地球環境部会(第142回)・産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会合同会合(第49回)議事録

日時

平成31年4月23日(火)16時00分~18時00分

場所

 全国都市会館 大ホール

(東京都千代田区平河町2-4-2 全国都市会館2階)

議事録

16時01分 開会

○亀井環境経済室長  皆さん、こんにちは。定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会地球環境部会産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会合同会合を開催いたします。

 本日は、委員総数の過半数の委員にご出席いただいております。ありがとうございます。定足数に達しております。

 なお、本日の審議は公開とさせていただきます。

 ここで、中央環境審議会地球環境部会の2名の委員に交代がございました。経団連環境安全委員会地球環境部会長の右田委員、日本商工会議所エネルギー・環境専門委員会委員の中島委員にご参加いただくこととなっております。また、産業構造審議会地球環境小委員会に早稲田大学の大塚委員、東京商工会議所エネルギー・環境委員会共同委員長の野末委員の2名の方々に新たにご着任いただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

 審議に先立ちまして、冒頭、経済産業省産業技術環境局長の飯田よりご挨拶させていただきます。

○飯田産業技術環境局長  皆様、ご多用中お集まりいただきまして、ありがとうございます。本日は、パリ協定の長期戦略についてご検討いただきます。これは昨年6月に未来投資会議という成長戦略を議論する場で安倍総理から、温暖化対策はむしろ競争力の源泉である、環境と成長の好循環を実現せよ、イノベーションを推進する、グリーン・ファイナンスを推進する、それから、日本の技術の国際展開を進めるということでご指示があり、本日ご出席を賜っておりますけれども、高村先生を初めとするJICAの北岡理事長を座長とする有識者懇談会でご検討いただいて、きょうお配りしてありますが、4月2日に懇談会報告書をいただきまして、それに肉づけをする形で本日政府の長期戦略のたたき台をお示しさせていただいております。

 内容でございますけれども、全体のビジョンとして高い目標を掲げて、環境と成長の好循環を実現するための具体的なアクションもかなり書かせていただいておりまして、私どもとしては、他国に比べて類がないものがたたき台としてはできたのかなと思ってございます。本戦略の策定を通じまして、今年度、G20の会議が開催されますけれども、こうした我が国の考え方や取り組みを世界と共有して、世界全体の取り組みにつなげてまいりたいと考えておりますので、忌憚のないご意見を賜れればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○亀井環境経済室長  続きまして、中央環境審議会地球環境部会の三村部会長、産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会の内山委員長よりご挨拶をお願いいたします。

○内山委員長  内山でございます。本日は恐らく平成最後の会議になるかと思います。

 皆様もご存じのように、パリ協定では世界全体の温室効果ガス排出水準レベルを2100年までにゼロレベル、あるいはそれ以下にするという非常に厳しい目標が掲げられ、それの実行ルールが決まりました。これまで2030年の削減目標を政府中心に実施しておりまして、それは産業、運輸、民生、それぞれの部門におきまして、それぞれの積み上げで削減目標を達成しようというものでありますが、パリ協定のような野心的な削減目標になりますと、もっとグローバルかつ長期的な戦略で物事を考えなければならないかと思います。

 先ほど局長から説明がありましたように、総理大臣の指示のもとに経済界、産業界、そして学界の皆様が集まっていただきまして、パリ協定長期成長戦略懇談会を開催し、5回にわたる会議がありました。そして4月2日にその提言がまとめられました。本日はその提言に対して、社会の変革、あるいは技術革新、さまざまな視点から皆様から忌憚のないご意見をいただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○三村部会長  皆さん、こんにちは。中央環境審議会地球環境部会長・三村でございます。

 先ほど来ご紹介がありますとおり、本日のテーマは、パリ協定に基づく長期戦略についてであります。もう何度も触れられておりますけれども、ちょっと振り返ってみますと、2015年は非常に潮目が変わった年といえるのではないかと思います。パリ協定の合意によって、世界を挙げて温暖化対策に取り組もうという機運が高まりました。その後、投資のあり方とか産業のあり方、そういうもので非常に大きな変化が生じております。

 パリ協定の目標にもあるとおり、地球全体でCOゼロエミッション社会を目指すという方向も徐々に強くなってきていると思います。そういう世界の流れの中で、この提言を受けて、6月のG20の会議までに政府が長期戦略をまとめるということでありますので、世界をリードするような提言、政策になりますように、審議会としても皆様方のご意見を期待いたしております。どうぞよろしくお願いいたします。

○亀井環境経済室長  ありがとうございました。ここでカメラはご退席をお願いいたします。

 配付資料の確認をさせていただきます。議事次第、配付資料一覧、座席表のほかに、資料1及び資料2としまして各審議会の委員名簿、資料3―1及び資料3―2として長期戦略のポイント、資料4として長期戦略の本文、参考資料として長期戦略懇談会に関する資料の3点をお配りしております。お手元の資料に不備がある場合は、事務局までお申しつけください。

 それでは、以後の進行は産業構造審議会地球環境小委員会の内山委員長にお願いいたします。

○内山委員長  議事の進行は順番で、今回は経済産業省が担当しますので、私が務めさせていただきます。それでは、早速議事に入ります。

 本日は議事次第にあるとおり、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略についてご審議いただきたいと思います。

 まず、事務局から資料の説明をまとめていただき、その後、委員の皆様からご質問やご意見をいただきたいと思っております。

 まず議題に関して、資料3―1を事務局から説明をお願いいたします。

○亀井環境経済室長  ご説明させていただきます。資料3―1、3―2が長期戦略のおポイントであります。1枚の概要版と3枚の詳細版がありますけれども、きょうは資料3―2を使いましてご説明させていただきたいと思います。

 その前に、参考資料として長期戦略懇談会の資料をつけております。この懇談会から4月2日にご提言いただきまして、その提言を受ける形で政府のほうでとりまとめの案をつくりましたのが、この長期戦略という位置づけになっております。

 参考資料2をごらんください。懇談会の概要であります。一番上の枠囲い、今世紀後半のできるだけ早期に脱炭素社会の実現を目指し、2050年までに80%の温室効果ガスの削減に大胆に取り組むべきであるとか、気候変動問題の解決には世界全体での取り組みと、やはり非連続なイノベーションが不可欠である、ビジネス主導の環境と成長の好循環を実現するような長期戦略を策定すべきというご提言をいただきました。この提言をいただきまして、今回政府のほうで案をとりまとめさせていただいたものが資料3―1、3―2の概要、資料4の長期戦略の案であります。

 資料3―2をごらんいただければと思います。基本的な考え方であります。今、長期懇談会からご提言いただきましたとおり、長期的なビジョンといたしましては、最終到達点として脱炭素社会、カーボンニュートラルを掲げております。それを野心的に、今世紀後半のできるだけ早期に実現するということを目指すということを掲げております。2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減に向けて政策に取り組んでいくということであります。

 政策の基本的な考え方につきまして、こうした非常に高い野心的なビジョンの達成のためには、やはり非連続なイノベーションを起こしていかなければならない。しかも、それは技術があるだけではなくて、社会に実装されていくことが必要で、そのためにはビジネスに主導していただくということだろうということであります。そういったビジネスが伸びて成長する、それがさらなる対策に結びつく、環境と成長の好循環を実現していく。そのような戦略であるべきだということであります。しかも、それは日本国内だけの取り組みではなくて、世界全体での取り組みを目指すべきであるという戦略を基本的な考え方としております。

 また、この対策は非常に時間がかかる性質のものですから、迅速に取り組んでいく。日本だけではなくて、世界全体に貢献していく。しかも、そういった取り組みが将来に希望のもてる明るい社会、SDGsや地域循環共生圏にも資するような戦略であるべきだろうと考えております。

 第2章からが施策の中身になってまいります。第2章は各部門ごとにビジョンを提示するということと、そのビジョンに向けた施策の方向性を記載しております。

 大きく4つの各分野を想定しており、1つがエネルギー分野であります。目指すべきビジョンといたしましては、エネルギー転換、脱炭素化を進める。そのためには特定の技術にこだわらずに、あらゆる選択を追求していくということをビジョンとして掲げております。

 そのための施策、対策の方向性といたしまして、再エネ、再生可能エネルギーについては主力電源化を目指していく。コストを下げ、系統制約を克服する。火力については、パリ協定の長期目標と整合的に火力発電からのCO排出を削減していく。そのためのイノベーションとして、例えばCCSとかCCU、カーボンリサイクルを推進していく。水素は、水素社会を実現していくということを掲げております。

 産業分野につきましては、新たな生産プロセスを確立して、ものづくりの脱炭素化を図っていくということをビジョンとして掲げております。そのための対策・施策の方向性でありますけれども、COフリー水素を活用して、例えば水素還元製鉄によるゼロカーボン・スチールに挑戦していく。CCU、カーボンリサイクル、バイオマスに対して原料転換を図っていく。人工光合成の研究開発等を進めていくということを記載させていただいております。

 運輸部門です。Well to Wheel Zero 、ゼロエミッションにチャレンジしていくというビジョンを打ち出しております。2050年までに1台当たりの温室効果ガスを8割削減していく等のビジョンを掲げております。

 施策・対策の方向性でありますけれども、自動車の環境性能評価を初めとした電動化政策の国際協調を強化していく。次世代電動化技術のオープンイノベーションを促進していく。ビッグデータ、IoTを活用した道路、交通システムをつくっていく等々の施策を書かせていただいております。

 1枚おめくりください。地域・暮らしであります。

 ビジョンといたしましては、地域における脱炭素化と環境、経済、社会の統合的向上を図っていくという地域循環共生圏をつくっていく。2050年までにカーボンニュートラルで、かつレジリエントで快適な地域と暮らしを目指していこうということを打ち出しております。

 その対策・施策の方向性としましては、カーボンニュートラルな暮らしへの転換。例えば、ストック平均でZEB・ZEH相当を進めるための技術開発を進めていく、普及を図っていく、ライフスタイルを転換していくということであります。地域づくり、都市とか農産漁村等において、カーボンニュートラルな地域をつくっていくということを書かせていただいております。

 吸収源対策としましては、十分な吸収源の確保を目指していこうということを書いております。

 こういう分野ごとのビジョンと対策・施策の方向性に加えまして、第3章では、横断的な施策として3つの柱を掲げております。脱炭素社会2050年8割削減、非連続なイノベーションが必要であるという趣旨から、イノベーションを全面に押し出した戦略を書かせていただいています。

 第1節がイノベーションでありまして、基本的な方向性としましては、温室効果ガスの大幅削減につながるような脱炭素技術の実用化、普及のためのイノベーションに取り組んでいく、社会実装可能なコストを実現していくということを基本的な考え方としております。

 そのために3つ柱がありまして、まず戦略をつくっていこうということであります。革新的環境イノベーション戦略を策定する。、その中身としましては、コスト等の明確な目標を設定すべきである、そこに対して官民のリソースを最大限投入していく、国内外の技術シーズの発掘、創出をしっかりやっていこうということであります。

 そのために3つ柱がございまして、まずは国内外における技術シーズの発掘や創出、ニーズから課題を設定していく。例えば世界の主要国、G20がありますけれども、科学技術の指導的な人材を招聘して国際会議を日本で開催する。RD20と書いてありますけれども、そういうことを通じまして研究機関の連携強化と国際共同研究開発を展開してこうということであります。

 もう1つが、ビジネスにつながる支援を強化すべきという趣旨から、技術シーズ、人材の発掘がビジネスにつながるように、公的機関が選定した企業に対する支援を推進していくことを記載しています。

 もう1つが、実用化に向けた目標設定をしっかり行う、課題をみえる化していくということであります。再エネ、エネルギー転換、例えばCCUS、ネガティブ・エミッション分野については、CCU、カーボンリサイクル製品の既存製品と同等のコストを実現していくという目標を設定しております。水素につきましては、製造コストを10分の1以下とするなど、既存エネルギーと同等のコストを実現していくという目標を設定しております。再生可能エネルギーにつきましては、既存電源と同水準のコストで導入できる大幅増大に資する技術を確立していく。原子力については、安全性、経済性、機動性にすぐれた炉を追求していく、バックエンドの問題解決に向けた技術開発を実現していくということを書いております。

 こうしたものとあわせまして、経済社会システムとかライフスタイルの分野でもイノベーションも重要であります

 2つ目がグリーン・ファイナンスでして、こういったイノベーションを推進していかなければならないわけですけれども、民間のビジネスでイノベーションに取り組む企業をみえる化をして、そういった企業にESG資金を流していく。そうすることによって、そういった企業が伸びて、さらなるイノベーションが可能になるような好循環を実現していく。ファイナンスの面からイノベーションを支えていくという内容を第2節のグリーン・ファイナンスで書かせていただいております。

 1つ目が、TCFDによる開示とか産業と金融の対話を通じた資金の好循環を構築していくということでありまして、例えばTCFDとありましたけれども、これを実際に行っていく際のガイダンスとか、シナリオ分析のためのガイドを拡充して開示を支援していくことや、そういった情報をしっかり活用し、グリーン投資に流し込んでいく、そのための金融機関向けのガイダンスを策定していくということ。また、産業界と金融界の対話の場として、TCFDのコンソーシアムを創設していこうということ。そこでの議論を世界に発信、共有していくためのものとしてTCFDサミットを日本で秋に開催していこうといったものを書かせていただいております。

 1枚おめくりいただきまして、3ページ目であります。金融側の取り組みとして、ESG金融の拡大に向けた取り組みということで、グリーンボンドの発行支援や金融界の経営トップのコミットメントを得たESG金融ハイレベル・パネルといった取り組み等を通じて、金融機関のESG金融に関するモメンタムを醸成していくことを書かせていただいております。

 最後がビジネス主導の国際展開、国際協力でありまして、イノベーションで生まれた果実を世界に広げていく、地球規模のCO削減に貢献していくといったコンセプトを書いてあります。

 基本的な方向性といたしましては、日本の強みである環境性能の高い技術、製品を国際展開していく、世界全体の排出削減に日本が貢献していくという発想で政策を記載させていただいております。

 柱は3つでして、まずは政策・制度構築や国際ルールづくりと連動した脱炭素技術の国際展開ということで、技術を売っていく際に、例えば省エネラベルとか国際標準化とか、そういった相手国における制度構築をしっかり図りながら、例えばASEAN大で官民イニシアティブを立ち上げなどの取組を通じて、ビジネス環境を整備し、技術の普及、横展開を図っていくということを記載しております。

 また、CO排出削減に資するようなインフラ輸出を強化していくということで、パリ協定の長期目標と整合的にCO排出削減に貢献するようなエネルギーインフラ、都市交通インフラを国際展開していくということを書かせていただいております。

 第4章、その他の部門横断的な施策としまして、人材育成。レジリエントというのは、適応と緩和の調和を効果的に推進していく。こういった気候変動対策を進める際には公正な移行も配慮していく。カーボンプライシングにつきましては、国際的な動向や日本の事情、産業の国際競争力の配慮、影響等を踏まえた専門的、技術的な議論が必要であるというとりまとめの案とさせていただいております。

 最後、レビューと実践であります。レビューについては、本体計画とかエネ基等と連動を図りながら、例えば6年程度を目安としまして、この長期戦略も見直していくということを書かせていただいております。

 というのが現在、我々のほうで長期戦略としてまとめさせていただいた案の概要でございます。

 以上です。

○内山委員長  ありがとうございました。

 それでは、ただいま説明いただきました成長戦略案について、皆様からご意見をいただきたいと思います。

 本日は実は以前よりも出席者が非常に多くて、今、説明を聞いておわかりのように、非常に説明の内容が多岐にわたっておりまして、1人が話しても10分、20分簡単にご意見が出てしまうのではないかという危惧をしております。ただ、40名もの出席者がいますので、どうしても全員に発表の機会を与えるとなると2分以内ということで、厳しいとは思いますが、運営上、皆様、協力をお願いします。また、委員の方が先に発言されたことが同じ内容でしたら、○○委員がもう既に指摘していますのでということで、そこは省略していただきたいと思います。ぜひスムーズな運用にご協力をよろしくお願いいたします。

 それでは、早速ご意見を聞きますが、名札を立てていただきたいと思います。今回は中環審の方々から先にご意見をいただくというルールになっておりまして、最初に浅野委員、よろしくお願いします。

○浅野委員  委員長、どうもありがとうございます。2030年までの計画しかなかったのですが、その後の見通しが、ようやく政府としてもはっきりしたものとしてできたというのは大変いいことだと思います。

 大分努力なさったと思うので、余り悪口をいう気はないのですが、やはりこのビジョンをどうやって実現するのかという手だてとか、ロードマップという点でみると、まだまだ十分ではないという感じもします。ですから、できれば早急に温対計画の見直しをして、この長期戦略にいわれていることが早く実現できるために、温対計画の中にしっかり盛り込んでいくということが必要ではないかと思います。

 特に重要だと思いますのは、本文の7ページの27行以下のところに出ている「迅速な取り組み」ということではないかと思っています。今からやらないといけない。本当にこれは今まで気候変動対策はおくれておくれて先延ばしにしてきたことばかりだと思うのです。例えば系統強化、増強などは絶対必要なことですし、それから、都市の再開発があちこちで行われているときに、カーボンフリーの都市にしようというインセンティブが全くないものですから、どうもロックインのようなことが起こってしまうというのが心配です。

 それから、CCSについてはかなり強調されていますけれども、法制度の面では全く不備でありまして、環境総合推進費による研究でようやく前年度に報告書がまとまりましたから、こういうものを参考にして至急に法制度の準備のようなこともやらなければいけないのではないかと思います。

 最後に、こういうビジョンというのはやはり多くの方に知っていただいて、関係主体がこの内容を共有できるようにしないと、こういうものがありますで終わってしまいますから、ぜひそうならないように啓発、普及、ビジョンの周知ということは力を入れていただきたいと思います。

○内山委員長  ありがとうございました。続きまして、井田委員、お願いいたします。

○井田委員  ありがとうございます。提言に各省庁が肉づけするだけと聞いていたのですけれども、大量の肉がついて、肉が余りにもついてしまって肥満体になって、肝心の骨格がみえていないという印象なのですけれども、1.5度への貢献とか、今世紀後半、可能な限り早い時期の脱炭素という重要なメッセージを明確にみえる形に整理することが必要かなと思います。特に原子力についてはぜい肉たっぷりみたいな、何でこういうことになったのか、政府はアカウンタブルでなければいけないと思います。

 具体的なポイントを3点申し上げたいのですが、ダブりを避ける意味で2つ、私、江守さんが出している紙と全く同じでありまして、非連続的なイノベーションにこだわると。これ、こだわり過ぎると、前回も申し上げたのですけれども、1990年代につくられ、今誰も覚えていない地球再生計画というのがあって、あれの失敗を繰り返すようなことをしてはいけない。既存の技術、既存の政策オプションの中で、直近、大幅に削減できるという道をもっと明確にすべきだと思います。

 2点目、石炭についても、私、江守さんの出したペーパーと全く同じなので、多くは申し上げませんけれども、懇談会の中ではたしか日本の石炭が大きなレピュテーションリスクになっているという指摘があったと思うので、ここはG20に向けて、世界に向けてこれを発信するというのだったら、やはり全廃と書かない限り、世界からは評価されないと思います。

 長くなって恐縮なのですが、3点目は、提言の中には産業分野でのマテリアルの脱炭素化というのがきちんと書かれていたと思うのですけれども、私にはこれがどうも戦略の中ではきちんとみえません。特に重要なのは、やはりG20で重要になるプラスチックの問題なのです。この前、私、質問したのですけれども、お答えをいただいていないので、今回ぜひお答えをいただきたいと思うのですが、マテリアルの脱炭素化を考えるのだったら、今の石油起源のプラスチックの大量生産、大量消費、大量回収、大量焼却はどう考えても脱炭素化と整合性があるとは思えない、パリ協定と整合するとは思えない。廃棄物部局でなくて、温暖化をやっていらっしゃる経産省の方には産業政策としてこれをどのように考えるのかというお伺いに対して、環境省にも同じことを伺いたいと思います。繰り返しになりますけれども、前回質問してお答えをいただいていないので、きょうはぜひお答えいただきたいと思います。

○内山委員長  続きまして、大江委員、お願いします。

○大江委員  初めて参加いたします。日赤大阪府支部の大江と申します。

 この長期戦略なのですけれども、この進捗に日本として取り組んでいくということで、世界的な発信が非常に重要かなと思いますので、たまたまG20は大阪で行われるということもありますし、また、パリ協定の10年後がちょうど2025年の大阪万博に当たってございますので、ぜひこの場を日本の温暖化への取り組みを世界的に発信する、この長期戦略の日本としての取り組みの進捗を発信する機会として活用いただけたらうれしいなと思いましたので、よろしくお願いしたいと思います。

 以上でございます。

○内山委員長  ありがとうございました。続きまして、荻本委員、お願いいたします。

○荻本委員  私からは2点。

 まずは、コスト規律という言葉はこの中でも出てきます。これは極めて大事なことだろうと思いますので、書いているだけではなくて、一体どのようにコスト規律を保っていくのか。予算を要求する段階もそうですし、中間結果が出たときもそうですし、コスト規律というのをしっかりやることによって、非常にたくさん書いてあるいいアイデアをどの順番にやらないといけないのか。コスト規律、つまりリソースが十分ないというところからしか出てこないと思いますので、まずこれが重要だと。全く同じ話なのですけれども、それは今たくさん並んでいる技術を時間軸に展開したら一体どこで実用化されるのか、また、実用化される時期がわかったとすると、いつ技術開発に着手するのかということが重要であるということだろうと思います。これを全部一緒にやったら破産する、発散するということを、どうやって規律を高めていくかということだろうと思います。

 もう一点は、制度という言葉だろうと思います。制度は非常に安くて、いろいろなものを実現できる。ただ、いろいろなステークホルダーのお互いのコンフリクトがあるので、なかなかできないというところなのですけれども、これこそが政府が一番やるミッションを負った分野だと思います。なので、非連続なイノベーションというのは結構なのですけれども、格好いい言葉にとらわれずに、今、非常に安く確実にできることは何なのか。それは1つはキーワードが制度にあるということだろうと思います。

 この2点をご指摘したいと思います。

○内山委員長  ありがとうございました。続きまして、河上委員、お願いします。

○河上委員  ありがとうございます。幾つか意見を述べさせていただきます。

 エネルギー資源に乏しい我が国で脱炭素社会を目指していくためには、11ページあたりにも書いていただいているのですけれども、やはりエネルギー分野においてはS+3Eが基本的視点、大前提とすることが極めて重要と考えております。したがいまして、今も書いていただいていますが、このとおり確実に記載をお願いいたします。

 それから、この観点に加えて、2050年ということになりますと、かなり長期の話でございますので、相当程度、不確実性が出てくるということでございますから、再エネの主力電源化にしっかり取り組んでいくのは当然のことながら、やはり安全性の確保を大前提といたしました原子力の活用がどうしても不可欠ではないかと思っております。その点についても記載をご検討いただきたいと思います。

 最後ですが、以前からも申し上げているとおりなのですが、やはり大幅な温室効果ガスの削減をやっていくためには、電源の低炭素化は当然のことなのですが、加えて電化の推進も必須かと考えております。電化については50ページあたりに記載いただいておりますが、電化の推進というワードについても記載のご検討をお願いできればと思います。

 以上です。

○内山委員長  続きまして、岸上委員、お願いします。

○岸上委員  ありがとうございます。内容につきまして、井田委員と同様の疑問をもっておりますので、後ほどお答えいただければと思います。

 そのほかに、先ほど効果とコストを考えながら対応していくというご説明があったかと思いますのが、それに関連しまして、情報の信頼性というポイントについて申し上げたいと思っております。信頼できる情報がなければ判断を誤ってしまうリスクがあると思います。3つぐらいポイントがあるかと考えます。

 1つ目は、情報開示に関してでございます。この報告書に情報開示に関してTCFDのイニシアティブについて盛り込んでいただきまして、ありがとうございます。ただし、現在、イニシアティブの乱立ということがいわれておりまして、企業の方は混乱もされるでしょうし、全てに対応するとなると大変かなという状況だと思っております。そして、国際的にはCDP、CDSB、GRI、IASB、FASB、ISO、SASBといった機関が集まって、コーポレート・レポーティング・ダイアログという活動が行われております。そのような状況を認識しながら、イニシアティブの乱立という状況にどう向き合って、効率的な情報開示のフレームワークをどのように考えていくかという視点が大事ではないかというのが、1点目です。

 次が、ガバナンスと情報の報告ないしは開示との連動という論点でございます。報告書にも記載されておりますけれども、日本においてコーポレートガバナンス・コードが導入され、ガバナンス改革が進んでいるのは大事な進捗だったと思います。組織全体にとりまして、統制活動の基盤となるガバナンスがきいていなければ、その戦略等を実務に落とし込むことはできませんしモニタリングも困難です。また、ガバナンスと切り離されていては、開示される報告書の内容が信頼できるものにはなりませんので、ガバナンスと情報の報告ないしは開示との連動という視点をもつことが大事であると思っております。

 最後の3点目ですけれども、これは我々会計士の職業にも若干かかわりがありますが、第三者による保証とか検証、意見といったことについてでございます。

 ご案内のように、会計士は過去・現在の財務情報について監査、レビュー、合意された手続ということで活躍してきました。いろいろお叱りを受ける場面もありますが、この監査、レビュー、合意された手続は信頼性の程度や、性質にいろいろ違いがあります。その点、まず、ご理解いただきたいと思います。

 その上で、国際的には非財務の情報の信頼性の担保に使われている、ISAE3000という基準がございます。非財務情報の場合は監査とはいわずに保証という言葉を使います。合理的保証、限定的保証、そしてまた合意された手続を非財務情報の分野にどのように広げられるかといった議論が進んでおります。日本もおくれることなく、国際的な議論をフォローし、また、どんな性格をもつ信頼性の第三者による担保なのかということの理解を関係者で醸成していく必要があるかなと考えております。よろしくお願いいたします。

○内山委員長  ありがとうございました。続きまして、小西委員、お願いいたします。

○小西委員  ありがとうございます。きょう時間がないと思いましたので、お手元にこちらの提言を置かせていただいておりますので、お読みいただければ幸いです。これ、脱炭素社会というものを明確に打ち出して、1.5度を踏まえたという点は大変評価できる点ではないかと思います。ですので、これ、パリ協定に提出されるものだと思いますので、その観点から3点ばかり手短にお話しさせていただきます。

 まず、15ページの火力発電、石炭もそうなのですけれども、これ、パリ協定の長期目標と整合的にというのは、具体的にどのようなことをいっているのかということをご質問させてください。

 2つ目が、産業界のビジョンに向けた対策・施策の方向性というところなのですが、ここで1つ欠けているかなと思われる視点が、日本を含めた先進国はもうこれから飽和社会であるということ。日本は都市鉱山であるということです。いかに市中のものをリサイクルしていく、循環社会をつくっていくかという視点を施策として体系化して取り組むべきかなと思っております。例えば日本には鉄も既に13億トン以上ありますし、1人当たりにすると10トンになりますので、こういったところから出てくるものをいかに循環させていくかということが、これから脱炭素社会に向けての1つ重要な視点かなと思っております。

 そして、75ページのカーボンプライシング。今までの慎重に検討から、専門的、技術的検討が必要ということで、バージョンアップされたのかなとは理解していますけれども、パリ協定に提出されている各国の長期戦略の多くにこのカーボンプライシング、既に導入か、これから予定しているかと明確に書いてありますので、日本だけ検討という形でパリ協定に提出するのはちょっと出おくれ感が出るかなと思っております。その点はやはり今後改善される必要があるかなと思っております。

 以上です。

○内山委員長  ありがとうございました。続きまして、佐藤委員、お願いいたします。

○佐藤(淳)委員  ありがとうございます。パリ協定を踏まえて脱炭素を打ち出したということについては小西委員と同様、高く評価したいと思います。それで、メディアに身を置く者として、この戦略をいかにこの国全体に浸透させていくかということに非常に関心があります。そういう意味でいうと、私はたまたま今、東京と地方都市を行ったり来たりしながら生活していますけれども、やはり地域であるとか、地域と都市間の差もありますし、地域間の差もあります。非常に意識の格差が大きいなと思います。別に東京が進んでいて、地方がおくれているなどという単純な話ではありません。地方においても、温暖化対策を地域づくりと両立させている先進的なところもありますし、金融機関においても非常に質の高いグリーン・ファイナンスをやっておられるところがあります。

 一方で、例えば最近、ある地方銀行のトップとお話をしているときに、胸にはSDGsのバッジが光っているのですけれども、よくよく話し込んでみると、パリ協定の何たるかもよくわかっていないということがありました。別に知識がなくても、そのマインドをしっかり受けとめていていただけていればいいのですが、中身が全く伴っていないような金融機関も実際はあります。この戦略にも非常に金融のことがたくさん書いてありますし、とても重要なことだと思います。この場は環境省と経産省が中心ですけれども、やはり金融庁との連携も非常に大事になってくると思います。バッジをつけることが大事なのではなく、実際に温暖化対策に寄与する事業にお金がまわっていくことが大事です。そういう意味でいえば、単に企業のPRということではなくて、この戦略をいかに実効性のある形で企業活動や国民の意識の中に浸透させていくかが重要だと考えます。こうした点について、政府全体で知恵を絞っていただきたいと希望いたします。

 以上です。

○内山委員長  ありがとうございました。続きまして、下田委員、お願いいたします。

○下田委員  ありがとうございます。私も脱炭素社会という言葉が出てきたということは高く評価したいと思いますが、これを読ませていただきまして、産業の特に製造業と運輸、地域・暮らしと書かれているところはやはり攻め方が違うなと思いました。まず、産業は書かれているイノベーションが非常に難易度の高いものであるということ、それから、国際的に間接排出の問題等がある中で、世界の中で最も炭素排出の少ないものづくりができたところがアドバンテージを受けるようなシステムをつくるという制度設計とあわせてイノベーションを狙っていくということが大事であると。それに対して、運輸とか地域・暮らしというところに書かれている技術はそれほど難易度が高くないので、ここは意欲的な目標を掲げて、その目標に向かって達成していく。これまでトップランナー制度等で成功してきたやり方でいけるのではないかと考えます。その上で、運輸、地域・暮らしというところに関しては、インフラとか建築の寿命が長いということを考えますと、早期に具体的なゼロエミッションのビジョンを書いていただきたい。それに向かって着実にできるところを進めていって、その中で2050年がどういう位置にあるかと考えていくというのが妥当かと考えています。

 それから、人材育成というのが出てきているのですけれども、先ほど佐藤委員からお話がありましたように、やはり世論喚起をしないといけないので、国民全体に対する情報提供というテーマをぜひ掲げていただきたいと思います。

 あと、水素の問題については、江守委員の意見書にもありますように、2次エネルギーとして位置づけをしていただきたい、せめてCOフリー水素と書いていただきたいと思いました。

 以上です。

○内山委員長  ありがとうございました。続きまして、住委員、お願いいたします。

○住委員  簡単にいいます。総じて産業政策に偏っている気がします。特に分量からみても、地域・暮らしとか非常に少ないし、私はおざなりになっているような気がします。特に、SDGs達成を図る地域循環共生圏と、一言でほとんどの問題を全部カバーしているように思います。現在の我々、国民が生活で抱えているいろいろな問題、例えば高齢化社会とか格差社会とかをこの中でどうするかということぐらいは、もうちょっと触れるべきだと思います。

 それから、公正な何とかというところがあって、そういう意味で転換期に非常にいろいろなことが起きるというのに触れたのはいいのですけれども、それが再教育だけかというのが私の印象です。

 ですから、そういう点では、成長戦略というのは新しい低炭素社会に向かっての戦略ですので、社会という側面をもう少し強調して、いろいろな施策のことを具体的にしてもらえればと思います。

 以上です。

○内山委員長  ありがとうございました。続きまして、田中委員、お願いいたします。

○田中(里)委員  田中です。ありがとうございます。

 脱炭素社会の姿というのが、もう少し明確に一人一人にみえるような表現ができないかなということを考えておりました。本文の8ページにはトレンドワードがSDGsから全部並ぶわけなのですけれども、やはり一人一人が脱炭素社会にアクセスできて、担い手にもなれるというような、丁寧な表現が必要かと感じます。

 もう1つ、ほかの先生もご指摘でしたけれども、非連続なイノベーションというのは少し意図が取りづらい印象です。その意味する心は、段階を踏まえて、こつこつ進むのみならず、理想の姿に向けてアクティブにアイデアを出して、成長を加速していこうという意味なのかなと解釈しますし、本文にはそういうことが書かれていますが、認識に誤解が生じないようにできればと思いました。

 また、4章には各分野の人材育成の方向性が書かれているのですけれども、重要な項目ながら、他と比較してここも少し素材および情報が少な目な印象です。各分野で目標達成に寄与できるリーダー人材や、大局観をもって戦略が推進できてアイデアを出せる人材が今求められていると思いますので、そこを踏まえた上で各分野の専門家を適切に育成する制度や体制が記されるとよいかと感じました。

 関連して3章には世界に貢献できるようなインフラ輸出の強化がありますけれども、ここにも日本の人材や、日本からの指導がセットで輸出されて、実効性をもって展開できることで、日本発の発信の有効性と、世界での評価への期待が見込めるようになるとよいかと思います。

○内山委員長  ありがとうございました。続きまして、中島委員、お願いいたします。

○中島委員  このたびの会合から初参加させていただきます。日本商工会議所のエネルギー・環境専門委員の中島と申します。よろしくお願いします。私からは、ポイントを押さえまして4点お話しさせていただきます。

 1点目です。先ほど河上委員からもご指摘があったのですけれども、基本的な考え方として、「S+3E」と、環境基本計画の「環境・経済・社会の統合的向上」が重要だと認識しております。それから、2050年という複雑かつ不確実な長期に向けて野心的な複線シナリオのもと、あらゆる選択肢の可能性を追求するとともに、「需要と供給」、「電気と熱」、「集中と分散」等のバランスの確保をぜひお願いしたいと思います。また、昨今の自然災害や、それによる停電等を踏まえたレジリエンスの観点から、エネルギーの選択肢を多様化して、そのバランスの確保についてもぜひ配慮をお願いいたしたいと思います。

 2点目です。資料4の16ページのところなのですけれども、「省エネルギー/分散型エネルギーシステム」についてであります。低炭素化と国土強靱化、さらには地域循環共生圏の形成には、ここで取り上げられている再生可能エネルギーや蓄電池に加えまして、第5次環境基本計画でも取り上げられましたコジェネレーションも有効だと考えております。省エネルギー性が高くて、かつ再生可能エネルギーとの親和性が高いコジェネレーションは、さらなる技術開発も現在進められておりまして、将来、メタネーション等による燃料の脱炭素化も期待されております。したがって、コジェネレーションもこの分散型エネルギーシステムの1つとして、この項でぜひ取り上げていただきたいと思っております。

 3点目です。40ページにおいて、地域に根差した中小企業の野心的な目標設定や削減取り組み、情報発信の促進による競争力強化が取り上げられていますけれども、中小企業自体がそもそも非連続なイノベーションの担い手でありまして、ぜひこのような中小企業が活力を維持して、国内外で競争力を発揮できますよう、引き続き研究開発や設備投資、情報開示の支援をお願いしたいと思います。

 最後に、4点目になります。先ほど別の先生からもご意見があったのですけれども、カーボンプライシングについてですが、さらなるカーボンプライシングの導入は中小企業への影響もかなり懸念されますことから、本戦略案にもあるとおり、専門的、技術的な議論をぜひ慎重に進めていただくようお願いしたいと思います。

 以上です。

○内山委員長  ありがとうございました。続きまして、中根委員、お願いいたします。

○中根委員  ありがとうございます。江守委員から非常によくできたご意見が出ていますので、それについては触れませんが、3点ほど述べさせていただきたいと思います。

 この非連続なイノベーションについて、割合注意すべきだというご意見が出ていますけれども、私はこの非連続なイノベーションの必要性とか重要性も認識しております。その中で、非連続なイノベーションとして幾つか列挙されていますが、それだけではなくて、人工知能がディープラーニングによって爆発的に発展したようなイノベーションも非連続的なイノベーションとして重要なわけで、ですから、こういう技術が非連続的なイノベーションが必要だと示すだけではなくて、非連続的なイノベーションを生み出す枠組みづくりとか、プラットフォームづくりということについても触れていただく、今後具体化に当たって重視していただくことが大事かと思います。

 もう1つは、世界への貢献のところ、8ページに考え方のところで書いてございますけれども、これは日本の技術とか、国内対策で範を示しということで、ある意味世界の貢献と書きつつ、国内対策で国際貢献をするということに重点が置かれているような印象を与えています。それだけではなくて、世界にどう働きかけるかを重視したい。。ルールづくりのことが後々出ていますけれども、そういう世界のルールづくりをするために、どんな方針をもつのか、どういう分野については例えば欧州と協力し、どういう分野については米国と協力し、どういう分野については中国と協力するという具体化を今後やっていただければと思います。

 もう1つ、74ページに公正な移行ということが明記されています。これは非常に大事だと思います。それはSDGsの実現という意味でも大事だと思いますが、これもどう具体化していくか。これは国際的に、国際協力の中で初めて実現することかと思いますので、世界への働きかけ、ルールづくりという観点からしっかりとやっていっていただきたいと思います。

 以上です。

○内山委員長  続きまして、西尾委員、お願いいたします。

○西尾委員  ありがとうございます。私は59ページのところにあるライフスタイルのイノベーションというところについて意見を申し上げたいと思います。

 ここはイノベーションの推進ということで、多分技術のイノベーションと同等ぐらい重要な項目なのだろうと思うのですが、Ⅱの経済社会システムのイノベーションもそうですし、Ⅲのライフスタイルのイノベーションも12行ぐらいしか記述がありません。前回の審議会でも議題に上がりました民生部門のCO削減は非常に大きな課題であることからも、ライフスタイルのイノベーションについて、もう少し具体的な提案が必要だと考えます。

 少なくとも、例えば20行目に倫理的消費(エシカル消費)の拡大云々とあり、倫理的消費が拡大するということが書かれていますが、実際にはとても拡大している状況ではありません。メーカーの方々はご存じのように、消費者はコスト負担してまで倫理的消費を推進するというところまで進んでおらず、市場の経済的効果として捉えられる状況ではありません。したがって、拡大させることは不可欠なのだけれども、拡大させるためにどういう施策が必要なのかということをぜひとも示さなければいけないと思います。

 2点目は、同ページの後段の25行目から、シェアリングエコノミーのように、脱炭素化につながり得るような人々のライフスタイル変革を進めていくのだとありますが、これも大変乱暴だと思うのです。シェアリングエコノミーの精神そのものは、個人所有の稼働率は低いから、これを人に使ってもらって役立ててもらおうというところが背後にあって、こういうことを進めていくと、まさにこれは過度に所有するとか消費することをしないようにするためのライフスタイルを普及させていこうという精神ですので、そういう意味では非常にマッチするというか、合致するかと思うのです。

 ただ、すべてのシェアリングがCO削減につながるかといったら、そうでないシェアリングもいっぱいあるわけでして、ここに書くのであれば、例えば工場施設のシェアリングのように、定量的にみてもCO削減につながるようなシェアリングエコノミーに特定化して記す必要があると考えます。それと同時に、CO2削減型のシェアリングサービスを、どうやって消費者も巻き込んで拡大・推進していくか、そのために必要な方策等をきちっと記すべきだと思います。日本でもシェアリングエコノミーが……

○内山委員長  済みません、簡単にまとめてください。

○西尾委員  わかりました。ということで、上述の2点についてぜひとも書き込んでいただきたいと思います。

 以上です。

○内山委員長  ありがとうございました。続きまして、藤井委員、お願いします。

○藤井委員  最初に、40人で2分の意見開陳という運営は参加者をある種、侮辱しているのではないかと私は思います。産構審と中環審が合同でやる意味も全くない。委員同士のディスカッションもないような運営では、審議会の意味があまりというか、ほとんどないといってもいい。スケジュール的なやり方でしかない。本来は、もっとちゃんと、もう少し丁寧に運営できるのではないかと思います。以前にも審議会の運営の在り方については言ったことがあるのですけれども、委員の意見を聞いて政策に反映させようとするならば、こうしたやり方ではなく、審議会の運営の有効性をもう少し考えていただきたい。これが1点。

 中身的には、グリーン・ファイナンスのところ、結構書いていただいて、それはいいのですけれども、ちょっと勘違いしているのではないかと思います。TCFDは温暖化のリスクを「みえる化」させることを求めているわけです。企業のイノベーションの取り組みを適正にみえる化し、結果として、これもワン・オブ・ゼムの政策の中に入ってきますけれども、COの気候変動の財務リスクを開示させるためを求めているのです。したがって、政府に求めたいのは、TCFDガイダンス、TCFDコンソーシアム、あるいはTCFDサミットといったような「お祭り騒ぎ」的なことをやるのではなくて、ちゃんと本来の企業会計の中でこれ(企業が抱えるCO2のリスク)をどう取り扱うのか、という作業をもう始めていただかなければいけない。IASB(国際会計基準機構)も既に作業に入っています。グローバルには動いているのです。これはまさにTCFDが勧告の中で言っている移行リスクそのものです。政策が温暖化対策にどうしようとしているのかが「みえない」こと自体が移行リスクなのです。我が国はその移行リスクが非常に高い。つまり政策のリスクが非常に高い。いつ政策が転換されるかわからない。そこを明確にしていただきたい。

 もう一点だけ、34ページに住宅建築物についてのことを書いているのですけれども、ご存じのように、住宅・建物は最大のCOの排出源です。3割ぐらいは日本でも建築物全体が占めます。住宅を含めてですけれども。先進国はどこの国もそのように住宅建築物の問題が大きい。その中でも特に既築の建物のCO2削減が大事なわけです。しかし、これがなかなか難しい。ですから、「野心的、大胆」というならば、この問題をどうするか。それに取り組まねばならない。しかし、ここでは2行しか書いていないです。全然、野心的でも大胆でもなくて、臆病で、後ろ向きといわざるを得ない。最近、ニューヨークはエンパイア・ステート・ビル等の既存のビルにこれから排出キャップをかけると宣言しました。こうした取り組みこそが野心的ということなのです。この分野を担当している国交省の方がいらっしゃるのかわかりませんが、もう少し真剣に検討していただきたい。

 以上です。

○内山委員長  続きまして、藤村委員、お願いします。

○藤村委員  ありがとうございます。まず、これだけのボリュームにまとめられたことに対しては敬意を表したいと思いますが、運営については藤井先生と全く同感ですし、内容についてはやはりいろいろ問題があるかなと思います。

 1点目としては、1.5度には触れていただいているのですけれども、この報告書に書かれてある2030年45%削減とか、2050年正味ゼロということには触れられておらず、相変わらず2050年80%にとどまっているというのは、やはり世界からは受け入れられない内容ではないかなと思います。

 2点目として、エネルギーについてですけれども、パリ協定がほとんど反映されていないエネルギー基本計画に基づく政策を続けるということが明記されているということは、相変わらず原発と石炭も使うというスタンスだと思うのですが、これも福島が全く解決していない、世界では脱炭素の方向に向かっているという大きな流れがある中で、やはりこの内容では国民の不信感を増長させるだけではないかなと思います。

 3点目、ビジネス主導のイノベーションというだけあって、技術のことがいろいろ盛り込まれておりますが、果たしてCO削減効果がどの程度なのか疑問ですし、何より非連続なイノベーションというのは単に技術の転換だけではないといいつつも、先ほど西尾先生もおっしゃいましたように、技術イノベーションについては15ページ書かれていますが、経済社会システム、ライフスタイルについては数行、しかも、いずれも言い尽くされたことしか書かれていないという点は非常に不満ですので、この点は大いに膨らませていただきたいと思います。

 4点目として、やはりカーボンプライシングについて、もう30年以上議論し、各国で成果を出しているのに、相変わらず議論、これも小西さんがおっしゃったように、世界的にはとても受け入れられる内容ではないと思います。

 最後に、全体的にビジネスと技術にお任せといった感じで、佐藤さんもおっしゃったように、地域とか人材育成にはわずかに触れられていますが、これも技術やビジネスのための人材育成という感じでしかありません。本質的に自治体だとか市民の参加といった視点が大きく欠けていて、社会とか人間がみえない長期戦略になっているなということを非常に強く感じます。また、1990年からほとんどCO2が減っていない原因についての分析もないままで、これではやはり説得力に欠けるのではないかと思います。

 最後に1つだけ質問です。世界各国で若者を中心にしたデモが広がっており、日本でも少しずつですが、広がっています。そういう危機感を募らせている次世代に対して、この内容で私たちの世代の責任が果たせると思われますか。その辺のところをぜひお伺いしたいと思います。

○内山委員長  続きまして、右田委員、お願いいたします。

○右田委員  今回初めて参加させていただきます。日本経団連の地球環境部会の立場で参加しておりますが、日本製鉄の右田と申します。よろしくお願いいたします。

 今回の長期戦略につきましては、非連続なイノベーションというのをベースに、環境と成長の好循環を達成する非常に野心的な内容となっておりまして、高く評価すべきものだと認識しております。非連続なイノベーションの1つといたしまして、日本鉄鋼連盟が掲げておりますゼロカーボン・スチールについても記載いただいております。今後、鉄鋼業界といたしましては、水素還元製鉄という非常にハードルの高い技術にチャレンジしていくということとなります。

 その実現に向けては、安価で豊富な水素の供給という民間だけではなし得ないイノベーションも必要となります。政府にはこうしたイノベーションを最大限に引き出すために、官民連携のもと、民間の研究開発、投資、原資の維持拡大を図りつつ、規制、制度改革を初めとする投資環境、事業環境の整備等、民間だけではとり得ないリスクを補完するための施策を強力かつ継続的に推進していただきたいと思います。また、こうしたイノベーションを推進していくためにも、民間の研究開発投資の原資を奪うことのないよう、炭素税や排出量取引といった明示的なカーボンプライシングにつきましては、導入拡大ありきではなく、慎重に議論していただきたいと思います。

 経済界としても、引き続き技術革新、革新的技術、製品の開発と、その国内外への普及に全力で取り組んでまいります。そのことで地球規模、長期の温暖化対策に貢献してまいる所存でございます。

 以上でございます。

○内山委員長  続きまして、吉高委員、お願いいたします。

○吉高委員  ありがとうございます。私からは、ファイナンスと国際協力の面でそれぞれお話ししたいと思います。

 非連続のイノベーションが金融界のほうも起こってくるということでは、今回ESG投資やTCFDのことをたくさん盛り込んでいただいて、現状には合っていると思います。ただ、この6年ごとのレビューという点をどのように考えていらっしゃるのかお聞きしたいです。今、金融の中に身を置いている立場からすれば、多分6年スパンとなるとこの内容では足りないのではないかと思います。現状記載されているグリーン・ファイナンスに関しては多分2~3年の話という気がしております。日本の市場のグリーン化におきましては、ベンチャーキャピタルやコーポレートベンチャーキャピタル、M&Aなど、さまざまな金融の手法で、グリーンイノベーションとのシナジーがあると思います。長期ビジョンであれば、ファイナンスも長期的な視点で、フィンテックなども踏まえて記載いただければと思います。

 それから、国際協力なのですけれども、国際協力に関する記載が全体の中で比較的少ないのかなと思ったのです。例えば農業系、フロン系は、非常に途上国での問題が高まると思います。特に農業系は投資家が熱帯雨林の伐採についてCO吸収源に影響を与えるものとしてリスクがあると考えているというところもありますので、日本の産業のグローバルサプライチェーンを考えれば、もう少しその辺りついても入れていただければと思います。一方で、世界的に、気候金融では”Just Transition”という点が注目されていますので、先ほど中根委員もおっしゃったような、世界に向けて国際協力の長期のロードマップで、金融とグリーン・ファイナンスのシナリオがあってもよいのかなと思いました。

 以上です。

○内山委員長  ありがとうございました。続きまして、大塚委員、お願いいたします。

○大塚委員  4点ほど、ごく簡単に申し上げさせていただきたいと思います。

 1つは、1.5度目標に関しても考慮していることと、カーボンニュートラルを掲げているという点では一歩前進にはなったと思っているところでございます。

 2つ目でございますけれども、CCS、CCUに関して今までよりも大きく取り上げられているところもよかったと思っています。過去のCOを吸収するには、今とりあえずCCSしか方法がないと思いますので、そういう意味でもCCSに関して今までよりも重視していることはよかったと思います。浅野委員もおっしゃったことですけれども、もし日本の近海の海底とかで実施するのであれば、CCSに関しての包括的な法律をつくるということもぜひお考えいただければと思いますし、貯留地が十分なものがあるかについての調査も今進めておられると思いますけれども、ぜひ迅速に行っていただけるとよろしいと思います。

 3つ目でございますが、レビューのところは最後にちょっと書いていただいているのですけれども、1つお伺いしておきたいのは、この6年というのはどこから出てきたかということです。さらに、地球温暖化対策計画等と、この戦略との関係は目標の年が違うということだと思いますけれども、計画間の連携に関して、できれば法律で位置づけたほうがいいと思われますし、さらに、6年間何も見直ししないというのは、温暖化が進んでしまうということも多分出てくると思いますので、進捗管理をきっちりやっていただく必要があるのではないかと思います。例えばイギリスの気候変動委員会のようなものは1つ参考になるのではないかと思いますけれども、科学者を中心とするような委員会に進捗管理をしてもらうというのは1つの方法ではあると思っているところでございます。次世代との関係で、ヨーロッパで特に少年少女がいろいろ気にし始めており、これが世界的な動きになる可能性もありますので、それに耐え得るものにしていく必要があるのではないかと思います。

 第4点でございますけれども、カーボンプライシングについても、今までよりも記述が少し積極的になったところもよかったと思いますが、経団連からも電力システム改革に公的資金を入れるようなご提案が出ているようですので、例えばそういうものの原資をどこから出すかということを考えなくてはいけなくなると思いますので、1つの方法としてはカーボンプライシングということも考えられるのではないかということを申し上げておきたいと思います。

 以上でございます。

○内山委員長  それでは、続きまして、高村委員、お願いいたします。

○高村委員  ありがとうございます。発言する立場にないのかもしれませんけれども、まず、提言に盛り込んでいただいた内容をもとに、これをできるだけ反映させる形でまとめてくださったことを改めてお礼申し上げたいと思います。

 何人かの委員からもご指摘がありましたけれども、やはり明確なビジョンをつくる必要があるということは、懇談会の委員の総意としてこういう形で示させていただいたと。もちろん委員の中でいろいろな意見はあったわけでありますけれども、少なくとも今世紀後半にできるだけ早期に脱炭素社会を目指すということは明確に記したということで、非常に重要なビジョンを示していると思います。あわせて、主要分野についても、それぞれの脱炭素化のイメージ、ビジョンを示したというのは一歩踏み出した点だと考えます。

 それを踏まえた上で、具体的には2点ですけれども、幾つか要望を申し上げたい。

 これは懇談会の委員の中でも、脱炭素社会を目指すというビジョン、あるいは各分野のビジョン、このメッセージをやはり明確に戦略の中に示してほしい。これはG20を前に、国際的にもそうですし、佐藤委員等もおっしゃっていました、国民にきちんとわかるようなメッセージの形で伝える必要があるということは確認されていると私は理解しています。よく読むと中に書かれているのですけれども、恐らくエディトリアルな問題かもしれませんが、見出しですとか、各分野の冒頭に明確なビジョンを前出ししてきちんと書くとか、特にここで申し上げる脱炭素社会を目指すという各分野のビジョンを明確にするような書き方をしていただくように改めてお願いしたいと思います。

 1つ、ちょっと細かいのですが、本質的に気になっているところは、電力の脱炭素化について、2050年に向けてその取り組みを進めるということ、提言でも書いてありますし、これはエネルギー基本計画でも書かれていると思うのですけれども、2050年に向けてというところは必ずしも明確に書かれていないのが1つ気になっております。見落としていたら申しわけないのですが、これは懇談会の中でもモビリティーを初め、水素、CCUをやっていく上でも、コストが低減された電力、脱炭素化された電力が要求されるというのは非常に重要だということを繰り返し指摘してきたと思いますし、これは皆がそう思っていたと私は思いますので、この点については、より明確なメッセージを出していただきたいと思います。

 もう1つの要望は、既に何人かの委員からありましたけれども、イノベーションのところです。これは苦労して書いてくださっていると思うのですけれども、これも懇談会の中で、経済界の方々も含めて共通していわれていたのは、将来、今、ソリューションがないイノベーションへの対応、もう1つは、今シーズがあるが、普及しないことで脱炭素に貢献できていない、ここにどういうイノベーションをつくっていくか。場合によっては市場や制度を変えていくことも必要だと。これは書かれていると思うのですが、非常に大事だという指摘が繰り返しされたと思います。

 その理由は、先ほど局長がおっしゃったように、成長戦略で、今、実際の対策の中で成長の芽というものをつくっていく必要があるという問題意識が背景にあると思います。私、ここはいわゆる……

○内山委員長  済みません、簡単にまとめてください。

○高村委員  そのところをきちんとわかる形で書いていただくことをお願いしたいと思います。

 以上です。

○内山委員長  続きまして、田中委員、お願いします。

○田中(加)委員  ありがとうございます。こちらの長期成長戦略案ということで、特に今、長期的なビジョン、積み上げでない将来あるべき姿、とてもすばらしい考え方がちゃんと入ってくださったものだとうれしく思っております。ただ、言葉の問題なのかもしれないのですが、ビジョンというように使われている言葉が、こうみていきますと、例えば本文の11ページもそうなのですけれども、低炭素社会としてのあるべき姿という意味のビジョンというよりは、むしろそこに到達するまでの方法論のようなものにビジョンという言葉が使われているところが多々ございます。ビジョンとしてどうあるべきか、どうしていきたいのかというのと、そこに至る道筋はやはりちょっと違うと思うのです。それらは、別に議論するべきです。結局は、ではどのように達成するのかとなったときに、今度はまた積み上げの議論に戻ってしまいます。もちろん本当の行動につながるのは積み上げなので、それはそれで結構なのですが、それらが混同してしまうと、せっかくの長期戦略案が生きてこないのではないかと思います。

 2点目としましては、グローバルバリューチェーンについてです。この考え方が最近ある程度浸透してきて、大変喜ばしいと思っています。グローバルに限らず、バリューチェーンです。実際、結局のところエンドユーザーに働きかけられる暮らしの部分ですとか、そういったところの削減を働きかけるのは、まずこのグローバルバリューチェーン、バリューチェーンの考え方をもってしてでしか、産業界はなかなかそこにタッチできないところであるからです。例えば省エネ性能がアップすることで市場の価値が上がって、そうすれば産業界は製造を増やすことができると思うのですが、一方で、そういった商品価値が上がること以外にも、もちろん制度と一体になって進めていくといったところで効果が上がることでもございます。つまり算定方法にどう入れていくのかとか、そういった地道な評価をどのようにやっていくかということが重要だと思います。

 もう1つ、次に、江守委員も意見を出されていらっしゃいますが、CCUについてです。エネルギーが非常に安定したCOというものを、不安定なほかの物質に引き上げるためにエネルギーが非常にかかるといったところを皆さん忘れていらっしゃったまま議論していることが多々あるのではないかと危惧しております。それは結局、多く使ってもとに戻してしまうときのエネルギーが炭素由来であれば全く意味がないといったことは、江守さんの話にも出ていたとおりです。増エネになってしまうといった逆効果をどのように考えていけばいいのかというところが非常に問題で、かといって、全く意味がないわけではなく、カーボンリサイクルというか、本当に将来、脱炭素型のエネルギー源に変わったときにはとても意味が出てくるわけです。つまりCCUを短期、中期的に進めていくには技術を詳細に評価して、そのタイミングと量をしっかりみて、プライオリティーの議論をしなければいけないと思っておりまして、そういう意味でいうと、今、例えば文章中にも2023年までにといった、私の中では非常に短期的な目標が随所にみられるというのは注意しなければいけないのではないかと思っています。

 それに関連して、ここでも結局は、算定方法が非常に問題になってくると思っています。というのは、ある製造業、ある業界のバウンダリーで評価してしまいますと、当然そこの中だけでどうやって削減できるか、となり、もう出したものを削減するしかないという話になります。全体のエネルギー収支や炭素の収支をしっかりみていくには、バウンダリーを取っ払って、つまり煙突主義、どこでCOが出たかといったところでの制度ではなくて、全体で本当に収支として削減につながっているのかといった議論はしていかなければいけないと思っています。

 最後にG20といった言葉で……

○内山委員長  まとめてください。

○田中(加)委員  最後に1つだけご紹介です。G20の下にエンゲージメント・グループ、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、いろいろなグループがございまして、そのうちのシンクタンク20で活動しておりますが、そこでも環境やエネルギーが非常に重視されて議論されており、去年、おととしのドイツやアルゼンチンが議長国のときは首相や大統領が出席し議論に参加しております。日本ではそのあたり、少し重要視されていないというのを感じております。せっかくの日本の議長国ですので、ぜひそういったところからの政策提言などもしっかり取り入れて活用していただきたいと思います。

 以上です。

○内山委員長  続きまして、南部委員、お願いいたします。

○南部委員  ありがとうございます。大きく2点ございます。

 資料4の4ページ、SDGsのくだりでございますが、長期戦略を達成するためには全ての人々がかかわるということが第一だと考えておりまして、まずSDGsの根底に流れているというか、考え方は、誰も取り残さないということだったと思っております。その点について記載がないというのがいかがなものかということで、できればSDGs全体の達成に向けての後に、誰も取り残さない考え方のもとというような文章を入れるべきだと思っております。

 次に、74ページの公正な移行でございます。記載していただきまして、本当にありがとうございます。ただ、ここで幾つか確認しておきたいと考えておりまして、1つは、24行目にございます労働生産性を向上させながら実現していくことが重要ということでございますが、労働生産性のことについては、人件費イコールコストではないということがまずあり、モチベーションの向上につながる雇用と処遇のシステムの構築が大切であると。そして、生産性というのは付加価値、労働生産性であるということの再認識をすることが必要であると思いまして、そのことを入れるためには、労働生産性とすべきという言葉の前に、グリーンでディーセントなという言葉をぜひつけ加えていただきたいと考えております。

 また、ILOが提唱します公正な移行につきまして書いていただいておりますが、これにつきましては、具体例はありますが、脱炭素社会への移行について、影響を受ける分野と想定されるリスクについての事前の分析と特定、そして必要な対策については、労働組合または労働者、そして地域の利害関係者も含めた社会対話をベースに生み出されるものと考えておりますので、ぜひその手段をしっかりと記載していただきたいと思っております。

 最後になりますが、この公正な移行を具体的に進めるためには、日本においても、各省庁別々ではなく、関係する省庁との連携をしっかりとしていただくということをご要望申し上げて、以上でございます。

○内山委員長  続きまして、廣江委員、お願いします。

○廣江委員  ありがとうございます。今回の長期戦略は環境と成長の好循環ということでありますが、私どもが携わっております電気事業で申せば、長期にわたってCOを削減しながら安価な電気を安定的に国民の皆さん方にお届けするということになります。これを実現するには、決して王道があるわけではなく、結局は過度に一部の電源に頼るのではなく、多様な電源のオプションをもって、それぞれの電源の特徴を生かし、可能性を生かしてバランスよく構成していくということに尽きると考えています。

 その点で申しますと、再生可能エネルギーが非常に重要な電源であるということは私どもも当然だと思っておりますが、一方では電力系統の安定化に果たしている火力発電の役割、あるいは福島でああいった事故を起こしてしまいましたが、その反省を踏まえて最大限の安全対策を施した原子力発電の実力も直視しなければならないと考えています。

 先日、電力中央研究所が2050年にCOを80%削減するための定量的な分析を発表いたしました。これは実は私からいわせれば、少しバランスという面からどうかなと思いますが、ある種の試行実験でございまして、例えば省エネルギーは現在の足元のペースの倍のペースで進んでいく。さらに、再生可能エネルギーについては、IEAや、さらに、それ以外の機関、業界団体等がおっしゃっておられる導入可能量、あるいは目標を全て実現するという前提を置いても、実は2050年に2,900万キロワットの原子力発電が必要だという結論になっています。実はこの分析といいますのは、系統安定上の問題が発生しても、再生可能エネルギーは一切出力抑制しないという前提です。すなわち、お金に糸目をつけずに徹底的に蓄電池も入れる、系統対策もする、系統の増強もするという前提でも、こういった結論になっているということでございます。

 今回の重要なテーマは非連続なイノベーションということであります。これは非常に重要だと思いますが、一方では原子力に代表されている現在私どもが手にしている脱炭素技術もやはりしっかり活用していくという視点はぜひ堅持していただきたいと考えております。

 以上です。

○内山委員長  続きまして、平岡委員、お願いいたします。

○平岡委員  ありがとうございます。日本化学工業協会でございます。

 政府の長期成長戦略案にございますように、化石資源の使用削減に向けた具体的な行動が強く求められております。私どもは2017年に化学の長期成長戦略となる地球温暖化問題への解決策を提供する化学産業としてのあるべき姿をまとめておりまして、低炭素社会実行計画の報告書でも公表させていただいております。今世紀中ごろに想定される社会の姿として、化学製品は依然として多くの産業や暮らしを支える重要なものとなっております。炭素源については、炭素循環社会に向けた取り組みが進展して、エネルギー源としての化石燃料使用も大幅に削減されているとしております。

 これを実現するための方針として3つございます。1つ目が炭素循環技術の確立、2つ目がプロセスエネルギー革新、3つ目が製品技術によるGVC、グローバルバリューチェーン貢献によってGHGの削減を図るとしております。それぞれさまざまな解決すべき技術、施策を上げておりますけれども、今回の成長戦略案にみられるイノベーション技術の項目と一致するところでございます。

 日本化学工業協会は低炭素社会実行計画の新しい目標として、BAU目標だけでなく、絶対値目標も加えて、この2つの同時達成を目指しております。これまでのBAU対比のみの使用と比べて次元の高い目標でございまして、化学産業の低炭素社会の実現に取り組む姿勢を強く示したものでございます。

 最後に、化学産業は低炭素社会実現に向けて、ソリューションプロバイダーとしての立場として、2050年の80%GHG削減の社会に向けて技術革新に努めてまいります。

 以上でございます。

○内山委員長  ありがとうございました。続きまして、野末委員、お願いいたします。

○野末委員  きょうから初めて参加させていただきます。東京商工会議所のエネルギー・環境委員会の共同委員長を務めております野末と申します。

 先ほど日本商工会議所の代表の中島様から中小企業について話がありましたが、まさしく東商は中小企業の集まりでございます。約8万社の会員を有し、その90%以上が中小企業ということで、この長期戦略に対する意見というよりは要望に近いものとなるかと思いますけれども、よろしくお願いしたいと思います。

 世界全体の温室効果ガス排出を大幅に削減するためには、日本が持続可能な低炭素化を図るための革新的なイノベーションを主導し牽引することが必要であり、そのためにはイノベーションを引き起こす基盤となる企業、すなわち、特に中小企業が元気であることが重要であると思います。特に気候変動や地球温暖化といった問題は、大企業のみならず中小企業においても、他社との差別化を図るビジネスチャンスになり得ることであり、省エネやエコにつながる高度な技術を要した商品を製造する中小企業は少なくありません。中小企業の有する製品製造方法、あるいはサービスの環境性能の見える化、または海外に向けた中小企業の技術供与が促進されるよう、特に東商では中小企業の海外進出も支援しており、その基盤となる国内経済を活性化させるとともに、そうした中小企業の取り組みに対する強力な支援を求めたいと思います。地域の中小企業の活力強化はイノベーションを創出する原資につながることから、イノベーションを引き起こす中小企業の実質的な取り組みに対する支援、また、そうした意欲ある企業への投資促進や販路拡大に資する後押しをぜひお願いします。

 カーボンプライシングについては、高水準なエネルギーコストに加えて、カーボンプライスと同様の税制が既に導入されております。そのような状況下で、中小企業あるいは小規模事業者にさらに負担を強いることは、まさに経営を圧迫し、イノベーション創出につながる投資を抑制することにつながると考えております。カーボンプライシングについては極めて慎重な議論をお願いします。

 以上の2点でございます。ありがとうございました。

○内山委員長  続きまして、豊田委員の代理で黒木様、お願いいたします。

○豊田委員(黒木代理)  日本エネルギー経済研究所の黒木です。豊田の代理でまいりました。私からは4点、手短にご指摘させていただきたいと思います。

 既に河上委員、中島委員が触れられたようなS+3Eの重要性の観点を忘れることは我々としてはできないと思っております。この観点は常に頭の中に置いて、この議論を進めていただきたいと思います。

 2点目は、省エネ、再エネ、蓄電池、水素、原子力、CCUS、これは全部必要だと書いていただいております。我々としてもそのように思っています。これは全て実現しなければいけないと思っております。どれ1つ除いても、なかなか難しい点がありますので、この点は再度強調したいと思います。

 3点目、非連続なイノベーションですが、2度とか1.5度という目標を達成するには、IPCCのレポート、分析でエミッショントレンドが出ていますけれども、これは完全にネガティブ・エミッションにならないとできないということを考えると、非連続なイノベーションを否定したのではパリ協定の実施は絶対難しいということで、これも強調させていただきたいと思います。

 最後、4点目、再生可能エネルギーの事実化です。既に中国は再生可能エネルギーは補助金をやめるということを明確に政策として打ち出しておりますし、ヨーロッパでは日照条件のいい南欧だけではなく、イギリスやドイツも既に補助金なしの再生可能エネルギーのプロジェクトがどんどん立ち上がっております。我が国でも系統安定化も含め、再生可能エネルギーを事実化することが重要だと思いますので、この辺については加速していただきたいと思います。

 以上です。

○内山委員長  続きまして、寺師委員の代理で饗場様、お願いいたします。

○寺師委員(饗場代理)  自動車工業会でございます。ありがとうございます。

 今回の長期戦略懇談会にはトヨタの内山田会長が参加しておりまして、内山田会長は、積み上げのロードマップと切り離して、あるべき姿として脱炭素社会を目指すべきという主張をしておりました。今回そういった形でロードマップと切り離して、そういう高いビジョンを掲げていただいたというのは非常に画期的だと思っております。こういう高いビジョンを掲げる意味というのは、産業界のためだけではなくて、日本国民全員がそこを目指して、ベクトルを合わせて頑張っていくためということで、委員全員で一致して記載されたと理解しておりますので、産業界だけではなくて皆さんで頑張るビジョンということだと思っております。

 また、内山田会長からは、イノベーションの重要性を主張していただいていまして、特に普及させるためのイノベーション、コスト削減ですとかスピードの重要性を強調しておられました。今回それも提言に盛り込んでいただいていまして、ほかの国の長期ビジョンにない、非常に充実したイノベーションについての記載がされました。特に普及に重点を置いたイノベーションの記述がある今回の長期戦略は、非常に日本らしい特色のあるすばらしいものだと思っております。また、懇談会の提言の中にはもう少しあったのですけれども、サプライチェーンですとか、日本のものづくり、中小企業の方の脱炭素化への支援をしっかりやるべきという主張もしておりまして、そういったことも含めて取り組んでいけたらいいのかなと思っております。

 今回の長期戦略の運輸部門のところなのですけれども、こちらは自動車新時代戦略会議のラインにのっとった形で、非常に高いゴールを掲げていただいておりまして、日本車について世界最高水準の環境性能を目指すという目標をいただいていますが、そのあたりにつきましては自工会全体で頑張っていきたいと思っております。

 ただ、さらにそれだけではなくて、“Well-to-Wheel”Zero Emission チャレンジに貢献とあります。これ、聞くと、一般の方には大して大胆に聞こえないかもしれませんけれども、”Well-to-Tank”と”Tank-to-Wheel”と分かれまして、”Tank-to-Wheel”のところは車の燃費とか自動車のところでございまして、そこは我々は頑張りたいと思います。ただ、”Well-to-Tank”のところは我々の手が届かないところ、その上流のところです。電力ですとか水素ですとか、液体燃料のところの脱炭素化も目指すという非常に高い目標でございまして、これも上流の方と一緒に取り組ませていただきたいと思います。また、車両の電動化ですとか、車の部分についても、消費者の皆さんに選んでいただいて使っていただかないと実現しないものですので、政府の支援策等も考えていただけないかと思います。とにかく自動車業界も頑張りますので、皆様と一緒にこの目標に向けて頑張れたらいいなと思っております。ありがとうございます。

○内山委員長  続きまして、鶴崎委員、お願いいたします。

○鶴崎委員  ありがとうございます。需要側のほうを長くみておりますので、需要側の側面からこの文章全体を拝見させていただいて、感じたことをお話ししたいと思います。

 やはりエネルギーのほうから入っていく、つまり供給のほうから入っていくというのはやむを得ないかもしれないのですけれども、エネルギーの供給は需要があって成り立つというものですので、需要に対する考察がまずあるべきなのかなと個人的には感じます。2章のところからみていくと、エネルギー、産業、運輸、地域・暮らしと並んでいますけれども、これからどのような暮らし、なりわい、あるいはそれに伴う物流や移動が起こっていくのかといったところの考察をきちっとしないと、それに伴うエネルギー供給がどうあるべきかという議論にならないのではないかと感じています。

 また、需要側に関しては、長年、この20年ぐらい、エネルギーマネジメントシステムがどうなるのかということを考えているのですけれども、なかなかビジネスとして離陸しないという話がずっとあります。その理由の1つとして、恐らく需要側の対策が供給側の対策に比べて位置づけが低いといいますか、例えば電源でいえば、発電所をつくるのか、デマンドレスポンスをやるのか、どちらがいいのかということになったときに、まずは発電所をつくることを考えて、それで足りなければデマンドレスポンスを考えるという発想がこれまで長く日本ではあったと思うのですけれども、そういう形になると、デマンドレスポンスをやるほうに関しては、なかなかそこに投資をしっかりやっていこうというビジネスの流れになっていかないのではないか。そのあたり、これから震災以降、議論が深まって変わってくるところだと思うのですが、こういった文章をみていても、まだ、ともすれば供給側の目線で書かれているかなというところを感じるところがありますので、そういった観点で、また少し見直していただければと思っております。

 以上です。

○内山委員長  ありがとうございました。続きまして、竹内委員、お願いします。

○竹内委員  ありがとうございます。この長期戦略を他国の戦略と比較いたしまして、日本として3つの特徴があり得ると思っております。高い目標や、いい戦略を掲げれば世界のリーダーになれるというわけではなくて、大切なのは実行です。その実行の中で、ぜひこの3つの特徴を意識していただければということで申し上げます。

 1点目、イノベーションの必要性を強調しているのは他国も同様でございますけれども、コスト目標を含めて書ける限り具体的に書かれていると感じております。なお、石炭あるいは原子力という技術に対して批判的なご意見があるということも承知はしておりますけれども、今後のエネルギー需要動向や社会の変化も含めて考えれば、あらゆる技術の高効率化、あるいは低炭素化、このイノベーションを模索する必要がある、技術に対してニュートラルであるべきではないかと考えております。ここでさらに申し上げたいのは、ファイナンスのスキームの中にもぜひイノベーションを引き出すという観点を強く含めていただいて、具体化に向けた違いを出していただきたいということでございます。

 2点目は、本当にCO削減につながる評価方法を確立しようという議論に踏み込んでいる点でございます。この長期戦略の1つの要素でもあります自動車新時代戦略でも、EUのようにEVは排出ゼロという、ある意味いいかげんな考え方ではなくて、ウェルトゥーウィールという形で確実にCOに資する評価軸をつくるとしています。何がグリーンかという議論はまだ未成熟なところがございますので、本質的な削減につながる考え方をしっかり議論していく必要があるかと思っております。こうしたルールづくりは産業や経済活動の実態がわかっていなければいけないというのは当然ですが、ファイナンスの関係は特にホームや会計基準といったところとの関係が重要でございますので、多様な関係者の参画を得ながら議論していただきたいと思います。

 なお、新しくルールをつくっていくという点で申し上げたのですけれども、温暖化対策の大きなセオリーとして、電源の低炭素化を進めるというのであれば、その低炭素電気を活用する電化というところも非常に重要になる。今、鶴崎委員おっしゃったように、供給側だけ力を入れても意味はなく、例えばFITという電気にだけかかる炭素税のような仕組み、省エネ法や供給構造高度化法など、電化促進の阻害要因になっている可能性があるものについてあわせて改善していく、足元を細かくみていく必要があるということも申し上げたいと思います。

 最後、3点目、我が国はソサエティー5.0という大きなコンセプトを打ち出しております。8ページ目にソサエティー5.0との連携とございますけれども、本来は我が国の抱える地域課題、社会課題を解決しながら幸福な未来をつくり出す、その社会がソサエティー5.0であって、これが我が国なりのSDGsだと私は理解しております。ソサエティー5.0という社会像を具体化するという意識を国民とも共有して、諸外国に対しても訴求していくということが必要ではないかということを申し上げたいと思います。

 以上です。

○内山委員長  ありがとうございました。続きまして、曽谷委員、お願いいたします。

○曽谷委員  日本鉄鋼連盟です。3点コメントさせていただきます。

 1つ目は、イノベーションでございます。昨年11月、鉄連は「ゼロカーボン・スチールへの挑戦」を公表いたしました。これはパリ協定のゴールであります2℃目標に沿った長期的なビジョンを示したものでございます。この中でイノベーションが最大の柱となっており、足元ではCOURSE50やフェロコークスといった革新技術を政府の支援を受けながら開発中で、既に実証段階に入っております。ゼロエミッションに向けては、さらに挑戦的な超革新技術が必要となります。今後いろいろな技術の可能性を探索していきたいと思っております。こうしたリスクの高い研究開発には、個々の民間企業の努力は当然のことですけれども、政府の役割も非常に重要でございまして、引き続き官民でスクラムを組んで取り組んでいきたいと思っております。

 なお、超革新技術の1つに水素還元製鉄があります。これは炭素にかわりまして水素で鉄鉱石を還元して鉄をつくるという技術でございます。長期戦略懇談会における安倍総理のご発言のように、水素が現状の天然ガスよりも割安になれば、利用に大きなはずみがつくと思います。安定供給、数量確保とともに実質的なコスト低減をぜひ実現いただきたいと思います。

 2つ目が、目標の引き上げ議論についてでございます。脱炭素化の必要性、あるいは方向性は既に各界で共有しております。同時に現状の目標も極めて困難なゴールであるということも認識されていることでありますから、目標の数値論、あるいはスケジュールの議論というよりも、中身を詰める、あるいは具体的な内容の議論、実行の重要性に重きを置きたいと思います。

 3つ目が、カーボンプライシングについてでございます。3年前の地球温暖化対策計画は、排出量取引制度について経済への影響や効果をみきわめるとしております。カーボンプライシング全般についても考え方は同じはずです。現状そうした経済への影響や効果のみきわめが十分と思えません。本文にありますように、今後慎重な議論が必要だと思います。

 以上です。

○内山委員長  続きまして、杉山委員、お願いいたします。

○杉山委員  イノベーションということを大事にするというのは大賛成です。その上で、温暖化対策のCO削減のイノベーションを実現するための前提条件に関する議論が少し足りないと思いますので、以下を具体的に提案します。

 資料4、ページ6の30行目からですけれども、ビジネス主導による非連続なイノベーションを実現するにはあらゆる選択肢を追求云々とあるのですが、ここを「ビジネス主導による非連続なイノベーションを実現するには、まず第一に良好なマクロ経済状態を維持し、ビジネスが活発に活動できることが前提となる。このためには安定、安価なエネルギー供給が必須である。温暖化対策のためにこのエネルギーの安定、安価な供給が阻害されることがあれば、それはあらゆるイノベーションを阻害するものであり、気候変動対策イノベーションも結果として阻害される。というのは、イノベーションは分野横断的に起きるものであり、気候変動対策のイノベーションだけが進むことはあり得ないからである。例えば現在、省エネ対策にAI、IoTが大いに用いられているが、AI、IoTは経済全体で活用されることでイノベーションが進んでいるものであり、活発な経済活動があってこそ、AI、IoTが進歩して、その果実がCO削減にも活用されるのである」と、このように書いていただきたいと思います。

 それから、これを反映して、要約のほうの資料3―1の第2章、第1節、1、エネルギーで、冒頭に「安定、安価なエネルギー供給を前提としてエネルギー転換、脱炭素化を進める」と、「安定、安価なエネルギー供給を前提として」というのを挿入すべきと思います。

 それから、同じですけれども、資料3―2の要約ですが、こちらも第2章、第1節、1のエネルギーのところで、冒頭にエネルギー転換、脱炭素化と書いてありますが、ここも「経済と環境の好循環の前提となる安定、安価なエネルギー供給を確保した上でエネルギー転換、脱炭素化を進める」としていただきたいと思います。

 それから、別の話ですけれども、本文の資料4のページ3でIRENAという国際機関の試算を引用して、環境対策投資をすれば経済成長するということが書いてありますが、この試算は欠陥がありまして、環境対策を行うためのコストについて適切に勘定していません。この旨を追記するか、あるいはこのパラグラフを削除したほうがいいと思います。

 最後ですけれども、資料4の2ページ冒頭のところ、(1)気候変動をめぐる状況というところで、最近日本で起きた自然災害を出して、これが地球温暖化関係と結びつけて書いてありますが、ここは科学的知見の要約として不適切であります。この自然災害の主な要因は地球温暖化ではありません。そこにこの金額や人数を書くということは余り適切ではない。地球温暖化に関する寄与は全くないというわけではないですが、そこはかなり控え目な表現になっているのは、ここで引用している気象庁の文献などをみれば、はっきりしていることです。ここで科学的知見の要約が不適切だと後の信憑性も失われますので、ここは慎重に見直すか、あるいは削除したほうがいいと思います。

 以上です。

○内山委員長  ありがとうございました。続きまして、杉森委員の代理で池田様、お願いいたします。

○杉森委員(池田代理)  今回の長期戦略案はイノベーションを軸とした温暖化対策を経済成長につなげるという非常に野心的な内容となっていると考えます。その実現には、先ほど饗場代理からもお話がありましたように、企業のみならず、一人一人の消費者、国民の意識・行動の変革を含め、国を挙げたさまざまなチャレンジに取り組んでいく必要があると考えます。その上で2点申し上げます。

 第1に、長期戦略案に掲げられた脱炭素社会という野心的ビジョンの実現には、S+3Eを高い次元で確保したエネルギー転換が不可欠となります。そのためには、再生可能エネルギーの「低コスト化」、「安定供給」、「持続的事業」の実現を通じた「主力電源化」や、送配電網の次世代化などが求められます。また、日本国全体の電力を再エネ100%で賄うのは現実的ではないことから、原子力についても、安全性の確保を大前提に継続的に活用していかなければならないと考えます。

 一方、我が国では、こうしたエネルギー転換に必要な電力分野への投資が停滞しており、現状を放置すれば、S+3Eを毀損し、地球温暖化対策や産業競争力強化に逆行することになりかねないと考えます。政府におかれましては、非化石電源である再エネの主力電源化と原子力の継続的な利用に加えて、電力分野への投資を活性化させ、電力システムを再構築すべく取り組みを強化していただきたいと考えます。

 第2に、温暖化対策は地球規模の課題であり、パリ協定の長期目標は、国内に閉じた取り組みでは実現は不可能です。経済界といたしましては、グローバルバリューチェーン、すなわちGVCを通じて地球規模での排出削減に取り組み、新興国等の成長を取り込むなど、「環境と成長の好循環」を実現してまいります。政府におかれましては、GVCの概念についての国内外への普及啓発やビジネス環境整備に努めるなど、地球規模の削減に資する民主導の挑戦を後押ししていただきたいと考えます。

 以上でございます。

○内山委員長  続いて、佐藤委員、お願いいたします。

○佐藤(泉)委員  まず、この題名がパリ協定長期成長戦略なのですけれども、これは英語で何というのか教えていただきたいのです。というのは、実現に向けた戦略ではなくて、長期の成長戦略になっていますので、日本は儲かることしかやらないのではないかという誤解を受けるのではないかと懸念します。。ほかの国の戦略案がこういう名前ならいいのですけれども、気になりました。

 それから、第1章の政策の基本的考え方なのですが、通常、政策というのは規制と自主的取り組みのベストミックスです。また、規制の中には規制緩和と規制強化と両方あります。これを各省庁が検討し、国会を通過して国民の承認を得ていくというのが日本の民主主義だと思います。規制強化・規制緩和など規制のあり方が全く入っていないというのは政策として違和感がございます。

 その次の将来に希望のもてる明るい社会を描き行動するというのは、今希望がもてないイメージがあります。目的とするところは幸せな世界、幸せな日本だと思うのです。幸福度を考えないといけない。全体的に何か経済的なカンフル剤に感じられる内容ですけれども、本当は生活を楽しみ、人生を大事にするという要素が重要であり、幸せな社会において低炭素を実現するということだと思います。その意味でもSDGsの誰ひとり取り残さないというコンセプトが必要だと思います。

 最後に、全体の細かいところはともかくとして、CCUS、CCSと原子力のところは、これを読んで国民の方々がそのとおりだと思うか、私としては疑問を感じます。

 以上です。

○内山委員長  続きまして、崎田委員、お願いいたします。

○崎田委員  ありがとうございます。今回の内容の中に、今世紀末に脱炭素を目指すと明確に書いていただいているのはまず評価したいと思っています。それを成長戦略として位置づけるということで、今回イノベーション、特に技術とかエネルギー戦略を重視して描くというのは当然だと思っておりますが、このような中で実際にどう実現するかという段階では、私たち社会をどう巻き込むかというのが大変重要になってくると思いますので、そういう意味では、やはりこの戦略の中に社会を巻き込むという視点を強調していただくのがいいのかなと思っています。

 そういう意味で1つ提案は、資料にも書いていますが、共創、ともにつくるという視点を少し強調していただいたらどうかと思っています。例えば技術の発展とともに私たちが暮らしとか地域を変えていくという、ともにつくっていくというところが大変重要なわけですので、こういう視点を明確にしていくというのが1つ将来の方向性としていいのではないかと思っています。

 そういう場合、基本で教育のところが実はすごく大事なのですが、ここを拝見すると、人材育成の中の特に教育のところは、大変申しわけありませんが、ほとんど10年前ぐらいと変わらない様な文言が出ているのです。ですから、この辺をもう少し意欲的に書いていただきたい 。特に環境とかエネルギー教育に関して戦略的に取り組んでいくというのが大事だと思っています。実はJSTが2015年に公表した世界96ヵ国のアンケートで私はびっくりしました。世界96ヵ国の平均は、気候変動は大変な課題だと思うという方は79%なのですが、日本だけは44%という大きな違いがある。やはりこの辺をもう一回考え治す必要があると思います。

 最後に1点なのですけれども、こういうことを踏まえると、今後この長期戦略ができたときに、これをもとにして私たちがどういう地域社会をつくりたいのか、それを具体的に描くのはやはり次世代のユースの方の力が重要だと思っていますので、高校生とか大学生の方たちを対象に、全国でこれをもとにワークショップをして、自分たちがどういう社会をつくりたいのか描いてゆくという大きなムーブメントを起こしていくというきっかけに、今回の戦略を使っていただくのもいいのではないかと感じます。よろしくお願いします。

○内山委員長  続きまして、亀山委員、お願いいたします。

○亀山委員  私は経済産業省や環境省が行っている、まさにここに書かれている技術開発を評価する立場からコメントを2つ。1つは研究のアウトカム評価と、若手人材の育成について述べさせていただきます。

 今回の第1章に書かれている長期ビジョン、2050年にCO2の80%削減を、世界を視野にして書かれているというのが、やはり私どもの積み上げの技術をやっているところからすると、かなり野心的なレベルであると思います。2030年の26%の比ではないということを意識しますと、これを実現するためには、やはりきちっとエビデンスを評価しないといけないでしょう。ご承知のように、証拠に基づく政策立案ということでのEBPMということがいわれていますので、長期ビジョンに書かれているような研究開発プログラムをただやるのではなくて、その技術が世界に使われたときに、それでどれだけのアウトカムでCO削減が生み出されるかというのをきちっと評価する予算措置を行って、もし効果があれば、さらに政策の加速をするということをぜひやっていただきたい。

 それから、2050年を支えるのは若手ですから、若手人材の育成、1行、44ページに書かれているのですが、これについては野心的な予算をつけて、特に文部科学省を巻き込んだ形での政策立案をしないと、やはりなかなか実現しないので、その2点を申し上げたいと思います。

○内山委員長  続きまして、遠藤委員、お願いいたします。

○遠藤委員  気候変動問題に取り組むことは先進国、そして高いエネルギー効率を獲得した技術保有国である日本の義務であると思います。そういう意味では、こうした長期ビジョンを共有するということは重要な意義があろうと思います。

 皆様、専門家が多くいらっしゃるので、私の研究領域について申し上げますと、電力はAIやIoTが提供する非連続なイノベーションを下支えする、ますます重要なインフラになっていくと思います。地政学上の不安定さは増していて、エネルギーセキュリティーの確保についても重要性が増しています。一定の排出量がある電力セクターが気候変動問題に取り組むということは大変重要なのですが、気候変動問題だけで電源構成を決めるということはやはり余りにナイーブです。例えば日本の国土事情を考えれば、大規模災害に備えるためには長距離運搬が可能な石炭はゼロにするわけにはいきません。日本は全ての電源について否定できる余裕はありませんので、全ての電源において次世代の技術開発を怠るわけにはいかないと考えます。

 例えば原子力についても、原子力の能力は、従来いわれてきたベースロード電源のみとしてではなくて、再生可能エネルギーの負荷調整に小型炉が有効であるということはグローバルの政策議論の場ではホットなイシューです。そういうこともいろいろありますので、今回の長期ビジョンについて、エネルギーの分量も大変多く割かれているわけですけれども、エネルギーミックスを重視したエネルギー基本計画を踏襲していることについては非常に賛同したいと思っております。

 以上でございます。

○内山委員長  最後になりますが、秋元委員、お願いいたします。

○秋元委員  どうもありがとうございます。今回の戦略ですけれども、全体としては非常によくできた戦略だと思っています。長期的な野心的なビジョンを掲げ、そして環境と経済の好循環を生み出すということで、あと長期の話としてはSDGsをちゃんと書いていたり、ソサエティー5.0を書いていたり、それを支える部分で非連続的なイノベーションの重要性を書いているということで、非常に評価していいのではないかと思います。また、いっぱい細かく記述して、まじめ過ぎるところの記述があるような気はしますけれども、日本らしくていいかなという気はしました。

 ただ、少し委員からも話がありましたように、技術のピッキングを行い過ぎると、これはちょっと問題があり得ますので、もう少し全般的な非連続的なイノベーションを生み出すような政策、例えば投資減税とか、むしろ基礎研究の強化とか、規制緩和もそうかもしれませんけれども、そういったことについてももう少し触れていただければいいかなと思います。これは田中加奈子委員がおっしゃったと思いますけれども、一部のところで目指すべきビジョンというところがあって、長期ビジョンはいいのですが、それぞれのところがそう書かれると、余計にピッキングしそうになってしまうので、そこを少し言葉を検討いただきたいと思いました。

 ITとかAIとか、そういう進展によって幅広くイノベーションを生み出していくというところも非常に重要ですので、これも誰か委員がおっしゃいましたけれども、重要かと思います。

 最後、1点ですけれども、これは杉山委員がおっしゃいましたけれども、私も3ページ目のIRENAのここの引用はちょっと懸念があって、普通のIPCCのいろいろな経済分析は、ほとんどはマクロ経済としてはマイナスの影響が出るという部分を、IRENAは都合がいい分析をしていると思いますので、そこは信頼性の問題があるので、削除したほうがいいのではないかと思います。

 以上です。

○内山委員長  以上で皆様方からご意見をいただきました。まことにありがとうございました。もう1つ、欠席の方から書面で意見を賜っていますので、簡単に説明をお願いします。

○亀井環境経済室長  大石委員から、きょうご欠席ということで、ご意見を代読するようにといただいています。

 1つは、金融ビジネスの情勢の変化ということで、温暖化防止に向けて投資の引き上げ、ダイベストメントの動きが世界で活発になっているということを真摯に受けとめる必要があるという旨をどこかに記載すべきではないかということ。

 もう1つは、エネルギー効率の向上ということで、きょうもご議論がございましたけれども、住宅については新築のみならず、現存する住宅での省エネ性能の向上を進めることが重要であると考えると。新築はもちろんストックの住宅の省エネ、断熱化も急務であるということをご意見としていただいています。

 もう1つは、電力の原子力の課題として、安全確保だけではなくて、廃棄物問題もあるのではないかということ。

 あと、フロンの問題についても取り上げるべきではないかというご意見をいただいております。

 以上です。

○内山委員長  司会の不手際で時間が大分押してきてしまいまして、大変恐れ入りますが、10~15分ほど終了時間を延長させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 それでは、ただいま皆様方からご質問があった点につきまして事務局から回答をお願いいたします。

○木野低炭素社会推進室長  まず、環境省から。

 まず最初に、藤井委員からご指摘がありました、このような人数で時間が非常に限られているというところで、委員の方々には非常に短い時間で本当に申しわけありませんでした。今後改善について、委員長を初め、ご相談したいと思います。ただ、その中で本当に貴重なご意見、ご指摘をいただいたことにまず感謝申し上げます。

 時間の関係でご指摘について全てにお答えできないのですけれども、この場では複数の委員からご指摘があった点と、ご質問いただいた点を中心に5点ほど、まず私からお答えできればと思います。

 まず1点目、非連続なイノベーション、このイノベーションにこだわり過ぎるのではないか、ここに頼ってはよくないというご指摘がありました。

 このイノベーションの捉え方なのですけれども、3点あるかなと私は思っておりまして、1つは、今回の脱炭素社会の実現により排出を実質ゼロにするという高いビジョンをいただきましたので、今みえていない水素、CCS含め、ゼロともっていくためには、やはり技術の革新が要るということで、丁寧にその要素を盛り込んでいるのが1点目。

 2つは、ほかの委員からもご指摘がありましたけれども、イノベーションということは、今ある技術の普及をしっかり社会に実装するということを含めてイノベーションだと思いますので、現在ある技術のコスト低減を含めてしっかりやっていくということ。

 3つは、江守委員からも、CCUが例えば実用化すれば、化石燃料を幾ら使ってもいいみたいな誤解があるのではないかと各論でも指摘がありましたけれども、これについては本体のドラフトの15ページ、16ページでも、省エネルギーをまずしっかりやっていくことが大事だということ、化石燃料、石炭についても、パリ協定に整合的に減らすだけではなくて、依存度も低減していくということもありますので、そういう誤解がないように、しっかり最後書き込んでいきたいと思います。

 2つ目、石炭火力について、全廃と書かないといけないのではないかというご指摘がございました。懇談会の提言を受けまして、戦略案の中では火力発電についてはパリ協定の長期目標と整合的にCOの排出削減をやっていくということで書かせていただいています。これは懇談会のご議論を私なりに解釈すると、石炭もそうですけれども、ほかのガス火力含めて、パリ協定の下で脱炭素社会に移行していくには、最終的にCO自体を減らさなければいけない、そこを強調いただいたということで理解しております。

 関連のご質問として、パリ協定の長期目標と整合的にはどういうことですかということで小西委員からあったと思いますけれども、これは日本だけでなく、各国、これから2度目標、あるいは1.5度の努力目標に整合的な削減目標が出てくると思います。日本だと50年までに80%の削減、さらに今世紀後半のできるだけ早期に実質ゼロと、そういった中でエネルギー部門がそれに沿う形で貢献する、それに十分な削減が火力発電でも図られているという理解をしてございます。

 3点目、今回の戦略案の中で、住先生を初め、藤村先生などから、地域という観点で記述量が少ないのではないかというご指摘をいただいております。これに関しましては、この戦略の中で地域循環共生圏を初めとする、地域発でしっかりカーボンニュートラルの実現に取り組んでいきたいという方向性は書けているのかなと思ってございます。これをスタートとして、まさにこれから各地域で需要側の視点、あるいはニーズ、どういうありたい姿を目指すのかといったところを、各地域、自治体、市民、その地域の企業、社会を巻き込んでしっかり議論していって、対話、あるいは連携して、その社会像を実際にこれからつくっていくことで具体化していく、というスタート地点として捉えているということでございます。

 4点目ですけれども、質問として藤村委員から、若い人、次世代に対して我々が責任を果たせる戦略となっているかというご質問がございました。これにつきましては、提言を含めまして、今後、将来日本が実質ゼロの脱炭素社会をできるだけ早期に目指すという明確なビジョンをいただいています。これを全てのステークホルダー、全ての分野の主体が受けとめて、提言でも指摘があったように、「今」から迅速にやっていく、しかも、世界のCOゼロに向けて、日本がしっかりと世界にソリューションを与えられる、実践をしっかりやって、世界にも貢献していくということで、十分責任を果たせるという戦略案になっているのではないかと感じてございます。

 あと、1つ質問で、戦略のレビューの期間がどうして6年なのかというご指摘がございました。これにつきましては、この長期戦略と特に関係が深い政府の法定計画で、地球温暖化対策計画、エネルギー基本計画というのがございますけれども、それぞれ3年ごとに見直すということになっておりますので、そのスパンを考えると6年程度ということかなと思っておりますが、6年ということに縛られず、ご指摘があったように、大きな情勢変化があったら、しっかり対応していくということかと思います。

 最後ですけれども、井田委員から、前回から含めてプラスチックをどうするのかというご指摘、ご質問がございました。これについては39ページでプラスチックの資源循環という観点を今回盛り込ませていただいているので、後ほどご参照いただければと思います。

 あと、経産省さんからよろしくお願いします。

○亀井環境経済室長  ありがとうございます。幾つか補足させていただきます。まず、脱炭素社会というのはカーボンニュートラルという定義であります。これは長期戦略でもご参照いただけたらと思います。

 あと、幾つか金融ファイナンスと情報の信頼性に関するご意見をいただきました。これについてもTCFDコンソーシアムの設立し、金融界と産業界でこのあり方について議論してまいりたいと考えております。また、金融庁ともしっかり連携を図ることが大事ではないかというご提言もいただきましたが、このコンソーシアムの設立にあたり、金融庁、環境省、経産省でしっかり連携してまいりたいと考えております。

 あと、グローバルバリューチェーンを通じたCOの排出削減貢献について、どういう算定方法や評価方法に関するご意見もございました。これについては我々、温室効果ガス削減貢献量定量化ガイドラインを2018年3月に策定したことも書かせていただいておりますし、まさに算定方法が業界を越えて、または国を越えて、頭をそろえるという取り組みが大事であるということでガイダンスをつくって、それを海外に普及していく取り組みをしております。こういったことも今後の方針に記載しておりますので、取り組んでまいりたいと思います。

 若者との対話が大事であるというご意見もございました。これも今回の長期戦略の1つの重要な施策として書かせていただいております。あとビジョンの記載内容や、用語等、幾つか長期戦略をアピールしていくに当たって、もうちょっとビジョンを明確に書いたらどうかといったご意見もいただきました。こういうものも表現上の工夫としてさせていただけたらと思います。

 私からは以上です。

○内山委員長  どうもありがとうございました。

 それでは、閉会に当たりまして、中央環境審議会の三村部会長より一言ご挨拶をお願いいたします。

○三村部会長  本日はたくさんのご意見をどうもありがとうございました。もう時間もありませんので、ごく簡単に2点だけ、きょう非常に印象深かった点についてお話を申し上げたいと思います。

 この長期戦略を実現する方策の柱は非連続なイノベーションということですけれども、エネルギーや産業分野だけではなくて、社会、あるいは経済、ファイナンス、そういう分野においてもイノベーションが必要だというご意見はたくさんありました。特に国民的に脱炭素社会を目指すという担い手である自治体や市民の方、多くの多様な方々に理解していただくという点では、まさにその意見はそのとおりだと思いました。

 先ほど経産省からも触れられましたけれども、2点目は人材育成ということであります。私、現在、国立大学の学長をやっておりまして、そういう若い世代に国が目指す方向、社会が目指す方向を理解して、その担い手になってもらうというのは今後にとって非常に重要だと思っておりますので、その点もまた重要なご指摘ではなかったかと思います。どうもありがとうございました。

○内山委員長  ありがとうございました。今回、今世紀末を目標に長期戦略を他国に先駆けて日本が全体でとりまとめたということは大変意義があることではないかと思います。今後は国民各層にこれを周知するとともに、世界で評価される長期戦略にしていくことが重要と考えられますので、引き続き皆様方のご指導をどうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、最後に、環境省地球環境局の森下局長より一言ご挨拶をお願いいたします。

○森下地球環境局長  環境省地球環境局長・森下でございます。本日は本当に精力的なご議論、大変ありがとうございました。御礼を申し上げたいと思います。本日いただきましたご意見を踏まえまして、6月にG20が開かれるということを念頭に、この長期戦略をしっかりと充実したものにすべく、さらに検討を深めてまいりたいと考えてございます。

 この長期戦略、パリ協定に基づくものでございまして、2020年までに国連に出してねということになっていますが、伊勢志摩サミットでG7はそれに十分先立って、well ahead of 2020ということで長期戦略をつくろうということになっています。今まだつくっていないのがイタリアと日本ということでありますけれども、早くつくらなければいけないということよりも、むしろ中身をしっかりと充実させるということが非常に大事だと思っております。その意味でも日本らしいもの、そして世界にソリューションを提供できるもの、1.5度といった新しい動きも踏まえて、世界に対して日本が貢献していく姿をしっかりとこの長期戦略で世界に示してまいりたいと考えております。今後広く国民の皆様の意見をちょうだいするということでパブリックコメントも実施してまいりますし、説明会などについても開催していきたいと考えております。

 これまで中環審の皆様におかれましては、長期低炭素ビジョン等をおまとめいただくなど、長い期間、長期戦略の策定に向けて積極的にご議論をいただいてまいりました。この場をおかりしまして、心から御礼を申し上げたいと思います。本日は皆様、ありがとうございました。

○内山委員長  これで本日の議事は全て終了いたしました。事務局から何かあれば連絡等、よろしくお願いいたします。

○亀井環境経済室長  皆様、活発なご議論、ありがとうございました。本日の議事録につきましては、事務局でとりまとめを行いまして、本日ご発言いただいた皆様にご確認いただきました後にホームページに掲載させていただきたいと思います。

○内山委員長  司会の不手際で終了時刻が延期したことを重ねておわび申し上げます。どうも失礼しました。

 以上で本日の議事を終了したいと思います。皆様、本当にありがとうございました。

18時12分 閉会