中央環境審議会総合政策部会 環境研究・技術開発推進戦略専門委員会(第7回) 会議録

日時

平成21年7月31日(金)15:00~17:08

場所

航空会館 801会議室

議題

  1. (1)環境研究・環境技術開発の推進戦略の実施方針の総括フォローアップについて
  2. (2)(新)環境研究・環境技術開発の推進戦略の検討の方向性について
  3. (3)その他

配付資料

出席者

委員 :

安井 至委員、岡田光正委員、鈴木基之委員、西岡秀三委員
中杉修身委員、藤田正憲委員、森本幸裕委員、山口耕二委員

環境省:
総合環境政策局
白石局長
三好審議官
秦室長
坂井主査

議事

【秦室長】 それでは、定刻となりましたので、ただ今から中央環境審議会総合政策部会の環境研究・技術開発推進戦略専門委員会を開催いたします。
 本日は、大塚委員、それから三村委員からご欠席の連絡をいただいております。また、先ほど、指宿委員より、本日の出席が難しくなりそうだという旨のご連絡を頂戴していることをご報告申し上げます。
 それでは始めに、総合環境政策局長の白石より、ごあいさつ申し上げます。

【白石局長】 遅れて参りまして失礼いたしました。ご紹介いただきました白石でございます。
 皆様、本当にお忙しいところ、ありがとうございます。もうご案内のように、18年3月の環境研究・環境技術開発の推進戦略というものがあって、その改定に向けてご審議をお願いしているわけでございます。ことしの4月には、環境大臣が、いわゆるグリーン・ニュー・ディール、緑の経済と社会の変革ということで、思い切っていろいろな環境政策を打ち出していくことによって、そのことが経済にもいい影響を与えるというふうな形での政策を発表して、それを受けた形で補正予算を組み、エコポイントあるいは環境のためのいろいろな地方・政府の基金を作ったりと、いろいろなことをさせていただいております。研究開発という点で言えば、もともと、科学技術基本計画の四つの重点推進分野の一つが、この環境分野でございます。これを、これからどうしていくかということは、ひとり技術の中だけではなくて、世の中をどう変えていくかということになったりするわけでございますので、前職の小林に引き続き、よろしくお願いをしたいと思っております。
 どうぞ、よろしくお願いいたします。

【秦室長】 それでは、報道の方のカメラ撮りは、ここまでとさせていただきます。
 議事に入ります前に、我々、かなり大幅にメンバーが交代をしておりますので、ちょっとご紹介をさせていただきたいと思います。

〔異動者紹介〕

 それでは、お手元の配付資料のご確認をお願いいたします。

〔資料確認〕

 よろしいでしょうか。それでは、以後の進行につきまして、安井委員長にお願いを申し上げます。よろしくお願いいたします。

【安井委員長】 安井でございます。よろしくお願い申し上げます。
 本日の議事は1、2、3と用意させていただいております。3はその他でございます。1がメーンの議題でございますが、総括フォローアップについて、これに大体時間の7割ぐらいを使ってまいりたいと思っております。ということは、2に大体25%ないし30%程度ということになるかと思います。
 それでは、順次始めさせてまいりたいと思いますけれども、まずは、その1でございますが、ここの総括フォローアップということを行うことになっておりますけれども、その位置づけ等につきまして、まず事務局側からの説明をいただきたいと思います。お願いいたします。

【坂井主査】 
 資料1に基づきまして総括フォローアップについて、背景と方法をご説明いたします。
 平成18年3月に答申いただきました「環境研究・環境技術開発の推進戦略について」では、中央環境審議会のもとに設置された適切な会議体、この専門委員会でございますが、ここにおいて、専門的見地から環境省が作成する推進戦略の実施方針への助言を行うとともに、そのフォローアップとして推進戦略の着実な実施に向けたナビゲーションを行うとされております。これに基づきまして、これまで毎年度、推進戦略の実施方針への取り組み状況をフォローアップいただいておりました。
 この推進戦略でございますが、平成18年3月に策定いただきまして、当初5年計画ということでつくられておりました。つまり、対象期間が当初は来年度までということになっておりましたけれども、社会的状況の変化の大きさなどを踏まえまして、このたび1年前倒しで改定いただくということで、前回ご了承いただいたところでございます。この新しい戦略の検討に資するようにということで、今回は現行の戦略について総括的に振り返るフォローアップをしていただきたいと考えております。
 その方法でございますけれども、毎年の簡易フォローアップで調査してきた項目に加えまして、各領域における具体的成果、あるいは残された課題、また、戦略の進め方・体制といったことについてもフォローアップすることといたしまして、ここまで数カ月、四つの領域ごと、脱温暖化、循環型、自然共生、安全安心ということで、その領域ごとのワーキングにて先生方にご議論いただいてまいりました。
 フォローアップの具体的な構成は、下の表のとおりとなっております。まず「1.環境に係る国内外の社会的状況について」ということで、次章以降の背景としての社会的状況について記載をいたします。次の「2.重要課題の実施状況及び成果について」においては、これまでの簡易フォローアップでは、推進戦略で規定された研究開発の実施状況、つまり予算配分の状況のみ調査をするということにしておりましたけれども、今回は、これに加えまして、今後3年間の特筆すべき成果ですとか、残された課題についても調査をしております。その成果や課題を抽出する観点といたしましては、当初の戦略の中で重要課題ごとに設定されました「サブテーマ」ですとか「5年後の目標」、あるいは、最近中環審等で科学的知見の充実ですとか技術開発の必要性などの議論がなされておりましたら、そういったものも参考とさせていただいております。次の「3.横断的事項の実施状況について」でございますが、ここでは、これまでの簡易フォローアップと同じく、戦略で分野横断的に実施すべきこととして規定されている、総合的・統合的アプローチの確保、あるいは研究開発の基盤整備といったことについて、実施状況を調べております。最後に4.の「まとめ」でございますが、ここでは全体を概略するとともに、実施状況が不十分であったとされた項目については、この戦略の進め方が妥当であったのかどうか、あるいは戦略そのものの重点化は十分だったのかといった観点で、今後の対処方針の考察を記載するということにしております。
 資料の1については、以上でございます。

【安井委員長】 ありがとうございました。
 それでは、何かご意見等いただけたらと思いますが、ご意見・ご質問等ございましたら。何かございますでしょうか。
 よろしゅうございますか。それでは、ご了承いただいたことにさせていただきまして、次にまいりますと、今度は総括フォローアップの(案)そのものの議論に入らせていただきたいと思います。
 それでは、資料2に基づきまして、領域ごとに事務局からご説明をいただきまして、それぞれの領域のご説明の次に、各領域を担当いただきました委員の先生方から一言ずつ補足をいただくと、そういう形で進めさせていただきたいと思います。

【坂井主査】 
 それでは、資料2に基づきましてご説明をいたします。1章と2章については領域ごとに記載をしておりますので、それごとに区切ってご説明をいたします。
 1章の、「環境に係る国内外の社会的状況」では、平成18年4月から平成21年7月までの国内外の社会的状況の変化について調査いたしまして、ワーキングでご議論いただいて記載しております。なお、このネタとなりました個別のトピックにつきましては、参考資料の2に一覧表にしておりますので、適宜ご参照いただければと思います。
 それでは、資料2の1ページ目の1-1.脱温暖化社会の構築領域の社会的状況について、大きな動きを、簡単にご説明いたします。
 資料2の1ページ目の下の方でございますが、この領域、この3年間の最大の出来事として、平成19年のIPCC第4次評価報告書の公表が上げられるかと思います。また、昨年からは、京都議定書の第一約束期間が始まっております。この間、「低炭素革命」ですとか「環境モデル都市」といった言葉も生み出されまして、また、2050年の排出削減目標が設定されるなど、温暖化対策を社会・経済構造を具体的に変換していくべき長期的な取り組みとして捉える段階に移ってきたと言えるかと思います。
 次のページの上の方でございますけれども、平成19年には「21世紀環境立国戦略」が閣議決定されまして、中期及び長期の戦略が示されました。そういったものがハイリゲンダムサミットの首脳宣言に反映され、昨年の北海道洞爺湖サミットでは、2050年までに世界全体で排出量を半減するという目標について、気候変動枠組条約の全締約国と共有して採択を求めるとされております。また、先日のラクイラサミットでも、先進国全体での2050年マイナス80%といった目標を支持することなどが合意されております。また、同じページの下の方でございますが、各国の動向といたしましても、例えばアメリカでは、オバマ新大統領が2020年マイナス14%、2050年マイナス83%といった目標や、グリーンジョブの促進といったことを打ち出しております。また、欧州でも、法的拘束力を持った削減目標が合意されております。また、アジア、韓国、中国でも積極的な動きが出ております。
 一方、我が国ではどうかと申しますと、次の3ページに行っていただきまして、昨年7月に「低炭素社会づくり行動計画」が閣議決定されております。また、革新的技術や再生可能エネルギー技術の開発普及に関して、総合科学技術会議や各省において、各種計画が策定されてまいりました。また、ポスト京都の枠組みの構築が大きな課題となっている中、先月には、総理から2020年までに2005年比で、真水で15%削減するという中期目標が示されたところでございます。さらに、一番下でございますが、IPCC第4次報告書におきまして、至近には温暖化への適応策が不可欠とされたことを受けまして、温暖化の緩和策と適応策を同時に推進することが喫緊の課題として認識されております。それを踏まえて、総合科学技術会議や各省において、各種の取りまとめが進んでいるところでございます。
 このような社会的を踏まえまして、この3年間の研究開発の成果や課題がどうであったかということについて、次に2章にてご説明いたします。こちらでは、推進戦略で定められた重要課題、全領域で51課題ございまして、脱温暖化では、この9ページの下の[1]総合的な温室効果ガスモニタリング体制の確立から14ページの[12]まで12課題ございます。これごとに事務局の方で研究開発の実施状況を整理して、さらにそこから3年間の成果あるいは課題を抽出しております。その上で、ワーキングでご議論いただいてまいりました。そして、その課題を総括する形で、例えば脱温暖化領域で申し上げれば、9ページの2-1の部分、真ん中あたりですが、ここで総括する文章をまとめてございます。
 なお、研究開発の実施状況については、昨年度と同じく俯瞰図にして整理をしておりまして、これは非常に膨大な資料となって恐縮ですが、参考資料の3-1、3-2です。事務局側で二種類のマップを作成し、研究開発の実施状況を把握しようとしたものでございます。
 なお、この俯瞰図につきましては以前に、紙の資料だけでは何とも各研究開発の中身がわかりづらいというご指摘をいただいておりまして、このたび、これをウエブ化しまして、それぞれのカラムをクリックすれば、それぞれの概要がわかるというものを作成し、国環研のご協力をいただきまして国環研ホームページに掲載しておりますので、ここでお知らせいたします。
 それでは資料2の9ページに戻りまして、2-1.脱温暖化社会の構築領域の課題の実施状況及び成果について、簡単にご説明いたします。
 この3年間、温暖化のメカニズムと将来トレンドについて、知見の蓄積がなされてまいりました。特に特筆すべき成果としましては、温室効果ガス観測衛星「いぶき」(GOSAT)の打ち上げですとか、IPCC第4次報告書への我が国としての貢献が上げられます。また、低炭素社会の実現に向けた12の方策などによりまして、今後の社会構築に係る政策議論が非常に活性化したということも、成果として上げられます。さらに、個別の技術、例えば家庭用燃料電池や電動自動車など、各種の先進的技術が実用段階に入りつつありまして、今後、さらにそういった成果の普及に向けた基盤整備が必要となっているところであります。同時に、社会システムの変革を求める研究、社会システムの変革を進める研究ですとか、適応策に係る取り組みの一層の強化が求められているというところでございます。
 以上、重要課題ごとに脱温暖化領域の実施状況と成果についてご説明いたしましたが、時間が限られておりますので、後の方の個別の課題に対する実施状況と成果については省略いたします。

【安井委員長】 それでは、今お見えなのは、三村先生お休みなので、西岡先生お一人だけでございますが、ちょっとご補足をお願いいたします。

【西岡委員】 2のところですか。

【安井委員長】 というわけでなく、特に全体で結構でございますが。

【西岡委員】 大体、今、ご説明ありましたように、この3年間というのは、極めてドラスティックに物事が動いた時代だと思います。それに対しては、大体は対応していたんではないかなと思うんですけれども、新しい展開が幾つか出てきたかなといいますのは、何といっても、日本の国は何とか行けそうな感じは私はしているんですけれども、これから途上国をどう全体に巻き込んでいくかということに対して、我々はどういうコントリビューションができるだろうかということが一つ大きく問われているのではないかなと思っております。それに対しまして、例えば9ページ以降の、その課題というのは、大体対応はされていると認識はしております。
 それからもう一つは、どうもこれは、単にCOを減らすという排出側だけの問題でなく、吸収側の問題が非常に大きくなってきたなと。これは、もう現実に、今度、COP15の後で、今でもREDD等々、吸収の問題が大きくなっておりますが、長期的に見ると、この問題、非常にいろいろな面で大きくなっていると。CCSなんていうのが、今まで、そんなにものになるのかなんて言っていたら、みんなそっちの方に行っているとかいうことを考えますと、地球全体を対象にした排出・吸収の競争が生じているような状況にもあるかなということがあります。
 それから先ほどお話ございました、適応策というのが、まだまだ十分目には見えてないところもありますけれども、やはり、あるタイムスパン、二、三十年の間では考えておかなくてはいけない話だし、いつまでも適応できないわけですから、当然それはさらなる抑止策の強化にはいくと思いますけれども、そういう大きな動きが出てきている。
 それから、一言で言って、科学から技術へという言い方をすると非常に誤解を生むところがあるんですけれども、現実に起こっていることは科学的に、そちらの方向に行くということは、もう間違いないと、低炭素社会という技術問題に移りつつあることはあります。ですけれども、先ほど申しましたように、科学がやるべき仕事が、単に大気の科学、大気の物理だけではなくて、地球全体に動いてきたというのが、私の見るところ大きな流れではないかなと思っています。
 それから、それぞれの国、それから特に途上国等々で、長期的なビジョンづくりと言いましょうか、今、オバマもそういうことを言っておりまして、つくっていかなければいけないんです。我々もそういうことをやってきましたけれども、その過程の中で、いろいろな国が、それぞれに低炭素を目指すようなプログラムの構築をするという、ソフト的な話もやっていく必要があるかなと思いますが、そのあたりは重要課題のところで、あるいは重点投資という形で、かなりカバーされているのではないかなと考えています。
 以上です。

【安井委員長】 ありがとうございました。
 どうしますかね。ここで皆さんからご意見いただく予定にはなってないんですけれども、よくよく考えてみると、ここの部分に関しては、ここで今ご意見がもしあれば、ちょっといただいた方がいいかもしれないですね。ただ、余り時間がないので、全体の構成は後で時間をとりたいと思いますけれども、この部分に関しまして何か特にございますか。

【中杉委員】 ちょっと技術関係で、これ、事務局の方にコメントを差し上げたんですが、13ページのところで、炭素の固定・貯留というところの10番ですね、その真ん中辺で、「今後、国内でも本格的な実証実験が行われる可能性があるものの」というふうに書いてあるんですが、今年度からスタートしています。

【安井委員長】 長岡でやりましたね。

【中杉委員】 いや、長岡ではなくて、今、経産省が300億をかけて今年度からスタートをしています。総合科学技術会議の方で評価を行いましたので。可能性があるものではなくて、実際に動いているというふうに思いますので。始められている。実際には、入れるまではいっていませんけれども、そういうプロジェクトは始まっているということと思います。

【安井委員長】 昨年、とにかく1万トンは突っ込みましたよね、長岡で。

【中杉委員】 長岡のではなくて、また別にやっているんです。全体が5年間で、とりあえず300億かけてやるという話です。

【鈴木委員】 これ、全体のところの方がいいのかもしれないんですが、この二つの俯瞰図が、俯瞰図になっているのかどうか。要するに、項目は沢山上がっているんですが、その重みづけが全くわからないですよね。何となく項目、キーワードで並んでいるという感じで、本当に脱温暖化社会に持っていくためには、どこが、優先度が高くてどうすれば良いのかというあたりが、もうちょっと見える形になっているといいのかなと思います。こちらに、前回は、そこへかかった経費みたいなものがあったんですが、ここは全くそれが抜けてしまっていて、一体、重点投資とは言いながら、どれくらいその分野にどう投資されたのかというあたりは、わからなくていいんでしょうか。後の方の議論かもしれないですが。

【安井委員長】 ウエブではわかるんですか。

【坂井主査】 ウエブでは、一部はわかります。各事業の概要として予算を載せているものについてはわかりますが、すべてではございません。

【鈴木委員】 あと、やはり3年間の変化のところで、ライフスタイルみたいなもの、すなわち、需要側をどういうふうに動かしていくのかというあたりに対して、なかなか研究課題になりにくいんですが、その辺をどういうふうに、今後引っ張っていくのか。これは、次の課題かもしれませんけれども。悩ましいところですよね。

【西岡委員】 今のお話は、私は非常に重要だと思っていますのは、そもそも、都の、例えばイギリスの計画にしても、IEAの計画にしても、今後、低炭素社会にするには、まず需要側でのエネルギーを半分にするというのが、ほとんどの前提になっているということなんですね。そうしないと、とてもではないけれども、供給側だけの努力では減らせないということが明らかになっています。我々の、個人の意見を言ってもしようがないんですけれども、後々技術的にはできるけれども、一体それをちゃんと社会の中に組み入れていくにはどうするか。これはライフスタイルだけの問題ではなくて、むしろインフラの話であるとか、あるいは政策の話だとか、そういう組み合わせたところは確かに非常に弱いというのでしょうかね、何か統一的な研究が余りなされない。みんなばらばらとやっているんですが、余り力になってないし、それはだれが一体まとめるんだという問題が多分残っているので、非常に難しいソフトウエアの問題ですかね、ソフトサイエンスの問題が。

【安井委員長】 今後の方で、またご議論いただくかどうかですね。
 では、一応このくらいにさせていただきまして、次、お願いいたします。

【坂井主査】 それでは、循環型についてご説明をいたします。循環型の社会的状況の変化につきましては、資料2の4ページでございます。
 このところ、経済活動のグローバル化がますます拡大しておりまして、それに伴って、資源の価格の乱高下が起きております。それによって、適正な処理を前提としつつ、循環型社会を構築することの重要性といったものが国際的にも非常に強く認識されるに至っているとされています。また、安全・安心といったものを確保した上で、循環型社会の構築について、低炭素社会の構築や、自然共生社会の構築と、統合的に実現していくことが重要なのではないかといった議論も多くなっております。
 こうした中で、国内の循環型の取り組みを振り返りますと、各種リサイクルの制度整備が着実に進んできました。また、昨年改定された「循環型社会形成推進基本計画」におきましては、個々の技術システムと社会システムを統合し、3R型の生産消費システムを実践する設計技術の開発を戦略的に進めていくというふうにされております。また、廃棄物処理施設整備計画におきましても、この分野における地球温暖化対策、処理施設のストックマネジメント等について重点的に推進をするとされております。また、将来の人口減といったものが想定されるわけですが、それを踏まえた、効率的かつ効果的な処理システムの再構築といったものについても議論され始めているとご指摘をいただいております。
 また国際的には、昨年の環境大臣会合におきまして「神戸3R行動計画」が合意されました。我が国では、あわせて、アジアにおいて循環型社会を構築するための行動計画として、「新ゴミゼロ国際化行動計画」を発表しておりまして、今後も我が国が3Rイニシアティブを保持していくことが重要とされております。
 これらの社会的状況を踏まえまして、3年間の研究開発成果を総括いたします。同じく資料2の15ページをご覧いただければと思います。
 15ページの上のところ、2-2でございます。リサイクル技術に関しましては、製品・材料ごとに大きな進展が見られました。また、3Rの社会システム研究についても成果が出始めまして、政策議論への貢献が見られます。今後とも、個々の技術と社会システムを統合して3R型の生産消費システムを実現していく、といった設計技術の開発を進めていくことが必要とご指摘をいただいております。
 また、国際的には、アジアでの資源循環フローに関する研究が大きく進展いたしました。今後、資源取引が一層活発化すると想定される中、我が国がイニシアティブをとってアジアの資源循環適正管理に係る研究をさらに進める必要があるとご指摘をいただいております。また、将来的な資源の枯渇を回避するための3R研究自体も一層強化が必要とされております。
 循環型については、以上でございます。

【安井委員長】 ありがとうございました。
 それでは、藤田先生と山口先生から、少しずつ補足や、ご意見いただきたいと思います。

【藤田委員】 循環型社会の構築で、一つだけ、15ページのちょうど真ん中、[1]のところに低炭素社会の構築とのコベネフィット型の廃棄物管理システムという言葉が多分出てきたと思うんですけれども、やはり、この3年間を見まして、技術開発、特に3R技術に関しては、特にリサイクル技術ですね、これはかなり進んだと評価はしております。そういう点を踏まえますと、次に目指すのは、こういうコベネフィット型の管理システムというのを、やはり一つ視野に入れなければならないだろうというふうに思っております。
 それから、アジア全体を見ましても、実はアジアでのE-wasteを含めたいろいろな廃棄物のフローに関しては、この一、二年で非常に、これもまた研究の方が進んできております。大きなシステムをつくるというところまでは行ってはおりませんけれども、かなり物の動きがわかってきたというふうに評価できると思います。
 それからもう1点は、前の方の頭書きにもありましたけれども、資源という視点から、特にレアメタルの方ですけれども、特に昨年、重点的にこういう研究に支援をしていったということもありますので、恐らく、この一、二年で、それらの成果が出てくるものだと思いますが、少なくとも、そのあたりについては、やはり今後も見ていく必要があるというふうに考えております。
 それから、あと少し個々の点ですけれども、重点投資の中で言えば置いてきた部分というふうに評価していいのかもわかりませんが、これなかなか研究にならないというところもあったと思うんですが、最終処分場の適正な跡地管理という研究に関しては、もう、ここに記述も非常に簡素にしか入ってないということは、もうほとんどできていないということで、これは恐らく、自治体等との連携による研究というのが非常に重要だと思うんですが、残念ながら、この分野に、やはり関わっている研究者、技術者が少ないということもありますので、我々としては、やはり、この後、もし5年のうちの後半ということになれば、この[5]の最終処分場の跡地管理に関しては、やはりしっかりと見ていきたいなというふうに思っております。
 その他、もう1点は、これは重点ではございませんけれども、3Rを一体化させた設計・生産技術の開発、これも当然ながら研究というよりは生産者ですから、当然ながら企業に求められることです。その部分については、研究課題として、あるいは技術開発課題としては、なかなか出てこなかったということで、どちらかというと啓蒙しながら、やはり企業の中で、どんどんと進めていってほしいというふうな期待を込めて、そこに書いてあるような形になっておりますが、現実には、余り、目に見えた形では成果が出ていなかったというふうに思います。
 この3年間総括しますと、やはり3R技術と、もう一つはE-wasteを含めたアジアにおける廃棄物のフロー、流れですね、このあたりは非常に進んだと思いますが、先ほど述べた点については、やはりこれから積み残している課題ではないかなというふうに思っております。
 山口さんに、資源の方も含めて、ちょっと補完してもらいます。

【山口委員】 基本的には、藤田先生のおっしゃった内容に尽きるわけですけれども、私から言わせていただきますと、まず、3R関係の[1][2][3]を総括すると、技術、個別の技術は、おかげさまで随分と進化したなというのが、いろいろな成果を見ているところの実感でございます。具体的には、自動車とか家電とか食品とか、かなり個別の技術は進化していったのかなと。一方、ではその技術を使うためのシステム、社会システムが、どうももう一つ踏み込めないというのが、本当に、研究テーマ的にも、なかなか深追いができないという悩みがあるのかなと。ですから、テクノロジーを、個別テクノロジーの話と社会システムとしてのテクノロジーの話をどういうふうに組み分けるかというのが、これから大きな課題なのかなと。そういう意味では、先ほど西岡先生の方から温暖化については供給と需要だというお話がございましたけれども、循環型で言うならば、技術と社会システムをどういう形でコラボレートさせるかということが、これからの大きなテーマになるのかなと、このように思っております。したがって、個別の技術については、もう、はっきり申し上げまして、かなり民間ベースに任せればいいのかなと。ただ、国としては、やはり革新的なイノベーションが起こるような、ピンポイントの技術、これがナノになるのか何なのか、私にはよくわからないんですけれども、そこら辺をブレークスルーするような環境技術のテーマの発掘と。これが一つのポイントになってくるのかなと、このように思っています。
 それから次のページの、16ページの有害物質の観点、これも、残念ながら、もちろん日本の規制等々もありますけれども、社会全体で見ますと、EUにかなり引っ張られて、産業界は有害物質の削減ということをやってきたのが実態だと思っております。例えば、RoHS指令とか、REACH指令とか、WEEEですか、残念ながら、本当は、こういう問題については日本がリーダーシップを発揮できればよかったんですけれども、EUに引っ張られた再生品、再利用品の規格化、標準化が進んだということも、また事実なのかなと思っております。
 それから17ページのLCAについては、かなり、この標語自身は、もう実用段階に来ているのではないかなと。これからLCAをやるとするならば、むしろ社会システム的なLCAの話を持っていかないと、産業界レベルの話のLCAではないのかなと、そういう感じがいたしました。
 これで、私からは以上でございます。

【安井委員長】 ありがとうございました。
 ほかの先生方から、何か追加的なご意見ございますでしょうか。

【中杉委員】 藤田先生からご指摘があった6番の、跡地の話ですけれども、これは非常に、安全・安心の方の立場からいっても、多分、今後の課題になってくるだろうというところのお話なんですが、ただ、一応最終処分場についての跡地については一つの仕切りをつくりましたので、管理の、あれが一つ効くんだろうと思うんですが、どういうところが一番問題かというと、廃棄物の管理がだんだん厳しくなってきたんですね。大気とか水は管理が厳しくなれば、それに応じて環境がよくなっていくんですね。ところが、廃棄物というのは、昔のが残ってしまうわけです。今、公害等調整委員会でも出てきているのは、安定型廃棄物処分場が非常に問題であると。そこを調べると、今の規定からいくと、もう合わないようなものがたくさん出てくるわけです。それを撤去しろと言われると、日本全国の安定型処分場を全部ひっくり返さなければいけないなんていう話になってくる。この辺のところを、どういうふうにするかというところの調査研究がものすごく重要だろうと思っています。だから、私がちょっと言って、超長期と直していただいたのは、多分、我々今考えているのは、100年ぐらいの単位でしか考えていないんですね。その後のことはどうなんだとなると、これは、その間にごみが、廃棄物が普通の土壌みたいに変わってしまうかというと、必ずしもそうではない。その先のことというのは、埋立処分場を建設しているゼネコンの人たちに聞いたんですが、その後、ごみの山は崩れるだろうかという話を聞いたら、半分の人は崩れる、半分の人は崩れない、と。確実に共通しているのは、そこまでは考えてつくっていないという話なんです。そこら辺のところ、ものすごく重要な話なので、これはぜひやらなければいけないと。それは、安全と安心なのか、循環の方なのか難しいんですが。そういう観点で見ていくと、もう一つ、ちょっと先走ってしまった話をさせていただくと、安全・安心は、土壌汚染も一つ問題なんですが、これは自然共生のところで何か扱っていただけるのかなと思っていて、そこも入っていないし、しまったなというような感じがしています。

【安井委員長】 循環なのかな、土壌汚染。

【中杉委員】 土壌汚染ではなくて、自然共生のところでしょうね。

【鈴木委員】 廃棄物・リサイクル部の方の問題なのかもしれないんですが、やはり、廃棄物に関する社会システムを、どういうふうに今後考えていくのかという、そういうものがなくて、今までどおり、一般廃棄物と産廃を、それぞれで集めて、この後どうしますかという話しかやっていないというのは、非常に不安なんですよね。やはり、社会システムを、どういうふうに組んでいくのかと。大体、電気製品だって、今、もう解体しやすい、リサイクルしやすい製品なんて、どんどん出てくるようになっているわけでしょう。それをちゃんと、社会システムなり、あるいは法制度なりできちんと回すような、そういう方向に動かす仕掛けを考えていくという、そのあたりは、行政の方が遅れているんですかね。ちょっとその辺が気になるんですよね。
 もう一つは、この廃棄物処理科学研究費補助金というのを拝見すると、昔ながらのテーマがいっぱい並んでいて、こんなことを今やっていていいんですかという感じなんですけれども、これ、だれがどう決めているのですか。ぜひ、環境省を一本化して、環境省全体の研究費の中に、やはりちゃんと組み込んで、いつまでも厚生省時代の継続ではまずいのではないでしょうか。

【藤田委員】 鈴木先生にそれを言われるとつらいんだ、私が委員長ですから。結果としては、やはり公募ですからね。やはりどうしてもそういう・・

【安井委員長】 公募というのが必要かという問題ですね。

【藤田委員】 そうです、そこはもう別と。ただ、そうは言いましても、実は、廃棄物科研費はこの戦略とは連動していまして、重点投資とか何とかという形で、例えば、今年は恐らくレアメタルの回収が入っていたと思うんですけれども、そのように1年ごとには、そういうふうな一つのアクセントはつけてはおります。しかし、残念ながら、私の印象から言って、研究者の層が薄い。だから、どうしても何となく同じようなテーマが出てくるというのは否めないと思います。それは、残念と言わざるを得ないのかもわかりませんけれども。

【鈴木委員】 こっちの、一括計上の方と合体して、一緒にやってしまったら。

【藤田委員】 それはあったんですが、ちょっと。

【安井委員長】 あと、先ほどの西岡先生のお話で、温暖化だと、やはりアジアが非常に重要とか、途上国が重要という話になるんですけれども、これは大気がつながっているからなんですが、廃棄物系はつながっているようなつながってないようなものだから、やはり、日本国内だけ片づいていればいいみたいな、そんな感じなんですよね、まだ多分。フローとしては見ようというのだけれども。

【藤田委員】 フローとしては見ます。

【安井委員長】 ただ、それはしかし、我々がフローを見るだけであって、向こうのために見ているわけではないですからね。

【鈴木委員】 やはり有害物質にしろ資源にしろ、アジア地域で回さなければいけなくなってきたら、最終的な処理は、やはり日本が引き受けることになるんでしょう。

【安井委員長】 確かに、ぎりぎりのところはそうですよね。処理技術は二つしかないですからね。

【鈴木委員】 そういう仕組みをどうつくるのかなんていう話は、どこでやっているんですか。

【安井委員長】 いや、やっていないですね。それからあと、まだアジアはいいんだけれども、例えばアフリカあたりになってしまうと、もうはっきり言って、手も足も出ないですよね。

【鈴木委員】 アフリカはヨーロッパに任せれば良いのでは。

【安井委員長】 では、島嶼諸国。たとえば、小さな島国、スモールアイランドからその辺が、ちょっと何とかしなければいけないというところがあるのですが、やはり今の話ではございませんけれども、日本の環境技術がちょっと高度過ぎてしまって。

【鈴木委員】 今でも、パラオから廃タイヤを日本に運んできてはいませんか。国が許可したと思いますが。

【秦室長】 そこまでは存じ上げていないんですけれども。

【鈴木委員】 そうですよね。廃タイヤは確かバーゼル条約の対象ではありませんから。

【事務局】 担当部署は同様の問い合わせを受けたことがあるようです。輸入されているとしても、バーゼル法、廃棄物処理法の規制対象外のものとして輸入されているはずです。

【安井委員長】 いずれにしても、そういう問題は、後でまた、これから先の話は、また後でご議論いただくということでございます。
 それでは、次にまいります。

【坂井主査】 自然共生型社会についてご説明いたします。資料2の5ページをご覧ください。
 社会的状況でございますけれども、まず、水環境分野におきましては、環境基準の設定から35年以上が経過したということで、既存の項目だけではなくて、より実感しやすい水質目標の設定が必要なのではないか、あるいは排水中の多様な化学物質の影響を総合的に評価するWET手法といったものも必要ではないか、そういった議論も始まっています。また、水を持続的に活用できる社会の実現と健全な水循環系の構築を目指して、さらに気候変動リスクへの対応も含めて、関係主体が連携した総合的な水管理、施策パッケージの可視化といったものの必要性も議論をされております。一方、大気環境分野では、VOCについて、法規制と自主的取り組みの組み合わせによる排出規制が始まっております。
 国際的に見ますと、2009年3月に「国連 第3次世界水開発報告書」が発表されまして、人口増加やエネルギー需要の増加、地球温暖化の中で、地球規模の水問題が発生するおそれがあるというふうに指摘されております。こうした中で、我が国として、これまでの公害克服の経験と知恵を生かすということで、アジア10カ国との水環境パートナーシップやコベネフィットCDM事業など、国際環境協力が展開されております。また、越境汚染対策につきまして、日中韓環境大臣会合の枠組みなどによって研究が推進されております。
 一方、生物多様性の分野でございますが、2006年の「地球規模生物多様性概況第2版」におきまして、2010年目標、つまり2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させるという目標の達成は非常に厳しいというふうにされております。また、IPCC第4次報告書におきまして、今後、温暖化の進行で、生物多様性への影響が拡大するというふうに予測されております。
 こうした中、平成19年11月に、「第三次生物多様性国家戦略」が閣議決定されております。この中で、生態系を100年かけて回復すること、あるいは多様性総合評価指標の開発、またSATOYAMAイニシアティブ、温暖化緩和策と適応策の検討といったものが盛り込まれております。また、昨年には、「生物多様性基本法」が成立をしております。そして来年には、COP10が名古屋市にて開催されることになっておりまして、今後我が国のイニシアティブが、ますます重要となっているというところでございます。
 これらを踏まえまして、3年間の研究開発の実施状況と成果でございます。19ページをごらんください。2-3のところでございます。この3年間で、各重要課題に関する研究開発は、おおよそ実施されてきている、しかしながら、個々の研究開発をつなぐような研究が不足しているというご指摘をいただいております。また、この自然共生分野と温暖化への取り組みの分野、その統合の重要性が一層増しており、従来の研究から一歩踏み込むことが重要ともご指摘いただいております。また、越境汚染についても取り組みの強化が必要とされております。
 また、生物多様性につきましては、特に来年はCOP10が我が国で開催されることになっておりますし、「生物多様性2010年目標」の達成目標年でもあるということでして、我が国には、COP10の議長国として、生物多様性保全施策の一層の推進が求められているところです。また、国内外の生物多様性の保全、持続可能な利用につながる研究開発の取り組みの強化が必要というふうにもご指摘をいただいております。
 自然共生については、以上でございます。

【安井委員長】 ありがとうございました。
 それでは、ここの部分に関しては岡田先生、森本先生、何かございますか。

【岡田委員】 昨年の議事録がお手元にあるんですが、同じ印象を持っております。同じことの繰り返しになるかもしれませんが、従来の枠組みの中での個別研究というのは、今ご報告いただいたようにやっていると。どこまで成果が上がったかというのは、必ずしも成果目標が定量的ではないわけですから、やったことはやった、そこそこにいった、でも目標が完全に達成されたかどうか、これは必ずしも明確でないところがあるというふうに全体的には思います。ただ、あと、個別は別にして、全体として、一つ一つのコメントを見ていただきますと、アジアとか、それから統合化、総合化、政策立案、こういうものが必要だとずっと書かれております。この問題は、やはり次に持ち越しているというか、まだ不十分な状況が続いているというふうに思います。特に、一番問題な自然共生型社会の中では、水とか大気という分野と、後で森本先生がコメントされるかもしれませんが、自然という分野が、必ずしもうまくリンクしていないというところもあります。それから、例えば5ページを見ていただきますと、自然共生型の構築領域で、こういう社会変化があったといろいろ書かれております。例えばこの中では、気候変動のリスクへの対応、もしくは適応策といっていいかもしれませんが、そういうところは、ほとんど書かれていません。ですから、今回は、前回決めたときは余り入ってなかったので、次に入れるときは、もう入れなければどうしようもない分野であると。例えば、5ページの真ん中辺に、国際的に国連の第3次世界水開発報告書云々と書いていますが、これはもちろん温暖化に対する適応策みたいな話がいっぱい書かれているんですが、そういうところについても、まだ明らかに不足していると。それから、順序が逆になりましたが、自然共生の一番上のところで、そもそも水環境をどうするかと、どう管理するかという哲学、それから水循環の、健全な水循環と、白石さんいらっしゃるから言いにくいんですが、健全な水循環ですら、きちっと定義されているとは言いにくい。そういったところに関する研究が、まだまだ不十分で、そういう意味では、最初に申し上げましたように、総合化・統合化のあたりが最も欠けているというふうに、文章でも書かれていますからいいんですが、その通りだというふうに思います。
 以上です。

【安井委員長】 ありがとうございました。

【森本委員】 岡田先生のおっしゃったことについて、私もそう思います。書かれてなかったんですけれども5ページの、国内外の状況で、多様性条約のCOP9の時から始まっているというか、注目を浴びている生物多様性の経済評価という分野がありまして、これは余り我が国では遅れているというか、ほとんど手がついてないという問題があるんですね。TEEBのプロジェクトはドイツでスタートして、中間報告が出て、今度COP10では、その最終報告が一応出ることになっているんですけれど、それに生物多様性、自然共生型社会ということを目標にしたときに、そういう方面の研究というのがほとんどないというのが結構課題だなと、今思っています。
 それから、いろいろ個別のところでは、まさに岡田先生おっしゃった、重複するので避けますけれども、安全・安心の分野とも、実はかなりかかわるところがありまして、これはなぜかというと、生物多様性、あるいは自然を考えてみたときに、自然の要素と、要素というのは例えば絶滅危惧種であるとか何とか、あとパターンといいますか、どんな形であるかということと、あとプロセスなんですね。プロセスは、水とか大気とかが動いているので、あと土砂も動いているんですね。土砂が山から川、海に出る流砂系が劣化しているということがボディブローのように海岸侵食なんかに来て、結局砂浜と浅海、砂浜の生物が消えたことなどに結びついていることが分かってきて、流砂系を考え直そうというのが結構大きな流れであるんです。これは、安全・安心の分野、要するに砂防とか、これまで一生懸命やってきた分野と、いわゆる生物多様性保全、自然共生型社会をつくるという上でのネゴシエーションというか何というか、全体を考えなければならなくなって、先駆的には知床なんかでやりかけられてはいるんですけれども、トータルに都市部も含めた形でどう考えていくのか、そういう研究が結構大事なので、今後の課題になると思うんです。だから、生物多様性分野だけではなくて、安全・安心分野と連携した形で進めていかないといけない課題研究というのは多分あるんだなと実は思っていまして、そういうふうに頑張っています。

【安井委員長】 ありがとうございました。
 何か、この分野に関しまして、ご意見等ございますか。

【鈴木委員】 水・大気局の関連は、自然共生に入るということになったわけですか。例えばVOCの話なんかは、後ろの安全の方で扱ったっていいような気もするけれども。

【坂井主査】 VOCは、ほとんど4の方の安全・安心で扱っているんですが、大気環境の項目出しということで自然共生にも1行だけ書かせていただいております。

【鈴木委員】 生態系、本当は生態系に関して、どういうふうに進めていくのでしょうか。

【森本委員】 個々の研究は、それなりにはあるんですけれども、要するに、これからのシナリオに沿ったモデルの構築だとか、実際のシナリオ分析だとか、そういった研究というのが欠けているように思うのですね。個々のモデルはそれなりにあっても、例えば琵琶湖がレジームシフトで大幅に変わりそうだというような話もありますけれども、温暖化のシナリオの中で、もっとトータルな話というのが、どこでどんなふうになっているのか全然見えてこないという。それぞれの分野で研究は進んでいるんですけれども。

【鈴木委員】 さっきちょっとおっしゃった、経済性評価みたいな話、今、進んでいるでしょう。あれも、僕は非常に危険だと思うんですけれどもね。

【森本委員】 ある意味、危険なところもありますね。

【鈴木委員】 だけど、やはり一度はやってみなければいけないという。

【森本委員】 ただ、それをどこまでやるかというのは、LCAと似たところがあって。

【鈴木委員】 時間軸もありますからね。

【森本委員】 そうです。オオカミの絶滅の影響が今になって出ていて、すごいシカ害などでどうするんだというふうな莫大な経済効果になるのですが、時間を極めて限定的に見ると、おっしゃるように、矮小な評価にならざるを得ないんですけれども。実は、少し広く見ると、すごい経済効果があるわけで。ひとつ、ドイツの動きを注目したいとは思うんですけれども。

【安井委員長】 最近、この分野の研究者と結構つき合っているんですけれどね。何かプロジェクトを立てられないかと。彼らはやはり、どう考えても生態学者であって環境学者ではないんです。明確に違う。

【森本委員】 なぜかというのは、この前、一つの理由がわかって、生物多様性っていうのは、ストックなんですね。ところが、経済というのはフローなんですよ。その辺で議論が、実はかみ合わなかったり。だから、これからのことを考えるときに、経済と環境の好循環というときに、生物多様性と経済をどう結びつけていくかといったときに、経済評価というのもあるんですけれども、ではもうこれが絶対守らなくてはならない絶滅危惧種だとか何だとかしたら、生物多様性オフセットだとか、キャップ・アンド・トレードとか、そんなふうな仕組みすら、今、考える必要があるところではないかなと。

【鈴木委員】 エコシステムサービスといったときには、フローでしょう。そういう形でしか評価ができないという。

【森本委員】 だから、そうなると、極めて限定的になってしまって、限界があるのです。今、里山里海サブグローバルアセスメント(SGA)というのをやっているんですけれども、その議論でも、結構それが混乱しているのが現状でして、関わっている人の間でも、議論の整合性がなかなかとれない面もあって、なかなか生物多様性分野というのは難しい、ややこしいところがあります。とは言いつつ、やはり、ちゃんと整理してやらなければいけない。これはちゃんと国が、何か明確なところを示していく必要がある。

【安井委員長】 今お話しの、次のCOP10の話にしても、そういう人たちと議論していて、何か距離がほぼ無限大に遠いなという気がする。

【森本委員】 次、課題になるのが、多分、GBO2の次の目標なんですけれども、それに関する研究とか何とかの根拠をどう考えていくかと、ほとんどまだちゃんと取り組まれていない。

【安井委員長】 ちょっと大変な話ですね。ありがとうございました。それでは、次に行かせていただきたいと思います。

【坂井主査】 それでは、安全・安心について、6ページをごらんください。1-4でございます。2002年のWSSD2020年目標で、「2020年までに化学物質が健康や環境への影響を最小とする方法で生産・使用されるようにすること」が、国際的な化学物質管理の目標として示されております。そして、これを達成するための枠組みが採択されておりまして、国際的に共通の目標と戦略のもと、各国の実態に即して化学物質管理が進められてまいりました。また、国際機関等の取り組みも進みまして、例えばOECD高生産量化学物質プログラムが順調に進捗をしております。また、POPs条約に関しましては、PFOS、臭素系難燃剤等の9物質群の追加が決定されております。
 海外の動向を見ますと、EUでREACH規則が施行されておりますし、カナダ、米国でも、それぞれ取り組みがなされております。
 次のページですけれども、我が国では、昨年、化管法の施行令が改正されております。また、本年には、化審法が改正されまして、既存の化学物質も含めた包括的な化学物質管理制度の導入、流通過程における適切な化学物質の管理、またリスクベースでの管理の仕組みなど、国際的な動向を踏まえた審査・規制体系の合理化の措置が講じられることとなりました。
 また、この3年間では、化学物質の影響を受けやすい集団に対する取り組みが進み出しております。特に、環境要因が子どもの発育に与える影響を明らかにするための疫学調査の必要性が提言されておりまして、既にFS調査が開始されているところでございます。
 人の健康に関する環境基準等につきましては、ページの下の方でございますけれども、まず、微小粒子状物質の環境基準の設定について答申案が了承されております。今後、監視測定体制の整備ですとか、排出状況の把握、そして挙動、二次生成機構の解明等が課題とされております。このほか、有害大気汚染物質の指針値が策定されており、水質環境基準についても見直しの検討が行われてきたところであります。また、自動車の排出ガス低減のあり方、騒音低減対策のあり方といったところについても答申がなされております。また、先ほど少しお話がありましたが、土壌汚染対策につきましても、土対法が改正されまして、汚染把握の制度の拡充、汚染区域の特性に応じた措置の明確化、汚染土壌の適正処理の確保といったことが講じられることとなっております。一方で、風力発電に伴う低周波騒音などというような低炭素社会構築に向けた新たな課題といったものも浮かび上がっているところであります。
 この分野の成果・課題について総括いたしますと、22ページでございます。2-4でございますが、まず、有害性評価の分野では、多数の化学物質の評価手法の確立、高感受性集団への影響評価等が実施されてまいりました。また、暴露評価に関しては、アジアでのPOPsモニタリングは実施されております。また、リスク評価についても、生態系への影響評価研究が進展しております。一方で、国際動向がハザードペースからリスクベースに移る中で、多種多様な汚染物質のモニタリングや影響調査について国際協調体制の構築も視野に置いて取り組みが必要であるとされております。
 また、資源循環が活発化する中で、環境負荷増大を考慮したリスク評価・管理の研究を推進する必要があるというご指摘もいただいております。また、高感受性集団への影響や、ナノ粒子等、有害性が未解明な物質による影響の研究、人の発達段階における感受性変化を考慮した評価・管理の研究といったものも必要とご指摘をいただいております。
 また、安全に関しては相当高い水準が確保されているというふうになっておりますが、国民が本当に安心感を得るに至っていないという場面も多々あるということでして、ここはご議論のあるところかと思いますけれども、社会的な合意の形成に向けた人文、社会科学アプローチも活発化が必要ではないかというふうに記載をさせていただいております。
 安全・安心について、以上でございます。

【安井委員長】 ありがとうございました。
 では、中杉委員から。

【中杉委員】 この間というのは、大きなところの一つは、既存化学物質についての管理が進むようになって、これは研究が進んだというよりも、制度的にも進んできたということで、これが進むことによって、いろいろな情報が出てくる。それによって研究も進んでいくだろうというふうに考えられますので、そういう意味では、大きなことだったかなと思います。
 それからもう一つは、全然別なんですが、総政局で環境の意識調査をずっとやっているわけですけれども、その意識調査の結果を見ると、化学物質に関しての国民の関心というのは年々低下をしています。地球環境問題についてはぐっと上がってきているのに、化学物質は低下をしている。それは何なのかというところが一つの大きなポイントではないかというように私は考えています。これは、実は、東京都とリスクコミュニケーションに関しては仕組みをつくって、住民と事業者と合わせて話をさせる場をつくるようなのをモデル的にやろうと思ったんですが、事業者の方からそんなことをやる必要があるかと言われるのはわかるんですけれども、住民の方に、そんなことが必要なのかというふうな反応があって、それは何だろうかと、ちょっととまどっているところでございます。そういう意味では、そこら辺が関心が低くなってきたということと絡んでいるのかなと。実際に、今健康被害が出ている人というのは、化学物質などの環境汚染で健康被害というのは、アスベストみたいな昔の特殊な例は別として、出てこないわけですね。そうすると、そんなことを自分が認識することはできない、そういうふうなことが一つの大きな理由ではないかと。そういう意味で、リスクコミュニケーションが必要だ必要だと今まで言われてきたんですが、そのリスクコミュニケーションの前に、国民の化学物質に対する意識、リスクに対する意識というのをしっかり把握する必要があると。一方で、一般の人についてはそういうふうな感覚を持っていますが、一方で、非常に感受性の高い、今感受性の高いというのは、「子ども」というふうなある階層で分けているんですが、同じ階層の中での感受性の違いがあって、化学物質過敏症みたいな人たちがものすごく感受性が高いんですね。こういう人たちをどういうふうに考えていくか、そういう人たちの管理をどうしていくかということが、やはり今後必要になってくるんですね。そういうふうなことについて、やはり、国民の化学物質リスクに関しての管理に対する意識というものをしっかり把握していかなければいけないというのが一つです。
 それからもう一つは、実は、ここにはなかなか出せないんですが、未解明のリスク、リスク評価ができないもの、リスク評価が確立していないというのが幾つかありまして、一つ最たるものは、逆U字型のリスク。投与量が多くなると、一般には影響が高くなっていくんですが、途中で下がってくる。それでどんどん高めていくと下がってくる。こういうものがまれに見え始めたのですが、こういうものが出てきたときに、どうやってリスク管理するかというのが、全く今ノーアイデアなんですね。高いところの濃度の結果を低いところへ持ってきてリスク管理をするという方法でしか、今、できていませんので。
 それから複合暴露したらどうするのか。これも規制法を使ってやるんだと言っていますが、なかなかそういう容易なものではない。そういうふうな幾つかの基本的な問題が、まだこれは、ここで重点的に取り上げるという、もう一つ前の段階かなというふうに思いますけれども、そんな問題が幾つも内在している。その一方で、全体としては、そんなに問題が顕在化していない。そういう、ちょっと難しい場面にあるように思っています。ですから、そこら辺をどういうふうに、今度の中で書き込んでいくか。あえてそういうふうに、こういう問題があるあると言って問題をあおり立てるだけでは、またおかしなことになりますし、ちょっと難しい立場にある。その中で、一番最後の28ページのところにリスクコミュニケーションの手法というところに、これも前と同じような書き方になっているんですけれども、若干変えて、意識をしっかり把握する必要があるという部分を加えていただいた。まだリスクコミュニケーションは不要だというまで至っていないんだろうと思いますけれども、ちょっと難しいところだと。少し今度の計画をつくるとき、少し模様変えが必要かなというふうに考えております。

【安井委員長】 ありがとうございました。
 何か、追加とかコメント、ございますでしょうか。

【山口委員】 今のところの最後の話なんですけれども、やはり、消費者なり国民が非常に関心が薄いのか、わからないから無知なのか、いろいろあると思うんですけれども、このリスクコミュニケーションのやり方というのは、やはりもっとスマートにやらないと、化学物質を全面的に否定するようなことになってしまっては、非常に非現実的な話になるわけですね。したがって、一つは情報公開のあり方をどうするのかということと、もう一つは、それによって、逆に社会の不安をあおるようなことをしても、また困る。したがって、私が申し上げたかったのは、例えばリサイクルとの関係を、ちゃんと資源として戻さなくては駄目なんだよと、これを単純に捨てたりしてはいけないんだよと、そういう資源循環とのかかわり、言いかえれば消費者が担うべきリサイクルの義務的なものも含めて情報公開しないと、何か、怖い、怖い、怖いで、結局化学物質を否定するようなことになってしまっては、うまくないような。賢い化学物質の使い方のリスクコミュニケーションをやっていただければいいのかなという気がするんですけれど、先生、いかがでしょうかね。

【中杉委員】 今、怖いというリスクコミュニケーションの仕方はほとんどないです、基本的には。例えば、土壌汚染対策法でも、そんなに対策をしなくてもいいよと言っているわけですけれども、受ける方はそうはとらない。さっきの化学物質のリスクコミュニケーションと土壌の場合と違うのは何か違うのかと私も考えてみたんですけれども、一般の化学物質と違って、土壌汚染の場合は、自分の資産の価値が下がってしまう。そこがものすごく違うわけなので、本当にあれは土壌汚染で、自分の健康に影響があると思っておられるのではないのではないかと。そういうところも、少ししっかり把握して見ていく必要がある。必ずしも、今、研究者が個別に発表するものは、こういうことを言うと怒られるんだけれど、研究費を取るためには少し怖いようなことを言わなければいけない側面が出てくるかもしれませんけれども、リスクコミュニケーションという観点でやっているときは、それはそうではないような形に、今はなっているんですね。そういう方向の検討。ただ、国民がどういう意識を持って過剰な反応をしているのかというのは、一般に聞いてしまうと怖いという答えが、多分返ってくるんです。そういう単純なアンケート調査方式でなく、しっかり、どういうふうに考えるかという、それこそほかの問題と絡めて、ゼロリスクというのももちろんあり得ないですし。そういうようなところを含めて、意識をしっかり把握するということが必要になってきているのではないかと思います。それが、逆に言えば、どうやって化学物質のリスク管理をやっていくかという施策の方にも当然必要になってくるんだと思います。

【安井委員長】 おっしゃるとおりだなと、私も思っています。化学物質に関する国民の関心が下がっている最大の理由は、新聞に記事が出なくなったからだと思います。ダイオキシンとか環境ホルモンというキーワードが、ほぼ消えたからですよね。それで、一方で、それではリスクが本当にないのかという話になってくると、相変わらず、それでも何となく人工的な化学物質にかかわりがありそうなものは避けるという、そういう行動パターンはまだあるとは思いますね。それと同時に、先ほどおっしゃっていた財産価値と化学物質というのは結構厳しくやられていて、そのプラスチックの中間処理施設ですね、廃プラの、そういう施設って、なかなかできないですよね。あれがなぜできないか、よくよく考えると、やはり隣にできると資産価値がばっちり落ちるからなんですね。それが非常に大きくてできないですよね。だから、明らかに、この戦略の3年間で、リスクという言葉はかなり様変わりした感じがします。

【中杉委員】 もう一つは、その裏で、やはり行政といいますか、管理する側に、国民はゆだねているわけです。安心し切っているわけです。だから、それを受けた方は、ちゃんとそれを管理していかなければいけない。そこはしっかりしなければいけない。そこのところで非常に重要な課題が、先ほど申し上げたようなところの話が出てくるんだというふうに思っていますけれども。

【安井委員長】 ということで、よろしゅうございますか。これで、一応、1から4というか、四つの分野に関しまして、それぞれのご説明をいただきましたが、並べてみると、先ほど鈴木先生がおっしゃったように、例えば水はこっちに入っているとか、そんなバランス、いかがですか。そのあたりがよろしければ、次の議題に入りたいと思いますけれども。粒子状物質とか、そういうのは、安心・安全に入っていて、VOCは、それに関係するにもかかわらず、前の方に入っていると、そういう仕分けでいいのかどうかです。それは、それでいいですかね。

【中杉委員】 すっきり分けられないでしょうね。

【安井委員長】 くっきり切れないでしょうね。

【藤田委員】 同じだと思いますね。特に、循環型社会は、低炭素社会とかなりリンクし始めているので、これも例えばどちらで取り上げてもいいしというふうな感じで仕分けしています。

【安井委員長】 多分、後の議題にもなるかもしれませんけれども、おっしゃるとおりで、適応策と生態系なんて、本当にもろですからね。
 さて、よろしゅうございますか。

【鈴木委員】 環境試料の課題は、最初に設定したんでしたっけ。環境試料の保存方法の検討だから、課題にするまでもなかったのではないかと思いますが。

【安井委員長】 これは、やはり母乳なんかの話ですよね。今、多分、子どもの成長段階の話とも絡むんだと思うんですけれども、現状で、我々が気がついていないものがあるかどうかみたいなことですね。

【中杉委員】 一応形がつくれましたので。

【鈴木委員】 保存方法の技術的検討ですよね。保存の手法なんて確認しているわけですよ。

【安井委員長】 今のところ、低温保存しかやってないですよね。

【鈴木委員】 しかも、研究も二つしかないでしょう。もっと整理を。

【安井委員長】 そうですけれど、今回は総括フォローアップですから、過去、項目に上がったものはフォローアップをして、こういう結果ということだと思います。
 それでは、まだ実をいうと全部終わっておりませんで、残った部分の説明をお願いします。

【坂井主査】 では、分野横断的なところにつきまして、3章、4章でございますが、ご説明いたします。29ページでございます。たくさんございますので、特にポイントとなる項目について、ご説明いたします。
 (1)総合的・統合的アプローチの確保ということで、推進戦略では、領域横断的な環境をトータルシステムとしてとらえる研究、複数の問題に同時に対応するような研究、あるいは社会システム研究、経済研究、といった総合的・統合的アプローチの確保が非常に求められているところであります。これを踏まえまして、環境省では、競争的資金において、総合的・統合的な研究開発を推奨し、採択しております。例えば、脱温暖化社会の構築に向けたシナリオと対応方策の研究などが実施されまして、成果が政府の政策検討に反映されているものもございます。このほか、環境汚染対策と温暖化対策を一体的に実施するコベネアプローチであるとか、地域における資源循環システムの経済研究等も実施されております。これまでもお話がありましたように、例えば温暖化の緩和策と適応策の具体化ですとか、より効果的な環境対策の推進に当たって複数の問題を一体的にとらえて、その解決を図る研究開発が非常に求められているところでございますので、今後も、これについては充実が望まれるところと考えております。
 次の(2)国際的取り組みの戦略的展開でございますが、例えば、特筆すべきところとしましては、GOSATに係る国際共同研究協定が結ばれております。また、IPCC第4次報告書への貢献もなされてきました。また、越境汚染対策についても研究協力が推進されているところでございます。今後も引き続き、こういった持続可能社会の構築に向けた国際的枠組みづくりに資するように、国際機関とも連携して、我が国がリーダーシップを発揮できるような研究を推進していくべきとさせていただいております。
 (3)の国内の地域における研究開発の推進でございますが、地域の研究所が主体となるような研究開発の推進といった取組をしてまいりましたし、以前から継続してでございますが、環境測定分析、統一精度管理調査が実施されております。地方環境研究所は、以前から指摘されていることではありますが、培ってきた分析技術やノウハウにおいて、我が国の環境行政にとって非常に貴重な財産となっておりますけれども、昨今の厳しい財政状況などを背景として、後継者育成不足、環境モニタリングの民間委託の増加など、課題が非常に山積しております。今後とも、地方環境研究所の役割を一層明確化することが必要となっているところでございます。
 30ページ(4)の、国の研究資金制度の活用・強化でございます。環境省では、競争的資金におきまして、推進戦略の重要課題ですとか、科学技術基本計画で掲げられた戦略重点科学技術等を踏まえて研究開発を推進しております。ただし、それがすべてではございませんで、今後とも、あらかじめ研究課題を指定して公募するトップダウン型公募などの仕組みを一層活用し、環境政策ニーズに沿った重点化を行うなど、質の高い研究・開発を一層推進していくための制度の整備といったものが肝要となっております。
 次ですが、(5)の2)継続的モニタリングの戦略的推進を上げさせていただきます。温暖化分野におきまして、地球観測の連携促進が図られております。また、国内の大気・水環境のモニタリング体制については、都道府県等の業務につきまして、的確化・効率化の推進が図られてきたところでございます。ただし、先ほども申しましたように自治体の財政難等の課題は引き続きございまして、抜本的な検討が必要ではないかというご指摘もいただいているところでございます。
 次の知的研究基盤の強化につきましては、国環研におきまして、遡及的観点の環境モニタリングの実施ですとか、絶滅危惧種の保存を目的としたタイムカプセル化事業などが行われているところでございます。
 次の31ページ、環境情報の効果的な活用・普及の促進につきましては、環境省ホームページ、また国環研ホームページの「環境研究技術ポータルサイト」の拡充などが行われております。
 次の(6)の研究開発評価の充実・強化につきましては、国全体の評価に関する大綱的指針を受けまして、環境省においても追跡評価を実施する体制の整備を行ってまいりました。また、評価を次の段階の研究開発に活用するということも実施されつつありまして、今後とも適切な評価が必要となっております。
 主立ったところは、以上でございます。

【安井委員長】 こういうまとめになっておりますけれども、いかがでございましょうか。

【山口委員】 全般的には、むしろ国環研さんの実施状況を中心に書かれているということで、これでいいと思うんですけれども、書き振り的に、ちょっと違和感を感じるのは、(2)国際的取り組みの戦略的展開。それと(7)の先端技術の積極的活用。この書き振りが、他のものと、かなり違和感を感じる。ほかのものは、ほとんど環境省の競争的資金とか、要するに環境省が主体の書き振りになっているんですね。ただ、例えば(2)については、出だしが、どちらかというと文科省とかIPCCの話になってしまっているのでね。ちょっと、ここはもうちょっと環境省さんとして、主語を環境省はとか、何かそういう書き振りにされた方がよろしいのではないですかね。ほかのところは、大体、こうやってみると、例えば(1)ですと、環境省の競争的資金とか、ずっとなっているんですけれど、主語が違うのは、(2)と(7)が、主語が違うんですよね。それは、別に他の省庁と連携してやっているということを書いても、全然おかしくないわけですね。例えば具体的には、(5)の2)は、環境省と気象庁とやったということを書いたわけです。ということなので、書き振りでございますけれども、もうちょっと環境省はアピールした方がいいのではないかと。

【秦室長】 入れさせていただきます。

【西岡委員】 今のお話、非常にある面では重要だと思いますのは、もう環境省だけではやっていけないところがいっぱい出てきている。それが、ちゃんと、そういう方向に行っているということを明解に書いた方がいいと思うんですね。僕も知っている中でも、今、文科省の方の共生プロジェクト、要するに地球シミュレータを使ったデータを、どう、今適応策に使っていくかということで、今、研究会が開かれているとか、これも去年の話に、その突端が書いてありますけれども、そういうような広がりをぜひ書いていた方がいいとは思いますね。

【鈴木委員】 これ、今後の問題にもなるかもしれないんですけれども、やはり、昨年も申し上げたような気がするけれども、環境省が国全体の環境研究の、やはり司令塔になるというような形が、本来とらなければいけないでしょう。そういう意味では、ちょっと、総合科学技術会議の環境PTなんかも、もうちょっと環境省で何をという、大いに打ち出したらいいと思うんですよね。

【西岡委員】 ちょっと、そういう意味で、例えば今、ここで我々が議論するのは、中央環境審議会に関連することだけみたいですけれども、ねらいとしては、次の「科学技術基本計画」ですよね。その前の期と比べると、明らかにもう、昔は環境・ライフサイエンス・ナノテク・、、なんていうのがありましたよね。しかし、もう、環境という言葉が、それを全部包括するぐらいのものになっているのだったら、やはり、単に横断的事項の実施状況についても余り小さいところに閉じこもらない書き方で書いておく必要がある。あるいは次の作業として、そういうことをなさるのか。ちょっとそれはまた後で。

【安井委員長】 今のお話、結構重要というか、まさに重要で、ここで今後も充実が望まれると書いたのが、どのぐらい意味があるかというところでもあるんですけれども、そういうことであるのならば、例えば、いきなり総合的・統合的アプローチもそうだけれども、もう少し小さなところで、今、四つに分けた分野間のブリッジング研究とか、カップリング研究とか、要するに2個ぐらいの分野にまたがった研究を進めるとか、そういうことを、やはり書かなければ本当はいけないのかもしれない。いきなり総合・統合に行く前にやることはあるだろうみたいなこともあるような気がします。

【岡田委員】 この報告書の今の部分は、参考資料6の、多分7ページぐらいからに対応するように書かれているのではないかと、そういう筋のものだと思うんですが、よく見ると、必ずしも一致してないところとか、書いてあるのに書きたくない、書きにくいところもあるかもしれないが、やはり、やっていないことはやっていないと書いた方がいいのではないでしょうか。実施方針に対して、ではどこまでやったかというのは、大体合っていると思いますけれども、非常に細かいことを言って恐縮ですが、14ページに(9)成果目標を設定すると書いてありますが、実際にはされていませんよね。というところで、これ、イグザンプルですから、もう少し、これは書く必要はないことなのかどうか、ちょっとわからないけれども、その辺の意識を確認したいということです。

【坂井主査】 実施方針の、今ご指摘いただきました「・」で書いてある具体的目標については、申し上げそびれましたが、それぞれの実施状況を調査し、参考資料4にまとめてございます。

【岡田委員】 そう、失礼しました。

【坂井主査】 ただ、ご指摘の通り、実施したことについて箇条書きしているため、実施していないことがきちんと整理されていないところがあるかもしれません。

【岡田委員】 やっていないことは、必要がないからやらなかったのは、それはそれで、途中で情勢が変わったんだったら、それはそれでいいと思うけれども、必要であるけれどもやらなかった、それはお金がないからやらなかったのか、人がいなかったとか、これ書いておいた方が、次の戦略に生きると思うんですよね。

【鈴木委員】 大事なことは、それでいいんでしょうけれども、実施方針が未熟だったということもあるわけだから。

【岡田委員】 おっしゃるとおりです。

【安井委員長】 大体、まさにオーバーオールな感想であれですけれども、これ、もう少し保つかなと思ったら、意外ともたなかったというのが実際のところですよね。世の中の進歩って読めないねと、結局。そういう感じで、まさにおっしゃるとおり未熟なんです、多分。

【鈴木委員】 常に未熟ですよ、そういう意味ではね。次の、やはり方針の方が重要なのかな。

【安井委員長】 そうですね、ではそちらに。「まとめ」を簡単に。

【坂井主査】 今、やっていないところの記載についてもしっかりすべきとご指摘いただいたところでございますが、ワーキンググループでのご議論を踏まえて、こちらで、ここが足りなかったのではないかというところを考察して書かせていただいております。33ページでございますが、個別の課題について見ますと、概ね着実に実施されてきたと言えるのではないかと考えておりますが、実施状況が不十分であったと評価された項目もございます。それについて考察いたしますと、まず、各課題を着実に実施していく体制の不足があるのではないかというふうに記載をしております。特に、研究開発を実施できる経費の中でも大きな割合を占める競争的資金においては、政策ニーズを踏まえて採択をしてはおりますが、この課題の推進を必ずしも直接的に求めているのではなくて、関連する研究が研究者から応募されれば、それを採択するというようなところが大きかったことも否めないのではないかというふうに記載をさせていただいております。今後は、各競争的資金の中で、トップダウン型公募という仕組みが既にございますので、そういったものを一層活用しまして、政策ニーズに沿った重点化を行うことと同時に、政策担当者と研究者コミュニティとのコミュニケーションを十分に行うことが必要というふうに記載をしております。また、お話もありました通り、限られた予算の中にあって、投資対象が分散されてしまった面も否めないかと考えております。このため、環境省としては、総合科学技術会議や関係府省と十分に連携をしまして、政策への反映等の出口を明確にしつつ、連携のあり方と、その中で環境省として注力すべき課題を明確にして、資源を重点的に投資することが重要というふうに記載をさせていただいております。
 次の(3)につきましては、この3年間、環境に係る社会的状況が非常に変化しており、それに対応していくべきであるということを記載させていただいております。
 また(4)は、少し趣向が異なりますけれども、予算要求の時期ということもございまして、直近、来年度にどういったことを重点的に実施していくべきかということで、各領域ご指摘いただいたものについてこちらでピックアップし、記載しております。
 まとめについて、以上でございます。

【安井委員長】 ありがとうございました。
 ここのまとめに関しましては、恐らく、ここで議論するよりは、本当言うとあれですね。これはデッドラインは大体いつまでですか。

【坂井主査】 来月中にまとめていければと思います。

【安井委員長】 8月中にまとめたい。このあたり、書き振りをどうしたいかというのは、多分、実をいうと議論するときりがないかもしれないですね。

【鈴木委員】 次の新戦略につなぐものにしなければいけないでしょうから、本来は、提言的なものは、ここに頭出しをしていておいた方がいいのではないですか。

【安井委員長】 という気がするんですよね。次の議題で議論していただくのは枠組みだけですから、検討の枠組みだけで、その内容に関しては一応ワーキンググループをつくってやるという、そこまでなんですけれども。

【鈴木委員】 また同じワーキンググループをやったら、同じものしか出てこないのではないかな。

【安井委員長】 そこをどうやってやるかですよね。そのときに、このまとめを見ながらやれというようなものが、本当はないと方向性は決まらない。

【鈴木委員】 ですから、さっきの反省事項も含めて、どこかにまとめておいたらどうなんでしょうね。例えば、地方の支援なんていうのは、やはり十分ではないですよね。これから地環研であったり、地方自治体をどういうふうにサポートしていくかというのは非常に大きな問題になってくるんだけれども、その辺は、この研究の、研究技術開発の範囲内で、どういうふうに支援していくのか。それから突如始まった環境と経済の公募研究がありますね。この議論とは全く独立に動いてしまっているんですが、やはりどこかで整理しなければいけないでしょう。

【中杉委員】 地方の研究所の話は、地方環境研究所の支援の話は、昨年度、ある県の研究機関、環境も含めて全部の評価をさせられたんだけれども、ちょっとやそっとではという状況ですね。もうほとんど壊滅状態なので、今度は研究の支援のレベルで終わる、解決できる問題では決してないんだろうと思うんですね。もう少し大きな枠組みで考えて、その中でこれがどういう役割を持つかというような形で見ていかないと、その県では、結局は研究者といいながら一般職で採用した人間が、たまたま研究所にいるだけという形で動いているんですけれども、それをまず変えなければ駄目だと言ったんですけれども。

【鈴木委員】 このワーキンググループは四つ並ぶにしても、本当に横串の、国際、それから総合化、地域、その辺はやはりもっと重みを増して、例えば国際であれば、温暖化においては国際的な環境の中でどのような戦略を立てていくのかというように、国際の方を、むしろ軸に考えるぐらいのことがあってもいいのではないですか。

【安井委員長】 それは、次の議題ですか。

【鈴木委員】 要するに、それを頭出しにしておかれたらどうですか、提言として。

【中杉委員】 安全と安心のところですが、化学物質のデータベースの拡充というのは、これは、先ほどまで安井先生と別なところで議論していた話なんだけれども、もういいんじゃないかなというのがあります。それから、その前にある化学物質の監視体制の構築というのは、全くなくて新しくつくるという話では決してないでしょう。

【安井委員長】 そうですね。少なくとも、前の方にもご意見あるかもしれませんが、このまとめに関しては、ちょっと、やはりもう一遍、何らかの段階でご意見伺って、少しまとめた方がいいかなと思うんですが、それに関しては、次の資料の3を先に議論させていたただいて、それで、それからちょっと戻らせていただきたいと思います。
 資料の3で、これ議題の2でございますが、(新)と括弧がついていますが、それの推進戦略の検討の方向性というよりも、これはフレームワークですね。お願いします。

【坂井主査】 資料3に基づきまして、ご説明をいたします。
 お話にございましたように、現行の推進戦略については当初5年計画で動いておりましたけれども、非常に社会的状況の変化が大きかったということ、それから科学技術基本計画の対象期間が来年度までとなっておりまして、今年の秋にも、その見直しに係る議論が開始されるというふうに聞いております。そこへのインプットもできるように、前倒しで新戦略を策定いただきたいということで、昨年度のこの会にてご了承いただいております。その方向性については以下の通り考えておりますが、先ほどの総括フォローアップも踏まえてご議論いただければと考えております。
 1.の基本的な考え方でございますが、まず、新戦略については、現行の戦略と同じく、環境の保全に関する基本政策を担う環境省が中心となりまして、関係府省や関係機関と連携して推進するということを前提としたいと考えております。ただし、特に脱温暖化領域等において各省にて研究開発が本格的に実施されている中で、環境省として限られた予算・資源を有効に活用して環境保全の効果を上げていくという必要もございますので、環境省として、どういうところに注力すべきか、関係主体とどういうふうに連携すべきか、そういったところについても、全体的な俯瞰的なものを示した上で位置づけの明確化を図れればというふうに考えております。
 関連しまして、現行の戦略では、重要課題が51項、さらに絞った重点投資課題でも20項ございましたけれども課題に重複感があったり、数が多かったり、ということがありました。そこで、次の戦略では、本当に国として重点的に投資すべきものを整理して、さらなる重点化を行っていく必要があろうと考えております。また、各課題の相互の関係や、総合的・統合的アプローチが必要な課題、あるいは、それによってどういう効果が期待されるのか、そういったことについても明示を図っていくことで、何を推進すべきかが明らかになるかと思われます。
 最後に、戦略と政策ニーズの整合性及び、戦略を着実に推進する体制の一層の確保を図るということで、新しい戦略を、当省の競争的資金において重点的に採択していくべき事項を示す方針として位置づけることにより、この新しい戦略の体制、実施体制の強化を図っていきたいと考えております。
 戦略の検討体制、2.でございますが、この委員会において議論いただきたいと考えております。また、具体的な重要課題を検討いただくために、この委員会を補佐するワーキンググループを下のような構成で設置したいと考えております。ここでは、まず、現行の戦略と同じ4領域それぞれを議論していただくワーキンググループと、全体の横断的事項に関するワーキングと、計五つのワーキングというふうに考えております。また、それぞれのワーキングには、競争的資金の企画委員会からもご参画をいただき、競争的資金を持っております各課室からも参画することによりまして、戦略と政策ニーズとの整合性を一層確保して、戦略推進のエンジンとして競争的資金を活用するというふうにしていきたいと考えております。また、戦略を策定した後のフォローアップについても同じような体制で行うことによって、より効果的、効率的にフォローアップを行い、さらに、そのフォローアップ内容を競争的資金の公募・採択にも反映させることによって、戦略を着実に推進していきたいというふうに考えております。
 現行でのスケジュールの目安を、裏面に示してございます。本日、現行の戦略の総括フォローアップをいただき、次期戦略の方向性についてご議論いただいております。次回の委員会、9月をめどに考えておりますけれども、こちらでフレームワークを固めていただいて、また内容の方向性についてもご議論いただきたいと考えております。これを踏まえて、10月から1月くらいにかけて領域別のワーキンググループで重要な課題を検討していただくことになります。そして、2月をめどに、それをレビューして合体させまして、この専門委員会での報告書として取りまとめをいただければと考えております。そして3月ごろに、この上の総政部会にて答申として取りまとめをいただければと考えております。ただし、このスケジュールは、目安として考えていただきまして、審議の状況あるいは社会的状況によって、多少柔軟にお考えいただければと思います。
 以上でございます。

【安井委員長】 ありがとうございました。
 というご提案をいただいておりますが、総合科学技術会議側がどういう議論を始めるかはまだよくわかってないんですけれども、雰囲気的には、少なくとも今期の各領域の反省としては、ちょっと縦割り過ぎたということなんですよね。ですからそこを、先ほどの鈴木先生のお話ではないですけれども、横串的なとらえ方で何かやりたいなと、こういう話が強くなってくるに違いないというふうに思うんですよ。そうなってくると、この五つのワーキンググループをどうやって縦と横に検討するかというのはすごくテクニカルに難しい話です。多分同じ困難を総合科学技術会議は経験することになると思うんですが、その横をどうやって検討するかというのは、一つの大きな課題になると思いますね。ですから、とりあえず、こういうフォーメーションにしておいてもいいんですが、ちょっと横を重要視したシナリオを書く方法論というものがない。大体あるのかないのか。一方で、寄ってたかって全員でやると、これまたちょっと人間的に時間が足りないという話になってしまうので。

【鈴木委員】 総合科学技術会議では、重点分野に関して横串なんて難しいのではないでしょうか。環境であれ、ものづくりであれ、今の形は残るのではないですか。

【安井委員長】 残るかもしれませんが、多分。

【鈴木委員】 中の組みかえぐらいでしょう、あるとすると。だけど、そういう意味での専門家がいないから。

【安井委員長】 確かにそうなんですが、壁が相当厚いのは、壁はとにかく取っ払うみたいな感じになるのではないかな。だからといってしかし何ができるかというのはなかなか難しいですけどね。

【鈴木委員】 要するに、単にいろいろなものが環境になだれ込んで、環境が大きくなる。

【安井委員長】 それは、それでもいいのではないですか。

【鈴木委員】 ここで、この図で見ると、横断的事項に関するワーキンググループの受け皿はどこかにあるんですか。左側は、みんな下に研究資金がついていますけれど、お金はなしでやるということは難しいのではないですか。

【坂井主査】 横断的事項のところでご検討いただいたものをベースに、各領域で、そのような方法で進めていくことになります。

【鈴木委員】 これをみんなに分配するわけですか。

【坂井主査】 はい。

【鈴木委員】 それで横断になりますかね。それぞれのところでの横断という意味。

【安井委員長】 それぞれのところというか、二つジョイントとか、三つジョイントとか。

【鈴木委員】 国際といっても広いから、例えばアジアに絞ると。そうすると、温暖化に関してもアジア、循環型でもアジア、自然共生もそうでいろいろあります。これは総括的に見ることも必要なのではないですか?それぞれの分野に関する地方の問題も同様でしょう。環境教育というのは、一応横断に書いてはいるけれど、これは実質的にはどのようなことを考えているのですか。活動は?

【森本委員】 ゼロではありません、予算が数千万。

【鈴木委員】 数千万、それはどこについているのですか。

【森本委員】 環境人材育成団体です。

【鈴木委員】 いやいや、このマップで見ると、横断っていうのはあるのですか。

【坂井主査】 このマップの中では、ございません。

【鈴木委員】 ESD、持続可能な開発のための教育、みたいなものを、ちゃんとやってくれればいいんだけれども。

【安井委員長】 それのお金は、今、環境人材コンソーシアムというのをつくって、そこに若干の予算がついているぐらいですね。

【鈴木委員】 いっぱい集めて何しようという感じでしょう。

【安井委員長】 なかなか、何をやったらいいか難しいと。

【鈴木委員】 本当に、でも、どこかで整理しなければいけないと思うんですよね、環境教育とESDとを。

【中杉委員】 人のライフスタイルというのが主になったときに、これは、どこか切り離せる話ではなくて、例えば、特に地球温暖化とごみというのは、ものすごく絡んでいるかなと思っているのは、横浜市でごみが30%減った。今、まだ減り続けているという。どうしてなのかというのは、よくわからない。理由はよくわからないんですけれども。市民がどういう意識を持っているのかなと。私の勝手な仮説なんですが、あれは、市民が何か環境にいいことをしなければいけないと、何かやらなければいけないと思っていたところに、いい材料を提供したんだと。というふうに解釈もできないことはないんですよ。それを、多分、地球温暖化も、ごみも関係ないんです、環境問題ですよ。そういう意味では、安全・安心ということがライフスタイルとものすごく絡んでくる話なので、それで取り出しても、いろいろな意味合いで、別枠でやってもいいような感じが私はしないでもないんですね。環境問題として、どう考えるのか。それぞれ、一人一人が、その辺で価値を見出していっている。

【安井委員長】 どうやって検討するのか。

【秦室長】 横浜の場合は、産廃が減ったようです。

【中杉委員】 産廃だけではなくて。

【秦室長】 産廃だけではないんですけれど、産廃が減った分が効いていると。

【中杉委員】 産廃って、事業系一廃でしょう。

【秦室長】 要するに、事業系一廃だと称する産廃ですね。もともと産廃だと、事業所から出てくるプラみたいなものが、結構混じっています。

【中杉委員】 もちろんそうだけれども、家庭の方も3割削減されていますから。

【秦室長】 家庭の方も減ってきています。それはもう、全国的に減ってきていますね。

【藤田委員】 全国的というのは、大阪市もそうですね。

【秦室長】 明らかに、がたんと減りましたね。

【中杉委員】 大阪は、横浜以上に、もともとが大きいから。

【岡田委員】 いいですか。戦略と政策ニーズの整合性というのは随分書かれているんですが、まず最初に、資料2のまとめのところで、(2)のところですね。環境ニーズに沿った重点化を行うことが必要だと書いてありますが、この事実認識は多分正しいと思うんですが、根拠はあるんですか。何となく、そう言われているというか。

【坂井主査】 この(2)は、現行の戦略について取り組みが不十分であった課題が幾つかあったことについて考察をしたものでございます。

【岡田委員】 そうですか。では、一応、これは事実認定は正しい。

【坂井主査】 はい。

【岡田委員】 そうすると、その結果として、政策担当者と研究者コミュニティの十分なコミュニケーションが重要であると、この通りだと思うんですね。そういう事実認識に対して、資料3のところは、各領域のワーキンググループの該当する競争的資金の企画委員会から参加してもらうというが、これで済むんですか。何でこんなことを言うかというと、実は、これに近いことを始めたんですよ、鈴木先生の命令でというか、全然違う学会ベースの命令でね。要するに、水環境学会と環境科学会が、水環境課と、政策課題がどうで、学会に属する水系の若い研究者だったらどんなことができますかという会議を、今まで二、三回やったんですけれどね、結構大変なんですよ。大変だというのがわかって、まだうまくいくかどうかもわかりません。そういう段階において、この各ワーキンググループというか、要するに採択している人と担当者を加えたくらいで、本当にうまくいくんだろうか。

【中杉委員】 企画委員会と環境省内の担当部局を。

【岡田委員】 もう少し、学会ベースとかね、そういう使い方もあるのかなと。

【鈴木委員】 ここの関連で、ちょっと申し上げようと思うのですが、やはり、ここでできた戦略あるいは政策目標みたいなもの、何を解決するべきかというもの、これを、研究者集団など、外へ対して発信しないといけない。一つは公募のときにも行政ニーズというと余り言葉はよくないんですが、一体何をやらなければいけないのかが伝わるようにする。もう一つは、さっきの総合科学技術会議なんかの環境PTなどを通じて、今、環境はこうなんだということを、具体的に、発信していくことが必要なんですね、外に対して。それがなくて、たまたま作られた推進戦略がここにあって、一方において、後で研究者の関心事レベルで公募されたものとすり合わせてみたら、どこがうまくいっているなんてやっているのが現状ですね。むなしい思いはありませんか。

【藤田委員】 確かにウエートづけも含めて。ただ、地球とか自然とは違うのかもわかりませんけれども、循環型社会なんかを見ますと、時系列でずっと読んでくると、ある分野がどんどん増えて、研究課題としては増えてきているし、大体あるところはほぼ終わったというか出そろったということでしょうね。もちろん、そこから何年か後に、成果としてはきちっと出てきて、多分それが政策にいずれは反映されるという気はしているんですけれどね。私は、ちょっと政策の人間ではないので、研究と政策はイコールではないだろうというふうに思っています。だから、むしろここで先行的にやったのが何かで抽出されるのではないかというふうな感じは持っているんですけれども。

【岡田委員】 私の言っている、結構難しいというのは、環境省の担当者が、これが政策ニーズですと言うところと、研究者が研究としてできるところに、かなり乖離があるわけですね。

【藤田委員】 それはしようがないです。

【岡田委員】 だから、それをちゃんと議論する場がないと、環境省の政策ニーズにきちんとした対応する研究テーマになっていかないと。しかも、その研究テーマの中で、環境省の金でやるべきことと、それは科研費で出しなさいということもありますからね。そうすると、さっきの、ここで議論するのは環境省の金だけではないですよという話だって必然的に出てきてしまうんですね。結構大きな話なんで、この資料を見るとちょこちょこっというように見えるけれども、すごく大がかりなことをやってみて、いろいろなコミュニケーションが本当にうまくいくかどうかというのもちゃんとやらないと、なかなか整合性がとれないのではないかという危険性を感じるんですよ。

【中杉委員】 政策ニーズといったときに、研究とタイムスパンがどう合うかという話なんですよ。担当部局だと、現実に今の問題ですよね。今抱えている問題ですよね。私も、いろいろなところ伺っているけれども、やはり、その部分部分だけやっているだけでは駄目だという話が幾らでもあるわけです。そういうものを踏まえた形での議論が本当にできないといけなくて、以前、国環研で、研究者と、それから行政、特に水を多くやったかな、環境省の人間とで、意見交換をするといって、毎年毎年やったんですよ。でも、ほとんど成果が上がっていない。お互いに言っているだけで。

【鈴木委員】 それは、かみ合った議論をしないからですよ。行政の方だって、議論を通じて研究者のカルチャーを理解して、こういうことを達成するためにはどういう形で研究者に手渡すかということを学習しなくてはいけない。そういう場が、今までなかったんですよね。それでお互いに不満を言い合っているということが起きて、相手のせいにしているという感じでしょう。それは、いつまでやっても、本当に不毛ですよね。

【西岡委員】 私は、もっと環境というのが、この数年の間に、ものすごく大きなものになってきているということをまず認識しなければいけないと思う。社会全体の大きな方向づけを押さえるべきである。何が言いたいかというと、この脱温暖化の問題は、環境省の原課といいますか、担当だけでやっていると、いわゆる行政ニーズ、環境省の観点からの狭いニーズだけになってしまう恐れが非常にある。これはもう学界の人がいいかどうかはわからないんだけれども、もっとほかの省庁の話もいっぱい出てきていている。例えば、適応策なんて環境省というより、今、現場がやる時代になっていて、国交省の問題、農水省の問題になっているんですよね。そこのところをまず押さえて、そしてそれはそれでいいじゃないかと、何も少ない金で環境省でやることはないんですから。でもその、いわゆる本丸の設計は、やはりこれは環境の話を他の方も言っているからには、私たち環境に取り組んできたものが中心になってやるべきだ。そういう人たちはそれだけの力を持たなければいけない。実際そうではなってないかもしれないけれども。中核の展望と、実施をうまいこと仕分けしてもいいのではないかと思うんですね。
 例えば、横断的に、地域の話というのがいつも出てきますが、岡田さんにもお伺いしたいのですが、地域の大学と地方行政の人が、もっともっと一緒になってやってもらいたい。しかし現実には、地方の行政の方々が、僕のところに来ては何かやってくださいと来る、遠くの方の人が言うけれども、そのようなことは地元の大学の先生方に頼んでくださいといつも言う。地元の先生方が足もとの実際の問題に取り組むことから逃げまくっているみたいですね。もちろんちゃんとやってくださっているところもあるんですけれどね。

【岡田委員】 国環研の信用度が高いからです。

【西岡委員】 言いたいことは、それだったら、そういうことを文科省に強く言うために総合科学技術会議の計画の中には、こちらの要望として入れていくとか、そういう仕分けをして、本当に自分たちがやらなければいけない本丸をもう一度見直す。今、ものすごく環境の分野が膨れ上がっていますから、そんなの、この環境省の安い予算と環境研の少ない人手の中でやっても、もたない。だから、僕はまず、始めから環境省の枠で論じるのではなく、もう少しほかの省庁にもまたがる、ここにいらっしゃる方以外の方も含めて、何か一度大きくもんでもらって、そして自分たちのやるところを同定した方がいいのではないかなという気がする。今の段階で、今やらないと遅い。

【鈴木委員】 どこかに、ともかく国としてのステアリンググループが必要なんですよ。それが、総科側が、それを果たせればよかったんですけれど。残念ながらね。

【山口委員】 私も、以前も総合科学技術会議のPTやりましたけれども、本来、今議論されていることというのは、内閣府が主体となって、総合科学技術会議で科学技術のあり方をきっちりと国家戦略として打ち出して、その中で、私はこの場というのは、やはり環境省、その中で環境省としてできることは何かということに絞らないと。それは、おっしゃることは十分わかりますけれども、限界がありますよね。人・物・金の限界もあるわけですから、やはりここは、ここでいう政策ニーズというのは、やはり、環境省の政策ニーズというふうに言わざるを得ないのではないですかね。戦略については総合科学技術会議が国家的な戦略を出すと。

【鈴木委員】 総科が、それだけの信頼感をみんなから集められるようになればよかった。それが、どうしてなんだろうと思うんですね。要するに、総科にお金がないでしょう。

【山口委員】 お金を握ってないから駄目なんですかね。

【鈴木委員】 SABCだけなんですよね。そこが問題なんですよね。だから、制度設計をもう少しキッチリやり直す必要がある。

【山口委員】 そうなんですよね。金を握ってないからしようがないんですよね。ここは、環境省としてできることと。

【安井委員長】 ただ、その政策ニーズもいいんですが、各研究資金が、なんていう政策ニーズでは、もう多分もたないと私は思うわけです。だから、先ほどの鈴木先生の話ではありませんが、個別の、廃棄物系なら廃棄物系しかやらないのではなくて、二つ複合的なターゲットを持たない限り採択しないぐらいのことを言ったっていいのではないかと。

【藤田委員】 廃棄物の方でいきますと、確かに、例えば低炭素とか安全・安心も含めて入ってくるんですけれども、これは科研費ですねとかという、そういう議論はやはりするんですよね。

【山口委員】 ですからむしろ、環境省さんの器の中でやらざるを得ないと思うんですよね。例えば技術だと、NEDOとか経産省とか文科省の予算から比べると、局長には申しわけないですけれども、これはもう、そういう構造なんですから仕方ないわけですね。ですから、そういうところと競争して技術のイノベーションを起こそうというのは、ある程度限界はある。すると、環境省としてできることというのが、需要を起こすにはどうやればいいのか、社会システムとしてはどういうことをやればいいのかとか、そういう、余りお金はかからないけれども、頭が大事な、ここにはそういう先生方がいっぱいいらっしゃるわけだから、頭を使ってうまくできるような需要側の技術、社会システムのあり方とか技術、それに特化した方が、やはり成果も出てくるような気がしますけれどね。私は、フリーの立場なので言いますと。

【安井委員長】 いずれにしても、資料3に関しては、どうも、やはり決まらないという感じですね。私の個人的な提案としては、横断的事項に関するワーキンググループとほかの四つが並列、というのはないのではないかという観点。横断的事項を上に持ってきたいという感じなんですが、それができるかできないか。それを具体的にどうやるかと問われると、これまたすごく難しい。とにかく縦割りというのは、行政の縦割りって合理的なんですよ、ある意味では。デマケをやるというのは非常に合理的なんです。

【秦室長】 正直申し上げまして、ちょっとここは、そう簡単に決まる体制ではないなというのは、実は会議の前から思っていまして。

【安井委員長】 ですから、ワーキンググループと称して、また再びこういうグループで、これがとにかく横断的な事項をやるグループであると、そういうのを決めて、残りの四つをどうやってつくるかという議論だけで一遍やるべきではないか、そんな気もしますね。少なくとも、今のこの構造でやってしまうと、全く同じ構造のものができる。要するに検討の方式が過去と同じだと、多分同じものができる。それだと、多分、総合科学技術会議あたりへのインプットも大して変わらないということになりかねないなという気がする。それが、気がするだけでありまして、本当かどうかわかりませんけれども。
 ちょっとそんなわけで、まとめの文章はとにかくもう一遍見ていただいて、それでインプットしていただき、適当な時期でそれを吸い上げていただいて、お出しいただくと。今日の資料3に関しては、まず最初に横断的ワーキンググループというのを開催して、それから残りの四つへの仕事の分配を、そこが仕切るというやり方かなという気がします。

【鈴木委員】 今までは、この横断的ワーキンググループというのは、だれかちゃんとメンバーはいたのでしょうか。

【安井委員長】 なかったですよ。これを作っただけ進歩しているんですけれど、他のワーキングと並列では同じだろうと。

【鈴木委員】 上でやってしまえばいいわけですね、専門委員会で。

【安井委員長】 そういうことですね。だから、ワーキンググループを専門委員会と呼ばないでワーキンググループと呼んでもいいし、あるいは専門委員会でもいいんですけれど、それを上で、下のワーキンググループに一体何を、まさにタスクとして割り振るかという話を、少しちゃんとデザインしないとだめかなという。
 というわけで、ちょっと今日結論が出ないようでございますが、また少しご相談をさせていただきつつ、このワーキンググループの構成というのは、私は、最後の報告書の構成を決めそうな気がするので、ちょっといささか慎重に、せっかく作業をするなら慎重に取り組みたいと思いますので。

【秦室長】 そういう意味では、検討スケジュールの方も、一応こういう形で予定としては書いておりますけれども、多分、かなり大変な議論が予想されますので、もう少しずれ込むようなことは、十分考えられます。

【白石局長】 打ち合わせがあったときに、年度末にまとめて決めようとするとこぼれるような気がするから、これはもうちょっと柔軟に説明はしてくれというふうに申し上げました。

【安井委員長】 というわけで、ちょっと結論が余りうまく出ておりませんが、少なくとも総括フォローアップに関しましては、ぜひ、特にまとめの部分に関してご意見ございましたら、問い合わせのメールを出していただいて、ご意見を吸い上げていただきたいと思います。
 ということで、また継続的によろしくお願いしたいと思いますということで、まだ何かございますか。

【秦室長】 特段ございません。

【三好審議官】 貴重なご意見、ありがとうございました。まさしく、これからどういうふうに進めていくかという議論を、一度改めて機会を設けてしていただくということが大事かなと思っておりますので、また、そのあたりの進め方につきましても、ご助言をお願いできればと思います。どうもありがとうございました。

【安井委員長】 どうもありがとうございました。