中央環境審議会地球環境部会・総合政策部会炭素中立型経済社会変革小委員会(第2回) 議事録

日時

 令和4年3月2日(水)10時00分~11時58分

場所

 WEBによる開催

議事

(1)炭素中立型経済社会への変革・トランジションに関する論点の深掘り①

(2)その他

議事録

午前10時00分 開会

地球環境局総務課長

 おはようございます。

 それでは、定刻となりましたので、中央環境審議会、炭素中立型経済社会変革小委員会(第2回)を今から開催させていただきます。

 私は、事務局を務めております環境省地球環境局総務課長の西村でございます。どうぞよろしくお願いします。

 本日の小委員会はWebでの開催とさせていただいておりまして、Youtubeの環境省動画チャンネルで同時配信もしております。

 会議の開催に当たりまして、幾つかお願いを申し上げます。

 カメラの映像は、ご発言の際のみオンでお願いいたします。また、マイクにつきましても、ご発言の際のみオンでお願いいたします。それ以外はミュートでお願いします。また、ご発言をされる際には、挙手ボタン、手のアイコンを、クリックをお願いいたします。その他、何かございましたら、チャット欄にご記入をいただきますか、あるいは事務局までお電話をいただければと思います。

 本日は、委員会の総数17名中13名の方に現在ご参加をいただいております。この後、さらに1名ご参加いただく予定になっておりまして、定足数の要件を満たしております。

 また、本日は、委員の皆様、オブザーバーの皆様に加えまして、龍谷大学学長補佐、政策学部教授の深尾昌峰先生にゲストスピーカーとしてご出席をいただいております。

 それから関係省庁でございますけれども、前回もご参加いただきました、経済産業省、内閣府、金融庁に加えまして、農林水産省、国土交通省からもご参加をいただいております。

 それでは、以後の進行は大塚先生にお願いいたします。

 

大塚委員長

 どうも、おはようございます。本日も活発なご議論をどうぞよろしくお願いいたします。

 では、早速議事に入ります。まず、議題の1、炭素中立型経済社会への変革・トランジションに関する論点の深掘り①といたしまして、前半におきましては、地域経済、金融、社会、人材について、竹ケ原委員、淡路委員、広井委員から、それぞれ5分程度の発表をいただき、深尾様から10分程度のご発表をお願いしております。さらに、これに関連した事務局の説明を行っていただきまして、その後でご議論を頂戴したいと思います。後半は、国際展開について、宮下委員、武藤委員から、それぞれ5分程度のご発表をお願いし、その後でご議論いただければと考えております。

 では、まず、前半パートの冒頭説明を、竹ケ原委員、淡路委員、広井委員、深尾様、最後に事務局の順番にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

 すみません。では、竹ケ原委員、お願いします。

 

竹ケ原臨時委員

 はい。竹ケ原と申します。よろしくお願いいたします。貴重な機会をいただいて感謝申し上げます。また、前回、欠席してしまいまして、大変失礼いたしました。では、私のほうから話題提供させていただきます。

 私は、金融関係で、この小委員会のテーマに関わることが多いものですから、この観点から話題提供させていただきたいと思います。

 議論のフレームワークですが、まず、炭素中立型社会、カーボンニュートラルに向けて膨大な資金が必要になるという認識が大前提になります。最近出たIEAのレポートでも、必要な投資額はネットゼロシナリオでは現在の4倍になると予想。いろんな推計が世の中にありますが、兆の単位を超えて、京の単位の数字が躍っているという状況なのは、皆さんご存じのとおりです。こうした膨大な資金需要を満たすためのファイナンスの奪い合いが、今、世界で起こっている現象と理解しています。EUのタクソノミーはその典型ですが、ICMA、TCFDなど、様々なルールを用いて、いかに自分たちがサステナブル投資にふさわしい客体かというアピールを、地域であれ、企業であれ、競い合っているというフェーズです。

 その主たるターゲットがいわゆるESG投資です。いろんなデータがありますが、足元では残高が35兆米ドル、大体4,000兆円ぐらいですか、にはなると言われているESG投資のメインストリーム化が進んでいます。その内訳も、予め定めた基準に基づくネガティブスクリーニング、切り捨てのようなものから、実際のバリエーションに非財務情報の評価を統合していくタイプへと比重が移っていますので、そうした投資を引きつけるべく、企業単位で考えれば、情報開示を充実させる、そして、高質な対話・エンゲージメントにつなげていくという流れになっていることも、日々報道されているとおりでして、これが、現在、我々が資本市場で観察出来る現象です。

 今回の小委員会のテーマにひきつけますと、これをいかに地域に持ってくるかという話になる訳ですが、実際にESG投資を長期投資、すなわち長期投資の不確実性を補うために財務情報だけでなく様々な非財務的な緒元も評価材料に加えようという行動と考えれば、ゴーイングコンサーンを前提に、企業の様々な緒元に目を配って、メインバンクとして支えていくという、もともと地域の金融が果たしてきた機能は、本質的には何ら変わるものではありません。

 加えて、鍵となるのが、金融行政から要請されている事業性評価の強化です。過度に担保や財務情報に依存せず、事業の本質を見極め、そのうえで、融資に加えて、地域商社機能であったり、コンサルティング機能であったり、いろんな多角的にサポートしていこうという流れは、資本市場でのESG投資と重なります。ここ数年、環境省、金融庁指導の下で、「ESG地域金融」というコンセプトが打ち立てられ、地域の金融機関の皆さんと、これをいかに実装するかという課題に取り組ませていただいています。

 観点はいろいろありますが、一言で申し上げてしまえば、地域に存在する潜在的な資源を特定して、これをマネタイズしていく機能の発現に集中しています。具体的に地域にどんな資源が存在するかを議論する上で、重要ではありますが、金融だけでは限界がありますので、自治体及び地域の産業界とのプラットフォームを形成することが重要になります。

 また、特定した資源をマネタイズする際の視点ですが、地域循環共生圏の強化、すなわち域内での所得の循環をいかに太くするかという視点が重要だというのがコンセンサスです。稼ぐ力がいかに強くても、分配の段階で域外に流出させてしまっては、意味がないです。また、分配された後の支出の分野においても、域外への支出が大量に出てしまうようでは問題です。なるべくここを太くするようにプロジェクトを選定して、太くしていく。そのためには、実際に産業間の連関が非常に重要になってきます。こういう視点を持って、地域経済に貢献しようというのが共通認識になりつつあるところだと思います。

 こういうフレームワークの下で、ご提示の論点に接続したいと思います。今、地域脱炭素ドミノという地域間競争が環境省によって導入されました。各地域が先導地域となるべく競っていますが、競争の中身は、今申し上げたESG地域金融機能の強化、すなわち、有効なプラットフォームの形成し、地域の潜在資源をマネタイズして、高度な地域循環共生圏を創りあげること、とほぼ一体であると申し上げてよろしいかなと思います。そして、この地域ESG金融の機能強化がもたらす効果、これもいろいろあるわけですが、本委員会に引きつけて2点申し上げたいと思います。

 一つは、グリーントランスフォーメーションの推進人材の補完です。担い手となる人材が地域あるいは中小企業で不足しているというご指摘は前回もありました。文字通り地域における人材の宝庫である金融機関が、今、こういう観点で、企業の見えない価値を見える化してサポートしようという動きを強めていますので、この過程を通じて、金融がこうした人材の補完機能も果たせるんじゃないかということです。実際、中小企業の環境マネジメントシステム、エコアクション21という仕組みが環境省にありますが、その審査機能に金融機関を巻き込もうという取組が、今、始まっています。

 もう一つは、事業性評価の観点が広がることによる効果です。具体的に申し上げますと、今、気候変動から始まって、いろんな施策を多角的に見ることが求められてきています。で、その結果、実は事業性評価の対象、あるいはこういったファイナンスの対象として巻き込まれる客体が広がってくるという効果があります。

 具体的には例えば、化学産業の脱炭素化を考えますと、最終的にはナフサに依存しない形での原料転換、人工光合成みたいな非連続のイノベーションの話になりますが、これと並んで、市井にあるプラスチックをいかに回収してケミカルリサイクルの系につなげていくかというサーキュラーエコノミーの視点、すなわち原料循環も非常に重要です。ですから、廃棄物処理セクターへの評価が、実はカーボンニュートラルの不可欠のパートと捉えることで新たな事業機会につながるんだという視点、これが、今、金融界のほうに共有されつつあるという話です。

 加えて、前回もご議論されていましたが、自然資本の話です。従前は工場のビオトープであったり、社有林であったり、どちらかというと社会貢献的に捉えられがちだった取り組みが、ネイチャーポジティブ、30by30、そしてTNFDと、気候変動を追いかける形で自然資本を巡る議論が急速に進むなかで、その価値化に向けた取り組みが始まっています。企業が所有・管理する地域の自然資本を、地域の金融がきちんと価値として把握・理解して、これ、先ほどの付加価値の系を太くしていくような価値判断の中に織り込んでいく、この効果は大きいと思います。同時に、自然資本吸収源としてのカーボンニュートラルへ貢献する価値、あるいはサーキュラーエコノミーが進展してプラスチックリサイクルが進むことで、海洋プラ汚染の問題が解消されて、自然資本につながってくる視点など、様々なテーマが統合的、複層的に金融界に消化されてくること、この効果というのは非常に大きいんだろうと思います。

 最後は、付け足しみたいな話ですが、例えば既存の住宅ストックの省エネ改修のような、一見金融とは距離があるような政策であっても、それ自体のインセンティブに加えて金融界で起こっている変化と接続していくと、よりバーゲニングパワーといいますか、効果が働くんじゃないかなと考えてございます。

 申し上げたいのは、ESG地域金融というフレームワークで行われている地域の金融の変化、進化が、この小委員会で提示された課題に直結する解決策としての性格を多分に持っているということです。

 若干時間をオーバーして、大変失礼いたしました。私からのご説明は以上とさせていただきます。

 

大塚委員長

 はい。ありがとうございます。

 では、淡路委員、お願いします。

 

淡路臨時委員

 淡路でございます。お時間いただきまして、ありがとうございます。私からは、今のお話を受けるとするならば、やや具体的な事例という形でご紹介させていただければと思っております。

 まず、私ども地域金融機関といたしましては、やはり掲げている目標が地域経済の持続的発展に貢献するというところが大きな特徴かと思います。ですので、これまでも一環として、グループ全体で地域活性化に取り組んできたという経緯がございます。

 特に、近年ですと、地方創生活動というのに注力しておりまして、こちらに出ている左上の空き公共施設の利活用ということで、空き小学校にグランピング施設を運営する事業者を誘致するということ、あるいは、右側の農業経営の高度化支援とございますけれども、地域の15の企業から出資を受けて、2018年から農業法人「フレッシュファームちば」を立ち上げて、銀行員が米作りに関わっている。田んぼを借り受けるんですけれども、既に11ヘクタールまで拡大して、一定の信頼を得ております。

 また、左下の寄付型私募債の取組みですけれども、ここに3種類ございますが、今後、もうちょっと種類を増やそうと思っていますが、この私募債の発行手数料の一部を自治体やスポーツ団体、医療機関、学校などに寄付するという仕組みで、地域に貢献したいという経営者のお気持ちを具現化する商品として、770件の利用をいただいております。

 また、右下には、地方創生SDGsと連携協定を結んだ松戸市、山武市、2自治体を掲載しておりますが、これらは、もともと地方創生連携協定を結んでいる自治体でございまして、千葉県は55自治体ありますが、22の自治体と千葉銀行は連携協定を結んでおりますが、その中からSDGsの取組につながってきているという事例でございます。

 続いて、地方創生の特徴的な取組、内閣官房ですね、金融機関の特徴的な取組に選定されております睦沢町のスマートウェルネスタウンの事例をご紹介したいんですけれども、睦沢町というのは人口が約7,000人程度の人口減少著しい町なんですけれども、この人口減少を食い止めるために、地域防災機能を持つ道の駅、それから一戸建ての町営住宅に子育て世帯を流入させようというような考え方で、コンパクトシティ、むつざわスマートウェルネスタウンというものを開発しました。

 この最大の特徴といいますのが、天然ガスを活用したコージェネレーションシステムによって、太陽光や太陽熱と、併せてつくった電気・熱を供給する仕組みを構築しているところでございます。この株式会社、右側、右下のほうですね、CHIBAむつざわエナジーがエネルギー事業を運営しておりまして、電気は無電柱化で住宅へ供給し、排熱は温浴施設に使っています。この地域資本の新電力が面的に熱電供給を行う事例としては、国内初というふうに把握しております。

 また、売電事業も行っておりますが、利益は町が運営します健康づくりプログラムに還元するなど、域内の資金の循環構造も構築しています。これはPFIの形でスタートしておりまして、私どもは初期の段階から参画しております。左側にSPCとございますけれども、むつざわスマートウェルネスタウンに対してプロジェクトファイナンスを実行したほかに、銀行本体が、この右側のCHIBAむつざわエナジーに直接出資をしております。本体からの出資は、当時、全国的にも事例が少ないというふうに伺っていました。

 また、私どもの支店がこの電力を購入する、あるいは、私どものネットワークを活用して、近隣の事業者に電力を使っていただくようにご紹介するなどの支援も行っています。今は33戸の町営住宅全てが埋まっておりまして、特に、2019年の大きな台風のときには、6時間後には発電を開始して、近隣に電気を供給し、また、シャワー施設などで多くの方たちにご利用いただいたというような実績がございます。

 私どももサステナブル・ファイナンスを推進しております。目標を公表しておりまして、左側の上段にありますとおり、2030年度までにサステナブル・ファイナンスの実行額として総額2兆円、このうち環境系のファイナンスとして1兆円という目標を立てております。また、下のほうに法人向けのお客様の商品、また、個人向けのお客様の商品を開発しております。

 右側の再生可能エネルギー関連融資ですけれども、太陽光発電やバイオマス、風力、水力などにこれまで関わってきておりまして、発電能力は620万MWh、約170万世帯に相当するような供給能力を有するまでに至っています。

 また、左下のようなESG債への投資も行っております。特に私どもでは、併せてちばぎんSDGs宣言というのも公表しております、左側にございますけれども。そして、最近では、CDPによる気候変動質問書回答に基づく格付でA-、また、MSCI社によるESGの格付でもA評価と、高い評価を頂くようになっております。これまで関わってきた太陽光発電、バイオマス発電など右側の地図上にございますけれども、千葉県に幾つかございますほか、全国各地に及んでおります。また、この四角で囲っております市原、愛知県、群馬県の案件については、千葉銀行がアレンジャーとして関わったもので、この大型プロジェクトファイナンスのアレンジャーとして関われるようになりましたのは、2001年から、初期の段階から県内のPFI事業のほとんどに関わってきた、その経験と、それから、これからご紹介するTSUBASAアライアンスという地銀の広域連携による招聘力の強さにあるものだと自負しております。

 TSUBASAアライアンスと申しますのは、右上のほうにございます地方銀行10行が参加する広域連携で、左のほうのグラフにございますとおり、合計総資産で90兆円と、地銀最大のアライアンスでございます。店舗所在地では、北海道から沖縄までをほとんどカバーしておりまして、メイン先数では、メガバンクスを上回る先数を有しております。これらの情報量、それから全国に広がるネットワーク、規模の優位性などから、より高いレベルの金融サービスの提供が可能と考えております。このアライアンスにより、大型プロジェクトファイナンスの組成も可能になってございます。

 一番新しい部分ですが、県内での取組をご紹介いたします。SDGsの取り組みによって地域を巻き込む活動に高めているもので、黄色い枠にあります、ちばSDGs推進ネットワークというものです。これは、青いところにございます、千葉県が始めましたちばSDGsパートナー登録制度をきっかけとして、私どもが、右側にございます経済団体7団体、千葉県信用保証協会、それから、左側のピンクにありますとおり、私どものほかに京葉銀行様、千葉興業銀行様にお声かけをして立ち上げたネットワークでございます。これによって、県内企業へのSDGsの周知啓発をオール千葉で進めていっております。私どもは事務局として、まずはこの千葉県に設立したパートナー登録制度の普及活動に注力しているものでございます。

 また、この普及活動とともに進めておりますのが、このSDGs推進支援メニュー、大きく分けると三つございますけれども、真ん中の赤で囲っておりますSDGsリーダーズローンというものが非常に多くのお客様に当てはまるのではないかということで進めております。これは、サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲットをそれぞれ設定いたしまして、私どものグループである、右側のちょっと図にございますけれども、ちばぎん総研が、国際的な原則、ガイドラインに対する整合性の評価も行いまして、そのパフォーマンス・ターゲットを一緒に考えて、その目標達成状況に応じて金利の優遇を行うということで、脱炭素に向けた取組を伴走していくものです。

 で、事前に私どものお取引先750社に対してアンケート調査を行っておりますが、そのうち85%が、SDGsの取組をさらに改善させたい、加速させたいと考えているものの、自社のCO2の排出量を把握しているのは8%の62のみでございました。大多数の企業はCO2の排出量を把握できていないという実態でございます。また、把握している先の多くは、ISOの取組により把握しているというようなことで、今後は分かりやすいCO2の排出量の算出方法などを提示することができれば、先ほどご説明した推進ネットワーク、あるいはTSUBASAアライアンスを通じて、県内また全国に波及させていくことで、私どもが貢献できるのではないかと考えております。

 長くなりましたが、以上でございます。

 

大塚委員長

 はい。どうもありがとうございました。お二人の委員に金融機関の具体的な取組をお話しいただきまして、ありがとうございました。

 では、広井委員、お願いします。

 

広井専門委員

 はい。京都大学の広井と申します。貴重な機会をありがとうございます。

 それでは、早速本題に入らせていただきます。脱炭素と持続可能社会のデザインということで、お話しさせていただきます。

 最初に、私どものほうでAIを活用した未来社会のシミュレーションという研究をここ数年行ってきました。2050年の日本を視野に入れて、4つの持続可能性、そこに書いております人口、財政・社会保障、地域、それから環境・資源という4つの持続可能性を視野に入れて、日本が持続可能であるためには何が必要かというシミュレーションです。

 結論から申しますと、日本社会の未来の持続可能性にとって、東京一極集中に示されるような「都市集中型」か「地方分散型」かというのが、最も本質的な分岐点であると。また、人口・地域の持続可能性や健康、幸福、格差などの観点からは地方分散型が望ましいという、こういう結果が出ております。

 どういうことシミュレーションをやったかというのをごく簡潔にお話しさせていただきますと、今ご覧いただいておりますような日本社会の現在、そして未来にとって重要と思われるような150ぐらいの要因、下に例示しておりますけど、人口とか高齢化とか経済関係、エネルギーとか、これらから成ります因果連関モデルというのをつくりました。こういった多くの要因が影響を及ぼしながら、時間の流れとともに進化して、未来が枝分かれしていく、その2万通りのシミュレーションというのを行いました。

 そうしますと、大きく2万通りのシナリオが6つぐらいのグループに分かれて、右下が、先ほどから申しております都市集中型、残りが地方分散型、こういうような形で分岐していくという内容です。

 では、その地方分散型に行くためにはどのような要因が効いてくるかというのも、併せてAIを使って出しましたのですが、ここに列挙しておりますような環境課税、やはり再エネ関係、この後お話しさせていただきますまちづくり、公共交通、地域コミュニティを支える文化や倫理、資産、社会保障、こういった要因が上位に出てきました。そういったこと、今、分散型というふうに出たのを、具体的なイメージで少し考えてみたいと思います。

 私は、基本的にヨーロッパですね、特にドイツ辺りにこういったテーマに関して学ぶべき点が多いと思っております。今ご覧いただいておりますのは、エアランゲンというドイツの10万人ぐらいの地方都市ですけれども、ドイツの地方都市は、どこへ行っても、こういうふうに中心部からは完全に自動車がシャットアウトされて、歩行者だけの空間になっている。こういった、車椅子のお年寄りやベビーカーを引いた女性が普通に過ごすことができる。広い意味での福祉的な意味、それから、やはりガソリン排出を含めた環境的な面。それから、何より私がいいなと思いますのが、人口10万の地方都市の中心部がこれだけのにぎわいを示しているというのは、残念ながら今の日本ではまず考えられないことで、このように、言うならば環境・福祉・経済の相乗効果とでも言えるようなものが見られる点が興味深いと思います。

 これも似たような例で、これは2万人ぐらいの町、村というぐらいの規模の地方の一例ですけれども、ここも中心部がこういう形でにぎわっている。

 最近、国土交通省のほうでもウォーカブル・シティということが言われるようになっておりますけれども、コミュニティということを重視した都市や地域づくり。重要と思いますのが、こういう方向を進めていくことが、脱炭素とともに、QOL、生活の質の向上にもつながる。決して、脱炭素で我慢するというよりは、QOLの向上にもつながり、むしろハッピーな都市や地域の在り方が実現していく。環境・福祉・経済の相乗効果という視点が重要ではないかと思います。

 残念ながら、私も各地へ行きますけれども、日本の場合、20万以下の地方都市は、まず間違いなくシャッター通りになっていることが多いですし、場合によっては、30万、40万、50万の規模の都市でも空洞化が進んでいる。こういった点を何とか改善していくことが脱炭素にもつながると思います。

 大きな視点から言いますと、「多極集中」とでも呼べる方向が重要ではないかと思っております。現在が「一極集中」かというと必ずしもそうではなくて、札幌、仙台、広島、福岡などの人口増加率、特に福岡辺りは東京圏よりも人口増加率が高かったり、地価、土地の値段ですね、去年、おととし、コロナもあって軒並み、東京圏を含めて地価が下落する中で、これら地方4都市はむしろ上昇している。ですので、今進みつつあるのは、どちらかというと少ない極の「少極集中」。これを、先ほどのドイツの例に見られるような「多極集中」、極がたくさんあるとともに、それぞれの極はある程度集約的な構造になっている、こういった方向を進めていくことが、脱炭素にとっても、また地域の豊かさやライフスタイル、ひいては地域の自然環境の保全にとってもプラスになるのではないかというふうに思います。

 ちょっとこれは付録みたいなものですけれども、環境パフォーマンスと社会の平等度がある程度相関しているということです。この図は、縦軸がジニ係数つまり格差の度合い、横軸が環境のパフォーマンスですけれども、ある程度相関している。すなわち環境パフォーマンスが高い国ないし社会というのは、平等度も一定高い。これは分析が必要ですけれども、興味深い関係性ではないかと思います。

 あと、私のほうで進めております伝統文化を取り入れた鎮守の森・自然エネルギーコミュニティプロジェクトというようなこととか、あと、ソーラーシェアリングの資料なども入れさせていただいております。

 以上です。どうもありがとうございました。

 

大塚委員長 はい。どうもありがとうございます。地域循環共生圏の観点からも非常に重要なご報告だったと思います。ありがとうございました。

 では、深尾様、お願いします。

 

 

 

地球環境局総務課長

 深尾先生、声がミュートのままでございます。

 

深尾龍谷大学学長補佐

 聞こえますかね。

 

大塚委員長

 今聞こえました。はい、よろしくお願いします。

 

深尾龍谷大学学長補佐

 すみません。失礼いたしました。

 それでは、貴重な機会を本日はいただきまして、ありがとうございます。私のほうからはローカル・グリーン人材の現状と必要性ということでお話をさせていただきたいと思います。

 今、私は環境省の「地域循環共生圏のプラットフォーム」のWGの委員をさせていただいていまして、多くの専門家の先生方と、地域で脱炭素に向けてどのようにトランスフォーメーションを起こしていけるかということを議論させていただいております。

 その中でかなりたくさんの議論が出てくるのは、やはり人材の問題です。地域でそれらを牽引していく人材が明らかに不足をしています。加えて、ポスト近代に向けたトランスフォーメーションというふうに考えると、先ほどの広井先生のお話にもありましたが、脱炭素という文脈と、ウェルビーイングのような、我々の地域が地域として暮らしていく、そういった幸せを接続させていくようなトランスフォーメーションを考えるとすると、かなり、大がかりな構造転換が必要だろうと思っています。そういう日々の「暮らし」を変えていく人材やリーダーシップというものが不足しているよねというような議論は、私も、この地域循環共生圏のプラットフォーム構築の役割を担いながら、地域を歩いたり事業支援をすると、各地域でやはりこういった五つぐらいの視点での人材が不足をしているというようなことが顕著であります。これは、これまでの、高度経済成長期型の人材育成モデルや旧来のリーダーシップ育成の文脈ではなかなか育っていかない。地域脱炭素に即した新たな研修体系が必要かなと思っています。

 コトを、そういう意味では少し、幾つかのポイントを絞ってお話をしたいと思いますが、非常に地域の中でいくと「コト」を起こすというようなことですよね。イノベーションとかデザイン思考であったり、バックキャスト的に発想できる人というのが少ないということですね。

 アントレプレナーシップも非常に重要になってくるんですが、地域を歩いていると、必ずしもいないわけではなくて、0→1をおこせるカリスマを持った人たちは一定いる。また、7→10、10→10という、事業を安定させていくような人材は比較的たくさんいる。しかし、その間の1→3とか3→7みたいな事業フェーズを育てていくような人たちが不足をしているよねということは議論としてよく出ます。

 で、私が何よりも重要だと思っているのは、自治体の人材です。自治体を2020年に悉皆調査をしました。そのときに再エネ政策の位置づけを聞いてみました。そうすると、66%の自治体が「再エネの取り組み」をやっている。例えば補助金を出したりとか相談に乗ったりとかしているんだというふうな答えをいただいたんですが、その政策目的を聞くと、ほぼ、ほぼ啓発広報的なんですね。要は、再エネ政策なんかが、地域の中でいくと、まだまだパネルをつけました、環境のためにいいことをしています的なものにとどまっていて、メインストリーム化、統合的なアプローチになっていない。経済の活性化や雇用の創出や、そういった地域の福祉との接続、暮らしというものとの接続をしていくような、地域循環共生圏的なアプローチになっていないということが明らかになりました。

 その上で、じゃあ、そういった地域の活性化や雇用創出につなげていくときの課題とは何ですかというふうにお聞きをすると、72%の自治体が、そういったことを発想すること自体の人材がいないんだということで、72%の自治体が人材不足を挙げました。ただ、面白かったのは、人口が少なくて財政力指数が低い自治体は、どちらかというと、もう、何といいますか、そういったことに取り組まざるを得ないので、そういったところを乗り越えていこうとする姿というものが見えました。ただ、やはりそういったところでも、人材不足というものはかなり高いというのは顕著に見えたところであります。

 そういった意味で、地域に行くと自治体や地域の金融機関の皆さん方がパワーエリートなわけです。そういったところの人材をやはり支えていくということは、非常に重要なことだろうと思っています。脱炭素をメインストリームとして捉え、地域の中で発想していく、人材が必要。従前の環境政策的な発想だけではなく、地域経営のモデルなんだということを理解し行動する人々、そして、それを自治体に閉じず、地域の文化や生活の圏域の中でデザインできるような人材というものは、ものすごく大切と思っています。そういう人材をやっぱり育てていかなければいけないし、つくっていかなければいけないと思っています。

 私は、各自治体6人ぐらい毎年養成をして、5年間で5万人位養成できると、地方公務員の9.1%ぐらいに相当します。それぐらいの規模感で、少し急いでそういった人材をつくっていかないと、なかなかトランスフォーメーションは起こっていかないだろうなというふうに思っています。

 地域経済分析も環境省に頑張ってやっていただいて、こういったツールはあるんですけど、こういったものを真に活用していく人材が不足しています。これは私が参与をさせていただいている滋賀県東近江市のものですが、こういったエネルギー代金が流出しているよね、民間消費が流出しているよねというようなことを問題として捉えるところまではみんな何となく分かるんだけど、じゃあ具体的にどうアプローチしていくかということを考え、行動を促していったり、コレクティブインパクト的に地域の資源をつなぎ合わせていく人材というものが圧倒的に不足しているというのは地域の現実だと思います

 あと、私も竹ケ原さんと重なった問題意識を持っています。信用金庫にも、実は悉皆調査をしました。地域から逃れられない金融機関として、信用金庫さんのESG投資とかインパクト投資の動向を調査してみました。

 その前段として、やはり地域にお金がないわけではなくて、これは信用金庫の預貸率をグラフにしてみました。赤い線が預貸率です。どんどん、やはり落ちているわけですね。これはいろんな要因があります。先ほどのような金融検査マニュアル以降のリスク重視の検査というものが、ある意味で目利き力を奪ったりというようなことはあるわけですが、一方で、そのお金、青い線の棒グラフは、公地域の金融機関が国債や公社債をどれぐらい買っているかということを表した数値になります。かなり、ある意味での相関関係があって、地域のお金が地域で循環せずに、国債や公社債によって運用されているというような現実があるわけですね。

 こういったものをベースに、信用金庫の皆さん方に悉皆調査をしていくと、やはりここもノウハウとか人材がいなくて、何かよく分からないというところがまだ現時点なんですね。ESG投資も、何かどうやっていいんだか、よく分からない。で、実際にそういったものに取り組んでいる信金さんが感じた課題も、知識不足ということ。そもそも、圧倒的にほかの調査よりも回収率が低くて、電話で全ての金融機関、未返送の金融機関に電話でお話をお伺いすると、やっぱり、そもそもESG投資とかインパクト投資は分からないから答えられないんだ、というようなお話が圧倒的でした。そういう意味では、日本の99.7%を占める中小企業を、グリーン化、グリーントランスフォーメーション化させていくというところでいくと、地域の金融機関の関与が不可欠なわけですがこの現状はまずいわけです。

 私も地域の現場で、例えば産廃業者さんがごみを減らしたいんだというようなことを事業モデルとして考えられるような場面に出くわしました。そうすると、メインバンクである地域の金融機関さんは、そんなばかなことはやめてくださいよというような反応なわけですよね。いわゆるこれまでの経済合理性で考えると、もうかる、あえてもうかるものをなぜ捨てるのだというような反応になってしまうわけです。こういったところの、やはり足元の人材育成ということも、非常に重要なわけです。

 地域のグリーントランスフォーメーションを実現していくためには、私は地方公務員の皆さん方を応援する必要があると思っています。必要な能力を磨いていく場や体系が必要だと思っています。地方公務員の皆さんの10%がこういった能力を身につけると地域社会は大きく変わっていく。同様に地域金融機関を応援するという文脈でも、地銀・第二地銀、信金、信用組合を合わせて498あります。地域金融機関は、グリーントランスフォーメーション実現には不可欠ですが、これまでの金融行政によって、若干そういった目利き力であったりとか、中長期に地域社会を考えていくということの発想や力量が、地域の基盤が弱い金融機関ほど、そういったものがなくなってしまっている実態もあります。

 そういったこと、そして、支援者の支援ということでいくと、例えば中小企業庁さんが持っておられる経営指導員みたいな、従前から地域のビジネスを支えていくような人材も、何かグリーン人材に変えていくような手だてが必要です。今ある、既存にある人々、機能というものを、グリーン化させていくための人材育成・学びの方策というものが非常に重要なのではないか、地域の現場を歩いていると、非常に強く感じるということであります。

 本日は、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。

 

大塚委員長

 はい。どうも、非常に具体的なお話をいただきまして、ありがとうございます。

  事務局から、1分ほどで説明をお願いします。失礼しました。

 

大臣官房総合政策課環境教育推進室長・地域脱炭素企画官

 はい。事務局でございます。

 資料2-5をご覧いただければと思います。こちらは深尾先生が今お話しされた内容と重複してきますが、環境省のこれまでの地域循環共生圏の活動などを基に、我々なりにこういう人材が地域脱炭素を引っ張っていくために必要なんじゃないかということを、1枚にまとめさせていただいたものでございます。

 グリーンで地域を活性化するために、いろんなステークホルダーの方々と連携していく。そのために必要な役割を、リーダー、コーディネーター、専門という三つのカテゴリに分けまして、それぞれにこういったスキルが必要ではないかというところをまとめている資料でございます。詳細は深尾先生の内容と重複しているところがあると思いますので割愛します。全体を見ていただくための資料としてご用意したという位置づけでご覧いただければと思います。

 また、育成・確保とタイトルが書いてありますが、記載内容は人材のイメージだけになっておりまして、どうやって人材を育成・確保するかというところは、ぜひご議論をいただければというふうに思っております。

 加えて、実際にイノベーションを起こす技術者の方々をどう育成するか、地域でどういった形でこういう人材の雇用に移行していくか、ジャスト・トランジションと海外でも呼ばれているような論点もあろうかと思いますし、さらに、こういった人材が海外でも地域脱炭素の都市間連携を進めていくかといった論点もあり得ると思います。

 以上でございます。

 

大塚委員長

 はい。

 では、ただいまのご発表を踏まえまして、ご意見等を頂戴できればと思います。挙手ボタンをクリックしてください。

 時間が押しておりますので、ご発表は3分以内にまとめていただくように、ご協力をお願いいたします。

 では、浅利委員、お願いします。

 

浅利専門委員

 はい。貴重な情報、本当にありがとうございました。すごく頭の整理にもなりましたし、向かっていくべき方向性というのはすごく見えてきたのかなというふうに思っております。

 1点、最後に整理の論点ということで示していただきました人材育成のところなんですけれども、深尾先生のほうからも、やっぱり地方の行政の関係者が重要という話、本当に切実に思っております。

 例えば私の場合でしたら、当然、一般廃棄物の処理の責任というのは自治体にありますので、基礎自治体の体力というのが非常に問われておりますし、また、特に顕著に出てくるのが災害時ですね、災害廃棄物への対応というのがかなり大変になっております。特に、通常、平時の廃棄物担当者が0.5人という小規模自治体も多い。そういうときの補完体制を検討している中で、この文脈とも通じるものがあるなというふうに思いました。今、災害廃棄物の分野でも、そういう意味では大都市とか被災経験のある都市の人たちが支援に行けるようなネットワーク化なんかも進んでおりまして、ぜひそういう人材交流的なこともできるのかなというところと、あと、地方の場合、もちろん人数が少なくて大変なんですけど、一方でSDGsとかという観点から行きますと、1人の人が複数の課題を並行して見れる、ある種のスーパー人材的な側面もあるのかなと。何かそこをうまく褒めて伸ばすようなこと、それと、それを首長さんがちゃんと評価できるようにしてあげるということがすごく大切じゃないかなというふうに思いました。

 それと、教育の観点でもう一つ発言しておきたいのが、これはかなり時間のかかる話ではあるんですけれども、やっぱり学校教育との連携というのはすごく重要だというふうに思っています。小中高、大学まで含めてもいいのかもしれませんけれども、また最近ですと、本当に小中校の生徒さんたちのほうが、SDGsであったり、こういったテーマにもう精通している。教科書にも載っていますし、受験問題にもなっているということで、その観点も忘れないでいただきたいなと思っています。

 ただ、やはりSDGsをやろうとすると、担任の先生を含めて、なかなか歯が立たないと。やっぱり専門的な知識、それから、やっぱり地域に根差した問題の把握とかアクションというのが必要になってきますので、そこで金融機関であったり、先ほどのちばぎんさんのようなネットワークが、そういう学校教育等も支援してあげていただくような、そんな試みが生まれてきたらいいかなというふうに思いました。

 最近、ニューヨークのプラスチックの学習を映画化したもので、マイクロプラスチック・ストーリーというのが結構我々の分野では注目されているんですけれども、やっぱりそこも子どもたちの問題意識をいかに専門家とか地域の人たちが支えていくかということがポイントになっているかなと思います。

 そういう事例、地方でもたくさん出ていますので、人口減少で廃校目前という学校もたくさんあると思うんですけど、逆にそういうふうに地域でそういう教育を育てるということが価値にもなっていく、そんな方向性は十分にあるのじゃないかなというふうに思いました。

 ちょっと私はここで時間切れで途中で多分退席するので、後半のほうの議論ですね、国際展開のほうでも、ぜひぜひ、教育であったり、あとは今まで縦割りがちだった省エネとかごみ対策ということで、アジア各国、世界との連携が、支援が図られてきたわけですけれども、ぜひ、もっとパッケージで脱炭素社会に向けたスタイルというのを見せていけるように、我々も頑張りたいなと思っています。途中でドイツのモデルが出てきましたけど、やはりそこをちょっと日本モデルにしっかり昇華したものも見せていけるように頑張らなければいけないなと思いながら伺っておりました。

 以上です。

 

大塚委員長

 はい。ありがとうございました。

 では、馬奈木委員、お願いします。

 

馬奈木臨時委員

 はい。馬奈木です。ありがとうございます。

 最初に、委員へのコメント、その後にこの、今回の最後の取りまとめに向けたお願いをしたいと思います。

 まず最初に、竹ケ原委員及び淡路委員がおっしゃっていた金融の世界からの課題を今回ちゃんと社会課題として捉えて、それが、社会課題を解決することが、昔で言う費用、CSRのような費用になるのでなく、実際にビジネスにつながるんだということの認識をぜひ、言っておられるのが非常にありがたかったと思います。そのビジネスにつながるというのは、人の健康をよりよくするとか、CO2を削減するとか、自然を守るとか、そういったものが、最初に制度があるから、それを守ることによっていいというだけでなく、通常そのまま放っておくとコストになるものを、コストを削減するという視点があったので、非常に参考になりました。

 その次に、広井先生の分散型が大事だということの結論は非常に大事で、その上で我々は分散型をさらに含めたところも触発されて研究したことがございまして、実際の都市の構造は分散している、または大都市という2択だけじゃなく、実際は分散しているけども、供給先が近隣の大都市である場合、または東京のような日本全体のまとめ先ということの分かれ方もあります。その際に、東京の場合ですと、関東地域ですと東京のほうにまとまっていって、じゃあ集中が悪いかというとそうでもなくて、一部の本当の大都市、主要3大都市などはその還元を元の地域に戻しているので、タイプを2分割だけでなく、さらに三、四分割で理解することが大事かと思っています。

 そして、深尾先生がおっしゃっていた人材もおっしゃるとおりだと思います。さらに推進、深めていけば、実際に地域の課題をやる際に、例えば私たちですと、九州DX推進コンソーシアムというのをつくって、産学官連携をしながら人材育成を進める取組を始めているんですけども、自治体の方が、それこそデジタルの理解を自分たちでできる必要があるかというと、そこに費やす時間もないので、むしろこの企業の方、または大学でも構わないんですけども、専門知識がある方が入り込みやすい組織づくりをすること自体が大事かと思っています。

 最後に、この取りまとめのほうでどういうふうにしていただきたいかということに対して、コメントして終わりたいと思います。ぜひ、今回の取りまとめの際に、社会課題を企業、地域で解決するという視点が大事だと思いますので、今回、この新しい資本主義ということで、頂いた資料の中で書かれているのは、気候変動及び他の環境の問題も加味しながら解決して、それを経済の成長のエンジンにするということが書かれています。これは通常の環境と資源の経済学で言われている外部性を評価しようというものですので、きちんとした課題を解決すること自体が実際にビジネスになるというときに使いやすい言葉は、SDGs及び自然資本だと思うんですね。そういう資本として考えることによって、課題解決に価値があるということをぜひ文言として入れていただきながら進めていただけると、非常にありがたいと思います。

 その上で、実際に企業は、ESG、SDGsの評価は、上場企業であれ、非上場企業であれ、されています。それは、今回ご紹介いただきましたような日本政策投資銀行さんでありますとか千葉銀行さん、そしてふくおかファイナンシャルグループ、サステナブルスケールなどのような多くの取組がありますので、ぜひそれを取りまとめたガイドラインづくりをしながら進めていただけるのがいいのかと思いました。

 以上です。ありがとうございます。

 

大塚委員長

 はい。どうもありがとうございました。

 では、日商の大下様、オブザーバーの大下様、よろしくお願いします。

 

大下オブザーバー

 ありがとうございます。

 前回も述べさせていただきましたけれども、脱炭素を進めていく上で、国や自治体の役割として、脱炭素時代の経済社会や地域社会の全体像、できるならば明るく希望が持てて、取組の意欲が湧く未来像を描くこと、同時に、コスト面も含めて、それを実現するための現実的な道筋を示すことが大事であるということを申し上げました。本日皆さんからのお話を伺い、今の点も含めた地方自治体が果たす役割は大きいと改めて認識いたしました。

 広井先生のお話にもありましたような、脱炭素という課題と、人口減少や一極集中といった既にある課題を、それぞれどのように地域として解決していくのか、各自治体が国の様々な政策や方針を踏まえながら、地域の住民、企業や専門家の知恵を集めて、脱炭素時代に発展していくための地域像を描いて、実現に取り組んでいく必要があると思います。

 その中で、地域の中小企業を含めた多くの企業との接点、さらには脱炭素に向けた設備の導入や更新にかかる資金の提供といった観点で、本日お話があった千葉銀行様のような地銀あるいは信用金庫など、地域の金融機関が果たす役割は公的な金融機関とともに非常に大きいと思います。本日の淡路様のご説明内容は大変興味深く、またすばらしい取組だと思いました。地銀10行によるTSUBASAアライアンスのお話がありましたけれども、各地銀が互いに、ある種、競い合って、アイデアを出し合って、また連携し合って取組が広がっていくことを期待したいと思います。

 深尾先生からは、商工会議所の経営指導員に中小企業の脱炭素支援の役割を付加するといったようなお話もございました。私ども日商も、各地の商工会議所に対して、商工会議所自身並びに地域の中小企業の脱炭素の取組推進を図る「環境アクションプラン」の策定を進めております。環境省様にもご協力いただきながら啓発に取り組んでいるところですが、まだまだこれからと思っています。

 日商としてもしっかり取り組んでいきたいと思いますが、例えば中小企業庁が各地の中小企業大学校で用意されている経営指導員向けの様々な研修メニューの中に脱炭素の観点を盛り込んでいく、あるいは全国にある職業訓練校、ポリテクセンターの様々なメニューの中に脱炭素の要素を取り込んでいくということが人材育成の面で重要ではないかと考えておりました。

 私からは以上です。ありがとうございます。

 

大塚委員長

 はい。とても具体的なことまでおっしゃっていただいて、ありがとうございます。

 では、宮下委員、お願いします。

 

宮下専門委員

 ありがとうございます。

 1点だけ、最後、深尾先生からお話をいただいた際に、やはり地域での人材不足、特に中小企業事業者の方々からそういうお話がある、とございました。地域を歩いているとという付言がございましたが、非常に気づかされるコメントでした。

 私どもとしては、可能性として感じているのは、金融機関の関与もさることながら、スタートアップの企業なんかも、やはり従前に比べれば非常に使いやすい、いろいろなソリューションを提供していると思いますので、そういうところにも課題解決の新しい切り口もあるのと思いながら聞いておりました。ありがとうございました。

 

大塚委員長

 はい。どうもありがとうございます。

 では、森田委員、お願いします。

 

森田専門委員

 どうもありがとうございます。森林総合研究所の森田です。非常に、皆様の発表、勉強になりました。いろいろな取組が進んでいるということを勉強させていただきました。

 私自身は森林の分野の研究所には所属しているのですけれども、現在、IPCCの第6次評価報告書の投資とファイナンス章のLead Authorも務めておりまして、報告書の内容に関しては、まだ公表前なので触れられませんが、個人の意見として、少し所属の森林の範囲を超えて、コメントさせていただければと思います。今日お話を伺って、2点コメントさせていただければと思います。

 1点目が、先ほど少しお話にも出ていた公正な移行の観点です。今日お話も出ていましたが、国際的にも気候変動の文脈でこのJust Transition、公正な移行について、非常に議論が高まっております。日本の中でもこの公正な移行、人々がみんなしっかり自分たちの職を持ち、職を失うことなく、みんな幸せな状態で持続可能な社会に移行していくといった公正な移行の観点から、日本がカーボンニュートラルに向かう社会システムの変革の道筋をしっかり描いて、そこで求められる人材の育成、その中での雇用の創出の可能性、地域の在り方というのをもう少し包括的に考えていく必要性があるのではないかなというふうに改めて感じました。

 公正な移行を考えていく中では、化石燃料の関連の産業からグリーンな産業への移行に伴うような雇用の創出の問題を考えることはもちろんですけれども、今後超高齢化社会を日本が迎えますが、その中で今の若い世代が長期的に職を持って幸せに暮らせるような持続可能な産業というのは何なのか、そのために求められるスキルは何なのかということを、もう少し長期的な視点から道筋を描くということが必要なのではないかと思いました。特に、今、若い世代がコロナの影響でいろいろな機会を奪われている中で、何かこう、将来に夢を持てるような道筋というのを示していくことが大事なのではないかと思います。

 2点目は、少しそれにも関連して、広井先生のお話、都市中心か分散型かという話を、非常に興味深く伺いました。その観点にも、そういった若い世代の雇用の問題ということをもう少し考えていくと、少しまた違う議論になるのかもしれないなというふうに思いました。

 若い世代に関しては、将来、老後のお金はどうなるのかといった、いろいろな不安もありますけれども、長期的に雇用がどうなるのかという心配、また子どもの教育、育児の問題、そういった観点も考慮した上での都市中心なのか分散型なのかといった議論も今後必要ではないかと思います。

 国連の経済社会局、UN DESAのレポートでは、2050年までに都市部に住む人々は世界の人口の68%、約7割になるといった試算もあって、都市に多くの人が、日本だけでなく、国際的にも都市に多くの人たちが住んでいくということを想定して、都市の脱炭素に向けた研究も増えていまして、IPCCの第6次評価報告書の今度出るレポートの中でも、都市のシステムの章もあります。また、次のIPCCの第7次評価報告書のサイクルの中でも、気候変動と都市の特別報告書も出るということが決まっているという話もありますので、そういった観点の議論も、この都市中心か分散型かといった議論の中で参考になる部分があるのかなというふうに思います。

 以上です。ありがとうございます。

 

大塚委員長

 ありがとうございます。

 では、三宅様、お願いします。

 

三宅氏

 はい。ありがとうございます。

 JCLPの三宅です。まずは、プレゼンをいただきまして、本当にありがとうございます。大変興味深い視点がいっぱい共有されていたと思います。

 実は、プレゼンしていただいたのをずっと聞きながら、地域社会の在り方みたいなのを考えていく上で、一つ、私、実は昨年1月から、資源エネルギー庁さんがやられている地域共生型再生可能エネルギー事業顕彰のプロセスに関わらせていただく機会があって、その中で、それは本年から開始された事業とのことで、エネ庁さんも委員の先生方も、地域共生型再生エネルギーの定義みたいな、まあ、どういうものをそういうふうに呼ぶのかというところから始まって、いろんな議論をされていました。で、応募も全国から様々な案件がたくさん寄せられていて、大規模資本による大型案件もあったんですけれども、地域住民が出資されてつくられているいわゆる市民電力のようなものまで、それから再エネも、ソーラーだけでなく、風力、地熱、バイオマスと、地域特性に合わせて、本当に様々なものが入って、応募されていました。

 このプロセスを経て感じたことが幾つかあったんですけれども、まず最初に思ったのは、こんなにたくさん、地域に根差した再エネプロジェクトが既に存在しているということに驚いたとともに、うれしくもありました。一つ一つの芽はとても小さいんですけれども、たくさんの芽が芽吹き始めているというのも事実なんだろうというふうに感じました。

 プロジェクトの組成も様々で、純粋に民間企業が営利目的で実施しているものから、今日もお話が幾つかされていましたけれども、自治体さんが地域企業と一緒になっているものですとか産官学連携のものなど、様々でした。再エネ発電という側面だけでなくて、付随する地域の産業基盤への貢献、それからもちろん、今日ずっとお話しいただいている地域の金融の方々の巻き込み、そういったものも入っていましたし、災害における地域のレジリエンスへの貢献という視点も入っていました。地域経済基盤全体を捉えて構成されていたということも、大変心強く感じた次第です。このような顕彰制度を通して、広く、あるべき姿というのをみんなで共有して促すという意義は大きいなというふうに感じました。

 ただ一つだけ、ちょっと若干残念だったことがあって、それはまさしく岸田総理がおっしゃっている、国民の暮らしに関わる視点です。もちろん審査項目には住民理解という項目があったんですけれども、住民が知っている、理解しているという視点に終わっていて、そういうことだけじゃなくて、本当はやっぱりどのように住民の暮らしに入り込んで、その暮らしそのものがどのように、再生エネルギーのプロジェクトがどのように地域の住民の暮らし、地域の方々の暮らしに影響を与えているのか、住人は参加しているのか、そういった視点での切り込みが若干薄かったというふうに感じています。

 ですから、こういうような顕彰みたいな形ですとか、モデルをつくったりとか、そういったことって、これからもどんどんされるべきだと思うんですけれども、ぜひ環境省さんとして、国民の暮らしだけを切り離して、そこだけをフォーカスするというよりは、こういった地域基盤、地域経済基盤の中の一つの項目として、もっと強く国民の暮らしという視点を盛り込んだものを検討していっていただきたいなというふうに感じた次第です。ありがとうございます。

 

大塚委員長

 はい。ありがとうございます。環境省さんもいろいろおっしゃりたいことがあるかもしれませんが、後で何かあったらお伺いしようと思います。

 では、西尾委員、お願いします。

 

西尾臨時委員

 はい。ありがとうございます。筑波大学の西尾でございます。時間が限られているので、1点だけ申し上げたいと思います。

 環境省さんがお示しになられた地域脱炭素を推進する人材の育成についてですが、これは地域脱炭素の推進だけでなくて、広く地球環境問題やSDGsに関わる社会問題の解決を推進する人材の育成および人材確保に共通する課題だと考えます。

 その際、どこで教育するのかについては、先ほど深尾先生からご紹介のあったように、「コト」を起こす人材に必要な、イノベーションとデザイン思考とバックキャスト的思想については、できれば初等中等教育から、そのような発想や思考ができるような教育体制が求められると考えます。一方で、大学を含めた高等教育機関では、技術や技能等の専門人材の輩出には一定の貢献ができていると思います。しかし、コーディネート人材やリーダー育成のためには、技術や技能などの専門的知識を有しているだけでなく、人文社会科学的な知識も含めて、領域横断的な知見や思考も重要となります。そう考えると、今の高等教育機関で行われている専門特化型の教育体制では難しいと思います。

 そう考えると2点あって、一つは、高等教育機関でも、「コト」を起こせる、あるいは地域や社会をサステナブルな方向に引っ張っていくような人材を、領域横断的に育成する体制が必要だと考えます。そのためには、例えば社会人大学院や学び直しのためのリカレント教育も含めて、さまざまな教育体制を統合的に見直していく必要があると思います。

 二つ目は、このような「コト」を起こせる人材を育成できる教員をどう確保するかという点です。そのためには「コト」を起こせる人材を育成するための教育プログラムの開発とそれを的確に教育できる教員の養成が必要だと考えます。このように考えると、この委員会の中にも文部科学省の方々も入っていただいて、リカレントも含めて、生涯教育の中でこういう人材を育成する教育プログラムと教員の養成を検討すべきだと思っております。

 以上でございます。

 

大塚委員長

 重要なご指摘、ありがとうございます。

 では、髙村委員長代理、お願いします。

 

髙村委員長代理

 大塚先生、ありがとうございます。

 まず最初に、前回申し上げてお願いをいたしましたけど、国交省さん、農水省さん、ご出席いただいて、どうもありがとうございます。

 幾つか申し上げたいと思いますけれども、本日ご報告を聞いて、地域それから金融、人材、地域の脱炭素化を進めていく上で、非常に重要な示唆をいただいていると思います。前回も申し上げましたけど、やはりこれを非常に加速的に、この10年が重要であるということを、前回、資料にも、事務局に入れていただいていますけれども、加速的に進めていくためにどうしたらいいかということをやはり考える必要があると思いました。これは気候変動の観点からもそうですし、先般IPCCの第6次評価報告書の第2作業部会の報告を見ても、いかにやはり緩和策、適応策、そしてレジリエントな地域づくりをしていくかということが喫緊の課題となっていると思います。

 本日、淡路委員からご紹介があった睦沢町などは、まさに脱炭素化の取組と地域のレジリエンスを高める、実際に2019年の台風15号のときの、睦沢町の拠点の果たした、住民への災害時の役割って、非常に大きかったと思っていまして。

 こうした炭素中立型社会の施策と、炭素中立型社会の施策を進めていくことが、まさに地域の課題の解決につながっていく、それをしっかり打ち出していくこととともに、そういう施策をしっかりつくっていくということが重要なんだろうというふうに思います。これが1点目です。

 2点目が、金融の役割についてご報告をいただいた竹ケ原委員あるいは淡路委員のご発言、ご報告、そのとおりだというふうに思っております。

 最近、中小企業の方とお話しする機会も多くあるんですけれども、やはり脱炭素の取組を進めていく上での課題として何があるかというふうに伺うと、やはり三つのポイントがあるというふうに思っております。一つは、人、人材の点。それから、情報のギャップ。それから、三つ目が資金であります。

 中小企業の皆さんとお話をして、脱炭素に向けて取り組んでいらっしゃる、ある意味で先導的な中小企業の皆さんの話を聞くと、やはりそこに地域金融ですとか信用金庫さんといったような、いわゆる伴走して経営を支えてこられた金融の方々の役割というのは、人の不足、情報のギャップ、資金の確保を補うのに非常に重要な役割を果たされているというふうに思っております。

 恐らくこれを加速するために、例えばディスクロージャーあるいは排出削減の対策を、中小企業あるいはそれを支える金融機関を支援していくということと、もう一つは、民間だけでは投資ができないような、投融資がなかなか難しいような案件というようなものに対して、どういうふうにやはり官民でそれを支えていくのかという、金融の投融資の手法についても、やはり検討する必要があるのではないかというふうに思っております。

 3点目が人材についてです。おっしゃった地域の取組、様々なきっかけ、様々な、始める人、入り口というのがあるというふうに思いますけれども、ここでは2点だけ強調して終わりたいと思うんですけれども。

 一つは、やはり専門性に基づく取組というのが地域の脱炭素化には非常に重要だというふうに思います。これは、そういう意味では、自治体の役割というのは非常に大事だと。どなたか委員もおっしゃっておりましたが、大事だと思います。深尾先生が取り組んでいらっしゃる、龍谷大学を中心に取り組んでいらっしゃる地域人材も、もともとはやはり自治体さんとの協力で始められた取組だと理解をしていまして、自治体がやはり非常に重要な役割を果たす。計画をつくる意味でも、住民の側の合意を形成していく上でも、地域のインフラの形成あるいはその転換のためにも重要だというふうに思います。

 これは、そういう意味で、材育成ということと同時に、いかに自治体がそうした地域の脱炭素化の中心的な役割を果たすか。これは、温対法の改正は非常に重要な、一種のサポートなりシグナルを出していると思いますが、やはりここは一つ重要な点だろうと思います。

 二つ目は、先ほど西尾先生がおっしゃった点に関わるんですが、専門性という意味でいったときに、やはり大学などの高等教育機関の役割というのが、地域において非常に重要ではないかと思います。文科省さん、環境省さんで、大学コアリション、脱炭素に向けた、カーボンニュートラルに向けた大学コアリションを始めていらっしゃると思っていまして、やはりこうした既存の取組をしっかり進めていくことと同時に、やはり大学がこうした地域の脱炭素化にどういう役割を果たせるのかという点については、議論をやはり深める必要があるのではないかというふうに思っております。

 以上です。

 

大塚委員長

 はい。どうもありがとうございました。

 では、太田委員、お願いします。

 

太田専門委員

 自治体のお名前がかなり出ていましたので、その立場から申し上げます。

 1点目は、今の話を聞いて、これを取りまとめるに当たって、やはり大きな視点、こういう視点はぜひお願いしたいと。当然ですが、日本の社会産業構造を支えているこの都市集中、都市の文化とか、そういうものは認めるのですが、そういう日本の構造を変えなきゃ駄目なんだというような観点が一つ。

 それからまた、こうすることによって、実質の暮らしの豊かさをつくっていくという観点が必要かなと。

 それから、個々の地域あるいは自治体で言えば、自立と持続ですね、つまり、東京が本当にエネルギーから、あるいは食料から考えて、自立しているまちなのか。そういうことで、それぞれの自立度みたいなものを出していけば、本当に都市部というのはもろいところだと思うんですよね。そういう中で、それじゃあ、農山村とお互いに補うとか、そういうことによって、自立と持続をしていくという、そういう観点が要るだろうというふうに思います。それが1点。

 それから、2点目は広井先生のことですが、実は、広井先生と日立製作所のほうにご協力いただいて、真庭で具体的分析をいたしました。やはり農山村、真庭で同じような結果が出ております。私どもはそれに基づいて政策を打っておりますが、もう一つ、コロナとか、そういうこれからの伝染病、それが今の都市集中の日本でどうなのかと。やはり、本当にコロナとか今後起こり得る新しい伝染病とか、そういう事態に対して、どういう社会構造にしていくべきなのかとか、そういう観点の分析がもう少しあればありがたいなというふうに思います。

 3点目は、人材であります。地方自治体からしますとこういうことをしていただければ、つまり、中小企業大学校だとか、あるいは自治大学校だとか、あるいは市町村アカデミーだとか、農水省においてもいろんなところがあります。そういうところのカリキュラムを、大分変わってきたと思いますが、SDGsだとか、あるいは環境だとか、こういうことを意識したカリキュラムにもっと中央政府においても変えていくということであります。

 子どもたちについて、小さい頃からというのは、例えば真庭市の場合、SDGs市民会議を円卓会議という名称で、もう3回目ですが、どんどん、質も量も拡大しております。私どももこういう取組をして、子どもたちを教育というか、自ら気づくという人材に育てようとしております。

 4点目、金融関係。やはり地域循環を基本としていくと。先ほどの発表にありましたように、地域の金が地域で使われなくて、外に出ていってしまっている。真庭の場合、そういうことをなるべくやめようというようなことで今取り組んでおりまして、日商の大下さんの話にありましたが、商工会の会員数が、真庭は5年連続で増えております。一つのバロメーターでしかありませんが、地域循環をすることによって、中小企業、そして暮らしがよくなっていくというようなことであります。

 以上です。

 

大塚委員長

 はい。ありがとうございます。

 地域循環共生圏の中に都市を含めた地域の自立というのが入っていると思うんですけど、それほど強調されていないと私は思っているので、今まさにおっしゃっていただいたように、強調していただけるとありがたいと思っています。

 では、連合の冨田様、お願いします。

 

冨田オブザーバー

 はい。ありがとうございます。

 本日は、大変示唆に富むお話を先生方にいただきまして、改めて労働者の立場として、我々としても自分事として考えていかなきゃいけないと、認識を新たにしたものでございます。

 私からは2点申し上げさせていただきたいと思います。今日のお話を伺っておりまして、地域の脱炭素化のデザインを描くに当たってポイントとなるのが、政策決定に関与する当事者をどこまで広げるかでありまして、社会対話の枠組みづくりが大変重要なのではないかと考えております。

 現在、都道府県の環境審議会では、我々労働組合、例えば連合の関係者の参画は20府県にとどまっている状況でございます。地域社会経済を広く巻き込んだ協働に向けて、労働組合も含めた関係当事者による社会対話の枠組みづくりに向けたイニシアチブの発揮なども改めてお願いしたいと存じます。

 また、地域循環共生圏の実現過程においては、前回も申し上げましたが、少なからず雇用への影響が避けられないと考えております。失業なき労働移動は当然のことですが、新たに創出される雇用においても、ディーセントでクリーンかつ持続可能であることが求められます。この点において言えば、地域雇用の創出を担う地方労働局などの協力なども必要ではないかと考えてございます。

 さらに、実行段階においては、深尾先生のお話にありましたとおり、人材の育成が大変重要であると思います。こちらも前回も申し上げましたが、公務部門や企業の能力開発やリカレント教育などへの環境整備への大胆な支援策が必要だと考えておりますし、ほかの先生方からもご意見ありましたが、地域の大学など、教育機関との連携、協力も欠かせない要素だと考えてございます。この人材の育成に向けては、検討に必要な要素の洗い出しなどを行って、具体的な書き込みに向けた検討なども併せてお願いしたいと考えてございます。

 以上でございます。

 

大塚委員長

 はい。どうもありがとうございました。

 では、挙手されている委員の方は以上だと思いますので、深尾先生、恐れ入りますが、今の意見を聞いていただいて、さらにコメントいただくことがございますか。

 

深尾龍谷大学学長補佐

 はい。ありがとうございます。非常に勉強させていただきました。

 どなたかもおっしゃいましたけど、地域でフルラインナップで人材をそろえるということは難しいわけですよね。ですから、そういったものを借り物競争ができる、いろんなところの資源をコレクティブインパクト的に集められたりとか、専門人材の知恵を借りたりとか、そういったことのできるコーディネーションができる人材が、特に自治体を中心に育てられたりとか、リカレント的にというふうにも思います。

 そういう中で、私も大学に、構成員ですので、大学人としては、リカレント教育的にそういった人材育成をこういった議論の延長線上でやっていければなというふうに思っています。

 本日は、貴重な機会、ありがとうございました。

 

大塚委員長

 はい。どうもありがとうございました。

 私から、ほんの一言だけ申し上げますが、すごくいい意見をいただいて、大変ありがたく存じます。地域循環共生圏は、環境省が中心になってやってきていますが、国全体の、政府全体の取組にしていくように、さらに環境省にもご努力いただきたいと思っております。

 あと、いろんな関係者が集まるような場が必要というふうに思っていまして、既にこれも環境省でおやりになっていらっしゃると思いますけども、協議会のようなものをつくるなど、お考えいただければと思いました。

 あと、教育に関しては、やはり創造力が必要だと思いますけれども、さらに郷土愛のようなことも自然に沸き起こっていることが必要と思いました。

 では、活発なご議論を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。後半パートの国際展開のほうに移りたいと思います。

 まず、宮下委員、それから武藤委員の順にご発表をお願いしたいと思います。

 宮下委員、どうぞお願いします。

 

宮下専門委員

 はい。承知しました。三菱UFJの宮下でございます。

 事務局の方、資料の共有をお願いいたします。

 早速ですが、私の役割としては、国際関係を横串でということだったと思います。早速、資料左下2ページ、よろしくお願いします。

 私ども金融機関も、気候変動につきましては非常に多面的な取組をやっておりますけれども、本日、目次にありますとおり、産業界へのご支援並びにトランジション推進に向けた取組について、そこに絞ってご説明を差し上げたいと思います。

 次ページをお願いします。金融機関におけるネットゼロの考え方というのは、一体、そもそも何かということですけれども、金融機関の排出量の大部分は、投融資事業から出る排出量となっております。この左の図の下流という部分になりますが、つまり、資料右下のとおり、お客様の排出量の積算と、ざっくりお考えいただいて結構かと思っております。

 したがいまして、我々金融機関の目指すカーボンニュートラルというのは、お客様のカーボンニュートラルの取組とまさに表裏一体でございます。したがって、脱炭素に向けた影響の大きい業種、あるいは企業のお客様へのエンゲージメントが求められているという、状況と認識しております。

 次ページをお願いします。ご覧のとおり、日々、メディアでは、産業界での主要な企業の取組、ここに挙げられているようなものが多く取り上げられ、どんどん加速していると思います。我々もファイナンスの面で関わるケースが非常に増えてきているということでございます。

 次ページをお願いします。では、具体的な脱炭素への私どもの取組支援が、どのような状況かと申し上げますと、気候変動対応の必要性が、サプライチェーンを通じまして、大企業のお客様から中堅、中小のサプライヤーの方々に広がってきております。排出量の把握、あるいは削減実行計画の策定サポート、この辺りに金融機関に対してへの期待が拡大をしてきております。

 左下にあるとおり、例えば可視化のサービスの中では、中小企業の事業者様向けに簡便な可視化のクラウドサービスを提供しているスタートアップとの協業など、対応してきております。また、そうした中で、今後、カーボンオフセットのニーズが高まる可能性もあると考えております。

 次ページをお願いします。いわゆるサステナブルファイナンスというものの動向でございますが、多くの金融機関がグリーンボンドの原則、あるいはグリーンローン原則などの基準を参照しながら、独自の定義で残高目標の開示、あるいは実績の開示をしてきておりますけれども、市場規模、右半分にございますとおり、内外とも、年々拡大傾向でございます。傾向として、この1年は、グローバルのほうが伸びが高くなっているという、そのような状況であります。

 次ページをお願いします。そのような流れの中で、私どもMUFGといたしましては、昨年の5月、2050年までの投融資ポートフォリオからの排出量のネットゼロ並びに2030年までの自社排出のネットゼロを宣言いたしまして、①から④に示しているとおり、全社を挙げた対応を進めております。まさに経営戦略の中核、中心課題の一つになってきております。

のところが、ビジネスの領域です。例えば、サステナブルファイナンス目標を35兆円、2030年までという形で挙げておりますけれども、この上期までの累計実績が約10兆円となっています。お客さまのビジネスの状況についてサポートしながら、②の自社排出の脱炭素化、あるいは③④のような開示やガバナンスの強化に取り組んでおります。

 次ページをお願いします。来月になりますけれども、電力と石油・ガスの2業種につきまして、2030年の中間目標の開示をいたします。これは、後ほどお話をいたします、グローバルなイニシアチブの一つであるNZBAというイニシアティブでの開示ガイダンスにのっとった形になっておりますが、そのための、お客様に対するエンゲージメントの強化あるいはトランジションの推進に関するご支援、それらが今後はまさに具体的段階に入ってくると認識しています。

 ページを飛んでいただいて、10ページにお願いします。では、そのトランジション・ファイナンスの動向というのは、どのような状況かということですが、ICMAがトランジション・ファイナンスのガイダンスを公表し、また、本邦におきましても、産業別のロードマップ、あるいは指針の策定を契機に、ページの右下にありますとおり、大手企業のお客様におかれましても、資金調達でトランジション・ファイナンスの枠組みを使われる、そういう企業が拡大をしてきております。

 また、1ページ飛んでいただいて、12ページ、お願いします。グローバルイニシアティブへの参画というのはどういう状況かということでございます。金融業界におきましては、この1年間、グローバルなイニシアチブの動きは大変活発でございました。COP26を挟んで様々な動きがございました。

 主たる取組をご紹介いたしますと、ページ左側のGFANZという取組でございますが、これはネットゼロ社会への移行を加速させるための金融業界横断のグローバルなイニシアチブでございます。移行計画の策定などの検討状況を金融安定理事会に対し報告することも公表しておりまして、今後、一層大きな役割を担うことが想定されておりますが、本件、民間の取組でございます。そこでの議論の内容が、どのような形で規制に繋がっていくのか、グローバルな議論の内容を、本邦の中でも官民で情報共有していくことが肝要と考えております。

 また、ページ右側のところは、GFANZの傘下にある銀行業界での取り組みでありますNZBAという枠組みでございますが、弊社、コアメンバーであるステアリング・コミュニティーの1行として参画をしております。作業部会の一つの議長を務めるなど、欧州中心に議論が進んできた中で、グローバルな枠組みづくりの議論に加わり、今後も本邦の金融機関として意見発信を行っていく所存でございます。

 次ページをお願いします。では、アジアの中での取組ということでございますが、アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブの中で、Asia Transition Finance Study Groupという枠組みがございます。ご覧の民間企業、あるいはオブザーバーでは、関係する省庁にも入っていただいての取組が立ち上がってきており、弊社がそのリーダーを務めております。

 アジアの現実的かつ段階的なエネルギー・トランジションの実現に必要な共通原則、あるいは基準を議論いたしまして、各国・地域の各種イニシアチブやルールを補完できるガイドラインの公表について、本年秋を目指して精力的に作業しています。我々のこの取組自体がパリ協定にいかにアラインをしているのか。それが各国のNDCの中でどう位置づけられて、産業別のロードマップがどうなっていて、個別の企業の取組、プロジェクトがどうなるのかという、この連関性が非常に大事だと思っております。

 次ページへお進みください。企業のトランジションを支援していく、また、加速していくための論点を三つ挙げております。まず一つ目として、既に各省庁で策定いただいております産業別のロードマップや基本指針を参考に、トランジション支援事例を積極的に積み上げていくことで、当該ファイナンスへの共通理解を本邦のみならず、グローバルにも形成していくことが重要であると思います。

 何となれば、2点目でございますが、そういうことを開示していくことによりまして、内外でのトランジションへの取組の支援自体が、いわゆるグリーンウォッシング、あるいは炭素の単純な固定化とみなされないことが大事でありまして、実際、炭素中立の経済社会を目指すに当たり、必要な資金がしっかりとプロジェクトに回ること、その辺りが非常に重要だと考えております。

 最後に3点目でございますが、民間企業がトランジション・ファイナンスを利用しやすくする環境整備が必要でございます。官民一体となって国際的なルールづくりに参画をし、日本、アジアの状況をしっかり説明しながら、トランジションのパスウェイ、あるいはその考え方を積極的に発信し、国際的な理解を得ることが必要だと考えております。本年、ますますそういう取組が重要になるのではと考えております。

 以上で、私の発言を終了いたします。ご質問、コメントなど、後ほどいただければと思います。ありがとうございました。

 

大塚委員長

 はい。ご努力いただいておりまして、ありがとうございます。

 では、次に武藤委員、お願いします。

 

武藤専門委員

 国際協力機構(JICA)の武藤と申します。本日は機会をいただき、どうもありがとうございます。

 JICAは援助機関でございまして、開発途上国、特にパブリックセクターをメインの顧客としております。技術協力、それから譲許的な資金協力、いわゆるまとめてODA、政府開発援助と言われているところを担っております。そういったところの現場経験から――プレゼン資料をよろしくお願いいたします。最初のページをお願いいたします。

 3点に絞ってお話しさせていただきたいと思います。一つは、ビジョンづくりでございます。二つ目は、新しい共通価値の市場づくりでございます。こちらは、竹ケ原様、淡路様、宮下様のお話が国際的にもチャンスがあるということをお話しさせていただきたいと思います。それから、3点目は、気候資金での国際貢献というところで、1、2があって、3が成り立つという構成でお話しさせていただきます。

 次のページをお願いいたします。まず、ビジョンづくりの実例でございます。今回は、炭素中立型の経済社会のグランドデザインが一つのテーマでございますけれども、日本も開発途上国も全く同じでございます。途上国に協力しておりまして、重要なのは、総合的なマスタープランというアプローチでございます。その事例となるのが、メガ都市ではございますけれども、バンコクに対して横浜市と行っております協力でございます。

 きっかけは京都議定書の頃でございまして、ビジョン、アクションプランづくりのお手伝いをし、「低炭素」というビジョンになっております。すみません、今は「脱炭素」でございますね。パリ協定前後からマスタープランに踏み込むお手伝いをさせていただいております。

 次のページをお願いいたします。ポイントは分野別、ばらばらではなく、運輸交通、エネルギー、廃棄物排水、都市緑化ということで、総合して温室効果ガスを削減していくという計画づくりでございます。目標は2013年から20年まで13.57%削減ということでつくりまして、今、確認できているところで8%削減まで来ているということでございます。

 次のページをお願いいたします。この協力は、横浜市とバンコクとの都市間関係をベースとし、そこにJICAと横浜との協力連携が重ねられて、技術協力として実現したものでございます。その過程で、バンコクのほうの人づくり、横浜市側の人づくり、もちろんJICAの中での人材育成にもなっておることをご報告させていただきたいと思います。

 課題もございます。脱炭素という目線にはまだとても遠いということ、それから、社会の脆弱層を配慮したジャストトランジションという側面がなかなか拾い上げられていないということ、それから、3番目、次のポイントともつながりますけれども、この営みがグリーンファイナンスですとかJCMに直接つなげられていないという私の反省も含めて、そういう課題がございます。

 次のページでございます。次は、こういった技術協力とファイナンスとのポテンシャルをお話ししたいと思います。

 ビジョンを実現するためには、新しい共通価値をつくり、そのための市場をつくって、それをベースにファイナンスを一緒に回せないかというお話でございます。国内の金融の動きを上手に国際展開するというチャンスでもございます。今までも何回かお話がございましたけれども、金融でESG、もっと言って、サステナビリティ、インパクトへの関心が高まっております。こちらの表はちょっと片仮名が多くて分かりにくいんですけれども、要するに、左のいわゆる古典的な財務リターンを求めるファイナンスから、右の寄附の世界まで、その間にいろんなファイナンスが出てきておりますということでございます。私たち政府開発援助、ODAは、どちらかというと、右寄りのインパクトファイナンスのそのまた右のほうのファイナンスでございますが、民間金融のほうがESGから最近はインパクト領域に、左から右へ物すごく領域を広げていらっしゃいます。

 次のページでございます。話題のインパクトファイナンス、インパクト投資ですけれども、リターン、リスクに加えて、インパクトを見ます。こういった投資を途上国でどう広げられていくのかというのが、開発分野では大きな話題となっております。しかし、どうしても、途上国のコンテクストはもともと、リスクが高めということがありまして、このインパクト投資を成り立たせるためには、どうしてもリターンのところで、よりもうちょっと明確なプラスがないと、つまり、いわゆるマネタイゼーションのもう一層の工夫がないと、なかなか成り立たないというところで、そこは竹ケ原様が問題提起いただいたところと非常に通じるものがございます。

 マネタイゼーションということの観点では、広い意味で、並行して市場メカニズム、いわゆる国際フロントでのマネタイゼーションとも言えるかもしれませんですけれども、そういうことが非常に重要になってきております。そういう観点では、政府が推進していらっしゃるJCM、さらにはアジア・ゼロエミッション共同体というところは、私たちも一緒に大きくしていきたいところでございます。

 現実に、こういうインパクト投資、幾つか成り立っている事例があるんですけれども、例えば、私どもの、モンゴルでの風力発電とか、時にはODA、官のほうが手厚い支援を行っております。人づくり、制度づくり、あるいは、IFCなどの国際機関ですと、よりリスクを取ったりするということもございます。しかし、それをよりスケールアップするためには、先ほど来話が出ておりますけれども、今までマネタイズされていない人材を含む社会資本ですとか自然資本、それから減災などの部分も含めまして価値づけがされて、それに伴い、2030年、2050年へと社会変革が進むことが期待されております。これは、日本も途上国も全く同じでございます。

 最後のページに行っていただけますか。最後は、日本のCOP26での気候資金のコミットメントとの関連のところでございます。5年間で6.5兆円、プラス追加分の宣言もございますけれども、中身は公的資金、私どものようなODAですね、プラス、それによって動員される民間資金という定義になっております。

 こちら、「新たなODA」と書いてございますけれども、私どもは、自分たちの業務を実施するだけでなく、民間資金の触媒となって、新しくインパクトをスケールアップするというところが期待されております。これを達成するために、ビジネス・アズ・ユージュアルではなく、ビジョンづくり、マスタープランづくり、人づくり、今まで価値づけがなされていなかったものへの価格づけ、全てにおいて、官、民、地域社会のご協力も得ながら、私どもも国際協力を展開したいと思います。

 ありがとうございます。

 

大塚委員長

 はい。どうもありがとうございました。

 そうしましたら、後半パートのほうの今のご発表を踏まえまして、ご意見等をいただきたいと思います。ご意見等がございましたら、挙手ボタンをクリックしていただきたいと思います。ご発言は3分ぐらいでまとめていただくよう、ご協力をお願いいたします。

 じゃあ、馬奈木委員、どうぞお願いします。

 

馬奈木臨時委員

 馬奈木です。ありがとうございます。

 まず、宮下委員、ありがとうございました。特にアジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブで、その中で、Asia Transition Finance Study Groupで既にされているということで、非常に参考になりました。ぜひ、その中で、国連関係機関もオブザーバーでいいですので入れていただけると、アジアに閉じた金融機関だけの話でなく、それが国際的にも影響が出るのかなと思います。

 私、OECDの貿易と環境の部会の副議長と日本政府代表をやっているんですけども、オブザーバーでよく、関係の違う国でありますとか国連機関が入るんですね。そこで波及効果が多いですので、ぜひお願いできればと思います。

 あとは、この国内の話を進める際に、ぜひ、国際の連携がないと、日本国内だけに閉じた話ですと、結局サプライチェーンを考えたときにその実際の取組が全く波及しないので、どんどんどんどん日本の国内または地域内で閉じた小さな話になるので、そういう視点が非常に大事かなと思います。

 それを踏まえた上で、武藤委員の災害、または適応に対するファイナンスという考え方も非常に参考になると思いました。特に、多くの場合で、結局、国内であれ、海外の途上国であれ、適度なリスクを取りながらリターンを求めるという通常のファイナンスの概念は、環境でも同じであるというふうに思いました。

 その際におっしゃられたネガティブインパクトを防止するというのが、今回のこの委員会の枠組みで捉えますと、脱炭素でカーボンを減らしながら、同時に生態系保全もしっかりしようということで、ネイチャー・ポジティブに考えるものですし、ぜひ、日本版の欧州タクソノミーのような原理をきっちりつくって、それをこのアジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブなどで広げていただけると、2年後の排出権取引市場などができたときに、企業にとっては明確にインセンティブになり、話が進みやすくなると思うんですね。それを、各国内自治体でありますとか、企業にとっては海外に波及するときに役立つと思いました。

 次は、このCO2の排出権取引市場というのができた場合には、より環境意識が高い人などが、当たり前ですけど、実証研究ではそういう支援が高く、よりその活用もしようというのがあります。省エネ利用であるとか、企業への活動も普及しやすいですので、その取組に市場のメカニズムをぜひ使っていただきたいと思います。その際に、条件付きでネイチャー・ポジティブなどの自然資本のこの制約をしっかりつけるというのが、脱炭素を考える際にそれ以外の項目を考えるのがいいかと思います。

 もう一つ、最後の点ですけども、海外でありますと、気候変動をもって、その国内展開を考えた場合には、イギリスですと、IPCCから始まり、ダスグプタ・レビューで、不確実性は非常に大きいんですけども、経済への悪影響が非常に大きいことを示して、早めの取組が大事であることを示しました。その後に出てきたダスグプタ・レビューが自然資本の概念を経済価値に持ってきて、その際に、CO2だけじゃなく生態系保全なども同時に考えようということがありました。こういうレポートは、実際の計算は、彼らは1年程度で行ったんですね。それを国内で、日本版でもし展開しようとするときに問題になるのは、この、農水省で言いますところの最適土地利用対策、まあ、国交省でもありますけど、こういう耕作放棄地に対策をする際の制度が非常に邪魔をしますので、そこは環境省さんと農水省さん、国交省さんが連携を取られながら、新しい取組をする際の制度の障壁が減ると、地方自治体、国内でやるときにも、また海外に展開するときにも非常に進みやすいので、その障壁を取り除くことで、企業と自治体の連携がしやすいように持っていっていただければと思います。

 以上です。ありがとうございます。

 

大塚委員長

 はい。どうもありがとうございました。

 では、森田委員、お願いします。

 

森田専門委員

 どうもありがとうございます。宮下様、武藤様、非常にいろいろな取組ですとか、また課題についても教えていただき、ありがとうございました。私自身は学術分野からファイナンスのことを勉強していますが、少し気になっていたポイントについてのコメントと、1点、質問させていただければと思います。

 一つ、コメントですけれども、宮下様のご発表の中で、トランジションの取組がウォッシングとみなされないように、といったお話がありましたけれども、本当に、私自身も学術面からファイナンスの議論を見ていて、国際的に使われているトランジションの意味合いと日本の使っているトランジションの意味合いが少し食い違っているように認識されているのではないかという、少し懸念を持っています。日本は化石燃料から脱却する方向に向かっているというメッセージがまだ十分伝わっていないのではないかと感じています。そういった意味では、トランジションというのが本当にトランジションしていくのだと、そして、最終的には実質排出ゼロに向かうのだといった、明確なメッセージを示す必要があるように思います。

 2点目の質問は、私が気になっていたことでぜひ今回お伺いしてみたいことなのですけれども、国際協力に関連するようなファイナンスの議論とサステナブルファイナンスに関連する人たちの関わっているステークホルダーが、もっと協調できる可能性が日本でもあるのかという話点です。

 気候変動枠組条約の下での気候資金というのは、これまでメインは途上国への国際協力の話で、サステナブルファイナンスと、結構、議論に距離があったと思うのですけれども、EUなどの動きを見ていると、サステナブルファイナンスの議論の中に欧州開発金融機関協会とか欧州投資銀行、欧州復興開発銀行、そういった人たちが関わって、国内の、自分たちの欧州の域内の話と海外の途上国とかの話も一体として結構議論しているように思っています。日本ですと、サステナブルファイナンスの議論を見ていると、国内の議論が中心のような感じがします。国際協力の文脈でも、もっと民間資金を動員していく中で、武藤様のお話の中でもありましたが、こういったサステナブルファイナンスで、いろいろな民間資金を動員するようなアプローチを考えられている方々ともう少し連携する必要があるのかなと思います。こういった、日本でこの国際協力のファイナンスとサステナブルファイナンスのコミュニティをもっとつなげるようなことが可能なのか、また、その課題がもしあれば、教えていただければと思います。ありがとうございます。

 

大塚委員長

 今の点、どうぞ、武藤委員とか宮下委員とか、後でご発言いただくときに、ご回答もいただければと思います。

 では、連合の冨田オブザーバー、よろしくお願いします。

 

冨田オブザーバー

 再び発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。今お話しいただきました投資と国際協力の観点を伺いまして、改めて検討の項目などに加えていただきたい点について、1点申し上げたいと思います。

 投資で申し上げますと、労働組合自身も、企業年金など年金基金や労働組合の独自資金の運用当事者でありまして、ワーカーズキャピタル責任投資を積極的に推進する立場として、差し向け先に高い関心を持ってございます。この点を国際競争力の強化やサプライチェーン全体の取組に鑑みますと、やはり人権も看過できない要素ではないかと考えてございます。令和2年にビジネスと人権に関する行動項目が示され、環境省におかれましてもデューデリジェンスなど各種検討報告などを出されておられますが、この地域社会の脱炭素化を進める上でも、人権の観点をぜひ検討の項目の中に組み込んでいただきたいと存じます。

 以上でございます。

 

大塚委員長

 はい。ありがとうございました。

 では、髙村委員長代理、お願いします。

 

髙村委員長代理

 ありがとうございます。

 まず、宮下さん、武藤さん、どうもありがとうございました。

 1点目は、金融の重要性は、この前回の、前段の議論でありましたけれども、改めて国際的な脱炭素化、特に私はアジアだと思いますけれども、その重要性ということをお示しいただいたと思いますし、我々のこの検討の中でも十分に意識する必要があるというふうに思います。

 気候変動対策としては、もちろん、アジアが世界の排出量の約過半を占めて、これからも排出量が増える。ある意味では気候変動対策として決定的に重要な地域であるということはもちろんですけれども、もう一つは、これは馬奈木委員もおっしゃっていたかと思いますが、サプライチェーンを、日本企業のサプライチェーンを見ても、特にアジア諸国にサプライチェーンを持っていらっしゃる企業も少なくない。他方で、サプライチェーン間の排出を削減するということが、企業にとって非常に重要な、企業評価の評価軸にもなってきているということを考えると、これは、アジア諸国のためだけではなく、日本企業、ひいては日本の競争力の観点からも非常に重要だと思います。

 これは同じことが実は適応策についても言えると思っていまして、アジア諸国、国際的に、特にアジア諸国が気候変動リスクにしっかり対応できる強靱さ、レジリエンスを高めるということ自身が、そういう意味では日本企業のサプライチェーンの強靱化にも資するということだと思います。その意味で、この国際的な対応の重要性というのは、ぜひ、取りまとめの中でも協調していただきたいと思っている点です。

 その上で、2点目ですけれども、金融の、武藤さんも宮下さんも金融の側面からお話をいただいたと思います。三菱UFJさんをはじめ3メガさん、それから三井住友トラストさんなども含めて、投融資のポートフォリオのネットゼロというのをコミットされているというのは、敬意を、大変難しいチャレンジだと思うんですけれども、大変心強い取組だと思います。これは宮下さんがウォッシングと言われないようなというコメントを付していらっしゃいましたし、森田委員からもご指摘がありましたけれども、恐らく金融に、これはJICAさんなどの公的な資金供与機関といいましょうか、援助機関もそうですけれども、伴走の段階から先導する段階にやっぱり移ってきているんじゃないかという、金融の非常に重要な役割を改めて思います。

 その意味で、先ほどのウォッシングの話ですけれども、私自身、見ていると、しかもトランジションファイナンスの議論にも関わらせていただいていますけれども、現状からいかにトランジションするか、ここに資金をつけていくことの重要性は極めて重要だと思います。そこは恐らく委員の間でも共有されていると思いますけれども、やはり懸念とされるのは、どうしても、今行っているビジネスを、脱炭素、低炭素に転換していくということですから、現実的な移行という形で考えると、どうしてもマインドとして現状維持、事業温存になりがちな傾向が出てきてしまうと。そこに資金をつけているんではないかという、そういう見方があるのではないかと思います。恐らくここをしっかり、そうではなくて、例えばパリ協定の長期目標、特にCOP26の後は1.5度目標と整合的な形でトランジションを促している資金供与であること。それからもう一つ、これは環境社会配慮、質の高い国際貢献、質の高い資金の供与である、ファイナンスであるということをしっかり示していくということが重要ではないかと思います。質の高い国際貢献あるいは質の高いファイナンスという意味で行くと、これはカーボンマーケットも同様で、これは6条の、今回の市場メカニズムのルールもそうですし、ご存じのとおり、ICAOのコルシア対応のクレジットも、非常に高い環境社会配慮、環境だけではなく、先ほど連合の委員からもございましたけれども、社会配慮、人権、労働者の権利についてもしっかり織り込んだ、質の高い国際貢献の在り方というのを考える必要があるというふうに思います。

 最後、1点、武藤さんに質問なんですが、COP26で開発銀行、世銀も含めて開発銀行が、パリ協定の後、脱炭素というのを主流化されたと思うんですが、今回、COP26で開発銀行がこぞって、自然、ネイチャーを主流化するというふうに宣言を出していると思います。それについて、若干武藤さんのご報告でも言及があったと思うんですが、日本の開発支援あるいはJICAさんのところでの具体的な動きなり今後の方向性について、もし情報をいただければ、大変ありがたく思います。

 以上です。

 

大塚委員長

 はい。今、手が挙がっているのは以上なんですけれども、武藤委員、森田委員とそれから髙村委員長代理からご質問がございましたので、お願いしてよろしいでしょうか。

 

武藤専門委員

 はい。どうもありがとうございます。そのほかのポイントも含めまして、少しお話しさせていただきたいと思います。

 髙村先生のおっしゃっていただきました伴走から先導の段階に入ったというところ辺りが一つの大きなキーワードなのかなというふうに思っております。私ども、やはり二国間の外交のベースラインとなる二国間援助を行っておりまして、そういう中では途上国にまず寄り添って信頼を得ることというのが第一義的な姿勢になります。そういったコンテクストの中で、やはり日本政府全体として先導していくんだというようなところの、はい、目線合わせ、ナッジ、そういったところが非常にこれからキーポイントとなっているのかなと思っております。

 それから、質問のほうでありましたサスティナブルファイナンスと援助、ODAのファイナンスのほうとのコラボレーションというところですが、私、OECD、DACの場によく出ておりますけれども、そういったところでも日々そこは非常に重要なリンクだなと感じているところでございます。日本のこうしたコミュニティ、政策コミュニティ、それからODAのコミュニティ、しっかり私も橋渡しの役を務めたいと思っております。

 それから、髙村先生から質問いただいたネイチャーの主流化というところで、私どもも自然環境分野のみならずもっと広く土地利用というところで視野をきちっと広げて取り組まなければならないという危機感は、中でしっかり共有しておるところでございます。具体的な、ポリシー、目標設定、そういったところまでは至っておらないわけなんでございますけれども、ネイチャー・ベース・ソリューションを含め、中で議論しておりますことはご報告させていただきたいと思います。ありがとうございます。

 

大塚委員長

 はい。ありがとうございます。

 宮下委員、何か追加していただくことはございませんでしょうか。

 

宮下専門委員

 はい。ありがとうございます。少しお話しさせていただきます。

 まずご質問ということで、森田さんからいただきました。先ほど武藤委員もご発言されていましたが、私ども民間金融機関が、JICAのプロジェクトに直接ファイナンスを実行するというケースは多くはないのですが、国際協力銀行と我々民間金融機関が資金面でタイアップしてやっていくというのは、これからも増えてくると思っております。そういう取組をしっかりやっていきたいと考えております。

 それと、冨田さんからは人権の話もございました。今日は、脱炭素、気候変動が主たるテーマですので、私の発言もそこに特化してお話をしておりましたが、金融機関としても、人権に関連するデューデリジェンスが一層重要になってくると感じているところでございます。

 それから、最後に、髙村先生あるいは森田さんからもいただきましたウォッシングに関連するようなお話の中では、今日は述べませんでしたが、やはり評価機関の重要性であるとか、どういうものがトランジションファイナンスなのかという具体例のすり合わせを通じた標準化みたいなものが本当に重要だと思っています。まだまだ本邦の中でも、トランジションファイナンスという言葉の解釈、定義が異なっている場合があると思います。ただ、その定義を一足飛びにつくりにいこうとすると非常に難しい、やや神学論争的な話にもうなる可能性もあると思いますので、具体例をしっかり積み上げながらと申し上げたのは、そのようなアプローチがふさわしいのではないかと、実務的には思っているという次第です。

 最後、馬奈木先生からいただいたサジェスチョンについては、考えてまいりたいと思います。ありがとうございます。

 以上です。

 

大塚委員長

 はい。どうもありがとうございました。ちょうど時間になりつつあります。熱心なご議論を頂戴いたしまして、誠にありがとうございました。本日ご議論いただきました論点を含めまして、次回以降も引き続き議論を深めていただければと考えております。

 最後に、議題の2、その他につきまして、何かございましたら事務局からお願いいたします。

 

地球環境局総務課長

 特にございません。

 

大塚委員長

 はい。それでは、以上で本日の議事は全て終了いたしました。円滑な進行にご協力いただきまして、誠にありがとうございました。

 事務局にお返ししたいと思います。

 

地球環境局総務課長

 はい。大塚委員長、ご参加いただいた委員の皆様、本日も大変活発なご議論を頂戴いたしまして、誠にありがとうございました。今日の議事録につきましては、事務局で作成をして、委員の皆様にご確認をいただきました後に、ホームページに掲載をさせていただきます。

 次回は4月の1日金曜日を予定しております。

 それでは、本日の会議は以上で閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

 

大塚委員長

 ありがとうございました。

午前11時58分 閉会