中央環境審議会総合政策部会 環境と経済の好循環専門委員会(第7回)議事要旨

日時

平成16年4月16日(木)10-12時

場所

環境省第1会議室

議題

委員会報告案の審議

要旨

1.委員会報告案について、事務局からの説明の後、意見交換

○浅野 直人委員

  • 資料5(ビジョンの要旨)の冒頭の囲いの中に、「~を目指すことを提案します」とあるが、この書き方では、この報告が具体的なシナリオまで全部提案しているとの誤解を与えてしまう。今回は、ビジョンを提案するのが目的であるので、「~を目指し、ビジョンを提案します」とした方がよいのではないか。
  • 資料5の「4.」に、「次期環境基本計画に具体的な施策が盛り込まれることを期待します」とあるが、このビジョンは最終的に中央環境審議会の答申となり、審議会は次期環境基本計画も検討するのだから、「具体的な検討を進める必要がある」のような記述にすべき。

○環境計画課長

  • 本文は「日本全体でさまざまな動きを活発化させて世界に広げることを期待します」となっており、それに合わせて要旨を修正する。

○崎田 裕子委員

  • このビジョンは、わかりやすい言葉で具体的に書かれているのが良い。このビジョンの実現に向けてどうすればよいか、議論を誘発するような形で社会に提案していただければと思う。

○辰巳 菊子委員

  • 参考資料の中に絵による概要があるが、これも報告に入れ込むとわかりやすいのではないか。

○環境計画課長

  • 資料6の参考資料は、答申の冊子をつくるときに、中に入れようと考えている。

○植田 和弘委員

  • 「2025年には価格に環境価値が組み入れられている」ことは、環境と経済の好循環の1つの基本的な要素であり、2頁のほかビジョンの全体に貫かれている考え方だが、2(1)[2]の「市場が環境配慮に向かうために」の部分にも一言書かれているとよりわかりやすくなるのではないか。
  • Sustainable Development(持続可能な開発)という考え方との関係で、2025年の時点では多くの主体が、例えば100年後の将来のことも考えて何かを決めるようになる、というようなニュアンスを明示的にした方が、ビジョンの意味合いが明確になるのではないか。

○浅野 直人委員

  • 2.(1)について[1]、[2]と一続きで見ていただくと価格に環境価値が組み入れられているという考え方は十分に入っており、さらに[2]のところで繰り返すというのは饒舌だという感じがする。
  • 「持続可能な開発」については、現行の環境基本計画は「持続可能な社会」を目標としており、それに環境と経済の好循環という考えを入れていけば、植田委員が指摘されていることはよりはっきりするのではないか。もし入れるとすれば、頭書きの部分に書き加えるぐらいだろう。

○天野 明弘委員

  • 価格に環境の価値が反映されるという表現は、経済学者にとっては非常にはわかりやすいが、一般の人にはそうとは限らない。ここでは、「こういうことが行われると、結果として価格に環境の価値が反映され、そういう市場ができ上がる」ということを考えてつくられたと理解。
  • 「持続可能性」と「発展」を両方一緒にやるこいうことを、ここでは好循環としてとらえ、積極的に進めていこうというビジョンである。全体の中に一貫として持続可能な開発の考え方が流れているのではないか。

○崎田 裕子委員

  • 1.(1)に、「持続可能な社会の実現に向かおうとするとき」とあり、それを前提として議論が進んでいると読んでもらえるとありがたい。

○安原 正委員長

  • 植田委員のご了承の上、他にご発言がなければ、この案のとおり委員会報告を決定させていだだく。

2.各委員より、今後のビジョンの活かし方等について意見発表

○和気 洋子委員

  • パブリックコメントで提出された意見の少なさが気になる。社会のレスポンスをどうとらえるかが行政の重要な感性だと思うので、それを踏まえながら施策も含めて検討すべき。
  • 「世代をつなぐ」のがビジョンを活かすためのキーワード。当事者意識を高めるため、このビジョンを25歳以下の若い人たちに読んでもらい、2025年に自分がどんな姿になっているのか具体的に提案してもらう、というような活かし方があり得る。例えば、ビジョンには2004年に14歳の人が登場しており、今の14歳に当事者の生の声を聞くというのもあるのではないか。

○山本 加津子委員

  • 情報というのは、量を出せば解決するというふうに思われがちだが、市場原理と非常によく似ていて、例えば新聞でも、隅から隅まで読む人は非常に少なく、関心領域だけを読む人がほとんど。2025年に環境の価値が80%の方の心の中に染みわたるよう情報を出していくことは並大抵のことではない。
  • 一方では、例えばここ10年で「スローライフ」という言葉が出てきてあっという間に広まり、女性誌の中では「スローライフ」というだけで生活像がわかるようになった。今は大変な課題だと思っているものも、案外、ちょっとした1つの穴があくことによって、回転していくのではないかと明るい期待をしている。

○安井 至委員

  • 普通の人がこれを読んで、一体何をすればよいのかの具現化がこれからの課題だと思う。
  • 環境省の他の会議で企業の環境パフォーマンスをどうやって測るかという議論をしているが、個人の生活の環境パフォーマンスを評価するようなことも新しい検討課題ではないか。

○深尾 典男委員

  • 自分自身も、ここにいる皆さんもほとんど、環境に強い関心を持っていると思うが、そういう人たちがつくったものをどうやって1億2千万人に広げていくかというスキームをつくっていくことが重要。
  • 2025年という非常に長いスパンを考えてビジョンをつくったが、社会とは連続的に変化していく。不連続な目標を立てたが、連続的に変化していく社会をどのようにしてそちらに向けるかというフィードバックをかける仕組みも重要。
  • 日本で、今、何が優れているのかということを徹底的に分析し、日本の国としての戦略に落とし込んでいくことも重要。そのためにどういう行政組織、あるいは産業、コミュニティ、NGO、NPO、生活者などの関連をつくっていくかという戦略、具体的な実現のための手順が重要なテーマ。このビジョン自体はラフなスケッチを描いただけに過ぎないので、これを具体的な絵に仕上げていくための努力をこの後の審議会や委員会で進めていただきたい。

○辻 晴雄委員

  • 中国は、これまでGDPの伸びだけを見ていたが、エネルギー、環境問題がある中で、今後は、今のGDP成長率9%を2%落としてでも質を重視した成長を考えなければならないという話が政府高官などからも出ている。日本はヨーロッパと違った意味での環境問題で進んでいるところがあり、日本で学んだり、訪れようというような方向に持っていく必要があるのではないか。
  • 資料7の11頁でビジョンをセクター別に整理しているが、それぞれの意識の改革、革新をやらなければならないし、時間軸をおいてアクションプランを組まないと「絵に描いた餅」になってしまう。

○辰巳 菊子委員

  • やさしい言葉で書かれているが、そのやさしい言葉の奥にある意味がすごく重い。環境の価値の問題などは、普通の人に読んでもらってわかってもらえるかとなると、難しいところもあるのではないか。書き直すという意味ではなく、きちっとわかるように伝えなければいけない。
  • 事業者が、社会的責任として環境経営や環境配慮型設計をして情報を開示し、消費者はその情報をきちっと受け取り、選択の基準とするという循環が起こることが望ましいが、情報の伝わり方が難しい。これをうまく循環させるためには「つなぐ」ことが重要で、それは行政、地域の人、NGOの人などが担う。これらの人たちが、自分たちが価値のある大事な役割を担っていると思えるような施策をとっていただければと思う。
  • また、生活者が情報を吸収する力を育てる必要がある。環境教育はもちろん、五感でつかむことも大事である。
  • 好循環社会をつくる基盤として消費者を一番に取り上げていることは、とても画期的なことだと思う。

○園田 信雄委員

  • 私どもは環境報告書をつくるとき、必ず日本語と英語と、これからは中国語は要るだろうと考えている。このビジョンも、英語版や中国語版をつくってパブリック・コメントをいただくこともあり得るのではないか。

○関 正雄委員

  • 具体的なイメージが目に見える形でわかりやすくまとまって良い報告になったと思う。
  • 日本経団連の企業行動憲章の見直し作業に関わっているが、持続可能な社会をつくる観点でみると、環境以外に人権などさまざまな問題があり、これからの企業行動のそれらのベースとなる共通の価値観について議論を深めなければならないと感じている。今後、環境基本計画等の施策についても、持続可能な社会の創造に向けて関連の省庁と横糸を通した政策議論を深めしていただきたい。

○笹之内 雅幸委員

  • まだまだ漢字が多いというのが正直な印象である。さらにわかりやすいバージョンをつくってWebサイトなどにのせてはどうか。
  • 環境先進国を目指すという以上、少なくとも英語にして、国際的に広めるべきだと思う。また、先進国というのは比較用語なので、添付資料にはぜひ国際比較データを載せていただけると、われわれの位置がどこにあるかがわかりやすいのではないかと思う。
  • こういうビジョンをつくったら、次にロードマップが必要。ビジネスでは、5ヵ年計画等をつくって評価指標とそれを評価するための尺度をつくり、PDCAをまわしていくが、行政ではこれがうまく回されていない。さらにはそう考えると、ビジョンを本当に実行していくのは政治である。政治家が選挙などで争われるときに、こういうのをきちっと争点に出すようにならないと、ビジョンが風化していくのではないか。

○崎田 裕子委員

  • EUに取材に行ったとき、社会全体が環境と経済の好循環をつくり上げるという明確な意志のもとに動いていることを感じた。そのため、この好循環は、環境を考えたときのすべての分野、産業、そして社会全体に大事なキーワードであり、このようにビジョンを先に示すことが重要になってくるのだなと考えている。
  • 好循環をつくっている地域社会や企業の取り組み、消費者へうまく情報が流れているような話、そしてそういうことを市場が評価している、金融市場が評価しているようなことをどんどん出していくと社会が元気なると感じている。
  • NPOとして、地域の企業、子供たち、一般住民とともに企画を運営していくような形で楽しい社会づくりに取り組んでいるが、そこにコミュニティービジネスのような、きちんと経済的に回っていくような形をつくって行くことが課題。

○神津 カンナ委員

  • レンズ付きフィルムは使い捨てなどと言われるが、実はリサイクル率が非常に高い。このように物事には二面性があり、電気製品が壊れたとき、それを修理して使うべきか買い直すのがよいのかなど、私たちはしばしば悩む。したがって、ビジョンが出た後に、こういう狭間で悩んでいる人たちに対し、どのような情報の出し方があるのか、アドバイスができるのかが、個人レベルでは大きな問題だと思う。
  • 屋久島の自然も人の手が入ってつくられている。環境を守っていくためには、ただありのままではなく、どのように人の手を入れていくかが課題。
  • 地域の活性化のため、自然エネルギー等あるいは循環型のいろいろな複合施設をつくって観光客を誘致したり地元住民を活性化することについては、企業も地元も高い意識をもって努力しているにもかかわらず、経済的にはうまくいっていない事例が山のようにある。失敗の原因を精査するのも、今の私たちに与えられた課題のひとつではないか。
  • 今、環境問題というのは変化の時期に来ている。このままではだめだと気づいた瞬間であって、どう変わりどっちへ転ぶか、タイミング的にはよい時期。ここを逃さないようにしないと、2025年はあり得ないのではないか。

○黒須 隆一委員

  • 自治体にとって、ごみ問題は環境面でも経費的にも大変な課題。その中で、私ども多摩地域26市共通の取り組みとしてごみ減量のための有料化を打ち出したが、それはこのビジョンとも一致するわけで、心強い。
  • ビジョンの具現化については、いかに多くの国民、事業者に浸透させられるかということにかかっているのではないか。積極的な国のPR対策を図るとともに、次期環境基本計画への具体的な反映をぜひお願いしたい。
  • 八王子市での世論調査では、定住意向の方が90%近くいて、その人たちに理由は何かと尋ねたところ60%の方が「豊かな自然環境」だと答えている。こういう数字を見ると、環境はこれからの選挙のキーワードの1つになるのではないかと期待している。

○小倉 康嗣委員

  • このビジョンを具体的にどう政策に盛り込んでいくのか、企業の行動計画につなげていくのか、生活者にどう結びつけていくのか、誰に読んでもらうのかを考えるのが課題。
  • 企業としては、現状では環境で大きく儲けようとすると何となく後ろめたい。それは、環境によいことをするとコストが高く、そのコストをだれかが負担しているから。そういう意味で、好循環の社会をつくって、企業として環境で大きな利益を上げても堂々とできるような社会にしていかなければならない。
  • どの産業の企業も環境ビジネスに参加して、コストをうまく利益に反映させるといったような社会をつくることが重要。
  • 若い人にビジョンを読んでもらうというのはよい考え。委員のうち、大学の先生をされている方に講義でこれを配ってもらい、感想文を書いてもらうとよいのではないか。

○植田 和弘委員

  • ビジョンは、「環境先進国へ向けて」ということで、国全体というイメージがすごくある。今後、地域、都市、コミュニティ、企業等でこういうことが実現できるという実感が持てるような先進的な取り組み事例が出てくることが大事ではないか。
  • 同時に、このビジョンを実現するためには、市場のあり方や価格など、必要なルールや仕組みを具体化していくという課題にも取り組んでいかなくてはならない。
  • ビジョンは、「環境先進国へ向けて」とあるように、私の理解では、ある種国の形を提示している部分があり、国民が選択するものとして議論の対象となることがもっとあってもよいのではないか。そのためにも、この文章がもっと読まれることが大事。

○天野 明弘委員

  • 今回は、私たちはどのような国づくりを望んでいるのか、その基本的な合意をまずつくることを目指した。これは、日本の環境政策では新しい試み。理念を示して、理念に基づいて分野別、主体別の役割がどういう風になるか考えるというように、下へ降りてくる政策の出発点としてこのビジョンを位置づけていただきたいと思う。
  • 外国語版をつくって外国に向けて発信するというのには賛成。
  • 今後、中央環境審議会に報告されて、環境省の政策として位置づけられると思うが、もう少し先へ進んで、政府全体のビジョンとなるよう努力していただきたい。

○浅野 直人委員

  • これから先どのように進めていくかが問題だが、ビジョンもなく政府全体でただ施策をぶら下げていくとすると、一つ一つをみてもよくわからないということになりかねない。環境基本計画の改定ではビジョンが示されているので、ミクロから攻めていくとよい結果がでるかもしれない。今後の基本計画を考えるときに、これが単なる文章でどこかに置かれるということにならないよう、環境省全体の中でいつもこれを意識して考えていただけるとよいと思う。
  • 環境省も縦割りの弊害がないとは言えない。これは総合環境政策局が担当したものに過ぎないという扱いになってしまうとうまくいかないと思うので、他局に対して情報発信することも大事ではないか。

○安原 正委員長

  • 産業界の方々にとって、今後10年くらい、化学物質対策は事業活動の大きな投資分野となると思うが、入れなくて良いか。

○安井 至委員

  • ビジョンの具現化は、環境基本計画の改定に反映させることに尽きる。広く皆で参画して行う環境分野の計画は、環境基本計画しかない。政府一体で策定し、そこで具体的な施策を示し、事業者の方、国民の方々にも示す。場合によってはインセンティブをつけていくというようなことも必要になろうかと思う。
  • 環境基本計画の実効性を高めるためには、それぞれの省庁が自らの分野について、もっと具体的な実施計画をつくり、それを一定の尺度で評価し、足りないところを補い、強化し、実行に移していくといったことをしていかなければならない。
  • 環境と経済の好循環といった場合には、エネルギー分野の取り組みが重要だと思う。経済の発展にはエネルギーが必要で、それを化石燃料だけに依存していると大きな環境負荷をもたらす。好循環とは、計画的、段階的に脱化石燃料社会に向けて進んでいくということではないかと思う。その際、技術開発だけでなく、開発された技術が普及し効果が出るようにしなければならない。具体例では水素エネルギー社会などがある。