気候変動影響評価・適応小委員会(第4回)議事録

日時

令和6年8月6日(火)14:00~15:43

場所

WEB 会議システムを併用したハイブリッド形式で開催。併せて YouTube チャンネルでライブ配信を実施。

議事次第

1.開会

2.議題

(1)気候変動影響の評価について(現状、第3次影響評価に向けた検討)

(2)その他

3.閉会

議事録

●羽井佐気候変動科学・適応室長
定刻となりましたので、ただいまより第4回中央環境審議会地球環境部会気候変動影響評価・適応小委員会を開催いたします。
進行役を務めます環境省気候変動科学・適応室の羽井佐と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
前回から約一月弱たちまして、今回の会議を迎えております。この会議の直前まで、ブルガリアのソフィアで気候変動に関する政府間会合(IPCC)の会議が開催されていまして、それに出席をしておりました。そのIPCCの会議において、第7次気候変動の影響評価のサイクルが回り始めました。この第7次のサイクルにおきましては、最初に、都市と気候変動に関する特別報告書が検討されることになっています。その目次案、構成案について議題となっており、それが第61回のIPCC総会で採択をされました。その動きと合わせるような形で、日本の国内における気候変動の影響評価のプロセスが進んでいくということで、今回から皆様に議論していただきます。どうぞ今日はよろしくお願いします。
本日の会議は、現在、委員総数の過半数以上であります16名の委員にご出席をいただいており、定足数に達しておりますことをご報告いたします。
また、本日の小委員会は、対面・オンラインのハイブリッド形式での開催となります。この会議は、環境省の公式YouTubeチャンネルによりライブ配信を行っています。資料及び議事録につきましては、ホームページにて公開とさせていただきます。
対面、オンラインのハイブリッド形式での開催となり、ご不便をおかけすることもあるかもしれませんが、どうぞご容赦、お願いいたします。
WEB参加の委員の皆様におかれましては、ご不明な点がありましたら、事務局まで、チャット欄か、事前にお伝えした電話番号にてお知らせください。
資料の確認でございますが、画面上に配付資料一覧を表示しますので、それに沿ってご案内をいたします。
資料は、資料1、資料2-1、2-2、そのほか参考資料が3点ございます。
参考資料1についてですが、先般の小委員会で座長一任の決定をいただき、気候変動適応法施行後5年の施行状況に関する検討中間取りまとめとして8月1日に公表させていただいたものとなります。この取りまとめに当たりまして、委員の皆様方から貴重なご意見を賜り、誠にありがとうございました。
参考資料2ですが、本年5月に環境大臣から中央環境審議会に対して行いました気候変動影響の評価に係る諮問及び中央環境審議会会長から地球環境部会長に対してなされた付議に関する文書を、この小委員会の設置要綱とともにお示しをしているものでございます。冒頭申し上げましたとおり、今回の小委員会からは、2025年度公表予定の気候変動影響評価報告書について、ご議論いただくこととなっておりますので、参考資料2をご確認いただければと思います。各資料につきまして、事前にもお送りしておりますので、WEB参加の皆様は、お手元にご準備をお願いします。
議事中、発言者以外のWEB参加の皆様は、基本的にマイクをミュート設定でお願いします。回線負荷低減のために、ご発言時以外はカメラの使用をお控えください。画面の下にあるカメラのアイコンをクリックし、オフにしていただければと思います。
ご発言される際は、対面でご参加の皆様は、ネームプレートを立ててください。オンライン参加の皆様は、ご自身の名前の右側にある手のマーク、挙手ボタンを押してください。委員長から順番に指名をしていただきます。マイクのボタンを押してミュートを解除し、ご発言ください。ご発言が終わりましたら、マイクをミュートにし、再度挙手ボタンを押して、挙手を解除いただきますようお願いします。ご発言の際には、最初にお名前をおっしゃっていただくと幸いです。
それでは、以降の議事進行を肱岡委員長にお願いいたします。どうぞよろしくお願いします。
 
●肱岡委員長
よろしくお願いします。お暑い中、ご参集いただき、どうもありがとうございます。
第3回までは、気候変動適応法施行後5年の施行状況にかかる中間取りまとめに、様々なご意見とアドバイスをいただき、どうもありがとうございました。無事公表することができました。御礼申し上げます。
それでは、第4回は、先ほどご紹介がありましたように、第3次気候変動影響評価に向けた検討ということで進めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いします。
それでは、まず本日の最初の議題ですけれども、気候変動影響の評価です。
じゃあ、事務局よりご説明、よろしくお願いいたします。
 
●池田気候変動科学・適応室室長補佐
気候変動科学・適応室の池田でございます。
私のほうから、気候変動影響の評価の現状でございますとか、第3次影響評価に向けた検討状況について、ご報告をさせていただきます。資料につきましては、続けて資料1、資料2-1、資料2-2の順番でご説明させていただきます。
まず、資料1でございます。
まず、気候変動適応法の概要の資料でございます。適応法におきましては、気候変動影響評価を概ね5年ごとに行うこととしております。気候変動影響評価の結果等を勘案して、気候変動適応計画を改定することが定められているところでございます。
次のページをお願いします。
適応の総合的推進のプロセスを整理している資料でございます。5年サイクルで、最新の科学的知見を基に気候変動影響を評価し、各分野の将来影響を加味した施策を適応計画にも反映していって、適応計画においてはPDCAサイクルを回していくことで、適応の総合的推進を図っているところでございます。
次の資料をお願いいたします。
こちらは気候変動影響の評価、これまでの経過に関する資料になってございます。本委員会の改組前の気候変動影響評価等小委員会におきまして、第1次、第2次の影響評価について、これまでご審議いただいているところでございまして、平成27年3月に最初となる第1次の報告書、令和2年12月に第2次の影響評価の報告書を公表しているところでございます。現在、第3次影響評価の検討を始めておりまして、来年度公表に向けて検討作業を行っているところでございます。
次のページをお願いします。
こちらは第2次気候変動影響評価の概要をまとめている資料でございまして、この報告書は、気候変動適応法に基づく最初の報告書になっております。こちらは科学的知見として引用している件数が1,261件ということで、前回の1次に比べて、科学的知見の充実が図られているところでございます。
真ん中右側のところに、分野ごとの主な影響の原因についておまとめしているところでございます。
影響評価報告書は、構成を下にご紹介しておりまして、「総説」と「詳細」ということで、2部構成にさせていただいております。
総説のほうは、各分野における気候変動影響の概要に加えまして、気温や降水量などの観測結果及び将来予測、影響評価に関する今後の課題とか、現在の政府の取組などを整理している、概要の資料になっております。
一方、詳細のほうは、各分野における気候変動影響に関する詳細な情報を整理した、フルバージョンといいますか、そういった内容になってございます。
評価対象につきましては、各分野におけます7分野、項目で言いますと、小項目として71項目ございまして、重大性、緊急性、確信度と、三つの観点で評価しております。
左の真ん中辺りに、重大性、緊急性の評価の下の3ポツのところに記載させていただいていますが、そのうち33項目、46%につきましては、特に重大な影響が認められており、かつ、対策の優先度が高いとされたという結果でございまして、気候変動による影響がより重大で、緊急の対策が必要であるということが示されているところでございます。
この報告書の取りまとめに当たりましては、先ほど小委員会でご審議いただいたと申し上げましたが、具体的な影響評価の検討におきましては、環境省事業におきまして、各分野の有識者の先生方で構成する分野別ワーキングを設置してご議論いただくとともに、座長間会合におきまして、分野横断的な方針の検討でございますとか、分野間調整を行っていただくなど、相互連携して検討、取りまとめをいただく作業も行っていただいたところです。後ほど第3次に向けた検討のところでもご紹介させていただきます。
次の資料をお願いします。
気候変動影響の評価手法のご紹介でございまして、こちらは、1次の、これまでの評価書を踏襲しつつも、IPCC、当時の最新の報告でございます第5次の評価報告書でございますとか、諸外国の事例におけるリスク評価の考え方を参考に、科学的知見の充実や、現状を踏まえて更新をしたというところが大きな概要でございまして、右側の重大性のところでございますが、こちらは影響の程度、可能性、不可逆性などを切り口といたしまして、社会、経済、環境、三つの観点から評価を実施したところでございます。尺度としましては、特に重大な影響が認められる、または影響が認められるという、二つの尺度で評価をさせていただいております。
次のページをお願いします。
こちら左側、緊急性につきましては、影響の発現時期でございますとか、適応の着手・重要な意思決定が必要な時期のいずれか緊急性が高いほうを採用しているといった形でございます。
また、右側の確信度につきましては、情報の確からしさということで、「証拠の種類、量、質、整合性」、「見解の一致度」、二つの観点で評価を実施したところでございます。
次のページをお願いいたします。
こちらは、影響評価報告書は、非常にボリュームが多い内容になってございますので、一部抜粋しつつ、ご紹介させていただければと考えてございます。
まず、影響評価報告書の中で、気候変動により想定される影響の概略を、こういった分野ごとで概略図をまとめてございます。こちらは農業・林業を例に取りまして、お示しをしているものでございまして、これをご覧いただきますと、気候変動が様々な形で影響を与えていて、さらには、下のところで関連の分野、その他の分野とも関連して影響が生じているといったことを、分野ごとで整理をさせていただいているところでございます。
次の資料をお願いします。
こちらは農業・林業・水産業分野の影響評価結果の概要をまとめたものでございます。先ほど小項目と申し上げたのは、それぞれ表にございます項目ごとでの評価というところでございまして、特に赤い丸がついているもの、こちらが、重大性のところは特に重大な影響が認められるところですし、緊急性、こちらも赤い丸がついているところは緊急性が高いというところで、かなり赤丸が多いような結果になっているというところでございます。
次のページをお願いします。
こちらは、報告書の記載内容を少しどういった項目が書いているかというところを抜粋して、概要をご紹介させていただいております。こちら、農業・林業・水産業の分野のうち、水稲を例にいたしまして、概要をご紹介させていただいております。収集した科学的知見を基にいたしまして、整理する内容としましては、気候変動による影響の要因を整理させていただいておりまして、現在の状況としての影響、さらには、将来予測される影響といった整理を行った上で、先ほど申し上げましたとおり、重大性、緊急性、確信度の評価を行っているというところですし、さらには、その評価に至った根拠を整理させていただいているというところでございます。
次の資料をお願いします。
こういった、先ほど農林水産業の例をお示しさせていただきましたが、各分野でそれぞれ同様の科学的知見に基づいた整理及び評価を行っておりまして、その記載内容を抜粋的にお示ししているものでございます。個別の説明のほうは割愛させていただきます。
次、お願いします。
こちらは先ほど農林水産業の分野でお示ししたとおりなんですが、7分野における影響の評価結果の概要をお示ししております。各分野におきましても、特に重大な影響が認められるものであるとか、緊急性が高いとされている小項目、赤丸のところがあるということがご覧いただけると思います。
第2次評価におきましては、重大性評価については、こちらは知見があった場合に限られますが、一部の項目におきましては、IPCCの第5次評価で使いました排出シナリオ、少し注釈をお入れしていますが、RCP2.6、いわゆる2℃上昇を想定したシナリオというところと、あとはRC8.5、4℃上昇想定のシナリオというところで、農林水産業など一部で、そういったシナリオごとで分けて重大性を評価しているところです。逆に言うと、シナリオごとの評価については、なかなかそこまで知見がなかったので、一部の項目における評価にとどまっているというところも言えるかと思います。
そうしましたら、資料変わりまして、資料2-1ということで、第3次影響評価に向けた検討のほうのご説明をさせていただきたいと思います。
こちらは第3次気候変動影響評価の進め方というところで、具体的な検討体制を整理させていただいております。こちら、先ほどご説明があったとおりでして、次期の気候変動の影響の評価につきましては、今年5月に環境大臣から中央環境審議会会長に諮問させていただいているところでございまして、今後、専門的な見地からの具体的な検討につきましては、私ども環境省事業において設置してございます気候変動に関する分野別ワーキンググループ、こちらのほうで実施させていただくこととしておりまして、これまでにも既にちょっと検討を進めているところでございます。
その中身としましては、分野別ワーキング、こちらは先ほど7分野と申し上げましたが、一つ統合しておりまして、六つのワーキングで、各分野の有識者の先生方にご参画いただきまして、分野ごとの検討をお願いしているところでございまして、さらには、各座長の先生方及び専門家で構成いただいています座長間会合におきましては、全体の方針でありますとか、分野横断的な検討、さらには取りまとめを行っていただくというところで、実際の作業、検討のほうを今後も進めていただくこととしております。
小委員会につきましては、現在、現在の委員の先生方、影響評価の専門家の先生に加えまして、様々なお立場の方、地方自治体の方でございますとか、報道関係者の方、企業の方、様々な主体の方が委員として参画いただいているところでございまして、影響評価報告書の活用に資するようなまとめ方とか、大局的な視点で、この小委員会でご議論いただければと考えているところでございます。
こちら、事務局としましては、先ほど申し上げました環境省事業で実施しています分野別ワーキングのほうで取りまとめた案につきまして、環境省より小委員会に報告する形で、この小委員会の場でご確認、最終的にはご承認いただいて、最終的に中央環境審議会から答申をいただいた上で、公表したいと考えております。
次のシートをお願いします。
第3次評価に向けた検討スケジュールの全体像をお示ししております。もう既に、下検討といいますか、検討を始めているところでございまして、昨年度は、評価手法の検討、後ほど概要をご紹介させていただきますが、評価手法の検討であったり、科学的知見の収集・整理などは既に進めてきているところでございます。今年度は、実際に得られた知見や評価手法を基に、原案を作っていくというところが主な作業になってまいります。今後の具体的なスケジュール案は後ほど、資料2-2に、より詳しい資料がございますので、そちらのほうで説明させていただきます。
次の資料をお願いします。
今回、ご報告事項と確認いただきたいポイントをおまとめしております。今回のご報告事項、この後、ご説明させていただきますが、現在、先ほど申し上げましたとおりですが、座長間会合でありますとか、分野別ワーキングのほうで、第3次評価に向けた検討も着手してきておりまして、今回の小委員会では、これまでの検討状況をご報告させていただきます。引き続き、専門的な見地からの検討につきましては、座長間会合及び分野別ワーキングにおいて実施予定とさせていただいています。
確認いただきたいポイント、今回、小委員会の委員の先生方に確認いただきたいポイントをまとめてございます。
まず一つ目でございますが、自治体・事業者等による影響評価等の活用に関する取りまとめの在り方ということで、こちらは、やはり取りまとめに当たって、実際のところ、地方自治体の方であるとか、事業者の方であるとか、やはり活用いただきたいというところが目的としてございます。この辺りも、様々な使い方といいますか、まとめ方によって、やはり使い勝手も変わってくると思いますので、その辺り、こういうまとめ方のほうが分かりやすい、使いやすいといったご意見がございましたら、ぜひいただけたらと思っております。
あと、二つ目、国民の気候変動影響及び気候変動適応の認知度向上につながる影響評価報告書の取りまとめ、情報発信、コミュニケーションの方法ということで、こちらも、やはりまとめ方によって、国民にどうメッセージが伝わるか変わってくると思います。自分事のように感じていただくために、国民の皆様方に、気候変動の影響とか気候変動適応をいかに伝えていくかという観点で、気候変動影響評価報告書の取りまとめの在り方でございますとか、あとは、さらにはどういう情報発信、コミュニケーションを取っていったらいいかというところの観点でも、ご意見をいただければ幸いでございます。
そのほか、今後、影響評価報告書を取りまとめていくに当たって、留意しておいたほうがいい、留意すべき事項がございましたら、ご意見等をいただければと考えております。
次のページをお願いいたします。
ここからが、分野別ワーキングにおいて、これまで課題として検討してきた状況を少し、ちょっと概要レベルになって恐縮なんですが、ご報告させていただきたいと考えております。こちら、一覧表にしてございますが、内容的には、目的・全体構成、評価手法から情報発信に至りますまで、主に11項目について、課題として整理して、これまで検討を進めてまいりました。
あと、取りまとめの段階で検討すべきと思われる、⑧とか⑪のところは、ちょっとまだこれからというところでございますが、それ以外のところは、既に検討を進めてきておりまして、現段階で、分野別ワーキンググループでありますとか、座長間会合で整理いただいた対応方針につきまして、ご報告させていただきたいと思っております。
次のシートをお願いいたします。
まず、第3次評価の目的というところです。こちら、第3次評価の目的につきましては、第3次影響評価が首尾一貫したものになるように、目的の再確認、明確化を行うことが課題であります。今回、気候変動影響だけではなくて、適応策の効果等に係る科学的知見を集めていくという方針の下で作業を進めておりまして、そうなってきますと、今度、それを基に政府が定めていく適応計画とのデマケをどう整理するかといったことでありますとか、さらには、先ほどお伝えしたように、地方自治体の方とか、事業者の方が、影響評価を実施するために参考になる手順・考え方を、この報告書の中でいかに示していくかというところを現在検討しているというところでございます。
次の資料をお願いします。
報告書の全体構成ということでございまして、こちらは目標の達成に向けた全体構成ということで、構成としましては、総説と詳細ということで、2部構成というところは基本的に維持するという方向でございますが、ワーキンググループの委員の先生方より、政策決定者向けのメッセージを入れたほうがいいというご意見をいただいていたりとか、さらには論文、基本的に、科学的知見というものが、やはり査読つき論文がかなりメインになっているというところではございますが、論文にはなっていないですが、例えば昨年の猛暑の影響など、近年に発生した社会的関心の高い影響の事例なども、こちらも、なかなか科学的知見と言えるかどうかというと、議論もあるものの、コラムとか、そういったことで、やはり国民の皆様方に意識していただくという観点においても、何らかの形で追加してはどうかといったコメントもいただいているところでございます。
個別には、詳細につきましては、影響評価の内容の詳細、これまでもお書きしていますが、さらには、その中で自治体・事業者の方が自ら影響評価を実施する際に参考となるような、具体的な手順・考え方を整理するとか、さらには、今申し上げましたような、近年発生した社会的関心の高い影響の事例など、コラム的に入れられないかといったところを検討しているところです。
また、総説につきましては、こちらは詳細の要約といった役割もございますが、日本における気候変動の概要でございますとか、影響評価に関連する現在の取組、課題、展望、この辺りはこれまで報告書にもございますが、政策決定者に向けたメッセージを整理できないかというところで、検討をしているところでございます。
次、お願いします。
こちらは小項目ごとで報告書を記載しておりますが、記載内容をやはり充実させてはどうかということで、2次評価と3次評価を比較として表でお示しをしておりますが、例えば、特に強い影響を受ける地域、地理的な分布であるとか、あと、対象(集団、業種、生態系など)に関しての評価であったりとか、あとは、科学的知見が得られるという前提ではありますが、追加的な適応策の効果を考慮した影響評価の結果などについても、この影響評価報告書には、科学的知見があるような小項目については、追加を検討していくとしているところでございます。
次、お願いします。
評価結果の提示方法でございます。こちら、気候変動の最新の見通しを踏まえた年代・シナリオ設定、追加的な適応策の効果を考慮して評価を行うといったような全体方針で進めているところでございます。
具体的には、重大性の評価につきましては、先ほど申し上げましたとおり、一部の項目では、二つの排出シナリオで評価を行ってまいりました。今回、3次におきましては、現状と、約1.5~2℃上昇時、約3~4℃上昇時と、三つに分けまして、現在の適応の下で、どういった影響になり得るのかといったようなところ、こちらも科学的知見がどこまで得られるかにもよりますが、三つに分けて評価できないかというところを試みているところです。
さらには、追加的な適応策及びその効果に関しても論文化されているなど、十分な科学的知見が得られた項目につきましては、別途、さらに、そういった適応策を実施した場合といったところで、別途、重大性評価を行うこととしているところでございます。
次のページをお願いします。すみません。13ページですね。
こちらは課題⑤として、重大性評価の尺度につきましては、評価尺度の適切な設定、評価、こちらは高・中・低という、尺度をいかに整理するかというところが論点になっております。
右側の検討方針の表でございますが、こちらは分野による評価の食い違いといいますか、尺度の違いがなるべく出ないように、レベル感をそろえていくために、統一的な基準を整理して、まとめているものでございます。ただ、実際のところは、分野別のワーキンググループにおきまして、この基準を念頭に置いた上で、各分野で詳細な尺度、それぞれの分野に応じた尺度を整理させていただいた上で、評価をいただくといった流れでございます。
評価に当たりましてコメントを先生方からいただいており、留意すべき事項を下に整理しております。共通というところに整理をしているんですが、例えば、対象の希少性/重要性であるとか、特に脆弱な地域・対象への重大な影響の有無であるとか、影響の連鎖による重大な波及効果の有無といった観点も、評価に当たっては留意するとしております。
こういった基準もあるんですが、作成指針という、ちょっとマニュアル的なものも、統一的に評価をしていくために作成を進めておりまして、実際に作業を行っていただくに当たっては、作成指針でありますとか、分野ごとの詳細な尺度などを用いて、エキスパートジャッジによって実施していただき、評価結果に加えて、その評価した根拠についても、報告書に記載するといったことで進めていく方針でございます。
次のページをお願いします。次の次のページですね。
課題⑥の緊急性の評価の尺度でございます。こちらについても、尺度の適切な設定、高・中・低の尺度の整理というところが論点になっております。
第3次評価につきましては、2.の追加的な適応策への意思決定が必要な時期で評価するといったところを基本としておりまして、その評価には、影響の発現時期と適応に要する時間を、両方を考慮するとしております。ただ、この評価に当たって、適応に要する時間に関する知見がないケースも考えられるということで、その場合は、1.にありますように、影響の発現時期のみで評価をすることとしております。
影響評価と適応計画の改定のサイクルとの対応ということで、これは時間軸の話でございますが、高に当たる部分というのは、この影響評価の結果の公表直後の適応計画の改定で対応するような緊急性であると。中のほうは、さらに5年後の、次の計画改定で対応するといったような時間スケールを想定してございます。
次の17ページをお願いします。
こちらは知見の収集・整理ということで、より広範な文献からの知見の収集というところで、今回、影響だけではなくて、適応に関するものでありますとか、学術論文以外の幅広い情報源からも活用するといった方針で、収集を進めているところでございます。こちらに表で、一覧でお示しする以外にも、様々な資料を活用できないかということで、今検討を進めているところです。その中には、IPCCの知見でありますとか、海外の文献も含めて、日本の気候変動影響に資する内容であれば、積極的に取り入れていく方針をまとめております。
中には、先ほど、論文化されていない情報につきましても、直近に起こった影響というところでまとめられないかということは、この情報収集の範囲において、検討を進めていきたいと考えております。
次、お願いいたします。
こちらは、影響の連鎖・複合影響の検討ということで、課題⑨分野間の影響の連鎖の検討というところは、実は、2次報告書でも独立した節で、ちょっと図が小さくて恐縮なんですけれども、分野間の影響の連鎖の概要を図示したり、本文に記載したりといったところであるとか、あと、先ほど農業・林業の例でお示ししたように、各関連分野との連鎖的なところの影響というような整理をしていたところでございますが、重大性の評価までは至っていないといったような課題がありまして、この辺りは科学的知見をさらに充実させるとか、どうやって重大性を評価するかといったようなところが課題になっているというところです。
あと、課題⑩のところですが、複合災害の検討については、こちらは、2次報告書のほうでは、自然災害、沿岸域分野の中で、例えば土砂災害と洪水氾濫、高潮と洪水氾濫といったところは、右側の、ちょっと小さい図で恐縮ですが、概要を図示して、近年の災害事例を本文で記載するといったところでございましたが、こちらについても、いかに整理していくか。例えば、気象災害×気象災害だけではなくて、気象災害×全災害なども検討していくべきじゃないかといったところも課題でございます。こちらについては、なかなか科学的知見が少ないというところがございますが、国立環境研究所の横畠先生の学術論文などの手法を参考にさせていただきながら、現在、まとめ方、お示しの仕方などについて、検討をしているところでございます。
この資料は以上でございまして、最後に資料2-2のほうをご説明させていただきます。
こちらは第3次影響評価に向けた検討の進め方、こちらは先ほど資料2-1でも同様の資料がございましたので、次のページに行かせていただきます。
こちらは、より詳細のスケジュール感をおまとめしておりまして、真ん中辺りに、令和6年8月ということが、これが本日の小委員会でございまして、こちらで現状をご報告して、ご意見等をいただいた後は、分野別ワーキングでございますとか、あとは座長間会合でご議論いただいた上で、今度は3月に、ある程度報告書の原案の形になったものをご確認いただく予定でございます。
予定としましては、令和7年度に報告書案を固めて、その中で、プロセスとしては、関係各省庁の協議でございますとか、さらに小委員会も開かせていただいて、確認をいただいたり、パブコメなども経て、最終、答申という形でいただいた上で、取りまとめて、環境省より公表させていただきたいと考えております。スケジュール感としましては、来年冬頃に公表できればいいなというところで、作業を進めてまいりたいというふうに考えてございます。
説明については以上でございます。
 
●肱岡委員長
ご説明どうもありがとうございました。
それでは、委員の先生方からご意見をいただきたいと思います。多くの先生方から多様なご意見をいただきたいということで、お1人、おおよそ2分ぐらいにまとめていただけば大変ありがたく思います。また、ほかの委員の先生方がコメントされたものと重複するものは、できるだけ避けていただいてコメントいただければありがたいと思います。それでは、挙手等をお願いします。
まず、じゃあ、沖委員から、よろしくお願いいたします。
 
●沖委員
ありがとうございます。
作業委員会にも少し関わらせていただいているので、いろいろ思うことはあるんですが、資料2-1のほうで、8ページにまずなりますけれども、検討方針で、影響評価の内容の詳細に加えて、近年発生した社会的関心の高い影響の事例等、これ、単にこんな、例えば熱中症の救急搬送がこのぐらいあったというのではなく、やはりアトリビューションも含めて、この熱波はどのぐらいの確率で地球温暖化の影響が現れたと見えるといったことがないと、単なる時事報告になってしまって、あるいは全ての事象を気候変動と結びつけているというふうに取られかねないと思いますので、その辺は注意していただいたほうがいいんじゃないかなというふうに私は思います。
それから、9ページに参りまして、特に強い影響を受ける地域・対象とあります。ここは非常に重要かなと思いまして、前回の令和2年12月に出ましたもので、例えば重大性・緊急性が、49項目69%が特に重大な影響と。69%が特に重大と言われると、もちろん危機意識を高めるためには重要なんですが、例えば行政が優先順位を考えるに当たって、あまりにも多過ぎるのではないかという懸念をいたします。ですので、例えば予算をきちんと確保するために、特に重大でないと取れないということがあったとしても、何かトップ10%、いろいろある中で、この地域のこういうセクターは、特にここに注意すべきではないかという情報が非常に価値を持つように思いますので、そうした取扱いが可能かどうか、ご検討いただければと思います。もちろん、それは非常に怖いことで、トップ10%というか、トップを言ってしまって、ほかを考えなくていいかと。そんなことは全然ないわけなんですが、全部考えなきゃいけないけれども、せめてここだけは、あなたの地域、あなたのセクターは、考えないのは非常に不十分ですよという情報を発するのが大事かなと思います。
その下の、すみません、追加的な適応策という言葉の問題ですが、追加的が自律的な適応でないという意味で追加的とおっしゃっているのであれば、若干、用語は、緩和をやって、追加的に適応策をやるかのようでありますので、意図的な適応策とか、計画的な適応策、インテンショナルといった言葉を使っていただくふうに考えていただいたらどうかなと思います。
もう一つだけ。10ページに参りまして、緊急性のところなんですが、これが前回と同じように、既に影響が現れているかどうかということで、具体的には、恐らくスピードは、15ページになるんですけれども、影響が生じているかどうかというのは、これはゼロイチではないわけですね。徐々に影響が出てくる。ですので、まず、何かそこは本来やっぱり定義をしないと、セクター間の統一が取れないのではないかと思いますことと、もう一つは、緊急かどうかというのは、既に表れていても、深刻化がゆっくりなものと、物すごく速いスピードで深刻度を増しているものとでは、やはり緊急性は違うのではないかという気がいたしますので、影響の深刻化のスピードという観点もあったほうが、なおいいのではないかというふうに思います。
以上、意見でございました。
 
●肱岡委員長
沖委員、貴重なコメントありがとうございます。
もし何か、今のご意見に対して、事務局側から回答があれば、お願いします。
 
●池田気候変動科学・適応室室長補佐
沖委員、重要なコメントをいただきまして、ありがとうございます。
今後のワーキンググループの検討に生かしていきたいと思います。例えば、近年関心の高い気候変動影響と思われる事例につきましては、イベント・アトリビューションに関しましては、一部、事例として研究成果も出ておりますので、そういったことも織り交ぜながら、全てが説明がつくかというところは難しいところがありますが、ただ、そういった観点も、ぜひ取り入れてお示しする形で、検討したいと考えております。
あと、地域、特に影響を受けやすい地域というところは、自治体において、影響評価なり適応計画なりを作っていく中でも重要な視点と考えておりますので、その辺りは、どういった整理にするとよいのかというところ、また、引き続き検討できればと考えております。確かに重大性の高い項目が増えてきていますので、さらに、その中でどこに重点を置いたらいいのかというようなご指摘も、これまでのワーキンググループなどでもご指摘をいただいている部分でございますので、さらに検討してまいりたいと思います。
あと、追加的な適応策というワードが適切かどうかというところは、精査したいと思います。
あとは、影響の深刻化のスピードとか、その辺りの観点も、少し事務局の中で検討して、整理ができればと考えております。ありがとうございました。
 
●肱岡委員長
ありがとうございます。
それは次、勢一委員、お願いします。
 
●勢一委員
ご説明ありがとうございます。勢一です。
私からは、大きく二つコメントさせていただきたいと思います。私は法制度の専門家ですので、そういう視点からのコメントとさせていただきます。
一つは、影響評価の目的についてです。資料の中でも、課題として目的の明確化ということで、論点も示されています。何のために影響評価をするのかということが明確にならなければ、当然、求められているものがはっきりしてこないということになるので、これは重要な論点なのですが、2次評価と目的が変わるのかというところも、実は正直よく分からないところがございます。
なぜかと申しますと、この影響評価の根拠は、恐らく気候変動適応法の10条の規定と思います。ただ、この規定には、影響評価の目的は、具体的には書いていません。評価をして、公表するだけとなっています。ただ、これがどこの章に位置づけられているのかというと、気候変動適応計画の章の中の条文ですので、法の立てつけとして中立的に見るならば、気候変動適応計画の進捗を見る一つの指標・評価という位置づけなのだろうと思います。
そういうふうに考えますと、当然、国の現行の計画及びそこに並べられている施策との関連性は切れないということになろうかと思いますし、ただ、その中でも、国際動向を含めて何を適応として見ていくのかというのは、徐々に変わってきていますので、この影響評価が担う役割と機能については、適宜アップデートをすると。そのアップデートが、次の適応計画に反映されるという、こういう関係性になるんだろうと思っています。
そういう点からしますと、これは8ページのところでご指摘があったかと思うのですが、影響評価の目的に関する課題に加えて、政策決定者向けのメッセージなどを追加してはどうかというご指摘があったと、ご紹介がありました。確かに、影響評価ですから、科学的なデータを収集して、それを適切に整理をしてということなのですが、法10条の規定には、予測とか評価というような項目が合わせて加わっていますので、当然、これはデータ・知見の分析に加えて、現時点での科学的水準の下による一定の判断をするということが前提となっていると思います。また、次期適応計画の改定の基礎になるという部分もありますので、当然、客観的データと分けるというのは前提ですけれども、評価者の意見が示されてしかるべきであろうと思います。これが恐らく次の政策決定の段階での施策の優先順位を決めていく大きなヒントになると思いますので、こういうところは少し意識をして考えていくのがよろしいのかなと感じました。これが1点目です。
2点目のほうは、これは4ページのところで示していただいておりました、自治体や事業者の活用に資する取りまとめの在り方という論点の提起をしていただいています。もちろん国の計画の基礎と、先ほど法的に書いてあると申し上げましたけれども、当然、こうした影響評価の内容というのは、自治体も事業者も含めて、社会全体で共有していくというのが重要であり、かつ必要であると思っています。そうしますと、やはり国の計画も含めて、適応の施策というのは、各省の取組を取りまとめたような形になりますので、法制度であるとか、組織体制による縦割りからは、なかなか解放されないという悩みがございます。
自治体レベルで見ますと、自治体の地域適応計画というのは、実は単独で作成されているというよりも、温対法の実行計画であるとか、生物多様性の地域戦略などと一体的に策定している例も多いわけですから、各省の施策分野というよりは、分野の相互影響なども、これからは地域にとっては重要な指標になってくると思います。施策のトレードオフとシナジーをどう考えていくのかということを地域や事業者が考えるためには、第2次では7分野に加えて分野間の影響の部分が入っていますので、ここの部分を厚くしていくと、現場としては、きっと有意義だろうと思います。また、評価過程に当事者として自治体や事業者の意見が反映されると、そこから見てとれるニーズもあろうかと思いますので、こうした途中の検討過程についても、工夫をいただけるとありがたいと思います。
以上です。
 
●肱岡委員長
貴重なご意見ありがとうございます。ぜひ今後の進め方に反映してください。
それでは、江守委員、西井委員の順でお願いします。
 
●江守委員
ありがとうございます。
僕は資料2-1に基づいて、最初、13ページですけれども、重大性の評価のところで、共通というところで、特に脆弱な地域・対象への重大な影響の有無、これを追加してくださっていること、まず大変感謝をします。
それで、僕がここに注目している意味は、やはり弱者等というところでありまして、やっぱりマジョリティーにとって大した問題ではなくても、特定の脆弱な集団に対して非常に深刻な被害が出ているというのは、社会正義の観点から、軽視されるべきではないということを考えますと、そういった影響をきちんとこういうところに述べられるということが重要ではないかというふうに思っています。そういう科学的な評価をした論文がどれぐらいあるか分かりませんけれども、そういった観点に注目した議論がワーキンググループでも尽くされるといいなというふうに期待しております。
それから、ちょっと話は全然飛ぶんですけれども、6ページの評価に向けた検討課題で、⑧のステークホルダーからの意見・知見の収集というところと、⑪の効果的な発信方法というところに関してコメントしたいと思います。
報告書の主たる利用者として想定されている自治体とか事業者から、どんな影響があるかとか、心配かとか、そういうことを聞くのも大事かもしれませんけれども、やはり取りまとめに当たって、見せ方というか、どういった形で整理されていると使いやすいかとか、見る気になるかとか、そういったことをヒアリングするといいのかなと思っています。そのときに、やっぱり影響評価にかなり取り組んでいる模範的な自治体の担当者だけから聞くのではなくて、かなり苦労しているような、例えば小さい自治体の人にも聞くとか、そういう工夫が必要なんじゃないかというふうに想像しました。
今のは⑧についてで、それから⑪の結果の効果的な発信方法で、影響評価報告書が出たときに、多くの人に知ってもらいたいということが起きると思うんですけれども、それはやはり、この報告書が出たから知ってもらいたいという前の段階として、国民の関心のレベルといいますか、度々問題になっておりますように、日本人は、これは想像も入りますけれども、これだけ暑くても、あまり、これが人為起源の気候変動によるもので、温暖化が止まらなければ、このままさらにひどくなっていって、それを止めるということを世界が取り組んでいて、日本も取り組んでいて、自分もその一部であるといった認識が、あまりぴんときていない人がかなり多いんじゃないかという肌感覚を持っています。僕が講演等でそういうことを説明すると、かなり初めて聞きましたという感じのリアクションを受けることが多いということでありますので、これは、やっぱりコミュニケーションの問題は、この影響評価報告書の発信に限らず、もっと理解のベーシックな部分から、あるいは必要性の認識も含めて、環境省として一体的に、そこのコミュニケーションというのをもっと強化していかなくちゃいけないんじゃないかなというふうに思っております。
以上です。
 
●肱岡委員長
貴重なコメントありがとうございます。
最後の点も、影響評価を超えて、何か普及啓発に向けた取組があれば、お考えがあれば、何かコメントをお願いします。
 
●羽井佐気候変動科学・適応室長
ありがとうございます。前の小委員会でのご議論も含めてお聞きすると、影響評価報告書そのものの認識のアップというよりは、気候変動の取組に対する認識をアップさせていく、取組をぐっと強化するようなタイミングで、この報告書をうまく使っていくということが大事なんだろうなというふうに思っています。報告書ができるタイミングというのを見越しながら、他の部署でやっているデコ活とか、そういった普及の取組と合わせて仕込み・準備をしていくことが必要なんだろうなと思っており、そういう観点で考えてみたいと思いました。ありがとうございます。
 
●肱岡委員長
よろしくお願いします。
それでは、西井委員、お願いします。
 
●西井委員
西井でございます。
私からは、地域適応センターと、それから自治体の立場から、大きく2点意見させていただきます。
一つ目は、影響評価報告書を自治体が、影響評価や適応計画改定に活用できるようにするために考慮すべきことについてです。
報告書におきまして、先ほども沖委員からもご発言がありましたが、どこの地域、もしくはどのような特徴のある地域に影響があるかといった地域特性に関する情報をいただけると、自治体としてもその重要性を自分事として理解できますので、地域の情報をできるだけ盛り込んでいただければと思っております。
それから、これ毎度お伝えてしていて恐縮ですが、このような報告書も関係省庁に重要性を認識してもらって活用してもらえるような内容に取りまとめていただき、関係省庁から各自治体、各部署に情報を下ろしていていただきたいというのは、強く思いとしてはございます。
もう一つは、国民への認知度向上や情報発信等についての方法ということですが、一人一人に気候変動を自分事として考えてもらえるようにするには、やはり分かりやすい言葉で発信することが重要だというのは言うまでもないことだとは思います。私どもの地域適応センターも、府民向けのセミナーなどにおきまして、国のボリュームのある報告書から、地域に合った重要なポイントを見つけ出して、抜き出して、それを分かりやすく加工して、また伝えていくというのに結構苦労しているところでございます。
分量の多い資料って、なかなか一般の人には見てもらえないというところがありますので、少なくとも概要版につきましては、今100ページぐらいあるのを拝見しておりますが、特に重要性の高いポイントに絞って、分かりやすい言葉でまとめることも必要ではないかというふうに考えます。
また、普及啓発におきましては、インパクトのある言葉、キーメッセージを使うのも重要だと思っております。熱中症警戒アラートのキーメッセージは大変よい例だと思っております。自治体としては、国が言っていないのに勝手に危機に瀕しているといった激しい言葉をなかなか使いにくいというところがありますので、報告書作成に当たっては、ぜひ国からも率先して国民に正しく危機感を持ってもらって行動していただけるような、科学的根拠に基づいたインパクトのあるメッセージを発信していただきたいなというふうに思っております。
以上です。
 
●肱岡委員長
貴重なアドバイスありがとうございます。
それでは三島委員、お願いします。
 
●三島委員
三井住友海上の三島です。ご説明ありがとうございました。事業者の立場から一点だけコメントさせていただきます。
9ページのいろいろな影響評価についての記述があるところなんですけれども、科学的に影響評価をきちんと切り分けるのは恐らく難しいというか、不可能なんだろうなと思いつつ、考慮していただきたいなと思うのが、事業者の取組自体もかなり進化してきているので、5年前に比べると、悪化のスピードって若干緩和していてほしいなという思いが少しございます。2020年度当時というのは、TCFDもTNFDもございませんでしたし、今ですとネイチャーポジティブビジネスという観点で、事業者自身が生物多様性や自然資本の保全ということに積極的に取り組んで、そして適応だけではなく、緩和も引き続き頑張ってやっているところでございますので、何もしない状態、つまりbusiness as usualでいったときの直線に比べると、その上がり度合いというのは若干鈍化しているはずなんですね。ですので、影響評価をしていただく際には、そうした事業者どもの頑張りというか、何か好事例とか、そんなものも併せて掲載していただいて、こんなものの集合体として今のこの姿に落ち着いているんだと。こうした企業の取組がなければ、もっとひどいことになっていたのではないかというような、科学的にこれを実証するのは難しいことを承知の上で申し上げているんですが、そういった観点を入れていただけると、やっている者としては大変ありがたいなというふうに思います。
よろしくお願いします。
 
●肱岡委員長
コメントありがとうございます。産業経済活動は科学的に文献が非常に限られておりますので、今回それ以外の情報も加えるということはありますが、ぜひいろんな情報をいただければ、ワーキングのほうでも共有させていただきたいと思います。よろしくお願いします。
それでは、堀江委員、お願いします。
 
●堀江委員
私からは、思いついたアイデアを少しご紹介させていただきます。改めてご検討いただけましたらと存じます。
先ほどから、自治体で中間取りまとめをどのように活用するのかということが第3次評価に向けた検討課題と伺っております。令和2年12月公表のものが資料1の11ページに掲載されています。各分野の影響の概要が細かい字で記されていますが、自治体の担当としてこれを見たらどう思うかという視点で拝見しますと、なるほどこのようなこともあるのかと気がつくところで立ち止まってしまうおそれがあるのではないかなと感じています。これを受けて、各地域で何らかの具体的な取り組みをしようというアクションまで、なかなかつながらないような気がいたします。
そこで、私が思いついたアイデアというのは、決して私が一から考えたのではなくて、労働衛生の分野における原則に戻って考えたものです。いわゆる職場の危険有害要因を減らしていこう、安全に仕事をしようとするといろいろなものが無限に出てきます。そこで、優先順位をつけて課題を整理するために、本来、リスクアセスメントをすべきであろうと思います。現状は有害な要因、ハザードが列挙されているという段階なので、それぞれの自治体おいて、どの要因のリスクが高いかについて、本当は自治体ごとにアセスメントしてくれればいいんですが、難しいと思いますので、少し分かりやすくまとめた言葉を並べて、アクションチェックリストというのを作ってはどうかと思います。
アクションチェックリストというのは、実施の検討をすべき事項をチェックリストにするのですが、その語尾を「〇〇を実施する」という言葉で結んでいただいた選択肢を並べて、そのうち限られた個数だけチェックを入れていただくことで、優先順位を付けるやり方です。たくさんありますと、幾つ選ぶのが妥当か分かりませんが、選択肢数がnとしますと、√nぐらいを選ぶという方法があります。いずれにせよ何個か優先的に取り組む事項を選んでいただきます。それやる過程で何をするかということを考えていただけるのではないかと思います。やっているか、やっていないかというチェックリストではなくて、やるか、やらないかというアクションチェックリストにして示していくと、自治体としてすぐ取り組むかどうかを考える材料になるかなと思います。やることを、いきなり選んでいただくという方法です。
その際に、全く何もないと何をしたらいいか分からないので、私は、リスク低減対策の中身を少しプロセスに分けて考えています。大体四つか五つに分けますが、最初にやらなければならないのは、法令があれば法令の規定を守ることです。次にやるべきであるのが、原因対策です。例えば何か食料が手に入らなくなるとかいうのがあれば、例えば違う食料で代替できないのか、もちろん、社会への影響を多面的に検討しなければいけませんが、原因を完全に除去することです。その次にやるべきであるのが、人々の行動に依存しない工学的対策です。健康に悪影響を及ぼす要因は吸い出していてしまうとか、密閉してしまうとか、遠隔操作するとか、そういう工学的対策をやります。さらに、その次に、管理的対策です。ルールをつくって、その原因に近づかないようにするとか、あるいは交代制にして、1人の人がたくさん暴露されないようにするとか、そういう管理的対策をやります。それでも対策が不十分であるときは、最終的には個人を保護具で守ることを考えます。個人の行動に依存する対策を最後に検討します。
そういう優先順位でリスク低減対策を考えていただきます。自治体で具体的な対策を考えるのはなかなか難しいと思いますので、各地の好事例をアクションチェックリストの中に含めたり、リンクを示したりしても良いと思います。
もう一つのご提案ですが、職場の安全衛生対策では現場で定着させるのが難しいことも多いので、入り口のハードルを下げるために、いわゆるピクトグラム、漫画、絵表示をつけることがあります。また、職場ですぐ使えるパワーポイントや二、三分で視聴できるような動画で解説した資料を環境省のホームページに載せてはいかがでしょうか。何か自治体や国民の多くの方々に何となく興味を持ってもらうような施策があると普及しやすくなるのではないか、と思って発言いたしました。
以上です。
 
●肱岡委員長
いろいろアイデアをどうもありがとうございました。
それでは武藤委員、お願いします。
 
●武藤委員
ありがとうございます。私は国際協力の観点から2点述べさせていただきます。当然ながら、今回の議題である気候変動影響評価は日本のということだと思いますけれども、後で他の国からも参照されるということを考えますと、2点お伝えしたいことがございます。
1点目は、複合影響ですとか影響の連鎖の重要性です。日本を対象に考えますと、洪水、高潮、それから地滑りといった、日本らしい組合せになるんですけれども、国際場裏では、例えばソマリアでは干ばつの後、土壌劣化、洪水が起きてしまい、農地が放棄され、気候難民が増えて、それが都市に殺到して、紛争リスクも高まるという、そういった事象が報告されております。
日本ではそういう状況には、なかなかなりにくいですけれども、ただし、影響の連鎖の分析手法としてはそういうようなシチュエーションにも参考となるようなことを、ぜひお願いできればと思います。
2点目ですが、国際場裏では森林火災の話が出てきます。今回のご報告の中ではその言葉は見かけなかったのですけれども、何らかの形で分析手法の一環として組み込んでいただけると、後でほかの国が参考にしやすいと思います。例えば、JICAでは今、西バルカンで森林火災にEco-DRRも加えたキャパシティビルディングをやっておりまして、森林火災に国際的な関心が集まっているということはお伝えさせていただきます。
以上です。
 
●肱岡委員長
コメントありがとうございます。今の2点、もし何か分野のワーキングで情報があれば、共有いただけますでしょうか。
 
●池田気候変動科学・適応室室長補佐
すみません、まだこの辺りは検討ができておらず、本日の資料の内容もまだ更新まで至っていないような状況でして、今後、武藤委員からいただいたご意見も含めて、ワーキンググループ等でもご議論いただけたらと思います。また事務局でも検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。
 
●羽井佐気候変動科学・適応室長
IPCCの総会に出てきて、国際的な議論の中で、特に緩和と適応ということについてバランスが必要なんだという意見が多く聞かれました。国内で適応について取り組んでいることが国際的にどんなふうに参考事例になるのかなというのは、常に考えておかないといけないポイントだなというふうに思いましたので、今後のプロセスに反映できるものがあれば、取り組んでいきたいなというふうに思っています。
ありがとうございます。
 
●肱岡委員長
ありがとうございます。
それでは、オンラインから、長谷川委員、よろしくお願いします。
 
●長谷川委員
ありがとうございます。農研機構の長谷川です。私からはコメントでなく、2点質問です。
一つ目は、7ページの上にある項目で、「適応計画等とのデマケ」という言葉についてです。この表現がわかりにくかったので質問させていただきます。①の論点の一番上のところに、「適応計画等とのデマケ」という言葉がありますが、この影響評価報告書では、適応がある場合とない場合でどのような影響の違いがあるか、適応技術がどのような効果があるかということを示し、適応計画はそれらを今後どのように発展させていくか、計画していくかということを示すものと認識しています。したがってデマケの必要があるかというのが一つ目の質問です。違いは明確なのではないかと思いました。
もう一つは、8ページの下のほうにありますが、皆さんも話題にされていた「検討経緯」の一つ目の項目です。政策決定者向けのメッセージについてですが、盛り込むことは賛成です。ただし、例えばIPCCの場合は、国際機関ということもあって、policy-relevantではあるけれども、policy-prescriptiveではないという、政策を規定するようなメッセージは発しないというのが明確な方針があります。今回の影響評価報告書において、他省の政策も規定するような内容をどこまで記載する用意があるのかどうかというのを確認させてください。よろしくお願いします。
 
●肱岡委員長
ありがとうございます。それでは事務局、お願いします。
 
●池田気候変動科学・適応室室長補佐
長谷川委員、コメントいただきまして、ありがとうございます。
まず、適応計画等とのデマケいうところですが、もともと適応策に関しての情報を収集して追加するとなったときに、少し整理が必要でないかというところが出発点で、影響評価の取りまとめをする以外に、ややもすると適応策のところまで言及していくと、政府の意思決定である適応計画ともバッティングしてくるんじゃないかというところ、当初デマケが必要ではないかということで議論させていただいたんですけれども、その後、概ね整理がついてきたかなというところでございますので、長谷川委員がおっしゃっていただいたとおりで、基本的には当初の論点として整理をさせていただいて、今のところ方針としては落ち着いていると考えております。最終的なアウトプットをどうしていくかというところは課題としては残っていますが、コメントいただいたとおりかと思います。
あと、2点目でございますが、影響評価の観点での政策決定者向けのメッセージということではありますが、それがまた、さらには適応計画にも直結していきます。また、影響評価報告書の取りまとめに当たっても、関係機関との協議を行いますので、どういったメッセージであれば、影響評価報告書の中で取りまとめができるかというところは、各省とも協議を重ねながら、また、かつワーキンググループの中でもご議論いただきながら、整理できればと考えております。
以上でございます。
 
●長谷川委員
分かりました。心してそのように取りまとめのほうに努めさせていただきます。ありがとうございました。
 
●肱岡委員長
ありがとうございます。メッセージという単語自体が何かを伝える形になると思いますので、ここに書かれているように、要約という、いわゆるSummary for Policymakersという意味では要約ですので、そのほうが結局、いっぱいあった情報を、こう簡潔にまとめたというほうが多分ご理解いただけるかもしれません。ご検討ください。
それでは、オンラインから渡部委員、お願いします。
 
●渡部委員
東大の渡部です。大変ご苦労さまです。
二つありまして、ちょっと僕前回欠席したので、何か議論を蒸し返すようなことになっちゃったら申し訳ないんですが、既に出ていた意見でもあるんですが、やっぱりフィードバックですね、前回の報告書が出た後に、地方自治体だったりにヒアリングとか行われていないのかなと思うんですが、間違っていたら後でちょっと訂正していただきたいんですが、どれだけのフィードバックを受けたのかというのをちょっと後で教えてください。
何でそこを気にするかといいますと、気象庁のほうの気候変動2025は、構成を確定する前に自治体にヒアリングを行ったそうでして、どれがどのぐらい参照されたかというの聞いているんですね。それで、ご存じだと思うんですが、影響評価報告書の総説、詳細、概要に対応するものが向こうにあって、プラス都道府県のリーフレットという、各都道府県ごとにシートとして用意したものがあって、それが一番参照されたという結果なんですね。
ここは既にご意見が出ていたことなんですけれども、分野ごとにまとめるという軸と直交するような形で、都道府県レベルでまとめるというのは、やっぱり影響評価報告書でもあったほうがいいんじゃないかな。もしフィードバックをちゃんと受けていたら、そういう要望を受けられているんじゃないのかなと想像するんですね。そこが一番気になりました。
労働が増えてしまうので、どうしてもというのは、なかなか言いにくいところはあるんですけれども、やっぱりユーザーから見たときに、自分の住んでいる、市区町村のレベルは無理かもしれないですが、県ではというのが、すごく知りたい情報なんだろうなというふうに想像します。
2件目なんですけれども、これは資料2-1の12ページですかね。対応方針の④というところで、前回から今回でAR6に対応する形で、1.5~2℃それから3~4℃というふうに分けて、それぞれを時間軸上でシナリオごとに、2度だったらいつ頃というのを示すのは、これは大賛成で、もっと分かりやすくしなきゃいけないと思うところなんですが、気になるのが、くくりが荒っぽくないかなということでして、AR6とかだと1.5℃と2℃というのを、かなり議論して、それぞれ評価しているのに対して、ここは1.5~2℃というふうにくくっちゃっていますよね。それでいいんだろうかというのが気になった点ですね。
それで、多分これも気候変動2025ときちんと対応づけることになると思うんですけれども、あちらは依然として1.5℃、2℃、4℃というふうに幅を持たせていないので、そこを整合性を持たせるというか、もう1回検討していただければなというふうに思いました。
以上です。

●肱岡委員長
ご意見ありがとうございます。それでは事務局、お願いします。
 
●池田気候変動科学・適応室室長補佐
渡部委員、ありがとうございました。
2次の影響評価のときに、地方自治体のヒアリング等を行ったかどうかというと、すみません、そこの辺りは確認が必要になりまして、またどういった経過で取りまとめたとか等については、またご報告できればと考えております。
あと一方で、日本の気候変動の取りまとめに当たって、地域バージョンをつくっているというのは私も認識しておりまして、一方で、そういった影響評価も、そういった地域ごとでできれば、確かに分かりやすいのかなと思うところもございますが、その辺り、地域ごとでの影響に関しての知見がどこまで得られるかというところもございまして、もちろん今の議論の中で地域性に配慮するといった一方で、完全に例えば都道府県とかごとに分けて整理することができるのかどうかというところも、なかなかハードルが高いのかなというふうには思うところもございますが、ただ、大変貴重なご意見として、今後の検討の参考にさせていただければと思います。一点目は以上でございます。
2点目でございますが、こちらも、日本の気候変動の2025の状況も踏まえてのコメントかと存じますので、その状況もこちらでも確認させていただきつつ、こちらも同様に、三つの区分に、現状と1.5~2℃、3~4℃としつつも、どこまで科学的知見において区別して評価できるかというところも、今確認中でございますので、そういった状況も踏まえて、細かく1.5℃、2℃と分けた評価ができるのかどうかというところもございますので、その辺りも含めて今後検討してまいりたいと思います。
以上でございます。ありがとうございました。
 
●肱岡委員長
よろしくお願いします。
それでは、オンラインから今田委員、よろしくお願いします。
 
●今田委員
ご説明どうもありがとうございました。東京大学の今田です。
私からは、資料2-1の17ページにありました知見の収集・整理方針に関する部分について、情報提供という形でコメントさせていただきます。
特に文献化していない情報を取り入れることが重要であるということで、その中で近年の極端事象についての言及がありました。特に2023年の猛暑等ということでしたが、こういった情報は特に国民の認知度向上という観点では、本当に有効だろうというふうに考えておりまして、先ほど沖先生のほうからも、全てが気候変動のせいではなくて、何%が気候変動の影響なのか、そういうことを科学的に示すことが重要というコメントがありました。イベント・アトリビューションに関する言及でもあるわけなんですけど、私自身がイベント・アトリビューションの現場で活動しておりますので、その当事者として最近の現状を共有させていただきたいと思います。
これまでの議論もあったとおり、イベント・アトリビューションは情報を特に迅速に社会に情報発信することで、こういった影響評価の観点でも非常に重要で、国民の認知度にもつながるということで、重要だという認識はこれまでも議論されてきました。
そういった認識の下、我々も、ここ数年は論文化を待たずにプレスリリースを行うという取組をやってきました。ただ、これでもやっぱり足りていないということで、近年欧米では、何かイベントが起こると、イベント・アトリビューションの結果をホームページ上で即時に情報発信するという取組がだんだん盛んになってきておりまして、こういった取組を日本もぜひやるべきだということで、今計画を進めているところでありますので、そういった情報も今後、影響評価報告書の参考になるだろうと思っておりますので、ぜひ、引き続き情報を提供させていただきたいと思います。
以上です。
 
●肱岡委員長
情報共有をどうもありがとうございました。
それでは、オンラインから三村委員、よろしくお願いします。
 
●三村委員
三村です。どうもありがとうございます。
私からは1点、報告書は総説と詳細になっているわけですけれども、報告書の位置づけと役割分担について、お話をしたいと思います。
この報告書のオーディエンスは、度々言われていますけど、政府とか各省という政府レベルの政策決定者、それから自治体、事業者、それからさらに幅広く国民全体が対象と、こうなっているわけですよね。それに対して、必要な情報、どういう情報を提供したいかというのは、今日の議論でもいろいろ出てきておりますけれども、これまでと比べて、どんどん情報が幅広くなっていて、それから量も増加していると。そうすると、これだけレベルの違うオーディエンスに対して、これだけ多様な情報をどういうふうに仕分けしてまとめたらいいだろうかというのが問題になると思うんですね。
私の意見は、総説と詳細というのを分けて出すのはいいんだけれども、この二つだけで全ての話題を全ての詳細さにおいてカバーするのは難しいんじゃないかと。つまり、この評価報告書が出たとき、あるいはその前後も含めて、環境省のほうで国民の認知向上とか、そういう幅広い層に対して働きかけるものについては、別途広報の計画や、パンフレットとか、あるいは特定地域の情報の供給とか、あるいはA-PLATの活用とか、そういうものも含めて、全体としてどういう情報を発信するかということを考えて、その中のどの部分を総説と詳細が担うのかというふうに考えるのがいいんじゃないかなというふうに思います。
今回やっているレビューから、どこが重要かというのは出てくるでしょうから、その切り分けをするということですね。
その上で、詳細は、前回の報告書を読ませていただいても、詳細のところは非常に具体的な情報が入っていて、読んで、なるほどこれは我々にとって重要だなと思える情報がたくさんあります。それを継承して、地域ごとの影響だとか、今日いろいろご意見が出た地域や事業者の影響とか、なるべく詳しく整理して、新しい情報も加えて提供するというのがいいと思います。
総説は、それの中で影響に対する基本的な見方、今後の気候変動、温暖化の影響が日本社会にとってどの程度の意味を持ってくるのかとか、あるいは対策の考え方、適応策をやるというときに、どういう選択の仕方があるのか、あるいは適応策と緩和策の関係はどういうふうに考えたらいいのか、緩和を努力することが適応の可能性をさらに広げると、そういうような方向の取組はどうしたらいいのかとか、そういう国民に知っていただきたい基本的なエッセンスのようなものを明らかにしておくのがいいと思います。そのエッセンスに沿って、今日出たような地域ごとの情報の提供とか事業者に対する情報の提供とか、あるいは若者とか国民の各層に対する情報をどう発信するかとか、あるいは海外に向けてはどういうことが必要だとか、そういうことを考える上で、ベースになる見方が総説には全部含まれていると、そういうような構成にするのがいいと思います。総説と詳細で全部をカバーしようとするのではなくて、それを軸にして、さらに大きな情報の発信、伝達の在り方というのを検討すると。そういうような構想にしていただくのがいいんじゃないかなというふうに思います。
以上です。
 
●肱岡委員長
貴重なアドバイスをありがとうございます。事務局から何か回答があれば、お願いします。
 
●池田気候変動科学・適応室室長補佐
三村委員、どうもありがとうございます。
ご指摘いただいたとおり、なかなか今の総説と詳細だけで全てカバーするというのが、なかなか難しい面もあるかなと担当者としては感じていたところでございますので、また、やはり影響評価につきましては、報告書の取りまとめもさることながら、それをいかに発信していくかというところを、事務局においても、パッケージとして考えて示していく必要があるというところを、コメントをいただきまして、感じたところでございます。
引き続き、いただいたご意見を基に検討してまいりたいと思います。
 
●羽井佐気候変動科学・適応室室長
すみません、ほぼ一緒ですけど、江守委員からのご指摘とも非常に関連するお話だなと思っていまして、全体としてどう情報発信していくかを、この時点からちゃんと戦略的に考えろということだと思いますので、検討したいと思います。
 
●肱岡委員長
ありがとうございます。
挙手いただいた委員の先生方から、ご意見どうもありがとうございました。もう少し時間がありますので、追加のご意見、もしくはまだご発言されていない委員の先生方から何かあれば、よろしくお願いします。
江守委員、よろしくお願いします。
 
●江守委員
ありがとうございます。ちょっと時間があるようなので、先ほどの渡部委員からの二つ目のご指摘の、影響取りまとめの温暖化レベルの幅についてなんですけれども、聞きながら感じたことは、恐らくそれはテクニカルな問題で、気候のプロジェクションの場合には、手元にデータが全部あって、それを使ってぴったりとした温暖化レベルで結果は整理しやすいんだと思いますけれども、影響の場合は、いろんな論文に載っている結果を、シナリオのどれを使ったかとか、何年断面かということを頼りに整理しているんだと思いますので、そうすると、ご存じのように、モデルによって同じシナリオでも温度上昇の幅があるなどの理由で、そういったまとめ方になるということが起きるのかなと。
違うシナリオに関して、ざっくりとまとめている部分に関しては、もしかしたら検討の余地がありますけれども、その一つのシナリオでも幅があるというのは多分そういうことで、それはIPCCの報告書の図とかを見ていても、影響評価の図は結構温暖化レベルで幅がある表記をしているなというふうに思っていたので、そこはそういう問題もあるのかもしれないと思いました。コメントです。
 
●肱岡委員長
コメントありがとうございます。渡部委員、何かございますでしょうか。
 
●渡部委員
すみません、僕はIPCCでもワーキンググループ2は関係ないので、そちらはそういう表記なんだというのは今知ったんですけれども、エビデンスとか、科学的な知見が足りないのであればしようがないかもしれないんですけれども、一方でやっぱりこれを読む側から見たときに、温暖化レベルに幅があって、それぞれの温暖化レベルがいつ実現するかという評価にも幅があるみたいな形だと、いつまでに適応施策を考えればいいかというのが分からなくなってしまうのではないのかなというふうに思ったんですが、しようがないんですかね。
 
●肱岡委員長
私が回答するのもあれですけれども、おっしゃるとおり、例えば2050年に何度気温上昇するかというときに幅があって、それに対して適応をどうすればいいかというのは、もちろん、高いところで適応するのか、一番低いところで最もコストをかけてやるのかというのは、それはもちろん計画とかの優先度になりますので、少し幅があっても、例えばそれが1.5~2℃という幅であるのか、3~4℃という幅であるのかによって、適応の取り組む取り組み方だとか、取り組む、どれぐらい注力しないといけないのか変わってきますので、少なくともそれが1℃とか1.5℃とか2℃として決まらなくても、それは適応の取り組み方というのはできるかと考えております。
いずれにせよ、ワーキングではどういう資料を使われていて、どの程度の情報の粒度があるかというのは、すみません、まとめていただいて、次の委員会でご報告いただければと思います。
それでは三村委員、よろしくお願いします。
 
●三村委員
どうもありがとうございます。度々ありがとうございます。
今日出た意見の中で関係することを言われた方もおられたんですけれども、日本社会の今後の大きな変化、人口の減少とか高齢化などと、そういうことが進行する中で、気候変動の影響も現れてくると。その相互関係というか、複合的な効果というのを見ておくというのが、非常に重要なんじゃないかと思うんですね。
例えば、今S-18の代表をやらせていただいているんですけれども、漁業だと、魚種が海域の水温の変化など様々な条件で、どんどん変化すると。それで日本の漁業をどう維持していくかということを考えると、逆に沿岸の漁村の人口がどんどん減っていくとか、あるいは漁業を継続してくれる若い人たちが参加してこないとか、農業でも同じような事情があると思いますけれども、そういうことの効果と複合的に重なって、どういうシナリオが描けるのかというのは、すごく苦労している面があるんですね。ですから、そういうようなことを重ねて考える。勢一委員だとか、あるいは自治体の委員の方もおっしゃっていましたけれども、適応計画というのは、気候変動の悪影響にどう対応するかだけじゃなくて、その地域の社会的な変化、将来像をどういうふうに描くかという問題と一緒になって、他の政策課題、産業の活性化とか、あるいは生物多様性の維持だとか、いろいろなそういうものと重なった形で構想されることが多いというのは、そういう理由があるからだと思うんですね。
ですから、今言ったようなことをどうやってこの報告書の中でちゃんと表現するかというのは、非常に難しいところかもしれませんけれども、そういう見方をすることが、自治体だとか社会の中で理解をされていく必要な条件なんじゃないかなと思います。
以上です。
 
●肱岡委員長
貴重なご意見、どうもありがとうございました。
それでは沖委員、よろしくお願いします。
 
●沖委員
一つ戻りますけれども、先ほどの渡部委員からの、幅があり過ぎるんじゃないかというコメントですけれども、考えてみますと、あそこで言っている温暖化レベルというのは、全球平均気温の上昇量で、同じように全球平均気温が上がっても、気候モデルの結果によって、例えば日本のこの市区町村で雨が増えるのか減るのかとか、気温がどうなるかというのは、あるいは季節変化がどうなるかというのは、大分違う場合があるわけですね。
なので、あまり逆に確定的にこんなふうになるという情報よりは、やはり最初に申し上げましたとおり、影響はあるかないかではなくて、例えば豪雨が1.2倍になるのか、1.4倍になるのかとか、そういう幅があるんだということを理解していただいた上で、優先度、これは特にやっぱりこの地方、このセクターでは危険ですよといった情報が非常に有効になってくるんじゃないかなと思いますので、あまり確定的だという情報のほうが、むしろ危険かなというふうに私は思いました。
以上です。
 
●肱岡委員長
貴重なコメント、ありがとうございます。
その他、追加のコメント、質問等はございますでしょうか。オンラインの先生方もよろしいでしょうか。
それでは、どうも貴重なご意見、質問をどうもありがとうございました。少し早いですけれども、ここで終わりとさせていただきます。
それでは最後の議題に移らせていただきます。次の議題はその他となっております。事務局から何かございますでしょうか。
 
●池田気候変動科学・適応室室長補佐
特にございません。
 
●肱岡委員長
ありがとうございます。
それでは最後に、これまでまとめて何か言い残したご意見、質問等がございましたら、挙手いただけますでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、少し早いですけれども、これにて本日の議事を終了したいと思います。
それでは事務局にお返しいたします。
 
●羽井佐気候変動科学・適応室長
皆様、活発なご議論いただきまして、大変ありがとうございました。いつも大所高所から、私たちの考えのあまり及んでいなかったところをご指摘いただきまして、大変ありがとうございます。今回も特に普及啓発の部分では、影響評価報告書というのが本当に重要なタイミングにとりまとまり、それに合わせていろんなところと連携して、重要な情報をツールとして活用する作戦を、今のうちから練っておかないといけないなというふうに思いました。ちゃんとそういうふうに進めていきたいなというふうに感じました。
引き続き、2025年度の公表に向けて作業を行ってまいりたいと思います。今後、3回程度、小委員会への報告というタイミングがあります。ワーキンググループ自体は環境省の事業の中で回していっているものなので、この小委員会の下にぶら下がる形の組織体系にはなっていないですが、皆様にご報告をして、またフィードバックをいただくことで、小委員会での影響評価ということがきちんと進むようにしていきたいと考えております。引き続き、どうぞご協力をよろしくお願いします。
本日は、改めましてご参加いただきありがとうございました。対面、オンラインでのハイブリッドで不便があったかもしれませんが、この場合はお詫びを申し上げたいと思います。
議事録は今後事務局にて取りまとめて、皆様にご確認をいただいた上で、環境省ホームページにて公開させていただく予定です。次回の小委員会は3月頃を予定しております。きっと過ごしやすくなっているはずですので、それまで本当に暑いところ、皆様体調の管理にはご留意いただきまして、また次の機会に元気でお会いしたいと思います。
どうも今日はありがとうございました。