中央環境審議会地球環境部会2050年ネットゼロ実現に向けた気候変動対策検討小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会地球環境小委員会中長期地球温暖化対策検討WG 合同会合(第6回) 議事録

開催日時

令和6年11月25日(月)14時00分 ~ 17時00分

開催場所

対面及びWEBによる開催

議題

(1) 関係省庁からのヒアリング
  ・ 環境省地域脱炭素推進審議官グループ地域政策課
  ・ 国立研究開発法人国立環境研究所
  ・ 公益財団法人地球環境産業技術研究機構
(2) その他

資料一覧

議事次第

資料1 中央環境審議会地球環境部会2050年ネットゼロ実現に向けた気候変動対策検討小委員会 委員名簿

資料2 産業構造審議会イノベーション・環境分科会地球環境小委員会中長期地球温暖化対策検討ワーキンググループ 委員名簿

資料3 国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)結果概要 

資料4 第5回合同会合での主なご意見

資料5 環境省地域脱炭素推進審議官グループ地域政策課 説明資料

資料6 国立環境研究所 説明資料

資料7 地球環境産業技術研究機構 説明資料

議事録

 
午後 2時00分 開会

○荻野室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「第6回中央環境審議会地球環境部会2050年ネットゼロ実現に向けた気候変動対策検討小委員会・産業構造審議会イノベーション・環境分科会地球環境小委員会中長期地球温暖化対策検討ワーキンググループ合同会合」を開催いたします。
本会合は、経産省、環境省が共同で交互に事務局を担いまして、私、今回の事務局を務めます経産省の荻野でございます。
本日の会議は、対面とウェブの併用開催とさせていただきます。開催の状況はインターネットで同時配信いたしまして、動画は会議後、議事録公開までの間、ウェブ上で公開予定です。
本日、産業構造審議会側は9名、中央環境審議会側は8名の委員に御出席いただく予定でございます。定足数の要件を満たし、委員会として成立していることを御報告いたします。
なお、中環審、小西委員、津久井委員は本日、御欠席です。中環審の髙村委員、井上委員、産構審の吉高委員は会議途中からの参加となります。
それでは、本日の議事進行は大橋座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○大橋座長 皆さん、こんにちは。本日もお忙しいところ御参集いただきまして、ありがとうございます。早速ですけれども、会議のほうを始めさせていただきたいと思います。
本日は議事次第にありますとおり、2つの論点がございます。最初に「関係省庁等からのヒアリング」ということで、本日は環境省地域脱炭素推進審議官グループ地域政策課及び国立研究開発法人国立環境研究所、さらに公益財団法人地球環境産業技術研究機構、この3者からのヒアリングを行わせていただきたいと思っています。
議事に入る前に、資料3に基づいてCOP29の結果概要について、環境省気候変動国際交渉室から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○小沼室長 ありがとうございます。環境省地球環境局の小沼といいます。よろしくお願いいたします。
それでは、早速でございますが、資料3を開いていただきたいと思います。表紙をめくっていただきまして最初のページで概要だけ説明させていただきます。
昨日の早朝までアゼルバイジャン、現地バクーにおいてCOP29が開催されておりました。浅尾環境大臣には、政府代表団長のヘッドとして参加いただきまして、ナショナルステートメントをしていただいています。その中で、特に日本の取組として現在23%削減しているという実績があり、46%の削減目標、さらには、その先の2050年ネットゼロに向けて着実に削減しているという我が国の取組をしっかりとPRいただきました。
その上で、共同行動というものを発表していただいておりまして、ネットゼロ・サーキュラーエコノミー・ネイチャーポジティブのシナジーアプローチ、さらにはJCMのさらなる推進、GOSATなどを活用した透明性向上への支援などについて呼びかけていただきました。
その上で浅尾環境大臣には、特に気候資金が一番大きいテーマではありましたけれども、そのほかにも緩和、6条などのテーマについて複数の閣僚級のセッション、さらには議長とのコンサルテーションなどにも参加いただきました。米国、中国、さらにはグテーレス国連事務総長などともバイ会談を実施しております。
会議の結果でございますけれども、既に報道等でも多く出されておりますが、気候資金に関する新たな目標として、2035年までに少なくとも年間3,000億ドルの支援をしていくということが合意されております。加えまして、全てのアクター、公的・民間資金両方含むものになりますけれども、そこから途上国へ向けての支援を年間1.3兆ドル以上に拡大するということも決定しております。現場においては、これでも足りないという途上国の声などもございましたけれども、何とかぎりぎりのところでこの資金目標に合意したところでございます。
そのほかにも、JCMの基礎になっておりますパリ協定の第6条、この運用ルールにつきましては長年の宿題になっておりましたけれども、この場で詳細ルールが完全に決着しまして、完全運用化に至ったところでございます。JCMのさらなる推進に弾みがつくものと期待しております。
最後に緩和でございますけれども、緩和作業計画というものがございまして、都市や建物の脱炭素化の重要性などが確認されたところでございます。一方で、昨年のグローバルストックテイク決定にあるような、例えば、再エネの3倍だとか、化石燃料からの移行を進めていくといったことについて、より踏み込んだ決定というものはございませんでした。
以上、簡単でございますが、報告とさせていただきます。
○大橋座長 ありがとうございました。
続きまして、資料4に基づいて第5回合同会合での主な御意見について、事務局から御説明をお願いします。
○荻野室長 資料4の1ページ目を御覧ください。
まず、エネルギー需要側対策でございますけれども、国民に対してライフスタイルの転換の必要性、行動変容を促していくというようなことが必要であるということ。また、個人にとっても、中小企業にとっても、脱炭素に取り組むことのメリットというようなことの指摘がございました。また、GXを受け入れられるマーケットが必要不可欠である。その際には公共部門、公共工事の役割という部分に対する期待がございました。また、中小企業につきましては人的リソースが不足するといったことがございますので、いかに分かりやすく発信するか。他方で、脱炭素の取組をしていない企業にはなかなか人が集まらないといった御指摘もございました
2ページ目でございます。日本の都市交通システムですとか建築設備というものは世界のトップクラスであって、これらによって世界に貢献するという御指摘がございました。他方での既築の建物についての対策、この部分の問題、課題がございまして、効果的な取組を拾い上げながら、対策に優先順位をつけた上で進めていくべきという御指摘でございました。
3ページ目でございます。国際対策につきましては、グローバルな排出削減貢献というのは非常に重要であるというようなところでございまして、国際貢献ですとか、グローバルバリューチェーンでの削減というものを入れ込んだ目標が必要ではなかろうかということでございました。また、ルールメイキング、これによりまして国際貢献が日本の産業競争力に結びつけるような取組というような御指摘をいただいたところでございます。
以上でございます。
○大橋座長 ありがとうございます。
それでは、議題1のほうに移らせていただきたいと思います。まずは環境省地域脱炭素推進審議官グループ地域政策課から、資料5に基づいて御説明をお願いします。5分めどでいただけるということですので、よろしくお願いいたします。
○近藤課長 御紹介預かりました環境省地域脱炭素推進審議官グループ地域政策課長の近藤でございます。よろしくお願いいたします。
お手元の資料5でございます。
まず3ページイメージ図になります。地域脱炭素(地域GX)のイメージということでございますけれども、上段のボックスになりますが、2050年ネットゼロ2030年46%削減の実現には、国民により身近な地域・暮らしに密着した地方公共団体が主導する地域脱炭素というものが極めて重要だと。そういう認識のもと、地域で脱炭素が進むためには、地域にメリットというものがないとなかなか進まないだろうということで、そこにありますように産業振興、防災力強化、このような地方創生に資する形で進めていくことが大事だということでございます。
左側に地域ポテンシャルがありまして、右側に推進体制、産学官金労言、真ん中に地域経済活性化・地域課題の解決ということで御紹介しておりますけれども、これは実例に基づいたものだということで御紹介しておきたいと思います。時間の関係で割愛いたします。
次のページをお願いします。4ページでございますけれども、地域脱炭素につきましては、3年前に地域脱炭素ロードマップというものを官邸の会議で決定し、それから温対計画に反映させる形で進めてきております。①、②とありますが、①の脱炭素先行地域という比較的・相対的に取り組みやすい民生電力部門を中心に一定のエリアをRE100にするといったモデル地域を2025年度までに少なくとも100か所選定し、2030年度までには実現する。もう一つの②は重点対策加速化事業と言ってますが、全国で重点的に導入すべき屋根置き太陽光、ZEB、ZEH、EV、地域共生型再エネなどを全国で実施していく。こういった2つの仕組みで進めてきております。
下に概念図というか、スケジュール表みたいなものがありますが、先行地域、重点対策加速化事業の下に下向きの矢印がございますが、こういった事業を契機に地域で脱炭素を進めていくための基盤、仕掛け、仕組みづくり、金融機関、中核企業、都道府県等巻き込んだ仕掛けづくり、仕組みづくりを構築していきたいと考えております。
次、お願いします。5ページになります。これはロードマップの進捗状況ということで、今日はお時間がございませんので割愛させていただきます。
それから、6ページです。地域による脱炭素の取組の加速化ということで、ゼロカーボンシティー、これは議会やマスコミの前で首長さんに宣言していただくものですが、1,788の自治体のうち1,122自治体が宣言しているということになっております。逆に言うと最近伸びが鈍化しておりまして、残りの自治体はなかなか宣言が進んできていないともとれます。それから、温対法に基づく計画の策定状況。その下、公共施設・公用車の脱炭素化の状況。地方公共団体における独自の予算とか条例。こういった動きがあるということでございます。
ページをおめくりいただきまして、7ページになります。これは温対法に基づく地方公共団体の実行計画の策定状況です。事務事業と区域施策の計画2つあります。
事務事業は全ての地方公共団体が義務ですが、人口1万人未満の市町村辺りを見ていただくと、策定率がまだ100ではない。それから、地方公共団体の組合というものがあります。これは排出量が比較的多い廃棄物とか、上下水道とか、温室効果ガスの排出量が多いところですが、そこの策定状況が低い。
それから、区域施策編。これは旧特例市までが義務で100%の策定率ですが、それ以外の自治体の策定率は、努力義務ですが、低いという状況になっております。
11ページをお開けください。地方公共団体の状況、予算と条例の事例ということで、予算は割愛いたしますが、独自の条例として下段にありますが、御案内のとおり東京、川崎では建築物への太陽光発電の義務化条例、これが来年4月から施行されますし、長野県、仙台市、相模原市等でも同様の動きがあります。地方公共団体が絡むことによって、政策化されていくという認識でおります。
それから、12ページになります。地方公共団体と運輸部門との連携、地方公共団体と金融機関との連携、地方公共団体とエネルギー会社との連携ということで、その地域・事業にとどまらず、いろいろな波及効果が生まれているという状況になります。
続きまして14ページ以下は、最初に申し上げた脱炭素先行地域という重点対策加速化事業の実例ということで、お時間の関係で割愛いたしますけれども、16ページ以降、何個か事例を挙げておりますが、表題のところを見ていただくと、脱炭素掛ける地域課題解決、地方創生というものをイメージできるような形で書いております。例えば、16ページの右でいえば、石狩の例ですけれども、RE100産業団地の創出とデータセンター等誘致、こういった形でございます。
29ページをお願いいたします。今回のNDCの見直しに合わせまして、地域脱炭素の今後の在り方について、環境省のほうで検討会を設置いたしまして議論を進めてまいりました。その結果概要ということで30ページでございます。この検討会の取りまとめの概要ということで、上段にこれまでの進捗情報とか必要性など書いておりますが、2つ矢印がある中段です。この3年間くらい地域脱炭素を進めている中で顕在化してきた課題がございます。特に地方公共団体における、人材・人員不足、財源不足があるのですが、小規模地方公共団体になりますと、先ほど計画の策定状況を申し上げましたが、顕著であります。また、地域経済の中核となる中小企業、ここについても取組がなかなか厳しいという状況が分かってきております。それから、再エネ導入に伴う地域トラブル、林地におけるメガソーラー案件など、そういった事案に伴うトラブルが増えております。それから、系統制約が増えておりますので、地産地消、自家消費、こういったものが更に必要になってきている。
同じページの右側ですが、例えば、今の課題を克服する、ブレークスルーするペロブスカイトとか、高度なエネルギーマネージメントとか、そういったものを導入していくことも必要ではないかということになります。
31ページ、32ページをお開けください。少し拡大したものになっております。31ページですが、顕在化した課題。先ほど申し上げた3点でございますけれども、その1点目の「小規模地方公共団体を始め」云々というところですが、国、県、市町村、民間企業等の役割分担・連携ということで、今の地球温暖化対策計画でも地方公共団体同士の共同・連携ということが書いてありますけれども、その強化と申しましょうか、それを一層進めていく必要があるという報告書の内容になっております。
その下になりますが、再エネトラブルのところにおきましては、令和4年から進めております温対法に基づくポジティブゾーニング制度、再エネ促進区域制度、これはなかなか実施が進んでおりませんので、ここをもう一回てこ入れをして強化していく必要があるということでございます。
32ページ、最後でございます。「考慮すべき新たな技術」の一番上のほうですけれども、脱炭素先行地域、民生電力部門を中心にやってきました。次のフェーズを見据えて、民生電力以外、GXの部分ということですが、そこに書いてある太陽光・蓄電池、空調、給湯器などの需要側の対策について、EV等を活用したエネルギーマネジメントとか、ペロブスカイトとか、こういった次世代の技術を先導していくようなこと、そういったものをモデル化して進めていってはどうかという御提起をいただいております。
恐縮です。時間が超過しました。失礼いたしました。ありがとうございます。
○大橋座長 ありがとうございました。
続きまして、国立研究開発法人国立環境研究所様から、資料6に基づいて御説明をお願いいたしたいと思います。8分めどで御説明いただけるということですので、よろしくお願いいたします。
○増井委員 国立環境研究所の増井です。声がこんなで申し訳ございません。お聞き苦しい点もあるかと思いますが、御了承いただければと思います。
今日はこうした機会をいただきまして、どうもありがとうございます。国立環境研究所で推計してまいりました2050年までの脱炭素社会を実現するための排出経路について、今日は報告いたします。
4月にも中環審の温対計画のフォローアップ会合で報告させていただきましたが、それをさらに対策の前倒しですとか、後ろ倒し、こういった場合の排出経路の違い、そういったものを今日は御説明いたします。
スライドをめくっていただきまして1枚目、「はじめに」ということで、こちらは飛ばさせていただきます。
スライド2、こちらは推計に用いましたモデルの全体像になります。分析の中心は紫色で示しました技術選択モデルと呼ばれるもので、こちら、産業、民生、運輸といった各部門別にエネルギーサービス需要量というものを想定しまして、資本費用、エネルギー費用、炭素費用、こういったものを考慮して技術を選択してまいります。その結果、CO2、温室効果ガスの排出量を推計する、こういったモデルになっております。ここではCO2となっておりますが、全ての温室効果ガスについて推計をいたしております。また、分析の前提といたしまして、下にあります応用一般均衡モデルである経済モデルを用いまして、マクロフレームの各項目における定量的な情報の整合性といったものを確保するとともに、脱炭素社会で重要となります再エネ、こちらについては時間当たりの電力需給、これが非常に重要になりますので、緑色で示した電源計画モデルを用いまして電源構成等を確認しております。
次のスライドが想定したシナリオになります。こちら、シナリオⅠというものが、これまでの分析で「技術進展シナリオ」と呼んでいました2030年のNDC、これを延長するというシナリオでございます。結果的にこれは2050年には7割程度の削減といったところになっております。
次のシナリオⅠ-aというのが、そのシナリオⅠに対しまして2040年以降に加速度的に技術を導入し、その結果、2050年に実質ゼロを実現するというシナリオになっております。
シナリオⅡ、こちらにつきましては、これまでの分析で「革新技術シナリオ」と呼んでおりますもので、2030年以降に再エネの大幅な拡大ですとか、電化、水素導入、CCS、こういったものを導入して2050年に実質ゼロを実現するというものです。
シナリオⅢは、革新技術とともに社会変容、―社会変容というのはデジタル化ですとか、循環経済、こういったもので効用を維持しつつ、サービス需要を低減する、―これを導入しまして、その結果、2050年の実質ゼロを実現していくというシナリオになっております。
シナリオⅢ-a、次のシナリオは、このシナリオⅢに対しまして革新的な技術を5年前倒しで大規模に展開していくケースになっております。
次のスライドをお願いします。こちらはシナリオの内容をまとめたもので、赤字部分が特徴となっております。詳しくは説明を割愛させていただきます。
次のスライド5ですけれども、こちらはマクロフレームの想定になっております。7月に内閣府から報告されました「中長期の経済財政に関する試算」、こちらをベースに想定しております。
次のスライド6、こちらはシナリオⅢ、「社会変容シナリオ」に相当する排出経路になっております。左側が部門別のCO2排出量、右側がガス種別の温室効果ガスの排出量になっております。2050年のCO2排出量につきましては、産業、運輸、家庭で若干の排出が残りますけれども、発電部門でBECCS等の導入でマイナスとなって、全体的にもマイナスがやや上回るという結果になっております。また、温室効果ガスにつきましては、非エネCO2、CO2以外のガスで若干の排出が残りますが、森林吸収等で2050年実質ゼロを達成するという結果になっております。
次のスライド、スライド7は先ほど示しました各シナリオの排出経路を1つにまとめたものでございます。前のスライドで示しましたシナリオⅡは黄色で示しておりまして、これに対しましてシナリオⅠ、技術進展は7割程度の削減にとどまっております。シナリオⅠから派生しましたシナリオⅠ-a、こちらはシナリオⅠから対策を前倒しするということで、排出経路がやや上振れするという結果になっております。シナリオⅢはシナリオⅡとほぼ同じような排出経路ですけれども、シナリオⅢ-aは対策を5年前倒しするということで、排出の経路が下方向に振れております。
次のスライドをお願いします。こちら、各シナリオにおける費用の比較をしたものでございます。こちらは固定費用と維持管理費用、それとエネルギー費用、これらを比較したものになっております。シナリオⅢ-a、水色の点線で示したものですけれども、こちらは再エネ等の費用低下の前に導入するということになりますので、こちらで示したものは、シナリオⅢ、水色の実線で示したものよりもコストが上振れしています。ただ、2046年以降は導入量が緩くなるということで、費用が低下していきます。
一方、シナリオⅠ-aのほうですけれども、設備更新の入れ替えのタイミングではなくて、強制的に様々な設備を導入する必要があるといったこと、また、実質ゼロに向けまして、新燃料への依存がかなり高まるといったことから、特に2040年代からコストが上振れしているという結果になっております。
次のスライド、スライド9をお願いいたします。こちらは、費用でも追加投資の分を比較したものでございます。特にシナリオⅡ、シナリオⅢ、「革新技術シナリオ」と「社会変容シナリオ」について比較したものでございます。これまで示しておりましたものと同様に、社会変容の実現で革新的な技術への依存度が低下するといったことで、この追加費用も総額で40兆円程度減少するという結果になっております。
スライド10はまとめですので、時間の関係上、割愛させていただきます。どうもありがとうございました。
○大橋座長 ありがとうございました。
続きまして最後の御発表になりますが、公益財団法人地球環境産業技術研究機構様から資料7に基づいて御説明をお願いします。8分めどで御説明いただけるということですので、よろしくお願いいたします。
○秋元委員 地球環境産業技術研究機構、RITEの秋元です。
RITEのDNE21+モデルを用いて2040年の排出削減目標を分析したということでございます。
めくっていただいて、まず3ページ目を見ていただいて、分析・評価のフレーム、全体概要でございます。日本の全温室効果ガスを対象にして分析したというのが一点。そして、メインのエネルギー起源CO2等に関しては、今タイトルでありましたようにDNE21+モデルというモデルを使って分析しております。ほかの部分についても、各種分析モデルを用いて全体を評価しているということでございます。
続きまして、4ページ目でございます。DNE21+モデル、御承知かと思いますが、簡単に御紹介しておきます。ポイントは世界全体を対象に評価しているという点でございまして、ただ、国を詳細に分けておりますので、日本もその中で単独として評価ができているということでございます。もう一つは、モデル対象期間が2100年までの期間を動的に解いているということでございまして、将来にツケを残すというような結果は出てこない。将来の削減も見越して、現在何をすべきかということも含めて、全体の費用が最小化されるようにモデルを解いているということでございます。技術は詳細に積み上げておりまして、供給側、需要側一体で解いておりますので、供給側のエネルギーコストが変わったりすると、需要側のレスポンスも変わってくるということでございまして、全体が供給側、需要側、そして世界全体が全て最適化されている。費用最小になっているというような解を導いているということでございます。
5ページ目、モデルでございます。とりわけ非常に細かいモデルでございますけれども、線形モデルなので若干触れたりすることはございますので、そういうところに関しては御注意いただきたい。ただ、全体を前提条件の下ではモデルが費用最小化で解を出してきますので、恣意性は極力排除していると思っております。
6ページ目でございますが、経済的な基礎部分においては、内閣府の中長期経済財政に関する試算ベースのGDP、潜在的なGDPを与えているということでございます。
続いて7ページ目でございます。技術の将来の想定が不確実でございますので、今回の分析においては2種類のシナリオを用いています。成長実現シナリオと低成長シナリオということで、こちらは8月9日にGX専門家ワーキンググループで御提示させていただいているものと基本同じでございます。ただ、少し技術の想定に関して、その後の最新情報等で見直しを行っている部分がございます。詳細は省略いたしますけれども、成長実現シナリオのほうでは、ここに記載のように、様々な技術に関して、かなり楽観めにコストの低減等を見込んでいる。また、再エネに関しても、社会共生制約が比較的緩いというような想定を置いていますし、代わりに低成長シナリオでは、コスト低減等の見通しが、漸進的にコスト低減していくという想定でございまして、再生可能エネルギーの社会共生制約も比較的強めというような制約で置いていて、少し極端な2つを分析したということでございます。
その上で、次に行っていただいて、2040年の排出削減目標の分析でございます。9ページ目に行っていただきまして、事務局から依頼いただきましたのは、2040年から50年にかけて排出経路が上に凸なのか、真っすぐ線形削減なのか、下に凸なのか、3種類の分析をお願いしたいというように依頼を受けましたので、世界全体に関しては1.5度シナリオで全て整合させています。世界全体は1.5度シナリオ。そして、2030年は各国のNDCをみんな守るという想定を置いています。これは日本だけではなくて、ほかの国も全て守るという制約を置いています。その上で、あとは主要先進国は2050年カーボンニュートラルを実現するということで、そちらは線形で仮定しております。日本だけ上に凸なのか、線形なのか、下に凸なのかという3つのシナリオを分析したということでございます。
結果でございますが、まず10ページ目、1.5度シナリオとの整合性。こちらは結果というよりは想定であるわけでございますが、今回分析したシナリオは一番下でございまして、まず2040年の世界全体のGHG排出削減率でございます。IPCCのC1シナリオが1.5度、オーバーシュートなし、もしくは小さいオーバーシュートということで、ピークは0.1度未満のオーバーシュートを認めるというシナリオでございますが、その下、C2のシナリオが1.5度、2100年、1.5度未満ですが、少しピークが高め、0.1度以上のオーバーシュートを認めるというシナリオですが、そのシナリオとの比較を書いています。C1のシナリオでいきますと、2040年の削減率が平均69%減。C2ですと55%減ですが、今回のシナリオでいくとGHG全体では62%減、エネ起CO2に限れば71から72%減という数値でございます。
CO2正味ゼロの実現時期でございますが、C1シナリオと同様、2050年から55年になっています。カーボンバジェットはC1よりも大きいわけでございますが、これは2030年、NDCを固定していますので、そういう面では今すごく大きなエミッションギャップがあると呼ばれている部分はそのまま残しているということもあって、C1とはギャップがございますが、基本的には2040年の排出を見ていただくように、むしろC1との整合性のほうが近いということでございます。ただ、気温上昇に関しては2030年のNDCが影響しているせいで、少しC2のシナリオに近いような気温上昇になっているということでございます。ただ、いずれにしろ1.5度目標整合的なシナリオを分析したということでございます。
その上で、結果、11ページ目でございます。まず、限界削減費用を世界各国間で比較したものでございまして、成長実現シナリオ、日本の削減率60%減、73%減、80%減。低成長シナリオも同様でございますが、まず60%減を見ていただきますと、限界削減費用は世界間でほぼ均等になっているということが分かるかと思います。これは何を意味しているかというと、1.5度目標を世界全体で費用最小――費用最小というのは限界削減費用が均等化するということでございますので、そういう排出削減に60%減だと、偶然ですけれども合致しているということでございまして、もし費用最小でやろうとすると60%減くらいが日本としてはいいだろうということでございます。ただ、公平性の問題がございますので、途上国よりも先進国はより野心的であるべきだという議論はあると思います。そうすると、もう少し限界削減費用がほかの国より高いほうが説明性は高くなるかなということで、73%以上であると、そういう結果になっているというのがここでございます。
続いて12ページ目でございますが、今度はグラフを横軸に60%減、73%減、80%減を取って、限界削減費用の傾きを見たものでございますが、当然ですが、技術の革新を相当見込まない限りは、大体これが下に凸系の関数になるというのは一般的でございますが、今回の分析でもそうなっているということでございまして、73から先になると傾きが強まってくるというのが一点でございます。
もう一つは、1.5度シナリオのモデルの癖もございますので、限界削減費用がほかのモデルでどうなっているのかということを比較しております。ピンクの帯がNGFSで用いられている3モデル、3シナリオの1.5度シナリオの限界削減費用(炭素価格)でございますが、それと比較しますと60%減がほぼここに入っているということでございますし、70%減になると、技術進展を少し保守的に見込むと、それよりも今回の日本の限界削減費用は高めに出てくるということですし、仮に成長実現シナリオ技術ベースで技術の進展を相当楽観的に見込んだとしても、80%減になると、そのラインを越えてくるというようなものが今回の分析です。
続いて13ページ目、今度は時系列で限界削減費用を見たというものでございます。2030年が46%減でございますので、46%減の限界削減費用と、ほか、2040年、それ以降の限界削減費用を比較したというものでございます。当然ながら、技術進展を楽観的に見込む場合は、限界削減費用は低めに抑えられますし、とりわけ将来世代、将来に行くに従って楽観的に見込んでいるというのが成長実現シナリオですので、このケースでいくと2040年くらいまでは、60%減ですと2030年よりもちょっと下がる。ほかの2ケースでいくと少し上がる。技術を保守的に見込むと、いずれの目標であっても、2040年にかけて、2030年よりも上がっていくというのが今回の分析結果でございます。
続いて14ページ目、最後の分析結果の整理でございますが、今度は限界削減費用ではなくて累積になりますが、エネルギーシステムコスト全体を見たものでございます。それを期間中、累積して表示したというのがグラフでございます。累積していないのが下でございます。こちらで見ても下に凸になっているということでございまして、だんだん逓増していくという結果が見られるかと思います。
最後、まとめでございますが、1.5度シナリオと、いずれにしても整合的な3つのシナリオ、経路を分析した。技術の不確実性も見込みました。3つ目のポツは、国間での排出削減努力の検証をしましたが、60%減ですと費用効率的でありますが、他国よりもうちょっと頑張ろうということになると73%減以上がいいだろうということでございます。限界削減費用は逓増していきます。これは限界削減費用の動きを見たというものでございます。あと、ほかのモデル分析、世界的に言われている限界削減費用、もしくは炭素価格との比較をしてみても、60%減でも整合的ですが、80%減になると、それを上回ってくるという、かなり楽観的に見ても上回ってくるということでございます。時系列でいきますと、46%減は非常に厳しい目標ですが、60%減だと、それよりも若干低下する可能性がある。累積コストで見ても逓増的ということでございます。
以上でございます。ありがとうございました。
○大橋座長 御説明、ありがとうございました。
以上、関係府省等からのヒアリングの御発表でございました。
様々な観点から御説明いただきましたけれども、委員の御意見なり、御質問なり頂戴できればと思っています。中環審と産構審の委員に順に御指名をさせていただきたいと思います。多くの委員に御参加いただいていますので、毎度ながら恐縮ですけれども、御発言、5分めどくらいでお願いできればと思っています。今回のあいうえお順でということで、毎回恐縮ですけれども、順番でお願いできればと思います。なお、今回、福田委員はお時間に制約があると伺っていますので、差し支えなければ、まず福田委員からお願いできますでしょうか。
○福田委員 ありがとうございます。全国知事会の栃木県知事の福田でございます。
本日は、この後、官邸での全国知事会議がございまして、発言順を最初にしていただきました。御配慮にお礼を申し上げます。
ただいま、関係省庁等から脱炭素政策の今後の在り方等について丁寧な御説明をいただきましてお礼を申し上げます。全国知事会では本日、国への提言を取りまとめましたので、その内容や、これまでの本委員会での議論内容も踏まえながら、4点申し上げたいと思います。
1点目といたしましては、我が国の新たな温室効果ガス排出量の削減目標については、あらゆる主体がオールジャパンで取組を加速できるよう、現行を上回る目標を設定していただきたいと思います。国が2050年を見据えた2035年度の明確な目標を示すことで、企業が脱炭素化に向けて投資しやすい環境を整備し、脱炭素とエネルギー安定供給の確保、経済成長を同時に実現するGXに向けて取組を強力に推進していくべきと考えます。
また、企業だけでなく、我々地方公共団体や国民と危機感を共有し、国を挙げて脱炭素をこれまで以上に推進していくという強いメッセージを発信してほしいと思います。高い目標と現実をつなぐのは的確な政策であり、政策の役割が今まで以上に重要になると考えます。
次、2点目といたしましては、一方で、現在の技術のみでこれらの目標を達成することは極めて難しく、ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力発電、水素製造など、次世代技術の開発等が必要不可欠と考えます。これらの技術の早期の社会実装に向け、GX経済移行債を活用し、地方公共団体とも連携した脱炭素製品の需要創出など、取組を強力に推進することが必要であります。また、脱炭素社会の構築のためには、電力のみならず、熱需要の対策も非常に重要であり、水素を活用したボイラーの普及やe-メタンの活用なども求められます。さらに、メタンやフロン類などの温室効果ガスについて、それぞれの特性に応じた排出抑制対策を講じるほか、森林の若返りによるCO2吸収量の向上など、あらゆる手法により対策を講じていく必要があると考えます。
3点目といたしましては、地域と共生した再生可能エネルギーの導入推進であります。再エネは主力電源化が求められておりますが、設置に当たっては地域とのトラブルが生じている事例もあります。地域共生型・地域裨益型の再エネ導入に向けて、地域との丁寧なコミュニケーションの確保や地域への利益還元ができる仕組みの創設など、地方創生にもつながる制度に改善を求めてまいりたいと思います。
また、エネルギーの有効活用としては、発電した場所と使用する場所が近いほど送電ロスが少なく、メリットを享受できますので、こうした点に着目した企業誘致などの取組も必要と考えます。
結びに、本日のヒアリングで御紹介いただきました資料5の30ページ、一番下の部分にありますとおり、国におきましては、地域脱炭素2.0として2026年度以降の5年間を新たな実行集中期間と位置づけ、施策を積極的に推進していくことを表明いただきました。既に1.5°Cの目標の達成は厳しいという声も聞かれますが、地方としても気を緩めることなく積極的に取り組んでまいりますので、今後も脱炭素政策を強力に推進し、地方における財源や人材の確保等についてぜひ御支援いただきますようお願い申し上げます。
以上、全国知事会からの意見でございます。
○大橋座長 ありがとうございました。
続きまして、秋元委員、お願いできますでしょうか。
○秋元委員 ありがとうございます。発表したばかりなのであれなのですけれども、せっかくなので、国立環境研様の御発表に関してコメント、若干質問があるかもしれませんが、2点だけ申し上げたいと思います。
分析、ありがとうございました。比較評価という面でも有益だと思いました。ただ、分析が、排出削減目標と技術の進展の見通しがシナリオによってコンピテーションになっているので、排出削減目標自体の差によるものなのか、技術進展によるものなのか、そこの判別が非常に難しいので、私の理解ではシナリオⅢとシナリオⅢ-aは比較的比較はしやすいので、この2つのシナリオでコストを見たときには、Ⅲのほうがコストが安いということで、Ⅲ-aにすると2040年から50年の間くらいで少しコストが上がるということだと理解しました。そういう解釈でいいかどうかということが一点でございます。
もう一点はコメントです。御説明がなかったのですけれども、最後にIPCC第6次評価報告書の抜粋が少し書かれていますが、ちょっとコメントしておきたいのは、ワーキンググループ3のコメントはないのですが、ワーキンググループ3のSPM、サマリー・フォー・ポリシー・メーカーズの中には、費用と便益に関して書かれていて、2度目標に関しては費用よりも便益が上回る可能性が高いというように書かれていて、他方1.5度についてはエビデンスが十分ではなく、今の段階では費用と便益のどちらが勝るのか分からないというように書かれています。コメントとして、1.5度は非常に重要で、影響側からすると、それは厳しいほうがいいわけですけれども、緩和サイドからすると、1.5度、余り厳しいと、拙速にやり過ぎると、今度は費用が上がり過ぎるということだと思います。その辺りのバランスも含めて、目標というのは全体として考えるべきかと思いますので、コメントしておきたいと思います。
以上です。
○大橋座長 ありがとうございます。
続きまして、池田委員、お願いできますでしょうか。
○池田(将)委員 ありがとうございます。
私からのコメントは、本会議体についての意見を述べさせていただきたいと思っています。
私は今年からNDCのこの会議には初めて参加をさせていただいている形です。お声がけいただいた際には、我が国が2050年にカーボンニュートラルを実現するために専門家の皆さんとともに政策や施策を議論して有意義な場にしていきたい。なので、忌憚のない御意見をお願いしたいとのことで声かけをいただいたので、この場で全力で挑みたいという思いで私も参加を決めました。
ただ、前回の会議自体は自分自身も仕事の調整ができずに、欠席せざるを得ない状況があったのですけれども、その際に今回の会議体に関しての意見も含めて意見書をお送りさせていただいております。ただ、今回は環境省の伊藤室長から私の携帯にお電話をいただいて、今回のコメントは控えさせていただきたいという形で言われました。私は、この会議体の在り方と、より野心的な目標設定をすべきであるということを内容としては記載させていただいたのですけれども、どうやらこの内容は都合がよくなかったのか分からないのですが、コメントを読み上げていただくことができなかったので、忌憚のない御意見というところの言葉もパフォーマンスではないかというように私は感じてしまいました。
やはり、この会議体の在り方としても、今は議論が行われるという形の場づくりではなく、コメントを3分で述べるだけ。本当にこの進め方で正しい方向性の政策がつくれるのか、意見が出るのかということに私自身、今、疑問を感じています。一企業を率いる私もリーダーとして、この進め方では本当の意味での価値を生み出すことはできないのではないかと感じています。既に存在するシナリオに何となく都合のいい部分を付け加えてつくっているようにしか今は見えないので、今、世界規模の課題である気候変動を本気で解決したいと思って自分自身もビジネスに取り組んでいます。ここに集まっている皆さんはすばらしい知見をお持ちで、専門性も多岐にわたっている方々が集われていると思うので、日本のカーボンニュートラルの実現に本気で貢献したいと思っているので、改めてこの会議の在り方を考えたいと思っています。
私からは以上です。
○大橋座長 ありがとうございました。
続きまして、オンラインで御参加の池田委員、お願いできますでしょうか。
○池田(三)委員 ありがとうございます。聞こえておりますでしょうか。
○大橋座長 はい、よろしくお願いします。
○池田(三)委員 ありがとうございます。
国環研様、RITE様、モデル分析につきまして興味深く拝聴させていただきました。ありがとうございます。
まず、国環研様の分析につきまして、各シナリオの想定を拝見するに、やはり革新的技術の開発・普及が不十分であれば、2050年カーボンニュートラルの実現が難しいことを改めて認識した次第でございます。その上で、効果的なコストの低減、つまり経済性をもって脱炭素化を進めるためには、技術の進化だけでなく、ライフスタイル、インフラ、制度などの変化を背景に、デジタル化、循環経済進展などの社会変容が必要です。逆に、シナリオⅢ-aで示されたような急速な脱炭素化はコスト増につながる可能性があるとの分析結果をお示しいただいたと理解いたしました。
次に、RITE様の分析につきまして、成長実現シナリオと低成長シナリオに対し、それぞれ線形削減、上に凸の削減、下に凸の削減、3つの削減パスに関し、CO2限界削減費用のシミュレーションをお示しいただきました。いずれも2040年時点の削減度合いが大きいほどコスト増となるとの分析結果となっており、排出削減の推進とともに、国際的な目で見て受容可能なコストに抑えることの重要性をお示しいただいたと理解してございます。
いずれの分析結果も急速な脱炭素推進、つまり下に凸型の削減パスがコスト増大につながるということを表しています。経済と環境の好循環を目指すGXの考え方に基づき、排出削減と社会全体で負担するコストのバランスが取れた削減パスを目指すべきと考えます。
最後に、国環研様、RITE様それぞれに質問です。今回のモデル分析につきまして、今後のエネルギー需要、特に電力需要をどのように見立てておられますか。既に一部で前提条件をお示ししていただいておりますが、経済界の大きな関心事でもございまして、詳しく御教示いただければ幸いでございます。
私からのコメントは以上でございます。よろしくお願いいたします。
○大橋座長 ありがとうございました。後ほど、御質問については御回答さしあげられればと思います。
続きまして、オンラインで御参加の井上委員、お願いできますでしょうか。
○井上委員 井上です。声は大丈夫でしょうか。
○大橋座長 大丈夫です。
○井上委員 ありがとうございます。
遅参をして大変申し訳ありませんでした。
環境省さんの地域脱炭素の加速化についてというところでちょっとお話をさせていただきたいと思います。昨日、アゼルバイジャンから帰ってきたのですけれども、今回のCOP29の参加に当たりまして、私ども連合、それから上部団体の国際労働組合総連合、ITUCでは、COP29の全ての関連する決定に対して、地位に関係なく全ての労働者の人権と労働者の権利、保護に関する明確な文言を求めること。これを政府に要求していこうということで、国際的な労働組合としては全体として取り組んできたところでございます。
今回、労働組合の要求は盛り込まれないという残念な結果になりましたけれども、とりわけ公正な移行に関して、環境省さんの資料でいくと41ページ、地方財政措置ということで、人材育成のところに中小企業のリスキリングや地方公務員のリスキリングが入っておりましたので、多分、ここのところでしっかりと対応していただけるのではないかと思っています。
今回、向こうに行ってオーストラリアの労働組合と意見交換をしたときに、オーストラリアでは公正な移行に関する法案が成立したということを伺いました。具体的にはこれからというところですけれども、法案成立後、石炭事業やガスの事業が閉鎖。3年後、この3年後の中で、ネットゼロの所管庁がコミュニティー地域を選定して、正社員、非正規の社員とも訓練やサラリーも含めてきちんとサポートする体制をしくと。それができない場合は、フェア・ワーク・コミッションというところが裁定や罰則をするということを伺ってまいりました。その意味では、日本の中でもこの公正な移行に関して有意義な情報でございましたので、ぜひまたもう少ししっかりと調査をして皆様にも共有ができたらと思っております。
また、1.5度目標と整合的なNDCの策定、提出というのは必須であると思っておりますので、限られた時間の中ではありますが、引き続き皆様と議論していきたいと思っております。
以上でございます。
○大橋座長 ありがとうございました。
続きまして、オンラインで御参加の伊藤委員、お願いできますでしょうか。
○伊藤委員 ありがとうございます。
まず、コストと削減目標との関わりでRITEさん、国立環境研究所さんから非常に興味深い分析をしていただきまして、ありがとうございます。これを拝見してみると、やはり2040年の削減目標、RITEさんのほうですけれども、2013年度比で73%を超えるとかなり費用上昇の角度が上がってしまうということ。それから、国立環境研究所さんによると、早くやり過ぎてもコストがかかるということ。これをデータで示していただいたというところがあります。そうすると、2040年、73%以下に抑えるというところが、費用対効果というところでは適しているのかとも思います。
ただ、この削減でいくと、今のオントラック上に多分目標を設定するということになると思うのですけれども、今年、平均気温の上昇が1.5度を超えてしまったというところがあります。長期的に見る必要はあると思うのですけれども、今の時点で既に目標を越えたという現実と、では、コストとの問題をどう捉えるかということもやはり重要かと思います。トランプ大統領の登場で、アメリカのパリ協定脱退というのは避けられないのかもしれませんけれども、これから自然災害がもし激甚化していくというようなことになってきますと、危機感の世界的な高まりは避けられず、経済においても、やはり取組を加速化せざるを得ないという動きになっていく可能性もあるということですよね。そうなったときに、脱炭素の取組が競争力となってコストを上回るリターンになっていくということも念頭に置いて考えていく必要もあるのではないかと思います。
ですので、その一歩先くらいのバランスがすごく微妙なところではあると思うのですけれども、グローバルストックテイクで示された2035年度に2019年度比60%削減。つまり、2013年度比で66%削減ということになると思うのですけれども、日本としては、そこになるべく近い目標は捉えていくべきなのかと感じております。
それから、地域脱炭素への取組ですけれども、脱炭素、ネイチャーポジティブ、双方のアプローチにおいて、これから地域の役割が非常に大きくなると思っております。まずは、やはり再生可能エネルギーということで、もっと積極的に進めていかないといけないということだと思うのですけれども、エネルギーの脱炭素化と分散化というのは、災害対策のBCPとしても非常に重要なので、大きな企業が地域に拠点を置く理由にもなり得ると思います。これを地域の強みにしていくということが地域経済の活性化にも非常に重要だと思います。
例のところで秋田県の再エネ工業団地のようなところも出ておりましたけれども、同じように原子力発電所も脱炭素電源でありますので、その立地地域においてもデータセンターなどで同様のアプローチをしていく必要があるのではないかと思います。
それから、循環型社会の構築という点で、ごみの分別とリサイクル、あるいはリユース、こういうものはもっと進めていかないといけないのかと思います。そして、小さい自治体ほど多分それは取り組みやすいのではないかと思います。ごみの分別はとても大変ではあるのですけれども、こういうライフスタイルの転換も含めて、若い世代にはアピールにもなり得るところもあるので、若い世代が流出しないように、あるいは東京から住まいを移すというような動きもありますけれども、これを一つアピールのポイントにしていくこともできるのかなと。
それから、サーキュラーエコノミーですけれども、これも地域にはすごくポテンシャルがあって、特に資源価格の高騰などを受けまして、国内で代替できるものを研究・開発していくという観点で、地域にある廃棄しているような資源に目を向けるという動きもあると思います。ですので、一次産業からの廃棄物だとか、活用できていない自然資源などを企業と共同で開発していくような仕組みづくりというのも自治体が中心になってやるべきですし、金融機関も積極的に巻き込んでいくということが必要かと思います。
あと、地域の特性としては、車社会をどうするのかというところ。ちょうど人口減少、高齢化の進展などもありますので、よりコンパクトシティーが求められると同時に、EVを利用した自動運転バスのような運用なども考えていく必要があると思います。また、農業分野のメタン削減なども取り組んでいかなければなりません。。しかし、これも脱炭素ということを全面に出すと、一次産業の方々は、それはちょっと取組のモチベーションになりにくいというところがあるのですけれども、脱炭素の取組が収量とか質の向上にもつながるという部分もありますので、そういうところのメリットも同時に伝えて推進していく必要があるかと思っております。
以上です。
○大橋座長 ありがとうございました。
続きまして、オンラインで御参加の下田委員、お願いできますでしょうか。
○下田委員 ありがとうございます。
まず、地域脱炭素の話でございますけれども、やはり人材の話が大事だと思っております。先ほどから幾つか出ておりますけれども、それぞれの地域にユニークな人材が育たないといけないと思っております。そのためには、例えば、脱炭素先行地域の取組自体が、その地域の人材を育てるようなものでないといけないと思います。それから、先ほど挙げられておりました41ページのところも、大学であるとか様々な職業訓練施設を取り込んだ形でぜひ進めていただきたいと思っております。
それから、もしできれば、脱炭素先行地域でドミノを倒していかないといけないということがございますので、特にいろいろな地域に波及しそうな取組があれば御紹介いただければと思いました。
それから、国環研の資料6番ですけれども、8ページのところで箇条書きの2番目と3番目です。これ、簡単に言ってしまえば、例えば、水素利用のシステムというのは、今すぐプラントができるわけではないので、後ろのほうでないと技術が出てこないとか、前回も申し上げましたけれども、例えば、建物とか住宅の設備などを改善していこうとすると、それは年間に取り替えられるストックに制約があるとか、そういうスピードに関する制約を、コストではなくて、やはり制約条件として入れるべきではないかと思ったのですけれども、もし何かあればお答えいただければと思いました。
それから、資料7でございますけれども、これは先ほど出していただいた2つのシナリオの違いをいかに分かりやすくしていただくか。ここがポイントだと思いますので、この2つの違いを、できれば個人ベースで見たときの所得だとか、費用負担だとか、挙げていただいている再生可能エネルギーの社会共生制約がどういう関わり方をしてくるのかというところを分かりやすく御説明いただければいいと思いました。
それで、先ほどの伊藤委員の御意見、もっともでありまして、これは本当に難しい話ですけれども、日本が途上国に拠出する資金を含めて、やはりこれから適応コストというものを出していかないと、緩和コストの議論というのは難しいだろうと思いました。
以上でございます。ありがとうございました。
○大橋座長 ありがとうございました。
続いて、岩船委員、お願いいたします。
○岩船委員 岩船です。意見を述べさせていただきます。
まず、資料5の環境省さんの地域の件です。私は、地域脱炭素推進交付金は、本来それだけではないはずなのですけれども、少し再エネの導入に重きを置き過ぎているような気が前からしておりました。下田委員からもお話があったような建物対策ですとか、もちろん項目には上がっているのですけれども、やはりそれぞれの建物に対策していくというのはなかなか容易でないこともあって、余り進んでいないように思います。省エネだけではなくて、エネルギーマネジメントですとか、電化ですとか、建物対策も脱炭素に資するものには幅があると思いますので、ぜひその辺り、積極的に進めていただきたいと思います。
この脱炭素交付金は、最終的に需要と供給でネットでゼロにしなければ、カーボンニュートラルにしなければいけないというものがあって、だから都市部では再エネポテンシャルが限られるので、どうしても難しいというのが現状だと思います。ただ、本来、自治体さんは、需要に近い役割を果たせるわけなので、需要側対策だけでも本当に価値がある。それを極めれば本当に価値はありますので、ぜひそういう需要側対策をやるのだというような視点をもっとフォーカスしていただきたいと思います。それはマイクログリッドするみたいなお金のかかることではなくて、建物単位でできることはまだまだありますので、ぜひよろしくお願いいたします。
あとは、RITEさんと国環研さんの資料は非常に勉強にはなるのですけれども、私、将来的に、これから2040年の目標をつくる上で、ぜひシミュレーションベースで、このようなきちんとしたものに基づいて目標を決めていっていただきたいと思います。ただ、今の時点で、この2者様の資料を見ても、なかなか我々素人には比較ができないということがあると思います。できれば、シナリオの比較、データの比較ができるように、ぜひ共通の指標で判断できるような整理をお願いしたいと思います。そういう意味で、国環研さんのAIMのモデルに関しては、これもCO2削減限界費用で示していただけると、RITEさんと比較できるのになと思いました。総費用だけではなかなかイメージできませんので、検討をお願いしたいと思います。
もう一つ、私、国環研さんの電化と省エネの進展の8ページの説明が少し分からなかったので、どういうことを意図しているのかということをもう少し説明していただけるとありがたいと思いました。
総費用というのは国環研さんのほうで示されていたので、これは私の質問ですけれども、RITEさんの14ページの年コストというものがあったと思うのですが、これは、例えば、国環研さんの8ページの年間費用と比較し得るものなのかどうか。ここに何がカウントされているのかも分からないので、比較していいかどうかも私は分からなかったのですけれども、やはりそういう比較ができると我々としてはありがたい。我々は、モデルの結果に対して、モデルのプロではないので、その数字が妥当かどうかという絶対的な評価はできません。あくまでも、幾つかのモデルで、同様のシナリオで、余りばらつきのない結果が出ているということでしか正直いって判断できないと思うのです。なので、複数のモデルの評価は非常に重要だと思いますし、できれば我々に違いが分かる形で御説明いただけると大変ありがたいと思います。
2040年、恐らく73%というのが一つの指標になるのかと思いますけれども、先ほどのRITEさんの結果を見ても、かなり痛みを伴うシナリオにならざるを得ないと思います。2050年カーボンニュートラルを目指す以上、ここは仕方ないと思うのですけれども、どの程度の費用を負担していかなくてはいけないのかということも含めて、やはりニュートラルにシミュレーション結果を示していただき、それで負担を示しながら国民の理解を求めていくというようなやり方が私は重要だと思いますので、ぜひこの方向で進めていただきたいと思います。また、どの対策のコストにインパクトがあるか。どこを減らすところに価値があるかみたいなこともシナリオ分析により検討できるのではないかと思っております。
最後に、会議の進め方に関して池田委員から御意見がありましたけれども、これは今回だけではなくて、前回までにも何名かの委員の方から御意見が出ていると思います。やはりここに対する御回答がないようですので、ぜひここは何らか御回答をいただきたいですし、何らか対応を求めたいと思います。やり方としては難しいかもしれないですけれども、ここは余りにも人数が多いので、ワーキンググループみたいなものをつくって、もう少し深く議論するような場があってもいいのかと思いました。
以上です。
○大橋座長 ありがとうございます。
続きまして、髙村委員、お願いいたします。
○髙村委員 質問と意見を少し申し上げたいと思います。資料5の地域脱炭素の加速化についてですけれども、スライドの3にあります地域脱炭素の取組が今地域で進められている、そのモチベーションといいましょうか、ドライバーが何なのかということを、ここは非常にうまく説明してくださっていると思います。もちろん気候変動対策であるわけです。しかしながら、地域の諸課題に対して、地域が取り組む一つのエントリーポイントといいましょうか、として脱炭素を位置づけて取り組んでいらっしゃるということかと思います。
既にほかの委員から今後の地域の脱炭素化政策について、知事をはじめ、ございましたけれども、私自身も地域脱炭素、あるいは温暖化の促進区域の設定について、地域、地方自治体のお手伝いをしているところで、やはり具体的に解決すべき課題が出てきているように思っております。一つは、例えば、農地を利用した再生可能エネルギー導入。これはもちろん食料安全保障の観点から重々に配慮しなければいけないのですが、エネルギー基本計画等の議論の中でも紹介されているように、農業者がプラスになるような形で再生可能エネルギーを導入しているような事例も出てきていて、恐らく、こうした地域で論点になり得るといいましょうか、課題になり得る点は幾つか焦点化してきているようにも思っておりますので、具体的にやはりその調整がうまくいくような対応が必要になってきているかと思います。今、農地を一つ例に申し上げましたが、これは県が促進区域において設定する基準と、基礎自治体が実際に促進区域を設定するときに、その基準をどのように反映させるのかという点についても、これは温対法の解釈の問題もあるのかもしれませんけれども、地域のところで少し悩ましさを感じられているようにも思います。ぜひこうした地域脱炭素化政策、今回、検討会で、そして、この議論でも御指摘のあった点を踏まえて検討いただきたいと思います。
増井委員と秋元委員から御報告をどうもありがとうございました。先ほど、岩船委員からもありましたように、基本的にそれぞれのモデルの特性がある中でのものであるということですけれども、一つ重要な点として御質問したい点がございます。といいますのは、削減コストのケースはもちろん重要であります。しかし、同時に、気候変動対策としてもそうですけれども、とりわけGXの文脈でいくと、排出削減策のコストだけでなく、当然、将来の気候変動影響のコストと同時に、中長期的に特に日本にとってプラスになるがゆえに、この政策を取っていると思っていまして、こうした、例えば、GXの文脈でいけばエネルギー自給率の向上ですとか、安全保障、あるいは日本の産業の競争力強化といった対策のプラスの便益についてどのように評価をされているのか。あるいは、評価ができるモデルなのかといったほうがいいかもしれませんが、この点について、確認をさせていただければと思います。
以上です。
○大橋座長 ありがとうございました。
続いて、オンラインで御参加の大下委員、お願いします。
○大下委員 日本商工会議所、大下でございます。御説明ありがとうございました。
まず、RITE、秋元先生からの御説明で、これから先の導きとして上に凸、線形、下に凸の3つのシミュレーションがございました。現在の、いわゆる野心的な目標というように最初はあったかと思いますけれども、これに向けて、それでもオントラックで削減が進んでいる要因の一つは、残念ですが、我が国のいささかの経済の停滞というものがあり、さらに足元では、特に中小企業においてはエネルギーコストの増大が非常に大きな足かせになっているところであります。こうした中でシミュレーションの受け止め方はいろいろあるかと思いますけれども、下に凸の経路を目指せばコスト負担の増加につながりますよという分析は、我々の立場からすると非常に重たいと思っています。国際情勢の先行きが見通せない状況もまだたくさんありますので、今の角度よりもさらに足元のところで取組の加速をするというのはなかなか容易ではないと受け止めております。
申し上げるまでもなく、カギを握るのは技術開発であって、官民の力を合わせて、さらなる取組の加速を期待したいですけれども、そもそも新しい技術が開発されて、実装されて、地方も含めて普及していって効果を生むというのには、順調にいってもやはり一定の期間がかかるというところだと思います。気候変動等もなかなか厳しい状況にあって、温暖化対策の重要性が高まっていることに全く異論はありませんけれども、今申し上げたような現状も踏まえると、仮に、説明があったような官民総力を挙げて2030年までに集中的に取組を進めたとしても、上に凸となることを何とか回避して、これまで取り組んできたスピードでオントラックでさらに進めていくというのが現実的なラインではないかというのが今日のお話をお伺いしての受け止めであります。
その際にぜひお願いしたいと思うのは、まずはリードするのは、多排出産業、大企業だと思います。GX経済移行債、あるいは排出量取引等の仕組みを通じて、そうしたセクターが技術開発、さらにいえば中小企業も巻き込んだサプライチェーン全体での排出削減をしっかり進めていただくこと。と同時に、今日もう一つ御説明があった環境省脱炭素先行地域、この取組等を通じました地方や中小企業の取組をどうやって進めていくか。どうやって加速していくのかというところだと思っています。
日商の調査では、温室効果ガス排出量の把握測定に取り組んでいる中小企業はまだ4社に1社にとどまっています。マンパワー、ノウハウ、資金が不足しておりますので、この辺りの課題をどうやって解決していくのか。国としてのさらなる支援が重要かと思っていますし、加えて言えば、こうした地域脱炭素の取組を、例えば、再エネ導入、あるいはエネルギーの地産地消、こういった取組を、今、人口減もあって、相当疲弊している地域の産業振興、地場の中小企業の活性化、こういうものにどうやってつなげていくのかということが非常に重要ではないかと思います。
私からは以上です。ありがとうございます。
○大橋座長 ありがとうございました。
続いて、オンラインで御参加の藤瀬委員、お願いします。
○藤瀬委員 藤瀬です。ありがとうございます。
地域脱炭素の取組、そして、モデルを用いた分析結果の共有をいただき、誠にありがとうございます。特にモデルにつきましては、現在の状況と、これからの予測を把握することができ、大変参考になりました。
私からは、本会議、本委員会の議論ポイントを踏まえて全体を通したコメントと各発表への御質問をさせていただければと思います。
まず全体を通したコメントについてですが、COPの結果や、本日の分析結果からもありましたように、1.5度目標に整合した野心的な排出削減目標を日本国として掲げることはやはり必要不可欠で、2050年ネットゼロに向けて、現在のNDCでは厳しい部分もあるという結果があることから、本会議ではさらなる温室効果ガス削減の追求に向けて高い目標を掲げ、そして、そこからどのように歩んでいく必要があるのかというところの議論を深めていけたらと思いました。
世界に先駆けて野心的な目標を掲げ、日本の強みを生かせる技術で世界に先んじて温室効果ガス削減に向けて取り組んでいくためには、どのシナリオでも、やはり革新的技術が重要視されており、この革新的技術が生まれやすい、つまり、イノベーションが起きやすい環境、そして、そのような技術が社会実装しやすい環境を国が率先してつくっていくことが重要であると感じました。
具体的には、スタートアップの投資促進、(これは官民含めてです)、あと、日本は研究開発型スタートアップに力を入れていくというところがあると思いますので、大学から生まれる研究成果、社会進出をするための支援、そして、スタートアップのビジネスがより拡大するための支援(これは公共調達ですとか、海外進出の支援を含めてです)また、地域課題の中でも上がっておりましたように、GX分野を担っていく人材をいかに増やしていくかというところを官民両面からの力を入れて進めていくことが必要であると感じております。
まずは環境省さんに質問ですが、地域脱炭素を進めていく上でも課題となっている人材、人員面ですけれども、私も地域、自治体の皆さんとお仕事をする上で、なかなかこの分野は専門人材がいない、また、GX分野とスタートアップ分野の担当者の連携が余りできていないことから、両輪で進めることが難しいというお話をお伺いしていることも多くて、この課題を解決するために、どのような支援が必要なのか。どのように課題解決に取り組もうと現時点でしていらっしゃるのかというところを教えていただければと思います。脱炭素先行地域がどんどん選定されておりますが、この地域の取組や、それをどのように評価されていくのかというところも教えていただければと思います。
続きまして国環研さんに質問ですが、モデルにおいても、やはり革新的技術が重要な要素となっておりましたが、国環研さんが想定されております革新的技術というのはどのようなものなのかというところをお伺いしたいのと、実際にまだ実現しておらず、社会に大きなインパクトを与えるからこそ革新的だと思うのですが、実現可能性をどの程度見積もっていらっしゃるのかというところもお伺いできれば幸いです。
最後にRITEさんに質問ですが、RITEさんのシミュレーションの中でも最も合理的かつ日本が取り組むべきと考えていらっしゃるシナリオ(私がお話を聞く中で線形削減、 73%減のシナリオかと認識しておりますが)、そのシナリオを実現するために、今、欠けている要素、そして、今後力を入れていくべき事柄等ありましたらぜひ教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○大橋座長 ありがとうございました。
続きまして、オンラインで御参加の吉高委員、お願いします。
○吉高委員 発言の機会をいただきましてありがとうございます。聞こえていますでしょうか。
○大橋座長 よろしくお願いします。
○吉高委員 済みません、途中から参加しておりまして、資料は事前に拝見しておりましたけれども、皆様の意見と重複するかもしれませんので、御容赦いただきたいと思います。
私からは、地域の脱炭素のほうについてコメントをさしあげたいと思います。今回、3ページにあるように、地域の脱炭素化でかなりの地域を実際に創生するための市、県を活用した多くのモデルができているということは私も重々承知しております。そして、特に6ページにありました、これは地方公共団体が独自で予算措置をしたり、独自の条例を増加している。これはとても画期的でございまして、ドミノ倒しは、これが進まないとならないと思っています。ただ、まだ少ないというところなので、ぜひもっとこれを加速度的に進めていただきたい。かつ、こういった事例を自治体同士で情報共有していただくのが大変重要なのかと思っております。
御存じのとおり、2028年度、化石燃料賦課金、2033年度、有償オークションでの排出量取引みたいなものが加速してまいりますと、地域にとっても負担が増えてくる。エネルギーの価格が決して下がるという見通しが立っているわけでもないというところでは、今までは2030年マイルストーンに向けてやってきたのですけれども、35年、やはりそこら辺をターゲットに考えていく必要があろうかと思います。特に地域の中小企業がこれに耐え得るような状況ではないと思いますので、ぜひ強化してやっていただきたいと思っています。
もう一つは、私自身は金融機関にも関わっているというところもありまして、自治体と金融機関の連携です。これをもっと協力的に進めていただきたいと思っています。今後、金利が上がってまいりますと、金融機関のビジネスの状況がよくなってまいります。そうしますと、またこれまで脱炭素に向けて頑張ってきた地域の金融機関と、そうではないところで、では、ほかの競争が起こってくると、こういったところに関心が薄くなる可能性もございます。やはりドミノ倒し――私、ドミノ倒しというのも実は……。ドミノ倒しと言われても、それぞれ地域に本当に特徴がございますので、全てが違うモデルになっていくのではないかと思っていることなので、その地域のことをよく分かる地域金融機関が丁寧に地域の産業や中小企業を支援していくようなインセンティブが起こるような形で進めていただきたいと思っております。
いろいろな委員もおっしゃっているかもしれませんけれども、とにかく人材不足でございますので、金融庁、他の省庁とも連携しながらぜひ進めていただければと思っています。
以上でございます。よろしくお願いいたします。
○大橋座長 ありがとうございました。
続きまして、志田委員、お願いいたします。
○志田委員 三菱総合研究所の志田です。
本日は地域脱炭素に係る取組と併せまして、今後のNDCに関わる示唆深いシナリオ分析を御提示いただき、誠にありがとうございました。幾つかコメントと質問をさせていただきたいと思います。
まず1点目ですけれども、今回の議論の前提として、今回の削減目標の位置づけをどう考えるのかというのがあるかと思っております。削減目標を目指すべき大きな方向性とするのか、一定の確度を持った目標とするのかで、やや考え方も変わってくるように感じております。前者の場合ですと、大きく水準感として目指していくということになりますので、その場合、削減パス、経路が重要ではあるのですけれども、そのものを厳密に議論するというよりも、経済合理的な手段から順に対策強度が増していくという方法のほうが望ましいのではないかと考えております。
今回、RITEさんから御提示いただいたシナリオの中に、2040年に限界削減費用が下がるシナリオもございますけれども、仮にこういったパスを想定するのであれば、2040年頃までは経済合理的な手段を重視して、技術革新の期待が持てるポイントで大きく削減するということで、ある種、S字型のパスに近いのかもしれませんが、そういったものが理屈の上では合理的になるようにも思われます。もちろん現実的にはいろいろな不確実性がありますので、こういった狙ったところで大きく下げるというのは難しいかもしれませんけれども、何らか野心的と考えたときに、現実を見据えた形での野心性というものを考えたほうがいいかと思います。
また、後者の場合、一定の確度を持った目標とするのでありますと、これまでの2030年目標と同様に、2035年ないしは2040年目標、これは個別の施策の積み上げ、これと整合的に設定する必要があるかと思いますし、バックキャストとフォアキャストの両面から評価すべきかと考えております。
2点目ですけれども、今回新たにNDCを提出する際のメッセージ性に留意すべきなのかと考えております。今回のCOP29でNDC3.0としまして、開催前にUAE、直前にCOP30のホストのブラジル、そして英国は発表しましたけれども、英国以外では次期目標について目指す発表をしていないというように、私が把握している範囲だと考えております。やや他国の状況も見えにくい中において日本がどの程度の水準感を示していくのかというのも重要なポイント、非常に着目されるポイントかと思います。
こういったことを考えた際に、直線パスの延長だけで見ると、現行のNDCやエネ起等の考え方が変わっていないように受け取られかねないというのは注意しないといけないかと思います。実際には国際情勢の大きな変化ですとか、今回の試算の中にもありましたけれども、ICT産業を中心としました電力需要の大幅な増加の兆し。また、天然ガス、原子力の位置づけ、こういったものが大きく、この3年間で変化があったと思います。エネルギーミックスの議論は基本政策分科会側で実施されるというようには認識していますし、削減目標の内訳というところで、そういったメッセージが出てくるのかもしれませんけれども、目標水準から読み取られるメッセージ、これを日本として誤解されないように注意すべきではないかと考えております。
幾つか質問させていただきたいと思います。
国環研さんへの質問について、これは済みません、基本的なところで大変恐縮です。7ページ目の資料を見ますと、シナリオによって異なる排出パスがございますけれども、こちらは前提条件ではなくて、計算結果として出てきているのかと拝察しましたが、その場合、各シナリオで一体どういった制約が置かれて、このようなパスになっているのかというのが、済みません、見えにくかったので、この辺、御教示いただければと思っております。
あとは8ページ目のところで、もしかしたら、先ほどの岩船委員の御質問と重なるところかもしれないのですけれども、省エネの電化のところに関する記述、需要側の省エネや電化も機器交換のタイミングで進展するものであり、短期間での進展は難しいとありますけれども、需要側の対策については、費用対効果が総体的に高いものも多いかと思っております。ここでいう短期間の進展が難しいというのは、モデルが試算の結果として選ばれなかったということなのか。ある種一般論といいますか、いわゆるユーザーの視点で考えたときには、入れ替わりのタイミングでこういうことが行われるのでという意味なのか、どちらの意味かということをお伺いしたいと思いました。
また、RITEさんの秋元委員への御質問については13ページ目のところで、先ほども触れました緑の実線のところです。成長実現シナリオ技術ベースの60%というところで、2040年の限界削減費用が2030年から下がっているかと思います。これは幾つかの技術の進展というところが理由によるものかと思いますけれども、特にこういったものの影響が大きかった。どのような技術の影響によって、こういった限界費用の削減が行われたというのか御教示いただければと思います。
また、同じスライドの中で、2050年時点でネットゼロと。炭素制約が同じにもかかわらず、2050年の限界削減費用が同じシナリオにあっても異なるというのが、どんな理由になっているのかということをお伺いしたいと思いました。
技術の累積効果、習熟効果のようなものがモデル内にあって、早期導入によって最終的に効果が、コストが安くなるということなのかといったところもお伺いしたいと思いました。
以上になります。
○大橋座長 ありがとうございました。
続いて、増井委員、お願いします。
○増井委員 ありがとうございます。
まずは質問ということで、環境省さんから、地域脱炭素に関するところ、御説明ありがとうございました。2点ほど質問があるのですけれども、今回示していただいたいろいろな事例があったかと思いますが、そういった事例の効果がどの程度公表されているのか。公表されているのであれば、ほかの自治体等の参考になりますので、その辺りを教えていただきたいというのが1点目です。
2点目は、脱炭素社会を実現していく上で、現行の取組が進んでいる、そういったところだけではなくて、まだ取組が行われていない、そういった自治体も引き上げていく必要があるかと思いますが、横展開の議論も資料には記載されているのですけれども、そういったロードマップについて、何か検討されているのであれば教えていただきたいと思います。
続いて、RITEさんの資料へのコメント、質問ですけれども、今回、成長実現シナリオと低成長シナリオという2つのシナリオが想定されているのですが、今回、2040年ということではあったのですが、それぞれのケースにおきまして、実際導入される技術あるいは対策というのはどの程度違うのか。特に限界費用についての違いとして現れるのはコストの違い、そういったものなのか。この2つのシナリオでの対策の違いとはどのようなものなのかということをお聞きしたいと思っております。
あと、このRITEさんのDNEではグローバルなモデルということで、基本的に世界の想定は同じということですけれども、日本の排出経路が変わってきますと、当然、排出がさらに増えてもいい。あるいは、上に凸の場合には、さらに世界全体で帳尻を合わせようとすると、ほかがより削減しないといけないというような結果も出てくるかと思います。そういう割を食うといいますか、あるいは、逆に日本が対策を進めることで得をするといいますか、より便益が高まる。そういった地域についても、もし結果が出ていれば教えていただきたいと思いました。
以上です。
○大橋座長 ありがとうございます。
続きまして、鶴崎委員、お願いします。
○鶴崎委員 鶴崎です。3件の御説明、どうもありがとうございました。後半2つの国環研さんとRITEさんのモデルの報告を伺いまして非常に参考になりましたけれども、会議の進め方に関して幾つか御意見がありましたが、できればこういう御説明を早い段階で伺いたかったと感じました。非常に重要な示唆がたくさんありまして、それの理解、解釈は、岩船委員もおっしゃったように、モデルをふだん扱っていない者にはなかなか難しい。また、前提だとか、モデルの振舞いに関して今日も御質問がたくさん出ていますけれども、そうしたものを踏まえて、この会議体で、あるいは政府の皆さんにおいて、こういうトップダウンで目標を立てていくときの進め方について、もうちょっと深められる時間があったのではないかと思います。
ただ、過ぎてしまったことですので、今後に向けてということで言いますと、やはりこれから、この計画ができた後にフォローアップの会合を毎年やっていかれると思うのですが、そういう場合でも、これは従来の積み上げの話から大きく変わっていると思いますので、こうしたトップダウンといいますか、モデルの分析に関して、その詳細な内訳ですとか、そうしたものをすり合わせながら議論していくような、恐らくそのようなフォローアップが今後必要になってくるのではないかと今のところ感じております。積み上げで従来どおりやっていくと、高い目標を立てるのはなかなか難しいということもあって、バックキャスティングで目標を掲げざるを得ないというのは、これは一つのアプローチとして仕方がないといいますか、むしろ望ましいことではないかと思っております。
ただ、そこの裏づけといいますか、どのくらい大変なことなのかということについてしっかりと国民に示していく必要がありますので、そこの理解を深めていく必要があるのだろうと思っています。恐らく、今回伺っていますと、目標感に関しては、オントラック辺りが妥当な線なのかと、これは本当にこれを見た感想にすぎませんけれども、感じました。73%という数字もありましたけれども、それを上回るような水準だとかなり厳しい負担になってくるというところ。しかも、その負担感は恐らく73%でも相当高いものだろうと思われますので、この辺りをベースに今後の対策の内訳というものを示していただくのかというように感じました。
ただ、恐らく、今回の中で感じたこととしては、国環研さんがシナリオⅢに織り込まれた社会変容シナリオというものが非常に大切な鍵になるのではないかと思っています。ここの肝としては、デジタル化や循環経済の進展によって人々の効用を維持しながら、財、サービスの需要が低減していくということです。これは経済産業省でも同じような方向で議論していたかと思いますので、まさにここの実現性を高めていくということが恐らく今後の焦点になるのだろうと思っています。
既に過去の会合の中でも申し上げてきましたけれども、消費者、国民、住民のそれぞれの意識の変革、あるいは行動の変容が重要になってくるわけですが、その中でやはり納得感というのでしょうか、言われるほうも信頼できる人からの働きかけでないと、なかなか耳を貸せないというところがあろうかと思います。そういう意味では、こういった数字の持つ意味だとか価値、負担ということが強調されますけれども、これは将来に対する保険、あるいは将来に対する投資、そういう側面があるのだということを丁寧に説明していく必要があろうと思います。この中では、今日、地域グループさんからの御報告がありましたけれども、地域でフェース・トゥ・フェースでコミュニケーションを取る機会が非常に重要になってくるのだろうと思っています。
私からは以上となります。
○大橋座長 ありがとうございました。
続きまして、林委員、お願いします。
○林委員 ありがとうございます。
全体の感想ということで、今、皆様、おっしゃっていただいたとおりだと思うのですけれども、最終的にどういう直線を描くかということを、いろいろなモデルケースで御議論されて、今日は2つの研究所さんのお話を伺って、これをモデル分析するのは本当に大変だなと。でも、何となく、急いでやって、がんがんやるとコストがかかると、肌感覚で感じていることを分析していただいたというようにも思いましたが、余りざっくりした話では世間的には納得されないと思うので、その中で精緻化していくというプロセスだと思うのですけれども、資料6につきましては、ほかの委員の方がおっしゃられたとおり、社会変容ですとか、技術ですとか、どういったことを前提にしているのかということをもう少し何かの形でお示しいただければと思います。
それから、秋元先生からいただいたほうで、金融機関にいるものですから、どうしても数字を見ると反応してしまうのですけれども、5ページで前提となっている為替が110円であると。ただ、現実は今既に150円近辺でいて、下手したらこれから円安になる可能性も十分にある中で、もしこれが為替を110円ではなくて、例えば、150円とは言いませんけれども、140円くらいで置いたら、この分析は一体どうなるのかという素朴な疑問がありますので、後でもしよろしければ御教示いただきたい。
併せて、同じく14ページの割引率のところで5%というのは、IPCCの使っているレートだと思うのですが、海外の金利の水準と日本の金利の水準が全く違うので、これを5%で置かないで1%くらいで置いたらどうなるのかとか、余りいろいろ前提を置くと無限大にケースは広がるとは思うものの、やはり日本を前提に考えたときに、このレートがもしインパクトが大きいのであれば、簡単に計算できるものかどうかも分かりませんけれども、御検討いただければいいのかと思いました。
いずれにしても、皆様もおっしゃっているとおりに、急いでやろうとすると負担がかかる。じっくりやろうと思うと目先はなかなか削減が進まない。その現実の中でどこに目標を置くのですかとなったときには、余り答えていなくて、真っすぐで置くか、ちょっと膨らませるか、下に凸にするか。下に凸はどうやら難しそうだとなると、真ん中辺りが無難というすごくつまらない結論になってしまのかもしれません。いずれにしても、ほかの委員の方もおっしゃいましたように、難しい中でも意欲を示す。その意欲を示すために、では、何をやろうとしているのだというメッセージをいかに出せるかということを口だけで言っている国がたくさんあることも分かっていますけれども、できるだけ納得感の高いものを出せていければいいのではないかと思っております。
以上です。
○大橋座長 ありがとうございました。
加えましてですが、本日御欠席の小西委員から事前に御質問等いただいているということですので、事務局から読み上げをお願いできますでしょうか。
○伊藤室長 事務局でございます。
小西委員については、COP29に行かれている関係で残念ながら御欠席ということで、幾つか御質問をいただいております。手短に。
まず、RITEさんのシナリオ分析に関しまして、スライド7の関係だと思いますけれども、2つのシナリオ分析で、2035、2040、まだこれらのCCS、あるいは水素・アンモニア、合成燃料などは主要的に普及していないと想定される。学習曲線で既にコストが低減加速していると想定できるのでしょうかという御質問がありました。
それから、スライド10の関係ですと限界削減費用のお話ですが、同じように、これらの技術は導入量ですとか、実現可能性をどのように考えられていますかという御質問がありました。
併せて、同じくスライド10ですけれども、限界削減費用、技術のコスト設定の前提次第で変化すると理解しておりますが、年間コスト、低コストを示すとどうなるかというところの視点があればお教えくださいということです。
それから、国環研のシナリオに対しましては、社会変容はどういうことを想定されていますかというお話。
それから、シナリオⅢ-aで想定されている新燃料とはどういうものか。2040年に年間コストが上がる理由はどういうことか可能であれば教えていただきたい。
最後に10ページ目の関係だと思いますけれども、革新的技術について、技術習熟が十分でない段階からの早期大量実装を目指すということで、経過年における固定費用やエネルギー費用の負担が増大するとありますが、具体的な技術など実例があれば御紹介くださいということでございます。
以上でございます。
○大橋座長 ありがとうございます。
次に、大塚委員長からお願いできますでしょうか。
○大塚委員長 では、簡単に質問させていただきます。
まず、地域脱炭素との関係で環境省さんに関してですけれども、2つございます。
一つは、先行地域に関して、実態がなかなかついていかなくて苦労されている県があると思いますけれども、そのようなことについて、ここで役に立つようなことがあったら教えていただければと思います。
もう一点です。26ページのところで地域間の連携を図っているケースが出てきていて、これは大変結構だと思いますが、熊本とか、北九州とか、いろいろ出ていますけれども、これは何かインセンティブを与えていらっしゃるのかどうかを教えてください。
それから、モデル分析のほうでございますけれども、RITEさんにお伺いしたいのは、経団連の池田委員もさっき聞かれましたが、原発に関してはどういう想定をされているか教えていただければと思います。
国環研さんに関しては、直線が一番コストが少なくて済むということかと思いますけれども、いずれにしても年間20兆円弱近いお金が要るということになるので、グリーントランスフォーメーション、経済移行債のようなことを続けていかなくてはいけないということを暗に見せていることになるのかと、そんなことも思いました。何かコメントをもしいただけることがあったらお願いします。
以上です。
○大橋座長 ありがとうございます。
最後、私からも委員として発言させていただきます。
まず、特にシナリオの2つの分析については大変精緻にやっていただいて本当に感謝申し上げます。毎年公表されていますが、特にRITEさんのものは厚みがあって、年を追うごとに精練されているなと思って相当程度感心しているところです。
今回、成長実現シナリオでは60%削減で、マージナルコストが世界全体で一律になるというところは、こうした世界を経済学的には求めているわけで、一定程度勉強になった次第です。
それ以上に、さらに上げていくと、これは国環研さんの資料にも定性的には分析いただきましたが、時間的に短期で集中的に実装するということのコストについて、あるいはそのリスクについても指摘していただいているのかと思います。こうした点は、過去思えば、我が国も先行して脱炭素関係の市場をつくったものの、その後、他国に相当程度荒らされた経験もあるというところも含まれるのかと思ってお聞きしていました。
御質問は1つだけですけれども、これは秋元さんにです。11ページ目ですけれども、我が国が60、73、80とどんどん上げていったときに、他国は変わらない数字ですが、これはあるシナリオで多分止めているのだと思うのですが、ここのシナリオはどういうシナリオなのかというところだけ教えていただけるとありがたいと思いました。
以上です。ありがとうございます。
以上、委員からの御質問もありましたので、そうした御質問も踏まえて各発表者から御回答いただければと思います。お時間、限られている関係もございますので、それぞれ要点を絞って6分めどでいただけると大変ありがたいと思っています。
まず、環境省様からお願いできますでしょうか。
○近藤課長 環境省でございます。非常に多くの御質問、御意見をいただきまして、ありがとうございました。
重複する部分もあるので、今日、御提出した資料5などを活用しながらと思っております。資料5を用意していただければと思いますけれども、5ページになります。脱炭素先行地域、横展開のモデルということで、そのノウハウとか、評価とか、どのようなことをしているのかというご質問がありました。この5ページの左上、先行地域については、丸の3つ目になりますけれども、選定された先行地域、今、82ございますが、そのモデル性とか先進性や、取り組んでいる地域課題、或いは地域脱炭素の基盤、仕掛けづくり、金融機関との連携といったものや需要側の特徴、つまりどういう地域をエリア設定しているのか、或いは供給側、つまり地域共生型太陽光だとか、風力であるとか、そういった供給側などの特徴を計4つに分けて分類を整理して公表を今年の3月からしているところでございます。
それから、先行地域は毎年度フォローアップしています。毎年度、前年度の取組をフォローアップしていまして、その中で非常に優れた事例をピックアップしたり、非常に多くの団体が苦しんでいる点についてこういう解決をしていますよというような課題克服の事例とかを公表しています。北九州の例も、最後、大塚先生からもありましたけれども、ここはもともと連携中枢都市圏でいろいろなことに取り組んできたので、脱炭素についても取り組もうという話になったのですが、公共施設の脱炭素化をやりますと、PPAモデルでは、例えば、学校などは夏休みなどがある関係で、なかなかなじまない。ただ、他方でPPAモデルだと、事業者から見て採算性があるというような箱物もありますので、そういうものを全部まとめて、一括して発注することで事業者の採算性を確保して全部まとめてやるとか、いろいろぶつかった課題に対して乗り越えてきた手法などを公開させていただいております。
それから、地域経済効果とか、そういったものも具体的に示しているのかということで、先行地域の提案書というのは全部公表、公開しておりますけれども、事業開始後3年めどに中間評価というものをやっておりまして、今年度が第1回目の中間評価、今まさにやっていますが、その中で脱炭素に係る部分だけではなくて、地域課題解決、あるいは経済効果、こういった、いわゆる地方創生に資するようなKPIというものをもう一回チェックして、それをどのような目標設定にするのか今改めて対応しているところでございます。
それから、人材についての御質問を多くいただきました。このページの(3)のところを見ていただきますと、丸の3つ目になります。地方財政措置のお話をいただきましたけれども、あれは自治体が独自に取り組んだ事業に対して総務省のほうで特別交付税が措置されており、自治体が取り組む対象事業にかかった事業費に対して措置率0,5の特別交付税が措置されるものでございます。自治体が中小企業の方のリスキリングをするために要した経費の半分であるとか、自らの職員に対して行った研修、あるいは資格取得、さらには、中小企業のリスキリングの場合においても資格取得に要する経費を自治体が補助した場合についてはその半分の特別交付税が措置されるということになりますけれども、そういった形で取組を進めております。また、国としても脱炭素まちづくりアドバイザー制度をつくりまして、実際の要請に応じて伴走、あるいはスポットで派遣をしております。これは地方創生部局でも似たような仕組みがございますので、そちらとも一緒になってやっているということでございます。
それから、民間の脱炭素アドバイザー資格制度認定事業というものをつくっておりまして、今、7つの民間事業者の資格を認定しておりますけれども、こういった認定資格を創設いたしまして、中小企業、金融機関、自治体職員、こういった方々に取得していただくようなことを推奨しているということで、地域の信用金庫などでは何百人単位でこういう資格を取っていただいているところがございます。
それから、金融機関とは今後ますます連携してやっていきたいと思っておりますけれども、これまででありますと、官民ファンドでJICNと申しますが、2022年度に創設して、メザニンとか債務保証とかいう形でやっておりますが、30件以上、案件を支援しております。
それから、地方公共団体が、そういう民間事業者に無利子融資制度、ふるさと融資というものをやっておりまして、地銀とかはこの手の人材が少ないので、非常に融資が固いということで、地方公共団体が無利子融資をして後押しします。転貸融資なので、地方公共団体の自らの金利負担について4分の3特別交付税がある。こういったものを積極的に活用していこうというようなことも含めて今やっておりますということでございます。
あと残された時間で若干ですが、福田委員からいただいた新しい技術、ペロブスカイト、水素などについては2週間前ですけれども、地方三団体の意見交換で知事会の副本部長の山梨県知事から多くいただきましたので、冒頭の御説明させていただいたGXイノベーションモデルのようなものをやっていったらいいのではないかというようなことで考えております。
それから、地域裨益型再エネの導入についてです。これも何点かいただきましたけれども、これにつきましては、ポジティブゾーニグの促進区域、これの実績がまだ非常に少ないということで、少し制度的な仕組みのてこ入れをしようというお話をさせていただいております。
また、営農型太陽光の御質問、髙村委員からもいただいておりますけれども、これにつきましても最後のほうでまとめております今後の在り方の報告書の中で、やはりメリットがないと地域脱炭素は進まないということで、農業者が例えば2馬力になるというか、営農型太陽光で副収入があるというようなこととか、やはり非常に重要な要素になってくると思っております。あるいは、同じような視点ですけれども、森林クレジット等、こういったものを支援していったらいいのではないかということで考えております。
お時間がありますので、最後、先ほど説明で割愛をしてしまいましたけれども、33ページ以降を少し御紹介だけさせていただきたいと思います。今後の在り方の検討会の取りまとめ、ダイジェストを冒頭御説明しましたが、大きく分野横断的な課題と個別の取組ということで御説明させていただいております。非常に零細な地方公共団体の話、あるいは中小企業のお話をいただいておりますけれども、この中でいえば、上から②のところで、非常に小規模な地方公共団体、事務事業についても、あるいは区域の施策についても、なかなかマンパワーもいないということで、既に実例もあるのですが、都道府県や中枢連携都市圏と共同、あるいは連携してやっていったらどうか。
それから、中小企業については②の3ポツ目になりますけれども、日頃の行政において、産業政策というのは、市町村と県でいえば制度融資対応なども含めて都道府県が主導しているということがありますので、ここはしっかりと都道府県が担っていくというような立てつけに、推奨、推進していったらいいのではないかというお話をいただいております。
それから、人的なところは③のウになりますけれども、全体として人材不足だということなので、掘り起こしをしっかりして、国単位、ブロック単位、あるいは都道府県単位というところでしっかりと人材のプールをしていこうというお話をさせていただいております。
④については、促進区域、営農型太陽光の話でございます。
それから、下田委員から優良な事例ということで、大ざっぱな説明になりますけれども、今日御紹介させていただいた先行地域、あるいは重点対策のモデルというのは、それぞれ82、149ある中で参考になりそうなものということで御紹介をさせていただいているということでございます。
それから、岩船先生から、省エネ、住宅の話で、先行地域についていえば一定のエリア、民生電力についてはRE100だということで、住宅、あるいはオフィス、これらの脱炭素がマストになっているということなのですけれども、今日、説明は割愛してしまっているのですが、住宅の対策といたしましては、例えば、先行地域であれば黒潮町などが選ばれているのですが、防災カルテを作成した経験・ノウハウを生かし、「脱炭素カルテ」というものを作成し、町内全戸を足で稼いで回って訪問し、各家庭に合った省エネ・再エネ・設備導入を促進する事例があります。また、今日御紹介させていただいた取組の中で、地域新電力、エネルギー会社になりますけれども、ローカルエナジーというところが、これはもともとケーブルテレビの地元企業が出資者でありますので、このケーブルテレビの営業網を活用しながらやっているということと、個別の住宅でいうと、断熱性能も全国ブロック、たしか9ブロックだったと思いますが、そういったところが大ざっぱな基準になっていますので、重点対策加速化事業をつくりながら、独自の地域の断熱性能基準、地域版の断熱性能基準を細かくつくって、地域版の断熱推奨レベルかつ地域材を使って推奨していくような事例があります。済みません、今日は御紹介ができなかったのですけれども。
それから、御質問の中で、藤瀬委員から専門人材がいないということの課題解決については、先ほど、いろいろなツールをさらに拡充していきたいということと、もう一つは、小規模市町村だと全職員入れて50人くらいしかいないというところがありますので、そういったところは、やはり都道府県がしっかりケアしていくという方向性が一つあるのではないかということでございます。
吉高先生の話は、情報共有ですね。先ほど御紹介した今後の在り方の中で、33ページの①の地域脱炭素の横展開のところで、いろいろ優良事例や課題克服事例はこれまで情報公開、情報提供しているのですけれども、もうちょっと具体的に、実践的にこのように解決しましたよと、より細かいデータが分かってきていますので、そういったものの周知を積極的にやっていきたいと思っている次第でございます。
済みません、ちょっとお答えできていない質問があったかもしれませんけれども、一旦ここで終わりにさせてください。
○大橋座長 ありがとうございます。
続いて、国環研の増井様のほうでお願いできますか。
○増井委員 コメント、御質問、どうもありがとうございました。
まず、スライドの2枚目です。モデル分析に用いたモデル群というところに記載しておりますけれども、このモデル、今回主に用いましたモデルは左側の技術選択モデルというもので、資本費用、運用費用、エネルギー・炭素費用、こういったものを考慮して技術を選択しているという枠組みの下で計算しております。
そういった中で、特に下に凸、上に凸というようなことを言ったときに、特に上に凸の場合、2040年以降、設備としてまだ使えるのだけれども、2050ゼロを目指すために強制的に設備を置き換えていかないといけない、そういったことが起こってきます。また、2050年のゼロというようなことを考えたときには、本来ですと、電化というところが選択されるべきところが化石燃料の使用が残って、それを強制的に合成燃料等に置き換えていかなければいけないといったことがあります。そういったところが御質問としていただきました省エネ、あるいは電化に関連する、よりコストがかかるといったところになってきます。
御質問として、秋元委員から、技術の進展が目標なのか、この点が分かりづらいということですが、このモデルの場合には、いろいろな対策をパッケージとして考えて、単に排出削減目標を制約条件として与えるというのではなくて、革新的な技術、さらには、その革新的な技術に加えて、社会変容というようなものを加味していくという前提の下でいろいろ計算しております。
そういう意味で若干分かりにくいところもありますし、多くの委員から限界削減費用はどうなっているのかということで御質問をいただいておりますが、そういう意味では、排出の上限を制約条件として与えておりませんので、限界削減費用という形では計算されないというのが、このモデルの前提です。一方で、炭素費用としましては、例えば、2050年にはトンCO2当たり4万円程度の炭素税、炭素価格を前提に計算しているという計算のメカニズムがございますので、本来ですと、その辺りもきちんと定式化等をした上で示す必要があったのではないか。その辺は反省すべきところと思っております。
そういう前提についてどこまで示すのかということで、こういうモデル分析の場合、前提とセットで議論していただく、結果を示していく必要があるのですが、この枠組みの中ではどうしても、ここの合同部会では温室効果ガスの排出経路を、一方で資源エネ庁さんの基本政策分科会ではエネルギーというようなすみ分けがあるということで、この場で数字が出せないというわけではないのですけれども、排出経路に絞ってというリクエストもありまして、提供している情報が十分ではなかったと思っております。そういう意味で、池田委員から御質問のありましたエネルギー需要等につきましても、恐らく基本政策分科会のほうで今後提示されていくのではないかと思っております。
下田委員から御質問がありました水素ですとか、様々なプラント、住宅ストックもそうですけれども、コストの評価だけではなくて、制約条件として入れるべきではという御示唆もいただきましたが、制約条件として入れても、いずれにしても最終的な費用としてはかなり高くなっていくというのは、やり方を変えても同じなのかというように思っております。
それと、多くの委員から、下に凸の場合、コストの増加が激しくて大変というような御意見もいただいております。確かに結果としてはそうなっているのですけれども、実際カーボンバジェットの考え方からしますと、既にIPCCのAR6が出されたときは2019年、20年を基準にバジェットが示され、1.5度の場合、500ギガトン残っているという結果だったのですけれども、それ以降も既に世界全体の排出量が増加しているということで、その増大分をどこで吸収するのかといったことも今後議論していく必要があると思っております。日本が全て吸収するということは無理ですけれども、日本も何らかの形で、そういった1.5度の実現に貢献していくという議論があってもいいのではないかと思っております。
あと、髙村委員から、自給率と競争力というような御指摘もいただきました。自給率ですとか、輸入のコスト、こういったところは今回示しておりませんけれども、これまでも計算はいたしております。一方で競争力というのは、このモデルは日本単独のモデルですので、なかなかこの産業で競争力が優位に立つというようなことまでは、結果として表すことはできず、むしろその辺りはシナリオという形で想定することになると思っております。
あと、社会変容についても多くの委員から御指摘をいただきました。この点、どういったインセンティブで社会変容を実現していくのか。効用等を維持したまま不要なサービス需要を低減していくということが一つ鍵になってまいりますので、社会変容をいかに実現し、また普及させていくのか。納得という御意見、御指摘もいただきましたが、そのようなことを訴えていく必要があると考えています。革新的な技術の重要性、役割というのは言わずもがなですけれども、それだけに頼るよりも、社会変容のようなソフトな取組、このようなことを実現することで、この脱炭素社会の実現性を高めていくというのが我々の一つのメッセージでもありますので、この点、革新的な技術とともに、このソフトな社会変容をいかに実現するのかということも併せて検討していきたいと思っております。
あと、革新的な技術の中身ですけれども、こちらは水素ですとか、先ほど言いました合成燃料、さらにはCCS、また、再生可能エネルギーの大幅な拡大、こういったものも革新的な技術の中に入れております。そういう意味で、全く絵空事の技術といったものでは決してなく、ある程度実現が見通されているもの。そういったものを、この中では革新的な技術と呼んでおります。
最後、大塚委員長からありましたコスト20兆円という8枚目のスライドのところからあったのですが、この8枚目のスライドは固定費用だけではなくて、エネルギーの費用も含めたものでして、固定費用だけですと、その次の9枚目になります。こちらは2020年から2050年までの約30年間の累積ということで、こちらからいきますと、固定費用は10兆円に満たないというような水準ですので、この点をどう評価するのか。その辺り、議論のポイントかと思っております。
以上になります。
○大橋座長 ありがとうございます。
続きまして、RITEの秋元様、お願いします。
○秋元委員 御質問等ありがとうございました。たくさんありましたが、もし漏れたら申し訳ございません。
まず、池田委員から電力需要の見通しのお話がございましたが、資料7ページ目にありますように、IT需要に関しては成長実現シナリオでは上位の想定を置いていまして、低成長シナリオでは中位の想定を置いています。ただ、モデルでエネルギー供給コストが上がれば弾性値が働きますので、高位の場合は様々な技術が、コストが安くなる想定を置いていますので、余り弾性値が強く働かず、需要抑制が働かないという感じですけれども、低成長ですと、エネルギー価格が総体的に上がっていますので、弾性値の影響があって、相当需要が抑えられるということになっています。結果としてみると、成長実現シナリオでは電力需要が、もちろんCO2制約は厳しいので、電化という要素も加わって成長実現シナリオでは電力需要は大きく上がる。低成長シナリオでは横ばいみたいな結果になっていると思います。
なお、ほぼ結果は同じなので、GX専門家会合、8月9日の資料に、その辺りの電力需要の見通しに関しては載せておりますので、そちらも御参照いただければと思います。
下田委員、もしくは岩船委員、鶴崎委員等から、モデルの中身が若干分かりにくくて、前提条件、クリアにしてほしいということだったように思いますので、そちらに関しては、今後どういう形でお示し可能かというのは事務局と相談させていただければと思います。
その上で、岩船委員から、コストの比較、国環研さんとということだったと思うのですけれども、国環研が出されているエネルギーシステムコスト。バウンダリーが本当に同じかどうか分からないのですが、我々も14ページ目で出していますし、その下の表になりますが、表が年ごとの数字になっておりますので、これを比較していただくというのが国環研さんとの比較でよろしいのではないかと思います。一応、うちの分析では1ドル110円でモデルの中は整合しておりますので、それで考えますと、73%減のときは、恐らく年間8兆から17兆円くらいになるかと思いますし、そのさらに深堀りの80%減でいくと、13兆から23兆円といった規模感になると思いますので、国環研さんとそうは大きく違うような数字感が出ていないのではないかと思っています。
続いて、髙村委員からでございます。これは伊藤委員のコメントとも重複する部分があるかと思いますが、今回、削減コストだけを見ていて、気候変動影響のメリットがあるのではないかというお話だったと思います。これは、御承知のように日本の場合、GHG排出量の世界の3%しかないので、若干ここで動いたからといって、世界全体の温暖化影響にはほぼ影響しないということだと思います。しかもそれに加えて、今回は1.5度目標、世界で同じパスを全部分析しておりますので、全て影響は、この3シナリオにおいて気候変動影響は同じだという分析になっています。ただ、変わっているのは、限界削減費用の部分の表が、11ページ目を出していただいて、こちら、多分、大橋委員が最後におっしゃったところだと思うのですけれども、先に11ページ目、大橋委員長のコメントも踏まえますと、一応60%、73%、80%でほかの国の限界削減費用が微妙に変わっているところがあると思います。数ドル、1ドルとか2ドルくらい動いていると。日本が深堀りすれば海外が緩くなるので、限界削減費用が1ドルとか、そのくらい下がる可能性があるということでございますが、そこに現れているということでございます。
ただ、日本の場合、繰り返しですが、GHGの3%しかないので、そこが少し動いたからといって、世界の限界削減費用はほぼ動かないということです。逆に、限界削減費用のほうを固定すると、気温が若干動きますが、そこもほぼ影響しないということだと思います。
その上で、もう一回海外の市場獲得効果などはあると思っていまして、これもぜひGX専門家会合の8月9日の資料を見ていただきたいと思いますが、成長実現シナリオでいきますと、市場海外、日本が先行的にやることによって、海外の環境製品等を売る市場が獲得できる可能性があるという効果を織り込んだ分析をしています。今日の資料には入っていないのですけれども、そういった経済効果についてもあり得ると思っています。ただ、そのためには、限界削減費用が世界で余り差がないことが非常に重要で、そこに差が大きくなってくると日本は負けてしまうという形になってしまうので、なるべく限界削減費用がある程度いって、同じというのは理論的には効率的でいいわけでございますが、若干日本が深堀りするにしても、余り高くなり過ぎると、結局、日本の製品、海外が緩過ぎて、その製品が海外にも売れなくなるということになりますので、そういったところの見方は必要かと思います。
続いて藤瀬委員の御質問でございますが、何か欠けている要素というお話だったと思うのですけれども、我々、今回は成長実現シナリオでは相当技術進展を見込んでおりますので、そういう面では、やはり技術進展をしっかり技術開発をして、それを実現していくということは一つ重要で、それによって、例えば、73%減でも60%減と同じくらいの費用で実現できるというのは、低成長シナリオの例えば60%減のコストと成長実現シナリオの73%のコストを比較していただいたら分かるかと思いますが、そういう結果になっていると思いますので、しっかり様々な技術開発を実現していくということはとても重要だと思います。もう一つは、先ほどの繰り返しですけれども、他国の協力がなければ、なかなか難しいわけで、ここに来て分断されつつある世界の中で、世界が本当に協調できるのかどうかということに関しては難しさが増してきていると思いますが、日本としてはしっかり世界協調の働きかけを続けていくということは重要ではないかと思っています。
志田委員からでございますが、技術進展が大きいものがどういうものかということです。これは増井委員と同じかもしれませんけれども、これ、ちょっと交ぜ込んで全部技術進展に入れていますので、この結果から、どれがということはなかなかすぐには言いにくいのです。やはりもう複合的でございまして、再エネも重要ですし、CCSも重要だし、水素系のエネルギーも重要だし、そのほかいろいろな、例えば、EVとか、そういうところも重要だということで、どれが突き抜けてということは申し上げにくいのですけれども、どれも重要と考えています。
あと、同じシナリオでも、同じ削減率でも2050年のコストが若干違っているというのは御指摘いただいたとおりで、先に対策を取ると、そのストックが後まで残りますので、そういう面では2040年に相当コストが上がった反動として、2050年が逆転現象が起きる部分があるということでございます。ただ、累積を取ると、モデルで全体の費用を最小化していますので、その逆転は起こらないということでございます。時系列にすると、そういうストックの効果が出てくるということでございます。
増井委員からでございます。2つのシナリオで、コストの違いということでおっしゃられたのですけれども、恐らく、これは先ほどの志田委員のところとも大きいかもしれませんが、コストの違いというか、例えば、低成長シナリオのときにどういう技術が入るかということだと思うのです。そうすると、国内で再エネが制約されて、原子力が制約されて、CCSも制約されるということで、その中でCO2を大幅に削減しようと思うと、海外から水素とか、アンモニアとか、そういったものを持ってこないとカーボンニュートラルというか、大幅に削減できないということになりますので、そういった技術、対策が増大してくるということになっているかと思います。
あと、これも既に御説明が終わっているかと思いますが、排出が増えるときに割を食うのはどういうことかといいますと、今回は、世界全体では排出経路は一致させておりますので、割が食っているのは、先ほど申しましたほかの国の限界削減費用が1ドルくらい上がっているというようなところでございまして、割は食っているのですが、そんなに大きくないということでございます。
時間が長くなって申し訳ないです。
林委員から、まず、為替がいいのかということでございます。モデルの中では全体、実質価格で為替もあるところで固定して、全て各プラント等、そのときの為替でコスト計算していますので、もし為替が動くと、為替想定を変えると全部のコストが変わってくるので、そうすると、その時点、時点で、もちろん日本において若干変化はあるかもしれませんけれども、ほかの国とか含めて、全部のデータベースが書き換わるということになりますが、私のこれまでの感覚だと、結果自体のコストは動きますが、全体の総体感は余り変わらないというように御理解いただければと思います。
さらに割引率の件も同じでございまして、今回5%というのはモデルの中で使っている評価関数が時点間で5%で割り引いていて、これはエネルギーシステムモデルでは標準的に使われている割引率だと思っていまして、仮にこれが変わったとしても排出経路は外で与えていますので、ほぼ結果は変わらないと思っていただいたらいいと思います。モデルの中では5%を使っているので、最後の結果の解釈も5%を使うのが正しいと思いますし、IPCCもそのようにしていると。
ただ、RITEの中では、結果が出てきたものを、3%の場合にどういう結果が変わるのかというチェックは一応しておりまして、そのときも、同じような経路というかコスト関数でございまして、ほぼ結果の解釈に関しては変わらないというように御理解いただければと思います。
小西委員から、私の聞き間違いかもしれませんけれども、CCSに関する商用化ということだったと思うのですが、基本的にCCSは動いていますので、全くない技術ではなくて、あとはコスト低減と、実証し、商用化し、大きく展開していくという段階でございますので、基本的にコスト低減は見込んでいますが、我々としては、言われているほどコスト低減は過大に見積もっていないということで、かなり保守的にCCSのコスト低減を見積もっていると思っていますので、CCSを過大評価するという感じは全くないというように個人的な感覚として持っております。
あと、技術の年間コストとおっしゃられたような気がしますが、14ページ目の下の表が全体のコストを年間別に示したものでございまして、これで回答になっているのではないかと思っています。
大塚委員長から原発の想定でございますけれども、成長実現シナリオでは2030年の目標が、今の持っているNDC、もしくはエネミックスの目標が、比率をそのまま上限として維持するということでございます。低成長では、新増設がなくて、そのまま低減していくというような感じの想定を置いています。両極端なものを置いたということでございます。
大橋委員長からは、先ほど既にお答えさせていただいていますが、全体としてもう一度だけ申し上げると、今回分析しているのは、1.5度は全部整合させておりますので、その効率的なものを解くか、カーボンパジェットも基本は整合させております。ただ、日本においては排出量の割合が世界からすると僅かなので、そこで余り世界の1.5度目標に対して影響を与えることもないですし、カーボンバジェットに対する影響もほぼないということかと思っています。
以上です。
○大橋座長 ありがとうございます。
それでは事務局からお願いできますか。
○伊藤室長 事務局でございます。
何人かの委員から、本会議の在り方、あるいは進め方についてコメントいただいております。
まず、池田委員からございました忌憚のない御意見というところだと思っております。前回、御欠席の際に、意見というか、御発言の代わりに紙を出したいというお話、確かに承りました。その際に、削減目標、経路、あるいは再エネについてのいわゆる提言もあるということで、私からは、当時まだ関係省庁のヒアリングのみで、シナリオ分析の発表が後になるので、そちらのほうに移してくれないかというようにお願いしてずらしていただいたという経緯があると認識しております。いずれにしましても、どういった経路にするか、政策をどうするかに限らず、今会議はどういう会議にしていくか。あるいは、鶴崎委員からもありましたけれども、今回に限らずどうするかというところを、何かブロックするとか、阻害するとか、そういう性格のものではございませんので、そこは忌憚のない御意見を引き続きいただきたいということでございます。
その上で、岩船委員などからございました、ワーキングをつくって合意形成をする、あるいは多数決を取る、いろいろな御意見、拝聴させていただいたと思っております。一定の結論を出すべきではないかという御意見だったかと思います。前回も多少御説明をさせていただいたかもしれませんが、本検討会の在り方は、政府として案を御提示させていただきながら、専門的見地から御意見をいただいて、それを形づくっていくという性格でございますので、そこは、そのありようの中で、いや、もっとそういうワーキングをつくって積極的にという御意見もあるかと思いますが、年末に向けて温対計画、恐らく12月はお出しするということかと思いますが、基本的には政府の案をお見せしながら、皆様方に御意見をいただきながら仕上げていくというところは同じように進めてまいりたいと思っております。
以上でございます。
○大橋座長 ありがとうございます。
御質問については、おおむねお答えしていたのではないかと思いますけれども、皆さん、それでよろしいですか。――ありがとうございます。
それでは、これまでの議論を踏まえて、事務局から御発言があればいただければと思います。お願いいたします。
○土井局長 ありがとうございます。
ただいまも含めまして、幅広く御議論いただきましたので、事務局としての今後の方向性につきまして資料を今お配りしております。この内容につきまして御説明をさせていただきたいと思います。
おめくりいただきまして2ページ目でございますけれども、これまで2050年ネットゼロに向けまして、2030年から先の我が国の削減経路につきまして幅広く御議論いただいたというものでございまして、主な意見につきましては、こちらに事務局として取りまとめをさせていただいております。
イノベーション、技術等の社会実装や、その効果が表れるスピードを考えた場合には、上に凸の経路の追求がより現実的な経路であるという御意見がある一方で、パリ協定が求める、できる限り高い野心を反映するために、下に凸の経路を追求すべきとの御意見もございました。どちらも重要な御指摘であると考えてございますけれども、それだけに、そのどちらか一方に寄った経路を置くというのはなかなか困難であると考えてございます。
おめくりいただきまして3ページ目を御覧いただきながらでございますが、そのような思いといたしまして、事務局といたしましては排出削減技術の進展や世界的な経済社会情勢等が見通せない状況におきましても、我が国として2050年ネットゼロ実現に向けて着実に進んでいくという意思を明確に示し、排出削減と経済成長の同時実現に向けた予見可能性を高めることが重要であると考えてございます。そうした観点から、直線的な経路を軸に検討を進めることがどうかと考えてございます。御意見を賜れれば幸いでございます。
事務局からは以上でございます。
○大橋座長 ありがとうございます。
ただいまの資料を使って御説明いただきました内容について、特に御意見のある委員はネームプレートを立てていただければと思います。オンライン参加の委員は挙手ボタンでクリックしていただければ、私から指名をさせていただきます。いかがでしょうか。――それでは、岩船委員、お願いします。
○岩船委員 このNDCですけれども、たしか志田委員だったと思うのですが、位置づけとして、どういうものになるのかというのは、まず教えていただけませんか。方向性を示すものなのか。ある程度角度を持って本当に実現しようと思っているものなのか。そこの確認を最初にさせていただきたいと思いました。よろしくお願いします。
○大橋座長 では、ある程度御質問をまとめさせていただきますので、次にオンラインの下田委員、お願いします。
○下田委員 ありがとうございます。
結論に余り異論はないのですけれども、直線的に進めていくということは、少なくともまず2030年に46%削減を通すということが大事でございまして、もともと46%という数字自体がかなり野心的な数字であったということを認識する必要があると思っております。現状、確かにオントラックではございますけれども、アンダーコントロールではないと。計画したとおり進んでいるわけではないという状況でございまして、この後、2030年に、ちゃんとこの46%が通るのかどうか。そのときに、今問題になっている生産の海外移転ということなしに、今の対策で着地するのかどうか。もし着地しないとすると、今から現対策の強化、あるいは新しい対策の提案、こういうものが必要になってくるのではないか。その辺りの議論をぜひ2035年の数字とともに含めていただければと思いました。
以上です。
○大橋座長 ありがとうございます。
続いて、髙村委員、お願いします。
○髙村委員 ありがとうございます。
恐らく事務局からお答えがあると思うのですが、先ほど岩船委員がおっしゃったNDCの位置づけについて、NDCはパリ協定に基づいて日本を含め各国が提出することになっているものであります。パリ協定の仕組みに基づけば、各国は5年に1度出す。今回、2035年目標を提出することが合意され、推奨されているわけですけれども、パリ協定の文言にありますように、提出した目標については、各国は誠実に、その実現に向けて実施する義務があるというようになっています。ここは京都議定書の削減目標と位置づけが少し違っている、性格が違っているものであります。御存じのとおり、京都議定書の目標は、結果に対して国が国際的な義務を負うものであるというものと比べたときに、NDCの法的な、日本という国に対して課される法的な義務の位置づけが違う、意味合いが違うということは申し上げておきたいと思います。
その上で、今御提示をいただいたものについてですけれども、龍崎さんもそうだと思いますが、井上委員もそうだと思います。私も先ほどバクーから帰ってきまして、浅尾大臣が現地で、今日、御紹介もありましたけれども、1.5度目標と整合的でアンビシャス、意欲的な目標ということを日本は検討しているというように発言されました。先ほど、志田委員からも少し御紹介がありましたけれども、英国、ブラジル、小国の中では英国が30年目標、90年比ですけれども、30年比60%削減を、35年81%削減。ブラジルは2005年比で30年目標を53.1%削減。これは2022年に引き上げたばかりですが、35年目標として59から67%削減という目標を正式に表明いたしました。正式に表明した国はまだ策定中の国が多いのですが、EUは御存じのとおり40年、90年比90%という委員会提案を基に議論している。そして、ドイツは既に法定で40年88%削減という目標です。ビューティーコンテストを申し上げるつもりはないのですけれども、先進国グループを代表して会議の最後にオーストラリアが、これは日本も含めてアンブレラグループとして、1.5度目標に向けた動きに後戻りしないということを明確に発言していただいています。
私、この方向性は非常に重要だと思っていまして、一つは気候変動の影響についてです。これはこの場で言うまでもないと思うのですが、もう一つ、私、日本の文脈では、今のGX、つまりグリーントランスフォーメーションによって、いかに産業構造を脱炭素型に転換して国際競争力をつけていくかという産業政策の意味合いを強く帯びた気候変動対策であり、目標であるという点です。長期的な観点から、これまでヒアリングをした事業者、経済団体の皆さんからも、いかにインフラや新しい技術の開発に長期的な予見可能性が必要かということは繰り返し強調されていたと思います。国の目標は、そういう意味では政策導入の将来に向けての水準と意思を示すもので、その意味で1.5度目標と整合的で意欲的な目標ということは重要だと思います。
EUを初めとして、やはり脱炭素、産業政策間の競争が始まっていて、ここで、それでは各国の状況と、アメリカで政権が代わるので、目標を下振れさせますというような方向性を国として、産業政策として示すのかという点において、しっかり1.5度目標と整合的な、これは2050年カーボンニュートラルとしての整合的な目標を期待します。
もう一つは、これはGX移行債との関係も一つ考えるところでして、35年のNDC、GX2040年と、日本の移行の道筋を示すものだと思います。トランジションファイナンスのガイドブック、これは林委員の下では釈迦に説法ですけれども、1.5度目標を視野に入れる。少なくとも2度を十分に下回る水準ということが一つの指標といいますか、ガイダンスになっていることを考えると、やはりこうした観点も含めて目標を設定する必要があると思います。
1.5度に向けたパスウェイで上に膨らむのか、下に膨らむのかということがありますけれども、これまでのIPCCも含めたモデル分析では、1.5度目標に向かうパスウェイというのは基本的に下に膨らんでいると思います。これは当然今日、増井さん、あるいは秋元さんの御報告にあったように、将来に向けて限界削減費用が高くなる。あるいは、今ない技術に依存せざるを得ないとなると、そこに角度の問題が出てくるということかと思います。
その意味で、今回、直線の経路を軸にというのは、私、ミニマムの提案だと思っていまして、できるだけ短期の、つまり、今ある技術で削減ができる。しかも、エネルギーコストを抑えるなどベネフィットが大きいものについて追求をしながら深堀りをしていくということを常に念頭に置きながら、しかし、直線を軸に検討するという点については賛成したいと思います。
以上です。
○大橋座長 ありがとうございます。
続いて、オンラインの井上委員、お願いします。
○井上委員 ありがとうございます。事務局から御説明がありました点について2点申し上げます。
1点目は、公正な移行です。負の影響を最小化する公正な移行の観点からは、目標設定においては予見可能性が重要であります。2050年ネットゼロに向けて、経済活動による影響はあると理解しつつも、2013年から現在まで、温室効果ガスの削減は直線的に進んでいます。そのことから、多くの国民が2050年に向けたカーボンニュートラルの実現に向けた温室効果ガスの削減は直線的なものを予見しているものかと存じます。また、上に凸、下に凸の案も示されていますが、現在、開発が進められている様々な技術が社会に実装される時期はかなり異なり、具体的時期については予見が困難であると思われます。目標設定において予見可能性を確保し、カーボンニュートラルと公正な移行の実現に向けた施策を着実に推進することが重要だと考えています。
2点目は社会対話です。これまでの議論の中でありました、生産活動にも配慮しつつ柔軟性を持った削減目標を定めるべきという御意見。また、1.5度目標に向けて早期に排出削減を進めるべきという御意見。どちらも重要な御意見だと認識しております。それぞれの御意見がある中で、本小委員会を各ステークホルダーの社会対話としながら、数値目標の合意に限らず、あらゆる主体が積極的に気候変動対策に取り組む体制に通じるような合意形成を図っていただきたいと思っております。
以上です。
○大橋座長 ありがとうございます。
続いて、オンラインで御参加の池田委員、お願いします。
○池田(三)委員 ありがとうございます。聞こえておりますでしょうか。
○大橋座長 大丈夫です。
○池田(三)委員 ありがとうございます。
先月、経団連が発表いたしました「エネルギー基本計画の見直しに向けた提言」においても、カーボンニュートラルは現在ある技術だけでは実現困難であり、GHGの大幅削減に資する革新的技術の開発・普及が不可欠です。しかし、そのようなイノベーションが社会実装されるまでの研究・開発段階からのリードタイムを考慮しますと、相当な時間が必要となります。従いまして、2035年度時点の削減量は2050年カーボンニュートラルの直線的達成ペースには乗らず、将来に向けて加速度的に削減が進展する、いわば上に凸型の削減パスを想定することが理にかなっているとも言えます。
とはいえ、我が国を含むG7各国が1.5度目標に整合的なNDCの提出にコミットしていることを踏まえますと、我が国の野心を示す観点から、ただいまの資料でもお示しいただいたとおり、2035年度以降も2050年カーボンニュートラルの直線的達成を実現する目標を掲げることが望ましいと考えます。ただし、その数字の意味づけでございますけれども、不確実性の下で極めて野心的な目標を追求するため、各国の実情も把握した上で、全体の排出削減の進捗や技術の普及状況等を定期的に確認しつつ、柔軟に施策を展開すべきと考えております。

○大橋座長 ありがとうございます。
お手が挙がっている委員は以上だと思われますが、よろしゅうございますか。――それでは、秋元委員、お願いします。
○秋元委員 ありがとうございます。
結論から申し上げますと、私も73%減で、事務局提案でいいかなと思いました。冷静な科学者としての分析からすると、60%減というのが1.5度目標と整合的で費用効率的だということは先ほど御提示したとおりでございます。ただ、日本としては率先してこの気候変動対策をリードしていくという責務もあると思いますので、そういう面で今回の御提案は理にかなっていると思います。また、余り複雑過ぎても、では、何%がいいのかというところがかなり議論になる気がしますので、直線で考えましたほうがすっきりしているかと思います。
ただ、池田委員もおっしゃられたように、ここに来て非常に不確実性が増していると思います。しかも、1.5度目標の達成はかなり難しいという認識は広がっていると思いますので、そういう面ではもっと高くてもいい可能性ももちろんあるわけで、そういうことをちゃんと丁寧に説明した上で、やはり日本としてはビューティーコンテストになるのではなくて、しっかり実現できるような範囲の中の意欲的な目標を掲げて、そこに着実に取り組んでいくという姿勢を見せることが重要だと思いますので、こういう形でよくて、ただ、リスクに関して、よく認識をし、とりわけ海外との総体的なエネルギーコストを上げ過ぎないような認識を持ちながら、ここに向かって着実に対策を打っていくことが大事かと思いました。
以上です。
○大橋座長 ありがとうございます。
ほか、よろしいでしょうか。――どうぞ。
○岩船委員 ありがとうございます。
私、先ほど質問をしましたけれども、これがある程度目安となる目標であるということであれば、直線で示すというのがシンプルですし、分かりやすいと思うし、賛同したいと思います。ただ、これがどの程度実現性までコミットするのかというところに関しては、この委員会などで議論が出ましたように、先ほど下田委員からもありましたように、これまでが本当にオントラックなのかという検証がないまま、ここでこのまま直線を引いていいんでしょうかというのがやはり疑問だと思います。前回、たしか民生部門に関して、同じように、どのように減っているかというような数値があったと思うのですけれども、あれを見る限り、家庭部門ではオントラックではなかったですし、業務は、それよりは少しましだったと思います。明らかに、これがオントラックなのは、産業界のところが減っているからであって、産業部門が減っている理由がきちんと分析されないまま、ここでこのまま、オントラックですよ、伸ばしていいですよというのには、私は少し疑問を感じます。
以上です。
○大橋座長 ありがとうございます。
ほか、よろしいですか。――ございますか。――お話しされてください。
○林委員 悩んだのですけれども、直線でいいだろうという結論は皆さんと合意で、今お話がありましたように、実際にこの下がってきた理由がエネルギー価格ですとか、いろいろな理由で産業そのものが停滞したことが、残念ながらCO2の削減に貢献したことは事実です。だからといって、またその要素も加味して直線を引き直したら本当に分からなくなってしまうので、これはあくまでも、目安というと実現する気がないように聞こえてしまいますから、実現する覚悟を持った目安だということだと思いますし、何なら張り切って技術を革新してどんどん下に凸に行くようにみんなで頑張るということかと考えたりもいたしました。
以上です。
○大橋座長 ありがとうございます。
池田委員、お願いします。
○池田(将)委員 ありがとうございます。
今、オントラックかどうかみたいな議論に関しては、確かにまだ難しい。本当にオントラックかどうかというのは検証が必要だと思いつつも、やはり私たちは日本としてもっと高い目標を、野心的な目標をしっかり立てて、立てたからにはどうやって実現するかをバックキャストして考えることが今すごく重要ではないかと思っているので、ビューティーコンテストになるかどうかということよりも、私たちとして、1.5度整合を目指した目標設定をちゃんと示して、それに対して精いっぱいできる政策、打ち手を考えていくということが今すごく大切なのかと思ったので、逆に延長線ではなくて、もっと高い目標設定をすべきだと私は考えています。
以上です。
○大橋座長 ありがとうございます。
志田委員、お願いします。
○志田委員 先ほど申し上げたことの若干繰り返しになってしまって恐縮ですけれども、直線的な目標を出すということは先ほど来ありました。ある種、水準感というか、目安ということで目指すのであれば、分かりやすいほうがいいかなというところで考えております。
他方で、本当に繰り返しになってしまうのですけれども、現行のNDCやエネ起等、考え方は変わっていないように捉えられるのはちょっとよくないかと思っていますので、この内訳として、どういったところを個別な施策として持っていくのかというところを、ある程度リアリティーを持って示していく必要があると考えています。
以上です。
○大橋座長 それでは、オンラインで藤瀬委員、お願いします。
○藤瀬委員 ありがとうございます。
私のほうでもコメントの中で言わせていただいたように、やはり世界の中でも先進国として、そして、発展途上国を牽引していく国として日本は本当に野心的な目標をしっかり掲げて、かつ、それをいかに実現していけるのかというところを描いていく必要があると思っておりますので、私個人としては、ある程度下に凸の経路を思い切り示してもいいのではないかと考えているのですが、これは事務局の皆さんが、例えば、下に凸の場合は、それぞれ2035、2040でどの程度の数値を考えていらっしゃるのかという前提が既にあれば教えていただけたらうれしいなと思っております。
よろしくお願いします。
○大橋座長 続いて、鶴崎委員、お願いします。
○鶴崎委員 ありがとうございます。
最初の議論のときに、感覚的にですけれども、直線的なところになるのかなというようなことを申し上げました。少し粗雑な議論という感じがいたしますけれども、今日伺った2つのモデルの道筋を見る限りは、できるだけ野心的な目標であることはもちろん理想ではありますが、正直、この3つのパス、どれだって野心的ではないかとさえ感じています。そういう中で、数字の議論を余りにも大ざっぱにやっていいのだろうかというのは正直感じているところです。
いずれの道を選ぶにしても、国民に対してどういうメッセージを出していくのかということのほうがより重要だと思っていて、ここが計画でこれから文書を書かれていくと思うのですけれども、本当に大事なところで、特にマスコミの皆さんにどのように伝わっていくのかということは非常に危惧といいますか、懸念しておりまして、従来の積み上げでやっていた、前回の途中まで積み上げでやっていたような世界では全然なくなっているので、この数字の意味をきちんと伝えていくことが大事だと思います。そういう意味でも、本当はこの場でもう少しここが、この数字の意味は何なのかという議論が尽くされる時間があればよかったかと思います。そういう意味で、今日この案に対してどれが一番望ましいということは言いにくいのですが、当初申し上げたように、ここの中で選ぶのであれば、真ん中のオントラックといいますか、直線的なところが無難なのかというところでございます。
ただ、正直、内心、非常に雑な議論をしているという実感の下、申し上げているということは申し上げたいと思います。
○大橋座長 続いて、増井委員、お願いします。
○増井委員 ありがとうございます。
オントラックかどうかの検証も必要という御意見もありましたけれども、実際にこれは目標がトップダウンで示すものなのか。あるいは、ボトムアップである程度実現可能性といったものを示す必要が一方であるのではないかということで、今回、時間の関係とか、事務局から要請されていた内容ではかなり不十分だったところもありますので、もう一度、事務局と改めて相談になるかもしれませんが、モデルで表現した、この脱炭素に向けてどのような取組で実現したのか、そういったところを明確にした上で議論していくといったことも必要ではないかと思っています。
もちろん全体的な目標として、今、鶴崎委員から御発言があったように、どれを選んでも非常に大変な目標であるということは間違いないのですけれども、そういった中で、仮に真ん中の直線的なものであれば、どのような具体的対策等で実現していくのか。もし仮に下に凸ということであれば、追加でどのような取組が必要になってくるのか。そういう建設的な議論もやはりこういう場で行うべきではないかと思いますので、その辺は改めて相談したいと思います。
以上です。
○大橋座長 続いて、髙村委員。
○髙村委員 申し訳ありません。2回目で恐縮ですけれども、今、岩船委員、志田委員、鶴崎委員、増井委員もおっしゃったのですが、この目標自身は、日本がどのように気候変動対策と併せて脱炭素型の経済社会に移行していくかという、目指すものをはっきり示すという役割が非常に大きいと思っています。それに向けて誠実に対策を実施するという国際義務があるというのはもちろん先ほど申し上げたとおりです。
ただ、皆さん、おっしゃったように、簡単な目標ではないというのは、どの数字でも間違いがなく、したがって、今の政策の実行下がどうなっているか。どういう見通しで政策を打っていくのかということをもっとしっかり議論すべきだというのが共通した御意見だったと思います。それは私も全く同感です。
先ほど、知事がおっしゃっておりましたけれども、政策の役割が極めて重要になっていると思っていまして、その意味で、この目標の数字と併せて、その議論をぜひお願いしたいと思います。
もう一つは、鶴崎委員がおっしゃった国民へのメッセージというのはとても重要だと思っております。今日、増井委員と秋元委員から非常に丁寧な御報告をいただいたのですが、コストは確かにかかる。しかし、GXもそうだと思いますけれども、それはよりよい日本の経済社会にしていくための政策として打っているものだと思います。この政策の期待をする効果、何を目指したいと思っていて、どういう効果が期待できるのかということをしっかり国民にコミュニケーションしないと、国際的に削減が求められているからやっているという対策ではないということをやはり明確に打ち出す必要があるのではないかと思います。
以上です。
○大橋座長 ありがとうございます。
続いて、オンラインの伊藤委員、お願いします。
○伊藤委員 ありがとうございます。
私も先ほど申し上げたとおりですけれども、オントラックでいくというのが一番現実的というか、これでもすごく高い目標ですが、これでいいとは思うのです。ただ、本当に脱炭素、GXというものを日本経済の起爆剤にしようということで目標設定もやっていると思うのです。そうすると、世界へのアピール力というところで見ると、やはり一歩でもオントラックから踏み出しているというところが一つ国際競争力につながるアピールにもなるのかなというところを考えると、非常に難しいですけれども、少しでも下に凸の経路というのもやはり考えておかなくてはいけないのかと思いますし、1.5度目標に対して、多分加速度的にこれから気候変動が現実味を帯びてくる中で、もっと野心的な部分というものを備えておかないと、やはり達成が難しくなってくるのかなというところもありますので、これで示してもいいのですが、やはり日本国内としては野心的な数値をもっと追いかけるべく努力をすべきですし、アピールという意味でいうのであれば、もう少し踏み込んでもいいのかなという気はしております。
以上です。
○大橋座長 ありがとうございました。
多く御意見をいただきましたけれども、以上でよろしゅうございますか。――大丈夫ですか。ありがとうございます。
様々御意見をいただきましたけれども、もし事務局からございましたら、もう時間も来ているのですが、ただ、ちょっと延びることを御容赦いただいて御発言いただければと思います。
○伊藤室長 事務局でございます。手短に。
どの経路に限らずでございますが、前回、2030年の目標との違いというところも、なかなか表現は難しいですけれども、我々、経済産業省、環境省、共同事務局の中で、政府として次のNDCをどう考えるかということです。髙村委員はじめいろいろありましたけれども、世界全体での1.5度目標の実現に向けて野心的な目標を掲げて、可能な限り削減を進めるというところは揺るぎないかと思っております。
それと同時に、現在政府としてGXを通じて脱炭素とエネルギー安定供給、経済成長の同時実現、これが極めて重要というところを政府全体として推しているという性格ですので、そこはバランスを踏まえた野心的な数字を御提案したく、本日、提案の運びになっております。ですので、基本的には、ほかの経路を考えていますかという御質問がありましたけれども、こういう形でテーブルに置かせていただいております。
もう一つ、積み上げですとか、そういったこともありますけれども、前回に比してでありますが、必ずしも現段階で全ての政策、何をやって何トン減らすというところが具体的になっていない部分もあろうかと思います。そこは下田委員からあった46%もそうですが、12月に温対計画の素案を御提示しますが、やはり目標と政策をつなぐところは、今まで以上にフォローアップの重要性がございますので、そこは具体化も含めてフォローアップで政策をつなぐ部分もあろうかと思いますので、現時点で全ての政策を積み上げて、この目標という形での御提示ではないという性格を有していると認識しております。
以上です。
○大橋座長 ありがとうございます。
よろしければ、本日の議論を踏まえて、大塚委員長からも一言いただければと思いますが、いかがでしょうか。
○大塚委員長 私も一言申し上げるだけですけれども、今までの合同会議の議論を踏まえますと、委員の方々からは、下に凸という御意見もありましたし、本来、上に凸がいいという御意見もあって、多数の意見が直線という意見だったと思います。事務局から直線的な経路を引き続き検討するという御提案でしたけれども、この方法を進めることは、1.5度目標には整合するということもございますし、排出削減と経済成長の同時実現ということを考えながら、着実に2050年のネットゼロを目指すという方向性を示すものとしては適当ではないかということを申し上げておきたいと思います。
ありがとうございました。
○大橋座長 ありがとうございます。
ちょっとお時間ない中ですけれども、私からも一言述べさせていただければと思います。
まず、今日、第6回ということで、毎回参加させていただいて、本当に真摯な議論を、それぞれの立場から、また、それぞれの専門的な見地から御発言いただいて、いろいろ観点での議論が深まったことは、私は相当程度意義があったと思っています。結局のところ、本日、事務局からも示されていましたが、上に凸というのですか、技術革新が生まれて、あるいは排出削減が進むことは将来であるから、今、GI基金とか、GXでやっているところが芽として出てくるのは後半なので、ある意味、上に凸なのだというような御意見もございました。また、我が国は世界の平均以上の目標をしっかり掲げて進むべきなのだということで下に凸の経路を取るべきなのだという御意見もあって、私は双方の御意見をしっかり受け止めさせていただいたつもりでおります。
我が国としては、GXということで、経済成長と排出削減、同時に達成するということ。そこに向かうためには、今日もいろいろ御意見がありましたが、地場産業への影響も見なければいけない。また、技術に対する不確実性も相当高まっているところがある。あるいは、人材についてもまだまだ育成する時間的猶予が必要等々、様々な社会的影響があるという御意見をいただいたものだと思っています。その意味で、本日、最後に事務局から説明があった、ある種、直線的な削減経路を軸にして検討するということは、議論として粗いという委員の御意見もありましたけれども、これは精緻化するのも一定の限界があることは事実で、そういう意味でいうと、ある種の一定の合理性があるのかと思っています。
ただ、御意見があったように、直線とか、上に凸という表現がよくないというところはあるのかと思っていまして、言うのだったら73%。これは相当大きな数字で、そもそも43%だって、みんなひっくり返った数字ですから、そこの辺りはしっかり国民とのコミュニケーション、あるいは発信をしていただくというのは重要と思われるところです。
政府におかれては、本会合の専門家の御意見をしっかり踏まえていただいた上で、今回示された事務局提案を軸に検討を深めていただきたいと思っております。
以上でございますが、最後に事務局から何かありましたら御説明いただくことはできますか。
○土居局長 御議論いただきましたとおり、直線という経路を軸に検討、事務局のほうで深堀りをさせていただきたいと思います。
○荻野室長 最後に事務連絡でございます。
本日の議事録につきましては、事務局で作成の上、委員の皆様に確認いただきました後、ホームページに掲載させていただきます。
次回日程につきましては、詳細が決まり次第、別途御連絡を申し上げます。
以上でございます。
○大橋座長 ありがとうございました。
それでは、これでよろしければ以上とさせていただきたいと思います。時間も相当詰まってしまって申し訳ございません。長時間、熱心な御議論、本当にありがとうございました。
午後 5時00分 閉会