中央環境審議会 環境保健部会 石綿健康被害救済小委員会(第11回)議事録


議事録

午後5時57分 開会

○伊藤補佐 それでは、定刻まで少し時間がございますけれども、委員の先生方、皆さんおそろいですので、始めさせていただきます。
 ただいまから、第11回中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会を開催いたします。
 本日は、小委員会の委員11名のうち、6名の委員にご出席をいただいておりますので、定足数を満たしておりますことをご報告いたします。
 初めに、傍聴者の皆様へのご連絡でありますけれども、傍聴券に記載しておりますとおり、会議中は静粛を旨といたしまして、審議の妨害になるような行為は謹んでいただきますようお願いいたします。
 また、会議中であるか否かにかかわらず、会場内において委員等に対する抗議または陳情等はしないでいただきますようお願いいたします。守られない場合には退場していただくことがありますので、ご協力をよろしくお願いいたします。
 それでは、開催に当たりまして、環境保健部長の佐藤よりご挨拶を申し上げます。

○佐藤部長 改めまして、環境保健部長の佐藤敏信でございます。本日は石綿健康被害救済小委員会を開催いたしましたところ、少し遅い時間に、また、寒い中、お集まりをいただきまして、本当にありがとうございます。また、平素から環境保健行政、とりわけ石綿救済問題をめぐる業務につきまして、ご指導とご尽力をいただいておりますことに、この場をかりて厚く御礼を申し上げます。
 本日は、ちょうど東京建設アスベスト訴訟の判決が出た日でございまして、私どももまだ全文を入手できておらず、骨子の段階ではございますけれども、環境省あるいは環境保健部もこうした判例をよく読みまして、環境保健行政の充実に努めてまいりたいと考えております。
 さて、今日、お集まりいただきました本小委員会でございますが、救済法が平成18年3月に施行されて以来、指定疾病と言われる中皮腫などの取り扱いを初めとします、救済制度のあり方についてご議論をいただいてきたところでございます。本日は、新たな医学的知見に基づいて救済制度の医学的判定基準をどう考えるのかということでご審議いただきたいと思います。
 話が相前後しますが、去る3月には、私どもがある意味、手本にもしております労災制度で認定基準の改正が行われました。ご存知のように、私どもも労災の制度と救済制度というのは制度の性格、趣旨が多少異なりますので、判定にあたっても全く同一というわけではありませんが、やっぱり相互の制度がある程度関連するということですから、参考にしながら、我々は、救済制度の趣旨に合った医学的判定基準について、短期間になるとは思いますけれども、ご提言を取りまとめていただきたく考えております。
 本日、限られた時間ではございますが、委員の皆様方には忌憚のないご意見、ご助言をいただきたいと思いますし、また、必要に応じて関係される方から意見を聞く場も設けておりますので、実りの多い会議になりますようお願いをいたしまして、簡単ではございますが、冒頭の挨拶とさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。

○伊藤補佐 次に、本日ご出席の委員を紹介させていただきます。
 まず、座席の中央でございますが、福岡大学法学部教授の浅野委員長でいらっしゃいます。
 それから、私の右側から順番にご紹介いたします。
 京都大学名誉教授の内山委員でいらっしゃいます。
 岡山労災病院副院長の岸本委員でいらっしゃいます。
 中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター所長の清水委員でいらっしゃいます。
 全国労働安全衛生センター連絡会議事務局長の古谷委員でいらっしゃいます。
 横須賀市立うわまち病院副院長の三浦委員でいらっしゃいます。
 今村委員、太田委員、大塚委員、新美委員、椋田委員からはご欠席との連絡をいただいております。
 また、前回の開催以降、事務局にも異動がありましたので、ご紹介をさせていただきます。
 私の左側から、石綿健康被害対策室長の神ノ田でございます。
 同じく、石綿対策室の清水でございます。
 それから、私の右側になりますが、石綿対策室の本多です。
 よろしくお願いいたします。
 それでは、次に配付資料の確認をさせていただきます。議事次第に添って確認をいたしますが、資料1といたしまして、石綿健康被害救済小委員会の名簿であります。それから資料2でありますが、医学的判定に関する考え方の見直しについて。それから資料3でありますが、左上の方に資料番号が振ってありますが、労災制度における認定基準の改正のポイントという資料であります。それから資料4、石綿による肺がんに関する主な医学的知見の整理となっております。それから資料5は1枚の資料になりますが、石綿による肺がんの判定・認定に関する比較であります。それから資料6が、救済制度と労災保険制度の比較、次に資料7といたしまして、医学的判定に関する考え方の見直しに係る主な論点となっております。
 参考資料の方にまいりまして、参考資料1が「石綿による健康被害の救済に関する法律施行令の一部を改正する政令の施行(指定疾病の追加)について」であります。それから参考資料2が「石綿による健康被害の救済における指定疾病に係る医学的判定に関する考え方について」の答申となっております。それから参考資料3でありますが、「石綿健康被害救済制度における指定疾病に関する考え方について」(一次答申)であります。次に参考資料4が、石綿による疾病の認定基準に関する検討会報告書であります。それから参考資料5が、石綿健康被害救済法に基づく認定状況。それから参考資料6が、左上の方に番号が振ってありますけれども、二次答申の対応状況という資料であります。
 最後にヒアリング資料といたしまして、本日ヒアリングにご対応いただきます「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」のご提出資料であります要請書となっております。
 以上、資料に不足等ございましたら、事務局にお申しつけいただきますようお願いいたします。
 それでは、ここから議事進行を浅野委員長にお願いしたいと思います。
 浅野委員長、よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、久しぶりの小委員会でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は議事として、石綿健康被害救済制度における指定疾病に係る医学的判定に関する考え方についてということでございます。
 事務局から、まず、資料の2と3についての説明をいただきます。

○神ノ田室長 それでは、資料2と資料3を用いまして、今回の救済小委員会でご議論をいただきたい内容につきましてご説明を申し上げます。
 まず、資料2でございます。医学的判定に関する考え方の見直しについてということで、1番の背景・趣旨のところでありますけれども、石綿救済制度では、医学的判定を行う基準を環境保健部長通知で定めておりまして、また、先ほど部長からの挨拶にもありましたとおり、今年の3月に労災制度においては認定基準が新たな医学的知見に基づき改正されたという背景がございます。こういったことを踏まえまして、今般、石綿救済制度においても医学的判定基準の見直しについてご検討いただきたいということでございます。
 2番のところで、労災認定基準の改正の概要をまとめております。表にありますとおり、労災の5つの対象疾病のうち、肺がんとびまん性胸膜肥厚の2疾病につきまして、基準が改正されております。本日の救済小委員会におきましても、この2疾病の医学的判定基準についてご検討をお願いしたいと考えております。
 3番の今後の予定でございます。本日が第11回の救済小委員会ということでありますけれども、年度内に2~3回開催をいたしまして、1月中を目途に医学的判定に関する考え方(案)の取りまとめ、また、1か月間、パブコメを実施いたしまして、3月中には環境保健部長通知の改正・発出につなげていきたいと考えております。
 これを踏まえて、来年度からは新たな基準に基づいて審査を行っていけたらということでございます。
 資料3では、労災制度の認定基準改正のポイントをまとめてございます。表側が肺がん関係の改正のポイントでありますけれども、茶色いところが基準が追加されたところになります。
 広範囲の胸膜プラーク所見が認められる肺がんについては、2番のところにありますとおり、石綿により肺がんになったということで認定されることになっております。
 同様に、4番のびまん性胸膜肥厚につきましても、この所見が認められる肺がんについては、石綿によるものだろうということで認定されることになっております。
 5番のところでありますけれども、これは「医学的所見は不要」ということでありますが、右のところに書いてあるとおり、石綿吹付け作業等の3つの作業について5年以上従事したということが確認できれば、石綿による肺がんと認定されるというものでございます。
 以上の3点が追加されてございます。
 裏面にまいりまして、びまん性胸膜肥厚関係でございます。こちらも茶色いところでありますけれども、従来は「肥厚の厚さ5mm以上」という基準だったものが、今回の改正後、「肥厚の厚さは問わない」ということで見直しがされております。
 事務局からは以上でございます ○浅野委員長 それでは、ただいまのご説明に対するご質問なりがございましたらお出しください。いかがでございましょうか。何か特にご質問ございますか。よろしゅうございましょうか。
 (なし) ○浅野委員長 それでは、ただいまのご説明については特段ご質問がないようでございますので、先へ進めさせていただきます。
 本日は中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会の古川会長と斎藤事務局員からご意見を伺いたいと存じますので、恐縮でございますが、前の席にお座りください。
 ご提出いただいたヒアリング資料に基づいてお話を承ることになるかと思いますが、それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

○古川和子(中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会) ご紹介いただきました、古川和子です。よろしくお願いします。
 まず、私からは、ある患者さんの事例を紹介させていただいて、その後、斎藤さんからということでお願いします。
 まず、その前に一つ確認させていただきたいことがあります、先生方に。この石綿救済法は、「石綿による健康被害の特殊性にかんがみ、石綿による健康被害の迅速な救済を図ることを目的とする」と掲げてありますけれども、それに、今も相違はないということですね。
 そうですか。迅速な救済を図るということをモットーと、考えてよろしいわけですね。
 はい、ありがとうございます。
 では、私のほうから、肺がんで治療中の患者さんのことを紹介させていただきます。
 Sさんは、大阪在住の方で、2010年12月に肺がんの手術をしました。そして、翌年再発し、再手術をしました。そして主治医からは、アスベストが原因だからと勧められて環境再生保全機構に申請いたしました。2011年2月の申請です。そして、5月に神戸労災病院に石綿小体の測定を依頼して、結果が右肺上葉に3,134本、左肺上葉に2,293本の石綿小体が確認されました。そして2011年8月3日、去年の8月3日です。石綿繊維測定検査に提出されました。そして、現在に至っております。
 つまり、この方は2011年2月に申請をして、もう年が明けて2月になると2年になりますけれども、まだ何も決定されていません。もちろん、石綿小体の5,000本という基準をクリアしていないので、石綿の測定の検査結果を待っている状態です。しかし、測定をするお医者様は、日本では今、一人しか担当していないと聞いています。そして、機構からのお返事によると、申請から結果が出るまで2年半はかかると思ってくださいと聞いております。肺がんで闘病中の患者さんに2年半待てというお話です。
 そして、私から本日、言いたいことは、この方は、先ほど言いましたように、上葉で3,000本以上の石綿小体が神戸労災病院において確認されています。通常、石綿小体の検査をするときは、肺下葉が適していると、そうお伺いしています。にもかかわらず、この方は上葉部分に肺がんができたので、そこの検査しかできません。もしかしたら、下に行くほど、下葉に行くほど石綿小体は多くなっているということを、さまざまな文献で読んでおりますけれども、もし本当に5,000本ないと認定できないという基準、方針でいくのであれば、私からの提案が本日あります。
 どうしてもこの5,000本のラインが崩せないため、今のように2年半も待たされるというのは、迅速な救済につながりません。そこで今後、肺がんの治療を行う患者さん、手術する患者さんにおいては、この方のように「上葉の手術をするときも、一緒に下葉部分の組織もとりなさい」と、そこまでの通達を出してください。あるいは手術できない患者さんに対しては、「解剖するように」、そこまでの指導を徹底してください。そうすれば2年半も待たなくて認定されると思います。
 今、環境再生保全機構が行っている認定基準の5,000本という数値は、本当に私が今言ったことは、人道上とても問題のあることですけれども、そこまで言わせるだけの、ひどい認定基準です。ぜひ、そこまでの通達を出して、そこまでしなければ認定できないということを、きちんと明快に示した上で、5,000本の認定基準の運用を行ってください。
 以上です。

○斎藤洋太郎(中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会) 事務局の斎藤です。
 今も会長からございましたように、肺がんの判定要件、これは労災と、それから救済、ヒアリング資料の1枚目のところにございますように、[1]の石綿肺、[2]の一定量以上の石綿小体又は石綿繊維。それで、[3]の石綿作業歴、あるいは、ばく露歴と医学的所見というこの部分が、[3]の部分が救済給付の場合にはないものですから、今のような形で救われない、2年も待たされると。しかし非常に今、病状は厳しいというようなことがございます。
 ですので、そこの部分は、ぜひ、ばく露歴をきちんと要件として入れていただきたい。これはヘルシンキ・クライテリアに即して、2006年の環境省と厚労省の報告書というのは、そういう形でつくられていると思います。
 ヒアリング資料を1枚めくっていただきますと、そこの下のところに、職業歴を補足するガイドラインということで、石綿小体であれば1,000本であるとか、石綿繊維、5ミクロンなら10万本以上、1ミクロンなら100万本以上というガイドラインがありますので、石綿ばく露歴があってガイドラインを満たす、もしくは、石綿ばく露歴があって胸膜プラークという場合には、やはり、労災と同じように認めるべきではないのかと。救済給付の対象というのは、建設の自営業の方とか、そういう方がかなりいますので、ばく露歴の確認ができないということはないと思いますので、これはぜひ、それを取り入れていただきたいというのが、私どもの要望でございます。
 それから、次のページの2番目、私どもとしては肺がんのこととともに、今、石綿肺の判定が、11月までのところで石綿肺の認定13件に対して、不認定が63件ということで非常に、これは、石綿肺の診断をされている先生も別にやみくもに出しているわけではないと思うのですが、かなり認定率が低い状況で、このあたりは、やはり、蜂窩肺型の石綿肺と間質性肺炎との区別、石綿肺と間質性肺炎との区別というのは、病理学的にも臨床的にもなかなか困難なわけですから、そのときにはやはり、ばく露歴を参考にするということで、今、石綿肺に関しては救済給付においても、ばく露歴をきちんと要件として取り入れて、そして判定をしていると思うのですが、肺がんについても、ぜひ、ばく露歴をしっかり取り入れていただきたいと思います。
 それから、3番目には、今日は法学系の先生方もいらっしゃいますから、やはり、救済給付の水準の問題です。これはヒアリング資料の一番最後のところに、「チャート労働基準法」の中で、憲法25条に基づいて労働基準法、労災補償というのは労働基準法に基づいて行われているわけだと思うのです。
 それで、労災というのは、健康で文化的な最低限を保障する労働者保護法としての部分と、例えば安全配慮義務違反などに対する損害賠償という部分の両方があると思うのです。ここの部分を全部一緒にして、労災というのは損害賠償的なものだということではなくて、健康で文化的な最低限をきちんと保障するのだということからしますと、今の救済給付というのが療養の給付、あるいは、療養手当というのは労災で言えば休業補償の部分に大体該当すると思うのですが、遺族に対するものがないですね。遺族年金の部分というものが。
 長期間治療されていても、中皮腫などは、やはり亡くなることが多いわけですから、そういう遺族の方への給付、この部分が労災ではあるけれども、救済のほうがないと。そして、労災のほうは、そもそもそういう意味で言うと、最低基準なわけですので、最低基準よりも下回ってしまうというのは、やはり問題だと思いますので、ここはぜひ見直しを、患者と家族の会としては、そういうご遺族が結構おりまして、救済給付のみという方がいまして、そういうことではとても生活が成り立たないということです。
 ここの部分は、損害賠償というのではなくて、あくまで最低限を保障するものだと思いますので、ぜひ、その辺りのご検討をお願いしたいと思います。
 以上です。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご意見に対してご質問がございましたら、どうぞお出しいただければと思います。いかがでございましょうか。どなたかご質問がございますか。
 どうぞ。

○神ノ田室長 冒頭の古川会長からお話のあった繊維計測の関係で、若干お答えさせていただきますと、基準上は5,000本ということになっていますので、これを超えないものについて、その場で認定という扱いはできないということです。ただ、繊維計測をしてみたら、場合によっては認定できるかもしれないと。
 つまり、可能な限り救ってあげたいということで。時間がかかっているというのは、申しわけないなとは思ってはいるのですけれども、何とか救済できるものは救済していこうという考え方で、念のため計測に回そうということで対応しているところでございます。
 法律の、あるいは制度の考え方としては、迅速に救済したいということではありますけれども、やはり基準は基準としてしっかり運用していかなければいけないということで、ご理解をいただきたいと思っております。
 あと、何点か確認させていただきたいところがあります。1ページ目の下のところで、「ヘルシンキ・クライテリアに、肺がんは中皮腫の2倍発生すると見積もられており、日本における肺がん認定の遅れは明らか」だと書かれているのですけれども、ここまで結論づけるのは、どうかなというところもありまして。
 例えば、海外と日本とのばく露の程度がどうなのかと。かなりばく露量の多いような国もあるという中で、そういったものも含めて出した推計・見積もりが、そのまま日本でも適応できるのかどうかというようなところ。
 あるいは、これは1997年当時の、その時点での見積もりということだと思うのですけれども、その後、中皮腫についてはかなり増加しているということで、現状としては、肺がんと中皮腫の関係、そこに変化が生じている可能性もあるのではないかとか。あるいは、聞くところによると、中皮腫については肺がんに比べて相当、潜伏期間が長いということも聞いておりまして、そういうことからすると、最近になって中皮腫の数が増えてきている可能性も否定できないのではないかとも思いますので、そういったところをもう少し精査をしてからではないと、「日本における肺がん認定の遅れ」というようなことで結論づけることはできないのではないかと思っております。この点については、専門家の先生にもご意見をいただきたいと思っているところでございます。
 あと、2ページ目の上のところで、「石綿ばくろ歴かつ胸膜プラークで認める裁決」と、公害健康被害補償不服審査会だと思いますけれども、我々が把握している範囲では、救済制度の基準について不適当だというような公害健康被害補償不服審査会の裁定が出たことは、ないと理解しております。
 あともう1点、プラークがあるということだけで認定というような裁決もなかったと思っておりまして、これについても確認ができたらと思っております。胸膜プラーク+線維化の状況の判断のところでいろいろと議論があって、認定ということで裁決されたような事例はありましたけれども、胸膜プラークだけで認めると、認めるべきというような、そのような裁決は出ていないと認識をいたしております。
 あとその下、1,000本以上のところです。これは、我々が理解しているところでは、1,000本以上あれば、職業ばく露があったでしょうというところの目安であって、これをもって石綿による発症リスクが2倍以上になったという判断はできないのではないかと思っていまして、その点についても、医学の専門家の先生に見解をお伺いできたらと思っております。
 あと、3ページ目の上の囲みのところで、『環境省によって、石綿肺でなく「肺線維症」と判定された事例が厚労省のほうでは、じん肺管理4相当と決定されました』と。「格差は許されず、環境省の判定は厳しすぎる」というようなお話でございますけれども、これは一般論で申し上げますと、厚労省のほうでは、石綿肺以外の珪肺とか、あるいはアルミニウム肺といったようなものもじん肺として認定しているという形で、範囲が広い部分がございますし、また、厚労省と環境省、当然、提出された資料に基づいて認定するのかどうかを判断していくことになりますので、提出された資料が違えば、あるいは時期がずれていれば、この判定も変わり得るということでございますので、この一事例をもって、環境省の判定が厳し過ぎるというところまで言えないのではないかと思っております。
 疑問点も含めまして、お話をさせていただきました。

○浅野委員長 ご質問なのか、コメントなのか、よくわからないところがあるのですが。

○斎藤洋太郎(中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会) こちらにコメントさせていただけますか。
 今の話は、まず、ヘルシンキ・クライテリアに中皮腫と肺がんの比率について、肺がんが2倍ぐらいという話は、これは書かれていることなので、それを特に否定する何か確たるものが特に出されているというわけではないと思います。これは医学系委員の先生にもお聞きいただいたほうがいいと思うのですが。ただ、私どもが問題にしているのは、とにかくばく露歴がないため、ばく露歴がきちんと加味されていないために、救済されていないというお話なので。
 それで、2ページ目の職業歴を補足するガイドラインという、ばく露歴を補足するガイドラインというものも、これもヘルシンキ・クライテリアの中には明確に書かれていて、1,000本以上とか、それから石綿繊維の本数というのは、ヘルシンキ・クライテリアに明確に書かれておりますので。
 それで、ばく露歴のことをきちんと救済の制度の中の要件に入れてくれれば、私どもは、ただ1,000本だけでとか、あるいは胸膜プラークだけでリスク2倍あるとは言っていないのであって、ばく露歴プラスこういう医学的要件、こういうガイドラインを加味して判断するというのが適当なのではないかと、そういうことを要望しているわけなのです。
 それから、あともう一つは、石綿肺の、これは具体的な事案としては、大工さんで、不整形陰影の方なのですけれども、この方の場合は労働者であった期間、そうでない期間というのが非常に微妙だったので、それに結構病状も進んでいましたから、救済の観点から両方出しておいて、もちろん、労災になれば労災でいいわけですけれども。
 それで、とにかく環境省のほうの判定、それから労働省については、私もいろいろご本人の職歴だとか、とにかく労働者性の判定というのはなかなか難しいですから、そういう要件を含めて、いろいろお聞きした上でやっていたので、じん肺の申請が遅れたわけですけれども。
 じん肺のほうは、そういう形で管理4ととってきているのですが、環境省の判定を見ますと、石綿肺以外の肺線維症が示唆されるということで、臨床的に肺線維症だから違うという言い方をしていて、これがやはり一番問題なのではないか。ばく露歴を検討するのではなくて、臨床的にどうなのかと。それで石綿肺と間質性肺炎が区別できないものもあるわけだと思うのです。
 実は、胸膜プラークとばく露歴でもって公害健康被害補償不服審査会が認定しているのは、平成21年3月19日の裁決ですけれども、そこを見ますと、確かに肺気腫の所見が顕著で、肺の正常構造が破壊されて、組織が圧迫されたことによる肺線維化が石綿起因性のものなのかの区別が困難であるということで、石綿起因性を否定するまでには至っていないと。
 しかし、これについては、医学的にはリスク2倍というところまではいかないけれども、裁決については、本件においては医学的には石綿起因性の肺がんであると確定診断することはできないと。しかし請求人が述べる、ここは個人情報だから墨塗りになっていますけれども、ばく露歴に加えて胸膜プラークが認められるということで、肺線維化所見のところは、確かにどちらという判定は、もう正常構造が壊れて難しいということですが、そうなると、それだけではリスク2倍とは言えないから、ばく露歴と胸膜プラークとを両方合わせているのですね、公害健康被害補償不服審査会は裁決をしているわけです。
 だから、原処分の段階では、ばく露歴のことは全部オミットしてしまいますので、そうするとダメになってしまいます。しかし、公害健康被害補償不服審査会においては、きちんとばく露歴と、それからプラークという形で認定をしているわけですので。そういうことからしますと、今の室長さんの話のところは、やはり、ばく露歴のところをきちんと判定要件に加えることによって解決していく問題です。
 それから、2年待たされるという話も、石綿繊維を測るという話も、ばく露歴が、この方は石綿小体が2,000本~3,000本ある方なのですから、そうすると、ばく露歴が確認されれば、それをかみ合わせてリスク2倍と判断できるわけですから、これはばく露歴のことを、職業歴のことを避けてはいけないと思います。ぜひ、そのことをよろしくお願いいたします。

○古川和子(中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会) 先ほどの室長がおっしゃったことは、石綿繊維が5,000本に満たないから繊維の計測に出していただいていると。それは、そこまでしていただいているということは重々わかっています。
 私が言いたいことは、先ほども言いましたように、実はここに、今日はネットから引いた神奈川県立循環器呼吸病センターからの案内を持っています。アスベスト小体計測検査についてということで、関係医療機関の方へと題して、いろいろな注意書きがあります、石綿小体の計測に関して。その中に、「肺組織はどの部位でも検査は可能ですが、アスベスト小体は肺上葉から下葉にいくに従って増加するというデータが多いことから、できるだけ肺下葉部の検査材料をご提出ください」と。これはその前で言えば、環境再生保全機構が出しています、こういった石綿小体計測マニュアルにも同じようなことが書かれています。
 私が言いたいことは、本当に苦しんでいる患者さんを救済しようと、迅速に助けてあげたいという意図があるのであれば、そういう心があるのであれば、そこまで5,000本に、今は確かに認定の要件は5,000本ですけれども、それを今回のこういった認定基準の話し合いの席において、あまりにも上葉、中葉、下葉で、もしかしたら差があるのかもわからないということがもう公に認められているのですから、この患者さんももしかしたら、三千何百本も小体が出てきたと。確かに親切に測定に出していただきました。だけどその結果は2年待てと。申請から測定に出すまで半年、測定に出したら2年かかります。2年半待てと。患者が亡くなってしまったらどうするのですか。救済も何もないでしょう。
 もちろん、担当されている室長たちの責任だとは思っていません。でも、こういった実態があるということを、今日、ここにおられる先生方にわかっていただいて、そして認定基準の緩和・運用につなげていただきたいと、そう思ってお話ししているわけです。
 今、確かにおっしゃっているように、来年の8月まで待てば何らかの結果は出ると思いますけれども、もう腫瘍マーカーの数値が上がってきて、この方は、来年から新たな抗がん剤をしなくてはいけないのです。治療費もかかる、仕事もできない、生活に困っていると言われています、そういう方をみすみす目の前にして、石綿救済法云々ということは、私は恥ずかしいです。何のための救済法設立だったのか。
 この方は、あえていえば職業ばく露はありません。でも、ある地域の石綿工場の近隣住民です。早く言えば、この地域のばく露があった。だから斎藤さんが言っているように、ばく露要件を加味していただければ救済できます。もちろん、周辺ばく露ですから、そうはいかないでしょうけれども、逆に言えば、だからこそこれだけの石綿小体が出ているのです。一般の方には出ません、三千何百本も、上葉で。下葉だったら5,000本超している可能性があります。だから、とても残念で無念で悔しいから、今日、このような発言をさせていただいているのです。
 以上です。

○浅野委員長 わかりました。医系の先生方から、何かコメントが、ございますか。よろしいですか。

○三浦委員 おっしゃることはよくわかります。まず、ヘルシンキ・クライテリアに肺がんは中皮腫の2倍発生すると認められています。これは私もそのとおりだと思います。
 ところが、これは1997年にまとめられたデータですけれども、肺がんが発生するには、最初のばく露から平均30年近く経ってから発生しますから、その当時、少なくとも一番新しい肺がんの患者さんが出たのが、20年前でも1970年ということになります。その当時の、特にお仕事をなさってばく露した方たちの平均的な濃度で集計すると、今のように肺がんが中皮腫に対して2倍の患者さんとなっています。ところが、申請されてこられる方は、その当時の方たちと同じぐらいの濃度を吸っている方たちは、むしろ少ないと思うのです。
 ですから、そういう面で、まず、肺の中に入り込んだアスベストの量そのものが多分少ないのだろうと考えられます。と言いますのは、ここから向こうを向いたら、あかりがチラチラするぐらいの濃度のアスベストを1年間吸った方、それから、向こうがほとんど見えない、ものすごいばく露濃度の方、それから、向こうがボッーと見えるとか、そういう濃度の差によって、仮に1年間、あるいは5年間、10年間吸ったときに、肺の中に入ってくるアスベストの量が皆さん変わってきます。
 そうしますと、平均的に肺の中に入り込んだアスベストの量が、25繊維/年というのは、ここから向こうが見えないのが、仮に1ミリリットル中に25繊維あるとすれば、それを1年間吸えば、もう肺がんが2倍発生する量まで入っているということになります。逆に、1ミリリットル中1本ですと、25年間吸って初めて2倍になる量が肺の中に入ってくるという、そういう数なのです。そういう25繊維/年のアスベストの繊維が肺の中に入ってくる方は、一番危険なデータを基にすると、2倍の肺がんの発生の頻度があると。
 いろいろな疫学データがありますけれども、その中で一番患者さんにとって、これは危険だよと。いろいろなデータがありますけれども、その中で患者さんにとってはありがたいデータをとって、このデータが出ていると。
 そうしますと、今でも2倍発生するかどうかというのは全くわからないのと、もう一つは、救済に申請されてくる方は、労災に申請される方と比べると、圧倒的に人数としては濃度の少ない方が多い。これは事実だと思います。ですから、必ず2倍ないからおかしいというのは、必ずしも当たらないと思います。
 それから、もう一つは、次のお話ですけれども、職業歴を補足するガイドライン1,000本以上、これも私はそのとおりだと思います。アスベスト小体が肺の中に乾燥重量当たり1,000本あれば、これは一般人では、とても入ってこない量です。ですから、これは職業歴を補足する量ではあると。これは間違いないことだと思います。
 ただし、先ほどのヘルシンキ・クライテリアでは、1,000本では、要するに、5,000本あれば、25繊維/年と大体同じ量が肺内の中に入っているとみなせると。だけれども、1,000本では、その5分の1ですから、そこまではとてもいかないでしょうというのが。ですから、年数とか、そういうものだけではなくて、肺の中に入り込んだアスベスト小体の数を計測、そこで証明されたものが一番重要な値になってくると。これが今のところ基準になっております。
 それから、じん肺のほうは、岸本先生でしょうかね。

○岸本委員 では、石綿肺に関しては、確かにじん肺法でいう石綿肺と慢性間質性肺炎との鑑別が難しいということは、我々もわかっています。今、我々もこの2疾患を鑑別するために、3年ほど研究をしています。わかったことは何かというと、中途半端な量のアスベストの吸入では、じん肺法でいう石綿肺にはならないという事実が明確になりまして、厚生労働省の研究班の報告書に書いております。
 5,000本というのが肺がんの発生を2倍にする量というのは、ヘルシンキ・クライテリアからわかっていることですが、じん肺法でいう石綿肺になるためには、最低でも50万本以上の石綿繊維を吸わないと、石綿肺にはならないという事実は、最近の我々の研究でわかってきております。
 どういうことかと言うと、じん肺というのは、粉じんを吸えば吸うほど重症なじん肺が出てきます。量-反応関係というのがあるわけですけれども、そういう石綿肺ができてくるためには超大量の石綿繊維を吸わないといけないということになると、一般人でも増えている慢性間質性肺炎、原因不明の慢性間質性肺炎を石綿肺と、医学的には診断してはいけないということで、その辺りはきちんとした医学的な所見をもって判定をしようと思っています。
 ただ、今、室長も言われましたように、じん肺法というのは、石綿粉じんだけではなくて、その他の粉じんを吸いますよね。例えば、建材でもそうで、石綿というのは5%未満しか入っていませんけれども、他の粉じんもたくさん吸っていますから、他の粉じんと石綿を吸って起こってくる混合性のじん肺、mixed dust pneumoconiosisというのがありますから、そういうものになるので、それは石綿肺とは別に扱わないといけないと思います。
 それから、もう一つ、下葉のほうに上葉よりも石綿小体が本当に多いのだろうかと。私はこの仕事をして二十数年になるのですけれども、若かった頃25年前に私が一部症例で、上葉と中葉と下葉を見たときには、症例によって、上葉が多い人、下葉が多い人、いろいろありまして、本当なのかなと、ずっと思っていました。それをきちんと医学的論文にしたようなものがあまりないものですから、この4~5年行ってまいりました。
 私のデータですと、上葉、中葉、下葉に差はない、左右差もないという、そういう結果が出ておりまして、平成23年度末に厚生労働省の研究班の報告書にそれは記載させていただいておりまして、今、論文を作成をしているところでございます。
 実際的に石綿繊維は、下葉のSの8あたりが換気がいいので、このあたりに多く蓄積するだろうと思ってはいたのですけれども、我々はデータを60名ほど集めてみましたところ、手術肺、剖検肺を見てみますと、個人的に差があるということがわかりました。100例集まっていれば、何らかの論文に書けるのではないかと思っているところでございます。
 この傾向は、他の方がおやりになられると違う結果が出るのかもしれませんが、我々のところで行ったのは、石綿肺と石綿肺がんと中皮腫の患者さんを合わせて60例実施して、左右差もなければ、上葉、中葉、下葉で差はないというデータが出ているというところなので、これに関しても、まだまだ検討の余地があると思います。
 最後に、ヘルシンキ・クライテリアなのですが、私も三浦先生もその時代よりも10年も前から日本で中皮腫や肺がん、アスベストによる肺がんの臨床研究を行ってまいりましたが、当時は、中皮腫という診断がとても難しくて、なかなか確定診断できなかったという事実もございますが、昨今は中皮腫と肺がんの鑑別診断というものが医学も進歩して、比較的できるようになりました。なので、過去のデータを見ると、患者側の方、三浦先生も言われましたように、1997年前後のデータというのは、1980年から1995年のデータだと、中皮腫と肺がんが1対2だったのかもしれませんけれども、新たなデータを集めて見たものがあまりないのです。実施すれば、またこの比も変わってくるのではないかと思いまして、我々も検討をしているところです。
 最後に、石綿肺がんというと、医学的には石綿肺に合併した肺がんを石綿肺がんと言って、石綿肺のない肺がんが認められるようになったのは、医学的には2000年頃でございます。私もその頃に論文を書きましたけれども、海外の論文にプラークがあって、職業歴があって、石綿小体が一定以上あるものを石綿肺がんとしてカウントすると、それはインターナショナルには認められないということで、全部、却下されておりました。
 石綿肺のない肺がんがあることは間違いないのですけれども、その肺がんは、どの肺がんか、基準がありません。なので、今から15年も前のヘルシンキ・クライテリアのこの、肺がんを2倍にするという基準が今でも生きていると。新たな何らかの基準は、作成するべきだと思いますが、今の我々のところには、ヘルシンキ・クライテリアのこれしかないので、労災もこの救済もこれに合致したものを石綿肺がんとして労災認定して際にしようということになっていますから、それに粛々と従うのであれば、今の基準がベストなのかなと私は思っております。
 以上です。

○浅野委員長 ありがとうございました。

○古谷委員 ヒアリングでいただいた件も含めて、これから議論するということなのですけれども、ヘルシンキ・クライテリアの2倍云々にかかわったところで、今、お話をしたほうがいいのかなと思って、その点と、実はこれから説明があると思うのですが、資料4の石綿による肺がんに関する主な医学的知見の整理ということで、下のほうの表で、医学的知見の整理、[1]肺内石綿小体等が一定量以上のところの現時点での主な医学的知見のところに、「クリソタイルの肺がん発症リスクは角閃石系と比較して低いとする報告がなされ、・・・・・1/10程度である」と書かれていることについてなのですが。
 これは、そもそも議論の前提として、私自身も中皮腫と比べた場合に、石綿肺がんが労災も救済も十分に救えていないのではないかという問題意識がまずあって、そのことを改善するためには、少しでもいい認定基準、反対基準を作らなければいけないという、そのベースのところの考え方にかかわることなのですが。
 発言したかった中身というのは、厚生労働省の検討会の報告書、今年の3月に厚生労働省の検討会で取り上げられなかった論文で、その前後を含めて、幾つか重要な論文が出ているので、そのことを含めて発言したいと思っているのです。
 一つは、今年の6月4日に出された、これは国際疫学会や国際環境疫学会など9つの疫学関連学会のジョイントポリシーコミティ、共同政策委員会がアスベストに関するポジションステートメントというものをまとめています。これが非常にすっきりしています。今、文書を持っておりますけれども、今日における一般的なコンセンサスは、中皮腫の発生能力について、クリソタイルについては角閃石系アスベストと比べて低いと。これは一般的だと。しかしながら、肺がん、他の肺疾患、その他のがんについてはクリソタイルが著しいポテンシーを持っていることについては何ら疑いがない。結果的に、全体としてのがんリスクについては、クリソタイルと角閃石系石綿との間に違いはないという。これが今日の関連するこれだけの疫学会の今のコンセンサスだという書き方をしています。
 ここで引用しているのは、資料4で挙げられているものの他に、IARC、国際がん研究機関の2012年の文書があるのですが、これは今年出版されたモノグラフの100Cというものです。アスベストについて、もう一回国際がん研究機関がレビューし直した文書で、これはもう先生方ご存知の文書ですけれども。これを根拠に今の文書の発言がありまして。
 こちらの文書でも、クリソタイルが角閃石系アスベストと比較して、中皮腫については差がある。これはもう立証されている。肺がんについては相対的に違いがあるということは言えないと、こちらはIARCの文書ですから、資料4で紹介されているものに2000年、あるいは2009年の論文、あるいはBermanの2008年の論文もレビューした上で、結論がそうであるということを書いているのです。
 これは一科学者の論文ではなくて、国際がん研究機関の公式な見解ということですから、今、私たちがよって立つべきと言ったときに、そこが一番大事なところなのだろうと思います。
 それに加えて、もう一つ。IARCの関係者が中心なのですけれども、まさに、中皮腫の死亡者数からアスベスト関連肺がんの推計というタイトルの文書が、今年出されているのです。これは今も少し議論された、例えば繊維の種類などによって違いがあるのではないかというような議論を踏まえた上で、結論としても、ここにも確かに繊維の種類によって違いがあると言ってはいます。
 むしろ、中皮腫対肺がんの比率をとったときに、クロシドライトの角閃石のアスベストの代表格である青石綿の単独ばく露の場合には、中皮腫対肺がんは0.7だったと。2ではなくて、とても少ない。逆に、中皮腫の単独の長期大量ばく露の場合には、中皮腫の10倍肺がんが多い。混合石綿全体でいうと1.97です。
 結論的に総体として、混合石綿として見た場合に、これまで言われてきたヘルシンキ・クライテリアの2倍というのは、現時点においても全般的に見たときには、当てはまるというのが結論の一つです。もう一つは、むしろクリソタイル単独であったり、クリソタイルが主の場合、あるいは環境ばく露などの短期ばく露の場合には、中皮腫の発生自体がそんなに多くない。むしろ、そういう場合の被害は中皮腫よりも肺がんが大きいのだろうと。そのことをしっかり見きわめなければいけないというのがもう一つの結論です。
 そう考えますと、一番新しい、しかも、一科学者の論文というのではない議論の中で、全般的に言えば、2倍ということについては、今だにこれを否定するものは出されていないということと、アスベストによる被害で数として一番大きいものは、やはり肺がんなのだと。それが実態として労災保険でも救済法でも、中皮腫と比べても、数として救えていない。このことを少しでも改善しようということは、この委員会の大事な任務なのだろうということは、やはり、議論の前提として必要だと思っています。

○浅野委員長 ご意見を伺うということから、大分外れていましたけれども、ありがとうございました。

○古谷委員 すみません。

○浅野委員長 少し予定よりも時間をとってしまいましたが、医学系の先生方からのコメントをいただいて、さらにまた古谷委員から、それに対しての、医学的知見についてのお話を伺いました。

○三浦委員 もう一つだけよろしいですか。
 繊維計測に2年と少しかかるというのは、私たちも非常に困っていることでして、ただ、日本で電子顕微鏡を持っているところが非常に少なくなってしまった。それから、ご存知ないかもしれませんけれども、民間に委託すると、今、1件30万円~50万円ぐらいの費用がかかります。それを一つの研究所でほとんど無料に近いものでやっていただいておりますので、なかなか急がすことができないというのも現実です。
 それで、基準の見直しの一つに挙げさせていただきましたのが、胸部写真で明らかな胸膜プラークがあった場合と、それから、そういう場合には、大体、手術または剖検させていただいた肺の中のアスベスト小体の数が5,000本以上ある方が、80%以上だったかな、さっきありましたけれど。
 それから、胸部CT写真で胸壁の4分の1以上プラークが占めている、少ないところから多いところまでありますが、一番多いところで、ワンスライスでもそういうところがあれば、それは5,000本以上の方が75%ぐらい占めると。
 それでは、残りの25%とか、残りの十何%とか、そういうものはもう全部目をつぶって、とにかく迅速に認定をするということで、エックス線写真及びCTで、そういう基準を満たせば、これは多少少ない方もおられるけれども、それはもう5,000本あるものと。とにかく、プラークがあるということが画像上確認されるということは、明白なアスベストばく露歴があるということになりますので。
 そうしますと、明確なアスベストばく露歴があって、なおかつ、その方がおおむね5,000本以上、確実に5,000本以上あるということなので、そういうものは迅速に、要するに、アスベスト小体の計測も肺の標本がなければできませんので、そういうことを全部まとめて、計測しなくても迅速に認めましょうという基準を、実は、厚労省の改定の根拠になった研究は、環境省の委託研究によって出ていたデータです。それがやっと、今、ここで日の目を見させていただけるのかなと期待しているところでございます。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 お二方、まだおっしゃりたいことがおありかと思いますけれども、おっしゃったことは、私としては趣旨はよく理解できました。それから、先生方からは、医学的にはこういうことだというお話をされているのでして、おっしゃったことが間違っていて、全くおかしいという趣旨ではなくて、こういう意味だという説明をされたわけです。
 それから、今、三浦委員からさらにお話があって、私なんかは医学系の人間ではないし、役所の人間でもない者からいうと、30万円かかるならかければいいのではないかという気もするのです。それをただでやるから2年かかりますというのは、全然理屈にならないということは、私にもよくわかります。ですから、今、さらにおっしゃりたいお気持ちはよくわかります。制度の運用の仕方として問題があるということをおっしゃっているのだろうと思いますので、そのことは理解できました。
 私どもは、これからまだ議論をしなければいけませんので、ご意見を伺い、御趣旨は十分小委員長といたしまして頭の中に入れましたので、このあたりでよろしゅうございましょうか。
 それでは、どうぞ傍聴席にお戻りいただけますでしょうか。
 ありがとうございました。

○古川和子(中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会) ありがとうございました。

○斎藤洋太郎(中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会) ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、古谷委員がもうすでに先に話を始められましたけれども、資料の4以下の説明をいただいた上で、議論を続けていきたいと思います。
 では、事務局、よろしくお願いいたします。

○神ノ田室長 それでは、時間も押していますので、手短にご説明をさせていただきます。
 まず、資料4でございますけれども、こちらは医学的知見を整理しております。
 概要のところに記載しておりますとおり、過去に出されております平成18年2月と平成24年2月の報告書を基に整理をいたしました。
 2番のところで、救済の判定の考え方、労災の認定基準、両方に共通する考え方としては、これはご案内のとおり、「肺がんの発症リスクを2倍以上に高める石綿ばく露があった場合をもって石綿に起因するものとみなす」という考え方で基準が設定されておりまして、具体的にはここにありますとおり、石綿のばく露濃度とばく露年数を掛けあわせた数値、これが25以上ということをもって比較的に高濃度のばく露があったとみなし、肺がんの発症リスクが2倍になるとしております。
 3番の医学的知見の整理でございますけれども、こちらは各指標ごとに医学的知見を整理いたしております。今回ポイントとなっているところだけ触れさせていただきますと、2ページ目のところの[3]広範囲の胸膜プラークにつきましては、先ほど、三浦委員からもご紹介がありましたとおり、「胸部正面エックス線写真によって胸膜プラークと判断できる明らかな陰影が認められるもの、その87%が石綿小体数5,000本以上だった」と、いう報告ですとか、あるいは「CT画像上、胸膜プラークの範囲が胸壁内側の1/4以上の事例、この73%が石綿小体数5,000本以上であった」と。このようなデータがエビデンスと示されております。
 あと[4]のところ、びまん性胸膜肥厚につきましては、1点目のところで、「ドイツとベルギーにおいては両側性のびまん性胸膜肥厚を単独の認定要件としている」ということ。
 あと、2つ目のポツでは、「他方、イギリスにおいては、単独の要件から外している」という状況がございます。
 3点目でございますけれども、「石綿ばく露歴のあるびまん性胸膜肥厚の13例中12例が500万本を上回っていた」と、そのような報告があるとしております。
 あと、⑦のところで特定の石綿ばく露作業5年というところでございますけれども、読みにくいと思いますけれども、中ほどのところで、「石綿紡織製品製造作業、これは9例のうち8例が5,000本を到達期間4.13年以下であった」ということ。あるいは、もう一つの下のところで、「セメント製品の製造工程における作業、この6例のうち5例が5,000本到達期間3.44年以下であった。」また、「吹付け作業については、9例すべてが5,000本到達期間7.34年以下」という、そのようなデータが示されております。
 続きまして、資料5でございます。救済制度と労災制度の基準について、肺がんの基準につきまして比較をしております。救済制度のところで、胸膜プラーク+肺線維化、こちらは救済制度のみの基準となっております。
 その次の石綿小体・繊維数が一定以上というのは、救済制度、労災制度共通する基準となっておりますけれども、労災制度のほうでは、※1と書いておりますけれども、下のほうをご覧いただきますと、業務上か否かを判断するため、石綿作業従事歴が1年以上必要と、そのような条件がつけられております。
 今回、新たに加わったものとしては、[1]と[3]と[4]となっておりますけれども、この[1]から[4]については、労災制度のみの基準ということでございます。
 表側(ひょうそく)どおり、医学的所見によって判定可能かどうかという観点から大きく3つに分類させていただいております。
 1番目のところが、医学的所見により判定可能な指標ということで、医学的所見だけでおおむね判定できるものとしては、[1]の広範囲胸膜プラークが該当するのかと思われます。
 2番目の石綿肺とびまん性胸膜肥厚については、※2で書いておりますけれども、鑑別診断に石綿ばく露作業従事歴の確認が必要とされておりまして、鑑別診断をしっかりするという上で、ばく露作業従事歴を確認することが必要となりますけれども、医学的判定ということで対応できるものに分類できるのかなと考えております。
 あと3番目の医学的所見のみでは判定困難な指標としては、[4]の胸膜プラーク+作業従事歴10年以上というものと、[4]の特定作業従事歴5年以上というものが該当するのではないかと考えております。これは医学的所見以外の指標によって認定・不認定を判定しなければいけないという意味で、医学的所見のみでは難しいということでございます。
 資料6へまいりまして、判定基準の違いについては、やはり、救済制度と労災制度の違いが大きくかかわっておりますので、両制度の比較をしております。
 救済制度と労災制度の性格としては、救済制度のほうは「個々の原因者の特定が困難というような特殊性にかんがみて、民事上の責任とは切り離して、社会全体の費用負担により救済を図る」と、そのような性格の制度であるということに対し、労災保険制度のほうは、「労働災害に対する使用者による災害補償責任を担保するための保険制度」であるという違いがございます。
 あと、体制のところでございますけれども、救済制度のほうは、「環境再生保全機構1ケ所で救済制度に係る審査等を実施」しておりまして、※印で書いていますけれども、医学的事項については環境大臣に判定を申し出るということになっております。
 それに対して労災保険制度のほうは、「全国321ケ所ございます労働基準監督署において、給付に係る調査等を実施して、監督署長が支給の決定を行う」となっております。※印で書いてありますとおり、労働基準監督署においては、石綿ばく露作業従事歴、医学的事項等について、しっかり調査を行っているということであります。
 対象者でございますけれども、救済制度の方は「労災保険制度の対象とならない石綿健康被害者、またはその遺族」ということでありますが、※印で書いてありますとおり、記録等が残っていないケースが多くて、必ずしも石綿ばく露の経緯が明らかでないものを対象としているという特徴がございます。
 労災保険制度は、「労働者又は労災保険の特別加入者と、またその遺族」ということで対象者を設定しております。
 あと、最後のところ、石綿ばく露の取扱についてでありますが、救済制度のほうでは、「医学的所見を中心に判定することで、迅速な救済を行う」ということで、これまで制度の運用がされてきております。
 労災保険制度のほうでは、「労災認定を受けるためには、医学的所見のほか、石綿ばく露作業に一定期間従事したことが確認される必要がある」とされております。
 最後、資料の7でございます。救済小委員会の場での検討を進めていただく上で、主な論点として整理しております。大きくわけて肺がんの判定基準と、びまん性胸膜肥厚の判定基準、2つについてご議論いただくことになろうかと思います。
 肺がんについては、広範囲胸膜プラーク所見を指標とすることについてどう考えるのか。また、2点目としては、びまん性胸膜肥厚を指標とする考え方についてどう取り扱うのか。また、作業従事歴となっております。
 あと、びまん性胸膜肥厚については、厚さに関する要件について、どう取り扱うのかということが論点になるかと思います。
 1枚めくっていただきまして、あらかじめ判定小委員会の委員の先生方からご意見を伺っております。細かいところは説明を省きますが、肺がんの医学的判定につきましては、(1)の胸膜プラーク画像所見、これを指標とする考え方につきましては、一番最後のところに書いてございますとおり、『本指標を満たすものは「肺がんの発症リスクを2倍に高めるばく露」があったものとみなして差し支えない』と、そのような考え方が示されております。
 次のびまん性胸膜肥厚を指標とする考え方につきましては、2つ目のポツの下のほうで、「肺がんの発症リスク2倍に高めるばく露の指標であるかどうかは現時点では判断出来ない」ということで、最後の3つ目のポツにあるとおり、「今後とも新たな知見の集積に努め、その結果を基に採用の適否を決定することが適当」という指摘でございます。
 もう1枚めくっていただきまして、2番のところ、びまん性胸膜肥厚の医学的判定につきましては、(1)肥厚の厚さについて、結論だけ申し上げますと、3つ目のポツのところにありますように、「厚さについては明確な基準を設けないとすることが適当である」という見解が示されております。
 説明は以上でございます。

○浅野委員長 それでは、ただいま資料の4から7まで、さらにご説明をいただきました。
 先ほどのやりとりの中で、古谷委員がご指摘になったのは、肺がんと中皮腫の2対1ということについて、従来の知見からいうと、必ずしもそれが絶対的なものではないというご説明があったと私は伺っておりますけれども、それに対して、古谷委員からの最近の学会の国際的なレビューの中では、中皮腫と肺がんの違いを指摘するレビューが出ているということでございましたので、この点について、先生方から何かコメントがあればお聞きしますが、なければ、もうそれはそれでということにしておきますが。

○岸本委員 古谷委員の2倍のデータというのは、喉頭がんや卵巣がんがアスベストによって起こってくると言っているIARCの勧告と一緒で、最近の新しい知見というのがあまりないのです。最近の新しい知見というのは、中国とか、その辺りの国のデータであって、あとは古い1970年から1990年頃の、要するに20年以上前の疫学調査を基にして、2012年の現在、過去のデータから見ると、こうだったというデータなので、本当にそうなのか、私自身は疑わしいのではないかと思っております。

○浅野委員長 この問題はおそらく、真偽がどちらかということをここで決着をつけることは不可能だと思いますので、一応コメントとして承っておくということにしたいと思います。
 いずれにせよ、そのことが中心ではなくて、古谷委員がおっしゃりたかったのは、肺がんが現実には救済されていないから問題だということをおっしゃりたかったのだと思いますし、その趣旨はよくわかっています。また、先ほどのお二方のご意見も迅速にと言っているのに迅速でないことが問題だということであったようです。さらに、ばく露歴をもっと考えろということがご主張の趣旨ではなかったかと思いますが、それらを含めて、この小委員会で考えなければいけないと思います。
 少し強引な言い方をして申しわけありませんが、今回は労災のほうの基準が変わったということもあるので、それに合わせて、こちらのほうが変えなければいけないものはとにかく至急変えておかなければいけない。
 それから、もう少し時間をかけて、納得できるまで議論をし合って、変えるものはそれはそれでいいのですが、とりあえず、労災の基準が変わって動き始めているのに、こちらがいつまでも全く従来のままではよくないので。先ほどの資料7で判定小委員会からも指摘されて、これは構わないのではないかと言われたところまで、全くそのままにするということは許されないと思います。ある程度、意見が一致するところについては、早急に決めてしまう。それから、意見が分かれるところはもう少し議論をするということがあってもいいのだと考えます。そこで、場合によっては中間的に報告を出してしまうというようなことも急がなくてはいけないのかなと思っております。その点は、小委員長の判断ということでご了承いただきたいと思いますが。
 先ほどの資料の4から7までについて何かご意見がありますか。
 古谷委員、どうぞ。

○古谷委員 その上で、この提案がいいのかも含めて判断してほしいのですが、これまでの議論の中で、労災補償と救済法と共通部分については、できるだけ齟齬のない、しかも最新の形でということを主張してきたわけなのですけれども、議論の仕方として、一つ思っているのは、救済法が対象としているのは、幾つかのパターンがあるわけですけれども、主に環境ばく露の住民たちと、あと、家庭内ばく露の人たちも入りますと。それと職業ばく露ですけれども労災保険の対象にならない人たちが入る。さらに言えば、そのどれかもわからない人たちも含めてということだろうと思うのですけれども。
 とりわけ、自営業の職業ばく露の方で、労災保険の対象にならない方、建設職人の場合で言いますと、どこが違うかといえば、自分で労災保険の特別保険加入料を払っていたのか、払っていなかったのかだけの違いですから、集団として職業ばく露の形態や作業の形態に一切何も違いがないわけですので、原理原則的な考え方として、職業ばく露の方の救済の判定に当たっては、労災保険の認定基準の考え方を準用するという、原則をまず確認してしまうと、かなりのことがすっきりしてくる、今後の対応については。その上で、救済法独自に対応しなければいけないことがあったら、特別な取り扱いか何かで対応する。ただ、考え方としては、準用できるところは準用する。
 同様に、提案された資料5の例で言えば、ほぼ医学的所見だけによって判定の可能なものについても、これは職業ばく露だけが対象ではありませんけれども、やはり、同様に、特に厚生労働省の方で議論されたことを、また一から全部検討しなければ適用されないということではなくて、そういう考え方をとるということは、大いにあり得るし、私は、むしろそういう原則的な考え方を確立しておいた方がいいのではないかと思います。

○浅野委員長 わかりました。ご意見として伺っておきます。
 他にご意見はありますか。
 内山委員、どうぞ。

○内山委員 認定の見直しについては、今、古谷委員も言われたように、利用できるところは労災保険制度のところを準用していいと思います。そして、一番これから議論の中心になってくるところは、救済制度でどの程度ばく露歴、特に職業歴によるばく露歴がどの程度、この体制でできるのだろうかというところが、一番問題になってくるのだろうと思います。もし、労災保険制度の認定基準を準用した場合に、救済制度で難しいところは、そこになってくるのではないかと思います。
 その辺のところの資料として、認定の数は挙げていただいている参考資料が、この1年でどのぐらいでしたとあるのですけれども、そうしますと、肺がんが大体年間に100例未満、全国で。それから、石綿肺、びまん性胸膜肥厚というのは一桁の範囲です。ですから、このぐらいを、もし、労災保険制度のように、はっきりしない方を綿密に調べていくのにどのぐらいのコストがかかって、どのぐらいの人員が必要なのかということまで少し検討していかないと、先に進まないのではないかと思います。
 それで、実際に肺がんではっきりしないとして却下されたような事例、職業歴、ばく露歴が、今、認定基準に入っていないので、そういう方は全然出てきませんということもあると思いますが、それでも出してみようと思って出された方。それで、ばく露歴がはっきりしないから、医学的所見だけで認定しますから、認定に適合しませんと言われて却下された数がもしわかれば、次回ぐらいまでにデータとして出していただいて。
 その数によって、これが何千例とあれば、これは確かに環境再生保全機構だけではできないという気もするのですが、それが数百例であれば、何とか工夫すれば、できるのではないかという気もしないではないです。
 救済制度の基金を作ったときの予測数から言えば、今のところ大分少ないので、そういう調査員を、新たに人員を増やすとか、これが全国に行って、ある程度調べなければいけないということであれば、何例ぐらいまでなら可能なのか、いろいろ具体的に検討しなければいけないところも出てくると思うのです。これからの医学的判定に関する考え方等で議論になっているところで、「作業従事歴を指標とする」というところが一番ひっかかってくるので、それ以外で労災制度と準じなければいけないということは、それほど議論にはならないのではないかと思いますけれども。
 ですから、そこら辺をもう少し資料があれば、出していただけると、今後の議論に役立つのではないかという気がいたします。

○浅野委員長 ただいまのご意見ですが、今まで認定審査をおうけになった方々の経歴については、元々それを認定に際して取り上げるということにはなっていないので、なかなかこれまでのデータを調べることが難しいのではないかという気がします。最初からそれが全部要件になっていれば、相当詳細にデータは集まると思いますが、つい最近になって、一部のものについては少しばく露歴を見ましょうということに変わってきていますし、一部の要件は変わってまだ1年経っていない状況です。内山委員がおっしゃっていることを過去にさかのぼって調べようと思っても、元々データがないので、ちょっと無理ではないですか。

○内山委員 例えば、これで門前払いしてしまうのではなくて、では、今後1年間、そういうことも調査をしましょうと。

○浅野委員長 わかりました。

○内山委員 と、言うぐらいの提言ができればいいのではないかと思うのです。今すぐに職業歴を入れましょうと言うと、今度は確かにおっしゃるように、今まではデータがないので、どのぐらい出てくるのかはわからないということになる。

○浅野委員長 ですから、今後さらに調べてみるいうご提案ですね。ただ強制的に調べるということはできませんので、任意にご協力いただかない限りデータはとれないと思います。つまり、法的な要件にもなっていないもののデータを強制的にとることは不可能ですから、ご本人が協力してくださった場合にだけデータがとれるということだと思います。

○内山委員 それは、今後こういう改正予定があると言えば、協力してくださる方は多いのではないかと思います。

○浅野委員長 あとは制度を作ったときのいきさつがありまして、やはり客観性と公平性ということが一方で要求されてくるので、労災のように経歴がかなり明確で、全く疑いの余地がないというケースとは違ってくるわけです。
 もっとも、前回の議論のときもそうでしたけれども、古谷委員に言われると非常につらいのですが、この制度の対象にも3つのタイプがあります。我々はそのことを前提にして、労災の適用を受けることができない職業ばく露について、ある程度考慮しよう、この間はそれで踏み切ったわけです。ですから、そこである種の踏み切りをやっていますので、全くその話はもうなかったかのごとくの議論はできないと思いますけれども、ただ、それにしても現実には、なかなかその辺りについては現場では難しいだろうとという気がします。
 とりあえず、資料7にある判定小委員会の指摘というのは、こういう形で書かれているだけでありますので、これはこういう指摘があったのだろうと、我々は読む以外ないのですが、この辺りに関連して岸本委員、三浦委員から何かさらに補足的にご説明がございますか。

○岸本委員 この研究は環境省から研究費を出していただいて行った廣島班と、びまん性胸膜肥厚は岸本班、私の研究班で行ったデータが労災認定に際して、認定基準の参考になったということでございますので、このデータは妥当だと思います。ぜひ、採用していただけるとありがたいと思います。
 ちなみに、びまん性胸膜肥厚での厚みというのは、測定が個々人によって全く違うというのがわかりましたので、厚みというのが、いかに測定に信憑性がないというのは、自分でやってわかりましたので、厚みは取り払ってほしいと申しました。
 それから、これは継続審議になるかどうかはわかりませんが、びまん性胸膜肥厚で著しい肺機能障害がある方を、今、100例追いかけています。びまん性胸膜肥厚のみで石綿肺の合併のない症例で肺がんが発生した方は一人もおりませんので、びまん性胸膜肥厚で著しい肺機能障害のある方の肺がんの認定基準というのを、労災は外国の論文を参考にして入れられましたけれども、果たして本当に肺がん発生頻度を2倍にするのかどうかは判りません。この委員会は、肺がん発生頻度を2倍にするというものを石綿肺がんとして認定しようというのがベースにありますので、本当にそうなのかというのがわかりません。我々もびまん性胸膜肥厚の方の肺内石綿小体のカウントをしたいのですが、亡くなった方で、肺を提供された方が一人もいません。それから、この病気は手術の対象となりませんので、実際に石綿小体を測ることができないので、本当に肺がん発生頻度を2倍にするのかどうかがわからないということです。この件はまたここでご議論いただいて、これを入れるのかどうか、決めていただけたらと思います。
 ただ、労災の新しい3月27日の認定基準に関しては、古谷委員も言われましたように、すき間ない救済という意味で、妥当なデータだと思いますので、ぜひ、お認めいただければと思っております。

○三浦委員 びまん性胸膜肥厚で一番問題なのは、いろいろな疾患でびまん性胸膜肥厚は同じ様態が出てきます。ですから、アスベストによるびまん性胸膜肥厚ということが、はっきりしている場合には、外国の肺内アスベスト小体の数とか繊維の数とかも、もう十分肺がんを起こす量が入っているということで間違いないと思うのです。
 疫学的調査ですから、100例を1年間か2年間追いかけただけでは全く比較ができませんので、おそらくこれは5年~10年と実施するうちに有意差が出てくるものだろうと思います。
 今一番の問題は、環境再生保全機構で、労災と一番違うのは、確かにアスベストによるものですよというところが一番困るところでして、結局、過去の職業歴とか、要するにある程度、担保されるものについては客観的証拠があると。保険の給付とか何かそういったものがある場合とか、そういうものは割合簡単にできるのですけれども、判定小委員会でも、ほとんど「ああそうか」ということで、スッと通る状態なのですけれども。
 そうではなくて、ご本人だけの訴えで、しかも医学的な証拠が十分ではない場合には、本当にアスベストによるびまん性胸膜肥厚なのかどうなのかというところが、いつも悩みの種です。実は判定小委員会の中で一番時間がかかっているところなのです。でも、びまん性胸膜肥厚の件数はどんどん増えております。認定件数もどんどん増えております。

○古谷委員 質問ですが、参考の判定小委員会の意見の(3)に、肺組織切片中の肺内石綿小体又は石綿繊維、プレパラート中に1本でもあればよいという基準ですけれども、これは労災認定基準でいうと、表でははっきり書いていませんが、実際には、新たに項目として入ってきたものです。
 多分、判定小委員会の意見は、これも使ったらどうなのかということなのだろうと思いますが、これは主な論点の中に項目がないのと資料5にもないですから、これも入れようということですか。

○神ノ田室長 実は、運用上救済制度でも行っていまして、それを明文化した方がいいのではないかというご意見を判定小委員会の委員からはいただいております。

○古谷委員 明確化ではなく、きちんと増えたと見た方が世間的にはわかりやすいと思いますが、それは確認で、そのことを含めて結論的に3点、胸膜プラーク、画像所見を指標とする考え方を新たに救済法でも取り入れるということと、びまん性胸膜肥厚についても同様にすると。それとプレパラート中に肺内石綿小体等があった場合についても、それだけでいいとするという、この3点を新たに追加することについて、結論としては賛成です。
 ただ、一つ気になっているのは、胸膜プラークの話で、三浦先生からも環境省のほうでということをご紹介いただきましたけれども、まさにここに書かれているとおり、肺内石綿小体が1グラム当たり5,000本以上に相当するような画像がどうだったのかという見方で見られています。そうすると、基になる5,000本以上というのが、肺がんの判定の中でどういう位置を占めるのかということとの問題で、あえて言うと石綿小体については、とりわけクリソタイルの場合には、そんなに出ないというか、ハードルが高くなるということが指摘されていますよね。
 そうしますと、5,000本以上に相当する画像所見として出されたから、結果的に今回入れるのは、結論としては、今の基準を広げることになるので賛成ですが、肺がんリスクを2倍に高めのかどうかという基準で見たときよりも、ハードルの高い指標になってしまっている可能性が高いと。結論は、結果的に発がんリスクが2倍になったという論文であればいいのですけれども、そうではなくて、5,000本に相当するのがどういう条件だったのかという形で見ていますから、肺がん2倍ということを実際的にやっていっても……。

○浅野委員長 いいえ、ちょっと違うんのではないですか。5,000本以上とみなしていいと言っているだけで、要するに、実際には中に入っているのは、満たしているものも満たしていないものもあるけれども、満たしていないものについても、もうそれはみなしていいと、そこは目をつぶろうと、先ほど三浦委員が言われた、私はそう理解したのですが。だから、その限りにおいては、むしろ上がった部分というよりも下がった部分があるのではないでしょうか。

○三浦委員 古谷委員のご質問は、その基になる5,000本は、角閃石系の石綿によるデータだから、クリソタイルのデータは含まれていないから、クリソタイルについては、もっと少ないのではないかと、こういうご意見ですよね。

○古谷委員 それが一つと、そもそもヘルシンキ・クライテリアや労災認定の基準の中でも、オールマイティーの一個の基準がないから、どれか一つに該当すれば救おうという基準になっているわけで、そのうちの一つが5,000本。だから5,000本に該当しなくても、肺がんリスク2倍になる条件というのはもっとたくさんある。けれども、今回、検証の仕方が肺がん5,000本を一つの基準にしながら、それを満たすような形でやっていますから、結果的にはハードルが高くなる。

○浅野委員長 そうではなくて、少なくともその基準については、とりあえずあまり疑わずに考えるとして、これでそれを推定するとみなす。私はみなすのだと思うのだけれども、推定よりも、ほとんどみなすに近いのだと思うのですが。それはそれで、そもそも5,000本がおかしいのかどうかという議論はまた別の議論になってしまいますし。

○古谷委員 おかしいという議論を今しているわけではないことは理解してください。

○浅野委員長 ハードルが高くなった、低くなったという言い方は、あまりいい表現ではないような気がしませんか。

○古谷委員 多分、三浦先生にはわかっていただけたような気はするのですけれども。

○三浦委員 ただ、それに代わる基準が、今、世界的に全くないわけです。ですから、ある基準を基にやるしか今のところないわけで、新しい基準ができれば、それに添ってその時点から変えるというのは、大事なことだと思いますけれども。少なくとも、今ある世界的に認められた基準は、あれしかないですから。
 特に我が国では、実際にご本人が吸った場所で、どのぐらいのアスベストの量を吸ったのかというデータはほとんどありませんので、それと発がんとを結びつけるデータというのは皆無に近い状態ですから。そうすると、やはり国際的に認められた基準を持ってきて、それをベースにして判断するということ以外に今のところないと思います。ですから、新たな基準が今ない以上は、今までどおりでいかざるを得ないと思います。

○古谷委員 まさに三浦先生が言われたことと同じことを言っているつもりなのですけれども。

○浅野委員長 だから、高い低いという話をすることでもないわけでしょうね。

○古谷委員 論理的にはそうなのですよね。

○岸本委員 古谷委員の言うことはよくわかっていて、クリソタイルのばく露が石綿小体5,000本には満たない症例が多いだろうということが予測されるので、厳しいと言われるけれども、このデータも胸膜プラークが4分の1以上というのは、5,000本以上あった人は72%しかいなくて、28%の5,000本なかった方も、これも見ましょうと、みなしましょうと言っているわけです。胸膜プラークが胸部画像上あっても、肺がん発生頻度を2倍にしないというのは、古谷委員もよくご存知でございまして、1.6倍程度というのが過去のデータです。胸膜プラークだけがある症例も肺癌発生頻度を2倍にすると考えましょうということで、かなりみなしのところが多いのです。それとクリソタイルでは石綿小体形成が少ないというものを足して2で割れば、そう遜色はないだろうということにもなると思います。
 私が実は言いたいのは、古谷委員が言われるように、患者の会の方が言われるように、石綿繊維を測らなければいけない症例が多いことは事実でして、1,000本以上の石綿小体がある方というのは、5ミクロン以上が200万本以上、1ミクロン以上だと500万本以上の繊維がある可能性がある方がいるので、ぜひ、これをもっと、1機関だけではなくて、多くの機関で測るようにしてほしいと思っています。
 石綿小体に関しては、我々の労働者健康福祉機構の労災病院がクボタショック以前から石綿小体は測らなければいけないということで、とても熱心に取り組んでまいりましたし、環境再生保全機構の方のお力を得て、制度管理もきちんとやっています。
 我々には、機器を整備するだけの予算がないものですから、ぜひ、お国からそういう機器を我々に供与していただければ、三浦委員が言われたように、30万円も50万円もそんな高いお金を要求はしませんので、石綿小体と同じ程度の金額、安価で行いますので、ぜひ、やりたいと皆言っております。肺癌発生頻度を2倍にするを石綿肺がん認定基準と考えるなら、石綿小体を測っている担当者も石綿繊維までやらなければいけないと、皆申しておりますので、お国のお力をぜひ我々の機構にいただいて、測らせていただければ、我々も独立行政法人として存在感もある程度確立できますので、この場において宣伝させていただきます。

○古谷委員 一言言わせてください。まさに環境省は委託調査をやる場所にあるので、本当に似たようなお願いなのですけれども、肺がん過剰リスクを直接検出できることに超したことはないわけで、そんな調査研究をぜひ進めていただきたいと思いますし、ヒラーダルの論文もある意味かなり古いデータなので。

○岸本委員 そうですね、あれは1980年代のデータですね。

○古谷委員 実際、プラーク所見と過剰肺がんがどれぐらいなのか、もう少し新しいデータが欲しいと本当に思うのです。

○浅野委員長 わかりました。期せずしてみんなの意見が一致しました。あとは役所のほうで考えてください。
 というわけですが、とりあえず、胸膜プラーク画像所見指標ということについては、あまり本日は異論がなかったということでよろしいですね。
 2番については、いろいろなご意見がありまして。さらにまた議論しなければいけないことがあるかもしれません。
 3番は従来からやってきたことを明文化しろというのが判定小委員会からの要望ということのようですが、この辺は事務局、しっかり受けとめていただければと思います。

○古谷委員 2番、岸本先生は基本的に入れてもいいということではないのですか。

○浅野委員長 でも、これはびまん性胸膜肥厚。

○岸本委員 これは私も微妙なところではあるのですが、決してこれが対応しないとは思いませんので。

○浅野委員長 先ほどのご説明では、先生のお持ちの症例では、あまり肺がんは発症していないとおっしゃいましたが。

○岸本委員 今、三浦委員がくしくも言われましたが、1~2年しか見ていないのに、100例で言えるのかと言われると、とても微妙です。しかし、我々の扱っている症例は1990年代の死亡例もあり、この年代以降の生存例もフォローアップしていっておりまして、今、3年目になっていますが、3年目の段階でも肺癌発生事例が1例もないのが現実なものですから。肺がん発生頻度を2倍にするほどの本当にばく露量があるのかないのか、疑問です。私の今持っている100例ほどの患者の数と石綿小体数を測れていない段階で、本当にどうなのか疑問だというのが、私の経験からの発言とお考えいただければと思います。

○浅野委員長 わかりました。では、この点については、今のご発言をさらにもう少しよく整理をした上で、どうするのかということについて、次のステップへのペーパーをまとめていただきたいと思います。
 その上で、ばく露歴を全部に適用できるのかどうかということについては、現場ではなかなか大変な話だということがございました。
 それから、内山委員からは、実際に今の人員でできるのかどうか、もっと実証的に数字を確保しないと議論できないのではないかということがありましたが、当面、今までの手持ちのデータだけでそこを追いかけることはなかなか難しかろうと、小委員長として思うわけですが、将来的にはデータを集めてほしいということは十分あり得ると思います。
 それにしても、制度を作ったときの発想法から言って、ばく露歴をどこまで客観的に押さえることができるのかという問題が、もう一つ大きな悩みとしてあります。従来は医学的所見により判定できるもの、あるいは医学的所見でおおむね判定できるものというぐらいのところが、この制度での一応の裾切りになっていたという理解をしてきたわけです。
 そういう意味で言いますと、肺がんに関しても、まだ微妙なところがありそうだと言えます。それから、びまん性胸膜肥厚については厚さというのは、ほとんど因果関係がないというご指摘が、先ほど岸本委員から出されましたので、この点については、労災の今回の基準の改定に合わせるということは、特に問題はないということでよろしいでしょうか。この点も今回は一緒に扱うということですね。
 資料の労災制度における認定、びまん性胸膜肥厚関係というところです。5ミリ以上というのはあまり合理的な根拠がなかったということであったわけですね。これは労災の改定に合わせてもいいのではないかと、こういうご意見がありました。一応、そう私は理解したのですが、それでよろしゅうございましょうか。
 そうしますと、今日伺った患者の会の方々のご意見や、古谷委員のご意見は、正面から作業従事歴を指標とすべきだということでした。それに対して、それは、なかなか現場は難しかろう、あるいは果たして本当に実務的にうまく対応できるのかどうかということがございました。
 それがうまくいかないと、若干、公平性ということで問題が出てくるかもしれませんし、他方では、既にばく露歴ということを全く無視してやっているわけではないという事実も一方でありますから、そこをどう考えるのかというのは、その点は考えなければいけないと思います。
 今日はご出席でない委員の方もいらっしゃいますので、本日、直ちに結論めいたものに持っていくことは難しかろうと思いますが、次回は本日欠席の方々にも、あらかじめ十分ご意見を伺って、さらに小委員会としての意見をまとめていくことが適当ではないかと思います。
 他に何か特にありますか。清水委員、いかがでしょうか。

○清水委員 今までのご意見をいろいろ伺って、やはり、2つの制度が齟齬を来さないようにというのは、一番大事なことで、アスベストでのばく露がどうであるのかというのを、はっきりとさせておくということが大事であろうと。
 今、アスベストは製造・輸入禁止になっておりますけれども、これからアスベストによる疾病というのは多くなるということが予測されておりますので、そういう意味では、データの蓄積というものも非常に大事ではないかと思います。
 以上です。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 大気環境部会でも、今、大防法改正ということについて議論しておりまして、従来、過去の問題だと思っていたのですけれども、建築物解体の現場で結構いろいろ問題がありそうですから、これからもまだばく露の可能性がないとは言えないようです。それが無限に広がってしまうと、本当に将来、大きな問題を残しますから、何とか解体工事のときのばく露を、中で働いている方はもちろんですし、周辺の方に対しては、なおさらのことばく露がないようにということで、制度を厳しくしなければいけないという議論をしているところで、そのことと、ここの議論とも関係があるということを意識はしているところです。

○古谷委員 また、次回議論するということなのですが、先ほどのばく露情報をやはり救済に活用してほしい、あと、労災補償制度を準用できるところは基本的に準用するという原則を確立してほしいというのは、やはり先延ばししないで、ここで確立したい。
 それに補足したことで言いますと、参考資料1、これが、今の判定基準ですよね、ここに書かれている中身が。具体的には、7ページの[3]、先ほどの石綿肺が追加された部分ですけれども、「著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺については、大量の石綿へのばく露、胸部CT画像所見、呼吸機能検査所見といった情報をもとに総合的に判定する」という3つの柱を立てて、そのあと「鑑別を行うためには」ということで出てきています。まず一番最初に、石綿へのばく露の確認についてはこうするということが書かれているわけです。
 これは9ページの[4]で、びまん性胸膜肥厚についても出ていますけれども、こちらのほうでも全く同じで、石綿へのばく露の確認、画像所見の確認、著しい呼吸機能障害の有無という形で、これがまさに判定基準なわけです。
 ここに確認方法も出ています。一つは、先ほどの5の説明で、石綿肺、びまん性胸膜肥厚については医学的所見によりおおむね判定可能で、ばく露歴は鑑別要素なのだという説明をされましたけれども、それはどこにも書いてないわけです。むしろ鑑別というのは別のことできちんと書かれているわけで、そういう意味では、あの説明はあまり適切ではないと思うのですけれども。
 肺がんについて10年と言うときにも、考え方、あるいは判定基準の書き方としては、全く変わらなくていいと思うのです。ただし、環境再生保全機構の負担はどうなのかという話は、これは確かにあると思います。
 ただ、判定基準の考え方、書き方として、これが今書けないということはまずないということが一つと、委員長、あと2点だけお願いします。今日、議論の中で、初めのほうであった、私自身は準用という話が一つと、もう一つは、本当は労災認定基準そのものもまだ問題をいろいろ抱えているのだということで。これは特にそのことと絡むと、こちらの方もまた見直しが必要になる可能性がある。端的に言いますと、肺がんの認定をめぐって、行政訴訟が今かかっているだけで7件あるのです。判決が昨年出たのが3件、認定基準の改正前後にあって、認定基準が改正されたから、それで訴えがなくなったのが、判決が出た3件のうち1件だけです。2件はまだ係争中です。高裁判決も2月に出るということを考えると、現行の労災認定基準の考え方そのものが、特に裁判という形も含めて見直される可能性があるので、準用という考え方で、よりよく物を考えると、そのことももう一つ考えておかなければいけない。
 3点目に、ばく露歴を救済にと言ったときには、職業ばく露だけではなくて、それ以外の方々の救済についても何とか道を広げたいと思っていて、一つは今の判定基準ですけれども、これは、書き方の解釈にかかわるかもしれませんが、肺がんのところは6ページですね、参考資料の[2]で、肺がんについては、2倍に高めるリスク、「国際的にも、25本/ml×年程度のばく露があった場合であると認められており」となっていて、続いて、「これに該当する医学的所見としては、次のア又はイに該当する場合が考えられること」という書き方です。限定でというのではないと私は読めます。読めるのではないかというのは、25本ファイバー/イヤーに相当するようなばく露が、ここに挙げたア、イ以外の情報から推定されるような場合には、救える余地がある判定基準の書き方だと読めると思うのです。そういうふうに読んでほしいし、そのことによって、石綿肺の場合も一緒ですよね、石綿肺のときの書き方は、職業歴が確認できない場合にはいろいろな情報から総合的に判断すると書かれているのです。この判定基準の書き方をもって尼崎で現実に環境ばく露の石綿肺の方が救済されました。これは非常にありがたいことです。
 ですから、はなから文章の中で切ってしまうのではなくて、何とか情報があった場合には救える道を残してほしいです。それが、より文章になればいいのですけれども……。

○浅野委員長 わかりました。要するに、ここに書いてあることは既に今やられているわけです。ですから、それをさらに後退させることはないわけで、ここに書いてあることは当然の前提で。ただ、ばく露歴だけで決めるということはないわけで、必ず他覚所見があって、それプラスということになっているわけです。

○古谷委員 ア、イは限定的でないという、理解はそれでよろしいですか。

○浅野委員長 それは限定かどうかは、私は法律家だから限定と考えない方が好きだけれども、それはいろいろ類似のものについては幅があるでしょう。先ほどの5,000本は、では4,999本ではだめだという議論はあり得ませんからね。

○古谷委員 それは部長なり室長に確認をしておいていただけませんか。

○浅野委員長 基準というものも、この制度のような場合には、それを機械的に当てはめることはできないだろうと思っています。とにかく他覚所見プラスこういうものを加えてということは、既に道を開いていますから、それをもう一回また元に戻してしまうということはできないというのは、最初に私が、言っているとおりです。
 ただ、他覚所見だけでやってもいいというにも、今のところはしてはいないので、そこはやはりこの制度の枠の中では、多分無理なのではないかと思います。だから準用と言われても、どこまで準用するのかという話になりますから、古谷委員が言われるように、それをまず大前提として、本日ここでみんなで合意しましょうといわれても、それは、ちょっと難しかろうという気がします。
 ですから、次回までにもう少し事務局に勉強していただいて、どういう書き方がいいのかということを勉強していただきます。いずれにせよ、すぐまたこういう通達を書かなければいけないわけでしょうから、事務局としても、そのときに困らないように、ある程度そのことも考えて、今日の資料はどちらかというと、漠たる資料でありますので、箱書きぐらいでは多分、通達は書けないでしょうから、そのことも考えた資料をもう少し丁寧に次回は作っていただいて、可能な限り合意ができるところで合意をして、できるところは早く実施するということにしていきたいと思います。
 そんなところでよろしいですか。

○古谷委員 できたら、促していただけるとありがたいですけれども。

○浅野委員長 では、本日はこれで委員会の審議を終わりたいと思いますので、あとは事務局からお願いします。

○伊藤補佐 それでは、長時間にわたり熱心なご議論をいただき、まことにありがとうございました。
 次回の日程につきましては、現在調整中ですので、確定しましたら追ってご連絡をさせていただきます。
 なお、本日の議事録につきましては、原案を事務局で作成いたしまして、委員の皆様にご確認いただいた後、ホームページに掲載する予定ですので、よろしくお願いいたします。
 それから、最後に傍聴者の皆様へのご連絡でありますけれども、お帰りの際、本日時間が遅くなっておりますので、正面の門が閉まっております。正面の玄関を出ていただいて、直ぐに左折をしていただきますと、突き当たりに南門という門がございますので、そちらから出ていただくようにお願いをいたします。正面の玄関に係の者を立たせておりますので、ご不明な点がありましたらお尋ねください。
 それでは、以上で第11回石綿健康被害救済小委員会を終了します。どうもありがとうございました。

午後7時55分 閉会