中央環境審議会 環境保健部会 石綿健康被害救済小委員会(第4回)議事録


議事録

午前10時00分 開会

○柳田補佐 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第4回中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会を開催いたします。
 本日は、小委員会の委員9名のうち、7名のご出席をいただいておりますので、定足数を満たしております。
 まず、本日の資料の確認をしたいと思います。
 まず、資料1といたしまして、中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会の名簿でございます。資料2といたしまして、非腫瘍性石綿関連疾患の取扱いに関する論点項目でございます。資料3といたしまして、石綿健康被害救済制度における指定疾病に関する考え方について(案)でございます。資料4といたしまして、救済制度におけるフローチャート(案)でございます。資料5といたしまして、大量の石綿へのばく露の確認について(案)でございます。資料6といたしまして、救済制度における呼吸機能評価フローチャート(案)でございます。資料7といたしまして、石綿肺の呼吸機能の評価の在り方について(案)でございます。資料8といたしまして、石綿肺症例の解析調査結果(呼吸機能)概要でございます。
 それから、参考資料1といたしまして、基本資料集。参考資料2といたしまして、「石綿による健康被害に係る医学的事項に関する検討会」の報告書。参考資料3といたしまして、労災の認定基準に関する参考資料でございます。
 また、事務局からの再度のお願いでございますけれども、傍聴者におかれましては、傍聴券にも記載されておりますとおり、静粛を旨として、審議の妨害になるような行為は慎んでいただきたいと思います。他の傍聴者のご迷惑にもなりますので、守られない場合には退場していただくこともありますので、何とぞご遵守をお願いいたします。
 それでは、ここからの議事進行は浅野小委員長にお願いしたいと思います。それでは浅野小委員長、よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 では、おはようございます。きょうもどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、引き続き、「石綿健康被害救済制度における指定疾病に関する考え方について」、本日も審議を続けてまいりたいと存じます。
 これまでの会議におきまして、答申の取りまとめに向けた論点について、判定基準、それから、石綿肺以外の疾病の扱いなどの一部の論点を除いては一通りのご議論をいただいたところでございます。本日は、まず、これまでご議論をいただきました部分について、答申と申しましょうか、小委員会としての中間的な取りまとめの素案をつくりましたので、これについて議論をしたいと思います。
 それから、判定基準につきましては、前回の議論を踏まえて、より具体的な案について事務局から案を提示いたしますので、それについてご検討をいただきまして、中間の答申の取りまとめに向けて一定の方向性を導き出してまいりたい、最後に、残された論点でございます石綿肺以外のその他疾病の取り扱いについて議論を行う、そういうことにしたいと思います。
 それでは、まず、前回までの議論を振り返りながら、報告の素案について、事務局から説明をお願いしたいと存じます。

○泉室長 それでは、石綿室の泉から説明させていただきます。座ったままで失礼をいたします。
 まず、お手元に資料2と資料3をお出しいただけますでしょうか。資料2、論点項目は、各論点につきまして、これまでの報告書の書きぶり、それから、第1回、第2回、第3回のこの委員会における主な意見をまとめております。この中でIの石綿肺についての1、石綿肺の取り扱いについて、それから、認定に至らない石綿肺の取扱いについて、こうしたことについては、これまでもいろいろご意見をいただいてまいっておりますので、これらにつきまして資料3の方に文章化しておりますので、そちらをお示ししていきたいと思います。また、その他の点につきましては、今、浅野委員長からございましたように、判定につきましては、この後でまた細かい点をご説明してご議論いただきたいと思いますし、また、その他の疾病についてもご議論をお願いしたいと思います。
 まず、最初に、石綿肺の取扱いについてというところと、それから、Iの4の医療費支給の範囲について、ここはご議論は特にいただいていないのですが、技術的なことでございますので、事務局で原案を用意しております。
 まず、資料2の2ページです。これまでのご議論としては、石綿肺の救済法上の位置づけにつきましては、前回の議論で、「現在の救済法では医療費と療養手当という一体系のみの救済手段となっているので、これを前提に政令改正を行い、早期救済を図る」。そういう観点で行くと、「著しい呼吸機能障害という要件は外せないのではないか」と。さらに、「法改正をするのであれば、その際に抜本的な検討を行うべき」である。こういった方針を示していただいているところでございます。
 それをもとにしまして、資料3に文章化しております。項目は論点項目と少し出入りがございまして、必ずしも同じ形でまとめてはおりません。石綿健康被害救済制度における指定疾病に関する考え方について(案)ということで、1、救済給付の対象となる指定疾病の追加について、(1)石綿肺についてというところでございます。
 ここでまず、「環境省においてはこれまで、石綿肺等に係る医学的知見の収集を行うとともに、専門家による検討を行ってきた。この結果、石綿肺については必要な知見が集まったことから、これらを基礎として制度上の取扱いについて検討を行った」と。これは前回の制度発足時の答申からこれまでの知見の収集を踏まえて今回検討を行ったという経緯についての説明でございます。
 次に、1)救済給付の対象となる病態について、「現行制度においては、重篤な被害を救済することを念頭に、被認定者への救済は、『医療費(自己負担分)及び療養手当(103,870円/月)』のみとなっており、疾病の重症度に応じた給付体系とはなっていない。これを踏まえると、石綿肺には無症候のものから著しい呼吸機能障害をきたすものまで様々な病態が存在するが、このうち著しい呼吸機能障害をきたしている場合は、現在の指定疾病(中皮腫及び肺がん)と同様に重篤な病態であり、現行法の趣旨に鑑み、救済の対象とすることが適当であると考える。なお、救済給付の対象となる指定疾病の範囲に関しては、『重篤な病態』にとらわれるべきではないのではないか、労災制度では、石綿肺を含むじん肺について、一定の合併症が認められれば(著しい呼吸機能障害がなくとも)業務上の疾病として取り扱っているため、これと同様の取扱いをすべきといった意見があった。これらの意見は、法制度の枠組みの見直しに関わるものであることから、『今後の石綿健康被害救済制度の在り方』を議論する中で引き続き検討を行い、追って答申することとする」、このようにしております。
 次に、2)の医療費支給の範囲に関する考え方につきましては、初めてお目にかけることになります。これに関しましては、今の中皮腫、肺がんについて、前回の答申では、資料2の論点項目の11ページ点線の中にありますように、「指定疾病である中皮腫、肺がんに付随する疾病であって、日常生活に相当の制限が加わり、常に医師の管理による治療が必要であるような疾病については、当該指定疾病と一体のものとして取り扱い、救済の対象とされるべきであると考える」となっています。これは例えば中皮腫なり肺がんなりと認定された方の医療費の自己負担分を救済制度で給付するわけですけれども、そこで見るべき医療の範囲がどこまでかという、その医療費支給の範囲でございます。具体的には、中皮腫・肺がんについては、[1]経過中、または、その進展により発症する、がんの遠隔転移、癌性胸膜炎など。[2]指定疾病を母地として細菌感染などの外因が加わって発症するものとして、肺炎、胸膜炎など。[3]指定疾病の治療に伴う副作用や後遺症。この三つの類型を示しているわけでございます。今回、石綿肺を指定疾病に追加する場合に、石綿肺そのものの外の医療費をどこまで給付すべきかという、その範囲についての考えをこの資料3に、肺がん、中皮腫を参考としまして書いております。
 (案)として、「著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺に付随する疾病、(いわゆる続発症)であって、日常生活に相当の制限が加わり、常に医師の管理による治療が必要であるような疾病については、当該指定疾病と一体のものとして取り扱われるべきである」。ここは先ほどの中皮腫、肺がんのときと同じ書き方でございます。
 次に、例示として、「なお、付随する疾病の例としては石綿肺を母地として発生したがんや、細菌感染症などが想定される」としております。
 ここまでがまず最初にご議論いただきたい答申案に書いた全体の位置づけの部分でございます。よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、ただいま資料の2の2ページから4ページまでにかけて書かれていることを受けた形で、資料の3の1ページ目が示されたわけでございます。1の(1)の1)についてはこれまでのご議論を取りまとめたという性格のものでありまして、とりわけ今回の答申は先ほど私も中間答申というような言い方をいたしましたが、そういう性格のものであることを明瞭にしたいということで、事務局の原案に少し手を入れました。2)に関しては、きょう初めて出てきておりますので、これについては、これまでの指定疾病についての続発症の記述との整合性を考えながら、それでよろしいかどうかご議論いただきたいということでございます。どなたからでも結構でございます。ご意見がある方はどうぞ、お願いいたします。いかがでございましょうか。

○古谷委員 1)の方のなお書きのことについては、私の意見をまとめてくれたものだと思いますけれども、一応、私の意見を整理しておきます。というのは、その1に続けて、「これらの意見は、法制度の枠組みの見直しに関わるものである」ということについては、これはこれまで議論してきたとおり、なお書きの意見については法改正を必要としないでできるというのが私の意見の趣旨だということを、改めて言っておきたいと思います。
 2)の方をちょっと言わせていただいてよろしいでしょうか。一つは、付随する疾病(いわゆる続発症)というのは、さっき室長が引用した以前の書き方を引用しているということはよくわかっているんですけれども、ここで例として挙げている、一つは石綿肺を母地として発生したがん、肺がん以外に何か想定しているのかわかりませんけれども、石綿肺を母地として発生した肺がんについては、これは指定疾病としての肺がんになりますので、判定基準の方も石綿肺がある肺がんについては救済対象になるという判定基準になっているので、続発症の例としてこのがんを挙げるのはどうかなということと、あわせて、むしろこれまでの議論からしますと、じん肺法で言うところの合併症の有無に関わらず、著しい呼吸機能障害がという議論をされていたわけなので、細菌感染症等の中に含まれているのかもしれませんが、慢性気管支炎等を例示として挙げた方が、合併症の有無に関わらず著しい呼吸機能障害がある石綿肺をという前回までの議論の中身に即しているんではないかなという気がします。

○浅野委員長 わかりました。古谷委員のご意見は合併症の例として石綿肺を母地として発生したがんというのは、もともとそれ自体が肺がんであるならば指定疾病であるから、あえて挙げる必要はない、それから、気管支炎のようなものをむしろ挙げるべきではないか、こういうご意見だったと思いますが、ほかに、ご意見がございますでしょうか。医学の専門の委員の方からのご意見がありましたら。

○泉室長 ここにがんを挙げた理由でございますが、おっしゃったとおり、肺がんは指定疾病ですが、では、改めて認定手続をしないと肺がんの医療費が出ないということであると不合理でありますので、石綿肺の方が肺がんになられた場合には、その石綿肺の認定があれば、新たに肺がんとしての認定をしなくても医療費が出せるような形の方がよろしいのではないかということで例示として挙げたものでございます。

○浅野委員長 という趣旨だそうです。その趣旨も踏まえて、この書きぶりでよろしいかどうかですね。それから、まだほかに考えられるものがあるか、合理的に。

○岸本委員 中皮腫もそうですから、肺がんには限らないと思います。「石綿肺を母地として発生するがん」ということになると、肺がんの趣旨ということです。今の指定疾病に入っているということですね。この「細菌感染症等が」というのは、著しい呼吸機能障害を有する石綿肺の人が急性気管支炎や急性肺炎になったという意味に私は理解をしているわけでございます。このように理解するでいいのではないかと思います。

○浅野委員長 ということで、この細菌感染症、私も常識的には肺炎は当然入ると思ったのですが、気管支炎も入るのでしょうか。

○岸本委員 たとえば急性気管支炎や急性肺炎のように、すぐ処置をしなければならない、あるいはすぐに医療機関にかからなければいけない合併症というのはこんなものだろうと思います。言うなれば、著しい肺機能障害を来す石綿肺というのは、例えば右心不全という心不全にもなりますから、心不全状態も考慮してもいいのかなとは思います。ただ、一番頻度の高いものとしては急性肺炎ですけれども、急性気管支炎も考慮するというようなことではないかなとは思います。例えば急性胃腸炎だとかという、余り石綿肺とは関係のないようなほかの疾患を入れる必要はないと思います。石綿肺というのはやはり呼吸器の病気ですから、それに付随した合併症ということで考えれば、心不全等も考慮されればどうかなと思います。

○浅野委員長 わかりました。この場合、右心不全というのは、これは症状を言っているのではありませんか、病名として表現する場合はどういう表現になりましょうか。

○岸本委員 肺が悪くなりますと、右心不全、さらには左心不全となるんですけれども、やはり右心不全が先に来て、それから、左心不全になりますので、心不全という言葉を書いておけば問題ないのではないかとは思います。

○浅野委員長 心不全という記載をしておけばよいということですね。
 三浦委員、どうぞ。

○三浦委員 やはり右心不全または肺性心というのが前提だと思います。高血圧によるものなど心不全は幅広い病気で、患者さんは結構いますので、やっぱり著しい呼吸機能障害をベースにして起きた右心系の不全ですね、これが大前提だと思います。その結果、左心不全が来た場合は当然対象になりますので。

○浅野委員長 まあ、必ず前提としてはこれがあるということなので、前提の症状というか、病名を挙げておけばいい、こういうことですね。

○古谷委員 制度に関してなんですが、医療費支給の範囲ということで、あらかじめ認定された後に発生したかどうかにかかわらず、例えば石綿肺に慢性気管支炎が合併しておって、急性呼吸機能障害で救済対象になったときに、慢性気管支炎に対する治療も医療費の対象になるという理解については、多分そういうことだろうと、そういう意味では急性に限るということではないという理解でよろしいでしょうか。

○浅野委員長 この点はいかがでしょうか。

○岸本委員 古谷委員のおっしゃるとおりだと思います。

○浅野委員長 ほかにちょっと気になっていることがあります。現行制度では治療に起因するという項目があるのですけれども、このアスベスト肺の場合には、副作用とかそういったようなものを生ずる治療というのは余り想定しなくていいのでしょうか。ぜんそくの場合だとステロイド投与なんかで結構、かなり派手にいろんな症状が出てきますね。それを公健法は拾っているのですが、この制度ではそれをどう考えたらいいんでしょうか。そういうたぐいのことは余り心配要らないのでしょうか。

○三浦委員 やはり感染症ですから、それに対して抗生物質を使うことがありますので、それの副作用というのは必ずあります。その結果、時には著しい障害が来ることもないわけではありませんので、それは対象にしておいた方が私はいいと思います。

○浅野委員長 そうすると、現行のシステムの中で、3という項目がありまして、そこに書かれていること、つまり、指定疾病の治療に伴う副作用や後遺症、後遺症があるかどうかよくわかりませんが、これは落とす必要はないのですね。この点については、岸本委員、いかがですか。

○岸本委員 基本的に石綿肺に対する治療方法というのはないんですけれども、これに類似した慢性間質性肺炎・肺線維症に対して、ピレスパという薬が今保険適用になっています。この薬は結構副作用の強いお薬で、それを石綿肺治療の対象とするかどうかわかりませんけれども。やはり薬の副作用に対しての給付というのは入れておいた方がいいと思います。もちろん、抗がん剤とか放射線療法とかという治療方法はないんですけれども、薬の副作用ということは想定されますので、中皮腫、肺がんと同じように、薬剤性の障害に対しても救済をするという、そういう考えであっていただきたいなと思います。

○浅野委員長 わかりました。
 それでは、ただいまご意見が出されましたことについて……、どうぞ、三浦委員。

○三浦委員 すみません、ちょっと仲間うちで割れてしまいまして。ピレスパは特発性間質性肺炎という病気に対しての適用だけです。将来変わる可能性はありますけれども、かなり副作用が強い薬ですし、これは指定疾病外というものになります。

○浅野委員長 わかりました。今、岸本委員がおっしゃったのはそういう例もあるので、例示としておっしゃったので、多分この指定疾病についての治療でも何らかの副作用が全くないとは言えないので、安全のためには入れておくべきだというご意見というふうに伺いました。そういう整理でよろしゅうございましょうか。
 それでは、ただいままでのご議論を事務局でもう一度整理していただいて、今の原案はちょっと狭過ぎる、もう少し広げるべきだというご意見がありましたから、次回までにここは整理をしてください。よろしゅうございますか。清水委員、何かご意見は、よろしゅうございましょうか。
 それでは、次に行きたいと思います。事務局、また、説明をお願いいたします。

○泉室長 それでは、判定の在り方、特に認定基準についての説明をさせていただきたいと思います。論点項目では8ページからになりますが、判定に必要な情報、それから、石綿へのばく露の証明、画像、呼吸機能検査の在り方といったところについてご意見をいただいてきたところでございます。
 資料3の方の裏面を出していただけますでしょうか。まだ、項目だけのところはきょうご議論いただいた上でまた書き込んでいこうということであけておりますけれども、現在書いてあるところを中心に申し上げます。
 まず、総論としまして、判定に必要な情報については、「石綿肺であるか否かとその重症度の評価は、大量の石綿へのばく露、適切な条件の下で撮影された胸部CTを含む画像所見、呼吸機能検査所見といった情報をもとに総合的に行うことが必要である。さらに、他の原因による肺の線維化との鑑別を適切に行うためには、病状の経過、喫煙歴といった情報も必要となる」。(2)石綿肺にかかったことを判定するための考え方について、のうち大量の石綿へのばく露の確認につきましては、資料5に案をまとめておりますので、こちらを説明したいと思います。
 資料5の1、作業従事歴の聴取及び確認でございますけれども、申請者について、過去に石綿肺を発症し得る作業、これには当該作業の周辺等において、間接的なばく露を受ける作業を含むということにしますが、に従事していたかどうか確認を行う。過去に従事した事業場及び石綿ばく露の状況、これは作業の内容、時期、期間、場所などでございますが、これについて、本人(亡くなった方についてはご遺族など)から聴取を行うとともに、その内容を各種の資料により可能な限り確認することが必要である。そして、石綿肺を発症し得る作業の例といたしまして、石綿製品の製造、配管、断熱、保温、ボイラー、石綿の吹きつけ作業、船内など密閉空間において石綿を取り扱う作業、解体作業、これらを挙げております。その下に※で書いておりますように、ここに列記した以外の作業につきましても、平成18年の厚生労働省の通知を参考として幅広く確認をするということを考えております。
 じん肺法の対象者の方と違いまして、今回、この救済法の対象となる方というのは、一人親方の方とか、事業主の方などが想定されます。毎年の健診でずっとばく露歴が把握されている方ではなく、病気になってから申請があって、その時点から確認作業を始めなければいけないような方が主と考えられますので、このような形でなるべく客観的な資料によって確認をしていくことが必要かと考えております。
 2、客観的なばく露指標でございますが、1で申し上げたような従事歴が明らかでない申請者の方につきましては、大量の石綿へのばく露を客観的に示す資料等をもとに、総合的に評価することが適当である。なお、この資料の例といたしまして、肺内の石綿小体計測結果や石綿繊維計測結果が提出された場合には、石綿肺を発症し得る肺内の石綿小体や石綿繊維の量については、肺がんの発症リスクを2倍に高める量の石綿ばく露量よりも多いと、このようなご報告もございますけれども、当面の間は救済の観点から救済制度における石綿の肺がんの判定基準を参考として、これを評価することが適当であるという案でございます。
 石綿肺を発症する濃度につきましては、いろいろなご報告がございまして、今、肺がんで用いております、石綿小体数が乾燥肺1グラム当たり5,000本という値よりもさらに1けた、2けた上のオーダーではないかという報告もあるわけですけれども、救済の観点から当面石綿肺がんと同じ扱いではどうかということです。
 また、気管支肺胞洗浄液を用いて石綿小体を計測する手法につきましては、国内の知見を集積し、症例選択基準、検体の調製方法及び計測・評価方法などを提示することが必要であると、このようにしております。
 資料3に戻っていただきまして、2(2)2)画像所見の確認でございます。「胸部エックス線検査又は胸部CT検査(HRCTが望ましい)により、じん肺法に定める第1型以上と同様の肺線維化所見が認められること(ただし、大陰影のみが認められる場合を除く)」としております。注意事項として、「重喫煙者や吸気不良の胸部単純エックス線写真では、石綿肺と類似の軽い不整形陰影像を呈することがあり、注意が必要である。早期の石綿肺については、重力効果による線維化類似所見を回避するため、腹臥位による撮影が推奨される。それから、一時点のみの画像所見で所見の確認を判断することができない場合は、病状を見極めつつ、半年又は一年など一定の期間を置いて再度撮影し、所見の変化を確認することが望ましい。また、過去の写真により遡って確認できればこれを活用してもよい」と、このようにしております。
 次に、(3)の著しい呼吸機能障害の有無を判定するための考え方でございます。前回%VCを基本に評価すること、肺活量の基準値としては新しい日本人の予測値を使うというようなことをご議論していただきました。これにつきましては、さらに細かい資料を用意しておりますので、ご説明したいと思います。
 資料6は、ばく露歴の確認と、画像から石綿肺であろうということを確認し、その次の段階として、著しい呼吸機能障害があるかないかということを判断する、そのフローチャートでございます。石綿肺の呼吸機能障害は拘束性の換気障害が主ですので、これを中心に評価していくということで、まず、%VC60%未満のものにつきましてはこれを著しい呼吸機能障害としてよろしいのではないか。60%から80%のものにつきましては、さらに合併した閉塞性換気障害の評価あるいは低酸素血症の評価を加えて、これらが一定の基準以下であれば、これを著しい呼吸機能障害としてよろしいのではないか。これら以外の結果が提出された場合についても、総合的な判定としてそれを参考にして判定することができるということにしてはどうかと考えております。個々の指標につきまして、やや細かくなりますけれども、資料7の方でこれらの指標を選んだ理由、それから、基準の考え方についてご説明したいと思います。なお、じん肺制度におけますフローチャートを参考にしていただく場合には、参考資料3の6ページにじん肺制度の肺機能検査のフローチャートがございますので、必要に応じてご参照いただければと思います。
 資料7でご説明したいと思います。拘束性換気障害の評価は、正常予測値に対する%肺活量を指標としてはどうかと思っております。前回もご議論いただいたところでございますが、呼吸器学会の新しい予測値があるということ、呼吸器学会のガイドラインに基づきますと、80%未満を拘束性換気障害といい、また、じん肺法では60%未満を著しい呼吸機能障害としておりますところから、判定基準の考え方としては、正常予測値としては日本呼吸器学会の予測値を用いてはどうか、判定基準としては、60%未満の場合は著しい呼吸機能障害と判定し、60~80の場合には閉塞性換気障害や低酸素血症の評価を行うこととしてはどうか、こういう案でございます。
 次に、閉塞性換気障害の評価でございます。これは%肺活量が60~80の場合に評価してはどうかということでございます。閉塞性換気障害の指標としては、1秒率、%1秒量、それから、V25/身長と幾つかのものがございますが、この中で1秒率と1秒量の組み合わせを使ったらどうかというご提案をしたいと思います。
 まず、1秒率は呼出開始から最初の1秒間に呼出された排気量を努力肺活量で割ったものでございますが、これが70%未満の場合には閉塞性換気障害と判定されます。また、%1秒量は、最初の1秒量に呼出した量を、正常者が1秒間に呼出する量を分母としたそのパーセントでございます。閉塞性換気障害がある際に%1秒量を重症度評価に用いることとなっておりまして、慢性閉塞性肺疾患の病期分類では30%以上から50%未満を「高度の気流閉塞」、30%未満を「極めて高度な気流閉塞」というふうに定義されているところでございます。これらのことをあわせまして、1秒量の正常予測値は日本呼吸器学会の予測値を用いてはどうか、また、1秒率70%未満かつ%1秒量50%未満の場合を著しい呼吸機能障害ありと判定してはどうかと、このように考えております。
 V25/身長につきましては、現在、じん肺法の方では採用されているところでございますけれども、石綿肺を対象とすることを考えていきますと、末梢気道病変の早期発見の指標としては意義があるものの、進行した呼吸機能障害を判定するには不適である。また、加齢とともに低下したり、健常人においても値のばらつきが大きいというようなことがございますので、V25/身長につきましては評価指標としては用いないことではどうかと、このように考えております。
 次の(3)は、低酸素血症に関する指標でございます。これも%肺活量が60%から80%の場合に低酸素血症を評価してはどうかということです。指標としては、一つは室内の空気を吸っているときのPaO2、動脈血の酸素分圧、もう一つは、肺胞気動脈血酸素分圧格差という指標、この二つが候補になります。PaO2は血液ガスの検査の指標の中で呼吸機能障害の生体への影響を最も敏感に反映する指標であると言われておりまして、一般に80Torr以上が正常、60Torr以下が呼吸不全とされているものでございます。事務局案といたしましては、このPaO2を用いて60Torr以下の場合は著しい呼吸機能障害と判定してはどうかと、このように考えております。
 AaDO2につきましては、PaCO2とPaO2から計算式ではじき出すもので、これが大きくなるとガス交換効率が低くなったという評価になるわけです。計算値ですので、マイナスになってしまうことがある、あるいは、PaO2が低くてもPaCO2が高いと正常値を示す場合があるといった評価に難しい点がございます。また、一般には10Torr以下が正常とされておりますけれども、各種の予測式があるという状況でございまして、この二つの指標の中ではAaDO2の方は評価としないということで、PaO21本での評価としてはどうか案でございます。
 なお、じん肺の肺機能検査では、耳朶血による検査というのが書かれておりますが、これは現在臨床現場ではほとんどされていないというふうに伺っておりますので、今回は取り上げないこととしたいと思っております。
 これらの指標が中心となりますが、その他の検査として考えられるものとして幾つかございます。一つは自覚的な呼吸困難を評価する指標で、MRC分類など国際的に評価に使われているものが幾つかございます。いずれも運動時の息切れの状況などを尋ねるもので、病状の改善など、個々の方の経過を観察する場合の意義は非常に高いものですが、被験者ご本人の感じ方に依存する主観的な指標であるという点がございます。
 運動負荷を行ったときの呼吸困難を評価する指標、つまり、安静時には呼吸困難が生じなくても、運動時に著しい呼吸機能困難が生じるような場合の指標として、6分間歩行試験による動脈血酸素飽和度といったものがございます。これは歩くという非常に簡単な検査ではありますが、その検査を指導する験者に習熟が必要であると。それから、検査機器は、これはパルスオキシメータを使いますけれども、この測定精度という課題があるということがございます。
 肺拡散能の指標としてDlco/VAなどがございます。肺拡散能の指標は石綿肺の病気の本質からすれば一番望ましい指標かもしれませんが、現実の検査の仕方としては、被験者の方への負担があったり、実施可能な施設が限られていたり、また、その予測式がなかなか難しいということで、評価が難しいと思っております。ただ、これらの指標につきましても、提出された場合には参考としてもよろしいのではないかと、こういう案でございます。
 2として、留意事項を記載しております。呼吸機能の検査につきましては、実際の検査のやり方、評価など、難しい点がございますので、留意事項としてまとめておきたいということす。
 一つは、妥当性・再現性の確保。一般に呼吸機能検査(スパイロメトリーの検査、フローボリューム曲線の検査)は、検査を受ける方が最大の努力をしていただいて、それを測定するというものですので、検査をする側が適切に指示を行って、被験者の方が十分な理解と協力をしてくださらないと、きちんとした結果が出ないと、こういうものでございます。このため、検査結果が妥当である、また、再現性があるということを確保するためには、日本呼吸器学会のガイドラインにも書かれておりますけれども、検査を最低3回行って、最も良好な結果を採用すると、このような形が必要であろうと。また、判定の際は、この呼吸機能検査や血液ガス測定の結果が記録されたグラフであるとか、検査報告書の提出を求めて、もとデータを確認することが必要ではないかということでございます。
 (2)として、他の疾病の合併でございますけれども、石綿肺に他の疾病が合併することにより呼吸機能が修飾されている可能性がある場合であっても、医療機関において得られた呼吸機能検査結果から著しい呼吸機能障害があると認められる場合には積極的に救済すると、このように考えたいと思っております。ただし、気胸など、急性の疾病が合併している場合には、その状態が一定落ちついたところで結果を出していただくということが必要ではないかと、このように考えているところでございます。
 さらに、これらの指標につきまして、データ的なところをお示ししたいと思います。資料8になります。資料8は今年度、全国の医療機関で石綿肺の症例が多数あるところにお願いして症例収集をし、さらに画像をチェックすることで、これは石綿肺と取り扱っていいだろうというケースが119ございました。その中から、肺がんと中皮腫を合併した症例を除き、呼吸機能データがない症例を除きまして、結果83が分析可能でございましたので、それらにつきましてお示ししております。
 まず、%VCですけれども、Baldwinの予測式と学会の予測式を使った場合に、それぞれでそのラインを引いたときにどれだけの方が該当するかということでございますが、これも前回見ていただいた資料を最終のデータに更新したものでございますけれども、%VC60で切るといたしますと、Baldwinの式ではこの83名のうち24人の方が該当し、呼吸器学会の式では30人の方が該当したということで、呼吸器学会の式を使うと6人該当する方がふえるという結果でございました。
 次のページは、前回、閉塞性障害の状況についても資料を示すようにというふうなご要望がございましたので、用意させていただきましたが、同じ83人の方につきまして、%VCと1秒率をプロットしたものでございます。1秒率70%未満が閉塞性障害ありという基準も、%VC60%が拘束性障害ありの基準ですが、閉塞性障害と拘束性障害が合併している方が5名ほどいらっしゃいますし、%VC60から80までので、閉塞性を合併している方が6名ほどいらっしゃるという状況で閉塞性障害の方はこの中ではそんなに多くはないという状況でございます。
 1秒率と%1秒量をプロしますと、%1秒率70%未満で、%1秒量50%未満というところが、高度以上の気流閉塞となりますが、そこに該当する方は7名ほどでございます。
 次のページは、先ほどのフローチャートでお示ししました基準案をこの83名の方に適用するとどんなふうになってくるかというところでございます。
 まず、%VCで60%未満、60%から80%、80%以上と、分けていきますと、60%未満の方は先ほどの図のように30人であり、まず、この30人の方が救済対象となります。次に、%VC60から80の23名について、閉塞性障害とPaO2の基準案を当てはめてまいりますと、閉塞性障害の基準案に該当する方が2名、PaO2の基準案に該当する方も2名あります。この2名のうち、1名は重複しておりますので、実で3名となります。結果、83名の方のうち、合わせて33名の方が新基準案では該当になってまいります。
 ご参考までに、じん肺基準を適用したらどうかというのを申し上げますと、%VCでは先ほどの図にあったとおり24人の方が該当し、学会基準の方が6人増えるという状況でございます。この6人のうちの1名はじん肺基準の血ガスの基準で該当する方ですので、%VCでの純粋増は5名ということになります。
 閉塞性障害の基準の方も2名該当しておりますが、このうち1名はじん肺基準では該当しない方で純粋増です。全体として、じん肺基準を当てはめてみると、83名の方のうち27名が該当し、新しい基準案を適用するとさらに6名が該当すると。裏返して申しますと、じん肺基準では該当するけれども、新基準では該当しないという方はいないという結果でございました。
 もう1枚、今の裏には、じん肺基準と比べて、該当する方がどのくらい変わるのかというところをお示ししております。じん肺の基準では、限界値というのがございまして、1秒率が限界値より低い場合に閉塞性障害に該当する、AaDO2については限界値より高い場合に該当すると、このようになっております。じん肺法の1秒率のその限界値は、年齢と性別による値になっておりまして、それをグラフ上にプロットしますと、このオレンジ色のまっすぐな線になりこの線より下の人がじん肺基準に該当する方です。今回のデータをみると、オレンジの線の下にある人、つまり、じん肺基準でも該当する方は1名でございまして、この方は先ほどお示ししました救済制度の新基準案でも該当いたします。このオレンジの線のすぐ上にもう1人いらっしゃいまして、この方はじん肺基準では該当しないですが、新しい基準案では該当する方です。
 AaDO2については年齢に応じた限界値が示されております。このオレンジの線を超えるところがじん肺基準で該当する方になります。今回のデータを見てまいりますと、2名の方がじん肺基準に該当しますが、2名とも新しい救済制度基準のPaO2の基準案でも該当いたします。じん肺基準で該当する方は新しい基準案でも該当してくるということを見ていただけるのではないかというふうに思います。
 資料6に戻っていただきますと、新しいフローチャート案は単純な形になっておりまして、じん肺法のフローチャートの方が複雑な形には見えますけれども、拘束性障害を基本にした評価の形としては大きくは違いがございません。じん肺制度の方は呼吸機能障害の評価の中に画像診断の評価が組み合わされているのに対し、今回の救済制度の提案では、画像と呼吸機能の評価を一応分けておりますけれども、最終的にはそれらを全部加味した総合的な医学的な評価ということになってくるかと思っております。
 資料3の一番最後のところには、現行制度でも、制度が始まったときに生存されて療養中の方と、制度が始まる前に亡くなっている方につきましては、得られる資料が違う、または治療を受けていたときの医学的な状況が違うということから、認定の資料について若干違う取扱いをしていることから、施行前死亡者及び未申請死亡者についての考え方を3に掲げております。
 「施行前死亡者及び未申請死亡者については、石綿肺であったことが記載された死亡届記載事項証明書、医療機関に残存している資料や診療録の記載等により確認することをもって判定することが適当であると考える」ということで、入手可能な記録から判定してはどうかという考え方を示しております。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、これまで資料あるいは事務局案が出ていなかったことも含めて、ただいまご説明をいただきました。具体的には資料の3の裏面、2の記載について、こういう書き方でいいかどうかを、きょうは決めていただくことになるわけですが、それを前提にしながら、ただいまのご説明についても、ご質問、ご意見があればお受けしたいと思います。
 では、岸本委員、どうぞ。

○岸本委員 最後に室長が言われましたが、肺機能検査特に%VCなんですが、これはご本人の努力にすべてよるものでございまして、より手を抜けば抜くほど悪いデータになって、%肺活量が60%を切るということになるもので、客観性が少ないんですね。じん肺法ではレントゲンを参照するということをやっております。やはり総合的な判断というのが私は望ましいと思います。PR1/0の方とPR3/+の方のレントゲンで、肺機能は明らかに違いますので、レントゲン写真の読影と肺機能を別個にせずに、総合的に判断をするということが望ましいと思います。
 それともう一つ、私は何度も言っていますが、石綿肺の診断は非常に難しゅうございます。慢性間質性肺炎との鑑別が特に難しいわけなんですけれども、労災であれば職業歴を問いますから、ある程度石綿ばく露ということが意識できます。救済法ということになると、石綿ばく露が明らかでない方々もすべて対象となりますので、HRCTが望ましいと書いてありますが、これは必須ということにしてはどうかと私は思います。というのは、HRCTの撮影に際して、昔は2度息をとめて撮影しなければなりませんでした。患者さんに大変努力を強いたわけですが、今はらせん状のCTがあって、1回の息どめだけでHRCTモードというのが作成できます。患者さんにご無理を申し上げることがなくなってまいりました。再構成のHRCTでも私はいいと思うので、ぜひそれも参考にして、より診断の確度を上げるのが医学的に望ましいのではないかというふうに思います。
 以上です。

○浅野委員長 わかりました。ほかにご意見はございますか。

○古谷委員 一応順番に従っていいですか。1)の大量の石綿へのばく露の確認ということで、資料5が示されているわけですけれども、前回の議論で、恐らく職業ばく露の人がほとんどであろう、中心であろうということで議論されながら、ただ、しかし、なおかつ、職業ばく露以外のばく露による、いわば公害患者なり住民のばく露の石綿肺の発生というのもあらかじめ排除することがないようにしようということで、ここは委員長もたしか見るというような話があったと思うんです。多分資料5の2の方のところで作業従事歴が明らかでない申請者については総合的に評価ということに含まれているということなんでしょうが、できるものなら、より、あらかじめ排除するものではないということがわかりやすい形になる方がよいというふうに思っておりまして、例えば1番目の見出しを作業従事歴の聴取及び確認ではなくて、石綿ばく露歴の聴取及び確認とするようなことも含めて、もし、そこのところの「あらかじめ排除するものではない」という趣旨がよりわかる形になれば、そうした方がいいのではないかというふうに思います。

○浅野委員長 わかりました。この点は確かにおっしゃるように、二つが1or2というふうになっているのですが、見出しから明瞭にわからないというのは古谷委員のご指摘どおりですから、これは工夫をさせます。総合判断ということをここで強調していますので、その点は先ほどの岸本委員のご指摘と、この関係に関しては合っていると思いますが、岸本委員はさらにそれに加えて、これでまずばく露を見て、次は呼吸機能を見るという、そういう2段構えで行っても、呼吸機能の障害の有無についても総合判断が必要だというご意見というふうに伺いました。
 ほかにございませんでしょうか。学会式を使うということに関しては、前回、私は新しい方がいいだろうというふうに申し上げたのですが、きょうの資料8を見ましても、どうやらこちらの方が日本人の実態には合っているらしいということが言えそうなんですが、この辺は医学の委員の方、そういう理解でよろしゅうございましょうか。

○岸本委員 いいと思います。

○古谷委員 繰り返しで恐縮ですけれども、結果的に出されたものを見ていますと、%VCについて正常値の評価値をじん肺法ではBaldwinのものを使っているんだけれども、今度は呼吸器学会のを使うと。あるいは、閉塞性換気障害について、じん肺法の体系では1秒率を使っているんだけれども、今回、1秒率と%1秒量の組み合わせにしたいと。低酸素血症についても、じん肺法ではPaO2を使っているんだけれども、今度の方ではAaDO2を使うべきだと。

○浅野委員長 いや、それは使わない。

○古谷委員 ごめんなさい、AaDO2を使わないでPaO2を用いる。目立ったところでもそういうふうになってしまいます。最初から申し上げてきたことですけれども、同じアスベストによる石綿肺の評価に役所によって違うことが持ち込まれるということが臨床現場や患者家族に与える影響の重大さというのはやはり私はぬぐい切れない。
 なおかつ、よりいいものを目指すのであれば、それは全部総対的に見直す必要があると思います。特にこういう作業というのは結構大事な作業だと思うんですよね。例えば83例当てはめてみてどうだということだけではなくて、もっと関連する学会や実際に患者さんを診ている方々の意見も聞きながら、きっちりと科学的根拠も持ってやられるべき作業だということも含めて、今回そういうことなしにこういう形で環境省が別の方法を採用することについては反対ですし、非常に現場が混乱するんじゃないかという懸念を強くしています。
 細かいことは私自身得意ではありませんけれども、例えばPaO2の60Torr以下については、在宅酸素療法の適用の基準だと理解していますから、これはいま数字を持っているわけではないですが、やはりかなり厳しい制限的な基準だというふうに受けとめざるを得ないと考えます。

○岸本委員 日本のじん肺法はかなり古いものでして、今、室長も言われましたように、V25/身長というのは、通常医学的に今は使っておりません。ばらつきが多いというのは、健常人であってもデータが非常にばらつくということでございます。それと、現在では、肺気腫という病気は日本人でも非常に多くなって、もう20年たつと死亡原因の4番目になるだろうと言われています。肺気腫の患者さんに対して重症度を決めようというのが%1秒量でございまして、今回出ている50%というのがそれでございます。日本呼吸器学会の肺機能の検査データも、じん肺法制定時の日本にはこのようなデータがなかったのでBaldwinの式を使っていましたが、日本人に合ったように変えていくべきだろうと思います。これを機に、労災の方も含めてより新しくて日本人によりフィットしたものに変えていく時期ではないかなというふうに思います。この石綿救済法もまだまだ将来長く患者さんが出てくると思いますので、やはりここでこのように変えていくべきだろうと、医学的には私は思っております。
 それから、AaDO2に関しては、私としてはPaO2とAaDO2両方並行でやってはどうかなと思います。前回も申し上げましたが、今、古谷委員がおっしゃられましたように、PaO2の60Torrというのはかなり厳しいものがあります。これは救済法なので、AaDO2とPaO2と両方並行してどうかなというふうに思います。

○三浦委員 %肺活量につきましては、現実には肺機能検査の機械の中に、もう日本呼吸器学会の標準値が組み込まれていて、そっちを使って出しているものもあります。労災申請するときにどっちを使ったというのを書かなくてもいいことになっています。ですから、現実には両方ミックスしたものが通っています。そうしますと、その中でより日本人に合った方の基準を使うのは、これはもういいだろうと私は考えます。
 それから、もう一つ、A-aDO2についても全く岸本委員と同じ意見でして、A-aDO2というのは計算により算出する値ですけれども、非常に正確な値です。マイナスが出るというのは、食べたものによって、たとえば脂肪類が多いと出てくる炭酸ガスの量が少なくなることがわかっていますが、食べたものの違いによって生じるんですけれども、通常はPaO2がほぼ正常の場合に起きます。A-aDO2は、ある計算式により体の中の肺胞中の酸素分圧を推定し、それをもとに計算された値で、臨床的には非常によく使われます。正確な値ですから、私はこれは使って、どっちかが基準値より下がっている方を取るというのは賛成です。

○浅野委員長 この点、事務局は使わないという積極的な理由はあるのですか。

○泉室長 積極的な理由というのかどうかわかりませんけれども、今、じん肺法の基準になっているものが、1960年代に調べられた式をもとに、その3σ、つまり99%以上の人がその中に正規分布であれば入るというところで決められている値というふうに伺っておりまして、それ以外に適当な基準値がないのかなということでございます。
 PaO2とAaDO2はきれいに相関が出ますので、AaDO2のじん肺の基準とPaO260というのは、ほぼ同様の意義であろうというふうには考えております。
 先ほどのフローチャートでもこれ以外の検査も参考にするとしておりますので、事務局案としてはPaO2をベースにしながら、AaDO2などほかの結果が出てきた場合にもそれを参考にするという形でいかがかと思います。

○浅野委員長 わかりました。
 それでは、この問題に関しては……、どうぞ、三浦委員。

○三浦委員 A-aDO2に関して一つだけ、間質性肺炎あるいは石綿肺そのものが進行して呼吸困難感が強くなると、過換気状態になります。この場合、酸素は上がります。PaO2は上がるのですけれどもA-aDO2の値も大きくなりますので、PaO2では基準に達しなくてもA-aDO2でひっかかることがあります。ですから、これを完全に外してしまいますと、呼吸困難感が強くて換気量が多くPaCO2が30ちょっとぐらいしかない、呼吸性アルカローシスを呈しているような方たちを救うことができませんので、外さない方が私はいいと思います。

○浅野委員長 わかりました。私は外さないということで結論を出そうと思っておりました。
 では、清水委員。

○清水委員 私は呼吸器専門ではないので、公衆衛生なのですが、今までのご意見を伺っていまして、なるべく救済できる方向に向かっているということで私は賛成なのですけれども、ただ、このじん肺法で厚生労働省と環境省の間でダブルスタンダードになるというようなことはないと考えてよろしいでしょうか。その辺が一番心配なことです。

○泉室長 事務局の考え方でございますが、石綿救済法は石綿肺だけを取り上げているのに対し、じん肺法はじん肺全体であるというそもそもの違いがございます。また、じん肺の方は毎年の健康診断を制度の中で受けてきて、その結果をもとに判定をしていくのに対し、石綿救済法の方は普通に医療機関で受けている健診なり、治療の結果から出てくるデータということで、全く同じ成り立ちではないという点はございます。ただ、きょうも厚生労働省からオブザーバーで来ていただいていますので、連携を深めつつ、よい形にしていきたいと思っております。

○古谷委員 ほんの一言だけ。やっぱりダブルスタンダードになる危険性は大きいように思います。

○浅野委員長 わかりました。こういうふうに扱いたいと思いますが、いかがでしょうか。結論的には、やはりダブルスタンダードという議論もあるのですけれども、この方が日本人の実態に合っているという、今の専門の委員の方のご意見を尊重すべきだろうと思いますので、私はこちらの方はやはり学会式でやるということにした方がいいと思います。ただし、古谷委員のご指摘についてはきちっと意見として入れるということと、それから、なぜこのようにしたかについては、結論だけ書くのでなく、きょうも出ましたようなご議論を文章としても残しておく、議事録を見なければわからないということはよくないので、なぜこうであるかということをはっきりわかるように書くということにしたいと思います。
 それから、PaO2だけという事務局案ですが、これについてはきょうお二方の委員からAaDO2もあわせて、どちらかでいいんじゃないかというご意見がありまして、事務局も相関関係があることは認めておられますので、この点については事務局案では外すと書いてありますが、いずれでもよいということにしてはどうかと思うんですが、それでよろしいですか。いずれか。

○新美委員 どちらかを主にして、どちらかを従にみたいな使い方もありますが。

○浅野委員長 それは、しかし、いろんな検査を要求すると誤解されるおそれはありませんか。

○新美委員 はい、同時に。

○浅野委員長 ですから、計算式で出すだけのことですか。

○新美委員 動脈血採血すれば両方出ますので、それは問題ないなと。

○浅野委員長 だから、三浦委員が言われるように、こちらでは落ちちゃうものをこちらだったら拾えるというのであればいいのではないかと思います。どちらかの要件を満たしているものであればいいと。これだけで決めるわけじゃないですから、これはあるクライテリアに入ったもので、さらにそれを救済するかどうかの話をしているわけですね。これで○か×かじゃないわけ。前提があるわけですから、その上でなおかつ、こういう方でもここまであれば拾えますと言っているわけですね。であるならば、二つで構わないと思いますがいかがでしょうか。
 それから、もう一つ、ここが現場で審査をなさる方には微妙なところだと思うんですが、どうなんでしょうかと思ってお聞きしていたのは、「それ以外の結果が提出された場合は、これを加えて総合的に判定を行うことができる」ということを、どう読むかということです。これは私の経験から言うと、本当に総合的に判断をしなきゃいけない場面というのはあるわけですね。それはボーダーラインの方の場合で、クライテリアではどうも定量的には認定できない。ところが、他のデータを加え、他のいろんな所見を加えてみると、これは認定せざるを得ないというケースがあったり、逆にこれは非常にきついのだけど、ボーダーラインの数字で、この数字は定量的には認定の要件に該当しているんだが、他のデータを入れてみるとどうもちょっとおかしいんじゃないか。だから、これは総合判断では認定できませんという場合が現実にあるわけです。基準に該当するかしないかがはっきりしている場合は何の問題もないわけですけれども、ボーダーラインをどうするかで迷うときに、総合判断が出てくる。そのときにさまざまな材料がある場合にはそれは使えるということであるならばそれを総合判断ということならいいんですけれども、定量的に決まったものにさらに他の資料もつけ加えて、それで総合的といってもそれでは何の意味もないわけですね。余計な負担をかけるだけです。ということは、ここで総合的というのは定量的な基準だけが絶対の基準ではない。ボーダーラインに関して判定をするときにこれらの要素を加えて判定ができると、そういう趣旨だというふうに私は理解したのですが、そういう理解でよろしいですか。
 この点は委員の方はいかがですか。

○岸本委員 私もそのように思っていました。明らかにレントゲンも進行した石綿肺であって、肺活量も予想どおり60%というような方はそれだけで認めればいいんですが、どうしても問題なのはボーダーラインの方なので、その方々で、例えばDlco/VAとかができて、これが著しく悪い、50%とか60%になればそれも考慮をするというような考え方です。ボーダーラインは、今、浅野座長がおっしゃられたような形で総合的判断をするということが望ましいのではないかというふうに思います。

○浅野委員長 ありがとうございました。それでは、ここはこういう理解だということにしておいて、いずれにせよ何らかの形でこれは現場に伝わるようにはしなきゃいけないと思います。
 それから、もう1点ですが、これは委員の方いかがでございましょうか。きょう出た資料3の3、施行前にお亡くなりになった方、未申請でお亡くなりになった方の取扱いですが、ちょっとこれも気になっているのですが、残存している資料やカルテの記載等により確認をすることをもって判定をすることが適当であると考えると書かれていますが、現実にはどういう資料が残っているのでしょうか。

○岸本委員 カルテは5年間の保存義務がございますので、カルテの記載とレントゲン所見、肺機能検査はやられていなくても臨床医はPaO2とかSpO2というのは、やりますので、そういう検査も考慮して判断をする。特に石綿肺で呼吸不全になった方にあえて肺機能検査はやらないこともございます。ここにSpO2という記載も事務局案でありますので、それを見るということと、主治医がどういう状態だったということをカルテに記載をしていると思うので、それを見て判断しましょう。それから、例えば解剖された方であれば、その組織が残っておりますので、病理組織所見等を見て石綿肺でいいかどうか判断もできます。カルテベースでレントゲンを含めて提出していただけるものを提出して判断をするでいいのではないかなとは思います。

○浅野委員長 三浦委員、いかがでしょうか。

○三浦委員 これも総合判断が必要と思います。と言いますのは、石綿肺という言葉は、臨床的には胸膜プラークしかなくても解剖の結果、突然その言葉が出てくることがあります。ですから、単に「石綿肺」という言葉があるだけで判断するのではなく、きちんとした石綿肺の所見があるということを総合判断する必要があると思います。肺がんとか中皮腫の場合にはお亡くなりになられている方の残っているカルテを全部検討して、判断するという作業を現実にはしていますので、それと同じような形が可能だと思います。あるいは死亡診断書の場合には、主病名が石綿肺であればこれはもうそのままということになるだろうと思います。

○浅野委員長 わかりました。古谷委員、どうぞ。

○古谷委員 大事な問題を書いていただいて結構なんですけれども、今現実に中皮腫については、過去の事例については死亡診断書での中皮腫の記載等で救済につなげている実態があります。同様に、実際石綿肺が死亡診断書の中に記載されることは必ずしも多くないという僕なんかは実感していて、石綿肺で療養されていた方であっても、そういう意味では死亡診断書への石綿肺の記載というのは大いに重視していただきたいですし、また、死亡診断書の記載にかかわらず追跡できる資料から積極的に救済につなげていくということをぜひ運用に当たっても徹底していただきたいと思います。

○浅野委員長 わかりました。清水委員、いかがですか。よろしいですか。
 私が気になったと申しましたのは、確認することをもって判定するという文章が出てしまうと、クライテリア全部を満たしたデータがなきゃいけないというふうにとられるおそれがあるなと思ったわけです。それで申し上げたので、岸本委員と三浦委員とのお話、それから、古谷委員のお話も私の懸念を裏づけるものだと思いますので、ここは確認した事実をもとに総合的に判定をすることが適当であるという表現に直すことにしましょう。ですから、事実はこういうものによって確認をし、その確認された事実をもとに総合判断という方がいいと思います。古谷委員、そういう修文でよろしいですか。それでは、この3はそのような形で扱わせていただいて、できるだけ救済が可能になるような道を選ぶということを明らかにしたいと思います。
 それでは、ここまでのところはこれでよろしいかと思いますので、きょう出ましたご議論をもとにしてさらにこの文章については整理をして、次回またお諮りをすることにいたします。
 それでは、最後になりますけれども、その他疾病の取扱いについて、事務局から説明をお願いいたします。

○泉室長 資料2の論点項目に戻っていただきまして、一番最後の12ページになります。これまで石綿肺のご議論を進めてきていただいておりますけれども、その他の石綿関連疾患あるいは病態といたしましてびまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水、胸膜プラークがございます。これらにつきましては、医学的事項検討会の報告書におきましては、「良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚、胸膜プラークについては平成18年の中央環境審議会及び『石綿による健康被害に係る医学的判断に関する考え方』で取りまとめられた知見を覆すような新しい知見は今のところ得られていない。これらの疾病等については、引き続き知見の集積に努めるべきである」というふうにされております。今回お示ししました石綿肺の症例収集のような作業はこれらの疾患等についてはできていないので、これらの患者等の方々の呼吸機能の実態とか、亡くなっていく状況とか、そういったデータが事務局にはない状況でございます。これらの取扱いについてご議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、古谷委員、どうぞ。

○古谷委員 私自身は最初のヒアリングのときに、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水、及び、その他石綿を吸入することに起因して発生したことが明らかな疾病、を指定疾病とするのなどが一番万全の体制だということを提示させていただきましたが、とりわけ、びまん性胸膜肥厚については、きょう資料の中にも入っていますように、労災認定基準の方で肥厚の扱いや広がりに対する一定の基準、そして、著しい肺機能障害というクライテリアが非常に明確で、判定の運用とか実態について、これまでの石綿肺についての議論と変わらないということと、実際労災認定の方でも、平均すると毎年10件くらいの事例が出ている。海外などについてもそれぐらい出ているということを考えますと、とりわけびまん性胸膜肥厚については、少なくとも同じような考え方ででも指定疾病に追加されるべきだろうというふうに考えます。

○浅野委員長 わかりました。ほかの医学系の委員の方のご意見を伺いたいと思いますが、どうでしょうか。

○岸本委員 職業性石綿ばく露がある例というのは、確かに今、厚生労働省の方で集積をされていると思うんですけれども、どの程度のばく露でびまん性胸膜肥厚が起こるのかというような医学的なところがわかりません。職業歴がない方で、びまん性胸膜肥厚はないのかというと、結構あります。例えば陳旧性の肺結核、結核性胸膜炎の後遺症、心不全、肝硬変等の胸水もあるので、石綿によるのかよらないのか、ここの鑑別が一番問題になると思います。そのあたりは医学的に症例を集めて一度検討して、それからでもいいのではないかなと思います。鑑別診断という意味で、びまん性胸膜肥厚を来す疾患というのはアスベストだけではないという、ここが一番救済するに当たっての問題点だろうなとは私は思っております。三浦委員、どうですか。

○三浦委員 今の論議はびまん性胸膜肥厚に限ったことではなく、全く石綿肺の場合も同じと言えます。職業性ばく露が明らかな場合には、むしろ現在は石綿肺よりもびまん性胸膜肥厚で著しい呼吸機能障害を来す患者さんの方が世界的にも多くなっています。ですから、入れるのであれば、石綿ばく露がきちっと担保されるということを大前提としてこれを加えるのがよいと思います。もし加えるのであればですけれど。

○浅野委員長 古谷委員、どうぞ。

○古谷委員 委員の方のご意見をお聞きしても、労災認定基準にありますように、石綿ばく露作業への従事期間が3年以上あるということが確認できる方に対するびまん性胸膜肥厚については新たな研究とかを待たずにぜひ救済の対象にすべきだというふうに考えるんですが、そんなお二人の意見と違わないんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。

○浅野委員長 古谷委員のご意見は、その点に関しては3年以上のばく露というものを少なくとも経歴等から把握できるということを要件として、あとは呼吸機能も見るという点は石綿肺と同じで構わないと、こういう考え方だと理解していいですか。

○古谷委員 そうですね。判定基準のより緩やかな形では総合判断というのがやっぱりあれだと思いますが、少なくとも3年以上確認できるものについてはしていこうという考えがあるんじゃないでしょうか。

○浅野委員長 わかりました。この点は、岸本委員、いかがですか。ばく露歴については、因果関係についてはとりあえず通ると。しかし、ばく露歴が全くないということがはっきりすればだめだということについては合意ができると思いますが。

○岸本委員 はい、そうですね。労災認定基準は古谷委員がおっしゃられたように、石綿ばく露歴が3年というのがございます。医学的に胸膜プラークがあるというような、そういう事実、それから、胸水の原因が結核等の疾病ではないということが担保されないといけませんので、職業歴が3年以上あって、肥厚の原因が石綿以外の他の疾病を否定できるという、そこが担保されればいいのではないかなとは思います。

○浅野委員長 わかりました。それでは、ただいままでのご意見で大体意見は一致しているようでありますので、一定の要件の中でびまん性胸膜肥厚についても救済対象とするという結論にしたいと思いますので、これについては事務局でもう一度クライテリア等については整理をしていただけませんか。新美委員、何かご意見ありますか。

○新美委員 労災と同様に扱っていいというのはわかりますが、労災における職業歴3年間というのは作業歴ということで、かなり正確に把握しているということでございます。それと同じような正確な把握ができるのかどうかがポイントだろうと思います。確からしさということを考えるならば、そうした職業歴の把握の正確さも押さえておく必要があるんじゃないかと思います。

○浅野委員長 そこは、ですから、石綿肺も同じようなことではあるわけですから、少なくとも、でも、今、3年間労災でばく露ということを要求していると同程度のばく露ということがわかるような何らかのデータを確保するという書きぶりであれば、新美委員の指摘には答えることになると思います。それでいいですか。

○新美委員 石綿肺の場合、病像の点でさまざまな映像等でかなり肉薄できるということを伺ったと思いますが、このびまん性胸膜肥厚についてはそれと同じようなことは可能なのかどうかです。

○岸本委員 石綿によるびまん性胸膜肥厚の原因の大半は、良性石綿胸水後にびまん性胸膜肥厚になります。胸水の原因が本当にわからないというところ、そのあたりが医学的に押さえられているということが必要です。新美委員がおっしゃられているように、職業性石綿ばく露が3年というのは、労働基準監督署の方々がきちっと調べられてそれだけあるということが担保されますけれども、この救済ではそういうところがありません。なおかつ胸水がどういう原因でたまったのかというところがわからないものを救済するというのは、私はちょっと問題があると思います。もう少し労災で認定された方々の石綿ばく露歴とか、背景に良性石綿胸水があったのかどうか、そういう医学的な検討をした後の方がいいのではないかなと、医学的にはそのように思います。

○浅野委員長 わかりました。三浦委員、どうぞ。

○三浦委員 良性石綿胸水の場合には非常に難しいんですね。労災もいまだに前例、本省協議ということになっています。胸水がたまる病気というのはいっぱいありますので、その中で最後に石綿しか考えられないという場合に初めて良性石綿胸水とされます。ですから、なおかつ最低でも約1年間新たな病気が出てこないとか、そういうことを確認した方がいいということになっていますので、これを今の時点で良性石綿胸水もまぜてしまうと、物すごい量の申請がもしかしたら来てしまう危険性があるため……。

○浅野委員長 それは今のところまだ考えておりませんので、そうじゃなくて、今、岸本委員がおっしゃったのは、良性石綿胸水からびまん性胸膜肥厚になるという、そういう進展が通常だということをおっしゃっただけですから。私は、さっき岸本委員がご指摘になったように、胸水の原因で、他原因であることが排除できればとりあえずはいいのかなと、こういうふうに考えたのですが、無理でしょうか。

○岸本委員 良性石綿胸水というのは一応は治ってしまうわけですよね。ただ、びまん性胸膜肥厚というのはずっと残るわけなので、いつ、どういう原因で肥厚が起こったのかというのはなかなかわからないということです。

○浅野委員長 ですから、さっきのお話ですと、結核などのちゃんとした病歴があれば、そのことが胸水の原因だというふうに判断できる場合は排除する。つまり、除外診断がちゃんとできるのならいいのだろうと思ったんです。それは甚だ難しいということですか。

○岸本委員 はい。そこが甚だ難しいので、もう少し医学的な知見を検討してみてはどうかなというふうに思います。というのは、今までびまん性胸膜肥厚に関しては医学的な検討というのがなされておりません。労災で認定をされた症例もそれほど多いわけじゃないので、一度そういう方々を対象として、例えば既往歴等を調査してみるとか、やってみてはどうかなというふうには思います。

○浅野委員長 2段構えで考えるという発想法はだめでしょうかね。つまり、労災で救済されている方で、たまたま労災の制度外なので救済されない方をまず拾わなきゃいけないだろうという考え方からいきますと、3年のばく露というものが客観的に確認できるなら認めていいじゃないかということがさっきの古谷委員のご意見だと思うし、その点に関しては私は余り違和感を感じないのです。ですから、一般環境経由の場合が一番問題だというのはおっしゃるとおりだと思いますので、3年の職業的ばく露もしくはそれに相当するということでかなり絞りがかかるのではないか。であるならば、少なくとも政府が我々に労災並みに最低限のことはまずやれと言われていることから言うと、絞れるのではないかという気はしていますが。古谷委員はいかがですか。

○古谷委員 全くそのとおり、全く同感です。
 こちらのクライテリアの資料にもあるように、医学的には胸部エックス線写真で肥厚の厚さが最も厚いところが5ミリ以上とか、非常にクリアカットに示されているということもあって、ここからやはり拾っていくということはいいアプローチだと思うんですけれども。

○浅野委員長 結局同じことですね。アスベスト肺も職業的に労災と同じような形では経歴を十分に把握できない方々を救済すると言っている以上、それと同じような方法で、しかもばく露についてはさらに3年間ばく露というようなことを加えるとすれば、アスベスト肺以上にそのところについての因果関係の確実さを確保できたということにならないのかな。と私は考えたのですが、新美委員、どうですか。

○新美委員 少なくとも、石綿肺の場合には映像なりで相当程度絞り込めますので、それで、ばく露歴を少し労災と違った緩やかなものでも病像等が映像で絞り込めることとの総合判断をしていけば石綿に起因する疾病であるとすることの確からしさは担保できるだろうと思います。それと同じように、ばく露歴を石綿肺と同じようにした場合に、びまん性胸膜肥厚について石綿肺と同じように映像等で絞り込めますかということを伺ったわけです。総合判断するというのはそういうことだと思います。そうした総合判断で、石綿によるものであるということについて、どの程度確からしさが確保できるのか。映像等による絞り込みができないとなると、ばく露歴の把握を労災の場合よりも緩めることで確からしさは低減するんだろうと思います。

○浅野委員長 わかりました。古谷委員の主張は、びまん性胸膜肥厚はクライテリアがかなり明確だから、少なくとも何が原因かは別として、そういう病気であるかどうかについてはかなり客観的に判断できるじゃないかと言っておられるのですが、その点だろうと思います。新美委員はそのことを問題にしておられるのですが、三浦委員、いかがでしょう。

○三浦委員 原因は別としまして、びまん性胸膜肥厚があるかないかというのは画像で確実に判断できます。胸部写真とCT、ただし、石綿肺よりももっと厳しいのは、石綿肺の場合には特発性間質性肺炎あるいは肺気腫に伴う肺線維症、こういったものがHRCTまで使うとかなりよく区別ができるようになっています。ただ、びまん性胸膜肥厚の場合には胸膜が厚くなっているということはわかりますけれども、その原因が別の疾患によるのか、アスベストによるのかは画像では今のところは判断できません。

○浅野委員長 わかりました。その点は十分理解できました。

○泉室長 事務局としては、最初にご説明しましたとおり、まだ資料が足りないというふうに思っております。鑑別診断が重要であるということですが、例えば石綿肺の場合はその鑑別すべき相手の、例えば特発性間質性肺炎の患者数というようなことをボリューム感をわかった上で議論をしてきたわけですが、今、びまん性胸膜肥厚について、画像上の合致するものの中で石綿原因がどのくらいで、それ以外のものがどのくらいあるのか、あるいはその中で著しい呼吸機能障害まで起こしてくるのがどのくらいあるのかなど情報が全くない状況でございます。次回までに得られる情報があればそれをお示ししたいと思っておりますのが、慎重なご議論をお願いしたいと思っております。

○浅野委員長 そうですか。それでは、次回までと言うけど、大丈夫ですか、次回までにはかなり時間が短いのですが。

○古谷委員 委員長、言わずもがなですけれども、ある意味室長の言われたことは石綿肺にそのまま当てはまることで、それを待ってからやるんですかという話だと思うんですよ。そういう意味で、委員長も言われていたように、非常にクライテリアが鮮明なところで労災間の格差なくしていく、あるいは救済していくということは先送りすべきじゃないというふうに思います。決して石綿肺だってこのクライテリアでどれぐらい出てくるかということの根拠は出せないと思うんですよね。

○浅野委員長 とりあえずこの段階でまた、意見が完全に分かれてしまっていますので、きょうは私が強引に結論を出すのはやめることにしましょう。ただ、委員長としての考え方を申しますと、石綿肺を認めるということをここで合意をして、これまで議論をしてきたという、この事実に基づいて議論をしますと、それに限りなく近いか、限りなく遠いかということだろうと思うのですね。私の判断はある前提のもとでは限りなく近いのではないかという気持ちをもっています。それは何かと言うと、石綿肺以上にばく露歴についてかなり難しいけれども、正確にばく露歴についてアプローチができるのであるならば、それは労災で救済されている方と同じように救済してなぜ悪いのだろうかという気がするわけですね。その点については、3年働いておられたということがはっきりわからない場合は物すごく難しいんですけれども、ひとり親方的な方で、おっしゃっていることについて客観的に裏づけができて、雇用されている労働者と同じように3年間ばく露が続いていたということまでわかった場合に、この方を排除する理由は余りないんじゃないかという気がしますが、ただ、こういう形で本当に現場が動けるかどうかという問題がもう一つあるでしょうし、さらにそれに加えて、いずれやっぱり一般環境の問題というのは必ず出てまいりますから、これを職業ばく露というふうに書けない制度上はやっぱりその問題が残ります。ですから、次回までに少し資料を整理するとおっしゃっていますので、その資料を整理していただいた上で、この点に関してはもう1回次回に議論をして、場合によっては私の意見と古谷委員の意見が少数意見ならまあ少数意見だというふうに書いてまとめる以外にないだろうと思いますが、きょうはいずれにせよ二つ対立する意見があって、3年のばく露というものを古谷委員の方、ちょっと頑張ってどうやってひとり親方の3年ばく露と同じようなものを確認で、私は同じことだと実は思っていて、アスベスト肺と全く変わらないと思っていますから、それと同じようなことで、アスベスト肺の場合以上に期間についてまで要件化してしまうということで、かなり絞りがかかるので、それでアスベスト肺に比べれば厳しい、そのばく露に関してはより厳しいデータを要求することになるんだと思っていますから、余り私自身は矛盾を感じていないのですけれども。
 それから、今までのデータでおっしゃるような資料をそろえていくのがかなり急速に可能か、時間的に見て短い期間でデータが集まるかどうかですね。つまり、半年ぐらいでちゃんと資料が整理できるものなのか、数年かかるものなのか。これも結構重要なことでありまして、数年かかるとすれば、多分我々の審議会ではもう結論を出せないということになってしまうわけですが、比較的短期間で何らかのデータがちゃんと出てきて、安心して結論も出るのであるならば、それは今回はしようがないなということになるかもしれません。次の4月以降の議論のところでそれについて答え出しますということにせざるを得ないという結論を多数意見とすることもできないわけではないと思っていますけれども、もし、余りにも時間がかかるのであれば、労災並みというこの文脈の中で考えられることはとりあえず考えるというのが筋ではないかと思います。
 いずれにせよ次回、この点については結論を出すということにいたします。よろしゅうございましょうか。
 それでは、きょうは以上でございますので、少しまた予定の時間より早いのですが、きょうご議論いただいた点でほぼ合意に達した点については、次回のパブコメにかけることができるように我々の報告案として整理し、最後の点については次回整理をしていただいて、私もちょっとその文章には関与しようと思いますけれども、場合によっては二つの意見があったということを書かざるを得ないのであれば書くということで、この問題は扱う。ただし、全体として速やかに何らかの医学的な知見を確保できるということがわかるなら待ってもいいという気がしますので、その点については事務局で努力をして可能性をご検討いただきたいと思います。よろしゅうございますか。
 それでは、本日はこれで小委員会を終わりたいと思います。次回以降の予定について、事務局からご説明お願いいたします。

○柳田補佐 ありがとうございました。次回の小委員会の日程でございますけれども、3月5日の金曜日、13時から15時、場所はこの建物中央合同庁舎4号館の12階1202会議室でございます。また、本日の議事録につきましては原案を作成いたしまして、委員の方にご確認いただいた後、環境省のホームページに掲載する予定ですので、よろしくお願いいたします。
 それでは、以上で第4回石綿健康被害救済小委員会を終了したいと思います。どうもありがとうございました。

午前11時37分 閉会