中央環境審議会総合環境政策部会第2回 環境と経済の好循環専門委員会議事要旨
日時
平成15年11月20日(木)15-17時
場所
環境省第1会議室
議題
環境と経済の好循環を目指したビジョンについて委員等からの意見発表と討議
要旨
1.「くらしを彩る環境のわざ」をテーマに委員等から意見発表
○ 園田 信雄委員
- 松下電器産業(株)の大きな事業ビジョンの1つは、地球環境と共存する「新しい豊かさ」を目指すこと。
- すべての製品をグリーンプロダクツ(環境に優しい製品)にすることに取り組んでいる。2005年度には70%以上、2010年度には90%以上をグリーンプロダクツにする。
- 「新しい豊かさ」の指標として、「ファクターX=環境効率の向上倍率」がある。冷蔵庫の電気代で言えば、1991年から2002年で、ファクター5.2になった。待機時電力の削減、電球型蛍光灯による消費電力の削減、食器洗い乾燥機による水の削減にも取り組んでいる。生活の質の向上と環境への影響の削減は両立可能。新製品への買い替えが京都議定書の目標達成に有効。
- 新たな取組としては、燃料電池コージェネレーションシステム、電子書籍端末の開発、ITを活用した環境影響への貢献などを実施。
○ 筒見 憲三委員
- ESCOとは、Energy Service Company の略。従前の利便性を損なうことなく、省エネルギーあるいはエネルギーの効率化に関する包括的なサービスを提供し、その顧客の省エネメリットの一部を享受する事業。例えば病院の照明、空調等で電気代を削減した。 最近は特に、ESCO事業者が自ら顧客の現場に設備を持ち込んで、電気と熱を供給するオンサイト発電事業が注目されている。燃料電池、バイオマスのオンサイト発電にも取り組んでいる。
- 乏しい国内資源・海外高依存度、CO2削減の率先推進の必要性、持続可能な経済成長と豊かさの共存という課題の中、資源消費を半分にして豊かさを2倍するというようなビジョンが必要。
- 動脈産業、物をつくる産業は、いくら効率的にやっても、資源・エネルギーを使って環境負荷をつくる。循環型社会をつくっていく上で、静脈産業、環境ビジネスがもっと発展する必要があり、その実践の時代がきている。
○ 辰巳 菊子委員
- (社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会は、消費者の利益と企業活動の調和を図りながら問題を解決していこうとする団体で、5年前に環境委員会を設立した。
- 消費者が環境に与える影響を広く考えて商品やサービスを選ぶグリーンコンシューマーになるだけで、かなり社会が変わると思う。そこで必要なのが環境ラベル。家電など耐久消費財では定量的なデータがほしいし、雑貨などはマーク等でいい。エコツーリズム、クリーニング、 レストラン等のサービスは簡単な文章での説明がほしい。
- 環境ラベルを参考にして、商品の一生のことを考えて選び、わからないときは問い合わせるということを、私たちは広めている。企業の宣伝は、省エネ=お金節約の面が強調されがちだが、CO2削減につながる点なども示して欲しい。
- 流行等がテイクオフする普及率を16%とする学者がいるが、グリーンコンシューマーはまだそこまで行かず、もう少し増えると社会がうまく回ると思う。
- 消費者の声がもっと反映されること、環境ラベルが法制化されて環境配慮型商品にはつけられるようになることが希望。
○ 伊藤 哲志講師
- 自動車を取り巻く環境の問題点は5つあり、[1]大気環境、[2]気候変動、[3]エネルギー需要、[4]自動車リサイクル、[5]環境負荷物質(有害物質)。 [1]は今後、日本や欧州は環境基準を達成し、発展途上国の問題になる。[2]、[3]は同じような問題。エネルギーがなくなれば自動車もなくなるわけで、エネルギー問題は今後より重要になる。 [4]自動車リサイクルは法律が2005年から施行され、EUでも指令が出ている。 [5]は今後ますます問題となり、われわれとしても取り組まなければならないと考える。
- 低公害車では、天然ガス車、ハイブリッド車は増えており、電気自動車は今はほとんど伸びていない。
- 低公害車普及の課題としては、価格が高いことと、燃料供給のインフラ不足、長距離走れないことがある。ガソリンハイブリッド車だけは、価格の問題以外は当てはまらないが、燃料代でペイするかというとまだ難しい。
- 新型プリウスは、加速性能と燃費のトレードオフを打破するような技術を採用し、販売実績は、順調に伸びている。燃料電池車は、燃料を作る段階等のCO2排出が大きく、現時点では、LCAでのCO2排出量はハイブリッド車が最も少ない。
- 規制の効用として、日本のメーカーは53年排ガス規制を乗り越えてアメリカで競争力を確保したことがいわれるが、事実とはいえない。BIG3が米国内規制により競争力が低下したという逆の事例もある。好循環はなかなか難しい。
○ 関 正雄委員
- グリーンコンシューマーだけではなく、グリーンインベスター(環境に配慮する企業に投資する投資家)の存在は今後ますます重要になる。欧米に比べると日本ではまだこれからの状況。
- エコファンド販売の経験から、エコファンドの意義は、(1)環境問題に関心がある投資家(グリーンインベスター)の顕在化、(2)環境への取組が企業評価の基準の一つとなることを認識、(3)金融機関も本業を通じた環境への取組が可能であることを実証したこと、(4)社会的責任投資(SRI)を日本に紹介したこと、だと考える。
- SRIが今後さらに発展するための条件は、(1)個人投資家だけでなく、年金基金等の機関投資家の参入、(2)環境を含めた企業の社会的責任に関する透明性の高い情報公開、(3)多様な価値観を持つ投資家に支持されるようなSRI商品の開発・提供、(4)英国における年金法の改正などのように、SRIを普及・促進するような法制度の整備、(5)「社会的責任を果たす企業の株主価値(=株価)が向上する可能性が高い」ということを示すデータが数多く発表されること。
2.環境と経済の好循環に対する現時点での考え方について委員から意見発表
○ 深尾 典男委員
- 日経エコロジーは、経済と環境の好循環をどうやったら作れるかという目的で創刊した。企業向け雑誌、BtoBだが、企業が変わり、環境に取り組むことにより、社員、取引先、消費者など広くステークホルダーを変えていくと考えて発行している。でも、この企業と消費者のところの輪が途切れており、これをどのようにつなぐかを議論する必要がある。
○ 辰巳 菊子委員
- 企業と消費者、つまりBtoCをどうつなぐかが課題。消費者は、非常に千差万別で、わがままだと言われる。その人たちにうまく理解してもらう仕組づくりが求められる。
3.自由討議
○ 崎田 裕子委員
- 環境配慮をしている企業の情報、企業の出している具体的な商品の情報を消費者、投資家につないでいくことが信頼関係を生み、環境と経済の好循環が生まれるというイメージが描けてきた。
- 好循環を目指すという大きなビジョン設定により、それぞれが取り組んでいこうとするパートナーシップ社会の信頼関係をつくっていくことが大切。
○ 天野 明弘委員
- 環境と経済の好循環を生み出すためには、テクノロジーという意味の技術革新と、ビジネスモデルという意味での技術革新が重要。
- 環境報告書など、BtoBの情報はうまくまわり始めたが、BtoC まではなかなか至らない。知る権利、知りたいと言う権利を確保できるような、きちっとした法的仕組により、BtoCの環境情報開示が進み、それが起爆剤となり、BtoBがより加速されるのではないか。
○ 浅野 直人委員
- 情報開示を義務づける制度として、例えば、化学物質についてMSDSがあるが、これはプロが相手。最終消費者は、たとえば食品添加物の名前が並んでいてもわからない。法的枠組を先行させるよりも、むしろ信頼に足りる情報が提供される仕組を考えていくことが必要ではないか。
- 資料7-2は、箱と箱のつながりなどを検証するとともに、箱そのものも丹念にみていくと話が整理できるのではないか。
○ 深尾 典男委員
- 前回、安井委員が環境負荷の種類を分けて議論することを提案しているように、論点を整理した方がよいのではないか。資料7-2のキーワードを見直し、どの部分が好循環を目指せるのか、どういうシステムをつくっていけるのかというのを、場合分けして議論すべき。
- 現在、消費者のエコプロダクツの認知度と購買意欲を調査している。マーケティング戦略の事例がもう少し詳しく発表されると、企業と消費者のミッシングリングのどこかがつながっていくのではないかと思い、調査した。