中央環境審議会地球環境部会(第3回)議事録

1.日 時

平成13年9月21日(金)10:00~12:00

2.場 所

東条インペリアルパレス5F 曙の間

3.出席者

(会長)森嶌 昭夫
(部会長)浅野 直人
(委員)青木 保之  浅岡 美恵
飯田 哲也  飯田 浩史
大塚 直  猿田 勝美
佐和 隆光  塩田 澄夫
清水 誠  須藤 隆一
瀬田 重敏  高橋 一生
武内 和彦  富永 健
西岡 秀三  波多野 敬雄
福川 伸次  桝井 成夫
桝本 晃章  松川 隆志
松野 太郎  三橋 規宏
宮本 一  村上 忠行
甕 滋  安原 正
横山 裕道  和気 洋子

4.議事次第

  1. 京都議定書をめぐる最近の動向について
  2. 平成11年度温室効果ガス排出量等について
  3. 中間取りまとめパブリックコメントの結果について
  4. 国内制度の基本的考え方及び今後の審議の進め方について
  5. イギリス調査について
  6. その他

5.配布資料

資料1-1「国内制度小委員会」「目標達成シナリオ小委員会」
中間取りまとめへのパブリックコメントの結果(ポイント)
資料1-2「国内制度小委員会」「目標達成シナリオ小委員会」
中間取りまとめへのパブリックコメントの結果概要
資料2国内制度の基本的考え方について
資料3今後の審議の進め方について
資料4イギリス調査について
参考資料1京都議定書をめぐる最近の動向について
参考資料2-11999年度(平成11年度)温室効果ガス排出量について
参考資料2-2地球温暖化対策推進大綱の進捗状況及び今後の取り組みの重点
参考資料2-3地球温暖化対策の強力な推進について(申し合わせ)
参考資料3「国内制度小委員会」「目標達成シナリオ小委員会」中間取りまとめ
参考資料44つの社会・経済シナリオについて-温室効果ガス排出量削減シナリオ策定調査報告書
参考資料5地球温暖化防止のための税の論点報告書
参考資料6米国における気候変動問題に対する取り組み動向及びEUにおける京都議定書目標と温室効果ガス排出の状況
参考資料7諸外国における地球温暖化対策のための国内制度の検討状況
参考資料8地球温暖化問題への我が国の対応について(経団連提出資料)

6.議 事

午前10時00分開会

○浅野部会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会の第3回会合を開催いたします。
 審議に先立ちまして、部会の委員につきまして、寺門委員から桝本委員への変更がありましたので、ご報告いたします。
 では、まず初めに本日の配付資料の確認を事務局からお願いいたします。

○事務局 それでは、資料の確認をさせていただきます。
 資料1-1、両小委員会中間取りまとめへのパブリックコメントの結果(ポイント)。資料1-2、両小委員会中間取りまとめへのパブリックコメントの結果概要。資料2、国内制度の基本的考え方について。資料3、今後の審議の進め方について。資料4、イギリス調査について。参考資料1、京都議定書をめぐる最近の動向について。参考資料2-1、1999年度(平成11年度)温室効果ガス排出量について。参考資料2-2、地球温暖化対策推進大綱の進捗状況及び今後の取り組みの重点。参考資料2-3、地球温暖化対策の強力な推進について(申し合わせ)。参考資料3、委員のみの配付となっておりますが、両小委員会中間取りまとめ。参考資料4、こちらも委員のみの配付となっておりますが、4つの社会・経済シナリオについての報告書。参考資料5、こちらも委員のみの配付となっておりますが、地球温暖化防止のための税の論点報告書。参考資料6、米国における気候変動問題に対する取り組み動向及びEUにおける京都議定書目標と温室効果ガス排出の状況。参考資料7、こちらも委員のみの配付となっておりますが、諸外国における地球温暖化対策のための国内制度の検討状況。参考資料8、地球温暖化問題への我が国の対応について、経団連からの提出資料。
 以上でございます。資料の不足等がございましたら、事務局までお申しつけください。

○浅野部会長 それでは、委員限りの資料もございますが、資料に不足がございましたら、お申し出いただきたいと思います。
 本日は、地球温暖化問題に関しまして今後の審議の進め方等についてご審議いただく予定でございまして、時間としては2時間、12時までの審議を予定しておりますので、どうぞ議事進行にご協力をお願いいたします。
 次に、京都議定書をめぐる最近の動向について事務局から報告をお願いいたします。

○地球環境審議官補佐官 お手元の資料の参考資料1、「京都議定書をめぐる最近の動向について」という資料に基づきましてご説明申し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず、この資料の第1のところでございますが、7月の下旬にボンにおきましてCOP6再開会合が開催されまして、既に報道などでご承知かと思いますが、その結果を政府代表団としてまとめたもので、ボンの会合は7月16日から2週間開催されまして、とりわけ19日の夕方から日曜日を最終ゴールとして、閣僚レベルの参加によりましてハイレベルセグメントが開催されました。1日延長となりまして、7月23日、月曜日の、正午過ぎに閣僚会合における合意、これは「ボン合意」と呼ばれておりますが、京都議定書の中核的要素に関する基本的合意というものが成立しました。具体的には、吸収源でありますとかメカニズム、遵守及び途上国問題、こういった大きな項目について政治的に決定すべき点について、大くくりに決定を見たところでございます。
 そういうことを踏まえて、京都議定書の2002年発効に向けたモーメンタムが高まったといえるわけでございます。我が国の立場からしましても、吸収源について所要の吸収量が確保され、また京都メカニズムについても、定量的な上限を設けるといったような議論もございましたが、そういった上限の回避をすることができたということでございます。
 「ボン合意」というのは大くくりなものですから、これを法的文書という形で詰める作業が残されておったわけでございます。ボン会議の後半の3日間を使いまして、法的文書の詰めを急いだわけでございます。その中で、途上国問題につきましては法的文書の整備が整いました。そのほかの課題については、大きなところで前進がございましたが、まだ依然として残されたところもございます。具体的には、吸収源についてはロシアの取り扱い、また遵守、京都メカニズムなどについては引き続き法的文書に置きかえるという作業が残されております。10月の後半、29日からモロッコのマラケシュで開催されますところのCOP7におきまして全体を取りまとめ、採択するという方向になっております。
 政府代表団としての評価でございますが、3つございます。
 まず第1は、先ほども言いましたが、2002年発効を目指し具体的な合意を目指そうということでございまして、吸収源等も含めまして我が国の主張が盛り込まれる形での合意ができたということでございます。
 2点目につきましては、先ほど申し上げましたとおり、具体的な法的文書への翻訳というような作業が残っておりますので、COP7までに最終合意を達成すべく引き続き全力を尽くすと同時に、京都議定書の目標を達成するための国内制度に総力で取り組んでいくことが重要でございます。
 最後の3点目は、米国の問題でございます。すべての国が一つのルールのもとで行動することが重要という立場から、引き続き米国に対して働きかけをやっていくということでございます。後で申し上げますが、日米ハイレベル協議、閣僚レベルの協議をする場が設けられておりますが、こういったものを通じまして引き続き最大限努力していくことを考えております。
 次に、右側の2ページ目でございますが、「ボン合意」の中身の概要であります。
 途上国支援としましては、条約に基づきまして2つの基金が設置されるということが合意されております。特別気候変動基金及び最貧国基金というものであります。それから、議定書に基づく基金といたしまして、京都議定書適応基金というものを設置するということが合意されました。具体的な中身などについては詳細をこれから詰めるプロセスが必要ですが、こういったことについて合意されました。
 それから、拠出の規模につきましては、昨年来より議論がありましたプロンク議長の提案であった年間10億ドルが提示された経緯がございましたが、最終的には「ボン合意」の中で規模を明示するということには至りませんでした。先進各国が政治宣言の形で、これからも積極的に取り組んでいくというような形で整理がついたところであります。
 2番目の京都メカニズムにつきましては、補足性の問題という点では、先ほど申し上げました定量的な制限は設けず、定性的に京都議定書上の表現を使うなどコンセンサスを得られる形になりました。
 それから、排出量取引の売り過ぎ防止措置ということで、先進締約国は排出枠の一定量を国内で保有するという観点から、排出枠の90%または直近の排出量のうちどちらか低い方に相当する排出枠を常に留保するということになりました。
 原子力の扱いにつきましては、共同実施・CDM、こういったところで原子力によりまして生じた排出枠といったものを目標達成に利用することを控える、ということで最終的にセットされたところであります。
 吸収源につきましては、国ごとに上限を設けるということを我が国は主張してきたところでございますが、そういう仕組みとなりまして、後で別表がございますが、国ごとに吸収量をどこまでカウントできるかというキャップを設けることになりました。また、途上国とのプロジェクトを通じたCDMシンクの対象でありますが、新規植林及び再植林に限って認める、ただし排出枠の1%までという上限つきでございますが、こういうような形でまとまったところであります。
 遵守につきましては、目標を達成できなかった場合、1.3倍に割り増した上で次期排出枠から差し引く。
 それから遵守委員会、これは遵守の判定をしたり、いろんな権限行使をするということですが、促進部と執行部と2つありますが、それぞれ10名ということで、途上国と先進国の委員構成の問題をめぐりましていろいろ議論がございました。最終的には、地域の代表各1名、非附属書I国、附属書I国がそれぞれ2名ずつ、プラス小島しょ国の代表1名ということで10名になっております。委員のカウントの仕方によりますが、基本的には途上国6、先進国4となる見込みでございます。ただ、いろんな意思決定については、先進国の意見が反映できるという形での取り決めになっております。
 なお、最終的に法的拘束力を導入するか否かというような性格づけにつきましては、先送りということになっております。議定書が発効した後に開催される議定書の締約国第1回会合で決定するということになっておるところであります。
 次に、4ページに参りますが、7月23日の「ボン合意」を受けまして内閣総理大臣から談話が発表されております。要点は3つありまして、基本的な要素に関する基本的な合意を歓迎、2点目は、先ほどからの繰り返しになりますが、これからの作業を詰めるということで、2002年発効を目指して国際的合意が得られるよう全力を尽くすとともに国内制度に総力で取り組む、最後にアメリカに対する働きかけということを言っております。
 5ページ、6ページには、先ほど申し上げました「ボン合意」の概要の少し細かいところが書いてございます。重複を避ける形で申し上げますと、5ページの途上国支援でありますと、資金供与という点で先ほど申し上げました3つの基金、それぞれどういう内容かについて書いてございます。
 6ページの方は、京都メカニズムの補足性、定性的な形でと申し上げましたが、表現ぶりについてはsignificant elementというような書き方になっています。
 吸収源につきましても、先ほど申し上げたとおりでありまして、各国ごとの上限を設けるということで、別表がついておりますので、ご参考にしてください。土地利用のシンクの扱いについても先ほど申し上げたとおりでございます。
 7ページに参ります。これも先ほど申し上げたとおりかと思います。
 最後の8ページは、先ほど申し上げました吸収量の各国ごとの上限値になっております。ロシアの扱いがペンディングになっていると申し上げましたが、「ボン合意」ではロシアも入った形で合意がなされたわけでございますが、その決定の後にロシアの方から、留保する、また数字をさらに検討したいということでございました。そういうことで、法的文書の取り決めについてはまだ継続された形になっておりまして、具体的には事務局が中に入りまして、ロシアからの具体的な提案を踏まえながら再度検討するというようなことになろうかと思いますが、大枠につきましてはボン合意を踏まえた法的文書のテキストがほぼ固まっております。そういう意味で、ロシアの扱いを除いてほかは吸収源について固まっているということだと思います。
 続きまして、9ページから日米ハイレベル協議につきましてご説明したいと思います。
 これは、6月30日の小泉首相とブッシュ大統領の会談の結果、気候問題について共通する部分もあるので、ハイレベルで協議していこうという合意に基づきまして、7月13日、川口大臣がボン会合に向かうその途上米国に立ち寄りまして、先方、2番にございますが、ハバード経済諮問委員会委員長、コノートン環境評議会議長、ドブリアンスキー国務次官、ライス補佐官等政府高官と直接この協議を行ったところでございます。
 4にありますとおり、日米首脳会議を踏まえたものでございまして、共通の行動の領域を探求することが目的でございまして、率直な意見交換が行われたところであります。
 我が国から申し上げた点は、5にございますが、その結果として、次のページの6でありますが、具体的に次の3つのテーマについてさらに事務レベルで検討していこうということで、気候変動に係る科学技術、途上国の能力育成、市場メカニズムの活用という3つのテーマがアイデンティファイされまして、これらについて事務レベルで協議をしましょうということになったわけでございます。
 双方の代表者がそれぞれ決定されておりまして、次回のハイレベル会合を9月末から10月初めを目途に開催しようということで閣僚レベルの会合を終えておるわけでございます。この日程については、諸般の事情もありでまだ確定はしておりませんが、今、日米間で調整しているところでございます。
 最後に、11ページでありますが、川口大臣、先般9月4日からニューヨーク、ワシントンを訪問いたしまして、米国に対する働きかけをハイレベルで行ってまいった次第でございます。政府の高官に加えまして、議会のリーダーと思われますヘーゲル議員及びリーバーマン議員とも会談してきたところであります。
 3のところに日本の立場、日本としての主張という点では、2002年発効を目指しましてCOP7におきまして最終合意を達成すべく引き続き全力を尽くす、そして国内制度に総力で取り組む、それから、すべての国が一つのルールのもとで行動するということで引き続き努力していく点を主張してまいりました。
 できるだけCOP7におきまして最終合意を目指す、こういうモーメンタムが高まっているという状況下で、米国の提案を生かすためにCOP7より前に具体的な提案を出すことが重要である点を指摘したところであります。
 米国内での閣僚レベルの政策レビュー、ボン会合の動きを受けて議会も政府に対し活発に動くようになってきておりまして、閣僚レベルの政策レビューも集中的にやっておるということでございます。しかしながら、具体的な提案の内容、時期について、米国内の諸事情を踏まえて、どのような判断が今後なされるのかは具体的ではございません。先般のインシデントを受けまして米国内もいろんな混乱があるようでございますが、現在、現地の大使館を通じまして、また直接にもいろんなルートで、米国での状況も踏まえつつ今後対応してまいりたいと思っております。
 以上が私の方からのご説明でございます。

○浅野部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいま説明いただきましたことについてご質問、ご意見がございましたら、承ります。どなたからでも結構ですが、いかがでしょうか。
 どうぞ、波多野委員。

○波多野委員 一番最後に言及していただきましたけれども、今回のテロ事件の影響という問題ですが、これは日本で考えているのとはけた外れにアメリカでは重大視されていて、私が関係している会議でも、みんな延期です。もちろん国連総会も延期、ほかの話なんかやる雰囲気はアメリカの国内では全くないということで、9月末とか10月初めとかという話は当然流れちゃうと思います。
 しかし、環境の問題というのは非常に長期的な問題なので、テロの事件に影響を受けて日本のアメリカに対する説得努力がなくなるとか、緩くなるとかというような種類のものではないけれども、例えば総理とブッシュとの間でこの話を出すとか、そういう雰囲気では全くなくなっちゃうと思います。ですから、日本側も、アメリカとの接触についてはタイミング及び内容についてよくご検討いただく必要があるんじゃないかと思います。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 ほかにご意見がおありでしょうか。福川委員。どうぞ。

○福川委員 今の波多野委員のご指摘、私も全く同感でありますが、EUの方はこの事件を踏まえてその後どういうふうになっているか、もしその辺がわかれば教えていただきたいのが1つ。
 それから、9月の資料の中で、「米国は引き続き閣僚レベルでの政策レビューを精力的に進めており、議会及びシンクタンク等においても国際的枠組みに参加するための検討が熱心に行われている」と書いてあるんですが、具体的にどういう情報があって、どういうシンクタンクか、議会なら全部公表されていると思うので、ここにこうお書きになった具体的な内容というか、背景というか、これを教えていただきたい。
 その2つをお願いします。

○浅野部会長 では事務局からお答えをお願いします。

○地球環境審議官補佐官 まず第1のヨーロッパの動きにつきましては、テロ事件を受けた上でどうなったかという点についてはまだ具体的に把握していないという状況ですが、この事件の前、いろんな形で接触した限りにおいては、そういう意味では直接のお答えにならないかもわかりませんが、COP7において「ボン合意」を最終的に法的文書に置きかえるという作業をクリアにする方針である、いろんなレベルでコンタクトした限りではそういうことでございました。今、先生ご指摘の先週の事件を受けた後の具体的な動きについては、情報をとろうとしておるところでございます。
 それから、2点目の議会とかシンクタンクの動きというのは、実際に現地に参りまして、ここに書いてある以外、NGOといいますか、シンクタンクなんかの方と直接川口大臣も接触しております。例えば、政府に影響力のあるシンクタンクなんかは、「ボン合意」を受けてこれからアメリカとしてどういうアクションをとるべきかという話を提案したり、プレスといいますか、新聞に投稿したりというような動きがあるということでございます。また、議会におきましては、外交委員会だったと思いますが、アメリカ政府は国際的交渉により積極的にコミットすべきであるということを委員会として満場一致で決議したり、また国内対策として積極的に取り組みをすべきではないかという法案の準備をしている動きもあるということで、さっきの報告の中では民主党のリーバーマン議員なんかも積極的に動いておりましたが、民主党だけでなくて共和党の議員とも協力しながら活動しているというような報告がございました。
 以上でございます。

○浅野部会長 ほかにご質問、ご意見はありませんか。
 浅岡委員、どうぞ。

○浅岡委員 私、ボン合意ができましたときその場におりましたが、ボン合意ができまして、日本もそこに積極的に参加されたということについてはよかったと思っておりますが、先ほどの説明の中で、吸収源につきまして、日本は所要の吸収量が確保されて、それがよかったというふうに政府としての評価がずっとされておりますが、日本の吸収源の主張、国ごとに上限を設けるというそこに固執されたことによる結果が、報告書の8ページにあるように、どういう基準で吸収量をカウントしていくのか全くわからない、およそ科学的な議論を外れた妥協の道具として吸収源の3項、4項が使われることになった。日本は1,300万トンでありまして、カナダは1,200万トンですけれども、日本は3.9%程度に相当いたしますが、カナダは10%近いものだということ等、今後に大変問題を残してしまったことについて私たちはよく認識しておかなければいけないと思います。
 それからもう一点、交渉の最後の最後まで日本は遵守制度について法的拘束力のある形での遵守に抵抗したこと、最終段階のところで世界の国々に対して、プロンク議長の最終調整案に対して京都議定書の発効に不可欠の国だけが反対している。日本が反対している、だからここの合意ができない、さらに交渉させてほしい、こういうことを言われるもとにもなったものであります。そこまでして日本が頑張って、結局のところ、遵守、不遵守の議決措置の経過についてはCOP/mop1でというふうに修正させたわけですけれども、中身については、例えば未達成分は3割増しで、次期約束期間の排出枠から差し引きということが決まっているわけで、それには合意しているわけですし、それを政治的な拘束力にさせたいと頑張っていかれるとして、差し引かないことがあるということをおっしゃりたいんでしょうか、また排出権取引の一時停止がないかもしれないということを頭に置かれてそういう議論をされているんでしょうか。
 そんなことは国際的に全く通用しない議論でありますし、それが日本の主権を侵すというふうな議論を大上段にされたりしてきたわけです。排出権取引等、アメリカとの間でも京都メカニズムの活用を今後の課題として3項目の中に入れておられるわけですけれども、法的拘束力のないところでこうした仕組みを動かすということは考えられない話だと思いますが、最後のところ、ボン合意に至るまでがそうですし、その後の数日の間も日本はこの点、筋の合わない主張を一国と言っていい状況でなさってきたことについては、よく反省いただいて、COP7及び今後においてまた同じことを蒸し返さないようにしていただきたいというふうにお願いしておきたいと思います。

○浅野部会長 桝本委員、どうぞ。

○桝本委員 寺門委員にかわりまして今回から、桝本と申します、よろしくお願い申し上げます。
 一点お伺い申し上げたいと存じます。京都メカニズムの中の排出量取引、共同実施・CDMでの原子力の扱い、これはもともと京都で決められた大変すばらしいアイデアで、地球温暖化問題が大事であればあるほどあらゆる選択肢を広く活用する。かつて中国のリーダーが言った「白い猫でも黒い猫でもネズミをとる猫はいい猫だ」、これほどの思いで臨むべきだと思うわけです。しかし、それにもかかわらず、残念ながら今回は原子力についてはJI・CDM、排出量についても量的制限が課される。それはそれで一つの考えに基づくものとは思うものの、本来京都で国内対策の補完措置として、すばらしい柔軟的なアイデアが盛り込まれた、そのアイデアにこの2つの制限は基本的なところで反するのではないかというふうに私は考えております。この点についてどうお考えか、ご意見を承りたいと存じます。

○浅野部会長 どうぞ、高橋委員。

○高橋委員 資料の10ページの8、先ほど波多野委員、福川委員がおっしゃった点に関係することですが、私は、今、京都議定書にアメリカをのせるためにも重要な時期だというふうに認識しておりますので、その点に関して一つだけコメント申し上げさせていただきたいと思います。
 私、よくアメリカの友人たちとけんかいたしますが、長い間のけんかを通じて、けんかの自分なりの仁義をはっきりさせてまいりました。それは、やはりアメリカは偉大な国だとな私、常々思うのですが、非常に大きく時にぶれる国であるのはご案内のとおりですが、それに対して国内から非常に大きな反論が必ず出てくるんですね。そういう国だと思いますので、国全体がぶれているときに外からいろいろなコメントを出しても、全然有効な議論ができない。アメリカの国内から批判が出てきたとき、そのコンテクストで外からもそれなりの意見を言うと議論がかみ合ってくるということが通常のパターンだと思います。
 今回の場合、一部、アメリカのブッシュ政権の極めてユニラテラリズムの性格が強いこの半年の外交政策運営に対して自制のようなものがニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストにちらほらと出始めておりますが、その色彩が出てくる。その中には当然のことながら京都プロトコルに対するアメリカの態度なんかも指摘されているわけですが、私は、もう少し待って、それがどういうタイミングかよくわかりませんが、今までのパターンからしますと恐らく11月、12月くらいになるんじゃないかと思いますが、そういう段階で日米の協議をすることが非常に重要なんだろうという感じがいたします。
 タイミングを過ちますと、全体を考え直すという方向が必ず出てくるに違いないのに、それを押しとどめてしまうことになりかねないという感じがいたします。したがいまして、10ページの8番目、9月末から10月初めをめどにというのは、ワンス・アポン・ナ・タイム、こういうことがありましたねということにいたしまして、現在の状況をじっと見る、しかるべきタイミングで素早く日程を決めるということが大事だろうと思います。
 以上です。

○浅野部会長 それでは、まだほかにもご質問、ご意見がおありかもしれませんが、大変恐縮ですが、議題が多数ございますので、とりあえずご質問、ご意見はここまでにさせていただきまして、先ほど桝本委員から原子力の利用、排出取引の枠組み上限についての見解を求められておりますので、それについて事務局からお答えをお願いします。

○地球環境審議官補佐官 まず原子力の扱いのことでございますが、2点目の排出量取引なんかに対する制限などに関しても同じことかと思います。ご案内のとおり、97年12月の京都議定書採択のときにすべて詳細まで詰め切ったわけではなくて、大きな枠について議定書という形で合意がなされた。そのときに、目標値でありますとか、システムについて大きくフレームが固まった。だからこそといってもいいんでしょうけれども、3年以上かかりまして詳細を詰めるプロセスがなされ、まだ残された課題もある。そのプロセスの中で、またご案内のとおりでございますが、98年、ブエノスアイレスで開催されたCOP4におきまして、これからの作業計画、いわば工程表といいましょうか、項目とプロセスをクリアにしまして、「ブエノスアイレス行動計画」で詳細を詰めていきましょうということに合意がなされたわけでありまして、そういったものにのっとっていろんな詳細についての提案が各国からなされました。
 原子力についても、ポジティブリスト、ネガティブリストにあったように、具体的にやってはいけない事業であるとか、積極的にやるべき事業をアイテマイズしたらどうかとか、いろんな議論がある中で、こういう形で最終的に合意がされたというこれまでのプロセスでございます。国内での対策にどうやるかという形ではなくて、国際的なやりとりを行う、また個別事業についての特別の取り決めということでございます。
 また、排出量取引の制限についても、ご案内のとおり、国内対策を中心としてということについては、京都議定書の表現どおり国内努力に対して補足的にやるということで、具体的に定量的な上限を設けるという提案がずっとありましたけれども、そういう形ではなくて、京都議定書のラインに沿った形で整理がされました。
 それから、売り過ぎ防止の話についても、これも長い議論でございましたが、90%とあわせて直近の排出量、どちらか少ない方ということで、大きな意味では、大きく問題にならないのではないかということで、詳細を詰めるプロセスの中でこういうような「ボン合意」に至った経緯もあるということでございます。
 以上でございます。

○浅野部会長 それでは、高橋委員と浅岡委員からのご発言は、ご意見あるいはご示唆ということで事務局の方で受けとめてください。
 次に、7月10日に開催されております地球環境保全に関する関係閣僚会議及び地球温暖化対策推進本部の結果につきまして事務局から報告をお願いいたします。

○地球温暖化対策課長 それでは、参考資料2-1から2-3までにつきまして簡単にご説明を申し上げます。
 まず、参考資料2-1、平成11年度の温室効果ガス排出量、これが本年7月10日に開かれました会議で報告され、了承されたものでございます。
 1ページに総排出量が示されておりますが、6種類のガス、すべて二酸化炭素換算で13億700万トン、これは京都議定書の基準年、基本的には90年でありますが、HFC等3ガスは95年で、基準年の排出量に比べまして約6.8%の増加となっております。また、前年の98年に比べますと約2.1%の増加ということで、図1をごらんいただきますと、96年をピークに98年まで減少していたわけでありますが、99年には若干増加に転じたという概況でございます。
 2ページに参りまして、二炭化炭素のみについて見たものでございますけれども、90年に比べまして、総排出量で9.0%の増加、前年度に比べまして3.2%の増加ということで、6種類のガスの中では二酸化炭素の増加が大きく効いているということでございます。
 ちょっと飛びまして、5ページに二酸化炭素排出量の部門別内訳のグラフがございます。二重の円になっておりますが、内側の円は実際に排出している部門での排出量に着目したもの、外側の円グラフは、発電したことに伴う排出量、これを実際に電力の消費量に応じて最終需要部門に配分したものでございます。内側の円グラフをごらんいただきますと、エネルギー転換部門、産業部門、いずれも3割程度ということで、非常に大きな割合を占めております。外側の円グラフでは、産業部門が約4割、左の運輸部門が約2割、民生・業務と民生・家庭が12~13%ということで、大きな割合を占めております。
 最後の6ページに部門別排出量の推移が示されておりますけれども、産業部門はほぼ横ばいで、若干増ということでありますが、運輸、民生部門、これはいずれも15から23%という非常に大きな伸びを示しておるところでございます。
 恐れ入りますが、3ページに戻っていただきまして、二酸化炭素以外の物質についての概要でございますが、3ページの3.メタンは、90年に比べて11.2%減少ということで、農業部門の減少が大きく効いていると考えられます。
 一酸化二窒素につきましても、90年に比べて20.4%の減少ということで、これは特にアジピン酸という化学物質の製造時に排出されるものが多かったわけでありますが、破壊装置が導入されたことによりまして、工場からの排出が9割程度減少したことが大きく効いております。
 HFC等3種類のガスにつきましては、HFCが2.7%、六フッ化硫黄が50.1%ということで、非常に大きな減少がなされております。いずれもさまざまな要因がありますが、特に六フッ化硫黄では、絶縁用に使われているガスの製造時、また使用時の回収・破壊、こういった処理が進んできているということが大きいと考えられます。
 以上が排出量の結果でございまして、続きまして参考資料2-2をごらんいただきたいと思います。これも7月10日の温暖化対策推進本部で報告され、了承されたもので、大綱の進捗状況と今後の取り組みの重点でございます。かなり分厚いので、これにつきましては概要を参考資料2-2の後に用意しておりますので、これを簡単に目で追っていただきたいと思います。
 この大綱は今から3年前に策定されたものでございまして、その後毎年フォローアップを行っておりまして、今回が3回目ということになります。我が国では、先ほどの国際交渉でのご紹介にもありましたように、議定書の締結がなされ、発効に向けての交渉に取り組んでいると同時に、締結に必要な国内制度にも総力で取り組む必要があるということで、省エネ法の改正、地球温暖化対策推進法の施行といったことを初めとして、さまざまな対策を行ってきたわけでございます。
 主な取り組みとしまして、地球温暖化対策推進法に基づきまして都道府県、市町村での取り組み、実行計画の策定、また活動推進センターの指定等がなされてきております。
 2ページに参りまして、エネルギー需要面の対策として、省エネ法に基づき省エネを進めるべき機器の指定、また省エネを進めるべき工場の拡大、こういったことも進められております。
 中ほどにありますように、二酸化炭素排出の少ない都市・地域構造の形成等のためのさまざまなインフラの整備が行われております。
 また、2ページの一番下にありますように、関係業界の自主行動計画が策定されておりますので、それを各省においてフォローアップを行っているといったこと。
 3ページの一番上、自動車税のグリーン化が平成13年の改正で創設されたということで、これによる低公害車、低燃費車の普及をさらに進めていくということでございます。
 また、エネルギー供給面での対策につきましては、原子力、新エネルギーの導入、あわせてさまざまな対策が実施されました。
 それから、二酸化炭素以外で特筆すべきものとして、HFCの回収・破壊に関しまして、フロン回収破壊法が成立いたしまして、通常のフロンとあわせてHFC冷媒の回収が義務化されましたので、その面での対策が今後さらに進んでいくだろうと期待されております。
 その他吸収源、地球観測体制の強化、国際協力の推進、さらに4ページに参りましてライフスタイルの見直しといったことにつきまして、過去1年間の実施状況、さらに今後基本的にはこういったものを継続し、さらに拡充強化していくという方針が説明され、了承されたところでございます。
 最後に、参考資料2-3は、この会議の際に申し合わせがなされたものでありますが、「地球温暖化対策の強力な推進について」というものでございます。
 COP6再開会合を控えた時期に行われたものでございます。再開会合もさまざまな交渉の困難が予想されたわけでございますけれども、それをもって国内の努力の手を決して緩めるつもりではないという決意を改めて国際社会にも示すという意味も含めて、ここに書いておりますように、国際対策をしっかりやる、強力な推進をするということを政府全体として申し合わせたものでございまして、これに基づいて今後対策を強力に推進していくということになっておるわけでございます。
 以上で議題2の説明を終わらせていただきます。

○浅野部会長 それでは、ただいま報告いただきましたが、これにつきましてご質問、あるいはご意見がございましたらどうぞ。
 飯田委員、どうぞ。

○飯田(哲)委員 今の地球温暖化対策推進大綱について一言。これは今後の審議等にもかかわるのかもしれませんけれども、この中身を見ると、従来から言われていることですが、各省庁がやっていることをある意味で束ねているだけで、ほんとに効果があるのかどうか疑わしいもの、例えば道路の建設とか、これは昔から指摘されていることですが、そういうのがばらばらと積み重ねられたり、それから、先ほど桝本さんが発言されましたが、原子力なんかは必ずしも国民的合意がとれてないのに今後の重点ということで単純に挙げられている、こういったものでほんとにこのまま政府全体の枠組みを進めていっていいのかどうか。
 実態としては各省庁がある意味でかなりばらばらに進んでいっていますし、この先、京都メカニズムなんかも必ずしも全体でつくろうという枠組みでなく、そのあたり中央環境審議会だけでは難しいところがあるんじゃないかと思いますけれども、90年代における当初の地球温暖化防止実施行動計画そのものがなぜ達成できなかったのかという検証とかも含めてきちんとしたチェック・アンド・レビューをやっていくような枠組みでないと、こういう形でぱらっと出るような政府の枠組みでは今後が非常に危ぶまれるんじゃないか。これは意見です。

○浅野部会長 わかりました。今の点はこの審議会の今後の討論の内容ということになると思いますので、ただいまのご意見について特に事務局からお答えは求めません。ただ、一点だけ言えることは、議定書を批准するというときに、国内法の担保措置を講じなければならないわけでありますから、そのような点から、この大綱が担保措置足り得るかどうかということが議論の遡上に上ることだと考えられますし、ご指摘の点は審議会の連絡会議に出席いたしました私も同様に感じておりますので、その方向で議論したいと思います。
 佐和委員、どうぞ。

○佐和委員 私自身は、温暖化対策推進大綱が前提としているビジネス・アズ・ユージュアルというのは、少なくとも今の時点に立ってこれを考える限り、あるいは10年先までの産業構造の変化とか、その他構造的な問題を考慮に入れると、明らかにレベルが高過ぎる、例えば二酸化炭素の排出に関していえば排出量が高目に見積もられ過ぎていると思います。高目に見積もっておいた方がいろんな対策の効果があったということで、むしろ高目に設定しておいた方が望ましいという考え方もあるのかもしれませんが、もうちょっと現実的に、あるいは構造的な変化ということも配慮した上で、もう一遍見直そうということを政府部内ではお考えではないんでしょうか。

○浅野部会長 政府部内ではどうかということですが。

○地球温暖化対策課長 私からお答えさせていただきます。
 政府部内としては、ことしの7月にこの大綱の進捗状況の評価をしたというところで公式的にはとどまっておるわけでありますが、中央環境審議会を初めといたしましてほかの省庁での審議の中でも、今、佐和委員からご指摘のありました将来の見通しがいかにあるべきか、それに対してどういう対策が講じられるべきかということは、検討がそれぞれ進められてきておるところでございます。
 特に中間取りまとめがなされましたシナリオ小委員会でも、BAUも含めた議論をこれまで随分ご審議いただいたところでありますので、我々としては、この大綱のあり方も含めて政府内で見直す上で一つの材料としての検討をしてきているわけでございます。いずれの時期か国内担保措置としてふさわしい政府としての対策のあり方を考えていく時期は来るわけでございますので、私どもとしては、そういったものの準備をこの審議会にお諮り申し上げさせていただいているところでございますので、今後の国際状況の進捗状況を見ながら、そういった事態に備えての検討は進めていくべきものと考えております。

○浅野部会長 というわけでありますので、ぜひ審議会の先生方にはご協力をお願い申し上げたいと思います。
 枡本委員からお手があがっておりますが、次の議題と関連することでもあるのですが、どうしてもこの場面で、ご発言をお求めでしょうか。

○桝本委員 (大綱のチェック・アンド・レビューについては)飯田委員に賛成だということです。

○浅野部会長 わかりました。
 それでは、続きまして、先般、私どもの審議会が出しました国内制度小委員会と目的達成シナリオ小委員会の中間取りまとめにつきましてパブリックコメントを求めておりますが、その結果について事務局から報告をいただきます。

○地球温暖化対策課長 それでは、資料1-1と資料1―2でございます。
 恐縮ですが、まず資料1-2の方からご説明したいと思いますが、ここではそれぞれの小委員会の中間取りまとめの結果概要を書いておりまして、1ページのところでは、シナリオ小委員会の結果でございまして、49件のコメントをいただきました。
 2ページではそれぞれ項目ごとに件数が記されておりまして、3ページ以降、その項目ごとに意見の抜粋が記されております。7ページになりますと、国内制度小委員会、95件というコメントの数でございます。同じように8ページから10ページまで項目別の件数でございまして、11ページからそれぞれの項目に応じました意見の抜粋が記されております。
 そこで、事務局の方では、ポイントを整理しようということで、資料1-1、「パブリックコメントの結果(ポイント)」ということで整理させていただきました。
 まず全体的な話でございますが、地球温暖化問題は100年を見通した長期的な問題であることから、2010年以降も見渡した議論が臨まれるという意見が大変多かったということでございます。
 温室効果ガス税あるいは課徴金については、排出抑制効果、経済、雇用への影響などの観点から十分な検討が必要であるというご指摘の一方、効果が大きく導入が望ましいという意見もございました。
 各主体の排出量の自主管理のための制度でございますが、煩雑で費用のかさむ制度にすると実効性が失われるとの指摘がございますが、排出量の把握は温室効果ガス削減対策の前提であって、直ちに実施すべきとの意見もございました。
 自主行動計画につきましては、着実に成果を上げており、正当に評価すべきとの意見が多くございました。一方、責任の明確化、透明性の確保の観点から協定化や参加団体の拡充など、その見直しを求める意見もございました。
 京都メカニズムの活用についてでございますが、レジストリーの構築など京都メカニズムを活用できる仕組みの整備を求める意見もございました。さらに、京都メカニズムの活用は国内対策に対して補完的である点に留意すべきとの意見もございました。
 それから、先ほどもご指摘がございましたが、地球温暖化対策推進大綱に基づく取り組みにつきましては、特に民生・運輸部門の取り組みが不十分との意見が多く寄せられたほか、大綱そのものの限界と新たな防止政策体系の必要を説く意見も多かったということでございます。
 以上でございます。

○浅野部会長 最後の点は、先ほどのここでのご議論とも共通するご指摘が多数あったという報告でございました。
 それでは、これにつきまして何かご質問、ご意見はございませんでしょうか。パブリックコメントでお寄せいただいたご意見については、細かく目を通して、これらにどうお応えすべきかという議論をすべき筋合いのものだと思います。ですから、ここで直ちにコメントなり意見を出すということも難しいかもしれませんが、何かご発言がございましたらお願いいたします……。
 それでは、特にご発言がありませんので、パブリックコメントの結果についても、今後、各小委員会でのご議論に反映していただき、また当部会での議論にその結果をさらに反映させることを確認いたしまして、個々出されましたコメントはコメントとして受けとめておくということにさせていただきます。
 次に、国内制度の基本的考え方及び今後の審議の進め方の審議に入りたいと思います。本日はこれがメインでございますので、よろしくお願いいたします。
 では、事務局から説明をお願いいたします。

○地球温暖化対策課長 それでは、資料2をごらんいただけますでしょうか。「国内制度の基本的考え方(案)」でございます。
 3つの項目からなっておりますが、まず必要な担保措置といたしまして、京都議定書の義務は当然のことながら、2008年から12年までの5年間、第1約束期間に温室効果ガスを基準年比で94%、マイナス6%にすること。
 必要な国内担保措置でございますが、議定書締結の国会承認を求める2002年時点で、将来の期間(第1約束期間)における温室効果ガスの6%削減を確実に達成できることが担保されていることが必要であろう。ただし、法的拘束力のある京都議定書の目標を達成するための具体的な国内での手法は各国の裁量に任されている、ということでございます。
 そこで、制度設計の基本方針を考えてみますと、1つ目には、京都議定書の目標を達成するための個々の対策の導入目標でありますとか、それによる削減量、さらにはそういった対策を推進する施策、国などの施策でございますが、そういった工程表、最近はやりでございますが、工程表といったものが盛り込まれた計画を制度上策定する。
 2番目には、京都議定書の目標達成を確実なものとするため、[1]にありました計画の進捗状況及びその効果について定期的に評価・検証を行いまして、十分でない場合の対策の見直しを行うための仕組みを設ける。
 3番目に、制度設計に当たりましては京都メカニズムの活用など費用対効果の高い取り組みが可能となるような柔軟な仕組みとするといったことで、日本全体の計画、それの検証・見直しを行う、柔軟な仕組みとするといったことが制度設計の基本方針でなかろうかということでございます。
 3番目に、担保法というものの中核的要素は何かということでございますが、2でありました計画、その検証・見直しのシステム、対策実施主体別の取り組みを推進するための措置、それから京都メカニズムを活用するための措置、1を中心といたしましてこの3つが中核的要素ではなかろうかという考え方でいかがでございましょうか、ということでございます。
 裏のページに、関連いたしまして、さっき費用対効果の高い取り組みが可能となるようにということでございましたが、そのイメージでございます。これは、本シナリオ小委員会の中で約100の対策につきまして導入量、削減量、さらにコスト評価をしていただいたわけでございます。そこでも似たような表がございましたが、費用対効果の高い取り組みという観点からアレンジし直したものでございます。
 一番上に8%とございますが、これは現行で決められている対策を確実に進めていった場合、2010年で日本全体の排出量は基準年比プラス8%になるというシナリオ小委員会の一つの予測がございますが、それをベースにした表でございます。
 それをベースにいたしまして、一番上の枠に書いてございますのは、交通機関とか、共同輸送とか、ITSとか、食品廃棄物リサイクル等、主に他の政策目的から実施する対策というのが幾つかございます。直接温暖化対策を目的にはしていないけれども、効果としてあるというものを抜き出してみますと、これが90年の排出量の2.3%分ございます。
 それから、その下の枠のところは、炭素1トン当たりの削減コストが0円未満の対策、26個対策がございますが、これは0円未満ということでございまして、こういう投資などを行うことによってエネルギーコストなどが節減され、おつりが来るという対策であります。
 この2つ、黒い大枠のところはノンリグレット対策というふうに考えることもできるわけでありまして、残りの下の方の1トン当たりの削減コストが5,000円未満とか、5,000円~1万円とか、1万円~5万円とか、その下へ行きますと5万円以上とか、10万円以上とかがあったわけでございますけれども、こういうふうに整理してみますと、一番費用対効果の高い方法、理念的といいますか、理想的といいますか、考え方でございますけれども、大枠にあるようなノンリグレット対策を十分進める。
 それから、その下にあります、矢印で右の方に示していますが、国内対策のコストと排出枠価格等を比較して、京都メカニズムも活用して達成していくということがうまくできれば、最小のコストで達成できる。
 なお、下の方に点線がございまして、-2.3%とございますが、これは、ボン合意において認められた吸収枠を差し引いて、ここでは3.7としておりますが、-2.3が国内での削減目標というふうに理解した上でこの数字をつくっております。
 こういった考え方でありますが、費用対効果を考えてやる際、考え方としてこのような考え方ができるのではないかということでございます。
 それから、若干関連いたしますが、参考資料6でありますが、ここでアメリカにおけます気候変動問題に対する取り組み、とりわけアメリカにおける国内対策の動向、それからEUにおける議定書目標と温室効果ガス排出の現状について資料を用意いたしました。
 1ページ目からでありますが、アメリカにおける気候変動問題に対する取り組み、国内対策であります。
 まず議会の動向では、気候変動問題に対する取り組み強化ということで、一番上の枠では、修正京都議定書または将来の拘束力ある合意に向けた交渉に参加すべきという内容の法案が可決。そのほか、8月1日のところで2つございますが、ホワイトハウスに気候変動室を設置するといったような提案が承認された、あるいは大統領が国家気候変動戦略を策定するという法案が提出されたといった動き。
 真ん中のところでは、キャップ&トレード方式による国内排出量取引の導入についての提案がなされています。
 一番下のところでは、発電所からのCO2排出削減ということで、左側の方で、主要な火力発電所について市場メカニズムを活用しつつ、2007年までに90年レベルまで削減するという内容の法案が出されています。右の方では、再生可能エネルギー証書等の市場メカニズムを活用して、電力に占める再生可能エネルギー発電比率を2020年までに20%という法案も出されています。こういったものが議会の動きとして最近ございます。
 次の2ページ、州等の動きでございますが、上の方では、広域的な取り組みの強化ということで、ニューイングランド地方とカナダの東部地方の州知事が共同で温室効果ガスの排出削減に取り組むことに合意したということでございます。
 真ん中のところでは、オレゴン州におきましては、州内に新設されます発電所はCO2排出量を17%削減する義務が課せられた。それから、遵守のために、効率向上に加え、発電所以外でのCO2排出削減・吸収を実施する、超過金の支払いが認められている。マサチューセッツ州におきましては、主要な発電所に対するCO2の排出総量規制法案に州知事が署名。
 下の方では、温室効果ガス排出削減目標の設定ということですが、ニュージュ-ジー州では排出量を2005年までに90年比で3.5%削減することを目標として協定などを締結している、シアトル市では7%削減を目指すことを表明している、といった州あるいは地域、市レベルでの国内対策という動きがございます。
 企業の方におきましても、3ページでございますが、排出量取引への取り組みということで、上の方では、キャップ&トレード型の排出量取引が米国中西部において2002年から実施される予定でございます。右の方では、国際的企業によるキャップ&トレード型の排出量取引に対する取り組みに米国からデュポンなどが参加している。
 その下に行きますと、半導体工業会はPFCの排出量を今後10年間で95年比10%削減することにつきましてEPAと合意書に署名。
 自主的な排出削減の申告、これは94年からしているわけでございますが、これにつきましては99年の申告削減量は2億2,600万トンとなっている。
 下の方へ行きますと、温室効果ガス排出削減目標の設定等ということで、デュポンの動き、あるいは大手電力の動き、メジャーの動きなどがございます。
 4ページは、先ほども少し触れられておりましたが、シンクタンクの方で米国での国内対策という提案がなされております。ピュー・センターというシンクタンクでございますが、ここでは、真ん中あたりの1から始まりますが、まず温室効果ガスの排出量把握と報告が必要であろう、排出量を公開することは排出削減の大きな誘因となるということでございます。
 2番目に、技術開発が必要である、そのために税制優遇とかラベリング等を講ずる。
 次のページでございますが、3番目に排出削減の確保ということで、1つ目は温室効果ガス排出量削減に関する協定の締結、協定の締結ということはメリットが大きい、それは法的拘束力のある協定であるといったことが提案されております。
 下へ行きますと、2番目に主要業種に対する自主的な排出削減目標の設定ということで、自主的な排出目標を設定して実施し、未達の場合にはさらに厳しい規制的措置を導入することが条件だという提案でございます。
 それから、大気汚染防止規制の枠組みへのCO2対策の自主的な組み込みということでございます。
 4番目に、経済全体を対象としたキャップ&トレード型の排出量取引の制度設定と実行ということで、国際排出量取引と統合された国内排出量取引の導入が提案されているといったことで、米国におきましても、国内対策ということで幾つかの提案、企業レベルでの実施がなされているというご報告でございます。
 6ページからは、別にEUだけではないんですけれども、EUにおきます京都議定書目標と現状の排出の動向というものについてご報告したいと思います。
 例のボン合意に基づく森林管理の吸収量上限値を考慮した場合に、EUと日本の国内目標がどうなるかということでございますが、計算しますと、EUはマイナス8であったものがマイナス7.5、日本はマイナス6であったものがマイナス2.1、いずれも計算上は最上限値を使っておりますが、そのようになるということであります。
 それから、ドイツとイギリスで90年の排出量の半分を占めるわけですが、森林管理による吸収量上限値を考慮しても削減目標の水準はそれぞれの国ではほとんど変わっていないということで、下にグラフがございますが、ドイツでは21だったのが20.6、イギリスは12.5だったのが12.3、先ほど申し上げましたEU全体では8が7.5というようになるという点が1つ。
 次に、7ページでございますが、EUにおける温室効果ガス排出の状況でありますが、これは主に欧州環境庁のデータ及び評価をもとにしておりますが、全体で見ますと順調でありますが、個別の国で見るとむしろ目標達成が容易でない国の方が多いということで、EU全体で見て排出削減が順調に見えるのは、全体の排出量の半分を占めるドイツとイギリスでの排出削減が寄与している。しかしながら、2000年のCO2排出量は、英国では前年よりプラス2、ドイツでは、エネルギー起源のCO2でありますが、0.2の増加というふうに増加傾向に転じており、今後の削減は容易ではなくなっている。EU全体の排出量に大きな影響を持つ英国とドイツが排出増大傾向となったことにより、相当な努力を必要とする状況になってきている評価が現状でなされているということでございます。
 下の表は、それぞれの国のバードン・シェアリング後の目標が左側で、99年の現状が右側でございます。
 8ページは、その半分を占める英国とドイツ、英国はCO2、ドイツはエネルギー起源のCO2でありますが、排出量の推移でございまして、最近、横ばい傾向にあるところもあるというデータでございます。
 引き続きまして、今後の審議の進め方、この審議会の中での審議の進め方につきましての案をご説明させていただきます。
 ご案内のように、本年2月に2つの小委員会を設置させていただきまして、中間取りまとめが7月9日にされております。7月にボン合意が得られまして、2002年発効に向けた機運が高まっております。総理の談話にもございましたように、2002年発効を目指して最終合意を目指す、国内制度に総力を挙げるということでございます。
 これらを踏まえまして、今後、年末をめどに最終的な取りまとめを行うということで、以下のようなスケジュールで行っていってはどうかということでございます。本日は部会でございますが、さらに詳細な検討を国内制度小委員会の方で9、10、11、12と計4回していただいたらどうかということでございまして、国内制度小委員会の取りまとめを受けて、12月20日に部会でその取りまとめをご了承いただくというような進め方でいかがでございましょうか。
 以上でございます。

○浅野部会長 ただいま今後の検討の考え方と進め方について事務局から報告、提案がございました。なお、あわせて米国及びEUの動向についても資料が提出されました。
 具体的には事務局から提案いたしましたように国内制度小委員会を再開いたしまして、そこで京都議定書の批准のために必要な国内担保措置を講じるためにどのような国内制度を構築すればいいかということについての原案をつくっていただき、それを部会にお諮りするという手順で進めることになるわけでございます。きょうのところは非常に荒削りな「国内制度の基本的考え方(案)」ということで1枚紙のものが出されているだけでございますが、これは小委員会中間取りまとめで報告しておりますものをベースにして、それをさらに制度としてどういう形で設計していくかを検討する必要があるということで、その手順を示しているのがこの「考え方(案)」であるとご理解いただきたいと思います。
 参考資料をごらんいただきますと、こういう整理の仕方もあるということが出ているだけでありますけれども、これまでシナリオ委員会で出されている報告書と制度委員会がやっている作業とのつながりには少しわかりにくい面がありましたが、こういう形で整理してみますと、全体のつながりが少しわかってくるのではないかと思われるわけです。
 8%と書いてあるわけですが、要するに、現在予定されている対策を進めていけば、1990年レベルに比べて8%ふえてしまう。したがって、ここに書かれているものは、すべて今後それに追加的に投入すべき施策として、シナリオ小委員会でご検討いただいたものを取り上げていくとどうなるかということであります。「机上の計算としてはすごく楽観的に見えるけれども、こんなにうまくいくのかしら」という印象もなくはないのですが、計算上こういうことになって、何とかつじつまが合うということだと思いますので、森林吸収に係る施策はそれとしてちゃんと実施されるとしたうえで、シナリオ委員会で出されているそれ以外の施策を拾っていって当てはめていくと何とかなるのではないかと一応の希望が見えてきたことを前提にして、これを実際に制度的に実施できるような担保措置を講じることが検討課題である、こういうお話でございました。
 そして、ここでは法案という言葉が出ておりますけれども、国内の法的な措置を講じる場合には二通りの考え方があるわけで、現在ある国内法で何ができるのかということを明らかにして、それで十分であればそれでいいわけですが、現在の国内法で足りない部分があれば、当然ここは新しく法律をつくるということになるわけでありまして、そういうことも含めた検討を今後、国内小委員会でもやっていかなければならないと考えるわけであります。現行法だけをただ並べてみても、なかなかそれだけではうまくいかないのではないか、もう少し現行法の施策を束ねるような枠組みをつくっておかないといけないのではないか、というのがただいまの報告、提案の中身でございます。
 期せずして、先ほど、委員から、現在の政府の大綱はただ施策を並べているだけであるというご指摘がありましたが、そのこととも関連するわけでありまして、もっと全体の統合を図る何らかの仕組みが必要だろう、それを検討していく必要があろうというのが事務局の説明であったということでもございます。
 それでは、基本的な考え方について、小委員会のメンバーの方々は小委員会でご発言いただけるチャンスがございますけれども、部会のメンバーで小委員会に加わっておられない方に特に優先的にご発言いただきたいと存じます。十分にご意見をお聞かせいただきたいと思います。
 須藤委員、どうぞ。続いて、武内委員。

○須藤委員 2つほどお伺いしたいと思います。
 1つは、日本の中でも市町村あるいは都道府県、温室効果ガスの抑制あるいはその対策についての計画等もつくられつつあるし、もう実行されているところもあるんですが、米国の分については結構お調べなんですけれども、我が国の分について、やはり国内制度をつくっていく上では先行している地方自治体の実態を調べておく必要があるのではないかと思いますし、またお調べでしたら、それをお聞かせいただきたいのが1点目。
 それから2点目は、1990年に対してマイナス6%でも植物吸収を引いた後の2.3%でもよろしいんですが、マイナス6%の場合にいつの時代か。例えば1988年ぐらいなのか、あるいは85年なのか知りませんけれども、イメージをわかせるために、どの時期がそれに当たるのかということがもし計算上わかっておられれば、時代をさかのぼるわけにいきませんけれども、イメージとしてその辺がわかるのではないかと思いますので、それをお調べでしたらお聞かせいただきたい。
 以上です。

○浅野部会長 それは後で事務局からわかる限りお答えさせます。
 武内委員、どうぞ。

○武内委員 部会長の最後の言葉で、吸収の方については除いてというふうにおっしゃったので、もしかしたら私が今言うことはピントがずれているのかもしれませんけれども、ボン会合の一つの大きな特徴は、排出と吸収の間のバランスをとることが主張として認められたということでありますので、当然のことながらシナリオ及び国内制度に関しては吸収のことについて議論がされなければいけないと思います。これについては、地球温暖化問題が発生して以来の科学的な取り組みというふうな観点から申し上げましても、現行の社会制度のもとでの森林の使われ方と、ここで言われるような再植林も含むさまざまな経済的な行動を伴う森林の利活用というものの間の大きなギャップを考えても、相当深刻な問題を含んでいる。
 排出を抑制する方は、望ましい社会に向けてという中長期的な視点はあっても、短期的にはそれぞれの要素をつぶさに検討しながら、それを絞り出していくというふうな形の作業が当然想定されるわけですけれども、吸収に関していうと、そのようなことというのは、例えば里山を市民が刈り取るということでは到底追いつかないような非常に大きな問題を含んでいるわけで、この辺の議論が今後12月ぐらいまでの間に全くされないまま一方の議論が整理されていくことはちょっと私には理解できないんですが、置いておくというのはどういうことを意味するのか、今のような趣旨を踏まえてお答えいただければと思います。

○浅野部会長 先ほどの私のコメントは、ちょっと表現が悪かったようですが、参考資料に載っている数字の上には吸収分の3.7は全然入っていないということを申し上げたわけで、これは林野庁がやることだとか、農林水産省がやることだという話じゃないと思いますし、統合的な法政策を考え、法枠組みを考えるときには当然それも含めたものになることが望ましい。そして、それの達成度が不十分であれば、3.7については、よそに下駄を預けて済むものでもないわけで、うまくいかなければほかでカバーすべき場面が必ず出てくるわけでありますから、武内先生のご指摘のことは当然だと思います。
 説明というより、私のコメントは参考の表の中の数字に限ってそういうことを申し上げただけで、3.7について全部うまくいくことがあり得ないのは先生のおっしゃるとおりだと思います。ですから、この部分は、あるいは場合によってはこの部会を超えて自然関係の部会との連携が必要であるとか、特に環境再生の議論をやっていますから……

○武内委員 恐らく学者のグループが変わってくるんですね。ですから、大変申しわけないですけれども、今の検討の枠組みでそのことを議論するのはちょっと無理があると思います。しかし、おっしゃるように林野庁にげたを預けるというふうな形の処理はすべきでない。ですから、今のようなご認識をお持ちであるならば、突っ込んで申し上げますと、その部分については別途きちっとした専門家の会合を同時並行的に設けることが必要なんじゃないかというふうに思います。

○浅野部会長 わかりました。その点については検討させます。
 宮本委員、どうぞ。

○宮本委員 質問と意見を申し上げたいと思います。
 アメリカにおける気候変動問題に対する取り組みという中で非常に威勢のいい対策をいろいろ打っておられるんですけれども、ブッシュになってからCOP6のときにアメリカが外れていった大きな理由は、国民経済に対する影響を非常に重視したということがあると思います。今、アメリカは、ITバブルがはじいて不況へ入りつつある、こういう状態でございますから、これは多分気候変動枠組み条約に対する対策であって、国民経済への影響とか雇用というような問題をどう考えるかというのが前段にあるのではないか、私はかように思うわけです。その辺がもしわかっておればお聞かせ願いたいというのが質問です。
 そこで、資料2の国内制度の基本的考え方も含めて私が申し上げたいことは、確かに京都議定書の義務であるとか、必要な国内担保の措置は重要ですけれども、今、日本は景気後退に入りつつあります。また、雇用が非常に不安定になっております。一方では、規制緩和で相当な荒治療をやろうとしております。そういう中で我々が今までやってきたのは、サステーナブル・ディベロプメント、持続可能な社会をつくろうというわけですから、COP3の京都議定書に対する問題だけではなく、根底にある日本経済をどう考え、日本の国民生活をどう考えるかということが前段になければいけないのではないか、そういうような文章が前段にあるか。さもなくば制度設計の基本方針の中に、[3]のところでございますが、費用対効果の高い取り組みが可能となるような柔軟な仕組みというのは、経済情勢の変化も踏まえながら政策を年次的に行っていく必要があるのではないかというように考えますので、その辺を踏まえて今後検討していっていただきたい、そういうような文章がどこかに入ってくるべきではないかということであります。

○浅野部会長 わかりました、ご意見として承っておきます。
 飯田委員。その後、三橋委員。

○飯田(哲)委員 一点お願いと、もう一点は質問ですが、1点は、私はシナリオ小委員会にこの7月までいたんですが、そっちの方が一段落しましたので、オブザーバーということで、すべて出れるかどうかわかりませんが、勉強を兼ねて傍聴させていただくことが可能かどうか。
 それから、質問の方は、国内制度の中で、とりわけこれから全く新しくつくる京都メカニズム、CDMとか排出量取引が非常に重要かと思いますが、そういうような制度設計について国内制度小委員会ではどこまで踏み込んで、ほんとの意味の制度設計は実際どこで、どういうふうな形で進んでいくのか。これは経済産業省の方でも急遽始めているようなところもありますので、そういった統合性も含めて、これは委員長でなくて、むしろ事務局への質問かもしれませんが、どういうふうにお考えなのかということを質問したい。

○浅野部会長 三橋委員、どうぞ。

○三橋委員 先ほどの武内委員の質問とも関係するんですけれども、要するに、京都議定書で6%が実質3.7%に行って、マイナス2.3%になったということで、ほっとしている部分というのがかなりあると思うんだけれども、反面、こんなことで温暖化対策ができるのかという思いを持っている人も非常に多いと思うんですよね。
 それで、ボン合意に基づいてこれからいろいろな計画を立てるに当たって、2010年以降はさらに温暖化対策を強化していかなくちゃいけないわけです。3.7%を配慮したマイナス2.3%が達成できる程度の計画をつくっていたのでは、もうとても手おくれという感じがあるわけで、今度つくったものが2010年以降にさらに生きてくる、そういう2010年以降を目指した対策がつくられてこないと意味がないんじゃないかなという感じがするわけです。マイナス2.3%が辛うじて達成できるような計画じゃなくて、2010年以降にそれをさらに強化することによって大幅に削減できる対策を考えていかなくちゃいけないんじゃないかなという感じがするんですね。ともするとマイナス6%がマイナス2.3%になってよかった、よかったみたいな形ではとてもだめなので、そういう意識で臨んでほしくないなということですね。
 そして、今度つくるのが2010年以降、なるほどこれを拡大していけばさらに大幅な削減への道につながる、そういうような視点をぜひ取り込むような形で、項目を羅列するんじゃなくて、体系的、総合的といいますか、そういうような視点が必要なんじゃないかなということを指摘させておいていただきたいと思います。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 どうぞ、瀬田委員。

○瀬田委員 先ほどの産業構造の変化の問題とか、今のお話にも多少関連するのかもしれませんが、全体の流れというのは、今現在の科学的知見の何十%かのコンセンサスの上に成り立っているというふうに思われます。しかしながら、こういった科学的根拠の解明は今後ともどんどん進んでいくでありましょうし、いろんなシミュレーションの精緻化もどんどん進んでいくだろう。したがって、この過程の中で、あるいはこういった対応の中で、できるだけ定期的にそういった科学的知見の解明の進歩をレビューしていただくような機会はないでしょうかということです。

○浅野部会長 どうぞほかにございましたら……。
 福川委員、どうぞ。

○福川委員 もしできればお調べいただけるとありがたいと思っております幾つかのポイントがあります。先ほど武内委員からもお話がございました森林の方ですが、もちろん詳しくはご専門の方でご検討いただくんでしょうが、3.7か3.9を実現するというときに、ややマクロというか、大ざっぱにつかんだとき、どういうような森林政策あるいは森林予算をすればどういうふうになるか、財政面から可能であるかないかという大ざっぱな見当がつくと非常にありがたいと思うので、できれば吸収源のところについて計算結果というか、そういうようなものの見当がつけばありがたいというふうに思います。
 2番目に、もしできればと思いますが、さっきドイツ、イギリスのお話がございまして、これは確かに非常に大きく削減しているわけですが、ドイツもイギリスもそれぞれ特別な事情があってこういうことが実現している。ドイツは石炭から天然ガスにかわり、東ドイツが入り、イギリスもまた石炭から天然ガスにかわる。本来考えていたエネルギー政策の観点でこれだけ実現したケースがかなりあるわけで、そういうものを捨象してみたときに、どういう施策で効果があったか。確かに結果はマイナス21、マイナス12.5ということでしょうが、そういった別の要因で変わっているところはどういう要因があるか。いろいろ向こうも施策をとったでしょうし、削減コストをかけていると思いますが、そういったところを捨象してみたときの削減コスト及び施策の効果がどうかということがあれば、特にドイツ、イギリスについて教えていただけるとありがたいという気がいたします。
 それから3つ目の問題は、これは非常に難しいと思うんですが、非常に大きなこういう分野の施策というのは、マーケットの選択が変わるというところが非常に重要なポイントになってくるというふうに思っております。いわゆる価値観が変わったときに、例えば省エネ機器を選択するようになるとか、あるいはリサイクル商品の方が選択されることになるとか、いろんな形で価値観的な要素というか、市場の選択というところが変わってくるのがこれから一番大きな推進力になると思います。これはみんなで考えなければいけないと思いますが、ややハード的な側面での施策としての効果だけ積み上げるんじゃなくて、そういったソフト的な分野のものはいい施策にチャレンジする方法がないだろうかということを考えているので、そこらでいい手法、お考えがあれば聞かせていただきたいと思います。
 もう一つ、これを考えるときに2010年という目標をとってみると、1990年を基準にするのがいいか悪いかの議論もありますし、2010年の目標がいいかどうかの議論もありますが、さっき三橋委員がおっしゃったような長期のことを考えると、技術開発というのがそこで非常に大きな要因になって、これは2010年には効果が出ないようなものがまだ幾つもあるし、チャレンジしなければならないものもあるだろうと思いますが、そういったところは今から準備しておかないといけない。ですから、京都議定書と少し離れるかもしれませんが、日本の戦略として20年、30年たったところの目標の施策をこの中に含めて考えておかないとその次へ行ったときまたあわてる、こういうことになると思うので、その辺はどういうふうに位置づけたらいいかという気がいたします。
 それから、皆さんから出たご意見で、私も前から何回も申し上げておりますが、今、日本の産業構造は非常に変わっていて、生産ベースでいうと、前年比1割ぐらいダウンしていますし、海外シフトが非常に進んでしまって、いろんな試算がありますが、一番早いのですと、来年半ばには日本の貿易収支は赤字になるという予想さえあります。今、非常に海外移転が進んでいるということでございまして、日本の物づくり、生産規模が崩れている。そこのところをどういうふうに考えるかということですが、全体像を考える場合、そこらも考慮に入れて検討していただきたいというふうに思います。
 以上です。

○浅野部会長 ありがとうございました。
 それでは、いろいろとご意見をいただいたわけですが、ご質問の形で出されたものについて事務局からお答えいただけるものはお答えいただき、なお検討すべきことは検討するということにしたいと思います。
 まず、オブザーバーの件でありますけれども、私の理解では、決してクローズドにやっているつもりはないので、審議会委員の方が出たいと言われれば、来るなということは決して言えない性格のものであると理解しておりますので、ぜひ加わっていただければと思います。ただ、小委員会のメンバーとして追加するかどうかということになりますと、一たん最初に決めて、どういうふうにするかということになりますから、若干検討させていただきますが、オブザーバーというお話でございますので、その点に関してはできると理解しております。
 それから、制度設計というときのお話、いろいろなお話が出まして、みんな共通する点があると思うわけでありますが、中央環境審議会は確かに環境政策という観点からの審議を主に行っておりますし、一方、産業政策の観点からこの問題に取り組んでいる審議会が別にあるわけでありますけれども、最終的に政府としての方針が決定されるときには、関係する審議会の調整を図って、国としての一つの方向を出すということになるわけであります。しかしながら、中央環境審議会も全く産業政策のことを抜きにして一方的に環境の面からだけ考えて物を言っておけば済むものでもないわけで、当然それぞれ関連することについては中に取り込んで議論することが効率性の高いやり方であると考えます。
 それから、議定書の批准のために当面国内でどういう措置を講ずるかいうことと、さらに第2ステージ以降どうするかを踏まえた長期的な見通しをどのように立てていくのかということと両方ございます。そのことは、ともすれば当面の議論に追われてしまい、いかにも目先のことだけで議論しているように見えますし、現在使える技術はどうかということを材料にして検討していきますと、どうしても現在ということになってしまいます。しかし、おっしゃるように当然先々のことを考えなければいけないわけでありますし、特に経済的措置を講じるという場合には、これは2012年までの時限措置ということはあり得ないわけで、その先に続いていくことであろうかと思います。
 ですから、私の理解では、12月に部会を開いてある種の答えを出すとしても、決してこれが最終答申であるはずがないわけで、経済審議会がかつて、常に中間答申をだし続けたと聴いたことがありますが、温暖化に関しては恐らく22世紀まで続く問題ですから、中間答申という形で次々に考えていくことになるのだろうと思われます。それにしても、今回目先のことだけで答えを書けばいいということではないというご指摘は全くそのとおりでありますので、長期的に取り組むべきことがどういうことであるのかということが明瞭になるように、それから税制度、その他についての検討ということになりますと、そう短期間で直ちに大きな制度枠組み全体を動かすという答えを出しにくい面もあるわけですが、そういう部分は、まさにおっしゃるように第2ステージまでちゃんと生きるような形のものになっていくでしょうし、当面使える技術をうまく上手に使うというためにできる施策が2012年対策ということになるだろうと思いますが、そこは細かく書き分けをするというか、きちっと体系化できるような整理を小委員長にもお願いしたいと思います。
 先ほど須藤委員から地方自治体の取り組みについての情報はどうかということとイメージの話、福川委員から4点ほどご質問、ご意見がございましたけれども、そのうちの何点かについては端的にご質問ということでございますので、今のコメントに加えて事務局からお答えいだたけることがありましたら、お願いいたします。

○地球温暖化対策課長 それでは、まず須藤委員からご指摘ございました日本の自治体の取り組みについてでございますが、5月ごろ制度小委員会の方にご報告させていただいたものが少しございますが、その中では、都道府県でございますが、都道府県レベルで2010年の削減目標を設けているのが9割ございまして、それを単純に足し上げてみますと、日本全体で自治体レベルのものが削減目標として6.24になるという単純な計算はできるわけです。そういった目標を設定しているというところは多うございますが、さっきアメリカにありましたような地域で排出量取引を行うとか、そういうものはございません。
 ただ、温暖化対策といいますのは、そういった問題だけではなくて、地域での効率的なエネルギー利用の方法でありますとか、あるいは地域での交通体系のあり方とか、廃棄物処理のあり方とか、そういったところに関連するわけでありますから、そういった点でいきますと、さまざまな取り組みがなされているということは言えます。先ほど申し上げました目標のときと一緒に一部紹介させていただきましたが、さらにそれは集めてみたいと思います。
 それから、基準年マイナス6%というのは日本の過去の現状でいくと一体いつぐらいに当たるのかということでございますが、オイルショックが終わって、85年あたりまでオイルショックの影響で日本のCO2の排出量は減少ないし横ばいであったわけですが、85年あたりから急に伸びております。そこで、90年と比べてマイナス6%というのは、88年のレベルでありまして、大体20年ちょっと前ということでございます。
 それから、福川委員からご指摘ございました、例えばドイツの排出量削減が基準年から比較して18.7%減っているということでございますが、最近、ドイツとイギリスについて排出削減の要因分析というレポートができているようでございます。詳しくまだ見ていませんが、一言でいいますと、ドイツだけのことについていいますと、東と統合して新しい設備に置きかわったことによって生じた削減の効果は9%分、残りの9%分は風力発電の電力を買い上げる制度とか、あるいは最近ですと炭素税を入れたとか、燃料転換も入ると思いますが、さまざまな国内での対策による効果としてマイナス9%分ある、合わせて18%分であるというような評価がなされているようであります。
 それから、宮本委員からご指摘ございましたアメリカのものですが、これ、日付が入っていますが、ことしの8月以降に取り組まれているものがかなりございます、ということだけご報告申し上げたいと思います。
 以上です。

○浅野部会長 それ以外、福川委員から最初にご指摘のあった問題については、きちっとまじめに勉強する必要があるテーマであろうかと思いますので、何らかの形で勉強する、ワーキンググループのようなものをつくるように事務局の方と相談して、決めさせていただきます。
 飯田委員がおっしゃった排出取引の話、その辺についてどうするんだという……

○地球温暖化対策課長 京都メカニズムの制度設計の検討でございますが、2002年の国内制度といいますか、批准に際して必要な事項にどこまでかかわってくるかという問題も含めて制度設計についてご審議していただくことを考えております。

○浅野部会長 飛ばしはしません。ただ、直ちに次の通常国会でどうだこうだという議論になるかどうかは若干検討していかなきゃいけない、というのが今の竹内課長の答弁でございます。
 それでは、最後になりましたが、中央環境審議会地球環境部会による英国調査について事務局からご説明いただきます。

○小島大臣官房審議官 資料4、「中央環境審議会地球環境部会による英国調査について」という紙がございます。
 温暖化対策に取り組んでいる国の中で非常に特徴的な制度を持っておりますイギリスについて、これからの審議の一助としていただくために、審議会のメンバーの方々による英国調査の機会を設けることを、森嶌会長ともご相談いたしました。審議再開のできるだけ早い時期がいいということと、イギリス側の準備の都合、委員の方々のご都合もお聞きしながら、10月1日・2日ということで、ロンドンで調査させていただく運びになっております。委員の方々も7~8名ご参加いただけるということでございます。
 1日・2日でございますが、日程的には非常にきつい日程になって申しわけございませんが、向こうの準備は、政府関係として、環境・食料・田園省、産業省、財務省、それから排出量取引にかかわった事務局、その検討に加わった企業の方々、気候変動協定にかかわった業界団体の方々、イギリスにおける経団連に当たります英国産業連盟という形で、午前中、午後、夜と2日間フルにセットさせていただいております。調査の結果はできるだけ早く整理して、この審議会にも提出させていただきたいと思います。ハードなスケジュールでございまして、ご参加いただく先生には大変かと思いますけれども、よろしくお願いいたします。

○浅野部会長 どうもありがとうございました。ご参加いただく委員の先生方にはどうぞよろしくお願いいたします。この調査の結果につきましては、後日皆様にご報告させていただきたいと思います。
 そろそろ予定の時間でございますが、何か特段この段階でご発言がございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、本日の審議はこれで終えたいと思います。引き続きご意見がございますなら、事務局あてにご連絡くださいますようによろしくお願いいたします。本日のご議論を踏まえながら国内制度小委員会でご審議いただきたいと思います。どうもありがとうございました。

午前11時53分閉会