中央環境審議会地球環境部会・総合政策部会炭素中立型経済社会変革小委員会(第6回) 議事録

日時

 令和4年8月31日(水)17時00分~19時02分

場所

 WEBによる開催

議事

(1)中間整理以降の動向等について

(2)その他

議事録

午後5時00分 開会

地球環境局総務課長
 それでは定刻となりましたので、ただいまから、中央環境審議会地球環境部会・総合政策部会炭素中立型経済社会変革小委員会(第6回)を開催いたします。
 環境省地球環境局総務課長の小笠原です。7月に着任しております。よろしくお願いいたします。
 本日の小委員会はWebでの開催とし、YouTubeでの環境省動画チャンネルで同時配信しております。
 本日は、委員総数17名中、15名の委員に現段階で出席いただいており、定足数の要件を満たし、小委員会として成立していることをご報告いたします。
 本日は、三日月委員、ご欠席でございます。
 前回の小委員会から、委員1名の交代があったことをご報告します。これまで住環境計画研究所主席研究員の中村委員にご参加いただいておりましたが、フランスへの転居に伴い、本日から同研究所取締役研究所長の鶴崎委員に参加いただいております。鶴崎委員、よろしくお願いいたします。
 
鶴崎専門委員
 よろしくお願いいたします。
 
地球環境局総務課長
 そのほか、関係省庁として、農林水産省、経済産業省、国土交通省、内閣府、金融庁からも参加いただいております。
 ここで、7月の人事異動で、地球環境局長が松澤に代わっておりますので、一言ご挨拶申し上げます。
 
地球環境局長
 地球環境局長の松澤でございます。5月12日の中間整理以降、官邸にGX実行会議が設置されまして、この会議には、この小委員会の淡路委員、それから伊藤委員が参加されておられますけれども、このGX実行会議を軸に、年末に向けて、今後10年のロードマップ策定の議論が行われることになっております。
 この小委員会では、これまで地域脱炭素トランジション、これは地域経済、地域社会経済の変革、あるいはローカル経済の活性化、さらに暮らしの変革といった幅広い内容を伴うものだと思いますけれども、これを中心に、さらに金融ビジネス、国際展開も含めてご議論をいただいております。この議論の再開を今日からさせていただきたいと思います。
 本日は、GX実行会議の今後の議論に貢献していく観点から、引き続き議論をいただきたい点、これを中心に、それから、これまでの中間整理以降の動きを簡単に振り返りながら、今日、議論いただきたい点を事務局のほうから提示させていただきたいと思います。
 本日は、環境省の会議室に大塚委員長、それから髙村委員、軽米町の山本町長が直接参加いただいておりますので、ご紹介させていただきたいと思います。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 
地球環境局総務課長
 それでは、以後の進行を大塚委員長にお願いいたします。
 
大塚委員長
 よろしくお願いします。
 皆さん、こんにちは。委員各位におかれましては、これまで炭素中立型の経済社会変革に向けた中間整理の取りまとめにご尽力いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、中間整理以降のカーボンニュートラルをめぐる政府の動向等について紹介いただいた後で、炭素中立型の経済社会変革の道筋について、改めて委員の皆様にご議論いただきたいと考えております。
 それでは、議題1、中間整理以降の動向等についてに入ります。議論の時間を十分に取りたいと思いますので、まずは、事務局から最近の動向と議論の論点につきまして、資料の2と3を合わせて説明をお願いいたします。
 
地球環境局脱炭素社会移行推進室長
 環境省脱炭素室長の伊藤と申します。7月から着任しております。
 私のほうから、資料2、それから資料3を用いまして、本小委で5月にまとめていただきました中間整理以降の動き、それから、本日をキックオフといたしまして、後半、局長からもございましたけれども、GX実行会議に向けてご議論をいただきたい論点などについて、簡潔にご説明したいと思います。
 まず、資料2でございますけれども、右下にページ番号がございますが、1ページから3ページで、本小委でおまとめいただいた中間整理を基に、5月19日に当時の山口環境大臣から官邸の有識者懇談会に報告、プレゼンをした内容をご用意しております。
 ポイントだけ申し上げますと、地域・くらしの脱炭素投資の意義ということで、資金需要の立ち上がりが早い既存の技術、具体的には右下に図もございますけれども、再エネ、蓄電池、あるいは断熱リフォームといった既存の技術を社会実装して、そこに集中的に投資をしていくという意義、必要性をプレゼンしております。
 また、地域・くらしにおける脱炭素設備・製品の需要、ニーズを大きく生み出すことによって、産業部門の脱炭素投資、あるいは供給の拡大を促すべきというところを言っていただいております。
 それから、下になりますが、成長志向型のカーボンプライシングの最大限の活用、あるいは省エネ関連の規制などの制度面の対策、さらには資金支援につきましては、各手法の活用、財源措置、そういったところも政府として明確に考えを示すべきというところを大臣から言っていただいております。
 さらには、小委でまとめていただいた内容と関連いたしますが、若干見にくいですけれども、左下ですが、いわゆる投資というお話だけではなくて、脱炭素に必要な人材育成、あるいはDX、土地利用、そういったところについても図の中で重要性をアピールいたしてございます。
 2ページ目には、環境省が主導する脱炭素先行地域、モデルケースを提示しながら大臣から説明いただくとともに、3ページになりますけれども、地域脱炭素に加えて、ライフスタイル変革、あるいは国際展開と。分野横断といたしましては、循環経済ですとか、自然共生分野にも投資の拡大が必要であると、これも小委の取りまとめなども踏まえながら、インプットしているという状況でございます。
 4ページにまいりますが、そういった我々からのインプットも受けて、ほぼ同時期に経済産業省からクリーンエネルギーの中間整理というものが出されております。
 めくっていただいて、5ページ目になりますけれども、右下、第3節、地域・くらしの脱炭素に向けた取組という形で、エッセンスがはまっているという格好になります。
 駆け足で恐縮ですが、6ページ目になりますと、これが後半戦につながるお話ですが、このクリエネのいわゆる中間整理の中でも、上になりますけれども、年末に向けて、いわゆる投資の予見可能性を高めるロードマップというものの具体化を図ると。成長志向型のカーボンプライシングの最大限の活用、あるいは規制・支援一体型の投資促進策の活用というところを基本コンセプトに置きながら議論を深めていくということが明示されております。
 画面中央には5本の柱というところがございますけれども、ロードマップをつくり上げていく中では、①から⑤の5本の柱を中心に議論を深めるという方向性が出ておりまして、何より上にありますけれども、このGXの実現には、脱炭素だけではなくて、我が国の経済成長、発展と、脱炭素×成長という文脈で、さらに具体的なロードマップ作成に向けて議論をしていくという構図になっています。
 5本の柱につきましては、後ろにも詳細がありますけれども、予算措置、GX経済移行債というような仮称もございますが、そういったもの、あるいは規制や制度と一体的にということで、その措置、金融パッケージ、あるいは自主的なGXリーグの活用、国際展開というところが5本の柱になってございます。
 めくっていただきますと、重複しますが、総理指示として、5月19日には、一番下になりますけれども、GX実行会議というものを官邸に設置して、ロードマップづくりに向けて議論をしていくということとなりました。冒頭、局長からもありましたが、ここに向けて本小委では、環境省側からの打ち込みということも考えながら、先生方にいろいろ議論を深めていただきたいというふうに思ってございます。
 8ページ目から11ページまでは、今申し上げたようなところの流れの中で、いわゆる閣議決定されている新しい資本主義のグランドデザイン、あるいは骨太の方針の中でも今のような流れのようなエッセンスが位置づけられているというご紹介でございます。
 めくっていただいて、12ページにGX実行会議の概略を載せております。既に7月27日、8月24日と2回開催されていますけれども、淡路様、あるいは伊藤先生にも参画いただいて、官邸のほうで議論が始められております。
 大きな論点は二つということで、我が国のエネルギーの安定供給の再構築に必要となる方策、あるいは、繰り返しになりますけれども、脱炭素に向けた10年のロードマップ策定というところが柱につながってございます。
 めくっていただきまして、13ページは5本柱でございますが、時間の関係上、詳しい説明は省きたいと思いますが、特にいわゆるGX経済移行債(仮称)というところにつきましては、まさに先行して、この規制・制度と併せて、予見可能な形でいわゆる投資を支援していくことを一体的に検討していくという流れになってございます。
 めくっていただきますと、16ページになりますけれども、こちらは、第2回GX実行会議が、先日8月24日に行われましたが、西村環境大臣のほうからプレゼンをいただいているものになります。8月のテーマは、足元のエネルギー需給問題と、それから再エネ、蓄電池、省エネというところがメインテーマでしたので、大臣のほうからは、足元のエネルギー危機が地域経済であるとか、くらしへの影響がどうも非常に大きいということで、いわゆる即効性のある取組を真っ先に需要側で行うべきであるというプレゼンを中心にいただいております。
 具体的には、断熱リフォームであるとか、蓄エネとセットの再エネ導入であるとか、そういった即効性のある取組はエネルギー危機克服にも効くということで、そういったものを地域ぐるみで展開していくということが鍵だということを表現いただいております。
 特に環境省も主導をしています、いわゆる自治体、あるいは金融機関、あるいは商工会議所等との連携という中で、地域の企業ですとか、家庭の巻き込みというところで取組を集中的に行うべきという形でございます。
 さらには、そういった取組を全国展開、海外展開することによって、脱炭素×経済成長という文脈で、しっかりと長期、かつ大規模な需要を創出すると。そういったことで、いわゆる企業の投資予見性向上にもつながるというところで、まさにエネルギー危機に強い地域づくりが脱炭素・経済成長の第一歩というところ、そこへ集中的な投資が重要であるという発表をいただいているという流れでございます。
 このような状況の中で、お話は戻りますけれども、さらにロードマップづくりなどに向けて具体の議論を進めていくということで、資料3のほうに移らせていただきますが、本日は事務局のほうで論点をお出しいたすというところでございます。
 めくっていただいて、2ページ目になりますけれども、ここは申し上げたとおりでございまして、一番下になりますけれども、本小委員会でございますが、中間整理を踏まえながら、まさにGX実行会議の議論に貢献と、それだけではございませんけれども、そういった観点も含めて、今後の政策の具体化ということをお願いしたいと思っておりまして、3ページ目にまいりますけれども、本日は、論点を提示させていただいて、皆様方からご意見、コメントをいただければと思っております。
 論点につきましては、先ほど申し上げた、GX実行会議で深めていく5本の政策の柱に対応するような形でご用意しているという状況です。まず、やはり官邸の会議も非常に成長というところを意識して議論が進むということでございますので、一番上にありますとおり、成長との関係では、脱炭素を日本の成長エンジンへと転換していくと、そういう観点から各主体の役割、あるいは取組をどう進めていくべきかということを論点に置かせていただいてございます。
 それから、地域・くらしの文脈では、地域脱炭素、あるいはライフスタイル転換、資源循環、それから地域・くらしに関連する社会インフラ、あるいはサプライチェーンなどのいわゆる脱炭素の着実かつ速やかな実現、そういったことを果たしていくときに必要な投資対象ですとか支援、さらには制度、規制・制度一体というのがございますので、規制・制度的措置も含めた投資促進策、こういったものをどういったものがあり得るかということを論点に置かせていただいてございます。
 繰り返しになりますけれども、そうした投資が我が国の経済成長・発展にどう資するかということも明示させていただいております。
 加えて、脱炭素に必要な人材育成、DX、自然資本の活用、国土・土地利用、こちらは中間整理の中でも議論いただきましたけれども、さらに、そこもどう進めていくかという深掘りをお願いできたらと思っております。
 金融・ビジネスの観点ですけれども、我が国の脱炭素の取組、そこに国内外のESG投資を呼び込むためにどういった取組をさらに進めるべきかと、あるいは、我が国の企業、あるいは製品サービスが取引先や消費者に評価されるためにはどのような取組を進めるべきかという形を論点に置かせていただいております。
 国際展開のほうは、来年が我が国、G7の議長国ということもございますので、そういったことも踏まえて、アジアをはじめとするアジアから世界への脱炭素化という、そういった絵の中で、さらにどういった取組を進めていくべきかという形で論点を置かせていただいております。
 今後の流れを若干申し上げさせていただきますと、本日、ご議論いただきまして、それを次回以降の議論につなげたいと思っていますので、具体的には、次回は地域・くらしですとか、金融・ビジネス、少しアジェンダを区切って議論したいと思っていますが、本日いただくこの論点に絡むコメントも、主要部分を次回以降の議論で事務局資料の中でも少し提示させていただきながら、さらに議論を進めていただきたいと思っておるところでございます。
 以上でございます。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。それでは、ただいまご説明がございました、論点を中心に、委員の皆様からご意見を頂戴したいと思います。ご意見のある方は、順次指名をしますので、挙手ボタンをクリックしてください。いただきました内容につきましては、何人かの委員にご意見をいただいた後で、まとめて事務局から回答をお願いしたいと思います。
 多くの委員がご発言をご希望なさると思いますので、お一人4分以内をめどにしていただけると幸いでございます。
 では、竹ケ原委員、お願いします。
 
竹ケ原臨時委員
 ありがとうございます。一番目になると思っていなくて、口火を切らせていただきます。
 非常にきれいな論点整理、ありがとうございました。大変頭が整理できました。今回の主題は、脱炭素の着実な進展と成長の両立ということだと思います。とすると、やはりグリーンハウスガスの排出量の削減という社会課題への取組と成長戦略を同期させて、産業界の背中をどう押していくか、加速させていくかということが中心の課題になろうと理解しております。これも既に着手されているお話で、そうなると、2段階的に現状からトランジションの段階をどう進めていくか、その次に控えている非連続イノベーション、社会実装をどう加速していくかと、二つの方向があると思います。
 前段のトランジションの話については、資料のご説明にもありましたけれども、サステナブルファイナンスをめぐる資金調達競争、ここで日本の産業界を有利なポジションにつけるということが大事になるので、とにかく欧州のそしりを受けないように、透明性のある情報開示ですとか、ファイナンススキームの確立が課題だということになっていて、ここは議論が進んでいると理解しています。
 これが進んでいくと、次に課題になるのが、資本市場に直面していない地域レベルでどうやって進めていくかという話になろうかと思います。この点も地域金融機関が果たされる役割が非常に大きいということになりますので、現状進めていらっしゃる脱炭素先行地域のセレクトの段階であったり、あるいはESG地域金融のカバレッジを広げるなど、まさに進めていらっしゃる政策、これが果たす役割はすごく大きいんだろうなというふうに考えます。
 2件目のイノベーションの社会実装の方ですが、イノベーションの開発そのものですとか、それに必要なリスクマネーの供給というのは、多分この場の主題ではないんだろうと思いますが、むしろそれで出てきたものを、いかに社会実装させていくかという点は、小委員会で大きなテーマになると理解しています。
 その際のキーワードが、個人的に考えますのは、この場でも何度も議論が出ていますけれども、いわゆる統合的なアプローチではないかと思います。中間取りまとめの段階でも、気候変動、資源循環、自然資本、こういった一連の施策は統合的に見ていくことが重要だというご指摘は、委員の先生方、あるいは事務局からもご説明があったところでありますけれども、特に脱炭素と成長、これを両立させようとすると、この点がすごく大事だろうなと考えます。
 個人的に、特にその典型はサーキュラーエコノミーだと思っておりまして、サーキュラーエコノミーという言葉自体は、既に定着した感がありますけれど、恐らく私も含めて大方の理解は、3Rをより高度に進めていくというレベルの理解にとどまっているような印象があります。ただ、EUの施策としてサーキュラーエコノミーを見た場合は、例えば先生方のご指摘なんかを見ても、アメリカのプラットフォーマーに対抗するためのヨーロッパのデジタルプラットフォーム戦略の差別化に資源循環を使っているんだであるとか、環境配慮設計をバリューチェーンに延伸することで、循環させることが競争力につながるんだと、かなり産業政策的な、したたかな意図が含まれている仮説をよく聞きます。
 実際にリサイクルを考えたときに、再生材の質とか量をいかに安定的に確保するかという点で考えると、既にヨーロッパの場合は、静脈産業の再編とか体系化が終わっていますから、ここに電池メーカーなんかの情報がきっちりインプットされていくと、非常に産業政策的にもおいしいんだろうなという気がします。
 こういうもうちょっとしたたかな観点でのサーキュラーエコノミーとの掛け算、こういう観点って、もう少し日本でもあってもいいのかなという気がします。そう考えると、多排出産業のトランジションの議論をした際に出てきたんですけれども、例えば化学におけるケミカルリサイクルでありましたり、セメントのプロセス由来のCO2を減らすために、建設リサイクルといかに接続するかですとか、鉄鋼における電炉でありますとか、やっぱり日本の主要産業の脱炭素戦略を進める上でも、サーキュラーエコノミーの要素ってすごくビルトインされています。ですから、資源循環はそれ自体として、単独の政策課題として整理するのもあるんですけれど、もうちょっと成長戦略として、この掛け算をよく見ていくというのも次の課題になるかなと感じました。
 以上になります。ありがとうございました。
 
大塚委員長
 どうも非常に重要な点をご指摘いただきまして、ありがとうございます。
 では、伊藤委員、お願いします。
 
伊藤専門委員
 どうもありがとうございます。事務局、大変丁寧に整理していただいて、それに関連して、感想みたいなことを4点、申し上げたいと思います。
 第1点は、言わずもがななんですけれど、政府のいろんなところで取り組んでいて、それを官邸のGX実行会議というところでも議論をしているわけですけれど、そういう中で、それぞれの取組はもちろん独自にやるとしても、全体の整合性を常に意識する必要があるのかなと。もっと申し上げれば、環境省のところは、特にどういうところを重点的にやるのかということを常にチェックしながら議論していく必要があるのかなということを感じました。
 それに関連して、第2点目として申し上げたいのは、実際に経済・社会を運営するときに、この気候変動問題というのは、全ての経済主体、全ての社会の構成員が対応することが重要なんですけれども、どちらかというと経済産業省が主にやっている、例えばGXリーグの話ですとか、あるいはGX経済移行債を使っていろんなところに投資していきましょうというのは、どちらかというと、ごく限られた数の企業だとか、大企業だとか、そういうところになってくるわけで、そうすると、そこで拾い切れないものって何があるかというと、実は膨大な分野があるんだろうと思うんです。
 簡単な言い方を一言だけすると、単純な市場原理に乗らないような分野がいっぱいあって、これがやっぱり気候変動の問題と非常に関わってきていると。単純に市場原理に乗らない、例えば教育がそうでしょうし、あるいは国土計画もそうかもしれませんし、あるいは地域の活性化とかも、そういうことかもしれませんけれども。そういう形で、単純な市場原理に乗らないようなところをどういうふうにうまく乗っけていってやっていくのかということが重要で、そうすると、例えば金融で言うと、先ほど竹ケ原さんもおっしゃったように、例えば地方の金融になってくると、これはいわゆるボンドでは乗らない世界で、よりローンというんですか、そういう違うタイプの金融になると思います。ましてや学校だとか、地方自治体だとか、あるいはNGOだとか、こういうところになってくると、いわゆる市場原理とかなり違う形で動いているわけですから、それをどうやって全体の成長戦略の中に取り組んでいくかというときのいろんな政策づくりだとか、あるいはビジョンというのが大変重要になってくるのかなというように思います。
 3点目は、これは今までの夏までの議論でも随分出てきたと思うんですけど、一言で言うと、成長と気候変動の問題を両立させる、この成長って何なのかということは結構重要な話で、もちろんGDPが増えていくとか、それによって雇用が拡大していくとか、所得が増えていくとかいうことが重要であることは間違いないんですけれども、ただ、それではない、つまり持続可能な社会は、我々がどういう社会を豊かな社会と描いていくかと、例えばローカルでそれをどう考えるかとなってくると、ここで我々は今までも議論してきたコンパクトシティの話とか、資源循環の話だとか、あるいは生態系の在り方の問題だとか、いろんな問題が出てくるわけで、これは当然、気候変動対応とも非常に深く関わっているわけですから、そういう意味で理想的な言い方をすると、これから将来の、より我々が好むような社会に持っていくときに、どういう要素があるのか。ただ単にGDPを増やすとかで雇用を増やすだけではないということをはっきり打ち出して、それが気候変動の問題とどう関わっているかということを考えていくと、いろんな意味でプラスの要因があるんだろうと思います。
 最後に、成長との関係で、恐らく議論がこれから出てくると思うんですけれど、カーボンプライス、カーボンタックスでも、排出権取引でもいいんですけれど、足元の効果というのと、5年後、10年後、あるいは20年後、30年後の社会を見通した効果というのは、随分いろんな論点があるんだろうと思いますので、これからいろんな議論がなされると思うんですけれども、先ほどから話題になっている、透明性があるとか、あるいはプレディクタビリティが非常にしっかりしているということをするためには、常に短期と中期と長期で整合的な議論をしなければいけないと思います。
 そういう意味では、この会合でも、総理がおっしゃっている成長志向型のカーボンプライスというのはどういうイメージなのかと。特に中期、長期のところの議論は非常に大事になってくると思いますので、ぜひ、また議論をさせていただければと思います。
 どうもありがとうございました。
 
大塚委員長
 どうもありがとうございました。成長とは何かということも含めて、非常に貴重なご指摘をいただきました。
 では、宮下委員、お願いします。
 
宮下専門委員
 ありがとうございます。
 まず、前段、今日のこの議論を再開するに当たりまして、これまでの議論を整理いただいき、私自身も頭の整理ができました。ありがとうございます。
 それで、クリーンエネルギー戦略の中で掲げられた、今後10年で官民共同で150兆円、この10年で脱炭素投資をしていくというこの目標ですけれども、ファイナンスの世界に身を置く者としましては、まさに脱炭素×経済成長、これを実現していく重要な要素でありますし、ドライバーとして期待をされているということも理解をしております。
 これまで、金融業界の中でも、グローバルな議論、あるいは国内での議論も、概念的な議論がやはり先行しがちでもあったりしてきましたけれども、いよいよ金融もグリーンファイナンスからトランジション、あるいはイノベーションのためのファイナンスとは一体具体的にはどんなものなのかということをイメージしながら議論をしていく、そういう段階に差しかかってきていると思っております。
 これまで、この小委員会でも、私ども三菱UFJの取組として、各種の国際イニシアチブへの参画などをお話もしてまいりましたけれども、ネットゼロ・バンキング・アライアンスという、銀行が参加しておりますイニシアチブにおきましては、足元ではトランジションに関するファイナンスの指針を、現在、取りまとめようとしております。
 やはり議論の過程では、当初、世界の地域によっては、スタート段階から考え方が非常にかけ離れているところもあったのですが、何とかそれを一つ取りまとめようとしております。具体的には、当初、例えばネットゼロを達成するためには、ダイベストメントというのは有効な手段だというふうに、ある意味、極端な声も聞かれました。ただ、銀行のネットゼロというのが、結果としては、実はお客様の脱炭素、ネットゼロを通じて達成されるべきものなのだということについて、考え方を粘り強く主張してきたことで、ネットゼロ・バンキング・アライアンスが発足1周年で公表した文書の中でも、実体経済の脱炭素化こそが銀行のネットゼロの基本路線であるというふうに記載されるに至ったと認識をしております。
 そのようなグローバルないい流れもあるという一方で、ファイナンスを具体的に検討、あるいは想定していく中では、幾つかの論点が浮き彫りになってきていると感じております。
 二つ申し上げますと、まず、一つ目は、ファイナンスの前提となる事項をしっかりと整理し、詰めながら議論を進める必要があるなと思います。例えば、クリーン成長戦略の中でも掲げている150兆円、400兆円という数字がありますけれども、それの中身をやっぱり事業として必要な資金がデッドなのか、エクイティなのか、使途としてはグリーンかトランジションか、イノベーションか、投資対象はどんなものなのか。さらに、その上で公的セクターと民間のファイナンスの割合はどの程度なのか。もちろん、当初から、これはかちっと決めることなんかはできないんですけれども、ある程度これぐらいだなという想定を関係者の間で予見をそろえておかないと、実現性が不確実になってくるのかなというふうに思っております。
 それから、もう一つは、事業者の方々のサイドの論点になるわけなんですが、やはり金融機関が検討するファイナンスの前に、当該事業の予見可能性を高める施策、諸施策のパッケージが必要じゃないかということであります。
 ファイナンスを実行するサイドからすると、当たり前ですけれども、事業の収益から利息や配当が支払われて、元本が返済されていくことでありまして、ファイナンスをバンカブルなものに仕上げていく、仕立て上げていく中では、大前提として事業の成功予見性がやっぱりあるんだと思います。そういう意味では、脱炭素化自体が単純なコストアップになってしまうという声も聞かれる中で、そのコストを回収しやすくなる仕組みづくりについては、いろいろな政策パッケージがあるんだろうと思いますが、それをぜひ具体的に検討して、事業者側に提示をして、安心して取り組んでいただくというようなことが、ファイナンスサイドからもやはり重要だなというふうに思い立っております。
 以上の事項は、グローバルなファイナンス、あるいは地域金融を問わず、ある意味、これまでも頭の片隅にはあった事項ではあるんですけれども、ますますこれから乗り越えていくべき論点、問題意識だと思っておりますので、また、この場で議論、検討する場、あるいは私のほうから説明する機会があれば、議論を深めさせていただきたいと思っております。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。ファイナンスの観点から非常に有益なご指摘をいただきました。
 では、淡路委員、お願いします。
 
淡路臨時委員
 淡路でございます。
 私も成長というところが引っかかっておりまして、伊藤委員もご指摘だったと思うんですけれども、脱炭素を進めいく際に、成長ですとか、イノベーションというようなことを、あまりに前に出し過ぎると、それだけで多くの中小企業のハードルを上げるんじゃないかなというような印象を持っております。
 と申しますのも、上場企業の製造業の方で、脱炭素に取り組んでおられる担当の方にお話を伺ったんですが、これまで補助金を使って導入してきた既存の省エネタイプの設備を更新しようと思っても、更新時に補助金が使えない。もっと新しい、恐らく効率のいい設備の切り換えとなったら補助金は使えるけれども、従来型は対象から外れてしまったと。もし新しいものを導入すると、その設備だけではなくて、配管や周りの設備も変えなくてはいけないので、コストが一気に上がってしまうというようなお話でした。
 上場企業でさえ、省エネタイプの設備の入替えに非常に苦心しているというような状況があって、成長とか、イノベーションというよりも、もっと今までやっていた省エネということを継続していくということについても、脱炭素の取組の中では下支えとして重要ではないかと思うので、そこを成長とかイノベーションのほかに、例えば変化に対応していく取組ですとか、そのようなメッセージも出していくと、もっと脱炭素に取り組みたいという企業の裾野を広げやすくなるのではないかなというふうに感じております。
 もう1点あるのですが、今後の論点の中の地域・くらしのところの一番下に人材育成というのがありまして、これも地域の事業者の話ですが、脱炭素や省エネを進めるためには、まず人がいない、それから知識を持っている人がいない、両方をもってして人がいないというふうに表現されることが多いので、必ずしも知識のある人がいないという意味ではなくて、頭数がいないということです。これまでコロナ対応の支援ですとか、地域金融機関の第一の仕事ということで力を入れてやってきたんですけれども、私どもの地域金融機関の仕事は、中小企業をいろんな意味で支えるということが、おこがましい言い方かもしれないけれども、一番大切だと思っておりまして、だとすると、人材の面でも、何らかの形で地域金融機関が積極的に地元の企業に入り込んでいくことで、脱炭素の取組を進めていくことが可能なのではないかというふうに考えています。
 私どもは、DXを進めるときに、ちょっと話は変わりますが、ITパスポートというのをみんなで取って、知識レベルを上げていこうという取組をやったところ、私たち4,000人ぐらいの従業員なんですが、1,500人以上が一気にその資格を取るという展開になりました。
 同様に、人材育成のところで、何かきちんと、この人材は脱炭素の支援を企業に対してアドバイスできますというようなかちっとしたものがあると、また同じように私どもの行員でそういった資格を取って、それをもってして地域の事業者と一緒に脱炭素を進めていくというような展開も考え得るのではないかなというふうに、人材のところについては思っておりまして、また、一段、この人材育成を具体的に示していけるといいのではないかというふうに思います。
 以上です。長々、すみませんでした。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。人材育成とか補助金に関して、非常に具体的な点を指摘していただきました。ありがとうございます。
 では、山本委員、お願いします。
 
山本臨時委員
 岩手県軽米町長の山本賢一でございます。
 軽米町は、これまで積極的に、再生可能エネルギーを推進してまいりましたし、今後とも推進していきたいと考えております。
 そういった中で、脱炭素中立社会に向けたトランジションについてでありますけれども、資料3の4ページにございますとおり、エネルギーコストの上昇が見込まれております。これは地方自治体が脱炭素の事業を進める場合も同様であります。これまでも多大なるご支援、ご協力をいただいておりますけれども、さらに交付金、補助金等をいただきますと、脱炭素についてスムーズな移行へとつながると考えられますので、どうぞよろしくお願いしたいというふうに思います。
 また、資料3の3ページですけれども、日本企業や製品サービスが取引先や消費者に評価されるための取組とありますが、消費における数値的な基準、認証、ポイント制などを国のほうから提示していただくと、それに合わせて事業を推進することができます。町としましても、早期にカーボンニュートラルを達成いたしまして、再エネの町、軽米をPRすることで企業誘致を進めてまいりたいと考えておりますので、数値化等の制度設計を進めていただきますよう、よろしくお願いいたしたいと思います。
 以上であります。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。国に対しての具体的なお話をいただきました。
 今で5名になりますので、では、ご回答をお願いします。
 
地球環境局総務課長
 今日の段階では、次回に具体的な資料をお出ししようということで、いただいた意見を踏まえて、検討してまいりたいと思います。
 若干、コメントをさせていただきますと、竹ケ原委員よりご指摘ありましたとおり、地域レベルの取組の重要性、おっしゃるとおりでございます。環境省としても、地域の取組、地域脱炭素の取組をしっかり進めてまいりたいと思っております。
 それから、論点にも書いてありますように、サーキュラーエコノミー、循環と脱炭素を同時に進めていくことは非常に大事なことでございますので、どういった投資が必要かということも含めて、次回、また資料をお出ししたいというふうに思っております。
 それから、伊藤委員からもご指摘ありましたとおり、経産省さんの観点からすると、大きな企業さんをどう支援していくかというのは重要な課題だと思うんですけれども、環境省からすると、そこから漏れるような部分もあるんじゃないかという観点も含めて、社会全体を脱炭素プラス成長に持っていくために、どういったことが必要かということを、より分かりよい視点で検討をしていきたいというふうに考えております。
 時期についても、短、中、長期の整合性ということも含めて、環境省としても検討していくことが必要であるというふうに思います。
 宮下委員、淡路委員、山本委員のご意見も含めて、検討をしてまいります。ありがとうございます。
 
大塚委員長
 では、続けて、また委員のご意見をお伺いしたいと思います。
 大下オブザーバー、お願いします。
 
大下オブザーバー
 日本商工会議所、大下です。ご発言の機会をいただき、ありがとうございます。
 ここまでの皆さんのご発言も踏まえつつ、今後の議論の中で、地域脱炭素という動きを全体としてどのように進めていくべきかという点から申し上げたいと思います。
 国内各地に出向いて、地域の状況を見たり、あるいは商工会議所、事業者の方々と話す機会も、コロナが少し落ち着いてきたことで増えてまいりました。そこで感じていることは二つあります。
 1点目は、脱炭素に関する関心は、地方も含めて、徐々にではありますけれども、中小企業も含めて着実に高まってきているということです。自治体と連携し、具体的な取組を進めている商工会議所も増えてきています。
 ただ、全体として見ると、関心の高まりはまだまだであり、特に地域や企業による関心の濃淡というのは、かなり大きいと感じています。
 それから、もう1点は、今回議論のテーマになっている、脱炭素を成長に繋げていく点に関連しますが、地域によって、脱炭素に対する関心と同様に、経済の回復の勢いというのも相当差異があると感じています。比較的堅調に回復してきている地域もある中で、コロナ以前からの人口減少、企業の流出などにより、新しいことに取り組んでいく活力がかなり厳しい状況にある地域も多いという実感があります。
 先ほど淡路委員がおっしゃった、全体的な足元の中小企業の経営状況の厳しさ、コロナ以前からの人手不足、人材不足、この厳しさもそのとおりでして、こういうことを踏まえると、脱炭素を日本全体と各地域の成長エンジンにしていかなければならないというのは間違いないですけれども、決して容易ではないし、なおかつ一様にはいかないと感じているところであります。
 他方で、脱炭素への関心以上に、エネルギー価格が上がっていることに対する不安というのは、中小企業は非常に強くなっています。そういう意味では、このエネルギー危機への対応というものを、うまく脱炭素に取り組むモチベーションにつなげていく、こういう視点が中小企業の取組を広く促していく上では非常に大事であると思っております。
 GX実行会議で大臣からお示しいただいた、即効性のある取組を地域ぐるみで集中的にという考え方は大いに賛同するところでありますので、ぜひこういったところから、まずはエネルギー危機への対応、すなわち省エネ、コストダウン、つまり中小企業の経営の改善につなげていくという視点から、脱炭素につなげていくというシナリオが描けないかと思っています。
 国レベルではGXに係る技術開発も含めて様々な取組を進めていく、こうした動きとも連動しながら、各地域は、地元の企業や産業界が持っている技術、地域の金融機関が持っている資金、大学や研究機関などの知見、こういったものをうまくつなげて、あるいは、それで不足するのであれば、近隣するあるいは連携している他の地域からそういうものを呼び込んで、地域でどのように脱炭素を成長につなげていくのかということを自ら考えていく取組というのが非常に大事であると思っています。
 こうしたジャンル・分野を超えてという意味では、国や自治体においても、ぜひ、これまでどおり環境省と経産省、環境関連の部署と経済商工関連の部署が、国、地域それぞれで壁を越えて一体となって取り組んでいくという視点も非常に大事であると思っています。
 環境省が取り組まれています脱炭素先行地域に関して、先ほど申し上げましたとおり、地域の状況、関心も活力も非常にまだら模様ですので、意欲があって、なおかつ取組の体力を持っている地域の取組を、ぜひ環境省として、国として後押しをしていただきたい。なおかつ、その取組がどのように進んでいるのか、どういう面で壁にぶつかっているのか、こういったものも含めて積極的に情報を共有し、先行地域同士あるいは他の地域同士が他の地域の取組も見ながら、お互いに競い合って、学び合っていくというしかけが非常に大事であると思っています。
 分野は違うので、同じように語ってはいけないのかもしれないですけれども、コロナ禍以前は、かなり規模も小さくて、経済的にもそれほど規模が大きくはない自治体も含めて、各地域がインバウンド需要の取組を競い合いました。同じようにいくものではないかもしれませんけれども、先ほど申し上げた、エネルギー危機への対応から、脱炭素をうまく成長や地域の発展につなげていくというムーブメントにつなげていただいて、かつてのインバウンドブームでの自治体同士の競い合いと同じように、脱炭素による地域活性化の競い合い、こういう全国的なムーブメントにつなげていくという視点が非常に大事であると思っております。
 ぜひ、そうした視点から、次回以降の議論でも、皆さんと一緒に考えていければと思っております。
 私からは以上です。ありがとうございます。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。エネルギー危機を、脱炭素の試みにつなげていくという、非常に具体的なやり方を教えていただいたと思います。ありがとうございます。
 では、太田委員、お願いします。
 
太田専門委員
 私のほうは地方自治体なので、特に林業の関係もありますので、その観点も申し上げたいと思います。
 まず、1点目ですけれども、先ほどから出ておりますように、成長というのも確かに理解できるのですが、環境省は、やはり経済産業省と少し役割も違うため、別の視点も重視していただきたいと思います。食料とエネルギーの関係として、現在、自給率が非常に落ちています。特に学校関係ですが、給食を見ていますと、ジャガイモとか玉ねぎとか、そういうものはあまり地産地消ができておりません。地産地消をすることによって、輸送コストが落ちる、つまりガソリンを使うことが少なく、環境にもいいですね。成長にとっては、むしろマイナスかもしれませんけれども、そういう観点が必要ではということが1点です。
 もう1点は、住宅のリフォームを含めたZEHとか、その関係で資料2の17ページを見てみますと、いわゆる窓とか、それから、装置関係の省エネというような観点が非常に強いのかなと思います。今、木材は非常に断熱性があるということで、CLTとか木材を使った住宅のリフォームであったり、学校をそういうふうに変えていけば、地方の工務店を含めた経済対策にもなるし、エネルギー対策にもなるため、そういう観点を重視していただければありがたいと思っています。
 3点目は、地方鉄道の問題が今言われていますが、JRも脱炭素の問題に取り組んでいます。ほとんど都市では考えられない、ディーゼル車の環境問題というのは非常に深刻な面があります。そういう意味で、電動車をドイツのようにもっと開発をしていくと、東南アジアを含めて、輸出にもつながるんだろうというように思います。それから、電動車のほうがランニングコストが落ちるはずなので、地方鉄道の赤字、解決はできないものの、赤字が少なくなるとか、そういうようなことにもつながります。
 それから、もう1点だけ。G7の議長国ということで、国際貢献というのが非常に重要になってくると思います。そういう意味で、例えばヤシガラを、今日本に持ってきて、日本で燃やしてバイオマス発電というようなことはやめて、東南アジアでヤシガラの発電をしていけば、それは大きな国際貢献になるし、環境問題への貢献になるというようなことで、ぜひそういう方向で進めていただければありがたいと思います。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。それぞれ具体的なご発表をしていただきました。ありがとうございます。
 では、森田委員、お願いします。
 
森田専門委員
 どうもありがとうございます。事務局の皆様、とても分かりやすい資料をありがとうございました。とても勉強になりました。
 3点ほど、手短にコメントをいたします。
 1点目は規制的手段とかカーボンプライシングなどの経済的手段について資料でも触れられていましたが、これらの重要性についてです。IPCCの新しい報告書でも、気候変動の緩和策に関する政策手段というのが、より規制的な手段、カーボンプライシングへシフトしているということ、そして多くの規制や経済的手段は既に排出削減の効果が証明されているということが示されています。自主的な取組も進められていますが、こういった規制的・経済的手段をしっかり入れていくことが、金融などの取組をうまく進める上で非常に大事であると感じております。
 2点目はDX関連です。6月に欧州委員会が、新たな地政学的文脈におけるグリーン・デジタルトランジションのレポートを出していました。それを読んでみると、デジタル技術が温室効果ガス排出量の測定・報告・検証などをサポートするですとか、脱炭素などに貢献するようなビジネスモデルの構築などに貢献すること、あとは気候変動対策だけでなく生物多様性対策の促進など、いろいろな問題に貢献することが示されています。また、そのデジタルトランジションにおいて、それを支える再エネというのが非常に重要になってきていて、脱炭素トランジションにおいて、今日、図が示されていましたが、イノベーションという観点だけでなく、既存の再エネなどの技術を早く着実に入れていくということが、デジタルトランジションにおいても重要ということで、デジタルトランジションとグリーントランジションとの関係ということについて、もっと検討をする必要があるというふうに思います。
 3点目ですけれども、脱炭素に向けた社会経済システムの変革の道筋というものを、先ほど伊藤委員からもありましたが、様々な委員会で議論されていることの整合性を考えながら、そういった道筋をしっかり示して、いろいろなステークホルダーに分かりやすく示していくことが必要だと思っています。
 国家レベルでやれることと、そしてローカルレベルの取組との整合性の話、また、国内の問題と国際協力の観点での日本としての方針の整合性といったことなども考えていく必要があると思っています。
 また、G7などで日本が国際的にもこういった議論をリードしていく立場になる中で必要と思うことの一つとして、気候変動と生物多様性との関係性がこの委員会の中で議論をされてきますが、まだまだ国際的な文脈の中での日本の気候変動と生物多様性にまたがる議論の中でプレゼンスというのは、あまり高くないように思っております。例えば一つの事例ですけれども、気候変動枠組条約の中で資金に関する常設委員会のフォーラムというのがあって、昨年から引き続きネイチャーベースドソリューションがテーマなのですが、日本を含めてアジアのプレゼンスが低い印象です。国内では気候変動と生物多様性の議論の整合性も議論をされ始めていますが、国際的な議論を理解しつつ、両方の問題の関係性を見ていく必要があるというふうに思っています。
 以上です。
 
大塚委員長
 非常にたくさんのことをご指摘いただきました。
 では、馬奈木委員、お願いします。
 
馬奈木臨時委員
 馬奈木です。ありがとうございます。
 私からは、制度の面についてお話しさせていただきます。これから、さらに支援制度が必要でありますとか、情報をきちんと中小企業まで伝えるというのは、多くの方がおっしゃいました。
 その一方で、私が一番大事だと思うのは、J-クレジットやGXリーグなど既存の多くの制度がある中で、煩雑に見えるため、新規の事業者が、新しくカーボン市場に入りたいと思っても、分からないから入らないというのがよくあるということです。
 そういうときに大事なのが、既存のやり方だと、例えば森林でJ-クレジットじゃなくても、通常の新しい自主的な排出権市場の枠組みで取組をしようとした際に、どの木のタイプだったらそれを共用できるかとかいうことが話題になるわけです。実際一番大事なのは、自然資本を傷つけない範囲において、脱炭素に対して前進すればいいと思うんです。
 そういうときにおいては、化学的な手段でCO2削減ができたことを証明させることを条件に、比較的制度の規制を緩和しながら、多くのオプションを提示することが必要になるかと思います。もしそういうことができれば、例えば森林のほうですと、早生樹のような早めに育つ木のタイプも導入されやすく、それ自体が生物多様性を傷つけなければいいわけです。
 もう一つは、農地貯留も、バイオ炭でない、他のやり方も含めて新しい展開をすることによって、一毛作のところを二毛作にすることによって、CO2を削減するなど、アメリカに似た取組も許容するでありますとか、複数のタイプが出てくると思います。そうすると、そのやり方を支援する比較的大きめの企業が地域に参入して、地域と一緒に展開をすることも可能になります。この大きめの企業も含めて、小さめの自治体でやる理由は、地域の土地代が安いからであります。そうすると、その地域で新しい土地利用ができますので、実質、地方創生にもつながります。
 そういうような取組を推進することを、ルールの簡素化をすること自体のほうが、かなり実質的な貢献度合いが大きくて、短期的に1年、2年だけの新規の補助制度ができて、その持続性がないものをするよりは、許容範囲を増やすような仕組みをぜひやっていただければと思います。
 その際の自然資本の重要性というのはかなり大事で、例えば先週、アメリカのホワイトハウスでも、自然資本管理をするというのを明確に提言されました。これは次の11月に首相、大統領が参加される、G20におけるシンクタンクユニットのT20でも、この自然資本を加味した上での産業界の投資が重要視されます。そういう意味での生物多様性を加味した上でのCO2削減を積極的に進めるルールの簡素化、そして実質的なCO2削減を担保することの証明というのを条件に、推進することが必要でないかと思います。そちらのほうが、個々の個別の蓄電池などの技術を推進して、その場その場でやるよりも実効性がある土地利用の改変になるかと思いました。
 以上です。ありがとうございます。
 
大塚委員長
 J-クレジットも、森林関係では最近ルールを新しく追加していると思いますので、環境省さんはそれとの関係を後でお答えいただけると思います。
 では、広井委員、お願いします。
 
広井専門委員
 ありがとうございます。二、三点、コメントをさせていただきます。
 1点目は、既に伊藤委員や淡路委員、太田委員もご指摘された経済成長との関連です。私も、全体として、よくも悪くもといいますか、脱炭素プラス経済成長ということで、経済成長ということが割と強調されている印象を受けました。それはもちろん非常に重要なことだと思いますが、資料の7ページでしたか、この小委員会の中間整理で出されたゴールとしてのサステナブルな経済社会、そこでの人の幸福というのと若干温度差があるように感じました。
 経済成長は、もちろん重要ですけれども、ただ短期的なGDP増加だけを追い求めていては、かえって失われた何十年ではないですけれども、経済にとっても果たしてよいのかというおそれがあると思います。
 そこで、重要なのは2点あると思いますけれども、一つは時間軸ですね。これはできるだけ長い時間軸で考えていくということ。
 それから、もう一つは、伊藤委員がまさにおっしゃられておりました、成長の定義、あるいは豊かさの指標といいますか、これは遡れば70年代ぐらいからあった議論かと思いますけど、近年、プラネタリー・バウンダリーとかそういった議論も活発化する中で、いよいよ本格化している状況かと思います。そこら辺りは、やはり注視していくことが大事で、時間軸に関しては、まさに長い時間軸というのは、すなわち持続可能性、サステナビリティということでもあり、もう一つ、強調すべきは、将来世代のことを考えるということだと思います。この点、私の認識では、いささか今の日本は、膨大な借金を将来世代に回していたり、その点がかなり危うくなっております。ですので、持続可能性に軸足を移していくことが、結果として経済成長、あるいは社会の発展にもつながるというような、そういう視点が大事ではないかと思います。
 それから、2点目は個別の話で、国土交通省のテーマともつながりますけれども、国土の空間デザインのような点を一つ重視するべきではないかと思っています。特に集中と分散というような点です。
 以前、この会でもAIシミュレーションの話をさせていただきましたけれども、大きく言えば、分散ということが重要かと思いますけど、単純な分散ではなくて、集中と分散の最適な組合せの姿。私は多極集中というふうに言っていますけれども、極は多く存在するけれども、それぞれの極となる都市や地域は、ある程度、集約的な構造で、それで過度の車依存のようなものから脱却して、先ほどもちょっと出ました、公共交通が一定充実して、ウオーカブル、歩いて楽しめる空間になっていると。それが脱炭素にもプラスになりますし、生態系にとっても、また、ひいては地方都市の活性化とか、人々のウェルビーイングにもプラスになるというような、そういう点を深堀りしていくことが大事ではないかと思います。
 言い方を変えますと、人口減少でこれから未利用地が非常に増えていくわけで、先ほどの馬奈木委員のお話ともつながりますけれど、それを積極的に活用していくことが脱炭素にもつながるというような、そういう視点も重要ではないかと思います。
 長々と失礼しました。以上です。ありがとうございました。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。中間整理は、11ページのところで次世代を尊重と書いてあって、本当は将来世代と書いていただきたかったということはあるんですけれど、広井委員がおっしゃったところは、その辺だと思います。
 では、5人になりましたので、環境省からよろしいですか。
 
地球環境局総務課長
 ありがとうございます。お時間をかけて、個別にコメントをというところまでは失礼させていただきますけれども、大下オブザーバーよりご指摘ありましたとおり、我々も足元のエネルギー危機への対応というのを、いかにこれを、ここで再エネ、省エネを導入していくというところを、将来のGXというか、脱炭素、さらには成長につなげていくかというのは非常に大事だと思っているので、ご指摘ありがとうございます。
 それから、大下オブザーバーから、先行地域、脱炭素による地域活性化の競い合いというご意見もいただいて、これについて地域グループのほうからコメントありましたら、お願いします。
 
地域脱炭素推進審議官グループ地域政策課長
 地域脱炭素推進審議官グループ地域政策課長をしております、松下と申します。
 ご指摘がありました、先行地域のフォローアップですが、選ばれたところについては、当然、交付金で支援をしていくということもありますので、フォローアップはしていきます。
 また、先行地域をモデルにして、脱炭素のドミノを起こしていくということを狙っておりますので、モデル的にほかの自治体も真似していただいたりとかいうことを考えておりますし、また、先行地域は、首長さんをはじめ、かなり意識の高い自治体ですので、そこまで行かないような自治体を引き上げていくということも、どういう施策を打つかも含めて検討をしていきたいというふうに思っております。インバウンドブームのような競い合いにできれば理想的とは思っておりますけれども、当然、横展開というか、広がりも持つようにということを心がけていきたいと思っております。ありがとうございます。
 
地球環境局総務課長
 それから、太田委員からも何点かご指摘をいただきましたけれども、特に地方鉄道がなかなか厳しい状況にある中で、今後そういった交通インフラをどうしていくかということ、これは大きな、重要な検討課題であるというふうに思っております。
 それから、森田委員のほうから、気候変動と生物多様性の関係ということについてご指摘をいただきました。今日は、自然局が入っていないので、詳細なコメントはなかなかできないんですけれども、要するに脱炭素というのは、浸透しつつありますけれども、今後、生物多様性というのをどう浸透させていくかというのは、これは環境省としても重要な課題だと思います。国際的な面も含めて、脱炭素と生物多様性をどう整合しながらやっていくかというのは大事なご指摘だと思います。
 それから、馬奈木委員から、政府におけるJ-クレジットの最近の動きのご説明をという話がありましたけれど、井上課長のほうで説明できますでしょうか。
 
地球環境局地球温暖化対策課長
 地球温暖化対策課長の井上でございます。
 森林関係のところでJ-クレジットのお話が出ましたが、そもそも日本における森林吸収という面を考えますと、20年ぐらいの樹齢のものが、一番よくCO2を吸収するわけですけれども、現在の日本の森林というのは、様々な要因があって、なかなか適切なタイミングで伐採・再造林されないため、日本全体の森林におけるCO2吸収量というのが減っているという現状があります。
 そういった中で、農水省と環境省と経産省において、J-クレジットを活用して、森林を適切に管理し、吸収量を増やしていこうという取組を既に進めております。具体的には、現行のJ-クレジットにおいては、森林を伐採してしまうと、その森林に固定されていたCO2が排出されるという整理になっており、その分クレジット量が減ってしまう状況にありました。つまり、J-クレジットを創出しようと思うと、森林を適切なタイミングで伐採して、再造林するというインセンティブが働かないということで、まさに気候変動、さらには森林経営への対応を考えると、逆行する制度になっていました。細かい説明はしませんが、より適切なタイミングで森林を伐採し、さらに再造林をすることを促すために、今般、森林クレジットに関する大幅な改正をさせていただいたところでございます。こういったJ-クレジット制度の見直しを通じて、CO2の森林からの吸収、さらには森林経営、そういったものを促進していきたいと思っております。
 森林自体はまさに地域資源でございます。そういった意味で、J-クレジットを通じまして、J-クレジットを創出した中山間地域と、逆にCO2の削減がこれ以上できない都市部の間で、クレジットを融通することで、地域間での資金循環、さらには中山間地域の活性化、そういったものにもつながるものと思っております。
 以上でございます。
 
地球環境局脱炭素社会移行推進室長
 伊藤でございますが、成長について、広井委員、それから前段で伊藤委員や淡路委員からもありましたけれど、やはり議論を進めていただくに当たって、成長の定義というところが、まさにGDPの議論だけではないですとか、いわゆる中小企業がついてこれるような成長を考えるというところは非常に肝かなと思っていますので、次回以降の議論の中では、事務局の資料の中でも成長の考え方もお示ししながら議論を深めていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 
大塚委員長
 どうもありがとうございました。では、また、委員からのご意見を拝聴していきたいと思います。
 三宅オブザーバー、お願いします。
 
三宅オブザーバー
 ありがとうございます。私のほうからも、事務局の資料は大変分かりやすく、ありがとうございました。あと、ここまでの議論を幾つか聞かせていただいて、その上で少しコメントをさせていただければと思います。
 まず最初に、冒頭ありましたとおり、大臣が発表いただいたロードマップに反映させることとして、やっぱり即効性の高い足元のできることをやろうという方針に対しては、本当にうれしく思っております。何人かの委員の方々もコメントをされていましたが、脱炭素先行地域の取組の広がりというんですか、それへの興味の大きさですとか、そういったところは私も肌身で感じていますので、大変うれしい流れだというふうに思っておりますし、ぜひもっと広がればいいなというふうに思っております。
 先ほど、大下オブザーバーから、地域によってばらつきがあるというのが現実でということもご指摘いただいて、そうかもしれないというふうに思ったのですが、とはいえ、ここ数年見ている中で、自治体が自分たちの意思で何とか手を挙げようとか、じゃあどうしたらいいんだとか、何をしたらいいのかというのを、少なくとも探しにいっているということは、本当によく感じるし、私のところにもいろんなご相談を受けていますので、その傾向自体はすばらしいことだと思います。
 ここから先、何ができる、もうちょっとやっぱりしたほうがいいんだろうなと、それから環境省さんへのお願いという意味では、この後、実際に事例が出てくるのだと思うんですね。その事例がどうやって見える化されていくのか、あそこであんな取組をして、こういう成功事例があるんだよと、その取組ってこういうふうにやったらできるんだよとかいうことが分かるように、それが目的だと思うので、そこの仕組みをどうするのかというのをもう一歩考えていただけると、先ほどおっしゃっていたような横展開にもつながるというふうに感じております。
 あと、もう1点、今までのところ、民間企業、自治体、産業界の話というのは、いっぱい聞こえてくるのですけど、何が大切かというと、時間軸の話が先ほどちらっと出ていましたけど、この10年間が重要だということ、この温暖化危機、気候危機を解決するには、それから1.5℃に最終的に抑えるためには、この10年の行動が問われるんだと、ここで分岐点になるんだということを、生活者も含めて議論できるような、そんな空気感というのをどうやって今後出していくのか、今年それが問われるのではないのかなとすごく感じております。
 それは、もちろん企業側の責任もあるんですけれども、政府と一緒になって、生活者を巻き込んで何ができるのか、生活者の購買行動、それからライフスタイルを変えていくためにはどうしたらいいのかということに、もう一歩つなげたいと。今年こそもう少しそれがつながるようにしていきたい。そのためには、カーボンフットプリントなどの見える化で、それがお客様にちゃんと伝わって、お客様がそれによって自分のライフスタイルを変えたり、それから企業もそれに向けて切磋琢磨して、より負荷の少ないライススタイルが送れるような提案ができるとか、そういったことにつながるような施策、それから、そういった取組というものの強化を、ぜひ一緒に考えていただきたいなというふうに思っております。
 やっぱり見える化というのはすごく大切で、企業のそういった取組がお客様にも伝わるし、逆に言うと、やはり透明性を上げていくことによって、資料にもありましたとおり、ESG投資の国内外からの呼び込みというのにもつながっていくんだと、企業の評価がそこで見えてくるということの大切さみたいなことは、もうちょっと考えていきたいなというふうに思っております。
 最後に一つだけ、カーボンプライシングは何名かの委員の皆さんがコメントをしていただいて、本当に私も心強く思っておりますし、伊藤先生、最初おっしゃっていただいたように、その議論はぜひともしていただきたいですし、していくべきだと思っていますが、もう一つ、あまり語られてないことの中に、カーボンプライシングをどうやって取ったらいいのかということは結構議論になっていると思います。その制度設計みたいなところ、それももちろん大切なんですけれども、それと同時に、集めたお金で何をするのか、どこに使っていくのか。脱炭素に向かっていく中では、当然、負荷のかかってしまう産業は、同じ難易度なわけではないですよね。そういった負荷がかかってしまうところに、どうやってカーボンプライシングで集めた資金を使って、それを有用に使っていけるのかみたいなところまで含めて、ぜひ議論をしていただくと、出す側の納得性も高まるのではないのかなというふうに感じている次第です。
 以上です。ありがとうございます。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。見える化の話とか、生活者を含めた気候危機の解決とか、重要な点についてご指摘いただきました。
 では、冨田オブザーバー、お願いします。
 
冨田オブザーバー
 冨田でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 まず、これまでの小委員会の議論の中では、目指すべき社会像であるですとか、公正な移行の観点など、ほかの会議ではあまり議論がされなかった点についても取り上げていただいたことに感謝申し上げたいというふうに思います。
 大事なのは、やはりそれらを着実に実行に移していくということだと思いますので、その観点から、お示しいただいた四つの論点について、3点意見を申し上げたいと思います。
 まず、1点目は、皆様もおっしゃっていらっしゃいました、成長との関係についてです。脱炭素を日本の成長エンジンへと展開していくためには、中長期的にグリーンでディーセントな付加価値の高い雇用を生み出していくことも必要でありますので、GX実行会議の中でも、連合の芳野から意見申し上げさせていただきましたが、公正な移行の実現を六つ目の柱に据えて、GXの実現は脱炭素の実現×経済の成長・発展×グリーンな雇用の創出というようなことをご検討をいただきたいというふうに思ってございます。
 あわせて、この公正な移行の実現に向けましては、政府、地方自治体、企業に加えて、労働者、生活者など各主体が積極的に参画できる社会対話の場を設置し、様々な政策立案が必要と考えますので、お示し、ご検討をいただくロードマップの中には、その具体的政策立案に向けたプロセスをどのように書き込んでいくのかといったことについてもご検討いただけるとありがたいというふうに思います。
 なお、この点につきまして国際展開との関係で申し上げますと、来年のG7は日本が議長国となりますが、同時期に開催される労働者代表のL7では、連合がホストとなります。各国の労働者代表における最大の関心事は、やはりこの公正な移行でありまして、我が国の取組と方向性については、この会議やGX実行会議での議論などを発信していくことになります。改めて、政府の皆様方には、この公正な移行の国際標準づくりにおけるイニシアチブの発揮も期待をしたいと思いますし、日本国内においても各セクターによる一致・協力した取組を背景とした強固なスタンスが構築されていくようにご尽力などにもお願いをしたいというふうに存じます。
 2点目は、地域とくらしについてです。地域やくらしにおいて脱炭素を促していくためには、この委員会で議論もしました、目指すべき社会像であるサステナブルな経済社会の実現とそこでの人の幸せ、このことが全ての国民に注視され、認識されるとともに、その実現した姿を誰もが描けるということが大変重要だと思います。加えて、中小企業も含めて、GXを担う産業のウェルビーイングが担保されることも重要でありますので、適正取引を促していくという観点からも、GX投資が生み出す付加価値は、開発から販売に至るまでのそれぞれの段階で適正に評価をされ、取引価格だけでなく、消費価格にも反映されるような仕組みづくり、こうしたことの検討も必要ではないかというふうに思っております。
 また、規制的手法の検討に当たっては、労働者保護と企業の予見可能性確保の観点から、関係分野の労働組合を含めた関係者の声を丁寧に聴取をし、その意見が反映できるような仕組みというものもご検討をいただきたいというふうに思ってございます。
 3点目は、金融とビジネスについてです。ESG投資を日本に呼び込むには情報開示が大変重要であり、特に非開示情報とされてきました人的資本情報の積極的な開示が求められるというふうに思います。
 加えて、個々の企業行動におけるSやGの側面でも、行動規範が守られるよう、デューデリデンスがしっかりとなされ、その状況が取引先や消費者に分かりやすく示されることが評価につながるのではないかというふうに思います。
 先ほど、三宅オブザーバーのほうからもありましたが、ぜひこうした点の見える化につきましても、ご検討をいただきたいというふうに思います。
 私からは以上です。
 
大塚委員長
 たくさんのことをおっしゃっていただきましたが、公正な移行については、後で環境省さんからお答えいただけるんじゃないかと思います。
 では、浅利委員、お願いします。
 
浅利専門委員
 ありがとうございます。大分、皆様から意見が出尽くしている部分はあるかもしれません。まず、最初のほうでご発言があった循環経済、うまくしたたかに展開していくような考え方が必要だというところは完全に同意しておりまして、また、別の機会に議論いただけるということでしたので、私のほうでも、頭をつくっていきたいなというふうに思っております。
 それと、論点の最後のほうで、今度のアジアへの展開というようなお話もございました。資源循環分野でも、政府主導となった3Rフォーラムというような政府間の交渉というか情報交換と、あと学術とか民間が一緒になってやっている国際学会との連携というようなことも模索してきました。そういう意味では、産学官の連携でこれを推し進めるというスキーム自体、大分アジアでもこういう研究者のネットワークが徐々に見えるようになってきていると思いますので、何かそのモデルとして発信していけると、継続的に産学官、アカデミアも含めた推進というところに貢献できるのかなという気がしております。
 それと、来年のお話もありましたけれども、約10年後というふうに考えますと、それまでのナショナルイベントというところでは、一つ、万博があるのかなと思っています。2025年の万博ですね。これもしっかりレガシーづくりの一歩に位置づけていただけないかなと思っていまして、ここがまさに脱炭素のショールームになるというところもつくっていく。それが、太田市長もおられますけれども、脱炭素都市なんかが、逆に会場をはみ出たサテライト、サテライトと言うと、ちょっと万博さんに怒られるのですけれども、実際に脱炭素を実感できる場所みたいな形につながっていくと、夢のある展開になるんじゃないかなというふうに期待しています。
 夢のあるというところでいきますと、脱炭素のライフスタイルをこれから打ち出していこうということで、新たな組織といいますか、省内でも立ち上がったというふうに聞き及んでおりますけれども、具体的に暮らしがどうなるのかというイメージ、先ほどから見える化という話もあるんですけれども、やはりなかなか一般のところには落ちてこないのかなというふうに感じていまして、このイメージづくりをしっかりしていく。それはできるだけ若い方とか、頭の固い私たちだけじゃなくて、柔らかいクリエイティブな人たちも巻き込んでやっていく。ファッションであったり、ゲームであったり、いろんなわくわくするような形で、大変この移行は痛みを伴うしんどいものだと思うのですけれども、それを裏に返して楽しめるような、そういう知恵の絞り方ができたらいいなというふうに感じて聞いておりました。ぜひ、この辺りも継続的にしっかりと議論をしていただけたらと思います。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。楽しめるようにというのは、あまり今までなかった視点ですが、非常に重要なお話だと思います。
 では、武藤委員、お願いします。
 
武藤専門委員
 ありがとうございます。日本国内の議論をお伺いしながら、日本ならではの国際協力へのヒントをたくさんいただいております。ありがとうございます。
 国際協力に関しましては、重要なキーワードである、アジアゼロ・エミッション共同体のお話、JCMなど既に挙げられておりまして、私のほうからは、それらがうまくつながるような形で、ベースラインとしては経済社会変革を支える投資、それから人材育成のバリューチェーン、そういったものを構想できたらばと思っているところです。
 実は気候ファイナンスですとか援助の世界では、資金はあるのですけれども、よい案件がない、パイプラインがないということが非常に大きなボトルネックと認識されております。
 具体的にどこにターゲットを当てるかということなのですが、アジアを見ますと、やはり脱炭素の主要舞台は、何といっても大都市です。JICAでも成長著しい大都市での需要に対応すべく、エネルギーマスタープラン、人づくり、制度づくり、発電をはじめとしたインフラ支援を実施してきています、省エネも行っています。しかし、よく考えると、ここの会で議論されているようなライフスタイル、産業構造転換、経済社会変革への円滑な対応、ウェルビーイング、こういったような観点は、正直、手が回っておらず、抜けております。逆に、そこが国際協力の今後の大きな付加価値分野となるのだと思っているところです。
 一方で、実際の事例、マレーシアのイスカンダルですとか、タイのバンコクなどを見ていくと、JICAの協力ですとか、日本の都市との連携を下地にしながら、低炭素、脱炭素に向けて着実に成果を上げている都市もございます。そんなところをすごくヒントにしたいと思っています。
 では実際、どんなところがこれから日本がG7でリーダシップを示し得る分野かといいますと、例えばですけれども、アジア、成長する都市のGXというようなタイトルの下、都市をターゲットとしていくことを提案したいと思っております。そのイメージは、今までの都市間協力にとどまらず、中央政府と都市との役割分担を含む制度改善ですとか、今まで抜けていたような視点を入れた持続的なマスタープランづくり、案件づくり、そして、その次にグリーンファイナンス、トランジションファイナンス、それも官民合わせてというような、バリューチェーンをつくっていきたいと思っております。
 そういった中からJCMの対象案件も出てくる。もちろん理想的には、適応や防災も勘案しますし、自然資本への対応もしっかり入れていくという、本当に理想は尽きないんですけれども、そういった都市への包括的な協力プログラムができないかと思っているところです。
 それを実現するには、日本自身の中での持続可能なビジョンとか社会づくりの成功事例がすごく重要ですので、よろしくお願いいたします。
 私からは以上です。ありがとうございます。
 
大塚委員長
 アジアゼロ・エミッション共同体の形成に向けて、非常に重要な視点をご指摘いただいたと思います。
 では、鶴崎委員、お願いします。
 
鶴崎専門委員
 住環境計画研究所の鶴崎と申します。今回から参加させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
 私は、ライフスタイル分野に関連して意見を出してほしいというふうに依頼されております。ライフスタイル分野に関しては、ライフスタイルの転換が必要だということは、誰しも分かっていることではあるのですけれども、なかなか捉え方が難しい課題だとも思っています。
 そもそも、ライフスタイルの前提となる需要というものを、もう少し掘り下げていく、あるいは見詰め直していく必要があるのかなというふうに感じております。前々回、第3回ぐらいにコンパクトシティの議論があったかと思うのですが、その中で自動車と都市の密集度というのは明確な相関があるということで、そういう知見から、いかにまちづくりを車に依存することのない形に転換できるかといった課題に長年取り組まれてきたと。
 我々は、ともすると自動車社会を前提として、その自動車をいかにEV化するとか、あるいはせめてエコドライブをやろうとか、そういうところに行ってしまいがちなのですが、そもそもうまく都市を構成し、まちづくりをやっていけば、公共交通がしっかり活躍できる、あるいは、先ほど広井委員もおっしゃっていましたが、ウオーカブルなまちということで、アクティブモードでの移動ができる、そういう形になっていきますし、また、このコロナ禍でテレワークだとか、こういったテレカンファレンスといいますか、こういった形での活動が可能になってきておりますので、そもそも移動の必要性が失われるという機会もあろうかと思います。そういう形で、従来の需要を前提にすることなく、もう一度掘り下げて、そもそも必要なのかどうかを考える視点が必要ではないかと思っております。
 というのも、例えば、私は集合住宅に住んでいるのですが、電気に関しては再エネ電力を契約するという選択肢が今あります。それをやれば、ある程度オフセットできると。ところが、ガスで給湯をやっているのですが、このガスの給湯というのは、高効率給湯機がございますけれども、それ以上の脱炭素のオプションがほとんどない状況です。これから10年、15年たてば、カーボンニュートラルの合成メタンが供給されるようになるかもしれませんが、それまでまだしばらく時間がかかりそうです。
 こうした中で、既存の集合住宅の給湯分野の脱炭素化をするにはどういうオプションあるのだろうかと考えますと、実はほとんどないと。そういう話をいろんな方としていますと、そもそもお風呂の在り方だとか、入浴といったものから、考え直す必要があるのではないかといった話もしています。例えば、浴槽が本当にお風呂に必要なんだろうかとか、あのスペースをうまく使えば、もう少し違った機器が展開できるのではないかとか、あるいは銭湯の文化を復活させれば、集合してお風呂に入る、そこを脱炭素化することは恐らくできるだろうとか、そういった話もしています。
 このようにライフスタイルの転換のことを考える場合には、暮らし方や住まい方を、いかにデザインしていくのかというところまで一度立ち戻らないと、なかなか解が見えてこないではないかというふうに感じています。
 もう1点、今日もありましたけれども、カーボフットプリント的な話です。見える化やフィードバックが重要だということは長年言われております。私どもも、いろんな形で実験などをやってまいりました。それは今後、しっかり進めていかなければならないのですけれども、実はもっと簡単なことでも工夫できる余地があるのではないかと、最近感じました。
 過去のこの会議において、浅利委員がご紹介されていた、京都市のごみが20年で半減したという例を拝見して、そんなに進んでいたのかとはっとさせられました。自分の住んでいる川崎市のデータも見てみたのですが、2005年から約3割減っていました。さらに、政令市の中で、川崎市は1人当たりのごみ排出量が一番少ないということがホームページに書かれていまして、そういったことも知らなかったのです。こういったことは知れば、日頃、非常に面倒くさいと言ったらあれですが、分別をやって、ごみの対策をいろいろやってきたことが、こんなふうに結果として表れているんだなと、すごく力をいただいたというところがあります。こういうものが消費者にいかに伝わるかということなのですが、恐らく、まちでも広報誌だとか、いろんな工夫はされていると思うのですが、なかなか目にする機会がないと思います。
 一方で、川崎市さんは、例えばごみの分別のアプリなどをやっていて、そこは次の粗大ごみの回収はいつだろうといった目的でよく見ています。そういう機会でぱっと通知していただくなどすると、フィードバックもしやすいのではないかなと思いまして、デジタル時代ならではのフィードバックの在り方というのは、実は本当に基本的なところにもまだ可能性が潜んでいるのかなということも感じました。
 今日は具体的な話で、かなり細部の話になりましたが、次回、また地域やまちのところに関して話題になるということですので、また考えてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。需要がそもそも必要かという視点が重要だということを教えていただきました。
 では、環境省さん、この辺でまたご回答をいただけますでしょうか。
 
地球環境局総務課長
 三宅オブザーバーから、実際の取組の見える化のご指摘をいただきました。先ほど、大下オブザーバーからいただいたご意見と共通する部分もあろうかと思います。そうしたことも含めて、取り組んでまいります。
 それから、ライフスタイル、生活者を巻き込んだ機運醸成についてご意見をいただきました。ライフスタイルについては、浅利委員からも、わくわくするような取組、それから鶴崎委員からも、見える化とデジタルを活用したフィードバックという、デジタルを活用したフィードバックはナッジ事業なんかでもやっておりますけれども、そういったご指摘も踏まえながら、いかに効果的な見える働きかけを行うかということを検討してまいりたいと思います。
 それから、三宅オブザーバーから、カーボンプライシングについて、お金を何に使うかということの検討が重要というご指摘をいただきました。本小委員会において、次回、どのような投資促進が必要か、具体的な議論をしていきたいというふうに考えております。
 それから、冨田オブザーバーから、グリーンな雇用の創出といったご指摘をいただきました。公正な移行に向けて何をやっていくかということ、非常に重要かつ、我々も知恵がまだまだどうしたらいいかというふうに、環境省としてもいろいろ考えているところでございますので、いろいろお知恵をいただければと思います。
 それから、GX投資が生み出す付加価値が消費価格に転嫁され、しっかりと反映されるような仕組み、そういったことを通じて環境価値の高い、環境に配慮した製品がより高い価格で売れていくと、そういう経済にすることは大事だと思います。カーボンプライシングなんかも含めて対応していくことが必要だと思うんですけれども、引き続き、取り組んでまいりたいと思います。
 それから、武藤委員のほうから、アジアへの国際協力の在り方について具体的なご指摘をいただきましたので、その点に関して西川推進官よろしいでしょうか。
 
地域環境局国際脱炭素移行推進・環境インフラ担当参事官室
 ありがとうございます。国際脱炭素移行推進環境インフラ担当参事官室の西川です。
 武藤委員、貴重なご意見いただきまして、誠にありがとうございます。G7に向けた日本ならではの打ち出しということで、都市をテーマにした包括的な協力プログラムができないかというご提案をいただきまして。まさに、これについては、我々、環境省でも、今、現在進行形で議論をしている方向性と一致をしていると思っておりますので、ぜひ具体的な相談を今後させていただきたいと思っています。
 具体的には、例示にいただきましたように、政策支援のGtoGの政策対話であったり、計画策定支援みたいなところ、マスタープランの支援ということは、JICAでも環境省でもやっておりますし、都市間連携であったり、人材育成は、まさにJICAさんのお強いところですし、ファイナンスという、その制度、人材、投資のトータルバリューチェーンを国、地方、実施機関、企業が連携をしてやっていくという、そういった姿が打ち出せるのが日本の強みかなと思っておりますので、そのG7の打ち出しについては、ぜひ今後もご相談をさせて、ご指導をいただければと思っております。
 また、関連する指摘としまして、浅利委員からも3Rイニシアチブや3リンクスの例を取って、産官学の連携の重要性、そのモデルの発信というご指摘もいただきまして、脱炭素分野でも国環研をはじめとする長期戦略を策定するためのシナリオ分析モデルを研究チームが開発して、それをアジアに展開し、さらにそれによってGtoGの支援でカーボンニュートラルに向けた道筋をつくると。その道筋に沿った具体の脱炭素事業の実装というところでは民が入ってきて、産学民のパッケージ支援ということをやっているというふうに自負をしておりますので、そういった資源循環分野、脱炭素分野での取組の発信ということもご指摘を踏まえて検討をしていきたいと思っております。
 もう一つ、冨田オブザーバーからありました、公正な移行の国際標準づくりというところでございまして、宮下委員からも、前段にありましたトランジションファイナンスルールの策定といった動きも金融機関を中心に動きがあるというふうに認識をしておりますが、環境省のほうでも、パリ協定の6条ルールを昨年のCOPで合意をするのに貢献したという経験も踏まえて、環境十全性、さらには人権やジェンダー、情報公開といった十全性の高い炭素市場を世界的につくっていくことへ貢献していきたいと、6条ルールを世界的に普及していきたいということで。まず、炭素市場の市場整備を図ることで、それによって日本の脱炭素技術や脱炭素インフラが適正に評価をされて、海外で展開し、それが国内産業に裨益をするというような絵姿を描いていければと思っているところでございます。
 すみません、もう一つだけ、森田委員から先ほど前のラウンドでいただいた気候変動と生物多様性の関係のところで、ちょうど今、G20の環境大臣会合をバリでやっておりますけれども、昨日、インドネシア政府と包括環境協力パッケージというものを署名しておりまして、その中でもマングローブ保全というインドネシア政府が非常に重視する分野での協力展開を打ち出しております。こちらは気候変動、その吸収源としてもそうですし、あるいは緩和という意味でも気候変動対策にもなり、生物多様性保全にもなり、さらに海洋プラスチックの漂着場所にもなっておりますので、そういった資源循環対策にもなるということで、こういったネクサスの事例を多くつくって、発信もしていくということでも具体の取組を進めたいと思っております。
 以上になります。
 
大塚委員長
 再開します。
 では、西尾委員、お願いします。
 
西尾臨時委員
 ありがとうございます。環境省が中心になって議論すべきことということについて、2点申し上げたいと思います。
 1点目は、環境省が中心となって「脱炭素+成長」を議論するに当たっては、既に多くの委員の方々が指摘されているように、地域、あるいは市民も含めたライフスタイル変革、暮らし方変革を実現するために、総合的な観点からの取り組み支援が必要だと考えます。
 例えば消費者に対しては、脱炭素効果の高い住宅への投資は重要だと思いますが、単に優れた箱物への住み替えを推進するだけでなく、その住宅において低炭素・脱炭素型の暮らしを実践、推進させること、さらにはそこでの経験や学びを通じて、消費者のライフスタイルそのものを見直して変革していくというソフト面の施策との連動が重要だと思います。ソフト面に関する施策として、例えば食と暮らしのグリーンライフポイントが始まっていますが、この施策の中でも、脱炭素効果の高い住宅への住み替えと関連の深い暮らし方に関する推進策を抽出して、セットにして提示することが必要だと考えます。これが1点目です。
 2点目としては、ライフスタイル変革や脱炭素型の行動は運動であり、自発的で自己裁量性の高いものです。そのため、その成果をどう捉らえるかは難しいことです。ライフスタイルを変える、それを定着させるためには、規制等で無理やり行動制限するという手もありますが、これではある特定の行動変容に留まってしまいます。市民にビジョンを理解してもらい、気づき、共感し、行動変容をしてもらうことが求められますが、これには時間がかかり、すぐには成果が得られないものです。その上、行動変容することで経済的なインセンティブが得られればよいのですが、多くのエコロジー行動は経済的な価値に結びつかないことが多いのが現状です。
 しかし経済的な価値には結びつかないものの、自分たちが地球環境のことを考えて行動変容をする、あるいは、暮らし方をちょっと変えることによって、よりよい社会をつくることに貢献できるんだということが実感できること、しかも、それが同じ志をもった地域や企業や組織と一緒になって行動することによって実現できるんだということは、行動推進上、重要です。このような社会的な成果を実感できれば、たとえ経済的なインセンティブが得られなくても、やりがい感が得られるでしょう。そしてそのような地域や企業や組織との間に絆や共感や信頼感といった良好な関係が形成されるでしょう。
 こうなって初めて経済的価値に結びつくかもしれません。それでもなかなか結びつかないかもしれません。しかし、自分たちの地域や社会や地球をよりよくするために、一緒になって行動する、やりがい感や生きがいを感じる社会の構築は、私たちにとって経済的価値よりも意味があるのではないでしょうか。
 何が言いたいかというと、今回の目標である「脱炭素+成長」の「成長」は、経済面での成長だけではなく、これまで述べてきた社会的価値を高める、すなわち、社会的側面での成長、それらを両輪とする成長を目標にすべきではないかということです。そのためには、社会的価値とは何か、それをどう捉え評価するか、その価値を高めるための仕組みをどうつくるかといった議論も必要なのではないかと思います。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、小野委員、お願いします。
 
小野専門委員
 ありがとうございます。事務局の方々のすごく分かりやすい資料等、ありがとうございます。私はエネルギー業界の企業活動というところが中心的なお話にはなってくるんですけれども、今、夏場も言われていて、今年の冬場も電力の予備率がかなり低いというふうに言われていて、電力が不足するだろうということが予測されています。
 ほかの委員の方もご指摘いただいた方がいらっしゃったんですけれども、今この冬場の電力が足りないということに対しては、取りあえず目の前のことを何とかしなければいけないという施策で、節電だったり、小売事業者のほうから需要家の皆さん、お客様に向けて節電やPRの施策を打つことで、何とか対策をしていこうというような形が、今、国として取られている施策なんですけれども、これが短期的なお話だけではなくて、やはりその先に中長期的な視点でこの脱炭素の目標を立てていって、短期的なものをこなしていくよりかは、長期的な目標を立てたところから逆算、バックキャストをして中間目標を定めていくというところ、この考え方に基づいて目標を立てていくということが大事だなというふうに、改めて感じています。
 もちろん目標は変動していくものだとは思うんですけれども、この大きな目標に対して、現在地が今どこかというところを、官民が共通言語として認識していることがすごく重要なのかなというふうに思っています。
 今、エネルギー業界の立場から見たときに、脱炭素に向けて、ざっくり大きく分けて二つの課題があるなと思っておりまして、まず、一つ目は、今、小売電力事業者の数がどんどん減っていっている状態にあります。それはもちろん自然エネルギーを販売する事業者というところも、例外なく今減っていっておりまして、そうすると、自然エネルギーを消費者が選択するための選択肢というものが直接的に減っていっていることにもつながりますし、あとは、この選択肢を知らない方というのが、世の中を見たときに大多数の方々なので、その方々が選択肢に触れる機会というものも目に見えて減っていっているなというところに、すごく危機感を感じています。
 もう一つが、発電事業者側のお話なんですけど、特に太陽光発電のほうの新規開発の件数自体もどんどん減少傾向にあるなというふうに感じています。これはFIT制度の買い取り価格というものも年々下がってきておりますし、風力発電も同じなんですけれども、大型案件を開発しても、なかなか投資回収の見込みが立てられないという形で、新規開発を考えている、悩んでいる事業者さんがたくさんいるということを耳にしています。
 今後、FIP制度というものも始まっていきますが、これも変動要素が大きいものなので、やっぱり大きな投資に踏み込めないという状況かなと思っています。
 これらそれぞれの課題に対して、やっぱり10年後という中長期的な目標に向けて、脱炭素という観点で、私たちが逆算して、日本が達成すべき目標を固めていくための議論をこの場で進めていけたらなと。すみません、ちょっと抽象度が高いお話なんですけど、感じています。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 髙村委員、お願いします。
 
髙村委員
 ありがとうございます。委員の先生方がご発言になったところに大きく賛同するものです。三つか四つほど、その中でハイライトしたいと思いますが、どちらかというと、今後の検討に向けてという意味で発言をしたいと思います。
 一つは、既に伊藤先生、広井先生をはじめ、ここでいう成長とは何かみたいな問いがあったと思います。既に伊藤さんからお答えあったところですけど、これはやはり非常に重要だと思っていまして、結局このロードマップをつくっていくときに、どういう社会の実現を目指すのかということと、それが本当に進捗をしているのかということをしっかり見極めるという点でも、この点はやはり議論を深める必要があるという点だというふうに思います。これが1点目です。
 それから二つ目ですけれども、50年で行き着く先とロードマップをつくっていくときに、ぜひ二つのレイヤーで議論をできるといいなというふうに思っています。
 一つは、やはり今、足元でどうやって、できる限りの脱炭素化、排出削減ができるのかという点です。これは、この重要性というのは、委員からもご指摘があったように、例えば企業、事業会社の気候変動対応の評価にも、企業評価につながってくるのはもちろんですけれども、まさに大下さんが非常に適切にお話を指摘されたと思うんですが、今、足元のエネルギー供給不安ですとか、エネルギーの高騰に対して、足元でそうした事業者と家計を、実はこの気候変動対策というのが助けていく、そういう側面を持っていると思います。エネルギーの効率の改善にしても、例えば、あと自家消費型の再生可能エネルギーの導入にしても、こうした対策は今、足元のエネルギーについての事業者や家庭の不安に応える対策だというふうに思います。そこを、やはり具体的にどういう対策を足元で取っていくのかということをしっかり議論をする必要があるのではないかと思います。
 これは当然、インフラの差し替えですとか、設備の更新に関わってくると思うんですが、まさに景気の先行き不安もある中で、しっかり国がこうした政策で需要をつくっていくという意味でも非常に重要だというふうに思います。
 もう一つの視角というのは、とはいえ50年カーボンニュートラルに向けた整合的な10年の先を見通した移行の戦略、道筋というのを明らかにするということではないかと思います。新たな技術開発も、あるいはソリューションの開発も含めて、これは必要だというふうに思っています。恐らく、これは明確な目標、あるいは、それは同時に、中間目標をしっかり示した道筋であることが必要だと思っていまして、やはり国がその方向に向けて、しっかりその速度感と規模感を示して、政策の方向性を示すことが投資環境を改善する一つの条件だというふうに思います。
 これは同時に、その中間目標、明確な目標に沿って、国がインフラと、場合によっては規制の見直しや、新たなルールづくりをしていくという、そういうベンチマークにもなっていくというふうに思います。
 その中で、ぜひ検討が必要だと思いますのは、新しい技術やソリューションを生み出していくときに、生み出される技術やソリューションがしっかり市場で評価をされる、つまり排出をしない技術やサービスというのが市場で評価をされるような社会システムをどうつくるかということだと思います。そうでなければ、新しい技術を事業体がお金をかけて、しかも開発をして、市場化できるか不透明性も残る、どうしても残るものについて、しっかりやはり行動し、開発をし、投資していくということを可能にするために必要だというふうに思います。その文脈で、やはり炭素を排出をしないことの価値が、しっかり市場で評価をされる仕組みとしての炭素の価格づけというのを考える必要があると。そういう意味では、伊藤先生がおっしゃったんですけれども、足元で今幾ら払うか以上に、将来に向けて、その価格が上がっていく、価値が上がっていくということをしっかり示す、そういう価格づけの議論ができるといいのではないかというふうに思います。
 最後ですけれども、多くの委員がおっしゃっていましたけど、いかなる国の政策も、地域で、足元で実践をされて、現実のものになって、初めて地域の脱炭素化、そして国の脱炭素化が実現すると思っております。そういう意味では、いろいろな施策を特に環境省さんを中心に、先行地域もそうですし、温対法の改正もそうですけれども、一度、さっきの炭素の価格づけもそういうところはありますけれども、特に地域に関して、国の施策を現在の様々な取組を見ながら、改めて見直すということが必要ではないかというふうに思います。その中には、関係するほかの省庁さんも参加をしていただいて、地域にどう様々な施策が統合的に実現できるか、そこに課題がないのかという、地域を軸として、国の政策を改めて見直すという、そういう検討ができるといいんじゃないかなというふうに思っています。
 以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 では、環境省さん、お願いします。
 
地球環境局総務課長
 ありがとうございます。西尾委員からのハードも大事だけれども、ソフトも大事という点、おっしゃるとおりかと思います。
 脱炭素の価値は、先ほどのご意見でも共通していますけれども、そういったものも社会で評価されていくことが大事ということは、中間整理の中のライフスタイルのところでも、そういったものが消費者に選好されることによって、より求められて、脱炭素で高付加価値な製品の需要が高まるような社会になっていくことが重要ということを、ライフスタイル変革の一つの効果としてうたっているところでございまして、そういった観点を含めて検討をしてまいりたいと思います。
 それから、小野委員からありました、足元で再エネをめぐっていろんな課題があること、おっしゃるとおりでございます。小売事業者さんが減っている点について、エネ庁さんのほうでいろいろ検討をされているところでございますが。環境省サイドからすると、再エネを導入促進していくという観点から、再エネスタートという消費者向けの自家消費型の再エネ導入のキャンペーンを張っていたりとかですね。あと、太陽光の新規開発の件数が、足元は減りつつある中で、一方で、エネルギーミックスを達成するためには、たくさん導入していかなきゃならないということで、地域ぐるみでの導入、脱炭素先行地域としての地域ぐるみの導入ということを環境省として進めていきたいというふうに思っております。
 それから、髙村委員からのご指摘、まさにおっしゃるとおりでございます。国がこういう政策を通じて、足元の道をつくっていくことも大事ですし、10年先を見通して戦略をつくっていくこと、取り組んでまいりたいと思います。市場に評価されることが必要、多くの委員に共通のご指摘だと思います。カーボンプライシングという価格メカニズムというものと、それから、消費者側のこういったものの選好を高めていく、両面の取組、環境省として必要だという共通したご指摘だと思います。
 総体的に、こうしたご指摘を踏まえて、次回については、環境省としての論点整理の考え方、その中でお示しできるものをお示ししていきたいというふうに考えております。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。非常に多角的にいい意見を活発に言っていただけたと思います。
 今、小笠原課長にまとめていただいたように、市場において技術の価値が見いだせるようにという、先ほど髙村委員がおっしゃったことと、それから、今、伊藤委員が特に強調されましたけれど、必ずしも市場ではないところの、そこから漏れたところに関しての脱炭素の将来価値というのを出していけるようなことを検討していければと思っております。
 では、事務局におきましては、本日いただいたご意見を整理していただいて、次回以降の会合でさらに検討を深めていけるように準備をお願いいたします。
 最後に、議題の2、その他につきまして何かございましたら、事務局からお願いします。
 
地球環境局脱炭素社会移行推進室長
 伊藤でございます。本日は、誠にありがとうございます。スケジュールだけですけれども、次回、9月29日の17時からを予定させていただきたいと思います。改めて、委員の皆様には、ご出席の確認をさせていただきたいと思います。次回以降、個別テーマで、繰り返しになりますけど、少し個別テーマで割って、議論を深めていきたいと思っておりますので、また、ご協力のほど何とぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
 
大塚委員長
 それでは、以上で本日の議事は全て終了いたしました。円滑な進行にご協力いただきまして、誠にありがとうございました。事務局にお返しいたします。
 
地球環境局総務課長
 ありがとうございました。本日の議事録につきましては、事務局で作成の上、委員の皆様に確認いただきました後に、ホームページに掲載させていただきます。
 それでは、以上で第6回炭素中立型経済社会変革小委員会を閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

 

午後7時02分 閉会