中央環境審議会環境保健部会(第54回)議事録
議事録
午後3時30分開会
○鮎川企画課長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第54回中央環境審議会環境保健部会を開催いたします。
環境保健部企画課長の鮎川でございます。よろしくお願いいたします。
委員の皆様におかれましては、こちらの会場にお運びいただき、また対面以外でも、WEBの参加をいただきまして、誠にありがとうございます。
本日の環境保健部会は、会議室とWEB会議の併用で開催をいたしております。
WEB会議で参加の委員におかれましては、音声が聞き取りにくい、あるいはその他の不具合がございましたら、事務局までお電話、またはWEB会議のチャット機能でお知らせいただければと思います。
本日の会議は、WEB公開でございます。傍聴用のWEB会議システムを用意いたしておりますので、事前登録のあった方に傍聴いただいております。
毎度のことでございますが、委員のご発言方法につきましてお知らせでございます。会場にいらっしゃる委員は、お名前の札を縦にしていただければと思います。WEB参加の委員におかれましては、お名前の横にある挙手アイコン、手のひらのアイコンをクリックしていただければと思います。それぞれ部会長のほうからご指名がありますので、ご指名のあった方につきましては、指名を受けた後にご発言をいただくということでございます。WEB参加の委員におかれましては、今、マイクのミュートの状態であると思いますけれども、そのミュートをクリックして、解除してご発言いただいて、ご発言後は再びミュートにするということで、そちらの操作をよろしくお願いいたします。
機器の不具合等により、万一ご発言がこちらに届かなかった場合には、お電話またはチャット機能でご意見をいただければ、後日、議事録に掲載するという形にさせていただければと思います。できるだけつないでご発言いただければと思いますが、万一の場合はそのようにさせていただきます。
保健部会の委員及び臨時委員24名でございますが、本日は19名に対面及びWEB参加でご参加をいただいております。定足数に達しておりますので、本部会は成立いたしておりますことをご報告申し上げます。
続きまして、資料の確認でございます。会場にお越しの委員におかれましては、お手元のタブレット端末などでご覧いただけます。WEB参加の委員におかれましては、事前にメールでお送りいたしましたので、それでご覧いただければと思います。
議事次第のほかに、資料1から5でございます。議事につきましては、議事次第に書いてございますとおり、本日は諮問が1件と、あとは報告事項が3件ということでございます。
説明に当たりましては、事務局が画面上に資料を共有して進行させていただきます。傍聴されている方につきましては、環境省ホームページの環境保健部会のページに、既に資料をアップロードしておりますので、そちらをご覧いただきますようお願いいたします。
資料の不足等ございましたら、WEB参加の方、委員におかれましては、事前にお知らせした電話番号までご連絡いただければと思います。特に資料の過不足等ないということでよろしいでしょうか。途中でも、欠落がございましたら、WEB、チャットないしは電話でお知らせいただければと思います。
では、ここで事務局を代表いたしまして、環境保健部長の前田からご挨拶を申し上げます。
○前田環境保健部長 環境保健部長の前田でございます。
委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中、第54回環境保健部会にご出席いただき、誠にありがとうございます。
本年は、中央環境審議会の委員改選の年であり、本日の部会が現在の委員構成でご議論いただきます最後の環境保健部会となります。これまで、本部会における議論を牽引いただきました大塚部会長をはじめ、環境保健部の施策の推進に有益なご意見をいただきました委員の皆様に、改めて感謝を申し上げます。
本日の部会でございますが、1件の審議事項と3件の報告事項を予定しております。審議事項でございますが、毎年の恒例となってございますが、公害健康被害の補償等に関する法律、いわゆる公健法に基づく障害補償及び遺族補償の標準給付基礎月額の改定についてご審議をいただきます。
なお、公健法は昭和49年9月に施行されて以来、昨年の9月で50年が経過したというところでございます。環境省といたしましては、今後も公健法に基づきます公害健康被害補償や予防事業が継続して安定的に実施されるように、一層努力をしてまいります。
このほか、最近の環境保健行政の動向としまして、前回9月の環境保健部会でご報告をさせていただいた事項について、9月以降から本日までの進捗状況のご報告を予定しております。
委員の皆様におかれましては、限られた時間でございますが、ぜひ忌憚のないご意見を賜りますよう、よろしくお願いをいたします。
○鮎川企画課長 それでは、ここからは大塚部会長に議事進行をお願いいたします。大塚部会長、どうぞよろしくお願いします。
○大塚部会長 どうもありがとうございます。
それでは、早速、部会を始めさせていただきます。
まず、議事に入りたいと思います。
議題の1、公害健康被害の補償等に関する法律の規定による障害補償標準給付基礎月額及び遺族補償標準給付基礎月額の改定について(諮問)でございます。事務局からご説明をお願いいたします。
○堀内保健業務室長 はい、ありがとうございます。保健業務室長の堀内でございます。
それでは、資料2に基づきまして、公害健康被害の補償等に関する法律の規定による令和7年度の障害・遺族補償標準給付基礎月額の案につきましてご説明申し上げます。
こちら、厚労省が公表している直近の賃金構造基本統計調査報告と民間主要企業、春闘賃上げ集計を基に、毎年度、次年度の補償費の改定を行っているものでございます。
まず、1ページから3ページ目は諮問と環境保健部会への付議の関係になりますが、1ページ目、令和7年度の改定額についての環境大臣から中環審会長への諮問書になります。
2ページ目、金額が別記として、性別及び年齢階層別に案が挙げられておりますが、こちらが諮問の対象となります改定後の給付基礎月額の案となっております。こちらは千円単位のものでございます。
3ページ目は、諮問を受けまして、中環審の会長から本環境保健部会長へ付議をいただいたという書類になっております。
続きまして、4から6ページ目は制度の解説となっておりまして、基本的には、制度は例年同様でございますけれども、4ページ目をご覧いただきますと、上段が公害健康被害の補償等に関する法律における障害・遺族補償標準給付基礎月額に関して、労働者の賃金水準その他の事情を考慮し、審議会の意見を聞いて定めるとされている各条文でございます。また、下段が、同法の施行令におきまして、性別及び年齢階層別に区分すること、それから毎年度定めるとされているものでございます。
続きまして、5ページ目でございます。関連する当時の中央公害対策審議会の答申の抜粋でございまして、上段のほうから、算用数字6の(1)番には、具体的な算出は「賃金構造基本統計調査報告」、いわゆる賃金センサスを用いること、それから、(2)としまして、給付水準に関して、平均賃金に対して、障害補償費で80%、遺族補償費について70%ということが適当であること、(3)番におきましては、基礎月額算定の基礎となる賃金、こちらは前年の賃金実績によることとしております。ただし、これは(注)にございますように、賃金センサスのデータは前々年のデータになりますので、前年の「春闘による賃金引上げ状況調査報告」、これも用いて算定するというふうにされております。
それから、6ページ目をご覧ください。6ページ目は障害補償費の実際の給付におきまして、認定患者様のその障害の状況に応じまして、特級から3級まで、就業能力の喪失度合いに応じた給付率を掛けて計算するということになってございます。こちらは制度の解説になります。
それから、7ページから10ページ目が、賃金センサス及び春闘のデータとそのトレンドの関係の資料になります。
まず、7ページでございます。こちら、今回の計算に用いました令和5年の賃金センサスの性別、年齢階層別の数値になります。括弧書きの令和4年度と比較してございます。
続いて8ページが、同じく同様の区分で、賃金センサスの令和5年のデータの令和4年度からの差額と増減比をおのおの記載しております。上のほうにございます全体の集計での前年からのアップ率1.9%プラスというものは、次の9ページに過去10年のトレンドがございますが、過去10年の中で見ても最も高い伸び率となっております。
また、令和5年度の賃金センサスの男女別の増加率、次の9ページのほうがご覧いただきやすいかと思いますけども、9ページ、こちらの表で賃金センサスの伸び率の男性をグリーンの折れ線、それから、女性を紫の折れ線で示しております。例年、紫の女性の増率のほうが男性を上回っているほうが非常に多いんですけども、この10年で申し上げると、平成30年と今回のセンサスの令和5年の2年度のみが男性のほうが高いという、センサスの性別増率に関しては、ちょっと比較的まれな形が見られているという年になります。
そして、この9ページの春闘アップ率でございますけども、こちらは下段のほう、(注)にあるように厚労省の集計を基にしておりまして、これは資本金10億円以上、かつ従業員数1,000人以上の労働組合のある大企業を対象にしているものでございます。こちら、令和6年のデータが既に公表されておりますが、5.33%という令和5年の3.6%を上回って、こちらも過去10年で最も高い伸び率となっております。
この例年の春闘アップ率と賃金センサスのアップ率には当然ながら差がございます。過去の春闘アップ率と賃金センサスの男女別のアップ率の比をとりまして、令和6年度の男女別の賃金センサスのアップの度合いについて、後ほど、13ページ、14ページのほうでご説明いたしますが、賃金推計増減率というものを求めておりまして、男性を3.6%、女性を4.6%として、推計、算出しております。
続きまして、10ページ目でございます。こちらは年齢階層、男女別の賃金センサスのアップ率に関してグラフで示したものでございます。今回から男女別に分けさせていただいております。上が男性でございますけれども、直近の令和5年度でいけば、全労働者平均が、この薄い水色でございますけども、それから最も大きく乖離しておりますのが年齢区分の一番高い70歳以上、その次が65から69歳という比較的高年齢の層が、この全体の平均よりも例年高いほう、低いほうへの乖離が大きくなっております。
下の表の女性で言えば、やはり高齢者の乖離が、相対的にこの70歳以上の薄紫、65から69歳の薄いピンク色の部分が相対的に大きいんですが、直近、令和5年度では、若年層、18歳から19歳の年齢層が最も乖離が大きくなっております。この高齢層における全労働者平均からの乖離については、増方向、減方向へ、年度をまたいで、その振れを繰り返していくというような傾向が見てとれるところでございます。
これを踏まえまして、11ページ目が、標準給付基礎月額の具体的な算定方法についての解説でございます。
1番につきましては、先ほどご説明したとおり、基本的には賃金センサスの性別、年齢層別の平均賃金の障害補償費を80%、遺族補償費を70%に、過去の春闘報告と賃金センサスの比と令和6年度の春闘アップ率から算出した賃金の推計増減率を乗じて計算するとしております。
2番は、この賃金推計増減率に関しては、男女別にセンサスのデータが利用可能ですので、男女別の推計増減率を用いて算出するということと、それから、3番の激変緩和措置についてでございますが、賃金センサスでは、先ほどの10ページにございましたように、年齢階層によりまして、全労働者平均に対し増減の比較的大きな層がございます。そのような大きな増減がありました場合に、激変緩和措置を取るという仕組みを設けてございまして、ある年齢階層の賃金センサス増減率が、全年齢平均よりも大幅に増減した場合、翌年に、その全年齢平均の推移に対して逆方向へ乖離をすると、例えば、ある年度で、全年齢平均よりもマイナスへの振れが大きいという年齢層は、翌年は、その全年齢層平均に対し乖離はプラスの方向に、また、そのプラスに出た場合には、翌年マイナスに出るという傾向が過去のデータから統計的に有意に見られるということが分かってございますため、増減率から2.5%以上乖離しているという年齢階層に関しては、単純に賃金推計増減率を当てるのではなく、回帰分析手法を用いた補正によりまして算出するということが一つ。
それから、3番の3行目の「さらに」以降の部分は、回帰分析で補正した数値に対し、なお前年の給付基礎月額から2%以上増減している場合に関し、一昨年までは増減率を2%までにするという激変緩和措置を取ってございました。ただし、この点は昨年度、本部会にもお諮りし、賃金の大幅な上昇傾向に対応するため、当該年度の春闘アップ率が2.5%以上の場合、増率側の上限を春闘アップ率までという運用に変更をさせていただいております。今年度も同様の方法で、基礎月額の対前年増額上限は、春闘アップ率である5.33%で算定を行っております。
12ページは、先ほどご説明した回帰分析の相関図でございます。今回、回帰分析の適用が必要となるのは、男性の65から69歳、それから70歳以上の2階層でございますので、男性分のみのデータとなっております。横軸が当該年度の乖離、縦軸がその翌年の乖離ということで、青い点はこれまでのデータのプロットと、それに対する回帰直線を示したものでございます。横軸、当該年度の乖離がマイナス方向に大きければ、翌年度はプラスの方向に、前年度平均に対して出ることが多いと。また、その逆のケースで当年乖離がプラス側に大きければ、翌年はマイナス側に揺り戻しがあるというような回帰式が得られております。
それから、13ページ、14ページに移りまして、こちらが、それぞれ障害補償費と遺族補償費の計算に用いた数値と、11ページでご説明した各ステップの計算された値などを記載しております。障害補償費と遺族補償費は、80%を掛けるか、70%を掛けるかという違いがあるだけで、試算プロセスは共通ですので、13ページ、障害補償費のほうでご説明させていただきます。
中央部分の一番大きな表に、男女の年齢階層別に、一番左のほうに令和4年度のセンサスの数字、一番右のほうに上限5.33%措置という列のある部分、各列の下に丸の数字を振っております。こちらの表で、まず、③の列にある令和5年度の性別、年齢階層別の賃金センサスの値に、こちら障害補償費ですので80%、0.8を掛け、右上にある賃金推計増減率、男性が3.6%、女性が4.6%、こちらを103.6と104.6としまして乗じまして、⑧番の列にある補正前の数値というものを計算しております。このうち、⑥の列にあるセンサスの性・年齢階層別で令和4から令和5年度の増減率が、全年齢の男女別平均から2.5%以上の乖離がある、黄色マーカーをしております男性の65から69歳、こちら4.4%の乖離、70歳以上で6.87%の乖離という部分に関しては、この左下にございます回帰分析式を適用しまして、男性103.6%に対して103.1%、102.1%という、その補正計算を行っております。
こちらが、それぞれ⑨番の列にある黄色のマーカーの数字、255.5と231.5ということになります。この⑧と⑨の列にある数値に関し、⑦番の列にある、昨年の標準給付基礎月額からの増減率を、⑪番の列に示しております。こちらが+5.33から-2%の範囲にあるものは、その数値で案を確定とさせていただいております。男性では60歳以上の3階層、60から64、65から69、70歳以上というところが5.7から6.9%ということと、女性の60から64歳の階層、こちらが5.33%を超えて5.6%というものがございますので、こちらについては一番右の⑫の欄にある5.33%、基礎月額の数値を100円単位で丸めます関係で、5.32とか5.31になるケースもございますけれども、春闘の上限を適用したという数値になります。
14ページのプロセスは今と同様でございますので省略しまして、15ページ、最後にお移りください。
15ページが、先ほどの13ページ、14ページの赤囲みの案として確定した数値を令和7年度の改定案として記載し、令和6年度の基礎月額とその増減率をした一覧になります。このページの黄色マーカーは、先ほどご説明した春闘アップ率を適用した年齢階層というものでございます。男女合わせた全体平均では3.7%、対前年比の増、男女別では、端数を丸める関係で、男性の障害で4.1%、遺族のほうで4.0%の伸び、女性では、いずれも3.4%となっております。
こちらの改定案は先ほどの資料2枚目にありまして、冒頭の諮問書によりお諮りしておりますので、説明が長くなりましたが、ご審議のほどよろしくお願いいたします。
○大塚部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまのご説明につきまして、ご質問、ご意見がございます方につきましては、会場の方は名札を立てていただきまして、WEB参加の方は挙手アイコンでお知らせいただければと思います。順次お名前をお呼びいたします。WEB参加の方は、ご発言の際にミュート解除を忘れずにお願いいたします。
○大塚部会長 では、山口先生、お願いします。
○山口委員 連合の山口と申します。
ただいまご説明いただいた基礎月額について2点と、基本的な部分について2点お伺いしたいことがございます。
一つ目は、激変緩和措置についてです。昨年も発言したこととも関連しますが、春闘のアップ率が2.5%以上であるときには、この春闘のアップ率が激変緩和措置の上限になりますというご説明をいただきましたが、今回、60歳から69歳と70歳以上がキャップを当てはめる対象になった、男性のこの年代がキャップを当てはめる提案となっています。この60歳以上というのは、一般的な春闘の影響を受けづらい、その企業によってどう扱うかというのは異なりますが、大体春闘の賃上げ効果というのは、概ね60歳ぐらいまでが対象となることが多いという実態がございます。そのため、ほかの年代に比べて、この男性の60歳以上の増加率が大きくなった要因というのが、果たしてどこまで春闘と関係あるのかというところを感じましたが、事務局として、どのように分析をされているのかというのを伺いたいというのが1点目です。
2点目は、これは前回も申し上げましたが、経済社会情勢の変化や、政府として男女間賃金格差を是正していくという方向感がある中で、補償額に男女差を設けることについて早急に検討する必要があるのではないのかというのを前回お尋ねしたところです。事務局の見解についてお聞かせいただければというのを改めて申し上げたいと思います。
基本的な部分なのですが、基礎月額の年代が35歳以上から始まっているのですが、この34歳以下が載っていないというのはなぜでしょうかというのが一つ目です。
もう一つが、実際の補償金額ですけれども、不幸にして公害による健康被害を受けてしまって、働くことが難しくなった場合に補償される金額というのは、それまでの所得の額を問わず、この基礎月額及び障害の程度による給付率だけで算定をされるのでしょうか。昭和49年の審議会の答申を読むとそのように読めたのですが、現在では雇用形態による差というのが事実としてある中で、果たして一律でいいのかということを疑問に思ったので、その点を教えていただければと思います。
以上です。
○大塚部会長 ご質問もございましたので、事務局のほうからご回答お願いします。
○堀内保健業務室長 ご質問ありがとうございます。
大きく4点あったかと思いますけども、まず、60歳以上の年代に関して、春闘のアップ率が、その反映の程度が、それ以下の年代と比べて、十分関連性があるのか、やや低い可能性があるのではないかというご指摘かと思います。
この点に関しては、過去、このようなルールで算定を行ってきておりまして、なかなかほかに有用な指標というものがございませんので、現実的には従来どおりの方法で計算をさせていただきました。ただ、ご指摘のように、その高齢層の賃金のトレンドというものが、春闘とどのように連動していくのかという部分に関しては、今ご指摘もございましたので、今後、やはりそういう関連性というものはきちんと確認して、必要があれば、そのルールの見直し等についても検討してまいりたいというふうに思います。
それから、2点目のご質問いただきました男女のところでございます。これについては、昨年もご質問をいただいたところでございまして、こちらの補償費のほうに関しては、被害者の方の逸失利益を補填する形の制度というふうに制度設計がされておりまして、賃金に関して、その男女別の統計があるということから、制度発足の当時に、性別に基づいた損失補填を行うということを基本として、男女別、年齢階層別の賃金を利用するという形にしてございます。現在も、女性と男性で比較した場合に、相対的に女性のほうがやや低いというような状況がございますけども、これまでの制度の経過の中では、その差も縮まってきているということもございますので、引き続きこういう点に関して今後もご意見いただきつつ、検討してまいりたいというふうに思います。
それから、3点目の年代別の部分でございますけれども、35歳以上の年齢階層になっているのはなぜかという点でございます。こちらは、公健法の歴史的な経緯との関係でございまして、昭和62年に公健法が改正されまして、いわゆるこの大気系の公害認定に関しては、63年3月以降、新たに行っていないということがございます。このため、認定されている患者様が、その63年3月までに認定に必要な期間、その当該地域で一定期間の曝露を受けた方ということに限られますので、ご指摘の30代前半以下の方という方は対象としていらっしゃらないということになりますため、対象者に絞った表とさせていただいているところでございます。
それから4点目、実収入による補填等がなされないのかという点でございます。こちらに関しては、一般的に労災でございますとか交通事故等による補償の場合に、その被害者の方が就かれている職業、収入というようなことを前提に補償されるようなケースもあろうかと思います。公健法におきましても、その制度の設計に関して、こちらは資料2の5ページのほうに、この49年8月の答申をつけさせていただいておりまして、6の(1)番で、制度として定型化を行う以上、全労働者の性別、年齢階層別の平均賃金を基礎として基礎月額を定めることはやむを得ないものと考えるというふうに書かせていただいておりますが、この49年8月の前に、もう少し詳しい制度設計の答申が出されておりまして、それは割愛させていただいているんですけども、いわゆる公健法の対象の方に関しては、職についた一定の労働者に限らず、自営の方とか年金生活の方、無職の方や高齢の方、学生、主婦の方、お子さんなど多様であること、それから、気管支ぜんそくなど、このような公害の健康被害に関しての疾患の経過というものが、中長期的に個人個人で、その経過や重症化の相違も大きいということで、実収入の減少が、その公害の認定による短期的な変化ではなかなか推しはかりがたいというようなこと、それから、家計や家庭の状況のため、やむなく就労されるケースなどもありまして、いわゆる収入減少分の補填ということでは、なかなか実情に沿わないような例もあったりというようなことから、個々の収入補填の算定が非常に困難であるということから、現実的な補償制度として、このような制度設計がされているというふうに理解をしております。
長くなりましたが、以上でございます。ありがとうございます。
○大塚部会長 ありがとうございました。
よろしいでしょうか、引き続き、ご質問、ご意見をお伺いしたいと思いますけど、いかがでしょうか。特にございませんでしょうか。
(なし)
○大塚部会長 では、さらにご意見がなければ、事務局案のとおり改定したいと思いますが、ご異議ございますでしょうか。
(異議なし)
○大塚部会長 では、ご異議なしということで、承りました。ありがとうございました。
それでは、議題の1は以上にさせていただきます。
議題の2の報告事項のほうに入りたいと思います。3件の報告がございますので、事務局からまとめて説明をお願いいたします。
○長谷川化学物質審査室長 はい、ありがとうございます。
それでは前回の部会、昨年の9月以降でございますが、環境保健部の政策の進捗についてご報告させていただきます。
まず資料3、化学物質の国内対策についてということで、化学物質審査室長と化学物質安全課企画官をしています長谷川からご報告させていただきます。
1ページおめくりください。まずは、化学物質審査規制法、化審法関係の取組について3点ご報告させていただきます。
3ページ目、化学物質審査小委員会の審議事項からご説明させていただきます。
こちら、この部会の下に設置されております小委員会でございまして、化学物質に関しての新規化学物質の審査、既存化学物質のスクリーニング評価、優先評価化学物質のリスク評価など同法の重要な事項に関する調査審議を行うものでございます。通常、この化学物質審査小委員会と、厚生労働省の薬事審議会、経済産業省の化学物質審議会、この3審議会の合同会合という形で開催されております。
一番下に小委員会のメンバーを記載させていただきました。本日もご参加いただいております白石委員長をはじめ、10名の委員によって構成されております。概ね毎月一度ずつ開催してございます。
上のほうに戻りまして開催状況でございますが、前回会合以降、合計4回開催しております。10月、11月、12月、1月でございます。個別の事項につきましては省かせていただきますが、主な審議事項といたしましては、まず、新規の化学物質の審査として、化学物質審査規制法では、化学物質を新たに製造または輸入する事業者に対して、その事前審査というものを義務づけておりまして、当委員会でその審査を行ってございます。この4回の審議の間で、合計51件についての審査を行いました。
また、既存化学物質、こちらについてはスクリーニング評価・リスク評価というものを行っております。現在、既存化学物質は大体約1万物質程度ございますが、こちらについて、順次これらの評価を行っているところでございまして、この期間内、7,840物質についての評価を行って、このうちの2物質について、より取組を行うという優先評価化学物質に指定いたしました。
また、やや細かい話でございますが、現に優先評価化学物質である1物質、エチル=水素=スルファートでございますが、こちらにつきまして評価を再度行って、それらについての評価の見直しというものも行ったところでございます。参考までに、これによりまして、優先評価化学物質が225物質がプラス2となり227物質になる予定でございます。
このような小委員会は、原則として毎月1回、これからも開催してまいりますので、また、次回会合において報告させていただければと思っております。
1ページおめくりください。4ページ目が、化学物質対策小委員会の審議事項でございます。
こちらの委員会は、前回の環境保健部会におきまして設置が決められたものでございまして、化学物質審査規制法の前回改正からの施行が5年経過したことによりまして、今後の化学物対策の在り方について、検討を行うものでございます。こちらも、経済産業省が設置している委員会との合同会合として、これまで2回開催してございます。
先に、下のほうのメンバーをご紹介させていただきますと、こちらも、今日ご参加いただいております鈴木先生他7名の委員で構成されております。
前回の環境保健部会以降は合計2回、10月と11月にそれぞれ1回ずつ開催してございまして、第1回では主に全般的なこと、化審法全体の施行状況の確認、また、前回改正、平成29年の改正でございますが、それ以降の概要及びその実績についてご審議いただきました。また、11月の会議におきましては、それも含めたより広い事項として、化学物質管理の動向について検討ご審議いただいたところでございます。この委員会は続いてございまして、今後は化学物質対策全般の在り方について議論を深めていただきたいと、我々事務局としては思っているところでございます。
1ページおめくりください。5ページ目は、化審法の施行状況について、主に規制対象物質の追加についてのご報告でございます。
前回の保健部会以降は、以下、今からご説明を差し上げる6物質について制度への反映を行っております。
まず一つ目が、PFOA関連物質でございます。関連物質というものは、自然界でPFOA、こちらは既にPFASの一種として規制対象でございますが、自然界でPFOAに分解する物質のことを関連物質と定義づけてございます。PFOA関連物質には様々な物質がございまして、これにつきまして、POPs条約、もともとの国際的な条約でございますが、このPOPs条約のほうで、このPFOA関連物質に該当する物質というものが例示的に定められてございます。私どものほうでは、その例示リストを参考に、約140物質をこのPFOA関連物質として定めました。昨年の7月に公布いたしまして、1月10日から、この規制が施行となってございます。これに該当する物質は、製造・輸入等が原則禁止となる第一種特定化学物質となってございます。
2番目はポリ(オキシエチレン)=ノニルフェニルエーテル、通称NPEと呼ばれるものでございます。こちらは界面活性剤などに使用されているものでございますが、リスク評価の結果として、第二種特定化学物質、こちらは製造・輸入などが禁止されるわけではございませんが、数量の届出などがかかると、このような物質に指定しました。こちらにつきましては、前回の審議会の直後、9月26日に指定をいたしまして、今年の4月1日から施行ということになります。
3番目の欄に三つの物質が書いてございます。メトキシクロル、UV-328、デクロランプラスとこのような3物質でございまして、これらは昨年のストックホルム条約におきまして規制対象物質に追加指定されたものでございます。メトキシクロルというものは農薬の一種、UV-328は、これは紫外線吸収剤として主に塗料やプラスチックに添加されて使われていたもの、また、デクロランプラスは難燃剤として使われているものでございます。これら3物質につきましては、第一種特定化学物質として昨年末、12月18日に規制対象として追加いたしまして、今年の2月、また6月から、順次施行となっております。これら化学物質は、一部の特殊な用途を除き、使用、製造・輸入などが禁止されることになります。
また、一番最後の欄でございますが、PFHxS、いわゆるPFASと呼ばれるものの一種でございますが、一つ目の欄と同様、関連物質についての規制でございます。自然界でPFHxSに分解するというような物質でございまして、こちらも国際的な議論におきまして、約100物質程度が今リストに掲載されておりますので、これらについて、現在、作業を進めているところでございます。今後、対象物質を絞り込んで、規制、公布、施行というものにしておきたいというふうに思っております。
これら物質の詳細につきまして、資料の後ろのほう、8ページから11ページに詳細なこれまでの流れを付した資料を用意してございますので、適宜ご参照ください。
続きまして、6ページからPFAS関係の取組についてご報告させていただきます。
環境省におきましては、PFASに対する総合戦略検討専門家会議というものを開催いたしまして、PFASに関しての取組についての事項をまとめて、それに基づいて各種施策を進めております。主に、私ども環境保健部と水・大気環境局で、よく連携を取りながら、一丸となって対策を進めておりまして、それらの全体像が、6ページにございます方向性としてとりまとめられ、各種政策を進めているところでございます。
本日ご報告いたしたいのは、このうち、左側の赤色の欄の一つ目の四角、管理の強化、在庫量把握に赤字で書かせていただいておりますが、こちらについての私どもが行っている取組についてご報告させていただきます。
これは何かと申しますと、PFOS、PFOA、こちらはPFASの一種として規制対象になってございますが、既に市中に残存しているもの、製品として残存しているものがございます。具体的に申し上げると、PFOSなどを含有する泡消火薬剤でございまして、こちらの適正管理に向けた取組を進めております。
1ページおめくりください。4年に一度、この市中に残存しているPFOS等の含有泡消火薬剤の全国の在庫量調査というものを私どものほうで行っております。それの結果を昨年11月に公表いたしましたので、そちらについて、この場を借りてご報告させていただきます。
様々な施設ごとに数字が書いてございますが、右側が令和6年度、今回の調査結果、左側が前回令和2年度の調査結果でございます。
まず、全体概況から申し上げると、今回の数字を全部足し合わせますと約210万立方メートルという数字になりまして、これは前回調査、令和2年度と比較するとおおよそ半減しております。その意味では、取組というのは進んでいるのかなというふうに思ってございます。
一方、施設ごとに、より細かく見てまいりますと、上のほうの消防機関、消防署や空港、自衛隊関連施設では、大幅に削減が進んでおります。これらのように大規模かつ使用頻度が非常に高い施設については、代替処分の取組が大きく進んだというふうに思っております。
一方、下のほう、石油コンビナート、また、その他と書いてございますが、これは駐車場、地下駐車場などにも設置されているものですが、こちらは横ばい、または微増してございます。既にPFOSを含有する消火薬剤というものが新たに製造されることはございませんので、このように数字が上がっているということは、これは調査精度が向上したものが原因かというふうに思っております。
これまでの取組で上の四つ施設に関しては大幅に進捗しておりますので、今後は、よりこの小規模の民間セクターでの取組というものを進めていく必要があると、このように私どもは考えております。
このためでございますが、少しページを飛びまして12ページに、来年度の環境省の取組についての資料を1枚入れさせていただいておりますが、総合的なPFAS対策等検討事業といたしまして、来年度予算において、この2ポツ、事業内容の下の部分、PFASの適正管理のあり方検討というところに書いてございますが、駐車場におけるPFAS等の含有泡消火薬剤の在庫量の把握について、さらに取組を進めていきたいと、このように思っております。
具体的に申し上げますと、この泡消火薬剤につきまして、在庫量をより正確に把握し、さらには、それが環境中に出ないような取組などの施策というものを講じてまいりたいと思っております。これによりまして、PFOSなどを含む消火薬剤の代替処分を促進して、また、それによる環境汚染の防止というものに、より取り組んでまいりたいと、このように思っているところでございます。
13ページ以降が水銀関係の話題でございます。
14ページをおめくりください。水銀を含有している電池、蛍光灯などにつきまして製造禁止措置を講じましたので、そちらのご報告となります。
水銀につきましては、水銀に関する水俣条約と、このようなものがございますが、こちらの令和4年に第4回締約国会議、また、令和5年に第5回の締約国会議がございましたが、こちらにおいて、製造及び輸出入を廃止する対象製品というものが追加されました。新たに廃止対象となった製品につきまして、我々の国内法である水銀による環境汚染防止に関する法律、そちらの政令を改正いたしまして、特定水銀使用製品というものに指定いたしました。こちらに指定されますと、製造、部品としての利用というものが原則禁止されることになります。
具体的な対象製品を次のページ、15ページのほうに掲載させていただきましたので、ご覧ください。
4種類ございます。
まず①が、ボタン型の亜鉛酸化銀の電池や、ボタン型の空気亜鉛電池、こちらの写真のようにありますが、このボタン型の電池の中に水銀が含有されているものがございました。また、②番目として、いわゆる蛍光灯でございますが、一般照明用の蛍光ランプ、電球型であったり直管型だったりしますが、こちらについても製造禁止対象となります。また③番目が、電子ディスプレイ用の冷陰極蛍光ランプ、外部電極蛍光ランプ、最後に、圧力計などに使われているもの。これらにつきまして、新たに規制対象の製品として、特定水銀使用製品として指定いたしました。
これらにつきまして、14ページにお戻りいただきますと、順次、製品ごとに施行時期をずらしながらですが、最終的には令和10年から、全ての製品についてての規制が開始するというようなタイムスケジュールで、水銀対策というものを進めているところでございます。
18ページのほうで、化学物質評価専門委員会の審議状況についてご報告させていただきます。
こちらの委員会では、化学物質の環境リスク評価について検討・審議を行っている委員会でございます。
委員の名簿、下のほうに掲載させていただいてございますが、白石先生以下の先生方にご参画いただきまして、昨年の年末、12月20日に委員会を開催いたしました。こちらの委員会では二つ審議事項がございまして、化学物質の環境実態調査と、化学物質の環境リスク初期評価につきましてご審議いただいたところでございます。これら2点につきまして、今から概要をご説明させていただきます。
それでは、19ページをご覧ください。まず、これは1点目の化学物質環境実態調査についてのご報告でございます。
この調査、いわゆる黒本調査と言われているものでございまして、一般環境中における化学物質の残留状況、これを継続的に把握するために、昭和49年度から毎年度、実施しているものでございます。今回の委員会では、令和5年度調査、2023年度に行われた調査でございますが、こちらの調査結果を専門委員会のほうにご報告いたしまして審議をいただきました上で、昨年末に公表いたしました。
より具体的に申し上げますと、四つの媒体、水質、底質、生物、大気でございますが、こちらを念頭に置きながら、以下の3種類の調査を行っております。
一つ目が初期環境調査、こちらは、環境リスクが懸念される化学物質の一般環境中における存在状況を確認するもの、二つ目としては、詳細環境調査、こちらは全国的なばく露量などを把握するものでございます。また、三つ目といたしまして、モニタリング調査と称しまして、第一種特定化学物質、またはPOPs条約の対象となっているようなもの、こちらにつきまして、中長期的に環境中での残留状況を監視するというようなものでございます。
結果につきましては、いわゆる黒本と呼ばれておりますが、「化学物質と環境」という本にまとめまして、省内、関係省庁、また地方公共団体などの施策に活用しているというようなものというようなことをしてございます。
令和5年度の調査の概要でございますが、こちらの資料には、ごくごく概要だけを記載しておりますが、もしよろしければ、今回の資料の中に、資料3別添という表を、全部で7ページの表を使いまして、より詳細にご説明させていただきたいと思います。
資料3別添の中には表が何種類かついてございますが、まず別表1と書いておりますのが初期環境調査、環境リスクが懸念されるものについて、まず概要を調べると、このようなものでございます。
令和5年度調査では、調査対象の化学物質は延べ14物質群について、様々な媒体で調査を行いました。全く検出されなかったものも一部はございますが、複数か所で調査をしておりますが、1か所だけでも検出されたというものをカウントしていきますと、14物質群のうち水質からは13物質群、底質からは1物質、大気からは2物質、それぞれ検出されてございます。この別表1には、それぞれの検出頻度、また、その検出された場合には、その検出濃度についても記載させていただいてございます。
おめくりいただきまして別表2、ページで言うと3ページ目でございますが、こちらは詳細環境調査と呼ばれるものの結果概略でございます。物質といたしましては、全部で5物質群の調査を行いまして、日本全国様々な場所で調査いたしましたところ、水質からは3物質群、底質からは2物質群、そして大気からは1物質群が検出されたと、このような状況になってございます。
また、5ページ目以降が長期的なモニタリング調査の結果でございます。継続的にモニタリングしている物質、11物質群ございますが、それの検出状況をまとめたものが表3-1、こちらが水、水質、底質関係で、表3-2が生物・大気関係の結果でございます。
別表3-3以降に、傾向をまとめたものがございます。3-3から3-5までが傾向をまとめたものでございまして、いずれの物質も総じて濃度は横ばい、または漸減傾向にあるというふうに認識してございます。
このような調査を長年やっておりまして、結果につきましては、先ほど申し上げたとおり昨年末に公表させていただきました。
○市村環境リスク評価室長 それでは20ページをご覧ください。化学物質の環境リスク初期評価の結果となります。こちらは第23次の取りまとめとなっております。
本事業の概略を申し上げますと、環境汚染を通じて、人の健康や生態系に好ましくない影響が発生すること、これを未然に防止するために、化学物質は世の中にたくさんの種類がありますけれども、環境リスクが大きいと思われる化学物質をスクリーニングするということで、平成9年度から実施しております。
「詳細な評価を行う候補」と判定された化学物質につきましては、関係部局等へ評価結果を提供の上、各主体における詳細なリスク評価等化学物質の適切な管理に向けた活用を図るものとなっております。
こちらは、昨年12月に、化学物質評価専門部会における審議を経て公開しているものとなります。具体的にどういった観点から評価をしているかといいますと、この表にありますとおり健康リスク、これは人の健康に対するリスクです。また二つ目は、魚類、甲殻類、藻類の3種生物を中心に得られたデータを基にしておりますが、生態に対するリスクの観点から、文献やモニタリングや排出量等の情報を用いて有害性・曝露に関する情報を整理して、リスク評価を実施しております。
大体毎年、合わせて20程度を実施しているところですけれども、今年度の第23次取りまとめの結果につきましては、こちらに書いてありますとおり、健康リスクについては7物質、生態リスクについては11物質を対象といたしました。評価結果については、詳細な評価を行う候補であったり、更なる関連情報の収集が必要ですといったような形で、3段階に分かれているところですけれども、詳細につきましては次のページでご説明させていただきたいと思います。
21ページをご覧ください。簡単に言いますと、例としては、曝露量が有害性を示すと考えられる値等の閾値を超える等、有害性やばく露量を総合的に評価して、リスクが大きいと思われる化学物質は詳細な評価を行う候補としております。もう少し詳細な関連した情報が必要だというものとしまして、次のカテゴリーとなっております。最後のカテゴリーとしましては、現時点では、更なる関連情報の収集といったような作業の必要性は低いのではというような分類となっております。
今年度の評価結果ですけれども、健康リスクについては1物質、キシレンが室内空気において詳細な評価を行う候補となり、2-(2-エトキシエトキシ)エタノールほか2物質が更なる関連情報の収集が必要と判定されました。
生態リスクについてはN,N-ジメチルドデシルアミンほかご覧の2物質、計3物質が詳細な評価を行う候補となり、クロロ酢酸ほか3物質が更なる関連情報の収集が必要と判定されました。それ以外の物質はここにありますとおり、現時点では更なる作業の必要性は低いということになっております。
続きまして、22ページ以降、エコチル調査の研究の進捗についてのご報告となります。23ページをご覧ください。エコチル調査の目的・概要については、改めてご説明させていただきますと、一番上の四角の中の1ポツ目、エコチル調査の目的は、化学物質のばく露等が胎児期から小児期にわたる子どもの健康にどのような影響を与えているかということを明らかにして、リスク管理当局や事業者への情報提供を通じて適切なリスク管理体制の構築につなげることとしております。
右下の研究成果につきましては、令和6年11月末時点までの全国データを用いた論文数は497編まで増えております。そのうち、化学物質等の環境要因についての論文は中心仮説と呼んでおりますけれども64編まで増えているところです。
具体的に、こういった論文成果がどのような形で社会還元されているかといいますと、次の24ページ目をご覧ください。これまで社会還元の例としましては、食品安全委員会の評価書に3件、そしてガイドライン等に6件のエコチル調査の成果が引用されているところです。活用事例としましては、左側が食品安全委員会における「評価書 鉛」、右下が「妊娠中の体重増加曲線」ということになっております。
続きまして、25ページ目をご覧ください。エコチル調査におけるPFASに係る研究の進捗となっております。エコチル調査におきましては、子どもの健康に影響を与える環境要因を明らかにするために、参加者の血液等の生体試料を分析しておりまして、PFASも含まれております。実施状況は、真ん中の表に書いてありますとおり、2017年度の母親の妊娠期間中の血液のPFASの血中濃度につきましては、約2万5,000検体が完了しており、また、出産時の臍帯血及び子どもの血液につきましては、現在配布準備中、そして子どもの血液につきましては、今現在測定中となっております。
また、PFASに関係する論文は、これまで令和6年9月末時点で3件が発表済みですけれども、先日1件追加されましたので、合計で4件となっております。発表論文題目としましては、こちらに記載のあるとおりですが、2本が関係があった、2本が関連がなかったという結果となっております。
続きまして、26ページ目をご覧ください。エコチル調査の令和7年度の予算案となっております。例年どおりの予算規模となっておりますが、特に事業内容としましては、令和7年度はこれまでの学童期検査を引き続き実施して、計画的な化学分析を行うとともに、真ん中辺りにあります、データ及び生体試料の利活用の推進のための方策の検討を行うということを追加しております。
続きまして、27ページ目をご覧ください。化学物質の人へのばく露総合調査事業費ということで、令和7年度は昨年度に比較しまして、1億円のプラスの要求予算案となっております。これは令和7年度以降、本事業の規模の拡大を行う予定となっているためです。
事業内容の2ポツ目をご覧ください。全国の一般的な国民の平均的なばく露量を把握するために、令和7年度は50地域程度、成人1,000人程度において調査を行う予定となっております。
以上が私からの報告となります。
○長谷川化学物質審査室長 では、続きまして、資料4、化学物質関係の主な国際会議についてという資料を用いまして、国際関係の動きについてご報告させていただきます。
1ページおめくりいただきましたところに、2024年9月以降の主な会議関係の概要を記載してございます。概要だけご説明させていただきます。
まず一つ目、ストックホルム条約関係でございますが、こちらは3ページ目により詳細な資料をご用意しておりますので、そちらを使いましてご説明させていただきます。
ストックホルム条約、通称POPs条約と、このように略しておりますが、残留性汚染物質について国際的に規制する条約でございます。現在186か国批准しておりまして、参考までにアメリカは批准してございません。
こちらで規制対象となる物質というものは、条約の下部会合である残留性有機汚染物質検討委員会、こちら加盟国の専門家から構成されている委員会でございますが、こちらで検討されて、こちらで検討されたものが締約国会議(COP)に勧告されて、そちらで決定すると、このような仕組みになってございます。
この下部会合が昨年9月にございましたので、そちらの概要をご報告させていただきます。9月末にローマで開催されたというものでございます。そこで決定されたことが幾つかございます。まず一つ目が、今から申し上げる3物質について、幾つかの適用除外とともに新たに規制対象物質としてCOPに勧告することが決められました。一つ目がクロルピリホスというものでございまして、こちらは殺虫剤でございます。二つ目が中鎖塩素化パラフィンでございまして、金属加工剤や難燃性の樹脂原料に使われているものでございます。三つ目がいわゆるPFASの一種である長鎖ペルフルオロカルボン酸、長鎖と申しますのは、炭素数が9~21のやや長いものでございます。
以上3物質につきまして、本年に開催されるCOPに規制対象物質というように勧告されることになりますので、そこで加盟国が決定すれば、これら3物質が国際的な規制対象物質になると、こういうようなものでございます。
また、その一つ前の段階と申しましょうか、リスク・プロファイルというものを作ることになっておりますが、そちらの対象となっているものがポリ臭素化ジベンゾ-p-ジオキシン及びジベンゾフラン、いわゆる臭素化ダイオキシンと呼ばれているものでございますが、こちらにつきましても今リスク・プロファイルを行っておりまして、機が熟せば一つ上のリスク管理の評価が行われ、いずれ合意されれば、それらもストックホルム条約の規制対象物質になるということが見込まれるところでございます。
COPは今年の4月末に開催予定でございまして、ここの3物質について議論されると、このような予定になってございます。
1ページお戻りいただきまして2ページ目のところに、その他会合の概要を記載しておりますので、簡単にご説明させていただきます。
まずOECDでございますが、これはOECDの化学品プログラムの最上位の会合として、8か月に一度程度開催されているものでございます。PFAS関係、また、GFCと呼ばれている化学物質に関するグローバル枠組みなどについての議論が行われております。
また、11月中旬には日・中・韓3か国の政策対話というものが開催されました。本部会のメンバーでもあられます、国環研の山本先生にもご参加いただきました。
また、その次でございますが、日本とイギリス、これは2国間の関係のものでございますが、2国間の間で内分泌かく乱物質に関するワークショップというものを年に1回定期的に会合してございます。今回はイギリス側での開催でございましたので、行政官、また、専門家の先生方にイギリスに行っていただき、イギリスのDefraと呼ばれている、環境省に相当する環境・食糧・農村地域省との間での定例会合というものを開催いたしました。
また、環境と子ども関係でございますが、こちらも日本を含めまして数か国の間で各国コホート調査の進捗についての情報交換というものを毎年開催してございます。フランス、リヨンで11月末に開催いたしましたので、私どものほうからも参加して検討、意見交換を行いました。
また、最後でございますが、こちらはマルチでございますが、プラスチック汚染に関する条約の策定に関する第5回政府間交渉会議、いわゆるプラスチック条約と呼ばれているものでございますが、それの検討会議が11月末に韓国で開催されました。もともとは本次会合、この11月の会合におきまして、プラスチック汚染に関する条約の策定が完了すべく精力的な交渉が行われましたが、残念ながら合意には至らなかったというものでございます。
化学物質関係といたしましては、プラスチック中の懸念化学物質への対応に対する条文案というものについて議論が行われたのですが、各国間の意見の懸隔が相当大きく、残念ながら意見集約はできませんでした。
今後でございますが、再開会合、この会議の次の会議というものが開催されることにはなっておりますが、まだ日程・場所ともに未定でございます。我が国といたしましては、この主要なプラスチック大量消費国、搬出国が参加するような実効的・進歩的な枠組みが早期にできるよう、合意に向けて積極的に貢献していきたいと、このように思っているところでございます。
以上でございます。
○森特殊疾病対策室長 それでは、続きまして、特殊疾病対策室の森でございます。
資料5をご覧ください。前回部会に続きまして、水俣病対策の一つとしまして、メチル水銀による健康影響に係る疫学調査の在り方に関する検討会の設置につきまして、ご報告をいたします。
2ページ目をご覧ください。水俣病被害者特措法第37条におきまして、政府は健康影響に係る調査研究を行うこと及びこのための手法の開発を図ることが規定されています。
当該規定を踏まえまして、環境省では、メチル水銀による脳への影響を客観的に評価するための手法の開発に取り組み、具体的には※印に記載をしておりますけれども、脳磁計及びMRIを用いた手法の開発を進め、一定の精度に達したところでございます。
こうした経緯等も踏まえまして、水俣病被害者特措法に基づくメチル水銀による健康影響に係る疫学調査の在り方について、専門的見地から検討及び助言を行うことを目的として、令和6年12月17日に外部有識者で構成する検討会を設置し議論を開始いたしました。
これまでの開催実績にありますように、第1回目は座長の指名に続きまして、水俣病に係る経緯やこれまでの健康調査、疫学調査の動向、これまでに得られた知見や手法の開発等について紹介を行い、特措法に基づく健康調査の目的などについて意見交換、議論を行ったところでございます。
続いて、第2回目としまして、1月24日に開催をいたしました。こちらの第2回目では、関係者からのヒアリングを行いまして、一つ目にあります、関係団体が選定された医師からのご提案について、また、環境省の研究班から、環境省が開発・研究を進めてきた脳磁計及びMRIを用いた調査設計についてそれぞれヒアリングを行い、その後委員間で意見交換を行ったところでございます。
意見交換では、脳磁計とMRIを活用した調査は概ね妥当とされつつ、また一方で患者負担への考慮についても必要性のご指摘等もいただきました。次回以降は取りまとめに向けてご議論いただくということになっております。
この検討会で検討いただきました結果を踏まえつつ、令和8年度を目処に健康調査を開始できるよう、必要な検討準備を進める予定となってございます。
3ページ目をご覧ください。検討会の委員につきましては、こちらの表に記載をしているとおりになりますけれども、水俣病の経緯や歴史の理解が深い先生方を中心に、法学、公衆衛生、疫学、医学統計学、脳神経内科学等からの有識者にご参加をいただいております。新美育文先生、明治大学名誉教授に座長をお願いしているところでございます。
ご報告は以上になります。
○大塚部会長 ありがとうございました。それでは、ご質問、ご意見がある方につきましては、会場の方は名札を立てていただき、WEB参加の方は挙手アイコンでお知らせください。順次お名前をお呼びいたします。WEB参加の方は、ご発言の際にミュート解除を忘れずにお願いいたします。
では、どうぞよろしくお願いします。青木委員、どうぞ。
○青木委員 まず、いろいろ丁寧なご説明ありがとうございます。今後とも化学物質関連の様々な健康に係る施策の更なる発展をお願いしたいところでございます。
化学物質の人へのばく露総合調査について、コメントというか質問なのですが、この事業自身、諸外国、特にヨーロッパに比べて遅れていたところだと思うので、これを積極的に推進していただくということは、非常に大きいことだと思っています。規模も1,000人程度ですか、立ち上がりとしては非常に大きい規模ではないかと思いますので、今後ともさらに人数を増やしていく方向でお願いできたらと思います。
ただ、そのときにもちろん専門家の先生方がここに入ってはおられるので、私から言うのもいささか憚られるところではあるんですが、やはり気になりますのは実際に化学物質のいろいろなヒト試料の含量をはかる、もちろんそれ自身は非常に大変なことで、精度管理等をどうやっていくか、それをさらに国際的な比較をしていくときに、国ごとの精度管理が同じように図られているかということは、やはり相互に比較するときに非常に重要でございますので、そこら辺のところをぜひ、何か先ほど日独、あとIARCでの共同の会議も開かれたということを伺いましたので、そういう席で特に精度管理のところとか、よろしくお願いしたいということと。
あともう一つ、こちらのほうがどちらかというと大きいと思うのですが、やはり調査の中で結局環境からのばく露を受けますので、生活環境がどのようなものだったか、どういう経路でばく露されたのかという経緯を明らかにするというところがやはり現実的には非常に重要になってまいりますので、やはりそういうことが分かるようなデータ、生活環境の、もちろん非常に機微な個人情報に当たりますので、しかもそれを膨大に取ろうと思ったら非常に気になる点が幾らでもあるのですが、やはりそこは専門の先生方も参加されることですし、ある意味効率よく、いわゆる調査対象になった方がどのような生活環境を送られていたかということをやはりぜひ知っていただきたいと思うところでございます。
以上でございます。
○大塚部会長 ありがとうございます。
では、続けてご質問、ご意見を伺っていきたいと思いますが、オンラインのほうで奥委員、お願いします。
○奥委員 ありがとうございます。資料3の25枚目のスライドでご説明いただいた内容についてお伺いしたいと思います。
エコチル調査でPFASとの関連、それに関わる成果論文がこのように出てきているということは非常に貴重な知見が積み重ねられていくということで、非常によいことだと思いますが、先ほどのご説明で今3本一番下に記載されておりますが、このうちの2本についてはPFASとの関連性が認められたと。1本はそうではなかったということですが、どれが認められたものだったのかというところをお伺いしたいのと。
あともう一本、最近成果が出てきたということなので、そちらのタイトルとその関連性が認められたかどうかというところについても、追加で情報をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○大塚部会長 同じくオンラインで赤渕委員、お願いします。
○赤渕委員 ありがとうございます。まず、今、奥委員のほうからご指摘がございました、同じく資料3の25ページ目に関してでございますが、こちら成果論文として具体的な内容は原著をご覧くださいというふうに赤字で書いてございます。この資料3は外部にも公表されている資料かと思われますが、せめてサイテーションぐらいは記載しておいてもよいのではないかと。さらに欲を言いますと、その該当の論文は3件しかございませんので、何か短い概要ぐらいは、著作権との関係もございましょうが、載せてあってもよいのではないのかなというような気がいたしました。これはコメントでございます。
次に資料7ページ目のPFOSの在庫量把握に関して、こちらお尋ねでございます。泡消火薬剤の在庫量調査が4年に一度というふうにされてございますけれども、これは4年に一度ということの何か根拠みたいなものはございますでしょうか。4年という時間を置くことの妥当性について、取り分け昨今PFASに関して世間をにぎわせているような状況に鑑みますと、もう少し短期の間でその調査を重ねていくといったようなことも必要なのではないかと思った次第でございますが、4年に一度やるといったことの根拠についてお教えいただければと思いますというのが一つと、あとは代替が進んでいるといったことで、PFASに着目すればそれは望ましいことなのかもしれませんが、代替された泡消火薬剤、代替として使用される消化薬剤の毒性等について何かご知見等がおありでしたら、ご案内いただければと思います。
関連いたしまして、12ページで2025年度の取組ということで、適正管理の在り方が検討されるといったことはぜひお進めいただければと思いますが、こちらにつきまして、その上にあります国外調査における云々ということで、現在REACHとかアメリカの法制度、恐らくこれはTSCAかもしれませんが、それらにおけるPFASの取扱いがどのようになっているのかについて、もし何かご存じでしたらお知らせいただけるとありがたいと思いますというのが一つと、あとはそうした海外の法制度に基づく対応と比較して、例えば我が国において、在庫量の把握について報告とか、あるいは届出を法律上の義務とする必要はないかといったことについてはいかがでしょうかということですが、恐らくこれは現在、行政指導によって行われているように推測いたしますが、そういたしますと結局のところ、相手方がそれに従うか否か、当然のことながら任意でございますので、果たして本当に必要な情報が適時に提出されているのかといったところがやや心もとないところがございますので、その点何かご検討の余地はないのかといったことで、お教えいただければと思います。
長くなりましたが、以上でございます。ありがとうございます。
○大塚部会長 ほかにはよろしいでしょうか。では、鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 ありがとうございます。それぞれ非常にしっかり進められていると思いましたので、特段強い意見というわけではなくて、感想的コメントです。
一つは質問ですが、PFOSの泡消火薬剤の在庫量ということで、各消防署や空港がみんな頑張ってやられて、民間セクターもこれから働きかけ中ということは理解しましたけど、空港だけ何となく少し減り方が少ないような気がします。地方空港ということなのかもしれませんが、公的セクターでしょうから、これは何か事情があるんですかというのを質問させていただきます。
あと、PFOSだけではないのですが、その前のこれまでの化審法で、私も随分お手伝いしていますのでその場で申し上げていることでありますけれども、挙がっている物質を見てもPFOAとかPFOS、PFHxSの関連物質という言葉が出てくる、相手が100とか、もちろん国によっては1,000とか万とかというようなものが出てくるということは、多分、化審法制定当時には全くなかった状況ではないかと私は思いますので、もちろんPCBは当時あったけど、たかだか何百ですので、しかも構造は完全に特定することが原理的には可能だけど、こちらは特定できないと。ほかの化合物とは違う用途、あるいは違う形態で出荷されているものがありまして、これは環境省でご承知かと思いますが、この辺りについて今の日本の法制度で対応し切れないことが多々あり得るのではないかと、あるいは工夫すればできるのかもしれないことは工夫する必要があるんじゃないかと思うことが常々ありまして、いろいろな場で私の意見は申し上げておりますけれども、ぜひ法制度の在り方について、引き続き、変えるべきものは変え、新しいものができるのだったら検討してやっていくぐらいのことが必要かなと思いました。
あと最後にプラ条約について、これはコメントですけれども、プラ条約と聞いたときに、これは一専門家として、プラスチックって何を交渉するんだろうと内心思ったところでありまして、プラスチックという言葉は非常に一般的な言葉でして、多分物量としてのプラスチックは固形の樹脂になっているものを指しているというイメージなんだろうと思いますが、プラスチック添加剤などと言っている言葉は切り離せないというか、プラスチック添加剤は別なものと考えるのがそもそも間違っているものではないかと思いますので、その辺りの化学的な知見を踏まえて、要するにプラ条約を、交渉が進まなかったことはいろんな事情があるのだろうとは想像いたしますけれども、学術的にはプラスチックというものについて、どの範囲をどういうふうに捉えるかということについて日本から提案できるくらい、知識は日本に多分あるのではないかと思いますので、意志を持って進んでいただければうれしいかなと思いました。
以上です。
○大塚部会長 ほかにはよろしいでしょうか。
私からも一つお伺いしたいと思いますが、今、鈴木委員が聞かれたことと似てきているので、同じところに関心を持ったこと自体私は大変ありがたいと思いました。5ページのところのPFOA関連物質に関して140物質というお話でしたが、法規制で新しく考えることがないかというのが鈴木先生のご質問で、そちらのほうもお伺いしたいところですけど、化審法の中でこれとの関係で、今までにないことを何か考えなければいけない可能性はあるか、現在の化審法でうまくいくかどうかという辺りを教えていただければと思いましたというのと、これはVOCとかも似たようなところが若干あったと思いますけれども、化学物質の審査とは関係ないのですが、こういう多数の物質に関してまとめてグループで扱うというときについて、ある種の予防的なアプローチということになると思うのですが、そのようなご認識を持っておられるかどうかという辺りも教えていただければと思います。
では、5人から質問があったということになると思いますが、よろしくお願いいたします。
○市村環境リスク評価室長 環境リスク評価室の市村です。
まず、HBMにつきましてご回答させていただきたいと思います。人数を増やしてしっかりと化学物質の精度管理をして、国際的にも評価可能なような形にすべきだということで、こちらに関しましては、国際的な比較にも耐え得るような形で進めていきたいと考えております。
また、生活環境の調査につきましては、基本的な情報については質問票で収集をしておりますが、本調査については一般的な環境にお住まいの国民の血中濃度の分布を調査するのが第一で、ばく露の経路について調査するというところについては、今後の課題と考えております。
ただ、追加調査ができるような仕組みというのは、今回、令和7年度以降検討していきたいと考えております。
続きまして、エコチル調査についてです。25ページの表記についてもう少し詳しくというところですけれども、今後改善していきたいと思います。
また、これまで3件発表されておりますが、このうち関連がなかったというのが上記二つです。PFASばく露と、生まれた子どもの4歳時におけるぜん鳴及びぜん息症状との関連はなかったというのが一つと、PFASばく露と生まれた子どもの4歳までの川崎病との関連はなかったと。そして最後、PFASばく露と生まれた子どもの染色体異常の関連については、こちらについては染色体異常全体として関連はあったというような結論となっております。ただし非常に症例数が少なかったということであったり、多くの染色体異常は妊娠12週以前に起こるものであり、本エコチル調査自体が妊娠12週以降の妊婦のリクルートであるため、非常にリミテーションが多い中での結果となっております。個々の染色体異常については、それぞれ関連はなかったという形になっております。
この資料には間に合いませんでしたけれども、つい先日発表されたのが、母親のPFASばく露と母体血、臍帯血中の脂質との関連についてという論文となっております。これもなかなか簡単に一口で説明するのは難しいんですけれども、総コレステロールと一部のPFASについて、母親のPFASの血中濃度と、母親の妊娠中の総コレステロールについては関連があったんですけれども、さい帯血中の総コレステロールとは関連がなかった。しかし、いくつかのPFASの中で、母親の妊娠中のHDLコレステロールが上昇しているという関連性があった。一方、母親の妊娠中の中性脂肪や、LDLコレステロールは、むしろ低下しているという関連性があった、というような論文内容となっております。先ほどの概要を追記すべきという指摘にも関連するんですが、なかなか一言で説明するのは難しいような論文内容が多いという現状になっておりますので、できるだけ誤解のないような形で記載をしていきたいと考えております。
私のほうからは以上です。
○長谷川化学物質審査室長 続きまして、私のほうから三つ、泡消火薬剤関係、プラ条約関係、そして化審法の規制に関して様々ご質問をいただきましたので、ご回答をさせていただきます。
まず、泡消火薬剤関係について、赤渕先生から幾つかご質問いただきました。4年に一度やっている根拠でございますが、我が国のストックホルム条約国内実施計画、これを4年に一度見直ししておりまして、それのもともとの根拠は、COPが2年に一度開催されるのですが、4年に一度それを提出することということになっておりますので、これに紐づけて4年に一度やっているというものでございます。
ただ、先生がご指摘のとおり、昨今のPFASに関する関心の増加も受けまして、今後どのようにこの在庫量管理というものをやっていくかにつきましては、来年度の事業の中でもよく考えていきたいと、こういうふうに思っております。
物質が代替された場合についてのご質問もございました。PFASではない泡消火薬剤にされる場合もあれば、規制対象外のPFASに代替される場合もあると、このように業界団体のほうからは聞いております。ただ、規制対象にまたなったら元も子もありませんので、その規制動向をよく見ながら、イコール毒性がないようなものの代替というものについて、進めていただくよう、業界団体とは話合いをしているところでございます。
海外規制状況についてのご質問もございました。有名なのはEUでございまして、PFASと呼ばれるようなもの、おおよそ1万物質がございますが、これらについて包括的に規制をするという案が現在EUのほうで検討されているところでございます。
最近の情報を聞いておりますと、その規制案に対して世界各国、域内も含めまして多数のコメントが寄せられておりまして、現在それの使用用途ごとにどういうものが規制であって、どういうものが規制対象ではないかというような検討を一つ一つやっていると聞いておりまして、まだまだしばらくその結論には時間がかかるというふうに聞いております。私ども、環境省全体として分担をしながら、この規制状況をよくウオッチしております。これらについても適宜私たちの政策に反映していきたいというふうに思っております。
泡消火薬剤の把握はおっしゃるとおり、何らかの法的義務が今求められているわけではございません。ただ、PFASの含有を問わず、泡消火薬剤の在庫、保有状況というものは例えば消防法で管理されている世界がございまして、現行法制度の中でも十分きちんと把握する施策はあるのではないかと、このように思っているところでございます。この辺りは消防庁ともよく話をしておりますし、また、来年度事業の中で他法令も活用しながらきちんと把握する策というものは考えていきたいと思っているところでございます。
鈴木先生から泡消火薬剤、空港の減りが低いのではないかという質問があり、国土交通省さんとはもう少しよくここは話していきたいと思っておりますが、国管理のところは比較的進んでいるんですが、地方管理のところがなかなか、費用または代替物が見つからないということで、取組がやや遅れているというふうには聞いております。それでも問題意識は大変強く持っているというふうにも聞いておりますので、引き続きよくウオッチしていきたいと思っております。
プラ条約関係でご提案をいただきました。おっしゃるとおりだと思いますので、プラ条約は実は非常にプラスチックという物質を中心としてその生産から消費、そして廃棄また資金援助と、様々な事項を議論している条約でございまして、決して化学物質だけの人間が集まっているわけではなくて、国際交渉はこういうものなのですが、なかなか難しい交渉をやっているところですが、日本からは化学物質に詳しい人間も必ず参加して、科学的な提案をできるようにいつもしたいと思っておりますので、引き続き先生方のご知見もいただければと思います。
鈴木先生、大塚先生のほうから化審法と、この百何物質も指定するというこの仕組みがどうかというような、何か課題があるのかというご質問をいただきました。化学物質審査規制法では、通常規制対象物質は政令と呼ばれている政府全体で決定する仕組み、法令で物質名を限定列挙するという仕組みになっておりますが、今回この140物質を指定する際には、あまりにも技術的事項ということがございましたので、法制局とも相談をして省令でそれを指定するという仕組みを整えたところでございます。これによりまして、その関連物質がたとえ140物質が141になったり、また10物質が減った・増えたという場合でも、より迅速に対応できるというような仕組みを整えたところでございますので、まずはこれを活用していこうと思っております。
大塚先生がおっしゃったのは恐らく大防法のVOC規制だと思いますが、あちらは個別物質列挙ではなくて、全体でグループで規制するという仕組みでございまして、今、化審法にはそのような考え方はございません。一方、そういうグループ規制はどうあるべきかというものは検討する必要はあると、これは思っておりまして、今回ご説明させていただきました制度を検討するための委員会、今ちょうど化学物質対策小委員会というものを開いてございますが、こちらのほうでも検討を進めてまいりたいと、このように考えているところでございます。
以上です。
○大塚部会長 ありがとうございます。ほかにはよろしいでしょうか。
最後のところは、予防的アプローチとはあまり関連させていないわけですかね、そうすると。
○長谷川化学物質審査室長 予防的アプローチというものは、先生がよくご存じのとおり、環境政策の基本的な概念の一つとして、化審法のみならず環境政策全体に入れるべきものというようなものを我々としては認識してございます。POPs条約の規制対象物であること自体がまず予防的なアプローチを念頭に置いた対象だというふうに思っておりますので、まずこれをきちんと我が国内法に入れていくということが、まずは予防的な対策の一つだと思っております。
また、グループでどのようにこの化学物質を扱っていくかというのは、また一方、サイエンス的にもきちんと整理しなければいけないし、できていない世界でございますので、これはこれで、何でも規制すればいいというものではないんですが、きちんと科学的に論理立って評価できるようなものということは一方で考えていきたいと思っております。
○大塚部会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
青木委員、どうぞ。
○青木委員 最後のPFASの物質数が非常に大きい、場合によっては1,000に当たると。ただ、そのときに化審法ですよね。化審法って今リスク評価の仕組みも持っているわけですね。ただ、そのときに、1,000物質一個一個、今はケミカルバイケミカルと一個一個の物質のリスクを評価していって、その管理を考えていこうということですが、まさか一個一個やっていくわけにはいかないですよね、現実的に。
そうすると、今恐らく国際的な趨勢としては、そこを日本語では混合物、要するに、ミクスチャーのリスクアセスメントの考え方が非常に進んでいて、ヨーロッパとか、アメリカといってもEPAが中心になっていると思うのですが、進んでいるので、そこはある意味科学としての議論が、もちろん施策ですから、そのまま科学がすぽんとそのまま施策に行けるわけではないけれども、少なくとも施策につなげられる形というのは、かなり進んでいると私は理解しています。ですから、そこら辺のところをぜひ、日本の化学物質規制、特に化審法の規制の中で、その部分についていろいろと考えて、将来の課題というか、場合によっては緊急の課題かもしれないですね。そういう観点からいろいろとぜひご検討いただけたらと思ってございます。
以上でございます。
○大塚部会長 今のこととついでに、140のPFOAに関しては、一つ一つのリスク評価をやっているのかどうか、まとめてお答えいただけるとありがたいです。
○長谷川化学物質審査室長 まず、青木先生のお話はおっしゃるとおりでございます。ちょうどこの化学物質対策小委員会でも同じようなご指摘をいただきまして、どのように対応するかというのを検討している真っ最中でございますので、その中でもよく検討してまいりたいと思っております。
140物質は個別物質のリスク評価をしているわけではございません。国際的にこういうものが一般環境中でPFOAに変化するものということをもって規制対象としてございます。
○大塚部会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
赤渕委員、どうぞ。
○赤渕委員 ありがとうございます。先ほど資料3に関するご回答をいただきまして、ありがとうございました。ぜひ、環境省といたしましても、消防庁などとの絡みがあるので大変かと思いますが、着実にお進みいただければと思います。
全く別のお話といたしまして、資料5に関して質問というかコメントでございます。こちらの特措法の37条1項におきましては、調査研究を積極的かつ速やかに行うと規定しておりますところ、疫学調査の在り方に関する議論が特措法制定の2009年から25年近くたってようやく開始されるといった事態は、恐らく残念ながら法37条1項に違反しているものと評せざるを得ないと個人的には感じております。この間には少なからざる認定患者あるいは未認定患者の方がお亡くなりになっているのではないかと、このように推察しております。
恐らく政府といたしましては、これ以上水俣病行政の失敗を繰り返すことは許されませんので、こうした在り方に関する議論は早々にまとめていただいた上で、法律が言うように速やかに疫学調査が実施されることを切に望むところであります。これに当たりましては、いつまでに何をするといった工程表みたいなものを作成した上で、計画的に実施されるといったことをぜひともお願いしたいと思っております。
これが科学的な営為でありましたら、時間をかけて慎重にその審理を見極めるといった態度で臨まれるのでありましょうが、政府が行おうとしておりますのは科学ではなくて、あくまでも被害者の救済なのであって、認定患者とか未認定患者の方々の高齢化がますます進む中で時間的猶予はほとんどないといったことは改めてご認識いただくとともに、今回設置されております検討会にご参加の先生方にも強くお願いしていただきたいと、このように考える次第でございます。
以上でございます。
○大塚部会長 ほかにはよろしいでしょうか。
では一つ追加のご質問、ご意見が出てきましたので、ご回答をお願いします。
○森特殊疾病対策室長 資料5につきましてご意見、ご指摘ありがとうございます。水俣病対策における疫学調査を速やかにというのは、ご意見は重々承知をしておりまして、できる限り早く進めるとして、政府としても環境省としても取り組んできたところです。
一点補足としまして、特措法が制定され37条に第1項で調査を速やかに行い、その結果を公表するというのが規定にあります。同時にですが、ここの資料に条文がないですけれども、第3項にメチル水銀が人の健康に与える影響を把握するための調査、効果的な疫学調査等の手法の開発を図るものとするという規定が設けられたというような経緯がございます。そうしたことで、調査の手法の開発に時間がかかってきたというところが経緯としてございます。その手法の開発が一定程度達したというところで、疫学調査の在り方について速やかに検討を進め、令和8年度に行いたいと考えているところでございます。
また、37条の規定と同時に、特措法であたう限りの方々の救済措置を行うということで、救済についても並行して、当時平成21年から救済対象の方を把握なり手当てを進めてきました。今回の疫学調査の目的もこの検討会で議論しているところですけれども、そういったあたう限り全て救済されることを目指して救済者というのも確定をしたその上で、さらに何が健康調査として必要かというところも検討会で併せて議論をしているところです。そうした結果を踏まえて、速やかに進めていきたいと考えております。
○大塚部会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
そうしましたら、本日の議事は以上となります。事務局に進行をお返しいたします。
○鮎川企画課長 部会長、ありがとうございました。本日は委員各位の皆様方、活発なご議論ありがとうございました。
本日の議事録は、原案を事務局で作成し、委員の皆様方にご確認いただいたのち、環境省ホームページに掲載いたします。また、次回の環境保健部会の日程につきましては、また改めてご連絡を差し上げます。
それでは、第54回中央環境審議会環境保健部会を終了いたします。どうもありがとうございました。
午後5時17分閉会