環境影響評価制度専門委員会(第5回)議事録

開催日時

平成22年1月15日(金)10:00~12:00

開催場所

弘済会館 4階会議室 「蘭」

議事次第

  1. 開会
  2. 議題
    1. (一)環境影響評価制度に各論点に係る議論
    2. (二)その他
  3. 閉会

配付資料

資料1 環境影響評価制度専門委員会委員名簿
資料2-1 前回までの指摘事項について(一覧)
資料3-1 中央環境審議会総合政策部会における中間報告について
資料3-2 環境影響評価制度専門委員会中間報告
資料4-1 「今後の環境影響評価制度の在り方について」に関するヒアリング議事概要
資料4-2 「今後の環境影響評価制度の在り方について」に関するヒアリング(再質問及び発表者回答)
資料5 現状の戦略的環境影響評価について
資料6 事後調査について
資料7 これまでの環境影響評価制度専門委員会における各項目毎の委員意見概要(発言順)

参考資料

参考資料1 環境影響評価法の仕組み
参考資料2 環境影響評価法の対象事業
(以下、委員限り)
参考資料3 環境影響評価制度総合研究会報告書

議事録

午前10時00分 開会

○花岡課長 定刻となりましたので、これより第5回中央環境審議会総合政策部会環境影響評価制度専門委員会を開催いたします。
 本日は、ご多用中にもかかわらずご参集いただき、誠にありがとうございます。
 本日は田島副大臣が出席しておりますので、ごあいさつを申し上げます。

○田島副大臣 改めまして、皆様おはようございます。
 この環境影響評価制度専門委員会も5回目を数えることとなりました。ご就任いただいておる浅野委員長をはじめ、委員の先生方には大変お忙しい中、時間を縫ってこうして昨年9月からの議論にご参加をいただいておりますこと、心から厚く御礼を申し上げたいと思います。
 本日は、とりわけこれまでの議論の中で特に検討が必要とされてまいりました戦略的環境影響評価、SEAと事後調査等についてご議論をいただくというふうに承っております。SEAは、もう私が申し上げるまでもなく、事業に先立つ早期段階から重大な環境影響の回避、また低減を図るという観点から大変重要な課題だと認識をしております。一昨年、私ども議員立法で提出をさせていただきました生物多様性基本法にも、事業計画の立案段階で必要な措置を講ずることと書かせていただき、法案は衆議院、参議院とも全会一致で可決、成立をしたところでございます。加えて、本年は国連が定める生物多様性年でもあり、この日本が議長国を務めます生物多様性条約第10回締約国会議が、愛知、名古屋で開催をされます。こうした状況からいたしましても、この生物多様性を守っていく積極的な取組が求められているところでもございます。
 加えて、事後調査につきましても、環境影響評価を行った上で実施されることとなっておりますけれども、調査結果であるとか環境保全措置の状況を行政または一般国民の皆さんが確認できる仕組みがないということが課題だと思っております。我が国の環境影響評価制度をよりよい制度にしていくためにも、委員の先生方からの貴重なご意見を賜っていきたいと思います。今日1日、どうかお世話になりますが、よろしくお願いを申し上げ、簡単ではございますが、ごあいさつにさせていただきます。ありがとうございました。

○花岡課長 議事に入ります前に、本日の配付資料についてご確認いただきたいと思います。

○沼田補佐 それでは、お手元の議事次第及び配付資料一覧をご覧ください。
 本日の配付資料でございますが、まず資料1としまして環境影響評価制度専門委員会委員名簿、資料2としまして前回までの指摘事項について(一覧)、資料3-1が中央環境審議会総合政策部会における中間報告について、資料3-2が環境影響評価制度専門委員会中間報告、資料4-1が「今後の環境影響評価制度の在り方について」に関するヒアリング議事概要、資料4-2が同ヒアリングの再質問及び発表者回答、資料の5番としまして現状の戦略的環境影響評価について、資料6が事後調査について、資料7がこれまでの環境影響評価制度専門委員会における項目ごとの委員意見概要。また、参考資料1としまして環境影響評価法の仕組み、参考資料2としまして環境影響評価法の対象事業を添付しております。
 また、委員限りではございますが、参考資料3としまして環境影響評価制度総合研究会の報告書、メインテーブル限りといたしまして環境アセスメント百選のパンフレット、また、これもメインテーブル限りでございますが、風車問題伊豆ネットワークから専門委員会あてに風力発電施設を法アセスの対象とすることに関する要望書が提出されておりますので、お配りしております。
 お手元の資料に不足等ございましたら、事務局までお申し付けください。

○花岡課長 これより先の議事進行につきましては、浅野委員長にお願いしたいと思います。
 報道の方々には冒頭のカメラ撮りはここまでということでお願いいたします。
 それでは浅野委員長、議事の進行をお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、どうも今日も朝早くからお集まりいただきまして、ありがとうございました。
 早速議事に入りたいと思いますが、まず第1に、昨年11月27日にこの専門委員会の親委員会であります中央環境審議会の総合政策部会へ中間報告をいたしました際に各委員からいただきましたご意見の概要、さらに各関係団体にヒアリングを行いました際の結果についてのご紹介、その後、論点についてのご議論をいただくということにしたいと思います。
 では、まず前回までの各委員からのご意見についての論点ですね。この取り扱い状況について事務局から説明をお願いいたします。
 なお、論点についての具体的なご意見は資料7にまとめてございますので、参考にしていただければと思います。

○沼田補佐 それでは、前回までの専門委員会におきまして各委員からいただいたご意見につきまして、対応状況をご説明します。お手元の資料2番をご覧ください。
 こちらは毎回同様のものを添付しておりますので、前回からの変更点のみをご説明いたします。
 まず、1ページ目、事後調査についてでございますが、第1回の際に委員長から事後調査の事例に関して幾つかサンプルを用意してほしいというご指摘がございましたので、今回資料6の中で事例の詳細をご説明しております。
 次のページに行っていただきまして、戦略的環境アセスメントについてでございますが、第4回におきましてSEAについて現在完全なモデルはなく、民間事業を含め、全事業を対象とするかどうかについてはまだ合意はできていないと委員長からご指摘をいただきました。これにつきましては、本日資料5としまして、戦略的環境アセスメントの具体的事例等の情報を整理させていただいております。
 また、3ページ目でございますが、こちらは前回の第4回でお示ししました専門委員会の中間報告骨子案の内容につきまして各委員からご意見をいただきました。こちらにつきましては、それぞれ反映をした上で、昨年11月に総合政策部会へ報告を行っております。こちらの内容のご説明は時間の関係もございますので省略いたしますが、資料3-2としまして専門委員会の中間報告を添付しております。
 以上でございます。

○浅野委員長 それでは、ただいまこれまでの取り扱いについてご説明いただきましたが、特に何かご意見ございますか。よろしゅうございましょうか。これからの議論の中で内容に入れると思いますので、よろしくお願いいたします。
 なお、中間報告につきましては、私にご一任をいただきましたので、皆さんのご意見を反映させて形で中間報告をまとめまして、総合政策部会に報告をしたところでございますけれども、やはり中間報告としての字数の制限等もあり、いろいろと部会からご注意、ご指摘をいただくということもございました。そこで、中間報告をいたしました際に、部会の委員からいただいたご意見についてご紹介をいただきたいと思います。

○沼田補佐 では、資料3-1をもとにご説明をいたします。3-1をご覧ください。
 なお、先ほど申し上げましたとおり、中間報告本文は資料3-2として添付しておりますので、適宜ご参照いただければと思います。
 まず、資料3-1が総合政策部会における中間報告の際の委員からの指摘概要でございますが、まず、1番が一般論について、今後の各省との連携状況あるいは国民の理解の推進、それぞれご質問をいただき、委員長からご回答をいただきました。なお、国民の理解の推進に関する回答の関係で、優良アセスの事例百選について触れておりますので、こちらは本日参考資料として各委員にお配りをしているところでございます。
 次に、2番が戦略的環境アセスメントSEAについての指摘でございます。
 まず、A委員でございますが、戦略的という言葉が何を意味するかがわからないので、その定義を引き続きよく検討してほしい。仮に民間事業を対象とすると企業秘密保持の問題もあるので、慎重に検討願いたい。順番を飛ばしまして、同様の趣旨のご意見をまず先にご紹介しますと、C委員でございますが、民間事業がやっている場合には活力を失わせないような考え方をとらねばならない。民間事業の場合、企業秘密保護等の観点から慎重な扱いが必要。また、D委員でございますが、民間事業を対象にすることは慎重に検討してほしい。
 2ページにまいりまして、J委員でございますが、現行法の制度で大きなトラブルやうまくいかなかった事例は現時点ではそれほどない。海外においても民間事業のプロジェクトについてSEAの対象となった事例はないと認識している。民間事業を対象とすると、意思決定前の複数案公表など難しい問題が出てくる。こういった意見がございました。
 1ページ目に戻っていただきまして、その一方でB委員でございますが、民間事業であっても高速道路、鉄道、電力等大きな開発計画については、何らかの積極的な働きかけが必要であるといったご指摘がございました。また、同様の趣旨のご意見としまして、また2ページ目、F委員でございますが、後々もめないでスムーズに事業が進むことが肝心な目的であり、民間、公共の区別なく議論をするべき。G委員でございますが、生物多様性法等で記述のあるとおり、計画段階のアセスを実施する必要がある。また、どのような事業であっても自然環境に対する影響が大きいものはSEAの対象とすべき。H委員でございますが、公共、民間問わずSEAを早急に実施すべき。特に、温暖化対策として新エネルギーをますます導入する必要があり、そのためには構想段階から早急にアセスを実施する必要がある。また、I委員でございますが、リニア新幹線あるいは石炭火力を考えると、民間事業を外すわけにはいかないのではないか。こういった指摘がございました。
 また、2ページ目の一番上、E委員でございますが、SEAに関する政府側の考えに関する質問がございましたので、この際、事務局のほうから民主党政策インデックスの記述をご紹介してございます。
 以上がSEAの主な指摘でございました。
 次に、3番が風力発電施設についてのご指摘でございますが、まずA委員、新エネルギー推進の観点から風力を定着させる仕組みづくりが必要。また、基準の明確化等、検討を引き続き実施してほしい。B委員でございますが、景観の点から問題となっているケースがあるので、積極的な和解のためにも法対象として風力を扱う努力をするべき。また、部会長のほうからは風力がエネルギー政策の中でどういう位置づけになっているか。どういう問題を生むのか、こういった整理をしていくことがまずなければならないといったご意見がございました。
 最後に4番、総評といたしまして、部会長からは国民の合意をつくっていくという観点からSEAという制度が有効に機能していくことが期待されている。このための制度をどうつくっていくのか、専門委員会で議論し、明快な結論を出してほしいといったご意見をいただいております。
 以上が資料3-1、総合政策部会の主な指摘の概要でございます。

○浅野委員長 それでは、ただいま総合政策部会での委員からのご指摘について事務局から報告をさせました。中間報告では特にSEAに関して、民間事業に関してはなお議論の余地があるという書き方をしたわけですけれども、そのことが「しなくていい」という趣旨だというご理解を一部に与えてしまったので、かなり厳しいご意見をいただいてしまったというように思います。議論の中で民間事業については、取り扱いが全く公共事業と同一であるかどうかについては議論の余地があるだろう、というニュアンスで議論をしていたつもりですが、そうでないような書きぶりになったかのような印象を与えたということでございます。
 実はよくよく考えてみますと、我が国のアセス制度は当初は主に公害防止を目的として意識していたものですから、面開発の上わものについてはそこにどういう工場ができるかなどについては、アセスで議論しなくても公害規制法で対応できるので、面開発のアセスだけやっておけばそれでいいと考えて、上わもの建設はアセスの対象からはずしてきたという経過があるんですね。ですから、もし仮にあのときに面開発の上わものについても全部アセスの対象にするという考え方をとっていれば、当然民間事業が一杯入ってきますから、民間事業のアセスのありかたはどうであって、はどういう手順でやるんだという議論ができていたんだろうと思いますけれども、必ずしもそういう議論がまともに行われないまま今に至っていますので、公共事業をモデルに考えてアセスメント制度を考えてしまうということがあります。そのことに最近気がつきまして、民間事業を本当にアセスの中で本格的に取り上げる場合にはどういう扱いにするのかということに関しては、いろいろ議論の余地があるということを述べたつもりであったんですが、多少誤解を与えたかなと反省をしているところでございます。
 この総合政策部会における中間報告に対するやり取りについてご質問なり、ご意見なりございますか。総合政策部会にご出席でない委員の方には様子がわかりにくいかもしれませんので、総合政策部会の委員でない方を優先的にご発言をお願いいたします。
 それでは、中川委員、どうぞ。

○中川委員 委員長のご発言として2行書かれておりますが、ここで出ております「中間報告の手直しをすべき点については」という委員長のお話については、今、委員長からもお話がございましたが、具体的に中間報告のどこの部分についてどういう点のご意見があったのかというのを、特にSEAについて、もしわかれば教えていただきたい。

○浅野委員長 ほかに何かご質問ございますか。部会にご出席でない方でございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、事務局、今の中川委員のご質問にお答えできますか。まだ確定議事録は出ていないのですけれども、今、事務局から説明がありましたように、この資料3-1の2に書きましたご意見は、どちらかというと中間報告のこの記述というご意見よりも、少し概括的なご意見が多くて、ここを直すとかここがおかしいというような議論は中間報告の性質上、出てはいないわけでございます。しかしやはり親委員会の意向を十分に反映させて専門委員会報告をつくらなければいけませんから、ご議論があった点については私のほうで、専門委員会で持ち帰ってもう一度よく検討し直しますというお答えをしたわけでございまして、部会ではこの部分を直しますというほどに固めた文章は出していません、と最初に申しあげております。これが報告書のたたき台であるというものではございません、という前提での私の説明に対する応答であったということでご理解いただけますでしょうか。

○中川委員 わかりました。結構でございます。

○浅野委員長 事務局からはよろしいですか。
 ほかに何かございますか。よろしゅうございましょうか。
 それでは、続きまして昨年12月に急遽ヒアリングを行うということにいたしました。中間報告への反響が大きかったものですから、やはりぜひヒアリングをということになりまして、今回は公募の形でヒアリングのご希望の方を募りましたが、すべてを受け入れることはできなかったものですから、後で私のところは手を挙げたのに入れられなかったといっておしかりを受けまして、ひたすら頭を下げてお詫びを申し上げたということですが、かなりタイトなスケジュールの中でヒアリングを行いました。ヒアリングでは時間が不十分でございましたので、委員の皆様方からさらに再質問があれば、再質問をいただき、それに対しては文書回答をいただくということで委員の皆様方とヒアリング参加の皆様両方にお願いしておりましたところ、再質問とこれに対するご回答がございましたので、これらを含めて事務局から説明をお願いいたします。

○沼田補佐 ではまず、「今後の環境影響評価制度の在り方について」に関するヒアリングの結果につきまして、資料4-1をもとにご説明いたします。
 時間の関係がございますので、当日の質疑応答の詳細は説明を省略いたします。各団体の発表要旨の概要を中心にご説明したいと思います。
 まず、1ページ目、電気事業連合会でございますが、発表要旨としましては、「SEAの意味するところ」は、「事業計画早期段階からの環境配慮」ということではないか。現行の方法書段階でも早期段階からの環境配慮はなされており、「SEAの意味するところ」は十分実施されている。民間事業へのSEA導入は、事業計画の実施が困難となり受け入れられない。海外のSEA制度においても、政府等が策定する政策等が対象となっており、民間事業者の計画等については、対象とはなっていない、といった発表がございました。
 2ページ目へ行っていただきまして、公害・地球環境問題懇談会でございますが、まずSEAについては、政策、計画、予算の段階等からSEAを実施することを直ちに法制化すべき。また、代替案の検討を義務づけるべき。公聴会の開催を義務化すべき。また、事後評価の義務化、それを受けた緊急措置の義務化をすべき。情報開示としまして、公告縦覧期間以降も環境省等のホームページで全文を常時公開すべき。評価項目について、第三者の審査が求められるのではないか。また、対象事業について国の許認可が必要とすることを要件から外し、環境負荷の大小で決めるべき。訴訟手続については、不服申し立て、訴訟手続、こういったものを定める必要があるといったご意見をいただきました。
 3ページ目が日本弁護士連合会でございます。まず対象事業について事業種を限定するのではなく、環境保全に重大な影響を及ぼし得る事業を広く対象とすべき。方法書については、方法書作成前の調査実施の禁止規定を設けるべき。方法書の段階からの代替案の検討を義務づけるべき。横断条項については、環境保全審査に係る結果・理由を明示した文書を公表すべき。環境保全措置の基準を法律上明確化すべきではないか。また、累積的影響の評価を法で定めるべきではないか。争訟手続については、手続の不当・違法を理由とする不服申立権を認め、そういった申し立てを行った者に原告適格を認めるべき。また、環境保護団体等の原告適格について明文化をすべき。条例との関係では法対象事業であっても上乗せ・横出しは認めるべき。事後調査について、事後調査の手続を設け、その結果に基づく是正措置を法で定めるべきといった意見をいただいております。
 次に、4ページ目が風力発電事業者懇話会一般社団法人日本風力発電協会でございます。
 要旨としましては、風力発電について世界では自主アセス・簡易アセスが主流であり、事業者の解釈に起因する現行の問題は、現在作成中の自主規定の徹底、こういったものにより改善可能ではないか。風力発電の適地は限られており、SEAで求められる複数案の提示は不可能である。風力発電事業を法及びSEAの対象とすることは受け入れがたい。また、迅速な風力発電の導入促進に大きな影響があること、実現性が不透明な段階での調査費が増加することなどから、法対象とすべきではない。低周波音・バードストライクについても基準の設定が必要ではないか。こういったご意見をいただいております。
 5ページ目が財団法人日本野鳥の会からの発表でございます。
 意見の要旨としましては、風力発電が法対象となっていない現状では、手続がばらばらであったり、また情報公開が不十分なため、議論が手戻りになっている事例がある。自主アセスでは、情報公開が確保されないといった問題がある。制度見直しのこの機会に法対象とすべきと考える。また、バードストライクについて事後調査を実施することで評価技術が向上し、その結果を共有化することが求められる。また、規模要件については1基であってもバードストライクが起きているため、規模要件の設定に当たり考慮してほしいといった意見をいただいております。
 次に、6ページが社団法人日本環境アセスメント協会でございます。
 まず対象事業については、風力発電は対象事業とすべき。放射性廃棄物最終処分場、CCS、海洋資源開発、こういったものについて調査・検討を進める必要がある。方法書段階での説明会を義務化するとともに、制度理解を深めるためのキャパシティビルディングを行う必要がある。事業への反映として、環境影響の不確実性、保全措置の効果について検証し、フォローアップを行う仕組みが必要であり、事後調査を制度化する必要がある。情報交流について、図書の電子縦覧とセットで環境情報システムを整備し、情報提供、共有化、閲覧サービス、こういったものの充実を図るべきである。評価内容については、事業による環境改善あるいは地域環境づくり、こういったポジティブアセスの視点をアセスの中に盛り込むことが重要ではないか。また、人材育成について、環境アセスメント士の活用等による技術レベルの向上などを図るべきといったご意見をいただきました。
 7ページが日本自然保護協会からの発表概要でございます。
 まず1点目がSEAの導入としまして、SEAガイドラインによる実績を待つだけでは時間が過ぎる。環境問題が複雑化している時代だからこそ、SEAによって市民関与が社会合意をまとめる道筋が不可欠である。対象事業につきましては、規模や事業種、事業主体だけではなく、生物多様性の保全が優先されるべき地域、こういったものにおける事業は法対象として環境省が関与すべきである。また、事後調査結果の公表等につきましては、事後調査報告書の公表と意見聴取、必要な場合の大臣勧告、罰則規定を設けるべきであるといったご意見をいただきました。
 資料4-1、最後の8ページですが、ダム・発電関係市町村全国協議会からご発表いただきました。
 発表の要旨としましては、全国町村会の要望書の中にも発電所をSEAの対象事業とすべきという意見を取り入れている。温暖化対策の観点から特に水力発電所の開発が必要であるが、発電所建設に伴う森林、河川の開発といった自然環境破壊の面もあるので、住民の理解が必要である。発電所事業をSEAの対象とし、当該事業は地元が納得した上で推進をする必要がある。また、アセス手続後に事後的に問題となることがあり、環境面のフォローまで含めた制度設計をすることが必要であるといったご意見をいただきました。
 以上が資料4-1、ヒアリングの概要でございます。
 続きまして、資料4-2でございますが、ヒアリング終了後に各委員からいただきました追加質問及びそれに対する書面回答の内容でございます。
 まず、1ページ目でございますが、電気事業連合会に対する再質問としまして、鷲谷委員のほうから、これまでのアセスに関する自己評価について、手続あるいは評価内容について信頼を得ていると評価する理由をご説明いただきたいといった質問をいただきました。回答はこちらに書いてあるとおりでございますが、発電所の環境アセスメントにおいては住民意見等さまざまな方々の意見を踏まえながら環境配慮を実施している。その環境影響評価については、客観的に国による評価書の審査を受け、適正な配慮をしているという評価を受けているといった回答をいただいております。
 また、1ページの下、石田委員から計画の中止・変更した事例についてそれぞれアセス開始時期、また変更・中止の年次を教えていただきたいという質問をいただきました。こちらについては各事例のアセスの開始年、また中止・変更を行った年次をそれぞれ回答いただいております。
 2ページ目に行っていただきまして、鷲谷委員から風力発電事業者懇話会に対する追加質問をいただいております。内容としては、日本の国土の特性から見て、風力発電所の建設によって潜在的に生じ得る環境影響としてどのようなものがあり、またどのようにすれば緩和できるとお考えかお答えくださいという質問をいただきました。回答は書面でいただいているとおりでございますが、風力発電の建設の際には、計画地周辺の動植物、とりわけ地域の固有種、絶滅危惧種、こういったものについては慎重な調査を行っています。また、日本においては生物多様性の保全、持続可能な利用といったマクロな全体バランスを考えた検討は例が少なく、バードストライクといった影響だけに注目した報告が多いのではないか。また、騒音問題、低周波問題、こういったものについては明確な基準を作成していただくことが重要ではないかといった回答、ご意見をいただいております。
 次に、3ページでございますが、日本環境アセスメント協会に対する再質問でございます。
 まず、鷲谷委員からポジティブアセスについて、理念や手続における戦略的アセスメントとの関連、相違点について整理をいただきたい。また、ポジティブアセスに関する海外の実践例等があればご教示くださいといったご質問をいただきました。回答でございますが、まずポジティブアセスは事業による環境影響のマイナス面だけでなく、環境改善、環境創造、そういったプラスの影響を積極的に評価しようとするものであります。また、2点目、海外の事例で実践例は把握しておりませんが、海外ではSEAあるいはEIAにおいて事業における環境への貢献内容、こういったものについては表示されているようです、という回答をいただいております。
 また、鷲谷委員からもう一点、SEAの実行可能性についてご意見をいただきたいというご質問をいただきました。これに対しては、環境省のSEAガイドラインに示されているSEAについては、これまでの立地選定調査等に類似して対応ができると思われる。ただし、SEAで得た調査結果については、事業アセスについても活用を図る必要がある、といったご回答をいただいております。
 最後に石田委員からポジティブアセスにつきまして、研修、セミナー等でこういった観点を意図した具体的なカリキュラム例があれば教えていただきたいというご質問をいただきました。これについては、ポジティブアセスを標榜した具体的なカリキュラムはございませんが、現行行っているコミュニケーション技術あるいは生物生態系の評価方法の研究開発・導入促進活動、こういった活動はポジティブアセスを進めていく上で重要となる活動と考えるという回答をいただいております。
 以上が資料4-2の説明でございます。

○浅野委員長 ありがとうございました。それでは、ただいまのご報告、ご説明に対して、これはご質問をいただくという性格のものではございませんので、何かご意見がございますか。
 鷲谷委員。

○鷲谷委員 丁寧にご回答いただきましたので、とても参考になります。もちろんまだ意見が全く同じになっているというわけではありませんけれども、アセスメントもそうですが、なるべく丁寧な議論を、今後も報告書の取りまとめに向けて行えればと思っております。

○浅野委員長 ありがとうございました。石田委員、よろしゅうございますか。

○石田委員 結構です。

○浅野委員長 ほかに何かございますか。よろしゅうございますか。
 それでは、ここまでの議題は以上にさせていただきます。
 続きまして、本日の中心的な討論のテーマでございます戦略的環境影響評価について、前回委員会では対象や手法などについて意見が一致するには至っておりませんでしたし、また、総合政策部会でももう少し検討するようにというご指示をいただきましたので、今回委員会で議論をしていきたいと思います。
 そこで、まず、これまでにも資料をある程度お出ししておりますが、さらに追加的に事務局から資料を出すようにということで整理していただきましたので、まずは事務局の資料の整理をお願いいたします。これは実例なども含んでおりますので、竹本補佐からお願いいたします。

○竹本補佐 資料5のご説明をいたします。現状の戦略的環境影響評価についてでございます。
 まず、本体の1ページ目でございますが、戦略環境アセスメント(SEA)とは、一般的に個別の事業実施に先立つ「戦略的な意思決定段階」、すなわち個別の事業の実施に枠組みを与えることになる計画(上位計画)や政策を対象とする環境アセスメントであります。
 それから、1ページ目の図では、まず左側の列にあるものでございますが、これは各種事業の上位の計画段階から事業の実施に至る流れを示したものでございます。この図のねらいは、実際に我が国のSEAガイドライン、条例、また海外の制度、これらが具体的にどの段階に当たるのかというものをわかりやすく示したものでございまして、事例として、No.1から10まで別紙に掲載しております事例が、具体的にどの辺の段階に当たるのかというものを示したものでございます。個々の段階、実施主体等についてはその次の各論からのご説明に当たります。
 まず、2ページ目、SEAの目的でございますけれども、戦略的環境アセスメント総合研究会報告書によりますと、環境に著しい影響を与える施策の策定・実施に当たって環境への配慮を意思決定に統合すること、それから、事業の実施段階での環境アセスメントの限界を補うという目的がございます。これを受けてSEAのガイドラインにおきましても、事業に先立つ早い段階で著しい環境影響を把握し、複数案の環境的側面の比較評価及び環境配慮事項の整理を行い、計画の検討に反映させることにより、事業の実施による重大な環境影響の回避または低減を図ることを目的とされております。
 続きまして、対象計画でございます。ここでは、SEAはどの事業におけるどの段階について実施するのかということについて整理をしております。
 まず、SEAガイドラインでは上位計画のうち事業の位置・規模等の計画段階を対象としております。条例・要綱に基づくSEAにおいても、一般的にはガイドラインと同様の段階を対象としております。他方、主要な諸外国におきましては、SEAは計画・プログラム段階を対象とされていることが多いですが、ただ、これは我が国のSEAガイドラインにおける位置・規模等の検討段階のアセスが事業アセスとして義務化されているという国がございます。1ページ目冒頭の図にもございますように、我が国で対象としているSEAの範疇と、海外のその段階というものが必ずしも一致していないこと、場合によっては、事業アセスで実施されているというものがあるということがわかっております。
 続きまして、実施主体でございますが、誰がSEAを実施するかということでございます。ガイドラインにおきましては、対象計画の策定者等が行うとされていまして、条例・要綱でも同様の規定となっております。主要な諸外国におきましては、対象計画等の提案機関が実施主体となっておりまして、我が国のSEAガイドラインにおける位置・規模等の検討段階のアセスは、諸外国では事業アセスとして実施される場合があり、この場合には民間事業者等も実施主体となっております。
 続きまして、SEAに関する手続等でございますが、まず、複数案についてです。論点は、複数案の設定をどう考えるか。それから、どのようなタイプの複数案を検討するかということでございます。SEAガイドラインにおきましては、原則、複数案を対象に比較評価を行うこととされております。
 4ページと5ページに具体的な複数案のイメージを図とともに示させていただいております。さらにそれぞれの複数案のタイプに応じてどのような事例があるのかというのを示しております。
 まず、位置・規模に関する複数案でございますけれども、お手元にございます別紙の事例1、2をご覧いただければと思います。3ページから5ページにかけてでございますが、例えば別紙2の事例1にございますような東京港臨港道路南北線の建設計画におきましては、起点・終点の位置及び構造が異なる2つの複数案を設けて検討しております。続きまして那覇空港の滑走路増設、事例2におきましては増設場所を460メートル差の2案を設けて検討しております。
 このような位置・規模に関する複数案のイメージだけでなく、本体資料の5ページにございますように、配置・構造等に関する複数案もかなりあることがわかりました。例えば別紙2の6ページはオランダにおける風力発電事業の事例でございます。ここでは、道路の両側あるいは東側に1列ないしは2列配置する。さらには数百メートルの地域内に群立をするというような複数案を比較検討しております。これは位置・規模というよりも配置に関する複数案と考えることができます。さらに冒頭申し上げましたように、この例ではSEAではなく事業アセスという段階で複数案が検討されているということがわかりました。また、その事業の実施主体は民間事業であるということでございます。
 続きまして、事例4はカナダの新規原子力発電機の建設に関する事業でございます。こちらも民間事業が事業アセスの段階で行っている敷地内の発電機の配置等に関する複数案の事例でございます。
 さらに別紙2の8ページでございます。これは、我が国の事業アセスで行われた原子力発電所の複数案の検討の事例でございます。これもカナダの事例と同様に事業アセスの段階で配置計画についての検討が実際には行われていたというものでございます。
 続きまして、事例6でございますけれども、これは京都市のプラスチック製容器包装中間処理施設整備計画でございまして、京都市のSEAの条例で行われた複数案の検討でございます。これは、各施設の能力、廃棄物処理の中間処理施設について合計処理能力を1日60トンとする整備を行うために2つの処理施設の能力に差をつけたものでございます。以上のように位置・規模だけでなく、配置・構造に関する複数案も存在するということがわかりました。
 本体資料の次のページ、6ページにまいります。
 別紙2の事例7と8でございますが、事例7ではイングランドの水資源に関する長期計画でございまして、民間の水道事業者がSEAを実施しております。これは水需給方法の組み合わせの複数案が検討されております。事例8につきましては、同じくイングランドの汚泥管理計画でございます。これは汚泥管理方法の組み合わせによる複数案を検討しております。
 この他、地方公共団体の条例でも複数案の検討が原則行われています。環境省が年末から年始にかけて地方公共団体にヒアリングを行っておりますが、ここでも事業種によってさまざまなタイプの複数案があり、例えば配置・構造等に関する複数案を設定することが妥当という意見もいただいております。このヒアリング、アンケート等につきましては、本体資料の最終13ページにございますので、あとでご参照いただければと思います。
 続きまして、7ページ、調査、予測の手法でございます。
 SEAガイドラインにおきましては、調査は原則として既存資料により収集・整理することとされております。この原則は、地方公共団体の条例・要綱においても同様に規定されております。地方公共団体のヒアリングにおきましても、自治体の方である程度の既存資料が用意されているとの意見がありました。ただ、ガイドライン、また条例においても既存資料で判断することが難しい場合等、必要に応じて現地調査が実施されているということでございます。諸外国においてもSEAでは通常文献調査により調査が行われているということでございます。
 続きまして8ページ、評価の手法でございます。SEAの評価においては、環境面のみを評価するか。また、既存の計画策定プロセスとの関係をどのように整理するかということが論点です。
 まず、SEAのガイドラインにおきましては、評価結果の取りまとめにおいては、環境面から見た各案の長所短所、環境影響について記述することとされております。また、条例等におきましても、一般的には環境要素を評価項目としている場合がございます。地方公共団体のヒアリング結果によりますと、環境面のみからの意見も言ってほしいというニーズがあるという意見とか、また、国土交通省の公共事業の構想段階における計画策定プロセスガイドラインでは環境面だけでなく必要性、社会性、経済性とあわせた検討が行われており、プロセスガイドラインの中でSEAを実施することとしてきているので、これまでの取組を活用できるような仕組みにしていただきたいという意見もございます。
 諸外国でございますけれども、国によって対象段階が異なりますが、環境影響のみが評価されている国もあります。ただ、環境影響とあわせて社会面、経済面も評価している国もございます。
 続きまして9ページ、公衆、地方公共団体の関与、それから国、環境省からの意見提出についてでございます。
 まず、公衆、地方公共団体につきましては、ガイドライン、それから国交省のプロセスガイドライン、地方公共団体の条例・要綱等でも公衆、地方公共団体の関与が盛り込まれています。
 SEAのガイドラインにおきましては、国の行政機関が計画決定を行うというような場合等におきましては、環境省からの意見提出を得ることとされております。地方公共団体に行ったヒアリング結果によりますと、環境大臣の役割について、ぜひ意見を言っていただきたいという意見がほとんどでございました。

○浅野委員長 すみません、少し急いでください。

○竹本補佐 わかりました。地方公共団体自らの関与につきましては、何らかの当然関与が必要であるというようなご回答がありました。
 10ページでございますけれども、評価結果の取り扱いにつきましては、いわゆるティアリングについてどのように考えるかということでございます。SEAガイドラインでは評価結果を対象計画へ反映するということが望ましいとされております。ただ、東京都のように、SEAで行った結果、手続をそのまま省略するということにつきましては、地方公共団体等からすべての手続を省略するのは難しいかもしれないが、一部の項目等について活用することは効果的ではないかというご意見をいただいております。あとは省略いたします。それをまとめたポイントが12ページにございます。
 以上です。

○浅野委員長 それでは、ただいま資料に基づいて説明をいただきましたが、この説明に基づいてご意見、ご質問などをいただきたいと思います。特に質問を先にという限定をいたしませんので、どこからでも結構でございますから、ご質問、ご意見ございましたらお出しいただきたいと思います。いかがでございましょうか。
 それでは、吉田委員、どうぞ。

○吉田委員 ありがとうございます。生物多様性保全の視点ということから2点申し上げたいと思うのですけれども、先ほど田島副大臣からもお話がありましたように、生物多様性基本法の25条の中で事業計画の立案段階から実施段階まで、生物多様性に係る環境影響評価の推進ということがこの基本法の中に盛り込まれたわけでございます。そういったことから考えると、この資料の2ページ、3ページの部分ですけれども、実施主体に関しては、国だけではなく民間も含め、生物の多様性に影響を及ぼすおそれの事業を行う事業者等がということですので、すべての事業者ということだと思います。
 それから、先ほどの説明の中でSEAはどの事業におけるどの段階について実施するのかということで、事業の位置・規模等の検討段階を対象とする。これはSEAガイドラインの中でこうなっているということは、結構だと思うのですけれど、また、実際その位置・規模等のものについては事業アセスの中でもやれるんだから、それは入れていこうということをここでまとめることは結構だと思うのですが、もちろんその前の段階、例えば生物多様性基本法の中では立案段階からということで書かれているわけですので、そういったところまでここでなくしてしまっては生物多様性基本法との整合性が図れなくなるということで、戦略的環境影響評価は本来、立案段階から全部含むものであると。ただし、そのうちの事業の位置・規模等の検討段階は事業アセスでもできるのではないかと。そういうふうにまとめたほうがいいのではないかと思います。
 2点目は、スクリーニング段階における配慮ということなんですけれども、現在スクリーニングは第一種事業になるか、あるいは第二種事業をアセスの対象とするかどうかと、そういう規模要件の審査のみになっていて、そして実際上は第二種事業でもやっているということで、非常に形骸化してしまっていると思うんですけれども、生物多様性条約にはいろいろ作業部会がございますが、環境影響評価の作業部会の中では生物多様性を組み込んだ環境影響評価に関する自発的ガイドラインというのを出していまして、スクリーニング基準に生物多様性関係の尺度を含めるということが求められています。そういったことを含めて、そして、スクリーニングプロセスの成果としてスクリーニングに基づく決定が行われると。
 私はその中で、この環境影響評価が行われ始めたときと現在とすごく違うのは、国土の生物多様性情報というのが随分蓄積されてきているわけです。それを活用しないという手はないと。自然環境保全基礎調査、それから河川水辺の国勢調査とかさまざまな生物多様性情報が蓄積されております。それをスクリーニング段階で活用して、もう決定的にこういった場所に立地したらばまずいという場合には、もうその段階から変えていただかなくてはいけないし、あるいは比較していけるのであれば、複数案でいくといった判断をするというふうに活用したほうがいいと思うんですね。昨年事業仕分けの中でもこの自然環境保全基礎調査の予算のことが問題になりまして、果たしてこれは本当に役に立っているのかということで3分の1ぐらい減額されてしまったと思うんですけれども、やはり私としては30年続けてきた自然環境保全基礎調査はぜひ予算をつけていただきたいものだと思うのですけれど、国民からすると、本当にこういった環境影響評価だとかに役立って事業の変更に活用されるということがなければ減額されるべきじゃないかということで、そういう判断になってしまいます。ぜひともこういったものを活用して、スクリーニング段階で生物多様性の配慮をしていく。これも戦略的環境影響評価の一つであると思います。ありがとうございました。

○浅野委員長 ありがとうございます。
 それでは、ほかにご意見ございますか。
 では、石田委員、どうぞ。

○石田委員 全体にわたってしまうことになるかもしれませんが、今日この資料を拝見したことで非常に意見形成がしやすくなった、よく整理していただけてありがとうございます。
 まず、SEA自体をどうするかということについて、導入すべき時期にやはり来ているのではないか。それは戦略的アセスメントの考え方の重要性ということが1点と、もう一点は世界の中での日本の立ち位置といいますか、環境先進国を標榜するなり、あるいは日本の世界への貢献という点でそろそろ避けて通れない時期だろうと考えます。その場合にガイドラインのときの議論でも若干ありましたが、やみくもに特別に例外要件みたいなものを設けるのは、やはり制度の導入の上で支障を来すことになりかねない。かといって、対象事業のすべてが同じ線上にそろっているとも言いがたい状況だと思いますので、運用の柔軟性ということは極めて重要な視点だと思います。その意味でこの資料5の1ページの整理は非常にわかりやすいんじゃないかと思うんですけれども、外国でも戦略的アセスと言っている部分に大きな違いがあって、もう限りなく事業アセスに組み込んでもいいようなものもある。まだ日本の事例蓄積の状況だと、少しほど遠いかなというようなものもあるというところが考える立脚点だと思います。
 その場合に幾つかの論点で申し上げると、事業種ごとの特徴とか個別性というようなもの、それから、個別法でかなり規制してきた歴史があるかどうかというような点、それは1つ大きな点ではないかと思います。つまりガイドラインがひとり歩きしてしまって、逆にそれに対するアレルギーというのは変ですが、そのことが、戦略アセスの非常に重要な考え方を導入する上で阻害するようなことは避けたほうがいい。ただ、柔軟性という言い方をすると際限がなくなりがちですので、そのときには資料5の冒頭にも整理されているSEAの目的が阻害されることにならないかどうかというのは大きな基準になるんだろうと思います。目的が満たされるかどうかというと、その度合いの解釈が分かれてきますので、阻害されないという考え方が重要だろうと思います。これまでの委員会で公共事業から民間事業にも取り込むかというような議論のときに、もちろん部会のほうでもご議論があったように拝見しますが、企業秘密とか民間の利益というようなものももちろん尊重しなくてはいけないんですけれども、その場合の利益というときに例えば今日挙げていらっしゃる例でも、その事業が進みにくくなって競争から負けてしまうというような意味での企業利益だけに着目するのではなくて、例えば位置が早く公表され過ぎることによって、地域で混乱が生じる、地価が異様に高騰してしまうとか住民が賛成、反対に分かれて非常に大きな社会的混乱が起こるというような、そういった社会面での利益の阻害というところに、むしろ着目すべき利益の阻害という意味があるんじゃないかと思います。
 もう一点、ティアリングの関連ですけれども、ある程度柔軟にして間口を広げて、例えば位置・規模では複数案がつくれないけれども、配置や構造とか、例えば小さな規模になってしまいますけれども、護岸の素材とかそういうようなものまで含めると、さまざまな複数案が成立すると思います。そうしたところで柔軟性を担保しながら、ティアリングのようにあまり省略しすぎない。そのままデータを活用をできるものは活用しながら、もう一度きちっと審査すべきところは審査をするというのが、SEAを入れていくときの重要なポイントではないかと私は考えております。
 以上です。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 では、猪野委員、どうぞ。

○猪野委員 最初に質問からお願いしたいと思います。今、資料5の別紙で海外の事例を含めて幾つか紹介をされておりますが、例えばオランダの風車や、事例4の原子力発電所については環境影響評価、普通のEIA手続きの中で配置の検討をされているということでしょうか。

○竹本補佐 そうです。

○猪野委員 わかりました。ありがとうございました。
 私も実際には電気事業に携わっているものですから、そのあたりも含めた観点からコメントいたします。SEAの趣旨につきましては、生物多様性の基本法を踏まえますと、事業の特性を踏まえた事業計画の立案段階からの環境配慮という理解をしており、現行の発電所における事業アセスにおいても、事業の立案段階から環境配慮を行っており、方法書にその結果を記載してございます。
 そこで、今、SEAというものを「事業計画の立案段階からの環境配慮」と定義し、その場合に民間事業として、新たに実行可能な対応について意見を述べます。発電所の事業特性を踏まえた現行の取組に加えての新たな対応としては、例えば生物多様性に関して言えば、希少種の有無に関する文献調査等から、例えば先ほど話が出ました配慮可能な複数のレイアウトの検討結果、それから例えば水質に関しては冷却方式や取放水口の位置に関する、配置可能な複数の予備検討結果等、これらを環境配慮の結果として方法書に記載して拡充・充実をするということがあげられます。加えて、本専門委員会でも検討されたように方法書の説明会が導入された場合に、その場において環境配慮結果を説明するということも新たに考えられます。このように発電所の事業特性を踏まえて、実行可能な対応を新たに行うことによって、事業の立案段階からの環境配慮を充実させることが可能と考えております。
 一方で今、環境省のガイドラインによるSEAにつきましては、発電所の事業特性を考えてみますと、3つの問題点があると考えます。
 1つは建設計画の公表前の事業の構想段階におけるSEAは、やはり困難であります。これは前回も申し上げたとおり、一般に競争環境にある民間事業における意思決定プロセスの途中で、まさに経営戦略とか事業の根幹である技術的ノウハウや重要情報の開示を求められることや、計画の公表により当初計画の不確実性が増すことを意味しております。
 また一方、石田委員もおっしゃられましたように、地点選定に当たっては地域の関係者の方々との調整や用地取得の見通しなども含めて、総合的に判断して決定されるわけですが、これらのプロセスが完了する前に計画案を公表した場合には、地元を中心として混乱を招くことが憂慮され、低炭素社会実現に不可欠な原子力発電所等の円滑な電源立地に支障を来すおそれもあると考えております。
 2つ目は、建設計画公表の前後を問わないことですが、燃料種や、今言った地点の話、出力、発電方式を複数案提示することも非常に難しいと考えております。こちらも以前申し上げたとおり、発電所建設のための意思決定プロセスには燃料種、地点、出力、発電方式等の重要なパラメータがありますが、これらは相互に関連しながら、最終的に1つの案に収斂をしていくものであります。ただし、このパラメータもエネルギーセキュリティ、立地制約、需給の動向などから選択肢が限定されていくために、すべての条件を満足する複数のプロジェクト案というのは現実的には存在いたしません。
 また、仮に上記の条件を一部満たさないいわゆる理論的な複数案を提案したとしても、事業者としての意思決定がない中での公表になり、やはり地元を中心として混乱を招くとともに将来の有力立地候補地点を失うことになるのではないかと考えております。
 あともう一つ、3つ目でございますが、先ほど述べましたように、方法書段階での新たな対応をすることによって、「事業の立案段階から環境配慮」を充実させることが可能と考えられるため、建設計画公表後、事業アセス前に別途SEAの手続を義務づけることには疑問が残ります。先ほど方法書での記載の拡充や方法書説明会での配慮結果の説明等といった発電所の事業特性を踏まえた実行可能な対応を新たに行うことによって、「事業の立案段階からの環境配慮」をさらに充実させることが可能であると申し上げました。一方、方法書の前で別途SEA手続を義務づけることになった場合、仮にSEAの評価書等を作成したとしても、内容的に現行の報告書と重複する部分が多く、タイミング的に方法書に先行して別途SEA手続としてアセス図書作成や公告縦覧、審査会の開催等を実施することには疑問を感じます。
 また、低炭素社会実現に向けて不可欠な原子力発電所の立地や環境負荷を低減させる高効率火力発電所へのリプレースなどについても、別途SEAの手続を義務づけることは、さらなるアセス期間の長期化やコストアップといった事業計画の不確実性を増大させることにつながり、事業者としても受け入れが非常に難しいと考えております。
 これらの問題点については、環境省のガイドラインにも「民間事業者等においてはSEAの手続により、計画作成者等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある場合も想定される」との記載があり、この点も留意すべきだと思っております。
 以上をまとめますと、今まで述べましたように、地点や燃料種等の複数案の提示は困難ですが、現行の取組に加えて、事業の特性を踏まえた実行可能な範囲での追加的な取組を行うことにより、生物多様基本法の趣旨も踏まえた「事業計画の立案段階からの環境配慮」をさらに充実させることができると考えております。
 少々長くなりましたが、以上です。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 それでは、崎田委員、どうぞ。

○崎田委員 ありがとうございます。今いろいろ委員のご意見と、あとこの前のヒアリングのときの印象からお話をさせていただきたいんですが、私自身は戦略的アセスを事業アセスの前に実施して、しっかりと複数案を検討していき、事業アセスに入っていく。そういうようなことに関しては、今後検討していくことが大変重要だというふうに思っていたんですけれども、この前のヒアリングのときも多くの自然保護団体の方や関心を持っていらっしゃる皆さんが今のアセスメントをできるだけ補強して、補強と言ったら変なんですが、補強してできるだけ戦略的アセスメントの精神を明確に入れていってはどうかと、そういうご提案をされた団体が大変多かったというのが私は印象深かったです。ですから、できるだけ早く環境配慮の実質を上げるようにと、そういうお声が強かったのではないかなという印象を実は持っています。
 そういうことを考えると、私は今の事業アセスメントの内容にもう少しできるだけ早い段階からきちんと取り組んでいき、そして、事業内容をしっかりと公表していくようなところを入れていくとか、そのときにやはりできれば複数案ということが私は大事だと思っております。そのときに何を複数案とするかというのは事業によって違うと思いますので、その辺は柔軟性を入れてということは私も賛成なんですけれども、やはり地域に住んでいるものの立場から言うと、自分たちの長年住み慣れた地域が今後どう発展していくのか、どうなっていくのかというときに、自分たちができるだけ早く知ったり発言したり参加できたりという機会がないうちに、どんどん情報が進んでいく、決められていくというのは地域の方にとっては大変つらいものだ。長く反対とかいろいろ意見を言いたいということが続くというふうな可能性を私は持っていると思いますので、できるだけ早い段階から公表していただき、市民が参加できるような形に持っていくというのが大事だというふうに思っております。
 ただし、一番最初に申し上げたように、戦略アセスと事業アセスと全く切り分けて長い期間をやるというより、何かもう少し実質的なところを進めていくようなやり方がとれないかというのを私は今感じております。よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、田中委員。

○田中委員 それでは、私も何点かこのSEAについて申し上げたいと思います。
 まず、1点目は制度の対象ということで、これでいくと、資料5の2ページから3ページにかけてということになるかと思いますが、この諸外国の例を見ますと、確かにSEAということで政策段階あるいは上位計画の早い段階でこういうことを行うということがあります。確かにこれも1つSEAの非常に重要な役割だと思いますが、現行の日本あるいは自治体のこのSEAの取組のこれまでの経緯を見てみますと、やはり今回のこの制度改正で対象とするといういわば限定的な対応を考えますと、ここで言えば、個別の事業計画の検討段階になるのではないかというのが私の意見です。したがって、むしろその長期的にはより上位の政策は計画レベルまで対象とする制度のあり方が望ましいので、これは今後の課題として引き継いでいくというふうにしたらどうだろうと。現時点での制度改正に向けては、実行可能という趣旨でいけば、個別の事業計画の計画段階あるいは検討段階というところで手続を導入する。これが1つ私の主張です。
 それから、2つ目はこの複数案のことで今もいろいろ議論がありますが、複数案の設定については、私も位置・規模、配置・構造あるいは内部での土地利用とか、あるいは建物の規模とかあると思うんですが、そういう原則的な考え方と現実的にはいろんな事業の種類に応じて、やっぱりそこのところは柔軟に対応する必要があるのかな。確かにこの位置や配置、立地というところに限定しますと、なかなか事業によっては現実的に対応が難しいと。SEAとしての対応が難しいということになってまいりますので、複数案についてはそういうことで、一応その原則的な考え方を決めた上で、事業者、事業の内容によってSEAとしての複数案の考え方を柔軟に設定する、そういう工夫が必要ではないのかなと思います。恐らくこういう制度設計については、基本的事項の検討などでの整理を行う必要があるんだと思います。
 3つ目は評価の方法ですが、ここで環境面の評価ということを中心に7ページから8ページでしょうか、書いてございますが、私も原則的には現行ガイドラインにありますように、やっぱり環境面の評価結果を中心にSEAとしては取り扱う。これに事業者、計画策定者が他の評価結果、検討結果、つまり経済面であったり、社会面の影響を含めて総合的に判断して、計画の内容を確定していく、こういう枠組みが妥当ではないかなと思います。
 今回のSEAというのはEIAのいわば前置として、EIAの前の手続としてSEAが構想されておりますので、その環境面の影響評価を中心に行うということで整理した上で、事業計画の必要性なり経済性については、そこまで広げると広げすぎかなという印象は持っております。したがいまして、複数案についても環境面の評価を中心に行っていくということでございます。
 最後ですけれども、先ほど猪野委員からもご意見が出まして、この発電所の問題が重要な課題で、現行のガイドラインでは適用除外になっているわけですが、今回制度改正の中で私もできればあまり例外的な規定を設けないで、枠組みとしてこの中に入らないかなというふうに思っております。SEA制度の中に位置づけられないかなと。先ほどご説明の中で、いわゆる方法書段階の内容をある程度見直すことで、例えば建設地の中の配置計画であるとか、あるいは冷却方式とか構造とか、そういう複数案の検討が可能であろうと、そんなコメントもあったと思いますので、私はむしろそういう内容を複数案としてSEAの手続でこなすことはできないかなと。これが1つでございます。
 もちろんその上で、もう一つ問題点として出されましたのは、リードタイムといいますか、手続に時間を要することが懸念されるというお話もありましたけれども、むしろSEAで行った内容あるいは方法、そしてその知見といったものを後のほうの方法書段階、いわゆる準備書段階にむしろ積極的に活用していく。場合によっては手続のある意味での短縮化とか簡素化のようなものを工夫することで、何とか全体としてSEAとEIAが連結していって、効果的な環境配慮ができる、そういう仕組みができないかなと。
 以上でございます。

○浅野委員長 ありがとうございます。中川委員、どうぞ。

○中川委員 今日の委員会は最初のご報告といいますか、ご説明にもございましたように、先日の部会での議論を踏まえて、さらにSEAを中心として詳細な検討をするということで開かれたものと理解をいたしております。特段どこの部分がというお話ではなかったようですが、私の理解では、この中間報告で言えば3点ぐらいの点について議論が分かれたといいますか、いろんな議論があったのではないかと思います。
 1つは、SEAの考え方が必ずしも明確ではない。この中間報告の書き方でいいますと、SEAの意味するところを明確にするとともにと書いてありますが、それは逆に言えばまだ不十分だという意味ではないかと思われます。ただ、今日ご説明をされましたことを通して考えてみますと、SEAの意味するところはかなり明確になってきたのではないか。もちろん詳細な部分についてはいろいろまだ判断の余地の分かれるところはありますけれども、という気がいたしております。
 ただ、質問として1点だけ申し上げたいのは、この8ページのところにあります既存計画策定プロセスの関係をどのように整理するかというこの質問の項目に対して、実はあまり答えが書いていないんですが、その既存計画の策定プロセスの事例として挙がっておりますのが公共事業のプロセスガイドラインですが、これ以外にどのような既存計画の策定プロセスというのがあるのかどうかをちょっと後で教えていただきたい。
 それから、したがってこのSEAの概要を明らかにすると。意味するところを明確にするというところは、今日出された整理をそれなりにもう少し絞って考えていけば明らかになっていくのではないかと。そういうことを前提として議論されれば、また部会においても別の結論になるんじゃないかなと思います。
 2つ目は、これは部会でも議論がなされた中心はやっぱり民間事業の扱いについてであります。中間報告ではさまざまな問題が指摘されていることから、なお議論の余地があるという結び方になっているわけです。前回の議論では私もこういう書き方でとどめざるを得ないのではないかなというふうに思っておったんですが、SEAの必要性あるいはヒアリングにおける各団体の皆さん方の熱意というようなものを考えていけば、今後のアセスにおいてのSEAの位置づけというのは非常に重要であり、今回の法律改正で制度改正を行うのであればやはり正面から取り組んでいかなければならない問題ではないかと思っております。私は、法文の書き方としては、かつて宣言的に書けばいいじゃないかというふうな気持ちも持っておりましたけれども、できるのであればやはりそこは明確にしていくことが望ましいというように考え方を少し変えた次第でございます。
 ただ、その際に今、猪野委員もお話がございましたように、民間事業の中心は恐らく発電事業だと思われます。発電事業については、今いろいろご説明がございましたように、なかなか厳しい問題が介在していることは私も認めざるを得ません。ただ、言葉の端々に出ておりましたように、また田中先生もおっしゃったように、柔軟に取り扱う余地というのはあるのではないか。これは特例をどこまで設けるかということとほぼ同じ意味かもしれませんが、俗な言い方をすれば折り合う余地はあるんじゃないのかなという気がいたします。SEAを導入することを前提として、どのような発電事業に関して特別な扱いというのを認めていくのかということが検討されてしかるべきだというふうに思います。
 中間報告での問題点の3つ目は、インセンティブ導入とあわせてと。ティアリングの考え方を明確にすべきだというところがはっきりしていなかったということではないかと思います。これはSEAの導入問題と当然密接に関わるんです。今も議論が出ておりましたけれども、やはり負担をかけ、時間をかけて行う以上は、それによって得られる利益は、もちろん環境面での利益ももちろんですが、事業者としての利益というのも当然あってしかるべきだと思われますので、それはアセスの場面においては、やはりその後の手続なり時間なりというものについてのプラス面をあらかじめ明確にしなければいけないというふうに思います。現実に条例等でこのティアリングが明らかにされている例があるようです。これがどの程度まで効果的なのかという話は検証してみなければわかりませんが、むしろここをもっと明確に、そしてかつティアリングの内容を明確にして、そしてプラス面がどのようなものなのかということが十分その事業の実施に踏み出すに当たっての立場から明らかにできるような内容としていただいたらいいのではないか。
 以上、3点申し上げました。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 それでは、鷲谷委員、どうぞ。

○鷲谷委員 この間の質問に対するお答えを見たり、皆様のご議論をお聞きしていて確認をまずしておいたほうが今後の議論をするにはいいかと思うことは、SEAというのは社会的な意思決定もしくは社会の意向を反映した意思決定そのものが行われる場でなくて、望ましくは総合的・統合的な意思決定を事業者が社会と相互作用しつつするための情報の整備と情報交換の場であるということだと思うんですね。事業者は貨幣価値で評価できてわかりやすい社会的・経済的な利益と経済的なコストに基づいて事業の計画を立てるわけですが、それらはもちろん重要な要素として最終的な意思決定に反映されると思うんですけれども、幅広い環境コストに関しても十分な情報を適切に活用し、また多様な主体の間での情報交換、その情報交換には十分に科学的なデータが活用されなければいけないと思うんですが、それによって認識を共有した上で、事業者も悔いのない意思決定をするということに意義があるのではないかと思います。
 環境コストのほうなんですけれども、問題が起こった場合には事業者が不利益を受けるというよりは社会全体が不利益を受けることになりますし、生物多様性を損なうというような影響が生じた場合には、後の世代が多大な不利益を受けることがあるということもあって、適切な意思決定に資するような十分な予測を含む評価というのが必要なんだろうと思います。これまでの事業アセスがそのような機能を果たせていたというご意見もあるようですけれども、生物多様性に関心のある人たち、研究者、それからそういうことに関心を持っているNGOの方たちはそういう機能が十分果たせていたとは思わないからこそ、生物多様性基本法のお話もありましたけれども、いろいろな場面でSEA制度を切望しているわけです。
 石田委員が世界の中の日本環境先進国という視点を提示されましたが、それを世界に示すチャンスというのが今年ではないかと思うんですね。生物多様性条約を世界のほとんどの国が参加していますし、生物多様性の保全と持続可能な利用というのは国際的にも非常に共通性の高い社会的目標になっているわけです。条約の中でも環境影響評価をどう実施することによって、生物多様性を保全し、持続可能な形で利用していくかというのは重要なテーマになっていまして、詳細に検討すべきテーマとして締約国会議などでもこれまでも話題になってきたことなんです。そういうことですから、日本の生物多様性基本法ができたこと自体は世界にすごくインパクトを与えているのではないかと思うんですが、そういう理念を示すだけではなくて、実際にも実効性のある制度をつくっていくということは環境の国、日本を世界にアピールするとてもいい機会なのではないかと思います。

○浅野委員長 ありがとうございます。
 あとお二方、手が挙がっているんですが、副大臣はよろしいですか。お二方のご発言の後で。ちょっとコメントをいただきたいと思っていましたので。
 それでは、屋井委員、お願いします。

○屋井委員 どうもありがとうございます。資料5について的確にまとめていただいていると思いますので、これについて3点申し上げたいと思います。あまり出席率がよくなかったこともありまして、若干時間がかかるかもしれませんが、できるだけ手短にしたいと思います。
 最初は2ページ目の、どの事業の段階について、ということでは、やはりここに書かれているように、事業の位置・規模等の検討段階、いわゆる構想段階と言われているものにまずは取り組むべきだという、従来の様々な議論の経緯から、あるいは現実的に抱えている様々な課題を考えると、やはりここかなというふうに思います。特にSEAの定義やその制度自体が、国によって違う以上に、上位計画に至ると、その制度あるいはその中身についても事業ごとにかなり違いがあります。ですから、そのあたりをどうしていくかについても、できればここからメッセージを出すぐらいのことはあってもいいと思いますが、そういう違いをぜひ配慮すべきだと思います。その中であえて余計なことまで申し上げると、先ほどの電力事業等もありました。あるいは交通の関係でも都市鉄道を仮に題材に上げますと、やはりまだ政府の役割と責任分担とかリスクテイクとか、この段階の計画プロセスにおいて、どうもそこら辺が十分でないなという気がしています。ですから、民間事業に任せてしまう中で、どこまでをやってもらうかというのはなかなか難しいということはわかるんですが、一方でそのフレームワークというか、リーガルフレームをどうつくっていくかを、もう少し国としても取り組むべき事業対象があるのではないかと思います。これは環境省としてということではありませんが、そういうことについては検討を要すると思います。
 例えばイギリスの2008年の計画法。これは明快に国の重要なプロジェクトに対しては国が法定基本方針を定めて、そのもとで民間事業者が商用的な成立性も考えながら計画案を、もちろん環境アセスもやりながら作っていく。こういう役割分担を明確にしたということがあります。そんなことをそれぞれの国が、制度は違いますけれども、検討しているという状況の中で考えるべきではないかと思います。
 それから、重要なことは8ページあるいは9ページがありまして、特に公共事業の構想段階における計画策定プロセスガイドライン。これは環境省さんのSEAガイドラインの趣旨を踏まえて国土交通省が積極的に取り組んでいて、既に那覇空港の構想段階として、またその適用第1号としても行われてきたわけであります。申し上げたいことはSEA、すなわち環境に特化した評価行為を早期に行うという、この評価行為自体を法制度化していったときに、実際には計画をつくっていくという立場から言うと、SEAを含む計画プロセスを行った後に、やはり計画案を1つに決めていくという行為がどうしても必要になります。その計画案を決めたら今度はEIAが行われる、という2段階の間にある決定行為。こういうものをSEAという中で、あるいは環境アセスという中で制度化できるかというと、これはなかなか今の計画の制度、仕組み等を考えると難しいということがありますね。ですから、それはぜひ計画プロセスのガイドラインはできましたけれども、それ自体も別に法定の手続でもないという状況でもありますので、もしこのSEAを法制度化していくのであれば、こういう対応する計画のプロセス自体についても、より法制度に近いあるいは法制度自体にしていくような要請を逆にここからしていくことが必要ではないかなと思います。そうでないと、国民の視点、あるいはそれを活用する視点からいっても、どうも計画を作っていくところが埋没し、一方で環境に特化した評価のところだけが出てきてしまう。社会、経済、環境に配慮して、計画自体は廃止も含めて決定していくことが必要ですので、そことの整合性あるシステムを全体でつくれるような、そういうことをお考えいただくことが良いと思います。
 それから、3点目ですけれども、9ページにありますが、公衆とかあるいは関係機関からの意見提出というところがありまして、これは今申し上げたような計画策定プロセスということにも関わるわけです。この中では住民参画とかPIとかというような名称を使いながら、かなり積極的なコミュニケーションの取組が行われてきているわけでございまして、これは環境面だけに特化してご意見をお伺いするということができない。やはり総合的にどうしてもいろんなご意見が来たものに対して、丁寧に対応していくということが計画を作っていく立場からいうと、当然必要になるわけです。既にご紹介があったかもしれませんが、横浜北西線という高速道路の事業計画がございまして、環境省のガイドラインができる前でありますが、国交省の道路のガイドラインに従ってこの構想段階のPI、計画づくりを進めました。2年以上かけてご意見を様々に丁寧に聞きながら進めていって、その後、環境アセスの段階に入りましたけれども、環境アセスの準備書に対する意見は何と11件、4人しか出てきていません。隣の横浜環状北線という区間がありますが、そちらはそういった早期のコミュニケーション、PIを十分に行っていなかったということもありまして、アセス段階の意見は恐らく30万件近い意見が出てきていたと記憶しています。
 申し上げたいことは、それだけの取組をすればEIAのほうで意見がこれだけ少なくて良かったということでもないんです。ただし、そこは法制化されていないからこそ柔軟にできたところもあって、法制化されることが悪いわけでは決してないんですが、柔軟にできる、あるいは形骸化しないということは大変重要な視点であります。今の事例は一つの事例ですが、それだけ前もってきっちりとコミュニケーションをとっておけば、あえてEIAの段階になって意見を言う必要もないと。我々の意見はもう言ってあるし、記録に残っているし、公開もされている。あるいはそれに応じて、反映し対応してくれているということであれば、そういうことになるんだという一つの例に過ぎないんです。けれども、ぜひ制度化していくときには形骸化という一方の問題を抱えるということのないような、そういうディテールの設計検討が同時に必要になってくるんだと思います。
 以上です。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 では、大塚委員、どうぞ。

○大塚委員 4点ほど申し上げたいと思いますが、第1に最初に田島副大臣もおっしゃったように、生物多様性基本法ができておりますので、立案段階からの対応というのは必要になっておりまして、このSEAというものの導入が非常に重要だと思います。
 その主体の問題として民間も入っていただくかという点でございますけれども、先ほど来、皆さんがご議論しておられるように、ここで問題になっているのは日本版SEAでして、SEAガイドラインや自治体もほとんどそうですけれども、先ほど田中委員もおっしゃったような個別の事業計画についてのアセスメントですので、諸外国におけるSEAとは違うというのを十分認識する必要があると思います。もし法律に入れるとしても、ガイドラインとか条例とかに沿った形で対応していく必要が日本の場合はあるということになると思いますけれども、そういうものですので、民間に関してもぜひ複数案の検討をこの日本版SEAの中で行っていくということが必要であるし、諸外国との関係でいえば割と自然にやっていただけることではないかということがございます。
 それから2つ目でございますが、複数案というのは先ほど来、これも議論がありますように、それから資料にも出していただいているように、いろいろなものがあるということで、別に位置とか規模とかだけではなくて、配置とか構造とかいろんなものがあるし、さらに事業種によっていろいろ複数案は違いますので、その点はある程度柔軟に考えていいのではないかということがあると思います。
 それから、第3点でございますけれども、この日本版SEAというのを法制化するとして、その中で環境大臣の意見というのはぜひ入れていく必要があるのではないか。つまり客観的に環境面からの評価というのを意見として言っていただくということが必要だと思いますけれども、第三者としての意見を言う機会というのが必要ではないかと思います。さらには公衆の意見を聞くという手続も一般的には必要だということになると思います。
 あと、第4点でございますが、先ほど猪野委員がおっしゃってくださった発電所に関していろいろお考えいただいていて、大変ありがたかったと思っております。方法書との関係でどう考えるかというのが一つの大きな論点になってくると思いますけれども、一般的に日本版SEAを入れるとして、何を手続として入れるかということを考えた場合に、やはり方法書の前に何か環境配慮書のようなものを出していただくというようなことを公表していただくというようなことをぜひ考える必要があるのではないかと思います。つまりそれまでの検討の経過のプロセスを示したものを出していただくと。これは先ほどのお話との関係でいえば、建設計画について公表した後でそういうものを出していただくということが必要かと思います。
 そこで示していただく検討プロセスというのは、かなり柔軟なものであってもいいと思いますが、方法書の中で本来扱うべきものというのはこれからEIAをやる上で、日本版EIAですけれども、調査の方法がどうなるかと、どうすべきかという調査の仕方をどうするかというのが方法書に本来書くべきことなので、検討の経緯について方法書で書く必要は必ずしもないものですから、検討の経緯については環境配慮書という方法書のちょっと前だけでもいいと思うんですけれども、その間が何かあくと、もし不都合がおありでしたら、ほんの少し前でも場合によってはいいかもしれませんが、そういうものを出していただくというのが必要ではないかと思います。
 とにかくこの環境配慮書の公表時期はある程度柔軟に考えてもいいわけですけれども、方法書よりは前に出していただいて、そこまでが日本版SEAの手続だという整理をするのが一つの現実的な方法ではないかと考えております。企業秘密とか競争上の問題とかいろいろあることはよくわかりますが、他方で今の環境配慮書のようなものを公表していただかないと、どうしても透明性が確保できませんので、透明性の議論というのはどういうガイドラインでも出ていますが、ご自身の中でご検討なさったというだけで外にお出しにならないと、どうしても透明性が確保できませんので、手続としてはそのぐらいやっていただけると大変ありがたいというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 副大臣どうぞ。何かお聞きになってご意見がありましたら。

○田島副大臣 ありがとうございます。委員長のお許しをいただきましたので、一言申し上げたいと思います。
 冒頭のごあいさつのほうでも申し上げましたけれども、とりわけ私どもとしては今回、先生方にそれこそ今回のSEA、また事後調査の部分、そしてその細部のEIAとSEAに対するきちっとした明確な方向性というものをお示しいただきたいというような思いでご議論をいただいていると思っております。私、ずっと考えておりましたのは、古いことわざで言い慣らされておりますけれども、「せいては事をし損ずる」ということについて、ずっとこの環境影響評価を見てまいりました。じっくりと意見を聞き、そしてまた国民の、そして後世の利益をどのように確保していくのか。それを考えていく上で、今ここで急ぐべきか。そしてじっくりと根回し、また説明をしていくべきか。これは必ずしもこのSEAだけではなく、今日までの日本のあらゆる社会で言い慣らされてきたのがこの「せいては事をし損ずる」に集約されているのではないかというふうに思っております。
 いろんなご意見をちょうだいし、私自身も随分整理をさせていただくことができました。ただ、皆さんの意見の中でございますと、このEIAの充実でいいというご意見も崎田先生や吉田先生のほうからもあったかというふうに思うんですけれども、方法書の前にやってもらうというその必要については、ここで明確に宣言をしていただく必要があるのではないかというふうに思っております。これから私どももこの先生方のご意見をしっかりと受けて見直しに着手をしてまいりたいと思いますので、その点についてはぜひ委員長にご配慮をお願いしたいと思っております。
 以上です。

○浅野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいま一通りご意見をいただきました。今のご意見は完全にまとめ切ることは難しいと思いますので、次回また報告書の素案のようなものを取りまとめるところで今日のご意見についての整理をさせていただきたいと思いますが、現段階までで私が今お聞きしていて考えましたことは、やはり生物多様性基本法の25条の規定があり、その精神をきちっと生かしておかないと、今回の改正ではどうにも国会の意思に応えたことにならない。国会が全会一致でお決めになった法律を全く無視して法改正案を出すことは多分政府にはできないと思いますので、審議会がそれをしなさいという答申を書くことは極めて非常識だというふうに思っておりますから、理念といいますか、私も名古屋で、国際会議では我が国が議長国であるということをちゃんときちっと我が国の立場を示すことができるようなことが改正の中になければいけないという総論的なご意見ではほぼ皆さん一致しているだろうと思うわけです。
 その上で、第2に今日出されましたご意見は今、副大臣からEIAでいいのではないかという意見があるようだがというコメントをいただいたわけですが、私の理解は必ずしもそうではなくて、EIAと全くかけ離れたものを別につくるということは今の段階では難しいので、EIAにつながるという発想法でやらざるを得ないのでないかというご意見が多かった、と私は理解しております。それを大塚委員は日本版SEAというふうに言いまして、ヨーロッパの方々から見ると「これが本当にSEAか」と言われるかもしれませんけれども、日本でこれまでやってきた環境影響評価の制度を発展させていって、この趣旨を生かしていくとすれば、とりあえずはまずEIAにつながるという形で、すなわちガイドラインで考えましたようなことを意識しておりますから、やはり事業者あるいは事業者等と書いてございますから、事業者等が手続に参画していただくという仕組みでいかざるを得ないのではないか。
 3番目にこれは私、大事なご指摘を屋井委員からいただいたと思いますが、あまり手続、手続というようなことばかりをごちゃごちゃかたくなにつくってしまいますと、どうしても形骸化してしまいますので、屋井委員は形骸化を避けるべきだと。形式化されたSEAだったらむしろ問題を起こすかもしれないから、それは避けようということを言われました。それは、屋井委員は主に公共事業を意識しておられるんですけれども、公共事業の計画決定プロセスというものをよく見据えて、それにうまく合うようなSEAでなければいけない。つまりSEAという形に取り入れられる場合でも、やはりそれぞれの計画事業種の特性というものをある程度考えながら合わせていかなければいけない部分がありますから、原則としてこれは絶対譲れないという部分と、運用面でどこまで柔軟にするのかということと2つがあるだろう。その意味では、柔軟な対応ということを皆さんが言っておられるわけですけれども、法文で柔軟にやりますと書くことはできませんから、法文では原則を書いておいて、やっぱり細かい点は各計画事業種ごとの主務大臣の判断ということで、環境大臣の示した基本方針に従って修正をお願いするというような形になるのかなと思いながらお話を聞いていました。
 しかし、最後の最後、これはかねてから私も強く考えていたことを何人かの委員がおっしゃってくださったのですが、本来ヨーロッパでやっているようなEIAというのは国が責任を持つ部分がかなり多い。ところが、我が国の環境アセスメント制度は、国がやると言いながら国や自治体がサポートするという部分は制度的には比較的少なく、国はややチェックをする側だけに回っているという面がある。これは吉田委員が思っておられることと私が思っていることが比較的一致しているわけですが、この点はぜひ副大臣にも頑張っていただきたいと存じますが、生物の調査の予算が削られると、アセスがやりづらくなるということを言わなくてはいけないということです。つまり生物調査は、単に生き物好きの人間の趣味のためにやっているんだと財務省が思われるとしたらこれはとても迷惑な話で、よりよい環境をちゃんとつくっていくためには環境部局をはじめ、関係する各主体が情報をちゃんと持っていなきゃいけない。情報を集めるときも国民的合意の中でみんなが協力して情報を集めることによって環境ができるのだから、これは決して無駄な金ではないということを縷々申し上げ、鷲谷委員も同じことを発言なさいましたけれども、そういうようなことがベースになければいけない。そのことをベースにしながら、本来あるべきもっと上位計画で考えられるSEAというものは、それらの基礎的な環境情報が積極的に使われ、その結果が個々の事業計画をお考えになる方々に対しても提供される。そうすると、事業者はコスト負担が軽く、しかも的確な環境配慮ができるということになります。そういう意味では国がSEAの本格実施についてはかなり責任があるし、そのための仕組みを改めてつくらなきゃいけない。何なら生物の調査についても予算をつけろと報告書に書いてもいいと思っているぐらいですが、そういうような国がやらなきゃいけないことも含めた今後の大きな課題が一杯あるということもこのSEAの議論の中ではまとめていかなければいけないなと思いました。
 このようなところで皆さんの全部のご意見を反映できるかどうかわかりませんが、次回は整理をさせていただきたいと思います。
 それでは、吉田委員、どうぞ。

○吉田委員 すみません、私の発言に誤解があったかもしれませんが、SEAをぜひこの機会に取り入れていくべきだということを宣言することについては、私は賛成でございます。そのSEAの中で現実的に対応できる部分をこの環境影響評価法の改正によって入れていくという意味で、EIAのみでいいというふうに申し上げたつもりではございませんでした。
 また、さらにむしろ中間報告ではまだ議論段階というふうに書かれていた累積的な影響とか広域的な影響などについても、スコーピングの段階でできるんじゃないかということも申し上げたつもりでございます。

○浅野委員長 その点については今、私も申し上げましたように、スクリーニング、スコーピングのところをもっと考えなきゃいけないというご意見はよくわかったのですが、これはちょっと整理の段階で考えさせてください。今の枠組みとかなり違ってきますので、場合によっては将来課題ということで、私はもっと公的部門が責任を持つべき本来のSEAのようなものがあるのだろうと思っていますので、そういう整理もちょっと案の中に出るかもしれません。吉田委員の意に反するかもしれませんが、お許しください。
 田中委員、どうぞ。

○田中委員 1点だけ申し遅れてしまいました。地方公共団体の関与で事業者がこの計画段階を考えるときに、割と地方公共団体へ相談に行って計画内容について相談しながらやっていくという事例をよく聞きます。したがって、その地域における環境面をやっぱり適切に評価するという意味では、その自治体の役割や住民の役割というのは大変大事だと思います。そういう点で自治体や住民の関与が必要だと思いますし、また、その点も地方自治体の環境部局が柔軟に関われるような、これはPI制度などでもう既にそういうことが行われていると思いますけれども、柔軟にかかるような制度にしたほうがいいのではないか。その点だけちょっと申し述べたいと思います。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 それでは、まだこの点についてご意見がおありでしたら、今日はちょっと時間的に、もう一つ議論しらなきゃいけなくて、あと20分しかないので、鷲谷委員、もしどうしても必要なら、ご発言いただきますが。

○鷲谷委員 結構です。委員長がおっしゃったことの中をもうちょっと具体的な言い方にしたいと思いましたが、後で事務局にメモをお渡しいたします。

○浅野委員長 わかりました。では、メモをください。報告書の中で生かせますので、よろしくお願いします。
 それでは、事後調査について今までどういう状況かということについて調査をしてほしいということをお願いしておりましたので、竹本補佐からご説明をお願いいたします。

○竹本補佐 資料6でございます。事後調査につきまして、まず1ページ目では法律の規定ぶりについてのご説明でございます。
 (1)環境影響評価法につきましては、事後調査は環境保全措置が「将来判明すべき環境の状況に応じて講ずるものである場合」に行う「環境の状況の把握のための措置」と規定されております。さらに基本的事項におきまして、事後調査が「工事中及び供用後の環境の状態等を把握するための調査」という位置づけになっております。
 ただ、(2)、(3)、(4)にございますように、報告・公表に関する規定、期間・頻度に関する規定、事後調査結果を踏まえた対応に関する規定については特段設けられておりません。
 続きまして、2ページ目、3ページ目、条例における事後調査の位置づけでございます。条例におきましては、すべての条例において事後調査に関する手続が定められております。また、報告に関する手続もすべて規定されております。公表のあり方については、公告・縦覧というものが主体でございます。また、事後調査報告書の記載事項につきましては、調査結果だけでなく、環境保全措置の実施状況ですとか事後調査結果を踏まえた対応方針も記載事項として規定されておりまして、その事例として3ページの表2のように沖縄県や仙台市のように、詳細に記載事項が定められております。
 他方、期間・頻度に関しましては、表3のとおりその具体的に期間を定めているものは、限られているということがわかりました。このほか、条例では調査結果を踏まえた対応に関する規定も記載されることになっております。
 4ページ目以降は事後調査の事例のご紹介でございます。

○浅野委員長 ちょっと時間がないので、これは申し訳ありません。途中を飛ばしてポイントのところに行っていただけますか。

○竹本補佐 わかりました。
 一番後ろ、8ページにポイントをまとめております。法律では報告・公表に関する規定は設けられておりません。アンケート結果によりますと、インターネット等で事後調査結果を確認できる事例は限られていました。条例では、報告・公表等も含めて規定されていますが、事後調査の期間・頻度を具体的に規定している例は少ないことがわかりました。また、公開された事後調査報告書によれば、事後調査結果を踏まえて環境保全措置の変更が行われた事例や、保全措置が成功せず追加対策を行った事例も見られます。
 以上です。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 それでは、限られた時間でございますが、事後調査について何かご意見ございましたらお出しいただけませんでしょうか。
 では、田中委員、どうぞ。

○田中委員 2点申し上げたいと思います。
 1つは報告・公表の関係なんですが、現行の法制度では公表に関する規定が設けられていないということでございますが、やっぱりこれは自治体のアンケートの結果なども見ますと、公表されたことによって、結局幾つかの例えば措置の不十分さが明らかになり、その結果としてさらにその環境保全措置が進んだという事例が報告されておりますので、こういう点からは事後調査結果の公表の規定はぜひ入れるべきではないか、今回考えるべきではないか。これが1点目でございます。
 それから、2つ目は事後調査をやる場合に非常に問題なのがその期間でございます。実施期間をどう考えるかということがあります。これも確かにいろんな事業種……

○浅野委員長 ごめんなさい。期間というのは時間の問題ですか。

○田中委員 はい。事後調査期間ということになります。この調査期間は例えば事業によって建設期間そのものが非常に長引く場合もあり、さまざまな事業の内容やその特性によってなかなか設定が一概には難しいというのはわかると思います。ただ、基本的な考え方、こういう事業の場合にはこういう項目が必要であるとか、こういう項目についてはおおよそこういうところまで、例えば定常的に安定するまでとか、そういう一定の考え方を事後調査についての考え方は、必要最小限の枠組みといったものは示す必要があるのではないか。その2点を申し上げたいと思います。

○浅野委員長 わかりました。この点に関しては、鷲谷委員、吉田委員お二方、何かご示唆がありましたら、どうぞ。

○鷲谷委員 生物多様性に関連する保全措置として移植とか移動というのが非常に今まで多かったんですけれども、それがどれだけ効果があったかという評価が十分できない現状がありまして、もしそういうことがしっかり確かめることができれば、後のアセスメントにも随分役に立つと思うんですね。そういう意味で、事後調査の結果をどういう公表の仕方がいいのか、保全上重要な種などですと、位置情報とかは隠したりとかいろんな配慮が必要ですけれども、利用できる形で公表するということは、しっかりそういう保全措置をただしたということにすればいいのではなくて、有効な保全措置を進めるためにも重要なことではないかと思います。
 あと、期間なんですけれども、やはりあまり短期間、二、三年ではその地域の個体群が保全できたかどうかは評価ができませんので、そんな大がかりな調査をする必要はないので、非常にローコストで確認ができるはずですから、それを評価するのにふさわしい期間については、もしそういう移植とかでしたら調査を継続するということが望ましい。あるいは短期間のうちにもう確実に将来予測で、これは持続できるということが科学的に確認できれば、そこで打ち切ってもいいと思うんですけれども、きちっと説明ができる期間が必要というふうに……。

○浅野委員長 わかりました。一般原則としてはそういうことでしょうね。

○鷲谷委員 順応的という言葉をよく使うんですけれども、生物多様性の保全に関しては。対象のあり方を見ながら、あまり固定的でない計画を立てておくというそれができると。皆さんが思っているほどコストがかからないと思います。もう少し広いものを対象とするときでもきちっと指標を決めるということをすれば経年的な調査というのは、今やっていらっしゃるよりもずっとローコストでできるのではないかという印象を持っております。

○浅野委員長 ありがとうございます。大変役に立つ情報をいただきましたので、考えやすくなったと思います。
 吉田委員、どうぞ。

○吉田委員 2点申し上げたいんですが、1点は具体的で先ほどの期間のことなんですけれども、生物多様性のほうにその事業の影響が出てくるというのは非常に時間がかかる場合がございます。例えば私が関わったものとしては、長良川河口堰なんかの場合には完全に締め切って、その貝が減っていって、その貝を食べるキンクロハジロなんかが減っていくのに3年ぐらいで、これは完全に締め切ったものですからそうなんですけれども、その前に行った利根川河口堰なんかの場合には、漁民がシジミをとり続けられるように放流しているものですから、完全に影響が出てくるまで13年ぐらいかかっているんですね。やっぱり生態系の中の食物連鎖などを通じて、後事の捕食者まで影響が出てくるというのはかなり時間がかかるということで、そういったことを考えると、生物種に対してはかなりある程度の時間は必要なんじゃないかということです。
 具体的なものはそれなんですが、もう一つ理念的なこととして、この事後調査を何のためにやるかということで、方向性が必要だと思うんですけれども、今年生物多様性条約の第10回締約国会議が開かれ、その中でもいろいろ議論になっているものとして生物多様性オフセットなんていうものが出てきます。かなりこれは免罪符的になるんじゃないかといろんな懸念もあるんですけれども、やっぱりそういったことを提案している国というのは、自分の国の中で、環境アセスの中でちゃんとミティゲーションをやって、そのミティゲーション・バンキングなどという制度をつくっている。それに基づいて国際的な提案をしているわけです。やはりそういった事後調査をしてみたけれども、事業者がやるのではなかなかその生物が生き残れないと。むしろきちっとしたそういったノウハウを持った技術集団がそれをフォローしていくというようなことが必要なんじゃないかという考え方になってきて、初めてこういう制度ができてきたと思うんですね。
 日本では事後調査制度でこれをやっていると、この大きな潮流に乗り遅れてしまうのではないかと。もっときちっとこのアセスでやった環境保全措置がどうなったかということを定量的にきちっと把握して、日本でもそれを提案していけるようにならないと、地球温暖化のときの二の舞で非常に遅れて後発ということになってしまうんじゃないかということを懸念いたします。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 なかなかこれは難しい問題ではあるわけですが、しかし、逃げて回ってはだめな面があるということがわかってきました。事後調査については目的の問題もありますし、いつまでやるのか、誰がやるのか。一般環境管理としての自治体なりというものの持っている役割との関係をどうするのかということがありますから、総論的に事後調査をやるべきであると書いただけでは制度になりませんので、どんな場合には事後調査をしなきゃいけないのかをある程度はっきりさせることと、それから、事後調査を行った場合にその運用については今お話がありましたように、特に生物系に関しては順応的対応が必要であるということであれば、一律に決めることはできませんので、それをどうするかということを含めて考えなきゃいけませんから、ここも制度化は政府がなかなか悩まれるところではないかと思いますけれども、工夫をしなければならない。
 そして、もう一つで今言われたオフセットのような話が入ってきた場合には、事業者の責任なのか。これまたせっかく副大臣がいらっしゃいますから陳情しておかなきゃいけないのですが、公共事業というのは供用開始後は予算がプツッと切れてしまいますから、幾らその後事後調査をやれと言われても、今の財政の仕組みではお金がないということがあり得るわけです。ましてや何年やるか。10年やるとかということを言われると。多分現場の公共事業の担当部局は悲鳴を上げてしまって、やりたくないと。それならもう2年で切ってくれというようなことを言うものですから、それを2年で切ってしまうことになりますが、今度は鷲谷委員の立場からは、そんなことではだめじゃないかという話になる。逆に言えば、やらなくていいのに3年続けてやっているとか、半年で終わっていいのにというものが5年行われるという非常に無駄が起こってしまうおそれがある。
 だから、これはむしろどこかで環境部局に予算を移してもらって、環境部局が責任を持ってやるというほうがよっぽど合理的かもしれないですね。そこから変な場合にはこうやってくれということがむしろ公共事業部門に対してアドバイスができるというようなほうが、はるかに合理的かもしれないわけですから、この辺についてはなお検討の余地といいましょうか、今後の制度をしっかりしたものにしていくためには考えなければいけないことが一杯ありますけれども、とりあえずやはりアセス法の中で今のように事後調査をやると書いてあるのに、それが全く報告もされないという点については改善しなければいけないということでは一致していますので、あわせてどういうことを検討しなければいけないかということを示していきたいと思います。
 屋井委員、どうぞ。

○屋井委員 そのとおりだと思うんですけれども、公共事業というのはご存じのように、事業評価を、事前から再評価からやって、最後、事後評価まで最近はよくやるようになってきました。ただ、私も申し上げられなかったのは、ではそこにこれを組み合わせたらお金がかかるし、誰がそれを負担できるんだろうということもありますので、そこはまさにおっしゃるように、ちゃんと手当しながら、そして、事後評価といいましても、経済面とか社会面等を中心に評価をしているところがありますので、そこに環境面もうまく配慮して、しかし、そこには何らかのお金なり、人の手当をしていくとか、そういうことができれば、十分に事後評価もできるのではないかと思います。

○浅野委員長 実は私もその事後調査、事後評価をやらされていますのでよくわかるんですが、3年なり5年目で事後評価をやりますが、結論部分には、必ずこれ以上の事後評価はやる必要がないと書いてあるわけです。ですから、ちょっと待ってください。これで自然がどうなるかわからないのに、もうこれでやめていいんですかと言わざるを得なくなってしまう場合も出てしまう。そういう問題が実はあります。
 ほかに何か。大塚委員、どうぞ。

○大塚委員 2点ございますけれども、第1点はさっき田中委員がおっしゃったことと関係しますが、どうしても予測評価というのは不確実性を伴う場合がございますので、その点から考えると、この事後調査というのを行って報告していただくこと、そして、公表していただくということが重要だと思います。これは恐らく許認可権者に対してということになると思いますけれども、その報告とかを行って、公表は許認可権者が行っていただいてもいいかと思いますが、あるいはご自身で事業者のほうがなさるということもあると思いますけれども、そういう手続を義務づけるということが重要ではないかと思います。
 それから、もう一つ事後調査の内容でございますけれども、この2ページの条例のところにもございますように、環境保全措置の実施状況というのもぜひ入れていただく必要があると思います。生物が存在しているかどうかというようなことが注目されまして、そちらはそちらで大事ですが、それ以外に環境保全措置を実施するということが評価書などに記載されている場合に、本当に実施されているのかどうか、どういう状況かということについてぜひこれも報告の内容に含めるということが重要だと思います。
 以上でございます。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 吉田委員、どうぞ。

○吉田委員 ちょっと申し上げ忘れたことで、環境影響評価法の中でできる事後調査あるいはミティゲーションというものはやっぱりある程度限度があります。これをきちっとやっていくためには、生物多様性基本法、それから種の保存法、自然再生推進法、こういったところともうちょっと連携がとれるようなそちらの法律のほうも変わっていく必要があると思うわけです。例えば種の保存法なども3,000種以上レッドデータブックの記載種がありながら、80種足らずしか指定されていない。レッドデータブックの中で今の指定だけではなくて、例えばこの個体群の再生計画が義務づけられるような指定だとかそういったものがあると、その国が立てた目標に向かってその事業者があわせるように目標設定して、事後調査をするということもできるわけですけれども、今のところそれがないので、結局それぞれのところでは5年やって、大体こんなところでいいでしょうで終わってしまっているのでは、結局のところはノーネットロスというのは達成できないんだろうと思います。

○浅野委員長 ありがとうございました。アセス法の世界は割合に他の制度をリードするという性格があって、ここから始まってもっと他の制度が整備されるという歴史があって、ようやく生物の世界にもこの話が出てきたのかなという印象はあるわけですが。
 崎田委員、どうぞ。

○崎田委員 ありがとうございました。私も基本的な立場の表明だけですけれども、やはりせっかくきちんと最終的に事後調査をしているのに、その内容が社会に公表されないというのは、逆に実施してくださっている事業者さんとかご担当の方たちにとっても不幸なことなんじゃないかと思います。ですから、そういうことで社会の信頼性を確保していくという意味でも、そういうところをきちんと入れていくということは大変重要だと思っています。
 なお、先ほどのやり取りの中で浅野先生がおっしゃってくださいましたが、私もSEAの精神がしっかりと位置づけられるということは大事だと思って発言しております。どうもありがとうございます。よろしくお願いします。

○浅野委員長 それでは、もう時間がございませんので、なおご意見がこの件に関しておありでしたら、書面でいただきたいと存じます。副大臣、この事後調査についてどうぞ。

○田島副大臣 ありがとうございます。実施報告・公表については、もうほとんどご発言いただいた先生方からはやるべきだというふうにお話をいただきました。ただ、やはりこの期限の問題についてが私どもも本当に悩ましいものだと思っております。事業者にしてみれば、何年というふうに具体的に書かれたほうがもちろん計画も立てやすいというのがありましょう。しかしながら、先ほども利根川の河口堰の話で聞きますと、13年なんていう時間がかかるとなると、これはもうお手上げになってしまうかもしれないというような不安も当然出てこようかというふうに思います。
 私どもも事後調査の今後、公共事業についてももちろんこの環境省だけではなく、他省庁にも相当大きく影響を及ぼす課題でもありますが、こうしたことまできちっと面倒を見ていく覚悟を示すのが我々の大きな仕事だというふうに思っておりますので、この期限の問題については、今日いただいたご意見等々もしっかりと踏まえた上で整理をさせていただきたいというふうに思っております。

○浅野委員長 ありがとうございました。
 それでは、次回の委員会では報告の案を事務局に取りまとめていただいて、それについて議論をしていきたいと思います。報告の案をつくる時間があまりございませんので、大変恐縮でございますが、これまでのご議論、それから今日は議論しなかったポイントも含めても結構でございますので、報告書案に盛り込むべきご意見がございましたら、期限を切って申し訳ないんですが、来週の水曜日までに事務局にメールなりでご連絡いただいたものは報告書の中に反映の可能性がある。それを過ぎた場合には反映の可能性があるかどうか保障はできない、こういうことで進めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、大変急いで申し訳ございません。あと残り30秒しかございませんので、その他の議題について事務局から説明をお願いいたします。

○沼田補佐 次回の委員会につきましては、1月28日木曜日、10時から12時、場所は環境省第1会議室、合同庁舎5号館22階で行います。正式な開催案内は追って送付いたしますので、よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、本日の専門委員会はこれで終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。

午後 0時00分 閉会