カーボンプライシングの活用に関する小委員会(第16回) 議事録

日  時

 令和3年6月21日(月) 15:001800

議  題

(1)定量分析に関する有識者からのヒアリング

(2)CO2排出削減に関連する既存の諸制度とカーボンプライシングとの関係について

(3)中間整理(素案)について

(4)その他

配付資料 

資料1-1 定量分析に関する有識者からのヒアリングについて

資料1-2 株式会社価値総合研究所提出資料「カーボンプライシングの経済影響等に関する分析結果について」

資料1-3 国立環境研究所提出資料「AIM/CGE [Japan]を用いたカーボンプラインシングの定量化」

(資料1 参考資料) 気候変動対策と経済成長の定性的な関係性について

資料2 CO2排出削減に関連する既存の諸制度とカーボンプライシングとの関係について

資料3 中間整理(素案)

参考資料1  カーボンプライシングの活用に関する小委員会委員名簿

参考資料2  カーボンプライシングの全体像

参考資料3  成長戦略等におけるカーボンプライシングに係る記載

議事

午後3時00分 開会

井上市場メカニズム室長

定刻となりましたので、ただいまから、第16回中央環境審議会地球環境部会カーボンプライシングの活用に関する小委員会を開催いたします。

初めに、私、事務局を務めます地球環境局市場メカニズム室長の井上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

本日の小委員会はWEBでの開催とし、YouTubeの環境省動画チャンネルで同時配信しております。

本日、ご欠席の神津委員の代理として、平井様にご参加いただいております。委員の皆様にはご承知おきいただきますよう、お願いいたします。

また、大橋委員、諸富委員、安田委員は、本日所用のためご欠席です。

なお、牛島委員、高村委員、小西委員は、遅れてご参加される予定と聞いております。

WEBの会議の開催に当たりまして、何点かご協力をお願いいたします。

まず、通信環境の負荷低減のため、カメラの映像は原則オフにして、ご発言の際のみオンにしていただけますようお願いいたします。また、ハウリング等を防ぐため、発言する際以外はマイクの設定をミュートにしていただけますようお願いいたします。

ご発言を希望される場合には、ご自身のお名前の右側にあります手のアイコン、挙手ボタンをクリックしてください。また、発言を終えられましたら、ボタンを再度クリックし、挙手を解除いただけますようお願いいたします。もし、挙手ボタンを押しているのに事務局側が気づかないなどございましたら、画面右下のチャットボックスにご記入ください。

その他、通信トラブル等がございましたら、チャットボックスにご記入いただくか、事務局までお電話いただけますと幸いでございます。

それでは、浅野委員長、以降の進行をお願いいたします。

浅野委員長

それでは、今日もよろしくお願いいたします。

今日で再開5回目になりますが、今日は議題が多うございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

まず、前半でございますけれども、定量分析に関しての有識者からのヒアリング、それに基づく討論を行います。

後半では、既存制度とカーボンプライシングの関係についての整理をいたしまして、さらに中間整理、素案についてもご説明いただき、ご意見を賜りたいと思います。

先ほど申しましたように、非常に議題が多くなっておりますので、できるだけご発言は簡潔にお願いをしたいと思います。

それではまず議題1について、事務局から説明をいただきます。よろしくお願いいたします。

羽田野係長

事務局に代わりました。環境経済課の羽田野と申します。

ヒアリングに先駆けて、事務局から幾つかアナウンスさせていただきたいと思います。

資料1-1でございます。

2ページ目、お願いいたします。まず、定量分析のヒアリングを行う趣旨・目的でございます。

本ヒアリングは、皆様から定量分析の必要性について複数ご意見があったことを踏まえまして、仮想的に炭素価格を与えた場合に、CO2排出量であったりGDP・マクロ経済指標等にどのような影響が起こり得るかについて、経済モデルを用いた分析結果をヒアリングするものでございます。

経済モデルでございますけれども、ある政策が入った場合とそうでない場合の影響の差を定量的に表すことができるといった利点がございます一方で、使用するモデルの特性、設定条件、分析のシナリオ等々によりまして、大きく結果が異なってまいりまして、場合によっては真逆の結果になる場合もございます。こういったことに注意が必要だということでございます。また、経済モデルは、全ての経済的要素を完全に再現したものではなく、将来の経済状況等を正確に予測するものではないというところでございます。

こうした限界を踏まえまして、議論の参考としてモデル分析を取り扱うこととし、複数の分析機関からヒアリングを行うということでございます。

おめくりいただきまして、3ページでございます。ヒアリングに際して、幾つかの留意点をアナウンスさせていただきたいと思います。

まず、モデルの分析を見るに当たって、幾つか矢羽根を付させていただいていますが、まず、先ほど申し上げましたとおり、GDPやCO2排出量等につきましては、将来の値をあくまでも正確に予測するものではないことに注意が必要でございます。

また、2番目でございますけれども、モデルというのは、過去の一時点での経済構造、過去から現在までの経済トレンド等を前提に構築されるものでございますので、これから、例えばカーボンニュートラル実現に向けて大きく経済構造が変わっていくとか、新型コロナウイルスの影響によって経済の構造が変わっていく、あるいはそうした経済構造を変えていくと、そういった経済構造等が将来大きく変化する場合の経済効果・影響を見るというのは難しいというところに留意が必要でございます。

また、その他、GDPが増えればCO2排出量も増えるような結果になりやすいとか、あるいはGDPでは定量的に表されない効果・影響等も存在するといったことについても、留意が必要でございます。

こうした留意点を踏まえつつ、事務局からは以下のことをお願いしたいと思ってございます。

経済分析を用いた定量分析は、政策による効果や影響、シナリオや政策の設計を変化させた場合の効果や影響の違いなどを検討する際の一つの有益なツールでございます。

他方、分析結果として表されるCO2の排出量とかGDPの多寡、こういったものだけでその政策がいいかどうか、あるいはその中身は何が適当かというかということを判断するということは適切ではなくて、定性的な要素や、またモデルの限界とか、モデルの前提、こういったものも踏まえた上での総合的な評価をしていただきたいということでございます。

ご参考でございますけれども、定性的な要素ということでございまして、資料はご説明いたしませんけれども、資料1、参考資料として、気候変動対策と経済成長の定性的な関係性についてという資料をご用意してございます。こちらは、成長戦略ですとか、骨太の方針等々でグリーンと成長の関係はどう書かれているかということをまとめたものでございます。

ざっくり申し上げますと、投資とかイノベーションを起こしていくということ、またそれに伴い、経済の構造を大きく変えていくということで成長につなげていくんだというのが現在の大きな政府の文書の中でのトレンドということでございます。

また、カーボンプライシング小委の中でも、再開前でございますけど、何度かカーボンプライシングと成長の関係について、概ね同じような議論をさせていただきましたので、その辺りの資料もご参考までにつけているものでございます。

こうした定性的な要素も踏まえつつ、今回のヒアリング結果をお聞きいただきたいということでございます。

おめくりいただきまして、4ページでございます。定量分析に際して、幾つか、各分析機関の方々に、共通の前提条件を置かせてもらいましたので、その辺りをご説明させていただければと思います。

まず、分析の期間ですけれども、2030年をターゲットとした経済分析を行うことといたしました。

次に、炭素価格でございますけれども、1,000円から1万円まで四つの炭素価格を設定して分析をしていただいています。

これは、下に四つ書いていますけれども、国際機関ですとか、あるいは諸外国での事例、目標値などを参考に、こうした価格帯を設定させていただいたということでございます。

また、BAUのGDP、つまりカーボンプライシングがなかった場合にどれだけ成長するかでございますけれども、これにつきましては、内閣府の中長期試算の中でのベースラインのケース、これをGDPの成長率として採用させていただきました。

こういった前提条件を統一した上で、今回分析を行っていただいたものであります。

事務局からは以上でございます。

浅野委員長

それでは、続きまして株式会社価値総合研究所から、資料1-2、カーボンプライシングの経済影響等に関する分析結果について、これに沿ってご説明をいただきます。

よろしくお願いいたします。

価値総合研究所(山崎様)

ただいま紹介いただきました、日本政策投資銀行グループ価値総合研究所でございます。よろしくお願いいたします。

早速でございますが、私どもの分析結果について、ご報告します。

スライド2とスライド3には、分析に関する留意点がございます。これは、書いてあるとおりでございますので、後ほど時間があれば説明させていただきます。

スライド4にいっていただきまして、スライド4からが分析の概要でございます。

スライド5がありますが、スライド5の上に書いてありますように、先ほど羽田野さんからお話がありましたように、数値モデルによる分析では、理論的根拠の前提条件やモデルの構造の特徴によって結果が大きく異なる可能性があります。この分析では、特徴の異なる複数のモデルを用いて、総合的に分析していこうということで進めております。

次のスライドにいっていただいて、モデルは大きく三つございます。

一つは均衡価格モデル、これは産業連関表、産業連関分析と同じでございまして、400の詳細な産業分類で、ここの②がありますが、産業間の取引、取引ごとの課税や免税、その還付、こういったものを詳細に設定することができるというものでございます。

2番目の応用一般均衡モデルでございますが、これも産業分類を400でかなり細かい分析ができるようにしてあります。そこの3ポツに書いてありますように、家計の選好とか、企業の生産技術、投入-産出構造がCPを入れると逐次動学的に変化していくというメカニズムをシナリオとして入れております。

3番目といたしまして、エネルギー経済モデルでございますが、これはマクロ計量モデルでございまして、内閣府のモデルから財政モデルを引いて、エネルギーモデルを付け足したというものでございます。

この三つでありますが、その二つの、次のスライドで、応用一般均衡モデルとマクロ計量モデルの特徴を書いたものであります。この図で、横軸が時間になっていまして、縦軸がGDPだとして、この時系列で見ていくと、青いところに書いてありますように、エネルギー経済モデルというのは将来の経済指標を試算する、予測するのに強みがあります。

CGEは黄色のところに書いてありますように、ベースラインが決まったところで効果の予測、そういったこの効果の計測をするときに強みがあるというところでございます。

その次のスライドからが、モデルの試算の前提条件について説明させていただきます。

これは、モデルの試算の前提条件というのは、ベースラインで2030年を予測するための前提条件でございます。労働力人口とエネルギー効率性と企業の生産技術でございますが、労働力人口は2015年比で4.2%減と。エネルギー効率性は、8スライド目の右下にありますように、これまでのトレンドを踏まえて、2%ずつ上昇していくと。企業の生産技術に関しても、これは全要素生産性でございますが、0.6%で成長していくというところでございます。

9スライド目からは、各モデルのシナリオの設定について書いております。

9スライド目は、CGEのシナリオでございますが、ここでは①と②がありますように、シナリオを二つ設定しています。

青いところに書いてあるのが、標準シナリオでございまして、これは、現況のシェアに基づいて選好などのパラメータが決まってくると。これは、CPが導入されたとしても、変わっていかないというものでございます。

もう一つ、②として、構造転換シナリオというのを作っておりますが、これは年々シェアが変化していくというのを入れています。この変化していくというのは、消費者の選好とか企業の生産技術がCPを入れることで脱炭素化にシフトしていくということをシナリオとして入れております。

次に、スライド11にちょっと飛びますが、エネルギー経済モデルのシナリオでございます。

これも二つ、シナリオを作っておりまして、①の標準シナリオというのは、エネルギー効率性が先ほど申し上げましたように、2%ずつ向上していくというところ。それに加えて、エネルギー効率化進展シナリオというのを入れていまして、CPを入れた後、その税収を省エネの投資をした場合、このパープルのところに書いてありますが、省エネ投資をした場合、エネルギー効率性が上がっていくと。これを統計的に分析しているんですけども、こういう上がり方というのが決まっていて、それでエネルギー効率性が向上していくというシナリオを入れています。

12スライド、13スライド目にそういうような話を入れています。

14スライド目からがプライシングの設定なんですけども、これ、大きく三つございます。

1番上のポツに書いてありますように、今回は温対税の289円から値上げしていくという設定をしています。導入時期というのは、2022年から。価格の上乗せは先ほどありましたように、1,000円、3,000円、5,000円、1万円。また、この本分析では、この赤文字に書いてございますように、免税、還付、そういった措置というのは、石石税、温対税のこれまでの設定と全く同じにしています。

15スライド目にいきまして、今度、税収をどう使うかということで、いろんなパターンが考えられますが、今ここでは、二つ設定しています。

大ざっぱに設定しているんですけども、これ、税収を今の政府支出で全部活用した場合、一般財源、特定財源、全部入れて、一括で全部使っちゃうというところ。

それから、2番目といたしまして、税収を、半分は黄色のほうの政府支出に使って、半分は民間設備投資の補助に使いますという話です。これで設備投資をすることで、資本ストックを増やしていくという狙いです。

16スライドが、このシミュレーションの一覧を記載しています。

一番左、標準シナリオというのがありますが、標準シナリオがあって、それから税収の使途、これが黄色の政府支出に全部、それからピンク色のところで半分は設備投資に使うということ。1,000円から1万円まであると。

標準シナリオというのは、CGEとエネルギー経済モデル、両方でやりますと。真ん中の、構造転換シナリオというのはCGEの話ですが、これも同じように8ケースあります。エネルギー効率化進展シナリオというのは、エネルギー経済モデルでやるものですが、8ケースあって、合計で32ケースをやってきたところでございます。

17スライドからは、その分析結果でございます。

まず18スライドにいっていただきまして、ベースラインの試算結果でございます。

これ、エネルギー経済モデルで、左の図のように実質GDPを予測するのと、右側にCO2排出量がこのままいったらどうなるだろうかと。これはCPを入れていない段階です。入れないでこのままいったらどうなるんだろうかというところです。

GDPに関しては、2030年で594.2兆円になっています。ほかの機関の、省庁の結果も入れてありますが、大体その中の真ん中よりもちょっと上ぐらい、ベースラインは位置づけてあります。内閣府の数値とほぼ一緒です。

CO2の排出量でございますが、右側の図で2030年で9.7億t。下の括弧に書いてございますように、2013年比で21.6%削減されると。このままいったらこういうふうになるのではないかということを記しています。

ここから、2022年でCPを入れていくわけですが、その結果が19スライドにあります。

これ、19スライド、20スライドというのが、CGEの結果でございまして、21スライド、22スライドがエネルギー経済モデルの結果でございます。

19スライドはCGEの標準シナリオの結果でございます。一番オーソドックスなところでございますが、左側に政府支出のケース、右側に政府支出と設備投資のケースをやっています。それから、色が濃くなっていくと、CPの価格が高くなっていくというところ。それから赤い線が引いてありますが、赤い線が先ほどのベースラインの数値でございます。これが2030年の上がGDP、下がCO2でございます。

19スライドの左上を見ていただきますと、政府支出の段階では、CPの投入によって価格が上昇するので、経済には若干ダメージがありますと。1万円を入れることによって、マイナス2.6兆円ぐらいのダメージになっていくというところです。

一方、右側の設備投資も半分使った場合ですけども、その場合には、設備投資が資本ストックを増加させて、それでGDPが上がっていくと。CGEの場合、供給主導型のモデルでもあるので、資本ストックが積み上がっていくと、GDPがアップするというところです。

19スライドの下の図ですけども、左側の図が政府支出の段階のCO2の排出量です。赤いラインのベースラインが21.6%下がるわけですが、政府支出の1万円の段階を見ていただきますと、大体マイナス26.9%で、若干減っていくというところでございます。右側の設備投資の場合は、それよりも若干増えるというところでございます。

次に、20スライドで、CGEで構造転換シナリオというのを作っています。

上のGDPの話でありますが、基本的には上の標準シナリオとあまり変わらないんですけども、政府支出の上のところに書いてありますように、一方でこの産業構造の転換、これが起こっていくことによって、負の影響が若干緩和されると。先ほどは、1万円で2.6兆円のマイナスでしたが、今回2.2兆円ぐらいになりますと。それから、設備投資に関しても、若干増えていくというところです。

一方で、CO2の排出量でございますが、CO2の排出量は大幅に削減されていくという結果になっています。これは、消費者の選好の脱炭素化や原材料の脱炭素化、こういったことが起こっていって、それでCO2が下がっていく。これは1万円を入れると、政府支出の段階だとマイナス43%ぐらい下がってくる可能性があるということがシナリオとしてあります。

21スライドからが、エネルギー経済モデルの結果でございます。

21スライドの上の実質GDPに関してでございますが、政府支出の場合、左上の図、政府支出の場合、これは1万円でマイナス9.5兆円ぐらい下がります。これは、CGEと比べて下がっていくんですけども、これは資本ストックが内生的に決まっていくというのがございます。ですから、投資が下がって、資本ストックが下がると。潜在GDPが下がって、それによって需要サイドも下がっていくと。ですので、CGEと比べて、より下がる構造になっています。

右側の政府支出プラス設備投資というのは、左側の政府支出に比べると、大分高くなりますが、ベースラインよりも高くはならないという結果でございます。

21スライドの下のCO2排出量に関しては、先ほどのCGEの標準シナリオとほぼ同じ結果でございます。マイナス26%ぐらい。1万円でマイナス26%、27%、このくらいになっていくと。

最後に、22スライドでございますが、パープルのところです。エネルギー効率化進展シナリオでございますが、左側の政府支出とか、それは全く一緒、先ほどの標準シナリオと全く一緒です。

右側の設備投資に使った場合、省エネ投資に使った場合には、経済成長をかなり促すというメカニズムになっています。これは、CP導入によって潜在GDPが下がることになっているんです。上がっていくので、より上がっていく構造にはなっています。

その下のCO2排出量でございますが、政府支出と設備投資のところは、マイナス26%ぐらいなんですけども、一見すると下がってないように見えるんですけども、これ、GDP当たりのCO2排出量に比べるとかなり下がっているというところでございます。

こういった分析結果がございますが、最後にまとめて23スライドがあります。

まず、標準シナリオの試算からの示唆ということですが、税収に関して2パターンだけやっていますが、いろんなパターンが多分考えられると思います。その税収の使い方によって経済の影響というのはかなり変わってくると。ダメージを受ける場合もあるし、プラスになる場合も十分考えられるというところです。これは、構造があまり変化しないシナリオというのが標準シナリオです。

一方で、②は構造転換シナリオとか、エネルギー効率化シナリオというところですが、このシナリオによって、シナリオが本当に成立するかしないかによって、GDPへの影響もCO2の削減量もかなり違ってくるというところです。

ですので、①と②を組み合わせて、税収も組み合わせて、いろんな組合せがある中で、どういった組合せにしていくと全体としてよくなっていくだろうかということは細かい設定の調整でいろんなことが見えてくるというところが分かってきたところでございます。

ただ、③に書いてございますように、この留意点の再掲とありますが、あくまでこれ、GDPとかCO2というのは定量的にこうやったものなのですが、今定量的にできることだけをやっているものでありまして、定性的な分析も踏まえて、総合的な評価というのが必要なのではないかというふうに思っているところでございます。

簡単ですが、以上でございます。ありがとうございました。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

それでは続きまして、国立環境研究所増井委員から、資料1-3に基づいてご説明いただきたいと思います。

よろしくお願いいたします。

増井委員

はい。それでは、資料1-3に基づきまして、説明いたします。

今日は委員の立場ではなくて、説明者ということで説明をいたします。

まず、2枚目のスライドにいってください。先ほど、事務局のほうからも留意点等説明がございましたけれども、一応定量的な結果を今回お示しするわけですが、定量的な結果というのは入力情報、入力条件によって大きく変わりますので、入力値と合わせて評価していただくということが非常に重要かなと思っています。

また、最後のポツに書いておりますが、モデルで示された社会と現実社会の間にはギャップが存在するんだということもご留意いただければと思います。

3枚目にいっていただきまして、こちらもモデルによる定量化についての注意事項なんですけれども、将来は不確実性というものが非常に多くございまして、そういう不確実性を考慮してシナリオを今回定量化しております。

そういう意味で、将来の予言ではなくて、可能性を示したものであるということ、また、本日は各委員からいろいろとフィードバックをいただければと思っております。

また、そういう不確実性の観点からも、絶対的な数値、数字の値そのものよりも、そのシナリオ間の相対的な変化、こういったところに注目していただければと思っております。

では、4枚目のスライドをお願いいたします。この分析、今日紹介するモデルの結果は、我々国立環境研究所で長年分析、開発してまいりましたアジア太平洋統合評価モデル、その中の、経済モデル、CGEモデルを使った分析であるということをまずはご紹介しておきます。

次のスライド、お願いします。5枚目です。その概要、詳しくは後ろのほうに書いてあるんですけれども、こちらのモデルも先ほどの価値総研さんのモデルと同様に、逐次均衡型の一般均衡モデルでございます。

このモデルは、2005年の産業連関表を基礎として、2030年まで毎年毎年、計算を行っております。係数につきましては、統計値が遡れるところについては、そういうデータを使って更新をしていって、こういう社会科学のモデルについて、なかなか検証というのは難しいんですけれども、できる限り過去の統計値というのが再現できているかどうかというのを確認しながら、このモデルを使っております。

そのほかは、そこに書いてあるとおりなんですけれども、今回は炭素価格というものを想定して、そのときの温室効果ガスの排出量を分析しております。

政府はその税を使って所得の再分配を行っていきます。繰り返しになりますけれども、予測のためのモデルではなくて、あくまでこういうふうに想定された経済成長、これを前提になりゆきを定めて、それに対して、政策の効果というのを解析する、そういうモデルでございます。

6枚目に示しておりますように、このモデルは約40の部門から成っております。エネルギー、石油製品ですとか電力、こういったところは、財が詳しい、あるいは技術が詳しいというような形になっております。

次のページをお願いいたします。7枚目のスライドに基本構成を示しています。家計がありまして、家計は所得制約の下でその効用というのを最大にする。一方で、生産者は技術の制約の下で利潤を最大化する。市場では、価格メカニズムで需要と供給のバランスが調整されるという、そういうモデルでございます。

次のスライド、お願いいたします。8枚目に、この分析におけます緩和策について、記載しております。

まず、カーボンプライシングとして炭素税の導入を想定しております。このモデルの一つの特徴は、既存の設備と新規の設備を明確に区別しておりまして、省エネ技術、こういうものは、既存の技術でいきなり省エネが実現するというのではなくて、新規設備として導入されていって、徐々に徐々に省エネというのが浸透していくというような形になっております。

省エネ設備の導入には追加費用というものが必要になってくるわけなんですけれども、こちらの情報は、我々の中で開発しております技術選択型のモデル、そちらの想定結果を踏まえて、その情報を使っております。

ちょっと1点、留意点なんですけれども、現在、2030年の排出目標というのは2013年比46%削減なんですけれども、現時点では、まだちょっとそこまで対策や技術が積み上がっておりませんで、やや古い、26%削減の時の技術、これを対象に今回分析をしております。

そういう意味で、その目標達成といった点からは少し物足りないというようなものになっております。

あと、最後に書いておりますが、再エネの導入量は、外生的に想定して、全てのケースにおいて同じ、こういうふうになっております。

それとあと、その一つ前のポツ、こちらも非常に重要な想定なんですけれども、短期と長期は明確に分けておりまして、短期的にはエネルギー間の代替等は生じないとしています。ただ、機械の置き換え、こういうことによって省エネあるいはエネルギー代替ということが生じると考えております。

次のスライドにいっていただきまして、9枚目。想定ということで、基本的には事務局あるいは価値総研さんのほうで説明いただいたものと同じです。

炭素税として2022年以降1,000円から1万円までそれぞれ増額という4ケースを設定しております。

基本的に、税収は政府の政府支出の増大ということに使われます。

省エネ機器の導入につきましては、基本は投資回収年数3年という、そういう設定をしております。もう一つ、追加的なケースとしまして、炭素税導入によって行動変容が起こるという仮定をしまして、投資回収年数が延びる、延びる対象として10年という、そういう設定をして、計算をしております。

さらにもう一つ、追加的な試算として、炭素税収、これを活用して、省エネ導入に必要な追加投資分、そちらに補助するという、そういうような想定も行っております。

次のスライド、10枚目に、こちらも解釈に関する注意点ということで、あくまでモデルですので、モデルで想定された式に従って、その中で想定されている行動をとるとしています。カーボンプライシング導入前後で極端な買い控え等はしないとしております。

あと、将来の見通しというのはなかなか難しいです。このモデルの中では、毎年毎年の均衡を目指して計算されており、その中では将来こうなるというようなことは反映されていません。こういう点を補うために、投資回収年数というものを意図的に変更して、分析を行っております。

次のスライドからが結果になります。最初に、エネルギー起源のCO2の排出量ということで、右側にグラフが三つございますが、一番上が2005年からの経年的な排出量、真ん中のグラフが2030年のなりゆきの状態からの変化率、2030年の状況。この三つのグラフを示しております。

エネルギー起源のCO2排出量の場合、投資回収年数3年、各色の一番左側ですけれども、排出量の削減というのは1%程度にとどまってしまいます。最高でも1%。一方で、投資回収年数10年になりますと、省エネ技術の導入が進んで、削減幅が大きくなります。

さらにその税収で追加投資分を補助するといった場合、各色の三つの棒グラフの右側ですが、その場合には一番排出量の削減が大きくて、2030年に8%程度まで削減されるという結果になっております。

12枚目のスライド、こちらは、炭素税導入直後の2022年と2030年を比較したものでございます。2022年では、炭素税が導入されましても、省エネ技術が十分に普及できないということで、経済的な影響が大きく、また一方で、その排出量の削減というのはほとんど見られないという結果になっておりますが、8年後、2030年では、経済のほうの影響も緩和されて、なおかつ削減量も非常に大きくなっている。そういう結果になっています。

次のスライド、13枚目が、GHGの排出量ということで、こちらもCO2の排出量とほとんど同じですので、説明は割愛させていただきます。

次の14枚目のスライドが、GDPということで、GDPの推移をCO2と同じような形で示しております。

まず、課税額が大きいほど、家計消費等の影響、減少幅が大きくなって、GDPへの影響は比較的大きい。ただ、長期を見据えた行動にしますと、その影響というのはかなり小さくなっていくということで、その真ん中のグラフにありますように、一番左の各グラフの下げ幅から真ん中のほうにいくと下げ幅が小さくなります。一番税率の小さい場合ですと、逆にプラスになるというような結果になっております。

さらに追加投資分が税収によって補助されるといった場合には、省エネの効果等がさらに進展しまして、GDPの増加というのがより大きくなる。一番税率の大きい1万円の場合におきましても、ほぼゼロに近い値まで回復するという結果になっております。

次のスライド、15枚目のスライドが、同様に2022年直後と2030年の状況を示しております。

これ、先ほども申し上げましたように、直後では経済的な影響が大きいんですけれども、その影響が徐々に徐々に緩和されていくということで、脱炭素社会に向けてなるべく早くカーボンプライシングを導入をする必要があろうということが、こういった結果から示唆されます。

次のスライド、16枚目が、家計消費、家計の最終消費ということで、こちらもGDPとほぼ同じような計算結果を示しております。

飛んで18枚目のスライドが、炭素税収と省エネ投資の推移ということで、税収は2022年がピークで、それ以降は徐々に減ります。追加投資を補助する場合、年間4兆円程度の追加投資というのが必要になってまいります。一方、投資回収年数10年の場合には、年間の省エネ投資需要が二、三兆円になります。逆に、投資回収年数3年では、省エネ投資はやはり極めて限定的で、ほとんど省エネ投資の追加需要というのは生じないというような結果になっております。

グラフでは示してないんですけれども、再エネの拡大のためには、年間2兆円程度の投資需要が生まれるというような結果になっております。

分析結果のまとめとして、19枚目、20枚目に記載しております。もう繰り返しになりますので、詳細は省かせていただきますが、一つ、非常に重要かなと思うのは、カーボンプライシング導入直後というのはかなり影響が大きいんですけれども、徐々に徐々に省エネ機器の導入によって、影響が緩和されていくということ。

あと、今回の分析では、2030年に26%削減の技術、これをベースに分析しておりますので……。

浅野委員長

恐れ入りますが、予定の時間を大分過ぎていますので、簡潔に。

増井委員

はい、分かりました。

今後の課題であります。

最後、経済活動への影響も20枚目のところに書いておりますように、1万円の場合におきましても影響はなりゆきと比較してマイナス1%未満で経済成長は維持されるといったこと、さらに追加投資等を補助することによって、エネルギー効率が高まり、なおかつそういったことから経済成長につながっていくというような結果でございます。

すみません。時間超過しましたが、以上です。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまお二方からご説明、出てきましたが、これについてのご発言をいただきたいと思います。

ご発言をご希望の方は、どうぞアイコンにクリックをしていただけませんでしょうか。

いつも途中からぽつぽつと追加の申出を受けておりましたが、今日はそれができませんので、今、質問、ご発言、ご希望の方は全部手をお挙げください。

事務局は手の挙がっている方についての名前をチェックしておいていただければと思います。

よろしゅうございましょうか。

それでは、ここで打ち切らせていただきたいと思いますが、よろしいですか。

それでは、ただいまお手の挙がっている方について、ご質問、ご意見を承ることにいたします。

このうち、申し訳ないのですが、有村委員から事前に、自分のモデルを使っての説明をしたいのでというお申出をいただいておりますから、有村委員に例外的ですが、先にご発言を5分間だけ認めたいと思います。どうぞ有村委員、よろしくお願いいたします。

有村委員

ありがとうございます。

通信環境のあれがあるので、ちょっとカメラは停止してお話しさせていただきたいと思います。

早稲田の有村です。私のほうから2点、申し上げたいと思います。

初めに、報告された経済モデルについてのコメント、質問です。

ご説明、ありがとうございました。

カーボンプライシングの中でも炭素税の税収の使い方によって経済影響が異なってくるというのがよく分かる、重要な分析結果だと思います。省エネ投資に使うことによって、経済成長と削減が両立できるというようなことだったと思います。

確かに、現行の地球温暖化対策税でも税収は省エネや再エネに使われておりまして、今後導入される場合にもそのように温暖化対策に用いるというのは社会的に受け入れやすいのではないかなと思います。

ただ、脱炭素ということになりますと、省エネ、再エネだけではなくて、CCSあるいはCCUS、それから水素といったようなことにも重要な要素になってくると思いますので、その点、この二つのモデルでどう考えたらいいのかということに関して、ご示唆があればいただければと思います。

二つ目は今ご紹介いただいた、私が京都産業大学の武田史郎先生と一緒にやっているモデル分析についてです。

ここでは、我々、炭素税の二重の配当という考え方を検証しております。経済学の分野では炭素税収を法人税減税や消費税減税に用いると、排出削減と経済成長の両立が新古典派モデルでも可能ではないかという、二重の配当の考え方があります。

炭素税をかけることで、価格効果によって排出削減を得ると。これが一つ目の配当です。ただ、その削減のためには費用がかかる。経済負担がかかる。GDPがマイナスになる。

もう一つの配当は、その税収を使いまして、その既存の税の税率を減らすことによって、投資や消費を活発にして、経済成長を達成するという考え方です。二つ目の配当の効果が大きければ、排出削減と経済成長の両立がマクロで可能になるというので、二重の配当というふうに呼ばれます。

我々は、この考え方が日本経済でも成立するかどうかというのを応用一般均衡分析という経済モデルを用いて検証しました。先ほどご紹介いただいているCGEなんですが、二つのモデルとは違って、フォワードルッキングの動学モデルを使った分析です。我々のは2050年、80%削減という、以前の目標を目指したシミュレーションになっていて、今回のご報告、二つのモデルとはちょっと違っております。その結果がサステナビリティサイエンスという学術誌に載りましたので、今年、ご紹介させていただきたいと思います。

そこでは、炭素税の税収を家計に一括で返す場合をベースラインとして、それ以外に税収を法人税減税に用いる場合、消費税減税に用いる場合、所得税減税に用いる場合の三つのケースをシミュレーションしました。ベースラインだと、GDPがマイナス、2030年時点で0.2%ぐらいになるような結果になっていますが、それでも法人税減税をすれば2030年にGDPがプラス1%、消費税減税ならGDPがプラス0.2%増加する可能性があるという結果が得られております。

これは、炭素税の二重の配当という考え方が日本経済でも成立する可能性を示唆するような内容になっているということで、とても重要な視点ではないかというふうに考えております。

この二重の配当による税制改革というのは、カナダのブリティッシュコロンビア州でも実施されておりますし、これ、もしかしたら経済産業省のほうの検討会かもしれませんけども、鉄鋼連盟からご紹介がいただいたドイツのエネルギー税制改革などもこのような理念に基づいて行われております。

確かに炭素税の税収は排出削減の補助に使うというのがまず第一の使い方だと思います。しかし、長期になりますと、それだけに限らず、法人税減税、消費税減税に用いるというような視点も大事なのではないかなと。まさに、そうすることによって、成長に資するカーボンプライシングが可能になるのではないかというふうに思っております。

もちろん、日本の財政状況を考えますと、消費税減税とか、法人税減税というのは難しいかもしれないと。ただ、消費税や法人税を今後上げるというようなことよりも、炭素税を導入したほうが環境にも経済にもいいというようなことがモデルから得られる結果だというふうに理解しております。

以上です。ありがとうございました。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

それでは、ご質問に対する回答をいただく時間も必要ですので、本当に申し訳ないんですが、お一人2分でお願いをいたします。今日は少し時間管理を厳しくいたしますので、どうぞそのつもりでお願いいたします。

それから、岩田委員には、申し訳ないのですけれども、さっきもうこれで打切りと申し上げた後にお手を挙げておられましたので、時間に余裕があればご発言をいただくということにいたします。

石田委員、前田委員、井上委員、椋田委員、小西委員、大塚委員、手塚委員、清水委員、遠藤委員、一応この方。それから土居委員がちょっと今席を外しておられますので、戻られて間に合うようでしたら、ご発言をいただきます。

では、石田委員、どうぞお願いいたします。

石田委員

ありがとうございます。

今回の議論の争点は、カーボンプライシングが成長に資するのかということだと思います。

本日提出された試算結果では、炭素税による税収の使い方によってカーボンプライシングが成長に資するという結果でよろしいでしょうかというのが、質問としては一つです。

このシミュレーションには、温暖化対策の遅れによる気温上昇によって、自然災害が増加して、経済に影響を与える、ダメージを与えるというのが考慮されていないようですが、実際には世界全体の共通認識として、温暖化防止が遅れると気候変動が進行して経済にダメージを与えると考えられています。これにより、GDPが下がるという認識ですが、これを考慮に入れていただくと、もう少し高い精度のシミュレーションができると思いますが、いかがでしょうか。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

前田委員、どうぞお願いいたします。

前田委員

できるだけ手短にさせていただきます。

本日のお話、大変興味深く聞かせていただきました。こうした定量的な分析はとても重要と思いますので、大変参考になったと思います。

今日ご披露頂いたいずれのモデルもCGEをモデルの骨格にしているので、スタンダードな手法に立脚しているといえますし、その点ではあんまり変なことはやっていない、妥当なモデリングとその結果であるはずだと思います。一方で、事務局の資料にもありました、あるいは各モデルのご説明の中にもありましたけれども、やはりモデル分析の利用には注意が必要だと思います。モデル計算には、多くの仮定とか設定が組み込まれて、そうした仮定、設定込みで計算結果を解釈する必要があるということだと思います。

私自身もこの点、大分前の会合、たしか第10回かの会合で定量的モデル分析の議論が出たときに、こうした問題意識を述べさせていただいています。改めて、モデル分析は数字そのものではなくて、その解釈が重要という点は強調しておきたいと思います。

その上でですが、今日ご披露いただいた分析結果について、個人的にはたくさん、議論したいことはあるのですが、時間が限られているので、1点だけ。

今日ご説明頂いた2つのモデルでは、それぞれ多くのケースが検討されているわけですが、いずれのモデルとケースで考えても、2030年の46%削減目標というのはなかなか容易ではないという結論を意味しているかと思います。これはなかなか衝撃的な結論ではあると思います。CGEの性質上、とっぴな仕組みが組み込めないという事情があるからということではあると思います。しかしそれは言い換えると、モデルで明示できるような明確なメカニズムが足らないということだと思うのです。もっというとカーボンプライシングだけでは絶対に足らない、ということだと思います。これは今日の次の議題である「CO2 排出削減に関連する既存の諸制度とカーボンプライシングとの関係について」にもつながる議論だと思いますが、既存の制度の延長でカーボンプライシングを考えるだけでは2030年の46%削減目標は無理、ということだと思います。ではどうするか、そうした議論が必要であるということでもあると思います。そう考えながら話を聞かせていただきました。ありがとうございます。

井上市場メカニズム室長

浅野先生、声が聞こえてないんですが、もしかしてミュートを設定されているかもしれないので、解除して。

浅野委員長

井上委員、どうぞお願いいたします。

井上委員

今回の定量分析は、施策の検討において重要だと思います。冒頭、両研究所からのご説明、とても参考になりました。ありがとうございます。

感想ではありますが、モデル分析ということではありますが、このコロナ禍の経済の状況を踏まえるかどうかで結果は相当程度変わってくると思います。

また可能であれば、中小企業と大企業、それぞれに対する影響などについても、お示しいただけるとありがたく感じました。

また、国立環境研究所の資料1-3の9ページにございます、「将来の想定」の部分について、省エネ機器の導入を「投資回収年数3年を基準」とした上で、「環境税導入により行動変容が起こると仮定し、投資回収年数を10年に」と記載がありますが、中小企業は一度設備投資を行っても持続的に更新していくことが難しい現実もございます。中小企業の立場としては、環境税が入ったことにより、企業が省エネ効率、CO2排出削減効果のより高い設備に投資するに当たって、投資回収10年を想定すると、自社にとって導入した省エネ技術の陳腐化をどのように見極めるのかが難しくなります。

車や航空機リースのように高い設備と同様に、残価や購入選択権を設定し、継続使用か、売却もしくは返却を可能にして、省エネメーカーが海外に再販するなど、新しい取組を考えていただくと、さらに省エネへの取組がしやすくなると感じました。

ありがとうございます。

浅野委員長

どうもありがとうございます。

それでは、椋田委員、どうぞお願いいたします。

椋田委員

私も質問というよりコメントです。まず価値総研と国環研の2機関から定量分析の結果について、詳細なご説明をいただき、とても参考になりました。ありがとうございました。

その上で2点申し上げたいと思います。まず価値総研さんの資料1-2では、税収を政府支出プラス設備投資に活用した場合、多くのケースでカーボンプライスが高ければ高いほどGDPが高まるという傾向が示されています。では、これをさらに、例えば10万円/t-CO2とか100万円/t-CO2といった極端な価格に設定したとしても、同様の結果になるのでしょうか。ややこの辺、現実から乖離しているような印象を受けた次第です。

一方、国環研さんの資料では、投資回収年数を10年と想定した結果同士を比較すると、ケース1からケース4のようにCPを10倍に引き上げた場合、GDPの減少幅に比して、排出削減効果は乏しいと感じます。

また、カーボンプライスが高いほどGDPが下がるというのは、これは実感に合う話ですが、これでは成長に資するカーボンプライシングにならないのではないかと思います。そもそも今回の検討は、成長に資するカーボンプライシングを検討するということが大前提だったと思います。

いずれにせよ、カーボンニュートラル実現に必要となる技術があるということがこれらの試算の前提でありますが、現実には、現時点でそうした代替技術が存在しない中では、カーボンプライシングは単なる企業の負担増になりかねないという点には留意すべきだと思います。

私からは以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

小西委員、どうぞ。ご質問ください。

小西委員

ありがとうございます。

ちょっと私、遅れてしまったので、ご説明を全部は聞いてないんですけれども、ありがとうございます。

まず資料1-2なんですけれども、このページ、9ページで、この構造転換シナリオ。もともとこのカーボンプライシングの意義というのは、行動変容を促すというところに一番あると思いますので、ここからいくと、このカーボンプライシング、1,000円から3,000円というのは標準シナリオで、それの次の5,000円から1万円というのは構造転換シナリオというふうに解釈するのが妥当ではないかというふうに感じたんですが、いかがでしょうか。

あともう一つ、11ページの、現行の税の免税還付をこれ、そのまま反映しているということなんですけれども、反映しなかった場合の効果というのも知りたいなと思いました。

12ページ、2030年まで9年しかないんですが、エネ効率改善が最も費用効果的で、そこに投資するとこれだけ効果があるという成果が貴重かなと思っております。

続いて、資料1-3、国環研さんなんですけれども、16ページで、やっぱりCPのような政策によって、将来の対策の予見可能性が確保されれば今回の試算ではこの投資10年に相当すると思うんですが、省エネ機器の導入が促進されて、CO2やGHG排出量削減が拡大するということで、まさに成長に資するカーボンプライシングというのがここに表されているのかなと理解いたしました。

これ、GDPの影響、双方共に1%程度ということで、二つの研究成果、同じような結果を示していらっしゃるのが信頼度が高いなと思いました。

以上です。ありがとうございました。

浅野委員長

ありがとうございました。

大塚委員、どうぞお願いいたします。

大塚委員

大塚です。

浅野委員長

どうぞ。

大塚委員

簡単に質問ですけれど、資料1-3の増井委員が報告してくださったことに関して、投資回収年数がやはり非常に重要だということが理解できましたけれども、モデル自体の問題ではないんですけど、この投資回収年数を長くするために、増井委員自身はどのようなことをお考えになってらっしゃるかということを教えていただければと思います。あるいは、これは、政府のほうからも、環境省のほうからもお答えいただけるとありがたいと思います。

以上です。

浅野委員長

手塚委員、どうぞお願いいたします。

手塚委員

聞こえていますか。

浅野委員長

はい、聞こえております、大丈夫です。

手塚委員

いずれの資料もご丁寧な説明、ありがとうございました。大変興味深く拝読させていただきました。

まず、両方に共通なんですけども、これから9年間で行われるその構造改革に対して、使われる技術というのは基本的に既にある技術なんだろうと考えるんですけども、お金をかければかけるほどどんどん省エネが無尽蔵に拡大していって、コストが上がる分を回収できるだけのエネルギー効率性が担保できるということが前提になっていると思うんですけども、でないとこういう結果にならないと思うんですけども、本当にそんな技術があるんでしょうか。

逆に言うと、お金さえかければ無尽蔵に省エネというのは進むということで、このモデルではいわゆる技術限界みたいなものが規定されていないんじゃないのかなというのが、第一印象として持ったところです。

それから、いずれも、政府が税収を対策のほうに資金として回すと非常に効果が大きく出て、経済成長につながるような書き方になっているんですけど、そうすると、つまり政府がよりよい投資先を分かっているというわけで、これも通常の経済の常識とはちょっと違うような気がいたします。本当にそうであれば、もうほとんど全部公共投資でやっていく、あるいは政府がどの部分に金をつけるべきだという補助金のような制度でもってやっていけば、もう日本のCO2というのはどんどん減るんだということにつながるんじゃないかと思うんですけども、実際はそうではないんじゃないかということです。政府の産業構造審議会省エネ小委員会で議論されている話を聞いている限り、省エネのネタというのはもう減ってきている、限られてきているということが言われていたと思います。

それから、両方のモデルに共通なんですけれども、輸出とか輸入に対するインパクトをどう考えるかということなんですが、海外のカーボンプライスとの相対評価みたいなものがこれは想定されているんでしょうか。といいますのは、政投銀さんのほうのでは、35ページでは、構造転換によって輸出は落ちないで輸入が減る、37ページでは、エネルギー効率化が進むと輸出が減って輸入が激増するような形になっているんですけども、それでもGDPは拡大するとされていて、ちょっとこの辺の背景がよく理解できないです。

一方、国環研さんのほうは、貿易収支は外生的に決めているということなので、CP導入のインパクトがないということを前提にされているのかなというふうに感じました。

最後に、これ、マクロ分析で全体の経済の話をされていますけども、実際にはカーボンプライスに1万円とかかけると、物凄いインパクトを受けて、生産が止まるようなセクターと、そうでないセクターと、まだらの模様になるはずなんです。それをその中で、このモデルは恐らく、雇用の移動とか、設備の構成の移動とかが自律的にきれいにすんなりと移行するようなことが仮定されている、最適配分が直ちになされることを想定されているんじゃないかと思うんですけども、実際の構造転換というのは、雇用に関しても、産業構造にしても、そんなに簡単に進まないんじゃないかと思います。つまり、そうした構造転換に要する時間定数の制約みたいなものがモデルには入っているのでしょうか。それとも、価格がかかれば自動的にそういうものは右から左に雇用が移転するというようなことを想定されているんでしょうか。この辺、ちょっとコメントがあったらいただければと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございます。

清水委員、どうぞ。お願いいたします。

清水委員

清水でございます。聞こえますでしょうか。

浅野委員長

はい、聞こえております。

清水委員

ありがとうございます。

定量分析、ありがとうございます。

まず、資料1-2についてですが、19と20ページを比較しますと、税収を上げるよりも構造転換するほうが大きく削減しているように見えます。このことからしますと、炭素税ではなくて、そもそも消費者の選好や企業の生産技術が脱炭素へとシフトしていくような対策が重要であるということではないかと思います。

23ページで、構造転換シナリオ、エネルギー効率化進展シナリオからの示唆が示されておりますけれども、カーボンプライシング導入によるプラス面のみが可能性として強調されているように感じます。分析内容の詳細については承知してはおりませんけれども、今回の結果から分かることは、カーボンプライシングではなくて、脱炭素に向けた行動変容や省エネが進展することが重要ということではないかと思います。

それから、資料1-3についてですが、11から15ページにおいて、税率よりも投資回収年数の違い、3年ないしは10年というのが大きく結果に影響しているということだと思います。これは、炭素税に限らず、低炭素投資を呼び込むような対策、あるいはシグナルが重要であるという示唆ではないかと思います。

また、価格シグナルを出せば、事業者は投資回収年数も10年だと、長期に見るということでありますけれども、そもそも現実的に起こり得るかどうかというのはちょっと疑問に感じます。企業経営や省エネ投資だけでなくて、いろんなことを考慮しながら戦略的に設備形成、投資判断を行っておりますので、炭素税により足元のキャッシュフローが悪化する中で、あらゆる主体が10年の投資回収年数を許容できるかも、これは疑問です。現実社会とは相当ギャップがあるというように感じるのですが、いかがでしょうか。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、遠藤委員、どうぞお願いいたします。

遠藤委員

定量分析をしていただきました2機関、御礼を申し上げたいと思います。

私も質問がございまして、手塚委員のご指摘のところと被るかもしれないのですが、まず1点目が、2030年に目標を置かれておられますので、どのような技術の導入を想定してこの試算が進めておられるのかということが1点、もう一点は、価値総合研究所の分析において、14ページ目に記されておりますが、現行の温対税の免税・還付措置を精緻に反映したシミュレーションということで、参照33ページと記載されておりますが、温対税における補助金還付の制度で、どのぐらいの削減効果があったとご分析されているのか、わかりにくく、この点をもう少しご説明をいただけたらと存じました。

以上でございます。

浅野委員長

ありがとうございました。

岩田委員、どうぞ。皆さんのご協力で時間があります。岩田委員、どうぞ。

岩田委員

ありがとうございます。

三つほど申し上げたいと思います。

一つは、両方、二つのシミュレーションについて共通の問題として、最初の時点ですぐ、例えば1万円というような炭素税を課すというシミュレーションをされておられますが、これはやや非現実的ではないかと思うんです。

仮に46%なり26%、排出量を減らすということがあったとしても、それはスムーズなパスで上げていって、あるときにまあ1万円というようなシナリオを考えることが望ましいんじゃないか。理論的にも、GDPの成長率で考えるか、あるいは実質利子率の大きさでもってそのスムーズなパスを想定するというようなことがいろいろ言われておりますが、そこの点はやはり考える必要があるんじゃないか。

特に、AIMの場合には、増収が例えば9兆円と出るわけですが、一遍に多分そういうことは不可能なので、このグラジュアルなスムーズなパスというようなものを明示するということが大事で、その場合には我々のほうの試算では、6兆円ぐらいまでしか税収は上がらないということがあるということであります。

これが1点目でありまして、二つ目は、AIMのほうのモデルでありますが、26%削減ということで、1万円だとbusiness as usualよりは8ないし9%、最善の場合でも減りますと、こういうお話があったかと思います。価値総合研究所のほうは構造転換があると実は41.6%という削減が見込めますということで、相当差があるんですね。つまり26%と41.6%、この点は電事連の清水委員もご指摘されたように、産業構造の変化をどのように織り込むかということが非常に大事で、私どもはデジタル転換で8割ぐらい削減するということがあるとすれば、1万3,000円でもゼロエミッションに行けますと、こういうことを言っておりますが、この産業構造の変化の。

浅野委員長

恐れ入ります。簡潔にお願いします。

岩田委員

すみません。ということが大事ではないか。その場合に、AIMと価値総合研究所の違いが、IO表が古いものを使われておられるので、AIMの場合に、それが影響してないかどうかお伺いしたいと思います。

また、AIMには排出量の制約を置くことによって潜在価格としてのカーボンプライシングが出てくるという記述が何ページか、7ページ目にあったと思いますけど、そのようなシミュレーションをやったことがおありになるのか、その場合のカーボンプライスは幾らなのかお伺いしたいと思います。

すみません、長くなって。以上です。

浅野委員長

はい。それでは、価値総研、それからAIM、二つの報告についてのご質問がございましたので、できましたら5分、最大でも8分ぐらいでそれぞれお答えをまとめていただければと思います。よろしくお願いいたします。

安田補佐

浅野委員、すみません、事務局でございます。

中座されております土居委員からチャットで事務局にご質問をいただいていますので、まずそちらから。

浅野委員長

はい、分かりました。どうぞお願いいたします。

安田補佐

代読させていただきます。

価値総研と国環研にそれぞれお伺いいたします。この分析結果で2030年の長期金利、あるいは国環研の場合は資本収益率に相当する率はどのくらいになるでしょうか。

土居委員のご質問は以上でございます。失礼いたしました。

浅野委員長

はい。それでは、ただいまのご質問も含めて、大変むちゃなお願いですが、よろしくお願いいたします。

増井委員

じゃあ、増井のほうから。

どうもいろいろご質問をありがとうございました。

まず、技術についてご質問を非常にたくさんいただきました。冒頭申し上げましたように、こちらのモデルでは、AIM/Enduseという技術選択型のモデルもございまして、そちらのほうで26%減を対象としたものなんですけれども、その情報、実際どれだけ費用がかかるのか、追加的な費用を導入したことによって省エネがどれだけ実現できるのか、ということを前提にこれは計算しております。そういう意味で、毎年毎年、いきなり省エネがわっと進むというのではなくて、あくまで固定資本の減耗、さらには成長していくという、その追加的な分、それによって、その追加的な投資の段階において、より省エネ型の技術が導入されて、この2030年のこういった姿に帰着していくという結果になっております。そういう意味で、いろんな技術が無制限に入ってくるというものでは決してないということをご理解いただければと思います。

そういった中でほかにも、特に46%を達成できないのではないかというご指摘もありましたけれども、先ほども申し上げましたように、これは26%減を前提とした技術の組合せ、これを前提としておりますので、今後、46%減を達成するような技術の組み合わせを前提に計算することで、実際に46%減というのを実現した社会がどのようになるのかということは計算していきたいなと、再計算したいなと思っております。

岩田委員のほうからもご指摘がございました、CO2制約下でのポリシー、カーボンプライシング、炭素価格は幾らかということで、ちょっとこれと同じ前提で計算しているわけではないんですけれども、似たような計算はしております。こちらもいろんな取組、今回示しましたような税収をどう使うのかというふうなことによって、やっぱり税率、炭素価格というのは大きく変わってきますので、その点、また前提を明記した上できちんと示したいと思っています。

あと、産業構造の転換というところにつきましては、各委員おっしゃるとおりでして、そういう転換の一つのやり方として今回、投資回収年数を3年から10年というふうに見立てました。むしろ絶対10年になるというよりは、その一つの姿として投資回収年数を10年に延長したという、そういう一つの試行実験というふうにお考えいただければと思います。具体的にどういうふうな形で実現するのかという、そういうご質問もあったかと思いますが、一つは省エネ技術、こういったところに政府が投資をしていくと。もちろんそういう場合には、賢い政府を仮定しているということで、それは非現実的ではないかという手塚委員からのご指摘もありましたけれども、そういう省エネ型の技術、これが世に出てきたときに、いかに安く使えるか、使えるようになるかというところが一つ鍵なのではないかなと思います。そういったことが実現することによって脱炭素と成長というようなものが両立できるのではないかと思っております。

最後、土居委員のほうからご指摘、ご質問がありました、2030年の金利ということで、このモデルは実物経済を対象としており、金融市場を明示しているわけではないんですけれども、資本価格も単位が抽象的なものになっておりますが、こちらもきちんとこういう前提でこうなりましたというのは後ほどお示ししたいと思います。

私のほうからは以上です。

価値総合研究所(山崎様)

続きまして、私、価値総合研究所からお答え、回答させていただきます。

浅野委員長

山崎さんですね。どうぞよろしくお願いいたします。

価値総合研究所(山崎様)

はい、よろしくお願いします。

まず、繰り返しなんですけども、その技術のことに関しましては、今、具体的な技術が何かあって、それが入ってくるというのではなくて、これまでの統計的に技術更新がされているといったところから見ていて、将来もそうなるのではないかということで、今、技術というのは設定しています。

それで、手塚委員からありましたように、政府が全部対策を分かって、それをちゃんとやっていけるかというところでございますが、これまでモデルの中でも最適な配分というのはしているわけではなくて、いろんな設定を考えて、試行錯誤でやっていくものですので、それがたまたま経済成長につながったというところがございます。

それから、今はGDP全体、全産業で見ていますが、私どものモデルでは400産業のかなり細かい分類で見ていけていますので、その意味では、いろんな業界のところの細かいところの分析のところが見えていくと思います。

それから、モデルで仮定しているように、社会が瞬時に変わるのかというところですが、これはもちろん変わるわけではなくて、ただ、モデルは当然のことながら完全情報の世界で構築されているので、そういったことは考慮しなければいけないというところがあります。

それから、小西委員からありましたように免税還付がない場合というのがありますが、これは私ども、計算することはもちろん可能ですが、そういうことよりも、今は現実の税に乗っけたやり方で今シミュレーションはやらせていただいたところでございます。

それから、私どもの資料の19スライドにありますように、設備投資を行っていったらもうずっと増えていくのかと。そうすると、税収が設備投資に使えば幾らでも増えるかというご質問をいただいておりますが、これはまだやっていないんですけども、そうではないと思っています。税収がダウンすれば打ち止めは当然あって、そういったところで成長につながる内容になっていくというふうに考えています。

それから最後、土居委員からのお話でございますが、これはCPを入れて、CPの価格を高くすればするほど金利は高くなっていきます。CGEのレンタルコストももちろん高くなっていくという結果になっています。

以上でございます。

浅野委員長

ありがとうございました。

大塚委員から事務局に対する質問もあったような気がするんですが、事務局、何かお答えになる用意はありますか。

羽田野係長

ありがとうございます。事務局でございます。何点かご回答させていただければと思います。

まず、石田委員から、本日の試算結果はCPの使い方によって成長に資するということでよいかというようなご質問がございました。事務局から大変僣越でございますけれども、今回の結果は、例えば使い道ですとか、あるいはCPによる行動変容とか、あるいは省エネの進展等々によって成長に資する可能性があるということが示されたということだと思っています。

ただ、椋田委員からもご指摘がございましたが、例えばその税率を上げれば上げるほどGDPが高まるというのは現実的ではないというご指摘もございましたが、そういったところも含めて、モデルの前提条件とかシナリオ等々によってここは左右されるところでございますので、あくまで可能性として、そういったものが示されたということだと理解してございます。

それから、大塚委員から投資回収年数を長くするためにはどのような政策が考えられるかということでございますけれども、まさに投資の不確実性を取り払うといいますか、企業の皆さんなり、あるいは金融のサイドが安心してお金をつけられる、投資ができるというような状況をつくるということが重要だと思っておりますので、その一つの手法としてカーボンプライシングというのは考えられるかどうかということ、それは以前、炭素税のところなどでも示させていただいていますけれども、投資の予見可能性をカーボンプライシングで確保するというようなことというのも一つ考えられるのではないかということで事務局からお示しさせていただいているところでございます。

それから、岩田委員から、最初から高い税率というのは難しくて、スムーズなパスを示すべきではないかというご指摘がございました。この辺りはご指摘のとおりかなと思っているんですけれども、一方で、価格をだんだん上げていくことによって投資の予見可能性を例えば確保するとか、あるいは人々が前もって行動してくれるとか、その辺りの定性的な部分というのはなかなか表現が難しいというところもございまして、今回は、まずは簡易な形で一律で最初から入れさせていただくという形で分析をさせていただいたものでございます。その辺りのさらなるシナリオの設定というのは今後の検討課題かなと思っているところでございます。

事務局から以上でございます。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

それでは、この議題1につきましては、まだご質問、ご意見、おありかもしれませんが、どうしてもここで発言をという方はいらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。よろしければ、議題の2、3に移りたいと思います。

既存の諸制度とカーボンプライシングの関係について、事務局に整理をさせました。それから、さらに中間整理の素案についても今日ご提示申し上げたいと思っておりますので、この二つについて事務局から説明をいたします。

井上市場メカニズム室長

それでは、事務局から、資料2と資料3をまとめてご説明させていただきます。

まず、資料2でございます。CO2排出削減に関連する既存の諸制度とカーボンプライシングとの関係につきまして説明させていただきます。

2ページ、お願いいたします。この資料の構成とご議論いただきたい点をまとめております。まず、CO2排出削減に関連する既存の諸制度とカーボンプライシングの関係につきまして、二つ目の矢羽根にありますとおり、一つ目として、それぞれの制度において、政策目的や対象者、最終的な負担者等が異なることを踏まえて、2050年カーボンニュートラルや成長に資するカーボンプライシングの制度設計としてどのような点を考慮すべきか、二つ目として、地球温暖化対策全般の中で、カーボンプライシングはどのような効果・役割を担うべきか、ご議論いただきたいと思います。

また、三つ目の矢羽根にありますが、カーボンプライシング間のポリシーミックスとしまして、ボランタリーなクレジット取引につきまして、経済産業省さんの研究会での検討の概要などについてご報告させていただきたいと思っております。

3ページ目をお願いいたします。まず、CO2排出削減に関連する既存の諸制度の全体像とカーボンプライシングとの関係についてでございます。

資料を飛ばしまして、5ページ、お願いいたします。現行の地球温暖化対策計画において記載されております主な施策を分野ごとに整理したものでございます。上から地球温暖化対策税、J-クレジットといいましたカーボンプライシングのほか、固定価格買取制度や税制優遇などの支援、あと省エネ法や高度化法などの規制的手法、あと温暖化対策の推進法に基づきます算定・報告・公表制度などの情報的手法、グリーン購入法、環境配慮契約法、地球温暖化対策推進法に基づきます政府実行計画、地方公共団体実行計画などの政府の率先的な取組、そして低炭素社会実行計画といった自主的取組がそれぞれございます。

続きまして、6ページをお願いいたします。下の図をご覧いただければと思いますが、需要家が直面しますエネルギー価格としまして、一番左にありますエネルギー本体価格のほか、エネルギー課税、FITや省エネ法・高度化法、自主的取組等への対応コスト、そこに、一番右になりますが、炭素税・排出量取引によって設定される炭素価格を加えたものが需要家が直面するエネルギー価格ということで書いてございます。

このうち、省エネ法・高度化法等の規制、FIT、エネルギー課税等の諸制度につきましては、地球温暖化対策以外を主な政策目的としつつ、温室効果ガス削減にも寄与するものと整理されます。また、これらに自主的取組を加えたものにつきましては、必ずしも炭素比例で対応が求められるものではない点に留意が必要かと思っておるところでございます。

続きまして、7ページに既存の諸制度とカーボンプライシングとの関係を文章で整理しておりますが、ここでは次の8ページの図を見ながら説明させていただきたいと思っております。

この図は、CO2を追加的に1t削減するのにかかる費用、すなわち限界削減費用に着目しまして、限界削減費用の安い対策、技術から高いものへと順に並べたものでございます。

また、真ん中にある黒い横線でございますが、これにつきましては、先ほどご説明しました需要家が直面する価格ということで、単純ではございますが、お考えいただければと思います。

一般的に経済合理的にCO2を削減しようしますと、本来、限界削減費用の安いものから順に、この図でいきますと、左から右に対策が実施されるわけでございますが、現行制度下におきましては、必ずしもそうはなっていない可能性があると考えられるところでございます。この点がカーボンプライシングを考えるに当たっての一つのポイントかと思っております。

次、この図におきましては、限界削減費用ごとに大きく3分割しておりますが、まずは真ん中の赤い丸で囲った部分をご覧いただければと思います。これはここに書いていますとおり限界削減費用が比較的低い対策に当たる部分でございますが、現行の制度としましては、省エネ法・高度化法、自主的取組等でもって対策が履行される部分と考えられます。ただ、例えばでございますが、省エネ法でございますと、目的がエネルギー効率改善ということが主目的で行うものでありますので、必ずしも削減コストが低い順から順に実施されるとは限らないということであります。また、自主的取組も含めまして、一定規模以上の事業者を対象としておる、そういったことから、必ずしもあらゆる主体の行動変容を促すものにはなっていないとも考えられるところでございます。

2050年カーボンニュートラルを実現するためには、規制や自主的取組で定められた水準・目的を上回る対策を行うインセンティブ、あと規制等の対象外の事業者に対しますインセンティブを付与する仕組みの構築が重要であると思いまして、この点ではカーボンプライシングを導入する効果が考えられるのではないかと考えているところでございます。すなわち、カーボンプライシングの導入によりまして、限界削減費用の見える化を図り、より合理的にCO2削減を行うインセンティブになるということがまず考えられると思います。

その上で、またですが、限界削減費用が炭素価格以下となる対策を自発的に実施してもらう、さらには、何度か議論が出ていますが、脱炭素化に向けた投資に必要な予見可能性が確保され、将来を見据えた投資を実現できる効果も考えられます。さらに、規制対応等に多額のコストが生じる場合には、財政的支援を組み合わせることで、より効果的に取組が推進されるものと考えます。

続きまして、一番左の青丸で囲った部分でございますが、削減コストがマイナスでございますので、本来的には削減するほど利益が得られる対策、技術に当たる部分でございます。現行制度としましては、自主的取組や見える化・周知などの対策が行われているものと考えております。ただ、環境省で実施しておりますCO2排出削減のポテンシャル診断などによりますと、これらの部分につきまして実施されていない対策もございます。そういった意味では、例えばですが、カーボンプライシングによって削減コストの見える化・明確化をして、実施を後押しすることも可能だと考えます。

一方で、これらの対策が実施されてない要因としては、特に中小企業を中心に、人材やノウハウ不足といったコスト以外の要因も想定されますので、併せてこうした施策も講じていく必要があろうかと思います。

次に、一番右の緑の丸で囲った部分でございます。削減コストが比較的高い対策に該当するものでございます。現行制度としましては、書いていますとおり、FIT・補助金・税制優遇などが行われておりますが、2050年カーボンニュートラルの実現には、こうした対策、技術の実装・導入が不可欠であると考えております。このため、カーボンプライシングの収入を活用して、特に投資リスクからファイナンスがつきにくいイノベーション等への支援を行い、民間投資を誘発することが考えられると思っております。

最後でございますが、真ん中辺りに雲が浮かんだようなものがございますが、地域や社会全体に効果が裨益するインフラ整備や、カーボンニュートラルに向けた公正な移行など、限界削減費用では表現できない対策についても、こういったカーボンプライシングの収入を活用した政策的な後押しができるのではないかと考えられるところでございます。

続きまして、10ページをご覧いただければと思います。ここは今まで、先ほどから説明いたしましたCO2排出削減に関連します諸制度につきまして整理したものでございます。ファクトを中心に整理したものですので、時間の都合上、細かい説明は省略させていただきます。

1点だけでございますが、12ページをご覧いただければと思います。エネルギー関係諸税についてですが、我が国においては、以下のようなエネルギー関係諸税がございます。課税対象は、使途等がそれぞれ異なっている点について留意が必要かと思っております。

次のページ以降ですが、この小委員会でも何度がお示しした資料としてCO2排出1t当たりのそれぞれの燃料別の税率、あと、OECDの実効炭素価格の国際比較等々を載せております。この説明は省略させていただきます。

その他、16ページ以降になりますが、それぞれ省エネ法、高度化法、FIT、低炭素社会実行計画につきまして、その制度の概要や最近の動向、そういったものを整理したものをつけております。この点につきましても、今回は時間の都合上、説明は省略させていただきますので、後ほどご覧いただければと思います。

ページ、かなり飛びますが、44ページまで飛んでいただければと思います。カーボンプライシングを巡ります最新の動向としまして、ボランタリーなクレジット取引に関します検討状況につきまして、経済産業省さんの研究会の資料を活用させていただきながらご報告をと思っております。

まず、45ページでございます。非化石価値取引市場の見直しということでございます。書いてございますとおり、非化石価値取引市場につきましては、国際的に展開している事業者を中心にRE100を取得しなければサプライヤーから外されるといったようなリスクがございます。FIT証書の価格の引下げ、市場における証書購入を需要家に解禁すること、あとトラッキングの拡充などの要望があるところでございます。

46ページをご覧いただければと思います。こうした要望を受けまして、これを担当しておるところは経済産業省になるわけですが、経済産業省さんにおきまして、これまでの非化石価値取引市場をFIT証書のやり取りに限定して、小売電気事業者のみならず、需要家にも購入を可能とする再エネ価値取引市場と、それ以外の非FIT証書のやり取りを行います高度化法義務達成市場の二つに分けることで検討が現在進められておると聞いておるところでございます。

続きまして、49ページまで飛びますが、J-クレジットに関してでございます。J-クレジットにつきましては、環境省、経済産業省、農林水産省の共管の制度でございます。カーボンニュートラルの実現に向けまして、代替技術が実装するまでの移行期では、クレジットでCO2排出量を調整する動きが加速しております。J-クレジットの活性化が必要であるということで考えておるところでございます。

ここにありますが、まずはJ-クレジット創出、需要の拡大としまして森林クレジット、あと中小企業の省エネ設備導入により生じるクレジットの創出を増やすとともに、(2)番にありますが、水素などの新たな技術によるクレジット創出のための方法論についても検討していきたいと思っておるところでございます。

また、(3)でございますが、企業、政府、自治体によりますカーボン・オフセットの取組を推進することによりまして、J-クレジットの需要拡大にも取り組みたいというふうに考えておるところでございます。

また、大きな2番目ですが、制度環境整備としまして、(2)にありますように、利便性確保のためのデジタル化の推進、あと(3)にありますように、非化石証書等の他の類似制度との連携についても検討を3省共同で進めてまいりたいということで考えております。

続きまして、51ページをご覧いただければと思います。JCMに関してでございます。

JCMにつきましては、環境省、経産省、外務省の共管の制度でございます。JCMにつきましても、我が国の2030年の温室効果ガス削減目標の強化に伴いまして、この目標の達成のために一層の活用の拡大が期待されているところでございます。

このため、ここでもお示ししておるとおりでございますが、大きく4点、パリ協定6条ルールを先駆的に実施することを通じましてJCMの国際的な認知度を向上させる、二つ目として、現在、17か国のパートナー国と協定を結んでおりますが、こうしたパートナー国のさらなる拡大、三つ目としまして、プロジェクトの大規模化や資金源の多様化、四つ目として、民間資金を中心としたJCMプロジェクトの案件組成などの制度運用の改善、そういったものにつきまして対応を進めてまいりたいと考えているところでございます。

最後、52ページ、53ページでございます。

まず、52ページをご覧いただければと思います。経済産業省さんのカーボンプライシングの研究会におきまして、成長に資するカーボンプライシングの検討の進め方ということで、大きくここにありますとおり、企業ニーズに基づいた対応が必要な事項として、今まで申し上げましたようなボランタリーな市場、高度化法に基づきますコンプライアンス市場の見直し、活性化ということを検討するとともに、今後、専門的・技術的観点からさらに検討が必要な事項としまして、自主的な排出量取引の枠組みの検討・構築や、カーボンニュートラルを実現する上でのあるべき税制と既存税制との関係などを取り上げられているというところでございます。

53ページをご覧いただければと思います。こうした考えに基づいて、この経済産業省さんの研究会におきましては、炭素削減価値取引市場としまして、非化石価値取引市場、J-クレジット、JCM、さらには、下のほうにありますが、日本企業によります国内での自主的炭素削減価値のクレジット化なども見据えまして、右側にあります、三つの市場についてご検討を進められるということで聞いておるところでございます。

ざっと行きましたが、資料2につきましては以上でございます。

続きまして、資料3、中間整理(素案)につきまして、簡単ではございますが、ご説明させていただきます。この資料は2月1日の再開第1回以降、カーボンプライシングの類型ごとにご議論いただきましたものを基に議論を整理したものでございます。

2ページ目をご覧いただければと思います。目次と書いております。中間整理の構成としまして、第1章、第2章で国内外のカーボンプライシングを巡る動きや、カーボンプライシングを検討する目的、方向性を巡る議論といった大局的な事柄につきまして整理をさせていただいた上で、第3章以下でカーボンプライシングの類型ごとに議論を整理させていただいております。第3章が炭素税、第4章が排出量取引制度、第5章がボランタリーなクレジット取引、第6章が炭素国境調整措置、第7章がインターナル・カーボンプライシングといった感じでございます。また、第8章としまして、カーボンプライシングと既存の諸制度の関係について整理することとしておるところでございます。

以降、4ページ以降になりますが、本文に入るわけですが、内容としましては、それぞれこれまでの事務局からの説明をまず記載させていただいて、それに対します委員からの意見ということで、前回の委員会で整理させていただきました、これまでの議論の整理を基に記載させていただいております。そういったもので事務局の説明、委員からのそれぞれのご意見という形で、それぞれが構成されておる形になります。そうした意味では、今回の中間整理で新たな視点や論点、これまで議論をしてこなかった新たな視点・論点は特に盛り込んでおりません。あくまでもこれまでの議論を整理したものとご理解いただければと思います。本来、この内容につきましてもご説明すべきところなのですが、ちょっと時間もございませんので詳細な説明は割愛させていただきます。

なお、39ページに飛んでいただいてご覧いただければと思いますが、第8章のうち、ここにあります8-2、CO2排出削減に関連する既存の諸制度とカーボンプライシングとの関係、あと、参考としてあります、カーボンプライシングの効果に係る定量的な分析を巡る議論につきましては、本日のご議論を踏まえまして追記をさせていただこうと思っております。

また、「おわりに」とありますが、この部分につきましても、本日のこれからのご議論、また、今後の小委員会の議論の進め方などを検討の上、必要な追記をさせていただこうと思っておるところでございます。

最後になりますが、この中間整理(素案)についてですが、本日のご議論などを踏まえまして、次回の委員会で中間整理の案としてお示しし、夏頃の取りまとめに向けた作業を進めてまいりたいという形で事務局は考えております。今日のご議論にもよりますが、引き続きのご協力をお願いいたしたいと思っておるところでございます。

以上、非常に簡単ではありますが、資料2及び資料3の説明を終わります。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、ただいま資料2及び資料3につきまして、事務局から説明を申し上げました。この説明につきまして、ご発言をご希望の方からご発言いただきたいと思いますが、今、ご協力いただきまして少し私の当初の予定よりは時間に余裕が出てまいりましたので、先ほど一人2分と申しましたが、お一人3分のご発言をいただいても何とかこなせそうでございます。

資料3につきましては、どういうことを整理しようとしているかということを事務局から説明いたしましたが、整理の仕方そのものについてご意見があれば、ぜひお伺いをしておきたいと思います。もしこの書かれていることの中身についての修文のご要望というようなことにつきましては、大変恐縮でございますが、事務局宛てに今週を目処に書面でご提出をいただけましたら、これを反映させるということにしたいと思いますので、個々の表現についてのご発言ではなくて、全体構成はどうであるかというようなことについて、もしご指摘があるならばご発言いただきたいと思います。議題の2、資料2につきましては十分にご議論をいただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと存じております。

それでは、ご発言をご希望の方、ありましたら、どうぞ挙手をお願いいたします。

ほかにはご希望の方はいらっしゃらないのでしょうか。もしこれで終わりということであれば大変スムーズに進むわけですが、いかがでございましょうか。途中から手が挙がりますのでなかなか時間管理が難しいんですが、今日はできましたら先に挙手をお願いいたしたいと考えております。

森澤委員

先生、挙手できないんですが、発言希望します、森澤です。

浅野委員長

森澤さんですね。サインが入らない。分かりました。お伺いいたしました。

それから、遠藤委員は中途でご退席ご希望ということを伺っておりますが、何かございますでしょうか。よろしゅうございますか。

遠藤委員

はい、遠藤です。まだ随分と時間、いることができますので拝聴しております。

浅野委員長

はい、分かりました。

それでは、今、お手が挙がりました大塚委員、大野委員、手塚委員、それから清水委員、高村委員、小西委員、遠藤委員、さらに森澤委員がご希望でいらっしゃいましたので、この方々からまずご発言をいただきたいと思います。

では、大塚委員、どうぞお願いいたします。

大塚委員

後のほうだと思っていたんですけど、すみません。では、発言させていただきます。

浅野委員長

後でもいいですよ。

大塚委員

では後のほうに回していただいたほうが。結構後に出したつもりだったんですけど、すみません。

浅野委員長

そうですか。いや、ここには真っ先に挙がったので失礼しました。それでは、大塚委員は後にします。

大野委員、どうぞ。

大野委員

大野です。じゃあ、何点か発言をさせていただきます。

浅野委員長

はい、どうぞ。

大野委員

まず、資料2なんですけども、これはカーボンプライシングと既存制度の関係をどう捉えるかというご下問だと思うんですけども、まず、1点目は、6ページの表で概念図を出していただきました。ちょっとこれ、ミスリーディングだなと思うのは、既存の制度が真ん中にあって、それに炭素税/排出量取引が右側にあって、既存の制度にカーボンプライシングが丸々コストアップになるみたいな、そういうふうな理解につながっちゃうと思います。必ずしもそうじゃないんだろうというふうに思います。一番大事なのは、この一番下に書いてあるカーボンプライシングというのは炭素比例なんだけども、既存の制度というのは炭素比例じゃないということですよね。だから、こういうふうに、ぽこんと上に載っかっちゃうんじゃなくて、既存制度を整理して、例えばエネルギー課税についても炭素比例でないものはやめていって炭素課税にしていくということになれば、別にそれも丸々全体費用が上がるわけじゃないわけですから、ちょっとそういう意味ではこのイメージというのはミスリードじゃないかなというふうに感じました。それが1点です。

もう一点は、既存制度があって何でカーボンプライシングが必要かということなんだけども、一番大事な点は、一つは、レベル的にも今までの既存制度で目標としていた26%削減という世界から今度は46%削減、さらには菅総理は50%を目指すとおっしゃっているわけですから、そういうレベルに上がったときに、やっぱり今の既存制度だけだととてもではないけどやり切れない、もっとやり方を変えなきゃいけないということだと思うんです。今日は細かい説明はなかったんですけども、端的な例だけ申し上げますと、一つは省エネ法です。省エネ法は、毎年1%の効率アップを努力義務として課すという制度なわけですよね。ところが、じゃあ、46%削減、どうなんだろうかというのを考えると、これはIEAが先月出しました2050年カーボン実質ゼロというレポートがあるわけですが、その中で2030年までのカーボンハーフをやるためには、年4%の効率アップをしなきゃいけないというIEAの知見が出ています。今の省エネ法の1%としても努力義務というものを単に上乗せするような方法でできるんだろうかという大変疑問があります。

もう一つ、端的なのは、石炭火力だと思います。供給構造高度化法というのも既存の制度の非常に大きな柱だと思うんですね。その中で今、石炭火力については、いわゆる非効率な石炭火力発電というものを2030年までにやめていくという話になった、目指していろんな検討をされているわけなんですが、今回のG7のサミットで、そういう効率・非効率という話ではなくて、そもそも石炭火力発電についてはCCSがついてない限りはもう駄目なんだと。これはもう使っていいものじゃないんだというメッセージが明確に出たんだと思います。もちろん直接的にあそこに出ているのは海外支援の話なんですが、これは当然、国内制度にも跳ね返ってくる話です。そうすると、供給構造高度化法という枠組みで、やっぱり石炭火力をやめていくというような政策は出てこないんだと思います。そういう意味で、やっぱりCO2排出量に応じた価格をかけていくということかなというふうに思います。

その他、いろいろと細かく見ればあると思うんですが、いずれにしても大事なポイントというのは、26%削減を目標にした既存の制度をいじくるということでは、46%、さらに50%を目指すという新しい目標、これは日本にとっては極めてチャレンジングな目標ですけども、国際的には当たり前の、まさにG7では共通なものになっていると思うんです。だからそれをやろうと思うと、カーボンプライシングというような新しい枠組みを作らなきゃいけないということが一番大事なポイントではなかろうかと思います。

それから、あと資料3については、細かいことについては後で、浅野委員長、事務局に後でコメントを渡そうかと思いますが、やっぱり一番疑問なのは、こういう両論併記というかな、いろんな意見を細かく並べたものを出しても国民に必要なメッセージが伝わらないんだと思います。同じような中間取りまとめは前回、去年ですか、やったと思います。ですから、やっぱりこの小委員会としては、もっと明確なメッセージが伝わるような、どういう点を議論してほしいとかというのが伝わるような、国民の皆さんに見ていただけるような、そういうまとめをぜひお願いしたいと思います。

取りあえず、以上申し上げました。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、手塚委員、よろしゅうございましょうか。お願いいたします。

手塚委員

はい、簡単に。資料2のほうですけども、まず、この6ページで、既存の制度と、それから新たに考えられる炭素税・排出量取引がどういう位置づけかということを、きれいに整理していただいているんですけども、二つ目の矢羽根で、「FIT、エネルギー課税等の諸制度は、地球温暖化対策以外を主な政策目的としつつ、温室効果ガス削減にも寄与するもの」ということで、必ずしも炭素比例ではないということが書かれているんですけれども、私はエネルギー諸課税とか省エネ法とかはそうだと思うんですけども、FITというのは、ひとえにCO2削減のために電力部門の非化石化を後押しするための3.36円/kWhのコストを国民全体で、年間で、平均世帯で1万円を超える、ある種税金のような形で徴収しているわけですから、これは炭素価格そのものじゃないかと思うんですね。通常のCO2排出との比例、直比例ではないのかもしれませんけども、そういう意味で、これが真ん中の部分に入っているのはちょっと違和感を感じます。

それから、8ページの限界削減費用の低いものから高いものという、これは非常に分かりやすいんですけども、先ほどのシミュレーションで使われている経済成長に資する、あるいはそれを導入することによって経済が成長するような結果をもたらしている技術というのは、恐らくこれで言うところの青い丸に入っている技術で、こういう本当はやればリターンが取れるんだけども、実際は実施されてないというものがどこまで実施できるかということで、あのような計算されているんだろうと思うんですね。一番右側にあるような極端に限界削減費用が高い技術、これを無理に普及させるということは、基本的には社会全体のコストアップにつながります。これは普及させるために政府がカーボンプライシングを導入して、税収から補助金を出すようなことが書かれているわけですけども、それも税金は払う人がいるから入ってくるわけなので、社会全体ではコストアップになるわけなので、こういうものを入れていったときに本当に経済が成長するというのは、どういうモデルでやるとそうなるのかという点について、ちょっと私は疑問に思うところであります。

それから、資料3の最後の39ページで、このペンディングになっているところですけども、これはカーボンプライシングの効果に係る定量的な分析を巡る議論ですが、ここは今日の前半の議論を前提に何か記載されるということなんだろうと思うんですけども、ここについては、先ほどの議論の中で、あるいは事務局からの説明の中でもこのモデル分析は非常に不完全、かつ、まだ様々な新しい状況を取り入れたものではないので、未熟なものであるという前提を置かれて説明されていたと思うんですけども、そういう意味で扱いに関しては非常に慎重に記載していただくことをお願いしたいと思っております。

資料3のその他の意見の部分で、私が発言した内容がそのまま反映されて記載されているかどうか、そういったことに関しては改めて後日、書面で提出させていただければと思っております。

私からは以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。どうぞ後で書面をよろしくお願いいたします。

清水委員、どうぞお願いいたします。

清水委員

清水でございます。資料2で既存の……。

浅野委員長

音声が途切れたようですが。

事務局

委員長、ちょっと今、清水委員、不調で退室されたようでございますので。

浅野委員長

ああ、そうですか。

事務局

よろしければ、次の、あ、つながりました。

浅野委員長

大丈夫ですか。

清水委員

すみません、清水ですけど、聞こえますか。

浅野委員長

大丈夫です。聞こえております。

清水委員

すみません、では、お願いします。資料2で既存の諸制度を整理いただいて感謝申し上げます。この議論に当たりましては、ただ単に関係諸制度を整理するというだけではなくて、それぞれの政策目的ですとか、それぞれの制度におけますカーボンプライシングの水準というのを明らかにすることが必要ではないかと考えます。その上で追加的なカーボンプライシングの長短得失を整理し、議論する必要があると考えておりますので、関係諸制度のさらなる整理をお願いできたらと思います。

次に、7ページの黒ポツの二つ目で、価格シグナルを形成する明示的なカーボンプライシングを導入することにより、以下の効果が考えられるのはないかということで、明示的なカーボンプライシング導入メリットの可能性、これのみが記載されていますけれども、例えば電力の場合、FIT賦課金の2.4兆円というのは電気料金のみに賦課されておりますので、電力からのCO2排出量、約4億tで割った場合には、それだけでCO2、1t当たり約6,000円の炭素コストを負担していると考えることもできます。さらに、これは38ページだったと思いますけれども、FIT賦課金は今後も増える見込みです。それ以外にも電気事業者が負う高度化法や省エネ法への対応に関する炭素コストも負担となります。そのため、これは繰り返しになるのですが、炭素税等の明示的なカーボンプライシングの検討に当たりましては、既存の税制や規制により電気料金に含まれます炭素コストを踏まえた議論、あるいはエネルギーコスト上昇によります国民生活や産業競争力への影響、これを十分に踏まえた慎重かつ丁寧な議論が必要であると考えます。

それから、資料3ですが、これも繰り返しで恐縮ですが、これまで様々なカーボンプライシングについて論点ごとに特徴、課題を示していただき、議論を行ってまいりましたけれども、今回の中間整理で示していただいたように、各論点については様々な意見もございますし、特に炭素税や排出量取引制度については課題や懸念点も多いということで、これまでの議論で一定の方向性や結論が得られたものではないと認識しています。したがいまして、中間整理の冒頭に様々な意見があることや、炭素税や排出量取引制度について一定の方向性を示すものではないということを明記いただきたいと思います。

私からは以上でございます。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、高村委員、よろしいでしょうか。高村委員、いかがですか、聞こえますか。

高村委員

すみません、浅野先生、ちょっと私、今、電源が切れかかっておりまして、今探しておりますので、後で。

浅野委員長

分かりました。では、後で。

高村委員

メッセージを送ったんですが、申し訳ありませんでした。失礼しました。

浅野委員長

はい、分かりました。後で、いいですか。

高村委員

後に回してください。すみません、申し訳ありません。

浅野委員長

では、大塚さんの後でお願いします。

高村委員

ありがとうございます。

浅野委員長

それでは、小西委員、お願いいたします。

小西委員

ありがとうございます。まず、資料3なんですけれども、資料2ですね、失礼いたしました。これ、12ページですね。大野委員が先ほどおっしゃったんですが、炭素比例であるということが、このカーボンプライシングの一番の特徴であると思っております。今すぐ代替ができない、燃料、熱需要というのは今の技術でできないんですけれども、2030年にかけて46%削減のためには、やっぱり電力部門の脱炭素化が急務であります。そのため現実的なところから考えると、石油石炭税と温対税の見直しというのが効果的ではないかと思っております。これを少なくとも炭素比例にしていくということが必要なんじゃないかと思っております。それについて環境省さんと経産省さんのご見解も伺えればと思っております。

あと、ちょっと飛ぶんですが、52ページ、これボランタリー市場とコンプライアンス市場ということなんですけれども、コンプライアンス市場は高度化法のみという、そういった整理になっているのかなと思っております。これはもちろん経産省さんのほうの議論だとは思うんですが、これでいくと、すなわち電源のみがコンプライアンス市場になるのかなという形で、ボランタリーのほうは、どちらかというとRE100とかSBTとか、あるいはファイナンス部門とか、そういった、どちらかというと外のところからのプレッシャーでこれを買っていくみたいなことに頼るという認識なのかなと思っております。しかしやっぱり電源のみならず、日本の産業部門の省エネを進める政策として、今、何が重要なのかといったときに、このカーボンプライシングを検討されているんだと思いますので、これはコンプライアンス市場というものが、この電力のみでいいのかどうかということを非常に疑問に思っております。これについても今の基本政策部会のほうの議論をお聞きできればと思っております。

あと、もう一つ、これは簡単なことなんですけど、13ページでOECDによる実効炭素価格って、全部門で見ると日本は30ユーロなんですけれども、運輸以外では日本は非常に低いですので、やっぱり日本の2030年にかけての喫緊のカーボンプライシングで必要なのは、ノンロードだと思うので、ノンロードのデータもお示しいただくのが順当ではないかなと思っております。

あと、50ページ、これはJCMなんですけれども、ちょうどSBが終わったところですけれども、例えば排出量全体から減らしていくためのOMGE(overall mitigation in global emissions)とか、あるいは6条2項からもshare of proceedsをとるとか、そういったものがないと、やはり6条4項との関係で公平な制度にはなっていきにくいと思います。やっぱりそのshare of proceedsに6条2項、このJCMもその中に入ると思いますが、6条2項にかけることについてどう思われているかというのを環境省さんのご見解を伺えればと思います。

最後に、資料3、今日、報告二つお出しいただいたんですけれども、二つ研究報告があって、それらの研究の示唆というものは、やっぱり重要だと思っております。ぜひ書き込んでいただきたいなと思っております。基本政策部会のほうでも、RITEさんにいろいろシナリオ分析いただいたものを示していただいていますけれども、やっぱり前提など詳細がまだ公開されてないこともあって、なかなか理解が進みにくい部分もあります。今回の報告も、先ほど増井委員が前提などの詳細をこれから公開されていくとおっしゃっていたので、研究報告、すべからくそういった詳細な報告を別途出していただいた上で、やっぱりせっかく今回の、二つもやってらっしゃるので、ぜひこの資料3にも今回の示唆というものを十分に書き込んでいただければなと思っております。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、森澤委員、よろしいでしょうか。。

森澤委員

ありがとうございます。私のほうも資料2のほうでいきますと12ページ、ここになるかと思いますが、これは既存の制度ですね、石油石炭税のところであったりとか、温対税ですね、こちらのほうにもう地球温暖化対策のための税ですね、新たな税を作るというところではなく、今、もうカーボンプライシングということを考えるに当たっては、今の既存の税制の中で脱炭素に向けて、そういった部分を合わせていくと、炭素に合わせて炭素排出に応じた税にすべきというところで、ここをまず変えていくべきではないかと。これはもう時間軸、かなりもう時間が迫ってきているということからは、それに対応するのが一番必要ではないかと思います。

また、冒頭で石田委員のほうが発言されましたように、削減が遅れた場合は、さらなる急激な削減が必要になってくるというような、そういった、こういった研究のほうとか試算のほうがあってもいいのかなと思います。これがもう十分に遅れてきているわけなんですが、今、導入しなければ将来においてはどれぐらいのことが必要になってくるかと。これはもうやらないといけない、カーボンニュートラルに向けて進めていかないといけないということであれば、遅れれば遅れるほど、その部分の対策というものは急激になってくるんだというような部分も、何かそういった部分のデータが出てくればいいかなというふうに思っています。

あとは、キャップ&トレード、これはまずは炭素税だと思ってはいますけれども、キャップ&トレードのほうも、これはボランタリーではなく、やはりちゃんとしたキャップをかけると、産業界のほうにかけていくということも併せて検討していくべきだと思っておりますので、これはボランタリーではなく、そういったものが導入されるべきだというふうに思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、遠藤委員、どうぞお願いいたします。

遠藤委員

ありがとうございます。私のほうも、資料2の6ページのほうからになりますが、やはりFITは地球温暖化対策が目的、再エネの導入が手法とすると地球温暖化対策でもありますし、この位置は違和感があると思いました。また、ポリシーミックスの在り方が、包括的に整理されていて、ポリシーミックスが必要だということを改めて感じた次第でございます。

また、皆様のご発言が集中していたように、税によってプライシングするとなると、恐らく温対税の見直しということに、落ち着くのではないかと私としても感じております次第です。

ただ、現在、コロナ禍でもありますし、タイミングの問題があり、もちろん詳細についてはいろんな制度設計について議論が必要になるのではないかと思っております。2030年46%削減という極めて高い目標が急に示され、電力部門の削減に注目が集まっているということは大野委員もご指摘のとおりだと思うのですが、これも繰り返しになりますが、電源構成というのは二酸化炭素の排出量だけで決まるものではないということを重ねて申し上げておきたいです。安全保障の面もありますし、安定供給の問題もあります。様々な問題を複合的、総合的に考えて電源構成は決められていく必要があり、炭素を減らすという目標のためだけではないということでございます。石炭火力に係る税率を上げていくべきとのご指摘もございましたが、例えば災害のとき、もしくは猛暑、厳寒の際の電力需給逼迫のときのバックアップ電源として石炭、もっと言えば石油も有効です。例えばバックアップで通常は止めておくのでカウントしないなど、そういった措置を一方で取っておかなければ安全保障上、安定供給上は極めて難しい状況になるという現実的な懸念が生じると考えます。

また、海外について、途上国、新興国の中においては、これから増えていくのは石炭火力だったり、ガス火力だったりするわけです。この間のサミットでの合意は十分に尊重すべきものだと思いますので、石炭は恐らくそういうCCUS、CCSなどの技術を込みで輸出ということになっていくのかもしれないませんが、むしろ日本の高効率のガス火力については、日本は途上国・新興国の削減への貢献という意味で積極的に展開をしていくべき技術だと思います。海外で減らしたクレジットがスムーズに使えるよう、JCMの使い勝手のよさについても十分に配慮する必要があるというふうに考えます。

以上でございます。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、大塚委員、よろしいでしょうか。

大塚委員

はい。どうもありがとうございます。

まず、この8ページの図についてでございますけれども、私はこれは非常にいいというふうに思っておりまして、価格効果で削減コストが低い対策まで対応すると。それから、財源効果によって削減コストが高い対策に対して対応すると。さらにこの送電網とか、ジャストトランジションに関して現在世代が対応していくということを考えていると思いますけれども、この三つの点が非常に重要な図であるというふうに思っています。

送電網とか、ジャストトランジションに関しても、将来世代にあまり大きなつけを回すことなく現在世代が対応してくという姿勢は非常に重要だと思っておりますので、この8ページの図は非常に説得力があるのではないかということを、まず申し上げさせていただきます。

それから、5点ほど簡単に申し上げていきますが、まず第一に、12ページのところからも明らかなように、これは、前からも指摘させていただいていますけれども、化石燃料の種類によって相当に不公平なことになっているのではないかということすら言えるんじゃないかと思いますけれども、石炭に関してすごく優遇がなされているということは、注目していかなければいけないだろうと思います。

石炭火力に関しては、徐々に新しい方向が出されてきていて非常にいいことだと思っていますけれども、一方、中国が対応しないという話があるんですけれども、中国も、あるとき突然石炭火力をやめる可能性があるので、そのときに対応できるように日本でも考えていかなければいけないということも申し上げておきたいと思います。

それから、第2に、2030年に46%削減、2050年カーボンニュートラルに向けてどういう対策を取っていくかということを、やはり考えなくてはいけない。経団連さんも、この目標に関しては異議を唱えておられませんので、そのためにどうやっていくかということを考えていかなくてはいけないということで、現在のように自主的な取組中心でやっていくのは、なかなか難しいかなということは残念ながらあるのではないかと思います。

温暖化対策については各制度がいろいろ、対象が分かれているというような問題がございますけれども、低炭素社会実行計画に関してはカバー率の問題が残念ながらございますし、省エネ法については、命令の前に指導等を前置する方式を取っていて、それ自体は別に悪くないともいえますが、実際にはなかなか勧告等が出されていないというような問題があると思います。

高度化法についても、目標の達成度合いの問題がありますので、それぞれカバー率とか削減の確実性に関して、必ずしも十分でないところがあるということだと思います。

それから第3に、今後、やはり対策の予見性を高めていくということが、全体の市場との関係で重要になってきていると思いますので、その点からもカーボンプライシングというのは有効だということを申し上げておきます。

それから第4点ですけれども、これも元来、今まで議論がありますように、社会的費用を低く抑えながらその対策を取っていくというためには経済的手法が一番いいという、環境経済学の根本の話がございますので、この点も改めて強調しておく必要があるのではないかということを申し上げておきたいと思います。

自主的取組に関しては低炭素社会実行計画等で一生懸命やってくださっていて、それは大変ありがたいことだと思っていますけれども、やはりフリーライド、ただ乗りの問題があるので、一生懸命やっていらっしゃらない企業もあることが、企業間の競争上の不公平を生んでいるということが、あまり日本では議論されないんですけれども、そこはどうしてなのか気になっているところであります。

第5に、自主的排出量取引の話は経済産業省のほうでご議論なさっているようですけれども、JVETSという、昔、環境省のほうでやっていた自主的排出量取引とかもありますので、ぜひ、そういうものも参考にしていただければありがたいということを申し上げておきたいと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは高村委員、どうぞ。よろしいでしょうか。

高村委員

はい。すみません。申し訳ありません。すみません、移動しながら今日、伺っておりまして、大変失礼しました。ありがとうございます。

今、実は大塚委員がおっしゃったことで、かなりカバーされております。ただ、やはり幾つか確認をする意味で発言させていただこうと思います。

このカーボンプライシングの小委員会、議論の前提は、少なくとも今期、昨年以降、成長に資するカーボンプライシングということを、一つの前提として議論してきたと思います。これはグリーン成長戦略の中でも、産業構造や社会経済の変革をもたらし、次に大きな成長につなげていくという、そうした方向性が気候変動対策の中に、その目的の中に織り込まれているというふうに思います。

このときに、やはり一つはこれまでも議論にございましたけれども、とりわけ今のサプライヤーや資本市場からの要請を考えると、いかに短期的に排出削減を促進していくかという視点と同時に、産業構造、社会経済を長期的にどう変革していくか、そして、それによって次世代の産業構造に転換をしていくかという課題として、私は読み解いております。

そのときに、やはり、今日、資料2で説明をしていただいておりますけれども、実際、様々な気候変動関連の施策というのは、これまでもあるということが分かります。したがって、カーボンプライシングの議論をしていくときに、こうした現行の制度を見ながら、本当に産業構造、社会の基盤を脱炭素に変えていくときに、何が足りないのかという問いを、我々は投げかける必要があるというふうに思っております。

そのときに、やはり現行、何人かの委員からもありましたけど、現行のやはり制度に改善の余地があるのではないか。これは負担されている方々が、負担をしている、努力をしていると思っていらっしゃりながら、しかしながら、なかなかその全体としての排出削減、先ほど言いました脱炭素型への産業社会の構造転換につながり切る効果が出ているのかというところに戻っていくように、問いは行き着くように思います。

その意味で、恐らくこの議論の一つのやはり重要な論点でもあると思いますけれども、一つは、この炭素価格が長期的にその主体の脱炭素型への行動の転換、あるいは産業構造の転換のシグナルとして、十分なものになっているかどうか。そして、もう一つは、国境税調整の議論がございますけれども、それがしっかり対外的にも、そうした炭素価格を盛り込んだものになっているというふうに評価をされる制度になっているかということ。そしてもう一つは、これは大塚委員がおっしゃった自主性に委ねるそのメリットと同時に、それは逆に、その自主的に先を行く企業の人たちのところに不公平感を生んでいないのかという、制度の公平性の問題を提起しているように思います。

一つ一つ、制度についてはいろんなところで申し上げていますけれども、やはりこれまでの諸制度というのが、例えば自主行動計画、企業によって本当にしっかりやっていらっしゃるわけですけれども、やはり自主性に依拠するがゆえに、そうした不公平感、あるいは全体としての底上げが担保できていないという課題があるように思います。

そして、再エネの買取制度について、何人かの委員からも言及がありましたけれども、確かに再生可能エネルギーを増やすというエネルギー転換という意味では、一定の排出削減効果があると思いますが、しかしながら、やはり火力の間の選択には影響を与えていないというところが、この買取制度のCO2削減という点でいくと、非常に分かりにくい、不十分なところだと思います。

これは電事連からもおっしゃったように、電気だけという、そうした対象になっているところにも課題があるというふうに思います。温対税については、もう、申し上げませんけれども、そういう意味で、今、幾つか課題を申し上げました長期的なCO2削減ということが、しっかりシグナルとして見える制度に改善をしていく。そして、こうした負担がCO2の削減の評価に結びつくという制度に変えていく。そこに、その中長期的な視点で制度の改善をするのと同時に、やはりそれを補完する上で、しっかりこのシグナルが少しずつでも将来に向かって、その制度がCO2、互換性というのか、奪還性じゃないですけれども、CO2をベースとした制度に変わっていくような、そうした転換を全体として考えていただく必要があるのではないかと思います。少なくとも現行の制度では、幾つかの課題があるという点は共有できるのではないかと思います。

最後に、これは私、投資とイノベーションの観点からも非常に重要だと思っていまして、特にやはりセクター間、技術間の公平な競争、融合をしっかり促すカーボンプライシングの設計が必要だと思います。これは脱炭素に向けて、様々な技術が、イノベーションが競争する環境をしっかり作るという意味でも、炭素をベースにした制度の設計の上で、このカーボンプライシングというものを新しく、しっかりベースのもの、あるいは最低基準といったほうがいいかもしれませんけれども、しっかり入れていくということは、一つのオプションとしてしっかり検討すべきではないかというふうに思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

ご協力いただきまして、ただいままでのご発言ご希望の方については……。

事務局

委員長、失礼いたします。事務局でございます。

あと、すみません。まだ挙手ボタンを挙げていらっしゃる委員の方が複数いらっしゃいまして。

浅野委員長

ああ、そうですか。ちょっとこちらでは全然分かりませんので、すみません。

事務局

参加者のリストのところ、ちょっと上のほうにスクロールしていただけますでしょうか。岩田委員以下、あと10名ほどご発言ご希望でございます。

浅野委員長

そうですか。全然こちらのほうは見えていなかったものですから。失礼しました。

それでは、ちょっとすみません。

事務局

まず、岩田委員、平井説明員、前田委員の順でございます。

浅野委員長

それでは、岩田委員、お願いいたします。

岩田委員

どうもありがとうございます。

それでは、最初、資料2について2点ほど申し上げたいと思います。

一つは7ページなんですが、これは大変いい図だというふうに思っていますが、一つのポイントは削減コストがマイナスにもかかわらず実施されていない対策、これは非常に残念なことで、これはどうやったら発見できるのかなと、ですね。私は、やはりこういうことが分かるのは情報開示ですね。後のほうでスコープ1からスコープ1、2、3ということで整理がなされておりますが、情報開示をするということで、こういう、すぐやればむしろ収益が改善する政策というのは、すぐ分かるんじゃないか。つまり、情報開示は、これ環境省、金融庁、経済産業省、一緒にタスクフォース、TCFDにのっとってやっておられるわけですが、これ、もっと協調すべきではないかと思うんですね。つまり、見える化ということで、各企業がどういう措置を取って、どういう目標を持っているのかというのが、よく見えるようになる。

それから、もう一つのポイントは、この点線で書いてある、ある時点の明示的炭素価格、カーボンプライシングですね。このラインが将来どうなっていくのか。足元では幾らなのかという、それが次第に私は上がっていく、グラジュアルに上がっていくのが望ましいというふうに思っていますが、それに従ってこの分類がどんどん変わってくるということだと思います。

つまり、中間領域のところが、実は左のほうのマイナスであるにもかかわらず実行されていない。こういうものもはっきり見てくるということで、カーボンプライスにある意味で最適なカーボンプライシングのパスを、これはもう、最初から申し上げていますが、環境省が公表されるということがあれば、このことがもっと、企業は事前に準備ができるということなんじゃないかということで、情報開示の重要性とカーボンプライシングの最適なパスを早く出すということを求められているんじゃないかというふうに、おのずから思います。

2番目は8ページ、これはもう、そのとおり大変結構ですが、あるところでAIMのエクササイズで脱炭素社会だと、このネガティブエミッションが1割ぐらいになるというふうにシミュレーションされているのを読んだことがあるんですが、ここでも同じ1割ぐらいを見ておられるのか、これは経済産業省さんにお伺いすべき点かもしれませんが、ということと、30年のミックス、これで25%の削減ということになっているんですが、今はもう46%になっているので、この改定を、実はいつおやりになるのかということをご教示いただければというふうに思います。

最後に51ページ、52ページのところで、スコープ1、スコープ2、スコープ3対応ということなんですが、これも多くの委員がご指摘になったように、これは企業がスコープ1、2、3でやるのは電力だけについてやるんじゃなくて、排出量全体なので、これはエネルギー全般をなるだけ広げていく、企業ニーズに基づいた対応、本当にこれをもっと拡大していくということが求められているんじゃないかというふうに思います。

以上が資料2についてのコメントでありまして、資料3については、まだ検討段階ということだと思うんですが、気のついた点を、今申し上げたいと思います。

一つ目はページの5番目ですが、「コロナを理由に気候変動対策を放っておけば、もっとひどいことになり、その被害たるや、人類の生存に関わる話ではないか」という、これ、コメントがありまして、これは全く同感でありまして、私はBISが今、コロナ自体も気候変動リスクだと。つまりグリーンスワンだというふうに、去年の5月から、そのように定義をしております。

ですから、コロナ対策は私は同時に気候変動対策だというふうに認識しています。というので、この点はまさに生存、生きるか死ぬか問われていると、身近なところでというふうに思います。というのが1点で、次は……。

浅野委員長

まだ、ほかにもご発言、ご希望の方がいらっしゃいますので。

岩田委員

すみません。それじゃあ、あともう一点だけ申し上げます。

2番目は、ページの7ページですが、脱炭素化に取り組まないことによる経済的な損失、オプティマルなカーボンプライスって何か、出発点はピグー課税だと思います。それは社会的費用、将来の社会的費用を割引顕在価値にして、それを表すと。それでやってきたわけですが、今のIPCCは、カーボン・バジェット・アプローチに代わっていると思います。つまり、温度1.5℃上昇を抑えると。つまり、カーボン・バジェット・アプローチで見た場合に最適なカーボンプライシングが幾らになっているのか。それは実は社会的な費用でいろいろやっていたものと比べますと、かなり高いものになっていると思います。

3番目、すみません、国境調整税の話がやっぱり書いてありますが、1点だけ追加したいと思っていますのは、実はEUが実施したいと言っていますが、ドイツとフランスの専門家会合というのが、この点についてあって、そこでは何を議論しているかというと、輸出に関する免税還付、ここはもう、やらないでいいんじゃないかという提言を実はしております。ということで、これは情報提供ということであります。

以上です。

浅野委員長

それでは、大変失礼いたしました。ちょっと私のほうで見落としておりましたが、まだご発言ご希望の方が10名ぐらいいらっしゃるようですね。恐れ入ります、お一人3分以内でお願いいたします。

それでは平井さん、どうぞお願いいたします。

平井説明員(神津委員代理)

平井でございます。日本税理士会連合会の平井でございます。聞こえますでしょうか。

本日は神津委員が会務のため出席できませんでしたので、代理で出席をしております。

資料2について、特に税制について意見を述べたいというふうに思います。

資料2の6ページに図表があります。エネルギーの本体価格にエネルギー課税等が上乗せされ、さらに今後、炭素税が上乗せされる予定だと。このエネルギー課税については、先ほども何回か出ましたけど、12ページに幾つかのエネルギー諸税がここに掲載をされております。

このエネルギー諸税だけではなくて、環境に関する税としては、多岐にわたっており、例えば令和6年度からは森林環境税が創設をされたり、自動車関係の諸税、これも環境に関する税として整理をされているわけです。エネルギー諸税とか環境に関する税というのは、非常に多岐にわたっているわけで、これを何とか整理、統合をして、国民の負担というのを少しでも和らげる必要があるんではないかなというふうに思うわけです。

炭素税を導入した場合には、やはり価格が上昇する。価格が上昇するとともに、消費が低迷して経済に影響を与えることを少なくしなきゃいけないということで、なるべくこのエネルギー諸税だけではなくて、環境に関する税制も整理、統合して、その価格が上がったことを吸収できるような措置を考えるべきではないかなというふうに思います。

それから、もう一つ、同じく税制なんですけど、令和3年度の税制改正に、カーボンニュートラルに向けた投資減税というのが、経産省主導で創設をされております。税制についても、経産省あるいは環境省、その関係する省庁が、これまで以上に関係、連携を深めて、効率的で無駄のない税制を作っていただきたいということを要望いたしたいと思います。

以上でございます。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは前田委員、どうぞ。

前田委員

ありがとうございます。聞こえますでしょうか。

浅野委員長

はい。ちょっとお声が小さいようですが。

前田委員

聞こえますでしょうか。

浅野委員長

はい。聞こえております。

前田委員

ちょっとビデオはオフにさせていただきます。

資料2の7ページに、ポリシーミックスの必要性という問題提起がありましたので、これを中心に少し意見を述べさせていただきたいと思っています。

まず、第15回、前回ですが、このときに述べさせていただいたのですが、ポリシーミックスというときに、炭素税と排出量取引を組み合わせたハイブリッドシステムというのを指すのか、それともこれらを別々のセクターや対象者に適用して、社会全体として併用するのかということによって、全く議論の中身が変わってくると思います。ですから、どちらを議論しているのかということを、まず明確にしてから議論に入る必要があるだろうと思っています。

それで、今日の前半のお話の中でモデル分析をご披露いただきましたが、このモデル分析は、いずれも炭素税を念頭に置いているという分析だったと思います。しかし、これは正確な言い方をすると、炭素税と排出量取引の両方に共通する要素の分析しかできないというだといえます。CGEですから、CGEっぽいモデル分析では炭素税と排出量取引の違いを議論するということは、基本的にはできないはずなんですね。そこで、この二つの組合せというのは、モデル分析から離れて、別途議論すべき議論であって、なかなか難しいとは思いますが別のことだろうと思います。これがまず一点目です。

その上で、もう二点だけ申し上げたいんですが、前半のモデル分析のご報告に関連して申し上げました、いずれにせよモデルで明示できるような明確なメカニズムでは、2030年46%削減目標というのは、なかなか難しいということだったと思います。つまり、妥当と思われる形でモデルに組み込まれた仕組みだけでは、こういった46%を達成するというのは難しいということだと思うんですね。逆にいうと、モデルとしては明示的には組みこめなかったメカニズムがないと、46%は達成できないということだといえます。

こうした明示的に組み込めないメカニズムというのは、この資料2の7ページの中で挙げられたものの中では、限界削減費用の算出が性質上困難な対策に当たるのだと、私は解釈しています。これらは、この資料にもすこし書いてありますけれども、インフラに関わるようなものについて抜本的な改革、変革が必要であるということだろうと私は理解しています。

例えばEVであるとか、また、水素のシステムといったものの個別の技術というのは、開発としては、ほぼ目処がついている、出来上がっているといえます。ただ、これを現実的なレベルで利用可能な形にするには、それを支えるインフラというのが必要であって、これこそが社会全体の大きな変革のために必要なものと言えるのではないかと私は思っています。

そこで3点目ですけれども、こうした社会の大きな変革という部分について、やはり単なるハイブリッドシステムではとても足らないというふうには思うところです。さらには、できることを全部やって、その上でさらに何か必要ということになりますが、それは単にポリシーをミックスするというようなレベルの話では収まらないことだと思っています。もう少し大きな未来図というか、ビッグピクチャーというものが必要だろうと思うところです。

これはグリーン成長、あるいはそれを支える新たなグリーン税制といった言い方もできるかもしれないのですが、カーボンプライシングは、そうしたビッグピクチャーの一つのピースであり、同時に1ピースに過ぎないということ、そういう位置づけで考えるべきなのではないかというように思った次第です。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

河口委員、どうぞ。

河口委員

はい。ありがとうございます。聞こえますでしょうか。

浅野委員長

はい。聞こえております。どうぞ。

河口委員

私が申し上げたいのは、資料3の素案のところの考え方なんですけれども、今日の会議、冒頭で石田委員がおっしゃったことにもかぶるんですが、これを考え方の大前提として、やると経済的にプラスになるよという話ですけれども、遅れれば遅れるほどマイナスになると。もう、世界のトレンドとしては脱炭素をしないと経済的にも環境的にも非常に破滅的なことが起きるから、やろうということになっているはずですので、これは成長に資するというよりは、衰退をいかに食い止めるかということが、本来は目指しているところではないかなと。

これですと、デファクトが、やらなくても経済は放っておいても成長するという前提で、いかにカーボンプライシングを入れて、それが邪魔しないような別の成長を目指すかというロジックになっていると思うんですけれども、何もしなければ気候変動によって大きなダメージを受けるという、だから下り階段を、エスカレーターを、下りエスカレーターを一生懸命上るような努力をしなければいけないからこそ、一生懸命経済にプラスになるような方向を目指すんだというような、そういった危機感のあるメッセージというのを少し入れていただいたほうがいいかなと。

金曜日に、日銀の新しい政策決定会合が出まして、やっと金融政策の中に気候変動対策はやらないと大変だからやるわというのが入っていたりとか、プラスで、おまけでやるというのではなくて組み込むという発想になっていっていますので、こちらの素案を作るときも、そういったトーンを入れていただくようにお願いしたいと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは吉村委員、どうぞ。

吉村委員

一橋大学の吉村です。もう既に指摘が多く出ておりますけれども、資料2の12ページですね、エネルギー関係諸税については、かなり複雑な状況になっています。

過去の経緯としては、やはり戦後の自動車化が進む中で財源が必要であったといったこととか、ほかにもいろいろ電源開発等の必要性があってということで、こういった入り組んだ状況になっておりますけれども、仮に本格的な炭素税が導入されるという場合には、やはりそろえていく必要があるんだというふうに思います。

その際には、これらが財源獲得のために導入されてきたといったところをキーにして、調整の可能性というのがあるのではないかというふうに考えております。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、井上委員、お願いいたします。

井上委員

資料2の5のページでは、地球温暖化対策の計画の主な施策を分かりやすくご説明、整理いただいてありがとうございます。

この表からも分かるように、既に日本には様々な施策が存在しています。例えば企業にとって温室効果ガスの排出削減のインセンティブになり得るJ-クレジット制度や非化石化証書市場などが整備されていることから、こうしたものを含めた様々な既存の制度が企業にしっかり認知され、活用されるよう、実効性を高めていくような方策を検討することが有効と考えています。

以前から申し上げておりますが、新型コロナウイルスの影響が続いている中、多くの中小・小規模企業の経営の立て直しが大変厳しくなっております。地方の商工会議所からも、「コロナ禍で経営が悪化している企業が大変多く、先行きを見通せず疲弊し、廃業する企業も少なくない」といった声が多く届いております。

景況だけではなく、最近ではさらに材料費が高騰していて、価格転嫁も厳しいという声も届いております。今後も全く予断を許さない状況であり、中小・小規模企業は、今後さらに厳しい経営環境に置かれることも予想されます。こうした状況において、企業に追加的なコスト負担を強いるようなカーボンプライシングを新たに導入することは大変厳しく、「成長に資する」とはとても言い難いと感じております。

中小企業もCO2削減の必要性は相当程度理解しておりますが、くれぐれも大変厳しい経営環境に置かれるこうした地域の中小企業の現状を、十分勘案いただきたいと思います。

以上です。ありがとうございます。

浅野委員長

ありがとうございました

増井委員、お願いいたします。

増井委員

どうもありがとうございます。

資料2についてのコメントなんですけれども、脱炭素という、できるだけ早期に温室効果ガスの排出量をゼロにしていくという、そういう課題がある中で、この温室効果ガスの排出というのは、ただではないと。あるいは行動変容ですとか、社会構造の転換が必要ということを広く国民に伝えることというのが、まず第一に必要ではないかと思っています。

そういう意味では、政府等からの呼びかけだけでは、やはり限界があって、経済的なメリット、デメリット、これを明示的に示すことができるカーボンプライシングの役割というのは非常に大きいであろうと思っております。

特に脱炭素社会の実現に向けては、今から最大限の温暖化対策に取り組んでいく、なおかつ、そうした取組を50年、100年と続けていく必要がありますので、長期的に検討をし続けることができるようにするためにも、実効性のあるカーボンプライシング導入というのは必要不可欠な施策であろうと思います。

ただ、一方で、このカーボンプライシングの導入によって不利益といいますか、を受ける主体というのが出ることは予測されるんですけれども、税収等、炭素税の場合ですけれども税収をうまく活用することで影響をなるべく小さくする、あるいは出ないようにするということもできますので、そういう意味で環境と経済、脱炭素と経済を両立させるようなポリシーミックス、今回の資料のようなポリシーミックスというのが必要になるのではないかと思っています。

やっぱり自分の問題として、常に意識できるような、そういう取組が必要であるということ、さらに今回取り上げられているもの以外にも、その行動変容を促す取組というのは、幾つかあるかと思いますので、そういう意味でカーボンプライシングとそういう取組というのは、どう連携して、より大きな効果をもたらすのか、そういう記述というのもこの資料の中にあれば、非常に重要なメッセージになるのではないかなと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

椋田委員、どうぞ。

椋田委員

聞こえていますでしょうか。

浅野委員長

おります。どうぞよろしくお願いします。

椋田委員

まず資料2ですが、既存の制度の位置づけ等、整理いただきましてありがとうございました。この中の7ページで、ポリシーミックスの必要性を記載いただいておりますが、ポリシーミックスを実施する際に不可欠なことは、各ポリシーが対立関係ではなくて、互いにシナジーが働くことだと思います。

同じページの上から3行目に、明示的カーボンプライシングを含めた検討とありますが、明示的なカーボンプライシングである必要性には疑問を感じているところです。

例えば低炭素社会実行計画、これは今度、カーボンニュートラル行動計画と名前を改めますけれども、技術を理解している参加業種が、BATの最大限の導入で達成できる目標を自らプレッジし、最大限の削減努力を行って、結果として大きな成果を上げています。

これは「自主的行動」といいましても、実行段階では、中環審や産構審といった政府の審議会を含め、大変厳しいチェックを受けています。また、カバー率も幸いなことに、資料の後ろにもございますが、産業部門・エネルギー転換部門で84%とかなり高いものになっております。それゆえ、政府の地球温暖化対策計画において、産業界の対策の柱と明記されるなど、日本の中期目標の達成に不可欠と位置づけられています。

他方、例えば追加的な炭素税などを課せば、BATの導入に向けた投資などに必要となる原資を奪って削減努力を損ないかねませんし、カーボンプライシングの中でも、特に炭素税等は自主的な取組と対立関係にある可能性が高く、シナジーが有効に働かないのではないかと思っております。

特に最近では、CO2の削減というものをコストではなく価値と捉える企業も広がっています。炭素価格を政府がトップダウンで決める必要性については、慎重に検討していくべきだと思っております。

また、8ページのイラストの右側の削減コストが比較的高い対策は、カーボンプライシングよりも、むしろイノベーションによる削減コストの低下がその普及に不可欠です。政府はグリーンイノベーション基金の拡充を含む大胆な財政支援、あるいは税制措置等のインセンティブとなる施策を総合的かつ大規模に講じて、その環境整備を進めていただきたいと思っております。

あと、簡単に資料3の中間整理の素案ですが、「はじめに」の部分では、読者の理解に資するよう、今回の検討がカーボンプライシングの導入を前提とするものではないこと、そしてカーボンプライシングはあくまでも手段であって、導入自体が目的ではないことを明記してはどうかと思います。

そもそも今回の検討は、昨年12月のグリーン成長戦略で、「経済と環境の好循環」という大きな目的を掲げて、成長に資するかどうかという基準を軸に議論を進めてきたものと理解しております。

この点、検討の背景となります政府の考え方を読者が理解しやすいよう、参考資料3にもございます、先週政府が決定いたしました成長戦略実行計画、あるいはグリーン成長戦略におけるカーボンプライシングに関する記述を、冒頭の部分で、できるだけ正確かつ詳細に記述してはどうかと思います。

その他の点につきましては、後ほど改めて書面で修正意見を提出させていただきたいと思います。私からは以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

有村委員、お願いいたします。

有村委員

ありがとうございます。私のほうからも何点か申し上げたいと思います。

この図を見ながら、ページ8のですね。まず、現行のいろんな施策というのは、やはり炭素比例ではないというところが問題ではないかと思います。この図で言うと、コストの低いところから技術が入っていくというところなんですけれども、今の施策は非化石の話とか、省エネ法にしても、炭素比例、エネルギー税に関しても炭素比例でないので、そのことによって社会全体の費用を抑制するというメカニズムはないというところが問題なんだろうと思いました。

この辺は、高村委員なんかも非常に申し上げられたところで、賛同するところであります。

一方で導入に当たっては現実に反映した、低率から導入していって、将来的には高まっていくかもしれないけれども、そういったパスを明確にするということが必要になると思います。

それから、効果についてですけれども、省エネの機会がないのではないかというようなご意見もありましたけれども、私のところの研究所で、東京都の排出量取引の効果を見るために、東京のオフィスビルと地方のオフィスビルと、いろんな省エネ技術を比較してみますと、やはり東京のオフィスビルで入っている技術というのは、地方のビルに比べますと、かなりハイレベルなものが入っていて、普及度が高いというところはありますので、やはりカーボンプライシングによって省エネ技術の普及の余地というのは、まだまだあるんだろうなというようなふうに思っております。

それから、ちょっと中間取りまとめに関して申し上げますと、大野委員がおっしゃいましたけれども、もう少し踏み込んだ形で書かれてもいいのかなと。先ほど河口委員もおっしゃっていましたが、カーボンプライシングの導入を避けることのデメリットというのも結構大きいのではないのかなというようなふうにも感じております。

今、中間取りまとめの案の中で、韓国、中国などでもカーボンプライシングは実施されていると記述していただいておりますけれども、今、既に今度はASEANのいろんな国で、さらに排出量取引の制度設計が始まっておりまして、もはや中・韓だけではなくて、東南アジア諸国でもそういった動きが明確になってきているといったことも、改めて申し上げておきたいと思います。

それから、あと、中間報告書におけるモデルに対する評価というところなんですけれども、かなり今日、モデルを発表されたお二方、増井さんと価値総研、それぞれかなりモデルというのは限界があるということを強調されておられました。

実際、その将来を予測するためのモデルではないので、そういった意味ではいろんな限界があるということではあると思うんですけれども、一方で国際的に見たときに、各国がカーボンプライシングの導入を議論するときにどういうモデルを使っているかというと、それらのモデルと、今日ご紹介いただいたモデルって、それほど大きな乖離はないのではないかと。こういったモデルの限界を踏まえつつ、そのモデルのシナリオ間の比較をうまく活用しながら、カーボンプライシングの導入というのを議論するというのは、割と国際的な水準になるのではないのかなというふうに、経済学者として思いましたので、一言申し上げさせていただきたいと思います。

取りあえず以上です。

浅野委員長

ありがとうございます。

石田委員、お願いいたします。

石田委員

ありがとうございます。

まず、資料2については、JCLPではポリシーミックスに明示的なカーボンプライシングを含める必要があると考えています。しかし、今回の委員会でも、先ほど大野委員からも話があったように、両論併記で平行線のままであり、これまでの委員会の内容とは変わらないと思います。

再エネが普及し、商品、サービスの排出係数を下げられなければ、国際競争力は失われてしまう危機感を持っています。今後、カーボンプライシング導入に当たっては、どういった制度設計であれば懸念が解消されるかという視点で、より具体的で前向きな議論がされるべきではないかと思います。

カーボンプライシングを導入しなくても、この先ずっと済むのであれば良いのですが、世界的情勢を見ても、そうはいかないと思います。

資料3については、先ほどから申し上げているように、税収をうまく使えば、成長に資するであろうという分析結果も出ているので、それを明記していただきたいと思います。また、中間報告にはポリシーミックスに明示的なカーボンプライシングを含める必要があるという点と、明示的なカーボンプライシングが導入されないまま、気温上昇が進んで社会的、経済的なダメージが生じるということが抜けているので、これも盛り込んでいただきたいと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございます。

土居委員、どうぞお願いいたします。

土居委員

ありがとうございます。途中、中座させていただいて失礼いたしました。ちょっとその間に、委員の方がどのようにご発言されたか、完全には掌握しておりませんけれども、私から2点ほど申し上げたいと思います。

先ほど、有村委員がおっしゃっていた点と、私も認識は共通なんですけれども、モデルの分析というのは、もちろん予測をより多く当てるということではないということは承知していますけれども、やはりそのモデルが裏側に、そのロジックとしてどういうチャネルで経済効果なり地球環境への影響が及ぶかというところは、しっかりとしたロジックがあるわけでして、そのロジック自体をモデルの当てはまりが悪いからといって否定するというのは、私は間違っていると思います。

もちろん、どれぐらいの定量的な影響があるかというところは、もちろんそれはそれとして別途評価する必要はありますけれども、定性的な部分としてモデルで描写したチャネルでの効果というものは、これはこれとして、そのモデルでしっかり描写されているならば、それはその部分にどういう効果があるかというロジックを、しっかりこの小委員会でも理解を共有するということは大事なことかなと思います。

ですから、どちらかというと事務局の頭の、冠の説明は消極的な印象を私も持ったんですけれども、モデルというのは当てるだけが目的ではなくて、その経済効果なり、地球環境への影響のチャネルをロジカルに説明するという効果もあるということは、これはこれとして、しっかり共有する必要があるのかなというふうに思います。

それから、あと、資料2の53ページ、これは経済産業省の研究会の資料ということではありますけれども、私はそこの研究会のメンバーではありませんので、この場を借りて私の意見を述べさせていただきたいと思うんですけれども、少なくとも、この炭素削減価値取引において、まさにクレジットと言っている部分で、どれぐらいの炭素価格に換算できるのかということは、もっと積極的に、ないしは早期に、これにチャレンジしていく必要が、私はあるんではないかと思います。

その値段が高いか低いかというのは次の次元の問題であって、もちろんそれがあまり高くないほうがいいというふうに、経済会の方々は思うんだろうと思いますけれども、少なくとも我が国で、そもそも炭素価格が幾らなのか。対外的に見ても、よく分からないということであれば、そもそもその状態こそが対外的に見て日本は消極的だというふうに受け止められかねない。それは日本にとっては大きな損失であり、ハンディキャップであるというふうに思います。

我が国が、気候変動問題に対して消極的であるということを印象づけられてしまっては、それこそ国際競争力を失うということになりますから、いや、そうではないと。きちんと炭素価格を、暗示的なものも陽表的に、explicitに表そうと努力しているんだという姿をきちんと見せていく、そういう姿勢が必要で、しかもそれは悠長に構えていてはいけないわけで、早期にそういう取組を具現化して、炭素価格をきちんとあぶり出していく、これが必要だと思います。

もちろん、そのプロセスの中で、炭素税なり、排出量取引なりが加わっていくということを私は必要だというふうに思っていますけれども、それが時期尚早だというのであれば、なおさらこの暗示的なものをエクスプリシットな炭素価格で換算できるような取組を急ぐべきだと思います。

私からは以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

神野委員、ご発言がございましたら、どうぞお願いいたします。

神野委員

どうもありがとうございます。

特にということではないんですが、着実にご準備していただいているというふうに感謝を申し上げたいと思います。

それで、資料2についてなんですが、私は次の、より具体的なフェーズに入ったとき、例えば具体的に炭素税をどう落とし込むかという問題になったときに、カーボンプライシング以外の諸制度というか諸施策と、どのように有機的に関連づけるかということが重要になるので、もう、その辺についての指針等々を作っていただければというふうにお願いしていたのですが、今日、資料2でもって既存の諸制度と、それからカーボンプライシングの関係についてということで整理していただいたということは、次のステップのときに、これは一つの踏み台、基盤になるのではないかというふうに感謝しております。

さらに、これは、そういう意味ではザイン(存在)といいましょうか、既存の制度であって、本来は今後どう取り組んでいくというか、CO2排出削減、つまりカーボンニュートラルなり何なりで目指して取り組んでいくときに、どういう既存の制度や何かを動かしながら、全体としてそこの中でカーボンプライシングをどう位置づけるかというようなゾルレン(当為)が必要になるかと思いますが、先ほど来、ご指摘のように、限界削減費用をキー概念としながら、これ、パワーポイントの8ですね、のところで、これ、うまくまとめていただいているので、いろんな諸制度との関連でカーボンプライシングをどう考えていくのかというときの、一つの指針になるのではないかというふうに思っております。

そのことについて、話すと長くなりますので、一応、そういう手がかりを出していただいたということで感謝を申し上げたいのと、それから、この資料3のほうは、取りあえずの論点を整理していく上での構成としては、これでいいんじゃないかなというふうに思います。カーボンプライシング全体について、それから炭素税、排出量取引、それからクレジット取引、それから国境調整だとか、それぞれここでやってきた論点を適切にピックアップしてまとめていただいていますので、当面、こういう形で。中身についてはいろいろ既にご意見も出ておりますので、今後、これを精緻にしていくというか、まとまって、今後議論を含めていく中で、いろいろな共通認識が生まれるのであれば、それを取り入れるということにして、まとめ方としては、今日はそういう議論だという話なので、まとめ方としては、この資料3でご準備していただくというのがいいのではないかというふうに思います。

以上でございます。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

それでは、もう残り時間僅かになりましたが、ちょっと事務局からのご回答をいただくという必要がございますので、5~6分、場合によっては時間が延びるかもしれません。お許しください。

経産省の梶川さん、ご質問もありましたので、まず、ご発言がございましたらお願いをしたいと思います。

梶川室長

経済産業省の環境経済室長の梶川です。本日は、活発なご議論をいただき、ありがとうございます。

資料2で、環境省の事務局から経済産業省側で議論しているものの紹介がございまして、それに対してのご質問がありましたので、簡単にご回答及び考え方をお話しさせていただければなと思います。

まず最初に、小西委員から、52ページについてのご質問がありました。税のところについて、カーボンプライシングの本質は炭素比例で石石税と温対税の見直し、この辺をどういうふうに考えているんだというお話があったかと思います。

この52ページのところの考え方は、大きく二つに分けていまして、1ポツのほうは、今、企業の様々なニーズ、先ほどのご説明にあったグローバルにRE100に対応するための証書であるとか、あとはカーボンニュートラルという宣言が受ける中で、移行期においてはオフセットが大事だという議論がございますので、その中でのクレジットの需要が必要だということで、まず、企業の直近のニーズにしっかり応えていこうというのが、まず、①のくくりでございます。

②は、これらの状況を踏まえながら、いろいろとご議論が、課題の多いところがありますので、専門的、技術的な観点からそれらの検討が必要ということで整理をしています。

1ポツのほうですけれども、ボランタリーとコンプライアンスというふうに記載をしておりますが、ボランタリーについては再エネ価値取引市場の話と、あとはJクレジットについて活性化をしていこうということで、記載をしています。

コンプライアンスのほうは、今の段階では、高度化法の達成市場の見直しというものをエネ庁でやっておりますけれども、ここをしっかりとやっていきます。その上で、コンプライアンスはこれだけなのかという話がございましたが、政府全体の削減目標がある中で、実際の企業及び国全体の進捗を踏まえながら、本当に何が必要かという議論をしていくのが大切かなとは思っているところでございます。

あと、石石税とか温対税の見直しという話については、2ポツの、この2番目のところに、カーボンニュートラル社会を実現する上でのあるべき税制と既存税制の関係整理というふうに記載をしております。委員からも、規制、省エネ法、その他様々な制度があるとの御指摘がありましたが、どういう形でポリシーミックスを考えるのか、我々のほうの研究会でも議論がございます。

また、炭素国境調整措置の関係を踏まえると、ある程度、対外的にしっかりと説明ができるような形をどのように作っていくのかというのも大変重要な視点だと思っています。この辺りを総合的に勘案しながら議論を深めていくということと認識をしておるところでございます。

あと、ご質問をいただきましたのは、大塚先生からは自主的排出量取引という記載について、環境省さんの取組もあるということは十分認識しております。そのときと今で考えますと、いわゆるESG金融の進展や、特に上場企業は、様々なステークホルダーから規律を受けながら経営をされているということなど、状況変化があります。この中で自主的にやる場合には、どういう形であれば機能するのかという議論を、深めていくことになると思います。

あと、岩田先生から、エネルギー基本計画の改定をいつやるのかというご質問があったかと思います。これにつきましては、先日のG7のコミュニケの中でも、COP26までにNDCと長期戦略について出していくというふうになっております。こういったスケジュールを念頭に置きながら、エネルギー基本計画の議論も進めていくということで、今、エネ庁で議論を進めているところでございます。

あとは、平井先生からは、カーボンニュートラル投資減税について、無駄のないような形でやってほしいということで、関係省庁とうまく連携しながら、よりよい制度になるような取組をしていきたいと思っております。

最後に土居先生から、53ページについてコメントがありました。炭素削減価値取引について、ある程度、炭素価格が明示的に見えるような形にするべきじゃないか、そういう努力をするべきじゃないかというご指摘があったかと思います。

これはCO2が単なる迷惑財ということだけではなく、やはりCO2を削減することそのものに様々なインセンティブがつき始めていると考えています。また、人工光合成というものがこれから出てくる場合は、CO2そのものを原料として使うという可能性はあるんじゃないかなと思っています。こうした炭素削減をすることの意味合いは、政府が負の価格をつけるだけでなく、うまくプライシングしていくということ、またこの価格を見える化すること、その重要性は、我々も認識するところでございます。

例えば、J-クレジットでは、国の補助金由来のクレジットについては、オークションという形で省エネ由来と、再エネ由来、それぞれやっておりますけれども、ここ最近でいくと、例えば再エネ由来は、t当たり2,000円を超えるような形になっているとか、省エネも1,500円を超えるということで、ある程度、国内においても、どれぐらいの価格で、そのCO2、t当たりで取引されているかというのが出始めています。なので、制度設計をするに当たっては、価格の公示機能をしっかり持たせることとか、あとはこういうものがしっかりと関係プレーヤーに認知されるようなシグナルにしていくというのが大事かなと思っておりますので、大変貴重なご意見として、我々のほうの検討にも入れていきたいと思っております。

以上でございます。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、井上室長、お願いいたします。

井上市場メカニズム室長

井上でございます。様々、ご意見をいただきましてありがとうございます。一つ一つ答え出すと時間がございませんので、総論的にちょっと資料2、資料3についてコメントさせていただきます。

資料2でございますが、カーボンプライシングの諸制度の関係ということで、どちらかというとざっくりと概括するような感じの資料となっております。

私自身、ポイントとしては、椋田委員、あと増井委員からもご指摘がありましたけれども、それぞれがそれぞれの目的を例えば持っておる、そういった中で、カーボンプライシングと既存の諸制度が、共にうまくシナジーし合って、よりCO2削減なり、いろんなそのほかの対策にも効果が発揮できないかという視点で、この資料を作成させていただいたものでございます。

その一面、先ほどからご議論でありますとおり、エネルギー関係諸税もそうですし、その他の規制とカーボンプライシングの関係もそうですが、ここではちょっと、ある一面のそういったところのポリシーミックスとの関係を述べておりますので、一方の面では、その負担論とか、あと細かい、それぞれの諸制度とカーボンプライシングの関係、そういったことについては、まだ十分に語れていないものだということは理解しております。

今後、引き続き、こういった、神野先生からもあたたかいコメントをいただきましたけれども、こういった資料をまた土台に、今回の皆様のご意見も踏まえて、さらにブラッシュアップしていくということでやっていきたいと思っておるところでございます。

1点だけ、資料の中で6ページのところ、FITについて、温暖化対策以外みたいな形で主目的というような感じになっておる部分でございますが、正直言うと単純に、まず法律上、もちろん再エネということの導入拡大のためにFITが出され、その結果として副次的にもちろん温室効果ガスの削減ということになるんですが、法律上、その温室効果ガスの削減ということは明記されていなかったりしたもので、まず一つ、ちょっとそういうところでの整理をさせていただいたのが1点。

あと2点目は、高村委員からもご指摘のとおりでございますが、これはこれとして、もちろん再エネ導入促進、温室効果ガス排出削減にも寄与するものでございますが、他の火力電源との代替、そういった部分ではないところもあって、こういう分類にさせていただいたところでございます。

ただ、いろいろ意見がございましたので、この図を仮に使うとしたときに、どういうFITのところを表現ぶりにするのか。例えば何かしら注釈を入れるのか、そこら辺のところはちょっと再度考えてみたいというふうに思っているところでございます。

あと、資料3でございますが、中間整理の素案につきまして、様々なご意見を頂戴いたしました。私の認識としては、基本的な今回の資料の構成、あと事務局からの提案と、あと各委員からの意見ということで、まとめることにはご賛同いただけたと思っております。

ただ、細かい書きぶり、あと全体の方向性、そういったところには様々ご議論をいただきましたところでございますので、また、改めまして今週末を目処に、先ほど浅野委員長からございましたけれども、書面、メール等でご意見を頂戴できればというふうに思っているところでございます。

いただきましたご意見を精査した上で、早い段階でまた調整をさせていただき、次回は案という形で示させていただければというふうに思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。

以上です。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

大変、熱心にご議論いただきまして、また、ご協力いただきましてありがとうございました。

以上をもちまして、本日の審議は終了ということにしたいと思います。

次回の日程、議題等につきまして、事務局からご説明をお願いいたします。

井上市場メカニズム室長

井上でございます。本日は活発なご議論、ありがとうございました。

次回の日程、あと議題等につきましては、浅野委員長にもご相談した上で、追って事務局よりご連絡させていただきたいと思います。

本日はありがとうございました。

浅野委員長

それでは本日はこれで閉会いたします。

大変ありがとうございました。

午後6時03分 閉会