カーボンプライシングの活用に関する小委員会(第22回) 議事録

開催日時

令和5年1月24日(火) 10:00 ~ 12:15

議題

1.2030年目標、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた成長志向型カーボンプライシング構想について
2.その他

議事録

午前10時00分 開会

山本市場メカニズム室長
皆様、おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから第22回中央環境審議会地球環境部会カーボンプライシングの活用に関する小委員会を開催いたします。
はじめに、私は事務局を務めます環境省市場メカニズム室長の山本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日の小委員会はWEBでの開催とし、YouTubeの環境省動画チャンネルで同時配信しております。
本日は、岩村委員、大橋委員、諸富委員、吉村委員につきましては、所用のため御欠席でございます。
また、井上委員、森澤委員、安田委員は、途中で退出の御予定。牛島委員、小西委員は、遅れての御参加の予定でございます。
それでは、WEB会議の開催に当たりまして、何点か御協力をお願いいたします。
通信環境の負荷低減のため、カメラの映像は原則オフにして、御発言の際のみオンにしていただけますよう、お願いいたします。
また、ハウリング等を防ぐため、発言する際以外はマイクの設定をミュートにしていただけますよう、お願いいたします。
御発言を希望される場合には、御自身のお名前の右側にある手のアイコン「挙手ボタン」でございますが、こちらをクリックしてください。また、発言を終わられた際にはボタンを再度クリックし、挙手を解除していただけますよう、お願いいたします。
もし、挙手ボタンを押しているのに事務局側が気づかない等ございましたら、画面右下のチャットボックスに御記入をお願いいたします。
その他、通信トラブル等がございましたら、チャットボックスに御記入いただくか、事務局までお電話をいただけますと幸いでございます。
それでは、浅野委員長、以降の進行をよろしくお願いいたします。
 
浅野委員長
皆さん、どうも朝早くからお集まりいただきまして、ありがとうございます。
前回、11月にこの小委員会を開きましたが、その後、政府の中でカーボンプライシングに関しても議論がさらに進んだようでございます。今日は、その御報告を受け、かつ、そのことについて皆様方から御意見を伺いたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、2030年目標、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた成長志向型カーボンプライシング構想についてということで、事務局から説明を受けます。
どうぞよろしくお願いいたします。
 
波戸本環境経済課長
環境省の環境経済課長の波戸本でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
脱炭素社会に向けて、カーボンプライシング制度を導入することについての重要性に対する認識は、大きく高まっているところでございます。これまでの本小委員会の御議論に、改めて御礼申し上げます。
先般、官邸に設置されておりますGX実行会議において、GX実現に向けた基本方針が取りまとめられました。これを踏まえて、GX基本方針の閣議決定、あるいは関連法案の次期通常国会への提出を目指しまして、政府部内では作業が進められているところでございます。
本日は、基本方針における成長志向型カーボンプライシング構想、この概要を御説明した上で、さらに、2030年目標、2050年目標の達成に向けて、今後留意すべき点などについて、マクロ経済動向や国内の状況なども御紹介しつつ、本構想をしっかりと社会実装するため、委員の皆様から御意見を頂戴したいと思っているところでございます。
それでは、議題1につきまして、資料1「2030年目標、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた成長志向型カーボンプライシング構想について」に沿って、御説明したいと思います。
それでは、資料をめくっていただいて、これまでの経緯としまして、CP小委におきまして、一昨年の年末に一定のカーボンプライシングの方向性について御議論いただいて、了承されたところでございます。
この流れの中で、政府の中でも議論が進められまして、昨年末にはGX実行会議において基本方針が取りまとめられていると、これについてパブリックコメントをかけておりまして、1月22日に意見募集を終了しまして、それを整理した上で閣議決定を目指すとともに、次期通常国会に向けて関連法案を提出すると、このような流れになっているところでございます。
次のページ、こちらが、一昨年末にCP小委で取りまとめていただいた方向性についての概要でございます。
ポリシーミックスとしてのカーボンプライシングということで、成長にも資するカーボンプライシングということで、このような取りまとめをいただいているところでございます。
飛ばしていただいて、次のページ。
「GX実現に向けた基本方針」としまして、三つ目のパラグラフでありますが、2030年、2050年の国際公約を実現するために、今後10年を見据えた取組の方針を取りまとめるということでございまして、そういった形で大きな方向性を取りまとめているところでございます。
次のページをお願いいたします。
特に、その中でのカーボンプライシング構想ということでございますが、こちらはポチで三つあります。まさにこれが、CP小委で言っていただいておりましたポリシーミックスということでございまして、脱炭素を進めるための、まずは大胆な先行投資を支援する。それに加えまして、カーボンプライシングによるインセンティブ、我々は価格シグナル効果とも言っておりましたが、こういったことをセットで設定することによりまして、いろんなところで行動変容を促していく。
さらに、今回、新たな金融手法の活用ということでございまして、大きな、150兆円投資を導いていくわけではございますけども、そのためには、ファイナンシングの手法も重要ということでございまして、民間の資金を導入するとともに、民間で取り切れない資金については公的なファイナンスというのをしっかり活用しようということで、こういった枠組みを提示しているところでございます。
次のページをお願いします。
今申し上げたものを構造的に表したものがこのページでございまして、さらに次のページをお願いします。
10年を見据えたロードマップということでございますが、このような形で、先行投資支援、カーボンプライシング等々を徹底していっているということでございます。
次のページをお願いします。
詳細については省きますけども、先行投資ということで、政府の資金として20兆円を準備していくんだと。さらに150兆円の投資を引き出すということで、数字だけではなくて、その内訳についても、この10年間のイメージについて議論した上で、このような整理となっているところでございます。
さらに、その次のページ以降なんですけども、単に支援をばらまくということではなくて、重要な分野について、GXの投資額、例えば水素・アンモニアについていいますと、今後10年間で7兆円規模の投資であると、それに合わせて、規制制度、そういったものを併せて走らせていくということで、きちんとお金がこういった方向に流れるということを意図した形での支援になっていくような、そういった枠組みをつくっているところでございます。
その次のページには蓄電池、さらには鉄鋼といったようなもの、さらに続くわけですけども、最後に、環境省としても重要だと思っております地域・暮らしについても言及があるというところでございます。
次のページをお願いします。
こちらからカーボンプライシングということでございまして、今回のカーボンプライシングの基本方針の中では、排出量取引と、炭素に関する賦課金というものを、ハイブリッド側でカーボンプライシングを入れていこうということでございまして、排出量取引につきましては三つのフェーズを念頭に制度設計を進めていくところでございます。第1フェーズというのは、今年の4月から始まる、2023年度からの民間企業の自主的な取組の中でのGX-ETS。
さらには、第2フェーズとしましては2026年からでございまして、第1フェーズにおきましては、排出量の上限などは、基本的には企業の皆さんの自主的な取組の中でやっていくということでございますが、本格稼働という流れの中で、排出量の設定というものは政府の方針も併せて示していくのだと。さらに、第三者機関による認証というのも念頭に置いていくということでございます。
最後第3フェーズにおきましては、下の②の方にございますが、こちらについては、発電事業者さんを念頭に排出枠というものを設定しまして、その中で有償の枠組みをつくっていくということでございまして、これは2033年からスタートするというものでございます。
その次のページ以降が、今申し上げたものを図示したものでございます。
そして、もう一つの制度設計としまして、炭素に対する賦課金ということでございますが、こちらにつきましては、中ほどにありますように、代替技術の有無、国際競争力等々を念頭に置きまして、一定の準備期間を置くんだと。直ちに導入するというわけではなくて、GXに取り組む5年間、この集中期間を経た上で2028年度から導入するということでございます。
形としましては、化石燃料の輸入事業者さんを対象としまして、当初は低い負担で導入した上で、徐々に引き上げていく。その方針をあらかじめしっかりと示すことによって、民間の皆様のGXの取組をしっかりと促していくと、こういう枠組みになっているところでございます。
次のページをお願いします。
今申し上げました排出量取引「有償化」であるとか、賦課金の導入ということなんですけども、その規模感、スケジュール感ということでございますが、こちらは、議論当初から、総理の方からの指示がございましたが、新たな制度設計におきましては、この冒頭にありますように、エネルギーにかかる負担の総額を中長期的に減らしていくんだという方向で検討を進めてほしいということがございまして、そういう意味では、既存の負担としましては、石油石炭税、温対税に加えて、FIT賦課金というものがございますが、これが中長期的に減っていくという中で、緑色の面積がありますけども、こういうところも念頭に制度設計していくと。その中できっちりとカーボンプライシングを示しながら、2050年までに20兆円のGX経済移行債の償還財源を確保すると、こういったようなイメージで、今後、制度設計がさらに進んでいくという状況でございます。
次のページをお願いします。
新たな金融手法ということでございまして、150兆円の投資をしっかりと引き出すためには、黒字でありますけども、グリーン・ファイナンス、これは既存のいろんな枠組みがございますが、この拡充を検討しながら、さらにはトランジション・ファイナンスというのもしっかりつくっていくんだということ。
加えまして、公的資金。こういったもの。例えば、既存のものとしましては、日本政策投資銀行さんであるとか、JICさんであるとか、あるいは、昨年10月に環境省としても設立しました脱炭素化支援機構、こういったところがイクイティ出せるといったことになっておりますけども、加えて、いろんな枠組みの中で、今回、GX新機構という機構を立ち上げる予定でございますが、こういったところも併せて、公的なファイナンスというのも、いろんな枠組みができるようになっていくということで、組み合わせというのも進化させていくということでございます。
駆け足になりましたが、以上が構想の概要でございまして、加えて、こういった制度設計というものをさらに政府として詰めていくわけですけども、加えて、こういうものがしっかりと2030年目標、2050年目標に資するというために、さらに、いろんな検討・施策が必要ではないかということもございまして、以降、これから日本が直面する経済動向等を御紹介しながら、皆様に様々な御意見を伺いたいということでございます。
ページをめくっていただきまして、マクロの経済状況としましては、コロナ以降、徐々に経済成長が戻っていくかなというところもあるんですけど、IMFの見通しでいいますと、なかなか厳しい状況は引き続き続くんではないかということも考えられます。
こういった中で、GXをいかに成長につなげていくのかということが非常に重要だと思われます。
次のページをお願いします。
一方で、金融環境、日本についても今後、金融緩和はどうなっていくのかということを含めて、金融政策というのは非常に世の中に対する影響が大きいと思います。こういったことも非常に重要な局面だと思いますので、これも注視した形でGXを進めていくということが重要かと思います。
次のページをお願いします。
さらに物価動向でございますが、エネルギーの高騰に加えまして、様々なところに影響が出てきていると。世界の物価上昇率と比べますと、我が国は、やや落ち着いているように見えますが、これは2022年の前半まででございまして、後半以降、あるいは2023年度に向けて、食料品等々、様々な物価上昇が見込まれている中で、こういった状況の中で環境性能が高い商品、製品というのが、通常より高いという状況は多分なかなか否定できないと思いますが、そういったものを消費者の方々に選んでいただく。こういった物価上昇の中で、そういったものを選んでいただくということのためにも、今度は、消費者の方々の行動変容といいますか、意識改革というのもしっかり後押ししていく必要があるということかなと思っております。
次のページをお願いします。
こちらは、エネルギー価格(原油)、あるいは、その次、天然ガス。さらには石炭と、ウクライナ情勢以降、やはり高騰しておりまして、そういったものが落ち着く局面はあるかと思いますが、こういったものが長期的には高くなっていくという傾向が恐らく見てとれるんじゃないかなと思います。
次のページをお願いします。
あと、賃金ですが、これを見ますと、諸外国に比べまして、我が国の動向は見劣りする面もある。先ほど申しましたように、環境性能をしっかり理解していただくためにも、この辺りも重要な話ではないかと思っているところでございます。
あと、民間消費。こちらについても、今の流れでありますとおり、諸外国と比べてもなかなか厳しい状況にある。
さらに次のページをお願いします。
一方で、ストック、貯蓄についていいますと、民間企業の現預金を見ましても、しっかりと積み上がっている面はある。これを、先ほどの150兆円投資にどう回していくのかということも、一つ重要かなと思っております。
特に家計についていいますと、この資産なんですが、貯蓄から投資へというのが大きな政府の施策の流れでございますが、この中で、国内にどう回していくのか、さらに、グリーン投資にどう回していくのかということも、非常に重要じゃないかと我々は思っておりまして、そういった意味で、消費だけじゃなくて、こういう投資行動の意識改革、行動変容というのも、促すということも一つ重要なファクターでないかなというふうに考えているところでございます。
次のページをお願いします。
企業の皆様の動向でございまして、後ほど、公正な移行という論点も提示したいと思っているわけですが、そういったためにも、企業内、あるいは企業間の人材移転というのも必要になってくるかと思いますが、そういったものを円滑にするためにも、人材育成、人材投資、これは重要になってくると思います。政府としても当然そうなんですけども、企業の皆様のこの辺りの動きというのも、注目点かなというふうに思っております。
次のページをお願いします。
企業の皆様の間でも、大企業あるいは中小企業の方々で差があるのではないかなということでございまして、大企業の皆様、こういった方々はグローバルな大きな流れを受けまして、かなり意識が高まっているということかと思っておりまして、こういったような指標に見てとれるところかなと思っております。
他方で、その次のページでございますが、中小企業の皆様は、景気が厳しい中で、なかなかそこに手が回らないということもあると思います。
右側にありますように、まだ対策を行っていないという方もかなりいらっしゃいますし、その背景として、やはり何をすればいいのかということも、中小企業の皆様としては分からないという取組があると思います。こういったところにもしっかり手を差し伸べていくということが、今後重要になっていくんではないかなというふうに考えているところでございます。
加えて、サプライチェーン全体での脱炭素化という動きが、これまではTCFDの開示という中で進んできたわけでございますけども、一方で、やや技術的でございますが、ISSBという国際会計基準の世界の中でも大きく取り上げられておりまして、現行、TCFD開示、Scope3の開示、サプライチェーン全体での開示になってくるわけですけども、この辺りのTCFD開示の話につきましては、上場プライムの参加者に対してということでございますけども、ISSBの流れになってきますと、金融庁さんを中心に議論も国内で進んでいくわけですけども、有価証券報告書の中での取り上げということも念頭に置かれて議論を進められると思いますので、こういったことも注意が必要かなというふうに思っているところでございます。
次のページをお願いします。
さらに産業界の構造改革も進めていく中で、一方で地域の脱炭素化、これもしっかり進めていく必要があると思っております。
そういった中で、地域の皆さんが取組をするに当たって、例えば、地域の中での再エネポテンシャルというものがしっかりあるということ。あるいは、こういったことを念頭に様々な支援が必要なわけでございますが、次のページをお願いします。環境省としては、脱炭素先行地域というのを設定しまして、こういった地域等に対しては交付金措置などで御支援しているところでございますし、あと、例えば経産省さんにおかれましては、再エネ導入を支援するための系統強化というのもしっかりと出されているところでございます。
さらに、総務省さんにおかれましては、新たな施策として、地方財政措置の中で、新たに脱炭素化推進事業債という枠組みをつくられておりまして、地方の公共施設の脱炭素化のための事業のための支援措置が新たに設けられようとしているところでございます。
加えて、地域の脱炭素支援については、今ここにお示ししていますように、地域の金融機関が非常に重要なプレイヤーとなってくると思っておりまして、地銀、あるいは信金の皆様との連携というのは非常に重要であろうというふうに考えているところでございます。
次のページをお願いします。
先ほど言及しました、昨年10月に設立しました「脱炭素支援機構」、こういったところからも地域の支援というのができると思っていますので、様々な角度で地域に対する支援、オールジャパンでやっていけるのではないかなというふうに考えているところでございます。
行動変容ということでございますが、消費者の皆様は、アンケートベースでございますけども、年齢層等々によってかなり差異があるという中で、こうしたところを後押しする、さらに、意識を改革する余地はかなりあると思っていますので、環境省としましても、この辺りは重要だと思っているところでございます。
国際比較の観点からも、そういったことは言えると思いますし、さらに次のページをお願いします。環境大臣を筆頭に国民運動ということで、こういったことをさらに展開していきたいと。まだ、これはなかなか国民の皆様に浸透しないところがございますが、こういったところもしっかりとやっていきたいということでございます。
加えて、事業者サイドといいましても、一家計だけではなくて、公共部門も事業者でありまして、そういった観点から、環境省としましても「グリーン購入法」ということで、公共部門の調達において、グリーン性能、環境性能の高いものを調達するという枠組みがございます。
この下の四角にありますように、さらに省エネ基準等の強化、これをしっかりやっていきたいということと併せまして、カーボンフットプリント、こういったものが掲示されているものに対する優遇措置ということも考えていきたいと思っておりまして、こういったことを通じて、公共部門の調達、需要サイドとしての意識も変えていきたいというふうに考えているところでございます。
次のページをお願いします。
公正な移行ということで、これから脱炭素が進んでいく中で、様々な社会的な大きな動き、場合によってはトランザクション的なコストも出てくるかもしれません。その中で、労働者の皆さんもそうですし、地域のバランス、あるいは各地域の企業の皆さんが取り残されないように、包摂してしっかりと脱炭素に動いていくということを、しっかり国としても支援していく必要があるというふうに考えているところでございます。
次のページをお願いします。
そのためにも、様々な人材育成は重要だと思っております。
環境分野における人材育成。環境省もそうですが、各省の皆さんもいろいろ取り組まれております。
例えば、その次のページでございますけれども、環境省としましても、一つ資格制度と、脱炭素アドバイザー的な制度。これは地域の金融機関の皆様を中心に、例えば商工会の皆様、あるいは地方公共団体の方々を含めた、中小企業の皆様を初めとした、これから脱炭素にしっかり取り組んでいくという方々に対して、一酸化炭素排出をどう把握していくのかというところから含めて、しっかりとアドバイスできるような、そういった人材育成を進めていきたいというふうに考えているところでございます。
 どうもありがとうございました。
 それで、最後に、本日御議論していただきたい事項としまして、先ほど紹介しました基本方針であります、新たな構想の概要に対する御意見もそうですが、加えまして、構想を含めた我々の施策というのが2030年、2050年、こういったものにしっかりと実現するように、この構想が効果的に、社会的に実装されていくためには、さらにどういった点に留意が必要なのかということ。
あるいは、二つ下にございますが、脱炭素の世界というのは、恐らく循環経済、サーキュラーエコノミーであるとか、自然再興、生物多様性、ネイチャーポジティブ、こういった取組とも大きく関係していると考えております。
そういった意味で、こういった三つをどうやって前に進めていくのか。あるいは、少し風呂敷を広げておりますけども、17のSDGs目標、こういったものを大きく前に進めていく。
特に、今回カーボンプライシング小委員会は、この4年間で22回議論していただきましたが、カーボンプライシングは基本的にこれまで外部経済と言われていたものを、いかに経済に取り込んでいくか。これまで気づきのなかったものをいかに取り込んでいくかということだと思っております。
カーボンプライシングでいいますと外部経済かもしれませんし、例えばJ-クレジットみたいなものは森林の育成、これをしっかりとうまく炭素の吸収という観点から経済価値を新たに認めていくといったような観点もあったと思います。
そういった観点をこういった環境的な分野、これはなかなか経済に取り込んでいないものもたくさんあると思うのですけれども、こういったものをいかに経済の中に取り込んでいくか。あるいは気づきとして行動に取り込んでいくかというようなこともございます。こういった観点から御議論いただければなというふうに考えているところでございます。
すみません。駆け足になりましたが、私からは以上でございます。
 
浅野委員長
どうもありがとうございました。
ただいまの事務局から御説明いただいたことにつきまして、どうぞ皆様方からの御意見をお伺いしたいと思います。
御発言を御希望の方は、どうぞいつものように挙手機能をクリックしていただいて、意思を御表明ください。
なるべく多くの委員に御発言いただけますように、できましたらお一人の発言は4分から5分ぐらいの範囲内でおさめていただければと存じます。
なお、本日中途退室ということで、早めの御発言御希望の方が、現在私の手元のところには4名ほど届いております。
井上委員、森澤委員、安田委員、小西委員、この4人の方から早めの御発言の御希望がございましたが、他にいらっしゃるようでしたら、どうぞ、お声で「早めの発言希望」ということを今申し出ていただけませんでしょうか。よろしゅうございますか。
 
大野委員
大野です。早めの発言を希望です。
 
浅野委員長
大野委員も早めの御発言を御希望ということで、承りました。
他にいらっしゃいますでしょうか。よろしゅうございましょうか。
それでは、私の方に届いております順番でお願いしたいと思いますが、井上委員、森澤委員、安田委員、そして、小西委員、大野委員、この順番でまず御発言をいただきまして、その後、挙手をされた方に御発言をいただくことにいたします。
では、井上委員、どうぞよろしくお願いいたします。
 
井上委員
まずは御配慮いただきまして、ありがとうございます。そして御説明をありがとうございました。
私の方からは、日本商工会議所、そして中小企業の視点から、意見を申し上げたいと思います。
今回のGX実現に向けた基本方針取りまとめに対する評価でございますが、このGX実現に向けたロードマップ全体像と、そして、重点分野における今後の導きが示され、カーボンプライシング導入に向けた具体的な工程が打ち出されました。これは本当に国民や企業がチャレンジすべき課題がより明確になると同時に、炭素賦課金等の導入意識を明確に示されることで、企業に対し先行きを見通した対応を促すことは、本当に意義があることだと思っております。
一方で、このエネルギー環境情勢は、先行き不透明な要素も大変多くございます。必要に応じ、プランを随時見直し、修正していただくしなやかさも重要ではないかということがございますので、適時、引き続き御検討を実施してほしいと思います。
また、中小企業におけるカーボンニュートラルの取組支援についてでございますが、今後、今回まとめられた内容を着実に周知、実行していくとともに、そして、特に中小企業については、少しでもこの炭素賦課金導入まで取組が進むように、コストダウンにつながる省エネの取組の入り口としまして、温室効果ガス排出削減に向けた「知る・はかる・減らす」この三つのステップで取り組んでいくのと、そして大事なのが、大手企業と中小企業がパートナーシップを組んで、共に協業し、連携し、取組をしていくことが重要ではないかと感じております。
商工会議所としても、引き続き啓発、支援に取り組んでいきたいと思っております。
引き続き、政府の後押しもお願いしたいと存じます。
一方で、足元では本当に深刻な人手不足、そして、エネルギー、資材等の物価高騰が続いておりまして、中小企業の今の経営環境を直撃しているのが現実でございます。
カーボンニュートラル、そしてこのGXを本格的に推進していくに当たり、必要な人材の確保やコスト負担等の、中小企業にしわ寄せがいくようなことにならないように、いろいろな援助、そしてサポートもお願いしたいなというふうに思っております。
弊社でも、最近では、新たに大手がいろいろな事業に取り組むことによって、転職も増えているのが実情でございます。有能な若手が大手企業に転職していく。中小企業でせっかくいろいろと学んで、勉強して、成長したのに、優秀な人材を大手企業に取られてしまうというのはかなり経営も圧迫するというような現実もございますので、この辺も御配慮いただきながら進めていっていただきたいと思います。
また、パートナーシップ構築宣言の考えに基づく、大企業、そして中小企業の連携・協力が進むように、政府による働きかけ、そして、よりよいチェック機能の整備をお願いしたいと思っております。
以上でございます。ありがとうございます。
 
浅野委員長
どうもありがとうございました。では、森澤委員、どうぞ。
 
森澤委員
浅野先生、御配慮いただき、ありがとうございます。発言させていただきます。森澤でございます。よろしくお願いいたします。
今、この成長志向型カーボンプライシングの構想、効果的な社会実装に向けて、今、井上さんが御発言されましたとおり、中小企業、地域、こういったところに支援、教育が必要だろうと思います。
気がつかなかった企業さんもいらっしゃいますが、分かっていらっしゃっても、取引先の関係で進めることができなかった、ビジネスモデルを変えることができなかったという企業さんもおありだと思います。
これに関しましては、トップの方、経営者の方の判断が重要で、こういった変革にはトップの判断が必要になってくるということで、トップの方への研修とかも重要になってくるかと思います。
今回も、総理の発言によりまして、いろいろ変わってくるわけなんですが、改善ではなくて大きな変革には、やはりトップ、経営者、こちらの方の判断が重要になってきます。
ISSBの設立で有価証券報告書の中でも開示ということが日本でも言われておりますが、ISSBの方でもさらに進んでいく。案の中では御紹介いただきましたとおりに、Scope3を含めた開示が求められています。
中小企業の脱炭素化を進めるためにも、サプライチェーン全体の脱炭素化につながるScope3の開示を政府としても促進していくべきだと思います。
前回も発言させていただきましたが、ISSBが設立されて、そういうことが進んでいくであろうと。また、全ての企業でScope1、2の開示があることによりまして、Scope3というものが算定しやすくなるわけなんですが、こういったことは排出量取引の中でも算定は基本となるところですので、まだ日本におきましては必須開示になっていない。これが世界の流れと考えますと、この必須開示にScope1、2を早く変えていく。そして、Scope3が計算できるように、考えられるように導いていかないといけないところにあるかと思います。
このカーボンプライシングGXの基本方針ということに関しまして、CDPではパブコメを出させていただいておりますけれども、排出量取引につきましては、先進国としまして、1.5度の経路に基づいたカーボンバジェットからキャップを設定すべきだと考えておりまして、実施的ではなくて、それに基づいたキャップを設定すべきではないかと思います。
また、今回、賦課金という名前になっておりますが、炭素税につきましても、2028年からの導入では遅いのではないかなというふうに思っております。既に脱炭素技術が成熟期を迎えてくるかと思いますので、そこの中では、そこから、そのお金をどう回していくかということでは遅いのではないか。その税収を、早くいろんな財源として充てていかないといけないのではないかというふうに考えております。
また、投資の促進という話がありましたが、当然ながら、投資を呼び込むためには情報開示が重要になってきます。国内の投資家の方も、日本の企業さんの開示データが必要だと長年おっしゃっていただいていますが、まして海外からも投資を呼び込むということであれば、こういった部分に関します開示、これの義務化を早く進めていくことが、企業が強くなるんだろうと、また、投資家からも評価されるんだろうというふうに思います。
一方で、グローバルな投資の流れを考慮すべきだと思います。
グローバルな投資家は、グリーンウォッシュということでは厳しく見ていますので、PRI、私も兼務しておりますが、こちらの方もそうですが、あとICMAとか、そういったところではどのように考えているかということも参考にしていただくことが重要になってくるかと思います。かなり厳しくは見ているというところなので、日本が独自の路線を進めて、移行をトランジションだからということであっても、そこの部分に関してはグリーンウォッシュだと見られないようにすべきだというふうに思います。
地域への支援、教育。これは本当に重要だと思っております。
地方の豊富な再生可能エネルギー、このポテンシャルを生かすためには、地域の活性化も伴いまして、再エネ導入。これは日本としては大分支援していくべきだと思いますし、環境省さんがつくっていらっしゃいます脱炭素先行地域のドミノ。こういったことがどんどん進んでいくことが重要だと思いますし、それにおきましては、地銀さん、地銀協さんとかが勉強会を進めていらっしゃいますけども、これをどんどん促進していただくことが重要かなと思っています。
また、公正な移行の話が出てまいりましたが、ここについて、長年、公正な移行はPRIの方でも、日本でもいろいろと勉強会をさせていただいておりますのでお話しさせていただきますと、グローバルで言われているような公正な移行は、日本はあまり当てはまらないんじゃないかなと思っています。採掘もないです。その業務に従事していらっしゃる方々ということではなくて、化石燃料を輸入していらっしゃる業者さんとか、それを使用していらっしゃるところはあっても、実際に、EUのポーランドみたいに炭鉱があったりとか、石油を採掘したりとか、そういったアメリカとは違ってくるわけですので、そこに従事していって、その町が沈んでしまうというところの公正な移行の考え方と、大分意味合いが違ってくるとは思っています。
ただ、人材教育ということは、先ほども申し上げましたとおり重要でして、どのように将来が変わっていくかということ、これを理解していただくためにも、こういった教育、今はオンラインで様々な教育を受けることが可能になっていますので、わざわざ会場に行かなくても、今日もオンラインで開催いただいているとおりに、そういったことを進めていただくことが重要かと思います。
ここに関しましては、中小企業さんの人材が流出しているという話がありましたが、若い方々は、大企業であっても将来がないと思うと移っていかれますので、そういうためには人材、いろいろ分かっていらっしゃる方々を育てていく、裾野を広げていくということは重要だと思います。
最後にお話しいただきましたサーキュラーエコノミーとネイチャーポジティブ。こちらにつきましても重要なことだと思います。
日本の多くの企業がTCFDであったり、SBTとの枠組みに参加いただきまして、脱炭素へのコミットを進めていただいている状況にはなっています。
一方で、自然、水資源であったり、森林へのコミットはまだまだ道半ばですので、今年9月にはTNFDが自然関連のリスク及び機械のマネジメントと機械に関するフレームワークの最終版を発表する予定であって、TNFDの開示も盛り上がっていくかと思います。
ネイチャーポジティブやサーキュラーエコノミーなしでカーボンニュートラルは達成できないというふうに考えていただきたいと思いますので、併せて進めていく必要があるというふうに考えております。
以上です。ありがとうございました。
 
浅野委員長
どうもありがとうございました。
では、安田委員、どうぞ御発言ください。
 
安田委員
安田です。
事務局側の準備いただいた資料に関して、2点です。
それとは直接は関係しないんですけれども、総論、総括的な発言を1点行いたいと思います。
まず、資料に関する点でいうと、今後のカーボンプライシングを初めとした様々な環境への取組が、マクロ経済状況の影響を受けるだろうという観点から、幾つかポイントが挙げられておりました。
その中で、物価上昇ですね。日本でも、もともと企業物価の上昇率は高かったのですが、最近では消費者物価も上がってきて、いよいよインフレが本格化しそうですが、それが、今後の気候変動や温暖化対策に向けて、僕自身は逆風というわけでもないなと思っているので、その点について、まずコメントします。
どういうことかというと、物価上昇は、何か原因があって物価が上がるんですけれども、その諸因の一つが、皆様も御存知のようにエネルギー価格の上昇でした。
エネルギー価格の上昇がきっかけとなった物価上昇であれば、まさに、我々が進めようとしてきたクリーンエネルギー化であるとか、そういった従来の化石燃料に頼らない形でのエネルギーを増やしていくことが、経済インセンティブ上もプラスになるはずです。なので、相対的に気候変動への取組がむしろ進む可能性がある。
もう一つのポイントとしては、これは特に日本において顕著かなと思うんですけれども、今までは、なかなか消費者物価が上がらなかったので、企業側からすると、なかなか価格転嫁というか、強気のプライシングができないという観点だったかと思います。
これが最近大きく変わり始めているので、場合によっては環境に配慮した、ある意味でエシカル消費を進めるための施策というのを、企業側が行いやすくなってきている。また、価格転嫁がしやすくなれば、エシカル消費が進むというチャンネルが働く可能性があるので、それも、またこういった環境配慮志向型の投資を誘発するポジティブな面があるんじゃないかというふうに考えます。
2つ目、2点目ですね。
脱炭素アドバイザーの話が最後にありました。
これは、主には、企業向け、to B向けの施策だと思うんですけれども、似たようなことをto C向けにできないか。
例えば、最近ではカーボンフットプリントとか、表示されるケースが増えてきていますけど、まだまだあまり認知度が高くない。
こういった、直接、経済インセンティブに紐づいてはいないんだけれども、何か環境に関連する、あるいは、今日大きな論点として挙がりましたけれども、GXリーグ、その中でもGXダッシュボードというものがあります。企業の取組を開示するということなんですけども、そういった開示した情報が、とれぐらい消費者から見られるか。どれぐらい企業の取組を、実際の最終消費者である家計、我々が消費するかというのは、どの程度、こういった環境の取組を知る機会があるかとか、上から目線になりますが、啓蒙できるかというところに大きく依存すると思います。
なので、消費者向けの試みというのも、何か進めていかれたらおもしろいんじゃないかなというふうに感じました。
以上が資料に関するポイントで、最後に少し総論的なコメントです。
この会議は、カーボンプライシングというトピック、キーワードが入っているので、当然、金銭的なインセンティブを通じて人々の行動を変えようというアプローチが主たる議論のポイントだったんですが、人々の行動を変えるためには、他にもアプローチがあるわけです。
インセンティブを変えるという、カーボンプライシング以外で、例えば情報や知識を変える。環境であったり、気候の状況について、まだまだ情報の非対称性はたくさんあるので、それの理解が変われば行動が変わるかもしれない。
2つ目は好み。経済学で言えば選好、プリファレンスみたいなもの自体を変えるという意味です。
3つ目がインセンティブで、この3つが代表だと思うんですけど、最近では、そっと背中を押す、よくあるナッジといわれる、習慣や癖を変える。あるいは活用するというアプローチも注目されています。
以上、複数アプローチがある中で、この会議の中では専らインセンティブに関連する物事を議論していたんですが、インセンティブがうまく働くために、先ほどGXダッシュボードの話をしましたけれども、情報であったりとか、人々の好みを変えていくアプローチというのは、補完的に有効ではないかと考えています。
なので、今後、我が国において、少しでもカーボンプライシングや、こういった気候変動に向けた取組を進めていくためにも、インセンティブはもちろんですけれども、他の情報、知識、好み、あるいはナッジ的なものとかをうまく補完的に活用していく。そういった取組を、環境省を初め、省庁も意識していくとよいのではないかと感じました。
以上になります。ありがとうございました。
 
浅野委員長
どうもありがとうございました。
それでは、小西委員、御発言いただけますでしょうか。
 
小西委員
ありがとうございます。
総論1つ、そして、細かいところを3つお話しさせていただきたいと思います。
今回、GXの、曲がりなりにも賦課金と、そして排出量取引制度の仕組みがようやくキックオフして、非常に遅過ぎますけれども、制度の方向性として、例えば、賦課金と排出量取引制度の組み合わせとか、時間軸がある程度見えているとか、いずれ電源はオークション化していくとか、予見可能性など、制度の方向性はいいとは思うんですけれども、これは、詳細ルールを決めていくときに本当の実効性が左右されていく。これはもうパリ協定などと一緒だと思っております。
非常に気になりますのが、この小委は、4年間で先ほど22回開催してということで、過去、本当に他国の制度なども十分研究して、専門知見を積み上げてきたと思うんですけれども、この小委が、今のお話ですと一種休眠するのかなと理解したんですけれども、今後どこでこの詳細な制度設計というのは話し合われていくのでしょうか。
ここからこそが本番だという気持ちが非常に大きいと思っておりまして、かつ、これからはネイチャーポジティブなど、そういった視点もこの脱炭素化の仕組みの中には必須として入ってきますので、今こそ本当に環境省の知見が重要なんだと思っております。
ですので、今後、どの場で、どのように話し合われていくのか。そこの場で、例えば環境省と経済省が合同の場があるのか。できれば、本当に正式の場があってほしいと願っていますが、今後について聞かせていただければと思います。
そして制度についてなんですけれども、これは自主的に目標を決めて、達成できなくても説明すればよいといった制度でスタートする、いずれ規制化される前提だとは信じたいんですけれども、これは、カーボンプライスの見える化ですので、炭素国境調整措置などを踏まえて、世界の機関投資家から、日本の脱炭素化の動きというものを、グリーンウォッシュではなくきちんとトランジションなんだよと、脱炭素化に向かっているんだよと認めてもらうということが、一つ大きな役割なんだと思っています。
ですので、独自の制度になってしまうのではなく、例えば国際スタンダード、先ほど森澤さんもお話しされていましたけれども、SBTなどに沿ったものになっていくことが非常に重要だと思っております。
その中で、一つ細かい質問なんですけれども、予見可能性。これは上限と下限が決められていくということなんですけれども、この65ページですね。本来はバックキャスティングで、2050に脱炭素化が必要、2030年は46%は少なくとも必要ということで、そのカーボンバジェットからどんな価格になっていくかということを決めていくことが望ましいんですけれども、今のお話を伺っていると、エネルギー価格、今の負担をそのまま増やさない方向でというようなニュアンスに聞こえましたので、逆に上限が低いと害になってしまうので、ここの考え方をお聞きできればなと思っております。
最後に、地域の脱炭素化については、地方自治体を中心として地域銀行との連携ですとか、脱炭素の支援アドバイザーを育成していくとか、その方向性には大きく賛同いたしますので、具体化のところでステークホルダーの一員として、いろんな御協力の道を探らせていただければなと思っております。
以上です。
 
浅野委員長
どうもありがとうございました。
それでは、大野委員、御発言を御希望でしたので、どうぞよろしくお願いいたします。
 
大野委員
ありがとうございます。
今回、政府が決めましたGXのカーボンプライシングの構想なんですけども、拝見しまして、幾つか懸念がありますので、それについて率直に指摘をさせていただきたいと思います。
4点ございます。
一つは排出量取引制度の導入時期なんですけども、2023年度から開始されて、2026年度から本格稼働されていますけども、これは、あくまでも自主的な参加にとどまるということだと思います。
自主的な参加ということですと、いろんな仕掛けをしても、これは経済産業省さん自身の資料を拝見しても、GXに向けた負担の偏りがあるという問題点が指摘されております。この問題は解決されないんだろうというふうに思います。
では、自主的な参加ではなくて、一定の基準を満たすものは皆さんが参加されるという、そういう世界標準の制度がいつ入るんだろうかということなんですが、これは資料を拝見しても書かれておりません。
ただ、2033年度から発電部門を対象にオークションを導入されると書いてありますので、さすがにオークションになると自主的参加というわけにはいかないと思いますので、ここが自主的ではない制度になるというふうに考えたとしますと、今から10年後ということになるわけですね。
排出量取引は、既に20年間、日本では検討してまいりました。それから、さらにあと10年かかるのか。しかも、それも電力部門だけなのかと考えますと、あまりにこれは遅いんじゃないかと思います。
何よりも、世界全体で2030年までの大幅な排出削減が求められているわけですが、それには残念ながら寄与しない制度となってしまうと思いますので、この導入時期の問題が懸念であります。
第2は、炭素に関する賦課金ですが、これがなぜ賦課金なのかということであります。
この小委員会でも盛んに議論されてきました既存のエネルギー関係税制ですね。揮発油税ですとか、石油・石炭税でとか、いろいろありまして、合計で約4兆数千億円、5兆円近いんですかね。あるんじゃないかと思います。
実効性のあるレベルのカーボンプライシングをいれるためには、既存のエネルギー税制をそのままにして上乗せするということでは、どうしても、そんなに負担を増やすわけではない。総額の負担を増やすわけにいかないわけですから、今までのエネルギー税制を見直さないでやるということは、どうしても限界があるんだと思います。
なぜ、今回の提案が既存のエネルギー税制の見直しという点には踏み込まずに、新たな賦課金という形になってしまったのか、非常に疑問であります。
3点目が、これの帰結なんですが、まさにカーボンプライシングのレベルであります。
これも明示はされていないんですけども、今回のカーボンプライシングの目標は、GX経済移行債の財源という位置づけが非常に強いんだと思います。これは20兆円で、2050年までに償還ということですから、詳細は分かりませんけども、単純に計算すると、大体1トン当たり千数百円ぐらいのレベルの価格になるんだと思います。
IEAEがNet Zero by 2050という、2050年視点を出したわけですが、その中では、先進国にはNet Zeroを目指すと、2030年に130ドルの炭素価格が必要になっております。ですから、それと比べると大体10分の1くらいになってしまうと思うんですよね。
本来は、カーボンプライシングのレベルというのは、脱炭素化をするために1.5度目標のカーボンニュートラルを目指すために、どういうレベルが必要かということからレベルが設定されるかと思うんですが、今回は20兆円の償還財源を確保するという観点が中心となってしまっていることから、必ずしも必要なレベルにはなっていないんじゃないかということが懸念されます。
その背景には、前にも申し上げました既存のエネルギー税制に手を触れずに、何とかつじつまを合わせようと、そういうことがあるんじゃないかなと思います。
4点目の懸念は、この20兆円の使途なんですけども、20兆円、さらに民間投資を見込んでということになると、国際的な、国内外からの投資を呼び込むということが必要になると思うんです。そのために、この投資、GXが目指す方向性が脱炭素に向けた正当な方向になっているんだろうかということが問われると思います。今までも何人かの方の御指摘がありましたけども、少しそこに疑問があります。
具体的な使途として一番目に上がっているのが、水素とアンモニアです。もちろん水素、アンモニアは、自然エネルギー電力、再エネ電力から作るグリーン水素、グリーンアンモニアであれば、これは脱炭素化に向けて一定の役割を果たすことは間違いないと思っていますけども、しかし、これまでの経済産業省の議論を拝見しますと、供給構造高度化法でも長期脱炭素化のオークションでも、グレー水素、グレーアンモニアも支援の対象にするというふうになっています。
これらのグレー水素、グレーアンモニアですと、使ってしまいますと、CO2が減るどころか、実際には増加をしてしまうということも分かっています。ですから、こういうものが支援対象に入ってくると、実はこれはグリーンウォッシュではないかという疑念をどうしても呼んでしまうというふうに思います。そうすると、残念ながら、GXもGX-ETSも世界から投資を呼び込もうとしても集まってこないということになってしまうと思いますので、こうした点について明確な懸念を払拭するような、グリーン水素、グリーンアンモニアを対象にするとか、あるいはブルー水素、ブルーアンモニアの排出基準を明確に設定する、こういうことが必要なんだろうというふうに思います。
以上4点申し上げましたけれども、この小委員会は2018年から4年間やってきたと思います。いろんな議論がございました。
率直に申し上げて、今回のGXのカーボンプライシングの構想の中に、それらの論点、成果が全て集約されているとは思いません。
ぜひ、今後も環境省におかれても、また、経済産業省におかれても、より脱炭素に本当に貢献する制度の構築に向けて進んでいただくことを期待したいと思います。
以上でございます。
 
浅野委員長
どうもありがとうございました。
それでは、順次発言を御希望の方から、御発言をいただきたいと思いますが、私の見落としがあればお許しください。
岩田委員、石田委員、土居委員、とりあえずこの順番でお願いしたいと思います。
岩田委員、どうぞ御発言ください。
 
岩田委員
議長、どうもありがとうございます。それでは、コメントしたいと思います。
1番目に申し上げたいのは、全体の報告書の第一印象は、今御指摘がありましたように、全体のスケジュール感が2030年46%削減と、こういう日本政府の目標がありますが、それを実現するにはどうも間に合わないスケジュールになっているんではないかというふうに、まず思います。
というのは、今、御指摘の有償のオークションは33年度ですし、賦課金の方も28年度からということで、30年度に46%削減しようと思っていたら、とても間に合わない。ディレイド・トランジションシナリオの構想ではないかと思います。
ディレイド・トランジションだとどうして困るかというと、追い込まれて慌ててたくさんカーボンプライシングを上げないと実現できない。これは金融政策でも同じですが、インフレの対応が遅れると、必要以上にたくさん早く上げないと間に合わなくなって、経済に与える悪い影響が非常に大きくなるんじゃないかというふうに思います。
というのが、まず第1点でさらにもう一つ申し上げたいことは、今と関係しますが、どこまでプログレスがあったのか。
このとおりの構想でやった場合に、30年46%削減というパスに比べて、どの程度進捗しているのか。これをはかるメジャーがどこにも存在していない。だから、どのくらい遅れているのか、どのくらいの進歩したのか。これは、私はずっと小委で最初から申し上げていることですが、今の脱炭素社会を実現するためのカーボンプライシングのパスをはっきり示して、そのパスに比べて、今回の報告書ですとどこまでそれが進捗したのかという、はっきりとしたメジャーを持つべきではないかと思います。
この報告書では、価格帯で5年ごとに見通しをやるというのですが、5年ごとでは、とても最終的な目標まで、どこまで進んでいるのかがどうも分からないのではないかというふうに思います。
ということで、中長期のプログレスをはかる具体的なメジャーが必要で、一番明確なのはプライシングで示すことだというふうに思っております。これが2点目です。
3番目は賦課金についてですが、これまでの小委では、少なくとも議論の最初の段階では、グリーン税制ということが必要ですという御議論もあって、私は大賛成です。
エネルギー税制全体を考え直す、その中に位置づけて議論すべきだというのは、部分的にいじってしまいますと、全体的にどういうふうになるのか、経済に与えるインパクトが。
非常にはかるのが面倒になってしまう。税制全体を、グリーンを実現するために、グリーン社会を実現するための税制、望ましい姿はどうで、そして、その中で今回の賦課金というのはどう位置づけられるのか。
また、これまでの小委での議論でいうと、少なくとも地球環境対策税、これを上乗せしたらどうか、税率を上乗せしたらどうかという御提案もあったかに思えるんですが、その税制というのも取れてしまって、賦課金という非常に狭い範囲でもってその議論が収束してしまったというのは非常に残念だと思います。
もう少し経済全体の姿を考えて、グリーン税制というようなところから考えた上で構想を練るべきではないかというふうに思います。これが3点目です。
4点目は、今、移行債の話が出ていましたが、20兆円で、今逆算すると1,200円とか1,300円とか、そのような数字が行き交っていると思いますが、これも、ある意味では、悪く解釈すると、1,200円でオプティマルだと。1,200円やれば46%削減だというふうに、裏側からいうとそのように見えてしまうのですが、それは、もしそうだとすれば、明らかに足らないのではないかというふうに思います。
それから、第5点目は、これまで議論をあまりされていませんが、私は本当に脱炭素社会実現のためには、DACというダイレクト・エア・キャプチャー。これは技術進歩技術革新によりけりなんですが、これがないと、実は脱炭素は不可能だというふうにおっしゃる学者の方も随分おいでになります。私も同感いたしております。
個別の企業でも、DACでもって過去に排出した分も実は減らすというような企業も出ているというふうなことも考えますと、私は、この構想の中にDACという言葉がどこにも出てこないというのは非常に残念だというふうに思っております。
それから、6点目はマクロの経済についての見方でありますが、今日は参考資料の方で、コロナがあってどのくらい成長率が変わったかという、日本は戻りが非常に弱いんですね。落ち込んだ分を取り戻せないぐらいである。つまり、過去のトレンドよりも、コロナで成長経路が下方シフトしているんじゃないかというふうに思います。
過去10年の労働生産性の伸びは0.6%しかありません。将来の労働力人口は0.5から1%マイナスになります。成長率というのは、一番簡単なメジャーは、この労働生産性の伸びと労働力人口の伸びを足したものなんですね。
そうしますと、どうしても30年ぐらいにはゼロ成長になっていくというふうに考えた方が、私は素直なんではないかと思います。
これも脱炭素社会を考える上で、どういうマクロの前提を置くかというのは非常に重要な論点だというふうに思っております。
内閣府の方で、今日、中長期の試算というのを出されるんですが、以前ベースラインケースと成長実現ケース。成長実現ケースは名目GDP3%、具体的に言うと3.4なんですが、ベースラインは1%と言っているんですけれども、過去の名目GDP10年間の伸びは実は0.5%しかありません。政策のベースが全部3%で行われています。これは非常に大きな誤りを犯すことになるんじゃないかと思って、心配をいたしております。
最後に一つだけ質問ですが、この表の中に電動車新車販売、電動車100%というふうに記述がありますけれども、これにはハイブリッド車が入っているんでしょうか、入っていないんでしょうか。これは質問であります。
以上です。
 
浅野委員長
ありがとうございました。
それでは、石田委員、どうぞ。
 
石田委員
ありがとうございます。ようやく日本政府がカーボンプライシングの導入を決断したことは大きな前進だと思います。長年にわたり御尽力されてきた関係者の皆様には敬意を表したいと思います。
一方で、今、大野委員、岩田委員からも御発言がありましたように、2030年のNDC、2050年カーボンニュートラルの達成に向けては、現在発表されているカーボンプライシングの導入案では、まだまだ多くの課題が残されていると思います。
まず、GX、ETSについては、2023年度から試行が始まり、2026年度から本格稼働、2033年度以降に発電事業者への有償割当ての段階的導入開始というスケジュールになっていますが、このスケジュールでは2030年のNDC達成に向けては、カーボンプライシングは効果を発揮できないと懸念しています。2026年度の本格稼働時に多量排出事業者を全てカバーするなどの必要があると思います。
EUは、昨年末にETSの対象部門全体で2030年までに2005年比で62%削減をすることを決めたそうです。日本も国内外から150兆円の投資を呼び込むためには、明確な目標設定を行い、それぞれの産業分野に対する目標も明確化する必要があります。
また、欧米が2035年までに発電部門の脱炭素化を目指している中で、発電事業者への有償割当ての段階的導入が2033年度以降では、あまりにも遅過ぎると考えます。日本の製造業の競争力への重大な悪影響を懸念します。再エネなどの代替手段の転換を加速すべく、前倒しが必要ではないでしょうか。
さらに、発電事業者以外の大量排出者への有償割当ての導入についても、EUのCBAMや鉄鋼・アルミに関する米国EU間の貿易枠組みなどの国際情勢を踏まえながら、日本における投資活動等、グリーン製品の競争力強化の観点から検討していただきたいと思います。
御説明の中で、物価が上がっている中で、環境によいものは高いが、これをユーザーに選んでいただくことが必要だと言われていますが、だからこそ、カーボンプライシングより環境によいものが安くなるような仕組みが必要だと思います。
このために炭素賦課金については、社会全体に行動変容を促すために、上流に課した炭素賦課金は、炭素排出量に応じて下流に価格転換され、需要側は、より排出量の少ない製品やサービスを選択できるようになることが必要だと思います。
炭素賦課金はカーボンリーケージなどに鑑みて、GXに集中的に取り組む5年間の期間を設けた上で2028年度から導入されるということですので、その間に必要な準備が完了するように、今から準備を行っていただきたいと思います。
また、排出量取引制度における有償オークション等、炭素に関する賦課金については、同一の炭素排出に対する二重負担の防止などの必要な調整措置の導入を検討するとされていますが、GX-ETSと炭素賦課金の制度間の公平性に鑑みて、GX-ETSが自主的取組である間、または無償割当てが許容されている間は、炭素賦課金が免税されることがないようにお願いしたいと思います。
以上です。ありがとうございます。
 
浅野委員長
どうも、石田委員、ありがとうございました。
それでは、土居委員、御発言をお願いいたします。土居委員の次には、増井委員にお願いします。
土居委員
土居でございます。これまで、この小委員会を開催していただきましてありがとうございました。私としても、この小委員会で議論をさせていただくことで勉強にもなりましたし、また、カーボンプライシングが我が国でよりよく実施される何らかの一助になればなという思いで参加してまいりました。
今日、事務局からお示しされた資料について、コメントを3点ほど述べさせていただきたいと思います。
まず、GX経済移行債を起債して、それで先行投資をして、その後、カーボンプライシングの収入でそれを償還するという制度設計になったということでありますけれども、炭素にかかる賦課金は2028年度から導入することになるわけで、今後の制度設計が非常に重要になってくると思います。
2028年度から始めるということだから、2027年度までに決めればいいというような悠長な考え方では、この脱炭素化への動きと矛盾することになると思います。
脱炭素化に向けては、予見可能性、今後さらに炭素価格が上がっていくんだという、そういうメッセージ、これも非常に重要なポイントになってくるわけでありますから、できるだけ早期に、この賦課金の制度設計を国民に示し、2028年度には幾らになり、そして、2030年代には幾らになるのかという将来的な道筋を早期に示して、予見可能な形にして、そして、だんだん炭素価格が上がっていくということを多くの国民に知っていただいた上で、その賦課金として収入をGX経済移行債の償還に充てていくということが必要になってくるかと思います。
ですから、確かに耳障りの悪い話になるのかもしれませんけれども、予見可能性を高めるためには、早期に2028年度からの賦課金が、いくら、何に対して課されるのかということを示す、これが必要になってくると思います。
ですので、事務局におかれましては、何とぞ早期に、制度設計を示して、予見可能性を高めていただきたいと思います。
それから、2点目は、その賦課金に関してですけれども、私も、この小委員会の中で仕向地主義炭素税というふうに申して、仕入税額控除とか、輸出免税をすることで国際的な競争力がそがれないようにするということができるということを提案いたしました。
この賦課金は、税ではありませんけれども、ほぼ税と同じような性質を持っているということでありますから、仕向地主義的な仕組みを、この賦課金にもきちんと埋め込むということは、今後の制度設計上、可能だと思います。ですから、税ではないとはいえ、賦課金にも仕向地主義的な仕組みをきちんと埋め込んで、その賦課金が、単に、他との類似のコストと埋没するような形で、その価格転嫁がされていくというようなことにならないよう区別して、場合によっては国境では、きちんとその負担調整を行うというような形で導入されることを願います。これが2点目であります。
3点目は、GX経済移行債の償還確実性を担保することであります。
これは賦課金だけでなくて、排出量の有償割当ての収入も含んで、GX経済移行債を償還していくということになっていると承知しております。
確かに2050年までに償還するということではあるんですけれども、なかなか予見が難しいとはいえ、2030年代、2040年代に、しっかりとその財源を確保して、2050年にはきちんとGX経済移行債を償還するということができる程度に収入をしっかり確保するということが極めて重要であります。その収入確保のために、2030年代、2040年代には躊躇することなく、しっかりと収入を得られるように徹底するべきであります。
先ほどの事務局の資料にもありましたように、金利が上昇するということが今後大いに考えられるわけでありまして、GX経済移行債の起債に伴って発生する金利も、当然、今までよりはより多く利払いをしていかなければならないということになりますから、当然、その利払いについても、このカーボンプライシングによる収入によって賄わなければなりません。さらにはカーボンプライシングというのは、単に我が国の国内における排出量取引と炭素の賦課金だけで炭素価格が決まるわけではなくて、ワールドワイドなマーケットのプライシングによって炭素価格が決まってくると。
恣意的に我が国の政策によって収入確保のために高い賦課金なり有償割当てをすることになったとしても、当然のことながら、民間の経済主体はそのより安い炭素価格のものにシフトしていくということが考えられるわけでありますので、高過ぎず安過ぎないカーボンプライシングを政策として2030年代、40年代に講じていかなければならないという、極めて難しい政策調整になるというふうに思います。その点は、当局におかれましては心して臨んでいただきたいというふうに思います。
まかり間違っても、十分な収入がカーボンプライシングによって得られないからGX経済移行債が、それらの収入だけでは返済し切れませんでしたといって、他の税の補填に頼るなんていうようなことは断じて許されないことでありますので、そういうことのないようにしていただきたい。もし、そういうことが起こりそうならば、つまり、収入が足りなければ、GX経済移行債の発行を縮小するということを考えていただきたいと思います。
以上です。
 
浅野委員長
どうもありがとうございました。
それでは、増井委員、御発言ください。
その後、高村委員は挙手を引っ込められたんでしょうか。高村委員、もし御発言が御希望でしたら増井委員の次に高村委員、それから大塚委員という、この順番でご発言をいただきたいと思います。
少し時間がタイトになってきましたので、時間についてはよろしくお願いいたします。
では、どうぞ増井委員、お願いいたします。
 
増井委員
浅野委員長、どうもありがとうございます。
事務局の方には、本日GX実行会議の取組の御説明ありがとうございました。
取組が一気に進んでいるというのは、脱炭素社会への移行という面から重要かつ好ましいと思いますので、この流れが途切れたり縮小することのないようにお願いいたします。
多くの委員の方が懸念されておりました、そのプライシングのレベルですとか導入時期、これは私も全くそのとおりでございます。
現状では、これぐらい脱炭素、2050ゼロに向けて必要と、プライシングのレベルはこれくらい必要というようなイメージが常に共有できるように情報を更新する、こういった仕組みもぜひ考えていただければと思います。
GXにつきまして、報道されている内容を見る限り、また、今日の御説明もそうなんですが、どちらかというと革新的な技術ですとか、あるいは、150兆円といった大きな話が強調されているかと思います。
こういった技術ですとか、取組の規模というのは非常に重要で、特に、その核心的な技術というのは脱炭素というのを実行していくために、実現するためには欠かすことはできないんですけれども、ただ、これらの技術さえできていれば全て解決という誤ったメッセージにならないように、伝え方には十分注意していただきたいと思います。
既存の省エネですとか、断熱転嫁、こういった身近な従来から進められている取組を最大限進めて普及させるということが重要ですので、消費者の意識が変わるような仕組み制度、こういったものが必要ですので、そういったことを念頭に、このカーボンプライシングの役割等を強調していただければと思います。
また、脱炭素に向けまして取組を進めようとしているところに、きちんとお金が回る、こういった仕組みも非常に重要ですので、こちらも考えていただければと思います。
日常の経済活動でも、その環境保全といったことがきちんと意思決定に反映される、こういったことが重要ですので、プライシングとともに、その情報の開示ですとかラベリング、こういう社会変容に向けた取組の支援、トランジションを支援する制度の構築なんかも併せて、このGX実行会議において引き続き検討していただけるよう、御配慮いただければと思います。
本日の資料にもありましたが、残念ながら気候変動に対する認識の高い人は、日本にはまだ多いとは必ずしも言えない、こういった結果が示されておりました。
こうした状況を変えるためにも、本日の最後のスライドにもありましたように、脱炭素に加えて、資源循環ですとか、生態系サービスの課題と併せて検討する、こういったことが非常に重要であるというふうに私も認識しております。
地域によっては、大規模な再エネ設備が地元の自然地ですとか、景観を破壊する、こういったことのために、再エネそのものが悪者扱いされているというような例も聞いております。
地元の方との話合いを通じて、最終的な着地点を探していただくということが重要ですので、環境省におかれましても、こういったことを支援していただければと思います。
カーボンバジェットの観点から、残されている時間は多くないんですけれども、こういうきちんとした合意形成を行って、合意できたところについては迅速に対策を進めていただくという、こういうプロセスが重要ではないかなと思います。
特に、近年では気候市民会議等を通じた取組が実行されるようになっていますので、気候変動というと地球全体の話で、なかなか自分には関係ないというような意識になりがちなんですけれども、日常の行動につながっているということをきちんと気づいていただける、そういった場、あるいは情報の提供の仕方、こういったことを、ぜひ自治体ですとか企業なんかとも連携して、構築していただければと思います。
多くの委員が指摘されましたように、これから実践というふうなことが問われております。
そういった意味で、本日の資料の中で41ページのような説明というのは非常に分かりやすいんですけれども、一方で、平均的な姿というのは、多くの人と現状とは乖離するということがままありますので、実際現状においてどういった生活、どこでどういった暮らしをしているのかといったこと、こういうことによって取組ですとか、その効果が大きく変わってきますので、主体に合わせて情報をきちんとカスタマイズできる、そういうような形でミクロな行動とマクロな気候変動の問題が結びつく、そういう情報発信をぜひお願いしたいと思います。
以上でございます。どうもありがとうございました。
 
浅野委員長
どうもありがとうございました。
高村委員はよろしゅうございますか。
 
高村委員
ありがとうございます。既に多くの委員が御発言なさったことと重なっているので、簡潔に、2点だけ申し上げたいと思います。
 
浅野委員長
どうぞお願いします。
 
高村委員
ありがとうございます。もう既に、岩田先生をはじめ、多くの委員が御指摘になっている今後に向けた課題という点については、多くを共有いたします。
この委員会で、これは理論的にも様々なケースも含めて議論してきたことが、こうした形でまとまったということは、一つの到達点だと思いますし、同時に今御指摘があった課題について、この委員会でも議論してきた内容というのが反映をされることを期待をしています。
1点目の申し上げたい点は、これは、ほぼ、ほとんどの委員から御指摘があった点ですけれども、一つの到達点として評価をしつつ、国際的に掲げる1.5度目標、あるいは50年カーボンニュートラルといった目標等の達成との関係を見たときに、この制度の起動が遅過ぎないかという点であります。
これは、もちろん今申し上げた気候変動対策との関係ではもちろんなんですけれども、これも何人かの委員から御指摘があったように、脱炭素化の取組が遅れていくことというのが、これは日本の事情はあるにしても、国際的な共存にさらされている日本の企業に対する評価に大きな影響を与えるということを懸念します。まさに成長を実現するためのカーボンプライシングとして議論をしてきた中で、その点は、単に気候変動対策の遅れとしてだけでない、日本の将来の競争力に影響を与えるものとして、懸念をしています。
その意味で、これは2点目に関わりますけれども、これから制度の詳細を議論される中で、先ほど言いました、この委員会の知見も反映していただきたいというふうに思いますが、スケジュールの前倒しという点についても、一つのオプションとしてお考えをいただくのがよいのではないかというふうに思います。
今の点に関わって、この議論を進めていくときに、科学のインプット、国際的な状況、日本の対策の進捗、企業の取組、国民の取組、こうしたものをしっかり踏まえて、この制度がうまくチューンナップされながら効果を上げていくということが必要だと思っております。
スケジュールの前倒しの検討というのは、そういうオプションの一つとして申し上げるものでありますけれども、その意味で、制度設計が多角的に検討される、これは気候変動対策の観点からも、産業政策の観点からも。そして、その実際の制度の期待される進捗、実際の進捗や効果がしっかり評価される多角的なプロセスがしっかり立ち上がらないといけないのではないかというふうに思います。
これは省庁の連携が非常に重要だと、こうした知見が集まって多角的に検討される上、省庁間の連携が非常に重要だと思います。こうした制度の設計、それからその進捗管理、効果の評価、さらには、制度後のチューンナップを見越した、しっかりした制度の評価と検証管理のプロセスを省庁間の連携で立ち上げていただきたいというふうに思っております。
以上です。
 
浅野委員長
どうも高村委員、ありがとうございました。
それでは、大塚委員、御発言ください。大塚委員の次には牛島委員、さらに、それに続いて河口委員ですね。この順番でお願いいたします。
恐縮ですが、時間がだんだん押してまいりましたので、3分以内でお願いいたします。
 
大塚委員
大塚です。3点簡単にお話しして、それから1点は質問です。
1つ目は、こういう形になりましたけれども、カーボンプライシングのある形ができたということはよかったというふうに思っています。特に90年代の初めぐらいから環境省の方ではカーボンプライシングの検討は何らかの形で始めていましたので、ほとんど全て関わってきましたけれども、どういう形であれ、カーボンプライシングができたことはよかったと思っています。
ただ、今まで委員の先生方がおっしゃったことは私も同感のところが多いですけれども、特に、償還財源として2050年までにカーボンプライシングの徴収を考えていますけれども、GX経済移行債は2030年までの対策に用いることを考えていますので、30年代40年代にさらに移行債のような大規模支援をすることは今の考え方だとできなくなると思います。そういう意味で世代間の衡平に配慮したものとは言いにくいところがありまして、極めて基本的なところで、そういうずれが発生していることが大きな課題ではないかということを一つ申し上げていきたいと思います。
それから2つ目ですけれども、カーボンプライシングと必ずしも関係しませんが、そちらの方の話も考えるようにということでございますが、公正な移行に関しては森澤委員がおっしゃったことは私もそのとおりだと思っているところです。確かに、日本には化石燃料の採掘とかはないんですけども、化石燃料の輸入をされている事業者の方たちに、どういうふうに移行していただくかは結構大事な問題でして、水素、アンモニアの話も出ていましたけれども、気をつけないと、今までの輸入の方法を別のものに変えて事業を存続させていきたいという意向をお持ちの方々に、公正な移行をしていただくことをぜひ御検討いただく必要があり。これは大いに産業に関わることではありますが、環境省としても、そういうことを考えていく必要があるという意味では、アメリカとかポーランドとは違うことは違いますが、別の意味で、今まで化石燃料に関わっていた、あるいは輸入とかに関わっていたところも含めて、別の形での移行を考えていかなければいけないということだと思います。
脱炭素アドバイザーの認定というのも非常におもしろいなと思いまして、環境省も、できたら関わっていただくといいと思います。昔の公害防止管理者に若干似ているところもありますし、さらに地球温暖化防止の推進員にも少し関連するところがあると思いますので、そういう観点で進めていっていただけると大変結構だと思っております。
3点目ですけれども、小西委員が言われましたが、この会議が休眠状態になるかということもあるようですが、この会議自体はどうなるはともかくとして、カーボンプライシングの問題はエネルギーの問題にもちろん関連しますけれども、環境の問題でもありますので、環境の観点から、カーボンプライシングについて、発言したり議論していくことは極めて重要、当たり前のことだと、ここの委員の方たちは思っていただけると思いますけれども、重要でございますので、何らかの形でカーボンプライシングの検討は環境省の中で会議をつくっていっていただけるとありがたいということを申し上げておきたいと思います。
最後に質問ですけれど、今回の排出枠取引について、2023年は自主的な参加だと思うんですけど、2026年についても、先ほどのスライドだと14ページだと思いますが、参加企業の自主性に重きを置く中でと書いてあるので、これは大野委員も少し発言されていたことだと思いますけれども、これは2026年になっても自主的な参加を続けるという御趣旨でしょうか。これは質問としてお伺いしておきたいと思います。
以上でございます。
 
浅野委員長
大塚委員、どうもありがとうございました。
それでは、牛島委員、お願いいたします。
 
牛島委員
ありがとうございます。既に多くの委員から指摘されていますので、できるだけ手短に済ませたいと考えております。
ようやく機が熟し始めたということで、それなりに具体的なスケジュール感が出てきたと考えており、その点ではまずはよかったと感じております。
しかしながら同時に、なぜここまで遅くなったのか、というのは率直な印象です。
この間、ウクライナ情勢をはじめコロナ禍もあり、情勢としてはよい時期を待つどころか状況はむしろ悪化の一途をたどっており、タイミングを逸したようにも感じられます。
そういう意味では今回の計画において、26年以降の排出権の取引や28年以降の賦課金が示されておりますが、遅ければ遅いほど我々が取り得る選択肢は狭まってくると考えております。
こうしたところに何が懸念があるかということですが、これも他の委員から既に御指摘いただいたとおりでして、政策の遅れが日本の、特に企業の国際的な競争力に影響を及ぼすだろうと考えております。
日本企業においては、TCFDやCDPの分野では世界トップクラスの取組が認識されておりますが、一方で経済の面で言えばなかなか成長し切れていない、国際的な評価は必ずしも高いわけではないということです。
一方、ヨーロッパではCSRDやCBAMという形で気候変動をはじめとするサステナビリティに対する開示、あるいは貿易政策、関税問題が統合され始めており、日本においてもグローバル企業では、本社では感じ得ないプレッシャーを彼らの海外拠点では既に感じ得ており、むしろ、海外拠点の取組の方が先行し始めているという現状です。
したがいまして私から申し上げたいのは、ぜひともこの取組を加速させてほしいということです。
25年もしくは30年をターゲットに、各企業はいろいろな施策を打っていると思いますが、26年からあるいは28年からのスタートではあまりにも遅いのでないかと感じています。
今後の社会実装あるいは制度設計において、ぜひ留意していただきたい点ですが、既に気候変動というテーマについては科学の問題だけではなく、経済や貿易問題であり、さらには安全保障の問題でもあるということです。
したがいまして、環境に対する負荷を下げて新たなモデルをつくっていくことは一丁目一番地ではあるものの、その制度設計においてはぜひとも国際的な視点、経済や貿易、安全保障のアングルで物事を見ていく必要もあると考えております。
産業保護の観点だけではなく、今後、将来の日本経済の新陳代謝、日本経済を牽引するための新陳代謝という面でもこうした問題を様々なアングルで統合し、より加速した取組になることを期待します。
 
浅野委員長
どうも、ありがとうございました。
では、河口委員の御発言をお願いいたします。
 
河口委員
ありがとうございます。手短に。
今までの委員の方々の「遅いのではないか」ということに関しても、全く賛成です。基本的に、3年以内である程度のことが出来上がっていないと、国際競争力強化という実効力という面では全く機能しないんではないかなというふうに思います。
一方で、賦課金制度と排出量取引というのを組み合わせたということで、賦課金は後からということですが、排出量取組ができることで、そこで値段というものが実際に出てくるので、これを多くの企業やら民間のいろんな商品の中に、みなし環境税みたいな形で自主的に取り組むような仕組み、それを取り込んだ経済的な判断ができるようなものを先行してつくるですとか、そういう工夫というのがあるんではないかなというふうに思います。
それから、もう一つ、遅くなると懸念すべきことは、今のカーボンを出している産業ですとか、こういうものがカーボンを出しているから、これを止めようとかいう技術にはないような新しい治験ですとか科学的なものが出てくるんであろうと。
例えば、農業でいえばメタンの排出というのが二酸化炭素よりもよっぽど大きいのではないかと。計測されていなかったけど、そちらが大きいのではないかなんていうレポートも最近出ていますし、農水省の方では、農産物にカーボンラベルをつけるみたいな動きもしていますし、それからあと、土壌から出てくる吸収力なんて言うのも実は大きいのではないかというふうに言われていますので、今までない知見がカーボンの部分、気候変動のところにも出てくることが考えられます。
あと、プラス、ネイチャーポジティブの部分を、どうここのカーボンプライシング、カーボンニュートラルと結びつけようかという動きも出てきますので、そういった新しい動きに対して対応できるような制度設計にしていただかないと、これはこれ、それはそれ、ではないような柔軟な制度設計ということをぜひ考えていただきたいですし、それも、今スタートしているところですから、ほぼ同時並行でやるぐらいの勢いでないといけないと思いますし、特にネイチャーポジティブということになりますと、やはり環境省の強みというのが出てくると思いますので、そこで、ぜひ発言力を強めていただきたい。
最後にもう1点、寒波が来るということで、テレビのワイドショーとかを見ていると、どうやって省エネをするんだみたいなことを山のようにやっていて、環境省がライフスタイルを変えるとかいう前に、もうみんな物すごい勢いで、いろんな知恵とか、テレビとかSNSとかで拡販して、みんなやっているということがあるので、逆に、この寒波ですとか、エネルギー価格の上昇というのは、個人の生活ですとか中小企業には非常にマイナスなんですけれども、これが省エネに対するマインドを高める、ある意味、それを機会として、よいチャンスとして使うような、そういった戦略性、国民のライフスタイルを変えるなんていのも、こういう機会をうまく活用するというようなノウハウも、これからどんどん柔軟に入れていっていただければなと思います。
以上です。
 
浅野委員長
どうもありがとうございました。
有村委員、お願いいたします。その後、前田委員、手塚委員の順番でお願いいたします。
有村委員、どうぞ。
 
有村委員
ありがとうございます。まず初めに、4年22回に関わって委員長をしていただいた浅野先生に御礼申し上げたいと思います。本当にお疲れさまでした。
私の方から何点か申し上げたいと思います。
まず、この委員会でこれまでいろいろ話してきたことが、間接的にかもしれませんが、政府の方に届いてカーボンプライシングが制度設計されたということは、とてもうれしく思っております。
それで、それに関して、まず賦課金について申し上げたいと思います。
排出量取引の方は、既にGX、EDSという形で少し制度設計がもう出てきていて、いろんな形が出てきているわけです。ここに御参加のいろんな先生方と一緒に私も制度設計に参加しているんですけれども、一方、賦課金の方は、まだ金額がどのくらいになるかという話が出てきておりませんので、ぜひ、政府の方では、この賦課金に関して早めに価格のレベルを示すとか、全体像を示すということをやっていただきたい。
それから、大野委員からもありましたけども、今後、賦課金をエネルギー関係の諸税と含めて全体像を話すような場というのは政府の方で設けていただきたいなと思います。
2点目は、環境省がやられている事業に関してのお願いということに関してです。
まず、Jクレジット、JCMというようなものを環境省さんもされていますけれども、そういったものが、先ほど岩田委員からあったDACというか、そういった新しい技術の開発につながるような形で、今後、制度設計が進んで行く。それから、事業者がやりやすい手続の簡素化みたいなものが進んでいくということを期待しております。
3つ目は、既に環境省さんが取り組まれている地域脱炭素に関して、いろんな委員からお話がありましたが、やはり、SDGsの「No one left behind」という話がありますけれども、いろいろな地域があって、まだ必ずしも脱炭素というところに、そこまで深く入ってきていないかもしれない、そういった地域も取り込んでいくような形で地域脱炭素というのを進めていかれるということがとても重要ではないかと思いました。
それから、4番目は消費者に関することで、安田委員なんかもおっしゃっていましたけども、消費者の選好というのが今後変わっていくかもしれない、そういったところに環境省が何らかの形で関与できたりするようなこと、あるいは、していくべきではないかなと思っています。
カーボンプライシングが導入されたときに、物によっては、炭素が出るものは値段が上がっていく、あるいは、新技術に対して値段が上がっていくような製品なんかも出てくるかもしれませんけれども、そういったことで、環境に対する商品の値段の上昇に対して、消費者が支払う意志を、ちゃんと支払いをしてくれると、そういった社会になっていくと、そういった消費者を育てていくというようなことも必要なのではないのかなというふうに考えております。
これでちょうど3分になります。ありがとうございました。
 
浅野委員長
どうも御協力ありがとうございました。
それでは、前田委員の御発言をいただきます。よろしくお願いいたします。
 
前田委員
東京大学の前田です。
今日の皆様方のお話を聞いていて、総論賛成、大体の方向性として賛成、その上で、苦言も幾つかあるというようなご意見が多いように思います。
そうしたご意見については、私は、なるほどなと思う議論もあるし、そうはいってもという議論もあるところです。そこで、少し話を戻しまして、今日の資料の一番最後、本日御議論いただきたい事項というところに戻って、思うところを述べたいと思います。
というのは、成長志向型カーボンプライシング構想が効果的に社会に実装されていくにはどのような点に留意が必要か。それから、そのカーボンプライシング構想は他の多くの炭素中立型社会とか循環経済とか、あるいは自然再興とかに関連する。これを、こうした他の分野に応用できないかというようなところが重要な論点だというお話だったと思います。
これに関連してですけれども、今回のこのカーボンプライシングはGX、Green Transformationの脈絡と枠組みの中で、ある程度まとまり、方向性が定まったように思います。そして、このGXの構想自体というのは、2030年あるいは50年に向けての戦略、50年まで見ると四半世紀に及ぶような戦略になっているわけです。
これは大変すごいことで、異例なことであり、こうした長期にわたって政策を維持し、また、同時に社会にこうした政策が受け入れられ続けるということは、なかなか大変なことだと思います。つまり、政策はつくりました、5、6年たったら政権も変わっちゃいました、人も変わっちゃいました、それで全部なかったことにということも普通はあり得なくはないわけです。そこで、長期にわたってこの政策が維持されると同時に社会に受け入れられるということが大事ということになります。
そのためには、もちろん、この政策の根本であるとか骨格であるとかがきちんと貫かれて、その上で、さらに社会の情勢に応じて柔軟にマイナーチェンジをしていく、されていく、あるいは見直しの機会というものがあって、その見直しが実施されていくということが大事だと思うのです。しかし、それは恐らく、今後、通常国会に関連法案を提出していくということだそうですので、その法案に落としていく段階で、そうした今後の方向をきちんと維持していくこと、それから、柔軟なマイナーチェンジを担保していくことみたいなことも予算と法律条文の中に盛り込まれていくのだろうというふうに思います。そういうことは十分、事務局の方々、役人の方々、政府関係の方々はお考えになるんだろうなというふうに思います。ですのでその点は少し安心はしています。
一方で、そうしたことの背景としてもっと大事なこととしては、概念的なことが重要だろうと思います。概念的な面がしっかりと継続して行くことです。今回のGXというのは、カーボンニュートラルであるとか、あるいは脱炭素といった、これら自体は目標ですが、この目標に対して、目標達成に向けた戦略というニュアンスを含んだ概念になっているんだと思うのです。このGXという言葉自体は、そんなに古くはなくて、最近出てきたもの。だけど、この言葉の下にこれまでの多くの事柄がいろんな形でまとまったんだろうというふうに思います。これは素晴らしいことですが、ただ、これがいつまで続くかというのは、なかなか不明であって、10年くらいしたら色あせてしまって、昔こんな言葉があったよねみたいな古臭い言葉というふうに捉えられるようなこともあるかもしれないです。そうした場合、この全体のプランというのがだんだん色あせてきてしまうわけです。そこで、やはり概念のマイナーチェンジとか、あるいはリビジョンというのがある程度必要というふうに思います。
何を隠そう、このカーボンプライシングについても実はそういうことがずっと起こってきています。昔はもちろん排出権取引あるいは排出量取引、それに加えて炭素税だけだったんですが、それが2013年頃からだと思うのですが、カーボンプライス、カーボンプライシングという言葉が一般的になって全体を包含する拡張概念のようになり、さらに、今回、成長に資する、あるいは自主的という、枕言葉が乗っかって、それで多くの人々の賛同が得られるようにきれいにまとまってきたというふうには思います。
同様に、トランジション・ファイナンスだとか、サステナビリティファイナンス、こういった言葉も比較的最近で、特にトランジションというのは、エナジートランジションという言葉が10年くらい前からエネルギー専門家のコミュニティのなかでありました。それが最近になってやっと一般的なものとして出てきたように思うんです。
私個人のことで恐縮ですが、10年くらい前に環境技術の転換ということについて英文で論文を書いたときに、トランジションという言葉を使うことに随分と思案したことがあったんです。
経済学ではテクノロジカルチェンジという言葉が一般的に使われる用語ですから、それに対して少し新しいタイプのテクノロジカルチェンジというニュアンスを論文の中で主張したかったのですが、それを表すのにトランジションという言葉を使っていいかどうか、その言葉で新しいタイプの変化であると理解してもらえるかと大分悩んだんです。結局そのように使って、それで、ちょうどその時期からこのトランジションという言葉がだんだん流行ってきたように思うんですね。
こうしたことを振り返ってみますと、概念を表すわかりやすい言葉というのが大変重要だということなのです。戦略的に上手に言葉を選んで、時代に合ったグランドデザインを提示するような概念用語としてきちんとつくっておく。そして、それを時代に合わせて微妙なマイナーチェンジ、リビジョンさせていく。そのたびにスコープを広げ、範囲を広げ、それからフォーカスを時代にあわせて微妙にシフトさせていく、そうした作業が重要なことかと思います。特に時代の変化にあわせてスコープを広げフォーカスをシフトさせていくというがポイントで、これこそが、先ほどの本日御議論いただきたいところ、「他の分野に応用できないか」といった、こういうところにも関連してくることだろうなというふうに思っています。
ヨーロッパの方々というのは、結構こういう概念づくり、あるいはその概念のリードというのが大変上手で、大体、ヨーロッパ発の新しい概念というのが世界に広まっていくということがありますけれども、こうした概念づくり、そして、時代に合わせていった調整というのを、国内のみならず国際的にも認知されリードしていくような形で提示できる、あるいは提示し続けることができるとしたら大変よいことだろうと思います。そうしたことのできる人材というのが、この審議会の関係者、つまりこの審議会を主導された役所の方々、それから政治家の方々、そして、この審議会委員の方々の中から出てくる、それよって本委員会の議論が今後長期に渡って発展していくことを期待したいと、こういうふうに思います。
以上です。
 
浅野委員長
どうもありがとうございました。
それでは、手塚委員、佐々木委員、遠藤委員、この順番で御発言いただきます。
手塚委員、どうぞ。
 
手塚委員
手塚です。どうもありがとうございます。
いただいているお題目がこの戦略の課題についてコメントということだったので、3点ほど、課題について、お願いも含めてコメントさせていただきたいと思います。
まず最初に、このGX実現に向けた基本方針ですけども、これは非常によくできたパッケージだと思います。
前田先生もおっしゃったように、非常に長期にわたり日本国家の経済成長軌道に再び乗せるための壮大な枠組みが提示されているというふうに認識しています。
そのための肝が、支援を先行させて、そこから出てきた様々な成果を投資に結びつけて、その投資が経済を成長軌道に乗せて、その成長軌道に乗った経済からカーボンプライシングという仕組みで、最初の支援に使われるお金の償還原資をねん出するという構造になっているという、こんな一貫したストーリーなんだろうと思います。
足下は、御案内のとおり、ウクライナ情勢からきているエネルギーインフレでもって日本経済全体が今疲弊していて、特に政府は、電力、ガス、ガソリン、こういった化石燃料由来のエネルギーに対して巨額の補助金を出すという状況にあるわけですね。これはまさに、カーボンに対するマイナスのカーボンプライスをかける形になっているわけなんですけれども、現時点で、巨額のカーボンプライスを経済にかけるということが受け入れられる土壌にないということの証左だと思います。
そういう意味で、今回のパッケージは、まず化石燃料に依存しないで回せる社会に必要な様々な基礎的な技術、イノベーション、こういったものを、これから10年間集中的に開発して、さらにそれをコストを下げ実装していく目途を立てていく、こういうことなんだろうと思います。
それができた暁に、それを日本社会に実装していく段階で、カーボンプライスというインセンティブシステムを使う。さらに、そこで実用化され、日本の中で投資が行われていくということと併せて、その技術を使って日本の産業が世界に対して競争力を持って稼いでくる。これが今回のパッケージの成長シナリオなんだろうと思うんですね。
その中で、幾つか前提となっている条件があると思います。そこをよく見て実行をしていく必要があるだろうと思います。
その支援ということで言いますと、私ども鉄鋼産業も、既にGI基金から巨額の支援をいただきまして、2030年頃までに実用化できるような様々なカーボンニュートラル製鉄技術の開発を複線的に開始しております。
「もっと早く」というお話が何人かの先生から出ていますけども、実際に研究開発を、実験段階の設備をつけて、それが動き始めるのがですね、2024~5年ぐらいになってきます。
その段階で、ステージゲートという形で、その技術がどういうふうにものになるか、ならないかということを判断いただいて、さらにそれを工業レベルのものに規模を拡大し実装していくための試験を2030年頃までに行っていくというシナリオですので、非常に時間がかかるんです。これは、鉄だけではなくて、恐らくエネルギーインフラ、あるいはその他、様々な素材産業等も同じような道筋を通っていくと思います。
今回の政府の資料の中にも、「道行き」という非常に細かな技術のリストが併せて参考資料として出されていますけども、これについて不断の見直しが必要になってくると考えます。
技術だけではなくて、三つ見直すポイントが必要になってくるんですけども、少なくともこういう技術に関してはどの技術がものになるか、ならないか、あるいは実際に工業レベルまでもっていけるか、いけないかという判断が、これから数年間の間にスクリーニングがかかってくる。それを前提に、さらにその次の実用化プロセスでどこまで巨大化していけるかというような道筋を通っていかなければいけないということで、今回の方針の中に掲げられているいろいろな技術あるいはパッケージも、不断の見直しが必要になってくるだろうと思います。
加えて、それに基づいて出てきた製品が本当に市場に売れるのかという問題もあります。グリーンだけども、コストは上がってしまいますというような製品も当然出てくるわけなんですけども、これが、喜んでその価格を払って、投資に見合った価格で買ってくれる国内あるいは国外の需要が形成される、そのスピードが技術開発のスピードとマッチングしている必要があります。そうしないと、技術はできたけども売れないんであれば設備投資ができないと、こういう問題が生じる。これをファインチューニングしていく、あるいは、この市場形成が遅いんであれば、どうやってこの市場形成を加速化させるかと、こういったことの政策も併せてやっていただく必要があると思います。
最後にもう一つの不確実性として、国際情勢が今非常に、流動的になっております。前回のこの委員会で申し上げましたけども、カーボンプライシングをネガティブインセンティブにして政策を進めていくと言って世界をリードしてきたEUに対して、アメリカはインフレ抑止法というカーボンプライスを掛けずに、CPゼロでもってグリーントラスフォーメーションをやるという政策を4,000億ドル近い資金をつぎ込むとしてで発表されているわけです。
これは、EUの方にとっては激震が走っているわけです。アメリカはカーボンプライシングゼロで行くという政策ですので、EUの方の政策も見直しをかける必要があるんじゃないかという議論が中で行われていることは私も承知しております。
したがいまして、今、世界で言われているような政策が額面通りに進んで行くわけでは恐らくなくて、様々な変化、変更が行われるということも想定されますので、これも見据えて、このGX実行戦略は不断の見直しをかけていく必要があるというふうに思っております。
そういう意味では、あまりぎちぎちに枠を決めた政策でもって進めるんではなくて、柔軟で軽やかに変更が可能なような建てつけにしておいて、状況によっては身軽に新しい方針に切り替えていくといったことも必要になると思います。
2点目の要望は、それをやっていく際に、アメリカでやっているとおりに、国内に投資が行われるような仕掛けも同時に必要になってくると思います。
150兆円の投資が誘発されるんですけども、この投資が国内ではなくて海外に行われてしまうと、日本国内の経済の成長には直接的につながらない。
したがいまして、どういう投資環境、経済インフラが日本の中に整う必要があるか。それはエネルギーインフラであり、人材インフラであり、そういったものが全部必要になってくるんですけども、こういうものを併せて、その政策として用意していただく必要があると思います。
3点目が、このGX実行戦略と同時に発表されているエネルギー戦略の中で、原発の再稼働と新設・リプレイスという項目が入っております。
これは、GX実行戦略と表裏一体の構造になっていると考えておりまして、この原発の再稼働、つまり、既に日本の中に存在している脱炭素電源、これはエネルギーコストの低減とエネルギー安全保障の向上に同時に供することができる既に存在しているインフラなわけです。これを可能な限り速やかに再稼働を進め、さらにリプレイス、新設を行うということを同時に実施する。これが、実はGX実行戦略を行う際の政策的な財源になってくると思います。
こちらが崩れてしまうと、実行戦略の方も大きくブレーキがかかってくるという構造だと思いますので、合わせてこちらも確実に着実に進めていただきたいと考えております。
私からは以上です。
 
浅野委員長
どうもありがとうございました。
佐々木委員、それから遠藤委員の順番で御発言いただきたいのですが、恐縮でございます。12時に終わる予定でございましたが、15分ほど延長をお願いいたします。よろしゅうございましょうか。よろしくお願いいたします。
それでは、佐々木委員、遠藤委員どうぞ、お願いいたします。
 
佐々木委員
ありがとうございます。浅野先生並びに環境省の事務局の皆様、本当に、これまでの御尽力に感謝を申し上げます。
私から数点お話をさせていただきます。
まず、今般のGX実現に向けた基本方針に示されているとおり、GXを推進していく上でもエネルギーの安定供給の確保は大前提であります。
資源に乏しい我が国におきましては、安全性の確保を大前提に、エネルギーの安定供給、経済効率性及び環境への適合の同時達成を目指す、いわゆるS+3Eの観点が非常に重要であることには変わりなく、そうした中で、エネルギーの安定供給を第一にGXに向けた取組を進めていく必要があると考えております。
この大前提の下、私ども電気事業者としましては、供給側の電源の脱炭素化と需要側の電化を進めておりまして、引き続き、最大限の排出削減に努めてまいる所存であります。
特に、電化に関しましては、本日の資料にも中小企業の脱炭素化が重要との御説明がありましたが、中小企業における電化は資金面もハードルの一つになっていると推察されるため、政府による積極的な支援をお願いしたいと思います。
次に、本日の議題でもある成長志向型カーボンプライシング構想の効果的な社会実装のための留意点も含め、カーボンプライシングの今後の制度設計に関してお願いしたいこととして、2点申し上げます。
1点目は、コスト負担の在り方についてであります。
GX実行会議におきましては、多くの有識者の方々から、社会全体でのカーボンプライシングの公平な負担や、その仕組みの構築の必要性について意見があったと認識しております。
成長志向型カーボンプライシング構想を社会実装していくためには、国民一人一人が温暖化対策に対して当事者意識を持つということが不可欠でありまして、そのためには、社会全体で必要なコストを公平に負担していくということが重要であります。
ぜひとも、カーボンプライシングをはじめとする温暖化対策のコスト負担に対する国民理解醸成に向けて、国が率先して国民理解を得る努力を行っていただきたいと思います。
2点目は、エネルギー間の公平性についてであります。
発電事業者への排出量取引の有償オークションの具体的な制度設計に当たりましては、カーボンニュートラルに向けて不可欠な電化の推進を阻害しないよう、エネルギー間の公平性を確保することが極めて重要でありますし、同一国内で炭素価格が複数存在することにより、制度が複雑化することを回避することが必要であります。
このため、有償オークションの落札価格と、炭素に対する賦課金の炭素価格が均衡化されるよう、検討いただきたくお願いいたします。
加えて、カーボンプライシングとその効果や負担が重複するFIT、高度化法、省エネ法の火力発電に関するベンチマーク指標など、既存制度との関係整理についても必要であると考えているところであります。
最後になりますけれども、成長志向型カーボンプライシング構想は、日本の成長に資すること、電力の安定供給を阻害しないこと、受益と負担のバランス等を踏まえた制度とすることが望ましいと考えております。
今後の具体的な制度設計におきましては、関係業界にも意見を聞くプロセスを経るなど、丁寧かつ慎重な議論を行っていただくとともに、その時々の状況に応じて不断の見直し検討を行い、柔軟に対応していただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
私からは以上です。
 
浅野委員長
遠藤委員どうぞ、御発言ください。
 
遠藤委員
長い期間、有識者の皆様と議論を重ねることができまして、大変勉強になりました。ありがとうございます。
エネルギー政策研究に軸足を置いておりますので、その点から、改めて申し上げる次第でございます。
ロシアによるウクライナ侵攻後のエネルギー危機を踏まえて、日本政府が、エネルギー安定供給が何よりも優先されるべきものであるということを現実視し、エネルギー環境政策を再構築しようとしている姿勢に賛同しております。
DXの進展やEVの普及で、電力の消費量というのはますます増大が見込まれます。その中、気候変動の観点でも、原子力が将来にわたって重要な発電オプションであることを再確認できたことも大変意義のあることだと思っております。
一方、原子力の再稼働を進めたとしてもなお、昨今の資源価格や電力価格の上昇が経済環境を大きく悪化させるシナリオは重たく、気候変動問題への対応がそれに大きな影響を与えるカーボンプライシング制度の設計については、現実問題としては、いま今行われることに対しては難しいと考えております。
経済成長に資するという可能性は否定したくないのですが、2030年にCO2を46%削減するためには、GDPの損失が30兆円発生するという試算もあります。今回の政府方針は長期を見据えたもので、そういった経済影響についても十分配慮されているものと思われます。
気候変動問題は、あくまで地球規模課題であって、一国の突出した取組だけでは解決できません。日本はアジアの脱炭素化をリードする技術の貢献、具体的には、例えば、これらの諸国で、まだまだ増加する火力発電の高効率化、これに寄与することが、まず政府事業者、金融機関において再検討されるべきだろうと具体的には考えております。
GXでも原子力と並んで重要視されている再生可能エネルギーにつきましては、普及の拡大期を経て、その制度の見直しが図られようとしていますが、基幹電源の一つとされた今、その供給責任というものは非常に重くて、系統の安定への貢献とか、自然環境保護とか、廃棄物の処理であるとか、そういった面の制度整備もさらに必要であると思います。
その点につきましては、環境省の真骨頂でありますし、果たす役割は大きいと思われますので、引き続き御尽力を大変期待しております。
以上でございます。
 
浅野委員長
神野先生が会場にいらっしゃいますので、神野先生の御発言をお願いいたします。
 
神野委員
ありがとうございます。
迷い人に道案内をするときに一番重要なのは、あなたの目的地はこっちですよと方向を示すことだと思うんですけれども、一応、今回、方向性みたいなものを示すことができたんじゃないかというふうに思っております。
浅野委員長に対して、私は全然手助けをできなかったんですが、適切な浅野委員長の御指導と、委員の皆様方の献身的な御協力、さらに、事務局の努力によって成果が出たというふうに考えております。
中身といいましょうか、内容につきましては、岩田先生が極めて網羅的、体系的におまとめいただいているので、重要な課題が残っているんだろうと思います。
今後、画像、絵に描いた像に息を吹き込んで、操作像として動かしていくわけですけれども、その点で、いろいろローリングさせていかなくちゃいけない問題や、注意すべきことがたくさん出てくるんだろうと思いますが、そのときに、私が個人的に考えている感想めいたものを申し上げれば、目的をまず見失わないということだと思うのです。
そもそもの環境問題というのは、人間の命をどうやって守っていくか、人間の生活を守っていくかという問題だと思うんですけれども、これを、生産面といいましょうか、経済面から入っていくということをすると、幾つか大きな問題点などが生じる場合があるということを覚悟しておく必要があるかなと思っています。
私たちは、これで重要な経験をしたのは、コロナパンデミックだったと思うんですが、コロナパンデミックに襲われて一番重要なのは、人間の命ですので、人間の生活活動です、守らなくちゃいけないのは。
そうすると、生産活動、経済活動の方は、これは制御せざるを得なくなるという問題にぶつかったんだと思います。
人間の生活活動をうまく守れれば守れるほど、経済活動を抑制したり、生産活動を抑制することは少なくて済む。日本は残念ながら、御存じのとおりに、2020年にコロナの財政出動を世界各国に行うわけですけれども、アメリカと匹敵するぐらい大きな財政出動をしたということですね。せざるを得なかったということですね。
これは制御するということが非常に必要になった。実際には患者数は人口当たりで見ても二桁少ないにもかかわらず、そういうことになってしまったということですね。
私たちがこれからやろうとしていることは何かというと、生活面において、人間の生活、生活様式を変えたりしていくということだということを忘れてしまうと、制御してもなかなかうまくいかなかったり、それに対して、かかる経費が非常に大きくなるという危険性があるのではないかというふうに思っています。
その意味から言うと、今後動かしていく上で重要な点は、私たち人間の生活というのは特に地域において自然環境と人間の環境をいかに調和させていくかということを考えていくので、生活面でのことが一番重要なんだということを意識するということが重要だと思いますので、今日の御説明で、今後の方向として取られた、最初に、これはうたわれていることだと思いますが、脱炭素につながる新しい豊かな暮らしをつくる、国民運動を生活面から起こしていくということが一番重要なんじゃないか。コロナパンデミックでも、国民運動によってコロナパンデミックを克服しようとした北欧の方が圧倒的にうまくいっているし、私の認識では経済活動を抑制する、もう小さくするんだということを考えれば、こうした生産面からのアプローチに対して、生活面から、生活様式の面から直接運動を起こしていくということが、今後、炭素を単に数字的に抑えるという話ではないので、つまり、自然環境といかに調和した人間の生活様式をつくり出せるかという問題ですので、そういう方向を見失わない限りにおいても重要なのではないかと思いますので、私は、こうした方向を、上から、国際的にこう決まったからとトップダウンで下ろすのではなく、下からの運動として盛り上げていくということが、ボトムアップでつくり上げていくということが重要なのではないかというふうに思いました。
とりあえず、行き届かなかったのですけれども、浅野委員長と委員の皆様方、それから事務局の皆様に感謝を申し上げて、私の最後の言葉にさせていただきます。
 
浅野委員長
どうも神野先生、ありがとうございました。
今日の御発言の中で、小西委員、岩田委員、大塚委員から御質問がございました。
この点についてごく簡潔にお願いしたいのですが、事務局からお答えをください。
 
波戸本環境経済課長
事務局でございます。環境経済課長でございます。本日も御意見、ありがとうございました。
小西委員から、今後カーボンプライシングの詳細設計について、どのような場で議論を行うのかということでございました。
この辺りは、まだ詳細が決まっておりません。いずれにしても環境省としてもしっかりと詳細設計について考え方を示していきたいと思っておりますので、本日の御意見を踏まえまして、しっかりと考えていきたいと思います。
それから、岩田先生から、これは資料の11ページになるんですが、乗用車の新車販売でも電動車100%、蓄電池の関連の資料で出ている文言でございます、この電動車について、これに何が含まれるのかということだと思います。これはハイブリッド車も含まれるということでございます。
最後に、大塚先生の方から、排出量取引が、2026年から本格稼働するわけですけども、この参加者というのは自主的なのかということでございます。
これは自主的だというふうに理解しております。
一方で、この資料14ページになりますけども、本格稼働以降、さらなる参加率の向上に向けた方策ということで、自主的ではありますが、しっかりと参加率を上げていくということも念頭に置いた取組になっていくというふうに理解しております。
以上でございます。
 
浅野委員長
どうもありがとうございます。
上田統括官から発言の御希望を承っておりました。
どうぞ、上田統括官、お話をお願いいたします。
 
上田統括官
上田でございます。本日も活発な御議論をいただき、感謝を申し上げます。
この小委員会は2018年に設置をされ、以来、4年半にわたり委員の皆様にはカーボンプライシングの活用に関し熱心に御議論いただいたところでございます。
この4年半の間に、我が国は2050年カーボンニュートラル、これを宣言し、この目標達成に向け、従来の対策の積み上げだけでなく、産業構造や経済社会を大きく変革していく取組の必要性が一段と高まったと認識しております。
昨年末に政府が取りまとめた成長志向型カーボンプライシング構想は、本小委員会における議論の積み重ねが具体となったものであり、これまでの委員の皆様の貢献に深く感謝申し上げたいと思います。
これからは、本構想の詳細設計を詰め、実行に移していく段階であります。
環境省としては2030年目標、2050年カーボンニュートラルを達成するため、本構想の具体化の議論に参加していくとともに、地域や中小企業の脱炭素支援、国民の行動変容の促進において中心的な役割を果たすことにより、本構想がより一層効果的なものになるよう、尽力してまいりたいと考えております。
本小委員会はカーボンプライシングの活用に関する検討において重要な役割を果たし、成長志向型カーボンプライシング構想の取りまとめをもって、その役割に一区切りがついたものと考えていることから、当面、この小委員会の開催を今後行うということは予定は、事務局の方ではしておりません。
今後、また議論が必要になった場合には、改めて各委員に御相談することとしたいが、まずは、これまで22回にわたり熱心に御議論いただいた委員の皆様に対して、改めてこの場を借りまして深く感謝申し上げたいと思います。
ありがとうございました。
 
浅野委員長
どうも、統括官、ありがとうございました。
本日は時間が延長してしまいましたが、活発な御議論をいただきまして、本当にありがとうございます。
考えますと、2018年7月30日に第1回を開きまして、1年間11回にわたって、かなり精力的に御議論いただきました。2019年8月には中間的整理ということで、それまでの議論の論点を整理し、今日の議論のための下ごしらえができたと思っています。
途中1年間くらい休みましたが、再開後も、2021年2月1日から本日まで熱心に皆さん方の御議論をいただきましたことを、大変感謝申し上げたいと思います。
この議論の積み重ねがありまして、政府の基本方針の中にカーボンプライスがしっかりと位置づけられたのではないかと思います。
今後、政府におかれましては、成長志向型カーボンプライシング構想をしっかり実装していくための検討を進めていただきたいと思います。
本日も、委員の皆様方の多くの方々から、スケジュールは可能な限り前倒しにする必要があるし、準備についてはとりわけ急いでほしいという御議論がございました。
また、環境の観点から、カーボンプライシングに対する発言を環境省が引き続きしっかりやっていくことがとても重要であるということについても、多くの方から御指摘がありました。私も同感でございます。
今後、政府におかれまして、成長志向型カーボンプライシング構想を実装していくということのための検討に当たっては、ぜひ、今日の委員の発言も生かしていただければと思います。
2030年目標、2050年のカーボンニュートラル実現がこのことによって、実現できることを強く願いたいと思います。
なお、今し方、統括官から御発言がありましたように、当分の間、この小委員会の開催を予定していないという状況でございます。
本小委員会を再開するというようなことになりました場合には、改めて事務局から御相談があるかと思いますので、その節にはどうぞよろしくお願い申し上げます。
それでは、事務局の方から、今後のことについて御説明をください。
 
山本市場メカニズム室長
本日は、長時間にわたり御議論を賜りまして、誠にありがとうございました。
これにて本日の小委員会は終了となります。
本日はありがとうございました。
 
浅野委員長
それでは、皆さん、どうもありがとうございました。長い間の御協力に、心から感謝を申し上げます。
 
午後0時15分 閉会