中央環境審議会総合政策部会  環境研究・技術開発推進戦略専門委員会(第13回)  会議録

日時

平成27年3月24日(火) 17:01~19:02

場所

環境省 第1会議室

議題

  1. 1.開会
  2. 2.議事
    1. (1)各領域において重点的に取り組むべき研究・技術開発の論点について
      1.   ①低炭素、資源循環、自然共生、安全確保の各領域について
      2.   ②領域横断的な研究課題について
    2. (2)その他
  3. 3.閉会

配付資料

【資料】

資料1 中央環境審議会総合政策部会環境研究・技術開発推進戦略専門委員会委員名簿
資料2 中央環境審議会総合政策部会環境研究・技術開発推進戦略専門委員会(第12回)議事録
資料3 第12回環境研究・技術開発推進戦略専門委員会における委員コメント
資料4-1 低炭素領域における論点について(案)
資料4-2 資源循環領域における論点について(案)
資料4-3 自然共生領域における論点について(案)
資料4-4 安全確保領域における論点について(案)
資料5-1 領域横断的な研究課題に関する論点について(案)
資料5-2 現行の推進戦略における重点課題と新たな戦略における重点課題(案)との関係
資料6 新たな環境研究・環境技術開発の推進戦略の策定に向けた今後の予定(案)
参考資料1-1 環境研究・環境技術開発の推進戦略について(平成22年6月22日中央環境審議会答申)
参考資料1-2 環境研究・環境技術開発の推進戦略 平成26年度総括フォローアップ結果
(平成26年11月 環境政策局総務課環境研究技術室)
参考資料2-1 環境基本計画(平成24年4月27日閣議決定)
参考資料2-2 第四次環境基本計画の進捗状況・今後の課題について(第1回点検結果・抜粋)
参考資料3 低炭素・資源循環・自然共生政策の統合的アプローチによる社会の構築
~環境・生命文化社会の創造~ (平成26年7月中央環境審議会意見具申)
参考資料4-1 科学技術基本計画(平成23年8月19日閣議決定)
参考資料4-2 第4期科学技術基本計画フォローアップ(概要)(平成26年10月22日総合科学技術・イノベーション会議決定)
参考資料5 科学技術イノベーション総合戦略2014(概要)(平成26年6月24日閣議決定)
参考資料6 環境エネルギー技術革新計画(平成25年9月13日総合科学技術会議決定)
参考資料7 SDGs/ポスト2015開発アジェンダについて
参考資料8 Future Earthについて(日本学術会議パンフレット)
参考資料9 災害環境研究サマリー2014(国立環境研究所パンフレット)
参考資料10 循環型社会形成推進基本計画((第2章・第3章(一部)抜粋))
参考資料11 めぐみの星に生きる(生物多様性国家戦略2012-2020

出席者

委員: 安井 至委員、岡田光正委員、白石寛明委員、高村典子委員、大塚 直委員、
指宿堯嗣委員、甲斐沼美紀子委員、谷口 守委員、塚原正徳委員、松藤敏彦委員、
森本幸裕委員
オブザーバー: 一般社団法人国際環境研究会 鷲田研究主監
環境省: 小林総合環境政策局長、吉川環境研究技術室長、
宮下環境研究技術室調整係員、嶋田環境研究技術室調整係員

議事

【吉川室長】 定刻になりましたので、ただいまから中央環境審議会総合政策部会第13回環境研究・技術開発推進戦略専門委員会を開会させていただきます。

 本日は、お忙しい中、またちょっと遅い時間からのスタートになります。ご出席いただき、ありがとうございます。

 前回、4年ぶりに委員の改選を行いました。ご報告申し上げましたが、前回はご欠席でしたが、今回、大塚臨時委員にご出席いただきましたので、ご紹介させていただきます。

 早稲田大学の大塚臨時委員でございます。

 本日は、荻本臨時委員、山口専門委員から、ご欠席の旨をお伺いしております。また、岡田委員はご出席の連絡をいただいています。ちょっと遅れておられるようですが、開始させていただきたいと思います。

 また、オブザーバーといたしまして、環境省競争的資金プログラムディレクターであります、一般社団法人国際環境研究会の鷲田研究主監に、今回もご出席いただいております。

 議事に入ります前に、お手元の配付資料でございますが、一番上の議事次第に一覧を記載しております。資料2の前回議事録がちょっと分厚くありますが、これについては、既に委員の皆様のメールでお送りしまして、ご確認をいただいております。今回の配付をもちまして、一般公開とさせていただきます。資料については、そんなに部数はありませんので、欠落がありましたら、会議の途中でもお申し出いただきましたら、お持ちいたしますので、申し出ていただければと思います。

 参考資料については分量が多いので、前回同様、席上にファイルで配付をしております。毎回このように用意いたしますので、本日の委員会が終わりました後は、そのまま置いていただければ結構でございます。

 カメラ撮りにつきましては、ここまでとなっておりますが、今日はないですね。

 それでは、以降の進行は委員長にお願いいたします。

【安井委員長】 それでは、本日もよろしくお願いします。

 前回に引き続きまして、議題は環境研究・技術開発の推進戦略の新バージョンをつくるということでございまして、前回いただきましたご議論を事務局に整理していただきましたので、そのご紹介をさせていただいて、それから本題に入りたいと思いますので、事務局からよろしくお願いいたします。

【宮下調整係員】 それでは、前回の第12回環境研究・技術開発推進戦略専門委員会における委員コメントにつきまして、資料3をご覧ください。前回の議事録をもとに、幾つかに分類して整理をさせていただきました。

 まず1.の全体の構成等につきまして、その中でさらに四つの中分類に分けさせていただいておりますが、まず一つ目、推進戦略の全体構成等についてです。目標に対しての成果ではなく、その研究に資金を投資したかどうかで研究の進捗の判断が行われているという事実を踏まえて戦略を策定していく必要がある等の御意見をいただきました。

 二つ目の、策定の手法についてです。行政需要の根拠資料は、果たして本当に意見具申だけでよいのか、将来どのように議論していく必要があるのかという御意見をいただきました。

 三つ目が分野設定についてです。法学的な分野が欠けている、経済動向を見ながら新しいテーマを提案していく必要がある等の御意見をいただきました。

 四つ目、推進戦略の活用についてです。人を育てるのが目的か、それとも数年後に結果を出すのが目的か、そして人を育てるのが目的の場合、ミドルアップをしていくのか、トップレベルを上げていくのかを意識する必要があるという御意見をいただきました。

 次に、2.環境技術の範囲についてです。

 環境分野とエネルギー分野が重複していることがあるので、もっと方法論について強調してはどうかというような御意見をいただきました。

 そして、環境技術の範囲についてということで、記載の三つの御意見をいただいております。

 3.国立環境研究所についてです。分野横断的な研究プロジェクトを組み立てるのは難しいが、社会からそのようなことを非常に求められているので、そういった研究を進める努力を行っていかなければいけないという御意見をいただきました。

 4.省庁連携につきましては、環境省はほかの省庁や団体の研究費に関わる情報が少ないので、議論ができないような状況にあるという御意見や、ほかの省庁とのデマケについて、もう少し検討をしていくべきというような御意見をいただきました。

 そして、5.その他として、これまでの1.から4.に分類できないものについての御意見をこちらに記載しております。

 いただいた御意見につきましては、本日の論点とともに、今後の答申策定に生かしてまいります。

 以上です。

【安井委員長】 ありがとうございました。

 何かご質問、ちょっと文章がわからないとかというようなことが何かございましたら、ご指摘をいただければと思います。大体こんなふうだったかとは思うんですけれど。よろしゅうございましょうか。

 ここは、本日後半に議論いただきますときに、また見直していただけるとよろしいかというような気もいたしますので、次に行かせていただいてよろしゅうございましょうか。

 それでは、議論そのものは、まさに環境研究・技術開発の推進戦略の策定でございますけれども、先生方にご協力をいただきまして、各領域でご議論を若干いただいたと伺っております。各領域の論点につきまして、事務局側から、そのまとめましたものにつきまして説明をいただきまして、その後、それぞれのワーキンググループですか、そこでの議論をまた各先生から補足をいただく、もしくは新たにご意見をいただくと。そういった形で進めさせていただきたいと思います。

 それでは、事務局から、四つの分野につきまして、ご説明をお願いしたいと思います。お願いします。

【嶋田調整係員】 それでは、資料の4シリーズに沿いまして、それぞれの領域における論点について、先生方ともご相談をさせていただきまして、事務局で整理をしましたペーパーがございますので、こちらについてご説明いたします。

 まず、資料4-1でございます。低炭素領域における論点ということでございまして、これ以降、4領域全て同じになりますので、このペーパーの構成も含めて、ご説明をしたいと思います。最初に3行ほど書かれておりますが、これがそれぞれの領域におけるごくごく大まかな概観を書かせていただいております。

 低炭素領域ですと、環境基本計画等において2050年までに温室効果ガス排出量の80%削減をすることが掲げられています。それに向けた研究・技術開発が求められております。また、我が国の低炭素領域での研究・技術開発の成果は、これまでにIPCCなどの国際的な取組にも貢献をしております。今後も国内の課題解決のみならず国際的な取組への貢献が重要であるとまとめております。

 その下の青色の枠でございますけれども、2050年頃を想定した長期的な社会像ということでございまして、こちらをなぜ最初に書いているかと申しますと、現行の推進戦略、参考資料1-1でおつけしておりますけれども、こちらにおいても、長期の社会像をまず描いた上で、中期の社会像に少し引き寄せて重点課題を設定するという構成にしておりますので、それに倣って、この論点ペーパーも作成をしております。2050年頃を想定した長期的な社会像に関しては、各領域、ある程度共通の認識をまず持っておりまして、昨年7月に中環審から意見具申をいただきました「低炭素・資源循環・自然共生政策の統合的アプローチによる社会の構築」ということで、参考資料3でおつけしておりますが、こちらの10ページから12ページに、実はビジョンというものが記載されております。こちらがおおよそ2050年頃を想定した社会像ということで、この意見具申の大きな方向性を示しておりまして、今回の今のまさにご議論をいただいております答申におきましても、この意見具申をある程度踏まえながら検討をしていくのが、流れとしてよいのではないかと事務局としては考えており、これを土台にしています。ただ、こちらだけですと、どうしても入っていない論点がある、抜け落ちている問題点があるというご意見をいただいておりますので、この社会像はありながらも、さらに研究・技術開発によって取り組まなければならない論点をさらに書いていくというようなイメージと考えております。

 低炭素領域の場合ですと、この意見具申のビジョンを踏襲することとしますが、加えて、先ほど申し上げた温室効果ガス排出量80%削減をしている社会においても、活発な経済活動、あるいは豊かな暮らしが確保されているということでありますとか、経済成長、産業競争力以外の新たな社会の駆動力となり得る価値ということで、これは文化的な面と申しますか、地域のつながりを大事にするといったことですとか、そういったものが生み出されて、地域の活力につながるということを考えるべきであろうということでございます。

 その下の備考と書いておりますところは、これは2行上の温室効果ガス排出量80%削減と関連しますけれども、本日ご欠席の荻本先生からのご意見でございまして、2050年に温室効果ガス80%削減というのは、非常にチャレンジングな目標であって、それほど容易なものではないということは世間一般にも認識されているとは思いますけれども、そういったことをよくよく踏まえるべきというようなご意見もいただいておりますので、このような形で、備考を書かせていただいております。

 また、2025年~2030年頃を想定した中期的な社会像でございますけれども、この低炭素領域につきましては、今、中環審・産構審の合同専門家会合で、別途、COP21に向けた約束草案の議論がされておりますので、それが決まらないことには、エネルギーミックスの話もなかなか定まらないという状況でもございますので、それがある程度見えてきたら、これに相当する内容をどうしていこうかということを考えることになると思っております。なので、今時点、これ以上は書きにくいというところです。

 そういう状況を踏まえました重点課題ということで、重点的に取り組むべきテーマについて、大きく四つほどお示ししております。

 こちらですけれども、一つ目がシナリオづくりということで、行動変容を促す例えば合意形成だとコミュニケーションのやり方でありますとか、あとは都市、あるいは農山漁村、あるいは都市と農山漁村との連携といったこと、地域像を踏まえたシナリオづくりでありますとか、都市計画等の制度への反映に向けた研究でありますとかが、ポイントとしては挙げられると考えられます。

 続いて、緩和策でございまして、省エネルギー・再生可能エネルギー技術の高度化・低コスト化、これまでにもかなり取り組まれてはおりますけれども、こちらについて引き続きということでありまして、あとはフロンの対策技術でありますとか、供給側の観点の比較が多くございますけれども、需要側の観点からの研究・技術開発も考えるべきではないかというご意見もいただいております。また、これは研究・開発の課題とはやや直結しないかもしれませんけれども、二国間クレジット制度等を活用した我が国の技術の海外展開ということも考えていくべきというところでございます。

 続いて、重点課題③でございますが、適応策は、これ以後、別の領域でも適応策の話は出てまいりますが、一応、今回はここに置かせていただいております。観測・予測モデルに基づく適応技術の評価でありますとか、影響総量の予測でありますとかが、ポイントとして挙げられると考えております。

 最後が温暖化現象の解明・予測・対策評価でございまして、これは気象学に若干近いイメージでございますけれども、炭素循環・水循環の解明でありますとか、解明に資する統合的観測・予測でありますとか、観測技術・モデル技術をさらに政策立案に活用していくということですとか、それをさらにIPCCへの貢献を引き続き行っていくというようなことをイメージしております。

 続いて、4-2でございます。資源循環領域における論点の案でございます。

 資源循環領域におきましては、ここ5年の間に、大きな動きとしまして、平成25年5月に「循環型社会形成推進基本計画」が閣議決定されております。その中で、リサイクルに比べて取組が遅れておりますリデュース・リユースの取組強化でありますとか、有用金属の回収、安心・安全の取組強化、これは有害物質の適正な管理・処理でありますとか、災害廃棄物対策でありますとか、さらには3R国際協力の推進などが新しい政策の柱になっております。これを踏まえた取組というのが求められると考えられます。

 長期的な社会像につきましては、ある程度ビジョンで書かれているところではございますけれども、その中では、地域ごとの自然環境や人・生活・事業活動の特色に応じた物質・エネルギーの循環でありますとか、環境中のさまざまな物質・元素の健全な循環、さらには自然環境・生態系の保全の実現にも資する健全性の確保といったこと、さらには途上国を中心に我が国の技術力が幅広く展開されるということによって、地球環境保全に貢献するだけではなくて、直接投資も活発化するという社会像が規定されております。

 これをもう少し、2025年~2030年の中期に引き寄せて考えてみますと、先ほど申し上げました循環基本計画の中で、循環型社会の形成に向けた中長期的な方向性というものが実は示されております。

 こちらにつきましては、本日、参考資料の後ろのほうですが、循環基本計画の当該部分の抜粋を記載しております。参考資料10でございます。循環型社会形成に向けた取組の中長期的な方向性ということで、ここで2030年頃までの社会像が示されておりますので、これに沿うのが整理としてよいのではないかなと考えております。

 とは申しましても、もう少し個別テーマでいきますと、自然循環性、循環利用率の向上、廃棄物としての処理量の減少でありますとか、有用金属の回収・リサイクルの技術開発・システムの確立、あるいはバイオマスなどの廃棄物エネルギーの回収に向けた技術開発・システムの確立、さらには環境負荷の少ない適正処理・処分に向けた技術開発とシステム開発がなされている、あるいは、アジア等での資源循環の実現に向けて展開といったことが考えられるのではないかというご意見をいただいております。

 これらを踏まえまして、重点課題の案として大きく三つ記載しておりますが、一つは3Rを推進する技術・システムの構築ということで、3Rの推進による資源循環性の向上と廃棄物の減少を目指すテーマでありますとか、有用金属の回収・リサイクル、前回の戦略ですと、レアメタルということを非常に強調しておりましたが、レアメタルだけではなく、広く有用金属というふうに捉えたほうが望ましいのではないかというご意見をいただいておりますので、こういった書き方になっております。さらにはアジア等、地域特性を踏まえた技術・システムの開発などということも考えられます。

 次に、廃棄物の適正処理と処理施設の長寿命化、機能向上に資する研究・技術開発ということで、3Rを推進していくことは当然なんですけれども、その上で、さらにどうしても残る残余廃棄物がどうしても出てまいりますので、それに関して、環境負荷の少ない適正処理を考えていく必要があると。あとは、アスベストですとか、最近話題になっております水銀でありますとか、そういったものの廃棄物の適正管理・処理が求められると。さらには、廃棄物処理施設の長寿命化ということで、インフラの老朽化が近年各方面で言われておりますけれども、廃棄物処理施設も同様であるということで、そういったものの長寿命化も求められるであろうと。あとは、廃棄物処理施設の社会的受容性の向上ということもテーマとして挙げております。

 三つ目の重点課題でございますが、バイオマス等の廃棄物からのエネルギー回収を推進する技術・システムの構築ということでして、化石燃料資源の代替を見据えた廃棄物ですとかバイオマスからのエネルギーの回収技術、また、それを地域特性に応じたシステムにしていくということでありますとか、地域熱供給など、回収エネルギーの利用拡大に向けた社会システムの整備、都市計画制度との連携ということも視野に入れるべきというご意見もございましたけれども、そういったところのシステム整備ということが求められると考えております。

 続きまして、資料4-3でございます。自然共生領域における論点でございまして、国際的な目標として、「生物多様性国家戦略2012-2020」で、さらに国際的な愛知目標があって、それを国内で達成するために生物多様性国家戦略があるというような状態になっておりますけれども、そちらで2025年~30年がございますと。

 2025年~2030年までの中期の社会像の設定に当たりましては、愛知目標の達成状況とそれ以降の展開を踏まえる必要があるということで、実は目標設定はやや大変、やや踏み込まないといけないので、今の時点ではなかなか言い切りづらいというところもございます。また、グリーンインフラストラクチャの活用、気候変動への適応など、幅広い政策への反映を要するテーマもございまして、こちらは低炭素や資源循環などの領域との連携ですとか、あるいは、実際に研究を行う際には、府省間の連携ということも重要であろうというご意見をいただいております。

 長期的な社会像につきまして、意見具申のビジョンを踏襲することとはしておりますが、それに加えて、視野に入れるべきポイントとして、住民がどうしても戻らない旧里山というものがどうしても出てくる可能性がありますので、それについて、適切な生態系への回帰がなされているでありますとか、都市においても生物多様性を確保する、あるいはグリーンインフラストラクチャの活用ということが十分に進められていると。さらには、気候変動による生物多様性への影響に関連して、モニタリング、あるいはそれに基づいた評価、順応的アプローチにより生物多様性への悪影響が低減され、多分野の適応策による生物多様性への影響が最小化され、さらには生態系を活用した適応が進められるというようなことが望ましい社会像ではないかというご意見をいただいております。

 もう少し中期に引き寄せますと、愛知目標の達成状況とそれ以降の展開を踏まえる必要があるということで、本日の参考資料11に生物多様性国家戦略のパンフレットをご用意しておりますが、そちらの18ページに、愛知目標そのものが記載をされております。これは2020年に向けた取組ということでございますので、今回は、2025~30年は、さらにその先に行ってしまうということなので、やや見込みを立てにくいところではありますけれども、タイムスパンとしては、そういう状況にあるということでございます。

 それを踏まえまして、今時点でこういうことが言えるのではないかということで、ご意見をいただいたこととしまして、グリーンインフラストラクチャの考え方に基づいた展開ということで、エリアマネジメント、土地利用の手法と連携したレジリエントな都市づくりでありますとか、平常時の利用計画と災害時等、あるいは非常時とも言えますけれども、その対応、両方を踏まえた国土デザインということが考えられます。また、生物多様性保全の観点からの気候変動への適応に向けて、モニタリング等々、先ほどの長期の社会像と若干重なりますが、順応的なアプローチによる取組等々がなされているというようなこと、さらには、生物多様性の損失防止に配慮した国土デザインと、生態系サービスの評価に基づいた利活用が進んでいるということが考えられるのではないかとご意見をいただいております。

 それを踏まえまして、重点課題として大きく二つ設定しておりまして、一つには生物多様性、もう一つは、いわゆる二次的自然という分け方で考えておりますけれども、一つ目、生物多様性でございます。こちらは、生物多様性の保全とそれに資する科学的知見の充実ということでございまして、リモートセンシングからの遺伝子分析など、さまざまなレベルの新技術の活用、情報集積でありますとか、さらに集積した情報を活用した評価手法、地域における生物多様性保全に向けた意思決定に利用できるような合意形成ツールでありますとか、遺伝子資源の把握と利用、気候変動への適応、生物多様性に関する知見の情報発信なども考えられるのではないかとご意見をいただいております。

 また、二次的自然に相当します森・里・川・海のつながりの保全と生態系サービスの持続的な利用に向けた研究・技術開発でございますけれども、エリアマネジメント手法との連携でありますとか、流域別の生態系サービスの恩恵解明でありますとか、先ほど資料3で若干こちらから申し上げましたけれども、人文社会領域との連携ということで、コモンズとしての生態系サービスの観点が重要というご意見もいただいており、そういったことも挙げております。また、健全な水循環を可能にする土地利用デザインですとか、グリーンインフラストラクチャの評価と利用なども挙げさせていただいております。

 これはどこにどうおさめるかという問題ではありますけれども、備考としまして、気候変動による生物多様性への影響の把握・評価・対策に関しまして、モニタリングでありますとか、シミュレーション手法、さらには、特に影響が生じそうな地域を特定する、避難場所だとかということの地域をある程度定めた対策に資するような取組、さらには、適応策の計画実施に関連する研究・技術開発ということで、これは先ほど低炭素領域に適応策というふうに少し書かせていただいておりますけれども、自然共生でも、こういったことが考えられるのではないかというご意見もいただいております。

 続いて、資料4-4でございます。安全確保領域でございます。

 こちらにつきましては、PM2.5等の大気汚染に注目が集まったとともに、水銀に関する水俣条約などの国際的な取組が進展しております。このため、研究開発の面でも国際的な貢献を視野に入れた取組が求められております。また、平常時だけでなくて、東日本大震災からの復興でありますとか、災害時・事故時の化学物質・有害物質の排出などへの対応についても視野に入れるべきというご意見をいただいております。

 長期の社会像につきまして、引き続き中環審のビジョンを踏襲することとしますが、ビジョンの中で、安全確保領域の記載が比較的少ないということでございますので、少し社会像を広げていただいているような状態でございます。具体的には、顕在・潜在リスクを含めた生命環境への脅威を包括的に防止し、活力ある社会が実現されている、でありますとか、リスクの可視化や市民の合意形成に基づく安心が確保されている、さらには安全に関する世界的な状況把握と国際的管理の枠組みの構築と、それと連携した国内施策が達成されているということであります。また、国内だけでなく、新興国等における大気・水・土壌等の問題の解決に、我が国の技術・ノウハウが貢献しているということも挙げさせていただいております。

 中期の社会像でございますけれども、もう少し引き寄せてきまして、化学物質が人・環境にもたらす著しい悪影響について、予防的取組方法に留意して科学的なリスク評価がなされていると。あるいは、化学物質など生命環境へのさまざまな脅威が人の健康や生態系に与えるリスクについて包括的に把握・管理が行われていると。多様な機能を持つ物質、革新的な機能物質に対して、的確に安全を確保するための科学的知見の集積と。さらには、革新的な環境監視技術の確立と、地域及び全球的な監視・情報の共有が実現と。国内だけでなく、新興国における大気・水・土壌等の環境管理技術・ノウハウの利用というふうに書いております。

 これらを踏まえまして、重点課題ということで、大きく化学物質対策が一つ、もう一つは大気・水・土壌等の環境管理技術というふうに、大きく分けて挙げております。

 化学物質に関しましては、小児等の脆弱性を考慮したリスク評価・管理の推進、あるいは多種・新規化学物質の網羅的な環境把握と予測・評価・管理、生体高次機能への影響解明、生物多様性の視点に基づく生態毒性評価、水銀・POPsなど全球的な課題への対応、災害時・事故時への対応などというふうにご意見をいただいております。

 環境管理技術のほうに関しましては、大気・水・土壌等の環境管理、計測技術の高度化・低コスト化というふうに書かせていただいておりますが、健全な水循環を確保するための流域・陸域を含む水域全体の評価・管理、PM2.5・光化学オキシダント等のリスク評価・対策でありますとか、越境大気汚染の計測・分析・対策、環境管理技術の国際展開に向けた研究・技術開発などを挙げております。

 また、こちらもどうおさめるかということで、今日、この後もご議論いただければと考えておりますが、一般環境中に放出された放射性物質への対応でありますとか、災害・事故における工場等からの有害物質の排出などについても視野に入れるべきであると。これは化学物質分野、今、重点課題案②の備考で書いておりますけれども、実際には重点課題案①にも関係してきますし、資源循環領域等々とも関係してくる共通の課題ということで、一旦、ここで備考と書かせていただいておりますが、そういったご意見もございました。

 各領域の論点につきまして、事務局からの説明は以上でございます。

【安井委員長】 ありがとうございました。

 それでは、ただいまご発表いただきましたことに、補足もしくはご意見をいただきたいと思いますが、一番最初に、低炭素、資源循環、自然共生の統合的アプローチというのが出てくるんですけど、これの中環審意見具申というのは、確かに私も委員なので読んではいるんだけど、全然記憶にはなっていない。申し訳ないんですけど。大塚先生も委員のはずなので、どんなものだったか見解を伺ったほうがいいかなと思っているんだけど。ちゃんとした文章には多分なっていないんじゃないかな。

【嶋田調整係員】 参考資料3の10ページから12ページに載っています。

【安井委員長】 ワーキンググループはこれをお読みいただいて、つくっていただいたと考えていいのかな。

【吉川室長】 そうですね。ワーキンググループの議論では意見具申での、長期的な社会像で足りないものを新たに書き込む方向で御意見をいただきました。また、意見具申の後ろのほうでは、2020~2030年を想定した中期的な社会像の検討に役立つような施策の方向性が書かれております。

【安井委員長】 これをちゃんと読まなきゃいけないな。私も入っているんだけど。それでは、ほかの委員の方はちゃんとわかっているという前提でよろしいですね。

 そういうことであれば、議論が進められるかと思いますけど、どこからでもよろしいんですけど、最初のほうから行きますとすると、一番最初が低炭素になるんだと思いますが、このあたりで順番に参りたいと思いますが、ここにご参画いただいた方が、どなたとどなたか、私は正確に把握をしていないんですけど、何か補足すべき、あるいは何かございましたらお願いします。

【甲斐沼委員】 よくまとめてくださっているので、今のところ追加はありません。思い出したらまた追加いたします。

【安井委員長】 はい。ほかに参画された方は、いかがでございますか。いいですか。

【谷口委員】 はい。

【安井委員長】 では、そういうことだったというように考えたいと思います。

 ほかの委員の方で何かご質問等がございますか。

【大塚委員】 よくまとめていただいているので、中に入っているということだと思いますけれども、再生可能エネルギーの技術としては、特にフラクチエートする風力とか太陽光との関係で、安定化させた蓄電池みたいな技術は、ぜひ検討していただくとありがたいです。蓄電池がいいかどうかもよくわからないですが、その検討はぜひ必要だと思いますし、ヨーロッパはリアルタイムで、どの発生源、どのエネルギーを使って、今発電がされているかということを、この間、イギリスの人が来ていたので見せてもらったんですけど、コンピュータでぱっと全部見られる。デンマークだと今何%で、どれだというのが見られるようなシステムができているんですけど、日本の技術からして、そういうものもできないはずもないと思うんですが、それは系統との関係とかがあるのかもしれませんが、何かヨーロッパは非常に進んでいるなと思って伺いましたので、私は文科系の人間でよくわかっていなくて発言していて申し訳ないんですけど、この辺の技術に関する展開は非常に期待しています。

 それから、これも言ってもしようがないかなと思いながら申し上げてすみませんが、社会科学との関係でいうと、これは法的な問題になってしまうし、政策の問題になってしまうので余り申し上げてもあれなんですけど、今、進んでいる電力の自由化との関係で、気候変動をどう扱うかというのは政策の問題になっちゃうんですけれども、非常に重要な環境研究なのではないかと思いますので、一言だけ申し上げます。ちょっとレベルが違う話かなと思いながら申し上げているので、すみません。

【安井委員長】 そのとおりなんですけど、今おっしゃったような、例えば、リアルタイムで何がどのくらい動いているとか、リアルタイムでそれぞれの家庭がどれだけ使っているかなんていうのは、実は言うと欧米はわかっているんですよね。日本は、これまた議事録から消さないといけないですけど、いろいろな社会的な持続性を保つ意味で行われていない。例えばカリフォルニアなんかはみんなスマートメーターが各戸についていて、それが電話回線等で一気に戻ってくるから、実を言うとメーターを読む人は要らない。しかも、電力計が昔の電力計を全部外して新しい物を出した。そういうことをやろうとすると、なかなか難しい問題があるようでございます。というぐらいで。

 多分、風力の話なんかもそうかもしれない。ただ、日本の場合、ヨーロッパと決定的に違うのは、ヨーロッパはグリッド型でこういう格好の電力網なんですけど、日本は魚の骨型なんで、魚の頭のほうで発電したやつがしっぽまで行かないんですよね。そういうところがあって、同じでは必ずしもない。

【甲斐沼委員】 ちょっとよろしいですか。今、先生におっしゃっていただいた電力の話、非常に重要で、議論として出ていたかと思います。

特に電力ユーズと電力供給をマッチングさせていくことは重要です。日本の場合、現在は、10の電力会社で電力を供給していますが、それが将来、2050年にどうなっているかわかりませんが、再生可能エネルギーで電力を安定的に賄っていくにはどうしたらいいかを考えるには、技術的な問題だけではなく、制度的な問題も含めて検討する必要があるという話は、技術開発の中に議論としてはありました。この中に入っている再生可能エネルギー技術の高度化の中には、そういったシステム的なものも入っているかと存じます。この2行で書かれているので、なかなか理解するのは難しいかと思います。

【安井委員長】 思いはここにも入っているのかもしれません。どうぞ、森本委員。

【森本委員】 重点課題の①についてなんですけど、自然共生分野とも関係するかと思うんですけど、最後に都市計画等の制度への反映に向けた研究というのがございます。例えば、今現在、風力発電というのは、どこでやったらいいかというのが結構問題になっていまして、今アセスが混乱していて長期化して、うまく進まないというのがございます。

こういうときに、どこで風力発電をやるべきだとか、ここはやめておけとか、ゾーニングというか、そういう地域の評価というのが、今、公的なガイドラインがないというか、そういう状況になっていまして、デンマークなんかと比べて、その辺が物すごく弱いというのが進まない非常に大きな原因だと思っていまして、ここで書くべきなのか、あるいは自然共生の分野で、あるいは統合的な分野で扱うべきかわかりませんが、風発だとか地熱だとか、いろいろ持続可能なシナリオを考えるときの土地利用に資するような評価というか、研究というのがこれから望まれるかなと思います。

 風発で言いますと、いろんな面があって、鳥なんかに関することが非常に問題になっていて、これは自然共生の分野かなと思うんですけど、必ずしもそれだけじゃないところもあるかなと思って聞いておりました。

 以上です。

【高村委員】 今、森本先生がおっしゃったことに関してですが、「行動変容を促す合意形成、コミュニケーション」は、人を中心に考えると、低炭素だけを考えず、地域社会の他の色々な側面も踏まえ、どういうような持続可能なシナリオづくりをするのかを共通に考えていて、そのうちの一つが低炭素ということだと思います。

 生態系サービスの中の一つに低炭素を入れ込んでもらうほうが、地域の人々が直接に考えやすいかなと思いました。

【安井委員長】 場合によるような気もしないでもないですね。確かに、自然エネルギー系は、部分的にはそうかもしれないけど、どこまでやるんだろうな。結局、低炭素領域において自然エネルギーしかやらないという言い方もあるんですけど、大塚先生あたりは、そうではないと。電池までやれと。電池は自然エネルギーのためと言ってしまえばいいのかもしれないけど、そのときにエネルギー貯蔵という言葉を言ってしまうと、また随分増えてしまうというか、いろいろ難しい話があるなと。だけど、環境省の研究は、ここは自然エネルギー中心だと打ち出しちゃう手もないわけじゃないんですけど。

 ただ、さっきおっしゃったような社会的な問題というか、なかなか難しい問題があって、自然エネルギーを入れていこうなんていうときに、社会的な矛盾が一番よく目に見えるので、それを社会的な問題として取り上げて、ここに入れるのか、どこに入れるのかわからないけど、何かそれをやっていくというやり方はあるかもしれない。

【小林局長】 ちょっとよろしいですか。

 森本先生から、今アセスメントの話がありまして、確かに自然系エネルギーだと、水力もないことはないんですけど、風力・地熱はアセスにかかって、太陽光はあまりかかっていないとか、日本のアセスというのが単発の事業をやっていく中で、なるべく計画的なレベルからというので、縦に事業の上でつなぐような感じになっているものですから、時間的に随分、何重にもやるような感じにある種なっていて、風力とか地熱に期待するという目から見ると、どうなっているんだろうという話があります。

 それで、今、事業側からは、とにかく期間を短くしてくれみたいな、ある種、わかりやすい言い方と言ったらいいのか、そういう課題が出てきていまして、それで、今やっていることは、少し期間が積み重なるときにどれだけ短縮できるかというようなことも、ある種、ここではやっているんですが、特に、例えば風力、地熱もある種そうなんですが、風力よりは難しいと思っているんですけれども、結局、風景のいいところに集中してくるものですから、ただ、アセスというのは単発事業であって、一つの事業者でも時間がずれれば、別のタイミングに別の事業として出てくると。ただ、また複数の事業者が同じようなところに出てきているという場所が、北海道とか東北、あるいは九州でもあり得ると思うんですが、そんなことになってきていて、一個一個の環境のチェックをやっているといえばやっているんですが、全体像は誰も見えていないようなところがあります。

それで一つ、ある意味で合理的にやっていって、再生可能エネルギーの将来もというようなことを考えたときに、一つは、特に生態系の調査なんかは時間がかかるので、公的なところが、国がお金を出して、自治体とも協力して事業者の皆さんのご協力も得たり、ご要望も聞いて、あらかじめ整備しておくかと、こんなことは、ここ何年来やってきております。

 さらに、地域が何を望んでいるかということに結局なっていくので、少し合意形成的なところも、来年度の予算では少しやろうかと。

ある意味で、計画的に場所を見ていくということにつながる要素があるのかなと思っていまして、最終的にどうなっていくのかというのは、少し調査をしながらなんですが、何らか面的な形で風景のいいところ、かなりポテンシャルがあって、みんながやっていきそうなところについて、あらかじめ一定の環境なり、みんなの少し合意形成的なことも含めて整理をしていくというようなことができればいいのかなという気持ちを持っておりますので、一遍にどこまでいけるかはあるんですが、問題意識は持ってやっておりますので、そういうものにつながる研究などもやっていただければ大変ありがたいというふうに思っております。

【安井委員長】 あとは、どこまで揉むかというのは、後からどうせ全部やらなきゃいけないんですけど、例えば重点課題①低炭素で気候変動に柔軟に対応する持続可能なシナリオづくりというのは、これは文章を読んでいくと、やっぱり地域のシナリオと読むべきなのか、それとも日本全体を読むべきなのか。しかもそこを読んでいくと、「行動変容を促す」ということは、誰がという話もあって、例えば、ある意味で既得権を持っている事業者とか、そういうものは含むのか含まないのかとか、いろいろあって、なかなか微妙な表現かなという気もしないでもないんですけど。そういうようなこととか、あと低炭素はいいんだけど、気候変動に柔軟に対応するということになっちゃうと、これは適応策とかなり重なってきてしまうと。その辺の切り分けとか、何かもう少し練らなきゃいけないかなという気がしますね。

 それから、あと気候変動の緩和策で、先ほど再生可能エネルギー云々ですけど、考えてみると、省エネルギーがここに出ていますけど、経産省にも省エネルギーをやっている専門の連中がいることはいるんだけど、ここと向こうとの切り分けをどうするのかな。構わず並行でやるという手もあるし。

【岡田委員】 それは、ここに入るじゃないですか、日本国の計画なんだから。

【安井委員長】 協力してやるのか。

【岡田委員】 少なくともそういう姿勢で、ちゃんとできているかどうかは問わないでいただいて、一応そういう方針でやっているはずですので。

【安井委員長】 そうですね。とにかくそのあたりは協力してやると。

あとは、前から申し上げていることなんですけど、省エネルギーもITをうまく使った省エネルギーとか、社会システム優先、技術ごりごりの何か高効率なハードウエアをつくるということは、割合と経産省がやるんだけど、それをいかに人間がうまく使いこなすかとか、人間の感性にいかに訴えるかというところは向こうは全然やらないので、例えば省エネルギーというのは、そういうところを重点的に、そこはどうも聞くみたいなんですね、実際には。ですから、省エネルギー行動と機器との連携みたいな話で、複雑なところはこっちが引き受けるという手もあるやもしれないという気がしないでもないですね。

【鷲田PD】 実際に、特別会計で扱っている技術開発は、当然、経産省とバッティングするんで、温対課で扱っている研究開発は、社会システムとか、要するにいわゆるごりごりの技術ではなくて、それをどう生かすかというところをやるんだというふうに説明して仕分けをしているようです。

【安井委員長】 なるほどね。ですから、それを少し明らかになるように書いたほうがいいかもしれない。

【鷲田PD】 ただ、例えば自動車なんかの場合開発が中心にどうしてもなるのですが、例えば、水素燃料電池車になるとステーションをどうするかとか、さまざまな社会との兼ね合いの問題が出てくる。そこで、いつも問題になりながら切り分けてやっているような気がします。

【安井委員長】 あと何かご指摘があればどうぞ。

【大塚委員】 局長がおっしゃってくださったのは、私もそのとおりだと思っていまして、この間、自然エネルギー財団の会議に出たら、外国の人に、これは議事録にあまり残さないでほしいんですが、日本のアセスの制度はとにかく風力発電ができないというような、ほとんど一致した意見にされてしまっていて、ほとんど陰謀のように言われたので、さすがにそれはまずいと思って、私は若干関わっていますので釈明したんですけれども、そのぐらい、アセスが風力の発電の設置にマイナスだという認識が結構強いようなので、今まさに局長がおっしゃってくださったような風力発電に適地かどうか、しかも生態系の調査も含めて適地かどうかというマップみたいなのをつくっていただくと、かなり早くできるようになるかなと思いますので、ぜひやっていただけるとありがたいと思います。

【安井委員長】 研究と、その辺にマップをつくるなということになりますかね。

【指宿委員】 重点課題の②で、「需要側の観点からの研究・技術開発」と書いてあるんですが、これは今、議論のあったような観点なんですか。例えば、うまく消費者が使うためのソフトウエアとか、そういうものを意味しているのか。あるいは、そうでなくて具体的に何か技術的なイメージがあるんでしょうか。ちょっとわかりにくいなという気がしているんですが。

【吉川室長】 ここでは、かなり幅広いものが研究者からの自発的な提案で出てきていただくことも期待して、あまりかちっと決めずに書いております。ソフトウエア的なものも兼ねておりますが、それとはちょっと違うようなものもあり得るかなと思っております。まだそこは現時点で詰めて限定的には書いていません。

【指宿委員】 上手に表現すると、環境省らしい技術開発につながるかなと思ったんですが。

【甲斐沼委員】 ちょっとよろしいですか。技術開発、ここのところ、そのままかどうかわからないのですが、分科会で出た意見としては、最新の技術というか、技術のほうのロードマップはしっかりできているが、事業者側がいつ、その最新の技術を導入するとか、その障害は何か。あるいはいつ、どんな技術を、どういう条件だったら使う側の人が取り入れていくかというような、そういった需要者側のロードマップも重要じゃないかというようなご意見があったと思います。

【安井委員長】 まだいろいろ問題がありそうですが、ちょっと時間の関係で次に行かせていただきたいと思います。

 資源循環でございますが、ご担当いただきました委員からコメントをぜひ。

【松藤委員】 この領域は物が動くものですから、具体的なイメージがほかの領域よりも持ちやすいんだと思います。

 どのように考えたかというと、さっきレアメタルという話がありましたけれども、レアメタルだけではないと、もっといろいろあるだろうという総合的な視点と、やはり社会実装を視点に置いてつくったものです。

重点課題についてだけ簡単に説明いたしますけれども、1番については、前回は3Rと適正使用が一緒になっていたんですけれども、これは違うだろうということで3Rを独立させて、その中にレアメタルも含めた有用金属ということを入れました。

 それから、2Rは括弧の中に入っているんですけれども、やはり3Rじゃないといけないだろうということで頭に出したということと、従来は埋立処分量の最小化というのがいつも入っていたんですけれども、どうも社会的な進行からするとかなり少なくなっていて、それよりむしろ3Rによって、②レジディアル・ウエストという言葉があるんですけど、産業廃棄物を減らすというのが目標になっていくだろうという書き方にしていると。

 あとは社会システムづくりと、それからアジアにおける貢献が大きいということで、アジア等というのを入れております。

 ②は適正処理で、従来は有害廃棄物系を中心に書いていたんですけれども、そうではなくて、3R後の残った廃棄物の適正処理が中心になるべきだということと、長寿命化というのが入っていますけれども、つくった施設をいかに長くうまく使うかというのも大事だと。それから先ほどから議論になっています住民合意と書かなかったんですけど、「社会的受容性向上」という書き方で、それはとても大事なことだということで入れております。

 3番目については、従来は熱回収効率ということだったんですけれども、一方ではバイオマスということがありますので、廃棄物・バイオマス、要するにあまり使えない物からのエネルギー回収といった書き方にしておりますし、もう一つの特徴は、社会システムでいかに技術が発達しても受け皿がないと何ともならないと。制度的な問題もあるだろうと、買ってくれなきゃしようがないと、そういったことも重要な視点として入れております。

 補足としては以上です。

【安井委員長】 ほかにご参加いただいた意見、どうぞ。

【塚原委員】 ワーキングの議論は、ここにきちんと反映されております。改めてまとめられたものを見て気がついたのですが、2050年の長期的な社会像の最後のところに、「直接投資」というキーワードが出ておりまして、環境分野の海外直接投資が活発化という中で、恐らくこの分野で直接投資できるというのは、明確な収入が期待できるエネルギーに絡んだ部分だと想像しますが、その部分というのは、重点課題案の③のところにありますバイオマスとか廃棄物からのエネルギー回収というところにあたりますので、国内でのさらなる高度化とともに、海外での展開に資するものが必要だと思います。これが2050年のところの3ポチにつながるのではないかと思います。

 JCMに関するものは、低炭素領域の重点課題の②のところにありますけれども、そういった観点も、この循環領域の重点課題③のところにもつながるのではないのかなというふうに改めて見て感じました。

 以上です。

【安井委員長】 あと参加いただいた方、よろしいでしょうか。

【鷲田PD】 この分野で一番問題になるのは、コストの問題なんですけど、それが読み取れるようなところがないんです。社会を構築するといっても、紙の上では幾らでも皆さん、書けるけれど、結局コストでしょう、全ては。そこへ行き着いちゃいますよね。その辺はどういうふうに表現するのかな。

【松藤委員】 私たちは、コストは当たり前だから書かなかったので、それは入れていただいて結構です。

【鷲田PD】 大概、行き詰まるのはコストですよね、全部。

【安井委員長】 多くの場合はそうなんですけど、それだけだと経産省と同じになっちゃうので、だから、何らかのベネフィットが別のところであるという、そういうようなところがあれば、あり得るかもしれないということですね。

【松藤委員】 それは、中間の2025年~30年のところに社会実装というのが何回も書かれていて、この中にコストは含まれているというような意識ということです。

【安井委員長】 そうですね。

【大塚委員】 コストの問題は、政策としてはとても重要だと私は思っています。

リサイクルとか3Rのシステムで、どうしても高度化していってコストのことが政策としてもやや軽んじられる可能性はあるので、リサイクル技術と社会システムとか、この辺に入っていることだと思うんですけれども、本当は社会システムも、法律を含めて考えるときに、高度のリサイクルだけじゃなくて、安くしていくということも考えなくちゃいけないというのは結構大事な視点なんですが、そういう研究は確かにあまりやっていないのかなという感じはします。

【安井委員長】 思い出してしまうんですけど、いろんなことを。そういう話を伺うと。

【大塚委員】 どうやって競争を入れていくとか、そういう話です。

【安井委員長】 この世界、コストが問題は問題なんですけどね。あとは、いわゆるバイオマス発電は自然エネルギーで、ここではやらないというイメージ。こっちは廃棄物で、いわゆるバイオマスも廃棄物としてのバイオマスと。

【松藤委員】 はい。

【安井委員長】 そうですね。中間的なものもないわけじゃないけど、それはどうでもいいのかもしれないな。

 あと何か具体的な問題になりそうなお話がございますか。

【岡田委員】 後のほうで出てくるんですが、放射性廃棄物の話は、ここのところでは明示してあるような、ないようなところがあるんですが、これはどう扱うかというのは、後でもいいんですが、ちょっとご議論いただければと思います。

【安井委員長】 今、明示的には安全確保領域の話題になっているんですね。

【岡田委員】 一応ね。

【安井委員長】 放射線はそっちというほうがいいかもしれないな。

【岡田委員】 まあいいですよ。

【安井委員長】 どうですか。

【吉川室長】 第二幕のところで、領域横断の論点というのを資料5-1で示していますが、災害・事故と環境研究については、そこで一まとまりにしてはどうかというのが事務方では考えている案ですが、ただ、安全確保、自然循環、それぞれに密接に関わる話ですので、中身について、このタイミングか、後ほどの二幕のところか、どちらかでちゃんと議論いただければとは思います。最後に、どこに入れるかというのは、またそれも含めてご議論いただければと思いますが、事務局としては、たくさんの領域にまたがるので統合領域的に扱うべきかなと思っております。

【安井委員長】 そうかもしれないですね。後でご議論いただくという感じにいたしましょう。

 ほかに何か、どうぞ。

【谷口委員】 ここに書かれていること、このとおりでよろしいんじゃないかなと思うんですが、一方でポイントにも挙げられないぐらいの意見かなと思うもので、自然共生領域とちょっと関係するかもわからないものがあります。確かにマテリアルの議論としてはご提案のもので完全にカバーされていると思います。ちょっと違う観点で、私の専門分野は都市計画なんですが、スペースも、空間も実は3Rを考えるべきだということをずっと言っております。ちなみに、今、空き家が国の中で14%ぐらいになって、まだどんどん上がっているんですよね。人口減少でどんどん空き地が増えているという問題があって、あとグローバルで見ても、熱帯雨林とか、要するにバージンランドがどんどんなくなっていく。けれども空き地はあるということがあって、本当は空間としてスペースのリサイクル、3Rというのがどこかにあったほうがいいなというのを常々申し上げてはいるんですが、なかなか認めていただけないという状況です。すみません。

【安井委員長】 ある意味で、これって、要するに研究者のムラがここに利益代表者としていて、やっぱり空間はその裏ではできていないんだよね。だから、どこか別のところに入れないと、都市計画みたいな連中ってどこに入るんだよという議論をしていただいて、それで都市計画はどこだろうなと、例えば自然共生領域か。

【谷口委員】 低炭素にかなり入っているので。

【安井委員長】 確かにね。例えば都市計画みたいなものは、もともと複合的というか、境界領域だよと言って、別のところで1本立てるというような主張をしていただいたほうがいいのかもしれないです。

【谷口委員】 もともと都市計画が全然なかった世界にちょっとずつ入ってきているので、10年後でも結構ですから、そんな感じで頭出しだけをしていただければ。

【安井委員長】 別に10年後じゃなくてもいいと思いますよ。もうかなりいろいろとやられているという気がいたします。

 では、とりあえず、ほかのところに行かせていただいて、そちらでまたご議論いただければと思います。

 よろしければ、次の資料4-3でございますが、ご担当の委員の方から補足などございますか。

【高村委員】 2050年を想定した社会像なり、2025年、30年を想定した社会像については、議論したことをよくまとめていただいていると思います。重点課題案の議論の時間が若干不足をしていた関係で、備考にもたくさんコメントを書きこんでいただいているんですが、それらを整理して入れ込めばいいのではと考えています。

 「生物多様性の保全」という言葉が、私自身は弱いかなと言ったんですが、「損失を防止する」とか、もう少し明確な表現にし、そのあめの技術開発を進めるとしたほうがいいかなと思いました。「森・里・川・海」というのは、自然環境局が国家戦略に使っている言葉で、生態系のネットワーク、温暖化による生物の適応もここの文脈に入ってくると思います。

【安井委員長】 ほかに何か補足もしくはご意見をいただきたいと思います。

【森本委員】 生物多様性の重点課題案①で入っているといえば入っているんですけど、ちゃんと愛知目標にも書かれている絶命危惧種の保全戦略というか、ストラテジープランというか、それがちゃんとうまくやっていくというのはすごい大事な話だと思っていて、それは、生息域外保全のような装置的というか、そういうことも含めてですけど、生息域内保全というようなことになってくると、自然再生とも絡まってくるので、非常に多様なあり方が多分あると思うんですね。

 試行的なアプローチも大事だと思っていまして、その辺、生物多様性の保全ということだけで出ているといえば出ているんですけど、絶滅危惧種をどうかするという、これはやっぱり明示的にどこかに書いておいたほうがいいかなと思いました。愛知目標にもちゃんと書いていますので。

【安井委員長】 ここに、重点課題案と書く場合に、ある程度の研究者が存在して、それに対して研究提案が来るかということも結構重要なんですけど、そこはどんなものなんですか。

【森本委員】 この前の推進費のヒアリングでもありましたし、割合、これは研究者として取り組みやすいテーマかもしれません。実際、トキとかコウノトリでもかなり研究成果があると思いますので、それをもっと広い視野で、絶滅危惧種は非常にたくさんございますので、それの保全というのは、いわゆるエコロジカルなところとともに、ただ、京都なんかで文化と合わせて一般普及啓発も含めた形でやっていこうという流れもございますので、結構、これは展開が期待できるんじゃないかなと思っています。

【安井委員長】 この領域だとIPBESが、結構IGESか何かに来て、動き出すというお話を聞いているんですけど、あれは何をやるか全く私は知らないんですけど、IT推進のやり方を見ていると、今みたいな絶滅危惧種あたりが結構重めに取り上げられる可能性があるんですか。そんな気もしないんでもないんだけど。

【森本委員】 その点、よく存じません。ただ、絶滅危惧種というのは、話題に乗りやすいというか、聞くところによりますと、環境省の自然局は、野生生物かな、希少種の保全戦略ですね、たくさん何十種類もつくらないといけないというので頭を抱えてられると、この前お伺いしたことがあるんですけれど。

【安井委員長】 重点課題案③をつくっていただくという手もあるのかもしれないですね。

【高村委員】 生態系サービスは、農業や水産業など、様々な一次産業と緊密に連携しながら、保全していく姿勢が大事になってくるので、他の省庁と連携して研究ができるものがあればいいかなと思います。環境省以外の省庁も生物多様性の研究をやっているわけですので、情報があればいただきたいと思いました。

【白石委員】 絶滅危惧種ではないんですけれども、外来種というのがどっちも出てきていない気がするんですが、これも重点課題①のところに入ってきてもいいのかなと思うんですけれども、その辺の議論はあったんですか。あるいは微生物農薬とか、生物を使った農業、統合防除みたいなのもありますので、そういった観点。

【高村委員】 絶滅危惧種の保全と侵略的外来種の駆除・防除は、生物多様性の保全の中に当然含まれています。当たり前すぎてわざわざ、書き込まれなかったのだと思います。前回に比べ、新しい項目として、生態系サービスや、生態系ネットワークという用語が目立つようになりました。

 しかし、生物多様性は愛知目標で主流かを目指していますが、COP10の直後、やや知名度が上がったものの、また落ちていいます。そのため、産業と連関した形で保全をしていく手法や技術の開発が望まれます。

グリーンインフラストラクチャも防災の文脈で使っていただく。例えば、マングローブ生態系が本来有している生態系機能、都市でも、グリーンインフラを重視する。様々な生態系が本来持っている機能を評価し、それを明示して、人々の合意形成に使ってもらう。合意形成のツールをつくっていくことで、産業と連関する方向性が大事です。

【安井委員長】 今おっしゃったグリーンインフラストラクチャなんですけど、真ん中の欄にありますところを読むと、エリアマネジメント・土地理由云々レジリエント、それから平常時、災害時、割合と災害寄りだけみたいなイメージなんですけど、このグリーンインフラストラクチャって、そういう考えでいいんですか。

【高村委員】 インフラストラクチャーという言葉は、ヨーロッパとアメリカで考え方が違うらしく、アメリカは都市の水循環、ヨーロッパはより広義な意味で使っているようです。国交省と環境省で定義も違うようです。この辺は定義づくりからしないといけないかもしれません。

【安井委員長】 ここだけ読むと、すごい偏っているような定義を使っている気がするけど。

【森本委員】 そうしたら、この前、学術会議でおまとめになった生態系インフラストラクチャというような言い方がございますので、括弧でそれを入れておくと比較的、今の懸念が払拭されるかなと思ったんですけど。

グリーンインフラストラクチャというのは世界共通の用語なんですけど、学術会議がおまとめになった生態系インフラストラクチャというのは、多分、どこも使っていないかな。要するに、生態系の働き、生物多様性とその恵みというような視点を明示的に入れたと僕は理解していたんです。高村さん、そうじゃないですか。

【高村委員】 ヨーロッパのほうでEco-DRRという概念を出しています。気候変動で災害の発生が頻繁になってきた。そのため、それを緩和するマングローブの生態系機能を潰さないで、うまく活用していくということを真剣に考えたほうが利点があるかもしれない。また、日本では防潮堤の議論もあって、海岸林や、藻場の生態系機能を評価し、それを活用できるところは活用していったほうがいいという、文脈も出てきています。

【安井委員長】 お国柄ということなんですかね。それとも、最近の経験を一番重視しているということなのかな。

【谷口委員】 単純に教えていただきたいだけなんですが、これもここに書かれていることでいいと思うんですけれども、25年ぐらい前に、たまたまカリフォルニアに住んでいたときにミチゲーションといって自然をむしろ積極的に創生するというか、つくるというふうな考え方を勉強したというか、いろいろ調査したことがございます。割とそういうクリエイト型の、例えばマングローブなんかもクリエイトしたほうがいいとかというふうな議論もあったりするんじゃないかと思うんですが、最近そういう環境補償に関するものは、研究課題にはあまりなっていないんでしょうか。すみません、全然わかっていないので、ちょっと教えていただければと思います。

【森本委員】 中静先生がやられていたかなり大きな研究はミチゲーションを正面から掘り上げられていましたね。私は、それよりもかなり前にミチゲーションという本を書いたんですけど、どういうのか、当時はいわゆる自然保護派からも横を向かれて、なかなか苦しかったんです。生態学会長がヘッドの研究でありましたから、一応、僕は市民権を得たというぐあいに理解しているんですけど、日本でも。

【岡田委員】 ミチゲーションというのは、実際の分野で具体的に工事でやっています。

【谷口委員】 それはやっています。25年前にやられているんで。

【岡田委員】 今あちこちでやっているし、それに関するベースの研究も山のようにやっていますから、もちろんミチゲーションという言葉自身が、日本国内でオーソライズされて定着されているかどうかは別にしても、バンキングとかいろいろ、実際にそれは頭に置いてやらないといかんというのは、あちこちでやっていると私は理解しています。

【谷口委員】 それは理解しているんですが、研究領域になるのか、ならないのかということがよくわからない。

【岡田委員】 いや、研究も山のようにやっていると思います。

【谷口委員】 それはもう研究としては要らないということでしょうか。

【岡田委員】 完成しているとは言えないな。

【大塚委員】 現在動いていたり、動きつつある制度との関係がちょっと気になっているんですけれども、二つあるんですけど、一つは、COP10で名古屋議定書ができて、ABSという遺伝資源に基づく利益配分の議定書ができたので、日本はそのうち締結すると思いますが、日本でやったので、そういう意味で責任があると思うんですけれども、気をつけないと、石油の権限がアラブにあるというふうに変わっただけと同じようなことだけになってしまう可能性も全くないわけではないので、ABSの仕組みを生態系の保全とか生物多様性の保全に結びつくような制度設計を世界的にしていく必要があるんですけれども、現在あまりそういうことにはなっていないので、具体的に何が問題になるかということの一つとしては、PICとかMITと呼ばれている途上国のような生物がたくさんいる、熱帯雨林を持っている国と、それから研究者グループとか、製薬会社だったり、いろいろするでしょうけど、利用する一つの間の契約がどうなるかというのと、あとそういう国から遺伝資源を持ち出すときの同意の仕組みがどういうふうになるかということが結構重要になると思いますが、それを余り厳しくすると、先進国のほうは使えなくなってしまうので、そうすると例えばそれでつくる薬がつくられなくなれば、途上国も結果的には不利益になるんですけれども、そういうことを経済的に評価して、社会的に考えていく必要は非常にあると思うんですけれども、法律も若干関わりますけれども、いろんなことを知っていないといけないので、多分、経済学も関わると思いますし、生態系の先生方はもちろん非常に関係すると思いますが、ぜひそういうことを検討していただくと、日本で生まれた議定書なので、大変ありがたいというのが一つ。

 いろいろ言ってすみません。もう一つ気にしているのは、現在、水循環基本法ができて地下水とかの制度の利用の所有権とかを含めた法的な位置づけが、また新しく法律ができて変わっていく可能性があると思いますが、さらに水循環基本法は水源地の確保のことを考えているので、この辺は法的な問題として、あるいは所有権との関係もあると思いますが、社会科学的な問題が結構あると思いますので、そういう研究もぜひしていただけると。これは環境省だけじゃなくて国交省とかも関係するのですが、そっちのほうがむしろメーンでやりたがっておられるかもしれませんけど、研究としては結構重要なのではないかと。環境とか、健全な水循環の確保のためにどうするかということを考えることが必要ではないかと思います。

【安井委員長】 最初のABSとか名古屋プロトコールの話って研究者はいるのかな。

【大塚委員】 僕は、実は自然のほうの審議会に出ていないので、必ずしもよくわかっていないんですけど、僕は、あれは気をつけないと、全然生態系の保護のために使われた結果にならなくなる可能性もあるので、環境省も随分後押していただいたと思いますが、最後のところまで見届けないと、日本で議定書だけつくったというのでは、申し訳ないけど、いい結果が生まれるかどうかわからないなと思っています。

【安井委員長】 今、文科省と環境省と経産省で議論はしているけど、合意できそうな気がしないという噂だけ聞いたことがあるんだけど。誰か研究しているのかしら。実を言うと、微生物の研究者が今一番頑張ってやっていて、ただ、名古屋プロトコールも本当に変な法律の枠組みなんで、ああいう変な法律の枠組みでどうなるかというのは、法学者にとって非常におもしろいんじゃないかなという気はするけどね。だって、各国は勝手に国内法をつくっていいんだからね。それをどうやって動かすのかという話ですからね。こういうプロトコールもあるんですね、なんていう感じです。

 それはそれとして、あと何かございませんでしょうか。

なさそうであれば、次に行かせていただきたいと思います。これは、白石委員が独壇場なのかな。何か補足するところがございましたら。

【岡田委員】 安全確保領域は、会議の議論で出てきたキーワードは、よく見ると一応全部入っていると。例えば重点課題①については、割といろいろなことが整合性があって入っていると思いますが、簡単に言うと、これは白石委員のご尽力により、うまくまとまったと言うと言い過ぎかもしれませんが、まとまった。

 ただ、問題は重点課題②で、一個一個のポイントはいいんですが、例えば「大気・水・土壌等の環境管理・計測技術の高度化・低コスト化」というタイトルは、これはまだ委員会でも合意されていないというか、きっちりまとまっていないところです。取りまとめが悪いというか、ごめんなさいとしか言いようがないんですが。なぜ難しいかというと、例えば健全な水循環を確保するための流域、水域全体の管理評価というところに、例えば水循環という言葉の中に、いわゆる水量水質だけじゃなくて、生態系も当然入ってきているし、そういう議論を、簡単に言えば、こっちのムラでもしている時代になっているわけですね。そうすると、自然共生の重点課題の②とどういうふうに切り分けるのか一緒にするのかというところが非常に気になります。

 例えば、水・土壌なんかも環境管理だけではなくて、環境の回復、レストレーションという概念が明らかに入っていますし、先ほどちょっと議論に出た水産業とか、そういうところとどういうふうにするかというのは既に大問題になっています。新しい環境基準をつくろうとしたら、これは議事録からちょっと外してほしいんですが、水産業界が反対してくると。一方で、排水処理は処理すればいいということではなくて、排水を適度に流すことによって里海をつくるとか、そういう議論になってくると、自然共生とどこを、島割りをする必要はないと思うんだけれども、その辺のところをうまくやっていかないと、何となく両方とも引いてしまって、例えば、極端に言えば、ここの島に今までたくさん出していただいた方が、単に水質かといって、生態系のほうに出してくれるかというと、なかなか出さないかもしれません。その辺の配慮をしないと、旧態然たるというと大変失礼ですが、旧態然たる水大気環境研究だけになってしまうのは、幾ら何でもまずいだろうという危機感というか危惧を感じます。

 同じように気候変動も水質プラス生態系でやっていて、そのシミュレーション自身もやっているんですが、なかなかうまくいかなくて四苦八苦しているんで、この5年間ぐらいの間には確立していかないと、多分、問題が起きるだろうと。

ですから、かなり近々の問題で困っているところをどこまで入れるか。前も同じような議論があったと思いますが、5年後、10年後を目指したテーマと、20年、30年のテーマの切り分けをうまくしていただかないと、なかなか難しいのではないかという印象でした。

 これは、事務局が悪いんじゃなくて、すみません、ワーキンググループの議論がまとまっていなかったということで、ひとえにお詫び申し上げます。

 以上です。

【白石委員】 お出しした意見は、ほとんど採用されているので、とてもよくまとまっているかなと思います。

 今、ポイントは、国際的な視点とか、生態系とか人の脆弱性とかを考慮したリスク管理みたいなことでまとめてみましたが、当たり前のこととして、コミュニケーションとか社会実装というのはここには書いてありません。

 重点課題の②は今ご説明があったとおりで、私の個人的な印象では、水循環基本法ですか、基本計画みたいなのができるので、健全な水循環はそれに沿って書き込んでいくのかなという気がしますけど、まだそこが固まっていないということで、そこは書いていないということだと思います。

【安井委員長】 今のお話で、上のほうはあれなのかもしれませんが、この領域というのは、実際には小児等の脆弱性云々とありますけど、人体影響だと厚労省とどういう切り分けができているのか、どういうものかなと、重点課題①についてはそんな気がするというのが一つ。

 2番目は、おっしゃってくださったみたいな感じなんだけど、今までのまさに環境省の環境基準云々の研究が単独で行われても、もうしようがないよねというようなご意見で聞こえたとすると、ここの領域にずぼっとはまっているような研究じゃないようなイメージ、要するにほかのところとブリッジングしているような、そんなイメージの書き方にできないかなという気がするんですけどね。

【岡田委員】 工夫させてくださいとしか言いようがない。もう少しお時間をいただければと思います。

【安井委員長】 最初からそういう複合領域に持っていっちゃうということもあるんだよね。

【岡田委員】 そのほうが書きやすい気はします。

【安井委員長】 ただ、安全確保領域というのが、非常にベースな領域であるよというのは、前のやつにも書いてあるし、今回も、そこをとると怒られそうな気がするんで、恐らくとれないのだろうと思うんだけど、そこに書くべきものは一体何なんだろうかという話かなという気がしますけどね。

 真ん中の欄を見て、化学物質が人の健康と環境にもたらす著しい悪影響に対して云々と、どこかで聞いたことがあるなという、SAICMの頭かなみたいな感じがするんだけど、日本でもって本当にこういうことがあるのか、確かに胆管がんで死んだりするから、まだないとは言えないんだけど、単品では、よっぽどひどいことをしない限り、まず被害は出ないという認識になったときに、SAICMは途上国向けなので、と私は思っているんだけど、それが日本の研究課題に、こういう書き方になるのかなという気がしないではない。

【鷲田PD】 一つよろしいですか、お伺いして。

 推進費を運用しているときにいつも感じたんですが、推進戦略の最初のフェーズの11ページにある絵ですね。安全が確保される社会というのが全体を俯瞰するような描き方になっているんです。ところが、実際の研究を見ていると、これは一つの分野になっているんです。そこのところを一体どうするのかというのが疑問なのと、もう一つは、今書かれたものを見ると、エコチル以外は、ここ四、五十年変わっていない。我々が公害研に入ったときとほぼ同じものが書かれているような印象があるんです。その2点がよくわからないというか、ちょっと問題かなと思います。

【岡田委員】 まさにそういうふうに思われる書き方が問題で、どういうふうに書きかえていこうかというところを悩んでいるところです。おっしゃるとおりです。この書き方だと、本当にもう50年、40年同じなんで、避けたいとは思うんですが、そうはいってもベースのところをどこまで認識。

【鷲田PD】 変わっていないんですよね、多分。

【岡田委員】 同じような研究が繰り返されている。先生おっしゃるようにね。

【鷲田PD】 しかもムラ化しているんですよね。

【岡田委員】 それは、私自身がそう認識していますから。

【鷲田PD】 ムラになっているものを、こういうふうに俯瞰するような絵を描いて、一体何を考えているのかよくわからないなというのが印象なんですけど。

【岡田委員】 いや、この絵と、要するに40年やっている研究の話は、ちょっと違うと思うんです。 むしろ私の理解では、ここの重点課題①のところがこの絵に相当して、重点課題②は、あちこちにばらばらに入っているという理解を私はしています。

【鷲田PD】 ただ、例えば低炭素社会なんかも俯瞰しているわけだけど、低炭素社会における例えば健康リスクとかというのは、重点課題①に特に入ってはいませんよね。そういう意味では、全体というより分野ですよね。

【安井委員長】 その絵を描いたときなんですけど、結局、そこが領域に入っているつもりで描いたわけでもなかったんだけど、しかし、どうしても、それを描いたときの社会情勢からいって、そこを外すことができなかったというのが実際なんです。

ここの上のほうにも出てくるんだけど、「安心」という言葉が、ここに書かれているというのが何なんだろうと。最近、「安心」というのはいろいろな見方があるんだけど、それでも前の合意形成というものが重要であれば、それをちゃんと書くべきだし、リスクの可視化も重要なんだけど、落としどころが「安心」だというのは、私は、どうも昔から疑問に思っているんですけれどもね。ある種の、安心じゃないんだよね。結局、自分も参画していることによる、ある種の決め事なんですね、この安心というのは。自分が阻害されていない、ちゃんとコミュニケーションに加わっているという安心なんで、これを「安心」と書いていいのかどうかというのもかなり疑問だなと思いながら、ずっと来ているわけですけど。

また重点課題①に戻りますと、おっしゃるとおりで、この部分は、まさに進化していない。新しい課題もあるわけでもないような気がする、極端に言うと。一時期、わからないのはわからないんですよ、幾らやってもね。エンドクリンの話も、結局、よくわからないし、だからといって規制になるわけでもないしという感じで、若干はなったかなぐらいなんですね。だから、これを取るわけにはいかないのかどうかというのが悩ましいところなんですよ。白石委員にそのあたりはしっかり見ていただいて、適当なところで落としていただきたいと思うんだけど、最近、日本に疫学者はどのぐらいいるの。疫学をやる人。

【白石委員】 少ないと思いますけれども、エコチルに参加されている機関が相当数あるんじゃないかと思いますけれども。科学者自身は、かなり少ないと思います。参加されていてフルベースの研究をやられている方は相当いるんじゃないかと思います。

【安井委員長】 エコチルのフォローアップみたいなことで研究が必要かなという気もしないのでないんだけど、そのあたりはどういうふうに。

【岡田委員】 それに近い研究が数多く採択されて、結構な額を持っていっています。

【安井委員長】 どうするのかな。この領域は、まさに、これをどうするかは結構大きな課題だろうとは思いますね。実際、前のつくったときと今の状況はあまり変わっていないのです、確かに。いつの間にか課題に入ってしまって、それは環境省のメーンの仕事だったということで、事務局側からもかなり強く要請をされたような感じが残っていますね、記憶として。

【鷲田PD】 もう一点、区別がよくわからないのは、生態系リスクなんです。ここでは化学物質の影響と毒性に特化しているんですが、一般的な生態系のリスクは、いわゆる自然共生で見るのか、安全確保分野で見るのかというのが、いつも議論になっていたんですけど、その辺の分け方があまり明確でないんです、この分野の分け方だと。

【安井委員長】 この分野は、農薬が環境省の仕事のどこまでなのか、私はよくわからないんだけど、農薬というイメージが結構強いんだけど、どうですか、皆さん。

【白石委員】 ここは「等」で入っていることになっています。当然のことながら入っています。

【鷲田PD】 だから、湖沼とか河川の環境破壊、湖沼なんかは多いですよね。それらはここに入るのか、自然生態に入るのか、よくわからないんです。

【岡田委員】 いわゆる有害物質による問題は、どちらかというと伝統的にはこっちに入っているというふうに理解しています。多分、皆さん、合意すると思うんですけれども。

【白石委員】 そうですね。

【鷲田PD】 化学物質が原因なのか、何が原因なのかわからないようなケースが多いんですね。

【岡田委員】 それはテーマの問題ですよ。

【白石委員】 それはどこでも一緒の話。研究は、どこでも一緒のような気がします。

【鷲田PD】 明確にこの化学物質が悪いという出し方だとわかるんだけど、必ずしも、そういう感じじゃないんだな、一般的なリスクは。

【岡田委員】 これからは、もっと複合影響とかWETみたいな試験法が具体的に導入されそうな雰囲気になっていますから、もっと複雑な複合影響、生態系にですよ。いっぱい出てくると思いますけれどもね。

【鷲田PD】 それはどっちで扱うんですか。

【岡田委員】 例えば、重点課題①の生態系の指定に基づく生体毒性の評価みたいな形で、今まではここで扱っている。実際に採択しているんじゃないかな。

【鷲田PD】 自然共生には、そういうリスクはあまり入っていない、考えていないと理解していいのか。

【高村委員】 外来種とか侵入種とか、明らかに悪がはっきりしているものは多少入っている。

【鷲田PD】 推進費のことばかり言って悪いんですけれど、実は現在の5分野に変えたときに、生態系のリスクは生態系で見てもらおうと思ったんですよ。だから、安全確保のところには生態系の評価委員は1人も入っていないんです。基本的には、そういう考えでいたんです。要するに、生態系の人もここに入れると物すごく分野が広がって、1人1種目みたいな格好になるとまずいというのがあって。

【岡田委員】 ですから、今までの伝統的な水・大気とか、あと伝統的な自然保護と昔からの水・大気が何となく同じようになりつつあるんで、要するに、どっちが上か、どっちが下か知らんけれども、近い方向に行っている段階なんで、それをうまく分けてもらわないと、みんながうまく研究提案ができなくなるのではないかというのを私はおそれているんです。

【鷲田PD】 その辺が難しくなっているんですよ、実は。

【森本委員】 今のお話でいうと、例えば、ネオニコチノイド系の農薬の問題が典型的かもしれませんね。あれは、エコロジーなのか。だから、やっている人が、どこへ出せばいいかというのがわかるような変え方をしなければいけないということですね。

【岡田委員】 そうそう。今のところ、ネオニコは安全のほうに出てきたと思いますね。違うかな。どっちだっけ。

【高村委員】 ネオニコは大気・水局で扱っています。

【岡田委員】 ですよね。

【高村委員】 ただ、ネオニコチノイドの問題は生物多様性条約で議論されて、出てきたんです。

【岡田委員】 だから、どういうディシプリンの人が研究しているかということに、かなり依存する。

【高村委員】 ただ、私自身は、オーバーラップしていても別にいいんじゃないか、どこかで拾われていれば。そうではないんですか。

【安井委員長】 いや、それがそうでもなくて、審査員、審査体制側がこれで決まっちゃうんで、そうでもないんですよね。

【鷲田PD】 結構、落ちる、落ちないに効いてくるんでね。

【安井委員長】 そうなんです。ある意味で、今、安全確保領域はほかの人を外しちゃった感じになっているのかな、今だと。ですから、昔ながらの化学物質リスクみたいなコミュニティーだけで審査しているような感じになっている。

【岡田委員】 これは前回の委員会でもたしか申し上げたと思うんですが、例えば、安全確保領域でエコチルの話がいっぱい出てくると。エコチルに関するきちんとした審査ができる人は、あまりいないんですよね。そうすると、正直言って、我々わからない人は、それの関係の先生が「いいね」と言えば、まあいいのかなということで、あまり健全でないということは、前の前の会議か何かのときに、私、申し上げたと思うんです。同じように、生態系の話があっちにもこっちにも出てきたときに、ネオニコの化学物質の分析等が専門の人が出すとこっちに来るんですが、影響を見たときに、化学物質専門の人がトンボかハチか何かを見ると、生態系学の人もしくは生物学者から見たら、そんな変な評価の仕方はないだろうというのはあり得ると思うんです。だから、そこは両方で評価しないと無理な時代になっていると思うんですが。

【鷲田PD】 でも、両方で評価するのは無理です。どこかでしてもらわないと、現実には。

【岡田委員】 両方から代表選手を出してやるのか。そうすると、また枠組みが大変なんで。

【鷲田PD】 そうじゃなくても、安全確保の分野は広くて、各専門家の人が2人、3人ぐらいでばらばらになっているような状態が、さらに零細化するんですよね。

【岡田委員】 そうです。

【白石委員】 生態系自体が広いので、温暖化で低炭素社会であったり多様性であったり。

【岡田委員】 みんな入っちゃうから。

【白石委員】 安全確保領域では毒性に特化して、毒性を主に見るというような形に。だから、生体毒性の研究者と生態系のエコロジーをやっている人は全然人種が違うんです。

【岡田委員】 全然違いますね。

【白石委員】 そこは、審査員を入れかえていただくなりして。

【岡田委員】 ケミストとエコロジストとバイオロジストという、全然違うところ。

【鷲田PD】 それが悩みなんですけど。

【安井委員長】 何となく昔ながらのケミストのトキシコロジストがいう感じなんじゃないのかな、今は。その辺、こういうふうに三つに分けたことと、それから推進費の審査をどうやってやるかという話は絡みますね。

【鷲田PD】 随分、この推進戦略に引っ張られるんです、推進費のほうは。

【安井委員長】 そうですよね。だから、前も最初は……と下の台座はあまりなかったんだけれども、結局、置かざるを得なくなったのは、保健部あたりからのプレッシャーでそうなったなんて、これは議事録に書けるかどうかわからないんだけど、そういうようなことになっているわけです。皆さん、大きな問題だと意識して動いていただいて次に行きましょう。

というわけで、各ワーキンググループは終わりでございまして、予定より随分長くやっていますが、次は、実を言うと何分でも終わるということでございまして、次の議題に行かせていただきたいと思います。

課題の説明から事務局でお願いしたいと思います。

【嶋田調整係員】 それでは、資料5のシリーズに沿いまして、簡単にご説明申し上げます。

既に、それぞれの領域におきまして、さまざまな論点をご提示いただいたところでございますが、もともとの推進戦略においても、領域横断的な話というのは取り上げられております。また、今回、出てきた論点の中、例えば、先ほど岡田先生からご意見をいただきました、災害、放射性物質の扱いでありますとか、どうしてもまたがっている問題、ほかの領域とも関連するし、どう置こうか難しいというご意見をそれぞれいただいたものもございますので、それを資料5-1のような形で、事務局たたき台のような形で作成してみました。

資料5-2を横目に見ていただきながら思いますが、現行の推進戦略におきましても、全領域共通あるいは領域横断ということで、この脱温暖化社会から安全が確保される社会までの四つになかなかおさまり切らない、あるいは全てに共通する課題というのを別出しで重点課題として設定をしておりました。今回もご議論いただいている中、やはり別出しして領域横断的な課題、仮に統合領域という言い方をしておりますけれども、それを設定する必要があるであろうと事務局としては考えておるところでございます。

領域横断的な課題を設定する際の考え方というのが、大まかに書いてみたのが資料の5-1でございます。持続可能な社会の実現に向けてということで、これは大きな社会ビジョンの提示ということで、SDGsが動き出そうとしておりますけれども、そういったところへの知的貢献でありますとか、環境の観点、グリーンフラストラクチャ等々、ご意見がございましたけれども、そういった観点からの国土形成でございます。

あるいは、少し下に行きまして、各領域の統合的実現ということで、以前から環境省も取り組んでおりますが、コベネフィット・アプローチの話でありますとか、あとは領域間でのコンフリクト解消ということで、先ほどご議論の中で再生可能エネルギーの施設を導入しようとすると生態系に影響が出たりというようなご意見もありましたけれども、あまりに境界領域ということは別出しというか、またがるということで別出ししてもよいのではないかなと思ったところです。

また、右上に行きまして新たな技術シーズの活用ということで、こちらは、実は前の戦略では全く何も書かれていなかったところなんですけれども、今回、ご議論もございますし、さまざまな動向、意見具申も出ておりますけれども、そういった内容を踏まえますと、地域によって最適な技術はスペックであったりコストであったりというのは変わってくる可能性があるので、そういうことを取り組んでみるということですので、あとは材料工学の話といったことも考えられるのかと。今まで、環境という切り口であまり見られていなかったかもしれない分野の技術シーズを何とか引っ張り込めないかということをちょっと考えてみたというところでございます。

下に行きまして、価値観・ライフスタイルの変革ということで、どうしても技術の話に寄る部分はあるのですけど、やはり環境の分野で見たときに、環境教育でありますとかリスクコミュニケーションでありますとか、あとは、先ほど合意形成もいろいろな分野にまたがるというご意見もございましたけれども、そういったものは、もう統合領域というか、領域横断的な課題としてもう位置づけてしまうというのは、一つの整理の仕方かなというふうに思ったところです。

さらに、ご意見をいただきました災害あるいは事故の話でございますけれども、28年度から福島県において環境創造センターが動き始めるということもございますけれども、放射線計測でありますとか除染・廃棄物に関する技術、あとは環境配慮型の地域復興、放射性物質の環境動態の解明でありますとか、もう少し話題になっているところで申しますと除去土壌の減容化でありますとか再生利用でありますとか、そういったことも環境研究、技術開発の守備範囲に入っていくのではないかなというふうに考えて書かせていただいております。

また、福島県の復興ということもありながら、同時に、安全の分野で比較的議論になりましたけれども、事故が起きたときのさまざまな環境汚染への対応といったことも視野に入れるべきなのではないかということのご意見もございましたので、例えば、こういう立て方がいかがかなということで少し整理をしてみたというものでございます。

以上です。

【安井委員長】 というわけでございまして、今日、議論をどこまでやらなきゃいけないということでは全くないので、目出しだけでございますが、このような領域横断的な研究課題に対する論点ということで一応の整理が出てきておりますが、なかなか難しい気がいたしますが、何かご意見なりいただければと思いますが。

コベネも悪くはないんだけど、コベネって書いちゃうと、本当にコベネが出てきちゃう。しようがないんだけど、ネイチャーテクノロジーと書くと、それが出てきちゃうんです。そういう単品料理を食いたいから領域横断的な研究をやっているんじゃないよと私は言いたくなっちゃうわけね。

要するに、複眼的にものを見てほしいのに、コベネって二つの間なので、領域的にはかえって狭くなっている。二つの目が1個になって単眼的になっていて、それはいい感じがしないというのがこの間の反省なんです、個人的な。だから、ネイチャーテクノロジーなんていった瞬間に単眼の、まさに目が1個しかない申請が出てきてしまう。だから、その辺を何かうまく、例えば、上の地域最適技術なんていうくらいの括りのほうがいいんだよと言いたいわけ。

【鷲田PD】 研究者ってポイントで理解するから。

【安井委員長】 変なキーワードを示すと本当に単眼的な研究ばかりになって、何が領域横断だよという話になっちゃう。

【岡田委員】 今ごろ聞くと叱られるんですが、一個一個の単語の解説は、どのくらいしていたんでしたっけ。

【安井委員長】 ほとんどしていない。

【岡田委員】 あんまりないですよね。だから、みんな、キーワードを見て勝手に想像して。

【安井委員長】 そうなんです。そのキーワードを含めりゃいい、そんな感じかな。

【岡田委員】 わかりました。地域最適技術なんかも、それぞれ勝手に解釈する人がいるんじゃないかなと。

【安井委員長】 そうでしょうね。

【高村委員】 領域横断の審査は、個々の分野に審査員がいるんですか。

【安井委員長】 そういう会があって、私一人の責任じゃないですけど。ただ、鷲田先生はどう思われるかわからないけど、いろんなことをおっしゃってくださって、割とまともに機能しているような気がしますけど。

【鷲田PD】 企画委員会です。

【安井委員長】 そう、全体がやっているんです、企画委員会。そこそこのレベルの評価になっているような気がします。いろんな意見があるので。

【高村委員】 応募する研究者に、ここは分野横断でやりますよと説明させて選ぶ、そういうやり方もありですね。

【安井委員長】 おっしゃるとおりかもしれない。例えば、さっきの安全のところは、全部ベースなんだから領域横断でしか受け付けないという手もあるかもしれない。そもそもベースなので。そうすると、やっぱり昔ながらのトキシコロジーみたいなやつは、全部、落っこちちゃうと思うんだけれども。

【松藤委員】 例えば、環境教育やリスクコミュニケーションというテーマを考えたときに、例えば、廃棄物におけるリスクコミュニケーションとか、そういった見方に当然なると思うんですよね。リスクコミュニケーション全体をやるなんて不可能ですから、領域横断で。ですから、この言葉は全体にかかっている言葉ですよね。だから、例えば、持続可能な社会で、このテーマはあり得ると思うんです。あることに対して、こういったテーマでやっていくということだってある。現実的だと思います。

【安井委員長】 おっしゃるとおりではあるんだけど、例えば、環境教育というところで、廃棄物の環境教育の研究をやりますよといって、しかし、それを廃棄物のところだけで発表されても、結局、その共通的なノウハウみたいなやつは、ほかの領域に伝わらないわけです。ですから、リスコミもそうなんだけど、結局、リスコミという一つのスキルを持った人間をつくろうという話になってくると、対象は何であっても結局同じかもしれない。だから、それをそれぞれの領域に落としていってはいけない部分が残るという話なんです。

今日はプレリミナリーにいろいろご意見をいただいて、それで、もともと環境研究というのは、基本的に、私は全部の研究が領域横断でもいいんじゃないかとすら思っている人なんです。ですから、そういうスタイルに、とにかく何でもいいから二つ、個々の領域がありますけど、それからぽんぽんと二つ選んで出してくださいでもいいんじゃないかと思っている。1個のここだから出すというのをやめちゃうという手もあるのかと逆に思っています。審査は大変。審査は、どこにやるかというのは大変。だけど、そういう時代になったような気がするんですけどね。

だから、審査会側がどうやってやるかという話は考えなきゃいけないんだけど。例えば、全部複合領域というわけにはいきませんから、幾つか分けていって、審査員はずっと変わっていくんです。そこにぽっぽっぽっぽと当てはめていくみたいな感じというのも、ありなのかもしれない。しかし、難しそうだな。

【吉川室長】 ここの領域横断は、確かに難しいと思うんです。推進費の募集審査の話も重要なんで、そこは議論になりますけれど、統合的な領域というものに何を看板として掲げるかということは、環境省としての姿勢をどう対外的に示すかというのでもあると思うわけです。ですので、例えば、持続的な社会の実現に向けてというのは、これは低炭素領域の1番もそうだし、資源循環の1番もそうなんですけれど、ここは特に独立させて、社会ビジョンとか国土形成、SDGsといった内容で、独立して柱立てするべきであろうと。これは中長期社会を考えたときに、統合的な3社会の実現と考えたときには、ぜひ必要だろうということで立てています。

あとはなかなか難しいところで、例えば、コベネ・アプローチについて座長からもお話がありましたが、実際に、この5年、コベネで出てきている研究課題は、あまり統合的な内容ではなくて、要は廃棄物であったり省エネだったりするものをコベネと銘打っているだけなんで、審査も実際には個別分野の部会でやってもらったりしているんです。

あとは、ここに災害・事故に係る環境というのを新たに出しました。ほかに柱立ての候補としてあるのは、議論でもずっとありましたが、適応が低炭素領域と自然共生領域で、どちらも非常に重要な柱になり得るということで、それぞれで立てるのか、統合領域にするのかというところは論点だろうなと思います。今は未整理といいますか、低炭素領域に掲げて、それから自然共生領域のところで、課題案としては立てていませんが、論点として掲げているという形です。

もう一つは水循環の話で、これも統合領域に立てるべきか事務方で議論はしたんですが、ここは安全確保領域の中で大変重要な課題でもあるし、自然共生領域の中でも大変重要な課題でもあるし、それぞれ専門家にしっかり見てもらうという観点からは、それぞれで残すべきではないかという考えもあります。今回はそれぞれの領域では柱を立てておりませんが、それが最善とも我々は確信を持っておりません。

一方で、災害・事故については、放射線の話もこの中の多くの部分を占めるというのもありますので、一つ、そういうことで知見がある方にも新たに加わっていただいて、見ていただく必要があるかなということで立てておるという次第です。

ほかにも、環境省として、あるいは環境政策として、環境研究として、将来を見据えたときに、こういうことをすべきであると、それが各分野に落ちないというご指摘があれば、アイデアをいただければ、これから事務方も、それを踏まえてどんどん案を改善していきたいと思っているところです。

【鷲田PD】 一つ、よろしいですか。推進費からいいますと、領域横断は行政から行政ニーズが出てこないんです。つまり行政は、これを必要としていないんです。行政は自分の分野があって、やっぱり縦割りですから、どこに必要なのかわからないものは出てこないというのが現状なんです。そういう意味では、根づくのに大分時間がかかると思うんです。領域分野横断分野を始めて3~4年たちますよね。最初の頃よりは大分よくなったでしょう。そういう意味では時間はかかるけど少しずつよくなっている。

【安井委員長】 すごい効果はあった。

【鷲田PD】 一番最初のときは、どこにも入らないものをここへ出してきたとか、とんでもないものばかりだったけど、今は少しは形ができてきて。あとは行政のほうで、この点をきちんと考えてもらわないと、形ができないというふうには思います。

【安井委員長】 行政というのは縦割り以外の構造を考えたことがないけど、多分ないんだよな。そんな話をしている暇はないのでありまして、終わろうと思いますが、資料6の今後の予定、ご説明ください。

【嶋田調整係員】 本日は活発なご議論、ありがとうございます。

資料6、今後の予定でございます。本日、各領域において重点的に取り組むべき論点についてご議論いただいたところでございますが、次回につきましては、既に委員の皆様にもご連絡しておりますとおり、4月20日(月)を予定しております。時間帯は今回と同じ、また遅い時間の開催になってしまって申し訳ないんですが、17時から19時の開催でございます。場所はここから変わりまして、19階、第二・第三会議室を使用いたします。また近づきましたらご連絡差し上げますので、よろしくお願いいたします。

それ以降でございますけれども、5月は開催が難しい見込みでございますので、6月上旬に第15回の委員会を予定しておりまして、さらに審議状況等々を踏まえつつでございますが、第15回の後、もう一回ないし二回程度でまとまると事務局としては描いているところなんですが、これは今後の進み方次第でございます。今年の夏ごろ答申を目指してご議論等をいただければと考えております。

以上でございます。

【安井委員長】 ということでございまして、ひとつ今後ともよろしくお願いしたいと思います。

今日は、ちょっと予定を無視して議事を進めてしまいましたが、次回以降、また、こういった議論はさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、これにて閉会とさせていただきます。ありがとうございました。