中央環境審議会 環境保健部会 石綿健康被害救済小委員会(第8回)議事録


議事録

午前10時00分 開会

○柳田補佐 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第8回中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会を開催いたします。
 本日は、小委員会委員11名のうち、10名のご出席をいただいておりますので、定足数を満たしております。
 次に、本日の資料の確認をしたいと思います。議事次第を1枚めくっていただきまして、資料1が小委員会の名簿でございます。資料2が、石綿健康被害救済法施行令の一部改正についてでございます。資料3が、制度利用アンケートの集計結果の速報でございます。資料4が、各制度における認定等の状況でございます。資料5は、労災保険制度等と救済制度の比較でございます。資料6が、石綿健康被害救済制度に関する主な論点でございます。それと、参考資料といたしまして、古谷委員から石綿健康被害救済法見直しについてという資料をいただいております。
 以上でございますが、不足等ございましたら、事務局までお申しつけください。
 それでは、ここからの議事進行は、浅野委員長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、きょうの議題は、前回に引き続きまして、今後の石綿健康被害救済制度のあり方についてでございます。前回、次の回には論点整理をしたいと申し上げましたが、ちょっと日程が合いませんで、きょうまで時間がたってしまいましたことをまずおわび申し上げたいと思います。
 さて、本日は、論点整理についての整理案を事務局に用意をしていただいたわけですが、それに先立ちまして、7月にご存じのように政令改正が行われましたので、改めて私どももどのように政令が改正されたかということについてきちっとご報告を受けて、内容をお互いに共有したいと思います。
 それから、さらにそれ以外にもこれまでにも資料をそろえて欲しいというご要望が出ておりました。それについても資料がある程度できましたので、それらについてご説明をいただきたいと思います。
 それでは、報告事項について、事務局からの報告をお願いいたします。

○泉室長 それでは、事務局から報告させていただきます。座って失礼いたします。
 まず、お手元の資料2をお開きいただきたいと思います。いただきました答申に基づきまして、政令改正をいたしました、その報告でございます。石綿による健康被害の救済に関する法律施行令の一部を改正する政令についてという資料でございます。
 まず、改正の背景・趣旨は、法の給付の対象となる指定疾病は、現在、法の2条におきまして、中皮腫及び気管支または肺の悪性新生物と二つが規定されているところでございましたが、ことし4月28日のこの救済小委員会におきまして、石綿健康被害救済制度における指定疾病に関する考え方ということで取りまとめをいただきました。
 この答申の内容は、石綿肺及びびまん性胸膜肥厚のうち、「著しい呼吸機能障害をきたしている場合は、現在の指定疾病、つまり中皮腫及び肺がんと同様に重篤な病態であり、現行法の趣旨に鑑み、救済の対象とすることが適当である」ということで、救済の観点から、この著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺、そして著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、この2疾患を追加するということで政令改正をしたわけでございます。その下の図のとおりでございます。
 具体的な改正の内容でございますが、次のページに政令の新旧をつけております。改正後の政令、上の方でございますが、指定疾病として新たに第1条を設けております。と申しますのは、法の本体では指定疾病とは中皮腫、気管支または肺の悪性新生物、その他石綿を吸入することにより発生する疾病であって、政令で定めるものになっておりますので、法本体に書かれた以外の疾病を追加する場合には、政令に書くということでございまして、それが、今まで何もなかったものが、今回、新たに二つ入ったということで、第1条に二つの疾患を書いております。
 それから、次の第2条は、法によりまして政令で認定の有効期間を定めるということになっております。従来の一、二、略しているところには、中皮腫と肺がん、それぞれ5年というのが書かれているわけですが、新しく追加した2疾病について、認定の有効期間は5年という規定をしております。
 なお、その後の条が1条ずつずれました。
 それから、1枚目に戻っていただきまして、改正の内容の(3)のその他必要な経過規定というのは、技術的な話として、今まで法の施行前の死亡の方というのは、法律が施行された18年3月28日を起点にしていたわけでございますが、新しく追加された2疾患については、施行前というのは、この政令の施行前をいうのだという形の経過規定を定めているということでございます。7月1日に施行いたしました。
 あわせまして、診断書などの様式や、認定の基準についても通知を出しております。
 また、医療機関から資料を出していただくときの注意事項として、医療機関向けの留意事項の通知も改正し既に6月半ばに出しているところでございます。
 また、日本医師会、病院関係の団体を通じまして、現場の医師の方々への啓発、お知らせということも進めております。
 現在までの申請の状況でございますが、お問い合わせはたくさんいただいておるようでございまして、実際に環境再生保全機構の方に既に正式な申請として上がってきているものが、直近聞いたところでは、療養中の方については4件、それから既に亡くなっている方について12件、既に申請が来ているということのようでございます。
 今後、申請の内容の確認、書類の整理、さらに医学的判定が必要なものにつきましては順次進めていくという予定でございます。
 まず、それが、資料2の政令についてのご報告でございます。
 次に資料3でございますが、これは。

○古谷委員 今の点について、追加でよろしいですか。

○浅野委員長 そうですか。あとでまとめてご議論をと考えておりましたが、では、この点について、この段階で発言をしたいというご趣旨のようですから、どうぞ。

○古谷委員 どうもありがとうございました。今、私も一生懸命施行通達などを読ませていただいていて、小委員会の答申が基本的に書かれていると感じていますが、ちょっと1カ所だけ気になったので、ちょっとここで発言させてください。
 というのは、法施行前死亡者、今話があったように、今回の場合には改正政令の施行前の死亡者については、医学的な証明が、十分資料を集めるようなことが不可能な場合もあるということで、死亡診断書などに石綿肺ないしはびまん性胸膜肥厚ということで死亡の原因が記載されていた場合には、医学的判定を申し出ることもなく、機構として権利の認定を行うことができるとされています。
 それと関連して、施行前死亡じゃなくて、未申請死亡の方の場合ですね。答申の方では、未申請死亡についても、資料の入手が困難な場合には、医療機関で残存している資料や、診療録等を利用することが適当であるというふうに答申に記載されていたと思うんですけれども、施行通達では、そこの部分の解説が、未申請死亡については、原則、生存中の場合と同じ扱いであるという記載だけであったように読めたものですから、もし今確認できるのだったら確認していただいて結構なんですけれども、ぜひ答申にありました未申請死亡の場合にも資料入手が困難な場合には、そういうことを利用していくことが適当だという趣旨を指摘していただけたらというふうに思います。
 以上です。

○浅野委員長 この点については、事務局から何かございますか。

○泉室長 今手元に施行通知を持っていないので、文章に沿って明確にお答えできませんが、原則的な考え方は、施行後の死亡の方は、療養中の方と同じ資料というのは大原則ではありますけれども、その際にやはり亡くなっているということで資料の入手が困難だということから、答申に書かせていただいたようなさまざまな資料を使うということは、考え方は変わっておりませんので、そこは誤解がないように運用していきたいと考えております。

○浅野委員長 それでは、施行令改正に関して、何かほかにご質問ございますか。それでは、どうぞ、清水委員。

○清水委員 ちょっと確認と言いますか、お伺いしたいのですけれども、著しい呼吸機能障害の定義について、環境省がかなり先進的な判断をしたと思うのですが、厚生労働省との、いわゆる労災の方とのすり合わせについてその後はどうなっているのか、何か情報があれば教えていただきたいのです。

○泉室長 厚生労働省の方も、こちらの答申を踏まえてじん肺法の検査方法についてご検討いただきまして、呼吸機能検査の基準値等などについては、整合を図っていただいたと理解しております。

○浅野委員長 ほかにございませんでしょうか。よろしいですか。

(はい)

○浅野委員長 それでは、どうぞ、報告を続けてください。

○泉室長 それでは、資料3の方をお願いいたします。これは、全く初めてにお目にかける資料になります。石綿健康被害救済法に基づきまして、健康手帳を持っていらっしゃる、つまり現に療養中の方につきましては、毎年5月に現況届を出していただくことになっております。ことしも4月に環境再生保全機構から現況届の用紙をお送りしたのですけれども、その際に、あわせて、療養状況等をお尋ねする「制度利用アンケート」という調査票を同封いたしまして、ご回答をお願いいたしまして、得られたものをここに集計しております。まだ速報値ということでご理解いただければありがたいと思いますが、611人の方のうち518人から回答をいただいております。
 このアンケートの調査票自体は、資料3の後ろの方、裏表ですから3枚ほどがそれに該当しますので、適宜参照していただきたいと思います。この中で、特に療養状況に関するところを今回抜き出してお示しをしております。2ページ以降でご説明したいと思います。
 まず、回答された被認定者の属性ですけれども、中皮腫、肺がんを男女別に示した表が一番上にございます。中皮腫と肺がんの比率が、大体3対1、それから男性と女性の比率も3対1ということになっております。これは、現に療養している方の頻度ということで、認定者全体の割合とは多少違っております。
 それから、被認定者の年齢階級でございますけれども、60代、70代の方が全体の7割を占めるという状況でございます。また、アンケートに答えてくださった方は、認定者ご本人が7割弱ということでございました。
 次の3ページに行っていただきまして、受けた方の家族構成でございますけれども、ご本人のみ、それからご本人+配偶者、さらにご本人+配偶者+子供(孫)、その他というふうに分けています。
 次の表からが、療養の状況でございますけれども、4月にアンケートをお送りいたしましたので、その前の1カ月間、ことしの3月の1カ月の様子について、大体教えていただきたいという質問にしております。この1カ月間の生活の様子について最も当てはまるものはどれかということですが、主に入院という方が、中皮腫・肺がんあわせて13.5%、疾病別に見ますと、中皮腫の方がその割合はやや高くなっているところでございます。それから、主に自宅で通院や療養中心の生活をしていたという方が、約半数を超える数字となっております。それから、通院しながら仕事や家事をしていたという方も2割程度いらっしゃいました。次のその他というのは、自由記載欄を見てみますと、例えば3カ月に1回、検査を受けていたというような形の方が、その他として回答をしていらっしゃるようでございます。
 次に、この1カ月間に通院をしたかという質問につきましては、「はい」というのが73%ということで、しかし、いいえという方もいらっしゃいました。
 次のページに行っていただきまして、通院先がどこかということですけれども、同一市町村ないしは同一都道府県内という方が大部分でございました。
 それから、通院医療機関までの片道距離でございますけれども、一番多いのが10から20キロというところでございまして、遠い方は100キロ以上という方もいらっしゃいます。
 主な交通手段でございますが、過半数の方が自家用車というお答えでございました。
 その通院の交通費としてかかった費用ということですけれども、5,000円未満、それから5,000円から1万円未満という、ここが一番多くなっておりまして、1万円未満の方で全体の約9割ということになっておりました。
 次は入院でございますが、この1カ月間に入院をしたかということをお聞きしますと、約4分の1の方が「はい」というお答えでございました。
 それから、その入院にかかった費用で医療費以外のものにつきましては、約半数の方が1万円未満、それから5万円までいきますと、大部分の方が5万円未満のところに入ってくるという結果でございました。
 次のページが、今度は日常生活の自立や介護の状況でございますけれども、日常生活の自立の状況を大まかに4段階でお聞きいたしましたところ、日常生活はほぼ自立しており、独力で外出できるという方が7割、次の屋内での生活はおおむね自立しているが、介助なしに外出できないという方が2割、一方で一日中ベッド上で過ごし介助を要するという方も3%ほどいらっしゃいました。
 この介助や手助けをしている方がどなたかということにつきましては、配偶者が約7割、そして子供という結果でございました。
 また、この1カ月間に介護のためにかかった費用としては、1万円未満という方が8割でございました。
 次に7ページに行っていただきまして、制度についての意見等ということで、さまざまな角度からお聞きしておるんですけれども、まず、石綿健康被害救済制度に全体的に満足しているかと、これは当てはまるところを選んでくださいという問いでございますが、そうしますと、とても満足、それから満足という方で半数を超えるという結果でございました。
 それから、認定や支給を受けて、生活上、療養上の負担感ということだと思いますが、それはどうなったかというと、とても軽くなった、軽くなったという方が7割、4分の3ぐらいということになっております。
 また、自由記載欄で給付内容に対する意見、要望というのを自由に書いていただいたものを、似たようなものを集めて集計してみましたところ、給付をもっと増額してほしいというもの、それから、制度があってありがたいというご意見、それから、認定の有効期間があることが不安だというご意見、それから、この制度をずっと続けてほしいというご意見、それから、医療費以外の費用についても扶助をしてほしいという意見、それから、手続の簡素化を求めるもの、そして、損失補てんで補償を求めるもの、治療法の確立を求めるものといったご意見がそこにあるような数、出ておりました。
 次のページを見ていただきますと、今度は主に手続面で、申請から認定までの手続などについて、今後見直した方がいいと思われることということで複数回答をしていただいている項目がございますが、一番多いのが認定までの審査期間について、それから給付金額についてというところで改善を求めるご意見がございました。
 また、よりよい療養を行えるような環境整備として、どんなものがあったらいいと思われるかという自由記載につきまして、同じように集約いたしますと、治療法の研究や開発をしてほしいというご意見、それから、治療法や療養介護についての情報提供が欲しいというご意見、専門医療機関がどんなところなのかということについての周知や情報提供をしてほしいというご意見、それから、石綿関連疾患の専門医師それから専門の医療機関がふえてほしいというご意見、患者や家族のネットワークをつくってほしいというご意見、また、経済的な支援をしてほしいというご意見、こういったものが出ておりました。
 まだあらあらの集計の段階でございますが、実態を見る資料として貴重なものだと思いますので、今後の議論に活用いただければと思います。
 次に、資料4をお開きください。これは、先日5月21日の会議に中皮腫につきまして、既に亡くなった方の死亡年別に労災制度それから救済制度で認定された方がどのくらいいらっしゃったかという数字を既にお出ししてありますけれども、その数字を一部更新して、救済制度につきまして、前回は2月までの数字だったのですが、それを3月まで延ばした数字になっております。次のページに、前回お出しできなかった肺がんについても同様の集計をお出ししております。
 肺がんにつきまして、やはり死亡年別に労災・船員制度と、それから救済法での認定者について書いております。また、一番右側は、参考までですけれども、人口動態統計でのトータルな肺がんの死亡者数を書いておりますが、ご承知のとおり、肺がんの原因というのはさまざまでございまして、ここには石綿以外のものも入っておりますので、あくまで参考値として隣に書いております。
 これを見ていただきますと、(A)と(B)というところが、労災認定特別遺族給付金、それから船員保険でございます。それから、(C)というところと(E)というところが救済制度にかかわるものでございますけれども、(A)プラス(B)のトータルの数を見ていただきますと、1,544となります。それから、(C)と(E)を足して(D)と(F)を引いてみますと、281件ということでございまして、救済制度での認定というのが、認定を受けた全体の中で約15%、一方で労災制度・船員保険制度の方が約85%という結果になっておりまして、中皮腫の方が大体5対5であるのに対しまして、異なった比率となっております。
 それから、次のページは、これも前回予告だけさせていただいておりましたけれども、毎年、環境再生保全機構の方で認定を受けた方につきまして、申請時のアンケートをもとに、ばく露状況を分類して集計しております。前年までは労災と両方申請して、労災の方に移行された方のデータを除去し切れていなかったのですけれども、今回、精査をしまして労災を除いた数の形で精査をしております。これは、ア、イ、ウ、エと分けてありますけれども、アというのは、直接または間接の石綿ばく露の職歴がある、あるいは、ある可能性のある方、それから、イは、家族内のばく露の可能性がある方、ウは、石綿取り扱い施設の立ち入りなどの可能性がある方、それから、アからウのいずれにも該当しない、特定できない方というのをエというふうに分類しております。複数のところに該当する方については、上の方を優先という形でとっております。
 見ていただきますと、上の表が医療費対象者、つまり療養中に申請をされた方です。下の方が、亡くなってから申請をされた方ですので、回答されたのはご本人でないということで、若干情報の質が、確度が下がるということになります。
 百分率の方が見やすいかと思いますけれども、中皮腫では、アという職業の直接または間接の職業ばく露のありそうな方というのが、約5割でございます。ですので、先ほどの死亡の表とあわせますと、まず労災制度と救済制度で大体5対5と、さらに救済制度の中の半分の方が職業ばく露がありそうな方、こういう分布になっております。
 それから、肺がんの方は、9割がア分類、つまり職歴のある、あるいはありそうな方ということです。先ほどの表とあわせますと、85%が労災・船員で、それから15%が救済法と申しましたが、その15%の救済法の中の9割の方は、職歴がある、あるいはありそうな方ということで、認定を受けた方のバックグラウンドというのが大分明らかになってきたというふうに考えております。
 以上、資料2から4までご説明させていただきました。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。それから、前回もご意見が出ておりましたが、労災保険制度と救済制度の比較についての資料を準備していただきましたので、これもあわせてご説明をいただきます。

○泉室長 労災保険制度と救済制度の比較ということで、これまでも資料をお出ししておりましたが、どちらかというと、対象となる疾病がどうかとか、給付がどうかという、かなり実用面を中心にご説明させていただきましたが、今回、制度そのものの考え方というところについて、少し詳しく表をつくりましたので、そこを中心にご説明させていただきます。
 まず、労災制度の概要としては、保険による補償制度、これに対して救済制度は、国による救済制度ということでございまして、労災制度の方は、労働者の業務上の事由または通勤による負傷・疾病等について、被災労働者またはその遺族に対し、所定の保険給付を行う制度ということでございまして、一方で救済制度の方は、石綿による健康被害を受けた者等に対して、医療費等の給付を行う制度、それぞれ根拠法は労働災害補償保険法、そして、石綿健康被害救済法となっております。
 制度の根幹となる責任の考え方でございますけれども、まず、労災制度につきましては、使用者の無過失賠償責任に基づく制度ということになっております。一方で救済制度につきましては、本来、原因者が被害者にその損害賠償をすべき責任を負うのですけれども、石綿健康被害に関しては、[1]、[2]のような特性があると。つまり、一つは、長い潜伏期間、30年40年のばく露からの期間を経て発症とするということ、それから、石綿が社会全体で広範な分野で使用されてきておりますので、飛散と個別の健康にかかる因果関係の立証が非常に困難であるという特殊性があることから、民事責任とは切り離した救済という制度になっております。
 次に対象でございますけれども、労災制度につきましては、労働基準法に定める労働者ということでございまして、労働者以外の方、つまり中小の事業主や自営業者、家族従事者などについては、特別加入制度という任意加入制度があって、掛け金を払って加入されているという形になっております。一方で、救済制度につきましては、対象は日本国内において石綿を吸入することにより指定疾病にかかった旨の認定を受けた方、そしてその遺族ということになっております。
 給付の趣旨でございますけれども、労災制度が労働災害に対する使用者の災害補償責任、これがもともとあるわけでございますけれども、それを代行する機能を有する制度ということであるのに対しまして、救済制度の方は、社会保障的な考え方に基づく見舞金的な給付制度ということでございまして、支給される手当については、入通院に伴う諸経費、介護手当的な要素が含まれている一方、労災のような無過失賠償責任に基づく補償制度ということではございませんので、慰謝料や不利益のてん補、生活保障といった要素は含まれていないということになっております。
 なお、労災との関係につきましては、労災認定を受けた方を明示的に排除するわけではございませんで、両方の認定を受けることが可能でございますけれども、給付については調整されるということで、同じ事由で両方の制度から給付は受けられない、こういう制度になっております。ですので、労災制度で医療費をもらいながら、救済制度の療養手当をもらっているというような形で、両方の受給をされている方も制度的にはいらっしゃるということになります。
 それから、財源でございますけれども、労災制度の方は、事業主が100%保険料という形で負担するということでございまして、その保険料は、賃金総額に事業の種類によって定められております料率を掛けたもの、この料率は、事業の種類によって労災事故の発生状況から算定されていると伺っておりまして、低い業種では一般的には3、そして高い業種では1000分の103という形で、3年に1度の改定がなされているというふうに伺っております。
 一方で、救済制度の方は、政府と地方公共団体、関係事業主が拠出するということで、これは、その救済という観点、それから石綿健康被害の広範に使用されてきたという特殊性などから、広く分担するという考え方で、現実的には、国が約8分の4、地方が約8分1、事業主が約8分の3という負担になっておりまして、制度開始からの5年間の総額として、基金760億円を積んでいるという状況になっております。
 次のページ以降は、既にご説明させていただいているところでございますけれども、対象となる指定疾病につきましては、今回、救済制度の方で追加をした関係上、このような形になっております。
 それから、認定者数についてもごらんのとおりでございます。
 それから、給付内容、水準などにつきましても、そこの表のとおりでございます。
 資料5につきましては、以上でございます。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。それでは、ただいままでの資料のご説明について、ご意見なりコメントなりご質問なり、何でも結構ですが、あればお出しをいただければと思います。なお、先ほどの政令改正についても、まだご質問、ご意見がおありの委員には、ご遠慮なくその点についてもご発言をいただければと思いますが、いかがでございましょうか。
 はい、どうぞ、内山委員。

○内山委員 資料3についてちょっと確認させていただきたいのですが、5ページの表なんですが、この1カ月間に入院をしたかという問5の3のところで、「はい」が97名いらっしゃいますね。その後に、この1カ月に入院にかかった費用ということは入院された方だと思うんですが、それ以外に医療費以外の方というのが、件数がこれは97を超えているんですが、これ、母数がどこになっているのかちょっと教えてください。

○泉室長 ここは、調査票上は「入院をした」に、「はい」と答え方だけが、その次の項目を答えるような形になっているんですが、中には入院していないのにつけている方もいらっしゃいますので、今後、精緻な集計をしていく際には、「はい」と答えた方に限った集計をするという形で整理をしていきたいと思います。

○内山委員 もう一つよろしいですか。7ページの自由記載のところで、認定の有効期間に対する不満・不安というのが13件ございます。前回のヒアリングの時の患者さんの方も、5年間で打ち切られるのではないかというようなことで大分心配されていたんですが、ここは、有効期限5年ということですが、これは更新もあるということだと思うんですけれども、そのときの手続ですとか、更新条件ですとか、そういうところは、もうどこかで説明されているんでしょうか。それとも一応有効期限は5年ですよということだけでまだ、初回の申請のときですね、そこら辺をちょっと教えていただければと思います。

○泉室長 この項目が意外に多かったので、私たちも対応が必要だというふうに考えておりますけれども、実際には、有効期限5年ということで最初にお知らせをしておりまして、疾病が治っていなければ更新可能な制度でございますが、その辺をまだ十分ご理解いただいていないのかなと思っております。次の3月にもう認定の有効期間が終わる方が出てまいります。期限の半年前から申請ができることになっておりますので、そろそろご案内をさせていただくようなことを考えております。

○浅野委員長 よろしいですか。今の点は、当小委員会の役割を超える部分ではあるわけですけれども、申請主義ということになっていますから、やはり出し忘れると失権してしまうというような問題がありますね。だから、運用の上では何遍ご連絡、ご確認をさし上げても構わないので、行政からきちんとご連絡をさしあげておかないといけないと思います。決して悪気はなくて、出し忘れたというような方がおられるようで、労災法でもその問題を結構抱えて悩ましい問題があるわけですね。
 はい、古谷委員、どうぞ。

○古谷委員 同じ資料3の基本的なところでちょっと聞き漏らしたかもしれないんですが、対象の611人というのは、現に手帳を持っていらっしゃる方全員という意味でしょうか。

○泉室長 はい。これは、手帳を持ってらっしゃる方で、この調査の直前の段階で療養中ということを確認した方についてお送りしていますので、それの全数が611ということになります。

○古谷委員 認定された累積件数はもっと多いわけですけれども、そのうち亡くなったりした方は、手帳が返納されると。それを除いて、現に手帳所持者が611人ということで、その方々にアンケートを送ったという、非常に重要な調査だと思いますので、ぜひ継続して中身も充実していただきたいと思います。

○浅野委員長 ありがとうございました。さらに、細かい分析も行われる予定と聞いております。資料の後の方に質問の様式、こういう質問をしたということがございますので、これを見ていきますと、まだまだきょうはご報告いただかなかった項目が含まれていて、これらについても今後の我々の検討の中でも参考にしなくてはいけないこともあるだろうと思います。引き続き整理をお願いしたいと思います。

○古谷委員 多分、先生方もいろいろ感じられていると思いますが、一つだけ、あっと思ったのは、4ページのところで、通院医療機関までの片道距離が出ていて、比較できるデータを持っているというわけではないんですけれども、労災保険の方が昨年ちょっと緩和されるまでの通院費の支給の基準というのが、原則4キロメートル以内だったんですね。4キロメートル以内の場合には、治療費を出す。それを超えた場合には、労災指定医療機関が適当なのがあるはずだから、医療機関を選ぶのは本人の自由だけけれども、労災保険から払うのは原則4キロ以内というふうに言われていたわけですけれども、もしそれが一般的に当てはまるのだとしたら、やはりこの表は、結構通院されている医療機関が遠い方が多いことを示しているのではないかと感じました。労災保険の方も実は、特に中皮腫については、この原則4キロを大分前から取っ払って適当な医療機関、もっと遠いところになる場合が多いという扱いをされていますけれども、石綿関連疾患の一つの特徴を、もしかしたらあらわしているかもしれないなというふうに思いました。これは感想です。

○浅野委員長 わかりました。この点については、岸本委員、どの程度の密度で中皮腫に対応できる医療機関があると考えたらいいのですか。

○岸本委員 当院でも、100キロ以上離れたところから通っている方がいらっしゃいます。今、古谷委員がおっしゃられましたように、中皮腫専門病院というのは少ないですから、専門病院に行くためには数十キロ以上かけていらっしゃる方がおられます。
 労災保険は、従来、古谷委員が言われましたように4キロ以内ということだったんですけれども、今ではそれ以上でも理由があれば旅費を払っていただけるということなので、救済法でも少し考慮していただけるとありがたいなと思っております。

○浅野委員長 わかりました。引き続き検討の中では、こういう要請があることはよくわかりました。
 それから、私が気がついたことですが、これは、介護のためにかかった費用というところでは、極めて低く数字が出ていますけれども、恐らく、配偶者の方などのご家族が介助などをしておられるのであろうと想像できることと、ここでのご回答では、1万円未満の方が8割ぐらいであるということとの関係がどうもありそうな気がいたします。つまり、これはご家族の介護の場合には対価が全く計算されないので、その分の無形の負担というものは数字にあらわれてこないと見ておかなくていけないと思います。そこで介助のための費用はそんなに高くないという結論を簡単に出してしまうのはよくないようですね。この点は、これ、二つあるというのが非常にいいことで、下の費用の点だけのアンケートだとついつい間違った情報を得てしまうということになりそうですから、この辺もクロス集計みたいな形でもしちゃんとデータがとれるようだったら、いま申し上げた推測を実証できるかとかを知っておきたいという気がしますけれども。これもさらに、速報じゃなくてきちっと報告するときには、よく分析いただければと思います。
 新美委員、何かありませんか。

○新美委員 私も、今、資料3についてですが、交通費等の費用をきめ細かくやっていらっしゃるのは非常にいいんですけど、これ、通院の回数ですね。頻度が出てないので、これと交通費の要否、妥当であるかどうかの検討については、ちょっと資料不足だと思います。質問項目にはちょっと入ってないように思いますので、今後、やるとしたときには、その辺をぜひご検討いただけたらというふうに思います。
 あと感想なんですけれども、同じく資料3ですが、7ページの問6の1に対する答えで、認定支給を受けて重くなったという回答があるんで、これ、ちょっと理解の不能で、経済状況が変化して全体に苦しくなったという趣旨なのかなというふうに推測はするんですが、制度で認定されたら重くなったと言われると、制度がない方がいいのかということになっちゃいますので、ちょっとその辺、きめ細かく精査していただくと結構かと思います。
 以上2点でございます。

○浅野委員長 ありがとうございました。大塚委員、何かありますか。いいですか。
 椋田委員、どうぞ。

○椋田委員 資料5で労災保険と救済制度の比較は、大変わかりやすくまとめていただいて、とても頭の整理に役立つものだと思っております。
 1点質問させていただきたいのが、財源のところです。今、国・地方、国が半分、地方が8分の1、事業主が8分の3ということで、総額760億円の基金ができています。国には当初、補正予算で大きなお金を出していただき、毎年については、それほど大きな金額を出してないと思います。一方、地方と事業主は、それぞれ毎年相応の負担をしているわけです。この結果、平成18年から22年の5年間でこうした形になっています。ここ数年の国の負担のままで放置しておくと今後国の役割がだんだん小さくなってしまうことが懸念されます。来年度以降の予算要求について、どう考えておられるのか、教えていただければと思います。

○浅野委員長 事務局、どうぞ。

○泉室長 今、まさにこの救済小委の中で制度の見直しということでご議論をいただいております。次の今後の制度がどうなっていくのかということを議論していただき、その姿が明らかになったところで、基金のあり方ということについてもご議論いただくということです。現時点で、国が幾らというふうに数字がはじけるものではございませんので、今後のご議論を踏まえて、予算要求をしていくとことになるかと思っております。

○椋田委員 その際、一般的に予算要求は、8月末が一つの締め切りになっていると思いますが、この委員会の審議のペースが、そういった国の予算要求のペースとうまく合っているのかどうか、そこはいかがでしょうか。

○泉室長 今後こちらでいつ結論を出していただいて、また法改正が必要だという場合には、いつの法改正になるのか、さらに、その施行がいつになるのかといったことに関係してくることでございますが、少なくとも来年度の要求という形で、この基金に関する大幅な要求をするという状態ではないというふうに考えております。

○浅野委員長 ご意見はわかりました。何もしなければ、多分、おっしゃるとおり、この基金の中の政府の拠出割合が8分の4という比率が崩れていく可能性は十分あるというご指摘だろうと思います。現行の制度で、今回、拡充したことによってどの程度の費用増になるのかということについては、必ずしも厳密にシミュレーションができていないわけですけれども、さらに加えて、今後、当小委員会では、制度そのものについて、法改正を含めた検討をするということで作業を進めているわけでございますので、法改正の結果、どの程度の費用がかかるかということを当然考えなきゃいけません。この点は、今後の検討の中で政府の負担の問題、あるいは、地方公共団体の負担、関係事業主の負担という点をにらみながら議論をするということになろうかと思います。ご指摘ありがとうございました。

○泉室長 すみません。その前のご質問にお答え漏れをしておりました。通院の回数については、調査票上聞いておりまして、今回の資料には入っておりませんけれども、手元に粗集計があります。通院回数が1回あるいは2回という方が全体の半分ぐらいですが、無回答という方も多いようでございますので、また整理をしたいというふうに考えております。

○浅野委員長 よろしいですか。では、太田委員どうぞ。

○太田委員 私は、全国知事会の任を受けて参加しておりますので、負担の問題については、また議論させていただきたいと思いますが、とりあえず資料4でございますが、大変興味のある数字だと思います。今後の救済のやり方について考えさせられるところがあるんですが、そのうちの3ページでございます。被ばくの状況調査、これについては、一応、一定の患者さんの数字が出ておりますし、今後、少しファクターは加わるにしても、大きな流れとしては、この傾向は変わらないと考えてよろしゅうございますですか。比率の問題とか、肺がんとかの。

○浅野委員長 これは、現況での手帳を持っておられる方についての調査と、それから、施行前弔慰金の対象者に対する調査ということですので、この比率が、今後どう動くかということについては、何か、今、事務局としては分析をしておられるようなことがありますか。

○泉室長 例えば潜伏期間が、ばく露の多い、少ないによって違うかもしれないと、こういった仮説もございますので、長い目で見れば、この割合というのは変わってくるかもしれませんけれども、ここ一、二年、数年のうちに、これが動くということは、現状の制度の枠組みが大きく変わらない限りないと。

○古谷委員 今言われたアンケート調査結果、これ、毎年公表していただいているわけですけれども、職業ばく露について、このうち自営業者と思われる方がどれくらいというようなことは出せないですか。職種だけ見ていると、明らかに自営業者じゃない職種はたくさん、公務員だったり、あるのはあるんですけれども、何か方法がもしあれば、これのうち……。

○浅野委員長 今の調査では、そういうフェースシートみたいなものはとってないということですか。どうぞ、再生機構の方でお答えください。

○機構 環境再生保全機構石綿健康被害救済部長の瀧口と申します。この調査を実施させていただいていますが、今は産業分類で職業を分類しています。それでは出るのですが、アンケートの中で、それが自営だったかどうかというところまで、ちょっと読み取りづらいところがございます。例えば、何とか工務店とかでお名前と同じであれば、恐らく自営かなというところぐらいまでしか推測できないものですから、ちょっと自営かどうかまでは難しい。要するに労働者性があるかどうかで集計することは難しいかなと思っております。

○浅野委員長 労災との併給調整で処理済みという理解はできないのですか。そうはいかないということでしょうか。

○機構 そういう集計も可能かと思います。どこまでできるかどうか、アンケートまで見てみないとわかりませんので、そこは課題としたいと思います。

○浅野委員長 いずれにせよ、我々の見込みも、本救済制度の中では、自営業者の方々で労災の救済から漏れておられる方々に対しては、早急に密度の濃い救済をしなければいけないだろうという議論をやってきているわけですから、その辺の比率がはっきり出てくるといいですね。
 それから、このエの部分でよくわからないのは、これが将来的には減ってくる可能性があるのか、それとも、ますます同じような比率で来るのか、過去分については、なかなかわかりにくいというので、特に施行前弔慰金の場合には、ご遺族の回答ですからわからないというのが多いのは当然だと思うんですが、ご本人の方にシフトしていった場合には、もうちょっとはっきりするのか、しないのかですね。

○機構 この件につきましても、過去の2年間しかデータがありませんので、トレンドは見にくいんですけれども、余り比率としては変わっておりません。どこでばく露したかの情報がまだまだわかっているものではありませんので、ばく露がどうしてもわからないという方は、かなりの数は出るのかなと思っております。

○浅野委員長 わかりました。三浦委員、どうぞ。

○三浦委員 先ほどのご質問なんですけれど、この集計に一応私も携わった一人なものですから、環境再生保全機構の方でこの集計をするコーディングをしたり何かするのは、結構後からするのは大変なので、これから質問項目をまた変えていかなきゃいけないですね。
 特に石綿肺とかびまん性胸膜肥厚が今度入ってきますので、こちらはかなり高濃度ばく露者が多いと考えられますので、この自営業者かどうかというところは、非常に大事な項目になると思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

○浅野委員長 これは、ご要望ということですので。

○古谷委員 問題意識だけ確認しておくと、委員長も言われたように、労災保険に特別加入していない自営業者が救済法の対象であるということは間違いないわけですけれども、もし被用者として雇われていての職業ばく露が原因であるとしたら、労災保険なりの対象になるわけで、それはそっちで救うべき、補償基金にとってもそうですし、本人にとってもそうあるべきなので、そのことの仕分けというのをきちんとやっていく仕組みづくりというのは、前回課題の一つとして挙げさせてもらったところです。そのことを、せっかくデータをとっていらっしゃるので、そこら辺から検証なり、材料として使えるのならばということが、特に大きな私自身の問題意識です。もちろん、三浦委員がおっしゃったような、これから実際にどういうところから出てくるという分析の上でも大事だろうというふうに考えています。

○浅野委員長 ありがとうございます。ほかの委員から何かコメントなりご意見なりございますか。清水委員、よろしゅうございますか。

○清水委員 先ほどのこのアンケート調査の8ページ目ですか、プライバシーへの配慮がなされていないということなのでしょうか。具体的にはどういうことがあるのでしょうか。ちょっとその辺が疑問としてあります。

○浅野委員長 こういうご回答が出てくるということについては、何か思い当たる節があるかという、多分そういうご質問ではないかと思うのですが、再生機構の方でわかりますか。

○機構 この8ページの申請から認定の手続について見直した方がいい点ということでございますけれども、一応あるのが、認定までの審査期間ということで、これは確かに若干長いというか、かなり長いところがあるかなと我々も認識しております。療養中の方で大体6カ月ぐらいかかっておりますので、それは、やはり課題として受けとめているところでございます。給付金額その他につきましては、やはり労災ですとか、例えば公健法の支給ですとかといったものとの比較をされると、なかなかご議論があるのかなというところはございますけれども、その他様式ですとか、手引きの内容ですとか、我々の方で直さなければいけないものについては、指摘をいただいたものを順次直していきたいと思っております。
 プライバシーへの配慮ですけれども、これは、特にがんの患者さんでいらっしゃるものですから、本人に告知をされていないケースがございまして、そこに対して、我々も非常に気を遣って、ご本人が目にしないように送っているのですが、そのあたりの配慮をもう少ししていただきたいということではないかと思っています。

○浅野委員長 わかりました。なかなかセンシティブな問題ですが、そういう事情であろうというわけですね。
 ほかにございますか、よろしゅうございましょうか。

○古谷委員 資料5の2枚目の方で、労災制度と救済制度の給付の方の比較をしていただいているんですが、確認の意味を含めてですけど、一つは、救済制度の方の側では、医療費と療養手当、それと、これに並べる特別遺族弔慰金が並ぶと、何となく見ていて生きて闘病中のうちは医療費と療養手当がもらえて、亡くなった場合には280万円がもらえると、こういう制度のように見えるんだけど、実は違っていて、2系統になっています。そういう意味では、もし表をつくるときも、本当はここを二つの欄に分けて、医療費と療養手当をもらえて、亡くなった後に特別葬祭料をもらえるという流れと、医療費、療養手当がなくて、特別遺族弔慰金と葬祭料だけという、こういう流れだということですね、もちろん。
 それと、労災制度の方は、ここでは保険給付だけがどうも書かれているようで、例えば休業補償が例示として、給付日額が1万円の場合6,000円というふうになっていますけれども、実際には保険給付ではなくて、労働福祉事業という形でさらに2,000円、プラス8,000円になります。
 特にその中で恐らく今後の議論とも絡みますと、先ほど言った治療費の補償以外に通院にかかった費用が別枠で原則実費補償で労災制度の場合やっているということですとか、あと、お子さんが小さかったりしている場合には、就学援助などの制度があるというのが労災制度の救済制度と比較したときの違いとして幾つか出てくるんだろうということを気がつきましたので、発言だけしておきます。

○浅野委員長 わかりました。救済制度については、ご指摘のとおり、ちょっとこの表には誤解を与える恐れがある表現があるということは、確かに言われるとおりでありますので、少々直して、ホームページに載せるときはちょっと直してくださいと言うことにしてください、きょうはすでに配られてしまったからしようがないですね。よろしくお願いします。
 ほかにご質問、ご意見、コメントございませんようでしたら、報告事項については、ご報告を承って、議論をしたということにさせていただきます。
 それでは、次に、資料6に基づきまして、石綿健康被害救済制度に関する主な論点、前回いろいろとご指摘をいただき、またその後にもご意見を賜ったことをもとに、事務局で整理をさせていただいたものでございます。内容的には、私も目を通しておりますので、私の責任ということになりますが、これまで考えられた論点等はこんなものだったろうということをまとめてみたわけでございます。
 まず、これについて事務局から説明をいただいて、これでよろしいか、あるいは、さらにつけ加えるべき論点があるかどうかということについてのご意見を伺いたいと思います。
 では、事務局の説明をお願いいたします。

○泉室長 それでは、資料6をお開きいただきたいと思います。主な論点ということで、これまでにさまざまなご意見をいただいたことにつきまして、論点という形で整理をしております。全部で1から5までございます。一つ目が、制度設計(法律)と書いてありますので、これはもし変えるとすれば、法律的な事項になるということ、また、費用負担のあり方については、法律そして政令事項になるということで、括弧書きをしております。制度設計、費用負担のあり方につきましては、一つ目として、現行制度は、民事上の損害賠償に基づく補償制度ではなく、社会保障的な考え方に基づく見舞金的給付を行う制度(一方、労災制度は、民事責任を踏まえた原因者負担による損害賠償的な給付制度)であると。
 二つ目ですが、現行の費用負担は、国・地方公共団体・事業者が拠出する救済基金を環境再生保全機構が運営、三者間の負担割合や、二段階方式をとっている事業者負担のあり方につき、今度の認定者数の推移等を踏まえ、どのように整理するか。
 次に、2でございますが、救済対象、そして給付のあり方についてでございます。一つ目ですけれども、現行の救済対象は、「中皮腫」・「肺がん」に加え、著しい呼吸機能障害を伴う「石綿肺」及び「びまん性胸膜肥厚」を追加。これは、先ほど政令改正によるものでございまして、良性石綿胸水については、引き続き知見を集積とされております。今後、重篤には至らない疾病について、どのような整理としていくか。
 次の項目ですが、現行の救済給付では、指定疾病が重篤であることを前提に、医療費と療養手当を「一定の定型化」のもとに支給。今後、給付のあり方をどのように整理するか。
 3番目でございます。健康管理のあり方。労働者については、労働安全衛生法に基づく離職者健康管理制度が存在するが、対象外となっている一人親方や、検診の有効性が確立していない一般環境ばく露者に対する健康管理のあり方について、今後どのように考えるか。
 ちなみに、注をつけておりますけれども、健康リスク調査事業といいまして、これは、一般環境を経由した石綿ばく露による健康被害の可能性がある全国の7地域におきまして、問診・胸部X線、CT検査を実施する事業でございまして、平成22年、今年度からは5年間の追跡調査という形で健康管理の対象者をどのように設定するのかとか、どんな手法があり得るのかといった検討をするための資料を収集しようということで進めている調査がございます。
 次に、裏のページの4番でございますが、基金の使途の見直し。現在、基金の使途については、法31条により、「救済給付の支給に要する費用」とされているところでございますが、患者の方々からは、先ほどのアンケートでございますように、医療機関の方への知識の普及をしてほしいとか、それから、患者さんに対して治療に関する情報の提供をしてほしいと、こういったご意見などもございますので、基金の使途について、こういったご意向を踏まえてどう考えていくかという論点があろうかと思います。
 その他でございますが、一つ目は、特別遺族弔慰金等の請求期限の延長について、申請数の推移等を踏まえ、延長するかどうか検討する必要があるということ。
 それから、次の点は、肺がんについてばく露歴をどのように評価するかという点がございます。
 三つ目ですが、労災制度と救済制度について、お互いの制度間の調整をどのように行うかという点。
 それから4番目として、今後の石綿健康被害の未然防止についてどのように考えるか。
 こうしたさまざまな論点があろうかということで、論点のペーパーとしてまとめさせていただきました。よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、ただいま、これまでに議論されてきたことの中で、まだ議論が積み残しになっている部分は何かということについてとりあえず整理をしていただいたわけでありますが、さらにまだほかにもこういう論点があるのではないかというご指摘もあろうかと思いますし、また、各論点について、この段階で発言をしておきたいということがおありかもしれません。
 まず、参考資料が出ておりますので、古谷委員提出資料ということで出されているものについて、古谷委員から、お時間をさし上げますので、発言をいただければ、どうぞ。

○古谷委員 ありがとうございます。そこに書かれていますように、7月5日付で石綿健康被害対策室にあてられた要望書ですね。7月5日というのは、健康リスク調査をやっている石綿の健康影響に関する検討会が開かれたときで、その折にリスク調査が行われている地域の住民被害者の団体の方々が連名でこのような要望を出したということで、事務局の方にお願いしましたのは、これも含めて、ここの小委員会の議論にかかわるようなことで環境省の方に寄せられた要請や何かがあったら、ぜひそれは、この委員会に出してもらって、議論の素材にしてほしいという趣旨でお願いをしたものです。
 中身自体は、そんなに繰り返すまでもなく、読んでいただいてわかることだろうと思います。私の知っている限りでは、同じ日に横浜市と鳥栖市、それに羽島市、これも健康リスク調査が行われている自治体ですけれども、この三つの自治体がやっぱり連名で申し入れをしていることを承知しています。私、自治体の方からそのときの要望書をもらっているんですけれども、できたら、それも含めて、あとそれ以外にももし出されているようなものがあれば、小委員会に提出してもらったらどうだろうかということで、事務局の方にはお願いしたつもりだったんですが、いかがでしょうか。

○浅野委員長 とりあえず、本日は、この要望書が出てきたということですね。

○泉室長 7月5日に、横浜市、羽島市、鳥栖市の部長の連名ということでご意見をいただいている内容をご紹介いたしますと、大きく二つございまして、一つ目は、将来、中皮腫・肺がんのリスクを有する胸膜プラークなど石綿ばく露の所見があるものに対する検診の実施など、恒久的な健康管理システムの創設ということ。二つ目に、住民みずからが適切に健康管理を行うために必要なリスク情報の開示ということで、その細項目として、これまで実施した健康リスク調査の結果から石綿ばく露特有の医学的所見があるものと、石綿取り扱い事業所等の距離関係などの分析・公表、それから、石綿取り扱い事業所の創業当時の所在地など、必要な情報の公表ということでご意見をいただいております。
 これにつきまして、要望項目の2つ目の方は、7月5日の健康影響検討会で事務局が用意した資料が、かなりこれにお答えするものだと思っております。
 また、最初の恒久的な健康管理システムの創設というところにつきましては、先ほどの論点にもございましたけれども、一般環境を経由したばく露の可能性のある方の健康管理の手法としては、どういったやり方が医学的に正しいのかといったエビデンスがまだ十分ないので、今後さらに健康リスク調査を続けることによって、対象者を絞り込めるような特定の方法、あるいは検診の内容といったところについて、さらに知見を深めていきたいということで考えております。
 以上です。

○浅野委員長 それでは、以上を踏まえて、資料6についてご意見がございましたらお出しをいただければと思います。

○古谷委員 前回のときに時間をいただいて、今後検討していただきたい課題ということで整理して提起させていただきました。結構整理していただいたというふうに思うんですけれども、課題として大事な課題は、基本的にテーマで網羅されているだろうというふうに思います。例えば、2番の救済対象と給付のあり方というのは、必ずしもセットというか、同じ、一緒に考えることではないかもしれないので、テーマとしては二つに分けられるかもしれないだろうというふうに思っています。
 私たち自身、特に被害者団体の方、あるいは支えてきた団体の立場から言いますと、もちろん、本質論にかかって、制度設計そのものを、やはりよく使われる言葉で言えば、少なくとも労災並みの救済なのか補償なのか、同じアスベストによる被害者が同等な給付を受けられるようにしてほしいというのが一番大きな望みですけれども、小委員会の議論としては、どうしたら実現できるのか、どれが実現できるのかということが最大の課題だろうと思いますので、議論については、むしろ、私が長々と話すというよりは、皆さんとの議論と合わせながら議論ができていけばというふうに考えているわけですけれども、その上で、ただ、具体的に大きいところは、今救済対象と給付のあり方は必ずしもセットじゃないというふうに言ったわけですけれども、前回のこの委員会のヒアリングで家族の方が一番訴えられましたように、あるいは、きょうの資料3のアンケートの自由記入欄にもあったように、給付のあり方で一番患者さんや家族の方々が望んでいるのは、給付の内容や水準を引き上げる、改善するということです。これが恐らく最大の課題だろうというふうに私自身は考えています。
 それと並んで、今の自治体の方々の要請、あるいはリスク調査をやられている自治体の住民団体の方々の要望の中にもあるように、今、曲がりなりにも労働者については整備されている、長期的な、恒久的な健康管理制度を今のリスク調査にあるような予算措置としてとか、いつまで続くかわからないというようなものではなくて、恒久的な健康管理制度として確立してほしいというのが、恐らくそれに並ぶような議論なんじゃないかなという気がしています。
 あえて言えば、その他のところの一番最後にその他というのを入れておいてくれた方が、議論としては余地があると思うんですけれども、例えば前回、私が提起した中では、今の法律には施行から5年以内にという見直しの規定があるわけです。それで、今この作業をやっているわけですけれども、その後の見直しのことはどうなるというようなことも含めて、細かいことは幾つかあると思いますけれども、ここに掲げられている、特にその他のところで掲げていただいたことは、私が取り上げてほしい課題として提起したものと重なるというふうに理解しています。

○浅野委員長 ありがとうございました。ほかの委員からご意見ございますか。
 今言われた点については、セットで考えるということから言えば、1も2もそれぞれセットになりますから、殊さら意図的に、1はこれで、2はこれでといってまとめたつもりはございません。書きぶりの問題ということで理解をしてください。論点がどこにあるかはわかっております。
 ほかにご意見ございますか。太田委員、どうぞ。

○太田委員 この機会に申し上げますが、私は全国知事会の任を受けておりますので、この救済の拡大について、間口を広げるということについては、住民の皆さんにとって非常にいいことであるということのまず基本的なスタンスを申し上げた中で、ご存じのように、被害者救済を優先すると、それから都道府県も一定の基金に対しての負担をすることについてはやむを得ないということで、18年11月に知事会として申し入れたところは、今後に追加の負担の問題があったときには、全国知事会としては、国の責任においてお願いをしたいということを申し入れております。
 22年6月17日に全国知事会のエネルギー・環境問題特別委員会で、私はこの委員会の途中報告をさせていただきました。その中でご意見がございましたのは、基金への追加負担、または費用負担については、これまでの基金の執行状況を検証してからお願いをしたいという意見もございました。あわせてこのことをご報告を申し上げたいと思います。
 それから二つ目の、これは兵庫県の話でございますが、先ほどの住民の健康管理の件でございますが、少し参考にしていただければと思いますが、我々兵庫県は、例えば一連の市町の検診、精密検査で、胸膜プラーク等の石綿所見が見つかった場合には、健康手帳というものを交付いたしまして、市町との一定の負担で検査費用を補助する事業をいたしておりますので、またご参考にしていただきたいなと思います。
 ありがとうございました。

○浅野委員長 ありがとうございました。それは全部、県と市の両方の行政の負担ということですね。
 論点の整理について、三浦委員、どうぞ。

○三浦委員 給付のあり方なんですけれども、医療現場の人間としては、中皮腫と、それ以外の疾患がかなり違うと思うんですね。特に中皮腫で若い方でお亡くなりになった方は、もう職業的ばく露によらない石綿のばく露によって中皮腫を発症される方が結構おられますので、そうしますと、今現在の給付では、生活が成り立っていかないと言われれば、まさしくそのとおりだと思います。ですから、やはり給付のあり方について、特に中皮腫は特別、もうちょっとかなり上積みして、必要な方にはもっと上積みしていく必要があるのではないかと、私自身は考えております。

○岸本委員 今の三浦委員のおっしゃるとおりだと思います。びまん性胸膜肥厚と石綿肺も7月1日から対象疾病に入ったわけですが、これらは悪性の病気ではございません。確かに終末期は呼吸困難等、自覚症状も厳しいですけれども、予後と重症度という面で中皮腫は圧倒的に重症だと思います。
 それと、石綿肺がんもそうなんですが、CTが簡単に撮れるようになって、早期の肺がんというのは治ってしまいます。ですから、石綿肺がんに対して本当に5年の給付が要るかどうかというような方も出ています。けれども中皮腫は、手術をしても2年程度で再発するので、中皮腫を特別に扱っていただきたいというのが、我々医療現場の気持ちです。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 ほかにございますでしょうか。内山委員、何か。

○内山委員 私は、特に健康管理のことについて、少しお願いと言いますか、こういう点も重要じゃないかなということがあります。
 一つには、恒久的な健康管理制度をぜひ私もつくっていただきたいと思うのですが、今は私どもの行っております健康リスク調査は、国が主体でやって自治体のご協力を得ながらやっていると。今度は基金でやるとなると、環境保全再生機構が恐らく主体にならざるを得ないのかなと思います。そこのお金を使って国がやるということは、まずあり得ないのではないのかなと。その辺の制度的なところをどういうふうに、再生機構がやっていただく場合には、どういう制度になるのか、そこら辺を少しお考えいただきたいというふうに思います。
 それから、特に基金の見直しのところでお願いしたいのですが、公健法の方では、予防的事業、それから知識の普及事業と同時に、調査研究事業というのがございます。これは、仕分けの対象にまた恐らくなっていって、非常に今、公健法のお金を使うに当たっての調査研究事業への使い方というのが恐らく問題になって、減額の方に行っているのではないかと思うのですが、やはり基金として調査研究事業にも使えるようにお願いしたい。ここの基金の見直しの記述には知識の普及ということはありますけれども、調査研究事業、その調査というのが、この健康管理の調査になるのか、ちょっとそれはまた別だと思うんですが、特に治療法の開発ですとか、そういうものにぜひ、あるいは、予防、どうしたら発症をおくらせられるか、早期に発見できないだろうかとか、そういう方にも使えるような見直しをぜひ行っていただければなというふうに思います。
 今現在、この治療ですとかメカニズムの研究は、主に環境省の推進費でもやっておられるし、厚労省からの厚生科学研究費でもありますし、それから文科省の科研費でも出ておりますけれども、これと重複するからいけないということではなくて、これでやるからほかのところは出さないというのではなくて、やはりこれは、あくまでも競争的資金として公募で今も行っていると思いますので、それぞれが補うようなところの調査研究もぜひこの基金でやっていただければ、非常に効果が上がるのではないかというふうに思います。

○古谷委員 健康管理制度というのは、ある意味で皆さん必要だということ、救済法でできないかという話は、ここでの議論でもありましたし、住民団体や自治体からも出ているわけで、ぜひ何とか前向きにというふうに私自身も思っています。内山委員含めて、お医者さんの先生方に聞かせていただければと思うのは、一つは、現に労働者の場合には、過去にアスベストにばく露した人々のうちの一部について、健康管理手帳という形で制度ができています。そういうことを考えると、同じ職業ばく露ということで言えば、自営業者の方々について同様の制度をつくることには、新たなエビデンスは、私は必要ないというふうに思います。果たして住民の方とか、職業ばく露のない方々にといったときに、今現にやられているような健康リスク調査、年に1回、必ずしも義務じゃないわけですけれども、そういうことをやるのに、さしたるバリアというか、障害はなく、お金のことは別にして、そういう制度を導入すべきだということについては、コンセンサスが得られるんじゃないかというふうに私は考えていて、ぜひ皆さんの意見を聞かれればと思っています。
 私自身としては、もちろん直接的にはサービスとしての検診だとか、早期発見というようなことが中心の一つにはなると思いますけれども、実は、世界保健機関WHOが、2006年にアスベスト関連疾患の根絶に関するポリシーペーパーというのをまとめていまして、その中で各国に呼びかけていることの一つが、過去にアスベストにばく露した、あるいは、現にアスベストにばく露している人のレジスター制度が重要だという言っているんですね。ばく露者のレジスターということの意味は、必ずしも検診や早期発見だけに限られるものではない。日本の場合には、労働者については健康管理手帳制度が、一定そういう機能は果たしていると思いますし、そういう制度そのものがない自営業者だったり住民の方々にそういう制度を提供することの意味は、私は大きいと思っています。
 ついでにもう一つだけ言いますと、逆に私自身もむしろ、環境省の委員会だからということで遠慮が働いているようなところがあると思うんですけれども、登録制度ということで言えば、ここの委員の方々がずっと重要だと言い続けていることでもあるんですけれども、やはり公的な中皮腫登録制度をつくるという話があります。これはやるとなったら、厚生労働省が本来やるべきことなんだろうなというようなことがあったとしても、ここの小委員会として、やはり公的な中皮腫登録制度が必要だということを提起する意味はあるんじゃないかなというふうに思いまして、このことは、できるものなら課題の中で取り上げていただけたらと思います。
 以上です。

○浅野委員長 ありがとうございました。内山委員がご指摘の点は、実務的な取り扱いと、今やられていることの関係の整理ということも含まれているのだろうと思います。現在行われている健康リスク調査事業というのは、あくまでも政策形成のための調査事業だという理解ですけれども、ここで今話題になっている健康管理事業というのは、むしろ政策をつくるというよりも事務事業のたぐいの話で、完全に整理されます。ですから、恐らく基金がやるとすれば、それは事務事業のたぐいの話になったときに、そこにお願いするということだろうと思うので、私自身は、余り頭の中では混乱が起こると思っていないのですが、ただ、5年間継続しないで、もう早い段階で事務事業に移行される必要があるなら、それをやればいいということはあるかもしれないし、少なくとも制度改正という中に議論が出てくれば、この5年間の健康リスク調査事業はやるとしても、その中でわかったことは、とりあえず、まずこのことはやりましょうというような話はあるだろうと理解しております。
 何しろ来年度は10%の予算削減だそうですから、大丈夫なのかなと思って心配していますが、環境保健部は、予算確保にも頑張ってください。

○岸本委員 健康診断も何らかの形で、特にプラークのある方は、肺がん・中皮腫の発生リスクが大きいというエビデンスもありますから、何らかの形で健康診断をやっていってほしいというふうに思います。
 それと、今、古谷委員が言われました中皮腫登録制度の話なんですね。私は厚生労働省の方からの研究費をいただきまして、平成15年から20年までの中皮腫で亡くなった症例の方の、遺族の同意を得て診断機関に画像や病理組織を求めて、臨床病理学的に今検討をしているんですが、2割程度は診断が間違っています。今、私や三浦委員はこちらの方で審査をやっておりますけれども、同じ事案が労災と救済と両方に出た場合に、診断が異なるということも事実上あります。全日本として、中皮腫の診断は一つということで、きちっと最終診断ができたものを登録していって、より精度を上げていくという努力は必要ではないかなというふうに思っています。
 先ほども申しましたように、中皮腫というのは非常に予後の悪い病気でございますので、登録制度を確立するということで、より日本における中皮腫の診断精度も上がるのではないかと思います。これは厚生労働省の方かもしれませんが、古谷委員がおっしゃられたように、このこともアスベスト関連疾患として重要な問題ですので、ぜひこの小委員会で議論していただければと思っております。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 では、新美委員、どうぞ。

○新美委員 私も、過去の救済制度を拡充していくのはいいと思うんです。先ほど古谷委員がおっしゃったように、お金の問題は別ですよというのですけど、制度はお金が一番大事でありまして、労災並みにしていくということになりますと、原因者負担による損害賠償的な給付制度に極力近づけろというご主張になるわけですが、それが見舞金的な性格を持つ救済制度でどこまで可能なのかということを議論しておく必要があります。ましてや費用負担者、これは国、自治体、それから事業者、それぞれあるわけですけれども、それにどこまで説得していけるのかということであります。これ、全く同じになるんだったら、労災制度は要らないということになるわけです。国が全部面倒を見ますと。あるいは、この仕組みでいきますということになります。どこかで違うということがあるのか、要するに、その辺を少し見据えて議論しないと、制度設計はできなくなるというふうに思います。ですから、これは見舞金的なものだということを取っ払うところまで視野に入れるのか、入れないのかということをきちんと議論しておく必要があるのではないかと。
 それからもう1点は、登録制度でありますが、これは全く違う観点で、確かに診断基準等をやるのは非常に望ましいことですが、それと似たような制度でがん登録制度というのがあります。これはWHOの世界的規模でやっておりますが、これは我が国でもそうですけれども、最近、各国は、個人情報の保護の観点から一方的にやるのはよろしくないということでだんだんと縮小していくところも出ております。医療の観点から望ましいということだけで、この制度をこの委員会でやっちゃえということが言えるのかどうか、その辺も慎重に議論していかないとまずいんじゃないかというふうに思います。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 三浦委員、どうぞ。

○三浦委員 先ほどの中皮腫登録制度についてなんですけれども、岸本委員の言われたように、診断の正確さというのが非常に要求されることで、もう既にわかっているところですけれども、実際に中皮腫と診断されている患者さんの2割は中皮腫でないということが大体わかったんです。ですから、できるだけ正確に中皮腫あるいは中皮腫にこれだけ近い、グレードが5とか4とか3とか、そういうところまである程度診断して、そして登録していくということが非常に大事でして、現在、環境省の方は専門委員会で判断しておりますけれども、労災の方は、残念ながらすべての労災案件についてお墨つきのあるような診断がなされていないんですね。ですから、その辺がミックスされた状態で今起きていますので、労災で認められても環境省の救済の方では認められないということもしばしばありますので、それを統一するような機関、あるいはそういうものをつくるというのは非常に大事じゃないかと思います。ヨーロッパでは中皮腫パネルというものがありまして、大体すべての案件がそこで診断されて、それから逆に動いていくというような形がとられているところが多いものですから、やはり日本でもそういったことをやっていく必要があると思います。

○浅野委員長 ありがとうございました。だんだん話がはっきりしてきたわけですが、この小委員会の役割として、どこまで中心的にできるのかということと、それから、関連する制度ということとのつながりも考えながら議論しなきゃいけないことがあるということだろうと思います。
 その他の中では、労災と救済制度についての制度間調整というような、割合抽象的な書き方になっていますけれども、この論点整理のこの部分は、古谷委員もいろいろご発言なさっておられたことももろもろ考えながら書いたような面がありまして、それに加えて、現在、今ご提案が新たにありました中皮腫登録制度のようなものがあればいいんだなという場合に、ご指摘の点も当然中に入ってまいりますので、この検討の中では、その点も踏まえた検討をしたいと思います。
 ほかにございませんでしょうか。清水委員、どうぞ。

○清水委員 健康管理手帳という話が先ほどから何回か出てきておりますけれども、労働法では、個人の申請に基づいてある重篤な疾患になる恐れのある職業に従事しただけで健康管理手帳を発給しているわけですね。将来、がんになれば、当然、労災補償というのが得られることになります。
 この救済法の場合に、例えば中皮腫であれば、最初からわかっていますから、健康管理手帳というものを出しても当然だと思うのですけれども、例えば、石綿肺の場合、呼吸機能の障害が重度になってきて初めて対象となるというのではなくて、石綿肺と診断された段階で健康管理手帳というものが交付されるべきなのかどうか、その辺をちょっと考えておかなければいけないのかなと思います。私自身、まだ整理ができていないのですけれども、びまん性の胸膜肥厚においても著しい呼吸機能が発症するまで放置し、発症してから健康管理手帳の対象になるのかどうか、その辺も検討していかなければいけないのではないかと思います。

○浅野委員長 わかりました。ご指摘の点は、前の中環審の答申の段階からの積み残しということでありまして、現行法の枠組みでとりあえずできることといって、先ほどご紹介があった政令改正をしていただいたわけでありますから、それ以外のことについては、今回の政令改正の対象にならないという方について、何もなしということでいいのかどうかということは、当然、この検討の中でのテーマになると思っておりまして、同じような関心を私も持っております。

○古谷委員 先生が言われたことで、労働安全衛生法の方の健康管理手帳は、確かに職歴の長さで資格が該当する場合もあれば、医学的所見を要件としている場合もあって、アスベスト作業の場合には、実は年数ではなくて、医学的所見が確認できるものを対象にして、なおかつ、本人の請求に基づいて手帳が支給されるというシステムです。
 恐らく、岸本委員が言われたように、プラークの有所見者にそういう制度をつくろうということについては、それがいいことだということで異論はないんではないかというふうに、これまでの議論を聞いていて思います。私自身の意見はといえば、先ほど来言われている、7カ所で行われているリスク調査、あれについても、自治体も恒久的な制度へということを望んでいるわけで、ぶっちゃけて、今やっているリスク調査としてやられている検診を移行するのと、プラークの有所見者を対象とするというのが一番望ましい形じゃないかなというのが、私自身の意見です。

○浅野委員長 内山委員、どうぞ。

○内山委員 プラークの所見があれば重篤な肺がんなり中皮腫になられる可能性が高いということは言えると思うのですけれども、プラークがない方にも、結構中皮腫の方が発症するということも事実です。我々が今健康リスク調査をやっていて、どういう方を対象にすべきか、あるいは、健康診断の対象者をどこに絞っていくかと、いわゆるハイリスクというのは、職業ばく露あるいは工場の周辺に住んでおられた、また工場の周辺に住んでおられた方のある程度の距離なのか、それですべきなのか、あるいはプラークの所見がある者、1回そういう所見があれば、健康管理手帳を出すのは、これは当然だろうと思うのですが、プラークがなかったからそれでいいのかということを一番悩んでいるところです。それを今後5年ぐらいかかってやりましょうと言っているところなので、必ずしもプラークがある方だけを健康管理手帳というふうには、まだすべきではないのではないかと思っています。

○浅野委員長 はい、わかりました。いずれにせよ、このアスベスト問題に関しては、決して水俣病の二の舞にならないような配慮が必要だろうと思います。まだ初動対応で何とか被害の拡大を食いとめることができる状況にあるだろうと思うからこそ一生懸命になっているわけで、やはり健康管理の調査なりということを徹底してやれるものをやっていかないと、後になって大変な大きな負担が出てくるということを十分に認識しなくてはいけないということを委員長として認識をしております。
 さて、ほかにご意見がございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 では、論点として、きょう資料6でお示ししたことについて、今、付加的にいろいろご意見をいただきましたが、おおむねこの論点整理の中に含まれるものと考えます。古谷委員が言われるように、5のその他のその他というのがもう一つあるだろうと言われるたのですが、それは、そのとおりで、その他のその他があるだろうと思います。健康管理のあり方については、具体的にいろいろなご意見をいただきましたので、それらも論点の中に含めて今後の議論を進めていきたいと思います。
 それで、本日はここまでで、一応用意した議題が終わったわけでございますが、ちょっとここで私から提案をさせていただきたいのですが、この議論を今後進めていく上では、新美委員が言われますように、制度設計ということがかなり重要なポイントになってまいりますし、この点に関しては、法制度の観点からの検討が必要だろうと思っております。現行法についても、立法者の意思が現状にかんがみて、果たしてうまく活きているかどうかというようなことも含めた、多少、法的な議論をしなければいけないと思っておりますので、そこで、この小委員会には、大塚委員と新美委員が法律の専門としてメンバーに入っておられます。それに現状をよくご存じである古谷委員もメンバーでございますので、私の方から、この3名の方をご指名させていただきまして、法的な整理について、この3名にご検討をお願いする。私ももちろん加わりますけれども、その整理をして、幾つか制度案のようなもので複数案を整理ができるなら、そこまでやりたいと思いますけれども、その結果をまとめて、もう一度小委員会の皆さんにお諮りをして議論を進めていくと、そういう進め方にしたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。ご異議ございませんか。

(異議なし)

○浅野委員長 ありがとうございます。それでは、大塚委員、新美委員、古谷委員におかれましては、これまで以上にお働きをお願いするということになりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 具体的にどうするかということについては、必要に応じて、速やかに事務局と相談の上、お声をかけさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、ほかに、何か特にこの際ご発言がございますでしょうか。よろしゅうございますか。椋田委員、何かございますか。よろしゅうございますか。太田委員、よろしいでしょうか。
 それでは、少々時間が早うございますけれども、今の問題点の整理をこれから進めることについてご了承をいただきましたので、この線に沿って進めてまいりたいと思います。
 次回の小委員会の日程につきましては、改めてまたご相談をさせていただいて、ご通知を申し上げます。
 では、事務局、お願いいたします。

○柳田補佐 次回の日程ですが、委員長から今ございましたとおり、法的な整理をこれから行うということですので、それが終了した後、またご連絡をさせていただきたいと思います。
 また、本日の議事録についてですけれども、原案を作成いたしまして、ご確認いただいた後、環境省のホームページに掲載する予定です。なるべく早目に掲載するため、こちらの方でも進めていきたいと思いますので、また、お願いいたします。
 それでは、以上で第8回石綿健康被害救済小委員会を終了いたします。どうもありがとうございました。

午前11時36分 閉会