中央環境審議会地球環境部会2050年ネットゼロ実現に向けた気候変動対策検討小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会地球環境小委員会中長期地球温暖化対策検討WG 合同会合(第8回) 議事録

開催日時

令和6年12月20日(金)9時17分 ~ 11時43分

開催場所

対面及びWEBによる開催

議題

(1) 地球温暖化対策計画(案)について
(2) その他

資料一覧

議事次第

資料1 中央環境審議会地球環境部会2050年ネットゼロ実現に向けた気候変動対策検討小委員会 委員名簿

資料2 産業構造審議会イノベーション・環境分科会地球環境小委員会中長期地球温暖化対策検討ワーキンググループ 委員名簿

資料3 地球温暖化対策計画(案)

参考資料1 第6回合同会合国立環境研究所 説明資料

参考資料2 第6回合同会合地球環境産業技術研究機構 説明資料

参考資料3 第6回合同会合事務局 説明資料

参考資料4 これまでの合同会合での主なご意見

参考資料5 エネルギー基本計画(原案)の概要

参考資料6 池田将太委員提出資料

参考資料7 小西委員提出資料

参考資料8 小西委員提出資料(2)

参考資料9 津久井委員提出資料

議事録

 
午前 9時17分 開会

○伊藤室長
大変お待たせいたしました。申し訳ございませんでした。
ただいまから、第8回中央環境審議会地球環境部会2050年ネットゼロ実現に向けた気候変動対策検討小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会地球環境小委員会中長期地球温暖化対策検討WGの合同会合を昨日に引き続いて開催させていただきます。
引き続き事務局を務めます環境省の伊藤でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
定足数は満たしております。
今日は、産構審の岩船委員と大下委員がご欠席と、それから中環審側は、福田委員がご欠席で、代理で山口参事に入っていただいております。
それでは、大塚委員長、よろしくお願いいたします。

○大塚委員長
本日は、議事次第にございますように、(1)地球温暖化対策計画(案)について、(2)その他となっております。小西委員と津久井委員からの資料のご提出がございます。
一言、最初に申し上げておきますが、今日も改めて議論を尽くしていきたいと思っています。昨日の提案を踏まえまして、複数のモデルについて説明をいただくということにいたします。時間もございませんでしたので、提案があった全ての機関を呼ぶということはできませんでしたが、委員が属している機関の方にも補助者として参加をいただくことにいたしました。
政府は2月にNDCの提出を目指すために、年内に応対本部で案を決定してパブコメを開始するというスケジュールになっております。この合同会合は政府が策定する案に対して意見をいただくという場でございまして、24日には審議会としての議論を得たいと思います。
今日も十分議論を尽くすために延長の時間も確保しておりますが、後にご予定がある方もいらっしゃいますので、できるだけ出席委員全員がいる間に議論を尽くしたいと思いますので、円滑な議事にご協力をいただきたいと思います。
では、まず小西委員からコメントなどございましたらお願いいたします。

○小西委員
今日は、ほかのシナリオの発表機会をいただきまして、誠にありがとうございます。昨日の今日で本当にばたばたと準備させていただいて、システム技術研究所に研究委託しておりますので、そこの所長の槌屋治紀先生が今日ご発表をくださいますので、ぜひ考え方の違うシナリオ、そうするとどのような合理的な選択が日本が取ることが可能かということをその観点でご覧いただいて、よろしければどんどん質問していただければと思います。
ちなみにこのシナリオは、2011年のときから既に4回アップデートをしておりまして、これまで、もちろん技術的なシナリオとそれからそれのコストがどれぐらいかかるか、例えば再生可能エネルギーがそれぞれ50%、70%増えたときの電力システムがどこまで、どのように対応可能か、そういったものを全て統合したものをこれまで何度も出させていただいているものの最新版でございます。
今日は、槌屋先生、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○大塚委員長
どうぞよろしくお願いいたします。

○槌屋氏
槌屋です。WWFジャパンから100%自然エネルギーシナリオの作成を依頼を受けてしている者です。
事務局のほうでスライドを出していただけますでしょうか。次のページへ。
今日の発表シナリオは、WWFシナリオの概要、エネルギー需要と供給構成、費用の推定、CO2削減率をまとめたものです。次へ。
概要としては、太陽光と風力の野心的な導入を想定しまして、気象データを使って1時間ごとの1年間の電力需給ダイナミックシミュレーションを行っています。
この24年までに発表したWWFシナリオでは、COP28の要請を満たしています。2030年に19年比で再エネ容量を3倍にする。35年CO2削減率を19年比で65%以上にする等のIPCCの要請も満たしております。次へお願いします。
ここで将来のエネルギー需要の推定方法をどのようにしたかということですが、基準年のエネルギー需要に対して、活動度がどういうふうに変化するか。大きく変化するのは人口ですけれども、鉄鋼の素材の輸出とか建物の長寿命化とか情報化、そして、それぞれの活動の変化に応じて使用される技術の効率向上がどういう効果があるか、こういった三つの要素のかけ合わせで、将来のエネルギー需要が推定できると考えました。次へお願いします。
これは、35年と50年のエネルギーシナリオを簡単にピックアップしたものです。目標としては、35年にはCO2排出を65%削減する、2019年比で。2050年にはCO2排出をゼロにするというふうに目標を設定しました。
エネルギー需要は、人口減少により活動度が減少する、効率化が進むということで、活動度の減少と効率化のかけ合わせで、2050年にはエネルギー需要は現状の半分以下に減少していくと想定しています。
エネルギーの供給ですが、35年には電力はおよそ75%を再エネから、残りをガス、石油、原子力から供給します。50年には太陽光、風力、水力と再エネで100%、熱・燃料需要にも供給するとしております。
原子力については、2021年時点で既に再稼働決定したもの、および適合性審査完了済・申請済は稼働しますが、30年以上経過したものは稼働しない、新規建設はしないということで、2030年には3基のみ322万キロワット、2038年以降ゼロになると想定しております。次へお願いします。
需要構造、特に産業部門ですが、先ほど申し上げました人口減少とほかの要素において変化が生じます。農林水産業から食品飲料、繊維工業等が人口減少によって変化を起こすということを想定しました。
パルプ、化学、プラスチック、窯業、鉄鋼等は、50%台から60%台に最終的に2050年には減少する。大きく増大するのが情報機械産業で、総合変化量は150%になると想定しております。次にお願いします。
AIがデータセンターの電力消費を増大させるということが話題になっておりますけれども、AIのモデルにも様々ありまして、電力消費も小さいものから大きいものまでたくさんあります。
それから、今まで新技術が電力消費を増大させるという説は繰り返しありました。高温超伝導のときもそうですし、インターネットの普及、仮想通貨のマイニング等によって増加が予想されましたが、そうなりませんでした。
電力消費削減の技術開発もあります。ラピダスでは、電力消費を10分の1にする省エネ半導体を開発するということが行われておりますので、単純に大きく電力消費を増大させることはないと考えております。次へ。
そして、最終エネルギー需要を推定しました。2021年の3,318TWhが、2050年に1,419になります。2035年には67%に、2050年には43%に減少する。産業部門の減少が大きい、また、EVの導入により自動車の効率が3ないし4倍になるため、運輸部門の減少が特に大きいというふうに想定しております。次へお願いします。
主要な再エネ容量の想定ですけれども、風力と太陽光は、2035年には風力が61GW、太陽光が280GW、2050年には風力が153GW、太陽光が413GWを想定しています。
この根拠ですけれども、風力と太陽光の業界のエネルギービジョン、公式に発表されている内容は次のようになっています。風力発電協会、JWPAへのビジョンでは2050年に陸上40GW、洋上着床が40GW、洋上浮体は60GWということで、合計140GWとなっています。JPEA(太陽光発電協会)のPVビジョンでは、2050年に太陽光400GWとしています。
これらのビジョンは、過去の傾向を見ますと次第に大きくなっておりますので、今後も、もっと大きな数字になるというふうに予想されます。ということで、WWFシナリオでは、ここの二つの協会の出している数字よりやや大きめの数字を出しております。次に。
具体的に各年ごとに太陽光発電の容量と風力容量を想定しております。太陽光発電は、2021年から急速に増大していって、2035年には280GWということで、風力発電は、洋上着床、洋上浮体がやや遅れて増大していきますので、太陽光ほど早く普及はしないんですが、大きく変化してくると思います。
いずれにしても太陽光や風力は新しい産業として大きな魅力を持っていますので、これを育成して、重要な産業として捉えていくという見方が必要かと思います。次に。
そうしますと、全エネルギー供給の構成変化を見ますと、2021年、特に一番上にあるのが石炭ですけど、灰色の石炭が35年に向かって急激に減少します。これは、石炭火力発電をなくすということで、まだ残っているのは工業とか紙、パルプ産業とかが一部石炭を利用していますので残るという状態になります。
ガスがえんじ色のところですけれども、割合長い期間、大きく供給を占めていますが、いずれ石油と同じように再エネに変化していきます。次にお願いします。
電力供給構成ですが、2021年には994TWhが、2035年には914TWh、2050年には1,257TWhというふうに増大しています。
2030年までは減少しますが、その後は再エネ発電が増加して、EV、電力加熱、水素製鉄、ヒートポンプなど、今までは電力の用途でなかった分野に電力供給が増加してゆく。地熱その他の中には、バイオマス発電と自動車の屋根に乗せた太陽電池(車上PV)が含まれています。次へ。
2021年のエネルギー構成は、左側が全エネルギー供給、右側が電力の供給構成で、石炭とかガスが大きくなっているのが分かるかと思います。次へお願いします。
35年になりますと、全エネルギー供給としては、太陽光が16%、風力が7%という形になります。電力供給構成だけで見ますと、太陽光が43%、風力が18%とかなり大きくなっていきます。次お願いします。
2050年になりますと、全エネルギー供給構成は、全て再エネ、電力供給も全て再エネということで、電力を見ますと太陽光が47%、風力が38%という状態になります。次にお願いします。
再エネの割合ですが、2021年には、電力について19.7%、全エネルギーについて4.5%ですが、2035年には、全エネに関しては31.9%、再エネに関しては76.5%というように増大していきます。次お願いします。
再生可能エネルギーの供給の内容ですが、2050年の断面を見ますと、再エネの発電と余剰電力で、既存の電力需要、それから新しく生じる電力需要、電力需要Bと書きましたけれども、EVとかFCV、水素製鉄等に供給します。こういう需要は時間的に柔軟にシフト可能な需要で、デマンドレスポンス、天気予報に応じて生産調整を行うというふうに考えております。次にお願いします。
年間平均投資額の推定ですけれども、WWFシナリオの2020年から2050年の30年間についての総投資額は、再エネが172兆円、省エネが82兆円ということで、254兆円になります。30年で割りますと年間8.5兆円ということで、再エネが5.8兆円、省エネが2.7兆円というような投資額になります。次お願いします。
このときのCO2の排出量ですが、2013年比と19年比が書き出されております。上から二つ目の段にWWFシナリオのCO2排出量が書いてありますが、2030年に5億3,400万ton、35年には3億4,900万ton、2040年には2億tonというような形になります。2013年比削減率は、2035年に71.7%、19年比で66.1%となることができるとなります。次お願いします。
まとめですが、適切な政策によってエネルギー需要は減少する。再エネのコストが低下しておりまして、再エネを主体にしたエネルギー政策は経済性が高く2050年にはCO2を100%削減できると思われます。再エネ産業は日本の将来の産業構造の主要な担い手になりますので、支援して育てていくということが重要になると思います。
大きく削減するには、毎年の大幅な効率改善、再エネ導入が必要で、資源リサイクル、ペーパーレス、原材料輸出の減少、それから再エネ関連企業の育成、洋上風力産業の推進、送電網の柔軟な利用促進等々、気候変動に対抗するイノベーションを進展させる政府の適切な政策が必要であると考えております。
以上、簡単ですけれど、WWFシナリオの内容はこのようになっております。ご清聴ありがとうございました。

○大塚委員長
どうもありがとうございました。
では、続きまして、津久井委員からコメント等がございましたらお願いいたします。

○津久井委員
ありがとうございます。シナリオ発表の機会を頂戴しましたので、本日、資料として提出させていただきました。時間も限られておりますので発表に移らせていただければと思います。
発表は、シナリオ分析を担当しました、弊機関の田中より行わせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○田中氏
おはようございます。IGESの田中と申します。昨日の今日で準備してまいりましたので、主著者の栗山のほうで対応かないませんで、共著者の私からの発表となりますことをお許しください。次お願いいたします。次のスライドをお願いします。
本日、弊機関で行いました分析結果のうち、二つのシナリオに絞って対比するような形でご説明したいと思います。
一つは、直線的削減シナリオというものでございまして、前回のエネルギー基本計画やその後のトランジションロードマップなどで検討されていた対策を積み上げたものになります。
もう一つは、早期削減シナリオと呼んでおりまして、社会経済の大きな変化や技術成熟度の高い技術の早期大量導入により、1.5℃整合の排出経路達成の可能性を模索したシナリオというふうになっております。
昨日の会議において、弊機関の分析が科学的な根拠に基づかない、主観的な願望を述べたものであるというふうにも取れるご批判をいただいたように認識しておりますけれども、それは誤解であるというふうに考えておりまして、むしろ信頼できる科学的な根拠を幅広い分野からできる限り集め、国際社会での政治的合意事項などに基づきながらデザインしたものになります。次のスライドお願いします。
では、その科学的な知見とは何なのかというものを主要なものに絞って幾つかご紹介したいと思います。こちらは基本的に全て査読論文などで出ているものでして、科学的な根拠というのに足りるというふうに考えております。また、我々の分析の一部も既に査読論文として学術誌などに発表させていただいております。
第1に、需要の変革は限界削減費用を大幅に下げうるということです。ここで重要な変革と言っているのは、単に新しい技術に置き換わるであるとか、各産業の生産額が変わっていくといったような話をしているわけではありません。デジタル化や自動運転・シェアリングといったエネルギーを需要するサービス自体構造的な変化を伴うものと考えております。
これらは、何らかのシナリオを外生的に与えない限りは従来のモデルでは評価し得ないものだというふうに考えておりますけれども、重要なことは、モデルで計算される限界削減費用は、こうした需要の変化によって大きく変化し得るということだと思っております。
グラフは、IPCCの1.5℃特別報告書とそこで引用されている論文から引用しております。炭素価格シャドウプライスと書かれておりますのは、基本的には限界削減費用と同じものを掲載しているものと理解いただければと思います。需要が低減するシナリオほど大きく限界費用が削減しているということが理解できると思います。
もちろんこうした需要の変化というのは、完全に予見性を持ってコントロールできるものではないですし、特に予測し得ないリバウンド効果なども起こり得るということは十分に注意する必要はありますけれども、限界費用が単純に安い高いという議論をする前に、まずはそういう方向にも持っていって限界費用を抑えるという政策的な選択というのも重要ではないかというふうに考えております。次のスライドお願いします。
次に、電力コストについてですけれども、再エネの増加が電力システムのコスト増につながるかどうかということは、電力システムの柔軟性をいかに高めるかということに依存するということです。
こちら、日本に限らず多くの地域のスタディーがありますけれども、日本を対象に費用最適化計算を行った研究においても、政策的に水素の国内製造、国内消費を進めて、再エネの余剰電力による水素製造を拡大させた場合、変動性再エネが7割を超える電源構成が最も安いオプションとなり、電力コストが現状よりも低下するというような結果も出ております。
再エネ比率やコストの推計結果の値自体は前提に依存するものですけれども、いかに電力システムの柔軟性を高めるか、再エネが増えれば統合費用が増えるのは自明ということではなく、いかに統合費用を抑制できるような政策を入れていくかということを考える必要があるのかなというふうに思っております。次のスライドお願いします。
さらに、やや概念的な話になってしまうんですけれども、ネットゼロに向けた大きなトランジションをいかに行うかという課題を考える場合は、今の人々の行動や選考といったものを前提に対策のコストや効率性について評価するということではなく、それらの前提自体をいかに変化させていけるか、そして、こうした社会的な要素の変化との相互関係の中で、技術がどのように普及し得るのかというのを検討しなければならないのかなというふうに思っております。次お願いします。
さらに、政治的な合意と言いましたのは、一つだけ挙げさせていただきますけれども、我々1.5℃整合の排出経路を模索する早期削減シナリオというのを提示しておりますけれども、その際、IPCCが示しておりますオーバーシュートが無い、又は限定的となる経路というのを参照しております。G7などで日本もコミットしている目標というのは、基本的にはこの経路が前提となっているというふうに理解しておりまして、これが現実的に達成が難しいかどうかという評価は難しいですけれども、仮にそうだったとしても、勝手にそれを放棄することは許されないという考え方に基づいて、まずはオーバーシュート無しを前提とした経路をどうすれば達成できるのかということを分析したということになります。次お願いします。
少し前置きが長くなってしまいましたけれども、こうした科学的な知見や政治的な合意を前提に、ステークホルダーとの対話を通して具体的なビジョンや必要な取組について探索して、定量的な数字とその達成に必要なアクションプランとして表現したというのが我々のアプローチです。
こちらに示しておりますのが分析方法の概要ですが、ポイントだけお伝えします。
(1)と(2)のところですけれども、一つ目、できるだけ高いウェルビーイングを低いエネルギー需要で満たすような需要の変革というもののシナリオをつくりました。それを産業連関表などを用いて定量化しましたというのが一つの特徴です。
それから2点目は、(4)、(5)のところでございますが、大幅な電力システム、柔軟性の向上を想定した上で、電力系統のシミュレーションや電力コストの積み上げ計算を行ったというのが二つ目です。
それから三つ目は真ん中の(3)のところですが、エネルギー需要と技術の想定につきましては、技術開発のタイムラインなどを考慮した上で、デジタル化や生産性の向上といったナラティブと相乗効果を持つような形で、具体的には、原価と再エネが最大限に進むような想定で外生的にパラメータを設定して積み上げ計算したということです。
RITE様であるとか国環研様のように、世界全体についてエネルギーシステムの複雑な相互作用を考慮して、大規模な数理的な問題を解いているようなものではありませんけれども、逆にシナリオ設定の自由度が高まって、モデルでは考慮しにくいようなダイナミックな変化を考慮し得るというふうに考えております。次のスライドお願いします。
ここから二つのシナリオを対比させながらポイントだけご説明させていただきたいと思います。
直線的削減シナリオは、社会経済で重要な構造は現状とほぼ変わらないという想定です。政策として、電化や火力発電からの脱却を進められずに、水素由来燃料の輸入拡大であるとかCCSによって脱炭素化が図られるというシナリオになっています。
それと対比して、早期削減シナリオは、DXを中心とする社会経済の変化を想定しております。また、電化や省エネ技術など現在利用可能な成熟した技術については、政策的に導入が進められ、最大限進展していくというようなシナリオになっています。
一方で、水素については、再エネの余剰電力で国内で製造されて消費されると。不足分が輸入されるというような想定になっております。次お願いします。
社会経済の変化についてですけれども、産業構造審議会の経済産業政策新機軸部会においても、デジタル化を筆頭とする時代の大きな変化を踏まえて、従来と異なるアプローチの必要性、産業構造の変化の必要性が強調されております。基本的には、我々の社会経済の変化に関するシナリオでは、こうした各省庁の議論の方向性と整合したものになっておりまして、様々な社会課題が脱炭素と同時に解決された社会の姿というのを描いているということです。次のスライドお願いします。
ステークホルダーとの対話ということを申し上げましたけれども、基本的にはこの委員会でも意見を述べられておりました1.5℃目標を共有する多様な業種の企業の集まりであるJCLP様から多大なご協力をいただいております。
ここで強調しておきたいんですけれども、前回の会議でご指摘があったというふうに伺っておりますが、脱炭素化について高い目標を掲げるとやる気を失ってしまう方々が多数おられるんじゃないかということも、恐らく事実だろうと思いますけれども、一方で、脱炭素に資する技術の開発やビジネスに人生や社運をかけて取り組んでこられた方からすると、そういう方々に配慮し過ぎるあまり脱炭素化について高い目標が掲げられなければ、そちらのほうがやる気が失われてしまうと、よりマクロに見ると本当にいろいろなイノベーションや産業の芽を摘んでしまうんではないかということです。次のスライドお願いします。
ここから駆け足で設定したシナリオに基づく推計結果をお示しいたします。
最終エネルギー消費量ですけれども、2040年には足元と比較して38%減となっております。DXによる需要増などもございますけれども、我々の分析でも電化などにより電力需要自体は増加するという結果になっております。それから次のスライドお願いします。
電力部門のみですが、詳細なシミュレーションによって再エネが大量に導入された電力システムで安定供給が行え得るかということを確認しております。
計算の前提としては、繰り返しになりますけれども、水電解装置の大量導入であるとか、あるいはV2GによるEVの蓄電池の利用といったものが想定されています。柔軟性が大幅に高まったシステムにおける試算だということです。次にお願いいたします。
再エネについては、特に浮体式洋上風力を中心に、最大限の導入を想定してございます。また、2035年までに石炭火力はフェーズアウトするというような想定を見ています。この辺りは基本的には外生的に想定したものになります。次のスライドお願いします。
それから、それを基にシミュレーションを回して得られた電源構成ですけれども、直線的削減シナリオでは57%、早期削減シナリオでは72から79%が再エネということになっております。次のスライドお願いします。
電力コストについてですけれども、想定した内容に基づいて積み上げて計算した平均費用ということですが、また再エネのコストが低下していくという前提に立つものですけれども、足元で最も燃料費が安かった2020年、または最も高かった2022年と比較いたしますと、いずれのシナリオでもその変動幅の中に収まっているということであります。
点線で書いておりますのが、系統調整用に使っているEVの蓄電池の費用のうち、どこまでを電力コストとして見るかということです。もし仮に全て電力コストとしてみた場合は最大こうなりますというのを示しております。確かに、最適化された結果ではないかもしれませんけれども、社会として許容し得る範囲であり、その他の便益もこれによって見込めるのであれば、早期削減シナリオも十分選択肢に入り得るのではないかというふうに考えております。次のスライドお願いします。
GHGの排出量についてですが、早期削減シナリオについては、2035年に2013年比で74%から76%の削減となっております。想定したシナリオが実現すればここまで深掘りできるということを示したということです。もちろんそれは成り行きで起こることではなくて、相当な政策的な意思が必要になるというふうには考えておりますけれども、ぜひこの委員会の皆様がこれからご議論をされて、そういった方向性を検討される上での一助になればと思います。ご参考になれば幸いです。
私からの発表は以上です。ありがとうございました。

○大塚委員長
どうもありがとうございました。お二人とも短期間に対応していただきまして、心からのお礼を申し上げたいと思います。
それでは、以上のご説明内容を含めまして、昨日に引き続いて、目指すべき目標、経路、対策を含めまして、委員からご意見などを頂戴できればと思います。
本日も昨日と同様、議論が尽くされるまで皆様からご意見を頂戴したいと思っています。発言回数などに制約はございませんので、積極的にご発言いただければと思います。ご意見がある委員は、ネームプレートを立てていただきますようお願いします。オンライン参加の委員は挙手ボタンをクリックしてください。指名の後でご発言ください。
池田将太委員、どうぞ、お願いします。

○池田(将)委員
IGESさんとWWFさん、ありがとうございました。すごく貴重なご意見ありがとうございます。
昨日はこの会合で初めて双方向で議論する場になったなというふうに感じており、まず、前例をつくれたことに感謝しています。ありがとうございます。
その上で、昨日の議論の多くは、やはり目先のコスト、それも脱炭素に係るシステムコストという一面なものに結構、偏った議論だったなというふうに感じています。昨日の秋元委員のご説明でも、シナリオ分析では世界全体で1.5℃整合になっているから気温変動による被害の影響は織り込まれているということでしたが、そこに関しては、やはり納得できるご説明ではないなというふうに感じています。
ここで議論しているのは、日本の目標がやはりどうあるべきかということだと思っています。日本が他国に比べて遅れるような経路をNDCとして選択することは、1.5℃目標に日本は貢献する意思がない、そういうメッセージになりかねないなと思っています。日本の排出量が世界でたった3%しかないという指摘も、3%という指摘もありましたが、日本よりも少ない国の排出量の合計というのは全体の半分近くになっているのが実態だと思っています。なので、1.5℃目標を諦めるとなれば、それらの国に対しても、また、より排出量が大きい国に対しても、世界全体で力を合わせて気候危機を克服しようというような主張ができるので、それでできるのかというところも疑問です。世界全体として1.5℃目標を目指すことに日本も引き続きコミットすることが私たちが将来世代に果たすべき最低限の責任だというふうに思っています。
目標を掲げるだけで、それを実現する政策が大事だというご意見はそのとおりだなと思います。日本は、再エネ導入が難しいから、限界削減費用が高いから、これでも応分の負担をしているんだと主張すればいいというお話でした。
しかし、本日のWWFとIGESのご説明を伺って、日本が下に凸の経路をたどりながらも豊かな社会を実現していく道筋はあるというふうに強く感じました。どうやって大きなコスト増を伴わずに、また雇用を失う人をたくさん出すようなことをせずに、脱炭素社会を実現できるのか。それはシナリオ分析だけでなく、この会合の委員の皆さんをはじめ、みんなが知恵を出し合って考えて政策をつくっていくものだというふうに思っています。
世界で同じ問題を抱えていて、みんなが知恵を絞って、競い合って政策をつくっていると認識しているので、日本がそこでしっかり勝ち抜く道筋はあると思っています。なので、基本、昨日も申し上げたように、2035年、今、IGESさんのほうからも話がありましたけど、最低でも2030年比で66%の削減が目標であって、今、お話があったように、75%の高みを目指すのは本来日本が目指すべき目標であるというふうに考えています。
一旦コメントは以上です。

○大塚委員長
ありがとうございました。
では、増井委員、お願いします。

○増井委員
どうもありがとうございます。
まず、IGESさんとWWFさん、どうもご説明ありがとうございました。我々も前回、11月25日に報告させていただきましたが、まず一つ、モデル分析というか、そのモデルの専門家としてのコメントとして一言申し上げさせていただきますと、恐らくモデルイコール直線なのか、下に凸なのか、上に凸なのかという、そういうのではなくて、今回IGESさん、WWFさんは、結果として、下に凸の推計結果というのを示されていましたけれども、恐らくいろんな前提、特に再エネの想定ですとか、そういったものを仮に我々がこの前、示したような条件を入れると、また結果というのは大きく変わってきます。そして、どういう前提を入れて、どういう結果になるのかというのは、詳しくは見ていませんけれども、恐らくそんなにモデルによって違う結果になるということはないと思っています。
そういう意味で、どういう前提を置くのかというのは、モデルの説明にはなってしまいますけれども、再エネ開発をどこまで進めるのか、あるいはいろんな省エネ技術、そういったものをいつまでにどの程度導入する必要が、そういうことを実現するために腹をくくるのか。もちろん費用最適化という観点での技術導入のタイミングとの違いというのは若干出てくるかもしれませんけれども、そういう入力条件についてどういうふうにするのかという、そこのところの議論についても、モデル側、モデル研究者が全部やってしまって本当にいいのかどうか、そこはちょっと私も、長年やってきまして、少し疑問に思うところです。
そういう意味で、前回、小西委員でしたかね、麻生政権のときのいろいろなこともご発言いただきましたけれども、やはりどういう前提で計算するのかという、そこのところも改めて議論といいますか、なかなか時間はないというのは分かるんですけれども、どういうふうな水準を想定した、想定というか考えて今回議論していくのかということが必要なのかなと思っています。それがモデル研究者としての発言です。
最終的にこの委員会としてどこまで記述するのか、今、ハチドリの池田さんもご発言されましたけれども、昨日、髙村委員のほうから、我々は1.5℃目標というのを最低限共有し、それを達成するというようなことが共有されていると。そういったことについて、異論はなかったというふうに私自身は認識しております。
1.5℃の社会を目指すというのは、単に脱炭素社会を実現するということではなくて、排出をゼロにするということではなくて、そのゼロをいかに早く実現していくのか。昨日も申し上げましたが、カーボンバジェット等の観点から、累積の排出量をいかに下げていくのかが重要となります。世界の排出量が今でも増えている、そういった中で、じゃあ日本としてどういうふうにこれにコミットしていくのかという、その辺りのある種、宣言みたいなものになりますので、その点をどう考えるのか。もちろん各国ともに、日本も含めて単独での1.5℃の実現というのは可能ではないですけれども、それに向けてどう努力していくのかという、そういったところの表明だと思いますので、その点をどう考えるのかというところが一つポイントなのかなと思いました。
以上になります。

○大塚委員長
ありがとうございます。
では、大橋座長、委員としてご発言です。お願いします。

○大橋委員
ありがとうございます。あくまで学術的というか、私は人文社会科学ですけれど、ちょっとその観点からお伺いしたご発表について思うところなんですが、外生的でない要件、特に需要とかコストを直接いじっちゃって、その結論に合うようにシミュレーション結果を出すと。それは、できる話だと思うんですけど、それってアカデミック的にどう考えるかって相当難しいと思っています。
そうではなくて、やっぱりモデルって、ある種の何ていうかな、目的関数があって、その最適化の計算の中で、ダイナミックシミュレーションとおっしゃっていることも含めて、本来はそういうふうに解かれるべきなんだろうと。これは学術的にそう考えます。
ただ、いじっちゃうと、過程をいじって結論を出すというのは、ちょっと別のコンテクストではいいのかもしれませんが、学術的には、私はその査読論文とかね、そういうふうな観点で言うと、ちょっと相当扱いが難しいというふうに考え、だから査読のプロセスとして、どういうふうに判断されるかというのは、違う見方が恐らくあるということは、学術の観点からは思います。
それで、2点目は、限界削減費用についてなんですが、なぜ限界削減費用を言っているかというと、これは国富を最大化するために、最も効率的な導入の在り方は何ですかという指標でいうと、限界削減費用なんだと思います。やっぱりそこの観点から考えないと、その効率性という考え方は出てこないんだと思う。公平性から効率は出てこない。
だから、そういう意味で言うと、公平性と効率性は別の軸なので、効率的な観点で限界削減費用を考えるというのは、これは外生的にすんなり入ってくる考え方だと思っていて、そういう意味で言うと、本当は異なるモデルで比較するときに、ぜひ見ていただきたいのは、限界削減費用がどうなっているのかというところで比較するというのは、私は一つありなのかなと。じゃないと過程はもうみんないじれちゃうので、ここを統一するというのは、多分ちょっと難しいのかなというのが、2件お話を聞いて思ったところです。
以上です。ありがとうございます。

○大塚委員長
ありがとうございます。
公平性と効率性が別だというのは、多分、どの学問分野でもそのようには考えていると思います。
では、秋元委員、お願いします。

○秋元委員
ご説明いただきましてありがとうございます。
ちょっとそういう面では、もう一回モデルの違いということをちょっとご説明したほうが、今、大橋委員が、座長というよりは委員ということでしたけども、お話しいただいた部分も重なりますけど、ちょっと私のもう一回参考資料というか、モデルの資料を出せますかね。

○大塚委員長
出せますか、事務局。

○秋元委員
参考の何番だったかちょっと忘れました、2番とか。出ませんか。ありがとうございます。
昨日はちょっと結果のところをご説明しましたけど、改めてちょっとモデルというところをご説明したいと思いますが、手法のところはもう飛ばして、メインとなっているのはDNE21+モデルということですので、これをご紹介したいと思いますが、基本的には、先ほど大橋座長もおっしゃいましたけども、やはりコストと量の関係をこういうモデルというのは整合的に見ているというところがモデルでございまして、いろいろなカテゴライズがありますけれども、一般的にモデルと呼ばれるものは、シミュレーション型のモデルとしては計量経済型のモデルがあるということでございまして、これは過去のトレンド等を踏まえながら、ただコストは考慮して分析をしているというシミュレーション型のモデルですけども、一方で、最適化型モデルと呼ばれるものがありまして、これは部分均衡型モデルと一般均衡型モデルに分かれているということです。
このDNE21+モデルというのは、部分均衡型モデルで、国立環境研究所さんのAIMモデルでもエンドユースというモデルは、私の理解では、部分均衡型の最適化型モデルと。一方、もう一つ最適化型モデルが、一般均衡型のモデルで、そちらは例えばRITEでいくとDEARSモデルという形で、経済全体を評価できるモデルになっていて、国環研さんでは、AIM/CGEモデルという名前だったと思います、もうそういうモデルがあるということで。
大体モデルというのは、いろいろ前提条件を置いてそれに対して合理的な結果を出すと。そうすると最適化型モデルの場合は、コストと量の関係が完全に整合して均衡していると、部分で均衡するかエネルギーだけで均衡するか、ほかの材も含めて均衡するかというモデルになっているわけですけども。
今回ご紹介いただいたWWFさんもIGESさんも、基本的には想定の下で需要等を与え、また、電源の構成に関してもこうあってほしいという、再エネ100%という意思が入っているのがWWFさんだったと思いますけども、そういったものをモデル分析者がシナリオとして外生的に与えているということですけども、こういった先ほどご紹介したようなモデルと呼ばれる、計量経済型モデル、部分均衡、一般均衡といったようなモデルは、前提条件の下でモデルがある基準の下で最適化計算とかそういうことをして結果を出しているということで、恣意的にモデルを操作する分がないわけではないですけど、それは前提条件をいじるということであって、モデルの中の合理的な計算に関しては、モデル分析者が入り込む余地がないということだと思っています。
そういう面で、国立環境研さんとか、我々とか、もしくはエネルギー基本計画のところの議論では、デロイトさんとかも最適化型モデルですし、エネ研さんも最適化系のモデルでご説明になっていたと思います。そういう面で大きくちょっと種類が違うということは理解した上でシナリオを見る必要があると。
もちろんいろいろ私はシナリオとしていろいろ意思を示したいという思いがあるのは分かりますので、そういったシナリオを否定するわけではございませんけれども、学術的にどうなのかというところに関しては、大橋座長もおっしゃっていただいたように、少し違った種類だということをご理解いただければというふうに思います。
その上で、個別のところで申し上げますと、だからWWFさんもIGESさんもコストという概念がほぼ入っていないと。若干、出されているのは、WWFさんは投資額ということを出されていますけれども、これはシナリオをつくった後で、それぞれのコストがどれぐらいなのかということを貼り付けて全体の総額として出されているというふうに理解しますが、いずれにしろ我々が意思決定するためには、同じモデルの中で、同じの考え方の下で、じゃあ80%減がいいのか、73%減がいいのかという、同じ基準で基本的には排出削減目標を変えて、どれぐらいコストが変わるので、それに対する便益とその費用との見合いを考えて、意思決定を考えていくということが必要だと思うんですけども、今回は、1シナリオしか出されていませんので比較ができないということだと思っています。やはり、その比較情報を出していくということは、モデル分析上非常に重要だというふうに思います。
そういう面では、IGESさんは2シナリオを出されていて、直前に近い形のシナリオと深掘りというシナリオを出されているので、コスト計算という面では、基本的にコストは見ていないということだと理解していますので、若干、先ほどと同様ですけれども、後づけで電源のコストに関しては評価してみたということで、電力のコストだけは出されているということだと思います。ただ、非電力とか需要側の対策がどうなって、全体のコストがどれだけ積み上がっているのかという情報はないということです。
ただ、そうは言うものの、参考になる情報が付録にあると思っていまして、42ページ目だと思うんですけども、付録をつけていただいている部分で、GDP、これは内生的に解いているわけではないですけど、外生的にこのGDPを2シナリオを与えているということでございまして、直線的削減シナリオでいくと、これでいくとちょっと目分量ですけども、2050年に700兆円を超えるということです。もう一つの早期削減シナリオでは650兆円ぐらいで、2040年断面を見ても50兆円ぐらい差があるということです。
要は、直線的削減シナリオから早期削減シナリオにすると50兆円のGDPを失うということなので、50兆円を失うというのは、1億2,000万人だとすると年間1人40万円、年間所得を失うということになるわけで、そんなことでいいんですかということをやっぱり、我々委員会としては社会に問わないといけないと思うので。毎年1人40万円なので、そういった形で、まさにここで示しているように、直線的シナリオと早期削減シナリオでは、そんなに大きなコスト負担になってくるという、差が出てくるということをまさに示していただいているような気がするので、そこも踏まえて議論が必要ではないかというふうに思います。
ただ、その上でいろいろお話しいただいた上の中の需要の変化の重要性とか、系統の統合費用の対応といったことに関しては、全く私も同感で、こういったところをどうやって対応していくのかということは非常に重要だというふうに考えていますし、我々もサーキュラー経済分析ということで、需要低減のシナリオというのは、海外研究機関とも相当密にここを進めているところで、2022年の経産省の委員会でも、DNE21+モデルを使って、サーキュラーエコノミーで需要が減る場合に、どれぐらい限界削減費用が変わってくるのかといった分析も出していて、そういう試みというのは非常に重要だと思います。ただ、それを入れたところで、我々の分析では限界削減費用をせいぜい1割ぐらい下がるぐらいというような感じで、大きな変化はないかなということでございます。
これは暫定的な計算ですけども、いずれにしても、今、議論しているのは、排出削減目標がどの水準がいいのかということですので、同じような技術想定の下でそれを比較していくということが重要で、そういう面では、我々、繰り返しでございますけれども、成長実現シナリオというのと低成長シナリオという形で、当然ながら技術の進展は違うので、予測が難しいので、低成長シナリオは保守的に見込んだもの、成長実現シナリオは相当野心的に見込んだものということで分析した結果で、それでも成長率減シナリオでもかなり80%ぐらいまで深掘りしてくるとコストが上がってくるという結果をお示ししているということで、ぜひご理解いただいて、判断の材料にしていただければというふうに思いました。
以上です。

○大塚委員長
ありがとうございました。
では、下田委員、お願いします。

○下田委員
今、お二人の委員から非常に丁寧に、専門家としてご発言いただいたので、ちょっと私から発言しなくてもいいのかなと思いましたけれども、こういうモデルを議論するときに、やはり国民目線で何が起こるのかということをこのモデルからも少し丁寧に解説していただくことが必要なのかなと思いました。
国民目線、つまり家計のところというのは、割と経済的に最適じゃない行動も何かのモチベーションがあれば取れるところなので、ここで描いておられるようなモデルの内容が実現される可能性もあるかも分からないのですけれども、それにはどのような負担が求められて、これは先ほど秋元委員からもありましたけれども、どういうことが求められているのかということをクリアにした上で議論しないと、なかなか今のグラフだけでは議論をし尽くせないところがあるんじゃないかなというふうに思いました。
以上です。

○大塚委員長
ありがとうございます。
では、志田委員、お願いします。

○志田委員
ご説明ありがとうございました。モデルの違いのところについては、先ほど複数の委員の方からご指摘ありましたので、私も同じ所感を持っておりました。
1点、たしかIGESさんのほうでご説明されたとき、数理モデルだとダイナミックな変化が得られないのではないかみたいなことをおっしゃっていたかなというふうには思うんですけれども、恐らく数理モデルであっても、たしかRITEさんのご説明の中でもあったと思うんですけども、経済合理性が成り立った瞬間にむしろダイナミックに変わってしまうというところがモデルの特徴でもあり、デメリットのところかもしれないんですけれども、数理モデルだからこそ社会の構造変化が見込めないということは恐らくないんじゃないかなというふうに思っております。
両機関に対してちょっとご質問なんですけれども、シナリオで今回想定されたときに、恐らくこういう分析する際に重要になるのが、技術間の制約ですね、技術間のトレードオフみたいなものをどう織り込むかということかなというふうに思っております。
再生可能エネルギーが増えることで調整用の電源ですとか蓄電池が必要になるというところがあるかと思いますし、統合コストみたいな話もあるかと思います。数理モデルの中ではそういうトレードオフを分析すこともありますけれども、シナリオ分析であっても蓄電池が何時間以上のものがどれぐらい入るとか、そういう置き方もできるのかもしれませんが、ちょっとご説明の中にそういったところがちょっとご説明いただけなかったところもあったので、もしそういうものを何らか外生的にでも置いているのであれば、ちょっとお伺いしたいなというふうに思いました。
関連して、IGESさんのシナリオの中で、22ページ目のところで再エネ出力制御率が出ていたかと思いますが、これもちょっと若干感覚的なものになってしまって恐縮なんですけれども、13ページにあります発電構成の中で、かなり8割ぐらいですね、2050年だと再生可能エネ、変動型の再エネ電源になる中で、感覚的には結構低いなと思っていました。蓄電池のほうがその8分の1程度しか入っていない中で、かなり低めの出力制御になっているかなというふうに思いました。こちら、PROMODを使って分析されたということになっていますので、恐らく何らかそういった需給バランスを、何かを吸収しているということなのかなというふうに思うんですけれども、これが13ページ目のところが、系統用蓄電池だけを想定してこういう型になっているのか、もしくは12ページにあるような需要に関する点や、EVの利用ですとか、そういったものはあるので、そういうものを織り込んで、この外に何らか吸収しているものがあるのかというのは、ちょっと細かい論点で恐縮なんですけれども、これもある種技術間の制約というところで何らか示唆がいただければありがたいかなというふうに思っておりますし、例えば31ページ目のところで、CO2回収みたいなものとかも考慮されていると思いますけども、これによってエネルギー需要がまた逆に上がってしまうというようなループ的なところもあるかなというふうに思いますので、そういったものの、何しろ全てはちょっとおっしゃっていただくのは難しいと思うんですけども、主要な技術間の制約をどういうふうに置いているのかというのが分かれば、参考になるかなというふうに、理解が深まるかなというふうに思いました。
あとは、秋元委員ご指摘のところで、私もGDPのところ、IGESさんのところの42ページ目のところのGDPの差というところと、あとはWWFさんのところでもありましたけれども、6ページ目ですか、前提のところで輸出減ですとか総合の辺、活動量そのものが産業が減っていくというところのGDP影響をどう見るのかというところです。まさに便益といいますか、そこの経済的なところでの影響をコスト以外のところでもし見られているところがあればお聞きしたいというふうに考えました。
以上です。

○大塚委員長
じゃあ、WWFさんとIGESさんに対するご質問ということでよろしいですね。分かりました。後でまとめてお答えいただければと思います。
では、池田三知子委員、お願いします。

○池田(三)委員
ありがとうございます。モデル分析の扱いについては専門家の方からご指摘をいただいていますので私からはあえて申し上げませんが、コスト最適分析とそうでないものは区別して扱う必要があると考えます。
その上で、WWFさんの試算で、データセンターの需要が増加しない可能性を指摘されておりましたが、一方で、増加するという指摘も多々ございます。DXやGXといった電力需要は、日本経済の成長のドライブとして大いに期待できるものですので、そのポテンシャルを発揮できる環境整備が必要であると考えております。
また、WWFのシナリオが前提とする太陽光や風力の業界ビジョンは、業界の野心的な取組目標として評価できるものと思いますが、社会的制約や経済的制約を考慮すると達成可能か大いに疑問が残るところです。このことは、総合エネ調の分科会の議論でも専門家の方々から指摘があったと記憶しています。
また、15ページに水素等の記載がありませんが、これは全て国産グリーン水素で賄う想定なのかどうかといったところもお伺いできればと思います。
IGESさんのアウトプットにつきまして、企業の声に基づく社会変化を織り込んでいるということでしたが、わが国における排出の大部分を占める多排出産業の動向について、そのような多排出産業企業から将来の見通し等を聞いて策定されたのかどうか、どのような業種の声を聞いて策定されたのか、確認をさせていただきたいと思います。
私からは以上でございます。

○大塚委員長
ありがとうございます。
では、林委員、お願いします。

○林委員
今日はWWFさんとIGESの皆様には本当にありがとうございました。いろいろと勉強になりました。
今、池田委員がおっしゃったことと、それから皆様がおっしゃったこととほぼ重なるんですが、私は、モデルの分析を別にやっているわけではないんですが、やはりお話を伺っていて、そもそもの考え方の違いから始まっているので、これを同じように横に並べるというのは、学術的という言葉が正しいかどうか分かりませんが、客観的に見たときにちょっと違うかなというふうには思いました。ただ、WWFさん、それからIGESさんの考え方で、こういうふうにやればこういうふうに進むのにと、こうしたらいいのにということについては、賛同する部分もたくさんありましたので、大変参考になりました。
その上で、WWFさんに質問なんですが、6ページのWWFシナリオということで、輸出増減100%、建物の長寿命化100%、これは一体どういうことをおっしゃっているのかちょっと分からなくて、それをかけ合わせた総合変化量というふうになっているんですが、これはどういう前提で分析されているのかということと、それから、それぞれの産業の分野の方とどういうコミュニケーションをされているのかというところをお伺いしたいというふうに思いました。
同じく、再エネのところも風力発電、それから太陽光発電協会ということで、9ページに書いてあるところも、現実はなかなか大変だというお話も伺っている中で、制約条件などの分析ってどうなっているのかなというところを感じました。
それは、同様に水素のところもそうでございまして、IGESさんについては、水素の国内製造利用の政策的促進というふうに書いてあって、それは大変重要なことだとは思いますけれども、水素のコストの高さというところも、るる伺っているところでもありますので、その辺りがこの今回の分析にどのように反映されているのかということをお伺いしたいと思います。
あと最後に、日本国が野心的な数字を示すことで、グローバルに引っ張っていくんだということは、私も大変重要だというふうには思っています。一方で、日本のこの分析を拝見していると、先ほどのGDPが例えば減ってしまう、あるいは日本の電力需要がそもそも減っていって、この減っていった中だったらできますよという話だったんですが、多分、先進国に求められているのは、日本の中で完結する話ではなくて、日本の新しい技術であったり、経済成長によって近隣諸国も含めて成長をしていくというシナリオを描くことのほうが、もしかしたらグローバルには評価されるんではないかというところが少し気になりまして、その辺りについてもお考えを伺えればと思います。
以上です。

○大塚委員長
林委員の今、最後に言われたことは、デカップリングの話だと思いますので、あんまりちょっとこのデカップリングという言葉は出てこなかったですけど、今の議論は、林委員の今、最後に言われたのはそういう話だと思います。
ほかにはいかがでしょうか。
どうぞ、藤瀬委員、お願いします。

○藤瀬委員
ありがとうございます。本当に昨日の今日で複数のモデルについてお話をお伺いすることができて、準備いただいた皆様、本当にありがとうございました。
ちょっと私もモデルの専門家ではないので、ちょっと専門家の皆様にお伺いしたいなと思っているのですが、やはり前提条件が違うとまさに出てくる結果は違うということで、本当に前提条件をじゃあ何にするかというところがすごく重要になってくると思うのですけれども、それぞれのモデル、これは今までにご発表いただいた秋元さん、増井さんも含めてなんですけれども、それぞれのモデルの中で一番重要視している前提というのはどこなんだろうということ。あと、事務局サイドの皆様にもお伺いしたいのが、事務局の中で重要視している前提というのが何であるのだろうかというところもお伺いしたいと思います。
予見が簡単なものと非常に難しいもので、難しいものはやっぱり変動が大きくなるので、それによって結果が相当変わってくると思うのですけども、その辺も含めて教えていただけたらなと思っております。
もう1点は、今後、脱炭素に向けての各企業がどの程度頑張っていけるかというところ、高い目標を掲げたら、本当にどれぐらいの企業さんがついてきてくれるのかというところも含めてなんですが、先ほど、IGESさんの資料の中に、JCLPさんからのいろいろと意見を聞いたということで、ここに軒並みある企業さんは結構グローバルな企業さんが多いかなと思うのですけども、グローバル企業になればなるほど、脱炭素に向けて動いていかないと企業として立ち行かなくなると思うんですね。果たして本当に彼らが高い目標を掲げることによって及び腰になるのか、それとも自分たちの事業が成長することにつながっていくと思っているのかみたいなところも、もし伺っていたら、その辺のご意見もお伺いしたいなと思っております。よろしくお願いいたします。

○大塚委員長
では、井上委員、オンライン、お願いします。

○井上委員
ありがとうございます。連合の井上です。
昨日遅くまでご議論いただいた中で、WWFさんとIGESさんからそれぞれまた資料を準備いただき、ご説明をいただきましてありがとうございました。
素人肌で聞いているところなので、ちょっとお門違いの質問になるところもあるかもしれませんけれども、2団体のところにちょっと質問をさせていただきたいと思います。
WWFさんについては、ほとんどの産業部門で、産業活動が2050年までに約半減するというふうに試算をされているのですが、そうすると、やはり私ども労働組合でございますので、そこで働く労働者たちはどうなるとお考えでいらっしゃるのか、座して待たなければならないのか、この点のご意見を聞かせていただければと思います。
それから、秋元委員からの説明には、コストが加味をされていたのですが、示されたシナリオでは、例えば電力や生活のコストはどのようになると想定をしているのか教えていただければと思います。
そして、現状、風力や太陽光の導入には地元や環境面での課題があると報告がありましたけれども、それらの影響はどこまで加味をされているのかというのも教えていただければと思います。
IGESさんなのですが、早期削減シナリオを示されておりますけれども、これができれば非常に理想的だというふうに思います。ただ、その技術導入を目指して、それぞれ関係者は努力をしております。そこで働く労働者もしかりであります。それでも時間は要するのではないかと思っているのですが、その意味で、早期削減シナリオで想定している技術の導入がどこまで早期導入ができるのかについて教えていただければと思います。
そして、企業からの知見とありますけれども、製造業がほとんど入っていないのではないかなと思いましたので、その辺りについてもご教示いただければと思います。
先ほど下田委員から、国民負担とか国民目線の話がありました。そして秋元委員からは、年間40万円の所得をそれぞれ国民が失うというお話もありました。昨日も私が発言した中で、国民の負担について発言もさせていただきましたけれども、やはり年間40万の所得を失うということに関して、どうやって国民の理解を得ていくのかというところはとても大事なところでございますので、そういうところも含めてやはり考えていかなければいけないというのを改めて思った次第でございます。
以上です。

○大塚委員長
吉高委員、お願いします。

○吉高委員
2団体の皆様、ご説明どうもありがとうございました。大変参考になりました。
モデルの型については、先ほどおっしゃったように前提が違うということはこういった結果が出るんだなということで、それも理解した上で、どちらかというとシナリオ分析に近いのかなというふうに思いました。その点で、モデルとシナリオ分析との、その差を、私自身理解をしようと思ったところでございまして。まずそこは1点でございます。
それから、両団体にご質問なんですけれども、まず、WWF様、今の連合の方からもご指摘があったのですが、私も6枚目のスライドは衝撃的でございまして、もちろん人口が減るのでこういうふうに全体的に減るという仮定は、分かるんですけれども、そうしますと、新たな産業というものというのは、ここには全然加味されないということなんでしょうか。
これを見ますと、多分若者が、どこに、どういうふうに職業を求めていけばいいのかというところがちょっと見えなくなってしまうようで、かといって、太陽光と風力だけで、その若者の就職があるのかなというのもあって、もしそういったシナリオも教えていただければというふうに思いました。
それから、WWFさんの年間の平均投資額が18ページで示されていますが、この金額も大変驚く金額でございまして、もしこうですと、一体、1人当たりの税金とか、そういったのはどれぐらいになるのかと。多分、限界を超すとはそういうことなんだと思うんですね。下田委員もおっしゃいましたけど、欧州では相当な税金が家計にかかっているということで、負担が大きくなるのは、最終的には国民なのですね。事業会社が儲けることと家計は関係している、そして各家計が支払う税金にも関係してくるということで、全てが連関しているので、ぜひ各個人にどれぐらいの負担というか、コスト、税金がどれぐらいになりそうかというのが、もしお考えがあったら教えていただきたいと思います。
あと、IGESさんもありがとうございました。本当にこういう将来が見えて、行動変容が起こり、というのは、私も学生にグリーンビジネスを教えているので、こういったことでどんどんビジネスができればいいなというふうにつくづく思っておりますし、こういったことに投資がどんどん向けばいいというふうに私自身も常に考えております。
そこでご質問なんですが、直線シナリオにおきまして、本当に細かいところなんですけども、スライド8枚目ですか、省エネの現行の努力継続により進展はするが、電化など政策的には進められないという仮定を置かれたその背景についてちょっと教えていただきたい。私が理解するに、今相当な投資もして、金融機関もこれを進めるためにかなりリスクを取って、今やろうとしているときに、それは、この早期削減シナリオにはつながっているということなんでしょうかという。今既にしている、現行で努力しているのは単なる継続、成り行きとは思っていなくて、相当にリスクを取ってやっていて、電化にも進めることをしているというふうに理解はしてたんですが、この前提を置かれた理由というか、背景を教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○大塚委員長
よろしいでしょうか。一応、出尽くしたと思ってよろしいでしょうか。
では、回答をお願いしたいと思いますが、WWFさんとIGESさんと、あと事務局に対してもちょっと質問がありましたので、その順番にお願いします。
では、WWFさんのほうからまずお願いしてよろしいですか。

○槌屋氏
ご質問ありがとうございます。幾つか共通の質問もありましたので、まとめて答えたいと思います。
まず最初に、風力や太陽光のビジョンというのは、いろいろな制約を考慮しているのかということですけれども、二つの業界の方に聞きますと、そういう制約を考慮した上でこういう数字を出していると聞いております。
そして、私の作成した水素の利用について、水素はこれは国産なのかグリーン水素なのかということですけれども、余剰電力からつくる水素ということで、国産の水素です。輸入水素は想定しておりません。
それから、産業の構造が変化するということで、パーセント表示をしましたけど、100%と書いたのは、掛け算をしていくときに1を掛けるということで、変わらないということで、農林水産業、食品、衣料、繊維等、私たちの日常生活に直接関わるところに関しては、人口減少だけが効いてきますので、総合変化量は83%と人口減少と同じだけになっています。パルプ、化学工業、プラスチック、窯業、鉄鋼等については、それが輸出の増減とか情報化とか、そういうものが効いてくるので、その掛け算をしていくとこのように減ってきます。特に大きいのは鉄鋼業の鋼材の直接的な輸出ですね。これが産業の競争力という点でいろいろ難しい目に遭うので、減ってくるという想定をしました。
それから、このように産業が小さくなっていくと、労働者はどうするんだというお話がありましたが、この表の一番下、情報機械産業というのが、輸出が増え、情報化が増えるということで、1.5倍になるという想定をしております。人口減少で減少した分野の労働者のうち、かなりの部分がここで吸収されると考えておりまして、GDPはほとんど変わらないという計算になっています。
特に、情報機械産業というところには、自動運転の自動車、AI(人工知能)、ロボット、通信機械とか、そういったものが入ってきますので、若い人たちの新しい職場としていいのではないかと考えております。
それから、投資額の負担は国民にかかってくる負担なので、それが全て国民の負担なのではないかということでありましたけれども、これは投資していくと、次第に化石燃料の輸入が減ってきますので、全てがこれが直接的な負担とはなってきませんで、2035年を超える頃になると化石燃料の輸入コストがぐっと減ってくるということで、この費用はほとんど賄われるのではないかと考えております。
以上、簡単ですけれども、質問に答えさせていただきました。
それから、最適化モデルでないということでありますけれども、たくさんのマンパワーがあればそういったモデルをつくることも可能ではありますけれども、結局、最適化モデルであっても、前提条件を入力してそれによって結果が出てくるということで、想定したことが結論になるという構造は変わらないのではないかと私は考えております。
以上です。

○小西委員
すみません。小西から少しだけ補足させていただければと思います。

○大塚委員長
どうぞ。

○小西委員
ありがとうございます。これ、実は昨日から今日にかけて本当に急ピッチで用意させていただいているので、この裏には2011年からの研究の蓄積がございます。そのとき、先ほど秋元委員からコスト計算するときにはシナリオがやっぱり一つではというお話もありましたが、これまで二つのシナリオで計算したものもございますので、よろしければ、ぜひウェブサイトに全て前提も含めてありますので、ご覧いただければと思います。
今日ご紹介させていただいたのは、それらの今までの蓄積を基にした最新のアップデートのほんのさわりだけをご紹介したものですので、そこをぜひご覧いただければと思います。
あともう一つ、今、槌屋先生からもお話があったんですけれども、やはりモデルは前提を置いてやっていくという点においては、例えばG7で決まったこと、そしてCOP28で決まったこと、2030年までに再エネを3倍にできるようにしましょうという、そういった国際社会でトップダウンでこのようにしましょうと言われている内容、それを日本ができるかどうかということをやはり検証していくことが非常に重要なのではないかと思っています。コストを中心にして日本の中でどういうふうにやっていくのが、日本としていいかという計算もさることながら、やはり国際社会で決まった内容というものを日本も実現していく道を考えていくという、そういったモデル分析もとても重要なのではないかと思っています。
その意味では、やはりトップダウンから考えるということにはなるのかもしれないんですけれども、例えばIPCCの2019年比の60%、世界平均ですので、日本はそれ以上にするということが世界から求められているわけですけれども、そういったものがどうやったらできるのか、それをやったときにどれぐらいのコストがかかって、どの程度の影響があってということを見るということも、国民の皆さんにお示しするモデル分析としてのとても重要な役割なのではないかなと思っております。
ですので、最初に申し上げたとおり、考え方の違うこういった研究というものをやはりこういった審議会の場で皆さんに発表させていただいて、そしてこれを通じてメディアや国民の皆さんに知っていただく、こういったことをすれば日本も実現できるし、かつ、もちろん先ほど槌屋先生のお話があったように、投資額はあるんですけれども、だけれども、これは日本国内に投資するもの、すなわち、これは日本の中で労働を生み出し、日本の中でGDPを支える投資ということになります。やっぱり、今、化石燃料に年間20兆円、今もっとですよね、超えるような額を日本はずっと過去払ってきていますので、2040年にわたってもずっとその化石燃料に輸入費用をかけながらやっていくのか、それとも、いずれ国内で全部賄えるように、国内で投資還元して回っていくようにするのかという、それも一つの選択なのではないかなと思っております。ちょっとだけ補足でお話しさせていただきました。

○大塚委員長
重要な話をしていただいてありがとうございました。
この後、IGESさんに回答いただいて、すみません、秋元先生に対しても質問があったので、また秋元先生にもちょっとお答えいただいてから、事務局にお話しいただくことにします。
では、IGESさん、お願いします。

○田中氏
非常に本質的、根本的なところからテクニカルなところまで、多岐にわたるご質問をいただき、ありがとうございました。
一つ一つ、幾つかまとめてお答えしますけれども、まず大橋委員、それから志田委員、それから吉高委員から、モデル分析とシナリオ分析の違いであるとか、そのモデル分析がどうあるべきかというようなご質問をいただきました。
最適化計算に基づいて、できるだけ研究者が恣意性が入らないような形で評価するということは非常に重要だということは、私も重々認識しておりますけれども、必ずしもそれだけでいいのかということも同時にあると思っております。
学術的には客観的な評価を求められるというようなこともご指摘いただきましたけれども、一方で、トランジション研究の分野などでは、学術分野ですけれども、こういった客観的に将来の不確実性を評価して、それに対処していくというよりは、むしろあるべき姿を主観的なものに基づいてでも描いて、そこからバックキャスティングして、それを達成するような様々な道筋を規範的かつ探索的に模索するようなシナリオ分析の在り方というのも必要だというふうに言われております。
こういったことで、我々がやっていることは、必ずしも厳密な意味でエネルギーシステムの複雑な挙動を模式化したようなモデルは使っているわけではありませんけれども、先ほど紹介したようなトランジションの文脈でのあるべき姿に向かう一つの道筋ということで、十分に学術的にも耐え得る考え方であるというふうには考えております。
それから二つ目、限界削減費用についてご質問いただきました。限界削減費用、先ほどの繰り返しになりますけれども、一つの重要な指標であるということは重々承知しておりますし、効率性を議論することが非常に重要であることは疑いようがありませんけれども、それと同時に、やはり公平性、さらに言えば費用と費用の効率性だけではなくて、便益との比較、こういったことも含めていろんな観点から議論をすることが必要だというふうに考えております。
特に、最適化型のモデルだと、技術の導入についてはダイナミックに触れる可能性があるというようなご指摘もございましたけれども、我々が主張しているのはそういうことではなく、むしろ例えばシェアリングで自動車が自家所有からシェアリングに代わる、自動車が自動運転になっていく。そういった変化まで含めて、外生的に想定する必要があるのではということを申し上げた次第です。
これを見通すのは非常に難しいというのはよく分かっておりますので、一つの決め打ちではなく、様々な可能性を考慮した上で、複数のシナリオというのを検討するべきだというのは、我々の考えはそのとおりでございます。
それから、コストを全く考慮していないのではというご指摘もございました。需要側の技術の導入について、コストが決定要因になっているわけではないというのはそのとおりなんですが、一応、例えば低温熱の電化の想定において、どのぐらいのカーボンプライスがかかれば、あるいは燃料費がどのぐらいになれば、経済合理的にこういったヒートポンプの導入とかが進めるのかというようなことも、別の分析として行った上で、コストだけではなく、コストを一つの指標としながら、そのほかのドライバーも考慮しながら設定しているということで、一応考慮には入っているというところでございます。
ただ、厳密な意味で、コストと導入技術選択との間の関係性を評価しているというものではないということはご指摘のとおりです。
それから、製造業の方がほとんど意見を聞けていないのではとか、大排出産業の意見が反映されていないのではというようなご意見もいただきました。
我々、ご協力いただいたJCLP企業様は、1.5℃目標というのを旗印に集まっていらっしゃるいろんな業種の企業様でいらっしゃいます。自動車産業の方もいらっしゃいますし、鉄鋼業の方もいらっしゃいます。鉄鋼業といっても、高炉、従来のやり方で鉄をつくっているわけではないというメーカーではありますけれども、鉄をつくるということには変わりないということで、必ずしも限られた業種から意見を聞いたというわけではなく、必要な材を供給し得る、そういった活動をされている企業様から、気候変動1.5℃の目標に向けて、望ましい社会の在り方であるとか政策の在り方について、様々議論させていただいたということであります。
そういった企業様から常々聞きますのは、やはり再エネが増えていかないと、あるいは確実に増えるということが見通せないと、日本でも事業ができなくなるということが、喫緊の課題として、死活問題として提起されております。
この委員会でも意見提起されていらっしゃると思いますので、ご承知のことかと思いますけれども、非常にそういった声というのもございますので、必ずしもそれが経済的に合理的じゃない意見なのかというと、そうではないというふうに我々は考えております。
それから、GDPの話がございました。GDPが50兆円を失う想定になっているんじゃないかということでありますけれども、むしろ我々が想定しておりますのは、これまでのトレンドを踏まえると、現実的な経済成長の見通しというのを見ているということでありまして、過去の振り返りをいたしますと、常にGDPの想定というのは上振れ、想定というのが高めに想定されていて、下振れしているというような現状でございます。
そういったことが、やはりエネルギーの需要の見通しであるとか、こういったことにも影響してきますので、そういった野心的な前提だけを想定して、シナリオを設定するのではなく、現実的にあり得る姿というのを想定した上で、シナリオを構築したということでございます。
必ずしも我々のシナリオを採用とすると、50兆失うとか貧しくなるとかそういうわけではなくて、経済は成長しますし、人口が減っていく中で、1人当たりのGDPも倍近くになっているということでございます。これはデカップリングを実現しているということでもありますし、十分に海外に対しても貢献し得る力かと思っております。
それから、水素のコストについてご質問いただきまして、水素のコストについても電力と同様に積み上げ計算で計算を行っております。こちら海外の水素をどう想定するかにもよるんですけれども、確かに国内製造のほうが高くなるということを認識しておりますけれども、こちらもエネルギー自給率であるとか、LG電子とのトレードオフといいますか、そういった観点を踏まえて政策的に推進し得る余地があるというふうには考えております。それほど1割、2割の差だったというふうに認識しておりまして、ちょっと、今、手元にデータがないんですけれども、詳しくはレポートを読んでいただければと思いますが、そういったことを考慮した上で検討したということでございます。
それから最後ですが、テクニカルなところで、電化の想定であるとか、蓄電池などの想定についてもご質問いただいております。
電化につきましては、これまでのトレンドを基に、今の温対計画、これまで設定され、策定されていた御大計画に基づく目標のトレンドでの延長というのが、基本的には直線的削減シナリオになっております。
一方で、早期削減シナリオというのは、もっと2040年までに、例えば内燃機関であるとか、家庭の給湯、暖房といったものが化石燃料を使わなくなるというような、かなり政策的に強い介入を想定しております。そういった違いがあるということでございます。
それから、蓄電池の想定であるとか、再エネの出力抑制がなぜあまり増えていないのかということですけれども、基本的には水素の製造、水電解装置がかなり柔軟性に寄与しているということです。
こういったテクニカルの想定についても、本来は全てご説明すべきだと思いますけれども、ちょっと時間の都合上割愛させていただいて、レポートをご覧いただければというふうに考えております。すみません。長くなりまして申し訳ありませんでした。
以上です。

○大塚委員長
どうも丁寧に答えていただいて、ありがとうございました。
では、秋元委員、お願いします。

○秋元委員
ありがとうございます。直接ご質問いただいたのは、藤瀬委員だったと思うんですけども、要は前提条件で何が重要かというご質問だったというふうに理解していますが、まずモデルってどういうものかということをご説明しておいたほうがいいかと思うんですけども、モデルはやっぱり内部的にコンシステントな形を維持するということはとても重要だというふうに思います。
やはりモデルというのは、いろいろな前提条件を置いていますので、そこはブラックボックス化しやすいということも事実だと思いますので、他方で、何を政策変数として分析していて、結果として何が出ているのかということが、モデルはブラックボックスであっても、そこの中に関しては、全体、必ず整合しているということが説明性としてもとても重要だというふうに思います。
その上で、今回、RITEとしてご提示させていただいたのは、モデルとしての中身として想定という部分でいくと、繰り返しになりますが、成長実現シナリオと低成長シナリオという二つの技術想定、典型的な二つの技術想定の違いによって、どういうふうに変わるのかということを見ていて、その上で政策変数としては、2040年、60%減、73%減、80%減というところを見ていて、要はモデルの中はそれぞれ成長実現シナリオ、低成長シナリオでは完全にコンシステントになっていて、要は知りたい結果の排出削減目標によってどれぐらい増えるのかを見ているということで、透明性を高めて、ほかの方々に、必ずしもブラックボックスの中、全部知らないでも、どれぐらい動くのかということを明示しているということでございます。
その上で、じゃあ内部的に条件として何が効くのかというのは、必ずしもこれは簡単にお答えできることではないわけでございますが、ただ、そういう意味で当然ながらエネルギーの供給コストとかは違いますので、再エネのポテンシャルがどうなのか、再エネのコスト低減がどうなのか、もしくは原子力をどれぐらい使えるのか、もしくはCCSをどれぐらい使えるのかといったようなところは、カーボンニュートラルを実現するシナリオとしては、再エネか原子力かCCSしかないので、そういう面では、この三つの要素がどれぐらいポテンシャル的に使えるのか、コストがどれぐらい低減するのかということは非常に重要なので、そういう面では、今回はもう全部楽観的に見たというのが成長実現シナリオで、全部保守的というか、過去のトレンドの延長線で見たというのが、低成長シナリオでございます。
その上で、それぞれ動いたときにどれぐらい変わるのかというのは、エネルギー基本計画のほうの議論の基本政策分科会のほうにシナリオの提示をさせていただけるということでございます。ちょっと振れ幅にもよりますので、どれが一番ということにはちょっとお答えしにくいということでございます。
その上でちょっとだけ補足させていただいて、小西委員とで田中さんからコメントをいただいたところに、ちょっとだけモデルという部分でコメントさせていただきますと、小西委員がおっしゃったように、国内で投資が回ればいいというふうにおっしゃいましたけども、やはり投資を多くすると消費が下がる可能性があるので、そういう面で、経済モデルというのは、投資と消費のバランスがどう保てるのか、その中でGDPが大きいシナリオはどうなるのかということを見ているわけでございまして。しかも、日本のエネルギーコストが上がれば、海外との相対価格が変わってきますので、そうすると日本で製造するんではなくて、海外に出ていってしまうということになりますので、必ずしも投資額が多くて、国内で回ればいいというものではなくて、それが全体の中で均衡する解がどうなのかということを一般均衡モデル等では見ているということでございますので、よって、ほかのシナリオとの比較をしながら、投資だけではなくて、消費を見たり、輸出入額を見たり。そういうものを整合的に評価するということは極めて重要だということでございます。
田中さんからお話があった、あるべき姿からやっているというふうにおっしゃいましたけども、ちょっとどなたか、委員の方もおっしゃいましたけれども、最適化型モデルだからといって、あるべき姿とか、そのダイナミクスを評価できないかというと、全くそんなことはなくて、それは誤解でございまして、我々もまさに、今回70%削減とか、カーボンニュートラルというピン留めをしながらですね、バックキャスティングでモデルは解いているわけでございますし、その中でダイナミックな姿ということも分析していますし、途中ちょっと申し上げましたけど、別途サーキュラー経済が動いた場合にどうなるのかという分析もしていますので、そういったことも含めて、モデルが出来上がっていて、やはりそこのモデルというところがいろいろダイナミックも十分考慮されているということはご理解いただきたいというふうに思いますし、そうじゃなくて、やっぱりコストと、ただ、その中でも必ずコストと量というものを整合的にやっているというのが、先ほどご紹介した三つのカテゴリー、とりわけ最適化型モデルではそういうことをやっているということです。
それで、GDPの件、ご反論をいただきましたけど、やはり先ほど藤瀬委員に申し上げたことと一緒なんですけども、モデルというのは比較が重要でございますので、GDPの差がないとして、現実的に想定しているかどうかというところが重要だというふうに私は思っていなくて、その70%減なのか80%、今回ちょっと何%減だったかは忘れましたけども、その二つのシナリオによって、GDPの差がどれぐらい生じるのかという、そこの分析の結果が非常に重要で、ベースラインが上がっているかどうかではなくて、潜在的にもしそれで70%でいけば、それだけ50兆円に上がっていたのに、それを80%まで深掘りしたことによって、50兆円失う可能性があるという、この差分が重要なので、ベースとして上がっているかどうかというところに関しては、あまりモデルとしては重要性があるというふうに私は思っていません。
以上です。

○大塚委員長
すみません。基本的なことかもしれなくて恐縮ですが、小西委員が多分、国内投資のことをおっしゃりたかったのは、国外に投資するよりはという、そういう趣旨だったと思うけど、それもあまり。

○秋元委員
それも含めて、そういう意味だとしても、国内で投資をするのか、海外で投資をするのか、その投資額によって、あまり多く、より効率が悪いところに投資してしまえば、エネルギーコストは上がってしまうし、産業のコストが上がって、全体としては所得が失われ、産業が失われて、消費が下がって、輸出額も下がっていくということになりかねないので、マクロとして全体にどういうふうに整合しているかということを評価するということは非常に重要で、それはやっぱり一般均衡モデルのようなモデルを使わなければ出てこないということだと思います。

○大塚委員長
ありがとうございます。
では、事務局、ご質問がありましたのでお願いします。

○伊藤室長
事務局でございます。
藤瀬委員からございました、事務局側として、特にその目標経路の中でどこを軸に、どういったところに重きを置いておるかと。昨日、私のほうから、温対計画のポイントをざっとご説明を申し上げましたけれども、具体的には、19ページ辺りを少し強調させていただいてございます。
まず、何より世界全体での1.5℃目標、2050年ネットゼロ実現に向けた我が国の明確な経路を示すものというところに重きを置きながら、少し前段でもご説明しましたが、やはりこの状況のいろんな変化の中で、もはや、脱炭素、それからエネルギー安定供給、経済成長の同時実現が、今回、2030年から先の経路目標を議論いただく上での大前提という形で、重きを置かせていただいております。
その関連で申し上げると、また19ページに戻りますけれども、官民が予見可能性を持って、排出削減と経済成長のこの同時実現と、そこを進めるための野心的な目標というところをちょっと強調させていただきます。
それから、繰り返しになりますけれども、19ページにありますとおり、やはり誠実に、対策、施策、ご議論いただいていますけど、目標だけではなくて、そういったところに取り組んでいくというところをしっかり目指したいという形で、テーブルさせていただいておるという状況でございます。
以上です。

○大塚委員長
どうもありがとうございました。
もし11時に終わろうとするとそろそろなんですけども、鶴崎委員、どうぞ、ご発言あるようですので、よろしくお願いします。

○鶴崎委員
すみません。時間もない中。今日、二つのプレゼンを伺って、非常にまたより深掘りした下に凸のパスにに関する理解が深まりました。ありがとうございました。
IGESの田中様に教えていただきたいんですが、下に凸、特に今回、昨日から今日にかけて争点になっている2035年度の目標値の水準に関して、相当なまだ開きが委員の間でもあると思うんですけれども、下に凸に向けていくときに、非常に革新的となる技術、これからもう10年しかない中で、どこが非常に大きく貢献できるのか。
私が拝見したところ、やはりその風力や太陽光をはじめ、再エネの開発のスピードアップというところが焦点なのかなと。その現実性が恐らく認識の違いを生むんではないかと思っていまして、その点に関して、今日提示いただいた資料の後ろのほう、参考資料のほうで、64ページ以降でしょうか。かなりいろんな資料を掲げていただいているんですけれども、ちょっとこの辺について、先ほど来出ているような、業界のビジョン等の現実性みたいなことですとか、そのリアリティーというんでしょうか。
それから一方で、国内再エネが増えないと、もう日本で事業ができなくなるんではないかという危機感をグローバル企業の方から聞かれていると。そういう問題意識も投影されているかとは思いますけれども、実際問題、この製造、特に67ページのロードマップを現実化していくようなところで、実際にプレーヤーの方々が、この事業を進めていかれる。そこには、もの、金、人、それから時間的制約、様々な制約を乗り越えなければいけませんけれども、ところどころ、政策的意思だとか、政策的に強い介入というようなお言葉もありました。具体的にどういう、ある種強い誘導が必要とお考えなのか、その辺りも含めてもう少し教えてください。お願いします。

○大塚委員長
IGESさんには後でお話しいただけますか。
では、池田将太委員、どうぞお願いします。

○池田(将)委員
ありがとうございます。さっき2団体の発表が終わった後に、結構複数の委員から何かこの会議の意味を履き違えるような質問がすごく多かったなと思ったので、共通認識を確認させていただきたいんですけど、これで脱炭素のコスト削減会議じゃないですよね。ここは僕は地球温暖化対策計画を考える会議だというふうに思っているので、今回、IGESの田中さんからもお話ありましたけれども、基本的にはオーバーシュートなしで1.5℃未満にするというのは前提として日本も合意していること。だとすると、ここからバックキャスティングした上で、どういうふうにやれるのかというのを考えるのが当然のことかなというふうに思っています。
その上で、対策コストの話が、今、メインになってしまっていて、この間、審議会自体、コストや技術の専門家は多いけど、やっぱり気候科学だったりとか、被害コストの専門家がいないというのも、大きな違和感を感じています。
そもそも1.5℃目標というのは、被害のレッドラインとして、日本を含めて合意していると思うので、そうであれば、1.5℃の可能性が高いシナリオを議論するのが適切だというふうに思っています。逆に1.5℃の可能性が低いオーバーシュートなども含むモデルは、この場では不適切なんじゃないかなというふうに感じています。
何度も言いますけれども、この会議では、本当に危機を避けるためにどうすればよいかという視点が非常に、今、限定的な状態で議論が進められてしまっているので、そこは改善すべきかなというふうに思っています。
昨日、Cost of Carbonの話も、それこそ前提や想定によって変わってくることだというふうに思うので、それらをしっかり議論せずに、対策コストの話で結論を導くことは、僕としては許容できないなというふうに思っているので、被害コストの話をもっと深くやりたいなというふうに思っています。
本来であれば、2035年、例えば再エネ6割を確保するためにどうするかとか、もっと高い野心的な目標を議論する上でも大切だと思っているんですけど、今、エネ基のほうでは2040年の話が出ていて、じゃあ、NDCは2035年で、エネ基は2040年でという、ここの整合もちょっとよく分からないのと、あとは、エネ基の資料の中だと、本来太陽光のポテンシャルってもっとあるはずなのに、ソーラーシェアリングに関する話はほとんどないという状態で、そこも適切だとは思えないので、ここがしっかり整合してくることがNDCを引き上げる上では大切なんじゃないかなと、NDCを議論する上では大切なのかなというふうに思うので、ちょっとそこは僕も補足のコメントとして話をさせていただきました。
以上です。

○大塚委員長
では、池田三知子委員、お願いします。

○池田(三)委員
昨日も申し上げたように、脱炭素を実現するためには、経済を成長させていかなければいけませんので、ただ今の池田将太委員の発言に対しては、私は意見が違うことを一言申し上げさせていただきます。
モデルの話だけでなく、計画全体のことについて発言してよろしいでしょうか。

○大塚委員長
もちろんです、はい。それはそのとおりです。温対計画の話をしています。

○池田(三)委員
目標とも関連しますので、一つ問題提起させていただきたいと思います。
昨日も申し上げたとおり、カーボンニュートラルの実現には脱炭素製品の開発普及が不可欠です。そのために多大な追加コストが生じることとなり、企業が脱炭素投資を行うためには、そのようなコストが製品に転嫁されて、通常の製品よりも価格の高い脱炭素の製品を下流の企業や最終消費者にも積極的にご購入いただくことで、脱炭素社会に近づいていくものと考えます。企業も政府も、そして、消費者である我々国民も、脱炭素社会にふさわしい行動をしていかなければなりません。そういったときに、GX製品が受容される市場の創出が脱炭素社会の実現に不可欠となります。
残念ながら、今回の計画の対策の中に、GX製品市場の創造が書かれておりませんので、温対計画の重要な柱と位置づけて、市場創造に向けた政策パッケージ、具体的には削減実績量や削減貢献量といったGX価値を示す指標の浸透、政府・自治体の公共調達をはじめとするGX製品の優先調達、GX価値の国民の理解増進などについて、この計画に具体的に記載していただくようお願い申し上げます。
消費者の行動が大事である点に関連して補足させていただきますが、内閣府が行った気候変動に関する世論調査の結果を見ますと、まだまだ国民の意識が醸成されていない、むしろ前回の調査結果より意識が下がっているような結果になっていて、私自身も非常に衝撃を受けております。簡単に紹介いたしますと、脱炭素社会の実現に向けて、「あなたが日常生活の中で現在取り組んでいることは何かありますか」といった問いに対し、「家電製品を購入する際に省エネルギー効果の高い製品を購入する」といった回答は、前回調査では辛うじて5割を超えていたのですが、今回の調査結果では5割を下回ってしまっています。年代別に見ますと、高齢者ほど意識が高く、若年層ほど省エネ効果の高い製品を買う方々が明らかに少ない結果になっています。若年者は、高齢者ほど可処分所得が少ないといった面もあるのかもしれませんが、若年者も含めて、国民の意識を高めていく必要があると考えておりますし、価格が高くても環境に優しい製品やサービスを購入するために、経済成長や所得の拡大も重要です。そのような意味で、脱炭素社会と経済成長の両立というのは、必要不可欠であると思っております。
この問題について、経団連としても取り組んでまいりたいと思いますが、政府にも計画の中にしっかり明記していただいてご対応をお願いするとともに、ぜひ脱炭素を率先して取り込む企業、団体、NPOの皆様方にも、消費者である国民の意識改革の活動を担っていただくよう、お願い申し上げます。
5年後に行われる世論調査の結果が大きく好転することについて、期待申し上げたいと思います。私からは以上でございます。

◯大塚委員長
オンラインで、津久井委員がご発言のご希望ございます。お願いします。
すみません、11時もう過ぎちゃっていますが、私の不手際で申し訳ございませんが、もうちょっと延長させていただきます。
では、津久井委員、お願いします。

○津久井委員
ありがとうございます。
私から国際動向を踏まえた削減目標の在り方について、再度コメントさせていただければと思っております。
昨日アメリカがNDCを提出しておりまして、2005年比61~66%削減という目標を掲げております。米国のNDCの中の説明にも、2050年ネットゼロに向けて直線あるいは下に凸の経路で、オーバーシュートなし、あるいは限定的な1.5℃経路に整合していると記載がございまして、米国のNDCも1.5℃整合の基準はオーバーシュートなし、あるいは限定的な1.5℃経路ということで、C1シナリオであるということが分かります。
昨日、被害のコストについて議論がございましたが、IPCCや国際交渉では、こうした被害コストも含めた上で、気候変動の影響というのは、2℃に比べて1.5℃の温度上昇のほうがはるかに小さいということが認識されております。その結果として、COP26で事実上1.5℃目標を目指すことが合意されており、この1.5℃目標というのは、簡単に諦めてよい目標ではないということを改めて強調させていただきます。
現状のオーバーシュートなしの1.5℃経路と実際の排出推移に大きなギャップがあるというのは事実であり、1.5℃達成の機会が狭まっているということも、また事実だと理解しております。しかしながら、それを理由に大きなオーバーシュートを前提としたシナリオを策定して日本がNDCを決定するというのは、正当化できることではないと考えております。昨日も申し上げましたとおり、G7での合意はオーバーシュートを避けるC1シナリオであり、かつその中央値に基づいております。1.5℃との整合性を限界削減指標で説明するということは日本独自の解釈であり、国際的にはなかなか理解されづらいと考えております。こうしたこの1.5℃目標に合意した背景を踏まえて、1.5℃実現に向けた目標の設定とその目標を達成するための政策について議論を進めるべきだと考えております。
こちらも昨日申し上げましたとおり、1.5℃達成に必要な実行可能なオプションというのは、既に全てのセクターに存在していると指摘されておりますので、こうした技術をいかに迅速に、大規模かつコストを抑えて日本で展開できるかというのが重要な課題だと考えております。
私からは以上です。

◯大塚委員長
すみません、髙村委員、ちょっと国際法の専門家としてお伺いしておきたいんですけれど、オーバーシュートについてちょっとお伺いしておきたいんですけれども、1.5℃目標自体、パリ協定は努力目標なんですけれど、その後、様々なCOPにおいて合意が成立していると思いますが、オーバーシュートについては、国際的にどういう状況になっているか、ちょっとご説明いただいてよろしいですか。

○髙村委員
国際合意としてというお尋ねだというふうに理解しました。

◯大塚委員長
はい。

○髙村委員
これは後でまた発言しようと思いますけれども。

◯大塚委員長
まとめてしていただいても、後でしていただいても構いません。

○髙村委員
後でさせていただこうと思うんですけど、今、大塚委員長からご指摘のあった点でいくと、気候変動枠組条約パリ協定の下では1.5℃という目標、あるわけですけれども、そこについて、私の理解では、具体的なシナリオというのは想定をしているものではないというふうに思います。
他方で、今日IGESさんですかね、資料がありましたけれども、G7等の合意ではやはりC1と言っています。オーバーシュートがないか、あるいはオーバーシュートがあっても非常に短期間であるというシナリオを想定をして合意をしているというふうに思います。これは当然、シナリオについても、サイエンスによって、その新たな知見が加わってくるというのを前提にして、パリ協定においても最も最善のサイエンスに基づいてということは大きな条件としてなっているというふうに思いますけれども、むしろ違っていたら、事務局から修正いただければと思いますが。
以上です。

◯大塚委員長
どうもありがとうございました。
では、小西委員どうぞお願いします。

○小西委員
ありがとうございます。3点だけお話しさせていただきたいなと思ったんですが、今非常にトピックになっていますオーバーシュート。これ、やっぱり同じ1.5℃でもオーバーシュートするシナリオと、それからしないシナリオでは、やはり被害が相当違うということがIPCCの1.5℃報告書で既に表されています。
ですので、やっぱりこのNDCで2月に出した後、最後、次のCOP30で決まるまでに、国際的にチェックされることになりますが、そのときに日本はオーバーシュートのシナリオを前提にしてNDCを提出しますというのは、なかなか正直言ってその発表する担当官にはなりたくないなと思ってしまいます。
これは本当に国際的にはかなりいろいろ言われることになるのではないかと思います。というオーバーシュートの被害想定というのがやっぱり違うということを、私たち、認識する必要があるかなというのが1点。
そして、今回急遽ですけれども、こうしてWWF、そしてIGESさんのシナリオ、発表をする機会をいただいて、これから秋元委員をはじめ、いろいろなご意見をいただきながら、ここで議論できたということは、本当によかったなと、プロセスとしてよかったなと。座長もすごく話しやすい雰囲気をつくってくださいましたし、やっぱりこうして議論が深まっていくということがすごく重要かなと思っています。
本来はこれが半年ぐらい前から、本当だったらば、いろいろ前提を整えて、モデルもそれぞれ準備してくださいみたいな形になれれば一番ベストではあったんですけれども、日本にはいろんな選択肢があるんだということを、やはりいろいろな考え方の違う研究の内容も、ここに発表する場があって話し合っていくという機会が今回設けられたことはよかったと思っております。
前回の麻生政権のときには、たしか私たちは発表の機会はなかったんですけれども、それぞれの世に出ているシナリオを1ページずつ参照として、審議会の資料には作っていただいているんです。ですので、今回も本当にもう突貫工事ですけれども、ほかにやっぱりClimate Integrateさんとか、自然エネルギー財団さんとか、恐らくちょっとはっきり存じ上げていないですけれど、ほかのコンサルさんとかも持っていらっしゃると思いますので、そういったものも1枚ずつでもいいですので、24日までに参照資料としてあると、より国民の皆さんに日本はこういう選択肢があるんだということを、審議会がきちっと検討して話しているということを示して、そして、やっぱり選んでいただくということがすごく重要じゃないかなと思っています。
あと最後1点なんですけれども、やっぱり温暖化対策を話し合うにはもう、昨日も申し上げたんですけれども、エネ基の議論というのが最も主流、主になってまいります。ですので、このエネ庁さんなんですけれども、昨日ご説明で、RITEのシナリオを前提にしていますとおっしゃっておられたんですけれども、やはりここの議論も含めて、ぜひエネ基のほうにも持ち帰っていただいて、もちろんRITEさんのシナリオ、非常に優れたものだとは理解しているんですけれども、一つの研究機関の考え方だけではなく、ほかの研究機関の意見もある程度、結構、検討していただいて、それでエネ基の議論を再度お願いしたいです。これは2040年まで決まってしまう、2040年に化石燃料はまだ4割使うという、なかなか国際的には、恐らく先進国の中では珍しいシナリオになってきますので、それを検討過程において、いろいろな多様な意見を取り入れて、透明で公平な議論をしましたということが、やはり必要ではないかと思っていますので、ぜひエネ基のほうにも、どのようにこの議論が生かされるかということもお聞きできればと思います。以上です。

◯大塚委員長
事務局がコメントしていただけるということですので、よろしくお願いします。

○伊藤室長
事務局でございます。3点ほどを申し上げたいと思います。
まず1点、何度かGSTであるとかG7の決定関連のコメントがございましたので、まず、もう幾つか言及されていますけれど、まずIPCC自体が独自報告で示しているところは、様々なシナリオの中で、幅を持った水準として、1.5℃目標に抑えられるシナリオがどこにあるのかと。そのシナリオを並べた中での中央値として、2019年比、2030年だったら43%、2035年だと60%ということだと思っております。ここがIPCCで整理された科学的な整理ということだと思っております。
その上で、G7であるとか、GSTでどうなっているかと。英語を見ますと、訳がついたり外れたりというのはあるんですけど、いずれにしても確かにIPCCを踏まえながら。
ただ、認識として申し上げるのは、各国のNationally Determined、この目標について、5年にして目標をつくれとか、そういう合意には私はなっていないと思っています。G7コミュニケ自体も、いわゆるそこに対する世界全体への取組にしっかりと貢献していくというところで、コミュニケはなっているというふうに認識しております。ここが1点。
それから今回、2030から先のNDCを考える中で、テーブル、政府として案を持つときに、2035年と2040年、こちらを両方目標として検討させていただいていると。エネルギー基本計画、GX2040ビジョン。政策の軸が2040というところで、しっかりと両方の目標を検討して入れたんだということを申し上げておきたいと思います。
それから最後に、経団連の池田委員からGX製品のところございまして、すみません、何か恐縮ですが、111ページ辺りにグリーン購入法の記載がありまして、先端的な製品サービスの需要という記載がございます。ちょっと必ずしもヒットしてしないかもしれませんけれども、やはりそこの需要創出というところは重要ですので、またコメントをいただきましても、何かもう少し変えられるものがあれば検討させていただきますが、取りあえずは、以上でございます。

◯大塚委員長
GXのところはもうちょっと書き足していただけると大変ありがたいです。
では、秋元委員、どうぞお願いします。

○秋元委員
何度もすみません。ただ、話を聞いていて若干、私は違和感を持って聞いていた部分があって、まず池田将太委員がおっしゃって、被害を話していないということは、昨日かなり被害のご説明はさせていただいて、1.5度目標であれば、IPCCでも、2℃目標であれば費用と便益は、対策費用よりも便益のほうが上回るというような記載があり、ただ1.5℃目標に関しては、よく分からないというふうに書いてあるのは、これが今の、もちろんそれが本当の科学的事実かどうかは分かりませんけれど、今の最新の科学の整理になっていると。その上で、だけども世界は1.5℃ぐらいを対応すれば、安全サイドを見ても、被害を十分考慮できるような形で対応ができるだろうということで、1.5℃シナリオを目指そうとしていると。ということは、1.5℃を前提として考える以上は、被害に関しては十分考慮して、しかも安全サイドを見ている可能性は十分あるという中でのシナリオの検討していると。
昨日この委員会でも、みんな委員、私含めて1.5℃シナリオを目指すということに関しては同意しているわけでございまして、そういう中でのシナリオ分析だということを改めて申し上げておきたいと思います。
Social cost of carbonの部分に関しては、難しいというのは確かにそのとおりだと思うので、ぜひ追って勉強していただきたいと思いますけれども、Social cost of carbonも非常に幅がありますけれども、その中でも今のバイデン政権は、かなり高いところを見ていると。恐らくこの後、昨日も申し上げましたけど、トランプ政権になると非常に低いところに、また戻ってくるということだと思いますけれども、十分高いところの被害まで見ていて、それとコストを比較評価した上でも、十分、今回のご提案というのは見合っているという話をさせていただいていて、ちゃんと議論のかみ合わせということで、そういうところは理解いただきたいというふうに思います。
その上で、先ほどから1.5℃、オーバーシュートはけしからんというお話があって、1.5℃オーバーシュートをすべきじゃないということですけれども、今回の議論は、日本が60から73か80、我々の分析では2040年60から73か80ですけれども、仮に80%減を取ってもオーバーシュートになるわけでございまして、そこはどれを取ったって日本の排出が10%ぐらい変わるからといって、我々が示している部分でいくと、若干、僅かですけれども、IPCCのカテゴリーでは1.6℃までオーバーシュートなしという整理ですけれども、1.7℃ということでございますが、仮にそこに日本が10%を、例えば73%減と言っているのを80%に深掘りしたとしても、この1.5℃オーバーシュートの部分の1.7℃というところは、どのシナリオを取っても変わらないということでございますので、いずれにしろ、もし80というご希望があっても、そこに関しては同じことだという理解をしないといけないと思うんです。
その上で、繰り返しですけれども、昨日申し上げましたけれども、仮にオーバーシュートを避けようと思うのであれば、2030年の米国や中国やインドの削減目標の引下げというところに議論を持っていかないといけませんし、昨晩、出されたアメリカの目標も、決して厳しい目標にはなってないというふうに思っていまして、恐らくちょっと換算がよく分かりませんけれども、2005年比で61%で、66%減まで可能であればということですけれども、恐らく10%ぐらいだと思うので、恐らく2019年比にすると54%減から59%減ぐらいになると思うので、そういう面ではIPCCが言っている60%減には到達、全然していないと。
しかもアメリカという非常に大きな排出のところは、今回出したバイデン政権でさえ全く到達していないということだと思います。さらにトランプ政権になれば、これはもう完全になくなってしまうというような状況でございますので、そういった状況も踏まえながら、決して我々が出して検討している73%、2040年ですけれども、73%減の直接のラインというのは、野心が緩やかなことは決してないというふうに私は思っております。以上でございます。

◯大塚委員長
ありがとうございました。
ちょっと退室予定でいらっしゃるということなので、IGESの田中様、先ほどのご質問に対してのご回答があると思いますけれども、委員ではないですけれども、よろしくお願いします。

◯田中氏
申し訳ありません、ちょっと11時からもともと入っていた予定がありまして、申し訳ありません。ご配慮いただきましてありがとうございます。
まず、秋元委員からGDPの絶対値が重要なのではなくて差分がという話もありました。私もそのとおりだと思っておりますが、この件に関しては、我々の分析上の、厳密にこの二つのシナリオの差分を比較するというよりは、早期削減シナリオをメインに分析した上で、それともともと前回のエネ基などで政府が想定されているものがどのぐらい違うのかということを見せるために、別の想定を使ったということでございますので、ちょっと誤解を招くような形になってしまっているのは、大変我々も反省すべきかなと思うんですが、40万円それによって失われますというようなことでは決してないと。これまでのトレンドだと、なかなか経済成長すら難しいところを、こうした社会変革、脱炭素への早期の取組、それを通じた産業化ということを含めて経済が成長していくというような絵を描いているということ。
それから、バックキャストについても、将来の社会全体の姿というのを描いた上でバックキャストしているということであって、必ずしもカーボンニュートラルという数値的な制約をバックキャストするという、そういう意味ではないということを少し補足させていただければと思います。
それから、鶴崎委員からご指摘いただきました2035年で聞くのは何かと。政策的介入とは一体具体的に何なのかというお話いただきましたけれども、いろいろあるんですが、カーボンプライシングが入っていることであるとか、あるいは2035年、石炭火力が基本的にはフェーズアウトし、洋上風力の浮体式の洋上風力がかなり野心的な導入量で立ち上がっていると。これの背後に何があるかということですが、石炭火力については、もちろん今、企業の皆様が保有されている資産を扱うことになりますので、それを何らかの形で賠償するなり、そういった制度というのを検討する必要があるのかもしれませんし、そこで働いている方の雇用の意向、そしてその石炭火力の跡地を、例えば洋上風力の基地港とするなど、いろんなアイデアというのは我々のほうでも検討をさせていただいております。
そういった形で、公正な移行というのを政府主導で行うということが前提にあるということであります。そういった政策的意思介入というのが前提にあるという意味で、発言させていただいております。
すみません、ちょっと論点を外してしまって申し訳ありませんが、私はこれで退席させていただきますので、失礼いたしました。ありがとうございました。

◯大塚委員長
ありがとうございました。どうも恐れ入ります。
では、髙村委員お願いしてよろしいでしょうか。

○髙村委員
ありがとうございます。モデルの分析について、2機関について、お礼申し上げたいと思います。もう先ほど増井さんも冒頭におっしゃいましたと思いますし、皆さんの議論の中で共有されていると思いますけれども、モデルって一定の想定、前提を置いて、しかもある問いを解くために、適切と思われるモデルを使って、その結果を導き出そうとされるものだと思っていまして、したがって、今回お示しいただいたところも、いわゆる解きたい問いというものを必ずしも一応していない、これまでご紹介いただいたのも含めて、一応していないところがあるというふうに思っております。
しかし、他方で当然、想定される35年、40年あるいは場合によっては50年といったような時間軸を見たときに、想定される社会や技術の幅、言い方を変えると不確実性がある中で、こうしたモデル分析というものの重要性というのは、政策決定において非常にやはり重要になってくるというふうに思っています。
そういう意味で、今後どうされるかというのはもちろんあるんですけれども、例えば政策をこれから一層さらに具体化していくとき、あるいは何人かの委員からもありましたけれども、場合によっては見直していく、更新をしていくときに、こうしたモデル分析をどういうふうに使っていくかということを今後、ぜひ検討いただきたいというふうに思っております。
私、1点だけちょっと細かいところで気になったのは、やはりIGESさんの42ページのGDPのところですけれど、これは多分、それぞれのシナリオのGDP想定をご説明をされているのであって、それから導き出されるGDP損失、その結果としての生じるGDPのことは言及されていない。先ほど田中さんからあったところだと私も理解をしていました。ちょっと数字だけが独り歩きするのがまずいと思って、改めて、50兆円とかという話がまずいと思ったので、改めて申し上げたいと思います。
むしろ、もう一つのほうが私、これは事務局へのお尋ねであるかと思うんですけれども、35年60なのか66なのか、さらにその上なのかという、水準感の幅というのは、依然として今日の議論の中でもあると思うんですけれども、35年60にしても、かなりの施策が必要だというふうに思っております。
ご質問というのは、今、温対計画を策定するために議論しているわけですけれども、この計画年度というのは35年度、40年度、両方、それはちょっと一つ確認をしたいというところです。
それともう一つは、当然、温対法に基づいて温暖化対策計画策定をいたしますので、昨日、申し上げた趣旨というのはそれなんですけれども、基本的にやはり計画年度に当たって、目指す目標に対して、その目標を達成するために必要な措置、それから必要な措置の実施に関する目標等々を記載をしていくということが、法律上は求められていると思っております。それが昨日申し上げた具体的な計画年度、35年度、40年度と言ったときに、まだその辺りの具体的な、特に必要な措置、目標の辺りの記載ぶりというのが、もう少し議論、あるいは記載が必要ではないかというふうに感じていまして、昨日発言をいたしました。日程が非常に限られているということを重々承知の上で、どういうふうにこれを進めていかれるのかという、この後のスケジュールといいましょうか、プロセスについてお尋ねをしたいというふうに思います。中身についてはまだ幾つかありますけれども、前提として、お尋ねいたします。

◯大塚委員長
どうも重要なご指摘、ありがとうございます。
では伊藤委員、お願いします。

○伊藤委員
ありがとうございます。2団体からの発表、どうもありがとうございました。非常にいろいろなことを考えさせられました。
先ほどから、やはりコストのことというのが出ていて、被害のコストがどうなんだというようなご指摘もありまして、私もその部分というのは、企業にとっても非常に重要なコストの一つになっていくんだろうなというふうに思います。対策するコストがかかるというのはもちろんあるんですけれども、例えば災害が激甚化しているというのは実感としてもありますし、多分、今後もそういうふうになっていくんだと思うんです。そうなったときに、例えば川沿いにあるような工場を全部移さなければいけないであるとか、それから本当に損害保険の保険料もどんどん上がっているというような状況もあります。
それから、本当に想定し得なかったような、例えば日本に本当にマラリアの蚊がいっぱい発生してしまうというような、そういうことも想定していかなければいけない時代になっているのかなと思うんですね。そうすると本当にコロナのときのように、全く経済活動が止まってしまうというような、そういうリスクも備えた上での、そうなったときのコストというのも、企業はそのBCPということを考えたときには、多分、大企業などは想定もして、コストなんかも算出していると思うんですけれども、まだまだ中小企業のほうではそういう意識も低いというところもあって、そこの部分との対策コストと、それから、そういう部分にかかるコストということを、やっぱり一緒に考えながら、これも対策をしていかなくてはいけないことなのかなと思うんです。
そもそも今回の温対計画というのは、要するに温暖化対策ということをきっかけにして、もともと日本が産業界が抱えている非常に大きな課題とか、硬直感とか、こういうものを打破していくというか、そういうことが実は温暖化対策と合致する部分があるというところで経済成長につながるという認識があるんだと思うんですね。例えば、エネルギーコストに関しても、本当にこれだけ国際情勢が不確実な状況の中で、また物すごい勢いで上がるということもあって、それは本当に企業の経費という意味においては、直結することでもありますし、それからどんどん人口が減っていって労働力不足の中で、これだけもう万年生産性が低いと言われてこうして指摘されている日本の構造自体を、やっぱり変えていかなくてはいけない、GXももっともっと進めていかなくてはいけないという、そういう状況があると。そこをやっぱり変えていかないと日本の未来が明るくないというところの中での温暖化対策、そこが合致するからこそ、これを起爆剤にしていこうというところがあるんではないかと思うんですね。
ですから、その意味では、今日発表していただいた前提ですね。そういう社会を目指していくんだというところというのは、まず前提において、じゃあそのために何をしていくべきなのかというところを、緻密に先ほど言ったこの両方のコストです。そこを見ながらやっていかなくてはいけないのかなというふうに思います。
それから、日本側が僅か3%しかないと、日本が幾らこれだけじりじりやったとしても、世界全体のCO2削減には、本当に微々たるもんなんだというような考え方もありますけれども、それだからこそ世界を巻き込んでいかなければいけないということなんだと思うんです。特に、日本が主導権を握って、いつも海外のほうから決められたものに追随しようとすると、物すごいコストがかかってしまっているという構想が続いていると思うので、なるべく主導権を取ってやっていけるような目標値というのを、私は出すべきだと思って昨日も発言をさせていただいたんですけれども、そういう視点というのも、やっぱりこれから必要なのではないかなと思いながら今日はお聞きしています。
以上です。

◯大塚委員長
どうもありがとうございます。
京都議定書が6%削減の目標をつくったときに、今のような議論は実はしていたので、それを今どのように考えるかという、ちょっと様々な条件が変わってきていますので、どう考えるかということかなと思って伺いました。
では、藤瀬委員どうぞ、お願いします。

○藤瀬委員
ありがとうございます。まずは、このような議論の場、設けていただきましたことを、事務局の皆様に感謝申し上げたいと思います。本当に様々な専門分野を持つ委員の方々や外部有識者の皆様のインプット、そしてそれを基にいろいろな議論ができ、もちろんいろんなご意見があるのですけれども、委員会のゴールに近づきつつあるかなと感じております。これは希望なのですけれど、もう少し早くこのような議論ができていたら、よりよかったんじゃないかなということで、次回以降の審議会の形をご検討いただければなと思います。
本当に様々な意見が委員の皆様から出ていらっしゃいますので、ちょっとこれを取りまとめる事務局の皆さん、そして委員長には、大変ご負担をおかけすると思うのですけれども、やはり本会議で議論しているのは、今現時点の話ではなく、やはり2040年、50年に向けた話でありますので、次世代に少しでも苦しい状況を残さないというためにも、今できる最大限の努力をするということが何よりも重要かなと感じております。
やはり、気候変動は国際的な問題ですので、日本の中だけを見て目標値や対策を決めていくのではなくて、やっぱり世界の中で日本はどういう立ち位置であるべきだとか、どういう立場で取り組んでいく必要があるのかという点を踏まえた議論をしていくことが重要かと感じております。
それを踏まえますと、技術力や経済力の高い日本として、やはり発展途上国を含めた世界を牽引していく野心的な目標を「下に凸、最低でも2035年66%以上の削減」という目標値を考えていくべきだと、私個人としては考えており、その目標を達成するための対策や施策の話を今後していけたらと思っております。
モデルの中にもありましたように、やはり再エネ、省エネ、そして電化に向けた技術革新が必要であるということですが、日々進んでいるということを、スタートアップの皆さんを見て実感をしておりまして、今もう技術革新が進んでいるということをぜひ感じていただけたらなと思っておりますし、それがありますので、決して高い目標を掲げても実現可能性が低いというわけではないと思っております。
伊藤室長もおっしゃっておりましたように、脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長を実行していくためには、やはり日本政府としてもGXを本気で取り組んでいるということを、姿勢を見せていくことがすごく重要だなと思っておりまして、今世界を牽引しているスタートアップはGXに関するスタートアップが多いですし、日本国内ではスタートアップの領域で投資額がかなり伸びているのはこのGXの分野です。投資をするということは、その後にリターンが返ってくるということなので、もちろんそこを想定することはなかなか難しいですけれども、リターンもしっかりと見ながら話をしていけたらと思っております。
ここで国民に対して、やはり日本はより強くGXを進めていき、気候変動に本気で立ち向かっていくという姿勢を示すことが何よりも重要であると考えており、直線的ではどうしても今までの現状維持というメッセージが伝わってしまうのではないかという感が否めないですので、そこから少しでも踏み出しているぞということを本会合から打ち出していけたらと思っております。
野心的な目標を掲げて、本当に国民の皆さんが実現するのが難しいと感じていらっしゃるのかというところに関しては、パブリックコメントで実際の声をしっかりと聞いていくことがいいのではないかと思っております。
すみません、時間超過しておりますが、意見を言わせていただきました。ありがとうございます。

◯大塚委員長
どうもありがとうございました。
一応、そんなところで、では、事務局。

○伊藤室長
恐れ入ります。最後に申し上げようかなと思ったのですが、髙村委員からございましたプロセスというか、計画年自体は24ページにございます、2040年度末までということで、先ほど申し上げたとおり、GX2040ビジョン、エネ基と整合しながら、政策の軸は2040年を考えながら取ったほうで、NDCを想定をして、2035と2040の目標をつくるということで、24日、そこで、まだ出ていない少しブレークダウンした、CO2だけではございませんので、ほかのガスも含めて、少し細かなものをご提示をして、さらにご議論いただけたらというふうに思ってございます。

◯大塚委員長
髙村委員からは、その具体的な計画というご趣旨もありましたので、ちょっと限られた時間ですけれども、ご検討いただきたいと思います。
ほかにはよろしいでしょうか。
では、これまでの議論を尽くした結果、1.5℃目標に関しての、達成するために、整合性を取る必要があるということに関しては、共通基盤があるというふうに思っております。その上で意見の隔たりがあると、幅があるということは皆様ご了解いただいたんだろうと思います。
数字については、引き続きご議論がございます中で、全員が一つの数字で合意するというのはなかなか難しいという印象もございます。私としては、上に凸、下に凸という両論がある中で、委員長としてまとめるのであれば、真ん中ということになるとは思いますけれども、24日まで引き続き議論を尽くしていきたいと思います。その上で、このような有益な議論をして、多様な意見があるということを、サマリーなどの形で政府にもしっかり認識させたいというふうに考えております。
私としては、そのような簡単な私自身の考えを申し上げさせていただきました。
では、よろしいでしょうか。
最後に事務局から何かございましたら、ご説明お願いします。

○伊藤室長
事務局でございます。まず温対計画の文章案につきましては、ちょっとタイトで申し訳ございませんが、コメントいただいてる部分も既にございますけれども、追加でコメント、加筆ですとか、修正ですとか、何かある場合は、できますれば本日中にいただけると、ちょっと土日、作業させていただいて、また24日にお出しする関係上、もしそれに間に合わないとかあればあれですけれど、何とか本日中目途でいただけたらと思っております。それを踏まえて、24日に更新版をお出ししたいと思っておりますというのと、先ほどの繰り返しになりますが、少しブレークダウンしたものも24日にお出ししたい、できれば少し前にはご送付したいというふうに思っております。
それから、小西委員からございましたほかのシナリオ、Climate Integrateですとか、自然エネルギー財団、ちょっとこちらでまた検討をさせていただきたいなというふうに思ってございます。
取りあえずは、以上でございます。

◯大塚委員長
それでは、以上で閉会とさせていただきます。本日も非常に活発な議論をいただきまして、誠にありがとうございました。
 
午前11時43分 閉会