気候変動影響評価・適応小委員会(第1回)議事録

日時

令和6年1月23日(火)10:00~12:05

場所

WEB 会議システムを併用したハイブリッド形式で開催。併せて YouTube チャンネルでライブ配信を実施。

議事次第

1.開会

2.議題

(1)気候変動影響評価・適応小委員会について

(2)気候変動適応法の施行状況について

(3)その他

3.閉会

議事録

●気候変動適応室長

おはようございます。定刻となりましたので、ただいまより第1回中央環境審議会地球環境部会気候変動影響評価・適応小委員会を開催いたします。進行役を務めます、環境省気候変動適応室長の中島と申します。本日はよろしくお願いいたします。
はじめに、環境省地球環境局長の秦よりご挨拶申し上げます。
 

●地球環境局長

皆様おはようございます。本日は、気候変動影響評価・適応小委員会に、皆様ご多用の中ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。
適応法も施行から5年経過いたしまして、法律上、検討を加えることになっておりますので、このような会議体を持たせていただきました。
この5年間の間に、国はもちろん、自治体側でも適応関係の部署、あるいは地域の適応センターを設置していただいており、それぞれの地域でどういう現象が今後起きていくのかといったシミュレーションを進めていただきました。この検討には、国立環境研究所からも多大なるご協力をいただいたということに感謝を申し上げたいと思います。
こうやって足場固めをしてきて、今後いよいよ具体の適応策について、それぞれの地域で何をしていくかということを検討していく。あるいは、国レベルとしても何をしていくか、具体にどういうことに取り組んでいくのかをやっていかなければならないステージに入ってくると思っています。
一方で、日本に限って言えば、国民の皆さんは必ずしも適応について強い関心をお持ちかというとそうでもない。気候変動に関する、例えば報道ぶりを見ても、ほぼほぼ緩和、要するに排出削減ですね。こちらに相当偏りが見られます。一方で、昨年の夏は大変な猛暑であったり、実感はするんだけど、では適応策に考えが行っているかというと、まだそこまでではいっていないようにも思っております。
そういった点も、しっかり国民の皆さんに共有していただいて、とにかく今、手を打っておかないと先々困るという問題でございますので、そういったところの関心を高めていくというのも、我々にとっては大切な仕事だと思っています。
今日は第1回目ということで、まずは進行状況について、先生方の皆様から忌憚のないご意見を頂戴しつつ、今後の対応について考えてまいりたいと思っております。
本日はよろしくお願い申し上げます。


●気候変動適応室長

本日の会議は、現在、委員総数の過半数以上の17名の委員にご出席いただいており、定足数に達しておりますことをご報告いたします。
本日の小委員会は、対面、オンラインのハイブリッド形式での開催となります。また、この会議は、環境省の公式YouTubeチャンネルよりライブ配信を行っています。資料及び議事録については、ホームページにて公開とさせていただきます。対面、オンラインのハイブリッド形式での開催となり、委員の皆様にはご不便をおかけしますが、何とぞご容赦願います。
Web参加の委員の皆様は、何かご不明な点がありましたら、事務局まで、右下のチャット欄か、事前にお伝えした電話番号までお電話にてお知らせください。
続いて、資料の確認をさせていただきます。画面上に配付資料一覧を表示しますので、それに沿ってご連絡いたします。
資料は、資料1-1、1-2、2-1、2-2、3-1、そして参考資料1となっております。
各資料については事前にお送りいたしておりますので、Web参加の皆様は、お手元にご準備をお願いいたします。
事前送付資料からの変更箇所についてはその都度ご説明いたします。
委員構成につきましては、このたびの小委員会の改組に伴い、大きく変更しておりますので、五十音順でご紹介させていただきます。資料1-2に委員名簿を付けてございますが、ご所属とお名前のみ、簡単にご紹介させていただきます。
NPO法人気象キャスターネットワーク、井田委員。
 

●井田委員
よろしくお願いいたします。
  

●気候変動適応室長
東京大学大気海洋研究所、今田委員。
 
●今田委員
よろしくお願いします。
 
●気候変動適応室長
東京大学未来ビジョン研究センター、江守委員。
 
●江守委員
よろしくお願いします。
 
●気候変動適応室長
東京大学総長特別参与、教授、沖委員。
 
●沖委員
沖でございます。よろしくお願いいたします。
 
●気候変動適応室長
東京都立大学、奥委員。
国立感染症研究所、葛西委員。
東京大学大学院工学系研究科、栗栖委員。
丸井グループ執行役員、サステナビリティ部兼ESG推進部長、塩田委員。
西南学院大学、勢一委員。
 
●勢一委員
よろしくお願いします。
 
●気候変動適応室長
京都大学防災研究所、中北委員。
大阪府立環境農林水産総合研究所、西井委員。
 
●西井委員
よろしくお願いいたします。
 
●気候変動適応室長
農業・食品産業技術総合研究機構、長谷川委員。
 
●長谷川委員
よろしくお願いします。
 
●気候変動適応室長
国立環境研究所、肱岡委員。
 
●肱岡委員
よろしくお願いします。
 
●気候変動適応室長
産業医科大学教授、堀江委員。
 
●堀江委員
よろしくお願いします。
 
●気候変動適応室長
那須塩原市気候変動対策局長、松本委員。
 
●松本委員
よろしくお願いいたします。
 
●気候変動適応室長
三井住友海上火災保険株式会社経営企画部長、三島委員。
 
●三島委員
よろしくお願いします。
 
●気候変動適応室長
茨城大学地球・地域環境共創機構特命教授、三村委員。
 
●三村委員
よろしくお願いします。
 
●気候変動適応室長
国際協力機構上級審議役、武藤委員。
 
●武藤委員
よろしくお願いいたします。
 
●気候変動適応室長
国立環境研究所生物多様性領域長、山野委員。
そして、東京大学大気海洋研究所、渡辺委員。
 
●渡辺委員
よろしくお願いします。
 
●気候変動適応室長
以上、20名の先生方でございます。本日は、塩田委員、中北委員、山野委員のご三名がご欠席となっております。また、委員長は、肱岡委員にお願いしております。
それでは議事に入らせていただきます。
議事中、委員長及び発言者以外のWeb参加の皆様は、基本的にマイクをミュートに設定をお願いいたします。回線負荷を回避するため、ご発言時以外はカメラの使用はお控えください。画面の下にあるカメラのアイコンをクリックし、カメラをオフにしてください。
ご発言される際は、対面でご参加の皆様はネームプレートを立ててください。オンライン参加の皆様は、ご自身の名前の右側にある手のマーク、挙手ボタンを押してください。委員長が順番に指名いたしますので、マイクのボタンを押してミュートを解除し、ご発言ください。ご発言が終わりましたら、マイクをミュートにし、再度挙手ボタンを押して挙手を解除いただきますようお願いいたします。
ご発言の際は、最初にお名前をおっしゃってください。マイク、デバイスに物理的なミュートスイッチがある場合は、オンにしておいてください。ご発言時以外にも、ご意見、ご質問がある場合も、チャット欄をご活用いただければと思います。
それでは、以降の議事進行につきまして、肱岡委員長にお願いいたします。
 
●肱岡委員長
ありがとうございます。改めまして、委員長を務めます肱岡でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
先ほど局長のほうからもありましたけれども、気候変動適応法、5年たちまして、やっとその状況が整ったという状況にあると思います。ということで、やはり、これから次にどういう方向性を持って実践するかというところが大きな課題だと思いますので、ぜひ委員の先生の方々は、厳しい意見の中にも、どういう道筋が見えるか、ヒントをいただければと思っておりますので今日はよろしくお願いいたします。
それでは、本日最初の議題は気候変動影響評価・適用応小委員会についてです。
事務局より説明をお願いいたします。
 
●気候変動適応室長
それでは議事1、資料1-1をご覧ください。
気候変動影響評価・適応小委員会の設置につきまして、昨年の6月に地球環境部会で決定してございますので、改めまして、改組に伴う小委員会の設置要項につきましてご紹介させていただきます。
添付されておりますとおり、地球環境部会に気候変動影響評価等小委員会でございましたけれども、それを改組し、気候変動影響評価・適応小委員会を改めて置かせていただきました。
そして、2ポツにございますように、この小委員会のマンデートといたしまして、気候変動適応法の規定に基づき、気候変動影響の評価、同法の施行状況の検討及び検討結果に基づく所要の措置等について審議するということになっております。
また、資料1-2に、先ほどご紹介いたしました委員名簿をつけておりますので、ご参照いただければと思います。
以上でございます。
 
●肱岡委員長
ありがとうございます。これ、1-2の説明は大丈夫ですか。
 
気候変動適応室長
資料1-2は名簿でございます。
 
●肱岡委員長
それでは、今のご説明につきまして、何かご質問等ございますでしょうか。
よろしいでしょうか。設置の目的ということでご理解いただいているかと思います。
それでは、次の議題に移らせていただきます。次の議題は、気候変動適応法の施行状況についてです。
それでは、事務局よりお願いいたします。
 
●気候変動適応室長
それでは早速、資料2-1をご覧ください。
この資料は非常に大部になっておりまして、全体で70ページほどございます。今日、全てをご説明することはできないと思いますので、この資料の中からポイントをかいつまんでご紹介したいと思います。参考資料も、後ろにかなりついておりますので、また必要に応じてご参照いただければと思います。
それでは、気候変動適応法の施行状況についてということで、次のページをお願いいたします。
今日ご説明する項目といたしまして、そもそも気候変動適応とは、そして、気候変動適応計画、気候変動影響評価、地域の適応の強化、民間企業・市民の適応、科学的知見の強化と情報発信、国際展開ということになります。この適応法に規定された条文については、参考資料としてお配りしておりますけれども、主に法律の条文の規定に基づいた施行状況について、項目立ててご紹介していきたいと思います。
それでは、気候変動適応についてということで、3ページ目をご覧いただけますと、これは概念図ですけれども、気候変動対策としまして、緩和と適応がございます。先ほど局長からもご紹介いたしましたけれども、このうち緩和、つまり温室効果ガスの排出抑制につきましては、地球温暖化対策推進法という国内法がございます。
他方、適応につきましては、既に生じている、あるいは、将来予測される気候変動の影響による被害の回避・軽減対策を取るということでございまして、これについては気候変動適応法で、国内法としてカバーしているという構造となっています。
4ページ目につきましては、世界と日本の平均気温の変化を示していますけれども、日本の年平均、気温の偏差をご覧いただけますと、世界的にも上昇しておりますが、日本でもかなり、世界を上回る割合で上昇しているということがこのグラフから読み取れるかと思います。
そして5ページ目に、気候変動適応法成立までの経緯について、流れを示してございます。
適応策につきましては、従前より各省庁含めまして実施しておりましたけれども、国際的な動向も踏まえつつ、国内での法制化に向けた検討が開始され、国会における議論等々を経まして、平成30年に気候変動適応法の成立、6月に公布、12月に施行されたということでございます。また、この施行を踏まえて、気候変動適応計画の策定がされております。
また、昨年の5月には、気候変動適応法の改正を行いまして、特に熱中症の対策の強化について規定された状況でございます。
6ページ目に、この適応法の概要について示しております。
まず適応法の総合的推進として、国が気候変動適応計画を策定し、その進展状況について、把握・評価手法を開発しながらフォローアップをしていく。また、気候変動影響評価を概ね5年ごとに行い、その結果等を勘案して計画を改定していくということが定められております。
また、2ポツ目に、情報基盤の整備といたしまして、国立環境研究所の役割を位置づけてございます。そして地域での適応の強化として、都道府県、市町村におきまして、地域気候変動適応計画の策定の努力義務がおかれています。また、適応の情報収集、提供等を行う体制としまして、地域気候変動適応センターを確保する、こういった努力義務がございます。
最後に、適応の国際展開として、国際協力を推進していくことが位置づけられております。
また、先ほどちょっとご紹介いたしましたとおり、昨年の改正によりまして、熱中症対策の推進、熱中症に特化した実行計画の策定等が規定されたところです。
7ページ目をご覧いただきますと、環境省が旗振り役となりまして、この法律の施行、取りまとめをしているという構造になっております。
環境大臣を議長とし、関係府省庁により構成される「気候変動適応推進会議」を設置し、連絡体制を確保しながら、政府が率先して総合的・計画的に適用施策を推進するということになってございます。
このように各省庁の連携を確保しつつ、適応政策、関係する防災ですとか、農林水産施策、そして生物多様性施策との連携を確保していくことが、この法律上にも明確に位置づけられております。
そのような施策の連携につきまして、8ページ目以降に幾つかご紹介しています。
8ページ目、防災との関連といたしまして、令和2年には「気候変動×防災」ということで戦略を策定し、今後の方向性、取組例について公表したということがございます。
9ページ目、10ページ目に、この戦略、共同メッセージの概要と詳細につきましてご紹介しております。防災の施策の中に気候変動の適応を入れ込みながら主流化をし、また、脱炭素への動きも踏まえつつ、防災力の高い社会の構築に向けた包括的な対策を推進していくという内容になっています。
そして、生物多様性との、施策との関連につきましては、12ページ目以降にご紹介しております。特に、適応との関連が深いトピックとしまして、13ページ目にありますように、生態系を活用した防災・減災措置ですね。事例といたしまして、例えば、遊水地や水田、保全・再生された湿地の活用による洪水の緩和ですとか、浸水被害の緩和、これらを気候変動の適応施策の事例として取り上げております。こういった取組についても、生物多様性国家戦略の中に位置づけ、推進をしていくということが盛り込まれているところでございます。
そして15ページ目には、農林水産省の気候変動適応計画についてもご紹介しております。
このように、各分野の施策の中に、きちんと気候変動適応を織り込んでいく、主流するということでありまして、この5年間の中でも、大きな動きが生じているところでございます。
続きまして、気候変動適応計画、16ページ目以降です。
法律第7条、第8条に基づきまして、気候変動適応計画を策定、閣議決定しており、18ページ目に適応計画の概要をお示ししてございます。目標、七つの基本戦略、そして具体的な適応策につきまして、各分野ごとに取りまとめたものです。この中に、政府、地方公共団体、事業者、国民など、各主体の基本的役割についても改めて位置づけているというようなことでございまして、このような計画の下で、関係府省庁が緊密に連携しながら適応を促進していくということが具体的に位置づけられております。
19ページにその進捗管理といたしまして、PDCAサイクルの下で的確な進捗管理を行うために、KPI、インディケーター、進捗管理のための指標の設定を行っておりまして、毎年度のフォローアップを実施しています。
例えば、ここでも紹介しておりますけれども、分野別施策の中でも、気候変動の影響を踏まえて、例えば河川整備計画の策定数ですとか、または、法律に基づく地域適応計画を策定した自治体の数等々ですね。なかなか定量的な指標を設定することが難しい分野ではございますけれども、このようなKPIの設定と進捗管理を行っています。
20ページ目に、このPDCAのサイクルの概念図もお示ししておりまして、適応法施行以降、今回が5年後の施行状況の検討という段階ですが、計画の改定、そして毎年のフォローアップ、そして中期長期的な気候変動適応の進展の把握・評価についても、現在、検討を進めているところでございます。そして、2026年には適応計画の改定の年度を予定しているというようなサイクルになっております。
22ページ目以降につきましては、気候変動影響の評価、第10条に規定される影響評価について、23ページ目に実施体制を示しております。中央環境審議会地球環境部会での審議を経て公表されるという内容でございまして、環境省が全体の取りまとめ役を担いまして、分野別のワーキンググループの設置、そして座長間会合の設置、これらでご議論をいただき、取りまとめた影響評価報告書を、またこの小委員会にも報告をしながら、最終的に中環審に上げていくというようなプロセスとなっております。
前回の影響評価報告書につきましては、24ページ目にございますように、令和2年に適応法に基づく初めての影響評価報告書を公表しています。実は、全国での影響評価報告書については法律の施行前に一度、第1回の報告書が公表されておりますけれども、法律に基づく報告書については、この令和2年度のものが初めて、かつ最新のものとなっていまして、気候変動による影響が重大で緊急の対策が必要であることが示されたという内容になっております。科学的なデータ、様々な文献を収集しながら全国の影響評価を行い、公表していくと。そして、このような影響評価の結果に基づいて適応計画を作成または改定する、5年ごとに改定していくというプロセスでございます。
そして地域の適応の強化といたしまして、26ページ目以降に取組をご紹介をしてございます。
第14条に基づく広域協議会といたしまして、全国を七つのブロックに分けまして、広域協議会の設置を行っております。
29ページ目をご覧いただきますと、各ブロックの取組といたしまして、広域のアクションプランの策定ですとか、それを横展開するための全国事業として、全国大会を毎年開催し、連絡会議を実施する。こういった取組について環境省の地方環境事務所のほうでも運営を支援しながら実施をしているところでございます。
そして、31ページ目でございますけれども、第12条に基づく地域気候変動適応計画の策定状況をグラフ化しております。平成30年以降、この約5年間で増加しておりまして、目標については、都道府県、政令指定都市による策定率100%を目指しておりますけれども、まずは、各都道府県については47都道府県。市町村については、まだこれからというところがございますけれども、徐々に、着実に増加しているという状況と思っております。今後さらなる策定の促進、また、内容、質の向上を図る必要があるというふうに認識をしてございます。
このような取組を支援するために、環境省のほうでも策定のためのマニュアル、自治体向けのマニュアルづくりや情報提供等々を推進、実施をしているところです。
そして34ページ目には、自治体が設置する地域気候変動適応センターの設置の動向につきまして、グラフをお示ししています。現時点で、全国で61の地域適応センターが設置をされてございます。年々増えておりまして、設置の主体といたしましては、地方公共団体が設置しながらも、事務局としては各自治体の庁内、または地方公共団体の試験研究機関への設置が多い状況です。今後、このセンターを中心として、適応策を地域に推進するという役割を、さらに機能強化する必要があると思っていますけれども、また今後、実際の各センターの動向等については、今後の委員会の中でもヒアリング等々でご紹介をさせていただくような流れにできればと思っております。
そして38ページ目以降に、民間企業・市民の適応についてのご紹介をしてございます。気候変動適応法では、企業や市民の役割についても規定がございます。昨今、各企業では、気候変動の影響が非常に重大になっているということに鑑みまして、気候変動をリスクとして捉えて、リスクマネジメントの観点から取組を進められている企業も多くおられますし、また、適用ビジネスの展開という観点から、適応についての技術、新しい技術・製品・サービスの提供という視点で関わっておられる事業者も出ているということです。
また、各市民に期待される役割としましても、それぞれの立場から、気候変動に適応していくための行動を一人一人が実施していくと。また、施策に協力していくということで、幾つか適応策の例を示してございます。特に熱中症対策につきましては、一人一人の市民にとっても、本当に目の前に迫った大きな危機と認識されている方が、昨年の猛暑に鑑みても多いのではないかと思います。気象災害、渇水、洪水、こういった大きな社会影響に対してどのように適応していくかという点について、環境省のほうでも39ページ目以降にありますように、民間企業を対象とした適応促進のためのガイドブックの作成、公表というものも行っております。
これについては、主に気候変動による対応について、物理的なリスクへの対応を促進するためのガイドブックとなっております。
40ページ目、41ページ目に詳細も記述してございます。
このような取組を政府としても促進するために、42ページ目以降、例えば、気候変動リスク産官学連携ネットワークを設置しまして、環境省、文部科学省、国土交通省、金融庁、国立環境研究所、このように各省庁が連携しながら気候変動に関するリスク情報を提供し、その利活用を促進していくということで、企業に入っていただきまして、産官学が連携しながら意見交換、情報共有をしていくというような取組も実施をしております。
45ページ目にありますように、このような取組のバックグラウンドといたしまして、今、どのようなデータを創出し、提供していけばいいのかというような議論の場も持っておりまして、関係省庁とともに懇談会の設置等も行っています。
また、46ページ目にありますように、民間企業の物理的なリスク分析、開示に関する手法の検討調査、どのように情報収集をしていくべきか。また、そのリスクの評価をどのようにしていくべきかということで、環境省においても検討して、今後、令和7年度には手引き等の作成、公表を予定しているという状況でございます。
48ページ目以降につきましては、科学的知見の強化と情報発信。第16条に基づきまして、観測等の推進として、例えば、環境省においては温室効果ガスの観測技術衛星、GOSATシリーズによる観測についても、関係機関とともに取組を進めております。
また、文部科学省及び気象庁におきましては、49ページ目以降にありますように、気候変動に関する気候予測データセットの公表、そして解説書の公表等を実施しておりますし、50ページ目以降には、気象庁のほうで「日本の気候変動2020」の公表といった、科学的なデータを整備し、分かりやすく公表していくということを進めております。
また、文部科学省のプログラムですけれども、51ページ目には、気候変動予測先端研究プログラムのご紹介もございます。
このように、気候変動メカニズムの解明や、気候変動予測に係る不確実性の低減を行うということで、研究体制、プログラムを組んでいまして、このような成果を気候変動適応のための科学的なベースとして活用していくという流れになっています。
52ページ目につきましては、法律の第17条に規定された、事業者及び国民の理解の増進でございます。
昨年、夏に、内閣府で気候変動に関する世論調査を実施しましたけれども、気候変動問題についての認知度については、およそ9割の方が関心があるいう回答になっていますけれども、実は気候変動適応の認知度はまだまだこれからといったところもありまして、言葉や取組のみ、どちらかを知っていたという方が約半数という結果になっています。また、年齢層ごとのデータを見ますと若年層、若い方の関心がない。または知らなかったという回答割合が、如実に多いという傾向が見られています。適応という言葉がちょっと分かりにくく、ちょっとハードルが高い、そのために認知度が低いというところもあるかもしれませんけれども、特に今後、若年層へのアピール、どのようにメディアを活用しながら、このようなターゲットに訴求していくかというのが一つの、今後の課題にもなるのかというふうに認識をしております。
環境省のほうでも様々なイベントの開催とか、53ページ目以降にご紹介していますような、分かりやすいパンフレットの作成・公表。そして、民間企業とも連携をしながら、認知度の向上、情報の提供の促進等を進めています。
そして最後に、56ページ目以降、国際協力につきましては、特にアジア太平洋地域を対象としまして、情報プラットフォームの整備、適応施策に必要なツール、情報をアジア太平洋各国に提供するという事業も推進しています。これは国立環境研究所でメインに実施しておりますけれども、このような情報整備。また、2国間の協力、そして国際ネットワークを通じた支援についても推進しているところです。
57ページ目以降には、幾つか具体的な取組事例をご紹介しています。
60ページ、そのうち最近のトピックといたしましては、早期警戒システムの導入促進について、官民の連携協議会を昨年6月に立ち上げまして、ASEAN地域をはじめとするアジア太平洋地域において、ビジネスセクターを巻き込んで、各国、特に地域でのニーズに沿った早期警戒システムの導入、その事業展開を促進するための関係者との連絡体制を構築したところでございます。
このような取組を通じて、国際協力の展開を今後とも進めていく予定になっております。
あと、参考としまして、62ページ目以降には、昨年開催されたG7のエネルギー・環境大臣会合の結果、そしてCOP28の結果概要についても付けております。適応につきましては、国際的にも非常に大きな関心事となっており、特に、途上国においては気候変動の影響によって、例えば海水面の上昇によって国土の存続そのものが危機にさらされているような国、影響を大きく受けているという国も多くございます。
このような国に対して、国際的にもどのような支援が可能なのかということで、COPでも大きな議論になっておりますし、また、日本政府としても、COP28の中で、適応にも関連いたしますけれども、ロス&ダメージについての基金への拠出を表明したところです。
以上、ごく駆け足でございましたけれども、資料2-1の説明をさせていただきました。
参考資料1に、気候変動適応法の条文そのものも付けておりますので、今後の議論の中でご参照いただければ幸いでございます。
私からは以上です。
 
●肱岡委員長
ご説明ありがとうございました。
それでは委員の先生方、ご質問、ご意見等いただけますでしょうか。ご意見いただける先生は、このネームプレートを立てていただければと思います。あと、オンラインの方は挙手をお願いします。
じゃあ、まず江守委員からお願いいたします。
 
●江守委員
ご説明ありがとうございました。
幾つかお伺いしたいと思うんですけれども、僕も日本の気候変動影響適応の取組、ずっと拝見してきたんですけれども、影響評価において、それをリスク評価と見たときに、ハザードの評価というのは非常に、僕の周りの研究者も含めて、非常によく取り組まれてると思うんですけれども、社会の脆弱性の評価ですね。これがどれぐらい意識して推進されているのかということが、ちょっと僕からはあまり見えていない感じがするので、ちょっとお伺いしたいなというふうに思います。
特に、この気候変動の影響の問題というのは、これちょっと、僕は毎回、こういう会議だとこういうこと言っているんですけれども、国際的な議論では、かなり公平性の問題と、これ、やっぱり国家間で見たときは明らかですけれども、日本国内で見ても、やはり脆弱な人々というのがより深刻な被害を受けると。
例えば、2018年の西日本豪雨で大きな被害が出て、裕福な人たちはすぐに生活再建したと思いますけれども、3年ぐらい仮設住宅にいた人が結構いらっしゃったということを報道等で拝見したりもしております。
貧困な方だとか、高齢の方だとか、その脆弱な人たちというのを保護するということが気候変動の適応においても非常に重要な観点ではないかと思いますので、ぜひそういった観点、強調して取り組むことが必要かなと思っております。それについてお考えを伺いできればと思います。
もう一つ申し上げたいと思うんですけれども、先ほど世論調査の結果もありましたけれども、僕自身も非常に注目しているんですが、気候変動していますよね。最近、暑いですよね。昔と違いますよね。人間のせいだと。人間活動のせいだと言われてますよね。そこまでは、日本でも9割ぐらいの人が、そうですねというふうに認識するようになっているんですけれども、どうもですね、このままだと、さらにどんどん暑くなっていくということを、あんまりピンときてない人は結構多いんじゃないかという実感を持っています。
去年は地球沸騰とか言われたので、結構メディアの取材も受けたんですけれども、テレビの人とかが、雑誌の人が、「今年はすごい暑いですけど、もっと暑くなるんですか」というふうに聞かれて、「いや、もちろんなりますよ」と言うと、え、そうなんですかという反応を結構受けるんですよね。
それは恐らく、普通の市民の方々もそういう認識の方というのは結構多いんじゃないかという気がしておりまして、まずそこのところですね。温暖化というのは、このままだとどんどん進んでいくもんだという認識を強調して広めていくというところが、実はまだ足りてないんじゃないかなという気がしています。これは適応だけじゃなくて、もちろん緩和にも関わることなので、そこは、何ていうんですかね、緩和の啓発と適応の啓発というのは、一体的にというか、協力して、そこは進めていっていただくことが必要かなというふうに思いました。
あと、ちょっとついでに、それでもう一つ申し上げると、やっぱり緩和と適応というのは、法律が別で、別の施策として推進されているのは分かるんですけれども、やっぱり、シナジー、トレードオフとか、連携して取り組むべき部分というのは非常にあると思います。
国立環境研究所の中でも、気候変動の適応と緩和の研究というのは、連携を図っているところで、肱岡センター長も参画されて、そういう議論をしていますので、ぜひ施策の推進においても、そこの連携というのは意識していただけたらと思いますけれども、その点に関してもお考えをいただければと思います。
以上です。
 
●肱岡委員長
ありがとうございます。
それでは、沖委員、勢一委員、渡辺委員、そしてオンラインの奥委員のご意見をいただいていから回答いただきたいと思います。
それでは、沖委員、お願いします。
 
●沖委員
ありがとうございます。
まず地域気候変動の適応計画の数を増やすというのは多分、皆さん、KPIなど工夫されているんだと思いますが、環境計画の一部でよろしいというふうにしたというのは非常によかったと思います。適応は環境だけを考えるのではなく、例えば防災であったり、あるいは、環境の中に入っているかもしれませんが、生物多様性地域戦略であったり、それらと、とにかく、シナジーを持たせてやってもらわないと、リソースがとにかく足りないんだと思います。今は地方分権の時代で、中央からいちいち口を出す時代じゃないから、全部基礎自治体がやりなさいということで、いろいろな地域計画つくれという負担がものすごくかかっているので、そこを本当に軽減する取組を進めていただくのが大事だと思います。すでに大分ご尽力されているのはよく分かりましたが、そこを気にかけていただければなと思います。
今、江守委員がおっしゃったアンケート、私もつぶさに眺めたんですが、認知度を見ると、気温が暑いことは、若年層、30歳未満でも、分かってるんだけれども、例えば、桜の開花であったり、セミの鳴き始めであったり、豪雨であったりというのは認知度が低いんですね。気温は暑くなったので、影響を感じているけれど、ほかは認知度が低い。これはやっぱり、若いと経験が浅く単に昔と比べられないからじゃないか、と思います。私の世代ですと、昔、霜柱を踏んだような、とかいう記憶がありますが、考えてみると、彼らは2000年ぐらいに生まれているわけですね。もうその頃というのは、1℃ぐらい既に上がっている世の中で生まれ育っているので、やっぱり変化が分かりにくいんだと思います。実際学生に、30人ぐらいですけど、聞いてみたところ、やっぱり気候変動リスクを感じないと言うんですね。彼らも既にそういう状況で生まれ育って、まだ短いので。ですが、じゃあ情報が足りないのかといったら、情報が足りないという方は何か激減していますね。6割ぐらいから3割ぐらいに。
それで、僕が注目したのは、情報の入手先で、若年層はSNSと学校なんですよ。SNSが2割から3割ぐらいで、学校が5割ぐらいですね。学校で何を教えているんだろうと、ものすごく気になりまして。やっぱりそこで、江守委員がおっしゃったような、適切な判断ができる情報を提供するか、あるいは教え方の問題もあると思うんですけれども、こうだからみんな気をつけてねということなのか。若年層に関しては情報が足りない、広報を広げるというよりは、彼らが接している情報がどうであるのかというところを、ちょっと吟味する必要があるんじゃないかなというふうに思います。
以上です。
 
●肱岡委員長
ありがとうございます。
その後も挙手いただいていますが、もう一度戻りまして、井田委員のほうから、順番にお願いしたいと思います。
 
●井田委員
お先にすみません。気象キャスターネットワークで理事長をしています井田寛子と申します。
二つあります。
一つ目は、沖委員とも重なるところがあるんですけども、メディアをどう活用するか、メディアにどう効果的に取材をしてもらうかという点からお話ししますと、これからはもう、実践するために、やっぱり成功事例をたくさん見せていくというのがすごく重要かなと思います。
具体的に取材しやすい場所というか、成功事例を見せていくということですね、具体的な。やっぱり適応というと、災害に対する防災とか、そういうところは、もう随分定着して、まず適応なんだというのは、マスコミも理解しているし、結構報道されていると思うんですけども、やっぱり、もっと多様性というか、農業だったり、観光とか、産業とか、健康とか、いろんな面の適応の成功事例というのを、まだあまり見ていない気がするので、もっとそういう、もし成功している企業さんとか、自治体があるのであれば、それをどういうところから見ることができるか、マスコミの取材の入口として見られる場所があるのかとか、そういうのも教えていただきたいなと思いました。
これから生物多様性というのは、また重要になってくると思うんですけれども、まだまだこちらについての認知度が低いですけれども、資料を見ていくと、生態系を活用することで防災とか減災につながるという話もあったので、防災からの入り口というのは、結構つながりとしてすごく入りやすいところもあるので、そういうところのアプローチというのも、もっと分かりやすく打ち出していくということが必要かなというふうに感じました。
もう一つは、適応センターの格差みたいなものをどう解消していくかというのが非常に重要なのかなと思っています。適応センターは地方で結構充実して、もう立ち上がっていますが、中を見てみると、県の方が兼業で、お忙しい中、一応、名前はあるけれども、名ばかりで起動していないセンターであったりとか、一方で、研究者の方が実際入っていて、活動としてもすごく精力的にやられている、信州のセンターとかはそうだと思うんですけれども、そういう格差を、これから適応は地域ごとにやることが変わっていくのに、どう埋めていくかということについて、どう考えていらっしゃるのかなと思いました。
このアンケートの52ページのところで、私は、適応策を実践する上での課題上位3項目というのを注目して見ていたんですけれども、情報不足だったり、経済的コストとか、効果が分からないというのが上位に入っていて、これも地域別には取られていないかもしれないんですけども、どこで情報が不足しているのか。情報は十分で、研究者の方と一緒にやっているから、もう理解もしているし、コストもあるという地域もあれば、そもそも情報もよく分からない、不足しているし、何かやりたいんだけど、コストはないという、その辺の地域格差みたいなのをちゃんと浮き彫りに、明確化していくということが非常に必要かなというふうに思いました。
以上です。
 
●肱岡委員長
ありがとうございます。
それでは、勢一委員、お願いします。
 
●勢一委員
ご説明ありがとうございました。勢一です。
私からは質問を幾つかと若干のコメントをさせていただければと思います。
私は法律が専門ですので、法律家の立場から見ると、適応法というのは、やや特殊な法律であろうと思います。といいますのは、法律の定めによる法的な規律というのは、義務を課したり、許可を与えるなどが想定されているんですけれども、適応法は、そういう立てつけの法律ではないということです。
それ自体が問題という趣旨ではないのですけれども、この法律があることで、一体、どのような成果、効果が出ているのか、何が足りないのかというのを、5年見直しで、今、検討する必要があるのかなと感じています。
そういう点では、例えば、資料の7ページで、推進会議というのをご紹介いただきました。関係府省間で緊密な連携体制を取るということですけれども、法的に見れば、適応法がなくてもできていたのではないか、法があることで、どのような効果がもたらされているのか、共同メッセージなどだけなのかというようなところについて、何か効果があれば教えていただきたいと思います。
また、19ページのところでは、計画の進捗管理というご紹介をいただきました。確かに河川整備計画数など、数値で見ているということですけれども、こういうのも含めて、適応計画に上げられている各施策は、恐らく各個別法の下で実施されているものを束ねていると思います。そうすると、進捗管理は個別法でつくられた計画の下でKPIを見られているような気もするので、これをあえて適応法で取りまとめたときに、何が見えてくるのか、少なくとも、これまで何を見てきていたのかというところがあれば教えていただきたいと思います。
あと、地方に関して、既にご指摘がありましたけれども、人口減少とか、地域リソースが限られているという中で、どのように対応していくかというのは、本当に大きな課題だと思っています。
地域の適応計画、これは12条の規定の下にありますけれども、国は100%の策定を目指すとなっています。少なくとも都道府県、政令市というお話をいただきましたけれども、法律上は策定は努力義務になりますので、国が100%を目標にするというのは、地方自治との関係ではずれているところがあろうかと思います。
また、地域の目線で見ますと、適応対策というのは、例えば、流域とか山林など、自然環境であるとか、あるいは生活環境のつながりの中で取り組む必要がある施策だと思いますので、単独の自治体でつくることの意味がどのぐらいあるのか。そういう意味では、条文では共同策定ができることになっているんですけれども、共同策定の事例数がどのぐらいあるのかというのも教えていただきたいと思います。
同じような視点は、実は13条の地域センターも同じで、こちらも努力義務でありますけれども、これも先ほど、格差があるというご指摘があって、私もそのとおりだと思いますので、実態把握をした上で検討する必要があると思いますが、これも単独の自治体でマンパワーがないという中では、共同設置をして、より広域で、適応対策をするような広域で、人材と知見を集めて進めていくのが有効かなと思うんですけれども、こちらの共同設置はどのぐらいあるのかというのも教えてください。
広域協議会に関する14条です。条文には具体的に何をするというのは書いていなくて、各地域ごとに考えていってくださいということで、先ほどのご説明では広域のアクションプランなどもつくっているというお話でした。これは自治体がつくる地域の適応計画との関係は、どのようになっているのでしょうか。先ほど、沖委員からの指摘もありましたけれども、いろんな分野でたくさん計画やプランをつくらなければいけないというのは、それ自体でマンパワーを削られる。プランをつくることで終わってしまって、その後の実施に人が回らないというのが、実は環境分野に限らず、いろんな分野で問題になっていますので、そういうことを避けていかないと、現場での実施がうまくいかないんだろうと思います。この辺りの現状と、あるいは整理の状況を教えていただければと思います。
確かに民間の活動を推薦するのが非常に重要だということは、私も認識していますけれども、こちらのガイドであったり、連携ネットワーク、懇談会など、たくさんやって取組は進んでいるんですけれども、これは法との関係で、どういう効果が出ているのかというようなところも、ぜひ教えてください。
52ページ、事業者、国民の理解の増進で、これは国民3,000人への調査ということで、このデータ自体は、また意味があると思うんですけれども、恐らく国民全体の調査というよりは、もう少し主体別の関心事とか課題を、例えば、自治体とか、研究機関であるとか、企業でも規模が違うところがありますので、もう少し主体を、対象を絞った状況を把握されたほうが、対策を取りやすいのかなと思ったのですが、そういう調査があるのでしたら教えていただきたいと思います。
ちなみに、52ページでは17条となっていますけど、これは改正前の条文かなと思いますので、これは修正いただいたほうがいいかと思います。
コメントとして、もう一点追加でお話をしたいのは、適応法の役割をどう考えるかというところです。関連施策や政策を束ねる役割について、幾つか質問させていただきましたけれども、横断的な施策とか、指標とか、評価、横断的な部分をどう担えるのかなどについて次のステップとして考えられないかなという問題意識は持っています。
あとは地域空間に対するマネジメントの役割をもう少し持てないのかなという問題意識です。温対法の実行計画で促進区域を示すというような取組がありますけど、適応に必要な場所に促進区域をつくってもらったら困るので、当然、温対法との連携はしてもらわないと困るわけですけれども、特段、そういう仕組みにはなっていないところです。同じようなことは生物多様性の分野、地域戦略で示されている地域もそうですし、今、自然局のほうで検討しているOECMの候補になるような大臣認定をするようなところも、当然、開発から避ける、適応として、そこを受け止めていくというようなことをやらないといけません。こうした環境分野だけでも、これだけありますので、ほかのところとの連携をして、地域空間にしてマネジメントをしていく方策というのは、何か適応法が役に立てるんじゃないかと思っているというところを申し上げたいと思います。
すみません。長くなりました。以上です。
 
●肱岡委員長 ありがとうございました。
それでは、西井委員、よろしくお願いします。
 
●西井委員 大阪府立環境農林水産総合研究所の西井でございます。
私のほうからは、地域気候変動適応センターの立場で2点、意見をさせていただきます。
私ども適応センターとしまして、私どもであれば、大阪府と連携しまして、府内市町村に対して、研修やワークショップなどを行いまして、計画の策定支援を進めているのですが、実際のところ、計画策定している市町村は府内の約4分の1にすぎないという状況でございます。
環境省のほうで、昨年、自治体向けの計画策定マニュアルなども公開されましたけれども、基礎自治体にとっては、なかなかハードルが高く、特に小さな市町村におきましては、一担当者が生活環境全般を担うようなところもあるなど、なかなか人員的にも限りがある状況でございます。
そのような市町村に計画を策定していただくということは、もちろんベストではございますけれども、策定が難しいとしましても、それと並行して気候変動適応に関する対策を何らか取っていただくための、より具体的な研修であったり、また、啓発といった手厚い支援を強化していって、市町村の動機づけを粘り強く進めていくことが重要だと考えております。
もう一点、同じく計画策定に関することになりますが、市町村の計画策定や適応に関する施策がなかなか進まない理由の一つには、この計画が環境部署だけではなく、農林水産、そして都市整備であったり、健康・医療であったり、様々な部署との連携が必要なのですが、この調整がなかなか難航しているというのが進まない理由の一つにあると思っております。
国の計画が閣議決定から法制計画に格上げされ、関係府省庁間の連携強化につながるということは大変結構なことだと考えております。国の計画だけの省庁連携にとどまらずに、例えば、各省庁から各自治体への所管部署にも通達などをしていただき、計画の策定や施策の推進の必要性、こういったものを各省庁間から各部署のほうに下ろして伝えていただきますと、それが伝わりました自治体間の連携というのも、自治体の各部署間の連携調整も、恐らく比較的円滑に進むことになると思いますので、省庁間連携にあたっては、その辺りにもご配慮いただければと思っております。
以上でございます。よろしくお願いします。
 
●肱岡委員長
ありがとうございます。
それでは、堀江委員、お願いします。
 
●堀江委員
産業医科大学の堀江と申します。
5章に関連して一つ、それから6章に関連して二つ意見を申し上げます。
5章ですけども、39ページ、40ページ辺りの民間企業の気候変動適応ガイドというのをご紹介いただきました。内容は非常に広範にわたって優れた考察がなされているとは思うんですが、実は産業医科大学は、多くの企業の訪問を受けておりまして、労働者の健康をどうするかというようなお尋ね、もちろん産業医の要請というのもやっているんですけども、その中でTCFDの話が今まで出た記憶がないんです。カーボンニュートラルですとか、SDGsのようなキーワード、あるいはCSR、こういったような言葉はよく出てくるんですけども、TCFDに関しては、私は企業の人事担当の方から聞いたことが、恥ずかしながらございません。
それで、非常にいいものだけど、流行らないといいますか、普及していないということの障害、どこに隘路があるのかということを考えますと、実は私どもの産業医の世界は、労働法というのが一つベースにあって、これは最低基準をつくって強制的に守らせていくという強行法規なんですね。
一方で、企業の労働者の健康というのは全く別の視点で、健康度を高めれば高めるほど、企業にメリットがあると、還元するから、いいものをやっていきましょうというような、そういう施策もあります。
昨今、健康経営という言葉が結構はやっていて、これは多くの方、多くの企業が口にしていて、僕たちは労働者を健康にしますからこんなことをしていますと言うんですけども、どこまで本気で言っているかは分かりませんが、要は、何でこれを言うかというと、認証評価を受ける機会があるんです。それを名刺にどんどんつけたり何とかして、企業の付加価値につなげていくような仕組みがつくられています。労働基準と健康経営のビジネスというのは全然違う視点から取り組まれているんですが、いずれも労働者の健康をターゲットにしています。
これを参考にすると、TCFDに関しても、もう少し何か企業のサステナビリティを高める工夫というのは、企業の方が絶対できるはずなんですが、これを経営につなげるパスウェイがはっきりしていないというところが隘路なのかなと思っております。
例えば、最低基準をつくるといって、この分野は難しいと思いますので、恐らく何か認証、一つのソリューションとしては、ひょっとして、今後、何かガイドに書いてあるような内容で企業がいろいろな取組をしていっているかどうかを評価する何らかの機関ができて、この企業は地球環境があと1度上がっても、十分にサスティナブルな立地であるとか、サプライチェーンを持っているとか、対応の準備ができているみたいなことを評価する機関をつくって、そういうところが認証してあげて、企業がそれを、場合によってはカーボンニュートラルのように株式に反映されれば、一番いいですけど、そうじゃなくても、僕たちはTCFDをちゃんとやっていますよというようなことをCSRレポートに書くとか、そういったようなことができるようになれば、普及しないかなというふうに愚考しております。
それから、6章についてなんですけど、先ほどもご意見がございましたが、52ページです。多くの委員の先生方が、これは若い人が知らないというようなところを注目されておられましたが、私も同様でございました。
それでなんですけど、私も一応医学部ですので、医学部の人たちは、結構な倍率で入ってくるので、こういうのを知っているかと思って、たまに聞くんですけど、残念ながら、非常に歯がゆいんですけど、あまり知らないんですよね。若いというせいだけじゃなくて、これの問題点は、端的に言って、入試に出ていないということではないかと思っております。社会にいろんな決定力を持っている優秀な人材が、これを知らないというのは、極めて将来に対して危機的な課題だと思っておりまして、何とかしてこれを入試につなげられるような仕組みはないのか。今回、情報という科目が文科省に入りまして、来年の入試センターテストから入るので、準備していますけども、例えば、環境という科目があれば、これは一番いいんですが、何か優秀な人材がこれを勉強してこないと医学部に入れないというような形につなげられるのが一番ゴールとして、将来に期待が持てるんじゃないかなというふうに思っております。
三つ目なんですけど、6章の中でいろんな研究の話がございました。実は研究と聞きますと、気象とか環境関連の研究のことをイメージされるんですが、私ども医学部で考えますと、私は実は専門が熱中症ですので、熱中症の研究をしておりまして思うのは、二つありまして、温度が上がることによって人がどうなるという話と、物がどうなるという両方が私どもの研究では課題になっています。
人がどうなるのほうは、ご承知のように、体温というのは極めて精密に調整されていまして、多分、地球環境が42度とかになったら、ものすごいことが起こると思うんですよね。これはちょっと信じられないぐらい大きな影響があると思いますが、WBGTで普通は見ていますけども、こういう分野の研究をするにはどうしたらいいかというと、恐らく人工的な環境をつくって、その中に人を入れるとどうなるかというのをやるんですが、これはどっちかというと古典的な研究というふうにやられていて、最近、あまりこの分野に研究費も研究者も技術も投入されていない感じがいたします。
ですけど、昔と違う次元の暑さの研究をしていかないと、適応のためのシナリオが書けないんじゃないかというふうに思っています。強烈に暑い環境で人間がどうやって生活するのか。私も研究していますと、確かに生理学的な影響もあるんですけど、それが起こる前に何が起こるかというと、エラーが起こります。行動のミス、判断のミスが起こってしまいます。私は、実はもともと製鉄所の産業医をしていたんですけど、そういうところでミスが起こるというのは、大変大きな影響がありますので、単に生理学的な影響だけではなくて、行動や心理の面への影響、そういったものが、これまで過去の研究で何度の条件でその研究をしたんですかということを書かれずにレポートが出ていますので、これを高温に設定したら、どうなるかというのは、もう一度やり直さなければいけないテーマじゃないかなと思っています。
物については、実は私どもには人工気候室がありますので、その中に物を入れようとすると、結構多くの物、コンピュータから始まって、35度設定なんですよ。それ以上で動くかどうか保証しませんという機械が多いです。
ですので、地球環境、屋外にあるものを中心に、その辺のセンサーが35度で止まってしまったら、どれぐらいの影響があるかというようなことを考えると、非常に恐ろしくなりますので、物に対する研究、これは私どもの専門ではありませんが、何かそういったものもしていかないといけないんじゃないかなという気がしております。
以上です。
 
●肱岡委員長
三島委員、よろしくお願いします。
 
●三島委員
三井住友海上の三島です。
私からは事業者としての立場から1点と、あと、もう一つは生活者の立場から1点、コメントさせていただきたいと思います。
まず、1点目ですが、私ども損害保険業界でございますので、気候変動対応に資する商品、サービス、ソリューションの開発というのは、もう社会的責務と捉えて取り組んでいるところでございます。実際に気候変動を織り込んだ洪水リスクをシミュレーションして、将来のハザードマップを作るといったソリューションもつくっているところでございますが、一企業の情報発信力というのは限りがあるなと思っておりまして、こうした様々なネットワークに参画もさせていただいているんですけれども、特に地方自治体への情報の発信というか、周知がまだまだだなというふうに感じているところでございます。
私どもがソリューションのセールスというか、そういうことをすると、やはり、売らんかなという形に見えてしまいがちですので、こういうところは環境省さんですとか国のほうで各事業者が持っているソリューションを是々非々で皆さんに選んでいただけるように、公平なところに出していただけるような、そんな情報発信の仕組みをより充実させていただけるとありがたなというふうに思っている次第でございます。
もう一点は、先ほどというか最初のほうに沖先生がおっしゃっていたことと通じるんですけれども、小学生の男子がおりまして、今、学校現場で何が起こっているかというところについてちょっとお伝えさせていただきたいと思うんです。
昨年の夏、非常に暑かったですよね。そうすると、学校現場では、もう活動を止めるというふうになってしまうわけです。気候変動に、熱中症というリスクについてのリスクコミュニケーションはもう成功していると言っていいと思います。熱中症のリスクはもう十分学校現場には伝わっていて、先生たちは子どもの命に関わるリスクであるというふうに認識は改まっているんです。
しかし、そこからが問題で、それに対して、どのように対処すればいいかということについての情報がないために、先生方は責任が取れませんので、これまでやっていた活動を止めるという対応でしか対応ができないという形になっています。要は思考停止になっているんですよね。何が起こるかというと、体育が外でできない。休み時間に子どもたちが外で遊べない。そして土日にサッカーや野球など、外で活動しているクラブがあるんですけれども、練習ができない。そういうことが実際に起こっております。
先生たちは、今年の夏は特別暑いからねと思っているかもしれませんけれども、今年だけで終わるわけがなく、今年も来年も続いていくわけですので、新たな気候変動ということに対しての新しい行動指針というのを示さないといけないと思います。ここはきちんと先生方に情報提供していかないと、子どもたちの未来に関わってくるのかなというふうに思います。
我々大人にとってみれば、1年2年というのは誤差の範囲なんですけれども、子どもたちにとってみれば、かけがえのない1年2年ですので、その辺りへのきめ細かい情報提供を、ぜひ取り組んでいただきたいなというふうに思います。
以上です。
 
●肱岡委員長
ありがとうございました。
それでは、武藤委員、よろしくお願いします。
 
●武藤委員
どうもありがとうございます。
私は国際協力のところを中心に少しお話しさせていただきます。これはJICAという立場だけでなくて、ここ7年ぐらいはOECD/DACの議論に参加しておりまして、気候、特に適応のほうで何が期待されているのか、ギャップはどこかという観点も入っております。
まず、大きなところですけれども、法律のほう、国際協力の部分を拝見させていただきましたが、率直に申し上げて、本当に環境省さんの肩幅でおできになることを、いい意味でコンサバティブに書いていらっしゃるというところだと理解しております。
しかし、先般、改定されましたODA大綱で気候変動、特にパリ協定についての議論がしっかり明記されているですとか、SDG達成の大前提として気候変動への対応があるというふうにODAのほうでも非常に認識が高まってきていると思います。
ということで、チャンスがありますので、もっと国全体として国際協力、どうやって打って出られるかということを、ぜひ議論するステージに移行できればと思っております。
具体的に何かということなんですけれども、実際の途上国での適応を中心としたインパクトにつなげるのは、技術協力を適応と防災とか、適応と農業とか、ばらばらにデリバーするのではなくて、しっかり統合した形でデリバーしなければなりませんということが一つ。
次はファイナンスのほうの話です。
これは円借款などを中心としたお話、これはソブリンですけれども、あとはノンソブリン、民間向けのファイナンスも両方入っております。
特に国際社会で適応の話、ファイナンスはどうあるべきかについて、いろんなルールもできて、議論は続いていますけれども、ある程度のコンセンサスはできていると思うんですが、アダプテーションファイナンス、COP28でもアダプテーションファイナンスが少ないねと。どうするんだという議論があったかと思いますけれども、ここをどう実際にやっていくのかというところに一番国際協力の政策のニーズがあると思っています。
これから具体的に技術協力もファイナンスのほうも適応と防災、適応と生物多様性、適応と農業、こういった辺りが中心となると思うんですけれども、クロスオーバーしてちゃんとキャパシティー、案件形成、ファイナンスまで一気通貫につなげられるプロトタイプを示すことが必要だと思っております。
ということで、JICAのほうでもサステナビリティの室ができて、チーフサステナビリティオフィサーという形もつくって、私が初代なんですけれども、そういったこともやっておりますので、ぜひ外務省も含めた対話を盛り上げていただければと思っております。
以上です。
 
●肱岡委員長 ありがとうございました。
それでは、渡部委員、よろしくお願いします。
 
●渡部委員
ありがとうございます。
ようやく回ってきましたが、まず、全般、環境省さんが気候変動適応を防災や緩和や、いろんなものと関連づけて施策を加速しようとしているというのがよく分かりました。ありがとうございます。
その上で、二つコメントと一つお願いみたいなものなんですが、最初がタイムラインについてです。20ページに短期、中長期というのが出てくるんですけれども、できれば、もう少し具体的に短期、中長期的って、いつのことを指しているのかというのを、1枚紙みたいな感じで、分かりやすくまとめていただいて、私は何となく短期は2030ぐらいまで、中長期的は2050、あるいは2100年までかなと思っているんですが、それぞれの時間軸で何を最優先に実現するかみたいなものを強調していただくほうがいいんではないかな。ただ、取り組んでおられる施策が多いので、どうしても、少し頭出しをしていかないと、かえって見えにくいかなという気がいたしました。
短期、中長期が何年までというのは、違っていたら申し訳ないんですが、一般的には短期の時間スケールは防災とより結びついていて、中長期は緩和と結びつくと思うんですね。特に短期のほうをこれからもっと重視すべきだなと思うのは、現実、ネイチャーの変化が我々科学者の想定よりも早く進んでいるというのが背景にあると思います。既に何回も話に出ていますが、去年がWMOの推定でプラス1.45と。何だ1.5に近いじゃないか、でもそれはメデイアの人なんが話をしていて、パリ協定が実現できないかどうかというのは、1年じゃ決められないと。もうちょっと長期で判断しないといけなんだよ。去年の場合は、エルニーニョみたいな自然の変動の影響がありましたから、またちょっと戻る可能性もあるわけです。なんだけれども、ふと考えると、じゃあ1.5度、駄目でしたというのが分かった時点で、1.5度に備えるのは遅いんですよね。その時点では既に、多分上下するわけだから、1.6度、1.7度みたいなものが頻発している可能性が高いわけです。2030年というタイムフレームは、まさにそういう時期だと思います。
先ほど、熱波に対する適応もできているというふうに言われたんですけれども、一時的にでも、特に日本は、冒頭で出たように、世界平均より気温上昇は大きいですから、1.7度、日本だともっとですね。2度、3度になるわけですが、そのときの水害だとか、いろんな複合災害の可能性が出てくるので、そういう意味で短期のところは、より具体性が必要だろうと思います。
もう一つの中長期のほうは、これは2点目になるんですけれども、防災というと、どうしても起こり得るダメージを低減するみたいな、少しネガティブかつやらなきゃいけないことみたいなイメージがついて回りますけれども、中長期で緩和と適応をうまくミックスさせて、例えば、サスティナブルなまちづくりだとか、より強靭で住みやすい地域社会の構築みたいなのって、ちょっとポジティブに語れると思うんです、ナラティブとして。そういう意味で、中長期のほうは、できれば、いろいろ適応と組み合わせるファクターはあると思うんですけれども、社会をどうつくっていくかみたいなところで、ばら色には語れないとしても、少しでもポジティブに語るというのがいいのではないのかなというふうに思いました。
私自身、国交省の環境行動計画の点検を何年も加わってやっていますので、そういうまちづくり、インフラみたいなところは省庁連携が見えるようになると、よりいいのかなというふうに思いました。
最後のお願いは、これは私の専門に近いほうなんですが、国際的な話で、ついこの間、グローバル・ストックテイクがありましたけれども、あの結果、じゃあ日本は合格だったのかどうなのかというのは、できるだけ広く周知していただきたいと。当然、やられると思うんですけども。COP28の最中に、ちょうどGOSATの推定を使ってモンゴルの例と中国の例が出てきた。あれを非常に面白く見ていたんですが、我々だけじゃなくて、多分、一般でよく分かっている人だったら、NDCとかと言うんだけど、それはあくまで自己申告で、客観的に本当に削減できているのかよと疑っているところがあると思うんです。そういうベリフィケーションをGOSATが活用できる。GOSATは日本のユニークな衛星なわけですから、そこをもっともっと打ち出して情報発信とか評価していただけるといいのかなというふうに思いました。
以上です。
 
●肱岡委員長
ありがとうございます。
それでは、今田委員、お願いできますでしょうか。
 
●今田委員
東京大学大気海洋研究所の今田と申します。
私からは、気候変動適応法が施行されて5年で、これから効果を見ていくフェーズに入られると思うんですけど、その際に、こういう観点を加えてほしいなという視点のお話をしたいと思います。
具体例があると分かりやすいので、熱中症アラートが改正で盛り込まれたということで、こちらの効果を見ていくというのは一つあると思うんですけれど、そもそもこれまで熱中症の罹患者が非常に多かった2010年ですとか、2018年という非常に猛暑の年がありまして、その後、COVID-19になりましたので、そもそも皆さんの行動が制限されていた時期があって、その間に気候変動適応法が具体的に施行されて効果が出だしたと思うんですが、まだ、そこの部分では効果が見積りにくいと。
昨年になりまして、過去にないほどの猛暑が日本でも起こっておりますし、さらにCOVID-19も行動制限も解除されているという状況で、ここがまさしく効果を見るチャンスなんではないかというふうに思うんですが、速報結果なんかを聞いていても、熱中症の犠牲者数は2018年より減っているというふうに聞いておりますので、そういった結果だけを見比べると、この法律の効果が出たんじゃないかと言えてしまうんではないかと思うんですが、ただ一方で、先ほども三島先生がおっしゃっていたとおり、制限をすることで、もちろんリスクは減るんですけど、その分、失われたものというのはたくさんあると思います。私も全く同じことを感じております。小学生の子どもがおりますので、教育の機会、アクティビティの機会が物すごく削られてしまっていたというのはすごく感じた1年でした。
そういったところで、まず、何が失われたかという部分もきちんと評価をしていただきたいという部分と、あと、熱中症アラートに関して見直すべきところは恐らくたくさん余地はあると思いまして、例えば、熱中症の犠牲者数が出やすいのは、季節外れに暑くなったときに、より出やすいというのが、専門家の堀江先生がいらっしゃるので、その前で言うのは恥ずかしいですが、そういったこともありますし、また、江守先生がおっしゃったように、脆弱性をきちんと把握すれば、出すべきところ、そんなに出さなくても、皆さん、対応できる場所というのは違ってくると思いますので、そういった視点で、いろいろ見直すことは必要かなと思います。
また、熱中症アラートの算出に使われているWBGT自体の精度というのも、恐らく場所によって違うというのも聞いておりますので、そういったところの見直しですとか、そういったものを多角的に捉えて、一番効果的な政策に改善していくのが必要かなというふうに思います。
以上です。
 
●肱岡委員長
ありがとうございました。
それでは、オンラインから奥委員、三村委員の順番でお願いできますでしょうか。
まず、奥委員、お願いいたします。
 
●奥委員
はい、分かりました。
既に何人かの委員の皆さんがおっしゃったことと若干重複する部分もございますけれども、地域気候変動適応計画についてコメント等をさせていただければと思います。
都道府県と政令市レベルにおいては、適応計画は全て策定済みということで、これはいいことだと思いますけれども、一方で、市区町村において174件ですので、1,718分の174ですと、1割程度に策定率がとどまっていると。
聞こえますか。音声、聞こえていますか。
 
●肱岡委員長
すみません。委員の少し声が飛び飛びでして、ちょっと聞きづらいんですけど。
 
●奥委員
飛び飛びですか。ちょっとお待ちください。Wi-Fi、切り替えます。
 
●肱岡委員長
よろしくお願いします。
 
●奥委員
先ほどよりはよくなったかな。どうでしょう。
 
●肱岡委員長
よく聞こえております。よろしくお願いします。
 
●奥委員
市区町村の策定率1割程度にとどまっているということなので、こちらをもう少し引き上げていく努力というのが必要だろうというふうに思います。
そのときに、地球温暖化対策実行計画も同様なんですけれども、人と予算と、それから知見、情報、それが十分にないということで、それが割けないというところが策定率の伸び悩みの要因としては言えることだろうというふうに思っているところでして、温対実行計画もそうですけれども、適応計画のほうも適応法の12条で共同策定が可能という規定がありますので、先ほど、勢一委員からもありましたけれども、既に策定済みの政令市が中心となって、もしくは都道府県が中心となって、まだ策定できていないところとともに共同策定を推進していくとか、策定に関わる支援をしていくとか、広域的な取組を広げていくということが必要なのではないかというふうに思っています。共同策定の事例がどの程度あるのかというのを私もお伺いしたいところです。
それと、温対実行計画の中に適応策についても規定しているような自治体というのも、私自身が関わっているところでも幾つかありまして、もしくは環境基本計画の中に適応策を盛り込んでいるような事例もあるんです。なので、そういったところについては、そもそもカウントされているのかどうかというところも併せて確認させていただければと思います。
いずれにしても、法律が緩和策と適応策でそれぞれ根拠法が別個になってしまってはいますけれども、適応策プラス緩和策、もしくは緩和策プラス適応策、それに例えば掛ける防災だったり、掛ける生物多様性だったり、全体として、先ほど統合的になんてお話もありましたけれども、そういった全体としてのシナジーや相乗効果を引き出していくことにつながるんだという、そういう意識をしっかりと地方公共団体においても認識していただく、持っていただくということが重要かなというふうに思っております。
以上です。
 
●肱岡委員長
ありがとうございました。
それでは、三村委員、よろしくお願いいたします。
 
●三村委員
どうもありがとうございます。
じゃあ、私のほうから簡単に3点、お話をさせていただきます。
第1点目は、適応法の実施状況の評価についてです。
これは2018年にできて5年間の間に非常に幅広い分野で大きく進んだと。今日のお話を伺って、そういうふうに感じました。すばらしいことだと思います。
一方で、気候変動自体が昨年の猛暑とか、そういうことから見ても、急速に進展していると。じゃあ、我々の側の対策の進展度合いはどうなのかということで、両者のせめぎ合いの状況にあるわけですよね。そういう意味で、加速が必要、緩和も適応も加速が必要だと思いますが、適応法の施行状況の評価をこういう形できちんとやって、進行管理を進めていくということは非常に重要だということを改めて感じました。それが第1点です。
第2点は、先ほど来出ている市町村の適応計画の話なんですけれども、私も幾つか相談を受けて、実際にいろいろ一緒にやったりしました。感じることは、適応というのは、中央政府の段階でもそうですけれども、環境省だけの仕事じゃなくて、国交省や農水省や様々な分野自体が実施をするものが多いわけです。地方自治体でもそうで、防災や農業、健康、都市計画、それぞれそういう分野と連携、あるいは、その人たち自身の取組として進めなければ進まないという事業だと思います。そういう点では、環境部局が適応計画の原案をつくるというところからスタートするんじゃなくて、最初からそういう人たちと一緒にやるというような方向で考えることが、ぜひ必要なのではないかと感じています。
それから、3番目は、これも市町村、地方自治体の適応計画の話なんですが、気候変動の適応計画をつくろうとすると、新しい政策分野、新しい行政分野ができるというような感じで考えがちなんですけども、それぞれの市町村は総合計画だとか、あるいは環境基本計画をお持ちで、それを読んでみると、もう適応をここにはめ込めば、ぴったりだなと思うようなことがたくさんあるんです。地域の人たちに話をしても、新しいことを自治体に持ち込むんだというのではなくて、今までこういう地域の将来像を目指してきた、我々もこういうことを解決したいと思っていると、その中での取組に適応の取組がどういうふうにフィットするかという話をすると、非常に盛り上がってスムーズに話が進むというようなことがあります。
ですから、地域の将来像の中に気候変動の緩和や適応、カーボンニュートラル、ゼロエミッションシティ、そういうようなものと合わせて、適応も位置づけて、大きな地域の将来像を語る中で、そういう取組を進めるということが重要なんじゃないかということを感じています。
以上です。よろしくお願いします。
 
●肱岡委員長
ありがとうございました。
委員の先生方からのコメント、ご質問、ありがとうございました。
非常にたくさんいただきましたので、まず、質問に簡潔に答えられる部分だけいただけますでしょうか。よろしくお願いします。
 
●気候変動適応室長
大変多くのコメント、そして質問もいただきまして、ありがとうございます。コメントの部分が多かったと思うんですけど、ご質問に幾つか答えるとしますと、江守先生からは、社会の脆弱性の評価をどうやっていくのかという辺りもご指摘をいただきまして、気候変動の影響評価の報告書、5年に一度の作成の中で全般的な影響評価については行っているわけでございますけれども、おっしゃるとおり、社会全体への評価についても、どのように全般的に記載していくのかという辺り、今後の課題の一つにはなろうかと思っております。
国際的にも適応の評価、あるいは取組をどうしていくのか。COP28でも世界目標の中に健康分野ですとか、社会全体のシステムの中での適応の位置づけについても決定の中に含まれておりまして、そういった観点の評価というのは必要なんだなということを、GGAの目標などを見ても非常に感じたところでございます。こういった視点の評価をどのように日本でも取り入れていけるかというのは、次回の影響評価、そして適応計画の策定に向けて一つの大きなポイントとして捉えることができるんじゃないかなというふうにも思っております。
また、多くの委員から緩和と適応、そして各施策とのシナジーについてご指摘をいただいたところでございます。
これまでもご紹介しましたように、各施策への適応を統合していく、あるいは共同でメッセージを発出する。様々な取組がありますけれども、特に現場レベルでは、一体的な打ち出し、そして取組というのは本当にこれからの部分も多いと思います。たくさんのコメントをいただきましたので、さらに取り組んでいきたいと思います。
あと、特に地域計画とセンターについてもご指摘いただいたかと思います。共同策定や、広域でどうして行くかというお話がありました。先に、広域協議会とアクションプランについてもご質問をいただいたかと思いますけれども、今回ご紹介した広域アクションプランの策定、これは環境省として自治体の取組を後押しする上で、適応法の施行より少し前倒しで、まずは広域での取組を環境省としても支援をしていこうという、そこから入った部分があるかと思っております。
地方環境事務所を中心として、広域な観点から適応についてのアクションプランを策定しつつ、その中で各個別の自治体が適応計画の促進にも取り組んでいただくという、どちらかというと、広域の取組を先に支援しつつ、それを見ながら、個別の自治体がフォローしつつ、できる部分からやっていくというような並行した流れになってきていたということがあろうかというふうには思ってございます。
そして、共同策定については、現時点では法律に基づいた共同策定という事例はまだございません。ただ、複数の自治体で共同策定するというのは、環境省としても、そのようなご希望のある自治体への支援、協力というのは、現在まさに進めているところです。モデル事業なども検討しておりまして、そういった取組も今後進めていこうと思っております。
また、センターについては、これもまだ広域的な複数での共同センターの設置というのはございませんけれども、あるのは京都府と京都市の共同設置です。そういった県とその傘下の市が共同に設置しているセンターの事例というのは幾つかございます。
広域での複数の自治体での設置、計画策定の動きというのは、まさに今後、可能性としてはあると思いますし、どのようなことが後押しできるのかということについても、取り組んでいきたいというふうに思ってございます。
他方で、広域に計画を一緒につくるということについては、日頃の自治体間の体制なり、一緒にほかの事業で連絡体制が既に構築できているというような日頃の関係性がある場合には、非常に話が進みやすいんだけれどもというような実情もあるようでございます。その辺りも自治体の実際のニーズですとか、ハードルがどこにあるのかというところもよくヒアリングしながら、うまくニーズにマッチしたサポートをしていきたいというふうに思っております。
そして、適応計画が、温対計画ですとか自治体の環境基本計画、また各種のプランの中に位置づけられている事例は、実際には多数ございます。それを全て含めた数がこの二百幾つという数になっておりまして、実際には9割程度、かなり多数がほかの計画の一部として、あるいは統合して策定されている事例で、ほかの計画にも同時に位置づけられているというような事例が多数あるのが現状と考えております。
いずれにしても、適応計画は新しく単独で設置するというのは、先ほど、ご指摘がありましたとおり、現実的にはキャパシティーの問題等もあって合理的ではないという部分もあろうかと思います。あるいは施策のシナジーの観点からも、統合して策定していく方向に行っているかと、方向としては思っておりますので、さらにこの辺りを各自治体のニーズをよく踏まえながら応援していければというふうに思ってございます。
あと、勢一委員からもご指摘のあったような、適応法があることで、どのような効果があるのか、あるいは、それぞれこれまで行ってきた各種の施策で、どのような効果が出ているのか。今回、議論をさせていただく中で、ぜひ、またそのような効果についてのコメントなりもいただければと思っております。法律の制定前にも、適応についての取組はもちろん多数なされていたわけですけれども、法律があることで、後ろ盾と申しますか、各自治体に対しての支援なども充実してきたと思いますし、各省庁との連携についても、法律のある・ないでは、かなり大きな違いがあったかと思います。これはなかなか定量的に評価するというのも難しいところがあると思いますけれども、法律の施行によって加速してきたところがあると思いますので、その辺りを今回のレビューの中でも評価しながら、今後何が足りないのか、そして、この連携をさらに加速させていくためには、どういった取組なり視点が必要なのかということも、再度、整理をしながら、次の5年間に向けて課題の整理と方向性を見いだしていければというふうに思っております。
私からはひとまず以上でございます。
 
●肱岡委員長
ありがとうございました。
まだまだご意見はあるかと思いますけど、絶賛35分後れておりまして、次へ進めさせていただきたいと思います。
それでは、次は国立環境研究所より説明をお願いいたします。
 
●国立環境研究所気候変動適応センター副センター長
失礼いたします。国立環境研究所の気候変動適応センターの副センター長の上田と申します。すみません。今日は風邪っぴきでございまして、お聞き苦しい点、お許しいただければと思います。
それから、本当はセンターを代表して肱岡センター長から説明申し上げるところですが、あいにく司会進行ということでございますので、代理で説明させていただきます。
2ページ目をお願いいたします。
今日のご説明は、やや自縄自縛でございますけれども、国立環境研究所のいろんな適応に関する取組のうち、特に法律に基づいて付託をされている部分についての説明に絞って、今日はご説明させていただいております。
この11条がまさにその関係でございますけれども、赤でなぞっているところでございますが、適応に関するような情報の収集、整理、分析及び提供というのが非常に大きな中核でございまして、それに付随して、自治体に対する技術的援助、それからLCCAC、つまり地域適応センターに対する技術的援助、こういうことを仰せつかっているということでございます。
次、お願いします。
それを図にしたのがこのスライドでございまして、いろんな地域の主体とも連携をし、あるいは、国の中の各省、それから各国研とも連携をし、情報提供しながら、支援をしていく、こういうことでございますけれども、ここで申し上げておきたいのは、字が小さくて恐縮なんですが、国立環境研究所適応センターのすぐ下のところに、情報収集・整理・分析・発信といったことが書いてあるわけですが、その下に小さな字ですけれども、調査研究と書いてあります。国立環境研究所は研究所ですので、もともと調査研究がミッションなんですけれども、法律で付託されたところには情報の一番の中核となるということが書かれておりますので、少しそこが分かれておりまして、つまり、研究的なものと行政支援的なものと両方やっているのがこのセンターの一つの特色だというふうになっております。
次、お願いいたします。
それを表しておりますのがセンターの概要でありますけれども、長くは説明しませんが、特色がこの室が四つありますうちの一番上です。気候変動適応推進室という総合調整を行うような、あるいはLCCACとの協働を行うような、そういう行政的な支援を行う室が一つ専属でつくられている、これが非常にほかのユニットと比べて非常に大きな特色ということになっておりますし、右の表の人員数の中にも、行政系の職員が専任でいるというのが非常に大きな特色になっているかと思います。
次、参りまして、センター全体の「研究×支援」の体制について、ざっと図示したものでございますが、上半分はさっき申し上げた調査研究関係でございます。下半分がそれ以外ということで、それに付随するものということになっておりますけれども、まず、気候変動適応研究に関するプログラムというのがございまして、プロジェクト1、2、3とありまして、評価、機構解明、あるいは影響評価、それから適応戦略策定といったとこで、それぞれプロジェクトを走らせておりまして、それを支える基礎基盤として、データベース構築、シナリオの策定、データ集約といったところを基盤として整備しているということでございますけれども、これらの基盤をもって、国内外の研究プロジェクトとの連携、あるいは、国内外の研究機関との連携、あるいは適応推進の支援をしていくということで、自治体、事業者様、あるいは国際協力といったところで、外部の支援をしていると。それから左下にございますA-PLATと書いておりますけれども、これはADAPTATION PLATFORMでございますけれども、適応に関する情報をいろんなところで集約いたしまして、それで、国民、事業者、自治体といった各層に向けて幅広く発信させていただいております。それぞれで消化しやすいような形で並べて発信をさせていただいているということでございます。
次、お願いします。
多様なニーズ把握、ここからすみません、自治体関係に話が移っていくんですけれども、多様な地域のニーズ把握ということで、自治体に事前に、法施行前にアンケートさせていただいて、ここに人材育成から始まるいろんな支援メニューをご要望いただきました。これに沿って、かなりきめ細かく支援メニューを設定して、これまでご支援申し上げてきているということでございます。
詳しくは次のスライドをお願いします。
地域の活動推進のための国立環境研究所の取組ということで、自治体・LCCACの取組として、地域の実情に応じた、いわゆる金太郎あめではなくて、地域に伴った、ちゃんと地域ならではの「計画」を作るというところが非常に大事なポイントかと思いますが、それから2ポツとして、「拠点」を作ると、まさにセンターを造るということ。それから、3ポツで、先ほどから出ております統合的に関係者が一丸となって取組を推進するというところを私どもとして、いろいろと支援させていただくということですけれども、ここに書いてある①から⑥が今のところの支援メニューということで、大きくは知見の提供ということと知見の集約・共有・共創ということでございます。①から⑥のうち赤で示しているところをこの次に少し詳しめにご説明します。
次、お願いします。
①で、A-PLATを通じた情報提供ということで、いろいろな科学的知見をGISに落とし込むと。左上の地図は、お米の白未熟粒の割合に関する、つまりお米に対するダメージでございます。そういったものも分かりやすい形で図示をしたりとか、あるいは専門家による解説・記事なども各種取り寄せたりとか、あるいは、右上で適応策の事例ということで、地域と企業の適応策の事例、それこそ適応ビジネスとかかなりいろいろ取りそろえさせていただいて、掲載させていただいておりますということですとか、それから適応策の体系的な整理ということで、これは私ども、インフォグラフィックスと呼んでおりますけれども、イラストを交えて、かなり具体的に分かりやすく各分野でのいろんな適応策を解説するというような取組を進めております。
次、お願いします。
A-PLATで、この五、六年、どれだけアクセス数なり更新が伸びてきたかということでございますけど、見ていただいたとおり、更新は年300回から500回ぐらい頑張って進めておりますのと、月別のアクセス数も、お陰様でかなり伸びてきているということでございます。一応国環研としての目標値としては、年間50万アクセスぐらいを目標としておりますけれども、ここ数年は100万アクセスを超えておりまして、目標は達成しているということでございます。
次のスライドをお願いいたします。
②研修・セミナーの開催ということでございますけれども、計画策定に関するワークショップですとか、それから、計画策定支援ツール、これはまだベータ版で、去年3月にオープンしたばかりですけれども、本来は自動的にその地域の計画策定をバックアップするようなツールを目指していますが、今のところは、関連する図表が自動的に出てくるという、それぐらいのものを提供しているようなところでございます。また、専門家によるセミナーといったものも展開しております。左下に、技術的援助の実施件数、かなり精力的に出かけていって、いろんな支援をさしあげているということと、右側は、さっきご説明がありましたけれども、地域適応計画の策定数も伸びてきているということでございます。
次のスライドで、地域適応センターの設置状況が出ております。これも環境省様のスライドで既に書いてありますけれども、二つだけ補足させていただくと、この地図は空白地域がありまして、これは分かりやす過ぎるので、ちょっとあれだったんですけども、ちなみに去年12月15日に岩手県は埋まっております。ですので、また1県埋まったと。もう一点、補足は、ここに書いてあります埼玉県は県と県内市町村で共同設置を進めているということで、さっきのご質問についても、ここで一つ答えられたかなと存じます、
それから、次のスライド、お願いいたします。
⑤でLCCACとの協働ということで、国環研とLCCACとの間での共同研究というのも、今、6テーマ、同時に並行で走っておりますけれども、延べ29機関、29LCCACに参画いただきまして共同研究を展開いたしております。それから、普及啓発ツール、これはかなりレベルが違うんですが、一般の方々への普及啓発ということで、「ミライ地球ガチャ」。ガチャというものをすれば、結構、子どもが寄ってくるので、そういったツールを使って、開けると、これから暑くなっていろんな課題が起こりますと。課題が起こったことについてどうするかということを、まさに開いて見た人に考えてもらう。考えて貼り出してもらう、こういうような仕掛けなんですけれども、単にこっちから一方的に教えるんじゃなくて、自ら考えていただくというところに工夫の種があるわけですが、やってみると結構面白い答えがたくさん出てくるというのが、このツールの面白いところでありまして、そういったものも展開しております。ちょっと試行的ではございます。
次、参りまして、時間かけ過ぎまして、申し訳ありません。
⑥で、LCCAC間のノウハウ共有と書いてありますが、それと、あと、国研同士の連携ということも、スライドに一緒に含んでおりますけれども、上半分はLCCACの間での意見交換会ということで、先ほど、LCCACの格差みたいなお話がございましたが、こういった水平での意見交換会をかなり頻繁に開いて、お互いざっくばらんに本音で、どこを困っているんだよねとか、うちはなかなか人員がつかなくてとか、そういう話をしながら、互いに切磋琢磨し、伸ばしていただくというようなこともワークショップとして進めさせていただいております。
ちなみに、昨年の12月末に、この5年間の振り返りみたいなことを意見交換会の場でやりまして、5年の振り返りの取りまとめが、今は整理中なので、この場でまだご説明できないんですけども、もし、またヒアリングの機会でお呼びいただけるようなことがあればそこら辺も少し課題として話題提供できればというふうに考えております。
それから、気候変動適応の研究会ということで、これは国研同士、21の各省の国研との対話・共創ということをずっと進めてきております。もともとは21国研だったんですけども、LCCACも一緒に入っていただくような形で、最近進めてきておりまして、そういう意味で、各省の国研の縦糸と地域の横糸が一緒に会うような形で模索をしてきているということがありますし、実際、この仕掛けの中から共同研究が生まれてきたりということも出てきておりますので、成果としては出てきているのかなというふうに考えております。
以上でございます。
 
●肱岡委員長
ご説明、ありがとうございました。
それでは委員の先生方、質問、コメントをいただけますでしょうか。
それでは、まず、オンラインの松本委員、ご質問、コメントいただけますでしょうか。
 
●松本委員
那須塩原市気候変動対策局の松本でございます。
今回、こういった形で委員会のほうに参加させていただきまして、大変ありがとうございます。
私のほうで、今、国立環境研究所の方からのご説明もあったですが、それに関連いたしまして、あと、前段のこの施行状況、環境省さんのほうの発表で、いろいろ地方自治体に対するご意見などもお聞かせいただきましたので、その辺に関連して、簡単に事例紹介的なところで発言させていただきたいと思います。
那須塩原市におきましては、令和2年4月に気候変動対策局、それから気候変動適応センターを設置いたしまして、当初は担当する職員も3名程度、少人数でスタートしたところなんですが、その後、人員の増強などもして現在に至っているところでございます。
令和4年3月に、先ほど前段のほうでお話に出ました気候変動適応計画の改定と、それから実行計画のそちらのほうの改定を併せて、気候変動対策計画というものをつくったところでございます。
また、これも前段のほうになりますが、地域との連携でありますとか、近隣自治体との連携という部分ですと、同じ地域にあっても、気候変動対策についての捉え方はいろいろ違うところもありますので、現状としましては、那須地域で、那須塩原市と近隣の自治体とで定住自立圏というものを構成しております。その中で気候変動についても、例えば、パンフレットの作成でありますとか、あるいは講演会の共同実施でありますとか、そういったところに取り組んできたというような事例もございます。
今回、この委員会に参加させていただくに当たりまして、こういった地方自治体の事例など、今後いろいろご意見を提供させていただいたり、あるいは事例のほうを紹介させていただいたりしていければと思います。
この間、環境省の皆様、それから、国立環境研究所の皆様には、いろいろ情報提供いただきましたり、あるいは国のほうの補助金等予算を活用させていただきまして、これらの事業を進めてきたところでございます。
そういったことで、すみません、前段も含めまして、感想的なところになってしまいますが、発言させていただきました。ありがとうございます。
 
●肱岡委員長
ありがとうございました。
それでは、渡部委員、よろしくお願いいたします。
 
●渡部委員
手短に。ちょっとテクニカルな質問なんですが、10ページ目でツールを開発されたというのがありましたけれども、こういうのこそ、あっちでもこっちでも言われているチャットGPTだったり、チャットボットだったりというのを使うべきかなと思ったんですが、この辺、中身というのはどういうにされているんでしょうか。人がマニュアルをつくられているのか。
 
●国立環境研究所気候変動適応センター副センター長
ご質問、ありがとうございます。
今はデータベースから自動的にばっと出すというようなだけのやり方なので、AIではありません。
将来的にはもう少し、私の個人的な意見が入りますけど、地域経済循環分析みたいなものを今既にやられているものがありますので、そういうのもしっかり組み込んで、経済社会的にどういう適応策を入れるかみたいなことをもう少し乗せると、さらに使い勝手が上がるんじゃないかなというふうに思っていますが、これは今後の改善でございますので、乞うご期待ということでございます。
 
●渡部委員
いいかどうか分からないんですけれども、もし、こういうツールがもっと本格的なものに仕上がっていった場合って、極端な話、各市町村向けの適応計画、こっち側が自動的につくっちゃうこともできますよね。使いたければどうぞみたいに提示するとか、いいかどうか分かりませんけど。
 
●国立環境研究所気候変動適応センター副センター長
一々やってよろしいでしょうか。
おっしゃるとおりなんですが、各地域の意思決定というのはすごく大事だと思っております。これから、まさに地方自治がすごく大事な時代だと思いますので、勝手に押しつけるわけにはいかず、やはり、こういうやり方があるけれども、その上で地域としてどういう意思決定をしますかという過程がすごく大事なんじゃないかというふうに考えています。
 
●渡部委員
ありがとうございました。
 
●肱岡委員長
皆様、空気を読んでいただいてありがとうございます。12時を過ぎまして、大変申し訳ございません。あと、もう一つ、今後の予定というものがありますので、そこに移らせていただきたいと思います。
それでは、事務局、よろしくお願いします。
 
●気候変動適応室長
皆様、ありがとうございました。
本日は活発にご議論いただきましてありがとうございます。
今後の予定につきましては、次回の小委員会会合の日程を3月5日(火曜日)の15時に予定してございます。詳細につきましては、また改めて委員の皆様方にご連絡をさせていただきたいと思いますけれども、国環研さんを含めて幾つかヒアリングの機会としたいというふうに考えてございます。
その他については以上ですけれども、事務局のほうで進めさせていただいてよろしいですか。
 
●肱岡委員長
よろしくお願いします。
 
●気候変動適応室長
本日は、対面、オンラインのハイブリッド形式での開催ということで、ご発言しにくかった部分もあろうかと思いますけれども、本当にありがとうございました。
本日の議事録につきましては、事務局で取りまとめ、また、先生方にご確認いただいた上で、環境省ホームページにて公開させていただく予定でございます。
また、3月第2回委員会につきましても、引き続きよろしくお願いいたします。
以上で、本日の小委員会を終了いたします。どうもありがとうございました。