カーボンプライシングの活用に関する小委員会(第5回)議事録

日  時

平成30年12月27日(木)  10 :00 ~ 12:30

場  所

三田共用会議所 講堂
(東京都港区三田2-1-8)

議  題

(1)これまでの議論

(2)カーボンプライシングの意義・効果及び課題等

(3)これまでの御指摘事項について

(4)国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)の結果について(報告)

配付資料

資料1  カーボンプライシングの活用の可能性に関するこれまでの議論

資料2-1  日本経済の状況・課題とカーボンプライシングの関係について

資料2-2  日本経済の状況・課題について

資料2-3  日本の経済とカーボンプライシングの関係について

資料3  これまでの御指摘事項について

資料4  COP24の結果について

参考資料1  カーボンプライシングの活用に関する小委員会委員名簿

参考資料2  カーボンプライシングの活用に関する小委員会第4回議事概要

議事録

午前10時00分 開会

鮎川市場メカニズム室長

それでは、定刻となりましたので、ただいまより第5回中央環境審議会地球環境部会カーボンプライシングの活用に関する小委員会を開催いたします。

事前に若干遅刻をされるというご連絡をいただいている先生がいらっしゃいますが、定刻ですので始めさせていただきます。

本日は、年の瀬も押し迫った中、誠にありがとうございます。

それでは、まず資料の確認をさせていただきたいと思います。お手元配付資料、議事次第の下にございます資料一覧をご覧ください。まず資料1といたしまして、カーボンプライシングの活用の可能性に関するこれまでの議論。資料2-1といたしまして、前回もお出ししたもののアップデート版でございますが、日本経済の状況・課題とカーボンプライシングの関係について、資料2-2といたしまして、日本経済の状況・課題について。資料2-3といたしまして、日本の経済とカーボンプライシングの関係についてでございます。資料3といたしまして、これまでの御指摘事項について、資料4といたしまして、先日開かれましたポーランド・カトヴィツェで開かれましたCOP24の結果につきまして、これは担当の参事官のほうからご報告という形でご説明をさせていただきたいと思います。あと参考資料の1、名簿と参考資料の2、前回の議事概要につきましては電子データでお手元にありますので、適宜ご参照いただければと思います。

資料の不足あるいは落丁等ございましたら、お手数ですが事務局までお申しつけいただければと思いますが、いかが、大丈夫でございましょうか。

それでは、浅野小委員長、以降の進行をお願いいたします。

マスコミの関係の方におかれましては、撮影はここまでとさせていただきますので、よろしくお願いします。

では、委員長お願いします。

浅野委員長

それでは、おはようございます。年末ぎりぎりの会合で大変申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。

本日は、多くの先生方にご出席いただきましたので、大変ありがたいんですが、前回に比べまして30分ほど時間を短くしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

最初のほうで、議題の1から議題の4まで、全部まとめて事務局からまずご説明を申し上げて、その後ご発言をいただこうと思います。すなわち、これまでの議論をまとめたもの、それからさらに、カーボンプライシングの意義・効果及び課題等について、これまでの御指摘事項について、それから、COPの結果について、こういうことでございますが、このうちこれまでの議論というのは、従来大きな紙で整理しておりましたが、それを再度またもう一度少し小さい紙に整理をし直したというもので、事務局としては先生方のご発言をできるだけ客観的に整理をして並べたというふうに申しておりまして、同じような内容のご発言については重なることを避けるために少し整理をさせていただいたようでございますが、そういうことでございます。よろしくお願いいたします。

では、事務局からの説明をいただきます。

鮎川市場メカニズム室長

それでは、議題1につきまして、資料1、カーボンプライシングの活用の可能性に関するこれまでの議論に沿ってご説明いたします。

今、委員長からご説明がございましたとおり、この資料につきましては、これまでご議論いただきました議論につきまして、事務局のほうで、先ほど委員長がおっしゃったとおりのような方針で適宜編集をさせていただいたものでございます。

それでは、資料1に沿ってご説明をさせていただきたいと思います。

まず目次といたしまして、これまでの議論の経緯、それで、1ポツといたしまして、現状の整理、国内外の動向、あるいは我が国の状況といったものを整理したものが1.気候変動の現状と脱炭素社会への移行の部分でございます。

2ポツの部分が、カーボンプライシングが脱炭素化と経済成長に寄与する可能性といたしまして、移行におけるカーボンプライシング、あるいは削減効果、あるいは気候変動問題と経済・社会的課題の同時解決の可能性、あるいはイノベーション促進の可能性、ファイナンス促進の可能性といったようなテーマにつきましてまとめたものでございます。

3ポツは、一方で、課題をもたらす可能性といたしまして、負担増大の可能性、あるいは国際競争力等の課題の可能性、あるいは逆進性の可能性といったようなことで、この3ポツはまとめてございます。

最後といたしまして、これまでの議論の中でも具体的な制度設計、制度の中身についてのご議論といったことについて多数の委員からご指摘をいただいておりますので、そういったこと、委員のご関心の事項につきましてまとめた部分ということで、こういった構成で整理させていただいております。

それでは1ページから、すみません、お時間が限られておりますので、全てをちょっと読み上げるのは割愛させていただきまして、かいつまんでの説明ということになりますので、ご了承いただければと思います。

まず、1.経緯といたしまして、基本的にこの構成は普通の字体で書かれている最初の部分で、割と客観的な事実につきまして簡単にリード文をつけた上で、その後ご意見、斜字体の部分で箇条書きになっているのがご意見をある程度編集して記載をさせていただいた部分でございます。

まず、経緯といたしまして、この小委員会の設置の趣旨でございます。第5次環境基本計画におきましてという5行目のところから、あらゆる観点からのイノベーションの創出や気候変動問題と経済・社会的課題の同時解決を実現するといったようなことがこの基本計画において規定されております。こういったことを受けて8行目からでございますが、脱炭素社会に向けた資金を含むあらゆる資源の戦略的な配分を促し、新たな経済成長につなげていくドライバーとしてのカーボンプライシングの可能性についてご審議をいただくということで、本委員会設置をされてございます。

こういった趣旨を受けまして、まず議論の経緯の関係で、全体的な議論の進め方につきましてご意見をいただいておりますので、若干ご紹介をさせていただければと思います。

冒頭申し上げましたが、日本の実情を踏まえた具体的な制度案に向けた議論をすべきというご指摘。あるいは一方で、導入ありきではなく、慎重な議論をすべきであるというご指摘もいただいてございます。さらには骨太、骨の太いものをつくるべきであるといったこと。あるいはそれと関連をいたしますが、次の20行目辺りから、50年100年という長期をイメージして、民間企業ではやりにくい生産方針を出すことに意味があるというご指摘もいただいております。関連いたしまして、バックキャスティングで将来の日本のあり方のところから考えていくべきということもご指摘をいただいております。

24行目におきましては、エピソードベース議論にとどまらず、ある程度深掘りした分析に基づいた議論をしていくべきというご指摘があった一方で、次の26行目からですが、データが限られている部分もありますので、50年100年という長期を見る際にはエピソードの持つ力もあるというご指摘もいただいております。

さらに28行目以降では、関連して反対ありきでエビデンスを求める議論ではなくと、外部性の内部化というカーボンプライシングの効果をいかに発揮させるかという立論も必要であるとご指摘をいただいております。

以上がこれまでの経緯というところでございます。

続きまして、1.現状に関する整理でございます。

まず1-1といたしまして、気候変動の基本認識と脱炭素化を巡る国内外の動向という形で、最初のファクトの部分は、WMOあるいは気象庁などから、今年の異常気象について温暖化との関連につきましては指摘があったという事実を記載した上で、12行目辺りから、パリ協定においては、2℃高い水準を下回り、1.5℃に制限することを目指すといったこと。あるいは今世紀後半に人為的な排出と吸収をバランスさせるという「脱炭素化」の目標が掲げられているという中で、海外では、既に新興国を含む45カ国・25地域でカーボンプライシングが導入されているという話。

あるいは18行目からですが、SDGsの実現に向けた動き、あるいはESG投資の活発化といったことも広く注目されているというご指摘という中で、我が国におきましては、21行目からでございますが、温室効果ガス排出量を2050年80%削減という長期的な目指すべき目標というものの達成とともに、パリ協定の下で、従来の延長線上にない脱炭素化社会を今世紀後半に実現していくといったことを目指すといったようなことが書かれてございます。

他方でということで、足元のお話でございますが、石炭火力発電からのCO2排出量は、足元2016年は若干微減をしておりますが、基本的には90年以降増加基調で推移をしているといったようなこともあわせて記載をしてございます。

こういったようなことを踏まえまして、基本認識を巡るご意見といたしまして、32行目、33行目辺りからでございますが、この温暖化の対策というものは国民生活を守るということである意義を改めて認識すべきというご指摘。あるいは温暖化対策をとらない場合のコストも加速度的に変わっているというご指摘。こういう基本認識の一つでございます。それに36行辺り、最後から次のページにかけてでございますが、欧州を中心に経済やビジネスを統合して議論されるようになってきているというご指摘。

他方で、次のページの2行目でございますが、カナダ、アメリカ連邦議会下院では、炭素税に反対するといったような動きもあるというご指摘もいただいてございます。

次、4行目辺りからでございますが、日本が直面する問題としては、石炭火力発電の新増設という非常に大きな問題があるという中で、どういう議論をしているのかという共通認識を持つべきであるといったようなご指摘をいただいております。

続きまして、現状の整理。4ページ目をお開きいただければと思います。

1-2といたしまして、我が国経済の現状と脱炭素化に向けた考え方ということでございます。

3行目からでございます。いわゆる骨太の方針によりますと、4行目辺りから、持続的な成長経路を実現していくためには、イノベーション力の強化など生産性の向上によりサプライサイドを強化して、潜在成長率を高めていくことが急務といったような指摘がされているということ。あるいは経済財政白書等におきまして、生産性向上、資本ストック及び労働力に関する課題、あるいは企業の投資動向を巡る課題などが指摘されているといったような点。

こういったことも踏まえまして、さまざまなご意見をいただいているのが14行目以降でございます。まず最初のところで、日本経済そのものがどうなっているかという根本的な問題まで戻って考えるべきであるというご指摘。あるいは次のパラでございますが、一人当たりGDPの低下、生産性の低さ、あるいは設備の老朽化を初めとする日本経済の現状を踏まえることが重要というご指摘もいただいております。

さらにはちょっと下に落ちまして26行でございますが、諸外国の炭素生産性の推移を踏まえると、カーボンプライシングが産業構造の転換を後押し、企業レベルでは事業構造の転換を促すより付加価値の高いビジネス領域に企業を移していく効果があった可能性があるというご指摘をいただいております。

他方で、この炭素生産性の議論に関しまして、そもそも諸外国、産業構造の違いといったさまざまな要因の影響を受ける中で、単純な相関やトレンドだけではなくて、国の産業構造あるいはエネルギー構造の異なる点を踏まえた議論が必要であるというご指摘もいただいております。

続きまして、開きまして5ページでございます。脱炭素社会への移行に関するご意見でございますが、最初の行といたしまして、総論的にパリ協定を踏まえた日本の中長期的な低炭素成長のイメージを共有すべきというご指摘。さらには三つ目のパラグラフでございますが、日本企業やグローバル企業の国内生産を促進していくためにどうすべきかを考えるべきというご指摘。さらには関連いたしまして、事業構造の転換なくして経済全体の成長はなし得ず、どのようにプラスになるかという視点を持って議論をすべきという話。あるいは関連して、化石燃料企業からの投資撤退などのESG投資も踏まえて、こういった動きを踏まえて議論すべきというご指摘と。さらに少し落ちまして、16行目辺りから、再生可能エネルギーを戦略的に入れるといったようなことも世界では日本企業も含めて問われているというご指摘をいただいております。19行目からは、日本企業が脱炭素社会に向けたイノベーションを生み出させる原動力としてこそ明確なルールに基づいた制度のほうが望ましいというご指摘もいただいております。

続きまして26行目からは、エネルギー事情を巡るご意見をいただいておりますのでご紹介をさせていただきます。最初の27行目からは、我が国の資源が乏しい国情を踏まえて、エネルギーの3Eのバランスの視点が不可欠であるというご指摘をいただいております。さらには、他方で32行目辺りからですが、現時点での本体価格を前提に議論することには疑問があるとして、どうやって本体価格を下げていくか、国内のエネルギー源をどう増やしていくかが重要というご指摘をいただいております。

次に、その一番下でございますが、原子力はCO2を確実に減らす手段であるというご指摘をいただいております一方で、再生可能エネルギー100%で実現していくことが世界的な方向性というご意見もいただいております。

すみません。6ページに移っておりますが、4行目でございます。日本のエネルギー原単位の話に関連いたしまして、今の原単位の捉え方の関連のご指摘でございますが、鉄鋼業のように副生エネルギーの活用で一次エネルギー消費量を削減するといった、高度な省エネ努力が現状の原単位の計算の仕方に反映される形となっていないというご指摘もいただいております。

続きまして8行目でございますが、石炭火力の計画に関連いたしまして、安定供給のために石炭火力の計画をきちんとすべきであるといったことも多かったのではないかというご指摘もいただいております。

続きまして、おめくりいただきまして7ページからが2ポツでございます。カーボンプライシングが脱炭素化と経済成長に寄与する可能性というふうなタイトルで整理をさせていただいております。ここにおきましては最初のリード文のところで、SDGsあるいはRE100といったような世界の脱炭素化に向けた動きをご紹介した上で、15行目辺りから、今年の6月の未来投資会議における安倍総理のご発言といたしまして、「もはや温暖化対策は、企業にとってコストではない。競争力の源泉であります。環境問題の対応に積極的な企業に、世界中から資金が集まり、次なる成長と更なる対策が可能となる」と、「環境と成長の好循環をどんどん回転させ、ビジネス主導の技術革新を促す形へと、パラダイム転換が求められている」とのご発言をいただいておりますをご紹介しております。

こういったことも踏まえまして、この小委員会におきまして新たな成長につなげていくドライバーとしてのカーボンプライシングの可能性について、日本経済の状況・課題とあわせてさまざまなご意見をいただいてございます。

まず2-1といたしまして、脱炭素化に寄与する可能性ということで、(1)番、脱炭素社会への移行におけるカーボンプライシングという題でまず一つ整理をしてございます。

おめくりいただきまして8ページでございますが、さまざまなご意見をいただいております。8ページの10行目辺りからですと、競争力やお金の流れをどう仕向けていくのかという全体の移行プロセス、あるいは戦略の中でカーボンプライシングをどう位置づけたかという議論が必要であるというご指摘。あるいは15行目のパラグラフでございますが、炭素に価格をつけ、新たな経済に移行していくというメッセージが必要であると。その上で、特定の産業へのデメリット等は別途議論すべきというご指摘もいただいております。さらに20行目でございますが、気候変動に対するコストが一切払われてない点がカーボンプライシングに是正されるということが最も重要である。企業行動を変えていく効果があるというご指摘もいただいております。

あともう一つ、29行目辺りからですが、環境対策につきましては、数量調整とともに価格調整という二つのメカニズムをいかに組み合わせるかが重要であるというご指摘をいただいております。

関連したご指摘といたしまして、お開きいただいた9ページでございますが、上の2行でございますが、適切に温室効果ガスを抑制するための手段として、財政学的にCO2への課税は基軸に置かなければならないというご指摘をいただいております。関連いたしまして、9ページの7行目辺りですが、日々の現実的な経済・くらしの問題と長期的なビジョンを複眼的に見るべきということで、税だけがパッケージか、あるいは収入をイノベーション、アダプテーション、防災に使うとかといったことをセットで考えるべきというご指摘をいただいております。

続きまして15行目におきましては、カーボンプライシングを入れないデメリットも検討すべきというご指摘。あるいは17行目からは、グローバルな価格メカニズムを使うとしても、できるだけ共通の価格を設定することが重要であるといったようなご指摘もいただいております。

続きまして、エネルギーの脱炭素化における位置づけを巡るご意見といたしましていただいておりますので、ここもご紹介をさせていただきます。

29行目辺りでは、省エネが我が国はかなり徹底されてきた歴史がございますが、カーボンプライシングが省エネ、あるいはエネルギー転換という目的に対してどういった効果があるのか分析する必要があるというご指摘をいただいております。

32行目辺りからは、長期的な限界費用という視点で、34行目辺りからは、化石燃料依存体質のままで限界費用が下げられず、他国が再エネを大量導入し限界費用を下げた場合、日本は厳しい状況に置かれるだろうというご指摘もいただいております。

お開きいただきまして、10ページでございますが、6行目辺りから、エネルギーに関連して、石炭火力新設ラッシュに見ると、価格シグナルが働いていないことは明らかであるといったご指摘をいただいております。一方で、11行目からのパラグラフでございますが、削減、あるいは税制全体のグリーン化、エネルギー供給構造の高度化の三つの側面において議論を進めることが必要と。カーボンプライシングだけでエネルギー供給構造の転換ができるわけではないというご指摘もいただいております。

続きまして、(2)番は削減効果につきましてのご意見でございますが、リード文におきましては、カーボンプライシング導入済みの諸外国で削減効果、あるいはエネルギー転換の進展があったということを、これまで事務局からもご紹介しているような事実、デンマーク政府、あるいはスイス、あるいはイギリスといったような諸外国の事例を列挙してございます、10ページから11ページにかけて。こういったことも事務局からご説明しながらさまざまなご意見をいただいております。各国の削減効果に関するご意見をいただいております。

17行目からでございますが、削減効果につきまして、マクロだけではなくミクロベースでも条件をそろえた実証分析が行われてきているというご指摘をいただいております。他方で、11ページの28行目辺りからでございますが、必ずしも削減効果を発揮しない例も見られる中で、各国がそれぞれ国情を踏まえてとり得る最適な対策を講じることで、世界全体のCO2排出を減らしていくことが重要であるというご指摘。関連いたしまして、CO2削減につきまして、その要因がカーボンプライシングによるものかどうかについては丁寧な分析が必要というご指摘もいただいております。

以上が2-1に関することでございます。

続きまして、おめくりいただきまして12ページからでございますが、2-2といたしまして、経済成長に寄与する可能性でございます。

(1)番は、同時解決の可能性ということでさまざまなご意見をいただいております。

12ページの26行目からがご意見でございますが、27行目をご覧いただきますと、温室効果ガス削減と同時に経済成長もできている証拠が得られているというのが重要な示唆であるというご指摘がある一方で、むしろその逆で、デカップリングが進んでいるからカーボンプライシングを入れても大丈夫ということではないかというご指摘もいただいております。

カーボンプライシングの経済との関係では、あと36行目、一番最後の行でございますが、カーボンプライシングは炭素排出が多く不採算の事業から、より付加価値・価値率の高いビジネスへと事業を転換していく強い後押しになるというご意見をいただいております。ここからしばらく、こういったサプライサイドに関するカーボンプライシングの可能性についてのご指摘を複数いただいております。

11行目からは、今度、デマンドサイド、需要サイドのほうのご意見といたしまして、12行目からですが、カーボンプライシングは需要家の選択のための仕掛け、あるいは需要家へのシグナルの一つの候補であるといったようなご指摘を初め、需要サイドにおけるご指摘を多数いただいております。13ページの中ごろから下のほうにかけて。

13ページの一番最後のほうからは、今度需給の転換という視点から幾つかご指摘をいただいておりまして、一番最後の34行目でございますが、カーボンの価格による代替効果、その価格が波及した先の財の相対的価格の変化によって、次のページで14ページに移りますが、よりよい形へ構造が転換していくというご指摘。あるいは次のパラグラフでございますが、税制のグリーン化だけではなく、財政構造全体のグリーン化にまで議論を踏み込んでいかなければならないというようなご指摘もいただいております。

さらに一方で、経済との関係では課題のご指摘もたくさんいただいております。後ほどのまた出てくる部分も多数ございますが、15行目辺りからそういったようなご指摘をご紹介させていただきます。

まず15行目からですが、価格シグナルによる効果につきまして、どのような経路で成長を実現するのか、そのプロセスをイメージすることは難しいというご指摘。他方で18行目でございますが、価格シグナルを行うとなると、必然的に高税率の炭素税が必要であると。そういった中で、経済成長を実現できるのかについては疑問があるというご指摘。さらには国際競争力の喪失、リーケージの招聘、国民経済の悪影響が生じることへの懸念についてもご指摘をいただいております。関連いたしまして、22行目ですが、研究開発投資の原資を奪うことでイノベーションを阻害しかねないというご懸念のご指摘もいただいております。また関連いたしまして、26行目からですが、企業が生み出した付加価値をどのように配分するのか、カーボンプライシングによって賃金の伸び悩みといった問題も解決するのかといったことについてのご疑問もご指摘をいただいております。

もう一つの懸念といたしまして、28行目以降でございますが、価格シグナルにより、あたかも全ての経済的課題が解決されるかのような誤解は生むべきでないといったようなことにつきまして、価格シグナルの関係につきまして一定の限界があるという幾つかご指摘を14ページのこの行以降いただいてございますので載せさせていただいております。

15ページからは、イノベーション促進の可能性ということでご指摘をいただいております。

15行目辺りからは、長期大幅削減にはイノベーションの不断の創出が必要であるというものの中で、エネルギーコストの上昇を招き、研究開発投資の原資を奪うことでイノベーションを阻害しかねないことを懸念というイノベーションに関する疑念のご指摘をいただいている一方で、19行目から、カーボンプライシングで脱炭素投資を促していくほうが、経済にプラスに作用するのではないかというご指摘もいただいております。関連いたしまして28行目からでございますが、まちづくり、あるいはモビリティ等の使途とセットで考えてみると、イノベーションも関係してくるといったような可能性に関するご指摘をいただいております。

その可能性の関係のご指摘といたしまして、最後35行目から、CO2削減につながるような先進的なテクノロジーを生み出すインセンティブになるのではないかというご指摘もいただいております。

関連してその可能性といたしまして、16ページをお開きいただきまして、2行目辺りから、海外でも見られたように電源種あるいは燃料種の転換には明らかに影響を与えるであろうというご指摘。7行目辺りからは、EUの事例を参考にいたしまして、特許件数ベースでイノベーション創出の効果があるという論文が出ているというご指摘をいただいております。さらには10行目辺り、実際に我が国の中の東京都の排出量取引制度におきましては、技術開発や投資が起こっている事例があるといったご指摘もいただいております。

続きまして、市場競争の仕組みを巡る意見ということで、日本企業の技術力という強みをどう引き出していくかというところのご指摘。あるいは関連したご指摘といたしまして、20行目辺りから、かつての自動車排ガス規制のアメリカのマスキー法に合わせるための日本の自動車メーカーのご苦労を踏まえて、イノベーションのインセンティブを与えるようなプレイングフィールドをつくっていくかどうかということが重要であるというご指摘をいただいております。

以上がイノベーションの関連でございます。

続きまして、16ページ、17ページ以降がファイナンス促進の可能性ということでございまして、17ページをお開きいただきますと、まずリード文といたしまして、TCFDあるいはDivest Investあるいはエンゲージメントといったような世界の動きにつきましてご紹介をした上で、さまざまなご意見をいただいております。

まず投資家の新たな動向ということで、25行目辺りからは、産業構造の転換の文脈で脱炭素化に向けて移行していくように投資家がイニシアチブをとろうとしていると。関連いたしまして、33行目におきましては、ESG投資家からはカーボンを考慮しない経営が評価されなくなっているといったような動向につきましてのご指摘をいただいております。

お開きいただきまして、18ページでございますが、他方でということで3行目辺りから、海外がやっているから日本もやるという発想の中で、イノベーションを誘発するリスクマネーが日本の中で出てくるのかといったようなご懸念もいただいております。

続きましては同じ18ページでございますが、12行目辺りからは投資促進を巡るご意見をいただいております。

こちらにつきましては、まず最初の13行目辺りから、投資の原資を奪うという主張もある一方で、内部留保の蓄積を踏まえてカーボンプライシングによって脱炭素投資を促していくことによるプラスの作用というご指摘をいただいている一方で、内部留保は別に無駄遣いしているわけではないというご指摘もいただいております。関連いたしまして、22行目辺りから、カーボンプライシングは、企業にとって将来的には健全なコーポレートガバナンスやイノベーションのトリガーになるのではないかといったようなご指摘をいただいております。

その一方で、29行目辺りからは、カーボンプライシングが日本で引き上げられたからといって、個別企業への投資がどの程度に増えるかということについてはよく考えなければならないというご指摘もいただいております。

以上が2ポツ、以上でございます。

続きまして、3ポツといたしまして、19ページから、課題についての可能性につきましてのご指摘でございます。

まず3-1は、エネルギーコスト等の負担が増大する可能性ということでございます。リード文におきましては、カーボンプライシングのエネルギー価格に対する効果・影響につきまして、幾つか諸外国の事例を列挙してございます。英国のカーボンプライスフロア、あるいは30行目からのフランスにおきましては、再エネ導入のための支援の資金に炭素税収によってそれを賄っているといったような事例も含めまして、この経済との関係の海外事例をご紹介しております。

20ページからはエネルギー事情、まずは全体を巡るご意見をいただいておりますので、若干ご紹介をさせていただきます。まず、11行目からといたしまして、温暖化対策と同時に、国民生活にとってはほかにも大事な要素があるということを踏まえまして、カーボンプライシングの導入がどのような影響を及ぼす可能性があるのか議論をすべきであると。その中で、エネルギーの安定供給は大きなポイントであるというご指摘もいただいております。関連いたしまして、日本の電気代が高過ぎてデータセンターを国内に立地できないリスクがあるといったこともご指摘もいただいております。

さらに20行目辺りからは、現行の日本の炭素価格がどのような形でかかっているか。さらに追加的にカーボンプライシングを導入すれば限界的にどんな効果をもたらすことが期待できるかという議論をすべきというご指摘という一方で、炭素価格ではなくて、まず本体価格をどう下げていくかというようなことも考えるべきというご指摘も25行目辺りでいただいております。

関連いたしまして29行目からは、エネルギーコストを巡るご意見ということで、この32行目からの下から二つ目のパラでございますが、輸出競争力という観点からは、貿易の対象国であるアメリカ、中国、韓国、台湾、香港、タイ、シンガポールといったような国々と比較すべきであるというご指摘をいただいております。

一方でということで、21ページの4行目でございますが、本体価格を含めた価格が燃料についてどうなるかということが非常に多く指摘された問題だが、過去に比べてそれほど高くはなくなっているのではないかということがご指摘としていただいております。

続きまして、14行目からは実効炭素価格を巡るご意見をいただいております。まず一番最初でございます。日本の産業部門について実効炭素価格は国際的に高くないというご指摘をいただいておりますが、その一方で、国によって産業構造、エネルギー需給の構造、税制体系、さまざまに異なることから、比較の際にはこういった点もあわせて比較検討すべきというご指摘もいただいております。

続きまして、21ページの下の27行目から、電力の価格につきましてのご意見をいただいております。最初の28行目からでございますが、日本はLNGを輸入しているということから、電気代が非常に上がっているということも含めて、アジアの強豪国と比べてどのようなコストがかかっているかということを見るべきという点。あと、次の31行目でございますが、電力価格、日本の本体価格がそもそも高いという問題についてのご指摘をいただいております。そういった中で、34行目、35行目ですが、この電力価格の高水準という価格も踏まえて検討する中で、各国とも産業に対しては特段の配慮をしているというご指摘もいただいております。

続きまして、特に石炭に関する指摘も多数いただいておりますので、若干まとめております。22ページでございますが、二つ目のパラグラフ、石炭価格が他国と比較して低いという意見があるが、国際競争力、国民負担あるいは安定供給といった3Eのバランスの観点が背景にあるといったようなご指摘をいただいております。他方で、この石炭の関係ということにつきましては、本体価格の値段を含めても石炭は非常に安く、外部不経済という観点で見ると適切ではないというご意見もいただいてございます。

続きまして、22ページの22行目辺りからは、ほかの施策との関係でのご指摘をいただいております。

まず、23行目では、FIT、固定価格買取制度も含めた暗示的炭素価格も含めた議論が必要であると。その際、国際的なイコールフッティングを確保しつつ、世界的なカーボンプライシングの必要性を議論することが重要というご指摘をいただいております。関連いたしまして、既存施策についても28行目からですが、全体としてパッケージをまとめていくことが必要というご指摘。さらにはその下のパラグラフでございますが、最終的にはというご指摘で、全世界で限界削減費用を一致させるような政策を施行しないと科学的にはおかしいというご指摘をいただいております。他方で、34行目辺りからは、暗示的な炭素価格がそもそも見えないという中で、非常に困難性を伴うといったようなご指摘をいただいてございます。

続きまして、お開きいただきまして、23ページでございますが、5行目辺りから、省エネ法、高度化法といったエネルギー関係の法律につきましては、実態的には原単位規制という側面があるのではないかというご指摘がいただいている一方で、こういった法律は勧告もほとんどされたことがない状況であるといったようなご指摘も他方でいただいております。

続きまして、自主的な取組を巡るご意見等をいただいております。まず最初の16行目ということでございますが、自主行動でもかなりCO2排出量は下がってきていると。全世界的にも今後下げていこうという努力もしているので、その中でカーボンプライシングの比較衡量が必要というご指摘をいただいております。

特に電力部門ということで、19行目辺りからご指摘をいただいておりますが、電気事業者が市場の自由化という中で非常に急激に増えている中で、この自主的取組に関しまして、自分たちで何をしたらよいかと考える点で、自主行動計画の取組は非常に重要であるというご指摘をいただいております。他方で、参加企業が多くなった場合は、コーディネートが非常に難しいというご指摘も26行目辺りでご紹介をさせております。

以上が3-1でございます。

続きまして、3-2、国際競争力、炭素リーケージという国際との関係でのご指摘、可能性をご紹介をさせていただきます。

リード文におきましては、カーボンプライシングの導入の中でリーケージの有無についての検証結果が指摘されているということ等につきまして、事実関係をご紹介しております。

ご指摘をいただきました25ページの10行目以降でございますが、国際競争力を巡るご意見といたしまして、18行目からは、我が国はものづくり立国であるということで、国際競争力に悪影響を与えることがあればゆゆしき事態であるといったようなご指摘をいただいております。他方で、26行目からは、日本企業が脱炭素で製品をつくれないのであれば、脱炭素で製造できるほかの国に発注されるおそれがあるというようなご指摘もいただいております。

続きまして、26ページ目辺りからですが、炭素リーケージに対する基本的な考え方というタイトルをつけておりますが、いろいろの見方があるんだというベーシックなご意見をいただいておりますのでご紹介させていただきます。

26ページ9行目辺りからは、派生する事象を悪い影響だとして制限するというのは本来のいい影響や目的を消してしまうという可能性もはらんでいるというご指摘。あるいは、12行目辺りからは、排出規制の有無に関わらず製造業は先進国から途上国に移転するといったようなことに関するご指摘と。15行目辺りからは、世界に出ていくときの制約要因として、非常に難しい多元的な分析になると思うというご指摘と。20行目辺りからは、世界的なESG投資の流れの中で、産業立地としても投資家との関係で競争上の課題があるといったようなご指摘もいただいております。

続きまして、27行目からは、カーボンプライシング導入国における炭素リ-ケージの有無を巡るご意見といたしまして、フランスのEU-ETSの実証分析の事例のご紹介を事務局からさせていただいておりますが、これに対するご指摘といたしまして、フランスのように比較的社会主義的な政策をとる国において、リーマンショックの下で雇用が六、七%減っているというのは、これは相当なインパクトではないかというご指摘をいただいております。

最後のパラでございますが、リーケージが起きてないとのエビデンスに関しまして、そもそも現在のカーボンプライシングはリーケージを起こすほどの水準になっていないのではないかというご指摘もいただいております。

すみません、あと少しでございます。

次の27ページでございますが、5行目辺りからでございますが、ドイツ最大の鉄鋼会社は、ブラジルに高炉を含む製鉄所を建設し、中間製品をドイツで最終製品にしてEU域内で売るというビジネスモデルというご指摘をいただいて、EU-ETSに対する企業の反応の実例ということで、ご紹介、ご指摘をいただいております。他方で、この点につきまして、当時はブラジルの経済が成長して市場が拡大していたということで、こういったご指摘もいただいております。

最後、14行目辺りからは、こういった懸念に対する対処を巡るご意見を幾つかいただいております。

まず15行目からは、どの程度の税率にしていくかということも非常に重要な話であると。さらに、使途の問題も含めて重要な話であるというご指摘をいただいております。さらには、23行目辺りからでございますが、産業構造の転換も重要であるが、製造業も重要なので、ある程度国際競争力に配慮して税の減額ということは当然考えていかなければならないというご指摘。あるいは関連して、輸出競争力がそがれるという懸念に対しては、仕向地主義炭素税が導入されれば全く問題ないのではないかということご指摘をいただいております。

すみません、27ページ下のほうでございます。3-3、次は、もう一つ最後の懸念・課題でございまして、逆進性についてのご指摘でございます。28行目からご意見を列挙してございます。

まず14行目辺りからでございますが、カーボンプライシングの効果があるとして、一番の問題は弱者にしわ寄せが行くことと。多くの国民に賛同いただける方法を具体的に検討して、導入できるように考えるようにすべきというご指摘をいただいております。関連いたしまして、19行目辺りからは、寒冷地における灯油のような社会政策上安くしておく必要のあるものも多分あり、そういう部分も目配りが必要であるという指摘と。21行目からは、国民負担という関連で、エネルギー価格という関連ですので、生活を支えるインフラであるという性質を考えればFITの賦課金と同様に、国民負担の議論になっていかざるを得ないというご指摘がある一方で、25行目辺りからでございますが、消費税の逆進性の議論とはこのカーボンプライシングは別物であるということで一緒くたにしてみると論点がずれてしまうというご指摘をいただいてございます。

以上が3ポツでございます。

最後29ページでございます。カーボンプライシングの制度設計を巡る関心事項ということで、この小委におきましては、これまでの議論、複数の委員から、仮に我が国でカーボンプライシングを導入するとすればどの制度がよいか、具体的な制度設計案を提示して議論すべきというご意見。さらに加えて、課題に対してどう対処すべきかもあわせて議論すべきというご意見がありましたので、列挙させていただきます。再掲の部分が結構ありますので、かいつまんでご紹介をさせていただければと思います。

13行目辺りから、導入の是非だけではなく、どう設計するかが重要であり、時間軸で柔軟に変えていくことも含め、日本に合ったいろいろな設計を検討してみるべきといったご指摘。さらには、ちょっと再掲になりますが、24行目辺りから、FITも含めた暗示的炭素価格も含めた議論が必要であるというご指摘をいただいております。関連いたしまして、28行目辺りからは、一旦導入すると廃止が難しいという面も十分配慮すべきというご指摘もいただいております。

次は30ページにかけまして、次は、特に重視すべき対象分野を巡るご意見ということで、まず最初のパラグラフは、エネルギーが脱炭素化に向かっているかという観点からカーボンプライシングを考える必要があるというご指摘をいただいています。関連いたしまして、税に関しては石炭が非常に優遇されている。さらには石炭火力の新増設といったようなことを重視すべきというご指摘もいただいております。

さらにカーボンプライシングの水準を巡るご意見といたしまして、税制全体のグリーン化の視点が重要という中で、CPLCの報告書の中では、2020年までに80ドル、2030年までに100ドルという水準が示されているといったようなご指摘をいただいております。

他方で19行目以後でございますが、国際競争を意識してどういう炭素価格の水準とするのか、議論すべきというご指摘をいただいております。さらには、高率の税率をかけてしまってはリーケージが起きてしまうといったようなご指摘もいただいております。

さらに25行目辺りからは、イギリスやスウェーデンの例を取り上げて、カーボンプライシングにおける燃料転換に関するご意見をいただいてございます。

30ページの最後の行でございますが、ここは課題への対処を巡るご意見といたしまして、おめくりいただきまして31ページ、最後のページでございます。3行目からでございますが、ネガティブな側面があれば、それをどう補うか、政策パッケージを検討する必要があるというご意見。さらには6行目辺りからは、正の効果と負の効果、両面をきちんと分析すべきであるといったようなご指摘をいただいております。

最後でございますが、19行辺りからは政策パッケージの必要性を巡るご意見といたしまして、20行目からのパラでございますが、規制的手法、あるいはソフトロー、あるいは自主行動計画に頼るのか、それともカーボンプライシングなのかといったような比較が本来あるべきではないかというご指摘をいただいております。

24行目以降のパラグラフでは、ライフスタイル全体をソフト、ハードを含めて脱炭素型に変えていくような仕組みが必要というご指摘もいただいております。

最後のほうでございますが、31行目から、脱炭素に向かうさまざまな可能性があるという中で、手法の相互比較については、昨年度、環境省のほうで設置いたしました検討会におきましての資料を紹介すべきといったようなご指摘もいただいております。

以上、ちょっとかいつまんでのご説明になってしまいましたが、ちょっと時間がかかって申し訳ありません。以上でございます。

新原市場メカニズム室室長補佐

続きまして、議題の2の関係でございますけれども、日本経済の状況・課題とカーボンプライシングの関係についてご説明をしたいと思います。

右肩に資料2-1、2-2、2-3と書かれましたA3サイズの大きな紙をお配りしております。こちらをお手元にご用意いただければと思います。

これは前回、第4回でもお配りをした資料と同様のものでございますけれども、前回のご議論を踏まえて一部修正を加えたものということでございます。

前回ご欠席の方も多かったので、簡単に補足をいたしますと、この資料は、この小委の設置の目的が新たな経済成長につなげていくドライバーとしてのカーボンプライシングの可能性をご議論いただくということを目的としておりましたので、これを踏まえて、そうした日本経済の状況・課題を整理しつつ、カーボンプライシングの関係についてご議論いただくべくご用意したものでございます。

前回からの変更点につきましては赤い文字、または緑の文字で記載をしてございます。

資料2-1、大きく三つに分かれておりまして、向かって左半分が日本経済の状況・課題を整理しているものでございます。上から供給面や需要面についてA、Bと書いてございます。さらにぐっと下に行きまして、雇用面、金融面、財政面、地域経済について状況・課題を整理しているというものでございます。

今日は時間が限られてございますので、ポイントだけかいつまんで申し上げますと、現在、日本の骨太方針、それから経済財政白書、こういったもので共通して特に重要な課題とされているのが供給面、サプライサイドにおける生産性の向上ということで、この資料の中でも一番左上、筆頭に挙げているというところでございます。特にイノベーションの実現であるとか、それが成果に結びつかないといったようなことが課題として挙げられているところでございます。

また、生産性の向上は投資と表裏一体をなすものでございますので、生産性向上のすぐ右隣に需要面の投資の課題、収益が伸びているのに比べてあまり設備投資がまだ緩やかであるとか、無形資産投資がまだまだ十分ではないといったようなことを書いているというところでございます。

これら日本経済の状況・課題につきましては、次の資料2-2でそれぞれの項目について詳しく補足説明をしているところでございます。本日はちょっと割愛をさせていただきます。

資料2-1の左半分に挙げられているような日本経済の課題につきましては、資料2-1の右上にあります経済的課題へのさまざまな対策ということで、現在、政府全体で未来投資戦略や生産性革命、こういったものが講じられているところでございますけれども、これにプラスをしまして、もし仮に我が国でカーボンプライシングが導入をされた場合に、カーボンプライシングによる価格シグナルによってどういった影響が生まれるか。日本経済の課題の解決の一助となる可能性があるのではないかということで、可能性として考えられるものを列挙したのが資料2-1の右側の真ん中から下のところでございます。

これらにつきましては、価格シグナルということで、前回ご指摘がありましたのが、カーボンプライシングによる価格シグナルを通じて、その価格が波及された先の財の相対価格が変化をすると。そういったことによって脱炭素に向けた価格体系が包括的に転換をしていくと。これによって経済の構造転換をしていくということが考えられるのではないかといった可能性のご指摘がありましたので、赤字で追記をしてございます。

また、この価格シグナルの波及していく、影響を及ぼしていく可能性として、大きく三つ上から順に並べてございます。1番目が直接的に脱炭素マーケットを拡大していく可能性。2番目が生産性向上のきっかけ。これは脱炭素関係に限らないことですけれども、非価格競争力や付加価値生産性の向上、こういったものへの向上のきっかけの一つになるのではないか。部分的、間接的であっても寄与する可能性があるのではないかということで書いてございます。それから3番目に、むしろマイナス面ですけれども、経済へのコスト負担となる可能性ということで、これについても書いているというところでございます。

1番目につきましては、脱炭素マーケットを拡大する可能性ということで、特に脱炭素需要に関して前回ご発言がありましたのが、カーボンプライシングによって価格が変化をすると。これによった脱炭素化に資する既存の財・サービスを選択する仕掛けができて、これを通じて需要側の消費が拡大をするのではないか。また、逆にそうした脱炭素分野で新しいサービスや財が生まれる、プロダクトイノベーションによって、むしろ供給側から新たな需要を喚起するという可能性もあるのではないかというご指摘もございました。

また、脱炭素分野での純輸出の強化というのが1の(3)にございますけれども、これに関連しまして、我が国が技術的な強みを有する脱炭素分野の財・サービスの海外展開、これによって輸出を拡大できるのではないか。また、化石燃料の相対価格が割高となることによって、資源のアロケーション、資源配分が変化をして国内の資金循環が拡大するのではないか。こういったものにつながるご指摘がございました。こういったものを踏まえて赤字で書いているところでございます。

また、価格シグナルの1番と2番は価格変化による経済学で言うところの代替効果によるものであるということで、タイトルのところに追記をしてございます。

また、3番の経済へのコスト負担となる可能性については、価格変化による所得効果であるということで、これも追記をしているというところでございます。

この価格シグナル全体について、特に価格シグナルがなければ実現しがたいものについては、緑色で記載をさせていただいているというところでございます。これらにつきまして、可能性の議論ではありますけれども、こういった日本経済の状況・課題を踏まえて、カーボンプライシングがどのように作用していくのかということについて、大所高所からのご議論をいただければというふうに思っております。

ちょっと駆け足ではございましたけれども、説明はここまでとさせていただきます。

羽田野環境経済課係長

続きまして、資料3についてご説明いたします。

資料3のスライドの二つ目をご覧ください。前回の小委で委員から電力価格の国際価格についてご発言がございまして、それを受けて改めて資料をつくり直してまいりましたので、ご報告をさせていただきたいと思います。

まずはその2スライド目で前回資料の前提を簡単に再度ご説明させてください。まず、掲載国についてでございますけれども、G7、カーボンプライシング導入国を中心に掲載をしていると。ただ、IEAの2017年の「Energy Prices and Taxes」から本体価格と消費税のデータが入手できて、かつ別途FITの賦課金のデータが入手できる国にその中から絞って掲載をしているということでございます。

それで、本体価格と消費税についてですけれども、こちらはIEAの先ほど申し上げました資料に掲載されている2016年の平均値を採用してございます。ただ、アメリカにつきましては、IEAのデータがございませんので、EIAのニューヨーク州の電力平均小売価格、それから消費税について採用をしてございます。

それでもう一つ、エネルギー税、FITの賦課金についてでございますが、これは各国政府資料から得られる2018年1月時点の標準税率、標準価格を採用しているということでございます。ただ、発電エネルギーに係る税は本体価格に含まれるので、販売電気に対して電力に応じて課税される税のみエネルギー税として計上しているということでございます。

こうした前提条件を置いて計算したのが次のスライド3の図でございます。前回の小委員会のほうで出させていただいた同じ試算方法でのスライドということでございます。

今回新しいのは、次の4スライド目でございます。こちらは本体価格・消費税は先ほど3スライド目と同様で、IEAのデータを使ったものでございますが、それに加えて物品税、電気税のような物品税の部分についてもIEAの2016年のデータをそのまま採用した場合のグラフでございます。4スライド目と3スライド目を比較していただきますと、4スライド目のほうは、ヨーロッパの価格が若干下がって、全体の順位が変動しているというところでございます。

それで、こうした差が生まれる要因でございますけれども、物品税の定義ですとか、あるいは需要の想定、減免の想定等々、そうした推計の前提を変えた場合に若干前回の試算方法とでは結果が変わってきているということでございます。前提の置き方いかんによって若干の順位の変動が変わってくるということでご承知おきいただければと思います。

以上でございます。

小川国際地球温暖化対策担当参事官

続きまして、COP24の結果について報告をさせていただきます。

資料、スライドの1ですけれども、結果概要を1枚目に3点挙げさせていただいています。

まず重要なことにつきまして、まずパリ協定の実施指針が採択をされました。内容についてはパリ協定の精神にのっとって、いわゆる先進国、途上国を分けるような二分論ではなく、全ての国に共通なものが採択されたということがあります。詳細は後ほど参考のところでご説明いたします。

また、市場メカニズムですが、6条について指針については、これは議論も踏まえて次回、CMA2で決定するという手続の決定がなされております。重要なことですけれども、根幹部分については透明性枠組みを盛り込んだ、すなわちクレジットの二重計上を防止するために必要となる情報、報告については、これは透明性のほうの実施指針にきちんと盛り込まれているということがありまして、ただ、二重計上を防止するため、詳細のルールについて6条の指針の中で決めていくということが決まっております。

あともう1点は、日本の取組をアピールということで、COPの直前に速報値ではございますけれども、4年連続排出量が減少しているということで、このこと、あとは「いぶき」による世界全体の排出量を把握していくことに貢献、また「地域循環共生圏」の構築など、新しいビジョンを文字どおり大臣が発表されるところでは、あるいはバイ会談でも、あらゆる場所で発信をしております。

あと、来年のG20の大きな話題となります海洋プラスチックにつきましても、バイの機会を捉えて主要国と意見交換をしております。

3点目、米国の参加でございます。現時点でアメリカは協定に参加しておりますけれども、特に国益を重視する観点から非常に積極的に交渉に参加をしております。また、終わった後ですけれども、国務省がプレス報道を出しておりまして、昨年の脱退表明については再度引用しつつ、またパリ協定に対する立場は変わらないとしつつも、この実施の採択については交渉の成果に留意する。また交渉官の努力に感謝すること。交渉の成果はということで、特に米国の競争、経済競争相手に対し1992年以来、米国が満たしてきた基準に沿った形での排出量の報告を貸すための重要な一歩ということで、いわゆる透明性のところで非常に重視をして交渉してきてその成果が得られたというようなことを報道を発表しております。

実施指針ですけれども、スライド6、7に今回決まりましたと、非常に簡単でありますけれどもご紹介をしております。大きく緩和、適用、資金、また、スライド7に透明性枠組み、グローバル・ストックテイクということで、パリ協定は法律ということで、実施指針、政令、あるいは施行規則に当たるわけですけれども、中には、例えば緩和につきましては、NDC、各国で出すことになっておりますが、その中で書くべき事項、例えばその目標、期間、すなわち何年から何年までの実施期間なのか。基準年における定量データ等、各NDC。日本の場合は定量的な目標を出しておりますし、途上国の場合はBAU当たりということで出しておりますけれども、それに当てはまる情報というのを出していこうということが決まっております。

適応については、適応報告書、義務ではないんですけれども、出す場合に書くべき事項ということで、気候変動の影響、リスク等々、盛り込むべき事項が定められました。

資金につきましては、まず気候資金の支援見通しということで9条5という規定がございまして、この中で2年に一回報告していくことが決まりました。また、各国の裁量を確保した形ということで、英語ではas availableということを言っていますけれども、そういう形で出せる情報を提供していくということ。また、2025年以降、1,000億ドルの気候資金の目標が2025年までは決まっておりますけれども、これ以降の目標について2020年から検討するということが決まっております。

スライド7ですけれども、透明性枠組みについて、これは実施状況を報告するということで報告すべき事項を列挙しておりますけども、大きな交渉の観点としましては、能力が不足する途上国についてどれほど柔軟性、あるいはフレキシビリティを与えるかということで、非常にスペシフィックにどの事項についてフレキシビリティがあるのか、柔軟性があるのかということを非常に詳しく書き込んでおりますのと、それを改善すること、どういう道筋で改善していくのかということについても報告をいただくということに規定がなっております。

最後、グローバル・ストックテイクですが、これは世界全体の進捗を把握しますということで、やり方、すなわち技術的評価をやってハイレベルの会議をやってメッセージを出すという、いわば進め方と、あとはそこに利用する報告の情報の内容、すなわちパリ協定に今各国から提出される報告書と、あるいはIPCCの報告等を参考にして進めていくということが決まっております。

戻りましてすみません、スライド2と3でございます。先ほどの2点目のアピールの部分でありますけれども、原田大臣、参加いただきまして、タラノア対話、あとパビリオン、あとステートメントということで、さまざまな場で発信をしております。特に今回ジャパンパビリオン、非常に前年までシンプルでいろんな批判があったんですけれども、今回参加いただいておりますさまざまな政府の方々、自治体の方、民間の方、あるいはNGOの方に大変お世話になりまして、非常に盛況なパビリオンができたと思います。この場をおかりしてお礼を申します。どうもありがとうございます。こういう形で発信をしてまいりました。

最後、スライド4は2国間会議の実施ということで、特に大臣非常に精力的に13カ国、議長、あとEU、8団体ということで、非常に精力的に会談いただきまして、交渉の事項、あるいはアピールと、さまざまな議論をさせていただきました。あとは、あわせてWe Mean Businessということで、民間の方々とも意見交換をさせていただいております。

簡単ですが以上です。

浅野委員長

それでは大分予定よりも長い時間の説明になってしまいましたが、何しろ10時間以上のご発言を整理して努力をしたので、どうしても短くはできなかったらしいのでお許しください。

さて、事務局は前回ご欠席の委員の方に、特に資料の2というのを前回初めてお見せしたんですが、それについてさらに追加的なご意見があればしっかり承りたいという希望を持っております。別にこれに限定するつもりはございませんけれども、まずは本日、前回ご欠席の委員から先にご発言をいただき、それからまた順番にご希望の方からご発言をいただくことにしたいと思います。テーマはいろいろございますが、どこについてでも構いませんので、お願いいたします。

それでは、岩田委員から先にお願いできますでしょうか。その次、牛島委員にお願いいたします。

岩田委員

ありがとうございました。前回欠席いたしましたので、ご意見申し上げることができないで申し訳なく思っておりました。

それで、今日いただいた資料で拝見しますと、2-1の資料で大きい紙で、この中で私が指摘したい一つのことは、やはり金融市場を通じるこういうカーボンプライシングへの動きというんですかね、ことを1点申し上げたいと思います。

今日の資料で言いますと、もとの1番目にご説明のあった資料で言いますと、16ページから17ページにかけてそれに関連した記述が書かれております。私、出発点はフィナンシャル・スタビリティ・ボードという大金融危機が起こってから、その中でディスクロージャー、気候変動に関する企業のディスクロージャーを進めるというタスクフォースが設けられて、そこの議長がカーニーバンク・オブ・イングランドの総裁であられて、カーニーさんがおっしゃっておられるのは、企業のレベルでカーボンバジェッティングというのをはっきり、つまりこれからどのくらい使えるきれいな空気といいますか、つまりCO2排出の枠というのを個別の企業がそれぞれ予算の制約と同じような形で排出量の枠を設定して、そして同時に、企業の内部で内部的なカーボンプライシングをやる、暗黙のカーボンプライシングということになると思いますけど、そういったことをやるべきだという提言を17年6月というふうに書いてございますが、行われまして、私、やっぱり個別の一つ一つの企業が、やっぱり今の気候変動の問題をどう考えて、どのくらいこの脱炭素化ということに関して自分の企業は責任を持って行動するのかという、こういう原則を明らかにするということが非常に重要なんじゃないかというふうに思うんですね。

それで、マーケットのほうで言うと、今、ESG投資というのがこの16ページに本文で書かれてありますように、23兆ドル、今はもうちょっと増えていると思いますけど、25兆ドルぐらいになっているんじゃないかと思いますが、日本は残念ながら、つまりディスクロージャーとやっぱり裏腹の形になっておりまして、現実に企業がどのくらい脱炭素化に努力しているかということがデータがもともとありませんと、ESGの投資の中で、その企業はそういうESG投資に当たるものをしっかりやっているかどうかということも決まらないということになりますので、根幹はこのディスクロージャーにあるんじゃないか、そしてそれに関連して、ファイナンスのESG投資のマーケットがあるということではないかと思います。

それからもう一つ、こういう金融市場で特にどうしてこういうフィナンシャル・スタビリティ・ボードでこういうことを主な重要な議題としてどうして取り上げたかというと、個別の企業、これは金融機関だけではなしに、企業にとっても気候変動に伴ういろいろなダメージとかロスとか、そういうことに関して十分リスクマネジメントがどこまで行き届いていますかという、ですから、例えば気候変動でもって食料生産が大幅にロシアで減ると、それが中東向けに、あるいはエジプトにたくさん食料が出ていたと。それが細ってしまいますと、パンを買うこともできない。そうするとそれが「中東の春」というような形で、つまりジオポリティカルなリスクにつながっていくという、そういうリスクをどこまできちっと把握しているんですかという、こういう視点がやっぱりもう一つあるんじゃないかと思います。

アメリカで、保守的な政治家とかエコノミスト、これは前のFRBの議長のイエレンさんもカーボンプライシングをやるべきだとはおっしゃっていますし、フェルドシュタインも、この方はかなりコンサバティブなエコノミストですけど、カーボンプライシングが重要だということをおっしゃっておられるし、サマーズさんは、同様に原油価格が下がったときには本当にカーボンプライシングを実施すべき一番いい時期だと、こういうこともおっしゃっておられまして、そういう方々が意識されていますのは、やっぱりグローバルな気候変動が経済活動に与えるさまざまなネガティブなショックということをどのくらい個別の企業、金融機関が意識して行動していますか。こういうことで話が進んでいるんだと思うんですね。日本の場合には、残念ながらそういう視点が全体として見ますと弱いんではないかなというふうに思います。

これが申し上げたい第1点目でありまして、第2点目は、この大きい表紙には合ってないんですが、最近の時点で重要な出来事は、やっぱりフランスのマクロン大統領のもとで、30年には100ユーロのカーボンプライシング、カーボンタックスをやりますと掲げて、燃料税の引き上げというようなことも行っておられるんだと思いますが、それに対する非常に強い反発が起こっているという、こういうことは既にこの本文のほうでも21ページと22ページにかけて、やはりその所得配分に十分配慮すべきだということだとか、いろいろなご議論、社会保障のほうで考えるべきだ、こういうご議論も両方出ておりますが、やはり私、生活に密接な部分での軽油ですとか灯油ですとか、そういうところに関する何らかの所得分配に関して炭素税を本格的に導入していくという場合は、その配慮がやはり求められているのかなと。

この税との関係でいいますと、やっぱりFITの将来というのをどのように考えるかですね。今日の資料のご説明で、新たな電力価格の比較というのが一覧表で出ておりまして、それを拝見すると、家計部門、日本のあるいは産業部門を見ても、これFIT結構の部分あるわけですが、今、この先FITをどのように変えていくのか、家計部門を見ますと、今2.6兆円ぐらいの負担になっているんじゃないかと思うんですけど、その将来をどうするのか。既に負担しているわけですよね、家計部門は。私、これは税制のグリーン化ということとまさに関係していますけど、今FITの仕組みというのを税制のグリーン化という流れの中に位置づけてこれを改革していくといいますか、組み込んでいくということが一つ求められている点ではないかというふうに思っております。

以上であります。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

では、牛島委員、お願いいたします。その後、河口委員お願いします。

牛島委員

前回お休みさせていただいたんですけれども、いろいろとご意見をお聞かせいただいた中で、率直な印象、感想としては、ほぼ意見や主張、論点というのは出尽くしたというか、材料としてはもうほぼそろっているのではないかというふうなところです。なので、これから申し上げることというのは、ほぼこれまでの議論、今日ご説明いただいたところをある程度、もう一回言葉を若干かえてなぞらえるような形になると思いますが、もう一つ明らかになっていることというふうなことでは、気候変動問題はもう既に金融の問題であり経済の問題でありというふうなことだと思います。

私は、企業に対して気候変動対策ですとか、そうした開示の保証というふうなことをご支援させていただく立場なんですけれども、そこでもう明らかなことは、今日の報告にもありましたが、この問題に関する外部性の内部化が始まっていると。これは気候変動に限らず、そのほかでも人権ですとか、そのほかの問題に関しても、これまで何らかの形で社会が負担していたであろうコスト、あるいはもう一つ言うならば、企業が今までコストとして計上していたもので、将来お金を生むものなのであるというふうなことに関してもホームバランス化していこうというふうな流れに、これは確実にあるというふうに思います。

今、岩田委員からもご説明がありましたとおり、恐らくお話の中で言われていたのはTCFDのことだろうというふうに思うんですけれども、このTCFDは非常にいい示唆を与えてくれておりまして、ここで企業が認識すべきリスクとして移行リスクと物理的リスクというふうなものが述べられています。世界がこのパリ協定に従って2℃に向けて動けば、移行リスクは企業にとって高くなるというふうなメカニズムになると思います。一方で、2℃に向けてそれほど取組が進まなければ、逆に物理的リスクが高くなるということで、水害ですとか、そういった災害。どちらにせよ、ビジネスにおいてはリスクにさらされるというふうなことはもうある程度想像できるわけですね。これらの将来的な予測される予見されるコストというものを一体誰が負担するのかというふうなところに、このカーボンプライシングのメカニズムをどのように適用するのかではないかなというふうに思います。

今のところ、自社のあるいは企業の収益が短期的に影響するというふうなところに立脚したさまざまな意見が出ていると思いますけれども、最終的には価格に転嫁されて、それは消費者が負担するかもしれないというふうなことで、いずれにしても、誰かが負担すべきものを見えるようにしていくというふうなことになろうかと思います。最終的には、同時にそれでもってイノベーションが誘発されたり、そういったものが開示、あるいは今日お手元に私こういう飲み物とか持ってきておりますけれども、そういったところの表示等々に、つまりは価格だけではない、あるいは原材料だけではなくて、どのようにつくられたかというふうなところも開示されていけば、これはあらゆる面で選択肢がその増えるというふうなことで、そこから先どういう方向に赴くのかというのは、国民や消費者とか、あるいはBtoBだったら取引関係の中で、あるいは資本市場であれば投資家が選択をしていくのではないかというふうに思いますけれども、現在のところ、そこら辺が曖昧にされている、一方でそこを明らかにしていこうというふうな中にこの議論があるのかなというふうに思います。

もう一つ想像力というふうなところで考えるのは、今年が間もなく終わろうとしている2018年ですけれども、来年2019年というふうなことで、今年生まれた赤ちゃんというのは、2050年というのは実は30歳ちょっとなんですね。決して遠い未来の話ではなくて、今年生まれた子どもたちに私たちはどういうふうなレガシーを残していくのかというふうなところをもう少し考えて、過去のケースから機能的に整理する議論というのが多いと思うんですけれども、そろそろ導入するのであればどういう要件が必要になるのかと。税で仮に徴収するのであれば、それをどういうところにやはり使っていくのかとか、そういうふうなところも議論の中に含めていければより建設的になるのかなというふうに思いました。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

それでは、河口委員、お願いいたします。その後、小西委員、神野委員、そして根本委員、廣江委員、増井委員、諸富委員、安田委員、この順番で参りますのでよろしくお願いします。

河口委員

ありがとうございます。1回お休みをしていたということをすっかり忘れておりましたが、今日のまとめを聞いていて、それぞれのご意見が全部網羅されると、ああこういう形になるのかなと。それぞれ一理あるというか、それぞれのお立場で考えると確かにそうだということもあるんですけれども、それを全部聞いた上での感想なんですが、じゃあこれをやらないで2030年に日本の企業の競争力がどうなっているのか、日本社会がどうなっているのかなという視点がないんですね。今の立場で産業界からですと、導入すると非常にコスト高になるし、国際競争力をそぐのではないかと。確かに先ほどいただいた資料の電力の産業用の電力、実は日本が高いんだよねなんていうのを見ると、これ以上上げたら非常につらいであろうということはわかります、2018年時点で。でも、2030年時点で、だからこういうことは一切やらないということで果たして日本の競争力が高まっているのか、そういう仕組みもないような社会が2030年競争力があって、かつイノベーションを生み出してやっていけているのかなという、牛島委員が言われたように、バックキャストの観点で考えると、やらないことが2030年の日本の発展につながっているのかどうなのかという視点で考えたほうがいいんではないかなと。となりますと、多分やらないほうが競争力が増しているということは、パリ協定もありますし、SDGsもある中で、多分ないんではないかと。

先ほどから、投資に対して非常に期待が高まっているということで、これは今日リリースされるんですけれども、私がやっている日本サステナブル投資フォーラムで毎年日本の数字の推計を出しているんですが、ちょうど先ほどぐらいにプレスで出ていると思うんですが、230兆円、1.7倍昨年に比べて、になったということです。

この中身なんですけれども、日本の市場の場合ですと株がほとんどなんですが、世界的に見ると債権の部分が非常に大きいんですね。株と債権の違いということで考えますと、株ですと企業の評価というところで間接的に企業経営に影響を与えていると。債権ですと、そういうグリーンのプロジェクト自体にお金が行くということなんですね。今、非常に期待されているのは、1.5度報告書にもあるように、とにかく急いで低炭素型のインフラをつくっていかなきゃいけない。そのための資金需要が膨大なものであり、それをファンディングするグリーンボンド、また、サステナブルボンドというのは非常に期待をされている。しかし、今あるグリーンボンド、世界的に拡大したとはいえ、まだ1%とか2%、ボンドの市場の中でですね、極めてわずかであると。ただ、今あるようなボンドを全部グリーンにしていかなければいけないというような話があります。じゃあグリーンボンドが何でそんなに増えないのかということですけれども、発行体のほうで、じゃあグリーンにするために、普通のボンドに比べてコストがかかる。いろいろな情報もきちっとそろえなければいけないし、コストがかかるということもあるんですが、どうしてもやはりコストがかかるとなると、グリーンじゃない普通のボンドにしましょうという話になっていくわけですね。そこでやはりカーボンプライシングのようなものが入ることによって、グリーンボンドをより、そうじゃないものが割高になるということでグリーンが相対的に割安になるから、そういう動きにもつながっていくということを考えますと、そういう仕掛けのない日本経済が、果たしてこういう分野でも勝っていけるのかと。日本企業から全然そういうのも出てこないよねみたいな話にもなりかねないということになります。

それから、一般企業でいろいろな投資判断をする際に、どうしても安いほうというか、効率がいいほうというふうな判断をすることになると思うんですけれども、やはりカーボンに値段がついていない状況で判断すると、どうしてもカーボンをたくさん使うほうが目先割安になるので、どうしてもそちらに経営判断も行きがちになると。そういう形であと10年これを積み上げていって、じゃあ日本の国内にいろいろな設備投資だとかインフラが残っていく中で、それが高炭素のほうがペイするような仕組みの中で考えていると、非常に高炭素のものが2030年に日本にたくさん残ると。そういう判断にもなってくるのではないかなと。

ですので、足元で非常に痛みがあるし、経済にはマイナスの影響があるということはわかった上で、2030年に日本がどうなっていくかということを考えますと、かなり痛みかもしれないけれども、カーボンプライシングを導入すると。その痛みをどう減らしていくかという観点でそろそろ議論しないとだめなんではないかなというふうに思いました、

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、小西委員、どうぞお願いします。

小西委員

ありがとうございます。実は、前回軽く意見を出させていただいてかなり反映されていただいている部分もありますので、そのときに言えなかった3点だけ手短に言わせていただきたいと思います。

ここにいろいろカーボンマーケット、カーボンプライシングと、それからマーケットや経済的課題に対していろいろな便益を整理するという意味でこれ資料を書いてくださっていて、これは非常に有用ではあるんですけれども、カーボンプライシング自体があたかもこれらのマーケットや日本のこの課題、経済的課題も含めて、いろいろな課題を全て解決するかのような印象を与えてしまうと、非常に過大な期待を負わせることになるかなということをちょっと懸念いたします。やはりカーボンプライシングはあくまでも制度は第一の目的が排出量削減なので、それ以外の部分が過剰に強調されると制度設計がちょっとゆがむリスクがあるのかなと思いますので、その点を一言申し添えたいと思います。

あと、今後、制度設計、具体的に、入るかどうかは別として、行われていくということに非常にその方向性を期待しております。そのときに、例えば炭素税だけとか排出量取引制度だけというような検討の仕方になるのか、あるいはやはりこれポリシーミックスですので、それぞれが補い合う関係にあると思いますので、その制度を単体のものと、それから炭素税と排出量取引制度、そのほかもあるかもしれませんけれども、も含めた総合的な検討というところも、一つぜひお願いしたいと思います。

あともう一つは、先ほど小川さんもおっしゃっておられたんですが、COP24で私が非常に印象的だったのが、カンクン合意の下で、今、途上国と先進国、それぞれ国際的なレビューをかけております。その中で中国が今回レビューを受けていたんですが、中国がいろいろとこの排出量の制度を整えてきている。中国が去年から導入しました排出量取引制度について、すかさず多くの国から質問が上がりまして、中でも欧州連合やニュージーランドが、具体的にこれからお互いの排出量取引制度をリンクさせていくことについて、どのように今後計画をしているかという質問をしていたのが非常に印象的でした。日本もやはり排出量取引制度、今全土では入っていませんが、入っていないとこうしたグローバルなマーケットの中から非常に取り残されていってしまうんじゃないかなという懸念をそこで一つ持ちました。そのことをシェアさせていただければと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、神野委員、どうぞ。

神野委員

すみません。私は、委員長代理であるにもかかわらず、前回どころか最初、公務がぶつかっておりまして、ずっと欠席をしておりました。そこで皆さん方に大変申し訳ないということをお詫びと同時に、今までお述べいただいた委員の方々と同じ感想になりますけれども、かなり網羅的に意見が出ていて、さまざまな観点からほぼカーボンプライシングに関わる論点は出ているんではないかと思われるぐらい出ているかなと思っております。

そうなってくると、今後、焦点をカーボンプライシングという環境政策に絞りながらどうやってまとめていくかという、絞っていくかという課題になっていくのではないかと思います。個々の論点にところどころ疑問を呈していたり何かはありますが、それをちょっと除くと、これからまとめていく上でざっと見ると、やはりそもそもの政策目的が対立しているという問題があると思うんですね。これは政策目的の対立を克服しようとすると、これから討論をしながら相互に相互変容していくことが可能かどうかということが一つあるかと思います。そうでない場合には、どうしてもある政策目的を優先すればという仮定を設けるか、そうでなければ和解しがたい政策目的の対立の場合には、どうしても併記をするというような形にならざるを得ないかなと思っております。ただ、そこへ行く前に見させていただいて、小目的としては対立しているけれども、中目的とか大目的を考慮すると、必ずしも対立しないで和解する道があるのではないかということも思われますので、今後そうした点の議論、つまり少し大きな小目的を越える目的を考えていくということがこれからの焦点を絞っていく上で重要になるかなという感想を持ちました。

すみません、ずっとさぼっていたので、個々に言うとまた切りがないので、この程度にさせていただければと思います。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、根本委員、どうぞ。

根本委員

ありがとうございます。発言機会は一回だと思いますので全体について申し上げます。資料第1について、冒頭の事務局からのご説明で、リード文は客観的事実だとのご指摘がございました。少し気をつけなくてはならないと思うところが何カ所かありましたので指摘をさせていただきたいと思います。

例えば2ページの21行目について、80%削減と書かれていますが、閣議決定された地球温暖化対策計画では、条件つきの80%削減という表現になっていたはずです。事実関係ということであればしっかりと条件も付記すべきであろうと思っております。その意味で、脱炭素社会は今世紀後半に実現、あるいは累積排出量の低減を図るということについて、意見としてあることは承知しておりますが、これらが必要と、客観的事実を記述する趣旨のリード文で書くことが整理学として正しいかどうか、もう一度ご議論をいただければと思います。

また、29ページに、カーボンプライシングの制度設計を巡る関心事項ということで、リード文に制度設計案を提示して議論すべきという意見が相次いだとありますが、これは議論の模様なので、客観的事実だといえば事実ではありますが、整理学上、これは少し違うのではないかという違和感を持ちました。整理学上これでよい、ということであればよいですが、先ほどご意見が出ていましたように、カーボンプライシングは、あくまでも手段の一つにすぎず、本来的には政策パッケージとして議論しなければならないものです。さらに、全地球的規模でのCO2の削減が大目標であって、日本国内だけでどうするといった閉じたお話にしてはならないと考えますので、ぜひそういう視点から、常に大目標に立ち戻って考えることが必要ではないかと思っております。

資料2-3におきまして、価格シグナルで直接的に炭素マーケットを拡大する可能性と生産性向上のきっかけとなる可能性という分け方になっていますが、あくまでもここでメインに議論すべきは、恐らく直接的に脱炭素マーケットを拡大する可能性であろうと、議論の流れから見て感じられます。その議論にあたっては、実は温対税が2012年から導入されており、その後段階的な税率引き上げがあったことに注目する必要があります。現に我が国の明示的なカーボンプライシングとして温対税は存在しているわけです。明らかに価格シグナルを有する制度があるということですが、こういった現存する温対税が、「直接的に脱炭素マーケットを拡大する効果」に掲げられたような経路を通じて、どのようにCO2削減に寄与したのか、いま一度しっかりと分析する必要があると思っております。

次に、イノベーションの促進についてですが、私どもとしては、カーボンプライシングを課されることにより、国際競争力をそがれるということを改めて強調したいと思うとともに、それを導入することによって、むしろイノベーションは阻害されるという考え方に変更はありません。企業の実態としてそうなる蓋然性が高いと判断をしております。

それから、民間消費の拡大についてもご指摘をいただいておりますが、経済全体のパイが拡大しない限りは消費の拡大もないだろうと考えます。相対的な比率が高まることはあるかもしれませんが、経済全体のパイを拡大するための施策についても、同時に考えなければいけないだろうと思っております。その意味において、今後CO2の排出の増加が見込まれ、さらに人口増が見込まれる、購買力のある途上国を中心とした海外市場に、日本のすぐれた低炭素、脱炭素製品・サービスを展開することが、グローバルでの排出削減に日本として貢献できる一番の道ではないかと考えており、むしろそちらに政策のかじを切るべきだろうと思います。

それから、カーボンプライシングについては、明らかに国内の炭素価格が上昇するものであり、海外まで影響を及ぼすことができない施策はいかがなものかという感覚を持っております。

ちなみに、生産性向上のきっかけとなる可能性についても触れられていますが、その一方で、先ほどもお話がありました、イエローベストデモはなぜ起こったのかと思っております。また、アメリカのワシントン州の有権者は炭素税導入を否決しており、オンタリオ州は連邦政府の炭素税の阻止に向けて訴訟も起こしているという実態があります。オンタリオ州のキャロライン・マルルーニー司法長官は、「連邦炭素税が一般家庭から金を奪って雇用創出者の競争力をそぐ」と発言をしている事実があります。こういった現実からも目をそらさずに、広く国民の意識に寄り添いながら、課題の山積するこの国において、限られた財源、資源の中でどうやって解決策を見出していくのか、地に足の着いた議論が必要ではないかと考えます。カーボンプライシングを導入したり拡大したりすれば、「バラ色の経済が待っているのだ」という印象を振りまくようなことは、現に控えなければいけないだろうと思っております。

それから、少し用語に違和感がありますが、資料には、「カーボンプライシングの収入の経済への還流」とあります。何を意図するのかよくわからない表現ではあるなと個人的には思っていますが、こういった再配分をカーボンプライシングでやるのか、少し疑義があります。カーボンプライシングそのものについても、先般、秋の行政事業レビューの中で、実はエネルギー対策特別会計については平成24年度の地球温暖化対策税の導入によって財源が大幅に拡大していると指摘されています。その財源の大幅拡大によって不要不急の事業が予算計上されていないかどうか、引き続き行政事業レビューにおいて検証すべきと疑義も呈されている状況ですので、まずはこういう疑義に答えるべきであり、そしていろいろなパスによって将来にどういう形で貢献ができるかを検討しないといけないと考えます。なおかつ、議論のスタート台としては定量的な議論を常に心がけていき、それがどのような経路で経済に波及し、日本の経済がどのようになるのかという観点を常に忘れてはならないと考えております。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

廣江委員、どうぞ。

廣江委員

はい。ありがとうございます。3点申し上げます。

まず1点目ですけど、これまで4回にわたりましてカーボンプライシングの導入の意義であるとか、あるいは経済活動に対する影響について議論されてきましたけども、依然としましてカーボンプライシングが温室効果ガスの削減にどの程度効果を持っているのか、あるいはデカップリングと言われる事象がどのような因果関係で起こっているのかということについては、十分に検証されてないのではないかなというような印象を持っております。

一方で、先ほど来お話が出ていますが、フランスではあのようなことが起こったと。原因は必ずしも燃料税だけではないかもしれませんが、やはり一つの大きな原因としてあのような国民の反対運動が起こり、結果的にマクロン政権が政策を変更したということでございます。実は私、前回欠席いたしましたのは、ちょうどそのときに会がございましてパリに行っておりました。2回目のあの場面に遭遇をいたしましたが、もう夜間などは、デモどころか騒乱というような印象でございました。もちろん先ほど申しましたように理由はいろいろあると思いますが、やはりこういったことをよく考えないといけないと思います。

主として、この場ではカーボンプライシングのいわば好事例と言われるものを中心に議論が進んできたように思いますが、今申しましたようなマイナスの面も、よく冷静に検討する必要があると思っております。これが1点目であります。

2点目でありますが、電気料金、今回新しい4ページの資料を加えていただきましてどうもありがとうございました。私どもといたしましては、やはり特定の需要家の特に高い税率を適用したようなケースではなく、今回のような多分これは平均値であろうというふうに認識していますけども、こういったものがより実態に近く、国際競争力あるいは国民負担に与える影響をより適切に表しているんだろうというふうに考えております。いずれにいたしましても、私ども電力事業者としましては、資源小国というハンディキャップはございますけれども、やはりできるだけ経営の効率化をし、安い料金でお客様に電気をお届けするということが使命だと思っておりますが、残念ながら現実の料金、特に産業用につきましては、今回出てまいりましたように、国際的に、中でも今後とも産業維持等々で競争していかないといけない中国、あるいは韓国に比べて高いのは、残念ながら事実であろうというふうに思っております。私どもも努力しないといけないというふうに考えているところでございます。

3点目でございますが、これ前回欠席をしましたとおりに、私は前々回申し上げましたことに対してちょっと疑義があるというご意見があったというふうに聞きましたので、少しこれはカーボンプライシングのあり方にも関わりますので、少し申し述べたいと思います。

実は私が申しましたのは、今日の資料にも記載をいただいていますが、震災以降石炭火力の計画がたくさん出てきたと。これは電力事業者、特に私ども旧一般電気事業者、もちろん全てとは言いませんが、旧一般電気事業者の場合にはもちろん原子力を再稼働したいと、こういう思いが非常に強いわけでございますけども、必ずしもそうならないかもしれないということの、いわば対策としてこういう計画をつくったということを申し上げました。それに対しまして、前回のご疑義といいますのは、とはいえ、安定供給をもし考えているとするならば、それはスピードが大事であって、であるならば、石炭よりも天然ガスのほうがはるかに早いわけだから、結局石炭を選択しているというのはコストだけを考えた結果ではないかと、こういうような意見であったというふうに認識をしております。

実はこの二つの考え方といいますか、意見には、私は時間軸に大分相違があるように感じております。私が申しましたのは、震災から最初の原子力の新しい安全規制が出るまでに2年4カ月かかっています。さらに再稼働の第一号となりました川内の1号機が運転開始をするまで確か4年6カ月かかったと思いますが、もうこの間に、私ども先ほど来申しますように、原子力の再稼働を一生懸命しようという意欲はございましたけれども、必ずしもそれが明確に見通せないというときに、長期の視点で場合によっては原子力の代替が要るかもしれないということから、あのような計画が出てきたということを申し上げたところであります。

ご承知のように原子力といいますのはベース電源でありまして、実際そのように私ども運用をしています。ベース電源といいますのは、原子力、石炭、バイオマス、地熱、それから流れ込み式の小水力であります。電源の選択については、電源だけではなく、エネルギー全般もそうですけれども、やはり三つのEを十分に考えないといけないというところから、さらにベース電源ということを掛け合わせて、私は石炭の計画がその時点ではたくさん出てきたというふうに認識しております。

一方で、ご意見について、時期を考えているんであれば、建設の早いLNGを本来は選ぶべきだったんじゃないのか、だからそれはやっぱりそういうことを言っているけど違うんですよということですけども、多分おっしゃっておられますのは、足元の需給です。足元のごくごく震災直後の非常に厳しい状況であった、あるいはここに今日に至るぐらいの数年間の需給を多分念頭に置いていらっしゃると思います。残念ながらこの期間であればLNGであっても石炭であっても、新設は間に合いません。

実際にどのようにしてこれをしのいできたかといいますと、一つは国民の皆さん方の節電の努力です。二つ目はほとんど休止状態にあった石油火力を、私ども立ち上げました。三つ目は、1,000kwから1万kwぐらいの緊急電源、主としてガスタービンでありますけれども、これを数百台導入して、実は足元の電力の危機を乗り切ったということであります。その後、さらに震災前に計画をしておりました、主としてLNG火力は立ち上がってまいりましたし、再エネにも入ってきたということで、それに引き続いていったというのが実は震災からのここまでの足取りであります。ここは非常に重要ですので改めて申し上げますと、実は震災から今までの、2018年までの間に、運転を開始した火力発電ですが、石炭火力は202万kwあります。一方でLNG火力は1,761kw運開しています。これらは全て震災前に計画されたものです。カーボンプライシングが入っているかどうかは別ですけれども、そういう判断はやはり電力業者というのはしているということでございます。

ということで、繰り返しになりますが、私どもが申し上げたかったのは、足元の需給というよりは、むしろ長期の、場合によっては非常につらい状況が来るかもしれないというときに、原子力に場合によってはかわるものが必要だということで、石炭火力の計画がたくさん出てきたというのがその当時の判断であったということを申し上げたいなということをつけ加えさせていただきます。

以上でございます。ありがとうございました。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、増井委員、どうぞお願いします。

増井委員

ありがとうございます。2点あります。

1点目は、今回取りまとめていただいたものなんですけれども、これを一般の国民の方が読んだときにどれだけイメージできるのか、例えば2050年8割減というような社会、どれだけイメージできるのかという視点で読んだときに、やっぱりもう少しわかりやすいイメージ、あるいはこれから向かっていく社会というのはこういう方向なんだというところ、さらにはそれに向けて、そういったものを実現するに向けて、カーボンプライシングというものがどういう役割を示しているのかということがもう少しわかるような、そういう資料というものが今後、今回は全ての委員の意見の取りまとめということで、この資料の役割は非常によくわかるんですが、今後はそういったさらによりわかりやすいものというものが必要になってくるだろうと思います。

特に先ほどの別の委員のお話からもありましたけれども、単にカーボンプライシングで税率これだけ課しました、あるいは排出量取引をやりましたということだけではなくて、実際に消費者がこういうような製品を買えばこれだけCO2の削減につながるんだというような、そういうより情報として必要なものというのはどういうものなのかというふうなことも、ぜひあわせて検討していただきたいなというふうに思います。

日本の製品、省エネ製品が非常に多いというふうに言われておりますけれども、実際にそういう製品が供給されないと、使われないと、こういう脱炭素社会というのは実現できませんので、その供給側のほうとともに、やはり需要がというふうな視点からも、どういうふうな技術、製品というのがより普及するのか、使われるのかというようなことも、このカーボンプライシングを検討する上で必要になってくるのではないかと思います。

2点目なんですけれども、今回の資料の中でも、国際競争力の話というのが述べられていました。読ませていただいて、確かにそうかなというふうに思うところもあるんですが、今議論しているのは2030年、2050年というようなそういう将来の話かなと思っております。今日の報告にもありましたけれども、COPでパリ協定に向けて各国、先進国、途上国だけではなくて、全ての国が協力して脱炭素に向けて活動していくということが議論されている中で、国際競争力の前提となるような、国際社会ですね、何か今の議論を聞いていますと、今の価格だけでとにかく勝負するというような、そういうことを前提に書かれているのではないかなと、そういう危惧といいますか、疑問を持っております。恐らく、その10年後、20年後、あるいは2050年というような中では、脱炭素な製品でないと、むしろ売ろうとしても売れないというようなこともあるかと思いますので、そういう意味で、今回、その国際競争力というふうなことをどういうふうな前提で書かれているのか、やはり2050年ではこういうふうなことも踏まえて国際競争力ということを議論していかないといけないのではないか、そのためにカーボンプライシング、国内のその制度というものはどういうふうなものが望ましいのかといったことも、きちんと明記すべきではないかなと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございます。

諸富委員、どうぞ。

諸富委員

ありがとうございます。とりわけ資料2についてのコメントということのご指示だったと思うんですけれども、この資料2は非常に詳細で、日本の経済のあり方と、それから脱炭素化ということが密接な関連があると。それから、もちろんさまざまな課題もあるんですが、脱炭素化が実は経済を成長させていく要素、多様なルートがあるんだと。それは例えば生産性の向上であったり、投資拡大であったり、脱カーボンマーケットの拡大であったり、さまざまな幾つかの要素があるんですけれども、そういったルートを通じて、実は日本経済の成長に寄与し得るという論議を、非常に詳細に連関づけて資料をつくっていただいたという意味では、非常に画期的な資料づくりをしていただいたなというふうに思っております。

以前でしたら、とりわけこれが10年前の会議だったら、恐らくカーボンプライシングというのは、温室効果ガスを抑制する手段だと。今なおそうなんですけれども。ただ、課題はコストだと、あるいは産業に対してマイナスだと、コストをかけると。なので、プラスマイナスありますねで終わっていたはずなんですね、そういう整理ですね。

しかし、今回のこの出てきつつある、まだこれは完成形態じゃないかもしれませんが、出てきつつある論理としては、やはりカーボンプライシングというのが単に温室効果ガスの削減、これが第一目標なんですけれども、実はその導入を通じて成長につながる景気をむしろつくり出していく、ドライバーになり得るんだという論理が出てきたということが、非常に今回の議論の新しいところで、これは委員全員がその点で同意できるとは限らないんですけれども、そういう論理がしっかりつくられてきたということが、今回の、例えば10年前ぐらいの議論と比べた場合に、非常に大きな進歩であるというふうに思います。

このことは、必ずしも日本だけ、ここの場だけの特殊な議論ではなくて、むしろ国際な趨勢に沿った議論なんだというふうに思いますね。私が知る限りでも、最近国際的にもいろんな議論が大体そういう方向にもう行っていて、OECDでの議論はこの資料の中でも既に取り込んでいただいているところですけれども、非常にエネルギー転換についても保守的であったIEAも、最近非常にドラスティックなレポートを出していますよね。ですから、IEAとIRENAが、今共同でレポートを出す、Perspectives for the energy transitionというタイトルのレポートが2017年に出ているんですけれども、これは2℃シナリオですね、2℃に気温上昇をおさえる、66%でそれが達成できる、確率で達成できるというシナリオを想定した中で、一体どういう経済構造転換があるかということなんですが、驚くべきことに、彼らのIEAモデルでは成長するという、達成してなおかつ成長できるというシミュレーションになっているんですね。もちろんシミュレーションにはいろいろ転移があるんですけど、IEAがそれを出してきたということについて、非常に画期的だというふうに思いますし、そのうち、なんと2050年段階で再生可能エネルギーが総発電量の70%に達しなければいけないという議論になっているんですね。ですので、再生可能エネルギーが現在23%で、2050年には70%、もちろん原子力もそこで11%から17%増えるというふうに今書かれているわけですけれども、圧倒的な再生可能エネルギーの増大ということが、逆に言うと見込まれなければ、そういったシナリオは達成できないということでもあるんですが、そのようなことになっている。

石炭はということになりますと、もう2040年までには先進国、新興国を含めて全てフェーズアウトだということになっているんですね。ですから、先ほどから、もう石炭についてはご議論のあったところではありますが、もしこういったシナリオというものを実現を目指していくということならば、どうしても石炭というのはフェーズアウトの方向へ行く、今からもう立てるということであれば、それは遊休資産、ストランデッドコストになるということを覚悟でやるということを事実上意味するということになりますね。

その中でカーボンプライシングからのシミュレーションのカーボンプライシングでは、先ほどスターン卿とそれからスティグリッツ教授のレポートが2030年に100ドルですね、トンカーボン当たり100ドルに達しなければいけないという話でしたけれども、IEAのシミュレーションでも、なんと2020年段階では20ドル、トンカーボン当たり20ドルなんですけど、同じ30年で120ドルですね。それで2050年はそれを190ドルにカーボンプライシングが達しなければいけない、このシナリオを達成するためですね。というレベルなんです。ですので、289円、温室効果ガス、我々の温対税、残念ながら我が国の温対税は289円トンカーボンというのがいかに低いか、確かにこれはないよりはあるほうがいいと思うんですけど、残念ながら今のこういった数字と比較した場合にいかに低いか、そしてそれは、いわゆる明示的なカーボンプライシングじゃなくて、暗黙の暗示的なカーボンプライシング。仮に計算して入れたとしても、とっても追いつけないレベルの価格水準が求められているということで、こういった国際的な議論がほぼ収斂しつつあって、それがむしろ成長するということを両立するということがほぼコンセンサスに、国際的にはなりつつあるということを、我々の共通認識等をしておく必要があるというふうに思います。

そういう中で、カーボンプライシングを入れていくということが、日本経済にとってむしろ生産性を高めていって、事業構造、産業構造の転換をやはり伴うということを確保しつつ、でも、それが全体としては成長を促していく、それはセクターの、特殊なある経済セクターの話をしているのか、日本経済全体の話をしているかということは区別をしていかないといけないです。我々は日本経済全体の話をしていくべきではないかというふうに思いますね。

もちろんそのプロセスで、各委員からご指摘のあったように、フランスの黄色いベストの運動等、起きてくるというふうに思いますし、それは我々が昔から言っていたカーボンプライシングは逆進的だと。そして、地方によって代替の手段がなければ、それは単なるコスト上昇に終わるので、そこは気をつけなければいけないということはずっと我々も言ってきたことであって、それが具現化したんだなと、そういうレベルにやはり各国がしていきているということですね。

なおかつ、ただそれだけに期して、だからやめるべきだというのはおかしな話であって、マクロン改革がもたらすいろんな主たる改革、労働指標の構造改革だとか、いろんな改革が進行している中で不満がたまっていて、最後に燃料改正が火をつけてきたという部分が確かにあります。ですので、それだけでもってカーボンプライシングを止めるべきだという議論には私はならないけれども、フェアトランジションについてしっかり議論していかないといけないという教訓については踏まえていくべきだというふうに思いました。

以上でございます。

浅野委員長

ありがとうございます。

では、安田委員、お願いいたします。

安田委員

諸富委員が非常に全体を包括するすばらしいまとめをしていただいた後で、若干話しにくいんですけれども、私のほうから、三つキーワードを挙げながら、この資料2を初め、今までの議論を少しまとめるご意見を出させていただきたいと思います。

その三つのキーワードは何かというと、一つは、再三上がっていますけれども外部性ですね。もう一つが無形資産。資料の中にも2-2に書かれていますけど無形資産で、最後がニューグローバリゼーションというやつです。

全体の資料2の印象としては、僕も諸富委員と非常に意見が近くて、単にCO2や温暖化という負の外部性、マイナスの外部性に言及するだけではなくて、イノベーションでこちらは正の外部性ですね、スピルオーバー効果を通じて、これはいいことが起きる外部性、その両面に触れられている点が非常に大きい特徴だと思います。

個々の論点に関しましては、既に牛島委員からもご指摘ありましたけれども、かなり個別の論点に関して、詳細に、網羅的に触れられていると。

その一方で、これも何人かの委員の方からご指摘がありましたけれども、小西委員でしたかね、過大な期待をもたらすリスクがあるんじゃないかとか、あとは、根本委員からバラ色の未来がちょっと強調され過ぎているという、その辺の見せ方というか、売り方の面で、多少ワーディングを気をつける点はあるかもしれないんですけれども、論点についてはできていると。

個別の論点ではなくて、少し大きい視点というか、個々の論点をつなぐ、場合によっては10年後、20年後の先を見据えて、まだ出尽くしていないかもしれない話を幾つかしたいと思います。

冒頭、一つ目のキーワード、外部性とお話ししましたけれども、以前、たしかこの研究委員会でもお話ししたかもしれませんが、今年ちょうどノーベル経済学賞50周年の節目の年だったんですが、まさにこの負の外部性と正の外部性を体現している、ノードハウス氏、温暖化・CO2ガスの負の外部性をマクロ経済モデルに導入したノードハウス氏と、正の外部性、イノベーションや技術革新というのを同じように長期のマクロ経済モデルに導入したポール・ローマー氏、二人がノーベル経済学賞を受賞しています。

このプラスマイナス二つの外部性をカーボンプライシングのような新しい施策を通じて、うまく幸せな結婚ができるかどうかというところがやっぱり一番大きい問題じゃないかと。外部性の問題というのは、ご案内のとおり、市場や分権的な民間の動きだけでは解決が難しい問題ですので、そこがうまく負の外部性、正の外部性を幸せに結びつけることができるかどうかというのが一番重要な論点だと思います。

その上で、今までの議論、そしてまとめの資料でも、若干やっぱり足りないなと思うのが、自主的な取組でイノベーションが起こせるのかどうかと。要は、分権的な解決ができないのであれば、それはカーボンプライシングを初め、政府や公的な機関が制度をがらっと変える、ゲームチェンジをしてあげることは正当化されると思うんですけれども、先ほど来何度か上がってきているESG投資であるとか個別企業の意識ですね、これは岩田委員が強調されていました。こういったものでの解決が難しいというところもある程度訴えていかないと、なぜ国家がこういうことをやるのかという正当化にはつながらないような気がします。

いろいろとその理屈づけというかあり得るシナリオを考えてみたんですけれども、一つは、これはカーボンプライシングのような制度を導入すると、低炭素型、脱炭素型の企業や産業にとっては、それは当然プラスの、投資を生み出すようなインセンティブを与えると。一方で、炭素依存型、高炭素型の産業に関してはマイナスの影響が出るかもしれない。重要になってくるのは、低炭素型に対してプラスで、炭素依存型に対して少なくとも短期的にはマイナスになるようなことがどういった理屈で正当化できるかということなんですよね。

考えてみたのは、例えば、恐らく今、日本でこれは足りないというのは資料の中でも言及されていますけれども、企業の新規参入及び体質が非常に低調だと、スタートアップがなかなか起きないと。最初にスタートアップ、一生懸命これは増やそうと今努力しているところだと思うんですけれども、スタートアップ企業というのは基本的には小さい。基本的にはドメスティックな企業なんですよね。その中で非常にうまくいった一握りの企業が、今だとメルカリのようにユニコーン企業になったりして大きくなっていくと。そういった新しい新陳代謝を生み出していくことが重要だというのは、皆さん、あまり異論はないと思うんですけれども、大きくなっていったときに何が起きるかというと、世界市場に出ていけるところなんですよね。自分たちのビジネスモデルを世界展開するとか、ものづくりであれば輸出をするといったような形で、そこで初めて国を超えていくと。最初から、スタートアップをつくるときから、世界で勝負すると思っている人もいるかもしれないですけれども、大体は足元のその収益とかを気にするので、その時点では、先の将来のことというのは恐らくあまり意識していないんですよね。

ちょっと話が長くなりましたけれども、低炭素型のビジネスでスタートアップを起こすか、炭素依存型のビジネスでスタートアップを起こすかと。ここ、もしもカーボンプライシングのような取組がなければ、どっちもフラットなので特に差はないと。炭素依存型で新しいビジネスモデルをつくりました、それで成功したと、海外に出ていきますとなったときに、恐らく5年後、10年後は、もう何人もの委員の方からご指摘あるんですけれども、より炭素依存型のビジネスのハードルは高くなっていると。そうなってきたときに、せっかく日本で新しいイノベーションを生み出しても、それは国際展開しにくくなるという危険性は十分にあるんじゃないかと思います。

なので、そういった、もう既にグローバル企業になっていて世界展開していると。なので、特にカーボンプライシングなんかなくても、ESG投資等を通じて、外部からのプレッシャーを感じているような既に大きい企業に関してはそこまでの有効性があるかわからないですけれども、小さいこれから出てくる企業に関しては、やっぱり国が制度を設計してあげるというのは、非常にいい、ある種案内約というか調整役になるんじゃないかなというのが1点です。

大企業に関して、こういった国の価格シグナルを通じた後押しが本当に不要かというと、そこは個人的には若干そうでもないんじゃないかという気がしていて、それは何かというと、これも何名の委員の先生から既に上がりましたけれども、COP24ですね、直近の。僕自身一番衝撃的だったのは石炭火力に関する反対、デモというか、横断膜のようなものが掲げられて、ネット上のメディア報道だと、日本を明示的に言及して、日本の石炭火力政策を批判するといった動きがあったようです。これは大手メディアではあまり報道されていないですけれども、こういった形で非常に石炭火力に対する風当たりが国際的には強くなっていると。しかも、石炭火力投資・融資に関して言うと、日本のメガバンク、みずほさんと三菱ですね、それはワンツーで圧倒的に巨額の投資をして、融資をしていると。

そういった現状を受けて、例えばそういったメガバンクの取締役、これはやばいと、世界的な潮流がこうなっているので、我が社としても方針転換をしなきゃいけないというのが十分に抑制がきくのであれば、そこまでカーボンプライシングのような外的な後押しというのは必要ないかもしれないですが、現状きいているかというと、やや疑わしいのではないかと。

もちろんこれは例外はあって、例えば、国内3番目だったSMBCさんなんかは、石炭火力発電の見直しを既に行っていますし……。

浅野委員長

すみません、ちょっと簡潔にお願いできませんか。

安田委員

はい。メガバンク以外でも、丸紅さんは石炭火力の開発撤退も決めているので、影響が、国の政策ではなくて、ESG投資などが効いている企業もあれば、そうでもないというのが実情ではないかと思います。であるならば、やはりそういった大企業、既存企業を見てみても、有効性話ある程度あるのではないかと。

最後、すみません、無形資産とニューグローバリゼーションの話をする前に時間切れになってしまったんですが、1点だけ、ニューグローバリゼーションは非常に重要な点だと思うのでお話ししたいです。

これは何かというと、世界的な国際経済学者であるリチャード・ボールドウィンさんが、「The Great Convergence」という本を書かれていて、これは日本語訳にも今年なりました。「世界経済 大いなる収斂」という本ですね。非常にかいつまんで言うと、物とアイデアと人の流れですね、これが重要だと。物の移動に関しては、19世紀以降、物流革命が起きて自由化されたと。そのタイミングで世界的にGDPというか経済のパイが増えたのがG7なんですね。1980年代に、全世界のGDPの8割近くを占めるまで大きくなった。それはなぜかというと、人とアイデアというのはなかなか移動しないと。一部の生産性の高い国がたくさんつくって、世界中に売るというビジネスモデルです。そこから先、直近のIT革命で何か変わったかというと、アイデアの移動が非常にフレキシブルになったと、そこでのコストが下がったと。結果的にG7を中心とした先進国のアイデア、知財と、安い労働力が結びついたというフェーズに入っています。日本の場合は、残念ながら古い、オールドグローバリゼーション、19世紀以降のオールドグローバリゼーションの中で大きくなった企業であるとか、そこに融資をしている金融機関というのは、非常に既存ビジネスで影響力が大きいわけですね。それでニューグローバリゼーションになかなか移行できないという問題がかなり深刻ではないかと思います。

このニューグローバリゼーションのキーワードは、やっぱり国際連携なんですが、先ほど、日本の外のゲームチェンジがどんどん起きている中で、国際連携の足を縛るような産業構造であったりとか業界構造がいまだに温存されていると。ここを変えていくというのが、かなりこの10年後、20年後を見渡したときに、いかにこのニューグローバリゼーションに日本も入っていきやすい環境づくりを進めていくか、これが非常に本質的な議論ではないかと個人的には考えています。長くなりました、すみません。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

それでは、もう残りの時間が30分ぐらいしかありませんので、10人いらっしゃいますから、お一人できれば3分以内でおさめていただきたいんですが。有村委員から順番に。

有村委員

諸富委員、安田委員から大きな話が出た後、ちょっと個別の話で恐縮ですけれども、ちょっとノードハウスのお話でいくと、今回ノードハウス氏がノーベル賞をとられたということで、私もいろんなところで解説するような機会を得て、機関投資家の方なんかともお話しすることがありました。この間、産業界でも物すごくカーボンプライシングに対する関心、あるいは賛同みたいなものがあるんだなというふうにちょっと驚いているところです。

そのノードハウス氏は、実は環境経済学者の中からはあまり歓迎されていない面もありまして、実は、彼は割引率を非常に低くとるので、将来の被害を現在価値に直すと非常に低く見る傾向があります。ワイツマン氏など、有名な学者から批判もされているし、宇沢弘文先生も批判していましたけれども、そんな彼でも最近のモデルですと2050年に100ドルぐらいの炭素価格が必要だみたいな研究結果を出しています。そういうようなところが一つの目安にもなり得るのかなと、今の日本大勢は全然そういう水準ではないなと。いろんな実行炭素価格を見てもというようなことは言えるかと思います。

それでちょっと報告書のほうの中身に言わせていただきますと、基本的に論点は出尽くしたというのが、先ほど牛島委員を初めいろんな方から出たところがあると思います。あとは具体的な案を見せてほしいというところが大事なところかと思います。それで、ただそうは言いつつも、資料の2のところで、一番最初のページというのがやっぱり結構大事なところだと思うんですけれども、先ほどカーボンプライシングの効果に関して、安田委員から外部経済の不経済の内部化の話がありましたけれども、それに加えて、カーボンプライシングというのは資源配分を効率的にする、それで削減目標を達成するというところが、経済学者がこれを推奨する大きな理由なわけですね。その点が1ページ目のところに書かれていないと思うんですね。1ページ目のところに外部不経済の内部化の話は「はじめに」のところに書かれているんですけれども、あと戦略的に資源を配分するというところは書かれていますが、マーケットメカニズムを使って効率的に削減できるのでこれは非常に重要だというところは指摘すべきところだと思います。

この資料で言いますと8ページ目のところですかね。ちょっと軽く、8ページ目の15行ぐらいで軽く触れられているんですけれども、自主的な行動が必ずしも効かない、けれどもこのカーボンプライシングは効くかもしれないというところは、そのマーケットメカニズムを活用しているというところなので、そこのメッセージというのが「はじめに」のところで触れられている必要があるというふうに思いました。

それから細かい視点ですと、資料3ページのページ3で、今新しく原料価格の国際比較が書かれております。その資料の中では、ドイツでは減免措置を受けていて、電気料金が安くなっている業種もあるということが触れられていますが、恐らく日本でも同じようなことをされているので、実際は電力集約産業もこの価格ではないような価格構造でビジネスをされていると思いますので、そこは事実として確認されて、きちんとしたほうがいいと思いました。

すみません、それでまだちょっと時間が。

浅野委員長

すみません、ちょっと。

有村委員

じゃあ、あとは細かいことなので、個別にお話しします。

浅野委員長

あとはメモをいただけませんか。ありがとうございます。

石田委員、どうぞ。

石田委員

先ほど増井委員がお話ししたように、脱炭素製品でなくては売れない時代が恐らく来るんではないかということだと思います。またAppleのお話ですけど、Appleは、今年からサプライチェーン全体をRE100にするというふうに、この前お話を聞いてきたんですけれども、複数の企業が、昨年はイビデンさんだけだったんですけど、複数の企業が今RE100を導入、再生可能エネルギーを導入しようとしてきて、我々のところにも少しお話をいただいていたりします。ですから、これは今、Appleだけの問題になっていますけど、そうじゃないと。これは将来、全体的にそういう傾向があるんだという兆候をここで見逃してはいけないんじゃないかなと思います。将来、この潮流を生かす政策が必要だと思います。

日本全体がサプライチェーンから外されないために、脱炭素への転換を図るべきであって、前回の議論にありましたけど、大企業は恐らく多分対応できます。放っておいてもという言い方はいけないんですけれども、対応できるんですが、中小の企業が果たして対応できるかというところがなかなか難しいので、やはり国全体が、さっき言っていたようにゲームチェンジのような方針を出してサポートして、そういう方向に向かわせる必要があるんではないかなというふうに思います。

また、ただし全体に議論があるように、カーボンプライシングにはいろいろな問題があるでしょうから、その問題を導入したときの問題を話し合うべきで、前回から言わせていただいているように、入れるとか入れないとかという問題じゃないんだろうというふうに思います。

また、さらにいろいろな地方行政の方からお聞きすると、脱炭素には賛成だけど財源はどうするのかというお話もありますので、カーボンプライシングを入れて、例えば税制にした場合の税の使い方についてとかも、具体的にどうやって制度設計をするのかという議論が必要なんではないかなというふうに思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは大塚委員、どうぞ。

大塚委員

ごく簡単に3点だけ申しますが、一つは、先ほどの河口委員のご意見が非常に私は説得力があると思いましたけれども、現在、確かに大変だと思いますけれども、その2030年の日本のことを例えば考えて、それとの関係で検討していくと、2030年に日本がどうなるべきかということを考えて検討していくという視点が非常に重要だと思います。

産業界の方からは、海外に投資するのが人口減少の中ではむしろ合理的だというようなご議論もあるかと思いますけれども、それに従っていたのでは多分日本は沈没していくということだと思いますので、地域循環圏の話もそうですけれども、まさに日本の中に投資をしていっていただくような方向に我々は考えていかなければいけない。個々の企業の中で、まさに会議に投資することが合理的だとおっしゃっていることを変えていただくことを我々は考えなくちゃいけないんじゃないかということを申し上げておきたいと思います。

その点で、資料2-1はいろんなご意見があると思いますけれども、生産性向上のきっかけになる可能性という、この辺が多分重要だと思いますので、そういう視点が必要ではないかということを申し上げておきます。

あと第2点ですが、23ページに現在の省エネ法の勧告のことを資料1について書いていただきましたが、ほとんどないじゃなくて1件もないということがわかったので、これはほとんどじゃないので、1件もないです、はい。

それから、第3点ですけれども、やはり特に石炭火力との関係で、石炭に関しての税が現在非常に低いということがやはり問題だと思いまして、エネルギー安全保障とかという議論はもちろんあると思うんですけれども、この間の資料にも出ていたように、今日は含まれていないと思いますけれども、燃料別CO2排出量の1トン当たりの税率は998円で、ほかのどれよりも低いということとか、本体価格を含めても4,324円で最も低いということで、むしろ石炭に誘導しているような面があると思いますので、この点はやはり是正する必要があると思います。

以上でございます。

浅野委員長

ありがとうございました。

それじゃあ、大野委員、お願いします。

大野委員

私も簡単に3点申し上げたいと思います。

まず1点は、これは皆さんおっしゃいましたけれども、やっぱりこの取りまとめを見ても、ほとんどの論点は今まで言われたことの、もちろん新しい要素も入ってはいますが、繰り返しになっているので、もう段階としてはこういうレベルの議論を繰り返すのではなくて、制度設計をして、その上で議論を詰める段階に入っているなということを改めて感じました。これが1点です。

2点目は、これは目次を見ますと三つとか四つの構成になっているんですが、その中で今回の特色というのは、カーボンプライシングが経済成長に寄与する可能性を非常に高く書いてあることです。これは諸富委員がおっしゃったように非常に新しい論点であって、非常にすぐれた点だと思います。ですから、これも大いに強調する必要があると思うんですが、2番が経済成長に寄与する可能性で、3番がカーボンプライシングが課題をもたらす可能性とこうなっているんですが、もう一方、やっぱりカーボンプライシングが存在しないことによって起きている問題、今後起きる問題というのも、同じようにきちんと書いておく必要があるんじゃないかと思います。これ、読むと中身には入っているんですが、よく読まないとわからないので、多くの人に訴求するためには、見出しレベルで入れる必要があると思います。それはどういう問題かというと、最も端的なのは、先進国の中では日本だけで石炭火力発電所がたくさん計画されてつくられようとしているという問題がもちろん端的ですが、それだけじゃなくて、産業構造全体の中でも炭素排出が多い産業にシフトしていってしまうと。そういう意味では資源配分の適正化が損なわれている。こういう、現在カーボンプライシングが存在しないことによって起きている問題も、同じように、目次レベルでわかるようにしないと大事な論点が伝わらないんじゃないかなと、このように思いました。

それから3点目は、廣江委員からコメントされたのは、私が前回申し上げたことに対するコメントだと思うんですけれども、逐一、時間もないので申しませんが、恐らく廣江委員は、私が電力事業者の皆さんが安定供給じゃなくてコストを考えているというふうに受け取られたのかと思うんですが、それは誤解であります。私も電気事業者の皆さんが非常に安定供給に真剣に取り組んでいることはよく知っております。特に2011年8月時点では、私も東京都で仕事をしていましたので、当時の東京電力が夏の電力不足対策に対して、非常に真剣に火力部門の方が取り組んでいたのはよく知っております。むしろ問題なのは、そのように電力事業者の皆さんが安定供給を真剣に考えたときに、石炭火力を選んでしまう、そういう仕組み、構造が問題だと思いまして、そこを直していく一つがカーボンプライシングなんだろうというふうに考えています。

以上3点です。

浅野委員長

ありがとうございました。

神津委員、いかがでございましょうか。

神津委員

先日、日本経済新聞に、消費税に関するコラムが載っておりました。どういう内容かというと、今回の増税に当たって、税率の水準や財源としてふさわしい税かといったような点について、専門家と国民の認識が乖離しているというようなご指摘でございました。日本社会の高齢化を踏まえた社会保障財源の確保等の観点から専門家が議論すると、消費税は必要だねということになるわけですけれども、国民の間ではやはり反対というようなことでございまして、単純化して言いますと、専門家は消費税に肯定的、国民は否定的という構図で、専門家の説明不足がこの認識の乖離の一因であるというようなことでございました。

これを読んで、カーボンプライシングの議論にも当てはまるのではないかと感じた次第で、一つ例を挙げると、22ページの22行目以降にあるとおり、カーボンプライシングと現行のエネルギー課税との整合性を図るべきという議論はこれまでもされておりまして、私もそう思っておりますが、一般的な方々にとっては、カーボンプライシングと現行エネルギー課税との違いがわかりづらいかもしれません。政策目的や効果が違うのだから問題ない、二重課税ではない、と言われて、すぐに理解していただけるのかどうかという気もいたします。税という国民に負担を求める政策は、理解と納得のできるものであることがとても大事だと思っています。

今年は大変災害の多い年でございまして、地球温暖化がその一因だということを国民もよく理解しているということで、カーボンプライシングの議論をするには、状況的にいいチャンスではないかなというふうに思っておりますし、経済成長につなげていくドライバーとしてのカーボンプライシングの可能性というものも、国民に広く納得していただけるよう、専門家や制度立案者が丁寧に説明していく必要があるというふうに考えております。

もう一つでございますけれども、先ほど石田委員からもご指摘がございました。カーボンプライシングの収入をどう使っていくかということで、一言申し上げたいと思います。これまでの議論の中でも、法人税の減税とか、家計への還元などのご意見があったかと思いますが、中小零細事業者への配慮という点も少し念頭に置いていただければと思います。例えば、中小零細事業者で炭素に大きく関わっているようなところが産業転換しなければならないときの産業転換に対する補助金とか、そういうようなことも考えていただければありがたいと思います。また、税の世界では、消費税において、中小事業者の事務負担への配慮として、簡易課税制度や免税点制度が設けられていますが、こうしたものも参考にしながら、カーボンプライシングの具体的制度設計に当たっては、中小事業者の事務負担への配慮という視点からもご検討いただければありがたいと思います。

以上でございます。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

それでは、高村委員、お願いします。

高村委員

ありがとうございました。既に意見が出ている点については触れないでいきたいと思いますけれども、一つは共通しての現状認識ではないかというふうに思っています。そういう意味では、神野先生がおっしゃった大きなところというところかもしれませんけれども。

つまり、現状のままでは、このまま推移してはまずいと。何らかの転換がやはり必要で、それはその一つの例はエネルギーの分野だと思いますけれども、2030年のエネルギーミックスに照らしても、あるいは今回のエネ基の2050年のエネルギー転換、脱炭素化へのチャレンジという方向性に照らしても、現状からやはり非化石への転換が必要なのは明らかだというふうに思います。

これはもう一つ、今日の議論の中で大変おもしろかったんですが、安田先生がおっしゃったような、新しいグローバリゼーションに対応といったような、そうした観点からも言えると思いますけれども、少なくともやはり何らかの今転換が必要で、しかし今回まとめていただいた資料の中で、転換に伴ってプラスの便益も出てくるかもしれない、あるいはほかの問題の解決も図り得るかもしれないという可能性を示していただいたということは大事だと思います。同時に、導入に伴ういろんな懸念や課題があるということもそのとおりで、恐らくカーボンプライシングだけではなくて、ほかの政策との組み合わせをどうするか、それから、どういうふうにカーボンプライシングを導入したときにどういう制度でどこまで対応できるのかということを、やはり議論していく段階なんだろうと思います。これが1点目です。

2点目は、岩田先生が冒頭に指摘してくださった、FITを税制のグリーン化の中に位置づけてというのは、これは大変おもしろい論点で、これはカーボンプライシングについても恐らくパラレルに言える点だと思います。FIT自身は再エネを普及してコストを下げて再エネを拡大して再エネのエネルギー転換を引き起こすと、そういう過渡的なといいましょうか、移行のための制度だというふうに思いまして、そういう意味でカーボンプライシングとも移行のための機能というのはパラレルなところがあると思うんですが、ぜひカーボンプライシングの文脈でも、FITに関してもそうなんですが、賦課金の議論は、賦課金は見えますのでよくわかるわけですけれども、同時に導入による燃料費の削減、いわゆる化石燃料の輸入の削減による電力コストにどれだけプラスの効果があったのか、マイナスの効果があったのかという点や、あるいは、これはブルームバーグのデータが出ていますけれども、FIT以降日本の国内の再エネ投資額というのは非常に大きくなっています。つまり、国内に一定のお金が回るようになってきている。こうした点も含めてきちんとやはり評価をすることが必要だろうというふうに、カーボンプライシングについても思っています。

最後、資料の3についてですけれども、ありがとうございました、私もこれについてはお願いをして直していただいたんですが、今回出していただいた資料はこのまま全くこれで結構なんですけれども、資料の3の3ページに表れているところで、やはりもう一つ改めて言うと、本当にカーボンプライシング導入をしたときの影響を見るためには、やっぱり具体的な制度の実態に基づいて議論をする必要があると思ったわけです。何かといいますと、確かに産業用の電力って、これはこういう足し方で出していただくのはいいんですが、実際にはエネルギーの対象費の産業に関しては、日本もドイツも賦課金の減免をしています。日本は8割まで減免をしていますし、そういう意味では、最も影響が出てくるところ、影響を評価するにはそうした実態の制度に合わせて評価をすることが必要だというふうに思っていまして、資料の3について、これはこのままでいいんですけれども、その意味でも、具体的な制度論の議論をきちんと始めるべきだというふうに思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

手塚委員、お願いします。

手塚委員

ありがとうございます。まず資料の3についてのコメントなんですけれども、3ページ、先ほど有村先生、あるいは今、高村さんからもご指摘にありましたとおり、ドイツのFIT賦課金はこの下に小さな字で書かれていますけれども、減免されているんですね。これはかなり緩いもので、製品付加価値当たりのエネルギーコストが14%以上の企業に対し減免措置とありますけれども、9割減免になっていると聞いています。ですので、このグラフで見たときに産業用電力の緑の部分というのは、ドイツの場合はかなり企業が9割減免されていることになります。日本の場合は、今、高村先生がおっしゃったとおり最大8割減免というのがありますけれども、鉄鋼業の場合は普通綱電炉業はその対象になっていますけれども、特殊綱電炉業が入らない、あるいは高炉も入らないという形で、かなり要件が厳しいスレッシュホールドがかかっているということで、恐らく4ページのIEAが出されている数字なんかのほうが実態感に近いんじゃないかなという気がいたします。

それから資料1について、少し大きな議論をしたいと思うんですけれども、まず頭で、脱炭素化をめぐる国内外の動向というところの考え方なんですけれども、何人かの先生が既にご指摘のとおり、恐らく今、世界では少し揺り戻しのようなことが起きていると思います。フランスのイエローベスト運動は皆さん言及されていますけれども、米国でも11月の中間選挙でワシントン州でトン当たり15ドルのカーボンタックス導入案が否決されたという動きがありますし、カナダのオンタリオ州で排出権取引が導入を中止したということがあります。ちなみにこのワシントン州は16年にもキャップアンドトレードを導入しようとしているんですけれども、これも否決されていますので、なかなか国民の理解を得られない中で直接投票をやると、同意が得られないという状況があるのかと思います。

この件に関連して、これは意見ではなくて、事務局のほうでつくられている12ページの19行目に、「米国で排出量取引を導入した州では、経済成長を実現しつつ、CO2排出量の削減を達成している」と記載されているんですけれども、ちょっとこれはミスリーディングかなと思います。確かにカリフォルニア州のように成長している州もあるんですが、実は、今申し上げた、導入を16年以来否決してきているワシントン州の17年の経済成長率4.4%、カリフォルニア州が3%ということで、導入しなかった州のほうが高い経済成長をしていたりするんですね。もっと言いますと、カリフォルニア州の17年の経済成長は全米では6位ですけれども、その上にアリゾナとかコロラドといった炭素価格を導入していない州が乗っかってきますし、全米上位10州の中にはRGGIの州は入ってこないということがあります。なので、排出権取引を導入しても経済成長している州があるということは事実ですけれども、導入したから経済成長しているのか、もしかしたら導入した結果、本当はもっと成長したかもしれないのにできなかったということなのかということの要因分析は、この資料ではわからないんじゃないかと思います。

それから、もう一つの点が27ページに飛びまして、逆進性が生じる可能性ということについて縷々書かれているんですけれども、実は神津先生からもご指摘があったと思うんですが、9月28日に内閣府が日本の温暖化対策税を知っていますかというアンケートを国民に対して行っております。その結果、33.1%の人が知らないというふうに答えているんですね。現在、温暖化対策税はトン当たり289円の課税が係っていて、税収2,600億円くらいがあると言われていますが、環境省さんのホームページの試算によりますと、家計負担が年間1,288円というぐらいの負担を国民はしているわけですが、これがかかっているということそのものを国民は知らないんですね。なので、ここにいる委員の先生方も皆さんも含めまして、今日本にカーボンプライスがないというわけじゃなくて、存在しているということを認識することが出発点になります。しかも、それが国民に知られていないところから炭素価格導入の是非の話はスタートしているということを理解する必要があるんじゃないのかと思います。フランスやあるいはワシントン州の状況のように、実際にそれがストレートに公民投票のようなものにかかってきたときに、果たしてどういうふうに社会がこれを容認していくかということは、相当丁寧な説明と便益の説明をしていかないと、なかなか理解をいただけない可能性もあるんじゃないのかという気がいたします。

最後に、30ページ、これは私の発言と関係するので申し上げておきますけれども、15行目から、スティグリッツ、スターン卿のレポートで、2020年までの80ドルの炭素税が必要というようなコメントが書かれていますけれども、第1回のこの委員会で、私のほうから、同じこのスティグリッツ教授が日本に来られたときに、環境省の委員会で、「日本の場合は石石税を含めて暗黙的な炭素課税がトン当たり4,000円ぐらいかかっていて、その結果省エネが結構進んでいるんじゃないか」という話をしたところ、スティグリッツ教授からのコメントは、「それはすばらしいですね。どのような形で課税がかかっても、省エネが進むということであれば効果が出ているんだと思います。日本は既に半分以上の成果を達成しているということなので世界の模範になるかもしれません。」というコメントをいただいております。この発言はぜひここに加えておいていただけるとありがたいと思います。

以上でございます。

浅野委員長

ありがとうございました。

土居委員、どうぞ。

土居委員

この小委員会が設置されて以降、今日に至るまで、実は予期しない形で議論の背景が大きく変わることが起こったというべきだと思うのは、実は今月の14日に与党の平成31年度税制改正大綱が決まりまして、その中の検討事項に、自動車関連諸税の話があります。一見すると関係ないように思われるんですが、検討事項にこういうふうに書かれているんです。自動車関連諸税については、技術革新や保有から利用への変化等の自動車を取り巻く環境変化の動向、環境負荷の低減に対する要請の高まり等を踏まえつつ、中略しますけれども、その課税のあり方について中長期的な視点に立って検討を行うと。与党大綱で検討事項に入るということは、与党は必ず検討するということです。もちろんカーボンプライシングとは直接関係ありませんが、車の所有に対する税の負担を軽くするためには、利用の負担を重くするということとのバーターであると。利用に対する負担というのはどういうことかというと、当然ながら、道路の損傷に対する対価に対する税というのもありますけれども、環境の損傷に対する対価の税もあるということですから、当然環境に対する負荷ということになれば、当然カーボンプライシングのような発想というのが、自動車の利用者に対して求められることになるということですけれども、果たして自動車の利用者にだけそういう負担を求めるという話で完結していいのでしょうかということが、恐らくは議論の対象になると思います。そうすると、カーボンプライシングはほとんど手の届くところにあるという話になってくるというのは、この小委員会ができたときにはなかった議論ですけれども、その議論の背景がこれによって大きく変わったというふうに私は理解するべきなのではないかというふうに思います。

さて、その中で、確かに導入するべきかすべきでないかという議論はいろいろあるのですが、仮に導入するにしても、やはりいきなり高率の税を課すということになると、なかなかそれは受け入れられないということでありますから、環境税の世界では有名なボーモル・オーツ税という発想があるわけですので、いきなり理想の税額に達するということではなくて、少しずつエネルギー諸税などをスクラップして、よりグリーン化していくという方向、これはほかの委員の方もおっしゃっていますけれども、税制をグリーン化していくというような形で、少しずつ緩やかにカーボンプライシングの発想を取り入れていくことが一つ考えられるのではないかというふうに思います。

また、課税する対象も上流から始めるとか、いろいろな方法があるというふうに思いますし、私もこの小委員会で何度も申し上げていますけれども、国際競争力への配慮ということであれば、資料1の27ページに、私が申し上げたことも引用していただいていますけれども、27ページの25行目辺りにある仕向地主義炭素税。これは仕向地主義炭素税と書いていただいてありがたいんですが、ちょっとこれだけだと一体何が言いたいのかよくわからないと思いますので、これに賦課して、仕入税額控除を入れることと、輸出免税を入れることというのを入れるということですね。それを二つ入れることで、輸出免税もできます。ですから、輸出免税ができるので輸出競争力をそがないということになりますし、ここまでやれるかどうかは別ですが、輸入に対する課税と、カーボンプライシング的な課税というのもやろうと思えばできるということですから、そういう形の方法で対処するということも一つ考えられるのではないかというふうに思います。

それからもう一つは、先ほど根本委員もご指摘されました、今の温対税の使われ方というのには問題があると。私も行政改革推進会議の議員をさせていただいていて、まさにエネルギー特会の支出の使われ方があまりにもルーズではないかというのは、実は私が裏側で行政改革推進会議でこれを問題提起せよと言って、問題をこの行政事業レビューで扱っていただいたという経緯があるんですけれども、やはりそこはしっかり不要不急なものに使わないようにすると、環境対策なんだからといったら何でもいいというわけではないと。今も既に一般財源でありまして、特会に繰り入れない分は一般財源として一般会計留保ということで一般会計に留保されて、ひもついてないわけですけれども、いろいろな行政サービスに使われているというようなことがありますから、そういう意味では、しっかり使途を見直していただくということも必要でありますし、それに加えて、幅広い使われ方を考えながらトータルの政策パッケージを考えていただくということが重要なのではないかというふうに思います。

以上です。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

恐縮でございますが、あとお二方のご発言ありますので、多分30分をオーバーすると思います。お許しください。極力あまり延びないようにご協力いただければと思いますが。

前田委員、どうぞ。

前田委員

前田です。お時間もあまりないので、手短に。

これまでの議論で、カーボンプライシングの意義とか必要性とかについて、賛否はありながらも比較的包括的な議論がされたのではないかと思います。ただ、そうは言っても、カーボンプライシングというものを具体的にどう展開するのかとなると、やはり具体的な方法、制度の詳細の議論が必要で、実際のところは多様な方法があるのだろうというふうには思います。

そうすると、次に何が重要かというと、そのような制度あるいは施策を導入するには、きっと透明性、トランスペアレンシーというものが必要だろうというように思います。それは、特にこのカーボンプライシングについては、人為的な価格のメカニズムを使うということに起因します。あくまでも人為的なものですので、誰もがきちんとこれを認識できるというものでないといけない。どのような制度であれ、そのメカニズム、あるいは仕組みといったものが必ず誰にでもわかるというものでないといけない、そのためには、明快な設計図であるとか明快なルールというのが必要だと思うところです。さらには、大きな目標の中でのその施策の位置づけというものが明確であるということが必要かと思います。

もちろん実際のところは、どのような制度とか施策も、あんまり中身が明確になり過ぎ、誰もがそれをわかるということになると、かえって賛否が先鋭化するということもあります。そうしたなかで、実際の世の中の多くの制度、施策というのは、いろいろな意見を勘案した結果、いろいろな追加的措置をして、結局玉虫色なものができ上がり何をやっているかわからないということも実際によくあることではあると思います。

それでも、先ほどの話で、人為的な価格メカニズムを使うということが大目標であるのだとすれば、やはり明確であるということが、経済学として機能するかどうかのポイントになるのではないかと思います。また、そのための一般向けのきちんとした説明、広報といった面も必要かと思うところです。

以上です。

あと1点だけ、発言の機会を与えられましたので、追加しておきたいと思います。資料の参考資料2、前回第4回の議事のところですけど、52ページ、最後のところ、「ダイベストメントをまとめていただいているんですが・・・」で始まる前田委員発言とされる部分があるのですが、すみません、これは私の発言ではないと思うので、少し確認していただくとよろしいかと思います。

以上です。

浅野委員長

わかりました。ちょっともう一度確認いたします。

それでは、森澤委員、どうぞ。

森澤委員

ありがとうございます。

2-1に書いていらっしゃるとおりに、人的資本投資というところで、投資と生産性の向上は表裏一体であると、今、企業が脱炭素を進める際に、企業の中で経営陣を含め、知見を持ってシナリオ分析ができるということが必要になってきています。そして、環境と経済の好循環を加速するためには、投資家、アナリストが、その知見、分析する力が必要なんですね。ここの部分では、フランス政府は脱炭素政策、これはいろんな波がありますけれども、大分進めていらっしゃる中で、年金基金やポートフォリオの脱炭素化というのをすごく進めていらっしゃいます。主たる公的年金は、この方向でアナリストたち、運用会社に指示を出しているわけなんですね。運用会社、ファンドマネジャーやアナリスト、そしてデータプロバイダも事業会社がどういう状況であるか、将来性を分析しています。ここの部分で、以前からESG投資について進んでいましたギアチェンジ、ギアが上がっています。

日本でもシナリオ分析は始まっていますし、諸富先生がおっしゃっていただきましたように、IEAのワードエナジー、アウトルックを初め、移行リスクの影響について、いろいろ紹介がなされています。ただ、全然このレベルというものは違っています。日本のアナリストたちというところは、もっとわかる必要があるという部分からいきますと、今、民間企業、投資家が理解し、知見を持つということが重要です。この人的な投資というところが重要ではないかなというふうに思っていますし、ここの部分に対する補完ということ。

日本はTCFD、気候関連財務情報開示タスクフォースに対して、環境省は以前からですし、金融庁、全銀協、会計士協会が賛同表明をしていらっしゃったと。25日に、今月、この火曜日になりますけれども、経産省、それからGPIFが賛同表明したと。これから変わっていくんだろうと思うんですが、これを促進するような仕組みということも、このカーボンプライシングが出てくる部分で、何かここの部分の税制として、何か考えられる部分、それをどのように使うかというところで使えることがあるならば、そういった今のままではまだ足りないということをどう変えていけるか、企業や投資家を変えていくにはどうすればいいかというところに使っていただくというのも一つあるのではないかなと思います。

また、国の政策との関係性が強い業種というのがありますが、それはエネルギーを輸入して、輸入に頼らざるを得なかった日本ですので、経済成長するために政策が関与してきたと。そのために電力の部分は自由化が大分止まってきたわけですけれども、今、電力の自由化と再エネの需要、これが同時進行に行われている国というのは日本ですよね。これは新興国の中で日本だけなんだと。もうほかは電力の自由化はとうに終わっていて、そこで再エネの需要というものが出てきていると。

今、大手電力会社さんも、再エネに需要があるということは、石田さんがおっしゃったように、いろんなセクターから声が上がって需要があるということも気づいていらっしゃると思います。既に私がお話をお伺いしていますと、大手電力会社さんも新電力部門というのをつくっていらっしゃって、この再エネのことを促進するような部門もつくっていらっしゃるわけなんです。ですからカーボンプライシングというものが出てきても当然だと思っていただいているんではないかなというようなことを、そこの企業とお話をさせていただいている中では感じてはいます。この新電力部門というものが何であるのかというところ、どういうふうなシナリオをつくっていらっしゃるのかというところもお話を伺いながら、どういうようなシナリオをつくっていらっしゃるのかというのも、そのシナリオ分析はカーボンプライシングの考えに少し影響を与えるんじゃないかなと思いますので、そちらとのヒアリングというのもありではないかなと思いました。

以上です。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

大変熱心にご議論いただきましたので、少し時間オーバーしてしまいました。申し訳ありません。

これまでと同じように、資料1についてはご意見がありましたら、今日も少しいただきましたけれども、来年の1月第2週の半ばくらいまでにご連絡をいただきましたら、それをつけ加えることにいたします。それらをもとに、次回以降の議論のたたき台を整理してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

時間をオーバーいたしましたが、以上で本日の審議を終わりたいと思います。

事務局からご連絡をお願いします。

鮎川市場メカニズム室長

ありがとうございます。

次回につきましては、ご日程を示しておりまして、後ほど委員長ともご相談した上で、追って事務局より正式にご連絡はいたしますが、来年の2月18日、月曜日、15時から18時というところを軸に最終調整をしておりますので、ご予定のほうをよろしくお願いいたします。

事務局からは以上です。

浅野委員長

それでは本日はこれで終わります。どうもありがとうございました。

午後0時34分 閉会