中央環境審議会第50回地球環境部会・産業構造審議会環境部会第地球環境小委員会合同会合(第12回)議事概要

日時

平成19年3月23日(金)9:00~11:30

場所

大手町サンケイプラザ「ホール」

出席委員

茅地球環境小委員会委員長、鈴木地球環境部会長、浅野委員、原沢委員、黒田委員、青木委員、碧海委員、浅岡委員、飯田委員、猪野委員、石坂委員、及川委員、大塚委員、角田委員、木下委員、河野委員、小林委員、佐和委員、高村委員、武内委員、名尾委員、中上委員、永里委員、長辻委員、新美委員、桝井委員、三橋委員、森嶌委員、横山委員、山口(公)委員、山口(光)委員、和気委員


1.

各省庁(国土交通省・総務省・警察庁・厚生労働省・文部科学省)における地球温暖化対策の進捗状況について

 鈴木地球環境部会長から開会の挨拶の後、国土交通省、総務省、警察庁、厚生労働省、文部科学省より、地球温暖化対策の進捗状況の説明が行われた。

2.

合同会議委員の発言及び質疑

  • 住宅・建築物の省エネ基準の向上について、建築基準法の強化により対策を講じるのは、効果があり望ましいことであるが、担当者によれば、私有財産を規制することにもなるので、憲法との関係があり、非常に苦労されている。その点を踏まえると、現実的には、今行っている省エネ基準の強化を積極的に行うべきではないか。
  • 住宅・建築物の省エネ基準については、このような会議の場に出ないとなかなか分からないのが実情。CASBEEのような性能表示については、一般の国民に内容を周知していくことが重要。家を建てる人ばかりでなく、一般国民に周知し、国がこんなに努力していることを示す必要がある。環境省の官房長が省エネ住宅を建てたとのことであるが、こうした事例は国民の関心を集める上で有効ではないか。
  • 公共交通機関の利用促進について、富山での事例では、LRT等においてインフラや車体は公共負担で、運営は利用者負担で賄っている。公共負担がかなりあり、市民の理解と財政支援無しでは採算性が厳しいものがある。市民の環境問題や将来の生活への理解や意識を高めてないと成功せず、そうした意識の徹底が必要。
  • 総括的に言うと、国交省の施策は積極的に展開されており評価でき、更に積極的に展開していただきたいが、一般の国民にとって施策内容が理解しにくい点が課題。施策内容を記者に説明するだけではなく、様々な機会を通じて更に積極的に情報の公表を行うようにすべき。
  • 住宅・建築物対策は、民生部門の中で大きな割合を占めている。建築基準法の強制基準化が必要。基準法の強化による対応は私有財産の規制につながり憲法上問題があるという意見もあるが、既に他の建築規制で様々に強制化されているものがあり、建築基準法を強化することは必要で憲法上の問題はない、というのが法律家としての自分の考えである。
  • 資料2の2頁を見ると、新築住宅の省エネ基準の達成率が、04年の32%から05年の30%にかけて下がっているが、これは、現行対策では十分ではないということの証左ではないか。また、この数字は住宅性能表示対象となっている住宅における数字を達成率とするものであり、現在、そもそもこのような住宅は全体の15.6%に過ぎない。したがって、新規住宅の大半が省エネ基準を達していないということではないか。住宅は、30年50年と存在し続けるものであり、省エネ基準に達していない住宅を増やすことは適切ではなく、一刻も早い改善が必要。
  • 2頁の新築建築物の省エネ基準の達成率のデータは、2005年度の数値が出ていないので、05年度のデータも示して欲しい。また、省エネ基準に関する報告制度の対象でありながら、80%という目標値でとどめている理由はなぜか。
  • 更に、2000m以上の建築物についてのみ対策を講ずるというのは、もともと目標達成計画にはなかったこと。2000m未満の建築物については対策が講じられておらず放置されており、既存住宅を含めて建築物の財産性を高める観点からも省エネ等の対策を講じることが必要。
  • 国交省の自主行動計画フォローアップについては2003年までしかデータが示されていない。フォローアップの内容が薄いのではないか。
  • トラック輸送の効率化について、先ほど大型トラックについての話があり、24tトラックの台数が増加しているという説明があったが、24tというのは非常に大型のトラックという認識である。これより小さいトラックの状況はどのようになっているのか。その部分もきちんと見て、対策が進んでいるのかを判断すべき。
  • 鉄道についても、2005年のデータがない。
  • 自転車道を3万km整備するとの目標だが、自転車道を3万km整備しても、それほど大きな変化は見られないのではないか。この対策によって期待されるものは何か。
  • 資料2の9頁にあるEST事業については、大変良い事業だと思うが、定量的な削減効果は把握しているか。ある地域において、導入前と導入後の状況でどの程度変わったのか、定量的に効果を把握できないと、目達計画との関係上、よく分からない。大変良い素材であるのに惜しい。
  • 公共交通機関の利用促進についても、現行計画上の削減量の算定の根拠として、例えば、鉄道新線の整備については、一定割合の自家用車からの転換を想定して数字が弾かれているが、どの程度の転換が行われたかどうかについては、例えばつくばエクスプレスでの実績などによって調べることができると思われるが、きちんと把握しているのか。前回の審議会で、運輸部門での効果は自動車単体での燃費改善によるものがほとんどであると明らかになった。モーダルシフトについて、定量的評価を厳格に行わず、全体として効果が上がっているとしてしまうと、モーダルシフト対策は自動車単体規制の効果のただ乗りになってしまう。現在の目達計画上は、運輸部門は90年と比べて排出量を増やしても良いということになっているが、深掘が必要であり、この部分の定量的な把握が極めて重要。全体としての効果測定の努力がどうなっているか分からない。
  • 建築物の省エネ性能対策は効果が大きいだけに、失敗すると全体に与える影響は非常に大きい。特に、建築物の2000m未満のものについてどうするかが全く見えない。そもそも、 2000m未満の建築物がどの程度あるのか、全体に対し極めて少ない割合であり、2000m以上だけでも達成できるというのであればそれを示していただきたい。
  • 住宅の省エネ性能の向上について、住宅性能表示制度対象の住宅は新築住宅全体の約15%のみである。それ以外の新築住宅が本当に目標を達成出来ているのか。性能表示をしていない住宅は、住宅性能が悪いので表示をしていないという可能性も高いため、性能表示をしている15%からサンプリング調査して省エネ基準の達成状況を測るのは、不適当と思われ、この点についてどのように考えているのか。
  • CASBEEの内容を見ると、温暖化対策に関する基準はほとんどなく、環境面では、騒音等生活公害に関係する部分の基準がほとんどである。そのため、CASBEEが普及すれば温暖化対策として効果があがるというのはおかしい。
  • 総務省が行っているテレワークについては、温暖化への効果は非常に疑問であり、今回さらに疑問が深まった。資料1の52頁に記載されているテレワークによる削減量の根拠をみると、テレワークの普及で鉄道に乗る人数が減ることから COが削減すると計算されているが、例えば、テレワークにより5人乗る人が減っても、鉄道やバス、飛行機の排出量が減るわけではなく、自家用車の使用が多少減るくらいである。根本的に見直しをし、効果がある対策を考えるべき。
  • 警察庁の対策として、目標達成計画以前の温暖化大綱では、信号機のLED化が盛り込まれており、目標達成計画は温暖化大綱のプラスアルファであるため、大綱に記載された対策は粛々と進められているものと思うが、前回の見直しの際にも申し上げたように、この対策は定量的な削減が期待でき、評価できる対策であると考える。実感としてあまり進んでいないのではないかと思われるが、計画に新たに盛り込まれた対策に力を入れて、以前からの対策が消えてしまうと、全体として目標が達成出来なくなるので、この対策の進捗状況を伺いたい。
  • 資料2の1頁に自動車のトップランナー基準による削減量が記載されているが、この削減量は理論値を元にした効果で、実燃費による効果ではないのではないか。詳細を教えて欲しい。
  • 道路整備対策については、道路を作ることにより交通量が増し、その分のCO排出が増えるはずなので、その分を踏まえて評価を出すのが本筋。対策評価を行う時は、このような排出増を含めた総量でどうなるかで評価をすべき。
  • 高度道路交通システム(ITS)によって交通流がスムーズになる効果よりも、信号機のインテリジェンス化を進める方が渋滞解消には効果がある。日本は信号機がインテリジェンス化しておらず、速度抑制のみに重点を置いているため、交通流が非効率になっている。インテリジェンス化と国交省の交通流対策を統合する予定はないのか。
  • 2頁の新築住宅の省エネ基準達成率は、2005年度には前年度比で下がっているが、それでも今後、単純に達成率が上昇し目標を達成できると考えている根拠は何か。根拠があるのであれば文書で出して欲しい。また、新築住宅においても省エネ基準の達成率は3割程度にしかなっていない中、規制のない既築や 2000m未満の住宅についてはどのような対策を講じていくことを考えているか。
  • テレワークについては、コミュニケーションの在り方が変わってきている状況の中、現実に即した政策・ストーリーで見直すべきではないか。
  • 32頁の都市緑化については、公園に植林をしてもCOを吸収する量は限界があるが、ヒートアイランド抑制にはかなり効果がある。ヒートアイランドが抑制されることで、都市でのクーラーの使用量が減り、間接的に温室効果ガス削減に効果が出るのであり、このような間接的な効果についても評価すべき。都市の公園の面積率を向上させる上で、そういった観点の議論も必要ではないか。
  • 工場の省エネ措置については命令や罰則があるが、住宅・建築物にはそのような規制がない。工場と同じように命令・罰則の規定を入れてはどうか。
  • 資料1の32頁で、通勤交通マネジメント対策として、マイカーから公共交通機関への利用転換割合を10%と見込んでいるが、現在、利用転換割合の進捗はどのような状況となっているか。通勤交通マネジメントに関しては独自の対策評価指標を作る必要があるのではないか。
  • 資料1の64頁の国際輸送の陸上輸送距離の削減では、2002年までのデータしかないので、その後どうなっているのか教えて欲しい。
  • 建設施工分野における低燃費型建設機械の普及対策において、資料1の70頁に「低燃費型建設機械の指定制度」を策定中とあり、出来るだけ早く策定していただきたいが、いつ施行されるのか。
  • 国土交通省の自主行動計画では、全日本トラック協会や住宅生産団体連合会が、目標より相当高い実績を上げているので、是非とも目標の引上げを検討して欲しい。
  • 総務省の自主行動計画については、定量化が進んでいない業界について、定量化を進めていくように取り組んで欲しい。
  • 警察庁所管業種の中では自主行動計画を策定した例を把握していないとのことだが、例えば娯楽産業などは所管であると思うので、所管団体での自主行動計画策定を行うようにして欲しい。
  • 厚生労働省については、私立病院での自主行動計画策定を促していって欲しい。
  • 資料3の4頁にテレワークを総務省職員において実施しているとあるが、どのような業務内容をテレワークで行っているのか教えていただきたい。
  • 言行一致という点について意見を述べたい。今回の委員メンバーの中には大学などの関係者も多いが、自身の関係の学校においても、自主行動計画を策定してきちんと取り組みを行っているのか指摘しておきたい。
  • 病院や学校で温室効果ガス削減の取組をしても削減量としては大きいものではないかもしれないが、取組としては非常にシンボリックとなる。学校の中で温暖化対策の取組の工夫をすれば、環境教育としての教材にもなるというメリットがある。病院については難しい面もあるが、省エネを入れられる余地も大きいので、徐々にすすめていくと良い。
  • 総務省については、報道機関の対策を行う必要がある。報道機関が温暖化問題について放送するのは良いことだが、一方で自分自身が対策を行わないと、言行一致をしていないということになるので、その点からも取組をすることが重要。
  • 交通関係の対策については、公共交通機関の利用促進や、都市交通需要の調整、高度道路交通システム、交通安全施設の整備の削減量の検証・評価のほとんどが机上計算であり、例えば常磐新線が出来て本当に自動車交通量が減ったのか、自転車道の整備によって自動車交通量が減ったのかなど、机上計算ではなく、きちんと検証して欲しい。そうしないと、この事業そのものが評価されないのではないか。
  • 運輸部門では、国と地方自治体の連携が進みつつあるが、省エネ住宅の普及啓発に関しては、国交省と地方との連携がほとんど無い。地方との連携を是非お願いしたい。
  • 家庭でインターネットの普及が進んでいるが、光通信の普及でルーターが24時間点けっぱなしになっている。電話機も、現在のものは電源が必要なものに変わってしまっているが、これらの点について工夫する余地がないか考えるべき。
  • 文科省においては、私立学校における自主行動計画の策定を推進すべき。私立学校で温暖化対策を導入することで、教育効果も期待でき、実際に導入している学校もある。
  • 建築物における省エネ対策は非常に重要。一度、建築されてしまうと数十年に渡りストックとなってしまうので、できるだけ早く効果的な対策を打つことが必要。
  • 民生部門では温室効果ガスの排出量が伸びている。その一方で、国交省からのプレゼンテーションでは対策が進み着実に排出削減が進んでいるといった印象を受けたが、そのようなギャップが生じている原因、排出量の伸びの原因をどのように考えるか説明して欲しい。
  • 資料2の2頁の新築建築物の省エネ基準の達成率は、06年以降2010年まで80%で横ばいになるとの推計だが、横ばいのままで推移するとする根拠は何か。
  • 建築分野では、技術や建築素材が改善しており、現在の新築建築物は97年の段階ですでに、30%程度省エネポテンシャルが見込まれていることが、建築学会でも報告されている。これらの技術や素材を普及させる施策が重要。一つには、1999年基準はすでに高い達成率に到達しているので、99年基準を、建築を行う際の最低基準として位置付ければ良いのではないか。
  • 建築物の資産としての価値の中に、省エネパフォーマンスが含まれるようにする仕組み、例えば、証明書などを交付したり、建築物を売買する際に省エネ性能についてきちんと説明し、省エネパフォーマンスを表示するように義務付けるなどの対策を講じると良いのではないか。
  • 建築物の素材で、断熱材を作る際に代替フロンが使われているものがあるが、素材を介した温暖化の影響をどのように考えるか。
  • 厚生労働省関係では、所管する生活協同組合が地球温暖化防止活動推進センターなどと協力して温暖化問題について色々と活動を行っており非常に評価されるべきだが、時牛尾を行う事業者としてその業務について生協自身が目標を設定して温室効果ガス削減を行うことも検討していくべき。
  • 文部科学省関係では、国立大学や公立の小中高校での対策はどのようになっているかを確認したい。
  • 第一回の合同会合で申し上げて、きちんと回答がいただけなかったが、目達計画の中で、省CO型の地域都市構造を作るとなっており、都市の新たなデザインや交通体系の見直しが項目としてあるが、細目では住宅・都市緑化などの対策があるものの、それを束ねた、都市をどうするかといった議論が全くない。各地域が策定している温暖化計画と連動して考えていくことが重要。国土交通省としては、都市を念頭に置いた施策展開をどのように考えているのか。個人的には、都市計画というものがあるのだから、低CO型都市のマスタープランといったものを考えるべき。
  • 学校教育の話については、国際的には、アメリカの有名大学では、2010年までにCOの10%削減を学長が提唱し、サステイナブル・キャンパスに関する大学連盟といったものが作られており、我々も入るべきと言われているが、そういったものも見て施策を考えたらどうか。
  • 国土交通省における大本命の対策は渋滞緩和である。交通流の速度を10km速めるだけで温室効果ガスを2~4割程度削減することが出来る。大は東京の三環状道路の整備、小はあかずの踏切の解消や、右折レーンが整備されていないために渋滞が起きている道路など、一般道における対策を国と地方が一体となってしっかりと進めていくべき。
  • 交通流対策の定量化を進めていくべき。警察庁と国交省が持つデータを組み合わせれば削減効果などの把握は可能なはずなので、定量化を進め、PDCAをしっかりと行うべき。
  • 住宅や建築物の省エネ性能の向上による削減効果は非常に大きいが、数字が大きすぎて分かりづらい面もあるので、一般消費者にとってオーダーが分かるように、1世帯当たりにするとどの程度の削減になるかで表すと良い。
  • 既築住宅・建築物における対策は効果の検証が難しい。我々ではESCOを行っているが、既築の住宅・建築物はコストが非常に大きい。既築のものを新築と同じように扱うことは難しく、既築は既築で対策を検討して頂く必要がある。さらに、検証をするためにもコストが必要であり、環境省等において検証のための財源措置を確保することも考えるべき。
  • 病院については、民生部門の中でも、他の業種と比べてもエネルギー原単位が大きく、また、検証材料もないことが問題なので、自主行動計画を策定し、検証することで削減が進むのではないか。同じことが文部科学省についても言える。所掌の違いもあり、なかなか対策に踏み込めないので、時間がかかるとは思うが自主行動計画に積極的に取り組んでいただきたい。
  • 2月7日の合同会合でも申し上げたが、住宅の省エネにおいては住まい方が非常に重要になる。省エネ法の対象範囲を2000m未満の住宅についても拡大するべき。
  • 家庭においては、消費エネルギー量を記録し、削減した効果などが見える形でフィードバックされるようなネットワークサービスの普及を図るべきで、国交省で是非取り組んでいただきたい。
  • 学校などの公共施設における太陽光発電などの自然エネルギーの導入を積極的に図るべき。教育機関で導入すれば、目に見える教育素材としても役に立つ。
  • 待機電力の削減に取り組むべき。待機電力を大幅に削減することにより、日本全体でのCO削減に大いに貢献するのではないか。
  • テレワークシステムは少子高齢化対策や地域活性化といった社会構造の上での様々な効果があり、環境への効果もそのうちの一つと位置付けられるが、人の移動が減ることによりCOが削減されるという論理については、米国のように国土が広く車社会の国では、テレワークの普及により人の移動の減少による削減効果があるかもしれないが、日本でそのような効果があるかは疑問。また、テレワークで在宅勤務になると、1箇所で働かないため、エネルギー消費が分散されることになるが、細分化したエネルギー消費を総計すると逆に1箇所で働いている場合より消費量が増えている可能性もある。削減量が300万トンという試算があるが、これは難しいのではないか。効果を正確に捉える努力が必要。
  • 本審議会は、目標達成のための政策が順調に進捗しているかをチェックするために行っている。各省庁の揚げ足をとるためのものではない。我々としては、2008年から2012年の第一約束期間に向けて、どのような諸政策によって目標を達成するかを考えるべきで、各委員におかれては、評論家のように思いつきで発言するのではなく、どのような政策を行うべきか、具体的な政策の提案を行うべき。部会長におかれては、場合によっては議論の内容について統制することも必要で、委員におかれても、何のために集まっているのかを考えていただきたい。
  • 京都議定書の目標が実現できなければ、30%の上乗せがペナルティーとして課せられ、その達成のために更に税金が余計に使われることになる。政策を考える上では、そうなった場合と比較すると、クレジットが高騰する可能性も考えると、目標達成のために、現時点で減税や補助金を組み合わせて追加的に資金を投入した方が安く済むという考え方もできるのではないか。
  • 日本の場合、自主行動計画に重点を置いているが、経団連の自主行動計画は長年フォローアップが実施され、チェックが厳格に行われているため、世界を見ても例のない対策であり、相当のレベルとなっている。他方、日本全体としてみた場合、所管省庁の違いによってフォローアップの内容がバラバラになっている状況を改善しなければならない。今後、自主行動計画全体をチェックするよう見直していかなければならない。
  • 建築物・住宅については2000m未満のものについては省エネ基準に係る義務がなく、更に新築のみが規制の対象だが、2000m未満や既存部分でも削減対策を入れることができれば、非常に大きな効果が期待できる。既存や 2000m未満の建築物・住宅についても、複層ガラスの導入など、補助金・税制による対策を講じるべき。どこにお金をかけるか、どのような政策手段を投入するかを考えるのがこの審議会の役割である。各省を責めるのではなく、我々も真剣になって政策を考えるべき。
  • 各省庁の対策について、削減効果の大きさがどの程度で、どの対策がどの程度削減できているかが、全体的に分かるように示すことが重要。
  • 政策の縦糸として、排出ポテンシャルの大きな分野について、一層の深掘を検討する必要がある。その観点からは業務部門に焦点を当て、特に住宅・建築物分野の対策が重要になる。現在、 2000m以上の住宅・建築物のうち新築のみが規制対象だが、これらからの排出量が住宅・建築物全体の中でどの程度の割合となっており、床面積ベースではどの程度の割合となっているのか。おそらく、 2000m以上の新築建物の割合は少ないのではないか。いずれにしても新築のみでは効果が限られると思うが、仮に、既築住宅・建築物についても対策を講じようとした場合、削減効果はどの位でコストはどの程度かかるのか。
  • 政策の横糸は、国民運動としてあらゆる部門で排出削減を行うということである。その意味で、排出量の大小に拘わらず自主行動計画の展開が上手く進むかどうかは重要である。
  • 自主行動計画のフォローアップ状況は濃淡があり、例えば、放送・通信業界は排出量が把握されていないし、製薬業界や新聞業界はフォローアップ自体が行われていない。また、国土交通省ではフォローが行われているが、頻繁になされていない。例えば省エネ法において、工場ごとのエネルギー消費量が報告されているので、各省庁の所掌に該当する工場がどの程度あるかを見て、フォローすることもできるだろう。
  • 事業者間・省内・省庁間での連携を進めることは非常に重要なこと。しかし、環境税・国内排出量取引制度で経済産業省・環境省間で対立があり、現実には連携が上手く進んでいないのではないか。そこで、連携が上手く行っている部分・そうでない部分を明らかにして、上手くいっていない部分をフォローする必要がある。一例を挙げると、東京-大阪間の二酸化炭素排出量については、新幹線で移動した方が非常に少ないとJR東海は主張しているが、一方で、航空会社はそんなことはないと反論している。この問題について国土交通省はどのように認識しているのか。もし、JR東海側の主張が正しいと言うことであれば、東京-大阪間では航空便を減らすような対策を考えると言うこともあり得るのではないか。その辺りのどのように考えているのかお伺いしたい。連携について、本音の話を社会に明らかにしていくことが必要ではないか。
  • 運輸部門については、ここ数年、排出量が減少傾向にあるが、今日のお話を伺いすると、もっと排出削減を進めることができるだろう。基準年の排出量に限りなく近づけるように、連携によって対策を加速化することが必要であり、見通しと決意を教えて欲しい。
  • 自分の任務は、目標達成計画を数量ベースで積み上げて作るということだが、その場合に、全体の中で、どの対策がきちんと実施が出来て、どの対策の実施が困難かを把握した上で、追加すべき対策は何かを検証しなければならない。それが行えないと、新しい目標達成計画も単なる希望的観測に基づいた計画になってしまう。各対策については、達成ができるもの・深堀ができるもの・削減可能性があるものを仕分けされて各対策についての報告がなされないと、きちんとした議論が行えないだろう。
  • 審議会の場では、各省庁に対するバッシングだけのコメントをしても仕方がないので、このような対策をした方が良いといった提案をして欲しい。例えば、既設住宅対策はどのようにすれば対策を講じられるのか、良い智恵を出して次の施策の中に入れていかなければならない。

○鈴木部会長

  • 本審議会は、現行の京都議定書目標達成計画の中の約60の施策がどのように進捗しているのか定量化して確認するための場である。定量化するだけでも相当困難な作業である上に、交通、住宅対策などについてどのような対策を講じていくか考えていかなければならない。これまでのところ、手つかずの対策もある。前回ヒアリングした結果も踏まえ、これらの点について、全体としてどうなっているのか、モデルを走らせるのが黒田委員・原沢委員の役割であるが、当該モデルを元に検討していきたい。既に各省で施策を進められている部分もあるであろうし、次の目達計画での改正が必要な部分もある。

○国土交通省地球環境対策室長

  • 所管業界の自主行動計画について、フォローアップがなされていないとの指摘があったが、18年度は社会資本整備審議会と交通政策審議会においてフォローアップが行われる予定であり、現在、データを事務的に集計中。4月~5月に結果を公表する予定。
  • 今回の資料の中で、鉄道・バス関連施策等について、2005年度の実績が出ていないものがあるとの指摘があったが、こちらについても今年度末に集計を行っているところであり、集計が完了次第、公表する予定。
  • 24tトラックは非常に大型のものではないかとのご指摘があったが、最近は、幹線道路で20~25tトラックの走行量が増加している。直接、トラックの重量別の走行量を示すデータはないものの、1990年と2004年の比較において、トラックの走行量は減っているがトンキロは増加している、これは、トラックの効率化が進んでいることを示している。このようなデータをつかってPDCAをしっかりと行っていきたい。
  • 公共交通機関の利用促進策について、排出削減効果の定量的把握をすべきとの指摘があったが、ESTモデル事業は16年度からモデル地域指定を行っており、その指定の際には、原則、」CO削減量などの定量的な目標を示させている。また、効果を検証するためのフォローアップも行わせている。このような方法で、定量的に把握を行っている。
  • 都市構造・渋滞緩和に関する取組は、ESTモデル事業の中で、都市計画に基づき事業を進めており、都市のデザインなども念頭においた事業運営を行っている。
  • 運輸部門での深堀については、審議会に諮りながら検討を進めていきたい。どれだけ深堀ができるか答えられないが、まずは、現在の目標を達成し足固めをすることが重要。

○国土交通省国土環境・調整課環境調整官

  • 民生部門の排出状況の現状認識について、業務部門では90年以降床面積が3割増えているものの、床面積当たりの排出量はそれほど増加していない。例えば、百貨店・デパートは営業時間が大きく伸びているといった事実があることから、建物の利用方法の変化が排出増加の一因ではないかと考えている。
  • 家庭部門については、世帯数が2割増となったことと、温水便座や衣類乾燥機などの普及で家電製品の保有台数が増え、特に動力関係のエネルギー消費が増えたことが原因と考えられる。
  • 住宅の規制強化をすべきではないかとの点については、現在、届出については義務化がされているが、命令・罰則は規定されていない。また、義務化といった場合に、基準に適合しない住宅は建てられないという規制を指す場合もあるが、ここまでの義務化をする場合には、かなりのコンセンサスが必要となってくる。このような点も踏まえ、住宅・建築物対策について幅広く検討を行いたい。
  • 2000m以上の建築物・住宅の割合は、棟数ベースでは、非住宅が5%、住宅が1%をカバーしているに過ぎないが、床面積ベースでは、非住宅が6割をカバー、住宅が2割をカバーしている。仮に住宅の規制対象を1000mまで拡大しても、棟数ベースで2倍になるのに対し、床面積ベースでは1.2倍まで拡大するに過ぎない。このため、自治体におけるチェックのために多くの体制を整備しなければならない点も考える必要がある。
  • 推計によると、省エネ基準の導入により、例えば、東京都では基準が導入される前は建築物の7割が断熱が入っていなかったが、現在、断熱が入っていない建築物は3割にまで減ることとなっている。
  • 既築対策としては、平成18年4月の改正省エネ法の施行から大規模修繕、大規模改修等を届出対象に加えている。
  • 建物の断熱性だけでなく、機器面での対策を組み合わせ、総合的に評価することも検討していきたい。
  • 省エネ法上、建築物についても、例えばオフィスビルの場合、床面積5万平米以上の程度のものについては罰則対象になっている。
  • 都市緑化については、京都議定書上は植生回復という位置づけになり、吸収量は28万t計上を目標としているところ。今後、対策を見直しより一層の吸収量の確保を図っていきたい。
  • 都市構造については、まちづくり三法の改正などで、対応を進めている。

○総務省情報流通高度化推進室長

  • テレワークについては、総務省単独の施策ではなく、国土交通省、厚生労働省、経済産業省の4省庁連携で取り組んでおり、総務省は4省庁の代表として今回出席しているが、関係4省庁とも排出削減に効果のある対策であると考えている。今後、見直しを進める中で、更に議論いただきたい。
  • 総務省で実施しているテレワークはあらゆる職種が対象となっている。
  • 総務省において実施する通信・放送団体の自主行動計画フォローアップは、団体単位ではなく事業者単位である。資料にもあるように、125事業者で効果計測が実施されており、事業者単位で定量的な数量をしていると認識している。

○警察庁交通管制技術室長

  • 信号機のLED化については、目標達成計画の対策には位置付けられていないが、目玉となる対策と考えており、LED化の普及を進めている。現在、車両用は14.4万灯、歩行者用は4.6万灯のLED化が行われており、普及率は車両用が12.8%、歩行者用は5.4%となっている。毎年、数万ずつLED化を進めている。

○厚生労働省経済課長

  • 生活協同組合の自主行動計画については状況の確認を行いたい。製薬業界・私立病院については、今後、業界に相談しつつ対応を考えていきたい。

○文部科学省大臣官房政策課企画官

  • 国立大学については、環境配慮促進法で対応している。数値目標まで設定されているかどうかは今後実態調査を行いたい。また、小中高校については、地方公共団体が作っている温暖化対策に関する計画の中に含まれているかを確認し、含まれていなければ、教育委員会を含む地方公共団体に対して対応を促すこととしたい。

○小島産業技術環境局長

  • 先ほど環境省と経済産業省との連携、それから環境税、排出量取引の問題についてご指摘があったが、改めて両省の考えを述べさせて頂く。
     まず、環境省と経済産業省との連携については、両省の審議会が合同で目達計画の見直しをやっていること、自主行動計画のフォローアップも合同でやっていることに象徴的にあらわれているように、マイナス6%目標の達成に向けて、環境省と経済産業省はまさに一緒になって連携を密にしてやっているところ。自分と環境省南川局長も、ほぼ毎日連絡をとって、いろいろな共同作業をやっているところであり、両省の連携に全く問題はないと考えている。今後もその連携を深め、マイナス6%達成に努力していこうと考えている。
  • 次に、環境税と排出量取引の問題については、目達計画の中にも示されているように、その目標達成のために何が有効な対策かという観点から、総合的に検討していかなければならない。この合同会議においても、産業部門にいかなる対策が必要か、あるいは、近年排出量が著しく伸びている家庭・業務部門にいかなる対策が有効かという観点から検討をいただいている。環境税や排出量取引については、国際的には京都議定書の義務を負っている国と負ってない国がある中で、義務を負っている国だけにこのような非常に規制的な色彩の強い措置を講ずることが適当であるかどうかなどの、検討が必要と考えている。また、現在、産業部門においては、様々な排出削減対策が行われているが、有効性を確認しないまま環境税・排出量取引のような規制的な色彩の強い措置をとることによって、これらの対策の強化に悪影響を及ぼさないか、更に、工場の海外移転をもたらさないかといった点にも考慮を払う必要がある。
  • 更に、著しい伸びを示している業務、家庭部門に環境税・排出量取引が有効か、また、有効にするためにはいかなる措置が必要であるのか、そういうことを総合的に考えていかなければならない。これらの点について、現在、この合同会議でご議論をいただいており、行政サイドとしても、環境省と経済産業省との間でいろいろな議論をしているところ。この点においても、両省間で対立があるということではなくて、いかなる対策が有効かという観点から、いろいろ議論をしているということ。

○資エ庁省エネルギー新エネルギー部政策課長

  • 待機電力対策については、トップランナー基準の中で対応が進められているところ。
  • ルーターについては、電源オフは難しいが、トップランナー基準の対象に加えるべく検討している。
  • 学校等への太陽光発電の導入については、補助金による支援を行っている。

○環境省(馬場地球温暖化対策課長補佐)

  • 新エネと電力のCO排出原単位の効果が重複していると説明したが、経済産業省から説明があった内容が正しいと考える。