中央環境審議会第57回地球環境部会・産業構造審議会環境部会第地球環境小委員会合同会合(第16回)議事概要

日時

2007年6月13日(水)9時30分~12時30分

場所

KKRホテル東京『瑞宝』

出席委員

茅地地球環境小委員長、浅野地球環境部会長代理、浅岡委員、飯田委員、石坂委員、 猪野委員、浦野委員、及川委員、逢見委員、大塚委員、鹿島委員、木下委員、河野委員、小林委員、佐和委員、塩田委員、須藤委員、関澤委員、大聖委員、高橋委員、高村委員、内藤委員、名尾委員、中上委員、永里委員、長辻委員、新美委員、原沢委員、福川委員、三橋委員、山口(光)委員、横山委員、米本委員、渡辺委員


1.

運輸部門の対策について

 国土交通省より、配布資料(資料1及び2)に沿って説明が行われた。

2.

委員の発言及び質疑

  • 資料1-4について、今後の施策として述べられているいくつかのキーワードは進めてほしい。一つはトップランナーが重要だと思うが、その中でグリーン税制も含めて自動車の小型化がどう盛り込まれているのか。
  • 6頁に記載されている「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律案」は既に国会を通過したのか。自分は京都に住んでいるが、京都の街では新たな公共交通機関を作ることは難しい状況にある。自転車専用道路を作れないか、また既存の交通機関の乗り継ぎを上手くできるような料金体系にならないか、国としても考えて欲しい。
  • 社会資本整備について、全体としての自動車需要を大幅に促していくこととミクロ面での円滑化、増やす部分と減らす部分の大枠としての数字を出して欲しい。それと関連していわゆる道路特定財源が聖域となっているようだが、モーダルシフトを促すとか、バイオ燃料の減税財源にするとか、その運用について触れられていないがどうなっているのか。
  • 自動車のトップランナーと税制のグリーン化が一番効果があったので、2015年基準の前倒しを検討してほしい。現在、クラス別の基準が取られているが、大型の車でも税制の恩恵を受けてしまうとの問題がある。税を累進化する、メーカー毎の平均燃費を公表してもらうなど、自動車大型化の抑制を検討してほしい。
  • 自動車で訪れる大規模な集客施設が郊外に沢山出来ているが、これらを算定・公表制度の対象として、来客のCO2をカウントして公表してほしい。
  • 通勤や営業活動による自動車利用が旅客部門のCO2排出の6割を占めているが、自転車や公共交通機関の利用に切り替えるよう求めるなど、大規模事業者は何らかの対応をしてもらいたい。また、国としてもそれを支援してほしい。
  • 公共交通について、算定の基準を見ると通勤を10%転換するなどが書かれているが、これを具体的に担保するものを考えているのか。
  • 物流については、複数のものを組み合わせていくと「合成の誤謬」ではないが、本当にこのような効果になるのか、検討結果を教えてほしい。
  • 今後の方向について、自動車の車中の情報化が進んできたので、補助金もいいが、ユーザー負担の観点からそろそろ義務化しれも良いのではないか。カーオーディオ、エアコン等の補器をつけたときの燃費ないしは標準的な基準を、自主規制や自主協定などで定めてパンフレット等で出してはどうか。
  • エコドライブについて、様々なコンテストがあるが、政策の統合化の観点から全国ベースの全体版を設けてはどうか。
  • 物流については、現象的なことばかり書かれており、費用負担や標準化などの内容には触れられていない。どのように考えているのか。
  • 運輸部門について、施策を推進する際に温暖化の観点からアセスを実施して公表してはどうか。
  • 運輸部門は2001年以降、削減が進んでおり、目達計画の達成は可能性が高いと言えるが、施策努力がなされて削減が進んでいるというよりも、原油価格の高騰という外部的要因が原因と考えられる。目達計画上の目標を上回る努力を是非してほしい。目達計画の目標そのものが、自動車産業とか交通流の伸びを見込んでいるため甘いと考えており、その意味からも削減をお願いしたい。
  • 高齢者対策の部分について、地方自治体が高齢者対策を行っているが、JRや私鉄が協力していない。ぜひ人流対策として協力をお願いしたい。
  • グリーン物流パートナーシップについて、関係者に熱意があるとは感じられない。役所が行っているからお付き合いで行っているという感じ。これは荷主や物流業者のメリットが見えてこないのが原因である。支援策を強化することが重要。
  • 資料1-3について、運輸部門の2001年以降の減少振りはドラマティックであり、誰も予想しなかったものである。現行対策ケースで削減が進まなかった場合を前提としてもほぼ目標は達成できる。これについては、グリーン税制やトップランナー制度が有効に働いたことは確かだと思うが、ライフスタイル、ビジネススタイルの美意識に変化が生じたのが重要な要因としてあると思われる。例えば、90年から90年代半ばでCO2が激増しているが、このころは大型・贅沢な車に乗ることが格好いいとの美意識が蔓延していた。その後、90年代末以降は、ライフスタイルの美意識に変化が生じ、小型車や軽自動車への乗り換えが進んだ。
  • もう一つは、コンベンショナルな技術のものでの工夫、具体的には自家用トラックでの物流から運送業者のトラックでの輸送への転換、いわゆる事営転換がある。
  • 強調したいのは自動車の単体対策である。燃費対策として、燃費基準を作って、グリーン税制を早期に導入した効果を数量的に強調してほしい。
  • 物流についても大きな効果を上げている。グリーン物流の制度において、荷主と物流業者の協力関係を確立したのが非常に大きかったと思う。この数量的効果を示してほしい。
  • 公共交通機関の利用について、最近公共交通機関が混雑してきており、意識は高まって来ていると思われる。東京ではICカードの利用が大きな効果をもたらすと思われる。というのも、公共交通機関の利用上の問題は、公共の電車・バスの乗り換えの手間である。長く歩く場合もあり、お年寄りの方は、それが原因で車で送ってもらう場合がある。この辺に重点を置いてほしい。
  • 交通流との関係で、混雑踏切の問題について、連続立体交差の社会・経済効果を出来れば前にさかのぼって評価し、それだけの効果があるものを、これからどれだけ数量的に目標を作って推進していくかということをやってもらいたい。
  • 削減が現行のケースでも2010年で約250百トンということは、目標はほぼ達成できると理解していいのか。
  • モーダルシフトがなかなか進まない原因は何か。
  • エコドライブについて、国民運動の展開の中で進めてほしい。
  • 自転車の専用道路を整備していくに際して、日本の自転車保有台数はどのくらいか認識しているのか。例えば、通勤手当を自転車通勤した場合に少し高くするなど、国民運動の中で、人が動く際にどのような配慮を行うのか、例えばトップは自転車、続いてエコカー、公共交通機関など、順番をつけて対策を行う必要がある。
  • 税制のグリーン化に関して、超低公害車として四つ星があるが、三つ星と四つ星には差がないもかかわらず、四つ星のみに税制優遇措置が与えられているのは問題なので配慮いただきたい。
  • 改正省エネ法、グリーン認証、特定地域では自動車NOx・PM法などで、燃費の改善を報告することになっているが、書式の簡素化、電子化、チェックの透明化等を構築してほしい。国としてもマクロの効果を把握可能となる。
  • エコドライブについて、事業者から一般ドライバーへ転換を図るべき。新車にエコドライブを誘導する装置がつき始めているが是非奨励してほしい。2012年までに車の半分が入れ替わるので、新車への対策は重要。一方で古い車に対しては重い課税を行っているが、これは地方税で地方自治体の判断で行っており、これを全国展開してほしい。
  • トップランナーセクターに求められることは、セクター内で目標を達成することに加え、国民の意識を大きく変えていく必要があること、そのためにどのようなインパクトを持てるかということが重要。運輸部門では特に大切。オイルショック時のような自転車道の整備及びそのための経済措置にかかっている。意識改革との観点からは自転車は重要な意味を持つ。自転車関連の施策について、自転車総合対策など、もっと考えてほしい。
  • 以前取りまとめた論点整理のパブリックコメントは、今後の議論にどのように関わってくるのか。
  • 今回は国土交通省から説明を頂いたが、今回の議論と他の関連審議会におけるとりまとめとの関係をどのように整理しているのか。
  • 総論的には異論はないが、何故減ったのか、どの政策手法が効いてきているのか、分析を加えてより詳細な追加対策の内容を明らかにしてほしい。この内容について明らかにならないと、2008年から2010年までの目標達成の精査が出来ない。
  • トップランナー基準の前倒し、税金、財政誘導の利用を追加施策の中に明確に位置づけてほしい。
  • 追加施策の中で、公共交通機関あるいは社会資本整備にかかるところで、自治体の自主性が重要となってくるが、他方で自治体が自ら進んで取り組むインセンティブはないので、上手くいっている事例の普及とそれを普及していくための財政的支援を検討してほしい。
  • 今回の説明資料を見ると、参考資料1の「論点整理」で示された事項に全く回答されていない。交通流対策として示された論点に次回はすべてお答え頂きたい。
  • パッチワーク的な検討となっている。踏切渋滞対策は重要だと思うが、交差点の慢性的渋滞問題も同様に重要だが触れられていない。前々から指摘しているが、交通流対策について、総合的な対策を示して欲しい。国土交通省と警察庁がデータを交換し合って努力してほしい。
  • ヨーロッパでは政策的・技術的なことは議論し尽くされた。あとは、一般の人々に如何に実行してもらうかに論点が移っている。そういう意味で、分かり易いアプローチは重要だが、「一人一人のメリット」とあるが、得になるからやろうというアプローチでは限界がある。他の部門も同じだが、地球人としての責務、美意識など、価値観を変える方向にもっていく必要がある。「メリット」と書いた瞬間に色あせてしまう。例えば、夏の暑い中、黒塗りの車がエンジンを掛けて待っているというようなことは止めるべき。こういった点を運輸に限らず考えていくべき。
  • 交通について、都市部と農村部では自動車の役割は全く異なる。議論が都市部に寄りすぎているイメージを受ける。農村部における車の必要性は都市部以上であるので、きめ細かい対応が必要。例えば県別ランキングなどを実施してある程度グルーピングし、比較することも一案。
  • 資料1-3に関して、CO2排出量の推計は、原単位と輸送量の予測値を掛け合わせて出しているが、これまでの対策では原単位ではかなり効いてきていることは分かったが、輸送量対策としてどのような政策がどの程度効果を現しているか、十分な説明を頂いていない。コンパクトなまちづくりという話があるが、これも輸送量削減をねらったものと思うが、それはどの程度を目標とするかしっかり説明してもらう必要がある。
  • 自転車の利用促進の話が出ているが、自転車で通勤・通学出来るのは10kmが限度。そのコンパクトさを考える必要がある。原単位も取り組む必要があるが、輸送量をどう削減するかについて施策の論議をしていく必要がある。
  • 資料1-4で述べられている総合的な政策メニューの中のコンパクトなまちづくりに関して、こちらは中長期的な取組となるが、政府の環境立国戦略において2050年で現状の半分という目標を見据えると、こういった施設整備あるいは都市の整備が非常に重要になってくる。そこで目に見える形での各省の連携が必要。
  • 都市交通に偏った対策になっているが、地方交通が非常に問題となっている。地方では、公共交通機関が減ることで一家で数台車を保有する、あるいは保有せざるを得ないことにもなる。都道府県を巻き込んだ施策が必要である。
  • 原単位が良くなっても交通量が増えれば元も子もないので、極度な需要管理が必要ではないか。カーシェアリング、パーク・アンド・ライド、都心から車を閉め出す等、総量を下げる対策を行わないと極端な削減は出来ないのではないか。そういった少し大げさぐらいの対策を考えてほしい。
  • 資料1-1の6頁のグリーンエネルギー自動車について、対策評価指標の目標計画上の目標値(2010年度)は233万台、それに対する実績値(2005年度)は33万台となっており、台数的にかなり差がある。これを実現するため、自動車のグリーン税制を強化するのか、また新しい手を考えているのか、具体的な考えがあれば聞かせてほしい。
  • 公共交通機関利用促進は結構だが、それと自動車交通量の需要調整をリンクさせたモデルがあれば示してほしい。実際に公共交通機関の利用促進と自動車の交通量の需要調整をリンクしたようなモデル地区を設けるなどして、具体的な対応の仕方が目に見えるようにしてほしい。
  • 都市部の渋滞対策として、総量規制は避けて通れないと思うが、そのような検討をしたことがあるのか。
  • 資料1-3について、運輸部門の全CO2排出量が2001年から急速に下がっているが、諸外国、特に欧米でこのような現象はみられるのか。もし日本だけの現象であれば、その特殊性を分析してほしい。
  • 説明頂いた施策のコストをどのように試算しているのか確認したい。日本の政策の特徴としてコストの話がどこにも出てこない場合が多い。その場合、いくらかかってもという話になってしまう。どこを優先的にどのくらいやるかが政策。
  • バイオ燃料については、ヨーロッパでは相当議論が進んでいる。外でいろいろと議論が固まっていくので、早めに注意しておく必要がある。
  • 見える対策に関して、以前もバスのアイドリング対策の例を説明したが、外国から見て「日本はそこまでやっている」と見せることが必要。社有車を四つ星の車にするなども、対外的に見える施策の一案である。
  • 今回の発表で、削減が進まないケースと進むケースのCO2排出量が示されたことは非常にありがたい。一方で、運輸部門は2002年以降ドラスティックに減少しているが、目標値250百万トンがそもそも低いのではないかと思う。このような目標を掲げたため、シミュレーションをしてもこの目標に合わせようとし、削減が進まないケースと進むケースの数字になったのではないか。ぎりぎりの取り組みの結果でこのような数字が出たのであれば説明してほしい。
  • 一番効果を上げているのは、トップランナー基準による自動車の燃費向上である。2015年基準の前倒しをしてはどうかとの話もでているが、賛同する。資料1-1の5頁を見ると、「本年夏に策定予定の2015年基準を踏まえた対策を検討する必要がある」との記述になっているが、これは削減が進むケースの計算に入っているのか。検討し、これを前倒しでやった場合には、さらにどのくらい削減できるのかということが入っているかどうか、入っていないとすると、どのくらいの数字になるかというのがもし分かれば教えて欲しい。
  • また、日頃燃費改善の問題で自工会とどういう議論を行っているのか。自動車燃料の改善は国民運動にもつながる話。現状をオープンにして、相当な削減効果を持つ点をアピールしてほしい。

○浅野部会長代理

  • 多くの施策は推計がかなり正確に行われており、前回の達成度の点検のときの報告と比べて内容も整理されてきており、いろいろな点で評価はできると思う。
  • 総合的に捉えるべきとの指摘は同感。例えば、公共交通機関への転換・促進がどれほどのCO2削減につながるかについては、資料を見れば書いてある。自転車道でCO2が減る根拠も同様に書いてある。国民運動で数字を積み上げることは無理だが、こういう数字を達成するために国民運動を行う、更に様々な施策との結びつきが必要であることも認識しておく必要がある。

○国土交通省

  • 自動車の小型化については、自動車税は自動車の排気量に応じて累進的な税を課しており、そもそもの制度設計においてグリーン化が計られている。
  • トップランナーの2015年基準について、技術的には新しい燃費測定方法を採用しており、現状の車でやっていない燃費測定方法を採用しているため、そのまま適用するのは技術的に難しいと考えている。ただし、いまの燃費値の伸びの傾向は、目達計画の見直しや、今回の資料でも考慮に入れている。
  • 高速道路の延伸については、道路交通や地域の活性化の面で、高速の整備は重要だと思っている。道路整備による交通量の変化は今後もしっかりと把握していきたい。
  • モーダルシフトも重要で推進する必要があり、ハード的な施策とソフト的な施策をバランス良く実施することが必要。
  • 道路特定財源の関連でバイオ燃料の話があったが、税制において財源をどこから確保するかといった問題は国土交通省では決められない。税を検討する場で議論すべき問題と考える。
  • 自転車道については、一つデータを紹介すると、17年4月1日現在で、自転車道は1,680キロメートル、自転車・歩行者道は10万キロメートル強、自転車・歩行者専用道路は5,000キロメートル強、合計で11万キロほどの自転車関係の整備を行っている。自転車利用環境整備は引き続き進めて参りたい。
  • 踏切については、渋滞だけでなく安全の観点からも問題であり、出来るだけ踏切を減らすべく取り組んでおり、従来の計画を前倒しして早いスピードで政策を推進している。効果に関する定量分析は現在勉強しているところであり、今後効果を出していきたい。
  • 交通流対策について、重要性は認識しており、ネットワークの整備、環状道路の整備、交差点改良といった渋滞対策・ネットワーク整備については、一生懸命に進めている。CO2という観点からは、CO2アクションプログラムという道路独自の計画を策定して、CO2削減効果の分析を行っている。今後も最重要課題としてやっていくつもり。この審議会は目標達成計画についての議論が中心であるため、道路施策のうち、計画に盛り込まれた対策について資料を作成している。
  • 資料1-3で示した予測については、結論先にありきの数字ではなく、精一杯の数字である。例えば、テレワークの部分について、総務省にきちんと計算し直してもらった結果、削減量は減ってしまった。
  • 公共交通機関やグリーン物流のモデル事業を普及していくべきとの指摘については、「環境的に持続可能な交通(EST)」として平成16年度からモデル地域を指定して、現在では27地域で行っており、これらの実例をどうやって普及させていくかが課題。他方、国の施策でカバーしていないことを地方で行っている場合もあり、今後も応援していきたい。
  • エコドライブを国民運動の観点から指摘頂いたが、一人一日1kgにおいて、エコドライブは46g分。地球温暖化対策にどれだけ貢献しているかを分かりやすくすることが必要であり、国民運動を活用することで裾野を広げていきたい。
  • 原単位だけでなく輸送量についても検討すべきとの指摘については、例えば貨物輸送は、輸送量は増えているがCO2排出量は減少しており、輸送量の増加以上に原単位の方が非常に改善した、ということであり、両方の視点で押さえつつ、こうした実例を紹介していきたい。
  • バスのアイドリングストップは全国的に行われていたと思うが、なかなか進まない理由の一つとしてエンジンが止まることに対する違和感があるが、意識の改革が進んでいけば克服していけるのではないか。

○茅委員長

  • 他の審議会との関連の件で質問があったが、今回報告頂いた国土交通省の方が議論の結果を十分把握して、今後国土交通省の中の審議会において提案ないし審議に反映して頂けるものと理解している。

○小川環境省地球温暖化対策課長

  • パブコメの扱いについてご指摘があったが、4月の論点整理、パブコメ、今回から行う一連のヒアリングなど、これらを一連の成果を材料として、委員の方からもコメントを頂き、中環審・産構審としてどのように目達計画の見直しを行っていくか、対策はどうすべきか、今後の検討に反映させていきたいと考えている。

3.報告事項

環境省から参考資料2及び4、経済産業省から参考資料3に沿って説明が行われた。

4.委員の発言及び質疑

○委員

  • 日中間でこれまでの協力関係よりもハイレベルで話が進んでいるとのことだが、どのように話が進んでいるのか可能な範囲で教えてほしい。京都議定書の終わり方において中国と長期的にどのような関係を結んでいくかは重要である。
  • 関係審議会合同会合について、参考資料3-1の3頁で「可能な限り、最小値又は最大値を見通した値を把握する」とあるが、各省庁から提出された値の信憑性はどこでチェックするのか。また、第三者が検証できるようデータを提示して頂けるのか。
  • 安倍総理の発言について、内容について一つだけ残念だったのは、目指すべき濃度に触れていないことである。サミットの合意では今後決めると書かれている。洞爺湖では遅いので、その前に日本としてどのレベルの濃度を目指すのか、是非、早急に議論してほしい。この議論をしなければ、目標地点が分からず検討しているようなもの。
  • ブッシュのスピーチでは、会見後すぐ、環境評議会議長が長い記者会見を行った。28頁ほどの記録を見たが、かなりしつこい質問に全て答えている。日本の場合はそのような説明はなく、国民に対する十分な説明を御願いしたい。我々はいろいろ聞きたいことがある。また、自分はサミット期間中フランスにいたが、新聞では残念ながら日本の話はほとんどなかった。日本に帰ってきて、日本は中心的な役割を果たしたとの記事を読んでびっくりした。日本がリーダーシップを発揮したのは本当のことだとは思うが、海外では「日本はEUキャンプで、2050に半減」としか伝えていない。官邸の英語のホームページにはスピーチしか掲載されていない。その他の資料は全く掲載されていない。是非、官邸に働きかけてほしい。
  • 複数の場所で触れている国民運動には普及・啓蒙が必要ではあるが、自分たちが購入する製品がどのくらいのCO2を排出しているかが分かると削減の努力が行われると思う。すなわち、「見える化」が必要。そのような動きを盛り上げるため、国民の意識・ライフスタイルを変える必要があり、そのためのテレビCM、キャンペーンを関係省庁は実施してほしい。
  • 「2050年に現状より半減」との長期的な目標を日本から打ち出したということは、重要なリーダーシップであり、国内外への強いメッセージだと理解している。具体的な数値目標を議論していくことは重要。IPCCの第四次評価報告書の中で、いくつかシナリオを整理している中をみると、おおよそ2000年レベルで半減とのレベルを見ると、490~535ppmくらいの幅で安定化と出されており、2000~2020の段階でグローバルな排出量のピークアウトがIPCC報告書では出ていると理解している。現在、第一約束期間の議論をしているが、今後の枠組みが提示されたということで、こうした議論を進めていく必要がある。
  • 参考資料4の2頁のグレンイーグルス以来のG20、3頁の米国イニシアティブ、G8と新興国との共同声明に関連して、日本は来年のサミットに向けて、これらの3つのものを材料にしつつ、ポスト京都の枠組みを出していく責任を負うと思う。その時、この3つのものに入っている途上国プラスアルファ、かなり影響を持ち得る30カ国くらいの途上国の温暖化対策について状況を把握しておかないと、来年のサミットに向けて議長国としての運営は成り立たないだろう。オールジャパンで、30カ国全部の温暖化政策に関して、密な研究を積み上げる必要がある。
  • 目指すべき濃度との議論については、ストックとしての濃度を目標とするのか、フローとしての排出削減に数値目標を掲げるべきかについては、京都会議に先立ちずっと議論されてきた。当時は550ppmが危険水準と言われていた。しかし、550ppmという数字の明確な科学的根拠はない。濃度を目標に掲げる人たちは、20~30年間、今のままCO2を増やし続けても、400数十であるということで、早急なCO2削減は必要ないとの主張がなされてきた。しかし、京都議定書はアーリー・アクションと排出量削減を打ち出した。安倍総理が2050年に50%削減するとのフローの数値の目標を出したということは評価できる。
  • 安倍総理の発言に関して、従来、温室効果ガス排出削減と経済成長は相反するかのように言われてきたが、総理が明確に両者の両立は可能と言ったことは歓迎したい。
  • また、革新的技術開発について、石炭型発電の高効率化が実現すれば火力発電の3割が削減可能となるが、途上国に対する資金援助も必要だろうが、革新的技術開発として掲げられている5つが実現すれば、それをもって50%削減が達成可能と考えているのか確認したい。
  • 世界が日本のトップランナーに習えば世界のCO2はどのくらい削減されるのか、試算しているのか。
  • 安倍総理の2050年半減論は、外交のポジション取りの話。ただ、政治家としてビジョンを示すことは必要であり、特段ほめることではなく否定することでもない。
  • 総理の一番のメッセージは、ポスト京都においてどういう枠組みで主要国を集めるのか、どういう方法で物事を解決するのか、そのエッセンスは省エネと指摘している点が重要。これは、EUが主張する国別にキャップをはめるとの方法が唯一の方法ではないということを言っている。
  • 国民運動論について、スローガンには反対しないが、公害のように企業が悪くて国民は悪くないとの立場があるが、国民一人一人が責任を負っている点を認識すべき。
  • 前半の議論で思ったことは、つじつまを合わせるために一体どの程度お金が必要なのかということ。オール省庁で取り組む必要がある。
  • サミットについて、日本の貢献も含めて軸が決まったとこは大変良かった、また中期戦略についても主要排出国を全て入れるということが明確に出されたのでこれも良かったと思っている。
  • また、目達計画の進捗状況に関して、今後進めるべき重要な点が8点掲げられたが、重要な施策を取り上げたという点では評価できる。
  • 長期目標と中期戦略については出てきているが、短期目標をどうするかは今後議論することになると思う。安倍総理が言っているように、日本国内できちんと対策を講じて京都議定書を守る方向で議論しなければならないことは、大きな宿題として残っている。
  • 「いざない」の中で経済的手法も打ち出されているが、特に排出量取引が取り上げられていることは注目すべき点である。革新的な技術開発を進めていく上で経済的手法は重要であり、具体的にどういう施策をとるべきかをここでも真剣に議論してほしい。温暖化対策を議論していく際に、突然強い規制をかけられても産業界も民間も困るので、緩やかなやり方で経済的手法をかける方法を早くから検討してほしい。排出量取引については一部産業界が反対していることは理解しているが、そのような産業界は同時にセクター別アプローチも提案しているので、将来枠組みでセクター別アプローチを取ることも履行が確保できるのであれ問題ないと思っている。そのような方法も組み合わせて、排出量取引を検討してほしい。
  • 安倍総理メッセージについて、「現状に比して」とあるが、基準年をどこに置くのか。90年の軸を動かすということか。
  • 国民運動について、既にチームマイナス6%が行われているが、総理の提案した国民運動は新たな運動なのか。だとすれば、いまのチームマイナス6%に何か問題があり、変えなければいけない理由は何か。もし、ポスト京都議定書ということで2012年以降の国民運動のことを言っているとすれば、間延びした運動の提唱ではないか。
  • 第一約束期間で各国の約束が実現しても地球温暖化は止まることはなく、したがって第二、第三の枠組みを考える必要があると認識している。他方、「ポスト京都」という表現をあちこちで用いており、第一約束期間で京都議定書が終わってしまうような表現になっているが、日本としては京都議定書の枠組みをしっかり続けていくべきではないか。
  • 国民運動について、今回の「一人一日1kg」というのは分かりにくく、赤ちゃんまで含めて頭割りする数字は適切ではない。これは国民運動ではなく社会運動であるとの指摘に共感する。国民に対するメッセージとして重要なことは、一つのことでいろんなことを包摂したメッセージを出すこと。買換が削減につながるには「自動車の小型化」「テレビの小型化」などが鍵となるが、トップランナーの機器であっても、大型では小型と比べてどれだけエネルギーを使うのかということも組み込んでいく必要がある。
  • サミットの合意のパラ53で、「2008年末までに、新しい地球規模の枠組みに対する詳細な貢献について合意し、2009年までに地球規模の合意に貢献する」とあり、そこに日本の持つ省エネ環境技術を活用した地に足をつけた議論をすべきとするが、この中で来年の日本が議長国のG8会合があるので、この詳細な合意に貢献することに繋がるサミットが求められると思う。そこに日本がどう貢献するのか、その議論を早く進めて欲しい。
  • 参考資料3-2において、「ポスト京都に関しては、欧州における国内排出量取引制度との議論に踊らされることなく」との記述があるが、これは新しい制度の導入を議論することを封じるもの。

○茅委員長

  • 安倍総理の「クールアース50」について、一言話したい。皆さんからは好意的な発言が多いが、私はとても大変な提案であると思っている。世界の温室効果ガス半減を要求している。現在の先進国と途上国の温室効果ガス排出量はほぼ同じであるので、途上国の排出がほとんど伸びなくとも先進国の排出量はゼロにしなければならない。ゼロになるということは、鉄鋼業もなくなる、石炭もなくなる、自動車の全ては電気自動車になるという世界。現実的に出来るはずはない。したがって、安倍総理の発言は、途上国に削減義務を課すということを意味する。これは大変な外交努力を要する。そのような意味で、この「クールアース50」を安易な提案と受け取るべきではない。

○浅野部会長代理

  • 茅委員長の指摘は全くその通り。
  • 参考資料3-1について、推進本部では結論的には「達成は厳しい状況にある」とあるが、では現実にどれほど厳しいのか、トータルで厳しいのは分かるがどこがどのように厳しいのかが不明である。とりわけ、この通りに行くと、2010年にどのような推計値になるのか、現在、我々はしっかりした数値は把握できていない。これについて、環境省にも度々早く数値を出すように御願いしているが、各省庁との調整等でまだで数値は出てきていない状況である。これでは検討しようがない。大変だとは思うが、最後になって数字が出てきても議論ができない。関係各省にも御願いしたい。
  • 施策の実現方法無しに議論しても仕方がない。具体的にどれをどのようにやれば達成できるのかを明確にする必要がある。運輸の箇所でも指摘したが、例えば推計には努力を要する部分も盛り込まれているが、これを認識しないで議論している。目達計画は分厚い本であるが、我慢して読んで、どこに数字のマジックがあるのか把握して審議会で議論していく必要がある。推計でおかしいところを個別に指摘するなどしないと、役所側との議論できない。今後の審議においては、委員としてもそのような観点から勉強する必要がある。

○和田環境省国際対策室長

  • 中国との関係では、4月中旬に温家宝総理が来日した際に、共同ステートメントの中で「次期枠組みに向けた実効的な議論の場に参加する」と盛り込まれた。
  • 濃度の話は、まずは吸収量と排出量をバランスさせるという目標を置いて、アクションにつながる分かり易い内容とするため2050年半減としている。
  • 「現状に比して50%削減」の「現状」とはいつかとの質問については、各国のスタンスもそれぞれあり、来年の議長国の立場も踏まえ、あえて明確にはしなかった。
  • 「ポスト京都」との表現を用いているが、当然次期枠組みに向けた取り組みは行っていく。

○小川環境省地球温暖化対策課長

  • 国民運動はいつからかとの質問ついては、既にチームマイナス6%の取り組みを進めており、これを踏まえて強化すべきところを強化していく予定である。いつからということはなく、今の瞬間からできることを行っていきたい。
  • 進捗状況の点検について質問があったが、3月の段階で関係省庁から集めたものについて、不明確な部分については詳細につき再度各省に問い合わせているところである。結果は、定量的評価に活用していきたい。
  • 定量的な評価を早く進めるべきとの指摘については、鋭意作業を進めており、経済産業省とも協力して進めているが、出来るだけ早くまとめて議論できる形で示したい。
  • 8審議会の概要についていくつかの質問があったが、参考資料3-2の資料は、会合の結論をまとめたものではなく、各委員の発言を整理したものである。

○藤原経済産業省環境経済室長

  • 横山委員からのご指摘に関しては、小川環境省地球温暖化対策課長から説明があった通りである。
  • 国民運動については、内閣官房や環境省とともに、経済産業省としても、自らの所管の部分、例えばIT、コンテンツ、街作り・商店街の観点、あるいは省エネ全般といった観点からも進めていきたいと考えている。
  • 革新的技術開発については、ここに書いてある5つはあくまで例示であり、削減効果を正式に一つ一つ積み上げて試算を行っているものではない。このような技術を活かして、その延長・深掘により、実際に半減できる技術を探していくとの観点から書いているものである。
  • 排出権取引の話もあったが、様々な論点があるので、環境省あるいは政府全体として、総合的な検討を行っていきたい。新しい議論を政府全体として阻害するつもりは毛頭なく、既存の取り組みの中でも十分行われていないものもあり、そこを徹底していくことも重要であると考えている。
  • データの精査は早急に関係省庁と共に行っていきたい。

○藤原経済産業省環境経済室長

  • 本日の議事は速やかに委員の方々に送付したい。一週間以内でコメントを頂きたい。また、本日の意見に追加すべき意見があれば、こちらも一週間以内に書面で事務局に送付頂きたい。
  • 次回は6月21日(木)9:00から、「業務・家庭部門の対策」、「中小企業の対策」、「エネルギー源確保の対策」として省エネ・新エネ政策全般について審議頂く予定である。

(文責:事務局)