気候変動影響評価等小委員会(第22回)議事録

日時

令和2年11月27日(金)15:00~16:14

場所

WEB会議システムにより開催

議事次第

1.開会

2.議事

(1)気候変動影響評価報告書(案)について

(2)今後の気候変動影響評価に向けた課題等について

(3)その他

   ①気候変動の影響観測・監視の推進に向けた検討チーム(報告)

   ②気候変動予測及び影響評価の連携推進に向けた検討チーム(報告)

議事録

                                       午後 3時00分 開会

○気候変動適応室長

定刻となりましたので、ただいまより、第22回中央環境審議会地球環境部会気候変動影響評価等小委員会を開催いたします。

本日の会議ですが、現在、委員総数32名のうち、過半数以上であります30名の委員にご出席いただいておりまして、定足数に達しておりますことをご報告いたします。

本日の小委員会は、新型コロナウイルスの感染の発生状況を踏まえ、感染拡大の防止の観点から、傍聴者なしのWEB会議システムによる開催となります。また本会議は環境省の公式YouTubeチャンネルよりライブ配信を行っています。資料及び議事録については、ホームページにて公開しています。

WEB会議での開催となり、委員の皆様にはご不便をおかけしますが、ご容赦のほどよろしくお願いします。何かご不明な点がありましたら事務局まで、画面の右下のチャット欄か、事前にお伝えしました電話番号までお知らせください。

初めに、資料の確認をします。画面上に、配布資料一覧を表示しますので、それに沿って確認します。

資料は、資料1-1~1-4、資料2-1、3-1、3-2、参考資料1-1、参考資料1-2となっています。

各資料については、委員の皆様には事前にお送りしていますので、お手元にご準備をお願いいたします。事前送付資料からの変更箇所については、その都度ご説明します。

それでは、議事に入ります。

議事中、委員長及び発言者以外は、基本的にマイクを「ミュート」に設定してください。

回線負荷を回避するため、ご発言時以外は、カメラの使用をお控えください。画面の下にあるカメラのアイコンをクリックし、カメラをOFF(ビデオ停止)にしてください。

ご発言される際は、画面右下にある吹き出しのアイコンをクリックし、チャット欄に「!」(感嘆符)を入力し、全員宛てにお送りください。住委員長が順番に指名いたしますので、指名後「カメラ」をオンにし、「ミュート」を解除した後、ご発言をお願いします。

ご発言の際は、最初にお名前をおっしゃっていただいてからお願いします。また、ご発言を終える際は、最後に「以上です」と付け加えていただければと思います。ご発言を終えましたら、マイクのアイコンをクリック(ミュート)にし、カメラのアイコンをクリック(ビデオ停止)にしてください。マイク、デバイスに物理的なミュートスイッチがある場合はON(発言可能)にしておいてください。

ご発言時以外に、ご質問、ご意見がある場合も、チャット欄を活用いただければと思います。

それでは、以降の議事進行は、住委員長にお願いします。よろしくお願いします。

○住委員長

皆さんこんにちは。お忙しい中、ご参加いただきましてありがとうございます。新型コロナも、ますます深刻になりつつあるような状況ですので、このようなWEB会議にしたいと思います。できる限り、いろんな人が参加できるので、こういう会議のよさもあると思います。今までの、今日は総まとめということで、新しい報告書ができましたので、それについてご討議をお願いしたいと思います。

できるだけ多くの人に発言をしていただきたいと思いますので、発言は簡潔にしていただければと思います。

それでは、議事に入りたいと思います。

本日の議題の一つ目は、気候変動影響評価報告書(案)についてです。

それでは、環境省よりご説明をお願いします。

○気候変動適応室室長補佐

本日、逐一提示はいたしませんが、報告書の総説の(案)を資料1-1としてお配りしております。そこについて、まず、ご説明をさせていただきます。

本報告書(案)については、平成30年12月21日に、環境大臣から中央環境審議会会長に対しなされた諮問を受けて、平成31年3月に開催された第19回の小委員会から今回まで約2年弱、4回にわたりご検討をいただいてきました。

今回の小委員会において、報告書(案)について、中央環境審議会から環境省への答申案としての最終のご承認をいただきたいと考えております。

資料1-2に、前回の小委員会でいただいたご意見をまとめております。小委員会と、その後にメール等でいただいたご意見を踏まえて報告書の修正を一度行いまして、その後、委員の皆様にはメールにてご報告をさせていただいております。その上で、さらに追加でご意見をいただいていますので、そのご意見については、ここにお示ししているように追加という形で一覧表に記載をしております。

追加でいただいたご意見は、記載内容に関する技術的なものですとか、表現の明確化に関するご意見でした。それに対しては、右の欄の「対応」にあるとおり、対応させていただいております。

そのほかに、この表には記載をしておりませんが、事務局(環境省)において誤字・脱字などの修正や、文章の意味の明確化、用語の統一などの修正も行っております。

次に、資料1-3に移りたいと思います。

委員の皆様のご意見を踏まえて修正した報告書(案)について、11月2日から13日までの2週間、パブリックコメントを実施いたしました。その結果を資料1-3にまとめております。

提出された意見は、3件ありました。一つ目の意見は、二酸化炭素が気候変動や温暖化の原因とは言えないというものでした。これについては、本報告書は気候変動の原因について解明するものではないため、報告書の修正はしないことといたしますが、IPCCでは、人為起源の温室効果ガスなしで20世紀後半の気温上昇を説明することは困難であることが記述されていることも、併せて回答をさせていただく予定です。

二つ目の意見は、世界的な気温上昇が気候変動の主因となっているという基本認識に立っているが、世界的には気温が上昇している地域も低下している地域もあり、気温が低下していくという意見を重視せずに、一方的な報告内容となっているというものです。これに関しては、「本報告書は、日本国内における気候変動影響の評価を行うもので、日本国内においては年の平均気温が有意に上昇している」との回答を予定しております。

三つ目の意見ですけれども、これは「気候変動による影響を産業ごとにまとめるのは有意義だけれども、温室効果ガスの削減をすることで産業構造が激変することによる影響についても評価すべき」というものでした。このご意見については、気候変動影響評価の範疇の外ですので、報告書の修正はせず、今後の参考とさせていただくこととします。

パブリックコメントの実施結果を踏まえた報告書の修正はありません。

パブリックコメントに関するご報告は以上です。

続いて資料1-4でお示ししています今後のスケジュールについて、ご説明をいたします。

今回の影響評価につきましては、先ほどもご説明したとおり、平成30年に環境大臣から中央環境審議会会長に対して諮問がなされていまして、その審議が地球環境部会に付議されています。

まず、本日の小委員会、この場合で報告書(案)について最終のご承認をいただき、答申の案として報告書の案を確定させていただきたいと思います。あわせて、三村地球部会長のご承認をいただきまして、地球部会長から中環審会長への報告を文書で行った後、中環審会長から環境大臣への答申という形で報告書(案)をいただくことになります。

答申を踏まえまして、環境大臣が報告書の(案)を作成し、法律に基づく各省協議等の所定の手続を行った上で、年内をめどに報告書を公表する予定となっております。

事務局からは、以上です。

○住委員長

ありがとうございました。それでは、ただいまの説明に対する質問やご意見をお願いしたいと思います。挙手でお知らせいただければと思いますが。どうでしょうか。相当いろんなコメントは、事務局のほうで対応してお返ししてあると思いますが、最終的なことに関して何かございましたら。

一般的なコメントに対する答えというのは、個別にですか。

○気候変動適応室室長補佐

パブリックコメントですか。はい。パブリックコメントにつきましては、こういったご意見をいただいて、こういった回答をいたしますという結果を公表することとしています。

○住委員長

回答が、少し、遠慮しているような気がします。もう少し、考えていることをはっきりと言ったほうがよいと思いますが。

じゃあ、鬼頭委員、お願いします。

○鬼頭委員

これは最終ですので、細かいことになりますけど、14ページのところに温室効果ガス濃度の状況が書かれておりますが、ちょうど今週の月曜日に気象庁から2019年の世界の平均の二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素の濃度の報告ですね。これはWMOの温室効果ガス年報というので公表されたという発表がありましたので、そこのところ、2019年の値に修正していただければと思います。そうですね。このページの二酸化炭素2018年のところ、407.8とかがあるその辺りの数字ですね。最新のものにしていただけるでしょうか。

それが1点と、もう一点細かいことです。34ページの脚注に、これは19の脚注ということで、事業概要については82、これは80ページに修正か。じゃあいいのかな。分かりました。前回82だったのが、80に修正されたわけですね。こちらは結構です。じゃあ、最初のところだけよろしくお願いします。

以上です。

○住委員長

何か。

○気候変動適応室室長補佐

第2章のところが、気象庁、文科省によるレポートから引用していますので、この部分だけのデータの更新というのが難しい可能性があるかなと考えておりまして、現時点では、現在の状況というのは国が出しているレポートの最新のものとしていますので、この値とさせていただければと思いますが、今後は、もちろん最新の値ということで更新していければと思っております。

○気候変動適応室長

先ほどご説明したとおり、気象庁、文科省のレポートにも関係しますので、両省庁にご意見をいただきたいと思います。いずれにしましても、最新のデータを随時伝えていくことは非常に重要なことだと思いますので、この報告書に入れられるかどうかにかかわらず、最新のデータを随時更新し、普及啓発に努めていきたいと思います。

○鬼頭委員

委員としては、ぜひ新しいほうに数字を入れていただければと思います。

以上です。

○気候変動適応室室長補佐

ありがとうございます。

○住委員長

次は高藪委員。

○高藪委員

14ページのCO2の濃度の状況のところなんですが、そうか、気象庁が作ったんだったらしょうがないかもしれませんが、なぜGOSATのデータが出ていないのかなというのが気になりました。私、手元にGOSATのデータを持っていますけれども、これは全球平均でありますが、非常にきれいな季節変動を示していますし、2020年、場合によってはcovidが見えているかなというようなデータですので、もし、せっかく環境省さんが関係しているのであれば、ご考慮いただけたらなと思いました。

それから、あと、台風のところなんですが、33ページの台風の観測結果なんですけれども、つい最近、気象研でも報道発表したんですけれども、近年の台風が日本付近で速度が遅くなっているという論文をYamaguchi et alで出していますので、それもインプットしていただければなと思いました。

あと、34ページなんですけれども、疑似温暖化実験のところですね。非温暖化実験の結果については、近々、Kawase et al(2020)で論文発表いたしますので、もしも可能であればインプットしていただければなと思いました。

以上です。

○住委員長

はい、どうも。どこかで切らざるを得ないとは思いますけども、可能ならば、それは考えていただければと思います。

では、続きまして、高橋委員。

○高橋委員

よろしくお願いします。1点、確認の質問をさせてください。報告書をいただいているものの総説のほうのページ3なんですけども、この本報告書のポイントということで付けておられる点ですね。これ、公表されて報道発表とかがあった場合には、この報告書のポイントはやはり注目されて、よく扱われると思うんですが、この中の下から6行目のところが、重大性、緊急性、確信度のいずれも高いと評価された項目となっています。で、この黒いひし形がついているのが、次のページに新たに特に重大な影響が求められる云々ということで、「新たに」というふうについて項目立てされていると思います。また、その次も、新たに対策の緊急性が高いというふうに書かれています。

で、この一つ目の「重大性、緊急性、確信度の」というページ3の下から6行目、7行目のところですね。これは、この点も、この三つがいずれも高いと評価された項目を網羅的に扱っているわけではなくて、下に少し付記があるように、確信度が新たに向上した項目のみを結果として書いているというのが私の理解なんですけども、その理解で正しかったでしょうか。

もしそうだとすると、やはり、本文のほうまで見れば、重大性、緊急性、確信度が高いものがここに書かれているもの以外にも、従来から指摘されたものがあるということにちゃんと気づけると思うんですが、間違ってここだけピックアップされてしまう、変な引用のされ方をしてしまうことがないようにするために、もし、「新たに」をつけるのが特に問題ないようであれば、ほかのに並べてつけてもいいような気がするんですけども、その点について確認させてください。

○住委員長

はい。どうですか。「新たに」をつけるか。

○気候変動適応室室長補佐

今回、この最初の重大性、緊急性、確信度のいずれも高いと評価された項目は、これだけではないんですけども、この中で、今回確信度が向上した項目を抜粋して記載をしておりまして、それをこの括弧書きで一番最初に分かるように記載をしているところです。これ以外に、より明確な注意書きが必要というご意見でしたでしょうか。

○高橋委員

必要でないときに考えますかという質問です。それでよければ結構かと思いますけども、私自身は、その中の括弧書きの意味をもし慌てて読んで、見逃してしまった場合には、多分、ここに挙げられた項目だけ新聞に載せるだろうなというふうに思いましたもので、一応、確認させていただきたいと思いました。特に反対はありません。このままでいくのであれば、それでも結構です。

○気候変動適応室室長補佐

ありがとうございます。では、もう少し分かりやすいようにタイトルに入れるなど、そういうことも検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。

○住委員長

そのほか。あとは。そのほかよろしいでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、これで影響評価報告書(案)を確定したいと思いますが、先ほど2件出てきましたように、引用を増やすかということと、値を変えるか。それは、この報告書をどの時点でクローズするかというのにかかっていますので、例えば、エンドレスにやるわけにいかないので、ある時期でクローズするということになると思いますので、その時点では、それが出ていた、それを取り入れるかどうかというのは、事務局と協議しながら決めていきたいと思います。文章的にはそういうのを入れるだけですので、もし新しい観測データがあったり、そういうのを入れることがこの報告のスケジュールに合えばそれは考えてみたいと思うんですけど、その辺はどうでしょうか。

○気候変動適応室室長補佐

新たな文献の追加というのは、なかなか現時点では厳しいかなと思うんですけれども、そのデータの更新などに関しては、例えば、今回の小委員会でご承認をいただいた後に、また各省と相談をさせていただいて、環境省の報告書として出すときに、どうするかというのを検討させていただければと思います。いかがでしょうか。

○住委員長

今の事務局の対応でどうでしょうか。

○浅野委員

それでよろしいんじゃないでしょうか。

○住委員長

それでは、どこかでクローズしなきゃならないのは、こういう報告書はあれですので、それでは事務局の対応で、今のもので確定させていただいたということで、それで総意としたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(異議なし)

○住委員長

よろしいですか。ありがとうございます。じゃあ、そのような形で進まさせていただきたいと思います。

○気候変動適応室室長補佐

ありがとうございました。本日、小委員会においてご承認をいただいたということで、三村部会長のご了承もいただきまして、中央環境審議会長への報告をさせていただきたいと思います。その後、中央環境審議会長から環境大臣への答申をいただくことになります。その後、法律に基づく所要の手続を行った後に、報告書を公表する予定としております。また、その際には、委員の皆様にもお知らせができればと思っております。ありがとうございます。

○住委員長

次の議題は、今後の気候変動影響評価に向けた課題等についてです。環境省で説明をお願いします。

○気候変動適応室室長補佐

今後の気候変動影響評価に向けた課題について、ご説明をいたします。資料2-1をご覧いただければと思います。

今回の報告書が公表された後、5年後に次の影響評価が予定されています。それに向けてこれまでの小委員会でご意見をいただいた今後の課題を資料2-1にまとめております。

この課題にどう対応していくかという具体の議論は来年度以降になりますが、本日は、来年度以降の議論のたたき台として資料2-1をお示しさせていただき、これに関してご意見をいただければと考えております。

前回、9月の小委員会でもご意見をいただきましたので、それを踏まえて追加をした課題がございます。その部分には、表の中で下線を引いております。

また、どのご意見に対応する追加であるのか、意見の何番というふうに、このように括弧書きで記載をしています。意見の番号については、資料1-2に対応させております。

まず、課題としては、大きく気候変動影響評価に関する課題と、その他の課題の二つに分けています。気候変動影響評価に関する課題としては、まずは文献の収集に関するもの。これは文献の拡充が必要な分野・項目や、更なる研究・調査が必要な事項について記載をしています。

次に、評価方法に関する課題です。重大性評価のあり方に関しては、重大性の評価段階の見直しや、影響の大きさ・変化の速さを表現できるような指標の開発、誰にとって重大な影響であるかの明確化等を課題としております。

社会・経済条件の評価については、現在は文献が限定的で評価できていないが、社会・経済条件を考慮した将来予測を課題としております。

分野間の影響の連鎖については、今回の報告書で初めて取り上げていますが、今後、メカニズムの把握と分析、連鎖する影響の評価のあり方の検討の必要性について、小委員会でご指摘をいただいております。

緩和と適応の効果を踏まえた影響評価に関しては、「適応策の効果が出るまで時間がかかるため、影響評価と必ずしもリンクできない可能性があることに留意すべき」とのご指摘もいただいていますが、今後の適応策の効果も含めた影響評価が課題と考えております。そのためには、適応策に関する知見の充実が必要と考えております。

緊急性の評価の考え方については、影響の緊急性は低いが、対策の緊急性が高い場合などの評価の仕方、また、誰にとって緊急な影響であるかの明確化の必要性についてご指摘をいただいております。また、地理的スケールを考慮した評価方法の必要性についてもご指摘をいただいております。

そのほか、温暖化により生じる降水強度の変化ですとか、温暖化以外の要因による気温上昇などについて、明確な説明が必要とのご指摘もいただいておりまして、これに関しては次回の報告書で明確な説明の仕方を検討したいと考えております。

次に、影響評価以外の課題についてです。まず、報告書における適応策の扱いについて。「影響評価では、主に気候変動による影響を整理しているが、今後、分野別の適応策の普及状況を考慮して、適応策の整理も併せて行うかについて検討が必要」とのご意見をいただいております。

適応策に関しては、その効果等の検証をどう行うかが課題と考えております。計画の意思決定には、費用対効果に関する知見の充実が必要であること。その際、特に自然生態系などにおいては、金銭的価値に換算できないものがあることに注意が必要であること。緩和策とのトレードオフ、シナジーを見込んだ上での適応策の効果の検証が必要であること。影響評価と適応策について、ワーキンググループ等でレビューを行い、公表することの必要性などについてご意見をいただいております。

資料に関するご説明は以上です。

○住委員長

ありがとうございました。それでは、うまくまとめていただいたんですが、これは非常に、今後どうやっていくかは重要なことですので、ご意見、もしくはご質問ございましたら、ご質問をお願いしたいと思います。誰か、ご意見ございますでしょうか。何もないですか。

では、中北委員。

○中北委員

ありがとうございます。1点だけなんですけれども、また5年後とかになったときの緩和の見込みというのが、これからすごく変わるような年代に入っていくと思うんですけれども、少し影響評価報告書のところの前半のところで、緩和の見込みを少し入れておいていただいたほうがいいと思うんですけども、いかがでしょうか。

趣旨は、日本も含めて、いよいよ本当に緩和に関して5年、10年たつと・・・みたいなように、世の中が変わってきた中で、緩和の見込みがすごく変わるとしたときに、その見込みも、変わった見込みについても、そのものの報告書という意味じゃないんですけれども、適応を語る上において必要なバックグラウンドに関しては掲載していただくのが大事かなと思いますので、すみません、ご配慮いただけたらと思います。

以上です。

○住委員長

ありがとう。そういう方向に世の中が変わっていけば、それは当然、そういうことが記述されると思います。

○中北委員

緩和の見込みということですよ。適応だけじゃなくてですね。

○住委員長

だから、緩和がどのくらい進展するかということによって、適応もどういうふうにするか変わりますからね。それは当然記述されると思います。

○中北委員

よろしくお願いします。

○住委員長

三村委員。

○三村委員

いいですか。どうもありがとうございます。課題は、すごくうまくまとめていただいていると思うんですが、一つ情報と、一つ意見を言いたいと思うんですが。

2ページ目の一番最後のところに、適応策の評価をどういうふうにしたらいいか、あるいは適応策の効果をどう評価したらいいかというようなことが書いてあります。それで、今、実は環境省の環境推進費のS-18という研究が今年の4月からスタートしていて、それは影響予測と同時に、適応策の効果の評価というのをやることになっているので、次のこの影響評価報告書に向けては、その研究でうまく成果がまとまれば、全部の分野では難しいかもしれませんけども、幾つかの分野では、適応策をやるとすると、これぐらいの影響を抑制する効果があるというようなことが出せるんじゃないかと、そういうことを目標にして、今、取り組み始めているというのが一つの情報です。

それから、もう一つ、今の緩和の取組状況はどうかという話とか、それから適応策そのものの整理や状況の報告も含めたらいいんじゃないかという意見で、全くもっともだと思うんですけど、この報告書のタイトルが、「気候変動影響評価報告書」となっているので、その中で、我々がやる仕事がどの範囲までをカバーすべきかということから議論しないと、どんどんどんどん話題が広くなっていくと思います。で、全体を取り上げていいんだということになれば、大きな、もっと幅広い分野を含めた報告書になると思うんですけれども、来年、議論するときには、まず、その影響評価報告書では、どういう目的に向かって、どういう範囲で整理をしていくかというようなところから議論をする必要があるのかなというのを、今の議論を聞いていて感じました。これも意見です。

以上です。

○住委員長

ありがとうございました。

それでは、高橋委員。

○高橋委員

今回公表する報告書については、説明が行われて、意見が出て、それに対する対応も検討されているということですけども、この報告書が出た後に、次に向けた課題、次にこの報告書に記載されるところとかについて、専門家、作る側ではなくて使う側のほうから意見出ししてもらうような機会というのは、今後持たれていく予定があるのでしょうか。で、もしあるとすれば、それはタイミング的には、報告書を出したすぐ後ぐらいになるのか、それとも先々になるのかということについて伺いたいと思いました。

以上です。

○気候変動適応室室長補佐

ありがとうございます。この報告書の公表を踏まえて、本年度中に報告書の内容を解説するようなシンポジウムを開催したいと考えております。その中で、恐らく開催方式はWEBにはなるんですけれども、なるべく双方向なやりとりができるようにしたいと思っていまして、例えば今後、報告書の中に入れてほしい情報だとか、こういった情報が欲しいといったようなご意見もいただくような機会を設けて、次回の報告書の作成に生かしていきたいと考えております。

○住委員長

ありがとうございます。そのほか、よろしいですか。

じゃあ、僕のほうから1点だけですが、この報告書のスタンスは、待ちのスタンスですよね。要するにいろんな、じゃあ、みんながいろんな研究成果をやってくれた分をまとめるという、受けている立場ですね。だけど、ここの課題とかなんとかと考えると、さっき三村さんが言われたように、例えば、ある意味で、この課題に関してはこの手だてをしているとか、そういう戦略というのを立てないと、こんな問題があるよ、皆さん頑張ってねと言ってただ待っているだけだったら、なかなか進まないような気がするので。

結局、こういうトピックがありますと。これをやってくれたらお金は出しますからと、何か能動的に、そういう研究者を組織して働かせるようなふうにしていかない限り、だって、あればいいけどやるのは嫌だもんというふうになったら、なかなか思うようにいかないと思いますが、その辺はどうでしょう。

○気候変動適応室長

ご指摘のとおり、適応の推進に当たっては、必要な科学的知見の収集にとどまらず、つくり上げていくということも非常に重要だというふうに思います。

今の、先ほど三村委員からS-18のお話をしていただきましたけれども、環境研究総合推進費の中では、行政ニーズに応じた研究を推進していおり、この気候変動適応の分野についても、行政ニーズを示した上で、協力いただいている研究者の方にお力添えをいただき、研究を進めています。その成果も、この報告書の中にも随時反映しており、今後とも進めていきたいと考えています。

○住委員長

野尻委員。

○野尻委員

それでは、さっきの三村先生のお話を受けて一言言おうかなと思ったんですが、この報告書は、この我々の地球温暖化影響評価ということで、必ずしも適応策の評価だったり、対策の評価ではないという。それを踏まえて、ただしその中で、どの辺までできるかなと考えたんですけれども、恐らく、適応の限界というのは、影響をもって評価するのではないかなというふうに思っています。

ということで、もう一歩だけ踏み込むとしたら、この領域、この分野に関してはこれだけの影響が出るから、もうこれは適応ではどうにもなりませんよと。そういったメッセージは、次の報告書でもし枠組み、マンデートとかが変わらなくても踏み込めるのかなというふうに思っております。ですから、もう事例としてサンゴなどは2度の温度上昇でも、もう後戻りできない状況になるんですみたいなことを、今回も既に書いてはいるわけなので、そういった適応の限界というところを少し、次は踏み込めるのではないかなというふうに思っています。

あと、せっかく皆さんがいるところで、私、時々発言していることをもう一度繰り返させていただくと、私も授業で扱ったりする、大学の講義などでその緩和策、緩和策というところでいつも困っております。特に、私の講義は医学部の保健学科の学生も聞いているので、緩和というのは全然別の言葉なんですが、パリエイトという英語で緩和医療を扱いまして、今は検索をするとそれのほうが多い。パリエイトという意味は、一時しのぎなんですよね。だから、本質的対策をしないけれども何とかするというのがパリエイト、緩和医療の考え方なので、もう世の中の大勢としてこっちのほうの言葉が普通の人に一般化しているこの現況においては、我々だけ意地を張って、最初に決めた緩和という言葉を使い続けることに、私はもう物すごく抵抗感を感じておりますので、ぜひ、どこかで気持ちよく緩和という言葉を使うのはやめて、温室効果ガス対策というふうに、すごいすっきりした言葉に変えていただければなというのをいつも思っているので、時々発言させていただいています。

以上です。

○住委員長

ありがとうございます。

それは、役所的な問題みたいな感じがしますけど、気候変動と同じで、気候変動とかああいうのもどこかの段階で決めてしまうと言葉が残っちゃうんです、役所の世界では。

○気候変動適応室長

国際的には、ミティゲーションとアダプテーションといった単語が使われており、これらを日本語に訳して「緩和」と「適応」が使われているのかと思います。

ただ、先生がご指摘のとおり、緩和といっても色々な分野・文脈で使わており、各々で意味やとらえられ方が異なるというのもそのとおりだと思います。どう伝えていくのか、今後の課題と考えたいと思います。

ご指摘ありがとうございます。

○野尻委員

一言だけなんですが、辞書的には軽減緩和というふうに、前に軽減をつけている。軽減対策ですね、そういうふうに私の辞書には書いてあるので、軽減対策だと随分いいと思います。

以上です。

○住委員長

ありがとうございます。

では、浅野委員。

○浅野委員

先ほどの三村先生のお話と、ただ今のやり取りを聞きながら思ったことですが、実は環境省が適応政策の関してやっておられる仕事を拝見しておりますと、結構いろんなことがそれぞれに進行しているようです。この小委員会では、ちょうど今、気候変動影響の検討を行い、報告書をまとめているのですが、次には、この報告書を受けて今度は新たな国の適応の計画がつくられることになるわけです。さらにこれまでの適応計画がどこまで進展したのかについて、チェックをするためのPDCAサイクルをどのように回せばよいのかについての検討も、既に準備が始まっております。

これらは、それぞれが相互に深く関係をしているんですが、全体がどういう構造で進むようになっているのだということをもう一度環境省でしっかり整理をされて、それをそれぞれの仕事をするところに提示をされることが特に必要だろうと思います。

今のところ分かっているのは、この報告書が次の計画に反映されるであろうということは法律上もはっきりしていまして、その意味ではこの報告書づくり、非常に重要な役割を担っているわけですが、もう既にできている計画がどこまで進んで、それをどのように改めたらいいのかということが、次の計画づくりの上では非常に重要になりますので、先ほど言いましたように、PDCAサイクルの検討というようなところでも、この報告書は大変大きな意味を持つと考えています。

ですから、それぞれの役割を持った仕事が進んでいるということを、より広くみんなが共有することによって、議論が混乱しないように、無駄のないようにという作業が多分できるんだろうと思います。さらにまた、三村先生のS18は最初から大変期待をしておりますので、その成果は今後のそれぞれの検討作業にあたって生かされていくだろうと思っています。

それから、さっきの「緩和」と「適応」の用語についてのお話は、実は国会で適応の法律をつくるときに質問されて、私も説明に苦労したことがあるということだけ、ちょっと余計ですが、申し上げておきます。

○住委員長

ありがとうございました。

では、続いて磯部委員。

○磯部委員

ありがとうございます。適応のところなんですけども、これ、国のレポートということなので、適応法が成立して、それの施策が、5年後になると始まっている部分もあるのだと思います。例えば、沿岸域の関係で海面上昇とか、あるいは高潮が高くなるというようなことについて、行政的にも適応が始まるというようなこともあると思うので、少なくとも実際に進んでいる適応の施策については、何らかの形で入れないと、ただ影響が起こりますと書いておいても間の抜けた感じになるのかなという気がしましたので、そんなところも課題として入れてはどうかと思います。

以上です。

○住委員長

ありがとうございます。

ターゲットの影響評価と、どういうマンデートにするかというところを再度考えていただくということだと思いますが、そのほか、ご意見ございますでしょうか。

○安岡委員

安岡ですけども、報告書、非常によくまとまっていると思います。今後に向けてですけれど、空間的な境界条件というのは一度整理をしたほうがいいのではないかなという気がしました。

影響評価も、日本で今起きていないけど海外で起きたもの、その影響がどうやって日本に二次的な影響を及ぼすか、というようなことがこれから問題として起きるわけです。それから日本で起きた影響が海外に及ぼす影響というのもあり得るわけで、それは必ずしも日本に関係する論文だけではフォローできない部分があるのではないかなと思います。

特に、今後適応策になった場合に、適応策を日本全体の中でどう最適化していくかというような話は、空間的な条件になります。極端な話、ある作物はいろんなところ、日本中が影響を受けるけれども、あるところは諦めてほかのところでやったほうが日本全体として効率的になるというような話があるわけで、これは三村先生にも推進費の委員会でも申し上げましたけれど、やはり空間的な条件を考えた上で全体を見るという作業を、どこかで一度やっておいたほうがよいのではないかなという気がしました。

以上です。

○住委員長

ありがとうございます。

そのほか、ご意見ある方は声を上げていただければ。こちら見落とすことがあるかもしれませんので。よろしいですか。

では、深見委員。

○深見委員

土木研究所の深見です。多分1年ぐらい前のワーキングで一度発言させてもらっているのですが、様々な適応策の検討の基礎となっている気候変動予測について、いわゆるRCP2.8とか、RCP8.5とか、複数シナリオにより結果的に大きなばらつきが残ったままの状況です。しかし、これからの5年後ということになってくると、CO2や実際の気候変動の実績のモニタリングデータもそれなりに積み重なっていくと思いますので、それを踏まえて、気候変動の見通しは結局どのシナリオに行きそうなのかというあたりを、そろそろ示していくということも必要か、と思います。以上です。

○住委員長

ありがとうございます。

では、白戸委員。

○白戸委員

先ほど、安岡先生から海外で起きた影響が国内に影響を及ぼすというようなお話があったので、農林水産業のワーキンググループ、私が座長をしておりますけども、そこではいろんな作目ごとに影響を見ていますが、今回から世界の食料需給というような名前で、日本は食料輸入大国ですので、海外での、世界中の産地で、いろんな場所で栽培されている作物がどういう影響を受けるかというのを新たに加えることになったという経緯がありました。

なので、もしかしたら、そのようなことがこれからもっと増えていくということなのかなと思いましたが、既に農林水産業でそういうのが始まっているので、お伝えしておこうと思いました。

以上です。

○住委員長

ありがとうございます。日本は、伝統的にドメスティック志向が役所はあって、ほとんどそういう国際グローバルの中に日本のことを入れるというのをしない、そういう主義が非常に多いと思いますが、これからの時代はそうでもないので、今後とも考えてやっていただければと思います。

そのほか、何かおっしゃりたい方ございましたら。

○松井委員

森林総研の松井ですけれども、よろしくお願いいたします。

1件、文献の調査について思ったんですけれども、それこそグローバルな影響評価等について講評されている文献も多々あるんですけれども、それらについては当然グローバルですから日本も含まれるんですが、それについての特定の章みたいなものは、今までのところないわけですよね。それは、何か今後について、もしかしたらグローバルな研究ではこうだという部分も一章ぐらい設けたほうがいいのかなという気もしたりしておりました。

以上になります。

○気候変動適応室室長補佐

ありがとうございます。現在、国際的な規模での影響という項目を特別に設けているわけではないんですけれども、例えば各分野における影響に関して、日本では確認されていないが海外ではこういった影響も指摘されているとか、海外の文献も参考にそういった記述をしている部分もあります。海外について見られる影響は、今後も日本においても見られる可能性があるということですので、そのような書き方をさせていただいているんですけれども、そういった知見の充実というのも図っていけるとよいのかなと思いました。ありがとうございます。

○住委員長

そのほか。よろしいですか。何か、意見のある方、発声していただければ。

では、高橋委員。

○高橋委員

すみません、もう一点気づいた点がありました。今回、これをつくって見ていく中で、気象庁、文科省のほうでつくられている気候の観測と予測のほうとの足並みそろえの話があったかと思います。これまでそれらは切り分けた形でつくられてきたわけですけども、今後、さらに5年、あるいは10年というふうに繰り返す中では、そこが一つのつながったレポートの形で省庁連携でつくっていくというような形の議論も行われていく余地があるのだろうか、どうだろうというかというところについて、ご意見をお伺いしたいと思います。あるいは、それについて課題として含めていただきたいなというふうに考えました。

○住委員長

どうですか、それは。

○気候変動適応室長

この影響評価報告書も気候変動や気候変動影響の観測、監視などに関する最新の科学的知見も踏まえまとめることとなっています。

これまでも文部科学省や気象庁と連携していますが、今後この報告書を進化させていく中で、連携深めていくべき点もある、というご指摘かと思いました。ご指摘も踏まえつつ、次回の報告書の作成に向けた作業を進めていければと思います。ありがとうございます。

○高橋委員

ありがとうございます。

○住委員長

今、高橋君の言ったのは、だから、結局、こういう気候変動影響評価というある種のそういう事業なり何かを、どう具体的に展開するかという戦略を持っておかないとだめだということです。各省ばらばらでやっているんじゃなくて、総合的に行う必要があります。

だから、環境省のS18でやっているんだけど、それだけでは十分ではないので、例えばほかの省庁だったらそれをやってくれとかという、そういうことをもうちょっと明確にやっていくほうがいいのではないかということだと思います。

ですから、個々に課題はいっぱい上げられているんだけども、それをどうやって課題を克服していくのかというところが、こんな問題あるね、そうだね、誰か頑張ってよというのに近いと思います。そこを考えていただきたいなという気がします。

だから、そういう意味でのタスクフォースをつくるか、どうするか、来年度以降、どういうふうにこの課題を克服してやっていこうとしているのかというところを明確に出していってもらわないと、問題は山積みしているよね、頑張って、誰かということだと思いますから、そこはお願いしたいと思います。

では、三村委員。

○三村委員

どうもありがとうございます。今、住委員長の言ったことと同じことを、実は今度の報告書を読んで感じていまして、出されている課題の意見の中には、研究として今後どういう課題を明らかにしなきゃいけないという、その研究の方向性に関する意見と、それを実際の施策、政策の中に生かしていくにはどうしたらいいのかというような方向の意見と、大きく言うと2種類ぐらいあるんだなと思いながら読んでいました。

そうすると、研究の問題については環境省の中での研究のかじ取りをする委員会に、そういう意見を出したりとか、あるいは環境省の中にとどめず、文科省の科学技術学術審議会とか、いろんなところにもこの面ではこういう課題があるということを報告したりとか、それから施策のほうについては、これは施策の検討のその場に持ち出していくと。

だから、これは非常によくまとめて、今意見が活発に出たのはいいと思うんですけど、来年度以降議論するときに、出た意見をどういうところに生かすのかということを考えながら、あるいはそこを明確にした上で議論するというのがすごく重要なんじゃないかなと、住委員長の意見と全く同じような感想を持って読んでいました。そういう意見です。

以上です。

○住委員長

ありがとうございます。そのほか、よろしいでしょうか。

それでは、今後の環境省さんの頑張りを期待して、ここで終わりにしたいと思います。

次の議題は、その他で①気候変動の影響観測・監視の推進に向けた検討チーム(報告)と②気候変動予測及び影響評価の連携推進に向けた検討チーム(報告)です。

環境省のほうからご説明お願いします。

○気候変動適応室室長補佐

議題3、その他といたしまして、気候変動の影響観測・監視の推進に向けた検討チーム、それから気候変動予測及び影響評価の連携推進に向けた検討チームに関する報告をご紹介させていただきたいと思います。

両チームともに、平成29年3月にこの小委員会でまとめられました中間取りまとめを踏まえて設置がされました。平成29年、30年度の2か年を第1期、令和元年度と今年度の2か年を第2期として実施をしていただいております。

まず、資料3-1、影響観測・監視の推進に向けた検討チームに関する報告です。

こちらの検討チームは、気候変動の観測と監視の基礎情報としてのデータの収集が必要であるという背景から、第1期では、分野別に、観測・監視の実施状況・必要性を把握しております。第2期については、さらにより幅広い分野での気候変動影響の観測・監視の現状把握を進めるとともに、各分野における観測・監視の実施、拡充の優先度について検討を行っております。

まず、第1期においては、気候変動の影響観測・監視の現状について、全分野に共通する課題が整理されまして、課題解決のための方向性が示されました。全分野に共通する課題としては、データが非公開であること、デジタル化されていないこと、利用手続が煩雑であることなどのデータの利用性の低さや、継続性の低さ、空間・時間解像度の低さ、対象範囲の狭さなどが指摘されました。また、気候変動影響が予測されているものの背景的な観測・監視が行われていない項目があることも指摘されました。

また、多様な観測主体により得られるデータの利用性の向上や、関係省庁・機関との連携、各分野における適切な観測・監視の枠組みづくりといったことが挙げられました。分野は、適応計画に準ずる7分野としています。

次のページに行きまして、第2期では、各分野について、「現状における課題」と「将来の方向性」について検討を行っています。

検討分野は、第1期に引き続き、適応計画に準ずる7分野の、こちらにお示ししている7分野としつつ、委員の参画により図の中で赤字でお示ししている部分については、特に拡充がされています。

また、観測・監視の実施と拡充の優先度についても整理を行っていただいていまして、気候変動影響の「重大性」、「緊急性」、「確信度」、これらは気候変動影響評価報告書における評価を運用したものですけれども、それを踏まえつつ、観測が実際に行われているかどうか、観測を実施、拡充する必要があるかどうかという観点も含めた上で、例えば今お示ししている右下の表のように観測・監視の優先度を整理しております。次回の影響評価に向けて課題を取りまとめまして、今年度末に報告書を公表予定です。

検討チームの活動については、気候変動影響評価報告書の第4章でも概要を紹介しています。

影響観測・監視の推進に向けた検討チームに関する報告は、以上となります。

次に、資料の3-2、こちらは気候変動予測と影響評価の連携推進のチームに関する報告です。

こちらの検討チームは、気候変動予測と影響評価の内容を体系的に整理して、連携を進めることを目的に設置されました。本委員会にもご参加いただいている高薮先生が座長をされていらっしゃいます。

第1期では、気候変動予測と影響評価の連携に必要な5項目として、気候シナリオの統合化、気候モデルの選択に係るガイドラインの整備、気候モデル共有インフラの必要性、予測計算及び影響評価のアウトプットの待機時間の長さ、シナリオ整備へのユーザーニーズへの反映という五つが設定されまして、課題及びアプローチ案について整理が行われました。また、現状の課題及び気候予測・影響観測・情報の利用のあるべき姿が整理されました。

第2期は、これらを踏まえて、現状の課題及び気候予測・影響観測・情報のあるべき姿に関する共通の認識をまとめることも視野に入れまして、連携強化に向けた双方のニーズ・シーズの把握や、地方公共団体が気候や影響に関する予測情報を受け取るところまで検討対象を拡大することに重点を置いて、第1期での検討内容をさらに深めております。

議論に当たっては、1ページ目の右下の図にありますように、現在の課題から今後何をすべきかを検討するフォアキャスト型、また逆に、将来のあるべき姿から今何をすべきかを検討するバックキャスト型の手法を組み合わせて、連携推進のためにいつまでに何に取り組むかということを検討しています。

今年度の6月には有識者によるワークショップを開催し、幅広い知見に基づいて今後の取組方を検討しています。

資料の2ページ目ですけれども、第1期では、フォアキャストによる課題抽出を行っておりまして、ここに上げられている七つのカテゴリーの15の事項を、実現は困難だが重要で2030年の影響評価報告書において実現されているべき事項として抽出をしています。

3ページ目に行きまして、第2期では、資料の3ページ目にありますように、将来のあるべき姿からのバックキャストにより、気候予測・影響予測に関して、いつまでに何に取り組むべきか、地方公共団体等の利用者が何を望むのかについて議論を行い、気候予測・影響予測・利用者という三つの観点から、それぞれの時期ごとに必要となる事項をマトリックスとして整理しています。

横軸のその先のあるべき姿は、気候予測、影響予測の目指しているゴールで、データセット2020影響評価2025では、それぞれに搭載されることが予想される大型プロジェクト等で取り組んでいる主な事項を取り上げています。

データセット2027影響評価2030は、その先のあるべき姿も踏まえて、次の大型プロジェクト等で新たに取り組もうとしている事項です。

縦軸の利用者には、主に国と地方公共団体において適応策を立案、実施する立場からの気候予測・影響予測・情報に関するニーズを示しています。

アクター間のギャップには、マトリックスの中で明らかになった、主に縦軸方向の矛盾がまとめられています。情報ニーズのギャップは、主に提供される情報と利用者のニーズの乖離、情報提供側の課題は情報提供上の課題、情報利用側の課題は利用者による情報利用上の課題です。

共創のための課題には、アクター間の共創による望ましい気候予測・影響予測情報の利活用と施策の充実のための課題をまとめています。

このマトリックスは、気候変動影響評価報告書の第4章にも、検討チームの概要とともに掲載をしております。気候変動予測と影響評価の連携推進のチームに関する報告は以上となります。

いずれの検討チームも今年度が活動の最終年度ということになりますが、今後の影響評価に向けて取り組むべき事項をお示しいただいています。これまで、ご検討いただいた成果を踏まえて今後の活動につきましては、その位置づけも含めて関係者間で検討していきたいと考えております。

事務局からのご説明は以上です。

○住委員長

ありがとうございました。

それでは、この二つの報告に関してご質問、あるいはコメント等ございましたらお願いします。何かございますでしょうか。

では、安岡委員。

○安岡委員

現在進行で、さらにこれから検討されるということで、とてもいいと思うんですけれど、私はやっぱりこの気候変動の影響を評価する、さらにそれに適応策を考えるといったときに、社会のパラメータというのをどうやって計測していくかということをもう少し突っ込んで考えないといけないんじゃないかなという気がしています。物理的なパラメータは、我々、身近ですから非常によく分かるんですけれど、やっぱり社会への影響を考えるといったときに、社会のどういうパラメータを計れば、その影響がよく見えるのかとか、それを対策に持ち込むときに、適応策でもいいんですけれど、どういう対策と直結するようなパラメータを計測していくとかいう、言わばバックキャスト的な視点が必要だと思うんです。それについては議論はもうかなりされていると考えてよろしいんでしょうか。

○住委員長

されていないと思いますけど、どうですか。

恐らく、こういうもののつくりが、ほとんど自然科学に偏っていて、社会科学的なというか、社会を扱うような体制にはなっていないと思いますけどね。

○安岡委員

私もそうではないかというのが、若干気になったものですから、ご質問させていただきました。ここから先、いろいろなことを考えると、やっぱり社会とどう向き合っていくかというところの接点の部分をきっちり計るということも我々が考えていかないと、もしくはメンバーを増やすにしても、最後の対策のところで最適化されないのではないか、という危惧を持ったために質問させていただいた次第です。ありがとうございます。

○住委員長

ありがとうございます。

それは、多分非常に大きな課題だろうと思いますが、この辺はどうですか。

では、高薮委員。

○高薮委員

今の安岡先生のご質問、コメント、物すごく大事だと私も思っております。その質問は、この影響評価の検討チームのほうに向けられたのか、それともデータの収集のほうに向けられたのか、ちょっと分からなかったので、躊躇していたんですが。

○安岡委員

両方のつもりでした。

○高薮委員

分かりました。我々の検討チームでも、当初はどうしても、社会的な方々まで入れると話が難しくなってしまうと思いまして、本当に影響評価、それからデータ提供者の間のコミュニケーションについて議論をスタートさせました。

第2期は、さっき文科省さんからご紹介のありましたとおり、少し自治体の方々も入れることによって、少しウイングを広げた議論をしております。恐らく、もしこれからこの話を発展させるんであるとすれば、それこそ社会的なエンドユーザー、いわゆるエンドユーザーですね、エンドユーザーの方々にも積極的にご参加いただきながら、意見交換をしていかなきゃいけないというような感じに、話の、我々の中ではまとまってきております。非常にご参考になるご意見ですので、ありがとうございます。

以上です。

○安岡委員

ありがとうございました。

○住委員長

では、三村委員。

○三村委員

よろしいでしょうか。安岡先生、どうもご意見ありがとうございます。

直接に答えになるとは思わないんですけれども、せっかくの機会なので、議論の材料として、S-18の中で考えていることをちょっと紹介したいと思うんです。

3点ぐらいあって、一つは、今度の影響評価報告書の中でも都市生活とか、国民生活とかという部分が文献が少ないとか、弱いとかというような形になっていますよね。それをS-18の中でテーマの4というのがQOL、国民のQOLに対する影響というようなものにまとめて評価をしようとしています。QOLを構成する要素は何なのかというのを考えて、例えばインフラとか、産業とか、そういうようなもののパーツをそれぞれ評価した上で、最終的には一人一人の生活の質にどういう影響があるのかという形でまとめられないかというようなことをアプローチしています。これがどういうふうに政策に結びつくのかというのは分からないんですけれども、今までの国民生活に対する影響評価が少ないというところに、少し穴を開けられたらなと思っているということです。

2番目は、経済なんですけど、例えば災害とか農業とか、それぞれ目に見えるフィジカルな被害に対する被害額という格好での影響というのは、いろいろ今まで評価されてきたんですけど、影響が起きることによって国民経済全体にどういう影響が出るのかとか、適応策を打つことによって経済全体に対する影響がどれぐらい軽減されるのかというような都道府県とか、そういうものをベースにした経済モデルを、今開発していくような班があります。だからそういうような格好で、影響の全体像を把握をしたいと思っています。

3番目は、新たに立ち上がってきた話なんですけれども、ちょうど研究チームの中に京都大学の西浦先生がおられて、パンデミックと気候変動がどういう関係にあるのかというのを考えようというので、これは社会との接点になるという話じゃなくて、非常に今関心が高いので、そういうものも入れようということを考えているということなんですけども、ちょっとそういうような形で現在はアプローチをしようとしています。おっしゃるとおり、それらをもっと体系化して、自治体にしろ、企業にしろ、あるいは国民の皆さんにしろ、そういう物の見方をしたら気候変動影響の重大さがよく分かると、何をしなきゃいけないかということにもつながるというのをどうやって出せるかというのは、さらに次の課題だというふうに思っています。どうもありがとうございました。

○住委員長

ありがとうございました。そのほかございますか。

確認ですけど、これ、2期でもう終わってしまって、3期というのはないんですか。

○気候変動適応室長

現時点では第2期が令和2年度まで、とのみ決まっており、その後どうしていくかは、検討チームの皆様と議論しながら考えていきたいと思っています。

○住委員長

名前は変えても何でもいいんですけど、新たなそういう検討チームをまた発足させて、いろいろ議論を続けていくのか、これではい終わりというかというのは、結構大きなことだと思うので、そこは考えていただければと思います。

そのほか、よろしいですか。

それでは、ご意見もないようですので、これで本日の議事を終了したいと思います。

どうもありがとうございました。それでは、事務局にお返しをします。

○気候変動適応室長

本日は、活発なご議論いただきまして、ありがとうございました。

最後に、環境省地球環境局長の小野よりご挨拶申し上げます。

○地球環境局長

地球環境局長の小野でございます。

先生方、どうも大変お世話になります。本日も、お忙しい中、参加いただきまして、また非常に活発なご議論をいただきまして、大変ありがとうございました。

本日、最終審議いただきました報告書でございますけれども、今後必要な手続を経て、年内に正式に公表する予定としております。

このような形で、気候変動の影響を科学的知見に基づき、取りまとめ発信するということは、先ほど来も議論ありましたけれども、行政、企業、それから国民といった多様な主体による適応策の推進のためだけでなく、国民一人一人が温室効果ガスの排出削減の取組の必要性を認識するという意味にも、そういうときも大変重要であると考えております。

ご案内のとおり、菅総理が所信表明演説で2050年カーボンニュートラルということを表明、宣言されまして、環境省の小泉大臣に対しましては、カーボンニュートラルの中で地域の創造や国民のライフスタイルの転換に向けて取り組むように、また国際的な発信に取り組むようにというご指示をいただいております。

まず、その報告書に関していえば、この成果を活用して今後気候変動の影響について、広く様々な方々に知っていただくためのパンフレットを作成するとか、あるいは各分野における影響を解説するシンポジウムを開設するといったことを通じて、気候変動対策の必要性について分かりやすく発信し、ライフスタイルの転換にも役立てていきたいと考えております。

また、来年度には、本報告書を踏まえまして、政府が策定する気候変動適応計画の改定を予定しておりますので、その場面でも十分に活用していきたいと考えております。

また、次回の気候変動影響評価に向けまして、先ほど課題を整理していただきまして、またその課題についてどうやって対応していくんだというご議論もございましたけれども、どういうアクションプランで課題を解決していくのかということについても一旦事務局で引き取らせていただいて、検討させていただければと考えております。

今後とも、この報告書が出た後も、折に触れて様々ご協力、ご指導いただくことがあると思いますけれども、どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。

本日は、どうも大変ありがとうございました。

○気候変動適応室長

ありがとうございました。

本日の議事録につきましては、事務局にて取りまとめまして、先生方にご確認いただいた上で、環境省ホームページにて公開する予定としています。どうぞ、よろしくお願いいたします。

また、次回の会議につきましては、また改めて委員の皆様にご連絡をしたいと思います。

以上で、本小委員会を終了いたします。どうもありがとうございました。

                                       午後 4時14分 閉会