中央環境審議会地球環境部会・総合政策部会炭素中立型経済社会変革小委員会(第3回) 議事録

日時

 令和4年4月1日(金)17時00分~19時03分

場所

 WEBによる開催

議事

(1)炭素中立型経済社会への変革・トランジションに関する論点の深掘り②

(2)その他

議事録

午後5時00分 開会

地球環境局総務課長

 それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会・総合政策部会炭素中立型経済社会変革小委員会の第3回の会合を開催いたします。
 事務局を務める環境省の西村でございます。どうぞよろしくお願いします。
 委員の皆様には、大変お忙しい中お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
 本日は、委員総数17中、14名の委員の皆様方にご出席いただいておりますので、定足数を満たしております。小委員会として成立していることをご報告いたします。
 また、本日はゲストスピーカーとして、筑波大学大学院のシステム情報系社会工学域教授の谷口守先生、それから慶応義塾大学環境情報学部教授の安宅和人先生、そして京都大学大学院経済学研究科地球環境学部教授の諸富徹先生にもご出席いただいております。どうもありがとうございます。
 また、本日は務台副大臣も出席しております。
 それでは、以後の進行を大塚委員長にお願いいたします。
 
大塚委員長
 こんにちは。どうも、夕方からの会議になりまして、恐れ入ります。本日も活発なご議論をよろしくお願いいたします
 では、早速議事に入りたいと思います。
 まず、議題の1でございますが、炭素中立型経済社会への変革・トランジションに関する論点の深掘り②といたしまして、谷口様からコンパクトシティ、安宅様からデジタルトランスフォーメーション、諸富様から経済と環境について、それぞれ15分程度のご発表をお願いいたしまして、その後で、ご議論を頂戴できればと考えております。
 谷口様、安宅様、諸富様の順にご発表をお願いいたします。
 では、資料2-1から3につきまして、谷口様、安宅様、諸富様より、それぞれご発表をお願いしたいと思います。
 では谷口様、まず、よろしくお願いします。
 
谷口筑波大学大学院教授
 皆さん、どうもこんにちは。筑波大学の谷口と申します。今日は、このような貴重な機会をいただきまして、どうもありがとうございます。
 それでは、画面の共有をさせていただいて、お話をさせていただければと思います。
 画面、共有できておりますでしょうか。
 それでは、「知ってるようで知らないコンパクトシティ」というタイトルにさせていただいたんですが、炭素中立化のために非常に大事なポイントになる概念なんですけれども、なかなか正しくご理解いただけていないことが世の中では結構多いので、前半部分は四大誤解という、説明させていただくのは三つですけれども、三つの誤解と、後半部分は実際の政策に関してお話しさせていただきたいと思います。
 まず最初に、カンフル剤と体質改善ということなんですが、よくカンフル剤と間違えられるということです。つまり、都心にタワーマンションを造って、これ、コンパクト化したでしょうというふうなお話を言われるんですけれども、それはなかなかそういうことではないということです。
 順番にちょっとお話もしていきたいと思います。
 まず、これは非常に基本的なことなんですけれども、まちの構造でございますので、体質改善ですよということなんですね。左側のような、一般的に言われているのは、公共交通が主軸になって、ターミナルに人が集散するような拠点ができるような形の、めり張りのある構造というのが一般的にコンパクトシティと言われています。自動車依存型、こちらは好きなところから好きなところまで、ドア・ツー・ドアで行けるような都市構造は、こういうめり張りのない構造になってしまうということで、一般的に、コンパクトにすることによって、脱炭素のほかに、にぎわいとか高齢化対応とか、最終的には自治体の財政健全化とか、一石八鳥以上の効果があると言われています。うまくやらないと、ちゃんと効果は発現しないわけなんですけれども、複数効果が出るというふうに言われています。
 ちなみに、都市の密度をコンパクト化の指標だと考えると、世界で一番密度が高いまちはどこかというと、香港ということになって、そこでは公共交通機関もこういう2階建てで動くというふうな状況になるわけですね。
 逆に、都市においては一番すかすかな、コンパクトでないところはどこかというと、アメリカ合衆国の都市が代表的に取り上げられるわけで、これはデンバーの郊外ですけれども、もともと牧場の用地のようなところを一戸建て用地に改善しているというふうなところになります。こういうところは完全に自動車依存型、自動車で移動しているというふうな形になっていて、非常にCO2発生量も多いということになります。一見、高層ビルが林立しているアメリカの都市の都心はコンパクトに見えるんですけれども、長距離ドライブで通勤、1人乗りの自動車で通勤しているというのが実態になっているということです。
 データできちんと追っかけていくというのが非常に大事なことで、これがコンパクトシティ政策の基本になった図です。横軸が都市の人口密度で、縦軸が1人当たりのその町に住んでいる方の自動車燃料消費量ということになります。自動車を持たれていない方も、これは平均値に含まれるということで、一番疎で自動車消費量が高い、CO2発生量とこれはイコールでございますので、アメリカ合衆国の都市が一番コンパクトでなくて、CO2を出していると。それに次いでカナダ、オーストラリアの都市が、それに次いでいるということで、ヨーロッパの都市は、もともと城壁都市であったこともあって、それほど出していないということですね。
 カナダ、オーストラリア、アメリカ合衆国、これはお分かりかと思いますけれども、いずれも新大陸の国であり都市です。もともとインディアンとかが住んでいた土地をヨーロッパ人が来て追い出して、まちをつくろうというときに自動車が普及し出したということで、自動車を前提にしてまちをつくると、こうなるということになります。
 先ほどの香港が一番右下に来るわけなんですけれども、これは見ていただいて、縦軸はCO2排出量にもろに、ダイレクトに直結、そのまま線形に関係していますので、コンパクトシティ化は脱炭素に絶大な影響があるということが、まずお分かりいただけるかと思います。
 海外の研究グループは、東京しか日本のデータは取っておりませんので、私どもの研究室で日本のデータをかつて取ったというのが、この情報になっていて、同じような形で、市街化人口密度が高くなってコンパクトになるほど、1人当たりのガソリン消費量は交通の面で言うと低くて、CO2発生量というのは低くなると。市街化区域人口密度が倍になると、1人当たりガソリン消費量は大体半分になるというふうな傾向が見えています。
 そういう意味で、非常にコンパクト化は有効な政策なんですが、ここで、ちょっとまた違う観点から、誤解が結構あるということで、静的な情報と動的な情報ということで、これは1987年から今の図を全く同じデータで追いかけていきますとどうなるかというと、ダイナミック(動的)に見ると、こうなるんですね。戻っていきますと、こうなります。つまり、昔はそんな差がなかったんですが、時代を経るに従って、どんどん地方都市が上に上がっていくと。実はこれ、コンパクト性においては、時代を経てもあまり変わりがない、都市の密度においては変化が無い状況でこの変化が起こっている。つまりコンパクトでなくなったからという理由で、これは上がっているわけではないんですね。
 換言すると、ダイナミックに見ると、実はコンパクト性というのはCO2削減に効いていなくて、そうではなくて、地方都市では、要するに自動車が世帯に複数保有で普及していったがために、これ、どんどん上に上がっていったということになります。大都市は、むしろ昔より下がっています。つまり、政策で考えるときに、暮らし方とセットで考えないと、コンパクト性を生かした脱炭素というのはできないということですね。そこのところをよく理解する必要があると思います。
 あと、3番目の誤解なんですけれども、地方のマスタープランを見ると、コンパクトシティですよね、拠点に集約しますといって、いっぱい拠点の丸を描くということをされるんですけれども、我がまちでたくさん集約拠点をつくろうというと、結局、それ、丸をあちこちにつくって、分散計画になっていますよということなんですね。逆をしているということです。
 あと、なおかつ、今、地方分権化がいいということになっていますので、各自治体ごとに拠点分散化計画をつくったものを、これ、貼り合わせてみる。これは福岡県でやったケースですけれども、全く市町村間で調整なく、ネットワークもばらばらということで、これはアート作品でしかないという、これは分散化計画でも何でもなくて、ただの散逸化した計画にしかなっていないということです。
 ちょっと拡大してみますと、こういうふうになっていて、あまり詳しく解説する時間もないんですが、例えば飯塚市さんとか、コンパクト・プラス・ネットワークで、ネットワークで福岡市さんのところにラブコールを送っているわけですけども、福岡市さんは全く無視なんですよね。これ、飯塚市長さんがご覧になって、非常にショックを受けられているという。そういうふうな不整合が各所で起こっていて、広域的に見ないと、きちんとした脱炭素化のためのコンパクト化政策はできないということです。
 後半部分のお話に移らせていただきたいと思います。
 効果ある具体策というのは、何をやったらいいのかと。これも取りあえず三つお話をしておきたいと思うんですけれども、「競争」ということがよく言われるんですけど、そうではなくて、コンパクト化政策に関しては、体質改善のための「協調」ですよいうことです。それは広域的な協調もあるし、分野間の協調もあるし、あと本質的に、最近、スマートシティということも言われていますが、スマート化って何なのかということもちゃんとよく考えないといけないということです。あと、エビデンスベースとか、ナッジとかということもありますが、時間もありますので、どんどん行きたいと思います。
 まず、「競争」ではなくて、「協調」ということですね。
 これは、まず先ほど福岡県でお示ししたように、市町村間で調整しないといけないということになります。
 あとは部局間ですね。例えばコンパクト化することによって、福祉交通とかもセットで考えたほうがいいとか、健康寿命とかまちづくり、健康まちづくりとセットで考えたほうがいいとか、そういう話もやっていったほうがいいということになります。
 あと、本質的なスマート化ということなんですが、これは何かというと、例えばスマートシティって、もともとエネルギーの有効利用ができるまちがスマートだというふうに言われていて、例えば、こういう新しい、割とタワマン型というか、高層型の住宅なんかに、そういうスマートエネルギーの補助がなされたり、太陽光パネルをつける補助がなされたりしているんですけど、実はこのような高層住宅はエネルギー利用的に見ると、全然、再生可能エネルギーの有効利用という面に向かないんですよね。何でかというと、皆さん同じような生活パターンをされていて、同じ時間帯で横の電気の融通とかができないと。あと、太陽光パネルを張るにしても、世帯当たりで割ると非常に率が悪いということになります。
 むしろ、日本は非常に都市計画がある意味失敗したと言われていて、こういうふうな形で、中高層と一戸建てと空き地が入り混じるような、スマートでないまちが非常に広がっているわけですけれども、それはコンパクトでもないとも言えるんですが、そういうコンパクト化にある意味失敗したようなまちにおいて、むしろ一戸建ての住宅で再生可能エネルギー、太陽光を張ると余ります。中高層住宅居住者と生活パターンも違いますので、電気エネルギー、実は有効利用、再生可能エネルギーとして、横の有効利用が融通できるということなんですよね。だから、形の上でコンパクトにするということだけではなくて、エネルギーのスマート利用、融通とセットで併せて、一見スマートでないまちをスマート化していくということが大事になってきます。
 あと、コンパクトに対して、分散したほうがいいということが、これ、結構言われたりするんですが、非常にこれは安易な言葉として今使われています。実際問題、これは地方分散が期待されていたわけなんですが、実際、起こったことというのはどういうことかというと、2020年も2021年も、これ、対東京都です。各都道府県ごとに、対東京都と人口の転出入を勝負したのは、基本的に、埼玉、神奈川、千葉の三つの県が勝っているということですね。東京からは出るようになって、何か地方分散したと思われているかも分かりませんが、実は郊外化が進んだだけです。これは、もっと言うと、散逸化と言ったほうがいいと思います。
 彼らの交通行動を見ると、公共交通から自動車に交通が手段転換しています。それが戻らない形になっていて、コロナで公共交通が怖いというふうなこともあって、実はCO2が増える構造になっているということですね。だから、安易な分散化政策には気をつけないといけないということです。
 あと、対策としては、見える化していくということですね。エビデンスベースで考えるということは、やっぱり基本になります。これはもう2005年頃に作った、ずっと昔に作った書籍なんですけれども、基本的には地区ベースでカルテ化していくということです。タイプごと、日本の住宅地、このとき、130種類ぐらいのタイプに分けれますので、タイプごとに、どのようにCO2を出しているかということをちゃんと追いかけていくということです。
 これ、サンプルのページなんですが、これは地方中心都市のケースですね。先ほどの縦軸・横軸、全く同じ、コンパクトシティの都市レベルの図と同じものを町丁目で作ります。町丁目というのは、20ヘクタールから30ヘクタールぐらいなので、それぐらいのサイズで、規制とか誘導とか事業とか、実際に低炭素化に資する政策をやったときに、どのタイプの住宅地からどのタイプの住宅地に改善できるか、政策とCO2削減の関係を取組ベースで判断できる。こういうふうなエビデンスのセットの形でやらないと、実際の削減には寄与しないということです。
 あと、ユーザー目線で行動変容を促進しないといけないということですね。これは広い意味ではナッジということになるかと思うんですが、これが、例えば各市町村さんで、都市マスタープランの中でコンパクトシティやりますという市町村さんが増えてきていると。ただ、何のためにやっているかということの理由というのは、非常に多岐にわたるんですね。
 これは都市マス、2020年まで全82冊、これだけ多岐にわたる都市において、中身を、文章の解読をして、どういう理由で、そのまちがコンパクトシティを採用しているかというのを、大体7分類に分けられるんですけれども、これが大変興味深いことになっています。全部で40都市対象なんですが、取り上げている都市がどんどん増えているということですね。
 見ていただきますと、エネルギー/低炭素化ですね。あと自然環境保全ですね。今回の脱炭素に関係しているものというのは、実は最初すごくトップで採用されていたんですけれども、それが現在の状況では、生活利便性とか地域経済とかというのが実は一番採用される理由になっています。
 これは転換するポイントがあるんですよね。転換するポイントが、2008年頃なんですね。2008年頃というのは、ご存じのとおりリーマンショックがあったときで、リーマンショックまでは皆さん環境でというふうに言っていたんだけど、経済がちょっとやばくなると、首長さんとしては、生活利便性とか地域経済とか、そのためにコンパクトシティやっているんですよと言わないと、通らなくなってきたということです。それとクロスセクターで低炭素化が効くというふうになればいいわけで、だからいけないというわけではないですが。
 なおかつ、最近、顕著な傾向が健康福祉です。老人の人口が増えてきたということもあって、各自治体さんが取られる政策で、健康福祉のためにコンパクトシティしますというと、非常に受け入れられやすくなってきている。実際に、それが脱炭素にも効果があるということで、これは個人のメリットに直接プラスになるということで、環境といっても、皆さん、なかなか行動を変えてくれないですけども、あなた健康になりますよというと、行動を変えてくれるということですね。そういうこともうまく考えながらやっていったほうがいいということです。
 あと、これは研究者の中で、公共交通、どういうふうにしたら利用してもらえるかという取組を、価格の面でコントロールできないかということで、日本全国のバスとか、公共交通ですね、鉄道を全部、例えば新幹線の特急料金も含めて、乗り放題にできないかということで、実際の運営費を構成比で割ると、人頭税だと思っていただければいいんですけど、1年5万円ぐらいで乗り放題に実はできるんですね。
 こういう抜本的な価格政策みたいなものを打っていくことも必要だよねと言っていると、これは先を越されちゃったんですけれども、オーストリアが「気候チケット」というのを2021年の11月に販売を開始しました。これは国内全ての公共交通機関が乗り放題で、日本円にして12万円。先ほど申しました5万円よりずっと高いです。1日、約340円になります。ただ、1枚のチケットで乗り放題ということで、COP26のタイミング、その直前で、このネーミングで入れるという、この辺、非常にやっぱり国家戦略的にやられているということかなというふうに思っていて、大変悔しい思いをした次第です。こういうメニューは、幾らでも、まだこれから取れるかなというふうに思っています。
 海外の事例とか、こういう本でも紹介しておりますので、興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ご覧いただければと思います。
 以上で、すみません、大体15分になったので、私からのプレゼンとさせていただきます。どうもご清聴ありがとうございました
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 では、次に安宅様、よろしくお願いします。
 
安宅慶応義塾大学教授
 安宅です。すみません。急に呼び出されまして、何か投げ込めということなので、ちょっと投げ込みたいと思います。
 私、雑然といろんなことをやっていますので、その中から関連すると考える話をいくつか投げ込ませて頂きます。
 地球と人間の衝突によってパンデミックが来ていることは、ほぼ確実だと思います。海洋に溜まっている熱の増大やその結果のシベリアでのクレーターの発生やその周りでの炭疽の発生などを見ても、今後同様に更にウイルスも出てくるだろうというふうに推定されます。
 昨年の今頃、内閣府でデジタル防災の未来検討チームの座長をやっていたんですが、ひどい未来が今予想されていることは、皆さんご案内のとおりで、それは多分、今検討されている背景だと思います。この辺は割愛します。
 これらを踏まえると我々にとっての平和の定義が変わったという見解で、基本的には紛争も今起きていますけど、これらがないこともそうなんですが、パンデミックやディザスターで壊れないことも加わってようやくこれからは平和。このような社会を目指さないといけないという局面で、どうやって手詰まらないかということだと思います。
 単なるデジタル化が答えなのかというと、これについては一定の結論が出ていると思うんですが、今、この30年ぐらいのデジタル的なことをぐっとにらんでみて、こういったものをひたすら都市に詰め込むという実験が何回か、この5年、10年、けっこう行われました。いわゆるスマートシティ1.0ですけども、ことごとく、Masdarもそうですけど、巨大な廃墟をつくったわけですよね。トロントで行われたSIDE WALKもそうですが、基本的には1.0的なスマートシティ系の取組は全て失敗したという見解です。
 つまり、単なるデジタルを突っ込めばいいという類いの話ではなくて、これは経団連で中西会長がいらしたときに、Society5.0検討をやっていた委員の一人なんですけれども、ここで言っていたとおり、根本的に価値を変えて考えないと、多分ならない。デジタル化の旗振りをしてきた人間の一人ではあるんですが、これは時代用件的には正しいんですけど、やっぱりサステナブルな未来を創るということこそが正しくて、SX by デジタルというのが、多分、本質的なポイントなんだと思います。
 という意味で、首相がおっしゃっている「新しい資本主義」の核心は、私の見解では、もうとにかく「環境負荷が下がるような経済成長」、以上だと思います。
 そういう視点で考えると初めて、TESLAが企業価値100兆円を超すみたいなことが多分説明ができて、規模ドリブンではない経済が起きているということだと思っています。
 このような視点でどれだけのことがやれるか。言ってみれば、サステナビリティの延長の上にデジタルをどう突っ込んでいくかということで富は変わるので、このような活動をどこまで徹底的にやれるかによって、国富も増えるし社会も変わるというふうに思っています。
 そこは、ある程度夢を形にしていくということが勝負であって、TESLAのモビリティ会社というのも、実際はエネルギー会社ですけれども、持続可能なエネルギー社会にするというビジョンを持った会社なわけですが、そういうものからマーケットキャップが生まれてくると。
 日本はGDPの議論ばかりしていますけど、世界的に見ても、富というのは、もうマーケットキャップが中心として生まれている状態が長らく続いていて、世界の主要な富豪が、ほぼ全てマーケットキャップから富を得ていることから明らかなわけです。マーケットキャップ側を産めるかどうかということが望まれているときに、我々はGDP側ばかり議論しているところに一つの問題があるんじゃないでしょうか、というのは、ちょっとした問題提起として思うところです。そこで鍵になるのは「どういうような課題を、どういう技術で、どういうふうにデザイン的にパッケージングしていくか」ということだと思うんです。
 産業の視点で見ると、Old economy versus New economyみたいな時代は終わっちゃって、もう第三種人類と言うべきですね「リアルをデジタルでどうやってアップデートするか」という、今言ったTESLAもそうですし、OneWebとか、SpaceXもそうですが、そういった企業が中心になっている、そこをどう産めるかだというふうに思います。世界的にも人口は調整局面なので、この話は、もう本当に明らかに今後の経済成長の中核的な話だと思います。
 真鍋先生の受賞の話は、皆さんもご案内のとおりですけれども、ここをよく直視すると、結局、人類が使っているエネルギー量ではなくて、ここから降り注いでいるエネルギーのほんのちょっと残りやすくなっていることが問題だということが、この真鍋先生のモデルからあるとおりです。そこのドライバーは水蒸気、そしてCO2等々によるものなのですけれども。
 ここから電気の話になるんですが、これをぐっとにらむと、CO2は大事なんですけれど、CO2というか、地下のカーボンを使うことが結局、大きな問題なわけですが、よく見ると、アルベドと言われている反射のコントロールに、特に結構な余地があって、あと雲などによる入射光のコントロール、ここはすごく危険といえば危険ですけど、ジオエンジニアリング的なことなんですが、ここは多分、考えざるを得ないときが来る可能性があるというのは指摘しておきたいと思います。結局、今の脱炭素にむけた一時的な努力だけでいいのかということですね。
 危険だというのは、もう人類史に残っているとおりで、7~8万年前のところで、人類は最初、2,000人ぐらいまで減ったんじゃないかと言われています。「これは地表が凍ったり溶けたりする時にアルベドが劇的に変化し、気温が一気に上がって下がるを繰り返したら、人類は生き延びられなかったという意味で、コントロールには留意が要るという話です。
 次に、私の絡んでいる話でちょっと触れたいのは、先ほどのお話そのものの延長みたいなところがあるんですけど、こういう疎空間をバイアブルにできないかという取組を検討しているんですけど、いろいろ、非常に難いわけですね。というのは、とにかく疎空間で生活することは極めて環境負荷が高いということがあります。それはもう先ほど徹底的にご説明があったとおりで、スケール則がとにかく効いてしまうので、そうなると。
 基礎自治体を見ると、大体、疎空間にある基礎自治体というのは、住民一人あたりで見ると途方もない金、いい方を変えると環境負荷をかけているわけですね。エコノミクスの内側を見ると、本当にインフラがとても重くて、ほとんど自主財源が賄えなくて、8割以上の金を都市なり未来から借りるという状況になっています。ここはどうしたらいいのかということをフラットに見れば、結局、グリッド的なコストを削るしかないというのが、ほとんどのインフラ要素で見えてきます。
 ちなみに、これは一般的な水の場合ですけども、日本の場合、水道コストの9割以上が管とそのメンテナンスというのは、こうやって見たら分かるんですね。しかも、こういう擁壁や巨大な防波堤、固くて壊れるがままの舗装道路のような求心力のないインフラが大量投下されて、すごい環境負荷をかけている上、メンテナンスコストを考えると未来への大きな負の負債にもなっているんですけれども、こういうものが本当にこれでいいのかというのは、本当に直視しないといけないというふうに思います。
 「大量に金を突っ込んで環境負荷をかけて空間価値を破壊している」という問題をどのように考えるかというのを考えないと、我々にとってバイアブル(viable)な疎空間がなくなってしまうというのは、すごく大きな問題意識を持っているところです。
 この要素の広がりは非常に広く、ごみ処理とかも、我々が調べてびっくりしているのは、例えば47都道府県で一番1トン当たりのごみ処理コストが高いのは東京都なんですね。これは多分ほとんどの人は知らないと思うんですけど、これはトン当たり数十万円のごみ処理コストがかかる離島を持っているからです。我々、疎空間をどう考えるか、本当に徹底的に考える必要があると思います。日本の国土の7割ぐらいが森ですけれども、ほとんどが人口密度が5以下みたいなところなので、相当に重要な課題だと考えます。
 疎でも、とても美しくて環境価値の高い空間とか、これはダヴィンチが育ったような空間ですけれども、こういうところがインフラそのものが背骨のように美しく走っているわけですけども、美しくて環境負荷の低いインフラというのはどうつくるかということを考える時が来ているというふうに考えます。根本的な意味で、価値検討を行う必要があると思うところです。
 あと、パンデミックの話ですね。僕は落合陽一さんとともにウィズコロナという言葉を言い出した人間ですけれども、苦痛がある密閉よりも開放がいいし、高密度よりも疎なほうがいいわけですが、これを先ほどのと重ねて考える必要があって、人類は都市化で生きてきて、都市がやっぱり効率的ですし、エコノミカルに密接なのは明らかに都市なわけですよね。
 このような状態でOpenかつSparse(開疎)にしていこうという議論をやるとしたら、単純に田舎に行くという話ではなくて、やっぱり都市的空間を開疎化するということが、本質的なポイントなんですが、ちょっと僕が開疎という言葉を言った後、パンデミックを迂回的に、単純に地方に行けばいいんじゃないかみたいな議論が結構出ました。いやいや、その短絡的な行動は環境負荷がぐっと上がるんですよという議論を随分しました。というように、話がすごく違う方向へ行っちゃっていて、環境負荷を下がるようにして、経済的にも疎空間をバイアブルにするというのは、非常に重大なポイントだと思います。
 最後に、ちょっと全然違う話ですけど、今起きている話で、大きな富の形成が一つ始まりつつあるわけです。それは暗号資産等による膨大な富が発生しているということです。この3~4年を見ても、桁が3桁、4桁という勢いで増えていっていて、このままいくと、数年以内に世界の総GDPに匹敵するぐらいの価値になる可能性が高いというふうに推定されるわけです。
 これは詳しくは触れませんけれども、WEB3.0と言われている、DAOとtokenというタイプのものによる価値創造が、これは今までの合資会社とか株式会社とは全く違う、人間のイニシアチブに対して、ガバナンストークンという株券に代わるものが配られていて、後でこの活動に価値が発生すると、トークンが価値が生まれるというような仕組みなんですが、ある種、株式会社2.0みたいな仕組みなんです。これは物すごい勢いでお金を集めることが可能です。、現在、世界的に数百万種類も生み出されつつあります。ガバナンストークン部分だけでも、本当に数十兆円規模まで来ています。マーケットキャップ型の富の形成は、付加価値、GDP型のものと違って、圧倒的に⊿富辺りの⊿環境負荷がかなり低かったけど、第3世代というべきWeb3型の場合は、⊿富あたりの⊿環境負荷がさらにぐっと低いんですね。ですから、これは今まで人類が生み出した価値創造というか、富創造の世界において、最も環境負荷が低い可能性があるので、これは結構重大なレバーになる可能性が高いと私としては思っているところです。
 そういったこともあって、自民党ではNFT検討部会をお持ちになっていると認識していますが、関係する先生方等と年始よりいろいろ識者をご紹介しつつ議論をさせていただいている次第です。
 最後に触れたい話としては、Joi Itoさんの『whiplash』というのに出てくる、今みいな非常に連続性がないような社会でどう生き延びるかという話です。結局、強引にプッシュしても動かないわけですね。こういう状態では。どういうのがやっていったら楽しいことでpull、すなわち引っ張っていかないと、やっぱりどうしても社会が動かないということ。あと、きれいな地図を描くことはできないと。これはもう正しいですね。この10年、20年を見ていても、このパンデミックを見ても、Web3を見ても。やっぱり方向感が大事だということで、それを指し示していただくというのが、とても重要だと思うということです。
 完全な安全みたいなものはないので、やっぱりリスク取って仕掛けていくことというのがとても重要だと思いますし、理屈よりも実践という、このJoiさんがおっしゃっていることは、もう本当に正しいなと思っているところです。
 災害が来るとつい頑強な壁とかを造っちゃうけど、本当に答えはそういうことなのか。レジリエンスという言葉の真意はなになのか。ナショナル・レジリエンスの翻訳が国家強靭化として使われているのは、本当に正しいのかということも含めて考えるのは、ちょっと大事なんじゃないかなと思うところです。
 私からは、基本、以上ですね。
 残すに値する未来のために、何か意味があるかなと私として思うことを幾つか述べさせていただきました。ありがとうございます。
 
大塚委員長
 どうも安宅様、ありがとうございました。
 では、次に諸富様、お願いいたします。
 
諸富京都大学大学院教授
 諸富でございます。
 では、画面共有させていただきます。
 京都大学、諸富でございます。所属は経済学研究科でありまして、今、タイトルにもあります、「カーボンニュートラルに向けた経済社会の転換とカーボンプライシング」というタイトルでお話をさせていただきます。
 順次、このスライドに沿って行きたいと思います。
 環境と経済といいますと、対立構図で議論がされることが多いかと思います。つまり、成長を追及すれば、どうしても環境は汚れてしまう、あるいは環境を保全しようとすると経済成長にとってはマイナスであるという形で来たんですが、ここは時代の転換でありまして、環境に取り組むことが実は成長を促すというような経済に変わりつつあるし、また、変わらなければいけない、そういう転換地点じゃないかというお話でございます。
 「新しい資本主義」ということで、首相がこういうキーワードを掲げていらっしゃいますけれども、やはりアフターコロナ、コロナを経て経済がどういうふうに変わっていくかということを各国が模索していく中で、やはり資本主義がいろんな意味で持続可能、環境の意味でも持続可能ですし、それから長期的な成長、これをどう保障していくかという、非常に重要なテーマであると思います。
 その中で、私自身が注目しているのは、資本主義の「非物質主義的な転回」ということであります。これはもう、資本主義といえば、ものづくりを中心に工業社会になって豊かになっていったわけですけれども、やはり1980年代以降、徐々にものづくり中心からものでないもの、ここは非物質的なものと抽象的に言っておきますが、重点移行が起きているということで、非常に注目がなされます。
 これはもう経済力と連動的に土地、労働、資本を組み合わせて生産をするということだったわけですけれども、それが物的資本を中心の資本主義から無形資産ですね、形のないものを軸に生産活動が行われるというふうに変わってきました。そして、人々が求めるものも、物そのものはもちろんですけれども、それらに快適さや安全性、もちろん環境のよさ、そうですけれども、デザイン性、シンボル性などの非物質的要素が評価をよりされるようになってきて、それらに対して、より多くのお金を払う用意のある消費者が増えてきたということです。
 そういう意味で、資本主義が変わっていく中で非物質化が起きるということは、資本、あるいは投資、それから労働、消費、全ての局面で無形化が進行していると。消費で言うと、よくモノ消費からコト消費へという変化でよく言われるんですけど、コトという、ある種の形のないもので消費を行うという傾向が、より鮮明になってきているということにも表れています。
 こういったところから、無形資産の重要性が高まってきているわけですが、それが無形資産の投資という局面で見た場合にどういう変化が起きているか。これはアメリカ経済のものになりますけれども、右肩上がりの濃い線になっているのは無形資産の投資、こちらが有形資産の投資ですね。ちょうど1990年代半ばごろに両者の逆転が起きているわけであります。
 それから、こちらはStandard & Poor'sの上位500企業における有形資産と無形資産の価値を示していますけれども、95年に、それまでは有形資産の価値が大きかったんですが、逆転が起きて、無形資産が大きくなって、現在では、18年ですけども、これはもう5倍の価値を持っていると。
 それから、上位5社企業、時価総額で上位5社、この頃はIBMとかGEとかP&Gとか、いわゆるものづくりの企業が上位を占めていたんですが、現在はすっかりものづくりの企業は消えてしまいました。全てデジタル大手の企業ですね。
 ところが、こうした変化に対して日本は十分対応し切れていないということは、よく指摘されているとおりで、無形資産の停滞は、実は計算としては滞っていますし、伸びが停滞していると。それから、アメリカのように逆転も起きていないということになりますね。そうした中で、生産性の低下という現象が顕著に出ているということがございます。
 今の生産性というのは労働生産性だったんですが、実は同じことが炭素生産性と。このキーワードも普及してまいりましたけれども、分母が労働なのかCO2の排出量なのかという違いがございますけれども、この生産性の場合には炭素投入量、つまりCO2の排出量を分母に取って分子にGDP・付加価値を取った場合、どういう経緯を示したかということでいくと、日本は、95年の段階では、ちょっとスイスの例外を除くとトップレベルだったのですが、ほぼ日本が横ばいでいる間に、各国はどんどん伸ばしていっているわけですね。この値は、GDPを伸ばすか、CO2の排出量を減らすか、あるいは両方を同時にやることによって上昇するんですけれども、日本は、ほとんど、どちらのポイントにおいても停滞状況と。それで、アメリカなんかに、下にあったアメリカにも、ついに追いつかれつつある状況であります。
 こうした背景、なぜヨーロッパが中心に今のような生産性上昇が起きたのかというと、これはいわゆるデカップリングと、ちょっと書いてありますけれども、デカップリングですね。これは二つくっついているものを切り離すという意味でございますけれども、GDPの伸びと、それからCO2の排出の伸びを切り離すという意味になります。
 事成長期の頃は、GDPが伸びれば、それはもう自動的に化石燃料の使用の増大になりまして、CO2の排出の増大に、すなわちつながっているのですね。ですから、両者がずっと絡み合って右肩上がりで伸びていくというスタイルだったんですけれども、21世紀に入りまして顕著なのは、GDPが伸びてもCO2は下がると。スウェーデンなんかも、かなり明瞭である姿を示しています。もうGDPが上がればCO2の排出は減るというような形でなっています。
 残念ながら、そういう明確な形が取れていないのはポルトガル、ここではですね、それから日本。日本は、ようやく2013年以降、若干、デカップリングになりつつありますが、こういう状態になっています。つまり、21世紀に入っても、なかなか、こういった新しい経済構造、成長しながらCO2の排出を減らしていくという経済構造になり切れていないということを示していますね。
 ここは、成長しつつCO2を減らすということは、可能であるということもまた示しています。それは一体何が起きているのかということなんですが、恐らくその背景にあるのは、製造業がもちろん様々な技術開発によってCO2の排出を減らしていく。これは一つのポイントでありますが、もう一つはサービス化、あるいは、もちろんデジタル化といったことも背景にあるんですけれども、それがあるのではないかということですね。
 これは、ちょっとスウェーデンと日本、国と比較しているんですが、実はスウェーデンは福祉国家で、付加価値税率も高いし、日本より成長率は低いと思いきや、ほとんどの期間で実は成長率は高いです。しかも、スウェーデンはずっと給与水準、過去30年間上がり続けています。日本は緑でずっと停滞していますね。これはよく知られるようになってきています。それが、見ていただいてるように、スウェーデンはGDPは伸びてCO2排出量は減るという、極めてクリアなデカップリング、日本は、こういう状況ですね。
 なぜこうなっているのかということなんですが、スウェーデンは、一つは脱炭素化、既に法定化をしています。しかし、その背後で産業構造の新陳代謝が非常に速いんですね。彼らは、実はそのような社会的・経済的仕組みを持っているんですけれども、Volvoに代表されるように、自動車産業などの製造業も非常に強いです。他方で、IKEAとか、それからファストファッションのH&Mとか、デジタル音楽配信サービスのSpotifyとか、皆さんもご利用されているかもしれませんが、あるいはSkypeとか、人口800万人なんですが、次々とデジタル化された、しかし、グローバルに展開する新興企業が次々と輩出してくると。こういう産業の新陳代謝の状況ですね。日本は、なかなかこうは残念ながらなっていないんですね。
 他方で、先ほど言いましたようにCO2の排出が減っている中で、彼らは非常に人的資本投資、ここは岸田首相の「新しい資本主義」の非常に大きなテーマになりますけども、実は公的な、あるいは民間の人的資本投資が非常に厚いと。手厚い。これはもう間違いなく、データでも出ていることであります。
 そういう中で、無形資産を生み出すのは結局人ですから、無形資産を重視する経済の中で、人的資本投資を通じて成長をやはり実現できている。同時に賃金水準をどんどん引き上げながら格差を縮小させているというわけですね。こういった恐らく経済構造になっているがゆえに、付加価値の伸びが速いということですね。
 これがなぜ炭素生産性が上昇するかということの非常に大きな説明要因になってきます。もちろんインフラ構築も非常に大事でして、インフラの投資も非常に大事でして、アフターコロナということでいくと、アメリカ、ここですね、バイデン政権による「American Jobs Plan」ですけども、こちらはEUの復興政策パッケージですけど、非常に巨額の予算を立てていますけれども、その中でむしろ注目していただきたいのは緑で、実はバイデン政権の「American Jobs Plan」のうちの半分ぐらい、約半分はグリーン投資なんですね。欧州の場合も、30%がグリーン投資なんですね。日本の場合は、ここは景気刺激策として「Stimulus package」と書いてありまして、第三次補正予算をとっていますけれども、例の2兆円基金がここで計上されてはいるんですけれども、比率的には必ずしも大きくないという違いがございます。
 バイデン政権が挙げている投資先というのは、このようなものになっていますね。かなり全面的なインフラ更新をしつつ、グリーン投資をやっていくということが見えていると思います。
 そういう中で、今、インフラ投資においては気候変動と、それから社会的格差の縮小という、非常に大きな課題になっていますし、その財源網から法人税率を上げるということですよね。
 日本の場合、どういう財源を手当していくのか。その中で、例えば炭素税というのを考えられていますね。こういった脱炭素成長とも言うべき経済構造を目指していくことが、経済に与える影響はどうなのかということについては、様々、実は研究が既に行われていまして、結果だけ、時間の関係で示させていただきますけれども、例えばIEA、OECDのモデルの部分も、やはり成長率は、むしろ、そういった脱炭素シナリオにのっかっていくほうが成長していくという結果が出ております。
 また、京都大学でも、英国のケンブリッジエコノメトリクスと組んでシミュレーションをやっておりまして、その結果も、また、脱炭素しないシナリオに比べて、むしろ脱炭素に持っていくほうが成長するという結果が出てきております。これは、新しい投資が行われるからなんですね。
 それから、例えば再生火力を増やすことによって、化石燃料の輸入を減らすということによって、純輸出が増えるというような効果も期待できるということなんですね。
 最後に、最後のセクションとして、カーボンプライシングについて少し語らせていただきます。
 現在、日本の産業の中で、炭素生産性ということを横軸に、そして利益率を取った場合に、非常にバフォーマンスのいい自動車産業が一方であり、一方でいわゆるエネルギー集約型産業、炭素生産性が低く利益率が低いというセクターで、きれいに分かれているという部分があります。
 日本の産業の課題は、ここのセクター、ここに位置している産業の群に、どうやって右上方に移行していってもらうか。炭素生産を高めつつ利益を上げていくか、これは非常に大きな課題であります。
 カーボンプライシングというのは、実は、そういう中で、炭素に価格づけをすることによって、非常に炭素集約度の高い産業というのは、収益水準が実際落ちてしまう。非常に炭素集約度の低い産業については、逆に収益が上がっていくということで、ぐるぐると、これは時計回りに、収益率を人為的にカーボンプライシングの導入前と後ということで、収益構造を変えるということを通じて、言わば産業の新陳代謝を促す効果が、カーボンプライシングには期待されるということであります。
 過去を見ますと、カーボンプライシングを導入してどんどん引き上げていくという状況でありまして、日本は2012年に導入されましたが、ほとんど税率は変わらないままということで、そういう意味では、構造転換を促す力は、現状ではまだ弱いという意味では、カーボンプライシングが活用されるべき余地というのはありますし、むしろそれが、こういったデータ群を見てみますと、成長をむしろ高めていくんではないか。それは産業構造の転換を通じてということですね。
 そういう意味では、カーボンプライシングは非常に重要な役割を果たしますし、労働生産性と炭素生産性を同時に引き上げながら、新しい成長を目指していく、こういったことが今後の経済政策の非常に中心に居座るべきではないかなというふうに思っております。
 以上で、私のプレゼンを終わらせていただきます。ありがとうございました。
 
大塚委員長
 どうも、諸富様、ありがとうございました。
 では、ただいまの3名の先生方のご発表を踏まえまして、ご意見等を頂戴できればと思います。
 挙手ボタンをクリックしていただくようにお願いします。
 ご発言は、各自3分以内にまとめていただきますように、ご協力をお願いいたします。
 なお、ここからの進行につきまして、事務局からご説明がございますので、よろしくお願いします。
 
地球環境局総務課長
 少し補足申し上げます。
 今、3人のゲストスピーカーの先生からプレゼンテーションをいただきました。どうもありがとうございました。
 ゲストスピーカーの先生方には、18時半までご参画いただくようにお願いしておりますので、先生方へのご質問につきましては、早めに挙手ボタンを押していただきますか、あるいはそのチャットのほうで質問というふうに書いていただきましたら、早めにご発言をお願いしたいと思います。
 それ以外の、ご自身のお考えのご発表ですとか、あるいは役所のほうに対するご質問等がありましたら、こちらは19時まで継続させていただきたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。
 
大塚委員長
 馬奈木委員、お願いします。
 
馬奈木委員
 馬奈木です。ありがとうございます。3人の先生方、それぞれに質問させてください。
 まず、谷口先生に質問で、スマート化の失敗というところに興味があります。私、例えば、Regional science and Urban Economicsという雑誌に、混雑税を都市で、実際の日本のデータを使いながら導入すると22%、CO2を削減できるなどの結果を出しているんですけど、谷口先生が実際に政策にも関わられて、そういうふうに混雑税なんかは、実際に導入できないと思うんですね。
 今後、このカーボンニュートラルがゆえに、都市計画をまちの中心地を含めて変えることが現実にできるんでしょうかというのが質問です。
 次に、安宅先生へのご質問で、MasdarやSIDE WALKなどの失敗などを話されながら、最後に分散型自立組織とか、トークンエコノミーの話をされていまして、その場合におっしゃろうとされていることは、地方のほうを含めまして、この民間主導、または住民の一部の方、外部を含めながら主導しながら、そこの地域の自由度を与えることで、より自発的に物事を解決するというのを期待されていて、政策側ではないのかというものの確認をさせてください。
 最後に諸富先生への質問で、炭素生産性を考えながら政策比較をされておりまして、その中で、欧州を中心にヨーロッパの排出権取引などで、インセンティブがあるという地域が炭素生産性で伸びていて、同時に雇用の流動性もあるので、賃金でインセンティブが反応するんで、人的資本も伸びているというのが特徴だったかと思います。
 その中で、その二つがあまりない日本において、政府主導の、バイデン政権のようにグリーンに対する主導を日本でもやることによって、その二つを補完しようということが最終的に提案にされているんでしょうかというのが、三つの質問です。
 以上です。ありがとうございます。
 
大塚委員長
 次、いらっしゃらないですか。まだ。次の委員のご質問がございませんので、それぞれ……。
 
浅利委員
 よろしいでしょうか。すみません。挙げているんですけど、大丈夫ですか。
 
大塚委員長
 じゃあ、浅利委員ですね。
 
浅利委員
 大丈夫でしょうか。はい。すみません。ありがとうございます。
 ちょっと谷口委員と、特に安宅委員のほうにお聞きしたいんですけれども、谷口委員のほうの、事前に送っていただいたスライドの中で、四大誤解のうちの四つ目が、中山間地から撤退というのにバツがついている部分があったんですけれども、多分、時間の関係とかもあって、ご紹介いただけなかったのかなと思っているんですが、ちょっとかいつまんで教えていただきたいなと思いました。
 ここは多分、安宅委員のほうにもお考えがあるのかなと思っておりまして、前回でも、やはり少極集中から多極分散へというような広井先生のお話もありまして、私自身も、その中山間地への取組を始めていて、非常に壁といいますか、どういうふうに向かっていこうかと思っているところで、この辺りのお考えをお聞きできたらなと思いました。
 よろしくお願いいたします。
 
大塚委員長
 広井委員、お願いします。
 
広井委員
 ありがとうございます。3人の先生のお話、どれも本当に印象深く伺いました。
 まず、1点目、谷口先生がおっしゃられたコンパクトシティが脱炭素の一丁目一番地と、これは非常に重要な点だと思います。やはり、私、今の日本社会、各地へ行ってみて、地方都市の空洞化、いわゆるシャッター通りになっている。大体、20万人以下の都市はほぼ間違いなくそうですし、場合によっては、前回も似たようなことを言いましたけど、30万人、40万人、50万人でも空洞化している。
 ですから、まさに今、脱炭素への関心は非常に高まっていますので、脱炭素を契機に、この地方都市の空洞化を是正して、いわゆるウオーカブルな、歩いて楽しめるまちにしていく。これが進んでいくと、本当にすばらしいと思いますし、脱炭素のみならず、地域経済の経済循環を高めたり、人々の生活の質を高める、いろんな効果があると思います。
 ただ、コンパクトシティというと、学生などに話しても、割とちょっと誤解が多いという話がありましたように、何か、ややマイナスのイメージを持っている人も多いようです。言葉そのものの問題もさることながら、前回も申しました、どういうふうにデザイン、国土の在り方をデザインしていくかですね。前回、多極集中ということを述べましたが、つまり多極化しつつ集中するような姿。極が多く存在するがそれぞれの極自体は集約的な形になっている。これ、安宅先生がおっしゃられたテーマとも関係していると思うんですが、集中と分散をどういうふうにデザインしていくかという、これ、結構深掘りしていくべきテーマかと思います。
 以上がコメントで、質問は諸富先生に、炭素税の税収の使い道についてです。例えばドイツとかヨーロッパ諸国は、炭素税を導入する分、その税収を年金とか社会保障に充てて、その分、年金などの社会保険料を下げて、いわゆるレベニューニュートラルといいますか、税制中立。それで、企業の国際競争力とか、そういったことにも配慮しながら、全体のバランスの取れた分野横断的な政策を展開していると思いますけれども、その辺りを、どういうふうに考えたらいいかという点を、教えていただければ幸いです。
 以上です。すみません。ありがとうございます。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 では、経団連の長谷川様、お願いします。
 
長谷川オブザーバー
 ご指名ありがとうございました。また、3人の先生方には、大変興味深いご説明をいただきまして、大変ありがとうございます。
 谷口先生に1点、あと、諸富先生に3点、お伺いできればと思います。
 まず、谷口先生への質問です。ほかの国の政策で、気候チケットについてご紹介いただき、ほかにも提案できる政策がいろいろあるようなことをおっしゃられていたと思います。具体的に、どういったものを考えておられるのか、教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 次に、諸富先生のご説明について申し上げます。経団連はじめ経済界としても、脱炭素への取組を、経済成長にもつなげていかなければいけないと考えており、同じ問題意識を共有させていただいております。
 そのためには、様々な日本の置かれた状況も踏まえた、きめ細かなポリシーミックスが重要だと思っており、これについて、この懇談会も含め、議論させていただきたいと思っているところです。
 そのための手段としては、先ほど、バイデン政権の話がありましたけれども、投資が大事だというところは、全くそのとおりだと、心強く思ったところでございます。
 その上で質問3点がございます。炭素生産性の国際比較という図が出てきておりますが、国によって、エネルギーの供給構造、例えば自然エネルギー、再エネが使いやすい国と、そうじゃない国、あるいは原発比率が非常に高い国と、そうじゃない国といった状況の違いがあると思うのですけれども、こういった違いを捨象した上での分析のようなものは、されておられるのかどうかというのが質問の1点目です。
 質問の2点目ですが、OECDとかIEAの分析で、カーボンニュートラルの取組で経済が成長するという話があったんですけれども、他方で日本の場合は、取り組むに当たってエネルギー価格が上昇するといったことも起こり得ることから、そういった場合に、一体どういう経路で、経済が成長するということになるのかというのを、教えていただければと思います。
 質問の3点目については、炭素生産性が低い産業を右上に持っていかなければいけないというスライドのご説明で、産業構造の転換が必要であるとおっしゃられていたと思うのですけれども、その意味は、炭素生産性の高い、全く別の産業に転換していくべきという意味なのか、あるいは、今のエネルギー多消費な産業を脱炭素化し、産業のアウトプットは維持したまま炭素生産性を高めていくという意味なのか、どちらでしょうか。もし、今の産業を残したまま、その産業そのものを脱炭素化するということであれば、セメントや鉄鋼業では代替技術が未だ存在していないと考えられている中で、どう炭素生産性を上げていけばいいのか、お知恵をいただければと思います。
 すみません。長くなりましたが、以上です。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 ここで、務台副大臣からもご質問をいただいていますので、どうぞ、副大臣、お願いします。
 
務台副大臣
 すみません。今、政府は、どちらかというと地方に人をいざなう政策をやっていますが、コンパクトシティという手法は分かるんですが、どちらかというと都会でコンパクトに人を集約したほうがCO2的にはいいということで、若干、これは相当フリクションが想定されるんですが、これ、政策的にどうやって納得してもらうか、非常に大きな課題だと思うんですが、先生方のお知恵を伺いたいと思います。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 もう一方。では、日本商工会議所様、お願いします。
 
大下オブザーバー
 日本商工会議所の大下です。お三方の先生、大変興味深い示唆に富むお話、ありがとうございました。それぞれについて感想と、1点だけご質問を述べておきたいと思います。
 私、過去2回のお話の中で、日本商工会議所会員企業は中小企業が大半ですので、各地域の中小企業にも分かるようなカーボンニュートラルに向けた、全体像と道筋を示すことが非常に重要だということを申し上げてきました。
 それぞれの先生のお話に関わる内容かなというふうに思っております。
 諸富先生がおっしゃった、成長につながるカーボンプライシング、これ、経済界、我々、これまでずっと求めている内容です。全体像と道筋を示していく中で、このカーボンプライシングというのがどういう役割を果たすのかというのは、非常に大きな要素かなというふうに、伺っていて思いました。
 谷口先生がおっしゃった地域の全体像と道筋の中で、この交通、国内公共交通、乗り放題のお話、大変興味深く伺いました。地域、各地域においても、日本全体でも、カーボンニュートラルに向けた全体像と道筋を示す必要があると思うんですけれども、各地域、地域で、自治体が全体像と道筋を示していく必要があるというふうに思っておって、とりわけ交通をどうしていくのかというのは、非常に重要なポイントかなというふうに思っております。
 安宅先生がおっしゃった内容、それぞれ一つ一つ、非常に興味深いなと思いました。プッシュではなくプル、強さよりしなやかさ。特にエネルギー政策においては、我々もこれまでも、しなやかさ、柔軟な対応が非常に大事だということを申し上げてまいりました。ここも大変同感するところでありました。
 質問1点は、安宅先生がおっしゃった、地図ではなくてコンパスだと。方向感を示すことだというものです。
 冒頭申し上げましたとおり、全体像と道筋を示してくれというふうに我々、申し上げてきましたが、ひょっとしたら、そうではないのかなと。あるいは、このコンパスというのは、どういう内容を示すのかというところを、例えば、こういうようなメッセージを出すことがコンパス、方向感になるんだというようなことがあれば、もし何かあれば、安宅先生のほうからお伺いできればというふうに思います。
 よろしくお願いいたします。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。真庭市長の太田委員からも、ご質問がございますので。
 
太田委員
 少し外れるかもしれませんが、谷口先生にお伺いしたいと思います。
 最後の公共交通のところなんですが、農山村を代表して申し上げますと、そのJRそのものも、都市とその農山村を結ぶような長距離JRがほとんどなくなって、ぶつ切り、そしてまた、それも1時間に1本もない。さらに、このコロナ禍の中で、より経営が悪くなって、そのまま廃線というですね。高速バスすら、今、都市間と農山村を結ぶ長距離バスがなくなって、休止状態ですね。
 さらに、その農山村の中で見ても、大規模のマーケットが郊外にあって、そこに買物に行くと。そういうことで、車がないと、とにかく買物すらできないと。そうすると、高齢者の足がなくなって住めなくなるという中で、私ども、公共交通のバスを、真庭市の経営するバスを入れて苦慮しているわけなんですが、流れとしては市街地に、ある程度店舗を増やすことによって、そこで買物ができる。そうすると、そういう車の相対的な依存度が減ると。
 車の依存度が減ることによって、農山村は一家で3台くらい車を持っていますから、車にかける支出というのが、物すごい大きなシェアを占めるわけですね。それが減ることによって、実質消費が豊かな消費生活ができるみたいなことになるんですけれども、そういうふうに持っていく道筋が全く分からないという、絶望感に今、さいなまれているというのが現状なわけで。
 ただ、こういうふうに、公共交通にかける費用が案外安い、5万円ぐらいだとしますと、本当にその公共交通をただにしていく方向というのは、あり得るのかなと。
 そういう中で、鉄軌道の持つ有意性、環境の面においてもですね。ところに対して、政府のほうも一定の支援をしていくというような、道路にあれだけの投資をするわけですから、そういう交通体系そのものを根本的に変えることが、環境にも、あるいは農山村を豊かにするということにもつながっていくのかなと思うんですが、その辺りの感想をいただければと思います。
 
大塚委員長
 ありがとうございました。
 では、各先生からご回答をお願いしたいと思います。
 私からも、ちょっと務台副大臣がおっしゃったことは、私もそのとおり、ちょっと大変大事な問題だと思っていまして、これは谷口様に対するご質問だったということを基本的には思いますけど、先ほどナッジとか価格効果というようなことを書いていただいていて、これをちょっとご説明いただくことになると思いますが、憲法は一応、居住、移転の自由は保障しちゃっているので、コンパクトシティをやっていくときに、どうやっていくかというのは、極めて重要な問題になるかと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
 では、各先生方から、どうぞ、ご回答をいただければと思います。
 まず、谷口様、お願いします。
 
谷口氏
 今、委員長がおっしゃったとおり、無理やり強制移住とかということは、もちろんできませんので、ただ、そういうふうに誤解される方がいるというのは、昔からずっとあって、そこのところは違うんですよというお話をしているんですね。
 まず、副大臣のご質問と、あと、浅利先生のご質問がちょっと近いので、併せてご回答させていただきたいと思うんですけれども、おっしゃるとおり、フリクションというのはあります。というのは、自由に住めないじゃないかとか、安い土地が開発できないじゃないかとか、そういう考え方が一つあるということと、あと、私、最初に鳥取県で講演したときに、質問タイムでいきなり怒られました。先生は中山間地域から撤退せよとおっしゃるのかと怒られたんですけど、そんなことは全く言っていなくて、スプロール地域を何とかしなさいと言っているんですね。
 都市の外縁部で、いわゆる真庭市長さんがおっしゃったような、大型ショッピングセンターとかが幹線道路沿いにあるようなところに、どんどん外に展開していく、そういうところをきちんと無駄に広がらないように押さえるということです。
 そういう意味で、あと、中山間地域に関しては、きちんと人に住んでもらって、逆に交通、いろんな交通が入っていますので、それを集約することによってCO2を下げていくという、そちらですね。郵便とバスを一緒にするとか、貨客混載とか、そちらのメニューで対応していくというのが大事かと思います。
 副大臣のお尋ねで、政策的にそういうフリクションを抑えるには、どうしたらいいでしょうかということに関して名案が一つございまして、千人ぐらいの方、自治体の方とかに、コンパクトシティはどうですか、認められますかというアンケートを、ずっと20年ぐらいやっているんですけど、明確な傾向が一つあって、若い人ほど、当たり前じゃん、それ、ということなんですよね。これは、若さを図る指標ですよというふうにお答えすると、割と皆さん、ああ、僕、認めますという方が結構増えるということですね。それが一つのポイントかなと思っています。
 あと、こういうふうに順番にお答えしていったらよろしいですかね。
 
大塚委員長
 はい。そうですね。恐れ入ります。
 
谷口氏
 馬奈木先生から最初にお尋ねいただいた、混雑税ですね。私もそれ、先生がおっしゃるとおり、非常に有効だと思っています。ただ、政治的な理由で、これはなかなか日本に入らないというのが理由です。
 シンガポール、ノルウェー、ロンドンとかで既にやられていますけれども、もともと環境のためにやられていたというよりかは、シンガポール自体は混雑の解消ですね。ノルウェーは、むしろ道路財源を獲得するためにやっていたという経緯がございます。
 日本で導入する場合は、海外はトール方式といって、ゲートを通るときにお金を徴収する形なんですが、今までできなかったのであれば、むしろデジタルで、走行距離課金というふうな形で、違う形で、いわゆるガソリン税ではない形で、そういう混雑税を徴収する。いろんなメニューが多分あると思います。追い越し車線をゆっくり走っている車からは高く徴収するとかですね、そういうこともデジタルの時代ではできると思いますので、そういうメニューを期待したいというふうに思っています。
 それと、あと長谷川様からいただいた、どういうふうにしたら、そのメニューとしてはあるんですかということなんですが、これはスライドの中でお示しした、規制、誘導事業ですね。それに当てはまるメニューというのが、それぞれあるということになります。
 実は、環境省様のほうで2015年頃に、ロードマップ、脱炭素化のためのロードマップを作って、そのときにメニューの一覧というのを、かなり詳細に作ったので、そのフォローアップをするということが、まず大事ではないかなというふうに思っています。
 一つだけ何かと言われると、私は駐車場のコントロールというのが、実は車の交通を管理する上でも、非常に大事だと思っています。
 日本の場合は、これ、商工会議所の大下様からのご質問とも関係するんですけれども、あめ政策ですね。真庭市様とも関係します。アメ政策はやるんだけれども、ムチ政策は導入しないんですよね。そういう意味では、車の利用を抑えるためのプランというのを、きちんとやるというふうなことをやったほうがいいと思います。
 これ、ドイツ型の計画、都市計画になるんですけれども、それを、車を使うところはここよ、公共交通を使うところは、ここよというふうな形で、きちんと仕分けしてやるということですね。
 あと、公共交通、実はコストがかかるのかどうかということで、具体的な数値も事例としてお示ししたいと思うんですけれども、このコロナ禍によって、ある、人口40万人ぐらいの自治体さんが、公共交通にサポートをすることになって、市民からいろいろ、コストが増えるじゃないかというふうに苦情が出たと。じゃあ、幾らになったのか、それを出してというと、計算していただくと、年間350円ぐらいなんですよ、1人当たり負担が。
 これ、今、皆さん、ガソリン代を幾ら使っていますかと。あと、自動車を買うときのお金とか、税金とかを考えると、それの比較と考えると、物すごい差なんです。公共交通にすごくお金がかかっているというふうに思いこまれているかもわかりませんが、実際に計算すると、実はそんなにかかっていないんですね。
 あと、クロスセクターという意味でいくと、福祉の効果もございますので、そういう意味でも他のコストを代替しているということが言われています。
 あと、広井先生から、ご質問ではなかったんですけれども、多極集中というコメントがございました。実は、コンパクトシティの議論が最初に出てきた20年ぐらい前に、一度、その議論があって、多極集中にすべきだという提言が出されていたんですけれども、結局、それは明確な政策として実行されていないということが、ご回答になります。
あと、ウオーカブルということに関して、たまたまなんですけれども、おととい、国交省の道路局より、多様な道路のニーズを満たすためのガイドライン、これ、要するにウオーカビリティをアップさせるためにどうしたらいいかというガイドラインが、ちょうど出たところでございますので、そういうものも参考にしていただくと、脱炭素メニューとして非常に組み合わせてやると有効な方策になるかなというふうに思っております。
 こんなのでよろしいですかね。すみません。
 
大塚委員長
 どうもありがとうございます。
 では、安宅様、お願いします。
 
安宅氏
 安宅です。多々、ご質問ありがとうございます。ちょっと答え切れるか分からないですけど、簡単に。
 まず、馬奈木委員からいただいた民間主導でやる、より自発的にやったほうがいいのかという話なんですが、基本そうだと思います。ただ、ただですね、僕、実際今、すごい疎空間でいろいろやっているんで、現在のエコノミクスが10、金を突っ込んで1か1.5しか戻ってこないという、恐ろしいエコノミクス、物すごい流血状態なので、民間主導でやったら合わないんですね、はっきり言っちゃうと。
 だから、ここはエコノミクス的にはめちゃくちゃなわけです。このROIの極限的状況を直視して改善していくということが必要なんですけれども。なので、何ていうかね。メイクセンスするイニシアチブをいろいろやりながら支えていく、そこのその基礎自治体なり、国なり、何なりという、県なりというところが支援するということで、ひとつ、型をちょっとずつつくっていくという話だと思っています。
 特に疎空間ですね、中山間地域でやるというと、中山間地域がそのまま疎空間なわけではないんですよ、私の見解では。例えば、アルプスの少女ハイジとかを見ていると、あそこで本当に疎空間に住んでいるのは、ハイジとオンジだけなんで、ほかの人はまちに住んでいるんです。あれは、我々の定義では都市なんですね。なので、コンパクトシティの一種なんです、あれは。
 そうではない疎空間のところというのは、本当に答えがなくて難しい、めちゃくちゃ難しい問題なので、ちょっとずつ答えを探るということをやっています。それを50年、100年かけて実現していくという類いのことだと思います。
 なので、これをやるためには、すごい多分野の専門家が、もう相当量集まって、我々も色々検討しているんですが、ちょっとずつ、そういうふうにやるしかないと思います。今のところ、世界的に明確な答えがないという状態なので、そういうことだと思います。
 あと、浅利委員からあった、中山間地域はどういうふうに向かっていったらいいのかというご質問ですが、これが、はっきりよく分からないから、すごく難しい。中山間地域というか、疎空間が全般的によく分からないですね。山があろうと、海があろうと、疎空間の経済的に安定しつつ回る像が本当によく分からないと。
 これ、人間がいるという前提で、どういう状態であったらメイクセンスするのかということですと、大分、我々は方向性が見えてきていて、今、取りまとめようとしていますけれども、一般的な村おこしの類いのかなりの部分が経済視点、今後の価値創造という視点で間違っているということは、ほぼ確信しています。
 特に間違っているというか、残念で失敗していると思うところは、基本的には都市のソリューションを疎空間にそのままアプライするという方法です。
 例えば、国道を新規で敷くと1km当たり20~70億円のお金がかかっています。国交省のみち研の人とか、いろんなコアな人にも入って頂いて見ているんですけど、県道だと半分、市道でもその半分ぐらいのコストで、疎な空間でこんな道を敷くと、永遠に採算が合わない可能性が高いのですね。今後発生するメンテナンスコスト的にもですね。
 みたいなことで、全く違うスペックで造らなきゃいけないところに、都市スペックのものを突っ込んでいるところに相当の問題があって、ここは考え直す必要があると思います。
 あと、広井委員からいただいた、集中と分散をどんなふうにデザインしていくべきか。これが本当に、いいご質問というか、鍵なんですけど。本当に疎空間をviableにしようと思うんであれば、ある程度、そこはマイクログリッドが可能な程度に寄せるという、何ていうか、ミニマイクロ、コンパクト、マイクロシティというか、マイクロギャザリングみたいなやつを、ある程度つくるということをして、そこで完結していくタイプのマイクログリッド型のものを入れていくというのが、やっぱり基本だと思いますね。
 マイクログリッドとマイクログリッドの間をグリッドでつないでしまうのが、本当に答えなのかは、相当考える必要があると思います。
 道の場合ですけれども、道が一番分かりやすいんで、道の壊れ方は、これは国交省的な方がいらっしゃれば、よくご存じだと思いますけど、私の知っている限りは重量の4乗に比例して道は壊れると聞いています。乗っている車のですね。
 ですから、一般車両が走っているのと、トラックが走っているのでは壊れ方が、桁が数桁違うわけですね。みたいなことで、あまり小さい、普通の小さい車しか走らなくて、トラックも走らないようなところというのは、別に、そう、さして強度は要らないということで、必要なインフラには、実は相当激しいレイヤーがあって、その視点をもって考えるというのは、とても重要なんじゃないかなと思うところです。
 また、大下委員からいただいた、プル、コンパス、どういう内容を示すか、これが問題で、本当にちゃんと深く考えなくちゃいけないと考えます。この四、五年、ずっと検討しているんですけど、まず第一に、ROIから逃げないというのは、めちゃくちゃ重要だと思うんです。今の疎空間のほとんどは、お金を10入れて1しか戻ってこないという、とんでもない状況なんで、これではもう、将来的に捨てるしかないということは、もう直視しなきゃいけない。
 それと、二つ目は、グリッド愛が、やはり人類は強いんですけど、道だけでなく、電力、水道、ごみ処理もグリッド依存です。グリッドが大してコストがかからないもの、かかるんだけどペイするものはいいのです。通信みたいにですね。でも、そうじゃないものについては、やはりどうしてもオフグリッド、マイクログリッドを中心に、疎空間については回すというのは、一つのコンパスだと思います。
 そこに突っ込んでいるものが、あまり深く考えずにやっている、都市のソリューションを入れているんじゃないかどうかというチェックはすごく重要で、そこの本当の真の空間価値を上げるような入れ方をしているのかというのをチェックするというのは、すごくあると思うんですね。
 こういった辺りのことを、取りあえずは指針に置いて、もっと見えていることはいっぱいありますけど、それは、我々、まだ発表していないようなことだらけなんで、なんですが、そういったことをもってやっていくということだと思います。
 これは、安易にその辺に答えが転がっているという発想でやらないことが、極めて重要という見解です。
 一旦、以上です。ありがとうございます。
 
大塚委員長
 どうもありがとうございます。
 では、諸富様、よろしくお願いします。
 
諸富氏
 3名の委員の皆様からいただきました、順次回答をさしあげます。
 まず、馬奈木委員から、炭素生産性を上昇させるために必要なことということで、ご質問をいただきましたけれども、強調したかったことの一つは、やはりカーボンプライシング、価格づけは、非常に炭素生産性を上げる上で大事だというポイントですね。
 ですので、カーボンプライシングを通じて、やはり脱炭素へ向かうインセンティブが働くということですね。ただ、それだけでは、炭素生産性の分子のほう、上げるインセンティブに直につながるかどうかは、必ずしも保障されないので、なので、一つはグリーン投資、これは馬奈木委員も言及されたグリーン投資ですね。これを、しっかりやっていくということが非常に大事なのと、それから、やっぱり経済が無形資産化している、非物質化している中で、人的資本投資をセレクトイン、官民共に進めなければいけないということですね。
 ですので、これらが、やはり三つが重ならないと、生産性、炭素生産性は上昇していかないというふうに思います。
 それから、広井委員からいただいた点ですね。炭素税収の使途はどうするのかという点でありますけれども、これについては、様々な目途があります。広井委員がご指摘された社会保障、特に社会保険料ですよね。これの企業負担ないしは労働者側の、勤労者側の負担、社会保険料は折半されている、日本はそうですけれども。なので、そこと相殺をして、いわゆる環境税制改革というような形は、一つ、確かに有力な方法としてあるかと思います。
 また一方で、この間、過去10年ぐらい、カーボンプライシングを入れて、排出量取引制度にせよ、環境税にせよ、上がってきた段階の税収、あるいは排出枠の売却益ですね。こういったものの税収を、どういうふうにして使っていくのかということについては、今日、少し議論したようなグリーン投資ですね。これは、再エネや電力インフラ、例えば送電網投資とか、こういうものも含まれると思うんですけれども、そういったものに積極的に投資をしていくための財源にしていくというようなことも、盛んに議論されていますし。
 それから、一方で、どうしてもこういったカーボンプライシングを入れると、逆進的な負担構造になっていくと。イギリスでは、よく、エナジーポバティーという言葉を、よく言われていますね。化石燃料の価格が上がって、生活必需品である、このエネルギーの価格上昇が、低所得者層によりヒットするということで、そこを緩和するために、低所得者層に対して逆進効果を緩和するための支給をすると。こういったものに使うべきだという議論は、もちろんございます。
 このような形で、どういう社会構図を描いていくか。それから、特にトランジションという期間が、脱炭素までの間に10年、20年、30年と続いていきますので、そのプロセスというのは一日にして成らずですので、そのプロセスの様々な影響を緩和をしていくために、様々な資金の使途がありますし、緩和をするだけじゃなくて、また、未来への積極的な投資のための投資財源としても使うことができるということですね。
 そういう意味では、どういう経路をたどって、いわゆる脱炭素社会に至るのかということを、国民的な議論をした上で、移行期をどういうふうにして、どういう経路をたどっていくのかということによって、どういうお金の配分にしていくかということは決まっていくのかなというふうに思います。
 それから、長谷川様にいただいた三つのポイントに分かれていたかと思いますが、炭素生産性については、国際比較をする際に、各部門といいますか、また具体的に言うと国別の違いですよね。例えば電源構成などに言及されたかと思うんですけれども、私自身は、まず国別で見ていくことは、非常に有意義なことだと思っています。
 ただ、なぜ、こういう違いが生まれてきているのか。少しお見せしたような形の違いが生まれてきているのかを議論する上で、国別に背後にどうなっているのかということを、ちゃんと見ていくということは大事なことだと思います。
 例えば、電源構成、言及された電源構成は確かに違いますよね。日本の場合は、化石燃料が8割以上に達していますので、例えば水力比率の高いノルウェーとか、原発率の高いフランスなんかと、おのずと事情が違うというのは、そのとおりだと思います。
 ただ、現時点ではそうなんですけれども、なので、ただ、その違いが決定論的に理解されるのではなくて、じゃあ、それをどういうふうにして脱炭素に向けてエネルギー構想を変えていくかという議論、なぜ、こう違いが今、生まれているのか。その違いが生まれている原因は何かを分析することを通じて、じゃあ、どう10年後、20年後、30年後、つまり2050年に向けて変えていくのかという議論を積極的にやっていくために、国別のその中身ですよね。炭素生産性の違いの中身の分析を、しっかりやっていくということに意味があるのではないかなということを思っております。
 また、エネルギー価格の上昇等、取組をしていくプロセスで起きてくるんではないかというご指摘がございました。
先ほど、ちょっと言及、説明しましたように、脱炭素に移行する、カーボンニュートラルに移行することは、むしろそうしない場合よりも成長するという結論が、まず、様々な我々の研究結果も含めて出ております。
 ただ、そのプロセスの中で、ご指摘のように電力料金を見ていきますと、我々のモデルでも電力料金は上昇していくという結果がやはり出てきています。ただ、電力料金が上昇する背景でも、恐らく様々な電源構成の中で、電源構成の切替えが行われていて、一つは、再生可能エネルギーへのシフト、どのモデルでも非常な勢いで再生可能エネルギーへのシフトが進んでいくということが起きています。で、そのプロセスの中でなぜかというと、こう、後ろに最適化モデルがあるんですけれども、やっぱり安い電源にシフトしていくということなんですね。
 ただ、その投資コストがかかるといったことも含めて、最大のコストはどんどん、発電コストは下がっていくんですけれども、投資コストその他がかかってきて、それはオンしていく中で電気料金は上がってしまうことは確かなケースにいきます。だから、そういった投資や、それから化石燃料をたいて発電している場合に比べて、化石燃料その他の輸入が減りますので、代替が起きて、純輸出が増えるということになります。また、総体的にそういう形で投資が行われることがGDPを引き上げるといった効果も出てきますので、こういった効果が全体として効いて、むしろGDPは成長していくという方向へ転じていくということになりますね。ですので、この辺りで、やはり転換を進めていくべきであり、多少その電力料金の上昇という負債は生じてしまうということは認識しておく必要は確かにあると思います。
 最後に、達成する上昇ということで、エネルギー産業構造転換をどう図るのかというご質問がございました。そうですね、まず、産業構造の転換や新陳代謝ということを強調いたしましたのは、やはり、その資本主義の経済の構造変化がバックにあって、非常に大きな流れとして非物質化という流れがある中で、無形資産中心の経済に向かっていくんですね。ですから、それに向かう上で製造でのサービス化ということは避けられないというふうに考えています。つまり、そちらは、炭素生産性の分子のほうですね、伸ばす上でも、そういったまず産業構造の転換を促す必要がある。そのプロセスの中で、恐らく製造部のサービス化向け、資産中心の経済の転換が起きることは、恐らくですけれども、CO2の排出削減につながるというふうに思います。これが第1点目ですね。
 それから、鉄、鉄鋼などをはじめ、いわゆるエネルギー集約産業、第3象限から第1象限への移行ということについてのご質問もございました。恐らくこれは、一つは代替品への移行というのも起きてくるんじゃないかな。つまり、必ずしも、いわゆるエネルギー集約型産業が製品として製造しているものに対して、どうしてもそのCO2を下げられないということであれば、CO2を排出しない製造プロセスから生産される代替製品によって置き換えていくという戦略が一つあり得ると思いますね。
 それから、もう一つは、その第3象限に位置するエネルギー集約型産業の製法そのものをやはり転換するというのは非常に大事なのではないかなというふうに思います。具体的に言いますと、やはり水素還元法等、例えば鉄鋼産業でありますね、導入によってかなりドラスティックにCO2の排出を下げるという試みが、どこかの時点でやはり必要になってくると思います。それによって、ドラスティックに炭素生産性を上昇させていくということが必要なのかなと思います。
 ただ、そのプロセスにおいては、海外に、やはり鉄の生産というのは非常に産業の基盤として大事ですので、海外に出ていかないようにするにはどうするか。これは欧州も盛んに議論をしているところでありまして、公共調整措置は非常に大きな、有力手段として議論し、はや26年ですかね、正式導入を決めたというふうに思いますけれども、それ以外にも投資補助金を政府が出すと、つまり、水素還元法という非常に高価な、投資コストの非常にかかるものに対して、しっかり政府が投資コストを手当てしていくというようなことを決めていますよね。日本は、まだそこまで議論がいっていないと思います。ですので、鉄鋼産業をはじめエネルギー集約産業が、例えばグリーンアルミとか、グリーンセメントといったところへ本格的に製法転換をするならば、その後押しをすべきじゃないかなというふうに考えております。それが、例えば炭素税の税収でもって充てるというようなことも一つのアイデアとして考えられるのではないかなというふうに思います。
 以上でございます。
 
大塚委員長
 はい、ありがとうございました。
 髙村委員から質問の希望がございましたが、どうぞ、よろしくお願いします。
 
髙村委員長代理
 ありがとうございます。3人の先生、ご報告どうもありがとうございました。
 1点だけ、諸富先生にご質問させていただければと思います。諸富先生のスライドの19枚目でしょうか、デカップリングについて3点、可能になった要因を言及されているかと思います。ちょうど今、お答えいただいたところとも関わるかもしれませんが、3番目の先導市場というのが、私は、非常に日本の文脈では重要なようにも思っております。例えば、クリーンエネルギー分野の技術の開発そのものは多くなされている、特許を見てもなされていると思うわけですけれども、他方で、それを実証、そして市場開発をし、普及をしていくという段階で、日本の商品、日本の産業の商品化がうまくいっていないという指摘も複数、研究でも示されているように思います。そういう意味で、この先導市場をどのように促進されるのか、現状で国の役割、あるいは政策、必要な政策、制度などについて、ご示唆をいただければと思います。
 以上です。
 
大塚委員長
 ちょっと私からも安宅様に、ちょっと一言お伺いしたいんですけど、この最終的に、この炭素中立型の経済社会への変革をしていく中で、我々も、その将来世代の国民に対しても希望が与えられるようなことを考えていかなくちゃいけないんですけど、安宅様が一番こう、いろんな方向から物を考えていらっしゃると思いますから、一言何かご示唆いただけることがあれば、よろしくお願いします。
 以上2点につきまして、安宅様と諸富様から回答いただけますでしょうか。
 
安宅氏
 希望、希望ですよね、希望。はい、希望を持てるように生きていきたいと思って生きているんですけど、僕は、開高健さんが残された「明日、世界が滅びるとしても今日、君はリンゴの木を植える」という言葉を毎日見て生きているんですけど、正直、何が答えなのか分からないんですけれども、少なくとも間違っている方向よりもこっちのほうがベターな方向というのは常にあるわけですよね。だから、そこに向けてやれることをやっていくということ、こつこつやるということをみんなでやっていくと、少しずつましな未来になるよということをみんなで実感しながらやっていく、一つずつやっていくということがやっぱり大事なんだと思うんです。
 あと、人類が滅びる論みたいなことを平気で言う人がいるんですけど、氷河期ですら人類は生き延びたので、滅びるとは僕には思えないです。絶対に生き延びると思うんですね。ただ、数は激減するかもしれない。多分そういうことだと思うんです。だから、そこのサバイバル度合いを多少なりとも上げていくというだけの話なので、今頑張ったら頑張っただけ、もう未来にこのヒーロー、ヒロインになるんですということですとね、そうすると、やれることをやりましょうよというだけのことだと思うんです。あんまり、そんなに難しい話ではないのではないかと。
 海面が仮に四、五メートル上昇したとして縄文時代に戻るだけの話なので、大変ですけど、その過程で何が起きるのか、もう想像を絶することが起きそうな気もしますけど、でも、それでも生き延びると思うということで、あんまり悲観論をばらまいている暇があったら、やれることをやろうよということを、みんなで寄ってたかってやっていたら、それは全部産業になると思いますし、すごい面白いアイデアはいっぱい浮かぶんですよ。これからのすごいディザスターの中でも落ちないグリッドって何だろうとかといっていたら、すぐにそれ産業になるんですよ、ぽんぽんぽんと。だから、そういうのは1個ずついろいろあるんで、片っ端からやるということが大事だと思いますし、それは日本から発で、山のように、本当にいろんなものが出てくるんじゃないかなと思っています。別に日本発である必要はないんですが、日本から世界にそういう人を動かす、こういうようなことができればなと思っています。
 はい、すみません、あまり答えになってないんですけれども、私はそう思っています。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、諸富様、お願いします。
 
諸富氏
 はい、高村先生ですね、重要な点をご指摘いただきましたけれども、はい、ほかの先生ともずっと議論してきているようなことで、やっぱり日本は、製品とか研究開発、特許、非常に優秀ですよね、どの企業も、皆さんですね。だけど、結局それが、なぜ最初は世界に先駆けて技術が出ていって、製品開発も世界に先駆けているのに、当初はある程度マーケットシェアを獲得できるけども、結局、敗れていくのかと、ここが非常に難しいところですね。だから、この先導市場ということで、マーケットを形成していく政策というところが欠けているんじゃないかと。
 恐らく研究開発補助とか、投資補助とか、税制優遇とか、これは非常に、多分政策措置として非常によく入っていますし、既にたくさんされていると思うんですね。じゃあ、その製品を開発したら、後は企業にどうぞというふうにやっていると思うんですよ。だけど、その製品価格って当初は高いですから、実際に人々が手に取るようになるまでに価格が下がるプロセスが必要で、その研究開発とその普及率と、その普及というのはマーケットを広げていくしかないですね。
 このマーケットを広げていく措置、それは、例えば再エネの場合はFitとか、一つのそういう移行の普及促進のための政策手段ですよね。あれは高く買い取っているので、コストを上乗せしているので何という政策だという非難もあり得るけども、一方で、あれがあったからこそ、たくさん投資が行われて、コストダウンが効いたという部分がありますよね。だから、その普及を促して、コストダウンさせるための政策措置、その製品の普及とコストダウンをどうやったら促せるのか、これが先導指標ということの政策だと思うんですよね。日本は、多分そこが弱くて、そこをやっぱり手当てしていくようなことをやっていかなきゃいけないんじゃないかというふうに思います。
 以上です。
 
大塚委員長
 はい、ありがとうございました。
 ほかにご意見、ご質問がございましたらよろしくお願いします。というか、議論はしていただくことだと思いますが、よろしくお願いします。
 はい、じゃあ伊藤先生、伊藤委員、お願いします。
 
伊藤専門委員
 伊藤です。
 どうも今日は発表をありがとうございました。発表の方々について、特にコメントはないんですけども、ひょっとしたら諸富さんの議論と多少関係があるかもしれませんけども、私、前から申し上げているように、今の経済の中で、いわゆる創造的破壊と呼ばれている現象が非常に顕著になってきているんだろうと思うんですね。誰かのレポートにテスラの写真が出ていましたけども、既存のビジネスモデルを変えていくことによって、新しい価値を生み出すということで。
 なぜその話をさせていただいたのかというと、今日のお話全体にも共通していると思うんですけれども、今のある仕組みを何とか守りながら、雑巾を絞るように、そのより正しい方向に行った先に答えがあるのかどうかと、今の都市構造だとか、今の交通体系だとか、今の産業の仕組みだとか、今の我々の生活パターンの中で、もちろん努力することは大事だし、これまでの仕組みを守ることも物すごく重要であることは言うまでもないわけですけども、どこかで、さっきの安宅さんの言葉を借りると、捨てるべきものというか、壊すものに対する覚悟が必要なのかなと、そういうことを今迫られているんじゃないだろうかと。
 で、創造的な破壊という言葉を使った一つの理由というのは、その過去のものを壊すとか捨てるということは、決して悪いことだけではなくて、やっぱり次のステップに進むために非常に重要な特徴だろうと思うんです。ですから、そういう議論をどこまでここでやるかは別の問題として、やっぱりこれまでのものをとどこまで守り切れるのか、あるいはどこまで変えていくかということについて、どこかでやっぱり議論していかないと、変化に対する議論はできないのかなというのを、今日、皆さんの話を伺っていて、そのとおりだなと思いました。
 それに関連して、もう一つ申し上げますと、よく成長と変化というのが誤解されて、もちろん成長できれば、経済の規模が拡大すければ、それはそれで好ましいことなんですけど、今、我々が求めているのは、先ほどの私の話につなげて言えば変化なんですよね。これまでの仕組みから新しいものに変化していくということで、これは、いわゆる通常の成長の議論と、何というか、並行して議論することができるわけで、結局、変化するためにはサプライサイドも変わらなきゃいけないんですから、成長理論と同じように三つしかないですよ。生産性を上げるか、労働力の技術的な価値を、人的資源の生産性、価値を高めるか、あるいは資本ストックを増やしていくかという形になってきて、そうすると、やはり、その中でどれが一番可能性がありそうかというと、もちろん労働に対する投資は大事なんですけども、やっぱり生産性を上げる。つまり、生産性を上げるというのは、過去のものから新しいものに変えていくことによって新陳代謝を増やしていく、買い替えていくということになるんだろうと思うんで、ぜひ、そのもう一歩進む議論をどこかの時間に、時点でできればいいなと思います。
 それから、これは細かい点なんですけど、今日の谷口先生の話、非常に参考になって、ちょっと我々あれですよね、交通体系の話をするときに、どうしても自動車の電化をどうするかとか、そういう話がかなり重点になるんですけど、その話をする前に、一回公共交通のあるべき姿とか、公共交通が果たす役割みたいなものって、もう少し、ぜひ一回集中的に考えてみたら、なかなか面白いかなというふうに思います。
 以上、感想2点でございます。
 
大塚委員長
 はい、事務局、どうぞ、お願いします。
 
地球環境局総務課長
 すみません、事務局です。
 議論の冒頭に申し上げますと、3人のゲストスピーカーの先生方におかれましては、18時半でご退出になる方もいらっしゃいますので、一旦ここで一言御礼申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
 また、もう少しご発言を希望いただいている委員もおりますので、会議自体はもう少し続きますので、もし残る方は、可能な方は残っていただけると、なおありがたく思います。
 ありがとうございました。
 
大塚委員長
 はい、どうも恐れ入ります。
 では続けましょう。
 では、武藤めぐみ様、お願いします。
 
武藤専門委員
 はい、どうもありがとうございます。JICAの武藤でございます。
 国際協力に関して、今後へのインプリケーションとして一つポイントを申し上げさせていただきます。
 本日のご発表を伺いまして、産業構造転換ですとか、集中と分散の国土の在り方というのが非常に大きなトピックとなっていると感じております。国際協力の世界では、脱炭素というと、やっぱりどうしてもエネルギーのほうに関心が集中して、石炭火力をやるのか、やらないのかというところが話題になるわけなんですけれども、その裏には、どうしても日本の成功体験をベースに製造業中心の成長を促していくというところが過去あったと思います。製造業のために周波数のぶれは許されないということで、万全なエネルギー供給が必要だということになってしまいまして、石炭火力の必要論も出てくる素地がございます。
しかし、本日のご議論を伺いまして、やはり、特に東南アジアと対話するとき、産業構造の在り方、集中と分散の国土空間の設計の仕方、そういったところまでベースラインに戻って議論をしないと、東南アジアの脱炭素をリードするというようなところは、なかなかできないのではないかと自分でも思ったところでございます。ぜひ今回の取りまとめの中でも、国際協力に関して、そういうような方向性を示唆いただければと思っております。
 以上でございます。
 
大塚委員長
 それでは安宅様、どうぞよろしくお願いします。
 
安宅氏
 いいですか、すみません、私、退出せざるを得ないので、ありがとうございました。
 で、1点、ちょっと、先ほどご質問が上がっていたところでコメントできなかったのは、疎空間における公共交通なんですけれども、典型的なグリッドでどのように計算しても採算合わないんですよ、そのある密度を割り始めると。なので、そこは、もうこれこそシェアリング的な形で根本的に組み直した、全く別のタイプの形態を取らざるを得ないと思いますので、そこは相当のラジカルシンキングが必要だと思います。
 これは典型的な都市ソリューションを疎空間にぶち込んで、採算が合わないものだと思いますので、ここは我々の検討では、もう全く違う考えでやるしかないと思っています。結局、都市ソリューションを疎空間で横展開してきたところに我々の課題があると思っています。で、都市しかないんだとしたら、やっぱり先ほど、最初にあったとおり、谷口先生のほうから、コンパクトシティ、もっとマイクロシティなのかもしれない、そういった方向しか多分なくなっちゃうので、それ以外の道があるかは、問うのが我々の世代の仕事かなと思っているところです。
 本当にありがとうございました。ちょっと別の、伊藤元重先生に久しぶりにお会いできて、うれしかったです。失礼します。ありがとうございます。
 
大塚委員長
 では、小野様、お願いします。
 
小野専門委員
 はい、お時間いただき、ありがとうございます。
 私からは感想で、特に諸富先生のお話を中心になるんですけれども、カーボンプライシングの話でやっぱり重要性を、お話を聞きながら改めて感じていました。で、ハチドリ電力をやっている中で、やっぱり今、日本で自然エネルギーを導入している法人の方々、企業の方々というのは、やっぱり消費者へのPRが主流の目的になっているなというのをやりながら、すごく感じているところで、それが悪いというわけでは全くなくて、ブランディングに直結しているなというところがあります。なので、2bよりも2cのサービスをしている企業さんのほうがやっぱりメリットを感じているし、実感としても、やっぱりそういう企業さんのほうが、まだ導入している数は多いのかなというふうに感じています。
 現状、その日本では、欧州とかと比べてもサプライチェーンまで脱炭素をしていこうという動きがまだまだ弱いなというのを感じている中で、消費者の、消費者がサプライチェーンを見える化されていない構想だったり、または消費者の方が自発的にそこまで調べるということ、件数自体も少ないのかなと思っているので、やっぱりお話の中で出てきた製鉄業だったり、パルプとか紙の製造業というところは、消費者から動き始めるという動きだと、なかなか導入が進んでいかないので、政府が脱炭素を制定するということが最も近道になるかなというふうに感じています。もちろん、その中で投資とか三つの要素がセットでという話は、もちろん大前提だとは思うんですけれども、その中でも、動きとしては、やっぱり政府が主流で進めていくというのが一番早いかなというふうに思っています。
 あとは、グリーン投資のお話も出たので、そこもちょっと、その観点でもお話ししたいんですけれども、今のそのウクライナ情勢の話もあって、電力の市場価格ですね、すごく高騰しておりまして、恐らくこれは長期化するだろうというのが業界全体で見ている流れではあります。収束したとしても、しばらくの間、元にすぐ戻るということはないだろうというふうに思っています。やっぱり、その話の中で、国内でエネルギー自給率上げていこうという動きは、どんどんそういうシフトしていくだろうなと思っていますし、その声がどんどん、どんどん大きくなっていく流れになっていくと思います。
 その中で、やっぱり再エネ建設を増やしていこうというふうになったときに、例えば、電力会社だけじゃなくてもいいとは思うんですけれども、電力会社が例えば増設しようとなったときの、そのコスト、建設のコストを消費者に転嫁するというモデルだと、やっぱり電気って同質なので、同じ質なのに高いものを買うという方ってかなり少ないなと思うんです。そのモデルだと、確実に再エネは普及していかないモデルにやっぱりなってしまうので、そこの再エネを、発電所を増設していくというところにグリーン投資をしていく必要がすごく大切だなというふうに感じています。
 以上になります。ありがとうございます。
 
大塚委員長
 はい、どうもありがとうございました。
 では、宮下様、お願いします。
 
宮下専門委員
 ありがとうございます。手短に申し上げます。
 本日の3人の先生のお話ともに、需要側の行動変容を大規模に促していく、非常に示唆に富むご意見だったと思います。いろいろな気づきを頂く貴重なお話でございました。私の立場から見ると、それらのお話を進めるためには、ファイナンスが絡まないとピースとして埋まらないような印象を受けました。ただし、それが民間金融機関の通常のローンによるものなのか、リスクマネー的なものなのか、あるいは、公的な金融なのか、資金にもいろいろな種類がございますので、取りまとめの中では、次につながる形で、取り上げることができればと思いました。
 また、炭素税のこと一つを取っても、諸富先生のお話からは、経済的な観点からも、非常にうまく進むような感じもいたしましたが、ただ、長谷川さんとのやり取りの中にもありましたとおり、世の中のコンセンサスを取っていくには、まだ時間もかかるのかなと思いました。
 以上、感想でございます。
 
大塚委員長
 はい、ありがとうございます。
 では、森田様、お願いします。
 
森田専門委員
 ありがとうございます。今日、3名の先生方の発表、大変勉強になりました。
 私自身、気候変動と生物多様性の両方の科学的知見をまとめるレポートであるIPCCとIPBESのレポートの執筆に関わっており、その中で気候変動と生物多様性、それぞれの目標達成のための社会変革の議論をしています。何となく気候変動のコミュニティは割とコンパクトシティとか、スマートシティとか、そういったイメージを持ちながら議論していると思うのですけれども、一方で、生物多様性のコミュニティは、私のバイアスも入っているかもしれないですが、自然の豊かなところで人々は住んでいくことがみんなの幸せにつながるんだというようなイメージで、気候変動と生物多様性分野で描いている世界が、何か違うような、同じ社会変革なのに方向性が違うなという印象を持っています。今日のお話も聞きながら、今後、日本としてどういう方向に向かっていくのかということを結構しっかり議論していく必要があるなと思いました。それによって、どういうところにお金をつけていくかというこという話にもつながっていくと思います。
 また、今日のお話を聞きながら、このような横断的議論は、いろな省庁が関わってくる話だと思いますし、人々の行動の変容に関係する部分となると、また違う省庁が関わってくると思いますし、どういった省庁とかがリードしていくのかな、どうやってこれからの道筋を描くような議論ができるのかなということを思いながら聞きました。私の方では答えはまだないのですけれども、今日の議論、非常に勉強になりました。
 ありがとうございます。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 では、淡路委員、お願いします。
 
淡路臨時委員
 千葉銀行の淡路でございます。
 先ほど、伊藤先生からご指摘のありました、公共交通について一度議論してみたらいいんじゃないかという点ですけれども、私も大いに賛同します。私、この地方創生という観点から、公共交通の在り方というのに何度か関わったことがございますけれども、地域の住民の方は、電車も通ってない、バスもどんどん減ってしまった、車がないと生活できない、その利便性や必要性に迫られて、1人1台車を持っている地域というのは、まだ千葉県にたくさんありますが、じゃあ、それを全部捨てて、公共交通の負担をして、自分が利用するかというと、公共交通は残っていたほうがいいよねで総論は賛成なんですけど、各論に入ると、自分の車は手放したくない。ですので、その税の使い道、例えば、それを税金を取って整備していくとなると、税の使い道の透明性というんでしょうか。その徴収した税がどういうふうに使われていっているのかということが、もっと明らかにならない限り、なかなか多くの人に等しく負担してもらうというのは難しいんじゃないか。
 それから、今コロナの状況で、大きく打撃を受けている事業者の一つが、その公共交通とか、バス事業者とか、そういうところだと思いますので、そう考えますと産業の面から、あるいは一人一人の住民の視点から、公共交通をテーマに挙げて、落とし込んでいくと、生活の行動変容、あるいは事業の在り方に変革というようなアプローチが可能になって、身近な、分かりやすい議論になっていくんじゃないかなというふうに考えました。
 以上です。
 
大塚委員長
 はい、ありがとうございます。検討させていただくことになるかと思います。
 では、西尾委員、お願いします。
 
西尾臨時委員
 西尾でございます。
 2点、今日のお話を伺っていて触発されました。諸富先生、あるいは髙村先生とのお話にもありましたが、日本は、技術や製品のクオリティという側面では決して世界に負けないけれども、結果的には市場競争に負けてしまうということがよく言われています。
 それについてはオープンイノベーションが不得手であるとか、マーケティング展開上の問題とかいろんな議論がされていますが、このような課題解決のためには、今日お話しいただいた生産性の向上や人的資本投資の増大、資本ストックを増やすといったことだけでなく、企業の競争力向上のために市場のニーズに効率的に対応するためのDXに関する仕組みづくりの推進も重要ではないかと考えます。
 このこととも関連するのですが、もう一つは、製造業のサービス化、いわゆるサービタイゼーションへの対応です。今後、サービス中心社会に全世界的に移っていくといわれています。そのためのITやIoT等のデジタル技術も整備され、ますますサービタイゼーションがやりやすい環境になっています。サービス化することによって所有権が移転しなければ、消費者を巻き込んでいろんなタイプのサーキュラーエコノミーを展開することができます。そのことが資源効率や、ひいては低炭素化にもつながっていきます。このような環境は消費者と事業者の関係を変えていきます。例えばシェアリングサービスやクラウドファンディングでは、消費者自らが自分の持っている資源、ましてやお金までも提供するようになってきています。つまり、今までのようにメーカー側が、事業者のほうが価値をつくって、消費者はその価値の受容者ですというような図式が変わってくるわけです。
 このように消費者が企業と一緒になって価値を創っていく方向に変わっていくと、消費者は環境保全型の事業者を応援し、その商品やサービスを選択するだけではなくて、自分たちも、メーカーと一緒になってよりよい社会をつくっていくための価値共創者なんだという自覚が必要となります。そのための知識や能力を上げていくことが求められます。その機会を国がどのように提供するかといったことも重要ではないかと思います。
 諸富先生のお話の中で、スウェーデンは、非常に新しい先進的なサービスを生み出し展開し、成功しているとのことでした。なぜスウェーデンにできて日本ではなかなかうまくいかないのか。今日、先生方がご議論いただいた以外にも、初等から高等教育のあり方、リカレント教育の問題、あるいは、創造性やデザイン思考に関することを体系的に学べる機会を充実させる必要があるのではないかと感じました。
 以上でございます。
 
大塚委員長
 はい、どうも重要な指摘をありがとうございます。
 では、竹ケ原委員、お願いします。竹ケ原さん、ミュートになって、あ、竹ケ原さん、ミュートになっています。
 
竹ケ原臨時委員
 すみません、まだ時間は大丈夫でしょうか。ごく簡単にコメントさせていただければと思います。
 今日は、本当に大変勉強になりました。ありがとうございました。特に、谷口先生のマスタープランを結合する、散逸化計画になるという話は、この話題が出ると必ず好例として引き合いに出されるドイツにおいても、都市が密集しているルール工業地帯で目の当たりにしていたので、非常に懐かしく思い出したところであります。
 公共交通を議論するというのは私も大賛成です。特に、そのファイナンスの話なんですが、コンパクトシティ化により、うまく回っていると言われている都市においても、実際にはシュタットベルケの超過利潤、つまりエネルギーセクターからの収益で補填されて事業性を維持しているケースが少なからずあるように聞いています。コンパクトシティだから公共交通がうまく維持できているのか、それとも別の仕掛けがあるのか、公共交通を維持するための何らかの類型化ができるのかみたいな議論を少ししてもいいのかなというのは感じております。
 また、今日は、あまり金融の出番がない中でコメントで恐縮ですが、諸富先生のお話にあった無形資産投資へのシフトのお話は、ESG、非財務情報に着目した投資のメインストリーム化とつながっているように感じました。この投資の関心事項が、現在、人的資本とか、知的資本に向かっていますので、この辺の話がつながっていくと、生産性の話になってくる。今日いただいたご議論は、金融との接点が薄いように感じていましたが、よくよく考えてみると、意外につながっているんだなというのを感じたところでございます。
 すみません、簡単でございますが、コメントさせていただきます。ありがとうございました。
 
大塚委員長
 ありがとうございます。
 谷口先生、ご発言よろしくお願いします。挙手いただきましてありがとうございます。
 
谷口氏
 すみません、時間になっているかと思うんですが、関連する質問を頂いたように思ったので、ちょっとだけお答えさせていただきます。
 まず、森田先生のお話で、生物多様性と気候変動を別々にというふうなお話があったんですが、コンパクトシティは、そういう意味ではエコロジカルネットワークをきちんと作るという議論と実は連動しておりますので、若干認識は弱いかも分かりませんけれども、これはセットで、生物多様性の話もセットでやっていくということがやっぱり基本だと思っています。そのことをちゃんとメッセージとして出していかないといけないと思っています。それが1点ですね。
 で、あと、淡路先生、伊藤先生、それから、今、竹ケ原先生ですね、公共交通のお話が出たので、今後のためにちょっとだけ情報提供しておきますと、海外でコロナになって、公共交通が打撃を受けたという話はほぼないですよね。それはなぜかというと、それは生活の基本サービスとして提供しなければいけないというベースとなっている思想があるからです。で、エネルギーで補填しているというのは、カールスルーエとかはそうなんですけれども、都市によっては一般財源の10%ぐらいを提供しているというふうな都市もあって、それぐらいやると確実に利便性の高いネットワークが実現でき、車からの転換も生じます。日本で同じように、どれだけ一般財源から公共交通に負担が出されているのかというと、1%やっているところはほぼありません。0.1%から0.2%というところがほぼ全部です。公共交通は勝手に死ねというのが日本の仕組みになっている。昔、日本では公共交通がもうかっていましたので、そういう流れがあるということです。
 あと、一方で、スイスとかの中山間地域ですね、法律で、例えば集落、数値は正確でないかもわかりませんが、人口100人いるところには1日に4本、公共交通のバスを必ず出さないといけないという、これは生存権として保障されているというルールも一方ではあります。そういうことも含めて、広範に議論いただけると、脱炭素とどう我々が生きていくのかということですね、そのセットでより深みのある議論ができるのではないかと思いました。
 以上、すみません、コメントでございます。
 
大塚委員長
 大変重要な情報をありがとうございました。
 では、この辺にさせていただきたいと思いますけど、議題の(1)につきましては、誠に熱心なご議論を頂戴いたしまして、ありがとうございます。
 では、最後に、議題の(2)その他につきまして、何かございましたら、事務局、お願いします。
 
地球環境局総務課長
 特にございません。
 
大塚委員長
 それでは、以上で本日の議事は全て終了いたしました。円滑な進行にご協力いただきまして、誠にありがとうございました。次回から、論点を深めながら、議論のまとめに入っていきたいと考えております。
 それでは、事務局にお返しいたします。
 
地球環境局総務課長
 委員の皆様方におかれましては、大変活発なご議論をたまわり、厚く御礼申し上げます。
 また、谷口先生には最後まで残っていただきまして、どうもありがとうございました。
 本日の議事録につきましては、事務局で作成をいたしまして、委員の皆様に確認いただいた後、ホームページに掲載をさせていただきます。
 次回は4月8日、金曜日を予定しております。
 それでは、以上をもちまして本日の会議を閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

午後7時03分 閉会