中央環境審議会 環境保健部会 石綿健康被害救済小委員会(第2回)議事録


議事録

午後0時45分 開会

○柳田補佐 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第2回中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会を開催いたします。
 本日は、小委員会の委員9名のうち、8名のご出席をいただいておりますので、定足数を満たしております。
 まず、本日は、前回ご欠席でしたが、今回出席されている委員をまずご紹介させていただきます。議事次第を1枚めくっていただきまして、資料1をごらんになっていただきたいと思います。まず、独立行政法人労働者健康福祉機構岡山労災病院副院長の岸本委員でございます。
 また、中央環境審議会環境保健部会の委員でございます、井内先生と坂谷先生にもご出席をいただいております。まず、広島大学大学院医歯薬学総合研究科教授の井内先生でございます。
 続きまして、独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター院長の坂谷先生でございます。
 なお、資料にございます酒井先生は、本日はご欠席でございます。
 また、本日はヒアリングを行うため、中皮腫・じん肺・アスベストセンターの名取所長にお越しいただいております。
 また、厚生労働省の方にもご出席いただいておりますのでご紹介いたします。労働基準局労災補償部労災管理課の宮下補佐でございます。
 同じく労働基準局労災補償部職業病認定対策室の山口補佐でございます。
 労働基準局安全衛生部労働衛生課の桐生主任中央じん肺診査医でございます。
 次に、本日の資料の確認をしたいと思います。資料1は先ほど確認いたしましたが、資料2といたしまして、「非腫瘍性石綿関連疾患の取扱いに関する論点項目」、資料3-1といたしまして、「労災制度と救済制度の対象範囲の違いについて」、資料3-2といたしまして、「石綿に係る労災制度と救済制度の比較について」、資料4といたしまして、「石綿肺の判定の在り方に関する検討課題」及び資料4に参考資料が1枚ついております。資料5といたしまして、「じん肺における主な特徴」、資料6といたしまして、「石綿肺症例の解析調査について」、その後にヒアリング資料として「中皮腫・じん肺・アスベストセンター提出資料」、それと参考資料1といたしまして「基本資料集」、参考資料2といたしまして「石綿による健康被害に係る医学的事項に関する検討会報告書」でございます。何か不足等ありましたら、事務局までお申しつけください。
 それから、本日、お席の前にマイクがございますが、ご発言の際にはボタンを押してからご発言をお願いいたします。なお、発言が終わりましたら、お手数ですが、もう一度ボタンを押していただきますよう、よろしくお願いいたします。
 それでは、ここからの議事進行は浅野小委員長にお願いしたいと思います。それでは、浅野小委員長、よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、きょうもお集まりいただきましてありがとうございます。
 前回、ヒアリングを行いましたが、ご都合が悪くてお越しいただけなかったので、きょうもうお一方、先ほどご紹介がありました中皮腫・じん肺・アスベストセンターの名取所長からご意見を伺うことにいたします。本日はまず、この名取所長のご意見を伺った後、論点について議論をしていく予定でございます。
 それでは、名取所長、お忙しい中をお越しいただきましてありがとうございました。大変恐縮に存知ますが、時間が限られておりますので最初のご意見のご発表は10分ということでお願いいたしております。どうぞよろしくお願いいたします。

○名取所長 名取でございます。よろしくお願いいたします。
 私は、呼吸器内科医をして25年、石綿関連疾患が専門でございます。2003年から全国からセカンドオピニオンを主にして、石綿関連疾患の電話相談をする中皮腫・じん肺・アスベストセンターというNGOを立ち上げて、いろいろな環境ですとか家族ばく露を含めたいろんな方のセカンドオピニオンにも当たっておりますので、その経験をきょうはお話しさせていただきます。
 それでは、スライドをお願いいたします(Boligの図)。お手元の配付資料にもございますけれども、これは非常に有名な図で石綿累積ばくろ量と石綿関連疾患はどういう関係にあるのかということです。これは、諸先輩の医師にとっては当たり前のことかもしれませんが、石綿の低濃度曝露で出る疾患として胸膜プラーク(胸膜肥厚班)とか悪性中皮腫があるということです。これに比べると、石綿肺と肺がんというのは一定の石綿ばく露量がないと発症しないというふうに言われているわけです。つまり、非常に鋭敏な疾患として胸膜プラーク(肥厚班)と中皮腫があって、かなりのばく露がないと出てこない疾患として石綿肺と肺がんがあると、この基本の確認をしたいと思います。次をお願いいたします。
 そうしますと、石綿の累積ばく露量(濃度×年)と石綿肺、石綿肺がんというのはどのくらいの関係で出るのかということについては、石綿肺についてはイギリスのBritish occupational Hygiene Societyのもの、石綿肺がんについてはヘルシンキクライテリアが一番まとめております。この論文ですと、25繊維・年/mlの環境に置かれて初めて石綿肺が出たり肺がんが2倍になると言われているわけで、非常に石綿濃度が低いところでは、こういう病気は出てこないということがあります。
 どういうことかと言いますと、職業ばく露の場合ですが、これもご存じでしょうが、高濃度職業性ばく露の石綿の吹きつけ作業の平均濃度というのは、25繊維/mlと言われています。中等度職業性ばく露というのは、造船とか建築になりますが、この平均濃度は大体2.5繊維/mlぐらい、低濃度曝露の他の職業および他の環境については、平均0.5かそれ以下の濃度と言われているわけであります。例えば1年のばく露で石綿の吹きつけの方は25線維・年数/mlに達しますから、石綿肺および石綿関連肺がんとして認定していいと言われるわけですし、造船とか建築がなぜ10年間の石綿ばく露で認定されていいかと言うと、この職業は大体平均2.5線維/mlという環境にあるわけです。それで10年ばく露で石綿肺とか肺がんになるというのが労災の認定の基準の一つの目安になっているわけです。もっと低い濃度の場合ですと、それに応じて0.5線維/mlの環境であれば50年間のばく露でいいと、こういう考え方でとらえるのが科学的な考え方です。ですから、この基準に合っているかどうか、つまり、職業であっても、職業でなくても、25線維・年数/mlに合っているかどうかという判断をきちんととらえられれば問題はない。ここの部分の判断ができるということが非常に大事なことになります。次、お願いします。
 石綿肺の診断基準というのは、これはもちろんILOもそうですし、厚生労働省の方でももう長年決まっていて、じん肺診査ハンドブック等でも決められているわけです。石綿ばく露歴のある、これは高濃度だったら1年になるし、中等度だったら10年でいいし、低濃度だったらもっと長くなければいけないわけですけれども、石綿曝露職歴のある1/0以上の不整型陰影という定義があって、これが一般的にずっと決まっているわけでございます。
 ということで、石綿ばく露というのは何なのかと言うと、基本的には石綿の累積ばく露量に戻って考えていくというのが基本であります。
 石綿肺というのは、(もちろん進行には個人差が当然あるわけですけれども)、基本的に進行性疾患であるというのが、これは医学的コンセンサスでありまして、クリソタイルの石綿肺のみは進行性疾患ではないというような医学的コンセンサスまではないというふうに考えてよいと思います。次、お願いします。
 例えば、これは工場周囲でどのような濃度分布になるのかという推定でございますけれども、例えば、青とか緑の範囲、こういうふうな非常に低濃度の範囲において胸膜肥厚班とか中皮腫が出るということが、この間報告されています。でも、これはあくまで10とか30繊維/Lと非常に低いf/L、つまり0.03とか0.01繊維/mlという濃度のところなんですね。それに比べて、工場の非常に近接した部分となる、赤の部分になってまいりますと、そこにおける濃度というのはもっと上がってきます。つまり、25繊維・年数/mlの環境にいた方には石綿肺は起きてもいいわけです。そういう繊維・年数/mlの石綿肺がんは救済しなきゃいけない。つまり25繊維・年数/mlという考えをもとに石綿肺や石綿肺がんを考えるというのが、やはり科学的に大事であろうというふうに思います。ここまでは総論的な考えでございまして、次、お願いいたします。
 私の臨床的な経験的なことを話させていただきますが、現在、私、建築関係で40歳以上の男性の職業性石綿ばく露のある方のレントゲンを大体年間で4万人ぐらい診させていただいております。4万人の中で大体1,000人ぐらいの方に胸膜肥厚班という、非常に低濃度でも出る病気が出ます。それから、石綿肺の管理2以上のレントゲン写真の方が大体400人ぐらい出てきます。1%ぐらいです。そうしますと、月に3,000名ぐらいのレントゲン写真を読んで、月に30名ぐらいの方の胸膜肥厚班とか、石綿肺管理2以上相当ですと30人ぐらいの方の診察をさせていただくということになります。こういうふうな方の中から、さらにより重症化して合併症が出てきて労災の補償を受けるとか救済制度の対象になるとか、そういうふうな方が出てくるわけです。そういう石綿関連疾患の方というのは53名ぐらいで、こういう方を月に1回から4回ぐらい診察しております。次、お願いいたします。(図6)
 ほかの原因のじん肺の方というのはもちろんいらして、6名ぐらいは石綿肺以外のじん肺の方がいるんですけれども、石綿関連の53名の方というのは、やはり石綿の工場、造船、建築というふうな、そういう職業の方です。ここでお示ししたとおり、その中の39人の方というのは、石綿肺管理2+続発性気管支炎です。なかなか労災に該当しない方がいて、この方は今のところ国民健康保険で見ています。後で事例3としてご説明します。管理3のイ相当という方が3名ぐらいいて、1名は酸素を吸っています。管理3のロの方が、これまた1名で労災になっています。管理4の方というのは、たった1名です。それから中皮腫の方で今診ている方が2名いて、労災の申請中が1名で、救済制度の方が1名、石綿関連肺がんで労災になった方が4名、びまん性胸膜肥厚で労災になった方が3名でうち1名が酸素を吸っていると、こういう状態で、石綿肺の管理4というのは、石綿関連疾病で労災補償を受けている51名の方の中のごく一部です。つまり、対象疾患を管理4に限定するということは、非常にごく一部の方しか救済されないということになります。また、逆に、多くの方は労災制度の該当になって既に補償されているということがポイントだと思います。次、お願いします。(図7 2009年に悪化した7名)
 こういうふうな方で、こういう方がどのくらい2009年に悪化していったのかを見ますと、ここにお示しした7名ぐらいの方が、ことし1年間で悪化してお亡くなりになったりしております。ごらんのとおり、肺炎になられた方が3名いて、2人は亡くなられています。それから、石綿肺自体の進行で具合が悪くなって酸素を吸うようになったというふうな方、もしくは、肺がんが合併したという方、びまん性胸膜肥厚があるのだけれども酸素を吸っている、そういうふうな方がいらっしゃいます。つまり、悪化する要因としては、肺炎、肺がん、石綿肺の進行と、この三つが大きな要因ではないかというふうに思います。次、お願いします。(図8)
 逆に53名の中でずっと月1回以上診ているということで悪化を防げたという方、そういう方が22名いらっしゃいます。続発性気管支炎自体の増悪の段階で内服で改善した方が17名います。それから、肺炎にまでなってしまって、外来で何とか内服治癒した方が5名います。これは、外来で月1回以上診察治療することで予防できる方がかなりいるということが重要かと思います。それから、この53名とは別に、石綿肺でいうと0/1程度、ただ胸膜肥厚班があるとか、職業ばく露があるというような方で、ずっと診ていることによって肺がんが見つかって手術できたという方が2人います。次、お願いいたします。
 びまん性胸膜肥厚の方なのですけれども、ちょっと長くなりますので割愛しますけれども、在宅酸素療法を受けている方がいます。この方は労災補償を受けています。ただ、職歴を聞きますと、一人(ひとり)親方の時期が非常に長い、労働者期間がぱっと聞くと一見少なく見えてしまいます。でも、実際詳しく聞いていくと13年ぐらいあって、労災になりました。しかし、実際問題、ここら辺で(制度や法の隙間にならないか)いつも冷や冷やしながら職歴を聞いている場合があります。この方は酸素も吸っていますけれども、びまん性胸膜肥厚で一人親方期間が非常に長くて、労働者期間が3年以下というような方が当然います。こういうふうなことを考えますと、びまん性胸膜肥厚とか良性石綿胸水の方を救済する制度にしていただきたいというふうに思います。次、お願いいたします。(スライド 10)
 実際に管理3のイ+続発性気管支炎ということで労災になっている方ですけれども、やはり2002年の段階で労災になって、2006年の段階ではやっぱり酸素を吸うに至ります。ただ、この方は管理4ではないのです。管理3のイ+続発性気管支炎で、酸素を吸うに到った方です。ここにお示しのとおり、だんだんぐあいが悪くなられてクリニックでは無理だということで総合病院に今年転院されました。石綿肺で管理3のイ+続発性気管支炎、この方は、たまたま雇用された期間が9年あったので、何とか労災になったのですけれども、もっと少ない方も当然いるわけです。こういう方が救済されない可能性が、一人親方にあるわけです。そういうふうな制度でいいのか。それはまずいだろうと。やはり管理4だけではなくて、石綿肺の合併症すべてを対象にするということが望まれます。次、お願いします。(事例 3)
 この方は、石綿肺管理2相当と言います。一人親方事業主の場合は管理2はもらえないので、管理2相当というのです。実際に東京の労働局に提出すると、管理2相当という判定をいただけるケースなんですが、この方、お父さんが石綿スレート業をやっているわけです。お父さんが亡くなった後に社長になって、その後ずっと今にいたっています。ことしの10月来院されました。石綿肺があって続発性気管支炎があるという方です。同居しているお父さんのもとで働いている場合ですと、一般的には労災にならなくなってしまう。つまり労働者性がないということになるのです。こういう方は労災制度にも出せないし、今の救済制度も使えないという状態になっております。ここはぜひ何とかしていただきたいと思います。次、お願いいたします。(事例 4)
 これも同じような方で、管理2相当+続発性気管支炎で、この方は労災になりました。何でかと言うと、1946年から54年の間の8年間の配管工としての勤務を詳しくこちらが数日かけて聞き出して、どうもそういう期間があるというのがわかったからです。こういう方は十分聴取しないと、本当は労災制度に申請できないので、労働者性の把握というものを適切に行う人材が確保されるということが大変重要で、我々は臨床的にいつも苦労しているところでございます。次、お願いします。(スライド13)
 それ以外の(石綿肺以外の)じん肺と石綿肺の同一点と相違点というところで申しますと、じん肺の合併症と石綿肺の合併症、その他のじん肺の合併症と石綿の合併症は全く同一であります。肺炎が合併するとか、肺がんが合併することで悪化すると、これも同一でございます。石綿肺もその他のじん肺同様に不可逆性の進行性疾患であるということが医学的なコンセンサスでございます。ほかのまとめにもありますが、レントゲン像が粒と不整で違うというものです。そういう点でもちろん違いもございますし、呼吸機能においても若干違いはあります。ただ、肺炎を合併する、じん肺自体がもしくは石綿肺が進行する、肺がんを合併すると、そういう点で急速に悪化したり、永眠されるという点では、ほかのじん肺と特別区別する必要があるという知見はないと思います。全く違うところは、中皮腫とか良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚、これが合併するかしないか、これは違います。次、お願いします。(スライド14-1)
 以上のことを踏まえまして、今後の制度のあり方について要望させていただきますと、じん肺法とじん肺の診査の制度というものは、労働基準監督署にばく露を調査するという、そういう機能と権限がございまして、この50年間、幾多の改定がされて運用上の問題はいまだゼロとは言えないのですが、レントゲン写真であるとか肺機能検査の考え、合併症の診断基準は、長年一貫して運営されておりまして、多くの医療機関にとっては大変信頼性があると、そういう制度だと思います。ですから、石綿肺と合併症に関する認定基準については、長年運用されてきた厚労省の労災の基準というものと統一していただきたいというふうに考えます。また、肺機能検査についても、長年厚労省の診断基準でずっと運用されてきておりますので、そういう点では、新たに何かを設ける必要はないと、肺機能の新しい診断基準を設けることで臨床の現場に無用な混乱をもたらしてほしくないというふうに思います。次、お願いいたします。(スライド14-2)
 それから、石綿ばく露歴の調査を行う厚生労働省の労災制度で、石綿肺と特発性間質性肺炎等の混同が起きて大変に問題になったというような話は、私は余り聞きません。ほとんど聞いたことがない。つまり、事業主とか一人親方の特別加入者の、つまり自営業者の石綿ばく露歴というのは、現在地方の労働局において、一応、管理区分相当という形で実際に判断をしていただいておりますし、石綿ばく露歴の聴取は担保されておりますので、その利用が十分可能であるというふうに思います。
 では、それ以外に工場周囲とか家族に発症した石綿肺とかびまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水というのは、確かに対象疾患に今なっておりません。ただし、これは、後にも申し上げる時間があれば申し上げますけれども、数が多分少ないです。極めて少ないと思います。ですから、個別に石綿ばく露歴が、25繊維・年/ml以上に相当しているのかどうか、この確認をした上の人のみを審査に上げる、そういうことをすれば、十分に対象疾患としての判断は可能ですし、鑑別疾患をする人は非常に少ないというふうに思います。ですから、石綿ばく露歴の調査について、工場周囲と家族についてだけ、環境再生保全機構等で調査をする機能を持てば、十分対象疾患とすることは可能であろうと思います。
 ということで、大きくまとめますと、労災制度に基づきながら、石綿肺合併症の全疾患、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水をこの制度の対象疾患にすべきである。あとはばく露歴の調査機能というものを一部の方についてだけ環境再生保全機構の方で備えれば、十分対応可能であるというふうに考えます。
 以上です。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまのご意見につきまして、委員からご質問がございますでしょうか。三浦委員どうぞ。

○三浦委員 三浦ですけれども、一つだけスライド、後からpO2が40台に下がって呼吸不全状態になった患者さんがいましたね。その患者さんが管理区分4にならないという、それはもう申請する必要がないからならない話でしょうか。

○名取所長 その段階ではなってない。つまり、要するに、肺活量のいろいろなところでいくと、そうはなってないという意味であって。

○三浦委員 いえ、この数は、ちょっとじん肺診査ハンドブックが手元にないのでわからないのですけれども、このpO246.8TOORと、pCO247.1TOORという数でいくと、これはAaDO2は規定外になってしまうのですか、この面で。わかりますか。

○名取所長 そういう方って。

○三浦委員 いや、この方は。

○名取所長 この方についての確認はちょっと今…。

○三浦委員 明らかな呼吸不全ですから、私としては、多分、これ、このままこの段階で申請すれば、要するに…。

○名取所長 それは先生、管理区分出し直しということですか。現在既に労災補償されている方に管理区分の再提出は余りやられてないですよね。

○三浦委員 だから、結局、後から出す必要がないから管理区分4に相当しないけれども、合併症を抜きにしていった場合に…。

○名取所長 ただそのAaDO2の基準というのが、非常に厳しい場合があって認められないというケースがあるということを今申し上げています。

○三浦委員 この呼吸不全がありますから、私は、これで多分なると思うんですよね。

○名取所長 なる場合もありますね。

○三浦委員 もしこれがならなければ、名取先生のおっしゃるように、今の基準がやっぱり現在に全く合ってないということになりますから、それは急いで改定していただく必要が私はあると思います。お聞きしていてちょっと感じたんで、すみません。

○浅野委員長 ほかにご質問がありましたら。岸本委員、どうぞ。

○岸本委員 今、名取先生がお示ししていただいた石綿肺の方は、バーミキュライトの吹きつけだとか配管だとか、ひとり親方の方で石綿高濃度ばく露の職業歴が明らかになった人の提示をされておりまして、25ファイバー/年もクリアしているし、レントゲンも多分そうなんだろうなということで非常に納得します。建設労働組合の方に関して言いますと、私も、岡山県で25年ほど、今もそうなんですけどずっと診ています。建設業の方というのは、過去で言えば、アスベストにセメントをまぜるような作業をした左官さんとか木造大工とか、石綿ばく露量の幅があるんです。ただ、石綿肺というのは、私も論文に書いているんですけれども、線維化があって、ある程度石綿ばく露もあるから、これ、石綿肺かなというふうに診断されて、管理区分を持っている人もあるんですけど、そういう方を例えば亡くなって解剖しても、井内先生が石綿肺ではないと診断される方もいらっしゃいます。実際には石綿肺ではない人も結構います。名取先生は、建設業は石綿高濃度ばく露というふうにお書きになってらっしゃたけれども…。

○名取委員 中等度です。

○岸本委員 中等度と書かれていましたが、職種によっては中等度もあるけれども、ほとんど低濃度ではないかなという人もいます。となると、先生は、慢性間質性肺炎と石綿肺の診断が余り問題にならないというふうにおっしゃられたんだけど、実際、我々のところではかなり問題になっています。もう一度、私も石綿肺の勉強をしようと思って、今、石綿肺と過去に診断した人をレトロスペクティブに病理の先生も含めて検討中なんです。なかなかこれ問題があるなというふうに思っています。
 ですから、先生おっしゃる石綿吹きつけ作業だとか配管だとか、典型的な過去の石綿肺作業として認められた人はいいんですけれども、そうでない、いわゆる低濃度ばく露が長い間に本当に石綿肺が出るのかどうか、理論的にいうと25ファイバー/年、多分最低ラインだと思うのですけれども、なかなかその辺が難しいのかというふうに思います。今の私の石綿肺診断に対する実感なんですけど、僕はそういうふうに考えています。

○名取委員 基本的に、世界的にはヘルシンキクライテリアが、建設業は中等度の職業性ばく露と書いていて、それに合わせて西ドイツにしてもイギリスにしても、基本的に10年ばく露という形で建設の職業性石綿ばく露を一定の判断をしているということがあります。僕は建設業の方は中等度ばく露の人が多いという印象があって、一部高濃度ばく露の人もいるし、先生のおっしゃられた低濃度ばく露の方も一部いると、そういう印象をまず持っています。そこはちょっと若干見解が違うかなというふうに思います。
 それから、間質性肺炎のところについて言うと、特発性の間質性肺炎、これは難病というような状況だと思うんです。その方の数という点は、後のところで補足意見には書いておりますが、非常に進行の早い一部のものについては四、五年ぐらいで酸素吸入から死に至るという、極めて進行の早い疾患です。しかも、そういう形で認められた人の数が1万人というようなレベルではなくて、やはり今のところ、非常に数が限られている。それに比べて、職業の方というのは、万単位でいらっしゃるということがございます。臨床的な意味でかなり鑑別が私はできているというふうに思います。
 ですから、一部で進行してしまった非常に重い石綿肺の管理4とか、かなり進行してしまったレベルの石綿肺と特発性間質性肺炎を診たときに、ちょっと簡単に区別がつかないというご意見はわかるんですけれども、長い臨床的な経過が普通石綿肺というのは必ずある。そういう部分を考えますと、その点では、鑑別が困難な例というのは一部に限定されているという気が私はいたします。

○浅野委員長 ありがとうございました。それでは、まだご質問があるかもしれませんが、本日は、議するべき事項が多いのでここで質疑を打ち切らせていただきます。どうも名取先生ありがとうございました。

○名取所長 どうもありがとうございました。

○浅野委員長 それでは、引き続きまして本日の議題になっております石綿の健康被害救済制度における指定疾患の考え方についてございます。資料2の「非腫瘍性石綿関連疾患の取扱いに関する論点項目」、これをごらんいただきたいと思います。
 まず、1、石綿肺の取扱いについて、それから、2 認定に至らない石綿肺の取扱いについて、この二つについて検討を進めていきたいと思います。医学的な内容になりますので、3の判定の在り方については、分けて議論をさせていただきます。前回、第1回の小委員会ではご自由にご意見を伺ったわけですが、労災制度との整合性という点に関して多くご意見が委員から出されましたので、それぞれの制度についての説明、それから、制度の違いについて、これを重点的に事務局から説明をいただきたいと思います。事務局の説明をお願いします。

○泉室長 それでは、座ったままで恐縮ですが、説明させていただきたいと思います。
 まず、お手元の資料2をお出しいただきたいと思います。この表紙は、前回お出しいたしました論点項目のリストに、Iの1の[2]だけは前回のご議論を踏まえて項目を追加した他は、前回と同じでございます。前回は表紙のみでしたが、各項目につきまして、これまでの検討の状況ですとか、第1回の委員会における意見などをまとめております。今、座長からお話がございましたように、前回は特に労災制度と救済制度の関係、整合性ということでお話がございましたので、そのあたりを中心にご説明をしていきたいと思います。
 この論点項目の中のIの1、2、3、このあたりが、次の制度を考える上での一番核になるところでございますので、これを中心にして、また、内容としては制度的な面と、それから医学的な面と二つに分かれますので、まずは制度的な面のご説明をさせていただきたいと思います。
 資料2、2ページの石綿肺の取扱い、救済法上の位置づけにつきましては、背景というところは、これまでの審議会報告などを引用しているところでございますけれども、第1回小委員会における主な意見といたしまして、指定疾病について予後の悪さという前提はないのではないかというご意見、それから、労災制度との関係においては、石綿による疾病で療養が必要な方はすべて救済されるべき、あるいは、労災制度と救済制度では財源、救済の要件、目的などが異なっているというようなご指摘があったところでございます。
 4ページは、認定の対象となるばく露形態についてですが、前回のご意見としては、一人親方、職業性のばく露につきましては特にご議論はなくて、一般環境経由のばく露に関して門前払いしたり排除したりすることは避けるべき、あるいは、職業ばく露以外の方に広げていく場合については、その要件についてしっかりとした検討が必要であると、こういったご意見をいただいております。
 5ページの、認定の対象となる病態につきましては、最初に引用しておりますとおり、検討会報告書においては、「著しい呼吸機能障害を来している場合は、現在の指定疾病と同様、重篤な病態であると考えて差し支えない」と、整理されているところでございます。第1回小委員会における意見といたしましては、一つは、これはレントゲン上の問題ですけれども、第4型大陰影の場合も含めるべきというご意見、あるいは、合併症につきましては、労災制度に倣って救済の対象としてはどうかというご意見、それから、労災制度におけるじん肺全体の合併症と救済法で対象とする石綿肺の合併症を同じように考えていいのかはエビデンスに基づく検討が必要ではないかと、こういったご意見をいただいたところでございます。
 6ページ、認定に至らない石綿肺の取扱いにつきましては、重症化、重篤化して初めて救済給付を行うというのでは、制度として不足ではないかというようなご意見をいただいたところでございます。
 ここで、救済法と労災で制度の趣旨、財源給付対象など、どう違うかというところにつきまして、本日、資料3-1、3-2を用意いたしましたので、あわせてごらんいただきたいと思います。
 まず、全体の枠組みにつきまして資料3-2を見ていただきたいと思います。左側が労災補償制度、右側が石綿の救済制度でございます。まず、制度の性格といたしまして、労災補償制度につきましては、保険による補償制度ということで、これは、労働災害に対する使用者の災害補償責任を確保するための保険制度であるということでございます。これに対して救済制度の方は、民事上の責任と切り離して、社会全体の費用負担により救済を図ろうとする見舞金的な性格なものであるということでございます。
 その財源は、労災制度につきましては、これは事業主が負担する保険料が財源である。一方で、救済制度につきましては、国・地方公共団体・事業主、広くすべての事業主にご負担いただいているということで、社会全体で負担をする制度になっているということでございます。
 給付の要件ですが、労災制度の方は業務上の疾病であることというのが要件でございます。一方で、石綿救済制度は、日本国内において石綿を吸入することにより指定疾病にかかったということになります。
 次に給付の内容でございますが、労災制度につきましては、災害補償責任、保険による補償制度という性格でございますので、給付も業務上の疾病にかかる必要な療養費用、それから稼得能力のてん補を目的とする休業補償等ということでさまざまな給付が用意されております。一方で、石綿救済法につきましては、見舞金的性格ということもありますので、救済給付の種類としては六つございますが、実際に現に療養中の方が受けられる給付は医療費の自己負担分の支払いと、それから療養手当という1種類のパターンだけになっております。
 資料の裏には、対象とする疾病を記載しています。
 これを踏まえて、3-1の方の色刷りの絵の方を見ていただきたいと思います。まず、労災補償保険制度につきましては、1点ここで補足しておりますが、黄色い矢印のところですけれども、労働基準法上の労働者でない一人親方や自営業者については、特別加入制度として、ご自分で保険料を払うことによって任意加入するという制度があるということでございます。今この会議で話題になっている「労災の対象とならない一人親方の方」というのは、何らかのご事情によってこれに加入されてない方々が中心となってくるかと思います。
 図の、真ん中に赤い「重症度等」と矢印がございますが、概念的に疾病の重さを示したものでございます。左側が労災補償制度、右側が石綿救済制度です。一番下に赤い線が引いてございます。重症度としては、このさらに下まであると思うのですが、この赤い線から上が労災制度で補償給付を受けられる方を示しているとお考えください。つまり、労災認定を受けた方々というのが、この赤い線の上にあるというふうにお考えいただきたいと思います。個人個人の疾病の重症度はさまざま違う中で、ある一定以上の重症の方に認定がされ対象になっているという概念的なラインがこれです。そのラインが何かと言いますと、労災補償制度上は療養を行うということでございます。労災制度で認定を受けた方の中でも、例えば働きながら外来通院をするというような方から、仕事を休まなければいけない、あるいは介護が必要であると、さまざまな状況の方がいらっしゃって、給付も例えば医療費だけの給付という方もあれば、さまざまな補償を受けられる方という方まで、さまざまな段階があるということになります。
 一方、右側の石綿救済制度ですけれども、緑色の矢印で救済給付と書いておりますが、先ほどちょっと制度のところで申し上げましたけれども、石綿の救済給付は事実上1種類のみでございます。つまり、医療費の自己負担分と療養手当をお支払いすると。この療養手当は、月約10万円という額でございますが、この額は、入・通院に必要な経費と、それから介護に要する費用を勘案して定型化して定めた金額ということになっております。ですので、制度としては、介護が必要なぐらいの方を想定した設計になっているということになります。救済制度のところも下に赤いラインがございますが、このライン、これは制度の性格として前回お話し申し上げた特殊性として、中皮腫・肺がんと予後の悪い疾患が対象であるというラインです。重症者向けの給付が用意されているということと対応した制度の設計になっています。
 石綿救済制度、現行では、中皮腫・肺がんの2疾病が対象でございますけれども、これらの疾患であれば個々人の重症度については考慮をせずに認定される。ですので、肺がんで中には外来通院程度の方もいらっしゃるでしょうけれども、そういう方についてもすべて重症者を想定した1種類の給付で対応しているということになります。
 ところで、今検討の対象になっております石綿肺につきましては、個々人の重症度はさらに多様であろうと考えられます。中には通院の医療費のみでいい方もいるでしょうし、一方で介護まで必要な方もいらっしゃるということになるかと思います。しかし、現在の制度では、重症者を想定した1種類の給付しか用意されておらず、そこに加えるのが適当なのは中皮腫・肺がんと同等と考えられる著しい呼吸機能障害を有する方であろうというふうに整理されているわけでございます。つまり、この下に白いところが残っておりますけれども、仮に労災と同様に、医療費のみのような給付を作ってより軽症の患者さんを救済すべきということであれば、この法律自体を見直して給付の種類を変えていって、そういった方々に対応していくことを検討する必要があるだろうと思っております。
 4月以降にこの小委員会で制度全体の見直しをしていただく機会がございますが、そこでそういったご議論をいただくことも可能だろうと思っております。ただ、現在、まず指定疾病の追加を先行して議論しましょうとお願いしている段階におきましては、現行の法体系をいじらないでできる範囲になりますので、この救済給付の黄色いところに当てはまるのがどのような病態なのかというご議論をしていただくことになるのかなと思っております。
 以上が制度面の違いについてのご説明でございます。よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、ただいま事務局から資料2の前半部分と、それから資料3に基づいて制度の違いということについてご説明をいただきました。
 当初、第1回のこの委員会を始めた段階で、ある程度の合意ができていると私は理解したわけです。すなわち、まず、法律改正をしないでも政令改正でできることを急いでやらなきゃいけない。その上で、さらに政府の諮問の内容には、抜本的に制度そのものについて少し時間をかけて検討する。この点についてはほぼ合意を得ていると思いますので、この点も踏まえて、ただいまの事務局からの説明をご理解いただきたいと考えます。
 制度のそのものを抜本的にどうするかという論議に入り込んでしまいますと、結論が出なくなってしまいますので、当面の政令改正でどこまでやるのかということがまず第1の課題であることを前提として論議をしたい。その上で、さらにその次の議論を、急がなくてはいけないことはそのとおりですが、しかし時間をいただいて議論するということになるということでございます。
 以上を前提に、ご意見がございましたらお出しをいただきたいと思います。岸本委員が早目に退席されるとおききしておりますのでまずご意見をうかがいます。

○岸本委員 石綿肺で管理4の方は、先ほど名取先生も1例しかいないということをおっしゃられましたが、このような症例は、非常に予後が悪いので、今のこの体系でいくと資料3-2に基づきますと、石綿肺で著しい肺機能障害の方というのは、これに近いというふうに私は思っております。
 平成18年のときの最初の議論のときに、石綿肺も入れてほしいというふうに私が述べておりますが、私も石綿肺の患者さんを持っておりまして、労災の対象になってない方が何人かいらっしゃいました。そういう方を診ておりますと、救済の対象にしてほしいなと思いました。これらの方々は、在宅酸素療法の適応にいずれなる、なった人もあります。今の座長のお話、事務局からのお話をかんがみますと、石綿肺の管理4相当という重症の方が、ここに入るのではないかというふうに思います。

○浅野委員長 ありがとうございました。

○古谷委員 非常に大事な問題だと思いますので、私も注意しながら議論に参加したいと思うのですけれども、前回、私どもで提出した意見書にも書いておいたのですけれども、ちょっと繰り返しでもあるのですけれども、まず石綿健康救済法は第1条で、石綿による健康被害の特殊性にかんがみ、この法律をつくったということを書いてあります、確かに。ところが、この特殊性が何なのかということは、法文上にはどこにも書かれておりません。これがまず第1点ですね。
 特殊性にかんがみてつくられたのですけれども、特殊性についての定義は置かれてない。したがって、それ以外のところから持ってこなければいけないのですけれども、これがあらわれるのは、多分、最初に2005年12月27日付のアスベスト問題に関する関係閣僚会合のアスベスト問題に係る総合対策、この中で明確に、石綿に起因する健康被害については、長期にわたる潜伏期間があって、因果関係の特定が難しく、現状では救済が困難であるという特殊性にかんがみ新法をつくるのだと書いています。すなわち、ここで挙げているのは、長期にわたる潜伏期間と因果関係の特定が難しい、現状では救済が困難というこの二つが特殊性として説明されていたわけです。ここから救済法が始まるわけです。
 資料3-2で、目的のところで逐条解説平成18年環境省というのを上げていただいたのですが、これ、前書きを持ってきていただけたらちょうどよかったのですけど、前書きで実は同じことが書かれております。引用させていただきますと、このような経緯を踏まえ、石綿が長期間にわたって我が国の経済活動全般に幅広く、かつ、大量に使用されてきた結果、多数の健康被害が生じてきている一方で、石綿に起因する健康被害については長期にわたる潜伏期間があって因果関係の特定が難しく現状では救済が困難であるという特殊性にかんがみ、この法律をつくったんだと書かれております。したがって、救済法をつくるに当たっての特殊性の2点として合意されていたのは、潜伏期間の長さと因果関係の特定の困難です。
 さて、今ちょっと議論の中で出てきている非常に予後が悪い悪性腫瘍であるという議論がどこで出てきたかと申しますと、それは、前回のこの環境審議会の指定疾病を現在のところ中皮腫と肺がんの二つだけにするということの確認を行ったときに、その二つの疾病の特徴として非常に予後の悪い悪性腫瘍であるという説明が入ってくるのです。これは、環境省がきょう上げた資料の原文で当たってもらえれば、そのとおりになるのですけれども、したがって、それは、そこで初めて指定疾病が現状で、中皮腫と肺がんだけであるということの説明として出てくるのです。したがって、非常に予後が悪い悪性疾病、そのときには一緒なのですけれども、中皮腫と肺がんと同程度に重篤でなければ指定疾病にならないというようなことが前提とされたり、あるいは、救済法をつくる上の特殊性の中身として理解されたことはないというふうに私は考えています。
 したがって、ここでの議論のとき、誘導があってはいけないので、先ほどの潜伏期間が長い、特定が困難ということは、確かに救済法のときの特殊性でしたけれども、それ以外の重篤云々については、今のような経過であるということが一つ。
 もう一つ、これも法律の先生方がいらっしゃるので教えてほしいのですけれども、私の読んだ限りでは、救済法本体のいわば給付の要件として書かれているのは、国内において石綿を吸入することによって指定疾病にかかったこと、これが給付の要件だと思うのです。あといろいろなところを読んでみると、せいぜい診断されたことということが要件になっています。法律上、そういうふうにしか、この救済法は読めないのじゃないかと思うのですけれども、一方で医療費の話が出てきますから、医療費は療養を受けているということが前提になります。だから、私の読み方が間違いでなければ、法律で求めている要件は、国内で石綿を吸入したことにより指定疾病にかかって診断を受け、療養を受けているということが、救済法の想定している要件だというふうに読めるのです。そこを出発点としてやらないと、議論の前提として、ここはぜひご確認いただければと思うのですけれども、いかがでしょう。

○浅野委員長 今の古谷委員のご意見について、どなたかご意見ございますか。三浦委員、どうぞ。

○三浦委員 特殊性ということがもう一つ実はあります。古谷委員の言われることは、私も理解し、もっともだと思います。ただ、もう一つ、お手元の資料の41ページに中央環境審議会が平成18年3月2日に答申した、1ページめくりまして43ページの一番下なんですけれども、これは、救済給付の対象となる指定疾病の範囲についてということに関してなんですけれども、これは、中皮腫及び石綿を原因とする肺がんについてなんですけれども、それはやっぱり、要するに「30年から40年前には、このような重篤な疾病を発症するかもしれないことは一般的に知られておらず、知らないままにばく露し、自らに非がないにもかかわらず、何ら補償を受けられないまま亡くなられるという状況にあることから、民事責任等を離れて迅速な救済を図るべき特殊性がみられる。」と、ここにも同じような特殊性という言葉がありまして、両方一緒に使われていると考えられます。
 法律の根拠となるところは、古谷委員のおっしゃられたこと、非常によくわかりましたけど、疾病の特殊性という点については、報告書にも書かれていますので、ちょっともう一つ別のものがあるかなと考えております。

○浅野委員長 ありがとうございます。では、どうぞ、事務局。

○泉室長 事実関係で補足させていただきたいと思います。特殊性の中に予後の悪さとか重篤さということにつきましては、中環審の答申で初めて出てきたわけではなくて、これは、平成18年1月当時の国会審議の中で、重篤であるということに言及した答弁がございますので、立法当時において、重篤、予後が悪いということが念頭にあった、ということは補足させていただきたいと思います。
 また、先ほどご説明しましたように、現在ある給付が1種類のみでありまして、その給付も入・通院にかかる経費と、それから介護に要する費用というものを想定して定型化した額を設定しておりますので、そういう点からも、事務局としては、立法当時、重篤な状況にある方々を想定してつくられていた制度であると理解しております。

○浅野委員長 この点に関しては、先ほど三浦委員がおっしゃったように、前に現行法制定の議論のときに、私も参画しております。
 最初から二つの疾病については、はっきり明文で書かれております。なぜその二つの疾病について明文で病名が入っているかということは、審議会としてある程度意識しながら、当面ともかくその二つの疾病名を掲げている。ではその二つに共通する点は何かという議論をやりながら、法律にあるような記載をしているわけです。だから、重篤でなければだめだと言っているかどうかということが、今日の段階で審議会での議論に際してどこまで拘束力をもっているかということは別でしょうが、過去の経緯についていえば、確かに症状重篤という前提があったと言えます。そこで、指定疾病に石綿肺をくわえるとする場合には、どのように認定をしていくのかということも含めて考えていかなければいけないのだろうと思いますが、もし、この重篤ということを全く無視して構わないということがここで決まったとしますと、今度は給付レベルをではどうするかというようなことになってしまいますから、ちょっとここら辺は、政策決定の属する問題として、考えさせていただきたいという課題を含んでいると思われます。
 つまり、法文が何を言おうとするかということは、条文の表面に出てくる言葉だけでなく、それに加えて、立法趣旨など法規の全体を含めて考えなくてはいけないということであるわけです。もっとも中央環境審議会の当時の小委員会が出した結論は、今後ちゃんとエビデンスがそろってきて救済すべきであるということがはっきりしてきたときは、ちゃんとそれにはそれとして救済しなければいけない、しかし、当面はこれでやりましょうと言っております。
 ですから、我々としては、当面これでやりましょうとしてスタートしたことを見直せと諮問されているわけですから、それをどう見直していくかについて、ある程度の自由度が与えられていると考えます。しかし、現行法をどう理解するかということに関しては、やはり当時の立法趣旨は趣旨としてあるということと、他方では、法文上こういう解釈もありという古谷委員のご意見と、両方があり得るのだろうと思います。この辺については、法律家委員がおられますが、ご意見はいかがでしょうか。

○新美委員 浅野委員長がおっしゃったとおりで、立法当初における立法者の趣旨説明というのは、その法律が施行されるときには非常に大きな意味を持っていて、条文には明記されていないとしても、それに従って運用されていくものだといえます。それを後になって、これを見直すべきであるとするときには、状況の変化が立法時とどこまで変化しているのか、その変化を前提に、その趣旨をどこまで尊重するのか、あるいは、どう見直すのかという議論になると思います。したがって、立法当初の状況からの変化を把握するために、現在の状況分析をしっかりしておく必要があると思います。これが患者のために必要だということ、あるいは、症状が一緒だということだけで、立法の趣旨を修正せよと言い切れるかどうか、少し慎重に議論していく必要がある。枠組みを相当変えるということになりますと、それこそ先ほど来出ていますように、限られた財源、どういうふうにそれを運用していくかということも考えながら議論していく必要があるのではないか。

○浅野委員長 大塚委員。

○大塚委員 座長がおっしゃったように、最初の平成18年のときの審議の後、どういうエビデンスが出てきたかというところが重要だというふうに考えておりますが、ですから、予後が悪いということも最初から入っていたというふうに理解をするほかないとは考えています。
 ただ、もう一つ問題は、すき間のない救済というのをどう考えるかということで、それをさっき労災との比較でご説明いただいたわけですけれども、難しいところだと思いますが、先ほどのご議論を伺っていますと、給付の仕方を幾つか分けて考えていくということが、恐らく石綿肺全体を入れていくためには必要なんだろうなというところはございまして、石綿肺の中でも一部について現在の政令改正で行うというのが現実的ではないかなというふうには考えておりました。非常に難しいところだとは思っております。

○浅野委員長 というようなご意見がありました。どうぞ。

○古谷委員 私も、今先に政令改正で対応する話を先にやって、方向みたいな話を別にというプロセスは、それで構わないと思います。ただ、逆に、ここでの審議の場合のフリー度というか、どういう形で縛られているかということで大事なので、ちょっとそこはやはりこだわりたいのですけれども、やはりそういう意味で、ここの小委員会が、中皮腫と肺がんと同程度に重症なものに限定するしかないという、縛られるのがあらかじめあるとすれば、それはかなり限定されるわけですけれども、それ自体は、やはりそういう縛りとしてはない、小委員会としての議論はフリーであるということは、やはり確認ができるのじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか、先生。

○浅野委員長 ほかの委員は何か、この点についてご意見ございますか。どうぞ。

○坂谷委員 まさしくある一定の軽いのも入れるか、重症のものに限るかということを議論するということでいいんじゃないのかと。それから、37ページに救済制度の成立の経緯を見てみますと、記憶に新しいことですけれど、クボタショックが勃発しまして中皮腫・肺がんを救いましょうということから始まっていると思うんです。でありますから、それを網羅するために法を整えたのであって、そのほかの例えば石綿肺を将来この制度の中に取り込むということは視野に入っていたとは思いますけれども、当面は、この悪性腫瘍2種類について、それを確実に救済するための制度設計であったのではなかろうかと、この法ができるときの議論のあり方としては、そうだったというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○浅野委員長 岸本委員、どうぞ。

○岸本委員 平成18年のときに、繰り返しますが、私は石綿肺を入れてほしいというふうに述べております。これは肺がん、悪性中皮腫と同じぐらい重症度が高いと思います。そういうニュアンスがあったものですから、石綿肺もその一部には重篤な病態のものがあるので入れてほしいというふうに、私はそういうつもりで言っておりますので、一応、つけ加えておきます。

○浅野委員長 ありがとうございました。あのときに、どこまで表面に出たかということは若干問題があるのですが、やはり労災で救済されない方というときに、労災救済対象者と同じくらいの状態の方がこんなに多数いらっしゃるということは想定していなかったようにおもわれる。新法はほとんど一般環境経由でばく露された方々の救済を考えればいいと考えていた。その場合には、ばく露歴の客観的確認は容易ではないということがあるので、石綿肺も入れるべきと、岸本先生のご意見がありましたが、暴露歴の確認が必要な疾病を取り入れることは制度運用の上で困難があると考えて落としたという経過があると思われるわけです。しかし、改めて今、それも含めることを考えてほしいという政府からの諮問であるわけですから、暴露歴の確認を避けるということにこだわる必要性があるとはいえないわけです。前回のご議論の整理の中にもありましたように、重症度ということをどこまで重視するべきかということは論点としてあるのだろうと考えられます。

○古谷委員 もう一つ、先ほど言いました自営業者が余り想定されていなかったという議論、ただ、だからこそ今もう一度立ち返ってここで議論しましょうということでは、できるだけフリーの議論であるべきだと思うのですけど、もう一つ、私、言いました法律そのものは、やはり給付の要件を、私、どこを読んでも要療養の要件が法文で見つからないんで随分びっくりした覚えがあるのですけれども、法律の条文からは国内で石綿を吸入したことにより指定疾病にかかり、かかったことの診断を受けたことが要件になっておりまして、それ以上の要件は出ていない。せいぜい理解できるとして、療養しているということが前提であろうと。この療養を要する者という要件は、まさに先ほど室長の方から説明があった労災保険法の場合の給付要件と同じなのでありますけれども、療養手当の性格について、先ほど室長が説明されたような説明がされているということはありますけれども、これも一つの解釈ですから。

○浅野委員長 どちらかというと、現行法制定時の議論は、中皮腫は極めて予後が悪いという前提のもとで、療養を長くお続けになるからそれをどうしようということよりは、とにかく緊急に被害に遭われた方を救済し、あるいはそのご遺族を救済するということの方への関心が強く、長きにわたって療養される方々の救済のために何かの制度的支援をするためにこの制度をつくるという認識は余りなかったような気がする。ですから、つまり救済ということが療養の支援ということを中心に考えて制度が設計されていたなら、その点も明確に条文に出ていたはずでしょうけれども、ともかく救済しなきゃいけないということを中心にして条文ができていますから、その意味では、法文上療養ということが要件になっていないというのもそのとおりです。まさに救済対象を特定すればいいという法律です。だから、その上でこの審議会小委員会での議論の中ではもう一つ重視しなくてはいけないと思うことは、やっぱりこういう現行法の枠以外のもっとちゃんとした救済制度の枠が必要だということです。あの答申の中にも例えば健康管理の仕組みをちゃんとつくるべきだという指摘をしています。この法律の対象になっていない疾病についても、本来、健康管理の仕組みがあるべきであるということも言っております。ですから、私はこの小委員会は、緊急にやらなきゃいけないと言われている政令改正の仕事が終わった後では、古谷委員がおっしゃるように救済内容を労災に極力合わせるというのであるならば、その部分を考えていかなくてはいけないと考えます。そこで、現行制度の枠組みの中で今とにかくできることと、制度そのものももう一回見直していくという作業でやることとの仕分けが必要になるわけですが、きょうのこれまでの議論では、重篤ということが絶対的な要件かどうかということについての議論があったわけです。どうやら絶対的な要件であるかどうかはよくわからない。過去の経過はそうであったのだろうけども、その点については絶対的な要件ということでもないだろう。しかしながら今の現行法の枠組みの中で政令改正で疾病をふやすというときに、どこまでどういうふうにふやすのかということを次の段階では考えていかなくてはいけない。また今、石綿肺を追加するということに関しては、ほとんどもう当然の前提のごとく議論していて、それはそれでいいのですが、あとは、ではどの程度の病状の方を認定するのか、それから、どうやって認定をしていくのかという話が絡み合ってきます。

○古谷委員 いいですか。まさに今、委員長が言われたように、私もその後の議論ですけれども、健康管理みたいなこともぜひと思っているのですけど、そのときに、例えば労働行政の関係で言いますと、療養が必要な人たちは補償の対象にならない。療養の必要はないけれども、ばく露者として健康管理の体制が必要になる、こういう仕組みですよね、今現在。私も今、救済法、労働者でない人たちでも同じイメージで考えているのです。療養が必要な人たちは、今の救済法に基づいて要件からしても給付の対象になる。その給付の中身で法改正をいじって、もっと上げるとか下げるとか段階つけるということは今後の議論としてあるかもしれませんけれども、健康管理と給付というのが、療養が必要な人には給付を、療養が必要でない人に対しても健康管理が必要だというふうに整理ができるのですけれども、ちょっと先ほど室長の議論を聞いていて、そうではない、3段階ができてしまいそうな、療養が必要な人の中でも一定の重症度の人しか給付の対象にならない。療養が必要で治療を受けていても、救済法の給付の対象にならない人たちが残される。では今後、制度改正の議論のとき、健康管理というのはどこの人たちを対象にしているのだろうということで、ここのところが3区分になってしまうと余計わかりにくくなってしまうなということがあります。胸膜プラークのある方だとか、あるいは療養を必要としない石綿肺の早期所見の人だとか、そういう人たちの健康管理というのを、ぜひ次の議論で私も話したいと思うのですけれども、今、その話ではないというのは理解した上での議論の整理です。

○内山委員 私も健康管理に関しては、その次の段階だろうと思うんですね。ですから、先ほど委員長も、それから室長もおっしゃったように、少なくとも今年度中に政令でとりあえずできるところは何かということで、それに石綿の重症例を入れるかどうかということを、まず議論するのが今、我々に課せられたもので、ですから古谷委員の言われたことは、その先の次のステップとして用意はされていると思いますので、それはそのときに十分な議論をしていただきたいと私も思います。現在というか、一番最初のステップとしては、石綿の重症例をここに入れるかどうかということをまず議論、そして、その場合にはどのような形になるのかということを議論していくのがこの委員会の目的と思いますので、それに集中していけばいいかなと思います。その後に、古谷委員の言われるようなことを議論させていただきたいというふうに考えています。

○古谷委員 内山委員の意見に私も賛成をします。その上でここでの今の議論を、ですから療養が必要で、現に治療している人よりももっと限定して、一定の重症度の人でなければ現行法の救済の対象にならないとか、一定、中皮腫や肺がんと同程度の重症でないと指定疾病にならないのだという前提は課せられてないんだという議論にしていただきたいと思っています。

○新美委員 法律家として意見を述べます。第2条で中皮腫、気管支又は肺の新生物その他政令で定めるという書き方をしているときには、例示として掲げられているものに準ずるというふうに解釈するのが法律の通常の理解です。したがって、中皮腫と悪性新生物と同等ないしはそれに類似するものであるということが、この法文からは通常読み取れるので、何でもいいということにはならない。ですから、重症度というのが出てくるかどうかではなくて、救済の必要性があるということで中皮腫、それから悪性新生物の疾病に匹敵するかどうかという議論をした方がいいと思います。それで中環審での病像論の議論のところで出てきますけれども、重症度もそうですが、石綿に起因するといえるかどうかの「確からしさ」も考慮すべき重要な要素だとされています。肺がんについて、エクセスリスクが2倍以上になっているかどうかがポイントとして指摘されていますが、これは50パーセントを超える確からしさを意味するはずです。こうした「確からしさ」という要素は考慮すべき重要な要素であることを意識しながら、議論をしていくべきでしょう。

○浅野委員長 それでは、この点に関して、ご意見がまだほかにもありましたらお聞きいたしますが、いかがでしょうか。

○清水委員 私は、この救済制度ができる過程というのは余り存じ上げない、今、この論議の中でいろいろ委員長からもお話があって、だんだんに理解できてきたんですけれども、労災保険の方では、じん肺などは健康管理手帳というのがあって、ある程度の人に関しては健康管理をしていくというような制度ができているわけですね。ですから今後、健康管理という意味で、そういうような方向が出てくるかどうかというのは、やはり検討すべき課題だと思います。ただ、水俣病で私ちょっと経験がありますけれども、水俣病の場合には認定されるかされないかという判断でしたね。やはりこの場合も、ただ重症にならないと救済されないというような考え方は、また同じことを繰り返すんじゃないかなというふうに強く感じております。ですから、重症度だけで判断して本当にいいのかどうか、重症にならないと救済されないのかというところは、やはり議論すべきでないかというふうに思います。

○浅野委員長 ほかにご意見がございますでしょうか。井内委員、どうぞ。

○井内委員 今、重症度の議論があるんですけれども、もう一つ、この特殊性という言葉の中には、私の理解では診断の難しさみたいなものも入っているんじゃないかなと思うんですね。中皮腫が決して診断がやさしいというわけではありませんけれども、まだ腫瘍性疾患の理解というのは、かなり学問的なレベルでも高いものがあって、これを中皮腫とするか否か、あるいは肺がんについて言えば、その周囲の肺組織にアスベスト小体が見えるか見えないかというのは、かなり客観的な事実が言えると。ところが、石綿肺ということになると、肺線維症というのは余りにも原因が多過ぎて、それを除外することの難しさというのが一つ念頭にあって、やはりまず当面救済すべきは中皮腫と肺がんであるというふうになったのではないかという、私も1人の委員として参加していたときに、自分自身の整理の仕方としてはそういう部分があったなというふうに思います。ですから、今から議論する石綿肺について、必ずしも重症度というよりは確からしさというか、その部分の議論というのは、今回の、特にきょうの委員会での主要な目的ではないと思いますけれども、やはり医学的な判断プラスその重症度をどう判定していくかということの非常に複雑な作業をしなきゃいけないんじゃないかなという気はします。石綿肺そのものが当初外した理由のもう一つは、やはり先ほど名取さんのプレゼンテーションにもありましたけれども、短期間の高濃度ばく露者に見られた石綿肺というようなイメージがすごく強かったものですから、そういうものは環境ばく露では起こりにくいのではないかという非常に前提がどうしても医学上、扱っている人間としてはあったものですから、実際ここに来て5年の経験をしてみますと、確かにそういう方もいらっしゃる。ひょっとしたら少ないばく露でも急速に線維化が進行する方もいらっしゃるかもしれないし、そういうことがわかってきたという事実がありますので、石綿肺そのものを指定疾病に入れるということは、まず大多数の委員の方もおっしゃっているように別に異論はないと。じゃあどういうものを石綿肺と呼び、どういうふうな仕分けをしていくか、健康管理手帳でいい人から本当に今の中皮腫と同じような療養費から手当まで出すような人までをどう見ていくか、そういうやっぱり議論に進めるべきだなというふうにも思います。これは私の意見です。

○浅野委員長 三浦委員、何かご意見ございますか。よろしゅうございますか。

○三浦委員 皆さんと全く同じですね。健康管理のシステムはちゃんとつくった方が私はいいと考えています。ですから、次の段階で必ずそういうディスカッションが行われることを期待しております。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 それでは、次のテーマでございます「石綿肺の判定の在り方について」、これを取り上げて議論をしていきたいと思います。今のこれまでのご議論については、いろいろご議論出ましたので、もう一度、事務局でよく整理をさせまして、報告を書くときにどう書くかということを含めて、次回、また整理の結果をご提示申し上げます。
 それでは、次の「石綿の判定の在り方について」、資料の2の7ページ以下ですかね、事務局からお願いいたします。

○泉室長 それでは、医学的な面を中心として、ご説明したいと思います。資料2の7ページ、「石綿肺の判定の在り方について」でございます。7ページの記述は前回ご紹介いたしました医学的事項の検討会の報告書の抜粋でございますので、これは後ほど確認いただければと思いますが、8ページ目に前回のご議論の中でのご意見を引用しております。まず、判定に関しての総論的なご意見としては、医学的判断の基礎となる共通部分については労災制度と救済制度の整合性が確保されるべきというご意見、それから救済制度において、労災制度と同じぐらいの確度でばく露歴が明らかであるとするならば労災制度の基準を適用することも可能ではないかというご意見、それから地方労働局におけるじん肺管理区分決定の仕組みを活用してはどうかというご意見がございました。個々の要件につきましては、画像や呼吸機能については特にご議論がございませんで、大量の石綿へのばく露の証明についてのところで何点かご意見がございました。ご紹介いたしますと、石綿肺の診断に当たって、石綿へのばく露が大前提となるが、その確からしさをいかに担保するかが課題であるとか、職業ばく露が明らかな場合は労災基準に準拠し、それ以外は個別に判断するであるとか、その個別というご意見に対して、制度としては枠組みや要件の設定が必要ではないかと、こういったご意見があったところでございます。
 次に、資料の4と5、5は参考資料含めて2枚ございますので、これを用いまして、前回ご指摘ございましたような労災制度での認定の仕組みを参考にしてはどうかということについて、考え方をご説明したいと思います。まず資料の5の方を見ていただきたいと思います。ご承知のとおり労災の対象としてはじん肺ということで、その原因となる粉じんは石綿だけではなくて、遊離珪酸、それから炭素、その他、たくさんの粉じんがあり得るという中で、石綿肺と、じん肺の代表格であります珪肺とは、医学的には決して同じ疾患ではありません。既存の資料から主な医学的な相違についてまとめたものでございますので、ご説明したいと思います。
 石綿肺と珪肺の比較ですが、病理学的特徴としては、石綿肺では呼吸細気管支壁の線維化と石綿小体、一方で、珪肺については気管支周囲の間質の強い線維化とされております。胸部エックス線写真でどんな影が見えるかということにつきましては、これは特徴的でございまして、粒状影というのは珪肺の特徴的なものでございます。一方で、不整形陰影というのは石綿肺に特徴的なものということで、この所見が基本的に違うというふうに言われております。それから次に、大陰影という粒状影が上肺野で数と大きさを増してきたものというのがありますが、この大陰影は石綿肺においては基本的に見られない。一方で珪肺では見られます。その他として、石綿肺では特徴的な胸膜の変化がある。一方で、珪肺では肺門リンパ節の高度な変化を伴う。このようにレントゲンの所見の典型例としてはかなり像が違うと言われております。呼吸生理のところでございますが、呼吸機能障害を大きく分けて拘束性の換気障害と閉塞性の換気障害がございますけれども、石綿肺においては典型的には拘束性の換気障害が見られる。一方で、珪肺においては閉塞性の換気障害と拘束性の換気障害が見られるというふうに医学的には整理されているところでございます。
 これを踏まえまして、資料4の方で参考として、じん肺法におけるじん肺健康診断の流れ図というのをお示しいたしました。一部省略をしておりますが、じん肺の健康診断の流れというのはこのようになっております。この流れ図をご説明しながら、仮にこのやり方を、救済法では石綿肺を対象にいたしますので石綿肺に適用した場合に、かなり検討が必要な点が出てくるのではないかというところを資料4の本体の方でご説明をしたいと思います。
 まず、粉じん作業従事労働者、粉じん作業歴調査とございますが、まず、労災制度におきましては作業者を把握して、その健診を行うというプロセスが認定よりずっと前からございますので、ばく露歴は明らかな方がほとんどであると。一方で、救済法の対象としては、ばく露歴が必ずしも明らかでないような方々があるのではないかというところが大きな違いかと思っております。次に胸部エックス線撮影をしてじん肺所見を判断するわけでございますが、この資料4の方の画像所見についてというところを見ていただきますように、先ほどの表でご説明いたしましたように、「オールじん肺」の中では粒状影、不整形陰影、大陰影などが認められますが、ピュアな石綿肺では基本的には大陰影は見られないとされておりますので、大陰影がある方について、どう考えるのかというところが石綿肺を念頭に置いた場合の一つの課題になってくるかと思います。
 また流れ図に戻っていただきまして、じん肺所見があるとなった場合に、次に胸部臨床検査として、呼吸困難の有無とか、せきやたんの有無などの自覚症状、それからチアノーゼなどの他覚症状といったところの検査がありさらにその下で合併症の罹患の疑いの有無というところがございます。合併症につきましては、資料4の大きなくくりの三つ目のところにございます。6つの合併症の罹患疑いがあるとなった場合に、じん肺健康診断においては、結核精密検査等として結核の検査、さらには結核以外の合併症の検査として、たんの量が正常であるとか、それから特殊撮影としてCTを撮るとか、こういった検査が入ってくるわけでございます。そこで要治療となった場合に、その下の肺機能検査の対象を省略して、要療養と認定されるというのが一つの流れでございます。この合併症につきましては、資料4の方を見ていただきますと、前回ご議論あったところでございますが、じん肺全般に見られる合併症と比較して、石綿肺の合併症にはどのような傾向・特徴があるのかといったところについては、今日の知見、エビデンスを踏まえて改めて検討する必要があるだろうということ。それからもう一つ、合併症について、仮に、今、救済法で検討している制度の中で、見ていくとする場合に、その合併症について現在の知見からして合理的な、客観的な診断方法というのがどういうものであるのかということも一つ検討課題になってくるかと思っております。
 合併症罹患の疑いがない場合には、肺機能検査というところに流れていくわけですが、肺機能検査では一次検査として肺活量や1秒率などの測定、それから、二次検査として血液ガス測定がされるわけでございますが、この肺機能検査に関しましても石綿肺ということに特化して考えますと、資料4の中ほどにあるような課題があるかと思っております。一つは、石綿肺患者の特性を踏まえた呼吸機能を評価するための基準というのを考えたときに、少なくとも人種差、日本人の特性というものを踏まえたような基準値というものを考慮に入れることが必要ではないかという点。これにつきましては、2001年に日本呼吸器学会より日本人の基準値というのが発表されております。それからもう一つ、先ほどじん肺と石綿肺の比較で、呼吸生理が違うというところを申し上げましたが、じん肺全般では閉塞性の換気障害と拘束性の換気障害が見られると言われていますが、石綿肺の場合には拘束性換気障害であります。ですので、仮に閉塞性換気障害のみがあった場合に、それをどう考えるのかというのは「オールじん肺」とは違った視点になってくるかというふうに考えております。このように、じん肺法におけるじん肺健康診断を石綿肺の診断において参考にした場合に出てくる検討課題があるかということを考えております。
 最後に、資料6というのがお手元にございます。前回もご紹介いたしましたが、今、全国の労災病院などにご協力いただきまして、本日、ご出席でした坂谷先生、岸本先生にご協力いただきまして、石綿肺の事例収集を病院から行っております。これまでのところほぼ石綿肺確実だろうという事例が約100例集まっておりまして、これらについて暫定集計した結果を一部ご紹介しております。100例のうち、病院のカルテをもとにした調査から、労災認定がされているという方が44、されていないという方が36、不明が20でございました。認定がありという方の中で、管理4で認定されている方が18、合併症で認定されている方が26ございました。その合併症で認定されている方につきましても、呼吸機能のデータが得られている方がかなりございましたので、その呼吸機能のデータをもとに、仮に労災の基準、じん肺の先ほどの基準に当てはめていったらばどこに該当するのかというふうに見ていきますと、約半分の方は現在の労災基準で呼吸機能でもちゃんと該当してくる。一方で、残りの12の方につきましては、データからは著しい肺機能障害とまでは言えない状況の方でございました。また、合併症の内訳としては、一部重複ございますけれども、続発性気管支炎・肺がん・続発性気胸というものが挙がっておりました。このあたりのデータもご参考にしていただければと思います。
 以上です。

○浅野委員長 それでは、ただいまのご説明につきまして、ご質問、ご意見がございますでしょうか。
 では、全く私からの素人的な質問で申しわけないのですが、肺結核は、この石綿肺の症例であるがゆえに合併症としては出てこないのか、もう最近はじん肺でも肺結核の合併はそもそも減っているという理解をすべきなのか、どちらでしょうか。

○三浦委員 肺結核は珪肺にはかなり合併する。今でも同じだと思います。石綿肺の場合には、肺結核の合併は非常に少ないです。世界的にも、一応、大きな合併はないという、今現在はそういうふうになっています。

○古谷委員 よろしいでしょうか。意見をこれで言いますと、前回も言ったことと同じですけれども、判定のあり方については、基本的に実績もあり、今やられている労災保険のやり方と違うことをあえて導入すべきではないというふうに思います。もし万が一、改善の余地があるとしたら、それは労働行政の方もあわせて、次の課題として考えるべきだろうと思います。
 あわせて合併症のことについてですけれども、今現時点で挙げられている合併症のうち、石綿肺では起こらないということが、データがない限り、あるいは何かそれ以外の裏づけが今ない限り、労災の場合と違う合併症の取り扱いをする必要はなくて、すべての合併症を指定疾病に入れるべきだというふうに思います。言われた点では大変、岸本先生も管理4相当という言われ方をして、管理4相当の中には大陰影がある場合があると。あったとしても、それで石綿肺では大陰影が出なかったとしても、それは別に問題ないと思います、実務上。
 それと、閉塞性肝機能障害のあるものについては、あるいは必要だったら留意書きなんかみたいなのが必要なのかもしれません。これは委員長、許していただければ、もしきょう来ている参考人の名取医師なりに意見があったら、ぜひ振っていただければと思うのですが。
 あと、呼吸機能の評価については、これは本当に労災で扱われているのと違うやり方を、現時点で救済法だけが言えるということについては絶対にやめていただきたい。本日は厚生労働省の方いらっしゃっているので、できれば今の話について、参加されている方の個人的な、あるいは印象でもいいのですけれども、何かあえてそういうふうに救済法だけが石綿肺の判定のあり方を変えるとか、取り扱いを変えるというようなことについて、ご意見があったらぜひ伺ってみたいと思っているのですけれども。

○浅野委員長 まずは委員の意見を先にお聞きしたいと思いますが、委員としてのご意見はございますか。この検討課題としての資料4のペーパーでは、石綿肺患者の特性を踏まえた評価の基準というものが別にあると読み取れるような表現になっているわけですが、この辺はどう考えたらいいでしょうか。つまり広くオールじん肺を取り扱う場合と、この制度ではオールじん肺でなくて、あくまでも石綿肺を対象とするということですから、そこに何か差があるのか、ないのかということだろうと思うわけです。それが臨床医学的に、あるいは病理学的に明確に何か線引きができるものがあるのかないのか。それから、仮にあるとしても、実際に制度的にはいろいろなものを区別をすることはかえって混乱を招くからしない方がいいということは政策判断としてあり得るのですが、前提として全く同一に扱うということで何の問題もないのかどうかということだけは、突き詰めて考えておかなくてはいけないと思うのですが、この辺はどう考えたらよろしいでしょうか。井内委員、どうぞ。

○井内委員 私が必ずしも全部、臨床のこともわかっているというわけではないんですが、印象として私の意見を申し上げますと、画像では、やはり基本的には呼吸細気管支周囲の線維化というのが小さいドット状に見えるというのが特徴だというふうに言われていて、その集合体として、胸膜直下のところにリニアラインと呼ばれているような病変が出る。そういうものが見えれば、かなりこれは石綿肺として特徴的であるというふうにだれしも納得させられる、客観的な所見として出てくるわけですね。ただ、そうじゃない場合には、いつも我々、石綿関連疾患の判定会でもめるところがたくさんありますから、かなり非特異的な線維化しか見えない場合に、じゃあどう扱うか。それを全部、石綿に関連する線維化というふうに扱うんだという取り決めをすれば、それはそれなりの一つのクライテリアにはなると思うんですが、それで果たして、すべての方を納得させられるかというところにいつも議論が移ります。それから、病理学的な立場で言えば、先ほど言いましたように、もしも肺組織を生検等でとることができて、それが先ほど特徴的だと申し上げた呼吸細気管支が含まれていて、その周りに線維化があって、アスベスト小体が見えるなどということがあれば、これはもう絶対間違いないんですが、極めてその確率は薄い。つまりとる場所でありますとか、量でありますとかが大変限られているので、それを的確に診断材料に使うということは難しいので、これは医学的判定方法のところで述べられているように、病理所見を基準に入れようということはやめた方がいいというふうになったというふうに見ていただければいいと思います。呼吸機能検査については、これは先ほど古谷さんも言われたように、別に労災の判定の方法論としてのやり方というのを変える必要は全くない。同じ検査項目で同じようにやって、それが拘束性障害であるか、閉塞性障害であるかということの鑑別ができれば、それは一つのクライテリアの中に入れて、ある意味では最終的には総合判断ですので、それをまとめたときに、どういうものを石綿肺と呼ぶかというクライテリアをつくればいいという作業になろうかと思うんですね。もう一つの基準だけで、これ絶対間違いありませんということは事実上できないんだろうと思っています。でも、このぐらいまでだったら石綿肺の確率がかなり高いということであれば、あるいはこれぐらいだったら石綿肺と見ても、まずまずよかろうという部分が出れば、それを一つのクライテリアにしていくという作業がこれから必要なんだろうなというふうな印象です。
 合併症に関しては、大変これは難しいだろうと思います。本体よりも、むしろもっと難しいと。その方に気管支炎があったとして、それを続発性かどうかという判断をだれが決められるかと、これは事実上、不可能に近いと思いますので、これは労災と同じ扱いでいくんだとおっしゃれば、それも一つの方法だと。それは起こっていない、それは違います、絶対に関係ありませんなんてことはだれにも言えないと、これも事実ですので、かなり医学的な所見のとり方の不確実さを言っているだけのような気もしますけれども、それがある意味では世界的に見ても現状だろうというふうに理解をしております。
 以上です。

○浅野委員長 ありがとうございました。ほかに何かご意見、コメントをいただけますでしょうか。三浦委員、どうぞ。

○三浦委員 要するに、いろいろな医学的な判定の基準は日本国内に一つというのは非常に大事なことだと私は思うんですね。ただ、現在の労災の認定基準に使われている肺機能検査の値というのが、現在の日本人には全く合っていない。ある意味では、本来、要療養となるべき方たちが、結局、要療養にならない方の方が結構多い。日本人のデータじゃないですし、しかも今まで使われていたのは、普通にあるこういう検査ではなくて寝ているときの値とか、そういうことでもって、まるっきり違うデータが使われていますから、やはりもう50年以上たっているわけですから、きちんとした新しいものに変える時期が来ていると私は考えます。ただ、それは日本国内に一つの基準があるべきだというのは私は賛成です。ただ、まるっきりですから全く同じレベルで厚生労働省の方も動いていただけるなら、もうこれに越したことはないんですけれども、これがまたかなり大変だということになると、こちらの救済の場合にはどうしたらいいかというディスカッションが一方で確かにありまして、現実には、そういう形で呼吸機能の専門家を交えて検討が行われていることも事実です。

○浅野委員長 わかりました。むしろ本当に救済されるべきものが救済できていないということがはっきりしているのであれば、ここから先に変えるという考え方もないわけではないということがわかったわけですが、大塚委員、新美委員、法律家委員のお二方、医学専門家がいらっしゃいますから、ここでお聞きしておくべきことがありますか。

○大塚委員 ちょっと自分の意見をとりあえず申しますが、法的なことしか言えないので、今、お伺いしていて考えていることを申し上げるだけですけれども、基本的にやはり石綿についての法律なので、石綿肺ではないということになってしまうと、やはり外さざるを得ないと思うんですけれども、しかし、今のご議論を聞いていますと、例えば大陰影があるからといって直ちに石綿肺でないと確定できるというわけでもないでしょうし、閉塞性の換気障害があるから直ちに石綿肺でないと確定できるというわけでもないようですので、総合判断をしていただくというのが恐らくよろしいのかなというふうに感じました。
 それから、付随的に申し上げておきますと、この救済を受けるために生検をしなくちゃいけないとかいうのは、ちょっと患者に負担をかけると思うので、そういうのはやめていただいた方がいいかなというふうに個人的には思いました。

○新美委員 三浦先生と井内先生の話を伺っていて引っかかりを感じたので、確認させてください。先ほどおっしゃられていた、合併症について因果関係がはっきりしないというのは、石綿と合併症との間の因果関係がはっきりしないという意味ですね。つまり、発症の因果関係です。ところが、救済法の立法趣旨で述べられる、はっきりしないとされる因果関係というのは、発生原因と疾病との間の因果関係、すなわち到達の因果関係をいいます。したがいまして、救済法の立法趣旨を引用して、発症の原因がはっきりしない場合まで含むのかどうかについては、少し慎重な議論が必要ではないでしょうか。

○三浦委員 その点は、石綿と合併症との因果関係はあると思います。ただ、その患者さんが同じように、例えば続発性気管支炎というのは慢性気管支炎と全く定義は同じで、ただ、それが石綿を吸った方に起きた場合に続発性気管支炎と言うという形になっています。ですから、ただ続発性気管支炎じゃなくて、慢性気管支炎というのは圧倒的に数が多いのはたばこを吸う方なんですね。ですから、これを除かないと、もう全くたばこのために救済するという形が起きてしまうことは間違いなくて、例えば救済法で今現実にやっているのは肺がんなんですけれども、肺がんも石綿よりはたばこによる危険性の方が高いと。そうしますと、たばこによる肺がんのリスクをうんと、たばこだけによる肺がんもあり得ますので、そうすると、どこで石綿による肺がんと認定しようかというと、たばことは一応今のところは無関係に、石綿だけと仮定して、このくらい吸っていれば石綿による肺がんの、普通、危険性が2倍になると、そういうクライテリアが先ほど名取医師が説明していましたけれども、その基準に乗っかってやっているんですね。ですから、そういう基準が続発性気管支炎に対しても同じような基準がつくれるのであれば、将来的にその可能性は私はあると思いますけれども、現時点では、なかなかその辺は、かなり難しいなと私自身は考えています。

○浅野委員長 事務局にお尋ねしますが、労災の話ですから、厚生労働省の方に答えていただくことになるかもしれませんが、他原因参酌というものが公健法では制度的には存在するわけです。労災の場合は、この続発症に関しては合併症ですか、続発症ですか、これはそういう場合に他原因といえるものを明確に斟酌するのか、それとも、これは病名が該当すれば黙って合併症、続発症として認めてしまうのか、どちらでしょうか。

○桐生主任中央じん肺診査医 厚生労働省ですけど、労災でなくて、縦割りで申しわけないんですけど、私の方はじん肺法の管理区分の決定に関する部門なんですけれども、合併症については、じん肺に合併症で、じん肺も施行規則で定められたような疾患が認められるときには、一応、合併症ありというふうにみなしているということでございます。

○浅野委員長 内山委員、何か。

○内山委員 今の合併症の話なんですけれども、この合併症のありなしに来るまでには、一応、じん肺という診断はついているわけですよね。その先に、ただじん肺法では珪肺もあり、その他のじん肺もあり、それから石綿も入っているので、特に石綿肺に今、症例数は少ないけれども、結核は余り合併してなさそうだというので、そこでどうするかということになっているわけですよね。それを少し多目にとるのか、多目にというか、今は症例数が少ないから、たまたま肺結核の合併がないのか、それとももう何例集めても肺結核ないのか、それともたまたまそういう方に、石綿肺の方に肺結核が出た場合に、じゃあどうするのかということになりますよね。

○三浦委員 石綿肺に肺結核が合併しないということではないんです。そういう患者さんはおられます。現実にその治療期間、労災認定を受けておられる方もおられます。

○内山委員 私が心配しているのは、たまたま慢性気管支炎もあって、肺結核があった。じん肺というか、そこまでは来た。だけど、石綿肺には結核は合併症として認められないから、じゃあこの人たちは石綿肺じゃないというふうに逆に審査されると嫌だなということです。ですから、もう一つに例えば。

○浅野委員長 そこはちょっと違うような気がいたしますが、むしろ石綿は石綿であれば、もうあるのだから、それは黙って認定ということにはなりませんか。

○内山委員 だから、その要治療を要療養にならないわけですね。

○浅野委員長 救済対象として、どこまで救済をするか、どこまでするか、現行法は、余りその点については議論の余地がないようですね。何も療養手当がふえたり減ったりという仕組みになっていませんから余り関係ないのですが、ただ石綿肺を認定疾病に入れるとなると、将来的にはその問題はどっちが主なのかという話は出てきますから、なかなか一筋縄ではいかないということがありそうだ。

○内山委員 ですから、ここで資料6のように、いろいろ明らかな石綿肺ということで合併症を調べられて、こういう症例数は少ないんだということがわかっても、ここで合併症を、特にこういう合併症であっても療養を認めないということにはならないんではないかと思うんです。

○浅野委員長 ただ、今ここでは、救済の範囲を広げるために合併症という話をしているだけであって、救済範囲を狭くするための合併症の議論はやっていないようにも思われます。そういう理解でよろしいですしょうか。

○内山委員 そうすると、合併症を何にするかという議論は必要なくなってしまいませんか。

○浅野委員長 ただ、合併症も救済対象に含めろというお話が強いので議論のテーマになってきています。しかし、どの程度の症状の方々を救済対象にするのかという議論と微妙に絡み合っては来るかも知れませんね。たしかに委員ご指摘のように、もし、漏れなく石綿肺の診断を受けた人は全部救済対象だと割り切ってしまえば、およそこの議論は吹っ飛んでしまうわけですが、ある線を引いた場合には、症状が加重されているということをどう見るかという問題が出てきますから、合併症があるので症状が重くなっているのであれば、それは当然入れるべきだ、いやそれは別、という話が、次には出てくるわけでしょうね
 井内先生、何かご意見は。今の点に関していかがでしょうか。

○井内委員 今の点は、先ほど申し上げたとおりで考え方の問題だけですから、否定できるかと言われれば否定できません。ですから、そういう所見が明らかにあるということを診断されれば何らかの方法で、とにかく石綿肺という前提がある場合は、やっぱり救済されるべきだろうというふうに思っています。

○浅野委員長 清水委員、何かコメントがございますか。

○清水委員 今の皆さんの意見と同じです。

○古谷委員 もしよろしければ、ちょっとわかりませんけども、名取医師の意見も聞いてよろしければ、短くでもお願いできたらと思うのですけど、いかがでしょう。

○浅野委員長 先ほどの古谷委員の発言の中で厚労省の見解はいかにということがありました。これについて、何かお答えになる用意はありますか。

○桐生主任中央じん肺診査医 もう一度、そのご指摘を再確認させていただいてよろしいでしょうか。

○古谷委員 意外とざくっとでもいいんですけれども、今、ここで議論しているのは救済法。労働者と非労働者の石綿肺ということで、その診断・判定などに、今、じん肺法ないしは労災法の仕組みでやっていることと区別することに対してのご意見なり、お持ちの石綿肺と他のじん肺との違いということでおっしゃれることがあったらお聞きしてみたいなと思ったんですが、いかがでしょう。

○浅野委員長 ざくっとしたことでも、ということですので。

○桐生主任中央じん肺診査医 ざくっと総論的なお答えになってしまうんですけど、基本的に今までの議論でされているように石綿の健康被害の救済法の趣旨や目的と、じん肺法や労災法の違いとか、また、ご指摘のありましたように対象疾病の範囲をじん肺全般なのか、石綿肺と限定するのかとか、そういったちょっと制度的な違いがあるのかなと思っておりまして、そういったものがまさしく今、それでそろえるべきか、そろえないべきかというところは、それはまさしくここで今ご議論されているのではないかというふうに認識しております。その上で合理的な、そういう今みたいな制度の違いや対象疾病の違いのところから来る違いということは、一定の範囲であり得るのかなというふうに思っております。
 また、三浦委員のご指摘だったと思いますけれども、肺機能の日本人のデータとか、そういったものがそういった制度の違いによって説明つくようなものなのか、合理的にそろえた方がいいものなのか、そういったところについては、ご指摘もあったということは省の方に戻ってお伝えしたいというふうに思っております。

○浅野委員長 ついでにお聞きしますけど、その呼吸機能についての議論ですが、労災の方では何か見直しをしなきゃいけないというような議論が具体的に公式・非公式に出ているのでしょうか、全くないのでしょうか。

○桐生主任中央じん肺診査医 非常にお答えしにくいご質問と、あと、ちょっとこちらの今の救済法の議論と違うような話になってしまうのでお答えしにくいんですが、公式には、当然こういう検討はされておりません。非公式には、当然新しい知見や状況の変化に基づいての検討というのは、行政としては常にしていかなくてはいけないことというふうには認識はしているところでございます。

○浅野委員長 名取所長のご発言を御願いできればということでございます。異例のことではございますけれども、手短にコメントをいただければと思います。

○名取所長 資料の4と資料4の参考資料のところになろうかと思いますが、まず、先ほどの事務局のご説明で、基本的にお間違えだったと思うのは、気管支炎というのは閉塞性の換気障害になるわけですね。つまり慢性の気管支炎ですとか、続発性の気管支炎を合併すると、気管の部分が狭くなってしまうわけですから、閉塞性の換気障害を来します。石綿肺の方に続発性気管支炎というものが合併いたしますと、拘束性の障害プラス閉塞性の障害が起きてくるというのは極めて常識的なことでございますので、そこでは当然どちらも出てきてしまって、珪肺と、ある意味で言うと似たような状況になってしまうというふうなご理解をしていただければということがございます。
 それから、資料4の参考資料に、じん肺法における健康管理の体系が書いてございますように、ここでレントゲン写真での診断、井内先生もおっしゃられたとおり病理の診断、臨床の診断と病理学的な診断というものの精度で言えば、明らかに圧倒的に病理学的診断もしくは解剖の診断が正しいと思います。ただし、先ほど大塚委員が言われましたとおり、全員に正確な診断のために全部解剖しなさいというふうな無理な話になったり、手術して鑑別しなさいというふうなことになってしまう。それは人道的にあり得てはいけないことであるので、そこまではしないで画像でおおむね対比できるものについては、画像であるとか呼吸機能であるとか喀たん検査でしていくのが臨床的に妥当だということです。それで現在のじん肺の制度が長く続いてきたわけで、そのハードルとして粉じん作業歴調査と胸部エックス線撮影の検査については、極めて専門的な先生方による診査制度が設けられているということでございます。この部分のハードルを高くするということで石綿による特異性を十分立証できるということになっているわけですので、その後の部分については、ある面で言うと、喫煙による影響であるとか、ほかの部分が若干それに加味されてしまっても、それは余り問わないというふうな制度設計になっているのじゃないかと、そういう理解をすべきではないかと思います。

○浅野委員長 ありがとうございました。では、事務局どうぞ。

○佐々木補佐 大変途中で失礼いたします、石綿健康被害対策室の佐々木と申します。じん肺の合併症について、ちょっとご議論ございましたので、一応、事実関係を簡単に整理させていただきたいと思います。じん肺法の解釈通知の中でじん肺の合併症について、このように解釈通知が出てございます。「「合併症」とは、じん肺の病変を素地として、それに外因が加わること等により高頻度に発症する疾病等のじん肺と密接な関連を持つ疾病であり、増悪期に適切な治療を加えれば症状を改善し得るものであり、一般に可逆性のものであること」というふうにされております。本日のご議論は石綿救済制度のご議論、石綿肺についてのご議論でございますので、今の解釈通知を踏まえてのご議論をお願いいただきたいと思います。また、これについては、もし何でしたら紙で次回お示しすることも可能だと思います。
 以上です。

○浅野委員長 一当たりご意見をいただきました。このじん肺の判断の実際についてはもう少しお聞きするということが、場合によっては必要かもしれないという気がするわけですが、さらに、実務をなさっておられる方を、もうお一方お呼びしてお話をお聞きすることはできるでしょうか。

○泉室長 今、座長からご指摘ございましたところ、少し検討させていただきまして、委員長にご相談をして、もし可能ならば次回、またお話を伺う機会をつくりたいと思います。

○浅野委員長 ちょっときょうはまだ整理をするという段階ではありませんので、いろいろといただいたご意見を、もう一度、事務局でまとめていただくことになろうかと思いますが、まず、一番最初の入り口のところの話しとして、現行制度をどういう趣旨の制度と理解するのかということについては、必ずしも考え方が全員一致しているわけではないわけですが、制度をつくったときのいきさつ、それから立法者の意図といったようなものは、ある程度読み取れるだろう。しかしながら、法というものは立法者意思に従って、そのとおり最後までやらなきゃならんものでもないので、法律意思でも構いませんから、状況が変われば解釈によって変更の余地があるだろう。しかし、ある範囲を超えれば、これはもう立法的に解決する以外にない。つまり法改正でいく以外にないという部分があります。そこで、ぎりぎりどこまでが現行法の解釈なのか。それから、法改正を伴う手直しをしなきゃいけないのかということを、とりあえずの段階でも見きわめておかなくていけないことははっきりしています。その辺のいきさつについてはいろいろとこれまでの経過についてのご意見や、あるいは経過の説明がありましたので、これを一度きちんと事務局に整理をしてもらうことにしたいと思います。その上で、ただし、我々は見直しを求められているので、完璧に現行制度の枠の中にぎちぎち絞られてしまったら、恐らくつくったときの議論から言うと何もできないということになりますから、それは古谷委員がおっしゃるとおり、もうそもそもこの議論の前提が崩れてしまう、おっしゃるとおりだと思います。ですから我々としては、当面、解釈としてどこまで広げることができるかということをまずは考え、その上でもっと根本的に考え直さなきゃいけないことはそれとして考え直すんだという態度で臨むことが必要であると思いますので、この点を整理をしていただくことがまず第一かと思いました。
 それから第2番目は、石綿肺を追加することについては全くだれも異論がないので、これは構わないわけですが、今の第一の論点との深いかかわりがありますけれども、石綿肺というものをどう判定するのか、さらにまた、どこまでが現行法の枠内で追加救済対象になるのかということについての整理はきちんとつけておかなきゃいけませんので、これをやらなくてはいけない。この答えの出しようによっては合併症の問題が消えるかもしれないということもすでに本日、委員から示唆されたところだと思います。ただ、やはり労災で言っているじん肺と石綿肺というものの間には、やっぱり何らかの意味での違いがあるのではないか。つまりオールじん肺の中に石綿肺が含まれているわけですから、石綿肺なりの特徴というものを全く無視して、完全にじん肺と同じ扱いというわけにはいかないのではないか。制度設計としては、極力救済されるべき方が救済されるという仕組みにしておかなくてはいけないので、余りにも絞りをかけて切り捨てというようなことになってしまうようなあり方は、そもそも制度のあり方としては適当でないだろうということになります。ただ、対象を広げた場合には次の課題になるのですが、救済内容について、全く一色同一にやっていくということが合理的かどうかという議論に必ず拡がってまいりますので、その辺についても、議論をしておかないと厄介なことになってしまう可能性があるだろうということです。なお、先ほど古谷委員が言われましたように、2階建て、3階建て、4階建ては避けるべきだとおっしゃるご意見は理解できます。また、健康管理のシステムのようなものも、ぜひこの制度の中には将来的に入れていくべきだろうということは、我々、前から考えておりましたから、この点も異論がないので、将来的な制度の大きな見直しの中ではそれをきちんと入れるべきという点は、検討の材料に挙げることがほぼここでは一致したと思います。この点も議論していく必要がありますが、当面3月までの整理の仕方としては、きょう出た二つのポイントについて、かなり深く絡み合いますので、事務局で次回までに整理をしていただいて、再び次回、またこの点については議論をしていきたいと思います。次回までは各論点の項目についての議論は続けていきたいと思います。特に判定基準についての方向性についてははっきりと考えないと先へ進みませんから、当面これでやるのだというようなことでも場合によってはしようがないかもしれません。そこで、判定の基準についての方向を少し次回は重点的に議論をしていくということにしたいと思います。その上で、最終的に答申の内容がどんな内容になるのかという見通しがつく程度の作業を2月の頭にかけて事務局ではやっていただくことになると考えております。こういう進め方でよろしゅうございましょうか。

○古谷委員 全然異議ないのですけど、1点だけちょっと。先ほど佐々木さんが、じん肺法の解釈を言っていただいたもので、1点だけ追加しておきたいんですが、じん肺法も、まさにあの解釈のとおり、合併症を追加したときの議論というのは、積極的な療養を確保することによって悪化を防いだり、死に至ることを防ぐことができるということで体系の中に入れていこうという議論で入ったと理解しています。そのときの解釈だと思います。きょう、名取参考人にしゃべっていただいたことでちょっと議論の中で出なかったので、そのことですが、ここで議論されている救済法の中でも、特に悪性腫瘍と密接に結びつく可能性のあるばく露者の中で、石綿肺合併症ということをやっている人に積極的な療養を確保することによって悪化を防止する、死に至ることを防止するということは、じん肺法での合併症を追加したときと同様に大事な議論だということを意見ですけれども、一言だけ言わせてください。ありがとうございました。

○浅野委員長 ありがとうございました。最後の点は大事なご指摘だったと思います。
 それでは、よろしゅうございましょうか。では、次回のスケジュールについて、事務局からご説明をいただければと思います。

○柳田補佐 次回の小委員会の日程でございますけれども、2週間後の1月22日の金曜日の午前10時から12時、場所は4号館の本日と同じ1214会議室を予定しております。
 なお、本日の議事録につきましては、原案を作成した上で先生方にご確認いただいた後、環境省のホームページに掲載する予定でございますので、よろしくお願いいたします。
 また、第1回目の小委員会の議事録につきましては、既にホームページに掲載されているところでございます。
 それでは、以上で第2回石綿健康被害救済小委員会を終了したいと思います。どうもありがとうございました。

○浅野委員長 それでは、本日はこれで散会いたします。

午後2時47分 閉会