議事録
開催日時
令和4年10月21日(金) 13:00-15:00
開催場所
Web会議方式により開催
議事次第
1.開会
2.議事
(1)石綿健康被害救済制度の施行状況について
(2)その他
議事録
午後1時00分 開会
○小笠原主査 それでは、定刻になりましたので、ただいまより令和4年度第3回中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会を開催いたします。
環境保健部環境保健企画管理課石綿健康被害対策室の小笠原でございます。議事の開始まで進行を務めさせていただきます。
委員の皆様におかれましては、ご多忙のところご出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、Web会議での開催とさせていただいております。会議中、音声が聞きにくい等の不具合がございましたら、事務局までお電話、またはWeb会議のチャット機能でお知らせください。機器の不具合等によりご発言いただけなかった場合には、お電話にてご意見をいただきまして、後日、議事録に掲載させていただきます。
本日の会議は公開であり、環境省大臣官房環境保健部環境保健企画管理課公式動画チャンネルでライブ配信を行っております。通信環境の負荷低減のため、カメラ機能はオフにしていただき、ご発言の際のみオンにしていただきますようお願いいたします。
発言のご意思のある委員におかれましては、お名前の横にあります挙手アイコンをクリックしていただくか、チャット機能で発言したい旨をお知らせ願います。
委員長から指名を受けた場合、マイクのミュートを解除してご発言いただきますようお願いいたします。ご発言の後には再びミュートにしていただくとともに、挙手アイコンを忘れずにクリックして、元に戻すよう操作をお願いいたします。
また、本委員会は原則公開で開催いたしますが、石綿による健康被害を受けた方など傍聴が困難な方への迅速な情報提供を図るため、議事録が公開されるまでの間に限り、会議の音声を公開することといたしております。
本日は、小委員会委員10名のうち、8名のご出席をいただいており、定足数を満たしております。
また、本日はヒアリングを行うため、兵庫医科大学の長谷川誠紀先生、近畿大学の中川和彦先生、国立がん研究センターの後藤悌先生にお越しいただいております。
なお、ヒアリングに当たっては、予定経過時間の2分前に呼び鈴を1回、予定時間経過時に呼び鈴を2回、事務局から鳴らしますので、発言をまとめる参考としていただければ幸いです。
審議に先立ちまして、委員の任免について報告いたします。
令和4年10月5日付で右田孝雄委員が退任されました。退任されました右田委員におかれましては、石綿健康被害救済小委員会の審議等に多大なるご貢献をいただきまして、ありがとうございました。
同日付で小菅千恵子委員が新任されております。小菅委員、一言ご挨拶をお願いいたします。
○小菅委員 ご紹介いただきました小菅です。
右田委員は、ストレスからか、体調悪化により交代せざるを得なくなりました。3回目からは私が努めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
本小委員会に関連して、6月には、与野党の合意の下、参議院での附帯決議で石綿健康被害救済基金の治療研究支援の活用を含めた中皮腫治療研究の推進などに関する決議が環境大臣の前でなされています。8月には、知事会から、治療研究の推進に関する環境大臣への要望が出されています。これらの機関は国民を代表するもので、大変重い意味を持ちますので、丁寧な議論の進行をお願いいたします。
2回目の8月では、3人の委員の方々しか発言いただけておりませんでした。私たち患者と遺族は、国の被害者であります。そのことをお含みいただき、ぜひ、全委員の発言をいただきたいと思っております。
本日、事務局から提出されています資料には、前回のヒアリングで提示された課題が全く整理されておりません。また、基金の推計に関して、前回の委員会で右田委員から指摘があった2013年時の環境省推計と、前回示された推計の考え方が全く違う問題について、事務局からの説明資料がありません。議論の根幹を揺るがす重要な資料ですので、きちんと説明してください。
私どもの見解は、本日の提出資料に含めていますが、現状は、2013年時の推計を前提に議論を進めていくべき状況にあると考えているところでございます。
○小笠原主査 ありがとうございました。
それでは次に、本日の資料の確認をいたします。
資料は事前にメールでお送りして……
○細川委員 ぜひ一言、始まる前に意見をしたいんですけれども、日本医師会の細川でございます。駄目でしょうか。
○浅野委員長 まず、どういうふうに進めるかというお話をして、その後個々の論点ごとのご議論をいただくことになっていますが。
○細川委員 そうなんです。本日のこの会議の小委員会の在り方にもついて、ちょっと一言、始まる前にぜひお話しさせていただきたいということで、話をしようかと思っているんですけれども、それも認められないのであれば、黙ります。
○浅野委員長 事務局からの説明をまずしていただいて、その後じゃあすぐお願いします。
○小笠原主査 まだ議事が開始しておりませんので、まず私のほうから資料の確認の行った上で、浅野委員長に議事進行をお願いさせていただきますので、その後にご意見等をいただければと思っております。何とぞよろしくお願いいたします。
○細川委員 分かりました。
○小笠原主査 それでは、次に、本日の資料の確認をいたします。
資料は事前にメールでお送りしております。議事次第、資料1から4まで、委員提出資料1及び2、ヒアリング資料1から3まで並びに参考資料1から4まででございます。
説明に当たっては、事務局が画面上に資料を共有して進行いたします。傍聴されている方におかれましては、環境省ホームページの環境保健部会石綿健康被害救済小委員会のページにアップロードしておりますので、そちらをご覧いただきますようお願いいたします。
それでは、ここからの議事進行は浅野委員長にお願いしたいと思います。浅野委員長、よろしくお願いいたします。
○浅野委員長 それでは、今日もどうぞよろしくお願いいたします。
細川委員、最初にご発言が必要でしたら、どうぞお願いいたします。
○細川委員 はい。皆様、聞こえていますでしょうか。お疲れさまでございます。
本小委員会について、一言。先ほど小菅委員のほうからお話があったように、いろんな人の意見を聞く、それから意見を申すというのも、重々、今回、承知しておりますので、ぜひ意見を言いたいんですが、最初、事務局のほうから、意見をしゃべるとき以外は顔を出すなと言われていることは、大変ほかのWEBでもWEBEXでも、いろんな人が環境を整えるという意味で、顔を出さずに、発言する人間のみが発言するですと、皆様のうなずきだとか、顔つきとかというものが一切見えないんですね。それで、その上で何かしゃべれと言われても、とてもしゃべれるものではございません。
できましたら、浅野委員長に申し上げたいんですけれども、今日の議事の途中でのいろいろ資料の説明、ヒアリング等あったのは、もちろん顔を出さずにでも結構ですけども、皆さんの発言するときには、皆さん、どうかお顔を拝見しながら、また反応を見ながら発言するのが当然じゃないかという気がします。もしこれがかなわないのであれば、日本医師会としてというか、私としては、あまりしゃべれないのかなという気がします。
重要な話のときには、できたら皆さん、委員の方々のお顔を拝借しながらしゃべりたいと思いますが、そういうことは、浅野委員長、駄目なんでしょうか。
○木内石綿健康被害対策室長 失礼いたします。石綿健康被害対策室でございます。
今、細川委員からご発言があったこと、ごもっともだと思いますけれども、環境省におきまして、システムの回線の負荷につきまして検証ができていないことから、負荷軽減のために音声のみということでお願いしているところでございます。大変申し訳ございませんが、今、委員から提案のあったことにつきましては、どういった形であれば円滑にできるかということを少し検証させていただいて、次回ご報告させていただきたいと思います。
○細川委員 いいですか。WEBEXですと、最低でも何十人でもしゃべれるんですよね。それから、よほど環境省の環境がいいのか悪いのか分かりませんけども、このような本当に閉鎖的なところで意見を述べろといっても、とても述べられるものじゃないですので、もし本日このままの状態であるのであれば、私の意見はできたら遠慮させていただきたいと思います。
○浅野委員長 事務局、どうでしょうか。今日は8人なんですね。ですからこの程度でしたら負荷が何とかクリアできるんじゃないかなと。40人の場合はとても無理なんですけれどもね。どうですか。意見を交換する段階では委員が顔を出すということについて。
よろしいでしょうか。
○細川委員 ちょっと待って。とても重要な話で、今後の小委員会をあと何回やるんだとかそういうことも含めて、皆様のやっぱりお顔を多少見られないと、今後につながらない。本当にできたら環境保健部会の石綿の小委員会について、皆様が発言するときには、人の顔を見てだけではなく、こちらの顔も見てほしいし、皆さんのご意見、ほんの7人、8人のご意見に対して環境が整わないというのはとても考えられないんですよ。
○浅野委員長 事務局、いかがでしょうか。
○木内石綿健康被害対策室長 今、委員長からご提案がありました、委員の皆様のみ議論のときに映像をオンにするということについて、検証はまだでございますけれども、今回試しに実施をしてみるということでお願いできればと思います。
○浅野委員長 はい。よろしいでしょうか。
実は容量オーバーのためにシステムがダウンするということが前にあったものですから、それで中環審はどの部会や委員会も音声や画像をオフにしたまま会議を行い、発言のときのみ顔を出すというやり方がすっかり定着してしまっているわけです。しかし、この小委員会はかなり委員数が少ないので、私も細川委員と同じ感想をもっておりますので、この小委員会に限ってですが、お互い顔を見ながら意見交換をするということにしてみてはどうかと考えます。ただし、その結果途中でシステムがダウンするということが起こらないとも限りませんので、もし、そういう事態が起こったときは、すみません、復旧のためにまたやり取りのやり直しというようなことが起こるかもしれません。そのようなことを皆様にご了承いただければ、委員の意見交換については、今、細川委員がおっしゃるように、委員は顔を出して進めるというやり方で議事を進めてみることといたします。
それでは、議事に入りたいと思いますが、まず委員会の進め方について、再度、事務局から説明を受けます。その上で、ヒアリングを行い、その後に個別論点の議論をしたいというふうに考えておりますが、本日は今後の審議に資するためにヒアリングを行うことにしておりますが、この点について、委員の皆様方、ご異議ございませんでしょうか。
よろしゅうございますか。
(なし)
○浅野委員長 特にご異議があるという発言がないようですので。
それでは、まず資料の2につきまして、事務局から説明いただきます。
○木内石綿健康被害対策室長 浅野先生からただ今ご説明いただきました、資料2は、小委員会の今後の進め方ということで、前回の委員会で一度ご確認をいただいたものでございますが、前回の委員会におきまして、右田委員から、現在の治療や制度の在り方など、別の専門家の意見も聞いて審議してはどうかとご意見がございました。
このことにつきまして調整が整いましたことから、事務局から有識者ヒアリング、今回と次回でございますけれども、今回は臨床及び研究の専門家の方、次回は法学の専門家の方、それぞれ3名及び2名、予定してはどうかということで、再度お諮りするものでございます。
専門家の方につきましては、右田委員からのご推薦に沿ったものとなってございます。よろしくお願いいたします。
○浅野委員長 事務局、ご説明はそれでよろしいですか。
○木内石綿健康被害対策室長 結構でございます。
○浅野委員長 それでは、前回事務局が提出した資料4についての見解の意見書もいただいておりますけれども、本日の論点の3のところでこれを扱わせていただきたいと思います。それでよろしゅうございますか。
よろしければ、それではまず、今後の審議の参考とするために、有識者の方々からヒアリングを行いたいと思います。事前にお願いをしておりますが、お一人のご発言、大変恐縮ですが、7分ということでお願いをしております。
それではまず、長谷川誠紀先生、どうぞ、ご発言をよろしくお願いいたします。
○長谷川氏 兵庫医科大学の呼吸器外科の長谷川と申します。こういう機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
それでは始めます。私が述べますことは、中皮腫の医療の過去と現在の問題点みたいなことをご説明いたします。
まず、約20年前の中皮腫の医療ですけれども、まれな疾患である。日本で1年間の1,000人くらいです。それから、臨床症状はほとんどなくて、登録制度もありませんでした。予後は極めて不良です。そして治療法が未確立で、集学的治療の実績はほぼゼロ。それからこの当時は、保険医療で使える抗がん剤がゼロでしたので、言葉は悪いんですけど、もぐりという形で抗がん剤を使っておりました。
2006年に科学振興調整費というものをいただいたときに、担当官からは、1例でもいいから「治った」と言える症例をつくってくださいということを言われました。それぐらい治らないという認識がありました。
これは簡単に、中皮腫の医療の生存率ですね、それを簡単にご説明いたします。
2000年の初め頃に初めてアリムタというお薬が出まして、この頃から中皮腫の標準治療というものがようやくできるようになりました。でもこの頃は大体10か月前後という生存率でした。
それから約20年間たちまして、いろんなお薬が出まして、もちろん成績はよくなりましたが、それでも20か月は超えておりません。これが内科治療の現状です。
一方、外科治療は、もちろんもともと内科の患者さんよりはいい状態の方を治療しますので、もともと少し成績はよろしいんですけど、それでもなかなか20か月は超えない状態でした。
その後、手術の方法が少し変わりまして、かなり最近よくなってきました。後でも述べますが、臨床試験でも41か月とか、そういうデータが出るようになりました。ですので、外科の成績については割合改善傾向があります。
これが日本の現状を1枚で表したスライドでございます。これは、2017年から2019年の2年間に新しく診断がついた全ての中皮腫の患者さんを登録しまして、その後のフォローアップをしたものです。
ご覧いただきますと、この赤いのが外科治療でございます。外科治療の現状としましては、生存中央値が32か月です。これは例えば試験開胸に終わった方なんかも含めておりますので、手術が完遂できた方はもう少しよろしいです。
それから、これが内科治療、抗がん剤の治療を受けた方で、この方々の生存中央値は14か月。決してよくありません。
それから、そういう治療が一切できないで緩和治療のみ受けられた方は3.8か月です。
中皮腫の数は、ご覧のようにかなり増えまして、1995年の500人ぐらいから、現在、1,500人ぐらい、3倍に増えております。ただ、ご覧のように年間の手術数は大体150から200で、これは全く増えておりません。
つまり、集学的治療、手術を含む治療の成績はかなり改善をしたのですけれども、手術ができる方はたったの1割です。残りの9割を占める切除不能症例では、成績はまだまだ非常に悪いです。ということで、中皮腫は治る病気とはまだ言えません。
現在、問題点は、幾つかございます。
一つは、抗がん剤の使い方の問題です。現在使用可能な中皮腫の抗がん剤は3通りしかありません。シスプラチンとペメトレキセドというのが2007年に使えるようになりました。
このお薬は適用制限がなかったのでよかったのですが、その次に出てきたニボルマブでは、セカンドライン以降しか使えない。それから手術の補助療法としては使えません。
それから、最近出ましたニボルマブ+イピリムマブというお薬も、これはファーストラインのみでありまして、手術の補助療法としては使えません。
このお薬が非常にいいということはもう既に分かっております。現実に我々が担当しました患者さんでも、この患者さんはご覧のように巨大な中皮腫の塊があって、心臓を強く左のほうに圧排しております。とても手術ができる状況ではないので、このIpi/Nivoというものを3コース行いました。そうすると、ご覧のようにもうほぼ消えてしまいました。これなら手術ができるということで、救済手術を行いました。その結果、ご覧のようにきれいに取れたんですけれども、肉眼的にはどこにも中皮腫がない。それどころか顕微鏡で見ても中皮腫がない状態、こういうのを病理学的な完全消失と申しますが、これくらい効くケースがございます。
別のケースですけれども、この方も心臓の横に大きな中皮腫の塊がありまして、下大静脈という大きな血管を取り巻いております。ということで、切除不能と考えて、この方もIpi/Nivoを行いました。この方も非常によく効いておりまして、近々救済手術が行われる予定です。
ご覧のように、非常にすばらしいお薬なんですけれども、このIpi/Nivoというのは、ファーストライン、つまり最初に使う治療でしか使えません。つまり、以前からほかのお薬を使っていらっしゃる患者さんは救われないわけです。それから、手術の併用は許されませんので、さっきのようなケースは例外的で、基本的には手術の前後には使えません。つまり再発するまでは使えないという、かなりちょっと残酷な状況です。
そこで、このニボ+イピというお薬を、制限なしに使わせていただけないかというのが強い要望でございます。それから、このニボ+イピというのとほかの抗がん剤を併せて使うという治療法も肺がんでは既にすばらしい結果が出ております。これも何とか認可をいただきたい。それから、このシスプラチン+アリムタという標準治療に、このニボルマブを追加する治療、これも既に国内で臨床試験が行われて、よい成績が出ているのですが、今のところ認可されておりません。これも何とか認可していただきたい。
それから最後に、登録制度のことでありますが、患者さんにとってこれは何の意味があるかと申しますと、手術に関するデータはNCDと申しまして、外科系の連合団体みたいなものが100%捕捉しております。外科のほうは集約が進んでいるので、比較的成績が公表されております。しかしながら内科的に関するまとまったデータはほとんどございません。
臨床試験というのは、時々あるんですけど、これはかなり特殊な患者さんなので、実臨床とは乖離しております。目の前の患者さんがいるときに、その患者さんが、自分がこれからどうなるのか、どんなお薬がいいのか、どんな治療法がいいのかということを選択できるような資料は全くございません。
環境省のほうではこのような登録制度をしていただいております。これは環境省の救済制度に応募された患者さんのみが登録されるわけでありますし、それから、予後データはありません。登録されたときのデータのみです。ご覧の年間に六百例前後でしょうか、登録されておりますので、捕捉率としましては大体3分の1強というところであります。
これは日本における中皮腫の各種登録制度をまとめたものでございますが、この上の三つですね、これが公的な制度であります。厚労省の人口動態調査と、環境省の先ほどの登録制度、それから外科に関してはNCDというものがございます。この三つはそれぞれ公でやっておりますので、継続性は非常にすばらしいものがあります。それから、厚労省の人口動態調査は、網羅性もほぼ全症例を押さえていると思います。
ただ、これらのところでは、患者さんの登録情報、臨床情報、それからその後どうなったか、どんな治療をしたのか、そして生命的にはどうなったのかという情報が一切ありません。
一方、下の二つは、肺癌登録合同委員会といいまして、胸部の腫瘍に関係する幾つかの学会が集まって、それぞれお金を出し合って登録制度をしております。これはご覧のように、非常にデータ的にはすばらしいんですけれども、毎年やっているものではありませんで、ある限られた年しかしておりません。それから、捕捉率も決して高くありません。あくまでもボランティアで、登録をしてくださる施設のみの登録になりますので、どうしても限界があります。
ということで、全てがそろっている登録制度は、現実にはございません。
この二つですね。官庁などでやっているこういう既存の登録制度と、こういう臨床家たちがそれぞれ手弁当でやっている登録制度、この二つを補完し合うわけですから、これを合体させればすばらしい登録制度ができると思います。
我々からのお願いは、まず登録制度の立ち上げというものは、これは国なり公的なところが立ち上げていただかないと、継続性の問題、資金の問題、そして登録してもらうためには一定の強制力が必要ですので、やはり公的なところでしていただきたい。ただ、一つ一つのデータを打ち込むとか、あとの細かいことは、これは学会でないと無理だと思います。あるいは個々の医師でないと無理だと思います。中皮腫を担当します、例えば日本石綿・中皮腫学会ですとか、日本肺癌学会、そして先ほどの肺癌登録合同委員会、こういうところに実務はお任せいただければいいのではないかと思います。
以上でございます。ありがとうございました。
○浅野委員長 長谷川先生、どうもありがとうございました。
それでは続きまして、中川和彦先生にお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
○中川氏 私、近畿大学腫瘍内科の中川と申します。
最近、ここに書いてありますような、中皮腫治療推進基金の代表理事を務めさせていただいている関係上、このヒアリングに参加させていただいております。
最近、この中皮腫を取り巻く環境で最も重要だと思われますのは、4番目に書いておりますように、臨床試験の数が少ないということで、これを増やす必要があるということです。つまり、新しい治療の選択肢を増やしていくためには、試験そのものを増やさない限り増えようがないという現実がありまして、中皮腫治療推進基金が設立されたのも、そのための助成を行っていくといったことにあります。
したがいまして、ここに書いてありますように、治療研究や臨床試験等への財政支援を行うためにこの基金がつくられているということであります。まだそんなにたくさんのお金があるわけではないですので、できる範囲でこれを努めていきたいというふうに思っております。
長谷川先生も理事になっておられますけれども、私が代表理事を務めさせていただいています。なぜかというと、治験と、医師主導治験とをやった経験があって、そういったところに強いだろうということで、何しろ実技的に私が代表理事を務めさせていただいているということであります。
これは先ほどの長谷川先生がスライドで示されたものと一緒であります。こういった必要性が、中皮腫の患者さんには早急に改善されるべきニーズがあるということであります。
これをじゃあどうするかということでありますけれども、今までの定例からしますと、医師主導治験をやって、その申請に用いられるレベルの品質が担保されたデータをPmdaに申請するというふうなことになります。
私たちが最近やりました医師主導治験の例を示して、どういうふうなことをやるのか、そして幾らかかるのかといったところについて、委員の先生方に情報を提供したいと思います。
原発不明がんというのは、幾ら探しても原発巣が見つからないというようながんのことでありまして、全固定がんの1~5%程度、ちょっとはっきりとしないんですね。なかなかちゃんと原発不明がんですというふうに報告されていないのでよくは分からないんですけれども、一応5%程度はあるんじゃないかというふうに言われています。予後は不良でありまして、大体9か月程度でお亡くなりになる。
ここで問題なのは、原発不明がんも中皮腫と同じように、同じようにというかもっとひどくて、承認されている治療薬が全くないということであります。現時点ではプラチナ併用療法がみなし標準治療ということで進められておりますけれども、標準治療はないという状況にあります。免疫チェックポイント阻害剤等は、だから、プラチナ併用療法なんかの殺細胞性抗がん剤は、一応適応はされていないんだけれども、使うことは使って、削られることはないんですけれども、例えば免疫チェックポイント阻害剤なんかは、高価な薬剤を使った場合には、ちょっと怖くて使えないというような状況にはあります。
私たちの大学院生がこの原発不明がん、CUPというのが原発不明がんの略ですけれども、その検体を調べて、遺伝子発現を解析しますと、何と原発不明がんの患者さんの中にも免疫環境が、肺がんとか、悪性黒色腫と同程度の頻度でそういう効果が期待されるような集団があるということが分かりました。
そこで、2016年11月に、近畿大学内でこういう治験をやったらどうかというようなことを提案しまして、2016年12月に、実際にこの治験薬を提供してくれるかもしれないという製薬企業に提案したということであります。つまり、ニボルマブを原発不明がんの患者さんに使用した場合に、ある一定の有効性が認められることを証明するための臨床試験ということであります。
これはとても早く企業が対応してくれまして、2017年2月、つまり数か月間で、この治験請求をするということが決まりました。そして4月にはプロトコルが作成されて、7月に3回予定の施設を集めて会議することができた。それまでの間に、CROといって、進捗管理、モニタリング、プロジェクトをマネジメントしてくれるような企業も選定されまして、全体の見積りも後で示しますけれども、作って、会社側との合意が形成されたということであります。
そこで、これを治験をやっていくかどうかというのを、Pmdaと相談いたします。事前面談で簡単な打合せをした後、対面助言で、以下のような点でPmdaに相談を実際に行うということであります。つまり、治療の原発不明がんを対象に、一種の治験を行うことの妥当性を尋ねたと。その際の症例数の設定はこれでよいでしょうかといったことを尋ねました。
なぜこんなことが必要かと言いますと、原発不明がんに対して承認されている薬剤がありませんので、原発不明がんそのものが本当に保険対象になるような、そういう疾患群であるのかということそのものが不明瞭であるというふうなことがありますので、Pmdaがこれをそういう対象とするかどうかといったところがもう大前提として非常に重要なわけであります。
そこで、厚生労働省、Pmdaもそのことをどういうふうに考えるか、こちらに質問が投げかけられましたので、JASMOから出されておりますガイドラインを根拠として、他科の診察を必須条件として、こうしたらよいだろうといったことでパスしました。
また、原発不明がんの患者数というのは今幾らいるのかというようなことで、海外での頻度というものを、日本での新たにがんと診断された、これが86番というのが患者数でありますので、これに海外での頻度を掛け合わせて、この程度だろうということを示したということであります。
その結果として、対照群として、治験を実施することは可能である。その際に、私たちは既治療症例を、標準治療、みなし標準もないような二次治療以降の患者さんを対象とすることを提案したんですけれども、Pmda側から、標準治療はないんだから、一次治療の患者も組み込むことが進められまして、そのように実際に行いました。
過程ですけれども、リスポンス例と、奏効率半分以下に小さくなる確率を、主要評価項目として設定して、そして位置が最低でも5%以上、そして期待奏効率として20%というふうにしますと、最終的にデータが出てくるわけですけれども、この閾値、95%の信頼区間で、最低ラインが5%を超えるようなものであれば、この過程にメットするというふうな過程で実施したいというふうにしました。
これもPmdaから了承が得られたということで、11月、これは1年かかるわけですけれども、対面助言をパスしまして、そして18年2月に最初の患者さんが登録が開始されたということになります。結構大変なんですね。
そして、この治験の体制ですけれども、私たちが治験の調整委員を近畿大学で務めまして、それを、近畿大学の臨床研究センターが、試験調整事務局となってカバーしてくれました。しかしながら、本格的な治験を運営する実力はありませんので、シミックシフトゼロというCROに業務委託をいたしまして、モニタリング業務、データマネジメント、統計解析といったものをやっていただくような体制にいたしました。
そして、こちらに右のように示しておりますように、実施医療機関としては、ここに示すような十の機関が選ばれまして、この試験に参加していただいたということでございます。
このときにどのぐらいのお金がかかるかということですけれども、これはこの原発不明がんの治験のそのものを出しているものではございません。ちょっとやっぱりそのものを出すと問題があるかなということで、これは現在、西日本がん研究機構で、大体このぐらいの値段で企業さんに医師の治験を受けていますよという案であります。実際の原発不明がんのかかった費用もこれとほとんど同じくらいでありました。
つまり、研究費以外のところでの総和というのが、この黄色で示している中のほうのところでありまして、治験事務局費というのは、この場合にはWJOGに入ります。それから、下のほうのオレンジのところのWJOGの運営費でありますとか保険、全体会議、そういったものがWJOGで費用として発生してくる。真ん中のモニタリングからデータマネジメント、統計解析、そのほかの業務といったものに、そのほかのお金がこのようにかかってくるということでありまして、合計して1億8,677万というのが今のスタンダード。これは15例ですので、これより症例数が増えたり、もしくはイメージングが、中央判定の運営費用等が含まれたりしますと、またさらに加算されるというふうなところでございます。
実際に2018年2月から登録が始まりまして、2019年9月までの間に56例が集積されたということ、順調に終わったということでございます。
その結果どうだったかというと、奏効率が22.2%、そしてPFSというのは再発までの期間の中央値を示しますけれども、4か月ということで、まずまず良好であった。さらに、OSというのは製造期間ですけれども、約16か月というのは非常によかったというようなことで、Pmdaも受け入れて、審査委員会をパスしまして、これは2020年6月に、ASCOというアメリカの臨床腫瘍学会で発表され、2021年、昨年12月24日に適応追加になったというふうなことでございます。
成功事例として掲げましたけれども、今回の積立基金から研究が助成されるということが実現すると、どのようなメリットが、私たち、これを、このような一種の治験を行うときに起こってくるかということでありますけれども、これはメッセージ性が非常に強くて、製薬企業に対して私たちが交渉するときに非常に強い力になるということであります。日本社会、行政からの治験開発に、治療開発に対する強力なメッセージが発信されているというふうに受け取ります。
したがいまして、製薬企業との強力な交渉の援護になりますし、助成額がどのぐらいかというようなことはあまり問題ではなくて、それよりも、こういう助成をしているという意思の表明というものが非常に重要であるというふうに考えられます。
製薬企業の意思判断の判断する場所が変わります。こういうものがございますと。これは通常なかった場合には、2番目に書いてあるように、グローバルとの競争で、営利的な判断でどちらが有利かというふうな、そういう判断がなされますが、こういう発信がありますと、これは営業判断といったものよりも、社会倫理的な判断、グローバルな判断から日本国内の問題といったものに大分シフトしてくるというふうなことで、判断がしやすいような環境が整えられるということでございます。
厚労省Pmdaとの問題解決に向けた意見交換が、こういう試験がどんどん上がってくるようなことになりますと、そういう事前面談等を通してどういう解決方法が一番合理的なのかといったことについて、厚労省との具体的な話合いがなされて、いろんな方法があるだろうというふうなことで、その方法についてのサジェスチョンも受ける機会が促進されるということだと思います。
以上です。
○浅野委員長 中川先生、どうもありがとうございました。
それでは、最後に、後藤悌先生、どうぞよろしくお願いいたします。
○後藤氏 国立がん研究センター中央病院の後藤です。本日はこのような会議で発言する機会をいただき大変光栄に思っております。
私、国立がん研究センター中央病院で、希少がんセンターというところの一員を担っておりますので、そのような観点から、この中皮腫の治療開発について、少し挙げさせていただければというふうに思っております。
ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、この希少がんというのは、いわゆる疾患数の少ない患者さんでありまして、一番多いメジャーながんの中では、胃がん、肺がん、もう皆さんよくご存じのがんだと思いますけれども、世の中には、希少といって、日本では10万人当たり6例未満と定義されているんですけれども、いわゆるまれとされている疾患がたくさんあります。このまれとされている希少がんを全部足すと、全部で190種類ですけれども、全体の15~20%に該当するということで、意外と多くの患者さんが、この希少がん、本当に情報もなければ治療薬もないような疾患に診断されているわけであります。
こちらの図を見ていただくと、胸膜中皮腫のほうもこちらの希少がんに、いわゆる該当するものになります。
こちらが希少がんの種類、ずっと書いていますけれども、悪性中皮腫に関しましては、10万人中0.75人ということで、ご覧のように、希少がんの中でもかなり少ないほうということが確認できるかというふうに思います。
希少がん全体として、やはり予後がほかのがんと比べるとどうしても悪くなってしまいます。いわゆるメジャーがんと比べると、生存曲線、これは時間、例えば診断されてから500日後、1,000日後、1,500日後の生存率を縦にプロットして線でつないだものですけれども、ご覧のとおり、全体的にこのレアキャンサー、希少がんは低いことになります。こちらも同じデータで、ここも5大がんと、希少がんというのを比べると低くなっている。
これにはもちろんいろいろな要因はあると思いますけれども、一つ大きな要因は、先ほどのお二方の先生からの発表もありますように、やはり希少がんに対する研究開発が不十分だということになるかというふうに思います。
少しだけ研究開発の基本的なことをお伝えしながら、どういうところが不足しているかということをお伝えしたいと思います。
薬、特に抗がん剤は、開発のとき、そのフェーズ、その事相に合わせて、第Ⅰ相、第Ⅱ相、第Ⅲ相というふうに我々は分けて研究をしております。いわゆる第Ⅰ相は、新しい薬が本当に安全か、人間の体に思ったとおりの動きをしているかということを調べるような研究であります。第Ⅱ相が、少数の患者さんを対象に有効性と安全性を調べて、第Ⅲ相が、今までの薬と比べて、本当により有効かということです。
基本路線としては、この三つのテストをクリアしたところで承認するということになりますけども、希少がんなどでは、数百名規模の研究をすることはほぼ不可能ですので、実際にはこの第Ⅱ相などというところで承認されることも多いのが現実です。
もう一つ大切なことは、実はこの第Ⅰ相から第Ⅱ相、第Ⅱ相から第Ⅲ相と行われるときに、実現可能性を考えることになります。もちろんこれも中川先生からお話がありましたように、企業の判断になりますと、最終的には承認されたときの実際のマーケット市場というものを考えるわけですけども、残念ながら、希少がんがこの第Ⅰ相、第Ⅱ相の途中くらいで有効な可能性があるというふうに判断されても、さらなる投資がなかなか得られなくて、これに対して、実際にもう一段階ステップアップして承認まで結びつけるための何かしらのヘルプがないと、なかなかマーケットに任せると薬が世の中に出てこないというのが希少がんの特徴であります。この希少がんに関しては、世界中で同じ問題がもちろん起きておりますので、FDA、右側はヨーロッパです。左はアメリカですけれども、これらのいわゆる規制当局というところからガイダンスが出ておりまして、開発についての注意点ないしはメジャーがんとの違いというものも取り上げられていますし、日本でも規制当局、いわゆる厚生労働省、Pmdaが、かなり多くの取組をしていただいているのは事実であります。
ここにちょっと簡単に個条書きしましたけれども、いろいろな取組が行われているものの、やはり中川先生がおっしゃったような、より多くの費用ないしは何かしらの錦の御旗が必要というのが現実かなというふうに思います。
ここで幾つか、我々が実際に希少がんないしは中皮腫という立場から、このような研究がされている、もうワンステップあればこれがより現実的なものになるんじゃないかという治療ないしは研究などをご紹介させていただきたいと思います。
中皮腫、皆さんご存じのとおり、アスベストが深く関わっている病気ですけれども、実はそれだけではなく、ないしはそれとプラスして、一部の患者さんでは、もともと生まれ持った遺伝子なども関係しているというふうに言われています。このような場合には、家族によっては、がんないしは同じような中皮腫といった疾患が発症しやすいということが言われています。
これらに関しては、いわゆる網羅的な遺伝子解析が必要になるんですが、残念ながら、我々、現時点では、中皮腫に対して、全員にこの網羅的な解析、ないしは年間何百人と網羅的な解析をするのに十分な、残念ながら、環境が与えられていないということがまずありますので、日本からこういうデータはまだ今のところありません。
もう一つ、こちらはある企業の薬というよりも治療薬、治療方法なんですけれども、もともとはご覧のように、膠芽腫という脳の病気に対して使えるようになって、さらに日本では、世界でも有数の、膠芽腫に対しての治療法が使えるんですけれども、アメリカでは同じFDAにこの治療法が中皮腫に承認されたんですけれども、日本で同じ規模とは言わずとも、小さい規模で研究ができれば、日本でも会社の体制としては十分に開発できるんですけれども、承認申請もできるんですけれども、残念ながら日本での研究は、海外で既に行われた研究をレプリケイト、もう一回同じことをやることもできないと、それは残念ながら世界的にはあまり科学的価値がないということもあり、予算の関係上、現在は開発が断念されているということになります。
そのほかに、こちら、中皮腫に対して、ここに書いてあるADCという複合抗体というものがあります。詳細は省きますけれども、これは肺がん、乳がん、胃がんなどで大成功して、日本の企業が世界のブロックバスターをつくったような薬剤のタイプなんですけれども、これも同じように、実は中皮腫がターゲットになる薬が世の中にはご覧のように出てきているわけであります。こちらの研究開発、我々、こういうところから論文として見つけたりすることはできますけれども、残念ながら、いずれも日本のところにはまだやってきていなくて、こんなものが世の中にあるんですけれども、最終的には研究環境、患者さんが参加していただく、ないしは規制当局は環境が非常に大切なので、日本でのこれらの研究開発はまだ不十分と言えます。
もう一つ、こちらは、アカデミア主催で行われた、いわゆる血液がん、皆さんご存じかもしれませんけれども、非常に高額で有名になったCARTという治療法がありますけれども、これを中皮腫のmesothelinというもので同じような治療をするという研究が、ワシントン大学などで精力的に行われました。この研究は非常に複雑な研究で、アカデミアが多大なるいわゆる貢献をしないとできないんですけれども、これに関しても残念ながら日本は後塵を拝しているということであります。
実際にはヨーロッパで、例えば先ほどの長谷川先生の登録システムに似た、さらにそれにバイオバンク、生体サンプルなどを入手したような、全体で患者さんを集めて、実際のトランスレーショナルな研究をしていこうということに対しての予算が、ヨーロッパ全体で、イタリア、スペイン、オランダといった多くの国々で共同研究で行われ、研究費を獲得していますし、世界的にもご覧のように世界的な学会の中で中皮腫というミーティングも行われています。
このミーティングに、私も幸い参加させていただきましたけれども、本当に日本初の薬は、先ほどのニボルマブぐらいしかなくて、多くのセッションの中で日本人が発表することがほとんどできなかったというような状況であります。
まとめになりますが、悪性胸膜中皮腫、悪性中皮腫に関する希少がんの開発には、何かしらのサポートがない限り、本当に患者さんが、自分がまれな病気になっただけで、非常に医療の発展の恩恵を被れないということになります。市場に任せているだけでは厳しいというのがあります。規制当局も我々を本当にご支援いただいていることはよく理解しているんですけれども、加速化にはさらなる取組があれば、まさに中川先生がおっしゃったような公的な支援があれば、開発の大きく後押しになるというふうに思っております。
もう一つは、もう既に諸外国と比べて、研究開発という観点で、日本は大幅に後れを取っています。これは研究費という観点も非常に大きいですので、ぜひ我々も、世界の中皮腫開発のステークホルダーの一つになるためには、より社会全体としての取組が必要になるというふうに考えております。
ご清聴ありがとうございました。
○浅野委員長 後藤先生、どうもありがとうございました。
お三方の先生方から、本当にチームの検討に参考になる重要な情報をご提供いただきまして、ありがとうございました。
それでは、少しだけ時間を取らせていただきまして、ただいまの先生方からのご発言につきまして、ご質問や確認をしたいことがありましたら、ぜひ委員の皆様方から挙手をお願いしたいと思います。
なお、後藤先生には、2時までというふうにお約束をしておりますので、できましたら後藤先生に対するご質問のある方はお早めにお願いいたしたいと思います。
岸本委員、どうぞ。どうぞお顔をお出しください。
○岸本委員 後藤先生にお聞きしたいと思います。
私も中皮腫に関わりまして30年ぐらい、多分一番日本で古いと思うんですけども、かつていろいろ治験に関与させていただきましたけれども、最近で言えばCD26についても、治験で三十数例集めましたが、なかなかいい結果が出なかったというのが現状だろうと思います。
先生、新たな神経膠腫とかCARTとかを、今日、お示しいただきましたけれども、こういう治療で中皮腫に対してかなり可能性があるんでしょうか。確かに私がこの30年間見ていて、ニボルマブというお薬は極めてこの病気によく効いたと思います。確かにmalignant melanomaにも効きましたけれども、こういう画期的なお薬が本当にあればいいなとは思うんですけれども、この辺り、先生のご見解があれば、ぜひ教えていただきたいなと思います。
以上です。
○後藤氏 中央病院の後藤、回答させていただきます。ご意見並びにご質問いただきありがとうございます。
先生方のような先人がいらっしゃったので、日本でもこういう研究が進められていることを、まず最初に大変感謝しております。
現状をお伝えしますと、まさに先生がおっしゃったように、ニボルマブほどの薬がまた出てくるかということが大切になるかと思います。今日挙げました実は三つの治療法は、アメリカで承認されている、ないしは世界中で注目されているということで、先ほどの世界中皮腫学会では、本当に30以上の治療、研究が、発表も立て続けに一人10分くらいしか与えられずに、もう次々と発表されていく状況でありました。その中でも、より有望、より有効なことが期待されているものを一応取り上げさせていただきましたが、まさに先生がおっしゃりましたように、これもやってみないと分からないのも事実なんですけれども、これをやっていく、かつ、世界とほぼ同時にやっていくことが、いち早く患者さんに薬を届ける一番の手だてだと思っています。
まだどこまでのものができるか、もちろん分かっていませんし、非常に、先ほどのCART、初期のデータは非常に有効そうにも見えるんですけれども、安全性など、まだまだ検討する課題があるのも事実だと思っておりますので、これを世界とともにキャッチアップしてできれば、我々としては非常にうれしいことだとは思っています。
○岸本委員 ありがとうございました。
○浅野委員長 では小菅委員、どうぞ、お願いいたします。
○小菅委員 本日、私どものほうの資料でも、長年中皮腫の基礎研究に当たってこられた研究者の方の実情を伺った内容をお示ししていますが、先生方のような一定規模の研究機関に属されているような先生方であれば、ある程度の研究は、人員の確保も含めて、中皮腫の研究費が確保されているのではないかと思います。必ずしも状況は違うということでしょうか。
また、仮に現在に至るまでの中で、公的な支援がもっとあれば、中皮腫の治療環境がもっと違ったものになっていたと言えるのでしょうか。今後、支援が強化された場合に、どの程度のリターンが想定できるのかという意味で伺いたいと思います。
お話を聞いていますと、数億円の支援でも状況はかなり変わるのではないかと感じました。本日の会議資料4は、AMEDと厚労省関係の支援状況ですが、私としては、これほど少ないものかと驚いているところでございます。
○浅野委員長 今ご発表くださいましたお三方のうち、どなたかお答えいただけますでしょうか。
○長谷川氏 はい。
○浅野委員長 では長谷川先生、どうぞよろしくお願いいたします。
○長谷川氏 一例としまして、先ほどちょっとお示ししました、中皮腫の登録ですね。肺癌登録合同委員会というところで、毎年ではないんですけれども、年次を限ってやっております。この肺癌登録合同委員会というのは、肺の悪性腫瘍に関係する幾つかの団体が、年間200万円ずつ出して、1,000万円以下の、800万円程度の年の予算で、肺がんも中皮腫も全部まとめてそれだけのお金でやっております。ですので、億とかそういう単位では全くありません。
それでできるのかというと、結局、手弁当でやっております。具体的には、事務局というのは、大学が何年間に一遍回り持ちで、大学のその医局の部屋を使いまして、大学の秘書さんを秘書さんとして使いまして、大学の助教授クラスの先生が事務局長として一切の事務をしております。回り持ちですので、当然ながら、固定されたシステムとかそういうことはありませんし、それから場所としても固定された事務局はありません。それから、参加された先生たちが、全く手弁当で、一人の患者当たり1時間も2時間もかけてデータを打ち込んでこそああいうデータが出るわけですが、お金としては、年間に僅か1,000万円以下のお金でやっております。だから事実上はボランティアです。
我々、ボランティアをやることは一切問題はないんですけれども、ただ、そういう事務局とか、事務員とかが、できれば固定できる、どこかに事務所を置いてできれば、よりちゃんとしたデータが出ますし、それから、毎年登録をやっていくだけの体力、資金力が出ます。それほど大きなお金でなくても、やる気さえあればできるわけですね。あと少しの支援をいただければ、そういうものが大きく羽ばたくと思いますし、そういうデータが世界に対して貢献できると思います。
以上です。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。
中川先生からのご回答もございますか。どうぞ。
○中川氏 今、長谷川先生は公的な調査というか、データベースを構築していくためのことを言われましたけれども、新しい薬剤開発が、数億でも出していたら、それは改善していたんだろうかというような、そういう質問の趣旨もあったかと思います。
これは、やらなければ絶対に進まないということです。ただ、やったら必ず進むかというと、そんなことは分かりません。やってみないと分からないということです。
分からないので、可能性のあるような、そういう臨床開発は、できる限りたくさんやったほうがいいんだけれども、それは資金力によって、それができるかどうかは左右される。
今考えている、企業が新しい薬剤を開発する開発費用というのはもうべらぼうなものでして、一つの薬剤を開発するのに、やはり1,000億ぐらいかかる場合もあるんですよ。中皮腫だけというわけじゃないですけれども、一つのものをどこかの国に承認させるために、じゃあどれぐらいのお金がかかるんだろうか。臨床研究だけでどれぐらいかかるだろうかというと、500億とか、それ以上かかるような場合もあるわけなんですね。
ですから、私たち、この企業が開発する新しい薬剤に対して、これは何らかの形で公的な機関から国内で開発するようにということが推進されるようなメッセージが出されていると、すごく違うんじゃないかなというふうには思います。
しかしながら、そういう企業が開発するようなお薬、治療法とは別に、先ほど原発不明がんで示しましたような、もう既に開発されているお薬を中皮腫の患者さんに適応拡大するようなものは、それほどお金はかかりませんので、そういう開発には、やはりある程度効果が出てくるのではないか。
長谷川先生のお話の中でも、幾つかまだやっぱり、これが通ると、本当に患者さんは、それで助かるかどうかは分からないんだけれども、悔いなく生きていかれることができるんじゃないかというようなところがありますので、やっぱりそのことのために費用をある程度助成するといったことには、大きな意味があるんじゃないかというふうに思いました。
○浅野委員長 中川先生、どうもありがとうございました。
ほかにご質問ご希望の委員はいらっしゃいませんでしょうか。よろしいでしょうか。
先生方、お忙しい中、今日はどうも本当にありがとうございました。貴重なお話をいただきましたので、今後、私どもの検討の参考にさせていただきたいと思います。
○細川委員 ちょっといいですか。
○浅野委員長 それでは、細川委員、どうぞお願いいたします。
○細川委員 すみません、皆さん、3人の本日のヒアリングのことは大変勉強になりましたということのお礼を言いたくて、まず手を挙げさせていただきました。
ただ、こういう小委員会で、ほんの7分でこのような偉い先生方のお話というのは、多分尽きないと思うんですけれども、これは環境省というか、この小委員会自身の在り方、そもそもの在り方も言いたいんですけれども、もっと一人一人の先生方のお話のお時間を取るのが普通じゃないのかということを一言だけ言いたくて、取りあえず2時ちょうどのところで一言言わせていただきました。どうぞよろしくお願いします。
○浅野委員長 ご意見いただいてありがとうございました。進行につきましては、本当に残念な面もございますが重ねて先生方、どうもありがとうございました。
それでは資料3の説明を事務局からしていただきます。
○木内石綿健康被害対策室長 石綿健康被害対策室でございます。
前回ご確認をいただきました、本委員会の論点のうち、この回において挙げられています三つの論点につきまして、ご議論いただきたい点、28年の救済小委員会における取りまとめ及びその後の状況を含めて、石綿室のほうで整理をさせていただきましたもの、資料3です。一括してご説明します。
論点が三つありますけれども、一つ目、救済給付です。救済の考え方について、それから救済制度の給付内容・水準についてです。
まず1-2に、制度の趣旨及び現状ということで書いています。
既にご案内ですけれども、概要を申し上げます。
石綿による健康被害につきましては、多くの方が1、2年で亡くなられるような重篤なものであるというような状況に鑑みまして、民事の損害賠償とは別の行政的な救済措置を講ずる、そのため、原因者と被害者の個別的因果関係を問わず、社会全体で被害者の経済的負担の軽減を図る、そのような制度化を行っています。このため、こういった制度の性格を踏まえ、給付内容につきましては、見舞金的なものとされまして、ご指摘のある障害年金、遺族年金等は採用されていないところです。
また、医療費の自己負担分が給付されていますけれども、これとは別に療養手当として、療養されている方には月10万3,870円が支給されています。
この療養手当については、入通院に伴う諸経費という要素に加えて、介護手当的な要素が含まれているとされていまして、ただし、定額の給付を一律に行うと、制度の性格からそのような給付となっています。
なお、介護保険制度についてもご指摘がありましたが、医療系のサービスについては、これは医療費の一部として、自己負担なく利用できる、このような給付が行われています。
その下、1-3です。
平成28年の取りまとめの抜粋です。
このとき、現行制度については、事業主の労働基準法上の災害補償責任を担保する「労災制度」、医薬品等の製造販売業者の社会的責任に基づく医薬品副作用被害救済制度のような保険制度、あるいは民事責任を踏まえた公害健康被害補償制度、国家補償的精神に基づく予防接種健康被害救済制度と同様の性格としていくことは困難であるという結論でした。
一方で、基本的考え方に基づきまして、個別的因果関係を問わず、迅速に救済を行っていくべきであるということでした。
また、介護等の実態の詳細については必ずしも把握できていないというご指摘がありまして、被認定者の介護等について、実態調査を行うべきである、このようなことも取りまとめに書かれています。
1-4、その取りまとめ以後の状況を記載しています。
平成29年に、被認定者の介護等の実態調査を実施しています。詳細は後ろのページにありますが、衛生材料、入通院及び介護保険の自己負担にかかる主な費用、お一人ずつの金額、アンケートの結果を平均いたしますと、月ごとに約1万円から2万円程度でした。
また、この調査結果の追加解析の中では、日常生活活動制限が4級や5級の比較的重い方にも、「利用できると知らなかったから」という理由で介護認定を受けていない方が一定数いらっしゃいました。そのために、介護保険制度の活用について周知を行うことが重要と思われるという総括も行われています。
その次のポツは、令和3年5月の建設アスベスト訴訟に係る最高裁判決ですが、このとき、建材メーカーと国の賠償責任が認められています。
下のポツですが、国の責任は、屋内建設作業者について、労働安全衛生法上の規制権限の不行使について、昭和50年から平成16年の期間、一人親方も含めて国の責任が認められた一方、屋外作業従事者に係る責任は否定されています。当該判決を受けて、給付金の支給に関する法律が成立、施行されていることは、この委員会でもご報告したとおりです。
その下は、本委員会の第1回、第2回の会議における委員からのご意見をまとめています。第1回の委員会において、近年の司法判断、消費税や物価の上昇等の社会情勢の変化を捉えて議論すべきとの意見がありました。
1-5は、議論いただきたい点、事務局のほうでまとめています。「救済」の考え方について、救済制度の給付内容・水準について、それぞれ取りまとめ以後の状況、調査の結果等を踏まえ、変更すべき状況の変化があると言えるかということです。
2枚おめくりいただきまして、5ページ、参考3の、先ほど出てきました介護実態調査の結果です。
詳細のご説明は省略しますが、一つ、自己負担している衛生材料費と通院に係る交通費につきまして、月の平均額と中央値を分けて記載しています。例えば、衛生材料を利用している方、療養中の方では26%いらしたということですが、この方の月々の利用額が、中央値では2,000円ですが、平均値では7,957円となっていました。
この中央値と平均値が乖離していることについて、捕捉します。
一部、高額となっている外れ値の方がいらして、最高額の方は月18万円、内訳は、介助のためのアパート代ということでした。この方も含めまして、月10万円以上の方が4人いらして、サプリメント、マッサージなどの費用が計上されていました。
その下、通院に係る交通費につきましても、月40万円と回答された方がいらして、タクシーによる通院を月25回されたということでした。月10万円以上の方は5人いらして、飛行機で通院をされた方もいらしたという状況です。
少し飛ばしまして、7ページ以下、論点をまとめてご説明します。
2番が指定疾病についての論点です。
一つは、良性石綿胸水及び石綿肺合併症について、指定疾病との関係をどう考えるかということ。また、肺がんの認定における作業従事歴の取扱いについてです。
2-2、これまでの取扱いですけれども、現行制度は、重篤な疾病について、民事責任を離れた迅速な救済を図るべき特殊性があると、そのような疾病を対象としていると、そういった考え方に基づきまして、当初、「中皮腫」及び「肺がん」を指定疾病とし、平成22年以後、「著しい呼吸機能を伴う」、「石綿肺」及び「びまん性胸膜肥厚」を指定疾病に追加してきたところです。
また、肺がんについては、原発性肺がんであって、肺がんの発症リスクを2倍に高める量の石綿ばく露があったとみなされる場合に認定しています。これは、そうした場合には、対象となった方の半分以上が石綿によるものと言えることから、2倍で線を引いているということです。
そして、そのような石綿ばく露があったとみなされる場合に該当する医学的所見がコンセンサスとして認められていまして、本制度では、ばく露歴を厳密に求めることなく、医学的所見に基づき肺がんの判定が行われているということです。
28年取りまとめにおける整理です。
良性石綿胸水及び石綿肺合併症については、症状が様々であることから、これを一律に対象とすることは困難ですが、被包化された胸水貯留が認められるような石綿胸水の症例については、基準も含めて検討を行い、救済対象とすることが望ましいという取りまとめでした。
また、肺がんの作業従事歴については、制度の性格上、作業従事歴を確認するための客観的資料が乏しく、作業従事歴を厳密かつ迅速に精査するには限界がある一方で、石綿によるものであることを判定するための医学的所見が国際的なコンセンサスに基づき得られていることなどから、作業従事歴を採用すべきとは結論されませんでしたが、石綿による肺がんについて、引き続き治験の収集に努めるべき。また、医療機関における診断の際に、従事歴等の情報を活用するよう周知を図るべき、という取りまとめでした。
その後の状況ですけれども、良性石綿胸水のうち、被包化した胸水貯留が認められる症例については、「著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚」として取り扱って救済の対象とするという留意事項通知の改正を実施済みです。救済の対象とされています。
また、肺がんの申請者における石綿ばく露作業従事歴に係る調査を実施しています。この調査の結果、石綿ばく露作業従事歴に係る客観的資料、多くの方は提出できないということでしたけれども、提出できると回答された方もいらして、その方からは、年金記録が主に提出されたところです。
ただ、年金記録については、特定の事業所に特定の期間所属していたということは確認ができる一方、当該事業所において石綿ばく露作業に従事していたかどうかの確認が困難であったということです。
議論いただきたい点については、その後の運用状況、調査結果等を踏まえ、変更すべきかどうかということです。
10ページに行きます。
基金の使途を治療研究まで拡大することの是非です。
28年の取りまとめのほうには記載はありません。
第1回の本小委員会において、賛成の立場、慎重な立場から、各委員からご意見がありました。また、救済給付の見通しに関する客観的なデータを事務局が示すべきであるとご意見がございました。
これを踏まえまして、第2回の本小委員会において、残高の見通しについて資料を提出し、専門家の意見を聴取したところです。予測は非常に難しいものであるけれども、事務局の推計について、実際もあまりこれと変わらないものになるのではないかと、専門家の方からご意見があったところです。
その上で、委員の皆様からご意見をいただきました。
臨床関係の委員から、臨床の立場から見て、中皮腫の患者数は引き続き増加していくと考えられる。また、診断技術、治療技術の向上により、予後もよくなってきている。こうしたことからは、基金の残高に余裕があるとは言えないのではないか。また、患者の救済のために設立された基金は、救済のために充てるべきであるというご意見がありました。
また、患者の立場を代表する委員からは、生存期間が延びたといっても1~3年延びたか否かの程度である。基金の残高には余裕があると考えられるので、経済的な救済だけではなく、命の救済についても考えるべきというご意見がありました。
その下、法学関係の委員からのご意見です。
法律論として、もし基金の残高が余剰ということになると、現行法の枠組みにおいては、まずは産業界からの一般拠出金率を下げることになる、そのような枠組みであるということ。また、法改正を行って拠出金の使途を、かつてお願いしたものから事後になって変更していくことになると、今後、他の救済制度を構築する際に制度設計が困難になるのではないかというご意見です。
拠出者である経済界を代表する委員からは、個別の石綿健康被害患者を救済することを目的に基金の拠出・創設がされてきているので、これを後になって別の目的に支出するということは、制度運用の在り方として疑問であるということ。また、事業者の代表としては、別の目的に使用することには同意できないというご発言がありました。
これらの委員からのご発言を踏まえまして、委員長からは、必ずしも基金が余るとは断言できない状況ではないかと。また、治療研究の拡大については異論がないところであるけれども、基金の使途と結びつけないで何らかの治療研究の拡大の方策について考える必要があるというご発言がありました。
議論いただきたい点ですけれども、前回の議論を踏まえまして、基金の残高は余剰があるとは断言できない状況であり、また、当初の拠出の目的を変更することについて、拠出者等の同意がなされない状況では、基金の使途を拡大することは困難ではないか。他方で、治療研究の重要性については異論がなかったところであり、基金の活用以外の方法で引き続き検討を進めるべきではないか、具体的には、「調査研究」の論点、次回挙げておりますけれども、引き続き議論を行うべきではないか、というまとめとしています。
そして関連で、資料4についてもご説明します。
厚生労働省から頂きました資料です。
1ページ目が、疾病の治療を所掌する厚生労働省、疾病の治療を担当する部局の行っている研究ということです。「健康・医療戦略」及び「がん研究10か年戦略」に基づいて、がん医療の実用化を目指した研究を推進する「革新的がん医療実用化研究事業」が実施されています。この「がん研究10か年戦略」の中でも、「希少がん」あるいは「難治性がん」についての研究が重点研究領域として推進されていまして、ご覧のとおり、中皮腫に係る研究課題も採択されているところです。
2ページ目にまいります。
こちらは、労働者の福祉の増進の目的で、労働者を使用する事業主が支払う労働保険料により、労災疾病に係る研究を行う事業、「労災疾病臨床研究事業」です。この中で、ご覧のとおり、中皮腫に係る研究についても行われています。
資料の説明は以上ですが、冒頭、委員長からご指摘ありました、小菅委員から提出されています資料の1ページ目以下の、前回、環境省からお出しした基金の推計についての資料について、お答えをさせていただきます。
前回、環境省のほうから提出した資料については、直近5年の支出額の伸びを外挿して推計をしています。このことの計算式等については、今回の資料の参考資料2に記載しています。
そして、2013年時点の推計との差異についてご指摘があったところですけれども、小菅委員の資料の2ページ目の下半分に、各年度における直近5年の支出額の増減率の相乗平均が表になっています。
ご指摘のとおり、平成24年の時点では、この伸び率の平均が、毎年5.8%という状況でした。プラスだったということですけれども、その前後を見ますと、平成23年はマイナス12.1%、平成25年はマイナス3.2%というような状況で、その当時、基金の支出額の増減について、傾向が一定していなかった状況であると理解をしています。
今回、令和3年度の時点の情報を基に推計したわけですけれども、この令和3年度の前を見ますと、5年間、継続的に基金の支出額が増加している傾向となっていまして、こうしたことから、直近5年間の増加率の平均を踏まえて推計したということです。
ご指摘いただいているとおり、将来の推計は大変難しいものであると考えています。ただ、本制度においては、認定された方への着実な給付を行う、これが大事であると考えています。基金が枯渇して、給付に支障を来すというようなことが万が一にもないようにと、安定的に運用する必要があると考えていまして、そうした点も踏まえて資料を作成したものです。
以上、委員からのご指摘に対してのお答えといたします。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。
時間があまりないところで恐縮ですが、ご欠席の新美委員からご意見をいただいていますので、一、二分で概要のご紹介を事務局からしていただけますでしょうか。
○木内石綿健康被害対策室長 委員提出資料2で、本日ご欠席の新美委員から、論点1、給付のあり方について意見書をいただいています。
ちょっと長くなっていますので、概要のみご紹介します。
建設アスベスト給付金制度、また建設アスベスト訴訟の最高裁判決を踏まえて、どう考えるかということについて、このアスベスト給付金は、原因者となり得る事業者に対する国の規制権限不行使を理由とする責任が前提である。このため、原因者は個別具体的に特定できないが、原因者の集合が労働安全衛生法による国の規制の対象である、そうした方に対する給付として設けられている、限定がある。このため、こうした制度が設けられたことが、原因者の特定できない石綿関連疾患患者全員の救済に直接的な影響を及ぼすものとは言えないと記載されています。
また救済制度、共助または公助の理念に基づく制度においては、給付項目、水準の妥当性はそれぞれの制度趣旨に応じて判断すべきであり、個別に検討すると、現行の給付内容の給付水準については、概ね妥当なものといえる、というご意見です。
また、本制度における拠出者は、社会の連帯共助の精神の下、自発的に資金を拠出いただいている。こうした趣旨を踏まえれば、給付項目を追加するには、拠出者の同意を得る必要があるのではないか、こういったご意見です。
ご紹介のみさせていただきます。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。
それでは委員の先生方、どうぞお顔をお出しいただけますでしょうか。
今日、論点三つほど挙げられましたが、まず救済給付についてご意見をお持ちの方は、どうぞ挙手をお願いいたします。
挙手されるとき、下のほうに挙手というアイコンがございますので、それをクリックされますと分かりますので、それで合図をしていただくのが一番分かりやすいため、これでお願いしたいと思います。
それでは、小菅委員からご発言をお願いします。まず救済給付についてのお話から順次進めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○小菅委員 前回の小委員会後の大きな動きで言えば、建設アスベスト裁判における国の責任、一部建材メーカーの責任が確定しています。次回のヒアリングでも、公的な関係から、ご提言等あるかと思いますので、詳しくは次回の議論を待ちたいと思います。
制度施行当時から、最低賃金の上昇や、物価の上昇などの変化があることは事実ですので、遺族給付の創設を含めた全体の底上げの必要があることを前提に、何点か意見させていただきます。
中皮腫サポートキャラバン隊の中皮腫患者白書で取りまとめられておりますように、やはり子育て世代を含む現役世代の方が発症した場合の家計への負担は大きいですので、対応が求められます。これまでの認定者の割合における60歳未満の方の割合は、約10%未満ですが、まさにこの世代への手当は追加的に検討されるべきものと思います。さらには、お子さんの有無などによっても期間は追加されると思います。このような部分に配慮しなければ、本来は治療、療養に使用すべき手当が生活に回ってしまって、本来必要なものに使われないという実態があります。
一方で、60歳以上の認定者は9割以上を占めるわけですが、介護実態調査からは、数は多くないですが、要介護4、5程度、被爆者救護法でいうところの介護手当、身体障害者手帳1、2級程度に当たる方がいることが分かります。アンケートにもありましたが、このような方は、ご家族の方が何らかの犠牲を払って介護支援に当たったり、身の回りのお世話をする人を雇ったりする費用もかかるわけですので、追加的な支援が必要かと思います。
遺族の方についても、事実上、約20万の葬祭料以外の給付はなく、国の災害弔慰金制度でも、生計維持者が死亡した場合は500万円、その他の者が死亡した場合は250万円が支給されています。お子さんが就学中である方など、世帯状況に応じて追加的な支援が必要です。8月の小委員会でのヒアリングで語られたように、経済的な苦境に陥った貧困者の救済の審議をいただきますように強く求めます。
○浅野委員長 よろしゅうございますか。
救済給付に関して、他の委員でご発言の方、ございませんでしょうか。特にございませんか。
細川委員、どうぞお願いいたします。
○細川委員 皆様、お疲れさまです。皆様の本日出席されている方々のこうやってお顔を見ながら発言させていただけることというのが、本当にちょっとうれしいと思います。小菅委員のお話も、大変本日も参考になりました。また、議論いただいた点についてという環境省からの話も、とても勉強になりました。
私、個人的に、少しだけ時間をいただきますと、今回7月から日本医師会の常任理事になりまして、このような中皮腫、アスベスト等の委員にこうやって入れていただきまして、本当に勉強させていただきました。
前回の第2回に関しては、黙って聞いていて、発言することも何もなく、じっと聞かせていただきまして、本日、最初に小菅委員から、しゃべらなかった人間もしゃべれよというようなことも言われた気がしまして、あえて、ちょっとしゃべらせていただこうかなと思いました。
それで、前回、もともと環境省がやっている救済法ということに関しては、給付、ちょっと勉強させていただきましたら、平成18年の参議院の委員会において、中皮腫について、早期診断治療報開始等の基盤整備を行うこととなっております。それから、平成18年になりましたアスベスト等のまた中皮腫に効果ある新薬の研究開発を促進することというふうに聞いておりますが、環境省さん、途中まではこれで正しいですか。
○木内石綿健康被害対策室長 附帯決議の内容につきましては、おっしゃるとおりです。ただ、附帯決議ですので、政府全体として受け止めさせていただいていると理解しています。
○細川委員 僕も少し理解しながら少ししゃべらせていただきたいんですけど、平成23年6月に関しては、やっぱり中皮腫に対して、いろいろ早期発見どうのこうのと書いてあったりします。28年に関しては、このデータを分析しなさいということも書いてあります。
令和4年6月に関しては、最新の医学的治験、それから救済基金の活用等に早期に開始することというのを、参議院の環境委員会で決議したという。小菅委員さんに僕は言いたいんですが、決議というのは、我々はこう思うよというだけの話なんですね。それで、そう決定されたことではないと思います。
それから、中皮腫の治療とか現実に関しても、かなり進んでいるということも勉強させていただきました。
今回、ついでに、僕はこれで意見をずっと言わせていただいておしまいにしようかと思いますが、第2回の小委員会に関して、岩村委員から、それから新美委員のいろいろなご発言も、そもそもなんですけれども、この基金じゃなくて、救済法によるお金の使い方ということも、随分勉強というか、少しさせていただきまして、今後、この希少がん、今日、本日3人のいろいろヒアリングもありましたけれども、ほんの7分ごとで皆さんの思いがこの小委員会に伝わったかというと、とても伝わっていないと思うんですね。
それから、法改正が必要ですよと。これは今まで事業主が920億円、国が386億円、都道府県がこれだけのこと。それから、最近ですけども、患者と家族の会と面談させていただいて、そこの中の利息収入、約16億円ですか、それを何か使えるかとかということ。それから、研究に当たっての重点課題でいろいろお聞きしました。これに関しては1.5億円とか、そういうことに関して、これはいい話だと僕は思うんです。環境省自身も、今回の小委員会に関して、提言もしくは決議、それから答申でもいいんですけども、やっぱり患者様、それから家族の会からこういう話があったよという言葉はぜひ入れていただきたいと僕は思います。
そこの中でですが、この会で何をしゃべっても、法は変わらないと思います。私、日本医師会の、今、いろいろな外部審議会なんかに出ていても、小委員会の発言というのはここまでなんですね。それで、小菅委員にぜひ申し上げたいのは、もしこれから次に進もうと思ったら、日本医師会の私のところに直接お越しくださいませ。それから厚生労働省、それからほかのところにまだボタンを押す、それから、日本医師会からも医系議員というのは何人かいますので、そういうところにボタンを押す。そうしないと、前に進まないと思います。
それで、今回の進め方で、第4回で、また有識者のヒアリングがあると聞いております。それから、第5回、3月頃に報告書の取りまとめ。本当にこの委員会が大事であれば、この3回、4回、5回でおしまいにしていいのかという気持ちもしております。
そこら辺も含めて、浅野委員長、勝手なことを僕しゃべらせていただいて、本当に石綿の方々、困っていることも分かっておりますし、この小委員会で取りまとめに関しては、何とかやはり患者様と家族の会の意見も多少、多少かどうかは知りませんが、入れていただきながら、ただ、この意見が通る小委員会ではないということも、小菅委員様にも申し上げておきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
とにかくがん対策というのは、日本医師会に担当理事もほかにもおりますし、ぜひまたそこら辺でボタンを押していただければと思います。
ちょっと長くなりましたけど、大変失礼なことを言っちゃったかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。
救済給付についてというテーマで今は議論しているつもりでおりますが、ご発言はございますか。
○小菅委員 すみません、ありますので、よろしいでしょうか。
○浅野委員長 はい、どうぞ。
○小菅委員 先ほど新美委員からの提出資料によってご説明がありましたのでその件でちょっとお話をさせていただきたいと思います。
新美委員の意見書に関してですが、私も石綿救済制度は社会連帯共助の精神が含まれるものと認識しています。
委員のご意見では、自賠責保険について触れられていますが、他方では、犯罪被害者給付金制度や災害弔慰金、災害障害見舞金支給制度との関係性をどのようにお考えでしょうか。委員のお考えをお伺いしたいのと、次回以降、事務局は、これらを含めた他制度の比較ができる資料を準備するようにお願いいたします。
新美委員が触れられています自賠責保険では、興味深いことに、休業損害とは別に、看護料科目の中で、収入減少の立証等を前提に、追加の給付がございます。この考え方は、療養手当はもちろんですが、実際の支出を踏まえて、通院交通費でも検討できるかと思います。
遺族給付に関して、新美委員も触れられていますが、自賠責保険では遺族の人数などによって追加的な支援がされています。犯罪被害者給付金も災害弔慰金も同様です。
○浅野委員長 大林委員、どうぞ。
○大林委員 神鋼病院で病理医をしております大林と申します。指定疾病に関して、ちょっと意見を申し上げたいと思います。
中皮腫の患者さんが非常に深刻なわけですが、一方で、肺がんの申請者が少ないということも従来から問題になっております。これは、病理の立場としては、何かできることがあるんじゃないかというふうに考えています。
まずお願いしたいのは、臨床医に、肺がん患者さんの職歴を必ず聴取していただくと。喫煙歴に関しては記載されることが多いんですけれども、職歴はほとんど書かれていない、記載されずに病理の診断依頼書が提出されます。もし書いていただけましたら、例えば、肺系の組織にアスベスト小体がないかどうかということを、私たちが注意して観察するということが可能かと思います。それによって、アスベスト小体があるということを、まず主治医にフィードバックをして、さらに患者さんにそれを伝えると、そういう道筋があり得るんじゃないかというふうに思います。
これは非常に地道なことでございますけれども、日常診療の中で取り組めることで、実際、中皮腫に関しましては、機構が主催されております講習会等で啓蒙されていることが非常に大きく広がっておりますので、同時に肺がんに関しましても、アスベスト小体をよく観察することということを教育していきたいと、そういうふうに願っております。
もう一つは、この辺は私の知識が不十分なんですけれども、先ほどの専門家のご意見でもございましたけれども、今、遺伝子を包括的に調べる、特に希少がんに関しては、保険でもって何百種類という遺伝子を網羅的に調べることが保険適用になっております。ですので、これをまず、とにかく今、薬剤を使うとか、あるいは新薬を開発するというのは、遺伝子が大変重要な情報になりますので、このFoundationOneに対しまして、希少がんとして中皮腫をどんどんエントリーしていただくということは、やはり臨床の先生にお伝えしなければいけないんじゃないかと思います。
FoundationOneという、それだけではないんですけれども、網羅的な遺伝子の診断の中で、治療薬は存在するけれども適応外であるというような遺伝子異常が見つかることはままありますので、こういったところが一番直近の攻め口としてはいいのではないかというふうに考えております。
以上でございます。ありがとうございます。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。では、指定疾病について、ご意見をお伺いします。
岸本委員、どうぞお願いいたします。
○岸本委員 指定疾病について、石綿健康被害救済法の判定小委員会の委員長の立場としてご意見を申し上げます。
確かに、最初は悪性疾患である中皮腫と肺がんが認定の要件でございましたが、良性疾患であっても、石綿肺及びびまん性胸膜肥厚のうち、著しい呼吸機能障害を来した症例というのは、これら悪性腫瘍と同等の重篤な病態であるということで、平成22年に指定疾病にしたというのは、今、事務局からおっしゃったとおりであります。
ただ、私、30年ほどこの石綿関連疾患を見ていますが、良性石綿胸水というのは、約半数は無症状で、健康診断等で指摘されて診断をされておりますので、この疾病が全般的に中皮腫や肺がんと同等の予後の悪い疾患かというと、決してそうではないと思います。確かにその中の一部で胸水が器質化して、%肺活量が60%を切るような、この病態は予後もよくございません。環境省で認定された300例以上を調べて見たんですけれども、認定されて以降、その生命予後は中央値が28.5か月で、3年生きていないということが判ったので対象疾病として妥当だと思いました。
良性石綿胸水であっても、我々は研究によって他の要件を満たせば、僅か3か月胸水量が変わらなければ、びまん性胸膜肥厚としてよいと判断しました。このような病態は、びまん性胸膜肥厚というよりは、むしろ良性石綿胸水といってよいかもしれませんが、このような場合も認めているのは事実でございます。我々、この病態の審査をしておりまして、器質化胸水をもってびまん性胸膜肥厚と認定されている方が、大半でございますので、ここはうまく認定基準としたのではないかというふうに思っております。
それから、石綿肺の合併症でございますが、確かに石綿肺というのは、珪肺と違って、結核の好発部位に病変があるわけではなくて、両側下肺野が中心でございますので、結核の合併は極めて少ないという状況であります。
それからじん肺法の合併症の一番多い続発性気管支炎、気管支拡張症というのは、そんなに重篤な疾患ではなくて、抗生物質で治るような病気でございます。また、最後の合併症である続発性気胸にしても、難治性であるということは言えないと思います。石綿肺の合併症が、著しい呼吸機能障害を来した石綿肺と同等かというと、決してそうではないというのが臨床科としての意見でございます。
先ほど大林先生がご指摘の石綿肺がんでございますが、環境省の救済法ができたときに、職業性石綿ばく露等が分からない方を救済しようという発想で始まりました。1997年のヘルシンキクライテリアというのは、肺がん発生頻度を2倍にするというクライテリアであり、これであれば、職業性石綿ばく露等を言っておりませんので、近隣ばく露でもほかのばく露でも、みんな包括できるだろうということでこの基準を設けたわけでございます。なので、より幅広い方を救済しようという目的でできたわけなので、私は非常にいい基準ではないかなというふうに思っております。
それから、職業性ばく露なんですけれども、先ほど申し上げたびまん性胸膜肥厚、石綿肺というのは、職業性石綿ばく露によって起こった疾病ということでございますので、肺がんや中皮腫とは異なります。すなわち一定の職業性のばく露の要件を持った者のみを認定するというふうにしております。なので、職業歴を聞いております。けれども、ご本人の陳述のみというのは、客観性が担保できません。先ほど事務局も申されましたが、年金記録がくっついてきても、当該事業上でアスベストが使われていたかどうかということが不明な場合がございます。職業性ばく露以外を含めて、迅速な救済を目的として、我々、日夜努力している救済制度でございますので、石綿ばく露作業従事歴の基準としての採用というのは、客観的に見て難しいのではないかなというふうに思っております。
以上です。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。
小菅委員、どうぞご発言ください。
○小菅委員 肺がん判定のほうからお話しさせていただきたいと思います。資料も提出させていただいておりますように、労災認定基準や建設アスベスト給付金の認定基準で救える被災者は救うべきです。そのために、ばく露の判定基準を用いるべきで、既に石綿肺やびまん性胸膜肥厚では、石綿ばく露に関する申告書の提出も必須になっていますので、同じ取扱いをすべきで、救済制度では実際はどのようにされているのか、環境再生保全機構の方にもご説明いただきたいと思います。
これまでの累積の申請のうち、胸膜プラークがありながらも不認定となった方の割合、そのうち少しでも職業ばく露が疑われた方の割合を示してください。現状は、肺がんについては救える方を救わない救済制度となっています。救える人を救わない不合理な制度になっています。あるいは、建設アスベスト給付金制度では、ばく露歴の調査は必ずしも経験が豊富な方が調査に当たっているわけではないと確認しています。厚労省の担当の方から、実際の準備から運用に至るまでについて、ご説明をお願いしたいと思います。こちらも次回、厚労省の方からお伺いしたいと思います。
次に、指定疾病について、ちょっとお話しさせていただきたいのですが、この件についても資料を提出させていただいているんですけれども、じん肺管理区分2または3相当の半線維化所見があり、合併症のある患者で、著しい呼吸機能障害を伴うものは救済対象に加えることが当然であるとともに、良性石綿胸水を含めて、著しい呼吸機能障害を伴うにとらわれず指定疾病とすべきと考えています。
救済法の基本的考えは、労災保険鮮度で救われない方を救うための法律、制度であり、その較差に対して、合理性のない基準、ダブルスタンダードのある状態は早急に改善すべきだと思います。
肺がんの関係でも述べましたが、事務局は、委員にもご理解いただけるような、違いについて分かりやすく認識いただける資料を次回までご準備いただきたいと思っております。
以上でございます。
○浅野委員長 ありがとうございました。
ほかにこのテーマでご発言ご希望の方はいらっしゃいますか。
いらっしゃいませんようでしたら、では、基金の使途、3番目の項目ですね、これについては小菅委員からまずご発言いただけますか。
○小菅委員 ありがとうございます。基金の使途については、本当に3人の医師のヒアリングをいただきましたこと、本当にありがたく思っております。ありがとうございます。
本日、私どもの資料でも提案させていただいておりますが、基金の運用益の活用、あるいは基金の活用に関して、さらに広く拠出関係者の皆様との合意形成の場を設けていただくことを提案いたします。
この制度は、誰を助けるためのものなのかという目的において、基金の活用はその目的に直結するものです。治せる病気にしてしまえば、拠出者の皆様のご負担の軽減も検討できるはずです。
2006年7月24日の石綿による健康被害の救済に係る事業主負担に関する検討会でも確認されていますが、基金の事業主の皆様からの拠出は、積極的な救済活動に対してご協力いただいている性格のものです。
さらに、2021年6月に経団連さんが提言されておられます「新時代の日ASEAN関係~連携と協創による持続可能な社会の実現に向けて」では、これからアスベスト被害が拡大していくASEANへの医療、ヘルスケア協力を進めることを書かれていますが、私たちの提案は、それにも結びつくものと考えます。
経団連さんが2017年に改訂されています企業行動憲章の10原則の中には、全ての人々の人権を尊重することや、企業を取り巻く幅広いステークホルダーと建設的な対話を行うことも掲げられています。ASEAN諸国の皆様との関係で掲げられている、心と心の触れ合う関係は、本件においても構築可能であると考えます。その意味で、広く関係事業主の皆様との合意形成が得られると信じて、私たちも引き続きお願いと協力をしていきたいと思います。
同時に、国民の健康で文化的な生活を確保できる責任を負う、政府の立場から設けられた精度である趣旨からも、治療研究推進に関しては、国が基金内において拠出割合を担うという考えもあるかと思います。中皮腫を治せる病気にするための戦略を組み立てるために、関係者の定期的な会合、例えば中皮腫治療戦略会議を設けるなど、国も真剣に向き合っていただきたいのです。
資料4に、厚労省におけるAMEDの支援の状況が書かれていますが、私たちの調べでは、それらの合計は単年度で2億円程度です。アスベスト同様に国の責任が認められた肝炎では、治療研究支援の関係で、年間で35億円程度の予算が充てられていますし、国も一定の責任を認めたエイズの関係でも21億円程度の予算が充てられています。中皮腫を治せる病気にするための戦略と予算確保の方策について、次回以降で構いませんので、厚労省と環境省から、それぞれ見解をお聞かせいただきたいと思います。
先ほど、細川委員から、多大なる、本当に、これからのご協力もいただくご意見をいただきましたこと、本当にありがたく思っております。ありがとうございました。
○浅野委員長 細川委員、どうぞ。
○細川委員 小菅委員様、本当にありがたいお言葉をありがとうございます。今後は、今の環境省を超えた、厚労省も含めてですけれども、直接、多分こういうことの法改正も含めてボタンを押せるのは、ある意味、日本医師会だと僕は思っております。
この小委員会で今後こういうようなことをお話をするのは、時間のロスとは言いませんが、今小菅委員様も、今日お話になっているのは左上の何か書類をずっとお話になっただけなんですね。それも、ある意味不快感を僕は感じます。
それですので、ぜひ皆様、ここにいる委員長も含めてですけれども、直接お話をしたいなと思います。何かどんな形でもいいですからお力になりたいですので、次の4回目、5回目も含めてなんですけども、患者家族の会の話の中で、いろいろプレゼンもいいんですけども、もっと実りのある小委員会に僕はしたいと思いますので、どうかご協力をお願いします。
浅野委員長、そういったことを僕は言っちゃったんですけど、いいでしょうか。
○浅野委員長 ご希望としては承っておきます。またよく事務局と相談いたします。
大塚委員、ご発言をご希望ですね。どうぞ。
○大塚委員 第1回目のときに研究開発に充てていただくことが望ましいという話をしまして、今でもそう思っていますけども、ただ、内容面と手続面で障害があるということが出てきておりますので、当面難しいのだろうと思っております。
国としては、今回難しくても、取り組む方向で進んでいっていただければとは、将来的には思いますけども、当面は難しいということかと思っています。内容的には、障害としても、基金の残高の減少の可能性があるということと、手続的には、拠出してくださった産業界の同意がないということ、あと研究開発は主に厚労省の担当だということがあるかとは思います。
さっき細川委員もおっしゃったこととも関係しますけども、基金の使途の変更には法改正が必要だというのもありますので、日本は議院内閣制なので、役所が結構関与していらっしゃいますけど、最終的には国会が決めることになりますので、法改正をすれば研究開発のほうに充てるということも不可能ではないので、あとご検討いただくとしたら、そういうことが当面は考えられるのかなということかとは思います。
ということで、経済界との拠出のときの約束というのがおありなので、環境省としてはなかなか今回も難しいということかとは思いますけれども、将来的な道というのはさらにご検討いただければありがたい。ちょっと今回はちょっと難しいかなということかと思っております。恐れ入ります。
○浅野委員長 ありがとうございました。
今、岩村委員から挙手が挙がって、もうそろそろ時間なんですけれども、ご発言をご希望の委員がほかにいらっしゃいましたら、今のうちにエントリーをお願いいたします。もうほかにいらっしゃいませんか。
それでは岩村委員から始めていただいて、小菅委員、そして中澤委員、岸本委員がご発言をご希望ですね。そうしますと、予定の時間はもうあと2分ぐらいしかないのですが、会議を15分くらい延長させていただいてもよろしいですか。よろしゅうございますね。では15分、会議を延長させていただきます。
では岩村委員、どうぞお願いいたします。
○岩村委員 本日、提出された資料3の3-4に書いてある方針で、私どもは異存ございません。資料3にも書いてありますが、前回も申し上げたとおり、個別の石綿健康被害患者の救済を目的に拠出、造成された基金でございますので、途中で目的を変えることは、認めがたいというスタンスは変わってございません。
また、シミュレーションではありますけれども、基金が底をつく可能性が示されておりますので、本来の目的が果たせなくなってしまうということであれば、強い懸念を持たざるを得ません。また、先ほど、運用益についてもお話がございましたけれども、我々としては、元本と運用益は一体と考えてございまして、一体不可分で制度を運用していくことが必要であろうという立場でございます。
ただ一方で、治療研究の推進が重要であるという認識は、委員の皆様の間でも共有できたかと思います。本日の資料3にも記載がありますとおり、この制度以外の方法について、費用負担の在り方も含めて、別途議論を進める必要があるのかなと考えてございます。
環境省におかれましては、治療研究を所管する厚生労働省ともご連携いただき、対応をご検討いただければと考えてございます。
併せて、安定的な運用という観点から、前回申し上げました通り、国・自治体による基金への今後の拠出についても、ぜひご検討いただければと思います。
以上でございます
○浅野委員長 ありがとうございました。
中澤委員、どうぞお願いいたします。
○中澤委員 ありがとうございます。
今まで委員の皆様からのいろんなご意見が出ていて、概ね同じような意見になりますけれども、この基金の制度が発足した当時から、患者さんの環境というんですか、特に医学の進歩などにより随分変わってきているということと、先ほども治療の研究開発が進んできて、もう少し予算があったらさらに進む可能性などについても、専門家の先生方にいろいろとお示しいただいて勉強になりました。
患者さんのために研究開発が進むということは、誰もが同じ思いだと、1回目でそのようなお話もありましたし、それは同じことだと思いますけれども、いろいろ今お話がありましたように、基金自体の性格が、最初に設置されたときの性格というのもありますし、現行法の枠組の中で使途を一部変更するということもなかなか困難であることは、私たちも地方行政の者なのでよく承知しております。
ただ、何かちょっと制度を変更するとか、何か変えることが可能であるならば、検討することもあり得ると思いますし、今お話を伺っていてちょっと思ったんですけれども、基金の性格から考えると、基金の外で考えるほうが、より研究開発に資することができるのであるならば、そういう可能性があるのならば、そういうことを検討するということも必要なのではないかなというふうに考えます。
そうなってくると、ちょっとこの小委員会の枠から外れるのかなとは思いますけれども、そこのところもご検討いただければと考えております。
以上です。
○浅野委員長 ありがとうございました。
小菅委員、どうぞ。
○小菅委員 岩村委員からも、やはり治療研究はやっていかなきゃいけないというご意見もありましたので、この基金からの活用が本当に厳しいというふうに思われておられるのであれば、私は、やはり議員立法、法改正をしていくのが妥当ではないかというふうに思っております。
最後に調査研究について、ちょっとお話しさせていただきたいと思っております。
厚生労働省のある部局に意見を聞いたところ、附帯決議で、石綿健康被害救済基金活用の議論をすべしとなっていながら、十分な議論が尽くされていなければ、厚生労働省から予算要求をしても難しくなってくると伺っております。附帯決議を踏まえて、環境省が最大限に知恵を絞り出し、合意形成などをする努力をした上で相談に来るならまだしもという趣旨のご意見も伺っています。
また、基金活用以外の方法に関して、環境省は財務省との折衝で予算を確保できる確信のようなものはどの程度お持ちなのでしょうか。この辺りの見解のすり合わせを、環境省は厚労省と十分にされているのでしょうか。私どもが確認した範囲では、厚労省の方には、予算は取れないですかという電話があっただけということでした。
○浅野委員長 よろしゅうございますか。
では岸本委員、どうぞ、お願いいたします。
○岸本委員 ありがとうございます。
臨床研究をもう進めなきゃいけないというのが、第1回のこの会から皆さんがおっしゃっておられるとおりですが、先ほど中澤委員が言われましたように、この基金の中でこれを議論するというのは、これは難しいわけなので、やはり新たな研究のための資金を集めるなりなんなりをやはりしていくべきだろうと思います。
これには、ここは環境省の会なので、これは厚労省が主体的にやるべきものだろうと私は思います。長谷川先生と中川先生がやりたいという治験は、実際に肺がんとかでもう保険適用がある薬で、安全性が分かっているわけですから、そちらのほうにお願いをして、こういう治験をやってみたいと言えばこれはお金がそれほど要らなくてやれるわけで、効果があれば患者さんのために使えばいいわけで、この環境省の救済委員会で議論すべきものではないと思います。
ただ、後藤先生がおっしゃったのは、これは画期的な治療方法なので、これが効果が万が一あるとなると、先ほど申しましたように、中皮腫に対する国の研究費を新たに設立して、それでやっていけばいいのではないかなというふうに思いますので、やはり患者さんのため、患者さんの生活を救済するためにこの法律はできていますので、やはりこれはまずそれをやるということと、中皮腫を治す病気に、それは私も三十数年やっていて、それはそうしたいんですけども、なかなかこれに対する治療薬というのは、もう上がってきては全部これ駄目だったというのがこの30年の現実なので、先ほど後藤先生も言われていましたように、ニボルマブというのはこれは画期的なお薬だったけれども、30年間でこの薬が一つ出ただけで、あと、アバスチンとかニンテダニブだとか、いろいろフェーズ3まで行ったお薬も、結局は患者さんに使うことができなかったというのが現状でございますので、長谷川先生や中川先生は、厚労省に言えばこのような治験というのは私は可能かなというふうに思います。
以上です。
○浅野委員長 ありがとうございました。
それではまだご発言ご希望の方もいらっしゃるかもしれませんが、恐縮ですけれども、もうそろそろと思います。もしさらに今日発言しなかったけれどもこういうことを言いたいというのがありましたら、紙に書いて、メールで結構でございますので、事務局のほうにお知らせいただけましたら、適宜それを議事録の中にも反映させることができると思いますので、よろしくお願いいたします。
小菅委員、どうぞ。
○小菅委員 最後に一言、よろしいでしょうか。
○浅野委員長 はい。簡潔にお願いいたします。
○小菅委員 本当に基金の活用が難しいというお話もございますので、その件でちょっとお話しさせていただきたいと思っております。
広くこの事業者の皆様ご意見を聞きたいですし、その上でどうしてもこのご理解が得られないというのであれば、追加の拠出をお願いしない形で、国と都道府県の皆様の拠出範囲、ないしはその範囲の運用益の活用など、本当に何か知恵はないのか、事務局を含め、委員の皆様での検討は全くなされていないと思います。
附帯決議や都道府県からの要望が出ている以上、本日の議論をもって基金の活用は難しいと早急に結論づけるのは間違っていると思っておりますので、今後ともまた、このような、今回3回目は全委員の方のご意見をお伺いすることができましたので、本当によかったと思っております。今後ともまた皆さんでこの救済法に向けて審議していただけたらありがたいと思っておりますので、本日はありがとうございました。
○浅野委員長 どうもありがとうございます。
基金の使途の拡大、まず第一に基金の今後の状況についても、先ほどご説明ありませんでしたが、中澤委員と、小菅委員からご意見も出ていまして、今後の状況についても予測については、必ずしも十分に分からない面もあるということでありますが、しかし、それぞれ前回も申しましたけれども、基金の使途の拡大ということに関してはいろいろ制約も大きい。しかしながら、治療研究の重要性については異論はありませんので、この辺についてとにかく必要な検討をちゃんとしなきゃいけないということは、今回も変わらなかったと思います。
次回、またこれについて議論をし、全体の取りまとめの段階で、どういう形でこれをやればいいかということについては、再度整理をしていく必要があるかと思いますが、取りあえず今日の段階まででは、前回私が取りまとめて申し上げましたことを繰り返すことになりますけれども、治療研究の重要性については異論がない。ですから、それについての検討を、さらに次回の治療研究の論点のところでも詳しくしていく必要があるだろうということは間違いないことだと思います。
そのための経費につきましては、前回のまとめで申し上げましたが、今日いろいろご意見が出ましたので、それらを考えながら、最終の取りまとめをいたしたいと、このように考えます。
それでは、本日の議事はこれで終了させていただきます。
次回以降のスケジュールについて、事務局からの説明をいただきます。
○小笠原主査 事務局でございます。
次回の小委員会の日程については、現在調整中ですので、決まりましたら追ってご連絡いたします。
また、本日の議事録につきましては、事務局で原案を作成し、委員の皆様にご確認いただいた後、環境省のホームページに掲載する予定ですので、よろしくお願いいたします。
それまでの間につきましては、本委員会の運営方針に基づき、会議の音声を環境省のホームページで掲載する予定でございます。
それでは、以上で令和4年度第3回石綿健康被害救済小委員会を終了いたします。ありがとうございました。
午後3時10分 閉会
○小笠原主査 それでは、定刻になりましたので、ただいまより令和4年度第3回中央環境審議会環境保健部会石綿健康被害救済小委員会を開催いたします。
環境保健部環境保健企画管理課石綿健康被害対策室の小笠原でございます。議事の開始まで進行を務めさせていただきます。
委員の皆様におかれましては、ご多忙のところご出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、Web会議での開催とさせていただいております。会議中、音声が聞きにくい等の不具合がございましたら、事務局までお電話、またはWeb会議のチャット機能でお知らせください。機器の不具合等によりご発言いただけなかった場合には、お電話にてご意見をいただきまして、後日、議事録に掲載させていただきます。
本日の会議は公開であり、環境省大臣官房環境保健部環境保健企画管理課公式動画チャンネルでライブ配信を行っております。通信環境の負荷低減のため、カメラ機能はオフにしていただき、ご発言の際のみオンにしていただきますようお願いいたします。
発言のご意思のある委員におかれましては、お名前の横にあります挙手アイコンをクリックしていただくか、チャット機能で発言したい旨をお知らせ願います。
委員長から指名を受けた場合、マイクのミュートを解除してご発言いただきますようお願いいたします。ご発言の後には再びミュートにしていただくとともに、挙手アイコンを忘れずにクリックして、元に戻すよう操作をお願いいたします。
また、本委員会は原則公開で開催いたしますが、石綿による健康被害を受けた方など傍聴が困難な方への迅速な情報提供を図るため、議事録が公開されるまでの間に限り、会議の音声を公開することといたしております。
本日は、小委員会委員10名のうち、8名のご出席をいただいており、定足数を満たしております。
また、本日はヒアリングを行うため、兵庫医科大学の長谷川誠紀先生、近畿大学の中川和彦先生、国立がん研究センターの後藤悌先生にお越しいただいております。
なお、ヒアリングに当たっては、予定経過時間の2分前に呼び鈴を1回、予定時間経過時に呼び鈴を2回、事務局から鳴らしますので、発言をまとめる参考としていただければ幸いです。
審議に先立ちまして、委員の任免について報告いたします。
令和4年10月5日付で右田孝雄委員が退任されました。退任されました右田委員におかれましては、石綿健康被害救済小委員会の審議等に多大なるご貢献をいただきまして、ありがとうございました。
同日付で小菅千恵子委員が新任されております。小菅委員、一言ご挨拶をお願いいたします。
○小菅委員 ご紹介いただきました小菅です。
右田委員は、ストレスからか、体調悪化により交代せざるを得なくなりました。3回目からは私が努めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
本小委員会に関連して、6月には、与野党の合意の下、参議院での附帯決議で石綿健康被害救済基金の治療研究支援の活用を含めた中皮腫治療研究の推進などに関する決議が環境大臣の前でなされています。8月には、知事会から、治療研究の推進に関する環境大臣への要望が出されています。これらの機関は国民を代表するもので、大変重い意味を持ちますので、丁寧な議論の進行をお願いいたします。
2回目の8月では、3人の委員の方々しか発言いただけておりませんでした。私たち患者と遺族は、国の被害者であります。そのことをお含みいただき、ぜひ、全委員の発言をいただきたいと思っております。
本日、事務局から提出されています資料には、前回のヒアリングで提示された課題が全く整理されておりません。また、基金の推計に関して、前回の委員会で右田委員から指摘があった2013年時の環境省推計と、前回示された推計の考え方が全く違う問題について、事務局からの説明資料がありません。議論の根幹を揺るがす重要な資料ですので、きちんと説明してください。
私どもの見解は、本日の提出資料に含めていますが、現状は、2013年時の推計を前提に議論を進めていくべき状況にあると考えているところでございます。
○小笠原主査 ありがとうございました。
それでは次に、本日の資料の確認をいたします。
資料は事前にメールでお送りして……
○細川委員 ぜひ一言、始まる前に意見をしたいんですけれども、日本医師会の細川でございます。駄目でしょうか。
○浅野委員長 まず、どういうふうに進めるかというお話をして、その後個々の論点ごとのご議論をいただくことになっていますが。
○細川委員 そうなんです。本日のこの会議の小委員会の在り方にもついて、ちょっと一言、始まる前にぜひお話しさせていただきたいということで、話をしようかと思っているんですけれども、それも認められないのであれば、黙ります。
○浅野委員長 事務局からの説明をまずしていただいて、その後じゃあすぐお願いします。
○小笠原主査 まだ議事が開始しておりませんので、まず私のほうから資料の確認の行った上で、浅野委員長に議事進行をお願いさせていただきますので、その後にご意見等をいただければと思っております。何とぞよろしくお願いいたします。
○細川委員 分かりました。
○小笠原主査 それでは、次に、本日の資料の確認をいたします。
資料は事前にメールでお送りしております。議事次第、資料1から4まで、委員提出資料1及び2、ヒアリング資料1から3まで並びに参考資料1から4まででございます。
説明に当たっては、事務局が画面上に資料を共有して進行いたします。傍聴されている方におかれましては、環境省ホームページの環境保健部会石綿健康被害救済小委員会のページにアップロードしておりますので、そちらをご覧いただきますようお願いいたします。
それでは、ここからの議事進行は浅野委員長にお願いしたいと思います。浅野委員長、よろしくお願いいたします。
○浅野委員長 それでは、今日もどうぞよろしくお願いいたします。
細川委員、最初にご発言が必要でしたら、どうぞお願いいたします。
○細川委員 はい。皆様、聞こえていますでしょうか。お疲れさまでございます。
本小委員会について、一言。先ほど小菅委員のほうからお話があったように、いろんな人の意見を聞く、それから意見を申すというのも、重々、今回、承知しておりますので、ぜひ意見を言いたいんですが、最初、事務局のほうから、意見をしゃべるとき以外は顔を出すなと言われていることは、大変ほかのWEBでもWEBEXでも、いろんな人が環境を整えるという意味で、顔を出さずに、発言する人間のみが発言するですと、皆様のうなずきだとか、顔つきとかというものが一切見えないんですね。それで、その上で何かしゃべれと言われても、とてもしゃべれるものではございません。
できましたら、浅野委員長に申し上げたいんですけれども、今日の議事の途中でのいろいろ資料の説明、ヒアリング等あったのは、もちろん顔を出さずにでも結構ですけども、皆さんの発言するときには、皆さん、どうかお顔を拝見しながら、また反応を見ながら発言するのが当然じゃないかという気がします。もしこれがかなわないのであれば、日本医師会としてというか、私としては、あまりしゃべれないのかなという気がします。
重要な話のときには、できたら皆さん、委員の方々のお顔を拝借しながらしゃべりたいと思いますが、そういうことは、浅野委員長、駄目なんでしょうか。
○木内石綿健康被害対策室長 失礼いたします。石綿健康被害対策室でございます。
今、細川委員からご発言があったこと、ごもっともだと思いますけれども、環境省におきまして、システムの回線の負荷につきまして検証ができていないことから、負荷軽減のために音声のみということでお願いしているところでございます。大変申し訳ございませんが、今、委員から提案のあったことにつきましては、どういった形であれば円滑にできるかということを少し検証させていただいて、次回ご報告させていただきたいと思います。
○細川委員 いいですか。WEBEXですと、最低でも何十人でもしゃべれるんですよね。それから、よほど環境省の環境がいいのか悪いのか分かりませんけども、このような本当に閉鎖的なところで意見を述べろといっても、とても述べられるものじゃないですので、もし本日このままの状態であるのであれば、私の意見はできたら遠慮させていただきたいと思います。
○浅野委員長 事務局、どうでしょうか。今日は8人なんですね。ですからこの程度でしたら負荷が何とかクリアできるんじゃないかなと。40人の場合はとても無理なんですけれどもね。どうですか。意見を交換する段階では委員が顔を出すということについて。
よろしいでしょうか。
○細川委員 ちょっと待って。とても重要な話で、今後の小委員会をあと何回やるんだとかそういうことも含めて、皆様のやっぱりお顔を多少見られないと、今後につながらない。本当にできたら環境保健部会の石綿の小委員会について、皆様が発言するときには、人の顔を見てだけではなく、こちらの顔も見てほしいし、皆さんのご意見、ほんの7人、8人のご意見に対して環境が整わないというのはとても考えられないんですよ。
○浅野委員長 事務局、いかがでしょうか。
○木内石綿健康被害対策室長 今、委員長からご提案がありました、委員の皆様のみ議論のときに映像をオンにするということについて、検証はまだでございますけれども、今回試しに実施をしてみるということでお願いできればと思います。
○浅野委員長 はい。よろしいでしょうか。
実は容量オーバーのためにシステムがダウンするということが前にあったものですから、それで中環審はどの部会や委員会も音声や画像をオフにしたまま会議を行い、発言のときのみ顔を出すというやり方がすっかり定着してしまっているわけです。しかし、この小委員会はかなり委員数が少ないので、私も細川委員と同じ感想をもっておりますので、この小委員会に限ってですが、お互い顔を見ながら意見交換をするということにしてみてはどうかと考えます。ただし、その結果途中でシステムがダウンするということが起こらないとも限りませんので、もし、そういう事態が起こったときは、すみません、復旧のためにまたやり取りのやり直しというようなことが起こるかもしれません。そのようなことを皆様にご了承いただければ、委員の意見交換については、今、細川委員がおっしゃるように、委員は顔を出して進めるというやり方で議事を進めてみることといたします。
それでは、議事に入りたいと思いますが、まず委員会の進め方について、再度、事務局から説明を受けます。その上で、ヒアリングを行い、その後に個別論点の議論をしたいというふうに考えておりますが、本日は今後の審議に資するためにヒアリングを行うことにしておりますが、この点について、委員の皆様方、ご異議ございませんでしょうか。
よろしゅうございますか。
(なし)
○浅野委員長 特にご異議があるという発言がないようですので。
それでは、まず資料の2につきまして、事務局から説明いただきます。
○木内石綿健康被害対策室長 浅野先生からただ今ご説明いただきました、資料2は、小委員会の今後の進め方ということで、前回の委員会で一度ご確認をいただいたものでございますが、前回の委員会におきまして、右田委員から、現在の治療や制度の在り方など、別の専門家の意見も聞いて審議してはどうかとご意見がございました。
このことにつきまして調整が整いましたことから、事務局から有識者ヒアリング、今回と次回でございますけれども、今回は臨床及び研究の専門家の方、次回は法学の専門家の方、それぞれ3名及び2名、予定してはどうかということで、再度お諮りするものでございます。
専門家の方につきましては、右田委員からのご推薦に沿ったものとなってございます。よろしくお願いいたします。
○浅野委員長 事務局、ご説明はそれでよろしいですか。
○木内石綿健康被害対策室長 結構でございます。
○浅野委員長 それでは、前回事務局が提出した資料4についての見解の意見書もいただいておりますけれども、本日の論点の3のところでこれを扱わせていただきたいと思います。それでよろしゅうございますか。
よろしければ、それではまず、今後の審議の参考とするために、有識者の方々からヒアリングを行いたいと思います。事前にお願いをしておりますが、お一人のご発言、大変恐縮ですが、7分ということでお願いをしております。
それではまず、長谷川誠紀先生、どうぞ、ご発言をよろしくお願いいたします。
○長谷川氏 兵庫医科大学の呼吸器外科の長谷川と申します。こういう機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
それでは始めます。私が述べますことは、中皮腫の医療の過去と現在の問題点みたいなことをご説明いたします。
まず、約20年前の中皮腫の医療ですけれども、まれな疾患である。日本で1年間の1,000人くらいです。それから、臨床症状はほとんどなくて、登録制度もありませんでした。予後は極めて不良です。そして治療法が未確立で、集学的治療の実績はほぼゼロ。それからこの当時は、保険医療で使える抗がん剤がゼロでしたので、言葉は悪いんですけど、もぐりという形で抗がん剤を使っておりました。
2006年に科学振興調整費というものをいただいたときに、担当官からは、1例でもいいから「治った」と言える症例をつくってくださいということを言われました。それぐらい治らないという認識がありました。
これは簡単に、中皮腫の医療の生存率ですね、それを簡単にご説明いたします。
2000年の初め頃に初めてアリムタというお薬が出まして、この頃から中皮腫の標準治療というものがようやくできるようになりました。でもこの頃は大体10か月前後という生存率でした。
それから約20年間たちまして、いろんなお薬が出まして、もちろん成績はよくなりましたが、それでも20か月は超えておりません。これが内科治療の現状です。
一方、外科治療は、もちろんもともと内科の患者さんよりはいい状態の方を治療しますので、もともと少し成績はよろしいんですけど、それでもなかなか20か月は超えない状態でした。
その後、手術の方法が少し変わりまして、かなり最近よくなってきました。後でも述べますが、臨床試験でも41か月とか、そういうデータが出るようになりました。ですので、外科の成績については割合改善傾向があります。
これが日本の現状を1枚で表したスライドでございます。これは、2017年から2019年の2年間に新しく診断がついた全ての中皮腫の患者さんを登録しまして、その後のフォローアップをしたものです。
ご覧いただきますと、この赤いのが外科治療でございます。外科治療の現状としましては、生存中央値が32か月です。これは例えば試験開胸に終わった方なんかも含めておりますので、手術が完遂できた方はもう少しよろしいです。
それから、これが内科治療、抗がん剤の治療を受けた方で、この方々の生存中央値は14か月。決してよくありません。
それから、そういう治療が一切できないで緩和治療のみ受けられた方は3.8か月です。
中皮腫の数は、ご覧のようにかなり増えまして、1995年の500人ぐらいから、現在、1,500人ぐらい、3倍に増えております。ただ、ご覧のように年間の手術数は大体150から200で、これは全く増えておりません。
つまり、集学的治療、手術を含む治療の成績はかなり改善をしたのですけれども、手術ができる方はたったの1割です。残りの9割を占める切除不能症例では、成績はまだまだ非常に悪いです。ということで、中皮腫は治る病気とはまだ言えません。
現在、問題点は、幾つかございます。
一つは、抗がん剤の使い方の問題です。現在使用可能な中皮腫の抗がん剤は3通りしかありません。シスプラチンとペメトレキセドというのが2007年に使えるようになりました。
このお薬は適用制限がなかったのでよかったのですが、その次に出てきたニボルマブでは、セカンドライン以降しか使えない。それから手術の補助療法としては使えません。
それから、最近出ましたニボルマブ+イピリムマブというお薬も、これはファーストラインのみでありまして、手術の補助療法としては使えません。
このお薬が非常にいいということはもう既に分かっております。現実に我々が担当しました患者さんでも、この患者さんはご覧のように巨大な中皮腫の塊があって、心臓を強く左のほうに圧排しております。とても手術ができる状況ではないので、このIpi/Nivoというものを3コース行いました。そうすると、ご覧のようにもうほぼ消えてしまいました。これなら手術ができるということで、救済手術を行いました。その結果、ご覧のようにきれいに取れたんですけれども、肉眼的にはどこにも中皮腫がない。それどころか顕微鏡で見ても中皮腫がない状態、こういうのを病理学的な完全消失と申しますが、これくらい効くケースがございます。
別のケースですけれども、この方も心臓の横に大きな中皮腫の塊がありまして、下大静脈という大きな血管を取り巻いております。ということで、切除不能と考えて、この方もIpi/Nivoを行いました。この方も非常によく効いておりまして、近々救済手術が行われる予定です。
ご覧のように、非常にすばらしいお薬なんですけれども、このIpi/Nivoというのは、ファーストライン、つまり最初に使う治療でしか使えません。つまり、以前からほかのお薬を使っていらっしゃる患者さんは救われないわけです。それから、手術の併用は許されませんので、さっきのようなケースは例外的で、基本的には手術の前後には使えません。つまり再発するまでは使えないという、かなりちょっと残酷な状況です。
そこで、このニボ+イピというお薬を、制限なしに使わせていただけないかというのが強い要望でございます。それから、このニボ+イピというのとほかの抗がん剤を併せて使うという治療法も肺がんでは既にすばらしい結果が出ております。これも何とか認可をいただきたい。それから、このシスプラチン+アリムタという標準治療に、このニボルマブを追加する治療、これも既に国内で臨床試験が行われて、よい成績が出ているのですが、今のところ認可されておりません。これも何とか認可していただきたい。
それから最後に、登録制度のことでありますが、患者さんにとってこれは何の意味があるかと申しますと、手術に関するデータはNCDと申しまして、外科系の連合団体みたいなものが100%捕捉しております。外科のほうは集約が進んでいるので、比較的成績が公表されております。しかしながら内科的に関するまとまったデータはほとんどございません。
臨床試験というのは、時々あるんですけど、これはかなり特殊な患者さんなので、実臨床とは乖離しております。目の前の患者さんがいるときに、その患者さんが、自分がこれからどうなるのか、どんなお薬がいいのか、どんな治療法がいいのかということを選択できるような資料は全くございません。
環境省のほうではこのような登録制度をしていただいております。これは環境省の救済制度に応募された患者さんのみが登録されるわけでありますし、それから、予後データはありません。登録されたときのデータのみです。ご覧の年間に六百例前後でしょうか、登録されておりますので、捕捉率としましては大体3分の1強というところであります。
これは日本における中皮腫の各種登録制度をまとめたものでございますが、この上の三つですね、これが公的な制度であります。厚労省の人口動態調査と、環境省の先ほどの登録制度、それから外科に関してはNCDというものがございます。この三つはそれぞれ公でやっておりますので、継続性は非常にすばらしいものがあります。それから、厚労省の人口動態調査は、網羅性もほぼ全症例を押さえていると思います。
ただ、これらのところでは、患者さんの登録情報、臨床情報、それからその後どうなったか、どんな治療をしたのか、そして生命的にはどうなったのかという情報が一切ありません。
一方、下の二つは、肺癌登録合同委員会といいまして、胸部の腫瘍に関係する幾つかの学会が集まって、それぞれお金を出し合って登録制度をしております。これはご覧のように、非常にデータ的にはすばらしいんですけれども、毎年やっているものではありませんで、ある限られた年しかしておりません。それから、捕捉率も決して高くありません。あくまでもボランティアで、登録をしてくださる施設のみの登録になりますので、どうしても限界があります。
ということで、全てがそろっている登録制度は、現実にはございません。
この二つですね。官庁などでやっているこういう既存の登録制度と、こういう臨床家たちがそれぞれ手弁当でやっている登録制度、この二つを補完し合うわけですから、これを合体させればすばらしい登録制度ができると思います。
我々からのお願いは、まず登録制度の立ち上げというものは、これは国なり公的なところが立ち上げていただかないと、継続性の問題、資金の問題、そして登録してもらうためには一定の強制力が必要ですので、やはり公的なところでしていただきたい。ただ、一つ一つのデータを打ち込むとか、あとの細かいことは、これは学会でないと無理だと思います。あるいは個々の医師でないと無理だと思います。中皮腫を担当します、例えば日本石綿・中皮腫学会ですとか、日本肺癌学会、そして先ほどの肺癌登録合同委員会、こういうところに実務はお任せいただければいいのではないかと思います。
以上でございます。ありがとうございました。
○浅野委員長 長谷川先生、どうもありがとうございました。
それでは続きまして、中川和彦先生にお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
○中川氏 私、近畿大学腫瘍内科の中川と申します。
最近、ここに書いてありますような、中皮腫治療推進基金の代表理事を務めさせていただいている関係上、このヒアリングに参加させていただいております。
最近、この中皮腫を取り巻く環境で最も重要だと思われますのは、4番目に書いておりますように、臨床試験の数が少ないということで、これを増やす必要があるということです。つまり、新しい治療の選択肢を増やしていくためには、試験そのものを増やさない限り増えようがないという現実がありまして、中皮腫治療推進基金が設立されたのも、そのための助成を行っていくといったことにあります。
したがいまして、ここに書いてありますように、治療研究や臨床試験等への財政支援を行うためにこの基金がつくられているということであります。まだそんなにたくさんのお金があるわけではないですので、できる範囲でこれを努めていきたいというふうに思っております。
長谷川先生も理事になっておられますけれども、私が代表理事を務めさせていただいています。なぜかというと、治験と、医師主導治験とをやった経験があって、そういったところに強いだろうということで、何しろ実技的に私が代表理事を務めさせていただいているということであります。
これは先ほどの長谷川先生がスライドで示されたものと一緒であります。こういった必要性が、中皮腫の患者さんには早急に改善されるべきニーズがあるということであります。
これをじゃあどうするかということでありますけれども、今までの定例からしますと、医師主導治験をやって、その申請に用いられるレベルの品質が担保されたデータをPmdaに申請するというふうなことになります。
私たちが最近やりました医師主導治験の例を示して、どういうふうなことをやるのか、そして幾らかかるのかといったところについて、委員の先生方に情報を提供したいと思います。
原発不明がんというのは、幾ら探しても原発巣が見つからないというようながんのことでありまして、全固定がんの1~5%程度、ちょっとはっきりとしないんですね。なかなかちゃんと原発不明がんですというふうに報告されていないのでよくは分からないんですけれども、一応5%程度はあるんじゃないかというふうに言われています。予後は不良でありまして、大体9か月程度でお亡くなりになる。
ここで問題なのは、原発不明がんも中皮腫と同じように、同じようにというかもっとひどくて、承認されている治療薬が全くないということであります。現時点ではプラチナ併用療法がみなし標準治療ということで進められておりますけれども、標準治療はないという状況にあります。免疫チェックポイント阻害剤等は、だから、プラチナ併用療法なんかの殺細胞性抗がん剤は、一応適応はされていないんだけれども、使うことは使って、削られることはないんですけれども、例えば免疫チェックポイント阻害剤なんかは、高価な薬剤を使った場合には、ちょっと怖くて使えないというような状況にはあります。
私たちの大学院生がこの原発不明がん、CUPというのが原発不明がんの略ですけれども、その検体を調べて、遺伝子発現を解析しますと、何と原発不明がんの患者さんの中にも免疫環境が、肺がんとか、悪性黒色腫と同程度の頻度でそういう効果が期待されるような集団があるということが分かりました。
そこで、2016年11月に、近畿大学内でこういう治験をやったらどうかというようなことを提案しまして、2016年12月に、実際にこの治験薬を提供してくれるかもしれないという製薬企業に提案したということであります。つまり、ニボルマブを原発不明がんの患者さんに使用した場合に、ある一定の有効性が認められることを証明するための臨床試験ということであります。
これはとても早く企業が対応してくれまして、2017年2月、つまり数か月間で、この治験請求をするということが決まりました。そして4月にはプロトコルが作成されて、7月に3回予定の施設を集めて会議することができた。それまでの間に、CROといって、進捗管理、モニタリング、プロジェクトをマネジメントしてくれるような企業も選定されまして、全体の見積りも後で示しますけれども、作って、会社側との合意が形成されたということであります。
そこで、これを治験をやっていくかどうかというのを、Pmdaと相談いたします。事前面談で簡単な打合せをした後、対面助言で、以下のような点でPmdaに相談を実際に行うということであります。つまり、治療の原発不明がんを対象に、一種の治験を行うことの妥当性を尋ねたと。その際の症例数の設定はこれでよいでしょうかといったことを尋ねました。
なぜこんなことが必要かと言いますと、原発不明がんに対して承認されている薬剤がありませんので、原発不明がんそのものが本当に保険対象になるような、そういう疾患群であるのかということそのものが不明瞭であるというふうなことがありますので、Pmdaがこれをそういう対象とするかどうかといったところがもう大前提として非常に重要なわけであります。
そこで、厚生労働省、Pmdaもそのことをどういうふうに考えるか、こちらに質問が投げかけられましたので、JASMOから出されておりますガイドラインを根拠として、他科の診察を必須条件として、こうしたらよいだろうといったことでパスしました。
また、原発不明がんの患者数というのは今幾らいるのかというようなことで、海外での頻度というものを、日本での新たにがんと診断された、これが86番というのが患者数でありますので、これに海外での頻度を掛け合わせて、この程度だろうということを示したということであります。
その結果として、対照群として、治験を実施することは可能である。その際に、私たちは既治療症例を、標準治療、みなし標準もないような二次治療以降の患者さんを対象とすることを提案したんですけれども、Pmda側から、標準治療はないんだから、一次治療の患者も組み込むことが進められまして、そのように実際に行いました。
過程ですけれども、リスポンス例と、奏効率半分以下に小さくなる確率を、主要評価項目として設定して、そして位置が最低でも5%以上、そして期待奏効率として20%というふうにしますと、最終的にデータが出てくるわけですけれども、この閾値、95%の信頼区間で、最低ラインが5%を超えるようなものであれば、この過程にメットするというふうな過程で実施したいというふうにしました。
これもPmdaから了承が得られたということで、11月、これは1年かかるわけですけれども、対面助言をパスしまして、そして18年2月に最初の患者さんが登録が開始されたということになります。結構大変なんですね。
そして、この治験の体制ですけれども、私たちが治験の調整委員を近畿大学で務めまして、それを、近畿大学の臨床研究センターが、試験調整事務局となってカバーしてくれました。しかしながら、本格的な治験を運営する実力はありませんので、シミックシフトゼロというCROに業務委託をいたしまして、モニタリング業務、データマネジメント、統計解析といったものをやっていただくような体制にいたしました。
そして、こちらに右のように示しておりますように、実施医療機関としては、ここに示すような十の機関が選ばれまして、この試験に参加していただいたということでございます。
このときにどのぐらいのお金がかかるかということですけれども、これはこの原発不明がんの治験のそのものを出しているものではございません。ちょっとやっぱりそのものを出すと問題があるかなということで、これは現在、西日本がん研究機構で、大体このぐらいの値段で企業さんに医師の治験を受けていますよという案であります。実際の原発不明がんのかかった費用もこれとほとんど同じくらいでありました。
つまり、研究費以外のところでの総和というのが、この黄色で示している中のほうのところでありまして、治験事務局費というのは、この場合にはWJOGに入ります。それから、下のほうのオレンジのところのWJOGの運営費でありますとか保険、全体会議、そういったものがWJOGで費用として発生してくる。真ん中のモニタリングからデータマネジメント、統計解析、そのほかの業務といったものに、そのほかのお金がこのようにかかってくるということでありまして、合計して1億8,677万というのが今のスタンダード。これは15例ですので、これより症例数が増えたり、もしくはイメージングが、中央判定の運営費用等が含まれたりしますと、またさらに加算されるというふうなところでございます。
実際に2018年2月から登録が始まりまして、2019年9月までの間に56例が集積されたということ、順調に終わったということでございます。
その結果どうだったかというと、奏効率が22.2%、そしてPFSというのは再発までの期間の中央値を示しますけれども、4か月ということで、まずまず良好であった。さらに、OSというのは製造期間ですけれども、約16か月というのは非常によかったというようなことで、Pmdaも受け入れて、審査委員会をパスしまして、これは2020年6月に、ASCOというアメリカの臨床腫瘍学会で発表され、2021年、昨年12月24日に適応追加になったというふうなことでございます。
成功事例として掲げましたけれども、今回の積立基金から研究が助成されるということが実現すると、どのようなメリットが、私たち、これを、このような一種の治験を行うときに起こってくるかということでありますけれども、これはメッセージ性が非常に強くて、製薬企業に対して私たちが交渉するときに非常に強い力になるということであります。日本社会、行政からの治験開発に、治療開発に対する強力なメッセージが発信されているというふうに受け取ります。
したがいまして、製薬企業との強力な交渉の援護になりますし、助成額がどのぐらいかというようなことはあまり問題ではなくて、それよりも、こういう助成をしているという意思の表明というものが非常に重要であるというふうに考えられます。
製薬企業の意思判断の判断する場所が変わります。こういうものがございますと。これは通常なかった場合には、2番目に書いてあるように、グローバルとの競争で、営利的な判断でどちらが有利かというふうな、そういう判断がなされますが、こういう発信がありますと、これは営業判断といったものよりも、社会倫理的な判断、グローバルな判断から日本国内の問題といったものに大分シフトしてくるというふうなことで、判断がしやすいような環境が整えられるということでございます。
厚労省Pmdaとの問題解決に向けた意見交換が、こういう試験がどんどん上がってくるようなことになりますと、そういう事前面談等を通してどういう解決方法が一番合理的なのかといったことについて、厚労省との具体的な話合いがなされて、いろんな方法があるだろうというふうなことで、その方法についてのサジェスチョンも受ける機会が促進されるということだと思います。
以上です。
○浅野委員長 中川先生、どうもありがとうございました。
それでは、最後に、後藤悌先生、どうぞよろしくお願いいたします。
○後藤氏 国立がん研究センター中央病院の後藤です。本日はこのような会議で発言する機会をいただき大変光栄に思っております。
私、国立がん研究センター中央病院で、希少がんセンターというところの一員を担っておりますので、そのような観点から、この中皮腫の治療開発について、少し挙げさせていただければというふうに思っております。
ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、この希少がんというのは、いわゆる疾患数の少ない患者さんでありまして、一番多いメジャーながんの中では、胃がん、肺がん、もう皆さんよくご存じのがんだと思いますけれども、世の中には、希少といって、日本では10万人当たり6例未満と定義されているんですけれども、いわゆるまれとされている疾患がたくさんあります。このまれとされている希少がんを全部足すと、全部で190種類ですけれども、全体の15~20%に該当するということで、意外と多くの患者さんが、この希少がん、本当に情報もなければ治療薬もないような疾患に診断されているわけであります。
こちらの図を見ていただくと、胸膜中皮腫のほうもこちらの希少がんに、いわゆる該当するものになります。
こちらが希少がんの種類、ずっと書いていますけれども、悪性中皮腫に関しましては、10万人中0.75人ということで、ご覧のように、希少がんの中でもかなり少ないほうということが確認できるかというふうに思います。
希少がん全体として、やはり予後がほかのがんと比べるとどうしても悪くなってしまいます。いわゆるメジャーがんと比べると、生存曲線、これは時間、例えば診断されてから500日後、1,000日後、1,500日後の生存率を縦にプロットして線でつないだものですけれども、ご覧のとおり、全体的にこのレアキャンサー、希少がんは低いことになります。こちらも同じデータで、ここも5大がんと、希少がんというのを比べると低くなっている。
これにはもちろんいろいろな要因はあると思いますけれども、一つ大きな要因は、先ほどのお二方の先生からの発表もありますように、やはり希少がんに対する研究開発が不十分だということになるかというふうに思います。
少しだけ研究開発の基本的なことをお伝えしながら、どういうところが不足しているかということをお伝えしたいと思います。
薬、特に抗がん剤は、開発のとき、そのフェーズ、その事相に合わせて、第Ⅰ相、第Ⅱ相、第Ⅲ相というふうに我々は分けて研究をしております。いわゆる第Ⅰ相は、新しい薬が本当に安全か、人間の体に思ったとおりの動きをしているかということを調べるような研究であります。第Ⅱ相が、少数の患者さんを対象に有効性と安全性を調べて、第Ⅲ相が、今までの薬と比べて、本当により有効かということです。
基本路線としては、この三つのテストをクリアしたところで承認するということになりますけども、希少がんなどでは、数百名規模の研究をすることはほぼ不可能ですので、実際にはこの第Ⅱ相などというところで承認されることも多いのが現実です。
もう一つ大切なことは、実はこの第Ⅰ相から第Ⅱ相、第Ⅱ相から第Ⅲ相と行われるときに、実現可能性を考えることになります。もちろんこれも中川先生からお話がありましたように、企業の判断になりますと、最終的には承認されたときの実際のマーケット市場というものを考えるわけですけども、残念ながら、希少がんがこの第Ⅰ相、第Ⅱ相の途中くらいで有効な可能性があるというふうに判断されても、さらなる投資がなかなか得られなくて、これに対して、実際にもう一段階ステップアップして承認まで結びつけるための何かしらのヘルプがないと、なかなかマーケットに任せると薬が世の中に出てこないというのが希少がんの特徴であります。この希少がんに関しては、世界中で同じ問題がもちろん起きておりますので、FDA、右側はヨーロッパです。左はアメリカですけれども、これらのいわゆる規制当局というところからガイダンスが出ておりまして、開発についての注意点ないしはメジャーがんとの違いというものも取り上げられていますし、日本でも規制当局、いわゆる厚生労働省、Pmdaが、かなり多くの取組をしていただいているのは事実であります。
ここにちょっと簡単に個条書きしましたけれども、いろいろな取組が行われているものの、やはり中川先生がおっしゃったような、より多くの費用ないしは何かしらの錦の御旗が必要というのが現実かなというふうに思います。
ここで幾つか、我々が実際に希少がんないしは中皮腫という立場から、このような研究がされている、もうワンステップあればこれがより現実的なものになるんじゃないかという治療ないしは研究などをご紹介させていただきたいと思います。
中皮腫、皆さんご存じのとおり、アスベストが深く関わっている病気ですけれども、実はそれだけではなく、ないしはそれとプラスして、一部の患者さんでは、もともと生まれ持った遺伝子なども関係しているというふうに言われています。このような場合には、家族によっては、がんないしは同じような中皮腫といった疾患が発症しやすいということが言われています。
これらに関しては、いわゆる網羅的な遺伝子解析が必要になるんですが、残念ながら、我々、現時点では、中皮腫に対して、全員にこの網羅的な解析、ないしは年間何百人と網羅的な解析をするのに十分な、残念ながら、環境が与えられていないということがまずありますので、日本からこういうデータはまだ今のところありません。
もう一つ、こちらはある企業の薬というよりも治療薬、治療方法なんですけれども、もともとはご覧のように、膠芽腫という脳の病気に対して使えるようになって、さらに日本では、世界でも有数の、膠芽腫に対しての治療法が使えるんですけれども、アメリカでは同じFDAにこの治療法が中皮腫に承認されたんですけれども、日本で同じ規模とは言わずとも、小さい規模で研究ができれば、日本でも会社の体制としては十分に開発できるんですけれども、承認申請もできるんですけれども、残念ながら日本での研究は、海外で既に行われた研究をレプリケイト、もう一回同じことをやることもできないと、それは残念ながら世界的にはあまり科学的価値がないということもあり、予算の関係上、現在は開発が断念されているということになります。
そのほかに、こちら、中皮腫に対して、ここに書いてあるADCという複合抗体というものがあります。詳細は省きますけれども、これは肺がん、乳がん、胃がんなどで大成功して、日本の企業が世界のブロックバスターをつくったような薬剤のタイプなんですけれども、これも同じように、実は中皮腫がターゲットになる薬が世の中にはご覧のように出てきているわけであります。こちらの研究開発、我々、こういうところから論文として見つけたりすることはできますけれども、残念ながら、いずれも日本のところにはまだやってきていなくて、こんなものが世の中にあるんですけれども、最終的には研究環境、患者さんが参加していただく、ないしは規制当局は環境が非常に大切なので、日本でのこれらの研究開発はまだ不十分と言えます。
もう一つ、こちらは、アカデミア主催で行われた、いわゆる血液がん、皆さんご存じかもしれませんけれども、非常に高額で有名になったCARTという治療法がありますけれども、これを中皮腫のmesothelinというもので同じような治療をするという研究が、ワシントン大学などで精力的に行われました。この研究は非常に複雑な研究で、アカデミアが多大なるいわゆる貢献をしないとできないんですけれども、これに関しても残念ながら日本は後塵を拝しているということであります。
実際にはヨーロッパで、例えば先ほどの長谷川先生の登録システムに似た、さらにそれにバイオバンク、生体サンプルなどを入手したような、全体で患者さんを集めて、実際のトランスレーショナルな研究をしていこうということに対しての予算が、ヨーロッパ全体で、イタリア、スペイン、オランダといった多くの国々で共同研究で行われ、研究費を獲得していますし、世界的にもご覧のように世界的な学会の中で中皮腫というミーティングも行われています。
このミーティングに、私も幸い参加させていただきましたけれども、本当に日本初の薬は、先ほどのニボルマブぐらいしかなくて、多くのセッションの中で日本人が発表することがほとんどできなかったというような状況であります。
まとめになりますが、悪性胸膜中皮腫、悪性中皮腫に関する希少がんの開発には、何かしらのサポートがない限り、本当に患者さんが、自分がまれな病気になっただけで、非常に医療の発展の恩恵を被れないということになります。市場に任せているだけでは厳しいというのがあります。規制当局も我々を本当にご支援いただいていることはよく理解しているんですけれども、加速化にはさらなる取組があれば、まさに中川先生がおっしゃったような公的な支援があれば、開発の大きく後押しになるというふうに思っております。
もう一つは、もう既に諸外国と比べて、研究開発という観点で、日本は大幅に後れを取っています。これは研究費という観点も非常に大きいですので、ぜひ我々も、世界の中皮腫開発のステークホルダーの一つになるためには、より社会全体としての取組が必要になるというふうに考えております。
ご清聴ありがとうございました。
○浅野委員長 後藤先生、どうもありがとうございました。
お三方の先生方から、本当にチームの検討に参考になる重要な情報をご提供いただきまして、ありがとうございました。
それでは、少しだけ時間を取らせていただきまして、ただいまの先生方からのご発言につきまして、ご質問や確認をしたいことがありましたら、ぜひ委員の皆様方から挙手をお願いしたいと思います。
なお、後藤先生には、2時までというふうにお約束をしておりますので、できましたら後藤先生に対するご質問のある方はお早めにお願いいたしたいと思います。
岸本委員、どうぞ。どうぞお顔をお出しください。
○岸本委員 後藤先生にお聞きしたいと思います。
私も中皮腫に関わりまして30年ぐらい、多分一番日本で古いと思うんですけども、かつていろいろ治験に関与させていただきましたけれども、最近で言えばCD26についても、治験で三十数例集めましたが、なかなかいい結果が出なかったというのが現状だろうと思います。
先生、新たな神経膠腫とかCARTとかを、今日、お示しいただきましたけれども、こういう治療で中皮腫に対してかなり可能性があるんでしょうか。確かに私がこの30年間見ていて、ニボルマブというお薬は極めてこの病気によく効いたと思います。確かにmalignant melanomaにも効きましたけれども、こういう画期的なお薬が本当にあればいいなとは思うんですけれども、この辺り、先生のご見解があれば、ぜひ教えていただきたいなと思います。
以上です。
○後藤氏 中央病院の後藤、回答させていただきます。ご意見並びにご質問いただきありがとうございます。
先生方のような先人がいらっしゃったので、日本でもこういう研究が進められていることを、まず最初に大変感謝しております。
現状をお伝えしますと、まさに先生がおっしゃったように、ニボルマブほどの薬がまた出てくるかということが大切になるかと思います。今日挙げました実は三つの治療法は、アメリカで承認されている、ないしは世界中で注目されているということで、先ほどの世界中皮腫学会では、本当に30以上の治療、研究が、発表も立て続けに一人10分くらいしか与えられずに、もう次々と発表されていく状況でありました。その中でも、より有望、より有効なことが期待されているものを一応取り上げさせていただきましたが、まさに先生がおっしゃりましたように、これもやってみないと分からないのも事実なんですけれども、これをやっていく、かつ、世界とほぼ同時にやっていくことが、いち早く患者さんに薬を届ける一番の手だてだと思っています。
まだどこまでのものができるか、もちろん分かっていませんし、非常に、先ほどのCART、初期のデータは非常に有効そうにも見えるんですけれども、安全性など、まだまだ検討する課題があるのも事実だと思っておりますので、これを世界とともにキャッチアップしてできれば、我々としては非常にうれしいことだとは思っています。
○岸本委員 ありがとうございました。
○浅野委員長 では小菅委員、どうぞ、お願いいたします。
○小菅委員 本日、私どものほうの資料でも、長年中皮腫の基礎研究に当たってこられた研究者の方の実情を伺った内容をお示ししていますが、先生方のような一定規模の研究機関に属されているような先生方であれば、ある程度の研究は、人員の確保も含めて、中皮腫の研究費が確保されているのではないかと思います。必ずしも状況は違うということでしょうか。
また、仮に現在に至るまでの中で、公的な支援がもっとあれば、中皮腫の治療環境がもっと違ったものになっていたと言えるのでしょうか。今後、支援が強化された場合に、どの程度のリターンが想定できるのかという意味で伺いたいと思います。
お話を聞いていますと、数億円の支援でも状況はかなり変わるのではないかと感じました。本日の会議資料4は、AMEDと厚労省関係の支援状況ですが、私としては、これほど少ないものかと驚いているところでございます。
○浅野委員長 今ご発表くださいましたお三方のうち、どなたかお答えいただけますでしょうか。
○長谷川氏 はい。
○浅野委員長 では長谷川先生、どうぞよろしくお願いいたします。
○長谷川氏 一例としまして、先ほどちょっとお示ししました、中皮腫の登録ですね。肺癌登録合同委員会というところで、毎年ではないんですけれども、年次を限ってやっております。この肺癌登録合同委員会というのは、肺の悪性腫瘍に関係する幾つかの団体が、年間200万円ずつ出して、1,000万円以下の、800万円程度の年の予算で、肺がんも中皮腫も全部まとめてそれだけのお金でやっております。ですので、億とかそういう単位では全くありません。
それでできるのかというと、結局、手弁当でやっております。具体的には、事務局というのは、大学が何年間に一遍回り持ちで、大学のその医局の部屋を使いまして、大学の秘書さんを秘書さんとして使いまして、大学の助教授クラスの先生が事務局長として一切の事務をしております。回り持ちですので、当然ながら、固定されたシステムとかそういうことはありませんし、それから場所としても固定された事務局はありません。それから、参加された先生たちが、全く手弁当で、一人の患者当たり1時間も2時間もかけてデータを打ち込んでこそああいうデータが出るわけですが、お金としては、年間に僅か1,000万円以下のお金でやっております。だから事実上はボランティアです。
我々、ボランティアをやることは一切問題はないんですけれども、ただ、そういう事務局とか、事務員とかが、できれば固定できる、どこかに事務所を置いてできれば、よりちゃんとしたデータが出ますし、それから、毎年登録をやっていくだけの体力、資金力が出ます。それほど大きなお金でなくても、やる気さえあればできるわけですね。あと少しの支援をいただければ、そういうものが大きく羽ばたくと思いますし、そういうデータが世界に対して貢献できると思います。
以上です。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。
中川先生からのご回答もございますか。どうぞ。
○中川氏 今、長谷川先生は公的な調査というか、データベースを構築していくためのことを言われましたけれども、新しい薬剤開発が、数億でも出していたら、それは改善していたんだろうかというような、そういう質問の趣旨もあったかと思います。
これは、やらなければ絶対に進まないということです。ただ、やったら必ず進むかというと、そんなことは分かりません。やってみないと分からないということです。
分からないので、可能性のあるような、そういう臨床開発は、できる限りたくさんやったほうがいいんだけれども、それは資金力によって、それができるかどうかは左右される。
今考えている、企業が新しい薬剤を開発する開発費用というのはもうべらぼうなものでして、一つの薬剤を開発するのに、やはり1,000億ぐらいかかる場合もあるんですよ。中皮腫だけというわけじゃないですけれども、一つのものをどこかの国に承認させるために、じゃあどれぐらいのお金がかかるんだろうか。臨床研究だけでどれぐらいかかるだろうかというと、500億とか、それ以上かかるような場合もあるわけなんですね。
ですから、私たち、この企業が開発する新しい薬剤に対して、これは何らかの形で公的な機関から国内で開発するようにということが推進されるようなメッセージが出されていると、すごく違うんじゃないかなというふうには思います。
しかしながら、そういう企業が開発するようなお薬、治療法とは別に、先ほど原発不明がんで示しましたような、もう既に開発されているお薬を中皮腫の患者さんに適応拡大するようなものは、それほどお金はかかりませんので、そういう開発には、やはりある程度効果が出てくるのではないか。
長谷川先生のお話の中でも、幾つかまだやっぱり、これが通ると、本当に患者さんは、それで助かるかどうかは分からないんだけれども、悔いなく生きていかれることができるんじゃないかというようなところがありますので、やっぱりそのことのために費用をある程度助成するといったことには、大きな意味があるんじゃないかというふうに思いました。
○浅野委員長 中川先生、どうもありがとうございました。
ほかにご質問ご希望の委員はいらっしゃいませんでしょうか。よろしいでしょうか。
先生方、お忙しい中、今日はどうも本当にありがとうございました。貴重なお話をいただきましたので、今後、私どもの検討の参考にさせていただきたいと思います。
○細川委員 ちょっといいですか。
○浅野委員長 それでは、細川委員、どうぞお願いいたします。
○細川委員 すみません、皆さん、3人の本日のヒアリングのことは大変勉強になりましたということのお礼を言いたくて、まず手を挙げさせていただきました。
ただ、こういう小委員会で、ほんの7分でこのような偉い先生方のお話というのは、多分尽きないと思うんですけれども、これは環境省というか、この小委員会自身の在り方、そもそもの在り方も言いたいんですけれども、もっと一人一人の先生方のお話のお時間を取るのが普通じゃないのかということを一言だけ言いたくて、取りあえず2時ちょうどのところで一言言わせていただきました。どうぞよろしくお願いします。
○浅野委員長 ご意見いただいてありがとうございました。進行につきましては、本当に残念な面もございますが重ねて先生方、どうもありがとうございました。
それでは資料3の説明を事務局からしていただきます。
○木内石綿健康被害対策室長 石綿健康被害対策室でございます。
前回ご確認をいただきました、本委員会の論点のうち、この回において挙げられています三つの論点につきまして、ご議論いただきたい点、28年の救済小委員会における取りまとめ及びその後の状況を含めて、石綿室のほうで整理をさせていただきましたもの、資料3です。一括してご説明します。
論点が三つありますけれども、一つ目、救済給付です。救済の考え方について、それから救済制度の給付内容・水準についてです。
まず1-2に、制度の趣旨及び現状ということで書いています。
既にご案内ですけれども、概要を申し上げます。
石綿による健康被害につきましては、多くの方が1、2年で亡くなられるような重篤なものであるというような状況に鑑みまして、民事の損害賠償とは別の行政的な救済措置を講ずる、そのため、原因者と被害者の個別的因果関係を問わず、社会全体で被害者の経済的負担の軽減を図る、そのような制度化を行っています。このため、こういった制度の性格を踏まえ、給付内容につきましては、見舞金的なものとされまして、ご指摘のある障害年金、遺族年金等は採用されていないところです。
また、医療費の自己負担分が給付されていますけれども、これとは別に療養手当として、療養されている方には月10万3,870円が支給されています。
この療養手当については、入通院に伴う諸経費という要素に加えて、介護手当的な要素が含まれているとされていまして、ただし、定額の給付を一律に行うと、制度の性格からそのような給付となっています。
なお、介護保険制度についてもご指摘がありましたが、医療系のサービスについては、これは医療費の一部として、自己負担なく利用できる、このような給付が行われています。
その下、1-3です。
平成28年の取りまとめの抜粋です。
このとき、現行制度については、事業主の労働基準法上の災害補償責任を担保する「労災制度」、医薬品等の製造販売業者の社会的責任に基づく医薬品副作用被害救済制度のような保険制度、あるいは民事責任を踏まえた公害健康被害補償制度、国家補償的精神に基づく予防接種健康被害救済制度と同様の性格としていくことは困難であるという結論でした。
一方で、基本的考え方に基づきまして、個別的因果関係を問わず、迅速に救済を行っていくべきであるということでした。
また、介護等の実態の詳細については必ずしも把握できていないというご指摘がありまして、被認定者の介護等について、実態調査を行うべきである、このようなことも取りまとめに書かれています。
1-4、その取りまとめ以後の状況を記載しています。
平成29年に、被認定者の介護等の実態調査を実施しています。詳細は後ろのページにありますが、衛生材料、入通院及び介護保険の自己負担にかかる主な費用、お一人ずつの金額、アンケートの結果を平均いたしますと、月ごとに約1万円から2万円程度でした。
また、この調査結果の追加解析の中では、日常生活活動制限が4級や5級の比較的重い方にも、「利用できると知らなかったから」という理由で介護認定を受けていない方が一定数いらっしゃいました。そのために、介護保険制度の活用について周知を行うことが重要と思われるという総括も行われています。
その次のポツは、令和3年5月の建設アスベスト訴訟に係る最高裁判決ですが、このとき、建材メーカーと国の賠償責任が認められています。
下のポツですが、国の責任は、屋内建設作業者について、労働安全衛生法上の規制権限の不行使について、昭和50年から平成16年の期間、一人親方も含めて国の責任が認められた一方、屋外作業従事者に係る責任は否定されています。当該判決を受けて、給付金の支給に関する法律が成立、施行されていることは、この委員会でもご報告したとおりです。
その下は、本委員会の第1回、第2回の会議における委員からのご意見をまとめています。第1回の委員会において、近年の司法判断、消費税や物価の上昇等の社会情勢の変化を捉えて議論すべきとの意見がありました。
1-5は、議論いただきたい点、事務局のほうでまとめています。「救済」の考え方について、救済制度の給付内容・水準について、それぞれ取りまとめ以後の状況、調査の結果等を踏まえ、変更すべき状況の変化があると言えるかということです。
2枚おめくりいただきまして、5ページ、参考3の、先ほど出てきました介護実態調査の結果です。
詳細のご説明は省略しますが、一つ、自己負担している衛生材料費と通院に係る交通費につきまして、月の平均額と中央値を分けて記載しています。例えば、衛生材料を利用している方、療養中の方では26%いらしたということですが、この方の月々の利用額が、中央値では2,000円ですが、平均値では7,957円となっていました。
この中央値と平均値が乖離していることについて、捕捉します。
一部、高額となっている外れ値の方がいらして、最高額の方は月18万円、内訳は、介助のためのアパート代ということでした。この方も含めまして、月10万円以上の方が4人いらして、サプリメント、マッサージなどの費用が計上されていました。
その下、通院に係る交通費につきましても、月40万円と回答された方がいらして、タクシーによる通院を月25回されたということでした。月10万円以上の方は5人いらして、飛行機で通院をされた方もいらしたという状況です。
少し飛ばしまして、7ページ以下、論点をまとめてご説明します。
2番が指定疾病についての論点です。
一つは、良性石綿胸水及び石綿肺合併症について、指定疾病との関係をどう考えるかということ。また、肺がんの認定における作業従事歴の取扱いについてです。
2-2、これまでの取扱いですけれども、現行制度は、重篤な疾病について、民事責任を離れた迅速な救済を図るべき特殊性があると、そのような疾病を対象としていると、そういった考え方に基づきまして、当初、「中皮腫」及び「肺がん」を指定疾病とし、平成22年以後、「著しい呼吸機能を伴う」、「石綿肺」及び「びまん性胸膜肥厚」を指定疾病に追加してきたところです。
また、肺がんについては、原発性肺がんであって、肺がんの発症リスクを2倍に高める量の石綿ばく露があったとみなされる場合に認定しています。これは、そうした場合には、対象となった方の半分以上が石綿によるものと言えることから、2倍で線を引いているということです。
そして、そのような石綿ばく露があったとみなされる場合に該当する医学的所見がコンセンサスとして認められていまして、本制度では、ばく露歴を厳密に求めることなく、医学的所見に基づき肺がんの判定が行われているということです。
28年取りまとめにおける整理です。
良性石綿胸水及び石綿肺合併症については、症状が様々であることから、これを一律に対象とすることは困難ですが、被包化された胸水貯留が認められるような石綿胸水の症例については、基準も含めて検討を行い、救済対象とすることが望ましいという取りまとめでした。
また、肺がんの作業従事歴については、制度の性格上、作業従事歴を確認するための客観的資料が乏しく、作業従事歴を厳密かつ迅速に精査するには限界がある一方で、石綿によるものであることを判定するための医学的所見が国際的なコンセンサスに基づき得られていることなどから、作業従事歴を採用すべきとは結論されませんでしたが、石綿による肺がんについて、引き続き治験の収集に努めるべき。また、医療機関における診断の際に、従事歴等の情報を活用するよう周知を図るべき、という取りまとめでした。
その後の状況ですけれども、良性石綿胸水のうち、被包化した胸水貯留が認められる症例については、「著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚」として取り扱って救済の対象とするという留意事項通知の改正を実施済みです。救済の対象とされています。
また、肺がんの申請者における石綿ばく露作業従事歴に係る調査を実施しています。この調査の結果、石綿ばく露作業従事歴に係る客観的資料、多くの方は提出できないということでしたけれども、提出できると回答された方もいらして、その方からは、年金記録が主に提出されたところです。
ただ、年金記録については、特定の事業所に特定の期間所属していたということは確認ができる一方、当該事業所において石綿ばく露作業に従事していたかどうかの確認が困難であったということです。
議論いただきたい点については、その後の運用状況、調査結果等を踏まえ、変更すべきかどうかということです。
10ページに行きます。
基金の使途を治療研究まで拡大することの是非です。
28年の取りまとめのほうには記載はありません。
第1回の本小委員会において、賛成の立場、慎重な立場から、各委員からご意見がありました。また、救済給付の見通しに関する客観的なデータを事務局が示すべきであるとご意見がございました。
これを踏まえまして、第2回の本小委員会において、残高の見通しについて資料を提出し、専門家の意見を聴取したところです。予測は非常に難しいものであるけれども、事務局の推計について、実際もあまりこれと変わらないものになるのではないかと、専門家の方からご意見があったところです。
その上で、委員の皆様からご意見をいただきました。
臨床関係の委員から、臨床の立場から見て、中皮腫の患者数は引き続き増加していくと考えられる。また、診断技術、治療技術の向上により、予後もよくなってきている。こうしたことからは、基金の残高に余裕があるとは言えないのではないか。また、患者の救済のために設立された基金は、救済のために充てるべきであるというご意見がありました。
また、患者の立場を代表する委員からは、生存期間が延びたといっても1~3年延びたか否かの程度である。基金の残高には余裕があると考えられるので、経済的な救済だけではなく、命の救済についても考えるべきというご意見がありました。
その下、法学関係の委員からのご意見です。
法律論として、もし基金の残高が余剰ということになると、現行法の枠組みにおいては、まずは産業界からの一般拠出金率を下げることになる、そのような枠組みであるということ。また、法改正を行って拠出金の使途を、かつてお願いしたものから事後になって変更していくことになると、今後、他の救済制度を構築する際に制度設計が困難になるのではないかというご意見です。
拠出者である経済界を代表する委員からは、個別の石綿健康被害患者を救済することを目的に基金の拠出・創設がされてきているので、これを後になって別の目的に支出するということは、制度運用の在り方として疑問であるということ。また、事業者の代表としては、別の目的に使用することには同意できないというご発言がありました。
これらの委員からのご発言を踏まえまして、委員長からは、必ずしも基金が余るとは断言できない状況ではないかと。また、治療研究の拡大については異論がないところであるけれども、基金の使途と結びつけないで何らかの治療研究の拡大の方策について考える必要があるというご発言がありました。
議論いただきたい点ですけれども、前回の議論を踏まえまして、基金の残高は余剰があるとは断言できない状況であり、また、当初の拠出の目的を変更することについて、拠出者等の同意がなされない状況では、基金の使途を拡大することは困難ではないか。他方で、治療研究の重要性については異論がなかったところであり、基金の活用以外の方法で引き続き検討を進めるべきではないか、具体的には、「調査研究」の論点、次回挙げておりますけれども、引き続き議論を行うべきではないか、というまとめとしています。
そして関連で、資料4についてもご説明します。
厚生労働省から頂きました資料です。
1ページ目が、疾病の治療を所掌する厚生労働省、疾病の治療を担当する部局の行っている研究ということです。「健康・医療戦略」及び「がん研究10か年戦略」に基づいて、がん医療の実用化を目指した研究を推進する「革新的がん医療実用化研究事業」が実施されています。この「がん研究10か年戦略」の中でも、「希少がん」あるいは「難治性がん」についての研究が重点研究領域として推進されていまして、ご覧のとおり、中皮腫に係る研究課題も採択されているところです。
2ページ目にまいります。
こちらは、労働者の福祉の増進の目的で、労働者を使用する事業主が支払う労働保険料により、労災疾病に係る研究を行う事業、「労災疾病臨床研究事業」です。この中で、ご覧のとおり、中皮腫に係る研究についても行われています。
資料の説明は以上ですが、冒頭、委員長からご指摘ありました、小菅委員から提出されています資料の1ページ目以下の、前回、環境省からお出しした基金の推計についての資料について、お答えをさせていただきます。
前回、環境省のほうから提出した資料については、直近5年の支出額の伸びを外挿して推計をしています。このことの計算式等については、今回の資料の参考資料2に記載しています。
そして、2013年時点の推計との差異についてご指摘があったところですけれども、小菅委員の資料の2ページ目の下半分に、各年度における直近5年の支出額の増減率の相乗平均が表になっています。
ご指摘のとおり、平成24年の時点では、この伸び率の平均が、毎年5.8%という状況でした。プラスだったということですけれども、その前後を見ますと、平成23年はマイナス12.1%、平成25年はマイナス3.2%というような状況で、その当時、基金の支出額の増減について、傾向が一定していなかった状況であると理解をしています。
今回、令和3年度の時点の情報を基に推計したわけですけれども、この令和3年度の前を見ますと、5年間、継続的に基金の支出額が増加している傾向となっていまして、こうしたことから、直近5年間の増加率の平均を踏まえて推計したということです。
ご指摘いただいているとおり、将来の推計は大変難しいものであると考えています。ただ、本制度においては、認定された方への着実な給付を行う、これが大事であると考えています。基金が枯渇して、給付に支障を来すというようなことが万が一にもないようにと、安定的に運用する必要があると考えていまして、そうした点も踏まえて資料を作成したものです。
以上、委員からのご指摘に対してのお答えといたします。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。
時間があまりないところで恐縮ですが、ご欠席の新美委員からご意見をいただいていますので、一、二分で概要のご紹介を事務局からしていただけますでしょうか。
○木内石綿健康被害対策室長 委員提出資料2で、本日ご欠席の新美委員から、論点1、給付のあり方について意見書をいただいています。
ちょっと長くなっていますので、概要のみご紹介します。
建設アスベスト給付金制度、また建設アスベスト訴訟の最高裁判決を踏まえて、どう考えるかということについて、このアスベスト給付金は、原因者となり得る事業者に対する国の規制権限不行使を理由とする責任が前提である。このため、原因者は個別具体的に特定できないが、原因者の集合が労働安全衛生法による国の規制の対象である、そうした方に対する給付として設けられている、限定がある。このため、こうした制度が設けられたことが、原因者の特定できない石綿関連疾患患者全員の救済に直接的な影響を及ぼすものとは言えないと記載されています。
また救済制度、共助または公助の理念に基づく制度においては、給付項目、水準の妥当性はそれぞれの制度趣旨に応じて判断すべきであり、個別に検討すると、現行の給付内容の給付水準については、概ね妥当なものといえる、というご意見です。
また、本制度における拠出者は、社会の連帯共助の精神の下、自発的に資金を拠出いただいている。こうした趣旨を踏まえれば、給付項目を追加するには、拠出者の同意を得る必要があるのではないか、こういったご意見です。
ご紹介のみさせていただきます。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。
それでは委員の先生方、どうぞお顔をお出しいただけますでしょうか。
今日、論点三つほど挙げられましたが、まず救済給付についてご意見をお持ちの方は、どうぞ挙手をお願いいたします。
挙手されるとき、下のほうに挙手というアイコンがございますので、それをクリックされますと分かりますので、それで合図をしていただくのが一番分かりやすいため、これでお願いしたいと思います。
それでは、小菅委員からご発言をお願いします。まず救済給付についてのお話から順次進めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○小菅委員 前回の小委員会後の大きな動きで言えば、建設アスベスト裁判における国の責任、一部建材メーカーの責任が確定しています。次回のヒアリングでも、公的な関係から、ご提言等あるかと思いますので、詳しくは次回の議論を待ちたいと思います。
制度施行当時から、最低賃金の上昇や、物価の上昇などの変化があることは事実ですので、遺族給付の創設を含めた全体の底上げの必要があることを前提に、何点か意見させていただきます。
中皮腫サポートキャラバン隊の中皮腫患者白書で取りまとめられておりますように、やはり子育て世代を含む現役世代の方が発症した場合の家計への負担は大きいですので、対応が求められます。これまでの認定者の割合における60歳未満の方の割合は、約10%未満ですが、まさにこの世代への手当は追加的に検討されるべきものと思います。さらには、お子さんの有無などによっても期間は追加されると思います。このような部分に配慮しなければ、本来は治療、療養に使用すべき手当が生活に回ってしまって、本来必要なものに使われないという実態があります。
一方で、60歳以上の認定者は9割以上を占めるわけですが、介護実態調査からは、数は多くないですが、要介護4、5程度、被爆者救護法でいうところの介護手当、身体障害者手帳1、2級程度に当たる方がいることが分かります。アンケートにもありましたが、このような方は、ご家族の方が何らかの犠牲を払って介護支援に当たったり、身の回りのお世話をする人を雇ったりする費用もかかるわけですので、追加的な支援が必要かと思います。
遺族の方についても、事実上、約20万の葬祭料以外の給付はなく、国の災害弔慰金制度でも、生計維持者が死亡した場合は500万円、その他の者が死亡した場合は250万円が支給されています。お子さんが就学中である方など、世帯状況に応じて追加的な支援が必要です。8月の小委員会でのヒアリングで語られたように、経済的な苦境に陥った貧困者の救済の審議をいただきますように強く求めます。
○浅野委員長 よろしゅうございますか。
救済給付に関して、他の委員でご発言の方、ございませんでしょうか。特にございませんか。
細川委員、どうぞお願いいたします。
○細川委員 皆様、お疲れさまです。皆様の本日出席されている方々のこうやってお顔を見ながら発言させていただけることというのが、本当にちょっとうれしいと思います。小菅委員のお話も、大変本日も参考になりました。また、議論いただいた点についてという環境省からの話も、とても勉強になりました。
私、個人的に、少しだけ時間をいただきますと、今回7月から日本医師会の常任理事になりまして、このような中皮腫、アスベスト等の委員にこうやって入れていただきまして、本当に勉強させていただきました。
前回の第2回に関しては、黙って聞いていて、発言することも何もなく、じっと聞かせていただきまして、本日、最初に小菅委員から、しゃべらなかった人間もしゃべれよというようなことも言われた気がしまして、あえて、ちょっとしゃべらせていただこうかなと思いました。
それで、前回、もともと環境省がやっている救済法ということに関しては、給付、ちょっと勉強させていただきましたら、平成18年の参議院の委員会において、中皮腫について、早期診断治療報開始等の基盤整備を行うこととなっております。それから、平成18年になりましたアスベスト等のまた中皮腫に効果ある新薬の研究開発を促進することというふうに聞いておりますが、環境省さん、途中まではこれで正しいですか。
○木内石綿健康被害対策室長 附帯決議の内容につきましては、おっしゃるとおりです。ただ、附帯決議ですので、政府全体として受け止めさせていただいていると理解しています。
○細川委員 僕も少し理解しながら少ししゃべらせていただきたいんですけど、平成23年6月に関しては、やっぱり中皮腫に対して、いろいろ早期発見どうのこうのと書いてあったりします。28年に関しては、このデータを分析しなさいということも書いてあります。
令和4年6月に関しては、最新の医学的治験、それから救済基金の活用等に早期に開始することというのを、参議院の環境委員会で決議したという。小菅委員さんに僕は言いたいんですが、決議というのは、我々はこう思うよというだけの話なんですね。それで、そう決定されたことではないと思います。
それから、中皮腫の治療とか現実に関しても、かなり進んでいるということも勉強させていただきました。
今回、ついでに、僕はこれで意見をずっと言わせていただいておしまいにしようかと思いますが、第2回の小委員会に関して、岩村委員から、それから新美委員のいろいろなご発言も、そもそもなんですけれども、この基金じゃなくて、救済法によるお金の使い方ということも、随分勉強というか、少しさせていただきまして、今後、この希少がん、今日、本日3人のいろいろヒアリングもありましたけれども、ほんの7分ごとで皆さんの思いがこの小委員会に伝わったかというと、とても伝わっていないと思うんですね。
それから、法改正が必要ですよと。これは今まで事業主が920億円、国が386億円、都道府県がこれだけのこと。それから、最近ですけども、患者と家族の会と面談させていただいて、そこの中の利息収入、約16億円ですか、それを何か使えるかとかということ。それから、研究に当たっての重点課題でいろいろお聞きしました。これに関しては1.5億円とか、そういうことに関して、これはいい話だと僕は思うんです。環境省自身も、今回の小委員会に関して、提言もしくは決議、それから答申でもいいんですけども、やっぱり患者様、それから家族の会からこういう話があったよという言葉はぜひ入れていただきたいと僕は思います。
そこの中でですが、この会で何をしゃべっても、法は変わらないと思います。私、日本医師会の、今、いろいろな外部審議会なんかに出ていても、小委員会の発言というのはここまでなんですね。それで、小菅委員にぜひ申し上げたいのは、もしこれから次に進もうと思ったら、日本医師会の私のところに直接お越しくださいませ。それから厚生労働省、それからほかのところにまだボタンを押す、それから、日本医師会からも医系議員というのは何人かいますので、そういうところにボタンを押す。そうしないと、前に進まないと思います。
それで、今回の進め方で、第4回で、また有識者のヒアリングがあると聞いております。それから、第5回、3月頃に報告書の取りまとめ。本当にこの委員会が大事であれば、この3回、4回、5回でおしまいにしていいのかという気持ちもしております。
そこら辺も含めて、浅野委員長、勝手なことを僕しゃべらせていただいて、本当に石綿の方々、困っていることも分かっておりますし、この小委員会で取りまとめに関しては、何とかやはり患者様と家族の会の意見も多少、多少かどうかは知りませんが、入れていただきながら、ただ、この意見が通る小委員会ではないということも、小菅委員様にも申し上げておきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
とにかくがん対策というのは、日本医師会に担当理事もほかにもおりますし、ぜひまたそこら辺でボタンを押していただければと思います。
ちょっと長くなりましたけど、大変失礼なことを言っちゃったかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。
救済給付についてというテーマで今は議論しているつもりでおりますが、ご発言はございますか。
○小菅委員 すみません、ありますので、よろしいでしょうか。
○浅野委員長 はい、どうぞ。
○小菅委員 先ほど新美委員からの提出資料によってご説明がありましたのでその件でちょっとお話をさせていただきたいと思います。
新美委員の意見書に関してですが、私も石綿救済制度は社会連帯共助の精神が含まれるものと認識しています。
委員のご意見では、自賠責保険について触れられていますが、他方では、犯罪被害者給付金制度や災害弔慰金、災害障害見舞金支給制度との関係性をどのようにお考えでしょうか。委員のお考えをお伺いしたいのと、次回以降、事務局は、これらを含めた他制度の比較ができる資料を準備するようにお願いいたします。
新美委員が触れられています自賠責保険では、興味深いことに、休業損害とは別に、看護料科目の中で、収入減少の立証等を前提に、追加の給付がございます。この考え方は、療養手当はもちろんですが、実際の支出を踏まえて、通院交通費でも検討できるかと思います。
遺族給付に関して、新美委員も触れられていますが、自賠責保険では遺族の人数などによって追加的な支援がされています。犯罪被害者給付金も災害弔慰金も同様です。
○浅野委員長 大林委員、どうぞ。
○大林委員 神鋼病院で病理医をしております大林と申します。指定疾病に関して、ちょっと意見を申し上げたいと思います。
中皮腫の患者さんが非常に深刻なわけですが、一方で、肺がんの申請者が少ないということも従来から問題になっております。これは、病理の立場としては、何かできることがあるんじゃないかというふうに考えています。
まずお願いしたいのは、臨床医に、肺がん患者さんの職歴を必ず聴取していただくと。喫煙歴に関しては記載されることが多いんですけれども、職歴はほとんど書かれていない、記載されずに病理の診断依頼書が提出されます。もし書いていただけましたら、例えば、肺系の組織にアスベスト小体がないかどうかということを、私たちが注意して観察するということが可能かと思います。それによって、アスベスト小体があるということを、まず主治医にフィードバックをして、さらに患者さんにそれを伝えると、そういう道筋があり得るんじゃないかというふうに思います。
これは非常に地道なことでございますけれども、日常診療の中で取り組めることで、実際、中皮腫に関しましては、機構が主催されております講習会等で啓蒙されていることが非常に大きく広がっておりますので、同時に肺がんに関しましても、アスベスト小体をよく観察することということを教育していきたいと、そういうふうに願っております。
もう一つは、この辺は私の知識が不十分なんですけれども、先ほどの専門家のご意見でもございましたけれども、今、遺伝子を包括的に調べる、特に希少がんに関しては、保険でもって何百種類という遺伝子を網羅的に調べることが保険適用になっております。ですので、これをまず、とにかく今、薬剤を使うとか、あるいは新薬を開発するというのは、遺伝子が大変重要な情報になりますので、このFoundationOneに対しまして、希少がんとして中皮腫をどんどんエントリーしていただくということは、やはり臨床の先生にお伝えしなければいけないんじゃないかと思います。
FoundationOneという、それだけではないんですけれども、網羅的な遺伝子の診断の中で、治療薬は存在するけれども適応外であるというような遺伝子異常が見つかることはままありますので、こういったところが一番直近の攻め口としてはいいのではないかというふうに考えております。
以上でございます。ありがとうございます。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。では、指定疾病について、ご意見をお伺いします。
岸本委員、どうぞお願いいたします。
○岸本委員 指定疾病について、石綿健康被害救済法の判定小委員会の委員長の立場としてご意見を申し上げます。
確かに、最初は悪性疾患である中皮腫と肺がんが認定の要件でございましたが、良性疾患であっても、石綿肺及びびまん性胸膜肥厚のうち、著しい呼吸機能障害を来した症例というのは、これら悪性腫瘍と同等の重篤な病態であるということで、平成22年に指定疾病にしたというのは、今、事務局からおっしゃったとおりであります。
ただ、私、30年ほどこの石綿関連疾患を見ていますが、良性石綿胸水というのは、約半数は無症状で、健康診断等で指摘されて診断をされておりますので、この疾病が全般的に中皮腫や肺がんと同等の予後の悪い疾患かというと、決してそうではないと思います。確かにその中の一部で胸水が器質化して、%肺活量が60%を切るような、この病態は予後もよくございません。環境省で認定された300例以上を調べて見たんですけれども、認定されて以降、その生命予後は中央値が28.5か月で、3年生きていないということが判ったので対象疾病として妥当だと思いました。
良性石綿胸水であっても、我々は研究によって他の要件を満たせば、僅か3か月胸水量が変わらなければ、びまん性胸膜肥厚としてよいと判断しました。このような病態は、びまん性胸膜肥厚というよりは、むしろ良性石綿胸水といってよいかもしれませんが、このような場合も認めているのは事実でございます。我々、この病態の審査をしておりまして、器質化胸水をもってびまん性胸膜肥厚と認定されている方が、大半でございますので、ここはうまく認定基準としたのではないかというふうに思っております。
それから、石綿肺の合併症でございますが、確かに石綿肺というのは、珪肺と違って、結核の好発部位に病変があるわけではなくて、両側下肺野が中心でございますので、結核の合併は極めて少ないという状況であります。
それからじん肺法の合併症の一番多い続発性気管支炎、気管支拡張症というのは、そんなに重篤な疾患ではなくて、抗生物質で治るような病気でございます。また、最後の合併症である続発性気胸にしても、難治性であるということは言えないと思います。石綿肺の合併症が、著しい呼吸機能障害を来した石綿肺と同等かというと、決してそうではないというのが臨床科としての意見でございます。
先ほど大林先生がご指摘の石綿肺がんでございますが、環境省の救済法ができたときに、職業性石綿ばく露等が分からない方を救済しようという発想で始まりました。1997年のヘルシンキクライテリアというのは、肺がん発生頻度を2倍にするというクライテリアであり、これであれば、職業性石綿ばく露等を言っておりませんので、近隣ばく露でもほかのばく露でも、みんな包括できるだろうということでこの基準を設けたわけでございます。なので、より幅広い方を救済しようという目的でできたわけなので、私は非常にいい基準ではないかなというふうに思っております。
それから、職業性ばく露なんですけれども、先ほど申し上げたびまん性胸膜肥厚、石綿肺というのは、職業性石綿ばく露によって起こった疾病ということでございますので、肺がんや中皮腫とは異なります。すなわち一定の職業性のばく露の要件を持った者のみを認定するというふうにしております。なので、職業歴を聞いております。けれども、ご本人の陳述のみというのは、客観性が担保できません。先ほど事務局も申されましたが、年金記録がくっついてきても、当該事業上でアスベストが使われていたかどうかということが不明な場合がございます。職業性ばく露以外を含めて、迅速な救済を目的として、我々、日夜努力している救済制度でございますので、石綿ばく露作業従事歴の基準としての採用というのは、客観的に見て難しいのではないかなというふうに思っております。
以上です。
○浅野委員長 どうもありがとうございました。
小菅委員、どうぞご発言ください。
○小菅委員 肺がん判定のほうからお話しさせていただきたいと思います。資料も提出させていただいておりますように、労災認定基準や建設アスベスト給付金の認定基準で救える被災者は救うべきです。そのために、ばく露の判定基準を用いるべきで、既に石綿肺やびまん性胸膜肥厚では、石綿ばく露に関する申告書の提出も必須になっていますので、同じ取扱いをすべきで、救済制度では実際はどのようにされているのか、環境再生保全機構の方にもご説明いただきたいと思います。
これまでの累積の申請のうち、胸膜プラークがありながらも不認定となった方の割合、そのうち少しでも職業ばく露が疑われた方の割合を示してください。現状は、肺がんについては救える方を救わない救済制度となっています。救える人を救わない不合理な制度になっています。あるいは、建設アスベスト給付金制度では、ばく露歴の調査は必ずしも経験が豊富な方が調査に当たっているわけではないと確認しています。厚労省の担当の方から、実際の準備から運用に至るまでについて、ご説明をお願いしたいと思います。こちらも次回、厚労省の方からお伺いしたいと思います。
次に、指定疾病について、ちょっとお話しさせていただきたいのですが、この件についても資料を提出させていただいているんですけれども、じん肺管理区分2または3相当の半線維化所見があり、合併症のある患者で、著しい呼吸機能障害を伴うものは救済対象に加えることが当然であるとともに、良性石綿胸水を含めて、著しい呼吸機能障害を伴うにとらわれず指定疾病とすべきと考えています。
救済法の基本的考えは、労災保険鮮度で救われない方を救うための法律、制度であり、その較差に対して、合理性のない基準、ダブルスタンダードのある状態は早急に改善すべきだと思います。
肺がんの関係でも述べましたが、事務局は、委員にもご理解いただけるような、違いについて分かりやすく認識いただける資料を次回までご準備いただきたいと思っております。
以上でございます。
○浅野委員長 ありがとうございました。
ほかにこのテーマでご発言ご希望の方はいらっしゃいますか。
いらっしゃいませんようでしたら、では、基金の使途、3番目の項目ですね、これについては小菅委員からまずご発言いただけますか。
○小菅委員 ありがとうございます。基金の使途については、本当に3人の医師のヒアリングをいただきましたこと、本当にありがたく思っております。ありがとうございます。
本日、私どもの資料でも提案させていただいておりますが、基金の運用益の活用、あるいは基金の活用に関して、さらに広く拠出関係者の皆様との合意形成の場を設けていただくことを提案いたします。
この制度は、誰を助けるためのものなのかという目的において、基金の活用はその目的に直結するものです。治せる病気にしてしまえば、拠出者の皆様のご負担の軽減も検討できるはずです。
2006年7月24日の石綿による健康被害の救済に係る事業主負担に関する検討会でも確認されていますが、基金の事業主の皆様からの拠出は、積極的な救済活動に対してご協力いただいている性格のものです。
さらに、2021年6月に経団連さんが提言されておられます「新時代の日ASEAN関係~連携と協創による持続可能な社会の実現に向けて」では、これからアスベスト被害が拡大していくASEANへの医療、ヘルスケア協力を進めることを書かれていますが、私たちの提案は、それにも結びつくものと考えます。
経団連さんが2017年に改訂されています企業行動憲章の10原則の中には、全ての人々の人権を尊重することや、企業を取り巻く幅広いステークホルダーと建設的な対話を行うことも掲げられています。ASEAN諸国の皆様との関係で掲げられている、心と心の触れ合う関係は、本件においても構築可能であると考えます。その意味で、広く関係事業主の皆様との合意形成が得られると信じて、私たちも引き続きお願いと協力をしていきたいと思います。
同時に、国民の健康で文化的な生活を確保できる責任を負う、政府の立場から設けられた精度である趣旨からも、治療研究推進に関しては、国が基金内において拠出割合を担うという考えもあるかと思います。中皮腫を治せる病気にするための戦略を組み立てるために、関係者の定期的な会合、例えば中皮腫治療戦略会議を設けるなど、国も真剣に向き合っていただきたいのです。
資料4に、厚労省におけるAMEDの支援の状況が書かれていますが、私たちの調べでは、それらの合計は単年度で2億円程度です。アスベスト同様に国の責任が認められた肝炎では、治療研究支援の関係で、年間で35億円程度の予算が充てられていますし、国も一定の責任を認めたエイズの関係でも21億円程度の予算が充てられています。中皮腫を治せる病気にするための戦略と予算確保の方策について、次回以降で構いませんので、厚労省と環境省から、それぞれ見解をお聞かせいただきたいと思います。
先ほど、細川委員から、多大なる、本当に、これからのご協力もいただくご意見をいただきましたこと、本当にありがたく思っております。ありがとうございました。
○浅野委員長 細川委員、どうぞ。
○細川委員 小菅委員様、本当にありがたいお言葉をありがとうございます。今後は、今の環境省を超えた、厚労省も含めてですけれども、直接、多分こういうことの法改正も含めてボタンを押せるのは、ある意味、日本医師会だと僕は思っております。
この小委員会で今後こういうようなことをお話をするのは、時間のロスとは言いませんが、今小菅委員様も、今日お話になっているのは左上の何か書類をずっとお話になっただけなんですね。それも、ある意味不快感を僕は感じます。
それですので、ぜひ皆様、ここにいる委員長も含めてですけれども、直接お話をしたいなと思います。何かどんな形でもいいですからお力になりたいですので、次の4回目、5回目も含めてなんですけども、患者家族の会の話の中で、いろいろプレゼンもいいんですけども、もっと実りのある小委員会に僕はしたいと思いますので、どうかご協力をお願いします。
浅野委員長、そういったことを僕は言っちゃったんですけど、いいでしょうか。
○浅野委員長 ご希望としては承っておきます。またよく事務局と相談いたします。
大塚委員、ご発言をご希望ですね。どうぞ。
○大塚委員 第1回目のときに研究開発に充てていただくことが望ましいという話をしまして、今でもそう思っていますけども、ただ、内容面と手続面で障害があるということが出てきておりますので、当面難しいのだろうと思っております。
国としては、今回難しくても、取り組む方向で進んでいっていただければとは、将来的には思いますけども、当面は難しいということかと思っています。内容的には、障害としても、基金の残高の減少の可能性があるということと、手続的には、拠出してくださった産業界の同意がないということ、あと研究開発は主に厚労省の担当だということがあるかとは思います。
さっき細川委員もおっしゃったこととも関係しますけども、基金の使途の変更には法改正が必要だというのもありますので、日本は議院内閣制なので、役所が結構関与していらっしゃいますけど、最終的には国会が決めることになりますので、法改正をすれば研究開発のほうに充てるということも不可能ではないので、あとご検討いただくとしたら、そういうことが当面は考えられるのかなということかとは思います。
ということで、経済界との拠出のときの約束というのがおありなので、環境省としてはなかなか今回も難しいということかとは思いますけれども、将来的な道というのはさらにご検討いただければありがたい。ちょっと今回はちょっと難しいかなということかと思っております。恐れ入ります。
○浅野委員長 ありがとうございました。
今、岩村委員から挙手が挙がって、もうそろそろ時間なんですけれども、ご発言をご希望の委員がほかにいらっしゃいましたら、今のうちにエントリーをお願いいたします。もうほかにいらっしゃいませんか。
それでは岩村委員から始めていただいて、小菅委員、そして中澤委員、岸本委員がご発言をご希望ですね。そうしますと、予定の時間はもうあと2分ぐらいしかないのですが、会議を15分くらい延長させていただいてもよろしいですか。よろしゅうございますね。では15分、会議を延長させていただきます。
では岩村委員、どうぞお願いいたします。
○岩村委員 本日、提出された資料3の3-4に書いてある方針で、私どもは異存ございません。資料3にも書いてありますが、前回も申し上げたとおり、個別の石綿健康被害患者の救済を目的に拠出、造成された基金でございますので、途中で目的を変えることは、認めがたいというスタンスは変わってございません。
また、シミュレーションではありますけれども、基金が底をつく可能性が示されておりますので、本来の目的が果たせなくなってしまうということであれば、強い懸念を持たざるを得ません。また、先ほど、運用益についてもお話がございましたけれども、我々としては、元本と運用益は一体と考えてございまして、一体不可分で制度を運用していくことが必要であろうという立場でございます。
ただ一方で、治療研究の推進が重要であるという認識は、委員の皆様の間でも共有できたかと思います。本日の資料3にも記載がありますとおり、この制度以外の方法について、費用負担の在り方も含めて、別途議論を進める必要があるのかなと考えてございます。
環境省におかれましては、治療研究を所管する厚生労働省ともご連携いただき、対応をご検討いただければと考えてございます。
併せて、安定的な運用という観点から、前回申し上げました通り、国・自治体による基金への今後の拠出についても、ぜひご検討いただければと思います。
以上でございます
○浅野委員長 ありがとうございました。
中澤委員、どうぞお願いいたします。
○中澤委員 ありがとうございます。
今まで委員の皆様からのいろんなご意見が出ていて、概ね同じような意見になりますけれども、この基金の制度が発足した当時から、患者さんの環境というんですか、特に医学の進歩などにより随分変わってきているということと、先ほども治療の研究開発が進んできて、もう少し予算があったらさらに進む可能性などについても、専門家の先生方にいろいろとお示しいただいて勉強になりました。
患者さんのために研究開発が進むということは、誰もが同じ思いだと、1回目でそのようなお話もありましたし、それは同じことだと思いますけれども、いろいろ今お話がありましたように、基金自体の性格が、最初に設置されたときの性格というのもありますし、現行法の枠組の中で使途を一部変更するということもなかなか困難であることは、私たちも地方行政の者なのでよく承知しております。
ただ、何かちょっと制度を変更するとか、何か変えることが可能であるならば、検討することもあり得ると思いますし、今お話を伺っていてちょっと思ったんですけれども、基金の性格から考えると、基金の外で考えるほうが、より研究開発に資することができるのであるならば、そういう可能性があるのならば、そういうことを検討するということも必要なのではないかなというふうに考えます。
そうなってくると、ちょっとこの小委員会の枠から外れるのかなとは思いますけれども、そこのところもご検討いただければと考えております。
以上です。
○浅野委員長 ありがとうございました。
小菅委員、どうぞ。
○小菅委員 岩村委員からも、やはり治療研究はやっていかなきゃいけないというご意見もありましたので、この基金からの活用が本当に厳しいというふうに思われておられるのであれば、私は、やはり議員立法、法改正をしていくのが妥当ではないかというふうに思っております。
最後に調査研究について、ちょっとお話しさせていただきたいと思っております。
厚生労働省のある部局に意見を聞いたところ、附帯決議で、石綿健康被害救済基金活用の議論をすべしとなっていながら、十分な議論が尽くされていなければ、厚生労働省から予算要求をしても難しくなってくると伺っております。附帯決議を踏まえて、環境省が最大限に知恵を絞り出し、合意形成などをする努力をした上で相談に来るならまだしもという趣旨のご意見も伺っています。
また、基金活用以外の方法に関して、環境省は財務省との折衝で予算を確保できる確信のようなものはどの程度お持ちなのでしょうか。この辺りの見解のすり合わせを、環境省は厚労省と十分にされているのでしょうか。私どもが確認した範囲では、厚労省の方には、予算は取れないですかという電話があっただけということでした。
○浅野委員長 よろしゅうございますか。
では岸本委員、どうぞ、お願いいたします。
○岸本委員 ありがとうございます。
臨床研究をもう進めなきゃいけないというのが、第1回のこの会から皆さんがおっしゃっておられるとおりですが、先ほど中澤委員が言われましたように、この基金の中でこれを議論するというのは、これは難しいわけなので、やはり新たな研究のための資金を集めるなりなんなりをやはりしていくべきだろうと思います。
これには、ここは環境省の会なので、これは厚労省が主体的にやるべきものだろうと私は思います。長谷川先生と中川先生がやりたいという治験は、実際に肺がんとかでもう保険適用がある薬で、安全性が分かっているわけですから、そちらのほうにお願いをして、こういう治験をやってみたいと言えばこれはお金がそれほど要らなくてやれるわけで、効果があれば患者さんのために使えばいいわけで、この環境省の救済委員会で議論すべきものではないと思います。
ただ、後藤先生がおっしゃったのは、これは画期的な治療方法なので、これが効果が万が一あるとなると、先ほど申しましたように、中皮腫に対する国の研究費を新たに設立して、それでやっていけばいいのではないかなというふうに思いますので、やはり患者さんのため、患者さんの生活を救済するためにこの法律はできていますので、やはりこれはまずそれをやるということと、中皮腫を治す病気に、それは私も三十数年やっていて、それはそうしたいんですけども、なかなかこれに対する治療薬というのは、もう上がってきては全部これ駄目だったというのがこの30年の現実なので、先ほど後藤先生も言われていましたように、ニボルマブというのはこれは画期的なお薬だったけれども、30年間でこの薬が一つ出ただけで、あと、アバスチンとかニンテダニブだとか、いろいろフェーズ3まで行ったお薬も、結局は患者さんに使うことができなかったというのが現状でございますので、長谷川先生や中川先生は、厚労省に言えばこのような治験というのは私は可能かなというふうに思います。
以上です。
○浅野委員長 ありがとうございました。
それではまだご発言ご希望の方もいらっしゃるかもしれませんが、恐縮ですけれども、もうそろそろと思います。もしさらに今日発言しなかったけれどもこういうことを言いたいというのがありましたら、紙に書いて、メールで結構でございますので、事務局のほうにお知らせいただけましたら、適宜それを議事録の中にも反映させることができると思いますので、よろしくお願いいたします。
小菅委員、どうぞ。
○小菅委員 最後に一言、よろしいでしょうか。
○浅野委員長 はい。簡潔にお願いいたします。
○小菅委員 本当に基金の活用が難しいというお話もございますので、その件でちょっとお話しさせていただきたいと思っております。
広くこの事業者の皆様ご意見を聞きたいですし、その上でどうしてもこのご理解が得られないというのであれば、追加の拠出をお願いしない形で、国と都道府県の皆様の拠出範囲、ないしはその範囲の運用益の活用など、本当に何か知恵はないのか、事務局を含め、委員の皆様での検討は全くなされていないと思います。
附帯決議や都道府県からの要望が出ている以上、本日の議論をもって基金の活用は難しいと早急に結論づけるのは間違っていると思っておりますので、今後ともまた、このような、今回3回目は全委員の方のご意見をお伺いすることができましたので、本当によかったと思っております。今後ともまた皆さんでこの救済法に向けて審議していただけたらありがたいと思っておりますので、本日はありがとうございました。
○浅野委員長 どうもありがとうございます。
基金の使途の拡大、まず第一に基金の今後の状況についても、先ほどご説明ありませんでしたが、中澤委員と、小菅委員からご意見も出ていまして、今後の状況についても予測については、必ずしも十分に分からない面もあるということでありますが、しかし、それぞれ前回も申しましたけれども、基金の使途の拡大ということに関してはいろいろ制約も大きい。しかしながら、治療研究の重要性については異論はありませんので、この辺についてとにかく必要な検討をちゃんとしなきゃいけないということは、今回も変わらなかったと思います。
次回、またこれについて議論をし、全体の取りまとめの段階で、どういう形でこれをやればいいかということについては、再度整理をしていく必要があるかと思いますが、取りあえず今日の段階まででは、前回私が取りまとめて申し上げましたことを繰り返すことになりますけれども、治療研究の重要性については異論がない。ですから、それについての検討を、さらに次回の治療研究の論点のところでも詳しくしていく必要があるだろうということは間違いないことだと思います。
そのための経費につきましては、前回のまとめで申し上げましたが、今日いろいろご意見が出ましたので、それらを考えながら、最終の取りまとめをいたしたいと、このように考えます。
それでは、本日の議事はこれで終了させていただきます。
次回以降のスケジュールについて、事務局からの説明をいただきます。
○小笠原主査 事務局でございます。
次回の小委員会の日程については、現在調整中ですので、決まりましたら追ってご連絡いたします。
また、本日の議事録につきましては、事務局で原案を作成し、委員の皆様にご確認いただいた後、環境省のホームページに掲載する予定ですので、よろしくお願いいたします。
それまでの間につきましては、本委員会の運営方針に基づき、会議の音声を環境省のホームページで掲載する予定でございます。
それでは、以上で令和4年度第3回石綿健康被害救済小委員会を終了いたします。ありがとうございました。
午後3時10分 閉会