気候変動影響評価等小委員会(第23回)議事録

日時

令和3年9月27日(月)13:00~14:40

場所

WEB会議システムにより開催

議事次第

1.開会

2.議事

(1)次期気候変動影響評価に向けた検討方針等について

(2)その他(報告事項)

   ①気候変動適応計画(令和3年版)改定骨子案の概要

   ②気候変動による災害激甚化に関する影響評価(中間報告)

議事録

午後 00分 開会

●気候変動適応室長

それでは、定刻となりましたので、ただいまより第23回中央環境審議会地球環境部会気候変動影響評価等小委員会を開催いたします。

私、事務局において、委員長による議事進行をお願いするまでの間の進行役を務めさせていただきます、環境省地球環境局気候変動適応室長の塚田と申します。この7月1日付で着任いたしました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

本日の会議は、現在、委員総数の過半数以上の27名以上の委員にご出席いただいていることを確認しております。定足数に達しておりますことをここでご報告させていただきます。

本日の小委員会は、新型コロナウイルスの感染の発生状況を踏まえ、感染拡大の防止の観点から、傍聴者なしのWEB会議システムによる開催とさせていただいております。また、この会議は環境省の公式YouTubeチャンネルよりライブ配信を行ってございます。資料及び議事録につきましては環境省のホームページより公開とさせていただいております。

本日は、WEB会議での開催となり、委員の皆様にはご不便をおかけしますが、何とぞよろしくお願いいたします。何かご不明な点がございましたら事務局まで、右下のチャット欄か事前にお伝えした電話番号までお電話にてお知らせいただければ幸いでございます。

続きまして、資料の確認をさせていただきます。画面上に、配付資料一覧を表示しますので、それに沿ってご連絡をいたします。

ただいま画面に出させていただいております。

資料は、本委員会委員名簿のほか、資料1から3と参考資料1から4となってございます。

各資料につきましては、委員の皆様には事前にお送りしておりますので、お手元に準備をお願いいたします。また、事前送付資料からの修正箇所につきましては、それをまとめた資料を本日午前中に委員の皆様方にはお送りしておりますので、ご確認ください。

議事に移るに当たりまして、昨年度の中央環境審議会の委員の改選を受けまして、本年度より新たに本小委員会の委員長に就任していただきました三村信男委員長より、ご挨拶をいただきたいと思います。

三村委員長、どうぞよろしくお願いいたします。

●三村委員長

皆さん、こんにちは。住委員長の後を受けまして、今年度より小委員長を仰せつかりました三村でございます。どうぞよろしくお願いします。

この気候変動影響小委員会は2015年に意見具申を行って気候変動適応法の成立に先鞭を着けるとか、あるいは昨年度、2020年度は影響評価報告書を、非常に充実した報告書を作成して国や地方自治体の気候変動対策をリードする、非常に重要な役割を果たしてきました。次のターゲットは2025年に気候変動影響報告書を出すということだと思いますけれども、今の状況を見ていると、この5年間で大きく様々なことが変わってくると思います。新たなターゲットに向かって、皆様、活発なご議論をお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

以上です。

●気候変動適応室長

三村委員長、ありがとうございました。

続きまして、前回以降、新しく委員にご参画された方々をご紹介させていただきます。時間の都合上、お名前のみのご紹介とさせていただきます。

伊藤弘之専門委員、葛西真治専門委員、福濱方哉専門委員でございます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

なお、環境省を代表しての環境省地球環境局長からのご挨拶は、他の業務の都合上、本会合の閉会時に行わせていただきますので、ご承知おきください。

それでは、これより議事に入らせていただきます。

議事の中で、委員長及び発言者以外の方は、基本的にマイクをミュートに設定していただければ幸いでございます。回線の負荷を回避するため、ご発言時以外は、カメラの使用をお控えください。画面の下にあるカメラのアイコンをクリックして、カメラをOFF(ビデオ停止)の状態にしてください。ご発言をされる際は、ご自身の名前の右側にある手のマーク、挙手ボタンを押してください。三村委員長が順番に指名しますので、マイクのボタンを押してミュートを解除し、ご発言ください。ご発言が終わりましたら、マイクをミュートにし、再度、挙手ボタンを押して挙手を解除いただくようお願いいたします。また、ご発言の際は、最初にお名前をおっしゃってください。また、マイク、デバイスに物理的なミュートスイッチがある場合は、ON(発言可能)の状態にしておいてください。また、ご発言時以外に、ご意見、ご質問等がある場合は、チャット機能をご活用ください。

それでは、以降の議事進行を三村委員長にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

●三村委員長

分かりました。それでは、早速議事に入りたいと思います。

お手元に今日の議事次第があると思いますけれども、本日の議題は2点です。第1点が、次期気候変動影響評価に向けた検討方針等について、2が、その他(報告事項)です。第1の議題が本日のメインの議題でありますので、これに十分、皆様方のご意見をいただきたいというふうに思います。

それでは、早速、この第1の議題、次期気候変動影響評価に向けた検討方針等について、事務局より説明をお願いします。よろしくお願いします。

●気候変動適応室室長補佐

議題1の気候変動影響評価に向けた検討方針等につきまして説明をさせていただきます。

それでは、資料1をお願いいたします。

気候変動影響評価につきましては、昨年12月に公表したところでございますが、次期影響評価につきましては、5年後の2025年を予定しているところでございます。昨年11月に開催されました本小委員会におきまして、今後の気候変動影響評価に向けた課題を整理いたしまして、委員の皆様方からの意見を頂戴いたしました。その意見を整理したものが資料1の別添1でございますが、今回説明につきましては、資料1の(1)から(4)で説明をさせていただきます。

まず、(1)の気候変動影響評価の対象分野でございますが、既存の文献が限られる分野といたしまして、産業・経済、国民生活・都市生活、気候安全保障が挙げられ、海外からの二次的な影響や、逆に国内で生じた影響が海外に及ぼす二次的な影響を整理する必要があるということ。また、令和元年の台風15号、19号のように分野間の影響の連鎖による被害の激甚化が今後も予想されるということで、分野間の影響の連鎖について評価の在り方を検討すべきという課題がございました。

続きまして、(2)の気候変動影響評価の方法でございますが、2020年に実施しました影響評価では重大性の評価は2段階でございました。2015年の影響評価も2段階だったのですが、2020年の影響評価では、この2015年の影響評価と比べて5項目で上方修正されており、2段階で固定をしてしまいますと、重大性が最高評価となる項目が増えるということが想定されるといったご指摘があったこと、また、誰にとっての重大な影響なのかというところの明確化が必要なのではないかというような課題がございました。

また、緊急性につきましても、影響の発現時期と意思決定の必要な時期のいずれかが高いほうを評価するということになっていますが、影響の緊急性が低いけれども、対策の緊急性が高いといった場合、逆もそうですが、そういった場合の緊急性の評価方法についての検討が必要といった課題がございました。また、重大性と同じく、誰にとって緊急な影響であるかということの明確化が必要という課題もございます。

同じく確信度につきましても、当時、その課題では挙げられていなかったところですけれども、再度検討の必要があるということは認識しているところでございます。

また、気候変動影響や適応策の効果を評価する際に、社会に及ぼされる影響を定量的に議論するための指標が必要であるという課題があったほか、社会・経済条件が生態系や国民生活に対する気候変動の脆弱性を高めている可能性が示唆をされることから、社会・経済条件を考慮した評価方法の検討や、地理的スケールの違いを考慮した評価方法の検討が必要との課題もございました。

次に、(3)の適応の見通しの扱いですけれども、適応策が講じられている分野もあるということから、適応の効果を含めた影響評価が課題となっています。

(4)の適応の見通しの扱いにつきましても、気候変動適応についての議論をする背景として将来と現在を比較した場合における緩和の見込みの変化について整理が必要といったような課題がございます。

これらの課題の対応方針を、今後検討していくということなりますが、海外におけます気候変動影響評価事例の収集・整理の方針を、次の2のところで整理をしているところでございます。

次ページの表1にお示ししていますように、海外における最新の気候変動影響評価事例というのを表1のほうで整理をしているところでございます。また、この表1の事例以外にも参考となる事例があった場合は、適宜情報収集の対象に加えるということにしております。

また、2022年以降に公表を予定されております、IPCCだとか、EU、アメリカにおけます最新の気候変動影響評価事例につきましても、公表され次第、情報を収集しようというふうに考えているところでございます。

続きまして、3の科学的知見の収集・整理につきましてですけれども、基本的には2020年に実施しました影響評価の作業方法を踏襲するということを想定しているところでございます。

まずは、令和2年度以降に公表されまして、かつ過去の気候変動影響評価報告書で使用されていない文献というものを対象に収集・整理を行っていくことを考えております。収集方法といたしましては、文献検索サイトによるキーワード検索であるとか、学会誌等からの情報収集に加えまして、AR6の内容の確認や、今後設置を予定しております分野別ワーキングの専門家の先生方からのご助言、また、3ページに示すように、研究プロジェクトからの情報収集というものを想定しているところでございます。

続きまして、4ページ目の(2)、今後検討が必要な項目について、でございます。こちらにつきましては、複合的な災害影響と、分野間、分野の影響の連鎖についても事例と文献の収集及び整理方法の検討ということになりますので、その作業を進めてまいりたいと考えております。

また、冒頭申し上げました産業・経済、国民生活・都市生活、気候安全保障、海外における影響、国内と海外の二次的影響の各分野につきまして、文献の拡充が課題ということがありますので、今後収集方針に向けて検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。

最後に、4ページ目の4の次期気候変動影響評価に向けた5年間のスケジュールということでございます。今年度、次年度以降の作業方針や、次期報告書のアウトラインを作成するほか、本日、説明は省かせていただいていますが、昨年公表されました気候変動影響評価報告書に関する普及啓発資料を作成しているところでございますので、次回の小委員会のときには、委員の皆様にもお示しできると考えているところでございます。

次年度以降は、令和4年度以降は文献収集であるとか、分野ごとのワーキングを設置しまして、具体的な検討に入りまして、2024年には原案作成、2025年に公表といった流れを想定しているところでございます。

以上、簡単ではございますけれども、議題1、次期気候変動影響評価に向けた検討方針等についての説明を終わります。よろしくお願いいたします。

●三村委員長

どうもありがとうございました。

今の説明にもありましたけれども、今回は2025年の次の報告書に向けた最初の会合ということです。ですから、この2025年の報告書をどういうものにしたらいいか、そういう基本的な点に立ち返っても、意見をいただければと思います。影響評価、影響を科学的にしっかり把握するという面も非常に重要ですけれども、同時に国や自治体の適応策をはじめとする気候政策にどういうふうに橋渡しするかと、そういう点でも今後検討が必要ではないかと考えております。あらゆる点から、改めてまたご意見をいただければと思います。そういうことで、今、説明していただいた、この資料1に対するご意見、あるいはご質問があれば挙手をお願いいたします。私のところで挙手の状況を見て、順次指名をさせていただきます。じゃあ、最初に中北先生、それから肱岡先生の順番でお願いします。

●中北委員

三村先生、ありがとうございます。よろしくお願いします。

三村先生、今、ご説明の中で少しお答えくださったことへの質問ですけど、これから適応に関する研究も含めてたくさんの文献が出てくる見込みの5年間になると思いますので、適応に関する取扱いをどうされるのかと今、質問しようと思ったら、三村先生が「大事な取組です」とおっしゃっていただきましたので、タイトル自身が変わるかどうかはちょっと別にしまして、世の中、今、適応にもより進んできているところと、それから適応と緩和の両軸というのが大事になってくる時期になっています。ぜひ、両方の部分の調査も含むというふうに考えていただけたらいいのかなというふうに思います。

関連ですけれども、1ページ目に記していただきました、今後の課題整理というところの(3)と(4)ですけれども、今言いました適応に関する見通し程度の扱いでいいのか、もう少し大きく適応策が入った事例まで行くのかというところを議論いただければいいのかなと。私としては、適応に関するいろんな事例もこれと似たような評価書みたいな感じで出てくるといいとは思っております。この同じタイトルの、この評価書の中で入れるかどうかはご議論いただければと思います。

それから、緩和の見通しに関しても、私はここの4番に挙げていることは、実は賛成でありまして、ただ、予測のほうに関し、あと緩和の見通しに関しては、また別途報告書みたいなのもあるのかもしれませんので、でもここの影響評価書の中で関連する程度のものは最初のほうにとか、ある程度上手にまとまった形で入っているというのは大事かなというふうには思っております。

以上、2点でございます。どうぞよろしくお願いします。

●三村委員長

どうもありがとうございました。

それじゃあ、ある程度意見がまとまって出たところで事務局のほうからのお答えとか、そういうことを伺うことにして、最初、皆さんからご意見を伺いたいと思います。

次、じゃあ、肱岡先生、お願いします。

●肱岡委員

ありがとうございます。

今回説明いただいた、分野別の情報の濃淡というところがありましたけれども、地方の方は自分たちの地域がどういう、将来影響があるのかということは非常に興味を持っていらっしゃると思いますので、地域別の情報もうまく整理していただいたらいいかと思っております。やはり地域適応センターの方からは、自分たちの県、自分たちの市はどういう影響を受けるのかという問合せも多数いただいておりますので、その点もこの影響評価報告書に入れていただきたいと思います。コメントです。

●三村委員長

どうもありがとうございました。

それでは、次は、高薮先生、それから安岡先生、江守先生、増井先生、そういう順番で、あとお願いいたします。

じゃあ、高薮先生、お願いします。

●高薮委員

高薮です。ありがとうございます。

私は、国際的な動向というところについて、ちょっとコメントしたいのですけれども、幾つかございまして、まず国際的な動向というのはどこだっけ、表1か、表1ですね。まず、一つは、WCRPの中にRegional information for Societyというチームが今できていて、今サイエンスプランを作成中です。ここは何をやっているかというと、WCRPの気候の情報をどうやって社会に還元していくかというようなことについて検討しようという、WCRP的にはかなり画期的な試みですけれども、ですので、また来年辺りになると風景が変わってくるかなという気がいたします。

それから、あとIPCCですけれども、リージョナルファクトシートというのを、おまけというか、作ったけれども、先週、今度はセクトラルファクトシートというのを作ろうという話が起きています。これは、ワーキンググループ1の膨大な資料の中からセクターごと、つまりセクターごとというのはヘルス、健康ですとか、農業ですとか、漁業ですとか、水利関係とか、そういうふうに分けて、彼らが求めているように情報を整理して出そうということです。これはワーキンググループ2・3とも橋渡しということなので、今後彼らとの連携も取っていくと思いますけれども、そういうことがあって、今度のCOPでもアナウンスはすると言っていました。

あと、ワーキンググループ2が来年の頭に、多分アプルーブされると思いますけれども、アプルーブされた時点でこの分野の景色が大きく変わるなんていうことはないでしょうかというのは、ワーキンググループ2に参加しているリードオーサーの方にお聞きしたいと思っていますけれども、そういうようなこともあるので計画は柔軟にしておいていただけたらいいかなと思います。

それから、最後ですが、日本の気候変動2020というのが対になる形で出まして、その科学的知見を使ってということで、この影響評価報告書が出ています。それで、海外を見ましても、例えばこの今の表の中で見ますと、イギリスはUKCP18というのが出ていまして、それに対応する形で評価事例をやっていると。あと、この中にないですけれども、実はスイスとか、オーストリアも2020に対応するようなものを作っていまして、202Xだと言っていましたけれども、非常に詳細なモデルの結果、コルデックスEUフラッグシップを使って出すというようなことをやっておりますので、恐らくヨーロッパの各国でもこういう影響評価の報告書みたいなものを準備しているのではないかなと思いました。

以上です。ありがとうございます。

●三村委員長

どうもありがとうございました。国際的にも各国で社会へどういうふうに情報提供するかということは、いろんな工夫があるという情報をいただきました。

それで、最後に出た他国の情報などは高薮先生に限らず、この表1に、さらにこういうのを追加したらいいのではないかということがあれば、後でまた事務局にお届けいただければと思います。どうもありがとうございました。

それでは、安岡先生、お願いします。

●安岡委員

ありがとうございます。安岡でございます。

私も海外の関係の調査の調べる範囲というのをちょっとお伺いしたいと思います。これまでの調査はどちらかというと、日本における影響を論文ベースで調べてきたということになると思います。それを海外にまで広げることによってここまでグローバル化してきた、いろんな影響を調べるというのはとてもいいことだと私は思いますけれども、例えば今サプライチェーンなんかで物すごく経済的にも影響があるわけですけれども、海外で起きるいろんな影響が、そういう物流とか何とかを通して日本に及ぼす影響までを調べるとなると、かなり範囲が広がると思うのですよね。論文の範囲も広がりますし、論文に出ているかどうかもちょっとよく分からない部分もあるわけで、これまでとちょっとスタンスを変えなければいけなくなるかもしれないと思います。その辺についてどういうふうに望まれるか、取り組まれるかというのをお伺いできればと思います。

以上です。

●三村委員長

どうもありがとうございました。これも非常に重要な論点で、我々が今すぐ知りたい情報が論文として発表されるまでには若干時間がかかると。そうすると、論文以外でも重要なソースになっているものをどう扱うかというのは、確かに非常に重要な論点だと思います。

幾つか重要な論点が出てきていますので、もう数件、ご意見をいただいたところで、一旦事務局などの意見も聞いて、それから続けるというふうにしたいと思います。

それじゃあ、江守先生、次、お願いします。

●江守委員

ありがとうございます。

たしか前回も申し上げたのですけれども、先ほど事務局からご紹介いただいた中で言うと、影響を受ける対象の明確化であるとか、あるいは脆弱性が高い集団の明確化が必要ということは既に書かれていますけれども、この点について少し補足で申し上げたいというふうに思います。僕が特に重要だと思っているのは、いわゆる影響が出たときに社会的な弱者が特に深刻な影響を受けるという構造がないかどうかということで、これ一般的に非常に重要になってくる視点ではないかと思います。

例えば、最近の報道とかを見ていても、2018年の西日本豪雨から3年たつわけですけれども、1,000人以上が、まだ仮設住宅に住んでいると。災害、例えば直撃したときに富裕層は比較的簡単に生活再建ができるけれども、低所得の方というのはそこで非常に苦しんで、そこから非常につらい生活に行くということもあり得るだろうと思います。それから、海外の事例ですけれども、先日のハリケーン「アイダ」というのがハリケーンじゃなくなってからですけれども、ニューヨークを通って非常に大きな被害をもたらしましたけれども、そのときにやっぱりニューヨークは家賃が高いですので、低所得者が違法に地下室みたいなところに住んでいて、そういう人たちが逃げられなくてたくさん亡くなったみたいなことというのが聞こえてきています。そういった視点ですね。言ってみれば、気候変動の影響というのが、そういう社会的な格差が脆弱性を生み出して、それの影響がどう出るかということに関係してくると思いますけど、今度は逆に、影響が出たことによって格差が再生産されていくような、言ってみれば格差への気候変動影響みたいな、もしかしたらカテゴリーがむしろ要るのかもしれないというふうに思っているところです。これは国民生活とか、そういう分類のところで注意して書き込んで充実させていただくということかもしれないですけれども、そういった、かなり科学的な文献の評価ということがこの小委員会で作業の中心になっていると思いますけれども、もしかしたら社会学であるとか、もうちょっと人文社会科学の文献でそういう研究というのが、ないとしようがないですけれども、ないか探す。あるいは、そういう研究を、むしろもっと振興してもいいぐらいではないかと僕自身は思っています。どうもありがとうございます。

●三村委員長

どうもありがとうございました。社会的弱者とか社会的格差と気候変動の影響との関係というのはワーキンググループ2の中でも非常に注目というか、重視をされている視点で、最終的にどういう形でそれが出てくるのか、最後まで追っていませんけれども、これまでの議論の中ではそういうことが非常に強調されていました。ですから、先ほどの高薮先生のワーキンググループ2のレポートが出てきたら風景が変わると、変わるわけではないですけれども、重要な焦点が浮かび上がってくるというようなことはあるのではないかと思います。

今、手が挙がっておられる方は、今後、増井先生、高橋先生、平田先生、橋爪先生、鬼頭先生までで、ちょっとそこまでで、高村先生までで意見を言っていただいて、その後環境省のほうから、出ている重要な論点についてご意見があれば伺う。そして、さらに議論を続けるというふうにしたいと思います。

それじゃあ、増井先生、お願いします。

●増井委員

どうもありがとうございます。

私自身、産業・経済、国民生活・都市生活の部門に前回まで関わらせていただきました。今回の資料の中でもそういった分野においては資料が足りない、情報が足りないということで、先ほど来、安岡委員、あるいは江守委員のほうからも論文ベースでこの検討会は進んできたということではありますけれども、やっぱり情報が少ないという中でそういう条件をやや緩和していただく、実際には企業の季報ですとか、そういったものもベースにいろいろ評価してきたわけですけれども、特に産業・経済、国民生活・都市生活については、どういうふうな形で情報を集めればいいのかというところをもう少し柔軟に検討していただければと思っています。また、基本的にはそれぞれ農業ですとか、水、こういう、それぞれの分野の影響、それのさらに高次といいますか、二次的な影響として国民生活なり都市生活、産業に影響が及んできますので、場合によっては何らかの共通の分析の仕方、やり方で、それぞれの分野で生じた影響というのが、どう国民生活に影響するのかという、ちょっと論文を集めてという、そういう、これまでのロジックとは異なりますけれども、各分野における影響を受けてそれがどう国民生活に影響が及ぶのか、そういったところ辺りもこの中で検討する、あるいは評価するということが必要ではないかなと思っております。

以上です。ありがとうございました。

●三村委員長

ありがとうございました。

じゃあ、続きまして、高橋先生、お願いします。

●高橋委員

ありがとうございます。私からは2点ございます。

1点目は、影響の観測・予測だけでなく、適応の調査についてもカバーしていかなければならないという意見、中北先生から出ていたかと思います。その適応の調査について、適応の将来想定を置いた影響予測研究もうまくカバーして調査することにとどまらず、例えば現状において適応、あるいは適応能力が不足しているセクターは何か、地域はどこかということをなるべくはっきりと示した研究をカバーしていくことが大事であると考えます。その結果として、緊急性の高い、優先順位の高い適応策は何であるかについても議論の材料を提供できる評価報告書になると望ましいと思いました。

2点目ですが、これは増井委員からもご指摘があった点に関係しますが、これまで第1回目、第2回目として継続的にセクターごと、いわゆる研究のディシプリンに沿った形で文献がまとめられてきたかと思います。そのようなまとめ方を続けることで継続性を確保することは、これまで2回の評価との比較ができる利点を持ちます。しかし、適応策の検討に使いやすいものにしていくためには、例えば学校関係者にとって気候変動問題とはどういう含意を持つのか、医療関係者にとってはどうか、農家にとってはどうか、あるいは小学生にとってはどうか、大学生にとってはどうかというように、主体、ステークホルダーごとの視点で気候変動問題のリスクを解釈してまとめるような報告の示し方もあると思いました。この辺りは、今後の報告書の構成の検討などでも議論されていく点と思いますが、今回コメントさせていただきました。

●三村委員長

どうもありがとうございました。

それでは、平田先生、次、お願いします。

●平田委員

ありがとうございます。私のほうからも2点指摘したいと思います。

今回の中で3番、4番で適応、緩和、これを入れていただくというのが非常に重要なのかと思います。影響評価を行った後適応、あるいは緩和策をどう進めていくかというのが、確かに重要な観点なのかと思います。その中で、3番の適応につきましては、影響評価の結果、地域によっては必ずしも気候変動がマイナスに働くわけではなくて、プラスに働く地域というのも物によっては出てくるということで3番、特に地域性をどう細かく分けていくのかというのが一つ、重要な視点かと思います。特に、日本で各自治体が取組を行っていく場合にプラスに働くというところもしっかり見ていかなければいけないと考えております。

また、もう一点、4番目の緩和についてですけれども、これまでは気候変動の影響を評価して、そのためにこういう緩和を図っていかなければいけない、緩和策を図らなければいけないという、そういったロジックで進められてきましたが、今後各国が目標値を定めて緩和を図っていくということを行ってきます。その中で緩和が図られた場合、その後気候変動の影響、緩和が図られた状態での影響がどうなるのかという、そういった逆方向の矢印での観点というのも重要になるかと思います。

以上です。ありがとうございました。

●三村委員長

どうもありがとうございました。

それでは、橋爪先生、お願いします。

●橋爪委員

ありがとうございます。

先ほど高橋委員が言ってくださった意見とほぼ同じですけれども、適応に関して、将来の適応策の効果を含めた評価というだけではなくて、現状有効な適応策、適応策に関する研究というのは各分野で相当進んできていると思います。そうした有効な適応策のレビューというのも次回含めていただけるといいのではないかと、コベネフィット等も、もしかしたら含められるのかと思いました。

以上です。

●三村委員長

どうもありがとうございました。

それでは、鬼頭先生、お願いします。

●鬼頭委員

はい、鬼頭です。3点、ございます。一つは、対象分野として、前回、複合災害の例として土砂災害プラス洪水氾濫というのを取り上げられたわけですけれども、一般の方から見て複合災害がそれかというと、ちょっと違うようなニュアンスがあります。辞典等を見ますと、海面上昇、台風、集中豪雨といった気象現象に地震、津波、地盤沈下、あるいは火山噴火も含むかもしれません。そういった大規模な複合災害が挙げられています。なので、火山噴火と極端気象現象が起こった場合とか、そういった項目を立てておくのが必要じゃないかと思いました。該当する論文がないかもしれませんけれども、その場合は論文なしで、だけど検討が必要だということでもいいですので、考えていただければどうかと思います。

二つ目は、海外の評価事例として、表1に挙げられているわけですけれども、ほとんどが日本と大きく違う気候条件下にある欧米の影響評価の事例です。それよりは同じアジアモンスーン域にある国々の影響評価事例のほうに重点を置いて検討されたほうがいいのではないかというふうに思いました。AP-PLATを見ますと、アジアの国々での適応計画ですとかにも注視をされていますので、当然そういった国ではリスクがどうであるかということは事前に含まれているはずですので、そこのところを検討願えればと思いました。

最後は、表2のところで、統合プログラム以外は環境省のプロジェクトがずらっと並んでいるわけですが、他省庁のプロジェクトも当然あるわけで、国交省、厚労省とか、農水省も当然いろんなプロジェクトを抱えておられますので、それをより明示的に最初から挙げておくべきかと思いました。実際に始まった後は、環境省と他省庁とのいろんな話合いであるとか、ワーキンググループの委員を通じて情報は収集されると思いますけれども、最初からちょっと目配りをしておいていただけたらいいかなと思います。

以上です。

●三村委員長

ありがとうございました。おっしゃるとおりですよね。日本全体の状況、それからアジアの中での日本の位置というのを考えると、その対象をもう少し広く全ての省庁の知見を合わせて作るというようなことは非常に重要な視点だというふうには思います。ありがとうございました。

それじゃあ、高村先生、お願いします。

●高村委員

ありがとうございます。これまでご発言があったところと重複がするところがありますけど、3点申し上げたいと思います。

一つは、全体を通して気候変動影響評価の対象分野というところで、今後知見の拡充が特に必要とされた分野、ここについての意見について、3点ございます。

ここに挙がっている課題というのでしょうか、さらに研究が必要な分野として挙がっているところを見ますと、やはり複合的リスクといいましょうか、起こる気候の変化が様々な経路、あるいはその要因によってその発現の形態、リスクが変わってくるという、そういうタイプの分野であろうと思います。それゆえに、学術論文としてまだまだ出てきていないというところもあるのだと思いますけれども、同時にワーキングなどでも議論をしておりますと、やはり産業・経済分野ですと、情報の秘匿性、機密性があるとか、あるいは非常に個別的で一般化し難い、学術論文ベースで出し難い、そうしたタイプのリスクとしても認識をされているように思います。そういう意味で、もう既にご発言がございましたけれども、やはり学術論文ではないところの知見の蓄積をどういうふうに取り込むかという課題がやはりあるのだと思います。特に、産業・経済、あるいはそのサプライチェーンの影響に関しては、ご存じのどおり、気候変動のリスク情報開示で、企業自らがシナリオ分析を使って影響評価をし始めて、リスク評価をし始めていますので、こうした情報をどういうふうに活用できるかという点が1点でございます。

それから、二つ目は、これは既に江守委員が脆弱性の観点から、それから安岡委員がおっしゃった、海外影響に関しての、何が重要かというところを特定するような研究とたしかおっしゃったと思いますが、ここが非常に大事だと思っていまして、やはりその脆弱性、それから、例えば、サプライチェーン一つに取っても、何が日本にとって、あるいは日本の企業にとって、あるいは日本の食料、安全保障なのかもしれませんけど、何が大事かということを特定のできるような、そうした研究が一つは必要だというふうに思います。そのことで、次の具体的なやはりさらなる分析が必要かということが見えてくるように思うからであります。そういう意味で、江守委員、安岡委員のその点についてのご指摘、全く賛成であります。

最後は、これは環境省さんにお尋ねですけれども、今日、先生方のご議論を踏まえて、幾つかやはり重点を置いて行うべき、将来、影響リスク研究についての示唆というのがあったかと思いますけれども、例えば、進行中の推進費の研究の中で、どこまでカバーされているのか、あるいは追加的にやはり強化をしなければいけないところが何かという点について、もしご説明があれば、いただければと思っております。

これは、もう一つ最後に申し上げると、例えば、気候安全保障というのは、恐らく国がイニシアチブを取って、かなりしっかり行政側で何が重要なのかということを認識した上で、研究をする、あるいは研究者に分析を依頼するというようなことをしないと、なかなかその研究というのは進んでいかないように思っております。その意味で、現在の進行中の、少なくともあの環境省さんの推進費のところで、どれくらいカバーされているのか、あるいはどういうふうに今後されようとされているのかという点について、お尋ねしたいと思います。

以上です。

●三村委員長

はい、どうもありがとうございました。

非常に幅広い論点、しかも非常に重要で本質的な論点が出たので、すぐこの場で事務局がそれはこうですと答えられる範囲はあまり多くないかもしれませんが、今いろいろ出た論点の中で、環境省のほうから何かお答えをしていただけることがあれば、回答していただいて、さらにもう少し議論を進めたいと思います。

環境省のほう、いかがでしょうか。

●気候変動適応室室長補佐

先生方、どうもありがとうございました。たくさんのご意見をいただきまして、大変ありがたく思っております。

まず、その適応と、適応の見通しとその緩和の見通しというところですけども、我々もどのように気候変動影響評価報告書、次期の気候変動影響評価報告書には盛り込んでいくかというところが課題となっていると認識してございます。

その中で、どのような盛り込み方をするべきか、というところを考えているところでございまして、一つには、説明の中でもありましたけども、海外の文献であるとか、そういったものを調査しながら最適な取り込み方について検討できればいいと考えているところでございます。

あとご意見等がありました、海外の影響とか、国民生活であるとか産業であるとか、そういったところの文献というのがやっぱり少ないというのは我々も認識をしているところでございまして、今後、その学術論文以外にも、どういったものが取り込めるか、例えば、その企業の調査情報であるとか、あとはちょっと根拠としては薄いかもしれないですけど、マスコミの情報であるとか、何かしら情報を得られるものがあれば、そういったものを幅広に影響評価として使えるか、幅広く、情報として収集をしていきたいと考えているところでございます。

●三村委員長

よろしいでしょうか。

●気候変動適応室室長補佐

はい、三村委員長。

●三村委員長

はい、分かりました。

もう少し、もう10分ぐらいは時間があるという予定ですので、皆さんからさらにご意見をいただきたいと思います。

私のところに今手が挙がっているのは、その後、木所先生、石川先生ですけれども、あと田中先生。そういう順番でご意見をいただきたいと思います。

じゃあ、木所先生、お願いします。

●木所委員

はい。水産研究所の木所です。どうもありがとうございます。

やはり今回、皆様からの、各先生からの意見を聞いていますと、やはり今の論文ベースでやっていたこれまでの取りまとめではやはりいろいろくみ上げられないものもあると、それで、いろいろな限界があるのではないかというコメントが多かったかと思います。

特に、国民の生活に重要なその産業的なものとか、社会的に脆弱性なのはどこにあるかとか、やはりそういったものは、なかなか論文ベースでは難しいのかなと。

ではどうするかとなると、この委員会のほうで何らかの解析が必要かというと、ちょっとその辺も難しいのかなと。

それで、今先ほどちょっと高村先生のほうからコメントがありましたけど、今環境省の推進費で何をやっているのかというと、私も参画させていただいていますけども、三村先生がプロジェクトリーダーになっているS-18のほうで、そういった総合的な対応が可能なのかどうかと。また、それができなければ、それでも足りないようならば、例えば2025年、次の気候変動の報告書のときに何らかのテーマを決めて、何か総合的な解析なりトピックなりを決めて、それでいろんな論文では落ちているような問題点、そういったものを取りまとめるような、そういった方針というものも、この小委員会で決めていくのも一つの手かなと思いました。

ありがとうございます。

●三村委員長

はい、どうもありがとうございました。

今ちょうど木所先生から、推進費の関係について戦略的研究のS-18の話が出たので、ごく簡単に紹介させていただきますと、今出た話題の中の一部はS-18でカバーできる、これまでになく広い範囲でカバーできる分野と、挙げられたもので手が届かないというものがあります。

例えば、地域ごとの情報をもっと細かく自治体に届けられるように出すということは、これはかなりそういう意識でやっているということ。それから、分野で言うと、国民生活、都市生活、産業、交通、そういうものについては、初めてこの全般的な取組をすると。その中では、影響を見る総合的な指標としては、QOLのようなものを据えて、その気候変動が最終的にQOLにどういう影響を与えるかというようなことを評価しようというようなことをしています。

それから、大きな枠組みでは、適応策、様々な緩和のシナリオの下でさらに適応策を取ったときに、どの程度適応の効果が見込めるかというところまで成果を出したいということで、研究を進めているわけですけれども、これらがカバーできる範囲です。

ところが、今出ましたような、その国際的な状況の中での影響の表れ方、例えばサプライチェーンとか、他の国の影響と我が国の影響の関係、あるいは気候安全保障、そういうところについては、研究のスコープの中に入っていないので、必要があれば、新たに研究を考える必要があると、そういうふうに思います。

ちょっと途中でしたけれども、話が出たし、高村先生の指摘もあったので、S-18としてはそういう状況にあるということをお知らせしました。

じゃあ、次は石川先生、お願いします。

●石川委員

はい、JAMSTEC、石川です。

私のコメントは、今の三村先生のお話、それから肱岡さんとかからもコメントがあったと思いますけれども、やはりこの報告書は、非常に包括的に取りまとめてあるものの、やはり例えば、地方の自治体の適応センターの方とかが欲しい情報というのが必ずしも入っているとは限らないということがあると思います。

その中で、この5年後ということを考えると、例えば、このデータベース化とか、あとはA-PLATなんかの連携で、IPCCでもInteractive Atlasみたいなものが企画されていたりしますけども、いわゆる紙の報告書、PDFの報告書だけでなくて、そのデジタルデータとの連携というのは積極的に考えてもよいのではないかと考えています。

特にその中では、どうやってこういう評価になったかみたいなプロセスみたいなものが分かるといいなと思っていますし、今皆さんからあったように、いろんな論文以外の情報というのを、入ってくるときには、その情報へのアクセシビリティの確保というのは非常に大きな課題になってくるのではないかと思っています。

私としてはすぐ答えがあるわけではないですけれども、そういう問題、論文についても有償のものをどうやって手に入れるかというのも、実は問題があったりするのですけれども、そこも含めて、その評価のトレーサビリティ、それからそれに関するアクセスの確保というものというのはきちんと考えていかなければいけない問題ではないかと思っています。

以上です。

●三村委員長

はい、どうもありがとうございました。

それでは、田中先生、それから次が浅野先生、それから山田先生、そういう順番でお願いしたいと思います。

よろしくお願い、田中先生、お願いします。

●田中委員

ありがとうございます。田中充です。

私から地域と政策の関係から2点ほど、申し上げたいと思います。

これまで、この影響評価報告書が、いわゆる全国レベルにおいて分野別の気候変動の影響評価ということを視点に緊急性、重大性等の観点から重要な取組について評価し、紹介する、そういう構成になっていたかと思います。

この点、地域においては、気候変動適応法の制定を受けてこの数年の間に、かなりの地域で地域適応センターが設置をされたりして、取組が進んできたように思います。そして今後5年後を考えると、そうした地域において影響評価の情報集積が進んでくると思われ、またその点のニーズが高まってくると思います。そういう点では、気候変動影響評価についても、地域の観点も入れていくということのご意見に、私自身も大賛成いたします。

その上で、この影響評価報告書の位置づけとして、こうした地域気候変動適応センターや各地の大学が収集している知見やデータを、あるいは地域の取組に関する情報を、うまく収集し、記載することはできないかと考えます。先ほど、専門論文や学術論文以外にも、気候変動影響評価に関する情報源を多様化していく必要があるのではないかという指摘があったかと思いますが、そういう点では地域に、それなりの、情報資源が集積し機能し始めていますので、ぜひこのような地域の影響評価に関する情報を取り上げる仕組みはどうだろうかという、これが第1点です。

関連してもう一つは、影響評価報告書は、分野・セクターごとの適応の取組を収集していますが、現状では、地域の視点からの適応策も実施され始めており、地域特性に照らした形で地域が工夫をして適応の取り組み始めております。全国で実施されている広域協議会でも、そうした地域独自の先進的な適応策事例が報告されています。

そうしますと、そうしたこのような適応策の整備状況、実施状況について、どこかで収集し評価する枠組みがあるとよいと思います。環境基本計画の場合には、その年次の点検報告書という仕組みがありますが、政府の適応計画については、まだそういう仕組みはないと理解しています。

自然科学、自然影響の面から、今回の気候変動影響評価の報告書が5年に1度というスケールでまとめられることになりますが、そこのところに、いま話しました政策情報のようなものも入れていくかどうか。こうした対策実施の報告書は別途に作るのか、今回の影響評価報告書の中に取り込んだほうがいいのか、別途にしたほうがいいのか、ご議論があると思いますが、事務局でぜひ検討していただき、そうした各地の適応策の実施状況も含めて適応の進捗状況についても評価できる仕組みが望ましいのでないかと思います。

以上でございます。ありがとうございました。

●三村委員長

どうもありがとうございました。

それでは、浅野先生、山田先生、野尻先生の順番で、野尻先生のところで一旦議論を切らせていただきたいと思います。

浅野先生、よろしくお願いします。

●浅野委員

はい、よろしいでしょうか。

実は、適応の施策の進み具合をどう見るか、そのフォローアップをするというプロセスがありまして、そこで取り扱う情報などをどうすればいいかという検討会に参与させていただいております。これから先、適応の施策がどんどん進んでいく、それについての毎年、あるいは数年単位での評価というのも、システムとしては動く予定になっておりますから、そのシステムで出てきている話と影響評価をするというこの小委員会で扱っているテーマとの間で、うまく連携が取れるようにするということが必要だと思いますので、この辺りのところ、ぜひとも事務局に頑張っていただきたいと思います。

それから、既にもう先ほど高村さんからのご指摘がありましたことで、それは以前のこの小委員会で私が申し上げたことでもあったのですが、企業関係の適応への取組はなかなか論文ベースにはならないので、ほかのデータを使わなきゃいけないということは申し上げております。この点は今後も特にご留意いただく必要があるだろうと思います。

特にTCFDの動きが随分進んできていまして、それの報告が出てきますと、それによってどういうことを事業者や企業関係者が気候変動の影響として危機感を持って捉えているのかといったような意識がある程度表面に出てまいりますから、それらの資料は十分に整理をしながら使えるだろうと期待できると思います。

本来、社会科学の分野でこういうこと、きちっと論文にまとめる人がいなきゃいけないので、もう私のように引退した者はともかくも、若い先生方が、さらにそういう仕事をしてもらえるように若手研究者の誘導をするということも必要なのかもしれないというふうに思っておりました。

今日、特に発言したいと思っていたことは、ちょっと違う話になるのですけども、適応策というものがもう既に動きつつあるように見えますが、しかし、政府の作っている適応計画骨子案を見ておりますと、どうも総論的に非常に抽象的なことしか書いていないということが多いわけですね。しかし、中には極めて具体的なことを書いているセクションもある。つまり、どの分野での適応策を扱うかによって、同じ適応という言葉を使っていても、かなり取組のニュアンスが違うことがだんだんはっきりしてきたような気がするのです。

とりわけ河川管理とかといったような具体的なテーマを扱うところは、適応策として非常に具体的なことを書いていて、それについては本当にどこまで進んだかというのは割合明瞭に追っかけることができるというようなものもあれば、相変わらず情報提供して動いていただくというようなことしか書いてないような部分もある。あるいはその品種改良などに取り組んで、少なくともかなり時間をかけなければ答えが出てこないようなことが適応だというふうに考えているものもある、ということが出てきておりますから、これも本当は学術ベースできちんと整理する必要があるのだろうと思いますけども、適応策の領域別の違い、こういう領域の適応策はこういうようなことが考えられていて、こういう特色があるというようなことを少し整理しなさいと、一言で適応、適応といっても、かなり違うものを一緒くたに扱っているということ、気がついてきました。

ですから、とりわけ影響評価をやる場合に、今後適応策実施の見通しもしっかり見た上でいこうというときに、今私が申し上げたとおり同じ適応という言葉を使っていてもかなりそこで出てくる様子が違うということを定義しませんと、かえって混乱が起こってしまうのではないか。そんな心配をしましたので、今日はこのことを申し上げたいというふうに思いました。

こういうのは政策科学の領域ですから、今この小委員会のメンバーになっておられる高村先生とか田中先生の研究室の若い人たちにそういう仕事をちょっと本気でやってもらうといいのかなという気がしております。

以上です。

●三村委員長

どうもありがとうございました。

最後の問題提起、非常に重要だと思います。

それからもう一つ、企業の話でTCFDへの対応の話がありましたけど、確かに考えてみたら、TCFDの中に物理リスクとかいって、影響を定めたようなものに対する企業の対応というのを考える項目があるので、それを集めるだけでも、確かに企業のレスポンスというのは、様子が見えてくるということがあるかもしれないですね。非常に示唆的な知見、ありがとうございました。

それでは野尻先生、お願いします。

●野尻委員

弘前大学、野尻です。

私、これまでの間に何回か地方の自治体を集めてやっております気候変動適応広域協議会に参加させていただいて、各地方の方の話などを聞いております。RCP8.5で予測したような影響に対してどう適応するかというと、影響が大き過ぎてもう適応のレベルを超えていると、そういった議論もよく聞かれます。

前回の2015年報告書のときには、将来気候との関係性をあまり明確にしないで評価したのですが、2020年報告書では可能な場合にはRCP2.6と8.5で区別して影響評価しましょうということにして、非常にそれについて進歩したと思っております。

しかしながら、今後この影響評価が、2025年、2030年、2035年と進んでいくと、だんだんゴールが見えてくる。資料の緩和の見通しの扱いに関係していますけれども、一体どのシナリオが起こり得るか、そういったところを考えてみますと、最近の世界的排出量に減少傾向が見えているようなところも踏まえていくと、やはりRCP8.5という極端といえそうなものよりは、よりありそうなRCP4.5、あるいは目標とすべきRCP2.6や1.9といったほうがだんだんと重要性を増してくるのではないかと思います。

これについて影響評価をするときの難しさはやはり、地域スケールの予測情報がないことであり、気候予測データのほうのサポートが非常に必要になってくる。

ですから、RCP4.5ぐらいの、例えば2.5℃ぐらいの温度上昇の影響評価を2025年の評価報告書で行うのは難しいのかもしれないですけれども、やはり必要性としてはRCP8.5と2.6というような両極端だけではなくて、その真ん中辺のRCP4.5みたいなものの将来気候予測データを整理して提供し、それに関する影響評価を行うというところがだんだんと重要になってくるというふうに思っております。計算機資源の問題があることは分かっていますけれども、できる限り気候予測モデルのグループから、中ぐらいの影響をもたらすRCP4.5。それとRCP2.6で気候変化がどう違うのかを示す。そうなると、現実的な影響予測がより現実性を増してくると思いますので、ぜひその辺をお願いしたいというふうに思っています。

以上です。

●三村委員長

どうもありがとうございました。これも重要な課題だと思います。

山田先生、再び入っていただきまして、ありがとうございました。よろしくお願いします。

すみませんが、同じように音がこちらに届いていないですが、いかがでしょうか。山田先生、今お話しされていますか。申し訳ないけれども、こちらには音声が届いていないですね。

それでは、大変申し訳ないけれども、山田先生のご意見は後で事務局に文章で届けていただくか、あるいは会議中にもし音声が届くような状態になったら、後で発言していただくということでよろしいでしょうか。すみません、よろしくお願いします。

それではあと2名、中北先生と木本先生、ここで本日の議論は終わりということにしたいと思います。

じゃあ、中北先生、お願いします。

●中北委員

どうもありがとうございます。今の野尻先生のコメント関連で一つだけです。

適応する場合、何ていうかな、適応的適応、緩和も含めてリスクの増大に応じて、順次こう適応していく場合と、それから順次、適応的に適応できない、何か言葉が変だな、adaptiveにいろんな強度を上げたり、適応の度合いを上げたりできなく、最初からある程度考えておかないといけない適応、2種類、あると思います。そこのところが適応を考える中で大事で、それが何に対応するかというと2℃上昇という、かなり確度が高いものに対する適応。それが多分30年後ぐらいに確実に訪れるだろう適応ですけれども、世の中ではどちらかというと、そこを目標にしながら今適応を進めているところが多いと思います。

治水にしても、ただ、大事なこととしては、それが外れた場合の、よりシビアになる世紀末というものに対する、どちらかというと危機管理的な考え方での適応というのを併せ持って、今から考えておく必要があるというふうな場合と、20、30年後を考えたらいいという場合、適応の対象によって違うと思いますので、そこらを上手に区別して、何か整理していくことができればいいなと、今、野尻先生の話を伺って、そう思いました。

以上でございます。

●三村委員長

はい、どうもありがとうございました。

それでは、木本先生、お願いします。

●木本委員

私、適応の専門家ではないですが、報告書、次の報告書ということであれば、例えば今回のAR6の第1作業部会のように、これまでは専門家の専門分野で章立てを立ててきたものを、その読む人に合わせて、読む人が知りたいような章立てでこしらえるというような面が必要ではないかと思います。

適応は、ある程度はそれを考慮されているとは思いますが、やはり国民の皆さんが読んで使いやすいという視点をもう少し強調してもよいのかなと思いました。

例えば、もちろん影響の、皆さん、前からやっておられますが、今回、第1作業部会でも導入した、温暖化レベルで整理をして、いろんなモデルやいろんなシナリオの結果を整理した提示の仕方とか、それから先ほど野尻先生もおっしゃいましたけれども、使うシナリオとか予測実験を、使う人が使いやすいように選んで整理した形で提示するとかですね。

そうなりますと、このたまたま見かけた論文を集めて面白い順番に紹介するということではなくて、やはりフィロソフィーを持って、章立てを立て、それで、それに合うようにもちろん既存の論文を整理するわけですが、既存の論文に基づいて新しい視点で既存の論文の方法でグラフを表示するような、IPCCや何かでやっております、ですからレビューというよりは、評価とかそういう作業も必要になってくるのか。そうしますと、ここにおられる先生方の作業量が格段に増えてしまいますので、実際にはどうやったらいいかということは、私にはすぐには答えが出ませんけれど、今言いたかったことは、ユーザーの皆さんにより有用な評価報告書を作るように心がけたいなということでございます。

以上です。

●三村委員長

はい、どうもありがとうございました。

それでは、若干予定した時間を過ぎたということもありますので、ここまでにさせていただきたいと思います。

その山田先生には誠に申し訳ないですけれども、後で文章を出していただければと思います。

今日出た意見をここで全部総括することはできませんけれども、五つの点が非常に重要なんじゃないかというふうに思いました。

一つは、2025年に向けて、基本的な視点、枠組みをしっかり作るということで、皆さん、議論をされたと思います。例えば、地域にどういうふうに有効なものにするかとか、あるいは影響を受ける脆弱なグループの視点をどう持ち込むか、それから海外との関係をどうするか。最後に木本先生がおっしゃいましたが、国民目線で章立て自体も考えると。そういう全体の視点やフィロソフィーというのを設定する、非常に重要な意見が相次いだと思います。

2番目は、それに対応しようとすると、文献や情報をどこから集めるかということで、論文を拾ってくるというだけでは足りないというような意見が、かなりありました。

3番目に、日本全体のことを考えるわけですから、他の省庁や様々な研究、企業などの取組、そういうものも含めた幅広いソースに当たるべきだ。2とも重なりますが、そういうことですね。

4番目は、そのためのアウトプットの形式をもっと工夫したほうがいいと、いろいろアイデアが出ました。

5番目は、影響報告書を超えていますが、足りないところの研究をどう補充するかとか、あるいは現在進行中の適応策の評価をする仕組みを整える、そういうことも必要ではないか、そういう示唆もございました。

もっと精査すればいろいろな論点が出てくると思いますが、そういうことに基づいて、環境省のほうで考えていただいて、今年度、もう一度この小委員会があるということですので、その機会に改めて議論をさせていただければと思います。

どうも大変ありがとうございました。非常に有用で、熱心なご議論をしていただいて、感謝をしています。

それでは、次の議題に移らせていただきまして、その他(報告事項)について、事務局より説明をお願いします。

●気候変動適応室室長補佐

それでは資料2の気候変動、その他の議題ということで、まずは私のほうから資料2の気候変動適応計画(令和3年版)改定骨子案について、説明をさせていただきます。

まず、左上の目標では、気候変動による被害の防止・軽減、国民生活の安定、社会・経済の健全な発展、自然環境の保全及び国土の強靭化を図り、安全・安心で持続可能な社会を構築することを目指すというふうにしております。

また、計画期間は今後概ね5年間を予定しているところでございます。

続きまして、右上の基本的役割のところでは、政府であるとか地方公共団体、情報基盤を整備する国立環境研究所、事業者、国民といった多様な関係者が基本的役割を担いながら、相互に、密に、密接に連携していくこととしております。

その下の基本戦略につきましては、この目標を達成するため、七つの基本戦略の下、関係府省庁が緊密に気候変動適応を推進するということとしております。

続きまして、左下のところですけども、左下が各分野についての影響と施策の一例というのを載せているところですけれど、影響と記載されているのが、昨年12月に公表いたしました気候変動影響評価報告書の中から抜粋をしたもので、その影響を踏まえた適応策というふうになっているところでございます。

例えば、農林水産業のうち、水稲の場合、高温によってコメの品質が下がって、低下があるということから、高温耐性品種の導入というものが適応策になります。また、自然災害ということであれば、洪水の原因となるこの大雨の増加があるということから、この「流域治水」の推進というものが適応策というふうになります。また、健康のうち、熱中症の場合、熱中症による死亡リスクの増加があるということから、高齢者への予防情報伝達が適応策というふうになります。

このように各分野で気候変動の影響があるということから、それぞれの分野で適応策を設定していくということになっております。

続きまして、右下の基盤的施策ですけども、分野横断で取り組むことが重要であるということから、基盤的施策を設定いたしました。科学的知見の充実であるとか、気候変動に関する情報の収集や分析、提供を行う体制の確保、地方での適応の推進、事業者等に対する気候変動適応の促進、そして国際連携や国際協力の推進ということになります。

ちょっと真ん中のほうに戻っていただきまして、真ん中の進捗管理というところですけども、分野別施策であるとか、基盤的施策、これを推進していくところですけども、このKPIを活用して、進捗管理というのをいたします。また、それに加えまして、国、地方自治体、国民レベルでも、気候変動を定着・浸透させる観点から、この指標、目標を設定し、進捗管理というのを行ってまいります。

気候変動適応計画の改定骨子案については、以上でございます。

●気候変動適応室室長補佐

続きまして、資料3に基づきまして、気候変動による災害激甚化に関する影響評価について、ご紹介をさせていただきます。

こちらの内容は7月に報道発表させていただいたもので、中間報告に当たるものでございます。

この事業は昨年度から、気候変動による災害激甚化に係る適応の強化事業として開始をしております。近年、大きな被害をもたらしました台風が、将来2℃、4℃上がった状況の中で、どのように発達して、どのように影響を与えるかということをコンピュータのシミュレーションによって明らかにしたいという課題意識で始めたものでございます。

昨年度は、令和元年の台風第19号、東日本台風を対象としております。この台風はご承知のように、大型で強い勢力のまま関東地域に上陸をいたしまして、中部地域から東北地域の広い範囲に大きな影響を与えたというものでございます。

特筆すべきは、多くの河川が決壊をして、浸水の被害があったというところだと認識をしております。

次のページを、お願いします。

こちら、調査の状況でございますけれども、左下に模式図を書かせていただいておりますけれども、気象のシミュレーションによりまして将来の台風を予測するというところ、またその影響について、河川のシミュレーション、それから高潮のシミュレーションを行うというところ、それぞれマルチモデルで同様の影響評価を行いまして、それを取りまとめるということにチャレンジをしておりまして、文科省の統合プログラムに関わる先生方に多大なご協力をいただきまして実現したものでございます。この場をお借りしまして、御礼申し上げます。

この中間報告では、一部のモデルの成果をご紹介させていただいております。

次のページを、お願いします。

シミュレーションを行いました結果、今までの台風に関する研究と大きく違いはなく、やはり現在よりも強い勢力を保ったまま日本に接近して、関東、東北地域により多くの雨をもたらすという結果になっております。

下に気圧、降水量、風速に関する予測を載せていますけれども、例えば気圧ですと、2℃上昇シナリオの中では、平均で8hPa低下するなど、気圧が低下する方向性が示唆されておりますし、やはり大きく影響しました降水量につきましても、2℃上昇では6.3%、4℃上昇では22.2%の増加というシミュレーションの結果になっております。また、風速も正直なところ、もう少し強まるかと思っていたのですけども、2℃上昇シナリオでは2.6m、それから4℃上昇シナリオでは3.4m増加するというような結果になっております。

個別の事例として、特に荒川は、再現性がよかったということで、ご紹介をさせていただいております。棒グラフがございますが、真ん中辺りのグレーのところが観測データから作成したものでございまして、それに加え、その隣にあります「現在」というものが、シミュレーションで行った現在の再現結果となっております。それを基に2℃、4℃上がっていくとそれぞれ降水量も上がりますが、ピーク流量も上がっていくということでございます。

荒川の場合ですと、降水量は河川の整備計画の基本方針より、少し多めに降る可能性が4℃上昇ではあると。それに伴ってピーク流量は、基本方針より少し低い程度の予測というふうになっております。まだこれは一つの例としてお出ししたものでございますが、ほかの河川についてもより精度を上げた形でお示しできるようになればと考えてございます。

次のページを、お願いいたします。

こちらの図は、中小河川の氾濫リスクを評価したものになります。RRIモデルというものを使わせていただいておりまして、その中でシミュレーションをしておりますけれども、赤いところが洪水のリスクが高い、氾濫のリスクが高いところでございますが、やはり実際の台風に比べて、4℃上昇ですとその範囲が広がっているということがご覧いただけるかと思っております。

報道発表後はご関心がこちらに集中しております。皆様の関心の高いところですし、今後防災計画などを立案される上でも参考になる情報になればと考えており、今後も精査をしていきたいと思っております。

最後に、高潮の成果をご紹介させていただきます。これが東京湾です。上に伸びておりますのが荒川と認識をしております。東京湾のこれまで最高潮位と言われているのはキティ台風、これは昭和24年の台風で2m程度となっております。今回、東日本台風でも満潮だった場合には2mを超えていたのではないかと認識をしております。

このシミュレーションでは、4℃上昇して、かつ満潮の場合で、将来の海面水位の上昇を考慮しますと、平均の海面より3.2m以上上昇するような箇所も見えてきておりまして、浸水のリスクが高まるということが示されております。

こうしたものを、パンフレットに取りまとめまして、皆様にネットなどを通じてお配りをしているところでございます。

私からの報告は以上でございます。

●三村委員長

はい、ありがとうございました。

その配付資料の中に、資料4かな、すみません、参考資料1とかあります。それはいいわけですね。

●気候変動適応室室長補佐

はい。参考資料1につきましては、2020年の気候変動影響評価の、ということで、参考に見ていただければと思います。

●三村委員長

はい、分かりました。

ありがとうございました。

それでは、今説明していただいた二つの資料について、ご質問、意見がある方は挙手をお願いします。今挙手をされている先生が、何名かまだ挙手が残っていますけど、一旦それを降ろしていただいて、それから新たに挙げていただければと思います。

どなたかご質問はありますでしょうか。

●山田委員

質問させてください。

まず大ざっぱに言いますと、我々が努力していろいろ報告書を作ったけども、物すごく生臭い話しますと、今自民党の総裁選挙をやっていて四人の候補が出ているけど、メディアの人がいろいろ質問していますね、これに対して。ところが、ほとんど地球温暖化だとか、気候変動に対してどう考えるかなんていうのはほとんどメディアのほうからも質問しないし、政治家も話さないということで、どうもまだその辺のレベルにまで情報が定着しない、していないような気がして、じゃあどうすればいいんだろうかというのが一つの悩みというか、一つの質問ですね。

それから2番目は今までやってきた中で、適応策、さっきの今の説明でも、台風がこうなります、こうなりますとか、それで、高潮はこうなりますというのをやって、あるいは流域治水、私なんかもうこれ、提言したうちの一人ですけども、実はもうかなり動いちゃっていて、それよりももっと適応策として、例えば、経済的な観点からいうと、こういう適応策のやり方をしたほうがもっと効率がいいよとかいうようなことを知りたいのだけど、なかなかその論文のリストが出てこないというようなことがあります。これは2番目ですね。

3番目は、今までの中で、統計学とかデータサイエンス側からの論文の紹介とか、あるいは分析の紹介というのが少ないような気がしていて、それを、もうちょっと我々も積極的に取り込まなきゃいけないかなと思っています。

4つ目が、今この新型コロナに対して幾つかの妙な面白い動きが出ていて、例えば、今ウッドショックなんて、材木の値段が上がっているのですよね。つまり、全く違った原因から違った結果が出てくるということで、つまり気候変動とパンデミックとか、気候変動と経済変動とがこう一緒になっちゃって、それで妙なことが起き始めることの研究とか、そういうのもあることはあるのですけど、紹介例が少ないなと思っています。

それと似ていますけど、鬼頭さんなんかが言われた複合災害に対して、自然災害としての複合というのもありますけども、さっき言いました新型コロナみたいなパンデミックとこういう気候変動との複合というような意味の、何というかな、研究とか、そういうものへの、どう考えてやっていけばいいのかと、あるいはリスク管理としてどうあればいいのかというようなところの適応策というのがちょっと抜けているのかなと思っています。

四つぐらい言いましたので、もし必要なら後でゆっくりと事務局のほうに言いたいことを文章でお渡しするということも可能だと思っております。

以上です。

●三村委員長

はい、どうもありがとうございました。

また改めて事務局のほうからご質問させていただくかもしれません。よろしくお願いします。

●山田委員

はい、ありがとうございました。

●三村委員長

木所先生、手が挙がっていますか。

松井先生、お願いします。

●松井委員

よろしくお願いいたします。

私から、まず初めに、この骨子案の概要のスライドを見ていて、ちょっと事務局の方に教えていただきたいのですけど、この健康分野の影響適応策のところで、気候変動が、ちょっと下にお願いします。はい、そこですね。気候変動影響に対する知見収集というのが適応策として上がっているようですけども、これ、知見収集はそれでよろしいのかというのが。適応策を考える上での事前段階の準備なのかなと私は理解していたのですけども、これを出してしまってよろしいのかなというのが、一つありました。

あと、適応、2番目としては、適応の効果の検証という部分、適応策を出したまではいいですけども、その効果の検証という部分はどれほど突っ込んだ、その踏み込みが今後なされていくのかというのを、教えていただきたいと思いました。

以上です。

●三村委員長

はい、分かりました。

意見をいただいた後で、環境省のほうにお願いをしたいと思います。

じゃあ、住先生、お願いします。

●住委員

最後の台風の件ですけど、これはある種の研究計画と考えるなら分かりやすいのですが、行政機関としての適応室がどうしてこういうことをやったか、そして、今後これをどういうふうに続けていくのかというところが、非常に分かりにくいので、どういう位置づけでこれを続けていこうとしているか、その辺のことを少し説明していただければと思います。

●三村委員長

はい、それでは、時間の関係もあるので、先ほどの松井先生と住先生の質問に対して、環境省のほうからお答えをお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

●気候変動適応室室長補佐

ありがとうございます。

松井先生のご質問について、回答させていただきます。

まず、健康分野で、これの知見収集というのが適応策になるのかということですけども、やはりこの分野、分野におきまして、やっぱりこう、まだまだこの確信度が低い分野というのもございまして、まさしく今先生がご指摘のようなところにつきましては、この感染症の発生リスクと気候変動の影響というのがまだ密接に分かっていないところというのもありますので、こちらにつきまして引き続き、この知見の収集というのを進めていきたいというように考えているおり、このように記載させていただいております。

また、あと効果の検証というところですが、資料の真ん中の「進捗管理」というところがありますが、こちらにKPIという、単年度での施策の進展状況というのを評価するKPIというのを設定いたしまして、こちらで施策の効果検証というのをやっていこうということを考えているところでございます。

あと、国や地方、国民レベルで、計画全体を、進捗状況を測れるような指標、具体的に設定ができていないですが、そういった指標を設定して、適応の進捗というのを測っていきたいというふうに考えているところでございます。

●気候変動適応室室長補佐

台風のご質問にお答えをさせていただければと思います。

台風のこの事業につきましては、昨年度から始まっておりますが、その前の年度に予算要求させていただいて事業化したものでございまして、そのときの状況としましては、台風が幾つも上陸しているとか、大きな水害が起きているということで、災害が激甚化しているのではないか、それが気候変動によるものではないかと言われていました。また、それに対してどういう影響が考えられるのかという知見がなかなか分かりやすい形で出ていないというのが問題意識としてございました。

このときに、事業を企画するに当たって、実際に起こった台風を例に、将来どうなるのかということを調査しようというふうにした一つの目的としては、関東地域、また台風21号においては関西地域で、実際にその台風を経験された方々が、これがもっとこんなふうになるということのイメージがつきやすいようにということを、考慮したというところがございます。

最終的にこの成果をどうやって使っていくかということですが、今は最新のシミュレーションなどをお借りしまして、科学的な知見としてご紹介させていただいていますが、できれば将来、こういったものをしっかりと加工して、実際の計画にどう反映していくのかとか、実際にどういうふうな対策が必要なのかという検討に使っていただける形を目指していけたらと考えているところでございます。

まだ始まったばかりということで、今回は令和元年台風19号のご紹介をさせていただきましたが、今年は平成30年台風21号をやっておりますし、また19号をもう少し精査していくという段階にあります。今後それをどうやって適応策につなげていくかという検討も並行して続けていきたいと思っています。

以上でございます。

●三村委員長

はい、どうもありがとうございました。

よろしいでしょうか。

それでは、若干時間も過ぎていますので。お二人、手が挙がっていますね。じゃあ、お二人の方に発言をしていただいて、最後のご発言にしたいと思います。高村先生と安岡先生。

じゃあ、高村先生からお願いします。

●高村委員

ありがとうございます。2点でございます。

事務局から適応計画の改定骨子案を出していただいて、どうもありがとうございます。

一つは、これ2点、実は共通した問題意識ですけれども、その適応計画の中で、今まさにその日本が何をこの強靭性を増すために、あるいはよりよい適応のために必要、何をしなければいけないのかという具体的な課題なり、障壁というものが何なのかということを共有する必要があるのではないかと思っております。

先ほど、影響評価のところでは、先ほど出していただいたと思いますけれども、幾つか、その前半の議論でご意見もあったと思うのですけど、ぜひお願いをしたいと思います。

例えば、今日、資料3、とってもいい分析といいましょうか、作業をして示していただいて、今お答えいただいたようにこれをうまくこう適応策に結びつけていきたいというお話でしたが、私など、側目で見ていますと、そういうやはり降雨や台風による災害というのがまさにその気候変動の影響の中でも、日本においては国民生活、経済活動に実に多大な影響を及ぼしている。ここは重点を置いてしっかりやはり適応策を取り組まないといけない課題ではないか思います。

もう既に、国交省さんをはじめ、取り組んでらっしゃるということは了解をしていますけれども、これ、地域も含めてそういう、いわゆる、さっきの話でいくと、マテリアリティのある課題が何なのかということをやはり適応計画の中にうまくやはり組み込むということが必要ではないかと思います。

2点目ですけれども、同じ問題意識ですが、やはり地域の実情に応じた気候変動とか、ここに書かれている基本戦略に全く異論はないですけれども、先ほど言いました、それを行うために今何が課題になっていて、何をしなきゃいけないのかということをやはり詰めることが必要だと思います。

先ほどの議論にもあった、地域でやはりこうした実情において気候変動適応策やっていくときに、例えば、リスク分析のツールが必要なのか、国として何をすることが必要なのか、地域に何をしてもらうことが必要なのか、この明確化が大変重要だと思っております。

もう一つ例を出すと、企業のリスク情報を、企業が気候変動リスク情報を分析して、気候変動リスクを分析していくときに、特に物理的リスクについて、日本特有の企業のリスク分析に十分な情報ないしはツールというものを期待されている声を聞きます。

例えば、こうしたところにどういうふうに応えていくのかといったような、同じことを何度も言っていますが、やはり何がこの戦略の中で今まさに取り組むべき課題なのかというのを、ぜひ掘り下げた議論ができればと思います。

以上です。

●三村委員長

どうもありがとうございました。

それでは、安岡先生、お願いします。

●安岡委員

はい、ありがとうございます。簡潔にしたいと思います。

骨子案の中で、基本戦略、どれも非常に重要だし、やらなきゃいけないと思います。6番目の開発途上国の適応能力の向上というのは、当然、適応能力を向上させるためには、発展途上国の影響評価もしていかなきゃいけないわけですけれど、先ほどの影響評価のところで海外というのがほとんど文献に関しても、先進国のものだけだったような気がします。発展途上国の影響評価をやるとすると、これ自身が非常に大きな課題になってくると思うのですね。それをこう適応策も絡めてやっぱりきちっとやっていくということは、かなり覚悟してやっていただいたほうがいいだろうというふうに思います。

私は、先ほどの影響評価もそうでしたし、今回の気候変動の適応策に関するものも、海外と一緒にやっていくのだというのは非常にいいと思いますので、そこの核となる部分だけは押さえるという方向で検討していただければなと思いました。

以上です。

●三村委員長

はい、どうもありがとうございました。

これからさらに議論すれば、もっといろんな論点で重要な話がどんどん出てくると思いますが、時間もちょっと若干過ぎておりますので、ここまでにさせていただきたいと思います。

今日は今年度の最初の気候変動影響評価等小委員会、開かせていただいて、2025年に向けた基本的な課題、それから現状認識に対する基本的な視点、そういうようなもので、非常に広範でしかも基本的で深いいろいろなご意見をいただいたと思います。

環境省のほうでは、今日のご意見を踏まえて、ぜひ2025年の評価に向けて、それから現在直ちに取り組むべき課題なども含めて、改めて整理をして、進めていただければというふうに思います。

また、小委員会の先生方のご意見を伺う機会が本年度中にもあると思いますので、その際にはより進んだ方向性を示していただいて、それに対してさらに議論をすると、そういう形で議論が進めばというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

私が司会をする本日の議事はここまでとさせていただきまして、事務局のほうにお返ししたいと思います。

どうもご協力ありがとうございました。

●気候変動適応室長

三村委員長、ありがとうございました。また、委員の皆様方、本日は活発なご議論をありがとうございました。

また、本日はWEB開催ということで、システム上、ご発言しにくかった部分もあろうかと存じます。そのほか、事務局に不手際があった場合はお詫びをいたします。

また、本日の議事録につきましては、事務局にて取りまとめ、委員の先生方にご確認をいただいた上で、環境省ホームページにて公開させていただく予定ですので、ご了承いただきますと幸いでございます。

また、次回の小委員会の会合の日程等につきましては、また改めて委員の皆様方にご連絡、ご相談をさせていただきます。

では、最後に、環境省地球環境局長の小野よりご挨拶を申し上げます。

●地球環境局長

環境省の地球環境局長、小野でございます。

三村委員長をはじめ、委員の先生方、大変お世話になっております。また、本日は非常に、次期5か年、2025年の取りまとめに向けた根本的な様々なご議論をいただきまして、ありがとうございます。

先ほど三村先生からございましたように、今日いただいた課題でありますとか、宿題、あるいはアドバイスを踏まえまして、事務局のほうでまとめまして、この今後5年間の作業計画というのをさらにブラッシュアップをさせていただきたいと思っております。

この機会を活用いたしまして、ちょっと昨今の情勢をご報告させていただきたいと思いますけれども、ご案内のとおり、昨年の10月に菅総理から2050年カーボンニュートラルの表明がございました。4月には46%削減、さらには50%の高みを目指すという表明がございました。

現在、これらを肉づけして根拠をしっかりつけるということで、地球温暖化対策計画あるいは長期戦略、それから政府の取組の政府の実行計画などについて、パブコメをしております。10月4日までですけれども、パブコメをしております。

これを来るCOP26に提出しようということで、今後新政権の下で、になりますけれども、閣議決定を見据えて説明をしたいと思っております。

また、本日ご報告したかと思いますけれども、適応計画についても同じスケジュールで作業を進めて、COP26におきましては緩和、それから適応、車の両輪として日本の取組をしっかりと発信していきたいと考えております。

いずれにしても、やはり気候変動の影響をしっかり把握するというのが全ての基礎になってまいりますので、2025年の次回の取りまとめに向けまして、引き続きお世話になりまして、いいものをまとめ、また、適応計画へと反映していきたいと考えております。

本日はどうもありがとうございました。また、引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

●気候変動適応室長

では、以上で、本日の小委員会を終了いたします。

委員の皆様、どうもありがとうございました。

午後 2時40分 閉会

追加コメント(チャット)

●古米委員

適応計画骨子案についてのコメントです。骨子なので記載されていないものと思いますが、適応計画の改訂においては、適応策には短期的なものと中長期的なものがあり、それを適切に組み合わせることの重要性を記載することが求められるものと思います。