中央環境審議会環境保健部会 化学物質評価専門委員会(第23回)議事録

1.日時

平成29年12月26日(火)16:00~18:00

2.議事

午後3時57分 開会

○瀧口環境安全課長 定刻より少し早いですけれども、委員の先生も全員お揃いですので、ただいまから中央環境審議会環境保健部会化学物質評価専門委員会の第23回会合を開催させていただきます。
 私、4月1日から環境安全課長を務めております瀧口です。どうぞよろしくお願いします。
 本日は、委員の先生方におかれましては年末のお忙しいところを御参集いただきまして、ありがとうございます。
 本日は、武林委員、篠原委員より御欠席との連絡を事前にいただいております。
 現時点で14名の委員の先生方に出席していただいております。
 また、平成26年度まで当委員会の委員でいらっしゃいました中杉先生には、昨年度に引き続きまして、参考人ということで御出席いただいております。
 それでは、開会に当たりまして、環境保健部長の梅田より一言御挨拶を申し上げます。

○梅田環境保健部長 環境保健部長、梅田でございます。
 本日は大変お忙しいところお集まりくださいまして、誠にありがとうございます。また、先生方におかれましては日ごろより環境保健行政に御理解、御協力を賜っておりますこと、この機会をお借りしまして改めて心から御礼申し上げます。どうもありがとうございます。
 環境省では、化学物質が環境を経由してヒトの健康や生態系に有害な影響を及ぼす可能性を環境リスクとして捉え、その科学的な評価とリスク低減のための取組を実施しているところであります。そのための事業として、本専門委員会で御助言をいただきながら、化学物質環境実態調査及び化学物質の環境リスク初期評価を実施してございます。いずれも長い歴史のある事業で、化学物質管理施策のまさに基盤的な事業と位置づけておりまして、今後も最新の知見や技術等を反映しながら適切に実施できるように努めてまいりたく存じます。
 本年もこの評価専門委員会を迎えるまでに多くの先生方に御協力をいただき、また、さまざまな検討会等で議論が重ねられておりますが、本日、最終的な御評価等をいただきました後、速やかに結果の公表に進めることができればと考えております。
 先生方から忌憚のない御意見をいただきますことをお願い申し上げまして、簡単でございますが、冒頭の挨拶とさせていただきます。
 本日もどうぞよろしくお願いいたします。

○瀧口環境安全課長 梅田部長ですが、この後、別件が入っている関係で途中で退席させていただきます。よろしくお願いいたします。
 続きまして、事務局メンバーが人事異動により一部交代しておりますので、紹介させていただきます。
 12月1日付で環境リスク評価室の室長補佐として赴任しております鈴木です。

○鈴木環境リスク評価室室長補佐 鈴木でございます。よろしくお願いいたします。

○瀧口環境安全課長 続きまして、本日の配付資料について確認させていただきます。
 お手元の資料、議事次第をご覧ください。
 大部な資料になっておりますけれども、資料1がこの委員会の委員名簿でございます。資料2-1から2-5が化学物質環境実態調査関係でありまして、資料2-1が平成28年度の化学物質環境実態調査結果の概要、資料2-2は厚い冊子になりますけれども、これが実際の調査結果報告書の案、資料2-3が平成29年度の化学物質環境実態調査の進捗状況、資料2-4が平成30年度化学物質環境実態調査の実施方針の案、資料2-5が平成27年度化学物質環境実態調査の結果の活用状況となります。
 また、資料3-1から資料3-4が環境リスクの初期評価の関係になりますけれども、資料3-1が環境リスク初期評価の進捗状況、資料3-2が化学物質の環境リスク初期評価(第16次とりまとめ)の結果の概要案、資料3-3、これも厚い冊子になりますけれども、化学物質環境リスク初期評価ガイドラインと初期評価(第16次とりまとめ)結果案、資料3-4が定量的な発がんリスク評価のケーススタディの実施状況というペーパーになっております。
 また、参考資料1としてストックホルム条約第8回締約国会議の結果概要と、参考資料2、残留性有機汚染物質検討委員会第17回会合の結果概要ということで添付しております。
 もし資料の不備等ございましたら、事務局までお知らせください。
 なお、本日の会議は公開とさせていただいております。また、写真撮影等はここまでとさせていただきます。
 それでは、議事に入らせていただきます。
 櫻井委員長、よろしくお願いいたします。

○櫻井委員長 かしこまりました。議事進行を務めますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、最初の議題に入ります。
 化学物質環境実態調査の結果、進捗状況等についてということで、平成28年度の化学物質環境実態調査、いわゆる黒本調査の平成28年度の結果と、平成29年度調査の進捗状況等につきまして報告があるということでございます。
 資料2-1から2-5に基づいて、事務局から資料の説明をお願いいたします。

○藤井環境安全課専門官 資料2の各資料に沿って、化学物質環境実態調査について環境安全課より御説明させていただきます。
 順番が前後いたしまして恐縮ですけれども、まず、資料2-2をご覧ください。
 こちらは分厚い冊子になっておりますけれども、平成29年度「化学物質と環境」いわゆる黒本として公表を行います現時点の案になります。
 本年度の黒本では、平成28年度の調査結果について公表することを予定しておりますが、実際に製本する際には、こちらに調査結果の概要や、これまでに調査を行った化学物質の調査結果一覧も加えますので、これよりもう少しページ数が増えることになります。
 こちらの資料2-2をまとめた概要が資料2-1となりますので、資料2-1を用いまして御説明させていただきます。
 資料2-1をご覧ください。
 まず、本調査の経緯を1.の部分で書いております。本調査は昭和49年の化審法制定時の附帯決議を踏まえまして、一般環境中における化学物質の残留状況の把握を目的として開始されておりまして、これまで40年を超えて行われてきた調査となっております。
 2段落目中ほど以降にありますとおり、平成14年度以降、現在では、環境省内の化学物質管理施策等を所管する部署から要望のあった物質を中心に調査を進めております。
 次に、2.で調査の進め方について記載しております。
 (1)の平成28年度の調査対象物質につきましては、平成27年度の本委員会を経て選ばれたものになっております。
 (2)の調査内容ですけれども、本調査はそれぞれの目的に沿って、平成18年度より初期環境調査、詳細環境調査、モニタリング調査の三本立てで実施されております。
 まず、アの初期環境調査でございますけれども、本調査は一般環境中で高濃度が予測される地域で調査を行い、主に化審法の指定化学物質の指定やその他、化学物質による環境リスクに係る施策についての基礎資料とすることを目的としております。平成28年度は15物質群の調査を行いました。
 2ページに参りまして、イの詳細環境調査ですけれども、こちらは主に化審法の優先評価化学物質のリスク評価を行うことを目的に、一般環境中における曝露状況を検討する調査となっておりまして、平成28年度は22物質群の調査を行っております。
 ウのモニタリング調査ですけれども、こちらは化審法の特定化学物質の残留状況の監視やPOPs条約の対象物質、また、その候補物質の一般環境中における残留状況の経年変化を把握するための調査で、平成28年度はPOPs条約対象物質に当たる14物質群と、POPs条約対象物質の追加を検討しておりますペルフルオロオクタン酸(PFOA)とジコホルを加えた16物質群について調査を行っております。
 次に、大きな項目の3.として調査結果の概要を記載しておりますけれども、5ページ以降に別表として物質ごとの検出状況をまとめておりますので、そちらで御説明させていただきます。
 5ページの別表1をご覧ください。
 こちらは初期環境調査における検出状況になります。
 平成28年度の調査結果は、各物質左から4列目、実施年度の欄を太字にしております。なお、表には今回の結果に加え、過去に調査の実績のある物質につきましては、その調査当時の結果も併記いたしております。
 個々の調査物質の名称の後ろに※がついているものは、PRTRによる届出排出量情報を考慮して選定された地点が含まれていることを示しております。
 また、調査番号3のエストロン及びその代謝物など、一斉分析法を用いて測定したものがございまして、こちらは分析法ごとにまとめ、物質群として記載しております。
 今回の調査の結果、環境中から検出された物質と媒体を上から見ていきますと、調査番号1、1-アミノ-9,10-アントラキノンの底質、以下、調査番号3-1のエストロン、3-2のエストロン-3-硫酸の水質、5番のシアン化水素及びシアン化物の大気、6番・ジクロフェナクの水質、7番・セルトラリンの水質、8番・フェニトインの水質、飛びまして13番・p-ニトロフェノールの水質、14番・ヘキサメチレンジアミンの水質及び大気、15番・パロキセチンの水質、以上が検出されております。
 この中から、特に2つほど御説明させていただきます。
 まず、8番のフェニトインとなります。
 平成18年度にも水質の調査を行っておりまして、11分の3地点、今回が15分の2地点ですので、検出頻度としては大きく変わっておりません。一方で検出範囲の最大濃度につきましては、前回が11ng/Lであるのに対して今回は28ng/Lと高くなっているように見えます。今回は特定の地点で高かったのですが、検出されたもう一地点につきましては4.9ng/Lと、それほど高くはありませんでした。
 ここで、資料2-2の39ページをご覧ください。
 過去に同一地点で調査されていた地点が4地点ありまして、このうち上から3つが検出された地点です。これらの地点は、今回の調査では検出下限値1.7ng/Lでいずれも不検出で、濃度としては平成18年度より下がっていることが読み取れます。このことをもって、39ページの本文下から3行目の後半から「平成18年度からの減少傾向が示唆された」と、減少傾向が示されたことについて本文中にも記載しております。
 なお、一般に、過去に調査が行われたことがある物質のうち今回の調査と同一地点で調査をした結果があり、増減の傾向が見られるものは、この資料2-2の黒本案の本文でその比較に関する記載を加えるようにしておりますけれども、今回は初期環境調査とこの後の詳細環境調査を通して、増減について触れることができたのはこのフェニトインのみとなっております。
 資料2-1の5ページにお戻りください。
 13番のp-ニトロフェノールをご覧ください。
 水質について調査されております。過去に3回調査が行われまして、直近2回ではいずれも不検出でしたけれども、今回の調査では15地点中14地点で検出されております。今回検出された割合が高くなった理由といたしましては、過去の調査より今回の調査における検出下限値が大幅に下がった、つまり感度がよくなったことで、より低値まで検出が可能となったことが大きいと考えられます。
 なお、過去の調査地点と同一地点では調査されておりませんので、増減傾向については黒本の中には記載しておりません。
 以上が初期環境調査の結果となります。
 次に、詳細環境調査の結果ですが、同じく資料2-1の6ページ、別表2をご覧ください。
 詳細環境調査では、22物質群について調査を行っております。今回の調査の結果、環境中から検出された物質と媒体を順に見ていきますと、調査番号1・アニリンの水質以下、調査番号2の安息香酸ベンジルの水質、底質及び生物、3番のエチルアミンの水質、4番・エチルベンゼンの水質、生物、6番・エチレングリコールの水質、7番のキシレン類のうち7-1のo-キシレンの水質、生物、7-2のm-キシレン及び7-3のp-キシレンの生物、8番・クロロメタンの水質、7ページに参りまして9番・4,4'-ジアミノ~と書かれた物質の生物、10番・ジクロロベンゼンのうち8ページ中ほどのo-ジクロロベンゼンの大気、9ページに参りましてm-ジクロロベンゼンの大気、p-ジクロロベンゼンの水質、10ページにあります同じ物質の大気、続いて12番のテレフタル酸の水質、13番のトリエタノールアミンの水質、14番・ヨノンの水質、15番・トリメチルベンゼンの底質、16番・二硫化炭素の水質、17番・(Z)-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)オレアミドとあります物質の水質、18番・プロパン-1,2-ジオールの水質、20番・ホルムアルデヒドの水質、11ページの21番・N-メチルジデカン-1-イルアミンの水質、以上、計18物質群となります。
 この中で、特に2つほど御説明させていただきます。
 10ページ下から5つ目、16番の二硫化炭素の水質をご覧ください。
 昭和52年には不検出でしたけれども、平成28年には18地点で検出されております。検出感度が10倍強鋭敏になっております。また、地点ごとのデータはここにお示ししておりませんけれども、昭和52年の検出下限値のレベルで11地点検出されております。
 ただ、資料2-2の168ページの下から3分の1のところに、前回と同一地点で1地点検出されており、ここでは10分の1以下に下がっておりますが、これだけでは増減が判断できず、全体としての増減傾向の記載は行っておりません。
 同様に、資料2-1の10ページに戻りまして、一番下にホルムアルデヒドの水質の結果がございます。こちらもこれまで不検出だったところ、今回20地点全てで検出されております。こちらの物質も同様に、より感度がよくなっておりますけれども、資料2-2の177ページ下から半分ぐらいのところの表をご覧いただきますと、過年度調査の検出下限値と比較して大きく上昇はしておりませんので、増減傾向については記載しておりません。
 その他、過去よりも今回の調査のほうが検出された地点の割合が高いものが数物質ありますけれども、こちらは検出感度がよりよくなったことによるものと考えられます。過去の調査との地点ごとの推移を見ても明確な傾向がなかったために、資料2-2でこれらの物質の増減傾向について言及はしておりません。
 詳細環境調査の結果は以上となります。
 続きまして、モニタリング調査の結果について御説明させていただきます。
 資料2-1の3ページ中ほどに戻っていただきますと、モニタリング調査の結果について記載しております。
 4ページになります。
 平成28年度に調査を行いました16物質群について、①継続的に調査を実施している物質と、②その他の物資の2つに分けて整理しております。
 まず、①継続的に調査を実施している物質につきましては、環境濃度の経年変化の解析を行った物質と言うこともできまして、端的には、資料2-1の15ページから17ページにかけて別表3-3から別表3-5がございますが、この別表のいずれかに掲げられている物質となります。モニタリング調査を実施した16物質のうち9物質が該当いたします。
 例といたしまして、15ページの別表3-3をご覧ください。
 表の一番左側に調査物質番号がございますが、この調査物質番号は条約対象物質ごとに固定させていただいており、平成28年度に調査を行っていない物質は表に記載しておりませんので、番号が一部飛んでいることになります。昨年度までは、POPs条約制定当初から条約対象物質となっていた物質に、11番のHCH・ヘキサクロロシクロヘキサンを加えた、1から11番の物質を経年変化の解析対象としておりました。ここに今年度はモニタリングデータが蓄積された物質、15ページですと14、15、16番の物質を新たに経年変化の解析対象として追加しております。
 あくまでも環境濃度の比較でありまして、環境リスクの大小とは結びつかないというところはございますけれども、この水質のデータの特徴としては、全体として見ると矢印または階段上の記号が右下がり、つまり濃度としては横ばいまたは低減傾向にあるという解析結果となっております。
 ただ、下から3行目、14-7のデカブロモジフェニルエーテルにつきましては唯一、水質全体として右上がり、つまり最近の調査結果のほうが以前に比べて高値傾向という解析がされております。
 これにつきましては、資料2-2の411ページの上にあります水質の折れ線グラフをご覧ください。
 これは各調査地点の幾何平均値で記載した濃度推移ですけれども、平成27年度、一昨年度の値が突出していることがご覧いただけると思います。この平成27年度の結果が大きく影響し、調査前期と後期で後期のほうが高いという解析結果になったものでございます。平成28年度は例年どおり、同水準に戻っておりますので、今後、データが蓄積されることによって、より精度の高い解析が進められるものと考えております。
 資料2-1に戻りまして、16ページの別表3-4が底質の結果、17ページ・表3-5が生物、大気の経年変化となっておりますけれども、こちらは例年同様、右上がりになっている解析結果はありませんので、横ばいまたは右下がりの漸減傾向にあるという解析結果となっております。
 続きまして、②その他の物質について、POPs条約締結後に条約対象物質に新たに指定されたエンドスルファン類等の6物質群、条約対象物質にする必要性について検討されているジコホルを加えた7物質群を分類しております。
 こちらは調査の実施回数が比較的少ないため、経年変化の解析までは実施しておりません。
 調査結果の概要につきましては、4ページ中ほどの②に記載のとおりですけれども、調査を行いました全物質、全媒体で検出が認められております。
 検出状況の詳細につきましては12ページの別表3-1に水質と底質の結果を、13ページの別表3-2に生物と大気の結果を記載しております。
 再び資料2-1の4ページになりますけれども、4.調査結果の活用に移らせていただきます。
 今回の調査結果につきましては、「化学物質と環境」いわゆる黒本に最終的に取りまとめて公表するとともに、各種化学物質関連施策に活用されることになります。要望部署での活用状況につきましては、後ほど資料2-5で触れさせていただきます。
 なお、本調査の結果につきましては、調査結果の精査、そして解析など、資料2-1の18ページ、19ページに記載しております各種の検討会にて専門家の先生方に事前に検討を行っていただき、資料2-2の黒本案として取りまとめをいたしております。
 今年度公表予定の平成28年度化学物質環境実態調査に関する御説明は、以上となります。
 続きまして、資料2-3をご覧ください。
 こちらは平成29年度の調査の進捗状況についてまとめたものになります。
 まず、1.にありますとおり、本年度も初期、詳細、モニタリングと3つの体系での調査を実施しております。
 1ページ下の2.精度管理ですけれども、初期・詳細調査につきましては本年度も一部の地方環境研究所に分析の協力をいただいておりまして、複数の分析機関が同一物質の分析を行っております。分析機関ごとに条件が若干変わってしまう可能性がありますので、結果に差異やばらつきが生じるおそれがあります。それを事前に把握して対策を行うために、実際の分析を行う前に共通の標準物質などを配付して、ラウンドロビンテストを実施し、精度管理の担保を行っております。
 また、モニタリング調査につきましては、分析機関が年度ごとに変わる可能性がありますので、継続性を担保するために、国立環境研究所をはじめとした有識者の方々に御協力をいただきまして、分析機関への立入検査を行い、精度管理の確認に努めております。
 今年度に調査をしている物質、媒体は2ページ以降に記載しております。
 まず2ページ・表1のとおり、初期環境調査につきましては15物質群、また3ページ・表2のとおり、詳細環境調査は10物質群について調査を実施しております。いずれも昨年度に分析法の開発が完了した物質が中心となっております。
 次に、4ページの表3に参りまして、モニタリング調査の対象物質ですが、平成21年度に取りまとめられた化学物質環境実態調査のあり方に関する検討会の報告書の考え方に沿って調査対象物質を絞り、今年度は14物質群を選定しております。
 これらの調査結果につきましては、来年度の本委員会で報告させていただく予定としております。
 続きまして、資料2-4をご覧ください。
 平成30年度化学物質環境実態調査の実施方針案について御説明いたします。
 冒頭、3段落目にありますとおり、来年度の調査も今年度同様、初期、詳細、モニタリングの3体系で実施する予定としております。
 2ページから5ページまで、別添1として現在、分析法開発を行っている50物質を記載しております。これらのうち本年度中に分析法が開発されたものを対象に、来年度の調査の実施を考えています。
 次に6ページ、別添2になりますけれども、こちらの2物質は省内関連部署から調査要望がありました物質のうち、既存の分析法があるため来年度に調査の着手が可能な物質となります。
 次に、7ページの別添3に参ります。調査要望があった物質のうち今後、分析法の開発が必要な物質についてまとめております。これらの分析法開発の可能性など、専門家の意見をいただきながら絞り込んだものになります。今後、このリストをもとに地方環境研究所などと調整を行い、調整がついたものについて来年度に分析法を開発することを予定しております。
 また、こちらには記載がありませんけれども、モニタリング調査につきましては、1ページに戻っていただきまして、冒頭第3段落にありますとおり、平成21年度に開催されました化学物質環境実態調査のあり方に関する検討会の検討結果に沿って、調査物質と媒体を絞り込んで実施する予定でございます。
 以上、差し支えございませんでしたら、この実施方針で進めさせていただきたいと考えております。
 続きまして、資料2-5をご覧ください。
 こちらは昨年の本委員会で御確認いただいた、平成27年度の調査結果の活用状況について取りまとめたものになります。
 2ページから4ページの別表1が初期環境調査、5ページ、6ページの別表2が詳細環境調査の活用状況になります。右から2番目の列に要望部署と要望理由、一番右側の列に調査結果の活用状況を記載しております。基本的に関係部署において調査結果を御活用いただいていると考えています。
 以上、大変長くなりましたけれども、ここまでが資料2の化学物質環境実態調査に関する御説明となります。

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 結果の取りまとめに当たりましては、専門家から構成される検討会議で別途精査、解析等をしていただいたということでございますが、本委員会において評価等に入る前に、それぞれの実務者会議で座長を務められた白石委員、柴田委員、中杉参考人から補足説明などございましたら、一言ずつ御発言をお願いしたいと思います。
 まず、化学物質環境実態調査結果精査等検討会とモニタリング調査の結果に関する解析検討会の座長を務められた白石委員から御発言をお願いできますでしょうか。

○白石委員 では、補足させていただきます。
 精査等検討会は、例年のごとく、3日にかけて個々のオリジナルのデータを委員の方々と事務局と併せて精査させていただきました。今回は事務局の担当者が一部代わったこともあって、若干時間がかかったんですけれども、それ以上の問題が1つありまして、出てくるデータについて十分な検討を加える必要がありました。
 1つは検量線の問題なんですけれども、この調査の手引きというものが出ていて、手引きに沿ってやることになっているんですけれども、検量線の定量範囲が定量下限値の上にあるようなデータが幾つかございまして、そういったものについては定量下限値を検量線の下限値とすることで処理させていただいております。
 もう一つの問題点は、揮発性の有機物なんですけれども、そこでの検量線の切片が高い、いわゆるゼロ点がずれている懸念のある報告が幾つかございまして、それについての検討に大分時間をとられたということであります。
 結果として、ここに書かれているものは特に問題がないというか、その結果がこの数字となっているんですけれども、1つ注意していただきたいのが、例えば揮発性有機物の中で特に問題になるものは、この中ではジクロロベンゼン類の底質が特に問題で、ただいま説明があったとおり、黒本調査はまず分析法を1年かけてつくり、それをもとに精度管理をしながら進めていくものなんですけれども、この底質に関しましては測定機関の都合もあり分析法が変えられておりました。
 もともとヘッドスペースという方法なんですけれども、パージ・アンド・トラップという方法に変えられておりまして、かつ検量線の切片が高いという問題があって、定量精度について若干疑念があったということです。
 見ていただければわかると思いますが、例えば、7ページの下にo-ジクロロベンゼンの底質がございます。平成28年度は全部不検出なんですが60分の0、20分の0ということで不検出となっています。これは問題ございません。m-ジクロロベンゼンも同じで、全部不検出ですけれども60分の0、20分の0となっております。問題になったのがp-ジクロロベンゼンで、15分の0、15分の0ということで、これは同じサンプルで処理していますので、ちゃんと処理できれば60分の0、60分の0、あるいは60分の幾つかという数字になるわけですけれども、そうなっていないということです。
 ブランクがあるものですから、ブランクについての知見も得られていないということで、差し引きができないというところがございまして、検出下限値17となっていますけれども、これは要求検出下限値です。要求検出下限値をそこにセットしまして、その要求検出下限値を満たしているか、満たしていないかということでセットしてあります。結局のところ、60引く15で45ぐらいは欠測という扱いにさせていただいています。これは試料量が足りなかったというところがございます。そういったことで欠測処理となっています。
 この要求検出下限値でndであるということは、問題ないということです。
 あと幾つか細かい問題があるんですけれども、手引きのとおりにやっていただければいいんですが、その手引きが理解されていないところが、特に民間の機関で認められまして、そういったことには今後、注意していただけたらいいかなと思います。
 それからモニタリングのほうですけれども、今、説明のあったとおり、モニタリングの検討会から出てくるデータについて統計処理をしたということでございます。
 デカブロモジフェニルエーテル類が上に上がっていますけれども、説明のあったとおり特定のデータの影響である可能性もございますので、これについてはもう一回中身を精査したほうがいいかなという気がします。
 同じような問題が、16ページのPCB、湖沼域のところをご覧いただくと※がついていますけれども、これが非常にデータ数が少なくて、1地点のデータが高いのに引っ張られる傾向がありまして、それを除いて解析したというデータがあります。これと同じ扱いができるかもしれないので、少し検討してみたらいかがかと思います。
 以上でございます。

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 続きまして、初期環境調査及び詳細環境調査の結果に関する解析検討会の座長を務められた中杉参考人より御発言をお願いします。

○中杉参考人 御説明いたします。
 藤井さんから詳しく説明いただいたので、比較のところはもう済んだと思いますが、実際には判定ができたのは1物質、あとは判定できなかったということでございます。過去に調査をしている物質は結構たくさんあるんですが、うまくできないというのは少し問題があるのではないかと考えています。もちろん技術的な問題で、検出下限が大きく変動しています。多くの場合は低くなっているんですが、高くなっている場合もあるということで単純に比較できないんですが、もう一つは、この調査だけではなくて他の調査もありますので、それとの比較をやってみたいということもあるんですが、なかなかそれができないということで、これは検出下限というよりも調査地点がずれてしまって比較ができないというような問題があります。そこら辺は環境安全課のほうに、そこら辺全体をうまく調整をとって、比較できるよう工夫してほしいという申し入れはしてございますので、今後はそこら辺がちゃんとできてくるのではないかと思っています。
 それから大雑把に調査結果を、精密なリスク評価は今後の話ですが、リスク評価する観点で少し懸念があるというのは、PPCPsが結構検出されるということでございます。後で報告があります環境リスク上の評価でクラリスロマイシンが詳細に評価が必要であるということです。これは生態影響で医薬品関係の環境影響が明らかになってきているということがありますので、今回も2物質、37ページの6番とその後の7番ですね、これはPPCPsですが、これも結構検出率が高くて、これも詳細に評価していく必要があるんだろうと思っています。
 これはどこの段階でやられるかですけれども、やはり全体として見ていかなければいけない。そういう意味では、平成30年度はPPCPsが調査をたくさんやられるというのは非常に結構なことではないかと考えております。
 そういう観点でいくと、もう一つ判断できるのは、化管法の指定が適切かどうかということの調査であります。
 その中で、これまでの基準から考えると化管法の指定をし直してもいいのではないかというものが結構たくさん出てきています。初期環境調査の1番、27ページですが、1-アミノ-9,10-アントラキノン、これは第1種指定化学物質ですが、底質で1地点のみでしか検出されていないという観点でいくと、第2種ではないだろうか、あるいは4番の1,2-エポキシ-3-(トリルオキシ)プロパン、これは第2種ですけれども、水質の全点で不検出なので、これだけでいくと2種からも外していいのではないかという話になりますし、これはもう指定をやめてしまっていいのではないか、あるいは格下げしてもいいのではないか。その辺り、39ページの8番・フェニトイン、これもPPCPsですけれども、これについては検出されていますので、これまで化管法で指定していないけれども指定していいのではないか、それから13番のトリエタノールアミンとか21番のN-メチルジデカン-1-イルアミン、163ページと180ページですけれども、これらについても指定をするのでないだろうかということでございます。
 初期調査の13番・49ページのp-ニトロフェノールですけれども、これも15地点中14地点で検出されていまして、平成20年度の改正では曝露要件から、検出される地点が少ないということで第1種指定化学物質から第2種にされたんですが、今の条件から言えば第1種の要件ではないかといったことがございます。
 その他、PRTRの排出量を見ながら調査地点を選んで調査していただいたんですが、PRTRの排出量を考慮して調査した地点で最高濃度が検出されたところと、必ずしもそうでないところがある。どうしてもそういうことが出てくると思います。
 今度は詳細の5番・エチレンオキサイド、105ページです。これは今、化審法、大防法の両方でリスク評価が進んできているところですけれども、これがかなり、そちらのリスク評価ではリスクが高そうだということですが、実際に化管法の特定第一種指定化学物質の見直しとはうまく合わないところがございまして、これは一つの問題点ではないかといったことを考えてございます。そういう意味では化管法についても調査要件の見直し等が必要になってきているのではないか。個人的な意見でございますけれども、そういう感じがいたしました。

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 続いて、POPsモニタリング検討会の座長を務められた柴田委員から御発言をお願いいたします。

○柴田委員 それでは、御報告します。
 POPsモニタリング検討会は、先ほど藤井さんからも説明ございましたように、各分析機関の視察等も踏まえて精度管理を進めております。
 基本的なところで大きな問題点はないと考えております。ただ、今年度につきましては幾つか、分析を少しチャレンジングに進めていただいたところもあって、今後の課題としては幾つかの課題があるのかなと考えています。
 モニタリングの結果で言いますと、12ページから幾つか並んでおりますけれども、特に指摘すべき点かと思いますものが2つありまして、1つはヘキサクロロブタジエンであります。昨年も少し指摘させていただいたんですけれども、大気中のヘキサクロロブタジエンの濃度をはかってみると、やはりかなり高いということで、昨年は平均で1,100pg/m3ぐらい日本全体で見えていた。今年もまた同じように、やはり510から4,300の範囲で大気中で平均して850ぐらいの濃度でこれが見えてくるということで、実は世界的に見てもなかなか情報がなくて、比較できない状況なんですけれども、論文で見ますと、30年ほど前にヨーロッパのバックグラウンド地点で平均で1,800pg/m3ぐらいという報告があるんですけれども、その当時と比べると現在は処理が進んで、ほとんど出ていないはずなんですけれども、相変わらずこれだけ濃度が高いということは、何かまだ大きな発生源が残っているのではないかというのが少し気になるところであります。
 ただ、私どもも実は少し研究としてやってみているんですが、今のところ、どうも明確な発生源が近くにありそうな雰囲気が見えておりません。文献で見ますと、ヘキサクロロブタジエンは二重結合を持っている割には大気中の半減期が非常に長くて、大雑把に1年前後の半減期を持つと言われていますので、恐らくは地球全体に広く広がってしまっているのかなという感じを持っております。
 この辺りについては今、ヨーロッパとかアメリカでもまだあまり情報を持っていないようですので、各国にもいろいろと分析を呼びかけているような状況でございます。比較のデータが揃ってくると、もう少し議論ができるのではないかと思っています。
 それからもう一点、これは条約の対象物質に載ってしまったということもあって、短鎖塩素化パラフィンを初めて測定しております。これも実は分析法開発のほうで長く、もう10年以上にわたっていろいろ検討されていて、ただ、未だに確立できていない、問題点が残った状態ではあるんですけれども、何しろ条約の対象物質に載ってしまったということもあって、とりあえず基本的には分析法開発の結果を原則にしまして、さらに条約のほうで分析担当機関にも努力をしていただきながらデータをとるということをやってみております。
 短鎖塩素化パラフィンについては生物と大気の2つの媒体について測定結果をまとめておりますけれども、やはり濃度レベルとしては、特に大気中のレベルはどうも高そうでありまして、ヘキサクロロブタジエンをさらに上回る、2,000~3,000ぐらい、数千近いところ濃度がありそうだという結果になっております。
 ただ、短鎖塩素化パラフィンにつきましては、世界的に見てもまだ分析法のハーモナイズがかなり難しい状況でありまして、今年11月に条約の中で分析法のガイダンスドキュメントをつくるための専門家会合が開かれて、そこでも議論したんですが、正直言って短鎖塩素化パラフィンについてはまだ課題がたくさん残っていて、確立できている方法がないということで、とりまとめについてももう少し時間がかかりそうだと。今のところ、世界的にもそういうコンセンサスのもとで、より信頼できるデータを出そうと努力しているような状況であります。そういう意味で、この部分については今後、分析法自体が変化していって、それに伴ってデータの改定を進めなければいけないところがあるかとは考えておりますけれども、基本的に、やはりレベルが相当高いことは間違いないであろうということで、やはり少し注意して、今後、各媒体中の濃度をしっかり見ていけるような方法をつくっていきたいと考えています。
 以上です。

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 それでは、各委員からの補足説明も踏まえた上で、資料及び説明内容に対して御質問、御意見等ありましたら御発言をお願いいたします。

○柴田委員 素人っぽい質問で恐縮ですけれども、5ページの別表1の初期環境調査の5番、大気中のシアン化水素及びシアン化物が全ての地点で見られているということですが、こういったものはこのくらいのレベルで見えてもおかしくないのか、ちょっとその辺り、これまでにもし情報があれば、あるいは他の国との比較の情報があれば教えてください。

○中杉参考人 比較的全体に、満遍なく見えているというのは、これは必ずしもHCNというわけではないのでリスク評価するときに非常に気にしなければいけないだろうと思っています。HCNで有害性評価値をとってきてCNの値にすると物すごく大変なことになるんですが、実際、大部分はいわゆるシアン化物か何かになっているのではないかと思います。

○柴田委員 他の何かというのは。

○中杉参考人 まだそこまで詳しくはわかっておりません。
 そういう意味で、最初はシアン化水素として要望があったんですが、実際にはかっているのはシアン化水素及びその化合物と、表現をそのように変えております。

○藤井環境安全課専門官 強いて追加させていただきますと、シアン化水素そのものについての分析法ではなく、シアン化物も含めてという形になったので、今回このような表現にしていることを追加させていただきます。

○櫻井委員長 そうすると、これは微粒子等にくっついているという感じですかね。そうすると、いろいろな……

○中杉参考人 微粒子の形といいますか、実際に化合物の形で、塩のような形であるものもあるんだろうと思います。そういう意味では毒性的には単純に比較できないので。
 それでシアン化水素と書いてしまうと非常に誤解を招くだろうということで、あえてシアン化水素及びシアン化物という形にしました。

○柴田委員 ちょっと印象ですが、今、御説明いただいた辺りを報告書にも簡単に加えたほうが、もしかすると誤解が少ないかもしれないと感じました。

○藤井環境安全課専門官 それでは、資料2-2の黒本原稿のほうに、そういったことがわかるように書かせていただきたいと思います。
 資料2-1のほうは、こういった結果ということでそのまま示させていただきたいと考えています。

○櫻井委員長 それでよろしゅうございますか。
 その他、何かございますでしょうか。

○鈴木委員 白石先生からいただいた、ジクロロベンゼンの検出下限値が高かったという件ですが、確かに幾つかのものは、過年度は結構古いものが多いですけれども、明らかに今年、検出率がまるで下がったかのように見えるものがあるような気もするので、これは本体のほうには検出下限値の影響ということは記載されているのでしょうか。記述上、丁寧に説明しておいたほうがいいのではないかと思ったんですが。

○白石委員 本体には多分何も書いていなくて、この数字を比較しているだけだと思います。

○鈴木委員 なかなか難しいかもしれないんですが、検出下限値の、例えば9ページの下の底質を見ると、白石委員が言われたところ、平成28年は0/15で、その上はほとんど検出されているので、ここでまるで下がったように見えるような気もしますが、そうなのかもしれないし、もしかしたらそうでないのかもしれないということがもし言えるのでしたら、それをどこかで説明しておいたほうがいいのではないでしょうか。

○櫻井委員長 9ページの一番下ですね。0/15になっている部分。黒本のほうで説明できますか。

○藤井環境安全課専門官 事務局から現在の記載ぶりについてお伝えいたしますと、現在のところは何年度に調査をして、どれだけ検出されたということのみが書かれている。それに加えて過去に同一地点で調査を行っていた場合についてはその増減傾向について記載しているというところまでにとどまっている状況があります。このため、検出下限値との関係等について、なかなか突っ込んで解釈まではしていなかったという状況は正直なところあるということです。逆に、検出下限値が下がったから検出されたんだ、といったことも今までは実は書いていなかったということで、ご覧になる先生方あるいは利用される方に個別に解釈していただいていたという現実はあります。

○白石委員 9ページですか、底質、過去の非常に古いデータで、ここに検出下限値が不詳と書いてありますが、これは検出下限値がわからない、明記されていない時代の測定結果であるということで、ただ、ここだと高濃度の地点が減っているようには見えます。確かに減っているようには見えますが、それがどれだけ確かに言えるかは、ちょっとまだわからないかもしれません。
 測定結果から言えば、17を超えるものはなかった。ndであることは確かである。この15のサンプルについてはそう。欠測にしたものがあるので、それがどうだったかはわからないんですが、もともと底質ですからドライ換算にするので、試料量がばらばらなんです。そのばらばらなところでもはや満たさない、非常に試料量が少ない、だから水が多くて底質が少ないみたいなサンプルをとっている場合があって、欠測が非常に多くなったということで、ピークが出てきたものに関しても17を超えるレベルではなかったというのが今のところの判断です。
 ここでもう15年ぐらいたっていますので、この間、減っているかどうかについてはちょっと今のところわからないですが、結果はこれでいいのかなと。

○櫻井委員長 では、一応このままでよろしいですね。

○鈴木委員 はい。

○中杉参考人 ちょっといいですか。
 p-ジクロロベンゼンについては水のほうで要監視項目ですので、毎年毎年測定はしています。それについてのコメントはここでは出ていないことになります。厳密にそこまで加えていくと、そちらのデータを見ていくと毎年毎年の変化が見えてくるはずなんですが、検討のときは黒本の調査の結果だけをやってしまったので、後で少し見ておいてくださいと事務局にお願いしたんですが、ちょっと私もうっかりしていました。
 そういう意味で、水の要監視項目の調査結果、少なくとも水質については毎年のデータがありますので、それを見ながら少しコメントを書き変えることはあり得るかと思います。

○櫻井委員長 どうしましょうか。

○藤井環境安全課専門官 先ほど私から御説明いたしましたが、黒本についてはどうしても、今まで事実関係のみを記載しているというところもございますので、そういったところを今後どこまで書いていくのか、水環境課等が行っております調査の性質とかそういったものもありますから、継続的にこの部分については検討させていただくという形ではいかがでしょうか。

○櫻井委員長 今後、どこまで書くか少し丁寧に検討していただくと。

○藤井環境安全課専門官 そうですね、できるところとできないところがあると思いますが、そういったことを、ここに来るまでに検討会等を開いていますので、そういった中で場合によっては検討していくということで、引き取らせていただきたいと考えております。

○櫻井委員長 それでよろしゅうございますか。

○内山委員 別件で。
 先ほど中杉参考人からシアン化水素の件で、シアン化水素単独では測れないからシアン化合物としたというお話がありましたけれども、この厚い本では、それはどの部分に書いてありますでしょうか。

○藤井環境安全課専門官 資料2-2で申し上げますと、35ページからとなっております。こちらにシアン化水素の結果については書いてあるんですけれども、ただ、実際分析法がどうであったとか、そこまでは書いていないという状況です。これについては、環境省のホームページに、この黒本に書き切れない部分として出しているんですけれども、そこで概要を示している、これでお示ししているというのが現在の状況となっています。

○内山委員 測定法が書いてあって、そこでシアン化水素単独では測れないということも書いてありますか。

○藤井環境安全課専門官 そういうことがわかるような記載になっています。

○内山委員 今、御存じのように豊洲市場のほうでシアン化水素の大気中濃度ですとか、地下ピットでどうかというのが話題になっているものですから、これですと、環境省のマニュアルどおりに測定するとシアン化水素及びその化合物として測定できてしまうことになりますね。一般環境中で全ての、30地点で測定できる濃度ということは、豊洲市場の周辺でも測定できてしまうことになりますので、そこら辺のところがはっきり、シアン化水素単独で測っているわけではないということをどこかに、測定マニュアルにでも書いておいていただけるとありがたいと思うんですけれども。

○藤井環境安全課専門官 その件につきましてはホームページに掲載する分析法の中に書くですとか、あとは、実は分析法の詳細については白本というものが別にありまして、それは国立環境研究所のホームページに詳しく、どういった分析の仕方をしているのか、文章にして20ページ、30ページぐらいに書いてありますので、それをご覧いただくというか、そういった形になろうかとは思います。
 ただ、そこをどういうふうに書いていくのかというか、わかるように書いていくのは重要なことかと思いますので、ホームページ等に載せるときに※で注釈を書くですとか、そういったことで対応させていただきたいと考えております。

○櫻井委員長 いかがでしょうか、それでよろしゅうございますか。

○内山委員 はい。

○香山委員 「シアン化水素及びシアン化物」という5番のタイトルを見れば、一般の方は、シアン化水素を測ってその他を測っているんだとしか思わないので、シアン化物を測っているなら「シアン化物(シアン化水素を含む)」程度にしたほうがいいのではないかと思うのですが。私としてはタイトルが、これに固執されるのがなぜかよくわからないのですが。

○藤井環境安全課専門官 強いて申し上げますと、その部分についてはもともと要望のあった部署からシアン化水素について測ってほしいというところがあったので、そこがわかるようにという趣旨で今はこのように書いているところでございます。ですから、まずはそれに応えるべきなのかなと私どもは思っていたというのが、状況としてはございます。

○櫻井委員長 では、このままにしておくのか、今、おっしゃったように修正してもいいのか。

○藤井環境安全課専門官 そういたしますと、先ほど先生から御指摘いただいたように、「シアン化物(シアン化水素を含む)」ですとか、そういった書き方に、この部分は変更させていただくということで対応させていただきたいと思います。

○櫻井委員長 では、そのようにお願いいたします。

○小山委員 資料2-2で生態影響が記入されている部分についてお伺いしたいんですけれども、特にエストロンです。エストロンについての影響内容が……

○櫻井委員長 何ページですか。

○小山委員 資料2-2の32ページです。
 ここでは血漿中ビテロジェニン濃度の上昇が生態影響として書かれてございます。生態影響のほうで内分泌攪乱化学物質について、特にビテロジェニンの影響はエンドポイントとはしないという合意があるかと思いますが、ここであえて生態影響として書かれているのは何か意味があるんでしょうか。
 もう一つは、この初期調査と詳細環境調査結果のところで、生態影響の内容が若干違うように見えるんですね。つまり詳細のほうはPNECが必ず書いてあって、初期のほうは単に今までの影響結果が羅列してある。これは初期評価であるからとりあえずは影響を羅列してあるということなんでしょうか。
 以上2点、お願いいたします。

○藤井環境安全課専門官 まず最初の御質問ですけれども、こういった毒性データについて、調べられたものについては記載していくと考えておりました。ビテロジェニンを基本的にはあまり採用しないということでしたら、この部分は恐縮ですが削除する形をとらせていただきたいと考えています。
 それからPEC、PNECのお話につきましては、私の理解としては、初期環境調査につきましては継続的に調査するというよりは単発で、今回初めて調査をやったものが多く含まれているのに対して、詳細のほうはかなり実績があるものが多いこともあって、それで記載されているのではないかと考えてはおりましたけれども。

○中杉参考人 多分これは生態影響のところを詳しく委員会で検討しているわけではなくて、担当の委員に見てもらっているぐらいの話で記載しています。そういう意味ではPNECについても、PNECという数字を出している文献があればそれを引用しながら書いている、なければ書いていない、生のデータだけを出している、そのように解釈しています。

○櫻井委員長 どうしてもそういう状況を精査した上でというのは難しいというお答えで、ごもっともだという気もします。よろしゅうございますでしょうか。
 その他、何かございますか。
 では、そろそろ時間も気になってまいりました。
 別表1のシアン化水素及びシアン化物については、すぐ修正できるので修正していただく。

○藤井環境安全課専門官 そうですね。資料2-1と資料2-2、いずれも修正させていただくということで対応させていただきたいと思います。

○櫻井委員長 その他、幾つかの検討事項が残るかもしれませんが、今はっきり申し上げられる点はそれだけだったかな。その点だけよろしくお願いいたします。
 必要に応じて修正したものがありましたら委員長預かりということにさせていただきますが、特にないですかね。今すぐ変えるべきものは。
 そうしますと、今の修正をしたものにつきまして、平成28年度化学物質環境実態調査結果の概要ということで、この資料2-1を公表するということでよろしゅうございますでしょうか。

(異議なし)

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 では、そのようにさせていただきます。
 それでは議題2、化学物質の環境リスク初期評価(第16次とりまとめ等)についてでございますが、いわゆるグレー本第16次とりまとめですね。資料3-1から3-3でございます。資料3-4は前回の本委員会で宿題となっていた定量的発がん評価についてケーススタディを行った結果でございます。それらについて、まず事務局から資料の説明をお願いいたします。

○塚原環境リスク評価室室長補佐 それでは、環境リスク評価室から、資料3-1から3-4につきまして御説明させていただきます。
 今、委員長からありましたとおり、3-1から3-3までが第16次環境リスク初期評価のとりまとめの案でございます。資料3-4につきましては御報告事項とさせていただきたいと思います。
 まず、資料3-1を御用意ください。
 環境リスク評価室では、平成9年から化学物質の環境リスク初期評価に着手しております。この初期評価ですが、環境リスク管理施策を念頭に置きつつ、多数の化学物質の中から相対的にリスク評価が高い可能性がある物質をスクリーニングするための初期評価ということで、行わせていただいております。
 具体的には、1.にございますとおり、人の健康及び生態系に対する有害性を特定いたしまして、有害性評価と曝露評価を行い、その結果を比較することによってリスクの判定をしております。曝露評価につきましては、黒本調査の結果なども活用しているところでございます。
 これまでに健康及び生態の両方で262物質、生態のみで95物質の評価を行いました。この結果は、いわゆるグレー本といたしまして環境省のウェブページ上で公開しております。
 本日お配りしている資料3-3の分厚いものでございますが、こちらが実際のグレー本の案となっております。この資料は本日、適宜参照しながら使わせていただきたいと思っております。
 それでは、2ページをご覧ください。
 今回の評価物質について御説明いたします。
 中段の(2)でございますが、表2にございますとおり11物質、それから表2の1物質、合わせて12物質の評価となっております。これらの物質選定ですが、表にございますとおり、環境省内におきまして水環境課や大気環境課をはじめとする規制当局からの要望物質を中心といたしまして、さらに環境モニタリングで検出された物質も加えて、専門家の判断で選定いたしました。
 なお、3ページの7番から10番までにつきましては、大気環境課から有機スズ化合物としての要望を受けた物質でございますが、有機スズ化合物につきましては多数の種類が存在し、既に規制を受けている物質もございますので、今回の評価物質は化審法の規制物質を除く、環境中から検出データが得られた4物質を評価対象といたしました。
 また、表3のクラリスロマイシンですが、環境安全課で行っている残留医薬品の検討に関する項目の中からリスク評価の要望があった物質となってございます。
 4ページをご覧ください。
 こちらは環境リスク初期評価の検討体制となっております。物質選定から曝露評価、毒性情報の収集を経ましてリスク評価案を取りまとめるまで、専門家による検討委員会において検討されております。検討体制は図のとおりでございまして、内山委員を座長とする企画委員会で全体を総括しておりまして、その下に中杉参考人を座長とする曝露評価分科会、青木委員を座長とする健康リスク評価分科会、生態リスク評価分科会は楠井委員を座長として取りまとめてございます。
 本年度に関しましてはその他、発がんリスク評価ワーキンググループ、金属のリスク評価検討ワーキンググループも別途設置いたしまして、本案を取りまとめました。
 5ページ以降は過去の評価の概要を参考につけておりますものですので、説明は資料3-2に移らせていただきたいと思います。
 資料3-2をお手元に御用意お願いいたします。
 1ページの御説明は資料3-1でいたしましたので、2ページから御説明したいと思います。
 上段ですけれども、評価結果の活用方法につきまして御説明いたします。
 環境リスク初期評価ですが、リスクの程度に応じて、大きい順に「詳細な評価を行う候補」「関連情報の収集が必要」また「現時点ではさらなる作業の必要がない」とする3段階に分けて分類しております。
 詳細な評価を行う候補又は関連情報の収集が必要と分類された物質につきましては、曝露源に応じて大気環境課や水環境課、その他関連の規制当局へフィードバックいたしまして、詳細評価の実施や監視強化等の取組を促す等しております。
 具体的な評価の方法ですけれども、3ページをご覧ください。
 健康リスク、生態リスクともに基本的な考え方といたしましては、毒性情報に対しまして曝露情報を比較することで、リスクの程度を評価しております。健康リスク評価につきましてはMOEについては表が載っておりますけれども、MOEの評価若しくは過剰発生率による評価を行っております。
 生態リスクの評価につきましても同様でして、予測環境中濃度のPECを予測無影響濃度PNECで除したPEC/PNEC比により判定を行ってございます。
 その下の※印にございますけれども、情報収集の必要性に関する総合的な判定ということで、リスクの判定結果を定量的にしたものを踏まえながら、その他PRTRのデータ等を用いながらモデル推定等も行いつつ、専門的な観点から総合的な判定を行ってございます。
 なお、本ページの一番下のところですけれども、初期評価に関しましてはその趣旨に鑑みまして、環境リスクが高い物質を見逃してしまうことがないように、なるべく安全側に立脚した取り扱いを行ってございます。
 また、別途検討が行われておりますナノ材料や内分泌攪乱作用に関しての評価は、本評価の対象としてございません。
 それでは、4ページをご覧ください。
 今回の第16次とりまとめの結果を御説明させていただきます。
 表をご覧いただきますと、今回はA欄、詳細な評価を行う候補となったのは、健康でゼロ物質でございました。一方で、生態では4物質。銀及びその化合物、ジオクチルスズ化合物、ジブチルスズ化合物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケートとなりました。
 これら物質よりもリスクは小さいけれども関連情報の必要の収集が必要とされた物質につきましては、B1の欄ですが、健康で3物質、生態で3物質となりました。健康に関しましては経口曝露か吸入曝露か、それぞれについて表記しております。
 また、B2の欄には、情報不足の観点からリスクの判定はできませんでしたが、総合的な判定を経まして情報収集が必要とされた1物質を掲載してございます。
 これらの他の物質につきましては、C欄ですが、毒性に対しまして曝露量が十分に小さいといった理由から、現時点ではさらなる作業の必要は低いと判定されました。
 さらに5ページをご覧いただきますと、生態評価のみを行ったクラリスロマイシンにつきましては、詳細評価を行う候補として判定されました。
 それでは、個別の物質につきまして表を用いて御説明させていただきますので、8ページをご覧ください。
 まず、健康リスクの初期評価の結果一覧につきまして、11物質につきまして御説明いたします。
 この表の見方ですけれども、左から経口、吸入それぞれにつきまして無毒性量等、エンドポイント、曝露評価、それらを総合しましてMOEを掲載しております。今回は発がん性を呈した物質がなかったので、全てMOEによる評価となってございます。それから有害性と曝露評価を用いたリスクの判定、加えまして総合的な専門家の判断による判定という2つの判定が示してございます。
 先ほどの資料中ではAからCという御説明でしたが、本表におきましては記号によって判定欄が記載されております。詳細評価が■、情報収集が▲、作業の必要がないとするものは○で記載してございます。なお、総合的な判定欄の括弧付のものにつきましては、モデル推計等を結果を加味した総合判断ということで記載されているものでございます。
 各評価物質につきましては、特に詳細評価になったもの、若しくは関連情報の収集が必要となったものを中心に御説明したいと思います。また、再評価となった物質につきましても個別に御説明いたします。
 このままこの表をご覧いただければと思います。
 まず、上から3つ目の銀及びその化合物でございますけれども、こちらにつきましてはリスクの判定では○であったんですけれども、総合的な判定は(▲)となってございます。経口に関してでございます。こちらエンドポイントの欄にございますとおり、ヒトにつきまして銀沈着症の知見がございました。こちらは歯肉のびらんの治療に硝酸銀溶液を使用したことから、銀の沈着症が見られたという知見でございました。この知見から得られましたLOAELを慢性曝露に補正いたしまして無毒性量等を設定しまして、さらに公共用水域・淡水を摂取と仮定したところ、MOEの欄にございますとおり270という数字になりまして、こちらは○の判定となったんですけれども、一方で、PRTRのデータを用いたモデル計算の結果、または限られた地域を対象とした食物や土壌のデータを加えた曝露量も考慮いたしますと、さらにMOEが下がる可能性があったため、総合判定では情報収集が必要といたしました。
 なお、本物質につきましては大気環境課からの要望物質ではあったものの、吸入に関してはデータが足りなくて無毒性量等が設定ができなかったという結果となってございます。
 続きまして、7番のジオクチルスズ化合物についてでございます。
 この物質ですけれども、こちらも大気環境課からの要望物質となっております。塩化ビニルの樹脂用安定剤の原料やプラスチック添加物等に使われている物質でございます。判定につきましては判定欄で、経口が○から(▲)、吸入が×から(▲)となってございます。×につきましては判定できなかったという記号でございます。
 まず経口ですが、ラットで胸腺のリンパ球の減少が見られました。これについて、公共用水域・淡水を摂取すると仮定しましたところMOEは1,000となり、大きな数字となったので○ということだったんですけれども、PRTRのデータから高排出事業所の排出先河川濃度の推計や黒本調査でありました魚介類の中の濃度などから推定いたしますと、さらに低い数字が得られたため、総合評価として情報収集が必要ということで、▲とさせていただいております。
 吸入につきましては、無毒性量等が判定できず曝露情報も得られなかったのですが、経口からの換算若しくはPRTRデータを用いた推定の結果から、総合判定として情報収集が必要といたしました。
 なお、本物質につきましては発がん影響について、この物質とモノオクチルスズとの混合物の投与について知見が確認されているんですけれども、モノオクチルスズを主として投与した実験であったことや本物質単独についての発がん試験に関する情報がなかったことから、判定が難しいということで、発がん性についてのリスク評価は検討しておりません。
 続きまして8番、モノブチルスズ化合物でございますが、こちらの物質は情報収集が必要という結果となっております。
 モノブチルスズですが、吸入につきまして、モノブチルスズ、三塩化スズを投与したラットの試験がございまして、肺胞水腫が見られております。この知見から得られたLOAELをもとに一般環境大気の曝露情報を考慮しますとMOEが40となりまして、こちらにつきましては情報収集が必要とされております。
 9番目のジブチルスズ化合物につきましては、こちらは○判定ですけれども、第8次のときに評価しておりまして、再評価となっております。再評価の物質につきましては、10ページに過去の判定との比較を示してございます。
 10ページですが、第8次のときの判定が▲となっておりますところ、今回は○判定となりました。毒性評価は変更なかったんですけれども、淡水中の濃度が下がっていること、また、第8次のときに寄与度が非常に大きかった食品中の濃度につき今回は情報が得られなかったことと、そのかわりに魚介類の摂取量から推定した濃度を加えましてもMOEが上がったことが確認されました。
 健康についての御説明は以上でございます。
 引き続きまして、11ページから生態リスクの初期評価の結果を御説明させていただきます。
 生態リスクにつきましては、詳細な評価を行う候補とされた物質が4物質ございました。その他、情報収集が必要とされた物質もございましたので、それらを中心として御説明させていただきたいと思います。
 11ページ、表の見方からですけれども、左から物質名、試験が行われた生物種、急性・慢性の別、エンドポイント、アセスメント係数、それから予測無影響濃度PNECと予測環境中濃度PEC、それらを比較したPEC/PNEC比、それらをもとにしたリスクの判定と総合的な判定となっております。
 まず、p-アミノフェノールについて御説明いたします。
 p-アミノフェノールですけれども、リスクの判定が○、総合的な判定が▲となってございます。第3次にも公表した物質でございます。
 こちらの物質は、資料3-3も参照しながら御説明したいと思います。49ページをご覧ください。
 リスクの判定では○となったんですけれども、こちらの表2.1にございますとおり、PRTRのデータに基づく届出排出量におきまして、下水道への移動量が多くなっていることが確認されました。これを考慮いたしまして、下水道から公共用水域への移行もあるのではないかと考えますと、さらにPECが変わってくる可能性がある、そういった地点が出てくる可能性があるということも加味いたしまして、総合的な判定としては、排出源を踏まえた環境中濃度を充実する必要があるといった観点から、情報収集が必要ということで▲の判定といたしました。
 なお、資料が前後して恐縮ですが、資料3-2の13ページをご覧いただきますと、こちらは過去にも評価を行った再評価の物質でございますが、p-アミノフェノールにつきましては一番上にございますとおり、過去のもの、第3次では曝露情報が得られませんでした。今回は、新しく得られた知見で毒性値が10倍近く下がっており、曝露情報とともに今回初めて判定できたということで、▲の判定となってございます。
 11ページに戻っていただきまして、銀及びその化合物の御説明をいたします。
 銀につきましては、リスクの判定も総合的な判定も、いずれも■となってございます。
 こちらも資料3-3を参照しながら御説明させていただきたいと思います。93ページをご覧ください。
 一番下の表4.2のところでPEC/PNEC比が1を大きく上回ったという結果が得られました。こちらの結果をもとに、詳細な評価を行う候補という判定となりました。
 94ページをご覧いただきますと、この評価についてのまとめを記載してございます。記載のとおり、最大濃度の地点でPEC/PNEC比が非常に大きいことに加えまして、今回得られた黒本調査のデータの中で、15地点の淡水域の情報があったんですが、その大半である12地点においてPEC/PNEC比が1を超える結果となりました。
 ただし、今回得られました曝露情報ですが、全て全銀についての濃度であり、また、94ページの後段に記載してございますけれども、OECDのガイダンス文書等で金属の毒性に関する項目といたしまして、水中の存在形態であるとか実際の水中の条件、DOC等の環境条件に関しても毒性の結果に影響を与え得るということが示されてございます。こうした条件にも考慮しながら、詳細評価を行うことが必要というまとめ方とさせていただいてございます。
 銀については以上です。
 また資料3-2の11ページに戻りまして、次に4番目の物質、2,4-ジニトロフェノールでございます。こちらも第2次からの再評価となってございますが、今回は、PEC/PNEC比が0.1を超えて、情報収集が必要ということでございました。
 13ページを見ていただきますと、第2次の結果との比較がございます。
 第2次は、曝露情報が検出下限値以下であったため判定できなかったんですが、今回は曝露情報が得られ、また、新しく得られた毒性に関する知見で、最も感受性の高い魚類のデータが得られたこと等ございまして、アセスメント係数も上がったため、PNECが上がってございます。結果としまして、情報収集が必要という結果になってございます。
 11ページに戻りまして、■の判定となりました7番目の物質、ジオクチルスズ化合物について御説明いたします。こちらは淡水域でPEC/PNEC比が1を超えております。これにより、詳細な評価を行う候補となってございます。
 続きまして9番目の物質、ジブチルスズ化合物につきましても同様でございまして、PEC/PNEC比が海水域で5を超えております。こちらも詳細な調査を行う候補となってございます。
 最後、11番でございますが、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケートにつきましても、詳細な評価を行う必要があるという結果となってございます。
 こちらにつきましては淡水域と海水域で濃度が大きく異なっていることから、今後は水域別の評価の実施を考える必要があるととりまとめさせていただいてございます。
 さらに13ページで前の評価との比較をご覧いただきますと、9番目のジブチルスズ化合物につきましては第8次の評価のときも■評価でございます。今回、曝露濃度は下がったんですがPNECが5分の1程度に下がっておりまして、今回も■となってございます。
 生態の評価につきましては、以上でございます。
 資料3-2の5ページに戻っていただければと思います。
 こういった結果を踏まえての今後の対応につきまして、御説明させていただきたいと思います。
 結果の公表につきましては、先ほど申し上げましたとおり、今後インターネット上でグレー本といて公表予定でございます。
 (2)ですが、今回、詳細な評価を行う候補とされた物質につきましては、規制当局である関係部局等へ情報提供いたしまして、より緊密な連携を図ることによって取組を促すことを考えております。
 6ページをご覧ください。
 今回は、対象物質としましては主に生態リスクということですので、水環境課への情報提供となると考えてございます。
 (3)ですが、今回も再評価の物質がたくさんございましたけれども、今後も必要に応じて再評価を行うというスキームを続けてまいりたいと考えております。
 (4)今後の課題ですが、これはこの後、御説明いたします資料3-4とも関係いたしますけれども、今後、ガイドラインにつきまして、さまざまな新しい知見等も踏まえまして、必要に応じて見直しを行ってまいりたいと考えております。次年度の課題としまして、具体的にはベンチマークドーズ法を用いた定量的な発がんリスク評価等ということで、具体例を挙げさせていただいておりますが、これにつきましてはこの後、資料3-4を用いて御説明させていただきます。
 その他、QSARの活用であるとか候補物質の絞り込みの改良等々、課題としては考えておるところでございます。
 資料3-2につきましては、以上でございます。
 引き続きまして、資料3-4の御説明をさせていただきたいと思います。
 資料3-4は報告事項とさせていただいておりますが、ちょうど1年前の本委員会において初期リスク評価の課題として御指摘いただいた点につきまして、今年度、取り組んでまいった御報告でございます。
 資料3-3として取りまとめるグレー本に掲載する内容ではございませんが、本日は、今後のガイドラインの改良等に向けましての御意見をいただければ幸いでございます。
 まず、どのような課題をいただいたかにつきまして、資料の1枚目を用いて御説明いたします。
 昨年度のとりまとめにおきましては、IARC分類の2Bまたは2B相当の物質であって動物実験のみで発がん性が認められた物質が存在していたんですけれども、ヒトに対する発がん性の有無の判断ができず、過剰発生率に係る情報が得られなかったため、現行ガイドラインに基づいて、評価は非発がん影響を用いたMOEの算出のみ、また、そのMOE算出時に発がんの知見を考慮して係数5で除すというような評価をいたしました。定量的な発がんリスクの評価は実施いたしませんでした。
 これにつきまして、本資料の中段にございますが、専門委員会で2つの指摘を受けました。
 まず①ですが、そういった物質につきまして、ヒトでの発がん性については情報がないだけであって、発がん性がないとは言えないということ、また、非発がんを認めた用量で既に発がんを認めているような場合には、発がんリスクを評価しないことによってリスクを過小評価するおそれがあるのではないかということ、さらにがんの過剰発生率を算出するためのスロープファクターやユニットリスクにつきまして、既に独自に算出するためのツールも入手できるようになりつつあるので、初期リスクとしても計算することはできるのではないか、そういった御指摘をいただいたところでございます。
 また、②にございますとおり、非発がん影響についてMOEの算出を行うときにも、一律5で除していたんですが、発がんの生じ方が様々であるのに一律に5でよいのかという御指摘も頂戴いたしました。
 これを受けまして今年度、「このため、」以下にございますが、①につきましては、まず過去の評価物質につきまして、上記の御指摘に該当する物質を洗い出しまして、下の表の5物質を抽出いたしました。それから、それらにつきまして定量的な発がん評価を実際にやってみました。
 ②につきましては、今後の評価、ケース・バイ・ケースで判断することになろうと思いますので、しっかりとそういった物質が出てきたときに判断していこうというふうにとりまとめを行っております。
 ①の5物質につきましての定量評価につきましては、ベンチマークドーズ法を用いた評価を実施いたしました。具体的な方法につきましては、2枚めくっていただきまして、別紙の実施手順に基づいてベンチマークドーズを算出いたしました。
 簡単に御説明させていただきます。
 まず、Iの1.ですが、米国の環境保護庁(EPA)が開発して公開しているベンチマークドーズソフトウェアを用いて、幾つかの設定を当てはめて行いました。具体的には、ベンチマーク反応レベルとして10%を設定いたしまして、BMDL10を求めるということでございます。
 1つ前の紙に参考をつけておりますが、対象としたデータにつきましては基本的には対照群を含む4群が得られたデータを用いてございます。
 別紙に戻りますけれども、5.にございますように、EPAのソフトウェアに収録された標準モデルを使用してございます。複数のモデルからBMDL10を算出する際のモデルの選択につきましては、2ページの7.からに基づいて、3パターンで検討いたしました。
 まず、7.1のとおり、発がんを評価するということでマルチステージモデルを優先する方法、それから7.2の(a)のとおり、全てのモデルからデータ群へのモデルの当てはまりのよさを示す指標であるAICを用いて、これが最小のものを選ぶ方法、それから7.2の(b)にございますとおり、最小のAIC+2の範囲内にあるモデルを選択する、この3つの方法を用いてBMDL10を算出してございます。
 その結果を用いまして、3ページにあるような手続きを経まして、がんの過剰発生率の算出を行いました。
 3枚戻っていただきまして、結果を御説明いたします。2枚目の、横向きの表が結果でございます。
 表の見方ですが、最も高いリスクを示した腫瘍のデータを一番左の欄に、それから、3通りのモデルの選択からBMDL10を記載してございます。それらから得られたユニットリスク又はスロープファクター、過剰発生率から導かれるリスクの判定を記載してございます。
 判定の基準は右下の矢印の図のとおりでございまして、過剰発生率が10-6を超えたものについては情報収集が必要、10-5を超えた場合は詳細評価の候補としてございます。
 各物質の結果につきましては表のとおりでございまして、1,1-ジクロロエチレンの吸入が詳細評価■となりました。それから三酸化ニアンチモンの吸入が▲、2-クロロニトロベンゼンがの経口が○、4,4'-ジアミノジフェニルエーテルの経口が○となりました。また、四塩化炭素の吸入につきましては閾値があると考えられていることから、BMDL10を無毒性量等と設定しましてMOEを算出いたしましたところ、▲となりました。
 この表では、一番右の欄で第14次、15次における非発がん影響をベースとしましたMOEによる判定結果と併記してございますが、判定結果は、この4物質につきましては同じ結果となりました。
 なお、三酸化ニアンチモンのMOEにつきましては、判定結果が(▲)となっておりますが、これは実測値から求めた判定は○であったものの、PRTRを基にした高排出事業所近傍の大気中予測濃度を用いるとさらに低いMOEとなったため、▲としていたものです。
 こうした結果から、これらの5物質につきましては、MOEを用いた判定と比較いたしまして、発がんを考慮しないことによって大きなリスクの見逃しはなかったと言えるのではないかと思いますが、こうした検証を行うこと自体が非常に有効であったと考えている次第でございます。
 今回の第16次とりまとめにおきましては、IARCの発がん性分類2B又は2B相当という物質はなかったんですけれども、今後2B物質の評価が必要となる場合を想定いたしまして、こういったケーススタディを今回実施してみた結果を考慮して、ガイドラインを見直していくなど検討してまいりたいと思っております。
 先ほどの資料3-2の課題におきまして、こうしたケーススタディを元としたガイドラインにつきましても記載させていただきましたのは、こういったケーススタディを行ったことが背景にございます。
 以上、御説明とさせていただきます。

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 先ほど資料3-1の説明の中で、今回のとりまとめに当たって専門家から構成される分科会などで別途御議論いただいたということでございました。
 本委員会において審議に入る前に、それぞれの分科会などで座長を務められた中杉参考人、楠井委員、青木委員から補足説明などございましたら御発言をお願いしたいと考えております。
 まず、曝露評価分科会の座長を務められた中杉参考人より御発言をお願いいたします。

○中杉参考人 今の環境省の御説明でかなり詳しくお話しいただいたんですが、少し追加でコメントしておきたいと思います。
 まず、資料3-3、49ページのp-アミノフェノールでございます。
 これは化管法に基づく届出外排出量のうち、下水道への移動量を考慮した推計という従来やったことのない方法を使いました。従来は、表2.1で見ていただくと、公共用水域への届出排出量に基づいて公共用水域の濃度を勘案して、そのリスクがどうか判定しているんですが、これを見ていただくと、届出外のところの排出量が64と、届出事業所をはるかに上回る量が出ています。この業種が下水道であるということで、どういうところに出てくるかというと、水に出されているのが大部分であろうと考えられます。
 もう一つ、移動量を見ていただくと、届出の移動量が下水道77とあります。実はこの前年には下水道への移動量が64です。それをもとにして次の年に、届出外の排出量ということで64を下水道に割り振っているということですので、これを参考にしないとかなり過小評価する可能性があるだろうという判断のもとに、特例といいますか、こういう非常に稀なケースについてということで評価しました。それからもう一つ、どこの下水道へ移動したかも化管法のほうで届出がありますので、下水処理場ごとにどれだけp-アミノフェノールがその下水道に入ったかがわかります。そういう意味では場所も特定できるということで、非常に稀なケースですけれども、こういうことをやってみました。
 もう一つ、p-アミノフェノールについては下水処理の間に分解するのではないかという意見が曝露評価分科会で委員から出たんですが、実際に下水道からの、排水が検出されているケースがありますので、安全側を見るという意味で、そのまま全量入れたということでございます。
 そういうふうにして曝露量を、化管法に基づく推計をした。その結果がリスクありという懸念になったので▲になったということでございます。
 それから、銀についても御説明いただきましたけれども、全銀濃度で測定していますので、実際には河川中の存在形態がいろいろである。それをどう評価するかということで、これはまた楠井先生から御説明をいただくかと思いますけれども、そのような形での評価をしている。
 それからもう一つは、銀も自然由来のものがあるだろうということで、自然由来が原因の場合にはとらないということでしたけれども、今回の河川の濃度は茨城県の宮田川ですけれども、これは非鉄金属の精錬所があるところですので、そこの排水由来であろう。地質由来も若干あるのかもしれませんが、排水由来だろうということで、採用しています。
 もう一つ、海のほうの濃度は京都府の宮津湾のデータですが、これはちょっと排出事業所というのが明確にはわからないんですけれども、自然由来だと言い切れなかったので、それを採用して評価しているということでございます。
 もう一つ変えたところは、従来、食品のデータがないときに魚介類の実測値を用いて曝露量を評価するというやり方をしていました。105ページの2,4-ジニトロフェノールを見ていただくといいんですが、この中で、黒本の調査で魚類と貝類と2つの測定が行われていて、従前は魚類のデータを用いて魚介類の摂取量に足し合わせて曝露量を計算していたんですが、貝類と魚類は少し違うではないかということで、今回は魚類の濃度に魚類の摂取量を掛け合わせたもの、それから貝類の濃度に貝類の摂取量を掛け合わせたものを足して計算するということをやっております。そこら辺が少し従前とは違います。貝の摂取量はそんなに多くないので大きくは変わらないんですけれども、一応正確にということで、そのような表現をして変えたということでございます。
 もう一つ大きな点が、有機スズ化合物の部分です。ここのところは環境省の実測データ、黒本調査の結果、いろいろな形で濃度が示されているんですが、今回のものはリスク評価によってはみんな単位を、ジオクチルスズ化合物はジオクチルスズで、実際にはその塩化物だとか何とかいろいろあるんですが、オキサ類いろいろとあるんですが、ジオクチルスズと換算してやる。モノブチルスズ化合物についてはモノブチルスズに換算してやる。ジブチルスズ化合物もジメチルスズ化合物も同じように換算してやるという形で評価してございます。
 もう一つは、これも化管法の評価をやっているんですが、有機スズ化合物については、化管法では有機スズ化合物での集計ということでトータルの評価をしています。届け出ている事業所がそれぞれあるんですけれども、その事業所がどの有機スズ化合物を出しているかが分からないという難しい問題が出てきました。そこで、届け出ている排出量の多い事業所がどんな種類の有機スズ化合物を出しているかを判定しなければいけないということで、事業所で出している文書といいますか、情報、実際にこういう物質を扱っていますと説明会で出しているようなところについてはそれを採用する、あるいはそういうものがないところについては、そこの業種でどういう製品をつくっているか、例えばジブチルスズをどういう場面で使っていそうかということで、多分そこであればこの物質を使っている可能性があるということで判定して、その対象物質を最も多く出していると考えられる事業者の排出量をもとに推定する、そういう操作をしてございます。
 そこら辺のところは少し紛れがあるかと思いますけれども、多分それで間違いないのではないかと考えております。

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 続きまして、生態リスク評価分科会の座長を務められた楠井委員から御発言をお願いいたします。

○楠井委員 生態リスク評価は3回分科会を開催いたしました。
 報告の中にもございましたが、今回、詳細評価が必要となった銀につきましてはいろいろ議論がございました。結果的には全銀で扱うということですが、現在、金属リスクについてはいろいろ研究が進んでおりまして、遊離イオンが毒性に大きく関与しているのではないか、また、有機物、共存物質の影響を表現するバイオリガンドモデルなども開発されております。
 ただ、今回につきましてはそういった状況について金属のワーキンググループなどからもいろいろ情報を受けて解析はしましたが、最終的には一応全銀で行っていくと。ただ、やはり先ほどから出ていますように、では実際にそのリスクがあるかといった現場での状況などを考えていく上では、やはり金属の存在形態を評価しないとできないだろうと思っております。
 ただ、今後、取り上げる可能性がある銅とかそういった物質についても同様のことがありますので、ここら辺については今後、考え方をまとめておく必要があるのではないかと思います。
 また、今回初期リスク評価の中ではナノ粒子を省くということだったんですが、実はナノ粒子のほうで溶存体の金属、銀も扱っていたり、そこに結構情報があったりしましたので、文献探索の段階で少しそういったところまで広げて調べていく必要があるのかなということが、今回、明らかになったかと思います。
 それから医薬品、今回、クラリスロマイシンを行いました。これは非常に甲殻類に強く効くことが明らかだったので、それが決め手になって、今回、詳細リスク評価となりました。今後ともそういった可能性はあるのかなと思います。
 それからQSARの活用ということですが、今までやっていた感じではなかなか出番がなかったのかなと思います。QSARのほうは急性毒性だけを扱うことになりまして、実は慢性毒性が決め手になる場合も結構ありまして、その場合、生物間の相対的な感受性のほうからやはり一番効くのはこれだけれども、これは効かないから多分キーデータにはならないという形で、そういった相対的な感受性の差を寛容しているほうが、どちらかといえば出番が多いなということがありまして、このガイドラインの改定等々でもそこら辺をはっきりさせておく必要があるのかなと思っています。

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 続きまして、健康リスク評価分科会の座長を務められた青木委員から御発言をお願いします。

○青木委員 では、健康リスク分科会について御報告申し上げます。
 健康リスク分科会は3回の分科会を開きまして、この初期リスク評価を実施したわけでございます。また、今年は宿題として、実験動物のデータから定量的に発がんリスクを評価していくことが今後、必要ではないかという御指摘をいただきましたので、それを受けて発がんリスク評価ワーキンググループを2回開催いたしまして、今回の御報告に至った次第でございます。
 まず、健康リスク評価に関してでございますが、資料3-2の8ページでございます。環境省の御担当から詳細に御報告いただきましたので、若干追加させていただきます。
 まず今回、発がんをエンドポイントとしてリスク評価を行う例がなくて、現実にはMOEによるリスク評価を行うことになりました。これは見ていただければですが、当初予想していたことではあるのですが、やはりこういう有害性のデータは経口曝露による知見が多うございまして、そういうことから、有機スズ化合物は大気の部局からの要望だったのですが、現実にはリスク評価を実施してみますと経口によるデータが多く、吸入のデータがないことから、リスク評価としては基本的には経口によるものが中心となりました。ただ、そういう中で、モノブチルスズ化合物に関しては吸入曝露のデータが得られたためそこからリスク評価を行ったところ、両者MOEを見てみますと、やはり吸入に関しては情報収集を進める必要があるというという結果が得られました。
 経口と比較してみますと当然大きな差がございますので、今後、有害性情報を収集するといっても、有害性のデータがなければそれ以上先に進めることができないのですが、そこは広範に情報収集に努め、また、これはあくまでも初期リスクを進めてきたことによるコメントでございますが、やはり吸入曝露を今後どのように、毒性の試験あるいは実験として進めていくかが、実は初期リスク評価の目的とは違ったコメントになってしまいますが、やはり重要な課題なのかなと思った次第でございます。
 それから今年の特徴として、生態のほうでも話題になりました銀、それから2,4-ジニトロフェノールがそれぞれヒトへの影響をエンドポイントとしてリスク評価が行われています。
 銀に関しては、資料3-3の84ページ、85ページにございます。ヒトへの影響ということで、従来、銀のリスク評価値としては、84ページの④のイ)の4行目にございますけれども、WHOの飲料水ガイドラインでは、銀のNOAELは生涯経口摂取量として10グラムと考えて、それから基準を求めているわけですけれども、やはり有害性データがきちんと得られているものからリスク評価を行うべきであろうという意見が委員の先生方から出まして、その代わりに85ページのオ)にあります歯肉びらんの治療の際のヒトでの銀沈着のデータを採用することにいたしました。実はこのデータは産業衛生学会での、労働衛生の吸入の基準のもとになっているデータでございまして、やはりこれを採用すべきということで、このデータをもとにリスク評価を実施させていただきました。
 次に、2,4-ジニトロフェノールです。これはある意味、トリビア的なところなのですけれども、実はこの2,4-ジニトロフェノールというのはかつて、1930年代らしいんですけれども、やせ薬として使われておりまして、もちろんそんなこと今はないわけでありますが、当然それは有害作用、今から見れば有害作用で、そのデータはもちろん十分にあるんですが、ただ、定量的リスク評価に用いることができるようなデータはないということなので、白内障が作用として見られているので、それをもとに、資料3-3の114ページ、評価に用いる指標の設定というところに書いてございますが、それをもとに資料3-2の8ページにあるリスク評価を実施した次第でございます。
 続いて、発がんのほうもお話ししたほうがよろしいでしょうか。資料3-4、いわゆる発がんのケーススタディ。

○櫻井委員長 時間がかなり押しているのですが、どういたしましょうか。

○青木委員 では、一言だけ。
 なかなかいいケーススタディだったと思いますので、これを参考にガイドラインをつくってまいりたいと思っております。
 以上でございます。

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 では、今までの御説明等の内容を踏まえて、御質問、御意見等ありましたら御発言をお願いいたします。

○関澤委員 環境リスク評価の企画委員会でも申し上げましたが、発がん性リスク評価についていろいろ検討を進めること自体は賛成で、モデルを当てはめていろいろ計算することは、やればできないことはありません。資料3-2のデータ集を見ると、1,1-ジクロロエチレンと2-クロロニトロベンゼンについて、西川先生や菅野先生はよく御存じだと思いますが、マウスの肝腫瘍についてのデータがあり、マウスで肝腫瘍が自然発生というか、0ppmでかなり高い値になっていて、こういったデータを計算して「計算し、このぐらいの値です」というやり方がいいのかどうか、腫瘍が元々どのような性質のものかということもこれから検討されるということなので、その検討に加えていただいたほうがよろしいのではないかと思います。

○西川委員 今の点につきましては、私も同じような考えを持っていまして、コントロールで既に高いものが有意に増えているような状況なので、発がんの専門家の目から見れば、恐らくプロモーションのような作用が働いていると思います。したがって、閾値があるような気もしますので、その辺りはよく見ていく必要があるかなと思います。
 それ以外のことで、よろしいですか。
 定量的発がんリスク評価法について御検討いただきまして、本当にありがとうございました。結果的に無毒性量に基づく評価とほぼ同じであったことは、非常によい結果であったと思います。
 ただし、事務局から説明があったように、これからIARCのグループ2B相当のものが出てきた場合には違う結果が、ケーススタディとして5つの物質しか見ておりませんので、ぜひ並行して評価を進めていただければと思います。
 1つ確認したいのは、資料3-3の181ページ、ジオクチルスズ化合物。この真ん中辺りに実験動物に関する発がん性の知見があるのですが、ここにDOTCとMOTCの混合物を用いた2年間のラットの発がん性試験があって、そこで胸腺腫瘍の発生の有意な増加があったということ。こういうことについて、これは混合物だから評価には用いないと理解しますけれども、それでよろしかったでしょうか。

○塚原環境リスク評価室室長補佐 いろいろ御指摘ありがとうございました。
 まず、1つ目のエンドポイントのとり方ですけれども、今後のガイドラインの検討に当たりまして、もっと揉ませていただきたいと考えております。
 もう一つ、資料3-3の181ページ、ジオクチルスズ化合物の発がんの知見に関する御質問ですが、この知見に関しまして、実際の安定剤の組成で、モノオクチルスズのほうが高い割合で入っているものでありました。それぞれの物質に関する発がんの知見であるとか、その他混合物に関してもいろいろ他の知見も当たってみたんですけれども、ここに書いていないんですけれども、他にもいろいろと実験はあるようで、混合物に関しては大半のもので発がんを認めなかったという結果であったようでございます。単独の試験については情報が得られなかったということで、ここに関しましてはジオクチルスズ化合物の発がんを判定するのはなかなか難しいということで、今回、採用しませんでした。

○西川委員 そうすると、これは情報収集を進めるということになりますか。

○青木委員 今後少しフォローアップが必要な物質だと思っております。ただ、確かに製品の有害性評価をする中から出てきたデータですので、やはりこの混合物となった多いほう、モノオクチルスズ化合物に関してどの程度情報があるかに関しては、フォローアップはしていく必要があると思います。正直申しまして、データリッチかどうかに関しては、予備的に事務局に調べてもらいましたが有害探索でなかなかないようなので、ちょっと難しいかもしれませんということは申し上げたいと思います。

○西川委員 これで安全であることにはならないと思いますので、何らかの対応といいますか、情報収集を含めてお願いしたいと思います。

○塚原環境リスク評価室室長補佐 ありがとうございます。
 本物質につきまして、現時点では得られている情報がそれだけだったんですが、今後、再評価とかさらなるフォローアップの時点では、この発がんの情報をしっかり収集していきたいと思います。

○西川委員 3点目ですけれども、細かい点ですが、まとめの表の■とか▲とか○という表記ですけれども、それとABCの表記が一目でわかるような書きぶりをお願いしたいと思います。今後の検討ということでお願いします。

○青木委員 定量的な発がんリスク評価のところ、一番最初のマウスの発がんのデータのところですが、確かに1つのガイドラインをつくって始めてみると、実験が、これを採用するのはいかがなものかというのが出てくるのはよくわかりました。そういう点、確かにガイドラインをつくっていく際に、実験の中身を吟味して考えていく部分を入れなくてはいけないということも非常に勉強になりましたので、そういう点では非常にいいケーススタディをさせていただいたと思います。
 また来年、少しブラッシュアップしていきたいと考えているところでございます。

○櫻井委員長 それから、一番最後の■とか▲を前のほうのAB……

○西川委員 ABCの分類とわかりやすいようにといいますか、そういう記載を。

○櫻井委員長 これは、いかがですか。

○塚原環境リスク評価室室長補佐 長年このような形でやってきているんですが、確かにわかりにくいところはあろうかと思いますので、次年度に向けて検討させていただきたいと思います。

○櫻井委員長 次年度に向けて検討ということで、よろしくお願いいたします。
 あと、よろしいでしょうか。もうそろそろ時間がなくなってまいりましたので……

○関澤委員 すみません、今日、議題に上がっていたのでやはりこの場がふさわしいのかと思いながら、申し上げていなかったのですが、クラリスロマイシンなど人用の医薬品の環境生物影響は初期評価をやり、また、環境動態調査でも、幾つかの人用医薬品の環境流出について測定があります。
 ところが現在、食品安全委員会では、動物用医薬品がほとんど動物に吸収されないで環境中に排出されていることを重視していますが、これについて農林水産省で養豚場や養殖場でのデータは見ているけれども、環境への流出は誰も見ていないことになっております。実際には、これら動物用の抗生物質が環境に出ることによって多剤耐性菌が出来ていることを食品安全委員会は非常に懸念しているようです。
 国内で、たしか他と連携してやるようなことを食品安全委員会は申していたように思いますが、環境省としてはこのような環境中への流出について懸念が高いような物質を今後、検討していただくことが、次年度は無理としても、その次ぐらいにお考えいただけばどうかと思いました。

○藤井環境安全課専門官 ありがとうございます。その件につきましては、黒本調査のほうから回答させていただきます。
 環境中における動物用医薬品につきましては、私ども黒本調査のほうでも、一部、調査を実施しております。具体的にはリスク評価の担当部署から要望がありますが、例えば今回の資料2-4でいきますと、平成29年度に分析法開発に着手しているものとして、アモキシシリンといったものですとか、あとは14番のクロトリマゾールといったものがありますので、要望を受けて、引き続き動物用医薬品を含めて調査してまいりたいと考えております。生態影響の観点から、化学物質の影響というふうな形で見ることにはなると思いますが、そういったことを進めてまいりたいと考えております。

○関澤委員 最終的にヒトへの影響ということも、もちろん入ってくるのではないかなと考えますが。

○藤井環境安全課専門官 ヒトへの影響ですか。

○関澤委員 多剤耐性菌ができるということで、ヒトへの健康影響を食品安全委員会は配慮されているんだと思いますので、環境生物への影響だけを見るということではないのではないかと思います。

○藤井環境安全課専門官 いわゆる環境濃度については、いずれにしましても私どもが中心になって測定する。そして必要に応じてそういったものを情報提供していくなどして、連携していくものではないかと考えています。そして、それぞれのリスク評価の担当部署でそういったデータを活用していただけるものと私どもは理解しております。

○櫻井委員長 ヒトのほうは、今までまだ取り組んでいなかったのでしょうか。

○塚原環境リスク評価室室長補佐 我々初期評価のほうで、クラリスロマイシンは環境安全課からの要望物質ということで受けておりまして、環境安全課の評価そのものが生態メインということになっております。

○櫻井委員長 そういう要望がまだ出ていなかったということですね。今後それも考えなければいけない。ヒトへの影響ですね。

○笠松環境リスク評価室長 いろいろな考え方があろうかと思いますけれども、クラリスロマイシンについて、当然関係部署の要望に応じて初期リスク評価を行っているのはもちろんですが、ヒトへの影響となりますと、特に医薬品でもございますし、そこは当然、ヒトが飲むことを前提にした安全性ということがあるかなと思っておるところでございます。
 そういったことも含めて、関係部署との連携を深めてまいりたいと思っております。

○櫻井委員長 よろしいでしょうか。検討は当然やっていくことで。

○関澤委員 健康影響評価は食品安全委員会に任せて、環境中の存在を。

○遠山委員 時間もないようですので簡単にお願いしたいと思うんですが、ここは中央環境審議会の環境保健部会化学物質評価専門委員会ということですが、ここの、要するに環境安全課が所管する、あるいは環境保健部が所管することに関しては、もちろんここで議論するのはわかるんですが、環境省全体で扱っている他の、例えば農薬をはじめとするさまざまな物質に関しても、参考情報だけでもいいですから、やはり全体として環境中に出てくる化学物質の曝露とそのリスク評価に関しての情報を得る場にしていただけたらいいのではないかと希望したいと思います。
 もう一点は、いつも時間がないのですけれども、これだけいろいろとリスクの評価についてさまざまな問題があるものですから、化学物質のリスク評価に関する今後の問題点について、フリートークでもいいですし、そういった時間を少しとっていただけるとありがたいと思います。

○櫻井委員長 今後に関するご意見ということですね。
 では、今日のところはそろそろ終わりとさせていただいてよろしいでしょうか。
 ありがとうございました。
 それでは、かなり多くの御議論をいただきましたが、当面の資料3-2につきましては「とりまとめ結果の概要(案)」となっておりますが、この(案)をとって、これをもって公表することにさせていただいてよろしいでしょうか。

(異議なし)

○櫻井委員長 ありがとうございました。
 そのように御了解いただきましたので、よろしくお願いいたします。
 あと報告事項がございましたね。その他ということで。

○瀧口環境安全課長 ええ。ただ、もう時間も超過しておりますので、参考資料1、参考資料2の説明は省略させていただきたいと思います。お時間があるときにご覧いただければと思います。

○櫻井委員長 それでは、御報告を受けたということで、各自お読みくださいということで、予定した議題はこれで終了となります。
 事務局より連絡事項がありましたらお願いいたします。

○瀧口環境安全課長 本日はどうもありがとうございました。
 本日、御報告いたしましたいわゆる黒本調査と環境リスク初期評価の2つの議題につきましては、近日中にこの結果の概要を公表するということで進めさせていただきたいと思います。
 また、いわゆるこの黒本、それからグレー本の本体につきましては、今回の委員会の中でいただいた御意見、御指摘等を反映しまして、さらに内容も精査した後で、年度内を目途に公表するということで進めさせていただきたいと思います。
 また、本日の配付資料はかなり大部になりますので、そのまま机の上に置いておいていただければ、委員の先生方には後ほど事務局から郵送させていただきます。
 また、次回の委員会につきましては来年度の同じくらいの時期の開催を予定しております。時期が近づきましたら必要な連絡、調整をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

○櫻井委員長 以上をもちまして第23回化学物質評価専門委員会を閉会いたします。
 どうもありがとうございました。

午後6時10分 閉会