中央環境審議会地球環境部会・総合政策部会炭素中立型経済社会変革小委員会(第9回) 議事録

日時

 令和4年11月25日(金)15時00分~17時16分

場所

 WEBによる開催

議事

(1)有識者等からのヒアリング

(2)今後10 年を見据えた取組の方向性について

(3)その他

議事録

午後3時00分 開会

地球環境局総務課長
 それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会・総合政策部会炭素中立型経済社会変革小委員会(第9回)を開催いたします。
 環境省地球環境局総務課長の小笠原です。よろしくお願いいたします。
 本日の小委員会はWebでの開催とし、YouTubeの環境省動画チャンネルでも同時配信しております。
 本日は、委員総数17名中、現段階で12名の委員にご出席いただいており、定足数の要件を満たし、小委員会として成立していることをご報告いたします。
 なお、本日は、伊藤委員、広井委員、三日月委員がご欠席です。
 このほか、資料1の名簿のとおり、オブザーバーや関係省庁からもご参加いただいております。
 それでは、以後の進行を大塚委員長にお願いいたします。
 
大塚委員長
 どうも皆様、こんにちは。前回の会議では、金融、人材育成、国土利用、デジタルトランスフォーメーションの計6者の有識者の方からヒアリングを行いました。
 本日、一つ目の議題では、前回に続きまして、金融関係の有識者2名をお招きし、取組を紹介いただきます。委員の皆様には、カーボンニュートラルの実現という観点から、どのような取組が求められるか、ご助言などをいただければありがたいと思います。
 また、二つ目の議題では、これまでの委員の皆様のご意見やヒアリングの内容を踏まえて、事務局において改定をした「今後10年を見据えた取組の方向性」を説明いたします。本日、委員の皆様から、さらにご意見をいただいた上で取りまとめを行っていきたいと考えております。
 それでは、議題1、有識者等からのヒアリングに入ります。本日は、日本政策金融公庫の水谷泰久様、住宅金融支援機構の江口大暁様にご出席いただいております。それぞれ10分ずつプレゼンテーションをいただき、その後でまとめてご質問、ご意見をいただきたいと思います。
 まずは、日本政策公庫の水谷様、どうぞよろしくお願いいたします。
 
日本政策金融公庫(水谷事業企画部長)
 日本政策金融公庫、水谷でございます。よろしくお願いいたします。
 日本政策金融公庫からは日本公庫の取組ということで、日本公庫の概要、そのあと、地球環境への取組ということでお話をさせていただきたいと思います。
 表紙をおめくりいただきまして目次です。このような形で、今日、お話をさせていただきたいと思います。
 では、3ページまでお願いできますでしょうか。
 まずは、日本公庫の概要です。我々、日本公庫は、左の図にありますとおり、平成20年10月1日、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、経緯はありますけれども、基本的に現在はこの3公庫が統合して発足している組織ということです。国民生活事業と、中小企業事業につきましては、いわゆる中小企業者向けの融資、農林漁業分野につきましては、農林漁業分野の事業者の方々へのご融資ということを業務とさせていただいております。
 では、次のページをお願いいたします。
 総融資実績です。令和4年3月期、フローの供給額は約4兆9,000億円、残高は約29兆円ということです。
 次のページをお願いいたします。
 日本公庫といたしましては、直接のご融資だけではなく、信用保険業務も行っております。こちらは、コロナの中で民間金融機関がゼロゼロ融資を実施したということで、知名度が上がったかもしれませんが、民間金融機関が各地の信用保証協会の保証をつけてご融資をするという際に、保証協会のさらにバックアップということで日本公庫が信用保険を引き受けるという形で業務を行っております。令和4年3月期の時点では、保険の引受残高は約42兆円ということになっております。
 次のページをお願いいたします。
 こちらは、中小企業向けの貸出残高シェアにおける日本公庫の位置を表しております。中小企業向けのところは全体の6%、農業向けにつきましては、マーケットの特性もあり、40%程度というふうになっております。
 続きまして7ページ、コロナ対応の概要をご説明させていただきます。
 次のページをお願いいたします。
 左のグラフは、決定件数を示しており、大きな件数となっておりますが、このページでご紹介したいのは右の円グラフでして、今回、ご融資を多く実施させていただいた中で、従来からご融資があったところと、今までご融資が全くなくて、初めてお取引したところというのが半々ということになっております。日本公庫の融資先の裾野というのが広がっているという状況です。
 次のページをお願いいたします。
 こちら、コロナ対策資本性劣後ローンという名前でして、いわゆる普通の融資だけではなく、資本性に近いご融資という、なかなか民間金融機関では扱いづらいものというのが、このコロナの中で新たに措置をされておりまして、こういった利用も非常に多くなっているということです。こちらは、右の円グラフにありますとおり、民間の金融機関からのご紹介というのが半分弱を占めているということです。
 それでは、次のページをお願いいたします。
 ここからが本日の本題の環境対策関連の取組です。
 次のページをお願いいたします。
 日本公庫の環境対策関連の取組といたしましては、表題にありますとおり、環境・エネルギー対策資金というものがあります。いわゆる事業資金、何でもご融資しますというもの以外に、この環境・エネルギー対策に特化した制度というものを推進しております。
 中身は、左の表のとおりです。ご融資の対象というのを定めておりまして、1、非化石エネルギー関連ということで、こちらは太陽光であるとかバイオマスであるとか、そういった非化石エネルギーの設備を導入する方です。
 2番目は、省エネルギー設備関連ということで、中小企業は金属加工の事業者も多いですけれども、そういった加工機械で省エネルギーの設備を導入される方です。
 3番は、建設機械であるとか特定特殊自動車の排ガス規制に合致したもの。特定特殊自動車というのはフォークリフトであるとかブルドーザーのような公道を走行しない自動車のことですけれども、これの排ガス規制に対応したものの促進というのを進めております。ご融資の限度額は7億2,000万円ということで多くの中小企業者に利用をいただいております。
 次のページをお願いいたします。
 こちらが利用実績です。先ほど申し上げました平成20年に公庫が発足しましてからの累計ですが、件数で約6万8,000件、金額で約1兆2,000億円のご融資ということで、非常に裾野の広い中小企業の方々にご利用いただいているということがお分かりいただけるかと思います。
 次のページをお願いいたします。
 こちらは、先ほどのご融資の中での特徴的な事例ということを二つほど挙げさせていただいております。
 一つは、事例1、左のほうですけれども、先ほど申しました非化石エネルギーの中でバイオマス発電ということです。バイオマス発電設備はこちらにもありますとおり、非常に大きな金額の設備投資になります。そういったものにつきまして、我々、低利でご融資をさせていただく、なおかつ、発電設備ですので、耐用期間が非常に長くなりますので、長期のご融資をさせていただくということで、民間金融機関だけではなかなか対応しづらいものを協調してご融資をさせていただいておるということです。
 右のほうは、省エネですけれども、アルミダイカストの業者さんです。これは、昨今の流れになってきているかと思うのですが、このB社さんは自動車部品を製造しており、こういった産業は、お取引先からカーボンニュートラルの取組というのがしっかり進んでいるのかと、それが証明できないとなかなか取引を続けられないという話が中小企業のほうにも来たりしております。
 そういった中で、カーボンニュートラルの取組を進めておりますというために、省エネ最適化診断を受けて、そういった取組を外にオープンにしてやっているということです。
 これは中小企業の側から申し上げますと、脱炭素の取組は当然なのですけれども、併せて、省エネですので、コスト削減になるという、この両面があって初めて中小企業としては投資効果が得られるということです。これも民間金融機関と協調して融資を実行しているという事例です。
 次のページをお願いいたします。
 先ほど申し上げた環境・エネルギー対策資金ですけれども、今までの対象以外に、令和5年度から新しい対象を予算要求しております。今回の新しい対象は、補正予算で政府案として拡充が認められたところです。拡充が認められた内容というのは、真ん中に表がありますけれども、温室効果ガスの排出量を算定し、グリーントランスフォーメーションに取り組む方、いわゆるGXということです。
 さらに、GXに取り組む中で、貸付利率の中の括弧書きですけれども、J-クレジット制度のクレジットをつくり生み出す側であったり、エコアクション21の認証を受けている方につきましては、特別利率②という金利を適用します。特別利率は1、2、3と三段階あって第二段階ではあるのですけれども、優遇利率でご融資をするということで、今年度から制度を進めようというところで動いているところです。
 先ほどのGX、グリーントランスフォーメーションに取り組む方ということの具体的なものが一番下のポンチ絵の右端の囲み、取組のイメージとあります。いわゆる、先ほどの省エネ診断と同じような自社の工場でGXに取り組むというのは当然、融資対象になるのですが、中小企業はそれだけですと大変ですので、一番下のポツにありますとおり、カーボンニュートラルに向けた業態転換、例えば自動車の内燃機関のエンジン部品を製造していた方が、電気自動車の部品製造に転換するという世の中の流れに合わせて業態転換を行うという方もGXに取り組む方ということで融資対象にしたいということで考えております。ただ、詳細な制度の内容につきましては、今、関係の主務省との間で調整中ですので、またこれから少し調整が入ってくると思います。
 次のページをお願いいたします。
 これは参考ですけれども、中小企業の方々の取組の中で、我々公庫が民間金融機関や自治体と連携してさらにカーボンニュートラルの動きというのを進めていきたいと考えております。左の大阪支店の取組は、関西みらい銀行と一緒に、カーボンニュートラルのニーズに対して協調商品でご融資対応しましょうというものです。
 右の神戸支店の取組は、兵庫県がカーボンニュートラルへの取組を促進しようということで動いている中で、兵庫県と連携した対応です。中小企業が対象ですので、なかなか一度で大きな効果が出るものではありませんが、コツコツ積み上げて今の世の中のカーボンニュートラルの動きに資する動きができればというふうに考えております。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 では、次に、住宅金融支援機構の江口様、どうぞよろしくお願いいたします。
 
住宅金融支援機構(江口業務企画部長)
住宅金融支援機構で業務企画部長をしております江口と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 時間の関係もございますので、早速ですが、資料3の表題にありますように、「脱炭素社会の実現に向けた当機構の取組について」ご説明をさせていただきます。1枚おめくりください。
 当機構は、カーボンニュートラルの実現に向けて、気候変動関連財務情報開示タスクフォース、いわゆるTCFDの提言に本年6月に賛同いたしました。左側のブルーの縦軸にはTCFDの開示推奨項目を記載し、その右横には当機構の取組内容、そして、一番右側には当機構の商品名を整理しております。
 戦略の項目に目をお運びいただきますと、当機構は、カーボンニュートラルに向けた住宅循環システムの構築と、良質な住宅ストックの形成を目的として、省エネルギー性に優れた住宅を対象に、民間金融機関による住宅ローンの供給を支援していくとともに、民間金融機関だけでは対応が困難な分野への資金の融通を補完していくこととしております。
 具体的にこれに対応いたしますのが、一番右に商品名を四つ記載しておりますが、一番上の【フラット35】Sと、上から三つ目の子育て世帯向け省エネ賃貸住宅融資等であります。
 戦略の項目に目をお戻しいただきますと、ポツの二つ目として、新築住宅に加えて既存住宅に対する取組につきましても良質な住宅ストックの形成の観点から発展させていくとしております。具体的にこれに対応いたしますのが、一番右の上から二つ目の【グリーンリフォームローン】でございます。この【グリーンリフォームローン】につきましては、さきの通常国会で建築物省エネ法とともに住宅金融支援機構法を改正いただき、本年10月に創設した商品であります。
 再び戦略の項目に目をお戻しいただきますと、ポツの三つ目として、省エネルギー性に優れた住宅の住宅ローンを資金使途としたグリーンボンドを継続的に発行し、ESGの投資ニーズに対応していくこととしております。このグリーンボンドの発行につきましては、平成30年度から行っております。
 2ページ目に参ります。このページでは、国が目指す住宅の姿と、当機構の取組を絵にしております。僭越ながら、国が目指す住宅の姿をご紹介させていただきますと、年表を横にご覧いただきたいと思います。2020年10月の臨時国会で当時の菅総理大臣が2050年カーボンニュートラル宣言を行いました。その後、2022年、本年6月に建築物省エネ法等の改正が行われ、2025年度に新築住宅では省エネ基準が義務化されることになっております。
 その先の国が目指す住宅の姿をご紹介いたしますと、2030年度には新築される住宅についてはZEH基準の省エネ性能が確保され、新築戸建て住宅の6割に太陽光発電設備が導入されることを目指すとされております。さらに、2050年度には、住宅ストック全体の平均でZEH水準の省エネ性能が確保され、導入が合理的な住宅については、太陽光発電設備などの再生可能エネルギーの導入が一般的になることを目指すとされております。
 そこで、当機構の足元の取組をトピック的にご紹介させていただきますと、まず、新築住宅につきましては、【フラット35】と記載しております青で着色した箇所に目をお運びいただきますと、改正建築物省エネ法の趣旨を踏まえて、本年10月から金利引下げ措置を講じている【フラット35】SにZEHの区分を創設し、金利引下げ措置を強化いたしました。
 これに加えて、【フラット35】Sで求めております省エネルギー性の基準の強化を行いました。さらに、来年4月からは2025年度に予定されている新築住宅での省エネ基準の義務化に先行する形で金利引下げ措置を講じていない【フラット35】、Sがつかない無印の新築住宅につきましても、省エネ基準を融資の要件とすることといたしました。
 一方、既存住宅につきましては、【グリーンリフォームローン】と記載しております緑で着色した箇所に目をお運びいただきますと、建築物省エネ法と併せて住宅金融支援機構法を改正いただき、本年10月に【グリーンリフォームローン】を創設いたしました。住宅ストック5,400万戸のうち省エネ基準を満たしていない住宅が9割を占める中、この商品を通じて既存住宅の省エネ改修を進めてまいりたいと考えております。
 なお、この資料では当機構の足元の取組をご紹介させていただきましたが、今後とも国が目指す住宅の姿を念頭に政策金融機関として適切なタイミングで商品開発、そして商品改良を行い、2050年カーボンニュートラルに貢献してまいりたいと考えております。
 3ページに参ります。
 さきのページでは、当機構の取組をトピック的にご紹介させていただきましたが、このページでは当機構の取組の全体像を絵にしております。縦軸に新築住宅、既存住宅、横軸に戸建住宅、マンション、賃貸住宅としましたマトリックスに当機構の足元の取組の全体像を整理しております。【フラット35】をご覧いただきますと、金利引下げ措置を講じております省エネルギー性に優れた住宅を対象としている【フラット35】Sにつきましては、前のページでもご説明いたしましたが、本年10月にZEHの区分を新設し、他の区分につきましては省エネルギー性の基準の強化を行いました。これにより、トップアップを図ってまいりたいと考えております。
 ポツの二つ目にあります金利引下げ措置を講じていない【フラット35】の無印につきましても、来年4月からは新築住宅につきましては省エネ基準を融資の要件とすることで2025年度の新築住宅での省エネ基準の義務化に先行してまいります。これにより、ボムアップを図っていきたいと考えております。
 【グリーンリフォームローン】をご覧いただきますと、前のページでもご説明いたしましたが、本年10月にこの商品をリリースいたしましたので、この商品を通じて既存住宅の省エネ改修の推進に貢献していきたいと考えております。
 【グリーンリフォームローン】の右横に記載しておりますマンション共用部分リフォーム融資につきましては、本年10月より金利引下げ対象を拡大し、例えば管理組合が行う省エネ設備等設置工事も金利引下げ措置の対象といたしました。この融資を通じて既存マンションの省エネ改修の推進を図ってまいりたいと考えております。
 一番右に記載しております賃貸住宅を縦にご覧いただきますと、上段の賃貸住宅の建設、つまり新築ですが、本年10月より省エネルギー性の基準の強化を図るとともに、金利引下げ措置を導入いたしました。
 下段の賃貸住宅のリフォームにつきましては、賃借人がいる中で家主が省エネリフォームを行うことはなかなかハードルが高い現実がございます。しかし、何も手を打たないというわけにはいきませんので、当機構といたしましては、省エネルギー性の基準を緩和することで省エネ改修のインセンティブとしていきたいと考えております。
 以上が当機構の足元の取組の全体像のご説明でした。
 4ページ以降に参ります。
 4ページは【フラット35】の概要、続きまして、5ページは【フラット35】Sの省エネルギー性の基準の強化、6ページは【グリーンリフォームローン】の概要、7ページは賃貸住宅の建設の融資であります子育て世帯向け省エネ賃貸住宅建設融資の概要、8ページは賃貸住宅のリフォーム融資の概要と資料をつけさせていただいておりますが、主な事項は既にご紹介させていただいておりますので説明は割愛させていただきます。
 最後に9ページと10ページのグリーンボンドについてご説明をさせていただきます。
 9ページに参ります。
 【フラット35】は、当機構が民間金融機関の住宅ローン債権を買い取っておりますが、そのうち省エネ性に優れた住宅の住宅ローン債権の買取代金を市場から調達するために平成30年度より財投機関債としてグリーンボンドを発行しております。令和3年度には国内で初めてとなる政府保証債のグリーンボンドを発行して、政府と共に脱炭素社会の実現に向けて貢献しているところです。
 10ページに参ります。
 このページではグリーンボンドの発行実績を記載しておりますが、財投機関債と政府保証債の累計で国内最大規模の7,700億円を発行しております。今後もグリーンボンドの発行を通じて投資家のESG投資のニーズに対応していけるよう努めてまいります。
 私からの説明は以上となります。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 二つのプレゼンテーションがございましたが、どちらも大変きめ細やかな対応をされていると思いました。
 それでは、ご質問やご意見を頂戴できればと思います。ご発言いただける方は順次指名をしていきますので、挙手ボタンをクリックしてください。ご質問される場合は、お答えいただきたい方を最初に述べていただきますようよろしくお願いいたします。
 三宅オブザーバー、お願いします。
 
三宅オブザーバー
 ありがとうございます。
 大変きめ細かい対応をされており、私も知らないこともあって、大変良いなと思いました。
 日本政策金融公庫さんの取組、金利の優遇の観点から見ても、中小企業さんへの後押し、大変良いなと思いましたが、それほど急激に進んでいるという感じにはなかなかなっていないかと思いまして、数字は伸びているのは分かるのですが、今やられている中で中小企業さんからの悩みといいますか、こういうすばらしい金融商品があって、それからサプライチェーン的にもやってほしいという要望がもう来ていて、やりたいけれどもできないみたいな声がもし入っているようでしたら、教えていただけたらと思っております。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
では、竹ケ原委員、お願いします。
 
竹ケ原臨時委員
 ありがとうございます。
 住宅金融支援機構の江口様に1点だけご質問させてください。住宅ストックに切り込まれるというので非常に意義の高いお仕事をされていると思うのですが、5,400万戸あるうちの9割のストックが省エネ基準未達であると、ここに手を入れられるということなのですが、恐らくストックの中には省エネ改修をやることで性能が担保されるストックと、恐らく、言葉が悪いのですけれど、建て替えたほうが早いというか、改修がなかなか奏功しないようなものもあると思うのですけれども、この辺の見極めといいますか、どんな感じでやっていらっしゃるのでしょうか。現状、5,400万戸あるストックのうち、どのぐらいが省エネ改修に耐え得るストックなのか、この辺、もし数字とかをお持ちであればご教示いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、太田委員、お願いします。
 
太田専門委員
 日本政策金融公庫さんの6ページの農業向けの貸付残高のところですけれども、脱炭素という観点からいくと、例えば温室の暖房について。バイオマスボイラーとか、そういう利用というのは一定あるのでしょうか。ペレットによる暖房とかのほうが環境にいい、脱炭素になると思うのですが、その辺りの現状を教えていただきたいです。あるいは、今後、どう考えているのかということを教えていただきたいと思います。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 そうしましたら、今の3名の委員のご質問に関して、ご回答をお願いいたします。
 
日本政策金融公庫(水谷事業企画部長)
 日本政策金融公庫、水谷です。ご質問ありがとうございます。
 まず、三宅オブザーバーの、金利優遇でどういうニーズがあるのかということと、課題はどうかというお話しだったかと思います。
 実績のところのニーズでお話をさせていただきますと、実は、環境エネルギー対策資金の中で非常に分かりやすく伸びたのは、太陽光発電の設置でございます。周りから見ていても工場の屋根の上にソーラー設備を設置するとか、ソーラーの開発事業者が分譲したりということもありましたので、そういったニーズは非常にたくさんありまして、これが非常に伸びていたということです。
 現状の課題ですが、そこはまさに今回の拡充部分のカーボンニュートラルの取組ということでして、先ほど事例で取り上げた省エネルギーの取組は非常に分かりやすくて中小企業も容易にやっていけますという話なのですが、温室効果ガスの排出量の測定は、中小企業にとってまだコストがかかるということなので、今回のこの制度でカーボンニュートラルの動きというのを中小企業の方々にも広めていきたいというふうに考えております。
 それからもう一点、太田委員より農業のお話をお伺いしました。今回、ご紹介させていただきました環境エネルギー対策資金は、いわゆる中小企業向けのものでございまして、農業のものは今回、ご説明をさせていただいておりません。いただいた課題は農業分野の担当ともきちっと話をして、ご指摘、ご示唆に沿う形で動いていけたらと思っております。ありがとうございます。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 江口様、いかがでしょうか。
 
住宅金融支援機構(江口業務企画部長)
 ご質問ありがとうございます。
 まず、ご質問いただきました住宅ストック5,400万戸のうち9割が省エネ基準に到達していないということで、その9割のうちどれぐらいの住宅が建て替えになじんで、どれぐらいの住宅がリフォームになじむのかというお問合せにつきましては、大変恐縮なのですけれども、我々、データを持ち合わせておりません。
 我々、融資する立場としては、三つパターンがあるのかなと思っていまして、まず、建て替えを含めて新築される方については【フラット35】というものをお使いいただけるのかなと。そして既存住宅を買った上でリフォームをしていくという方については、【フラット35】リノベというものがございますので、こういった商品をお使いいただけるのかなと。それで、住宅は持っていて、単に省エネリフォームをしたいという方には、【グリーンリフォームローン】というのをお使いいただけるのかなと。この三つの商品を中心に、ご利用される方のニーズに合わせて、我々、直接というよりも、事業者を通じてきちっとご紹介できるように広報活動に努めてまいりたいと思っております。
 一方で、我々はホームページ等で一般の利用される方に対して幅広く広報をしていきたいと思っております。
 以上です。
 
竹ケ原臨時委員
 どうもありがとうございました。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 それでは、武藤委員、お願いします。
 
武藤専門委員
 ありがとうございます。
 1点質問でございます。日本政策金融公庫様にということで、スライド9で資本性劣後ローンのお話をしてくださっております。こちらは新型コロナ対策という限定的なお話だと承っておりますけれども、平常時も環境、気候変動、防災、そういったような目的で同じような商品は提供していらっしゃるのか、そういった辺り、お伺いできればと思います。メザニンに関心がございます。ありがとうございます。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、浅利委員、お願いします。
 
浅利専門委員
 ありがとうございます。
 先ほどの太田委員のご質問とも関連するところがあると思うのですけれども、後半の住宅関係のお話、大変興味深くお聞きいたしました。CO2の吸収とかを考えますと、木材の国産材の効果的な利用と植林みたいなことも、特に自然環境との関係を含めて重要になってくるのかなと思うのですが、何かそういった方向での議論であったり、検討はありますでしょうか。ほかの機関かもしれませんけれども、もし情報があれば教えていただきたいと思いました。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、淡路委員、お願いします。
 
淡路臨時委員
 千葉銀行の淡路でございます。ありがとうございます。
 【グリーンリフォームローン】を創設されたというところをぜひ伺いたいのですが、まだ創設されて間もないと思うのですけれども、特に既存住宅を省エネ化するのに貢献できる商品というふうにお見受けしており、また、特に60歳以上の方はリコース型の返済とかもあるということなのですけれども、この反応は今どんな感じなのかというところをお聞かせいただけないでしょうか。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 ほかにはよろしいでしょうか。
 では、これで質問、意見を終わらせていただきます。
 今の武藤委員と浅利委員と淡路委員のご質問に関してお答えをお願いします。
 水谷様からお願いしてよろしいでしょうか。
 
日本政策金融公庫(水谷事業企画部長)
 はい。日本公庫、水谷です。ご意見、ありがとうございます。
 武藤委員のご質問、資本性ローン、メザニンローンの環境対策ということでございますが、実は今、残念ながら通常の資本性ローンの使途につきましては、事業再生及びスタートアップという、非常に資金調達が困難な者に限って資本性ローンが措置されているという形になっております。
 いただいたご意見も参考にしながら、この環境対策のほうにもできるかというのは検討させていただければと思っております。ありがとうございます。
 以上です。
 
大塚委員長
 どうもありがとうございます。
 では、江口様、お願いします。
 
住宅金融支援機構(江口業務企画部長)
 まず、一つ目のご質問の、国産材とかを利用していくことも大事だから、そういった取組に対する当機構の取組ということでございますが、我々、【フラット35】の中に、資料にはつけていないと思うのですけれども、地域連携型というカテゴリーを設けておりまして、例えば、地域の産材を活用して建てられる住宅に対して、その地域の公共団体が一定の補助をしているといった場合には、金利引下げをしています。これは、地元の産材だけではなくて、幅広く公共団体が補助を出してやっている取組について、公共団体の取組と連携して、我々機構も、具体的には当初5年0.25%金利を引き下げていくといった取組をしています。地域産材のほかに、例えば空き家の取得をする場合だとか、あとは、地方に、U・I・Jターンをきっかけとして住宅を取得する場合だとか、そういった取組を地域連携型として支援をしております。
 それと、二つ目の質問でございますが、【グリーンリフォームローン】は10月1日から開始をしました。11月18日時点では、今、お申込みの受理件数としては7件出ております。先生からちょっと言及がございました60歳以上の方向けの高齢者向け返済特例という、金利だけご返済いただいて、お亡くなりになったときに元金を清算するというシステムもあるのですけれども、これについては、7件のうち1件という実績でございます。まだ広報が足りないと思っていますので、積極的に広報活動に努めてまいりたいと考えております。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 活発なご意見をどうもありがとうございました。また、日本政策金融公庫の水谷様、住宅金融支援機構の江口様にはご対応をありがとうございました。
 では、次の議題に移ります。議題2、今後10年を見据えた取組の方向性についてでございます。これまでの小委員会での議論を踏まえ、事務局にて取組の方向性を改定いたしましたので説明いただきます。また、これに関連して先日まで開催されていた気候変動のCOP27の結果も紹介いただきます。
 それでは、環境省から資料4と5と続けて説明をお願いいたします。
 
地球環境局脱炭素社会移行推進室長
 環境省脱炭素社会移行推進室長の伊藤でございます。
 資料4に基づきまして、今後10年を見据えた取組の方向性(最終案)のご説明をさせていただきます。
 2か月前にお示しした資料からの修正、追加箇所を中心にご説明を申し上げたいと思います。
 おめくりいただきまして3ページ目に参ります。
 まず取りまとめに当たりまして、「とりまとめの位置づけ」というページを設けさせていただいております。ポイントは、官邸で開催しているGX実行会議のインプットだけではなくて、今後の環境政策の重点政策への反映ですとか、環境基本計画の見直しへのインプット、あるいは、国際会議での提案発信というところにも本取りまとめを積極的に活用していきたいと思ってございます。
 駆け足で恐縮ですが、おめくりいただきまして8ページ目に参ります。
 ご議論いただいている中でも髙村委員はじめ、「脱炭素×成長」のイメージというものがあったほうが良いというお話をいただきまして、8ページ目、9ページ目、10ページ目などにイメージをお載せしているところでございます。
 9ページ目でございますが、竹ケ原委員からもコメントがありましたけれども、「脱炭素×成長」のイメージだけではなくて、カーボンニュートラル、それからサーキュラーエコノミー、それから自然手法のネイチャーポジティブと、そういうものを統合的に推進していくということの重要性、ESG金融ですとかDX、国際展開を使って、最後は希望や活力ある未来につながる地域循環共生圏の創造というところを目指すというところを9ページ目に新しく追加させていただいております。
 おめくりいただきまして10ページ目に参りますが、このイメージの中で、特に官邸でのGX実行会議のほうでは、右側のエネルギー、あるいは産業構造の転換というところが主にご議論されているところでございますが、我々として、地域・くらし、資源循環、社会インフラ・サプライチェーン、あるいは下支えをする人材、国土などなど、そういったところを中心に、この取りまとめではまとめていただいているというところでございます。
 おめくりいただきまして12ページからは「地域・くらし分野」となります。前半は、ほぼ2か月前と変わっておりません。次に17ページに参ります。地域ぐるみの脱炭素化による需要創出事例といたしまして、エネマネの事例、高断熱高気密住宅、あるいはZEB・ZEH、電気自動車など、四つほど需要創出事例を追加させていただいております。
 さらにおめくりいただいて18ページでございますが、地域・くらし分野の脱炭素を進める上でその意義、メリットを考えまして、平時だけではなく災害時のエネルギー確保の観点というものも非常に意義、メリットがあるということで、その例として千葉県の睦沢町のいわゆる地産地消の中で災害時のエネルギー確保もしているという事例を追加させていただいております。
 さらに、次の19ページですけれども、こちらは前回、国際のほうでお示しした都市のGXでございます。武藤委員などからもコメントをいただきまして、このような形にさせていただいていますが、地域脱炭素を国際展開していくということで脱炭素ドミノを世界にということで、地域の取組の中の国際展開という形に位置づけさせていただいてございます。
 おめくりいただきまして21ページに参ります。
 ライフスタイル転換、あるいは、それに向けての消費者の意識、行動変容の取組について書かせていただいておりまして、22ページには、ちょうど1か月前になりますけれども、新たに立ち上げました国民運動の概要というものをお載せしております。
 続きまして、23ページ以降に参ります。ここからはあまり大きな修正点はありません。24ページの5ポツですが、太田委員などからいただいております木材利用の観点を、しっかりと位置づけさせていただいております。
 27ページ目に参ります。
 自動車の取組ですけれども、乗用車だけではなくて商用車の取組について、前回からさらに追加の記載をさせていただいております。
 それから、29ページからは資源循環に参ります。前回、循環経済工程表などもおつけいたしましたけれども、新しいところといたしましては、34ページになります。投資促進策の中で3ポツになりますけれども、DXも活用しつつ動脈産業、静脈産業、一体的な安定供給体制の構築ですとか、5ポツになりますけれども、リサイクル金属利用促進のために必要な循環指標やデータ活用等の基盤整備、この辺りを新しく付記させていただいています。
 また、廃棄物、バイオマスからSAFあるいはSAF原料の製造というところで、航空燃料の国産化を進めるというところも追加事項でございます。
 それから、39ページのサプライチェーンに参ります。
 大塚委員長などからもコメントをいただきまして、前回から、少し見た目も含めて改善させていただいております。
 42ページに参ります。
 サプライチェーン全体での脱炭素化、こちらも前回は国際のほうでお載せしていたものですけれども、サプライチェーンの取組の国際展開、展開戦略ということで、こちらにお載せしています。情報開示であるとか目標設定支援というところも書かせていただいております。
 それから、金融に参りたいと思います。45ページでいわゆる脱炭素投資促進のためのグリーンファイナンスの強化・充実でございます。三つ挙げています市場の形成促進、情報開示、あるいはESG地域金融というところは、同じく、前回と同じように位置づけさせていただいておりまして、本日も水谷様、あるいは江口様からプレゼンもいただきましたけれども、46ページには、これまでこの小委員会でいただいたプレゼンの概要もつけさせていただいて、今後の政策にも生かしていきたいと思ってございます。
 併せまして、47ページには、10月28日に設立しております株式会社脱炭素化支援機構の概要というものをつけさせていただいております。
 48ページからは、ヒアリングなどもさせていただきながら追加させていただいております。
 49ページ、人材育成に参ります。
 特に冨田オブザーバーなどからも貴重なコメントをいただいていますけれども、2ポツ、公正な移行の観点からも、社会人の学び直しなど即戦力人材の育成を一層充実させることが重要であるというような記載の中で、50ページは、いわゆる大学等のコアリションというものの中で環境省も連携協力しながら進めている方向性を載せております。51ページには、環境省が行う脱炭素関連の人材育成事業、こちらは、新規予算要求中のものを含んでいますけれども、1枚追加させていただいております。
 それから、52ページは、価値総研の山崎さんからもプレゼンをいただきましたけれども、「公正な移行」に向けた取組の方向性ということで右側にはEUやアメリカの事案を置きながら、左に取組の方向性というものを書かせていただいております。柱は、やはりリスキリングなど、人への投資を通じて労働力の移行をするというところと、地域経済、あるいは地場企業の移行を一体的に進めるというところで、左側の箱にはまだまだ検討を深める必要があると思っておりますが、考えられるものを少しだけ中間整理から踏み込んで列挙しております。
 それから、DX・GXに参りたいと思います。日本総研の田谷さんからもプレゼンをいただきましたけれども、DX・GXを車の両輪として実装していくべきということで、同じように右側に海外事例を載せながら、左側に取組の方向性を書かせていただいています。
 データセンターなどDXをグリーン化するというお話と、DXによってグリーン化するという2本柱で表現させていただいていまして、特にDXによるグリーン化については、環境省としても今後進めていきたい施策なども載せております。例えばですが、エネルギー需給融通・管理の精緻化であるとか、センサー等を活用したエネルギー効率の向上など、こういったところを目出しさせていただいています。
 それから、57ページに参ります。カーボンプライシング構想の検討の視点、これは、中環審のカーボンプライシング小委員会などで議論されてきたものということで、官邸の第3回GX実行会議にも環境大臣の提出資料として出したものを本取りまとめにも入れさせていただいております。
 それから59ページには国土・土地利用というところを設けてございます。国環研の松橋先生からもプレゼンをいただきましたけれども、いわゆる地域特性に応じて脱炭素に向けた様々な施策の組合せ、これが重要だと、この辺りは大下オブザーバーなどからもコメントをいただいておりましたが、その辺りを記載させていただいております。
 また、左側の箱の中では効率的な国土・土地利用というのと、再エネ資源を最大限活用する国土・土地利用という2本柱で考えられる方向性を記載しております。温対法の地方公共団体実行計画と都市計画、立地適正化計画などの施策の連携手法などについても今後検討していきたいということで書かせていただいております。
 それから61ページからは、自然資本、あるいは生物多様性と炭素中立型の経済社会と、中間整理からもあまり変わってはいないですけれど、61ページの左下、地域における30by30目標の実現であるとか、ネイチャーポジティブ経済の実現、そういった取組を推進していくということを位置づけさせていただいております。
 65ページに参ります。
 気候変動適応についても設けさせていただいております。地域課題を同時解決する視点であるとか、気候レジリエントなビジネス環境構築に貢献ということを書かせていただきつつ、左側の取組ですけれども、例えば熱中症など、高齢者の熱中症弱者への対応強化であるとか、あるいは、左下ですけれども、COP27で発表した官民連携による早期警戒システム導入のイニシアティブなども載せさせていただいているというところでございます。
 国際展開に参ります。こちらの2か月前からの追加部分といたしましては、69ページ、GX世界市場の創出ということで二国間クレジット制度(JCM)の手法をベースとして、温室効果ガスの削減クレジットを国際的に取引する世界市場の創出であるとか、それに向けて2ポツですけれども、JCMの発展型となる多国間での取組に向けた検討ということを位置づけさせていただいております。
 それから、案件形成の促進というところで、かなりJCMのパートナー国が増え、クレジットが増えていくということで、効果的・効率的な実施のための外部機関の活用を含めた体制強化の検討というのを書かせていただいております。
 また、武藤委員などからもインプットいただいていますけれども、ODAや政策金融等との連携、あるいは、様々な資金の活用支援というところも書かせていただいております。
 最後になりますが、説明の中では省略させていただきましたが、工程表をお載せしています。それに関連して、今日の参考資料の中で、昨日も行われました経済産業省資源エネルギー庁のクリエネ合同会合の資料もおつけしています。その資料にもいわゆる今後の道行きが出てまいりますが、我々、経産省、エネ庁、それから関連する省庁とも連携しながら工程表を作っており、この炭素中立小委でお見せしているものも、整合の取れるものとしておりまして、昨日のクリエネ合同会合の資料の道行き(案)という形でも出来上がっているということで、今後も濃密に連携していいものをつくっていきたいと思っている次第でございます。
 以上でございます。
 では、川又課長から資料5をお願いいたします。
 
地球環境局国際連携課長
 国際連携課長の川又です。
 11月6日~20日までエジプトで開催されたCOP27の結果概要についてご説明いたします。
 上の会議結果のポイントにありますように、昨年、グラスゴーでCOP26が開催されましたけれども、グラスゴーではパリ協定のルールブックが完成したということで、これからは実施であるということで、実施のCOPとして世界全体での気候変動対策の実施強化に焦点が当たりました。
 具体的には、緩和についての作業計画というものをつくるということが今回のアジェンダとしてもともとありました。
 二つ目のポツにあります「シャルム・エル・シェイク実施計画」というもの。カバー決定と言われる全体の決定の中でも触れられましたし、また、緩和作業計画の中でも2030年までの緩和の野心と実施を向上するということで、これが採択をされたということです。
 それから、当初は議題になかったのですが、直前の議題設定の交渉において、このロス&ダメージ支援のための資金というものが議題に上がりまして、それについて交渉した結果、基金の設置を含む資金面の措置を講じるということが決定されました。
 最後のポツですが、西村環境大臣が政府代表団長として交渉に参加し、閣僚級セッションでステイトメントを行って、我が国の気候変動対策の発信を行いました。その中で「日本政府のロス&ダメージ支援パッケージ」というものを発表し、また質の高い炭素市場構築に向けた「パリ協定6条実施パートナーシップ」の立ち上げというものを行いました。また、二国間会談、閣僚級協議への参加を通じましてCOP27の交渉の妥結に貢献したというところであります。
 それから、その下、1.カバー決定と言われる「シャルム・エル・シェイク実施計画」のポイントになります。昨年の「グラスゴー気候合意」の内容を踏襲するということをしつつ、緩和、適応、ロス&ダメージ、気候資金等の分野で締約国の気候変動対策の強化を求める文書になってございます。
 まず、緩和の部分については、昨年のグラスゴーを引き継いでパリ協定の1.5℃目標に基づく取組の実施の重要性というものと、それから2023年までの1.5℃目標に整合的なNDC各国の排出削減目標、政策の再検討・強化を求めるという内容になっています。
 それから、石炭火力発電、化石燃料補助金についても、昨年のグラスゴー気候合意の内容を引き継いで、全ての締約国に対して、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電の逓減、フェーズダウンですね。及び非効率な化石燃料補助金からのフェーズ・アウト、これを含む努力を加速することを求めるという内容になっています。
 それから、気候資金については、先進国、2020年に1,000億ドルという投資基金の目標がございましたけれども、これに即して資金の流れを気候変動の取組に整合させることを目的とした「シャルム・エル・シェイク対話」というものを開始することが決定されています。
 また、昨年のグラスゴーで先進国適応資金の倍増をするというふうにされましたけれども、そのことに関する報告書を作成するということも決定をされております。
 そのほか、生物多様性と気候変動への統合的対処ですとか、あるいは、都市の役割、それから公正な移行、Just Transitionのようなものがこのカバー決定の中で記されています。
 次のページをお願いします。
 西村環境大臣のCOP27への参加、先ほど申し上げましたように閣僚級セッションがありまして、これは緩和の作業計画に関する閣僚級セッションなのですけれども、その中で主要経済国に対し1.5℃目標と整合した排出削減を策定することを呼びかけました。
 また、我が国のステートメントの中でも同様のことを呼びかけてございます。
 それから、ステートメントの中では、我が国の取組としまして、今後10年間で150兆円超のGX投資の実現、10月末に開始した脱炭素につながる新しい国民運動、「アジア・ゼロエミッション共同体」構想の実現といったことを発表いただきました。
 それから、閣僚級協議を通じて交渉に積極的に貢献ということで、先ほどの緩和の閣僚級セッションでのステートメント等々、そういった交渉への関与もいたしました。
 それから、21か国の地域の閣僚級とバイ会談を行いまして、この中にはG7の国々、ほぼ含まれてございます。それに加えて、ウクライナ、UAE、カナダ、UNFCCC事務局とそれぞれ協力に関する覚書を締結しております。ウクライナについては、先方から幅広い環境分野での協力をしていきたいというオファーを受けまして、今後、具体的な内容は詰めるということになっておりますけれども、今回、覚書を締結しております。
 それから、3ポツ目、我が国の気候変動対策の取組発信ということですけれども、「ジャパン・パビリオン」というものを設けまして、その中で各種展示、それからセミナーを行いました。国内、世界の脱炭素化に向けて日本が持っている洋上風力、水素、CDRなどの様々な技術、ソリューションを海外にアピールしました。それから、セミナーでは、GX、トランジションファイナンス、削減貢献度、そういった考え方についても産官学等と重要性を共有しております。
 それから、先ほど申し上げました「ロス&ダメージ支援パッケージ」につきましては、事前防災から災害支援、災害リスク保険までの技術的支援を包括的に提供するもので、そういった日本が様々行っているものを取りまとめて公表しております。
 それから「パリ協定6条実施パートナーシップ」については、COPに行く前には50ぐらい参加いただけるのかなと考えておりましたが、現地でも非常に参加が増えまして、11月18日の時点で67の国・機関に参加をいただいております。
 それから、パプア・ニューギニアとJCMの協力覚書に署名いたしました。これで25か国目ということになります。
 それから、WMOの早期警戒システム普及行動計画への支援とか、エジプト主導の都市イニシアティブへの参加というものも表明をしております。
 次、お願いします。
 最後に、各議題の交渉結果概要ということで、まとめております。
 緩和につきましては、その作業計画を策定したということが成果になっておりますけれども、目的としましては、2030年までの野心と実施を向上するということになっております。中身としましては、2026年まで毎年、進捗を確認すること、それから、全ての温室効果ガス排出分野や分野横断的事項、これは市場メカニズムであるパリ協定6条の活用ということも含まれております。こういったことも対象にすること。
 それから、閣僚級ラウンドテーブル、今回、第1回ということで、西村環境大臣が出席しましたけれども、それを来年も開いて議論していくことを決定しております。
 それから、2026年ということなのですけれども、これは取りあえず、2026年で一遍レビューをするということで、そこで終わりということではなくて、取りあえず、今回は2026年までということで決定をしております。
 それからパリ協定6条については、グラスゴーで基本的なルールというのは全て固まったのですけれども、より詳細な細則と言われるようなもの、例えば排出削減量の報告の様式ですとか、登録簿のシステム、そういったことについて、今回、決定をしております。これによって具体的に市場メカニズムを使っていく基盤ができたということが言えると思います。
 それから、適応については、適応に関する2年間の作業計画である「世界全体の適応目標に関するグラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画」というものについて、今年の作業の進捗を確認して、最終年度となる来年2023年に向けた作業の進め方について決定をしております。来年、一つ大きな議題として適応、世界目標ということがあります。
 それから、ロス&ダメージの技術的なことについては、サンティアゴ・ネットワークという枠ができておりましたけれども、それの完全運用化ということに向けて、ネットワークの構造、諮問委員会・事務局の役割等の制度的取組についても決定をしております。
 それから、グローバル・ストックテイク、これも来年実施するということになっておりまして、それに向けて、その成果物の検討のために、今後の新たなコンサルテーションやワークショップの開催というものが決定されています。
 それから、最後に、気候資金の関係ですけれども、これがマスメディアでも大きく報じられたロス&ダメージの新たな基金ということなのですが、その中身としましては、特に、脆弱な国へのロス&ダメージ支援に対する新たな資金面での措置を講じること及びその一環としてロス&ダメージ基金を設置することを決定ということがございます。途上国側から強い意向で、新しい基金というものを設置することで合意をしたわけですけれども、我が国を含めて、先進国としましては、このロス&ダメージの問題というのは、これまで様々、防災とか人道支援とか、そういった既存の枠組みがあるものでございますので、UNFCCCの下で新たにつくられる基金で全てができるわけではない、あるいは、担うということは不適切だということで、より幅広い、いろいろな措置を併せて概観しつつ、そこで不足するものですとかについて、新しい基金で対応するというように役割分担をしていくというようなスタンスで交渉してきたところ、こういった書き方、新たな資金面での措置ということで、より幅広いUNFCCC内外の取組というのも含めて検討していくという形で決定をされたものです。
 ただ、新しいロス&ダメージ基金の中身については、まだ何も決まっていなく、これからということで、ここにありますように、この運用に関して、COP28に向けて勧告を作成するため、移行委員会というものが設置をされます。3月までに設置をして、来年3回委員会を開いて、その中で中身については検討していくということになっておりまして、COP28でそこについて交渉して決定していくというようなスケジュールになっております。
 それから、加えて、先ほど申し上げました1,000億ドルの資金動員目標、これについての進捗報告書というものを隔年で作成することですとか、あるいは、先ほどカバー決定のところでも触れましたけれども、適応資金の倍増に関する報告書を作成することが決定をされております。
 以上がCOP27の報告になります。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの環境省のご説明を受けて、ご質問、ご意見がございましたら、挙手ボタンをクリックしてください。順次指名させていただきます。なお、山本委員、大下オブザーバーは、途中で退席されますので、お早めにご発言いただければありがたいと思います。いかがでしょうか。
 では、大下オブザーバーからお願いします。
 
大下オブザーバー
 日本商工会議所、大下でございます。ご説明ありがとうございます。また、早めに順番を回していただきまして、大変恐縮です。
 私からは1点だけ申し上げます。39ページに、中小企業における脱炭素化促進に関するしっかりとした枠組みについて記載いただいたことに感謝申し上げたいと思います。この点については前回も申し上げたと思いますが、知る、測る、減らすのステップのうち、測ると減らすの部分については、商工会議所や地域金融機関の人材の知識やノウハウだけでは十分に対応することがなかなか難しいと理解しています。日頃から中小企業と接点を持っている経済団体や金融機関と、エネルギーに関する基本的な知識を持ち、企業の測る、減らすを技術面からしっかり支援できる人材や組織がしっかりと連携して対応していくことが不可欠と思っております。
 この点、49ページの人材育成のところで、即戦力人材の中に脱炭素アドバイザー人材バンク創設が新たに記載されております。電力、エネルギー関連企業のOB人材等が候補になり得るのかとも思いますけれども、ぜひこの人材バンクの取組に期待をするとともに、先ほどの39ページの中小企業の脱炭素化促進の部分にも、これらの人材が経済団体や金融機関の人材とタッグを組んで取り組むという役割を明確に位置づけて記載いただければと思っております。
 私からは以上です。ありがとうございます。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、馬奈木委員、お願いします。
 
馬奈木臨時委員
 国際連携担当の方に質問させてください。
 国境税調整または具体的な、よりグローバル課題に向けた政策の議論のほうはあまり話がなくて、どちらかというと、お金の話でありますとか、負担の話はあったのですけれども、そういう政策的な議論に対して何かございましたでしょうか。連携ではアジアへのエネルギー共同体など、そういう大きめの枠の話はよく出るのですけども、税または排出権取引を含めた、そういう制度面での議論について、もしございましたら、よろしくお願いします。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、森田委員、お願いします。
 
森田専門委員
 ありがとうございます。森林総合研究所の森田です。
 資料について、これまでのコメントをいろいろ反映いただき、ありがとうございました。今回の成果を次のGX実行会議や環境基本計画などの議論に反映されるということで、うまくつながるとよいなと思っております。
 そこで、三つほど、コメントをしたいと思います。
 一つ目がスライド9にあります、カーボンニュートラル、循環経済、ネイチャーポジティブの三つの移行の連携についてです。これらの三つの連携という視点は、今後も頑張っていかなくてはいけないところなのですが、特にネイチャーポジティブに関しては、まだまだカーボンニュートラルや循環経済とのつながりの中での政策的・科学的な議論が十分ではないと思っております。例えば、森林の切り口で見てみても、カーボンニュートラルと循環経済に関しては、今、サーキュラーバイオエコノミーを推進するような話もありますが、その議論とネイチャーポジティブにする、自然によい影響をもたらすような議論との間にまだまだギャップがあると思いますし、具体的にどう両立すればよいかということについて、森林だけを見てみても、まだ分かっていないことも多くて、ほかの分野でも、まだ分かっていないことも多いと思います。この三つの移行の中での最適解は何かということも今後検討していく必要があるというふうに思います。
 二つ目は、今後GX実行会議などや次のステップで調整されていくと思いますが、金融庁さんとか経済産業省さんなどのほかの省庁などのカーボンニュートラルに関する委員会での議論と今回の、例えば地域とか暮らしなどの議論がどういうふうにつながっていくかということを見やすく今後示していただけるといいなというふうに思いました。
 最後の三点目が、スライド49にもあった人材育成についてです。カーボンニュートラルに関する、特に大学生などへの教育というものも非常に重要になってきて、そういった大学生の教育に関して、どういうことを教えるかとか、どういった流れで教えるかということに、私自身、今関わらせていただいております。先ほどのコメントとも関連するのですけれども、カーボンニュートラル、循環経済、ネイチャーポジティブといった様々なセクター横断的に取り組む必要性がある中で、また、さらに気候変動枠組条約だけでなく、それを超えて議論されている金融や企業の動きなどもあり、なかなか全体像がつかみにくく、それを教えるのもすごく難しいなというふうに感じています。議論もとても速く、今後、行政、企業、金融機関、国際協力の様々な分野でカーボンニュートラルの人材が必要となる中で、大学にただ人材育成してくださいねといっても、なかなか難しい部分があると思います。流れの速い議論、国際と国内での議論など、学ぶべきことというのはどんどん変わっていくと思いますし、もちろん、いろいろな企業や自治体の具体的な取組というのは、すごく勉強しやすいのですけれども、やはり全体像をつかんでおかないと、国際的にも戦えるカーボンニュートラルを実現するような人材育成はできないと思います。国際、国内の動きを、効率的に学べるようにするには、アカデミアの力だけでは難しいので、政策決定者のほうからも、これを読めば全体像がつかめるといった分かりやすい資料の作成について検討していってほしいなというふうに思っております。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、鶴崎委員、お願いします。
 
鶴崎専門委員
 取りまとめいただき、ありがとうございました。また、丁寧に解説していただいて、大変よく分かりました。
 今回、2点申し上げたいと思いますけれども、一つ目は、9月の会合でも申し上げたのですが、住宅や建築物に関しましては、いわゆるロックインという問題がありまして、今建築中の建築物に関しては、2050年にも現役でほとんど残っているだろうと思われます。そういう意味で、現時点でのBATで造られた建築物や住宅が10年、20年とたっていく中で、その時点でさらにアップグレードできるような、そういう体制をつくっていくことが必要だと思います。ただ、そうはいっても、現実的には、なかなかスペースの問題だとか、様々な問題で適用が困難といったことがございます。その意味で、設計の段階で将来の改修しやすいような形で進めていく、そういうことができないかと思います。例えば集合住宅で、将来、電気式のヒートポンプ給湯器にリプレイスするようなことができるようにするであるとか、あるいは、壁面に太陽電池を入れるようなことを考えたときに、そういった対策が取りやすいような設計をしていただければ、プラスの何か金融的な支援が得られるといったようなことも考えられるかと思います。要するに、ストック対策が今後重要になっていくということは誰でも分かっているのですが、そのストック対策をしやすくしていくということも併せて考えていく必要があるかなと思っています。
 もう一点、細かいことなのですが、55ページに、GXとDX両輪でというふうにまとめていただいております。こちら、そのとおりかと思います。ただ、デジタルもこれからの段階ですので、当面、アナログ的な手法とデジタルをいかに組み合わせていくかということが大事になると思います。55ページの左下辺りになるのですけれども、ナッジ等を活用して行動科学をといったところがございます。2017年度から環境省さんのほうでナッジ事業を実施されていまして、私ども住環境計画研究所でも、日本オラクルさんと、それから各地のエネルギー小売事業者さんの協力をいただきながら、家庭向けにエネルギーレポートをお届けするという事業を行いました。その結果、2%程度の削減というエビデンスを得ることができたわけなのですけれども、こちらは紙のレポートを郵送でお届けするというプロジェクトでございました。やはり、こういった新しいサービスが一般の方に根づくには、当初はアナログで受け取って、そうしたものが届くということに慣れていく、そういうフェーズが必要かと思っています。そういう段階を経て、徐々にデジタルに移行していくというような形で、よりコスト効率的にも効果を上げていくことができるかなと思っておりまして、このDX、非常に重要なのですが、この進め方に関して、アナログとの適切な組合せというものを考えていただければと思っています。
 以上でございますが、ありがとうございます。
 
大塚委員長
 極めて実践的で有益な話をありがとうございました。
 では、西尾委員、お願いします。
 
西尾臨時委員
 ありがとうございます。西尾でございます。
 大変よくまとめられていると思っておりまして、総論としては異議はございませんが、1点申し上げたいことがあります。
 いろいろなところで脱炭素で付加価値の高い製品・サービスを提供していくことが重要であるとの記載がございますが、製品のほうは、まさに脱炭素や低炭素であるとか、そのためのイノベーションを進めていくとか、そのための制度といったようなことはあるのですが、サービスというのは、何を想定されているのでしょうか。このサービスというのは、いわゆる製品ではない、無形としてのサービスというよりも、脱炭素、カーボンニュートラルということを考えると、製造業のサービタイジングとかシェアリングエコノミーの問題というのを取り上げなければいけないと思うのですが、それに関する記述が明示的にない印象を受けます。まさに今後は消費者側のライフスタイルにおいても、ものの所有からサービスとして利用するというようなことを推進することによって、低炭素化というのは非常に進むわけでございます。このことは、いわゆるサーキュラーエコノミーに対する貢献ということだけではなくて、例えば消費者にとってみれば、あまり使わないものを所有しないでサービス化する、さらにいうと、シェアリングエコノミーみたいなシェアリングシステムを利用するということで、これは消費者がいわゆるBtoCのレンタルやリースというよりも、もう一歩進んだ、それこそDXによって可能になったPeertoPeerとか、あるいはCtoCのシェアリングということを考えてみると、消費者が持っているものを他人とシェアする、あるいは、他人の持っているものを共同で利用するというような形をしていくことによって、製品の利用密度そのものを上げることができますし、まさにトータルとして低炭素、脱炭素というところにも結びついていくというふうなことかと思います。これはDXがここまで進んできたからこそできることで、21ページあるいは22ページのところで、消費者のライフスタイルとの関係でいろいろ書かれていますけれども、例えば22ページのところにも、脱炭素につながる新しい豊かな暮らしの中にも、本来は、この中に脱炭素や低炭素型の商品を利用するということだけではなくて、レンタル、リース、シェアリングを活用するとか、あるいは、もうちょっと言えば、シェアライドみたいな方向のことを提案して、高齢化社会の中でシェアライドみたいなものを活用していくといったようなことも本当は記載されてもいいのかなというふうに思います。
 さらに、そういうことからすると、55ページのDXとGXの同時進行のところのDXによるグリーン化という中にも、サービタイジングとシェアリングエコノミーの推進といったようなことも本来はあってもいいのかなというふうに思っております。
 以上でございます。
 
大塚委員長
 どこかに入れていたつもりだったのですけれど、検討させていただきます。
 では、今の5名の先生方のご意見に対し、環境省から回答をお願いします。
 
地球環境局脱炭素社会移行推進室長
 伊藤でございます。
 まず、大下オブザーバーからいただきました、39ページの人材バンク、それぞれの連携、タッグを組むというところ、ぜひ考えさせていただきたいと思っております。
 それから、森田委員からありましたけれども、金融庁、それから経産省、関係省庁との連携強化はもとより、それを見やすくというお話がありました。連携強化につきましては、我々も、今後もカーボンニュートラル、あるいはDXも含めて、非常に大事だと思うので、連携を深めていきたいと思います。
 それから、鶴崎委員からありました、いわゆる既存の住宅、ストックのカーボンニュートラル化という中で、設計段階で改修しやすくというご意見、住宅建築物は、国交省、経産省と連携しながらなのですが、いただいた意見も考えながら、各省とも連携して考えていきたいと思います。
 それから、西尾委員からありましたサービスのご意見、委員長からもありましたけれども、確かに記載がまだ足りないかなというところで、サービスの中では、やはりサービタイジングあるいはシェアリングエコノミーについて、我々としても進めていきたいため、記載を考えたいというふうに思ってございます。
 あと、馬奈木委員からございました、国際のところで税やEPSの議論がどのようなものがあったかというのは、COPに対するご質問でよろしかったでしょうか。
 
馬奈木臨時委員
 そうです。
 
地球環境局脱炭素社会移行推進室長
 恐れ入ります。川又課長、よろしいですか。
 
地球環境局国際連携課長
 はい。COPについては、基本的に政策の話というのは、パリ協定の目標達成のためには、各国がNDCでそれぞれのやり方で提出するということが前提になっているので、そういった政策の話というのがCOPの中で行われるということはあまりないという認識です。むしろ国境税調整とか、そういった話は今年のG7、ドイツで気候クラブの関係の議論とか、あるいはOECDのほうでそういった議論というのは主になされているというふうに認識しております。
 以上です。
 
馬奈木臨時委員
 OECDは存じ上げています。ありがとうございました。
 
地球環境局脱炭素社会移行推進室長
 あと、森田委員からありました、いわゆる大学だけではなくて、いろいろなところにカーボンニュートラルの世界的な動きも含めてということですが、河村室長、何かありますか。
 
環境教育推進室長
 環境教育推進室の河村でございます。
 温暖化対策など様々なことで全体像が分かる資料・教材の作成につきましては、実は、私どものほうでも大いに悩んでいるところでございまして、ご指摘のあったとおり、世の中の動きがどんどん進んでいるということで、一つの教材・資料を作っても、またすぐ使えなくなってしまうというようなこともございます。大学でも、それから環境教育の分野でもそうなのですけれども、それぞれの発展段階、それから理解の段階、それから学習の段階に応じて、どの程度まで分かっておけば、さらに事態が変わっても対応できるかというような観点から、必要な教材というのは何かというものを模索しながら、例えば教材を作ったり、例えば全体のまとめの資料を作ったりと、そのような形で、今、対応を順次しているところではございます。環境教育に関しましては、既に小・中学生向けの教材を今年の3月に出しておりますし、それから、大学のほうでは、この資料でも50ページにありますとおり、今、大学等コアリションのほうで、大学と一言でいっても、教養課程、それから専門課程、さらには大学院とそれぞれの段階がございますので、それぞれに合った形でどういうような形のカリキュラムを提供すればいいかというようなところがまさに検討の真っ最中というところでございます。
 私からは以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。鶴崎委員が言われた、将来改修しやすいようなストック対策をあらかじめしておくというのは、私は結構大事なことだと思いました。取り入れられるかどうかは、検討させていただきます。
 では、太田委員、お願いします。
 
太田専門委員
 真庭市長の太田です。
 24、25ページの木材関係、ありがとうございます。三つ意見がございます。
 一つは、26、27ページ辺りで、自動車の関係が書かれていますけれども、前にも申し上げておりますが、今後10年間というのを考えますと、ディーゼルカーを変えていくことが必要かと思います。蓄電の電車のために、架線を張るというのは、農山村では無理です。蓄電の電車、ドイツでは水素を使って電車を走らせるというのがかなり進んでいるようですけれども、そうすることにより、いわゆるランニングコストがぐっと落ちて、JRの赤字も減るわけなのです。JRそのものもディーゼルをやめて脱炭素で広めの電車に変えていくという実験をしておりますから、その辺り、車だけに絞らずに鉄軌道の関係を入れる工夫をしていただけないものかというのが1点です。
 それから、2点目は、32、33、34、35、36ページの資源循環のところで、みやま市や私ども真庭市だとか、まだ数自治体ですけれども、生ごみと、下水の浄化槽汚泥、あるいはふん尿を混ぜてメタンガスを発生させ、それで発電して、最後は液肥を作るということで、実践しております。私どもは、現在、本格的な施設を建設中です。岸田総理も、下水道汚泥を肥料に云々という話を関係省庁に指示しているということもありますから、そういうバイオマスの関係で、単に燃料にするというのではなしに、今申し上げました、生ごみ、下水道汚泥、それでメタンガスを出して、肥料を液肥にしていくというのも、何か入れていただければありがたいと思います。
 それから、もう一点、62ページの地域のゼロカーボンのところで国立公園があります。環境省は、国立公園、それから、休暇村を持っていらっしゃいますので、休暇村を含めたゼロカーボンパークといいますか、そういうようなことで休暇村も入れられたらどうでしょうか。
 以上、3点です。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、冨田オブザーバー、お願いします。
 
冨田オブザーバー
 ありがとうございます。連合の冨田でございます。
 私からも3点、意見を申し上げさせていただきたいと思います。
 1点目が27ページのくらしの脱炭素、特に自動車分野における投資促進策についてでございます。少し細かくなりますが、ここは2040年までの目標として、電動車+脱炭素燃料の利用に適した車両で100%を目指すとされておりますが、この投資促進策のページでは、投資の対象が電動車のみと読めるような記載になってございます。自動車向けのe-fuelなどの合成燃料は、既存技術の活用やコストなどの実現可能性からして、脱炭素燃料として取り入れる選択肢の一つとされておりますので、合成燃料の投資の必要性などについても言及をいただけるとありがたいと思います。
 2点目が52ページの公正な移行に向けた取組の方向性についてでございます。まずは、公正な移行につきまして項目立てをし、具体的な記載をいただいたことに感謝を申し上げたいというふうに思います。先ほど、COP27の結果概要のご説明をいただきましたが、最終合意文書の中には、公正な移行に1章が割かれ、関係投資者が入る社会対話や移行を支えるためのソーシャルプロテクションの必要性などが盛り込まれてございます。日本においても、政労使などが関わる社会対話が国から地域までの各レベルで展開をされ、分野横断的に省庁横断で課題へのアプローチが促進されるように期待をしたいと思います。特に、人材育成におきましては、例えば厚生労働省所管の動力開発分野のリソースを活用した、より幅広い社会人材に対応した育成や政策の方向性と業界や労働者のニーズをマッチさせる取組、さらには、失業なき労働移動を実現するための重層的な社会的なセーフティネットの構築の必要性なども必要になるかというふうに思います。環境省には、こうした点につきまして、引き続き政府の中で発信をいただき、イニシアティブを取っていただきますようにご期待を申し上げたいと思います。
 最後に、3点目が、57ページ、成長志向型カーボンプライシングの検討の視点に関してでございます。ここにつきましては、以前も意見を申し上げておりますが、連合加盟の関係産業から、様々な意見が寄せられてございます。例えば、移行コストは特定産業だけではなく、利益を享受してきた国民全体で広く負担をすべき。さらには、幾層にも重なるエネルギー関連の賦課金はスクラップアンドビルドをし、脱炭素化に伴うコストアップ分を価格転嫁していかなければならない。さらには、排出権取引につきましては、漸次のルール改正は、価格の不安定さにより予見可能性を損なう可能性があるため、こうしたことにならないような丁寧な議論が必要だといったような意見が寄せられてございます。引き続き労使を含む業界関係者の意見に丁寧に耳を傾けていただき議論が進められるように、こちらもお願いを申し上げたいと思います。
 私からは以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 では、竹ケ原委員、お願いします。
 
竹ケ原臨時委員
 ご説明ありがとうございました。
 2点、コメントをさせていただければと思います。
 まず、資料の9ページ、統合的なアプローチをきれいに図示いただき、非常に分かりやすく、ありがとうございます。これに関連して、先ほど森田委員からも、テーマによって熟度が違うというご指摘があり、実際、自然再興の部分については、ネイチャーポジティブというコンセプトを作って、ビジネス界のオポチュニティーとうまく接続する努力をされているというふうに認識をしております。その際に議論が出ておったのですが、この三つ、相互につながっているように相乗効果もある一方で、当然、下手するとトレードオフもあるというご指摘をいろいろなところで聞きます。そうすると、ここのコメントですけれども、それぞれの取組間でトレードオフを回避しつつ、相乗効果を最大化するよう統合的に推進するみたいな記載があると、いわゆるインパクトファイナンスのポジティブを極大化し、ネガティブを極小化するというロジックにも合うかなと思いましたので、ご検討いただければと思います。
 2点目は、10ページでありますけれども、非常によくできた図だと思いました。非常にダイナミックな読み方もできるわけで、一応供給側と需要側に分けておられて、恐らく本研究会は、この需要側を中心に議論してきたというふうに理解しておりますけれども、今まさしく供給側のほうで、ここに書いてある産業構造の転換、トランジションが議論されています。このトランジションいかんで需要側に直に影響が出てくるというところ。特に、地域レベルで考えますと、地域の主要産業がトランジションすることで、これに連なる雇用が喪失する懸念など、「ジャスト・トランジションどうするか」という別の議論にもつながってきますので、相互に連関しています。それを回避する方策として、ご説明のあった地域脱炭素であったり、ESG地域金融であったりという取組があり、それが下の部分に明記されています。こちらの資料は、イメージ図ではあるのですけれど、本研究会のコンセプトをより積極的に説明できる資料になるのではないかなと感じました。
 以上です。ありがとうございました。
 
大塚委員長
 どうもご示唆いただきまして、ありがとうございます。
 では、宮下委員、お願いします。
 
宮下専門委員
 ありがとうございます。
 私も竹ケ原さんがお話しした10ページから、全体で3点ほどコメントをさせていただきたいと思っています。
 まず、10ページの図の上流部分、これも竹ケ原さんおっしゃったとおり、やはり電力等のエネルギー産業や大企業を中心に脱炭素の議論が進んできているところもありますが、2050年のカーボンニュートラルという目標に向けては、この委員会で議論してきました、下流に当たる部分のサプライチェーンや需要サイドにもしっかりと取組みが波及し、供給側、需要側の両輪が順回転していくことが非常に重要だと感じております。需要が拡大し、脱炭素への取組がビジネスとして成立することは、本委員会でも何度かお話ししてきましたが、いわゆる事業予見性の重要性、これが大事だと思っております。投資を進められる企業にとってもそうですが、ファイナンスを行う金融機関にとっても事業の予見可能性、これは非常に重要だということを改めてお話をさせていただきたいと思いました。
 それと、9ページのところで、これも皆さん、お話をされていましたが、脱炭素社会への移行と循環経済、あるいはネイチャーポジティブの部分、これを統合的にアプローチするという視点は非常に重要なことだと思います。金融界においても、このような捉え方の中で、どういう貢献ができるかということをしっかり考えていくべきであると思っております。
 2点目は、45ページ、46ページ辺りにファイナンスの話がございました。サステナブルに関連するファイナンスをさらに広げていくという意味では、市場の整備や開示、この促進が非常に重要だということを改めて感じております。2030年という中間目標を設定するようなタイミングにおいては、特にトランジションの支援が重要だと思っています。このページの左の下辺りにもそういう記載がございます。ただ、ご案内のとおり、トランジションの解釈あるいは考え方については、見解が引き続き内外においても分かれているところであると思います。コンセンサスの形成に引き続き官民が努力をしていくことが大事だと思いますので、この辺りは強調いただいてもいいのかなと思いながら、資料を拝見しておりました。
 また、46ページのトップボックスのところにブレンディッド・ファイナンスと表現いただいているかと思います。民間が資金供給をしていきやすい環境整備という観点からは、非常に有効な取組です。具体的な事例も出てきていると思いますので、この辺りについても適切に対応をしていきたいと思います。
 それから、最後に、海外への波及、国際の分野ですけれども、10ページの右下のところにしっかり記載をいただいていますが、私どもから見て、やはり日本の脱炭素化の取組は、地理的な条件や電源構成の近い東南アジアでの排出削減に向けて重要になるのではないかと思っております。そういう意味では、日本企業の脱炭素に資する製品、サービスが東南アジアにしっかり展開していくということについては、日本の産業競争力を高めることにもつながること、ここで記載いただいたとおりだと思います。そのようなアジアの脱炭素化、トランジションに関する国際的な理解の醸成など、引き続き官民双方からの発信の継続、取組が重要である点は、改めてコメントをさせていただきたいと思いました。
 以上であります。ありがとうございました。
 
大塚委員長
 どうもありがとうございます。
 では、三宅オブザーバー、お願いします。
 
三宅オブザーバー
 ありがとうございます。
 私からは、1点。前半のときにも日本政策金融公庫さんへのご質問で、課題は何ですかとお伺いをした際に、GHGの見える化、測定のところが課題だという話がありました。今説明いただいた中の37~39ページのサプライチェーン全体での脱炭素の話のところで、冒頭、商工会議所の大下さんからもコメントいただいておりましたが、実際、何をしましょうかといったときに、まず測る化しないといけないというところに企業の皆さんの意識が来ているというのは、大変大きな前進だと思っておりますし、すごくいいことだと思っていますが、実際、ではやってみようと思ったときにどうやっていくのかは、やはり、なかなか大変だと。大下さんからも、そこで必要な人材育成、それから人材に対する支援のお話しをされていたと思います。それも本当に大切なことだと思います。それに加えて、もう少しルールのところが今必要とされているかなと思います。策定ツールというのは、皆さんご承知のとおり、デジタルの世界でたくさん出てきていますので、そんなに難しくなく、実は導入ができたりします。ただ、細かいところで、みんなが勝手にやって、それが比較可能なのかどうかというようなところでは、まだまだ疑問が残るような状態で、みんながやらなければいけないから始めようとしているツールもあります。何となく見よう見真似で、それからサプライチェーンの下流にある大手の企業が自社のサプライチェーンに対して、これをやりたいというような意向も少しずつ出てきています。
 そのような中、省庁の皆さんに一つだけお願いしたいのは、環境省さんは環境省さんで、今こういう提案をされていますし、農水省さんも食品業界で見える化のところをリードされようとしていますし、それ以外の産業では、経産省さんがリードされて、カーボンフットプリントという言い方もしますけれども、そういった世界で何とか見える化をしていこうと、サプライチェーンをつなげていこうという努力をされているのですが、もう少し省庁間の連携があると、中にいる企業さんもやりやすいですし、みんなが一つのある程度まとまった考え方に基づいて、そのツールを使っていくというようなことがスピーディーにできていくのではないのかなというのが、中にいて非常に感じることです。皆さん、やりたいという気持ちは非常に大きくなってきているというのをひしひしと感じますし、カーボンフットプリントという形で見える化にしたら、それが最終的にはサプライチェーンだけではなくて、最終エンドの消費者までつながると。消費者に対して見える化をすることができて、消費者も巻き込んで一連の脱炭素社会の構築に向けてつなげていくことができるようになる第一歩が、やはりここの測定化なのではないのかなというふうに最近思っておりますので、ぜひその辺り、もちろん官民が協力し合って、ルールをつくっていけたらいいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思っております。
 以上です。
 
大塚委員長
 重要なご指摘ありがとうございます。
 カーボンフットプリントは、もともと環境省が昔から言ってきていることで、最近、蓄電池で経済産業省さんが、頑張っていらっしゃると思いますけれど、ぜひ省庁間の連携はしていただきたいと思います。
 では、淡路委員、お願いします。
 
淡路臨時委員
 ありがとうございます。千葉銀行の淡路でございます。
 私からは、まず61ページに自然資本・生物多様性と炭素中立型の経済社会というのがございます。やはり、自然資本と経済活動が両立するということをこれからきちんと広めていく必要があるのだなというふうに思います。同様の趣旨で、9ページにも自然再興の取組、ネイチャーポジティブということが書かれているかと思います。
 それで、39ページにありますように、多くの取引先、中小企業では、測るということから始めている方が多くありまして、サステナブルリンクローンというような格好で支援しておりますが、従来、経済活動と自然環境の保全というのは相反する活動であり、例えば、自然を保全するためには、開発などのビジネスチャンスがある程度制限される、失ってしまうというような捉えられ方もあったのではないかと思います。最近、サステナブルリンクローンなどに取り組んでみたいというふうにお申出いただくお取引先の価値観としましては、もちろん脱炭素に貢献するということも一義的にはあると思いますけれども、例えば企業イメージを向上したい、あるいは生産する製品の価値を上げたい、あるいは、特に産業廃棄物などを取り扱っているような事業者においては、人材を確保したいというような具体的な目標も併せて思っているところがあります。また、近くで大型再生可能エネルギーの発電施設などができますと、それだけで脱炭素に取り組んでみようかというような動きも地域で出ているように感じております。このように、事業者において、脱炭素に取り組みたいと思うきっかけは様々ありまして、39ページの上のほうの赤字で「取組が評価され企業価値が向上」というふうにありますが、何が評価されて、何が企業価値を向上されているのかというようなことを今後発信するときに、成果として具体的に出していってはどうだろうかと思います。例えば、お客様を増やすことができた、あるいは、人材確保につながったというようなことにもなろうかと思います。自然資本との共生について、いろいろな言葉で通訳するというような発想で成果の発信を今後捉えていったらどうかと思います。
 以上でございます。
 
大塚委員長
 どうもありがとうございます。
 では、髙村委員、お願いします。
 
髙村委員長代理
 ありがとうございます。
 今回、事務局からお出しいただいている文書は、もちろんGX実行会議への議論に貢献するということもあると同時に、今後の環境省の施策や次期の環境基本計画等にも有効に使っていくという趣旨の文書だということですので、そうした観点も含めて、四つほど申し上げたいと思います。
 一つは、前提のところで、スライドの6と9に関わるところなのですけれども、両方をうまく組み合わせると、必要なことが書いてあるように思います。スライドの6、例えばサステナブルな経済社会のところ、なぜこういう経済社会を目指すのかということについて、議論をしてきた私たちにおいては、ある意味で所与のものになっていると思うのですが、特に環境省が環境政策に反映するものとして、基本的なところだと思います。総理も気候変動問題には、これまでの様々な課題が集約しているとおっしゃっているわけですけれども、やはり気候変動や生態系、あるいは水、様々な環境について、我々の生活や健康に悪影響を及ぼすような形での環境の悪化が統合的に進んでいるという残念な事態をしっかり示す必要があるのではないかというふうに思っております。昨日、総合政策部会がありましたけれども、プラネタリーヘルスのお話も議論の中で出ました。つまり、我々の健康に影響を与えるほどに地球の健康が危うくなっていると。その二つが結びついているということでプラネタリーヘルスの概念を出していると思います。その環境の危機的な状況について、共通の前提として書く必要があるのではないかというふうに思っております。それを課題相互の連関性のところで、竹ケ原さんがトレードオフというお話をされましたが、そこにもつながってくるというふうに思っていまして、単に統合的にうまくこれをやるというだけではなく、全体として、我々の生存権の健全さを確保するという、その上によって立つ経済社会を実現するという考え方をしっかり盛り込んだほうがいいのではないかというふうに思っています。これはスライドの6と9で、それぞれ、相互に読み込めないではないと思いつつ、やはり明確にそれを示したほうがいいのではないかなと思うのが1点目です。
 それから、二つ目が、鶴崎さんのご発言とも関わるのですけれど、今後10年を見据えた取組の方向性の一番最初のところで、投資との関係でうまく示していただいているのですが、その中に、やはり10年を見越したときに、発信元で今必ずやらなければいけない優先的な課題の視点というものを書いていただいたほうがいい気がしています。一つは鶴崎さんがおっしゃったことだと思うのですが、今作るインフラを本当に炭素中立と整合的なものにするという視点、もう一つは、地域の脱炭素化というところに、今、地域の移行も含めて手をつけないといけないという点。この二つをグラフと併せて、逃してはいけない視点として入れていただくのがよいのではないかというのが2点目です。
 それから、3点目ですけれども、公正な移行について。これは日本がトランジションの重要性をずっと主張してきたわけですけれども、同時に、日本でも、そして国際的にも、先ほど冨田さんがCOP27で非常に重要な議題だったというふうにご紹介いただいた、まさにそのとおりで、公正な移行というのが非常に重要なキーワードになってきていると思います。その点で、各論で申し訳ないのですが、冨田さんがおっしゃった人材育成の点、厚労省、文科省がもともと行政の権限として持っているところでもありますので、環境省がハブの役割といいましょうか、うまくこの両省に対し、促しの役割を果たしていただけるとありがたいと思います。
 また、公正な移行ですけれども、先ほどのこの10年の重点というところにも関わるのですが、もう少し公正な移行ということについて掘り下げる議論をしっかりすべきだという問題提起を入れ込んだらどうかと思います。本来、もう少し具体的な議論を私自身もしたいところなのですけれども、これに関わって、様々な論点があると思います。これは必要な施策についても同じです。例えば、エネルギー転換と産業構造の転換にどう対応するかという課題が、今まさにあるわけですけれども、実際にそれに直面する地域に具体的にどのような支援と投資ができるのか。そうした掘り下げを、もう少ししてもいいのではないかと思います。具体的に一つの例ですけれども、石炭火力を持っているところが縮小していくとしたときに、その地域をどうしていくか。本当に現実に直面する課題としてあると思います。これは産業の移行だけでなく、地域全体としての移行をどうするのかということについて、もう少しその方策を議論するとよいのではないかと思っております。これは中部圏の自動車の分野で、いわゆるTier1、Tier2という下のサプライチェーンの段階も含めて、それに呼応する金融機関の支援の仕組みというのを東海財務局と中部経産局でつくろうとされていると理解しています。もちろん、当然ながら中部の経済界の皆さんと協力してですけれども。これは一つの例でしたが、どういう取組を国としてできるのかというのは、やはり掘り下げる必要があるのではないかと思っている問題意識の一つです。
 もう一つは、脱炭素先行地域でこうした取組をどうやって支援できるのか。必ずしも、すぐゼロにはならないかもしれないけれど、確実に移行というのが求められる地域をどういうふうに脱炭素先行地域の中で先例をつくっていくかというのも課題ではないかと思います。
 公正な移行のところでもう一つ、今回JETPの話がなかったのですが、日本とアメリカがリードして、インドネシアのJETPを作りました。インドネシアのオーナーシップを維持しながら、インドネシア全体のエネルギーの構造転換をどうやってしていくか。これについては、地域とパラレルにも考えられるような非常にいいパートナーシップを立ち上げていただいたと思っています。その意味で、幾つか公正な移行をもっと掘り下げてその方策を考えるというのをぜひ今後の課題として書いていただけるといいと思いました。
 最後に、これらをやるのに、やはり科学基盤とデータ基盤の重要性というのをどこかに書いておいていただきたいと思います。
 以上です。
 
大塚委員長
 重要なご指摘ありがとうございます。科学とデータについては、総理のところで話をしたときも、私も結構申し上げていた点で、ぜひ入れていきたいと思います。1点目のご意見は、6ページの最初の四角の辺りに入れられたら良いのではと思いました。
 あと、公正な移行の話は、公正な移行のページに追記いただくということになると思います。今後10年の優先課題についての話は、3番の(1)や(2)に関係する話であったと思いますが、なぜ優先するのかということをご指摘いただきました。どうもありがとうございました。
 では、武藤委員、お願いします。
 
武藤専門委員
 ありがとうございます。
 それでは、主に国際協力の観点から、手短にお話しさせていただきます。3点ございます。
 1点目は、適応の重要性でございます。スライド63や64でも、それからCOP27におけるロス&ダメージ支援パッケージのお話もしていただきまして、非常にポジティブだと思います。
 一方で、COP27でも感じましたけれども、途上国は量を求めております。適応資金の倍増、それから、それをフォローするという話も先ほどございました。
 一つ提案ですけれども、国際協力のところがいいのか、それともスライド65がいいのかはお任せしますが、G7コーンウォールサミットで出ました適応倍増、5年間で官民合わせて1.6兆円、これをどういうふうに日本として実現していくのかというパスウェイを、防災も含めてだと思うのですが、何か示唆できたらば、非常にメッセージ性があるかと思います。それが1点目です。
 2点目は、スライド67でございます。6条パートナーシップの話で、30か国に広げるなど、非常にこれまたポジティブな話をしてくださっています。しかし、COP27のセミナー等で聞いて、実感しましたけれども、途上国内の認証プロセスが政治的で大変だという実態があります。私どもJICAでは、技術協力を行っておりまして、政治プロセスそのものに関わることはできませんが、6条パートナーシップの枠組の中で事例を学び合ったり、それからピアプレッシャーをかけるとか、私たちJICAも果たせる役割があるかと思いますので、今後一緒に検討させていただきたいと思います。
 3点目は、公正な移行です。髙村先生からも言及がございましたけれども、日本で深く実践を積み上げて、エッセンスを途上国に向けて発信していること、非常に価値があるものだと思っております。しかし、COP27でエジプト政府が既にジャストファイナンスのガイドブックを出したりとか、非常にいろいろなルールづくりがデファクトでできてしまう流れにございます。それに追いつくような、または追い越すような形で日本からいい発信ができればと思っております。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。以上でよろしいでしょうか。
 では、環境省から、ご回答お願いします。
 
地球環境局脱炭素社会移行推進室長
 時間超過して申し訳ございません。手短にご回答いたしたいと思います。
 まず、太田委員からありましたディーゼルカーの電化ですけれども、これについては、鉄道全体の脱炭素化に向けて、国交省が鉄道分野におけるカーボンニュートラル加速化検討会というところで検討を進めているということで、我々も連携してやっていくというところでございます。環境省は、車両の省エネ化ですとか、そういったところを中心に、まずやっていますけれども、鉄道分野の脱炭素化に向けては、国交省との連携というところで進めていきたいと思っております。
 あと、記載ぶりについては、例の32ページの記載ですとか、62ページの記載も、また中身を検討はしていきたいと思います。
 あと、冨田オブザーバーからありました、27ページに合成燃料の記載をということも、こちら、経産省、国交省と連携してやっているというところですけれども、何か書けないか検討をしてみたいというふうに思います。
 それから、竹ケ原委員からありました、9ページ目のいわゆるネイチャーポジティブの三角形の中でトレードオフの最小化というところも、内容を考えたいというふうに思っております。
 あと、宮下委員からもございました、事業予見性が非常に大事だというお話、貴重なコメント、いろいろいただきました。それから、トランジションの解釈や考え方、こちら、コンセンサスの形成というのも、我々もしっかり考えていきたいと思います。
 それから、淡路委員からのご意見は、後ほど自然局からご回答をできたらと思います。
 それから、髙村委員からございました、前半の説明は大塚委員長から言っていただいた部分もありますので、ぜひ考えていきたいと思いますし、いわゆる公正な移行の掘り下げというところも考えていきたいと思います。科学とデータ基盤の重要性というのも位置づけを考えていきたいと思います。
 それから、三宅オブザーバーから、GHGの測定の協調連携の話がございました。こちら、平尾室長あるいは泉さん、何かございますでしょうか。
 
地球環境局脱炭素ビジネス推進室長
 ビジネス室、平尾から申し上げます。
 CFPといったところのハードルを下げる話と、あと、特にCFPの連携の話もございましたけれども、これ、実際やっておりまして、まだ形にできていないのですが、環境省のほうでは、今年度モデル事業をやっており、経産省でやっている検討会の成果をガイドラインとして連名でまとめようという話をしておりますし、農水省さんがやっている今年度の検討にも、私、参加しておりまして、そういった両者の成果を農水省のほうにも生かしていこうということで、やっておりますので、その辺、うまく引き続き連携していきたいというふうに思っております。
 算定のところ、淡路委員からも話しありましたけれども、また、最初に大下オブザーバーからも話しありましたけれども、そこのところをハードルを下げてやりやすくしていくというところ、算定・報告・公表制度用に用意したEEGSというプラットフォームございまして、こちらを活用可能にしていくといったことも来年度予定しておりますので、そういったところもしっかり対応していきたいというふうに思います。
 淡路委員から話があった企業価値の向上のところ、おっしゃるとおりだというふうに思っておりまして、一般にはお客様に対して、あるいは金融機関に対しての企業価値の取組の評価がされて、企業価値の向上というふうになりますけれども、話の中にも出てきた地域での評価であるとか、あるいは従業員の評価とか、いろいろな多面的な話がありますので、そういったところをうまく発信していきたいというふうに思います。
 私からは以上です。ありがとうございます。
 
地球環境局脱炭素社会移行推進室長
 淡路委員から自然資本あるいは保全の成果の発信というようなお話もありましたけれど、浜島室長、ご回答をお願いします。
 
生物多様性主流化室長
 浜島でございます。
 前段のほうで森田先生がご指摘されたこととも重なる部分があるのかなと思いますけれども、自然資本の取組に関する成果、それから、特にそれがカーボンニュートラル、ネイチャーポジティブともつながるところの部分でどういったビジネス事例というのがあり得るのかということに関しまして、ネイチャーポジティブ経済研究会というのを立ち上げて議論しております。竹ケ原委員に座長をやっていただいて、企業の方にも数多く入っていただいております。
 その中で、まさにビジネス面で必要な政策ですとか、あるいは市場規模、それから事例、こうしたものを分析しておりまして、来年、ネイチャーポジティブ経済移行戦略という形で発信したいというふうに考えてございます。
 以上でございます。
 
地球環境局脱炭素社会移行推進室長
 武藤委員から6条パートナーシップのご質問というかお話しがありましたが、西川推進官、何かお話しいただけますか。
 
地球環境局国際脱炭素移行推進・環境インフラ担当参事官室
 ありがとうございます。武藤委員、いつもお世話になっております。
 6条パートナーシップに関しまして、おっしゃるとおり、6条ルールを国内で適用しようとすると、様々な制度設計であるとか人材育成がキャパシティービルディング、必要になってまいりますので、そこについては、かなり手厚く寄り添って支援をしていく必要があると認識をしております。ぜひJICAさんの様々なツールもフルに連携させていただければと思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 
地球環境局脱炭素社会移行推進室長
 超過して申し訳ございません。以上でございます。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 今日は、最後まで委員の皆様に時間制限なくおうかがいしたものですから、少し時間を超過してしまい、誠に申し訳ございません。活発なご意見、どうもありがとうございました。
 環境省におかれましては、本日の委員のご意見を踏まえまして、今後10年を見据えた取組の方向性につきまして、必要な修正を加えていただければと思います。先ほどご回答した中で、検討すると回答いただいたものを中心に検討していきたいと思います。その上で、政府のグリーントランスフォーメーションの実行会議へのインプットも視野に入れつつ、今後、1週間程度で文書の取りまとめをして公表いただきたいと思います。取りまとめにつきましては、委員長である私に一任していただいてよろしいでしょうか。
異議なし
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、委員の皆様におかれましては、本年8月の小委員会の再開後、4回にわたって精力的にご議論いただきまして、誠にありがとうございました。環境省におかれましては、今般、取りまとめを行う今後10年を見据えた取組の方向性について、政府のGX実行会議へのインプットはもちろんのこと、次期環境基本計画をはじめとする環境省の重点施策にしっかりと生かしていただければと思います。
 最後に、議題(3)その他につきまして何かございましたら、事務局からお願いいたします。
 
地球環境局脱炭素社会移行推進室長
 事務局でございます。委員の皆様におかれましては、多々ご協力いただきまして、誠にありがとうございました。
 委員長にまとめていただきましたとおり、環境省として、今後の施策に着実に取りまとめを生かしていきたいと思います。ありがとうございました。
 
大塚委員長
 それでは、以上で本日の議事は全て終了いたしました。円滑な進行にご協力いただきまして、誠にありがとうございました。
 事務局にお返しいたします。
 
地球環境局総務課長
 ありがとうございました。
 本日の議事録につきましては、事務局で作成の上、委員の皆様に確認いただきました後に、ホームページに掲載をさせていただきます。
 以上で第9回小委員会を閉会いたします。ありがとうございました。

午後5時16分 閉会