環境影響評価制度専門委員会(第2回)議事録

開催日時

平成21年10月15日(木)15:00~17:00

開催場所

弘済会館 4階 蘭の間

議事次第

  1. 開会
  2. 議題
    1. (一)環境影響評価制度の各論点に係る議論
    2. (二)その他
  3. 閉会

配付資料

資料1 環境影響評価制度専門委員会委員名簿
資料2-1 前回指摘事項について(一覧)
資料2-2 前回指摘事項について(環境影響評価手続の電子化)
資料3 今後の環境影響評価制度の在り方についての主な意見と論点 その1
資料4-1 対象事業について(法的関与要件)
資料4-2 対象事業について
(将来的に実施が見込まれる事業種への対応について)
資料4-3 対象事業について
(条例等による環境影響評価が実施されている事業種への対応について)
資料5 スコーピング手続について
資料6 国の関与について

参考資料

参考資料1 環境影響評価法の仕組み
参考資料2 環境影響評価法の対象事業
(以下、委員限り)
参考資料3 環境影響評価制度総合研究会報告書

議事録

午後 3時00分 開会

○花岡課長 定刻となりましたので、これより第2回中央環境審議会総合政策部会環境影響評価制度専門委員会を開催いたします。
 本日は、ご多用中にもかかわらずご参集いただき、誠にありがとうございます。本日、屋井委員は所用のためご欠席となっております。また、鷲谷委員は少し遅れておられます。また、白石総合環境政策局長は、所用のため会議途中で退席いたしますので、お許しいただければと思います。
 議事に入ります前に、本日の配付資料についてご確認いただきたいと思います。

○沼田課長補佐 それでは、お手元の議事次第、資料一覧及び資料をご説明いたします。
 まず、資料1としまして、環境影響評価制度専門委員会委員名簿、資料2-1としまして、前回指摘事項について(一覧)、資料2-2としまして、前回指摘事項について(環境影響評価手続の電子化)、資料3としまして、今後の環境影響評価制度の在り方についての主な意見と論点 その1、資料4-1としまして、対象事業について(法的関与要件)、資料4-2としまして、対象事業について(将来的に実施が見込まれる事業種への対応について)、資料4-3としまして、対象事業について(条例等による環境影響評価が実施されている事業種への対応について)、資料5としまして、スコーピング手続について、資料6としまして、国の関与について、また、参考資料1としまして、環境影響評価法の仕組み、参考資料2としまして、環境影響評価法の対象事業、また、委員限りでございますが、参考資料3として、環境影響評価制度総合研究会報告書をおつけしております。お手元の資料に不足等がございましたら事務局までお知らせくださいますよう、よろしくお願いいたします。

○花岡課長 これより先の議事進行について、浅野委員長にお願いをしたいと思います。プレス、報道の方々には、冒頭のカメラ撮りはここまでということでお願いいたします。よろしゅうございましょうか。
 それでは、浅野委員長、議事の進行をお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、本日は第2回目でございます。前回はちょっと無理な日程を組みまして、委員全員のご出席をいただくということができませんでした。本日は、前回おいでいただけなかったのですが、鷲谷委員、それから中川委員、崎田委員には本日からご出席をいただきました。前回は第1回ということでしたので皆さんに自由にご発言をいただきました。そこで、このお三方については今日は議題以外についてもお気づきの点がございましたなら、ご自由にご発言をいただければと存じます。
 それでは、前回はこの専門委員会ができる前の段階でつくられておりまして、今日お手元にも資料として配付されております、傍聴の方にはございませんが、環境影響評価制度総合研究会報告書がございまして、これについて事務局から少し時間をかけて、どういう内容であるか、特に論点がどんなところであるかということについてのご説明をいただいた上で、ご出席の委員から自由にご意見をいただきました。今日はそれらを受けまして、まず最初に前回の委員会で委員からこの点はどうか、調べよ、あるいは資料を集めよというご要望がありました。その点について事務局に準備をさせましたので、最初に前回の宿題について、全部ができているわけではありませんが、事務局の勉強の成果についてご報告申し上げることにいたします。
 それから、配付資料にありますとおりですが、今日は論点としてこれまでに既に整理されております事柄のうち、対象事業について、それからスコーピング手続について、さらに時間がありますならば国の関与について、この3つのポイントについて事務局に資料の説明をお願いした上で委員からご意見を賜りたい、このように考えております。今後のスケジュールでございますが、このような形で論点ごとに議論をいたしまして、それらをもとに、報告書の案をまとめていくということにしたいと思います。
 なお、こういう専門委員会の場合には、しばしばでございますが、ヒアリングという形で関係者からのご意見を伺うというのが通常ですが、前に研究会の段階でかなり綿密に意見を伺っておりまして、研究会報告は、お寄せいただいた、さまざまなご意見のいずれかを選んで結論とする、といった報告になっておりません。それらを全部併記するという内容になっていますから、この専門委員会では改めてヒアリングを行なうことはいまのところ予定としてはおりません。そのことをまずお断り申し上げておきたいと思います。
 それでは、事務局から前回の宿題についての答えをお願いいたします。

○沼田課長補佐 それでは、まずお手元の資料2-1をご覧ください。前回の第1回専門委員会において各委員からいただいたご意見等に対して、補足対応状況の整理をしております。
 まず、表の上からまいります。1点目が対象事業について、交付金事業のうち、環境影響評価法対象事業となり得る事業はどのくらいあるのかという指摘を田中委員からいただいております。これにつきましては、現在調査整理を進めておりますので、次回第3回で報告を予定しております。
 続きまして、2番目、事後調査について、実際にどの程度事後調査をした事例があるのか。また、事後調査後にどのような環境保全措置がとられているのか、実態調査が必要ではないかという指摘を田中委員からいただきました。また、浅野委員長からも、条例に係る事後調査の事例に関して幾つかサンプルとして用意し、あわせて報告をしてほしいというご指摘、また、事後調査は全く新しい措置としてではなく、今までの法の枠内でうまく工夫できるのではないかといったご指摘をいただいております。事後調査の実施状況等につきましても、同じく現在整理作業を行っておりますので、次回第3回で報告を予定しております。
 3点目、手続の電子化についてでございますが、まず、大塚委員からは、電子化に伴う情報の安全管理について事業者サイドから懸念が出ているが、実際どのような問題があるのか、事例を整理してほしいというご指摘。また、浅野委員長から、電子化している自治体からのヒアリング、あるいは電子化されたことで事業者が実際に困ったことの有無、紙媒体との差異、意見のやり取りの電子化についての問題の有無を調べる必要があるというご指摘をいただいております。このうち、まず海外における対応事例につきましては今回資料2-2として整理をいたしましたので、後ほどご説明いたします。この他の国内自治体あるいは事業者への調査につきましては、次回第3回にご報告を予定しております。
 4点目、生物多様性につきまして、まず吉田委員から、生物多様性に関しては広域的視点での判断が必要であるというご指摘、また、浅野委員長からは、現状の環境影響評価の事例では環境影響の範囲のとらえ方はどうなっているのか。広域的な生態系はどこまで捕捉ができているのかというご指摘をいただいております。これについては、生物多様性分野の評価における利用可能な自然環境情報について整理をして、次回第3回でご報告をしたいと考えております。
 また、その他としまして、猪野委員から、制度を運用している中でどういったものが実際に困っているのか、何が問題なのかをクリアにしてほしいといったご指摘がございました。これについては一つにまとめた資料というよりは、今後各論点ごとにお示ししていく資料の中で適宜報告をしていくという対応をしたいと考えております。
 以上が資料2-1でございます。
 続きまして、資料2-2、環境影響評価手続の電子化についてをご覧ください。まず、前回ご指摘のあった手続電子化の海外の状況につきまして、平成20年度に環境省で海外の事例調査を行っておりますので、その結果を整理いたしました。諸外国における環境影響評価図書の電子媒体による公開の状況としまして、アメリカ、カナダ、イギリス、オランダ、ドイツ、この5つの国について、環境影響評価図書の電子媒体による公開の状況を調査をしております。まず(1)が電子媒体による公開が制度上位置づけられているケースでございますが、カナダでは主務省庁が環境影響評価登録に事業に関する情報を登録し、公衆が入手できるようにすることが義務づけられておりまして、インターネットを通じた環境影響評価図書の情報提供が制度上位置づけられております。
 次に、(2)としまして、実態として電子媒体による公開が進められているケースとしまして、カナダ以外の4カ国については電子媒体による公開の法的な根拠はないものの、例えばアメリカでは政府全体として電子媒体による資料公開を推進しております。また、イギリス、オランダ、ドイツにつきましても、多くの場合運用上電子公開が進められているという状況でございます。
 3.の電子化に伴い生じ得る課題への対応としまして、以上の5つの国における縦覧電子化に伴い生じ得る課題への対応の調査結果を整理いたしました。著作権あるいは希少種に関する情報への対応、こういったもの以外は通常のホームページ管理によって対応しております。以下、具体的にご説明しますが、まず(1)著作権につきましては、各国の著作権法に基づき、事業者はアセス図書に関連する著作権者から許諾を得る必要がある、あるいはライセンス料を払う必要があるということになっております。
 次に、(2)希少種に関する情報ですが、ウエブ掲載に当たって法的規定はないものの、運用上場所が特定されるような箇所を塗りつぶす、あるいは削除するといったことにより、正確な生息地が特定しにくいよう工夫をしているという国、あるいは、許認可官庁とアセスの実施者が協議を行い、公開すべきではない内容を決定する取組、また、場所の特定につながるような情報が公開されることはあるものの、罰金刑あるいは保護地域の監視等で対応しているといった回答がございました。
 (3)ホームページの改ざんですが、これにつきましては、一般的にハッカー対策としてのソフトウエアあるいは非常時への対応による取組、あるいは外部からの特別なセキュリティープロトコルを内蔵する場合もあるという回答がございました。
 4点目がウィルス対策ですが、ウィルス対策については、内部管理体制の構築により対応している、あるいは外部業者への委託により対応している、こういった回答がございました。
 最後にポイントとして、以上の結果等を簡単に整理をいたしました。海外で電子縦覧が進められつつある一方で、日本では事例が少ないことについてどのように考えるべきか。また、海外では著作権及び希少種に関する情報を除いて電子化に伴って生じ得る課題への特別な対応が必要かどうかといったところを整理させていただきました。
 以上が資料2でございます。

○浅野委員長 それでは、この問題についてはまた改めて議論をする機会はあるわけですが、とりあえずただいまの事務局からの報告説明についてのご質問がありましたらお受けいたしたいと思いますが、いかがでございましょうか。

○大塚委員 1点質問させていただきたいんですが、2ページの最初のあたりですけれども、希少種に対する情報の問題ですが、ドイツの方法で機密事項について協議を行って、公開すべきでない内容を決定するということですが、これは紙の場合はやらなかったことを電子情報の場合は特にこういう協議をするという趣旨なんでしょうか。事実の確認だけお願いします。

○沼田課長補佐 運用上ということで、ウエブ掲載時には少なくともやっているということで回答をもらっていますが、紙ベースもあわせて対応しているかどうか、改めて背景を確認してみたいと思います。

○浅野委員長 他にございませんか。いかがでしょうか。よろしゅうございますか。それでは、またこの件についてはありましたら随時お出しをいただきたいと思います。
 それでは、先へ進ませていただきまして、対象事業について、まず事務局から説明を受けたいと思います。

○沼田課長補佐 まず論点の1つ目、対象事業につきまして、資料3番及び資料4-1から4-3をもとにご説明をさせていただきます。
 まず、資料3番をご覧ください。主な意見と論点として整理をしてございますが、まず対象事業についてでございます。総合研究会における主な意見としましては、まず小論点の1つ目として、国と地方の役割分担についてというのがございます。これについては、まず法の対象事業のあり方について、第二種事業の規模要件の引き下げあるいは許認可要件を外す、こういったことにより、対象事業の種類、規模について範囲の拡大を図るべきという意見がございました。その一方で、国の関与は少なくし、地方の独自性を生かすことも必要ではないかという意見、あるいは法の対象範囲を拡大した場合、従来環境影響評価条例で手続を実施していた事業を法対象に引き上げるということになりますので、法と条例の関係から適切かどうかという意見がございました。総合研究会報告書の中では、法対象事業の範囲の検討に当たっては、行政全体の動きとして地方分権の流れがあり、法と条例が一体となって幅広い事業を対象にしていること等を踏まえて、慎重に対応していくことが求められるという整理をしております。
 次に、対象事業の小論点の2つ目、法的関与要件についてでございます。法的関与要件については、国の許認可を対象事業の要件から外して、環境負荷の大小で対象事業を決めるべきといった対象範囲の拡大の必要性に関する意見がございました。その一方で、法的関与要件によって環境保全上の配慮の確保について一定の強制力を担保する、こういった仕組みは現行の環境影響評価法の制度の根幹であり、一定の妥当性があるのではないかという意見が見られました。
 2ページに入りますが、また、国の法的関与要件のない事業は条例において対象とされている場合が多く、国と地方の役割分担の観点からも、国の法的関与要件のない事業で法対象にすべき具体的な事業があるかという実態面での要請が乏しい段階にある、こういう点についても留意すべきといった意見がございました。
 小論点の3つ目、補助金事業の交付金化への対応についてでございますが、法施行後の状況の変化として、地方の裁量を高めるために補助金を交付金化する取組が進められております。現在のアセス法では法的関与要件の一つとして国の補助金等の交付対象事業という規定がございますが、交付金はこの要件の範囲には含まれておりません。地方の独自性の発揮を目的とする交付金事業を環境影響評価法の対象とすることは地方分権との関係で留意が必要という意見があった一方で、法対象事業に該当する事業種・規模相当の場合であっても、交付金化した事業については現行法の規定では法対象とはならないことから、補助金事業の交付金化に伴う必要な措置を行うべきという意見がございました。研究会報告の中では、補助金事業の交付金化等の状況を踏まえ、法的関与要件の内容について検討を行う必要があるとしております。
 次の小論点が、将来的に実施が見込まれる事業種への対応についてでございます。将来的に実施が見込まれる大規模な事業としては、放射性廃棄物処分場の建設事業が想定される他、二酸化炭素の回収・貯留、いわゆるCCSについて国内での実証試験の検討が始められているという状況にございます。これらについては何らかの形で法対象とするべきではないかという意見がございました。一方で、これらの事業は実証試験あるいは技術開発の段階であり、知見も不十分であることなどから、対象事業に加える検討をしていくのは時期尚早ではないか、こういう意見もございました。将来的に実施が見込まれる事業種で現行法の対象になっていないものについては、事業の特性や実施可能性あるいは社会的要請、こういった知見を収集・分析をした上で、個別の対応を検討していく必要があるとしております。
 続いて、3ページにいっていただきまして、条例等による環境影響評価が実施されている事業種への対応について、具体的には風力発電施設に関する環境影響評価について意見が多く見られました。風力発電施設の設置については、現在NEDOが風力発電のための環境影響評価マニュアルを作成している他、条例あるいは要綱に基づくアセスを義務づける地方自治体が出てきております。風力発電施設設置の環境影響評価については、法による取組に比べて情報公開あるいは客観性の確保が不十分であり、補助金の交付申請時において環境影響評価の結果をしっかりと反映することが必要ではないかという意見、あるいは法の対象として検討するべきという意見がございました。
 その一方で、NEDOのマニュアルで環境影響評価を実施している仕組みがある点に考慮する必要があるという意見や、従来どおりの地方条例の対応で十分ではないかという意見も見られました。また、NEDOのマニュアルあるいは条例の運用実態に問題があるのであれば適切な環境影響評価の実施が担保されるよう措置が必要ではないかという意見もございました。現在、条例等により環境影響評価が行われている事業種については実施状況等を把握し、必要に応じて適切な対応を検討することが必要である。また、その際には国と地方の役割分担の観点にも留意して、地方公共団体において今以上の対応が困難か否か、こういった点も含めて検討する必要があると総合研究会報告書ではまとめております。
 最後に、対象事業のその他の課題としまして、対象事業の範囲を拡大した上で、アセスを不要とする事業、簡易アセスを実施する事業、詳細なアセスを実施する事業に類型化するなど、簡易アセスを導入するべきではないかという指摘がございました。一方で、我が国ではアセス条例等により各地域の状況に応じて法対象事業以外の事業種あるいは小規模な事業も詳細なアセスを実施するという状況にございますので、簡易アセスの導入については現行の一種事業・二種事業をなくす等、大きな制度変更を要すること、あるいは条例との関係に注意をする必要があることから慎重な検討が必要であるといった意見もございました。
 以上が対象事業に関する総合研究会の主な議論でございます。
 続きまして、資料4-1以降の追加資料のご説明をいたします。まず、資料4-1の法的関与要件についての追加資料でございます。こちらの資料では、1980年代までに環境影響評価制度を制定している海外の主要国について、対象事業の条件として許認可等による国の関与を定めているか、いわゆる法的関与要件の有無を整理いたしました。まず法的関与要件がある国としてはアメリカのNEPAにおいて連邦政府機関の実施する主要な行為が適用対象となっている他、EC指令、オランダ、こういったところではいずれも法に基づく許認可の対象となっている事業が指定されております。一方、この表の中ではフランスや韓国、イギリス、イタリアといった国については環境影響評価の対象となる事業は規定をされておりますが、法的関与要件に関する規定はないという状況にございます。
 続きまして、資料4-2でございますが、将来的に実施が見込まれる事業種への対応についての資料でございます。まず1.が特定放射性廃棄物最終処分施設についてですが、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律に基づき策定されている特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針の中では、特定放射性廃棄物は多量の放射性物質を含み、その放射能が高い、またはその放射能の減衰に長期間を要するといったことから、地下深部に設けられた最終処分施設に適切に埋設することにより、生活環境から隔離して安全に最終処分することが必要であるとされております。また、同じく最終処分法に基づき平成20年に閣議決定されております特定放射性廃棄物の最終処分に関する計画の中では、最終処分施設の設置について、平成20年代の中ごろを目処に精密調査地区を選定し、平成40年前後を目処に最終処分施設の建設地を選定する。平成40年代後半を目処に最終処分を開始するとされております。
 なお、環境省では、平成21年度からの事業として、特定放射性廃棄物最終処分施設に関する環境影響評価の技術手法の検討を行っているところでございます。
 次に、資料の2.が二酸化炭素の回収・貯留(CCS)でございます。まず、二酸化炭素の海底下投棄に当たっては、海洋汚染防止法に基づいて環境大臣の許可が必要とされていまして、同法の許可を受けるための申請書には海底下廃棄事前評価書、これは二酸化炭素を海底下廃棄することにより海洋環境に及ぼす影響について調査をするものですが、これを添付することとされております。また、CCSについては、2008年7月にまとめられました低炭素社会づくり行動計画の中で、我が国としまして、2009年度以降早期に大規模実証に着手し、2020年までの実用化を目指すということが明記をされております。2008年5月に日本CCS調査株式会社が設立されまして、現在、同社は国及びNEDOの委託を受け、我が国近傍においてCCSの実証事業を実施する場合の候補地あるいは技術的な可能性について検討を実施しております。
 なお、ことし8月の経済産業省のCCS研究会の取りまとめの中では、CCSの実用化に関しては、環境影響評価について、国内実証事業において蓄積される知見、あるいは今後の国際的な議論の動向を踏まえた対応が必要としております。また、環境省では、平成21年度からの事業としまして、CCSについても環境影響評価の技術手法の検討を行っております。
 裏側は3.ポイントでございますが、以上の事実関係の整理としまして、特定放射性廃棄物処分施設については、平成20年代中ごろを目処に調査地区を選定し、最終処分の開始は平成40年代後半目処であるため、具体的な事業に関する環境影響評価の議論は平成40年代に入るころになると想定されます。また、CCSについては、2020年までの実用化を目指して、現在大規模実証事業等に着手をすることで知見を収集していく段階でございます。
 続きまして、資料4-3としまして、条例等による環境影響評価が実施されている事業種への対応について、風力発電の状況について整理をいたしました。まず、1.が風力発電の設置状況について、こちらは資料の1ページのグラフで示しておりますが、現在日本における風力発電の導入量は、2008年度末の段階で総設備容量185万キロワット、総設置基数1,517基となっております。また、風車の出力階級別で見ますと、近年は1,000キロワットクラス以上の風車の割合が9割近くに達しているという状況にございます。
 2.が風力発電施設の環境影響評価等に関するガイドラインとしまして、2-1は風力発電のマニュアルについてでございます。まず、NEDOにおきまして、概ね総出力1万キロワット以上の風力発電事業を想定した風力発電のための環境影響評価マニュアルを作成しております。このマニュアルの内容でございますが、まず(1)が環境影響評価の手続としまして環境影響評価方法書の作成、2ページ目にまいりますが、方法書に関する地域への情報提供や意見書の受付、[3]番が有識者からの意見聴取、[4]番がその結果を踏まえた環境影響評価の実施、環境影響評価書案の作成、[5]番としまして、評価書案に関する地域への情報提供、意見書の受付、[6]番が評価書に関する有識者からの意見聴取、[7]番としまして事業者見解の作成、そして最後に[8]番としまして環境影響評価書の作成といった手続を示しております。
 (2)番が環境影響評価の項目及び手法の選定でございますが、この中では、同じくマニュアルの中で項目として選定することが望ましいものについて、それぞれ調査すべき情報、調査の基本的な方法、こういったものが記載されております。表の2番はマニュアルに記載されている環境影響評価の項目を抜粋いたしました。また、3ページには、フロー図といたしまして、NEDOのマニュアルの、先ほどご説明した手続の流れをフロー図にしております。
 2-2は風力発電施設に対する補助金の交付についてです。風力発電施設の補助事業としましては、民間事業者を対象とする新エネルギー等事業者支援事業、あるいは地方公共団体等と連携して導入事業を行う民間事業者を対象とする地域新エネルギー等導入支援事業、この2つがございまして、いずれも今年度は交付元が一般社団法人新エネルギー導入促進協議会に移管をされているという状況でございます。
 4ページの上のほうですが、これら補助金の交付に当たっては、先ほどのNEDOのマニュアルに基づいて、または準じて申請者に環境影響評価手続等の実施が求められているという状況でございます。
 3.が風力発電の環境影響評価等に関するアンケートの調査結果でございます。これは以前総合研究会でも紹介してございますが、ことしの2月から3月にかけて、環境省におきまして、平成15年度から19年度にかけて稼動している総出力500キロワット以上の風力発電施設の設置事業者を対象に、アセスの内容についてアンケートを行いました。調査対象153件のうち130件から回答が得られまして、その中で条例に基づくアセスを実施したという回答が5件、アセスを全く実施していないという回答が2件、また条例以外によるアセスを実施したという回答が123件ございました。
 3-2.環境影響評価等の項目でございます。こちらの表4にはアンケートの結果を整理しておりますが、1万キロワット以上の風力発電40件については、すべての事例で騒音及び景観を項目として選定し、また98%の事例で鳥類を項目として選定しております。また、1万キロワット未満の風力発電施設については、すべての事例で騒音を項目にしている他、94%の事例で鳥類、89%の事例で景観を選定しております。
 続きまして、3-3.環境影響評価等の手続としまして、具体的にどういった手続を踏んでいるかを整理したのが5ページ下の表5でございます。1万キロワット以上の風力発電につきましては、93%の事例で住民説明会の開催、住民の意見聴取が行われております。一方で、1万キロワット未満の小規模な発電施設については、71%の案件で住民説明会の開催、65%の案件で住民の意見聴取を行っております。
 次に、6ページにいっていただきまして、4.が風力発電を対象とする条例の対応状況でございます。まず4-1.が条例の制定状況の実施件数でございますが、まず地方公共団体で環境影響評価条例の中で風力発電施設を対象としている団体は、都道府県で4団体、政令指定都市で3団体ございます。また、これ以外の自治体におきましても、風力発電を対象事業として明記はしていないものの、高層工作物の建設あるいは工場、事業場の新設、こういった対象事業の一環として風力発電に対してアセスを実施したという事例がございます。これらを合計しますと、これまで環境影響評価条例を風力発電に適用した事例は合計11件という状況でございます。
 4-2.が条例に基づく環境影響評価事例の内容でございますが、まず(1)評価の項目としまして、先ほどの条例適用事例11件について項目を調査をした結果として、7ページに入りますが、騒音については10件の事例、低周波音については4件の事例、この他鳥類、景観の項目については11件すべての事例で項目として選定しております。
 次に、(2)が環境影響評価手続を経て追加された環境保全措置ですが、条例適用対象について、知事意見等により追加された環境保全措置を調査いたしました。手続を終了している5件すべての事業について、影響低減を図るため風車の台数を減らす措置を追加しています。この他、風車の位置の変更、送電線のルート変更、繁殖期の工事中断、こういった措置を追加している事例が見られております。
 次に、4-3.が要綱等の制定状況としまして、条例以外に要綱、ガイドライン等を作成している団体は、県で4団体、政令指定都市では1団体あります。
 次に、5.が風力発電の設置を巡る課題の状況でございます。まず、5-1.が風力発電に係る騒音・低周波音の苦情発生状況でございます。平成21年1月に環境省から地方公共団体へ聞き取り調査を実施した結果、風力発電に関する騒音・低周波音の苦情の発生状況は、静岡県東伊豆町で27人、愛知県田原市で1人、同じく愛知県豊橋市で5人、愛媛県3人、兵庫県1人といった状況になっております。
 また、健康影響と風力発電の関係については必ずしも明らかになっておりませんので、環境省では平成20年度から調査を行っておりまして、平成20年度は諸外国における知見の収集、また8ページにまいりますが、平成21年度は実際に苦情が申し立てられている地域での風力発電施設の実態把握の調査、また平成22年度以降は人への影響調査に関する研究等を予定しております。
 次に、5-2.バードストライクの状況でございますが、過去に総合研究会において日本野鳥の会からヒアリングを行った際には、北海道、岩手、神奈川、愛媛、長崎といった都道府県で発見の事例があり、被害種としては、オジロワシ、トビ、イヌワシ、ヤマドリといった報告がございます。バードストライクについて、現在環境省では平成19年度から21年度の3カ年の事業としまして、バードストライクの防止策の実証あるいは衝突リスクの解析、渡り鳥のルートの調査を行い、この結果をもとに対策の内容をまとめたマニュアルを作成することを予定しております。
 次に、5-3.は自主的な環境影響評価手続の実効性についての指摘でございます。先ほどご説明したように、風力発電の補助金交付に当たってはNEDOのマニュアルに基づくアセス手続等の実施が求められております。しかし、3-3.で示した事業者のアンケートでは、アセスについて実施したアンケートのうち、住民の意見聴取手続を行っていない案件が26%に達するといった結果が出ている他、過去の総合研究会でのヒアリングの中でも、方法書・評価書案の縦覧を行わずに補助金の申請がなされているといった指摘があるなど、自主的な環境影響評価の実効性について課題を指摘する意見もございます。
 最後の6番のポイントでございますが、NEDOマニュアルまたは条例につきましては、手続履行の厳密さ、あるいは規模要件にかなりの相違が見られる。また、条例以外によるアセスの実施状況について、1万キロワット以上の発電施設は1万キロワット未満のものに比べて選定した項目あるいは実施した手続の項目が多いという状況がある。また、風力発電に関する騒音・低周波音またバードストライクの問題については、現在環境省において状況の調査等を行っておりまして、今後さらなる研究、対策等について検討していく予定でございます。
 以上が対象事業に関する過去の議論の整理及び追加資料でございます。

○浅野委員長 それでは、ただいま説明いただきましたことについて、少し議論をしていきたいと思います。前回は自由にご発言をくださいということで全員無理やり当てた面もありますが、今回からは、ご発言がありましたらどうぞご自由にお願いいたします。

○中川委員 最初に、この論点で出ました国と地方の役割分担について申し上げたいと思います。国と地方の役割分担の議論は2つの側面があると普通考えられます。1つは、ある一定の行政課題、仕事を国が直接自分で行うのか、地方の主体、地方自治体が行うのかという、どこが行うかという、主体の問題でございます。そして、別の側面は、この一定の行政課題を行うに当たって、法律で一定の枠組みなり、あるいはその手順、その他を定めるのか、それともそれは条例に任せるのかという、そういう分け方の問題がございます。もちろん前者と後者は関連が当然あるわけでして、条例で定めている枠組みについて国が直接それに乗るということは通常あり得ないと思います。そして、地方が主体となる行政課題に関しては、できる限り法律による枠組みとか規制は排除して、条例による規定、あるいはそれぞれの自治体の創意工夫が生かされるようなやり方による行政を行うというのが本来望まれる方向であるということでございます。
 通常議論されます国と地方の役割分担というのは、どこが、どの主体が行うかというのが中心になるわけでございまして、その問題はこの環境影響評価問題にも当然あるわけですけれども、この論点では、主としてそれを法律の枠組みをどこまで規定するのか。そして、その余の部分について条例はどの程度の役割を果たすのかというような、2つ目の議論として行われているような気がいたします。
 一般的に申し上げて、ある一つの仕事を国と地方がどのような役割を分担して行うかというのは、実は大変難しい問題でございます。直ちに結論が出る問題でもございません。例えば、外交・防衛であるというような、国の存立にかかわるような典型的な例は別でございますけれども、ほとんどの仕事は全国的あるいは広域的に関係し、また、色々影響が及ぶものであり、そして同時にまた一面それぞれの地域に特化した部分があるという、そういう仕事をどのように切り分けていくかというのは大変難しい問題があると思われます。環境影響評価も恐らくその側面を持っているというふうに思われます。
 これをどのように考えるかということについては、論点にも出ておりますけれども、現在の法律による規制・規定と条例による環境影響評価という、こういう仕組みが併存する状況がこの10年継続しているわけでして、そして、そのやり方、あるいは実施運営状況には、それなりの安定状況が見られるといっていいのではないかというように思われます。
 また、環境影響評価は過去の歴史上条例による規定が先行したという、そういう事実も考慮すべきかもしれないというように思います。したがって、条例で規定されている事項について、それを法律の対象として引き上げるかどうかということについては、やはり積極的な実態を十分踏まえた上での理由が必要であろうというように思われます。例えば、条例による環境影響評価では、十分な環境保全、環境保護ということがかなわないというような実態があるかどうか。あるいは、事業を行う立場からいっても条例に対する信頼がないというような事態が十分説明できるかどうかを検討すべきだろうというふうに思われます。
 また、ここにもございますように、現在の行政全体の流れとして、国から地方へ、地方でできることはできるだけ地方で、そして地方の創意工夫を生かしたやり方でということが時代の流れであるとするならば、現在の法律と条例のすみ分けといいますか、分担というのを大きく変更する理由は見出しがたいのではないかというのが私の結論でございます。ただ、例外的に条例がない地域において、小規模な事業、特に法律が対象としていない事業について、環境に影響を及ぼすような事例があるとするならば、その当該地域に限って、条例を制定することを求めるのではなくて、法律の範囲を拡大するという、そういう選択肢はないわけではないというふうに思われますが、具体の事例があるかどうか、私も十分承知しておりませんので、もしそういう事態があるとするならばお示しいただいて、また検討していただければというふうに思います。
 以上です。

○浅野委員長 一般的なお話として伺いましたが、早速各論にもつながってくるのではないかと思います。
 それでは、他の委員からのご意見がありましたら伺いたいのですが。

○鷲谷委員 前回欠席させていただいたものですから自由な意見というものを述べる権利があるということですので、今日ご説明いただいたことよりも広い話題になってしまうかもしれません。私は自然環境とか生物多様性に関心を持っていますので、その面から、これまでのアセスがどのくらい効果的だっただろうかということを時々考えます。そういう観点からの、まず感想のようなことを述べさせていただきたいと思います。
 環境影響のタイプというのは色々あって、それが評価の項目、評価の側から見れば項目として上げられるわけです。その影響のタイプによって、影響の時空間的な範囲というのは非常に大きく異なると思うのです。ですけれども、これまでのアセスではそれらは割合横並びになっていて、自然環境とか生物多様性への影響のように、影響が長期にわたる可能性があり、絶滅のように、回復が不可能であるか可能であったとしても長期にわたること、時には、不可逆的な結果にもつながる事柄、他の騒音とか、時間的空間的に限定された事象と同じような評価・対策のあり方で十分対処できるのだろうかということを感じます。
 これまでの事業アセスを考えてみますとアセスのプロセスそのものが、世論を喚起して、徹底した議論が行われて、事業地が変更されたというようなことで、かなり効果的な保全ができた例はあるかもしれませんけれども、多くの場合は希少な植物の移植とか、動物を動かすぐらいのことを保全対策としてきました。事後調査によってそれが有効だったということが検証されているものがどのくらいあるかわかりませんけれども、色々話を見聞きするところでは、その後は保全の効果がほとんど意識されたり検証されないままに放置されていることも少なくないような印象を受けます。
 やはりどのくらいこういう環境問題に関してしっかり対処するか。事業アセスでできることの範囲と、戦略的なアセスメントも前回の研究会では検討対象になっていましたけれども、そういうことで対処すべきことと、問題の整理が必要だと思います。影響というものの性格や時空間的な範囲に応じた対応を考えないで、これまでのアプローチをそのまま踏襲して、一項目として自然環境に関することを扱うのでは有効な保全は不可能であると思います。
 以上です。

○浅野委員長 前回吉田委員からも、ちょっと観点が違いますけれども、似たようなご発言がありました。

○吉田委員 私は、風力発電について伺いたいのですが、鳥類、景観、それから低周波騒音による人体への影響、そういったあたりが非常に注目点だと思います。環境影響評価法の対象にしていくかを判断するときに、補助金の対象事業であるとか、許認可に結びついているかということは非常に重要な論点ですが、もう一つ、事業の影響が全国的に普遍的なものであるか、事業自体が全国的に普遍的なものであるかという視点も重要ではないかと思います。例えば資料の8ページで、日本野鳥の会からバードストライクのことをヒアリングされています。例えばオジロワシとかイヌワシは全国的に見ても、あるいは都道府県のレッドデータブックで見ても、そんなにランクが変わってくると思えない。こういったものについては、全国的な視点から、環境影響評価法の対象にしていくことでよいと思います。
 一方、ヤマドリなどは都道府県によって位置づけが違うということもあるのではないかと思います。その場合に、都道府県の環境影響評価条例でアセスメントをしたほうが、都道府県のレッドデータブックにおけるヤマドリの位置づけがうまく反映されるという視点もあるかもしれません。事務局に伺いますが、都道府県の環境影響評価条例でアセスメントをやった結果、都道府県のレッドデータブックにおける生物の重要性がきちんと反映されたということがあるのか。そういったことが特別にないのであれば、オジロワシやイヌワシのように全国的にも地域的にも重要なランクの生物に対する影響が大であると判断し、生物多様性という視点から環境影響評価法の対象とすることでいいのではないか、私はそういう意見です。もし都道府県の環境影響評価条例の事例がわかれば教えていただきたい。

○浅野委員長 事務局に投げられた面があるようですが、このご質問は。条例でどの鳥が貴重であるとか、それほど貴重でないというようなことまで決めている例はないのではないかと思います。だから、多分予測評価をして、どういう評価をするかということになるだけであって、事務局にふられても事務局も答えようがないだろうと思いますが。

○花岡課長 一応調べてはみますけれども、通常は条例での背景というのは、大体規模要件とか、そういうようなもので、あとは項目です。項目をどれを選ぶかということを条件にしておられるということで、今、処理されていますけれども。

○浅野委員長 どちらにしろ、今の吉田委員のご発言は、多少留保して条例で対応する余地があるのはこういう場合という発言なので、そもそも条例ではなくて、国の法律で対応すべきというのが言いたいご趣旨でしょうね。

○花岡課長 何か特記されているものがあるかどうかは関係県に聞いてはみたいと思います。

○吉田委員 お願いします。もし条例でやっている利点がそういった点で見出せるのであれば考慮の余地はあるかもしれませんけれども、ほとんど広域的な観点あるいは渡りとか、そういった観点だと思いますので、私としては法対象でいいんじゃないかなという意見を持っております。

○猪野委員 最初に、国と地方の役割分担という話がありまして、今、中川委員がおっしゃったことは、至極ごもっともだと思います。今、国で法律としてやっているものと、現に条例である程度機能しているものについては、ナショナルミニマムという考え方も含めて、それぞれ役割分担されるのができるものはそういうほうがいい良いのではないでしょうか。
 それからまた、条例でやっているということは、地域の特色が反映されていて良いと思います。例えば、今、お話になりました風力の話でも、地域によっては風の条件が悪い等、もともと風力の適地ではないところもあり、全体を広く考えると、地域性が非常に強いものについては、引き続きNEDOのマニュアルと条例とを一緒に合わせてやっていくというのが適当ではないかと思っております。特に、先ほどお話に出ました騒音や、低周波音、それからバードストライクの話については、今、このポイントのところにも書いてございますが、今後詳細な調査研究を実施して、それらが実際にどのくらいの環境負荷になっているのかということや、評価基準として、どのようなものを求めるのかとか等、定量的な検討が必要ではないかと考えております。言ってみますと、今の状況で非常に大きな何かがあるかというと、そうではないのではないでしょうか。
 もう一つは、先ほど吉田委員から鳥のデータの話がありましたけれども、場合によっては、国で情報整理するということも考えられるのではないでしょうか。

○大塚委員 最初に、国と地方の役割分担ですけれども、これにつきましては中川委員がおっしゃったとおりだと、私も思っております。条例で今対象にして環境影響評価をされているものについては、法律で取り上げるということはできるだけしないほうがよろしいかと存じます。
 次の問題の風力の話ですけれども、風力については最近新聞でもかなり取り上げられているところがございますが、先ほどご説明していただいたように、条例がまだ4つぐらいしかない状況なので、もし国の法律で取り上げるというのは、今やるのであれば、条例から取り上げるという意味にはならないのではないか、将来はちょっと無理かなというところがないわけではないとは思っています。
 さらに、少し気になるのは、風力は再生可能エネルギーとして、温暖化対策として非常に重要なものなので、これであまりイメージが悪くなるのもどうかなというところがあります。そういう面から積極的にとらえる可能性もあるのかなというふうに考えております。
 それから、もっと一般的な話ですが、先ほど資料の3で説明いただいたところとの関係で、まず法的関与要件ですけれども、これはぜひ現在のものを維持していただくのがよろしいかと存じます。これは法的関与要件によって環境保全上の配慮の確保をしているという、そういうのがこの環境影響評価法の骨格なものですから、先ほどの風力の話も、補助金を国が出しているからそれについては対象にするかということが問題になるものと思われますが、そういう国が法的に関与しているというところが重要であって、この点は維持するのが適切ではないかと考えています。
 2ページの補助金事業の交付金化への対応でございますけれども、これにつきましては、あまり意識されずに、現在この交付金事業というのが環境影響評価法の対象から落ちてしまっていますし、交付金化したものについても国の法律の対象にしていっていいという考え方をとるべきではないかと思います。これは別に条例から取り上げるということではないので、現在の補助金事業が交付金化したものについても対象にしていくということは十分に考えられるのではないかと思います。
 とりあえず以上でございます。

○田中委員 私も風力のことで、資料の4-3で2点ほど確認をさせていただきたいことがあります。
 1つは、資料4-3の8ページに、5-3でしょうか、自主的な環境影響評価手続の実効性という、これはNEDOのマニュアルあるいはそれに準じた手続についての課題があるのではないかというご指摘だと思いますが、つまり、これは総出力1万キロワット以上の大規模なものについてマニュアルに沿ってやれば手続は行うべしとなっている。その手続の中では、例えば地域への情報提供をし、つまり縦覧をする、それから意見を求める、このような規定になっているけれども、実際にはそのとおりやられていない案件があるという、そういう趣旨のことなんですね、26%というのは。
 それから、方法書や評価書案の縦覧もせずに補助金が申請されてしまう。そこでお聞きしたいのは、NEDOのマニュアルではこういう場合はペナルティ、つまり申請が出ても取り上げないとか、あるいは何らかの留保をつけるとか、そういうことがあるのでしょうかという、ご質問です。

○沼田課長補佐 マニュアル自体が法的な拘束力を持つものではありませんので、補助金の交付に当たって運用上マニュアルに沿った手続を求めています。ただ、これは総合研究会のヒアリングでの指摘ですが、実際には手続を一部飛ばしていても補助金が交付されてしまっている事例があるというのが意見として上がってきています。

○田中委員 それから、もう一件は、これは同じく7ページに条例の手続が完了した5件についての事例が出ております。(2)でしょうか。環境保全措置、このときには一応5件については条例の手続により知事意見が出て、これに基づいて環境保全措置が、いわば追加された。しかも、これは全事例について何らかの、台数を減らすとか、ルートを変更するということが、それぞれの事例に応じて行われる、こういう理解でよろしいんでしょうか。

○沼田課長補佐 そうです。

○田中委員 そのことを踏まえて、私の意見ですが、私も場合によっては風力発電というのは、確かに条例で、具体的に風力発電という名称で事業地を対象にしているのは今のところ4自治体があるわけですが、今のタイミングであれば、つまり風力発電が再生可能なエネルギーの拡大、供給拡大という中で、現時点では年間200基ほど全国で建設されている。これがさらに加速して何百基と建設されていく、こういう今後の推移の状況を見ると、やはり何らかの手続を課す。そのことによって、先ほども言ったように住民に十分な情報提供がなされないとか、あるいは環境保全措置がとられないというか、不備なままで先に進む、こういうことについて少し対処したほうがいいのではないかと思います。そういう意味では、法対象事業の検討をしてみて、どういう問題があるかという、その方向に少し検討してみたらどうだろうか。現実に、これは新聞記事等でもたしか低周波騒音の問題が新聞報道されておりますし、住民の関心も高くなっておりますので、いわばこういう環境に良好なエネルギーを供給拡大していくためには、むしろ住民側への十分な環境配慮を盛り込むような、そういう手続を課したほうがいいのではないか。そのような意見です。

○崎田委員 私自身は、環境影響評価のこの仕組みに関しては、地方自治体の都市計画の審議会とか、基礎自治体が意見書への意見を出すときの内容を話し合う審議会で、この法律を活用させていただくという状況にありますが、そういうところから感じているところを一言申し上げます。
 まず、私は都市型の地域に住んでおりますので、大規模な都市再生とか、そういうときには必ずきちんとした計画書が出てきて、意見を聴取するような仕組みが地域に根ざしているということ自体は、大変いいと思うんですが、その意見がどれだけきちんと生きたかというところが、後まできちんと検証できるような形がきちんと定着していけばいいと感じています。また、もっと早目に地域で意見交換できるような、戦略的アセスの検討は今日の議題には出ておりませんが、そういう少し早目からみんなできちんと地域で意見交換をしていく、そういうような雰囲気をつくっていくことも、この法律は今後とても大事なのではないかと思っておりました。
 今日の議題に関して私の意見は、国と地方の役割分担ということに関しては、地方できちんと条例をもとにやっているところに関しては国と地方がきちんと役割分担するということは大事だと思っておりますが、今回のご指摘の中で、補助金事業の交付金化というような状況で、交付金化した大規模な事業が、それぞれの地域の条例できちんとアセスメントがなされているのかどうか検証が必要です。その辺のところをチェックしながら、交付金化した大規模事業に対してアセスメントするという対応ができるよう検討していくことは大変重要なことだと思っています。
 もう一点、将来的に実施が見込まれる事業への対応ということで、今、放射性廃棄物の地層処分と、二酸化炭素貯留のCCS、この2つの事例が出ておりますけれども、こういう大きな事業に関しては、やはりある程度きちんと国が関与して、環境影響評価をしていくということは大変重要なことだと思っています。
 ただし、これほど環境影響のあるような事業については、環境アセスメント法よりも、かなり厳しい法的な仕組みの中で、地域の選定などを国民合意を得ながら時間をかけてやるという流れなわけです。そういう流れの中にこのアセスメントの手法をきちんと取り入れていくとか、長い年月の中で、その精神をきちんと入れながら選定していくような、そういう独自の視点でこの事業を考えるということも必要なのではないかというような感じもいたします。
 その次の風力発電のところですが、私も今回いただいた資料などを拝見して、NEDOの自主的なガイドライン、マニュアルの中で取り組まれているというのは、それなりにきちんと進んできたとは思いますけれども、実施の仕方とか、住民へのコミュニケーションの仕方、意見聴取の仕方などにかなり差があるという状況の中では、きちんと法律の中に入れ込むとか、そういうことも検討していくことは大事なんじゃないかと感じております。
 よろしくお願いいたします。

○石田委員 風力発電に関してですが、適地が非常に地域性が大きいという意味で、条例を尊重することに賛成です。それを前提とした上で2点ほど申し上げたいと思います。
 対象事業に補助金が出ているから国が関与するという、その方向には非常に合理性があると思うんですが、その逆は必ずしもいえないというふうに考えております。国の補助金が出ないものについては全部条例でいいのかというと、そうではなくて、やはり影響の種類とか範囲とか、影響の特徴によってそれはきちんと関与すべきであろうというふうに考えます。それが一点です。
 もう一つ、条例に完全にゆだねてしまったときに、当然規制の厳しいところ、緩いところというのが出てまいりましょうから、風力発電施設の立地自体に国土の視点で見たときに非常にひずみが出てくる。規制の緩いところに立地していくというような、いい意味で地域性が生かされるという面がある反面、不均衡な立地が起こるというようなことに対してどう考えるか。それは、別の申し上げ方をすれば、田中委員のご発言とも若干関連しますが、何らかの地域のキャパシティに合わせた総量規制のようなものは国レベルの規制できちんと関与すべきではないかというふうに考えます。
 以上です。

○浅野委員長 一渡りご意見をいただきましたが、他にいかがでしょうか。

○鷲谷委員 何を対象事業とすべきかということに関してですが、事業の種類と規模で今まで考えられてきたわけです。そういう意味では、風力発電をある規模以上のものは対象にするということは必要なことではないかと思うんですが、今、対象は出力で足切りみたいな形になっていますけれども、環境影響というのを考えると、例えば高さとか、何かグレードの大きさみたいなものも、出力とともに考慮して対象事業を決めることが必要なのではないかなと感じます。
 これは風力発電に関してなんですけれども、一方で、そういうインフラ整備の事業の種類だけではなくて、何らかの事業で行われる事業に着目して、対象とするかどうかを判断するというのも一方で必要ではないかと思うんです。例えば、自然再生を目的としているような事業でも、沿岸域で大量の土砂を動かすなどということがありますと、そこで自然環境に対する影響というのが生じる可能性があります。今、思いつくのはそういう土砂を大量に動かす事業で、それでしたら何立方以上という基準も決めることができるのではないかと思います。高さを、これは風力発電とも関わりがありますが、急に高いものがあるということは景観、それから自然環境に対する影響とか、それが壁をつくってしまうようなものだと風などの環境を大きく変えるとか、そういう影響もありますので、高さの非常に高いものを建築するなどというときもアセスメントが必要なのではないかと思います。業種、規模プラス人為タイプでの基準が必要で、幾つかの問題がありそうな人為については、それもアセスの対象にするべきでないかと思います。

○浅野委員長 この問題に関しては研究会のとき以来ずっと議論が続いてきているところで、他のテーマとも当然に深いかかわりがあることは今までの議論でもおわかりいただけると思います。つまり、法と条例との関係をどうするのか。あるいは、法的関与要件を入れるのか、それを飛ばしてしまうのか、さまざまな問題がかかわりを持ってくると思います。鷲谷委員が今言われたように、自然再生事業のようなものについては、どうも現状では許認可に係るような話にダイレクトになるかといわれると、それが場所によっては何らかの法律に引っかかるという場合があっても、そうでなければ引っかからない場合があるかもしれませんし、何とも言いにくい面があるわけです。確かに、そういったようなものには一切アセスが要らないというのも変な話だという点はおっしゃるとおりだと思います。ですから、長期的にはどうするのかという問題として考えなければいけないと思いますが、当面、差し当たりの考えとして、どうするかという限りにおいては、今日の専門委員会でのご発言の大勢は、条例と法のすみ分けというものをそれなりに尊重すべきだというご意見は多かったようでありますし、それから法的関与要件についてもとりあえずいきなり外すということは無理じゃないかというご意見が多かったと思います。ですから、将来的にどうするかということはさらに検討しなければいけないかなという議論もあったわけですが、とりあえずその辺をまずは尊重しながらも、しかし現状では全く法が対象にしていない事業のうち、事務局の報告の中にも何となくニュアンスがあったわけですけれども、将来出てくるだろうという事業に関しては、多分具体化するのは20年ぐらい先ではないかというような話になりますと、直ちに現状でそれを法律の中に入れるかどうかという問題はまだありそうな気がします。とはいうものの、炭素の海洋固定みたいなお話は、海洋汚染防止法では既に、アセスをやるべしと書いてあるわけですから、それについてはあることはあるわけです。ただし、他法でアセスをやれと書いてあるから、ではそれはアセス法の中に入れて、アセス法の手続に載せるべきかかどうかについては、まだもうちょっと検討の余地がありそうだという気がします。
 風力に関しては、ご意見が多少分かれた面もあるわけですけれども、やはり現状は条例で取り扱っているからこれは条例にお任せしていいという状況ではなさそうです。かなり都道府県の間でのばらつきがあるということが今日の事務局の資料からもはっきりわかってきました。ですから、このようにばらつきがあるものについては、やはりこのままではまずいということを考えなければいけないのではないか。しかも、条例で取り上げていても規模要件が自治体によってもばらばらですから、それはそれぞれの自治体の考え方があるのでしょうけれども、主に騒音のようなところに着目をすれば影響範囲を考えて条例で考えてこれでというのがあるのだろうけれども、生物多様性の側からいうと、あまりそういう観点だけで区別されても困るという話も出てくるものですから、これは前向きに検討する必要があるのではないかというご意見が多いという気がいたしました。その方向で検討し、最終の報告書をまとめる段階でどうするかということを考えていかなければいけないのではないか。こんなふうに考えました。

○猪野委員 将来の事業についてという部分で、コメントを一つ言っておきたいと思います。資料4-2に書いてございますけれども、先ほど委員長も先の長い話という示唆をされました。2ページの裏にポイントとして書いてありますが、特定放射性廃棄物最終処分の施設については、平成20年代の中ごろから最終処分の調査地区を選定し、事業開始については平成40年代目途と、大分先のことが書いてありますので、もう少し知見を集める必要があると思っています。
 もう一つ、環境基本法の中で、放射性の物質を扱わないとなっておりますし、事実上放射性物質の規制のほうが緩いという話ではないと思いますので、そのあたりの整理も重要かと思います。
 CCSにつきましても、これから国の実証試験もやっていくということになりますと、今後技術的知見も含めて、新しい知見が出てくると思います。それらをうまく反映していくことが必要だろうと思いますので、タイミングを見て検討していくという形が良いと思います。

○浅野委員長 ただ、海洋の固定については法律改正したときに既に議論していまして、あれは当面は外国から乗り込んでこられたら困るなという話で、本当にそんな国があるとは思いませんけれども、日本の近海で適当な場所があるからやるぞと外国のどこかが言い始めたときにはすぐさま対応しなければいけないということがあります。
 それでは、次のテーマで、今日はスコーピング手続と、あと一つやろうと考えておりましたので、事務局から簡潔に説明をお願いいたします。

○沼田課長補佐 続きまして、スコーピングについて説明をさせていただきます。まず資料3番の4ページをご覧ください。スコーピングに関する総合研究会での主な意見でございます。1点目は方法書段階の説明の充実について、これについては方法書段階での説明会について、方法書の分量が多くなっている現状等を踏まえて、説明会を義務化すべきといった意見が多く見られました。その一方で、調査実施前の方法書段階で説明会を行うことは提供できる情報のミスマッチを起こすために、逆に相互不信を招く恐れがあるのではないかといった意見、あるいは事業内容が明らかになっていない段階で説明会を行うことについては負担感があるといった意見がございました。
 また、この他にも、構想段階で住民等とのコミュニケーションをやっている場合には、そういった取組と関連づけて検討すべきといった意見が述べられております。
 総合研究会報告では、最後に状況の変化等も踏まえて、方法書段階の説明充実に向けた検討を行う必要があるとしております。
 また、スコーピングにつきましては、他のご意見としまして、手続の強化について何件かございました。まず1つ目が方法書手続前または手続と並行して行う調査について、環境を改変するような恐れのある調査を禁止すべきという指摘がございました。その一方で、方法書の作成に当たって一定の事前調査が必要な事案もあると考えられるという意見、一律禁止はすべきではないといった意見もございます。
 資料3の5ページにいっていただきまして、手続強化の他の指摘としましては、方法書の記載内容が不十分な場合、方法書を差し戻しができるという仕組みとすべきといったご意見がございました。一方で、これにつきましても事業内容が不十分であることを理由とした差し戻し、そういった措置を課することは事業者にとっては計画内容が柔軟な段階から手続を行うインセンティブをそぐことになってしまうのではないか、こういった意見が見られております。
 次に、追加資料としまして、資料5番をご覧ください。まず1.が環境影響評価法に基づく方法書手続の実態でございます。これは以前総合研究会でも報告をしてございますが、まず方法書のページ数、平成20年3月末時点で手続が完了した案件74件について見ますと、方法書の分量は平均が170ページ、最大で約570ページの大部のものもあるという状況にございます。また、1-2.方法書の記載内容の実態でございますが、方法書を記載する際にはさまざまな専門用語が使用されておりますが、前述の74件の手続完了案件のうち巻末に用語解説の項目が設けられていたものは7件に限られております。
 資料の2ページにいっていただきまして、2.が方法書段階において説明会を実施した事例でございますが、法対象事業の中でも事業者の自主的な判断で方法書段階の説明会を行った事例として高速鉄道事業、あるいは廃棄物の最終処分場、こういった2つの事例が見られます。
 次に、3.が方法書・準備書段階における住民等意見の内容でございます。まず3-1.は方法書段階での住民意見の提出状況でございますが、平成19年3月末時点で法に基づく手続が完了した62件について、方法書に関する住民意見の提出状況等の整理を行いました。その分析の結果ですが、3ページに入りますが、方法書段階で出された住民意見の詳細を調査したところ、細かい内容として、[1]事業の必要性や効果、方向性を問う意見、あるいは事業の検討経緯、具体的な計画について質問をする意見、事業内容のわかりやすい説明、詳細な説明を求める意見、手続の趣旨の説明、周知を求める意見、こういった調査方法についての意見が見られるという状況にございます。
 次に、3-2.が法対象事業の準備書段階での住民等意見の提出状況でございます。これも同じく平成19年3月末時点の手続完了案件62件について調査をしております。3ページの(2)でございますが、手続完了62件のうち、住民意見の中で環境影響評価の方法等の改善に関する意見が出されたものが34件と過半数を占めております。詳細な中身を見ますと、この中には、項目を追加選定すべき、あるいは予測手法を変更すべきなど、本来方法書段階で提出すべきと考えられる意見が含まれておりました。
 4ページにいっていただきまして、4.が事業の上位計画等における説明会を導入している事業でございます。アセス法の対象事業の中でも、一部につきましては、こちらの表に整理したように道路事業、河川事業、飛行場、港湾の埋立、干拓、こういった事業におきましては、法あるいはガイドラインに基づいて上位計画等の策定の中で説明会等による住民説明が導入されているという状況にございます。
 最後は4ページの5.ポイントでございますが、方法書の実態を見ると、平均的な分量が170ページになっており、また専門用語が多く使われているにもかかわらず、専門用語の解説が設けられていないといった状況がございます。また、方法書段階の住民意見の中にも、調査方法についてではない意見が見られます。
 なお、法対象事業においても、計画段階における住民説明会の手続が設定されているところでございます。
 以上がスコーピング関係の資料でございます。

○浅野委員長 それでは、スコーピングすなわち現状の制度では方法書に当たる部分ですが、この手続について、研究会での内容、検討、議論内容、あるいは今資料が出てまいりましたが、これについてご意見がございましたらお願いいたします。

○田中委員 今、ご説明いただきました資料5の内容を見まして、私の結論から言えば、方法書段階でのコミュニケーションの充実といいますか、説明会等の導入というのは考えたらいいのではないかと思います。やはり多くの事例で、方法書段階の意見として、事業の内容であるとか、事業の必要性についての意見が出ているとか、それから、場合によっては本来は方法書で出されるべき調査項目であるとか、予測手法についての意見が、準備書段階で出てくるとか、少しタイミングがずれて住民意見が出てきたりしているわけです。方法書の意味であるとか、あるいは方法書の位置づけに関して、この段階で何をコミュニケーションしたらよいのか、そこらあたりが十分浸透しないままに、単に方法書の手続のみが課せられているという、そんな印象を持っています。ですので、方法書に関して、環境アセスの調査方法等について情報を住民側に、あるいは地域社会にできるだけ広く提供して、そして意見を求めるという、そういう趣旨では、説明会の開催というのは意義があるのかなと思います。そういう点で、既に先行している、いわゆる公共事業のガイドライン、PIガイドラインということになるのでしょうか。こういうところでも早い段階からこうした説明会等が行われておりますので、今回の法制度の改正を機にぜひ考えてみたらいいのではないかと思います。
 以上でございます。

○浅野委員長 他にご意見ございませんか。

○崎田委員 私もこの方法書段階での住民説明でできるだけ多くの意見を集めていただくという方向で検討していただけるとうれしいなと思っています。国の事業ではなくて、地方の条例の施行段階での色々な説明をうかがったりした経験から見て、初めてああいう書類を見ると、文言の理解というのは非常に難しい。そういう意味では、最初の方法書の段階できちんとお話をいただき、どういう項目を調査するのかという、その辺で意見交換を一回じっくりすると、その後非常にともに地域のことを考えていくという、住民の目線も育っていくというような感じがいたします。ここのスコーピングの手続についてという、色々なデータに示すとおり、私自身もできるだけ早目に一度きちんと説明していただくという、こういう流れをつくっていくということが、きちんと信頼関係をつくって環境保全を進めていただく上で、大変重要だと思っております。
 よろしくお願いいたします。

○鷲谷委員 質問なんですけれども、この調査に関して、割合基本統計的なデータと記述があるんですが、住民に事業の説明がなされている、法律上そういう説明が求められているダムもありますし、その場合に、ここの3-1の(2)で事業内容に関するご意見というのがかなり比率を占めているというのがありましたけれども、説明が既になされている事業と、なされていない事業で、この比率が変わってくるのかどうかについて、伺いたいんですが。

○浅野委員長 これは単純にこれまでにアセス法手続で62件が手続終了で方法書が出されている。

○鷲谷委員 そうですね。

○浅野委員長 その方法書に対する意見を分類したわけです。

○鷲谷委員 それはわかっていますが、4のところで、上位計画策定手続で説明会を導入している事業というのがございますね。その導入している事業の中では、そういう比率が下がっているのかどうかということは、これを解釈する上で本質的なことだと思いますので、それを。

○浅野委員長 この対応関係があるかということですね。4ページのPIなどの手続が既に決められているものに関して、方法書の段階で差異があるかということ。ただ、ちょっと難しいだろうなと思うのは、ダムは比較的早くからやっていますが、それ以外のものはPIの導入は比較的最近ですから、終了案件というのはほとんどがPI導入前に方法書が終わっているようなものが多いのではないかなと思うのですけれども、その辺はどうですか。

○花岡課長 3の調査は私どもの環境影響評価の終了案件について聞いていますので、その一つ一つの個別について、実際に事業サイドでの説明会をやられた場合と、私たちのサイドではどうなのかという比較はやっておりませんし、個別に全部チェックするというのはかなり難しいと思います。

○鷲谷委員 六十何件の中で、事業の前の説明会みたいなものがあったかどうかというのはわかるんですか、調査対象としたものに対して。

○花岡課長 それは多分どういう事業かというのを拾えば……

○鷲谷委員 そしたら、すぐ統計解析が可能であると思います。地域の中でその比率が有意に違うかどうか。

○浅野委員長 先ほど言ったようにPIの手続そのものが比較的最近出てきたものだから、以前はそんなものはないので、条例で……

○鷲谷委員 だけれども、最近であれ、もう既に説明がされているものがあれば、説明をされているものの中では、方法書でそういう問題が持ち出される比率が下がっているのかとか、それが下がっているのであれば、そういう事業の説明というのをきちんとして、内容を周知するということがアセスメントをスムーズに進める一つの条件になるということがある。ポイントのところにも書いてあることが、もうちょっと明確な形で記述できるんじゃないかと思います。

○浅野委員長 なかなか実証的に証明するのは難しいのではじゃないかなという気がします。

○花岡課長 私は関係省庁のすべての事業についてのPIの現場で住民側に座ってどんな説明を受けるか聞いておりませんのでわかりませんけれども、その中身は、私どもの制度で仮に説明会をしていきたい場合は環境面に特化したような中身で色々お話ししていただく話になると思うんですけれども、多分事業サイドでされているのは、もう少し違う視点でされていると思います。もしかしたらその事業の効果がどうなのかとか、地域活性化という側面ではどうなのかとか、そちらにウエートがあるような説明会かもしれませんので、単純に比較できるかどうかというのは。

○鷲谷委員 ただ、それでもかなり手がかりになると思います、実態がどうなっているかというのを。

○浅野委員長 わかりました。可能なかぎり調べてみてください。

○吉田委員 本来、計画段階で聞くべき意見が方法書段階で出てきたり、本来、方法書段階で聞くべき意見が準備書段階で出てきているというのは、田中委員のご指摘の通り、コミュニケーション不足といわざるをえません。そういった面から、方法書段階の説明会は実施したほうが良いと考えます。また、資料5の1ページ目に方法書のページ数のことが書いてありますが、これまでの方法書を見ると、地域の環境特性の説明にページを割いているだけのものが多いのです。本来、スコーピングでやるべき「重点化」にページが費やされているかというと、実際には最後のマトリックスの表だけであったりすることが多いわけです。この辺に方法書の問題があるのではないかと思います。そのマトリックスをつくる段階で、私もオブザーバーとして意見を言ったことがあります。スコーピング段階で「重点化」するのであれば、どういう行為が、どのような影響をもたらすかという、「影響モデル」がわかっていないと「重点化」ができないのです。これまでの方法書で、この事業をやったらこういう形で影響が出てくるというモデルを示しているものはほとんど見あたらず、マトリックスに丸をつけているだけです。だから、方法書は住民にもわかりにくいし、一体何に重点を置いて調査しようとしているのかわからない。ここに、方法書に対する意見の出しにくさがあるのではないかと思います。本来スコーピングのあるべき姿に立ち戻って、形式的になり過ぎているマトリックスを考え直す必要があるのではないかと思います。

○浅野委員長 私も実感としてはよくわかる。

○猪野委員 方法書段階の手続の趣旨や目的として、地域住民の方々を初めとする関係者に広く内容を理解してもらうということが大変重要であるということはもちろんそのとおりだと思います。事業者でもそういう段階でパンフレットを作成する等、いかに理解してもらうかという取組を現実にしておりますが、方法書段階での説明会ということになりますと、住民の方々が求める情報はどうしても例えば環境影響を評価した後のような段階を先取りした質問等が出やすくなってしまう。そうすると、方法書の段階で事業者から出せる情報と少しずれが出てくるような場合があって、十分説明ができない為にとかくコミュニケーションを取りにくい部分が出てくるのではないかと思います。あまりそういう事例が多くなると、説明会の開催そのものが場合によっては形骸化してしまうような恐れもあると感じています。

○鷲谷委員 先ほど吉田さんがモデルという表現をされましたけれども、科学の言葉でいえば影響の仮説を明確にするという言い方のほうがわかりやすいのではないかと思うんです。こういう影響がある可能性があるという形で提示されれば、どういうふうにそれにアプローチすればイエスかノーという答えを出せるかということも明確になって、多くのページを費やさなくても、そこがエッセンスとなると思いますので、そこを一番わかりやすく書いていただくような方法書のあり方を推奨するというようなことが意義があるのではないかと思います。

○石田委員 方法書段階でコミュニケーションを強化することに私も非常に賛成です。ただ、それがうまく機能するためには過渡期にはかなり混乱もありましょうし、今、猪野さんのご発言にもありましたように、事業者が非常に困惑する局面もあろうかと思いますので、方法書段階での説明会の位置づけをきちんとするということと、それから、いかんせんボリュームが多いと、住民にとってはそれを理解すること自体が非常に苦労も多いことになりますので、ボリュームだけで規制できるのか、あるいは何らかの運用上のガイドラインみたいなものをつくって、説明すべきポイントをある程度共通的にすることによって、あるいは用語の説明なども環境省等でおつくりになっているものを使えるようにして、事業者側の負担の軽減を同時にやるということも大事だろうというふうに思います。
 それから、非常に難しい話ではあるんですけれども、方法書段階での説明会ということを手続の中に入れるという場合に、手続としての意味と、本来はそれが実効性もある、効果もあるということとつながればいいわけですけれども、まだ、先ほどのPIの歴史等に象徴されるように、必ずしもそれを込みにした議論はできないと思いますので、効果の大小と手続として入れるか入れないというのは、必ずしもリンクすべきではないというふうに、私は現段階では考えます。

○浅野委員長 結局アセスの中での説明会というものを、どちらにウエートを置くかということは、根本的な問題だろうと思うわけです。つまり、コミュニケーションということが強調されるわけですけれども、ただコミュニケーションのためのコミュニケーションではないわけで、やはり方法書というのは適切な環境影響評価、予測が行えるための担保として多くの情報を集めたい。あるいはより適切な予測の方法を取り入れたいということであるわけです。ですから、コミュニケーションのために言えばいいというものでもない。だから、それは猪野委員が心配されるように、ただ説明すればいいという説明会であれば混乱を招くだけだということになってしまうわけですから、やはりこれを積極的に前向きに取り上げていくというときには、もう一回アセス法をつくったときになぜ方法書という仕組みを設けたのかということを、環境省として十分に国民にお伝えするという役割を果たせていないのではないかとも思います。多くの方々が方法書というのは何のために存在するか理解できていないので、色々な混乱が起こってしまう。もし説明会義務化みたいなことをいうのであれば、そこからもう一遍仕切り直しをしなければいけないということは事実だろうと思います。それから、何のための方法書なのか。これは調べてみなければわからないことですから調べますと言っているのに、わからないのはけしからんのではないかと言われたら、方法書はそもそも意味を失ってしまうわけです。ですから、「この点ががわからないからこのように調べたい」という方法書に記載に対して、「そんな調べ方は無駄だからこういう調べ方をしたらいいのではないか」とか、「そんなことはわかっているから今さら調べなくてもここに情報がある」といった情報が寄せられることが実は大事なことなのではないか、こんな感じがするわけです。そうすると、この問題に関しては、今、石田委員がおっしゃったのは、過渡期の混乱というお言葉でしたが、過渡期だろうと、その先だろうと、しっかり方法書というものの意味を理解してもらわない限りは、どこまでたっても混乱が続くのではないかという心配をいたします。方法書への説明会をすることが必要だという場合にも、2つの意味があるわけです。つまりそもそも方法書とは一体何なのかということを的確に理解していただいて、それに本当にうまく合うようなご意見がより多く集まることを期待する。そのための説明会ということがあるだろう。
 それと同時に、確かにこういうことがあるのを初めて知りました。一体何をやろうとしているんですか。その段階でもう固まった仕事についてであれば方法書の意味がないわけですから、これからこういう風に調べていってやり方は変える可能性があります。こんなふうに変えるということもあり得るのですよということがわかれば、またそれなりの対応が出てくるんだろうと思うので、単なる手続とか、単なる形式になってしまっている方法書というものをもう一遍活性化させるという、その視点からも考えなければいけないのではないか、と思います。
 それでは、急いで申し訳ないのですが、あと一つ国の関与についてというところがございますので、ここまで何とか終わってしまいたいので、事務局の説明を聞きたいと思います。

○沼田課長補佐 まず資料3番の6ページをご覧ください。国の関与に関する総合研究会における主な意見でございます。まず、現状では環境大臣関与がない事業の扱いについてですが、公有水面埋立事業のように、地方分権の推進等によって事業自体に対する国の許認可がなくなったためアセスの手続の中でも国の関与がなくなったケースが見られます。こういったケースについて、環境大臣の関与が必要ではないかという意見が、アンケート、ヒアリング等で見られました。総合研究会の議論の中でも、広域的な環境保全等の観点から、手続において環境大臣が関与する機会を設ける必要があるのではないかといった指摘が多く見られております。
 国の関与の2点目ですが、方法書段階での環境大臣の関与としまして、方法書、評価書、2つの段階で環境大臣意見を提出できるようにすべきではないかといった指摘が研究会ではございました。これについては、現行法における各主体の役割分担を変更しなければならない問題はないのではないかといったご意見がありました。その一方で、現行の法律でも項目の選定等において事業者が主務大臣に助言を求めることができるという規定がございますので、この段階で環境大臣にも助言を求めることができるようにする工夫はできるのではないか、こういった意見もございます。
 次に、国の関与の関係の追加資料でございますが、資料6番でございます。まず、1点目が公有水面埋立法における国の関与についてですが、1-1.が公有水面埋立法の改正経緯です。これは総合研究会の中でも以前ご説明をしておりますが、公有水面埋立法では、国以外の者が行う事業、これは1ページの真ん中フロー図の右側の矢印ですが、こういった事業については都道府県が免許を行う際に国土交通大臣の認可が必要とされておりまして、その際環境大臣にも意見照会がなされるという仕組みになっております。
 一方で、国直轄の事業、フロー図左側ですが、これについては法律上は国土交通大臣の認可はないものの、大正11年の通知に基づいて、自治体、民間等の事業と同じく都道府県の承認に当たっては国土交通大臣の認可、またその際に環境大臣の意見照会という、同様の手続を経るという運用がされていました。しかし、地方分権法の施行を契機に平成12年4月からこの通知による措置が廃止をされまして、国が事業主体になる事業については環境大臣の意見は求められなくなったという状況がございます。
 1-2.が公有水面埋立事業の大臣関与に関する自治体アンケート結果でございますが、まず、環境省関与がない公有水面埋立事業の審査実績を持つ地方公共団体10団体に環境省関与の必要性についてアンケートをとったところ、関与が必要という回答が2団体、実際の審査案件の中で関与があればよかったと思われる案件があったという回答が2団体、また実際の審査案件ではそういった事例はないものの、関与が必要な場合もあると思われるという回答が3団体ございました。2ページの円グラフは、その回答の分布状況の整理でございます。
 また、1-3.公有水面埋立事業の大臣関与が議論となった具体的な事例としまして、平成12年に環境影響評価手続が終了した沖縄県の泡瀬地区の事業、これは先ほどの通知廃止後の事業であるため環境影響評価法の手続また公有水面埋立法の手続、いずれについても環境省は関与しておりませんが、その後国会の場等で議論として取り上げられまして、その際に環境大臣の関与の手続が必要ではないかといった指摘もなされている状況でございます。
 資料の2.は方法書の記載事項に関連する環境大臣意見について整理をいたしました。平成19年3月までに手続が完了した案件の中で、環境大臣が関与した57件について、大臣意見の内容を調査したところ、16件において、以下に例示をしているような方法書段階に関わる意見が含まれておりまして、事業者の追加調査を求める内容となっております。
 具体的には、[1]番が項目選定に関して意見を発出している例、3ページにまいりますが、[2]は調査手法に関する意見を述べている例、[3]が予測手法に関して意見を述べている例、[4]が評価手法に関して意見を述べている例です。時間の関係もございますので、各事例の細かい内容の説明は省略いたします。
 最後、3番がポイントですが、公有水面埋立事業のような国関与がない事業の扱いについて、自治体アンケート結果等では環境省の関与が必要という意見が多く見られました。また、法手続が完了し、このうち環境大臣が関与した案件において、環境大臣意見の中で方法書段階に相当する内容が含まれていた案件が3割程度見られるというのが概要の整理でございます。
 以上が国の関与関係の資料でございます。

○浅野委員長 それでは、今、事務局から説明いただきました国関与に関してですが、大塚委員どうぞ。

○大塚委員 後ろのほうからいきますが、方法書段階での環境大臣の関与について、私はなるべく関与したほうがいいというふうに考えています。これは今のご説明にもございましたように、既にある環境大臣の意見の中で、項目選定とか調査手法とか予測手法に関しての意見というのが出ていますが、これは評価書の段階で出てきていますけれども、事業者としても困ることになると思いますので、手戻りを防ぐという観点からも、方法書段階でも環境大臣が何かの意見を言えるというふうにしたほうが適切ではないかと考えます。
 それをどういうふうにやるかですけれども、1つは現在事業者が主務大臣に助言を求めるという規定がございますので、その際に環境大臣も助言できるというふうにすると、すんなりいくのかなというふうに考えます。環境大臣が直接意見を言うというので悪くはないのかもしれませんけれども、現在方法書段階で自治体とか住民が意見を言うという役割分担がなされていますので、主務大臣のところに環境大臣も参加するという形をとるのが適切ではないかと思います。
 もう一つ前のほうですけれども、現状では環境大臣の関与のない事業の取り扱いの問題ですが、公有水面埋立事業の場合については、分権推進の観点ではあったんですけれども、国直轄事業について環境大臣の意見を求めるということがなくなってしまっているわけですけれども、これについては自治体のアンケート等からむしろ意見を言ってほしいということが出ていますので、第三者の意見を述べるという観点からも環境大臣の意見を求めるような修正をしていただけるとよろしいのではないかと思います。これは自治体が行う事業であることと、環境大臣が意見を述べるということは全く別の問題ですし、知事が免許権を持つということと、広域的な観点から環境大臣が意見を言うというのはまた別の問題ですので、こういう処理をすることは別に分権推進に反するということではないと思われますので、ぜひ進めていただけるとよろしいと考えております。
 以上でございます。

○中川委員 国が事業主体となる埋立事業について、環境大臣の関与が廃止されたという経緯はここに書かれているとおりなんですが、この理由は恐らく地方分権の観点ということから、免許権者である知事の判断を拘束するような国の関与は望ましくない。こういう発想だったのかもしれませんし、またあるいは通知で今まで関与をしていたという、そういう通知という法形式がおかしいということがその背景にあったのかもしれません。こういう知事が判断をするに当たって、一定の拘束を国の立場で行うというのはできるだけ避けるべきだというのは、分権の観点からそのとおりだろうというふうに思います。このような考え方は今後も継続して維持すべきだというように思われますが、一番大きな問題は国の関与といえるかどうかというところが問題なのではないかというふうに思っていまして、国の関与は、通常は、先ほど申し上げたように、地方の自由な判断を拘束して一定の方向を強制するというような内容のものがその中心です。ですから、もっと別の観点から、例えば環境保護、環境保全という観点から、参考となるような意見を求めるということは、たとえそれが環境大臣であっても、あるいは一般の学者、有識者であっても、あまり変わりはないのかもしれません。つまり、国という立場でいうならば、むしろ技術的な、専門的な支援を行う、環境保護のための色々な知識を提供するというような観点からの意見を述べるという余地は十分考えられるのではないかというように思います。
 ただ、手続的な点からいうならば、すべてについて自動的にそういう仕組みを組み込むのではなくて、あくまでも免許権者である立場で必要と思われるような場合にそれを求めていくことができるというような、そういう規定のほうがむしろ望ましいのかもしれません。地方のアンケートでも、必要と思われるものと、そうでないというところ、分かれているわけですので、必要でないと思われるところにまで強制的にこうしろ、ああしろというところまでは必要ないのではないか。どういう点での必要があると思っているのかは、このアンケートだけではよくわかりませんが、やはり色々現場にいて考えてみる際に、専門的な、あるいは全国的な観点からのこれまでの蓄積を参考にしたいという例はないとはいえないと思いますので、そういう面での支援、協力を環境大臣という立場でなさっていただくというのは、今後の方向としてはとり得る選択肢ではないかと思います。

○吉田委員 私は、国が主体となる埋立事業の環境影響評価に対する環境大臣の関与はぜひとも必要だという立場から申し上げます。先ほど事例として、泡瀬干潟が出ておりました。干潟は九州、沖縄には比較的多いのですが、全国的な観点から見ると干潟は非常に重要です。全国的な観点から収集したデータは環境省が持っているわけです。今日から生物多様性神戸国際対話が行われ、その中で生物多様性2010年目標の後の目標が話し合われています。その中で2050年、2020年という新しい目標を立てて生物多様性の減少を食い止める。生物多様性減少の速度を落すという2010年目標ではなく、生物多様性の減少を食い止めるということを、日本政府が国際条約の場に提案していくという時代になってきました。それにもかかわらず、環境省が持っているデータを使って、ここはこういった貴重な生態系があるので、生物多様性が減少することを防がなくてはいけないという意見を環境大臣が出せないというのは、この国際公約にも反することになると思います。そういった視点から、環境大臣は、生物多様性という観点から、いつでも意見を言えるという位置づけにすべきだと思います。

○鷲谷委員 吉田委員の意見とほぼ同じなんですけれども、全国的、専門的な観点だけではなくて、生物多様性に関してはグローバルな視点というのも重要だと思うんです。そういうような視点からの助言というのは、やはりぜひ必要なのではないかと思います。

○猪野委員 ただいまの資料の6の2.のところで、環境大臣意見として出された例が[1]から並んでおりますけれども、ここに書いてある中には例えば[2]や[3]を含めまして、大上段に振りかぶるような意味の意見ではなく、アセスの評価項目の予測手法や調査手法のような、現行の仕組みでカバーできる、技術的な部分についての意見があるのではないでしょうか。環境大臣が意見をおっしゃるのであれば、もう少し大所高所からのものである必要があるというわけではないのでしょうが、現行の仕組みでカバーできる部分と、今の実例をもう少し整理したほうが良い気がいたしました。

○浅野委員長 案件は色々あって、自治体がかなり厳しくやるところと、あまり丁寧に見ないところがあったりして、その辺が若干ばらつきの差が出てくるのかなという気がしないでもないです。

○崎田委員 この国の関与ですが、今ここに出ている公有水面の埋立事業だけではなく、ケース・バイ・ケースですけれども、環境大臣がコメントしたほうがいい社会的な影響が増すような事業の場合には、きちんと環境大臣が意見を言えるシステムをつくったほうがいいと思っております。今、事例として生物多様性への影響について盛んにご意見が出ましたが、それだけではなく、例えばCO2の削減に関する色々な規定の数字も、今の規制とか法制度の中ではオーケーな状況だけれども、規制が厳しくなる今後の展開を考えると、もう少しきちんとした計画を立てていただけるとうれしいと思う地域の事例もありますので、事前にそういう恐れのあるものに関してはちゃんと発言いただくことは大変重要なことだと思っています。

○浅野委員長 他にご意見はございませんか。

○田中委員 概ね私も今のご意見に賛成で、環境大臣が意見を言える仕組みがあったほうがいいと思います。その上で、ただ方法書段階でどうするか。資料では、本来は方法書段階で取り扱うべき意見が相当数、準備書段階で環境大臣から出されているとあります。たしか準備書では、事業者が主務大臣に意見を求めて、その際に必要に応じて環境大臣が意見を述べるという仕組みですが、そういうような間接的な意見の提出の機会を、二段階で、準備書段階と方法書段階を分けて、方法書では事業者が意見を求めることができるでもよいと思いますが、整理していただいたらよいというふうに思います。
 以上です。

○浅野委員長 色々と意見が出まして、これは必ずしも意見が一致しなかったような感じもしますが、中川委員がおっしゃったことはかなり大事な点ではないか。つまり、分権だから一切何もかも全部潰すというようなことを自治体側は考えていないのに、過剰反応みたいなところがあるようでもある。多分中川委員が言われるように単に通達だけでやってきたという馬鹿なことがあるものかというほうが中心だったと思うわけです。しかも、アセスにおける大臣意見というのは、別にいい、悪いを言っているのではなくて、技術的にこれはこうしたほうがいいんじゃないですかというような内容が多くの場合で、最近時々話題を呼ぶような大臣意見の出される案件がないわけではないですが、これはよくよくの場合で、全部が全部みんなそんな形で出てくるとは思えない。やはり通常は技術的なことで、これはどうですかと、ちゃんとやっておいたほうがいいのではないですかというような話が出る場合が多いから、その限りにおいては中川委員がおっしゃったことは非常にリーズナブルではないか。
 それから、全件意見を述べると言われたら環境大臣も困ってしまうかもしれないので、その点も含めて、どういう形でかは検討しなくてはいけませんが、関与ができるようにするという必要がある。ただ、分権の精神を殺すような関与はよくないし、特に手足を縛る、判断を縛るというようなことは、これは分権の精神からいって決して許されることではないので、我々もそんな提案はできるわけがないだろうと思います。ただ、では何もしないということが許容されるかというと、そうではないだろう。適切なアドバイス、適切な意見を適時述べるということは必要ですから、全件述べるということについては、そういうご意見もあったのにはあったので、そう考えられなくもありませんが、しかし、少なくとも本当に必要な案件についてきちんと言うべきときに言えるようにしておくということが大事なのかもしれませんから、このあたりのところは理論的な整理も含めて、報告書をまとめる段階でもう一遍議論をしたいと思います。
 それから、先ほどの最初の話題のところで風力が出てきたのですが、これに関連して事務局に一遍資料整理をしておいてもらいたいことがあります。それは、風力発電というものの設置については現在どういう手続が必要とされているのか。その流れは知っておかないといけないと思いました。現状でも、だれでもつくりたい人が勝手に風力発電所をつくれるものではなかろうと思うわけです。その辺を一遍押さえた上で、どうするかという議論をやらなければいけません。次回までに資料を整理してください。
 石田委員、何かありますか

○石田委員 最後の座長の整理に賛同です。

○浅野委員長 他にございませんか。

○田中委員 最初の第1の話題のときに通り過ごしてしまった電子化の話ですが、今日の資料を拝見いたしますと、諸外国でも著作権等の、あるいは希少種に配慮しながら一定の情報公開、積極的な電子化についての情報公開の仕組みがあるようですので、私は日本政府の立場も電子政府を標榜しているし、またそのことが広く住民やあるいは社会の利便に供するということになりますので、電子化手続はぜひ進めてみたらどうでしょうか。

○浅野委員長 これはまた別に論議する機会がありますので、今日結論を出すわけではない。ただ、ちょっと気になるのは、電子化だから著作権への配慮が必要になるのか。では、紙媒体のときは著作権は一切抜きにして、今までの評価書や準備書というのは勝手に人の書いたものを引用したのか。それがむしろ気になる。それもあわせて、副産物だけれども、調べてみましょう。大体学術論文的に考えると出典は書くものです。書けばそれで許されるかというと違うのだけれども、他人の写真を勝手に貼りつけるようなアセス図書があったとは思いません。おそらく、ほとんどの場合自分で撮影した写真しか貼らないと思うんだけれども、その辺どうなのかなということです。むしろ、人のものの著作権の問題よりも、自分の書いたものの著作権のほうが心配だというのが多い。電子媒体だったらすぐ剥ぎ取って別のデータファイルに貼りつけることができるから、紙媒体よりは盗みやすいということがあるという気はしたんだけれども、今日の外国の例では逆になっているものですから、その辺もちょっと気にはなります。
 それでは、よろしければ予定の時間になりましたので、次回の予定等について、事務局から説明をお願いいたします。

○沼田課長補佐 次回、第3回でございますが、10月28日水曜日15時から17時、場所は同じく弘済会館で行います。
 なお、次々回、第4回ですが、これも既にメールでご連絡していますとおり11月18日17時半からの開催を予定しております。場所等はまた詳細につきましてご連絡します。
 よろしくお願いいたします。

○浅野委員長 それでは、次の2回よろしくお願いいたします。11月18日は17時30分からという、遅い時間になってしまいまして、私もおかげでその日には家に帰られないことになってしまいました。皆さんお許しください。
 それでは、他に何かございませんでしたら、本日はこれで終わります。

午後 4時55分 閉会