中央環境審議会地球環境部会2050年ネットゼロ実現に向けた気候変動対策検討小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会地球環境小委員会中長期地球温暖化対策検討WG 合同会合(第7回) 議事録
開催日時
令和6年12月19日(木)16時10分 ~ 20時00分
開催場所
対面及びWEBによる開催
議題
(1) 地球温暖化計画(案)について
(2) その他
資料一覧
議事次第
資料1 中央環境審議会地球環境部会2050年ネットゼロ実現に向けた気候変動対策検討小委員会 委員名簿
資料2 産業構造審議会イノベーション・環境分科会地球環境小委員会中長期地球温暖化対策検討ワーキンググループ 委員名簿
資料3 地球温暖化対策計画(案)
参考資料1 第6回合同会合国立環境研究所 説明資料
参考資料2 第6回合同会合地球環境産業技術研究機構 説明資料
参考資料3 第6回合同会合事務局 説明資料
参考資料4 これまでの合同会合での主なご意見
参考資料5 エネルギー基本計画(原案)の概要
参考資料6 池田将太委員提出資料
参考資料7 小西委員提出資料
議事録
午後 4時10分 開会
○伊藤室長
大変お待たせいたしました。ただいまから第7回合同会合を始めさせていただきます。
私、事務局を務めます環境省脱炭素社会移行推進室の伊藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日の会議は、対面とWEBの併用開催ということで、状況はインターネットで同時配信、動画は議事録公開まではWEB上で公開予定でございます。
定足数に達しておりますので、途中参加の委員がおられますし、途中退席の委員もおられますけれども、時間の限り何とぞお付き合いいただけると幸いでございます。
それでは、座長は大塚委員長にお願いしたいと思います。大塚委員長、よろしくお願いいたします。
○大塚委員長
そうしましたら、本日は、議事次第にございますように、第一に地球温暖化対策計画(案)について、第二にその他となっております。
議題に入る前に、事務局から1分程度でご説明をお願いいたします。
○伊藤室長
事務局でございます。
議題に入る前に一言だけ。まずは、さきのハチドリ電力池田委員の意見書の取扱い、それから前回11月25日の事務局資料の提示のタイミングなど、議論の進め方が雑だったのではないかというようなご指摘をいただいております。真摯に受け止めまして、本日を含めて複数回にわたりまして、いわゆる目標や経路、対策を含めて議論を尽くしていただけるように、丁寧に対応してまいりたいと思っております。よろしくお願いいたします。
あと、今日は池田委員、それから小西委員から資料も頂いておりますので、その辺りもしっかり取り扱わせていただきたいと思います。何とぞよろしくお願いいたします。
○大塚委員長
そうしましたら、事務局から紹介がございました提出資料につきまして、まず池田将太委員のほうから、コメントなどございましたらお願いいたします。
○池田(将)委員
ありがとうございます。
まず初めに、今回、今、伊藤室長のほうからもありましたけれども、11月25日の会議において、終了30分前に、これまでと変わらない延長線上のGHGの削減目標という形で、2013年比で見たときには60%削減という目標が提示されて、それが、あたかも方針が決定事項であるかのように発表されてしまったという形、この内容にはやっぱり到底賛同することは僕自身はできないので、今回、意見書を作成して、皆さんのお手元に今日配っていただくという形になりました。今回は、意見書を黙殺というか、読み上げないというか、そういうことなく、配付していただいてありがとうございます。
私は、ここにいる皆さんと前提条件を共有した上で、今日、議論を進めていくことが大切かなというふうに思っているので、そこについて話させていただければと思っています。
そもそも2050年のカーボンニュートラルというのは、目標、要は最終的なゴール、つまり目的ではないというふうに僕は考えています。この審議会の意義も、2050年カーボンニュートラルという指標も、あくまでも通過点であると思っています。本来、私たちが目指すべき目標というのは、世界の平均気温を、上昇を1.5℃未満に抑えること、気候変動という世界規模の危機を回避して、持続可能な地球を次世代につないでいくことだというふうに考えています。
昨年のCOPもG7も、現状は深刻であり、2035年には2019年比で60%の削減が必要であるという議論が行われていて、我が国も、それに合意しています。17日の環境大臣の記者会見でも、世界全体で1.5℃に整合する目標、目標に対する整合を努力していくということは、発言があったかなというふうに認識しています。このことは、つまり世界全体で気候変動を回避するために1秒でも早く気温上昇を抑えて、カーボンニュートラルの実現に向けたGHGの削減を加速することへの意思表明だというふうに僕は認識しています。
しかし、あたかも決定事項のように発表されている60%という数字は、いかがなものかというふうに感じています。しかも、この委員会での議論を待たずに、経済産業省の基本政策分科会では、2030年60%、2040年73%の直線の前提にエネルギー基本計画の検討が今進められているということも、大きな違和感を僕自身感じています。このプロセス、NDCのプロセス自体が何のためにあるのかというふうに思っています。
2019年比で60%削減を目指すという国際的な議論を踏まえれば、2013年比では最低でも66%の数値目標でなければいけないというふうに思っています。つまり、2035年に向けた我が国の目標は、最低でもGHG排出量を2013年比で66%削減する。環境省さんとかでもよく使われる、高みを目指すという言葉をお借りするのであれば、75%のGHG削減の高みを2013年比で目指すことが最低限必要だと僕は考えています。なので、大切なので、ここをもう一度言わせていただくと、我が国が目指すべき目標は、GHGの削減目標を2013年比で66%と設定して、75%の高みを目指す。ここが最低限の着地ラインなのかなと思っています。
そのために、エネルギー基本計画案も含めて、いま一度、一体的に再考すべきかなというふうに感じています。そうしなければ、日本は先進国の中でも、日本は際立っている目標を掲げることになって、科学と向き合わず気候変動対策を他国に押しつける、だらしない国になってしまう、そういうふうに感じています。必要なのは、世界全体で1.5℃目標を達成して、気候変動を止めることだと思っています。なので、日本が果たすべき責任というのは、野心的な目標設定であり、それを実現するための政策を実行していくべきことだというふうに考えています。現行の目標値が1.5℃目標に整合的だと主張するなら、その理由をきちんとご説明いただきたいなというふうに思っています。
残された時間は僅かなので、形式だけの審議会のプロセスを今回変えていただけるということだと思うので、しっかりここは議論した上で、中途半端な目標設定で終わることは、私は断固として反対したいなというふうに思っています。建設的かつ透明性の高い議論を経て、NDCの決定を改めて求めたいと思っています。
以上です。
○大塚委員長
ありがとうございました。
では、続きまして、小西委員から、コメントなどございましたらお願いいたします。
○小西委員
ありがとうございます。私も参考資料を出させていただいたので、発言させていただければと思います。
私、前回、アゼルバイジャンからのフライトの中で、参加できなくて、そこの中で、いきなり最後30分で発表されたということに非常に驚きました。やっぱりこのプロセスで決まってしまうというのは、議論がされたとは言いがたいと思っております。本来は、これは本当に全員に関わることなので、選択肢を示して国民的議論、前回の麻生政権のときは、せめてそういう形になっておりましたので、そういう選択肢を示して、国民的議論をするべきではないかと思っています。
その選択肢の選定に当たっては、科学的根拠が非常に重要だと思っておりますので、幸いなことに、今回は複数の独立系シンクタンクのこういったエネシナリオの提言が出ております。IPCCのプロセスでも、きちっと科学的根拠のある研究シナリオというものを全部でピアレビューして、それで幅を持ったシナリオというのを出しております。そのため、今日、参考資料7として、削減目標・再エネ比率に関する各団体の提言の概要というものを、こちら水準でまとめた資料をつけさせていただきました。やっぱり科学的で、しかも公平で、しかもちゃんとインクルーシブに、開かれた透明性のある議論のプロセスであるべきだと思っておりますので、こういった、ある特定の研究機関のものだけではなく、今ある科学的根拠のきちっとした、これらのシナリオは全て本当にきちっとした研究成果ですので、これらを幅を持った形で見ていただくべきかなと思っております。
これでご覧いただくと、IPCC AR6の水準、基準年13年と19年のものをご参考までに裏につけておりますけれども、表の参考資料7と書いてあるほうをご覧いただきますと、ここで見ると、今回出てきた案というのは、この幅の中でも一番下の案ということになります。やはりほかのIGESさんのシナリオ76%、自然エネルギー財団65%、Climate Integrate70%、WWFジャパン、イコールシステム技術研究所ですね、68%といった内容になっていますので、やっぱりこうした科学的根拠のある中から選択肢を出していく、そして国民的な議論とした上で決めていくということがあるべき。本当は全て、国連もこういった形で行われていて、IPCCもこういう形で行われているので、日本のプロセスもこうあるべきではないかなと思っております。
今は多分、参考資料のプロセスの意見を言うようにということですよね、委員長。まだ意見を言うという。
○大塚委員長
いや、これとの関係での意見をどんどん言ってください。コメントを。
○小西委員
そうですか。分かりました。じゃあ、もうそのまま言わせていただきます。
今出てきた60%の案というのは、本当に世界平均でIPCCが必要だという案を下回ることになりますので、我々の計算だと、2050年までに、この60%削減というところまで行ってしまうと、日本国1国分の排出量が増えてしまうことになります。カーボンバジェットの観点から考えると、やはり先進国として、とてもこれでは説明責任を果たせないのではないかと思っております。
ご存じのように、パリ協定の提出のプロセスというのは、9か月から12か月前に出して、案を出して、それで世界各国に見てもらって、そして最後決めていくというようなプロセスで、世界に示すというプロセスがあります。ですので、この段階でいくと、このままでは日本の国際的評価は非常に低くなるということが想像されます。どういうふうに説明するのかということは、やっぱりお聞きしたいことです。やっぱり誰を向いた案なのかなと思っておりまして、これは日本企業全体の声ではないのではないかなと思っております。
昨日、InfluenceMapさんという、機関投資家さんが参照されるシンクタンクも出されておりますけれども、やはり経団連さんが10月に出した案、そのままであるということが、我々もそれを見ておりますし、指摘されています。やはり産業界としてJCLPさんとかJCIというのは、もっと高い削減目標をということを提言されていますし、こういった日本の政策というのは、やはり公平でインクルーシブな声を聞いた上で出していくべきではないかなと思っております。
そして、エネ基がもう既に発表されていますけれども、今、池田委員の内容にもありましたように60%、そして2040年の73%の案が、所与のものとしてそこに書かれているということに非常に懸念を持っています。これが決まってしまうと、NDCを後追いして決めるというのは非常に難しくなって、しかも2040年のNDCにまで影響するような内容になってしまうので、このエネ基というものも、やはりNDC審議会のほうから考え直してほしいということを強く言ってほしいと思っております。やっぱりこれだけ猛暑や洪水の被害が激甚化している中、その対策コストというものも検討しないままエネ基が決まっているということに、非常に懸念を持っておりまして、まさにここのNDCのほうでは、そういったことも検討していく場ですので、ぜひ、これをエネ基の審議、こちらのプロセスにも見直しを言ってほしいと強く思っております。
以上です。ありがとうございます。
○大塚委員長
どうもありがとうございました。
それでは、今の池田将太委員及び小西委員の提出資料につきまして、ご意見がございます委員は、ネームプレートを立てていただきますようお願いいたします。オンライン参加の委員の方は、挙手ボタンをクリックしてください。指名の後で、ご発言をお願いしたいと思います。
では、大橋座長、お願いします。
○大橋委員
座長と書いてありますけど、委員としてですね、発言をさせて頂ければ。前回、座長、チェアリングをしていて、池田さんのほうから、議論の形について触れていただいた部分は、ちょっと私に関する部分なので、そこの思いだけお伝えすると、資料が配付された後、通常、この会議は、あいうえお順でずっとやっているんですけど、それだとなかなか議論を聞きづらいところもあるので、取りあえず挙手制でやっていただいて、場合によっては2回、3回ご発言されている方もいて、一応、全部ご発言は尽くしたところで議論を止めたということが事実だと思います。そういう意味で言うと、今日、同様に、できれば挙手の形で、自由な順番でやっていただくのがいいと思うし、また、ぜひ議論を尽くして、最後、折り合うところ、折り合わないところもあるかもしれませんけれども、みんなで何らかの結論の方向へ持っていくということが、私はこの会議体として重要なのかなということで、そういう思いでやっていますということだけお伝えさせていただければと思います。
○大塚委員長
どうもありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
では、鶴崎委員、お願いします。
○鶴崎委員
ありがとうございました。
議論の進め方に関しては、前回、私も後半に唐突にということもあって、直線的な経路で妥当なんじゃないかということも申し上げましたが、一方で、それについても、自分の中でかなり雑な考察に基づいて言っていると。結果的に、その判断材料としては、まだ十分に深められていないという認識の下、そういうような言い方をいたしました。
その後、エネ基のほうも議論が進んで、いろんなデータ、資料なども出てきて、そういうのも拝見させていただいて今日に至っているわけですけれども、今日いただいたお話も伺っていて、やはり感じるのは、1.5℃目標というものに対して、整合的である目標として、この数字を埋めようと今しているわけですけれども、前回、軸として出た60%、あるいは73%が、1.5℃目標に整合していると言えるのかどうかというのが、恐らく争点になっているんだろうと思います。これに対して、今、池田委員、それから小西委員から、強い違和感があるというようなお話があったのかと思います。単純に見れば、私も明らかにずれているというふうに感じます。
一方で、前回、ヒアリングのほうで、RITEの秋元委員からお示しいただいた分析結果、参考資料2で今日配付されていますけれども、改めて拝見して、復習してきたんですが、そこでは1.5℃シナリオと整合的なものとして分析をされたというふうにご説明いただいております。その中の三つのシナリオが、どういうふうに整合しているということと関係しているのか、ちょっと私、まだ読み切れていないというか、はっきり分かっていないところもあるので、ぜひ後ほど秋元委員から改めて解説をいただけないかなと思っているところでございます。
この1.5℃に整合しているという中での直線的な経路というのが、あり得るというような解釈をされているんだというふうに私は読みました。それを政府も事務局も、そういう同じような解釈をされているんだろうと。このときに、私自身がちょっと感じたのは、世界全体の目標に対して、数字として2019年比60%減というのはあるけれども、そこに向かって、各国が適切な負担というか、応分の負担、特に先進国は共通だが差異ある責任という考えに基づいて、より突っ込んだ負担をするべきであるというふうな観点から見ても、秋元委員が示された限界削減費用は、日本において高い水準を示しているということがあったと思います。ここが一つ出発点なのかなと。恐らくここにまだ認識のギャップがあるのかなと思うので、ぜひここをお伺いできればと思っております。
以上です。
○大塚委員長
ありがとうございます。
オンラインの委員のほうから手が挙がっていますので、秋元委員、後で、もう既に手を挙げていただいていますけども、今の鶴崎委員に対するご回答も一緒にお願いしたいと思います。
では、藤瀬委員、お願いします。
○藤瀬委員
ありがとうございます。
まずは池田委員、小西委員、非常に有益な情報をシェアいただきまして、誠にありがとうございます。
私も今までの委員会を通して言わせていただいておりますが、まさにこの1.5℃目標に整合している目標値を出すというのは、NDCの会合の役割だと思っておりますので、そこを実際に前回の30分の時間では議論し切れていないということで、今回、しっかり議論できるような時間を事務局から設けていただいたと思います。
事務局の方にもご説明していただいたのですが、前回出していただいたのは、あくまでも「案」であるということだったので、目標値についても今日の会合で議論させていただくということで、まさに鶴崎委員もおっしゃっておりましたが、前回出していただいた直線的な目標値が、本当に世界の1.5℃目標に合致しているのかというところを、ぜひご説明いただけたら大変ありがたいなと思っております。
この委員会の中には専門の委員の先生方がたくさんいらっしゃると思いますので、ぜひ、その先生方のお話を聞かせていただきつつ、しっかりと議論を深めて、本当に日本国として世界に先んじてしっかりと高みのある目標を、この会合でしっかりと議論をして決めていけるといいなと思っております。やはり目標値を決めてからでないと、なかなかそれを達成するパスだとか方法論という議論にたどり着けないと思いますので、まずは皆さんの意見をしっかり聞かせていただきつつ、この目標値というところを決めていけたらなと思っています。
これは個人的な意見なのですけれども、私は前回の会合でも示させていただきましたが、やはり小西委員からもありましたように、世界の中でも、特に先進国である日本の役割は非常に大きいと思っておりますし、日本国として、誇らしい技術、そして今まで培ってきた研究というのがあると思いますので、66%以上の数値目標をぜひ掲げて達成できるようにというところは考えておりますので、今日の中でちょっと議論をさせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
○大塚委員長
ありがとうございます。
では、秋元委員、どうぞお願いします。
○秋元委員
ありがとうございます。
前回、私、短い時間でご説明の時間をいただいたので、若干早口で、理解いただいていない部分があるのかなと思って、ちょっと反省しているところでございますが、そういう面では、もう一回ご説明させていただいたほうがいいかなというふうに思うんですけども、大丈夫ですか。よろしいですか。
○大塚委員長
何分ぐらいかかる感じですか。
○秋元委員
10分ぐらいで、もちろん重複部分は避けますけども。
○大塚委員長
では、お願いします。
○秋元委員
参考資料で前回資料をご提示いただいていますので、スライド表示いただけないでしょうか。ありがとうございます。
前半部分は省かせていただいて、結果の部分で、少し、すみません、何ページか行っていただいて、ここからご説明したいと思います。9ページ目ですかね、ご説明したいと思いますけど、前回ご紹介したシナリオは、こちらでありますように、日本の排出に関しては、2030年までNDCを守るという、46%減、ここをピン留めしているということはご理解いただければと思います。ここを動かすかどうかという議論は、今回のアジェンダには入っていなかったというふうに思いますので、2030年46%減はピン留めしていると。その上で、2050年カーボンニュートラルというのも、日本政府は強くここを目指すということをおっしゃっていますので、このカーボンニュートラルはピン留めしていると。その上で、2040年に向けてどういう経路を通ればいいのかということで、60%減と73%減と80%減、いわゆる上に凸と直線ルートと下に凸を分析したというところでございます。
その上で、非常に重要なのは、今回分析させていただいたのは、世界全体で1.5℃を守るという条件に関しては、全シナリオで、この三つのシナリオともピン留めしているということでございますので、いずれのシナリオを取ったとしても、世界では1.5℃シナリオを実現し得るようなシナリオしか分析していないということでございまして、皆さん、若干ご懸念があったのは、1.5℃を達成できないのではないかということでございますが、今回の三つのシナリオとも、まず1.5℃は大前提としているということでございます。
ただ、もう一点、先ほどの繰り返しになりますが、日本も2030年、NDCをピン留めしておりますが、世界のほかの国も2030年に関してはNDCをピン留めしているというところはご理解いただければと思います。
次のスライドをお願いします。
それで、その上で、今回の分析において、先ほどからIPCCのシナリオ、要はIPCCのシナリオで言いますと、2035年に2019年比で60%減という数字感が出されていますが、これがどういうシナリオかといいますと、この表の上の一番上のIPCC C1というシナリオでございまして、1.5℃オーバーシュート無もしくは小さいというシナリオでございますので、このシナリオでいきますと、2035年60%減、これは世界全体でございますけれども、それに整合しているということでございまして、そのときの2040年の数字は69%減という数字になりまして、幅として見ると58~90%減、そしてCO2での正味ゼロの実現時期は2050年~55年というふうに言われています。このとき、右を見ていただきますと、ピーク気温が1.6℃、そして2100年の気温上昇は1.3℃という推定になっております。これは中央値だけ気温上昇は示しております。
それで、その下、ただ1.5℃目標として見ると、それだけではなくて、実際にはIPCCのシナリオは、1.5℃度目標は二つの1.5℃目標を示しておりまして、そのもう一つがC2というシナリオでございまして、これはオーバーシュート有というシナリオでございます。このシナリオになりますと、若干、排出削減率が変わってくるということになりますが、これでも1.5℃目標は、右にありますように、一応達成できますということでございます。ただ、ピークの気温は0.1℃上がってしまうということでございます。
その上で、今回の分析したシナリオは、どういうシナリオかということが一番下に書いていまして、若干、2040年のGHG排出削減率がC1のシナリオよりはちょっと緩やかになってくるということでございまして、C1のシナリオは、69%減というのが平均的な中央値でございますけれども、今回のシナリオは62%減ということになりますが、ただ、幅の中には入っているということでございます。
ただ、若干、ここがずれるのがなぜかということでございますが、先ほどご説明してきたように、2030年に関しては、NDCで固定しているということでございます。皆様よくご承知かと思いますが、例えばUNEPのEmissions Gap Reportなんかでいきますと、1.5℃目標、要はC1のシナリオ、もしくはC2のさらに高いC3というシナリオが、Wellbelow 2℃に相当するものでございますが、そこと2030年の世界のNDCは大きなギャップがあるということを言われています。よって、そこもNDCを前提とする以上は、若干、C1よりは排出が緩くなってしまっているというのが今回のシナリオでございますが、ただ、そこからさらに下げてということで、2040年に向かって相当深掘りをしていって、2050年に到達するというシナリオを描いていますので、C2には完全に合致したようなシナリオとして想定しているということでございますので、先ほどから科学に向き合うべきだとか、科学的な根拠が必要だということをおっしゃっていただきましたが、私もそのとおりだというふうに思っていまして、そういう意味では、確実に1.5℃と整合的なシナリオしか今回は分析していないということでございますし、これはIPCCの知見とも合致しているということをお示ししているものでございます。
次、お願いします。
その上で、国によって限界削減費用がどう違うのか。限界削減費用というのは、1トンCO2を削減するのに、最終的に限界値として幾らコストが必要なのかということになって、炭素プライスと同じ概念になりますが、炭素プライス水準として、これぐらいをかけると、この目標を達成できるということでございますが、それがどういう数字になるかといいますと、技術2想定をしていまして、成長実現シナリオは、かなりみんな技術が楽観的にコスト低減した場合、低成長シナリオは、保守的に今のペースで実現していった場合というような推計でございます。
その上で、60%減、73%減、80%減の3種類を分析しているものでございますが、60%減のときには、限界削減費用がほぼ国間で均等化しているということでございますので、このときに、日本がほかよりも数値が劣っていて、小さい数字であれば、日本は1.5℃目標不整合だというふうに言えると思いますけれども、限界削減費用が60%減のときに、ほかの国と均等化しているということは、経済合理的に1.5℃目標を達成できるシナリオになるということでございますので、60%減にしたからといって、1.5℃不整合にはならないということでございます。
何を申し上げたいかというと、数字が、基準年比何%減という数字を合わせることが重要ではなくて、排出削減努力を均等化するということが基本的に重要でございますので、みんなそれぞれの国は事情が違いますので、途上国なんかは、ベースラインではCO2排出量が上がっていく、潜在的に上がる状況の中でどのぐらい下げるのかということは、基準年比で何%減というふうに一律にしても、そこは異なってくるわけでございますので、必ずしも世界全体で60%減だから日本は60%減が正しいかどうかは分からないということでございますが、今回分析すると、偶然でございますけれども、2040年60%減にすると、ほぼ世界の国の限界削減費用は均等化しているということでございますので、もし経済合理的に1.5℃目標を達成しようと思うと、60%減を選択するオプションは十分あり得るということでございます。
ただ、私の視点からすると、先ほども少しありましたけども、先進国なので、より野心的であるべきだというのは私もそう思いますので、そうすると、もうちょっと限界削減費用は日本が高いほうがいいのではないかという議論が出てくると思います。ただ、そういう面で、この表を見ていただきますと、73%減になると日本は364ドル、もしくは低成長シナリオでは602ドルという、これ自体が相当高い炭素プライスになってきますが、これが例えばその他国が途上国等が含まれるわけでございますが、そこと比べても、もしくは米国、英国、EUといった国と比べても高めに出てくるということでございますので、十分、73%減以上であれば、堂々と誇って、1.5℃目標と整合的な目標を出しているんだということを主張できる目標になっているだろうということが、この表から分かるわけでございます。
次、お願いします。すみません、もうちょっとだけ。
ただ、ほかのモデルと炭素プライスを比較、RITEのモデルが若干特殊だというご批判がもしかしたらあるかと思って、ほかのモデルとの比較をしていますが、それでも十分、ほかのモデルとの比較からしても、炭素プライスとしては十分高めになっていて、60%減ぐらい以上であれば、十分整合的だろうと。1.5℃目標の炭素プライス、1.5℃目標に必要となるであろう炭素プライスと十分整合的だという評価ができますし、73%以上になれば、さらにそれを上回るような水準だということが、この分析から分かるということでございます。
次、お願いします。
時系列ということでございますが、46%減は決めておりますので、2030年、そこと限界削減費用はどれくらい違うのかということで、なるべく将来に向かって、限界削減費用、野心度を上げていきたいということもあると思いますので、この分析をしていますが、少なくとも73%減以上であれば、野心度は将来に向かって上がっていくだろうということも、ここから分かるわけでございます。
次、お願いします。
限界削減費用だけではないということがありますので、エネルギーシステムコスト全体ということで、これは温暖化対策費用の全体感ということでございますが、これで累積的に見ても、73%減以上であると、下に凸のような形でコストは上がっていくということでございますので、当然ながら、厳しい削減をすれば、世界への影響はいいかもしれませんけど、かなりやっぱり温暖化対策コストが上がってくると、将来世代に向かって対策コストの負担も残していくことになりますので、やはり対策コストと温暖化影響被害の低減部分と、ある程度バランスを取って目標を決めないと、将来世代にむしろ対策費用の負担を大きく残してしまうということになりかねないので、そういう面でのバランス感覚ということも含めて、この委員会としては排出削減水準を決めていく必要があると思いますので、そういった部分での参考情報ということで、この数値も示させていただいているということでございます。
次、お願いします。
大体以上かと思いますが、最後に申し上げておきたいのは、当然ながら、あと温暖化影響被害が入っていないんじゃないかということをおっしゃった方もいらっしゃいましたが、今回、繰り返しでございますけれども、どのシナリオを取っても、1.5℃目標と基本的に整合的なシナリオをご提示していますので、1.5℃シナリオというのは、IPCCの報告書の中にも書かれていますけれども、2℃目標だと、温暖化影響被害のほうがもしかしたら大きいかもしれないと。対策費用とのバランスで、かもしれないということは書かれていますが、1.5℃目標になると、どちらがバランスしているか分からないということも書かれていて、1.5℃目標であると、十分、将来世代に負担を残さないという、安全サイドも見て1.5℃ということになっていますので、それも含めた評価として今回はご提示させていただいていますので、一応、政府案として73%減、批判としては、直線的であまり考えていないんじゃないかというご批判はあるかもしれませんけど、我々の分析からしても、偶然とはいえ、73%減ぐらいになると、十分1.5℃目標と整合的で、しかも、ほかの国に比べても十分野心度はちゃんとあるんだということを主張できるような数字感ということをお示しさせていただいたということでございます。
すみません。長くなって申し訳ございません。ご質問があればお答えしたいと思いますので、よろしくお願いします。
○大塚委員長
どうもありがとうございます。まだご質問が出てくるかもしれません。ありがとうございました。
では、池田将太委員、どうぞ。
○池田(将)委員
ありがとうございます。これは今、この件に関してですか。
○大塚委員長
目標との関係の話で、先ほどのコメントとの関係でのご発言をいただければ。
○池田(将)委員
ありがとうございます。
さっき大橋座長のほうからあったんですけど、僕がさっき挙げていたのは、大橋座長から回答があった内容に対してのコメントを寄せていただいたほうがいいかなと思ってのそれだったんですけれども、合っていますか、趣旨。
○大塚委員長
どうぞ。
○池田(将)委員
ありがとうございます。
一つは、挙手制だという形で、前回のところは30分のところで始まったかなというふうに認識しているんですけど、あのときはやっぱり事前の議題がない中での挙手制だったということもあるので、多分、先ほど何人かの委員もお話しされていたと思うんですけど、やっぱり準備、しっかりそこに対するインプットとか、それに対する自分の考えをちゃんとコメントとして述べる時間が全然なかったというふうに思うんですよね。これまでの会議って、基本的に、事前に議題が出されていて、それに対して委員が読み込んだ上で、適切な意見が述べられるように準備をするというのが前提だったかなというふうに思うので、30分という時間の中で突然出てきて、もちろん、その場で意見が一旦収まったかもしれないですけど、あれが本当に十分な議論の設計だったのかという、ここの部分が僕はご指摘させていただきたいところだなというふうに思っています。
あとは、コストのところは、今ご説明いただいた部分もありましたけれども、これは今の話に対してですけれども、やっぱり限界削減コストというのは、公平性を議論するというのは、国際的にはそんなに通用する話じゃないのかなというふうに考えているので、ここは国際交渉の専門家の意見をぜひ伺いたいなというふうに、今の話を聞いていて思いました。
一旦、以上です。
○大塚委員長
では、オンラインですけど、津久井委員、お願いします。
○津久井委員
ありがとうございます。私のほうは、冒頭議論がありました会議の進め方のところについてコメントさせていただければと思い、手を挙げさせていただいておりました。
冒頭、事務局のほうからご説明いただきましたが、前回の委員会は、私もアゼルバイジャンからの帰国のフライトと重なっており、参加がかないませんでした。最後30分で目標が提示されたということで、残念ながら意見を述べることができず、非常に残念に思っております。
ほかの委員の皆様からも、目標値、それから1.5℃への整合性の部分について、少し疑問の声が上がっているかなと思っております。秋元委員のほうから前回の資料について再度ご説明いただき、大変参考になりまして、ありがとうございます。
1.5℃に整合しているという点について十分理解いたしましたが、1点、懸念としましては、オーバーシュートを前提とした議論ということで、オーバーシュートによる被害の大きさでしたり、今後の影響というところは、IPCCでも強く述べられている部分ですので、オーバーシュートした上での1.5℃というのが、本当に将来世代にとってよい対策なのかというところも踏まえて、改めて削減目標について議論させていただければと思っております。
私からは以上です。
○大塚委員長
ありがとうございます。
では、髙村委員、お願いします。
○髙村委員
ありがとうございます。すみません。ひどい声で申し訳ないですけれども。
今までのご議論を聞いていて、一つ明確にしたほうがいいかなというふうに思った点がまずあります。それは、11月25日に事務局からご提案があったものというものが、決めるための提案だったと私は理解をしていませんで、温対計画の案の具体的な中身を詰めていく、あるいは、さらに言うと、今日も来てくださったんですけど、エネ庁のほうで議論をしているエネルギー基本計画の検討に当たって、どういう35年・40年のエネルギーの在り方を書くのかというところで、まさに50年カーボンニュートラルに向けて、どういう道筋を基に検討を合わせていくのかという必要があったので、事務局の言葉を借りると、直線的な経路を軸に検討を進めるという方向が提案されたと私は思っていました。
ただ、今日、お話を聞いていて、恐らく検討のプロセスのところが、必ずしもここで出されている提案がどういうこの後検討のプロセスで進んでいくかというところのクラリティが、やはり少し欠いていたのかもしれない。つまり、少なくとも共通認識になっていなかったんじゃないかということを感じました。私はそういうふうに理解していたんですけれども、改めて、ですから事務局のほうから、できれば、ここで議論していることって、私は今、この議論をしているのは、温対計画の案をこれからつくりながら、目標の相場感というのももちろん議論し、しかし、それは当然ここで決めるんじゃなくて、広くパブリックコメントにもかけ、議論をしていく。議論を改めてそれを基にしていくというプロセスも、この途中にあるという理解をしていますけれども、それでいいのかどうかということです。そういう意味では、進め方の、この議論の位置を、我々が今どこにいるかということの位置を、やっぱり共有したほうがいいんじゃないかというふうに思ったということであります。
その意味で、これからちょっとどう進めるかという意味で、私自身思いましたが、非常にやはり心強いと思いましたのは、委員のどなたも、やっぱり1.5℃目標と整合的じゃないといけないというところは、誰も異論がないということだと思います。もちろん、その経路がどうなのかということについての意見の違いは、特に短期・中期のところでありますけれども、これは非常に貴重な基盤で、我々、目標を議論するにしても、温対計画の中での措置、あるいはエネルギー分野の措置という意味では、エネルギー基本計画の内容に関わるようなところで、どういう立ち位置で議論するのかという意味で、非常に重要な基盤が我々の中にはあるということだと思います。
その上で、議論として、私、数字は重要、目標は重要なんですけれども、しかし、前回の議論で、私、専門家の先生方、需要ですとか対策の専門家の先生方が、やはり本当に直線でいいのと意見された背景というのは、これまでの対策が果たしてどこまで進んでいるのか。それから、これからどういう対策を国は導入できるのか、すべきなのか。そして、それが単純な積み上げではないとしても、どこまで行けそうなのかというところのやはり議論が極めて重要だと思うんですね。数字は出せる。けれども、それを担保する施策がなければ、結局、計画は絵に描いた餅に終わってしまうので、その意味で、私は、目標の特に短・中期の削減の水準について、まだ意見の違いがあることは前提とした上で、どういう施策を、しかし、最低、今直線でも60ですよね、35年に。どういう対策が必要かという議論、あるいは可能かという議論を、専門家がいる場でしっかり議論すべきじゃないかというふうに思います。
それは、もう一つ言うと、エネルギー政策も当然この温対計画の極めて重要なパーツなので、今回、参考資料5で出していただいていますけれども、エネルギー基本計画で、これも案として当然出されて、決まったものではないと理解していますが、しかし、このタイミングでは、やっぱりしっかりここから1.5℃との整合的な、あるいは30年、35年、通っていく際の道筋との関係で、何が必要かという議論をここからインプットすべきだと思います。
秋元先生をはじめ、やっぱりコストの点は重要だと思います。同時に、やはりGXの効果も含めて、この対策の便益をしっかり見なきゃいけないと思っていまして、そうした観点からも、どういう対策を取ると、削減とともにそうした効果が出るのか、便益、国民に対してプラスになるような対策ができるのかという知恵を、せっかくこれだけ専門家の方が集まっていらっしゃるので、議論をしながら、本当にどの辺りの数字感を我々つくれるのか、合意ができるのかを探るというほうが建設的ではないかなというふうに思っています。
以上です。
○大塚委員長
ありがとうございます。
前回決まったことに関してのご指摘がございましたが、前回は、直線を軸として、方向性として考えるというところまでお話が行っていたということで、髙村委員がおっしゃるように、そこまでのことだったというふうに私は認識しておりますが、事務局、そこの点、ちょっとお願いします。
○伊藤室長
事務局でございます。
髙村委員がおっしゃっていただいたように、まさに文字どおりでございますけれども、直線を軸に検討を深めるようにという形で、大橋座長から、ご指示いただきましたので、それを基に検討ということだと思いますし、冒頭申し上げたとおり、複数回にわたって、この審議会でもいろんなことを出し合いながら議論を深めていただきたいというふうに思っております。
○大塚委員長
ありがとうございました。
では、小西委員、どうぞ。
○小西委員
ありがとうございます。
今、秋元委員のご説明、再度ありがとうございました。ちょっと残念だなと思うのは、やっぱり、もちろんRITEさんのシナリオは非常に優れたシナリオではあるんですけれども、例えば自然エネルギー財団のほうで、WWFのシステム技術研究所もClimate Integrateさんも、IGESさんとか国環研さん、今日は増井委員がいらっしゃるので、またお伺いできればと思いますが、そういった科学的根拠のある独立系のシンクタンクのエネシナリオが、やはりこの場で、先ほどの秋元委員のように、説明する機会をいただけないことが残念だなと思っております。それはやっぱり日本の損失じゃないかなと。これが本当にIPCCだったらば、それぞれ科学的根拠のあるエネシナリオなので、全てレビューして、その上で恐らく幅を持たせて、その中から日本は選択肢として国民に提示できるような、三つぐらいの選択肢を出して選んでいくというのが、公平で開かれた透明性のあるプロセスなのではないかなと思っております。
例えば先ほど池田委員がおっしゃっていたんですけれども、費用の出し方にしても、やはり私たち、システム技術研究所の槌屋先生のご意見として、やっぱり限界削減費用というのは非常に技術ごとのコストを積み上げていくものなので、かなり、技術のコストをどう見るかによって、ちょっと恣意的になる可能性もあるので、それで、システム技術研究所のやり方では、追加的に温暖化対策に必要なコストを1年の中の平均として出しているという形にしています。ほかのシナリオさんもその形を取っている、後ほど、また増井先生にお聞きできればと思うんですけれども、やはり研究機関によってやり方はかなりいろいろ違います。考え方も違いますので。ですので、もし可能ならば、この場で、ほかのきちんとしたシナリオの発表機会もいただいて、その中で科学的根拠を持って選択肢をつくっていくという形が、本当は望ましいのではないかなと思っております。
○大塚委員長
では、どうぞ。池田将太委員、お願いします。
○池田(将)委員
ありがとうございます。
僕も小西委員と同じ意見なんですけど、今説明していただいたのは、オーバーシュートありきのシナリオだったかなと思うんですけど、やっぱり今オーバーシュート前提で1.5℃整合ではなく、オーバーシュートしない形で1.5℃整合というのが、世界全体の気候危機を考えても当然目指すべき目標なのかなというふうに思っているので、私自身、これだけのシンクタンクの皆さんがシナリオを書かれているので、そこの説明を聞いた上で、決定していくプロセスが必要なんじゃないかというふうに思いました。
以上です。
○大塚委員長
秋元委員、今の点に関して、何かご回答いただくことはございますでしょうか。
○秋元委員
ありがとうございます。
いろいろご意見いただいて、ありがとうございます。
まず、今、オーバーシュートかどうかということについて、ご指摘いただいたと思います。当然ながら、1.5℃オーバーシュートなしのほうが望ましいことは間違いないというふうに、私も思います。ただ、今のそれは、先ほどご紹介した話でございますが、2030年にNDCをみんなが守るという前提の下に立つと、かなり、UNEPのEmissions Gap Reportでも、1.5℃オーバーシュートなしとは、物すごく大きなエミッションのギャップがあると。それは埋めがたいようなギャップがあり、もし、その議論をするのであれば、2030年のNDCをとりわけ大排出国である中国、インド、アメリカといったところが、もっと大きく深掘りしない限りは、1.5℃オーバーシュートなしのシナリオに乗ることは不可能でして、日本がどれだけ頑張ろうと、そこには全く影響はしないと。残念ながら、そういう状況なので、もしその議論をするのであれば、アメリカ、インド、中国等の大排出国に、2030年の目標の深掘りの議論を仕掛けないといけないと思うんですけれども、そういう状況では残念ながらないというふうに思います。しかも、米国にしろ欧州にしろ、NDCさえ守れないというのが、圧倒的に今NDCさえ守れないような状況になっていますので、そこも含めて考える必要があると。
だから、私が申し上げてきたのは、NDCは、2030年前提として考えた場合は、若干のオーバーシュートは致し方ないと。ただ、それでも1.5℃は守るべきだと私も思うので、そういう中でのぎりぎりのシナリオとして、私が今回お示ししたものを示したということでございますので、これ以上の削減を深掘りしようと思うと、先ほど申しましたように、2030年NDCの議論を米国、中国、インドに仕掛ける必要があるかなと思いますが、ちょっと今の状況では、リアリティのない、しかもトランプ政権とそれをやれるのかというような感じを持っています。
その上で、ほかの議論では、MACの均等化が、MACが指標としていいのかというご議論がありました。もちろん、いろいろな削減費用の指標があり、だからMACだけではなくて、我々の分析でも、排出費用とか、これは積分値になるわけでございますが、そういったものも同時にお示ししているということでございますし、IPCCでも、そういう示し方をしていて、限界削減費用としてのMACを示すということと、総排出費用、もしくは総排出費用をGDPで割ったGDP当たりの費用で示すとか、そういったやり方をしていて、IPCCの標準的な手法にのっとった示し方を我々はしているというふうに理解しています。
もちろん、公平性の議論というのは非常に深遠な議論でございますので、公平とは何なのかということに関しては、議論が複雑にあると思います。MACが均等化していることが公平ではないというのは、そのとおりでございます。よって、今回お示ししたのは、MACが均等化している60%減がいいということは、我々も思っているわけではなくて、だから、それよりは深掘りしたほうがいいだろうと。そうすると、73%減は少なくとも深堀りにはなっているので、十分な公平性というところには担保がされているだろうと。
もちろん、衡平性の議論というのは非常に深遠な議論でございますので、衡平とは何なのかということに関しては、議論が複雑にあると思います。MACが均等化していることが衡平ではないというのは、そのとおりでございます。よって、今回お示ししたのは、MACが均等化している60%減がいいということは、我々も思っているわけではなくて、だから、それよりは深掘りしたほうがいいだろうと。そうすると、73%減は少なくとも深堀りにはなっているので、十分な衡平性というところには担保がされているだろうと。
もちろん、どこまで深掘りすれば衡平なのかという議論は、いろいろなやり方があると思いますので、衡平というのは、科学的に定義するというのは非常に難しいので、もちろん、ほかの研究機関、欧州等の研究機関では、そういった概念をいろいろ導入して、衡平性ってどれぐらいだという議論がなされているというのはずっと知っていますけれども、それは以前から、パリ協定の前の京都議定書をその後どうするかという議論で、パリ協定ではない形で、バーデンシェアリングの議論はあったわけですけど、結局、やっぱりそれは潰れたわけで、衡平性を定義するのは非常に難しいので、国際的には私は成立しなかったと。そういう中で、パリ協定という形で自主的に目標を出し、それを後でレビューするという制度は仕上がっているというふうに思いますので、そういう流れからも、今回のプロセスというのは、議論自体の、この会議体としての議論のプロセスは分かりませんけども、分析・検討としては十分それにのっとったものになっているというふうに理解しています。
最後、もう一点だけですけれども、ほかの研究機関の分析、シナリオを小西委員がお示しいただいて、それとどうなのかという議論でございますが、私の理解では、全部を詳細に見ているわけではございませんが、先ほどお示ししていただいた中では、例えばIGESさんは基本政策分科会でもご発表なされていて、その場でもかなり議論があったと思いますが、IGESさんの分析は、全体のモデルにはなっていなくて、需要側の需要量がどれぐらいかということを積み上げて決めていると。何かコスト基準があるわけではなくて、こうあってほしいという中で需要量を決めていて、それに見合ったような形で、こうあってほしいという発電構成を決めているということで、これは完全に、IGESさんの中で分析された中では、ほか、コミュニケーションを取ってやられたということは聞いていますが、ただ、何かのコスト基準とか、経済的な指標を基準にモデル分析したものではなくて、このシナリオだと大体このぐらいの排出量になりますということを、ただ積み上げて評価しているというだけでございます。その上で、決めた電源構成に対して、どういった再エネの運用があるのかということに関しては、PROMODという、一般によく使われているソフトウエアを使って計算をして、一応、整合性は見ているということでございますが、じゃあ、それがほかの国に対してどれぐらいコストがかかるのかとか、全体のエネルギーシステムの中で、それが最適なのかどうか。やはり温暖化対策をするというのは非常にコストがかかるわけでございますので、なるべく費用を安く仕上げるということが、それを実現する実現の可能性を高めるということでもあるので、そういった分析が必要でございますが、そういったことはIGESさんの分析の中ではされていなくて、それはエネルギー基本政策分科会でも、IGESさん自身、そういうふうに認められていたというふうに思います。
また、自然エネルギー財団さんも、全くIGESさんと同じ分析をされているというふうに理解していて、エネルギー需要は積み上げて、コストを想定せずに積み上げておられますし、それに対してIGESさんは、自然エネルギーが80%だったと思いますけれども、原子力はなしという前提の下で、そういう自然エネルギー財団さんのお考えの下でつくられたシナリオでございまして、何かコストの評価をしたものではないということでございます。それで、その後、再エネが運用できるのかどうかということは、先ほどと同様、IGESさんと同様、PROMODというソフトウエアを使って一応チェックはされているということでございますが、繰り返しでございますけれども、全体をエネルギーとして、システムとして見ているわけではないということでございますので、我々は、やはりこの問題は、気候変動問題は、海外との国際的な状況の中でどうあるべきかということも考えなければいけないと。しかも、日本だけエネルギーコストを上げてしまうと、結局、産業は海外に移転していくだけで、これはグローバルに気候変動問題に対応できないので、そうすると1.5℃はむしろできなくなってしまうという思いがあるので、我々としては、ちゃんと世界で整合的に1.5℃を実現できる道筋を分析しているつもりでございますので、ちょっと手前みそで申し訳ないですけれども、そういうことをちゃんとやった上での科学的な知見に基づいて、ぜひ目標を考えていただきたい。そうしないと、決して日本が厳しい目標をしたからといって1.5℃にできるわけではなくて、むしろ悪影響が出てくるということをよく理解していただければというふうに思います。
以上です。
○大塚委員長
ありがとうございました。
では、増井委員、どうぞお願いします。
○増井委員
よろしいでしょうか。
○大塚委員長
どうぞ、お願いします。
○増井委員
まずは、今回のような機会を設定していただきまして、どうもありがとうございます。
今、秋元委員がご発言されて、モデル分析をやっている立場からすると、同じような意見になるんですけれども、今回の1.5℃目標に整合的なのかどうかというのは、あくまでグローバルな観点からどうかということが科学の面からは言えることです。
そこから、じゃあ、日本でどれぐらい削減しないといけないのかといったところに関しましては、まさに公平性ですとか、いろんな基準があるわけで、そういった中で、日本の覚悟といいましょうか、この1.5℃目標にどう貢献していくのか、そういった姿勢というのが、まさに今問われているのではないかなと思っています。
そういう意味で、今回、我々もモデルを使って分析しましたけれども、どういうふうな形で2050年ゼロを実現していくのか、そこのところ、若干コストが上がっても前倒しで取り組むのか、あるいは経済を優先して後ろ倒しでやっていくのか、そういうところについて、国際的な社会に対してどういうメッセージを発するのかという、そういうところではないかなと思っています。
今、小西委員のほうからありましたモデル比較ということで、小西委員もおっしゃっていました麻生政権ときには、様々なモデルチームが集まって分析をしてまいりました。あのときは、前提をきちっとそろえた上で分析をしていたということに対して、今回は様々な前提の下で出された結果を比較することになるので、若干、かえって混乱させる可能性があるかなという、そういう、ちょっと、やや懸念というか、危惧をしています。そういう意味で、今からモデル比較の結果を参考値として出すというのは非常に意味があるとは思いますけれども、なかなか、全く同じ前提の下で計算をした、そういったものではない情報をどう標準化していくのかというところも、かなり難しいところがあります。時間的な、どれだけの時間や猶予が与えられているのか、そういったところも踏まえて、最終的にご判断いただければなと思っています。
最後に、今回、いろんな意見が出ているわけで、最終的にどういう形になるのか、ちょっとこれからの議論次第だとは思うんですけれども、やはりいろんな意見があったと、そういった意見に対して、どう我々が、日本として向き合っていくのかというところのメッセージは、きちんと示しておく必要があるのではないかなと思っています。
例えば、いろいろ指摘されております経済的な影響、これをどうするのか、どう配慮するのか、といったこと。また、日本が1.5℃目標に対してどう貢献していくのか。仮に直線であったとしても、さらに高みを目指すということで、冒頭、池田委員のほうからご指摘ありましたけれども、やはり目標はそういうふうに設定されたとしても、さらなる削減というのを常に目指していく、そういう姿勢というのを示さないと、やはり日本はすごく後ろ向きだと見られかねないので、そういったところ、どういうメッセージを発するのかというところがやっぱり重要ではないかなというふうに思いました。
以上です。
○大塚委員長
ありがとうございます。
では、岩船委員、お願いします。
○岩船委員
ありがとうございます。
今の秋元委員、増井委員のコメントは、非常に説得的でした。要するに、もう少し私たちとしてはちゃんと説明を聞く時間が欲しかったというのが正直なところだと思います。前回、三つのパスが示されましたけれども、その比較はできたかもしれないんですけれども、それがどういう前提なのかとか、どういうシナリオだったのかとかというのを吟味する間もなく、真ん中で行きますと言われて、私は、それでやっぱりえっとなりました。正直申し上げまして。やっぱりその辺りのところで、もう少し丁寧に議論を進めていただきたかったというのがあります。私は、この数値自体は、どれにしても野心的だと思っていますので、正直、水準は、どれでもいいというわけじゃないんですけども、そこまで強い意見はありませんでした。
ただ、やり方として、やはり前回、RITEと国環研の説明は聞いたんですけれども、どういうシナリオかというところは、基本政策分科会のほうで説明しますみたいなことも後で言われて、ここでは説明してくれないんですかと正直思いましたし、もちろん二つだけじゃなくて、基本政策分科会のほうでは、ほかのところのシナリオとモデルも説明もされました。
あと、秋元委員の説明は非常に説得的だとは思うんですけれども、やはり研究機関の間でモデルの特徴もあるし、それを比較して、モデルの、皆さんの中でやり取りしていただくことが、やっぱり周りから見ていて、専門じゃない人間も理解が進むという面がありますので、そこはやっぱりもう少し時間をかけてほしかったなというのが私の印象です。なので、もし、今回はこれでいくかもしれませんけれども、例えば、また新しく目標を決め直すときには、もう少し丁寧に時間をかけて、そういう体制を組んでやっていただきたいと思いました。
もう一つは、先ほど髙村委員からお話があったんですけども、私は、ですから、数字自体は非常にどれも野心的だと思っていますと。ただ、この会議に今年参加して、いきなり最初、目標に向かってオントラックで進んでいますというところからスタートして、私は本当にそれがオントラックなのか、やっぱり対策の分解もされていないし、ここまでなぜ減ったかという吟味をもっとしてくださいと何度も申し上げたつもりでしたけど、やっぱりそれはそれで終わってしまったと。やっぱりその分解、きちんとした分析がなければ、この先も本当に減る要素があるのか、2030年までに。何が道筋としてこれから選択できるのかということが全く分からないわけですよね。そこが非常に重要だと思っているのに、その議論なしに、2040年73%みたいな話になってしまったところが、私、個人的には一番問題があるなと思ったところです。
なので、ここの役割が温対計画のレビューをするということであれば、本気でもっとレビューをしてほしい。きちんとWG等をつくって、プロの人たちに、きちんと分解して、原単位要素、あとは本当に省エネが技術的に進んだかとか、そういうところを様々、日本にはいいボトムアップシミュレーションができるツールもございますので、産業界の人の生産の要素が変わった理由みたいなものもしっかり見ていただいた上で、やっぱりもっと丁寧にレビューしなきゃいけない。でないと、この先どこまでできるのかが全く分かりませんので、そこはぜひお願いしたいと思います。
以上です。
○大塚委員長
どうも建設的なご意見ありがとうございます。
では、経団連のほうの池田委員、どうぞお願いします。
○池田(三)委員
経団連環境エネルギー本部長を務めております池田でございます。
多くの委員の方々から、前回の会合では議論が足りなかったというご指摘がありましたが、本日、このように改めて議論ができていることは、とても有意義なことと思います。その上で、前回の会合でも、2030年46%減、2050年カーボンニュートラルという国の目標がある中で、上に凸型の削減パスを想定することが理にかなっているということを申し上げました。この点について、本日改めてご説明させていただきます。先生方には釈迦に説法の部分があるかもしれませんが、お許しいただければと思います。
これまでも申し上げてきたとおり、カーボンニュートラルは、現存する技術だけでは実現できません。GHGの大幅削減に資する革新的な技術の開発と、普及が不可欠です。再エネ、原子力といった、脱炭素電源の拡大はもちろん必要ですが、それだけではカーボンニュートラルは実現できません。また、これらの革新的技術のほとんどが、いまだ具体的なソリューションを見いだせていないのが現状で、その開発と普及は簡単ではなく、極めてチャレンジングな課題でございます。岩船先生からもご指摘がありましたが、今回示されている三つのシナリオは、どれも極めてチャレンジングだということです。
当然、革新的技術の開発には多額の投資が必要です。今や多くの企業がネットゼロに向けて果敢に取り組んでいます。経団連が2020年から始めたカーボンニュートラルに向けた「チャレンジゼロ」には、約200社が参加しております。また、経団連のカーボンニュートラル行動計画でも、63業種にご参加いただき、推進しているところですが、その中で第四の柱として、2050年カーボンニュートラルに向けた革新的な技術の開発を推進しており、水素還元製鉄や、CO2等を用いたプラスチック原料製造技術、アンモニア・水素発電技術などに取り組んでいるところです。
ただし、これらの多額の投資を長期間にわたって継続するためには、企業の持続的な成長が必要不可欠でございます。持続的な成長なくして多額の投資原資は確保できませんし、カーボンニュートラルの実現も遠のいてしまいます。このことを、まず強調させていただきます。
政府にも同じことが言えます。日本経済が持続的かつ大きく成長しないと十分な財源を確保することができず、政府として、カーボンニュートラルに向けた必要な投資や社会実装のための資金を振り向けることが難しくなります。政府レベルで考えても、持続的な成長なくしては、カーボンニュートラルの実現は遠のいてしてしまいます。
そして、個人も同様でして、あらゆる個人が消費者として脱炭素に資する製品やサービスを積極的に購入しなければ、我が国のカーボンニュートラルは実現いたしません。脱炭素に資する製品やサービスには、脱炭素化に向けた多額の研究開発費が上乗せされますので、少なくとも世の中に出始めた当初は価格が高くならざるを得ません。なお、その後世の中に広く普及していけば、価格は下がっていくことが期待できます。個人消費者のレベルで見ても、カーボンニュートラルの実現には持続的な所得の拡大が必要でございます。
以上、長々と申し上げましたが、カーボンニュートラルの実現に必要な革新的な技術の開発と普及には、国レベルでも企業レベルでも個人レベルでも、多額の資金が必要で、だからこそ、持続的な成長、所得の増大が必要であり、環境と経済の好循環が極めて重要となります。
また、資金のみならず、時間も一定程度必要です。冒頭申し上げたとおり、これらの革新的技術のほとんどが、これから具体的なソリューションを見いだしていかなければなりませんので、その開発に時間がかかることも想定されますし、革新的な技術開発のソリューションを見いだした後、その技術を社会実装していくのにも時間がかかります。特に開発当初はどうしても製品・サービスの価格が高くなりますので、無理に早く普及させようとすると、多くの消費者・国民に価格の高い脱炭素製品・サービスを購入していただく必要がございます。まず、経済的に余裕のある消費者に購入していただき、量産されて価格が低下していく過程で、多くの消費者に脱炭素製品・サービスをご購入していただくことを通じて、広く社会実装していくというのが、理にかなっていて、そのような意味でも一定程度の時間が必要と考えます。
以上のことから、2050年カーボンニュートラルの実現に当たりましては、上に凸型の削減経路のほうが、これ自体もチャレンジングな取組ではあるものの、より理にかなっていると考えています。
誤解のないよう申し上げますが、一部の企業や個人の方々が積極的に取り組んでいただくということは大いに歓迎いたしますが、今、日本国としての目標を検討しているわけでして、我が国全体で考えると、下に凸型の目標は、多くの企業や国民に、より多大な負担を課すことになります。また、言うまでもなく、我が国が解決すべき社会的課題は、気候変動問題だけではなく、様々な社会的な課題を解決するための対策が必要でして、その対策に我が国の成長の果実を振り向けていく必要がございます。このような日本経済・社会の現状等に照らしますと、下に凸型の目標を掲げるべきとの主張は、大いに疑問です。
なお、1.5℃目標との関係では、2035年度60%減の目標は、IPCCが示した1.5℃実現経路の幅の中に収まっていますので、代表値よりは下回っていますが、1.5℃目標と整合的ではないとは言えず、許容される範囲であると考えております。もし、先進国としてもっと削減すべきであるというのであれば、先ほど秋元先生からも限界削減費用の話がございましたが、日本としても、もちろん自国の排出量削減に向けて努力いたしますが、日本は世界全体の3%しか排出していないこともあり、むしろ、日本の技術やノウハウを、アジアをはじめとした世界各国に広げていって、世界全体での脱炭素を目指すべきではないかと考えます。
そして、残念なことではありますが、我が国は資源が乏しく、海に囲まれた島国でありまして、隣国と送電網を巡らすこともできず、再エネの適地もかなり限定的になってきてしまっています。このようなことを考えると、現状、我が国は諸外国に比べて脱炭素社会を実現する条件に恵まれているとは言えず、むしろハンディキャップを負っていることについて、我々は直視する必要があると考えています。そのようなことから、下に凸型の目標を掲げることは望ましくないと考えている次第です。まずは、これらの点について主張したいと思います。よろしくお願いいたします。
○大塚委員長
ありがとうございました。
では、ちょっとこの辺で事務局のほうからコメントしていただきたいと思います。では、堀上審議官、どうぞお願いします。
○堀上審議官
環境省で担当審議官をしております堀上です。
多くのご意見ありがとうございます。特に進め方につきましてご意見を賜りました。時間的な制約があるということは、もちろんあるわけですが、ただ、内容的に丁寧にご説明すべきところが、なかなかうまく届けることができていないというご指摘、大変反省をしているところでございます。そういう意味では、お話があったようなところは十分今後生かしていきたいと思っておりますが、時間的な制約があるというところは、一つご承知おきいただきたいというのはお話をしておきたいと思います。
もう一点は、髙村先生がお話しされた、内容的に温暖化対策をどういうふうにしていくのかというところは、やはり併せて考えていかなければいけませんので、これは今回、温対計画の見直しということでもありますので、それとNDCは一体でありますので、そこの辺りも十分こちらもまだご説明できていないところでありますので、そこもご説明させていただきながら、NDCについても、またご意見をいただきたいというのが、今現在、我々の事務方としての進め方でお話をさせていただきたいところでございます。
ちょっと、もう少し詳しくは担当室長からあります。
○伊藤室長
事務局でございます。
議論を遮るわけではなくて、ありましたとおり、前回もいわゆるNDCの在りよう、位置づけというものも、ある程度表現したほうがいいというコメントもいただきましたので、その辺り、温対計画の案の1章、2章を使いながら、簡単に5分程度ご説明申し上げたいと思います。
まず、温対計画の案の最初に出てまいります気候変動のところと影響のところ、ここはしっかり深刻なものであるというのを原案として表現させていただいた上で、2ページ目の6行目にありますとおり、やはり状況の変化の中で、我が国として、しっかり脱炭素を、エネルギーの安定供給と経済成長と、これを同時実現をする必要があるという方針の中で、この温対計画、NDCをご議論いただきたいということで、その辺りも、温対計画の案にも書かせていただいております。
それから、特にIPCCの科学的知見も踏まえながらというところでございますが、ポイントで申し上げると、まさに脱炭素だけではなくて、全てを考えていくという意味では、10ページ目、11ページ目に設けさせていただいておるエネルギー周りの、ロシアによるウクライナ侵攻であるとか、中東情勢であるとか、あるいはDX、GXによる需要増であるとか、このような見込み、あるいは主要国では、10行目から12行目ですけれども、気候変動対策としてのエネルギー構造転換であるとか産業政策と、これを一体化させながら取り組んでいくということかと思っております。ですので、その辺りを考えながら、引き続きご議論もいただけたらと思っております。
加えて、ポイントとして、まさにさっき申し上げた、NDCの在りようで申し上げますと、19ページ目で案をご用意し、もちろんここもご意見をいただきながらブラッシュアップということだと思っておりますが、極めて様々な意味で不透明である状況ではございますが、前回いただいたコメントも踏まえて、19ページ目には、特に2030から先の35年、40年の目標の在りようを記載しております。
端的に申し上げると、まずはフォアキャスト、バックキャスト、両面から明確な経路を示すものであってはどうかということ。それから、官民が予見性を持って排出削減と経済成長の同時実現、これを進めるための野心的な目標というところ。最後に、ネットゼロに向けた全体的な進捗評価の軸という形の活用という意味合いも持たせながら設けてはどうかということでございます。
最後に、やはり目標を定めるだけではなくて、パリ協定に基づいて誠実に皆が対策施策を講じていくと、ここもしっかり、そういう在りようのあるNDCに仕上げてまいりたいというふうに思ってございます。
また、補足としまして、髙村委員から、我々は今どこにいるのかという点で申し上げますと、この審議会自体は諮問機関として位置づけさせていただいております。若干ご説明させていただいたところもありますが、政府の案としてお示しをして、まさに複数回にわたってご議論をいただきながら、いわゆる総理がヘッドで、地球温暖化対策本部というところで、案として取りまとめをして、パブコメに入らせていただくという段階で、最後は閣議決定になる文書というところのプロセスでございます。まさに複数回をかけて、様々ご意見をいただきながら仕上げていくという形を取らせていただく。そこは法律の中で、そのような位置づけになっているプロセスの中で、しっかりとご審議いただきたいと思ってございます。
すみません、遮ってはおりません。またご議論があればお願いいたします。
○大塚委員長
ありがとうございます。今、1章と2章について簡単にご説明いただいたということでございまして、これはちょっと議題の1になっているところでございますけれども、簡単にご説明をいただきまして、どうもありがとうございました。
そうしましたら、先ほどの続きで、大下委員から、お願いします。
○大下委員
日本商工会議所、大下でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。今のご説明も含めてですけれども、まずもって、前回に続いて、こうした議論の時間が持てたことは非常に有益かというふうに思っておりますし、また、先ほど秋元先生から前回のプレゼンテーションについて改めてご説明をいただいて、大変理解が深まりました。ありがとうございました。
経済界からの意見としては、先ほどの経団連池田委員の発言に概ね集約されていると思っておりますけれども、商工会議所の会員の多くを支える地方、あるいは中小企業の立場からも、一言だけ添えさせていただきたいというふうに思っております。
秋元先生のお話にあった限界削減費用の部分をお伺いして、やはりこれは相当厳しく受け止めざるを得ないなというふうに思っております。今、地方、あるいは中小企業は、大変コスト増で非常に厳しい状況にあります。エネルギー価格もそうですけれども、人件費も上がっていますし、円安の中でいろんな物の輸入をする上でのコストも上がっている、こうした中で、どうやって事業を継続していくのか、地域の経済を持たせていくのかというのは、なかなか厳しい状況にあるところです。地方、中小だけではなく、日本全体を見ても、残念ですけれども、人口が減少している、あるいは、なかなかイノベーションが進まない。こういう中で、他国と比べて潜在成長力が十分高いかというと、残念ですけど、今の状況はそういう状況にないというふうに見ています。
こうした中で、環境と経済の両立をしっかり図っていく必要がありますし、温暖化対策をしっかり進めて、その中で技術開発を進めて、それを成長につなげていくというのは非常に大事ですけれども、今申し上げたような現状を考えると、この段階で、各国よりも高いコストをかけて取り組むという状況にあるかというと、決してそういうふうには私としては思えないなというのが実感のところであります。
これも池田委員からお話がありましたけれども、技術開発には、開発をして実装して普及をしていくまでに、どうしても時間がかかります。国もいろいろと支援をしていただいて、中小も含めて様々な技術開発に取り組んでいますけど、まだそれは緒についたばかりであって、これがコストを下げるというところまで行くには、相当の時間がかかるというふうに思っております。
こうした面も考えても、上に凸というのが現実的なところではないかなというふうに思っております。これでも十分野心的だというふうに思っていますし、もちろん、それをさらに前へ進めていくための努力というのは必ず必要だと思いますが、今、どのラインを想定し得るかというと、地方、中小の今の厳しい状況を考えれば、上に凸というところが現実的なところではないかというふうなことを、私どもの立場から一言だけ添えさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
○大塚委員長
ありがとうございました。
では、下田委員、お願いします。
○下田委員
ありがとうございます。
私は、以前申し上げておりましたように、やはり実績値が大事であると、達成することが大事であるというふうにずっと思ってまいりました。そういう意味で、第1回目辺りに出たと思いますけれども、各国が、日本とイギリス以外の国が今、かなりNDCを達成できそうにないような状況にあるということが、まず大きな懸念でございます。今までの議論は、全て2030年NDCを通すということが前提になっていましたけれども、やはりそこをしっかりやらないといけない。少なくとも日本は宣言した46%をしっかり達成して、世界に貢献していくということが大事であろうというふうに思っております。
これまでのフォローアップの経験から申しますと、そこで動かしていかないといけないのは、いわゆる需要側でございます。屋根置きの太陽光でありますとか、電動自動車でありますとか、あるいは建物の省エネ改修、こういうところがしっかり動いていかないと、今、民生部門と産業部門の排出量がほぼ同じ状態になっている中では、これらが非常に大事だというふうに思っております。そこが残念ながら今しっかり動いていない。国がどういう目標を立てれば、それぞれがどのように負担といいますか、貢献をしていく必要があるのかというところが共有できていないというのが非常に問題だと思っております。今、オントラックであるのは製造業の海外移転という、別の要因で起こっていることであります。この後、およそ数年間を、今遅れている分野である、いわゆる需要側の対策を持ち上げていくことを日本はしっかりやらないといけないというふうに思っています。
その中で、今大きな目標を出してしまうということは、そういう国民の協力がなくても、国がほかの手段で大きな削減を達成していくというふうに見えてしまうと、これはちょっと逆効果になるのかなと。私の意見としては、まずは国全体が、特に需要側がしっかり動いていって、2030年に46を通すという、しっかりした確証が出れば、そこから2035とか40年、もし掘れるのであれば、深掘りの議論をそこでもう一回してもいいんじゃないかというふうに思っております。
以上です。
○大塚委員長
どうもありがとうございます。
では、林委員、お願いします。
○林委員
ありがとうございます。
今回、いろんな方からの意見をこうやって、議論ができたというのは、すごく私はよかったなというふうに思っていて、事務局の方は大変だったと思いますけれども、国民的に重要な議論を本音で議論できたというのは、すごくよくて、ヨーロッパで何年か前に起きていたことが日本でも起きてきたんだなというのをしみじみと感じていたんですけれども、何のためにこんなことをやっているかといえば、日本のためであり、国民のためであり、そして世界のためだという高い理想がある中で、その中で現実的な解をみんなで悩みながら見いだすということだと私は思っています。
60%なのか、66%なのか、何%なのかは、一金融機関の私には分かりませんけれども、ただ、いろんな方とお話ししている中で、正解はないということだけは何となく感じています。立場によって、今日も上に凸がいいとか下に凸がいいとか、いろんな議論がありますけれども、様々な地政学的リスクのもと次に何が起きるのか分からず、いろんな不確定要因がある中で、数字のことも大事なんですけれども、どうやって国民的コンセンサスを盛り上げて、そして具体的に前に進むのかということのほうが、大事なんじゃないかと考えます。この議論もとても大事ですけれども、いろんな立場がある中で、どうやって一人一人がそれぞれの立場で、この壮大な社会実験に取り組むのか、かつ、先ほどどなたかおっしゃいましたけれども、日本の置かれている環境は、本当に大変だなと感じています。2060年でいいやと言っている国もあれば、自らのエネルギーの自給率が100%を超えているアメリカやカナダという国もあって、それと10%ちょっとしかない日本と、全然議論のベースが違うので、かつ島国であるという中で、本当に何が正しいのかというのは、今日も、もしかしたら明日もやるのかもしれませんけど、議論を深めた上で、一つの軸は出した上で、ディスカッションを続けていくということしか、現実的な話で恐縮ですけれども、それ以外に答えはないんじゃないかなというふうに思いました。
最後に、私もよくも悪くもいろんな会議に出させていただいていたので、前回の議論を唐突に感じられた方も当然いらっしゃると思いますけれども、信じられないぐらいたくさんの会議が同時並行で、経産省さん周り、あるいは環境省さん周りで行われていて、そういう議論を聞いていると、正直言うと、前回の議論は、そうだよなと私は聞こえたんですけれども、それは聞かれる立場の方とかによって違うのは当然だというふうに思いましたので、冒頭申し上げたように、今日のような議論をする機会をいただいて、本当によかったなというふうに思っております。
すみません、6時に退出しなくちゃいけないので、まとめの議論を勝手にしてしまいました。ありがとうございます。
○大塚委員長
どうもありがとうございました。
では、オンラインで、志田委員、お願いします。
○志田委員
志田でございます。発言の機会をいただき、ありがとうございます。
私も皆さんのご意見聞かせていただいて、こういう形で議論を交わさせていただくのは、非常にいい機会だなと思っております。
私自身の意見を表明いたしますと、髙村委員がおっしゃっていただきましたけれども、1.5℃目標と整合的であるべきという土台があるということは、大事なポイントかなというふうにまず思っています。その上で、私は秋元委員のご説明は非常に説得的だと感じました。35年60%、40年73%も、十分野心的な目標だと思います。
ただ、それを決める、実際に決めるというプロセスの中で言うと、やっぱりほかの機関とのシナリオ比較、あるべきだということもごもっともだと思いますし、最終的に、それで決めたのであれば、どういう考え方に基づいてそれを決めたのかというのは、それはしっかり計画上に書かなくても、この場ではしっかり示すべきなのかなというふうには思いました。
他方で、今、林委員がおっしゃったことに私も近くて、目標値も非常に重要だとは思いますが、それにどう近づいていくのかという、達成の道筋ですね。施策がちゃんと裏づけがあるものなのかというほうが、より本質的なんじゃないかなというふうに思います。大きい目標を掲げても、そこに至る道筋が見えない、結果的に達成できないのであれば、あまり意味がないものかなというふうに思っています。ちゃんと説得性を持った施策が裏側にあるのかということと、それが国民経済ですとか国民生活、それに対する影響がどんなふうにあるものなのかというところが、ちゃんと見えていることが重要なんじゃないかなというふうに思っております。その上で、我々は1.5℃目標に向かって整合的な道に進んでいくんだということが、数値そのものよりも、より本質的なんじゃないかなと思っています。
そう考えたときに、やっぱり私も、下田委員や岩船委員におっしゃっていただいたように、現状分析というか、最初にオントラックというものがありましたけども、やっぱりいろんなところでひずみが見えてしまっていたりですとか、必ずしも想定していなかった事態というものが見えてきているということは、ちゃんと目を向けないといけないというふうに思っております。現状の対策として、どれぐらい深掘りが可能なのかということと、エネルギーやGHG排出以外のところで、経済とか、そういうところに対する影響も含めた包括的な検証が必要だと思います。それは多分、温対計画上で言うところのフォローアップに当たるのかもしれませんし、それは別の会議体で議論されるということは認識していますけれども、そういうところをしっかり見ていくというところが重要なんじゃないかなというふうに思っております。
私からは以上です。
○大塚委員長
ありがとうございます。
では、鶴崎委員、お願いします。
○鶴崎委員
ありがとうございます。
いろいろ伺って、幾つか申し上げたいことがあるんですが、一遍に申し上げると、ちょっと議論の腰を折ってしまいそうなので、少しずつと思うんですが、先ほど経団連池田委員から、産業界の非常に厳しい状況も含めて、上に凸という話、大下委員からもございました。そこをもう少し掘り下げる必要があるだろうなと思っていまして、産業界あるいは産業部門というような捉え方を私たちはしますが、その中にも、かなり多層な状況があるといいますか、鉄鋼だとか化学だとか、いわゆるエネルギー多消費産業というところの負担感と、機械工業とか組立て産業のほうとの負担感というのは、また違いますし、業務系の施設になれば、これは全く違ってくるわけです。ですので、中小企業といっても、製造業と業務系の事業所では全く状況は違うと思います。その負担感がですね。ですので、やはりいわゆる多消費産業で、エネルギーコストが上がることによって、競争力が低下して国外に出ていってしまう、あるいは非常に景気が悪くなってしまうというようなところに対する配慮、手当というのをしっかり考えなければいけない。
一方で、できるところはどんどんやってほしいというふうに先ほど池田委員もおっしゃったと思うんですけれども、まさにそういうところが本来あるんじゃないかと思っていまして、特にオフィスだけでやっているような事業者さんに関しては、相当程度、エネルギーコストというのは小さくて、売上げに対して本当に微々たるものだと思うんですね。人件費のほうがよほど高いわけでして、そういう中で、対策コストの負担感というのは、全くもう2桁違う、3桁違うかもしれないというぐらい違うので、そういうところもしっかり見て、どういう規制を今後していくべきかというのは考えたほうがいいのかなと思いました。
どうしても、これまで規制というと一社一社丁寧に見てというようなことになるので、排出量の大きなところから、エネルギー消費が大きなところから網をかけていきましょうという発想で、これまで資源エネルギー庁でもやってきたと思うんですけれども、そういうところほど厳しいわけですので、実はそこの網がかかっていないところの小さいところを含めて、それほど負担なく再エネを調達すればいいんでしょうというぐらいの企業にはどんどんやっていただくような、そこをどうドライブかけていくのか。先ほど下田委員からの建築のほうでPV、EV、省エネ改修がなかなか進んでいないという話がありましたけれども、やっぱり負担、網がかかっていなくて、モチベーションがなければ、見過ごされてしまうようなところは多くあると思うので、そうしたところを見ていく必要があるんだろうと思っています。
そういう意味で、その辺の産業だとか企業というときの解像度をしっかり上げて、できるところからどんどんやっていただくんだというような視点も必要なのかなというふうに思いました。
あと、もう一点だけ、今日、今、1章、2章を拝見していて、国民負担という話があったかと思います。これ、やっぱり国民一人一人も含めて、全主体で取り組んでいくんだというようなメッセージがこの計画の中には入っていて、これまでも入っていましたし、今回も入っていると思います。その中で、今日の資料で言うと17ページの1行目、「必要な国民負担に関する情報等を、なるべく目に見える形で積極的に提供・共有し、また、それらを伝え」というようなメッセージがあります。これは、これからやしっかりやっていくんだということなのかと思いますが、この目標を決める議論の中でも重要な視点だろうと思っていて、今回の、先ほどRITE秋元委員にご説明いただいた分析の中でも、エネルギーシステムのコストがどれぐらい上がるのかといった分析を示していただいています。
先ほどのまた参考資料2の14ページを拝見しているんですけれども、今日ご説明いただいた三つの上に凸、直線、下に凸のシナリオ掛ける成長実現シナリオ、低成長シナリオと二つのシナリオのときに、ベースラインに対してどれだけコストが上がるのかという数値を示していただきました。このベースラインって何だろうというところなんですが、下の小さく※で書いてありますが、特段の排出削減を考慮しない経済合理的なベースラインということです。この意味が、ちょっと完全には理解できていないところもあるんですけれども、特段の排出削減を考慮しないということは、今後の世界ではなかなか考えにくいところかなとは思いますので、恐らくここからプラスになるということは、ある程度合意ができているところなのかなと思います。
その上で、例えば2040年マイナス60%という上に凸のシナリオに対して、直線の73%に上がると、2040年のエネルギーシステムコスト、これが数兆円単位で上がってくるということかと思います。この+70とある2040年73%のところは、金額で言うと8兆円相当、年間8兆円相当になると思います。国民1億人で割れば8万円ぐらいということになるわけですけれども、1人当たり8万円、こういうコスト感で、もしそれが低成長シナリオのほうでうまくいかないパターンの場合だと、その2倍になると。さらに、下に凸に掘り下げていくと、それぞれ5兆円から6兆円上乗せ。つまり、国民1人当たり5~6万円ぐらい年間コストが上がっていくというような、そういう理解なのかなというふうに思っています。
ただ、ほかの分析もいろいろ見ていると、必ずしも、この相場感が共通しているような気もしないところもあるんですけれども、こういうような正確な分析結果の中から、どういう負担が国民に求められているのか、このシナリオを選んだときに、どういう負担。負担の一方で得られる便益があると、先ほど髙村委員もおっしゃったとおりだと思っていて、リスクがそもそも下がる。1.5℃の達成の確度が上がるということだとか、あるいは、この中でGXの投資をしていくということで得られる、日本の新たな競争力を得るきっかけにするといったところ、そういうことの便益もあるわけですけれども、そういうことをこういった分析結果から分かりやすく、国民1人当たりがいいか分かりませんけれども、示していただくことで、より実感が得られるシナリオになっていくのではないかなというふうに考えています。
以上です。
○大塚委員長
今の点について、ちょっと後でまた秋元委員にお話しいただきたいと思っております。
では、藤瀬委員、どうぞお願いします。
○藤瀬委員
ありがとうございます。
私からは、事務局の皆さんへの質問、そして秋元さんへの質問、そして私の主張をさせていただけたらなと思っております。
まずは事務局の皆さんに対する質問なのですけども、これは小西委員のほうからも出ていたと思いますが、実際にパブリックコメントに出す案なのですけど、これは一つでないといけないんでしょうか。それとも複数の経路、シナリオというところを、ある程度選択肢として提示することが可能なのかというところをまず1点お伺いしたいのと、事務局案でも、きっと様々なシナリオを検討された結果で、直線を前提にということを前回お示しいただいたのかなと思うのですけども、上に凸、下に凸で検討された中でのそれぞれのメリット、デメリットというところも、皆さんの中でどのように考えていらっしゃるのかなというところをお伺いしたいなと思っています。かつ、その中で、なぜ直線というところを選択されたのかという背景を知りたいなと思っております。
次に、秋元委員に質問させていただきたいなと思うのですが、先ほど追加でご説明いただきまして、大変、より深く理解することができました。ありがとうございました。2030年、NDCをピン留めしたモデルということですが、秋元委員のコメントの中でも、NDCさえ守れない国もあるということで、果たして2030年の時点で、NDCがオントラックの国というのはどれぐらいあるのだろうかというところは、正直、私の疑問なのですけれども、その場合、モデルの大前提が崩れてしまうことにもなりかねないのかなと思っており、そうすると、本当に1.5℃に整合するのかどうかというところに関して、どのように考えていらっしゃるのかなというところをお伺いしたいなと思っております。
私の意見も少し述べさせていただければと思っているのですが、今回、そうそうたる先生方の中で、初めてきっと若手としてこの委員会に任命していただいたのかなと思っておりますので、参加させていただいた使命として、温対計画やNDCは、やはり大前提として次世代に向けたものであるということをしっかりと強調させていただけたらうれしいなと思っております。
実際に、今こうやって議論している中で、2040年、2050年にもしかしたらいないかもしれないという私たちが、いわゆる現実的な話をしても、次世代として、果たしてどのような意味があるんだろうということは、ちょっと疑問に思っております。これからより厳しい状況に立ち向かっていかないといけない次世代に対して、本当に強く、胸を張って今回のNDCはこれですと出せるものにしないといけないなと思っております。
それに対して、実際、今、コスト面での話がかなり多いかなと思っているのですが、対策コストだけを見て議論するのはちょっと不十分ではないかと思っておりまして、いわゆる気候変動被害のコスト、対策をしなかった場合に受けるコストですね。プラス、やっぱりGXに変革をしていくことによって、よりプラスになるコストもあると思いますので、それらのコストをしっかり加味しながら議論していく必要があると思いますので、今回、この委員会の中に専門の先生もいらっしゃると思いますので、これらのコストですね、気候変動被害のコスト、そしてGXに変革した場合のプラスとなるコストを加味した場合のコストはどうなるのかという、全体像をぜひ教えていただきたいなと思います。これは多分モデルをいろいろ見ていらっしゃる秋元先生や増井先生にお伺いしたほうがいいのかなと思います。
それを踏まえまして、これは私個人の意見ですけれども、やはり下に凸以外、いわゆる最低でも66%以上以外は、今ある世代である私たちが次世代にとって少しでも苦しい状況を残さないように努力をするということにおいて、必要な数値なんじゃないかなと考えておりますし、もちろん高い目標を掲げて達成できなかったら意味がないとは思うのですけれども、高い目標を掲げないと、それ以上の施策、対策は出てこないと思うので、やはり世界を牽引していく日本として高い目標を掲げるということは非常に重要だと思っておりますので、この点も踏まえて、より議論させていただければなと思っております。
質問のところをぜひお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いします。
○大塚委員長
それは後でまとめて対応させていただきます。
では、伊藤委員、お願いします。
○伊藤委員
ありがとうございます。
○大塚委員長
伊藤委員、ちょっと声が小さいんですけど。
○伊藤委員
聞こえますでしょうか。
○大塚委員長
よくなりました。
○伊藤委員
すみません。ありがとうございます。
いろいろご説明いただきまして、ありがとうございます。経済界のほうからは、やっぱりコストの大きさというのが懸念されているというのは非常に納得できますし、私も地方の中小企業などへ行くと、非常に厳しい状況であるということは理解しております。ですので、限界削減費用というようなところは、そのとおりなのだろうなというふうに思います。
一方で、そうではありつつ、じゃあ、このまま世界的に見て対策が後退するということはあるのかというと、これはさらに加速することはあっても退行することはなくて、前に進む一方だと思うんですね。そうすると、対策をしていないと取り残されてしまうという、特に中小企業はですね、そういう状況に陥ってしまうのではないかという懸念があります。
それから、特にヨーロッパのほうは先に進んでいて、例えば循環型経済の法律とか、そういうことに基づいてルールメイキングがされていて、それに日本の経済界もそこに合わせるべく、今努力をし始めているというか、そういうような構図になっているということを考えると、やっぱり日本も非常に厳しい中ではあるんですけれども、かなり厳しい対策を取っていかないと、世界レベル、特に今EUがルールメイキングの鍵を握ってしまっているので、そこに追いつけなくなるというところが心配なところなんですね。
NDCというのはどういう意味を持つのかということを、やっぱり改めて考えておく必要があるのかなと思っております。というのは、これは世界に対する日本の決意でありメッセージであると同時に、国際競争力に対する戦略というところもあるのではないかなというふうに思っております。EUが何であんなに経済界において脱炭素のリードを取れるのかということを考えると、やはり目標に掲げているものが非常に高くて、決して達成していないんですけれども、やっぱり発表するたびにかなりのインパクトがあって、経済界が、世界の経済がそこに引っ張られるというところがあると思うんですね。ですので、すごく野心的、それからしたたかさというのも感じるんですけれども、そうやっていかないと、リーダーになれないというか、本当に1番じゃなきゃ駄目というのは、そういうところも経済界にはあるのではないかなというところを感じているところなんですね。
エネルギー基本計画、新しく出されていますけれども、それで見ると、再生可能エネルギーが4割から5割ということで、かなり再生可能エネルギーをさらに主力電源化していこうという計画になっていますよね。それはやはりペロブスカイトという新しい武器が日本にはあるからだというふうに思うんですけれども、じゃあ、そのペロブスカイトというものを、世界にこれから打って出ていこうというふうになったときに、じゃあ、どういうNDCにすることがインパクトを与えられるのか、ブランド化できるのかみたいな視点というのも、私は必要なのではないかなというふうに思っているところですので、そういうことも加味した上で、もう一歩目標を上げることが果たして可能なのかどうなのかというところの数値的な裏づけが欲しいところだなというところを今感じております。
以上です。
○大塚委員長
では、池田将太委員、またお願いします。
○池田(将)委員
ありがとうございます。
今、結構コストの話が経団連さんからも出ていたかなというふうに思うんですけど、やっぱり目の前のコストの話だけで、この議論は決めるべきではないなというふうに思っています。下に凸が企業や国民負担が大きいというのは、さっき藤瀬さんのほうからもありましたけど、脱炭素のコスト面だけを見た分析に基づいているので、脱炭素を遅らせることで国際的な競争力を失うリスクというのは、既に多くの企業がやっぱり直面しているところなのかなというふうに思っています。積極的な脱炭素を進めることで、それが経済成長につながるというところも、やっぱり政府のGX戦略が掲げていることだと思うので、そこは野心的な目標という方向性は、経済成長にとってもつながることだと思っています。
あとは、先ほど藤瀬さんからもあったように、脱炭素面のコストと並行してやはり考えなければいけないのは、これが1.5℃制御できなかったときの気候変動における被害のコストですよね。ここをしっかり見た上で判断することが必要だなと思います。
あと、私自身、中小企業の事業責任者と、あと自分で会社の代表をやっていますけれども、ビジネスって基本、やっているメンバーは分かると思うんですけど、制度が変わったら市場が変わるというのは当然かなというふうに思うので、地球全体として向かっていく方向に制度が決まったら、そこにビジネスマンが提供していくというのは本来あるべき姿だというふうに僕は思っています。なので、今の現状で何ができるかという議論をすることよりも、それだけをしてしまうと、成長やイノベーションの種を潰すことだというふうに思っているので、制度があれば実現性は上がるという観点で、目標設定は高く設定すべきなんじゃないかなというふうに思っています。
以上です。
○大塚委員長
では、山口参事、お願いします。オンラインです。お願いします。
○山口参事
ありがとうございます。栃木県庁、山口でございます。
様々なご意見をお聞かせいただきましてありがとうございました。全国知事会としましての排出削減目標についての意見を申し上げたいと思います。
前回も申し上げましたけれども、全国知事会といたしましては、2035年度の目標につきまして、現行より高い目標、すなわち2013年度比60%以上の削減目標の設定を求めております。60%でも十分野心的であるとは思いますが、気候変動は温室効果ガス排出量の累積での影響を受けるため、2050年にゼロになればいいというわけではなくて、より迅速な排出削減が重要と考えます。また、高い目標を設定することで、企業が投資に前向きとなり、技術革新が期待できるものと思います。また、我々地方公共団体や国民に向けても、国を挙げて脱炭素をこれまで以上に推進していくという強いメッセージにもなると思います。
こういった観点から、また現計画におきましても、2030年度に50%の高みに向けて挑戦し続けるというふうに、重ねて記載していただいておりますので、もう少し挑戦してもいいのではないかというふうに考えております。
以上でございます。
○大塚委員長
ありがとうございます。
では、オンラインで津久井委員、お願いします。
○津久井委員
ありがとうございます。再度の発言の機会をいただき、ありがとうございます。改めて私の意見を述べさせていただきます。
先ほど藤瀬委員からもご発言ございましたが、次期NDCは、ネットゼロへの取組をイノベーションと経済成長の機会と捉えて、若い世代や次の世代のための社会への基盤をつくっていくこと、そこに挑戦できる環境というのを整えていくことはやはり重要だと感じております。
お示しいただいた温対計画素案の1ページ目で、2050年頃に社会の中心を担う若者世代から、近年の異常気象への危機感から、自身や、これから生まれてくる将来世代の未来に対する不安が示されたと明記していただいておりますが、不安だけではなくて、我々に対して、将来世代に負担を残さず、野心的な目標を掲げて対策を加速してほしいというのも、一つのメッセージだったと私は受け止めております。
その上で、私の目標に対する考えでございますが、これまでの委員会でも申し上げてきたとおり、第1回GSTやG7での合意を踏まえて、IPCCが示す1.5℃目標との整合性を確保するためには、13年比で66%削減というのを議論の出発点とすべきという立場に変わりはございません。
ハチドリの池田委員からございましたが、1.5℃の整合性というのを限界削減費用というコスト分析に限定してしまってよいのかというところは、少し疑問を感じております。IPCCが示す削減目安にも幅はございますが、G7など国際的に合意された値というのは、幅ではなく中央値となっております。世界全体で大幅かつ急速、持続的な排出削減が求められている中で、先進国として積極的に率先して行動すべきところを、緩い目標を採択していくということは、日本政府がこれまで国際社会にコミットしてきたこと、そして国際合意にも背くことになってしまうのではないかと非常に危惧しております。
また、施策の道筋を慎重に検討すべきという意見が多数ございましたが、こちらに関しては、そのとおりだと考えております。国際合意を基準としたとき、日本の目標がどうなるのか。その目標を議論した上で、対策と施策のギャップをきちんと明らかにして、深掘りできる政策がないのか。そういったところを深く議論してくるべきだったのではないかなと感じております。
また、シナリオ分析につきましても、議論の示唆になるとは思っておりますが、基本政策分科会での発表というのは、直線的削減を前提にした発表でしたので、シナリオ分析を議論の参照とする場合は、幅広い選択肢を含んだ分析というのが必要だと考えております。
最後に、2050年ネットゼロに向けて、イノベーションや革新的な技術が必要という点につきましても、そのとおりかなと思っております。一方で、IPCCの第6次評価報告書や第1回GSTでは、1.5℃目標を維持するために、実行可能で効果的かつ低コストの緩和オプションは全分野で既に利用可能だと指摘されております。こうした技術をいかにコストを抑えて日本に導入していくのか、そういった議論というのも、これまであまり十分に行われてこなかったのではないかなと思っております。限られた残りの議論の時間において、こうした点を踏まえつつ、直線的な経路ではなく、さらに踏み込んだ排出削減を目指す方向で議論が進んでいくことを強く望んでおります。
私からは以上です。
○大塚委員長
では、大橋座長どうぞ、委員としてのご発言ということで、よろしくお願いします。
○大橋委員
座長とついているので発言しづらくていましたが、今日は委員でいいのかと思って、自分の意見を述べさせていただきます。
2050年のカーボンニュートラルを宣言している企業さんの数は、日本では、それなりにいらっしゃると思います。これは各国比較でも決して劣る数じゃないと思います。今、こうした企業さん、例えば自分で再エネ開発する、例えば風力発電とかですね。そうしたことについて、相当今難しい段階に直面している。はっきり言って、ちょっと宣言を取りやめるかどうかぐらいの瀬戸際に来ちゃっている企業さんも相当いるんじゃないかと推察します。これはやはり資材コストの高騰もありますし、また、風力だと、やっぱり地元の合意というのが途中でひっくり返ったりとか、いろいろあって、やっぱり手を引く企業さんって後を絶っていないというのが事実だと思っています。
そうした中では、やっぱりイノベーションというのがどうしても必要、何かしらの新しい技術がどうしても必要だと思っています。そのために、今、我々、この場じゃなくて、GX戦略という形で、GI基金とか、あるいはGX公債といって、お金を前借りする形で研究開発をして、それを、新しいそうした技術をつくることで、次の世代に向けたしっかりとした脱炭素の技術の中で、2050年カーボンニュートラルを目指すということをやっているんだと思います。
そうすると、今、GI基金もステージゲートとかを設けて、相当しっかりとした管理をやっているというふうに伺っていますけれども、そうしたものが芽吹いてくるのが30年、40年代ぐらいじゃないかというふうに思います。やっぱりすぐ研究開発で投資して、すぐ翌年に出てくるというふうなものではなかなかなくて、だからこそ基金でやっているということだと思いますけれど、そうすると、ちょっと時間的猶予を見ることで、効果が大きくなるということは一つあるのかなと思います。
もう一つ思うところは、ここで農業についてご発表いただいたことがあると思うんですけれど、世界のCO2排出に占める農業の割合って大体20%強、22%ぐらいだと思います。ところが、日本について言うと、これは4%。なぜ割合が低いのか。これは、日本の農業が必ずしもGXとか脱炭素技術に優れているからではないです。そうではなくて、生産能力が劣化しているからだと思います。今の農業の担い手の平均年齢は70代ということです。新しい人が入ってこないということになっています。そうした中で、メタンとか、いろんな問題が指摘されている中において、物すごい深掘りした数字を示されちゃうと、皆さん経営を持続する気持ちがぷちっと切れちゃうことを私、すごく心配しています。どっちかというと、今、価格転嫁もできていないので、しっかりまず価格転嫁してもらう。そのためには、小売と流通の方がしっかりGXより高い価格で買って、それで、それを消費者にGXという形でしっかり啓発をしていく。社会をGXに変えるやっぱり一番の接点を持っている人は小売と流通だと思います。そうした人たちがしっかり価格転嫁してあげることで、上流の人たちが、投資回収がしっかり循環できる姿。こういうものをつくってくれないと、なかなか、全体がうまくいかない。上流だけ頑張れといっても、糸が切れちゃう人もいて、それは何を引き起こすかというと、やっぱり事業をやめたりとか、あるいは産業であれば海外へ行っちゃうとか、そういうことを今、下田先生もおっしゃっていましたけども、そういうことというのがさらに深刻化することを私は懸念しています。
若い人が今、農業の例で言うとね、やっぱり農業で食うためには、ある程度やっぱり生活費をしっかり稼げないといけないし、そうするとマネタイズできる人が必要なんです。だって、これを明日できますかというと、できないですよね。やっぱりいろんなステークホルダーがいるので、そうしたステークホルダーの皆さん方にしっかりDXを考えていただいて、マネタイズできる経済構造へシフトしていかなきゃ。これは均衡をシフトさせるということだと思うんですよね。それはちょっと時間がかかるんじゃないかと、私は、さすがに思います。じゃあ来年からやりましょうという形で本当にできるのかどうか。
そうする姿をちょっとつくれるだけの時間的猶予が必要だというふうに考えると、最初はゆっくり入れてあげないと、なかなか皆さん糸が切れちゃうことがないかなということを私は心配していて、それで、過去に私が自分で発言しているときは、上に凸と申し上げさせていただいたのは、そうしたことを念頭に置いているからでした。
以上です。ありがとうございます。
○大塚委員長
どうもありがとうございます。
では、オンラインの吉高委員、お願いします。
○吉高委員
聞こえていますか、大丈夫ですか。
○大塚委員長
聞こえています。
○吉高委員
ご説明いろいろありがとうございました。
皆さんの意見を聞かせていただいて、実は私は前回の委員会では途中の中だけ参加しておりましたので、途中退出したために、本件の議論は、確かにその資料を見て驚いたんですけども、その後、事務局からのご説明もあって、段階で決めるもので、議論を尽くすということでご説明いただきました。私自身も驚きはしましたけれども、決まったという認識がなかったので、このように議論の機会があるということで、大変ありがたく思います。
本NDCについて、前回のときと違うプロセスであり試行錯誤されているということを改めて認識しています。気候変動の交渉において、国際協働の在り方というのは変更が繰り返されているところもあって、常にこういった課題が与えられているのかなと思います。
ご承知のとおり、パリ協定は、京都議定書のように国連のトップダウンではなく、世界全体での削減目標に対して各国がボトムアップで進めるということを決めてから、こうやって日本でもプロセスが始まっているわけです。このプロセスは完璧ではないかもしれないですけれども、私自身、2月の提出に向けて尽力できればというふうには思っております。まずはそれを申し上げたいと思います。
NDCなんですが、先ほど増井さんもおっしゃっていましたけど、基本的には各国が世界に対してどう貢献できるかという考え方を示すものであるということで、それがまず1.5℃に抑えるという世界目標にどう貢献するかということかと思います。
先ほどからおっしゃっていますGXの政策というのは、経済政策と同時に、もちろん1.5℃に抑えるための同時実現ということで、これは次世代も含めた、公正な移行を図るためのものだというふうに、私は前提にしていると認識しています。
ですので、この次期NDCの案については、今日、前回聞けなかったのですが、秋元委員、増井委員からのご意見をいただきまして、野心的なシナリオであるというご説明もいただきました。もちろん、ほかのシナリオも私は別の委員会でお聞かせいただいておりますけれども、まずは日本の道筋の案が出されたと理解しています。
これに関して、IPCCですとか、1.5℃と整合する水準に対する日本の野心の見せ方について、さらにというのは大変理解できるところでございます。
ただ、既に、以前の当委員会でも言われたかと思いますけれども、私自身が日本の技術によって、他国での削減の寄与というものに関して、ずっと現場で仕事をしてきた人間といたしましては、この貢献度は今後大きく上積みされていくんじゃないかなと思っています。つまりGXが進むにつれて、日本の経済のためだけではなくて、これが産業として大きくなることによって国際的な、地球全体的な削減にも寄与するというのは、大変、私としては期待できることだと思います。
私のように、金融機関の一員としてできることはほんの一部だったんですけれども、それでも長年、何とか対策に対して金融を動かしたいという思いで、高邁に思われるかもしれませんけれども、何かしら世界への貢献ができると思ったからです。そういう人間がこのプロセスの場に参加させていただいたことに大変感慨深く思っております。
設定する目標なんですけれども、先ほど何人かの委員がおっしゃったように、数字というよりは、達成する際、目標より大きく達成するときは称賛されますし、そのときにはさらに目標を上げるというインセンティブになります。達成が例えばできなくても努力していれば理解されるのか、できないほうが自信をなくすのかという、いろいろなモチベーションというのがあるのかと思うんです。2030年に向けては、野心的な46%の目標と、あと高みの50%の目標というのをつくられまして、結局、高みのほうは無理だったけど、野心的なほうに届いたというのは大きな国民の自信になったのではないかなと思います。
先ほど岩船委員がご指摘されていましたけど、私は計画のフォローアップ、レビューのほうの委員をさせていただきました、全ての対策の進捗についてのABCDというランクがあって、どういうふうに達成できているか見ていたのですが、そのときに、Cでオントラックの対策がほとんどで、Cだったらそれでよいのか、次にどれだけもっと上げるのかという、そのシステムがないということは以前ご指摘させていただいたかと思います。これについての提言に関しては、今回どのようにお考えなのかというのは、ぜひお聞きしたいところです。これは非常に重要な点で、今まではオントラックが、つまり野心的ではあるけど、それをやるのがベースラインになっていたので、これをさらにBやAに上げていくということで、野心な目的をさらにということであれば、このプロセスというのをきちんとしていく必要が私はあるかと思っています。
ですので、出した目標についてスピード感を持って努力するということ、それからモニタリング、見直しの際には、オントラックで満足することなく、高みにすることへの、とにかく国内外にやる気を見せ続けるということは大変重要だと思いますので、こういったところは計画の中にもぜひ入れていただければなというふうに思っています。
実際のところ、私はずっと現場で環境問題の解決を金融を通して、また途上国でもやってまいりまして、解決には一つの道筋という問題ではなく、システム思考で起こるということの認識、そしてステークホルダーをいかに巻き込み続けることというのが、大変重要だと思っていて、SDGsでも誰ひとり取り残さないとありますけれども、実は日本の考え方は、これは対応しているかと思います。京都議定書はトップダウンだったにもかかわらず、ボトムアップというパリ協定の思考が、まさに日本の思考に合致しており、特に新興国を巻き込むということでは、シナジーがあったと思います。
ぜひ、国民が自分事としてアクションできるような、そういった形のNDCを通して、世界貢献の考え方を示して、かつリーダーシップを発揮できるような形にしていくというのが大変必要だと思っています。
以上でございます。
○大塚委員長
どうもありがとうございます。
では井上委員、どうぞ。すみません、遅くなりまして申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
○秋元委員
秋元を呼びましたか。ちょっと聞こえにくかったんですが。
○大塚委員長
ごめんなさい、井上委員、お願いします。秋元委員、また当てますので、すみません。次の次ぐらいに当てます。すみません。
井上委員、お願いします。
○井上委員
すみません、井上です。声は大丈夫でしょうか。
○大塚委員長
大丈夫です。
○井上委員
ありがとうございます。
たくさん皆さんからご意見いただきまして、本当に参考になりました。ありがとうございます。とりわけ秋元委員からの改めてのご説明で、大変内容がよく分かりました。ありがとうございます。
先ほど事務局から温対計画の説明があって、19ページの第1節のところでご説明いただいた官民が、予見可能性をもって、野心的な目標として設定すると。そして、2050年ネットゼロに向けた全体的な進捗評価における軸として活用していくということ。また、パリ協定に基づき誠実に対策・施策を講じていく必要があるというご説明をいただきましたが、これに賛同する立場で発言をさせていただきます。私は研究者ではなく、働く者の代表ですので、労働者の立場から発言をさせていただきます。
この間の皆さんの発言で、2050年に向けて、2040年の目標をどこに置くかというのは、様々なご意見、捉え方があるかと思います。COP29の前後を含めて、非常に野心的な数値を示した国もあります。
先ほど経団連の池田委員がおっしゃっていましたように、連合の構成組織の中にも様々な業種があります。組合員も一生懸命に取り組んでいるところではありますが、一足飛びの目標については産業や雇用への影響は大きく、雇用への影響が大きく出うると考えております。
その上で、労働組合として改めて強調しておきたいのは、気候変動政策によって影響を受ける労働者がいるということであり、そうした労働者を置き去りにするようなことはあってはならないということです。その上で、気候変動政策、産業政策と合わせた雇用政策として、公正な移行が必要であることを改めて強調しておきたいと思います。
また、先ほど秋元委員がおっしゃっていたように、低過ぎる目標は将来にツケを残すことになりますし、一方で野心的過ぎる目標は、そのコストを将来的に残すことになります。脱炭素コストは最終的には国民が負担することになります。
先日、連合として、来年の春季生活闘争の方針を確認しました。2024年の春季生活闘争の評価をしたときに、33年ぶりの5%台の賃上げは実現しましたが、生活が向上したと実感している人は少数にとどまっており、個人消費は低迷しています。また、低所得者層ほど物価上昇の影響が強くて、生活はより苦しくなっています。マクロの個人消費低迷の大きな要因となっているということを評価しております。
その意味では、先ほど鶴崎委員からも国民負担について触れていただきましたけれども、国民がこうしたコストを負担していけるようになることも考えた上で目標を設定していく必要があるのではないかというふうに思っています。
先ほど事務局から、この小委員会自体が諮問機関として政府案を示し、そして総理がトップとなっている対策本部の案としてパブコメを実施し、閣議決定するという段階を踏むというところで行けば、まさにパブコメのところで国民の声をしっかりと聞いた上で目標を決めていく、そういうことが重要ではないかというふうに思っております。
以上です。
○大塚委員長
では、小西委員、お願いします。
○小西委員
ありがとうございます。林委員はもうお帰りになったんですけど、このような形で本当に議論ができる審議会は初めてだなと思っておりまして、非常に時間は厳しいですけれども、聞いていらっしゃる方も楽しいかなと思っております。
3点申し上げたいんですけれども、まず一つが、先ほどちょうど吉高委員がおっしゃったことと同じ内容にはなってくるんですけれども、下から施策を積み上げて考えるボトムアップの延長で将来の目標を考えるのか、それとも1.5℃に必要なトップダウンの目標から考えるのかというところは、長くUNFCCCの世界でも議論されているところでもありますけれども、日本は前は2030年目標を26%削減だったのを、政治的なトップダウンで46%、50%の高みを目指すと、いきなり上げられました。現場の省庁の、特にエネ庁の方は本当に大変だったと思いますけれども、やっぱりそのときに省エネをもっと進めて、脱炭素エネルギーをもっと進めてという形で、かなり本当に大変な数字合わせをされたと理解しています。
ただ、今この審議会で日本は46%オントラックだと、これほど誇らしげに言えるぐらい、すなわち数字があると施策はついてくるという面もあるのだと思っております。ですので、やはり下から積み上げるという考え方ではなく、必要なところを、たとえできなくても、そのときは説明責任を果たせばいいので、持っていくという考え方、それ日本は過去できたという成功体験がありますので、そういう形で考えていくという方法もあるのではないかなと思っております。
GX戦略の中で、やっぱり環境と経済の好循環ということで、特に、中でもグリーンプロダクツをもっと買ってくれるような需要、マーケットをつくっていくということがすごく重要だということが話し合われていると理解しております。そのためにも、やはりそもそもの目標というものがあって、それで初めてついていくという形があるのではないかなと思っております。
数字が66か60か73かという、数字がそんなに大きな問題ではないというかもしれないんですけれども、UNFCCCの長年の国際交渉を見ていると、結局、数字がひとり歩きして、施策が後からついてくるという、そういう形でみんな数字をすごく交渉するという形ですので、やはり野心的なトップダウンの数字に施策がついてくるという面もあるのではないかなと思っております。
あと、もう一つ、二つ目として、公平にと私が申し上げたのが、ちょっと皆さんに誤解されたように思ったので、それだけ説明したいと思ったんですけれども、各国、ほかの他国との公平性を見て目標をつくっていく必要があるって、そういう意味の公平で言ったわけではないんです。というのは、公平というのは、本当に100か国あれば100か国とおりの考え方があって、UNFCCCでも全くまとまらなかったものなので、そうじゃなくて、審議会で議論する場において、研究機関として幾つかある中で、やはり公平に研究機関に機会を与えてもいいんじゃないのか、もっとインクルーシブに、透明性を持ってやっていいのではないかという意味で、プロセスに対して申し上げました。
もちろん前提をそろえて、きちんと走り出すというのが本当は理想なんですけれども、今は時間がないと審議官もおっしゃっていました。ただし、今からまだ議論する時間は残されていますので、前提は違ったとしても、研究機関によって前提と考え方が全然違う、だけど、こういうふうな前提で、こういう考え方だったら、こういう数字が実現できますよということを、やはり国民は聞いてもいいのではないかと思います。
先ほど秋元委員もおっしゃっていたんですけれども、IGESさんとか自然エネルギー財団さんの考え方はこうだと理解しているとおっしゃって、やっぱりでも、この場で自然エネルギー財団さんとかが、それにきちんとコメントを返す場がないというのは、やはり残念なのではないかなと思っております。
最後、もう一つなんですけれども、産業部門、本当は上に凸がいいんだと、やっぱり非常に、雇用政策からいっても、そして企業の負担からいっても大変なんだと、そのお声は大変よく分かります。同時に、やはりもっとやってくれという産業部門もありますよね。特に、SBTとか、今は日本がトップを走っています、認定を受けている企業は。日経平均の半分が既にSBTを取っていますし、RE100もそういう状態にあります。
RE100の企業さんがおっしゃるには、日本は再エネが一番調達しにくい国で、下手したら再エネリーケージが起きてしまうかもしれないというぐらい、やっぱり再エネというものが重要になっていく世の中で、苦労されている企業さんもある。でも、この場でそういった企業さんの声を聞けないですよね。それは非常に残念だと思っています。もちろん基本政策部会とか、ほかのところで聞ける機会もあると思うんですけど、やっぱりNDCの審議会の中でも、残された、限られた時間ですが、そういった積極的な産業界さんの声も聞いていく機会を設けるということが、やっぱり選択肢をつくる上では重要なのではないかなと思っております。
以上です。
○大塚委員長
どうもすみません。では、大下委員お願いします。
○大下委員
ありがとうございます。日本商工会議所の大下でございます。
幾つか、私と池田委員の厳しいよという発言に対して、いろいろと、それでは駄目なのではないかというご発言をいただいています。中でも、高い目標を掲げることで企業の取組やイノベーションを促すという観点もあるのではないかというご発言がありました。大いに納得するところですし、一般的な考え方として理解しますけれども、改めて今の我が国の経済の状況、中小企業の立場から、2点だけ申し上げたいと思います。
1点目は、繰り返しになりますけれども、上に凸、60%でも、我々としては十分に高い目標だと思っていますし、そこに向けて取り組むことで、企業の取組やイノベーションを促す効果というのは十分あるというふうに思っています。
2点目は、高い目標を掲げれば、おのずと企業の野心的な取組やイノベーションが進むかというと、やはりそれほど簡単なことではないというふうに思っています。ここは髙村先生が途中でおっしゃいましたけれども、目標設定と併せて、どのような施策、対策が必要か、可能かというところをしっかり示していく、考えていく、議論していく、ここが非常に重要なのではないかという点であります。
一つには、多排出産業、大企業を中心に、どうやって我が国の技術を結集して脱炭素のイノベーションを起こして、これを次世代につないで、環境にも配慮して、なおかつ豊かな日本をどうやってつくっていくのか、あるいはその技術を海外に展開していくことで新たな富をどうやって生み出していくのか、こういった点が一つあるでしょうし、もう一つは、企業数で全体の99.7%、国内の排出量で約2割、この中小企業に、どうやって1社1社、取組のメリットを理解させて、具体的なアクションに踏み出させるのか。できるところからどんどん進めていけばいいという発言もあって、そのとおりと考えますが、実際に中小企業でも非常に意欲的にチャレンジしている企業さんがたくさんあります。ただ、繰り返しになりますが、企業数で99.7%に、しっかり裾野を広く取組を広げていくというのは、先ほどこれもお話がありました、価格上昇の転嫁の難しさ等もあって、なかなか簡単ではない。高い目標を掲げればイノベーションや取組が進むというふうには、私としてはなかなか、それはそうですねとは言いづらい部分があります。
繰り返しになりますが、どのような目標を定めるか、これが上に凸であれ、オントラックであれ、下に凸であれ、そのことと同時に、あるいはそれ以上に、掲げた目標に対してどうやって日本全体で、地方や中小企業も含めて、なおかつ成長を伴う形でたどり着くのかという道筋をしっかり示すことで、多くの中小企業も含めて企業の経営者が希望を見いだして取り組んでいく道筋をどうやって示すのか、これがどういう目標数値であり、排出削減のため、あるいは成長イノベーションのために非常に重要なことなのではないかなというふうに、これまでの議論を伺っていて、思っています。こういった内容もしっかり今後の計画の中に盛り込んでいただきたいというふうに思います。
私からは以上です。ありがとうございます。
○大塚委員長
ありがとうございました。
では、秋元委員、今までのご質問に対するご回答も含めて、よろしくお願いします。
○秋元委員
ありがとうございました。ちょっと幾つか、ご質問とかがございましたので、ご回答したいと思います。
まず、鶴崎委員から、コスト増のところのご説明をいただきましてありがとうございます。ご指摘のとおりで、しっかりそういう部分のコスト増が、それぞれのシナリオでどれぐらいなのかということを国民に説明していくということは大変重要だろうというふうに思います。ちょっと我々の数字だと、数字を示しているだけなので、そこは伝わりにくいかなというふうに思いました。ご解説いただきましてありがとうございます。
その上で、その後のご質問、藤瀬委員だったか、あったかと思いますし、他からもあったと思いますが、一応前回お答えしていたつもりではございますが、今回分析したのは、繰り返しでございますが、1.5℃シナリオを整合的に分析しているので、温暖化影響被害に関しては十分それを織り込んだ分析だというふうに考えています。もちろん、温暖化影響被害を緩和するというのが気候変動対策でございますので、それも踏まえた上で、1.5℃ぐらいが安全サイドを見ても十分だろうということで分析しているので、メリットは十分織り込んだ分析だというふうに理解しています。
その上で、さらに日本が率先して取り組むことによって、例えば日本の温暖化対策の製品であるとか技術が海外に展開できて、日本がまた便益を受けられる可能性もあるということだと思いますので、そういった分析に関しては、今回のここの委員会の資料ではご提示していませんが、エネルギー基本計画を議論した基本政策分科会に12月3日に出させていただいた資料であるとか、もしくは8月のGX実行会議の専門家会合に出させていただいた資料の中では、成長実現シナリオと低成長シナリオでどういった便益が得られるのかということも含めて試算を出しています。
とりわけ成長実現シナリオの場合は、日本はコストが技術で下がっていって、それによって海外で売れる可能性も出てくると。しかも限界削減費用にあまり差がない形、差はありますけども、それなりに低い差ですので、日本で製造して海外に展開していける余裕があるということでございますので、そうすると、海外でもCO2は減り、そこで便益が日本にも返ってくるということで、排出削減の費用はかかるけども、成長実現シナリオのように、うまくいけば、日本にはむしろメリットが出てくる可能性もあるということをお示ししておりますので、ぜひその資料もご覧いただければと思います。
他方でリスクもあるということを示しているわけでございまして、仮に日本が非常に厳しい目標で、しかも技術進展があまりないという、まさにご紹介している低成長シナリオのようなものが実現してしまうと、日本はやっぱり脱炭素の資源がないので、技術進展が起こらないと非常にコストが上がってしまって、他国とのエネルギー価格差が広がってしまう。そうすると、まさにドイツで今起こりそうになっているわけですけれども、日本も足を半分突っ込んでいるというふうに思いますが、エネルギー多消費産業、CO2原単位の高い産業の生産量が下がってしまって、経済に大きなダメージになって、むしろ技術開発する余裕もなくなって、世界に炭素がリーケージしていってしまう、日本はもっとGDPが物すごく落ち込むような可能性もあると、そういうリスクも同時に見るということが重要で、それが我々が将来世代に向けて、そのリスクも踏まえた上でトータルとして何をすべきなのかということをちゃんと考える必要があるという中で分析結果を示しておりますので、ぜひよろしければ、その辺も含めた上でご覧いただければと思います。
その上で、藤瀬委員から、仮に2030年NDCができなければどうなるのかと、1.5℃整合になるのかということですが、もちろん一番効くのは、やはりアメリカや中国がNDC不整合になるかどうかというところが非常に重要だと思いますし、その前に、そもそも先ほどから何回も申し上げていますが、2030年のNDCがそもそも1.5℃不整合な部分が非常に大きいので、さらにそこが難しくなってくると、もちろん1.5℃からオーバーしてくる可能性があると。ただ、これは日本の問題ではなくて、日本に全く問題がないというとちょっと語弊がありますけれども、ほぼ効いてくるのは中国、インド、アメリカもしくはロシアとか、そういった大排出国がどうなるのかということによって圧倒的に変わってくるということだと思います。
ただ、それでも道筋がないのかと言われると、我々としてはなるべく、ある限りは1.5℃を目指していきたいというふうに思いますので、例えばCDR、DACCSとか、そういったものを使いながらカーボンネガティブにしていくことによって、若干、手前が排出したとしても、そのリスクを最後取っていくということも、最後の手段としては考えざるを得ないかなというふうに思います。ただ、繰り返しでございますが、これは日本の、今議論している60%減とか73%減とか80%減というところとは無関係な、日本が制御できないところで決まってしまうことだというふうに理解しています。
その上でもう一つ、藤瀬委員からお話があった、先ほどの、大体話は済んでいますが、1.5℃で十分、温暖化被害を防止する便益を見ているということでございますが、ちょっと参考で申し上げておきますと、この議論で行くと、よく使われるのは温暖化影響被害の限界コストということが議論されて、これはSocial Cost of Carbonと呼ばれるもので、アメリカ政府がよくこれを参照するわけで、つくっているわけでございますが、これはトランプ政権か、バイデン政権か、もしくは民主党政権か、共和党政権かで算定方法が変わるので、かなり幅が出てくるということでございますが、一応今のバイデン政権は相当、この温暖化影響被害のSCCを高く見積もっているわけでございますが、それでもtCO2当たり190ドルという数値を使っているわけですね。トランプ政権では本当に10ドルとか、そういった推計になっていたわけですけれども、今は190ドルです。
そうすると、先ほどの私の参考資料のところで見ていただきますと、60%削減のときでも、日本の限界削減費用は、成長実現シナリオでは294ドル、低成長シナリオでは410ドルということでございますので、190ドルより高いということです。
要は、これだけ温暖化影響被害を見込んで、非常に被害を大きめに見込んだことと比較しても、仮に60%減のシナリオであっても十分それを上回ると。若干安全サイドを見て73%減であれば、十分、温暖化影響被害を緩和する便益よりも高いところを見ているということでございますので、温暖化影響被害を軽く見ているというような対策には決してなっていないということをご理解いただければと思います。
あとは、津久井委員から、コスト分析に限定と。これは先ほどご回答したところと重なりますし、あとは2035年60%減、中央値がそれぐらいなのでということでございますが、これも繰り返しでございますけれども、2030年時点で非常に大きなEmissions Gapがあって、IPCCの出している2035年60%減というのは、2030年を大きく深掘りして1.5℃、オーバーシュートなしのシナリオの場合60%減でございますので、そういう面では十分、今回分析している部分は、どれを取ったとしてもIPCCの言っていることと遜色のない形になっているかと思います。
幅広い分析が必要だということに関しては、そのとおりだというふうに思いますので、そういう面で我々RITEとしては6シナリオを分析したということで、必ずしも73%減の決め打ちではなくて、60、73、80%、しかも技術の進展によって2シナリオということで、6シナリオを出したということでございますし、同時に国立環境研究所さんも今回分析を出されて、2研究機関でシナリオ分析したということだと理解しています。
繰り返しでございますが、もちろんいろいろなシナリオがあるということは理解していますが、先ほどもご紹介したように、モデルによっては、一般の方はシナリオ分析というと、同じように、差が分からない方が多いかもしれませんけれども、どういった分析をしているのかというのは、シナリオといっても、自分の思いを語られている部分もあったりするので、それはそれで意義のあることだというふうには思いますが、そこをちゃんと峻別して、どういうことを分析しているのかをちゃんと理解しないといけなくて、そういう面で国立環境研さんとうちは、ずっとIPCCでもシナリオを多く提供していますし、査読論文もたくさん両者変えておりまして、ほかの研究機関では、多分、査読論文を変えていない研究機関も多いというふうに思いますので、そういうところも含めて、しっかり判断をいただければというふうに思います。
最後、1点だけでございますけども、議論がありましたように、これはちょっとモデル分析を離れてということですけれども、高過ぎる目標は、やっぱり私は、あまり意欲を逆に、本当にそこに行く道筋が見えなくなってしまうと、みんなやる気を失ってしまうと。これは欧州の高名な、かなり環境派の研究者と私も議論しても、みんなそういうことを異口同音に言っていて、高過ぎる目標を掲げてしまうと、結局、目標の道筋を見失ってしまうので逆効果になるということはよくおっしゃっていて、私も全く同意です。
例えば、ダイエットしようと思っても、10kgダイエットするという道筋は、なかなか描けないことがあって、5kgぐらいだったら、こういうことをやれば、やれるかもという感じになって、そういうふうに、やっぱり意欲的ではあるけどチャレンジすれば何とか到達できるというような、ぎりぎりのところを出していくということが、実際に実効ある排出削減につながるというふうに思っているので、そういうことも含めて、この議論はぜひしていただきたいと思います。
すみません、もう一点だけ。先ほどから、企業によっては意欲的だというのは、私も全くそうで、やっぱり国も様々ですし、企業形態も様々なので、そういう面では、ある企業体によっては80%減をやれるという企業もあると思います。ただ、全体として見た場合に、日本の排出量を規定しているのはやっぱりエネルギー多消費産業がCO2排出量の大きく部分を出していますので、一律に何%削減ということをすると、そういったエネルギー多消費、CO2原単位の高い産業に同じように削減率を求めるということになってくると、そこは事実上できなくなってくるわけです。
そうすると、先ほどご紹介した低成長シナリオの経済影響というのをぜひ見てみていただきたいんですけれども、そういうところが結局、海外にリーケージしていって、産業がなくなっていくと。そうすると雇用を失っていくということがあるので、しっかりそういったところが脱炭素の道筋がちゃんと取れるようなペースで削減していくということが、経済と環境の好循環のためにとても重要で、それがまさに将来世代の幸福のためにとても重要だと思うので、そういう視点をぜひ考えていただいて、この削減目標の議論って深掘りすればいいというものだけではないということだと私は理解しています。
以上です。
○大塚委員長
私から一つだけ。ちょっと委員長が勝手に聞いて申し訳ないんですけど。
スライドの14に出ているこの数字は、今おっしゃった、リーケージをして海外に出ていってしまうことのコストは入っていますか、入っていませんか。
○秋元委員
すみません。リーケージのコストというのは、リーケージの場合はGDPで測ったりしないといけないので、ここは限界削減費用とかエネルギーシステムコストだけで測っていますので、ここにリーケージのコストは入っていません。だから、仮に日本にとどまるとした場合には、エネルギーコストはこれだけ上がるということです。リーケージすると生産量自体が下がるので、このエネルギーシステムコスト自体は少し下がりますけども、代わりに生産が日本からなくなってしまいますので、GDPは非常に大きく落ち込むということになりますので、もっとこれよりひどいような状況が例えば出てくるということでございまして、これはむしろ楽観的に見積もっているというか、経済全体への波及効果というものは見ていない、部分的な部分で見ていますので、本来はもっとひどいことになりかねないぐらい。これ、成長実現シナリオのときはいいですけども、低成長のような形で、技術があまり進展しないという状況が仮に起これば、そういうひどい状況にもなりかねないというのは、別の計算でちょっと出していて、ここにはないので、ぜひ基本政策分科会の12月3日の資料も併せてご覧いただければと思います。
ただ、そちらは63%減のケースしか分析はしておりません。
○大塚委員長
ありがとうございます
ちょっと私の司会の不手際で誠に申し訳ないんですけれども、7時までということになっていますが、場合によっては8時まで延長することはお伝えしてあったと思いますが、8時までの延長をお認めいただいてよろしいでしょうか。
○伊藤室長
事務局でございますが、まず1点、目標・経路の議論はしっかり継続ということが一つと、委員の中には途中で退席される方もいらっしゃると思いますが、そこで公平性とかが失われないようにということが大前提で、かつ、ご賛同いただければということでございます。
○大塚委員長
どうぞ。今の点についてですね。よろしくお願いします。
○岩船委員
スケジュールの話だけ教えてください。明日も時間を予定していると思いますし、あと24日もあると思うんですけれども、そこでどういう議論をされるおつもりなのかというところだけ、確認していいですか。
○大塚委員長
事務局、お願いします。
○伊藤室長
まず、ご議論いただいている目標・経路につきましては、最後の課題までしっかりご議論いただくという形を考えてございますというのと、テーブルさせていただいている温対計画、政策部分もございますので、この後どのような形になるかにもよりますけれど、一定程度、政策のところも少し触らせていただいてご議論をいただければというのと、恐らく全部は行けないので、残り部分を明日ご議論いただいて、それを踏まえたものをもう一度、24日にテーブルさせていただいて、24日、目標・経路も含めて、改めてご議論いただきたいなというイメージでございます。
○大塚委員長
よろしいですか。
とにかく目標のことは引き続き継続して議論はするけれども、2章、3章、その後ろのほうまで徐々に続けていくという趣旨だったと思います。
○岩船委員
すみません、その対策の話は、でも、具体的なものというのは特に書かれていないと思います。この文言が適切かどうかということの確認ということですか。
○大塚委員長
いえいえ。対策の話ももちろんします。
どうぞ。
○伊藤室長
まず、3日間やらせていただくという意味では、今日、明日、24日というところでございます。それから、行ければ今日フロンぐらいまでご説明いたしたいなというところが一つで、残り部分は明日ご説明したいなというところがあります。
それから、いわゆる書きぶりだけかというところは、やはりこういう政策を入れられるのではないかとか、こういうところはもう少し何かできるんじゃないかということも含めてご議論いただければというところと、やはりご議論だけでは済まないものは書面にて、例えばですけれども、金曜日中とか、ちょっと難しいかもしれませんが、書面でも受け付けるということも検討したいと思います。
以上です。
○大塚委員長
よろしいですか。
○池田(将)委員
すみません。この後の時間は、8時までは何をするんですか。
○大塚委員長
いや、まだご発言される方が、今出ているだけでも4人はいらっしゃいますけれども。あと5人ぐらい、いらっしゃいますし、今日は3章の1節、2節まで、できたら扱いたいというふうには思っています。
○伊藤室長
目標・経路のご議論を、もちろん継続ですので、今日何か決めるということではないんですけれども、一とおりやらせていただいて、あとはちょっと対策のところを、少しフロンのところまでご説明をして、8時までの間は、その辺りを中心にコメントいただくという形でいかがかなと思っております。
○池田(将)委員
分かりました。
○大塚委員長
では、よろしいでしょうか。
では、髙村委員、お願いします。
○髙村委員
ありがとうございます。
今回のNDC、これまで議論してきたことですけれども、前回までのNDCの決め方と違うというところが一つ、多分大きな、方法論とか進め方の点でも、なかなか苦労している点ではないかなという、私自身は感想を持っています。
2021年のときの30年のNDCって、やはり基本的には積み上げをベースにして水準感を持ってきたということだと思うんですけど、50年カーボンニュートラルは日本の法定目標になっていますし、さらに今日、皆さんの共通認識だというふうに思いましたけれども、やはり1.5℃という国際目標との整合的な排出経路ということを考えたときに、なかなか10年、15年先の、しかも非常に大きな変化の中でどう見通していくかという、目標をどうつくるかということの難しさということを改めて感じた次第です。これは感想です。
一つ、シナリオ分析について、小西委員ほかから、ほかのシナリオの検討についてのご提案がありました。ちょっと正直、悩んでいるところであります。何かというと、RITEさんのモデルはRITEさんのモデルで優れた特質を持っていらっしゃるんですが、同時に、これは増井委員もそういうご趣旨でおっしゃったんではないかと思うんですが、モデルが持っている想定と制約というのがやはりあって、一つのモデルだけを前提に政策を議論することの危うさも、この間、感じているわけです。
そういう意味では、小西委員がおっしゃった、ほかのシナリオ、ほかのモデル計算をしている人たちの話も聞きたいというのは分かると。他方で、何を悩んでるかというと、増井委員がおっしゃったんだけど、それぞれの今モデルって想定が違うので、それをどういうふうにこの議論と結びつけていくのかというのが、なかなかこのタイミングで難しいなと思っていまして、一定の、やはりどうしても意見が違うところについて、想定を合わせて、それぞれのモデルで評価してもらうようなことがあると非常に有益なんですけれども、ひょっとしたら時間的な制約はあると思いますけれども、ちょっと事務局のところでご検討いただくしかないかなと、私自身、ですから非常に悩んでいるという率直な発言でございます。
今日の議論の中で若干ちょっと私は異論といいましょうか、意見が違うというか、気をつけたほうがいいと思っているところは、限界削減費用が国民負担であるという議論は少し注意をする必要があると思っています。これは電気料金負担とかで既に基本政策分科会でも議論になったところだと思いますけれども、確かに限界削減費用が高くなった中で、排出している人が追加的に削減することのコストが高くなるということについてどう考えるかということは重要ですけれども、国民がその時点でどういう負担をするかという議論とは、それとは違うというのは留意する必要があると思います。
それともう一つは、革新的技術は極めて重要で、イノベーションは本当に重要だと思うんですけれども、イノベーションを待つのかということは、もう一つの問いだと思っています。というのは、やはりこれまでの議論、ヒアリングの中でも、既に短中期で、特にエネルギーコストが上がった中で省エネ対策なんて典型的ですけれども、今足元でも国民にとってプラスの効果になる対策がある。先ほど下田委員もおっしゃいましたかね、建築物対策なんて本当にそうだと思うんですが、そうしたものというのは、実はイノベーションをどうつくっていくかという課題と同時に、もう一方でやはり今、国民にとって裨益する対策として、政策をつくってやっていく必要があるものがあるんじゃないか。
それは実はGXの文脈でもそうでして、今この変化の中で企業が変わっていかれるのは本当に大変だと思うんですけれども、しかし、今、日本が抱えている課題を、その大変さを理由に看過して待つのかというと、そうではないというのがGXの戦略だと思っていまして、だからこそ、規制と支援という二つでやるという方針を出されていると思います。
それが私が今申し上げた、国民の負担への懸念はすごくよく分かる、でも、国民に裨益し得る政策もあり得る。そして、今変わるのは大変だけれども、手をやはり打たないと将来に禍根を残し得るような課題にどう対応するかという意味で、やはり政策が本当に大事だと思うわけです。この難しさをどうやって乗り切っていくか。
そういう意味で、先ほど目標と排出経路と同時に政策の議論をすべきだと言ったのはそれでして、目標は大事です。高い目標は極めて大事だし、政策誘導する効果があるというのは全く賛同するんですけど、しかし同時に、足元での悩みにどう応えて、対策を一歩でも進めるときには政策の議論をせざるを得ないので、目標と排出経路の話と、それから対策の話と、双方を念頭に置きながら、一種、議論をキャッチボールしながら、この中でキャッチボールしながら、合わせながらやるしかないんじゃないかというのが、前半に申し上げた趣旨です。
その観点から、ちょっと先立って文案について申し上げると、さっき岩船委員がぽろっとおっしゃったんですけど、私も同じ感覚を持っていまして、今回出ている温対計画の案、実はこれは、すみません、基本政策分科会のエネルギー基本計画案でも申し上げたんですけれども、35年、40年に目指すところ、そこにどういうふうに至るのかという、例えば30、35年のマイルストーン、そのための重点施策が何で、とりわけ今喫緊でやらなきゃいけないのが何なのかということが、ほとんど書かれていないんじゃないかというふうに思っています。これはひょっとしたら、言うなれば、私たちにどんどん言ってということの事務局の期待なのかもしれず、そういう意味では、私たちは言ったほうがいいのかもしれません。
もう一つ、最後に、すみません、これはまだご提案になってないので、今取り上げていただく必要はないんですけれども、エネルギー基本計画の議論について、今回、参考資料のほう出していただいたんですけれども、あくまで検討中と言われている参考資料5の最後と、それから今日出していただいている資料3-2というのは、やっぱりリンクしてくるわけですね。ですから、目標の水準と経路に関わってくると思うんですけれども、すみません、エネルギー需給の見通しがどうしても日本の場合、85%がエネルギー由来のCO2なのでお尋ねしてしまうんですが、やはり需要の見通し、40年の需要の見通しの背景といいましょうか、どういう想定が置かれているのかということは一つお尋ねしたいと。最終エネルギー消費と発電量。
それからもう一つは、火力3、4割というのは、実は国際的にはすごいショッキングな数字だと思います。趣旨は、低炭素・脱炭素化した火力というのを想定されているという理解をしていますけれども、しかし、同時に、火力の低炭素化技術って、今回は発電コストの検証ワーキングで検討して分かっていますけど、やっぱり高いんですよね、コストが。そういう意味で、これがどういうインプリケーションを持つのかというのは、事務局にお尋ねするだけじゃなく、やっぱり我々は考えないといけない点だと思います。
最後は、ちょっと細かいんですけど、風力のところが、30年、40年の官民の洋上風力の目標との関係でも、かなり発電量が小さいようにも思って見ていまして、これはテクニカルな話かもしれませんけれども、そういう疑問を持っています。
何を申し上げたいかというと、資料3-1について、今、私はエネルギー政策のところでちょっと申し上げましたけど、それをやっぱり出さないといけないんじゃないかというふうに思って、例示として発言しました。
以上です。
○大塚委員長
ありがとうございます。
では、増井委員、お願いします。
○増井委員
ありがとうございます。
今、髙村委員がご発言されたところから行きますと、我々も前回出させていただいて、RITEさんと一緒に出させていただいたのは排出経路と費用だけということで、実際それをどうやって実現するのかというところなしに、費用がこれだけですという、そういう情報しか提供できていなくて、それがエネルギー基本計画、一昨日に出されたものとどういうふうにリンクしているのか、その辺りも実は、この委員会の中でもきちんと提示できていないところはございますので、そこはもし必要であれば提示したいと思っているところです。
先ほど秋元委員のほうから、Social Cost of Carbonのお話がありました。コスト検証ワーキングのほうでSocial Cost of Carbonについて報告させていただいたんですけれども、確かにトランプ政権とバイデン政権の間でSocial Cost of Carbonが違うということなんですけれども、実は推計方法そのものはそれほど違ってはいなくて、むしろ割引率の想定ですとか、あるいは、かつてのトランプ政権のときには被害額をアメリカのみに限定していた一方、バイデン政権の方は世界全体の被害をベースにSocial Cost of Carbonを計算していたというような、そういう想定の違いということで、手法そのものはどちらの政権下においても、もちろん手法そのものも年によってというか、いろいろ進化してきているところではあるんですけれども、どういうふうに想定するのか、将来にどの程度重きを置くのかということによって値が違ってくるということで、現状ではたしか190190ドルぐらいの結果だったのが、2040年には270ドル、これらはバイデン政権のときの値ですけれども、こういう値になっているということで、その点、どういうふうにこういった数字を見るのかというところが一つポイントになるのかなと思っています。
こういうコストに関連してのところなんですが、もちろんGDPへの影響とか、雇用への影響とか、いろいろありますが、先ほど来、貿易の話も出ていましたが、やはり脱炭素することによってエネルギーの自給率が上がり、その結果、輸入額が大きく下がってくるというようなところがあります。
また、現状では太陽光発電の設備は中国から大量に輸入されているわけですけれども、それを例えば国産に変えるとかいうようなことでも経済への影響はは大きく変わってくる。つまり、実際に、どういうふうな形で個々の対策、技術を導入するのかといったことによっても影響が大きく変わってきます。その辺りを全て網羅すると、全体がめちゃくちゃになってしまって、なかなか比較等はできないんですけれども、だから、どういうふうな視点に立って見るのか、そういうところはあらかじめ注意しておく必要があるかなと思います。
先ほど来、産業界の方々から、やはり上に凸のほうが合理的だというような、そういうお話もありましたが、我々の試算では、これは前回の質疑のときにも発言させてもらったんですが、上に凸の場合、特に2040年、2045年から、まだ使えるような設備も廃棄して、省エネ型の技術、費用が下がったということでそういう技術に置き換えていくということが計算の中で起こっています。やっぱり2050年までとは言いつつ、時間ってすごく限られているので、その点、2050年までの時間をいかにうまく使うのか、そのようなことも考えておく必要があると思います。
また、そういった中で、もちろんこれは国の目標なので、全体として何%という、そういう議論にはなるんですけれども、そういった中で、特に取組を進めていかないといけない業種、端的に言うと電力なんですけれども、電化をしていく中で、電力の排出係数というのはできるだけゼロに近づけていく必要があります。やはり2050年に向けて、若干、対策の強弱というのは出てくるところがありますので、やっぱりここには特に頑張ってもらいたい、そのためにはいろいろ補助するとかいうような、全体目標とともに、めり張りのある、特にどういうふうなところに頑張ってもらいたいのかといったところの議論というのも必要ではないかと思いました。
以上です。
○大塚委員長
では、池田将太委員、お願いします。
○池田(将)委員
ありがとうございます。
まず僕も、今日、何度か言っていることなんですけど、僕としては、やっぱり日本が目指すべき目標は、GHGの削減目標は2013年比で66%、75%の高みを目指すだと思っています。
先ほどから中小企業の立場の話だったりとか、あとは将来世代という言葉が出てくるので、僕は今どちらにも該当するかなと思っているので、今、自分自身も中小企業の立場でありながら、26歳なので、若者の中でいうとZ世代に当たりますので、そこの立場も踏まえて発言させていただければなというふうに思っています。
やはりこれまで日本経済を支えてきたのは大先輩の中小企業の皆さんだというふうに思っています。その中で、これから先ずっと持続可能な社会を守るために、最短を目指すための目標か、それとも今目の前のコストや経営が重要で、一旦、世界基準の温度を超えてしまうけど、技術が進化するから大丈夫でしょうと課題の先送りをしているようにしか今聞こえないなというふうに思っています。なので、その点、どのようにお考えなのか、ぜひお伺いしたいと思います。
あと、被害のコストについても、今現在、全く十分に示されているとは思えない、目の前のコストで意思決定をするという流れは、若い世代としては許容できないなというふうに思っています。
また、先ほど大橋委員からもありましたけど、イノベーション、GHGの話があったと思うんですが、先日も電力価格の市場操作の話で、今かなり、本当に正しい形で行われているのかという議論もありますし、2020年の電力高騰のときには、たくさんの電力会社がそれによって倒産したという事実もあります。なので、こういったところで起こっている状況で、本当にこのまま政策が決まってしまう、それに期待するということが本当に正しい方向なのかというところには疑問を持っています。
繰り返しですが、やはり世界で目指す目標というのは、先日のCOP、G7でも話されたように、2019年比で60%以上の削減が必要であるということが、そこに日本も合意しているということなので、そこを前提に、GHGの削減目標は最低でも2013年比66%で、75%の高みを目指すことが大切かなと思っています。
今日は秋元委員のシナリオをベースに議論していると思うんですけれども、先ほどからも、ほかの違うパターンでのシナリオもしっかり見たほうがいいということだったので、今日の明日で、どうなるか分からないですけど、例えばClimate IntegrateさんだったりとかIGESさん、JCAPさんとか、ここに記載がある団体さんに今日、この後お声かけをして、もし来られるのであれば明日来ていただいて、この数字についてご説明いただくという時間を設けた上で議論するというのが正しいやり方なのかなというふうに思います。
以上です。
○大塚委員長
では、池田三知子委員、お願いします。
○池田(三)委員
ありがとうございます。
本日の大変活発な議論を踏まえまして、先ほどの私の発言に補足を加えたいと思います。
企業が、徹底した省エネといった低炭素対策のみならず、脱炭素対策を積極的に行っていく必要性は、論をまたないと思います。ハチドリソーラーの池田委員からもご指摘ありましたが、脱炭素に向けたチャレンジを自らの成長につなげていくということは極めて重要なことです。そもそも、GXとはそういうものであると認識しております。経団連は十倉会長の下、まさに成長戦略としてのGXを推進しているところでございます。
また、鶴崎委員からご指摘があったとおり、企業といっても様々な業種があることは事実でございます。その上で、現在、エネルギー使用量が少ない企業は比較的、負担感が少なく対策を推進できる場合があろうかと思いますので、そういう場合にはより積極的に対策を推進していただくことも重要かと思います。
ただ、今後、川上産業である素材産業が莫大な投資を行って、脱炭素製品が開発された暁には、川下にある企業も、将来的にはコストの高い脱炭素製品やサービスを積極的に購入していくことが必要でして、今後、対策コストが上昇していく可能性が極めて高いことを言わば覚悟して、長期にわたってチャレンジし続ける必要があると考えています。
その際、しっかりと川上から川下、そして消費者に価格転嫁できていければよいですが、国際的な競争にさらされている企業ほど、価格転嫁が厳しい状況に追い込まれることも想定されます。そのようなことを考えますと、日本の競争相手となる外国との限界削減コストに大きな乖離が生じないことが極めて重要となります。限界削減コストは、国際的な競争にさらされている企業ほど、その競争力に大きな影響を与えることについて、ぜひともご理解をいただきたいと思います。
ちなみに、経団連はエネルギー多消費産業のみならず、極めて幅広い、ほぼ全ての業種の企業の方々に会員になっていただいております。先般公表した経団連の提言は、そのような多様な業種、多様な企業の方々にご審議いただいた上で取りまとめていることについてもご理解をいただければと思います。
さらに、日本は資源が乏しく、残念ながらエネルギー自給率も食料自給率も低い状況にありますから、引き続き豊かな国民生活を実現し続けるためには、外貨を稼げる産業をどう育成、確保していくのかといった視点も重要になってまいります。
この審議会会合の第1回会合から議論してきたように、我が国のGHG排出量はG7の中ではイギリスとともに概ねオントラックで推移しているものの、日本のこれまでのCO2排出量の減少は、残念ながら排出原単位の削減というよりは、鉄鋼や化学といった産業部門の経済活動量低下に大きく起因していることは、環境と経済の両立といった観点からゆゆしき事態でございます。これらの産業がこのまま空洞化してよいのか、はたまた別の外貨を稼げる産業を育成していくのか、そのようなことも論点になろうかと思います。
先ほど、どなたかもおっしゃっておりましたが、ロシアのウクライナ侵攻で世の中は大きく変わりました。EUですら今年9月にドラギレポートが発出され、野心的な目標が欧州産業界に追加的コストをもたらして、大きな負担となっているといった指摘も出されています。
また、ドイツでは高いNDC目標を掲げ、原子力発電の停止などの措置を講じた結果、言わばエネルギー環境政策の失敗と言っていいのかもしれませんが、それが大きな原因となって国内のエネルギー価格が上がり、フォルクスワーゲンの国内工場の閉鎖、海外展開が今話題になっているところです。こういったことも他山の石とすべきではないかと考えます。
このように考えますと、NDCの目標の設定は環境政策にとどまらず、産業政策、経済政策そのものであると考えられます。我が国が野心的過ぎるNDCを掲げることによって、日本企業の国際競争力の低下や産業空洞化を招いては、引いては国民の雇用や生活にも悪影響をもたらすことになりはしないかと、とても心配しているところでございます。果たして多くの国民がこのようなことを望んでいるのでしょうか。
先ほど来、若者の視点といったことが議論されています。ただ、若者にもいろいろあると思います。地球環境の保全にファーストプライオリティを置いて、不安を感じている若者もいるかと思いますし、自分の生活の将来不安を強く感じている若者もいると思います。そういったところも、我々は環境政策の枠組みにとらわれず、議論していく必要があるのではないかと思います。
誤解がないよう申しますが、経団連は経済成長だけが重要と申し上げているわけでは決してございません。繰り返しになりますが、環境も経済も極めて重要と考えております。日本政府におかれては、日本が置かれた状況、多くの国民の生活、環境政策はもちろん、産業政策、経済政策の観点も踏まえて、トータルでご判断いただくことが極めて重要であると考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○大塚委員長
ありがとうございます。
池田将太委員、まだありますか。
○池田(将)委員
今の発言のところだけ確認したいんですけど、若者ももちろんいろいろいるのは分かっていると思っているんですけど、ただやっぱり将来の不安というのも、もちろん今、自分たちが働く就職先のことももちろん大切だと思うんですけど、このまま今のコストのことだけになって、じゃあこれから20年後、30年後、自分たちが本当にこれから社会を引っ張っていく世代になったときのことを考えたとき、そのときもう手遅れな状態になっていたら、この問題って解決できなくなっちゃうと思うんですよね。なので今、僕らがここを検討できる場にいるからこそ、じゃあ今できることを、2050年に合わせてやっていくのではなくて、一秒でも早くやっていくことがすごく大切なのかなというふうに僕は思っているので、そこは今、署名活動している若者の方々もいらっしゃいますけど、もう1万人以上の署名が集まってきていると。そういう人たちの声をちゃんと聞いた上で、そこと経済性を両輪で回すということをやっぱり改めて検討いただきたいなというふうに思っています。
以上です。
○大塚委員長
秋元委員、どうぞ。
○秋元委員
1点だけ、ちょっと誤解されていると困るので、申し上げておきたいと思うんですけれども、ハチドリの池田委員が、温暖化影響被害を目の前のコストだけで判断してはいけないとおっしゃったというふうに思いますが、それはそのとおりでございまして、ただ、先ほどからご紹介しているSocial Cost of Carbon、SCCというのは、何百年まで取っているかちょっと忘れましたけれども、数百年先まで取った上で、数百年先までの被害を予測して、Social Cost of Carbonを現在価値換算して分析していますので、先ほどご紹介したような数字の幅はございますが、将来までの温暖化影響被害を全部織り込んだ上でのSocial Cost of Carbon、要は温暖化影響被害の現在価値換算になっているということだけ、ご理解いただければと思います。だから、手前の温暖化影響被害を見ているだけではなくて、将来予測される部分まで見込んでいるということでございます。
以上です。
○大塚委員長
池田三知子委員、お話しになりたかったんじゃないかと思いますので、どうぞ。
○池田(三)委員
ありがとうございます。
池田(将)委員がおっしゃることはもっともで、やれることを今やらなければいけないと思っております。ただ、革新的技術の開発には時間がかかるし、普及にも時間とコストがかかるということを申し上げております。
2030年の46%、2050年カーボンニュートラルを目指すことは変わらないわけでして、その上で、上に凸がより現実的と考えていることを申し上げます。今からやらなければいけないということについては、同じ意見でございます。
○大塚委員長
どうもありがとうございます。
後でいいですか、今のほうがいいですか。藤瀬委員のほうから事務局に対してご質問がございましたので、伊藤室長、お願いします。
○伊藤室長
ありがとうございます。
パブコメ案を複数案でかけられるのかというご質問があったかと思います。基本的には一つの案で政府案としてかけるという形になろうかと思ってございます。
以上です。
○大塚委員長
どうぞ、大橋座長、お願いします。
○大橋委員
1点だけ。先ほどの池田さんのお話で、電力の情報漏えい問題とかカルテルのお話をされたじゃないですか。あれとGI基金って全然違っていて、電力は電力さんの話がありますけど、GI基金というのはNEDOという全然別の組織でやられていることなので、ちょっとそこのご理解の切り分けだけ、ちょっと気になったものですから。
○池田(将)委員
分かりました。ありがとうございます。
○大塚委員長
ありがとうございました。
ご意見は一応出尽くしたということでよろしいでしょうか。非常に活発な議論ができて大変よかったというふうに私自身は思っております。こういう双方向の議論は必ずしも今までやってこなかったので、そういう意味では大変よかったというふうに思っております。
2章までに関しまして十分に議論が尽くされたというふうに思っておりますので、ここで議論を一旦終わりにして、次の章に進みたいと思いますが、あまり時間がなくて恐縮ですけど、よろしいでしょうか。
ありがとうございます。では、次に、地球温暖化対策計画の第3章、第1節、第2節について、議論を進めていただきます。事務局からご説明をお願いします。
○伊藤室長
ありがとうございます。
繰り返しになりますが、この議論自体を今日でやめるということはないということかと思いますが、継続的ということで、やはり目標と政策をなるべくセットでご議論いただくという状況で、今テーブルさせていただいている計画の案を途中まで申し上げて、取りあえずハイライト部分を申し上げて、各局のみならず、何かできないかというところは同時並行で、政策の部分もコメントいただきながら、この目標・経路もご議論いただくという形にしたいと思います。ちょっと駆け足で恐縮ですが、少しご説明に入ります。
資料で行きますと、32ページ辺りからになります。
エネルギーのほうは何度か出ていますけれども、エネ庁のほうで検討を進めている段階ですけれども、こちらにも入れて、特にCO2に関わるところには記載をということでございます。
ハイライトで申し上げると、例えばですけれども、産業部門の取組として32ページ、これは基本的に現温対計画46%、もちろん高めの政策部分が実はありますので、さらにそれをある程度、2040年政策を上乗せするですとか、そういうところがあるので、そこをハイライトしたいと思いますが、例えば27行目ですかね、2040年に向けての記載の中で、徹底した省エネの推進であるとか、あるいは燃料転換、電化、非化石代替を進めていくということです。ここにいわゆるエネルギーを取り巻く状況がありますけれど、この辺りもしっかりやっていくということが記載されております。
あるいは、38ページ辺り、部門で考えますと、38ページ目は業務その他部門とございますけれども、ハイライトさせていただくとすると、やはり建築分野は非常に大きく重点を置くべきかなと思っておりますし、22行目辺りから、2030年以降に新築される建築物はZEB基準の水準の省エネ性能の確保等を目指すというような記載がございます。
同じように、駆け足で恐縮ですが、44ページには、家庭部門の中にも、28行目辺りですが、同様にZEH基準の水準を大きく上回る省エネ性能を有する住宅の導入と、そういったところ。あるいは省エネ性の向上、再エネの導入拡大、非化石転換やデマンドレスポンスの促進等を進めていくといった施策が書き込まれてございます。
それから、駆け足で恐縮ですが、運輸部門に参ります。ハイライトさせていただいているのは、かいつまんでいる中で、ここだけが重点というわけではございませんし、要点でございますけれども、例えば運輸部門のCO2排出量は86%が自動車というところで、そこはライフサイクルを通じたCO2の排出ゼロを目指すというところが、47ページには出てまいっているという状況でございます。
飛ばさせていただいて、58ページ、59ページに参ります。
太陽光発電については、59ページ目の一番上で申し上げると、ペロブスカイト太陽電池については早期社会実装を進めて、2040年には約20GWの導入目標というお話ですとか、14行目にありますような地熱で行けば、地熱開発加速化パッケージの中で取り組むというような記載が設けられているということでございます。
それから、63ページに参りたいと思います。
非エネ分野でございますが、63ページにありますような、廃棄物焼却の減少の中で、9行目、10行目辺りですけれども、プラスチック廃棄物対策の実施ですとか、廃油のマテリアルリサイクル、この辺りの促進によって二酸化炭素を削減していくというところは、新しい政策というか、なるのかなと思います。
同じように、64ページに参りますと、家畜に関連する温室効果ガスの排出削減として、上にはメタン排出削減、下にはN2Oというところも、まさにハイライトすべきところかなと思ってございます。
それから、駆け足で恐縮ですけれども、吸収源対策に参りますと、71ページ目にはブルーカーボンの取組が出てまいります。森林もしっかりやり、ブルーカーボンについては、例えばですが、21行目にあるような沖合のブルーカーボンについて、関係省庁連携であるとか官民連携による推進体制で取組を検討していくということは新しい記載になります。
あるいは73ページ、J-クレで行きますと、J-クレについては、73ページの21行目にありますような、例えばCO2吸収型コンクリートのJ-クレ化の検討を進めると、こういったところも吸収源対策の新規というか、ものになろうかなと思います。
あるいは、75ページに参りますと、75ページの22行目に住宅建築物のライフサイクルカーボンの削減というのが出てまいります。先ほどの政策と、さらにはライフサイクルカーボンの算定評価、こういった制度を設けて、建築物の脱炭素化を進めるというところは新たなところかなと思います。
あるいは、77ページには中小企業の脱炭素経営を進めるというところで、これまでの政策の延長の中で、78ページにありますような、中小企業がしっかり排出量算定・公表を容易にできる環境整備であるとか、その下には、ご意見いただいたものを踏まえているところもありますが、脱炭素経営を進めることが経営リスクの低減や成長のチャンスなど、そういったいわゆるメリットを含めて訴求することで取組を後押しするといった記載も設けております。
そのほか、ここの舞台ではありませんけれども、カーボンプライシングの検討も進んでおりますので、その辺りの記載を追加いたしておりますし、あとは、83ページに参りますと、サーキュラーエコノミーの観点で幾つか新しいところを追加してございます。
例えば、16行、17行目にありますようなカーボンニュートラル型廃棄物処理施設の技術開発ですとか、その後に出てまいります廃棄物処理施設からのいわゆるCO2を回収したCCUなどの早期実装というところも新しいところになるかなと思ってございます。
取りあえず、88ページで終えたいと思いますが、そんなにないので行ってしまいますが、88ページは監視ですね。いわゆる衛星観測なども含めて、88ページの上にあるようなモニタリングは、いわゆる技術的な、科学的な情報もありますけれども、国内や国際の削減努力をモニタリングできるような、そういった基盤情報の整備というところがございます。
89ページからは公的機関による取組として、例えば89ページの12行目にあるようなペロブスカイトの率先導入であるとか、24行目にありますようなGX製品の率先導入といったところは、少しハイライトさせていただきたいと思ってございます。
地域共生型、あるいは地域裨益型の再エネ導入拡大については、かなり踏み込んで表現を追加してございます。ちょっと時間の関係で割愛しますけれども、担当も今日は入っていますし、明日も入ってもらいますので、ご質問などがあれば、ぜひお願いします。
同じように、100ページに参りますと、デコ活については、新しいところで行きますと16行目に、2040年までに、いわゆる数値目標ではないですけど、貢献目標というものを新たに掲げております。
あるいは、101ページにあるような「くらしの10年ロードマップ」によって、必要な方策の道筋を示すというところも新しいかなということでございます。
そのほか、削減政策ということではないですけれど、102ページについては環境教育であるとか、若者の声の取り込みですとか、そういったものも記載させていただいてございます。
あるいは、105ページにありますような地域創生の文脈で、地域脱炭素政策の在り方に関する検討会、それを踏まえた取組というのも追加しております。
駆け足で恐縮ですが、そのほかで参りますと、海外分野は113ページに、AZECなどを基礎としたような取組、やはり日本でどれだけ減らすかということもございますけれども、国際貢献をして、外でも減らすと。そういったものをある程度、見える化していくということができないかなということで、特に115ページの一番上ですけれども、いわゆる国際的な取組の中で、その貢献の見える化を目指すというのは、極めて新しいところかなと思ってございます。
最後にフォローアップ部分が、やはり不確実性の中で政策をやっていくということで、124ページでございますけれども、進捗管理のところは、単にフォローアップをするというわけではなく、フォローアップをしながら政策の具体化ですとか入替えを柔軟にやっていくというところを新たに記載を設けさせていただいております。
取りあえず以上でございます。
○大塚委員長
ありがとうございます。
先ほど髙村委員からは既にご意見が出ておりますが、ほかにもご意見があると思いますので、どうぞ、ご発言なさる方はネームプレートを立てていただくか、挙手ボタンをクリックしていただければと思います。
では、鶴崎委員、お願いします。
○鶴崎委員
ご説明ありがとうございました。
恐らく詳細に書かれていることには、一つ一つに異論を申し上げるというようなことはないというか、これまでやってきたことをさらに強化して、深掘りしてということを書かれているし、また新たなことにチャレンジするという意欲が示されているんだろうというふうに受け止めております。
一方で、フォローアップに関しては、ちょっと一つご検討いただきたいこととしては、今日の議論でも1.5℃目標整合という話は、やっぱり論点として非常に大事だったと思いますし、そこをどういうパスでやるのかということに関しては、かなりまだ見解の隔たりがありましたけれども、そこに関しては、髙村先生がおっしゃったように、土台ができたのかなと。
この1.5℃目標というのも、恐らく気候科学のいろいろな知見の集積といいますか、発展に伴って変わってくると思います。今も既に第7次評価のほうが進んでいるということですけれども、その結果を待つのではなく、できればそういう気候科学の専門家にも、こういうフォローアップだとか、あるいは見直しの際には議論に入っていただいて、この目標の意味するのが何なのか、この前提が変わっていないのかどうかといった観点での貢献を求めていくようなことが必要なのではないかと感じています。
それから、個別の中では特に申し上げることはあれなんですが、まだ数字が入っていないところではあるんですけれども、どこでしたか、政府実行計画で、政府の施設の目標値が2030年50%、35年○%、2042年○%というふうになっていたところがあったかと思います。
政府の施設も、必ずしも庁舎だけでなく、様々な事業があるということに注意が必要なんですけれども、一方、庁舎部門に関しては、先ほどちょっと申し上げたことになるんですけれども、エネルギーコストというのは、言ってみれば非常に小さいものでして、そこに対してきちっと再エネ調達をして手当をしていくということを目標に既に掲げてやっておられますけれども、もうちょっと踏み込んでできないのかなというふうに感じます。
ここも、国全体の目標よりちょっと上回るぐらいのことでは決して野心的とは言えないと思いますので、そこはぜひ深掘りして、もっと早い年限で実質CO2ゼロを目指す、そういう施設をたくさん政府のほうでやっていく必要があるだろうと思っています。そういったメッセージは、個別の細かいところですが、申し上げておきたいと思います。
ひとまず以上です。
○大塚委員長
ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
小西委員、どうぞ。
○小西委員
2点だけ。先ほど髙村委員もおっしゃったんですけれども、やっぱり日本はエネルギー起源CO2が85%を占めますので、エネルギーの議論なくして、温暖化対策、NDCは本当に話しにくいというよりは、話せないなと思っております。もちろんこれはすごく重要なことではあるんですけれども、やっぱりエネルギー基本計画の今回案が、あくまでも案だというふうにおっしゃっておられたので、どういうふうになっているかというご説明をぜひいただきたいなと。それと、それに対しても、NDC委員会からも意見を言わせていただきたいなと思っております。
あと、もう一点は施策として、すごくこれから重要になってくるのはGX-ETSとかカーボンプライシングだと思っております。ですので、ここの中にそれが本当は大きな位置を占めるはずだと思いますので、GX-ETSについてもぜひ詳しくご記入、まだ決まっていないところもあるんですけれども、ご一緒にやっていらっしゃると思うので、ご記入いただけるような形をお願いしたいなと思っております。
あとは質問なんですけれども、115ページの二国間クレジット制度は3か所に分かれて書いてありますけれども、パリ協定のところで行くと、今回は除去と、それから方法論が決まってきたので、除去を日本もこれから手がけていかれるのかなと思うんですけれども、今後もやっぱり6条2項で主にやっていくのか。6条4項は日本の国際貢献として今のところのご予定がどうなっているかという点と、それから6条2項なので、やっぱりShare of Proceedsと、それからOMGE、全体的な削減についての拠出は義務ではないんですけれども、やはり国際貢献が日本の中の一番大きなJCMの一つの目的でもあることから鑑みると、非常に拠出は重要なんだと思っています。この点について伺えればと思います。
以上です。
○大塚委員長
ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
岩船委員、お願いします。
○岩船委員
ありがとうございます。
私からは質問させていただきたいんですけれども、もう少し具体的な数値がこの会議中に出る予定があるのかないのか、やはり中身がないと何とも議論しがたいところがありますので。それぞれの個別の記載ぶりを、正直言って全部追うのは無理ですし、考え得る限りのものは網羅されているのかなと思いますので、やはりもう少し具体的な数字の話をできればしたいというのが本音でございます。よろしくお願いします。
○大塚委員長
ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、委員のご意見、ご質問を踏まえて、関係省庁、事務局からご回答をお願いいたします。
○伊藤室長
まず、岩船委員に今おっしゃっていただいたところは、19日あるいは24日に細かい、もう少しブレイクダウンしたものをご用意したいと思って準備をしておりますので、お出しする方向で考えてございます。
あとは、この後、座長に指名していただいて、それぞれ回答したいと思います。
○大塚委員長
では、まず脱炭素室ですかね、お願いします。
○伊藤室長
すみません、続けて。
鶴崎委員からあったフォローアップのご指摘を踏まえて、ちょっと検討したいと思います。ありがとうございます。
○大塚委員長
それから温対課の政府実行計画について、お願いします。よろしく。
○吉野課長
温暖化対策課長でございます。
私の関係はエネルギー需要側の対策ということで、10月末にも1回、進捗状況等をお話しさせていただいて、そのときもくらしとバリューチェーンと公共部門ということで、お話をさせていただきました。
今日、下田委員からもその辺りはしっかりやるべきというお話がありましたし、鶴崎委員からも、政府実行計画についてもっと深掘りをということでお話をいただきました。政府実行計画に関しては、それはそれでフォローアップの仕組みが別途ありますし、そこでまたいろいろご意見を伺いながら深掘りの対策を検討しているところなので、今日のご議論も踏まえて、しっかり目標については検討していきたいと思います。
○大塚委員長
では、GX推進室、お願いします。
○荻野室長
ありがとうございます。
GX-ETSにつきまして、ご質問いただきました。今現在、78ページ目に記載がございます成長志向型カーボンプライシングについて、ご指摘のとおり、今まさに並行して議論中でございまして、その状況をこちらに反映しているというところでございます。そちらの議論の進捗を踏まえながら随時、今後柔軟に見直していくということでございますので、そうした中で、ここの部分というものはしっかり、別の文章の部分でも実行してまいりますし、こちらの提言の中でも引き続きフォローアップしてまいるというところでございます。
○大塚委員長
では、インフラ参事官室のJCMの担当の方、よろしくお願いします。
○行木参事官
インフラ参事官室でございます。
115ページの関連でご指摘いただきました。現段階では6条4項、OMGEの拠出などにつきまして、この段階では考えてございませんけれども、まずは6条以降の実用化が決まったところでございますし……。
○大塚委員長
ちょっと声が小さいです。すみません。
○行木参事官
申し訳ございません。
6条4項に関連して、ご質問があったところでございます。現段階では6条4項の活用、OMGEの拠出などにつきまして考えている段階ではございませんけれども、まず6条に関連いたしまして、完全実用化のオペライゼーションの手法などが決まったところでございますので、6条2項に基づきまして、JCMをしっかり進めていきたいと考えているところでございます。
この先、そのほかにつきましても様々な検討を進めていきたいと思っております。
以上です。
○大塚委員長
6条2項のほうの拠出に関してもご質問がありましたけど、それも今お答えいただきましたか、すみません。
○行木参事官
拠出につきましても含めてお答えしたつもりでございまして、今の段階では考えてございません。この先、また考えていきたいと思います。
○大塚委員長
ありがとうございました。
非常に要領よく答えていただきましたが、もし追加のご意見がある方はネームプレートを。
髙村委員のあれがあると思います。お願いします。
○小高室長
資源エネルギー庁の小高でございます。
小西委員と髙村委員からご質問いただいた関係で、参考資料5を、すみません、ご参照いただきながらでございます。この資料の、ちょっと本当にポイントだけ申し上げます。
最初に、エネルギー政策の原点として、東京電力福島第一原子力発電所事故後の歩みと書いてございますけれども、この反省と教訓を肝に銘じて取り組むということが、引き続きエネルギー政策の原点であるという点を申し上げております。そして、福島の復興再生に向けて最後まで取り組んでいくことが引き続き政府の責務であるということ。
そして、2ポツ目でございますけれども、6次エネルギー基本計画以降の状況の変化でございまして、そこには、下のところに書いてございますけれども、ロシアのウクライナ侵略であるとか中東情勢の緊迫化、DX、GXの進展に伴う電力量の増加、あるいは各国がカーボンニュートラルに向けた野心的な目標を維持しつつも、多様かつ現実的なアプローチを拡大しているということ。そして、こうした脱炭素化に向けたエネルギー構造転換を経済成長につなげていくための産業政策の強化が行われる、こういった状況の変化について記載してございます。
3ポツのエネルギー政策の基本的視点のS+3Eは、原則は維持ということでございます。
続きまして、3ページ目でありますけれども、4ポツで、2040年に向けた政策の方向性でございます。電力需要の増加が見込まれる中、それに見合った脱炭素電源を確保できるかが我が国の産業競争力に直結する状況でございます。そうした中で、GXビジョンと一体的に遂行していくと。
二つ目のポツでございますけれども、日本の状況を考えれば、エネルギー安定供給と脱炭素化を両立するという観点から、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入するとともに、特定の電源や燃料源に過度に依存しないよう、バランスの取れた電源構成を目指していくということであります。
そして、省エネはもちろん徹底してやるということでありますけれども、再生可能エネルギー、原子力などの脱炭素電源を最大限活用するということでございます。
四つ目の丸でございますけれども、2040年に向けて、脱炭素化に伴ってコスト上昇を伴うということが見込まれますけれども、その中でも最大限、コスト上昇を抑制するべく取り組んでいるということでございます。
5ポツ、省エネ・非化石転換でございます。徹底した省エネの重要性は不変でございます。その中でも電化や非化石転換というものが重要になってくるということでございます。
5ポツの二つ目の丸でございますけれども、電力需要の増加に対しては半導体の省エネ性能の向上、光電融合などの技術開発、そしてデータセンターの効率改善などを進めていくということ。そして、工場における設備の更新支援であるとか住宅の省エネ、こういったものにも取り組んでまいります。
三つ目でありますけれども、特に製造プロセスは抜本的な転換が必要であるということで、それに向けて官民一体で取組を進めるということでございます。
続いて、4ページ目、6ポツでありますけれども、脱炭素電源の拡大と系統整備ということでありますけれども、こうした電力需要の増加が見込まれる中、脱炭素電源の確保ができなかったがために国内への投資が行われず、日本経済が成長機会を失うことがあってはならないということ、そして再生可能エネルギーか原子力かといったような二項対立の議論ではなく、脱炭素電源を最大限活用していくべきということについて、記載しています。
こうした脱炭素電源の投資回収の予見性を高めるために、事業者の積極的な新規投資を促すための事業環境整備、こういうことも記載しております。
再生可能エネルギーでございますけれども、重複した点を少し除きますけれども、三つ目の丸に課題が五つ書いてございまして、それへの対応というのが、その次のポツでありますけれども、事業規律の強化、FIP制度や入札制度の活用、地域間連系線の整備・蓄電池の導入、ペロブスカイト太陽電池、あとは浮体式洋上風力、地熱については国の掘削調査であるとか、あるいはワンストップでの許認可のフォローアップ、こうしたものを進めてまいりますし、次世代地熱についても加速化を図っていくというようなことでございます。あとは、中小水力であるとか、廃棄・リサイクル、こういったものの制度整備を進めてまいります。
次の5ページ目でございます。原子力発電についてでございます。
一つ目は特徴を書いてございまして、二つ目のポツでございますけれども、国民各層とのコミュニケーション、あるいはバックエンドプロセスの加速化を書いてございます。
三つ目は、再稼働の加速化に取り組んでいくということ。
四つ目が、次世代革新炉の開発・設置についてでありますけれども、地域の産業や雇用の維持・発展に寄与し、地域の理解を得られるものに限り、廃炉を決定した原子力発電所を有する事業者が原子力発電所サイト内での次世代革新炉への建て替えを対象として、具体化を進めていくというところでございます。
火力発電でございますけれども、火力は供給力、そして出力変動を補う調整力などとして重要な役割を担っているということ。火力全体で安定供給に必要なkWは維持しつつ、非効率な石炭火力を中心にkWhを減らしていくということ、そしてLNGをトランジションとて確保しながら、水素・アンモニア、CCUS、こうしたもので脱炭素化を進めていくということでございます。
続いて、6ページ目でありますけれども、ネットワークの整備ということで、地域間連系線であるとか、地内基幹系統等の増強といったものを進めてまいります。
7ポツでありますけれども、水素等、アンモニア、合成メタン、合成燃料を含みますけれども、こうしたものについては価格差に着目した支援であるとか、あるいはサプライチェーンの構築、そうしたものを通じて規制・支援一体での対応を進めていくところでございます。
8ポツ、化石燃料の確保/供給体制でありますけれども、トランジションを現実的に進めるという観点からの取組を進めてまいりますし、官民一体で必要なLNGの長期契約の確保といったものについても取り組んでまいります。
続いて、9ポツでありますけれども、CCUS・CDRでございまして、やはり脱炭素が困難な分野においても脱炭素化を進めていくために、こうした取組が必要だと考えてございますので、取組を進めてまいります。
10ポツ目、重要鉱物の確保でございますけれども、銅やレアメタルの確保、こういったものについても取り組みます。
11ポツが電力システム改革でありまして、二つ目の丸でありますけれども、一定の進捗があった一方、電力需要の増加が見込まれる中での供給力の確保、あるいは燃料価格の高騰に伴う電気料金の高騰、こういった課題に直面しているということを踏まえまして、下にございますけれども、まず脱炭素電源投資確保に向けた市場や事業環境整備、あるいは大規模需要の立地を見据えた電力ネットワークの構築、安定的な量・価格での電力供給に向けた制度整備や規律の確保、こういったものを進めていくということでございます。
8ページ目は12ポツで、国際協力と国際協調ということで、AZECなどを活用して、多様な道筋に基づいて世界全体の脱炭素化に貢献していくということ。
そして13ポツ目で、国民各層とのコミュニケーションということでございまして、エネルギー政策について、国民一人一人に当事者意識を持っていただくことが重要でございますので、若者を含む、幅広い層とのコミュニケーションを充実させていくということでございます。
その上で、9ページ目でありますけれども、2040年度のエネルギー需給の見通しでございます。これはあくまでも本審議会において直線的な削減経路を軸に検討するということを踏まえた暫定値としてお示しするものでございまして、今後変動していくものでございます。
その上で、エネルギー自給率については3~4割程度、発電電力については、もちろんこれは省エネが進む面もありますけれども、今後DX・GXの進展に伴う電力需要の増加も含めて、1.1~1.2兆kWh程度、再エネについては4~5割、原子力については2割程度、火力は3~4割程度、最終エネルギー消費は2.6~2.8億kL程度ということでございます。
こちらの数値については、私どもの総合資源エネルギー調査会において、まず最大限の経済成長を目指すエネルギー需給全体のコスト最適化を行う、そして海外との相対的なエネルギーコストの比較が重要となると、こうした観点を踏まえまして、各研究機関からヒアリングを行った上ですけれども、RITEのモデルを中心的に活用していくことを踏まえてお示しした数字でございます。風力についても同様であります。
以上でございます。
○大塚委員長
ありがとうございました。
ちょっと事務局に追加してお伺いしないといけないんですけど、髙村委員から聞かれた、2035年、2040年の重点施策が書かれていないというご質問がありましたけど、これはいかがでしょうか。
○伊藤室長
まず、本文のところで申し上げると、なかなか今の現温対計画の中で書いてある記載、多少そちらも強化している部分もございますけれども、その流れの中で記載してあるので、簡単に申し上げると、重点分野をどんと書いているというつくりにはちょっとなっていない状況かなと。
他方で、この後、もう少し対策、施策の、いわゆる少し細かいものをお出ししていく中では、政策部分の細かさもありますけれども、特に、例えばフロンですとかメタンですとか、そういったところはもうちょっと具体的にお示ししたいというところと、重点というところはなかなか、どのありようが重点かというのはありますけど、ただできるだけ、先ほど私がハイライトしたところも、新しいところで言えば、重点と言えば重点ですけれども、ご議論いただきたいのは、そういったところにしっかり取り組んでいくべきところとして何かコメントがあればいただきたいと思いますし、簡単に申し上げると、温対計画自体は各省の政策もある程度同時につくり上げていただきながらやっているという意味では、それぞれ重点と言えば重点というところで、各省の取組に重きを勝手に置くというのは、なかなか表現上は難しいかなとは思っています。
ただ、すみません、ちょっとまどろっこしくて申し訳ありません、できるだけお示ししながら、コメントをいただきながら、議論を進めてまいりたいと思っております。
以上です。
○大塚委員長
ありがとうございました。
もう残り時間はさすがに少なくなってきていますが、もし追加のご意見がありましたら、ネームプレートを立てていただければ。
鶴崎委員。
○鶴崎委員
鶴崎です。すみません。
今ご説明いただいた参考資料5のほうで、最終エネルギー消費量は2.6~2.8億kL程度というふうに示していただいたわけですけど、まだこの辺の数字の確度といいますか、いろいろ前提もよく分からない中で伺うんですが、従来ですと省エネを最大やった場合は5,000万kLですとか6,000万kLといった、そういった数字感もあったんですが、今回はそういうものはないまま行くということでよろしいでしょうか。
○大塚委員長
ちょっと全員聞きます。ほかに何かございますか。大丈夫ですか。
どうぞ、髙村委員。
○髙村委員
私は、ちょっと特に需要のところと六つのシナリオのところでも、かなりばらつきがあったというふうに理解していまして、ただ、もう時間がないので、できれば明日なり、継続して議論させていただければという提案です。
○大塚委員長
ありがとうございました。
小西委員、どうぞ。
○小西委員
同じです。
○大塚委員長
今もし答えられることがおありでしたら、お答えいただいてよろしいですか。
○小高室長
すみません、こちらの数字については、まず総合資源エネルギー調査会のほうでご審議いただく予定ですけれども、まだそちらでも今後検討していくというふうになってございますので、ご説明できる段階になったら、ちょっとご説明させていただきたいと思いますけれども、省エネ量についてどうかという点について申し上げれば、従来は、いわゆる施策の積み上げみたいなことでつくってきたわけでありますけれども、やはり排出削減を野心的に見込んでいくという上では、積み上げだけではなかなか、やっぱり不確実性が物すごく高まっている中で、単一の前提に基づいてつくるというのもなかなか現実的ではないというご議論もありまして、そうした中で、こういったモデル分析なんかも活用した数値として、総合資源エネルギー調査会のほうでご議論いただいております。
○大塚委員長
ありがとうございます。
岩船委員、どうぞ。
○岩船委員
では、今の話だと、基本的にエネ基のほうの議論が進まないと、こちらには数字は出てこないと聞こえたんですけど、であれば、24日になっても特に情報量としては変わらないんでしょうか。
○大塚委員長
お答えいただいてよろしいですか、エネ庁さん。
○伊藤室長
すみません、事務局ですが、端的に申し上げると、温対計画の中で形づくられる情報をお出しして、24日にご議論いただくということになります。そこはエネ庁さんとご相談しながら、出せる数字でご議論いただくということになります。
○小西委員
すみません、今後のプロセスを教えてください。少なくとも、非常に重要なエネ基を、委員の一部の方々は帰ってしまわれたところでお聞きして、意見を本当はこれで十分ある。NDCに一番関わるところなので、これをどういうふうにフィードバックしていただけるのか、それとも単に聞き置くみたいな感じなのかも含めて、今後のプロセスを教えていただければと思います。
○大塚委員長
事務局、すみません、お願いします。
○伊藤室長
ありがとうございます。
まず、若干プロセスとか段取りになりますけど、明日と、それから24日ご議論いただくという形で、いわゆるシナリオ分析のところはどういった形でできるかは、事務局でこの後、考えますが、目標・経路の議論は引き続きやらせていただくというお話が一つと、個別のところは、19日と24日で、どのタイミングで何を出せるかというところはあろうかなと思いますが、ただ少なくとも温対計画としての案をまとめ上げるというか、ご審議をいただくというところの資料は、それが19日なのか24日なのかというのはありますが、テーブルさせていただいて、ご議論いただくということを考えてございます。
○大塚委員長
よろしいでしょうか。
大橋座長、何かございますか。よろしいですか。
ということで、本日は大変活発にご議論いただきまして、今までにないぐらいご議論いただいて大変よかったと思っております。目標に関しては1.5℃目標との整合性というところが多分、皆さん一致していたところだと思いますけども、引き続きさらに検討を進められていくということになると思っています。
さらに、下田委員とか、特におっしゃっていましたけれども、対策のところが大事なので、温対計画としては対策のところも非常に重要ですので、その議論も忘れずに、きっちりしていただけると大変ありがたいと思っております。
では、残りの章につきましては、引き続き、次の合同会議でご議論させていただくということでございますけれども、最後に事務局から何かございましたら、説明をお願いいたします。
○伊藤室長
ありがとうございます。
繰り返しになりますが、あと2日間でしっかりご議論いただくというところと、ちょっと明日にテーブルできるものはなるべく早く整理して、ご提示いたします。
以上です。
○大塚委員長
ありがとうございました。
では、以上で閉会とさせていただきます。本日は大変遅くまで、私の不手際で申し訳ありません。ありがとうございました。
午後 8時00分 閉会