第13回中央環境審議会環境保健部会議事録

日時

平成17年9月1日(木)10:00~12:00

場所

環境省 第1会議室

議題

【審議事項】

環境基本計画見直しに係る「化学物質の環境リスクの低減」戦略プログラムの検討について

【報告事項】
[1]

平成18年度環境省重点施策について

[2]

化学物質対策等について

[3]

水俣病対策について

[4]

環境省における毒ガス問題への最近の取り組み状況について

[5]

アスベスト対策について

配布資料

資料1 中央環境審議会環境保健部会委員名簿
資料2-1 「第三次環境基本計画策定に向けた中間とりまとめの公表及び新しい環境基本計画のあり方に関する意見の募集について」(報道発表資料)
資料2-2 「今後の検討方法について」(第28回中環審総政部会資料)
資料2-3 「化学物質の環境リスクの低減」に係る戦略プログラムの検討について
資料2-4 第三次環境基本計画における重点分野「化学物質の環境リスクの低減」の戦略的プログラムの策定に向けた検討メモ
資料3 参考資料(別添参照)

参考資料

資料3-1 平成18年度環境省重点施策
資料3-2 化学物質対策等について
1P
官民連携既存化学物質安全性情報収集・発信プログラムの開始について
3P
化学物質審査規制法の施行状況について
5P
化学物質のリスク初期評価等(第4次とりまとめ)の結果について
12P
平成15年度化学物質環境実態調査結果について
16P
「残留性有機汚染物質に係るストックホルム条約に基づく国内実施計画」の策定について
17P
「化学物質の内分泌かく乱作用に関する環境省の今後の対応方針について-ExTEND2005-」について
20P
「PRTRデータを読み解くための市民ガイドブック~平成15年度集計結果から~」の作成・公表について
23P
「かんたん化学物質ガイド」の作成・公表について
27P
「化学物質ファクトシート-2004年度版-」の作成・公表について
33P
「化学物質と環境に関する学習関連資料データベース」の更新について
37P
「花粉症保健指導マニュアル」の改訂について(第3報)-今春(平成17年)のスギ・ヒノキ科花粉飛散終息予測
39P
「熱中症保健指導マニュアル」の作成について
資料3-3 水俣病対策について
資料3-4 環境省における毒ガス問題への最近の取り組み状況について
資料3-5 アスベスト対策について

議事

午前10時00分開会

○環境安全課長 定刻になりましたので、ただいまから第13回中央環境審議会環境保健部会を開催いたします。
 まず、議事に先立ちまして、お2人の委員の改選・再任が行われましたので、御報告申し上げます。
 資料1を御覧ください。臨時委員として、7月11日付で社団法人日本自動車工業会環境委員会副会長、只木可弘委員に代わりまして、浦田隆委員に御就任いただいております。
 浦田委員でございます。

○浦田委員 日本自動車工業会環境委員会の副委員長の浦田でございます。よろしくお願いします。

○環境安全課長 よろしくお願いいたします。
 また、同じく臨時委員として、8月26日付で関西電力株式会社取締役環境室長今井武委員に代わりまして、平山孝信委員に御就任いただいております。
 平山委員でございます。

○平山委員 関西電力の平山でございます。今井に代わりまして今回から出席させていただきます。よろしくお願いいたします。

○環境安全課長 よろしくお願いいたします。
 また、本日は崎田委員、藤井委員、井口委員、北野委員、佐藤委員、若林委員から御欠席の御連絡をいただいておりますが、委員及び臨時委員の過半数の方が御出席されておりますので、本部会は成立いたしております。なお、本会議は公開で開催いたします。
 まず、議事に先立ちまして当環境保健部長滝澤より御挨拶申し上げます。

○環境保健部長 環境保健部長の滝澤でございます。今月いっぱいはクールビズ期間ということで、皆さんの方も大分周知されているようですが、その点お許しを頂きたいと存じます。
 本日は通算13回目の環境保健部会でございまして、御多用中のところを御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 本日は、次期環境基本計画に盛り込むべき今後の化学物質対策が主な議題でございます。目下、環境省全体でこの環境基本計画の見直し作業を鋭意進めておる状況でございまして、本日、環境保健部会の先生方にも、今の時点でのこちらの考え方をお示しし、忌憚のない御意見を頂くというのが部会の中心でございます。
 環境基本計画の各論部分につきましては、10項目の重点分野が挙げられておりまして、戦略的プログラムという形で検討することとされております。その中で、今申し上げた化学物質の問題が重点分野の一つとして取り上げられております。
 この分野の戦略的プログラムを、10月ないし11月までに取りまとめたいと考えておりまして、総合政策部会の浅野先生にこの分野の担当となっていただいており、中杉先生を座長とする検討チームを、適宜開催をしてきておるところでございます。
 この環境基本計画見直しの検討の一環といたしまして、2025年という長期の将来を見越しまして、化学物質対策をどのように進めていくべきかというような観点、あるいは今後5年間にどのような対策を講じていくべきかというような点等々、この環境基本計画を作成するに当たっての化学物質問題を取り巻く課題について、いろいろな形でのさまざまな御専門のお立場からの、忌憚のない御意見を是非とも頂戴したいと考えております。
 また、前回の環境保健部会は2月でございましたので、もう半年以上経つことになります。この間、さまざまな環境保健行政に関する動きがございましたので、あわせてその辺の御報告もさせていただきたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。
 本日は、御出席いただきましてありがとうございました。

○環境安全課長 続きまして、お手元にお配りしました資料を確認させていただきます。
 資料1は、先ほど御覧いただきました委員名簿でございます。
 資料2に1、2、3、4。2から4までは1枚紙でございますが、資料2の束が一つございます。そのほか、環境基本計画関係では、部数が足りませんので会議後回収とさせていただいておりますが、現行の環境基本計画の冊子も机の上に置かせていただいております。
 それから、資料3といたしまして、資料3-1、3-2、3-3、3-4、3-5と5部用意させていただいております。
 資料は以上でございます。
 それでは、櫻井部会長、議事進行をよろしくお願いいたします。

○櫻井部会長 それでは、早速、議事に入ります。
 まず、議題1の環境基本計画見直しに係る「化学物質の環境リスクの低減」戦略プログラムについてでございます。滝澤部長の御挨拶にもありましたように、本会合の主な目的は、この次期の環境基本計画に盛り込むべき化学物質対策について、本日は御自由な御意見を頂きたいということでございます。したがいまして、事務局からこれから御説明いただき、その後、御出席の委員全員の方々から、順に御意見をいただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、事務局から資料2-1から2-4の内容について、御説明をお願いいたします。

○化学物質審査室長 化学物質審査室長の森下と申します。7月20日付で異動してまいりました。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
 それでは、資料の説明をさせていただきます。恐縮ですが、座ってさせていただきます。
 それでは、資料2-1を御覧いただけますでしょうか。「第三次環境基本計画策定に向けた中間とりまとめの公表及び新しい環境基本計画のあり方に関する意見の募集について」と、こういう資料でございます。こちらは、今回先生方にお集まりをいただきまして、化学物質のリスクの削減の戦略につきまして、御議論をいただくこととなりました背景を御説明させていただくために御用意した資料でございます。
 既に御案内のとおりでございますけれども、環境基本計画は環境基本法第15条に基づきまして、環境保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため環境保全に関する基本的な計画を政府が定めるということになっております。環境基本計画は、政府全体の計画ということでございます。
 環境基本計画は、第1回目が平成6年12月、第2回目が平成12年12月に策定されておりまして、概ね5年をめどに改定をするということになっており、今般、第3回目の基本計画の策定に向けた検討が行われているという状況でございます。具体的には、本年の2月に、環境大臣より中央環境審議会に対しまして、基本計画見直しにつきまして諮問が出されておりまして、それを受けて中央環境審議会の総合政策部会におきまして、現在審議がなされております。
 資料2-1は、7月19日に発表されました報道発表資料でございまして、その基本計画3回目の基本計画の策定に向けた考え方、その中間とりまとめという内容になっております。8月31日、つまり昨日までのスケジュールでパブリックコメントの受け付けを行っていた状況であります。
 この中間とりまとめの概要につきましては、時間の都合等もありまして説明は省略させていただきますけれども、1枚おめくりいただきますと、その概要の資料が載ってございます。その概要版の中に書いてございますように、まず現状と課題を整理した上で、今後の環境政策の展開の方向性、これを定めていくということとされています。
 おめくりいただきましてその裏面になりますけれども、四.というところでございますけれども、「持続可能な社会に向けた重点的な取組」という柱がございます。先ほど、環境保健部長より挨拶の中でも触れさせていただきましたように、その中で10個の重点分野、これを取り上げて検討するということになっております。個別分野が6つ、横断的な分野が4つ、合計で10個ということでございますが、「化学物質の環境リスクの低減」が個別分野の5番目の課題として挙げられているということでございます。
 それでは、この個別分野を具体的にどのような形で検討を進めていくかにつきまして、説明をさせていただきますのが資料2-2「今後の検討の方法について」でございます。これは、本年6月13日に開かれました中央環境審議会総合政策部会で配付され、説明された資料でございます。
 そこをまず御覧いただきますと、環境基本計画のこの戦略的プログラムを重点分野ごとに検討するということになっておりまして、例えば1.を見ていただきますと、各種団体と意見交換会を行う、これを重点分野ごとに行うということが方向性として示されております。ちなみに後ほど簡単に御紹介させていただきますが、化学物質については8月24日に既に意見交換会が実施されております。
 2.の方を御覧いただきますと、具体的な検討体制あるいは盛り込むべき論点、スケジュールというようなことにつきまして、既に中央環境審議会の総合政策部会から御指示をいただいているところであります。検討体制につきましては、この重点分野ごとに行います。そして当該分野を主に担当する総合政策部会委員を決めます。化学物質につきましては、浅野先生に御了解いただいておりますけれども、浅野先生に担当になっていただいた上で、必要に応じてその他の総合政策部会委員ですとか、あるいは関連する分野の他の部会の協力を得て検討を行うということになっております。委員の具体的な人選は総合政策部会長が行います。また環境省のほか、関係する府省の協力を得ながら検討を行うということになっております。
 このプログラムの中に盛り込むべき事項、論点ということですが、5つポイントが示されております。中長期的に目指すべき目標。それから施策の基本的方向。重点的に取り組むべき事項、これをさまざまな関係者の主体ごとに取り組むべき行動を明確化するよう努めることとされています。それから最後のポツになりますけれども、目標の達成状況や取り組み状況を把握するための指標について検討を行って、具体的な案を策定するように努めることとするというふうな指示になっております。
 スケジュールでございます。この戦略的プログラムの分野ごとの検討につきましては、本年10月から11月を目途に総合政策部会に報告を行います。その後、その報告を受けまして総合政策部会の方で分野ごとの計画素案の作成作業を行う、このような全体の流れになってございます。
 それでは、引き続きまして資料2-3を御覧いただけますでしょうか。では、具体的に「化学物質の環境リスクの低減」に係る戦略的プログラムの検討をどう進めていくかを説明させていただきますのが資料2-3でございます。この化学物質に関する戦略的プログラムを検討するに当たりまして、検討チームを置かせていただくということになっております。
 これは、その総合政策部会の検討のために設置をされる検討チームということでございます。総合政策部会の御担当委員でいらっしゃる浅野先生、そしてこの検討チームの座長でいらっしゃる中杉先生ほか、そこにお名前を記載させていただいております11名の先生方に御参画いただきまして、検討チームを構成しております。そして、この検討チームの会合に際しましては、広く情報を発信するということで「化学物質と環境円卓会議」のメンバーの方々に御案内をして傍聴をしていただくということもいたしております。また、関係省庁の担当官の方々にも御出席をいただいて、必要に応じてメインテーブルに座っていただいて発言していただくということも行っております。また、必要に応じて検討チームによる関係省へのヒアリングを行うということにしております。
 そして、これから作成していく戦略的プログラムを検討するため、中央環境審議会環境保健部会の会合を開催してフリーディスカッションを行うために、本日、委員の皆様にお集まりいただいておるということでございます。また、別途、総合政策部会におきまして関係団体との意見交換会を開催することになっておりまして、こういったさまざまな取り組みの結果を検討チームにおける議論に反映させていくというのが、全体の流れとなっています。
 具体的なスケジュールにつきましては、最後の丸の部分で書かせていただきましたけれども、まず8月24日に検討チームの第1回目の会合を既に開催させていただきました。その際は、戦略的プログラムの検討方針について議論いたしております。また、同じ日の午後、総合政策部会による関係者での意見交換会が実施されておりまして、神奈川県、主婦連合会、電子情報技術産業協会、日本化学会、日本化学工業協会のヒアリングをさせていただき、意見交換会をさせていただきました。
 そして、本日の環境保健部会で自由な御意見をいただいて、インプットさせていただくこととしています。こういったさまざまな御意見等を踏まえまして、9月14日に第2回の検討チームの会合を開催いたします。そこでは、関係省庁の取り組み状況及び今後の課題について検討チームでヒアリングを行います。そして、戦略的プログラムの要素について議論を行い、こうした結果を踏まえまして、10月中旬に第3回目の会合を開いて戦略的プログラムについて議論、御了承をいただくというスケジュールで進めております。3回の議論というと、非常にインテンシブでございまして、必要に応じ、もう1回程度会合を開催するということもあるかもしれませんけれども、こういった形でかなり短期間ではありますが、検討を進めていきたいと存じます。つきましては、環境保健部会からぜひ忌憚のない御意見をインプットしていただければと考えております。
 以上でございます。

○環境安全課戸田補佐 続きまして、環境保健部環境安全課の課長補佐の戸田でございます。
 資料2-4を御説明させていただきたいと思います。失礼ではございますが、着席して御説明させていただきたいと思います。
 資料2-4、1枚表裏の紙でございますけれども、この資料は、先ほど森下室長の方からも申し上げましたように、8月24日の検討チーム会合で用いた資料と同じ資料でございます。最初の検討チーム会合に際しまして、何もペーパーなしで御議論いただくよりは、何か参照するようなものがあった方がよかろうということで、総合政策部会の浅野委員、中杉座長とも相談いたしまして作ったペーパーでございまして、先生方にも事前に送らせていただいたものでございます。
 このペーパーにつきましては、検討チーム会合でもちょっと整理が悪いというコメントも幾つか頂いたところでございますけれども、まずは、同じペーパーで御議論いただきたいということで配付させていただいたところでございまして、このペーパーを参照しながらコメントを頂ければ幸いでございます。
 それでは、内容について御説明いたします。このペーパーの構成は、まず1.が現状と課題、2.が戦略目標、裏を返しまして3.が施策の基本的方向、4.が重点的取組事項、5.が戦略目標の達成状況などを把握するための指標及び数値目標ということで、森下室長の方からも説明いたしました総合政策部会の議論における5つの柱立てに沿った構成で作っております。
 最初の現状と課題でございますけれども、5つほど柱を立てさせていただいております。
 まず一つは、化学物質というものにどんな特徴があるのかということで、これはいろいろなところで言われていることでございますけれども、化学物質は有用であると同時に有害性を持つものであるということ。そもそも環境リスクに関する不確実性というのがあるということ。化学物質は非常に多種多様であって、その使用量も非常にたくさん扱われるものから、非常に微量で検出も難しいものもあるということ。またその残留性、蓄積性、移動性また毒性といったものも非常に異なっていて、それぞれの特徴に応じた対応が必要になってくるということ。また、排出源特定が困難であって、意図されず生成する物質であるとか自然由来の物質というものもあって、こういった背景が化学物質問題の複雑さの背景になっているということが挙げられるのではないかということであります。
 2番目が、有害性、暴露、リスクに関する情報の不足ということでございまして、まず市場に流通する化学物質の有害性等の知見が不十分であるということ。データが無いという部分もありますし、そもそもどういうふうに評価していいかという方法が確立していないという部分もございます。また、化学物質の生産、使用、廃棄、環境残留に関する情報が不足しているということ。これもデータがない場合、あっても共有されないという問題もあります。それから、新たな評価手法・技術が必要ではないかということがあります。
 3番目といたしまして、その対策手法、化学物質対策を講ずるに当たっての手法が規制的手法から自主管理手法まで、いろいろな手法があるというのが最初の丸でございます。特に人の健康だけではなくて、動植物やその生態系の保全に向けた新たな制度というのが、前回の環境保健部会以降、整備されてまいりました。化学物質審査規制法、農薬取締法にも生態系に着目した規制が導入されておりますし、水質環境基準につきましても生態系の観点からの水質環境基準が設定されているところでございます。また背景といたしまして、関係法律の附則に書いてございます5年後また7年後の見直しという年次期限が来るということもあります。
 4番目といたしまして、「安全」と「安心」のギャップというのが問題であるということで、国民の皆様が持っておられる、その不安の要因の解明とそれへの対処の必要性があるという点です。そのためには的確で分かりやすいリスク情報の伝達と関係主体の相互理解の促進というのが必要であって、またその信頼関係というのがベースにあるということであると思います。
 最後でございますけれども、国際的な動向への積極的な対応というのが必要であるということです。まず、中国等の東アジア、またひいてはアジア太平洋地域における化学品の生産量の増加、あるいは排出量の増加ということがあります。また、国際的な対策の枠組みの確立ということで、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約でありますとか、化学品の分類および表示に関する世界調和システムといったものに、我が国も参加しています。3番目といたしまして、我が国は参加はしていないけれども、ほかの国の規制の影響を受けないか、欧州における化学物質の新たな規制制度でありますREACHでありますとか、または電気・電子製品に含まれる有害物質を規制いたしますRoHS指令といわれているものが、我が国にも影響を及ぼすということがあります。こういったものを現状の課題として、項目として挙げさせていただいております。
 2.は、戦略目標でございますが、この2.の特徴は2025年というものを見越したということで、今回の環境基本計画の特徴が、こういった2025年という長期を見越して、今後約5年間の対策を取りまとめようということでございますので、そういった中長期的な戦略目標を立てるということで、ここは先生方にフリーディスカッションをしていただきたいという趣旨です。WSSD、すなわちヨハネスブルグの環境開発サミットで掲げられた2020年目標というものをあえて掲げさせていただきましたけれども、これにとらわれずに、検討いただければと存じます。
 3.でございますけれども、施策の基本的方向ということで、ここも長期を見据えたものでございます。大きく4本の柱を立てておりますのは、伝統的な置き方でございますが、まずは科学的な環境リスクの評価が必要であるということ。その評価に基づきまして、リスク管理またはリスクの最小化というのを行っていくということ。その際には、予防的取り組み方法でありますとか、科学的知見に基づく評価というのが必要であるということ。3番目といたしまして、これらリスク評価、リスク管理、一体としてのリスクコミュニケーションというのがあって、4番目として、我が国からの国際スタンダードの発信、また国際的な積極的な対応ということがあるかなということで、これら4つを仮に基本的方向の要素として掲げております。
 次に4.に流れてくるわけですが、この4.が重点的取組事項ということで、今後5年間に講ずるべき対策ということとなります。検討チーム会合を24日に開催いたしましたけれども、委員の先生方からも、ここが最も大事であろうということを御指摘いただいたところでございます。
 まず、先ほどの柱に沿いまして、そのリスク関連情報の収集とリスク評価の推進を行うということでございまして、非常にたくさん使われている既存化学物質のリスク評価を進めていく必要があろうということ。2番目といたしまして、リスク評価手法の高度化と効率化という柱があろうということ。そういった新たな評価手法を用いた環境リスクの検証を行っていくということ。生態系の観点からの評価手法、管理手法の確立というは最近の動きでございますので、特出しをしたものでございます。
 リスク管理につきましては、化審法でありますとかいわゆるPRTR法などに基づく取り組みの着実な実施と環境基準等の維持・達成に向けた取り組みと推進というのがまず挙げられるわけですが、リスク管理に当たりまして、いろいろ配慮すべき要素があります。一つは、不確実性の中でリスク管理をどのように位置づけていくか。また、その化学物質の生産から使用、廃棄に至るライフサイクルの全体を見なければいけないということ。化学物質が何らかの代替物質の影響を見る必要があるということ。大気や水など、複数の媒体を通じた影響もあろうかということ。またはその感受性の高い人口、または暴露の高い人口という影響に配慮する必要があるということ。こういった要素に配慮して、多様な手法によってリスク管理を進めていくということが、今後の課題ということです。3番目といたしまして、その負の遺産の適正処理ということでございますけれども、過去に既に製造された有害性物質または既に汚染された場所といったものに対する適正な対応が必要であるということです。
 3番目といたしまして、リスクコミュニケーションでございますけれども、まずは情報の把握・管理と、そういった情報を分かりやすい形で提供していく点が1つです。そういった情報を提供するだけではなくて、その相互理解に至るために人材育成や学習の機会の提供等が必要であろうということがあります。信頼関係の構築、合意形成のための取り組みにはどういったものがあるかといったことなどを今後検討していくことが必要であると思います。
 4番目といたしまして、国際的な視点からリスク評価作業、評価手法の開発等に関する国際的な分担ということと、また、我が国の経験と技術を踏まえた国際的な指導性の発揮ということが、取り組みの要素として含まれようかと考えているところでございます。
 最後、5.でございますけれども、指標及び数値目標でございます。たった2行書いているだけでございますけれども、総合政策部会の方からも、環境基本計画全体として、数値的な指標が必要である、各分野において考えるべきであるという考えを示していただいており、化学物質の管理の分野でどういった目標または指標が考えられるかと、事務局で中杉先生とも相談しつつ考えたところでございます。環境基準の達成率でありますとか、化学物質の有害性リスク評価の進捗に関する指標、またPRTRデータを用いた指標など、いろいろな観点が考えられますが、ここでは、まずアイデアをいただきたいということで、あえて例示にとどめたというところでございます。
 ちょっと事務局の説明が長くなりましたが、以上でございます。

○化学物質審査室長 一点だけ、スケジュールの関係でございます。環境基本計画の化学物質に関する戦略的プログラムの策定に際しまして、非常にタイトなスケジュールでございまして、この環境保健部会を開催いたしますのは今回限りということでございますので、ぜひ活発な御議論を頂ければと考えております。よろしくお願いいたします。

○櫻井部会長 ありがとうございました。
 それでは、総合政策部会でこの分野の戦略プログラムの担当委員をされている浅野先生から、まず一言お願いいたします。

○浅野委員 浅野でございます。
 まず、ここに現在の環境基本計画の冊子がございますので、ちょっと御覧いただけますでしょうか。お手元にあるかと思います。
 この61ページをお開けいただきたいと存じます。この61ページに、現行の環境基本計画の戦略的プログラムのうち、化学物質対策というところが出てまいります。御覧いただきますと65ページまででございまして、今回改定をするに当たっても、戦略的プログラムとして書けるのはこの程度の分量であるということを、まず十分に御認識いただきたいということでございます。
 それから、今後の我が国の環境政策の基本的な原則を記した総論部分がございまして、ここにこの分野に少し関連することが出てまいります。それは、27ページ以下でございまして、今度の環境政策の指針となる4つの考え方という記述がございます。28ページに参りますと、ウに予防的な方策それから環境リスクという概念が出てまいります。これは、政策全体にも応用できる考え方ということでございまして、総論部分の記述ではありますけれども、実は、もともとは化学物質の部分からスタートした議論であったということを思い起こさなければなりません。今回この戦略的プログラムの検討に当たって、化学物質の部分に直接書き込むということはもとより、総論部分にかなりこの点の考え方を示すことが必要であることを御認識いただきたいと思います。
 現行の、この環境基本計画の化学物質の戦略的プログラムでございますが、私の、あまり科学的な根拠がない、定量的な根拠もない、まったく定性的な評価でありますけれども、この分野は「曇り後薄日が差す」というぐらいの状況になっているのではないのかと考えます。例えば温暖化の分野については、まだじゃあじゃあ雨が降っていますし、交通の分野もまったくもうお先真っ暗のような感じもあるのですが、化学物質の分野については少し曇りから晴れの方向に向かっているのではないか、そういう評価ができると思います。
 と申しますのは、先ほど事務局が申しましたように、化審法の改正がございました。これでかなり大きな変化がありましたのは、人の健康だけではなくて、生態系、生物毒性について、はっきりとターゲットにするという考え方が出てまいりました。このことは、化審法のみならず、その他の環境基準の中でも少しずつ具体化しつつあります。第2に、もう一つ大きいと思いますのは、化審法の改正によって、危険なものは遠ざけるという、単なるハザード情報だけで化学物質を扱うという発想から、それがどの程度暴露されるかによって取り扱いを変えるという発想に変わったということです。例えば製造量の極めて少ないものについて、今まで1トン以上製造されるものは全部同じに扱っていたのを変えるとか、あるいは中間の製品で使われ、閉鎖系で使用されて環境中にまったく出るおそれのない物質については、そんなにぎちぎち言わなくてもいいといった考え方が入ってまいりましたのも、言ってみれば環境リスクのマネジメントに際して暴露条件という視点を入れるようになってきた結果だと思います。
 この発想は、土壌汚染対策法も同じような考え方がとられておりまして、汚染している土地は全部環境基準並みにきれいにしなければならないというのではなくて、どこまで汚れているかははっきりさせた上で、それが国民の健康にリスクを及ぼさないという観点からマネジメントを行い、その後は土地の用途規制をかければいいという考え方になってまいりましたのも、大きな発想の変化ではないかと思います。
 そのようなことで、いろいろ見てまいりますと、化学物質分野は随分進歩があったと思うわけでございまして、今回の戦略的プログラムでは、そこをいかにして更に伸ばしていくかということが大きな課題ではないかと考えております。
 翻って考えてみますと、環境リスクという概念を最初に公文書の中に入れましたのが、第一次環境基本計画、1994年でございます。その当時を思い出してみますと、「環境リスク」という言葉を使うことについても、危ないか危なくないか、よく分からないようなものも、ともかく何とかやらなければいかぬというようなことを言うわけですから、これは失礼な言い方かもしれませんが、多分幾つかの省からはかなりの抵抗があるだろうと初めは考えていました。それで多少、遠慮しまして「化学物質の環境リスク」という表現にしておきましたら、幸か不幸か、誰も文句を言わずに原案を通していただきましたので、第一次環境基本計画で初めて「環境リスク」という言葉が出てまいりました。その当時のこの環境リスクという言葉の使い方は、実はかなり荒っぽいものであって十分な整理ができていたわけではありませんが、第二次環境基本計画ではこれがかなり整理のできたものになってきたことは、先ほど総論部分を御指摘したことからもお分かりかと思います。
 ただ、それにしましても予防的方策とか環境リスクという概念については、いろいろな考え方がありますし、今日5年たって、かなり議論の整理がついてきておりますから、このあたりをはっきりと押さえて議論をしていかなければいけないなということを感じている次第でございます。
 お手元に事務局から御説明いたしました資料2-4は、中杉委員と私が主に相談を受けて作ったものですけれども、あまり画期的なこと、突拍子もないことをこんなところでいきなり言うこともあまり賢くないと思いましたので、極めて教科書的に、オーソドックスに、大体こういうことが論点だということを並べていますから、「何だ、教科書ではないか」と言われるかもしれませんが、それはお許しをいただきたいと思います。
 今回、前回チームで議論した時と同じペーパーをお出ししたことについても、前回御出席の方に、「私が言ったことが全然反映されていないではないか、お前たちはあくまでもこのとおり、ごり押しでやるつもりか」とおっしゃられると、それは困るわけで、そんなつもりは毛頭ございません。ばさっと見栄えのいい、メーキャップをするのは舞台に出る直前にやればいいことですから、楽屋裏は楽屋裏らしく素材をしっかり固めておいて、それをどうやるかというのは先の段階で行うというつもりでございます。
 さらに、この環境基本計画に関しては、最終的には総合政策部会で議を経て、そこで議論をして、相互の戦略的プログラムや総論との関連性を持たせながら、部分的には修正をしたり入れ替えをしたりすることが考えられております。第2回の環境基本計画の策定は、どちらかといいますと、検討チームには丸投げして、そこでできたものについては、もういじらないというやり方だったんで、そのためにやや戦略と言いながら相互の関連性が弱かったのでないかと思います。今回は、それを避けるために、関連するものをほかの分野で取り扱うなら、そこでやればいい、あるいは参照でどこを見てくださいとかして、相互の関連をはっきりさせるということも考えようとしておりまして、ここでは化学物質の問題は言及しておりますけれども、リスクの考え方とか、予防原則の考え方といったものは、この中にどこまで書くかということは別として、ほかの分野ではっきり書き込むということもあろうかと思います。
 ここで、これまでに議論されてきたことの中で、チームの中での議論、後で中杉先生からもお話があるかもしれませんが、2点ございまして、1つは化学物質というものの製造段階から廃棄段階までのライフサイクルアセスメント的な、流れ全体を押さえたトータルなありようというものを、どうやって見ていくかということが、このペーパーには十分出ていないという御指摘を既に頂いております。
 それからもう一つは、ここに明示には出ておりませんけれども、これから先、ますます化学物質などについての基準をクリアにしてまいりますと、現実に私も今直面して非常に悩まされている問題があります。つまり、自然レベルのものと、人為起源のものとをどう調整していくかということが、これから先、大きな問題になってくると思います。ただ単に、安心・安全ということだけの理屈で攻めていく場合には、そこら辺がごちゃごちゃになってしまっていくわけですが、それではまったく政策や施策にはつながってまいりませんので、そこをどう考えるかというようなことは、今回の部会で少し整理できればと思っております。
 以上です。

○櫻井部会長 ありがとうございました。
 次に、検討会合の座長をされていらっしゃる中杉先生にお願いいたします。

○中杉委員 浅野先生をお助けしてか、助けていただいているか分かりませんけれども、戦略的プログラムの化学物質部分を取りまとめるという立場でございます。私はものをいろいろ言いっ放しで、言いたい方で、そういう意味では、私はあまり得意ではないんですけれども、事務局サイドで取りまとめをしなければいけない立場でございます。ですから、本日は、先生方の意見をいろいろ頂いて、承るということが中心になるかと思っております。この戦略的プログラムは、化学物質対策の今後何年間かのベースとなると認識しております。できるだけ多くの先生方の御意見を頂いて、それを反映することが必要だろうと思っております。
 若干ですが、前回のプログラムの検討チームの中で、浅野先生とはちょっと別なことで2点ほど、全般的・フェース的なところが中心ですが、そういう議論もありましたことを御紹介させていただきます。
 1点は、現状と課題というところが書いてございますけれども、これまでの環境基本計画の何年間か前に、現状の環境基本計画がどう運用されて、どう成果が出たのかということがまったくここには書いてないのではないかということです。確かに、この中には明示的に入ってきていません。先ほど浅野先生が言われたような話で、曇り後、光が見えてきたのかどうかというようなところを少し書き込んでいく必要があるんだろうという御意見がございました。
 もう1点は、この施策の中で具体的な方向、取り組み以降のことでございますけれども、全般に将来のことを課題として書いてございまして、それはいつまでにやるのかということがあまり明確に出てきていない。将来の課題としてあるものの中で、今回の環境基本計画の中でどこまでできて、どれは次の段階の課題であるというようなことが、ちょっとこの資料の中では見えてこない。それももう少し明確に書き込んで、タイムスケジュール的なものを書き込むべきだろうという御意見を頂きました。その2点だけ、御紹介させていただきます。

○櫻井部会長 ありがとうございました。
 それでは、あと委員の先生方から御自由にコメントをお願いしたいと思います。先ほど申し上げましたように、順番に御発言いただきます。24人のうちのお2人からもう既にコメントを頂きましたが、お1人2~3分までの範囲で、ごく簡潔で結構でございます、御意見を賜りまして、その後、時間の許す範囲で追加の御意見を頂くという形で進めさせていただきたいと思います。
 御意見の内容は、この資料2-4の欄によらずということでございますが、事務局側としては、特にこの重点的取り組み事項のあたりのコメントをたくさん頂ければと思います。
 それでは、順番といたしましては、失礼ながら、あいうえお順ということで―ABC順でございましょうか、ここの並んでいる順番でお願いしたいと思います。
 まず、池田先生からお願いします。

○池田委員 恐れ入ります。
 あいうえお順になりますと、浅野先生がいらっしゃるとやや圧力が小さくなるんですが、「い」から始まりますと、小学校以来の圧力をもう一度思い直しました。実は、検討チームに入れていただきまして、その場で申し上げたことの若干繰り返しになるんですが、お許しいただきたいと思います。
 検討チームで、この資料2-4を拝見しました。その折もあいうえお順でしたが、一つは「教科書的な」という言葉を、非常に失礼な表現でしたが、申し上げたのは私でございます。その後、少し考えまして、あるいは検討チームでの議論を拝聴しまして、今考えていることを申し上げたいと思います。
 一つは、1.から2.に移るとき、これは他の先生方からも御指摘がありましたが、過去第一次、第二次で、何ができて何ができていないのかという解析ないし評価がありますと、2.以降の議論がしやすくなるのではないかということです。
 もう一つは、実際に翻って考えてみますと、例えば水俣なりイタイイタイ病なり、あるいは四日市の、ああいう壮絶な時代から今の状況を考えますと、これはかなりの成果があったと思います。あるいは先ほどから名前が出てまいりますが、化審法自体は、これは例えばPOPs条約で議論が始まるよりも、はるかに以前から対策を実行しまして、そのおかげでPOPsが決まったときには、PCBやダイオキシンは別ですが、大部分のものについては国内的には対応が完了していたという点があると思います。こういった成果は、国際的にも本当は高く評価されるべきだと私は思いますが、あんまり外向けの活動がないために必ずしも高い評価を受けていない部分がある、あるいは少なくとも気づかれていない部分があると思います。そういったことを考えますと、特に1の(5)あるいは3の丸の4つ目、あるいは4の(4)ですね、国際的な協調というところで、あるいは特に「対応」という表現をしますと、外で決まったものを取り込んで国内的な対策を作るという格好になると思います。そういうスタンスは、多分もう卒業できるのではないか。我々が何をし得たのか、その経験を外向けに伝え、場合によってはグローバルスタンダードの中に押し込むという角度が、もう少し鮮明に出されてもいいのではないか、その2点です。
 以上でございます。

○櫻井部会長 ありがとうございました。
 それでは、浦田先生、お願いいたします。

○浦田委員 申しわけございません。今回、初めてなので十分な意見を言えないかもしれませんけれども。
 私は自動車関連をやっておりますけれども、やはりこういう化学物質を含めて、排気関係についても、やはり定量的というか、そういう数字がないですね。これは分かりづらいかなと思います。いつも言われていることで、ちょうど先ほど先生もおっしゃいましたけれども、教科書的だなとちょっと感じております。環境保全などの進捗が見えるようにしないと、やはり最終効力が出せず、ちょっと分かりにくいのではないかなという感想でございます。

○櫻井部会長 ありがとうございました。
 内山先生、お願いいたします。

○内山委員 私も2番でちょっと基本的なことかもしれないですが、2.のところに書いてある予防的取組方法について、先ほど浅野先生の言葉の中には「予防原則」という言葉がありました。今、環境省は「予防的アプローチ」という表現しか使っていないと思いますが、将来に向かって、本当に我が国、環境省が「予防原則」として取り入れていくのかということです。文章の中では「予防的取組方法に留意しつつ」とか「予防的取組に留意し」という表現になっておりますが、ここら辺は本当に予防原則を将来取り入れていくのか、あるいは今までどおり未然防止とか、そういう心持ちでいくのかということを、もう少しはっきり言った方が、私はもう「予防原則」ではないかと思うのですが、2020年までに全省的にそういう方向に行くのかどうかということも、はっきり出していただければと思います。
 それから1枚目の、これはもう細かいところですが、下から2行目のところ「人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法」の中の「著しい悪影響」という言葉についてです。ちょっと穏やかではないので、環境基準等の概念から考えますと、健康に偏りのある影響ということをも予防していくということですので、著しい影響が出てしまったら問題です。ちょっとここは細かいところだと思いますが。
 それと、もう一つは、今、基準等を作っているときに一番残念なのは、我が国のデータを使用してつくれるということが非常に少ないということです。池田先生がおっしゃったように国際的な協調ということも非常に大事ですけれども、日本独自のデータの集積を、もう少し将来に向かって進めていただければありがたいなという気がいたします。
 以上でございます。

○櫻井部会長 ありがとうございます。
 江森先生、お願いします。

○江森委員 過去の経過がよく分からない部分がありますので、若干ピント外れな部分があるかもしれませんが、先ほど浅野先生の方から、化学物質についてはかなり先進的な取り組みをやってきたというお話がありました。私、このメモを見てちょっと思い出したのですが、農林水産省で数年前にBSE問題が起きたときに、この安全・安心のギャップとかリスクコミュニケーションということがかなり議論されて、食品安全基本法ができて食品安全委員会がスタートしたという経過があったと思います。あのBSEの問題で一つ大きな問題になったのは、やはり縦割り行政の弊害ということがあったんではないかと思っています。この化学物質対策についても、環境基本計画についても、思っていることはいっぱいありますけれども、これを実際に移していくときに横断的な施策としてどうやるかという仕掛けが同時にないと、絵にかいたもちになってしまわないかと思っています。
 農林水産省があれだけいろいろ議論して食品安全基本法を作ったり、あるいはまた食品安全委員会を作るというきっかけになったのは、やはりBSEという大きな社会的テーマが突きつけられたから、大きく前に歯車を動かさざるを得なかったのだろうと思うのです。そういう意味で言うと、この中でちょっと触れておりませんけれども、今、社会的な話題になっているアスベストという問題を環境全般の中の問題として、どう位置付けるかということは、まさに省庁を越えた横断的な対策を進めていく一つのきっかけになっていくのではないかと思います。
 環境基本計画の65ページを見ますと、前回はダイオキシンやPCBという具体的なテーマが設定されておりますので、果たしてこの委員会で議論するのかどうかよく分かりませんが、アスベスト問題もぜひ一つの柱として位置付けて、明記をしていくべきではないかなと思います。
 以上です。

○櫻井部会長 江頭先生、お願いいたします。

○江頭委員 4つほどお話ししたいと思います。
 この基本的方向の中に「予防的取組」とありますが、「的」ではなくて、予防しなければならないので、その部分を少し強調していただきたい。その上で、この未然防止と環境リスクの最小化という言葉がいいかなと考えました。
 それから、(4)の2つ目の丸ですが、「我が国の経験と技術を踏まえた国際的な指導性の発揮」の部分で、世の中どんどん進んでいますが、これから先、西暦2020年ぐらいになって、本当に日本は世界に向けて指導ができるのかな、と思っていますので、ちょっと引っかかるところがあります。
 それから3番目、5番の「戦略目標」と、それから後の方の「数値目標」とありますが、私も、この数値目標というのはすごく大事にしたいと思うんですね。ここには中期的目標として2025年と書かれてありますが、この環境基本計画の改定は5年後にするとしたら、5年後の姿はどうなってあるべきか、例えば「環境基準等の達成率」であれば数値的にこうあってほしいとか、そういう具体的な目標があると、今度見直しをするときに見直しがしやすいかと思います。
 最後はちょっと嫌みなのですが、この文章は「教科書的」という言葉が出ています。昔の教科書はこの資料のようだったのかもしれませんが、今の教科書は大変構造的になっております。大事なところをぴしっと押さえて、社会科なら人間にとって一番大事な食べ物のところから入って、その次に、人間の生活を支えるためのもの、その次は第三次産業という形で、ちゃんと構造的になっていますので、この資料は、教科書的ではなくて、総花的かなと思っております。
 以上でございます。

○櫻井部会長 ありがとうございました。
 大塚先生、お願いします。

○大塚委員 3点ほど申し上げておきたいと思います。
 全体的に、よく見通しのきいているメモだと考えておりますけれども、1つは、既にいろいろと御指摘がありましたように、予防的方策という言葉が、2のところ以外には出てきておりませんので、もう少し予防的方策という言葉を使っていただいてもいいのかなと思っております。
 それから第2点でございますが、先ほどアスベストの話も出ていましたし、過去にも水俣病等いろいろな経験を我が国はしてきているわけで、負の遺産を適正処理するというだけではなくて、どういう教訓を得ているのか、あるいは得るべきかというようなことはどこかに書いていただくか、あるいは今後検討していただいた方がよいかなと思います。アスベストの問題でも、縦割り行政のせいだとか新聞で報道されていますけれども、そういうことだけではなくて、もう少し構造的な問題があったのではないかと、私自身は思っていますが、ああいうことが起きないようにするためにどうするかということを、どこかに書いていただけると、あるいは検討だけでもしていただけると大変ありがたいと思っております。
 それから第3点でございます。1の(5)のところにREACHの話があります。これはもう法律の問題になってしまいますので、環境基本計画で見直しや扱える点というのは、ある程度限られてくると思いますけれども、先ほどのお話にもあったように、化学物質全体の横断的な施策、横断的な対応ということがおそらく認められていると思いますので、かなり先の将来の話になってしまうかもしれませんが、そういう観点もどこかに取り入れていただけるとありがたいと思っております。
 私も8月24日の会議に本当は出させていただくべきだったのですけれども、私の個人的な用事で出られませんでしたので、今申し上げておきたいと思います。

○櫻井部会長 ありがとうございました。
 香川先生。

○香川委員 まず1点目が、平成12年度に出されております環境基本計画の中と、今回出されているのはどこが新しく取り入れた点なのか、あるいは既にあるものの中で、更にそこを重点的に進めないといけないかということがよく見えないですね。ですから、平成12年度に出されたものと、どこが違うのかということをもっと分かりやすくしていただきたいと思います。
 それからもう一つ、従来から要求されていることですけれども、こういうことをきちんと行うためには、基礎研究が絶対必要なわけですから、それをもっと強く謳っていただきたいと思います。
 それから、個別汚染物質対策は、アスベストみたいなものが抜けたりしている部分もありますけれども、従来からかなり進んでいて、個別汚染物質も低濃度化してきておりますが、これも従来から言われていますように、いわゆる微量になってきた段階の中での複合汚染の指標というものをどのように評価していくか。これはいろいろな国で行われておりますけれども、幾つかの汚染物質をもとに複合汚染の指標というものを作って、低濃度化した環境の健康影響評価を見ていくことが重要だと思います。
 もう一つは、大気関係に関してはWHOがエアネットというのを作っていて、地域のいろいろな汚染指標を入れると、その地域がどんな健康状態にあるかということが分かるようなプログラムが開発されて、リスクコミュニケーションに非常に役立っています。そういったリスクコミュニケーションに役立つような、いろいろなプログラムを作っていかないと現状が分からないのではないかと思います。そういうものを作っていくための、最近いろいろなところで行われているタイムシリーズ・エコロジカル・スタディなどの研究を地域の中に根差していくということも、そういう細かいところまで書き込む必要はないかもしれませんが、そういった視点も含めて対応していただきたいなと思います。
 以上です。

○櫻井部会長 ありがとうございました。
 それでは、佐和先生。

○佐和委員 3点申し上げたいと思います。1つは、2.と3.の冒頭のところで、括弧で「2020年頃における望ましい社会像を見据えた」とございますが、何でこんな言葉が登場するのかよく分からないんですね。つまり、2025年でどういう社会が望ましいのかなんていうのは、これは仮に議論し始めれば喧々諤々ですが、それと、今ここで問題にされていることがどういう関連性があるのかというのがちっとも分からない。必要ないのではないかという感じがします。
 それから2.のところの、先ほども御指摘があった点ですけれども、3行目か4行目かの環境と開発に関する云々で、何とかを達成することを目指すという文章がありますけれども、これは意味がほとんど分かりません。予防原則、あるいは予防的取組と言ってもいいかと思いますが、この部分です。温暖化問題なんかに関して絶えずなされる議論なのですが、科学的知見が不十分だから、例えば京都議定書なんていうのは、科学的知見がまだまだ不十分なんだから先進国に対して義務付けるべきではないという考えなんですね。では、科学的知見は不十分かもしれないけれども、二酸化炭素の大気中での濃度の上昇というのが温暖化ないし気候変動をもたらす可能性は十分あり得ますし、同時にまた化石燃料の使用量を減らすことによって、我々の生活が脅かされることはないんだから、京都議定書によって先進国に対してCO2を初めとする温室効果ガスの排気削減を義務付けようというのが、予防原則なんですね。ですから、まず化学物質知見は不十分だからということに対する一つのアンチテーゼが予防原則なんです。ですけれども、これを見ると、リオ宣言云々は、予防的取組方法に留意しつつ、その後で科学的根拠に基づいて、悪影響を最小化する方法でそういうことを云々ということになっています。ここの文脈で言うと化学物質の悪影響についての科学的な知見が不十分だから、そんなに急いで対処する必要はないと言う人がいる一方で、まだまだ確実に知見は不十分だけれども、ひょっとすると危ないかもしれないし、その化学物質をあえて使わなくても、ほかの代替物質で間に合うんだから、使わないでおこうというのが予防原則なわけですよね。その辺が、何となく全体的な文脈からして分かりにくくなっています。
 それからもう一点は、非常に一見ささいなことですが、4.(1)の2つ目の丸のところに「リスク評価手法の高度化と効率化」と書いてありますよね。その高度化という意味は、多分リスク評価ですから、その精度を上げろというような意味だと思うんですね。しかし、効率化とは一体何なんでしょう。つまり、普通、最近官庁のお役所の文書の中には「効率化」とか「効率性」という言葉がおびただしく登場するわけですが、その意味するところは何なのかということが、必ずしも明確ではないわけですね。法律の条文の中にすら「効率化」という言葉は登場しますよね。国立大学法人法の中にも、効率性とか効率化という言葉が登場するんですね。何を意味しているのかよく分からないんですね。経済学で言う効率化というのは、これはそういう意味とまったく異なる意味なんですが、普通、おそらく効率の中身、条文で出てくる意味での効率化なり効率性というのは、費用対効果において望ましいということです。つまり、できるだけ安い費用で同じ効果を上げる、あるいは同じ費用であれば、できるだけ効果を高めるということです。こういう意味に一般には解釈されていると思うんですが、ここでもし仮にそうだとするならば、リスク評価手法の効率化というのは、要するに、同じ効果を上げるのに、できるだけ安い費用で同じだけの効果を上げる、精度を上げるという意味なのか、あるいは同じ費用ならば、できるだけ高い精度を上げるという意味なのか分かりませんが、そういう言葉がこんなところに登場していいのかなという感じがいたしました。

○櫻井部会長 それでは、酒井先生。

○酒井委員 私は3点ほど申し上げます。
 今、2025年の議論が先ほどからいろいろ出ていますが、中長期目標をいったん見据えるということ自体は、いい作業であろうと思います。ただ、その一方で、やはり中長期目標の光と影といいますか、その目標に見合わないことということも、十分あり得るわけでして、そういった意味で、この中長期目標の更新方針を十分に見据えるために、環境基本計画の見直しがあるということを、明確に今回位置付けていただいた方がいいんではないかと思います。現在、議論になっているアスベスト問題の状況を90年に予想し得たかという、そういう検証作業も進められておりますけれども、そういった作業の関連を見ておく必要があるように思います。
 それから2点目が、重点的取組事項のリスク管理の「負の遺産の適正処理の推進」の箇所と関連性がある課題かと思いますが、それと一種のリスク評価の推進と関連すると思いますが、少し環境シンクの、おそらく土壌とか底質といったメディアが中心になろうと思いますが、そのシンクの評価と管理という視点をちょっと含めておかなければ、どこまで負の遺産に対応していくのかということとの関連で、社会経済効率性との関連も出てきましょうから、その辺のところはバランスでやっていかなければならないということになろうと思います。
 それと、もう一つは国際的な対応に対する御指摘もございましたけれども、現在書かれているものを見ると、協調、国内対応あるいは国際的指導性ということが中心だと思いますが、グローバルモニタリングへの貢献は、やはり継続的にやっていかないと、世界から認められませんので、継続的に力を入れるという文脈がぜひ欲しいと思っております。
 以上です。

○櫻井部会長 ありがとうございました。
 篠原委員、お願いします。

○篠原委員 私、日本化学工業協会からの代表ですので、そういう意味では、この議論のど真ん中に置かれておりますし、化学産業としても、これは自らの問題として捉えなければいけないということは、もう十分認識しております。そういうことを前提にしまして、この文章は、表現の問題は別にしまして、化学産業としてもやっていかなければいけないという意味では、よくまとめられていると思っています。
 その中で2点、私の立場から申し上げます。1点目は、今、化学物質の環境リスクという問題は、日本だけではなくて、国際的な動きとして生じておりまして、国際的な化学業界の集まりでICCAという組織があり、その中に日本の化学業界ももちろん参加しながら、国際的な動きの中でどう対応していくかということを進めております。国際動向への対応というのは非常に重要でございまして、日本だけではなく、国際的な議論の中で進めていくことの重要性については十分に認識しながら、日本のこの戦略的プログラムを策定していただきたいというのが第1点でございます。
 それから、第2点目は、この2.の中での文章で少し議論がありましたけれども、私どもとしましては、リスク評価手順とかリスク管理手順と書いてございます部分について、やはり科学的に事実とデータをベースに議論していかないと、風評問題が起こったり、とんでもない混乱を起こす場合もあります。私どもとしては、できるだけ科学的根拠に基づき、事実とデータで議論していくべきだろうと考えております。
 この2点が、私の感じているところでございます。以上でございます。

○櫻井部会長 私自身も、2つ意見を申し上げたいと思いますが、この重点的取組事項の中で国、地方公共団体、事業者、国民、民間団体等、主体ごとの取り組むことが望まれる行動を明確化するというのは、この前の環境基本計画では、そういった視点が無かったのに対して、非常に具体化しようとしている、という点において重要だと考えます。特に、地方公共団体の取り組みが重要であるということは、今回の環境基本計画の基本的方向の中でも、たびたび指摘されているとおりで、私もそのとおりだと思います。化学物質の環境リスクというのは、地域差が非常に著しいので、各地域の、例えば地方公共団体に、積極的にその地域のリスクアセスメント、あるいはリスク管理をやっていただく場合に、その地域特性に応じたリスク評価やリスク管理を行いやすくできるようなガイドラインを示せないかなと思います。できるだけそれぞれの地方公共団体でレベルの高い仕事ができるように、国が支援することを考えるべきではないかと考えております。
 それから、人材育成の問題ですが、前回は人材育成というのは割合重点的に書いてございますが、今回はリスクコミュニケーションのところ、4.(3)のところに「相互理解の促進のための人材育成」と限定されておりますが、そうでなく、やはりもっと一般的に化学物質にかかわるリスク評価、リスク管理を担う人材の育成と適正な配置が重要であるということを強調していただきたい。例えば地方公共団体における担当者ですね。化学物質に関するリスク評価等の担当者を一定の基準で確保できないか。今おそらく地方公共団体の担当者のレベルのばらつきは非常に大きいだろうと思うんですけれども、例えば数値目標の中に先ほど申し上げたような視点を盛り込めないかと考えております。
 以上です。
 次、白石委員、お願いします。

○白石委員 何点か意見を述べさせていただきます。
 まず、今、地域特性があるというお話がありましたが、言われたとおりだと思います。1.(1)で「多種多様で使用量にも多寡あり」と書いてありますが、実際は新規化学物質が環境中から検出される部分で、少量で多品目という方向に最近は行っているような気がいたします。製造工場が限られ地域特有なところで製造されている、あるいはバッチ的に製造されているという少量で多品目という性質に対する対応がまず必要であろうかと思います。
 次に、重点取組事項に移って、(1)で有害性情報がないということがありますが、新規物質については有害性情報もついてきますので、今何が一番問題かというと、やはり既存化学物質濃度に関して調査がほとんどなされていない、遅れているということだと思います。今、Japanチャレンジプログラムというのが開始されたようですけれども、その成果を踏まえて、それを発展させるような形で既存化学物質の安全点検を終えるような、何らかの目標を立てたらいかがかなと思います。
 化学物質のハザード情報は、そうやって集めてくるんですけれども、実は暴露情報は集めるのが非常に難しいものです。リスクを判定する上でも、一つの要素である暴露情報をいかに集めるかというのが、課題だと思います。検討チームの後で関係団体のヒアリングがあったんですが、ユーザー企業は企業なりに有害な物質を手に入れたくないというRoHSの関係もありまして、独自にそういったデータを集めている、いわゆるプロダクトレジストリー的な情報を集めているという業界もあるようです。そういった情報を業界だけで集めているとすれば、そういった情報は共有できない可能性があります。集めた情報をどこかで共有させる、企業秘密もあるかと思いますけれども、そういった暴露に関係した情報をしっかりと共有できるような仕組みができないかと思います。
 リスク評価手法の高度化・効率化というような議論がありましたけれども、リスク評価手法に関しましては、今までハザード情報は動物実験中心で、動物実験の情報をもとにハザード情報は出しています。ただ、今後、多分動物実験というのはできにくくなると思いますので、例えば情報を、今まである情報を活用するような手法といえば、分子構造から有害性を推定するQSARとか、最近特に発達するだろうと思われるトキシコゲノミクスなどの方法を活用するという、動物実験重点からプラス情報活用型の評価手法等を開発していくことが必要ではないかと思います。
 また、今まで見逃されているハザードもあるわけで、例えば複合暴露だったり、今は確か累積型と言っているんですけれども、少量の物質を次々と暴露することによって、生体反応として高感受性化するような累積型の影響とか、あるいは環境ホルモンでも、ある特定の時期に暴露するワンショット型の影響などを引き続きしっかりと調査・研究していく必要があります。これは中期的な課題であろうと思います。
 また、生態影響に関するリスクという考え方が導入されたんですけれども、そのリスクの考え方が、まだしっかりできているわけではないので、そのために必要な調査・研究等が必要であろうと思います。
 それから、リスク管理に関して、2つ目のポツのところに「多様な手法」ということが書いてあり、ベストミックスと言われる方法だと思いますけれども、いろいろな方がいろいろな方法でリスクを削減するということは非常に重要で、良い方向だと思いますけれども、それを検証する方法がありません。その効果をどうやってチェックしていくかということが重要ではないか、環境省のモニタリングのようなチェック機能、多分これは行政が担わなければいけないと思いますけれども、そういったものを折り込む必要があるのではないかと思います。
 あと、国際的な情報発信等ですが、例えば化学物質は物質ですから移動します。それは越境的に移動してくることもあるでしょうし、製品として移動することもある。日本でいくら安全な物質を作っても、外から入ってくるとか、危ないものが検出されるということもあるので、そういった点を定量的に把握するような仕組みが必要ではないかと思います。
 以上です。

○櫻井部会長 ありがとうございました。
 清水先生。

○清水委員 冒頭に浅野先生がおっしゃった方向性は大変歓迎しますし、それが更に進められようとしているのは結構なことだと思います。ただ問題は、例えば「生態系の保全」という言葉が使われていますけれども、実際には一体何ができるのかということは、きちんと認識をしておいていただかないといけないと思います。
 もう数年前になりますけれども、ちょっと話が違いますが、環境影響評価法ができたときに、では生態系に関する評価・予測というのはどのようにやるのか、できるのかという話がありまして、本当はそんなものはできるわけがないというのが、そのときのコンセンサスでした。その状況は今でもそんなには変わっていないと思いますので、では生き物を守るとは、何をどれだけどのようにできるのかということを、きちんと踏まえた上で進めていただきたいと思います。
 それから、その結果についても、誤解のないように発信をしていただきたいと思います。例えば、本日の資料にも、水質環境基準等というのは生態系の保全に向けた新たな制度の運用開始とありますけれども、現実にはこれは生態系の保全などとはほど遠いものでありますので、その辺もぜひきちんとしていただきたいと思います。
 以上です。

○櫻井部会長 ありがとうございました。
 須藤先生、お願いいたします。

○須藤委員 私は、水や土壌分野の中央環境審議会のいろいろな場面でのお手伝いをさせていただいている立場で、いくつか問題になっていることを申し上げて発言に代えさせていただきます。
 1点目は、今、清水先生もおっしゃっていた、生態系影響についてです。これは、要するにいくつかの生物に対して影響評価をして、水質環境基準を決めていくというようなことを数年前からやったんですが、亜鉛だけ決めたまでで、それ以後、類型当てはめやら排水基準まで持っていくのに、大変苦労しています。当然といえば当然ですが、生物は無数の種類があり、たまたま扱った種類がセンシィティブであればすごく影響がありますし、種類によってはあんまり影響がないということになるわけですね。ただし、センシィティブな生物から見れば、人間の2けた、3けた低い濃度で、影響・リスク評価をされてしまうということがあるので、人だけでなく、生物に広く目を向けた化学物質の評価は当然進めていただきたいんですが、なかなか難しい点が非常に多いということは認識していただきたいと思います。現場にいる立場からは、そういうことを1点目に申し上げます。
 それから2点目は、先ほど浅野先生がおっしゃっていたのですが、自然由来、例えば今亜鉛の水質環境基準を決めたんですが、亜鉛が自然由来なのか、それとも面源負荷などであるのか、よく分からないんですね。自然由来とは何ぞやという点を、もう少し評価の中で判定できるようなことをやっていかないと、すべて自然由来になってしまうか、あるいは逆に、自然由来ではないことになってしまうことがあるので、現場、現場で多分これは一番悩んでいる問題だろうと思います。
 それから、もう一つだけ申し上げますが、3点目は、現在のこういう社会になると、自然のものを田畑や川にまくのは非常にいいことだという風潮があります。浄化のために、あるいは農薬の代わりに、あるいは作物の成長を促進させるために発酵させたり、あるいは微生物を加えたり、あるいは薫蒸させたりしてやるなど、いろいろあります。昨日、特定農薬について農水省との打ち合わせがあり、この話になりましたが、木酢液というのがあって、これは農薬ではありませんが、非常に広く使われているんですね。私も十分知らなかったんですが、その中にベンゾピレンやホルムアルデヒドが入っています。木酢液を散布したら、ホルムアルデヒドは作業環境濃度の基準よりも高くなってしまいます。これが自由にどんどん使われたら、化学物質として非常に大きな暴露になるということは当然ですね。こうして、自然のものがよかろうということでどんどん使われていますが、そういうものも私は化学物質としての管理対象だろうと思います。それともう一つ例を挙げますと、委員の先生は御承知のとおり、融雪剤は尿素を含んでいます。ですから、融雪剤を使うと、多量に尿素をまくことになります。私もかかわった例ですと、それが川にどんどん入ると、アンモニア性窒素が20、30mg/lになることがあるんですね。こういう物質も、化学物質の管理の枠組みの中で対策をしていかないと、毒ではないといわれる物質がどんどん自然に流出・放出されてしまいます。いくつか今例を申し上げましたが、こういう現状があり、水や土壌の中が最終着駅になりますので、そういう化学物質の扱いというのは、この環境基本計画の中のどこかで取り上げておいていただかいた方がよろしいかと考えておりますので、一応、今までの経験を踏まえて3点だけ申し上げました。
 以上です。

○櫻井部会長 ありがとうございました。
 高橋先生。

○高橋委員 私は、総合政策部会委員を兼ねておりまして、その関係で24日の会議にボランタリーで参加させていただきまして、そこで申し上げたいことを申し上げましたので、本日は、そこの重複は避けて2点だけ申し上げたいと思います。
 第1点は、24日に申し上げたこととの関連ですが、自己分析的な評価に基づいた新しい戦略的プログラムの策定の重要性です。冒頭で浅野先生も過去の政策について非常にクリアな分析をしていただきましたし、中杉先生も、その点の重要性を御紹介いただきまして、この辺は、24日に私が申し上げたことに対応していただいて、どうもありがとうございます。ただ、計画そのものに、いわゆる過去の数年間の分析というのを詳しく盛り込むと、スペースが足りなくなるので難しいと思いますが、やはりこういう計画を作るときには、そのような分析的な評価を自覚した上で新しい政策展開をしていくことは非常に重要であると思います。そういう意味では、例えば今度の14日でございますか、第2回検討会合があると思いますので、冒頭、浅野先生に非常に詳細に御紹介いただきました分析というのは、その会合にペーパーという形でお出しいただきまして、今後の施策等の関連性というのを御説明いただければとお願いしておきたいと思います。これが第1点でございます。
 それから第2点でございますが、私は政策評価法も研究対象にしており、それとの関係ですが、いわゆる行政の政策目標というのは、立てるのが難しいものです。経済状況などの周囲の環境は非常に変わりますので、立てるのも難しいし、評価も難しいということになると思います。ただ、例えば環境基準の達成率などは、経済状況にも関連しますが、短期的な目標設定には非常に適合的だと思いますし、逆に化学物質の有害性やリスク評価の進捗状況は、経済的な状況などには比較的影響を受けにくい分野ですので、例えば2020年までにどのぐらい達成するのかという長期的な目標を踏まえて、ではこの5、6年でどこまで達成していくのかという意欲的な戦略目標というのを、ぜひ立てていただきたいと思います。
 以上でございます。

○櫻井部会長 ありがとうございます。
 中館先生。

○中館委員 2つほど申し上げます。
 今、お話にもありました最後のところですけれども、数値目標をきちんと取り上げられているのは非常にすばらしいことだと思います。ただ、その上で2025年ですから20年後、または一方では5年間だという、そのタイムスケジュールの中で、20年後をきちっと見据えて、あるいは5年後あるいは10年、15年というようなタイムスケジュールの中できちっとそれを位置付けていくということが非常に重要なのではないかと思います。
 それからもう一点は、予防原則についてのコメントです。予防原則というのは、科学的な知見が不十分であるけれども、何らかのおそれがある場合に適用されるわけです。リスクの評価における科学的知見が不十分だということに関しては、そのリスク評価の指標というのは完全ではないまでも、皆さんがある程度納得できるような手法がありますので、不十分、あるいは十分ということは、大体皆さん同じような結論になると思うんですけれども、一方で、おそれという部分は人によっておそらく感じ方が非常に違うだろうと思うんですね。ですから、この予防原則をきちっと掘り下げていくには、リスク評価のための知見が不十分だったときに、おそれというものをどうやって皆様が納得できるような形で位置付けられるかというのがポイントのような気がします。その辺を少し御検討いただければありがたいと思っております。
 以上です。

○櫻井部会長 ありがとうございました。
 では、平山先生。

○平山委員 今日から初めて出させていただきました。ちょっとピントがずれるかもしれませんけれども、先ほどから各委員の方々が発言されておるのと似たような形で、3点ほど、御意見申し上げたいと思います。
この環境保健部会の検討課題と役割を見れば、2025年というのは少し中長期を見据えてということですけれども、長過ぎるかなというのが正直な感じです。ただ、将来を見据えてというのは非常に大事なことだと思いますので、指標を決めるときに将来の見極めを誤らないように、今回のアスベストのときもそうですけれども、本当にきちっとした評価、指標が見つかるかということが大事ではないかなと思います。それと、流れの中でこの環境基本計画策定の表現を見ますと、だらだら書いているだけに思えます。何をいつまでにだれがどこでどうしてという、いわゆる5W1Hの考え方できちっと整理をして、国民各層が主体的にどのような取り組みをするかということも大事だと思いますので、そういう整理の仕方をすべきではないかなというものが一つ。それから、先ほど皆さん方からも出ておりますように、タイムスケジュールの管理というのがまったくなされていませんので、2025年を見据えて、具体的な重点的取組のところは5年間での取組ということですけれども、5年ごとの見直しをするときに、どこまで何ができたのかをきちんと検証できるようにするためにも、スケジュール管理は一番大事なものだと思います。例えば、既存化学物質や、これから出てくる新規の化学物質について、この中から物質を抽出して有害性を評価して、ランク付けをするとか、例えば非常に強い有害性を持っているものについては、5年間のうちにリスク評価まで持っていくと、あるいは次のランクのものや情報データが不足しているものについては5年間で情報収集し、次のステップにつなげるとか、これは例がいいかどうか分かりませんが、そういう分類をしながらタイムスケジュールを作って、どういう取り組みをしていくのかというのが、国民のみんなに分かりやすい形のものをフロー図として中に入れるのが一番いいかなという感じがいたします。国民の健康を守るという使命が、この環境保健部会にあると思いますので、もう少し道しるべをはっきり示した形で取り組まれたらいかがかなということが1点です。
 それから2点目ですが、新規化学物質については、おそらくきちっとした評価がなされると思いますので問題ないかと思いますが、既存の物質については、今回のアスベストのようなこともありますように、後々の時期に社会問題にならないように、リスクの回避ができるようにしておく必要があるのではないかと思います。そういう意味では、既存物質の化学物質については廃棄時の安全処理、あるいは無害化処理対策の技術開発・研究をこの中には入れておくべきではないか。環境基本計画は、政府が発信する、いわゆる国民に対する計画ですので、技術開発・研究をこの部会で検討するものでなければ、どの部会で検討していただくのか、あるいはどこの省庁でやっていただくのかというところまで、つまり連携を深めた形で取り組むんだというところまで明確に入れておくのが非常に大事なことではないかと思います。
 それから、3つ目ですけれども、大学の先生方がたくさんおられますので、「いや、そんなのでけへんで」とおっしゃるかもしれませんが、この重点項目の中にもありますように、やはり暴露情報とか、あるいは有害性のデータというのが非常に不足しているというのが、一番の大きな問題になっていると思います。これが、リスク評価が遅れている原因の一つになると思いますが、こういうものについては、特に国立大学とか、国公関係の研究室はおそらくいろいろなことをされていると思いますが、国立の大学なんかを使ってもいいんではないかなと。文科省は、最近は成果主義だとか実用化研究ばかり言って、ばかなこと言うてるなあという気が僕はするんですけれども、やはり大学は、本当の意味で基礎研究をきちんとやる、いわゆる学術の場であると思います。日本の科学者を育成するような場でもあるということからすれば、国の補助金を使っている以上、やはりこういう不足しているデータなんかのテーマを与えて、そこで研究をさせてデータを収集する。そうすればデータの収集量が早くなるでしょうし、豊富でしょうし、加速もできるでしょうし、人材育成にもつながるのかなという感じがしております。これは文科省との連携プレーの中でも、そういうことができないのかどうか、そういうことも少し切り口を変えてやっていっていただいたらいいんではないかと思います。
 以上でございます。

○櫻井部会長 ありがとうございました。
 藤村先生お願いします。

○藤村委員 私は、日本医師会の者ですので、国民の健康を守るべき立場にあります。そういう立場から申し上げたいと思います。本部会は環境保健部会でもありますし、化学物質の暴露によって人体がこうむる損壊、被害、健康障害をもう少しはっきり、一つの大きな課題として取り上げるべきではないかと考えております。動植物の生態系の保全等が課題としてありますが、では人間はどうしたらいいのか。人間について、日本国民についてはどう考えるのか。例えば化学物質による発がん性だとか、大気汚染による呼吸器疾患とか内分泌かく乱物質、あるいはそのほかの物質による、もしかすると不妊だとか、それから少子化にもつながるようなものがあるかもしれない。これは厚労省の問題だと、厚労省に投げればよろしいとは考えないで、環境省としての検討・発言があってもよろしいんではないかと考えております。
 医療の面では、いろいろな問題があり、例えば化学物質の有用性と有害性、ベネフィットがどこにあるかというようなこともあります。例えば、DDTの残留がだんだん減ってきておりますが、こうなりますと、今まで30年間全く消えうせていた病気が、また昔返りで出てきているわけですね。例えば頭のシラミだとか性行為感染症としてのシラミ、ヒゼンダニによる疥癬が非常に増えてきております。こういうようなものに、どういう取り組みをしたらいいかというようなことも、一つの課題になるんではないかと考えております。
 それから、環境省は、大気汚染については濃度調査を大規模にやっておりますから、そういうようなことも健康被害とあわせて、当然取り上げていただきたいと思っております。
 それから、ちょっと話がずれますけれども、ホルムアルデヒドを中心とした化学物質によるシックハウス症候群なんですけれども、これは厚労省の健康局の今年度の予算で、いきなり2億何千万の請求が乗りました。シックハウスの原因となるホルムアルデヒドは、建材などからの排出についてはものすごく減ってきています。近年どんどん減ってきているにもかかわらず、急にそれが予算化された。しかも関係各省、つまり環境省や国土交通省との共同歩調をもって、シックハウス症候群に取り組んだという予算措置がされております。環境省の方にお伺いしたいんですが、環境省もシックハウスについては特別な予算措置をしているんでしょうか、今年どういうふうに予算措置をしているのかどうかということを、一つお伺いしたいと思います。要するに、この部会として国民の健康、これについて重点的な課題としてぜひ取り上げていただきたいと思います。
 以上です。

○櫻井部会長 ありがとうございました。
 眞柄先生。

○眞柄委員 お手元に「PRTRデータを読み解くため市民ガイドブック」というのがございます。これの77ページを開いていただきたい、おそれ入ります。この77ページには、全国で排出された発がん性物質の届出排出量が記載されております。これはウエートで出されていて、リスクでは評価されていませんので、これがどういう意味があるかということが分かりません。そういう意味では、リスクコミュニケーションができるときのリスクという感じで、こういう情報を整理していくべきだということが一つであります。
 それからもう一つは、一番上の砒素ですが、これは浅野先生もおっしゃいましたけれども、これの排出量の数倍にわたる自然由来の排出量がございます。江森委員もおっしゃったがんに関していえば、日本人の死亡要因のトップです。がんは、その多くは環境要因です。それに対して、環境保健部会あるいは環境基本計画で化学物質を管理することによって、日本人の死亡の要因であるがんの抑制に対して、どれぐらいコントリビューションしているのかということがないと、薄日が差したと私は言えないと思うんですね。ですから、多分、長期的な目標のところに入らざるを得ないと思いますが、もう少し関係省庁で、環境とがんとの関係をもう少しクリアにしていただくという視点をつけ加えていただきたいと思います。
 それから2番目は、これは非常にテクニカルな問題ですが、食品安全委員会ができまして、化学物質に対して1日耐容摂取量を決めますが、彼らはそこまでしかやってくれません。1日耐容摂取量をどうやって水と空気と食品と土壌などに振り分けるかについての科学的な情報がなければ環境規制ができないわけです。その部分の研究というか、プロトコル、あるいは実際の調査をもっと行っていただかないと、食品安全委員会が決めたものが実際の環境規制に使えないということが生じてまいります。ぜひ、その点についてお願いしたいと思いますし、それが行われるようになれば、今までいわば不確実性があるまま決められていた環境基準が、メディアによっては、科学的な根拠に基づいて現在よりも基準値としては緩くなる可能性の方が高いと思うんです。そういう調査をもう少し徹底的に行っていただきたいと思います。
 それから、ほかの先生方からもお話がありましたから、もうこれでやめますが、最後に一つだけ。開発途上国が化学物質のナショナルスタンダードを決めるための支援をぜひ進めていただきたいと思います。国際的な化学物質のモニタリングも重要ですが、開発途上国は、彼らの経済力と人的資源では、国のナショナルスタンダードが決められません。いや応なしに日本やアメリカの基準をそのまま基準に使っています。基準に決めても、それは日本の環境基準よりももっとひどい、絵にかいたもちです。開発途上国に、そういう視点からの国際的な支援を展開をしていただきたい。
 以上です。

○櫻井部会長 ありがとうございました。
 森先生。

○森委員 自分の専門分野から言わせていただきます。資料のいろいろなところに、「2025年頃における望ましい社会像を見据えた」と書かれていますが、重点取組事項になると、まず具体的に細かいところを言うよりも、20年後を見据えたということが重点的取組のタイトルに出るようなアピールをした方がいいと思います。それは何かというと、将来世代が、20年後の世代がどうなるかというのを基準にしたというか、そういう概念をこの際出せればいいんではないでしょうかというのが提言です。
 あと、もう一つ細かいところで言わせていただきますと、おそらく20年後ぐらいのリスク評価、リスク管理は、特に人への影響に関して言うと、平均値とか一般的なところではなくて、個々の人の状況によって変わる時代になっていると思います。それを見据えて、平均値ではなくて最大暴露量の人だったらどうするのかということが明確に言えるようになって、それに対してどうリスクリダクションするかという、オーダーメード医療ではないですけれども、環境リスクに対しても、個々のレベルまで落としたものが必要だということを、やはり重点取組の視野に入れておかないとだめではないかという気がします。
 さらにもう一点ですが、リスクコミュニケーションの推進のところに、リスクに関する相互理解の促進のための人材育成ということが書かれていますけれども、化学物質アドバイザーは、今実際に動いていると思いますが、現実にその人たちがファンクショナルに活躍する場を作らないと、どうしてもだめだと感じています。資格をとったとしても結局活躍ができない、あるいはそれが仕事にならない、あるいはまだアドバイザーの方々が実際、健康影響の話には踏み込めない、ということがあるので、そこを教えるシステムも、少し追加していただいた方がいいと思います。
 以上です。

○櫻井部会長 ありがとうございました。
 森田先生。

○森田委員 まず2-4の資料を見させていただいて、全体的に、15年前の話がそのまま書かれているという印象があります。化学物質対策というのは、30年近くずっと環境省がやった施策ですけれども、15年前にいわゆる発がん物質対策を取り込んだ形で、93年に追加部分の改正、96年に大綱の改正があり、その頃に議論していた事項が、そのまま羅列的に書かれているだけで、これで戦略的プログラムと言えるのかというのが、第一印象です。いろいろな方が教科書的とおっしゃっておりますが、むしろ陳腐化された目標しか書かれていない。これが第1ですね。
 それから第2は、戦略と言う以上、戦略が書かれなければいけないですね。それはどちらかというと、とりあえず何かこんなことをしましょうかというふうな戦術的なアクション目標みたいなものが、とりあえず羅列されていると。もし戦略というのを目標として掲げるのであれば、もうちょっと明確な戦略が必要である。多分それは何かというと、一つは日本の社会はどちらかというと、生産側がかなり有利になっていて、生産側のしりぬぐいのような形の環境政策がずっとついて回っていたんですが、むしろ今は、産業などの生産側を環境政策にあわせるような形で構成されるべき時代に来ているだろうと思いますが、そういう意味の戦略の書き方、それをやはり少なくとも20年先に出すんであれば、そういう形に変えていただけるのではないかと考えます。
 それから、効率の問題については、既にいろいろな先生方が御発言されていますけれども、90年代に入りまして、発がん性物質の対策みたいなものを、環境基準の中に盛り込む作業をずっとやってきたわけです。その中には当然アスベストも入っております。したがって、アスベストのリスクアセスメントは、その時点でやられ、かつ環境基準も大綱の中に盛り込まれたところもあるんですね。そのリスクの評価そのものは、間違っていなかったんだろうと思っています。ただ、何が起こったかというと、一方でそれを適用する側からも安全側に立った声があったにもかかわらず、リスクアセスメントの不確実性、つまりリスクの上限と下限みたいなところのやりとりの中で、やや甘い見積もりで社会を動かしてしまったということだと思います。その結果として起こった現実は、多分社会全体に非常に多額の損失を与えることになっていると思います。これはアスベストを使われた企業側にとってもそうだろうと思うんですが、そのようなことが起こっています。これをずっと我々の社会は繰り返しているんですが、それを繰り返さないための戦略は一体何なのかと、それをもう少し原点に戻って書く必要があるかなと思います。
 この戦略的プログラムの全体の流れといいますのは、化学物質の有用性と有害性をどうバランスするか、そして実際の安全と、それから市民が感じる安心のギャップをどうやって埋めるかということに、かなり全体のトーンが流れていますけれども、多分それは間違っていて、結果的には社会全体を誤って見せることになるんではないかという印象が一つあります。
 それからもう一つは、化学物質対策の中で、90年代に入って発がん性、そして90年の後半ぐらいから次世代の影響を中心にした化学物質の評価、それから対策というのは視野に入り始めていて、それが基本的には、いわゆる環境ホルモンの問題として提起されていきます。したがって、本来は戦略目標の中に環境ホルモンの問題、つまり胎児とか乳児とか、あるいは子供の知能の発達を含めてですけれども、そこに対して化学物質がどのような意味を持ち、かつそれを保護するにはどういうことが必要であるかといったものが、本来は戦略目標に入るべきだったんでしょうけれども、それが欠落しているというのは少しおかしいかなという感じがいたします。
 最初に、アスベストの問題というのも少し考えた方がいいと思うんですが、多分アスベストの問題というのは、構造的に起こっている問題があり、かつそれを防ぐにはこの形では多分難しいかなということを含めて、どういう形に作ったらいいかという、やはりアクションとしてのやることは、その程度のことなのかもしれませんけれども、目標だけはもうちょっときちんとした方がいいかなという感じがします。

○櫻井部会長 ありがとうございました。
 吉岡先生。

○吉岡委員 吉岡と申します。
 普通、私の場合には下から2番目でありまして、最後は大抵「わ」で始まる人が多いんですが、一応トリを務めさせていただきます。
 今まで先生方が多くお話なされましたように、さまざまな問題がございます。まとめようとするつもりはございませんけれども、ここで書かれる軸というのは何だろうかということを考えます。
 一つは時間的な問題ですね。この項目については5年先の話をしているのか、それとも10年あるいは20年先の話をしているのかということがよく分からないので、時間軸を考えなければいけないのではないかと思います。
 もう一つの軸というのは、多分実施可能性といいますか、研究レベルであるのか、それとも実際に行うべきレベルであるとかという軸をとっていかないといけないであろうと思っています。
 第3の軸があるといたしますと、それは例えば主体がどこにあるんだろうかというようなことだと思います。
 そうした幾つかの軸というものを置いて、分かりやすく図解的に示していただきますと、一般の人々にはよく分かるのではないかなと思います。図解といいますと、もう一つはそれぞれの施策、重点目標というものが、例えば化学物質の生産から廃棄に至るまでの、どの段階で主に作用するものなのかというようなことも考えられますし、あるいはそれぞれの重点的な取り組み事項というものの因果関係というものが、どのようになっているのかということを、例えばネットワークというような図でもって示すといったような、いわゆる分かりやすさに対する工夫が必要であるのかと思います。
 あと細かいところで申しますと、例えば2ページの3.の施策の基本的方向の2番目の白丸のところに「環境リスクとベネフィット」というのがございます。環境リスクにせよベネフィットにせよ、計算をするのに必要なデータが分かっているものの計算はできますけれども、分かっていないものについての計算はできません。その前の白丸の「科学的な環境リスクの評価」では、「環境リスク」だけが取り上げられていますが、ベネフィットはどう評価するのだろうかということが気になります。計算上は、ベネフィットの計算の方がむしろ難しいのではないかなと思います。
 それから全体を読んでおりまして気になりましたのは、環境リスクというのは、人に対するリスクと環境生物に対するリスクの2つがあるわけですね。それがリスクとして方向が一致していればいいんですけれども、逆の場合に一体どうするんだろうか。そういうときの評価の基準のようなものをどうしていくんだろうかということが、非常に難しい課題ではないのかなと思います。
 以上でございます。

○櫻井部会長 ありがとうございました。
 これで一通りコメントをいただきました。非常に貴重な御意見が多かったと思いますが、もう既に予定された時間5分前ということになってしまいました。更に御意見を頂くと非常に良かっただろうと思いますけれども、残念ですが、この辺で打ち切らせていただきます。本当にありがとうございます。
 本件の今後の取り扱いについて、事務局から御説明をお願いいたします。

○化学物質審査室長 本日は、非常に貴重な御意見を頂きまして、ありがとうございます。頂いた意見をまとめまして、今後検討チーム会合に御報告をさせていただき、さらに議論を深めていただきたいと考えております。
 それから、本日御欠席の委員の方がおられます。それから時間の関係で、まだ発言が十分にできていない方もおられると思いますので、9月7日までに、更にコメントがございましたら、御提出いただくようにお願いいたしたいと思います。
 ありがとうございました。

○櫻井部会長 続いて報告事項でございます。大変わずかしか時間がございませんが、御報告、御説明を、事務局の方からお願いしたいと思います。

○企画課長 企画課長の柴垣でございます。
 それでは、時間も押しておりますので、それぞれの報告事項の項目だけを御紹介させていただきまして、御報告に代えたいと思います。
 まず、資料3-1は、環境省全体の重点施策を説明したものです。1枚開いていただいたところに全体の概念、それからその後の柱ごとのものがございます。それから、全体の中におきまして、化学物質対策は、5の「安全安心な生活の保全」というところの中にございまして、また後ろの方に、それぞれ環境保健部の化学物質関連の個表も載っております。御覧いただければと思っております。
 それから、資料3-2は、化学物質対策の2月以来の進展につきまして、御報告しようとしたものでございまして、後半には、それぞれ記者発表資料をつけてございます。これも、時間はございませんけれども、御覧いただければと思います。
 それから、資料3-3は、公害健康被害の問題として、水俣病対策についての資料でございます。昨年10月に最高裁の判決がございましたし、来年は50年ということで、4月7日に「今後の水俣病対策について」として新たな水俣病対策を打ち出しております。それを踏まえまして、最初の重点施策の中の予算でも1.6倍以上の10億増の要求をしております。そういった御報告でございます。
 それから、資料3-4でございますけれども、環境保健部の方で、特に一昨年以来取り組んでおります国内の毒ガス問題の対応でございます。6月末に中間とりまとめとして公表いたしました、神栖の汚染源の解明、それからその汚染源の1つとみなされるコンクリート様の塊の掘削などについて、御報告させていただく資料でございます。
 それから最後に、資料3-5といたしまして、アスベスト問題への当面の対応についての資料でございます。政府全体で8月26日に第2回の関係閣僚会議がございまして、そのときの資料でございます。アスベスト問題につきましては、被害の拡大防止と、国民の不安への対応、それから一番重要な過去の被害への対応という点を中心に、新たな法制度の構築なども含めて、引き続き検討するということでございます。
 以上、駆け足になってしまいますけれども、こちらから御報告させていただこうと思った資料の項目の御説明ということで終わらせていただきます。

○櫻井部会長 この資料の説明内容についての御質問、御意見を頂くことはできないと思いますので、本日用意された議題は、これですべて終了ということにしたいと思います。全体を通して、何か御発言はございますでしょうか。
 特に御発言が無いようですので、本日の会議を終了したいと思います。事務局から何かございますか。

○環境安全課長 どうもありがとうございました。
 先ほど森下室長から申し上げましたように、本日の基本計画に関する御意見は、9月7日までに追加の御意見を事務局へお寄せいただければありがたいと思っております。よろしくお願いしたします。
 それから、次回の環境保健部会につきましては、改めて後日、日程調整をさせていただきます。その際に、本日時間が無くて御報告は御紹介に留まりましたが、これらのものについては、次回の保健部会で御質問等あればお答えさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 また、本日の議事録につきましては、原案を作成いたしまして、先生方に御確認いただいた後、ホームページに掲載させていただきます。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

○櫻井部会長 それでは、本日の会議を終了いたします。
 どうもありがとうございました。

午前11時58分閉会