「今後の環境影響評価制度の在り方について」に関するヒアリング議事録

議事次第

  1. 1.開会
  2. 2.議事
    1. (1)関係者ヒアリング及び質疑
      [1]電気事業連合会 関西電力株式会社環境室環境部長
           井上 祐一 氏
      [2]公害・地球環境問題懇談会代表幹事
                  小池信太郎 氏
      [3]日本弁護士連合会公害対策・環境保全委員会環境法部会長
        関根 孝道 氏
      [4]風力発電事業者懇話会 一般社団法人日本風力発電協会
        株式会社ユーラスエナジージャパン代表取締役社長 

         祓川 清 氏
      [5]財団法人日本野鳥の会自然保護室室長代理
               古南 幸弘 氏
      [6]社団法人日本環境アセスメント協会副会長
               梶谷 修 氏
      [7]財団法人日本自然保護協会保健プロジェクト部部長代行
         大野 正人 氏
      [8]ダム・発電関係市町村全国協議会会長
                 辻 一幸 氏
    2. (2)その他
  3. 3.閉会

配付資料一覧

議事内容

○花岡課長 定刻となりましたので、これより「今後の環境影響評価制度の在り方について」に関するヒアリングを開催いたします。本日はご多用中にも関わらずご参集いただき、誠にありがとうございます。本日、屋井委員は所用のためご欠席となっております。議事に入ります前に本日の配布資料についてご確認いただきたいと思います。

○沼田補佐 お手元の議事次第及び資料一覧をご覧ください。本日の資料でございますが、まず資料1は電気事業連合会提出の「今後の環境影響評価制度の在り方」に関する意見。資料2は公害・地球環境問題懇談会提出の「環境影響評価法の見直し・強化と戦略的環境アセスメント法制化について」。資料3が日本弁護士連合会提出の「今後の環境影響評価制度の在り方について」ヒアリング資料。資料4が風力発電事業者懇話会、日本風力発電協会提出の「風力発電を対象とした環境影響評価制度に関する意見」。資料5は日本野鳥の会提出の「環境影響評価制度への意見」。資料6が日本環境アセスメント協会提出の「環境影響評価制度に関する意見発表要旨」。また環境アセスメント協会からは委員限りでございますが、環境アセスメント士に関するパンフレットをお配りしております。資料7が日本自然保護協会提出「2010年環境影響評価法改正で改善すべきポイント NACS-Jからの提言」。資料8がダム・発電関係市町村全国協議会提出の「ダム・発電関係市町村全国協議会の概要」。また、同団体からも委員限りといたしまして「全国町村長大会意見」をお配りしております。また、参考資料といたしまして参考資料1「環境影響評価法の仕組み」。参考資料2「環境影響評価法の対象事業」。最後に委員限りとしまして参考資料3「環境影響評価制度総合研究会報告書」をご用意しております。
 資料に不足等がございましたら、事務局までお申し付けください。

○花岡課長 これより先の議事進行につきましては浅野委員長にお願いをしたいと思います。プレス、報道の方々には冒頭のカメラ撮りはここまでということでお願いいたします。
 それでは浅野委員長、議事の進行をお願いいたします。

○浅野委員長 議事に入りたいと思います。27日に専門委員会で中間報告を出させていただきましたので、今回はこれについて関係団体からご意見をうけたまわることにいたしました。参加団体につきましては12月1日~4日まで、ちょっと慌ただしかったのですが、公募を行いまして、事前にご提出いただきました意見要旨の内容を参考にしながら環境影響評価制度全般について全国的見地からご意見をいただいた8団体にご意見をお述べいただくことにいたしました。ヒアリングでございますが、会議室の使用時間の都合がございまして、各団体10分間でご説明いただいた後、質疑応答を5分間という進めかたとさせていただくこととしております。各団体におかけましては説明時間を是非ともお守りいただきますようによろしくお願い申し上げます。
 それでは今回、ヒアリングを実施する団体について事務局から説明をいただきます。

○沼田補佐 まず今回のヒアリングにご参加いただきます8団体につきましてご紹介させていただきます。本日、最初にご説明をいただきます電気事業連合会は昭和27年に創立され、電気事業の円滑な運営、また安定したエネルギー供給体制の確立に向けて活動されている団体です。2番目の公害地球環境問題懇談会は平成2年に創設され、公害問題、地球温暖化問題に積極的に取り組まれている団体です。3番目の日本弁護士連合会は昭和24年に創立され、公害問題をはじめとするさまざまな環境問題について調査研究、意見提出などの取り組みをされている団体です。4番目の風力発電事業者懇話会、一般社団法人日本風力発電協会はそれぞれ平成12年、平成13年に創立され、風力発電の導入促進、健全なる産業発展に取り組まれている団体です。
 5番目の日本野鳥の会は昭和34年に創立されて以来、半世紀にわたり野鳥の保護をはじめとする自然保護に尽力をされている団体です。
 6番目の日本環境アセスメント協会は昭和53年に創立された環境アセスメントの実際の調査、予測、評価といった作業を担当されている環境コンサルタントの団体です。
 7番目の日本自然保護協会は昭和35年に日本の自然保護団体として初めて財団法人となり、以来半世紀にわたり自然保護に尽力をされている団体です。
 8番目のダム・発電関係市町村全国協議会は昭和44年創立のダム所在市町村全国協議会及び昭和53年創設の発電関係市町村全国会議が統合し、平成19年に創立された発電関係施設等及びダム所在市町村に対する行財政措置の確立を図られている団体です。なお、この発表順につきましてはヒアリングの応募順となっております。また説明時間でございますが、説明開始7分後にベルを1回、10分後にベルを2回鳴らしますので、各団体におかれましては説明の時間を厳守いただくよう、よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 それではヒアリングを始めたいと思います。まず電気事業連合会の井上関西電力株式会社環境室環境部長からご説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○井上電気事業連合会・関西電力株式会社環境室環境部長 関西電力の井上でございます。電気事業連合会を代表いたしまして意見発表を行いたいと思います。
 早速ではございますが、電気事業連合会、我々は発電事業を営んでおりますが、ご承知のとおり発電所というのは先の通産省の省議決定アセス、これが52年に定まりまして、それから百数十地点のアセスメント、これは省議決定の要綱に基づくアセスメントでございますが、この実績を重ねておりまして、それから法制化後もここに書いてありますように7地点、プラス、今現在進行形でございますが、5地点の実績を重ねております。
 そういった実績から我々が申し上げたいのは、まずこの中環審の場でいろいろな制度上の論点が上がっておりますが、是非とも過度な事業者への負担となるような上乗せの手続については慎重な議論をお願いしたいというのが総論でございます。今日は時間の関係で特に申し上げたい戦略的環境アセスメント(SEA)について我々の意見を述べたいと思います。
 まずSEAでございますが、人によりましてSEAのとらえ方がまちまちではないかということを感じておりまして、我々電気事業連合会の中でもいろいろ議論をするときには人それぞれの認識がある。ここに書いてあります、12年8月に出ました研究会報告では政策、計画、プログラムを対象とする環境アセスメント、事業に先立つ上位計画、政策レベルの環境配慮であるというふうなところが示されておりますし、19年に出ましたガイドラインでは事業の位置、規模等の検討段階で著しい環境影響を把握し、複数案について環境面から比較、評価するというところで、いずれもこのEIAの手続に先だって検討するのでありますが、人によってとらえ方がまちまちである。我々はこのSEAの本当に意味するところはどうであるかというところを考えますに、事業計画の早い段階から環境影響の配慮、環境への配慮を行って事業計画を満たす。これが本質ではないかと考えております。そういった観点から現在の発電所のEIAの手続でどういった配慮がなされているかというところでございますが、発電所につきましては環境影響評価法に加えまして、電気事業法で細かい手続が規定されております。これがそのプロセスでございますが、左の方に方法書手続、この間におきましても住民意見、それから知事意見、それから経済産業省の審査になるわけですが、ここにも顧問会という専門家集団のご意見が反映されて経産大臣意見というふうになります。
 それから予測評価を行い、準備書段階におきましても住民意見、知事意見、審査会の顧問意見、それから最終的に環境大臣のご意見をいただいた末で経済産業大臣の勧告をいただくというふうな手続を経まして、さまざまな方々の意見をこの事業計画の中に取り込むような、既にそういった手続になっておりまして、事業計画の進行に伴いまして計画変更、中止というところまであるような事業も出ております。
 もう1点、電気事業法の中では方法書の手続の中で事業の背景や経緯、必要性、それから環境保全の配慮に係る検討の経緯や内容を事業者はきっちり把握して、方法書の中にも書くんだよということが規定されておりまして、我々事業者といたしましてもこの精神を守って、できる限り方法書の中でこういったものを記載いたしまして、住民の方にご説明し、それから方法書段階からの審査に供されている。このように理解しております。
 それからもう一つ、SEAでよく話題に上ります生物多様性からの観点でございますが、ご案内のように生物多様性の基本法には計画の立案の段階からその事業の実施までの段階において生物の多様性に関する調査を行いまして、環境の保全に、生物の多様性の保全に配慮するということを書かれているのですが、これにつきましても発電所のアセスメントにつきましてはその電事法の方で動物、植物、貴重な動物、植物に加えましてこの生態系という概念が既に法制化のときに取り入れまして、地域の典型性、特殊性、上位性、こういったものをできる限り調査して、これを評価しなさいよということが含められておりますので、既に現在のEIAの手続の中で我々はできる限りのことはやっている、こういう認識でございます。
 それから、先ほど申し上げましたように発電所計画において電事法と環境影響評価法と2つの規定によりまして計画の変更、中止もこれまでやってきておりますので、最初に申し上げたSEAの意味するところ、早期段階からの環境配慮というのは十分今のルールの中でできているのではないかというのが我々の認識です。
 細かい字で恐縮でございますが、ここに幾つか計画の中止、変更した事例を挙げてみまして、A、B発電所、これはどちらも石炭火力発電所でございますが、A発電所の方は準備書の提出、これが終わった後、社会情勢の変化、石油・石炭価格の上昇、地球温暖化問題の高まりということを受けて事業者自らが事業を撤回しておりますし、B発電所につきましてはこの方法書手続に入る前に地元に申し入れましたときに、やはり地元から景観等の問題に対するご意見をいただいて、これも事業者の判断による事業を撤回しているという早期段階からの配慮をしております。
 それから、下の方は方法書手続から進めること、途中段階で事業計画を変えた事例でございまして、C、D発電所、これは石炭火力でございますが、当初は石炭火力というのは石炭の貯炭場から灰捨て場まで必要でございますが、この発電所はいろいろご意見を取り入れて石炭灰の全量有効利用、それからサイロ方式ということで埋立面積を縮小しています。
 E発電所、これは騒音とかの問題に配慮して配置計画を途中で変更しています。F発電所は煙突高さについても変更、G発電所につきましては生態系保全の観点から改変面積を極力小さくするという変更をしております。あと景観等々の問題で内容変更もしている発電所がございます。
 このように我々は既に今のルールの中で早期段階から環境配慮をやっているということでございますが、今、議論されている環境省のSEAガイドラン、こういったものに従って一律にルール化された場合に何が問題かということをご説明しますと、このステップ1、2、3と書いてありますのは、今現在、我々が電力の中でやっている検討でございます。
 まず電力需要を想定しまして電源計画を作るのですが、これは環境側面に加えましてエネルギーセキュリティ、経済性、それからどこに建てるかということになりますと、そこのインフラ整備、それから最も大事なのは地元にどう受け入れられるかというところでございます。これを総合的に判断して、社内でもごく一部の関係者しか知らないような情報の中で決定しております。
 これがルール化されますと、計画公表に当たっての問題点でございますが、当然、これは民間企業でございますから企業経営の話である。どういった事業をどこで進めるのかという企業経営の話でございますから、これを公表することによって先々の投資計画の不確実性が増す。
 それから、位置・規模にあたって公表して意見を伺ったらどうかということでございますが、発電所、その他の事業もそうでございますが、環境側面に加えまして技術論や社会的、経済的側面、さまざまな観点から総合的に勘案して一つの発電所に絞り込みますので、現実的に複数案の比較は無理でございます。
 プロジェクトの中で出力、燃料種、発電方式、地点、こういった複数の要素が複雑に絡み合いますが、先ほど申し上げたように燃料インフラ、パイプライン、LNG、基地、貯炭場、こういったものを考えますとやはりそういった複数地点を機械的に評価するというのは無理でございます。
 繰り返しになりますが、最近、CO2の話で石炭、LNGの話がございますが、これにつきましても先ほど申し上げた理由でエネルギーセキュリティの観点等々、燃料調達も我々事業者がやっておりますから複数点の検討は困難である。
 最も大事なところは、早い段階からそういった発電所計画の複数点ということを検討の俎上に載せますと、まだ計画が不確実でございますから、まず地元の方へ十分説明できないというところがございますし、何といっても発電所というのは地元との共生の基になるところでございまして、地元の不信感を招く。もちろん土地投機等による混乱も生じるということで、SEAガイドライン、これを一律に発電所に適用されますと発電所立地がなりゆかないというのが正直なところでございます。
 それから、我々は海外でもSEAが導入されているということで勉強してまいりましたが、これは最初に申し上げましたSEAの定義にありますように政府の計画段階、プログラム段階、政策段階というところが実のところであろうということで、やはり諸外国を見ましても政府の中の検討で取り入れられている。民間事業ではなかったというところが調査の結果でございます。
 以上、まとめますとSEAの意味するところというのはやはり事業計画の早期段階からの環境配慮ということである。発電所計画におきましては電事法とアセス法、この2つの今のルールでもちまして、十分事業計画の早い段階からご意見を伺いましてその環境配慮をしている。そういったところから発電事業につきまして環境省のガイドラインによるSEAを導入しますと、先ほども繰り返し申しました発電所立地が今後できなくなるという恐れを危惧しております。諸外国につきましても民間事業には適用されておらず、政府の計画にとどまっているというところからこういった点を考慮いただきまして、十分議論していただきたいと思います。以上でございます。

○浅野委員長 ありがとうございました。それではご質問がありましたらよろしくお願いいたします。討論会ではありませんので、質問に限ってください。それでは石田委員、どうぞ。

○石田委員 ありがとうございます。スライドの7枚目で計画中止、変更事例のご説明がございましたが、年次としては何年頃でございましょうか。差し障りのない範囲で。

○井上電気事業連合会・関西電力株式会社環境室環境部長 今、正確な資料は持っていないのですが、これは実は省議決定アセスの事例も入っておりますので、かなり古いものも入っております。

○浅野委員長 あとで資料をください。
 それでは鷲谷委員、どうぞ。

○鷲谷委員 ご説明のご趣旨の1つに電力事業に関してはこれまでの事業アセスで手続、評価等をうまくやっていて、信頼を得たものをしているので、これからSEAなどを実施する必要はあまりないというふうにも受け取られるご説明だったと思うのですが、それはその評価に関しては主観的な自己評価なのか、それとも外部者などの検討によって、そういうアセスがうまくいっているという客観的な評価をいただいているのかということが1点です。
 それから、そのこととも関わりのある客観的な事実についてお伺いしたいのですが、どういう観点で質問させていただくかというと、社会的に必要な事業を遅滞なく速やかに進めるにあたって何か問題が起こっていないかという観点ですが、今実施されようとしている、もしくは実施されている事業のうちで環境の面から何らかの異議申し立てがあって停滞しているような事業というのが幾つぐらいあって、代表的な事例としてどんなものがあるか教えていただければと思います。

○浅野委員長 大塚委員、どうぞ。

○大塚委員 どうもありがとうございました。1点だけお伺いしたいのですが、SEAというよりもお伺いしていると複数案の検討がちょっと難しいというご趣旨かなというふうに伺ってはいます。諸外国でもEIAでも複数案の検討を義務付けているところもあるので、そこはSEAだけの問題ではないのかもしれません。もちろん複数案の検討は環境的側面以外の経済的な側面も含めておやりになることだとは思うのですが、それでもやはりあまり早い段階からやるというのはちょっと難しいというご趣旨なのでしょうかということをお伺いしておきたいと思います。

○中川委員 ご説明の立場としては、将来的にもこのSEAを導入するということについては否定的なのか、あるいはどういう点の改善が行われる。あるいはSEAの定義なり何なりをこういうふうに考えれば、それに向けて取り組む余地はあるというようなことがお答えとしてあるのかどうか。

○浅野委員長 それでは簡潔にお答えいただければ幸いでございます。

○井上電気事業連合会・関西電力株式会社環境室環境部長 まず客観性というところでございますが、これはあくまで我々としての認識と意見でございますが、最初に申し上げた百数十地点と今までの実績から申し上げて、特段そういった早期段階からのということで、これ以上の早期段階からのという地元の方の大きなお話は今まで聞いておりませんので、地元の方もそういった今の手続でご了解されているものと考えております。
 2つ目と3つ目の複数案とか将来ということでございますが、我々は先ほども申しましたように、我々企業の中で企業の本当の経営の課題として検討している段階で外に出しますと、いろいろな地元の方の混乱も起こりますし、土地の高騰とかそういうのも起こりますし、ですから将来にわたりましても我々民間事業はそういったものを我々の経営課題として検討しているものをその段階で出してご意見を聞くというのは将来にわたっても難しいと考えております。

○鷲谷委員 質問に答えていだいていないと思うんですが。

○浅野委員長 申し訳ないのですが、時間が限られております。今日は8団体からご意見を伺う必要がありますので、これで終わらせていただき、また何かの機会に議論をやりたいと思います。どうもありがとうございました。
 次に公害・地球環境問題懇談会の小池代表幹事からご説明、ご意見をいただきます。

○小池公害・地球環境問題懇談会代表幹事 おはようございます。公害・地球環境問題懇談会の小池と申します。よろしくお願いいたします。
 恐れ入りますが誤字がございます。私の資料の7ページ、上から4行目ですが、「基本駅」とありますが、「基本的」でございますのでご訂正いただきたいと思います。
 それでは制度見直しに当たりまして、現行事業アセスについての充実改善と戦略的アセスメント法制化を求めて、お手元にお配りしました文書を基に意見を述べたいと思います。まず、第1の項、制度の目的・位置付けについてであります。事業実施に当たり事前に技術や立地などについての最良の選択ができるように。またそういう選択を促進する政策や計画が入れられ、それと矛盾する政策や計画は環境面の点検で見直しさせるようにし、未然に防止を図ることを目的とすることが重要であると考えております。
 私自身、長年水俣病、大気汚染公害や大型公共事業問題について取り組んでまいりましたけれども、被害を拡大し、被害者を出してから汚染の除去、被害の救済をしていくということでは被害者には重大であると同時に、コストも莫大にかかるということ。地球環境でも同様で、スタンレビューにもありますように被害コストが対策コストを大きく上回るとしています。子孫に良好な環境を残すため、環境破壊の未然防止のために環境影響評価制度は極めて重要であると考えております。こうした評価を多くの科学者や住民の知見、意見を取り入れながら意思決定の仕組みとして適用する制度が今求められていますと考えています。
 ところで現行制度はこの実現について極めて不十分である。以下、幾つかの具体例を基に、どこが問題かを指摘し意見を述べたいと思います。2番目が事例に基づく現行制度の問題点であります。時間の関係で個々にふれられませんが、要点のみ、見出しのみ述べながら、ある程度ポイントを絞ってご説明したいように思います。
 (1)申し立て手続、事後評価がないこと。道路アセスで交通量を小さく評価した例であります。ここに工事時点の悪影響の例、例えば首都高速、それから圏央道の国史跡の八王子城跡内の文化財、「ご主殿の滝」というのがあります。影響が少ないというように評価されていたわけでありますが、水枯れでこの文化財の滝が「ただの崖」になってしまっているということであります。この滝だけではございません。他の滝や沢が水涸れしているのです。しかし工事を止めて再評価を実施する仕組み、異議申し立ての仕組みもなく、訴訟が提起されても工事が続いているのです。
 諫早湾の干拓事業による悪影響について口頭補足します。かつて宝の海だといわれ、我が国有数の漁獲量を誇ったこの有明海が国営の干拓事業が進められる中で漁獲量が激減しております。つい最近も漁民が農水省の前で座り込みを行いその窮状を訴えておりました。自殺者がどんどん増えているという、深刻な事態であります。そして水門締め切り後、調整池の水質悪化がひどく、夏には有毒なアオコが発生するという事態が発生しているわけであります。特にアセスとの関係でございますけれども、2008年6月27日に佐賀地裁は、国に対して3年以内に水門を開放するよう命じ、これを受けてアセスを実施するということになったわけでありますが、その中身が担当官僚によって都合のいいように解釈されて無視されているのです。まず1つは開門するかどうかというアセスをやるのだ。2つ目にはアセス開門の結論が出ても関係省、関係者、長崎知事が同意しなければ開門しない。3つ目は仮に長崎県知事が同意したとしてもアセスは3年後、その後の対策工事が3年かかるというのです。そのうちに海が壊滅状態になってしまう。死の海になってしまう。漁民の生活はどうなるのかという問題であります。
 (2)代替案の評価がないということの問題。道路の例。燃料の選択が問われない例。
 (3)戦略アセスがないことの問題であります。まず計画、政策変更の例であります。羽田空港24時間利用の方針が決まったということでありますが、地元民にはほとんどこれの変更についての連絡がないということで、地元区民は大変心配しております。それから、政策が悪影響を与えた例として、木材関税の撤廃の問題、総合保養地域整備法(リゾート法)の問題、都心再生法の問題、輸入一般炭の解禁の問題、物品税の廃止の問題などです。
 大きな3番目は私たちの求めるアセスメントであります。(1)原則。環境負荷を最小限に課すという方法をマニュアルチェックではなくて、科学者や住民の知見を徹底して集めた上で、科学的議論の基に意思決定をしていく手段にすべきであるということです。それから政策計画段階の評価と事後段階の評価を行うことで影響を多面的、総合的に評価し、最小化していくということ。次に事業官庁など事業者も話し合いに加わってもらって、情報を提供し、自治体、住民、科学者などの主体の話し合いで決めれば、それに従う仕組みを根本から変えるということが必要です。
 (2)は戦略的環境アセスメントの導入であります。是非戦略的アセスメントを直ちに法制化すべきであるというように考えます。その対象は以下の2段階とすべきである。その1つは、政策、計画、予算の段階。次には事業の計画段階の提案(都市計画などを含める)。次に代替案や事後調査も求めるべきである。政策や予算の全てで公聴会を開いて決めることは全てというのは現実的でないにしても、影響が大きいものについては議論が必要であると考えます。
 (3)は事業段階環境アセスメントの抜本強化、1)~12)まで挙げておきましたが、非悪化の原則、代替案義務化と、負荷最小のものの選択原則化、徹底して専門家意見、住民意見を集めることなど、時間の関係で多く述べませんけれども、特に9)の対象事業の国の許認可ではない事業の拡大の問題。これは対象事業でないからということで、幾つか挙げておりますが、特に製鉄の関係についてはCO2排出量がずば抜けて大きく、国の対象事業ではないから、これを外すということは温暖化問題や環境悪化防止のため対象とするなど、是非対象事業の拡大をする。特に負荷の大きい部分については対象にするということが必要です。それから以下12)の訴訟手続の要件の緩和の問題であります。これも極めて重要だと思っております。以下、この法改正に当たって留意していただきたい私からの要求でございますので、よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。それではただいまのご意見に対してご質問がございましたら、どうぞお出しください。鷲谷委員、どうぞ。

○鷲谷委員 私たちの求めるアセスメントの要素を挙げていただいているんですが、お見受けしたところではやや重なりもあって、おそらく徹底して専門家の意見や住民意見を求めるというところにかなり大きなポイントがあるようにお見受けしたのですが、効果的にそれを実施するための手続に関してですが。ここには公聴会のようなものを提案されているんですが、公開の場でご意見を述べ合うような場を保障するということが一番重要と考えていらっしゃるのでしょうか。その他の何か具体的な手続でこういうことを保障するとよいという他のやり方をお考えでしょうか。

○浅野委員長 猪野委員、どうぞ。お答えはまとめてお願いします。

○猪野委員 ありがとうございました。発表された中で基本的な考え方として、科学者や住民の意見を十分参考にして是非取り入れていただきたいという話がありましたが、例えば今、発電所などの建設に当たっては国や自治体の審査顧問会等で専門家や住民の方の意見も取り入れる仕組みがございます。そういった現在の仕組みで行っていることに対して、ご意見をお願いいたします。

○浅野委員長 崎田委員、どうぞ。

○崎田委員 いろいろと伺いましてありがとうございます。今の鷲谷委員の質問はほぼ似ているんですが、ご提案の中に4ページの今後の私たちの求めるアセスメントの中に対象を2段階というふうにお書きになって、1番目が政策、計画、予算。2番目が事業の計画段階ということで、ご提案内容は大変明確ではありますが、実際にもしこういうのをやるとなると大変広い範囲の事業展開になると思うので、皆さんが本当に今回の見直しで一番大事にしたいポイントというのを明確にお話しいただければ大変ありがたいと思いまして質問させていただきました。

○浅野委員長 それではどうぞご回答をお願いいたします。

○小池公害・地球環境問題懇談会代表幹事 私はまず現場のいわゆる地元の声、そして地元で何が問題になっているかということを十分につかむということ。専門家の果たす役割というのは極めて大きいということ。それらが制度として取り入れられる仕組みというのが特に大事であると考えます。そのために、次の三点を制度として取り入れ、保障されることが重要と考えます。その一つは、情報公開と住民参加さらに参画。二つは、科学的根拠の裏付け。三つは、実効性あるアセス実施時期の設定。特に、戦略アセスでは、政策、計画、予算の段階と、事業の計画段階での実施が重要と考えます。

○浅野委員長 恐縮ですが、時間もあまりありませんので。特に強調なさりたいのはSEAのうちで政策についてもやるべきだというお話でしたが、いいですか、崎田さんのご質問について。

○崎田委員 最初のお答えで。

○浅野委員長 よろしいですか。はい、分かりました。どうもありがとうございました。
 それでは、時間が限られておりますので、大変恐縮でございますが、次に日本弁護士会連合会の関根弁護士からご意見を伺いたいと思います。

○関根日本弁護士会連合会公害対策・環境保全委員会環境法部会長 ヒアリングの機会をありがとうございます。日弁連を代表して意見を申し上げたいと思います。日弁連は環境省の応援団だと自負しております。21世紀の環境保全を考えた場合には環境省の権限を強化していく必要があるというふうに考えております。そういう観点からしますとアセス法に関しても、まだまだ環境省が果たすべく役割はあるというふうに考えております。
 資料をご覧ください。資料3が日弁連からの資料ですが、その中に1~5まであります。詳しい日弁連の意見は資料3-1を読んでいただきたいと思います。資料3の中の4ですが、ここに日弁連として主張したい点を5本の柱にしてまとめました。1つは信頼性確保ということが重要だと考えております。現行制度は事業者アセス制度ですので、どうしても自己出題、自己採点になってしまうということがあります。あるいはアワセメント等と言われることもあるように信頼性を確保する仕組みが制度として見えるような形で必要だと考えております。
 2番目は実効性確保の仕組みを持つ必要があるというふうに考えております。3番目は訴訟手続です。許認可でチェックするから大丈夫、あるいは事業者の自主性に任せれば大丈夫というのではなくて、不正、違法な手続があった場合には最終的には司法的なチェックを受ける。そこで是正できる仕組みが必要であろうと考えております。
 4番目が代替案です。これこそアセスメントの中心となるべき制度だと考えております。この点が現行法で極めて位置付けが曖昧にされている。最後は手続原則の明記です。
 以上の五つの柱を具体的に制度で手続化する場合にはどういう改正が必要か。スライドを中心に見ていきたいと思います。論点としては10項目あります。スライドを10枚用意しました。10分ですので、1分しかありませんので、早口になるかもしれませんけれどもお許しください。
 最初にまず基本原則をどうするかです。理念が現行法ははっきりしていないというふうに考えます。いつの間にかアセス制度は事業者の自主的な取組制度だというふうに矮小化されている感じがいたします。そうではなくてアセスメントというのは国民の環境権を実現するための、あるいは担保するための仕組みだというような整理が必要だと思います。
 2番目に、生物多様性の保全も理念として掲げる必要があるだろうと思います。1番が人間中心主義とすれば、2番目は生命中心主義みたいな発想です。3番目としては、環境基本法を3条から5条まで高い理念をうたっております。これを具体的に実現する仕組みがアセスメントだというような整理の仕方が必要だと思います。そういう観点からアセスメントが合理的な決定を行う仕組みだと。それも科学的、民主的な手続の下で行う。この点が重要だというふうに考えております。
 あと戦略アセスメントですが、現行法では環境基本法19条に本籍があるような感じですが、アセス法の中でも法制度化をうたうべきだと考えます。
 次の2番です。実施時期です。SEAという議論をいく前に現行法でも実施時期を早めることができて、そうすればかなりの部分が現行法の枠内でもSEA的なことができると理解しております。例えば予定地が複数可能な場合にはその段階、事業内容が複数可能な場合にはその段階、単一予定地で単一事業だけが可能な場合に初めて環境保全措置を講ずるというような実施時期の定めを設ければ、かなりSEAに近いことができるだろうと考えております。
 あとアセスの実施から相当期間を経過した場合には再実施を義務付けるということも制度の信頼性を確保するためには必要な仕組みだと思います。
 環境保全審査会ですが、環境省が関与する場合には環境保全審査会の関与を認めるという仕組みが必要だというふうに考えております。
 あと1-6ですが、アセスメント法は行政法で強行法規ですが、行政調査だとか命令だとか、罰則規定がないんですね。思うんですけれども、道路に駐車違反してもレッカー車で移動されるし、罰則もあるのにアセス対象事業みたいに大規模な事業で違反しても是正措置もないし、罰則規定もないというのはいくらなんでもおかしいのではないか。実効性がないのではないかというふうに考えております。事業者の方はきちんとアセスをやっていると言われますので、こういう仕組みを設けても何も恐れることはないと考えております。
(スライド)
 対象事業ですが、現行制度の限定列挙主義の下だとどうしても漏れるような事業があります。ですので包括的に環境に著しい影響を与える事業は対象とするというような包括条項を設ける必要があるだろうというふうに考えております。
 対象事業のところですが、この部分でも現行法では主務大臣と都道府県知事しか意見が言えないのですが、市町村、住民でも判定の手続に対して市民参加を入れる必要があると考えております。
 あと脱法禁止規定を設けていただきたいと思います。実施時期、事業細分化することによってアセスの対象事業でなくなってしまうという仕組みがいかにもおかしいというふうに考えます。
 方法書ですが、幾つか問題点が見えてきたような感じがします。1つは、方法書作成前に現状を変更するような調査がなされることがあります。この部分は禁止するということですね。方法書手続自体を台無しにしてしまうようなことですので、記載内容ですね。現行法は事業アセスですのでかなり事業内容が固まってからアセスされます。とすると方法書の段階でもっと具体的なことを書く必要がある。そうしないと中身のある意見も出せないような仕組みになっております。
 代替案です。現行は極めて位置付けが曖昧だというふうに思っております。こそっと入っているような感じですが、代替案の規定を正面から、これこそがアセスの革新部分だというふうに明言する必要があると考えております。実際、アメリカの制度ですとこの代替案こそがアセスの革新だというふうに明記されていますので、そういう規定の仕方が必要と考えます。
 横断条項ですが、アセス書で書かれたことを許認可の条件とするような実効性確保の仕組みが必要だろうと考えております。
 また環境保全審査の基準ですが、現行法は極めて曖昧です。重要な基準は基本的事項に書かれておりまして、この基本的事項は非常に志が高く、よく出来ていると思うんですけれども、これの重要事項は環境アセス法で規定するという仕組みが必要だと考えております。
 あと環境保全審査結果については公表するということが必要だと考えております。
 基本的事項ですが、位置付けが告示ですし、法上曖昧です。これをうまく環境省令に格上げする。そうすれば基本的事項に反した場合には違法評価もされ得る仕組みができると思います。実効性も確保できるというふうに考えました。
 あと評価の項目に関しても、具体的な評価項目、手法に関しては法の規定事項とするという仕組が必要だと考えました。評価の基準ですが、この点も極めて現行法は曖昧ですので、評価基準の重要事項、一部は基本的事項に書かれていますが、これを法定する必要があるだろうというふうに考えました。
 あと環境保全措置ですね。回避、縮小、代償、この順で検討するのだということを法律で明記する必要があると考えます。
 あと累積的影響の規定も設ける必要があるというふうに考えております。関連行為ですね。現行法ですと、同一事業者の場合に併せて評価することができるとなっているんですが、もっと規定を拡大して、それを義務化する必要があるだろうと考えました。
 あと市民参加の規定です。市民参加という場合には単に情報を提供するだけではなくて、判断の形成に参加する。あるいは権利を守るために参加するという側面もあります。そういう観点から市民参加の規定を手続の中で具体的に各手続の特性に応じて具体化する必要があるだろう。手続保障する必要があるというふうに考えました。
 訴訟手続ですが、アセス手続で行政上の不服申立の手続を設ける。同時に不服申立を行った人には訴訟の資格を与えるという仕組みが必要だというふうに考えました。
 最後ですが、アセス条例に関しては上乗せ、横出しを認めるということが必要だというふうに考えました。一番大きな法対象事業よりも条例対象事業の方が厳しいアセス手続が行われるという仕組みがおかしいというふうに考えました。
 あと事後調査ですが、これは是非法律で定めていただきたい。信頼性、実効性を確保するためには不可欠な制度だというふうに考えました。以上です。ありがとうございました。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。それではただいまの日弁連からのご意見に対してご質問がございましたら、どうぞ。

○吉田委員 「累積的影響」の説明が1行だけだったので、少し伺います。私も、吉野川河口の干潟に影響する事業の累積的影響を評価してほしいと要望しても、根拠となる法律、条例、要綱が違ったり、事業の進度が違ったりということで、なかなか一緒にやるということは難しいと言われているような状況です。日弁連は、こういった問題をどのように解決しようと提言されているのでしょうか。

○浅野委員長 中川委員、どうぞ。

○中川委員 現在のアセスにおける法律と条例との関係についてどのようなお考えがあるのか。今のいろいろな改善案といいますか、改革案については主として現行法を前提としての話だと思いますが、現在の法律と条例とのすみ分けといいますか、対象分野も含めてどのようにお考えになっているのか。
 関連して、最後に61条2号の括弧書きを外せというご意見ですが、現実問題としてこの規定のために支障が生じているような事例をご存じであれば教えていただきたい。

○浅野委員長 崎田委員。

○崎田委員 先ほど実施時期を早めればSEAの精神をここにきちんと入れることもできるというふうにおっしゃったことは大変重要なご提案かと思って伺っておりました。それは例えば4番の代替案のところをもうちょっと明確にという、この辺のことを強調すればそういうになるというご提案か、戦略アセスと普通のアセスと両方つなげると、期間が長くなるというお話がよくありますのでちょっと伺いたいと思いました。

○鷲谷委員 今の質問とやや関係があるんですが、代替案が重要というご意見と、戦略的アセスメントの必要性という制度設計の観点から見て統一的に理解させていただいてもいいのでしょうか。それとも手続きとして別のものとしてお考えでしょうかというのが1点です。
 もう1点は、脱法的な手法を禁止すべきというご意見ですが、イメージがはっきりつかめなかったのですが、本来であれば大規模な事業であるはずなのに、それを幾つかの規模の小さい事業に分けてアセスをしないですますというようなことを意味されているのでしょうかということです。

○浅野委員長 そのとおりだと思います、現実に。
 大塚委員、どうぞ。

○大塚委員 不服申立とか訴訟の点についてごく簡単にふれられたのですが、不服申立に関して、意見を提出した人を考えていくことも可能かもしれませんが、おそらくもっと広くというお考えだと思いますが、その辺についてはどうお考えになっているか、もう少し詳しく教えていただけるとありがたいと思いました。

○浅野委員長 多くの質問が出ました。申し訳ございませんが、簡潔にお答えをお願いします。

○関根日本弁護士会連合会公害対策・環境保全委員会環境法部会長 質問事項が7つほど出て、時間内にとてもおさまりませんので、簡単に答えられる範囲で答えさせていただきます。最初に累積的影響ですが、これに関しては資料3-1で累積的影響の6-5のところで書いてありますし、アメリカのCEQ規則などでも累積的影響に定義規定があります。これなどが参考になるのではないかと考えております。
 2番目、法律と条例の関係、先ほど申し上げたんですが、法対象事業の方が規模が大きいのですが、条例の方が厳しい手続きを定めている場合が多いですので、それよりも規模の小さい事業の方が厳しい審査手続きに服して、法対象事業の方が緩い手続きで行われるというようなバランスを失しているというふうに考えております。先ほども述べたんですが、その点を解決するためには上乗せ、横出しを認める。そのためには61条の括弧書きを削除すれば済む問題だというふうに考えておりました。
 実施時期とSEAとの関係ですが、1つは実施時期を早めることはSEAとも関係していると理解しています。今の事業段階でやればいいというのは事業アセスですが、それよりも前の段階にいくのがSEAですので、日弁連の提言は実施時期を早めるということになりますので、SEAの部分と重なる部分があるというふうに理解しております。
 4番目でしたか、SEAとなっていくと当然代替案の範囲が広まりますし、SEAと代替案というのは不可分の関係があるというふうに理解しております。ただ現行の枠内でも複数の予定地が検討できる場合にはその段階、複数の事業内容が検討できる場合にはその段階、環境保全措置についても回避、縮小、代償の3つについて代替案が可能だろうと。これは現行法の枠内でできる問題だろうというふうに理解しております。
 あと脱法禁止規定がありますね。

○浅野委員長 これはさっき私が答えました。

○関根日本弁護士会連合会公害対策・環境保全委員会環境法部会長 日弁連の意見としては現行行政訴訟法の下では非常にアセス手続き自体を訴訟の手続きに載せるということは非常に困難です。許認可段階で、その許認可を争うということになるんですが、その場合でも地域住民が争うことは非常に難しい仕組みです。ですのでアセス手続法において不服申立あるいは意見提出の制度がありますので、意見が十分に反映されなかった場合には不服申立を認める、できる。不服申立をしたものは訴訟上の資格を与えるというようなアセス法内での解決が必要だというふうに理解しております。

○大塚委員 意見を呈しただけというお考えということでしょうか。そこをクリアにしていただければ。

○関根日本弁護士会連合会公害対策・環境保全委員会環境法部会長 はい、そうですね。

○浅野委員長 日弁連意見としては意見提出者にも不服申立の何らかの。

○関根日本弁護士会連合会公害対策・環境保全委員会環境法部会長 そうですね。それ以外の方は許認可段階で争う場合には一般の行政訴訟で、それ以外は一般の行政法理論によるということです。

○浅野委員長 分かりました。どうもありがとうございます。いろいろ参考にさせていただきます。
 それでは次に風力発電事業者懇話会・一般社団法人日本風力発電協会・株式ユーラスエナジージャパンの祓川社長にご意見を伺います。

○祓川風力発電事業者懇話会・一般社団法人日本風力発電協会・(株)ユーラスエナジージャパン代表取締役社長 それでは、風力発電事業者懇話会、日本風力発電協会から発表させていただきます。両会で風力発電関係として133社が加盟し、風力発電で日本全体の70%をカバーする風力発電関係の代表的な組織というふうにご理解いただければと思います。私どもの論点といたしましては、まずSEAというお話が先ほどから聞かれていますが、よくどのようなものかが理解できないという状況でございます。風力発電に関しまして、私どもは欧州や米国、アジアで事業を展開しておりますが、SEAの対象としてその制度を実施するように要請を受けたことがございません。また複数のプランを提示して、その中からどこかを選定するというプロセスを風力としては行っていません。
 なぜかと申しますと、風力発電は局地で展開する、すなわち6m/s、7m/sの風、これはなかなか吹くところがないのですが、そういうところを選定して事業化を進めているということですので、複数のプランを提出するというのは難しいと考えています。
 一方、国によるアセスの対象にというご意見も出ているかのようにお伺いしておりますが、海外でも州やあるいは電力法での簡易アセスメントというようなものの対象になることはございますが、ほとんどの事例は自主アセスで実施しているというのが実態でございます。そのような観点で我が国におきましては、NEDOさんが海外の事例を踏まえて、あるいは日本及び地元の問題等を種々ご考慮されてお作りになったNEDOの環境影響評価マニュアルというのがございまして、これを基に我々事業者が実施しています。
 マニュアルの更なる拡充も必要かも分かりませんし、我々事業者自らの規制の徹底ということも必要かと思いますが、何よりも我々としては地域の住民の皆様方のご意見を十分にお伺いした上で有識者のご意見を反映した上で事業のついてのご理解を得て事業を実施したい。ご理解を得られなければ事業をやめるというような判断を今後とも実施していきたいと考えております。
 3ページ目ですが、世界と日本の風力発電新規導入量、世界は伸びているのに日本は伸びていない。なぜなのかと申し上げますと日本の風力発電は極めてコスト増になっています。その1つの原因に、と申し上げていいのかどうかわかりませんが、建築基準法が改正されました。改正されて1年半、どのような手順で我々は風力を造っていいのか分かりませんでした。動けなかったということです。更に世界に類を見ない風力に対する建築基準法でございますので、その間の資材高騰もあり、コストが大幅に上がったということでございます。
 このような状況の中で大手、中小の風力発電事業者は現実的に事業の撤退、縮小というような方向に向かっているのが昨今の状況でございます。
 4ページにまいりますと、日本の風力発電というのはこんなに少ないのかなということをご覧いただけると思います。皆さん、地球温暖化ということが叫ばれている中で再生可能エネルギーは注目されています。再生可能エネルギーの中で風力発電は世界において最も注目されております。一番分かりやすい例が日本では太陽光と風力ですと1対1ぐらいの設備容量というのが実際の累計でございます。
 では世界はどうなのかというと、太陽光1に対して風力が約10倍。細かくいいますと設備容量では6倍から7倍、発電電力量では17倍、これが世界の実態だということでございます。鳩山首相のCO225%削減の国際公約もございます。我々としても風力発電を進めていきたいというふうに考えておりまして、我々のうちのほとんどの事業者はNEDOさん発行の環境影響評価マニュアルに基づいて、あるいは地方公共団体の条例に基づいて環境影響評価を実施しておりまして、ここにございますように1,517台の風車が稼働中でございますけれども、1万kW未満の2発電所のみが環境影響評価を実施していなかったという事実がございます。この点は反省すべきだと我々は認識しております。
 一方、NEDOのマニュアルによる場合でも事業者の解釈の違い、すなわち住民へのご説明の不徹底等に起因すると思われます問題が発生しておりまして、騒音やあるいはバードストライクのことが、複数のメディアにより報道されておりますが、私どもとしては科学的なデータに基づいてきちっと討議されるべきものであり、感情的な表現や感情的な行動はいかがなものかと思っております。極めて少数の同一発電所の事例を繰り返して報道されているというふうに我々は理解しております。
 環境影響評価法の対象事業に風力発電を含めないでいただきたい。先ほど申し上げましたとおりSEAを我々はなかなか認識しておりませんし、海外でSEAが民間事業者に義務づけられた例はないというふうにお伺いしております。まして風力発電のような小規模な事業にまで及んだということを我々は認識してございません。先ほど申し上げました国による環境アセスも同様ですが、我々は自主規制を更に強化し、そういうことによって地元の皆さんとご意見を十分に交わした上で進めるということなので、是非とも国による環境アセスの対象としないでいただきたいというのが私どもの考え方でございます。
 対象事業として環境アセスの対象になった場合のメリット、デメリットですが、メリットが十分あるというように認識しております。実施内容の差がなくなるということが1つ。近隣の住民の方は国によってご許可いただいたのですから、安心だなと思えるかもしれないというのがメリットです。
 ただし、先ほど新聞報道でいろいろ出た問題点等については全てを解決できるとは思っておりません。国でやるよりも我々は地方自治体への権限委譲をお願いしたいし、迅速な風力発電導入には国による関与というのが時間、これは実際の例ですが、かかるということで我々の自主アセスに任せていただきたい。費用についてもかなりかかるというようなことでございます。
 風力発電の導入フローはご一読いただければと思います。我々としては基本方針としては、実施方法、内容、手順などを明確にし、事業者の解釈を統一してきちっと対応するということが基本方針でございます。2番目は地域の皆さんの意見を十分にお伺いし、その意見を反映し、有識者の選考方法をきちんとして有識者のご意見を反映して実施すれば問題が生じないのではないかというように考えています。
 1点、最後に風力発電等の騒音特性でございますが、現在の騒音規制値、我々は45db以下で風力発電の運転を考えていますが、ここでの例ですが、北海道、室蘭では風力発電を建てる前から騒音が45db以上になってしまっている。そういうような地域については風車を建てたらどうなのだろうかということで、デンマークやオランダや、その他の国では騒音規制値を風速に応じ騒音規制値というものを規定されているそうです。特にアメリカのカリフォルニア州では暗騒音+5db以下という基準を設けられているということなので、我々としてはこの種の基準の決定、あるいは低周波、今いろいろマスコミを騒がせています低周波についての基準の設定、それからバードストライクの問題等ございますが、鳥の影響評価について数値化をしていただけないかというようなことをお願いしている次第です。すなわちバートストライクは飛行機や新幹線や民家の窓にも鳥が当たって亡くなる。送電線に当たっても亡くなる。アメリカではデータ化されていまして、風力発電が最も少ない。風力に鳥が当たった場合に、もちろん我々は鳥にバードストライクというような現象が起こらないような回避策を十分に検討して行うものですが、風車を止めるというようなことが実際にあるのでしょうか。新幹線は止められるのでしょうか。飛行機は止められるのでしょうか。民家は撤去できるのでしょうか。そういうようなデータ化の中での基準というものの正しい仕組みというものを作っていただければと考えております。簡単でございますが、以上でございます。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。ご質問ございましたら。
 鷲谷委員。

○鷲谷委員 諸外国とは異なる日本の国土と社会の特性から見て、風力発電所の建設によって潜在的に生じ得る環境影響評価としてどのようなものが重大であり、どのようにすれば緩和できるとお考えでしょうか。科学的な検討をなさっているようなご発言がありましたので、それを踏まえて簡潔なお答えをお願いします。

○浅野委員長 中川委員、どうぞ。

○中川委員 現在、風力発電についてはNEDOのマニュアルと条例による環境影響評価が実施されているというふうに書かれておりますが、併せて意見としては法律の対象事業には含めることは反対だ、こういうご意見だと思います。また、地方自治体への権限委譲にもそれは逆行するんだ、こういう話です。これは別の言い方をしますと、条例による環境影響評価は是認する。それは望ましいんだというように理解してよろしいのか。

○浅野委員長 田中委員、どうぞ。

○田中委員 ありがとうございます。私はNEDOと条例、法令の長期化ということが非常にデメリットだということでご説明があった。資料にもございますが、これはどこのデータ、つまり条例アセスの場合の約1.5倍、更に法令アセスはその倍ぐらいになるんですが、この法令アセスの場合は何をとってこのような期間を算定したのか。その根拠を教えていただきたいと思います。

○崎田委員 ありがとうございます。以前、こちらの委員会の方で環境省の事業者調査でいわゆるNEDOのガイドラインに沿った実施をされた場合に市民の意見を聞かなかった事例というのが4分の1ぐらいあったという情報もあったんです。そういう状況の是正のためにどんな努力をされているのか。メリット、デメリットにもいろいろありましたが、一言お話しいただければありがたいと思います。

○祓川風力発電事業者懇話会・一般社団法人日本風力発電協会・(株)ユーラスエナジージャパン代表取締役社長 海外の事例でございますが、アメリカとか大きい国だけではなくて、やはりイギリスとかポルトガルとか、日本と同じような国でも同様な形になっていまして、イギリスの方は電力関係で簡易なアセスメントをやられているという形ですが、基本的には全て自主アセスをやっているのが実態というふうに私どもは認識しています。
 2番目のNEDOのマニュアルと条例で十分ではないかというように我々は考えていることに対して、条例がいろいろなところでできたら、それに従うのかというご意見だと思いますが、基本的には各県でお考えになった各県の各地の特有、特殊性があると思います。それについては従っていこうと考えております。ただし、F県の場合ということにしますと、後ほどのご質問にも関係しますが、環境アセスの期間は2年強、実質的には3年ぐらいかかります。金額も2億円かかります。風力発電という事業者、ちっぽけな事業者ですが、それに2億円の環境アセスを負担するというのは大変でございまして、日本においては風力発電を実際に事業化するためには電力会社の抽選によって抽選に受かったところが事業を実施できるということです。そうすると環境アセスを県の条例によって2億円かけてやったけれども、いつまでたっても抽選に受からなければ事業はできないというようなことですので、それは風力発電のいわゆる導入の制度化と合わせた、両面から考えていただかないとなかなか難しいなというように考えています。実質的に大企業のみが係る条例による環境アセスを実施することはできますが、NPOや個人やあるいは地域の方が風力発電やろうと思っても、なかなかそれだけのお金の話を、下手をすると捨て金になるというものを、やれる実態があるのかというように私は考えております。
 それから、市民の意見を聞かなかった例が多々あるということでございますが、我々は1つとしては我々の自助努力というのが好ましい。我々は先ほど申し上げましたようにほとんどの風力発電事業者等が我々の両会に入っていますので、両会内での意思の徹底というか、そういうものをやっております。
 更に経済産業省さんの方からも種々のご指示やご徹底を各事業者に促していただいていると聞いております。我々としては更にそれを徹底化して、逆に言うとマスコミ等でいろいろなご意見をいただいて、適切な意見あるいは不適切な意見もありますけれども、そういうことがかえって我々にとって住民の皆さんへのご説明の機会を得て、最近ではどこへ行っても住民の皆様へ風力発電をやらせていただきたいというお話をすると、風力発電は良いけれども、では騒音はどうなの、低周波はどうなのという意見は必ずいただいております。いつ説明会をやって、どうやって方針を作って、どういうふうに試験をして、どうやってその結果を発表するのですかというようなご指摘もいただいております。

○田中委員 すみません、長期化の話の根拠をお願いします。

○祓川風力発電事業者懇話会・一般社団法人日本風力発電協会・(株)ユーラスエナジージャパン代表取締役社長 現実に我々はNEDOさんの環境影響評価マニュアルで1年もしくは2年で大体でき上がるということですが、先ほど申し上げましたように県条例でいきますと基本的には2年というような期間設定がございます。ただしご意見をいただいたりいろいろなことをしますと、大体3年ぐらいかかっているということで、これは風力発電側の実情です。風力発電以外の大型の事例というのは、例えば、法の適用を受けている火力発電所とか、小型の火力発電所ではそれだけで3年から5年ぐらいは実態でかかっているというのが私ども認識しているところでございます。

○田中委員 法令アセスというのは風力発電の例ではないということですか。

○祓川風力発電事業者懇話会・一般社団法人日本風力発電協会・(株)ユーラスエナジージャパン代表取締役社長 ございません。実際に世界で法令アセスがかかっているところはございません。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。続きまして日本野鳥の会、古南自然保護室の室長代理からご意見を伺います。

○古南日本野鳥の会自然保護室室長代理 日本野鳥の会でございます。続きまして、私の方からも主に風力発電の環境アセスについての意見を申し述べたいと思います。今、払川さんなからの話でも、環境影響評価について事業者さんのサイドでもかなり重視されているということがお分かりになったかと思います。私どもの意見は、1つは風力発電をアセス法の対象事業とすべきということです。それから、中間報告に関わる部分としては事後調査の重要性に関わる部分と情報公開共有の重要性ということでも併せて申し述べたいと思います。
 先ほどに論点を6つほど挙げさせていただきました。現状ですが、今、お話がかぶる部分がありますので、少しはしょりながらいきますが、新エネルギーの導入ということで、これは鳩山首相の鳩山首相イニシアティブ、CO2の削減目標も掲げられておりますので、ますます重要な公益的な事業となっていると思われますが、国の補助金の対象となっておりまして、ほとんどの事業について補助金で実施されている。大体3分の1程度というふうにお聞きしていますが、そういう意味では公益的な事業、プライベートな私企業さんがやられているものではありますが公的なお金が投入されている事業であるということが言えると思います。
 既に全国的に導入がされておりまして、皆様のお手元の資料は資料5ですが、4枚目に導入量ということで、これは新エネルギー機構、NEDOさんの統計データですが、既にほとんどの県でこのように導入の実績があります。まだゼロというふうになっているところでも、これから導入されると聞いている。あるいは計画があるというような県もございますので、これは全国的な課題としてあるということです。
 それから、鳥類への影響については後で述べますが、特に稀少種への衝突が発生しているということで、これは地球温暖化の対策のためには風力発電の促進はもちろん必要なわけですが、気候温暖化の対策をしていく中で生物多様性について影響を与えしまうというような事例が見られているということです。
 現在、法の対象事業となっておりませんけれども、なっていないために自主的に行われているために手順がバラバラであって、情報公開が不十分であったり、議論が手戻りになったりというような事例が私どもの方では聞いております。
 5番ですが、条例の対象としている県もございますが、扱いがバラバラということがございますので、補助金の対象となっていることを踏まえて制度化を行う必要があるだろうと思われます。
 それから、SEAの話がずっと出ておりますが、風力発電事業に関しては、計画段階、立地の選択において環境影響が発生しそうな場所をあらかじめ避けておくということが非常に重要であって、これが実際の事業アセスを実施する上でもスムーズな導入になるだろうと考えております。
 少し詳しく述べたいのですが、3番の鳥類への影響の部分です。資料5の3枚目のところに、これはヨーロッパの事例ですが、いろいろな鳥における影響があるということが分かっております。これはベルン条約という国際条約の条約事務局に提出された資料の中から引用しているものです。以下では主に衝突の影響ということを述べさせていただきますが、要するに風車の翼に鳥が当たって死んでしまうという事故がいろいろな分類群で確認をされております。それから、それ以外にかなり大きな建築物になりますので、今110m、120mぐらいの地上高の大きなものになりますが、そういったものを作るということで直接的な土地の改変であるとか、それから鳥が通るコース、ルートを阻害するので、直接死にはしないけれどもルートを変えてしまうといったような場所転換、あるいは移動の障害、障壁といったような影響があるということが既に報告をされております。
 日本の衝突事例ですが、今の3枚目の裏を見ていただきますと、ちょっと細かな字で申し訳ないんですが、既にいろいろなところでの事故の例が報告をされております。これは文献とか新聞報道とか、あるいは環境省のプレスリリースなどから拾ったもので、文献になっているものだけを拾っておりますけれども、非常に多くの種類が影響を受けている。それから北海道、本州、四国、九州、沖縄ですね。これは系統的な調査ではございませんので、各県でこれこれがあるというふうに調べたものではないのですが、かなり地理的にもいろいろなところにまたがっている。いろいろなところで事故が起きるということです。簡単に言いますと鳥がたくさんいるところに風車を建ててしまうと事故が起きてしまうということです。
 それから、ご注目いただきたいのは、この中でオジロワシであるとか、イヌワシのように種の保存法の対象種、天然記念物にもなっております。それから、レッドリストの絶滅危惧種ミサゴは準絶滅危惧ですけれども、そういった鳥の事故も報告をされております。
 先ほど祓川さんのご発表の中でいろいろなものにバードストライクが起きるという話がございましたが、このように稀少種がたくさん死ぬというのは1つ風力発電の特徴としてあると思いますが、特に猛禽類です。猛禽類が生息するような場所に風力発電が建ってしまうと、このような事故が起きます。
 自主的なアセスの問題点ということで、早い段階での情報公開が成立しにくいということで、これはよく企業秘密ということが言われますが、事業者さんの方で風況調査をやられて、わりと調査が済んでから住民に説明するといったようなケースが今まで多々見られております。祓川さんたちの協会や懇話会に入っていらっしゃる事業者さんでない事業者さんもありますので、そういったところかと思いますが、情報公開が確保されていないような事業者さんも散見されております。
 それから、科学性、客観性が確保されないということで、中には文献調査だけを行って、これが影響調査ですといったような形で補助金の申請のときにそういった添付書類が付いてくるということもあったように聞いております。
 それから、事業者さんが今、法律の下でやらないで自主的にやっておりますので、環境保全にコストをきちっとかけてくださる事業者さんはいいのですが、そうではない事業さんもありますので、対応がバラバラになってしまうということです。今年の秋から資源エネルギー庁の補助金の採択要件に環境影響評価書の添付あるいは自治体の審査会における意見書を添付しなさいということが新しく定められているようですが、ここまで環境影響評価の重要性を認識されているようであれば、これは法律で一律にきちっと進めるべきであるというふうに思います。
 条例については時間がなくなりましたので見ていただければと思いますが、実際にやっておられるところ以外にも環境影響評価について課題がある。指針が必要だということを言われている自治体はたくさんあります。
 それから事後調査について一言申し述べたいですが、風力発電は新しい技術です。環境影響評価の技術もまだきちっと定まっている部分、分からない部分がたくさんあります。それから鳥の衝突事故というのがメカニズムがまだはっきり分かっていない部分がありますので、これは実際に建てて見て、どういう事故が起きているかということをきちっと調べることによって評価技術が上がっていく。事故の起きないような建設がどのように行えるかということの検証にもなっていくので、事後調査というのは風力発電においては特に重要だと思われます。今、事業者さんの方で自主的にやられている事業者さんもあると聞いていますが、ほとんど公表されておりませんので共有化が必要であるということです。
 すみません。一言だけ。規模要件ですが、今の条例は10基とか1万kWというような規模要件がありますが、1基とか5基とかそういうレベルでも事故が起きてしまいます。資料の3枚目の裏の方の細かな表を見ていただくと分かるのですが、1基、2基、5基というようなところで絶滅危惧種の事故が起きています。
 それからSEAに関しては、これは少し工夫が必要だと思います。鳥がいるところで事故が起きてしまう。鳥がたくさんいるところで事故が起きてしまいます。特に稀少種のいるようなところで事故が起きると生物多様性上も非常に影響がありますので、立地段階できちっと重要な場所を避けるという工夫が必要です。これは長野県の例ですが、影響想定地域マップという資料が公表されておりまして、自治体の方で、行政の方でこういった情報を整理しております。環境省でも今、立地的成果マニュアルというものを作っていて、こういったマップを公表されるものと思っております。こういったものを利用して、立地段階で例えばオジロワシがいるところは避ける。イヌワシがいるところは避けるといったような措置をとっていきますと、環境影響評価自体もサイズが小さくできるとも考えられるというふうに思います。

○浅野委員長 よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。それでは、ご質問ありましたら、どうぞ。

○田中委員 ご趣旨はアセスの法制化が必要だという、風力発電について、ということだと思いますが、このお配りいただいたスライドの6番目に自主アセスの問題点とありますが、これは何を指しているのでしょうか。自主アセスというのはよく分からないので。こういうことが問題なので法令アセス、法令化が必要だということだと思いますが、その辺りの関係を教えてください。

○鷲谷委員 先ほど祓川さんにした質問にはお答えをいただけませんでしたので、鳥類への影響に限って、やや異なる角度からお尋ねしたいと思うのですが、日本の国土、自然の特徴から見て海外の経験をそのまま導入して問題にアプローチすることで環境への影響が十分に回避できるでしょうかということですが。世界に34の生物多様性ホットスポットとしての日本という観点も交えてお考えがあればお聞かせください。

○吉田委員 最後にセンシティブマップまたはアボイドマップを紹介していただきましたが、一方で環境省や県が稀少野生生物の情報を持っていながら計画段階でその場所を避けることができないために、こういった事故がたくさんあると思います。こういった問題に関して、情報のマッチングがまずいのか、それとも制度上の問題があるのか、どうお考えでしょうか。

○浅野委員長 大塚委員。

○大塚委員 ありがとうございます。抽象的なお話で恐縮ですが、仮にSEAに関しても風力発電を対象にするということになった場合に他方でもちろん風力発電は温暖化対策ということがあるのですが、利益と損失の関係についてどういうふうにお考えになっているか、ちょっと。私自身もよく分からないものですからお伺いしたいと思います。例えば絶滅危惧種がいるところは少なくともというか、そういうお考えはあり得るのかもしれませんが、でも他の野鳥ももちろん大事でしょうから、例えばその辺についてどういうふうにお考えか教えいただきたいと思います。

○崎田委員 私は、影響想定地域マップ、長野県の例が出ていますが、やはりこういうものが全国的に広がっていけばアセスの実効性が非常に高まるではないかと思います。この辺の動きに関してもう少しお話しいただければと思います。

○古南日本野鳥の会自然保護室室長代理 まず田中委員のご質問ですが、6番の自主アセスの問題点、これは条例で行われている県もありますが、そうではないところで自主的にやられていますので、事業者さんの中にはいろいろな、情報公開であるとか、あるいは客観的な調査とか評価といった面で実際にやられていない事例がありますということを申し上げたかったことです。
 鷲谷委員のご質問ですが、海外のアプローチが回避に適用できるかということですが。

○浅野委員長 というよりも日本の特性はどうかという質問ですが。

○古南日本野鳥の会自然保護室室長代理 鳥の種類であるとか、あるいは地形といったことで事故率が風車によって異なるということが海外の事例でも知られております。そのときに重要なのはどのような鳥が、どのような飛行パターンをとるかということですね。これは衝突の話だけですが、それが重要です。生息する種類、地形が異なりますので、海外の事例をそのまま適用するというのはちょっと難しいと思います。環境影響評価の技術は少しずつ上がってきていますし、環境省の検討会、マニュアル作りも行われていますので、それが公表されますと少し上がってくると思いますが、そのままは適用できない。やはり影響評価技術の向上というのはかなり急いでやらないといけないと思います。これは風車を速く導入しないといけないということに関わります。
 吉田委員のご質問で、計画段階での情報ですね。これは2つあります。情報が公開されていないという、あるいは糾合されていないといいますか、同じフォーマット、いろいろな情報がバラバラになっていて糾合されていないという部分が1つあります。
 それから具体的に鳥がどういう季節にどういうルートで、どういう高さを飛ぶかというのは重要ですが、そういうデータがほとんどないですね。ですから、新しく調べないといけない部分があります。ですから、先ほどお見せした長野県の地図というのは、平面的なというか、二次元的な情報を基にやっておりますが、三次元的な情報が加味されないともう少し細かく使えるようなものにはならないという部分があります。
 大塚委員のご質問で、SEAのコストベネフィットということですが、事前の段階で……。

○浅野委員長 これは結構です。それから崎田さんのもさっきのお答えで大体尽きていますので。どうもありがとうございました。
 それでは次は日本環境アセスメント協会の梶谷副会長からご意見を伺います。

○梶谷日本環境アセスメント協会副会長 日本環境アセスメント協会副会長の梶谷です。お手元に配りました資料を補足するような形で説明していきたいと思います。最初、当協会の話を書いております。30年間にわたってアセスに関しての技術、人材育成、情報の普及・啓発をやってきております。いろいろなセミナー等、あるいはJEASニュースを含めていろいろと広報・普及に貢献してきたということでございます。平成11年7月に社団法人化され、主務官庁は農水、経産、国交、環境の4省共管でございます。それから、アセスの実務を行う法人209法人でやっております。また、平成17年度より環境アセスメント士という認定資格制度をスタートして、アセスの担い手となる人材育成ということにも務めているところでございます。
 こういった継続的な活動をずっと続けてきたということで、実務のサイドから環境影響の未然防止に貢献を果たしてきたのではないかと自負をしております。
 今回は影響評価制度の意見につきまして6点の項目を整理させていただきました。特にその中で協会として強調しておきたい、5番と6番を重点的に説明させていただきたいと思います。
 まず対象事業につきましては、ここに書いているとおりでございまして、新しい今後の事業等につきましては技術的に開発すべき課題もかなり多くございますので、予算を確保して調査研究を進めていくということが必要ではないかと思います。
 それから、スコーピングについてでございます。これは方法書段階の説明会は義務付けるということが必要かと思います。ただ制度理解がなかなか進んでいないということもございまして、住民等への講座を含めて専門家等のキャパシティビルディングということも同時に行っていく必要があるかと思います。
 それから、事業への反映につきましては、これは事後調査ということで、事後評価、フォローアップを行う仕組みを取り入れるということと法制度にその事後調査を位置付けるという必要があるかと思っております。
 第4番目、情報交流でございますが、ここに書いてありますように、アセス図書等の図書の電子的縦覧ということは大いに進めていただきたいということと、関係情報システムという言い方をしていますが、これはアセスメントの情報基盤というようなものを整備していくということが必要かと思います。現在、協会には法アセスのアセス図書が全部揃っております。閲覧サービスを行っておりますが、紙媒体ですので、今後アセス図書の電子情報化の推進は大いに図る必要があるかと思っております。
 それから、第5点です。影響評価の内容ということで、イメージ的なことでございます。公害問題から来る環境負荷のイメージが大きいことが問題であると思いますが、この事業を進めることによって環境の改善であるとか、地域環境作りへの貢献といったようなポジティブといいますか、プラス面というものをもう少し強調できるようなアセスの観点というのは重要ではないかということを考えております。
 現在は、現状非悪化とかベスト追求型という評価が行われておりますが、ベースラインと比較して事業による環境改善、例えば最新設備を備えた工場設備による環境改善であるとか、周辺地域での緑地作りといった地域環境作りの貢献等、環境のプラス面ということの評価をアセスの中に更に盛り込んでいくという意味でのポジティブという意味合いでございます。
 現在はネガティブなところをできるだけ少なくするというのがアセスのイメージですが、もう少しプラス面のポジティブというところも含めて行っていくということが必要ではないかと考えております。かなりの費用負担、それから時間をかけて事業者等は進めていくわけですが、何らかアセスをすることによって事業の環境、地域環境への貢献ということも同時にアピールしていくといった要因も進めるに当たって非常に重要ではないかという感じがしております。
 そういったアピールできるような枠組みとか評価手法の検討が今後望まれるのではないかと思っております。
 それから第6点ですが、資格制度活用による人材育成の推進ということです。これは環境アセスメントの信頼性が非常に問われる中で、そういった向上に向けての資格制度の活用ということをもう一度見ていただきたいという趣旨でございます。先ほども言いましたように平成17年に実務の的確な実施とアセスメントの信頼性向上ということで協会認定資格を創設して、現在、ちょうど5年たっております。現在のところ全国的に363名の資格登録保有者がおります。こういった資格の活用によって社会的信頼性の向上を図っていくという必要があり、資格制度の一層の活用が求められていると思います。
 平成9年、環境影響評価法の制定の際に参議院の付帯決議において、人材育成確保と資格制度の導入がうたわれております。その後、5年後の同法の基本的事項の見直しにおいてもコンサルタントに資格制度の活用ということの必要性がうたわれております。この10年間を見てもアセスは非常に高度化、多様化といった進展があり認定資格制度の活用によって社会的な信頼性がより一層求められていると思っております。資格制度のパンフレット等を添付いたしましたので、後でご覧ください。この資格は試験委員会という第三者機関を設置しております。また、有効期限を5年ということで、資格更新に際しては継続教育制度に基づく一定のCPD単位の取得が条件になっているということで、技術の維持、向上にも努めております。
 更に最近は、環境コンサルは技術力と同時にコミュニケーション力ということで事業者、住民等の橋渡しを行う役割も求められておりまして、環境コンサルの果たす役割は一層増大していくのではないかと思っております。人材育成を推進してアセスメント制度の信頼性向上に向けた資格制度の活用を是非進めていただくことを要望いたします。以上でございます。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。ご質問ございましたらどうぞ。
 崎田委員。

○崎田委員 ありがとうございます。先ほど(5)の項目でポジティブアセスというふうにご提案がありました。これは地域環境作りなどで大変新しい視点だと思って伺ったのですが、枠組みや評価の検討をというお話がありましたが、もう少し具体的に言っていただければ、どこを動かせばこういう方向にいくかというお考えかを教えていただければと思います。

○浅野委員長 鷲谷委員、どうぞ。

○鷲谷委員 今の質問とも関連があるんですが、ポジティブアセスとおっしゃっているものと、戦略的アセスメントには理念的には重なりがあるように思われるのですが、あえて戦略的アセスメントという言葉を避けていらっしゃるのは何か理由があるのですかということと、またアセスの実務や技術開発に携わってこられたお立場から、戦略的アセスメントの実効可能性についてどのように考えていらっしゃるのが、ご意見をいただければと思います。

○浅野委員長 猪野委員。

○猪野委員 (2)のところで質問をしたいのですが、国や地方自治体は率先して環境影響評価に関わる住民への講座等、キャパシティビルディングを行うという話がございました。その点について環境の仕事を長い間なされてきた中で、どういう効果的なやり方があるのかイメージがあれば教えていただければと思います。

○浅野委員長 吉田委員。

○吉田委員 ポジティブアセスは、非常に大事な提案だと思います。地域環境作りというだけでなく、生物多様性の面でも、事業開始時のベースラインはずいぶん低くなっていますので、それより高いレベルを目指すというのはいいと思います。しかし、事業者にとってインセンティブがないとなかなかそこへ行かないと思いますが、そういったことについてどうお考えかを伺いたいと思います。

○浅野委員長 田中委員。

○田中委員 私はアセスメント士のことでお尋ねしたいと思います。現在、その準備書なり評価書なり、事業者が責任を持ってといいますか、実務に携わっていると思いますが、そういう中にこのアセスメント士というものは書き込まれている例はあるのでしょうか。そういう資格が。以上です。

○石田委員 ポジティブアセスに関連して、環境アセスメント士の研修カリキュラムの中で何か具体的になさっているようなことがありましたら紹介いただければと思います。

○浅野委員長 大変多くの質問ですが、1分か2分で答えてください。

○梶谷日本環境アセスメント協会副会長 答えられるところからお答えします。まず、アセスメント士についてですが、準備書とか評価書で、それが書かれていることがあるのかということについては、今のところございません。認定資格制度ということでございまして、自治体等の発注業務の中に資格要件としてアセスメント士を入れていただける例が増えてきたというのが実態でございます。
 それから……。

○浅野委員長 ポジティブアセスについて質問が集中しましたが。

○梶谷日本環境アセスメント協会副会長 具体的などういうやり方があるかということですが、法制度で制度的に何かを見直すということはなかなか難しいかと思います。環境貢献など精神的な理念を述べています。

○浅野委員長 分かりました。あとは猪野委員からのご質問で、具体的に国・自治体のキャパシティビルディングにイメージがあるかということです。

○梶谷日本環境アセスメント協会副会長 具体的にはあおぞら財団という財団がございまして、そういうところが住民の方を対象にそれぞれの地域で、例えば土日の4日ぐらいかけて、それぞれの地域に応じたアセスのテーマ、それから現場視察といったようなことを、それは国の予算(地球環境基金)で行っているというような例もございます。ですから、先ほど言いましたように方法書の段階等での制度理解がなかなか進んでいないということもございまして、その辺も含めて各地方、地方でそういう情報交流をやっていくことは必要かと思っております。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。それでは、あとお二方からご意見を伺うことになっておりますので、本日は12時終了ということになっておりますが、とてもそうはまいりませんのでご了承ください。
 それでは日本自然保護協会の大野保護プロジェクト部部長代行からご意見を伺います。

○大野日本自然保護協会保護プロジェクト部部長代行 こんにちは。日本自然保護協会の大野と申します。このようなヒアリングの場をいただきましてありがとうございます。昨年の研究会の段階からこの見直しの検討について注目してきまして、日本全国の自然保護の問題、さまざま政策提言をしてきた経験から10分という短い時間ですけれども、的を絞って提言をしたいと思います。
 先月出されたこの専門委員会の中間報告書ですが、ちょっと厳しく言えば、政策的方向性のないマイナー改正で終わってしまうのではないかという懸念を持っています。議論がここまで大詰めになっておりますので、私の方からは3つ重要な提言をしていきたいと思います。配布資料の方は資料7でA4の紙にまとめました。それと同じ内容をパワーポイントでご説明します。
 改善のポイントですが3つ、この法改正の機会にSEA(戦略的環境アセスメント)を含めた制度にすること。2つ目は、対象事業を生物多様性の観点からも判断をするようにする。あと3つ目は、事後調査をもう少し厳格なものにしていく仕組みを整えるということになります。既に皆さんご承知のように来年は、国際的にも2010年生物多様性年です。名古屋でCOP10、生物多様性条約の締約国会議が開かれます。そこで一番焦点になるのがポスト2010年目標になります。これは契約国全ての人々が共通に追求する世界的な目標になります。議長国日本として、今、ポスト2010年目標の政府案というのが提示されています。そこでは2050年には生物多様性の損失を止めて、その状態を現状以上に豊かなものにするという目標が日本政府案として挙げられています。2050年まで40年。40年のうちにいつ止めるのかがはっきりしない。そこは姿勢としてまだまだ緩いのではないかとは思いますが、その目標に向かった手段として何が掲げられているかというと「開発事業、貧困対策と生物多様性の保全を調和されるための手法普及、隔離させるということ」が入っています。ここにアセスのことが触れられて挙げられています。特に戦略的環境アセスメントの推進ということも含まれております。
 世界的に見ても生物多様性の損失の原因は何なのか。国家戦略でも挙げられていますが、やはり一番大きいのは生息地の破壊です。開発等による生息地等の破壊です。ですので、生物多様性の損失速度を下げるということに一番効果的なのはやはりここに何か手だてをしないといけない。そのときに保護地域制度を有効に整備していくということも重要ですが、今目の前にある開発行為が、壊そうとしているものを止めることがまず先決です。その手だてというのが2010年目標の日本政府案の中にも入っていません。
 また、このアセス制度が日本の中である法整備の中で開発に対して生物多様性の影響を事前に回避できる唯一の制度なのです。この制度をうまく改善し、運用することによってこの生物多様性の損失速度を下げるということに貢献できるのではないかと思っております。しかし、この委員会の議論で、改正の方向性は何なのか、それがこの中間報告で見えません。どこに向けるか、やはり生物多様性の保全を強く進める制度に転換していくことだと考えます。これは社会的にも来年迎える世界的な動向からも、日本に求められる姿勢ではないかと思います。
 1つ目の提言です。戦略アセスメントを含めた制度にする。これについてはこれまでお話しされた方の中でもいろいろ出てきているように、国家戦略の中でも一層の取り組みを進めることが必要と書かれています。これは2007年の戦略のときですが、今、その見直しがされている2010年版にも同様のことが掲載されています。これに先立つ環境基本計画の中でも積極的な戦略的環境アセスメントの導入ということが掲げられていました。生物多様性基本法の中にも戦略的環境アセスメントの条項が設けられていて、必要な措置を講じるものというふうなことがはっきりと言われています。現行の事業アセスのままでは状況は変わらなくて、生物多様性の損失速度を避けることが期待できません。やはりこの機会に戦略的環境アセスメント、SEAを制度化されることをこの機会にしなければ機を逃すというか、いつやるのだろうかと思います。環境省のSEAガイドラインをまとめられたのは浅野座長でした。今の見直しの検討会の座長も浅野先生です。この機会にやらずにいつやるのでしょうか。
 それで、別にまた制度を作るかというと、それでは間に合わないと思います。それとガイドラインの事例を待っているのでも多分時間が無駄に過ぎるだけだと思います。私が考えるに、今のアセス法の目的にある「事業者が事業の実施にあたりあらかじめ環境影響評価を行うこと」がとなっています。その「事業の実施にあたり」というところが一番問題です。事業を実施することが前提になるわけです。市民や地元の方たちが事業に懸念を持っていて、アセスによって変わるのではないか、白紙に戻るのではないかとか、見直されるのではないかという期待があって、いろいろ意見を出すのですが、やはり事業者の方たちとしては、「事業実施にあたり」ということは、事業の確度が高い状況なわけです。この不一致を残したままでは何も解決しません。したがって、「事業実施にあたり」という文言を変えることによって、SEAの手続きの可能になっていくのではないかと思います。
 古南さんのお話の中でもありましたが、やはり自主的なアセスでは手続きに乗らないために科学的、客観的なことは担保されません。透明性もやはり手続きに載せないと十分には担保されません。
 2つ目の提言、生物多様性の観点から事業を判定するということですが、これは昨年の研究会のときにも提案をさせていただきました。これからの時代、事業種とか主体、誰が事業主体なのか、規模などだけで法アセスにするか、条例アセスにするかということだけではやはり生物多様性が重要な場所で起こる開発について、解決できません。やはり生物多様性上重要な場所では小さな事業があっても、致命的な影響が起こるわけです。そこをやはり解決するためには生物多様性の観点が重要なものについては規模がどうであれ、主体がどうであれ、法アセスの対象にしていくということが大事なのではないかと思います。
 まして、政権が変わって「コンクリートから人」へと、国の公共事業もかなり変革をしていく兆しがあります。また、地方分権が進むなかで国の法アセスの対象が、国の事業や補助金、交付金、許認可というだけでいいのかどうかということはもう少し丁寧に議論する必要があるのではないか。その前にやはり国家的に見た生物多様性、重要な場所がさまざま失われる開発がたくさんされていくのではないか。そこに例に中段に挙げましたが、このようなことがたくさん予想されます。
 国家的に重要な地域、種に対しては国が保全の姿勢を示していく。そこではスクリーニングマップ、生物多様性の重要な場所を明らかにして、それに合わせたアセスメントをやっていくということが重要だと思います。全国的に情報が集まって、民間でも国でもそれが統合されつつありますが、それにすぐできるかというと、そうではない。では何からやったらいいのかというときに、やはり国立公園の特別地域とか、法的な裏付けだけにこだわらずに環境省が選定している重要湿地500を含めるなど、種の保存法の指定種やRDBのレッドリストのランクの高いものが生息する場所、そう場所はどんな開発事業でも法アセスの対象にしていくということからでも始められるのではないかと思います。
 最後に3つ目の提言。事後調査のチェックと事業の反映を厳格化する。これは事後評価をやりましょうということだけでは今の問題は解決しません。実際行われていることとしては、科学性の乏しい影響予測が評価書にそのまま入っている。安易な移植だよりの保全措置が横行している。事後調査がされ、あと専門委員会が設けられるのですが、その検証機能が十分に発揮できていないことがあります。やはりここは事後評価を義務付けるだけではなくて、そこにちゃんとチェックができる、公に公表されて、それに対して住民が意見を言える。そしてモニタリング会議も公表されるだとか、それで当初予想していた影響が大きかった。そのときに事業そのものを見直すということのフィードバックの仕組みですとか、それが十分されていない場合に環境大臣の勧告を行うとか。勧告しても改善されなければ罰則規定を設けるとか、そこまでの重みがなければ評価書段階での影響予測ということが、今の科学性の乏しいものから何も変わらないのではないと考えています。以上です。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。大野部長代行のご意見に対してご質問、ご意見はございますか。

○猪野委員 特に改善のポイントの1について、専門家や市民の声がなかなか反映されにくいというご意見がございましたが、例えば今回電気事業連合会の発表にもあったとおり、発電所アセスの場合、現行のアセス手続の中で市民や様々な門家の方の意見を取り入れながら進めております。その中には現に意見が反映され、計画の手直しや変更をしたケースもございますが、その点についてはどうお考えでしょうか。

○大塚委員 どうもありがとうございました。改善ポイントの2についてお伺いしたいのですが、まず後ろの方の環境省が監視・関与ができるようにすべきであるというところですが、これは自然公園法で今行為規制はありますので、それ以外の部分について、自然公園法の対象外の部分についてというふうに考えればよろしいでしょうか。あるいは種の保存法とかの範囲外の場合についてというふうに考えればよろしいでしょうかというのが1点。
 それからもう1点、2の最初のところですが、これはアセス法の根幹に係るところではありますが、もし許認可、補助金というのでもないものも対象にするのであれば、その場合にはどういうふうにしてアセスの結果を反映させるかとか、担保するかということがおそらく問題になると思います。その点についてはどうお考えなのか、ちょっとお伺いしたいと思います。

○崎田委員 ありがとうございます。改善のポイントの1番、戦略的アセスを含めた法制度に今回の見直しできちんと強調するというご提案だったと思います。そのときの第1条の文言変更を強調されましたが、その他今回の見直しで一番強調したいポイントというのを少しお示しいただければありがたいと思います。

○大野日本自然保護協会保健プロジェクト部部長代行 発電施設の開発に関しての計画段階でのコミュニケーションがされている。それがされているのなら制度に乗せてやってもいいのではないかというのが私の考えです。既にやられているのならば、独自のマニュアルでやっているよりは国の制度の中にのせてやった方がいいのではないかと思います。その制度の中でもやはりいろいろな形があるような形をとっておけばいいのではないかと思います。
 あと公園法と種の保存法ですが、行為規制がありますが、例えば公園内の開発行為について環境省の地方事務所と事業者での調整で済んでしまうこともあります。その調整がいい場合もありますし、公表されないことによっていつの間にか済んでしまうということもありますので、それをこのアセスの手続きに乗せて、もう少し公開の場で手続きをやっていくということと思います。
 あと事業への反映の担保ですが、民間事業であっても生物多様性基本法の中では、事業者の配慮事項と責務がちゃんと設けられています。そういう面からの国家的に見た生物多様性が重要な地域で何かをするのに当たっても、やはりそこをちゃんと守るんだという責務は、国だろうが民間事業であろうが、あると思います。
 SEAの実際の仕組みの方ですが、まず条文のところの先ほどの「事業実施にあたり」というところをまず取り除いて、フローとしてはあまり別々にせず、ティアリングを取り入れながら方法書、評価書の手続きを二巡三巡すればいいのではないかと思います。

○浅野委員長 それでは最後になりました。大変お待たせして申し訳ありませんでしたが、ダム・発電関係市町村全国協議会の辻協議会会長からご意見を伺います。

○辻ダム・発電関係市町村全国協議会会長 全国のダム・発電の所在する市町村の全国協議会ですが、私どもの団体は全国の市町村、約1,800近くありますけれども、そのうちの989の町村の全国町村会の傘下にあります発電、ダムの所在する市町村の協議会でございます。今回、環境影響評価の推進という中で発電所を戦略的環境アセスメントの対象事業としていただきたいということを所在町村として全国町村会の方へ上げた関係で、この場で意見発表させていただく立場になりました。全国の町村会ではエネルギー対策の推進という中でもエネルギーの問題を所在地域として考えながら取り組んでいるわけでありますが、我々のダム発電のある所在町村はこの組織の中でやはりエネルギーを考える立場から、地域の振興も含めながら、大いに国策に寄与していこうという立場の中で一方では取り組んできているところであります。
 ダムや発電所のある地域というのは、概ね全国でも山間地域に所在しておりまして、既に発電所などは50年あるいは100年以上の発電所があり、近代国家の振興に努力、寄与してきたという自負もあるわけですけれども、一方で長い歴史の中では大きな犠牲を払い、人々の生活や経済発展に欠かすことができない水力による電力の供給という、こういう使命を地域としては担ってきているわけであります。しかし、現在の状況を見ると非常な過疎化や少子・高齢化という中で財政力も脆弱になり、なおダムの存在等に伴う河川環境などは大変悪化の一途をたどっているという、こういう多くの問題を抱えているというのが現実の姿であるわけであります。そうした中で組織としてもそれぞれの地域としても電源開発の必要性というのは、特に地元の水力は純国産のクリーンエネルギーであるという立場から、あるいは二酸化炭素の排出量の抑制等地球環境保全面での優れた部分を有しているということから、開発適地として今後とも水力発電施設の開発には全面的に協力をやぶさかではないという立場でもあるわけであります。
 しかし、それに伴う森林とか河川あるいは自然環境面を含めて地元住民への生活面での影響も必ずしもプラスでないという内容もあるわけであって、犠牲を強いられる地元の理解と協力というのが発電設置についてはより昔と比べて一番必要になってきているということはぜひご理解をしていただきたい、こういうふうに思うわけであります。
 そして環境の面でありますが、既に時代が変わっていますので今日的ではありません。ダムにしても発電にしても、それだけの年数がたっているわけですし、その当時であったらこういう事業の誘致は歓迎をしたわけですが、必ずしも環境面を重視するということが全く皆無に等しいような時代の推移だったと思いますし、なおかつそのことによる環境の影響というものは非常に大きなものがダムに対しても水力発電の内容に対しても現れてきているということも事実であるわけであります。これからの建設あるいは開発については、それなりの対応を近年ではしていただいてきているということはよく分かるわけでありますが、やはりそういう点を振り返って見て、ぜひとも発電事業、発電建設に対しては戦略的な環境アセスメントの中へ加えていただいて、その地元の協力の中で推進していけるような、地元納得の中で推進していけるような事業の推進が必要ではないかなということを思うわけであります。
 そして環境アセスメントが通過して、事業がよしんば立ち上がったとしても、そのことで全てが終わることではなくて、その事後の問題は非常に出てきているわけでありますので、そういうフォローまで、後の環境の建て直しまで含めた地域づくりというか、地域振興というのが必要ではないかなということを強く感じているわけであります。
 これは発電所に対しても、あるいは今までできたダムなんかに対しても惨憺たるダム施設などの状況というのがあるわけであります。そのことを痛切に感じながら地域の電力所在あるいはダム所在、地域の実情をぜひともお考えいただき、なおプラン作りにも地域振興まで含めたプラン作りをお願いできたらということをお願い申し上げまして、意見の発表に代えさせていただきます。ありがとうございました。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。ご質問をお願いいたします。中川委員、どうぞ。

○中川委員 1点だけお聞きします。ここの全国町村長大会の意見の4番に今おっしゃいました環境影響評価の推進の部分がございます。ここに掲げられておりますのは、発電所を対象事業とせよと、戦略的環境アセスメントの対象事業とせよという主張でございますが、ここで言っておられる発電所というのは、これは当然のことですが、これから建設されるものだと思われるのですが、現実問題として水力発電というのはこれから多くどんどん出てくるわけではないと思いますので、ここで言われておりますのは主として火力発電を指して言われているのかどうかということ、1点だけお聞かせいただきたいと思います。

○猪野委員 今おっしゃられた中で水力の地点が地元のご協力の下に成り立っているという点は、まさにそのとおりだと考えております。今後、仮に戦略アセスを実施するとした場合、複数地点の比較検討をすることとなるのでしょうが今現状では水力の適地が中々無いために複数地点の比較は難しく、単一候補地点の検討になってしまうのではないでしょうか。
 1つお伺いしたいのは、例えば仮に複数の候補地点があったときに、それぞれの地点が所属する自治体においてはどういうご対応をされるのかという点でございます。発電所を作ることにご協力いただけたとしても、建設されるかどうかわからない計画について、自治体としてどのようにお考えになるのでしょうか。

○吉田委員 水力発電を戦略的アセスメントに含めるという件については大変いいことだと思いますが、その中身については立地の複数案ということが主眼なのでしょうか。それともダムの場合は発電だけでなくて治水面も当然加味されると思います。そういった中で基本高水流量をどう設定するかということが、ダムの規模とか、立地にも関係してくると思うんですが、そういうことも含めて戦略的アセスをすべきとお考えなのか、その辺りをお聞かせください。

○辻ダム・発電関係市町村全国協議会会長 私は総合的に、それから1点というのでなくて、私どもの立場はむしろこれから水力発電を強化していっていくべきだという立場からしたら、その調査の段階から数か所という地点というのは当然事業主が選択すべきですので、そういう点での事前のアセスから手をつけていいという考え方で臨んでいます。
 それから、先ほど火力の話題が出ました。当面、私どもはダムと水力発電の場ですが、火力も含まれて結構なことですし、特にCO2で環境問題が高い中で一番その火力が地球の汚染をしているわけですので、これらのことは当然考えていかなければならない課題ではないかと思います。原子力も含めて結構だと思います。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。それでは予定の時間をかなり過ぎてしまいましたが、本日のヒアリングはこれで終わらせていただきます。
 本日、早朝から8つの団体においでいただきまして、誠にありがとうございました。時間が不足でしたので、この後更に委員から質問がありましたら書面で事務局宛てに出していただきます。この場合、別途それぞれの団体に改めて再質問のような形でご質問を差し上げるかもしれません。その節はご協力をお願いいたします。
 それでは事務局からその他について説明をお願いいたします。

○沼田補佐 次回の専門委員会についてでございますが、次回専門委員会は来年1月15日10時~12時、場所は弘済会館を予定しております。詳細はまた追ってご連絡をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 それでは本日のヒアリングはこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

午後12時18分 閉会