中央環境審議会 地球環境部会(第129回) 議事録

午前 9時59分 開会

研究調査室長

おはようございます。定刻より1分早いですが、委員の皆様、全員ご出席になりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会を開催いたします。

私は、事務局の環境省研究調査室長の竹本と申します。よろしくお願いいたします。

本日の審議は公開とさせていただきます。

現在、委員総数23名のうち、過半数の委員にご出席いただいており、定足数の要件を満たし、部会として成立していることをご報告いたします。

まず、浅野部会長よりご挨拶をいただきたいと思います。

浅野部会長

おはようございます。22日に合同会議をやりまして、3日後にまた部会というのは、いささかめちゃくちゃなスケジュールだと思ったんですが、何としても単独部会を開けと。私は1月でいいと言ったのですが、事務局が何かシュリンクをしまして、今日やるということになりましたので、暮れのぎりぎりお集まりいただきまして、どうも申し訳ございません。

どうしても合同部会というのはテーマが限られてしまったり、一人の発言時間が限定されてしまうということがありますし、かなり重要だと思っています適応計画については、合同部会のテーマにならないものですから、これについては、やはりこちらの部会でしっかり内容の確認をしながら、今後のその運用の仕方についてもご意見をいただきたいと、こんなふうに考えましたので、今日、またこのような会合を開きました。

どうぞよろしくお願いいたします。

研究調査室長

ありがとうございます。

それでは、新しく参加された委員をご紹介させていただきます。

日本労働組合総連合会副事務局長の南部委員です。

南部委員

よろしくお願いいたします。

研究調査室長

また、環境省において一部人事異動がありましたので、新しく着任した者を紹介させていただきます。

地球温暖化対策課長の松澤です。

低炭素社会推進室長の関谷です。

続きまして、環境省地球環境局長の梶原より、一言ご挨拶をさせていただきます。

地球環境局長

どうもおはようございます。

本日は、師走の、本当に年差し迫ったところにお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。

本日につきましては、単独で開催しました8月以降の様々な進展につきましてご報告させていただき、そして、ご審議を賜りたいと思っております。

先ほど部会長の方からお話がございました適応計画でございますが、先月の27日に閣議決定をいたしております。

我が国初めての適応計画ということで、これにつきましては、本年3月に意見具申として取りまとめいただきました気候変動影響評価報告書がベースとなって作成したものでございます。

今後、本計画を踏まえまして、関係省庁で連携いたしまして、着実にこれを進めていきたいというふうに考えてございます。

そして、先月末から今月の13日にかけまして、パリ郊外で開催されましたCOP21におきまして、パリ協定が採択されております。先進国と途上国との立場の違いを乗り越えて、歴史上初めて全ての国に適用される公平な枠組みが合意されたものと高く評価させていただいているところでございます。

今後、パリ協定を踏まえまして、約束草案で示しました2030年度に2013年度比26%減という目標の達成に向けて、温室効果ガスの計画的な削減に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

また、このパリ協定に先立ちますG7のサミット、そして、パリ協定そのものに盛り込まれました長期目標、そして、既に閣議決定をしております我が国の2050年80%削減目標というものがございます。

2030年までの対策にとどまらず、2030年を通過点として、将来にわたり経済社会システムあるいはライフスタイルの変革といったようなものに取り組んでいく必要がございます。

今週22日に、政府で、総理をヘッドにしまして全ての閣僚から構成されます地球温暖化対策推進本部が開催されております。

今後の政府の取組方針として、2030年度目標の達成に向けて着実に取り組むこと。そして、我が国としても世界規模での排出削減に向けて、長期的、戦略的に貢献すること等を決定しているところでございます。

このため、当面の措置といたしまして、来春までに地球温暖化対策計画を策定すること等を定めて、決定もしております。

また、気候変動を含めまして、広範な分野での国際社会の目標といたしまして、本年9月の国連サミットにおきまして、持続可能な開発のための2030アジェンダが採択されております。設定されております17のゴールのうち、環境が非常に幅広く関係して取り入れられております。環境に関連する分野におきまして、国内外における施策を積極的に展開してまいりたいと考えております。

来年は、世界が、気候変動という困難な問題の解決に向けて新たなスタートを切る年だというふうに考えております。我が国では、G7サミットの議長国として伊勢志摩サミット、そして、それに先立ちますG7環境大臣会合を開催するなど、環境面から国際社会に対して一層貢献するという意味では大きな年になっております。

本日は、以上のような大きな流れの中で、次年度の重点施策、あるいは長期的観点からの取り組みの検討、あるいは主な今後の国際会議の予定等も含めてご報告させていただきたいと思っております。

よろしくお願い申し上げたいと思います。

研究調査室長

続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。

お手元に議事次第がございます。ここに配付資料一覧がございます。かなり大部になっておりますが、一つずつご紹介します。

委員名簿の後に資料1-1、気候変動の影響への適応計画について。それから、資料番号は打っておりません。恐縮でございますが、気候変動の影響への適応計画、冊子がございます。資料1-3、気候変動の影響への適応計画(案)に対する意見募集の結果概要について。資料2-1、平成28年度環境省重点施策概要。資料2-2、重点施策。資料2-3、気候変動長期戦略懇談会について。

資料2-4、同懇談会の提言骨子(案)。資料2-5、温室効果ガス削減中長期ビジョン検討会取りまとめ(案)(概要版)。資料2-6、検討会取りまとめ(案)。資料2-7、気候変動対策と経済・社会の関係に関する国際的な議論の潮流について(整理の方向)。資料2-8、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」と「持続可能な開発目標」。資料2-9、二国間クレジット制度の最新動向。そして、最後が資料2-10、環境省関係主要国際会議でございます。資料の不足等がございましたら、事務局までお申しつけください。それでは、以降の議事進行は浅野部会長にお願いいたします。

浅野部会長

それでは、早速議事に入りたいと思います。

まず、気候変動の影響への適応計画について、以前、一度、中間的にご報告申し上げておりますが、先ほど局長のお話がありましたように、閣議決定を見ておりますので、その内容について、事務局からご説明いただきます。

研究調査室長

それでは、資料1-1をご覧ください。めくっていただいて、3ページまで行ってください。

こちらに、政府の適応計画策定の経緯をお示ししてあります。

前回の地球環境部会は8月にございましたが、この段階では中央環境審議会の意見具申、気候変動の影響の評価報告書について意見具申をいただいた後、政府内部で計画を検討しているという段階でございましたが、その後、9月11日に関係府省庁連絡会議(局長級)を設置しております。

こちらは、関係11府省庁と内閣官房の局長級から成る会議でございまして、ここで本格的に計画のドラフト作業、調整が開始されたというものでございます。

その後、10月23日に、この連絡会議におきまして適応計画(案)を取りまとめまして、その後、10月23日~11月6日の間、パブリックコメントが実施されました。

そのパブリックコメントの結果は、資料1-3にお示ししております。

詳細は割愛させていただきますけれども、23団体・個人から87件のご意見をいただいております。

様々なご意見をいただいておりますが、概ね、今回、政府として初めてまとめるということで、そういった意味での評価はいただいております。あと、その課題についても、いろいろとご指摘いただいているということでございます。

このパブリックコメントを経て、11月27日に、COP21に向けた我が国の貢献となる、そういうタイミングで政府の適応計画を閣議決定しております。

こういった成果もあり、パリ協定に適応に関する様々な規定が盛り込まれております。

例えば、2条の目的にも、緩和と並んで適応というものが盛り込まれておりますし、その適応の計画の策定や実施に関する規定もしっかり盛り込まれているということで、我が国の果たした役割というのは、それなりに大きかったのではないかというふうに考えております。

それから次に、4ページをご覧いただきたいんですけれども、計画の概要でございます。

一番上は、計画策定に至った経緯、気候変動あるいはその影響について、現状と将来の分析を行っております。

また、基本的に、この計画は3部構成でございます。黄色の基本的考え方(第1部)、それから、ピンク、左下、分野別施策(第2部)、それから、基盤的・国際的施策(第3部)から成っております。

目指すべき社会の姿のビジョンでございますけれども、適応を推進することで、気候変動の影響による国民の生命、財産及び生活、経済、自然環境等への被害を最小化あるいは回避し、迅速に回復できる安全・安心で持続可能な社会の構築を図るという打ち出しを行いまして、それに近づくために5本の基本戦略を立てております。

この計画は、21世紀末までの長期的な展望を意識しつつ、概ね10年間の基本的方向を示しております。

その戦略5本柱の1番目が、政府施策への適応の組み込みでございます。これは2部に示されている7つの分野、それぞれの施策に適応、すなわち、気候変動のリスクをしっかり組み込んで対処していくというものでございます。

それで、5ページ裏に、膨大な量にのぼっておりますけれども、それを一覧にまとめております。農林水産業、水環境・水資源、自然生態系、災害・沿岸域、健康、産業・経済活動、国民生活・都市生活に至るまで、非常に対策の熟度、ばらつきはございますけれども、とにかく一つにまとめたということでございます。

この計画の特徴は、個々の分野ごとに、気候変動の現在と将来の影響と、それに対応した施策をコンビで書いている点でございます。

一つだけご紹介させていただきます。

農業の分野につきましては、この白い冊子の18ページから20ページにかけて、水稲に関する記載が、農業に関する記載がございます。

先ほど申し上げましたように、この計画、施策の中には、それぞれ影響の評価の結果を示しております。これは中環審の意見具申でもいただいた評価結果、重大性、緊急性、確信度についてお示しした上で、具体的な対策をその後に書く。

この水稲に関しては19ページに評価結果が示され、20ページの上半分にその施策が書いております。具体的には、水稲に関しては、肥培管理、水管理等の技術徹底ですとか、高温耐性品種の開発・普及、あるいは病害虫対策を実施していくといったような記載がございます。こういった記載を全ての分野にわたって示したという特徴がございます。

それで、また、パワーポイント、資料1-2の4ページに戻ってください。

基本戦略(2)~(5)にかけてでございますけれども、これは(第3部)基盤的施策ともリンクをしておりますが、この適応については、科学的知見をさらに充実をさせる必要があることですとか、気候リスク情報について協議をし、必要な人たちに提供していく、そういう役割。さらには、地域、地方、特に地方公共団体での取組の推進を支援していく。

また、最後に、途上国を中心とした国際協力を推進していくということで、これに対する戦略と施策を関係省庁の取組を網羅しております。

それで、今後でございます。

これから政府として一体的に実施をしていくわけですけれども、この進捗状況の点検、これは世界各国、このパリ協定そのものでも今後の課題となっております。国際動向もいろいろ調査をしながら、その進捗管理のあり方を開発していく。

概ね5年を目途に気候変動影響評価を実施して、必要に応じて計画の見直しを行うということとしております。

以上でございます。

浅野部会長

それでは、ただいま適応計画についてご説明いただきましたが、この適応計画について、ご質問、ご意見がございましたら、どうぞご遠慮なくお出しください。

ご発言希望の方は、どうぞ名札をお立ていただければと思います。

では、長辻委員、末吉委員、藤井委員の順番でお願いいたします。

長辻委員

この適応計画ですが、進めていく上で、科学的知見の充実ということが挙げられております。これは非常に大事なことだと思います。

そこで、もう一歩踏み込んで、具体的にモニタリングの充実ということをはっきり打ち出しておいた方がいいのではないかと思います。

というのが、どうしても最近の競争的研究環境において、モニタリングという年月を要する仕事が、次第に難しくなるという、そういう傾向がありますので、予算と人員と計画を明確に立てて、成果がすぐには出にくい仕事ですけれど、これはそういう分野であるということをはっきり位置づけて着実に進めていっていただきたいと思います。

それから、あと、先ほどの具体例で水稲の例が出ていましたが、水稲への温暖化の影響が現れたのは、かなり前のことですよね。もう手を打たれて成果も出ている。ミカンについてもそうですよね。四国地方では、もう新しい品種のミカンが開発されていますし、適応もうまく進んでいるという、そういうこともありますので、常に先を見据えた対策というのが求められると思います。温暖化の影響が及ぶ最前線をしっかり認識して対策を進めていくことが必要だろうと思います。

以上です。

浅野部会長

ありがとうございました。

末吉委員、どうぞ。

末吉委員

ありがとうございます。

ここしばらく休んでおりましたので、議論があったのかもしれませんけども、分野の金融・保険のところでちょっと意見があります。

例えばこの適応計画の64ページにしても、このスライドの5ページにしても、金融・保険の分野では損保の話しか出ていません。

確かに、これは一番原点なわけでありますけれども、私の見る限り、世界の金融は、もっと広い視点から適応の話を考えているのではないかと思います。どういう意味かと申し上げますと、今、金融のリスク判定、貸し出しをする、あるいは投資をする、そのリスク分析の中に基本的には気候変動リスクが入っていないんですよ。

その気候変動リスクを反映させる投資判断や融資判断をしない限り、気候変動のことが金融の中から無視されるわけです。そうすると、極端な言い方をしますと、適応に反する事業やビジネスであっても、短期的な金融から見ておいしいビジネスであればお金が流れ続けるんですよ。それでは幾ら周りが温暖化対策をとろう、適応対策をとろうとしても駄目なわけですね。金が流れるわけですから、どんどんビジネスが広がります。

ですから、今、世界が言っていますのは、特に商業銀行の融資判断に、今、埋没している気候変動リスクをどうやって組み込むのか。

具体的には、ちょっと専門的になりますけど、バーゼル3という世界の金融機関を縛っているルール、規制があるんですけど、その見直しをしようじゃないかと。適正資本の計算の中に気候変動リスクをちゃんと反映させようという議論が始まっております。

それから、もう少し広い意味では、日本もメンバーです金融安定理事会(FSB)というのがありまして、ここで気候変動リスクの情報を金融からもっと出させようじゃないかと。情報を出すということは、金融がそれに関心があり、適切な対応をとっていなければ情報も出ないわけです。ですから、こういったような形で、金融全般に対して気候変動リスクをどう組み込ませていくのか、こういう議論が本当にもう現実に始まっているわけですから、日本での議論の中においても損害保険が急増するぞというだけの話ではなくて、もっと金融全体を見直して、金融からグリーンなキャピタルがこの適応策あるいは削減策、その他に、どうしたらもっと流れるんだろうかと。そのお金の流れの道筋をつくるというような視点での議論をぜひぜひ進めていただきたいと思います。以上です。

浅野部会長

ありがとうございました。

前のこれを検討した委員会に若干社会科学のメンバーが不足していたということと、かなり一生懸命情報を集めていただいたのですが、今ご指摘のような点に関しては全く情報が入ってこなかったものですから、こういう結果になってしまったんですが、ご指摘ありがとうございます。後でまた事務局ともよく相談をしたいと思います。

それでは、藤井委員、どうぞ。

藤井委員

今、末吉委員が言われました点は非常に大事だと思います。金融が評価するときには、金融機関が融資先の気候変動リスクを見なきゃいけないんですね。

先ほどご紹介あったFSBは、産業ごとにその環境の評価をみようとしている。それも産業界の方が自分の産業の環境リスク、特に気候変動リスクを何だということを自分たち自身が出すように求められ、そういうタスクフォースをつくります。恐らく2016年中には結果が出てくると思いますので、そういうものに我が国も資するような対応が要るということが1点です。もう一つは、ここに示された適応計画は、それぞれ大事なことなんですけれども、結局、これをやらなかった場合にどれぐらいのコストがかかって、やることによってどれぐらいの費用がかかるのかということが、この報告のままだと、ちょっと見えないですね。

かつてのスターンレポートのように、環境影響の経済的な費用対効果の分析は大事です。国の予算にも限りあるわけですから、何を重点的にやっていくのか、やったことによる効果はどれぐらい期待できるのかという目安がないと、国民の理解はなかなか得られないと思います。ですから、ここで挙げておられる重大性、緊急性、確信度、それぞれの高いものについて、やらなかった場合、つまり、この対策をとらなかった場合に、将来、予想される被害コストとか、それと、しかし、やることによって、それがどれぐらい軽減されるのかということを見せていただければ、より国民の理解が得られるというふうに思います。

よろしくお願いします。

浅野部会長

ありがとうございました。

では、大塚委員どうぞ。

大塚委員

ありがとうございます。

私が1点気になっているのは、16ページのところの(4)にも出ておりますが、計画の進捗管理について、どうやっていくのかという点が若干弱いのではないかということを、もう閣議決定されてしまいましたのであれですが、今後、また検討していただければと思っています。

特に、どういうやり方で進捗管理をするかについて、余り必ずしも十分書いていないということと、どこがやるのか、どういう場でやるのかということについてもはっきりしていませんので、内閣府でやっていただくのでもよろしいですし、環境省がかなり重要な役割を果たしていただきたいと思っていますが、そこが余り明確に書いていないので、ちょっとこれでは進捗管理が十分にできるかどうか心配がございます。

諸外国の国際的な動向を踏まえながらということは、結構16ページの下から6~7行目辺りも出てきているんですけど、例えばEUとかはPDCAサイクルはかなりやることになっていると思いますし、国際的な動向を踏まえると緩やかでいいということには必ずしもならないと思いますけど、この辺はどういうふうにお考えなのか、ちょっと教えていただけるとありがたいと思います。

いずれにしても、今後、この進捗管理をしっかりやれるように、計画自体を見直しのときにまた検討していく必要があると思っております。

以上でございます。

浅野部会長

ありがとうございました。

和貝委員、どうぞ。

和貝委員

ただいまの大塚委員のところに敷衍してなんですけれども、モニタリングに関して、この今の現在の計画について、各省が多分、具体的な行動計画(アクションプラン)を立てて、今後、対応されていくということだと理解しますけれども、その際に、この記述の中では、どういうことをする、どういうことをするというような書かれ方をしているんですけれども、最終的にアクションプランとしては、どういう形を実現するという目標を具体的な行動計画では立てていただいて、それが達成できたかどうかということが、ただいま大塚会員もおっしゃっていた進捗管理になるのかなと思いますので、ぜひ行動計画の方では、何を達成するというような、いわゆる目標というんですか、それを決めて、それでぜひ計画を進めていっていただきたいというふうに考えます。

以上です。

浅野部会長

とりあえず、ここまで出されたご意見、ご質問について、事務局からお答えがあれば、どうぞ。

研究調査室長

ありがとうございます。

各委員のご意見は大変貴重でございますので、しっかりとそういったご意見を踏まえて、今後、関係省庁とも情報交換しながら対策を進めてまいりたいと思います。

1点、大塚委員からは、他国がその進捗管理をどういうふうにしているのかという、これはご質問だと思いますので、現状で把握している限りのことを申し上げますと、適応の、いわゆる計画自体はそれぞれ国内政策でございまして、その制度のあり方も様々でございます。

法律をつくっているものもあれば、そうでないものもありますし、あるいは網羅的でなく、例えば防災だけをやっているものもございます。

そういったこともございますので、やはり、しっかりどのようなやり方で点検をし、どこがどういうやり方でやっているのか、これをしっかり腰を据えて調べてみる必要があると思っておりますので、今後、そういった結果について、また共有させていただきたいと思います。

以上です。

浅野部会長

ほかにこの件に関して。下田委員、どうぞ、

下田委員

1点、この適応計画の中で暑熱に対する適応政策ですけれども、実際に書かれているのがヒートアイランド対策、屋外の気温を下げていく対策を中心に記述されておりますけれども、ここに書かれておりますように、この問題は非常に緊急性が高くて、既に屋内で高齢者の方が熱中症になって重篤になるというような問題も指摘されているところで、冷房を適応策として捉えることについて、議論が必要かと思っております。

といいますのは、どうしても緩和策の方で省エネルギー活動、国民運動といったものを進めていくと、どうしても冷房は我慢すべきものという意識が広がってしまうんですけれども、やはり弱者、高齢者の健康保護という意味で言うと、適応策としての冷房というのも位置づけておくべきではないかと考えております。

以上です。

浅野部会長

ありがとうございました。

多分今のお話は、冷房を目のかたきにして、それは緩和の政策から見たら全く困るということを言っているとすれば大変問題だと思うので、むしろ効率性の高い冷房に変えれば、古いクーラーを使っているご高齢の方がいらっしゃって、それを最新型に変えることによって、たちまちエネルギーが節減できる。しかも、ちゃんと暑熱対策にもなるということがあるなら、それに対する必要な手当てをきちっとするというようなことは、多分両方にきいてくるわけですね。

ですから、これは、適応と、それから緩和が対立的なものだという考え方ではなくて、いかに折り合いをつけていくか、両方とも効果を上げるようなものを実現していくにはどうしたらいいかと、そういうメッセージを発信していかなきゃいけないだろうというような議論はしていいわけですね。ご指摘はよくわかります。

それから、事務局からのお答えは、必ずしも十分でなかったような気もするのですが、適応計画それ自体は、中環審が特に意見具申をしたのは、その材料になる部分についての意見具申はしておりませんで、各省が何をやるかということについて、当審議会がいろいろ立ち入って物を言うという立場にはないわけですから、それはやっていないわけですが、しかし、最終的には適応という観点からいろんな施策について目配りをする。各省のやっていることがバッティングしないようにしてもらうというようなことに関しては、多分、環境省、中環審が役割を果たさなきゃいけないだろうと思っているんですね。

ですから、幸いにも環境基本計画の中に適応についても記述がありまして、来年は適応についてを含めて、環境基本計画の中の温暖化の部分については、当部会で検討しなきゃいけませんので、私が事務局にお願いしたいのは、1年目ですから、どのぐらいのことができるかはわかりませんけども、閣議決定された適応計画に基づいて、どういう検討が各省で行われているかということは、我々の点検のときにちゃんと問い合わせをして、各省からどういうことをやっているんだということをお答えいただく必要があるだろうと思っています。ですから、早速来年度行う点検の中で、これの進捗の状況についてというか、進捗というとちょっと角が立つのですが、どういう取組が始まっているのかということに関してはチェックをしていく必要があるだろうと思っております。

さらに、地方自治体に対しては、環境省がいろんな形でサポートする形で適応計画をつくってくださいとお願いをしているわけですが、これについても、さらに進めていく必要があるだろうと思っております。

いずれにいたしましても、そこで実際に行われる施策というのは、何かこの環境政策じゃなくて、それぞれ固有の領域の政策であることが多いわけですが、それが同時に適応の政策としても意味を持つというものが余りにも多過ぎると思われるんですね。

この辺のところをよく担当者が理解していただければ、自分たちのやっていることが適応の計画にも適合するんだということがわかって、それがさらに進められるということになるでしょうし、それから、お話にありましたように、それぞれの地域では、どの施策にまず優先順位をつけるのかというのは、当然地域の条件によって違いますから、それを的確に発見していただいて、優先順位をしっかりつけていただくというようなことは、多分地域ごとに考えていただかなきゃいけないだろうと思います。こういうことについても、これから多分環境省が中心になって発信をしていかないとなかなか進まないと思いますから、ぜひ事務局としては、その辺りについてもご努力をいただきたいと、こんなふうに考えております。

適応について、何か特にご注意いただくことはございますでしょうか。よろしゅうございますか。それでは、議題(1)についてはご意見をいただきましたので、ありがとうございました。

次に、議題(2)ということで、かなり包括的でございますが、様々な施策がこれから進められようとしておりますので、これらをまとめて、ただいまから事務局よりご説明をいただきたいと思います。

森下課長から、順番にお願いいたします。

総務課長

総務課長の森下です。私の方から、資料番号2-1から2-4まで、この四つの資料を一括してご説明申し上げます。

お手元に、まず資料2-1と、それから2-2をご用意ください。

2-1は平成28年度環境省重点施策の概要、資料2-2は平成28年度環境省重点施策そのものでございます。

ですので、ご説明の方は資料2-1をもとにさせていただきまして、適宜、資料2-2をご参照いただければと思います。

では、資料2-1をおめくりいただきますと、まず、平成28年度の環境省予算の概要でございます。

3ページをご覧ください。昨日、閣議決定をされた予算の概要でございますけれども、平成28年度の予算額でございますが、一般会計、合計の欄を見ていただきますと2,820億円ということで、対前年比112%というふうになってございます。これはエネルギー特会繰入がございます関係でこういう数値になっておりまして、ご案内のように、温対税、税率アップを3段階で進めてきておりますが、来年度、最終段階に税率がアップするということで、こういう数値になってございます。いずれにしても、真ん中のエネルギー対策特別会計、エネ特でございますけれども、合計欄を見ていただきますと1,586円ということで、138%という数字になってございます。これに復興庁一括計上になります東日本大震災復興対策特別会計、これを加えまして、関係省全体では合計として約1兆2,200億円、131%という数値の額をいただくという数値になってございます。

おめくりいただきまして、5ページの方に入らせていただきます。

環境省の重点施策、平成28年度、四つの柱を記載させていただいております。

1点目が、東日本大震災からの復興と震災の教訓を踏まえた防災・減災、2点目が、新たな温室効果ガス削減目標の達成に向けた国内対策の抜本的強化と世界全体の排出削減への貢献、3番目が、循環共生型社会の構築、四つ目がG7富山環境大臣会合等を通じた地球規模の環境対策への貢献という柱立てでございます。

おめくりいただきまして、個々の予算が出てまいります。

地球環境関係ですと、まず7ページを見ていただきますと、7ページには、新たな温室効果ガス削減目標の達成に向けまして、国内対策、抜本的強化をしていく。それが世界全体の排出削減に貢献していくんだということが書かれてございます。

26%削減に向けまして、業務・家庭部門を含む地域丸ごと再エネ・省エネの推進を行っていくということでございまして、例えば丸が四つございますけれども、地域内の再生可能エネルギー由来の電気・熱や未利用熱、これを最大限活用していくということで、再生可能エネルギー電気・熱自立的普及促進事業などを新たに立てるということを予定しております。

これに限らず、こういった取組を各省とも連携を進めていくということで考えておりまして、経産省さん、国交省さん、連携事業などと組み立てながら進めていきたいというふうに思っております。

二つ目の丸ですが、地域内の省エネの徹底ということで、地方公共団体ですとか、地域の業務ビル、それから、地域でのLEDの照明導入促進、こういったものに取り組んでまいりますし、また、公共交通・物流システムにおいても、物流分野でのCO2の削減対策、あるいは個別のトラック・バスの導入加速と、そういった事業にも取り組んでまいるということでございます。また、技術に関しましては、L2-Tech導入拡大推進事業あるいはCO2削減ポテンシャル診断推進事業、こういったものに取り組んでまいるという予定にいたしております。

おめくりいただきまして、8ページ目が、2としまして、省エネルギーの徹底と再生可能エネルギーの最大限の導入のための技術の確信と実証・実用化でございます。技術を新しくつくり出していく。そして、それを社会に組み込んでいくということでございまして、例えば最初の丸にございますが、再生エネルギー等を活用した水素社会推進事業ということを行ってまいります。また、一番下の丸をご覧いただきますと、セルロースナノファイバーといったような新しい次世代の素材を活用した事業と、こういうものも各省と連携して進めていきたいというふうに考えております。

9ページでございます。こちらは社会システムが大きく変革する環境金融や国民運動等ということでございまして、既に末吉委員からもご指摘がございましたけれども、こういった分野というのは非常に重要でございます。

金融を活用した低炭素投融資の促進を進めていきたいというふうに思っておりまして、地域低炭素投資促進ファンド事業あるいは利子補給、エコリース促進事業、こういったものを取り組みまして、大きく世の中のお金を低炭素化に向けて流れていくような後押しをしていきたいというふうに思っております。それから、フロンにつきましても、排出抑制法に基づきまして省エネ型自然冷媒機器等の促進事業を進めていきたいというふうに思っております。

それから、新たな国際枠組みの構築ですとか、低炭素技術の海外展開、こういったことで世界全体の取組を進めていくという意味では、将来国際枠組みづくり推進経費というものを新たに要求する、あるいは、いぶき観測体制強化など、こういった衛星の関係の予算についてもしっかり手当てをしたいと。また、二国間クレジット制度につきましても、しっかり位置づけをしたいと思っておりますし、本日ご意見をいただきました気候変動の適応についても、新たに予算をしっかり充実させていただくということでございます。

おめくりいただきまして、15ページの方に参りますと、こちらの方がG7富山環境大臣会合等を通じた地球規模の環境対策の貢献ということでございまして、G7富山環境大臣会合での開催経費、あるいはご紹介が冒頭もございましたけれども、持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)、こういったものにしっかり取り組んでいくための予算ということも獲得しておりますし、また、日中韓三カ国環境大臣会合の枠組みを活用して国際協力をしっかり進めていきたい。さらには、我が国の実績ある環境政策、環境技術の海外需要を捉えた展開をしてまいりたいというふうに考えております。

おめくりをさらにいただきまして、17ページが平成28年度の環境省の機構・定員の概要でございます。

大きなものは特段ございませんけれども、地球環境局関係で申し上げますと、17ページの1.の本省の丸の三つ目を見ていただきますと、地球環境局地球温暖化対策課事業管理官の新設ということが新たに認められております。エネ特も増加するということで、しっかりそれを監視、管理していきたいというふうに思ってございます。

さらに、またおめくりをいただきまして、19ページが平成28年度の税制改正の要望の結果でございます。地球温暖化対策につきましては、温暖化対策のための税が着実に実施することになってございます。

以上が重点関係の資料のご説明でございます。

それでは、続いて資料2-3と、それから資料2-4に入りたいと思います。資料2-3と2-4は、気候変動長期戦略懇談会についてのご紹介と現状のご報告でございます。資料2-3で、まず設置概要的なものがございますが、概要のところを見ていただきますと、日本は「日本の約束草案」を決定し、26%減ということを確実な実現を求められている。

さらに、その先を見てみますと、環境基本計画でも定められております2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す。また、今年のG7サミットでも合意が得られておりますけれども、共通のビジョンとして2050年までに2010年比で40-70%の上方の削減とするということも盛り込まれております。

こういった大幅な削減には、個別対策の積み上げではなくて、社会システム全体の変革が不可欠であるというふうに思っております。そういう観点から、長期における温室効果ガスを大幅に減らしていくという点と、それから、我が国が直面しております構造的な経済的・社会的課題、この二つを同時解決していくということを目指しまして、「気候変動・経済社会戦略」の考え方、これをご議論いただくということで、この懇談会の設置をさせていただいております。

座長は、豊橋技術科学大学学長の大西先生でいらっしゃいまして、浅野先生、住先生、安井先生、それから、伊藤先生、川口先生にご参画いただいておりまして、裏面をご覧いただきますと、これまでの開催経緯が記載されておりますが、これまで4回ご議論をいただいております。

第5回が来年の1月に予定されておりまして、1月で提言を取りまとめていただくという予定にいたしております。

これまでの議論の成果等がまとめられておりますのが資料2-4でございますので、簡単にご紹介をさせていただきます。

資料2-4の1ページを見ていただきますと、これはイントロの部分でございますが、科学的知見と国際社会におけるコンセンサス、これについて整理をしております。

先ほど申し上げましたように、大幅な削減が必要だということがここでまとめられております。

おめくりいただきまして、2ページに入ってしまいますが、上の丸の二つ目でございますけれども、気候変動の影響については、イギリス、アメリカ等でも国家安全保障上の大きな課題としても取り上げられているという、安全保障という観点からも非常に重要な問題だというようなことが前提として認識をされております。

まず、2.でございます。温室効果ガスの長期大幅削減への道筋でございますけれども、80%削減をするという世界は、じゃあ、一体どういう世界なんだろうかということを絵姿、これを一例として描き出した分野がこの2.でございます。この大幅な80%削減をするという意味では、どういうことが必要かといったことでございますけれども、可能な限り、まずエネルギー需要を削減した上で、電化を促進していくということでございます。再生エネルギーを最大限活用するなど電力の排出はほぼゼロにしないといけない。この場合、火力発電はCCSをセットして、CO2の排出を実質ゼロにすると。化石燃料への依存、どうしても化石燃料を使わないといけない部分も残ると考えておりますけれども、それは産業や貨物輸送のもう一部に限られるだろうということでございます。

2030年の26%削減というのは現状の延長線上にございますけれども、80%2050年削減のためには、現在の価値観や常識を破るぐらいの取組が必要だということでございまして、部門別に見てみますと、エネルギー転換部門のところで、発電部門は先ほど申し上げましたが、ゼロ・エミッション、再生可能エネルギー、原子力等の低炭素電源が大量導入されて、ほぼ排出ゼロが成立している。火力発電にはCCSが附属されていて、また、ITを利用しまして需給バランス調整、蓄電装置、そういったシステムが最大限活用できるようになっている。こういう絵姿を描いております。

それから、家庭・業務部門でございますけれども、これらの部分につきましては、ほぼ排出ゼロが実現されているということで、断熱性を高めた住宅ですとか、省エネ機器の利用、低炭素化した電力、水素の利用などによって、低炭素な暮らしや業務が実現している。HEMS・BEMSなども導入されている。

それから、運輸部門に参りますと、市街地のコンパクト化ですとか、モーダルシフトなどによりまして、人と貨物の移動が大幅に合理化されている。それに加えまして、様々な水素あるいは電力、低炭素化された電力とか水素をエネルギー源としたモーター駆動が主流になっているというようなことも書かせていただいています。

産業部門のところにつきましても、同様に大規模CO2発生源にはCCSが設置されている。また、製造工程のエネルギーが高効率されまして、新たな生産プロセスが確立されているというようなことが書かれてございます。

それから、地域の観点も重要でございまして、地域の絵姿としましては、エネルギーの地産地消と地域間の連携が進んでいるんじゃないかということでございます。自然的社会的条件に応じまして自立分散型の再生可能エネルギーが最大限導入されているということで、地産地消が進みます。また、余剰のエネルギーにつきましては都市部に供給されて、地域間連携が成立をしているということでございます。

この気候変動への対応につきましては、先ほど申し上げましたように、世界の経済・社会の不安定化の影響を受けやすい我が国にとりましても、気候変動による損害を回避することに寄与するということで、世界全体の大幅削減に貢献していくということが、いろんな面で我が国にとっても効果があるということでございます。

じゃあ、この絵姿を実現するためのイノベーションというのは何が必要かというのをまとめているのが3ページでございまして、技術、社会システム、ライフスタイルのイノベーション、これが必要だということでございます。

技術については、要素技術のみならず、プロセスも含め、また、社会システムとしましては、新たな要素技術、そういった新たな技術を世界全体で受け止める、アクセプトしていくというためのインセンティブづくり、あるいは自然分散型エネルギーを前提とした制度が構築されるなど、新たな要素技術が円滑に導入される仕組みが必要だと。

また、ライフスタイルにつきましても、国民の趣向や暮らし方が大きく変わって、最適なものを選択していくものになっているということでございます。

次に、この絵姿の実現の時間軸につきましては、書いてありますように、早期の削減を基本とすべきと。これは累積の排出量低減のためということでございます。都市構造など何十年にもわたって時間がかかるインフラ投資などもございます。こういったものに効果を発揮するためには、早期に対策に着手する必要があるということでございまして、中期と長期の目標の連続性を考慮しないといけないということが言われております。

4ページの下の方に、例えば火力発電の話で、石炭の電力の話も、火力発電の話も出ております。40年以上も稼働されるということで、新規の火力発電への投資、特に初期投資額が大きい石炭火力発電への投資にはリスクが伴うということをあらかじめ理解しておく必要があるということが書かれてございます。

5ページに参りまして、我が国の経済・社会的課題と解決の方向性がまとめられておりまして、ご案内のように、我が国は人口減少・高齢化社会等を迎えておりまして、供給制約の顕在化、医療・社会保障関係、様々な問題が生じております。こういった意味で、構造的な課題を抱えているというのが6ページ目にかけて整理されておりまして、こういった課題の解決の方向性として、6ページの(2)になりますが、特に人口減少期に適応しました社会構造のイノベーションが必要だということで、我が国の「量的な存在感」が低下すると予測される中、国際社会から尊敬をされる存在となるためにも、付加価値をしっかりと生み出していくという取組が必要なんじゃないかということが6ページに書かれておりまして、それで、7ページの方に至りますと、この気候変動問題と、今申し上げました経済・社会的課題を同時解決していくには、じゃあ、どういうことが必要かということなんですが、この切り口は、緑の産業革命、それから高付加価値化、地方創生という、この三つの切り口ではないかということで、緑の産業革命については、「破壊的イノベーション」そのもの、新たに化石燃料に依存しない新たなシステムというのをつくっていかなきゃいけない。

さらに、高付加価値化というものになりますと、「環境価値」が、いわゆる「環境ブランド」として財とかサービスの高付加価値化の源泉となるという社会をつくらなきゃいけない。

さらに、地方創生という点では、現在、地方都市の約7割が地域内総生産の5%相当額以上のエネルギー出資、エネルギーを買うためにお金を外に出しているということで赤字になってございますが、こういったことを解消して、地方経済の基礎体力を向上させて、また地方創生につなげていくということが非常に重要じゃないかということでございます。

8ページに参りますと、こういった取組、既に先進国では取組が進んでおりまして、CO2の排出量と経済成長のデカップリングが達成されつつあるところも出てきている。こういった気候変動対策をしっかり進めていくことは、日本も国際社会の尊敬を得て、国益にかなうものだということが書かれてございます。

諸外国の戦略の紹介につきましては、既に幾つかの国では、カーボンプライシング、イノベーション、情報開示、自然資本の評価といったところで、新しい取組が進められております。こういった取組も参考にして、我が国も戦略的に取組をする必要があると。また、石炭等の化石燃料をStranded-assets(座礁資産)と捉えて、企業価値に影響を与えるリスクと評価し、投資活動に反映する動きが多く見られるということで、諸外国の状況についてご紹介させていただいております。

最後、5.が社会構造のイノベーションを導くための戦略、これをどう考えるんだというところですが、これを最終回でご議論いただいて、ご報告、ご提言をいただくという流れになってございます。

以上でございます。

低炭素社会推進室長

引き続きまして、資料2-5と2-6についてご説明さしあげます。

これらは温室効果ガス削減中長期ビジョン検討会の取りまとめの資料でございます。この検討会は安井委員に座長をお願いいたしまして、今し方、ご説明さしあげました長期戦略懇談会とも関連しますけれども、2050年80%という我が国が掲げております長期的な目標を達成するための社会の目指すべき方向性、あるいはその2050年時点での社会の姿、そして、それを実現するための対策について、技術的な観点からご検討をいただいたものでございます。

資料2-5を少しおめくりいただきたいと思います。今、長期戦略懇談会の提言の方でも、一部、その内容が既に盛り込まれておりましたので、重複する部分もございますので、簡単にご説明を差し上げたいと思います。

1ページ目でございますけれども、2050年80%削減の低炭素社会実現に向けた方向性のイメージということでございます。この下の方に色のついた図がございますけれども、現状の排出量というのを左から示しておりまして、これを減らしていく方策として、真ん中にあります1、エネルギー消費量の削減、2、エネルギーの低炭素化、3、利用エネルギーの転換ということを掲げております。この三つを足し合わせることで、右の方にあります2050年のCO2排出量ということで、最初の左端の方からすると8割削減というものが実現できるのではないかということを言っているものでございます。

2ページ目の2050年の具体的な絵姿につきましては、先ほど長期戦略懇談会の提言の中でも各部門について簡単にご紹介がありましたので割愛させていただきます。

続きまして、3ページ、その具体的な絵姿を達成するためのイノベーション。

こちらも少し先ほどご紹介がありましたので、かいつまんでだけご説明を差し上げます。技術、ライフスタイル、経済社会システム、それぞれについてのイノベーションをやっていく必要があるということでございます。

例えば、技術につきましては、要素技術に加えて、複数技術の組み合わせ、特に情報通信技術を用いて、要素技術を複数組み合わせていく。そういったシステムが必要なのではないか。

それから、ライフスタイルのイノベーションのところでは、低炭素な商品等の選択に加えて、温暖化対策のコベネフィットを追求した相乗効果を狙っていくべきではないか。温暖化対策以外の社会課題への取組という観点で技術の普及が行われるように働きかけていくべきではないかというものでございます。

それから、社会経済システムのイノベーションということで言いますと、インフラ等のロックインを防いでいくための都市圏、地方圏の政策との連携。複数対策・施策の組み合わせ、これは例えば電気自動車を運輸部門で普及させていくということが、そのバッテリーをいわゆる調整力として使用していくという取組と相まって、一層の効果が出ていくのではないかと。あるいは、電力供給自体を低炭素化していく取組と、エネルギー利用を電力に転換していく取組、これらが相乗効果を発揮することで、より有効なのではないかといったことでございます。

また、人材育成というのがございますけれども、これは、今後こういったイノベーションを起こしていく上で、例えば素材技術あるいは生産技術、そういった個々のプロセスなり、そういったものに知見の深い方を育成するだけではなくて、それらを総合的にシステムとして全体を俯瞰できる横断的な視点を有した人材、そういった方が各個別のプロセスの専門家とコミュニケーションを図っていく。そういったことによってイノベーションを引き起こしていく。そういったことが必要なのではないかということでございます。

続きまして、4ページ目に参考資料というのがございます。

これは、今回、この技術的な検討を行う中で、80%削減に向けた試算の一例ということで示したものでございます。2050年に向けて、エネルギーの消費量の削減やエネルギーの低炭素化等によりまして、80%削減の可能性について検討を行いまして、その結果、試算のあくまで一例でございますけれども、技術的な可能性を見出すことができたということでございます。

下にグラフがございますが、ごくごく簡単にご説明を差し上げますと、エネルギー消費をできるだけ少なくしていくということで、約4割の消費を削減する。そして、発電電力につきましては、低炭素電源によって約9割を超える部分の発電を行い、また、残りについては、火力発電も一部残っていくという姿でございます。

こういった取組の中で、一番右でございますけれども、温室効果排出量につきましては、約8割の削減が達成可能ではないかという技術的な可能性を見出すことができたというものでございます。

資料2-5と2-6については以上でございます。

総合環境政策局総務課長

続きまして、資料2-7について御説明させていただきます。

環境と経済の統合に向けた動向調査検討会の設置についてということで、1ページ目をご覧ください。

趣旨について書いておりますが、こちらの検討会は今年の秋に設置しまして、先ほど説明がありました長期戦略懇談会、こちらで環境と経済・社会の統合についての長期戦略を出すというのに当たって、経済学的な観点から、諸外国では環境と経済の関係について、どういう風に説明され、論じられているかというものを整理しようということで、設けられたものでございます。

委員は1ページに書いているとおりでございまして、目的の一つは懇談会へのインプットということで、先ほどの骨子にも諸外国の戦略等について紹介をされております。

もう一つの目的は、今後、日本で長期の戦略を考えるときには、非常に大幅な社会システムの変革等を目指した対策、大きな対策を打たないといけない。そのときには、必ず経済への影響、社会への影響、そうしたものが議論になってくるかと思いますが、それら影響については色々な意見があり、また、全体的な絵で見ると、非常に一部だけで議論されていることがあります。そこで我々としては、社会全体を見て、バランスよく様々なコストとメリット、ベネフィットというのを比較して議論するときに、概ねどういうものがメリットとして認識され、どういうものがコストとして認識され、トータルで見てどうなのかというものが、議論する際の物差しとなるものができないかと思って、この検討会を設置したところでございます。

実際の作業方法としては、この一番後ろに、文献例というのが12ページ以降にあります。文献例は、まだ大分増えてきているのですけれども、国際機関、また、政府等から環境と経済の関係について出された学術論文、報告書について、その日本の課題に合わせて、そこの論点を分類し直して、それが意味することはどういうことなのかを学術論文等で補強しながら、わかりやすく整理していく。その学術論文の中で整理をしていく際に、ここに示してある委員の先生方にご意見をいただくというものでございます。

一つは、この目的は、先ほどの懇談会のインプットなのですが、それに加えて、今後、様々日本で議論していくときに、その議論というのは、社会全体で見たときに、どの部分の議論をして、トータルのメリット、デメリットというのはどういう風に評価すればいいのかというのが、得てして部分的な議論になりがちなものを全体の目で見る、そういったところの役に立てる資料にならないかということで、なるべくわかりやすく書いていこうという風に、今、整理しております。

実際には、この長期戦略懇談会で、一度中間報告させていただきましたのがこの資料でございまして、今年度末までには報告書の形でまとめて、広く世に供したいという風に思っております。

中身については、2ページに概略が書いてありますが、多くの報告書ではメリットというものがコストを上回る。そのときのメリットというのは、企業、個人とか、そういった部分だけではなくて、社会全体のメリット、そうしたものを通して見ると、メリットの方が大きくなるのではないか。

また、そのときに様々な数字が使われますが、その経済分析手法というのも、このメリットとかコストというのは一部しか反映していないので、どういう分析の仕方、どういう数字を使っているかというときに、その数字を、その説明を見ると、ああ、これはここが欠けているなとかということがわかるような工夫もしていきたいと思っております。

それに加えて、そうしたものをトータルで見ると、様々な、今、四、五十ぐらいの報告書になっているのですが、そうしたものがトータルで最大公約数、どんな戦略を提案しているかというのが一番最後の四つでございまして、この辺りは気候変動長期戦略懇談会の方の資料として使っていただいて、我が国の戦略をつくる参考にしていただければと思っているところでございます。

以上でございます。

国際連携課長

続きまして、資料2-8から2-10を説明させていただきます。資料2-8は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」と「持続可能な開発目標」ということで、国際的な動きが、今後、国内行政に、あるいは国内の関係者の方の施策にどのように影響していくかということでご説明させていただきます。

1ページめくっていただきまして、2枚目にございますが、持続可能な開発のための2030アジェンダの経緯でございます。

2000年の国連ミレニアムサミットで、ミレニアム開発目標として、8つ、開発目標が提示され、例えば、貧困と飢餓、初等教育の充実などが提唱されたところでございます。これは15年続けてまいりまして、成果としては貧困の削減など、一定の成果を得たものと評価をされております。

一方で、環境関係の目標というのは一つだけでございまして、社会、環境、そして開発という、この三つの柱を同時に達成できるような、そういった開発のためのアジェンダが必要ではないかというご指摘をいただいていたところでございます。

3年間のプロセスを経まして、この社会、環境、経済、三つの柱を持ちます2030アジェンダというものが本年9月の国連サミットで採択されております。3年間、国連・政府・市民社会などが参加できるプロセスとして、非常に透明性が高く運用されまして、本年9月の採択サミットには首脳級の参加を得ております。

日本からは安倍総理が出席いたしまして、気候変動あるいは3Rに言及しながら、世界に日本がどのように貢献していくかについての演説をしていただきました。年金積立金管理運用独立行政法人による国連の責任投資原則への署名についても特に言及していただきました。この点につきましては、末吉委員が新聞にご寄稿いただいたので非常に詳しく書かれておられるかと思います。

それから、3ページ目に参りまして、持続可能な開発のための2030アジェンダの概要でございます。

前文、宣言文、そして、「持続可能な開発目標」(SDGs)と呼ばれるもので構成されております。

Sustainable Development Goals(SDGs)というふうに呼ばれるものは、17のゴール、分野ごとの目標として169個、個別の目標が並んでおります。

今後、各国政府が国家目標を定めまして、国家戦略などに反映していくことが想定され、来年、2016年1月から2030年までの15年間の目標として位置づけられております。今後、各レベル、各国、地域、地球規模での実施と、そのフォローアップを必要としておりまして、進められていくものと思っております。

1枚めくっていただきまして、簡単にSDGsの17ゴールを示しております。ご覧いただきますと、例えば1番の貧困の撲滅、あるいは2番、飢餓撲滅といったように、開発目標としてこれまでも掲げてきたものと、それから、6番、水・衛生、それから、エネルギーへのアクセス、持続可能な経済成長といった環境にも非常に関連の深いものなどが並んでおります。

169のターゲットというのは、例えば7番、エネルギーへのアクセスにおきましては、個別の目標として、再生可能エネルギーの世界でのシェアを増やすといったことが叙述的に書かれております。

5ページ目に参りまして、SDGsの特徴でございますが、「ゴールの達成」に関しましては、前文に「誰一人取り残されることがない」という考え方を示しております。また、持続可能な開発の三つの側面(経済・社会・環境)に関する課題を一つの目標に統合されたもの。そして、一番最後のところが非常に重要だと思っておりまして、全てのゴールが全ての国に適用されるという点でございます。これまで環境に関する目標というのは、どうしても途上国、先進国との二元論、二分論に着地することが多かったわけですが、今回のこのSDGsは、先進国も自国内での対策・対応が必要だと。途上国においても、先進国においても、全ての国に適用される普遍性を持っているという点が特徴かと思っております。

めくっていただきまして、6ページ目でございますけども、もう一つの特徴は、フォローアップの仕組みがあるという点でございます。15年間にわたりまして、年1回、国連「ハイレベル政治フォーラム」におけるフォローアップが位置づけられております。次回会合は既に決まっておりまして、2016年7月11日~20日、ニューヨークで開催されます。

さて、国内の施策とどう関連づけられるかということで、7ページ目から、その環境省の施策を事例に引きまして、例示をさせていただいております。

7ページに入れましたのは、そのゴールの3番、健康的な生活の確保、福祉の促進ということで、具体の目標として、例えば有害化学物質、大気、水質、土壌の汚染による死亡や病気の件数の減少といったことが掲げられております。

環境省現行施策を見ますと、日本国内での大気、水質に関する汚染防止の行政、あるいは常時監視などもございますし、また、目を世界に転じますれば、化学物質管理に関する環境施策のパッケージをアジア諸国に伝達するということで、ベトナムでセミナーなどを開催しておるところでございます。

1ページめくっていただきまして、8ページ目、9ページ目は、SDGsのゴール・ターゲットと施策の関連の中で、12番、持続可能な生産消費形態の確保というものを入れさせていただきました。例えば、12.3のように、食品廃棄物を半減させるといった比較的伝統的な廃棄物行政に通じるものもございますれば、9ページ目にございますように、持続可能な公共調達、あるいは科学的、技術的能力の強化を支援するといった内容、また、企業の皆様方に、ぜひ持続可能な慣行を導入していただき、定期報告に持続可能性に関する情報を盛り込むよう奨励するといったものも含まれております。

環境省現行施策も多岐にわたっておりまして、化学物質の関係でございますれば、国際的な化学物質管理のための戦略的なアプローチに基づく国内対策、また、ESG投資に資するような環境情報の開示基盤整備事業、これは試行でございますけども、こういった非財務情報の適時・適切性、そして、比較を簡単にするようなコンピューターソフト、言語を用いた環境情報開示システム開発などを行っております。

1ページめくっていただきまして、既にこうした国際的な取組を国内あるいは国際的な企業様において取り組まれている事例がございますので、ご紹介させていただきます。民間企業様の取組として、国連グローバル・コンパクトというものがございます。これは責任ある創造的なリーダーシップを発揮する企業ということで、1999年、ダボス会議の席上で提唱され、設置をされております。

グローバルコンパクト・ネットワークに関しては、各国にそれぞれ、財団法人などで基盤となる組織がございまして、日本においてはグローバルコンパクト・ネットワークジャパンさんがSDGs採択翌日に声明を発表され、意欲的に公開セミナーなどを実施し、意見交換、それから、情報発信をしていただいております。

また、11ページ目には、民間企業様の取組として、さらに各社がSDGsを実施するためのガイドラインを自主的におつくりいただいているところがございます。企業ごとにSDGsをどのように目標設定をし、本業に取り込み、ステークホルダーと連携していくかということについてのガイドライン、指南書になっております。

また、これらとガイドラインにつきましては、全業種を対象としておりますので、各業種ごとの特徴を生かしたガイドラインも、現在、策定中というふうにお伺いしております。第1弾は金融業界とお伺いしました。

それから、1ページめくっていただきまして、次のページでございますが、環境関連のSDGsは、本日の局長からの挨拶にもありましたように、非常に多岐にわたっております。17ゴールの中で環境と密接に関連したものが多うございます。また、関連のSDGsの特徴として、実施には多様な主体が関与しております。

一方で、SDGsは、その中を見ていただきますと判明するんですけれども、書きぶりが非常に叙述的で、どのようなことをどんなスピードで実施したらいいかという具体的な処方箋にはなっておりません。このため、取り組まれる方々、企業の方々、自治体の方々、あるいはNGOの方々、あるいは行政機関であっても、やはり先進事例を参考にして、自分たちのその活動を組み立てたいというお声が多うございます。

このため、私どもの方では、ステークホルダーズ・ミーティング(仮称)というふうに書いておりますが、先行事例の実施経緯や動機づけ、効果などにつきましてご発表いただき、それらを共有することで、先行者、ファーストムーバーというふうに呼んでおりますが、こういった活動を規範として認識をしていただき、また、フォロワー、セカンドムーバーの方々がご自身の活動を考えられるようにという、そういうしつらえのものを考えようと思っております。来年度は、本日、森下課長からの説明にもございましたけれども、所要の予算措置も講じるべくお願いをしておりますので、そういった予算も使いながら、場をしつらえていきたいというふうに思っております。

資料2-8については、以上でございます。

資料2-9は、二国間クレジット制度に関する最新の動向でございます。Joint Crediting Mechanism(JCM)に関しましては、この部会にも何度もご説明さしあげておるところでございますので、最近のその動きとして幾つかご紹介させていただきます。

まず、2ページ目でございますが、二国間クレジット制度につきましては、二つ目のポツにございますけど、COP21において、安倍総理からも「日本は、二国間クレジット制度などを駆使することで、途上国の負担を下げながら、画期的な低炭素技術を普及させていく」ということで言及をいただいております。

現在は、当初、目的としておりました16カ国と署名が済みまして、その他の国とも署名に向けた協議を行っていただいております。パートナー国の増加に向けて、さらに取り組むということにしております。

3ページ目に行っていただきますと、非常に増えたなということを実感していただけるのではないかと思います。一番最後に署名をしておりますのはタイでございます。本年11月に東京において丸川大臣との間で署名を交わしていただき、これで所定の目標でありました16カ国ということが達成されたわけでございます。また、既にJCMプロジェクトとして登録済みの案件が8件ございます。

1ページめくっていただきまして、4ページ目、これは安倍総理のスピーチからの抜粋でございます。先ほどご紹介いたしましたけれども、イノベーションという文脈におきまして、その技術開発だけではなく、普及をしていくこと、先進的な低炭素技術の多く、日本がその有意性を持っているような低炭素技術も多くございますが、それらも含め、様々な技術について二国間クレジット制度などを駆使するということをご発言いただいております。

また、5ページ目には、そのJCMパートナー国との会合、それから関連サイドイベントの実施ということで、写真を載せさせていただいております。JCMパートナー国、16カ国から閣僚を含むハイレベルの方々に出席をしていただきまして、進捗状況についての情報共有と、それから、政治的意思の確認をしていただいております。

1ページめくりまして、6ページ目でございますが、COP21の期間中に17カ国目となるといいなと私どもで思っておりますフィリピンとの間のJCMに関する覚書についても署名をしていただきました。この覚書に署名をし、国内手続が完了し次第、できる限り早期にJCMを開始するということを確認していただいております。

また、7ページ目は、パリ協定におけるJCMに関係する条文でございます。

パリ協定における位置づけでございますが、第6条、Mitigationの条項に、第2項、第3項、国際的に移転される緩和の成果を自国が決定する、NDCに活用するということで位置づけられております。海外で実現した緩和成果を自国の排出削減目標の達成に活用するということ。

我が国は、パリ協定に基づきまして、JCMを通じて獲得した排出削減・吸収量を削減として適切にカウントするつもりでございます。

また、よくダブルカウントの防止ということを言われますけれども、この第6条第2項の下から3行目にも、ダブルカウンティングのその防止ということが明確に記載されております。このダブルカウント防止を含む、非常に確固とした堅固なカウンティングシステムの確立のためにガイダンスの作成を予定されており、これに積極的に貢献していく所存でございます。

また、8ページ目、市場メカニズムが重要な役割を果たすということを、やはり賛同国、様々な賛同をいただく国がございますので、ニュージーランドが提唱いたしました「炭素市場に関する閣僚宣言」に我が国もその参加をし、パリ協定のもとでの緩和の野心の向上、それから、国際的な市場メカニズムを活用するに際しての基本的な施策、環境の保全や透明性の確保などについて決意を表明しております。

9ページ目が、JCMパートナー国別の進捗状況でございます。

先ほどプロジェクトの登録件数が8件というふうに申し上げましたが、資金支援事業・実証事業などの件数は50件を重ね、関係者のそのご努力について、この場をおかりして、改めて感謝を申し上げます。

10ページ目、11ページ目に参りますと、経産省さんあるいは環境省の方で実施しております事業の一覧がございます。

50件入っておりますけども、これらの中には非常に業種的にも多岐にわたるものが入っております。例えばミャンマー、廃棄物発電などに関しましては、JFEエンジニアリングさんがこれを実施しておられますし、また、バングラデシュ、YKKさんが自社事業の中で太陽光・発電システムの導入などをしていただいたりしております。

また、これらの中にお名前が挙がっておりませんが、SPCに入っていただいております、例えばガスコジェネレーションシステムの中では大阪ガスさん、あるいは空調システムなどを入れるケースがベトナムや、あるいはインドネシアなどでは多うございますけども、そういった中には日立製作所さん、ダイキン工業さん、リコーさん、パナソニックさんなど、様々な業種業態の方々にご協力をいただき、進めております。

また、ラオスにおきましては、アカデミアでございますけども、早稲田大学さんがご参画をいただいておる。

こういった多様な事業主体と連携しながら、様々な、あるいは現地に非常にフィットした形のJCMを進めていきたいというふうに思っております。

それから、めくっていただきまして、12ページがJCMプロジェクト、8件採択しておりまして、例えば右肩にございますパシフィックコンサルタンツさん、太陽光発電を学校や公的な機関に置くといったもの、こういったものがプロジェクトとして形成されております。

13ページ目からは、自治体の海外進出支援でございます。

14ページをめくっていただきますと、JCM案件形成可能性調査事業が、アジア、1番から14番まで、案件として掲載されているということをおわかりいただけるかと思います。

また、昨今の進捗として、15ページ目、日本国におけますJCMの実施要綱の制定と登録簿の制定でございます。

JCMで得られました排出量削減分につきましては、クレジットとして、発効、振替を行うための基本的なルールが必要でございますので、その実施要項について制定していただいております。

また、口座間でのクレジットの振替などを行うためには記録台帳が必要になります。日本国JCM登録簿として、これも11月13日に公開をしております。

資料2-9については、以上でございます。

最後に、資料2-10でございます。環境省関係の主要国際会議ということで、2016年の一覧を配付させていただきました。もちろんまだ日程的にわからないもの、あるいは、この表の中に入ってこないものも多くございます。様々なものが日程順に並んでおります。

概観いたしますと、2015年が2030アジェンダあるいはCOP21といった相当のビッグイヤーだったということを受けまして、2016年はその実施の年だと言われております。

その実施の年として、例えば2030アジェンダ、COP21が、比較的外交政策を含むものであったということを振り返りますと、2016年は環境に関する実施を、ハイレベルで正式な意思を確認する年のように見えます。

例えば3月4日、EU環境大臣会合、また、5月には、私どもが開催いたしますG7富山環境大臣会合、また、5月末には国連環境計画(UNEP)の総会でございますUNEA2、また、9月にはOECDの環境大臣会合が入っております。環境の面での2030アジェンダあるいはCOP21、様々な、大きなうねりを受けた政策の実施の年だと思っております。

また、来年はG7の議長国を日本が務めます。さらに、日中韓三カ国環境大臣会合も我が国で4月下旬の予定で開催をするということでございます。所要の予算も要求しており、こういったG7プレジデンシー、また、TEMMの開催国として、ぜひリーダーシップをとっていきたいというふうに思っております。

また最後に、日程のボリューム感でございます。どうしても5月にいろいろな行事予定がクラッシュをしているようにも見えます。どんな会合で、どのような発信をしていくのか、あるいは、どのようなゲインをするのかといったことについて、また、先生方のご指導、ご助言などを仰ぎながら進めていきたいと思っております。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。

浅野部会長

それでは、大変多岐にわたるご説明をいただきましたが、これは区切って議論をしてもしようがありませんので、どこでも結構ですから、ご意見がおありの方は、どうぞ名札をお立てください。

中根委員が真っ先でした。どうぞ。

中根委員

パリ協定を機に今まで温めていた施策が全面的に出てきて、非常に心強い資料のご説明をいただいたと思います。社会構造のイノベーションを導くための戦略ということを特に議論するようにとのことですが、その前提となるところについて、少し意見を述べさせていただきたいと思います。

緩和と適応の統合的な推進は非常に重要ですが、適応のコストを下げるためには、いわゆる温室効果ガスだけではなく、温室効果を増やす、また、気候変動を増やすような要素、ガス、例えばCFC、HCFCなどのモントリオールフロン、黒色炭素があります。そういうものも含めた施策が重要です。また、温暖化対策を実行していく中で、いろいろなルール、制度のすき間で、逆に温暖化を抑えるための努力に対してインセンティブが働かない、モチベーションが下がるというようなことも往々にして起こると思います。そういうときに大事なことは、適応のコストを下げるような、温暖化を緩和するような、実際の気候変動を緩和するような努力に対しては、それはいいことだということを政府から地方自治体まで、広い視野で、かつ、そういう適応のコストを下げるような努力に対して、柔軟にかつ先進事例をエンカレッジするような、そういう科学的な知見、それから柔軟性、イノベーションをサポートしていく、エンカレッジしていくような精神が非常に大事なのではないかと思います。

そういう意味ではJCMにおけるCFC、HCFCの扱いも一つの例だと思います。日本におけるフロン対策は、京都ガスとモントリオールガスにも同時に対策をしていますが、海外でも企業の方と一緒に努力をして、取り組んでいくという方向が必要だと思います。ルールのいろんなすき間があっても、いいことはやるという、そういう倫理性の高さ、倫理性の高い国、それから政府である、それから国民であるということを評価していく、そういうことを打ち出していく、大事にしていくというようなことをやっていただきたい。これは一例ですが、緩和・適応に必要なことはやるということで、PDCAからまたプランに戻すときに、先進事例をプランに戻していくという、そういうマインドを政府から、自治体から、また現場の企業の方、国民の中で、そういうことが非常に強まっていくような、そういう施策の展開をぜひお願いしたい。それがやはり戦略の前提になると思いますので、よろしくお願いします。

以上です。

浅野部会長

もう少し、より具体的にご説明いただくと、事務局も理解しやすいかもしれません。

順番に、大塚委員、それから、末吉委員、藤井委員、多分この順番だったと思いますが、その順番でお願いいたします。

大塚委員

ありがとうございます。

資料2-4とか、2-5とかで、2050年に80%削減を目指して、どういう方向で行くのかということについて、ある程度、具体的なものが出てきていて、ある程度ですけど、大変よかったと思っています。

多分、この資料2-4の9ページのこれは、これからご議論なさるということですけども、その前に書いてあるカーボンプライシングのようなことがかなり重要になってくるのではないかと思いますし、排出量取引に関しては、いろんなご意見があり、合同部会ではかなり批判されていますけども、仕組みを限定したり工夫することによって、いろんなご懸念に関しては対処できるのではないかと思いますので、それも一つの方法として、ぜひお考えいただければと思います。

それから、多少気になっているのは電力の扱いでして、資料2-5で、熱から電力へということも1ページとかに出てきているんですけども、これも大きな方向としては間違っていないと私は思っていますが、短期的に、このまま火力が増えているような状況が少しの間続いていると、その間に関しては、電力に移ることが必ずしもCO2の削減につながらないこともあると思いますので、その辺に関してはどういうふうにお考えになっているのかなと、短期的な話だということになると思うんですけど、将来的には、この再生可能エネルギーをどんどん増やしていくという話だと思いますので短期的な話だと思いますが、ここでは長期的な話をされているということなのだろうと思いますけど、少し気になるので。

簡単には原子力がシェアが減っているので、原子力がいいということをわざわざ言いたいわけじゃないんですけど、その火力が増えてしまうと、電力への転換というのは、必ずしも一時的にはよくないかもしれませんので、その辺について、どうお考えなのかというのがお伺いしたいところでございます。

それから、あと二つは、ちょっと細かい質問になってしまいますが、二国間クレジットに関しての質問ですけど、資料2-9の15ページのところで、この取引のシステムに関しての登録簿の話がありますが、これは現在の温対法の割当量口座簿制度とはどういう関係になるかということをお伺いしておきたくて、これは法制度にはなっていないので、法制度にした方が多分いいのかもしれませんけども、そこのところは温対法の改正とかとも関係するかもしれませんが、教えていただきたいというのが1点。

それから、もう1点は、これはやや学問的な問題になってしまいますが、資料2-7のところで、スライド4の最後のところで、幸福度の維持の話が出ていますが、このWell-beingの話は、環境経済学においてかなり重要な課題になってきているようで、先ほど上田さんがご説明になった、その2ページのメリットがコストを上回るという話と具体的にどういうふうに結びつけていくかという辺りも問題になると思うんですけども、現在、この点に関してどういう位置づけがなされているか教えていただければ大変ありがたいと思います。

以上です。

浅野部会長

質問にはしっかりとメモをとっておいていただきたいと思いますが、忘れるといけませんので、もし安井委員が、大塚さんの発言についてコメントがありましたら。

安井委員

ありがとうございました。

電力への転換は、確かに一時的にはそれはよくない可能性がないわけではないんでありますが、中でもやはり石炭への転換というのが、今コスト的に一番安いというところが最大のやっぱり問題点であって、天然ガスは、当面、例えばIEA辺りでも、2030~2040ぐらいからCCSが入るみたいな感じですよね。

ですから、とりあえず天然ガスでやってくだされば、それほど文句をつけようは、今のところはないんだけど、ぐらいの理解で、今のところ進んでおります。

浅野部会長

それじゃあ、末吉委員、どうぞ。

末吉委員

ありがとうございます。

検討会とか懇談会ですばらしい議論が進んでおりますことをうれしく思って、また、敬意を表したいと思います。

2点ございます。

まず1点目は、やがて排出ゼロを目指すことの意味とか、インパクトをどう受け止めるか、どう認識するかであります。

COP21以前の議論も踏まえますと、私自身は、いわゆる脱炭素経済への経済モデルの入れ替えが始まるという認識が非常に重要ではないかと思っております。経済モデルの入れ替えですから、産業構造はもちろんですけれども、消費者の消費行動のあり方なども含めて、いろんな意味での大きな転換が待っているんだと。これは何十年かけてもやるということだろうと思います。

そうすると、恐らくその実践の場では、様々なインタレストのぶつかり合いがあるに違いないと思います。端的に言えばオールドマネーとニューマネーの闘いとか、社会のステークホルダー間においても、いろんな意見の相違も出てくると思います。

そうしますと、いい議論をして、いい方向性を導くには、私は、やっぱり自由濶達な議論の場が非常に重要であると思っております。あえて申し上げれば、民主的な議論の場を確保していただきたい。そのベースとなるのは、やはり正しいデータといいますか、必要なデータといいますか、日本にないデータを含めて、そのデータをやっぱりみんなで共有していくことだと。ですから、データにフェアなトリートメントをぜひしていただきたいと思っております。

それから、2点目は、瀬川課長がご紹介いただいたSDGsなんですけども、私自身はとても重要だと思っているにもかかわらず、国内での議論が余りないので寂しく思っていたんですけど、今日ご紹介いただいて大変よかったと思っております。

瀬川課長は、今年、ビッグイヤーとおっしゃいましたけど、私は、The biggest year afterword……だと思っておりますので。

恐らく、これはCOP21と同じようなエネルギーを国際社会がかけてつくったSDGsであると思っております。とすれば、これから当面の地球社会の運営、経営に当たっては、このSDGsとパリ協定のこの二つが車の両輪になって、国のあり方、社会のあり方、あるいは経済活動、ビジネスのあり方も含めてですけども、いろんなものを律していく、マネージ、コントロールしていく、非常に基本の物の考え方、あるいは方向性をこの二つが示しているんじゃないかという具合に思っております。ですから、ぜひ日本の国内においても、パリ協定、パリ協定だけじゃなくて、このSDGsとのペアリングで、カップルで物を考えていくといったようなことが、ぜひ進んでいけばいいのかなと思っております。

以上です。

浅野部会長

ありがとうございました。

それでは、藤井委員、どうぞ。

藤井委員

ありがとうございます。

3点申し上げたいと思います。

一つは、気候変動長期戦略懇談会提言に書かれているイノベーションの強調、これは非常に大事だと思います。

先ほど、私は費用対効果、優先度ということを言ったのですけども、それでは進めない部分をクリアするのが、まさにイノベーションです。最終的には温暖化問題も、イノベーションがないと、目標を達成できないんじゃないかという気もしております。ただ、イノベーションは大事なのですけども、どのようなイノベーションをどう進めていくかというところを、議論していく時期に来ていると思います。そして、基本的に官の役割と民の役割、この切り分けと連携、ここを明確にしていかないと、いいイノベーションは出てこないと思います。

先日、合同審議会の場でも言ったのですけども、アメリカでは、フォルクスワーゲンの問題もそうだったのですが、米国のEPAには自動車の排ガス規制でCO2削減を促進させるために、クレジットとその売買を認め合っている制度があるわけです。日本の各自動各社は規制を満たしているので、売りのクレジットが山のように積み上がっていますが、ヨーロッパ勢の中には買いに回っているところもある。全部じゃないんですけども。

国の役割は、イノベーションに直接お金を出すだけじゃなくて、厳格な規制というか、費用対効果を見据えた規制を設定し、弾力的な仕組みを導入することによって、民間のイノベーションを加速させる。我が国にも自動車排ガス規制での成功体験(日本版マスキー法)があるわけですから、ぜひ、官民の役割を明確にして進めていってほしいと思います。

2点目はJCMです。私は非常に大事だと思うんですけれども、今のところ、まだまだ「点」なんですよね。

恐らく、ほかの先進国も、当然、途上国対策はいろいろやっているので、途上国側はJCMだけでなく、先進国のいろんなものを、いいものは全部取り入れていこうということだと思います。したがって日本と協定を結んだからと言って、別に「JCM派」になっているわけではないと思います。

途上国が先進国からいい制度をどんどん取り入れて、途上国全体のCO2が削減することは望ましいのですけれども、一つは事務局への質問ですが、日本以外の先進国の途上国対策が、それぞれ今、本当にどうなっているのかというところを少し調べて、ご紹介願いたいと思います。

アメリカの場合、米中、米印で、直接、二国間の包括的な温暖化対策を結んでいます。協定の中にはいろんな取り組みが入っているようです。我が国も、本来は、日中、日印、あるいは日ASEANといった個別の関係の中で、いろいろやれるんじゃないか。それだけの材料を我々は持っていると思います。その辺も進めてもらいたい。

最後は、環境と経済の動向のところの炭素価格付けを書いてもらっているのはいいと思います。しかし、これは世界銀行のデータだと思いますが、環境税とキャップ&トレードを包括的に書いているのですけども、世銀のデータを見ればわかるように、環境税というのは、国によって税率に大きな差があります。一番高いのはスウェーデンですかね。

つまり、同じような価格付けの仕組みですけれども、キャップ&トレードとは成立する価格のレベルが実は違う。これはイノベーションの議論と若干似ている。つまり、炭素税・環境税は各国がその国内で税として課税する仕組みです。自分たちの環境対策のために財源を獲得するということは大事だと思います。ただ、多くのグローバル企業を対象として、マーケットで受け入れられるような炭素価格付けとなると、やっぱりこれはグローバルに共通性がなければ十分に機能しない。仮に、日本の基準と、中国とアメリカでそれぞれ価格水準が違うと、企業は資源配分を考えて、当然、一番価格の安いところに拠点を持っていきます。キャップ&トレードの場合は、市場の取引で炭素の価格が決まるので、税のような格差が生じない。生じた場合は、クレジットの売買で市場の中で調整される。クレジットはどこにでも売れるので、売ったり、買ったり、足りなければ安いところから買えるというような仕組みが望ましい。もちろん、炭素税・環境税とキャップ&トレードは対立概念ではなくて、温暖化対策の中で、並行、併用するものだと思うのですけれど、グローバルな市場を考えると、やはりキャップ&トレードのようなものが望ましい。しかし、各国ごとに個別対策と連動させた財源としては、税が望ましいとなるので、両者をうまく組み合わせられるかどうかだと思います。現在、委員会の先生方がご議論されているようですけど、もう少し踏み込んでやっていただきたいという感じがします。

浅野部会長

ありがとうございました。

それじゃあ、村上委員、河上委員、冨田委員の順番でお願いします。

村上委員

二つございます。この資料2-9の二国間クレジットを随分進めていただきまして、ありがとうございました。ますます環境省さんが中心なって進めていただきたいと思います。

それから、資料2-5で、例えば2ページに、民生、家庭・業務のことがございますけど、今、世界中でゼロエネ建築とかゼロエネ住宅をやっていまして、これは、もともとIEAが勧告して、それをG8サミットで受けて、各国が目標を立ててやっているわけでございますけど、もう住宅とか低層建築では、もうゼロエネは極めて普通の技術でございまして、といいますのは、屋根に太陽光を並べれば、太陽光発電を簡単にできるわけです。

ですから、もうそれが創エネと、エネルギーをつくるのと、省エネと分けて、幾ら創エネをしようと、やっぱり省エネの義務を義務づけすると。いわゆるポジティブエナジー住宅、我々はPEBと言っているんですけども、ZEBとかZEHからPEBに移った政策を推進すべきであると、そのように考えております。

以上です。

浅野部会長

ありがとうございました。

それじゃあ、河上委員、どうぞ。

河上委員

ありがとうございます。

幾つかございますが、まず、第四次環境基本計画にある、この2050年80%削減を目指すというこの目標なのでございますが、これは当然、今後のイノベーションを前提とした、いわゆる坂の上の雲として、そこを目指すんだと、こういう性格のものだと認識をされているというふうに理解をしております。

したがって、2030年の目標とは大分位置づけは異なっておるんだろうということで、施策の積み上げを行う段階というよりは、先ほどからもご議論ありますとおり、イノベーションをしっかりやって、有効な技術を見出すことを含めて、そこに注力すべき段階だと思っております。そういう認識しておりますので、その点を踏まえ、議論をよろしくお願いしたいということが1点でございます。

それに関連もするのですが、先ほど気候変動長期戦略懇談会のご紹介もありましたが、ここにCCSの話が出ておりまして、見ますと、「社会の絵姿の一例」と書いていただいているので、そこはご認識いただいているんだなとわかったんですが、CCSにつきましては、もちろん国内外におきましても温暖化対策の有効な革新的技術という位置づけでございまして、これは電力業界といたしましても、国の大規模な実証試験への協力など貢献はしていかなきゃいけないというところなんですが、ご存知のとおり、実現に向けては課題もたくさんあるということで、やはりこれの克服が前提となります。エネルギー政策につきましては、やはり「S+3E」の観点から、バランスをとれた供給体制ということが重要なので、そういうご認識でよろしくお願いいたしたいと思います。

それから、あと、大塚委員からもお話がございました排出権取引につきましては、合同部会でもいろいろ意見がありましたので細かくは申し上げませんが、非常に懸念のある、そういった施策だと思っておりますので、産業界としては反対しているところです。

ご紹介のありました環境と経済の統合に向けた動向調査検討会でも、この一つの対策の方向性として炭素価格付けというのも書いてありますが、ここのところも排出量取引制度がありますけど、今、EUETSの状況を見ても必ずしも効果的な施策ではないんだろうというふうに認識しております。そういう認識だということだけ申し上げておきます。

それから、あと、電力の話もありましたが、現状は、ご指摘のとおり原子力が止まっている状況で、原単位が上がっていることも事実でございますが、我々、業界としましては枠組みを強化いたしまして、エネミックスの達成に尽力するということで、原子力の再稼働もしっかりやりまして、それで、ミックスの数字と整合した0.37、これの実現に向けて尽力させていただきます。

以上でございます。

浅野部会長

ありがとうございました。

冨田委員、どうぞ。

冨田委員

ありがとうございます。

この気候変動長期戦略懇談会のことについてですけど、社会の絵姿の一例ということですが、一例と言いながら、唯一無二のような検討になっているのではないでしょうか。ほかの絵姿はお考えにならなかったのかというのが質問です。

イノベーションの必要性は論をまたないだろうと思います。でも、実現可能性ということを考えたときに、この絵姿はどうなのでしょうか。

先ほど、CCSについてのお話もありましたけれども、私の今持っている認識からすれば、実現可能性、イノベーションができれば達成できるということにはなっているかもしれませんけど、現時点で実現可能性は見通せられていないと思います。

この2050年80%という姿は、政府が国民に対して、こういう社会なんですよと、こういう社会を目指しましょうよということでつくられると思いますが、イノベーションができなかったときに、すなわち目指したはいいけどできなかったときに、どういう姿になるのかということまで含めないと、選択肢にはならないのではないかと思います。

CCSができたらこうなりますというだけでは、やっぱりまずいのではないかなと思うのです。できないときのリスクを含めて、国民に示す必要があるんだろうと思います。

それから、資料の中にもありますけれども、私も全くそのとおりだと思うのですが、2030年26%は積み上げですので、簡単とは言いませんけれども達成可能な絵姿というふうに捉えることができるのかもしれませんが、2050年80%はそうじゃない。現在の価値観や常識を破るくらいの取組が必要です。

ここで描かれている姿は、破られていないのではないかという気がします。

本当のイノベーション、まさに核融合だとか、CCSが制限なく将来にわたってずっとできるということになれば、そうかもしれませんけど、そうでないとすると、どういう姿が、私、描けてしまうかというと、昭和の初めのころの生活、あるいは、今、少子化ということが問題になっていますけども、これからの人口は減らしていこう、増やすことなんかとんでもないという世界かもしれません。

もっと卑近な例を言えば、今、省エネの方で議論しているのは、我慢を強いるような省エネは長続きしないということが言われているわけですけど、冗談じゃないと。こういう世界を目指すには我慢しなくてはいけないということを声高に言わなくてはいけない社会になるのではないかなと思います。価値観を破るということは、まさにそういうことではないかなと思います。

それから、S+3Eにしても、今は当然だと思っていますけど、そうじゃないかもしれません。経済成長の意義はもう無視するというような社会かもしれないと。そういったことを含めて、どこを選択するかを示してあげる必要があるのではないかと思います。

以上です。

浅野部会長

ありがとうございました。

安井先生、何かあれば。

安井委員

大変重要なお話なんですけど、今回は、余り時間がなくて、どういう社会になるか、大分前になりますけど、五つの社会というのをつくって提案をしたことがあるのでありますが、あれまでの検討をやれていないというのが実態でございます。

その今の最後に出ております、この一例という、資料2-5の一番最後のページでございますが、そこに関しては、ある意味で、一番厳しいのをやってみた。というのは、なぜかというと、これをご覧いただくと、その最終エネルギー消費のところで、どこが落っこちているかというのをご覧いただくと大体おわかりになるんですけど、産業が、減りが割とこれでも少ないんですよね。ほかのところの部分に比べると少なくて、ですから、現在の日本の産業構造が、比較的、何となしにエネルギー効率を上げながら維持されているというシナリオで、それが多分一番厳しいので、それについて一例を示したという感じだと私は思っています。

ですから、先ほどおっしゃっていただいた昭和の初めのころのような形になるとか、あるいは、日本からエネルギー消費型の産業が全部いなくなるとかということを考えていないという話です。ですから、割合と今の延長線上にあるような社会を例として取り上げて、それが多分一番厳しいので、それについても、CCSは確かにやらなきゃいけないんですけど、大分前にやったときには年間2億tというシナリオだったんですけど、今回は、まあ、半分ぐらいで書けないかなというのをトライしたと、そういうことですね。それでも年間1億tぐらい。

年間1億tを、私は20年ぐらいはやれるけど、それ以上は無理だと言っていますが、大体2040年~2060年ぐらいの20年間ぐらいはできるんじゃないか。

そこで何が起きるかというと、やはりカーボンプライシングというような問題よりも、とにかくCCSコストというのがカーボンプライシングの何か原点になる社会になっているという、そういう社会を考えて、これでいいのかなと。これ、全部の報告じゃございませんので、全体にもなかなかそこが書きにくいところがあるのでありますけど、そういった感じになった結論でございます。

したがって、我慢を強いるようなこと――省エネは、先ほどの話でございますけど、特に村上先生がおっしゃるように、快適性は多分維持されているというつもりです。

以上でございます。

浅野部会長

ということで、ここは事務局が多分答え切れないので、答えていただいたんですが、それじゃあ、それ以外のご質問に類することについては、事務局からお答えいただけますか。

総合環境政策局総務課長

経済の検討会についてご質問があったので、2点お答えします。

まず一つは、Well-beingについて、どう扱われることになるのでしょうかと、大塚委員からご指摘がございました。

Well-beingにつきまして、今、集めている論文の中で、それについて言及しているのは50ぐらいやっているのですが、2文献しかなくて、あともう一つですが、なかなか余り詳しく書いていない。ただ、経済学の分野では「幸福の経済学」とかという形で、かなり最近はやっている分野でもあるので、トータルで貨幣換算してコストとメリットを比較している関係上、そういったところにまで届くかどうかは、ここの委員の先生方にご指導いただきながら、最後の結論というのを整理していきたいと思っております。

また、プライシングのところで、お二方の委員からいただきまして、排出量取引の扱いについて、プラスマイナスのご意見をいただいたかと思いますが、今回のこの検討会の報告書は、施策の優劣について結論づけたりするものではなくて、それぞれの施策がある中の目指すもの、排出量取引も、例えば環境税も、そのほかに例えば規制も、プライシングというものを目指して、そのプライシングというものの必要性、重要性をどうしているのかと。それを実現するためにどんな施策でやるか、その施策の優劣までは余り議論しないようにしている。

ただ、経済学的に見れば、こういうメリット、デメリットがあるよと、こういうふうなところは、藤井委員からご指摘していただいた話は、例えばボックスとかコラムみたいな形で、これを議論する人が十分に議論できるように、そうしたものを指摘したいという風に思っております。

あと、戦略懇談会の方で絵姿の話が何回か出ましたが、その戦略懇談会は私も参加していまして、そこで出てきた議論で、なかなか長期、例えば2050とか、2100とかという議論で、その長期の絵姿を本当に正確に予測できるかというと、今の世の中を30年前に予測できたかというと、それもなかなか難しいということで、ただ、それをジャンプするのにはイノベーションが要る。その中で、委員の中で指摘されていた議論のキーワードが「不確実性」、しかし、何かやらないといけないというときには、施策の柔軟性という風なところ、そうしたイノベーションを生み出していくための施策なのですけれども、時によって修正も効くような、それでいて、ゴールにはきちんと向かっていく、そういう施策は何だろうかということで、例えばプライシングといった経済システムを使うようなものもあるんじゃないか、そういうふうな骨太な議論をしていただいて、最後、結論が出てくるのかなと思っております。

以上です。

国際企画官

市場メカニズム室でJCMを担当しております水野と申します。

資料2-9の15ページで、大塚先生の方から、JCM登録簿についてご質問いただきました。

ご指摘のとおり、今、京都メカニズムのための登録簿である割当量口座簿とは異なる、別の登録簿を構築しております。ただ、割当量口座簿の経験を踏まえて、新たな時代の変化も踏まえて、例えば今回のJCM登録簿においては、外国法人が口座を開設できるようにしてあったり、それから、割当量口座簿は間接移転といいまして、移転するときには一々政府に対して申請をしていただいておりましたけれども、このJCM登録簿では直接クレジットを移転できるような仕組みにしております。

今の段階で、割当量口座簿のように、地球温暖化対策法のもとで位置づけられてはおりませんけれども、今後、法律で規定していくかについては、JCMそのものの運営であるとか、それから、取引に対するニーズの必要性等を踏まえて、検討していくべき課題と認識しております。

以上です。

浅野部会長

フロン対策室長、フロンについても少し。

フロン対策室長

フロン対策室の鮎川でございます。

中根先生の方から、モントリオールガスと京都ガスのすき間というご議論をいただきました。ありがとうございます。

中根先生はこういう意図でおっしゃったんだと思うんですけども、我が国においては、両方ともきちんと回収・破壊も含めて制度を構築しているというご指摘だったと思います。

それを海外でも広げていくべきというご指摘だったかなというふうに受け止めておりますけども、制度を広げるということではないんですけども、例えば途上国へのフィジビリティスタディというのを我々は事業として持っておりまして、ベトナム等と、今、4カ国でやっておりますけども、フロンを使っていない高効率の冷凍空調機器を導入するという事業なんですが、それとあわせて、代替で今まで使っていた古いフロン機からフロンを回収して破壊するという社会システムをセットで、フィジビリティスタディをやるという事業を今年度から始めておりまして、そういう意味では、そういった実態の面から、我が国の経験あるいは企業のテクノロジーを途上国に対して移転して、貢献していきたいといったようなことも始めているところでございます。

こんな感じでよろしゅうございましょうか。

浅野部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ほかに何かご質問、ご意見はございますでしょうか。よろしゅうございますか。

それでは、今日、いろいろとご意見いただきました。

末吉委員からSDGsについて、いろいろとご指摘がありました。私も全く同じことを考えていまして、これは極めて重要である。特に全ての国が、これはちゃんと国家計画の中に組み込めと言われていますから、当然この国もそれを組み込まなきゃいけない。

ということは、具体的には一番距離が近いのは、第五次環境基本計画も近々に考えなきゃいけない。そのときに、我が国としては、この項目をどういう形で我が国にうまく当てはめていけるかということを考えながら議論をしなきゃいけませんので、第五次計画の検討に当たっては、このテーマは決して外すことはできないと思っております。

ですから、まず、とりあえず勉強会みたいなところでの検討を始めるということになるかと思いますが、いずれまた、総合政策部会やこの部会などでも議論いただくということになるのではないかと思っております。

それ以外についても、いろいろと有益なご指摘をいただきました。私も、先ほどの長期戦略の委員の一人でございますので、今日のご発言も十分踏まえながら、よりよい報告書がまとまるように努力していきたいと考えております。

それでは、ほかに特にご発言がございませんようでしたら、事務局から連絡事項がありましたら、どうぞ。

研究調査室長

委員の皆様におかれましては、活発なご議論をありがとうございました。

本日の資料でございますが、郵送をご希望の方は、そのまま席に置いていただければと思います。

議事録につきましては、事務局で取りまとめを行い、委員の皆様へご確認いただきました後、ホームページに掲載させていただきます。

以上です。

浅野部会長

それでは、予定よりも今日は早く終わりましたが、これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

午前11時55分 閉会