環境情報専門委員会ヒアリング(第1回)議事録

日時

平成20年4月4日

議事内容

午後1時32分 開会

○細野企画調査室長 では、ただいまから中央環境審議会総合政策部会の第1回環境情報専門委員会ヒアリングを開催いたします。
 まだお見えになられていない先生もおられますけれども、いずれお見えになると思いますので、始めさせていただきたいと思います。
 きょうは、お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。なお、植田委員、和気委員、恒川委員につきましては、本日はご都合によりご欠席とのご連絡をいただいております。
 きょうは、環境省の生物多様性センターの鳥居センター長、また国立国会図書館総務部の企画課電子情報企画室の田中室長にヒアリングでのご発表をお願いしております。また、専門委員の環境研究所の森口委員にもご発表をお願いしております。よろしくお願いいたします。
 まず、お手元の配付資料の確認をさせていただきたいと思いますが、議事次第のところに配付資料一覧という形で書かせていただいているところを対照していただければと思います。まず、資料の1といたしまして、これは環境情報専門委員会の委員の名簿でございます。それから、資料の2が生物多様性センターからの報告資料ということで、「生物多様性情報の収集・保存・低唱」というものをいただいております。それから、資料の3といたしまして、国立国会図書館からのご報告をいただく資料でございまして、「国立国会図書館におけるデジタル情報の収集・保存・提供の取組み」でございます。それから、資料4といたしまして、森口専門委員からいただいております資料でございまして、「整備・提供すべき環境情報の範囲・質等について」というものをいただいております。
 以上の4つの資料がお手元にあるかと思いますが、もし不足するようなものがございましたら、事務局のほうにお伝えいただければと思います。
 早速でございますけれども、今回のヒアリングの趣旨について簡単にご説明させていただきたいと思います。
 環境情報の収集や発信などを行っております、さまざまな関係者の皆様にヒアリングをさせていただきまして、特に特徴ある取り組みについてのご報告とご意見を伺いながら、今後の環境情報戦略策定の参考としたいと思っているところでございます。そこで、4月から6月まで三、四回のヒアリングを行うこととしておりますが、きょうはその第1回目といたしまして、テーマを「環境情報の収集・保存のあり方」としてヒアリングを進めてまいりたいと思っております。
 次に、きょうの進め方についてご説明をさせていただきます。
 まず、1番目の意見発表者でいらっしゃいます生物多様性センターの鳥居様から、生物多様性センターの情報収集・提供・保存の現状について20分程度のご報告をいただきました後、委員の皆様や事務局からの質問を10分程度想定しております。それ以降、同じような流れでございまして、2番目の意見発表者であります国立国会図書館の田中様より、国会図書館での電子情報を中心とした情報収集・提供・保存の紹介をしていただきたいと思っております。3番目の意見発表者であります国立環境研究所循環型社会・廃棄物研究センター長の森口委員からは、お二方からご発表いただきました報告を踏まえながら、整備・提供すべき環境情報の範囲や質などについてコメントをいただきまして、最後に1時間程度、皆様にご議論いただければと思っております。
 進行につきましては浅野委員長にお願いをしたいと思っております。では、浅野委員長、よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、お集まりをいただいてありがとうございます。ただいま室長から説明がありましたような趣旨でございまして、委員会としては、昨年度、さまざまな議論を進めてまいりましたけれども、今年度は、まず当初の段階ではヒアリングを行うことになっております。
 では、最初のご発表をいただきたいと思います。ご紹介がありましたように、生物多様性センターの鳥居センター長にお願いをいたします。よろしくお願いいたします。

○鳥居センター長 自然環境局生物多様性センターの鳥居でございます。当センターは、今、ちょうどお手元のほうにパンフレットをお配りしておりますけれども、このパンフレットでございます。このパンフレットのほうにも沿革が記載されてございますが、10年前に生物多様性条約を踏まえた第一次の生物多様性国家戦略というものが平成7年に策定されてございますけれども、そういう中で生物多様性の情報拠点を構築していくということで、ちょうど10年前にセンターが山梨県の富士吉田市、富士山ろくに設立されたものでございます。
 これからは、ちょっとパワーポイントを用いましてご説明をさせていただきたいと思います。

(パワーポイント)

 先ほど申しました生物多様性国家戦略は、今まで2回の改定を経まして、昨年11月に閣議決定されました第三次の生物多様性国家戦略におきましては、情報整備に関するいろいろな行動計画が第2部の中で、ここの特に2のところですね、調査・情報整備の推進というところに、いろいろこういうことをやっていくんだということが列記されてございます。ここに黄色い字体で書いてありますのは、自然環境保全基礎調査の推進だとか、生態系総合監視システムの構築だとか、いろいろなことが書いてございますけれども、これらについて、今どういうことをやっているのかということをご説明していきたいというふうに思います。
 パンフレットにもありますけれども、当センターの機能は大きく4つございます。1つは自然環境保全基礎調査、あるいはモニタリングサイト1000、これは後ほどまた詳しく説明しますけれども、こういった国土の自然環境の状況を調査するという役割です。これは自然環境保全法という法律の第4条に基づいて、30年以上やっている基礎調査ですけれども、そういうものが中心になっています。それから、センターができてから、いろいろ標本だとか資料だとかを集めておりますし、さらにこういった調査、標本資料のデータをウェブサイト等で普及していく、情報発信していく、あるいは生物多様性に関する普及啓発を行っていくという、大きく4つの機能を果たしております。
 まず1つ目、情報の収集・保存ですけれども、主な項目を列記いたしますと、基礎調査、それからモニタリングサイト1000、それから標本・資料。そして情報の提供ですと、J-IBISというふうに言っておりますけれども、生物多様性の情報システム、インターネット自然研究所、最後にCHM、生物多様性情報クリアリングハウスメカニズムという、大きくこの3つの項目がございます。それぞれについてこれからご説明をいたします。
 基礎調査は、先ほども申しましたように、自然環境保全法第4条に基づきまして昭和48年から、もうかれこれ30年以上やっております。陸域、陸水域、海域、生態系・総合、遺伝的多様性という、これらの項目について主にずっと調査をしてきたものでございます。
 基礎調査のデータといたしましては、ここにお示ししましたような自然環境に関する情報のほかにも、保護地域に関するこういった情報もございます。ちょっと時間の関係もございますので、この黄色く塗った現存植生の調査と動植物分布の調査につきまして、ちょっと詳し目にご説明をしたいと思います。
 現存植生図というのは、まず環境影響評価だとか地域計画、土地利用計画だとか自治体のこういう計画策定のベースマップとしての役割があります。
 そして、当初は5万分の1で全国を網羅していたんですが、第6回の自然環境保全基礎調査、これは平成11年からになりますけれども、そこからは2万5000分の1の縮尺レベルで今作成をしているところでございます。2万5000分の1の図幅は、全国で約4,500枚の地形図がございますけれども、現在進捗が約4割というふうな状況でございます。
 当初は都道府県に調査を委託してやっていたんですけれども、県ごとにばらつきがあったりするのを是正する関係から、全国を8つのブロックに分けまして、これは一般競争入札で民間の調査会社に調査をしてもらうとともに、ブロックごとにばらつきが出ないように、全国的な精度管理の業務をまた別途行っているという状況でございます。
 そして、現在は作図の段階からGIS等を導入いたしましてGIS化を図っているということでございます。
 具体的にちょっとご紹介します。第2回から第5回の調査は、5万分の1のスケールで植生図をつくってございました。これがそのものでございます。これは同じような縮尺で比較できるように、2万5000で同じ場所を見ていますけれども、見ていただきますように、この色の違いが植生の凡例の違いでございまして、よりきめ細かな情報が今載っているということでございます。現在、国土の約4割が整備されているということでございます。
 これは私どものセンターがございます近く。これは富士山ですけれども、植生図の例ですね。2万5000分の1のの植生図、あるいは、ここに植生凡例があって、カラマツ林だとかアカマツ何とか帯とか、いろいろあるんですけれども、全国で約700ぐらいの凡例があります。日本は南北に広くて、植生も非常に多様に富んでいますので、それぐらいの凡例になるわけですけれども、こういう図をずっと整備してきているというものでございます。
 次に、動植物分布調査の中でも、代表例といたしまして哺乳類の分布調査の結果をちょっと紹介したいと思います。これはヒグマ・ツキノワグマの分布の変化でございますけれども、2つの時点で調査をしております。1978年と2003年の時点の調査ですけれども、1978年のみ生息していたのが、この赤いメッシュ、それから2003年のみの生息が、この黄土色のメッシュ、両方の時点でいたのが緑のメッシュでございますね。そういうことで、赤いところでいなくなって、この黄土色のところで分布が拡大したというふうにご理解いただければいいかと思うんですが、生息区画数、あくまでもこれは目撃確認ですけれども、1.2倍に分布が拡大した。こういう結果は、例えば四国なんかでは、むしろ絶滅のおそれが非常に広がっている。こういうところは消滅しているとか、西日本というように都道府県ごとの大型哺乳類、ツキノワグマ・ヒグマの保護管理に役立っているというものでございます。
 これはニホンジカでございますね。北海道なんかではもう道東から、さらに西部のほうへどんどん分布が拡大しているとか、関東近辺でも非常に分布の拡大が傾向として見られます。約1.7倍ですね。メッシュの数でいいますと20年間で1.7倍にふえているというものでございます。
 次にご紹介いたしますのは、モニタリングサイト1000というプロジェクトでございます。これは、第二次の国家戦略を受けまして平成15年からスタートしたプロジェクトでございます。目標は、生態系の状況を把握し、継続的にモニタリングをすることで、種の減少、生態系の劣化といったものを異変をいち早くとらえて保全の施策に貢献していこうということでございます。課題はたくさんあるんですけれども、大きく4つ掲げさせていただいているのは、限られた予算でどういうところに調査地点を配置して、どういうことを調査するのかということだとか、それを継続的にやっていく調査体制をどうやって維持していくのかとか、その結果をどう分析して、どう保全施策へ活用していくのかとか、また、そういう情報発信というものをどうやってやっていったらいいのかというようなことが掲げられてございます。
 これは、それぞれの生態系のタイプごとに調査というんですか、モニタリングの体制とか調査項目、モニタリング項目が違ってまいります。例えば森林ですと、コアサイトと一般サイトというふうに分けて設定をしています。コアサイトというのは、毎年こういった植生の概況だとか、これは100メートル四方のコドラートを設けまして、その中の樹木を毎木調査をしていくわけですけれども、そういったものを毎年やるのと、一般サイトというのは3年に1回とか5年に1回とか、限られた予算ですので、めり張りをつけながらやっていこうということです。それで、実施体制も、私どものセンター職員がそこで調査をするというわけにはいきませんので、試験研究機関、大学なんかの協力を得ながらやっていっているとか、一般サイトは野鳥の会とか地域のNGOの協力を得ながらやっていくというような形で体制を組んでございます。
 モニタリングサイト1000につきましては、別途お手元のほうに「100年の自然の移り変わりをみつめよう」ということでパンフレットを用意させていただいております。こういうふうに、結構研究者だけではなくて、地域のNGOの方にもかかわっていただいているということで、非常にすそ野の広い調査でございまして、約6,000人ぐらいが全国で今かかわって、さらに里地の一般サイトなんかも募集をかけておりますので、将来的にはもっとかかわる人が増えていくんじゃないかと思っております。
 これは19年3月─これ、失礼しました。20年3月ですね。すみません。20年3月です。20年3月の合計で824カ所のサイトですね。今、ちょうど里地については一般公募をしまして、一般の方、NGOの方なんかの参加を求めまして、目標150カ所の登録・設定を目指したところ、目標を超える応募があって、今選定作業をやっているところでございまして、それらが終わりますと、大体今年度当初には1,000カ所のサイトの設定が終わるのかなと思っております。全国をこういう10の区域、生物多様性保全のための国土区分というのが、この赤い線で仕切ってありますけれども、そういう中で均等にこういうサイトを配置してモニタリングをしていこうということでございます。
 平成15年、2003年から第1フェーズ、5年間始まりまして、19年度までの5年間で1,000カ所程度の設置を目指すということでいます。まだ若干残っている部分がありますけれども、今年度からはいよいよ第2フェーズということで、これから5年間は本格的なモニタリングを開始していって、5年ごとに区切ってレビューをしていきつつ、結果を評価して生物多様性保全施策のほうに生かしていこうというふうに考えております。
 こういう結果を情報発信していくのは、これは環境省の私どものセンターのホームページで、モニタリングサイト1000というページがございまして、そのトップページを切り張りしたものでございます。このモニタリングサイト1000の趣旨だとか、どういうところにサイトが設定されているのかとか、そこでトピックス的なニュースみたいな、こういうものが見つかりましたとか、こういうものがわかりましたというのは、まだ十分ではないんですけれども、これからいろいろこういうところで発信をしていこうというふうに思っております。
 さっきの冒頭の第三次戦略のところでご紹介しました生態系総合監視システムというものを構築していこうというのが掲げられているんですけれども、今のところ、私ども、こういうふうな考え方でこのシステムを考えております。1つは、衛星等を使った国土の生態系の変化をマクロに見ていこうということで、人為的変化の状況というものの概略を衛星等を使ってリモートセンシング技術を活用して把握していくという方法。それからあと、先ほどのモニタリングサイト1000だとか基礎調査の情報を分析して、重要な生態系の変化なんかを把握していこうということ。それから、これは今年度からいろいろ、ちょっと今考えているんですけれども、市民参加による自然事象変化の広範な把握。これまでも当センターでは、身近な生き物調査ということで調査をやってまいりましたけれども、たくさん、数十万人から100万人規模の参加を得て生き物調べをやっていこうということ。これらを総合的に検討いたしまして、国土の生態系の変化を把握していった上で、生物多様性保全対策の強化だとか普及啓発、あるいは名古屋で予定されていますCOP10なんかへのインプットというものを考えていきたいというふうに思っています。
 それから、生物標本の収集でございますけれども、これは、多様性センターができまして収蔵スペースもできましたので、今標本を集めています。ただ、標本は博物館なんかのほうが、もう数でいえばはるかに多いんですが、私どものほうのセンターでは、この3つの収集方針に沿って、現在これぐらいの数の標本を収集しているというものでございます。詳しくは、お手元にお配りいたしました、この「生き物の証」というパンフレットをご覧になっていただければと思います。
 生物標本の保管ですけれども、標本収蔵庫に入ってくる標本を傷めるような害虫を、こういうトラップで捕まえるとか、それから、貸し出しをしたような標本なんかを収蔵庫に納める前に燻蒸するとか、湿度・温度の管理、それからあと、標本情報の管理ということで標本情報データベースというのがございまして、基本的に種名、採取場所、いつ、どこで、だれが何をとったのかという、この標本の由来、そういうようなものを、ここにありますけれどもバーコードをピッとやりますと、これがぱっと出てくる。あわせて画像なんかも今、そういうものが見られるような情報を整備しているところでございます。
 標本の利用ですけれども、これは1つはいろいろな普及啓発のための展示なんかで、館内での展示、あるいは貸し出しも一部やっておりまして、博物館なんかの特別展示なんかで貸し出しをする場合もございます。それから、研究者がセンターに来て実際に標本を目で見たり、計測したりというようなこともございます。それからあと、標本データにつきましては、地球規模生物多様性情報機構、通称GBIFと言っておりますけれども、こういう国際的な情報の枠組みがありますので、そこへのデータの登録といいますか、提供をしていこうと、これは今準備中でございますけれども、そういうこともやってございます。
 それから、図書資料です。これは当センターの図書の収蔵スペースで、一般にも公開をしているんですけれども、こういった図書資料、文献が約2万3,000点ほどございます。来館者への閲覧とホームページ上での検索システムというのがございます。ちょっとご紹介します。
 図書検索、当センターのホームページから入ってきますと、こういう画面があって、この形式のところをクリックすると、例えば逐次刊行物だとか基礎調査の報告書だとか、ジャンルがいろいろずっとあって、それを選択したり、あるいは、分野ではこういうような分野ですね。これをクリックして、あとタイトルなんかのキーワードをここにある程度入れますと、タイトルであれば、タイトルの中に含まれている単語で検索ができるというようなこと。著者名もすぐ出る、一応こういう検索システムがございます。
 次に、多様性情報の管理・提供についてです。こういうIT技術を生かして管理・提供を行うということで、大きく3つのシステムがございます。生物多様性情報システム、J-IBISというものとインターネット自然研究所、クリアリングハウスメカニズムですね。
 このJ-IBISと私どもが申しておりますのは、基礎調査の成果といったようなものを総合的に収集・管理・提供するシステムとなります。
 収集・管理、そして提供について、ちょっと実際に見ていきたいと思います。これがJ-IBISのトップページですけれども、ここにこういういろいろなカテゴリーがございまして、それぞれ調べたい情報をクリックすると出てくる。
 Web-GISによる情報の提供で、情報の重ね合わせもある程度できる。これは例えば植生調査の植生図と藻場・干潟の分布を重ね合わせて見たものでございます。緑色のところが藻場、この黄土色のところが干潟で、この内陸の部分が植生ですね。
 これも山梨県の河口湖ですけれども、その辺の植生図と、これは巨樹・巨木の調査を重ね合わせておりまして、ちょっと見にくうございますが、この木の形をしているのが単木の巨樹でございます。
 これは、巨樹・巨木林のこうふうふうな単木のものがいろいろあるんですけれども、例えばここの木をクリックしますと、その木が何で、例えばこれは300年以上の事例でスギで幹周りが何センチでというのも出てくるという仕組みでございます。
 それから、動物の分布。これはニホンジカですけれども、これは5キロ四方のメッシュでニホンジカが確認されたという情報がこういうふうに出てくるというものでございます。
 それから、これは鳥類の生息調査と湿地・藻場の調査の結果ということで、藻場なんかとガン・カモの渡来地、シギ・チドリの渡来地なんかを重ね合わせているものでございます。
 これはイノシシの分布ですね。先ほどのように、赤いところが1978年にいたけれども2003年には見られなくなったところですね。この黄色い部分が分布が拡大していっている部分ですね。
 こういうふうに、J-IBISではいろいろな重ね合わせなんかもできるということですけれども、調査・研究だとか環境アセスメント、あるいは自然環境保全施策の立案・実施ということに活用されるということで、ずっとアクセス回数がふえてきているということですけれども、最近ちょっと頭打ちになってきております。
 次に、インターネット自然研究所の紹介をさせていただきますけれども、これはどちらかというと割と普及啓発向けといいますか、一般向けの情報でございます。一番人気があるのが、国立公園・野生生物のライブ映像ですね。先ほどのJ-IBISとインターネット自然研究所、こういうリーフレットをお手元にお配りしていますけれども、ここの丸であるところの国立公園だとか、そこのワイルドライフセンターに飼育されている野生生物なんかが見られるということで、ちょっと見ていただけますか。
 これは一番人気の高い尾瀬の、これは燧ヶ岳ですけれども、大体10分ごとに画像が更新されるというようなことで、これは2007年、去年ですね。
 過去の画像も見られますので、例えばこれは釧路湿原のタンチョウですけれども、これは給餌場の画像です。夏の間はいないんですけれども、冬の給餌場に集まっているタンチョウなんかもさかのぼって見られるというようなことができます。
 2006年の参照回数ベスト5ということで、尾瀬が100万回以上、それから富士山とか、こういうところが非常にアクセスが多いというものでございます。
 それから、日本の重要湿地500です。これは過去、環境省のほうで日本の重要湿地500カ所を選んだんですけれども、こういうふうな分布があって、先ほどの位置をクリックすると、例えばこれは別寒辺牛湿原で、それぞれの湿地の特性が書いてあるというものでございます。
 最後、3つ目が、生物多様性情報のクリアリングハウスメカニズムということですけれども、これはどういうものかといいますと、いろいろな生物多様性に関する情報というのは、もちろん環境省だけでなく、いろいろなところがたくさんの情報を持っているわけです。いわゆる情報源情報というものでございます。多様性条約においても情報公開の重要性というものが掲げられていて、締約国がそれぞれCHM、クリアリングハウスメカニズムを構築を進めなさいということが条文の中にも書かれてございます。日本では多様性センターが日本の窓口として登録されてございまして、CHMのシステムを運用しているというものでございます。
 メタデータというものを登録をしていただきます。情報の所在、概要を知るための情報です。書籍でいえば図書目録に当たるものですけれども、どんな情報が入っているかといいますと、カタログ情報、責任者情報、データセットの範囲、データセットの概要、分類、キーワード、その他と、こういったようなものが情報として入っている。これは具体例ですけれども、こういったような情報が入っている。
 こういうところに今申しましたような情報をそれぞれ入れまして登録ということになります。
 全国に散在する情報のメタデータを横断的に検索・把握ということでやっています。ただ、まだこのCHMに登録されている情報が1,000件に満たないということで、なかなかちょっと課題があって、よりもっとふやしていくようにということで、先ほどの第三次の戦略でも、もっと増やしていくということを努力目標として掲げているところでございます。
 最後に普及啓発ということで、ニューズレターだとかホームページ、これは多様性センターのホームページで情報提供しております。
 それから、関係省庁や関係機関との連携ですね。環境省、特に自然環境に関するデータ、自分のところで調べたのはもちろんああいう形でやるんですけれども、関係省庁との連携というものにつきましては、現在、自然環境情報に関する省庁連携ワーキンググループというものがございまして、そこでそれぞれの省庁が持っているGIS情報を、岡山県の例で河川情報だとか森林情報を試行的に重ね合わせることをかつてやったことがあるんですけれども、ちょっとまだ先に十分進んでいないということもあって、今後関係省庁との連携というものを深めていかなければいけない。これは課題だと思っております。
 それから、自然系調査研究機関との連携ということで、私どもセンターが設立されてから、こういう自然系調査研究機関連絡会議というものを設けまして、現在16機関が入って、年に1回集まって研究発表みたいなものをやっているんですけれども、もっと拡充していくために、自然系の博物館なんかへの参加の呼びかけも今始めております。それから、調査研究項目の情報共有というものを目指していきたいというふうに思っております。
 それから、大学との連携ですね。これも重要だというふうに思っております。日本長期生態学研究ネットワーク、通称JaLTERと言っていますけれども、これと特にモニタリングサイトで連携をしていこうという動きがございます。それから、国際的枠組みとの連携でございますが、先ほどの標本のところでご紹介いたしましたGBIFですね。これを日本からもどんどん、標本情報だけでなくて基礎調査の目撃情報ですね。いつ、どこにどういう生き物がいたという情報を登録していくというようなこと。それから、アジア水鳥センサス。これはシギ・チドリ類だとかガン・カモ類だとか、そういう水鳥の渡来状況をこういう枠組みに提供していくということ。それから、その他の国際プログラムといたしましては、GEOSSというふうに通称言っていますけれども、全球地球観測システムなどとの連携というものが考えられます。
 最後に、今後の課題ということで幾つか掲げております。第三次戦略を踏まえた今後の取り組みということで、関係省庁、機関等々の連携を深めていくということです。それから、J-IBISの拡充等、情報発信・提供の推進。より迅速でわかりやすい情報の提供の仕方というものを工夫していかなければいけないとか、あるいは国外向けの情報発信の強化というものを図っていかなければいけないとか、そういったようなことを考えております。
 ちょっと駆け足になりましたけれども、以上で発表を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、もしご質問、確認をしたいということがありましたら、委員の先生方からお出しください。

○筑紫委員 どうもありがとうございました。大変いろいろな情報があることはわかったんですけれども、ここの中で生物多様性保全の我が国のレベルというのは、国際的にどれぐらいのレベルですというような情報ってないんでしょうか。例えば、OECD諸国の中で何位ぐらいですとか、上とか下とか平均とか、そういうふうに自分たちのお仕事をごらんになるというようなことはないでしょうか。

○鳥居センター長 数値化されたものはないんですけれども、私ども、先ほど基礎調査が始まって30年以上の歴史があるということですが、例えば植生図で申しますと、5万分の1では全国すべて整っておりますし、2万5,000分の1で、あと10数年かかるかもしれませんけれども、整えようとしております。このレベルで植生図が全国そろっているというのは、ほかの国、どこにもないというふうに思っておりますけれども、ただ、モニタリングサイト1000みたいな仕組みもできてきましたし、それを今後どう保全施策に反映させていくのか、ここが非常に重要なところだと思っていまして、そういうシステムみたいな、調査が保全につながっていくシステムを今後構築していくというのが非常に大きな課題だと思っております。欧米と比べてどうかというストレートなお答えになっていないと思いますけれども、そういう意味ではまだまだ課題は多いというふうに思っております。

○筑紫委員 それでは、欧米と比べてどうなんですかということを、どこに行ったらわかるんでしょうか。生物多様性の我が国のレベルですよね。どこがまとめていらっしゃるんでしょうか。
 なぜそういうことをお聞きしたかというと、ニューズウイークの日本語版ですが、そこで一番エコカントリーはどこかというのが最近出ておりまして、日本は21位でございます。最もエコなのはこの国だといって、149カ国ですかね、国と地域をしていまして、日本は21位。それから、アメリカは39位、中国が105位とか、ただ日本よりもフランスもイギリスも進んでいるということになっています。ただ、もっとも、この指標を開発したのはアメリカのエール大学と、それからコロンビア大学なんですね。ですから、そこで何をもってエコとするかというところが違ってくるんですけれども、こういうものに沿って、今、私どもは金融なんですけれども、世界で国債を格付けする動きが出てきています。ですから、余りエコではないと見られると投資されないという可能性がありますので、日本として生物多様性であったり、あといろいろなエコの部分で環境技術であったりとか、それは世界でトップクラスだといろいろ言っているんですけれども、トップクラスだと思ってもらうために必要なものを発信していただかないと困りますので、そういうふうにお聞きした次第です。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 今のご質問をなさった経緯というのはどういう意図があるかというのを説明されたわけですが、余りこれまでそのような形で国際比較とかランクづけとかというようなことは確かにやってきていないですよね。ですけれども、やる必要があるかどうかということはともかくも、やはりちょっと外国への情報発信ということと同時に、情報の質の比較というようなことが打ち出せていけばいいかもしれない。恐らく、今はないというのはよくわかったわけですけれども、今後、これは中環審の関係する部会のテーマかもしれないという気がするんですけれども。

○鳥居センター長 第三次の国家戦略の中にも、日本版の地球規模のグローバル・バイオダイバーシティ・アウトルックとか、ミレニアム生態系評価とか、地球規模でいろいろ世界の科学者が集まって生態系、生物多様性の評価をしようと、こういう試みがあるんですけれども、それを日本では、じゃ、どうなんだ。生態系サービスがどういうふうに、それがトレンドとして劣化しているのかとか、向上しているのかとかいう評価を今後やっていこうというのが、第三次の戦略の中に書かれてございまして、今後、私どもの過去の蓄積の生物多様性の情報なんかも、あるいは新たな情報も踏まえて、そういうことをやっていくことになるだろうと。今まで振り返ってみると、なかなか国際的に比較できるものは、ちょっと残念ながらないと思いますけれども、そういうものが進んでいけば、ある程度はいいかなというふうには思います。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 ちなみに、多様性の程度みたいなものについては、もう既にかなり定量的にも国際的な比較が出ていますよね。日本の生物多様性の程度というのが、種の数とかというあたりを確保していくと極めて高いということになるので、そういうものをもし仮に目安に、多様性が高いかどうかといえば高いわけでして、だから、それでよしということであれば多様性が高い国だということが言えるでしょうし、それから、じゃ、種が少ない国は悪いのかといったらそうでもないわけでしょうし、国の面積とか自然の条件の違いとかがあるんですが、なかなか一概に議論しにくいものかもしれませんね。
 どうぞ、ほかの委員、今の生物多様性センターについて。
 森口委員、何かありますか。

○森口委員 後ほど出番がございますので、そちらで申し上げようかなと思ったんですが、今、筑紫委員との間でやりとりのあったことは、ちょっと私もかかわるところがありますので、それに関することだけ先に申し上げたいと思います。
 OECDで環境情報関係の作業部会にずっと関係してまいりまして、そこの中でも、生物多様性であるとか─生物多様性という表現がいいかどうかはわかりませんが、こういう分野のデータの国際比較、何とかできないのか、指標ができないのかと、こういう議論がございました。
 今、浅野委員長からコメントがございました。何らかの数字があるんですけれども、なかなかやはり各国の専門家とも慎重でありまして、こういった分野を簡単に数字で国際比較するということ自身が難しいだろうということがずっとありました。そういうことにも私も参加というか、横で目撃してきたというのが正確かもしれないんですけれども、ただ、ちょっと気になるのは、日本からの国際的なそういう議論に対する参加が必ずしも活発ではないような気がしておりまして、私もいろいろな場面で、日本からもう少しそういうことに関する国際活動に参加してほしいということを間接的に言われるタイミングというのが、そういう機会が結構あったんですね。その後ちょっと、後ほど申し上げようと思ったんですが、情報の発信先として多分、これは日本の役所はどこでもそういう部分があるんですけれども、やはり国の中を向いていて、どのぐらい国際的な発信をするのか、国際的なそういうことに関して、例えば予算がつくかどうかということ自身、これもなかなか各省庁苦労されているところもあると思うんですけれども、やはり客観的に見れば、ほかの国に比べて日本はいろいろやっている割に知られていない。例えば自然環境保全基礎調査のデータなんかに関しても、今ひとつ世界的には知られていないんじゃないかなという感じがしております。
 そういうことに関して、何か極めて概論的な話になってしまうんですけれども、これまで問い合わせであるとか、ほかの国際機関であるとか、そういったところとの相互のやりとりの中で、どういうことをやれ的な、そもそもそういう機会が余りなかったのかですね。そういうニーズ自身がセンターさんのほうに届いていないのかどうかとか、そういったあたりはいかがでしょうか。

○鳥居センター長 ありがとうございます。国際的な情報発信という意味では、確かに今まで、一応ホームページ上の英語版の発信もあるんですけれども、必ずしも十分でない。トップページというか、最初のほうの入り口のほうは英文になっていても、細かい情報になってくるとどうしても日本語になるとか、そういうものがありますので、その辺を改善していかなければいけないかと思います。
 途上国に対しましては、JICAの情報システム研修をはじめ、年に数回の研修が当センターでもございまして、先ほどの基礎調査をはじめ、調査の仕組みだとか情報発信の仕組みなんかについて、途上国から来られた方にそういうものを解説するというのはありますが、多分先生がおっしゃったのは、もっとさらに広い意味でのご意見だと思うので、そこは生物多様性条約の第10回締約国会議を名古屋で2010年に誘致しようということで今動きがございますので、そういうものを一つのターゲットにして、より国際的な情報発信の強化というものをやっていかなければいけないなというように思っております。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 事務局、何かご質問、いいですか。
 ほかに。

○亀屋委員 調査自体、現データをとるのが非常に手間暇かかるものだと思うんですけれども、そういったものの中で、実際とられたデータの世の中に出てくるまでの時間的な遅れとか、それから、更新の頻度とか、その辺も興味ある方は見られるようになってくると思うんですけれども、そういった点で、最近ITなんかを活用されて、何か改善の余地がまだありそうなものなのか、いや、やはりその辺は非常に難しい段階なのか、その辺はいかがでしょうか。

○鳥居センター長 確かに今、国のいろいろな政策、国家戦略もそうですけれども、大体5年で見直すというのが定着しつつありますね。ところが、基礎調査の、先ほど哺乳類なんかは20年間の変化というのを見ているということで、やはりそういう計画の策定に合っていくぐらいの新鮮なデータを効率よく集めていかないといけないと思います。
 例えば衛星を使って調べるというのも方法としてあるんですけれども、どうしても、そうなると縮尺がどんどん小さくなってくる。縮尺が小さくなると、5年ぐらいのタームだと余り変化が出ないというようなこともあって、相矛盾している部分もあるかということで、今いろいろ試行錯誤しているんですけれども、やはりできるだけ、もっとタイムリーに情報を出していかないと、短いスパンである程度情報を出していって、それを政策や計画なり戦略につなげていくということをやっていかないといけないということで、例えばターゲットを絞る。例えば哺乳類の分布調査、かつてはかなりの種数をやったんですけれども、今年度からは大型哺乳類5種に絞って、特に農林業被害が多いとか、生態系への被害が多い種に絞って、それを5年ぐらいでアウトプットで出していくような、そういうふうにしていこうとか、そういうことは今試みをしておりますので、できるだけそういうサイクルに合うような調査にしていきたいというふうに思っております。

○浅野委員長 ありがとうございます。
 どうぞ。

○金藤委員 亀屋委員の質問内容に関連するかもしれませんが、30年間基礎調査を継続されているとのことですが、この基礎調査において、実施体制、調査の対象、調査の方法が少しずつ変化していることについて先ほど、ご報告があったと思います。調査データを経時的に考える時に、このような変化については、どのように考えられているかお教えください。

○鳥居センター長 調査体制が大きく変わってきているのは、大ざっぱに言いますと、かつては都道府県に委託をしてやっていたというのが多いんですけれども、今、特に植生図なんかは、さっきも申しましたように一般の調査会社に一般競争入札でやっているような形に移行しつつあります。ただ、モニタリングサイト1000は、依然として地域の研究者とか、そういうつながりの中で非常に予算的に限られておりますので、正直言って、かなりボランティア的にやっていただいている部分もあるんですね。そういう基礎調査、第1回の基礎調査のときからも、やはりそういうものがあって、どっちかというと潤沢な予算でやるというよりは、もうかなり地域の研究者の方に、あるいはボランティアの方にやっていただいているという、そこのところはかなり、余り変わっていないのかなというような部分もあるのは正直なところです。

○浅野委員長 よろしいでしょうか。

○福井委員 利用ということで、保全にどのようにつなげるかというところで、他省庁との情報の連携というのが非常に重要だと思うんですが、現在はある程度スタンドアローンで考えられていて、今、関係省庁連絡会議とか幾つかあって、そういった中で、先ほどグローバルな情報発信ということもありましたが、今、そういう空間情報については、ある程度グローバルスタンダードができてきているので、他省庁との連携をぜひ積極的に、今後どのようにお考えになられているかということをお聞きしたいというのが1点。
 もう一つは、こういう環境を知るというときにGISなんかは非常に有効だというお話で、いろいろな主題地図をつくられているんですけれども、今、もう一つの動きは、グーグルアースのような、いわゆるジオブラウザというような形で、航空写真に近い精度の衛星写真がどこでも見られるということで、普通のユーザーは、そういったデータを見ながら、GISでつくられている植生の区切りが実際にはどのようなものなんだろうかということを改めて認識するというようなことが非常にあると思うんですが、今後、環境省でよりよい環境理解を推進するときに、ちょっとわかりづらいああいう植生図ではなくて、その植生図とリンクする形で、実際に目に見えるそういう画像とか、そういったようなものとの融合を、今後他省庁との連携も含めて、高価なものですから、環境省がぜひリーダーシップをとって、むしろ日本全国だけではなくて、アジア地域を含めて何かそういうフレームワーク、イニシアチブをとっていただけるようなお考えがないかという、2点を少しコメントをいただければと思います。できればいいなという話になるわけでしょうが、可能な限り。

○鳥居センター長 1点目の他省庁との連携でございますけれども、これは、私どものセンターをはじめ環境省も、非常に予算が限られているということもあって、よそと同じことをやってもしようがないということで、できるだけ情報の相互利用といいますか、それを考えていかないといけない。かつて、先ほどちょっと口頭でご紹介しました林野庁、それから農林水産省、国交省の河川とか港湾と試行的にやったことがあるんですけれども、そういうものを、よりもっと岡山以外のほかの地域でもやっていきたいなというふうに思っております。
 それから、国際的な部分については、ちょっとまだなかなかそこまで、福井先生のおっしゃったところまでいけていないのが正直なところなんですけれども、そういうグーグルアースなんかの既存のそういう情報システムなんかも活用ができれば、より安価に、あるいは一般の方も親しみやすくできる、そういった工夫はしていきたいなと思います。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 グーグルアースのことは私もちょっと頭の中にあって、さっき、ローリングで調べていくときに、変化の激しい─さっきは種を絞って効率性を上げようというお話もあったんだけれども、どっちが先かわからないというのが正直なところだけれども、やはり変化が激しい地域は密にやる。それから、余り変わらないようなところは10年に1回やるというような、そういうサイトの選定についても、何か濃淡をつけるというようなやり方が、ひょっとしたらあるのかもしれないなと思ったり、あるいは、林野庁について言うと、最近ちょっと林野の仕事を一緒に付き合い始めたので知ったんだけれども、森林管理計画といいますか、伐採計画は大体5年で一巡しているみたいですね。だから、結局あそこは5年に1回は必ず、ほとんど国有林の中、林班とかいうような単位まで足を運んで調べているということがあるので、こういうところは、その情報が5年ごとに手に入るはずですね。だから十分活用できそうな気がするんですが、いずれにせよ、また後で少し残った時間で意見交換をしたいと思いますので、とりあえずご報告についてはどうもありがとうございました。
 では、引き続きまして、国立国会図書館の田中さんからお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

○田中室長 国立国会図書館総務部企画課電子情報企画室の田中と申します。本日は、私どもの事業を紹介するお時間をいただき、ありがとうございます。私もパワーポイントで報告させていただきます。

(パワーポイント)

 ご説明するまでもないと思いますが、国立国会図書館は、国の国立図書館としての役割と、それから議会の図書館としてという2つの側面を持っております。国の図書館というのは、ほとんどの国でそうですけれども、納本制度というものがございまして、その国の出版物を基本的には網羅的、悉皆的に集めて、それを永久的に保存して長期にわたって利用できるような状態にすると、そういう出版物を国の文化資源として保存していくという責任があります。それから、国会の図書館ということでいいますと、私どもは国会のための立法補佐業務ということで、国会議員の先生方の依頼に基づきまして、さまざまな調査・情報の提供活動をしているというところがございます。
 そういう中で、電子情報資源の拡大に対して従来の国の図書館としての役割、あるいは議会の図書館としての役割がどういう形で変化してきているかということですけれども、1つは、出版物そのものが電子的な形態に移行しつつあるということで、電子出版物に対して、どういうふうに制度的に対応していくかということがございます。その中には、急速に拡大しているインターネット上で発信している情報資源に対する問題がございます。それから、従来、出版物というのは、雑誌にしても新聞にしても紙の形で蓄積されてきているわけですけれども、そういう紙媒体の情報資源をこれからどういう形で保存していくかというときに、蔵書の電子化とかデジタル化といったことが重要な課題になってくるということでございます。
 また、インターネットというものが情報発信として非常に有効なメディアですので、今まで来館しないと利用できなかった資料の利用というものが、インターネットを経由してほとんどのものが利用できるようになるという目標に向かって、どういうふうに電子的なサービスを展開できるかということがございます。さらにそういったものを組み合わせて、今まで図書館ではレファレンスといったことをやっていたんですけれども、そういう情報提供機能を高度化していくといったことが求められているということがございます。
 そういった変化に対しまして、私どもは、もう4年ほど前になりますが、電子図書館中期計画2004というのを行動目標として策定をいたしまして、この計画に沿って、電子情報に対する収集・保存・提供ということについての図書館としての取り組みを進めております。その中に主要なものが3つございまして、1つがデジタル・アーカイブを構築する。このデジタル・アーカイブといいますのは、1つはネットワーク上の情報資源、インターネット上の情報資源をできるだけ集めて保存していく。それから、今まで紙の形で蓄積していた図書館の資料をすべてデジタル化して蓄積していくということが大きな2つの柱でございます。それから、情報資源そのものに対する情報を充実させるということで、情報を利用するという観点から、検索のインターフェースですとか検索ツールといった、そういったものを整備して、いかに情報に対するアクセスを改善するかということが2つ目の課題。それから、3つ目が、インターネット上でさまざまな形で情報が発信されているわけで、それを全部つないでワンストップで探せるような国全体のポータルサービスを構築するということで、この3つの柱に沿って、今、電子図書館事業を進めているところでございます。
 お配りさせていただいたパンフレットにも図が載っておりますが、視覚的に示したということで、中央の円の部分が、国会図書館のデジタル・アーカイブでございまして、この左上に日本国内のインターネット上のさまざまなサイトがある。そういったもので必要なものを集めて保存する。それから、電子的な形で流通している雑誌とか書籍といったものは著作物の単位としてアーカイブしてくる。さらに下側の円のところは、今まで紙の形で蓄積してきた図書館の資料を電子的に利用できるような形でアーカイブする。そういったものを全体としてつないで、さらにほかの機関が構築されていますさまざまなデジタル・アーカイブを統合した形で利用できるような、そういう環境を整備する。今の計画の全体を図式的に示しますと、このような形になります。
 次から、具体的に、どういうサービスを提供しているかということをご紹介させていただきます。その際、情報種別、カテゴリーによって分類してお示ししたいと思います。
 図書館のサイドから見ますと、情報を分類する考え方としまして、1次情報というか、原資料、情報そのものがあります。それに対して図書館は、今まで目録とか書誌という形で、今ですとメタデータという形ですが、情報を探すための情報をつけるという形で検索利用できるようにしてきた。さらに、今度はそういった中身そのものを抽出して組み合わせて、知識情報そのもの、あるいはその探し方そのものの案内する情報ということで、これを3次情報と呼ぶとしますと、そういう1次情報、2次情報、3次情報という形で情報の段階があるところで、それぞれに応じて、電子情報のサービスを構築しております。
 1つ目が「WARP、インターネット資源選択的蓄積事業」ですけれども、これは国内のインターネット情報を選択的に収集いたしまして、それを保存検索して、さらに利用できるようにする事業でございます。今現在、電子形態で出ている雑誌が1,500雑誌ほど、それから、サイトにしますと2,000強のサイトを集めております。現在、ウェブマスターというサイト管理者の方から収集の許諾をいただいた形で集めるということですので、政府のもの、それから市町村、大学、法人等といったものが多いのですが、基本的に消滅する可能性が高いものから優先的に集めるべきだということで、例えば合併によって消えてしまった市町村ですとか、機構が変わることによって維持できなくなった、前の組織、法人機構、そういったものを中心に今のところ残しているというところです。
 見づらくて恐縮なんですけれども、これは、例えば雑誌ですが、「資源・環境観測解析センター」とか、こういう形で収集されているものが出てまいります。
 これをさらにクリックしていただきますと、この下のところに収集個体一覧とありますが、例えば1号ずつ、1週間単位で何回か集めている。これは1年に1回集めに行って保存されているといまして、ここをクリックしていただきますと、その時点で集めたサイトなり雑誌の情報が利用できるという形になっております。
 インターネット情報を国の図書館として集めるというのは、どういう必要性があるのかということですが、やはりウェブ情報というものがどんどん消えていってしまうというのが現実でございますので、やはりそれも一つの文化資源、あるいは学術資源として重要であるということで、収集しているというところです。
 私どもは、選択的に大体3,000ぐらいを選んで集めているわけですけれども、それでは実際の必要性は全然満たしていないということで、法律によって、すべてのインターネット情報を悉皆的に集める仕組みをつくるということで、ずっと検討してきたところでございます。実際にはいろいろ問題がありまして、違法情報とか有害情報の問題、それから権利の問題等、今現在、法律制定に向けた部分がなかなか進捗を見ていないというところでございます。
 次に、紙で出た蔵書をデジタル化して、それを発信していくという部分では、日本で出た本について、明治時代のものから順次、デジタル化というものをやっておりまして、これを近代デジタルライブラリーということで、現在9万7,000タイトル、大体14万冊ぐらいの本が画像データという形ですけれども、利用できるという形になっております。
 こういった形で、資料をデジタル化するということは、どういう意味があるかといいますと、資料そのものを国会図書館も1部しか持っていないものというのがほとんどで、利用すれば本が壊れてしまいますので、利用と保存を両立させる。それから、全国どこでも利用できるようにするといったことがこれによって可能になるということです。そのためには、権利の問題、それから経費の問題、こういったものが今大きな課題となっているということでございます。
 次に、いわゆる書誌情報、資料検索のサービスでございますが、私どもではNDL-OPACという形で、今現在、データにして1,600万件ほどの書誌検索ができるようになっております。このうち雑誌論文に対する記事索引というのが大体800万件弱ぐらいございまして、これによって論文を検索して、そのまま遠隔地から複写の申し込みができるようになっております。
 その次に、これもパンフレットを配らせていただいたものですけれども、デジタルアーカイブポータルというものを構築しております。これは先ほど説明させていただきました、国のデジタル資源のワンストップポータルサービスということで、今までの紙媒体、冊子の形の資料に加えて、デジタルコンテンツの形で発信されている資料を統合的に探せるような横断検察手段として開発しているものです。
 さまざまなデジタルコレクション、分散的につくられたものがワンストップで広く探して利用できるような形ができるということを目指しております。
 現在は、私ども国会図書館のほうで持っているサービスに加えて、県立図書館、国立公文書館、そういったところのデータを提供しているというところで、まだ全体としては800万件ほどにすぎないんですけれども、これから大きく拡大していきたいというところです。
 次がD-Navi、データベース・ナビゲーション・サービスというものですけれども、サイトの表面を集めるという形ではなかなか集めることができない、いわゆるデータベース化されているような情報については、今のところそれを集めてきてということが容易にできないものですから、リンクサービスといいますか、ナビゲーションサービスを構築しているものです。
 大体1万件以上のデータベースサイトに対してリンクを張っておりまして、さまざまなデータベースの説明つきで、そこに対するリンクを維持しているというところでございます。
 それから、先ほど申しました3次情報というところで、1つが、私どもが大体500館近い公共図書館の参加を得てつくっておりますのが、レファレンス協同データベースという事業でございます。これは全国の公共図書館等で利用者の方から受けた質問に対して、どういう資料を使ってどういう回答をしたかということを記録に残しまして、データを集結して公開しているというところで、調べ方に対する一つの参考事例の蓄積というところを目指して進めてきている事業でございます。
 例えばこれは、「遺伝子に影響を及ぼす化学物質について記述のある資料を知りたい」という質問に対して、どういうものを使ってどういう回答をしたかという回答例です。まだ件数が1万5,000件ちょっとでございますが、この数倍の規模集まってくると、それなりの効果を発揮してくるものと考えております。
 具体的な回答事例を見ていただきますと、例えばこれは、「世界遺産に登録されることによって周りの環境が変わったことを記録している資料を紹介してほしい」というような質問に対して、どういう資料を使ってどういう答えをしたかというようなことを記録しておりますので、似たような質問に対して有効な回答を得ることができるというところです。
 こういった形で、私たちは「主題情報」と言っているんですけれども、知識にかかわる情報の知識ベース化を最終的には目指しておりまして、調べ方に対する事例、それから、「参考図書」、いわゆる調べものの本、それから、専門学術書を中心に、その本の目次情報、最終的には全文情報が必要なわけですけれども、そういう本の中身を構造化して、あるいは知識を体系化しまして、知識ベースとして利用できるような形に整備していくところでございます。
 これは、国会図書館のホームページから出ているものですけれども、「テーマ別調べ方案内」というところで、例えば一般の方が具体的な科学技術とか環境問題のテーマを調べたいと思ったときに、簡単にどういうものを使って調べればいいかという事例について、項目ごとに具体的な調べ方をご案内しております。
 例えば「環境統計」では、どういう資料があって、どういう項目が探せるのか、こういう形の情報をテーマ事例別に分類しまして提供しているというところでございます。
 最後に、私どもは国会議員の先生方の質問依頼に対しまして、さまざまな調査・回答をしておりますが、そういったものの一部も公開するということで、例えば環境関係のレポートもインターネットから発信しているところでございます。
 国会会議録も全文検索できるような形で、今フルテキストデータベースというもので公開しております。
 簡単ではございましたが、電子情報のサービスの方向性ということで簡単にご紹介させていただきました。ありがとうございました。

○浅野委員長 田中室長、どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの田中室長のご説明に対しての質問、コメントがありましたら、どうぞお出しください。いかがでございましょうか。

○関川委員 どんな種類のデータを集めているかということなんですけれども、例えば環境情報について特定の分野とかというのを絞り込むなどというような集め方をするんでしょうか。というのは、いろいろな機関でいろいろな情報なりデータが集められているんですけれども、書籍化されたり何か文書化されたものは国会図書館さんのほうでも集められ、二重に収集することになるわけです。そういう意味では、集める情報の分野や役割分担とか、何か考え方みたいなものはあるのでしょうか。

○田中室長 インターネット上の情報をどのように分担して集めていくかということですね。基本的に、今、発信されている大量の情報を、そのままの形で集めて、それを発信すれば二重にダブってしまいますし、私たちは基本的に文献情報が第一義的な守備範囲だということでございますので、それぞれの分野で発信され、提供されているさまざまな情報資源に対する基本の考え方としましては、現実に利用されているものについてはリンクを張るだけの形で、私たちはアクセスの手段を改良して提供していくということが一義的と考えております。ただ、インターネットで出ているものは出版物と違って、永続的に残っていくということがやはりなかなか難しいところもあるだろうということで、今サービスされているものが長期的に変わっていく、どこかのタイミングでは、それを保存という観点で集めていくことが、私どもの守備範囲なのかなと思っておりまして、長期的な保存という観点で残していく。ただ、今現在の利用・提供のところで、現実にサービスされているところでは、紙のものとかと一緒に提供できるようなアクセスの手段をつくっていくというところが役割なのかなというふうに認識しております。

○浅野委員長 ほかに。
 じゃ、森口委員、どうぞ。

○森口委員 これも後ほど私の発表のときに触れさせていただこうかと思っていたんですが、先にもうお尋ねをしてしまいたいと思うんですが、インターネットの話はまた後でも議論したいと思いますけれども、献本制度がございますよね。献本制度というものの中でも、もちろん漏れみたいなものも出てくる可能性はあると思うんですが、そもそもの、つまりこの献本という制度がどういう発想というか、どういう思想に基づいているか、ちょっと教えていただきたいなと思ったんですね。
 現在であれば、インターネットでだれでも情報発信ができるわけですけれども、やはり本を出すということは、それなりにある種のハードルが高い。したがって、本になったものを集めるということは、それなりにやはり信頼性の高い情報が集められているという、そういう考え方が裏にはあるのかなというふうには何となく感じたんですけれども、そういうことでいいのかどうかということと、現在の、つまり本にしない形での情報というのは、これだけ大量に出ている中で、つまり献本制度の中で集まってくる情報というのが、本来集めるべき、もともとの献本制度をつくられたときの発想から見て集めるべき情報に対してどのぐらい、現在その献本制度というものの中でカバーできているのか。そういうことに関するご検討というか、ご見解みたいなものを、何か国会図書館のほうで考えがありましたらお教えいただきたいと思うんですけれども。

○浅野委員長 じゃ、どうぞよろしくお願いいたします。

○田中室長 戦前は、書籍を出版すると国が検閲をして、その検閲した残りが帝国図書館のほうに渡されて、それが今の国会図書館の蔵書の戦前の部分を構成しているというのが歴史的な経緯としてはございます。戦後、国立国会図書館が発足したきに本制度というものを位置づけたところでは、先ほど申しましたように文化的な資源としてそれを蓄積・保存していくということが一義的な役割ですので、文献というものが国の文化の重要な部分であるということで、それを悉皆的に集めることが必要だということで始まったところでございます。
 厳密に言いますと、今の国立国会図書館法では、国等の官庁の出版物は公用─公用というのは、国会に対する情報提供というのが第一義的な目的としてございまして、民間の出版物については、文化財として保存するという趣旨ということで、目的が若干違うんですけれども、いずれにしても網羅的に集めて残していくということが役割でございます。インターネット上で出ているものは、そういう本という、いろいろなハードルを経てきちんと内容も精査されて、中身も保証された形で出されているものとは、やはり大分性格も違うと思いますが、一方で、今まで紙の形で出ていたものがインターネット上だけで、あるいは電子形態だけで出されているというものも相当出てきておりますので、学術雑誌等も電子ジャーナルという形で、紙の利用から電子形態の利用というところに相当動いてきてしまいました。そういう意味でインターネット上に出ている情報資源全部が、今までの納本制度の延長として集めるものであるかというと、ちょっと確かに違うのかなというところもあるかと思います。一方で、今までの役割の延長線上でネット上で出ているもののうち、発信者が内容を確認してオーソライズして発信されているものについて、それを、その著作物の単位で登録のような形で、預けていただいて、それを保存して利用、保証していくと、そういう役割も新たに生じているのかなというふうな認識も持っております。
 ちょっと雑駁なお答えで申しわけございません。

○浅野委員長 ほかにご質問、コメント、ございますでしょうか。
 今の森口委員のご質問に対するお答えに関連することですが、そうすると、やはりある種の価値判断というか、選択基準のようなものを国会図書館側で設けて、資料保護として発信されているものを集めるということになるんですね。そんなような理解でよろしいんでしょうか。

○田中室長 やはりそこは何らかの選択が必要かなというふうに考えております。
 それから、納本がどのぐらいされているかというお尋ねですが、昨年、納本状況のサンプル調査をしたんですけれども、民間で出ている、いわゆる出版流通を経由しているものは90何%、ほぼ100%近く入ってきております。ただ、地方で出ている出版物の一部ですとか、それから自治体で出されているものの収集率というのは、なかなか高くないというのが実情でございまして、市町村レベルのものは国会図書館までは届いていないというものが現実には相当数あるというところで、自治体出版物、それから専門的な、内部報告書、研究会報告書みたいな、いわゆる非流通の出版物は、収集率はよくなかったというところがございます。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 横浜市はどうですか。出していますか。僕は、福岡市が送ったというのは聞いたことがない。

○関川委員 ちょっと自信がないですね。

○浅野委員長 それでは、どうもありがとうございました。後ほどまた総合的に議論をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 では、森口委員から、今のお二方のご報告を踏まえてのコメントなんでしょうか、よろしくお願いいたします。

○森口委員 それでは、私もパワーポイントを用意いたしましたので、パワーポイントで説明をさせていただきます。パワーポイントにするほどの内容のものではない、発言メモという程度のものでございますけれども……。

(パワーポイント)

 それで、先ほど既に若干自己紹介的に触れさせていただいたんですが、経済協力開発機構、OECDの中で環境情報アウトルック作業部会というグループがありまして、ここ5年ばかりそこの議長を務めております。そういった中で、OECD加盟国における環境情報、環境統計の状況に関する概論的なものも、ここのところで把握してまいりましたので、若干そういう経験も交えてお話をさせていただきたいと思います。ただ、ちょっといかんせん準備の時間が十分にとれませんで、私のほうからの話題提供、特にこういった部分での国際的な環境情報の範囲といったような話題をきょうちょっと用意してきておりませんで、議事次第にもございますように、2つのご報告を受けて、そのご報告の中で触れられていたような話題をきっかけにしまして、整備・提供すべき環境情報の範囲ですとか質等にかかわる論点について、少し触れさせていただきたいと思います。
 これは前置き的なものですが、情報の量と質ということを考えますと、これはもう言うまでもなく、入手可能な情報の量は飛躍的に昨今増大しているというふうに思います。いわゆる環境情報についても同様の状況ではないかなというふうに思います。ただし、ちょっと言葉の定義は不正確かもしれませんが、主に二次的な情報の提供者が増大しただけで、1次情報という、例えば環境というものを観察するというようなことの行為に関しての、そういう段階での情報の整備状況というのは必ずしも変化していないのではないか。同じ情報がいろいろな別の解釈をされたり、いろいろな注釈がつけられたり加工された形で、またいろいろな主体から二次的に発信されているという状況ではないかなというふうな気がいたします。
 ちょっとすみません。ここは編集のミスで後ろのほうが切れておりますけれども、一方で質のほうはどうかといいますと、入手可能な情報の質というのは非常に多様化しているであろう。低下しているということはあえて申し上げません。質の高低という字句は、ちょっとクエスチョンマークというふうに結んでいただければと思うんですけれども、じゃ、そもそもこれまで集められていて、比較的限定的な情報として発信されていたもののほうが質が高いというような判断自身ができるのかどうか。先ほどちょっと微妙なやりとりがありまして、検閲という言葉も出てまいりましたし、ある種の選択をするのかというようなことの座長のお話もあったわけですけれども、これまで情報の発信ができるということは、例えば本が出版できるであるとか、ある種の限られた─限られたという言い方は言い過ぎかもしれませんけれども、やはり一定の限られた主体からしか、情報というのは広くは不特定多数に対しては発信できなかった。それに対して、インターネットの普及などにより、不特定多数に対する情報の提供者、発信者というものの数というのは飛躍的に増大したであろう。その結果、質は多様化したと思います。ある種の価値観に照らせば、質が低い部分というのは当然あるかと思うんですけれども、質が多様すること自身が、ある意味では情報の質を高くするという意味もあるかなと思いますので、質の高低という字句は、ちょっとこの後、どういう言葉をつなごうかということを書き切れないままスライドを上げてしまったんですけれども、これは非常に難しい議論ではないかなと思っています。
 ただ、いずれにしましても、結果的に非常にあふれる情報の中から、本来入手したい情報を入手することがかえって困難な場合が生じているのではないか。これは、情報がない、ないというようなことで、情報が必要だというようなことが言われていたことがあったと思うんですけれども、むしろ情報があふれ過ぎていて、どれを信じていいかわからないというような状況になっている可能性があるのではないか。そうしますと、質の向上、いい、悪いという質の高低という字句があったとして、質の向上のための情報の選択を一体だれが行うのか。さっきありましたように、例えば国会図書館さんで、一定のやはり質のふるい分けをした上で発信するという形が正しいのか。氾濫する情報の中から見分ける能力、ある種のリテラシーをすべての受け手が身につけなければいけないのか。環境情報に関してはどうなのか。こういったところがやはり論点として出てくるのではないかなと思います。
 2つの具体的なご報告を踏まえて、情報の今の選択という問題をどう考えるかということかと思います。これは、決してまだこういうふうに一般化し切れないかと思いますが、きょうはたまたま生物多様性センターさんと国立国会図書館さんからの報告がありましたので、先に報告のあった生物多様性センターのほうで収集・保存・提供されている情報というのは、主として自然という客体は人間が観察した情報ということで、観察することによって、そこにある種の価値なり何なりが入る可能性はあるわけですけれども、もともとはやはり自然ということになるかと思います。生物多様性センターさんだけではなくて、従来の、例えばいろいろな環境問題、環境汚染に関する情報という、旧環境庁時代から集めてこられた情報というのは、人間は観察をする、情報を得るという形で介入しますけれども、基本的には自然界を観察した情報ということであったと思います。したがって、情報の選択がどこで行われているかというと、そもそも観察する対象を選ぶ。何に関してデータをとってくるかということの決定をする段階で、結果的にどういう情報が存在するのかということが決まってきたんだろうなというふうに思います。したがって、例えば観察対象の重要性、優先度みたいなものをどういうふうに判断されているのか。これも私も分野外で不勉強で申しわけないですけれども、例えば希少種というような言葉があります。そもそも希少種ということを定義するために、どうやって調査をするのかということから恐らく始まる部分もあるのではないかなと思っておりまして、いずれにしても、観察対象というものをどういうふうに、例えば今の自然環境保全基礎調査なんかの中でも決めておられるのか。こういったところが、やはり手に入る情報の質なり情報の内容ということをかなり決定していくのではないかというふうに思います。
 それに対して国立国会図書館のほうから、ここも膨大な、あらゆる情報をご提供されていると思うんですけれども、もともとはやはり図書館ということで本ということかと思いますので、そこに書かれている中身は、もともとは、例えば環境情報であれば自然を観察したものであったかもしれませんけれども、いずれにしても人間が生み出して、ある種のまとめるという行為を経たものであるというふうに思います。ですから、従来からの献本、納本制度─すみません。不正確な表現で申しわけありませんが、納本制度ということであれば、そういったものが供給を決めてきたかと思うんですけれども、先ほど来議論になっていますように、インターネット時代になって、余りまとめるという意識がないままに世の中に対して発信されている情報がかなりあるんだろうなというふうに思います。
 需要側、議会図書館としてのニーズというのは、あくまでこれは一部かもしれません。それ以外の、おっしゃったように文化的価値の保存であるとか、いろいろなところがあると思うんですけれども、やはりそういうニーズに照らした場合に、何を残して何を残さないべきかというご判断が多分あるんだろうなと思っております。ですから、そういったところでの選択というのが、供給側で決まってくる部分と需要側で決まってくる部分と両方あるんだと思うんですけれども、特に下のほうといいますか、人間が二次的に生み出してまとめて発信するという行為が非常に今、盛んになっていますので、ここの部分をどう選択していくのかというのが非常に重要な問題かなというふうに感じております。
 ちょっとここから各論に入りますけれども、生物多様性センターさんからのご報告をお聞きしてといいますか、これは事前に用意したものですので、事前に資料をいただいたものを読ませていただいて、ちょっと考えたことをメモしてまいりました。これは既にお触れになったんですが、自然環境保全基礎調査というのは、自然環境保護法という根拠法がある。これは実は、環境分野の情報にかかわってきたことからいいますと、非常にある意味では、こういうちゃんとした法律があるというのは環境の分野では比較的珍しいことで、どうも環境省の所管している情報の分野というのは根拠法がなかなかはっきりしないところがある。つまり環境情報に関する基本的な法律がないわけですね。そういったことの中で言えば、国はおおむね5年ごとにこうこう、こうということで、ちゃんと基礎調査を行うように努めることをするとか、非常にある意味ではしっかりした法律があって、それであるからこそ30年続いてきたという部分はあるんだと思うんですが、非常に利点だと思います。
 一方で、それは制約になる部分もあるんじゃないかなと思っております。つまり、ここに書かれてあるので、このためにこれしかできないという部分があるんじゃないか。そういったことの中で、先ほど来、例えば省庁横断的な話だとか、あるいは国際的な話、我々は好き勝手に言ってしまうわけですけれども、そもそもこの調査は何のためにやっているかということになれば、やはりしっかりとこういうことで定義をされている。だから、こういうことの中に沿って、やはりやってこられたということだと思いますので、やはりほかの環境面全般の調査・統計に比べれば、非常に総体的には上位のほうに明確に規定されているということは利点であり、その一方で、今、生物多様性という言葉でやっておられますし、この法律の名前で言えば自然環境の保全ということになってくると思います。最近また自然共生社会というようなキーワードも出てきておりますけれども、基本概念が微妙に少しスライドしてきている部分があって、例えば自然共生社会というようなキーワードに合った、そのための情報を集めるということが、じゃ、この枠組みの中で必要十分、ちゃんとできるのかどうかといったところが、少しやはり違う部分があるのかもしれないなというふうに感じました。
 これは既にさっき議論になったこととも関係するんですが、たまたま1年半ほど前に欧州環境庁、ヨーロピアン・エンバイアメント・エージェンシー、EEAという機関がありますけれども、そこの会議に呼ばれて行ったときのテーマがこれであります。Land and Ecosystem Accountingという会議をやるのでだれか来てほしいということになりまして、私、結局行ったんですけれども、これは何をやっているかといいますと、かなり日本の自然環境保全基礎調査に近いような世界の情報を扱っているんですけれども、集まっている人たちは、どっちかというとアカウンタントというんですか、経済統計なんかも含めているんですね。国連統計局が実は共同議長をやっていたんですが、環境と経済と統合的に統計システムとしてとらえるということで、環境経済統合勘定ということの取り組みがここしばらくなされてきているんですけれども、そのいわば土地バージョンであります。ですから、いわば経済の基盤、あるいは資産としての土地、あるいは生態系に関する勘定、アカウントをしっかりつくっていこうということで、さっきミレニアム・エコシステム・アセスメントの話なんかも出ていたと思いますけれども、そういったところをしっかり国際的につくっていこうということで、これは欧州主体でありますけれども、こういう取り組みが議論され始めております。
 先ほど既に福井委員からもご指摘があったように、地理情報システム、GISなんかによって技術的には統合可能でありますが、国土の保全管理と、それから自然環境の保全管理と、やはり行政の権限上はどうしても分離されがちであろう。土地、地べたの管理というのは、日本でもそうですし、ほかの国でもそういったところはあると思うんですけれども、情報としては一元化しても、それを何のために使うかというところの出口の部分がどうしても分かれてきている。そういった意味で、研究者的に言いますと、やはりどんどんそういった情報がちゃんと統合して共同利用できるようにしてほしいなという部分があるんですけれども、やはりそれぞれのところが何のために仕事をしておられるかというところで、そこのやはり制約というのが出てくるのではないかなというふうな感じがしております。
 きょうは話題以外ですけれども、それ以外にもいろいろな環境分野の統計情報がありますけれども、どうしても一時的に各省でとらえる情報だけでは、ちょっと帯に短し、たすきに長しのところがあって、それを加工していろいろなものと組み合わせてこそ解析がしやすい情報になる部分があるんですけれども、そういう二次統計というのがなかなかつくられにくいところにある。そういったものを責任を持って編さんするところがなかなかないということで、これはある種の二次的な、ある体系の中に入れ込んでいくというような仕事というのも非常に重要なのかなというふうに感じております。
 もう一つは、国立国会図書館からのご報告に関することなんですけれども、インターネット情報の選択的な蓄積事業を始めておられるというお話がありました。これは私の理解では、さっきから申し上げています、インターネット上の多様な質の情報をより分けるある種の試みというふうに理解しておりまして、民営の検索エンジンのある種の差別化を図っておられるんだろうと。事前に資料をいただいておりまして、ちなみに、私、自分の名前を入れて検索をしてみましたところ、私の名前とある方のお名前を入れまして、国会図書館の検索エンジンと、具体的に名前を出しますとグーグルで検索するのとでは、明らかに数が違うんですよね。やはりこちらで検索したほうが、相対的に私の名前がよく出てくる。やはり政府系の独立行政法人という機関にいるがゆえに、そこに上がってくるということで、ある種の選択というのは働いています。それはいいのかどうかわかりません。ですから、ある種のより分けのシステムというのはやはり働いていて、多分政府系のところではないところに名前の出てくる方というのは、やはり民営のエンジンのほうへたくさん当然出てくる。こういうような機能が実際働いているんだと思います。
 ちなみに、さっき献本の話もありましたけれども、私ども、研究者でありますので、いろいろな学術論文も出します。それから、いろいろな研究費をいただいた後の研究報告書もあるんですけれども、そういったものも今のところは国会図書館のほうに納本させていただいていますが、そういったところの名前も上がってくるということで、我々は、ある種、政府に近いところで仕事をさせていただいている人間にとっては非常に便利なシステムなんですけれども、だれに向けてこれを発信しているか、だれが使うためかということで、場合によってはさっき出てきたある種の検閲的なものに受け取られる可能性もあるのかなということを、ちょっと感じながら見させていただいておりました。
 いずれにしても、これまでも、質を高めるかどうかわからないですが、ある種のこういうクライテリア、ある種の編集方針でもって均質性を高めるための情報の選択というのはいろいろやられているわけでして、学術論文というのは全く典型的で、査読という仕組みがありますので、ある種の質のフィルターを通ったものだけが出版される仕組みになっています。また、その査読というプロセス自身がいいのか悪いのかという議論も、当然我々もしょっちゅうやっているわけですけれども、それはやはりある種の均質性は高まってくる。それから、マスメディアによる編集というのも、ある種のそういうものだと思いますね。さっきあったような、本にして出版するということも、ある種の選択は働いているとは思うんですけれども、そういった本だけではなくて、媒体が別に紙だということが問題なのではなくて、最近電子出版もありますけれども、そういうある種の編集行為が入っているものと、それからインターネット上で個人が自由に情報発信していることというのは、やはり明らかに質的な差異はあるんだろうな。こういったものの中で、国民が本当に知りたい情報を、なるべく多様な情報を提供する。かといって、ただ混乱に陥らせるような多様な情報だけがあふれている状況がいいのかどうかという、こういったところの議論が必要なのかなというふうに感じました。
 最後の点は、必ずしもきょうのご発表の中には直接関係しないかもしれないんですが、さっき既に筑紫委員からお話もありました。そもそも日本という国に関しての環境がどうなっているのかということ。国を代表して対外国に情報発信する担い手って、一体機関でいったらどこがやるべきなんだろうなというのは、これはかなり大事な問題で、これは既にJFSの多田さんから、これまでのこの専門委員会の中でもご議論があったと思います。やはりそれぞれの省なり、それぞれの組織の責任の範囲内でやっているんですが、結果的に、やはり日本という国全体の環境がどうなっているかということに関する情報発信というのが、非常にある意味ではうまくいっていない部分があるのかなというようなことも感じました。
 これが多分最後だと思うんですが、環境情報・環境統計の範囲をどうとらえるかということの一つのヒントとして、先ほど最後に田中室長のほうからもご紹介がありました国立国会図書館のホームページの中で、テーマ別の調べ方案内というのを見せていただきましたが、環境統計というのがございましたので、ちょっとこれを引用させていただきます。これは環境全般という項と、その後、地球環境、廃棄物、大気、水・水質、化学物質、海外の環境情報ということで分類されているんですが、環境全般ということの中で幾つか、このようにずらっと並んでまいりまして、この環境統計集というのは、この専門委員会の事務局をお務めの総合環境政策局のほうで編集されておられるものだったと思います。こういったものが上がっておりますし、それから、3番目にある環境要覧というのは、要は環境統計集の前身として発行されていたものであったというふうに考えております。それから、環境省のホームページの中にある環境統計とか調査結果等というようなことで、環境統計集もここに再掲されていますし、それから、環境省の成果物、これはいわゆる調査報告書ということで、一般に流通している市販の本ではないけれども、公開されている報告書という、こういうたぐいのものかなと思います。それから、私ども国立環境研究所のほうの一部門がやっております数値データベースと、こういったものもご紹介いただいております。
 ちょっと1点だけ、今度は話題提供的な話になるんですが、最近、丸善さんのほうから「理科年表 環境編」というものが出ておりまして、私もちょっとそれにかかわりかけたんですが、結果的にはかかわりませんでした。ちょっと私も考えがあってかかわらなかったんですが、廃棄物に関する章を執筆してくださいと言われて、私はそれはお断りしました。なぜかというと、それは理科年表の世界なんだろうか、理科なんだろうかということで、ちょっと私はこだわりを持ちました。さっき申し上げた自然を対象にしているのか、ある種の人間の活動を対象にしているのかというところ、ここはやはりある種の区別はしっかりつけたほうがいいだろうなというふうに感じました。結果的に、ちょっと私自身はそれにはかかわらなかったんですが、そういうかたいことを言っている場合ではなくて、やはり人々の目に触れやすいところにちゃんとした情報を届けるということがいいんだと思うんですけれども、どうもやはりそういったところの、そもそもいろいろな情報の分類といいますか、体系化ということが十分には行われ切れていないのかなというようなところは感じております。
 ちなみに、さっき多様性センターさんからご紹介のありました自然環境保全基礎調査は、ここの中では2の地球環境ということの中に掲載をされておられます。なかなかやはりこういったところの環境情報の分類の体系とか階層というところについては、必ずしも一元化され切っていないというところもあります。やはり情報の整理といいますか、欲しい情報に的確に行き渡るために、やはり情報の整理の仕方といいますか、体系化の仕方ということについても議論していかなければいけないと思いますし、その範囲の議論と、それはちょっと表裏一体なのかもしれませんけれども、こういう分野分類というところから入らなければいけない部分もやはりあるのかなというふうに感じております。
 今のところ、恐らく分類するとすれば、我々はやはり環境省に近いところで仕事をしておりますと、環境省の局とか部ごとの大体の所掌の範囲内ごとに分類をして議論することがあるわけですけれども、それはあくまで、ある種の日本のローカルな環境問題の分類であって、やはりそういったものを国際的に比較をしていくと、必ずしもまたそれに沿わない部分も出てくるかなと思っております。ちょっときょうは資料は用意いたしませんでしたけれども、いろいろな国際的な環境情報、環境統計の比較の中で、ある種のこういう分野分類みたいなものについても、デファクト的に分類が立ち上がってきている部分もあるような気がいたします。そういったものもまた追い追い、機会があれば材料としてご用意をさせていただければなと思っております。
 ちょっと雑駁なコメントになってしまいましたけれども、以上でございます。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 では、続編はぜひまたやっていただくということにして、大変期待度の高い続編があるわけですが、さて、これまでお三方からのお話を伺いました。残りの時間、40分強ということでございましょうけれども、整備・提供すべき環境情報の範囲、あるいは環境情報の質についてということで、少し意見交換をしたいと思います。今までのご質問、あるいはご発表を踏まえ、あるいはそれを超えても構わないんですが、ご自由にご意見なりご質問なりがありましたらお出しをいただければと思います。ご発表の方からも、さらにご発表を超えてご質問なりコメントなりおありでしたら、一向に構いません。また、事務局からもどうぞ遠慮なく発言をしてください。きょうは会議をやっているわけじゃないので、お勉強会であります。自由であります。いかがでございましょうか。

○筑紫委員 以前、環境報告書とかを出したときにも、範囲をどうするとか質をとか、それからだれに向けてということが問題になりましたけれども、あれと同じように基本的に、あと国家のステークホルダーはだれかということを考えて、例えば投資家向けとか一般国民向けとかいうようなことで、そういう国家のステークホルダーというような人に対して、どういう情報をどこまで出すか。このステークホルダーだとこういうものが必要だとかいうようなことを、報告書のときにいろいろ議論したのと同じようなやり方で、余り難しく考えないで基本的にやればいいんじゃないかと私は思います。とにかく私どもは投資家の立場ですので、投資に必要な情報はとにかく欲しいと思います。

○浅野委員長 極めて単純明快でよろしかったかと思いますが、いかがでございましょうか。
 関川さん、何か。

○関川委員 だれに向けて情報を提供していくのかということはなかなか難しいなと思って聞いていたのですけれども、つまり、例えば日ごろ扱う情報としては大きく2つの種類があるかなと思います。我々が情報を使う立場、いろいろな地域の計画を立てる際に使う情報、そういういろいろな分野がありますけれども、あともう一つは、住民といいますか、市民に対して提供していく情報。データソースは同じようなところから出てくるものの、加工の仕方とかがやはり違ってくるかなという、提供の仕方をどうしようかという、だれに提供するかということを決めないと提供の仕方が決まらないなというのは思っているところであります。
 あと、ちょっと話がずれるかもしれません。先ほどの生物多様性センターのお話を伺っていたときに、ふと思っていたのは、航空写真などの写真情報みたいなものもあるという話があったかと思います。例えば本市でいいますと、緑被率についての議論をこの数年間ずっとやってきています。昭和40年代後半ぐらいは大体60%ぐらいの緑被率だったのが、今半分ぐらいになっております。3割を切るのではないか、どうにか3割は死守するということで、今議論している。そこで、今どのぐらいの緑被率があるのかについては5年ごとのデータというのは余りにも遅過ぎて使い物にならない。どういうことをしているかというと、やはり航空写真をもっと密に撮って数字を出している。そういった、情報を何に使うかというのが非常に大事であると思っています。こういったデータをたくさん本市は持っているんだと思うのですけれども、倉庫の中に眠っている情報もかなりあるのかなと思います。その辺のデータのやりとりとか活用のあり方というのを、うまく今回の検討の中で考えていければいいかななんて思いました。

○浅野委員長 あとはいかがでしょうか。きょうは何でも構わないんですけれども、どういう範囲の環境情報というのが本来的に整備されるべきなのか、提供されるべきなのか。あるいは、どの程度の質のというようなこと。これまでもさんざん議論してきて、使い方によって質というのは当然違ってくるんだろうということがあったと思うので、余りバシャッと議論してもしようがないかもしれませんが、範囲の話。きょうなんて、生物多様性センターがやっておられる仕事は、随分幅が広いというふうにわかったわけなんですけれども、もっとほかのテーマにこれを広げていくとしたらどうなるかなと。さっきの森口さんのお話で、自然を人が観察するという切り口から生物多様性センターはやっておられるだろうというようなお話があったわけですけれども、モニタリングをする、観察というよりも、もっと測定をするというような要素。さらにもっとそこから入っていって、科学分析の問題でやっておかなければいけないような要素のもの。それから、今度は事実を分析するというような要素と、いろいろありますよね。生物多様性センターというのは、単純に観察をしている情報を流しているんだというのもちょっと気の毒なような気もするんですが、その環境の観察なりモニタリングをしたことについての解析というようなところでは、どういうアクティビティーを今後考えられるんでしょうね。

○鳥居センター長 モニタリングは、さっきもスライドでご説明しましたように、目的を持ってやっているわけですね。つまり、変化をとらえて、それに対応するべく保全策を早急に打つというのが目的で、モニタリングのためのモニタリングをやっているわけではないということです。これを私どもも肝に銘じて、じゃ、何を具体的にモニタリングするのがいいのか、指標とする生き物をどうするのか、それから体制ですね。そこで得られた情報をだれがどう分析するのかということです。第1フェーズ、5年終わって、調査項目、調査地点─モニタリングサイトですね。それから調査項目、調査手法というものが大体固まってきた。これから本格的にデータが蓄積されていくんですけれども、今、先ほど幾つかの森林とか河川とか、いわゆる生態系のタイプごとに検討会というのを立ち上げております。そこで調査自体はまた、例えば野鳥の会とか自然環境研究センターとかというところの調査取りまとめ団体にお願いするんですけれども、専門家の先生方による検討会を立ち上げて、さらにその下に今度解析ワーキンググループというものを設けようというふうにしていまして、得られたデータを─例えばあるサイトでは渡り鳥ががんと減少した。じゃ、その原因は何なのかというものを議論する、そういう解析ワーキンググループというものをそれぞれの生態系のタイプごとの検討会で設けようというふうにしています。
 さらに、一つの森林であっても、その上流のエリアとのサイト以外の周囲の環境との関係とか、一つのタイプだけで議論していてもわからないことがありますから、全体で持ち寄った議論の場というのも、これはまだ立ち上がっておりませんけれども、そういった場も当然つくっていかなければいけないだろうと。今、モニタリングサイト1000推進検討委員会みたいなものを、各分野からのそういう委員が集まって全体で討議する場というのを設けているんですけれども、年に1回とか2回とか、そんな程度です。これをもうちょっとワーキング的にフレキシブルに集まって議論するような体制というものをつくっていかなければいけないなというふうに思っておりまして、そういう得られた情報をどう分析するのか。実は、モニ1000だけではなくて、基礎調査の情報とか、そういうものも総合的に本当は見ていかないといけないというふうに思っているんですけれども、一遍になかなかそこまで拡大できない。徐々にそういう体制を充実させていきたいと思っております。

○浅野委員長 もう一点、森口さんからの問題提起的な発言がありましたよね。微妙に基本概念が動いてきているということについては、どういう対応を……。国家戦略のほうで対応しておられるので、多分心配はしていないんだけれども。

○鳥居センター長 基本的に、その法律自体は、ここの先生の条文が抜粋してあります、これ、変わっていないんですね。ずっと自然環境保全法ができてからこの条文で、特に変わってございませんけれども、私どものやってきた調査の中身も、当初はやはり基礎調査ということで、基礎的な植生情報だとか、そういうものが多かったんですけれども、最近はやはり、先生の先ほどのスライドの中に、どういう項目を調査するのかというのがありましたけれども、かなり政策をにらんだ調査のほうにシフトしつつあります。
 具体的に申しますと、例えば先ほど哺乳類の話をしましたけれども、今、やはり特に里地、里山でも大型哺乳類、ツキノワグマ、シカ、イノシシ、クマ、サルとか、そういったものとのあつれき、これは農林業だけじゃなしに生態系にも影響が出ておりますけれども、それらに対応していかなければいけないという社会的なニーズがある中で、20年ごとの分布図の変化だけではもうもたないというようなことで、より詳しいデータを短期間にアウトプットで出していくというようなことだとか、あるいは、今年度から始める調査といたしましては、海洋域の調査ですね。これは海洋基本法というものができまして、海洋基本計画みたいなものが今、つくられつつありますけれども、そういう中にも生物多様性の情報図をつくっていこうというのが、もう基本計画でうたわれていますけれども、そういった全体的な大きな流れの中に沿って、今まで海洋は、どっちかというと浅い部分、干潟、藻場、珊瑚礁というのを中心にやっていましたけれども、もっと深いところも含めて多様性の豊かな海域がどこにあって、そこにはどういう生き物がいるのかというものを調べていこうとか、そういった社会的なニーズを踏まえて調査項目を選んで、大体3年から5年でアウトプットを出していくというような組み立てが最近の基礎調査といいますか、私どもの業務の方向です。
 多様性という言葉は、自然環境保全法ができて、基礎調査が4条から位置づけられたとき、まだ日本ではそれほどといいますか、ほとんど議論されていなかったので条文には入っていませんけれども、今はもう多様性でやっておりますし、あと里地・里山みたいな切り口でもいろいろ調査ということをやっておりますので、条文は変わっていないんですけれども、そういった社会的なニーズに応じて調査の中身を見直していっているということでございます。

○浅野委員長 確かに言われてみるとそうですね。環境基本法が上位法という位置づけになっているから、後から出てきた基本法で生物多様性を入れたわけよね。だから、そこでカバーしたと言えば、法体系的にはカバーしたと言えないことはない。
 いかがでしょうか。ほかにございますか。
 多田さんは報告を聞いておられませんけれども、別に遠慮しなくて構いませんので。

○多田委員 大変おくれてきまして申しわけございません。じゃ、せっかく振っていただいたので……。
 二、三気になったのは、1つは、我々がいろいろなところにアクセスするときには、海外とのベンチマーキングだとか、そういう目的で結構アクセスする機会が多いんですね。そうすると、やはり比較可能性の担保をどうするかというのが問題として出てくるので、そういう視座が、ちょっと私は発表を聞き逃しちゃったんですけれども、きょうの事例の中にあったか、なかったかみたいなところは1つ、今、追っかけで大急ぎで見ながら見ている中では感じました。それが1点。
 もう一つは、この森口委員の一番最後の中で、環境をどこまでどういうふうに分類するかというところなんですけれども、やはりこういう分類の仕方になりがちなんですね。例えば、環境教育だとか環境コミュニケーションとか、きょう筑紫さんが見えていますけれどもエコファンドとかグリーン購入とか、そういう間接影響的な環境のところって、すごく探しにくいというか、データがとりづらいんですね。ですので、そういった環境でいうところの間接影響みたいなものをどう整理して、どこが旗を振ってきちんと整理していくかというのが、また一つテーマとしてはあるんではないのかなというふうに思いました。
 あと、森口委員のペーパーの中で、日本という国を代表する対外国への情報発信の担い手というのは、ここも非常に問題だと思っています。余り日本の顔という意味ではうまく立ち回れていないので、これが決定版というサイトがどこかにある必要はないんですけれども、こういうものを組み合わせていけば一つの顔になるよみたいな、何かそういう全体の連関性みたいなものが担保されるといいなというふうに思います。
 以上でございます。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 この森口さんのペーパーで出ているのは、これは「環境統計」で検索をかけられたら出てきた結果ということみたいですね。だから、「環境」で検索をかけたらまた違うのかな。どうかな。

○森口委員 これは最後のスライドで、検索というより、これは国会図書館さんのほうでの検索の例ですかね。これは検索ガイドを使い─すみません。ちょっと正確でなかったんですけれども、テーマ別調べ方というか、ある種の事例としてこれはお書きになっているんだと思うんですよね。ただ、得てしてやはりこういう分類になっていることが多いというか、分野ごとでやはり整理しているケースが多いです。ただ、ちょっと、こういう分類とか体系化というのがどういう例があるかみたいな話は、さっきもお話ししたとおりで、これはあくまで一例ですので、こういったものももう少し調べてみた上で、範囲の議論はもう一度やり直したほうがいいかなと思います。

○浅野委員長 これは、例えば環境法の講義をする場合とか、どういう項目を立てて講義をするかというのは全く人によって違うので、大塚君と僕じゃまるっきり違いますよね。だから、本当に定番メニューというのはあってないようなところがあるんだけれども、最終的には、ぜひこの委員会でこういうような体系化がいいんだというお勧め品ができれば一番いいんだろうなという気はしていますよね。
 ところで、海外発信の話、きょう最初にも話題にはなったんですけれども、前任の瀧口さんでも構いませんし、西田さん、来たばかりだから答えにくければ……。

○事務局 すみません。4月1日で人事異動がございまして、メーンテーブルの後ろのほうに下がっておりますけれども、引き続きお世話になります。よろしくお願いいたします。
 日本の顔といいますか、比較可能性の話でございますね。

○浅野委員長 それと、それから、対外国への環境情報発信というのは、どこが一義的に責任を持つんだと、こういう質問です。

○事務局 まず後者のほうの顔というところでございますけれども、これは悩ましいところで、例えば、じゃ、環境省が各省庁を集めて一つの海外発信サイトを設けて、そこから出していくというのも、あり得ない話じゃないとは思っております。環境省のホームページでは、実は英語とフランス語と中国語と韓国語で情報発信しておりまして、メーンは環境省の取り組みとかが中心になっていますけれども、それを例えば拡充して、いろいろと各省がやられていることですとか民間での活動といったものを、ある種ポータルサイトに出していくということもあり得るだろうと思っております。多田さんからご指摘があったように、ある種の体系をつくって、そのうち環境省なりがここを出していく、ほかの民間のサイトであればこういうところを出していくというところがあって、お互いそごがないような体系で出していけば、それは幾つかピックアップすれば全体像が見えてくるような形というのもあり得るかなと思いますので、そのあたり、この委員会での議論という形で、どうしたらいいのかということもご議論いただければなというふうに思っております。
 先ほど、もう一点の比較可能性のお話は、これも森口先生の話につながってくるんですけれども、海外でのスタンダードと日本での分類というのがかなり一致していないところからまず始めないといけないところがあるものですから、そのあたりもどうしていったらいいのかというところも議論といいますか、整理できていければなというふうに思っております。
 以上です。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 福井委員、何かありましたらどうぞ。

○福井委員 私は、学術会議で地球人間研というのと環境学の両方に参加しているのですが、そこで少し提言を考えるということをやっていて、そこの中で地球に関する情報、国内の情報も含めて、その整備と利用に関して何か提言をしようということを議論していたんですが、その中で、きょうの議論ともつながりますが、まず徹底的にITを活用していただきたいというのが1つあります。今、国会図書館のご報告も受けたわけですが、今ある環境情報というのは、森口委員からお話があったように相当あるかもしれませんが、どうも利用という視点に立つと、なかなか利用勝手が悪いというような形が多いんじゃないかと思います。もう少しITを積極的に活用するような、単にGISとして図を出すだけではなくて、ユーズケースといいますか、先ほど、一体だれがどういう目的でデータを使うのかということで、ユーズケースを分析をしていただいて、典型的に利用者が最も多いような利用については、先ほどステークホルダーという話もありましたけれども、そういうシナリオをまず環境情報の中ではつくって、それに基づいた提供の仕方ということを考える必要があるんじゃないかというのが1点です。
 もう一つ考えているのは、先ほど情報が、一体だれが提供するのかということで、最も簡単なのは、こういうモニタリングステーションがあって、それが定期的にモニタリング情報を提供するとか、あるいはリモートセンシングのような画像で提供するとかということなんですが、さらには、人々がどういうふうに環境を受けとめたかとか、先ほど間接的ないろいろな情報というのがありましたが、そういった情報は、むしろ積極的ないろいろなステークホルダーの参加によって生まれてくるわけで、その場合は、そういった情報をどういうふうにスクリーニングをして、どう品質保証していくかというようなことが重要で、個別に生物多様性なんかのときにはそういう委員会などがつくられて、そこでスクリーニングをしようという、そういうことが行われていますが、むしろ積極的に、もう少しオープンな学協会とか、いろいろな本来そういったことを専門にしているような集団、あるいはスクリーニングするような、ピアレビューがあるような、そういう集団があるわけで、そういったところを積極的に活用できるような社会制度を議論していただくというのが非常に重要じゃないかと思っています。
 最後に、環境の範囲なんですが、環境の状態を示すようないろいろな情報と同時に、先ほどのユーズケースにもかかわりますが、リスク情報といいますか、エンドポイントとして一体何がその影響を受けるのかということで、人間とかドライビングフォースに関する情報も環境情報の中には広く含まれると思われますので、そういったことを含めて、関係省庁との連携ということにもっと環境省自身が出ていって、イニシアチブをとられるような姿勢が必要ではないかというふうに考えております。
 以上、ちょっと雑駁ですけれども、そういったところをちょっと……。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 亀屋さん、どうぞ。

○亀屋委員 きょうは非常に大きな話といいますか、難しい話を勉強させていただいたんですけれども、私の専門は化学物質でありますので、環境の中で化学物質といいますと、法律は化審法と化管法と2つありまして、それが大気だとか水のところでも一部の化学物質が管理されるようになっているということなんですけれども、そういった中で、これまでは化学物質の周りでは、森口先生が言われたところの人間が自然を観察するといった意味で、非常に少ない数の化学物質を選択してモニタリングもしてきた。ただ、それをずっと情報としてモニタリングし続けてきたら、環境の状況が、すべての基準値等が満たされるケースが非常に多くなって、場合によっては、もうそういったモニタリング自体が必要ないじゃないかというようなこともあったり、実際なんかでも、そういったモニタリングをどんどん削ってきているところも出ている状況じゃないかなというふうに思います。
 ただ、こういった基準値のようなものは、言ってみればネガティブリストでございますから、これは一度つくってしまうとなかなか外せないといいますか、また、その情報をずっとモニタリングし続けなければいけないような、何かそういった脅迫観念にとらわれちゃっているところもありまして、なかなか難しいところがあるんですが、一方でネガティブリストの部分を、さらにまた別の物質を何か追いかけていく必要があるんじゃないかという議論は、当然昔からずっとあるわけですけれども、少しずつ少しずつネガティブリストがふえてはきていますけれども、なかなかふえない。それをふやすのがいいのか、ふやさなくてもいいのかというのもあるんですけれども、一方で、我々の化学物質のところですと、世の中動いているというか、非常に化学物質を取り巻くところが世の中が成長しているといいますか、変化してきているのがありまして、それは、先ほどの人間が観察するということではなくて、人間がつくり出す、人間が使う化学物質の部分についての情報を、今度はネガティブリストではなくてポジティブリストのような形で情報をみずからがつくって、みずからが国民なりしかるべきところに認証を受けたりをしながら使っていかなければいけないといったことで、化学物質の面から見ると、選択といったことも非常に大きく立場が変革点に来ているのかなというふうに思います。
 そういった意味で、従来のネガティブリストを中心とした環境情報を整備していくこともなくしてはいけない部分もあると思うんですけれども、これからは、むしろ我々の周りでは、ポジティブといいますか、この化学物質はこれだけリスクが少ないよといったようなところの情報、それにかかわるような基盤となるような情報の整備とか、あるいはツールの整備といったことを環境情報の中心に据えていかなければいけないのではないかなといったのを、本日のお話を伺って感じたところであります。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 じゃ、金藤委員、どうぞ。

○金藤委員 環境情報ということでは、対象とする範囲が大きいので、私は特に環境データということに限りたいと思います。そこで、環境データの質の保証に関して言えば、いろいろな考え方があると思いますので、一般的に述べることは難しいと思います。ただ、公開する情報に対する比較可能性を検討する、または、それを担保するために最低限必要となるような、その特性を公開するフォーマット、例えて言うと、論文の投稿規定ものを考えていく必要があると考えております。そのため、そういったことを適性に検討する機関がどこかにあって、公開される環境データがそのフォーマットを満たしているかどうかの最低限の認証を行うと良いと考えます。これは意見です。以上です。

○浅野委員長 ありがとうございました。お二方から重要なご指摘をいただいたと思います。
 少し話が広がるかもしれませんけれども、森口さん、今までの話を全部総括するということもあるんですが、さっき福井さんからご指摘があった話で、人々の受けとめ方に関する情報というような、循環のほうで考えても、いろいろな情報というのは、かなりその要素に踏み込んでいますよね。単なるモニタリングとか数字を追いかけるという話ばかりでもなかったような気がするんだけれども、あの議論の経験も踏まえて、話を発展させるための糸口を何かつくることはできますか。

○森口委員 すみません。今、委員長のおっしゃったことのポイントをうまくキャッチしているかどうかがわからないところもあるんですが、亀屋先生が的確におっしゃっていただいたんですが、やはり自然の中における事象の、私の言い方をうまく引用してくださったんですが、ある種のネガティブリスト、これがやはり環境として悪いんだ、これをモニターしようというのは、そういうことを割に伝統的に、多分環境庁の環境情報というのはやってきたと思うんですよね。
 ちょっとたまたまきょう午前中、さっきも少し触れた環境勘定、環境経済統合勘定にかかわるようなところで、ある先生と議論をしていたんですけれども、今、循環の分野で、私自身がやっているのは物質フローとか、これも経済界の中における物の動きなんだけれども、まだある種の自然界における物の動きの議論をやや引きずっているところもあるんです。一方で、もっと人自身が環境問題とか、あるいは循環型社会みたいなものに対してどう行動しているのかとか、そういったところの情報はもっともっと、やはり環境省はプロパーの情報としてとっていっていいんじゃないか。例えば、人によって受けとめ方はいろいろあると思うんですけれども、ライフスタイルに関する情報とか、あるいは日常生活の中で環境保全のためにどういう行動をとっているかとか、こういうものって、多分生活時間調査だとか、あるいは家計調査だとか、いろいろなこういったものの中にうまく盛り込めるんですけれども、環境省はプロパーとして新たに統計情報として起こそうと思うから、これは大変ハードルの高い世界なんですね。だから、それがわからないがゆえに、結局何かアンケート調査みたいなものでとって、意識が向上しているとかしていないとか、そういう議論をしているんですが、もうちょっとやはり客観的に、そういう人々の行動、環境行動というものをちゃんと統計調査という枠組みでとらえていってもいいんじゃないかな。
 やはり自然を相手にしてきたんですね。国民が環境に関して何をやっているか、あるいは国民だけじゃなくて、企業も含めてでいいと思うんですが、ある種の、もうちょっと人間がどう行動しているのか、何をやっているのかみたいなところに関して、もう少しやはりしっかりとした情報収集をしていかなければいけないのかなというような感じがしていまして、その情報を集めて、またいろいろなネガティブリストの対象になりそうなネガティブな情報も、どんどん二次利用として発信してとか、そういう意味での人間ではなくて、もっと観察する主体というか、環境に対して働きかける、環境に関してアクションをする主体としての人間というものを、もっと環境情報の対象としてちゃんと加えていく必要があるのかな。そのことが、多分多田さんがおっしゃったこととも少し関係してくるのかな。いわゆる大気とか水とかなんとかじゃなくて、人間が何をやっているかということの情報をもう少し体系化していく必要があるのかなというふうに感じております。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 さらにそれがきちんと何か経済的な数字であらわせればなおいいというのが、西尾局長の前からの厳しい要求なんだけれども、なかなかそこまでいくかどうかは別として、今のような点は、もっときちんと環境情報の枠の中の議論に入れなければいけないという問題の認識はできると思いますので、さらに議論を今後、この専門委員会でも続けていきたいと思いますね。
 それでは、ほかに何かご意見。
 田中さん、せっかくおいでいただいて、何か今までの話を聞かれてご感想なりコメントなり、ありましたらどうぞ。

○田中室長 私どもは、国会議員の先生方のご質問に対して、環境分野も含め専門的な情報を提供するということをずっとやってきているわけですけれども、議員の先生方は、必ずしもその分野の専門家ではございませんので、専門的なものをどういうふうにご説明して理解していただくかというところでは、苦労するところがあります。そういう意味で、情報の調べ方というようなことも、専門家でないところにも専門的な情報ニーズはたくさんあるわけで、そこに対してどうやって専門的な内容をかみ砕いて提供するかというような実践を踏まえて、これからは「知識ベース」というようなものをつくれないかということでやっておりますが、なかなか簡単にできないところでございます。情報を受け取る主体というのは最終的には全国民ということで考えますと、専門家でないところにもニーズはあるというところで、そこをどう提示できるかというようなことも、また考えていただければと思います。

○浅野委員長 ありがとうございました。我々のミッションとして最終的に考えなければいけないことはそこら辺だという認識はもともと持っておりました。ありがとうございました。
 ほかに何かご意見ございますでしょうか。事務局、よろしいですか。

○西田環境情報室長 先ほど、鳥居センター長から、政策をにらんだ調査、逐次変わっていかないといかんと。他方で、調査というのは継続性が重要なんだと思うんですけれども、そこら辺で調査内容を政策をにらんで変えていくときに、これまでやってきた調査を廃止して新しい調査をやる、そういったときにいろいろご苦労なんてあるんでしょうね。予算をとれないということですかね。

○鳥居センター長 まさに、予算が非常に伸びるというのは今は厳しい事態ですので、限られた予算の中で何を優先していくのかということだと思います。やはりベースとなる基礎的な情報の整備という意味では、私ども、過去、いろいろな基礎調査をやってきましたけれども、今はやはり植生図ですね。あれを今、粛々とやっている。あれが非常に基礎的な情報になるだろうということでやっています。あと、政策的なことということで、先ほどの哺乳類の話をちょっとしましたけれども、あと海の話だとか、あと温暖化による生態系への影響、ここを重点的にやっていかなければいけないということで、私ども、今取り組みをまさに、モニタリングサイト1000はもう既に始まっていますけれども、やっています。モニタリングサイト1000は、先ほどもご紹介しましたように、これはもう100年やるんだということでやっておりますので、ずっとやっていきます。哺乳類の調査につきましても、予算のかけ方、調査の仕方で初期はかなり力を入れていきますけれども、水平飛行になってきますと、できるだけ要領よくやって、予算的にもうまくやって、ほかの調査へ回していくとか、それを工夫でやっていくしかないなというふうには思っております。
 ちょっとまだ時間もありますので、1つ私のほうから、話が飛ぶかもしれませんけれども、先ほどモニタリングサイト1000で、たくさんの人にかかわっていただいている。特にボランタリーなところで一般の方々からも情報をいただいているんですが、これは、植生図のように入札でちゃんと業者に請負で出してということになれば、その得られた情報の取り扱いというのは非常に規定にのっとってやれるのですけれども、ボランタリーなところでいただいた情報というものについては、結構得られた情報の取扱いルールを両者で持っていかないと、後でトラブルになることもあります。例えば情報の公開にしても、その情報が、例えば研究者の方であれば、論文を書くのにこっちが先に使っちゃってはまずいということもあって、こちらでちゃんとお金をお支払いしてやっていただいている分には、もちろんこちらでやれますけれども、ボランタリーで情報を出していただいている部分については、そういう扱いというのもかなりルール化してやらなければいけないとか、それはNGOの方にかかわっていただく場合もそうなので、結構そこにかなり時間を割く部分もございます。ちょっとそういうところも、なかなかこういう場では出ないかもしれませんけれども、そういう課題もあるということを一言申し上げておきたいと思います。

○浅野委員長 ありがとうございました。そういう事情があるということを我々は余り認識していなかった面もありますから、よくわかりました。
 それでは、本日は、田中室長、鳥居センター長、お忙しいところ本当においでいただいてありがとうございました。森口委員にもご報告をいただいてありがとうございました。
 本日は第1回ということでございますが、今後のスケジュールについて事務局からお話を……。

○細野企画調査室長 今後のスケジュールについて、まだ詳細は決まっておりませんけれども、2回目を5月に予定させていただきたいと思っております。早目にメールでお知らせをしたいと思っております。
 以上でございます。

○浅野委員長 それでは、次回は5月を予定したいということですので、またどうぞよろしくお願いいたします。なお、ヒアリングは委員会そのものではありませんので、定足数にはこだわっておりませんが、お出になれる方は、どうぞぜひご出席をいただければと思います。
 では、本日はどうもありがとうございました。

午後3時52分 閉会