中央環境審議会地球環境部会(第9回)議事録

1.日 時

平成15年10月31日(金)10:00~12:00

2.場 所

虎ノ門パストラル 5階 ミモザ

3.出席委員

(部会長) 浅野 直人 
(委員) 織田 由紀子  清水 誠
   桝本 晃章 和気 洋子
  青木 保之 浅岡 美恵
 天野 明弘  飯田 哲也
 飯田 浩史  浦野 紘平
 太田 勝敏  大塚 直
 久保田 泰雄  小林 悦夫
 佐和 隆光  塩田 澄夫
 須藤 隆一  瀬田 重敏
 大聖 泰弘  西岡 秀三
 林 貞行  平尾 隆
 廣野 良吉  福川 伸次
 細田 衛士  松野 太郎
 三橋 規宏  安原 正
 山口 公生  横山 裕道


4.議題

(1) 海洋汚染対策について
ロンドン条約96年議定書の締結に向けた取組等
(2) 地球温暖化に関する国際的対応等について
(3) その他

5.配布資料

<海洋汚染対策について>

資料1 ロンドン条約96年議定書の締結に向けた取組
資料 1-1 今後の廃棄物の海洋投入処分等の在り方について(案)の概要
資料 1-2 今後の廃棄物の海洋投入処分等の在り方について(案)

<地球温暖化に関する国際的対応等について>

資料2 気候変動問題に関する今後の国際的な対応の基本的考え方について(案)
参考資料1MARPOL73/78条約1997年議定書の概要
参考資料 2-1 各委員から提出された意見
参考資料 2-2 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第3次評価報告書における最新の科学的知見
参考資料 2-3 世界の温室効果ガス排出量の現状及び将来
参考資料 2-4 次期約束のあり方に関する主な論文・報告書の内容
参考資料 2-5 世界気候変動会議(モスクワ)及びロシア政府関係者等との個別会談結果について
参考資料3  アジア欧州会合(ASEM)第2回環境大臣会合の結果について
 

6.議事

午前10時00分開会

○石野地球環境局総務課長 定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会第9回会合を開催いたします。現時点で、21名の方が出席されて、定足数に達しております。私どものほうにご出席のご連絡をいただいております方があと10数名おいでになりますが、今から始めさせていただきます。この後の進行は浅野部会長よろしくお願いいたします。

○浅野部会長 それでは、早朝からお集まりいただきましてありがとうございました。
 少し事務局の読みよりも、今日はご出席予定の方が多いようでありまして、少し手狭でございますが、お許しをいただきたいと思います。
 先日委員の異動がございまして、村上委員がご退任になられました。新しく久保田委員にご参加いただくことになりましたので、ご紹介申し上げます。
 久保田委員です。

久保田委員 連合本部の事務局から来ました久保田でございます。村上が退任した関係から、後をやらせていただくことになりましたので、働く者の立場で、環境問題非常に重要ですので、よろしくお願いしたいと思いますし、また大衆行動といいますか、1人1人が参加をする運動として、連合としても力を発揮したいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 以上です。

○浅野部会長 では、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の配布資料の確認をお願いいたします。

○ 事務局 それでは、事務局より配布資料の確認をさせていただきます。

(資料確認)

○浅野部会長 それでは、本日の審議でございますけれども、まず第1は、ロンドン条約96年議定書の締結に向けた取組についてでございます。第2は、地球温暖化に関する国際的対応等についてということになっております。
 まず、これらの議題について事務局から説明をお願いいたしまして、それぞれの説明の後に質疑応答の時間を設けたいと思います。ご質問等はその際にお願い申し上げます。本日も時間が少し限られておりまして恐縮でございます。2時間、12時までの審議を予定しておりますので、どうぞ審議の進行にご協力をよろしくお願い申し上げます。
 では、まず初めに、今後の廃棄物の海洋投入処分等のあり方について、事務局から説明をお願いいたします。

○荒井環境保全対策課長 それでは、ロンドン条約96年議定書の締結に向けた取組等についてご説明させていただきます。お手元の資料の1-1、1-2の関係でございます。
 海洋汚染の要因となる廃棄物の海洋投入処分等につきましては、廃棄物その他のものの投棄による海洋汚染の防止に関する条約、いわゆるロンドン条約によりまして、国際的に規制が行われておりますが、96年にこのロンドン条約による規制をさらに強化することを内容といたします議定書が採択されまして、国際的に海洋投入処分等のより厳格な管理体制を導入することが求められています。この議定書は、早ければ2004年には発効するものと考えられております。我が国といたしましても、その締結に向けた準備を進める必要がございます。このため、前回ご説明をいたしましたように、8月5日付で環境大臣から中央環境審議会に対しまして、今後の廃棄物の海洋投入処分等のあり方について諮問を行いまして、中央環境審議会会長から地球環境部会に付議されております。
 本件につきましては、清水専門委員長の下で、海洋環境専門委員会が設置されまして、これまで4回開催され、資料1-2に示します専門委員会報告書(案)がとりまとめられています。本日本件についてご審議をいただきまして、また、1か月間のパブリックコメントの募集を行いまして、12月18日を現在予定していますけれども、地球環境部会におきまして最終的に詳細なご審議をいただきまして、答申をおまとめいただければというふうに考えています。
 資料の内容の説明に入ります前に、清水委員からお話をいただきたいと考えております。

○清水委員 それでは、専門委員会の委員長をおおせつかりました清水から若干イントロ的なお話をさせていただきます。
 前回少しお話ししましたし、いま荒井課長からもございましたけれども、海洋投棄に関する国際的なルールが変わったわけでございまして、ロンドン条約の96年議定書で新しく定められたわけでございます。投棄禁止リストから、投棄を検討してもよいものへというリストに変わったわけでございまして、投棄を許可する制度についても、これまでの我が国のやり方とは異なるわけでございます。したがって、どうしても新しい制度が必要でございまして、さもないとこの議定書の批准ができませんで、国際的に孤立をするということになります。
 改めるべき点としては、投入処分できる品目の見直し、例えばこれまで不発弾などを含む廃火薬類、これは海洋投入処分を行っておりましたけれども、禁止品目となっております。それからまた、許可条件の見直し等も必要になります。この新しいルールの基礎には、プレコーショナリーアプローチ、予防的取組と、それからPPP、汚染者負担原則がございますので、この原則を踏まえまして、基本的には事業者が海洋投入しても影響がないということを自ら明らかにする必要がございます。
 こういった状況を踏まえまして、海洋専門委員会で諮問案件の審議を行い、今ご報告がありましたように一応の結論に達しましたので、ご報告をする次第でございます。既にありましたけれども、かなり短期間で4回の審議でおまとめをいただいたわけで、この間、関係省庁へのヒアリング等も行っております。各委員の方々にはご協力に大変感謝をいたします。
 では、内容については環境保全課の荒井課長からご説明をお願いいたします。

○荒井環境保全対策課長 ありがとうございました。
 それでは、お手元の資料1-1をご覧いただきたいと思います。本日は時間の関係もございますので、この概要版を使いまして説明させていただきます。
 まず、資料の6ページでございますけれども、参考1、ロンドン条約96年議定書の概要をご覧ください。ロンドン条約では、陸上発生の廃棄物等の投棄によります海洋汚染の防止を目的といたしまして、有機ハロゲン化合物等を含む廃棄物その他のものの投棄の禁止に加えまして、一部の品目を除きまして、産業廃棄物の海洋投棄の原則禁止、事前の特別許可を要する廃棄物の規定等を示してございます。我が国では、この条約の求めるところを海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律、いわゆる海洋汚染防止法と、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、廃掃法で担保をいたしまして、海洋投入処分の規制等を行ってまいりました。
 この参考1に示します96年の議定書では、条約の規制を強化いたしまして、海洋投棄及び洋上焼却を原則禁止としてございます。そして、海洋投棄を検討できるものを附属書Ⅰ、図の右の下のほうにございますが、附属書Ⅰで限定列挙する方式といたしまして、海洋投棄する場合にもその影響の検討等に基づいて許可を発給するということを附属書Ⅱで明確にしてございます。また、許可を発給する際のガイドラインといたしまして、廃棄物評価ガイドライン、WAGと書いてございます、図1の右下のほうにございますが、このWAGという廃棄物評価のためのガイドラインが定められてございます。
 ロンドン条約と96年議定書の違いでございますけれども、第1に、附属書に示す海洋投入できる廃棄物の範囲の見直しがございます。これまで我が国が海洋投入処分を行ってまいりました一部の廃棄物等は海洋投入処分ができなくなります。
 第2の違いでございますけれども、附属書Ⅱの廃棄物の海洋投棄にかかる新たな許可制度の導入でございます。例外的に海洋投入を検討することができる廃棄物等につきましても、実際に海洋投棄をする場合には一連の評価手続を経た許可が必要とされてございます。さらに、許可条件の遵守の確認等のためのモニタリングを実施すべきとされています。
 以上の2点の他、洋上焼却の禁止等についても議定書は規定しています。
 1ページに戻っていただきまして、具体的にこれをどう採用するかということでございます。資料1の本文で、専門委員会報告書(案)では、ロンドン条約96年議定書をめぐる動きや我が国における廃棄物等の海洋投入処分管理等の現状を整理いたしまして、我が国が世界有数の廃棄物海洋投棄国となっている事実などを明らかにした上で、今後の廃棄物等の海洋投入処分等のあり方について提言を行っています。
 提言のポイントはこの概要に示します4つでございます。
 第1に、今後の廃棄物等の海洋投入処分等のあり方にかかる基本的考え方でございます。我が国は、96年議定書の国際発効に遅れることなく締結することを目指し、早急に国内体制の整備を図る必要があるということで、3点ございますが、96年議定書上の海洋投棄が禁止されることとなる廃棄物等につきましては、速やかに海洋投入処分を中止するための措置をとるべき。 次に、その他の廃棄物等については、我が国として国際的に表明してございます陸上処分の原則を維持強化し、海洋投入処分量の減量化を一層進めることを基本とするべき。3点目といたしまして、その上でなお海洋投入処分を継続せざるを得ない廃棄物等につきましては、96年議定書にしたがって、新たな海洋投入処分管理の仕組みを整備するべき。この3点の指摘がございます。
 我が国で海洋投入処分が認められております廃棄物等のうちの廃火薬類及び不燃性の一般廃棄物は、附属書Ⅰに列挙されております海洋投棄を検討できる廃棄物等に該当しないと判断されておりますので、海洋投入処分を速やかに中止するための措置を講ずる必要があるということでございます。
 一方で、附属書Ⅱにしたがって、やむを得ない海洋投棄でございまして、かつ海洋投棄が海洋環境に影響をもたらさないことが明らかとなったものに限りまして、規制当局が有期限の許可を与えることができるものといたしまして、附属書Ⅰに掲げられた品目に該当する廃棄物等がございます。浄化槽にかかる汚泥・し尿、赤泥、建設汚泥、水底土砂等でございます。これらにつきましては、現行の海洋汚染防止法等におきます制度との整合性に配慮しつつ、それを見直して、個別の排出事業者ごとに審査を行い、有期限の許可を発給する制度を設ける必要があるということでございます。この際、附属書Ⅱに明記されました考え方によりまして、予防的取組を確保する制度をつくる必要がございます。また、あわせて汚染者負担原則の考え方を踏まえ、排出事業者が潜在的影響の検討や環境監視の実施にかかる負担を担う制度とする必要があるということでございます。
 第2点でございますけれども、廃棄物等の海洋投入処分実態等の概要とその評価でございます。主な廃棄物等についての評価を紹介いたしますと、まず附属書Ⅰの品目に該当しない、海洋投入を中止すべき廃棄物等についてでございますけれども、廃火薬類のうちの不発弾。これは第二次大戦中に投下されました米軍によるもの、あるいは旧日本軍によるものでございますが、不発弾は国の責任において陸上処分に移行されるべきということでございます。現時点では、所管が明確でない等の理由から、陸上処理に向けた体制の整備が十分進展していないけれども、国は海洋投入処分されている不発弾をすべて陸上で処分するための体制を早急に整備するべきであるということでございます。
 廃火薬類のうちの押収爆発物、猟銃用の廃火薬類でございますけれども、これは陸上で処分する際の技術的な障害がないと考えられるということでございまして、速やかに必要な体制を整備して海洋投入処分を中止する必要がある。なお、警察が治安の維持の目的で自主的に回収している猟銃用廃火薬類等の処理につきましては、陸上処理と治安維持上の2つの要請の両立を確保すべく、回収・廃棄の仕組み等の条件整備について、生産者等を含む関係者間で検討されることが望まれるという指摘でございます。
 次のごみピット汚水でございますけれども、速やかに必要な措置をとり、海洋投入処分を中止すべきだということでございます。
 次に、許可を得れば海洋投入できる附属書Ⅰの品目に該当する廃棄物でございます。浄化槽にかかる汚泥・し尿でございますけれども、廃掃法によりまして海洋投入処分が全面的に禁止されているものでございますが、現在実施しているものにつきましては平成19年1月末まで海洋投入処分が認められています。今後施設整備を着実かつ計画的に行いまして、可能なところから速やかに海洋投入処分を中止すべきであるとしています。なお、本件につきましては、去る10月10日でございますけれども、廃棄物処理施設整備計画が閣議決定されておりまして、汲み取りし尿及び浄化槽汚泥の海洋投入を全廃し、衛生的な陸上処理を実施することを目標として確認したところでございます。できるだけ速やかに対応を取るということになってございます。
 また、海洋投入処分を継続せざるを得ない場合でありましても、今後は有害物質にかかる行動基準、いわゆる判定基準でございますが、こちらを設定をいたしまして、有害物質の排出量等の評価を含む附属書Ⅱに基づいた潜在的影響等の検討が必要になってまいります。
 次に赤泥でございますけれども、有効利用について検討されているものの、海洋投入処分を直ちに中止することは困難ということでございまして、海洋投入処分の中止を視野に入れつつ、段階的に海洋投入処分量を削減していくことが必要ということでございます。
 建設汚泥は、海洋投入処分を直ちに中止することは困難と考えられますけれども、建設リサイクル推進計画2002の推進によりまして、海洋投入処分量を削減していくことが必要ということでございます。
 浚渫された水底土砂でございますが、これは量が多いこと等から、今後とも海洋投入処分を継続せざるを得ないものと考えられます。その場合でも有害物質等を含むもの等を除いた現在の一般水底土砂のみを、海洋投入処分できるものというふうに限るべきであるということでございます。
 以上の赤泥以下の3項目につきましては、海洋投入処分を継続する場合につきましても、府附属書Ⅱに基づきまして潜在的な影響等の検討が必要になります。
 以上、各品目の詳細につきましては、資料1-2、報告書の本文のほうの参考資料4、ページで申しますと21ページに列挙してございますので、後ほどご覧いただければ幸いでございます。
 次に第3点でございますけれども、今後の廃棄物等の海洋投入管理のあり方でございます。新たな制度の基本骨格についての考え方でございますけれども、まず許可の申請主体でございますが、これは排出事業者といたしまして、一方で、審査主体は国とすることが適切であるということでございます。ただし、必要に応じまして地方公共団体との連携、それから特に個々の許可申請についてのパブリックコメントを求める等、市民関与の機会を確保するという必要があるということでご指摘をいただいております。
 次に、附属書Ⅱが求める仕組みへの対応の考え方でございますが、これは恐縮でございますが、資料1-2の本文の10ページの図2が手続きフローを示してございますのでご覧ください。新たな制度の下での手続ということがございますが、排出事業者がこのような6項目について申請時に明らかにする仕組みを設ける必要があるということでございます。すなわち、まず廃棄物等の種類と発生過程、発生量等を検討いたしまして、海洋投入処分量の最小化をしているかどうかということが求められております。また、廃棄物等の性状を検討いたしまして、それが判定基準に合うかどうかということが必要になってまいります。
 次に、廃棄予定海域の現況についてもきちんと把握をしておくということが必要になってまいります。
 5番目といたしまして、廃棄物等の海洋投棄による潜在的な影響を評価する必要があるということでございます。これにつきましては、物理化学的な影響に加えまして、生態系への影響も含めて検討することが必要というご指摘をいただいております。
 最後に、環境監視計画も作った上で、この許可を申請するということが必要ということでございます。
 これらの検討結果を審査する際には、国は必要に応じまして、専門家の意見などを取り入れまして、審査の妥当性、客観性を確保すべきというご指摘をいただいています。
 1-1の5ページのほうに戻っていただきまして、排出海域の選択でございます。また恐縮でございますが、7ページに参考2がございます。これは、現在指定をされております海域でございまして、A海域は有害物質を判定基準値以上含む廃棄物を固形化処理したものの排出海域として設定されています。現在投入実績もないということで、これについては廃止すべきというご指摘をいただきました。また、C海域、これは下水汚泥等水溶性の廃棄物を処分する海域でございます。それから、水底土砂を処分することができるF海域、これは事実上すべての海域になっていますが、これらのC海域とF海域の外縁につきましては、我が国の排他的経済水域に相当する海域内にとどめることが適切である。現在は、事実上すべての海域ということで、外縁の線がございませんが、それを排他的な経済水域に相当する海域内にとどめることが適切であるという指摘をいただいております。
 また、緊急避難時の廃棄物の排出海域といたしまして、廃棄物の性状や危険性等に応じて、的確かつ迅速な対応を可能とする仕組みを新設することが適切であるというご指摘をいただいています。
 次に、[3]でございますけれども、監視でございます。排出事業者が実施をいたしました監視調査結果については、国に報告されるよう制度化する必要があるということでございます。環境省におきましても、海洋環境モニタリング調査等を実施しているところでございますけれども、国は監視計画が排出事業者等により確実に実行されていること、海洋投入処分の影響が当初予測評価された範囲に収まっていること等を確認する必要があるということでございます。
 最後に、許可につきましては、周辺状況の変化を踏まえて、定期的に見直しをし、適切な場合にのみ許可を継続する。許可の見直し、更新制度を設ける必要があるということでございます。
 以上、第3点でございます。次に第4点でございますけれども、その他の締結に必要な措置といたしまして、領海を決める基線より外側では、陸上に起因する廃棄物の洋上焼却を禁止する必要がある。現在実績はございませんが、法律的にも担保をするという必要があるということでございます。また、内水、これは領海を決める基線より内側になりますが、内水での洋上焼却につきましても速やかに中止するように措置を講ずることが適切であるということでご指摘をいただきました。
 以上が専門委員会報告書(案)の概要でございまして、詳細につきましては資料1-2に示してございます。次回の環境部会におきましてご検討いただきたいと存じていますが、簡単に説明させていただきました。
 それから、参考資料1でございますが、ロンドン条約96年議定書とは直接関係はございませんが、MARPOL73/78条約1997年議定書の概要という資料がございます。これはいわゆる海洋汚染防止条約でございまして、附属書がいくつかございますが、そのうちの附属書Ⅵの関係につきまして、最近の状況を簡単に紹介させていただきます。
 これは、3の内容のところに書いてございますとおり、船舶からのオゾン層破壊物質や窒素酸化物、硫黄酸化物等の排出を規制すること等によりまして、大気汚染等を防止しようとするものでございます。その国際的な発効が2004年にも想定されるため、現在締結のための国内措置について関係省庁等と調整を図っているところでございます。今後、本部会に対してもこの対応につきましてご報告をさせていただく予定でございます。
 以上でございます。どうぞご審議よろしくお願いいたします。

○浅野部会長 どうもありがとうございました。
 ただいまご報告、ご説明をいただきましたが、取り扱いについては先ほど事務局からもお話を申し上げましたように、この後パブリックコメントをかけるということでございます。既に短期間ですが、大変精力的に専門委員会で充実したご審議をいただいておりまして、そのご議論の結果が本日報告ということで上がってきております。パブコメ後に改めて本部会でこれについては審議をするということになっておりますが、そのことを踏まえた上で、短時間ではございますが、もしご質問、ご意見ございましたら伺いたいと思います。大変恐縮でございます。本件について、何かご質問、ご発言ご希望の方は札をお立ていただけませんでしょうか。
 よろしゅうございましょうか。他にございませんか。
 それでは、平尾委員からお願いいたします。

○平尾委員 平尾でございます。内容は事前にお配りいただいたので、少し勉強させていただきました。
 質問でございます。参考資料、分厚いのがございまして、資料1-2の参考資料1の9ページ目のところですね。各国の投入処分実績状況というのがございまして、これを拝見いたしますと、ちょっと中ほどですね。9ページ、横書きで各国の浚渫物とか、下水汚泥、産業廃棄物と記載してありますが、これをざっと見ますと、我が国では非常に几帳面にまじめに届出している。フランスとかイタリアとかというのは未報告があったりして、これらがどんなふうに構成されているのかなという感じでありますが、これは感想でございますが、1つ英国が、産業廃棄物が286万トン、1992年であります。それ以来、97年からゼロになっておりまして、この中身が何かなと思いますと、次めくっていただいたら、11ページ目に、残っておりますのは魚類残渣が残っているということで、いわゆる工業にかかわるようなものはゼロになっているんですね。我が国もリサイクル、循環社会構築ということで今取り組んでおりますが、ご指摘の2002年版の建設リサイクル推進計画というのをやろうとなっておりますが、イギリスはどうも我が国と似たような構造の社会ですし、島国でもございます。そういった意味で、こういったものの処分というのが、イギリスはドラスティックにゼロになってしまっているけれども、こういったことが2002年のリサイクル推進計画の中に勉強して、参考として、どんなふうに盛り込まれているのだろうかなということに非常に興味を持ちました。この場でなくてもいいですが、その辺ご確認されて、我が国の役に立つといいなと思いました。
 以上です。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 細田委員、どうぞ。

○細田委員 資料1-2の、今ご指摘のあった例えば4ページに、どういうものが捨てられているかが書いてあって、そのまた後のほうの資料にも、だいたい何が捨てられるか詳細が書いてあるんですけれども、この各年次別に捨てられたもの、下水汚泥、産廃等々、ブレークダウンして、このブレークダウンした和がこの廃棄している量に等しくなるような、そういうデータがあるのかどうなのかを聞きたいというのが第1点。
 第2点目は、もう1つは地域によってどのようなところからそれが排出されているか。それが把握されているかが第2点です。なぜこの質問を申しますと、これを管理するためには当然ファクトファインディングが必要だと思いますので、その辺のバックデータがあるかどうかということのご確認でございます。
 よろしくお願いします。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 では、天野委員、どうぞ。

○天野委員 1つは質問、1つはコメントですが、まず海洋投入処分量の最小化の検討というのが1-2の18ページに書いてありまして、内容が2つほど書いてあるんですが、先ほどから例に挙がっておりますように、英国がゼロにしているわけですね。ですから、最小化というのがゼロまで持っていくという意味の最小化であれば、私は大変結構だと思いますけれども、何か制約条件か何かつけておいて、そのもとで最小化すればいいということであればゼロにならないわけです。ですから、この最小化というのがどういう意味で書かれているのかというのが1つ。
 それから、コメントのほうは、予防原則とか、汚染者負担というんですか、支払いというんですか、汚染者支払い原則、こういうのが必要になってくるわけですが、こういった国際条約を批准する際に、個々にそういうものがあるから我が国もそれに従うというやり方をするのか、あるいは国内で基本的にそういう原則で関係するところがやっているということがあって、1つ1つそれに対応しなくてもいいような方策をとるのが私は本来だと思うのですが、どうも我が国ではなかなかそうなっていないように思いますが、その辺は国際条約対応型ではなくて国内法の中で、そういう2つの原則をきちっとつくるようにしていただきたい。これはコメントでございます。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 それでは、コメントについてはコメントとして承っておきます。最後の点については、環境基本法、環境基本計画の精神から言えば当然そうだと私も理解をしておりますので、その辺はむしろ報告の書き方の中の表現ぶりの問題ではないかなという気もいたしますが、貴重なコメントとして承っておきます。
 それから、平尾委員のご質問というよりも、これもコメントのような気がしますが、もしお答えの可能性があれば平尾委員のご発言、それから細田委員からのご質問、天野委員の最初のご質問について、お答えください。

○荒井環境保全対策課長 それでは、まず平尾委員のご質問からお答えします。まず建設リサイクル推進計画2002でございますが、こちらの詳細につきましては次回報告をさせていただきたいと思います。ただ、ご指摘をいただきました各国の状況をご覧いただきましても、浚渫物につきましては、各国とも今後とも継続をして海洋投入をせざるを得ないということでございますけれども、下水汚泥、それから産業廃棄物等につきましては、今後削減をしていく方向にございます。
 魚類残渣等につきましても、一応条約上は投棄をすることは可能ということでございますけれども、各国とも努力をしていることが数字に表れているというふうに理解をしています。
 それから、2番目の細かいブレークダウンのデータということでございますけれども、産業廃棄物の中身につきましては、11ページのほうに、例えば日本の場合ですと、非常に細かい報告をしてございます。この報告自体は条約によって求められているものでございまして、各国が国としての報告書を提出いたしまして、それを科学技術委員会というのがございますが、そちらで審査をしたものが締約国会議におきまして、公文書として報告をされるという仕組みになってございます。ただ、ご指摘がございましたように、あるいは専門委員会の場でも議論になりましたが、未報告というような部分も多々あるということでございまして、これにつきましては今後とも条約事務局等を通じまして、情報収集をしていきたいと思ってございます。
 それから、細かい各国のどのような地域で出ているかというところまでは報告には入っておりませんので、なかなか各国の中の地域別の内訳等というのは、把握が難しいと思います。

○浅野部会長 質問の趣旨は日本の場合ということです。

○荒井環境保全対策課長 日本の場合は把握をしてございます。日本の場合は、例えば浚渫土等につきましても、どこから出てくるというのは全部把握してございます。専門委員会におきましても、各省庁からヒアリングをいたしまして、その辺の説明を受けてございます。
 それから、天野委員のご質問がございました、最小化をどこまで進めるかということでございますが、条約では、ゼロにするというところまでは求められておりませんで、プロセスを変えたり、あるいは処理方法を変えるということによりまして、海洋投入処分量をできるだけ少なくしているかというその努力の点というのが、実際には許可の際の判断材料の1つになるということでございます。
 それからあと、予防原則、PPPでございますけれども、報告書の1-2の7ページでございますけれども、我が国の基本的な考え方ということで、陸上処分の原則、海洋投入処分禁止の継続、海洋投入処分量の削減ということで、削減のところでいわゆる予防原則的な考え方を従来から締約国会議では表明をしているところでございます。  以上でございます。

○浅野部会長 よろしゅうございましょうか。
 大塚委員、何かコメントありますか。専門委員のお1人です。

○大塚委員 ちょっと突然のご指名ですが、一般的な話で、今のご議論と関係なくてもよろしいですか。

○浅野部会長 特にここで強調したいことがあればということです。

○大塚委員 特に強調させていただきたいのは、廃火薬類について、国の中で、警察庁とか自衛隊とか、いろんなところでご協力なさっていただいていると思いますが、割と責任の押し付け合いのようなことになる可能性がございます。この問題は治安維持のところも含めて、非常に重要な問題だと思いますので、警察とか自衛隊も含めて十分な仕組みをつくっていただきたいというふうに考えております。
 以上でございます。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 それでは、この後パブリックコメントにかけまして、次回の部会で再度お諮りをするということにしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。清水委員長には、どうぞ次の部会までの対応等、よろしくお願い申し上げます。
 では、次に地球温暖化に関する国際的対応等について、事務局から説明をお願いいたします。

○牧谷国際対策室長 次に、国際対策室長の牧谷でございますが、資料2の気候変動問題に関する今後の国際的な対応の基本的な考え方について(案)というものでございます。前回9月25日の審議会におきまして、1回目の審議をいただいたものでございます。
 これに対して、7名の委員からご意見をちょうだいしております。これを参考2-1につけてございます。
 今回の資料2は、これらを踏まえまして、必要な修正を加えたというものでございます。変更のあったところを中心に、ポイントだけ説明をさせていただきます。
 まず、表紙でございますが、タイトルでございますけれども、この基本的な考え方という部分を付け加えまして、この報告書の趣旨を明確にいたしました。
 次に、目次の2番、次期枠組みを検討する上での基本的な考え方というところですが、ここは、前回は6つのカテゴリーあわせをしてございました。今回この(3)地球規模の参加というところを独立させました。前回は(2)の中に書いてあったものでございますけれども、趣旨を明確化させ、重要性が高いということで、独立をさせたということでございます。
 それではお開きをいただきまして、1ページ。次期枠組みに関する検討の趣旨でございます。ここは特段の変更はございません。最初にロシアの批准ということで、もうすぐ京都議定書発効というところに近づいているので、国内外の気運が高まっているというところから始めまして、IPCCでの議論、それから、先のインドで開かれましたCOP8での議論を3つ目の○に書いております。
 めくっていただきまして、デリー宣言を例示しつつ、国内での取組、外務省での取組、環境省での取組を紹介しております。こういった状況で、国内外においての次期枠組みのついての検討の活発化ということを指摘しております。こういった背景を踏まえましての今回の検討をお願いするということを書いております。
 それでは、4ページをお開きいただきたいと思います。まず基本的な考え方の1つ目でございますが、京都議定書の発効及び約束達成に向けた取組ということで、まず第1になすべきことは、京都議定書の発効と達成に向けた努力ということでございます。2つ目の○に新たに付け加えておりますが、途上国全体の排出量が先進国全体の排出量を上回るということが予測されております。これは参考資料の2-3にも付けてありますように、こういったことが予測されておりまして、途上国参加の必要性ということが指摘されております。これをどうするんだという点について、途上国の参加を得るためには、まず先進国が約束達成に向けた取組をすること、それから、エネルギー効率化などによって経済的利益を生み出すことを実証するということが途上国参加を後押しするという点を、委員の意見をもとに追加しております。
 次に、今後の国際交渉においてはというところでございますが、5ページの3行目から。今後の議論をリードするためには、排出削減の実績をあげることが必要であり、このために大綱に従った対策を着実に実施することが前提であるという点を追加しております。
 次に、(2)気候変動枠組条約の究極目的の達成に向けた絶え間ない前進。ここでは、四角の中、基本的な考え方でございますけれども、ここで濃度の安定化ということが第2条にありますが、その水準をいつ達成するかというタイムフレームについても触れることが重要というご指摘がございました。
 こういうことで、2条の目的達成に向けて絶え間なく前進し、環境保全の実効性を確保することが重要というのが2番目のポイントでございます。
 1つ目の○の1行目から3行目で、現在188か国が締結しているということで、既にこの問題に対する国際的な取組の基盤となっている点を追加しております。
 次に、2つ目の○ですが、この環境保全上の実効性の確保に向けて進めていくことが必要であるわけですが、6ページをお開きをいただきまして、こうした対策を講ずるにあたって、各国の削減努力や投入資源が効率よく活用されるという観点が重要であるというご指摘を踏まえて追加しています。
 次から始まる3つの○はいずれも追加でございまして、1つ目の○では、科学的知見の不確実性にかかる問題でございます。IPCCの努力によりまして、未だ不確実性があるとはいってもそれは減少しているということでございまして、こういったIPCCの認識を各国が共有することが重要であるという点でございます。
 次の○では、こういった不確実性があるけれども、これを理由に対策を延期してはならないこと、これは条約3条1項にありますいわゆる予防原則でございますが、これを引きながら、目標に向けて、多くのパスがある中で、この問題の深刻さ、あるいは不可逆性に鑑みれば、対策を先延ばしすることなく進めるべきであるという指摘です。
 最後の○は、将来世代との衡平性に関する問題に関して、現代世代の排出が原因となって、将来世代が甚大な損害をこうむるということは衡平ではないということを指摘しております。
 次に、(3)の地球規模の参加におきましては、先ほど申しましたように、(2)の絶え間ない前進の中にあったわけですが、これを独立させました。環境保全の実効性の確保の観点から、地球規模での参加が必要であるという点でございます。
 1つ目、2つ目の○では、特に米国等について書いてございます。米国に対しまして、京都議定書への参加を粘り強く働きかけること。それから、次期約束期間においては、米国等が参加した枠組みが必要である点を指摘しております。
 米国では、現在政府レベル、州レベル、民間レベル、それぞれのレベルで、いろいろな取組が進行中で、それを紹介しています。
 次に、途上国については、現在の京都議定書では、途上国の数値目標はないわけですが、今後の増加量を考慮すれば、途上国も次期枠組みには何らかの形で参加をすべきであるという先進国の主張があり、これに対して途上国からは、まずは先進国の努力が必要であるという指摘がございます。こうしたいわば不信感が存在しているわけですが、これに対して、信頼醸成を図っていく必要があること。このためには、共通だが差異のある責任原則や各国の能力に応じて、先進国が率先して気候変動問題に対処するという原則。こういう考え方にしたがって、先進国がまず具体的な進展を示すこと、条約に定められた技術移転等の途上国支援を進めていくということがまず重要であるという指摘をしてございます。
 めくっていただきまして8ページ目。同時に途上国も、条約における義務を果たす必要があるという点を追加いたしました。それから、適応対策も重要であるという点を指摘しています。
 途上国の参加を検討するにあたって、これを定量的・客観的な分析に基づいて、ボトムアップ的に検討していくというアプローチが現実的かつ促進的である点を指摘してございます。
 次の○では、持続可能な開発について、途上国の基本的なニーズを踏まえることが重要であるということ。それから、気候変動政策と、持続可能な開発の統合の重要性及び、それに対する先進国の支援を指摘しております。
 次に、10ページ目にまいります。共通だが差異のある責任原則のもとでの衡平性の確保の原則のもとで、先進国と途上国、先進国間、それから途上国間、この3つの観点の衡平性を確保すべしということを書いております。
 2つ目の○で、先進国と途上国、次の○で、先進国間の衡平性、4つ目の○で、途上国間の衡平性という点を論じております。ここは特段変更してございません。
 途上国間の衡平性については、10ページの一番上ですが、特に各国の排出総量の考慮も重要である点を追加してございます。
 次に、5番目の考え方といたしまして、これまでの国際交渉の合意に立脚した交渉ということでございます。これまで長い期間を経まして、さまざまな合意を積み重ねてきたわけでございまして、これに立脚することが必要という指摘であります。
 1つ目の○から2つ目の○にかけて、94年の条約発効、それからそこでのレビューを経て、さらなる対策が必要であるということになっていった国際交渉の経緯を書いております。12ページに行って、COP1からCOP3に至る事実関係を書いております。
 こうしたこれまでの各種合意に基づいて、さらに排出量取引システムや報告審査制度といった具体の取組も進行中であります。こうした共通基盤の上に次期枠組みを検討していくことが効率的かつ現実的であるということでございます。
 次に14ページ。多様な主体が参加しつつ、国家を中心とした国際合意プロセスが必要であるという点でございます。地球温暖化の問題は、国際連合の枠組みのもとでの検討を行っていることから、最終的な解決の責任は国家が負うものであるという点を1つ目で指摘しております。
 2つ目では、国際合意の実効性を確保する点では、国家の他に市民、企業等のマルチステークホルダーの参加の重要性を指摘しております。
 最後ですが、15ページ、7番の環境と経済の好循環を目指した変革でございます。基本的な考え方の3行目ですが、この好循環の意味を明確化するために、環境と経済がそれぞれ質の向上につながっていく。すなわち、単なる静的な意味でバランスさせるということではなくて、動的な意味での好循環を目指した変革である点を明確化する趣旨で追加しております。
 このような変革の中での技術の重要性と、長期的な視野に立った技術開発及び既存技術の普及の重要性を指摘しております。
 ○の1つ目は、冒頭、人類がもたらした地球規模の最大の影響の1つである点を追加しております。
 次の○では、環境と経済の好循環の転換を図る社会構造の変革を指摘し、これが途上国の参加にもつながるというのが3つ目の○の趣旨でございます。
 16ページですが、こういった好循環が実現する社会においては、ビジネスチャンスが新たに生み出されるという側面もあること、さらに、技術の役割を考えると、長期的な技術革新、実用段階にある既存技術の普及、既存技術の組み合わせやシステム化などを組み合わせるということを指摘しております。
 次に、さらに具体的にこれをどうやっていくかという点が次の○でございまして、導入補助などの政策手段も考えられますし、また政府が将来の方向性を明確に示すことも重要であることを指摘しております。
 最後、おわりにというところを追加してございます。冒頭の、今年いろいろ観測された現象、日本での現象、欧州等での現象を記述しております。さらには、こうした異常気象が大規模かつ高頻度で発生し、被害をもたらすことを指摘しております。IPCCでも同様の記述があります。
 それから、例えば550ppmといった安定化濃度レベルにおいても一定程度の気温上昇が予測されております。
 次のパラグラフでは、予防原則を引用しつつ、我々に残された時間は少ないことを認識すべきであるとしております。
 最後ですが、こういった点を踏まえて、今後の国際交渉に臨むことを期待したいということで報告書を結んでおります。
 以上が資料2でございます。
 その他の参考資料ですが、2-2に、IPCCの最新の科学的知見をまとめております。2-3では排出の現状と将来。2-4では、9月の審議会でお配りした冊子をもう少しわかりやすく解説をしたものです。2-5において、モスクワで開かれました世界気候変動会議での結果報告です。参考資料3は、ASEMの環境大臣の結果でございます。
 以上でございます。

○浅野部会長 どうもありがとうございました。大変要領よくご説明をいただきましたので、約1時間ご議論をいただく時間がございます。できましたら、これは中間的なとりまとめということでまとめていきたいと考えております。詳細についてはさらに検討を続けるという所存でございますが、COP9に向けて、我々としても何らかの意見を中間的にはまとめる必要があると考えております。本日はご質問というよりもむしろご意見を積極的にお出しいただければと存じます。
 この本日のペーパーは、大変貴重なご意見を何人もの委員からいただきまして、それをほぼ盛り込んだ修正のバージョンだと理解しておりますが、どうぞ、ご意見をお出しにならなかった委員の方も含めてご意見をいただきたいと思います。
 それでは、大変恐縮でございますが、ご発言をご希望の委員は、例によって名札をあらかじめお立ていただけますでしょうか。よろしゅうございましょうか。時間がありましたら、お立てになっていない方にもご指名をいたしますが、とりあえずこのぐらいの方がご発言をご希望であることをご認識の上でご発言をいただければと存じます。
 それでは、佐和委員から順番にご発言をお願いしたいと存じます。佐和委員、お願いいたします。

○佐和委員 まず国語的な誤りですけれども、6ページの一番最後の○のところ、「現代世代」、「将来世代」と書いてありますね。これはやっぱり「現在世代」ですね。それが一つ。
 それから、そのすぐ上のところ、これは意見といいますかコメントですけれども、「条約の規定に従って今から確実に対策を講ずることが必要であり、画期的な技術を追求する余り、対応を先延ばしにすることは望ましくない」ということが、これは非常にある意味デリケートな内容になっているわけですね。例えば、私はアメリカが京都議定書から離脱したということを非常に好意的に解釈すれば、要するに5年間、5年間というコミットメントピリオドを短期的に続けていくということが、結局長期的な20年、30年かかるような技術開発というものに対してネガティブな効果があるのではないかと、つまりここで言っている画期的な技術を追求することを妨げるのではないかと。つまり20年たって画期的な技術が出てくれば、むしろその方が問題解決にはより効果的であるというふうな考え方が、やっぱりアメリカの一部にあると思うんですね。だから京都議定書から離脱した1つの隠れた理由だと。余り言われていないけれども、私の推測ですけれども。ですから、そういうところをちょっと一応念頭に置いていただけたらと思います。
 それから8ページ、ここの一番最後のところで、枠組みに参加する途上国について、米国等や途上国、枠組みに参加するインセンティブ、枠組みに参加しない国に対するディスインセンティブはそれぞれ何か。これちょっと枠組みに参加するインセンティブは何なのか。あるいは参加していない国に参加してもらうようにするのがインセンティブなんですね。参加しない国に対するディスインセンティブって、これ何かちょっと言葉的にもおかしいんですね。だから結局、私は枠組みに参加するインセンティブは何なのかというと、結局、エミッショントレーディングにおいて、排出権の価格が相当高い値段が仮につくとすれば、途上国はキャップをかぶせてくださいと言うと思うんですね。つまり緩めのキャップをかぶせてください。そして、その余ったエミッションの排出量を輸出すると。そういうことで、それが経済的なインセンティブになると思うので、もちろんきついキャップをかぶるのはごめんだということになるでしょうけれども、だけれども緩めのキャップをかぶせて、それで排出権取引ということが1つのインセンティブになって、取引市場への参加ということ、それで参加してもらう。そして徐々にキャップをきつく締めていくというようなことが対応として考えられるのではないかと。
 それから15ページのところで、この下に書かれていることは結構なんですけれども、この基本的な考え方のところで、そうした変革において重要な役割の一つを果たすのが技術であり云々と書いてありますね。これは全くそのとおりなんですけれども、その下の方を見ると、社会の構造改革とか書いていますね。ですから、これこれ普及が必要であるといってそこでとまるのではなくて、加えてとか、同時にとか社会システムの変革というんでしょうか、どういう表現でもいいですけれども、社会システムを組みかえるということも必要だということもこの四角の中に書き入れるべきだと思います。下に書かれている内容からしてですね。
 以上です。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 大塚委員。

○大塚委員 基本的に方向性としてこれで賛成でございますが、12ページの最後のあたりに関係することですけれども、今後の国際的な枠組みについてのいろいろな議論が既に展開されてきておりますけれども、やはり一番基本として考えられるのは、今までのコンセンサスができてきている国際交渉の結果ではないかというふうに考えております。
 今から全部ひっくり返して全く新しいことを考えるということは全く不可能ではないとは思っておりますが、従来やってきたことを基礎にして修正なりを加えていくというのが効率的であるというふうに思いますので、ここにも書いてあることは私が意見で申し上げたこととも関係しておりますが、国際合意ができてきた今までの共通基盤というのを基にして、その上に検討を加えていくべきではないかというふうに考えております。
 それから、もう1点でございますが、これもこの中の全体にかかわるような問題でございますけれども、少なくとも気候変動枠組条約というのはアメリカも批准しておりますので、非常に大きな基盤となるというふうに考えておりますけれども、気候変動枠組条約の2条というのは、今後、気候系に対する危険な人為的影響を防止する水準で、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させるということを言っておりますが、それはいつでもいいということでは全然なくて、生態系が気候変動に自然に適応し、食糧の生産が脅かされずかつ経済開発が持続可能な対応で進行できるような期間内に達成されるべきだというふうに言っておりますので、こういう期間内に達成されるべきだというふうなことについて既に合意があるということは十分に認識すべきですし、そういうことを国際的に認識させるように環境省としても是非努力していただきたいというふうに考えております。
 以上でございます。

○浅野部会長 天野委員、どうぞ。

○天野委員 今、ちょうど大塚委員が触れられたのですが、6ページですね。ここでは第3次評価報告書のことが書いてありまして、それを共有しなければいけないということですね。現在、第4次評価報告書の検討が始まっておりまして、この中で、前のページに書いてありました温室効果ガスの安定化という究極の目的を満たす状況に達すことということがありますが、具体的に科学的な知見でそれぞれの条件を満たすのがどのレベルで、どの期間内に達成するかという検討をしようということが重要な課題として挙がっております。ですから、そういうふうな点で、単に第3次評価報告書の知見を共有するということだけではなくて、今後進むそういった知見を高めるような努力を各国がしなければいけませんし、それにふさわしいような政策対応をとるべきだというようなこともちょっとお書きいただければいいのではないかというふうに思います。
 それから2つ目ですが、15ページの環境と経済の好循環を目指した変革、これは先ほど佐和委員も言われましたけれども、ここでは要するに技術革新というようなことが非常に強調されていて、その技術の開発と普及ということを強調されて、その付随的といいますか、ちょっと補足的に、そういった技術開発、技術普及を促進するような社会をつくろうというふうな書き方になっていると思うんですけれども、いろいろな海外なんかの意見を見ておりますと、非常に重要な点として、市場というのが環境保全への十分なインセンティブを与えるような仕組みには全然なっていないので、それを変えていくような変革というか、イノベーションも必要であると。ですから、技術革新と並んで組織とか制度の革新というのを促進しなければいけないという意見が非常に多いわけです。そういう意味では、ここでちょっと補足的に書かれている社会への転換あたりを、技術革新と並べて重要な方向として書いていただければというふうに思います。
 以上です。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 浅岡委員、どうぞ。

○浅岡委員 私も基本的にここでご指摘いただいていることは同じように考えているところが基本にありますけれども、二、三点気になるところを申し上げますと、1つは米国の問題もあるとともに、途上国に対してどう考えるのかという記述であります。米国に参加をもちろん促さないといけないとともに、途上国にも将来的な協力というのはもちろん必要でありますけれども、途上国が議論に前向きになっていっていただくことが米国に対するまたインパクトにもなるというふうな点から考えますと、ちょっと気になることを申し上げます。
 基本的に7ページで、認識として途上国と先進国との間に不信感が存在していると。今後の信頼醸成のためにはと、先進国に応援が必要だというふうにしまして、さらに8ページの最初の○のところで、途上国等の現実の対応というのを具体的に見ながら、現実的、促進的な方法ということが必要だと。ここの点まではよろしいかと思うのですが、そこから10ページにいきまして、具体的にどうするかという途上国の問題ということになりましたときに、最初の○で「先進国のみならず、途上国での排出抑制・削減も重要である」ということが重要で、そして11ページの上では、「排出総量も考慮されるべきである」ということにしまして、インドとか、中国は排出量が多いんだから、当然ここで抑制削減のどのあたりまでかよくわからないけれども、というように読みやすくなっているかと思うのですけれども、そのせっかく7ページでいろいろ言ったことと、この10ページ、11ページについての記述に少し飛躍があるように受けとめられないかと思います。途上国はその削減の行動に加わっていくというためのいろいろな仕組みを考えていくということについては、多分いろいろなところになるだろうと思うんですけれども、枠組みとか約束とかというふうなところを、先進国がどれだけのことをするのかということについてのかかわりの中で出てくる問題が、非常に並列的にもっと出てくるというあたりは、もう少し工夫をして書いておかないと不信感を日本なんかが助長したり、増幅するような提案をしたというふうにとられてしまうことにならないかと思います。
 その逆に、10ページの3つ目の○のところを見ますと、「先進国間にも」というところで、排出量、対策の実績等に伴う費用効果の違いがあることから衡平性といいますと、日本はそんなに負担を負わないんですよと言いたいのではないかというふうに見えないだろうかと思います。確かに、こういう対策の実績に伴う費用効果ということで、言わんとするところというのも1つの要因ではありますでしょうけれども、現排出量の割合、アメリカよりは小さいではないかとかというのもあるかもしれませんが、もっと日本のことだけ、あるいは日本だけ主張することは困難だということを余り露骨に見えない記述、もっと幅広く本当に衡平の観点から盛り込んだということを工夫しておいた方が、批判を受けなくていいのではないかと思います。
 それから5ページのところで、先ほど天野委員から言われましたところで、どの期間に達成するのかというところ、時間枠というのも重要で、確かにそこが絶え間なくという表現を加えたというように事務局から説明があったかと思いますが、時間枠も重要なのですけれども、この計画の目標達成に向けて一番基本的なところとしては、第一約束期間の目標では足りず、さらなる削減が必要なのだということも大事、ということもこの前提としてはっきりさせておいた方がよろしいのではないかと思います。
 以上です。

○浅野部会長 桝本委員。

○桝本委員 まず、このお伺いしたい点も含めて、ご指摘があった11ページの「排出総量も考慮されるべきである」、この意味を是非お聞かせいただきたい。仮にこの排出総量というものが、発展途上国がこれから総量が増えるから、その増えたものを総量で規制をするというような考えがもしあるとしたら、全体のトーンからしてちょっと矛盾をしているのではないかという感じがするだけに、是非そこを解明していただきたい。
 それから、7ページの基本的な考え方の中で、「米国等や途上国も参加する枠組みを構築することが必要である」と、こういうふうに非常に明解に言っていらっしゃいます。賛成です。この場合に、11ページ(5)、「次期枠組みの交渉もこれらの国際的取組や合意の上に立脚する必要がある」と、このことと、アメリカの参加を要請するということが、私から言わせれば矛盾するのではないか。この間に、気候変動枠組条約は別といたしまして、京都議定書については、言うまでもなくアメリカの離脱という大きな出来事がありました。主要メンバーの1人であるアメリカが離脱をしたということは、議定書のありようそのものがそこから問題であるということを意味しているわけで、そのこともこの国際的取組の中に含めるのであれば私は異論はありませんが、そのことを考えずに、ただ従来の経緯だけからそれで上手にやりましょうという趣旨が、この次期枠組みの交渉もこれらの国際的取組や合意の上に立脚するというふうにおっしゃっているのであればそれはいかがなものか。アメリカを再度何らかの形で土俵に引き戻すということであれば、むしろこの国際的取組や合意の上に立脚しないでいかない限りアメリカは乗っかってこないかもわからない。その可能性をしっかり踏まえる必要が1つはあると思いますし、ここでおっしゃっている国際的取組や合意の上に立脚する云々は、アメリカの離脱をどう考えてこういう表現をお書きになっているのか、そこをちょっと教えていただきたい。
 それから12ページですが、12ページの○、真ん中よりちょっと上ですけれども、「全世界の共有財産として効率的に温暖化対策を進める基盤ができ上がりつつある」。これは果たしてそうだろうか。ヨーロッパと日本を中心にする現在の京都議定書の主要メンバーの中ではそのとおりだと思いますが、共通認識が増えてはいるけれども、基盤ができ上がりつつあるというよりも、むしろ違いがはっきりしてきているという見方すらできるのではないだろうかというふうに私は思います。
 それから、「国際合意により形成されつつある共通基盤の上に」、ここも同じような趣旨でアメリカをどう評価するのか、冒頭にここで表現されているとおり、アメリカと発展途上国が参加する枠組みを構築することが必要ということを基本に据える限り、この共通基盤というものをもう一度見直す必要がやっぱりあるのではないだろうかという問題提起をさせていただきたいと思います。
 それから14ページの(6)ですが、これは非常に大事なことをおっしゃっているわけですが、かねがねこの環境問題は、国際的な政治経済の場で1つのイシューでありまして、重要なイシューでありますけれども、ほかにいろいろなイシューがあります。
 この場、つまり中央環境審議会のこの部会が必ずしも適切とは思いませんけれども、私は国益、日本のありようということを考えれば、必ずしも日本だけがいいという意味で申しておりませんけれども、国際政治学者とか、そういう他部門の人たちの意見がこの環境報告書に大いに入ってくる必要がある。COPでの協議と、既にこれが環境だけではなくて国際的な、いわば地政学的な交渉の場であるということははっきり言う人もいるわけで、もうだれも否定できない現実になってきております。
 したがって、この環境イシューは、いわば国際政治力学の中の一イシューになってきていると、そのことをどういうふうに考えるか。是非そのことを、この中環審の場で議論がないとしても、どこかしかるべき国の大きなレベルでの検討という意味で、その要素でのこの環境交渉の考え方を評価するという、ほかからのもうちょっと大きい場面からの評価の必要性もできればうたっていただきたいというふうに存じます。
 以上です。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 それでは、横山委員。

○横山委員 前回の議論に参加しなかったんですけれども、私は、アメリカが離脱する中で、京都議定書の枠組みは今後どうなるかという点に対する心配というか、懸念について意見を述べたいと思います。
 例えば、桝本委員も言及しましたが、これまでの国際交渉の上に立脚した交渉ということを素直に読めば、やっぱり京都議定書の中でやっていくんだということだと思います。そういう意味で、私はこの全体に貫かれた趣旨には賛成です。
 しかし、桝本委員も言われていたように、産業界の中では今やポスト京都議定書が語られ、経産省の審議会でも、もう京都議定書なんてだめなんだと、あんなものには頼れないんだというような議論が進んでいると聞いています。そうすると、一方でそうした動きがあるのに、この報告書では全くほとんど京都議定書の枠内でやっていくんだと。それを見た一般の人たちは一体どうなんだろうと、少なくともこの中央環境審議会の報告書が今後出た場合に、京都議定書の枠外なんていうのは全然出てこないわけで、そうした動きが政府あるいは産業界の中で進んでいるという理解が出てこないわけですね。ですから、こういう報告の中でも現状は世界的にこういう動きがあり、日本でも既にこういう動きがあるんだと。しかし、中央環境審議会としては、京都議定書の枠内でやるんだというようなことを述べていただきたいなというふうに思います。
 未来永劫京都議定書の枠内でやるんだと、あるいは京都議定書が一度できたからそれにこだわるんだというつもりは私はありませんけれども、当分の間は、これだけ苦労を重ねて国際的な合意を得てきた京都議定書の枠内でやるんだということが重要だというふうに思います。そのことを一切触れずにやったのでは、それではいつの時点かに突然、京都議定書をやめにするんだというようなことが出てくることを私は非常に懸念しています。正直にこの報告書の中に、やっぱり今どうなっているのか、中環審としてはそういう意見にくみしないとか、そういうことを書いていただきたいなと思います。
 以上です。

○浅野部会長 福川委員。

○福川委員 私、前回参加しなかったので、ちょっとやや前後の議論と離れるかもしれませんが、私は今回の報告書の中で、地球規模の参加ということを独立させたということは1つ評価をしたいと思います。
 今の一番大事なことは、地球規模でどういうふうにこの対策を考えるかということであろうと思いますし、現状で考えれば、そうすると気候変動枠組条約に立ち返って、それをどのように効果ある形の枠組みをつくるかということをもう1回考え直すということでないと、今の情勢はなかなか展開しないのではないかと思っております。
 今、何人かの方が政治の問題をおっしゃいました。ここでは、ロシアがいかにもすぐ批准しそうにも書いてありますけれども、果たしてそんな状況ではなさそうにも思います。これから議会の選挙があったり、大統領選挙があったりしますが、一体そういう政治状況の中でそう簡単にいくかというと私は疑問に思って感じております。それからアメリカの方は、これまでもここの審議会でも何回かアメリカに働きかけるようにというご意見が出ていまして、確かに大臣レベルでお話はなっていらっしゃると思いますが、私はもっと広い意味で、後ろに書いてあるNGOなり何なりで、もっとアメリカの世論を醸成しなければいけないのではないかということを私は申し上げました。今まで見る限り、環境省にしろ、外務省にしろ、あるいは経済産業省にしろ、本当にアメリカの世論を動かすほどの努力をしてきたかというのが余り見えてこないのが大変残念であります。
 現在、アメリカがこの前の京都議定書の直前に決めたアメリカの議会が、要するに発展途上国の参加しないもの、それからアメリカの国益に反するものは一切批准しないという全会一致の議決を変えようという雰囲気は、アメリカの中には全く出てきていないということであります。これから来年の大統領選挙にどういうふうにアメリカの政治が動くかということですけれども、やっぱり少し日本のメンツもあるかもしれませんが、現実の政治の動きがどうなるかを配慮した形でこの気候変動枠組条約に立ち返った仕方を考えないと、言うだけ言ったが何も進まないと、こういうことになりはしないかということを懸念します。そういう点で、桝本委員もおっしゃいましたが、この政治的な要素を考慮した枠組みを考える必要があるというふうに思っております。
 それから2番目に申し上げたいことは、これも出ましたけれども、アメリカと発展途上国の関係をどういうふうに考えるかというところが一つの大きなポイントになると思います。この間をどういうふうにつくるか、おっしゃっていらっしゃる「共通だが差異のある責任の原則」というところを、具体的にどういう意味かという点は抽象的に書いてありますが、これはなかなか難しい。抽象論では発展途上国と米国の間をなかなかつなげないだろうと思うので、ここはどういうことを考えるか、もうちょっと詰めた上で表現を工夫したらいいのではないかというふうに思っております。
 気候変動枠組条約に立ち返るといたしますと、実はこれをやや長期でタイムスパンをどう置くかということですが、それを長期で考えれば、これは相当ディーパーカットにしないとなかなか条約の目標は実現できない。いろいろな計算がありましょうけれども、一部の国の試算では今よりも排出量を60%とか相当深くやらないとできないと、こういうことにもなってまいりました。一体そういうこの知見をどういうふうに蓄積するかということも、もう1回よく立ち返った上で議論をしないとなかなかそういうところの合意ができない。アメリカと発展途上国の間をどう結ぶかということを考え直すことをもう少し考えていく必要があるように思います。
 私は、ここで11ページの国際的合意の中で、国際的な枠組みや合意の上に立脚する必要があるということですが、これは一体、私はどこまで弾力性を持って臨むかというところが大事なことです。今までの京都議定書の中でも確かにいろいろいいものはあるし、京都プロトコルと言われるようなものはあるいは使えることになる。合意ができるかもしれませんが、この規制というような形で考えた場合に、果たして上手く合意ができるかどうかということです。これは一切弾力性がないのかという点が1つ問題になるように思いますので、私はその弾力性の問題という点をある程度考えておく必要があるように思っております。そうでないとなかなか難しいと思います。
 それからもう1点、第4点は、私はこの技術の問題というのをこの中で非常に重視すべきだと思います。佐和委員もアメリカの技術開発のことをおっしゃいましたが、確かにアメリカも技術開発は大変熱心にやっているわけでして、これを何か何らかのきっかけにしてアメリカを引っ張り込むことができないかという気が私はいたします。この発展途上国に対して、私はこの世界の中で、資金の融通もありますが、同時にこの技術移転を発展途上国に加速するというようなメカニズムを何かできないかという気がいたします。それを税制でインセンティブを与えるとか、あるいは知的所有権のあり方をこの環境技術については別のものを考えるか、この技術移転という点を発展途上国についてもっと考えていくというようなことをしていくべきではないかと思っております。
 とりあえず以上です。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 廣野委員。

○廣野委員 今、諸先生方からいろいろコメントがありました。基本的にこの資料2にあります基本的な考え方についてという案の基本的な方向性としては賛成です。
 しかし、横山委員のおっしゃった現実を直視するということ、あるいは福川委員もおっしゃいましたけれども、そういう現実がどういう状況であるかということについて、できるだけ冷静な目で見ていくということが重要で、しかしながら、やはり基本的な考え方についての案にあるような、こういうより積極的な方向でこれをやっていくことが重要かなと、全体を通じて考えております。
 たくさん細かな点でいろいろあるんですが、余り細かな点を申してもしようがないので、二、三ちょっと申し上げておきますが、1つは、このページ数でいうと7ページなんですけれども、地球規模の参加、これはこういう格好で別立てにしたことは大変いいと思うんですが、そこで書いてあるトーンを見ますと、地球規模の参加ということを積極的に表現し、そしてそのためにはどうしたらいいかということであるんですが、地球規模の参加ということになると、どうしても基本的なところは先進国ではアメリカとロシア、あとは途上国だと思いますが、そこで2つに分けて考えますと、その先進国の中でもアメリカの対応ということですが、私、今回GEAという会合に出まして、ちょうどキャピトル東急ホテルで3日間ほどやったんですけれども、このGEAの会合に出てきている、アメリカの方々ともいろいろ話をしたんですが、次の2点、非常に強く彼らが指摘しておりました。
 1点は、ごく最近、カリフォルニア州、それからニューヨーク州、それからペンシルベニア州、非常に人口の多いアメリカの各州の州知事が集まりまして、全部で18州なんですが、18州が集まりまして、アメリカの大統領に対して京都議定書、いわゆるこれを批准するということを強く要請したということですね。これはアメリカの場合には各州の意見というのが非常に強い意見が出てきまして、そういうわけでその州の知事、特に今申しました人口が多いニューヨーク、ペンシルベニア、カリフォルニアというのは、実は来年の大統領選挙にものすごい力を持つ州なんですね。そこの州知事が京都議定書を批准せよということをアメリカの大統領に対して進言したということは、私はこれは非常に強い1つのアメリカの中の大きな変化のあらわれかなというふうに見ております。これが1つ。
 それからもう1つは、そういう方々の意見を聞いていて、大統領選挙はどこが勝つかわかりませんけれども、例えば仮に民主党が勝ったとしても、これは先ほど国際政治の問題が議論ありました。ちょっとその点触れますが、たとえ民主党が勝ったとしても、大統領自体を変えて民主党が京都議定書を批准する方向でいくだろうと。しかし、議会はノーと言うだろうと、そういうことですね。どうも来年の大統領選挙の終わった後、もちろん民主党がなった場合でもですが、議会によるところのノーという力は非常に大きいだろうと。しかし、その議会によるノーという力が大きい中で、何と言ってもアメリカの産業界も、特に化学産業ですね。それからセメントとか自動車とか、こういうところがかなり京都議定書に対してより好意的な方向であると。これはアメリカの全米製造業者協会の方が申しましたけれども、ところが、石油業界の方がなかなかそういう方向に行かないだろうということで、現在のように石油業界がかなり力を持っているアメリカの議会においては、なかなか難しいかなということを彼らはおっしゃっていました。
 いずれにしましても、そういう状況の中で、私はここで余りアメリカの状況が常にマイナスであるという方向で既に決めてしまって、京都議定書はやめようではないかと、あるいはほかの方向へ行こうではないかという考え方は、私はとるべきでないと思っております。そういう現実の問題というのをしっかりともちろん見きわめた上で、では京都議定書をどうやって動かすことによって、最終的にはアメリカの合意を得るかというほうに行くことが重要です。
 それから2番目の点ですが、これは対途上国の問題です。途上国については、この8ページのところに幾つか書いてあるんですが、それを読んでいて、8ページの下から2つ目の○のあるところですが、そこに「持続可能な開発を実現することが重要な課題である」と書いてあって、そのあたり、「途上国では貧困、衛生、教育などの問題に対処し」、これは全く賛成ですね、そのとおりですが、「一方で、気候変動問題への対処はこうした問題の解決にも資する」と書いてあるんですが、同時にその逆もそうなんですね。いわゆる貧困問題とかそういうものを解決すること自身も環境問題の解決に資するという、この逆も真ですので、その点はちゃんとそこにとめておいていただきたいなと。
 それから同時に、先ほどちょっと佐和委員の方から出てきましたけれども、枠組みに参加するインセンティブと枠組みに参加しない国に対するディスインセンティブ、こういう点なんですが、枠組みに参加するインセンティブというのは、いろいろな各委員の中でいろいろ申し上げましたから、私も先生方、例えば今日ご出席でないかもしれませんが、ある委員から、例えばCDMの分野なんていうことも出ておりまして、そういう方向でできるだけ途上国が枠組みに参加するような、そういうインセンティブを設けるのがどうかという、こういうことももちろん私も賛成です。
 そこで、その枠組みに参加しない国に対するディスインセンティブと書いてあるんですが、私はたまたま国連の経済社会理事会の国際開発政策委員会の委員長をやっているんですけれども、そこではたくさんの途上国の苦情なんかが出ているんですが、いろいろ今まで議論していく中で、このディスインセンティブというのは非常に難しいですね。物事を達成するためには、どうしてもインセンティブを与えるところから達成し合い、ディスインセンティブが例えば、これは全然違った問題ですが、ミャンマーに対する民主的なことが行われていないということでミャンマーに対する経済制裁なんていうのは、これはディスインセンティブなのですが、ところがそのディスインセンティブはどの程度効果があったかというと、これは疑問ですね。
 そういう意味で、ディスインセンティブよりインセンティブというものを強調することが必要だと思いますので、ここは是非枠組みに参加するインセンティブをどういうふうにしてやったらいいかというふうにこれを直していただくのが妥当ではないかと。以上、先進国と途上国ということで申し上げました。
 それから最後に、これ読んでいて若干気になる点があって、これは15ページの点なんですが、気になってというか、ここに書いてあることはそのとおりだから、もうちょっと強く言っていいのではないかという点なんですが、それはどういうことかというと、15ページの下から2つ目の○のところにすなわちと書いてありますが、温室効果ガスの排出削減が経済の中に組み込まれ、こうやって経済は統合されていくんだと思いますが、「環境と経済の好循環が実現する社会(脱温暖化社会)への転換を図る社会の構造改革が必要である」。これはそのとおりですが、私はこういう、言ってみればこれは全面的にそういうことをこういうような考え方を世界全体として考えようということでこれは書いてあると思うんですが、この考え方を途上国にもできるだけ当てはめるということが重要で、途上国に対するインセンティブなんていろいろありましたけれども、途上国ということに対する政策の中で、こういう点はもっともっと強調する点が必要ではないか。今IGESという地球環境戦略研究機関の方のプロジェクトで、途上国の環境産業の育成というプロジェクトを今やっているんですが、その中でもいろいろ、特にアジアの国を対象にインド、中国、インドネシア、韓国というのを対象に環境産業の発展、将来の環境産業をどうやって発展させていったらよろしいかということでやっているんですけれども、そういう中で、アメリカとかオランダとか、あるいはイギリスとか、ドイツとか日本のそういう先進国の対途上国政策なんかもいろいろ検討していますが、そういう中でどうもその点が欠けているのではないかなと。先ほど福川委員の方から環境技術の移転ということを申されましたけれども、本当にやればいろいろやることがあるんですね。本当にメニューはたくさんあるんです。だから、そういうメニューをどんどん引き出して、できるだけ途上国自身がそういう環境と経済の好循環ということを本当に認識するような、そういうことを足していただきたいなと、これが今回の新しい基本的な取組というものの1つの重要な課題なのではないかと思います。
 以上、ありがとうございました。

○浅野部会長 ありがとうございます。
 平尾委員、どうぞ。

○平尾委員 相当ご意見が出ましたのでダブるかと思いますが、1つは、(2)のところの絶え間ない前進ということ、これ非常に大事なことでございます。これは総論としてはいいんですが、私は、この絶え間ない前進をするには、相当な技術開発を今後進めていかないとやっていけないのではないかと。そういった意味で、佐和委員のご指摘のとおり、やはりそれをヘジテート(hesitate)するような表現というのはできるだけ避けて、積極的に技術開発をやっていかなければいけないと。それがそもそもが、これからこういう技術開発をして、先進国が一生懸命やるわけですが、それを途上国に適用して、途上国が経済と環境とをバランスのとれた形で成長していくということを後押しする、それを積極的に我が国は主張して途上国も巻き込んでいく。米国を巻き込もうという(3)のところは当然でございます。そのためには、技術開発というのを全面に押し出さなければいけないのではないかといいます。
 その中で、少し気になる表現が5ページ目の一番下のところで、究極目的の達成のために云々とございまして、やや排出総量規制の押しつけといいますか、分担といいますか、そういうニュアンスが出ております。これは京都議定書ができ上がってから以降の国益までずっと見ておりますと、やはり不協和音の種でございまして、国際的合意になるのには、相当この辺のところの表現が抵抗が上がってくるのではなかろうかというふうに思います。これは時間軸と、それから達成するレベルとそれのかね合いで、これからよほど議論を深めていかなければならないことだと思います。
 そういたしますと、では京都議定書というのは一体何だったんだとご指摘がありました。私は、これにつきましては、福川委員の意見と同意見でございまして、国際合意というのは、やはり尊重しなければいけない。これは軽視するわけにはいきません。ただ、その国際合意ができたときの背景というのがございます。背景はころころ変わってまいります。そういった意味で、国際合意というのをどういうふうに弾力的に取り扱っていくのかという視点が大事なのではないかと思います。京都議定書では、京都メカニズムという非常にすばらしいスキームができ上がっております。これなんかはどんどん使っていくべきでありますし、我が国も既に環境問題においては相当進んだ技術を既に総体的に持っているものもございます。そういったものを広く途上国なんかに展開していくという積極的な姿勢を全面に出すべきではないかと思います。
 そういう中でずっと見てみますと、(7)の一番最後に遠慮して書かれているようでございますが、私はむしろこの(7)の環境と経済の好循環を目指したそういう技術開発を重視、あるいは廣野委員がご指摘のとおり、社会構造改革といったことを強く意識して、むしろこれは、私はもっと前にくるフレーズではないかというふうに思っております。
 それから、先ほど桝本委員の方からご指摘がありました14ページ、隣のページ多様な国の云々がございましたけれども、私は、やはりここは同意見でございまして、最初の議論から今日に至るまで、各国が国内政治あるいは国際政治を意識しながらどういう振る舞いをしてきたのかということをもう一度レビューし直してみて、我々の国がどういうふうに国際社会の中で外交していくのかということをもう一度点検する必要があるのではないかと思います。この文章の中にどう入れるかということは離れまして、仕事としてそういうことを考えていかなければいけないのではないかと思います。
 それからもう1点、IPCCのことについて、6ページ目に触れられておりまして、いわゆる不確実性は減少しつつあるという表現がございます。私は、技術屋のはしくれとしまして考えますと、大体仕事というのはいろいろな予見を、検討対象をどんどん広げてまいります。そういたしますと、制度というのはだんだん幅が広がってまいりまして、さらに精度を上げていくというのが技術でございます、科学でございます。したがって、今の段階は、やはりこの地球温暖化に影響を及ぼす因子というものをどんどん広げて議論されておると、検討の幅、結果が、この間の報告書も温度の幅も少し広がっておりますけれども、そういうのが出てまいります。私の知見では、次の4thバージョンでは是非もっと突っ込んでいただいて、精度を上げていただきたいと思いますのは、水の影響でございます。地球は水の惑星でございます。このポテンシャルというのは非常に高いものと思いますが、それは問題だというようなご指摘があるんですが、私、勉強不足かもしれませんが、それについて突っ込んだ因果関係を説いた論文は余り目にしておりません。そういったところを、今度の4thバージョンでは是非力を入れていただかなければ、技術開発のスピードと達成目標を定量化していく上では、これはよほど信頼できるレベルになっておかなければいけないというふうに考えております。
 以上です。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 林委員、どうぞ。

○林委員 私は、前回これが議論されたときにはメンバーではございませんで、若干一般的なことをちょっとまず申し上げたいと思いますが、京都議定書が採択されたとき、それからアメリカが入らないということで、それに伴っていろいろな動きがあったとき私はロンドンの大使館におりまして、電報等で横から見ておったわけですが、そのときの印象というのは、少なくともヨーロッパは義務から完全に逃げきったと、彼らはそう言っています。つまり、東独の石炭、それからイギリスの石炭、これがもうやり放題やっていたわけで、それを転換するだけで放っておいてもそのCO2が減っていくという中で、EUはバブルという概念を持ち出して、全体としてやるんだということで、あと中ではバブルの割り振りで、京都議定書で義務を決めた後、国で違いがありましたけれども、それはあくまでEUの中の話であって、EU全体としては日本にCO2の関係では遅れておった国であって、それは当然国内の要請からして、また競争力を維持するためにやらなければいけない。そこに大きなすき間ができているわけで、そこのところは、EU全体としてはうまく逃げきった。もちろんEUが逃げきったということはやらないということではなくて、ドイツ、イギリスも含めて一生懸命やっていますけれども、義務としてはそういうことになっていると。
 それから、ロシアも私が横から見ていると、これは放っておいてもどんどん減るんだけれども、しかし、排出権取引のためにロシアが入ることになっているわけで、そうするとロシア自体としては何も変わっていないと。そこで義務がかかったのは、アメリカと日本とカナダと。アメリカは離脱して、今本当の意味で上から義務がかかっているのは日本とカナダぐらい、オーストラリアも逃げましてカナダぐらいだと。
 ここで一番重要なのは、地球全体の排出量をどうやって減らすかということであって、特定の国がどんなに頑張るということではないはずなので、そこは少し発想の転換をしなければいけないという気がするんです。そういう意味からこのペーパーを見ますと、地球規模の参加、それから衡平性の原則、これを非常にはっきり打ち出していただいていいと思うんですけれども、そういう観点からすると、アメリカ、それから先ほどから議論されています開発途上国ということになるわけで、アメリカはアメリカ自体に問題があると同時に、開発途上国が入っていないというのが大きな問題で、開発途上国の問題については、やはり先ほどから議論にありますように、もちろん先進国と同じ義務を課するわけにはいきませんけれども、それなりに努力する、してもらいたいと。ただ、努力しろといっても無理なので、先ほどからあります技術移転というものが本当に大きな役割を果たすわけで、税制による民間の協力、それからODAを使った協力とか、それからさっき佐和委員のほうからキャップを課してそれを得ることによるインセンティブという話もありましたけれども、技術協力というのも大きなインセンティブです。ディスインセンティブ、これは検討するとありますけれども、それをはっきりさせる必要があるというふうに私は書いたほうがいいと思うんです。入った国については、技術協力をやるとか、排出権を与えるとか、ディスインセンティブというのは、廣野委員がおっしゃったように、制裁ではなくて、もらえないということがディスインセンティブであって、やはり入ったほうが得だというような形にして入ってもらうと。基本的にはLDCといいましても、大きいのは中国とインドで、私もインド、中国のことはよく知りませんけれども、それぞれの国内において今のあれではちょっと国内的にも困ると。国内の狭い上での環境の問題と、それから競争力を維持していくためにもこれは何とかしないといけないという感じが出ているので、そういうものを助長することによって、大きな国を取り込んでいくことは可能ではないかと思いますし、その努力はすべきだと。そのことでやはり技術協力だと思います。
 アメリカの問題は、いろいろLDCの問題もありますが、自分自身の問題もあるわけなので、京都議定書に戻るかどうかというのはいろいろ議論があると思いますけれども、これは私は戻らないと思います。戻るという努力はするわけですけれども、それがあるかもしれないという前提で物事を進めるのは、これはそういうのはないので、仮に民主党の人が出てきて、仮にヒラリー・クリントンやゴアが大統領になっても、戻ることは国内的にできないと思います。
 そういう意味において、先ほどから議論になっています京都議定書、一定の枠組み内では言ってもいいと思うんですが、京都議定書というものを基礎とするということは、これは始めからノンスターターというような気がしますので、これは、意味はよくわかるわけですけれども、厳密な意味で、京都議定書でやるんだということであれば、アメリカは入ってこなくていいということなので、それはグローバルな上において排出量を減らすということ、本当の点から言えば全く目的に反しているということになるわけで、ここの書き方というのは、基本的に変更するのがよいのではないかという気がします。
 私は、やらなくていいと言っているのではなくて、全体として、地球全体として減らすにはどうしたらいいかということなので、そのためには、やはりアメリカが入ってこられるようなもの、それから主要なLDCが入ってこられるようなもの。そのためには、全体としての義務が少し緩くなっても入ってこられるようなものにしたほうが、結果として地球全体で見たらプラスではないかという気がするものですから、これは申し上げたわけです。
 それからちょっと一つ、ペーパーなんですけれども、4ページの下から京都議定書の約束を守らなくてよいという意味では毛頭なくて、これはきっちり約束した以上は守らなければいけないということですけれども、京都議定書の約束を達成した国の発言力が高まり、それから、そうでない国は交渉力が低下すると書いてあるので、これは若干情緒的なあれなんですが、発言力というのは排出量によって決まるのであって、小さい国は発言力なんか何もないんですね。ですから、ちゃんとやらなきゃいけませんけれども、ちゃんとやったら発言力があるんだということはそうではないので、その辺は誤解のないようにした方がいいと思います。

○浅野部会長 西岡委員、どうぞ。

○西岡委員 3点ございます。  まず1点ですけれども、アジアについてです。私が提出した文書にも書いております。まだアジアにまでターゲットする段階ではないと思いますけれども、日本がかなりアジアでいろいろなことをやっているという実績を踏まえ、あるいはこれからもできる可能性があるということを踏まえた書きぶりがどこかであってもいいかなというのが第1点です。
 第2点は適応政策です。今現在、途上国と話し合いをするときに、適応政策についてある程度しっかりした方向を持っておく必要があるのではないかと思っております。気候変動が時期的にいろいろな意味で遅れがありますが、その性質自身はよくわかっているわけですから、それを踏まえた適応政策がいるかと思います。
 例えば、この報告書にある衡平性のところに適応政策の意味について余り書いてありません。けれども、もし抑制政策が失敗しますと、その影響はまず最初に途上国にあらわれてくる。そして、その被害に途上国の人が汗をかいて対応するということですから、抑制策をとる場合と適応策だけでいく場合では大きな不衡平さが出てくる。こういうことも踏まえておいてほしいということが2つ目であります。
 3点目ですけれども、京都議定書をどう考えるかというこの報告書の非常に基本なところでございますけれども、余り白黒の議論ではなくてやっていただきたい。言葉としましては、京都議定書かそうではないかということではなくて、ここにはそういうトーンで書かれていると思いますけれども、京都議定書の上に乗っかって、そのべースを生かして次をどう使っていくかということが必要ではないか。現在、言い方として、ビルディングオン京都であるとか、あるいは京都プラスであるとかいう言葉があります。我々はやることはやりましょう、そして、そういう実績を踏まえて次の枠組みをどう考えていったらいいのかという基本的な態度をとっています。そうしますと、この報告書のトーンも矛盾のないように、京都議定書をやるけれども、京都議定書を否定するといった意味の書きぶりではなくて、その上にどう乗っかっていくかというようなことをベースにした書き方がいいのではないかなというふうに思います。
 以上です。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 大聖委員。

○大聖委員 これまで天野委員、それから福川委員、平尾委員のご発言をサポートする意味でコメントを申し上げたいと思います。
 これらの委員の皆さんおっしゃいましたように、技術革新がもたらすインパクトというのは非常に大きいと思いますけれども、とりわけ日本は技術立国でやってきておりますので、そういう貢献が非常に大きいだろうと思いますけれども、その一方で、日本の企業というのは生き残りをかけた環境技術にかかわる国際競争をやっていますので、そういったものをただで提供するというのは、非常に痛ましい損失なわけです。ですから、そういった技術的な知的所有権も含めたものをどういうふうに途上国に対して提供していくかというメカニズムというのは、私非常に大事だというふうに思います。
 それからもう1つは、ビジネスチャンスという言葉がこの中にありましたけれども、これ一歩間違えますと、そういったような構造的な問題になるのではないかというふうに思います。
 それからもう1つは、私ある学会の国際理事というのをやっているんですけれども、そういうふうな点から見ますと、地域、途上国と先進国の間の技術革新の格差というのは、今後ますます開くのではないかなという気がいたします。これは非常に南北の技術にかかわる構造的な格差ではないかと思うんですけれども、そういったものがますます開いていくときに技術革新によって地球環境問題を解決しようとしたときに、大きな矛盾が出てくると思います。
 ですから、そういった日本はやはり技術立国で食べていかなければいけないというやはりねらいと、それから技術を売り込んでそれをまた活用して地球全体の環境を改善していくという取組と、それから途上国もやはり科学技術というものをやっぱりキャッチアップしていくような、なにがしかの構造というのが絶対に必要だと思います。そういったものをどういうふうに盛り込むかというのは、非常に私は重要だと思っております。
 以上です。

○浅野部会長 瀬田委員、どうぞ。

○瀬田委員 幾つかございますが、まず最初に言葉の問題から入りたいと思います。
 一番最後のところに、「予防的措置」という言葉がございます。一方、先ほどからの口頭説明では、「予防原則」という言葉が何度か使われました。今までリオ宣言あるいはヨハネスブルグサミット等の場では、予防原則、つまりプレコーショナリープリンシプルという言葉は使われていないと思います。更に、予防的措置という言葉を使うときには、「費用対効果」という言葉が入っていたはずです。ですから、ここのところは口頭でもきちんと的確な言葉を使っていただきたいと思います。
 それから第2番目に、第2ステップの移行の段階になりますと、当然中国の存在というのが今以上に、はるかに大きなものになってまいります。この京都プロトコル自身のポジションでは、全体でロシアが入っても30%ぐらいしかカバーしないという状況の中で考えまして、この中国とか、インドという国をどう認識するのかということがここでは必ずしもはっきり触れられていないと思います。入っていない国としてアメリカの名前が出ていますが、その中国という国を発展途上国の中に入れるのか、あるいはそうではなくて、もっと大きな存在として入れるのかということをここで明確に書いていただきたいというのが2番目です。
 それから3番目は、結果としてこの議論が進んでいったときに、いろいろな制約あるいは大きな負担を日本の国民は受けることになります。私も国民の一人として、やはり環境上の負担を次の世代がかぶるということに対して、我々としては非常にセンシティブになるべきだと考えます。経済的負担をそのまま全部、いわば日本が過大な形で受けるという形を次の世代に課していくということが本当にいいんだろうかと思います。そのためには、やはりシミュレーション、つまりいろいろな制約を進めていったときに、国民生活、国民全体としては一体どうなっていくのだというシミュレーションを国民に対して示していくべきではないでしょうか。早い話日本が、非常に厳しい目標設定を求められ、そしてそれを達成できなかったときに、もっと大きなペナルティーを受けるということになったときには、日本の将来の国民生活は大変に厳しいものになっていきます。そういったことを含めた全体としての負担、我々がこれからコミットしようとしていることに対して、それはもしコミットすれば国民1人1人の負担がどうなるかというシミュレーションをして、国民にきちんと示すべきだと思います。
 それから、佐和委員初め何人かの方からお話がございました環境と経済の両立というものの基本には、技術革新が重要なのではなくて前提なんですね。私はそう思うのです。その技術革新というものは、そんな簡単に2年、3年ということでできる──できるものはあるかもしれませんし、部分的にはできるかもしれませんけれども、こういった大きな課題というものを乗り越えていくための技術革新というのは、これはもともといつまでにできるという約束はなかなかできない。それでも目標として頑張るというのが技術革新だと思います。
 したがいまして、非常にある意味では不確定なものを前提しているのが、我々の目標なのだ、我々のコミットメントはそれに日本の将来をかけようとしているのだ、ということを是非中に明記していただきたいと思います。
 それから、もう1つ最後に、国益論の話が何回か出ました。私も化学産業の立場でありますけれども、アメリカの会社の人たちと話をしますと、彼らは彼らで大変な努力をしているのですね。しかし、国としては京都プロトコルから離脱するというような動きをしているわけです。日本もその努力は、今までに随分やってきましたし、現実に大きな効果を上げてきました。しかし、前に議論がありましたように、これからやれる対策というのは、どんどんコストがかかる方向になっていくと思います。そういうことをよく認識した上で、我々の課題というものを考えていく必要があるのではないかと思います。  以上です。

○浅野部会長 それでは、もうあと残り時間ごくわずかですが、塩田委員と須藤委員。すみません、12時までですが。

○塩田委員 地球規模で世界の各国が科学技術の開発を通じて地球温暖化対策を推進していくのが大事だと私も思いますが、これに関連して、温室効果ガスを減らすという観点から、海洋の研究、例えば大気と海の相互作用などにもっと重点をおくべきであると思います。
 今日、1つ前の議題で廃棄物の海洋投入処分のあり方について論議されましたが、海洋の温室効果ガスの吸収量は大きいという説もあるそうですので、国際的な枠組も活用して、海洋で温室効果ガスを吸収する、あるいは固定化して温室効果ガスを固めて海洋に沈めるというような研究をもっと推進すべきであると考えます。
 第2点。リオの合意あるいは京都合意は、いずれも10年あるいは15年前のデータに基づいた取り決めだと思います。そのときの状況がどうであったかということ、それから今10年、15年たってどのように推移して、今何が起こっているのかということを知るため、最小限、各国の温室効果ガスの排出量、それの推移だけでもいつも見ながら地球温暖化対策を議論をすることにしたら良いと思います。
 第3点。気候変動がいろいろ新聞報道なりによっては報じられていますけれども、その評価についてはIPCCの第3次評価報告書のように、世界の大多数の学者のコンセンサスがある事象については、世界の気候に大きな変化が起こっている事象としてわが国をはじめ世界の人々にもっと強力にアピールしたら良いと思います。

○浅野部会長 須藤委員。

○須藤委員 全体としては結構かと思いますが、1つだけ、(6)の多様な主体の参加の部分でございますが、最近、県ももちろんのこと市町村でのこういう取組が熱心になってまいりまして、かなり温度差はあるものの、多様な主体の中に等ではなくて、やはりここには政府のほか地方自治体あるいは県や市町村でもよろしいんですが、そういうものをここできちっと例示しておいていただいたほうがよろしいのではないかと、こう思います。
 以上です。

○浅野部会長 ありがとうございました。  大変恐縮でございます。10分ほど延長させていただいてよろしいでしょうか。
 それでは三橋委員と織田委員と、すみません、3分以内でまとめていただければと思います。
あと事務局の方からのご説明もありますので、あと3人だけで。

○三橋委員 1分以内で言います。意見を提出したので黙っていたんだけれども、ちょっと要望なんですけれども、気候変動問題に対する日本の考え方をこのペーパーではまとめようというので、アメリカがどうだとか、ロシアの批准がちょっとおくれているのでにんまりするようなことではやっぱりよくないと思うんだね。やっぱり京都議定書を批准して、我が日本としては温暖化問題に対してこういうような姿勢でこれから取組、アメリカを説得し、ロシアを説得するというような形でペーパーをつくっていく。したがって、そのペーパーは非常にバランスのとれたものというよりも、日本の姿勢を全面に出すものでなくてはいけないんだよね。今までの議論を聞いていると、勝った負けたみたいな部分とか、義務を果たすとか果たさないというような、そんな次元のペーパーなんかつくる必要はないと思うんだよね。したがって、私、要望しておきたいのは、日本として温暖化問題に対してこういうような姿勢で臨むんだよと、そういうことで各国にもできる限りの働きかけをするし、日本もできることはやるんだよというような大前提を忘れてもらっては困るよということをちょっと指摘させていただきたいと思います。

○浅野部会長 ありがとうございます。
 織田委員。

○織田委員 6番目の多様な主体の参加のところですけれども、やはりこれまでずっとこの問題を進めてきた市民社会の力というのはひどく大きいと思うんですよね。ここのタイトルも参加しつつ国家を中心とした国際合意プロセスとなっておりますが、特に国家を中心ということを強調しなくても、むしろ多様な主体の参加を保証する国際合意プロセスというふうに、是非そういうふうな形で市民社会やその他のマルチステークホルダーの参加のことを強調していただきたいということが1点。
 それからもう1つは、とは言いましても企業や市民社会のキャパシティというのはかなり違いがあります。ですから、環境教育や何かを通じてもっと市民社会のキャパシティビルディングをするということを含めていただきたいこと。そして、途上国の市民社会の参加も非常に重要だと思いますので、途上国に対する技術移転だけではなくて、市民社会のキャパシティビルディングも一緒にやるということが全体としての社会構造の変化につながるのではないかというふうに考えますので、是非その辺を含めていただきたいと思います。

○浅野部会長 飯田委員。

○飯田(哲)委員 私も意見を提出しましたので控えていたんですが、総論としては賛成ですが、今、意見を伺っていて、それぞれ両議論があるのでこれはもうちょっと詰めていかないといけないというのがよくわかりましたが、1点だけ出たコメントとして、環境と経済のところで、天野委員が言われた市場を追加する、それから佐和委員の言われた社会構造という形、これ非常に賛成で、さらに社会構造の中に入るんですけれども、やはりエネルギーシステムの転換というのがやっぱり入る必要がある、これが最も根源ですので、コメントの中にもありましたけれども、地球レベルで再生可能エネルギーの技術を高めていくというのが非常に大きな流れになっていますので、これはこの下の○の中ででも是非触れていただきたいと。
 あと細かい点2点ですが、8ページに持続可能な開発というのは、途上国の話だけに矮小化されているんですが、これは非常に概念を矮小化しすぎているような気がしますが、むしろこれこそが先進国も含めた一番最初の目標に来るのではないかという気がします。
 それから、先ほど予防原則のことについて意見を言われた方がいらっしゃいます。これは、先ほどの海洋投棄のときにも出てきましたが、これはまた別途、ヨハネスブルクの話はあくまであれはアメリカ的考え方でゆがめられたのであって、日本政府の環境政策としては予防原則をどう扱うのかというのは、きちっともうちょっと詰めて考える必要があると。ここでは議論できませんけれどもという話です。
 以上です。

○浅野部会長 松野委員。

○松野委員 私はちょっと違った視点で、基本的にこれは気候を変えないと、気候変動枠組条約が気候に危険な影響を及ぼさないようにということですから、危険とは何かというのは必ずしも余りはっきりしていなくて、基本的には、非常に危険ないしはちょっと破局的とか、そういうようなことが暗黙のうちに入っていると思います。それがどんなものであるかというのは、我々が研究しなければいけない問題ですから、ともかく相当な変化ですね。今2倍ぐらいで安定化できればよしというのがほとんどの人だと思いますが、2倍といったらもう何度か気温が上がって、それから今まで人類が経験したことのない新しい環境に入るわけですから、これは決して気候を変えないグループではなくて、この問題というのは、変化する気候にどういうふうに対応していくのかという問題であって、決して気候の変化をとめるというよりはコントロールのもとに気候を変化させていく、それには、我々はどういう行動を為すべきかという観点で物事を考えていく。それはもちろん適応策というのは入ってということがあると思いますが、そちらでのウエートというのはもっとしっかり持つべきではないかと思います。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 それでは……。

○浅岡委員 議論はございますが、1つだけ。林委員から排出量の多い国の意見で決まるというような意見をされたことについて、これまで確かに国際慣行の中にそういう要素が強かったかもしれないけれども、この問題はそうではない仕組みを国連をベースにしながらやろうという努力であるという中で、全体を我々考えなければいけないと思います。

○浅野部会長 では、事務局のほうからもしコメントがあれば。手短に。

○牧谷国際対策室長 大変重要かつ内容の深い意見を大変ありがとうございました。今ここですべてお答えすることはとても不可能でございますので、基本的にはご意見を踏まえて次回の部会で議論させていただきたいと思いますが、1点、クラリフィケーションということで、11ページの排出総量の考慮という点について、桝本委員からいただきましたが、しばしば排出量の衡平性という場合に、例えば1人あたりの排出量のみが強調される場合があるわけですが、国家が人口であるとか、地理的条件であるとか、もろもろのものを引き受けている責任主体でありますから、そういった点では、総量も考慮されるべきであるという意味でございます。
 それから、これは大きな宿題ですが、今後の国際交渉を基盤とするという点と、それからアメリカの参加をどうするかという点。これは今後の非常に大きな課題であろうと思っております。福川委員からもご指摘がありましたように、いかに弾力性を持ってやるかというところではないかというふうに考えておりますので、また次回の部会でさらなる議論をお願いしたいと思います。いずれにしても、これは今後長い国際交渉、それからそれに合わせた審議会での議論、これらの中での重要なテーマであると理解しております。
 以上でございます。

○浅野部会長 それでは、大変申しわけございません。いつもこういう調子でやっていて申しわけないんですが、次回はともかく30分ほど、12時半まで、ただしお弁当は出せないということでしたが、時間を何とか確保しておりますけれども、今日出されましたご意見、内容的には完全に一致できる部分もありますし、それからご見解にはかなりの相違があるという部分もあります。とりあえずは、私どもが中間的とりまとめは何とかまとめたいと考えておりますので、個々のご意見をお出しになった委員の方には事前にまたご相談を申し上げる等の方法を講じながら、次回にはとりまとめの方向に持っていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。本日は各委員ご発言につきまして、いちいち私のほうからもコメントを申し上げる時間がございませんので、次回出しますペーパーの中で部会長としてのある種の考え方を反映させたペーパーをお示ししたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、次回は11月12日を予定しておりまして、これの中間とりまとめをCOP9に何とか間に合わせたいということでございます。それから、12月18日には、先ほどの海洋投棄に関しての検討をしたいと思いますので、どうぞ皆さんのご出席をよろしくお願いいたします。
 それでは、本日は大変ご熱心にご発言いただきましてありがとうございました。なお、今日は発言を封ずる気は毛頭なかったんですが、お手をお挙げにならなかった方でご意見がございましたら、いつまでにいただければいいですか。今日は金曜日ですので、来週の水曜日ぐらい。

○牧谷国際対策室長 そうですね。次回12日ということで、実質的には10日ぐらいしかないので、できれば来週の半ば、水曜あたりにいただけると大変ありがたいと思います。

○浅野部会長 水曜日ぐらいまでにもしご意見をいただければ、それも何とか取り入れるべく努力をいたしますので、よろしくお願いいたします。
 では、どうも本日はありがとうございました。

午後12時10分閉会