中央環境審議会総合政策部会環境研究技術専門委員会 自然環境分科会(第1回)議事概要

日時

平成13年5月17日(木) 14:00~17:00

場所

合同庁舎5号館26階 環境省第3会議室

出席者

 <委員側>

   岩槻主査、松本副主査、堀井委員、三浦委員、森本委員

 <環境省側>

   山田大臣官房審議官、松井環境研究技術室長、渡邉生物多様性企画官 他

環境省挨拶

山田大臣官房審議官から挨拶を行った。

議事

(1) 分科会の運営について
      事務局より資料2(中央環境審議会総合政策部会環境研究技術専門委員会の各分科会の運営方針について)を説明した。
(2) 第1回専門委員会の指摘事項及びこれを踏まえた追加的コメントについて
      事務局より資料3(第1回専門委員会における主な指摘)及び資料4(中間報告の目次及びその検討・記述方針(案))を説明した。


(松本委員)
 ポス・ドクの有効活用に環境省としても取り組んでいただきたい。

(森本委員)
 開発側・保全側で統一された評価システムの確立が必要である。例えば、環境影響評価にはミティゲーションが位置づけられているが、明確な目標を示せないので齟齬を来している。

(堀井委員)
  新しい問題へのキャッチアップ体制の整備が必要である。拡散したDNAは問題を起こす可能性があるが、何か問題が起こってから対応するようでは遅い。

(三浦委員)
  日本では生物多様性をもっている典型的な生態系の確保が不十分である。生物多様性国家戦略の中に「生態系の回復」を位置づけてほしい。ミティゲーションなど技術的な展開についても検討してほしい。

(岩槻委員)
  それぞれについて、どのように重み付けをするかが難しい。チャレンジングな研究も大切だが100年先を見通した基礎的な研究も重要である。また、大学等との交流を促進し、大学等が行う基礎的研究と行政が行う目的指向的研究を繋げる努力が必要である。環境省には大学等のサポートをお願いしたい。さらに、社会教育として、どのような環境研究が行われているのか国民に周知することが必要である。

(3) 重点戦略プロジェクトのあり方について
     事務局より資料5(重点戦略プロジェクト等のあり方について)を説明した。


(森本委員)
 生態系はダイナミックに変化しているので、自然度の高低だけで評価するのではなく、重要な生き物を視点において評価できる地理的システムやそのベースとなるデータの収集が必要である。

(渡邊企画官)
  データの収集については、生物多様性国家戦略の中でも重要な位置を占めており、今後どのような方向で展開を図るか検討中である。基盤環境のポテンシャルの定量的な評価が可能となる基礎データの収集が重要と考えている。

(松本委員)
 現在、アンケート等による重要な生態系の抽出に取り組んでおり、その結果は重要な地理情報として活用できる。また、気候で区分すると森林が主体になってしまうが、動物は総合的な評価が必要である。

(岩槻委員)
  環境研究の成果を生かすためには、過去の過ちを認めることを恥とせず、本質的な議論をすることが重要である。

(三浦委員)
 ポピュレーション・バイアビリティ・アナリシスというものがある。これは、現状の個体数が50年後、100年後に存続しうるかを評価し、減少要因を取り除こうとするものである。これによって、生物多様性の保全を計画の中に位置づけられるようになる。いわゆるリスクアセスメントとしての評価が可能になる。

(岩槻委員)
 そのためには、あまり知られていない生物のデータも重要である。どうすれば必要なデータが得られるか検討しなければならない。日本の研究者のレベルは外国の研究者のレベルと互角であるが、全体をカバーする基礎情報の電子化という点では外国が圧倒的である。

(渡邊企画官)
  日本でも重要な分類群のデータについては電子化が進められているがまだまだ不十分である。

(松本委員)
 日本の博物館には人材が少ない。補助金等による支援を行い、人材が集まる仕組みを構築する必要がある。

(岩槻委員)
 博物館は展示するところではなく研究するところであると世間に認識してもらう必要があり、環境省のてこ入れが必要である。

(森本委員)
 アメリカではミティゲーションについて開発と保全で折り合いを付けてやっている。専門家は大間違いでない程度の評価し、モニタリングを行って、評価が間違っていたらやり直すという方法で情報が蓄積されてきている。また、日本の場合、里地の自然をどう保護するのかも重要であり、目標となるモデルの提示が必要である。

(渡邊企画官)
  定量的な評価のためにはモデルが必要である。基礎的知見と専門家の意見を踏まえてモデルを構築し、その結果を基礎的知見として蓄積するという仕組み(HEP)が必要と考えている。

(三浦委員)
 自然公園でも、第2種特別地域の場合はどんどん事業をやっている。このあたりの政策的位置づけをはっきりさせるとともに、もっと攻撃的な保全を打ち出す必要がある。

(岩槻委員)
  里山については環境保全より環境創成という考え方が重要である。ただ手を付けないというだけではなく、どのように保全していくのかということを検討する必要がある。

(三浦委員)
 「自然環境の復元・再生・修復」があるが、これについては出口を明確にし、環境省での攻撃的政策とする必要がある。これからは生態系をつくりだすということが重要で、その場合、最小の生態系サイズを解明する方法、また、干潟の再生のために最低限必要 なことについて環境研究技術として取り組むことが必要である。また、生態系を維持するために最低限必要なことを示すこと、これを出口に加えて欲しい。

(岩槻委員)
  これまでの議論を踏まえると、ビッグ・クエスチョンとしては、[1]現在行っている評価は正しいか、及び、[2]評価に必要な基礎データは十分に揃っているか、また、それは利用できるよう整理されているか、ということでよいかと思う。


(4) 関係分野における推進課題及び体制整備のあり方について
     事務局より資料6(自然環境分科会の関係分野等における推進課題及び体制整備の あり方について(検討用メモ))、資料7(自然共生型社会実現のための基盤的研究)及び 資料8(環境研究・環境技術開発の推進方策(中間報告案))を説明した。


(森本委員)
 資料7では「自然とのふれあい利用技術」が省略されているが、里山については生物多様性の保全だけで整備を図ろうとするのは困難である。里山は権利関係が錯綜しており、まとまった施策を実施するのは困難ではあるが、これからは都市住民の庭として整備できる社会的な仕組みが必要である。

(松本委員)
  バイオ分野には大量の資金と人材が投入されているので、これを活用するため「生物保全バイオセンター」の設立を提案する。生物の保全にはバイオ技術も必要であり、分子生物学の成果を活かすという意味でもよいことである。

(渡邊企画官)
  遺伝子レベルのどういう研究が役立つのか中身を検討したい。

(松本委員)
 従来の勘に頼った種の判別とは異なり、遺伝子による判別は、早く、正確で、しかも事業化できるメリットがある。インベントリーの整備をすることになれば業者が大量に参入してくると予想される。

(岩槻委員)
 遺伝子による種判別は技術としては確立しているものの、判別するための基礎的データが不足している。この基礎的データの構築は競争的資金では無理であり、事業として行うべきである。遺伝子レベルの技術を環境保全にどのように役立てるかという視点が必要である。

(三浦委員)
 モニタリングについては、ボランティアレベルではなく、生態系の維持機構まで踏み込んで調査できる専門家が必要である。また、トキなど希少野生動物の増殖では、そのハビタットの整備も視野に入れた取り組みが重要である。そうなると、デカップリング制度が 必要ということになる。里山を含めたハビタット創生のための大きなプロジェクトと、そのためのベーシックな調査を行うことが必要である。さらに、生態系の最小サイズを解明し、その連続性を維持するための実験的な研究を行う必要がある。森林のコリドーだけではなく、河川周辺のコリドーが効果的である。

(岩槻委員)
 環境問題はグローバルな問題であるが、日本は国際的な対応が立ち後れてる。各国と協力して行うプロジェクトや海外の研究者のトレーニングシステムを構築することが必要である。日本は国レベルでの貢献が不足している。また、NGOのデータを有効に活用することも重要である。さらに、現在、水問題が最重要課題となっているが、ユネスコなどの取り組みへの協力・分担という視点が必要である。

(松本委員)
 自然とのふれあいは重要な課題である。環境省として、県のビジターセンターへの人材の投入を含めた支援が大切である。また、これらビジターセンターが法人化になじむか検討することも重要である。

(森本委員)
 ソフト面の取り組みも含めた計画技術が重要である。例えば、緑化についても、なんでもすぐ緑化ということではなく、しばらく期間をおいて考えるといったことを含めた、もっと大きな仕組みを確立することが必要である。

(松井室長)
 地球温暖化に伴う気候変動や海面上昇などの生態系への影響についても検討する必要があるか。

(松本委員)
 マラリアなど有害生物がどんどん入ってくる可能性があり、検討が必要である。
  また、移入種の問題では、一般人が趣味でいろいろな生物を持ち込んでいるが、病気を持ち込んだり、外に逃げた場合の生態系への影響も懸念されるところである。

(岩槻委員)
  移入種は、ハビタットだけでなく人体への影響も問題視されている。

(松本委員)
 台湾ザルについても、病気との関連で検討が必要である。

(岩槻委員)
 地球温暖化についても、温暖化すると困るというだけでなく、こういう影響が生態系にあるということを言っていく必要がある。干潟などをモニタリングする必要がある。

以上