中央環境審議会地球環境部会・総合政策部会炭素中立型経済社会変革小委員会(第7回) 議事録

日時

 令和4年9月29日(木)17時00分~18時49分

場所

 WEBによる開催

議事

(1)今後10年を見据えた取組の方向性について

(2)その他

議事録

午後5時00分 開会

地球環境局総務課長
 それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会・総合政策部会炭素中立型経済社会変革小委員会の第7回を開催いたします。
 地球環境局総務課長の小笠原です。
 本日の小委員会はWebでの開催とし、YouTubeの環境省動画チャンネルで同時配信をしております。
 本日は、委員総数17名中、現段階で11名の委員にご出席いただいており、定足数の要件を満たし、小委員会として成立しております。
 なお、本日は、髙村委員、広井委員、三日月委員、武藤委員がご欠席です。
 このほか、資料1の名簿のとおり、オブザーバーや関係省庁からもご参加をいただいております。
 それでは、以後の進行を大塚委員長にお願いします。
 
大塚委員長
 皆さん、こんにちは。どうぞよろしくお願いします。
 この小委員会におきましては、GX実行会議をはじめとする政府の新しい動きを踏まえて、先月再開したところでございます。
 本日は、前回の会議で委員の皆様からいただきましたコメントを踏まえて、環境省として進めていく施策の方向性を整理していただきました。委員の皆様には、グリーントランスフォーメーションをしっかりと前に進めていくために、積極的にご助言などをいただければ、大変ありがたく思っております。
 それでは、議題の1、今後10年を見据えた取組の方向性についてに入ります。
 まずは環境省から、取組の方向性について、資料2に沿って説明をお願いいたします。
 
地球環境局脱炭素社会移行推進室長
 環境省脱炭素社会移行推進室長の伊藤でございます。
 資料2に基づきましてご説明させていただきます。
 おめくりいただきまして、3ページに参りたいと思います。こちら、前回ご提示させていただいた論点をもう一度ご用意していますけれども、論点に沿って今日もご審議いただければと思っております。前回、脱炭素×成長のイメージみたいなのもお作りして議論を進めることを予定すると申しました。現在、鋭意作成中でして、本日はまだ間に合っていないですが、いずれにしても、この論点にありますとおり、今日は環境省として進めていく施策の方向性の中で、今後10年で必要な投資対象であるとか、投資促進策であるとか、そういったところを中心に資料をご用意していますので、ご議論をお願いしたいと思っております。あわせまして、論点にもありますけれども、脱炭素に必要な人材育成ですとか、DX、土地利用、あるいは金融・ビジネスや国際展開なども資料の中にご用意しています。DX、国土利用は次回以降という形ですが、人材育成などもご用意していますので、忌憚のないご議論をお願いできればと思っております。
 おめくりいただきまして、5ページ目、まずは地域・くらしの脱炭素化というところでございます。大きく左下に記載がありますけれど、5年間の集中期間に政策の総動員ということで、2本柱という形で、まずは先行地域を少なくとも100か所という形、それから、全国津々浦々で重点対策をしていく、このような取組をまさに需要創出につなげるべく、全国的な展開を図っていきたいということであります。
 上の箱の2ポツにありますけれども、全国的な取組にしていくために、どのような取組、仕組みが必要かというところを検討してまいりたいと思ってございます。
 おめくりいただいて、6ページ目には、現行の施策と課題を整理していますが、7ページ目に参りますと、やはり肝は、地域ぐるみで需要創出型の、いわゆる地域脱炭素を進めるというところでございます。必要な投資分野としては、再エネ・蓄電池、あるいはZEB/ZEH、断熱改修などを書かせていただいていますが、そこを地域ぐるみで展開するというところを集中的にやっていくということを考えてございます。
 おめくりいただきまして、8ページ目に参りたいと思います。投資促進策でございます。四つあるうちの二つ目ですが、温対計画に基づく実行計画のような計画もの、それから、交付金やソフト支援と、そういったところのひもづけによって、いわゆる支援効果を最大化するということを考えてございます。
 それから、前回、大下オブザーバーなどからもコメントをいただきましたけれども、いわゆる地域間の競争の活性化、あるいは取組の進捗状況を見える化して、ほかの地域に展開という形で政策を進めてまいりたいというふうに考えてございます。
 9ページには、粗いですけれども、工程表をご用意しており、このような形で進めていきたいというのが現状の案でございます。
 おめくりいただきまして、10ページ目に参ります。住宅・建築物は、新築、既存の住宅、あるいは公共施設の建物などに区分して表現したいと思っております。まず、新築の住宅建築物については、ZEB/ZEH化の基準に引き上げていくという取組、それから、11ページ目に書いてございますが、既存の住宅・建物につきましては、省エネ基準適合率が13%にとどまっているということで、断熱リフォームであるとか、省エネ/ZEB化改修の支援、こういうところに力を入れてまいりたいと思ってございます。
 前回、太田市長からもコメントをいただきましたけれども、木材利用の観点では、いわゆるCLT利用ですとか、木材利用促進協定事業への優遇措置とか、こういったところも考えてございます。
 それから、その下でございますが、今日は、まだ具体のイメージまではお示しできていないのですけれども、消費者の意識、あるいは行動変容を促す施策というところで、そういったものを効果的に講じて、需要の創出というものを促進してまいりたいというふうに考えてございます。
 おめくりいただいて、12ページ目。ご説明はお時間の関係で割愛しますが、同じように工程表をご用意しています。
 13ページ目からは自動車について書かせていただいています。自動車につきましては、グリーン成長戦略の中で、乗用車あるいは商用車目標などが定められておりますので、基本的には経済産業省あるいは国土交通省とも連携をしながら、そういった目標に向けての支援を促進していくということを考えたいと思ってございます。
 箱の3ポツですけれども、特に環境省としては、再エネ、それから、EV、プラグインハイブリッドのセット導入、あるいはグリーン水素と水素燃料電池自動車のセット導入というところにも力を入れていきたいというふうに思っております。
 おめくりいただきまして、14ページでございますけれども、温対法に基づく政府の実行計画ですとか、地方公共団体実行計画、そういったものの中で、公用車の導入目標というものもありますし、あるいは燃費基準というものもありますので、そういったものを踏まえながら、繰り返しになりますけれども、再エネと組み合わせた電動車の導入支援、あるいは新たに必要な開発支援というものを描きたいと思っています。
 それから、二つ目ですけれども、CO2削減の効果の見える化をいたしまして、電動車の利用者にポイントを還元するようなスキームの検討も進めてまいりたいと思ってございます。
 15ページには、工程表をご用意しております。
 17ページからは、循環経済のお話をさせていただきます。循環経済では大きく二つございます。一つは廃棄物の処理施設自体を、いわゆる脱炭素化していくというもの。それから、右下には、ポテンシャルの表現もございますけれども、資源循環、サーキュラーエコノミーを通じて、いわゆる地域や社会全体で影響のあるものの脱炭素化を図っていく、これは中間整理でも整理させていただいているところですけれども、そこに力を入れていくということを考えてございます。
 おめくりいただいて、18ページ目には中間整理以降の動きでございますけれども、本年9月、循環経済工程表というものをまとめさせていただいております。このような工程表にも沿いながら、今申し上げたような取組を進めたいと考えてございます。
 20ページに、工程表をつけています。
 21ページ目に参りますけれども、明示させていただきたいのは、箱の中、まず2ポツですけれども、廃棄物処理施設自体を脱炭素化していくという観点では、2030年までにプラスチックの資源回収量を倍増するですとか、バイオプラスチックの導入200万トンを目指すというところを書かせていただいております。
 また、二つ目の観点、いわゆる資源循環を通じて脱炭素化を図るという文脈では、例えば、いわゆる金属バリューチェーンで、資源循環を強化するですとか、カーボンニュートラル移行を促進するということを書かせていただいております。
 あるいは、廃棄物から燃料を作るという観点でいきますと、箱の一番下には、航空燃料としてSAFの製造・供給に向けた取組の推進というのも書かせていただいております。
 おめくりいただいて、投資促進策の中では三つご用意していますが、特に下の二つ、真ん中でございますけれども、プラスチックあるいはSAF、金属資源回収・リサイクル機能を備える、そういった先行的な取組を行う施設、こういうものに対して、必要と見込まれる技術実証であるとか、施設整備支援、あるいは制度枠組みの見直しというところに取り組んでまいりたいと考えております。
 それから、いわゆるバリューチェーン自体を活用していくということで、電子マニフェストなど、トレーサビリティーの向上というところも積極的に進めてまいりたいと考えてございます。
 同じく23ページ目には工程表をおつけしています。
 駆け足で恐縮ですが、サプライチェーンに参りたいと思います。こちらから若干産業っぽいお話になりますが、Scope3も含めて、サプライチェーン全体で、脱炭素化を図っていくというところ。それから、本日は中小企業の脱炭素化、コールドチェーンの脱炭素化、そういったところも取組として明示させていただければと思っております。
 おめくりいただいて、26ページ目、まずは大企業、それから、そこのScope3までのサプライチェーン全体の排出量を見える化、そして削減するという意味では、いわゆる算定の支援、あるいは削減計画、計画づくりの支援としてガイドラインなど、そういった手引ものをどんどん推進していくということをやっております。
 それから、27ページ目は、いわゆるサプライチェーンの中で中小企業の取組というものを書かせていただいております。知る、測る、減らすという形で分類させていただいておりまして、ポイントは地域ぐるみでの支援体制の構築ですとか、同じく、支援ツール、あるいは見える化、そういったところに力を注ぎたいと考えてございます。
 28ページ目でございます。コールドチェーンの脱炭素化は、ハード支援というところが中心になるかと思っていますが、必要な投資分野に書かせていただいているような省CO2関連空調設備、あるいは脱炭素型自然冷媒機器の導入と、そういったところも促進してまいりたいと思ってございます。
 29ページ目、投資促進策ですけれど、温対法では、いわゆる削減の取組を促す制度的措置、あるいはフロン法では削減規制というところ、そういった制度面と、あるいは支援面、いわゆるハード支援、ソフト支援を組み合わせて、一番下にありますが、サプライチェーン全体でも、いわゆる脱炭素×成長の実現に向けた投資の推進と、こういったところを制度・支援両面で必要な取組を検討・実施していきたいと考えてございます。
 同じく、工程表をおつけしている次第です。
 それから、31ページ目からは金融ですが、32ページ目に、金融のところは、やはりGXを進める上でお金を円滑に回すという中で、箱の中の一番下、あるいは下のほうに四つの箱を用意していますけれども、具体的な検討事項としまして、グリーンファイナンス市場の裾野拡大ですとか、質の担保、あるいは企業の、いわゆる情報開示、国内関係主体との取組の具体化、こういったものを進めてまいりたいと思ってございます。
 33ページからは、人材の資料をご用意しています。前回もいろいろお話、コメントをいただきましたけれども、地域にも企業にも、やはり人材不足が課題だということで、やはりこういった人材の育成確保が非常に重要であるという認識を持ってございます。
 34ページ目には、今、関係省庁を含めて、人材育成事業の俯瞰図を整理しております。環境省としましては、まずは、即戦力人材の育成の観点から幾つか事業を推進、あるいは予算要求をしているという状況ですし、中長期的には、例えば大学生など、人材育成を一層充実させるという中で、同じく予算要求をしているというところでございます。人材自体がボトルネックにならないように、人材育成をしていく必要性を感じてございます。
 次に、国際展開に参りたいと思います。37ページ、国際展開は、中間整理でも整理させていただきましたけれども、具体的なアプローチとしては、十全性(質)の高い炭素市場の形成、それから、上流から下流までの包括的協力・支援、その中で、やはりJCMが鍵となるということで、促進を図ってまいりたいということでございます。
 それから、四角の枠囲いでございますけれど、やはりアジア諸国の脱炭素化ということが鍵になると考えてございまして、アジア・ゼロエミッション共同体構想などにも沿って取組を進めてまいりたいというふうに考えてございます。
 38ページ、いわゆる上流から下流への包括的支援ということで、政策対話から計画づくり、案件形成、資金支援という流れを、上流から下流まで包括的に進めてまいりたいということを考えております。その中で、やはり日本企業を巻き込みながら取組を推進していきたいということでございます。
 39ページ、JCMの拡大でございます。いわゆるJCMのパートナー国を増やすというところ、それから、繰り返しになりますが、案件形成の加速、それから、大規模化というところでは、やはり関係者を巻き込んだ取組を、しっかりと進めるということを重点的にやっていきたいというふうに考えてございます。
 40ページには、一つのアプローチとして、都市のGXアプローチがあると考えてございます。箱の中の3ポツでございますが、日本の強みは協働モデルということで、自治体、地場企業、地域金融機関などが有機的に連携と、そういったコンソーシアムなどを作りながら、地域間、都市間のアプローチで脱炭素を図っていくということを考えてございます。
 下には、いわゆる連携の絵を描かせていただいておりまして、41ページ目には、工程表をおつけしています。
 それから、最後、46ページ目以降に参考資料をお載せしています。こちら、参考資料ではございますが、前回、森田委員からもご紹介いただきました、EUのレポート、それから、アメリカのインフレ抑制法の概要なども整理してお載せしており、ご参考ではございますが、本日のご議論の参考にもしていただければと思っております。
 私からは以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 それでは、ただいまご説明がございました取組の方向性につきまして、委員の皆様からご意見などを頂戴できればと思います。ご意見のある方は順次指名させていただきますので、挙手ボタンをクリックしてください。お一人、三、四分の範囲内でお願いしたいと思います。委員から一通りご意見などをいただいた後で、まとめて事務局から回答をお願いしたいと思います。
 それでは、宮下委員、お願いします。
 
宮下専門委員
 ありがとうございます。三菱UFJの宮下でございます。本日は中座しないといけないので、先に発言させていただきます。
 脱炭素社会の実現に向けて、今後の取組の方向性について、相当網羅的に整理をいただきまして、事務局の皆様には本当に感謝を申し上げます。ありがとうございます。
 ロードマップの策定であるとか、それから、政策の具体化に向けては、様々な検討、あるいは施策が同時進行しておりますけれども、日本として2050年のネットゼロという目標は共通であると思いますので、ぜひ各省庁間で密にご連携をいただきながら、目標達成に向けて官民一体となって進んでいけるように、我々金融機関としても貢献してまいりたいというふうに思っております。
 今回頂いたペーパーについては、大筋全く異論はございません。どちらかというと、今回は脱炭素だけを目的化するのではなく、いろいろな需要創出のインパクトをどのように作り上げていくかということで、投資の促進策であるとか、今後の工程表について整理をいただいているということで、脱炭素を日本の成長のエンジンにしていくというような観点が盛り込まれていると認識をいたしまして、その視点は非常に重要なものであると認識をしております。
 脱炭素化への取組が、経済あるいは企業の成長につながらなければ、持続可能なビジネスモデルだということは言えないかなと思いますので、企業が思い切った投資に踏み込むことができるように、このような議論の整理は必要になってくると思います。
 以前もお話ししたかもしれませんが、金融の立場としましても、やはり、お客様の事業あるいはプロジェクトの成功が、ファイナンス支援の前提にあるというふうに思っております。政策のパッケージにおいて、脱炭素化への取組が成長につながるという予見可能性をいかに高めていくのかというのが本当に重要だと思っております。
 その上で、いわゆるグリーンのラベルがついたファイナンス以外のファイナンス、例えば私どももトランジション・ファイナンスというのを標榜しておりますし、イノベーティブな資金導入もそうだと思いますが、金融機関が積極的な支援ができるような推進策を、我々も知恵を絞りたいと思いますし、ぜひ、ご検討いただければと思っております。
 国、地域、産業の特性に応じた形でファイナンス支援をしていくことで、事業者の脱炭素投資促進につなげる役割を果たしていきたいというふうに考えております。
 また、最後になりますけれど、省エネ、あるいは蓄エネ、循環型社会の投資にも注目しております。足元のエネルギー価格の上昇に鑑みると、省エネなどへの投資に経済合理性が認められるようなケースも広がってくるのではないかというふうに感じております。事業者が投資のコスト回収をしながら、着実な脱炭素化を目指すという観点では、省エネなどへの投資促進策も検討いただきたいと考えております。
 発言は以上です。ありがとうございました。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 欠席の武藤委員から書面のコメントをいただいてございますので、事務局から代読をお願いしたいと思います。
 
地球環境局脱炭素社会移行推進室長
 JICA、武藤委員からのご意見について、伊藤から代読させていただきます。
 武藤委員から2点いただいてございます。1点、金融ビジネス関連でございます。グリーンファイナンスを単なるアセットクラスではなく、世界のESG資金や個人の金融資産、企業の内部資金を脱炭素化につなげるための仕組みとして位置づけていることを高く評価します。この仕組みを具体的にどう構築し、機能させるか、各国内部だけではなく、先進国から途上国への資金の流れを促進する上でも大変大きな課題となっており、COP27ではファイナンスが大きな柱となっています。特に開発の分野では、ブレンデッド・ファイナンスとして議論が進められており、G20では、今年は議長国インドネシアが取り上げて、自国でブレンデッド・ファイナンス・プラットフォームという仕組みを立ち上げたところです。例えばグリーンファイナンス市場の取組の中にブレンデッド・ファイナンスの仕組みづくりの事例の蓄積と、国内外への発信といった趣旨の文章を入れると、今後のグリーンファイナンスと国際協力の間がつながってくると思います。
 それから、2点目、GXの国際展開にもコメントいただいております。脱炭素に向けた上流から下流までの包括的な協力支援は、日本との競争でトランジションを推進したい途上国のニーズを的確に捉えており、JCMはその中の重要要素です。JCMでは日本が獲得するクレジットの貨幣価値換算分がODAから引かれることから、現場でディスインセンティブになりかねません。他方、前述のブレンデッド・ファイナンスの過去の事例においては、ODA部分の譲許性や技術協力がより大きな民間資金動員につながるとされており、気候ファイナンスのデータでも、ODAだけではなく、ODAによる民間動員資金が加算され評価されています。ODAも参加して推進するJCMの効果の一つとして、民間動員資金量をしっかり位置づけ、日本のクレジット獲得に資するだけではなく、気候ファイナンスという国際公共財にも貢献することを示すとよいのではないでしょうか。
 以上のコメントをいただいております。ありがとうございます。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 それでは、浅利委員、お願いします。
 
浅利専門委員
 ありがとうございます。
 まずは、先ほどもご発言がありましたけれども、ご意見をまとめていただきまして、特に私の関連でいきますと、資源循環分野であったり、教育、人材育成、それから、国際展開というところで、非常に充実した検討をいただいていることがよく分かりまして、ありがたく思っております。
 数点、指摘をさせていただきたいと思っています。
 まず1点目、冒頭、これから、特に5年間、100か所の脱炭素先行地域、しっかり地域づくりをしていくというお話がありまして、その中でもしっかりと定量評価していくという話がありましたけれども、ぜひ、きめ細やかな定性的なモニタリングといいますか、ヒアリングとか、現地の調査を含めてやっていただけないかなというふうに思っています。これは、私自身もそのプレイヤーの一人という意味でも、やはり地域によって抱えている問題は違うものの、課題をみんなでエネルギーをかけて、解決しているというのが現状だと思いますので、そこはきめ細やかに課題克服のノウハウの共有を含めてやっていけるように、定性的なモニタリングをお願いしたいと思っております。また、定量評価に関しても、CO2のみならず、例えば健康であったり、SDGs的な、多様なメリット等もあると思いますので、そういうところも加味した評価をお願いしたいと思っております。
 また、9スライド目で、地域間競争を促すようなお話がございましたけれども、このコンペティションの競争に加えて、ぜひ共に創る共創というような意味合いも持たせていただけると、先ほどの地域のノウハウ共有とかも含めて考えられるのかなというふうに思いましたので、ご一考いただけたらと思います。
 10ページ、11ページ目、やはり住宅が重要ということで、ZEH等の高機能住宅ということもあったのですが、昨日、京都で、伝統建築とか、町屋の議論をしておりまして、町屋は脱炭素なのかどうなのかみたいな議論をしていたのですけれども、やはり伝統建築が持っている意味とか意義とか、長い視点で見たときの周辺の地域も含めた機能みたいなものもあるのかなというふうに思いますので、自然共生とか、持続可能な文化とか、そういうところも少し盛り込んでもいいのかなというようには思いました。
 あと、私の一番専門の資源循環分野に関しては、前回も、したたかな資源循環の戦略というような話もありましたが、特に今回、21スライド目の下のほうに、具体的な投資分野を盛り込んでいただきまして、プラとかバイオプラ、それから金属系、そしてSAFなどということで、かなりインパクトがあって、そういう意味では投資家も含めて、非常に強い意思が感じられる内容になっているのかなと思いますし、非常にいいことかと思います。一方で、ぱっと見ると、やはり静脈寄りの書き方ですけれど、確実に動脈と静脈をつながなければ成立しないものでもありますので、ここをつなぐ、例えば東大の梅田先生とかがおっしゃる循環プロバイダーじゃないですけれども、そういうところも一つの役割として求められるということも、どこかでしっかり表現できたらいいのかなと思いました。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 森田委員、お願いします。
 
森田専門委員
 ありがとうございます。森林総合研究所の森田です。
 どうもありがとうございました。幅広いポイントを丁寧にまとめていただき、工程表もあって、今後どういう流れで、様々な取組が進められていくのかというのがとても勉強になりました。
 2点、コメントさせていただければと思います。一つが、地域脱炭素関係で、もう一つが、自然を基盤とした解決策の関連です。
 一つ目の地域脱炭素について、様々な脱炭素先行地域が出てきているということなのですけれども、今回は個々の話にフォーカスしたというのもあると思いますが、今まで日本が結構力を入れていたSDGs未来都市などSDGsとの関係ですとか、あとは、その地域や都市などの様々なセクターの関係性がもう少し分かるといいなと思いました。といいますのも、IPCCの第6次評価報告書の中でも、都市のことが結構書かれておりまして、様々な緩和策が、交通、エネルギー、建築、土地利用、行動などに連鎖的な効果をもたらす、そういったシステムとして捉えられているということですとか、あとは、都市というのが、ほかのSDGsとともに排出削減を達成するためのシナジーを活用する重要な介入点になっているといったことも書かれています。SDGsとの関係、様々なセクターとの関係について、絵として何か描いていただけると分かりやすいなというふうに思いました。
 2点目ですが、自然を基盤とした解決策について、今週月曜日と火曜日に国連気候変動枠組条約の資金に関する常設委員会の、自然を基盤とした解決策のための資金に関するフォーラムというのが開催されまして、そこで私から、日本の国内の自然を基盤とした解決策の取組ですとか、途上国への国際協力への取組、資金動員も含めた取組について紹介しました。そこから、日本の取組から分かってきた制度的な課題や、民間資金の動員の課題なども話したのですけれども、そのフォーラムでの議論なども踏まえて、2点ほど、短くコメントできればと思います。
 一つが、気候変動枠組条約のほうで、生物多様性に関連するような、自然を基盤とした解決策というのが取り上げられるということも結構大きな変化だと感じております。今日出てきた地域脱炭素の話の関連では、都市のグリーンスペースの話とかもありますし、循環経済の観点でも少し生物多様性の側面も出ていましたし、金融や国際協力の文脈、国際協力の中でも都市間の連携とかの話もありましたが、そういった話の中で、生物多様性の関連の30by30の話を超えて、もっと広いこの自然を基盤とした解決策を、どういったところに、もっと自然の観点を入れられるかということを検討しておくことが必要だと思いました。参加したフォーラムの中では、TNFDの観点の話も多く出てきておりまして、やはりTNFDというのはTCFDよりもまだまだ様々な制度的な課題があるように感じましたが、こういった議論が、気候変動枠組条約のほうでも出てきているということで、いろいろな側面から、この自然の観点を入れていくことが必要だと思いました。
 二つ目が、G7議長国の関連です。私自身が日本の取組を説明する上で、いろんな方々にインプットしていただいたのですが、日本がどういう方向に向かっているのか、マクロ的にどのような戦略でいこうとしているのかというのを説明するのは、Nature-based solutions自体がまだ比較的新しい概念であるということもあるのかもしれないのですが、今の状況では説明するのがすごく難しいなと思いました。こういった概念、比較的新しいNature-based solutionsの概念もそうなのですが、G7で取り上げられるような国際的に重要な概念だったり、議題だったり、そういったものに対して、日本の取組が、個々の取組はとてもすばらしいものがあると思いますので、事例の積み上げの発表で終わってしまうのではなくて、これらの取組がどう国際的な議論にリンクするのかということを説明するということも重要ではないかと思います。議長国として、日本は日本の個々の取組を紹介するだけでなくて、世界をどうリードしていくかを考える役割も担うと思いますので、そういった点も必要ではないかと思いました。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。日本は、アイデアとか理念として集大成するというのは、必ずしも得意ではないので、おっしゃるとおりだとは思います。
 それでは、太田委員、お願いします。
 
太田専門委員
 私の見落としかもしれませんけれども、地方鉄道も書いていただいているのですが、13ページの電動車のところが車だけに絞られているように見えるのです。ぜひ、鉄道の電動車両化といいますか、それを入れていただけないかなというふうに思います。ランニングコストを考えると、はるかに電動車両のほうが安いのですが、今、田舎は、ほとんどディーゼルなのです。電動になるとランニングコストが安くなり、現在のJRの地方路線の赤字問題も、イニシャルコストをどこかでちゃんとすれば、かなり解消でき、赤字が少なくなります。そしてまた、ドイツは鉄道の電動車両を導入して、今、輸出しようとしているはずなのですけれども、日本においても電動列車の輸出産業化につながって、経済成長にもつながっていくということになります。特に駅のプラットホームの屋根なんかに太陽光を入れて電源にすれば、駅ごとに止まってというような、そういう新しいシステムができるはずです。それが1点。
 それから、2点目、廃棄物から肥料を作っていく、岸田総理がこの前の閣議で、汚泥から肥料をと言われていますけれども、私どもがやっている、生ごみとふん尿とを混ぜて肥料を作っていくという、資源循環という点でこれもかなり意味があると思います。この点も少し入れていただければありがたいなと思います。
 それから、3点目、国際協力ですけれども、38ページに、廃棄物発電が例として挙がっておりますが、バイオマス発電も、前から言っていますように、ヤシ殻なんかは持ってこずに、今、高騰して日本に持ってきても、もうヤシ殻発電は採算が合いません。むしろ、今度のG7議長国でもありまして、ヤシ殻とか、そういうもののバイオマス発電をODA援助で東南アジアでやっていくというのはかなり現実的で喜ばれると思います。それもにおわすようなことは何かできないかなと思います。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 それでは、西尾委員、お願いします。
 
西尾臨時委員
 ありがとうございます。2点申し上げたいと思います。
 まず、非常に網羅的に計画が立てられており、よいことだと思います。ぜひとも進めていただきたいなと思っております。進めるに当たって、具体的にどうしていくかというのはこれからだというお話ですけれども、その点で少しご参考になればと思い、発言させていただきます。
 1点目は、地域の脱炭素化について、最終的には全国区で、全国津々浦々で実施できるようにするのだということで、まず先行地域を選出して、それをベストプラクティスとして展開のヒントにしていくというような発想、とてもよろしいかと思いますが、市町村の人口規模だとか、産業構造というのはかなり異なりますので、先行地域の選定に当たっては、あらかじめ、人口規模や産業構造等々の違いでセグメント化をし、各セグメントから母集団比率に応じて代表地域を選出するみたいな形の工夫をしていただいて、とにかくいろいろなところから出てきたアイデアは必ずしも全ての市町村に展開できるわけではないので、そういう意味でベストプラクティスが的確に、同じような特徴を持った地域であれば展開できるというような形で、ノウハウを共有できるような工夫をぜひとも考えていただきたいなと思います。また、地域脱炭素化を進めていくのを誰が中心となって展開するのかというと、恐らく首長さんが中心ということなのだろうと思いますけれども、地域の金融機関、あるいは商工会議所といったようなところを巻き込むというようなことも重要だと思います。それに加えて、ぜひとも大学等の高等教育機関にも役割を与えて活用すべきではないかというふうに思います。地方には必ず国立大学が1校ずつございますし、私立大学もあります。まさに次世代を担う若者たちがそこで学んでいくわけですから、そういう地方の国立大や私立大等の高等教育機関にある、脱炭素に向けての技術だとか知識だとかというノウハウだけではなくて、人材育成の場として巻き込む。そのために文科省さんとも連携を図って、ぜひとも進めていただきたいなと思います。それが1点目です。
 2点目は、この審議会でも毎回出てくる、消費者や生活者のライフスタイル変革として、CO2対応の見える化をどうしていくのかと、毎回必ずいろいろな委員から出てきているかと思います。それの一つとして、カーボンフットプリント等々をもう一回活用するんだというようなことが書かれておりましたが、カーボンフットプリントというか、CO2の排出量というのは、これだけ負荷を与えていますというネガティブ情報なのです。そういう意味で、これまでのエコラベルとは性質が違うものです。しかもCFPに関しては、約10年前に導入を試みて、大失敗とは言いませんけれども、あまり普及しなかったというような経験があるかと思いますので、ぜひともそのときの失敗の教訓を、各省庁間で生かしていただきたいと思います。特に消費者に対しては、具体的な危機感があっても、何をどう具体的に行動していいか分からない状態です。だから、消費者に何を伝え、どう行動変容をさせるか、あるいはそれをサプライチェーン、小売や流通でどう支えていくのかといったようなことも含めて、それによって何を表示させるのかという、その目的を明確にした上で進めていただきたいと思います。特に、フランスでは今年から新しいラベリング制度が始まったというふうにも伺っています。ですので、海外事例についても情報を集めていただき、参考にしつつも、日本型の有用なラベリング制度、あるいはそれを使ったコミュニケーション、普及政策を展開していただきたいと思います。
 以上でございます。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 それでは、竹ケ原委員、お願いします。
 
竹ケ原臨時委員
 ご指名ありがとうございます。まず、何より体系的にまとめていただいて、大変分かりやすかったです。ありがとうございます。
 2点だけコメントをさせていただきます。皆さんがおっしゃっている話なのですけれど、まず、脱炭素を成長エンジンにしようということで、先行地域で地域間競争を促すと、この話は非常に有意義だと思います。特に今回、必要な投資分野がちゃんと示された上で、しかも期間限定で競ってもらっていますので、当然、案件を出すほうとしては、一定の削減効果があり、かつ、フィージブルな計画を立てなきゃいけないということで、自治体、そして金融機関、産業界、この辺がパートナーになって企画を練って競っているという様子を、私の耳にもいろいろ入ってきていますので、すばらしいお話だと思います。加えて、先ほどもお話に出ていましたが、総合的なアプローチがすごく重視されていて、資源循環との掛け算というのが今回の資料で入ってきておりますから、やはりこういうものがあるとプロジェクトの幅も広がりますので、非常にいいと思います。恐らくここに、この後、ネイチャーポジティブ等の自然資本関係も加わってくるのだろうなということは期待できる内容かと思います。
 まさにこの点、非常にすばらしいと思うのですが、成長エンジンという観点だけに、どうしても、まず、各地域で需要を喚起して投資が行われることが一義的に重視されることになりますけれど、やはり今後10年とありますように、当然投資が行われた後、それの効果を持続させるという観点で、投資の効果をきちんと所得の循環として地域で回っていくとか、再投資が行われるとか、もともと地域循環共生圏で環境省が強調しておられた循環という観点、ここを改めて、今後10年を見据えてという中でも強調していいのかなと思いました。
 2点目は、サプライチェーンの話です。25ページ以降のところで言及されていましたけれど、非常に重要であります。その中で中小企業についての言及がありましたけれど、これはやはり、どうインセンティブをつけていくかが課題かなと思っています。いろんなやり方があると思いますが、一つはやはり、地域の金融機関を持ち得た、気づきの提供も含めたエンゲージメント、これは非常に重要だと思います。若干、見える化が分化になっていて、とにかくGHGの見える化をしますという提案は一杯あるのですけれど、やはり大事なのは見える化した後どういう提案をしていくかということだと思いますので、サプライチェーンの取組を深めていく上では、見える化してコンサルティング機能を、今、経済課のほうやっておられるESG金融みたいな取組、これはそのまま引用できる話になりますので、こういった機能についての言及があるといいかなと思いました。
 以上です。ありがとうございます。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 それでは、三宅オブザーバー、お願いします。
 
三宅オブザーバー
 ありがとうございます。ご説明ありがとうございました。
 私からは、質問に近いところになるのですけれども、今回、今後10年を見据えた取組の方向性についてということで、全部それに沿って項目ごとにやっていただいて、分かりやすいし明確に見えてきたと思います。
 質問としては、この後、方向性が決まった後、これを具体的に計画に落とし込むというフェーズになっていくのですよねという質問と、いろいろな取組が工程表として、例えば一番最初のところでは脱炭素先行地域の話ですとか、その後、ZEB/ZEHの家の話とか、EVの話とか、それぞれ項目ごとに書いていただいていて、工程表も出ているのですけれども、30年でずばんといってしまっている感じがして、もう少し手前のところで、25年のところでどこまでできている状態になっているのかというのが、もう少しあるといいかなというふうに感じました。ZEB/ZEHのところ、それからEVのところ、その後も、25年までにやらなければいけないことと、それから、30年までにどういう出来上がりになっているのかというのが、もう少し具体的に見えると分かりやすいかなと思いました。全体的に、やはり30年だけだと、この数年どうなるのですか、まず何から着手すればいいのかというのが少し分かりづらいかなというのが感想とお願いと、それから質問でした。
 同じことなのですけれども、5ページの一番上のポチで、脱炭素先行地域を全国に広げていく、展開されるためには、さらにどのような取組や仕組みが必要か検討することが必要と書いていただいて、本当にそう思います。25年までにここまでやって、100か所決めて、その後、それを30年までに完成させて、その後のドミノ倒しが始まっていってといった、より明確に見えるロードマップだと、外に対しても、これだけ考えてやっているということが伝わりますし、それから、自分たちは何をしたらいいのかというのが分かる感じがするのですけれども。逆に言ったら、このドミノ倒しのところの仕組みが必要というふうに認識されていて、なおかつそれはどこで、いつ、誰が、どのように検討されるという課題出しはされて、それの答えをどういうふうに思ってらっしゃるのかなというのが質問です。全体的に、項目はすごくすばらしいです。全部網羅されていると思うのですけれども、もう一段、25年という、それまでにどこまでやって、できている状態になっていて、30年にこうで、その後どうなるのだというのが見えると、もうちょっとすっきりするし、自分たちも行動を起こしやすいかなというふうに感じました。
 以上です。
 
大塚委員長
 どうも、具体的な実施に関して重要なご指摘をいただいたと思います。後からお答えいただくことになると思います。
 それでは、鶴崎委員、お願いします。
 
鶴崎専門委員
 ありがとうございます。今日資料に示された方向性に関しましては強く賛同しております。その上で、2点コメントをさせていただきます。
 一つ目はデータに関することです。投資を促すためには、各種対策のコスト、それから効果に関するデータにアクセスしやすくなっていて、それをもって合理的な意思決定を促していくというのが健全な状況かと思います。しかしながら、特にコストに関するデータに関しては不足を感じています。よい事例としては、FIT制度で、再エネ電源のコストは大変詳しく分かるようになりました。また、資源エネルギー庁が実施している省エネの補助金がありますけれども、こちらでは工場や事業場に省エネ設備を導入した場合の費用対効果が分析されて公開されています。一方で、ZEHやZEBとなると、なかなかしっかりしたデータが見つからないという状況です。新築のコストというのはなかなかブレークダウンするのは難しいという側面はあるかと思うのですけれども、政府でも補助事業をやっておりますので、そうした事業を通じてデータを収集して、分析、公表して、それからまた施策の立案とか、PDCAを回していくといったところに活用していただくことを期待しております。こうしたコストデータが蓄積されれば、今後、住宅建築物の省エネ基準の引上げについての議論が進められますけれども、例えばコスト最適な水準に徹底していくのか、あるいは、気候変動緩和のためにさらにアクセルを踏み込んでいくのか、そういった議論を建設的に進めるためのデータになるというふうに思っています。
 もう一点ですが、公共建築物で、ぜひカーボンニュートラルReadyの設計を進めていただきたいと思います。建築物のいわゆるロックイン問題がありますけれども、これを軽減する上で、新築時に、中期、長期の修繕計画も立てると思うのですが、例えば10年目に次世代太陽電池を導入することを想定して、それに備えた設計をしていくということで、後で導入する場合の施工コストなどを抑制することができるのではないかと思います。これはある意味では官によるマーケット開発でもありまして、民間の投資の予見性を高める効果も期待できると思っています。
 スライド12に、政府・公共部門の率先実行とありますけれども、一番右に新築平均でZEB-Ready相当というふうに書かれています。できるだけ多くのビルが2050年までにReadyが取れるような、そういう状態を目指していただきたいと思います。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 それでは、冨田オブザーバー、お願いします。
 
冨田オブザーバー
 ありがとうございます。私からも、本日取りまとめていただいた資料に対しましては、事務局のご苦労にご敬意を申したいと思います。
 今日の内容についてですけれども、まさに地域社会や暮らしの変革をどのように動かして促していくのか、具体的な施策と時間軸が示されておりまして、改めて多岐にわたる施策の実行が必要なんだなというのを認識した次第です。なお、ここに書かれている施策につきましては、様々な省庁間にまたがるものでもありまして、冒頭、宮下委員もおっしゃってらっしゃいましたが、GX実行会議で検討されている政策などとも併せて、検討段階から関係省庁間の一層の連携にもご期待を申し上げたいというふうに思います。
 その上で、環境分野における人材育成事業の全体像について、1点要望を申し上げたいと思います。33ページから34ページに示されておりますが、ここに示されている育成に係る事業というのは、地域や地域の中小企業が脱炭素を実現するに当たっての支援を行う人材育成が主となっておりますが、具体的に支援を受け計画を実行するのは、やはり地域や企業側になるかというふうに思います。とりわけサプライチェーン全体の脱炭素化、これを実現していくためには、地域を支える中小企業の移行支援が重要ですので、まずは事業計画を立てることが優先されることはそのとおりと思いますけれども、立てられた計画を具体的に実行するのは、やはり現場の労働者でもありますので、労働者の能力開発や転換支援などについても厚生労働省などと連携をし、必要となるプログラムの開発や事業化、さらにはアクセシビリティの向上などもご検討をいただきたいというふうに思います。
 加えて、現時点で示すことというのは大変難しいと思いますけれども、地域や企業の予見可能性を高めていくためにも、必要とされる支援人材の規模感でありますとか、具体的な人材育成に向けたロードマップの全体像などについても、今後お示しいただけるとありがたいと思います。
 私からは以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 それでは、山本委員、お願いします。
 
山本臨時委員
 環境省をはじめ、関係各所におかれましては、当町の脱炭素への取組にご協力をいただきまして、心より感謝を申し上げます。
 炭素中立型経済社会実現のためにも、事業推進に当たり、5点ほど提言いたします。
 まず、1点目は、系統連系の増強及び連携枠の拡大であります。今のままでは大規模再エネが送れませんので系統の増強は必須であります。送配電事業者とのスムーズな連携に支援をいただきたく思います。
 2点目でありますが、ノンファーム連携時の最大出力抑制量の設定及び補填であります。ノンファームは出力抑制でやりますので、せめて最大抑制値や、抑制されたときの補償がないと再エネ事業者の収入予測が見込めません。
 3点目は、エリア間や自治体間の電力融通策の促進であります。今は東北電力から他の電力管内へ電気を送ると、再エネ電源なのに燃料調整費を取られてしまいます。オフサイトPPAを進めるためにもこの制度はなくすべきであります。
 4点目は、脱炭素社会に貢献する企業や自治体に対するインセンティブの提供であります。やはり地方を応援するためには、ふるさと納税のような特典を与えないと普及が進まないと考えます。
 5点目は、地域住民に対する啓蒙活動の推進であります。再エネ、脱炭素社会実現といっても高い電気は要らないというのが消費者の本音でありましょうから、意識改革のために、小さいときからの教育が必要と考えます。
 以上であります。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 それでは、淡路委員、お願いします。
 
淡路臨時委員
 ありがとうございます。まず、人材育成のところで、具体的に予算要求なども含めて、脱炭素に係るアドバイスができるような人材を具体的に育成していきますということを入れていただきありがとうございます。それに関連して、竹ケ原委員ご指摘の、中小企業は何から始めたらいいか分からないというところがありまして、見える化の後という、具体的な第一歩のところを、今回でなくてもいいのかもしれませんが、もう少し具体的に、一番最初に取り組みやすいことというようなイメージで提示できると、私たちがお手伝いできるようなことがあれば、絞ったメニューでご提案していくことで、より分かりやすさということにつながっていくのではないかなというふうに感じているところでございます。
 もう一点なのですが、浅利委員や西尾委員もご指摘だったと思います。5ページの先行自治体のところなのですけれども、たくさんの自治体が応募されているということで、とてもすばらしい反応があるというふうに伺っていますが、採択されるところと採択されないところの大きな差というのはどういうところなのだろうかというのが気になっております。応募するというところまでもかなりハードルが高いことなので、皆さん努力して手を挙げておられると思うんですが、採択されなかったときは非常に残念で、もう一度挑戦したいというふうになるのではないかと思いますが、その際に、もう少し具体的に、例えばここをもう少しやると、より提案内容としてレベル感が上がってくるので、こういうふうにしたらどうですかのようなアドバイスが行われているのかいないのか。もし行われていないのであれば、そういったアドバイスも含めて、次につなげられるようにしていくと、多くの自治体が、多くの地域がチャレンジすると思いますし、だんだん質も上がってくるのかなと思います。なぜ自分が採択されなかったのだろうということを、もやもや考えなくてもいいのではないかなというふうに感じております。
 以上でございます。
 
大塚委員長
 どうも具体的なお話をありがとうございます。
 それでは、大下オブザーバー、お願いします。
 
大下オブザーバー
 ご指名ありがとうございます。また、大変大部な内容をしっかりと整理していただいてありがとうございます。内容について、全体の方向性としては異論ありませんが、2点申し上げたいと思います。
 1点目は7ページから記載されている需要創出のインパクトについてですけれども、地域脱炭素を進めていく上では、それぞれの地域が、我が町、我が地域でどうやって脱炭素を進め、なおかつ豊かな地域をつくっていくのか。これを、先ほど西尾委員からもありましたけれども、各地域の関係者、行政、市民、企業、経済団体、あるいは教育・研究機関といったところが、みんなで知恵を出し合って考えていくことが非常に重要であると思っています。そうした中で、10ページからの自動車と住宅・建物に関する記載を見ますと、今回は需要創出、消費者の行動変容にフォーカスしていることによると思うのですけれども、内容を見ると、1台1台の車、一個一個の建物をカーボンニュートラル化していくという取組の内容が大半になっています。地域で考えていくという場合に、例えばもう少し地域でEVのカーシェアをもう少し進めるとか、そもそも公共交通の在り方を考え直すだとか、住宅の集約化とコージェネや蓄電設備を組み合わせるような取組であるとか、地域の関係者が協力して、移動や居住の在り方から見直していく、こういう取組も、もう少し地域脱炭素を進めていく上では重要かと思いますので、どのように落とし込むべきなのかは分かりませんが、何かしらの形で入れ込んでいただく必要があるのではないかと思いました。
 2点目は、27ページからの中小企業における脱炭素化推進についてです。竹ケ原委員、淡路委員からありました、中小企業はどこから始めたらいいのかわからないという点は、足元で言えば、やはり省エネかと思っております。それを進める上で、今回資料の中で、地域ぐるみの支援体制構築ということで、地域金融機関、商工会議所等、経済団体の人材が支援するとありますが、少なくとも我々商工会議所の職員は、ここで記載されている、「知る、測る、減らす」のうち、この全体像を中小企業にお伝えをすること、それから、「知る」と「測る」の入り口までのところまで持ってきてあげること、これは十分できると思いますし、やっていくべきだと思いますが、実際に測定をしたり設備更新のアドバイスをするということは、残念ながらやや現実的ではないかと思っています。ぜひこの地域ぐるみでという中に、例えば省エネセンターなど、技術面で具体的に脱炭素の指導・支援を担える機関を加えていただきたいと思いました。省エネセンターでは製造業やエネルギー関連企業のOBの人材が合理化専門員として活躍していらっしゃいますけれども、日頃から中小企業と接点を持っている金融機関や商工会議所の人材とこういう専門家の先生方とがタッグを組んで支援をしていくということが非常に大事かと思っております。この技術面での支援は、25ページ、26ページにある、サプライチェーン全体での削減という意味では、大手企業がサプライチェーンでつながる中小企業を支援するということも可能かと思っておりますし、ぜひその面では期待したいと思っております。
 私からは以上です。ありがとうございます。
 
大塚委員長
 どうもありがとうございます。
 委員の方からのご質問、ご意見は以上でございますが、よろしいでしょうか。
 最後に大下様がおっしゃったこととの関係でいうと、技術とかの知識を持っている高齢者も、人材育成に関して、ぜひ活用していくことを、私としては考えていただけるといいと思っています。高齢者の方で環境マインドのある人は結構いらっしゃるので、若い人にもちろんやっていただくことも極めて重要ですが、高齢者の方々で社会のために役立とうと思っていらっしゃる方も結構おられる気がしますので、そういう観点も若干入れていただくとありがたいと思っています。
 それでは、多くの委員からご質問いただきましたけれども、事務局から、ご回答をお願いしたいと思います。
 
地球環境局総務課長
 ありがとうございます。地球局総務課の小笠原でございます。
 貴重なご意見をたくさんいただきました。いただいたご意見を踏まえて、さらにこの資料をブラッシュアップして、もう一回お示し、さらに取組を進めていきたいと思います。三宅オブザーバーからありました、今後具体的にどうしていくのかということでございますが、今日のご意見を踏まえてブラッシュアップしたものに基づいて、実施していくものというふうに思います。
 幾つか具体的に我々にいただいたものについて、若干コメントをさせていただきますと、西尾委員から、CFPについての過去の経験を生かしてということに対して、経産省さんともよく連携をしながら、過去の経験を生かし、消費者に対してどのような情報提供をしていくのかということも含めて取り組んでまいりたいと思います。
 それから、鶴崎委員から、ZEB/ZEHの補助事業のデータの公表というご意見をいただきました。どういったことができるのか、担当にも聞きながら検討していきたいと思います。
 それから、同じく鶴崎委員から、公共建築物の取組についてご指摘いただきましたように、政府実行計画等に基づいて、新築についてZEB-Readyを目指すという目標がありますので、そういうものに基づいてしっかりやっていきたいと思います。
 それから、冨田オブザーバーから、中小企業の移行、今日お示しした資料、人材育成の観点から書かれているわけですけれども、おっしゃったような、職業訓練をどうしていくか、厚生労働省さんのエリアの色が濃い部分だと思いますけれども、そういう部分まで我々もまだ検討が及んでいませんので、連合さんの知恵も借りながら検討を深めてまいりたいというふうに思います。
 それから、大下オブザーバーからは、地域・くらしの項目の中で、地域ぐるみの取組というコーナーと併せて、住宅、車、そのものを全国的に規制とかも含めてどうしていくかという、二つのコーナーが一緒のところになっているので、若干分かりにくかったということでした。住宅、車自体は、全体的にどう取り組んでいくかという観点の記載にはなっているわけではございますけれども、おっしゃるとおり、実際に進めていく上では地域ぐるみの取組というのが重要かというふうに思います。
 それから、同じく大下オブザーバーから、知る、測る、減らすを実際に進めていく上で、技術面で指導できる人が必要じゃないかというご指摘については、非常に貴重なご指摘だと思いますので、そういったことも含めて検討をさせていただきたいと思います。
 そのほか、地域脱炭素関係、それから自然関係、それから大学の活用といった辺りでご意見をいただきましたので、まずは、松下地域政策課長から、浅利委員からの地域のモニタリングであるとか、西尾委員からの脱炭素先行地域の選び方のこと、それから、淡路委員からの採択されたところと、採択されなかったところへのフォローといったご意見について、コメントをお願いできますでしょうか。
 
地域脱炭素推進審議官グループ地域政策課長
 地域政策課長の松下でございます。多くの委員の皆様方から、地域脱炭素についてご質問いただきました。
 まず、浅利委員のモニタリングの関係でございますけれども、これは特に、地方環境事務所が伴走支援ということで、地域で案件の形成をしていくというところを、一緒になって考えていったり課題を分析したりしております。また、淡路委員からの不採択になった自治体についても、同じく、地方環境事務所のほうで一緒になって考えて、次につなげるといったことを取り組んでおりますし、引き続きやっていきたいというふうに考えております。
 また、森田委員からは、SDGsとの関係というご指摘がございました。地域脱炭素にとどまらないものとしまして、地域循環共生圏という取組も私どもで行っておりまして、いわゆるローカルSDGsという名称で、資源循環ですとか、自然環境の保全ですとか、そういったことも含めて、また、都市と農村との交流とか、そういうこともやっております。その中から、脱炭素について、特に先進的な取組が脱炭素先行地域に入っていくという考え方でございます。
 それから、西尾委員から、セグメントで分けて、それぞれの代表を選ぶというやり方でどうかというご指摘がございました。我々もまさに同じ考え方でございまして、自治体は様々でございますので、都市部ですとか農村部ですとか、また、離島ですとか、また、都市の規模ですとか、そういった、それぞれジャンル分けを考えております。そうした中で、代表的なものを選出ができればというふうな考え方でございます。
 また、三宅オブザーバーから、全国に展開するための検討についてどう考えておりますかというご質問がございましたけれども、本日の資料の中では、9ページの工程表のほうで、全国に広げていく考え方について記載をしてございます。全国展開していくために、都道府県・市町村連携の取組の推進等、必要な施策を検討・実施という白い矢印で書いてございまして、先行する地域、トップランナーを真似してやっていただきたいわけですけれども、それでもなかなか取組が進まない自治体、これをどうするかということは非常に大きな課題というふうに考えておりまして、広域的な取組として都道府県に引っ張っていただくということもあれば、例えば連携中枢都市のような中心市が引っ張って、周りの自治体と一緒に取り組むというような取組が、一部脱炭素先行地域でも行われておりますので、そうした取組をぜひ引っ張りたいと、つまり支援策で何とか促進をしていきたいと考えてございます。具体的な支援策については今後検討というふうに考えてございます。
 以上でございます。
 
地球環境局総務課長
 続きまして、森田委員からのNature-based solutionsについてのご指摘がありましたので、自然局からコメントをお願いできますでしょうか。
 
自然環境局自然環境計画課生物多様性戦略推進室長
 自然局の生物多様性戦略推進室長の山本でございます。森田委員からのコメントに対して、私からもコメントさせていただきます。自然を基盤とした解決策についてということで、森田先生のフォーラムでのご発言内容を読ませていただいております。おっしゃるとおり、事例が蓄積をされておりますけれども、なかなかまだまだ戦略的にというところまではいっていないというのはおっしゃるとおりかと思います。今後、理念という形で横断的に戦略などに入れていって、実際の各種施策に標準的に取り込まれていくということが非常に重要なことですし、大きな課題と思っておりますので、今後、しっかり連携して取り組んでいきたいと思います。
 以上でございます。
 
地球環境局総務課長
 それから、大学の活用について、西尾委員からご意見をいただきましたので、河村室長、お願いできますでしょうか。
 
環境教育推進室長
 環境教育室の河村でございます。西尾委員からいただきました地域脱炭素に大学など高等教育機関等の活用を考えるべきという御指摘でございましたけれども、これに関連いたしまして、昨年の7月末でございますが、文部科学省と経済産業省と環境省が連携いたしまして、「2050年カーボンニュートラルに資する大学等コアリション」が設置されてございます。ここに200近くの大学、それから、高等教育機関が参加しておりまして、そこで、まさしく西尾委員からおっしゃっていただいたような地域の脱炭素への貢献ですとか、あるいは人材育成をどのように大学で進めていくかとか、そういうような形のワーキンググループが設置されておりまして、今のところ参加している大学の中で事例を出して議論をしたり、あるいは課題についてどのようにアプローチしていこうかというようなディスカッションが行われております。環境省といたしましても、この中の地域脱炭素ワーキンググループの事務局支援をしておりまして、環境省の取組として脱炭素先行地域の取組の紹介ですとか、あるいは様々な支援策の紹介をさせていただいてございます。脱炭素先行地域に今回選ばれた地域の中には、地域ワーキンググループに参加している大学からも、それが協力機関として入っている場合もございまして、今後ともこのような大学、知の拠点として活用するというような方針で3省動いておりますので、大学とも連携・協力しながら進めていきたいと、このように考えております。ありがとうございます。
 
地球環境局総務課長
 全てについてコメントできず恐縮でございますが、環境省側からは以上でございます。
 
大塚委員長
 どうもありがとうございました。
 活発なご意見、どうもありがとうございました。事務局におかれましては、本日いただいたご意見を整理していただいて、次回以降の会合でさらに検討を深めていくよう、お願い申し上げます。
 もう一件でございますけれども、ヒアリングを予定しております。グリーントランスフォーメーションの重要な要素である公正な移行に関しまして、最近の欧米の動向について、価値総合研究所の山崎執行役員からご紹介いただきます。
 山崎執行役員、どうぞよろしくお願いいたします。
 
価値総合研究所執行役員
 ありがとうございます。ただいま紹介いただきました価値総合研究所の山崎でございます。よろしくお願いいたします。私からは、欧米の地域経済の移行と公正な移行、この動向について説明させていただきます。
 2スライド目、お願いします。今日の内容なのですけれど、大きく、この事例は二つございます。一つは、1番のところで、これまでの欧米の地域経済の移行の事例でございます。この事例というのは、基本的には産業構造の高度化によって起こってきた地域のトランジションでございます。石炭とか素材産業、それからトランジションをしていくと。この欧米の事例は、我が国と違っていて、我が国の場合は企業主導で行われる事例というのが多いですけれども、欧米の場合は基本的に行政主導でトランジションが行われていくというところでございます。そうすると、3ポツ目にありますけれども、地域の産業構造というのは大きく変わっていくと。日本の場合だと企業主導でやっていくときには、製造業から製造業、要するに鉄鋼から機械産業、こういった変わり方があったりしますけれども、欧米の場合、製造業から一気に三次産業に変わっていくという事例が結構あります。
 二つ目が、欧米の脱炭素の公正な移行の事例でございます。これも二つありまして、EUの事例と米国の事例でございます。EUの事例は、CO2の多排出地域のトランジションなのですけれども、特徴が幾つもありまして、先ほど来、出ている話でもありますけれども、まず圏域で考えていく、それから定量的な目標、それから進捗管理。今まで出ている話でもありますけれども、この辺が重要になってきます。それともう一つ、脱炭素で気にかけなければいけないのが、格差の拡大というのがあります。この格差の拡大に関しては、労働者のコミュニティーへの社会的影響の軽減を目指すというところがかなりしっかり書かれているというところでございます。それと、もう一つは、米国の公正な移行というところでございます。
 これまでの欧米の地域経済移行の事例について説明します。
 4スライド目に、七つぐらい事例を挙げています。4列目辺りに、どの産業からどの産業に変わってきたかということを書かせていただいています。先ほど申し上げましたように、基本的には石炭とか素材、それから海運、こういった伝統的な昔からある産業から、再エネとか都市型サービス、それから医療と、そういったことに転換しています。まさにドラスティックに変化をしているということでございます。このようなドラスティックな変化というのが、何で起こってきているかというのがありますが、これは大きくポイントがあると思っていまして、これは地方創生と同じような話でもございますが、大きく四つぐらいポイントがあると思っています。
 一つは、5スライド目の丸数字の1番でございますが、地域におけるマーケティングの機能です。先ほど来、お話にも出ていますが、ここは地域の強みのある資源を生かして、市場のニーズに合ったサービスを開発していくと。先ほど地域の個性という話もありましたが、この個性に合わせて、それからニーズを捉えていくというところです。このマーケティング機能というのは、地域の総合商社的機能とかと呼んだりしますけれども、そういった機能もやっぱり必要であろうと。ドイツでは、ご案内のとおり、フラウンホーファーがありまして、こういった機能を持っているというところです。日本だとこういうイノベーション関係の話をすると、シーズが優先される場合もありますが、そうではなく、ニーズ優先で考えられているというのが特徴だと思います。
 それから、②でございますが、これも先ほど出ておりましたが、地域における技術開発の機能です。これは、研究開発機能を地域に整備していくと。大学や研究機関を核に産業クラスターを育成していくということがあります。ここの事例にもありますけど、イギリスだとカタパルトセンターがありまして、さっきのフラウンホーファーとも似ているのですけれども、技術開発の機能をちゃんと持って、その周辺の企業を育てていくといった機能をちゃんと持っているというのがポイントだと思います。
 それから、③で、労働移動に関する教育訓練です。ここも欧米と日本でかなり違っていると思っています。日本の場合は、やはり会社に入ってからOJTでいろんなことを学んでいくということがあります。ただ、一方で、労働移動を円滑にしていくときには、即戦力というものを養成していかなければいけないと。このドイツの事例、職業訓練というのはかなりできていて、図の左側にありますようなデュアルシステムとか、実際の企業と大学と両方が作っていくというような資格のシステムがあって、即戦力、こういったことは作りやすいというところだと思っています。
 それから、④で、脱炭素移行の資金供給でございますが、これはリスクマネーも含めて、地域金融機関との連携と、先ほど来、話が出ているとおりだと思っています。この辺で、このポイントがそろっていくと、脱炭素の円滑な移行になっていくのかなというふうに思っています。
 それから、ここからは事例ですけれども、一つだけ説明させていただきます。8スライド、ヨークシャーの事例でございますが、この事例の書式なのですけれども、まず一番上に産業の移行が書いてあります。この場合は、素材型産業や漁業、造船から洋上風力のクラスターを作っていくというところでございます。地域の概況があって、その下に移行の取組がございます。ここで、緑の国、市って書いてあるところと、ピンクの民間というのが書いてありますが、印をつけていますけれども、これは、誰が主導でやっているかということを示しています。
 この移行の取組でございますが、大きく三つございます。一つは、洋上風力の発電産業の集積を促進すると。それから、2番目といたしまして人材育成の話、3番目でクラスターの強化というところでございますが、①のところで、まずシーメンスを誘致して、直接的な雇用を1,000人程度創出しています。これは、国と市と民間で総力を挙げてやっていったというところです。始まりを一気に協力してやっていったと。その後に、経済特区の整備ということで、周辺産業を育てるときの特区のつくり方というのは、市と民間でやっていったと。
 それから、人材育成についても、大きく二つありまして、上のほうが国、市でやっていくような職業訓練ですね。ここでいくと洋上風力の職業訓練というのをしています。それから、下のほうは、民間主導でやる職業訓練でございますが、ここに書いてありますように、17億円ぐらい投資して、この地域でそういったものを作っていったと。教材とかももちろん作ってやっているというところです。
 そして、③が、産官学連携によるクラスターの強化とあります。洋上風力でクラスターを作るというのは、再エネを地域裨益型の再エネ事業にしていくと。要するに地域で経済的な効果が、地域の中でうまく回っていく仕組みを作るということでございます。こういったところで、地域の地方創生にもつながっていくようなことを、国と市と民間で協調して作っていっているというのがポイントだというふうに思っています。
 その後も事例がありますが、ちょっと割愛して、次に行きますが、欧米の脱炭素経済移行の事例でございまして、14スライドからがEUの事例でございます。15スライドですが、これは公正な移行基金でございまして、Just Transition Fundでございます。EUでは、2.3兆円ぐらいの規模がありまして、特徴は、大きく四つございます。
 一つは、圏域レベルでの計画策定がございます。これは、ダメージが大きい地域と産業、これを特定して計画を圏域で作ると。圏域と言っているのは、市町村を複数組み合わせた圏域でございます。これが今、例えば日本では実行計画がありまして、実行計画でいうところの共同策定ですね。市町村の共同策定でやっていくことと同じでございます。
 それから、2番目が、圏域計画の目標と計画期間の設定なのですけれども、これも国の、脱炭素の目標や火力発電所の閉鎖の期限から逆算して設定すると。国全体との整合性を確保するというところでございます。
 それから、最大の特徴は(3)でございまして、移行の影響評価とか目標、進捗管理に定量評価を導入していると。これは経済評価なので、移行の影響評価、雇用とかGDPとかそういった数字でございますが、そういった数字をしっかり定量的にやっているということが一つあります。もう一つは、補助金の公平性を担保するために、みんな同じ指標で考えますと。地域にはもちろん個性はあるのですけれども、そのときに同じ指標で評価をしていきますというのがあります。それからもう一つ、2ポツのところにございますが、目標の達成度が65%以下の場合には補助金を減額する可能性というのも出てきますと。成果主義の話が出てきます。これは、日本で考えたときにも、地方創生のときにRESASというものが作られたり、REPOSがあったり、それから、経済循環分析があったりするので、こういうことも日本ではいろいろ、ツールというのは整っている状況かなというふうに思っています。
 そして、(4)は、新産業の育成とか雇用の流動性の確保でございます。15スライドの右側の表を見ていただきますと、新産業の育成というのは、イノベーションを中心にしていくと。それから、グリーン化への投資。ここで循環経済とか同じようなことがもちろん書いてあるのですけれども、こういうことを新産業の育成としてやっていくと。それから、労働者への支援というのがありまして、職業訓練とか職業支援、こういうものがあるというところでございます。
 その中の圏域計画について、16スライドですが、対象地域の考え方というのは(1)にございます。これは、ダメージを受ける範囲ということで決まっていくのですけれども、大体人口にして15万人から80万人の行政区分、このくらいの規模でやっていくということでございます。
 それから、2番目に、指標の設定とあります。先ほど申し上げましたように、補助金の公平性を考えると、みんな同じ指標でやってくださいというのはもちろんあります。その後に、圏域計画が通った後は、個別の指標も設定していいですよと。そういうところを個別に合わせてやっていくというのも、その後には可能になっていくというところです。
 対象圏域というのは、右側の図のようになっていまして、ほとんど東欧の話でございます。
 17スライドはこの事例を一つ入れております。左下に表を入れておりますが、移行による主な影響というのがあります。これは定量的にかなり分析されているのですけれども、経済の影響というのは、この表にありますように、雇用の話、サプライチェーンの話、それからマクロ計量モデルなどによって経済をシミュレーションするという話がございます。それから、社会的影響でございますが、これは家族も含めて影響がいろいろ出てくるでしょうと。この辺の規模というのも推計していくと。それから、最後に、労働者の支援対象者というのを見ていくというところでございます。かなり定量的にやっていくというのが主眼になっているというのがあります。
 ここまでがEUの公正な移行でございまして、最後に、少しだけ米国の話をさせていただきます。アメリカの場合は公正な移行の政策というのは大きく三つの流れが今あると思っています。最初に、真ん中のところに、米国雇用計画というのが2021年3月に発表されましたが不成立になっています。ここが修正されて①のところでございますが、超党派インフラ投資・雇用法が出てきたと。これは、交通とか水道とか電力インフラなど、もろもろのインフラ計画であります。投資額2兆ドルと書いてありますが、誤記でありまして、1兆ドルでございます。こういったところの中でやっていくというのが一つございます。
 左に行きまして、米国救済計画というのがあって、これはコロナとかでいろいろ救済というのを社会保障的にやっていこうというのがありましたが、この中で、②石炭地域コミットメントとあります。この救済計画30億ドルの割当てから、そのうち3億ドルを石炭地域の再興に割り当てるということをしているということです。ですから、これも、弱者救済とか衰退地域をどうやって再興させるかというところの予算に使われるというところでございます。
 そして、最後は、一番右側のところです。インフレ抑制法があります。これは先ほど環境省さんの資料にも、もちろん入っていましたが、先ほど①の超党派インフラ投資・雇用法に含まれない気候変動対策をカバーしていくというところでございます。気候変動対策に3,690億ドルを割り当てています。全体が4,370億ドルなので、全体のうちの85%ぐらいが気候変動に関するようなものになっているというところでございます。これが大体米国の流れでございまして、20スライドまでにその解説を書いているところでございます。
 以上でございまして、私からの発表を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
 
大塚委員長
 どうもありがとうございました。大変興味深い話をありがとうございます。
 ご質問、ご意見のある方は順次指名しますので、挙手ボタンをクリックしていただければと思います。残り時間を踏まえると5人程度のご質問になるのではないかと思っています。いかがでしょうか。
 私から一つ確認させていただきたいのですけれど、スライド16枚目で、EUの評価指標として各圏域で共通の指標を定義されているのですけれども、正当化すれば個別の指標の設定も可能となる、という部分について、詳しくご説明いただけますでしょうか。
 
価値総合研究所執行役員
 これは、どこの地域も基本スペックとしてはGDPとか雇用とか、そういうものを出していきますと。ただ、そのときに、地域の個性に合わせますと。地域の産業構造が違ったりします。それから、貧困層が多いとか少ないとか。そういったことというのは、後からその地域で決めていいですよというような話のようです。
 
大塚委員長
 補助金の公平性は保たれるという考えだということですね。
 
価値総合研究所執行役員
 多分、地域の個性に合わせたというのは、補助金が配られた後になっていくのだと思います。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 それでは、竹ケ原委員、お願いします。
 
竹ケ原臨時委員
 ご説明ありがとうございました。大変興味深いお話でした。
 こういう理解でいいのかということの確認なのですけれど、今、ご説明いただいた事例のケースというのは、移行そのものを政策が目的とし、例えばこの産業をこの産業に転換するという政策があって、その過程で合目的的にその公正さを追求したというよりは、どちらかというと、やっぱり比較優位を失って産業構造の転換がもう不可避になってしまって、失われていく雇用をどうにかしなきゃいけない、社会の影響を緩和するために何らかの対策を講じたというケースのような気がします。イギリスのケースは分からないのですけれど、資料に入れていただいていた、ドイツのルール工業地帯なんかが典型で、重工業が衰退してしまって、取りあえず国際建築展を使って、コンバージョンをやろうということで、いろんなものをとにかく造り替えて、いろんなオフィスユーズにできるようなものに、まず、建築技術的に造り替えていった。本当の移行ってその後に来て、そうやって造った箱の中に新しい雇用をどうやってつくるかという観点で、さっきおっしゃった、まさにフラウンホーファーみたいなところを使ったオープンイノベーションだったり、労働者の再教育、リスキリングみたいな話があって、どっちかというとドイツの事例なんかだと、ソフトの部分が公正な移行に加わるのだろうなという気が、話を聞いて、資料を読んでいて思いました。ただ、これからの脱炭素社会、カーボンニュートラルに移行するというのはそういう話と違って、本当に意図的に、産業構造の転換を政策として誘導していく。したがって、もうやらなければいけない公正な移行の中身もあらかじめ分かっているので、そこに政策として手を打っていくということだとすると、過去の取組と、これからカーボンニュートラルに移行するための施策とで違いがあるのかどうか、この辺り、どう考えたらいいのかと、漠然とした質問で恐縮なのですけれど、お考えがあればお聞かせいただければと思います。
 
大塚委員長
 何人かご質問をまとめてお伺いしたいと思います。
 それでは、冨田様、お願いします。
 
冨田オブザーバー
 ありがとうございます。大変多岐にわたっており、なかなかこういう資料を手にすることがないので、大変参考になりました。どうもありがとうございました。その上で、1点、教えていただければと思うのですが、それぞれの地域の事例を幾つかこうしてご列挙いただいているのですけれども、移行の取組が決まるまでのプロセスがどのようになっているのかというのが、私ども大変関心が高うございまして、それぞれ関連の主体もご記載をいただいておりますけれども、この具体的な対策を検討する、例えば検討の場ですとか、そこに参画するメンバーですとか、そういったものの何か事例などもありましたら、ご教示いただけるとありがたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。それでは、ご回答をお願いできますでしょうか。
 
価値総合研究所執行役員
 ありがとうございます。
 最初の竹ケ原さんからのご質問でございますが、ご指摘のとおりで、最初のほうの移行の事例というのは、産業が衰退していく中で、もう雇用がなくなってしまいました。では、どうしましょうかと言って、どういう産業を考えたらいいのかということをやっていったというものです。
 先ほどのお話のように、脱炭素の移行の場合は、国全体として、今、日本でもロードマップが作られていて、この産業はこういうふうになっていきますというのが示されています。そこは事例とかなり違うところです。ただ、その地域がどういう産業の組合せで、これからはどういう産業を育てていくかということに関しては、先ほどの移行事例のほうと似ているところはあると思っています。ただ、そのとおりではないというところだと私は思っています。というのが、竹ケ原さんへのご回答でございます。
 もう一つ、冨田オブザーバーからのご質問ですが、これは、大体、各地域、国とか市とか、それから経済団体、企業で検討会とかが作られます。まずは企業が撤退するということが決まった後に、では、どうしましょうかということで行政が主導で、こういうメンバーを集めて検討を始めていきます。検討を始めていって、それから、誰が何をやっていくかということが決まっていくというところでございます。ですので、最初はそういうサークルが出来上がります。それで、そこから始めていくというところでございます。
 以上でございます。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。私から質問よろしいでしょうか。
 16ページのところで、達成度が65%以下だと補助金を減額するという話でしたが、指標自体はどういうものになるのでしょうか。例えば、GHGの排出とか、雇用とかが指標になるということなのでしょうか。
 
価値総合研究所執行役員
 そうですね。
 
大塚委員長
 東欧が多いので、EUの中で偏っているとか、そういうことが問題になりそうな感じもしますけれど、その辺りはいかがでしょうか。
 
価値総合研究所執行役員
 ありがとうございます。指標に関しては、65%の目標を、KPIと同じように作って、それで65%行くか行かないかということで、ばっさりやっているのかどうかというのは、実際は分からないのですけれど、一応こういうルールとして設定していますということです。もう一つ、東欧は、石炭のエリアがもちろん多いので、そういったところから移行というのがかなり多くなっているというところです。もちろん経済的なレベルが低いので、そこのところの補償というのも、そういう観点はもちろんEUなのであります。そういうところで重点的に配分されているというのもあると思います。
 
大塚委員長
 あと、この地域を決めるときには、さっきの指標のところと関係してくると思うのですけれど、そこでもめたり、政治的な観点は入らないということでしょうか。
 
価値総合研究所執行役員
 いや、これは、やはり入ると思います。指標がどれだけ高いか低いかというよりも、計画がしっかりと作られているかいないか。計画づくりがしっかりとできているかということで評価されるということになります。
 
大塚委員長
 大変興味深いお話、ありがとうございます。
 もう一つお聞きしますが、EUとアメリカの違いは、EUのほうが、割と体系的な感じがしますけれど、アメリカは、どこについて対応するかということに対して、明確な基準があるわけではないというふうに考えてよろしいですか。
 
価値総合研究所執行役員
 そうですね。EUの場合は、地域で計画をつくってもらって、そうしたらお金を出しますというのができていますけれど、アメリカも議員さんから、そういう法律をつくろうという動きは出ていますけれども、具体的にまだ制度としてはできていないというところであります。アメリカでも同じように石炭地域のところをどうするか、本当にEUと同じような計画を、議員さんの勉強会とかそういったところではやっています。ただ、そこがまだ制度まではできてないというところです。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 それでは、最後に、議題2、その他について、何かございましたら、事務局からお願いいたします。
 
地球環境局脱炭素社会移行推進室長
 事務局、伊藤でございます。
 まず、自由闊達なご議論、大変ありがとうございました。山崎様からもご説明、大変ありがとうございます。
 まずは委員長からもご指示いただきましたが、今日いただいたご意見を整理させていただきまして、今日ご提示した資料もブラッシュアップをしていきたいというふうに思っております。
 その上で、次回は10月20日、木曜日の16時から予定したいと思いますが、今日は公正な移行でヒアリングさせていただきましたけれども、ほかに、土地利用ですとか、個別のヒアリングをやらせていただくことを考えております。その上で、今日いただいたご意見、あるいは次回もご意見などもいただきながら、11月辺りに、また今日の資料をブラッシュアップしてご提示したいと、それでご議論いただきたいというような流れを想定しております。
 以上でございます。
 
大塚委員長
 それでは、以上で本日の議事は全て終了いたしました。円滑な進行にご協力いただきまして誠にありがとうございました。
 事務局にお返しいたします。
 
地球環境局総務課長
 ありがとうございます。
 本日の議事録につきましては、事務局で作成の上、委員の皆様にご確認いただきました後に、ホームページに掲載させていただきます。
 それでは、以上で第7回炭素中立型経済社会変革小委員会を閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

 

午後6時49分 閉会