カーボンプライシングの活用に関する小委員会(第12回) 議事録

日  時

 令和3年2月1日(月) 15:301830

議  題

(1)「中間的な整理」以降の国内外の動き

(2)当面の議論の進め方

(3)その他

配布資料

資料1 「中間的な整理」以降の国内外の動き

資料2 当面の議論の進め方

(別紙1)カーボンプライシングの全体像

(別紙2)日本経済とカーボンプライシングの関係について(イメージ)(第9回小委資料2-3)

参考資料1  カーボンプライシングの活用に関する小委員会委員名簿

参考資料2  カーボンプライシングの活用の可能性に関する議論の中間的な整理(2019年8月)

議事録

午後15時00分 開会

井上市場メカニズム室長

時間になりましたので、ただいまから第12回中央環境審議会地球環境部会カーボンプライシングの活用に関する小委員会を開催いたします。

初めに、私、事務局を務めます地球環境局市場メカニズム室長の井上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

本日の小委員会は、Webでの開催とし、YouTubeの環境省動画チャンネルで同時配信しております。

まず、会議の開催に当たりまして、小泉環境大臣よりご挨拶をさせていただきます。

よろしくお願いいたします。

小泉環境大臣

皆さん、こんにちは。環境大臣の小泉進次郎です。

今、緊急事態宣言が出ている間にもかかわらず、それぞれの場所から、今日はカーボンプライシング小委員会に久しぶりにご参加いただきまして、ありがとうございます。

このカーボンプライシング小委が、皆さんのお陰で11回、今まで議論を積み重ねていただいて、その蓄積がなければ、総理が昨年10月にカーボンニュートラルを宣言した後に、昨年12月に、私と梶山大臣に対して総理の指示の下でカーボンプライシングの検討を、成長につながる形で議論を進めるようにという指示が出たのも、皆さんの議論の蓄積のお陰だと思います。改めて心から感謝から申し上げたいと思います。

国際社会のほうも、動きが急速に出てきました。バイデン政権がアメリカで誕生しましたが、早速、大統領令を出して、大統領令の中には化石燃料に対する補助金をやめることなど、次々に気候変動政策が展開を見せています。そして、中国についても、まさに今日から全国レベルでの排出量取引が試行的に行われるというのが中国の動きです。

こういったことも含めて、改めて、カーボンプライシングの小委員会の皆さんにおかれましては、環境省としても、カーボンプライシングの議論を前進させるためにも、カーボンプライシング、今年の最重要の課題として位置づけたいと思っています。そして、その中では、不可欠なのは、脱炭素という2050年までの道のりの中で、最も苦労をする業界、そしてまた企業、産業界の皆さんの立場、そして、その声にしっかりと丁寧に耳を傾けること、そういった皆さんの議論を幅広く聞かせていただくことも大事なことだと思っています。

今回、改めて今までのカーボンプライシング小委と違うのは、オブザーバーに、経産省に入っていただきました。そして、今後、この2月には、恐らく中旬ぐらいだと聞いていますが、経産省のほうでも、カーボンプライシングの検討会が新たに立ち上がる、研究会が立ち上がるというふうに聞いています。その経産省の研究会のほうには、我々、環境省のほうからオブザーバーに入ることになっています。こういった形で、最初から出口を決め打ちしないで、間口を広げた議論をする中で、今年1年間をカーボンプライシングにとっても前進の1年になるように、皆さんと共に精力的に議論を積み重ねていきたいと思います。

4月には、バイデン政権が100日以内にやると言っていた気候サミット、これが菅総理に対しても招待がありましたので、日本も参加する方向になります。国際的に、今年はCOP26も控える中で、間違いなく気候変動政策が大きな世界的な重要テーマにもなる中で、私は、日本が2050年カーボンニュートラルを実現する上で、成長につながるカーボンプライシングを描くこと、これが不可欠だと思います。そして、その実現のためには、今日参加いただいている賛否両方の立場から、多くの方々と丁寧な議論をすることも不可欠だと思います。

 どうか、これから会を積み重ねる中で、忌憚のない、率直な、精力的な議論をいただけますこと、そして忘れてはいけないことは、これは成長につなげる形にしなければいけない、そういった思いをみんなで共有した上で、ぜひ前進の1年にしようではありませんか。

最後まで、皆さん、どうかよろしくお願いします。

井上市場メカニズム室長

大臣、ありがとうございます。

委員長、委員の皆様は、カメラをオフにしていただきますようお願いいたします。

次に、委員の交代がありましたので、お伝えいたします。

電気事業連合会前副会長の月山將委員に代わりまして、電気事業連合会副会長の清水成信委員にご就任いただいておりますので、ご報告いたします。

次に、Web会議の開催に当たり、何点かご協力をお願いいたします。

通信環境の負荷低減のため、カメラの映像は原則オフにして、ご発言の際のみオンにしていただきますようお願いいたします。

また、ハウリング等を防ぐため、発言する際以外はマイクの設定をミュートにしていただきますようお願いいたします。

ご発言を希望される場合には、ご自身のお名前の右側にあります手のアイコン(挙手ボタン)をクリックしてください。また、発言を終わられたら、ボタンを再度クリックし、挙手を解除いただきますようお願いいたします。もし挙手ボタンを押しているのに事務局側が気づかない等ございましたら、画面右下のチャットボックスにご記入ください。

その他、通信トラブル等ございましたら、チャットボックスにご記入いただくか、事務局までお電話いただきますようお願いいたします。

それでは、浅野委員長、以降の進行をお願いいたします。

浅野委員長

浅野でございます。

皆さま、御無沙汰しております。今日もちょっと長丁場でございますが、どうぞよろしくお願いいたします。

2019年の夏に、「中間的取りまとめに向けて」ということで、それまでのご議論の内容を整理した文書を出すに当たりましては、大変、委員の皆様方にご協力いただきましたことを改めて感謝申し上げます。

さて、先ほど小泉大臣のご挨拶にもありましたように、大きな流れの変化ということが今起こりつつあるわけでございますけども、この委員会の役割として、最初から諮問をうけておりますのは、新たな成長につながるドライバーとしてのカーボンプライスの可能性がどうであるかということについて検討してほしいということでありました。先ほど大臣からはお褒めいただきましたが、皆様方のご協力によりまして、「中間的な取りまとめに向けて」という整理文書を取りあえず作ることができたわけですが、これによりまして、カーボンプライスの脱炭素化、あるいは経済成長への寄与ということについて、どういう可能性を持っているか、あるいは、どういう点が課題であるかということについての整理はある程度できたと思っておりますし、カーボンプライスの可能性と同時に課題ということについても検討することができたと思います。まだ詳しい内容まで細かく立ち入ったことはできませんけれども、さらに、税とか取引とかといったような、カーボンプライスの具体的なありようについても、少しく議論をすることができたと思います。

これからの議論として残されていることも、既に中間的取りまとめの文書の最後のところに記すことができたわけでありますが、やはり具体的な制度設計をどうするのかということを考えなければならないということが、そこで言われてきたことではないかと思います。この際に注意しなければいけないことは、それが成長戦略に資するものであること、さらには、既にこの国にすでに存在し、関連している諸制度との関係をどうするのか、この点をしっかり整理すること、また度々強調されてきたことでありますが、我が国の実情を踏まえた制度はどういうものであるか、と。こういったような点をきっちり踏まえた議論をしなければならない。特に専門的な議論をしっかり積み重ねてほしいということを記したわけでございます。そこで、このような整理をふまえつつ、この小委員会をこれから進めていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、本日、先ほど大臣のご挨拶にもございましたように、総理大臣から環境大臣、梶山経済産業大臣に、両省連携してカーボンプライスを検討するように指示を受けたことをうけまして、本委員会には、経済産業省から経済技術環境局環境経済室の梶川文博室長にご参加いただくことになりましたので、お知らせをいたします。

 本日は、1年半ぶりの小委員会でございますので、「中間的な整理にむけて」を取りまとめました以降の気候変動政策や経済情勢、カーボンプライスをめぐる動向などの変化を確認しながら、今後の議論の方向性についてご議論いただけるように、事務局に資料を整理させました。

それでは、議題の1、議題の2というふうに分けておりますけども、説明はまとめて事務局からしていただくことにいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。

井上市場メカニズム室長

それでは、事務局から資料1と資料2をまとめて説明させていただきます。

まず資料1、「中間的な整理」以降の国内外の動きについてでございます。

2ページ目、お願いいたします。ここでは、昨年8月に小委員会で取りまとめられました議論の「中間的な整理」以降の1年半、とりわけ新型コロナ禍以降の国内外の気候変動対策、経済対策、国内のカーボンプライシングをめぐる動きについて、ファクトに基づきご説明いたします。

5ページ、お願いいたします。まずは新型コロナ禍以降の気候変動の現状ですが、IEAにおきましては、新型コロナウイルスの影響で、2020年の世界のCO2排出量が前年度比で8%減と予測しております。一方で、UNEPにおいては、1.5℃目標の実現のためには、2020年からの10年間で、世界全体で毎年7.6%のCO2排出量の削減が必要であるとしております。コロナ禍により経済が縮小して8%減ということで、今後、経済を成長させながら、いかにCO2を大幅に削減させていくのか、さらなる検討が必要だということだと思っております。

6ページ目をお願いいたします。世界の異常気象を表したものでございますが、近年、世界中で異常気象が頻発しておりまして、気候変動の影響が指摘されている事例もございます。

7ページ目をお願いいたします。2019年度の我が国の温室効果ガス排出量の速報値でございます。我が国の温室効果ガス排出量は、6年連続で減少しておりますが、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、さらなる削減が必要となります。

続きまして、新型コロナ禍以降の日本経済の現状についてご説明申し上げます。

10ページをお願いいたします。GDPの状況ですが、新型コロナの影響もあり、2020年の世界の経済成長率は4.4%減少、我が国の実質GDP成長率も5.3%減少となると見込まれておるところでございます。

11ページでございますが、設備投資の状況でございますが、同様に民間の設備投資も落ち込んでいます。後ほど触れさせていただきますが、諸外国の例にも見られますように、こうした状況であるからこそ、回復のためには投資が必要であり、中でも2050年カーボンニュートラルの実現のため、気候変動対策に対する投資が必要となっているものと考えております。

12ページ、お願いいたします。企業の現預金の状況ですが、企業が手元資金の確保に努めた結果、新型コロナ禍以降、現預金の増加が顕著となっております。

13ページをお願いいたします。一方で、その裏返しではありますが、企業の経常利益は、新型コロナの影響による売上高の減少を背景に、大幅に減少しております。この意味で、企業に対しては投資を促す一方で、足元の経済低迷に配慮した様々な支援策、軽減策が取られているところでございます。

14ページ以降は、国内消費、輸出入、雇用の状況を示したものでありますが、新型コロナの影響により、軒並み悪化しております。

次に、国内外の気候変動対策や経済対策をめぐる動きにつきまして、ご説明させていただきます。

18ページをお願いいたします。ご案内のとおり、昨年10月26日の菅総理の所信表明演説におきまして、2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを宣言するとともに、もはや温暖化への対応は経済成長の制約ではなく、積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要と述べられておるところでございます。

飛びまして、20ページをお願いいたします。昨年12月25日に、成長戦略会議で示されました2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略ですが、ここでも経済と環境の好循環をつくっていくことの必要性や、大胆な投資をし、イノベーションを起こすといった、民間企業の前向きな挑戦を全力で応援するのが政府の役割とも記載されておるところでございます。

続きまして、22ページをお願いいたします。各国のカーボンニュートラル宣言の状況ですが、EUと欧州諸国は2050年カーボンニュートラルを、右側にありますアジアでは、中国が2060年、韓国が2050年のカーボンニュートラルを宣言するなど、様々な国・地域においてカーボンニュートラルが宣言されております。

23ページ、お願いいたします。昨年9月3日に、小泉大臣の提案により閣僚級のオンライン・プラットフォームが開催されました。持続可能で強靭な経済社会へのリデザインの必要性や、「脱炭素社会」、「循環経済」、「分散型社会」への三つの移行の必要性が共有されました。

続きまして24ページ、お願いいたします。EUのポストコロナ復興計画についてです。EUは、ポストコロナ復興計画を取りまとめ、コロナ復興の柱の一つにグリーンを位置づけ、気候変動対策に予算の30%を配分することとしております。また、欧州委員会は、炭素国境調整措置やEU-ETSの対象拡大によります収入を、復興基金の償還に充てることを検討しておると聞いております。

25ページ、お願いいたします。その他の各国におきましても、ポストコロナの復興施策パッケージを発表しております。追加の資金投入を通じまして、グリーン復興を目指しておるというところでございます。

続きまして26ページ、お願いいたします。この資料は、昨年7月当時、ですからバイデン代表大統領候補のものになりますが、気候関連の新たなビジョンとして、2050年までの経済全体でのネットゼロをはじめ、気候変動分野に2021年からの4年間で総額2兆ドルを投資することや、電気自動車、住宅、オフィス等のエネルギー回収、CCUSや水素などの脱炭素投資についても言及されておるところでございます。

ページ飛びますが、28ページ、お願いいたします。ここからは、国際機関などによる脱炭素化に向けたエネルギー関連等の必要投資額を示しております。ここにありますIEAでございますが、2℃目標の達成のためには、世界全体で67.8兆ドルのエネルギー関連の投資が必要としております。

 飛びまして、30ページ、お願いいたします。これはBloombergのものでございますが、Bloombergにおきましても、クリーン電力とグリーン水素について、2050年までに78兆から130兆ドルの投資が必要としておりまして、とりわけ水素のサプライチェーンの投資に、14兆から66兆ドルの投資が必要とされております。

32ページ以降でございますが、参考としまして、国内のESG投資についても資料をつけさせてもらっております。我が国のESG投資残高は、2019年時点で3兆ドルとなっております。世界全体のESG投資残高に占める我が国の割合も、2016年は約2%でしたが、2018年には世界全体の7%となっておりまして、大きく増加しているところでございます。

ページ飛びまして、34ページ、お願いいたします。IEAによりますと、新型コロナウイルスの影響もあり、2020年のエネルギー投資は、世界全体で20%減少すると予想されております。

36ページをお願いいたします。同じIEAでございますが、IEAによりますと、再エネ、省エネ、蓄電池等のクリーンなエネルギーへの投資につきまして、排出削減を継続するために必要な投資額からは、まだ程遠いというようなことが記載されておるところでございます。

続きまして、駆け足になりますが、新型コロナ禍以降の国内外のカーボンプライシングをめぐる動きにつきまして、ご説明させていただきます。

39ページでございます。国内におきましては、昨年12月の「グリーン成長戦略」の中で、カーボンプライシングにつきまして、成長戦略に資するものについて、既存制度の強化や対象の拡充、さらには新たな制度を含め、ちゅうちょなく取り組む、そして成長戦略の趣旨にのっとった制度を設計し得るか、国際的な動向や我が国の事情、産業の国際競争力への影響等を踏まえた専門的・技術的な議論が必要であるということが盛り込まれております。

40ページ、お願いいたします。また、先月18日の菅総理の施政方針演説の中でも、グリーン社会の実現に向け、成長につながるカーボンプライシングにも取り組んでまいりますと言及されておるところでございます。

41ページをお願いいたします。これは成長戦略会議の話でございますが、成長戦略会議におきましても、カーボンプライシングについての言及、議論がございます。例えばでございますが、この下にあります昨年12月25日の成長戦略会議ですが、カーボンプライシングについて議論がございました。例えばですが、下にありますとおり、さらなるコスト負担増につながる制度の導入には強く反対するという意見がある一方で、42ページ目になりますが、カーボンニュートラル実現に向けて、カーボンプライシングを重点的に議論することは、もう避けられない、そういった意見もあります。一方で、下にありますが、成長戦略に資する形でのカーボンプライシングの活用に取り組む必要があるが、その際、企業のイノベーションの促進を妨げることにならないか、国際競争力にどのような影響があるかについて検証、丹念な議論が必要であるといった、活発なご議論があったところでございます。

ページ飛びまして、44ページをお願いいたします。44ページ以降は、国際機関等において、新型コロナウイルスからの復興とカーボンプライシングに関する言及をまとめたものでございます。例えば、ここにございますが、国連事務総長は、新型コロナウイルスからの回復において、カーボンプライシングの実施の必要性に言及されております。また、IMF専務理事におきましても、炭素に正しい価格をつけるべきとして、気候変動に配慮した投資とクリーンな燃料、省エネの促進のために、75ドル/tCO2の炭素価格が必要と言及しておるところでございます。

ページ飛びますが、49ページをお願いいたします。その他、IEAにおきましては、2℃目標の達成のためには、先進国の電力、産業及び航空部門に係る炭素価格は、2025年に63ドル、2040年に140ドルになるとしております。その他、説明は省略しますが、UNFCCやIMFなどにおいても、カーボンプライシングの実施が必要とするとともに、炭素価格に関する様々な試算を提示しておるところでございます。

ページ飛びます。52ページをお願いいたします。ここからは、諸外国のカーボンプライシングをめぐる動向についてご説明いたします。この資料の緑の字のものは、カーボンプライシングの制度の維持・拡大を表しております。一方、赤字のものは制度の延期等を示しております。52ページから、ご覧いただきますと分かりますとおり、まず、冒頭ありますEU-ETSについては、予定どおり本年1月から第4フェーズが開始され、あと、下にありますが、ドイツでは建築物・運輸部門を対象に、国内のETSが本年1月より開始されております。

さらには、53ページでございますが、真ん中辺り、オランダ、ルクセンブルクにおきましても、CO2税が導入される一方で、下にありますが、赤字でありますスイス、ノルウェーなどでは、ETSの遵守期間やCO2税の免税措置廃止の延期等の動きもあるところでございます。

飛びまして、55ページをお願いいたします。これはアジア等でございますが、アジアにおきましても、冒頭あります韓国においては、ETSの遵守期限を延期する等の動きがある一方で、先ほど大臣からもお話ありましたが、中国におきましては2月1日、まさに本日より、中国国内の発電部門を対象にしました全国排出量取引制度が施行されることとなっております。

56ページをお願いいたします。EUにおきましては、域外の低炭素化と、域内外の産業の競争公正性を確保するため、炭素国境調整措置が検討されております。炭素規制が緩い域外からの輸入品に、新たに関税を課するなどの措置を検討しておると聞いております。なお、詳細はまだ未定でございまして、本年、第2四半期に制度の提案が行われ、遅くとも2023年1月1日までには導入という予定と聞いておるところでございます。また、下にありますが、アメリカにつきましても、当時のバイデン候補となりますが、政策ビジョンや民主党の政策綱領などにおいても、炭素国境調整措置を課することについて言及されておるところでございます。なお、こうした動きにつきましては、環境省においても情報収集に努めまして、必要なタイミングで、この委員会でもご報告させていただきたいというふうに思っているところでございます。

資料1は以上でございます。

続きまして、資料2につきましても、合わせてご説明させていただきます。

資料2でございますが、当面の議論の進め方ということでございます。

まず、2ページでございますが、この小委員会におきましては、2018年7月から2019年7月の約1年におきまして、計11回にわたりまして、カーボンプライシングや脱炭素化、経済成長に寄与する可能性、カーボンプライシングがもたらす可能性のある課題などにつきまして、定性的なご議論をいただいたところでございます。

3ページをお願いいたします。昨年8月におまとめいただきました「議論の中間的な整理」でございますが、その中で、今後の課題として三つ挙げられております。一つ目が、炭素価格がCO2削減や経済・社会に与える作用・影響について、定量的な議論が重要であること。二つ目でございますが、排出削減と関連のある既存制度とカーボンプライシングの関係について、各制度が十全に効果を発揮できるよう、今後の議論が重要であること。3点目でございますが、長期戦略を踏まえまして、国際的な動向や我が国の事情、産業の国際競争力への影響等を踏まえた専門的・技術的な議論が必要であることが盛り込まれております。つまり、これまでの定性的な議論から、より定量的・具体的な議論をすべきとの示唆であると考えておるところでございます。

5、6ページにつきましては、先ほど説明させていただきましたので、省略させていただきまして、7ページをお願いいたします。7ページも、先ほどご説明させていただきましたが、昨年12月のグリーン成長戦略におきまして、カーボンプライシングとして、大きく三つ分類されておるということでございます。真ん中以降でございますが、その一つが、キャップ・アンド・トレード型の排出量取引に加えまして、非化石価値やJクレジットなどの既存制度を含めました、いわゆるクレジット取引。二つ目が炭素税、この中には既存の温暖化対策税も含まれます。三つ目に、国境調整措置であります。後ほど説明いたしますが、グリーン成長戦略におきましても、カーボンプライシングにつきましては、間口を広く取っておるところでございます。

9ページをご覧いただければと思います。成長戦略に資するカーボンプライシングということで、これまでの小委員会でご議論いただいた視点を簡単にまとめたものでございます。

10ページ、お願いいたします。字が小さくて恐縮ですが、ここで、その際の議論をまとめたものを記載しておりますが、簡単に申し上げますと、カーボンプライシングによって脱炭素化に向けた設備投資、技術開発を促すことで、生産性向上や経済成長にも期待できるとか、人をうまく活用することでイノベーションを促すことができるとあります一方で、カーボンプライシングによってエネルギーコストが上昇し、需要を減退させる。国際競争力の喪失、リーケージといった、経済への悪影響が懸念される。さらには、イノベーションの原資を奪うといった、賛否両論あったところでございます。

11ページをお願いいたします。ここでは、カーボンプライシングの仕組みと特徴、課題について、簡単にまとめております。先ほどご説明しましたとおり、グリーン成長戦略なども踏まえ、この小委員会でご議論いただくカーボンプライシングの範囲としましては、ここにあります炭素税、排出量取引、ETS、これらを活用した炭素国境調整措置、さらには非化石証書やJクレジットなどのクレジット取引、さらにはインターナル・カーボンプライシングなど、炭素価格、環境価値のつくものについて、幅広くご検討いただければと思っているところでございます。なお、加えまして、この資料におきましては、字が小さくて恐縮ですが、炭素税、排出量取引の特徴と課題も簡単に整理しております。炭素税の箱のところでございますが、特徴としまして、安定した価格シグナルを発信できるとともに、幅広い主体を対象にできます。加えまして、税収を活用した、いわゆる財源効果も発揮できます。一方で、課題としましては、排出削減量を確実性をもって見通すことができないなどの課題もございます。一方、排出量取引の箱をご覧いただければと思いますが、炭素税と裏腹の関係になりますが、排出削減量を確実性をもって見通すことができること。あと、排出枠の売却を通じまして、経済的に目の見える形でメリットを享受できる。その反面、排出枠価格等が変動し、価格シグナルが安定化せず、投資の予見可能性などを見通しにくい点や、ギャップの設定、価格シグナルを安定化させるための措置など、制度設計が非常に複雑であるといった課題がございます。

なお、ここでは省略させていただきますが、カーボンプライシングの全体像につきましては、環境省において、資料2別紙1のような資料も作成しておるところでございます。これにつきまして、環境省として考えますカーボンプライシングの概念等々が分かりやすく書かれておりますので、合わせてご覧いただければと思っております。

続きまして、13ページをお願いいたします。先月26日に、当小委員会の親委員会であります地球環境部会におきまして、カーボンプライシングに係る意見が多く出ましたので、これを整理したものでございます。これまで説明したものと重複いたしますが、簡単にご説明いたしますと、まず、排出量取引や炭素税については、成長戦略に逆行するのみならず、企業のイノベーションを阻害するものと考える。我が国のエネルギーコストが高いことや、足元での新型コロナ禍において、経済への悪影響が懸念される。今後のカーボンプライシングの議論に当たっては、導入ありきでない広い視点に立つ必要があるのではないか。また、イノベーションに今必要なのは、政策のイノベーションであり、急ぎカーボンプライシングの議論を開始すべきといった意見。さらには、カーボンプライシングについては、低所得者層への配慮を十分にしていただきたいという意見。さらには、社会全体で市場において炭素価格をつけていることが必要となっており、カーボンプライシングは重要。負担の大きいところは減免措置を取るなどの対処をする必要がある一方で、脱炭素を機会として設備投資を増やしていく企業を応援すべきでないかといったご意見もございました。

14ページ、お願いいたします。最後になりますが、これまで申し上げた様々な議論等を踏まえまして、「中間的な整理」以降の動向も踏まえました当面の検討事項として、このような案を考えております。まず、カーボンプライシングを考えるに当たりまして、一つには、真ん中辺りにありますが、成長に資するカーボンプライシングとはどのようなものであるのか、二つ目でございますが、下のほうにありますが、諸外国におけるカーボンプライシングの動向も踏まえつつ、我が国として、どのような対応を取っていくべきなのかという視点に立つものと考えます。その上で、矢印の下になりますが、当面の検討の進め方として、こうした視点を含め、仮に我が国でカーボンプライシングを導入する場合、成長戦略に資するかという観点から、具体的にどのような制度設計が考えられるのか、今後、数回にわたってご議論いただくのがよいのではないかと考えておるところでございます。

長くなりましたが、説明は以上でございます。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいま事務局から、本日の議題の1と2について説明をいただきました。すなわち、「中間的な整理に向けて」作成以降の国内外の動き、当面の議論の進め方、議題としては、この二つに分かれておりますけども、しかし、これは一括して議論することが適当だと考えます。成長戦略に資するカーボンプライスとはどんなものか、あるいは諸外国での動向、特に炭素国境調整措置などが動きつつあるので、そういったようなことにどのように対応したらいいのか。さらに、今、最後にご説明ありましたように、資料2の14ページにありますように、当面の検討事項、こんなことではどうかという提案があったわけですが、これについていかがであるかということを中心に、もちろん何でも構わないんですが、ご意見がある方にはご発言をいただきたいと思います。

これまでの会議は椅子に座っていますので、端っこの方から順番にという、割合に荒っぽい指名の仕方をさせていただいておりましたが、今回はそうもまいりませんで、お手をお挙げになった方を順次当てていくということになると思います。何しろお一人お一人の手が見えませんので、事務局にも気をつけていただいておりますが、お手が挙がりました順番にご指名できるように努力をいたしますが、間違いがありました場合は、どうぞお許しください。

それから、本日、途中で退席をしたいというご希望を吉村委員から伺っております。また岩田委員が途中で一時的に席を立つことがあるというお話でございましたが、ほかに、もし中途退出をする必要があるという事情をお持ちの方は、どうぞチャットにお書きいただいて、事務局にお伝えいただきますと、私のほうにもメモが回ってまいりますので、それによって発言の順序を考えさせていただきたいと思います。

それでは、いつものように順番にということにはまいりませんので、お手をまずお挙げいただければと思います。多分、全員がお挙げになるだろうと思いますが、発言の順番が、ある程度、これで決まるかなと思います。

ただいま私の手元に来ておりますのは、神津委員、土居委員、大塚委員からご発言のご希望が出ておるようでございますので、それでは、神津委員、土居委員、大塚委員の順番でご発言をいただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

神津委員

しょっぱなにご挨拶の機会を賜りました、日税連の神津でございます。

昨年10月26日、菅総理の所信表明演説、先ほどご説明にもありましたけど、積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や社会・経済の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要というご発言があり、また1月、菅総理の施政方針演説では、環境対策は経済の制約でなく、経済社会を大きく変革し、投資を促し、生産性を向上させ、その鍵となるものというご発言がありました。まず、この大きな方向性について、大いなる賛意をご表明させていただきます。

当面、今日の課題であります成長戦略に資するカーボンプライシングというのは、どのようなものであるかということがテーマに掲げられております。この点につき、先ほどの総理の方針演説に、もう答えが出ていると思いますけど、脱炭素化、環境対策こそが経済成長に資するべきものであり、脱炭素化、環境対策を第一に議論すべきということが重要かと思います。

まず、ご高承のように、日本では毎年のように災害が発生しており、このことからも、環境を守ることは重要だと考えます。仮に、議論されているとおり、炭素税というものが導入されたとしたら、対象企業が、取る道は主に三つあると考えます。一つ目は、負担する税を価格転嫁すると。二つ目は、コストとして受け入れる。3番目は、脱炭素化を行うべく、技術革新を行って、炭素税の負担をゼロとすると。まず、3番目のイノベーションにより、負担をゼロにすることを目指すということが、技術革新につながり、かつ高度経済成長につながるものと考えております。

炭素税は消費税と同様、使途が特定の施策に使われるということでよく比べられますけど、消費税は、集めた税金を社会保障や少子化対策に使う恒久的な税制ですが、炭素税は脱炭素化が実現することで2050年までに税収がゼロになるという珍しい税です。

また、昨年末に発表されました令和3年度税制改正においては、2050年カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設が図られることとなり、企業の脱炭素化投資を加速するため、脱炭素化効率が高い製品の生産設備や、生産工程の脱炭素化と付加価値を向上する設備の導入に対して、最大10%の税額控除、または50%の特別償却を新たに措置するということが予定されております。

このように、税の側でもフォローの風が吹いておるというところで、大企業として制度の活用が見込まれるところですが、一方、財務面で非常に脆弱である中小企業においては、設備投資が困難な部分があると思いますから、補助金、助成金など、金融面からの施策においても、ご検討いただきたいと考える次第です。

以上です。

浅野委員長

どうも、神津委員、ありがとうございました。

それでは、次に土居委員、どうぞよろしくお願いいたします。

土居委員

ありがとうございます。

発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。

今回、この小委員会が再開されて、再びカーボンニュートラルの議論を深める機会を得たということは、大変有意義だと思っております。私としても、何らかの形で貢献できればというふうに思います。

菅内閣に代わって、私は様相が一変したというふうに感じております。もちろん世界、特に欧米諸国の動きというものは、先ほど事務局からも説明がありましたように、かなり動きが急になっているというところは、我が国としても看過できないものだというふうに思います。

ただ、我が国の国民、企業の気候変動問題に対する関心というものが、なかなか、欧米諸国の動きに比べると鈍いということが、今、現在ではあるのかなというような印象があります。

あまりいい例えではないんですが、今朝、東洋経済オンラインに私がカーボンプライシングに関して寄稿をいたしました。午前中は割とプレビューが高かったんですが、午後は、たちまち、もう圏外に、ランキングの圏外になってしまうという、それぐらい、なかなか問題関心が持続しないものなのかなというのが現状の、我が国の気候変動問題に対する、ないしはカーボンプライシングに対する関心度というものなのかなというふうに思っていて、私の不徳の致すところかもしれませんが、まずはカーボンプライシングの議論の中身を詰めることと同時並行で、気候変動問題の国民関心を高めるという取組も、積極的に行っていく必要が私はあるんじゃないかというふうに思います。

いよいよ、カーボンプライシングに関連するところで、私の意見を述べさせていただきたいと思いますけれども、今回の議論は、成長戦略に資するということが条件として冠に掲げられているということですので、これをいかに実現するかということが、これまでカーボンプライシングに必ずしも賛同的でなかった方々の、せめてもの反対はしないというようなところぐらいにまで態度を軟化していただけるようなものにつなげていく必要が、この成長戦略に資するという冠に思いが込められているのではないかなというふうに思います。

私が思いますのは、成長戦略に資するということを条件としたならば、カーボンプライシング、特に炭素税のほうで、これがうまくそれにそぐうような政策パッケージが作れるのではないかというふうに思います。もちろん、排出量取引でも可能といえば可能なのかもしれませんが、排出枠を無償で与えるということになりますと、それによって政府は収入を得るということができないということになります。もちろん、CO2排出量を減らすということはできるんですけれども、その収入を活用して、脱炭素を早期に促すような設備投資や技術革新を促す、そういう施策にこのお金を使っていく、そういうことが、政府が収入を得るということによって、パッケージングとして政策を講じることができるというふうに思います。そういう意味では、炭素税、先ほど神津委員はやがては税収がなくなるということではあるんですけれども、当初は、まだCO2を排出しているということですので、その排出に対しての比例的な課税を行うことを通じて、政府が収入を得て、その収入を、脱炭素を早期に促す設備投資や技術革新に資するような、補助金なり投資なりに使っていくということが可能になってきて、それこそが、我が国の産業構造を脱炭素に向けて成長とともにこれを行っていく、そういう道筋をつけることができるのではないかというふうに思います。そういう意味では、炭素税とその使い道というパッケージング、政策パッケージをこの小委員会でも今後議論を深めていくということがあっていいのではないかなというふうに思います。

それから、もう一つは、先ほど事務局からもありましたけれども、炭素国境調整措置をどういうふうに捉えるかということかと思います。もちろん、先ほどの事務局の説明にもありましたように、EUでは、6月頃までを目途に何らかの方針が示されるということですので、我が国がそれよりも先んじて何かいいアイデアを持っていれば、もちろん、それを提示するということもあるかもしれませんが、そもそも、カーボンプライシングの議論すら、まだ今年の6月とかというぐらいでは、なかなか国境調整のことまで頭が回らない程度の議論の進捗なのかなというふうに思いますので、我が国からEUに先んじて何かこれについて提案をするということは、ちょっと考えにくいとは思います。ただ、EUの動き、ないしは、場合によってはアメリカも国境調整に関連して何か提案をしてくるという可能性も考えられるということですので、それは小委員会としても綿密にウオッチをしていく必要があるのではないかと思います。

ただ、そのときに、EUなりアメリカなりが、国境調整に対して、我が国企業に不利になるような、そういうような提案が出てきたということであれば、それに対しては、何らかの積極的な反論、積極的というのは、そんな国境調整はやめろという意味ではなくて、気候変動問題にも資するようなアイデア、そういうものを併せて提示していくということで、我が国の気候変動問題に対する姿勢が積極的であるということを印象づける、そういうものにもなるのではないかというふうに思います。

私は、この小委員会で、仕向地主義炭素税ということを提案させていただきました。これは関税によって、輸入品に対して、CO2をより多く使っている輸入品に対して課税するということではなくて、むしろ付加価値税制度にある仕入税額控除と輸出免税、これらをセットにして課税をするという形式の炭素税、こういう仕組みで、過度に国際的な貿易を阻害しないようにしながらも、しっかり気候変動問題に対応していく、カーボンプライシングになる、そういうような提案というのも私はあるのではないかというふうに思っておりますので、何らかの形で炭素国境調整措置について小委員会で議論が深められるといいのかなというふうに思います。

確かに、我が国で国内のカーボンプライシングの話をどんどん前のめりにするということになると、当然、企業の方々なり、カーボンプライシングによって、一時的であれ、不利益を被る方から反対論が起こってくるということはあろうかと思います。ただ、必ずしも、我が国の国内だけでカーボンプライシング是か非かと言っていたのでは済まないような状況ということが、我が国の外で、欧米諸国をはじめとした動きとして既に存在していて、むしろ我が国が気候変動問題に不熱心であるということでもって、逆に日本企業なり日本の国民が不利益を被る、そういうようなことが国際的な対応として引き起こされるということこそ心配しなければならないのではないかというふうに思いますので、そこのバランスをうまく取りながら、一つの政策手段としてカーボンプライシングを検討していくということが必要だと思います。

最後に1点だけ、低所得者への配慮という話は、小委員会でもこれまでに議論があったところでありますが、念押しということで、私の考えを一言だけ申し上げさせていただくと、低所得者への配慮というのは、カーボンプライシングによって低所得者への負担があったとしても、それをカーボンプライシングの中だけで解決しようとするのではなくて、所得税制とか社会保障給付なども視野に入れながら、政策パッケージとして、低所得者への配慮を包括的に行っていくということをしていくべきなのではないかというふうに思います。

私からは以上です。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

それでは、次は大塚委員ですが、その後、岩田委員、遠藤委員、牛島委員、この順番でご発言をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

では、どうぞ。大塚委員、お願いいたします。

大塚委員

大きく2点に分けて申し上げておきたいと思いますけど、まず一つは、最近の先ほどご説明をいただいた状況から、温暖化政策一般というよりもカーボンプライシングに関して、新たな視点として考えなければいけないこととして、3点申し上げておきたいと思います。

一つは、これは少し前からもあったことですけども、ESGが拡大し、さらにサプライチェーンにおいて100%renewableを求めるような動きが出てきているという状況がございます。これはますますCO2削減に向けた投資をしていかなければいけない状況が民間に生まれているということだと思います。

それから、二つ目ですけども、カーボンプライシングが世界的に、国際的に広がってきているということ。例えば韓国などは、前、環境省の方と一緒に、エミッショントレーディングができる前にお話に行ったこともあったんですけども、日本のほうが完全に遅れてしまっているというような状況が生まれていますし、また、環境基本法の22条2項は、経済的手法として、環境税についても書かれてはいるんですけども、国際的な公平との関係を考えて、日本が先走ることがないように、様々な条件が規定されている、なかなか長い条文になっておりますが、それが今やカーボンプライシングを、ほかの国が先にやってしまって、日本が国境税調整をされるほうになってしまうかもしれないという、すごく変わった状況になってきていると。周回遅れになってきてしまっているという状況でございまして、土居委員もおっしゃいましたけれども、国境税調整をされてしまうことになりますと、非常に不利なことになってしまいますので、それについても考えなければいけないような状況に陥ったということがあると思います。

三つ目ですけれども、これはいろんな観点があると思いますけれども、やはり財政赤字が非常に大きくなっていますので、将来世代との衡平ということを考えると、現世代において、温暖化対策についても収支を合わせるようなことを少しは考えなければいけないというような問題が発生していますので、まさにそのためには炭素税のようなものが、カーボンプライシングが必要になってきているということだと思います。

以上3点が、新しく、最近、ちょっと前からの点もありますが、問題として指摘しておかなければいけないことだと思います。

カーボンプライシングの導入の視点として、4点申し上げておきたいと思いますけども、一つは、成長戦略に資するという、先ほど来ご議論があるところが非常に重要になっています。排出量取引と税を比べますと、私も排出量取引を応援してきたところがありますが、先ほども環境省の方にご説明いただいたように、排出削減量を確実性を持って見通すことができるという意味では、排出量取引は非常に魅力的ではあるんですけれども、成長戦略との関係を考えると、やはり税のほうが、これは土居委員もおっしゃいましたけれども、税収を使って、いろんな財源効果を与えるという観点から、より入れやすいのではないかということはあると思います。排出量取引でも、オークションにすれば収入が出てきますので、同じようなことができますが、オークションに行くまで少し時間がかかると思いますし、さらに、そこにも書いてあるように、価格の安定化のために、いろんな措置を取らなくてはいけないので、これもやっていけるとは思いますけれども、税のほうが少し有利ではないかということがあると思います。

それから、二つ目でございますけれども、原資を奪うのではないかというご批判がございます。これは前からそういう議論はあるんですけれども、メリットが見える形でお返ししていくということもあると思いますので、制度設計次第ということもあると思いますけれども、原資を奪うというふうに言われても、そもそも、この原資を気候変動対策に使っていただくという、そういうことが分からないわけですので、ご自身では原資を奪うというふうに思っていただいているかもしれませんが、確実に気候変動対策に使っていただけるというようなことを前提に置いたご議論になってしまっていると、実際には、それが達成されるかどうか分からないということが、申し訳ないですけども、ちょっとありまして、枠づけをする必要があるということがありまして、そういう意味でも、カーボンプライシングは重要なんだろうと思います。

それから、三つ目ですけれども、諸制度との関係が問題になるということ、先ほど浅野委員長もおっしゃいました。現在、省エネ法とか、エネルギー供給構造高度化法があるんですけれども、何といっても行政指導前置主義といって、行政指導を最初に行うということになっており、勧告等も含めてですが、なかなか命令のところまで行かないと。罰則まではちょっと届かないということがございまして、そういうところが、やはり残念ながらちょっと限界があるところではないかということがございますし、現在、石炭に関しては、非常に税が安くて、ちょっと語弊があると思いますけれども、石炭に誘導しているかのようなぐらい税が安いという問題がありますので、そこをどうするかという問題は、一般的にもあるだろうと思います。

第4点ですけども、先ほど来もご議論がありましたけども、確かにCO2をたくさん出しておられるところにおきましては、炭素税を導入した場合、その業界に直結する問題になる可能性があると思いますけれども、それに関しては、ぜひ減免の措置を取るということを考えていただく必要がございまして、ここら辺は、もし国がおやりになることをあまり信頼できないということでしたら、もう協議を始めていただくようなことが必要になってくるのではないかと思います。他方で、これも私が地球審で申し上げたことでもあるんですけれども、まさにカーボンプライシングによって、炭素の価格のシグナルが社会・経済において打ち出されることによって、投資が促されて、潤って、どんどん成長していかれるという産業もたくさん出てきている状況ですので、ぜひ、そちらを伸ばしていくことを考えていくという必要があると。負担が大きいところは減免措置を取っていく、そういう二つに分けて考えるということが非常に重要になってきているのではないかということを申し上げたいと思います。

以上でございます。恐れ入ります。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、次に岩田委員、どうぞ。よろしくお願いいたします。

岩田委員

ありがとうございます。

それでは、3点ほど申し上げたいと思います。基本的には、今日のご議論は資料の第2、ご議論を資料2にまとめてありますので、それに準拠しながらお話し申し上げたいと思います。

1点目は、最後の資料2ですね、ページを見てみますと、カーボンプライシングに対して反対する意見が出ております。これは資料の13ページですか、13ページの経済界のほうのご意見として、イノベーションを阻害してしまうと、かえってですね。コストが上がってしまう、あるいは新型コロナウイルスの影響で、経済活動で困っているときに、余計、悪影響が大きくなるという、こういうお話が経済界の方のご議論で出ております。

私が1点目に申し上げたいのは、コロナとの関係なんですね。非常に興味深いことに、BISという国際決済銀行、中央銀行のクラブみたいなものですが、そこが実は去年の5月にGreen Swan2という報告書を出しました。グリーンスワンの報告書の1回目は昨年の1月に出て、いわゆる座礁資産ですね、化石燃料をたくさん使っている設備とか施設とか、そういうものがみんな使えなくなってしまうので、その結果、価値がゼロになってしまう、座礁してしまうのが、たしか18兆ドル、これは幅がありますけど、巨大なロスが出て、それが金融リスク、気候変動の金融リスクに直結していますという、こういう報告書だったんですが、5月に出た報告書では、非常に興味深いんですが、コロナをGreen Swanリスクと考えるべきではないかということが明確に述べられております。

それはどういうことかというと、今日、資料1のほうで注目しておりますのは、最初に6ページ、資料1で、異常気象でどういう変化が起こっているかというのが、図がございます。私が気候変動に関心を持ち始めたときから、実は気にしていることがありまして、それは北極海が溶けてしまうということはさることながら、それで海面の面積が上がってしまって、小っちゃい島はみんな水面下ですと。東京都でも1/3ぐらいは下ですよと、ゴールドマンサックスがずっと前に公表しています。それ以上に私が心配していますのは、シベリアの熱波と書いてあるんですが、私が心配しますのは、凍土が溶けてしまうという、現実に今、もう溶け始めているんですが、凍土の下にはメタンガスとか、ほかの有害なガスが下にこもっておりまして、つい最近、NHKのスペシャル報道で、爆発している、これがボンッボンッと、凍土が溶けてガスが爆発しているんですよね。地中にまき散らかされて、CO2よりも、実はメタンガスのほうが気候変動に与える影響は大きいんですよね。それを放置していいのかという、これはもう大変で、一生懸命、経済活動を抑えても、凍土がどんどん溶けて暴発、メタンが噴き出て、悪くしたら、またそれに火がついてということで、ますます温暖化が進む。これは重大ですが、これを計測している人がいないというんですよね。これでどのくらい気候変動が悪化するのか、私は、ぜひ、科学的な見地からどのくらい悪化させているのか、ぜひ計測していただきたいと。計測した例はないというんですよね。と思うんですね。

それから、コロナとの関係で申し上げますのは、実は、凍土の下にはウイルスがたくさんおりまして、シベリアでも、凍土から出てきたカモシカから炭疽菌が出て、村人が70名死んだと。このように言われております。私は、ほかにもウイルスがたくさんいるんじゃないかと。というのは、未知のウイルスが80万種、世界にはあると言われていて、私、気のせいか、2000年代になってから、疫病ですね、SARSにしてもMARSにしても、非常に増えていると思うんですね。平均すると、5~6年に1回来ると。特に今回は強靭なウイルスが来た、それで被害が甚大だと。サマーズ元米財務長官らが、昨年10月、被害はどのくらいあるかと。アメリカで40万人以上死にました。経済コスト、どのくらいでしょう。GDPが下がっただけではありません。人が死んだことの価値を計らなくちゃいけませんが、あるいは入院した、そのときのコスト、これが全部でアメリカのGDPの90%、16兆ドルあるというんですよね、今回のコロナで。これも重大なわけでありますが、それがこういう凍土が溶けて、ますますウイルスが出てくる、頻繁に出てくるという、この膨大なコストをどうするのかというふうに思います。

ですから、コロナで大変だと経済界の方はおっしゃいますが、放っておけば、私が申し上げたいことは、もっともっとひどいことになるという、その被害たるや、私は人類の生存に関わる話じゃないかと。リスク、生き残れるかどうかという問題ではないかというふうに私は思っております。というのが1点目に申し上げたいことであります。

それから、2点目は、国境調整……。

浅野委員長

恐れ入りますが、少し簡潔にお願いできませんか。

岩田委員

すみません。失礼しました。

国境調整税については、簡単に言うと、私はやっぱり基本的な考え方を整理すべきだと思います、今でもですね。土居先生のほうからもお話のあった付加価値税方式、あるいは、WTOの貿易ルールと整合的であるとか、幾つかの原則があり得ると思います。日本の場合には、温暖化防止税という、これはエネルギー全般をカバーしていないので、例えば、それを考える場合には、私、エネルギー税制のグリーン化ということが必要だと思います。そういうことが求められるとか、基本的な考え方を整理すべきだというふうに思います。国境調整税について、これで。

3番目は、やっぱり第2の資料の12ページですが、ここで、カーボンプライシングの中、三つ挙げてあるんですが、私は三つでなくて、もう一つ、インターナル・カーボンプライシングというのが、これは39ページ、資料1のほうで言うと、三つありまして、炭素税、国境調整措置、クレジットというふうにありますが、私は、これと同様に重要なのが、企業内部におけるインターナル・カーボンプライシングですね。これは、各企業がやはり50年にはゼロにするという、そのためには、自分の社内におけるカーボンプライシングが幾らなのかということを、ぜひ、これは財務情報として、今、情報開示が随分進んでおりますが、そういうことを明示的に出していただきたいと。これはとても重要なことであるというふうに思っております。企業の中にもいろいろあって、ダイレクトエア・キャプチャリングみたいなことまで考えて、マイナスの排出量。マイクロソフトは1975年にできましたが、75年から、創立以来の排出量を全部回収するというプロジェクトを持っておられます。そういう、それは各企業がそれぞれ設定して、恐らくカーボンプライシングで行動されていると思います。私は、各企業が、上場企業は、とりわけインターナルなカーボンプライシングというのも情報開示していただきたいと考えております。

以上です。

浅野委員長

ここまでのところで、もう既に30分で4人のご発言ということになりました。とても時間が足りそうもありません。本日は、早めにお手を挙げられた方には、敬意を表して時間制限をかけませんでしたが、まだ順次、ご発言のご希望があろうかと思いますので、できるだけ手短に、可能であれば3分ぐらいで収めていただけるとありがたいんですが、ちょっと今までお一方の発言が長いかなという感じがします。大変恐縮でございます。

遠藤委員、牛尾委員、小西委員、この順番で指名をさせていただきます。

遠藤委員、どうぞお願いいたします。

遠藤委員

ありがとうございます。

カーボンプライシングの在り方としては、制度設計・運用コストなどを鑑みた場合に、排出権割当および取引よりも、税によるプライシングのほうが適当であろうということは、繰り返し申し上げてきました。ただし、これまでの議論でも、具体的な数値は示されなかったわけですけれども、カーボンプライシングのみで実質的な削減を狙う場合は、その価格が極めて高いものになるだろうということは、確認、共有された次第でございます。そういう観点からも、排出量削減には、やはりこれも何度も申し上げたことなんですが、ポリシーミックスが必要になると思います。

何より、現在、世界規模の新型コロナ感染の長期化と広がりを受けた企業収益、また家計収入というのは、非常に厳しいものがありまして、ここにさらなる負担を強いることがふさわしいのか。こうした観点も十分に考慮する必要があろうかと思います。先ほどのご説明にもあったように、企業の内部留保の程度の高さというのは、度々厳しく指摘されるのですが、このような先の読みにくい感染の動向と経済環境が続く中、経営者にとっては、バランスシート上の現預金を積み増したい、それは順当な判断だと私は思っております。

その上で、エネルギー政策や安全保障研究に携わる立場から、今後の議論の前提について、何点か申し上げたいと考えております。

電気自動車をはじめとする、一次エネルギーにおける電化の進展のためには、より多くの電力を安定的に調達する必要があります。まず、その点を忘れてはならないということ。年末年始に全国的な発電量の不足があったわけですが、これは原子力の運転が限られている状況で、再生可能エネルギーの調整にも使われるLNG火力発電に非常に負荷がかかって、LNG燃料の不足に陥ってしまったことが直接的な原因です。ですので、電力需要が伸びるなか、電力安定供給の意義を再度確認し、重要視しなくてはならないと考えます。カーボンプライシングの議論において、再生可能エネルギー、自然エネルギーの拡充ばかりが唱えられるのですが、これらは一見、クリーンエネルギーのように聞こえてもあくまで火力発電依存と言える電源であることをここでも何度か申し上げてきました。揚水発電にも電力が必要ですし、実際、年末年始の電力の需給の逼迫では、石炭火力のトラブルもあって、揚水発電も機能しませんでした。5日間ほど雪が降ったりすれば、太陽光発電の電気を蓄電池にためられない状況になります。カーボンニュートラルを電力セクターで検討する場合は、やはり原子力発電がどうしても必要になるというリアリティーが重要だと思います。

再生可能エネルギー、中でも主力である太陽光発電の主力部品は太陽電池ですが、ほぼ中国企業の独占です。これに対して、原子炉の国産化比率は8割あります。何を申し上げたいかというと、日本の排出量というのは、世界の僅か3.5%です。クリーンな地球に貢献するということは、地球人、市民社会として必要なことだと思うのですが、政策議論においてはナイーブな、あとはイデオロギーのためにする政策議論は、国力の減衰にしか帰結しないと考えます。

欧州・米国の政策担当者と議論しても、自国の利益にかなうこと、自国産業の競争優位であること、裏返せば、他国の競争力を奪うという観点から政策が練られていますし、投資家や電気自動車メーカーなども、当たり前ですけれども、自社の利益拡大のために経済合理的な判断をして、ロビーイングをしています。複合的な事象を総合的に判断し、国益を鑑みながら、カーボンプライシングの政策議論を進めるべきだと考える次第です。

私のほうからは以上です。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

井上市場メカニズム室長

浅野先生、すみません、有村先生がずっと手を挙げられているみたいなので、有村先生、先によろしいですか。

浅野委員長

有村先生、私のほうが最初に見落としておりました。失礼しました。

それでは、有村委員、大変申し訳ありませんでした。どうぞ。

有村委員

早稲田の有村です。皆様のご説明及びご発言ありがとうございました。

私は、土居先生とちょっと違う感じを持っていまして、世界中で気候変動がリアルに感じられてきているということに続いて、日本でも、やはり国内の気候変動というのは、かなり一般でも洪水被害等を通じてリアルに感じているということがあるということで、カーボンプライシングに関するコンセンサスというのも、だんだんとできてきているのではないのかなというふうに思っております。それで何点か申し上げます。

まず第一に、低炭素だけではなく、脱炭素ということになりますと、ますますカーボンプライシングの価格シグナルが大事になってくるというような世の中になってきたというふうに考えております。イノベーション、あるいは新しい技術、CCUSのような投資が必要になってくるということになると、価格シグナルというのがとても大事だというふうに考えております。

2点目は、カーボンプライシングのカバレッジが広いほうがいいだろうということを申し上げたいと思います。今期待されているイノベーションというのは、従来の業種の枠にとどまらない、業種を越えるようなイノベーションが必要になっているということだと思うんですね。例えば電気自動車にしても、自動車業界だけではなく、いわゆる発電部門も関係してくるというところで、そういった幅広い政策が必要になってくるということを思っております。

三番目は、国際競争力という点でも、何人かの方からご指摘あったように、新しい局面になってきたということを申し上げたいと思います。今までは日本だけが政策をすると不利益を被るという話だったのですけれども、今や、むしろほかの国のほうがいろんな政策を実施していて、EUの国境炭素調整などは、もしかすると日本のほうが、施策があまりないということで、不利益を被るリスクがあるということがあるのではないかと懸念しております。実際、日本では、いろんな暗示的炭素価格というのが導入されていると言われてはいるのですけれども、これを海外に分かりやすく伝えるということは、なかなか難しいので、注意が必要だと考えています。しかも、最近ですと、本日、大臣から中国の話がありましたが、今や韓国でも排出量取引は2015年からやっておりますし、最近、私が参加しました国際ワークショップですと、既にインドネシア、先ほどもありましたベトナムでも、排出量取引の議論というのが行われているといったところで、日本が今や環境政策の後進国になるのではないかといったような懸念を持っていて、そういったものが日本企業のマイナスイメージになるのではないかといった辺りも懸念しております。

それから、成長に資するカーボンプライシングということに関して言いますと、確かに炭素税の税収をうまく活用するといったようなことで、できるのではないかというふうに思っておりまして、先ほど遠藤委員からポリシーミックスという話がありましたけども、税収をうまく補助金に使うとか、あるいは思い切って法人税減税に使って、グリーン成長を促進するとか、そういったようなこともできると思いますし、コロナということで言うのであれば、グリーンリカバリーといったことに大胆に使っていくといったようなことを考えることができるのではないかというふうに思いますので、制度設計次第で、成長戦略に資するカーボンプライシングというのは、非常に現実的な政策だと思います。ですので、こういった経済成長に直結して、気候変動対策にもなるというような、具体的な政策を議論していくということが今必要になってきているというふうに考えております。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、この順番というように私のほうのメモに記されているのですが、これでよろしかったでしょうか。まず、牛島委員に、次にご発言をいただきたいと思います。その後、小西委員、それから石田委員、そして増井委員、この順番でご発言をお願いしたいと思います。事務局、これでよろしいでしょうか。あと、椋田委員になります。

事務局

問題ございません。

浅野委員長

大丈夫ですね。

それでは、お待たせしました。牛島委員、どうぞお願いいたします。

牛島委員

本年もよろしくお願いします。牛島です。

私のほうも、主に普段、様々な企業さんと、こうした問題に一緒に取り組んでいる立場でありますので、どちらかというと、民間企業側の意見というか、感覚が多く含まれているわけなんですけれども、先ほど来、経済界には反対というふうなコメントもありましたけれども、少なくとも私が周りにいて感じているのは、あながち全てがそういうふうなわけでもないというふうな感じは持っております。

特に日本においては、TCFDに賛同する企業が非常に多く、この活動も時間が経過しておりますので、それぞれ、気候変動問題と企業の経営の関わりというものを、比較的、長期的な視点で、企業内でシミュレーションが進み始めているというふうなところを感じております。なので、表向き、それほど、ネガティブだったとしても、実は中では、それなりに準備が進んでいるのではないかなというふうに考えております。

実際、政府のほうで脱炭素社会に向けた宣言がなされて以降、風向きが急激に変わったという実感を受けております。週にすると、1~2件は、毎週のように、各社にカーボンニュートラルの宣言に向けた取組ということに関する相談を多数受け始めております。実際、これを検討するに当たっては、クレジットの購入ですとか、あるいは再エネの利用というふうなことが必要になってきますというところ、そういったニーズというのは確実に高まっているというふうに感じております。

こうした企業が、先ほどのTCFD等々も含めて、グローバルな動向について、どういうふうに見ているかというふうなことについては、先ほどの環境省さんのご説明のとおりですけれども、一つは、やはりESG投資の拡大というのは、非常に大きな影響を各社に与えているものと思います。もう一つは、先ほど来出ております国境炭素税の動向というようなもの。さらには、今日、この場では出ておりませんけれども、EUタクソノミーの議論でございます。こうしたものが制度化されますと、国富の流出につながると同時に、各社にとっても競争力をそがれる可能性があるというふうなことで、非常に注目をしているところになります。

そういう意味では、グローバルに経済が既につながっておりますので、日本だけがどういうふうな主張をしたとしても、企業側としては、どうしてもそうした経営環境の変化に適応せざるを得ないというふうなところになりますので、そういう意味では、移行期間にどれだけの年数を我々として使えるのかというふうな視点も必要になっているのかなというふうに思っています。

一方で、ビジネスの機会として、既に幾つかの会社さんから相談を受けている中で、排出権取引をめぐるビジネス化、ビジネスの立ち上げというふうなことも、動きとしては顕在化しております。つまりは、カーボンニュートラルという宣言をもって、影響リスクをどれだけ低減するかだけではなくて、それを新たなビジネスチャンスとして動き始めている企業というのも、間違いなくあるというふうなところは、付け加えておきたいなというふうに思います。

全般としては、先進国の企業価値の源泉というのが、経営資産やサービスに移行するというふうに言われている中で、日本が出遅れているというふうな指摘も多くありますけれども、まさに、そういう意味では、我々、我が国として、産業構造をどういうふうに構造変革をしていくのかと。2030年には、日本のGDPは5%を切るという、世界の中で5%を切るというふうな、言わば影響力というのは、これから年々低下していくというふうなことが見込まれております。そういう中にあって、グローバルな動向とどうアダプトしていきながら、どのポジションで影響力を行使していくのかというふうな視点も必要になっているのかなというふうに思います。

最後にまとめるとすれば、そうした意味で、その産業構造の変更、あるいはエネルギーをこれから移行させる上の移行期間というふうなところを、どういうふうなステップを踏んでいくのかというふうなことと同時に、やはり先ほど排出権取引をめぐるビジネス化の動きもあるというふうなことですとか、カーボンニュートラルの宣言に前向きな企業が続々と増えているというふうなところもありますので、そうした新ビジネスを刺激していく、両方を満たすような制度設計というものが必要だろうなというふうに考えております。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、小西委員、どうぞお願いいたします。

小西委員

ありがとうございます。

事務局の検討に沿って三つ、お話しさせていただきたいと思います。

まず最初に、成長に資するカーボンプライシングはという点なんですけれども、やっぱりこれ、2050年ゼロということを首相がまさに宣言されて、もう予算とか税制とか金融、規制改革、あらゆる政策を総動員してということですので、まさにこれ、今、政府の2兆円の予算で、なるべくイノベーションを呼び水として、巻き起こしていきたいということですけれども、どうやって、今ある民間資金を、政府の2兆円という、民間資金に比べると少ない、非常に少ない金額でこれを促していくかといったときに、何が必要になるかという、そういった仕組みというところから、まず、成長に資するカーボンプライシングというところを考えていく必要があると思っています。すなわち、これは日本においては効率の悪い産業が、やっぱりカーボンプライシングによって別の産業にシフトしていくということも促すということが、日本の成長につながるということにもありますので、今の既存産業の成長に資するといったような、狭い感覚では捉えてほしくないなと。ぜひ広く議論していきたいなと思っております。

二つ目が、諸外国の動向にどのように対応するかということですが、これは、先ほどから土居委員も大塚委員もおっしゃっているので、もう繰り返さないんですけれども、これはやっぱり、これまで資料に、前回まとめた資料にも書いてある、リーケージの心配というのは、今、むしろ諸外国が進んできたことによって、日本を取り巻く環境が非常に変わってきました。やっぱり欧州の、炭素国境調整メカニズムという名前になるそうですけれども、これ、例えばWTOのルールとの整合性でいくと、例えばEUが輸入品に炭素排出量に基づく課徴金をかけるならば、域内の排出量取引制度の下での炭素取引価格に基づいた課金額になるといったことを、今、研究で発表されています。とすると、日本においても、今回のカーボンプライシング小委でも、国境調整措置も検討してもいいんじゃないかなと思っております。すなわち、日本にカーボンプライシングを入れる場合、何が日本の実情に合っているか、これまで日本の産業界さんが、この委員会でもおっしゃってきたように、リーケージを非常に心配されていらっしゃいました。とすると、むしろ日本もそういった国境調整措置を入れることによって、そのリーケージの心配を払拭するといったこともあり得ると思います。その場合、日本にもカーボンプライシングが、まさにどれぐらいの価格がというのが必要になりますが、そういった日本からも検討するという形でもいいんじゃないかなと思います。その場合、もちろん、パリ協定の6条の対応も含めて、例えばクレジットのディスカウンティングですとか、諸外国との取引のCorresponding adjustmentとか、そういったことも今回検討に入れてもいいんじゃないかなと思っております。

3点目が、もう一つこれ、今後の検討事項として、ぜひ前提として入れたいなと思っているのが、やっぱり2050年脱炭素化というのは、もう前提として検討に資するというのが今までの小委での議論とは大きく異なる点かなと思っております。バックキャスティングでどのようにそれを達成するかというと、まさに2050脱炭素化しようと思ったら、2030年に少なくとも45%ぐらいの削減は必要になってきますので、WWF、それをどのように達成するかという提言を出しておりますので、ぜひまたそれもこちらでもご紹介させていただければと思います。東京都さんが今回2030年に温室効果ガスで50%削減、大阪府さんも40%削減とか、日本の自治体も非常に意欲的な目標を出されてきていますので、世界のESG資金の3,000兆円を呼び込む、まさにどうやって呼び込んでいくかといった観点で、実際に2030年にどのような仕組みでそういった大幅な削減を実現していくか、そういった観点でぜひ話し合っていければなと思っております。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、石田委員、どうぞよろしくお願いいたします。

石田委員

ありがとうございます。JCLP共同代表の石田です。よろしくお願いします。

先ほど牛島委員から、日本企業の意見としても反対ばかりではないという発言がありましたが、JCLPとしては、2050年カーボンニュートラルに向けてカーボンプライシングは効果的な手段であると考えています。その理由は、世界中が脱炭素にかじを切りましたから、今後、脱炭素の産業や技術が大きく伸びることは間違いありません。オイルショックのように強制力のある状況ができれば、日本企業の潜在的な能力が生かされるに違いない。そして、脱炭素に関する優れた技術や製品を生み出して成長に寄与すると思います。その状況を作り出すのがカーボンプライシングであろうと考えています。脱炭素には社会的な仕組みの導入が必要で、自主規制や、やる気のある企業だけでやるのでは、恐らく達成ができません。全てのアクターが参加する仕組みが必要になります。CO2排出がコストアップになる仕組みをつくることで、先ほどから出ている脱炭素の価格シグナルが出せます。したがって、炭素税が望ましいと考えられます。企業としては計算がしやすいし、また、炭素税はたくさん出す企業がたくさん払う仕組みです。一方、非化石証書等の利用は、CO2を削減しようとする企業がコストを支払うもので、CO2排出削減の意欲を失わせるものです。たくさん排出する企業がたくさん払う仕組みが適しています。ただし、炭素税は行動変容を促すものでしょうから、もともとカーボンプライシングを課しても、CO2排出を構造的に削減できない産業があるでしょうから、ここについては免税とか技術的革新のサポートとして、国が炭素税から得た仕組みでサポートすることが必要かもしれません。

JCLPの多くの企業は、CO2排出削減は企業の成長を抑制するものだとは考えていません。実際、多くのJCLPの企業が売上げ増とCO2排出削減を同時に実現しています。前回までの議論は、カーボンプライシングの導入の是非をめぐって平行線をたどったように感じます。ですから、今回は導入を前提に、カーボンプライシングを導入する場合の方式とか条件とかを具体的な内容に踏み込んでほしいと思います。

以上です。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

それでは、次は増井委員、椋田委員、安田委員、この順番でお願いをしたいと思います。

では、増井委員、どうぞお願いいたします。

増井委員 

どうもありがとうございます。

まず、これまでの議論との違いというのは、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにするということがまず共有されたということかと思います。カーボンプライシングというのは、その様々な脱炭素に貢献する取組を誘導するという、これまでの役割が、ますます大きくなるのではないかと思っております。そういう意味で、今回の資料を拝見させていただいたんですけれども、前提が成長に資するカーボンプライシングということで、グリーン成長戦略ですとか、イノベーション戦略に近い内容であり、こうした動きを加速させて気候変動対策が経済を牽引するという、これまでにない動きというのは、非常に大きな意味があるのかなと思っております。

ただ一方で、2050年までに脱炭素社会を実現するということが表明されて、共有されているんですけれども、ややイノベーションに力点が置かれ過ぎていて、イノベーションというものが全て解決してくれるという、やや楽観論的なところがあるのかなというところが少し懸念されます。そういう意味で、脱炭素社会の実現には、もちろん、イノベーションの実現も重要なんですけれども、それを待って取り組むのではなくて、もう今からできることというのをどんどん取り組んでいく、強化していく、そういうことを実現していく必要がありますので、そういう意味でも、このカーボンプライシングの役割というのは非常に重要になってくるだろうと思います。

また、供給側の取組だけではなくて、需要側の取組を支援する、あるいは加速させるということからも非常に重要であろうと思っていますし、特に省エネといったところに加えて、消費行動ですとか、生産行動の行動変容を促すといったところにおいても、このカーボンプライシング、非常に重要ではないかなと思いますので、そういった点をぜひきちんと議論していきたいと思います。

イノベーションにつきましては、もう書かれているとおり、その重要性というのは、まさにそのとおりなんですけれども、そのイノベーションで生まれた取組ですとか製品が社会に普及しないと脱炭素につながっていきませんので、こういうイノベーションに期待されている製品ですとか取組、こういったものが選択されて普及していくというためにも、カーボンプライシングの役割というのは重要になるだろうと思っています。もうこういった検討会で、何年にもわたってカーボンプライシングの議論が行われておりますので、できるだけ早く具体的な制度設計、制度の議論というところに入ることができればと期待しています。

最後に、今回、新型コロナウイルス感染症による影響からの回復という点なんですけれども、もちろん、投資といったものがその対策のためにも必要になってきますが、やはり元に戻すというのではなくて、新しい持続可能な社会を構築するという意味からも、その新しい価格的なシグナルというのは重要になるだろうと思っています。2050年というのは遠いようで実は非常に短い30年後ですので、短期的な支援と長期的な対策というのは切り分けて捉えて、短期的な活動というのが、長期的な脱炭素に向けた取組を阻害しない、ロックインをしないよう長期的に脱炭素に向けて必要な措置を早期に導入させて、そういうようなことが必要だろうと思っておりますので、そういった点においても、このカーボンプライシングというのは有効になるんではないかなと思っています。

以上です。どうもありがとうございました。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

それでは、椋田委員、どうぞお願いいたします。

椋田委員

よろしくお願いいたします。

先ほど、「中間的な整理」以降の国内外の動きというのがございましたので、少し最近の経団連の活動を紹介させてください。

まず、カーボンニュートラル、これを何より一日も早く実現する上で、やはり非連続のイノベーション、これが不可欠だと思っています。そこで、経団連は昨年の6月ですが、脱炭素に向けたイノベーションの推進、これを企業に強く呼びかけようということで、チャレンジ・ゼロという取組みを開始しました。現在、これに賛同いただいた178の企業・団体には、376件の革新的イノベーションに果敢に、そして具体的に挑戦をしていただいているところです。大変面白い取組ですので、ぜひ経団連のホームページをご覧いただければと思います。

こうした中、政府のほうでグリーン成長戦略を取りまとめられるとともに、2兆円基金の創設を決定されるということで、まさにイノベーションを軸に2050年カーボンニュートラルを目指そうとされている、これは大変重要なことだと思っているところでございます。

さて、今回の検討の大きな目的ですが、このグリーン成長戦略に記載のとおり、2050年カーボンニュートラルに向けた挑戦を我が国の経済成長につなげていく。すなわち経済と環境の好循環をつくっていくことだと理解をしております。その際、カーボンプライシングというのは、あくまでも手段でありまして、導入自体が目的でないということは言うまでもないことだと思います。この目的に照らした議論という意味では、先ほど来出ておりますけれども、政府のグリーン成長戦略において、「成長戦略に資するものについて取り組む」ということで、まさに「成長戦略に資するか否か」という評価軸が明記されたことは大変重要だと思っております。この後も、ぜひこの点、ぶれない形で議論する必要があると考えております。

加えまして、政府のグリーン成長戦略では、資料2の別紙1にも書いてございますけれども、カーボンプライシングにつきまして大変幅広い類型が示されており、私も読んで、とても参考になりました。この中で日本にとっての成長戦略に資するものがあれば取り組むということが政府の方針であるということも理解できました。

他方、政府の成長戦略では、キャップ・アンド・トレード型の排出権取引制度とか炭素税につきましては、成長戦略の趣旨との関係で様々な課題があるということも明記されております。この点は経済界の課題認識と同じだと思っております。とりわけ、先ほど来少し話が出ておりますけれども、我が国のエネルギーコストが国際的に高い水準にあるという中で、当面、新型コロナウイルス感染症の影響で経済活動が大きな停滞を予期される中で、本当に国民生活や企業の国際競争力に深刻な影響を及ぼすことがないのかどうか、これは、まずしっかりと議論する必要があるというふうに思っています。

また、先ほど述べましたように、カーボンニュートラルの鍵はまさにイノベーションが握っていると思っております。政府が基金をつくって、これを支援しようとする一方で、カーボンプライシングによって企業のイノベーション創出に向けた研究開発投資などが阻害されることがないのかどうか、ここについても併せて丁寧な議論が必要だというふうに思っています。

以上、成長戦略の観点、コロナ禍の経済への影響の観点、あるいはイノベーションの観点から、今後の検討に当たっての幾つかの論点を提起させていただきました。

最後に、2050年カーボンニュートラルを実現することが重要だと思いますが、これを実現するためには、全企業の99.7%を占めて、ベンチャーをはじめ、イノベーションの担い手として、まさに期待されています中小企業の貢献が不可欠だと思っています。であるがゆえに、成長戦略のためのカーボンプライシングの議論でございますので、これら中小企業の視点というものが重要になってくると思います。ただ、残念ながら本小委員会には中小企業の代表の方が入っておられません。先ほど、大臣から産業界の声に耳を傾けるという大変温かいお言葉をいただきました。今からでも遅くないと思いますので、例えば日本商工会議所の方にご参加いただくことで、より有意義で建設的な議論ができるのではないかと思っております。ぜひこの点につきましてもご検討いただきますよう、よろしくお願いいたします。

私からは以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

この次は、安田委員の順番と申し上げましたが、吉村委員が5時半に退室ということでございますので、安田先生、申し訳ありません、ちょっと吉村委員に先にお願いしたいと思います。

では、吉村委員、どうぞ。

吉村委員

割り込んで申し訳ありません、吉村です。

私からは3点ございます。一つ目が、既に何人かご指摘がありましたように、国境調整措置の検討状況については高い関心を持って注視していく必要があるということです。国境調整はWTOルールとの関係で、かなり緊張関係に立つものですので、EUだけが言ってる分には、その実現可能性はかなり低いものだったと思います。ところが、アメリカでも環境政策に重きを置く政権が成立しましたので、今後、何らかの形で実現する可能性が高いだろうということです。この流れに乗り遅れると、日本企業の足かせにもなり得るということであります。

二つ目ですけれども、2050年カーボンニュートラルの目標に向けて、やはり長期にわたって安定した制度の枠組みを目指すべきだということです。先ほどご指摘ありましたように、排出活動を広くカバーする、経済活動の範囲を広くカバーするような、そういった制度設計が望ましいだろうということです。

三つ目につきましては、これからカーボンプライシングを導入する方向で検討していく際には、コロナ後ではあっても、今回のCOVID-19で傷ついた経済あるいは国民生活へのインパクトをどう緩和していくかという視点を忘れてはならないかと思います。また、先ほどありましたように、イノベーションをどうやって後押ししていくかといった重要な視点もあわせて、これらの視点に対応する財政面での支援に結びつくような制度設計が望ましいのではないかと考えております。

以上です。

浅野委員長

どうもありがとうございます。

それでは、お待たせしましたが、すみません、安田委員、ご発言をお願いいたします。その後、前田委員の順番です。

安田委員

よろしいでしょうか。

浅野委員長

はい、どうぞお願いいたします。

安田委員

安田です。

皆さん、もういろんなご意見が出てきてして、しかも開始からかなり時間もたっているのでお疲れかと思うので、まだ言われていないことを中心にお話ししたいかなと思います。

今回というか、中断前の前回の中間取りまとめでは、意欲的なビジョンが掲げられている一方で、やっぱり分析の中心は定性的なもので、あまり定量的な評価が十分にはできていなかったような印象を個人的に持っています。なので、今回はカーボンプライシングによって、どれぐらいこのCO2削減の効果が期待できるのかという定量分析をより厚みを持たせていく必要があるのはないかと。中間報告までの成果で言うと、主にカーボンプライシングによって期待できる財源効果と価格効果、二つあるんですが、一貫して財源効果は、これは定量的に見ても期待できるんではないかと。価格効果が、少なくとも今、日本で出そろっているデータを基にした分析だとあまり大きく出ていないといったような状況にあると思います。ただ一方で、価格シグナルが効かないことはないはずなので、どの程度これが、例えば実際に投資が起こる中長期的な経済活動とつながっていったときに、この財源効果と価格効果のシナジーというか、掛け算の効果みたいなのはどれぐらい現れるかというのは、今後進めていくべき課題ではないかと思います。

一方、財源効果に関して、何人かの委員の方から既にあったかもしれないんですけれども、カーボンプライシング、炭素税型にしたときのメリットの一つとして、集まってきた税収を投資に向けられる財源効果があるので、そういったプラスがあるのではないかというお話があって、それは確かにそのとおりなんですが、財源効果が期待できる、かつ、岩田委員でしたかね、この気候変動というのがもう人類の危機だということを踏まえると、これは税金を集まってきたからそれを使って環境対策するんではなくて、効果があるんであれば国債でも何でも発行してやればいいんじゃないかと。恐らくグレタさん辺りだったら、今すぐやれと言われて終わる話だと思うんです。なので、財源効果が期待できるから税収が集まってくるカーボンプライシングというのはやや本末転倒な気がしていて、本来、人類の危機ということは将来世代の危機でもあるわけで、そのために国債を含めた財源が何であれ、有効な手段を今すぐ講じるというのは、特にカーボンプライシングの中身であるとか、税収の多寡にはよらないような気がしています。

ほかに、我が国が何か他国にリードできるようなことはないか。ちょっと後進国かのようなイメージが委員の中にもつきまとっているような気もするんですけれども、一つ、これは少し、若干短期的な実現というよりかは中長期をにらんだときに個人的に考えているのは、消費ベースか生産ベースか。これは炭素排出のはかり方もそうですし、炭素税、カーボンプライシングを行ったときに、上流・中流・下流、どこで課税するかという話ともつながってくると思うんですけれども、消費ベースに行く行くは寄せていくというのは、かなり筋の通った考え方ではないかと思っています。先ほど来、国境調整の話とか日本企業の競争力点々々というのが出てくるんですけれども、これは生産ベースでカーボンプライシング課税しておくと、国内でそういった税率を高めたときに、日本の生産者にとって、ディスアドバンテージになってしまうということなんですが、生産ベースでは課税しないで、消費者が最終的に製品を買うときにどれぐらいこの製品を作るのにCO2を排出しているか。その量に応じて課税するという形にすれば、日本の企業だろうが、外国の企業だろうが、結局、どれぐらいサプライチェーンの中でCO2を使ったかに応じた、ある意味平等に課税ができると。しかも、これは国際連携をする必要もなくて、日本が単独で始められるわけですよね。数年で実現可能か分からないですけれども、10年、20年たったときにお店に行って何か商品をぱぱっとスマホか何か、スマホは、そのときはもう時代遅れになってるかもしれないですけど、かざすと、ブロックチェーンで、今までどれぐらい生産過程を通じてCO2が排出されてきたか立ちどころに見える化されて、それに応じた税金を払うといったような形で、消費者が自分が買っているもの、あるいは使っているサービスにどれぐらい環境負荷をかけているということを把握しながら、それを、要は見える化、プライシング、価格づけしていくというほうが生産ベースで、最初作るときに企業が税を負担して、消費者に直接見えないという形よりも本来は筋がいいんではないかと個人的には思います。すぐに実現しろといっても難しい話だと思うので、そういった、まだ他国でやられていないような将来的なカーボンプライシングとかを少しイメージしながら、これは2050年のカーボンニュートラルを図るということを考えると、何か抜本的に大きいことをやる必要が出てくると思うので、そういった少し、ちょっとドリーミーな視点と、2030年中間目標を見据えた定量的な分析に基づく、地に足のついた分析と二本柱で今回の再開以降の委員会では何か議論が進めていけたらなと個人的に思っています。

以上です。ありがとうございました。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

それでは、次に前田委員にご発言をいただきます。前田委員、大野委員、大橋委員、この順番でお願いをいたしますので、よろしくお願いいたします。

では、どうぞ前田委員。

前田委員

東京大学の前田です。本日の委員会、しばらく空いていてからの再開ということですので、これまでの議論の復習と、それから、それを踏まえた今後の検討事項の案ということが主なお話だったと思います。この復習の話はこれまでたくさんの先生方からお話があったと思いますので、私は後者のほう、当面どういう議論をするべきなのかということについて、私なりの考え方を少し述べさせていただきたいと思っています。時間が許せば3点、まず2点、時間があれば3点、お話ししたいと思います。

一つ目は、まず再開後のお題が成長戦略に資するカーボンプライシングとはどういうものかということでありまして、これは具体的かつ定量的に議論に踏み込んでいくというようなことなのだろうと思っています。その意味で、どこの、どういう経済主体に、どういう技術を対象にして、どういう時間軸でプライシングをしていくか、あるいは経済的なインセンティブを与えていくかということが細かい議論になるべきで、そういう細かい議論、私はこれを解像度の高いプライシングという言い方がいいかなと思うのですが、そういう解像度の高い議論というのが必要だろうなと思います。その中で、特にこの時間軸というのが大変重要で、それは2050年というエンドポイントがありますから、このエンドポイントに向かってどうしていくのか,それを逆算して考える、つまり2050年から逆算した時間軸に沿った議論というのが、今後、特に重要になってくるのではないかと思っています。

そこで、2点目ですが、では、どうしたらこういう具体的な議論が可能になるかというと、やはりそのキーになるのは、枕言葉についています「成長戦略に資する」という点だと思います。この成長戦略という議論はずいぶん昔からあって、その柱は昔からずっとイノベーションを促進するということだったと思います。そこで、このイノベーションですが、今申し上げましたように成長戦略、あるいはグリーン成長と言ってもよいかもしれませんが、それを実現するものがイノベーションであり、よってイノベーションを促進することが成長戦略そのものである、といった長い長い議論がされてきたと思います。こうした長い議論の結果、政策によって実際にどんなイノベーションができたかというと甚だ心もとない。このことが示す一つの教訓は、イノベーションは政府が旗を振って、やるぞと言って突然ぱっとできるような、そういうものではないということだろうと思うのです。実際に起きるイノベーションは何か政策によって簡単に実現できるようなそういうものではなくて、案外気がつかないところにあって実は大変革が起こっているというようなものなのだろうと思います。身の回りを見回してみると、実は世の中にはイノベーションがあふれていて、あ、これが実はイノベーションだったのかということが後から気がつく。あるいは長い目で見て、100年くらい経ってから振り返って、あの時代、大変革が起こっていたのだなということが分かる、そういうのがイノベーションだろうと思います。逆に言うと、今その真っ只中にいる人たちにとってみれば、ちょっとずつ、少しずつの変化であって、気がつかないうちにイノベーションが起こっているという状態なのではないかと思うのです。例えばですけど、今こうやって我々が使っているビデオカンファレンスですけれども、これは一見簡単そうに見えて、実は物すごいテクノロジーなんですよね。これはこの単体ソフトだけではなくて、それを支える端末とか、それに関わる情報インフラというのがあって、それで成り立っているわけです。それぞれ一個一個の技術は小さいけれども日進月歩になっていて、それが総体となって気がつかないうちに我々の生活の一部に自然になってきてしまっている。もう最近は、このZoomなくしては、僕らは生活あるいは仕事ができないというような状態になっているわけです。こういう何か気がつかないうちにインパクトのあるイノベーションができ上っていて、それに自然に我々がなじんでいるという状態になっているわけです。私はこれを「サイレントイノベーション」と呼んでいるのですが、そういうサイレントな形でちょっとずつ、しかし着実に出来上がり、我々の日々の生活にこっそりと入ってくる、それこそ本当のイノベーションじゃないかというふうに思っています。

こういう観点から振り返ってみますと、今日のお話の中で、資料の最初のほうの7ページで、2013年以降の排出量はコンスタントに減っていますというお話がありました。一方で、9ページ以降、日本経済の様子についてのお話がありました。それを見てみると、やはり確かに2020年、去年は大変でしたが、それ以前は日本が大不況だったということは特にないわけです。世界的に見ても過去10年ほど大不況だったということはないです。その大不況でもない期間に日本が、排出量をコンスタントに減らしてきたということになります。これは、やっぱりとっても重要なことだと思います。なにか特別なことがあったわけでもないのに減っている。このことは大変重要です。7ページの説明では、省エネが進んでいますというようなことが書いてありましたが、ではその裏には一体どういうことがあったのかというと直ちにはわからない。しかしなんらかの省エネ技術の大きな普及があったはずで、であるならば、一体どこのどういう技術がどういう形で入ってきたから排出量が減ったのだということを、やっぱり突き詰めて見てみなきゃいけないと思います。それがきっとサイレントイノベーションなのではないかと思います。だから、こういう過去のデータを見て、特に日本の過去10年くらいはとってもいいケーススタディーの題材を提供していると思います。ケーススタディーとして、サイレントイノベーションというのが実際はどういうふうに起こっていたかというのを調べてみれば、どこにどういう形で解像度の高い経済的インセンティブを与えることができるかという議論につながるのではないかと思います。

簡単にまとめますと、過去10年くらいのサイレントイノベーションをよくケーススタディーして、そのもとで解像度の高いプライシングの議論をしていったらいいのではないかと思います。

もしよろしければ、あと1分だけ。あともう一個、コロナですね。新型コロナによって2020年は歴史に残る年になったと思います。今後ずっとこの2020年って、すごい年だったと言われ続けると思うのですが、これは人々の行動様式とか生活様式を大きく変えた年として記録されると思います。これは、言い方は悪いですけれども、壮大な社会実験をしたんじゃないかというように考えることもできると思います。やろうとしてもできないような社会実験、こういうことが起きてこうなると人々の行動様式はこういうふうに変わるという大実験をやったといえると思います。これは本当にとってもいい実験データですから、これをケーススタディーしてみることは大変示唆に富むことと思います。もちろん経済的に大打撃を受けている方も大勢いらして大変お気の毒とは言えますが、一方で、特にエネルギー消費という観点では大きく減っているはずです。特にその中でも、例えば我々がこうやってビデオカンファレンスをやっているように、今までやっていたことをこうやってデジタルに置き換えることによって、移動や輸送にかかるエネルギー消費が大幅に減って、それでも何も困らない、といったことがたくさんあるわけです。これこそ本当に目に見えないイノベーションの実験をしたというところだと思うのです。これをいいケーススタディーとして、よく分析すると解像度の高いプライシングの議論ができるのではないかと思います。

以上です。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

残りの時間があと約1時間ぐらいです。現在、発言ご希望の方が、私の目の前で分かっている限りでは6人いらっしゃるんですが、まだ、それ以外にもご発言をご希望の方があるだろうと思いますので、どうぞ残り時間を少し意識してご発言をいただければと思います。ありがとうございます。

それでは、今、前田委員のご発言をいただきましたので、次に大野委員、大橋委員、そして高村委員、この順番でお願いをいたします。

大野委員

 大野です。簡潔に3点、お話をしたいと思います。

 一つは、カーボンプライシングとエネルギー転換の関係ということです。資料1にもありましたけども、昨年はコロナの危機によって経済活動が縮小して8%、CO2排出が削減されたということです。一方で、1.5℃目標を達成するためには、2030年まで毎年7.6%削減する必要があります。これを2020年のように経済の縮小で排出削減をするわけにいきませんから、どうするかといったら、エネルギー転換、エネルギーの質を変える、脱炭素のものにしていくということになると思います。

 この点で懸念されるのは、日本のエネルギー転換が遅れているという点です。特に電力のエネルギー転換が遅れている事です。昨年2020年、EUでは27か国全体で再生可能エネルギーが、初めて化石燃料発電、火力発電を上回りました。再エネ発電は38%、火力発電が37%になったということです。これに対して日本はどうかというと、まだ数字がちゃんと発表されていませんけども、恐らく日本では再生可能エネルギーが20%ぐらい、火力発電が70%台になるだろうと思います。大きくEUと比べて遅れているわけですね。エネルギーの脱炭素化という点でのこの状況というのが、今回の大きなテーマになっている成長に資するという点にも大きな影響を与えています。

 1月18日の日経新聞に、日本の大手約90社、代表的な90社が2030年度の再生可能エネルギー目標を40%~50%に、という大きな意見広告を出しました。これはご覧になった方もいらっしゃると思います。こういうふうに企業の皆さんが再生可能エネルギーを2030年、40~50%というのを要求されるのは、やはりそれがビジネスにとって、ビジネスチャンスを獲得していく上で不可欠なものになっていると、こういう認識があるんだと思います。逆に言えば、再エネ電力は使いたくても使えないというような状況のままでは、ビジネス、サプライチェーンからも除外されてしまうかしれないという危機感が広がっているんだと思います。

 では、40~50%という数字を2030年にやろうと思うとどうしたかということなんですが、やはりそこにはカーボンプライシングが無いとなかなか実現は難しいという状況があります。これは我々の財団の推計によっても、Bloombergの推計によっても出ていますが、例えば太陽光発電は2020年度の中頃には新設の石炭火力よりも発電コストは安くなる、と予測されています。しかし、既存の石炭火力というのも日本にはたくさんあるわけです。これと比べると、どうしても競争に負けてしまうということになります。また、ガス火力との関係でも、ガス火力が追いやられて石炭火力が残るということになります。ですから、自然エネルギーを増やすための脱炭素、低炭素の電源を使っていくためにも、カーボンプライシングがないとエネルギー転換は進まないという状況だと思います。これが第1点です。

 もう一点は、今後、具体的にどういうカーボンプライシングを導入するか、進めていくかということなんですけども、ここでは時間の問題というのを考える必要があると思います。カーボンプライシングは、2030年までの大幅な排出削減のために必要ですから、そうすると、どう遅くとも2020年代の前半には入れるということを目標に取り組む必要があると思っています。大きく排出量取引と炭素税と二つありますが、排出量取引ももちろんうまく設計をすれば、有効に機能いたしますが、EUの経験を見ても、いろんな試行錯誤を重ねて、ようやく最近かなり機能する排出量取引制度になってきたということだと思います。日本がこれから、ゼロから設計するとなると、早期に実効性のある制度というのが、かなりチャレンジになると思います。もちろん炭素税もいろんな検討要素はあると思うんですが、これは原型となる地球温暖化対策税もあります。

 それから、もう一つ、あまり議論されてない問題として、執行体制の問題があります。新しい排出量取引という制度を入れて、その執行体制をつくるということは、なかなか難しいことですから、やはりそういう点でも、当面はまず炭素税を優先的に検討するということで議論を進めるべきではないかというふうに考えています。

 3点目は、これは経団連へのお願いです。経団連の皆さんがいろんな提言を出されていて、私も改めて拝見したんですけども、反対、憂慮している大きな一つは、投資の原資を奪ってイノベーションを阻害するということをずっと主張されています。これ、もし本当にそういうことがあれば大きな問題ですので、具体的にどういうカーボンプライシングがあれば、どういうふうに投資の原資を奪うのかということを具体的にお示しいただけないかということです。経団連のいろんなペーパーを見てみましたが、私が見た限りでは、2017年10月に公表されたカーボンプライシングに関する基本的な見解、考え方というのが一番詳しいペーパーではないかと思います。これを拝見しても、具体的な数字について一切書かれていません。ですから、今回、皆さんもおっしゃったように、定量的な検討を進めるということが一つの大きな合意になっていますので、ぜひご懸念のある部分があるわけですから、その点について定量的に、カーボンプライシングがどのように投資の原資を奪って、どういうふうになるのかということについて資料を出していただけると、大変これからの議論に参考になるのではないかと思います。

以上、3点申し上げます。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

では、大橋委員、よろしくお願いいたします。

大橋委員

ありがとうございます。端的に2点申し上げます。

まず、1点目ですが、成長戦略に資するカーボンプライシングとは何かというと、懲罰的なものじゃなくて、誘導的なものであるべきじゃないかというふうに思います。誘導することによって行動変容が促される業種なり、企業さんなりというのは、確かに多く存在しますので、そうした業種なり、企業なりが時間軸の観点で投資計画を前倒ししてやれるような後押しをCPによって行うというような視点というのは、成長戦略に資するという観点で必要な視点なのかなというふうに思います。こうした投資は、例えば製造あるいは運輸などの業種では電化を伴うことが多い投資を要すると思いますので、そうすると、デジタル制御も同時に進むんだろうと思います。つまりDX化と環境対策が同時に進むような一石二鳥を追うような効果を生むのだと思います。

他方で、時間軸で見たときに、すぐにこうした行動変容ができない業種というのがあると思います。これは企業の責任ではなくて、業種とかテクノロジーの関係で、そうしたテクノロジーが出てくるのに時間がかかるという業種があると思います。そういうふうなところにとって、懲罰的に感じられないような細やかな配慮というのがやはり必要ではないかというふうに今後の議論では感じます。それが1点目です。

2点目は、それぞれの委員からお話がありましたけれども、国境調整というのはとても重要で、今回出される国内の議論においても、国境調整を視野に入れて、それを基軸としながら議論をすべきだというふうに思います。国内に閉じた議論をすべきではないというふうに思います。国内の温暖化対策は、ここでのカーボンプライシングを超えて我が国では様々取り組まれてますので、そうした点を整合的に整理して、見える化する取組というのをしっかりしていくべきだと思います。

最後に、国境調整の観点では、私も、先ほど安田委員がおっしゃったように、生産ではなくて、本来的には消費でCO2を、あるいは温室効果ガスの程度を測るような方向が本当は望ましいんだろうなというふうに思ってます。技術的にもトラッキングとかいろいろ難しい問題はあると思いますけれども、そうした方向で国際的な議論を広げていくような努力というのも併せてお願いできないだろうかというふうにも思っています。

以上でございます。ありがとうございます。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

では、高村委員、その後、手塚委員、諸富委員、この順番でお願いいたします。

どうぞ、高村委員。

高村委員

ありがとうございます。3点申し上げたいと思っております。

1点目は、昨年末に出ましたグリーン成長戦略、今回、事務局からもご紹介ありましたけれども、このグリーン成長戦略というのは非常に重要な中身を書いているというふうに思っております。これはもう冒頭にも書かれておりますけれども、やはり気候変動対策を積極的に行うということで、産業構造や社会経済の変革というものをもたらし、それによって次の成長につなげていくということが非常に明確に出ております。そういう意味では、気候変動対策が産業政策としての位置づけを持っているということを改めて確認をしたものだというふうに思います。もちろんこうした、特にコロナの感染症の影響の中での短期的なコストの懸念というのはよく分かるわけですけれども、同時に事務局からも、あるいはそのほかの委員からもありましたように、脱炭素化に向けた流れが非常に強くなっている。しかも、それは金融資本市場ですとか、あるいはサプライチェーンの中での取引先の評価にもつながってきているということを考えると、こうした気候変動対策を積極的に行うことでの次の産業構造、社会経済を次世代の競争力ある産業構造に変えていくということをしっかり打ち出されたというのが非常に重要だというふうに思っております。ここの委員会の文脈でいきますと、カーボンプライシングというのがそれにどう資するのかという点でいくと、私はその形、例えば税なのか取引制度なのか、場合によっては直接規制なのか、その形はともかく、まさにこの趣旨である産業構造と社会経済の変革をもたらす、そちらに企業を、産業を誘導していくという観点からは、やっぱり今よりは明確で分かりやすい強いシグナルを持ったプライシングが必要だというふうに思います。今でもプライシングがないとは言いませんけれども、次世代に向けて脱炭素に対抗した競争力ある産業構造に変えるということであるとすれば、やはりそうした基本的な考え方を持ったプライシングでないといけないと思います。

2点目ですけれども、この委員会の議論って非常に重要だと思っています。もちろん意識ある日本の企業さん、日本を代表する企業さん、既にインターナルにもうプライシングを入れてらっしゃいますし、そうした形で投資判断もされている企業が少なからずあることを了解しておりますけれども、繰り返しになりますが、やはり次世代の競争力ある産業構造をつくっていくためとすれば、それは意識ある企業が対応すればいいという次元の話ではなく、しっかり国がそうした産業構造に転換をしていくために、やはり企業により一貫した方向性を示すべきだろうというふうに思います。言い方を換えますと、やはり競争が行われる市場の中にしっかり炭素の価格が統合される、企業間の競争において、その炭素の価格が統合された形でしっかり競争していただくという、そうした市場をつくるという意識が国の、まさに産業構造転換の上で非常に重要だと思います。言い方を換えますと、脱炭素の方向で、自らのビジネスを転換し、あるいは転換しようとする企業の努力がしっかり市場で報われるという仕組みをつくる必要があると思います。それは排出しない技術や製品やサービスというのがしっかり市場で価値を得るという意味でもありますし、それを消費者や需要家が選択をするシグナルをしっかり国が制度として構築をするということであります。これは将来の革新的な技術のイノベーションにこそ非常に重要だと思っていまして、つまりこうした市場が将来、炭素の価格がしっかり評価された市場ができるという見通しがあってこそ、企業が今から10年後、20年後へ向けたイノベーションにお金を投じる、そういうインセンティブをつくるというふうに思っております。

最後、3点目でありますけれども、今回、先ほどのグリーン成長戦略、それから、その前の2019年のパリ協定の長期成長戦略でも、カーボンプライシングについては専門的、技術的な議論が必要であるというふうに書かれていると思います。全くそのとおりだと思ってまして、これまでの議論でも、本日あるいはこれまでの委員会の議論でも、幾つかプライシングに伴う懸念ですとか留意点というのは指摘をされていると思います。コロナの感染症の下での負担感ですとか、あるいはすぐには脱炭素に向けて転換ができない、そういうセクターや事業者もあるのではないか。あるいは社会的弱者の負担をどうするか。私、これらはいずれも具体的な制度設計の在り方いかんではないかというふうに思います。もうこれは、これまで先生方のご発言の中にもありましたけれども、誰をどのように対象にするか、軽減や激変緩和措置をどう構築するか、収益をどう利用するか、あるいはより広くこのカーボンプライシングの制度にとどまらぬ税制ですとか、全体の制度全体でどういうふうにその制度設計をしていくかという制度設計の議論だというふうに思ってまして、その意味では、ぜひ具体的な制度設計の次元で、今日あるいはこれまで表明されてきた懸念にどう応えるかという具体的な議論をしたいというふうに思います。

その上で、ぜひ検討いただきたい制度設計の議論の中で重要だと思ってますのは、一つは、先ほど申し上げた、より明確で、産業構造を転換したいわけですから、より明確で強いシグナルを出す、今よりも強いシグナルを出すプライシングというのをどうやって構築するか。一つの鍵は、やはりビジビリティだと思いますけれども、それは別の文脈で、つまり国境調整措置に対して一種の対応するという意味でのビジビリティでは、やはりこのプライシングが目に見える形であるということは、もう一つやはり重要な点ではないかと思います。

もう一つ、制度の議論の中で重要と思いましたのは、前田委員も時間軸とおっしゃったんですけれども、2050年のカーボンニュートラルに向けて企業の意識が非常に大きく変わってきていると思うんです。私が周りで伺うだけでも、企業の中、トップから、やはりとりわけインフラ事業を行っていらっしゃるところからは、どのタイミングで、どう投資判断をしていくかということを判断する上での長期的な炭素の価格づけ、炭素の価格の水準というものを明確に示してほしいという声を聞きます。これは投資判断をする際に、やはり株主に対してもどうしっかり説明をしていくかという観点からも求められていると思っております。その意味で、議論するカーボンプライシングは、いずれにしてもそうした時間軸を持った議論をする必要があると思います。この議論、ずっと長く委員会で議論しておりますけれども、どうしてもこれを具体的な制度にするためには時間がかかると思います。そういう意味で、早急の具体的な検討をお願いしたいというふうに思っております。

以上です。

浅野委員長

どうもありがとうございました。

結局、全員、ご発言ご希望ということになりますので、残りあと5人いらっしゃいます。本日与えられている時間はあと40分から45分ということですので、どうぞ割り算をしっかりしてご発言をお願いいたします。

では、手塚委員、それから諸富委員、森澤委員、河口委員、最後に清水委員、この順番で順次ご発言をいただきます。

手塚委員、どうぞよろしくお願いいたします。

手塚委員

それでは、鉄鋼連盟の手塚です。

少しリアルな話を踏まえて発言させていただこうと思います。まず、今回のカーボンプライシングの検討が成長につながるものに関してやっていくという前提になっていることに関しては大変大切なポイントだと思ってます。正直申し上げて、今、コロナの状況がどうなっているかというと、これは非常に厳しい状況にあると思います。そうした中でコロナからのリカバリー、これはグリーンであっても、グリーンでなくてもですけども、コロナからのリカバリーというのがまず大前提でないと、いろんなものが進まないんだろうと思います。数字を申し上げますけども、鉄鋼の大手高炉3社の19年度の、つまり去年の3月までの年度実績で総計7,000億円の赤字を計上しています。それから、20年度の上期で総計3,000億円赤字がもう出ています。こういった中で、今、目の前のビジネスでいかにサバイバルするかというゲームをやっているというのが実態でございます。そういう意味では、グリーンリカバリーといいますけども、実は今回のコロナの影響というのは、需要の喪失であって、生産設備が毀損したとか失われたと、そういう意味での不況じゃないのですね。震災とか災害とか戦争とか、こういうもので生産設備が毀損した場合には、これは新たなものに入れ替えて再出発させなければいけないという意味で投資が必要になってきますし、その際に新しいものを入れていくということになるのですけども、今回は、生産設備は全部無傷で残っていますので、止まってしまってキャッシュフローが入ってこなかった設備の償却をいかにして進めて回収するかが課題なのであり、つまり需要の喪失が最大の課題になっているというふうに理解しています。逆に言いますと、このように需要が1年間止まってしまったために、出てくるインパクトというのはどうしても企業にとっては設備投資の後ろ倒し、あるいは設備の新陳代謝の遅れというマイナスのインパクトが出てくるリスクが大きいんではないかというふうに考えております。ただ、その中でも、先ほどどなたか、ほかの先生もおっしゃいましたけども、中長期的に見たらば脱炭素に向けて動きを加速する必要があるということは十分認識しておりまして、私の所属しておりますJFEスチールでも昨年9月には、2030年の中期目標と2050年の長期ビジョンというものを掲げさせていただきまして、革新的な技術開発のスピードアップにコミットをしているところでございます。ただ、これには莫大な資金が必要になってくる。しかも、足元の財務体質は非常に弱っている。こういうことで、このカーボンプライシングがそうした脱炭素化へ向けての企業活動の足を引っ張るということがないように、ゆめゆめそういうことにならないように、ぜひ慎重な検討をお願いしたいというのが1点目でございます。

2点目は、基本的に我々鉄鋼業にとっては、大幅削減を行うために実行可能な技術というのは現状では存在していません。今、鋭意これを2030年頃までに技術を確立し、商業ベースに持っていくべく、革新技術開発というのを国のご協力もいただきながら進めているところでございます。実は、多くの技術分野でイノベーションが大事だという話をしていますけども、鉄鋼も同じような状況にございまして、政府のグリーン成長戦略の中でも、2030年までにそれぞれの革新技術が実用化し、コストを幾らまで落とすか。あるいは2050年までに、例えば水素のコストを今から10分の1にするといった定量的な目標が入っております。水素、CCUS、バッテリー、再エネ、あらゆる分野で2030年、2050年のコスト目標というのが入っています。逆に言いますと、そのコストまで行かない限り、つくった物が売れない、あるいは無理に復旧させると社会全体のコストアップにつながるということが認識されているがゆえに、2030年、2050年のコスト目標が政府の目標に掲げられていると認識しています。ということは、そうした状況の中で、今、カーボンプライシングでもって新しい技術の普及を図るであるとか対策を加速させるということを無理に行おうと思いますと、間違いなく社会全体のコストがアップしていく方向に行きます。先ほど大橋先生から、懲罰的なカーボンプライシングはよくないということをおっしゃいましたけども、この技術の開発プログラムが進むスピードよりも早く、このカーボンプライシングを入れていきますと、基本的には経済成長の足を引っ張ることになるんではないかというふうに私は懸念をするところでございます。と同時に、日本の場合、製造業がこのカーボンプライシングの影響を非常に受ける形になるんですけども、2018年の日本の輸出総額81兆円のうち、輸送機械、これは自動車ですけども、輸送機械と一般機械、電気機器、合わせて60%、つまり50兆円が海外の市場に商品を売ることで国富を稼いでいるという状況にあります。鉄の場合も、こういう製品の中に間接的に含まれて輸出されていく分、それから、鉄鋼製品そのものを輸出する分も含めて、売上げの60%が海外市場で使われている、海外で日本の鉄が使われているということでございます。そうしますと、先ほど申し上げたプリマチュアな、技術が未熟な段階でカーボンプライシングを入れて、日本のコスト競争力をそぐというようなことを行いますと、この80兆円の輸出によってもたらせる日本の富を何でもってカバーするんだという議論が出てきます。産業構造論の話につながるという話がありましたけども、実際にFITでもって太陽光パネルを大量に入れた結果、何が起きたかというと、日本国内の太陽光パネルメーカーはほぼみんな撤退しまして、先ほど、先日もパナソニックが国内生産から撤退というのを発表しましたけども、中国の太陽光パネルに置き換わったということになるわけです。したがいまして、いかにして国際競争力を維持しながら、この脱炭素化を進めていくか。その中でカーボンプライシングが日本の国際競争力を阻害しないような立てつけができるのかどうか、これが究極的には大事なポイントになってくるというふうに考えています。一部、先行して技術が進んでいる業界は少々のカーボンプライシングがかかっても、それがビジネスチャンスになるというケースがあるかもしれませんけども、部分最適だけでは、この日本の製造業60兆円の輸出をカバーすることはできないと思いますので、ぜひカーボンプライシングがマクロ的に日本経済全体にどういう影響が出てくるかということも踏まえた議論をする必要があると思います。

最後に、国境調整ですけども、これはその議論を詳しくする際にまたお話しすればいいと思いますが、EUが導入しようとしている国境調整は、なぜ導入しようとしているかというと、今までは排出権取引の制度の中で電力以外の多くの企業には無償配付という減免制度があり、つまりカーボンプライスが表面的にはかかっているんだけども、実際には免除されているという制度設計になっていました。それがこれから本当のカーボンプライスを導入することになり、国境調整が必要だという非常に強い産業界からの声があったために導入が検討されているということです。したがいまして、EUにおいて現状で圧倒的にカーボンプライスが国内で高くて、日本がそれに対して遅れているという議論になるとは、私は全く思っておりません。むしろEUの中は、日本よりもはるかに柔軟な免税措置あるいは免除措置、無償配付あるいはFIT賦課金の9割減免といったような、そのカーボンプライス・ディスカウント制度がありましたので、それをこれから外していく際に国境調整が必要だという議論をしているというふうに理解しています。アメリカの場合も、今までやっていなかったカーボンプライシングについて、バイデン政権がこれから温暖化対策を強化していくのに合わせて国境調整が必要になってくると、こういうことを主張しているんだろうと思います。したがって、日本がすぐにEU、アメリカに対して国境調整で不利になるということが起きるとは、この論理構成上ないんじゃないかと思います。もし日本の国内のエネルギーコストや、あるいはFIT賦課金を含めた暗黙的カーボンプライスも含めての実態が全く無視されて、EUあるいはアメリカ等の間で日本製品が国境調整の対象になるんだとすると、これは日本政府の国際的な理解活動あるいは、定量的な国内のカーボンプライス政策、あるいは環境政策の見せ方の失敗にほかならないというふうに理解しています。この国境調整は非常に複雑な話ですので、もしこれを議論する場があるのであれば、また改めて詳しくお話ししたいと思います。

私からは以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、諸富委員、お願いいたします。

諸富委員

ありがとうございます。私は2点、お話をさせていただきます。

まず、成長と脱炭素化というところですけれども、これはいろんな国際機関が、IAEAやOECDをはじめ、マクロ経済モデルとエネルギーと連携したマクロ経済モデルを回していますけれども、かなり高率のカーボンプライシングを入れていきながら脱炭素に向かっていきつつ、しかし、脱炭素化を図らない場合より、成り行きケースよりもむしろ成長率が高くなるというモデルの結果を出して、その要因を見ていきますと、やはり一番大きいのは民間投資、それから公的投資、そして、産業構造の転換が執行されることによって、より産業が成長を生み出していく構造に変わっていくという辺りが、なぜ成長率がより高くなるのかという大きな原因ですね。その中に、モデルの中にはカーボンプライシングが入ってくることが想定されているわけですけれども、やっぱりカーボンプライスが入ることによって民間として促される、シグナルでですね。それから、やはりその税収が環流されていくことによって公的投資が脱炭素へ向けて促されていく。産業構造転換というのは、より脱炭素の方向へ転換しつつ、やはり、あとはデジタル化、サービス化の方向ですね、より付加価値の高い産業領域に産業全体が変わっていくということを通じて成長率が高まっていく。こういった転換へ向けた誘導を果たしていくのが実は炭素税ないしは排出量といったカーボンプライシングだと思いますね。ですので、恐らく国際的なもう常識のレベルですけど、アカデミックなレベルでも、それから国際機関の評価でも、脱炭素化と成長、あるいはカーボンプライシングと成長という点では、むしろ成長促進的であるということについてのコンセンサスができつつあるというふうに言っているんですね。

先ほど、手塚委員からのコメントにあったところ、あるいは遠藤委員からもコメントのあったところですが、確かに炭素負担が増えることは産業にとって短期的な打撃かもしれないですが、それを避けることはかえって中長期的には日本の産業の競争力を失うことになるのではないかというふうに思います。つまり21世紀は脱炭素経済の獲得をめぐる国際競争になっていくはずです。その点で、脱炭素に遅れをとるということは、すなわち国際競争力をむしろ失うということで、バリューチェーンでますます再生可能エネルギー100%の電気を調達し、生産するようにという、例えば各国からのプレッシャーが強まっていくことに典型的に現れていますように、こうなりますと、再生可能エネルギーで生産をできない、例えば日本の企業があったとすると、バリューチェーンから、あるいはサプライチェーンから外されてしまうということで、かえって競争力を失うことになるわけですね。ですので、いかにして脱炭素経済を獲得していくかということを目標に置くならば、カーボンプライシングというのは、やはり不可避である。カーボンプライシングを使いながら、いかにして日本の経済、産業構造を構造転換していきながら脱炭素へ転換をしていくか、それが実は国際競争力を高めていく道であると。短期的には負担増となっています。最終的には、それが日本経済の生き残る道だという認識、コンセンサスを形成していくことが非常に大事じゃないかなというふうに思います。

もちろん、2点目ですけれども、それが、国際競争力が、少しその話に入っていましたけれども、あるいは投資の原資を奪ってしまう、こういう批判がなされてきたわけですけれども、ちょうど10年前、一旦、日本でも排出量取引の導入論議が盛り上がったことがありました。しかし、結局導入は見送られ、非常に低い税率の温対税が入ったのみという状態になったわけですけれども、それから10年間、果たして日本の産業及び日本経済の成長力は高まったのか。高まっていないわけですね、残念ながら。つまりカーボンプライシングは、ある種回避をして負担を抑えたことになったわけですね。しかし、様々な指標がGDPの成長率、それから企業のマーケットシェア、売上げ、あるいは炭素生産性、いろんな指標を取ってみても、むしろ日本経済、日本産業の地盤沈下がはっきりしてきているのではないでしょうか。つまりカーボンプライシングを避けることは成長にとってプラスになるのか。ならないというのがこれまでの経験から示されてきていることではないかなと。逆に他国で、カーボンプライシングをしっかり入れてきているところは産業の構造転換を図りながら、より付加価値の高い領域に経済を構造転換させつつ、むしろ成長しながら、むしろカーボンの排出を減らしてきているというわけであります。こういった構造転換ができてない日本は成長もしなければ、CO2の排出は減ってない。これは非常に不名誉な状況であります。例えばスウェーデンは、1990年から2017年の間に経済の成長は78%プラスですね。それから、CO2の排出はマイナス26%という、いわゆるデカップリングを実現しているわけですね。日本は残念ながらデカップリングし切れていない状況で、国際競争力、あるいは国際競争力を低下させてきている。こういったエビデンスがもう出てきているわけですね。

ということで、カーボンプライシングは、その中核的な要素として入っていき、これまでのエビデンスの示すところによれば、成長と、それから脱炭素を両立させる中軸となる政策手段として位置づけられるし、そういう実績を示してきている。過去1990年代初頭から入れてきて、過去30年の実績がそれを示しているというふうに思います。

もっとも、鉄鋼をはじめとしてカーボンプライシングに対して非常に大きな懸念を抱いてらっしゃる産業の方々が当然いるわけで、我々はそれを全て理解をしています。しかし、今どういうことが起きてきているかというと、もう、例えばスウェーデンの鉄鋼メーカーは、2035年には水素還元法を入れて、それを実証炉として動かし、45年には商用炉としてそれをもう動かすと。2045年には、もうそのカーボンニュートラルな製鉄業を自分たちは成立させているということをして、もうプロジェクトに着手しているわけですよね。ただ、もっとも、それには莫大な、これは手塚さんがおっしゃったとおりであって、莫大なコストがかかるというわけですね。ですので、EUは復興基金をこの度成立させて、そして、様々な財源措置、その中には排出量取引制度や国境措置に関する収入も入ってきているわけですけども、こういった財源措置をしっかりしながら、実はそういった脱炭素に向けた産業の根本的な転換に対する投資補助金を、こういった炭素税収あるいはその排出量取引の収入でもって投資補助金を出すというスキームを持ってきているわけですね。これが彼らの言うグリーンディールですよね。ですので、もしその、いわゆる素材産業、CO2材料排出産業の皆様が本当に真剣に脱炭素に取り組むということであるならば、単にカーボンプライシングを入れてコストを上昇させるだけ、これだと確かに大変ですよね。なので、脱炭素に向けた根本的な転換をするということを条件に何らかの財源措置を取って、その税収でもって投資補助金を出していく。EU復興基金を見ながらですけども、そのようなことをしっかり考えていく。そのためには日本の産業の将来像、2030年、40年、50年に向けて、どういうふうに日本の産業を形づくっていくのか、脱炭素をしながら成長できる産業をつくっていくのかということについて、きちっと議論をしていく。何かカーボンプライシングをめぐって堂々巡りの議論をしているのではなく、どういう産業をつくって生き残っていくのか、脱炭素経済化できるのか、こういう議論、問題の議論をしっかりやっていくべきではないかと思います。

以上でございます。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、森澤委員、お願いいたします。

森澤委員

ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

カーボンプライシングをファクトに基づいて考えていくということですので、どのようなデータがあるかということをご紹介していきたいと思います。環境も経済もということで、気候変動対策している企業を投資家が評価するという仕組みをCDPは20年前から始めております。CDPでは、企業の取組をその開示について評価しており、A評価の企業が2020年には271社ございました。その中で、発電セクターでAを取っている企業が世界で18社あるわけなんです。この発電セクターの中でも、全て残念ながら、この18社は海外の発電セクターの企業ですけれども、発電セクターでは、エネルギー源別に発電量、スコープ1、排出量、排出係数というのを開示いただいております。エネルギー源別といいますのは、石炭、石油、天然ガス、バイオマス、原子力、地熱、風力、太陽光、水力という分類です。これをエネルギー源別で報告いただいてますから、経年で報告データを見た場合に、発電会社のエネルギーの移行状況が見えます。Orsted、A評価になっておりますけれども、この企業は2019年から2020年におきまして、ソーラー、風力が前年から大きく増えています。一方で、石炭は2019年から2020年報告では半分になっています。そして、結果、スコープ1の排出量は、2020年は2019年の約半分になっている。こういうデータが誰でもといいますか、投資家、ステークホルダーが重要と思う、そういう報告の箇所のデータを活用していただくことができますし、世界中で活用されています。

企業のほう、今二つ目、これから三つのポイントで話したいというのを先に言い忘れましたが、二つ目に企業のポイントなんですけれども、企業は、日本企業は、A評価となった企業さんが53社とアメリカと同数で、世界で1位です。国別でなく、ヨーロッパというくくりになりますと、ヨーロッパは127で大分多いわけなんですが、このカーボンニュートラルの宣言の前から取り組んでいる日本企業はあるわけなんです。もう長年、こちらのほうにAを連続して取ってらっしゃる企業、これは世界中での競争を考えて脱炭素に向かっていかないといけないというふうに考えてらっしゃる企業さんがあるわけです。科学的根拠に基づく目標、SBTと呼んでおりますけれども、これについて1.5℃という目標を掲げてらっしゃる、もうネットゼロも考えてらっしゃる、そういう企業さんも多いです。

一方で、セクターによりましてはスコープ3が重要なセクターというのもあります。これはサプライヤーさんがどのように活動していくかということで、サプライヤーに対してエンゲージメントしてらっしゃる日本企業さんもございます。これは排出量の算定だけでなくて、目標設定、脱炭素に向けた戦略の策定、これが重要だと。これはサプライヤーさんに早く気がついていただいて動いていただきたいと考えておられるからです。ここの中では、欧米では取引先への働きかけでこのCDPを活用していただいて回答していただいている企業も、多いです。回答企業数でいきますと、ヨーロッパも2,500を超えておりますし、アメリカも2,000を超えております。日本以外にアジアで、意外なことに、これ2,000社が超えております。日本企業は約800社ほどです。サプライヤーさんも含めて800社ほどが開示していただいておりますが、CDPはこのTCFD提言を受けて、質問書TCFD準拠してまして、セクターごとの対応というのも2020年に終わっておりますので、言わばCDPに回答されている企業はTCFDの対応が容易なわけです。こういった取引先からエンゲージメントされている企業さんはいいんですが、今申し上げましたとおりに、日本でのそういった回答企業数というのは少ないです。Aを取って頑張っていただいているような企業さんも多い一方で、、裾野がまだ広がっていないと言えます。ここで菅首相が宣言されましたカーボンニュートラルを2050年までにと宣言されましたことで、政策が出てくることで、気づかなかった企業、特に中小企業に対しての働きかけ、そういったものが制度的に必要になってくる。このままでは取り残されてしまうと。脱炭素に向かってない企業が残っていける状況ではないので、早く気づいてビジネスの戦略を変えていかないといけない。そういう働きかけが必要であるというところになります。

CDPの気候変動の質問書におきましては、重要な排出権の除外なしに、スコープ1、2の排出量をそれぞれに70%以上の第三者検証を受けていること、これがA評価を受けるための条件となっているんですが、以前の委員会も2年ほど前になりますけれども、この排出量取引制度が日本で導入されてない。排出量取引制度を導入するということで、枠組みが、それがいいのかどうかは別にしましても、副次的効果としまして、排出量の報告及び第三者検証ということが義務化されるわけなんです。これがまだなされてないことで排出量の報告もきちんとできないような企業さんがたくさんあるわけなんです。そこがこれからどのように脱炭素に向かって取り組んでいかないといけないかということを、この制度設計の中でまず働きかけも含めて考えていかないといけないと思います。

CDPの質問書の中では、カーボンプライシングシステム、ETSやキャップ・アンド・トレード、それから炭素税によって規制されていますかとか、そういった回答をしていただく項目がありますし、また、社内カーボンプライシング、プライスを使用してらっしゃいますかとか、その場合は幾らですかという項目もありますので、そういったデータは2020年のデータももう出てますので、経年で見ていただくことで、世界の企業の動向、日本企業も含めて、どこまでどういうことを考えてらっしゃるのかということのファクトということを使えるかと思います。

もう一つ、最後に投資家の動向ですが、この投資というのは企業が自社の設備に投資するのでなくて、投資家が投資をするという部分ですけれども、ESG投資を牽引していますPRI、こちらのほうの立場から申し上げますと、PRIの署名投資家といいますのは3,000を世界中で超えております。この中でヨーロッパが1,500を超えているわけなんです。あとは北米が800、オーストラリアが200。日本が増えたとはいえ、ESG投資が増えたとはいえ、署名機関はまだ90です。もう中国も50になってきましたし、日本、中国以外のアジアというのも100以上になってきました。ということは、ESG投資ということが世界中で広がっている中で、日本ではそれほども拡大してないわけなんです。気候変動にPRIのほうではどのように投資家が取り組んでいるかという項目、必須項目でありますので、これも報告していただいています。これをデータとして、ファクトとして活用していただくことができますし、また、2020年のデータというのは、3月末までになりますけれども、2019年でも気候変動に関しましては報告いただいているんです。

先ほどコロナの話が出ましたが、コロナ禍において短期的にはどういう投資をするべきかということもPRIは投資家に対して世界中で働きかけをしておりますけれども、配当よりも雇用を守ってほしいと。昨年に関しましてはそういう働きかけを行いました。これは短期的にです。ただ、グリーンリカバリーということを全世界で考えていただいております。このコロナというのは、当然ながら日本だけではない。皆さんもご存じのとおりで、世界中で起きているわけですし、世界から見れば、まだ日本のほうのコロナ禍は、まだ比較すれば患者数も少ないと言われてますが、世界では同じように、この中でもグリーンリカバリーということは、投資家も含め、企業も含め考えているわけです。そこの中で投資家が国内に投融資する、そういう環境が必要になってくると。これは国内の投資家だけでなく、海外の投資家からも長期的な投資家にはぜひ日本に投資していただきたいわけなんですが、ようやくカーボンニュートラルという政策が出たことで、投資家も日本はそういうことで前に進んでいくんだということで関心を持ち始めていただいてます。これは日本の投資家から、まずそういった投融資が集まればと思いますが、世界の中でもそういう投融資を集めるためには、そういう政策を打ち出すことが投資家にとりましては投資する環境ということが必要になってきます。

浅野委員長

恐れ入りますが、少し手短にお願いできませんか。

森澤委員

そうですね、今、カーボンプライシングの制度設計で、そういったファクトというものを活用していただけたらということを申し上げました。制度設計は重要ですので、今後にまた一緒に議論させていただきたいと思います。

長くなりまして申し訳ございません。

浅野委員長

ありがとうございました。

では、河口委員、お願いします。

河口委員

ありがとうございます。手短に。皆さんからもかなりの議論が出ていて、今、森澤委員から現実的な数字も出てきたというところで、私が申し上げたいのは、もう前回の中間取りまとめで、カーボンプライシングにはゴーサインが出たと。今回は、じゃあ、具体的にどんなカーボンプライシングがいいのかなという議論する場だろうという理解をしていました。ですので、今のような数字に基づくようなデータをいただくと、より分析がしやすくなるのかなと。

話を聞いていて思ったのは、多分、このプライシングという名前が悪いのではないかなと。何かカーボンプライシングというと一般の人には関係ないようなイメージがあるんですね。なぜこれを言うかというと、ポリ袋の有料化というのがあって、我々からすると当たり前なんですけれども、多くの人たちの意見からすると、何でこんなものを有料化したんだと。国民の何か理解が得られているとは必ずしも思えない。今回は税金になるかもしれないとなると、いろいろな次元の人の理解がどうなるのかなというのが分からないところがあって、産業界の反発もありますけれども、一般の人たちの反発というのもかなり大きくなるのではないか。なので、いかにこれがどういうものなのかという情報発信というのをきちんとしていかなければいけない。一つは、カーボンプライシングという一般の人には分からない名前。これは、要するに地球からの人間に対する請求書だよと思うんですね。これをずっとため込んでいて払わなかったから払わなきゃいけないじゃないか。だけど、払い方によっては非常に困る人もいるので、それをどうするのかなという話だというような理解を深めると。その段階として、安田委員がいわれたブロックチェーンを使ったサプライチェーンの数値における負荷を明示するみたいなのが私はすごくいいと思うんですけれども、そこまで行かない段階として、カーボンフットプリントだとか、そういうラベルを使って一般の人たちに、こういうコストがかかっているんだよみたいな仕掛けをつくりつつ、税金が排出権だというような議論と結びつけるというようなものをセットにしていくというのが大事なのではないかなと思いました。

やはり数字の議論をしなきゃいけないということと、そもそも何のプライシングかと。これは地球に対してのコストを払うと、払わなきゃいけない、今まではただでやっていたと。世界各国がそこを有料化して、自分たちは払った上で競争力をしようとしているのに、ただでやろうとして競争力を維持しようとしているのが日本の産業界だなんていうイメージになってしまうと、もう本当に日本の国のブランドにもなってしまいますので、ここをやっぱりきちんとした数字を踏まえた議論をしていただきたいと思います。

以上です。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、最後になりましたが、清水委員、どうぞよろしくお願いします。

清水委員

恐れ入ります、電事連の清水でございます。メンバー交代しましたが、よろしくお願いいたします。

まず、私ども電事連の取組について簡単に触れさせていただきますけれども、2050年のカーボンニュートラル実現に貢献するため、私どもでは昨年末に電気事業に関わる各種領域での様々な課題の解決に向けました検討・議論をやっていく、そういう場として、2050年カーボンニュートラル実現推進委員会というものを設置いたしました。この場において、2050年カーボンニュートラルという大変難しい課題の解決に向けた検討を深めまして、電化の推進、あるいは電源の低・脱炭素化等を進めることで、地球温暖化対策等、我が国の世界全体の進化・発展の両立に貢献できるようしっかり具体的に、総合的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

続いて、当面の議論の進め方ですが、今後、カーボンプライシングについて様々な議論を行っていくということになると思いますけれども、成長戦略といいますか、まさに成長に資するカーボンプライシングという点が非常に重要であるというように考えているところであります。したがいまして、検討に当たっては、常に成長に資するかどうかという視点を持って、各制度や論点に対して定量的に確認・評価しながら議論していく必要があるというように思っていますので、こうした評価の視点をもって議論に参加・協力してまいりたいというように考えております。

また、特に、これは言わずもがなではございますけれども、我が国の成長の視点からは、エネルギーの安定供給が何よりも重要であります。我が国のエネルギー需要に鑑みまして、S+3Eを基本とした上で、既存制度も含めた国民生活への影響、あるいは我が国の産業の国際競争力の影響などについて十分な議論が必要だと考えております。ぜひ検討の論点としてご考慮をいただきたいというように思います。

なお、先ほど椋田委員から当小委員会への日本商工会議所の方の参加を求めるという意見がありましたけれども、成長に資するかどうかを判断するに当たりましては、やはり中小企業の視点も非常に重要であるというように考えますので、私どもからもぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。

私からは以上でございます。

浅野委員長

ありがとうございました。

それでは、一当たり全ての委員からご発言をいただきました。もう残念ながら時間がほとんど残っておりませんので、いろいろと後の発言を聞いて、まだもう少し言いたいことがあるとか、それに対して反論があるとかというようなことがあるかもしれませんが、そういう方は、恐れ入りますけども、書面をお出しいただきますと、次回以降の議論がやりやすくなると思います。今月の5日までに事務局に書面を送っていただければ、それがまたいろいろと役に立つだろうと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 今日いただいたご意見、あるいはさらに追加のご意見を踏まえながら、度々キーワードのように出ております成長戦略に資するカーボンプライスという観点から、具体的にどのような制度設計が考えられるかということについて、事務局に資料を精査した上で次回以降の議論をしていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、事務局から、あとお伝えすることがありましたらよろしくお願いいたします。

井上市場メカニズム室長

本日は非常に多岐にわたりご議論いただきまして、ありがとうございます。

次回の日程につきましては、委員長にもご相談した上で、また追って事務局よりご連絡いたしたいと思います。

本日はありがとうございます。

浅野委員長

それでは、どうも長時間、皆さん、ありがとうございました。また、次回もよろしくお付き合いくださいますように。