カーボンプライシングの活用に関する小委員会(第14回) 議事録

日  時

 令和3年4月2日(金) 15:001800

議  題

(1)排出量取引制度について

(2)インターナル・カーボンプライシングについて

(3)炭素国境調整措置について

(4)その他

配付資料 

資料1 カーボンプライシングの具体的な仕組みを検討する目的・方向性について

資料2 排出量取引制度について

資料3 インターナル・カーボンプライシングについて

資料4 炭素国境調整措置について

参考資料1  カーボンプライシングの活用に関する小委員会委員名簿

参考資料2  カーボンプライシングの全体像

前田委員提出資料 セーフティバルブメカニズムの必要性

議事

午後01分 開会

井上市場メカニズム室長

定刻となりましたので、ただいまから第14回中央環境審議会地球環境部会カーボンプライシングの活用に関する小委員会を開催いたします。

初めに、私、事務局を務めます地球環境局市場メカニズム室長の井上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

本日の小委員会は、Webでの開催とし、YouTubeの環境省動画チャンネルで同時配信しております。

なお、吉村委員は遅れてご参加される予定でございます。

本日の資料は、環境省Webサイトに掲載しているとおりとなりますが、議題1の排出量取引制度の議論に関連しまして、前田委員から書面での資料を頂いておりますので、併せてアップロードしております。あらかじめご承知おきください。

Web会議の開催に当たり、何点かご協力をお願いいたします。通信環境の負荷低減のため、カメラの映像は原則オフにして、ご発言の際のみオンにしていただきますようお願いいたします。また、ハウリング等を防ぐため、発言する際以外はマイクの設定をミュートにしていただきますようお願いいたします。

ご発言を希望される場合には、ご自身のお名前の右側にございます手のアイコン、挙手ボタンをクリックしてください。また、発言を終えられましたら、ボタンを再度クリックし、挙手を解除いただきますようお願いいたします。もし挙手ボタンを押しているのに事務局側が気づかないなどございましたら、画面右下のチャットボックスにご記入ください。

その他、通信トラブル等ございましたら、チャットボックスにご記入いただくか、事務局までお電話いただけますと幸いです。

それでは、浅野委員長、以降の進行をお願いいたします。

浅野委員長

それでは、本日も皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。

この小委員会を再開しまして、今日は3回目でございますが、最初は全体的にお話を皆さんからいただき、前回は税とクレジット取引について、具体的な手法についてのご議論をいただいたところであります。

本日は、もう一つ残っておりました排出量取引制度について、これを主にご意見を賜り、そのほか、インターナル・カーボンプライス、国境調整措置についてもご意見をいただくということになっております。

本日は、再開後初めて、吉村委員がおいでになりますと、全員ご出席ということになりますので、お一人の発言時間については、十分その点をご留意いただければと思います。

それではまず、排出量取引制度について、事務局からご説明いただきます。よろしくお願いいたします。

井上市場メカニズム室長

それでは、事務局から資料1、資料2をまとめて説明させていただきます。

まず、資料1、カーボン・プライシングの具体的な仕組みを検討する目的・方向性についてご説明させていただきます。

これは、前回の小委員会でお示ししたもののリバイスになります。赤字の部分が、前回の小委員会でいただいたご意見を踏まえ追記した部分でございます。

2ページをお願いいたします。カーボン・プライシングの具体的な仕組みを検討する目的として、大きく3点挙げておりますが、1点目のカーボンニュートラル・成長戦略に資するカーボンプライシングにつきましては、変更ございません。

3ページをお願いいたします。2点目の、上にありますが、我が国の国益にかなうカーボンプライシングにつきましても変更ございませんが、3点目の、様々な懸念点に適切に配慮したカーボンプライシングにつきましては、井上委員のご指摘を踏まえ、中小企業の視点を追記しております。

4ページをお願いいたします。ここでは、こうした検討の目的を踏まえた、カーボンプライシングの具体的な仕組みの基本的な方向性を整理したものですが、三つ目のポツとして、前回の資料では、経済成長の時間軸と技術の時間軸のみ記載しておりましたが、そもそもの2050年カーボンニュートラル実現に向けました、脱炭素化の時間軸の記載が抜けておりましたので、追記いたしました。

加えまして、一番下でございますが、カーボンニュートラルの実現は、カーボンプライシングのみで実現するものではなく、既存の制度・取組等を含めたポリシーミックスによって達成されるため、その点も追記させていただきました。

資料1は以上でございます。

引き続き資料2、排出量取引制度についてご説明いたします。

資料、飛ばしますが5ページをお願いいたします。排出量取引制度の利点と課題について整理したものでございます。

利点としましては、何よりも確実性を持って削減量を担保できる点がございます。また、市場メカニズムによって決められる炭素価格を通じまして、脱炭素化に取り組むインセンティブが確保されるとともに、規制と異なり排出枠を超えた排出がなされても、排出枠の取引により、柔軟な義務の履行が可能となります。

さらには、有償割当の場合は、オークション収入を活用しまして、イノベーションや技術の普及を後押しすることができますし、無償割当を行うなどすれば、様々な懸念点に配慮するための措置を講ずることができます。

こうした価格効果、財源効果という点では、炭素税と同様の効果を発揮できると考えているところでございます。

一方で、課題としましては、排出枠価格が上下しますので、予見可能性の確保が困難な場合があることや、制度が複雑な上、キャップをはめる制度対象者については、一定の据切りを設定する必要がございまして、中小規模の排出主体を対象としにくいといった課題がございます。

さらには、一番下ですが、炭素税同様、民間企業のイノベーション等の原資を奪う、我が国産業の国際競争力に悪影響を与えるなどの懸念もございます。

ページ飛ばしますが、10ページをお願いいたします。排出量取引の具体的な仕組みを考える上での、全体コンセプトを整備したものでございます。

先ほどの資料1、そして前回の炭素税のものとほぼ同様の内容になりますが、まず、脱炭素化、経済成長、技術の時間軸に沿ったものであること。

四つ目のポツにありますように、市場メカニズムを通じた価格シグナルに加えて、将来的なオークション収入を活用し、あらゆる主体の行動変容、経済の構造転換を促していけるものであること、そして、一番下5ポツ目になりますが、我が国の国益にかなうものということで整備しております。

11ページをお願いいたします。排出量取引制度におきましては、市場を通じて排出枠価格、すなわち価格シグナルが決まるわけですが、その排出枠価格は割当総量や割当方法次第で大きく変わります。

まず、ここに示しているのは、割当総量でございますが、先ほどご説明した全体コンセプトに照らせば、下の図にありますとおり、短中期的には、例えば我が国のNDCや地球温暖化対策計画、エネルギーミックス等と整合的な割当総量で、長期的には2050年カーボンニュートラル実現に向けて、割当総量を絞っていくことが考えられます。

続きまして、12ページをお願いいたします。次に、割当方法についてでございます。まず、下の表をご覧ください。

割当方法には大きく、政府が事業者に無償で排出枠を提供する無償割当と、割当総量に対し事業者が必要と考える割当枠をオークションで購入する有償割当の二つに大別されます。

ちょっとYouTubeが今、調子が悪くなっているので中断させてください。すみません。

事務局

環境省事務局です。

すみません、YouTubeのほうがうまく配信できていなかったようで、排出量取引の資料の説明を冒頭からまた、始めさせていただきたいと思いますので、大変申し訳ないですけど、よろしくお願いいたします。もう少々お待ちください。

浅野委員長

どうも前回に引き続いて、YouTubeのご機嫌がよくないようですね。申し訳ございません。

(中断)

事務局

環境省事務局です。

説明、止まってしまって申し訳ございません。今から説明を再開したいと思います。よろしくお願いいたします。

井上市場メカニズム室長

すみません。改めまして、11ページ、もう一度、説明を繰り返させていただきます。

排出量取引制度におきましては、市場を通じまして排出枠価格、すなわち価格シグナルが決まるわけでございますが、その排出枠価格は割当総量や割当方法次第で大きく変わります。

まず、割当総量ですが、先ほどご説明しました全体コンセプトに照らせば、下の図にありますとおり、短中期的には、例えば我が国のNDCや地球温暖化対策計画、エネルギーミックス等と整合的な割当総量で、長期的には2050年カーボンニュートラル実現に向けて、割当総量を絞っていくことが考えられます。

12ページをお願いします。次に、割当方法についてでございます。まず、下の表をご覧いただければと思います。

割当方法には大きく、政府が事業者に無償で排出枠を提供する無償割当と、割当総量に対し事業者が必要と考える割当枠をオークションで購入する有償割当の二つに大別されます。

さらに、無償割当について、過去の排出実績を基に排出枠を設定するグランドファザリング方式と、所定のベンチマークに活動水準を乗じて排出枠を設定するベンチマーク方式の二つがございます。

割当方法については、炭素排出量に応じた炭素排出コストを公平に負担することによりまして、あらゆる主体の行動変容、経済の構造転換を促すという観点から、将来的には、ここに書いてありますとおり、有償割当を原則とすべきと考えますが、社会的インパクトを回避する観点や、排出量取引のノウハウを身につけるということから、制度導入当初は無償割当を中心とすることが考えられます。

14ページをお願いいたします。前回の炭素税でも似たような図をお示ししましたが、排出量取引につきましても、これまで申し上げてきました割当総量や割当方法について分かりやすく図示してみました。

濃い青の線が、割当総量の設定イメージ、そして、水色の線が割当総量のうち、有償割当量のイメージとなります。

まず、左側をご覧いただければと思いますが、排出量取引制度の導入当初は割当総量をいきなり絞るのではなくて、また、割当方法も②というところにありますが、無償割当を中心とするのですが、それで終わるのではなくて、あわせて、①にありますとおり、割当総量が将来に向かって段階的に減少する。

割当方法については、③にありますとおり、将来的には有償割当の対象を徐々に広げていくことを明示することによりまして、投資の予見可能性を確保し、早期に削減に取り組むインセンティブを確保し、投資拡大に貢献することが考えられます。

また、水色のところでございますが、一番下にあります⑤のとおり、有償割当量が増えますと、オークション収入が得られますので、その収入を活用しまして脱炭素イノベーションや脱炭素技術の普及を後押しし、これも投資拡大に貢献できるのではないかと考えます。なお、その際には、左上の雲のようなものがございますが、以下のような仕組みが必要と考えられます。

一つには、前回の炭素税と同様でございますが、脱炭素技術の確立状況などの技術の時間軸を踏まえた、適切な仕組みを考えることが必要だと考えております。すなわち、代替技術が存在しない中では、単なるコスト増になってしまうということでございます。

二つ目でございますが、排出枠価格は市場を通じまして決まりますので、炭素税と異なり、価格が安定的ではありません。よって、価格シグナルを安定化させるための仕組みも考える必要がございます。

三つ目でございますが、後ほど説明しますが、実排出量のモニタリングや検証、排出枠の口座簿の整備など、制度運用のためのインフラ・ルール等をつくる必要がございます。

このような点に留意することが必要となります。

以降、参考ですので、説明は省略いたしますが、23ページをお願いいたします。

23ページでございますが、既に排出量取引制度が導入されています国、地域の割当総量について記載したものでございますが、EUのところをご覧いただきますと、EUについては、フェーズが進む中で割当総量を絞っており、現在の第4フェーズにおいては、2030年におけるETS対象設備の排出量を2005年度比で43%減を目標に、割当総量の減少率を年2.2%に設定しております。

次に、24ページをお願いいたします。割当方法でございますが、同じくEUでございますが、第1フェーズは、グランドファザリング方式が中心でございましたが、現在の第4フェーズでは、発電部門を中心に、産業部門の57%は有償割当としつつ、国際競争にさらされている業種などに対しましては、ベンチマーク方式の無償割当を認めるなどの対応を取っております。

こうした諸外国の事例も参考に考えていくものだと考えておるところでございます。

次に、排出量取引におきまして、キャップをはめられる制度対象者についてでございます。

27ページをお願いいたします。制度対象者として大きく三つのパターンが考えられます。

まず一つ目は、一番左にございますが、化石燃料を生産・輸入・販売する事業者、すなわち上流側を対象とするものでございます。

具体例を申し上げますと、本年1月より、ドイツではEU-ETSの対象外である自動車などの道路業燃料や建築物の冷暖房燃料について、その燃料を大本で供給します事業者を対象に、ドイツ独自の排出量取引を導入しております。

二つ目でございますが、真ん中辺りにございますが、EU-ETSのようにスコープ1、すなわち化石燃料を直接燃焼、消費する事業者を対象とするものでございます。

三つ目でございますが、一番右下になりますが、電力を含むエネルギーを最終的に消費する事業者を対象とするものがございます。この最たる例が東京都の排出量取引制度でございまして、ビル等大規模建築物が主な制度対象者となりますが、当該ビルで使用する電力を購入した場合には、自らが発電に伴うCO2排出をしたものとみなし、削減の取組を行うというものでございます。

28ページをお願いいたします。制度対象者ごとの特徴でございますが、見ていただきますと、上流ほど制度対象者の数が少なく、行政コストを抑えることが可能となり、化石燃料の価格転嫁を通じまして、多くの主体にCO2削減のインセンティブが及ぶことになります。

一方でその裏返しになりますが、上流に比べまして下流のほうが、より直接的なインセンティブを与えることによりまして、様々な方法による削減が可能となる特徴がございます。それぞれごとに細かく特徴があるところでございます。

続きまして、資料飛ばしますが、様々な懸念に配慮するための仕組みについてご説明いたします。

33ページをお願いいたします。矢印の下に、具体的な懸念点を三つほど記載しております。これは、前回の炭素税のときと同じことを記載しておりまして、一つには、代替技術がない場合には、単なるコスト増となること。

二つ目には、エネルギー多消費産業を想像いただければと思いますが、他産業と比べ負担が過重となるおそれがあること。

三つ目に、国際的な貿易材を扱う事業者にとっては、国際競争力がそがれてしまう場合があることを示しております。

これに対します対応につきましては、ここに書いてますとおり、排出枠の割当方法を無償割当とすることや、オークション収入を活用した支援などを行うことが考えられます。

続きまして、34ページでございます。また、炭素税と異なりまして、排出量取引制度につきましては、繰り返しでございますが排出枠価格の乱高下に係る懸念の声がございます。投資の予見性を高める上でも、価格安定化に留意した仕組みを考える必要がございます。

これに対しまして、矢印の下にありますとおり、例えば排出枠のバンキングということで、余剰排出枠を次の償却期間に繰り越すことや、ボローイングといって、不足排出枠を前借りすること、また、排出枠のオークションにおける価格の上限・下限の設定を行うことや、あらかじめ割当量の一定量を留保した上で、排出枠の需給状況に応じて、オークション量を調整する排出枠リザーブの運用といったことが考えられます。

ページを飛ばしますが、37ページをお願いいたします。諸外国における事例でございますが、EUにおきましては、貿易強度と炭素集約度という指標を基に、一定の条件を満たせば排出枠の100%無償割当を行う措置を講じております。

ただ、第3フェーズと比較して、第4フェーズにおいては、こうした優遇措置を講じる対象業種を絞っている点にも留意が必要かと思います。

39ページをお願いいたします。EU-ETSにおきましては、オークション収入の50%以上を気候・エネルギー関連の目的に使用することが義務づけられております。具体的な使途は各国の裁量に任されておりますが、主要な使途の一つに、電力多消費産業への電気料金補償ということが認められており、下にありますとおり、ドイツなどで具体的な補償実績がございます。

続きまして、飛びますが44ページをお願いいたします。諸外国においての価格安定化措置でございますが、EUをはじめ、アメリカの州レベルでの排出量取引において、余剰排出枠が一定量を下回った場合や、排出枠価格が高騰した場合に、リザーブしております排出枠をオークションに追加で販売することなどの措置が用意されているところでございます。

続きまして、政府税収の使途についてでございます。46ページをお願いいたします。

これにつきましては、前回の炭素税のときと同様で、有償割当によって得られたオークション収入についても、矢印の下にありますとおり、供給、需要サイドの構造転換に活用することや、先ほど来申し上げておりますとおり、様々な懸念点に対する活用や、国民などへのより直接な還元といった手段も考えられます。

49ページをお願いいたします。ここでは、炭素税も含めましてカーボンプライシングの収入の活用事例がまとめられておりますが、排出量取引に関しては、例えばEU-ETSについては、先ほど申し上げたとおり、収入の50%以上を気候エネルギー関連を目的に使用することが要請されておりますが、各国からの報告にありますと収入の約80%が気候変動関連のプロジェクトに活用されているようですし、さらに一部はEU全体への基金に取り置かれ、革新的な技術開発、商用化などに充当されておると聞いております。

一番下にありますが、米国カリフォルニア州や、カナダケベック州などにおいても同様に、気候変動に関するプロジェクトに充てられてるようでございます。

最後になりますが、制度運用のためのインフラ・ルール等でございます。

54ページをお願いいたします。排出量取引制度に関します主な論点をこれまでご説明しましたが、そのほか、制度運用のためのインフラ・ルールについては、例えばここに記載しておりますとおり、様々整備していくことが必要になります。

例えば一番上にあります排出量のモニタリングや検証の方法、いわゆるMRVの確立が重要ですし、三つ目にありますが、排出枠を管理する口座簿が頑強で正確なものでなければなりません。

また、企業の新規参入、退出に関する扱いや、会計、税務処理に関するルールを明確化する必要がございます。

もう一つは、一番下にあります、国際的なクレジット市場のリンクに関してでございます。

63ページをお願いいたします。この図をご覧いただければ分かりますとおり、EUを皮切りに、近年、韓国、中国など、排出量取引の実施事例が増えてきておりますし、地域レベルにおきましても、東京都や埼玉県のほか、アメリカやカナダの州レベルでも導入が進みつつあります。

そうした中で、複数の制度間において、他制度の排出枠の利用を認めるケースも増えてきております。ここで挙げられておりますとおり、EU-スイス、カリフォルニア州-ケベック州、東京都-埼玉県などでは既にリンクが認められております。

もちろん、国、地域によって制度が大きく異なりますので、単純にリンクできるわけではございませんが、世界的に見てこうした動きも増えつつある中で、我が国として、排出量取引をどのように考えるかといった視点もあろうかと思っております。

以上、駆け足になりましたが、説明を終わらせていただきます。ありがとうございます。

浅野委員長

それでは、中断して申し訳ございませんでしたが、ただいまの事務局の説明につきまして、ご発言をご希望の方はどうぞ、アイコンをクリックしていただいて、お待ちをいただければと思います。

先ほど申しましたが、できるだけ多くの方にご発言いただくために、可能な限り短く、お一人3分ということで、ご発言をお願いをしたいと思います。

それでは今、前田委員が先にお手が挙がったようです。前田委員から、提出いただいた資料に基づいてのご発言があろうかと思います。どうぞ、前田委員、お願いいたします。

前田委員

東京大学の前田です。ありがとうございます。

最初に発言するのは初めてのことで、少し緊張しますがお話しさせていただきます。

「セーフティーバルブメカニズムの必要性」という題名で、事前に資料を提出させていただきました。

趣旨を見ていただくと分かるんですが、すみません、最初のページ。ありがとうございます。こういう資料を事前に出させていただきました。

次のページで、この趣旨としては、今日のお話にもありました、事務局の資料の中で34ページ、「排出量取引制度に対しては、投機による影響も含め、乱高下に係る懸念の声もあり、予見性を高める上で安定化に留意した仕組み。それから、その仕組みに加えて安定化に向けた措置としては、方法は以下のような方法が幾つかある」となっています。

浅野委員長

前田委員、少しお声が小さいので、大きいお声でご発言いただければと思います。

前田委員

分かりました。申し訳ないです。

ここにありますように、事務局の提示の資料の中で、このような懸念についての議論がありました。これに関連してより深い議論を提示したいというのが、私の資料の趣旨であります。普段の発言のように口頭でお話しすればいいことではありますが、少し議論が込み入りますので、それで正確性を期するために少し文書で事前に書いてみたというところです。

それでは次のページなんですけれども、背景としまして、排出量取引制度には、通常の証券取引とは異なるリスクが少し考えられるということがあります。これは、普通の証券取引であれば、特にボラティリティというんですかね、価格が変動するということが重要で、それを安定化させる方法というのもいろいろあるんですが、ここで言う排出量取引制度へのリスクというのは、ボラティリティを抑えるということとは違ったもの、安定化させるということだけではないものがあります。それが特にここに書いた今日のお話というところです。排出枠、ないしはその許可証の取引というのは、比較的、物理的な制約がなく取引がされます。これは証券的な取引と同じような形になりますが、一方で、排出削減の活動をする場合は、多くの場合、事前の技術投資であるとか生産調整というのが必要となってくることが多いといえます。企業であれば、大体、そういうのは年間計画で、あるいは数年の計画で決めていくという形になっているはずです。

そのため、排出削減技術投資の意思決定と、実際の排出量の確定及びそれに応じた枠の確保という間には時間的なずれが生じる可能性があります。このタイムラグというのは、如何ともしがたい不確実性とリスクにつながるということになります。これが普通の証券取引とまた全然違うところというふうに考えられます。

それでは、次のページを見ていただきたいのですが、タイムラグに伴うリスクとして、この(期末の)順守すべき排出量が、事前の予想通りに(投資済み)削減技術で対応できる範囲に収まっているなら、それで構わないんです。でも、場合によっては、そうでなくて、削減技術で対応できる範囲を超えていて、それ以上はもう削減が不可能ということが判明することがありえます。それが事後的に判明するということです。これは、普通の議論であれば、排出枠を購入するか、あるいは削減するか、二者択一で選べますというのが排出量取引制度のいいところだというロジックになっているのですが、実はそういうことができない可能性が高いということですね。そうした排出枠の市場調達以外、方法がなくなる場合というのが大変問題で、さらにこれが市場全体で起きると、排出枠が高騰して各企業は大きな損害を被るということがあり得る。

このようなリスクというのは、規制当局の定める排出枠総量にも関連して、これが多ければそのような事態はあり得ない。総量が多ければ、価格は常に低迷するということが言えますし、逆に言うと、それが少なければそのリスクが高くなる。

そういう意味では、総量の割当と価格というのは、表裏一体といえます。今日の事務局の資料にもそのようなお話もあったと思います。逆に言えば、これはすごく人為的な側面が強いということ。つまりこの排出量取引制度におけるリスクは人為的側面が強いということなのです。これは一般な証券取引とは全然違うところといえます。

それで次のページなのですが、こうしたことから、市場価格高騰のリスク緩和の方法として議論されているのが、セーフティーバルブ、あるいはプライスキャップという言葉もありますが、そのように呼ばれるものがあります。

規制当局が価格に上限を設けて、実際の市場価格がそれを上回るような事態が発生した場合には、その上限価格で規制当局が無制限に排出許可証を供給するというような考え方です。

これは価格の規制と、量の規制を組み合わせるような、いわゆるハイブリッドシステムともいえるし、そういうのと形は似ているんです。しかし、形は似ているんですが少し目的が異なります。

それで、次のページに行っていただきますが、ほかにも類似したようなメカニズムはあります。選択制の炭素税。これは炭素税を選ぶか、排出量取引での取引を選ぶかどちらか選べるというもので、いわゆるポリシーミックスだとそういうような状況になるわけですけど、その場合は価格が固定されることになるので、これは似てるといえます。

あるいは、ユニットペナルティーというもの。順守ができない場合、不順守の場合の罰則ですね。これも類似した一つの方法です。

あるいは、プライスキャップが導入されているといったお話が、今日の事務局の資料にも大分出てきましたが、これとも形は似ているんです。ですが、その主たる目的というのが、予見不可能な事態により発生する損害の軽減、ないしは救済でありまして、そういう意味では安全弁というような言葉が、ある意味、一番適切だろうと思います。ただ単にプライスキャップというよりは、セーフティーバルブというのがよいと思います。

現行の世界各地の排出量取引制度としても、価格の上限やプライスキャップという形で類似の設定がなされていることが多いです。今日の事務局ご用意の資料にも、そういう話がたくさんあったと思います。

しかしながら、これらの実装の背景には必ずしも明確な論理があるようには思えない。論理が不明確なまま、ただただ価格に上限を設定しましょうというのでは、あまり望ましい政策決定プロセスとは言えないと思われます。

次のページなんですが、学術的な議論としては、まさにこのセーフティーバルブというのは2000年代によく議論されたことがあります。Jacoby and Ellermanというのは、よく知られているMITのこの分野の大先生ですけど、このような文献ほかいくつかあります。これが2004年ぐらいからあります。

このセーフティーバルブのメカニズムを排出量取引制度に組み込むには、セーフティーバルブの価格、これはTrigger priceと言いますが、これを幾らに設定すればよいかという議論が必要であるはずです。この議論の出発点は、市場価格の予想値を算定することですが、これを決定付けるのは排出枠の総量となります。市場価格と排出枠総量の設定とは表裏一体になっています。そういう意味では、より詳細なリスクの根源とか性質について深い議論がまず必要と言えます。

次を見ていただきたいのですが、ただ、残念ながらこのセーフティーバルブの具体的な設定方法については、このJocoby and Ellermanも含めて、学術的にはあまり明確な結論は出ていなくて、セーフティーバルブという考え方がありますという紹介程度にとどまっているのが現状です。

この理由というのは、EU-ETSでもそうですが、現行の多くの市場では、価格低迷のほうがむしろ目立ちがちなのです。それは排出量の総量が多めに設定されているからで、言葉を変えると規制が緩いということに起因します。ですので、今のところはそんなに高騰して大変ということはない。いまだ価格高騰で大問題ということをあまり経験していないといえます。しかしながら、将来的に規制を強めていくということになりますと、これは排出枠の総量を絞っていくことになりますが、そうするとセーフティーバルブの必要性が増してくるはずだと思います。

次なんですが、一つの考え方として、具体的にどういうふうに設定するかという議論を紹介します。価格の設定と排出枠総量の設定とは表裏一体で、その関係自体が、削減の技術などによって規定されます。そして、これもまた予見し難いものになりますから、表裏一体の関係自体に不確実性がさらにあるというような複雑な構造をしています。

こうした諸条件を勘案すると、セーフティーバルブのトリガー価格を社会的排出削減限界コストの2倍に設定するのがよいというような考え方が一つあります。ちょっと手前みそで申し訳ないのですが、考え方としてこういう文献もありますと申し上げておきたいと思います。

それで、次なんですけれども、まとめさせていただきます。

今紹介した文献も含めて、学術的議論とその結果には多くの前提、仮定があります。ですから、そうした学術的議論をそのまま現実の制度の実装に適用するということは少し無理があるというのは確かです。学術的にはこうだから、それをそのままやるべきですというのは大きく間違っている議論だと、私は思っております。実際の制度の実装の段階で、より多くの現実的要素を勘案した政策的な議論が必要であると考えます。

ただ、いずれにせよ、時間軸に沿って規制をこれから強めていくというような方針があるとすれば、将来的には価格高騰のリスクというのは、今以上に高まっていくはずであります。そのための対応策として、安全弁という考え方、セーフティーバルブという考え方ないしは、そうした考え方の下での議論の整理が必要ということはいえるのではないでしょうか。そのような問題意識が必要であると考えます。

以上です。簡単ですが終わらせていただきます。

浅野委員長

前田委員、よろしゅうございますか。

前田委員

はい。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

それでは、お手が挙がっている順番かどうか分かりませんが、大塚委員、遠藤委員、有村委員、まずこのお三方にお願いをしたいと思います。

大塚委員、どうぞ。

大塚委員

ありがとうございます。

最初に排出量取引について炭素税と比較していくつか申し上げます。排出量取引については先ほど井上さんがおっしゃったとおりでございますけれども、10年前にも検討がされたことがございますが、国レベルではうまくいっていないわけですけども、今回、経済成長戦略との関係でということが前提となっていますので、その観点から少しそのときとは違ってきているところがあるとは思います。

排出量取引のいい面としては、先ほどもご指摘いただいたように、総量削減が確実に行われるという点と、あと削減した人が金銭的なメリットを得ることができるという辺りもプラスだと思います。

ただ、今、前田委員のお話にあったように、価格の安定化というところに関して、企業の方の、あるいはほかの事業者の関係者の方の予測可能性という点では、少し価格が上下するという問題があることはあるわけで、そのためにリザーブとか、今のセーフティーバルブとか、いろいろ方法を使うわけですけれども、それに対する対処が必要になってくるということが一つございますし、あと代替可能な技術があるかどうかに関して、ピンポイントの政策の小回りがききにくいところがあるかなということはございます。また、裾切り以下の中小企業とか家庭に関しては炭素税も導入しないといけないというこよがございます。導入すればいいんだと思いますけども。

それから、最初からオークションを入れるのは対象事業者との関係で少難しいので、グランドファザリングから始めないといけないので、そのときは収入が得られないことになるというような問題等々があることはあると思います。

それぞれ対処はできると思いますけれども、経済成長戦略との関係でいうと、炭素税のほうが少しいいけれども、取り組むべき一つの方法としては並行して考えていくべきものであると思います。

あと、先ほどご指摘がなかった点で、今後どうなるか分からない点としては、これからまた後でお話がある、炭素国境調整との関係で、もし排出量取引市場が世界の他の市場とリンクしていれば、新たな調整はいらないというようなことになるとすると、ある程度メリットがあるかもしれません。ただ、これもまた、リンクすることに関してどう考えるかという別の問題もございますので、さらに検討すべき課題であると思います。

あと、幾つか細かい点を少し申しますが、スライド27にあった、どの段階で排出枠の取引をするかという点については、直接排出方式と間接排出方式に関して、10年前にも議論しましたが、10年前と違っているところは、何といっても電力の自由化が進んでいること、それから再エネというほかのエネルギー源が出てきている、代替できるものが出てきているというところでございまして、そのため、その点から考えると直接排出の方式を導入する素地ができてきているのではないかということを一つ申し上げておきたいとは思います。

あと、49ページの収入の使途ですけれども、私は、将来世代に現在の負荷に対しての負担を押しつけないという観点から、財政赤字等のところに補填することも多少は必要だと思いますが、少なくとも50%以上は、新しい技術開発とか温暖化対策に使う。80%ぐらいかもしれませんけども、そういうことが必要になってくると思います。

それから54ページのところのインフラのところですけども、口座簿に関しては、現在も温対法にあるCDM等についてつくったインフラとしての割当量口座簿制度がございますので、この辺が新しく排出量取引制度を入れるときに参考になるだろうと思います。

あと、先ほど前田先生がおっしゃった点は、私もそのとおりだと思いますけれども、現在EUでは、排出総量に関しての規制が厳しくなってきたので、価格が上昇してきているというようなことがあるということとか、あと、先ほど先生がおっしゃった排出総量の設定と技術の進展との間のタイムラグの問題は確かにそのとおりだと思いますけれども、税の場合はそもそもその二つの間をリンクをさせることを考えていないので、ちょっと炭素税と比較したときにはそこが、排出量取引のデメリットになるということではないかなとは、思っておりました。どうもありがとうございました。恐れ入ります。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは遠藤委員、どうぞお願いいたします。

遠藤委員

取引制度のみについて申し上げます。

日本企業のカーボンニュートラル宣言が相次いでいる現実を考えると、Jクレジットなど、現状の日本の取引市場が、そうした企業のニーズを十分満たしているとは思えません。割安な海外のクレジット市場に財が流出することを避けるためにも、国内の取引市場の活性化は必要だと考えます。ただし、それはあくまで民間の自主的取組であるべきであって、繰り返し申し上げていますが、制度設計の社会的コストを鑑みても、EU-ETSのような政府によるキャップ・アンド・トレードであるべきではないと考えております。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、有村委員、お願いいたします。

有村委員

有村です。聞こえておりますでしょうか。

浅野委員長

聞こえております。どうぞ。

有村委員

よろしくお願いします。

私のほうからは、少し違った視点で発言させていただきますと、同じカーボンプライシングでもやはり、炭素税と比べますと排出枠への数量目標を確実に達成できるというところが、非常にこの制度の特徴であるというふうに言えると思います。

そういった点からか、これEU-ETSはじめ各国で導入されていて、一種のグローバルスタンダードになっているような面もあると思うんですね。そういったところのほうが、Jよりも魅力的な制度ではないかなというふうに思っています。

実際、私自身も2016年から参加していますけれども、日中韓のこの排出量取引の国際リンクに関する、政府関係者なんかも入っているような集まりもありまして、そういった国際的な市場に対する関心というのもあるといったものがございます。

それで、懸念事項としてはやはり、排出量取引も炭素税も国際競争力、リーケージ問題なんですけれども、事務局の資料にもありましたが、例えばEUのように貿易集約度とCO2の集約度、炭素集約度を指標にしながら、影響を受けやすい業種を特定していって、そういった業種に対して無償配分をしていくというようなことを基本的にやっていくということをすることによって、かなり対処できるのではないかというふうに考えております。

何度も何度も、この委員会でも申し上げましたけども、実際そういったことをやってきた中で、今のところカーボンリーケージが大きく起きているというような事例というのは、あまり報告されていませんし、学術的にもそういったようなのはあまり出てきていないというのが、よく知られていると思います。

実際、先ほどから排出量取引制度というのは、なかなか事務的なコストがかかるということですけれども、日本でも、貿易集約度の計算というのは、10年前のこの排出量取引の小委員会で、議論されました。私自身も資料を出させていただきましたし、そういう研究もしておりますし、環境省のほうでもそういった試算をされていて、ある意味、そういった意味での制度の蓄積というのはされている面もあるということです。つまり、一部、排出量取引制度の準備はできているといったことがあると思います。

それから、価格に関しては、前田委員が出された資料にあったように、やっぱり上限価格というのを考えていくということは、長期の脱炭素ということには非常に重要であろうと思います。

この価格高騰に関しては、もう一つの方法としては、国際リンクで別のマーケットの排出圏を用意するといったことによって対処するというのも一つあり得る考え方です。

それから、前田委員もおっしゃっていましたけど、価格が実際には下落した例があります。EUでは最初に排出枠を大幅に割り当ててしまったということによる供給の増大による価格下落というのがあったということが、ご指摘ありました。

それに加えて、もう一つ、例えばリーマンショックのような景気後退があって価格の下落が起こるというようなこともあります。これはほかの排出量取引の制度の場合には、予見できなかった技術進歩があって価格が下落するといったようなこともあったりしました。これは酸性雨の対策の、SO2のマーケットでの話です。

そういったことを考えると、下限価格という、常に削減インセンティブをしっかりと持っていただくということで導入するための制度も必要だ、というふうに考えております。これはヨーロッパでいうとイギリスのカーボンプライスフロア、それからアメリカ北東部のRGGIの下限価格といったものがございます。そういった視点も大事だと思います。

それから、行政的に非常に大変だというような指摘とか懸念とかもあるんですけれども、そういった意味では、先ほどからご紹介されている東京、埼玉の制度が既に成功しているので、こういった自治体の制度を全国展開してやっていくということをすると、かなり行政的な実現可能性というのは高いのではないかと私自身は思っております。

そういった制度は、既に日本で成功しているということを踏まえて制度設計を考えていくといったことも一つの視点ではないかと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、小西委員、どうぞ。

小西委員

ありがとうございます。

私も、今、大塚委員とか、有村委員がおっしゃったように、これやっぱり、排出量取引制度にはすごくまた割当によって、削減量がはっきりするとか、そういった、いい面もあるので、5ページに書いてあるように、経済全体を脱炭素化していくためにはということで考えていくと、包括的なポリシーミックスが必要になりますので、なるべく多くの主体に価格シグナルを示すという意味で、炭素税と、それから排出量取引制度を組み合わせていくことが重要かなと思っております。

あと、二つ目は、やっぱりカーボンバジェットの観点から、この割当総量というのを決めていく必要があるかなと思っております。

ここの中では、現行の、例えばNDCを前提として、曲がった形での割当総量の図が書いてありますけれども、今これまさに、NDCの見直しの議論が進んでいますが、やっぱり炭素国境措置とかが検討されるときに、このCPのシグナルというのは、国際的に日本が十分な気候対策を取っていることを示す大きなツールになってきますので、やはりきちんと2050脱炭素化を反映するような割当、しかも時間軸を持ったものを示していくということが非常に重要なのではないかと思っております。

この14ページ、本当に事務局の方、よく考えて作ってらっしゃるなと。無償割当、2030年の先になっても少し、やっぱり国際競争力とか非常に気になるセクターには残るみたいなことも前提に、すごくよく考えて作ってらっしゃるなと思いました。

もちろん、どんな制度がいいかといったときには、この省エネというものをこの中で進めるには、排出量取引制度というのは一つ非常に大きなツールになり得ますので、やっぱり省エネのインセンティブを強く効かせるということを目的として、そうするとEU-ETSのように下流の直接消費者がよいなと思っております。

もちろん、行政コストの関係から、対象主体は一定の裾切りが必要になると思いますが、だからこそ炭素税とのポリシーミックスが必要で、それでカバー率を広げていくということが重要かなと思っております。

実は32ページからが非常に重要だと思っておりまして、この後の説明になると思うんですが、例えばインターナルカーボンプライシングを導入している企業が、日本は非常に多くなっているんですけれども、もはや産業界全体としてこのCPに反対という立場ではないということが、すごくよく出ていると思います。

ですので、これからは逆に言えば、CP導入の際には、どのような措置が必要か、言わば、条件を挙げていくということのほうが非常に建設的な議論になるのではないかと思っております。価格の乱高下が問題なのか、国際競争力が問題なのか、イノベーションの原資なのかといった、いろいろな、それぞれの懸念を示していただいて、そこから、例えば貿易集約度から見た無償割当とか、バンキングとか、先ほど前田先生が説明になったようなセーフティーバルブとか、そのような措置を検討していくという形が非常に建設的ではないかと思っております。

今の地球温暖化対策税、トン当たり289円というのも、私の理解では鉄鋼業界さんとか、まだずっと免除になっていると思いますので、そういったどういう条件があれば、このCPの導入がまさに成長につながるものになっていくのかといった観点で議論を進められたなと思っております。

最後、あと一点なんですけれども、これ、オークション収入、この間、炭素税のときにも申し上げたんですけれども、オークション収入というのは、多分、税とは違って、いろいろ違うところに政府収入として入っていくんだと思います。ですので、どういった形があり得るのかといったことも一つ検討していく必要があるかなと思っております。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

大野委員、お願いいたします。

大野委員

失礼いたしました。大野です。聞こえますでしょうか。

浅野委員長

はい。

大野委員

私からは何点か発言させていただきたいのですが、まず最初に資料14ページです。時間軸の話で、脱炭素化の時間軸というのを加えていただきました。これは大変よかったと思います。

ただ、もう一つ言うと、ここでは2050年カーボンニュートラルの実現や、それに向けた迅速かつ着実な排出削減と書かれているのですけれども、本来もっと、2030年までの大幅な削減という脱炭素の時間軸をも考える必要があるんだというふうに思います。これは小泉環境大臣なども度々言われていますけれども、やはり2030年までに半減近く減らさなければいけない。これはIPCC1.5℃の観点です。

資料222ページに、IEAWorld Energy Outlook2020年の、日本の排出量の、こうあるべきだというグラフが出ていますけれども、これを見ると、1.5℃目標と整合するのは、2019年比で2030年、46%となっています。これを本当に、こういうふうなレベルに近づくようにやろうと思うと、やはり実効性のある制度を早く導入しなければならないということですので、時間軸という意味では、やはり2030年を意識して使うということだと思います。

それに関連して、じゃあどういう制度がという話なんですが、これは、私は前回も申し上げたんですけども、排出量取引制度はちゃんと設計をすれば機能する。有効な削減段の制度になると思います。ただやはり、それなりにいろんな、説明にあった要素の設計が必要ですし、順次ファインチューニングしていく部分もあります。

今の時点が、例えば2000年代の初めで、2000とか2003年で議論していて、これから順次、排出量取引制度をグランドファザリングから始めてやっていこうという時点ならいいわけですけれども、そうでないわけです。もう2021年なわけです。そうすると、本当にこれから2030年までの大幅な排出削減へ間に合う制度が、排出量取引制度ができるのかというと、かなり難しいんじゃないかというふうに思います。

私としては、カーボンプライスの導入としては炭素税に的を絞って検討していくことが一番現実的でないかなと思います。

唯一、実効性のある排出量取引制度が可能であるとすれば、それは発電所を対象とした直接排出の排出量取引制度を導入するということだと思います。

さっき制度対象者はどうするかという話で、最終消費者を対象とした制度というのが紹介されて、その例で東京都の制度について言及がありました。確かに東京都の場合は、オフィスの部分が非常に多いということがありますので、そういう制度になっているわけですが、これはやっぱり全国展開するというのはあんまり効率的ではなくて、私はやっぱり全国制度としては、発電所からの直接排出を対象にした制度を導入すべきと考えています。

ほかにも幾つかございますけれども、時間があると思いますので、取りあえず以上の点だけ、発言をしておきたいと思います。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、石田委員、お願いいたします。

石田委員

聞こえますでしょうか。

浅野委員長

聞こえております。

石田委員

ありがとうございます。

今、大野委員からも話がありましたように、時間軸の話は、前回の会合でも多くの委員が、時間軸やスピード感について考慮すべきと発言されていました。

排出権取引制度は、制度設計自体が非常に複雑であって、制度設計に時間がかかります。さらに図にもあったように、投資とかイノベーション技術の普及・開発などの収入を、この取引制度から得ようとすると、排出量の無償割当からオークション制度に移行してからでないと、その財源が得られませんので、さらに時間がかかると懸念されます。

資金の有効活用という点でも、制度運用コストが安い方が良いと考えられます。

以上のことを踏まえると、設計が比較的容易である炭素税を先行的に導入して、排出量取引制度については並行して検討することが望ましいと思います。

また、排出量取引制度の設計において、カバレッジをどの程度担保できるかが問題ではないかと思います。例えば住宅産業では大手企業のカバー率は低く、大工さんなどの中小企業がほとんどです。排出量取引制度の対象を大企業に限定すると、大企業に非常に大きな負担がかかるのではないかとの懸念もあります。

以上です。ありがとうございました。

浅野委員長

ありがとうございました。

森澤委員、お願いいたします。

森澤委員

ありがとうございます。

急いでいるということからいきますと、時間がないという中では一番にはおっしゃっていただきましたとおりに、炭素税を電力セクターにかけると。これは再生可能エネルギーと同額になるような炭素税の導入が必要と考えます。

あわせて、こういったキャップ、割当というのは必要だと思っておりますので、幅広いセクターに対してのキャップアンドトレードが必要だと思っています。これは、28ページに示しておられました制度の対象者ごとの特徴というところになってくるかと思いますけれども、この中で下流の部分、こちらのほうの直接排出のところには、やはりスコープ1ですので、こちらのほうは燃料の転換ということ、こちらのほうを進めていきたいと。

一方で、下流の間接排出、こちらのほうは電力の選考されるわけですので、自分たちにキャップがかかるということにおきまして、再生可能エネルギーを選好していただくというインセンティブが働くかなというふうに思います。

再生可能エネルギーの供給側を増やすのとともに、需要側を増やしていく、これで再エネということを増やしていかないといけないと思います。

日本では、R100にコミットされていらっしゃる事業者さんが、こういう枠に関係なく再エネを、また、排出量削減に前向きな事業者さんを取り組んでいらっしゃいますが、やはりこういった割当がないと取り組んでいただけないのではないかなということで、ここの部分は排出量取引制度のいい点ではないかなと思っております。

また、13ページの割当ごとというところになってきますけれども、無償割当の場合に、グランドファザリングとベンチマークがございますが、グランドファザリングの場合は、これまで削減を進めていなかった事業者さんが削減の余地が高いわけなんですね。既に削減を実施してこられました事業者さんとの間で公平性が保たれないと、排出量の削減に必要性を感じて早く取り組んでいらっしゃる事業者さん、ここに対して、公平性の観点からはベンチマークの方式がいいかと思います。

ただ、ベンチマークについては、事務局に対してのご質問になりますけれども、設定が複雑かと思いますけども、これが設定することが可能なのかということになってきます。データやいろいろ蓄積がいるかと思います。これが難しいのであれば、グランドファザリングは少し難しい。先行者が不利になるということから、ベンチマークを考えた場合に、それが技術的に難しいのであれば、当初からオークションということも検討すべきかなというふうに思います。

東京都の排出量取引制度は、排出係数を固定を当初されていましたけれども、電力の自由化が起きていますので、当然ながら再生可能エネルギーを選好していただくためには、購入されました電力、そういったものが排出係数が低いものということが活用できるかと思います。

第三者検証は排出量取引制度、これが始まることによりまして重要になってくるかと思います。

今、排出量に、こちらの部分が本当に正しいのかということにつきましては、今、みんな、日本の事業者さんのスコープ1、スコープ2といいますのは、取引先にとりましてはスコープ3であったりしますので、そちらの部分から考えましても、正しい排出量を測定する、これは以前にも2年、3年前にも申し上げたと思うんですけれども、観点からも排出量取引制度、少し手間はかかるんですけれども、こういった第三者検証というところが重要になってくるかと思います。

あと、リーケージの問題、今、反対に日本が心配することはないかと思うんですけれども、企業は国内だけではなくてグローバルでビジネスをしていらっしゃるわけですので、その場合には、排出量の報告、CDPのほうでは、全ての事業において、国内外全ての排出量を報告してくださいということを申し上げておりますけれども、これを進めていく必要があると。違う地域、まだそういった部分に緩い地域での生産ということに移していくということを懸念するわけですね。

また、もう一方で、サプライヤーさんに多排出の業務を移管するということ、自社でなく他社の物流に変更するということ、そういったことが起きてくるかもしれませんので、どういうふうな変化が出てきたかということを見るためにも、そういった企業によりましてはスコープ3の報告が必要になってくるかと思います。

今、この辺りにさせていただきます。

浅野委員長

ありがとうございました。

神津委員、お願いいたします。

神津委員

よろしくお願いします。

この小委員会に参加し、いろんな今までの議論をずっと聞いておりましたが、まず、コンセプトの底辺にあるのは、菅総理のおっしゃった、2050年までに排出ガスゼロを目指すんだという、非常に分かりやすいスローガンがあり共感いたしました。

それで、私は税理士なので、カーボンプライシングのことについてはそれほど詳しくはありませんが、私なりに感じたことをお話させていただきたいと思います。

まず、いろんなところで言われていますけど、国民の間に理解をしていただくということが、大変重要な観点かと思います。2050年までに脱炭素化を実現して、地球の温暖化を防止するという非常に分かりやすいコンセプトの下、それに対する手段をいろいろと議論されていますけど、手段についてははっきり申し上げて分かりにくいと思います。

今日、ご披露したいのは、千葉商科大学の話なんですけれど、原科さんという学長とお話ししたとき、千葉商科大学は全校で使うエネルギーの100%を自然エネルギーによって供出することを見事達成されたと、多分2年ぐらい前のお話だと思いますけど、非常に印象深く思っています。

手法としては株式会社をつくって、そこで自然エネルギーを利用して発電し、電力会社に供給するもので、その発電量が千葉商科大学における電気使用量を上回ったということでございます。今回の資料にもございますエネルギーの流通段階、いわゆる上流、下流というお話だと、大学は下流に属するのではないかと思いますけど、そういう下流の方がそのような努力をされて、すばらしい成果を出していらっしゃるということが大いに参考になるなと思います。

私が住んでいるのは世田谷区でございまして、世田谷区も同じような自然エネルギー100%を目指すというようなコンセプトに取り組んでおりますし、また、現在、全国の多くの自治体でも同じような意見を表明されております。先ほど炭素税に限ってお話しすべきだというご議論がございましたけど、そういうことも含めて、きちんと国民の間に提示しないと、なかなか浸透しにくいのかなと思うんですけれど、既に官民を問わず、取組みが始まっていることが大きな方向性だなと思います。

再度、強調するようですけれど、分かりやすい制度設計をして、例えばホームページや、いろんな商業新聞等も含めて、広報活動を大いにしていただいて、カーボンプライシングの目指す方向性について、徐々に国民の理解が浸透することが非常に大事かなというようなことをお話させていただきました。ちょっと皆さんの今までのご議論とは違う観点でございますけど、申し上げた次第です。

どうもありがとうございました。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、安田委員、井上委員、増井委員、この順番でご発言をいただきます。

安田委員、どうぞお願いします。

安田委員

安田です。

僕のほうからは、3点ほどお話ししたいんですけれども、まず最初に、今回、皆さん、どちらかというと排出量取引と前回の炭素税との違いに焦点を当てた発言が多かったかと思うんですけど、最初に類似点についても考えておいたほうがいいかなということで、今回の資料だと14ページですね。既に小西委員がご指摘されていましたけれども、長期的にどういった形で有償割合での割合を増やしていって、収入の水位がどうなるかという図がありました。14ページです、これです。

恐らくこちらが前回の会合の多分11ページかな、何か炭素税の課税水準と税収・税負担のイメージという、税収・税負担のイメージが今回の水色の線のように途中でピークに達して下がっていくと。

この両者、似ているのは多分偶然ではなくて、中長期で企業のインセンティブを考えるときに、実際に彼らはどれぐらい負担をするかというのが投資インセンティブに一番影響を与えると考えられます。

それが前回の炭素税の場合は、国から見れば税収、民間から見れば税負担が、やはり2030年の後ぐらいでピークになって下がっていくと、それに合わせる形で、排出量取引でも一定程度まで負担金額が上がっていって、そこから下がっていくと、このスケジュールを一致させるような形で排出量取引をデザインしていくということが、炭素税で我々が期待していた中長期のインセンティブに与える効果を排出量取引でも同じように実現するためには肝心ではないかと。

なので、この前回と今回の資料の類似性というのは、中長期で見て排出量取引の場合でも炭素税と同じ効果を狙っているなということを表しているのではないかと思いました。

これが1点目。

2点目が、多くの委員の方から既にご指摘として挙がっているんですが、価格の乱高下とか、高騰に対する懸念で、昨年7月だったかと思うんですけれども、電力容量市場で国際的に見ても非常に高い水準で価格高騰が起きてしまったと。

当然、電力工事事業者にとって直接の打撃はあるわけですけれども、非常にざっくり言ってしまうと、市場設計に失敗しまうことによって、メディアにも大きく注目されるので、最初、制度導入時に、そういったトラブルというのは起こりやすい。民間事業者もまだ入札自体に慣れていないでしょうし、仮に排出量取引を行った場合に、そういったやや想定外のことが起きてしまうと、それが今後のカーボンプライシングを続けていく持続可能性にややマイナスの影響が出るかなというのはちょっと懸念しています。

もう1点が、制度運営のコストに関して、今のところ皆さんから挙がっているのは、排出量取引は手間がかかる行政コストがかかるんだということですけど、もう一つ、あまり指摘されていない点としては、やっぱり裁量が大きい仕組みだと思います。

炭素税と比べて無償割当の割合をどうするかであるとか、先ほど森澤委員からも指摘ありましたけど、公平性をどれぐらい担保するかとかというのは、かなり裁量の余地があると。裁量の余地があると、あまり想像はしたくないですけれども、政府の失敗、政治の失敗みたいな民間企業からロビー活動があったりとかということが起こるかもしれないと。

なので、単にマンパワーが必要だという意味で、行政コストが高いだけではなくて、そういった裁量の余地が大きいということが何か問題を起こすリスクもあるかなということを感じました。

最後に、遠藤委員から税クレジットで、有村委員から自治体レベルの取組というのが挙がりましたが、国の制度設計をしていく上で、既に実現している類似の制度であるとか、その制度との親和性、あるいはバッティングしてしまう場合には、何か代替性みたいなことも観点に入れながら議論を進めていくべきだと感じました。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、井上委員、お願いいたします。

井上委員

声、聞こえておりますでしょうか。

浅野委員長

聞こえております。どうぞ、よろしくお願いいたします。

井上委員

日本商工会議所の井上でございます。発言の機会、ありがとうございます。

排出量取引制度について、前回の会議におきましても、中小企業は大変厳しい経営環境に置かれている点についてご説明し、企業に追加的なコスト負担を強いるようなカーボンプライシングを新たに導入することは、大変厳しい旨をコメントさせていただきました。

中小企業もCO2削減の必要性は相当程度理解していますが、せっかく脱炭素に向けてエネルギー展開や省エネ等を進めようとしても、技術革新や代替技術が不十分なところで、排出量取引にしろ炭素税にしろ、企業の負担が増加すると結局、体力の弱い中小企業、小企業事業者にしわ寄せが来てしまうといった声が全国の会員から寄せられています。

排出量取引制度の課題として、「中小規模の排出主体を対象にしにくい」という点も資料でご指摘されておりましたが、直接的には対象にならずとも経済活動にキャップをかければ中小企業にも大きな負担が及ぶことを大変危惧しております。

くれぐれも地域の中小企業の実情を十分に勘案していただいて、ベストなタイミングでお諮りいただきたいと感じております。

今回の制度の具体的な仕組みについて、検討の視点を数多く示していただいております。排出量取引制度を導入した場合、企業の負担が幾らになるのか、シミュレーションをぜひ行っていただき試算結果を明示いただくことで、イメージがよりクリアに中小企業にも伝わるようにしていただきたいと思いますし、そうすることで検討しやすくなるのではないかと考えていますので、ぜひよろしくお願いいたします。

ありがとうございます。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、増井委員、どうぞご発言ください。

増井委員

どうもありがとうございます。

もう既に何人かの委員の先生方が発言されたことの繰り返しになるかもしれませんが、その点、ご了承ください。

まず、1.5℃目標というのを実現していくという、そういうカーボンバジェットの観点から、総量をどういうふうに設定するのかという、そういう議論は非常に重要であろうと思っております。

そういう意味での有効性というのは、もちろんありますけれども、一方で、やっぱりこの排出量取引制度というのは大規模事業者に対しては有効なんでしょうけれども、非常に排出量の少ない、そういう事業者、主体にとっては、どうカバーしていくのか、ネットゼロという、そういう社会を考えますと、排出量の漏れというのは許されませんので、そういう意味では炭素税との併用というのが望ましいのかなと考えます。

あと、割当量をどう設定するのかということもやっぱり非常に重要な問題で、公平性の確保という面から、問題が生じる可能性がありますので、こういう点、透明性の確保というのが必要になると思います。

こういう制度をつくるというのは非常に重要なんですけれども、やっぱり複雑になり過ぎないようにするということも新たに制度設計する上では、非常に重要ではないかなと思いますので、いかにして効果を出すかということとともに、できるだけシンプルな制度にしていくという、その両面を検討すべきではないかと思います。

以上です。どうもありがとうございました。

浅野委員長

ありがとうございました。

後のほうで手を挙げておられますが、河口委員から途中で退席という事前のご通知をいただいておりますので、河口委員、どうぞご発言を先にお願いします。

河口委員

ご配慮どうもありがとうございます。

大体三つのご意見と同じで、時間がないということから、やはり税を中心に大規模事業所向けに排出権取引というのを入れていくというのが時間の観点から言っても合理的ではないかなということがまず1点。

それから、排出量取引で、先ほど前田委員からもいろいろなご意見があったんですけれども、確かにマーケットということを考えると、需給関係でいろいろな値動きというのはあると思うんですが、ここの委員の中に、コモディティー市場の専門家がいないので、制度設計ということになりますと、これ、まさにコモディティー、商品市場だと思いますので、そういう専門家の意見をきちんと聞いて制度設計をするというのが大事なのではないかなと思いました。

値段の上限をつけるとかということ以前に、市場メカニズムというか、証券でもいいんですけど、やっぱりコモディティーのほうがいいと思いますが、そういう方のご意見がないと、ちょっとやり方が難しいということ。

もう1点なんですけれども、先日、農業系の新聞に寄稿してくれと言われて脱炭素と書いたら、そんな言葉は誰も知らないと言われて、結構びっくりしたんですが、大学生の息子もそんな言葉は誰も知らないと言っていて、何が言いたいかというと、先ほども中小企業は非常に厳しいというお話もあったんですけれども、何かよく分からないけれども、税金とか金がかかってくるというイメージを多くの国民が持つのではないかと。

ここにおられる方は、もう当たり前の議論というのが一般の方にはまだ全然当たり前ではないということを鑑みると、これをやるというのと同じぐらいのエネルギーをかけて、きちんとした分かりやすい広報活動というのをしていかないと、結果としていい成果が出ないのかなというふうに思いました。

以上です。ありがとうございます。

浅野委員長

ありがとうございました。

井上市場メカニズム室長

浅野委員長、すみません、岩田委員が手を挙げられているようなので、コメントいただければと思っているんですが。

浅野委員長

どうも、毎回、岩田委員のお名前が目の前の表示に出てこないものですから、失礼いたしました。

挙手のサインを押していただけますでしょうか。

岩田委員

よろしいですか。

浅野委員長

結構ですが、挙手マークが画面表示に出てこないんですね。トラブルがあるのかもしれません。

どうぞ、岩田委員。

岩田委員

よろしいですか。どうもありがとうございます。

私は、1点だけ申し上げたくて、排出量取引はやっぱり量で決めるというところが、キャップを決めるというところが一番ポイントで、問題はキャップの量をどういうふうに決めるかということが実は今度の地球気候変動サミットの最大の論点だというふうに私、伺っております。

それで、20ページを拝見しますと、今のところ日本政府の目標は25%減という、こういう数字を掲げておられます。

ですけれども、今、例えば19年中心で、IEAの、先ほどご紹介が22ページにありましたけれども、それから50年にゼロにするということだと、2035年には19年比でも5割削減しないと直線で伸ばしますと、どうしてもそれは必要だと。このIEAのほうは、多分1.5度目標ということもあって30年で46%減と、このようになっているわけであります。

ただ、この46%減というのは19年比ということなので、日本政府のコミットしているのは2013年、あるいは2005年で、13年比で見て25%という、こういう数字を出しておられるわけであります。13年と19年を比べると10%ぐらい実は差があるんですね。19年のほうが低くなっております。そういうことで、このIEAの数字を13年比で言うと、どう考えても56%とか、55%以上の数字ということになるんじゃないかというふうに思います。

55%と今の26%の差をどういうふうに埋めるのか、一部には4割カットというお話も出ているようですけれども、私、本当に2050年にゼロにしたいんであれば50%カットというのは、どうしても必要なんじゃないかと思っています。

もちろん、これはいろいろな努力も必要ですけれども、2011年から19年にかけて排出量CO2がどのくらい減ったかというと、実はトレンドとしてかなり落ちておりまして、このトレンドを伸ばしますと、実は4割ぐらいは減るんですよね。

そうすると5割カットといって、あと1割分を政策で何とかすると、こういうことになるんだろうと私、理解をいたしております。

そういうことで、私、ぜひとも申し上げたいのは、今度の気候変動サミットで日本政府が何をおっしゃられるのか分かりませんけど、EUのほうは既に55%を出しておられます。アメリカはどうされるか、私、分かりませんが、恐らくやや野心的な数字を出されるんじゃないかと思っていますが、26%はとても無理で、4割でもそれは甘いのではないか、50%という旗を掲げるべきではないかというのが1点申し上げたいことであります。

あと、今日の排出量取引については、私、多くの方からご指摘のあったように、例えば電力部門だけに限ってオークションでもってこの制度を運用するというようなことは可能性はあるというふうには思っております。

ただ、やはりその場合でも電力部門だけどうしてやるんだという話が必ず起こると思いますので、私はやはり炭素税がよろしいのではないかと、このように思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、土居委員、諸富委員、手塚委員、この順番でご発言をいただきます。

土居委員、どうぞ。

土居委員

ありがとうございます。

何人かの委員もご指摘されたように、炭素税を先行して議論するということが私もいいというふうに思いますが、排出量取引も遅れることなく議論する必要があると思います。

もちろん、グランドファザリングがいいのかどうなのかとか、そういうような話も、これも大事なんですけれども、もう一つ重要なのは、これを相対取引でなく市場取引として取引所ビジネスの基盤に乗せるということで、我が国の新たな成長戦略にもつながる、そういうものにしていく必要があると思います。

確かに、我が国には東京都、埼玉県での取組があるということではあるのですが、基本的には相対取引であって、市場取引ではないわけですね。そうすると、当然ながら市場取引の流動性が乏しいので、そうすると何らかのショックがあると、価格高騰がこのままだと起こりかねないし、さらに東京都、埼玉県の取組はそれとして、すばらしいんですけれども、これを全国展開すると、全県でネイションワイドにやるということにするにしては、あまりにも相対取引では取引のマッチングがなかなかうまくし切れないということですから、これを単に東京都の取組、埼玉県の取組をそのまま延長線上に相似拡大的に引き延ばすというのでは、残念ながら我が国において排出量取引をネイションワイドに行うというのは難しいと。

その克服は簡単で、要は取引所を創設するということに尽きるというふうに思います。当然ながら、我が国には株式会社の取引所が存在しているわけで、そういったところにも声をかけて、この排出量取引を上場できないかというようなことも、むしろそれは今からでも遅くないので、積極的に働きかけると。商品先物取引法に基づいた取引所というのは存在するわけで、そこの知見もかりて、市場の流動性も確保しながら価格の変動をより少なくして、排出量を取引するというようなシステムも併せて開発していかないと、グランドファザリングで枠を与えるといった話から、その先に進めないということになるんではないかというふうに思います。

先ほど河口委員のおっしゃったように、コーディティ、商品の専門家がいないということは、これは確かに排出量取引を市場取引として我が国において取引所ビジネスに乗せて、これを活発に行っていくという上では非常に重要な指摘だと思いますし、私もセコンドをさせていただきたいというふうに思います。何らかの機会に排出量取引を市場取引として取引所ビジネスに乗せるということを視野に入れる際には、そういう関係者のヒアリングないしはどういうふうな共働をして、これを実現させていくかということも併せて考えていく必要が私はあるんではないかというふうに思います。

特に、別に日本になくったってグローバルな排出量取引のネットワークで外国でもやればいいんじゃないかというような意見もあるのかもしれません。さらには、中国が市場取引で排出量取引をするというようなことも検討しているというようなことがありますから、隣の国でやっているんだからそれに乗っかればいいじゃないかというのは、私は間違った考え方だと思っていて、極めて重要なのは円建てで排出量取引ができるという、この特権を我が国は失ってしまうというようなことをみすみすしてはいけないというふうに思いますから、我が国で排出量取引のビジネスが、取引所としてのビジネスですね、成り立つような道も積極的に考えていく必要があるんじゃないかというふうに思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、諸富委員、お願いいたします。

諸富委員

ありがとうございます。

私も、今日、全体の議論の流れとしては、税か排出量取引制度かという議論になっていって、多くの方々がやはり時間を早くやることを考えると税だというご意見が大勢だったのではないかと思いますが、私は、やっぱり排出量取引も必要だし、税とのポリシーミックスにならざるを得ないのではないかという観点からお話をしたいと思います。

そういった意味では、今、お話になった土居先生と似たポイントなんですが、別の角度からお話ししたいと思います。

やっぱり、仮に税が今後入ってくる、あるいは先行して入れるということになったとしましたら、やはりエネルギー集約型産業に、何らかの形で減免を入れざるを得ないというふうに現実的にはなると思うんですね。

そうなったときに、他の代替措置を取らずに、単に減免をしちゃいますと、結局、負担は減って、だけどCO2の排出は増えてしまうと、あるいは抑制効果が効かないということで終わってしまうんですよね。

なので、もしエネルギー集約型産業に税の減免を入れるのであれば、同時にそこで排出量取引制度を入れて、排出の膨張手だてというのを取らざるを得ないと思うんですね。

そういう意味では必然的に排出量取引制度と税のポリシーミックスになるのではないかと思います。

もちろん、最初とかフルに、税率でフルにセクター関係なく税を掛けて、そして段階的に時間軸とともに税率を上げていくということが可能ならば、それはそれでオーケーなんですけれども、なかなかそうはならないのではないかというふうに思いますね。

そういうことでは、グランドファザリングは大きな問題がございますので、無償配分とした上でエネルギー集約型セクターに対するベンチマーキングの方式を導入する。そして、それと税との組み合わせで経済全体をカバーしていくのが一番現実的なほうではないかなというふうに思います。

そういう意味では、排出量取引制度の芽は、仮に税が先行していくとしても、残っていくのではないかなというふうに思います。

それで、問題はどっちも長期的に排出量取引制度の場合には価格を引き上げていく、キャップを絞り込みながら引き上げていく。税の場合は、税率を引き上げていくという形で将来的な価格は上がっていくという点では同じだというふうに思います。

先ほどご意見を伺う中で、電力セクターだけにETSを入れるのはどうかというご議論もございましたけれども、日本の電力市場の姿を見ても、非常に大きな、いわゆる大手電力会社、数社による寡占市場になってしまうことが明らかでありまして、マーケットで取引をやることのメリットを得ることがあまりできないという問題もございます。

やはり排出量取引制度を入れるならば電力だけではなく、かなり大きい広範な産業セクターをカバーしていくというのがやはり必要になるのかなというふうに思います。

時間軸に最後で言いますと、税で低い税率でいる間は、税のみで先行させてやりながら、時間を稼いで、その間に排出量取引制度の設計を同時並行として進めて、ある時点から税が、税率が上がってきた段階でエネルギー集約型産業の減免をかけて、そこに排出量取引制度をベンチマーク方式で入れるというような方式が、例えば考えられるのではないかと思います。

以上でございます。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、手塚委員、それから清水委員、そして大橋委員、この順番でご発言いただきます。

手塚委員、どうぞ。

手塚委員

鉄鋼連盟の手塚です。聞こえていますでしょうか。

浅野委員長

聞こえております。

手塚委員

今日は、3点お話ししたいと思います。

まず、1点目は、制度論なんですけども、これはこの委員会で過去にずっと排出量取引も税も制度の話をしてきているんで、多少繰り返しになりますが、念のため、もう一回お話しさせていただきますが、資料の54ページにありますように、この制度を導入しようと思いますと、非常に複雑、かつ精緻な行政的なインフラをつくる必要があります。

さらに、それに加えてキャップの設定、あるいは無償排出枠をどう配布するかという、さらなる複雑さが入ってくることになります。

14ページに、時間軸を含めた無償配布、あるいはキャップの設定のイメージを提示されていますけども、そういう意味では、今後、技術開発のスピードに合わせて、どういう無償配布枠の設計をするか、あるいはキャップの設計をするかという、さらに難しい方程式が入ってくるんですね。

果たして、こういうことを行政コストをかけて本当にやっていくのがよろしいんでしょうかと、こういう問題が1点目でございます。

加えて、価格の安定化であったり、投機的な動きを排除するとか、排出権を取引する際の、あるいは価格シグナルとして機能させるためのいろんな行政の介入が必要になってきます。実際、EUでも、排出権価格が下がり過ぎるということで、マーケットリザーブ制度の導入であるとか、様々な行政介入を行って排出権の価格を意図的に上げようというようなこともやられているんですけども、これは結局、安田委員もおっしゃいましたけども、行政の裁量でもって自由に取引されている市場メカニズムに価格操作を行うことになるんですね。

政治的に価格操作が行われるマーケットにおいて、自由に取引を行うとなると、必ずここには投機であるとか、ある種の怪しい行動を取る人たちが入ってくることになります。その裏で、技術のイノベーションがどういうスペードで進んでいくかということが現時点ではよく分かっていない。2030年までにどこまでいろんな技術が実現していくのか、2050年までにカーボンニュートラルの技術がどういうものが実現するのかというのは、政府のイノベーション戦略の中に書かれていますけども、百花繚乱の中でどれかが成功し、どれかは失敗し、こういう不確実性がいっぱいある。

果たして、こうした状況の中で予見的な形でキャップの設定、あるいは無償配布の設定というものを長期の価格シグナルを出しながら本当にできるんですかということです。私はこれミッションインポッシブルじゃないかというふうに思います。

2点目は、皆さんの発言を伺いますと、排出権取引制度をどう運用するのが削減に貢献できるか、あるいは1.5℃目標等に合致するかという点のご指摘が多かったんですけども、今回のこの委員会のお題目は、経済成長に資するカーボンプライスは何かということなのかと思っています。

そういう意味で、この排出量取引制度というのは本当に経済成長に資するような形で制度設計できるのかということですけども、これについても極めて私は否定的な見方をしております。

実例だけ申し上げますけども、ファクトフルネスで申し上げますが、実際にEUでも無償配布を使ってエネルギー多消費産業、鉄等に対するインパクトが起きないような制度設計をしているというふうにされていますが、実際に無償配布枠が減らされ始めてきたのが2013年から始まったフェーズ3からなんですね。毎年1.74%ずつ無償配布枠を減らしていくという話になっているんですけども、じゃあ、この2013年の前の2010年から2012年のEUの中での鉄鋼の生産量と輸入量、それから直近、2020年は異常値なので、171819年の3年間のEUの中での鉄鋼生産量と輸入量を見ますと、生産量は2010年から12年に対して、171819年は5%減っています。

一方、輸入量は22%増えているんですね。つまり、無償配布枠を何らかの形で設定はしているんだと思いますけども、それでも実際には鉄鋼生産は下がって、輸入に大幅に代替しているという事が進んでいます。

これは、結局、価格シグナルもそうなんですけども、生産量そのものにキャップがかかるということを事業者が読み取って、そのシグナルによって実際には生産キャパを落とす。

一方、需要は伸びてくるのに対して、輸入で代替するというのが起きています。果たしてこれがEUの、少なくとも鉄鋼生産ということに関したときに、経済成長に資する排出権取引制度なんでしょうかと、こういう問いかけになろうかと思います。

3点目は、今のことと関連するんですけども、価格シグナルの問題です。長期の価格シグナルがあることによって、技術革新なりイノベーションなりが期待できるということが言われているんですけども、まず第一に、このカーボンプライシング制度による価格シグナルが長期に見えてくると、今、申し上げたように技術が伴わない限り生産を落とすという方向にしか結果が出てこない。そうであったらば、最初から技術戦略をやったほうがカーボンプライシング戦略よりも速いではないかということです。

さらに、価格シグナルが誰に対して発せられるかということなんですけども、上流の生産者に対して排出権取引を入れるということが大体行われているわけなんですけども、これをやりますと結局のところ、本当に価格シグナルを受けなければいけないであろう最終的な消費者のところには、シグナルが行かないんですね。というのは、上流の事業者のコストがアップするんですけども、これは製品に価格転嫁がなかなかできない。特に中間業者あるいは上流の素材メーカー等は、産業構造的にモノプソニー(買い手独占)のような構造になっていますので、価格転嫁が直接できないということで、利益を減らしてカーボンプライスをのみ込むという形になります。そうすると、最終的な消費者のところにこの価格シグナルは行かないために、いわゆる消費者の行動変容みたいなところの効果というのは出てこないんじゃないのかと思います。

そういう意味では、税がいいのか、キャップアンドトレードがいいのかというお話をされていますけども、日本では既にFIT賦課金、あるいは上流の化石燃料課税等を含めて、様々な政策的な炭素コストが乗っかっているんですけども、これが必ずしも消費者にきちんと見えるようになっていないという、そこに非常に大きな問題があるんじゃないかと思います。

今、既に政策的にかけられている炭素価格を見える化して、それがどういうふうにCO2削減、あるいは省エネ等に貢献しているのかということを、まず見える化する、それに加えて追加的にキャップアンドトレードなり、炭素税なりを増税すると、どれだけの追加的効果があるのかということを明確に最終消費者に見せた上で、是非を議論しないといけないんじゃないかと思います。

ちなみに、今年1年間のFITの賦課金3.3円強がかかると、一般的な家庭で1万円のコスト負担になるということが最近、新聞等で書かれていますけども、この1万円のコスト負担を各家庭にお願いした結果、実際にCO2は何トン減るのかと、あるいは日本の総排出量の何%が減るのに貢献しているのかということもきちんと消費者に見せて、その上でこのカーボンプライスのさらなる追加の議論を始めないと、出発点が明確にならないんじゃないかという気がいたします。

私からは以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、清水委員、お願いいたします。

清水委員

ありがとうございます。

私からは、2点お願いをします。

まず1点目ですが、資料1について意見を申し上げたいと思うのですが、資料12ページにありますとおり、成長戦略に資するカーボンプライシングとして、カーボンプライシングの価格シグナルによって、脱炭素に取り組むインセンティブを明確化し、あらゆる主体の行動変容を促す必要というような整理をされておりますけれども、前回、炭素税の資料に関しまして、脱炭素の観点から価格シグナルのみで行動変容を促そうとした場合には、再生可能エネルギーの調整力として必要な火力電源の経済性を大きく損なうようなリスク等も含めて、エネルギー供給の基本であります、S3Eのバランスを崩すおそれがあるので、価格に限らない適切なシグナルの発信も併せて検討する必要があると申し上げさせていただきました。

この意見についても、ぜひ資料に盛り込んでいただきたいというのが1点目でございます。

それから、2点目は、排出量取引制度についてですが、割当の総量ですとか方法、あるいは制度の対象者、それから懸念点に配慮するための仕組み、運用のためのインフラ・ルール等といった排出量取引制度の様々な論点や課題が挙げられていることからしても、制度設計自体、非常に難しいものと考えております。

先行導入したEUにおいても、様々な懸念点に配慮するための仕組みで補完しながら運用されるなど、実際に運用するに当たっては、まだまだ課題が多く未成熟な制度であると思います。まずは、諸外国の実態を把握することが必要ではないかというように考えます。

それから、6ページに、排出量取引制度の利点として、一定の業種等に対して無償割当を行うなど、様々な懸念点に配慮するための措置が講じられるとありますけれども、これは裏を返せば、様々な配慮措置を講じないと、なかなか運用できないといった課題を含んでいるというように言えるものではないかと思っているところです。

その上で、我が国の成長に資するかどうかという観点から、前回の炭素税と繰り返しのような意見になりますけれども、重要だというように考えますので申し上げさせていただきますけれども、まずはキャップアンドトレード型の排出量取引制度が国民負担や産業競争力に与える影響というものをしっかり見極めていただきたいということであります。

14ページに、割当量と時間軸のイメージが提示されておりますけれども、割当量は、技術の進展状況等を踏まえる必要がありますし、さらに、確かにキャップをかければCO2の排出削減が進むかもしれませんが、段階的とはいいましても、有償割当量を拡大していた場合には、負担が増加していくことになります。この際、国民生活や産業活動にどの程度の影響が出るのか、この点を定量的に示した上で、国民の理解を得ていく必要があると思います。

さらに加えて、これも繰り返しになりますが、既存の税制や規制により、電気料金に含まれております炭素コスト、これを踏まえた議論をお願いしたいということです。国内では、既に明示的カーボンプライシングとして、地球温暖化対策税がありますし、そのほかにも電力部門においてはFIT、高度化法、省エネ法といった暗示的カーボンプライシングが存在しております。排出量取引等、カーボンプライシングを検討する場合は、これら既にある税制、規制によるコストも踏まえ、電気料金が高騰して将来のカーボンニュートラルに不可欠であります電化の推進を阻害するようなことがないように、慎重なご議論は必要だというように思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

今日、まだ、もう後、次の議題もございますので、まだご発言希望の方が4人ほどいらっしゃるんですね。大変恐縮ですが、少し簡略にご発言ください。手を挙げるのが遅かったのでしようがなかったというふうに諦めていただく以外ないかなと思うんですが。

それでは、大橋委員、どうぞお願いします。

大橋委員

ありがとうございます。

この排出権取引は、確かにご指摘のように、大変複雑な制度になるということだと思います。他方で、メリットといっては何ですけれども、フレキシビリティがあるという点は、やはりメリットとしてはあるのかなという感じはしています。

これ企業さんに課すとすると、企業のマインドとしては数量で考えることは非常に多いんだと思いますけれども、そういう意味でいうと、数量でコントロールするという考え方となじみやすいというのが一つあるのと。

あと、もう一つ、これまで暗示的と言われたものの一つとして、省エネに向けての努力であるとか、あるいは低炭素の実行計画であるとか、そうしたものの取組というのは、なかなか反映させることができなかったわけですけれども、このスキーム、つまり排出権のスキームであれば、取り組むことが不完全ではあるけれども、可能かもしれないという気はしています。

税のほうが透明性があるということはおっしゃるとおりだと思いますが、そうしたメリットも、また法であるなという感じがしているというのが皆様からのご意見でなかった点かなと思ったので、追加させていただきます。ありがとうございます。

浅野委員長

ありがとうございました。

椋田委員、どうぞよろしくお願いします。

椋田委員

聞こえておりますでしょうか。

浅野委員長

聞こえております。

椋田委員

ありがとうございます。

私からも、最初に資料1について簡単に触れたいと思います。2ページや4ページに価格シグナルに関する記載があります。前回も発言しており、また、清水委員の意見とも少しかぶる内容かもしれませんが、確かに企業の行動変容を促す仕組みとしてのシグナルは重要だと思われます。ただ、価格シグナルは様々なシグナルの一つにすぎず、日本において価格シグナルが有効か否かについては、今、議論しているさなかであって、まだこの場でもコンセンサスが得られていないと思います。

様々なシグナルの一つとして、例えばBATの最大限の導入を促す低炭素社会実行計画は着実な実績を上げておりまして、閣議決定された地球温暖化対策計画でも産業界の対策の中心的な役割を果たしていると位置づけられています。

また、金融面から行動変容を促すべく、経団連も設立に関与したTCFDコンソーシアムがあり、TCFD賛同機関数は世界トップです。加えて、エネルギー関係諸税、省エネ法、高度化法などの規制もあり、企業は多大なコスト負担をしています。

これらは明確なシグナルとして、企業の行動変容に大きく作用しております。世界トップレベルのエネルギー消費効率を誇る日本の場合、白地に絵を描くのではなく、今、有効に機能している諸制度の上に、新たにどのような制度が追加的に必要なのか否かを丁寧に議論すべきだと思います。

価格シグナルありきではなくて、現状を踏まえてどのような枠組みが最も効果的なのか、様々な施策を整理・比較し、まさに成長戦略の観点からベストなポリシーミックスを見出していくことが最も重要です。この資料1は、今後の議論のベースとなるものですので、こうした考え方が分かるような文章にしていただければと思います。

排出量取引制度については、まず、政府のグリーン成長戦略の中で、経済成長を踏まえた排出量の割当方法が具体的な課題として明記されていますので、この点は課題として書き加える必要があると思います。

それから、資料212ページ、13ページでは、様々な割当方法の特徴や課題が示されていますが、無償割当の一つであるグランドファザリングでは、経済成長を踏まえた割当はできません。一方、経済活動量を織り込んだベンチマークによる無償割当であっても、適切なベンチマークを設定するためには、製品・工程ごとの膨大なデータの収集が必要となって、EU-ETSを見ても分かるとおり、多大な時間とコストがかかります。

さらに、こうしたデータは技術の進展等に応じてアップデートが常に必要となることから、産業の実態を踏まえた適切な割当を行うことは現実には困難です。

14ページでは、無償割当からスタートして、順次にオークションによる有償割当の対象を増やしていくというイメージが示されていますが、左上に記載されている、分野ごとの脱炭素技術の確立状況など技術の時間軸を踏まえた適切な仕組みを実際に設計しようとすれば、変化する技術や産業の実態を踏まえた相当きめ細かな措置が必要となり、極めて複雑な制度にならざるを得ないと思います。

また、製品の製造段階ではCO2がより多く排出されても、使用段階等までをカバーするLCAで見れば、従来よりも排出が大幅に削減されるケースも多く考えられることから、この点も排出量取引制度の大きな課題として書き加える必要があると思います。

このように、政府が上限を決める排出量取引制度については、炭素税同様、クリアすべき課題が非常に多く残されており、これがどう成長戦略に結びつくのか、今のところイメージが湧かないところでございます。

むしろ、低炭素社会実行計画等の既存の枠組みに委ねたほうが有効ではないかと思われます。

私からは、以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、牛島委員、お願いいたします。

牛島委員

ありがとうございます。牛島です。

浅野委員長

少し声が小さいようですが、大きい声でお願いします。

牛島委員

聞こえますでしょうか。

浅野委員長

聞こえております。

牛島委員

よろしくお願いします。

私のほうは、主にいろいろな企業との付き合いがありますので、その観点から三つ簡単に申し上げたいと思います。

現在、いろいろな企業は、ビジネスモデルや様々な産業構造を変えていかなければいけないというところにかなり注力していて、投資家も相まって新たな成長ドライバーを模索している状況であります。

そのような観点でいけば、こうした市場メカニズムの中で資金が行き来するという仕組みをつくることにおいては、新しいビジネスにとって成長資金を得やすくなるという観点が一つなのではないか。

また、投資家周りにおきましても、昨今のESBTCFDの議論でもあるとおり、投資家側も必ずしも環境配慮とか、そうしたスクリーニングだけではなく、無形資産ですね。私どもも研究等々をいろいろなところでやっておりますが、この無形資産の議論をする際に、こうした環境に対するバリューや、そうしたものが実際、資産価値として可視化できる可能性もあるのではないかな、と。

実際に、こうした環境パフォーマンスについて経済的な価値に換算する考え方も出てきています。

そういう意味では、取引市場のようなものを設けることで、それがリアルな形で実現されていけば、今後のサスティナブルファイナンスや、ESGで投資家たちが企業の将来的な価値、主観価値などを見ていく上でも一つポイントになってくるのではないかと考えます。

ただ、最後にもう1点、この問題を解決する上では、やはり根っこのところ、特に日本で事業を続けることにおいては、やはりエネルギー構成の問題が出てくると思いますので、その選択肢を同時にそろえていく必要があると。

かねてより様々な委員の方がおっしゃっているように、炭素税との組合せというのは必要なのだろうと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、高村委員、お願いいたします。

高村委員

高村でございます。先生、聞こえますでしょうか、よろしいでしょうか。

浅野委員長

聞こえております。どうぞ。

高村委員

ありがとうございます。

排出量取引に関わる様々な論点は既にご指摘ありましたので、できるだけかぶらないように発言をさせていただきたいと思います。

一つは、資料の1で、事務局がカーボンプライシングの検討の目的・方向性というふうに出してこれまでの議論を整理していただいているんですけれども、何人かの委員からもご指摘がありましたが、間違いなく長期的な脱炭素化、あるいは脱炭素社会への移行ということを促していくと、そうした長期的な視点を持って、成長につながる、あるいは競争力から産業構造につくり変えるという、これはしっかり書いていただいていると思います。

ただ、同時に産業の競争力強化、あるいは今、足元での投資促進という観点からも、短期的な排出削減という、これは何人かの委員もおっしゃいましたが、やはりサプライヤーですとか、資本市場からの企業に対する要請というのは、単に50年の話だけではない形でしっかり評価をされているということを踏まえると、短期的な排出削減をどうかするかという観点は、私も必要な、この中にしっかり明記をしておく必要がある点だというふうに思います。

短期の影響コストだけを懸念して、移行が遅れないということもしっかり考えた上で、それをやはりマネージしていくような制度設計が必要だと思います。これが1点です。

2点目は、先ほど牛島委員がおっしゃったように、やはり経済主体の行動を変えていくという意味で、この価格シグナルの意義は非常に大きいというふうに思います。特に、これ排出量取引のところだけの話ではないんですけれども、先ほどいいました長期的な観点で、しっかり移行していくということのためには、長期的な移行をしっかり促していく一貫した価格シグナルが出ることということは非常に重要だというふうに思っております。

これは、もう釈迦に説法ですけれども、インフラの整備ですとか、更新にかかる時間を考えると、やはり投資の判断というのが長期の時間軸を持たなきゃいけないと、そういう投資は促される必要があると思いますし、技術に関しても、もちろん技術支援は重要なんですが、社会の大きな変化の中で、政府がこの技術という決めない中で、破壊的なイノベーションが起きてくる、そういうイノベーションのエコシステムをつくるという意味でも非常に大事だと思っております。

その意味で、長期的な移行のための一貫した価格シグナルという点では、総体的にやはり税の優位性があると思うんですが、ただ、今日、前田委員ですとか、有村委員も様々な制度的な可能性もご指摘がありました。むしろここで申し上げたいのはいろんな、この後のインターナル・カーボンプライシングも含めて、長期的な移行のためにどうしたら一貫した価格シグナルが出せる制度設計ができるかというところが私は非常に重要だと思っています。

3点目がありますけれども、現行の制度の効果についても含めて議論があったと思いますけれども、多くの委員の合意はやはりあれかこれかではなくて、最適なポリシーミックスをやはり探していく。ですから、あらゆるオプションは今の段階で落とさないということだと思います。

ただ、同時に現行の制度についていろいろ議論が何人かの委員からありましたけれども、手塚委員が、私、おっしゃってた点、非常に適切だと思いますが、つまり、対象となる様々な経済主体、努力をしているけれども、炭素価格として、それがしっかり評価されにくい現行の制度になってないかという問題提起だと思います。

FIT買取制度は、再エネは増やすという意味では確かにそうなんですけども、しかし、火力の間の選択には影響を与えていないということだと思いますし、温対税の制度設計については、もう言うまでもありませんけれども、全体として見たときのCO2排出に比例してないという意味で。やはり、それぞれ皆さんが負担をされてる負担感はあるけれども、CO2のコストという観点から見たときに、その負担が見えないような制度設計になっているとすると、やはり現行の制度をしっかり見直しながら議論するということは、やはり必要だというふうに思っております。

最後、スライドの46のところですが、政府収入のところです。1点だけ、ぜひ付け加えていただきたいのは、といいますのは、多分、各国の制度の中に盛り込まれてると思うんですけど、今、資料の中では見える形になってないというふうに思うのが、やはり公正な移行に対して、しっかりこの収入を使っていくということではないかと思います。脱炭素に向けた、例えばイノベーションへの支援はもちろんそうなんですけれども、しかしながら、やはり移行していくときに、どうしても痛みが伴うところに、しっかりと社会的に支えるというところに支出をするという発想は、私は非常に重要だというふうに思っております。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

今日は、神野先生がそこにいらっしゃるというふうに伺っておりますが、神野先生、前回も前々回もご欠席でしたので、これまでの環境税についての議論も含めて、何かご発言ありましたらお願いします。

神野委員

どうもありがとうございます。

私、視覚障害を負っていて光を目に入れることができませんので、パソコンを利用できないどころか持っていないので、参加する場合には、わざわざ環境省まで来ないと参加できないもんですので、2回ばかり、予定がバッティングして欠席してしまったことを、お許しいただければと思います。

それで、今、委員長からもお話がありましたように、私、税のほうに関わっておりますので、ここでの議論を裏支えするというような感じで、環境省のほうの環境関連の税制に関わる委員会と、それから、ここでといいますか、環境政策として租税に関する政策テーマが出てきたときには、いずれ政府税調なり、租税政策を所管する部署に検討が移っていくわけですが、ここにも、土居先生、諸富先生、神津先生と政府税調のほうにお入りになっている方がいらっしゃるかと思います。税のほうに関わっている人間のほうから今回の、これまでの議論を聞かせていただくと、2050年にカーボンニュートラルを実現するといったときにどういう政策体系で構想されているのかということが、つまり、カーボンプライシングと、それから他の政策との関連ということが、なかなか分かりにくいと、環境税のほうもデザインしにくいというところがございます。これは行きつ戻りつかもしれません。しょせん、ビジョンの全体像なんていうのは最初から分かっているわけではないので、下から上げていって初めて全体像が形成されてくるんだということになるかもしれませんので、行きつ戻りつかもしれませんが、そのビジョンと、それから問題解決的な対応を考えていく必要があるのではないか。つまり、ジグソーパズルの、我々は一つで、炭素税というところしか見てないわけですけれども、図柄全体がどうなっているのかということが分からないと、一つの小片もデザインしにくいというのが一つですね。

それからもう一つは、今日議論になりました排出権取引との関係でいくと、これも、カーボンプライシングで排出権取引と炭素税というのは、どういうふうに関連づけられるのか。これは、相互に存在するんだけれど、それぞれメリット、デメリットがあって、相補えばいいという話なのか、それとも、もう少し数量的な規制と価格的な規制というのを通して有機的に関連づけることができるような話なのかというようなことも、環境政策全体の中で租税といいましょうか、具体的に炭素税なり、もう少し広げた環境関連税制なりをするにしても、それをどう位置づけるかということが議論の過程で明示的になってくるほうが考えやすいということが、まず申し上げておきたいと思います。

それと、税のほうは、環境税なり炭素税を議論するときに、環境政策全体の中の一つのジグソーパズルだけではなくて、租税政策というか、租税体系全体の中で、どうやって炭素税を位置づけるかという問題があるわけですね。つまり、現在、私は租税体系を大きく変えなければいけないような転換点に来ていると思っておりますので、そのときに、炭素税、実際に使うとすると、恐らく従量税といいましょうか、間接税で従量税をどう使うかなということになるんだと思いますが、それどうやって位置づけるのか。つまり、基幹税、キータックス、基幹的な税金を何でつくるか。これは多分、所得課税と、それから付加価値税を組み合わせることになると思いますが、私の理解では、これからの税制においては、環境税というのが、補完税と我々呼んでるんですが、補完税で決定的に重要な意味を持つようになるんじゃないかというふうに考えています。

つまり、租税体系の中に大きな政策目標が入ってくるんじゃないか。これは、19世紀後半に課税の副次目的として社会政策というのが入ってきます。これは租税制度の決定的なインパクトを与えるんですね。つまり、累進的な所得税を中心にして税金を組もうと。社会政策そのものは、別に税だけでやってるわけではないので、社会政策全体ありますけれども、租税においても社会政策、きちっと入れていこうと、それは公平・公正の原理に決定的な影響を及ぼすわけです。19世紀の後半の、言わば重化学工業化していく過程で、そういう変化が起こったとすれば、今現在は、恐らく重化学工業化から無形資産で、無形財を生産するような経済構造に変わっていく。そのときに税を、租税制度をどうやって変えていくかという議論になるんだろうと思うんですが、そのときには、補完税、お酒の税金とか、たばこの税金とかでやっていた補完税が決定的に環境関連税制が、あと30年すれば明確に意義を持つようなことになるだろう。そういう方向を見通しながら税体系を考えていくときに、炭素税をどうやって入れ込んでいくのかということが重要になるんですが、そのときに、こちらでもって、こちらというのは環境政策として明確にある程度のデザインができていて、それで、租税政策のほうでも、それを参考にして、つまり複眼的に環境政策と租税政策を複眼的に見ながら入れ込んでいくということを、結果として歴史的には、そこで決着つくはずなので、その両方をやる上でも、今申し上げましたように、外的関連、他の環境政策とカーボンプライシングがどういうふうに位置づくか。それから、カーボンプライシングの中で、炭素税と、それから排出権取引がどう位置づくのかということを明確に詰めていくということと、作業を同じくして進めないと進まないんじゃないかというふうに思ってます。

あとは、もうちょっと時間があれなので、すみません。一応、今二つのようなことを考えておりますので、こちらの本体の議論も、そこら辺をちょっと考えて、我々、後から環境税をデザインしていく者の立場からいうと、それの導き星みたいなものを決めていただければというふうに思ってます。

以上でございます。

浅野委員長

ありがとうございました。

重要なご指摘をいただきまして、事務局も大変ですが、何とか宿題に応えるように努力していただけると思います。

時間があまりないところで大変恐縮ですが、事務局から何かお答えをすることがありましたら、簡単にお願いします。

井上市場メカニズム室長

事務局のほうからは、今日のご指摘も踏まえまして、また今後、様々取りまとめする際に、また反映させていきたいと思っております。

なお、価格シグナル以外、いろんなシグナルがあるという話もございました。ちょっと書き方が不足してるかもしれませんが、我々としては、繰り返しになりますが、カーボンニュートラルをやるためにはカーボンプライシングが全てというわけではないと思ってます。自主的な取組も、規制も、こういったカーボンプライシングを含めた形でのポリシーミックスだと思っておりますので、今、先ほどの神野先生のお話も含めまして、また次回以降考えていきたいと思っております。

以上でございます。

浅野委員長

大分、ここまでのところで議論が弾みまして、時間を相当オーバーしてしまいましたが、インターナル・カーボンプライシング、それから炭素国境調整措置について、この2点まとめて事務局から説明いただきます。

井上市場メカニズム室長

それでは、事務局のほうから資料3と資料4をまとめて、簡潔ですが、ご説明させていただきます。

まず、お手元にあります資料3、インターナル・カーボンプライシングについて、簡単にご説明させていただきます。

まず3ページをお願いいたします。インターナル・カーボンプライシングとは、ご案内のとおりですが、企業内部で独自に炭素価格を設定して、企業の投資判断などに活用する仕組みでございます。

4ページでございますが、実態としまして、CDPによりますと、右側のグラフになりますが、世界でインターナル・カーボンプライシングを導入、または導入を検討する企業は2,000社を超え、さらに増加傾向にあるということでございます。我が国におきましても、左側のグラフになりますが、約250社が導入、または導入を検討しているという状況でございます。

ページ飛ばしまして、7ページ目お願いいたします。インターナル・カーボンプライシング導入の目的でございますが、この絵の真ん中にありますように、もともとは、CDPの回答を通じまして情報開示を進め、投資家等へ環境対策をアピールする要素も多くあったと思いますが、これに加えまして、左上にありますようなSBTRE100、そういったものの低炭素目標を達成するものであったり、また右下にありますように、気候関連リスク・機会の特定や炭素税、低炭素規制の導入・強化等に備えるといった目的から、導入する企業も増えておると聞いておるところでございます。

8ページ目でございます。インターナル・カーボンプライシングの価格設定でございますが、9ページ以降、詳細な説明がございますが、IEAなどで、例えば2℃目標を達成するために必要な炭素価格が示されていたり、EUケースにおける排出価格などを参考に、例えば20ドル前後や100ドルあたりに設定する企業や、あと、自社で定めた削減目標達成のため、限界削減費用曲線を基に炭素価格を設定するなど、様々あるということで聞いております。

9ページ以降、そこら辺のところの説明が個々にございます。

最終的に飛ばさせていただきますが、16ページをお願いいたします。今回ご議論いただく視点をまとめたものでございます。先ほど申し上げましたとおり、インターナル・カーボンプライシングを導入、または導入を検討する企業が増える中で、カーボンプライシングの検討に際し、インターナル・カーボンプライシングはどのように位置づけるかという点についてご意見を頂戴できればと思っております。もう既に、先ほど来の排出量取引の中でもご議論があった部分と重複しますが、改めましてということでございます。

続きまして、資料4、炭素国境調整措置について簡単にご説明いたします。

3ページ目をお願いいたします。ご案内のとおり、EUにおきまして、6月に具体的な制度の提案が行われると聞いておりまして、その内容を見ないと具体的な議論はできないというところもございますが、今後、欧米の動きを見据えまして、我が国として炭素国境調整措置に関する基本的な方向につきまして、31日の経産省のカーボンプライシングに関します研究会にて提示された資料がこれになります。そのままお示ししております。環境省としましても、この考えに異論がないところでございます。具体的には、3ポツ目のところにありますが、炭素国境調整措置につきましては、国内の成長に資するカーボンプライシングの検討と並行しながら、以下のような対応を進めるとあります。一つには、WTOルールと整合的な制度設計であること。二つ目には、線品単位当たりの炭素排出量がベースになると考えられますが、その計測や評価方法の国際ルール策定等を主導する。三つ目でございますが、対象となる製品に生じる炭素コストの検証。そして最後に、他国との連携した対応という点が盛り込まれておるところでございます。

4ページをお願いいたします。EU、米国におきます炭素国境調整措置の検討状況についてでございます。毎回、この資料を出させていただいておりますが、赤字の部分が情報を更新したものでございます。EUにおきましては、当初の想定は国際競争力の影響、そしてカーボンリーケージ防止の観点から、これまで一部の業種において認めていた無償割当について、炭素国境調整措置が導入された際には有償割当にするという前提でございましたが、赤字で書いてます3月の欧州議会本会議におきまして、その点が削除されたというふうに聞いております。ただ、書いてますとおり、この決定は欧州委員会に対する拘束力はないとのことでございますが、今後とも情報収集に努めてまいります。

また、米国におきましても、下に書いてますが、通商代表部は炭素国境調整措置を含む温室効果ガス排出削減方法を検討するとしています一方で、一番下にありますが、ケリー特使は炭素国境調整措置について慎重な発言をされたとの報道もあり、この点につきましても、引き続き情報収集に努めてまいります。

事務局からは以上となります。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの事務局からのご発言、ご説明について、ご発言ご希望の方、どうぞ挙手をお願いいたします。今回、ちょっと時間が限られておりますので、しばらく待ちますが、お手をお挙げになった方のみということにしたいと思いますので。発言ご希望の方は、どうぞ今のうちに挙手ボタンを押してください。もうよろしいでしょうか。

それでは、この辺りで打ち切らせていただきたいと思います。

現在、発言ご希望の方が13人いらっしゃいます。できれば30分ぐらいというふうに考えていたんですが、無理かもしれませんけども、もう一つございますので、今後どう進めるかということについてもご意見を伺いたいと思いますから、大変恐縮ですが、本当に3分の時間を厳守でお願いいたします。できれば2分でまとめていただければと思います。

遠藤委員、石田委員、椋田委員、高村委員、この順番でお願いいたします。

遠藤委員

ありがとうございます。

先ほどの議論において各委員より電力セクターについての言及が多くありましたので、その点でのコメントもさせてください。

日本の電源構成というのは、CO2の排出量だけでは決められるものではありません。安定供給、経済性等も重要な要素で、再生可能エネルギーだけで電力が賄えるような議論はミスリーディングであるということを重ねて指摘しておきたいと思います。また、電力コストの上昇は、雇用吸収力のある製造業など電力多消費産業への打撃が大きく、そのインパクトを吸収するために補助金、つまり国民負担によって補填するという仕組みが、その産業競争力上よいのかどうなのか、この点についても、CO2排出量の議論だけにとどめるというのは、とてもナンセンスだと思っております。

その上で、国境調整措置についてですが、これは、EUが仕掛けるCO2排出量をツールとしたグローバル規模の製造業の争奪戦、もっと言えば、新しい貿易戦争であることをしっかりと認識しなければならないと思っております。

EUの措置も、どのように出されていくのか。もし仮に6月に出されるようなことがあった場合、自国の国際競争力を考えた上で米国との連携を密にして、京都議定書のときのように日本だけが置いてきぼり状態にならないように、十分に慎重な議論を進めていただきたいと思います。その際は、FITや途上国への省エネ技術支援など、既に負担している実質的なコストを明示して、国益の損失にならないような議論を行っていただきたいと思っております。

先ほど手塚委員よりFIT1万円の負担増で、排出削減量がどの程度なのか検証が必要だとのご意見がございました。私も繰り返し申し上げておりますが、どの程度のプライシングで、どの程度の排出削減効果があるのかが示されることが重要で、その上で、どの程度の費用対効果をカーボンプライシングで取って、それ以外は、例えばポリシーミックスの観点で他の制度に期待するというような具体的議論が進められると考えておりますので、その事務局からの提示を引き続きお待ちしたいと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

石田委員、どうぞお願いします。

石田委員

企業のインターナル・カーボンプライシングの導入は、それ自体は有意義なものだと思いますが、カーボンプライシングにとって代わるものではなくて、政府のカーボンプライシングに備える、あくまでも補助的なもので、ここで炭素税や排出量取引と同列で扱われるのは違和感があります。誤りだと思います。

炭素税の国境調整措置については、あくまでも自国産業の脱炭素化や産業構造の転換をどのように図るかが前提であり、その上で国際競争力を守っていくために導入される措置と理解していますので、2030年、あるいは2040年までに、どれだけ排出量を削減するか、どういった既存技術を先行して導入していくのか、その間に、どのような新しい技術を育てていって、どのように産業構造の転換を目指していくのかといったストーリーがあってこその措置であると思います。これが現在不足して不明です。

一方、国際交渉の場では対応を求められますが、国際的な議論に乗り遅れずに、日本と世界、両方に有益な制度設計に向けて意見を述べていくべきものであると思います。よって、まずは排出量削減経路、それに沿った産業転換をどうやっていくのかを早急に位置づけることが重要ではないかと思います。

以上です。ありがとうございました。

浅野委員長

ありがとうございます。

椋田委員、お願いいたします。

椋田委員

まず、インターナル・カーボンプライシングについては、ここで書かれているように、日本においても環境価値に意義を見出した企業が、創意工夫の下で自らインターナル・カーボンプライスを自主的に設定して、経営判断あるいは設備投資判断などに役立てる動きは、着実に広がっています。こうした企業は、脱炭素に取り組む動機づけが既になされており、政府が明示的なカーボンプライシングとして、炭素税や排出量取引制度の導入による行動変容を迫る必要はありません。むしろ、こうした企業の設備投資や研究開発投資の原資を奪い、脱炭素に向けた企業による主体的な取組を阻害する可能性すらあることに留意する必要があると思っています。いずれにせよ、こうしたインターナル・カーボンプライシングの取組は、各企業の実践に委ねられるべきことは言うまでもありませんが、例えばベストプラクティスの横展開など、その普及・拡大の在り方について検討を深めることは有益ではないかと思います。

次に、炭素国境調整措置について、資料13ページの上段に、「炭素国境調整措置の検討が欧米で進む中、我が国の国情も踏まえた明示的なカーボンプライシングを導入・拡充することを含め」という記載があります。この点、前回も述べさせていただきましたが、そもそも、明示的カーボンプライシングの導入・拡充云々の前に、日本では暗示的なものも含め、数兆円規模のカーボンプライシングが課されている事実など、日本の実情、あるいは様々な取組を国際的にきちんと発信して説明することこそが、国益の観点から重要だと思っています。そして、WTO整合性等を含め、今後、議論を深めて、日本が国際的な議論をリードしていく必要があると思います。

そうしたことから、資料1に書かれている「明示的なカーボンプライシングを導入・拡充することを含め」の部分は、むしろ削除し、何か例示が必要であれば、先ほど「環境省としても異論がない」ということでしたので、資料43ページの基本的な考え方(案)に書かれている、「国際的なルール策定・適用を主導する」とか、「対象となる製品に使用している炭素コストを検証する」とか、「立場を同じくする国々と連携する」等を書くことで、整合性を図ってはどうかと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

高村委員、お願いいたします。高村委員、どうぞ。

高村委員

失礼しました。高村でございます。

資料の3について、インターナル・カーボンプライシングについては、ぜひ進めていただきたいと思います。ただ、やはり、このカーボンプライシングの目的は、先ほどの議論の中にもありましたように、やはり長期的な産業構造の次世代化、脱炭素化を促していくという、そういう施策としては、やはりICPと言いましょうか、インターナル・カーボンプライシングをやる企業、やらない企業、数字も様々、その自発性に委ねているというところでは、やはり代替するものではなくて補完するものってどなたかおっしゃった点、正しいと私も思います。

それから資料の4の炭素国境調整措置ですけど、経産省さんの研究会で申し上げた点と重なりますが、WTOルールと整合的な制度設計であるというのはもちろん前提で、それについては、ぜひちゃんと検討する必要があると思いますけれども、もともと、こうした措置はWTOルールと整合的かどうかについて各国の意見が分かれて、しかしそれが導入をされるという、そうしたシチュエーションというのは十分起こり得ますので、したがって、整合的な制度設計であることについて検討はしつつも、ここで申し上げたいのは、やはりしっかり、今、最も適切にと言いましょうか、最も確実に対応できる、この措置に対して対応できるのは、やはり国内の脱炭素化を促進をして、炭素効率性を上げておく、炭素価格をビジブルにしておくということが最もこういう措置に対するロバストな方策だと思います。

先ほどからプライシングの話が出て、若干、ちょっと違和感を持ってるのは、現行の制度、いろんな負担を経済主体の方々にかけているんですけれども、カーボンのプライシングとしてきちんとワークしているかというところをしっかり見ないといけないというふうに思います。その意味で、炭素価格をよりビジブルにしていくという、そうした措置をしっかり進めていくということが、この国境調整措置に対する対応として非常に重要だというふうに思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

森澤委員、お願いします。

森澤委員

ありがとうございます。

インターナル・カーボンプライシングを導入している日本企業は、他国と比較しても多いわけなんですけども、これは各企業で独自の取組が進んでますのは、むしろ国レベルで統一的なカーボンプライシングが導入されていないという結果とも言えます。高村委員、また石田委員がおっしゃったとおりに、これは、補完であって、全くキャップアンドトレードと比較できる同列ではないと。排出削減に前向きな企業だけではなくて、これを広げていかないといけないというところが、この日本のほうのインターナル・カーボンプライシングの企業さんの結果からも言えると思います。

以上です。短くしておきます。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、土居委員、どうぞ。

土居委員

ありがとうございます。

インターナル・カーボンプライシングについては私も同感で、補完的なものであろうと。なおさら排出量取引が広範に認められるようになれば、極端に言えば社外で安く排出枠が買えるということになれば、インターナル・カーボンプライシングは、むしろ社内でワークしなくなるし、逆は逆だと、こういうことになるんだろうというふうに思いますので、やはり、本筋は排出量取引をどういう形でワークで位置づけるかということにかかっていると思います。

国境調整措置ですけれども、323日に、私はフランス政府が主催するシンポジウム、Carbon Border Adjustments for Climateというのに参加をして、そこでの議論、私なりに感じたところを申し上げると、GATT20条を使ってくるという可能性があるんじゃないかと。つまり、域内、国内での特殊事情があるということでもって、例外措置を講じるということで、関税なり、そういうものをかけてくるという可能性がゼロではないということだと思います。

これに対して、我が国で非常に優秀なまとめをしていると私が思うのは、経済産業省が2017年版の不公正貿易報告書で、補論ということでありますけれども、これについて言及をしていて、かなり詳細に法的な位置づけ、それからGATT 20条の、それを適用するのには向いていないという、ある種反論というか、もちろん2017年に出たものですから、別に今反論しているわけじゃないんですけれども。

ただ、その末尾になかなか意味深長なのは、現行ルールの限界というふうに、このGATT 20条に関連するところでの不公正貿易報告書を経済産業省が取りまとめていると。限界があるということも、これ経産省は、この当時認めているということですので、その間隙を突いてくるという可能性が当然EUはあり得るということはしっかり肝に銘じて、理論武装なり、我が国にとって不利にならないような検討をしていかなければならないというふうに思います。

ですから、もちろん私は、変な形で自由貿易を阻害するような関税を課すということは反対ですけれども、EUEUなりのロジックを組立てて、GATT 20条なり、ほかの措置で講じてくるという可能性は決して看過できないというふうに考えるべきですので、事務局及び傍聴されている経産省の方にも、このGATT 20条に対応するところはどうなっているのかということの整理をお願いしたいと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、井上委員、お願いいたします。どうぞ。

井上委員

ありがとうございます。

インターナル・カーボンプライシングについて、ご説明ありましたように、低炭素に向けた投資や省エネを推進するため、また企業内行動の変革や将来への備えのために取り組まれているということであり、こうした視点では、今後、中小企業にも不可欠になると感じます。

現在、日本において、インターナル・カーボンプライシングは幅広い業種で導入されているもの、ほぼ全てが大企業で導入されているという現実がございます。中小企業は、温暖化ガスに関する見える化を進め、排出削減に向けた自主的取組につなげられるような観点から、インターナル・カーボンプライシングの普及を図ることは相当程度必要でないかなというふうに感じております。

一方で、インターナル・カーボンプライシングが普及するにつれ、大企業から中小企業に対して環境配慮等に関する厳しい条件の要求が進むことは大変怖いことであり、懸念をいたします。前回の会でも申し上げたように、中小企業は既に需要の減少、取引先企業からの値下げ要求が強まっていることなどから、約7割の中小企業が価格転嫁できない状況がございます。難しい環境に置かれていると。こういったところでは、インターナルカーボンプライシングに関しても、ビジネスの現場における取引適正化に向けた施策とパッケージで制度設計を進めていただきたいというふうに感じます。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、安田委員、お願いいたします。

安田委員

安田です。

まず、インターナル・カーボンプライシングに関しては、資料の14ページですかね、ここに金銭のやり取りの有無というのがあって、22%しか現状では社内で金銭のやり取りを行っていないと。恐らく、残りの78%は何らかの形で見える化をして、企業の意思決定に間接的な影響を与える、あるいはそういった情報を整理しようという段階ではないかと思います。そういった金銭的インセンティブを伴わないようなやり方でも、一定程度、特に短期であれば効果が出る可能性はあるんですけれども、これは例えば、昨今はやりのナッジとか行動経済学でよく言われるんですけれども、そういった金銭的インセンティブがないと、短期的には行動変容が起こるんだけれども、長期的には、その影響が減ってくるケースが多いと。そういった観点を踏まえると、社内での金銭のやり取りを促進するために、国レベルでカーボンプライシングを明示的に導入していくと、恐らくそういった取組も補完的に進むのではないかなというのが、このICPに関するコメントです。

もう一方、国境調整に関して、先ほどからEUであるとか米国の動向に関するご意見とか、対応出ているんですけれども、遠藤委員でしたかね、新しい貿易戦争だと。この貿易戦争であるということを踏まえたときに、もちろん、EUや米国はどういう対応をしてくるのか予測するのは大切なんですけれども、相手の対応を期待するだけではなくて、それぞれのシナリオに応じたコンティンジェンシープランのようなものをしっかり、やっぱり練っていくべきではないかと。恐らく、これは経産省での議論が、僕、直接参加していないので分からないんですけれども、現状では日本での、温対税をはじめとした取組をアピールして、関税を課されないような方向に持っていくというのが基本線ではないかと思うんですけれども、そういった、きちんと、我が国の立場を主張すると同時に、仮にそれが認められなかった場合に、どういった形で対処すべきか。これは、ちょっと雑談めいてしまいますが、日本の多くの組織で何か一つの方向性について注力しているときに、結果が実らなかった場合のバックアッププランを考えておかないというのは、いろんな局面に見られるんですけれども、リスクヘッジするためには、取りあえず関税を課されないようにアピールすると同時に、課されてしまうような場合に、じゃあこうしようと、両にらみで対応策を練っておくというのは、とりわけ、この貿易戦争という観点で考えると重要ではないかなというふうに感じます。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

大塚委員、お願いいたします。

大塚委員

すみません、大塚です。

皆様おっしゃったとおりのところが多いんですけども、まず、インターナル・カーボンプライシングに関しましては、皆さんおっしゃったように、これだけで社外の構造変容は、ちょっと難しいと思いますけども、併用して一定の役割を果たしていただくことができるということだと思います。

それから炭素国境調整措置に関しましては、前回も申しましたが、今のEUが考えていることを見ていると、輸出国のほうでその製品の炭素価格について証明ができない場合には、EUのほうの自分の方法論で検討されてしまうという可能性がありますので、日本としても、一定の炭素価格がつけられているということを証明していくことが必要になってくるんじゃないかと思いますので、そのような観点から対応する必要がありますし、カーボンプライシングに関しても、その点から必要になってくるということもあるというふうには思っています。

自主的取組は日本の国内では非常に効果を発揮しているほうだとは思いますが、世界的には、残念ながら、あまり、その価値を認められにくいということが、もう20年前、30年前からございますので、これは、環境省にもどんどんアピールしていっていただくのはいいと思いますけれども、こういう炭素国境調整措置のようなときには、自主的な取組は、すぐには効果を発揮しないということも残念ながら認めていかないといけないのではないかということを申し上げておきます。

以上でございます。

浅野委員長

ありがとうございました。

増井委員、お願いいたします。

増井委員

どうもありがとうございます。

インターナル・カーボンプライシングのところなんですけれども、もちろん、こういった取組をされている企業というのは非常にすばらしい取組をされているんですけれども、やはり、これだけに頼るのは、ゼロカーボンといったところに向けては、ちょっと厳しいのかなと思います。むしろ、こういった取組を行ってる企業にいかに報いるかといいますか、活動を促進していくのか、そういうことも含めて補完的に用いるというのが望ましいのではないかなと思っています。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

手塚委員、お願いいたします。

手塚委員

聞こえてますか。

浅野委員長

聞こえています。

手塚委員

まず、インターナル・カーボンプライシングですけれども、椋田委員からもお話がありましたけども、基本的に、今、私どものような鉄鋼会社でも、2030年に削減目標を掲げて活動している、そういう中では、実際に投資判断とかのためにインターナル・カーボンプライシング制度を使っているわけですね。つまり、限りのある経営資源を使って、ある一定量の削減を達成するためには、投資対効果の高いCO2削減効果が相対的に高いものから順番に投資をしていくということで積み上げていくというやり方になっていて、それで、例えば2030年に20%削減ということを、ここまでの投資メニューでやると、実際の限界削減、CO2の限界削減費用が何千円とか何万円とか、こういう数字になると。

こういう中で、外から、いわゆる炭素税とか排出権取引のようなカーボンプライシングがかかると、これは、そこの投資に向けられる経営資源である、要はキャッシュフロー、これが既存するわけなんで、実は使える対策メニューが減っていく形になりますので、確かに税金でもってお金は会社の外に出ていき、車内でのCO2削減対策メニューは減るということで逆行する結果になるということをご理解いただければと思います。

それから国境炭素値、国境調整措置ですけども、3ページの3ポツ目の③のところにある、これが肝だと思うんですね。日本及び国境調整措置を導入する国において、対象となる製品に生じている炭素コストを比較検証する。これは、日本における、実際にかかっている炭素コストが、明示的、暗示的なカーボンプライスを含めて幾らかかってるのかというのを明らかにするということは絶対的にまず必要なんですけども、同時に相手国が本当にどれだけカーボンプライスを追っているのかということを比較するのは、あまり簡単ではございません。

例えば、FITの賦課金を経由して電力料金を経由してカーボンプライスを負担しているケースでいいますと、日本の鉄鋼は年間、2018年度で418億円の負担をしております。これ10年、これを負担すると4,000億を超えるんで、物すごい金額なんですけども、経常利益の約9%分の負担をFIT賦課金、これは電炉で8割減免を受けた後の数字で、これだけを実質負担しております。ところが、ドイツの鉄鋼会社は、FIT賦課金も、ほぼ100%近く減免されてますし、加えて送配電のコストが、再エネが入ると上がるんですけども、これもほぼ減免されてるということで、実は電力を経由するカーボンプライスは、ほとんど負担していないという形になってます。この二つをどうやって国境で調整するのかというのは、きちんとアップル・トゥ・アップルで比較する必要があるんですね。つまり、相手国の額面で言っているカーボンプライス制度だけではなくて、その裏で個々の産業セクターなり起業なりに、どれだけの減免が行われているかということも含めて比較しないと、本当の意味のフェアな比較にはならないということですので、ぜひ、そういう作業を行っていただきたいというのが、この3ポツ目の③の趣旨だと私は理解しております。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

小西委員、お願いします。

小西委員

ありがとうございます。

この7ページがすごく重要だなと思っていまして、当初は、やっぱりCDPの回答のためとかのところから、今は、いつか強化・導入される可能性が高い、この低炭素規制の準備・機会の獲得ということで、かなりCP強化の重要性が企業さんの間で高くなっているということの証左ではないかなと思っております。となると、やはり先ほど高村委員がおっしゃった、多くの委員がおっしゃったように、分かりやすく国際的に価格を見える化するということが、やっぱり重要じゃないかと。

というのは、パリ協定というのは、本質的には算定報告検証の仕組みの国際的な共通化で、どういった施策を入れたかというのは、国際的に報告するというのは義務となっておりますので、日本のNDCとして報告するときに、やはり分かりやすい形で報告できるということが、逆に言えば、こういった国境措置に交渉していく際にも、やっぱり防御の姿勢ではなく、国内できちっと措置がありますということが最も交渉力につながると思いますので、やはり、これは国際的にきちっとカーボンプライシングを見える化していくということが、とても望まれているのではないかと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

大野委員、お願いします。

大野委員

私も、インターナル・カーボンプライシングにしても、それから、その他の自主的な削減対策にしても、すばらしい取組だと思うんですが、冒頭申し上げましたように、今まで2013年以降の削減率というのは2.5%なんですね、平均。今までの対策のペースを、削減のペースを2倍以上にしなきゃならない。そのために、どういう政策が必要かということを忘れてはいけないと思います。

それから、もう1点、この資料でいえば2ページなんですけど、ちょっとこれ本当は前のページで言うべきだったんですけども、全体像という資料が、全ての資料に入ってます。この中で、排出量取引の部分について、どうも気になる表現があるのは、これ言わないと気持ちが悪いのでちょっとここで申し上げさせていただきます。排出量取引制度の定義として、「企業ごとに排出量の上限を定める」という記述があるんですね。これは不正確というか、間違いだったとだ思うんです。排出量取引制度の本質というのは、対象部分全体の総排出量、キャップを決めるということであって、企業ごとの上限を定めることが本質的な中身じゃないんですね。確かにグランドファザリングとかベンチマークでやる場合にはそういう作業ができますけども、オークションでやれば、それは必要なくなるわけです。実際、多くの制度はグランドファザリングで始まりますが、例えばRGGI100%オークションで始まりましたし、EU-ETSもそういう方向に向かっています。

ですから、ここは、ここで書くべきなのは、対象部門の総排出量の上限を決めるということであって、この記述は間違っていると思うので、ここはぜひご修正を願いたいと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございます。

それでは、前田委員、岩田委員、後から手を挙げられましたので、1分ぐらいで収めていただけませんでしょうか。

前田委員、どうぞ。

前田委員

ありがとうございます。すみません、ボタンがうまく押せなくて時間がかかってしまいました。

じゃあ1分ほどで。

インターナル・カーボンプライスについて、一言だけ申し上げます。

インターナル・カーボンプライスが、カーボンの価値を明示的に表せるという意味ではよいというご意見がありました。一方で、削減インセンティブというのはどうかというような意見もあったと思います。おっしゃるとおりだと思うのですが、ただ、環境政策の一般的な分類で言うと、これは自主的な取組に当たると思うのです。自主的な取組というのは、京都議定書の頃は国際交渉の場では随分と邪険に扱われて、日本は自主的取組はやってるけど経済的手法は一切やっていないのでいけないみたいなことで随分と非難されたのではないでしょうか。その後、世界の潮流は大きく変わってきて、実際、パリ協定に至っては、経済的手法一辺倒だったのが大きく方向転換されて、自主的取組というのも少し評価されるようになってきたと思います。

ですので、日本が、資料34ページですね、日本が世界的に見てもインターナル・カーボンプライシングに前向きだということがあるとすれば、これは高く評価されていいと思うし、また、国際的にすごくアピールしてもいいことだろうと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

岩田委員、お願いします。

岩田委員

ありがとうございます。手短に申し上げたいと思います。

一つ目は、インターナル・カーボンプライシング、私、この8ページを見て非常に心強く思いましたのは、300ドル以上、あるいは200ドルとか、そういうところの企業が日本の場合に結構あるということで、私の推測ですけど、これは単に排出量ゼロではなくて、ネガティブエミッションまでお考えになって、こういう野心的なプライシングを行ってるんじゃないか。そういう日本企業がたくさんいるというのは、大変頼もしいというように思います。というのが1点です。

2点目は、国境調整税の件で、これは資料の、経済産業省の研究会、3ページにポイントが四つほど上がっております。国境調整税については、先ほどケリーさんが後ろ向きのことをおっしゃったとファイナンシャルタイムズの記事を引用されましたが、よく読むと、今回の気候変動サミットでは、すぐに取り上げないけれども、COP26では取り上げるというようにおっしゃってるように私は思っております。ということで、必ずしもアメリカが後ろ向きだということではないんじゃないかと思っています。

それから、この国境調整税について、WTOルールということでありますが、私、国境調整についても、環境財ということについてゼロ関税というのがずっと前からAPEC辺りでもありますけども、私は、これ関税課さないほうも同じように重要だと思っていますので、こういうことをきちっと入れるべきではないかと思います。

それから、この国境調整税は、やはり多くの方がおっしゃられたように、国内でカーボンプライスが透明な形になってるインプリシットでなくてエクスプリシットにカーボンプライスがついてるということが、やはり重要なんじゃないかと思います。それは、エミッショントレーディングの場合もあるでしょうし、カーボンタックスの場合もあると思いますけども、プライシングがやっぱり明快であるということが一番重要だと思います。

私どものセンターでは、仮に世界で50ドルの炭素税というのが採用されるというようなレジームの下で、こういう国境調整税がどういう税収を生むかというようなシミュレーションもやっておりまして、これは必ずしも、ところが日本はあまり多くない。それから、輸出を還付する部分がかなり多いので、500億から600億円ぐらいというふうに試算をいたしております。これはご参考までということであります。

以上です。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

それでは、もう残り時間が大変少なくなりましたが。

井上市場メカニズム室長

委員長、すみません。オブザーバーの経済産業省のほうからコメントをしたいということで言われておりますので、よろしくお願いいたします。

経済産業省・梶川環境経済室長

1点すみません、お時間ない中。環境経済室長の梶川と申します。オブザーバーで参加しております。

国境調整措置について幾つかコメントがございましたので、今の検討状況についてご説明をしたいと思います。

委員の方からご説明がありましたが、EUやアメリカの提案が出てくる段階で検討するということではなくて、あらかじめ、出てきた場合のことを想定して、共通的に考えなくてはいけない事項について、政府内で準備をしていくということが一つの意味かなと思っております。ここにある基本的な考え方を、経産省の研究会でも、この環境省の審議会でも検討いただいて、しっかりと政府の中でやっていこうというのが、この意味合いでございます。

あとは、国内の負担の水準のところについては、明示的なカーボンプライシングというものがあるほうが、より対外的に説明しやすいという意見は、我々の研究会でも議論がございました。一方で、今の負担の水準は、エネルギー諸税なり、もしくはFITなり、様々なものがありますので、こういったものをうまくしっかりと対外的に説明していくことも必要であるという話がありました。我々としては、環境省と外務省とも連携しながら、こういった考え方をまとめていくことが大事だと考えております。国境調整については、コンティンジェンシープランも含めて考えていくことが必要であると思っているところでございます。

以上、コメントまで。失礼いたします。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、その他という議題になっておりますが、今後の議論の進め方について、事務局から説明いただいて、かなりの時間、これについても意見交換をいたしたいと考えておりましたが、もうお約束の時間ほとんど来ておりますので、これは事務局の説明を聞いた後に、お一人かお二人、どうしてもという方のご発言を認めますが、それ以外の方については、大変に恐縮ですが、書面をお出しいただいて、それを参考にしながら進め方を私どもで検討させていただきたいと思いますので、ご了承ください。

では、井上室長、どうぞよろしくお願いします。

井上市場メカニズム室長

最後に、資料ありませんで口頭になりますが、この小委員会での今後の議論の進め方についてご説明をさせていただければと思っております。

21日の再開第1回から今回までの3回の小委員会におきまして、何度も申し上げていますカーボンプライシングの類型ごとに、一通りご意見を頂戴したというふうに認識しております。次回は5月を予定しておりますが、これまでいただきましたご意見につきまして、事務局で議論を整理、まずさせていただき、提示させていただきたいと思っております。あわせて、これまで3回、今回も含めですが、いただきました宿題事項についても、お返しできるものをお返ししたいというふうに思っておるところでございます。それが1点でございます。

また、その次、次々回ですね、月1回のペースで開催するならば、次々回、6月以降ということになりますが、いただきましたご意見を集約させていただきまして、一度、中間整理ということで行えればというふうに思っております。中間整理の体系や構成につきましては、これから浅野委員長とも相談させていただきながら考えたいと思っております。ここで何か全てを決めるというわけではございませんで、あくまでも中間的整理でございますので、まとまってる部分はまとまっているでいいと思いますし、賛否ある部分は賛否をちゃんと整理するということで、またそこで出てきた書かれている課題については、今後年内の取りまとめということで言っておりますが、それに向けて引き続き議論をしていくという前提で考えておるところでございます。

時期としましては、夏頃までに中間整理を取りまとめていただきたいというふうに思っておりますので、事務局のほうも、そのつもりで準備をさせていただきたいと思っておりますので、ご理解をください。

あと、最後に、1年半前におまとめいただきました議論の中間的整理や、再開以降、今回も出てきましたけども、カーボンプライシングがCO2排出量や経済に与える影響につきましての定量的な分析が必要ではないかというご意見が多くございます。この定量分析につきましても、遅ればせながらでございますが準備をしていこうと思っております。

なお、定量分析につきましては、使用するモデルの特性などによって結果が大きく異なってくると思います。当たり前の話ですが。また、経済の面で見ても、昨今のコロナということで、コロナ後の、例えば新たな経済がどうなっていくかとか、デジタル化がどう進むのかという点は正確に予測できるものではなくて、そういった意味でも、モデル分析というところでは将来の経済状況等を正確に予測できるものではないというのも事実だと思います。そうしたモデル分析の限界も踏まえた上で、議論の参考として、さらにはモデルごとの、先ほど申し上げた特性なども踏まえながら、その結果を見て、さらに、例えばこういう政策を打てば、こういうことになるといったような感じで前向きな議論ができるように、モデルによる定量分析について議論いただければというふうに思っているところでございます。モデルの結果を見て何かしら一喜一憂するというのではなくて、あくまでも議論の参考として、さらに前向きな議論ができるようにということで、取扱いということで考えております。

なお、小委員会においては、複数の分析機関から直接ご説明をいただき、ご議論をいただくことを今考えておるところでございます。また、どのタイミングでご議論いただくかにつきましては、様々準備もございますので、浅野委員長とも相談しながらタイミング等々も考えていきたいと思っておるところでございます。

口頭ではございますが、説明、以上でございます。

浅野委員長

お分かりいただけましたでしょうか。というふうなことを事務局は考えているそうです。

ちなみに、前に出しましたのは中間的整理に向けての議論の取りまとめということで、まだ中間的整理を行っているわけじゃございませんので、ここで二度も中間的とりまとめをやるのかということではありません。その辺はご理解をいただければと思います。

また、経済モデルを用いた分析についても、直接携わった機関をお招きして直接ヒアリングができるような機会をつくりたいというのが事務局の考え方のようでございますので、このこともご理解いただければと思います。

はじめに10分ほど中断しましたので、最大10分ほど延長をお許しいただきたいと思いますが、どうしてもここで進め方について発言をしたいという方は挙手をお願いします。それ以外の方は、どうぞ紙をお出しいただければと思います。いかがでございましょうか。特にございませんか。

諸富委員から、今、お手が挙がりました。ほかにいらっしゃいますか。

それでは諸富委員にご発言をいただきます。どうぞよろしくお願いします。

諸富委員

時間迫っている中、ありがとうございます。

今、お話しいただいたほうの、特に後段ですね、定量的な評価、非常に大事だと思います。今まで、制度・政策の定性的議論を主としてやってきたわけですけれども、今日は産業界委員の方々からコストに関するご発言が多数ございました。一体カーボンプライスを入れたときにコストがどうなるのか、単にコストだけではなくて、当然メリットもあるわけでして、コストを負担している方がいるということは、一方で新しい省エネのサービスを購入したり、機材を購入する一方、その省エネ産業、再エネ産業の拡大といったプラスの効果も当然見られるわけですから、マクロ経済全体としてプラスに行く可能性もございます。こういった成長に資するといった場合に、やはりマクロ経済の動向、成長や雇用に対する影響はどうなるのかといったことまで含めて、複数税率や複数シナリオ、複数モデルで可能性を探ってみるという議論をぜひやっていただきたいということで、強く方向性を指示したいと思います。

以上でございます。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、ちょうど時間になりました。

次回は、先ほど事務局が言いましたように、これまでいただきましたカーボンプライスの個々の手法についてのご意見をもう一度整理をしてご提示をする。それから今後の進め方についても、さらにまた少し整理をしてお示しをいたします。

それでは、本日は、10分ちょっと中断しましたが、ほぼ予定の時間になりましたので、これで閉会にさせていただきます。

どうもご協力ありがとうございました。

井上市場メカニズム室長

本日はありがとうございました。

事務局からでございますが、次回の日程は、委員長にもご相談した上で、追って事務局よりご連絡いたします。

あと、加えまして、特に最後の今後の進め方に関しまして、そのほかでも構いませんが、ご意見等ございましたら、書面というか、メールなりで事務局のほうにいただければ、今後の議論の参考にさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

以上でございます。

浅野委員長

どうも長時間、皆さんありがとうございました。

井上市場メカニズム室長

それでは終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

午後6時01分 閉会