中央環境審議会総合環境政策部会第1回 環境と経済の好循環専門委員会議事要旨

日時

平成15年11月4日(火)14-16時

場所

環境省第1会議室

議題

環境と経済の好循環を目指したビジョンについての論点整理等の説明、自由討議

要旨

1.事務局より諮問の背景、今後の検討の進め方等について説明
2.環境と経済の好循環に対する現時点での考え方等について各委員より意見発表

○ 安原委員長
・ 今回提案されたもの以外に新たに追加すべき討議テーマがあれば、事務局の方で情報を整理し説明をしてもらうような方法も含め、対処したい。
・ テーマが環境と経済の好循環であるので、一番重要な柱はエネルギー対策ではないか。
・ 燃料電池等の新しい技術の開発促進と併せて、その技術が早期に大量普及するような仕組づくりが重要。
・ 数値目標としては、新技術の普及率が考えられるのではないか。

○ 安井委員
・ 環境負荷の種類を分けて、議論すべき。1番目は、排気・排水にかかわる環境負荷、2番目は温暖化ガスと資源の大量使用という環境負荷、3番目は製品中の有害物質という環境負荷。環境と経済の関係では、2・3番目が議論になるだろう。
・ 3番目の環境負荷については、塩ビのように、若干害があっても使った方が総合的効率が高い可能性があるものがあり、このように、いろいろなものを分析的に、詳細に、かつ総合的に解析・議論していくことが必要。

○ 天野委員
  議論すべきテーマとして3つ考えられる。[1]どのようにすれば、環境に関する様々な情報を企業と一般市民が共有することができるようになるか。[2]技術革新はもちろん重要であるが、社会的、組織的な制度の革新も重要ではないか。[3]国連を中心に検討されているエコシステムに関する指標を参考に、指標・目標が考えられるのではないか。

○ 和気委員
・ 環境の方が経済よりも不確実性が高く、新しい環境問題、環境に関する知見が出てきた際に、それを社会や経済に組み込める柔軟なシステムが必要。
・ 新しい技術や改良型技術が出てきた際、社会がそれをどう受け入れるか、その仕組を考える必要。
・ 環境に配慮する企業は企業業績が高いと指摘されるが、その因果関係を議論する必要がある。金融分野の方から話を聞いてもよいのではないか。
・ 市場が国際化し、アジアとの経済連携が進む中では、越境型の環境負荷だけではなく、ローカルな環境問題においても、やはり国際的な視野が必要。

○ 山本委員
・ 一般的な生活者は立派な建前だけでは動かない。情報を上手く届けることが重要。生活者もメリットがあって初めて環境活動に取り組むと考えられることから、「インセンティブを与えられるようなシステム」が必要ではないか。

○ 筒見委員
・ 日本の場合、ものづくりをする動脈系の産業では立派な会社がたくさんあるが、エネルギーを減らしたり廃棄物を処理する、物をつくらない静脈系のビジネスを、自ら先頭に立って、立ち上げていきたい。
・ 社会の仕組として、物の所有から利用へのパラダイム転換が、今後、環境と経済の好循環を作っていく上で重要。

○ 辻委員
・ 国民に訴えるには、具体的な数値目標が一番わかりやすい。数値目標を示すことが、革新的な技術開発、雇用創出、国際競争力の強化につながるのではないか。
・ 戦略的に環境関連技術の革新を促す仕組が重要。例えば、様々なセクターによる横断的プロジェクトなど、新しい仕組があってもよいのではないか。
・ 関係省庁と密に連絡を取りながら進めていくのが、成功の近道と考える。

○ 園田委員
・ 当社の環境への取組は、環境にやさしい工場をつくることから、環境にやさしい製品、グリーンプロダクツをつくる方向に変わってきている。後者の方が、環境負荷軽減への影響は大きい。環境への取組は、企業だけでできる時代は既に終わり、消費者、国民や行政と一体となって進めていくべき時代になった。
・ 経済的合理性に基づき環境と経済の両立ができる時代になってきた。
・ 企業が開発したグリーンプロダクツを社会全体として有効に活用していくため、社会全体のインフラが必要であり、議論したい。

○ 関委員
・ 環境と経済の好循環を生み出すための社会的・経済的な基盤として、融資・保険・投資の果たす役割は大きい。環境問題に熱心な企業と投資家の間をとりもつエコファンドも定着してきたが、さらに拡大するためには、企業の環境への取組について情報開示をきちんとして、それに対して一般の投資家の方、あるいは投資家以外の方にもいろいろ意見を求めるような、双方向のコミュニケーションが重要。
・ 人づくりの問題も重要。環境問題の認識だけでなく、行動に移すためのきっかけをつくることが非常に重要である。

○ 笹之内委員
・ 社内では、環境対応は企業ブランド維持のためのリスク管理と説明しており、収益につながるという説明は非常に難しい。環境と経済の好循環に向け世の中が動いていくことになればありがたい。
・ 例えば、カルフォルニアでは技術の実情にあわせてフレキシブルに制度を変えていくが、日本では技術の実態と合わなくても制度を変えられない点が問題。
・ お題目に終わらないようデータを重視した議論をすべき。なぜを5回繰り返して一番大きな原因を明らかにし、そこに理想説を投入して解決する方法がよいのではないか。
・ 技術開発について、技術の供給側を抑えるのではなく、オプションを幾つか提示し、マーケットが選択するという考え方が、継続するために重要。
・ 自主的に取り組めるところと取り組めないところを理解し、規制は、自主的に取り組めないところにのみ、かけるべき。

○ 崎田委員
・ 消費者の環境問題への意識は高くなっているが、行動に反映されているとはいえない。具体的にどうしたらいいかという、明確な情報をつないでいくことが大切。いろいろな比較の中で、消費者が環境に配慮した商品を選択し、それが企業の評価につながり、社会全体で認知される仕掛けが必要。
・ NPOの視点から、今回ビジョンをきちんと提示することが、非常に多くの地域の事業者や熱心な市民を勇気づける側面を持ってると感じる。
・ 地域での熱心な環境活動が、経済的に成り立ち、コミュニティビジネスとして継続できるようになるようなビジョンを提案できるとよい。

○ 神津委員
・ アマゾンの森林再生プロジェクトの経験を踏まえると、きれいごとで環境保全はできない。環境と経済の両立は、困難かもしれないが、知恵、技術、資金、政策転換、意識転換がかみ合ったら必ずできると考える。
・ 一般の人にわかりやすくするため、最終的には、好循環の可能性を何らかの目に見える形にするところまで持っていくことが、本委員会の任務ではないかと思う。

○ 小倉委員
・ 地域で産業間の連携を行うことによって、もっとエネルギーも資源も循環していくことを考える必要がある。
・ 環境対策には矛盾が多く、それを解決することを議論しなくてはならない。例えば、LCAを考えるとき、国内だけの場合と世界全体でみるのとでは結果が異なる場合が結構ある。また、CO2対策でもコスト増との矛盾がある。
・ 生活の行動様式を変える必要がある。また、その結果を消費行動の仕組に変えていくようなことを考える必要がある。

○ 浅野委員
・ 重要なキーワードとして挙げられたのは、[1]コミュニケーション/ネットワーク、[2]技術、[3]社会システム、[4]地域ではないか。
・ 地域の議論する際には、環境と経済の好循環に関する様々なキーワードを、国際社会、日本、大都市圏、地方中核都市、農山村、といったような箱をつくって入れてみると作業がうまく整理できるのではないか。
・ 今回の問題に規制はなじまないが、フリーライダーを抑えるような枠組をしっかりつくることが制度である。ネットワークができ、コミュニケーションができ、マーケットできちんと選択できる道ができれば、自然と制度になるのではないか。