環境と金融に関する専門委員会(第2回)議事録

日時

平成21年11月6日(金)9:59~12:20

場所

中央合同庁舎7号館西館13階共用第1特別会議室

議事次第

  1. 開会
  2. 議題
    関係者からのヒアリング
    1. (1)向畑康志委員(住友信託銀行株式会社)
    2. (2)伊東正行委員(株式会社三菱東京UFJ銀行)
    3. (3)関  正雄委員(株式会社損害保険ジャパン)
    4. (4)河口真理子氏(株式会社大和総研)
  3. 閉会

配付資料

議事内容

午前9時59分 開会

○末吉委員長 皆様おはようございます。ちょうど時間になりましたので、今日の会議を開きたいと思います。
 今日は第2回環境と金融に関する専門委員会でございます。委員の皆さんはもとより会場にも今日たくさんお見えいただきました皆様方に対しても、おはようございますと改めて申し上げます。
 今日は4名の方からヒアリングという形で現実に現場で何が起きているのか、そういったお話を伺う予定になっております。4名の方、それぞれ15分ずつ時間がございますのでその中で発表していただき、終わったところで10分程度質疑応答という形でやりとりをしたいと思います。
 その前に、実は今回から新たにこの専門委員会に委員としてご参加いただく方がいらっしゃいます。辻・本郷税理士法人の本郷さんでいらっしゃいます。どうぞよろしくごあいさつをお願いいたします。

○本郷委員 私は、辻・本郷税理士法人という税理士の事務所をやっております本郷と申します。傍らでちょっと環境の勉強というか、10年ぐらい大学で非常勤ですが環境の講義を少し持っております。今日はこの専門委員会に参加させていただきまして、どうもありがとうございます。
 私は金融はもともと素人でございますので、逆に勉強になる機会が多いかと思いますが会計の観点から、あるいは私は中小企業を長年見ていますので、その実務的な観点から多少でもお役に立てるかと思います。どうぞよろしくお願いします。

○末吉委員長 本郷委員ありがとうございました。
 本郷委員のご参加で、この専門委員会の議論の幅が広まり深まることを大変期待しておりますので、よろしくお願いいたします。
 では、ヒアリングを始めたいと思うんですけれども、その前に事務局から今日のヒアリングの趣旨のご説明をお願いしたいと思います。

○黒川環境計画課長補佐 資料2というのをご覧ください。前から4枚目ぐらいになります。
 「関係者からのヒアリングについて」という紙があるかと思いますが、今回と次回12月10日は関係者からのヒアリングということでやりたいと考えております。
 本日は資金供給側、金融機関側の立場からということで向畑委員、伊東委員、関委員という各金融機関の方に、投資、融資、保険というそれぞれのテーマに沿ってお話しいただければなというふうに思っております。それで本日、大和総研の河口さんに出席いただきまして説明をいただく予定となっております。
 次回、12月10日は今度は環境ビジネスの立場から資金需要側の立場からということで、これはどなたをお呼びするかまだ未定ですが、外部からエネルギーサービス会社ですとか、ベンチャーキャピタルですとか、中小企業関係者の方をお招きして、あとは竹ヶ原委員からというふうに予定しております。その後も必要に応じて委員ですとか、外部有識者からのヒアリングを予定しております。
 以上です。

○末吉委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、トップバッターですけれども向畑さん、お願いいたします。

○向畑委員 住友信託の向畑です。よろしくお願いします。
 お手元の資料3-1というレジュメと、お手元に住友信託銀行の「CSRレポート」と、あとSRIに関してダイアログを置かしていただきました。今日はレジュメと「CSRレポート」を主体にご説明したいと思います。
 1点目の環境配慮型商品に対する住友信託の取組ですけれども、まず住友信託のスタンスについて触れたいと思います。
 「CSRレポート」、表紙をめくっていただいて左側をご覧ください。
 ご承知のとおり信託銀行は銀行、信託、不動産といった具合に業務が多岐にわたっていますが、住友信託ではCSRに取り組む意義を5つのパスで整理しています。
 環境配慮型金融商品はこれら5つのパスの中でも1番目のパスである事業革新の実現ということで、単に社会貢献ということではなくて、社会的問題解決に向けた新しいビジネスとしてやるんだということを経営方針の中でコミットして行っていると。中でも環境というのが最大のテーマでありまして、さらにそのテーマの中でも4大テーマとして環境不動産、生物多様性、中国、SRIといったものを取り上げてラインナップに加えております。
 「CSRレポート」の12ページ、13ページをご覧ください。
 レジュメでは、資料3-1というところの(1)にエコ・トラステューションということで書かせていただいていますが、エコ・トラステューションというのは、エコの問題にトラストの機能を活用してソリューションに貢献していくという弊社の造語でありまして、レジュメ(1)で言いますと、上から6番目のサプライチェーンマネジメントのところまでは、いわゆる銀行業、信託業としてのラインナップ、それ以下は不動産業としてのラインナップを取り上げております。
 銀行業では、太陽光発電搭載住宅向けの金利優遇ローンですとか、あるいは信託業務で言いますと海外排出権の信託小口化商品、排出権購入の際の時間差がありますので、そこの決済リスクを抑えるための排出権決済資金保管信託、あるいはCSR配慮企業へのインセンティブとして、そういった企業への金利優遇を目的とした売掛債権一括信託などに取り組んでおります。
 不動産に関しましては、レポートの16ページ目をご覧ください。
 不動産が環境に占める位置づけは大変大きいので、自発的な取組が市場で評価される仕組みづくりということに主眼を置いております。研究やコンサルティング、ファンド組成などを通じて、不動産の環境配慮促進に流れるように多くのステークホルダーに参加していただいて活動をしているという状況であります。
 生物多様性については、レポートの18ページ目をご覧ください。レジュメでは(2)として取り上げております。
 生物多様性に関しましては、今まさに取組を強化しているテーマでありまして、リーダーシップ宣言の署名やCOP9で報告書が提出されていますけれども、その翻訳ですとか下地づくりを現状行ってきたと。翻訳版ができたということで、日本における生物多様性の取組は急速に広がっているというふうに認識しているんですけれども、以前から2000年に公益信託を通じてNPOに生物多様性に関してお金が流れる仕組みというものをつくりましたけれども、現在も生物多様性ファンドをつくろうと、経済の視点を入れた形で生物多様性に貢献していくという活動に注力しております。
 3つ目に中国への取組ということで、レポートの19ページに記載をさせていただいております。
 中国は今、国を挙げてCSRに取り組もうとしています。CSRに関する講演やSRIシンポジウムの協賛など、地道な活動を通じてCSRビジネスの今下地をつくっているという状況にありまして、それとあわせて今年6月に住友信託では中国A株を取り扱うためQFIIという資格を取りました。これによって中国SRIファンドをつくるということで、現在取組中であります。
 また、中国省エネビジネスへの参画ということで、中国企業と合弁でエスコ事業を推進する企業の設立に日本で初めて資本参加するということをやっていまして、具体的にはレジュメのほうをめくっていただくと別紙1というものがございますが、内容はここに書いてあるとおりということで、実際やっていくと契約上のリスクや知的財産あるいは金融機能の問題と、さまざまな課題がありますので、それを一つ一つクリアしながらビジネス展開をしていっているというような状況であります。
 最後に、「CSRレポート」23ページにおきましてSRIの取組を紹介しております。
 日本初のSRIファンドというのを2003年に弊社は設定しましたけれども、当初KDDIさんと新生銀行さんという2社で始まったファンドですが、現在39社まで拡大をしております。
 その後も確定拠出年金ですとか、個人向けの投資信託、あるいはゆうちょ銀行での窓販商品として、あるいは私募投信ということで発売ルートを拡大させているという状況にありまして、住友信託はご案内のように日興アセットさん、99年にエコファンドを初めて出された会社なんですけれども、そこと一緒になっていくということでございますので、今後もこちらのほうのこういった環境配慮型商品の開発というのは力を入れてやっていくということでございます。
 次に、レジュメを今度は主体にいきますけれども、資料3-1のめくっていただいて2ページ目、ここに取組の将来像ということをアイデアベースで列挙させていただいております。
 なかなか起死回生の一手というのはなくて、地道な活動が必要になるという認識なんですけれども、金融に対して環境フレーバー、スパイスとして使うというスタンスではなかなか本格的な流れにはならないと。実際にお客様や社会のソリューションにつながるということが基本観であります。
 種まきから刈り取りまで環境配慮型金融商品の取組はどうしても時間がかかってしまうということでありまして、例えば先ほどご紹介した住友信託の取組として中国のSRIですとか、あるいは省エネビジネス、エスコ事業というのも実際下準備や当局の認可ということで三、四年時間をかけているという状況があります。
 そういう意味で、環境投資の将来像を考える上ではレジュメの太枠でポイントに書かせていただきましたように、長期取組のインセンティブというものが必要なのではないかというふうに思っております。
 今後も新しいニーズやアイデアが出てくるんでしょうけれども、今既にある商品でも長期的なインセンティブの仕組みつくるということで再度拡大すると、あるいは本気になるという金融商品もあると思っております。例えば、私がやっているようなSRIファンドもそうですし、エコファンドあるいは個別の環境配慮型企業への投資といったようなこともこれに当たるというふうに思っております。
 私はSRIファンドの運用者として、いろんな企業に訪問してCSRに関するヒアリングを一社一社、行っているわけなんですけれども、CSRに関する取組ではレジュメ2ページにある(1)のようなキーワードというのをよく耳にするということがあります。全員参加ですとか、持続的成長、トップの強い決意とか、こういったキーワードが必ず出てきます。さらに環境と金融ということの方向性に関しては、(2)に書かせていただいているような声が上がってきています。
 足もとは、確かに短期的なインセンティブというのは結構メニュー的には多いというふうに思っていますけれども、ただしそれが本当に呼び水になっているものとそうでないもの、特にもっと大きなものや長期的なものにはまだまだつながっていないのではないかというふうに感じている次第でありまして、やはり長期の施策には長期のインセンティブが必要だというふうに考えております。
 したがって、私の今回の提案は実現の可能性はともかく現場レベルからの提案ということで、長期インセンティブという視点に限ってというか、そこにちょっと焦点を当てた形で提案をしていこうというふうに思っております。
 特に、レジュメ(1)で上げたキーワードの中から、自分自身も運用担当者としては常々課題だと思っていることが時間軸です。短期的な時間軸、長期的な時間軸というのをどういうふうにすみ分けていくかという点と、あと、すそ野の拡大と全員参加の意識という視点をどういうふうに取り込んでいくかというところにスポットを当てていきたいと。具体的には、個人投資家向けに1番として環境配慮型金融商品の相続税の評価額の軽減と、2番目にエコポイント対象商品としての認定と、3番目に手数料関係の補助と、4点目にこれは機関投資家向けになりますけれども法的整備と、こういった施策がいいのではないかというふうに考えております。
 ページを1枚めくっていただきまして、横長の資料になりますけれども別紙2をご覧いただきたいと思います。
 まず、相続税評価額の軽減ということですけれども、これは個人の預貯金を長期投資へ導く初めの一歩だというふうに考えています。これまでも株式市場が環境が悪化したときには必ず市況の底入れ策として、長期保有株や投信のキャピタルゲイン課税の軽減ですとか、あるいは他の所得との損益通算というのが議論されてきました。
 しかし、単に市場対策という位置づけだと環境配慮型金融商品といった場合には信頼がなかなか得られないんではないかと、やっぱり長期的に取り組むには長期的なインセンティブが必要であり、しかも環境が考える長期というのは世代がまたがるほどの長期だということであります。そこで、環境配慮型金融商品の相続税評価額を減額するという仕組みをつくって、従来預貯金という形で相続された資産を環境配慮型投資へ向かわせるというものを考えました。
 当然、今、高齢化が進んでいますので今後多くの方が亡くなっていくと、将来世代への資産移転が起こっていくということがあります。その際、相続税というものが発生するわけですが、多くの方は各種の税控除なんかによって相続税を納める必要がないと、上位5%の人が相続税を納めているということで、一部の富裕層の方が納めていると。内容的には相続財産の中身としては5割は土地です。2割が預金、金額にして預金の金額が2兆円強という形になっていまして、あと家屋・構築物が6,000億程度という形になります。
 したがって、将来世代への資産移転ということに際しては大きな位置を占める不動産ですとか、あるいは預貯金を環境配慮型へ誘導するというのが非常に重要な問題だというふうに考えています。
 したがって、環境配慮型金融商品の評価額を減額するということとあわせて、仮にその他の預貯金の課税評価額を上げると、預金は普通残高見合いで金額を換算しますけれども、これを例えば上げるということにすれば、不動産や家屋・構築物が環境配慮型になって一定の預貯金も環境金融に向かうんではないかというふうに思う次第であります。
 先ほど述べたとおり相続税を納付するのは富裕層の資金が中心になりますけれども、環境配慮にお金が流れるということで全体に対してメリットが出てきます。かつ、例えば預貯金に限って申し上げますと、この制度ができれば資金の出し手である富裕層の方々も税制面でメリットを受けると、価格が仮に下落してもその下落を税制でメリットでカバーができると、価格が仮に横ばいであれば当然節税のメリットを受けますし、価格が上がれば当然キャピタルを得られるということで一定のメリットはやっぱりあるんじゃないかと、預貯金という形で相続しなくても途中現金が必要になれば、その投信なり株なりを売却するということをすればキャッシュ化できますということであります。
 先ほど、相続財産のうち預貯金は2兆円というふうに申し上げましたけれども、人間いつ死ぬかわからないということですので、仮に5年程度前からその下準備をしたという形になりますと、10兆円のお金が引き継がれると。その中の10%が仮に投信に向かえば1兆円のお金が動くということでありまして、これは結構でかいんじゃないかというふうに思っています。
 長期的な視点で実際にお金が動けば短期筋も当然動くかもしれませんし、新たに社会的な課題に対するアイデアですとか、長期的視点を創出するといったようなインセンティブも生まれてくるというふうに思っております。
 さらに、環境配慮型企業の評価をしっかりと行うということを未上場企業にも適用するということになれば、株式上場の際には当然プラスになりますし、中小オーナー企業なんかでも事業承継といった形で、例えば子どもにその会社自体を相続していくといったときのインセンティブにもなっていくと。大企業が今一生懸命ESGをやっていますけれども、その下で中小企業がESGに一生懸命取り組んでいると、これは世の中の趨勢でグリーン調達とか一生懸命やっていると、そういった企業全体、未上場企業まで含んで長期的な社会的な課題に取り組むインセンティブというのが増していくんじゃないかと。かつ、受け継いだ将来世代というのも父親ですとか祖父母から受け継いだ資産というものを引き継ぐわけですので、そのときの理念ですとか受け継ぐわけですけれども、そのまま保有し続けるというインセンティブも働くかもしれませんし、やっぱり何のための運用なのかと、何のための投資なのかといったような運用の視点の多様化にも寄与するというメリットがあるというふうに考えております。
 一方で当然課題はあります。どうしても環境配慮型金融商品や企業をどうやって公平に評価するのかといったような視点があります。あと情報開示はどうするのかと。しかし、環境と金融を結びつけようとする限りは、やっぱり避けてはとおれない問題だというふうに思っております。
 本気で環境と金融を結びつけるんであれば、この課題を克服しなければなりませんし、あるいは相互の信頼ですとか全員参加といったようなことを行うために、やっぱりガバナンスの仕組みも必要だというふうに思います。
 したがって、今評価する仕組みをいろいろつくろうという動きもありますけれども、そういった仕組みを規制という形で使うのだけではなくて、評価される側やその周辺にも長期的なメリットがあるんだということを目に見える形で創出したほうがより能動的により実践的に自他ともになるというふうに考えています。
 あと、税の公平性についても指摘されるところなんですけれども、例えばこんな解釈ができないかということで右下のほうに幾つか書かせていただきました。やっぱり相続というのは現在世代から将来世代への移転ということで、そこで徴収されるものというのはやっぱり中長期的課題に向かうべきでしょうと。
 (イ)で書かせていただいているのは、やっぱり資産リスクがあるということであっても社会的な課題にチャレンジしているのであれば、これはやっぱり減税に値するんではないかと、むしろリスクの少ないものについては増税するということも一部考え方としてはあるんじゃないかと。
 (ウ)に書かせていただきましたのは、やっぱり現在世代同士でメリットをとるような仕組みというのでは、なかなか社会的な問題を解決するというところでの時間軸がやっぱり合わないと。また、投資を促進しましょうという形だけですと、なかなか信頼も得られないということで、やっぱり金融というのは信頼されることが大事ですので、こういった点からもいいんじゃないかなと。
 最後に、経済の活性化ということで環境で経済を活性化しようということで、これは当然活性化すれば税収もアップするということで、方向性も一致しているというふうに思います。
 あと、2番目以降にも書かせていただきましたけれども、仮に1番目で挙げた課題がクリアされればアイデアの幅というのは広がっていくというふうに思っています。例えば2番のようにエコポイント商品、今テレビとか、その辺しか入りませんけれども環境配慮型金融商品も入れてくれという話になれば、購入金額掛ける期間掛ける金利で事後計算すれば当面の財政負担というのは少なくて済みますし長く持つインセンティブも出ると、短期的なインセンティブも出ると。そのほかにもいろんな商品を評価する仕組みがきちんとできれば、誰もが納得するような仕組みができれば、いろんなアイデアが多分いろいろ出てくるんだろうなというふうに思います。
 最後に、機関投資家向けには法的整備というふうに書きましたけれども、これも現在世代から将来世代へどうやってバトンタッチしていくんだと、全員参加の感覚をどういうふうにするんだというコンセンサスづくりを踏まえて法的整備を、これは必要だという認識でおります。
 幅広にという事務局さんからの指示でありましたけれども、ちょっと焦点を私のほうで絞らせていただいて、こういった点をさせていただきました。
 私からのご報告は以上です。ありがとうございます。

○末吉委員長 向畑委員ありがとうございました。
 信託銀行という、いわゆる長期金融機関から出てきた非常におもしろいいろんな具体的提案、ありがとうございました。いろいろ議論のできる材料がいっぱい出ていたような気がいたします。しばらく、10分程度ですけれども、委員の皆様の中で少し議論いただきたいと思います。いかがでしょうか。
 はい、どうぞ。

○伊東委員 三菱UFJの伊東でございます。
 向畑委員のプレゼンテーションを、大変興味深く聞かせていただきました。その中で特に印象に残っているのが、相続と絡めるというところであります。私ども銀行、それから保険会社で、投資型年金というのがございます。これは一定期間運用してその後のキャッシュフローを何十年かにわたってもらう商品でございます。その商品の場合は、例えば1,000万が、お亡くなりになると相続財産としては預貯金ですと1,000万とカウントされますが、そういったような長期のキャッシュフローになっていますと、例えば20年ですと評価額が相続税法の24条というのがあって40%で済みます。1,000万のものが資産として400万の相続税評価額になります。
 それから、35年ぐらいになるとそれが3割、30%で済みます。そして保険商品では実際そういうような、今全額もらうのではなくて長期にわたって受け取るものに対して相続上の評価額のメリットがあるということがございます。ここら辺の考え方を、もし環境に力を入れるんであれば、応用する形で同様の相続税法24条の変形みたいな形でやれば同じようにできるのではないかと、こんなふうに感じました。

○末吉委員長 ありがとうございました。
 はい、どうぞ。

○藤井委員 非常におもしろい提案だと思うんですが、既に書かれている課題のところの認定の問題があります。この商品が環境金融、要するに税制の優遇をするべき対象かどうかの認定の仕組みが非常に大事になってくる。今、我が国でも売られているSRIファンドでも、いろんなタイプがあって、SRI型といいながらも実は環境テク投資というか、グロースファンドになっているものも少なくない。一般の投資商品との差がなかなかわからないという面もあります。ですから、税金でサポートするとなると、認定が非常に大事になってくる。
 それから、税のサポートとして相続税がいいのかどうかという議論もあります。長期的な視点ということでそれは一つの考え方ですが、実際に相続税を納めておられる方というのは非常に限定的ではないかと思います。相続税収自体は伸びていませんですね。広く環境配慮商品へのお金を流していく参考としては、オランダなどでやっているのは預貯金に対する利子の減税ですね。そういう仕組みのほうが幅広くとらえられる。もちろんその中で、相続に絞った商品ものを組み合わせるということもできると思いますが、その辺も論点になると思います。

○末吉委員長 ありがとうございます。確かに全体の絶対量としてのインパクトとしてはいろんな分野があるんだろうと思いますけれども、ただ、税金に対して先ほども向畑さんがおっしゃったとおり、現代世代だけで物を考えるのか将来世代も含めたトータルで税金のあり方を考えるのかと、これはとても大切な視点のような気もいたします。
 ほか。はい、どうぞ。

○崎田委員 今のご提案で税金と絡めて環境配慮型の金融商品にインセンティブをつけるということ自体は大変新鮮な提案で、こういうような社会になっていくとすばらしいなと思って伺ったんですが、そういう社会になって税制改革までいくというのはきっと大きなうねりが必要なんじゃないかと思うんですけれども、そういうところに持っていくまでに皆さんもこれを事業として正式に取り入れてこれからの数年間発展していこうというふうに思われるに当たって、やはりかなりさまざまな金融商品を取り入れることにインセンティブを感じるような社会につくっていかなきゃいけないという、これはそのための会議でもあるんですけれども、皆さんとしてはそういうふうな方向に向けてどういうところをチャレンジしていこうというふうに思っていらっしゃるか、もうちょっと伺えればうれしいなというふうに思うんですが。

○末吉委員長 じゃ向畑さん、どうぞ。

○向畑委員 私もその辺、具体的に何かあるということではないんですけれども、プレゼンでも申し上げましたけれども、やっぱり全員参加をすると。ただ、全員参加だけに縛られ過ぎるとなかなかやっぱり事が前に進まないということも片一方であるわけです。やはり広く投資してもらうというために、まず初めの一歩という言い方をさせていただきましたけれども、仮に富裕層の方でお金的に余裕がある方がこういうことに向かって、社会の注目も当たって、制度的には今でもいろんな制度があるんですが、なかなか目にされないというか、よく知っている人でないと知らない制度というのも結構ありますので、一つやっぱり注目される材料として取り上げて、それから横展開で、例えば最初相続から入って所得に入っていくのもいいと思いますし、やっぱり仕掛けと広がり方というのをどういう戦略でどういう順番で種まきをしていくかということは、非常にこれは議論が必要だと思いますけれども、重要だというふうに思います。それぐらいしか、すみません、今考えていることはありません。

○末吉委員長 崎田さんがおっしゃったのは、私はやっぱりこの委員会の最後に大きな問題になると思います。というのは、いろいろアイデア出すけれども全部それは外部がやってくれたら自分たちでやるという話では多分、物は動きませんので、どこが本当の最初のわだちを動かすモメンタムを力を出していくのか、そういったところはこれからいろいろ議論になるんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか、ほかに。もう少し時間ございます。
 はい、どうぞ。

○竹ヶ原委員 大変貴重なプレゼン、ありがとうございました。
 相続税の話は大変興味深く聞かしていただきました。、特に今、太陽光をこれからどんどん広げていこうとしていくときに、どうしても昔から気になっているのは日本の住宅寿命の短さでありまして、果たして相続税があるから短いのか、物理的気候的な原因で短いのかわからないですけれども、もし相続税が軽減されることで次世代により堅牢な建物を残していこうという風潮が広がるんであれば、まさに太陽光パネルを広げていこうという時に必ず制約要因になる住宅寿命と太陽光パネルの投資回収年数との競争みたいなところが一旦リセットされるのではという期待があります。10年、20年で投資の回収はできたと、あとは建物があり電池が動いている限りもうアップサイドといいますか、ひたすら相続した人は太陽光から恩恵を受けるだけになりますので、太陽光発電の普及促進にも相続税の軽減って効くのかなと、あくまで感想でございますけれども、以前駐在していましたドイツという国は相続税が基本的にない国で、この辺が公共材としての都市景観の維持も含めてかなりプラスに効いているんだと聞いたことがあるものですから、今ご説明を伺ってすごく広がりがある話かなという印象を持ちました。
 質問ですが、すそ野を広げられるということで、むしろ未上場の中堅中小企業にまでこういう環境金融の範囲を広げていきたいとおっしゃって、私もすごく共感するんですけれども、こうした未上場の会社に対するインセンティブ付けについてです。実際にやれている部分を評価してあげる、これはできると思うんですが、現実なかなかやれていない人たちに実は環境経営に舵を切ることで金融サイドからこういうご褒美があるんだよというインセンティブのつけ方について、何かアイデアなんかをお持ちであれば。

○向畑委員 イメージしていますのは、一律の相続税の資産の評価額を減額してあげるということですので、例えば未上場会社であれば、その未上場会社の資産価値というのを当然類似業種ではかったりとか、あるいは純資産価額ではかったりとか、それなりの評価の仕方が幾つかあると思うんです。その中で出てきた金額を、例えば上場会社で言うと株価というような位置づけにして、純資産レベルではかってきた資産から幾らディスカウントしてあげるんだというような手法があれば、上場会社と同じような土俵でできるんじゃないかなと。いわゆる事業承継というところに焦点を当てた形でやっています。
 私の今回の提案は現実的に社会を動かしたいと、短期的にも中期的にもということもあるんですけれども、お金の流れを通じてやっぱり人の思いというか現代世代が将来世代に対する思いというのも何とかバトンタッチしていけないかと。それは、そういった環境にいいものを後世代に残すという思いを後世代の人たちが引き継いでくれれば、そういった心の部分も金融を通じて動かせれば一番理想だなと、これはちょっと理想論ばかりで大変恐縮なんですけれども、そういった幅広いやり方は幾らでもまだ多分アイデアはあると思うので、やっぱり挙げさせていただいたキーワードが肝だと思うんですね。どの会社に行っても同じようなキーワードはやっぱり出てきますので、そのキーワードを含んだ施策がどういうふうにアイデア出せますかというところは、引き続き考えていきたいなというふうに思っています。

○末吉委員長 向畑さん、ありがとうございました。
 どうぞ。

○崎田委員 今、いろいろな流れを伺いながら先ほど人の環境に対する心のところを挙げていくようなお話もあって、ふと思い出したんですけれども、すみません、続くお話じゃないかもしれないんですが、今環境ビジネスのコンテストなどをいろいろ産官民連携で運営させていただいているんですが、今本当に技術革新だけではなくてソーシャルビジネスとか、かなりいろんな提案が出てきていて、その審査を最近もやったんですが大変おもしろいんですね。やっぱりそういうところにきちんと投資がどんどん集まるとか、やはりそういう起業とか、あと中小ビジネスとか、そういうところにもきちんと回っていくようなところで周りに見せていく、見える化していくみたいな、そういうムーブメント、見える化するということも大変重要なんじゃないかなというふうに一つ思いました。
 もう一点、私は先ほどの税金の相続税とかそういうお話を伺いながら、ふと今政府が提案していらっしゃる地球環境税とか、ああいうのがありますよね。ああいう税金の例えば税制のつくり方とか使い道とか、ああいうのでこういうところを動かしていくというのは、非常に今大きなチャンスなんじゃないかというふうにふと思いまして、ぜひそういうふうにうまく制度設計していただくとうれしいなと思いました。よろしくお願いします。

○川上総務課長 私の総政局が税制要望あるいは予算で財政当局と折衝しておりますので、今の進捗状況というか、そういうことをご参考にご紹介申し上げさせていただきますと、比較的融資の部分については省エネ投資というものが特定ができる、それから例えば3年間で3%の削減をしますとか、5年間で5%の削減をしますとか、客観的な基準があるということでございまして、今までも予算措置で、これまで例えば1%の利子補給とか、あるいは今年の補正では3%を限度とした無利子融資というようなことも実現を、お陰様でさせていただいております。
 これは今回25%の削減目標と、さらに大きな目標を今掲げておりますので、いわゆるチャレンジ25のプロジェクトということで、これは来年以降もぜひともやっていただきたいということで、私どもも強くお願いをしているところでございます。
 他方で、あるいはエコファンドについて、その周辺部の調査的な経費みたいなことは、これも今年の補正予算で措置をしていただいておりまして、こういうこともぜひとも続けるべく財政当局ともやっております。
 だから、私どもは税も含めてさらにいろいろご趣旨を踏まえた私どもの要望をいろいろさせていただいているんですが2つ実は壁ができておりますのは、1つはやはりエコファンドみたいなものを限定、先ほどからもお話が出ております環境金融商品というときに何が環境金融商品なのかタックスペイヤーズマネーを使うのであればそれをどう限定するんですかという、中身を見ると結構みんなが知っているような優良企業が例えばバスケットの中に入っているとすると、そういうものにわざわざタックスペイヤーズマネーを使ってやるんですかということで限定をどうするかという話が1つございます。
 それから、ファンドを通じてということでは、むしろ直接特定の省エネ投資を対象にして優遇するほうが政策として直截じゃないですかというご議論がありまして、主としてその2つの話があって、なかなかファンドの話の税制とか予算措置というのが今壁にぶつかっているというのが状況でございます。この場でもまたいろいろお知恵をいただいて、私ももう一つブレークスルーできればと思っておりますので、またいろいろ教えていただければというふうに思っております。

○末吉委員長 どうも川上さん、ありがとうございました。
 恐らく今の議論を聞いて私が思ったのは、目に見えない大切なものを我々はこれからどう評価して、できれば例えば税金とか、そういったものでもっともっと広がるようにできないのかという話ですよね。ですから、環境商品の客観的な基準が今ないから動かないということでは多分日本は遅れると思います。なぜならば世界は目に見えない価値をできるだけお金ではかって、それを社会で評価してもっと進めようという流れが始まっていると思います。ですから、ぜひそういったような視点での議論がこれからできればと思っております。
 じゃ、次の方お待ちかねだと思いますので、次は伊東委員にお願いいたします。

○伊東委員 それでは、三菱東京UFJの伊東でございます。
 資料3-2でございます。
 表題から1ページおめくりいただきまして、私のほうは個別企業もさることながら三菱UFJとしては銀行、信託、証券等々、幅広く持っております。グループのCSR推進部長も兼ねておりますので、本日は特に全体のフレームワークをご提示したいと思います。その中で若干口頭で数字等も申し上げられればと思っております。特に環境負荷が軽減されていく、いってみれば「価値向上」の点にスポットを当ててやっております。つまり土壌汚染等ネガティブなところではなくて、価値向上するところにスポットを当てております。
 それでは、私のレジュメの1ページで全体のフレームワークをマトリックスで書いております。これは左側の半分がいわゆるお金が直接的に環境に向かっていくという考え方でございます。一方右側は、金融機関というのは資源配分機能を持っておりますので、そういったような金融機関が各経済主体、個人とか法人に環境配慮行動を促していくということでございます。ありていに申し上げますと、左側は環境金融で直接的に環境負荷の低減が図られるものが多いということでございます。
 具体的には、(1)から(4)なんかは具体的に温室効果ガスがどういうふうに削減されていくかというのを補捉できるものでございます。一方、右側というのはその資金使途は要するに普通の運転資金、それから設備資金で構わないんだけれども、その経済主体が日ごろの活動で環境に対してよいことをやっていれば金融の商品サービスの中で何らかの支援をしていこうと、こういった考え方でございます。
 それから、上から下にいくに従って間接金融の世界、オンバランスの融資、それから投資の世界、いわゆるキャピタルで持つもの、それからオフバランス取引というような範疇、こういったようなことで全体の枠組みを整理しているわけでございます。
 それでは、次の2ページ以降で個別の分野についてお話しさせていただきます。
 まず、2ページ目の上からでございますけれども、再生可能エネルギー、リサイクルプロジェクトの関連の融資ということでございます。ここはご承知のとおり風力、太陽光、バイオマス、政府の補助金の案件が非常に多くございます。
 それから、銀行としては日本だけではなくてヨーロッパの案件も非常に多くございます。こういったような再生可能エネルギー関係が1つでございます。ここについては、ここにもうちょっと書いておきましたけれども、現状の我が国の新エネルギーの割合が3%、これをその倍弱にしたとするとCO2の削減効果が年間3,000万トンぐらい、日本の国全体としては2020年のマイナス25%を考えると4億数千万トン減らさなくちゃいけないわけですけれども、考えてみますとそこら辺で試算していくと大体我々の経験ですけれども、これは公式な数字ではないんですけれども、こういったような再生可能エネルギーのプロジェクトで1トン削減するのに要する投資額って大体24万円ぐらいなんで、仮にこの3,000万トンぐらい、この5.4%ぐらいをやろうとすると投資額はざっくり言うと、机上の計算ですけれども7兆2,000億円ぐらいの規模が潜在的にあるのかなと、こんなふうに思っている次第でございます。
 それから、次のリサイクルでございますけれども、ここについては当社も非常に勢いを持ってやったわけですけれども、現状はかなりそれが不良債権になっているものが多くございます。廃棄物系はもちろんなんですけれども、例えばバイオマスでいろいろごみ処理をしてそれでリサイクルしようとか、そういうようなプロジェクトが結構あるんですけれども、そこら辺は結構苦戦しているという実態がございます。いずれにしても(1)と(2)で、私どもで大体年間二千数百億円、融資を実行をしております。
 それで政策的課題に移りますと、政策的課題のところの2つ目、ここについては多くの再生可能エネルギーのプロジェクトが政府の補助金が入って、それでそのエネルギーを売って、それで最終的にペイをしているというのが実態でございます。
 それから、これはリサイクル案件についても同様でございます。ここら辺は実際に推進していく主体の視点から見ますと、本件委員会のように環境省さんと経産省さん、それから金融庁さんが、各々の垣根を低くしていただければいただくほどやりやすいという実態がございます。
 それから、1点申し上げますとリサイクル系のプロジェクト、特に生ごみの処理やなんかでやっているプロジェクトがあるんですけれども、実際にはどういう問題があるかというと、うまく立ち行かない理由として大体ちょっと前ですとキログラム当たり三十二、三円ぐらいで買い取らないと、リサイクルのプロジェクトはペイしないんですね。一方、東京都はいわゆる生ゴミを燃やしている焼却処理場の大きいのを持っていますよね、あれが12.5円ぐらいで買われますから、化石燃料を燃やしているほうが安くなるものですから、一生懸命そういうプロジェクトをやっても、都で買い取るほうが生ごみなんかも安く買い取られ、リサイクルプロジェクトの方はなかなかうまくいっていないと、こういった実態があることも申し添えたいと思います。
 続きまして、(3)でございます。
 国内クレジットでございます。これは、特に経産省さんで14の類型を示して、具体的にはこれは中堅中小企業、それから病院、学校、オフィス等、空調設備やボイラーの更新、ヒートポンプ等とコージェネ等々でございます。ここら辺については、これからまさに本番が来るということです。現状は数件ここら辺でやった案件を排出権を買い取って、当社もカーボンニュートラルの一環としてやったりしています。それから、経産省さん、政府からの補助金もかなり出していただいているようです。ここは今後、非常に大きくなっていくと思っております。
 ここら辺のところをざっくり言いますと、これまでの経験値、少ないデータからの試算ですが、CO21トン削減するのに必要な投資額は大体10万円ぐらいかかっているかなと思います。そうすると、例えば今度の中期目標のマイナス25%の仮に1割をこのクレジットでやっていく、最終的にはエネルギー消費が減っていくという考えですけれども、やろうとすると結構マーケット的には年間4兆円ぐらいの潜在的な規模もあるんじゃないかなと思っております。そういった意味では非常に重要なところでございます。
 よって、ここについてはグランドファザリングでやるのかオークションでやるのかベンチマークでやるのか、それも含めてキャップを決めてキャップ・アンド・トレードでやるのか、一部のエネルギー供給とか、それから素材については別枠でやるのか、そこら辺のはっきりとした仕組みを決めていくことが重要でございます。それで引き続き補助金等も入れていかないと、なかなかインセンティブは働かないのか。金融機関としてはそれを融資でやるかリースの形でスキームを組んでやっていくのか。また、出てきた排出権についてはそれを流通させていくということでございます。
 続きまして、(4)でございます。
 これは海外のCDM、途上国、それから東欧等の先進国の場合はJIでございますけれども、ここについては非常に最近顕著で中国とブラジルの案件がどんどん出始めております。現状は我々はどういうことをやっているかというと、国連での認証が必要でございますので、私どもの場合は証券がそこら辺の手法をアドバイザリー業務で非常に強いものですから、そこでたくさん関与させていただいています。そこでアドバザリーフィーもいただいておりますというのが1つです。それから、できたCDMの流通媒介もやっているということがございます。
 ここで申し上げたいのは、その前の(3)が大体1トン削減するのに10万円ぐらい我々のデータではかかっているんですが、海外クレジットでいきますと1トン削減するのに必要な投資額ってその5分の1ぐらいですね。2万円ぐらいかなという感じを持っています。つまり内外のクレジット、排出権というか、そこでは内外価格差がはっきりとある。それだけ日本という国は非常に省エネが進んでいて1トン削減する限界コストってやっぱり高いんだなと、海外のほうが安いんだなというのを実務としては非常に実感しているというのが実態でございます。
 仮に今回の中期目標の5%から10%を海外クレジットで賄おうとすると、年間大体4,000億から9,000億ぐらいの投資規模かなと、こんなふうに思っております。ここに書いてある例はこの間の慶應の野村先生の例で、仮に全体の9割なんて書いてありますけれども、非現実的であると思いますけれども、何が言いたいかというと内外価格差が大きいということでございます。
 それから、政策的な課題としては、やっぱりここら辺のCDMプロジェクトがうまく回るかどうかわからないので、そこら辺の履行保証というか、例えば輸出入に関してはサプライヤーズクレジットとかバイヤーズクレジットという形で、輸出入の手形保険がありますけれども、CDM関連プロジェクトにおいても、そういうような仕組みなんかができると、もっとやりやすくて投資が増えていくだろうと思います。
 今後については、例えばこの間、新日鉄さんが中国で技術を供与してCDMになるといったような、従来は割と小振りの案件がバイオマス等で多かったわけですけれども、今後についてはいわゆる日の丸案件というんですか、そういったものがODAのグリーン化の発想かもしれませんけれども、それでCDMにしていくような、こういったものが中国とかブラジルとかはより一層増えてくると、こんなふうに思っております。
 続いて、3ページ目でございます。
 5番目が今度はリテール、個人の分野でございます。
 ここら辺がまさしく環境配慮型の住宅、それとエコカーでございます。ここについては直接的に環境負荷低減を補捉するようなこれまでのものとは違いますが、結果的にエネルギー消費が減っていくというところです。ここについては現状の取組というのはまだ本格化しておりません。年間でまだ十数億円ぐらいしか出ていません。ただ、個別の住宅メーカーとかなり提携をして環境配慮型住宅のインセンティブのある融資の金利等の優遇をやっております。
 ここについて右側の政策的課題を見ていただきますと、環境配慮型住宅の基準をきちっと決めた上で、以下のようなことが考えられると思います。具体的には、もちろん新築でソーラーパネルのついた住宅をつくるというのもあるんですが、かなりの方が住宅ローンを借りていて、何年かして返済が進みます。そうすると、自分のお宅の担保に余力が出てきます。そこら辺の枠空きをうまく利用して、例えばエコキュートですとか、いろんな断熱材とかそういうような環境配慮型のリフォーム、そういったようなことが一つ考えられると。
 それから、エコカーを購入する場合でも住宅ローンの担保の枠空きなんかを利用して低利で貸す。なぜかというと、従来そういったものを無担保でやると結構金利が高いんですね。また、ここに書いてあるように不動産取得税の問題とか、抵当権を設定するとなると、それについての登録免許税の問題とか、それから金銭消費貸借契約の印紙税の問題とかが起きますので、こういったところの税制措置をぜひお願いできないかなと思います。
 それから、司法書士さんに登記をお願いしますので、そこら辺についても、その分程度は自動車とかエコ家電だけでなく、こういうところにも補助なんかを出していただければ、ぐっと伸びるのではないかと思います。
 それから、いわゆる賃貸住宅もこういったようなエコの設備をした場合には、これは銀行から金を借りて建てる場合が多くございますので、提案としては賃貸住宅でも非常に優良なものを供給するわけですから、法定耐用年数を延ばしていただけないかと思います。そうすることによって、銀行とすれば長い期間で貸せますから、年間の返済額が減ります。そうするとマンションの上がりと返済金額のキャッシュフローが非常によく回るようになる。こういったようなこともお願いできないかなと思っております。
 続きまして、6番でございます。
 6番はインフラの世界で一言で言いますと、どちらかというと川上サイドの施策が多いのでこれからは例えば太陽光なんかも個人がどんどん発電して、それを逆に電力会社に返すのがもっと拡大してくると今の電力の送電網で本当に大丈夫かという問題があるので、効率的にエネルギーが回っていくインフラ作りにも投資していく必要があるんではないかということでございます。この辺のマーケット規模は、まだ出ておりません。
 それから、7番目が環境ファンドでございます。
 環境技術を有するアーリーステージの企業には、中々、融資という形では対応が難しく、どうしてもキャピタルで、要するに私募のファンドなんかにしていくということでございます。そして、これはその企業が公開したりとか、どこかにM&Aされたりとかすると、大きなリターンが帰ってくるという長期の話でございます。ここら辺については、特に投資をする、これだけ個人のマネーが余っているわけですから、個人のいわゆるプライベートバンキング層、俗にいう富裕層と言う方も多いですけれども、そこら辺のマネーとうまく結びつけるということでございます。投資額を所得控除すれば、限界税率が高い方なのでインセンティブが働きます。
 それから儲かった場合の減税措置、それから損をした場合に所得と損益通算をするということです。ここら辺が整備されてくると、ぐっとお金が回りやすくなって、こういったようなファンドを組成しやすくなるのではないかと。
 それから、排出量取引については先ほど申し上げたようなとおり、8番でございますが、特にやっぱりこれはマーケット的には排出量のところはベースの額面としては1,000億ぐらいかなと思っております。よって、それが実需として回るんですが、どうしても円滑な流通のためにはうまく流動性を供給していく機能が必要でございますので、これを政府がやるのか金融機関がやるのかどの経済主体がやるのか、ここら辺を決めていく必要があるということでございます。
 それから、9、10については、関さんにお任せしたいと思います。
 続いて、右側でございます。先ほどのマトリックスの右側のところが4ページ、最後のページでございますが、ここについて若干ご説明をします。
 (1)が環境に頑張っている企業にインセンティブをというような発想でございます。そこについて申し上げたいのは現状、私どもで中小企業でエコアクション21をとったり何かしていると、その取得の経費である10万円相当をすぐキャッシュバックしてあげて、そんなような中小企業商品はつくっております。年間100億円程度やっております。
 ただ、ここで特に申し上げたいのは今後はやはり間接金融の先でもSRI的な発想を進めていく必要があるということで、これは簡単ではございません。具体的なイメージとして私どもが持っているのは、経産省さんが去年から今年に対して進められた企業の環境力評価の仕組みですね。あれは、非常にピッチアップをして固めていったらいいんではないかなと思っています。あれは、もちろんSRIとも共通する大企業のところの環境力の評価がありますが、将来的には中小企業にも応用できると思いますので、非常に興味深く私どもも見ております。ここら辺が決まってきますと環境先進企業と認められるところが、いわゆる上場の大企業から中堅・中小へとセグメントが下りてきます。そうすると、私どもはそういったような環境配慮の基準が公である程度決まってきますと、そこで認められた先進企業と自分たちの貸出のポートフォリオ等をひもつけなんかもしていくことができます。そして、そういったようなところのゾーンに入ってくる企業が増えていけば増えていくほど、結果的に日ごろの経済主体としての行動でエネルギー消費が少なくなっていくだろうと、これはボディブローのようですが実は2020年までのを考えていくと、こういったことをSRIとは別に間接金融の世界できちっとやっていくということが非常に重要なんではないかなと、こんなふうに考えております。個別金融グループの戦略もかなりある分野なので、すみません、レジュメはさらっと書かせていただいておりますが、実はここら辺は非常に重要だと思っております。
 それから、(2)は環境格付、例えば政策投資銀行さんとか滋賀銀行さんやなんかでおやりいただいていますね。環境で格付をしたら、金利のインセンティブを与えるということです。ただ、この(1)と(2)について申し上げたいのは、私どもは民間金融機関ですから、ご預金をお預かりしているわけでございます。そこは安全確実に、少しでも高い金利で運用する義務もございます。そうなってくると、デフォルト率を考えてネットスプレッドの高い順に貸出を割り当てていくというのが経済原則でございます。ただし、私ども金融機関としても、それに加えて環境にいいことをやっている企業というのは社会的な利益に貢献しているわけですから、金融機関の社会的な責任として、そういう部分もよく見て自分の銀行のスプレッドの利益には入っていないけれども、社会的には利益があるんだから、そういうところには資金を融資という形で割り当てていく、こういうような考え方が必要だと思っております。ただ、一方でステークホルダーとしては株主さんもいらっしゃいますので、そこはきちっと「CSRレポート」等で開示をしていくということです。こういったことが重要であると考えているわけです。
 そして、最後に(3)のSRIファンドでございます。
 これは2つの側面がございます。1つはリテールで個人に売っていくこと、それからもう一つは企業の厚生年金基金、それから公的な年金にアプローチしていくことがございます。特に前者の個人向けのSRIについては、先ほどのファンドのところと同じ考え方ができると思います。実際問題としてなかなかパフォーマンスがと考えている投資家が多いことも事実であります。よって、先ほどの投資額の控除とか損益通算とか利益の非課税とか、そういったことを考えていく必要がある。一方、企業の厚生年金基金については受託者責任との関係でSRIには慎重になっている方は最近は少ないと思います。そして彼らは基本的に厚生年金基金をつくっていると非課税でございますから、個人のような税制上の優遇がインセンティブになるというのは聞きません。彼らが思っているのは、やっぱりパフォーマンスの問題でございます。私どもの銀行でも厚生年金基金があって7,000~8,000億円の基金の運用をやっており、一部SRIを入れていますけれども、残念ながらSRIが一番パフォーマンスが低いという足元の状況がございます。ここら辺の状況もあります。ただ、やはりこれを本当に伸ばすには一定部分そういうものに投資してくれとか、何か行政で決めていかないと難しい面もあるのかなと本音では考えている方もいらっしゃるというのが実態でございます。
 すみません、最後はちょっとネガティブなことを申し上げましたが、以上でございます。

○末吉委員長 伊東委員、ありがとうございました。
 現実の金融商品とか技術、サービスを使った現実のお話と、それが少し壁にぶち当たっているところなどから、さまざま問題提起をしていただきました。ありがとうございました。
 委員の皆さん、いかがでしょうか。はい、どうぞ。

○筑紫委員 どうもありがとうございました。
 都市銀行ということで、いろいろ環境格付とか、そういったものについては専門性というものを確立しておられると思うんですが、融資をされるのであれば預金をSRI預金という形でこの預金にお金を預ければ、この融資についてはすべて環境なり、いわゆるCSRということをきちっとチェックした融資をしますよというような預金を開発されるというようなご予定というのはないんでしょうか。

○伊東委員 今のご質問については、具体的に現実的な預金の制約のことを考えると、お客様自身は銀行のコーポレートリスクに対して預金をされていますので、結論から言うと、コーポレートリスクに対しての預金を特定のものにだけ融資するのは中々難しいと思います。
 ただし、こういうことはできると思います。俗にいうフィデューシャリーベースというか、SPC等をつくってそこで、それは預金の形になるかどうかわかりませんけれども、信託受益権にしてもいいですし、出資をしていただいてもいいですし、そこで集まったお金はそういうような環境配慮の融資だけに向けますと。そして、それが多くの金額が集まってそこの企業が分散されれば、それから格付的にもデフォルト率もわかっていますので、例えば一部にはその予想デフォルト率以上パーシャルな保証を入れて、元本が極力安全なような商品にして、そこで仕立てていくというか、そういったようなことはできると思います。

○末吉委員長 伊東さん、最初おっしゃったコーポレートリスクでとっているというのはどういう意味なんですか。

○伊東委員 いわゆる三菱東京UFJ銀行のクレジットリスクで預金をしているという意味であります。

○末吉委員長 それは、預金者が三菱東京UFJだから安心だと。

○伊東委員 ということでございます。

○末吉委員長 だから預けていると。

○伊東委員 はい。ですから、資金使途まで特定していくとなると、一種のファンドとか信託とか、そういう形でやっていかないと厳しいかなという感じです。証券化商品でもいいです。

○末吉委員長 つまり、広く浅く入ってくる一般預金を、その資金使途を特定化するのはできないと。

○伊東委員 はい。それから、逆の発想をすれば、融資ポートフォリオの中で将来的な話ですけれども、環境に関連している部分だけ切り出して、それを債権譲渡して、それをアセットバックで証券化して売るとか、信託受益権として売ると。恐らく今のご質問については、そういう発想のほうが近いのかなと思います。

○筑紫委員 ありがとうございました。

○末吉委員長 はい、どうぞ。

○藤井委員 今、ご説明のあったスキームは既に日本の地銀で一部やっています。エコ預金として集めた資金を特定のエコクリーン融資に回している金融機関があります。現状でもやろうと思えば、できるということだと思います。
 1つお聞きしたいのですが、最初にネガティブな部分ではなくて価値向上というふうに言われました。つまり金融機関にとって、例えば融資先の土壌汚染というのはネガティブな面があるわけですが、そうした土壌汚染のある土地を融資先が浄化をすれば担保価値が向上するわけですね。ですから、金融にとってみれば環境は一つのリスクですが、オポチュニティーの部分も当然ある。要するに信用リスクに影響するところを改善することによって、金融機関の評価の中で、あるいはファイナンスの中で解決することによって、その物件あるいは融資のパフォーマンスも上がると同時に、国全体の環境価値がアップする。ですから、インセンティブは非常に大事であると同時に、まず金融機関としては、債務者のオブリゲーションをしっかり把握して、それを最適化する役割を私はすごく期待しています。その辺の環境リスクの把握という点については、MUFGではどのようなスタンスで取り組んでおられますか。

○伊東委員 すみません、今日のご説明自体が多分にマイナス25%を意識して、そこに直結している部分からと思ったので、今のご質問のところにはあえて書いてございません。
 国内では、典型的には土壌汚染をしていないか周辺環境に悪影響を及ぼしていないかというのは、個別案件ごとの融資のところの具体的にはホワイトシートと呼んでいるんですが、そこのところでチェック項目があって、そこでネガティブチェックを、案件ごとにやっております。
 それから、海外で典型的なのは赤道原則であります。例えばサハリン2とか皆さんご存じだと思いますが、いわゆる生態系に悪い影響を及ぼしていないか、これは国際的な赤道原則の仕組みで加盟行がございますので、それにのっとって幾つかの側面からやってそこら辺も説明をしながらやっていくということでございます。そのような形で環境にネガティブな要素を与えていないかというようなチェックは、ここは基本だと思っております。
 今日の説明の中にそこも入れちゃうと、ちょっと持ち時間の中で説明できないと思いましたので、あえて捨象しております。

○末吉委員長 はい、関さんどうぞ。

○関委員 伊東さん、ありがとうございました。
 保険のところも含めて包括的にお話しをいただきまして、ありがとうございました。
 今の土壌汚染の問題については後ほど私のプレゼンの中で、土地の流動化を促進するような仕組みや、土壌汚染リスクに対する保険のアプローチというのを少しお話ししようと思います。もう一つ伊東さんのプレゼンの中で、CDMの履行保証というのを挙げていただきました。ちょっと何のことがわかりづらいかと思うので、一言だけコメントさせていただきます。これは今後保険会社の役割として重要だと思っている、保険機能を使って企業の取組を後押しするというか、技術開発や新たな環境ビジネスを後押しするひとつの例です。CDMについては、CDM事業をする主体企業が相手国で契約を取り交わすときに、保証を求められます。信用保証とか、履行保証とかですね。その場合に保険会社が保証保険などで保証機能を提供することによって、そのスキームが前へと進んでいきます。これを取り上げていただいているんですけれども、やはり今後環境問題解決のために機会を求めて新分野に進出する企業のさまざまなリスクをカバーをしていくというのが、保険会社の重要な役割になっていくと思います。

○末吉委員長 関さん、ありがとうございました。
 実は先ほど伊東さんが赤道原則という言葉を使われたんですけれども、皆さんはこの委員の方々はご理解いただけると思うんですが、会場に来ておられる方にちょっと理解できない専門用語がこれからいろいろ出てきかねないと思いますので、そういうときには少しその意味を説明していただいたほうが、より会場の皆様を含めて理解が進むと思います。
 少し時間が迫ってまいりましたけれども、伊東委員への何かご質問ございますか。
 じゃ、どうぞ崎田さん。

○崎田委員 例えば、今の資料の4ページの右のところの政策的課題のところに、先ほど金融的ないろいろ商品を増やしたいと思ってもやっぱり課題として、その企業の環境力をどう評価するかとか、やはりそういうところが課題だということを盛んにおっしゃって、前のときのいろんなやりとりの中でも、どういうふうにそれを評価するかというのが大変重要だということになっていますが、先ほどの話の中でいろいろ審査の取組などでもそういう評価手法の開発が始まっているのでということで期待されていましたけれども、銀行自体がこういう評価の仕組みの中にきちんと環境的な要素を強く入れていこうという、何かそういう内部改革のようなムーブメント、いわゆる1社だけではなくて協会があると思うんですけれども、そういうところのムーブメントを起こしていただくということが入り口としては大変重要なんだと思うんですが、そういうのをどういうふうに今仕掛けていただいているか、ぜひ伺いたいなと思います。

○伊東委員 今のご質問なんですが、実は相当深い問題を含んでおります。つまり、こういうことであります。企業への環境を中心としたいわゆる非財務面、インタンジブルなアセットの部分の評価というのは例えば経産省さんの環境力の評価ですとか、日経さんの環境力調査とか、カーボン・ディスクロージャープロジェクトとか、いろんなものがあるわけですが、そういったものをもとにして環境への頑張り度合いを、融資のプライシングとか取引面でのインセンティブに反映すること、ここまでは割と簡単にできるんです。そして、そういったものをもとに、それぞれの銀行の中で、私どもではこういう環境への取り組みを見ますというところまではできるんです。
 ただし、難しい問題は信用力、つまり格付そのもののプロセスに環境への取組をどう入れていくかというところなんです。そこについてはありていに申し上げますと、ざっくり言って中堅中小企業も含めて業種横断的に1,000社ぐらいで5年ぐらいのデータベースがあって、非常にいろいろな統計的な分析もやって、そういったデータの蓄積を経ていかないと本当にしっかりしたものはできないんですね。
 そして、そこについてのデータが、まだはっきりとしたものが無いんですね。よって、そこら辺の課題には若干時間がかかると思いますが、中期的な課題としてやっていかなければいけないなと。それは個別行としてやるというよりは、経産省さんの環境力評価の基準のようなものがきちっとできてくれば、そういったものも活用していく必要がある。そのためには、もしかしたら大企業中堅企業レベルでは環境への取り組みを有価証券報告書に入れるのかもしれませんし、中小企業の環境への取り組み状況のデータも収集したりと、何かそういったものが、すそ野が拡大していくとそういうところまでいくだろうと、こんなふうに考えます。いずれにしても格付というのは相当精緻な統計的な分析をいろんな側面からやっていますので、そういったものも入れていくためのデータの収集をきちっとしていかないといけない。こういうような問題意識でおります。

○末吉委員長 ありがとうございます。
 崎田さんご指摘の点ですけれども、欧米の多くの銀行はもうポジションステートメントとして出しているんですよね。例えば、気候変動に自分たちはどう考えてどう取り組むか、それを自分たちのビジネスにどう反映させるのかと。ですから、これはこの委員会のテーマの1つにも、日本の金融機関に対してそういったことを求めるかどうか議論できればと思っております。
 それから、ご存じのとおり、例えばブルームバーグが世界の40カ国以上の3,000社以上の企業についてESG情報をもうオープンで出し始めております。ですから、単に従来の財務情報だけで企業は判断するという時代は終わりつつあるというような認識も必要かと思います。ですから、金融機関にとってみれば、特に銀行にとってみれば従来の審査判断をしてきた基準になる経済計算が従来どおりの経済計算で新しい動きを見ていけるのか、それとも新しいこういう時代の変化に新しい経済計算を銀行が取り込んでいけるのかどうかですよね。こういったような視点が私は重要なような気がいたします。
 どうも伊東委員ありがとうございました。
 じゃ、関委員よろしくお願いいたします。

○関委員 それでは、お手元の資料に沿ってご説明させていただきます。
 会社概要等は簡単に済ませますけれども、損保ジャパンは金融機関としてはいち早く環境問題に取り組んできました。来年2010年4月に経営統合を予定しておりまして、この新しいグループのビジョンの中にも3番目として環境というキーワードを盛り込んで、さらに力を入れていこうということでございます。
 めくっていただいて、現在の事業概要は損害保険を軸として生保、DC、アセットマネジメント、ヘルスケア等々、総合サービスグループということです。環境問題と損害保険というのはあまり関連づけのイメージがわきにくいかもしれませんが、実は地球環境リスクというのが非常に大きくなってきています。これはデータからも明らかで、大規模自然災害への保険金の支払いの顕著な増加傾向を見て私どもは危機感をいだき、この問題に正面から向き合っていこうということで取り組んでまいりました。その中でも特に、当社の環境方針の第一に掲げているんですが、保険商品あるいは金融商品そしてサービス、つまり本業での取組に力を入れてまいりました。
 6ページ目には、現在の当社CSRの4つの重点課題を示しております。この中で今日主にお話しする部分は、一番左側の「気候変動における適応と緩和」です。適応それから緩和、この2つのいずれの側面でも保険会社というのは重要な役割を果たしていく、ユニークなポジションを持っているということでございます。適応に関しては、まず財務体質強化、これは保険会社の本業自体が社会全体の気候変動への適応機能の一部、という側面を持っておりますので、将来にわたってこれに応えられるように万全の準備をしていくということがあります。それから、途上国へのリスクファイナンス、具体的に言うとマイクロ・インシュアランスです。途上国はまだ損害保険が普及しておりませんので、気候変動に対して非常に脆弱な途上国において保険を普及させることも、社会の適応機能を高めるために重要だと思っております。それから、ミチゲーション、つまり気候変動の緩和に寄与する保険商品の開発・提供、これも大きな課題です。CSRレポートでもご紹介しているように、これまでにさまざまな保険・金融商品を開発してまいりました。
 1つ飛ばしましてCSR金融、これは具体的にはSRI投資の普及ですね。あるいはプロジェクトファイナンス、PFI等の公共性の高いファイナンスへの参加といったようなことをテーマとして挙げております。次の7ページ目に「エコ・ファーストの約束」、その中身が左側の枠内に書いてありますが、ここでも金融・保険機能を生かした商品・サービスの提供に一番力を入れていきます、と言っております。
 具体的な商品・サービスの一覧が8ページ目に載っております。ここで少し概観して、その後幾つか事例をお話ししたいと思います。全体を保険、金融、サービスと3つの区分にしております。
 まず、保険ですが、1つは自動車保険ですね。私どもは今、収入保険料の6割ぐらいが自動車関連でございますので、例えば「対物全損時修理差額費用特約」ちょっと名前が長く専門的でわかりづらいかもしれませんが、要は自動車の修理を促進しようということです。全損とみなされると、事故車は廃棄物になってしまうんですが、支払い保険金を上乗せしてでもできるだけ修理していただく。通常ですと保険というのは損害の実額、あるいは協定保険金額までしか払えないんですけれども、それを超える修理費用もお支払いするような、そういう保険の特約をつくっているということです。それから、リサイクルバンパーなどリサイクル部品の活用推進、あるいはエコ安全ドライブ、これらは啓発活動としてやっております。
 金融商品については、損保ジャパン・グリーン・オープン、エコファンド「ぶなの森」という商品ですが、これを99年に発売して、ちょうど10年になります。これまでの実績としては個人投資家向けが中心ですが、年金など機関投資家に向けの私募エコファンドも用意していますので、拡大を図っていきたいと考えています。また、イオン銀行さんとの提携で、配当型を組み込んだ専用商品も開発しました。こうして投資家ニーズに応えてラインナップを拡大してきたということです。それから、スクリーニングの視点をエコに限定をしないSRIファンド、これについては2005年から、「未来のちから」という商品を出しております。
 3つめの保険・金融商品以外のサービスとしては、損保ジャパン・リスクマネジメントというグループ会社が提供しているサービスの数々があります。たとえばISO14001の認証取得コンサルティングですとか、あるいは最近ですとCASBEE、建物の環境性能の評価検証等のサービスもやっております。
 以上、概観をお話しましたが、それでは以下、幾つかの具体的な事例についてご紹介をしてまいりたいと思います。
 まず廃棄物関連ですと、産業廃棄物の排出者責任保険というのがあります。廃棄物処理法の改正で2001年以降、排出者責任が重くなったのに合わせて、損害賠償責任をカバーする保険という形で開発をいたしました。
 それから、先ほどもお話に出ておりました土壌汚染に関する保険ですね。これは幾つかバリエーションがあるんですが、2つ基本的なパターンをご紹介しますと、シロ保険、それからコストキャップ保険というのがあります。シロ保険というのは、一旦汚染なしと判定された土地に後日土壌汚染が発見される、というリスクをカバーする保険です。コストキャップ保険というのは、文字どおりコストの上限をはめるということです。土壌汚染調査でクロ、つまり汚染ありと判定された場合に、浄化費用の見積もりをまず行います。で、実際に浄化作業をしてみたら見積もりを大幅に上回ってしまう、これはあり得ることで一つのリスクですから、土地所有者の負担に上限を設定し超過部分は保険でカバーしよう、こういう保険でございます。最近ではブラウンフィールド活用促進を目的に、さまざまなパートナーと組んで汚染された土地の浄化コストを低減する方法を提供し、土地の流動化を促進するといったことで社会的価値を生み出すサービス、これも取り組みの一環として手がけております。
 それから次に10ページ目、天候デリバティブをご紹介します。具体的なイメージを例をあげてお話しすると、こういうことでございます。左側のグラフが気温の変動ですね。これによって売上高が変動する業種はたくさんあると思います。特に、異常気象が生じた場合に大きな損害が出る。そこで、この気温を指標として、予め定めた一定の条件を満たすと補償が得られる、これがデリバティブです。一定条件を満たせば自動的に補償が得られますので、実損害額の査定つまり通常の損害保険金支払いに不可欠な損害調査が不要になるんですね。したがって、非常にスピーディーにお支払いができる、こんな特長があります。
 これは、具体的な事例として途上国での農業保険、天候インデックス保険というところに応用いたしました。資料は17ページ、18ページ、参考資料の1枚目と2枚目です。タイ東北部の農業地帯は、水資源に乏しく雨水のみに頼った農業なんですが、気候変動の影響で最近干ばつがひどくなってきています。そこで、干ばつによる農家の収入減に備えて、農業ローンの返済に困らないように、タイ農業銀行とタイアップして、降雨量を指標としたローンに付帯する「天候インデックス保険」という農業保険を開発しました。降雨量が約定水準を下回った場合に、緊急の補償が受けられ生活基盤を守ることができる仕組みです。これは天候デリバティブの特長を生かした応用例であり、途上国におけるマイクロ・インシュアランスの一事例でございます。
 10ページに戻っていただいて、もう一つ、いわゆるミチゲーションつまり緩和のほうにもこの応用ができるということで、新エネルギー関連のデリバティブの事例を載せております。太陽光発電システムの個人住宅向け導入を促進するために、天候不順により日照時間が期待を下回った場合に備えて、日照時間という具体的なインデックス、指標を基準に発電量の減少リスクをこのデリバティブを活用して補償する保険を開発しました。自然エネルギーの弱点を保険で補うという、これも金融面から再生可能エネルギー利用促進を後押しするスキームでございます。
 11ページ、12ページは金融商品ですが、1つめはエコファンド・SRIファンドです。当社は99年の9月から、「ぶなの森」というエコファンド商品を開発・販売しております。特に私どもが力を入れてきたのは、環境コミュニケーションです。投資家と企業、それから企業の環境取り組みを評価する調査会社は損保ジャパン・リスクマネジメントというグループ会社ですが、三位一体といいますか、その3者間の環境コミュニケーションを活発にしていこう、それによって投資家も企業の取組をよく理解していただき応援していただけるように、と考えています。具体的には、運用報告書や「ぶなの森ニュース」等のさまざまな媒体で先進企業の好取り組み事例を紹介するなど、情報共有に力を入れてきました。また、SRIの一層の普及のために、ラインナップとして年金向けの私募エコファンドですとか、機関投資家向けの私募エコファンド、こういった商品もつくっています。しかし残念ながら、まだまだボリューム的には個人投資家のウエートが高いというところです。
 それから、金融商品の次の例が12ページでございます。グループの損保ジャパンクレジット社で発売した「リフォームローンecoプラン」、これは温暖化対策となる住宅リフォームを対象としたローンに、全国の里山・里地保全活動の支援を組みこんだ個人向け金融商品です。
 13ページが自動車保険関係の啓発普及活動、「エコ安全ドライブ」です。エコと安全、この2つのキーワードを結びつけたんですが、このポイントは、13ページの右下の棒グラフを見ていただくと一番わかりやすいと思います。エコと安全が密接不可分に関連しているという実証データです。グラフではエコドライブを心がけて、燃費は8%改善しました。一方、会社としての事故件数はその間ほぼ半減をしたという結果がでています。したがってエコドライブを実践すると安全面にも大きく寄与する、これを広く呼びかけようと、損害保険協会が中心となって業界ベースで推進しております。
 最後に、14ページ、15ページに今後有効と考えられる政策についての提言を4点にまとめてございます。
 最初は、異常危険準備金制度の充実です。昨今自然災害の増加、特に台風損害の増加が非常に顕著になってきています。日本でも2004年に史上最高の10個の台風が上陸しまして、業界全体で7,500億円近くの保険金支払いがありました。そのため異常危険準備金をかなり取り崩しまして、現在はピーク時の半分ぐらいの準備金しか積めていないという状況でございます。したがって、今後自然災害への十分な担保力を確保するために、収入保険料の一定割合、現在4%という水準となっている無税積立率、これを維持・増強していく必要があるという問題意識を持っております。
 それから2点目が、先ほども申し上げたように、これから非常に重要になってくると思う点ですが、企業のイノベーションを後押しするような、新しい保険サービス、その保険に対するインセンティブを考えていくべきではないだろうかということです。新しい環境技術の開発に伴うリスクというのはさまざまな未知のリスクがありますし、予測がなかなかできない、しかも過去の統計データが適用できません。そういう場合に活用できる保険の手法として、ちょっと専門的になりますけれども、ファイナイトという新しい手法があります。15ページの下に仕組み図が描いてあります。企業契約者を対象にしており、契約者にもリスクを一部保有をしていただきます。当然ですが保険会社が残りのリスクを引き受けます。その真ん中にあるのが、保険料の積み立てなんですね。毎年保険料をお支払いただき、保険ですから初年度から同じ額の補償が得られるように仕組むわけですが、リスクを一定期間内の時間軸で分散するという考え方です。ファイナイトという言葉は、保険会社に移転するリスクを「一定に限定する」という意味で使われています。お客様と保険会社の間で一件一件オーダーメードで、ニーズに合った保険の仕組みをつくっていきます。これはまだ保険としては新しい分野なので、いわゆる保険料の損金計上が認められていないんですね。ですから、こういう保険についても、特に新たな環境技術に関する新しいリスクをこのファイナイトで引き受けるといったようなときに特別措置を講じる、つまり損金計上を認め税制上優遇することも、環境技術開発への大きな促進材料になるのではないかと思います。
 3点目はSRIの促進です。これについての2つのキーワードは「情報開示」、それから「公的年金基金のイニシアチブ」、ということになると思います。まず情報開示の促進、そのための制度をきちんとつくっていくこと。そして欧米の例にありますように公的年金がリードする。フランスの公務員退職年金準備基金等の事例にもありますが、SRI運用を積極的にまず公的年金が取り入れていく、そのための政策誘導が不可欠だろうと思います。
 それから、最後4点目に研究開発・金融研究の促進です。例えば先ほど事例としてお話しましたタイの天候インデックス保険が、国際協力銀行さんとの研究会に端を発したものでございます。これからは官民さまざまなステークホルダー間での共同研究が、ますます必要になっていくと思います。ちなみに、研究をしていく上で、これは金融そのものの課題ではないんですけれども、気象データ、災害データ、こうした基礎データの整備が欠かせません。これは共同研究や商品開発の前提になると思います。
 以上です。

○末吉委員長 関さん、ありがとうございました。
 損害保険というのは、経済活動はもとより我々市民の日常生活においても欠かせない大変重要な金融サービスであります。一方では温暖化が進むと風水害を主体に多くの被害が発生し、そのこと自体が損保業界の存亡に関わるんだと、こういうような非常に深刻な問題でもあります。そういった中からさまざまな新しい商品とか考え方をご紹介いただきましてありがとうございます。
 委員の皆様方いかがでしょうか。

○水口委員 それでは一言だけ。大変興味深く伺いました。異常危険準備金というのは基本的には損害保険会社さんが積み立てるものなんですね。

○関委員 はい。

○水口委員 これはでも責任は、つまり気象リスクが高まってきたという責任は損保業界だけにあるわけではないので、そういうものの積み立てというのももう少し幅広く、例えばCO2をたくさん出しているところとかに求めていくという考え方もあるのかなと、ちょっとそんなことを思いながら伺いました。

○関委員 異常危険準備金というのは火災保険の制度ですが、火災保険は火事だけではなく風水災にもお支払いしていますので、昨今では台風、洪水等による支払いが相当頻発して規模も大きくなっています。末吉さんがおっしゃったように、保険会社の経営に関わる非常に大きな問題だというふうにとらえています。そのために一定割合の無税積立が認められている異常危険準備金制度があるんですが、これを何らかの形で拡充していかないと、社会全体のそれこそ気候変動への適応という面で支障が出てくるということです。

○水口委員 ただ、アメリカのスーパーファンド法ですと、土壌汚染の浄化のファンドを化学品メーカーに一定程度拠出を求めている。同じ考え方があり得るかなとちょっと思いました。

○末吉委員長 実は保険を掛けていても保険会社が支払いの事例が発生したときに倒産したら何の役にも立ちませんということですから、損保会社というのはやっぱり自社の持続可能性というのは大変重要で、実際の損害保険金の支払い能力を絶えず確保しておくと、これはもう社会全体のニーズですよね。ですから、今年の何月でしたか、アメリカの損保保険当局がすべての損保会社に対して地球温暖化に関わるリスクとオポチュニティーを義務として情報開示しろという要求が出ました。これは来年から始まるようです。こういった場合にやはり損保会社自体の財務内容健全性、持続可能性はこれは社会全体にとって大変大きなインタレストであると思います。
 いかがでしょうか。はい、どうぞ。

○崎田委員 私も今先生がおっしゃったお話が非常に大きな、いわゆる損保会社さんがこういう気候変動というものに関してこれだけいろいろなメニューをやってくださるというのは大変すばらしい流れだと思うんですが、本当にどんどんこれからはっきり言えば支払いが増えていくであろうという時代ですので、それを担保するのがこの異常危険準備金制度だけなのか、何かもう少しきちんと担保していくような仕組みを広げないと大変なんじゃないかと、そういう危機感をきっと関さんの業界はお持ちでないかという感じがするんですが、何か一言コメントいただけると。

○末吉委員長 どうぞ、大変いいご質問だと思います。

○関委員 おっしゃるとおり、異常危険準備金制度だけがすべてではないということでして、大規模自然災害に関しては国際的な再保険という仕組みがあります。1社だけで保有するのではなくてリスクを世界中に分散をするということなんですが、これも気候変動の影響は日本だけで起こっているわけではないので、世界中の再保険マーケットで料率が上がり引受けが厳しくなってきているんですね。そうすると再保険だけに頼っているわけにもいかない。
 そこで他にもいろいろな手法が開発され、例えばリスクの証券化ですね。証券商品として証券市場に売っていくというようなことも現に行われ始めています。今後さまざまな金融手法等を使って何とか巨大リスクの分散を図り、保険金の支払いに耐えるような仕組みをつくっていかなきゃいけない。そのなかで基本的仕組みがこの異常危険準備金ということです。

○末吉委員長 恐らく、これはほかの金融全般についても言えることだと思うんですけれども、温暖化対策などはコストアップなんですよ、やっぱり当面、ですからそのコストアップが誰も負担できないから放っておこうかという話じゃないわけですよね。その対策をとらなきゃいけない、そのことがコストアップになる、それをどうやって社会全体で吸収していこうか。その一部分というか、かなりの部分は私は金融機関がプロの能力を発揮してできるだけ吸収していくと、でも吸収できない部分をじゃどうするのか、じゃ税金がどれほど支援をしてくれるのか、あるいは保険商品を買う人自体が少々高くても買っていく、こういったことも含めて、やはり社会全体でのコストアップの吸収をどうするかというのは大きなテーマのような気がいたします。
 はい、どうぞ。

○藤井委員 いろいろと制度、商品のご説明がありましたけれども、実際に使われているのかというところが最大の課題だと思います。土壌汚染については幾つかの保険商品がありますが、損保ジャパンあるいは業界全体で、どれぐらいの実際の契約規模なのか、そうした推計があるなら教えていただきたい。また契約自体は伸びていないと思うのですけれども、伸びていないとすればその理由は何なのか。つまり保険会社も企業です。契約者にとっては契約コストが高いものは売れません。環境保険商品が普及しないのは、保険料が高いからなのか、もともと契約者のほうにそのインセンティブがないからなのか、その辺はどのように見ておられますか。

○関委員 環境関連のいろいろな保険商品をご紹介いたしましたが、土壌汚染に限らず、正直言ってまだまだこれからというところです。規模も決して大きくはありません。その理由は幾つかあると思います。土壌汚染に関して言いますと、これは保険会社だけで単独で判断して受けるのではなく、土壌汚染の実態調査を入れて、専門の調査会社と一緒にタイアップして進めていきます。契約に至るまでのプロセスが非常に長くて、申し込みをいただき翌日お引き受けします、というわけにいかず、半年なり1年かけて一件一件オーダーメードで引き受けをしていく、という商品なんですね。したがって、大量販売には残念ながらあまり適さないという状況もあります。私ども保険会社としての宣伝不足といいますか、アプローチ不足というのも、もちろんあるかと思います。
 ただし、気候変動に関する商品については、状況は違うと思っています。例えば天候デリバティブについては、自動車保険などに比べればもちろんまだまだ規模は小さいですが、最近非常に引き合いが増えております。今年、台風の襲来回数を指標とした「台風デリバティブ」という新商品を出したところ、非常にお客様といいますか一般の方々の問い合わせが多かったんですね。ですから、まだまだ正直言って規模は小さいんですけれども、今後大きく伸びていく可能性はあると思っています。

○末吉委員長 ありがとうございました。
 実は、もう11時半を回ってしまったんですけれども、もう一方、河口さんからのご発言をお待ちしたいと思います。じゃ、お願いいたします。

○河口氏 大和総研経営戦略研究所の河口と申します。あと、社会的責任投資フォーラムというSRIを日本で広めるというNPOの代表理事もやっております。
 この会で来られている金融機関は、さすがにこういう環境配慮は進んでいるということで三菱UFJさん以外は会員になっていらっしゃるということで、三菱UFJさんにもぜひ会員になっていただきたいと、非常に経営状況が厳しい折からそういうこともちょっと期待しておるんですが、SIF-JというNPOが非常に厳しい状況にあるということも、こういった問題が起きる同じ根っこにあるのかなということを考えながらお話を伺ってまいりました。
 私はずっと97年、98年ぐらいからこの環境ということと金融というのは絡んでいまして、証券会社が出身なものですからSRI、インベストメントのほうを中心なんですけれども、ずっとこの動きをフォローしてきました。今回、お三方から保険ですとか、信託ですとか、融資業務ということで、これだけ幅広い金融商品とか、あと税制に至るまでものすごいいいアイデアが出ていたということで、非常に感銘を受けております。
 感銘を受けているんですが、問題はここを一歩出ると誰もそんなこと知らないということなんですね。ここを出ると知らないんです。専門家の間ではいいスキームだねと言っているけれども、先ほども藤井委員からどのぐらいあるわけみたいな、金額ということがありました。そこが非常に問題ではないかということをまず最初に申し上げて、若干プレゼン資料を用意したのでそれに沿ってご説明をさせていただきます。
 今、お三方のほうからいろんな金融商品の流れというのがあるので、そのあたりはほとんど省いているんですが、基本的に日本でこういったESG投資ですとか、サステナブルファイナンスと環境を含めた金融という発想が出てきたのは99年のエコファンドというのがある意味では表立って大きく取り上げられて、社会に認められる契機であったのかなと。それにはここの筑紫委員が非常にご尽力された部分であるんですけれども、これでこういった金融商品で環境に配慮するというものが現実に存在し得るんだということが世に示されたということでありまして、そういった形では金融で環境に何ができると、特に消費者向けの金融商品ということではSRIファンドという形でも広がりましたし、最近ではエコREITといって不動産投信に環境の配慮を入れるですとかいう発想も広がってきていると。
 大体、大きな形で融資で広がったかなというふうに思われるのは、DBJ竹ヶ原さんがいらっしゃっていますけれども、竹ヶ原さんが2004年に3年かけて環境配慮型融資ということをやられて、これまた大きく取り上げられて、そういう形で世の中をリードしていく形でメガバンクさんですとか、地銀さんですとか、いろいろな金融商品が増えてきたと。その金融商品の実態は今日皆さんがお話しになったというところなので、省かせていただきます。
 ちょっと宣伝なんですけれども、今月、大和証券が初のマイクロファイナンスボンドというのを発行します。先ほど、関さんからマイクロファイナンス保険ということでやられているというお話があったんですが、これは国内向けにということで、エコではないんですが、最近エコとやっぱり貧困問題というのをセットで考える。特に気候変動なんかの被害というのは途上国で農林漁業、水産業に依拠して暮らしている人たちの現場が洪水とか干ばつでやられていると、先ほどもタイでというお話がありましたけれども、そういうことを考えると、エコと貧困問題というのはセットで考えるという動きがありますので、そういったことでもこのマイクロファイナンスのような考え方というのが、こういったサステナブルファイナンスの中にどんどん取り込めていけるのではないかなと。
 問題は先ほどから申し上げていることなんですけれども、いまだに環境は人ごと、おまけであって本質的要素として取り組むメーンストリームの金融機関はないと断言しても誰も多分、反論はないです。
 先ほど、関さんのほうからいろいろと天候デリバティブがあると、これは本業になっちゃっているわけですよね、目の前にある危機ですからね。干ばつで米がとれなくなるとか、本当にその人たちの危機なので、本業そのものなんですね。だから、そういった部分だったらばそこからは入ってきますけれども、CSRという要素にある限りにおいては、本業で取り組んでいる金融機関というのがないというのが残念ながら現状だと思うんですね。
 根本的な問題で、ここで書いたんですけれども、なぜ環境省さんがこれを主催しているのかと。ずっと環境省さんとはこういった形で何度かおつき合いをさせていただいていまして、2002年の小泉首相が立ち上げた環の国くらし会議というところで、金融と環境ということで委員としてやれということでお話しさせていただいたのが2002年でございます。
 その後、小池大臣のときに環境と金融を考える会という形でもなさっているんですけれども、環境省が主催でやられていると。環境省が主催でやっていたらば、金融機関は本気で動かないです。実は、金融庁さんが銀行とか金融機関に対して環境配慮の調査というのを昨年の夏やっていらっしゃいます。それは私どもがやっているSIF-Jにアンケートをどうやって項目をつくればいいかとかというのは内々にご相談があって、いろいろと協力を差し上げたことがあります。
 それで、普通そういうのって回収率はすごく低いんですけれども、さすが金融庁さんで99%の回収率で、何か返ってこないところがあるほうがおかしいなという感じだった。各社さんものすごく細かいことを書かれていて、最終的にできたという全部のシートというか、それを打ち出したものを見せていただいたらば、エクセルにこんなに書いていらっしゃる会社、地銀さんとかいっぱいあるんですね。そういうのがあるんだけれども、それはどこかに出されているのかもしれないんですが、あまり広く公に有効利用されているという状況ではないのがちょっと残念かなと。金融庁さんがちょっとアンケートをしたら、そういう回収率なんです。
 ただし、こういう会は環境省さんがどうしてもリードされているという状況があるということです。それは何でかなということをちょっとまた後で申し上げたいと思うんですが、その前にここのレジュメの3ページ目に書きましたけれども、市民セクターの動きと。今、大手の金融機関さんが各種各様な商品を、本当に現場の方はよくこんなの考えたよねというような非常に工夫されて開発されていると。ただ、それが数字に上がってきていない。なぜそういうことが言えるかというと、どっちの報告書にも金額はろくろく出ていないです。
 先ほど、三菱UFJさんはこの報告書はないんですけれども、金額で太陽光で二千数百億、それから中小企業ローンで100億と、それはメガバンクさんのバランスシートからしたら多分誤差の範囲の金額でしかない。こちらでも数字がちょこっとしか出ていない。今、CSR報告書、環境報告書をいろんなメーカーさん、いろんな事業会社さんが見て、環境目標がないところはないですからね、金額。エコ商品を売っていますといって、幾ら売っていると書いてないメーカーさんのCSR報告書はないです。でも、金融機関はこれが通ってしまうと。逆にここまでやられたのは、本当に批判しているわけではなくて、ここでやられている方というのは非常にレベルが高いんですけれども、それが金融機関全体の現状であり、その背景には先ほど言ったように環境省がリードしないとなかなか動かないという現状があるということです。
 ただし、一方で市民の動きというのはこういう形であるということで、若干ご紹介いたします。
 日本で最初に何かSRI的なものが生まれたのは日本共助組合というようなところがあって、ここは多重債務者のサポートなんかをしていると。実はこれは水口先生の著書から引用してきたものなんですが、69年に消費者信用組合というのがあって、ごめんなさい、これが多重債務者の救済を行っていると、89年に初の市民バンクという、筑紫さんのほうから貯金をしたらそれが全部環境に配慮した融資に向かうのかなと、それがメガバンクではどうなのということだったんですけれども、こうやって市民バンクという形で市民がそこに貯金を出して、それがちゃんとした環境だとか社会に配慮したところに流れるようなNPO的なものがありますが、これは出資形式。94年に未来バンクというのが設立されていまして、これは出資者の出資資金を社会環境事業に融資すると。市民バンクの場合は、これは信用組合の資金の一部をそういうことで動かすんですけれども、未来バンクの場合は個人が預金をしてそれが出資金に回るというそういったスキームもありますが、金額としては微々たるもの。その中でちょっとおもしろいかなと思ったのは市民出資型の市民風車ですね。風車というのは売電できますので、キャッシュフローが生まれるということで事業計画は立てやすいということで、これにずっと取り組んでいらっしゃる方たちがいて、2008年までに市民風車11機が立っています。これで3,600人が出資して合計21億円弱と、市民がこういったことにお金を出すのを、市民が自分たちで集めるとしてはかなりかなと。
 あと、風車だけではなくて、おひさまというのはこれは太陽光なんですけれども、これは飯田市でやっているんですが大体7億円ぐらいというようなことで、あとバイオマスですとかというのを市民で自分たちのエネルギーは自分たちで地産地消していこうと、自分たちでお金を出し合ってエネルギーの地産地消をしいていこうという、こういう動きもちょっとあります。
 ほかに、ネットを通じて出資者をつくる仕組みですとか、ミュージックセキュリティというこれはベンチャーで若者が立ち上げた会社なんですが、幾つかおもしろいお米をつくる、おいしいお酒をつくるファンドみたいなのを立ち上げて、その出資金をネットで募るというようなスキームをやったりしています。
 マイクロファイナンスの事業に対する出資というのもここでやったりということでありまして、社会的に意義の高い事業に参画しようとか、社会貢献をするのが自分がやるのではなくて自分のお金に社会貢献をしてもらおうと、そういうことを考える市民の根っこは出ているんですが、規模としては非常に微々たるものであるということです。
 次のページなんですけれども、これは先ほど申し上げた環の国くらし会議のときに使ったレジュメなんですが、そのときは事務局のほうから環境と金融ということだったらエコファンドでしょうみたいな非常に乱暴な議論があって、エコファンドというのはご存じのとおり株式型の投資信託なので値下がりリスクというのがあると。
 これを見ていただくと日本人で、これは日本の金融資産の内訳ですけれども、基本的にそのお金をどういうところに配分しているかということですが、現預金とか預貯金が半分以上なわけで、出資とか株というのはほとんどやっていないわけですよね。株とかに出資をしたりしていない人がエコファンドは環境にいいから買えと言ったって、そんな下がるかもしれないものが買えるかと。プリウスが幾らいいからといったって免許のない人に売らないでしょうと。金融商品を買うのは免許要らないですけれども、やっぱりそれなりの知識と覚悟がある人じゃないとリスクアセットというものにはなかなかお金が出せないという状況下で、エコファンドと言ったってそれは広まらないだろうということを考えますと、今回のようにいろいろな幅広に金融商品が広がっているのは大変いいことだとは思うんですけれども、ここで問題がありまして、先ほど皆さん、資金の出し手ということですね。これもつくった、あれもつくった、こんなのもつくった、でも金額は言えないみたいな、非常にそういうストレスがたまっていらっしゃる部分があるかと思うんです。
 じゃ、何が問題なのか。これは10年間こういう話はあちこちでして、それでいろんな人がいいねと言うわけですよ。環境に配慮、いいじゃないか世の中が。でもねと言って、でもちょっとできないよねみたいな。本当に環境に投資したいんだったらば、何かに投資して儲かった金でやればみたいなことを言うわけですよ。だから、投資のプロセスとか、そういうプロセスで環境に配慮をするという根本的な発想がどうもないと、何でなんだろうというのをずっと考えていまして、これが四、五年前に金融の本質を考えるということをちょっとレポートで書いたことがありました。それはある金融ビジネスをやっているところから自分たちのCSRは何かと言われて、どうやって考えたらいいのと聞かれたので、確かに金融の本質とは何かなと。それで、当社の図書館に行って証券論とか金融論の本をたくさんとってきて、金融の本質って何だろうといったらば、大体どの本も金融の本質というのは金を融通することであると、以上。次は、もうボンドの仕組みとかになっちゃっている。割引率とかね。ほとんどないわけです。だから、それで私も困って、社内でそれなりに見識のある研究者の人とかいろいろとキャリアのある人に金融の本質って何ですかねと聞いたら、誰も答えられない。
 うちは証券会社なんですけれども、財務省からいらっしゃった方とか、いろいろな方がいらっしゃって、みんな黙っているわけです。何が問題か、そうか日本では金融を何かということを考えるチャンスがないと思っていたところで、欧米、イギリスとアメリカに子ども向けに金融教育の本を書いているというフィナンシャルプランナーで千葉大学のイトウ先生という方がいらっしゃるんですが、その話を聞くことがあって、こういう本を日本語に訳していると。そうしたら、向こうは小学生のあたりからこういう金融教育をしていて、その中には税金をどう払うかみたいなところまで書いてあるんですけれども、リスクとオポチュニティーをどう考えるかということと、あなたがリスクをとって投資をするとか融資をするとかという金融的な判断をすると、それは社会に影響を及ぼすと。そのことに関してあなたは責任を持ちなさいというようなことが、まず最初に言われるわけですね。その後、どういう金融の仕組みがあってリスクがあってということなんですけれども、考えてみたら我々は誰もそういう教育を受けていないと。こういう話を3年前に、SIF-Jの学生部会というのがあって学生向けの金融教育の場というので話したら、学生がみんなそういう話はもっと若いころというか、学生のころに聞きたかったとか言って、無理だと、我々だって今聞いているんだもんという状況があって、だから何が問題かというと資金の出し手のほうに幾らSRIファンドがいいですよとか、こういう預金がありますよと言われても、その預金の一部が環境だとかというところに目に見えない形で回っちゃって、自分に返ってくるかどうかわからないものに何で私はお金を出さなきゃいけないという、どうしても根本的なそういう常識の部分があるんですね。それが常識だから、日本で金融は金融の中で完結するものであって金融が実物経済にいろんな形で有形無形にそういう形で影響を及ぼすという発想が、言われてみたらあるんですけれども、自分のものとして皆さんお考えになっている方が少ない。だから、その商品はいいですねと言うけれども、でも自分がそれを投資するのかねと言うと、えっ何でという形になるわけです。
 特に、資金の出し手のところで問題になっているのは年金のところ、年金はこれは146億あるといって、これはGPIF、ほとんどこんなんですね。あと保険。損保もありますけれども、特に生保のほうが、生保って年金みたいなものですから、これは相互会社でどういうお金の流れになっているのかちょっとよく見えてこない部分があるんですけれども、皆さんこういうものがお金が運用されているということを認識しないで保険商品、生命保険、死んだら1億出るとかということで考えて多分入っていらっしゃると思うんですけれども、背後で運用されているんですね。これがどういう運用しているのかなという発想もない。
 この間、私の生命保険会社、入っているところで年に1遍代表会とかいうのがあって、それに参加するかしないかというのが来て、ついでに当社に対するご質問はないですかというから、どういう運用しているんですかと書いて返したら、あまり読むに値しないCSR報告書を送ってくれて3行ぐらい書いてあったんですけれども、これを国民運動でみんなが保険会社に聞いたら保険会社必死になりますよね。保険商品を選ぶときにも、特に生命保険、20年後、30年後、我々の命の補償してくる金、どういう運用をしてくれているの、クラスター爆弾とかに入れていないよねと。環境破壊型事業で何か運用しているわけということになったら物すごく世の中は変わると思うんですけれども、とにかく資金の出し手がこういうことに問題意識があるということを認識していない。
 社会全体としてそういうことを共有していないですから、年金基金の方にもお話をしても、いや気持ちはわかるんだけれども、受託者責任があってそんなことできるかと。なぜならば、自分たちがいいと思ってそういうことをやっちゃって、よく公的年金はこんなに損したということは新聞でたたかれて、SRIとかやったからこんなに10%も下がったなんて言われたら誰が責任をとると。社会全体って、そういうものだと。公的年金というのはそういうリスクもとりつつ数十年後日本の社会、世界をよくしていきつつも受給者に対してリターンを返すというようなことが、それは価値観がシェアされていたらそれは多分受け入れられるんですけれども、今はそうではないです。だから、年金基金の人だって怖くてそんなことは自分からやるとは言えないんですね。もし損したらどうすると。
 だから、何が言いたいかというと、こういうふうなせっかくいいスキームがある、いいアイデアがあるんだけれども、これを評価してさあやろうかなという部分での決定的な意識というか、そこが欠けている。そこさえできれば、いろんなプロの方がいろんなことを開発されている。そういうふうな意識が増えてくれば、今問題になっている評価の基準がどうなんていうのも絶対情報は集まってくるわけで、よくなってくると思うんですけれども、そういうふうな意識土台をつくりつつ、かつそういうことの意識に目覚めた人に、こんな商品もあんな商品もすごいなというのがぱっと目覚めてみるとすばらしいじゃないというのがあって、かつ税制優遇ですとか、国としてそういうことをサポートするというアナウンスメント効果も大きいと思うんですけれども、そういう仕組みがあればいいのかなというふうに思っています。
 あとはご参考までに、社会性に配慮した金融ということで全体をまとめるとこういう感じかなというので6ページ目、責任投資原則、これはPRIですね。Principle for Responsible Investmentというのがあって、これは投資をする際にESGに考慮しなさいと。
 それから融資をする際、特にプロジェクトファイナンスで大規模な途上国の融資の場合は先ほどもお話にありました赤道原則というのがあって、これはメガバンクさんがみんな署名されていると。先ほど言ったエコバンクみたいなものもありますし、ミニ公債ですとかグリーン電力、先ほど申し上げましたそういうようなものもありますし、SRIのエコファンドとかというかなり、これはどちらかというと個人が買えるという立場なので、すみません保険はちょっとよくわからないんで関さん、保険入っていないんですけれども、大体金融商品とはこんな感じかなと。
 それから、これは日本のSRI市場ということになるんですが、パフォーマンスはこんな感じです。2007年がピークでして、このころは8,000億ぐらいあったんですけれども、それが今年の3月、半減しています。ただし、9月まで入れているとちょっと戻しているので、反面若干なんですけれども、リーマンショックの後、戻しているかなと。ご注目いただきたいのは、この折れ線なんですけれども、これはファンドの数ですね。金額はやっぱり暴落したので評価額は下がっちゃいますけれども、ファンドの数というのは基本的に増えています。ちょっと減っているのは、これは10年たって償還を迎えちゃったのでなくなっちゃったということで、減らしたというわけではなくということなので、基本的にこれは上昇トレンドなんで、こういったことに対してはやはり金融機関としては何かもうちょっと手当てをしていかないといけないなという発想があるということかと思います。
 次のページ、先ほど言ったことでありますがこういったことで、特に日本の場合、誰が言い出しっぺをとるのだということは末吉さんもおっしゃっているわけですけれども、やはり公的年金のようなところがある意味で大きなリスクはとらないかもしれないけれども、少し実験的にでもそういうことを始めるとか、でも厚労省の方が来られていないのでここで言って意味あるかどうかあれなんですけれども、例えばそういうことで責任をとるお金というか、なぜかというと公的な年金は我々のお金で、我々の未来のお金なので、そういう形で動かしていくとかというようなところから、あと同時に金融は何のためにあるんだということを本当に金融機関にいらっしゃる方がもう一回再考して、それを伝えていくというようなこと、そういう形をした上でプロフェッショナルとしていろんな金融商品の提案をしていく、そういう段階が必要かというふうに思います。
 そのための考え方として、一番最後のページなんですけれども、基本的に金融は環境とかと離れているというけれども、ふと考えてみたら企業というのはE、これは資源とエネルギーですね。人、ソーシャル、それがコミュニティとS。EとSで、それをいかにガバナンスするかという仕組みでFが出てくる。みんなFしか見ていないわけですけれども、FはほったらかしてFからFが生まれるわけではなく、EとSとGを通じてFが出てくるのに、なぜか今の社会はEとSとGを見てもよくわからないからFだけ見ようねという仕組みになっていて、これはちょっと発想の転換ということをすべきではないかなというふうに思っています。
 それから最後に一言、伊東委員のほうからSRIパフォーマンスが悪かったというお話がありました。SRIのパフォーマンスがいいか悪いかというのはいつも神学論争になるのであれなんですけれども、いろんな研究結果では大体6割から7割の感じでSRIのパフォーマンスのほうが同じかいいかも、みたいな研究結果が出ています。私の最近の実感では、運用なのでこれは最終的にうまいか下手かじゃないかと。実際に損保ジャパンさんも住信さんのファンドというのも非常に高いということで評価をされていると、賞をとられているので、SRIだから悪いとかということをやっているとあまり前へ進まない。SRIで悪かったら、もっと運用の方法とかEとSを入れるというだけであって、あとはもうファンドマネージャーの勘とか腕次第というところもあるので、そういうふうに少し見方も変えてもいいかなということであります。
 どうもご清聴ありがとうございました。

○末吉委員長 どうも河口さんありがとうございました。
 金融の本質論をずばっと言っていただいて、我々これから半年間それを肝に銘じて議論していきたいと思います。私もなかなか日本はなぜかと、Whyを問わずにすぐ何をしたらいいのという議論に陥りがちですので、この委員会では本質論も一生懸命やっていきたいと思っております。
 ところで、本郷委員いかがでいらっしゃいますか、初めてお出ましいただいたわけですけれども。

○本郷委員 最初なので私もずっとお聞きして、なかなか新しい話も大分聞きまして、ありがとうございました。
 特に私の多少専門になる税金の分野でインセンティブについては、なるほどなという意見をちょっと拝聴しましたので、次回からは少しそれをブレークダウンしてお話しをしたいなと。
 最後に大和総研の河口さんのお話は、なかなか非常に本質をきちんとついていただいて、実務が進まないんですよね。実際、私は現場でやっています。なかなか全体的なこともあるんでしょうけれども、だからどうやって普及するかという話をやらないと、何か机上の空論にいつもなっちゃうんですよね。そこをぜひ、せっかくこれだけ皆さんすばらしい話はあるので、私も中小企業ばかり見ていますから、エコでも何でもいいんですけれども、金融がつかなくて困っていると。エコでもいいから金融を出してくれという話のほうが現実的なんですよね。そんなこともちょっと踏まえて、あまり、私も何か端くれでやっていると全部エコがついちゃうんですよね。エコファンド、エコファイナンス、それから環境ビジネスとか、環境会計とか、それから今度の資産除去債務も土壌汚染なんかもちろん入りますから、これなんかも全部エコが入って、世の中、私も雑駁な話をして恐縮なんですけれども、全部エコで統一すると大体今の世の中が見えてくるというふうな話をほかではしているんですけれども、でも非常に参考になりましてありがとうございました。

○末吉委員長 本郷さんありがとうございました。
 やっぱり世界もWalk the Talkといっています。もう話ばかりじゃだめだと、歩こう、行動しようということですから、ぜひこの委員会の最後にはどうやったらアクションになるのか、そういった視点は大切にしていきたいと思います。
 今、本郷さんから中小企業のお話が出たんですけれども、佐藤さんいかがですか。

○佐藤委員 先ほど、河口さんのご意見を聞いて大変感銘を受けたんですけれども、資料の最後のところで地銀や信用金庫などの地域金融機関には環境・コミュニティとあったんですけれども、今、中小企業の場合は非常に厳しい状況で、何とか環境をもとに活躍できる場所がないかと信用金庫の立場で考えております。
 そうした中で、私どもはやはりお客様と直接顔が見える関係ということで、直接コミュニケーションがとれるのが一つの特徴かなと。そういった意味では、ぜひこうした環境の分野がこれから中小企業が生き残る分野として中小企業の適応力とか技術力を生かせるように、それが周知できればいいのかなと思っています。そうした意味でこの環境とコミュニティのところをちょっとご説明いただければありがたいんですが。

○河口氏 これはこの間ちょっと行った滋賀銀行さんのことをイメージしていたんですけれども、滋賀銀行さんも地銀の中で非常に環境配慮が進んでいらっしゃると。地銀さんとかというのは、やはり地域の経済をどう活性化するかということをポイントにされているんですが、伺わせていただいた本店の隣にある研修棟というのを最近建てられたんですけれども、地元の企業で環境配慮型の素材をつくっている環境配慮のタイルとか屋根とか、いろんなこういう環境配慮あるんですよというのを積極的に採用して、つくっているわけです。だから、ショールームになっているんですね。
 その地場の環境配慮ビジネスのショールームとして、人が来たらそれを見せるということですとか、エコビジネスメッセみたいなのだとか、そういうことを積極的にやられているというようなことをやっていらっしゃるところもありますし、この間ちょっと聞いたのは、地銀さんのネットワークとかで地元の森林をどう再生していくかというふうなネットワークがあるというふうに聞いたんですけれども、ただ地元の森林を再生するというのでみんなで行員が集まって木を植えましょうというだけではなくて、いかにその木を地産地消で地元で回すような仕組みをつくるか。そのためにはペレットストーブがいいのか、それとも木材で間伐材の家をつくるのがいいのか、そうしたら地元にお金を回すと、そういうふうな地元にある資源を使ってどうやって地元でお金が回るのかなと。
 先ほどもエネルギーの地産地消ということを申し上げましたけれども、実際に先ほどちょっと申し上げた飯田のおひさまファンドというのは、最初に個人のお金ばかりではなくて、やはり金融機関からもお金は入れてもらうんですけれども、最初にそのお金を入れる気になったのが地元の信用組合か信用金庫なんですね。そこが保育園か何かに太陽光パネルを貼ると。そうしたらこの保育園も信用金庫のお客さんだと、太陽光パネルを設置する業者もお客さんだと、それで世の中が回ってかつ太陽光パネルが増えればいいじゃないかということで、そういった信用組合さんとか信用金庫さんが入ってくると。
 逆にメガバンクさんはそこまで細かいリレーションというのがないので入りづらく、逆にそういうふうな地産地消型ビジネスでかつ環境配慮みたいなことですと、リレーションシップバンキングをずっとやっていらっしゃるところのほうがそういう発想さえ持てばもっと進むんではないかなと、そういうことでちょっとつけ加えさせていただきました。

○末吉委員長 ありがとうございました。
 滋賀銀行さんの研修センターは、実は僕も行きまして、あれは一見の価値ありです。という思いでこの天井を見ると、窓を閉めて全部電気ついていますけれども、今日のような日はこちら側の一列は全部消してもいいんですよね。こういう時間帯はね。ですから、ぜひそういった細かいことへの配慮が実は大きなことを考えるベースなんだと思うんですよ。考えていないからこういうことが起きると言ってしまうのは、言い過ぎなんでしょうか。

○末吉委員長 非常に本源的な問題提起がなされていますので、ぜひ委員の皆さん、いかがですか。
 はい、どうぞ。

○崎田委員 今、河口さんのお話を伺って、やはりSRIの推進をこれだけ頑張っていらっしゃった方の、本当に生の言葉をしっかり伺って非常に勇気もいただきましたし、ありがたいなと思います。
 それで今、河口さんの8ページのところの、じゃ、これからどういうことが必要なのかというのを拝見しながら、やはりこの辺を本気で動かしていくのが大事なんじゃないかというふうに思っていまして、これを拝見しているとやはり社会が金融哲学というか、やっぱり自分のお金で社会に貢献しようという動きをつくっていくことと、公的年金とか公的資金を持っていらっしゃるところがまず最初に動いてよという、そういうのが2つ大きなメッセージがあると思うんです。そういうお金に関わっていらっしゃる方はぜひそう動いていただきたいし、もう一つ社会の金融哲学とかお金で社会に貢献するという、こういう話を広めていくという、これが今すごく大事な時期なんだというふうに強く思います。
 それで、きっと、じゃ環境教育とか金融教育とかそういう場を増やそうとか、そういう話になると、もちろんそれは必要なんですが、後10年ぐらい効果が出るのに時間がありますので、みんなでやはりこういうところを盛り上げていくのが大変重要で、例えばマスコミの方との、この懇談会の次に環境と金融のマスコミ懇談会か何かで多くの方にこういう話し合いをもう一回共有していただくとか、何かそういう動きをつくっていくことも必要なんじゃないかというふうに思います。
 なぜそういう話をするかというと、今新しい首相が国連で2020年までに25%削減という目標を世界に表明したということは非常に重いことだというふうに思っています。もちろん今後の国際交渉の中で法的拘束力の出る数字がどこまでいくかというのはこれからの課題だと思いますけれども、そういう目標を示したという日本の持っているリーダーシップ兼社会的責任というのは大変多い。それを動かす金融が今の時代に次のギアチェンジができなかったら、それはもうおかしいことだというふうに思っていますので、こういう時期に開かれたこの会議をうまくきっかけにして、そういうギアチェンジに地域の視点でも、そしてそういう大きな視点でも、すべての部分で変わっていくということが大事だというふうに強く感じました。ありがとうございます。

○末吉委員長 25%を守ることも大切ですけれども、なぜ25%を守るのかというと、その先に日本の社会を持続可能な社会にするという大きな目標があるわけですから、その目標に金融が社会的責任も含めてどうやって貢献できるのか、期待される役割を果たせるのかと、その辺が多分この委員会の大きな柱の一つになるんでしょう。
 いかがでしょうか。はい、どうぞ。

○水口委員 私も河口さんのお話をいつも聞かせていただいていますけれども、大変感銘を受けまして、一言申し上げたくなりました。
 今日の皆さんの議論を聞いていて、やはり政府か市場かということを非常に感じました。政府がいろいろな仕組みをつくる、補助金を出す、税制を変える、ということは大事だと思います。一方で、例えばさっきおっしゃっていた地域のエコみたいなものは、やっぱり地域の銀行さんのアイデアで頑張っていただかなきゃいけない。それは現場のアイディアですから、その両方必要なんだなと思いました。河口さんのレジュメの8ページを見まして、一番おっしゃっていたのはやっぱりなぜ金融なのか、金融というのは本来どういうものであるべきなのかということの社会の認識が足りないだろうということでした。本当にそのとおりだと思います。社会がそれを共有していないから年金も動かないというのは、まさにそのとおりだと思います。
 一方で、公的年金が最初にコミットするということも大事で、そのことが逆に社会に対する教育効果をもつのかなという感じもしたんですね。ここから私のお願いなんですけれども、やはり公的年金の運用には、せめて環境とか社会の配慮を組み込んでいくということは決めるべきだと思いますし、それをするには法律を変えなければいけない。法律を変える議論をすべきだと思うんです。そして、ここがポイントなんですけれども、法律を変える議論をすることによって、つまりそれを国民的に議論することによって、まさに金融って一体何だったのかとか、世代間扶養って何なのかとか、年金ってどういう意味があるのかということの国民的な議論ができる、そういう場になるし、チャンスになると思うんですね。
 ところが、日本では法律を変えるときに、えてしてごく閉じられたところで議論して、何か専門家だけの議論で法律が変わるという感じがするのですが、それだとあまり意味がないのです。ですから、年金がなぜESGに配慮しなきゃいけないのかということを国民的に議論した上で法律を変えていくような、そういう法律を変える仕組みやプロセス自体もこれから新しいやり方にしていく必要があると思うのです。
 それから、今日の話ですと相続税の話、税金の話もそうだと思うんですけれども、それもやっぱりそういう形で法律を変えていきましょうと、それは国民の議論によって変えていきましょう、そういうことが大事だと思いました。

○末吉委員長 たしか2005年に前のコフィー・アナン事務総長が世界から年金基金を集めて、こう言ったんですよ。皆さんの手の内に地球の将来が握られているんだと、年金がその基金運用に当たって地球温暖化問題を反映させなければ地球の将来はないと言ったんです。そういうことから、世界の年金は今変わり始めております。ですから、ぜひ日本もその流れの中に遅れないようにと思います。
 はい、どうぞ伊東さん。

○伊東委員 いつも河口さんのお話を聞くと金融機関の担当者はぺこっという感じになってしまうので、何かコメントをお返ししなくちゃいけないと思いますので、1つ申し上げたいのは私のレジュメのペーパーの中の1ページに全体像をお示ししておるわけですが、前回のこの委員会の中でマイナス25%に直結するところからやろうというような合意が、たしか最後になされたと思います。
 河口さんのお話は大変立派なお話であって、きちっと地域金融も含めてやっていかなくちゃいけない、これは本当に畑で言うと土壌を耕していくところ、土壌がしっかりしていないと上の作物も出来ないし花も咲かないというお話で、そういった意味では全く河口さんのお話にアグリーいたします。
 その一方で、マイナス25%に向かって最善を尽くしていくということも待ったなしであります。そうすると、SRIというのは上場会社の株に投資するもので、SRIが今までこれだけ増えたことと、温室効果ガスがどれだけ減ったかという相関関係はどこまでわかっているんだろうか。もっと率直に言えば直接的な関係は殆どないのではないかということです。つまり、SRIの対象は大企業ですから、そういう大企業は自身の生産活動・業務活動の中で温室効果ガスの削減を行ったり、自社の製品やサービスをユーザーが利用するプロセスの中で温室効果ガスが減っているのであり、ファンドがその企業の株を買った資金が、ダイレクトに環境負荷軽減に使われる訳ではないのです。やっぱりそこのところは冷静に見ないといけないと思います。
 それから、例えば私どもに70兆円の貸出アセットがあって、その中で年間2,000億円は少ないという議論がありましたが、例えば10兆も20兆もお金が環境融資、つまり私のレジメの1ページ目の全体フレームワークで言うと、この左側の項目に向かった場合、本当にそういうネタがあったらマイナス25%じゃなくてその何倍も削減されてしまうわけであって、冷静に考えていくと、今の日本では民生部門が増えているわけですから中堅・中小企業やオフィスといったところにお金を回して、エネルギー効率の向上をやろうという議論、そして25%のうち何%くらいをこの分野で削減するためにどのくらいの投資が必要なのか、そこに間接金融機関として融資を通じていくらくらいお金を向けていく必要があるのか、こういった議論が足元としては極めて重要であると思います。
 ですから、年間2,000億円が私のレジメの1ページ目の全体フレームワークの右側も含めて多い少ないという議論ではなく、左側のところでまずどれだけどういう分野にお金を回していくのか、また、国内でどれだけやるんだ、それから海外でどれだけやるんだ(CDMですね)、そういった冷静な議論というのが、25%削減への影響の強いところから手をつけるという意味では、非常に重要であると思います。
 その一方で息の長い話かもしれませんが、今日お話しのあったようなことも極めて重要でございますので、それはファンドの形がいいのか、それともSRIでやるのか、それからそこのところの環境配慮の基準はいわゆるSRIが投資するような大きな企業ではなくて、もっと小さな企業まで考えていくことが大切です。それからマイクロファイナンスというのは、社会政策的な意味合いが非常に強い訳です。マイクロファイナンスへの投資、これは私どももグラミン・バンクのユヌスさんの精神に基づいて取り組んでおりますが、それをやったことと温室効果ガス削減とは直接的な関係はございません。CSR全体の範疇の話と、直接的な環境負荷軽減の話や、経済主体に環境配慮行動を促していく話、これら各々の区分けをきちっとやっていかないといけないと思います。どの面も重要なことは否定しませんが、環境と金融の専門委員会の議論ですから、そこは冷静に捉えていく必要があると申し上げたいのです。
 それから、産業界というのも非常に頑張っていて、実は実質的に経産省との間で非常に自主行動計画ということで現実的に減らしてきているわけですから、増えているのは民生部門だということも冷静に考えていく。
 それから、経産省のペーパーにもありますけれども、温暖化関連とリサイクル関連と自然共生という3つの区分けで考えたときに、直接的に影響があるのは温暖化関連、次にリサイクル関連、それからずっと永続的にやっていかなくちゃいけない自然共生関係、それから先ほどのお話も自然共生関係のお話が多うございましたので、そこでなかなかすぐ温室効果ガスとのひもつきというのは難しゅうございますから、そこは生産物で畑で作物がこれだけとれたというよりは、いい土壌を作っていくという話なんだということを認識し、そこら辺も冷静に考えて取り組んでいくことが必要だと思います。

○末吉委員長 伊東さん、ありがとう。
 はい、どうぞ。

○河口氏 伊東さんがおっしゃったことで、2,000億が多いか少ないかという感情的な議論をするべきでないというのはまさにおっしゃるとおりなんですね。ただ、今までのところだと、いいことやっていますみたいな、すごくやっているみたいなイメージで金融機関さんがやっていらっしゃることも事実で、数字を見ると、「えっ、これだけなの」というふうな思いを何度も抱いたことも事実なんですね。
 ただ、では70兆円のうちのどのぐらいを環境配慮に振り向ければいいかというのは、先ほども幾つか何千万トン積んだら幾らというような試算も出されているので合理的に判断して、当社ではこういうことを、25%削減のためにはこのぐらいのポートフォリオで環境配慮型融資をするのが妥当な目標であろうと。それが5,000億だったとしても構わないと思うんです。3,000億でも構わないと思うんです。金額の多寡ではないと。我々としては非常にいろんな計算をして冷静な議論が必要だというふうにおっしゃったので、来年度の報告書にはそういう議論を踏まえて目標を出す。なぜならばこういう計画の間でこういうふうな数字が多分妥当だろうから、3年以内にこれをクリアするような社内の目標を出すという形で出されればいいと思うんです。
 それは多いとか少ないとかという議論は、なぜならばこういうふうな合理的な判断をしたらこれは決して少なくないということでちゃんと論拠があればいいので、ぜひリーダーとして、まずそういう形で目標数値をいろんな形で出されているところが金融機関の中に見あたらないので、そういうところでリーダーシップをとっていただくと、こういう会から始まってリーダーシップをとっていただければなということを期待として申し上げました。

○伊東委員 ご意見ありがとうございます。
 今の議論というのは実は単独の民間金融機関だけで決めるものではありません。つまり、私のペーパーの1と2と3のところというのは、官民が一緒に連携をして、国全体の排出削減の計画があって、その中で公的な部分から例えば補助金はこれだけ出す、それから資金の仲介をする金融機関としてはこれだけ融資に振り向ける、そしてスプレッドはこれで、そしてそれが順番からいったらもっと高いスプレッドがとれる環境融資以外の普通の貸出があっても、これは社会的な責任でやっていくというものでありますから、まさしくこれは政府の全体目標、それから25%削減をどういう形でやっていくかというものと常に平仄を合わせながらやっていくべきものだというふうに考えています。
 ですから、単独行だけで出すものではないということをご理解いただきたいと思います。

○末吉委員長 はい、どうぞ。

○藤井委員 私見ですけれども、金融の本質については授業ではよく言っていることがあります。金融は、日本語で書くとお金を融通するとなります。これは、わかりやすいのですが、それ自体は金融の行為であって本質論とはちょっと違う。金融を英語で言うとfinance。ファイナンスという言葉の語源はfinalize、物事を仕上げるという意味があります。金融の本質はこした物事を仕上げるということではないか。お金が入ってこないといくら優れたプロジェクトでも絵に描いた餅で仕上がらない。資金供給の相談を受けた金融人は冷静な視点でこの事業のメリット、デメリットを評価してお金を供給してきた。その冷静な金融の視点の中に今、環境リスクが入ってきているということだと思います。
 この問題を地球規模の温暖化問題になぞらえて言うと、その解決・仕上げはもちろん金融機関だけではできないけれども、官民の役割というものがある。環境リスクを見ていく、信用リスクに温暖化問題等がどれだけ影響するかしないかということを含めて見ていくのは、プロの金融人がやるわけです。これは官僚にはできない。しかし、官僚はそれをサポートするような環境リスクを価値付けするような立ち上げの枠組みとか、政策の連携というものを担っていく。そういう官民の役割の分担というものが求められるということです。
 しかし、我が国においては、それが悲しいかな現状ではまだまだ緒についたばかりです。河口さんの話で言えば2002年のときからほとんど変わっていないのも事実だと思います。ただ、官の役割の中で、金融当局ではなく、環境省がこれをやるのは云々という話があったけれども、いや、私はこれは環境省でいいと思います。環境リスクの評価とか、環境金融のところはアメリカでもEPA(環境保護庁)がやっています。環境保護庁の中には環境ファイナンスのプログラムがあり、環境プロジェクトへのファイナンスを担当するCFO(Chief Financial Officer)も環境保護庁の中にいます。国にとって必要な環境プロジェクトを政府が判断して、お金を出したり税制のメリットを提供したりするのは環境行政を担っている人たちが判断する仕組みです。しかしそれが金融機関にも当然、影響しますね。環境分野にも民間のお金を流していかないといけない、補助金だけじゃ十分にいかないわけですから。その部分はFRBであったりFDICであったり、あるいは財務省も関与する。FRBの場合は金融機関の信用リスクを、健全性をまず最優先する一方で、その中において環境リスクがインパクトを与えることは認めて、その部分への対応については 金融機関に対してガイドラインを出している。そうした役割分担の中でども、環境金融全体はやはり環境行政のほうで見ている。
 そういう行政の中の役割分担と官民の役割分担というものをある程度想定していかないと、環境にお金をつけりゃいいんだというだけでは、個々の金融機関はすごくリスクを負ってしまう。結果として、企業も業績がいいから環境分野にお金を投資したとしてもリターンが入ってこない、経済全体で見ればマイナスになるリスクもあるということです。ですから、その辺の仕組みづくりをしっかり議論していく必要がある。もちろんアメリカが必ずしもこのテーマのモデルとは言い切れないとも思うのですけれども、アメリカは20年前からこういう議論をやって、試行錯誤の結果、そういう役割分担ができている。
 それから、欧米では、金融に対するリスペクトがあります。現在、金融機関は世界的にも大きな失敗をしたりして公的資金を入れたりして支えられていますいると。公的資金の注入は、金融の機能が大事だからです。いろんなところにお金を供給して物事をファイナライズするという役割を担っているからこそ、その機能が壊れたときにはタックスペイヤーのお金で金融機関をサポートして経済社会全体にお金が回るようにしなければならない、という合意があるからなんですね。その金融の本質的な機能の部分は金融当局が見ていくという風に、役割分担をしていかないと、環境にさえお金が流れればいいわけではないと思うのです。

○末吉委員長 ありがとうございました。
 私も全く同感でして、個別の金融機関の、この名前の金融機関が社会にいなきゃいけないということではなくて、社会がどういう金融機能を持つのか、どういう金融機能を持った社会こそより豊かになっていけるのかという話ではないかなと思います。
 大変いろんな視点から本質的な議論を今日していただきまして、本当にありがとうございました。4名の発表者の方に改めてお礼を申し上げます。と同時に、今日会場にも大勢の方がお見えいただいて、長時間おつき合いいただいてありがとうございました。皆さんもお聞きのとおり、まだまだこれから本質的な議論をしなきゃいけない状況もあることもよくおわかりいただいたと思います。と同時に、こんな大事な話をあの金融界の連中に任しておいていいのとも思われたんじゃないかと思います。これは実は金融の話ではなくて、社会全体、経済全体の皆様の問題でもあります。ぜひ、そういった目でこの委員会の議論を見守っていただきたいというふうに思います。
 私の不手際でちょっと時間をオーバーしましたけれども、密度の濃い議論がそれを許してくれたんじゃないかと思っております。じゃ、最後に黒川さん、事務局から。

○黒川環境計画課長補佐 次回日程ですが、12月10日の10時から12時ということでお願いしたいと思っております。場所は、まだ未定でございます。

○末吉委員長 以上でよろしいですか。
 じゃ、どうも長時間ありがとうございました。これで第2回の会議を終わらせていただきます。皆さん、ありがとうございました。

午後0時20分 閉会