中央環境審議会循環型社会部会特定有害廃棄物等の輸出入等の規制の在り方に関する専門委員会、産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会有害廃棄物等越境移動ワーキンググループ合同会議(第2回) 議事録

日時

 平成28年12月8日(木) 18:00~20:10

場所

 経済産業省 本館17階西3 国際会議室

議事録

1.開会

○田村管理官それでは、定刻となりましたので、ただ今から中央環境審議会循環型社会部会、特定有害廃棄物等の輸出入等の規制の在り方に関する専門委員会、産業構造審議会産業技術環境分科会、廃棄物・リサイクル小委員会有害廃棄物等越境移動ワーキンググループ合同会議の第2回会議を開催いたします。委員の皆様におかれましてはお忙しい中御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 私は本会議の事務局を務めさせていただいております経済産業省環境指導室越境移動管理官の田村でございます。合同会議の座長と司会進行は専門委員会とワーキンググループで交互に務めることとしており、今回はワーキンググループ側で務めることとしております。議事に入りますまでの間、本日は私が進行を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。なお、本日は専門委員会、ワーキンググループとも委員の皆様全員に御出席いただいております。どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして、配布資料の御確認をお願いいたします。議事次第に記載されております配布資料、参考資料はお手元のタブレットから閲覧できますので、それぞれ御確認をお願いいたします。操作に御不明な点などがございましたら、いつでも事務局にお知らせください。また、資料1の報告書(案)につきましては、資料2「第1回会議における指摘事項について」と併せて事務局から御説明させていただきますので、御覧いただきやすいようにコピーもお手元に配布しております。御確認いただければと存じます。よろしいでしょうか。
 それでは、議事に入ります。報道関係の方の写真撮影はここまでとさせていただきます。それでは、これ以降の議事進行は、本日は中村座長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。

2.議題

(1)報告書(案)について

○中村座長 それでは、早速議事進行をさせていただきます。2時間しかございません。また、こんな時間ですので、なるべく時間どおりにきちっと終わらせたいと思っていますので、御協力のほどよろしくお願いします。また、若干風邪をひいて、声がかすれていますけど、気にせずにいただければと思っております。
 この合同会議は特定有害廃棄物の輸出入の規制の在り方についての検討を目的としております。できましたら、報告書(案)を取りまとめ、年内にパブリックコメントをかけるということを目指して検討してまいりたいと考えております。よろしくお願いいたします。
 早速議事に入りたいと思います。議題1「報告書(案)について」、事務局から説明をお願いいたします。なお、議題はこれしかないのですね。最初に事務局から御説明いただいて、それからまとめて議論したいと思いますので、よろしくお願いします。では、御説明をお願いします。

○中嶋課長補佐 それでは、事務局の方から説明させていただきます。資料1と資料2を併せて説明させていただきますので、資料2の方はタブレットの方で開いていただいて、資料1の方の報告書は紙で見ていただければ見やすいかなと思いますので、よろしくお願いします。資料1の報告書が12ページで、資料2の方が37ページあるものですから、紙の方は報告書ということにしております。それから、委員の皆様の審議時間確保のために説明はポイントを絞りまして行わせていただきますので、よろしくお願いします。
 それでは、資料1の報告書を御説明させていただきます。まず1ページから4ページぐらいのところまでは「はじめに」ということで、今回検討することに至った経緯、それから、現在の制度の概要を述べているところですので、この辺は前回に現状のパワーポイントの説明があったものを文章化したものですので、割愛させていただきます。
 5ページの3.(1)「基本的考え方」のところから御説明申し上げたいと思います。こちらの基本的考え方のところにつきましても前回確認いただいたとおり輸出、輸入それぞれについて環境汚染等が生じるリスクを評価した上で規制を見直すという形で考えているということです。それから、5ページ以降は個別の論点ということになっております。
 まず①使用済鉛蓄電池の輸出増大を踏まえた輸出先での環境上適正な管理の確保ということですが、資料の構成としてまず課題を述べさせていただいて、その後に見直しの方向性を記載という整理にしております。課題としましては、使用済鉛蓄電池に関しては、OECD加盟国向けであるリサイクル目的の輸出についてはバーゼル法に基づく環境大臣の確認不要としていますというところが一つの大きな課題になっていると。一方で、平成28年6月に、6ページの真ん中辺に書いてありますが、韓国においてリサイクル業者の不適正な処理が行われた懸念がありましたということで、これを踏まえた対応をどうすればいいかというのが一つの課題になっております。それから、OECD決定では資力保証であるとか、環境上適正な管理の確保についても要件として入れているのですけれども、日本の場合は、そこについての明確な基準が示されていない。それから、環境大臣の確認の審査基準というのが明確化されていないといったところが課題として挙げられていたところです。
 これに関しまして、前回1回目の会合で御指摘いただいたことについて資料2の方で御確認いただければと思います。こちらの論点に関しましては、国内処理の推進について議論すべきというご指摘、それから、WTOルールとの関係を考えるべきというお話もございました。それから、最後は輸出先の環境管理はOECD国であっても確認すべきといったようなご指摘がございました。
 それについて事務局の方で整理させていただいたものが次の2ページにございます。まず国内処理の推進に関する関係整理ですが、こちらについては現在バーゼル法第3条に基づいて基本的事項告示というのが定められておりまして、この中で輸出と輸入の最小化、国内処理の推進、あるいは国内における処分施設の確保といったものについて規定しているところです。
 それから、条約4条9では、まず①として、輸出国が環境上適正かつ効率的な方法で処分するための能力・施設を有しない場合、②として、リサイクルの原材料として必要とされている場合、その他、③締約国が定める他の基準に従う場合に限り輸出が許可されるということで、リサイクル目的の輸出については許可されるという整理になっております。これについては、今申し上げた基本告示の方でそういった考え方に基づいて輸出を承認しなさいという基準が作られているということです。
 最後の「●」はOECD理事会決定での考え方ですが、OECD理事会決定は加盟国間ではリサイクル目的の輸出については推進されるべきということで規定されているということです。
 次のページは飛ばさせていただきまして、4ページを御覧ください。4ページはWTOとの関係ですが、環境省の28年4月にまとめられた検討会報告書の中では、国内処理の原則の具体化として、国内における適正処理が確保される限り、特定有害廃棄物等の輸出を認めないとするということを提言いただいたところですが、これについてWTOとの関係でどうなのかというのを整理させていただきました。まず原則ですが、こういった制限というのは、GATT第11条の関税及び課徴金以外のいかなる禁止、または制限に該当するので、輸出制限に該当します。ただ、20条の方で例外規定がございまして、人、動物又は植物の生命又は健康の保護のために必要な措置である場合には正当化されるということでもあるのですが、これが正当化されるかどうかが争点になるということです。
 5ページを御覧ください。WTOとの関係ですが、20条の関係で言えば、まず、(1)として、政策目的が人、動物、植物の健康の保護のために真に必要と認められるか、それから、(2)として、当該措置が政策目的の達成に必要なのかどうかといったことが大きく必要条件として課せられているということです。それから、GATT第20条の柱書において、措置の適用が任意・正当と認められない差別待遇の手段及び国際貿易の偽装された制限に当たらない必要があるというふうな規定もございます。こういったことから、環境省の検討会の中で示されたような措置については政策目的達成に必要な手段とは言えないということで、当省のWTO部局に確認したところ、GATT第20条(b)で正当化されない可能性が高いという見解であったということです。また、仮にGATT第20条(b)で正当化されるとしても、この柱書との関係において、国内に処理能力がある限り輸出を認めないとすることは、人・動植物の保護と無関係になってしまいますので、ここでいう国際貿易の偽装された制限であるとして正当化されない可能性が高いということです。
 それから、どういう紛争事例があるかという例示をという御指摘もございましたので、次の6ページでWTOの紛争事例を挙げております。中国のレアアースの輸出規制の話ですが、中国がレアアースに対して輸出税を賦課したことについて日本側が訴えまして、結果として「これはGATT第20条(b)の要件を満たしていません」というような結論が出たということです。WTOとの関係に関しては、別途環境の国際条約とWTOとの関係を議論するパネルがございまして、ドーハラウンドでずっと議論されているのですけれども、まだ結論が出ていないということで、環境関係の条約とWTOとの関係というのは国際的にもまだ明確なことにはなっていないという状況にもあるということです。7ページですが、こういったことも踏まえた方向性として、どういった方向性で我々としては考えたいかというものを示させていただいております。先ほど申し上げた国内における適正処理が確保される限り輸出を認めないということについてはGATT第11条の輸出制限に該当し、また、第20条(b)の例外としても正当化されない可能性が高いので、適切な措置とは言えないのではないかと考えております。ただ、一方で、リサイクル目的で輸出される場合であっても、また、OECD向けであっても、輸出先における環境上適正な管理を確保していくことは必要であると考えておりますので、そういった方向も含めた見直しをしていきたいと考えているところです。
 報告書の方に戻っていただきたいと思います。バーゼル法見直しの方向性ですが、今の論点も踏まえまして、6ページです。一つはOECD加盟国向けに輸出する環境上適正な管理の確保の審査ということで、輸出先国がOECD加盟国であっても、OECD加盟国と非加盟国の違いを考慮に入れつつ、環境上不適正な処理が疑われるような場合については環境大臣の確認等の審査を行えることができるようにするべきであると考えております。
 また、既に輸出承認がなされた案件におきましても、バーゼル条約上の権限のある当局がしっかり情報収集した上で迅速に対応できるような措置を考えていきたいとしております。また、使用済鉛蓄電池に関しましては、OECD加盟国を仕向地とする輸出であっても、輸出先国における適正処理に関する確認を着実に実施するための具体的な措置を、今回の不適正処理の事案がございましたので、他の見直しよりも先駆けて対応していきたいと考えているところです。
 ○の二つ目ですが、環境大臣の審査基準が今はないということですので、こちらについては明確化を図っていくということ、それから、輸出承認の審査の中で資力保証等に関する書類についてもしっかり見ていきたいということを考えているところです。
 続きまして、雑品スクラップの不適正輸出に対する懸念を踏まえた水際対策ですが、こちらについては雑品スクラップが国内で不適正に取り扱われている。取り締まることはできないということ、それから、バーゼルに該当するかどうかの判断が難しいので、雑品スクラップがバーゼル法に基づく手続きを経ずに不適正に輸出されているというような指摘がございました。
 こちらについての論点としては、また資料2の方に行っていただきたいのですが、幾つか論点を頂きました。「すきま」問題をどうするかという点ですとか、未遂罪・予備罪をどうするかといったご指摘がございました。まず「すきま」問題ですが、御指摘いただいたのは、国内管理で廃掃法の見直しが行われているけれども、それで十分かということ、それから、水際対策をしっかりするべきではないかということ、それから、条約の4条7(a)について担保漏れがあるのではないかという三つの御指摘を頂いたと考えております。それぞれについて事実関係と考え方の整理をしております。
 9ページです。まず廃掃法につきましては、別途中環審の循環型社会部会廃棄物処理制度専門委員会におきまして検討が進められております。その中で、参考と書いておりますが、スクラップヤードの所在地などを行政機関が把握することができるようにするとともに、こうした使用済物品を他の金属スクラップ等と混合することを制限し、もって雑品スクラップに起因する生活環境への悪影響を防止するなど、使用済物品の運搬や保管に対して処理基準の遵守を求めることができるようにするなどの必要な措置を講ずるべきというような議論がされているということで、こちらの状況を見守ってまいりたいと考えております。
 それから、該非判断が難しいという話ですが、これは有害物の含有量をどういうふうに見るかということでございまして、バーゼル法の中ではサービス告示という告示に定めております。その中で重量パーセントで規定しています。ただ、その重量パーセントの分母をどうするかというのが不明瞭になっているということで、雑品スクラップの全体量で分母を取ってしまえば基準のパーセンテージに達することを逃れてしまうことができるということで、そういった重量パーセントの分母をどうするかといったところであるとか、構成部品別に定義するなどより明確化していきたいと考えているところです。
 それから、条約の4条7(a)の担保問題です。11ページですが、条約4条7(a)では、締約国が、国内の運搬処分を行うことが認められ、許可されている者を除くほか、運搬処分を禁止することを求めております。また、条約1条1では「有害廃棄物」というのは何かというのを規定しておりまして、これは国境を越える移動の対象、輸出入の対象になるものだと規定されております。バーゼル法では、外為法の輸出承認のときに、国内の運搬者も含めて、全ての運搬者、処分者について、どういったものを運搬するか、処分するかというのを確認して承認しております。そういったことから、この条約4条7(a)というのは担保されていると考えております。こちらは外務省の方にも確認して了解を頂いているところです。
 方向性ですが、今、申し上げたとおり、国内管理につきましては廃掃法の見直しで検討されているということもございまして、そちらに検討を譲りたいと考えております。それから、雑品スクラップの不適正輸出への対応という意味では、取り締まり現場での水際対策の強化ということで、該非判断基準の見直し等をしていきたいと考えておりますということです。
 続きまして、未遂罪・予備罪ですが、未遂罪・予備罪について御指摘があったのは2点ございました。未遂罪・予備罪を創設すべきではないかという論点、それから、逆に慎重に扱うべきではないかという御指摘がございました。未遂罪・予備罪を論点に含めるべきという点につきましては、島村委員の方から第1回で資料の御提出がございまして、それが参考で下に書いております。外為法で未遂罪・予備罪ができないのであれば、環境大臣の行政処分を外為法の外に設けて実施してはどうかというような御提案でした。それによる効果として、一つは手続きの透明化につながるのではないかという話、それから、二つ目は廃掃法等の手続きを併せることによって簡素化ができるのではないかという御指摘を頂いているところです。
 これにつきまして事実関係、考え方について御説明させていただきます。まずバーゼル法における申請手続きですが、上の三つ目までは具体的な手続きのことを書いておりまして、制度創設時の考え方としては、バーゼル法に基づく輸出承認申請というのは一元的かつ合理的な貿易管理の観点から、申請者に対して経産省が一元的な窓口となるということで、簡素で合理的な規制体系を構築する。申請者負担の最小化というのを実現するという趣旨で一本化したわけです。これについて環境大臣による確認を外出しいたしますと、経産省と環境省の二重窓口になってしまって、二重窓口での手続きが必要になるのではないかと考えております。それから、外為法で未遂罪・予備罪ができないかというところですが、これは15ページで整理しております。外為法は基本的に対外取引が自由に行われるということを基本としております。貨物の輸出は最小限度の制限で行うと規定されているところです。そういった中で武器や大量破壊兵器につきましては輸出許可制を導入しておりまして、いわゆるココム事件のときに安全保障が脅かされるということで、未遂罪の導入を図ったところです。一方で、バーゼル法と同じような並びにございます外為法に基づく輸出承認では、こういった未遂罪の導入等はされていない状況にございます。また、外為法全般にわたって予備罪も設けられておりません。こうした貿易管理上の統一的な整理がされている中で、バーゼル条約の担保法であるバーゼル法のみに未遂罪・予備罪を外為法の輸出承認の中で導入することは難しいのかなと考えております。
 それから、廃掃法での整理ですが、廃掃法が未遂罪・予備罪を入れた経緯というのは御承知のことかと思います。平成16年5月に中国に廃プラを輸出したことに対して、中国政府側から廃プラの輸入を禁止しますという措置が講じられたということで、これに対する対応として未遂罪・予備罪の導入が図られたという経緯がございます。
 それから、16ページの下のところの未遂罪・予備罪は実際にあったのかということですが、予備罪は確認されておりませんが、未遂罪については1件こういった事例がありますということです。
 こういった未遂罪・予備罪への対応もいわゆる抑止力が必要だということだと思うのですが、我々として考えている抑止力への対応という意味でやろうとしていることとしては、一つは17ページにある雑品スクラップの水際対策の強化ということで、何が特定有害廃棄物等に該当するのかどうかというところをしっかり分かるような判断基準を作ることが大事なのではないかと考えております。
 それから、18ページにあるとおり、先ほど申し上げましたが、国内管理の部分でしっかり見るという意味では、廃掃法の見直しの中で検討していってはどうかということです。方向性としましては19ページにございますが、雑品スクラップについては水際対策での強化をまずはしていきたいということでございまして、未遂罪・予備罪につきましては外為法での導入が難しいということ、それから、事業者から懸念の声もございました。また、窓口一元化ということの経緯を踏まえますと、ここで書いてある費用対効果というのは事業者側の費用対効果もございますし、行政側としての改正に伴う費用対効果みたいなところもございます。そういったことも踏まえれば、慎重にまずは考えるべきなのかなと考えております。そこにあるとおり、まずは雑品スクラップの水際対策の強化等によってどういった効果があるかというのを評価した上で、必要に応じてさらに考えていくということかなと考えております。それから、御指摘いただきました環境大臣の確認基準の透明化というところは別途の議論でさせていただいておりますし、二重手続きの改善につきましても別の部分でさせていただこうと考えているところです。
 それから、雑品スクラップの判断基準は20ページですが、こちらははっきりと判断できる基準が必要であるとか、他国の例も参考にすべきというような御指摘がございました。21ページは雑品スクラップ、混合スクラップの扱いということで、我が国では該当する判断基準が不明確な状況になっているということ、それから、先ほども御説明しましたが、分母の取り方が大きな課題になっているということです。
 22ページは他国の例ですが、バーゼル条約及びOECD決定では濃度によって分かれるような定義はしていません。それから、OECD決定では混合廃棄物という定義をしておりまして、グリーンになるものとアンバーになるものが混ざった場合にはどちらにするかという手続きが記載されております。カナダは日本と同じように濃度により判断する基準となっていますが、混合物についての扱いは明確ではございません。EU、ニュージーランドは濃度によって判断する基準は確認できておりませんということです。方向性としては、先ほどから申し上げているとおり、該非の判断基準がしっかり行えるような対応を考えていきたいと考えております。
 ということで、見直しの方向性ですが、報告書の方の8ページに戻っていただきまして御覧いただきたいと思います。まず取締り現場での規制対象物の認定の実現ということで、先ほど申し上げたように、特に該非判断がしっかり行えるように範囲の明確化と該非判断基準の整備を行うべきである。それから、バーゼル法に現在はサービス告示の制定の根拠がないものですから、それにつきましてもしっかり法律の方で法的根拠に基づいて定めるようにしたいと考えております。それから、国内に関する問題につきましては廃掃法の方で総合的に考えていくと記述しております。
 ③シップバック対応の円滑化です。我が国から輸出した貨物が相手国から「これはバーゼル物に当たる」として返された場合のシップバックの要請が非常に増えています。特に香港なんかが増えているという課題がございました。
 これに対する対応ですが、こちらも資料2の方にまた戻っていただきたいのですけれども、24ページです。前回、措置命令と行政代執行についてご指摘いただきました。御指摘いただいた内容としては、措置命令についてはバーゼル法の14条の中で「人の健康又は生活環境に係る被害を防止するため、特に必要があると認めるとき」との要件を満たす必要がありますので、それがネックとなって条約を担保できていないのではないかということでした。それから、行政代執行につきましても、行政代執行法2条におきまして「不履行を放置することが著しく公益に反する」という要件がございますので、それについて阻害要因になっているのではないか。特則を設けるべきではないかという御指摘を頂きました。それから、再輸入の際に廃掃法上の輸入確認であるとか、バーゼル法上の輸入手続きを外しておく必要はないのかという御指摘がございました。
 これにつきましての事実関係と考え方ですが、25ページを御覧ください。こちらにつきましては、私どもの方で内閣の法制局、それから、外務省の方に確認いたしましてまとめたものです。まずバーゼル法の14条の措置命令というのはバーゼル条約の不法取引とか、再輸入の義務に対する対応でございまして、相手国から通報が行われた場合に措置命令を検討することになります。通報を受けた場合には原則30日以内に引き取る必要があるため、措置命令を出す緊急性があるかどうかを迅速に判断する必要がありますということで、御指摘のあった人の健康被害を防止するために特に必要があると認められたときというのは、バーゼル法の目的の中で人の健康保護及び生活環境の保全という目的がございますので、その目的達成のために限り措置命令が出せるという義務付けを行う趣旨でございまして、確認的、入念的に定めたものであると考えるということです。
例えばとありますが、他の手段・方法、いろいろな行政指導をするなり、そういったことによってちゃんと持って帰れるということであれば、そこまで措置命令をする必要はないけれども、通常は通報を受けた場合には、緊急性に鑑みて、ここでいう人の健康に係る被害を防止するために必要があると認めるときと解されるのではないかということです。こういった整理で外務省の方からも条約上の規定は担保されているとの見解を頂いているところです。
 行政代執行につきましては26ページです。まず事実関係として過去に行政代執行を実施したケースがございますが、その際には代執行法第2条の規定が阻害要因とはなっておりません。これは法務省等にも確認いたしましたが、過去の裁判例とか、文献等では、「著しく公益に反する」か否かの判断は、行政庁に裁量権が認められます。公益性要件は行政庁にとって過去の裁判でも大きなハードルにはなっていなくて、実際に違法とされていた裁判例はございませんということです。他方でということで、「著しく公益に反する」と認めるかどうかについては、法令の趣旨・目的であるとか、義務違反の態様、義務違反を放置した場合の障害等を考慮して、慎重に判断すべきという見解を頂いたところです。
 バーゼル法で考えますと、措置命令を出した上で、30日を守らないといったときにどうなのかということですが、そういった場合には、ここでいう「著しく公益に反する」と考えられるのではないかなということで、裁量権の濫用・逸脱とされる可能性が高いとは言えないのではないか。可能性がゼロではないのですけれども、そういうことです。この場合でも、「しかしながら」とあるとおり、義務違反の態様とか、先ほど申し上げた義務違反を放置した場合の障害等を具体的に考慮する必要があるので、考慮の結果、必要があれば、30日の期限というのを相手国と交渉して、それを延ばすような努力も必要であるということです。こういった見解につきましては、外務省からも条約上担保できているということで回答を頂いております。
 それから、27ページの再輸入時の手続きですが、バーゼル法、廃掃法においては、シップバックされた貨物の輸入時に外為法上の輸入手続きは不要という規定がございますので、これは問題ございません。
 28ページは方向性ですが、措置命令の条件については、より使いやすくする観点から、迅速な措置命令ができるような対応を考えていきたいと考えております。それから、代執行につきましては、現在のところ、「著しく公益に反する」との要件が制約となって、それができなかったということもないものですから、そういう懸念も指摘がございますけれども、今回は特段の対応は行わないこととしたいということです。
 それから、主なシップバック事例の詳細です。29ページです。どういったシップバックをどういった理由で行われているのかということを示すようにという御指摘を頂きました。30ページにあるのは香港からのシップバックの事例です。使用済みの液晶モニターを香港に輸出したときに、直接再使用する目的と認められない限りは香港からは返されてしまうということで、国内法における該非判断としては該当するのが19パーセント、非該当は81パーセントでしたということです。次のページはタイの案件ですが、タイについては雑品スクラップについて廃電子基板と
 か、鉛が入ったものを送って、この雑品スクラップがバーゼルに該当するということでシップバック通報された例です。これは国内のバーゼル法でも該当するということです。
マレーシアの例は使用済みのパソコンを中古品として送ったところ、マレーシアの国内法では製造から3年を超えるものはバーゼル物に該当しますということで返されたということです。国内法ではもちろん該当しないということです。
 こういったことで、シップバックへの対応につきましては33ページにございますが、相手国の判断根拠も確認した上で、現地に物がある状態の中でも迅速に措置命令ができるような対応を行う方策であるとか、相手国の方でバーゼルに該当しますよといったものについては、何度も日本から送るようなことがないような対策を検討してまいりたいと考えております。
 ということで、資料の報告書の方にお戻りいただきたいと思いますが、9ページです。輸出先国の国内規制に応じた適切な輸出管理ということで、バーゼル規制対象かどうかを迅速に判断できる基準を策定します。それから、諸外国との政府間ネットワークの強化を行ってまいりますということです。それから、輸出先国向けのものについては、相手国でバーゼル法の規制対象と規定されているものについて規制対象物とする方策についても検討してまいりますということです。
 続きまして、報告書の9ページ以降を御説明申し上げます。OECD加盟国向けの輸出手続きの簡素化です。こちらはOECD決定で決められている事前同意施設で処理する場合は3年間の包括的な同意が与えられるという規定がございますが、これは現在日本では設定されておりません。こちらについても見直しの方向性の中で事前同意施設での処理を目的とする場合には輸出手続きを簡素化するべきであるという方向性で進めたいと考えております。
 それから、⑤廃掃法とバーゼル法の二重手続きの改善です。廃掃法とバーゼル法で環境大臣の確認が二重になっている部分があるのではないかという課題ですが、10ページにございますとおり、これについては両法に基づく審査内容を点検し、統一化を図ることにより手続きの重複を排除していきたいということです。
 続きまして、輸入です。廃電子基板等の輸入手続きの簡素化ということで、課題としては手続きによってEUとの競争上の不利がございますということです。グリーンリスト対象物については、EUではOECD非加盟国からの輸入に際しても、OECDの輸入と同様に扱っていますということです。それから、もう一つ、事前同意施設の場合には、最大3年間の包括的な同意を与える特例措置がありますということで、こういった面が日本の国内法では措置されていないので、競争上の不利があるということでした。
 こちらについてはバーゼル法の見直しの方向性が書いてあります。グリーンリストにつきましては事前の通告、同意手続きを不要とするなどの手続きの見直しをすべきであると考えております。アンバーリストにつきましても、事前同意施設で処理する目的で輸入する場合には外為法の承認を不要として、最大3年間の包括的な同意が与えられることとすべきである。ただし、この場合でも移動書類の携帯は義務付けるべきであると考えております。
 この点に関しては、資料2の方で、37ページの御指摘がございました。輸入した電子スクラップの行き先がOECD、非OECDに関係なくトレースして確認できるようにすることが望ましいという御意見でありますとか、アンバーリスト貨物についてはトレーサビリティを確保する必要がある、グリーンについては移動書類の携帯義務を課すのは逆に規制強化になるといったような御意見もございました。
こちらについての考えが下に書いてあります。特定有害廃棄物等の輸入については、今回の基本的考え方としては、環境汚染等が生じるリスクが低いと考えられる場合については手続きの緩和を図るべきと考えております。電子部品スクラップの輸入については、現在OECD加盟国からの輸入の場合で不適正に取り扱われた事例は確認されておりません。ということで、環境汚染が生じるリスクは低いと考えられます。そういった中でリスクに応じた対応を行うという基本的考え方に基づいて更なる対応が必要かどうか必要に応じて検討してまいりたいと考えております。
 報告書に戻っていただければと思います。続いて、11ページです。こちらは我が国に輸入されたものを返すときのシップバック対応の円滑化ということで、現在は輸入したものについては仮陸揚げのものであっても輸出承認が必要になっているということで、これが再輸出を事実上困難にしてしまっているという課題がございました。これに対する見直しの方向性としては、不法に輸入されたものを相手国に返す場合には、再輸出する際のバーゼル法に基づく外為法の輸出承認を不要とするべきであるという提案をさせていただいております。
 最後ですが、その他の課題と見直しの方向性として試験分析目的での輸出入の円滑化がございます。OECD決定では、試験分析用のものであって、25kg以下の少量のものであれば「事前の通告、同意」が不要という規定がございまして、これが日本の場合は試験分析目的での輸出入はあえて承認行為が必要になっているということです。見直しの方向性としては、輸入に関してはバーゼル法に基づく外為法の輸入承認手続きを簡素化すべきであると考えております。また、輸出についても、原則的には通常の手続きよりも簡易に輸出を行うことができるようにすべきと考えておりますが、それがために抜け穴にならないような留意が必要ということです。
 (4)は報告書の今後の課題です。今回は、平成4年の制定以来、約25年ぶりの見直しということで、本報告書で示された方向性を踏まえて、早急にバーゼル法の改正を含む所要の制度整備が行われることを期待するという御提案を頂ければと思います。それから、今回は大きな方向性を示しているのみですので、さらに技術的かつ詳細な制度設計につきましては、今後さらなる検討を行う必要があるということです。また、法の施行状況を踏まえた定期的な規制の在り方の見直しが必要であるということで、その執行状況を定期的にレビューし、制度の見直しを進めていくべきである。また20年後に見直すということではなくて、定期的に見直しましょうということです。
 それから、なお書きですが、廃掃法上の廃棄物にも該当する部分については、バーゼルの特定有害廃棄物等には廃掃法上の廃棄物も含まれますので、今回のバーゼル法の見直しに合わせて廃掃法でも見直しがされるべきであるということで幾つかの項目を挙げているところです。以上、報告書の内容について御説明させていただきました。それから、資料の2の方でその他の御質問等がございますが、こちらは事実関係のお話ですので、後ほど御確認いただければと思います。事務局からの説明は以上です。

○中村座長 どうもありがとうございました。ほぼ時間ぴったりというか、ちょっと早めに終わったぐらいで、大変ありがとうございます。
 議題はこれ1本です。どこからでもということになりますので、御質問、御意見がございましたら名札を立てていただければと思います。一通り御意見をお伺いして、それから事務局から御回答を頂きたいと思っておりますので、よろしくお願いします。今のところは清水委員だけです。あと、佐藤委員、どうぞ立てておいていただければと思います。よろしいですかね。それでは、質問、御意見を先にお伺いしたいと思います。では、佐藤委員からお願いします。

○佐藤委員 まず使用済鉛蓄電池の輸出に関してです。今回の見直しで輸出国での国内の環境配慮についてきちんと審査をするという方向性になったということは大変重要であり、また、必要なことであると思っております。その際、相手国で適正に処理されているかということの確認の内容なのですが、一般的に廃棄物の不適正処理というのは、処理能力以上に受け取り、横流しされているというパターン、それから、受け取って処理した後の物を不法投棄など不適正に処理しているというようなパターンがあると思います。
 従って、その施設におけるインプット量とアウトプット量、それから、処理後物の委託先、販売先、これを網羅的に確認するということ、つまり、マテリアルフローを確認するということが必要だと思います。現地に見に行って、その場で大気の汚染がないかとか、保管量が超えていないかと見るだけでありますと、そのマテリアルフローがつかみ切れないために、いろいろな問題が起きているということがあると思います。恐らく韓国では日本以外からもかなりの量の鉛バッテリーを輸入している。また、韓国の国内でも鉛バッテリーを回収しているという実態があると思いますので、全体のバランスを確認するということが重要ではないかと思います。
 それから、雑品スクラップについてなのですが、このスクラップの問題は国内法とのバランスもあるのだと思いますが、いわゆる輸出前の保管中でかなり問題が起きている。これは輸出と連携しておりますので、その点も加味しながら、廃棄物処理法とバーゼル法で連携を取って対応するということをお願いしたいと思います。以上です。

○中村座長 ありがとうございました。それでは、続いて、清水委員、お願いいたします。

○清水委員 日本鉱業協会の清水と申します。我々は、皆さんご存じだと思いますが、銅、鉛、亜鉛といった非鉄金属を作っている業界でございまして、原料として鉱石以外に、まさにバーゼル法の見直しで出していただいています使用済鉛蓄電池、あるいはE-scrapといったものを二次原料として扱っている業界です。昨年度に環境省で立ち上げていただきました越境移動に関わる検討会で我々の要望を述べさせていただきまして、その方向で今回はこういう見直しを進めていただけていると認識しております。そこは非常に感謝しております。
 あえて資料の4を準備させていただきましたので、付け加えたコメント、質問、お願いをさせていただきたいと思っています。まず使用済みの鉛蓄電池ですが、事務局からの説明もございますように、国内で発生する使用済鉛蓄電池の約3割から4割ぐらいがここ2~3年韓国に流出しているということで、我々の業界の国内の鉛製錬所でも原料調達で非常に頭を悩ませているという状況にございますが、今年の6月に韓国の11の事業所といったらいいのでしょうか、会社で不法投棄されているという問題が発覚したということです。
我々としては、そういう問題が起きれば、すぐにでもその操業が止められて、環境対策がされるのではないかと思っていましたが、韓国の方では操業停止にならずに、鉛蓄電池の輸出をそのまま継続しているということで、国内の法律に照らし合わせて止めるべきなのではないかというお願いをしましたが、従来の仕組みでは止められないということで、そのまま輸出が続きました。この資料に書いていますように、その後の進捗があれば御説明いただきたいと思います。
 今回のバーゼル法の見直しに当たっては、韓国のようなOECDの加盟国であっても、非加盟国と同様の環境上のチェックをするというような方向で検討していただいておりますけれども、同じような問題が起きた場合にまた同じように輸出が続いていくというようなことのないように、できるだけ早くスピード感を持った仕組みの見直しというのをぜひお願いしたいというのが一つ目のお願いです。できればスケジュール感も併せて教えていただければ、いつ頃までにどういったことをしていただけるのかというようなことを教えていただければと思っています。
 それから、もう一つ、E-scrapにつきましてです。2番目のところに書かせていただいておりますが、前回のこの場でE-scrapがどんどんどんどん入ってきて、国内の処理は大丈夫なのかという心配をされている方もいらっしゃいましたけれども、そこについてはまだまだ処理の余力もありますし、御心配いただかなくて十分大丈夫だと思っています。我々の事業所では適切な環境対応をきちっとしておりますので、環境問題を起こすというようなことはまずないと自信を持って述べさせていただきたいと思います。このE-scrapにつきましても、欧州で行われているようなグリーンリスト、アンバーリストのようなリストに分類して、環境上負荷の低いE-scrapなんかはグリーンリストに載せていただいて、我々の国内の適正な処理をしているところの事前同意施設というような形で、欧州と同じような、あるいはそれ以上の手続きの簡素化ができるような方向に進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。以上です。

○中村座長 ありがとうございました。それでは、一通りということで、次は森口委員です。

○森口委員 1点だけ先に申し上げたいと思うのですけれども、先ほど佐藤委員からも御発言があったところですが、雑品スクラップに関わるところで極めて具体的な質問をさせていただきたいのです。今日のシップバックの事例の中でタイの雑品スクラップの例がありまして、国内法の該非判断で該当すると書かれているのですが、これは国内バーゼル法に該当するという意味ですよね。廃掃法上はどう判断をされているのか。あるいは専ら物と有価物の関係等に照らして、こういうものは国内法上の廃掃法側でどういう判断をするのかということに関しては一番基本的なところかと思います。
 それから、水際うんぬんという話がよく出てくるわけですけれども、水際に行き着くまでのところでもう少しやることがあるのかどうかということに関して、環境省側で別途、中環審側で検討されていると伺っておりますので、そちらでの議論がどの程度進んでいるのかということについてお伺いしたいと思います。特に廃棄物の世界では分ければ資源で、混ぜればごみになるということが一般ですが、この世界はむしろ逆になっていて、混ぜれば資源になってしまうというようなことがあるとやはりよろしくないと思います。ここはバーゼルの検討であるということは重々承知しておりますけれども、廃掃法側でそこに関してもう少し詰める余地がないのかどうか。これは「すきま」問題ということと関連してくるかと思いますけれども、そのあたりの議論の状況についてお教えいただければと思います。

○中村座長 ありがとうございました。それでは、寺園委員ですかね。

○寺園委員 ありがとうございます。関連したところを御質問させていただきたいと思っておりました。まず認識としましては、今日資料に挙げていただいた香港、タイ、マレーシアからのシップバック事例については重要なものと思っておりますが、私が海外のバーゼル関連の研究者仲間と情報交換、あるいはワークショップ開催などを通じて得られる情報は他にも多々ありまして、例えば今年の9月にベトナムに日本から家電がスクラップとして輸入されたというものがありました。古紙として輸入されたけれども、これは問題ではないかということで現地メディアの方で取り上げられて、インターネットに動画付きで出ておりました。そういった内容について環境省にもお尋ねしたのですけれど、まだ日本の方には届いていないということでしたので、あくまでこうやってシップバックとして報告されるものは政府間のやりとりを通じて出てくるものであって、もしかしたら氷山の一角かもしれないという認識はあります。ですから、危機感を持ってもっと対応するべきだと考えております。
 例えばタイの雑品スクラップ等につきまして森口委員がお尋ねされた以外にも、この輸出者に対してはどういった手当て(調査)や、対応が最終的にされたでしょうか。事前にバーゼル法、廃棄物処理法では該当しないという事前相談、輸出者の判断がなされて、輸出に至ったものだと考えているのですけれども、それは妥当であったのか。もし防げるとしたら、どのあたりで対応が可能であったのか等の分析がなされていないと、結局、今回のお話では、いろいろ検討するけれど、変えられるところは少ないと言われているような気もします。せっかくシップバックみたいな事例があったり、あるいは私も時々立ち合います火災のようなことがあり、少ない事例ではあってもそういったところから我々がもっとなすべきことの対応を検討するべきだろうと考えております。この他に私も資料があるのですけど、説明時間は後の方がいいですか。

○中村座長 そうですね。一通り皆様から意見をお伺いして、回答を頂いて、それからまた。

○寺園委員 ありがとうございます。

○中村座長 それでは、次に島村委員ですね。

○島村委員 ありがとうございます。前回少し発言させていただいた点に関連して何点か申し上げたいと存じます。全体的な方向性として定義を見直して、水際で問題が起きないように予め対処するという方向性には賛成です。それは検討会の頃から指摘されていた一番重要な点かと存じます。
 私が今回指摘させていただきたいのは、「すきま」問題のところと措置命令関係のところです。未遂・予備については寺園委員から後で資料の御説明があると思いますけれども、仮に未遂・予備というのが水際対策で抑止力として意味があるのだとしたら、その創設を妨げる理由はないのではないかという観点からの発言です。検討会の報告書でそういう方向性を出されていて、それを創設しない方向性での根拠付けが今日の資料2で幾つかされているのですけれども、それが説得的でないということです。
 資料2でこういうものは設けられないのだと理由として、外為法で体系上難しいという指摘がありますが、これは私も理解しております。外為法ではなくて、廃掃法の現在の環境大臣の確認と同じような形で行政処分をくくり出して、そこでやるべしというような方向性が環境省の検討会の報告書で出ていたわけですが、それに対して一元的かつ合理的な貿易管理の観点から、輸出承認申請一本で行くのだということが14ページの第4項目で指摘されています。しかし、既に廃掃法では同じような手続がございます。廃掃法の廃棄物と特定有害廃棄物等というのはかなりの部分が重なっておりまして、物としては同じものが両方の対象に入っているというものがかなりあるわけです。概念上もあるし、実態上もあると思います。したがって、ここでは一元的かつ合理的な貿易管理の必要性から、そういう制度設計ができないということにはならない。これは前に申し上げたとおりです。
 二重窓口での手続が必要になるということもありません。事前相談とかいう形で事前に両方の役所に行くことも多いと伺っておりますし、いずれにせよ廃棄物に該当しそうなものについてはどっちにも行かなくてはいけない。そして、これも検討会の報告書で指摘されていたことですが、環境上、輸出先で問題を生ずるかどうかの確認というのも同じようなことをやるわけですね。片や、廃掃法の場合には外為法の手続きに入る前に前さばきで環境大臣がやる。片や、バーゼル法の場合には、輸出承認申請があった後、バーゼル法の中の埋没した手続の中で環境省がやるということで、タイミングとしてばらばらの対応になっている。それを一元化した方がいいのではないかという御意見も、検討会のときに事業者の方からも指摘されていたと記憶しております。
 資料2の19ページですが、外為法での導入の困難性というのは確かにそのとおりだと思いますけれども、未遂罪・予備罪の導入についての事業者からの懸念の声というのもあるようですが、廃棄物該当性と比較をすればより明確な構成要件になっておりますので、杞憂ではないかと思います。費用対効果で法制度設計を変えるのに役所がどれぐらい大変かということは、私は分からないことですので、それが理由だと言われれば、それ以上私は申し上げられません。しかし、これを導入できない法的・制度的な理由はないのだと思います。
 もう一つは措置命令ですが、手短に申し上げたいと思います。この要件はない方がいい、あると条文上、条約の不担保ということになると思います。これは具体的な事例を想定していただければ明らかですが、例えばマニラからシップバックした事例で、倉庫に保管されていた貨物が人の健康や生活環境にかかる被害を防止するために、それを直ちにシップバックするような必要性があるとは条文上読めないわけですね。これはチンタオに輸出されたプラスチックのごみもそうです。それが人の健康や生活環境にかかる被害を生じるということはまずないわけでして、普通の国内法の条文の解釈であれば、こういう要件が入っているとまず措置命令を打てない。法解釈上そうなります。だから、大気汚染防止法でもこういう法益侵害要件というのは近年、2010年でしたでしょうか、削除したという例もあります。法益侵害要件を欠いている場合に無理に措置命令を打つと、それは取消訴訟で負ける、違法な処分ということになりますので、法制局が実際に何と言ったのかは分かりませんけれども、これがあると条文上、法律が条約にあっていない、不担保だということになると存じます。
 代執行のところですが、事実のとらえ方に誤りがございます。資料2に挙げられている過去の代執行の事例はマニラの事例かと思いますが、これは前回も申し上げましたが、宇都宮地検ですけれども、検察はバーゼル違反では起訴できないと判断したということです。外為法違反では起訴されて有罪になっていますが、ここでの議論の脈絡では、あまり参考にならないケースです。また、資料2で過去の裁判例、文献でこの要件が阻害要因になって処分が取り消された例はないというのは、そのとおりかもしれませんが、ここでの問題は、こういう「不履行を放置することが著しく公益に反する」という要件があるから、行政代執行をし難いのです。それは経産省、環境省所管の法律だけではなくて、一般的にそういう認識かと思います
 ただ、一般の行政処分の場合はこの要件があるからできないということになるかと思うのですけど、今回の場合、条約上基本は代執行をやらなければいけない。事業者がシップバックしない場合には基本的にまずはやらなくてはいけないというときに、この要件があると足を引っ張ることになる。この要件を簡易代執行のような形で削除しなければなりません。こういう簡易代執行を認めている法律は幾らでもあります。廃掃法もそうですので、そういうふうに整理する方が条約と整合的だと申し上げているわけです。もしこの要件が阻害要因にならないのだったら、簡易代執行を定めた法律はなぜそんな行政代執行法の特則を認めたのかということになります。過去の法律の改正がまるで意味がないのか。それは必要があるから改正しているわけでして、これがくびきになるから、過去の立法者は改正をしているということです。そういう立法者の態度と平仄が合う考え方として、これはこの条約の下では削除すべきだということです。

○中村座長 分かりました。ありがとうございます。それでは、崎田委員、お願いします。

○崎田委員 ありがとうございます。2点ほど申し上げたいと思います。1点目は、今回、ちょうど韓国に送られたものが不適正処理をされたという、その辺のきっかけがあったわけですけれども、そういう意味でOECD加盟国への輸出の審査に関しても、今までは審査がなかったわけですが、そこはきちんと審査していくような方向で考えるということがきちんとこの報告の中にも書いてあります。方向性としてきちんと打ち出していだたいたというのは大変ありがたいのではないかと考えています。
 もう1点なのですが、雑品スクラップ全体の適正な流れに対して今回詳細に検討が加えられているのですけれども、島村委員の御発言をいろいろと伺いながら思ったのですが、社会の一般通念から言って、ここのところはやはり未然防止という視点が大変重要なわけで、量で言えば、発生抑制がずっと循環型社会で言われているわけです。そういう意味で今回は未遂罪・予備罪の検討の可能性ということで、随分考えていただいた上で、法律としてそういう検討は今回難しいというようなお話です。ただし、こういう視点が大事だということ自体はきちんと入れておいていただいた方がいいと思うのです。
 こういうような意見が出ていることがこの報告書のどこに出ているのか。いろいろと先ほどから見ているのですけれども、それに該当するところが私にはよく分からなかったので、どこがそういうコメントか教えていただき、そこの書きぶりとしてはこの委員会で委員から指摘が出ていることを明確に書いておいていただければありがたいと思いました。どうぞよろしくお願いいたします。

○中村座長 ありがとうございます。それでは、小島委員、お願いします。

○小島委員 2点お話ししたいと思います。一つは未遂罪・予備罪に関してですけれども、廃掃法で資源性の低いものについては未遂罪・予備罪があるけれども、バーゼル法の汚染性が高いものをどう考えるかというところで未遂罪・予備罪がないというのは少しバランスが悪いのかなと思っておりますし、きちんと未遂罪・予備罪を何とかうまく入れられないかなと思います。
 2点目は報告書の11ページのところですけれども、我が国に不法輸入された特定有害廃棄物等のシップバック手続きの整備のところで、整備することは必要だと思いますが、その一方で、マレーシアとか、シンガポールのバーゼルの担当官とお話ししたときに、有害廃棄物の適正処理施設がない国から送られてきたものをそのままシップバックしていいのかというような議論をしたことがあります。実際にそういうケースもシンガポール、マレーシアでもう既に起きていると聞いております。シップバックする先によっては、送り返すことで逆に非難を受ける可能性もあるかと思いますので、少しその辺は留意いただいて、手続きを考えていただければと思います。以上です。

○中村座長 ありがとうございました。齊藤委員、どうぞ。

○齊藤委員 ありがとうございます。今回の見直しは20年ぶりのということで、特に資源的価値がいろいろなものに生まれてきたというところで大きくいろいろな見直しが行われているかと思うのですけれども、バーゼル条約の本来の目的というのが、最初のところにも書いてありますように、人の健康の保護及び生活環境の保全ということで、途上国のそういったものを守るというのが第一義かと思います。それについてはちゃんとできているのかという点について考えたときに、シップバックの問題というのはすごく大事に考えていくべきではないか。アジアの中で日本という先進国が途上国からおかしいのではないかと言われるという事態自身を恥ずかしいと考えて、起こったら措置命令をどうするかという話ではなくて、シップバックをとにかくなくすということにもっと言及いただいてもいいのかなと思いました。
 今回三つの事例が書かれていますけれども、例えば香港・マレーシアについては、先方の見解の相違とか、非該当とかいう話がありました。であれば、それをきっちりと擦り合わせるなり、周知するなり、そこをして、次からは発生させないための努力を一つ一つしていかなければいけないと思います。もう一つあったタイの事例は明らかにおかしな事例だと思いますので、それをまさに厳しく防止するために、今、議論されていますガイドラインをできれば厳しめにきっちりと規定するということです。また、物だけではなくて、輸出企業の確認です。資力の確認もすべきという話になっていますけれども、加えて、ブラックか、ホワイトかというところもきっちりと確認した上で、とにかくシップバックをなくすというところに日本としてもっと力を入れていくべきではないかと思いました。ここできちんとしたガイドラインが示されれば、出口がなくなり、不適切な回収をする業者も多分事業をやめていくと思いますので、今いろいろ御指摘されている、ヤードとか、国内の保管とかの問題にも資するのかなと思った次第です。以上です。

○中村座長 それでは、馬場委員、お願いします。

○馬場委員 ありがとうございます。前回の会議のときにお尋ねした点にご回答があったので、それについて触れたいのと、もう一つ気になった点がございます。まず1番のWTOや資源確保の問題についてです。前回も申し上げたのですけど、国内事業者の競争力が高まったり、あるいは国内で資源を循環させていくということは賛成すべきことと思っております。ただ、今回例に挙げていただいたような中国のレアアース輸出制限の事例は、日本も反対しています。日本が同じようなことをしてはいけないのではないかと思っております。WTO上もいろいろ問題があるということですので、1番目の論点に挙げていただいているような国内処理の推進や、環境条約や、自由貿易との関係については慎重に進めていただくのが良いと考えます。資料2スライド7の「方向性」で挙げていただいているような方針で進めることに対しては賛成したいと思っております。
 もう一つ、未遂罪、予備罪の件は非常に難しい問題で、法律にお詳しい先生方のような専門的な意見ではないかもしれないのですが、一方で、資料3の出利葉委員のコメントの中で予見性の低いリスクにも過度な影響を及ぼすのではないかというご懸念もあり、慎重に検討した方が良い問題ではないかと思っています。やはり資料2スライド19に「方向性」としてまとめてくださっているように、まずは水際対策を強化し、その効果を評価し、必要があればまた検討や対策を講じていくというように慎重に検討した方がいいのではないかと感じました。長くなりました。以上です。

○中村座長 ありがとうございました。髙村委員、お願いします。

○髙村委員 ありがとうございます。2、3申し上げたいと思います。まず前回の議論を受けて資料を作っていただいてありがとうございました。幾つか私自身が言い間違えたのか、はっきり発言の趣旨を申し上げられなかったのかというところがあるのです。
 一つ目は、環境省の検討会の見解で国内処理ができる限りは輸出をしないといったことについて、それを前提として検討されているのが資料の2だと考えております。検討会の詳細は私は存じませんけれども、間違いなく報告書(案)と資料の2のトーンが若干違うような感じがいたしました。つまり、報告書(案)では極めて明確に書かれていると思うのですけれども、バーゼル条約もWTO諸協定も、いずれも当然に日本が締約国となった条約ですから、両方が齟齬がないようにそれを実施していくということだろうかと思います。従って、私の言葉が多分足りなかったのだと思うのですけれども、むしろ私が申し上げたかったのは、バーゼル条約4条2の、私は(d)と言ったつもりだったのですが、(b)と(d)はリンクをしておりますけれども、いわゆる越境移動の最小化と国内処理の利用可能性の確保という、ここをWTOルールとも齟齬がない形で、どういう形で適切な措置が取られているのかどうかということについてお尋ねをした、問題提起をした趣旨でありました。
 今回、基本的事項告示に書かれているということで御紹介いただいて、これは非常に大事なところだと思うのですけれども、若干やはり基本的事項告示のところで文言等を見たときに気になりますのは、国が先ほど言いました越境移動の最小化を確保するために適切な措置を取ると書いている4条2項の(d)について例えば例に取っても、それは国の務めることという形の表記にとどまっている等のところで、果たして越境移動の最小化に適切な措置を取っているということがこれで十分かどうかという内容の点は少し検討が必要なように思います。
 逆に言いますと、今回の幾つかの事例では、先ほど韓国の使用済鉛蓄電池の例がそうかもしれませんけれども、実際にはこうした問題が起きているということで、今回提案をしていただいている方向性はバーゼル条約の4条のある意味ではここの2の(d)と(b)を踏まえた上で、輸出ができる最低条件として4条9が定めているところに加えて、日本として追加的に実施を行うものと私は理解をいたします。そういう理解で良いかどうかということです。そうであるとすると、ある意味ではWTOルールと齟齬がない形で措置を取っていただくことは大変重要なバーゼル条約の4条の2の国内実施という意味では1歩進めたものであると評価をいたします。
 その際に、この報告書(案)の6ページのところです。その観点からいくと、細かく3点あるのですけれども、OECD加盟国向けの輸出と非OECD加盟国向けの輸出について、その対応を変えるということが逆に先ほどのWTOルール等の関係で望ましいのかどうかという点が一つです。
 二つ目が、これは佐藤委員が先ほど適切におっしゃったので、繰り返すとあれですけれども、不適正処理が疑われるような場合というのが果たしてどのようにきちんとスクリーニングができるのかという点です。これは詳細について詰めていくということだと思いますので、しっかりどういう形でこれを審査していくのかということについてはお願いをしたいと思います。
 細かな点の3点目ですけれども、基本的事項告示の内容にその内容を反映していただきたいということです。今回追加的にこうした措置を取るということになったときに、これをここに反映をしていただきたいということです。
 本質的には以上ですけれども、一つ、きちんと私の発言の趣旨がうまく伝わらなかったところだと思っているのですが、資源ナショナリズムの点について回答を頂いております。資源ナショナリズムを追及する趣旨は全くございません。基本的に先ほど言いましたようにバーゼル条約をいかに国内においてきちんと実施をしていくか。その上でWTOルールと齟齬がない形でということですが、同時に日本の政策として「日本再興戦略2016」でもあるように、どうやって資源を有効に作っていくかという政策的な考慮は一つ念頭に置いても良いのではないかという趣旨でありました。私の言葉が多分足りなかったためだと思いますけれども、基本的にはバーゼル条約の国内実施という観点から発言をさせていただいたつもりです。以上です。

○中村座長 ありがとうございます。それでは、一通り頂きましたので、事務局から御回答をお願いいたします。

○田中室長 すみません。たくさん御指摘いただきましてありがとうございます。漏れがあるかもしれませんけれども、順にお答えしたいと思います。
 一つ目の佐藤委員の方から鉛の輸出に関してマテリアルフローも含めてしっかり確認すべきではないかという御指摘を頂いております。韓国も含めて鉛蓄電池の輸出先の状況を確認するにしても、そこをどう確認するのか。しっかり確認しないと意味がないという御指摘だと理解しました。全く御指摘のとおりだと思いますので、今後の検討の中でしっかりと処理能力等も含めて、どうやって確認していくかということも含めてよく検討していきたいと考えております。
 2番目の御指摘として雑品スクラップの関係で、廃掃法とバーゼル法でよく連携するようにという御指摘だったと思いますけれども、御指摘のとおりだと思います。特に政府側でいいますと、環境省のバーゼル法の担当は廃掃法の担当もやっているということですので、そういったところも生かしながら、両法が連携しながらやっていきたいと考えております。
 2番目は清水委員の方から、韓国で不正な事案があったということについて最近どうなっているのかというところについての御質問があったと思います。そこにつきましては、韓国の事例があってからは、我々もまさにバーゼル条約の手続きにのっとって、韓国側に「こういうことがあったけれども、輸出してもいいのですか」ということを確認してまいりました。そこについては、事案が起こってからすぐは韓国側もそこは確認がなかなか取れないということで、しばらく返事がなかったのですけれども、最近になって韓国の中での鉛蓄電池の処理という意味では違法な状態は、今はなくなったということが回答として得られているという状態です。ただ、いずれにしましても、現在の法律の中でできることというのは限られていて、それが不十分ではないかという御指摘はそのとおりかと思っておりますので、こういう問題がもう一回起こったときにまた同じような感じになるというのは良くないと考えております。
 そういう意味で、御指摘のペーパーで頂いている中に鉛蓄電池のところの対応を早くやってほしいというような御指摘を頂いておりましたけれども、全く我々もそのとおりだと思っておりまして、報告書の中に他の対応に先駆けてやるべきだと明記させていただいたのはそういう趣旨です。スケジュール感という意味ではまだあまり具体的なことは決まっていないですけれども、我々としては例えば韓国の鉛蓄電池の話も踏まえて、鉛蓄電池についてはしっかりとOECD向けであっても環境面の確認をしていくという措置については省令改正でできるのではないかと思っているところもありまして、そういう意味では法改正のスケジュールの前にできないかと考えているところです。
 また、清水委員の方からは電子部品スクラップの関係、E-scrapの関係でヨーロッパとの競争上の不利を解消してほしいというところにも御指摘いただいております。そこは我々も全く同じ認識でございまして、報告書の中にもそういう方向で我々も対応していきたいということで書かせていただいております。
 森口委員の御指摘については、廃掃法の話でしたので、すみませんが、回答は後ほど環境省の方からいただきたいと思います。
 寺園先生の御指摘は、シップバックの事例をよく分析して、それで対応を考えるべきではないか。例えばタイの事案について、どうしてこういうふうになったのか。事前相談があって輸出されているのか。なぜそこでブロックできなかったのかという御指摘だと思います。そこについては我々も確かに分析がやや足りないところもあるのかなと思いますので、これまでの案件についてどうだったのかということを今後分析していきたいと考えております。
 島村先生の方からは、未遂罪・予備罪のところについて第1回のときに御指摘を頂いております。それについての考え方はパワーポイントの資料で回答させていただいているとおりでございまして、我々としては島村先生のような考え方で、環境大臣の確認制を廃掃法と同じようにバーゼル法でもやっていくというやり方はテクニカルにはあるというところは理解しますけれども、パワーポイントで御説明したとおり、このタイミングでやるという意味ではなかなか難しいかなと正直思っております。今やるべきことという意味では、まず、水際対策をしっかり強化して、雑品スクラップがしっかりと手続きされていくこと、不法輸出が止まっていくこと、そういったことが大事かと考えています。
 ただ、一方で、これは崎田委員の方からもありましたけれども、御指摘いただいた、ここで議論したことが報告書に書かれていないのではないかという御指摘は、私もそのとおりかと思いますので、どういう記載ができるのか検討したいと思います。
 措置命令と行政代執行のところについては、条約等の担保の観点もありますし、実際問題としても不都合があるだろうから削除すべきではないかという御指摘だと理解しております。ここについては、これも繰り返しになってしまうかもしれませんけれども、外務省にも確認をして、条約との担保というところについては問題ないというところも確認を頂いているというところですので、条約の担保という意味では何らかの対応する状況ではないと考えています。
 また、使いにくいのではないかというところについては、我々としては現行の解釈でできると考えておりまして、措置命令についてはよりやりやすくなるような対応については論点に書いているとおりやっていきたいと思っておりますけれども、代執行の特則については現時点ではなかなか難しいのかなと思っております。他法令にはそういう特例があるというのも事実ですけれども、それは多分それぞれの個別にいろいろな理屈があって、そういう規定があるということかと思いますので、そこは個別に判断ということかと考えております。
 崎田委員の御指摘は、先ほど申し上げたとおり、報告書に未遂罪・予備罪の議論のことが書いていないという点については、書きぶりを検討したいと考えております。
 小島先生の方からの御指摘で、送り先によっては輸入したものを送り返してしまうと輸出先が処理できない場合もあるのではないか。そういう点に留意した方がいいのではないかという御指摘だったと思います。そこについてはそのとおりかと思いますので、送り返す場合にはその行き先についても留意しながら進めていきたいと考えております。齊藤委員の方から頂いた御指摘については、シップバックが起きたときの対応というの
 もあるけれども、そもそもシップバックをなくしていくことが大事なのではないかというものだったと思います。それについては、アジアに日本が輸出したものが戻ってくるというのはいい話ではないというのは御指摘のとおりかと思いますので、香港とか、いろいろな個別事案についても検証して、なぜこういう感じになっているのかということも踏まえて、同じような話が何度も繰り返すということがないようにやっていきたいと思っております。その意味でも雑品スクラップのガイドラインをしっかりやることが大事ではないかという御指摘だったと思いますが、我々としてもしっかりそのガイドラインの基準を作っていきたいと考えております。
 馬場委員の方からは、WTOとの関係も踏まえて対応していくということで、方向性としては良いのではないかという御指摘でした。未遂罪・予備罪のところについても予見可能性というような、事業者からの意見というのも一応踏まえつつ、今やっていく対策をやっていきながら慎重にやるべきではないかという御指摘を頂きました。
 髙村委員の方からは、今回の鉛蓄電池の不正事案を踏まえた対応というのが、これまでの対応に比べて一歩進めたものという理解でいいかという御指摘だったと思いますけれども、私は一歩進めたということかと理解しているところです。
 OECDと非OECDで対応を変えているというところについてWTO上どうなのかという御指摘がありましたが、そこは、すみません、私もすぐには分からないところがあるのですけれども、OECD理事会決定というのがあって、バーゼル条約があって、バーゼル条約の中でもOECD理事会決定というのはちゃんとした取り決めだという形で位置付けられているので、国際的な決まりに従ってやっているという意味では適切ではないかと思っているところです。
 不適正処理の韓国の鉛の事案について、しっかりと防ぐという観点から、環境上の措置を確認していくという制度を今後やっていくに当たって、そこはどういうふうにやっていくのかしっかり詰めるべきではないかという御指摘は全くそのとおりだなと思っております。佐藤委員の話と同じと思いますけれども、今後しっかりと詰めていきたいと考えております。
 告示に反映してほしいというところを御指摘していただいておりまして、それについてもそういう方向で検討していきたいと考えております。ちょっと抜けがあったかもしれませんけど、私からは以上です。

○中村座長 1点だけ、森口委員に環境省の方から御回答をお願いいたします。

○工藤室長 補佐タイの事例に関してですが、該当というのはバーゼル法上の該当です。廃掃法上は該当と判断しておりません。有価性があるということ、典型的な雑品スクラップの状態ですので、廃掃法上の該当という判断はしておりません。
 寺園委員からの御指摘とも関連しておりますが、こういったものは氷山の一角であるということは国際会議などの中でも言われているところでして、今回のタイの事例について申し上げれば、事前相談の中ではいわゆる対象物、実際貨物に含まれているものを多少限定的に申告することで非該当というふうな事前相談の回答を持って出ていったと。ただ、実際の貨物の中には事前相談で言ったものではないものも含まれていたことで、返ってきたのを見たら該当となったということです。事前相談制度自体にそういったところの不正確な判断が下る状況にあるというのは昨年の検討会でも御指摘いただいたところでして、今回の検討の中に含まれてはおりませんが、今後の進め方でどのように改善していくかというのは環境省、経産省で検討しているところです。以上です。

○中村座長 ありがとうございました。どうぞ。

○相澤室長 すみません。森口先生からはもう1点御質問を頂いていると思っています。廃掃法側の検討状況という形で御質問を頂いていたかと思います。水際で行き着く先の話を廃掃法側の議論ではどういうふうな形になっているのかというようなところの御質問だったかと思っております。
 こちらについては資料2のいわゆる「すきま」問題というところ、9ページの方の資料で参考という形で書かせていただいておりますとおり、現在、中央環境審議会に、廃棄物処理制度専門委員会という委員会を設けまして、その中で論点整理の論点の一つとしてこういった雑品スクラップを扱っているようなスクラップヤードについては処理基準の遵守を求めるようにするなどの必要な措置を講ずるべきではないか御議論いただいているところです。必要な措置の中身に、水際の話まで入ってくるのかどうかという話だと思っておりますが、そちらについては現在まだ御議論いただいているところです。来週、こちらの専門委員会を開催しようと思っておりますので、御指摘という形で受け止めさせていただいて、来週の議論の中で御議論いただくという形がよろしいのかなと思っているところです。

○中村座長 ありがとうございました。御質問に回答いただいたのですけど、御質問いただいた方で事務局の回答でよろしくなさそうな顔をされているのですが、よろしいですか。頂いた資料で、寺園委員からの資料を御説明していただいていないので、それの御説明をお願いしていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○寺園委員 資料の5で提出させていただきました。お時間を頂戴しましてありがとうございます。バーゼル法改正に向けた論点というような書き方をさせていただきました。今までの議論がありました未遂罪・予備罪の話が1点と輸入された電子部品を中心とするスクラップのトレーサビリティの2点について提示させていただいております。
 1点目の未遂罪・予備罪につきまして、本日も経産省からの御説明の中でその考え方をお示しいただきました。外為法の中で考え方が整理されていて、対外取引に対して必要最小限の管理または調整ということが外為法第1条の中で、自由貿易の確保という観点で非常に重要な大原則を提示されていると理解しております。この中で安全保障関係が除外されているが、それ以外のバーゼル法の対象であるような有害廃棄物について、これも除外に入るのか、入らないのかというのが私なりの論点であります。除外ができないといった場合には果たしてどういった対応が可能かということで、これまでは雑品スクラップの判断基準の明確化でまずは対応ということを言われていると理解しております。2枚目のところでは、水際を中心としました現在の対応状況ということを私の理解で書かせていただいています。私は法理論的なことはあまり通じておりませんので、あくまで現場を見た感触から、現状はこのような感じであって、どういった手当てができるのだろうかということを考えております。上から下に行くに従って、国内の保管、輸送の段階から、事前相談がある場合もあり、外為法に基づく輸出承認申請がなされ、関税法に基づく輸出申告がなされ、貨物の積み込み、相手国到着といった手順で進んでいくというふうな表にしております。バーゼル法に基づいてバーゼル物として輸出される場合は外為法に基づく輸出承認申請がなされ、そこで経産省が審査され、その後で税関が関税法に基づいて輸出承認をされるということになって、バーゼル物として輸出されたものについて基本は問題なかろうと思います。
 私が問題としたいのが、バーゼル物ではないということで、事前相談がされたり、されなかったりして輸出される場合に果たしてどうやって止める手段があるだろうかということです。当然国内での段階では何の情報もありませんので、バーゼル法としては対応することは難しく、廃棄物処理法などでの対応ということになるかと思います。事前相談がもしされた場合、貨物の内容についての情報はあるのですけれども、事前相談の数が年に数万件ということで、書面だけでは物の疑義を押さえるということは難しいだろうと考えております。また、その疑義が果たして指摘された場合でも、「この輸出をやめます」ということでキャンセルができて、輸出者がキャンセルされる場合であっても、未遂罪・予備罪がないわけですから、バーゼル法として何も問うこともできない。行政的な指導はできると聞いております。
 事前相談があった場合でもそうですが、ない場合も含めて、関税法に基づく輸出申告の後が言ってみれば唯一の水際での防波堤となり得るわけですけれども、ここでバーゼルの手続きがなされていないとすると、税関によって関税法以外の他法令確認、要するに、バーゼル法等に違反していないだろうかということを税関が判断して、そこで「これは怪しい、問題があるな」と言った場合には、虚偽申告罪等の適用がされるということを理解しております。
 ただし、ここでそこまでの判断を税関が行って適用されるかどうかということは非常にハードルが高くて、現実的には無理だろうと考えております。それがあったとしても、税関が問題を指摘された場合に、経産省、環境省にも御連絡がされて、行政的な対応がされる、指導等がされるということでありますけれども、未遂罪・予備罪がありませんので、司法的な対応は基本できないということで、ここでも抑止効果が働かないということです。積み込みがなされたら、法的には(輸出の)既遂扱いになるので、ようやくここでバーゼル法の適用が可能になると考えておりますけれども、実際は積み込んだら輸出がされた後ですので、そのまま輸出されてしまうであろうというのが私の現場を見ての率直な感覚です。ですから、この赤で囲っている部分に対してバーゼル法として未遂罪・予備罪の効果が期待できると考えておりますし、廃棄物処理法と同様のことを少なくとも水際のところでは検討するべきではないかと考えております。
 次のスライドが今申し上げたことを少し文章にしたものです。必要性、効果としまして私が申し上げているのは、特に悪意を持った輸出入に対してを想定しております。バーゼル条約の第4条でもイリーガルトラフィックについては犯罪ということが書かれています。これは条約を読み直してみて、当然のことが書いているなと思いましたけれども、果たして犯罪という認識を持って現在の国内法が担保されているだろうかということについては、私個人としてはまだ疑念を持っております。
 それに対してバーゼル法の実効性を持たせることが必要であると考えております。条約では第4条、第9条でこの不法取引の防止と処罰ということをできる国内法(含む対策)を締約国に義務付けていますので、そういった観点からは先ほどのバーゼル法の未遂罪・予備罪がない状態で、その不法取引の防止と処罰ということができていると言えるだろうかということに疑問があるわけです。そして、先ほど申し上げましたけれども、既遂に対する規制のみでは不十分ではないか。輸出が既遂となった状態では対応はほぼ困難であり、税関にとっては非常にハードルが高い業務を要求されているのではないかと考えております。
 この効果としまして、悪意を持った輸出入そのものに対する実効性もそうですが、そのグレーな部分に対しても当然抑止効果が働くということは非常に大きいと思っております。また、廃棄物処理法で未遂罪・予備罪がありますので、国内の段階、あるいは水際の段階でも両方で対応することができる。つまり、この雑品は廃棄物処理法ではどうだけど、バーゼル法ではどうだろうかというようなことで、先ほどのような議論をせずに済む場合があるかもしれない。両方で連携してやった方が効果的であると考えております。また、輸出者による事前相談の内容の信頼性向上も期待できると思っております。
 課題としては、過度な規制に対する懸念は確かにあるのですけれども、現在の廃棄物処理法の未遂罪・予備罪の適用実績を考えると、そこまで懸念は大きくないだろうと考えております。
 続きまして、輸入されたスクラップのトレーサビリティの問題です。これはトレーサビリティを付けた方がこういった効果が期待できるということで書かせていただいております。特定有害廃棄物等として、電子部品スクラップ等が輸入された場合に対して、国民や輸出国に対してどういった説明などが可能であろうかということを考えたものです。
 韓国では鉛バッテリーリサイクルに対して今年6月に事案が発生しておりますが、それを我が国に照らしてみて、同じようなことが起きないと果たして言い切れるだろうかということは念頭に置いております。そして、最近数年間も輸入量が増加しておりましたけれども、今後さらに輸入されるということを想定した場合、既存の実績あるリサイクル業者ばかりとは限らない。せめてトレーサビリティは確保しておくべきではないかなと考えております。方法案として、ここでは例えばとして書いておりますけれども、移動書類の携行、または環境省、あるいは自治体の確認ということがあり得るだろうと考えております。課題、検討事項としましては輸入・リサイクル業者の負担ということで、(他の)委員からの御指摘もありましたけれども、調べてみますと、欧州でも移動書類の携行ということは輸入国の中で義務付けられているので、それと同等の条件だろうと考えております。また、別の課題としましては、国内の関連規制との関係として、国内での廃棄物等の定義、あるいはマニフェストとの関係がありますので、それについては調整を行う必要があると考えております。以上です。ありがとうございました。

○中村座長 ありがとうございました。今の御説明に対して、これは事務局からの回答という形で必要ですよね。

○寺園委員 もし可能であればそうですけど。

○中村座長 可能であればということ。ということですが、可能でしょうか。

○田中室長 未遂罪・予備罪のところの御指摘は、先ほどお答えした中身と同じになってしまいますので、そこは省略したいと思います。一つあるのは、確かに水際を止めるにしても、その基準をしっかり作っていくというだけでは駄目で、それをいかに実施するかというところが大事かと私は思っております。そういう意味では税関とかというところとの連携というか、そういうところでしっかりとエンフォースしていくのが大事かと考えております。
 事前相談のところも信頼性向上というような御指摘を頂いておりましたけれども、そこも大事かと思っております。基準が曖昧なので、なかなか事前相談の質が上がっていないという気もしますので、そこは基準をしっかりと作っていくことと並行して、事前相談の質の向上というところをやっていきたいと考えております。
 スクラップの話ですけれども、ここについてはグリーンリストというところで、我々の今回の整理としては電子部品スクラップの輸入というところについては規制緩和をしていこうと考えております。そういった意味で電子部品スクラップのリスクという意味ではグリーンリストということで、アンバーリストに比べれば、リスクが低いということかと考えております。OECDからの輸入については現在でも移動書類を携帯しておりませんということもありまして、パワーポイントの事務局の資料で一番最後のところに御説明しているとおりですけれども、我々としてはそこについては今時点では何かやるというのではなくて、まずは規制緩和をしっかりやって、必要があればまた検討したいと考えているところです。以上です。

○中村座長 寺園委員が言われていた特定有害廃棄物というのは、OECDの中でグリーンリストに載っている基板のことを指していらっしゃるのですか。

○寺園委員 はい。

○中村座長 あれは特定有害廃棄物ですか。

○寺園委員 はい。(「該当するものとしないものがあり、該当するものを念頭に置いた意見です。」に訂正します。)

○中村座長 なるほど。はい、どうぞ。

○出利葉委員 先ほどヨーロッパでトレーサビリティを確保するために、いわゆるシップスケジュールのような携行書類を必要とするとおっしゃられたと思うのですけれども、中南米とか、そういうところからヨーロッパへ輸出されている電子基板くず等の動きを実際に見てみますと、書類は実際に出されています。ただし、最終のリファイナリーまで持ち込まれて、そこでサインをされて戻されるという処理は一切なされていないというのが現状のようですけれども、その辺はいかがでしょうか。

○寺園委員 戻すというところは確かに担保されていないのだと思うのですけれども、ヨーロッパの中では移動書類の携行というところが義務付けられていて、それは何かあった場合に、これは一体どういったものかの確認が取れる体制が取れているということかと理解しております。

○出利葉委員 その書類が戻ってきたものも私も確認させてもらったことが何度もあるのですけれども、現実には輸入当事者、コントラクターがサインして、そのままぽんと戻しているという状況でして、例えばある製錬所に最終的に持っていきますよというものに対して、その荷物に携行されているという状況にはなっていないようです。これが一つです。それから、もう一つ、先ほどお話がありましたように、バーゼル条約の中でやっていくということになれば、特定有害廃棄物の越境移動に伴うという言葉になってくるのだと思うのですけれども、グリーンリストというものに関しまして、「これは有害廃棄物ではないですよ」というものが基本的にはグリーンリストに載ってくるものと理解をしております。同じように今の日本の法律でいけば、携行書類をもってというような形になっていると思います。ここを規制緩和していくという部分に関しましては、グリーンリストに載っているものというのがどういう意味かといいますと、特定有害廃棄物ではないという考え方の上でグリーンリストということになるのかと思うのですけれども、そこの部分に関してアンバーリストやレッドリストと同じような扱いをする必要性がないのではないかというのが今のヨーロッパで実際に行われている規制だと思います。
 それに関しまして、私どもも同じように輸出入というのをやっておりますけれども、やはりいろいろな部分でのディスアドバンテージというものがあるわけなのです。実際のグリーンリストにきちんと載せられるものに関しましては、できるだけの規制緩和というのをやっていただければ。まして日本の例えばいわゆる鉱山、精錬業というものは世界に冠たる技術力と環境保全力というのを持っておりますので、そこの部分を緩和していくということに関しては、あまり大きな問題が今後出てくるのではないのではないかと考えるのですが、いかがでしょうか。

○中村座長 これは何か御意見がございますか。

○萱嶋課長補佐 御指摘ありがとうございます。1点確認したいのですけれども、バーゼル条約における有害廃棄物というのは基本的には有害廃棄物として我が国の法律で特定有害廃棄物等と当てはめているものでございまして、私どもの認識といたしましてはグリーンリスト対象物、あるいはグリーン、アンバーといった色分けというのはあくまで廃棄物全体の色を分けているというだけですので、グリーンリストに入っているから、直ちに特定有害廃棄物等ではないということにはならないと思います。また、OECD理事会決定ではバーゼル条約上の「廃棄物」の回収目的での越境移動全般について規定をしておりまして、アンバーでないグリーンリスト対象物についても最低限の要件等が定められているという点だけは念のため申し上げておきたいと思います。

○乗田委員 よろしいでしょうか。

○中村座長 はい、どうぞ。

○乗田委員 先ほどの中村座長の御指摘にあった電子基板は有害物かうんぬんかだと思うのですが、私ども現場を預かる者として、私どもの会員が中国などに行っていわゆる一般の雑品スクラップとして出ていった中で実際に向こうでより分けられて、フレコンバックというのですか、その中に電子基板がたくさん入っている。これは何を意味するかというと、彼らは電子基板が欲しいのですよね。私も詳細は存じませんけど、あの中に金とか、いわゆる高価なものが入っている。では、なぜそれがいけないかというと、基板ですから、当然ハンダで、それに鉛が入ると、そこの絡みだと思うのですね。
 私は今日の報告書を見せていただいて、非常によく経産省の方がきっちりこの間の議論を踏まえてまとめていただいていると思っているのです。また、各委員の方がいろいろ御指摘になっております。実際に税関の方なのか、どこか分からないけれども、どういった形で視認して、有害物を水際で止めていただけるのかということを突っ込んで、我々はお聞きしたいと思っております。これまでも経産省の方といろいろ事前の打ち合わせ、環境省の方とも含めて事前の打ち合わせをしていますけど、この危機感というのかな、この問題意識は共有させていただいていると思っております。よろしくお願いします。

○中村座長 他に今のところはよろしいですか。どうぞ。

○島村委員 未遂のところは寺園委員がおっしゃった点がそのとおりかなと思います。検討会でもそういう方向性が出されていて、細田先生も、中村先生もおられて、寺園先生も、小島先生もおられて、こういう方針が環境省事務局で、経産省もおられる中で方向性が出されて、それが全く今回の報告書に出ていないというのは大変違和感があります。私が申し上げたかった点は、それを阻む法的な問題点はないということです。実効性の観点から必要なのだったら法的に作り込むことはできるので、それを検討会の方向性に沿ってやればいいのではないかという趣旨で申し上げました。
 行政代執行について、ちょっとくどいようですが、もう1点だけ補足をいたしますと、先ほど田中室長に御説明いただいた点についてです。26ページ目で御説明いただいた点ですけれども、外務省が現行法で良いと言ったということなのですが、外務省が何と言ったかなのです。外務省に対して「ちゃんと措置命令を打ちます。健康上の影響とか、生活環境被害とかが特になくても大丈夫です。裁量だから打てます」と言えば、外務省はその法令の解釈に権限がないので、「では、条約との関係では大丈夫ですね」と言うと思うのです。
 「健康や生活環境被害が切迫していない場合には措置命令はできません」と説明したら外務省はどう答えるのか。「それはやってください。それはバーゼル条約上書いてあります」となるのではないか。資料2は、条約9条の5に立法裁量ということが書いてある、措置命令も代執行も立法裁量のはずだという趣旨なのだと思いますが、この条約の9条の5は不法取引を防止し、処罰するための法令の話で、シップバックとか、行政代執行のところで、生命・身体、生活環境上の被害などは考えられないので、我々はそういう手立ては打ちませんという国内法をもつということになれば、それはやはり条約違反になるということではないかと思います。外務省の方はこのテーブルにおられないから、伝言ゲームみたいな感じで、外務省はどういう解釈をして、これとバーゼル法が合致をしているというのかという点が不明瞭です。そういう点がまだ残っている。御説明ではクリアになっていないという点を補足したいと思います。以上です。

○中村座長 はい。

○小島委員 寺園委員の発表を聞きながら少し考えたことなのですけれども、未遂罪・予備罪との関連で雑品スクラップの火災の件です。雑品スクラップはバーゼル条約では自然発火しやすい物質、または廃棄物も規制対象になっていて、実際に自然発火したようなものに関してこれまであまり処罰とかというのはなかったと理解をしているのですけれども、それで本当にいいのかどうかということを含めて、未遂罪・予備罪を適用するというような可能性も含めて少し考えてもいいのではないかなと思いました。意見です。

○中村座長 ありがとうございました。川瀬委員。

○川瀬委員 未遂罪・予備罪の話に限定してですか。それとも何でも構いませんか。

○中村座長 何でも構わないです。

○川瀬委員 分かりました。先ほど髙村先生のOECD向けと非OECD向けで適用を変えることがWTO協定上整合的かどうかというご質問について田中室長の方からお答えがあったのですけれども、その部分については、恐らくGATT第20条柱書の「同様の条件の下にある諸国の間において任意の若しくは正当と認められない差別」になるかどうかというところで議論しなくてはいけません。OECD向けと非OECD向け、つまり、どの国で向けあるかということの地理的理由だけで、画一的に輸出承認手続の適用を変えるということにもしなるとすれば、それは恐らくWTOの先例に照らすと協定整合性は怪しいと私はお答えをします。
 ですので、基本的にはOECD向けと非OECD向けという区別を持ちながらも、今回の韓国のような事例があった場合は、相手の国の処理能力や処理の実態に合わせて適用を変えていくということの方がむしろ先例に照らせば協定整合的に運用できる、そういう意味で今回の鉛蓄電池については、韓国向け輸出についてはもう少し水際のところできちんと見ていくというやり方の方が、OECDか非OECDということだけで一律的に切るよりも、よりいいのではないかと思います。
 それから、私は先ほどから「みにくいアヒルの子」のような気持ちでずっとここに座っているのですが、というのも、バーゼルを御専門になっている委員の皆様方というのは廃棄物の輸出を止めるのが当たり前だという前提でお話をされるのですが、WTOをやっている人間からすると全く逆でして、止めた国が全て責めを負い、そして、説明責任を負うというのがWTOの原則です。ですので、例えば先ほどのシップバックのお話も、私はずっと聞いていて、「おかしいな」と思っていたのですけど、シップバックが起きることが廃棄物の輸出管理体制が甘い日本として恥ずかしいのではなくて、シップバックをして、それを水際で止めている輸入国が悪いのだというのが、はっきり言えばWTOのロジックです。
 それで申し上げると、もちろんシップバックが起きないに越したことはありません。それが適正な廃棄物処理の基準に従って輸入国の方がきちんと運用していれば、それはそれでいいのでしょうけれども、香港の液晶ディスプレイの件でしたか、相手がどういうふうに基準を運用しているか不透明で、あるケースはシップバックする、あるケースはしないという事態があるといお話を事前打ち合わせのときに田中室長から伺ったのですが、これは輸入制限であるかどうかということ以上に、こうした恣意的で不統一な輸入許可制度の運用は、規則の法令の透明性と一貫性のある運用について義務を課すGATT第10条への不適合が疑われます。
 むしろそういう怪しいケースについては、逆にあなたたちはどういう基準でシップバックをするもの、しないものというのを決めているのですか、と確認すべきでしょう。もちろんあなたの基準が統一的で合理的に運用されていれば、我々は判断を尊重しますが、そうでなければ、これは逆にWATT第10条に違反しますよ、ということで、相手にどういう基準でシップバックを決めているのかの説明責任をきちんと求める。その結果、多くの方がおっしゃるとおり、日本が出すときにきちんと輸出承認の運用ができていないということであれば、それは我々側の問題です。しかし他方で、輸入側のきちんとした規則の運用ができているのかどうかということを逆に今度はWTO協定を使って相手にきちんと説明させるということも、上記のようなケースでは必要ではないかと思いました。

○中村座長 時間がもう厳しくなってきているのですが、ある意味やっと佳境に入ってきたなというのが私の実感です。一言ずつ短めにお願いいたします。だんだん本質的な議論に入ってきて、これをやり出すと多分この時間帯ではとても終わらないような話だろうと思っております。これに関しても、予定時間を過ぎているのですけど、問題提起みたいな形でしたら、森口委員、何か。

○森口委員 2点だけ申し上げたいと思います。最終的にこういう専門委員会のミッションは報告書をちゃんとまとめるということだと思います。そういう意味では極めて総論的な話なのですが、報告書の中で、資料1ですが、5ページに輸出入等の規制の在り方に関する課題と見直しの方向性ということで、先ほど川瀬委員の御発言の中でそもそも基本的なところの考え方が全然違うような話もあるわけですね。ここは基本的考え方ですが、輸出と輸入とまた差があるのです。そもそも基本的考え方で輸出と輸入でダブルスタンダードであってはいけないはずなのです。輸出と輸入の各論がそれぞれ違うということは分かるのですが、それを貫くもっと基本的な考え方が本当はあるべきで、それがなくて、各論の話がいろいろ書かれているような気がするものですから、そこのところはある種のプリアンブル的なものになって、あまり意味のないものになってはいけないのですけど、それは書いていただかないといけないのかなと思います。
 それから、各論に戻って恐縮なのですが、小島委員も御発言になった寺園委員の資料のうち、時間の制約で御説明がなかったのですが、参考の中に「すきま」の問題が書かれていて、それと報告書との関係でいうと7ページに雑品スクラップの話が書かれていて、ここの国内で廃棄されたものの中に、環境上適正な管理が十分行われていないままうんぬんということで、明らかに環境上の問題があるということを割に明示的に書かれているわけですね。
 一方で、先ほど廃掃法では非該当ですというお話があった。廃掃法の問題なのかどうか分からないですが、現実にこういう問題がある、先ほどの火災の話もそうなのですけど、そういう問題があって、ここで対象としている法律の範疇かどうか分からないですが、現実に問題があって、法制度で対処できないということであれば、この専門委員会の議題かどうか分かりませんけど、それはやはり対処しなければいけないはずです。ここの報告書の中に問題があると書いていながら、答えがないというまま放置するというのはまずいのではないかなと思いますので、そこの点をちょっと御注意いただければと思います。

○中村座長 寺園委員。

○寺園委員 今の雑品の問題についていろいろ御指摘があったところで、私はそれに対する切迫感の問題かなと思っております。確かに火災が起きても、今のところ人が亡くなったりした例はありませんけど、明らかにこの(スクラップの)山はおかしい。火災まで(何度も)起きていて、それに対して廃棄物処理法、バーゼル法で基本的な対応ができていなくて、火を消して終わりというのが現状です。これに対して一体何ができるのかということです。
 御対応案としては判断基準ということを出されてはいるのですけれども、果たしてそれがどれぐらいのスケジュール感で、どれぐらい明確に実効性を保てるものなのかということについてまだ懸念は持っております。例えば今まで申し上げなかった観点ですが、条約の附属書の2の方である家庭から出る廃棄物は特定有害廃棄物等で「その他の廃棄物」ということで、これも規制対象である。家庭から出てきているものがここにあるよねというふうな、そこまで分かりやすい判断基準を持ってくれば、税関の方もある程度のことができるかもしれない。それぐらいのことも含めた非常に大胆な対策を出していく必要があるかなと考えております。御検討をお願いしたいと思います。

○中村座長 ありがとうございます。ただ、本日の委員会の中で判断基準の中までには突っ込みませんので。はい、どうぞ。

○髙村委員 簡潔に申し上げます。1点目は森口委員がおっしゃった第1点目について同感です。
 2点目は、結論的に川瀬先生がおっしゃっていたように私も賛成です。田中室長がおっしゃったように、国際的な決定に従ってきちんとバーゼル条約に位置付いているという意味では、確かにWTOのスクリーニングといいましょうか、それをクリアできる一つの大きな根拠だと思いますけれども、他方で、バーゼル条約の10条に基づいていると思いますので、基本的に非締約国との間での取引を認めるためという位置付けのOECD決定だと理解しております。その中の具体的な措置については、今回は検討されているような内容まで踏み込んで書いていないので、そういう意味では結論は川瀬先生と同じなのですが、むしろ国ごとに差を設けるよりは、それぞれの処分施設の能力等の判断基準を明確にした上で措置を検討される方がよいのではないかということです。以上です。

○中村座長 ありがとうございます。まだ何かありそうな感じです。前半はゆっくり終わるかなと思ったのですけど、後半は皆さん盛り上がって、ちょっと時間的に落ちてしまいました。いろいろ検討すべき点はまだあるというのは認識しております。最後に、多分細田先生が一言もおっしゃっていないので、何かございましたら。

○細田座長 ありがとうございます。前回で私は中村先生に振るのを忘れていたのに、今回は私を忘れずにいてくれて感謝いたします。時間もありませんので、大所として切迫感という話がありましたけど、そもそもなぜバーゼル条約ができたのだろうか。ココ事件とカリンB号事件ですよね。カリンB号事件はどこに切迫した人体上の問題があったのだというと難しです。海を船がさまよっているわけですから、直接的に環境上の影響はないわけです。だけど、全ての港で寄港を拒否されたということからバーゼル条約はできたのであって、それを抜きにして自由貿易を語っても無意味だと私は環境経済学者として思っています。それは別として、もう一つは未遂罪・予備罪の議論に関しては、やはりここまで議論した痕跡をとどめないということはこの手の審議会として説明責任を果たしていないということになると思います。絶対にそれは書くべきである。それをどうするか。私は意見がありますが、時間がありませんので、それは言いません。
 それから、もう一つ、報告書6ページ、韓国の例の鉛バッテリーの不法投棄に関してなのですけど、14社のうち11社が違法行為をしていたといういわば構造的な問題ですよね。ご存じのとおり、経済的なこういう犯罪というもので構造的な問題が起きて、たかだか6カ月で解決されるというのは、私は経済学者として思いにくい。こういうものはトラディショナルに残ってしまいます。それで相手がオーケーだと言ったから、OECDの国だからいいでしょうというのは、形式的にはそうなのでしょうけど、我が国としてやはりもっと調べる必要があるのではないでしょうか。これをやらないで、もう1回起きたら、私は本当に両省は責任を問われると思います。両省の適正室と指導室の存続はこれでいいのかという問題にまでなると私は思っています。だから、それを防ぐために我が国としてどこまでやったのかということをある程度示すべきだと思っています。すみません。ちょっと長くなりました。以上です。

○中村座長 ありがとうございました。そういう意味だと、バーゼルに関わらないという意味では非常に私が個人的に危惧しているのはリユースですね。リユース目的という形で出ていってしまって、これはバーゼルに全く関わりませんので、その下でいろいろなことを。逆に言うと、該当するときはリサイクル目的よりもリユース目的の方が多分多いのではないかなというのをちょっと懸念しております。そのあたりがちょっと心配ではあります。
 この後、どういうふうにこれをまとめていくかというのは、今日最後の方でちょっと盛り上がったので、どういうふうにするかというのは事務局と御相談します。そして、今日頂いた御意見を事務局で修正したものをまた皆さんにお送りして、それで御了解を得るのか。予備日が1日ありますので、それを使うかを含めて、事務局と細田座長と相談して決めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 せっかく御意見がたくさん出てきたところで打ち切るというのはすごい気が引けるのですが、時間的にも今日は遅く始まっておりますので、このあたりがいいところかなと思っております。今日の議論としてはここまでとさせていただければと思います。それでは、事務局にお返しいたしますので、よろしくお願いします。

3.閉会

○田村管理官 ただ今座長からありましたとおり、本日の御議論を踏まえた今後の進め方については事務局で両座長と御相談させていただいた上で、皆様にあらためて御連絡させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。本日の議事要旨及び議事録ですけれども、産業構造審議会のルールでは議事要旨を翌日までに公表することとしております。恐れ入りますが、本日の議事要旨につきましては前回同様事務局に御一任くださいますようお願いいたします。議事録につきましては事務局にて原案を作成いたしまして、後日、委員の皆様に御確認いただく予定ですので、よろしくお願いいたします。また、本日の資料につきまして御希望があれば郵送させていただきますので、事務局にお申し付けいただければと存じます。
 それでは、以上で、第2回中央環境審議会循環型社会部会、特定有害廃棄物等の輸出入等の規制の在り方に関する専門委員会、産業構造審議会有害廃棄物等越境移動ワーキンググループ合同会議を終了いたします。長時間御議論いただきまして誠にありがとうございました。

以上