中央環境審議会 総合政策部会(第89回)議事録

第89回 中央環境審議会 総合政策部会

平成29年4月27日(木)10:00~11:53

TKPガーデンシティ永田町 ホール2A

議事次第

1.開会

2.議事

  (1)第四次環境基本計画の見直しについて

     ・第五次環境基本計画の策定について

     ・持続可能な開発目標(SDGs)について

     ・重点分野の設定について

  (2)その他

3.閉会

配付資料一覧

【資料】

 資料1   第五次環境基本計画の策定について(案)

 資料2   持続可能な開発目標(SDGs)について

 資料3   重点分野の設定について

【参考資料】

 参考資料1 中央環境審議会総合政策部会名簿

 参考資料2 中央環境審議会第88回総合政策部会議事録

 参考資料3 第四次環境基本計画の見直しスケジュール(案)

 参考資料4 持続可能な開発のための2030アジェンダ(仮訳)

 参考資料5 持続可能な開発目標(SDGs)実施指針の概要

 参考資料6 持続可能な開発目標(SDGs)実施指針

 参考資料7 「低炭素・資源循環・自然共生政策の統合的アプローチによる社会の構築~環境・生命文明社会の創造~」についての概要

午前10時00分 開会

○山田計画官 皆様、おはようございます。ただいまから中央環境審議会第89回総合政策部会を開会させていただきます。

 議事に入ります前に、お手元の配付資料の御確認をお願いいたします。配付資料につきましては、議事次第の下に「配付資料一覧」に記載のとおりでございます。また、本日御欠席ですけれども、崎田委員から意見書の提出がございましたので、部会長と御相談の上、机上に配付させていただきました。

 以上につきまして御確認いただき、もし不足している資料等がございましたら事務局までお申しつけいただきますようお願いいたします。

 また、環境省では環境負荷低減の観点から、審議会等のペーパーレス化の取組を推進しております。本日の資料も環境省ホームページにアップロードしておりますので、傍聴される方につきましては何とぞ御理解御協力をくださいますようお願いいたします。

 また、今般臨時委員の異動がございましたので、御紹介させていただきます。4月26日付で中村恒明臨時委員が御退任され、小林勝彦臨時委員に新たに御就任いただきました。

○小林委員 小林です。よろしくお願いいたします。

○山田計画官 本日は委員総数28名のところ、過半数の委員に御出席いただいており、定足数の要件を満たし部会として成立していることを御報告させていただきます。

 それでは、今後の進行は武内部会長にお願いいたします。

○武内部会長 皆さん、おはようございます。本日もどうぞよろしくお願いいたしたいと思います。

 2月28日に開催された前回の総合政策部会におきまして、第四次環境基本計画の見直しに関する諮問があり、計画の見直しの基本的な方向について委員の皆さんから様々な御意見を頂戴いたしたところでございます。その御意見を踏まえて資料を用意させていただきました。

 今回はでき得れば大きな方向については固めていきたいと思っておりますが、特にSDGs、持続可能な開発目標を環境基本計画の中にどのような形で組み込んでいくのかということ、それから、もう一つは重点分野、従来は個別分野を点検する形で若干縦割り的な構造になっておったものを少し横串で見てみる形ではどうかという御提案もさせていただきたいと思っておりますので、その点を中心に御議論いただければと思います。

 それでは、早速資料1に基づいて事務局から説明をお願いいたします。

○山田計画官 それでは、資料1の説明をさせていただきます。「第五次環境基本計画の策定について(案)」でございます。この資料は前回2月28日にも同様のタイトルで提出させていただいたものですけれども、2月に頂いた御意見を反映させて今回御提示させていただくものです。

 この資料は第五次環境基本計画の策定に当たっての基本的な考え方を示すものでございまして、前回の部会で個別具体的な御意見を頂いている部分もあるかと思いますけれども、それは今後の議論で検討するということとさせていただき、今回のものには反映してございません。

 また、前回の部会では多くの御意見を頂きましたので、中には複数の方から同様の御意見を頂いているところもあるかと思います。私から「この部分は○○委員のコメントを踏まえて追記した」という説明はさせていただきます。中には「自分もここは発言した」という方もいらっしゃるかもしれないですけれども、多少の発言者の漏れがあるということは御容赦いただければと思います。このペーパーがどういう風に修正されているのかという観点で御覧いただければと思っております。

 では、早速1ページから説明をさせていただきます。上から3つ目の○、赤字になっている「もはや地球は限界に達しているとの研究成果もある」という部分でございますが、地球の限界、プラネタリー・バウンダリーという考え方があることを紹介させていただいております。特に生物地球化学的循環、生物圏の一体性、土地利用変化、気候変動については、リスクが既に顕在化しているということ、このような地球の限界の中でも豊かな暮らしは可能であり、さらにこの考え方は環境基本計画の理念にもなじむものであることを書かせていただきました。これは武内部会長からコメントを頂戴しております。

 その下の○の赤字になっている「自由貿易体制の縮小や自国の視点のみからの利益を重視する保護主義の動きが見られる」という部分でございますが、これは和気委員からコメントを頂戴した部分でございます。

 2ページの上から4行目の「世界全体での脱炭素社会の構築に向けた転換点となった」という部分ですが、これは崎田委員、末吉委員からコメントを頂戴した部分でございます。

 その下の○、急速なIoT、AI等技術革新に関する記述でございます。ビッグデータについても記述がございますけれども、幅広い分野で新たな技術イノベーションや社会価値軸が創出される可能性があると記述させていただいております。これは和気委員からのコメントを踏まえさせていただきました。

 そこから2つ下の○の赤字になっている部分、「様々な法制度や社会制度を始めとした経済社会システム全体の再設計等の」と書いてありますが、ここは末吉委員からのコメントを反映させていただいたところでございます。

 次に、国内の動きに移りたいと思います。下から2つ目の○、社会インフラのところでございますが、建設後50年を経過する施設の割合が加速度的に高くなり、維持管理や更新のコストも増加すると見込まれる中で、いかに持続可能な維持体制を構築するかなどが課題となっているという点につきまして、これは大塚委員からのコメントを踏まえて反映させていただきました。

 3ページに移らせていただきます。上から2行目、人口減少の下、期待成長率が低く、さらに投資活動に積極性を欠くとともに、可処分所得が伸び悩む中で将来不安もあって消費が抑えられているということですが、これは南部委員からコメントを反映させていただきました。

 その下、取消線で消されている部分がありますが、それは1つ下の○に移ったところでございます。上から3つ目の○の「二酸化炭素排出量について」というところでございますが、「電力消費量の減少や電力の排出源単位の改善により、平成26年度以降2年連続で減少している。一方で、原子力発電所の運転停止の長期化等により、電力由来二酸化炭素排出量に占める石炭火力発電の割合は引き続き増加傾向にある。また、冷媒分野においてハイドロフルオロカーボン類(HFCs)の排出量が増加している」と記述させていただきました。これは髙村ゆかり委員からコメントを頂戴したことと、環境省からの報道発表で2015年度温室効果ガス排出量の確報値を最近出させていただきましたので、そちらも反映しております。

 その2つ下の○にございますIoTとAIの話でございますが、これは白石委員からコメントを頂戴した部分でございます。

 4ページに移らせていただきます。一番上の「長期低炭素ビジョン」の「仮称」の部分を消しておりますが、これは時点修訂でございます。

 5ページに移らせていただきます。上から8行目に「こうした潮流の中で、社会、企業、個人がいかにして世界との競争に勝ち」という部分でございますが、こちら末吉委員からコメントを頂戴いたしました。

 その2行上に「この潮流を捉えて」とありますが、国際的な潮流を捉えるという観点について、中村前委員からもコメントを頂戴しておりましたので反映してございます。

 その2つ下の○「我が国では、世界に先行して本格的な人口減少・超高齢化社会を迎えている」というところです。人口の地域的な偏在も進展しているですとか、あとは環境政策の観点からも、これまでも人口増加を前提とした社会システムの転換、気候変動や防災・減災機能も有するインフラの再構築という記述がございます。また、健康寿命の延伸等も課題となっており、こうした課題に重点的に取り組む必要があるということで、これは南部委員からのコメントを反映させていただきました。

 その下の○、「国際」の後に「国内」と入れさせていただいていますが、これも南部委員からのコメントでございます。

 その下の行の「国際的な観点を持ちつつ」というところは、白石委員からのコメントを反映させていただきました。

 その下の○の「また、2030アジェンダにおいて」の部分でございますが、「26年意見具申」において複合的諸課題を解決するため、ビジョンを明確に掲げ、それを実現するための効果的な戦略を練り上げることが必要とされているということです。これはもともと(3)の取組の具体化というところに書かれていたものでございますが、ビジョンに関する記述ですのでこちらのほうに移転させていただきました。

 その下の○の「環境政策にとどまらず、他の施策に環境の要素を含めるよう働きかけを強化し、それにより、経済・社会のあらゆる面において環境的な配慮がなされる社会を目指すべきではないか」という部分については、武内部会長からのコメントを反映させていただきました。

 次のページ、6ページに移らせていただきます。「現在世代の幸福を適切に反映することに加え、2050年やそれ以降の社会を担う将来世代の幸福も尊重し」とございます。こちらは大塚委員からコメントを頂戴した部分でございます。

 次に(2)のタイトルについて、SDGsの考え方の「活用」と、タイトルを一部変更しておりますが、これは武内部会長からのコメントを反映させていただきました。

 その2つ下の○にございます「行政機関、地域、企業、大学、NGO、市民等」と並べていますが、これはステークホルダーを一通り書き出したということで事務的な修正でございます。

 その下の○にございます、「それを検討するに当たっては」のところですが、2030アジェンダにおいて持続可能な開発のキーワードとして掲げられている「5つのP」、People(人間)、Planet(地球)、Prosperity(繁栄)、Peace(平和)、Partnership(パートナーシップ)の趣旨を踏まえるべきではないかということで、これは武内部会長からコメントを頂戴いたしました。

 さらにその下○の「また、SDGsの実現は、世界が将来を共有する目標としてのみならず、地域の課題解決にも直結するものであることから、地方に着目し、地方公共団体をはじめとする地域の目線を取り入れ、SDGsの活用により地域における各種計画の改善に資するようなものにすべきではないか」ということで、ここは崎田委員からコメントを頂戴いたしました。

 7ページに移らせていただきます。「その基盤となる安全」という表現が上から5行目にありますけれども、これは白石委員からのコメントを反映させていただきました。

 その下の行に「技術のみならず、経済社会システム、ライフスタイルすべてのイノベーションを創出し」とございますが、イノベーションという観点で根本委員からのコメントを反映させていただいたということと、技術のみならず経済社会システム、ライフスタイルすべてのイノベーションというところで和気委員からのコメントを反映させていただきました。

 その下の○に見え消しで消してある部分は、(1)のビジョンの部分に移転した部分でございます。

 その下の○の「地域分散型エネルギーなど地域資源を活用した地域活性化」というところですが、これは髙村ゆかり委員からコメントを頂戴いたしました。

 さらにその下の○の「多属性社会の中で異なる属性における国民の「豊かさ」「幸福感」「生活の質(QOL)」」というところですが、これは林委員からのコメントを反映させていただいております。

 さらにその下の○の「また、上記検討に際し、地域が各課題を解決していくうえでの指針となるようなものを国として示すべきであり」というところですが、26年意見具申で提唱されている「地域循環共生圏」のように、再生可能な資源が循環する自立・分散型の社会を形成するということと、適切に地域資源を補完し合う仕組みが有用ではないかということの指摘をしてございます。また、特に森里川海の豊かな自然資源に恵まれた地方に着目し、その恵みの活用と自然の循環に沿った取組を通じて三社会統合と地方再生の拠点とし、マルチベネフィットに関する絵姿を積極的に提示してはどうかということで、これは前回の部会で武内部会長から御挨拶いただいたところですけれども、そこを反映させていただきました。

 その下、(4)重点分野等の設定というところでございます。7ページから8ページにわたって書いてある、「他方、環境・経済・社会の」という部分でございますが、現在直面する課題の中には、複合性を有したものが少なからず存在するという点ですが、これは先ほど武内部会長からもお話がありましたとおり、コメントを反映させていただいたということです。

 さらにその下の○、SDGsの考え方を活用するとともに、26年意見具申に掲げられている「グリーン経済」、「地域活性化」、「健康と豊かさ」、「国土価値の向上」、「環境技術」、「環境外交」といった分野横断的な課題に対応した「基本戦略」も参考にしながら、もちろん東日本大震災等についても触れながら、体系を構築していくべきではないかということでございます。これも武内部会長からのコメントでございます。

 またその下の「地域を担う国民をはじめとしたステークホルダーにとっても、合意形成の手法など提示しながらどのように行動すればよいのか分かりやすい計画となるよう心がけるべきではないか」という点は、これは髙村典子委員からのコメントでございます。「どのように行動すればよいのかわかりやすい計画」という部分は田中里沙委員からのコメントでございます。

 さらにその下○、「第四次環境基本計画の策定以降、地球温暖化対策計画」、以降縷々つづられておりますが、これは表現を正確にしたという事務的な修正で思います。

 (5)に移ります。2つ目の○のところに、環境・経済・社会の統合的向上を目指す取組を通じ、関連施策に環境的側面を自律的に組み入れる契機とすべきではないかという点は、武内部会長等のコメントでございます。

 その下の○に「客観的かつ科学的な指標」というところがありますが、これは髙村典子委員からのコメントでございます。

 駆け足で恐縮でございましたが、説明は以上でございます。冒頭申し上げましたとおり、まだまだ反映で不十分な点もあるかと思いますけれども、これから引き続き議論してブラッシュアップしていければと思っておりますので、御議論をよろしくお願いしたいと思います。以上でございます。

○武内部会長 どうもありがとうございました。今お話があったように、またこれをさらにブラッシュアップするという作業はさせていただきたいと思いますが、それ以上に最初に申し上げました持続可能な開発目標の環境基本計画への取り込み、それから重点的に取り組む分野ということについての考え方、この2つについて今日御議論いただきたいと思いますので、そちらのほうに重点を移させていただきたいと思います。

 それでは、最初に持続可能な開発目標(SDGs)について説明をお願いいたします。

○山田計画官 それでは、また事務局のほうから説明させていただきたいと思います。

 資料2の「持続可能な開発目標(SDGs)について」という資料でございます。こちらは、SDGsについて前回の総合政策部会でも申し上げさせていただきましたが、なかなか理解が浸透していないという御指摘もございました。ということもありまして、そもそもSDGsとは何だろうというところから、SDGsに関する事実関係をまとめた補足的な資料でございます。今日御議論いただく際の参考にしていただければ幸いでございます。

 「SDGs策定の経緯」の最初のチェックマークのところでございますが、大量生産・消費・廃棄型の経済活動の拡大や、開発途上国での貧困からの脱出のための乱開発といったようなことから、人間が安全に活動できる境界を地球環境が超えているということが明らかになったと書かせていただきました。これは先ほどのプラネタリー・バウンダリーの考え方でございます。

 そこで、持続可能な開発目標(SDGs)というものが2015年に国連により採択されたということですが、これは開発のための国際目標であるミレニアム開発目標(MDGs)の流れと、環境・経済・社会の3側面統合を謳った2012年のリオ+20という流れを受けて採択されたということでございます。

 SDGsの内容・特徴について、ざっと説明させていただきます。まずは2030年の世界目標であるということです。それから、17の目標、ゴールと言っておりますが、169のターゲットがそのゴールにぶら下がっており、さらにそのターゲットに232の指標がぶら下がっているという構成でございます。

 さらに、先進国、開発途上国を問わず、全ての国に普遍的に適用されるという特徴がございます。「誰一人取り残さない」ということを基本方針としております。

 それから、持続可能な開発のキーワードといたしまして、先ほども説明させていただきました、人間、地球、繁栄、平和、連帯という5つのPを掲げております。

 前身の一つであるMDGsと比較をいたしまして、環境的側面がSDGsでは大幅に増加しているという点が挙げられます。

 さらに、バックキャスティングの考え方、これは今できることの積み重ねではなく、ゴールに向けて逆算して現在の行動を決める方法ということでございますが、これを採用しているということでございます。

 次のページ、2ページに移らせていただきます。SDGsの各目標(ゴール)の関係について説明させていただきます。SDGsの目標とターゲットは、「統合され、不可分のもの」であり、環境・経済・社会の持続可能な開発の三側面のバランスがとれ、統合された形で達成するものであるということでございます。

 SDGsの目標は相互に連関するものであるため、SDGsの各ゴールの同時達成を図ることで、環境、経済、社会の諸課題の同時解決を図ることができるということでございます。この「統合され」というところが重要なところであると認識しております。

 国際社会での取組状況でございますが、これは国連が採択したものですので国連でも当然ハイレベル政治フォーラムのような形でレビューをやっております。これは自発的なものでございます。

 さらに、国連環境計画(UNEP)でも取組行っているところがございます。国際資源パネルですとか海洋ごみのグローバルパートナーシップ等の関係機関と連携しているということでございます。

 さらに、OECDでも昨年12月に「SDGsに関するOECD行動計画」というものを承認してございます。

 3ページに移らせていただきます。各国でもその取組が進んでおりまして、ヨーロッパでは比較的取組が進んでおりますが、例えばドイツでは首相府の下に持続可能な開発審議会を設置いたしまして、中立の立場からSDGsの理念に基づく政府への提言を取りまとめてございます。

 また、中国の取組といたしまして、昨年10月ですが、国家戦略を発表しているということがございます。

 SDGs達成に向けた我が国の取組ということで、政府の取組、①として「SDGs実施指針」の決定でございます。昨年5月にSDGs推進本部というものを内閣に設置いたしまして、総理大臣を本部長とした組織ができたということでございます。そこで検討された結果、昨年12月にSDGs実施指針というものができております。

 ここに8つの優先課題というのがございます。参考資料にも入っておりますので、適宜ご覧いただければと思います。この8つの中に環境関係のものも2つ含まれているということでございます。

 ②ですが、ステークホルダーズ・ミーティングという環境省が主催で開催しているミーティングがございます。それぞれの主体が行っている取組のグッドプラクティスを共有しようというような取組をやっておりまして、昨年度は合計3回開催させていただきまして、8つの企業・自治体の先進事例をのべ約600人で共有したということでございます。

 企業や地方自治体の取組でございますが、昨年3月でございますが、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンと公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)が共同で「SDG Compass」の和訳を作成いたしました。さらに、日本企業の認知度ですとか優良事例等を盛り込んだ「動き出したSDGsとビジネス~日本企業の取組み現場から~」というものをまとめたということがございます。

 4ページに移らせていただきます。グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンなどが産業別のSDGsの事例集であります「SDG Industry Matrix」の和訳を今年の2月に作成いたしました。

 また、地方自治体の動きでございますが、今年の3月に一般財団法人建築環境・省エネルギー機構が「私たちのまちにとってのSDGs(持続可能な開発目標)-導入のためのガイドライン-」というものを発行してございます。

 説明は以上でございます。

○武内部会長 どうもありがとうございました。

 前回の部会におきましても環境基本計画の中にこのSDGsを盛り込むということについては多くの方から御賛同いただいたわけですけれども、今後実際に計画の策定を行っていく中で、具体的にどういうふうにしてこのSDGsをうまく折り込んでいくかということが非常に大きな課題でございます。

 特にSDGsで今議論になっているのは、特定のゴールだけを取り出してそこばかりに注目するというやり方というのは余り望ましくないのではないかと、相互に目標間の関連性があるので、それを全体的に見て生かしていくということが必要だということで、その点も考え方としてこの環境基本計画の中に取り入れていくということが必要だと思っております。

 また、環境基本計画の中でも環境指標のようなものがあり、SDGsにも169の下に232の指標があるわけですけれども、そういうところまでどうやってギリギリと関連付けを詰めていくのかという、さまざまな問題があると思いますので、今日は幅広に委員の皆さんからのSDGsの取り込みということについて御意見をいただきたい。私からもSDGsの反映というのはちょっと言葉がまずいのではないかということで、活用という言い方に変えさせていただいているのですが、SDGsをうまく使うという観点からどういう方向で議論を進めていったらいいのかについて是非御意見をいただければと思います。

 札を立てていただきたいのですが、ちょっと縦長なものですから、私に札が見えるように是非よろしくお願いしたいと思います。

 それでは、安井委員、お願いします。

○安井委員 前回出られなくて申し訳なかったのですけれども、SDGsを今度の基本計画のある意味中核というか根底に使うというのは大変よろしいと思っておりますが。このSDGs、私が考えるにこの中で一番重要な記述というのは、資料2の1ページ目に書いてあります内容・特徴の一番下、バックキャスティングの考え方云々というところだと思います。なぜそうかというと、やはりSDGsは9月、そしてパリ協定は12月だったのでSDGsのほうが先なのですけれども、やはりパリ協定の中にclimate justiceという言葉が堂々と割り込んでくるということが前提として入っているわけです。それで、要するにパリ協定というのは2030年、2050年、そして今世紀の後半のどこかという3段階のことが記述されているのですけれども、3段目がネットゼロエミッションと言われる、はっきり言ってできっこないようなことまで書かれているわけです。

 それは一体何かというと、やはりclimate justiceというのが一番大きな表現になるのですけれども、なぜそう言わざるを得ないかというと、この温暖化に関しては過去の環境問題と全く違った性格を持っている。それは何かというと、過去の日本の非常に甚大だった公害も、排出をやめて大体15年ぐらいたつともとに戻るのですよ。それではこの温暖化はどうなのかというと、温暖化は今世紀中にゼロエミッションをやっても実を言うと温度は下がらないのです。大気中のCOの半減期はシェルンフーバーたちなどに言わせると数千年、1万年近いかもしれないと言われている。ということは出してしまったらもうずっと残ってしまう。これを考えないでやっては駄目だよというのがこのバックキャストというものの意味だと私は思っておりまして。

 したがって、今申し上げたような非可逆的な、本当に今までの公害みたいな考え方では駄目だよという全く特殊なものをどのように理解されているか、残念ながら日本人で今何%それを知っているかというのは大きな問題だと思うのですが、どのぐらい御存じなのでしょうか。ここで手を挙げてもらうのはやめますけれども、そんな感じがします。

 欧米社会はclimate justiceという言葉に引っかけてこれを大体理解していると思うのです。したがって、この国だけちょっと違った基本計画ができてしまうのを危惧しているわけでございまして、したがって、もしやるのであれば具体的にはこのバックキャスティングという言葉をいかにこの中に仕込むかということに注力すべきだろうと思います。

 以上です。

○武内部会長 ありがとうございました。

 浅野委員、お願いします。

○浅野委員 私もSDGsの考え方を第五次環境基本計画にきちっと位置付けることが必要だということは前回も申し上げましたが、SDGsについて一般にはなかなか理解されていないということはおっしゃるとおりだと思います。SDGsの各項目の一つ一つを取り上げて、これをどうするこれをどうするという議論をやるというように誤解をされると大変困るわけで、その中に盛り込まれている考え方をいかに上手に生かすか、そういう意味では今日事務局が、部会長の御指示に従って「活用」と表現を変えられたのはそれでいいだろうと思います。政府の決められたこのSDGsの実施指針の中でも、既に日本では実現できていることが十分にあるのだ、しかし、この点が不足なのだ、だからそれはちゃんとやらなければならないし、我が国で十分できていることであっても国際協力の観点からは考えなければいけないということが入っているわけですけれども、これはきわめて適切な認識だろうと思います。ですから恐らくSDGsを地域で参照されるときでも、地域によって状況は違いますから、ベタッと日本と同じような状況で全部の地域が同じように動いているわけでもなく、ある地域にとってはこの部分は解決済みだがここはまだ未解決だということがあります。ですので、環境基本計画が妙にバタバタでやっていくと、地域がそれに引きずられてしまって地域で何か考えるとき同じに考えなければいけないとなるおそれもあるのですが、そうではないということをはっきり示すことが地域でSDGsに取り組んでいくための鍵になるだろうと思います。

 SDGsの考え方をしっかり生かしていく、それから、どの項目はどの基本計画の項目に深くつながりがあると、そういう考え方で整理していく必要があると思います。安井委員がおっしゃるように、あるいは部会長がおっしゃったように今後の環境政策は複合的な考え方でやらなければいけないということは既に中央環境審議会の意見具申として出していますので、それを踏まえながら検討を進めることが大事ですが、それとSDGsとの関係というものが密接につながっていると思いますので、次の第五次環境基本計画の検討がこのような方向に進むということでよろしいのではないかと思っております。

○武内部会長 ありがとうございました。

 井田委員、お願いします。

○井田委員 ありがとうございます。前回欠席をしてしまったので、ちょっととんちんかんなことを申し上げるかもしれません。

 最初はSDGsの件を申し上げたいのですけれども、おっしゃるとおりで、これSDGsとパリ協定というのができて初めての環境基本計画であるということを考えれば、非常に重要なことかなと思います。その上で、ちょっと読んでみたのですけれども、プラネタリー・バウンダリーとかいう言葉が入ったのはいいのですけれども、何かそれが地球は限界に達しているとの研究成果もあるとかいうような書き方だと、これは何かちょっと言葉足らずだと思います。事務局からSDGsのところで御説明あったように、地球の限界に達しているのです。だからこそSDGsというのが出てきた。パリ協定もカーボンバジェットみたいな考え方というのはそういうものに基づくものであって、SDGsの重要なメッセージというのはもう地球限界に達しているのだというものだと思うので、ここをもっと明確に書くべき、地球の限界ということをもっと明確に書くべきではないかと思います。

 その上で、部会長や浅野先生おっしゃるように、個別の目標にこだわらないというのはおっしゃるとおりで、そのとき連関というのをどう考えるかということになると思うのですけれども。武内先生を前に私がこんな聞いたふうなことを申し上げるのは非常に失礼かとも思うのですけれども、プラネタリー・バウンダリーの考え方を出したロックストロームとかレジリエンスセンターの人たち、最近ウェディングケーキというのをこの前の武内先生もいらしたシンポジウムでも見せてくれたのですけれども、連関を考えるときに、一番下にバイオスフィアというものがある。目標で言うと13,14とか、海、生態系、大気とかいうようなものがある。その上に社会があって、その一番上に経済があって、そこの一番上に17番という目標がケーキの上のろうそくのように立っているという図を最近よく見せてくれるのですけれども。やはりここでも連関というのを考えたらそういうことをきちんと明確にしておくべきではないかというふうに思います。もう経済、大転換を求められているパリ協定にしてもSDGsにしても経済と社会の大転換を求められているわけであって、もう経済と社会の両立とか甘っちょろい言葉ではなくて、もう我々経済は地球の限界の中でしかやり得ないのだと。経済の目的というのは経済の目的ではなくて、その下にある平等であるとか格差であるとかというものにサーブするのが経済であるというようなそういうふうにSDGsを捉えるというふうなことまで踏み込まないとちょっとSDGs、パリ協定ができた直後の環境基本計画というのはちょっと世界に出して恥ずかしいかなというふうに思います。

 それで、前回出てないもので各論なのですけれども、ちょっと長くなって恐縮なのですけれども、言わせていただくと、これは3ページの丸、二つぐらいのところ、現状認識というところへ関わってくると思うのですけれども、私、環境の方でもう30年やっていて、見ていて、結構、残念ながら日本の環境政策は、グローバルスタンダードから遅れてしまったところというのが、実はいっぱいあるのです。石炭もそうだし、FSCだとかMSCだとかの認証あるいはRSPOの認証、キンバリープロセスの認証取得状況であるとか、リコーさんがようやく加盟しましたけれども、RE100というものに加盟し、ようやく一つになったところです。

 マイクロプラスチックとかプラスチックであるとか、言えば切りないのですけれども、そういうことを言うと、すぐ自虐的な報道をやると言われるのですけれども、やっぱりそういうグローバルスタンダードの中で、残念ながらこの数年間の間で遅れてしまったという認識が必要、そこをきちんと押さえておくのが必要ではないかと。その上で、世界のトップランナーであるとか、グローバルスタンダードを目指すのだというような書き方というのが、ちょっとできないかなと思います。環境外交もそうでありまして、最近も取材していて非常につらいようなことが多いのです。これは20年前にはなかったことなのですけれども。環境外交ということにも関わってくると思います。

 長くなって恐縮なのですが、さらに勝手なことを言わせていただくと、頭のところで、自由貿易体制の縮小や自国の視点のみからの利益というのは、おっしゃるとおりだと思うのですけれども、これを書くなら、なぜそういうことが起こってきたかというところまで書くべきであると思います。なぜ起こってきたかというと、グローバル化の中で格差が広がってきて、不満を持っている人がいっぱい増えてきたからです。SDGsというのも、そういうものにも関わる、社会の平等であるとかジェンダーであるとかということにも関わっている以上、ここに単なる現状認識ではなくて、この格差の問題に言及して、それをSDGsというものが解決しようということを目指すのだというような一言が、あってもいいかなと思います。どうもすみません。長くなって恐縮です。

○武内部会長 ありがとうございました。

 札を立てていただいた順に発言いただきたいと思います。三浦委員、お願いします。

○三浦委員 このSDGsに関しては、さまざまな主体が関わっているということで、政府の役割あるいは省庁の役割と各自治体の役割というのは、それぞれ違うだろうし、企業が担うべき役割というのがあって、こういうものを見るときに、特に日本の場合はロードマップが示されることが余りなくて、それぞれの主体が具体的にどういうふうに年次的に行動に起こしていくのかということを、もう少し具体的にして進められたほうが、より実現性が高いのではないかなと感じます。以上です。

○武内部会長 ありがとうございます。

 根本委員、お願いいたします。

○根本委員 ありがとうございます。2点お話しさせていただきます。

 1点目は、このSDGsの位置付けでございます。確認程度のお話になろうかと思います。SDGsでございますけれども、これは先ほど資料2で説明いただきましたように、世界あるいは全員で目指すべき方向性を出したものという理解でございますけれども、一方、たくさん目標があるわけですが、一つ一つ大変高く、かつ崇高で、なおかつ、これもまた御指摘ございましたように、それぞれの目標が複雑に相互相関しているといったようなものでございます。したがいまして、残念ながらということになると思うのですけれども、自然体あるいは成り行き任せで、とても到達できるようなものではないという理解をしております。

 したがいまして、そのギャップをいかに埋めていくか、消していくかということが一番大事な論点かと思いますが、そういう見方をしたときに、やっぱりSDGsというものの位置付けでございますけれども、いわゆる進捗管理といったような小さな管理ツールというようなことではなくて、やはりギャップをどうやって埋めるのだというその具体的な議論、これを促すような、例えばイノベーションですとかパートナーシップとか、こういったものを促すような仕組み、仕掛けとして位置付ける必要があるのだろうなと思います。これが1点目でございます。

 2点目でございますけれども、こちらは、資料1の中で、地域とSDGsの関係について触れられたところがあったと思いますが、これは申し上げるまでもなくなのですけれども、各地域、全国津々浦々で、いろんな課題解決に向けて取組が行われていると思います。表向きの看板として、環境対策と掲げているもの、あるいはそれ以外、たくさんあると思います。ただ、課題は、これは申し上げるまでもなく、表看板とは別に、いろんな顔、いろんな側面、いろいろ持ち合わせておりますので、表看板が必ずしも環境対策と、環境課題ということではなくても、そういったものが結果的に、あるいは附随的にという言い方になるのかもしれませんけれど、環境価値に寄与するような活動というのは必ずあると思います。

 したがいまして、今なお、SDGsの認知自体、必ずしも進んでいないと思っておりますが、今後、認知を広めていくその活動の中で、そういった必ずしも環境を表に掲げていないのだけれども、環境価値があるような、そういった活動に光を当てるといいますか、発掘してあげるといいますか、そういったものにもぜひ光を当てていただいて、表向きの看板が環境だからということだけではなくて、環境価値を内包しているような活動につきましても、積極的に後押しするような形、これが望ましいのではないかと思います。以上でございます。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、棚橋委員、お願いいたします。

○棚橋委員 ありがとうございます。教育の記述について申し上げたいと思います。

 SDGsを使った学校教育というのは、もう始まっています。教員研修もやっておりますし、私が講師をするときにも、全てSDGsを使うようにしていますけれども、実際に子供たちにこの17の目標を見せたときに、自分たちがやっていることは、ああ、こういう価値があるのだということに、小学生でも気がつくのです。なぜここで教育の話をするかといいますと、今日見せていただいた策定の案には、教育という言葉は一言もありません。ただ、5ページのところに、「環境政策にとどまらず」と書かれています。例えば、SDGsについてここで話し合うことも、それから、社会システムを変えていかなきゃいけないよねということを考えることも、全て価値観に基づいているわけです。その価値観のベースを築くのは、やはり教育にあろうと思います。

 SDGsで言っております環境・社会・経済のバランスという言葉は、もう2005年のESDが出たときに、持続可能な開発のための教育、ユネスコが指導して、やっておりますけれども、そのESDで最初に言った言葉がそれです。ですから、学校現場の中では、もう10年以上前からこの3つのバランスは大事だよね、そうじゃないと環境問題って解決できないよねということをやってきているのです。ですから、そういった意味でも、文章の中、どこかに環境教育ですとか、それからESD、持続可能な開発のための教育という記述を、ぜひ入れていただくことが大事かなと思っております。以上です。

○武内部会長 ありがとうございました。

 次に、小林委員、お願いいたします。

○小林委員 ありがとうございます。初めての参加なので、少し的外れな発言もするかもしれませんけれども、お許しいただければと思っております。現場にいる「企業」の立場からコメントをさせていただければと思います。

 まずは、この「SDGs」ということなのですが、正直申し上げると、まだまだ企業には浸透してないのが実態ではないかと思います。先ほどの御説明にもありましたように、いろいろな取組みをされているということでございますが、今後の展開を考えると、より一層この「SDGs」の取組みを活性化させるような方策をまた別途考えたほうがよろしいかなと思っております。そういう意味合いでもありますけれども、「SDGs」のキーワードであります「5つのP」の一つにあります「Prosperity」、いわゆる繁栄でございますけれども、つまり「経済成長との両立」の視点が、今後の環境課題の解決を図る上では重要な要素と考えております。よって、今回の基本計画では、「経済成長との両立・繁栄」という視点についても、しっかり踏まえた内容とすべきではないでしょうか、という考えを持っております。

 また、本計画のゴールを見ていくと、「環境」と「エネルギー」に関連する項目が多いという認識を持っております。すなわち、環境政策はエネルギー政策と密接な関係があるということかと思っております。よって、本計画の策定において、エネルギー政策との関係が深い項目については、「エネルギー基本計画」の主管である経済産業省様とも密接な連携をとって、是非とも進めていただきたいと思っております。

 また、三浦委員からもありましたように、経済・社会のさまざまな主体が関わっているという認識でございます。是非ともそれぞれの主体の方々が許容できる「実現可能性」という観点からも御検討いただければと思います。例えば、中小企業や地域経済におきましては、震災後、電力コストの高止まり等々、いろいろと負担増に苦しんでいるという実態もございます。今後の施策については、各主体の方々が理解できる、分かりやすい形にしていただくということも重要かと思いますので、是非ともよろしくお願いいたします。以上でございます。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、田中委員、お願いいたします。

○田中(里)委員 田中です。ありがとうございます。

 SDGsの制定の後は、様々なイニシアチブやプラットホームが立ち上がっていて、全国的に各地で多彩な活動が始まっていることを、報道の範囲および私自身のメディアの取材でも承知しています。その中で一番重要なポイントというのは、SDGs策定の経緯の前の理念のところかと思います。この理念が、すべての活動において、また、先ほど棚橋委員もお話されました環境教育における柱になるべきと考えます。環境倫理を踏まえた形で、SDGsの理念がアジェンダとして明文化され、浸透していくのが理想です。

 もう一つ、このSDGsを理解して目標に掲げ、共感して活動する方々が動いていく中で、自分自身の立ち位置をプロットして、次に進む指標の役割を果たしているか。運用時、活用段階で大切になってくるキーワード的な言葉としては、「バランス」と「統合的」に見るという、ここが重要ではないかと思っています。各目標に向けた多様で多彩なアプローチがベストプラクティス、優良事例として紹介される動きがありますけれども、これと同時に、俯瞰をしてバランスがとれている、統合的にどうなのかを見ることに意味があると感じます。このバランス・統合という切り口を、どのようにチェックをしていけばよいかについては、共通項目、指標の明示が一層大切になるところと思っています。

 また、資料1の2ページの最初に、IoT、AIに関する記述がありますが、これから新しく始まる事業や取組というのは、社会を大きく変えようという熱意の下に始まるものですので、最初からこういう事業においては、SDGsを事業の理念として踏まえて取り組んでもらうということを、皆で共有する、認識するということが非常に重要かと思います。この姿勢が実行されれば、自然と人間との関係性、多様な文化を真に理解し、そのような社会の中で統合的に考えていくということが、うまく実現していくのかなと思います。それぞれ主体として動いている企業も地域も、自分が今、どういう立ち位置にあって、これでよいのかということに疑念を持ったり、不安を覚えたりすることがあるかもしれません。羅針盤的に動かしていただくような流れにできればよいと思います。以上、よろしくお願いします。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、豊岡委員、お願いいたします。

○豊岡委員 ありがとうございます。

 私も皆様と同意見というか、先ほども羅針盤的に統合的に見ていただきたいという御意見ありましたけれども、私、地域から来ておりまして、地域計画にこれを落としたときに、どうしてもフォアキャスティングで物を考えて、取り出して、目標達成しやすいものから計画を立ててしまうというような傾向がございますし、本当にこのSDGsの理念、バックキャスティングして、どういう未来を推しはかってこれを策定しているのかというところを忘れて、実行計画のようなものでやりやすいものということで、大事な目標を置き去りにされてしまうというような傾向が、地域の場合、地方公共団体の場合、特に見受けられますので、そういう理念を、ガイドというお言葉もありましたけれども、そういうことを、何のためにこれをつくるのだということを、しっかりとガイドができるような文言というか、落とし込みにしていただきたいということが1つです。

 そして、よくありがちなのが、やりたいことを先にやってしまう。そして、相反する利益を無視してしまって、全体を見ないで一部を見て計画を立ててしまうというようなことが、地域にはやはりありがちなので、この理念をぜひ地域まで落とし込めるような基本計画にしていただきたいと思います。以上です。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、山極委員、お願いいたします。

○山極委員 ありがとうございます。

 SDGsの考え方を活用するという方針は、大変私も同感です。ただ反映だけではなくて、活用する。ただ、そのときに、これを統合的に活用していくということになるのだと思うのですけれども、ややもするとそれは総花的になってしまって、17の目標の間にコンフリクトが生じる場合があるわけです。特に、私のような発展途上国で仕事をした経験から申し上げますと、常にやはり弱者の立場というのは、抑制ばかりが効いてしまって、例えば貧困の問題と開発の問題、経済的な問題というものがコンフリクトを起こすと、どうしても抑制的な方針が立てられてしまう。このときに、環境ということを指標にしながら、いわゆる科学的な視点に立ってということが非常に重要になってきます。そのときに、科学者がトレーサビリティということをきちんと認識して、科学的にこのような行為がどういった結果に結びつくのかという予想を立てなくてはいけないと思うのです。これは、先ほどバックキャスティングが大事だというお話が出まして、全くそのとおりだと思うのですが、その目標だけではなくて、それにあわせて、現在のこういった活動がどういう結果になるのかということを、きちんと責任を持ってシミュレーションをしておく必要があると思います。それが17の目標の間にどういう不調和をもたらすのかということを、情報とともに発信していく必要がこの計画の中にはあるだろうと思います。そこをぜひ忘れないようにしていただきたいと思います。

 そういう観点からいたしますと、私もちょっと勉強不足でよくわからないのですけれども、資料1の7ページ目の上から3つ目の丸の中に、「多属性社会の中で異なる属性における国民の『豊かさ』『幸福感』『生活の質(QOL)』の更なる向上に資するような」というところがございますけれども、この多属性社会というのはどういうことを指しているのか、そして、異なる属性における云々というのは、どういうことを意味しているのかというのは、ちょっと説明が要るような気がするのですが、勉強不足で分からなかったので、教えていただきたいなと思います。

○武内部会長 事務局、今の点にお答えください。

○山田計画官 前回、88回の総合政策部会で林臨時委員からの御発言を引用した部分でございますが、もう少し要約ではなくて全体を申し上げますと、日本における地方の衰退において具体的に何を考える必要があるかというところの中で、高齢化ですとか貧困ですとかいう話もありますけれども、一方で、QOLとかウェルビーイングをどう両立させるかというのが非常に重要だという御指摘いただいています。そのときに、個々人や違った属性を持っていて、多属性の社会に移行しているということを踏まえながら、その違った属性の人々のQOLを向上させ、低炭素など、環境を穏やかにできるかは考える必要があるという、そういう文脈で発言いただいたことでございます。こういう趣旨でございますが、またこういうふうに文章を直したほうがいいというのがありましたら、考えさせていただきたいと思いますし、御提案があれば、いただきたいと思います。

○武内部会長 よろしいですか。

 それでは、次に大塚委員、お願いいたします。

○大塚委員 ありがとうございます。

 SDGsに関しての皆様の御意見と基本的に賛成でございますが、先ほど部会長がおっしゃったように、反映というのは活用と変えていただいたのは、私も賛成で、大変よろしいかと思います。SDGs自体は、非常にたくさんのことを目標にしているということがございますので、この考え方を重視すると。さっき安井先生がおっしゃったような、バックキャスティングのようなことが特に重要になってくると考えています。

 このSDGsの目標を同時達成するということが、あるいは統合的な達成というのが重要だと思いますけれども、ただ、これは政府全体と関わることでもございますので、環境基本計画として書いていくときには、重点の置き方というのは、やはりいろいろ違ってくる可能性がございますし、何といっても、国際の話と国内の話と地域の話というのがそれぞれございますので、環境基本計画として特にどういうところに重点を置くかということを考えながら、検討していくということになるだろうと思います。そういう意味で、先ほど山極委員がおっしゃったようなこととも私は近い意見を持っています。

 1点だけ、資料1の5ページのところについて、申し上げておきたいと思いますけれども、10行目ぐらいのところで、「社会、企業、個人がいかにして世界との競争に勝ち、我が国の幸福と同時にアジア、世界の幸福をどのようにして築いていくのか」と書いてありますが、こうした潮流の中で競争に勝ちというところまでは、潮流自体が環境に関して、環境負荷が少ないような社会を目指しながらということだと思いますので、ここまでは理解できるのですけれども、その後、競争に勝った後、我が国の幸福とかアジア、世界の幸福をどのように築いていくかという話は、ちょっと別な話のような気がするので、この論理的なつながりがちょっとよく分からないところがありますので、これは、例えば日本が競争に勝って、アジアとか世界にODAでもやることを言っているのかという、多分そんなことを言ってらっしゃるのではないと思うのですけれども、ここは話が飛ぶかなという感じがして、むしろ競争に勝って、世界全体の環境負荷を例えば下げていくとか、そういう話であればわかりやすいかなと思いましたので、一言申し上げておきます。以上でございます。

○武内部会長 ありがとうございます。

 それでは、高村ゆかり委員、お願いします。

○高村(ゆ)委員 ありがとうございます。

 資料1の文言については、また議論の機会あるいはコメントする機会もあると思いますので、むしろ今、SDGsの活用という観点で大きく3点申し上げたいと思っております。

 今回、反映から活用という形に変えていただいたのは、私も大変よかったと思っております。その上で、どうやってSDGsをうまく取り込んでいくかというときに、一つは、環境基本計画、ひいて言えば環境政策全般なのでしょうけれども、SDGsがどういう位置付けを持つのかということが確認をされる必要があるかなと思います。参考資料6に付けていただいている実施指針の中でも、SDGsの主流化というところに書かれていると思いますけれども、恐らくSDGsというのは、これから行う環境政策が行われていくときの、一つの正当化といいましょうか、その根拠であると、よりどころとであると同時に、政策を立案していく際、あるいは政策の効果を評価していく際の資格という、そういう位置付けを持っていくのだろうと思っております。これが1つです。

 それから、2つ目は、多くの委員からもありました、SDGsの個別の目標もさることながら、その背景にある考え方や方法、理念というのをきちんと取り込む必要があるということについても、私、賛成であります。特に、私は3点、その取り込むべき3つの要素といいましょうか、3つの理念といいましょうか、と思っておりますのは、最初の2つはもうほかの方がおっしゃっておりましたが、一つは、井田委員あるいは安井委員などからございました、プラネタリー・バウンダリーといったような言葉に象徴される、いわゆる環境容量の限界といいましょうか、しかもそれは、現状を積み重ねて進行していくと、回復不可能な結果が起こり得ると。もう1つは、このプラネタリー・バウンダリーについてもう1つ必要だと思うのは、それ自身が、SDGsでも目指していますし、環境政策の中でも目指していくべき経済的繁栄ですとか人の幸福にすら悪い影響を及ぼす可能性があるという認識が、少なくとも広がってきているという、ここは1つのSDGsからつながってくる、この環境基本計画の議論に反映すべき考えではないかと思います。

 SDGsからの理念としてもう1つ取り込むべきというのは、これももう安井先生始め、何人かがおっしゃいましたバックキャスティングの考え方だと思います。現在の活動の積み重ねでは、目標なり目指すところを達成できないということであるとすると、それはおのずとそういう方法論をとらざるを得ないということだと思うのですが、環境基本計画の文脈でいくと、この基本計画の中にどれだけ盛り込めるかという点は、議論をしたらいいと思うのですが、恐らく、次の環境基本計画の下で目指すべきビジョンと、それはそれぞれの分野の計画においてもですけれども、目指すべき長期のビジョンと、それから、これは根本委員が明確におっしゃってくださったところですが、現状とのギャップをどうやって埋めていくかという具体的な議論を、次の環境基本計画の中でもきちんとするということが、重要ではないかと思っております。

 それから、取り込むべき理念の3点目ですが、全体を通してどうしても隠れていることだと思うのですが、これは安井先生がclimate justiceで温暖化の文脈でおっしゃっていただきましたし、あるいは、SDGsの文章の中にも書かれている、つまり、誰も置いていかないという原則の背景は、弱者も含めた、結局、この環境政策も含めた政策の目指すところが、一人一人の人間の安全であり幸福であるという考えなのだと思います。これは環境政策の中でもよって立つところとして、やはり基本計画の中に何らかの形で反映をしていただきたいなと思っております。

 大きな点の最後でありますけれども、SDGsのもう一つの大事なところは、プロセスも含めた参加型のところだと思っておりまして、環境政策への主体の参加もさることながら、その主体を、どうやって能力を高めていくか、教育の話ですとか認識向上といったような点等、あわせて、もう一つ、こういう基本計画をつくっていくプロセスも参加型にやはりしていくことが必要ではないかというふうに思っております。いろんな形を多分、事務局も考えていらっしゃると思うのですけれども、総合政策部会だけではなく、各部会の委員の方々も、恐らくこれまでの環境政策に関わっていらっしゃる中で、いろんなお知恵を持っていらっしゃると思いますし、環境省の中でも、実務に携わりながらそういう蓄積があると思いますので、それをできるだけ広く吸い上げるプロセスというのを、ぜひお考えいただけないかというふうに思います。以上です。

○武内部会長 どうもありがとうございました。大変有意義な意見をたくさん頂きました。時間の関係でこの議論については、恐縮ですが、これで終了とさせていただきたいと思います。頂いた御意見を踏まえまして、次回の部会ではこのSDGsの活用の在り方についての基本方針を皆さんにお示しして、また更に御検討をいただこうと思っております。

 それでは、次のテーマ、重点的な枠組みの設定について事務局より説明をお願いいたします。

○山田計画官 それでは、事務局から説明させていただきます。資料3をご覧いただければと思います。「重点分野の設定について」というタイトルでございます。これは、過去の環境基本計画における重点分野に関する事実関係をまとめた、補足的資料でございます。これから重点的な枠組みに関する議論をされるときの参考にしていただければというふうに思っております。

 まず、第二次環境基本計画からこの重点的な枠組みというものを設定してございます。第二次計画では、以下の分野について11の戦略的プログラムを設定ということで、3つのカテゴリーに分かれております。

 一つは、環境問題の各分野に関するものということで、全6分野。地球温暖化対策の推進、物質循環の確保と循環型社会の形成に向けた取組、環境への負荷の少ない交通に向けた取組、環境保全上健全な水環境の確保に向けた取組、化学物質対策の推進、生物多様性の保全のための取組がございます。

 次のカテゴリーが政策手段に係るものということで、全3分野ございます。環境教育・環境学習の推進、社会経済の環境配慮のための仕組みの構築に向けた取組、環境投資の推進でございます。

 3つ目のカテゴリーが、あらゆる段階における取組に係るものということで、全2分野です。地域づくりにおける取組の推進、国際的寄与・参加の推進でございます。

 その次の第三次環境基本計画ですが、以下の分野について、重点分野政策プログラムを設定ということで、以下述べさせていただきます。2つのカテゴリーに分けております。

 事象面で分けたものとして、全6分野。地球温暖化問題に対する取組、物質循環の確保と循環型社会の構築のための取組、都市における良好な大気環境の確保に向けた取組、環境保全上健全な水環境の確保に向けた取組、化学物質の環境リスクの低減に向けた取組、生物多様性保全のための取組でございます。

 2つ目のカテゴリーは、事象横断的なものということで、全4分野。市場において環境の価値が積極的に評価される仕組みづくり、環境保全の人づくり・地域づくりの推進、長期的な視野を持った科学技術、環境情報、政策手法等の基盤の整備、国際的枠組みやルールの形成等の国際的取組の推進。

 次のページにいきます。第四次環境基本計画、2012年にできたものでございますが、以下の分野について重点分野を設定ということでございます。2つのカテゴリーに分かれております。

 事象横断的な重点分野ということで、全3分野。経済・社会のグリーン化とグリーン・イノベーションの推進、国際情勢に的確に対応した戦略的取組の推進、持続可能な社会を実現するための地域づくり・人づくり、基盤整備の推進。

 2つ目のカテゴリーは、事象面で分けた重点分野ということで、全6分野ございます。地球温暖化に関する取組、生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する取組、物質循環の確保と循環型社会の構築のための取組、水環境保全に関する取組、大気環境保全に関する取組、包括的な化学物質対策の確立と推進のための取組でございます。

 さらに、環境基本計画そのものではないのですが、今までも説明をしておりますように、平成26年7月に中央環境審議会におきまして出された意見具申、「低炭素・資源循環・自然共生政策の統合的アプローチによる社会の構築」の中で、基本戦略というものを6分野掲げてございます。環境と経済の好循環の実現ということで、すなわちグリーン経済成長の実現、2つ目が地域経済循環の拡大、すなわち地域活性化の実現、3つ目が健康で心豊かな暮らしの実現、4つ目がストックとしての国土価値の向上、5つ目があるべき未来を支える技術の開発・普及、すなわち環境技術の開発・普及、6つ目が環境外交を通じた22世紀型パラダイムの展開ということでございます。その6つの基本戦略は、従来の事象ごとの分野分類の発想ではなく、SDGsの特徴の一つである統合性の考え方に沿って、かつ、経済社会をより意識して設定された施策群の枠組みパッケージであるということが言えるかと思います。

 参考資料として、参考資料7でございますが、この26年7月の意見具申の概要をまとめたものが2枚程度ございますので、こちらも御参照いただければと思います。簡単でございますが、説明は以上です。

○武内部会長 どうもありがとうございました。

 今、御説明がありましたように、平成26年7月の中央環境審議会の総会で議論するという、異例の議論を経てまとまった意見具申の中で、低炭素社会、循環型社会、自然共生社会、これは非常に重要な環境政策の三本柱として認識されていることは、大変結構なことだけれども、この3つが施策として少しバラバラに進められているという感があるのではないかということで、それらを横つなぎにするような形の枠組みというものを、提案をさせていただいたということでございます。

 今回の環境基本計画では、でき得れば、そのような横つなぎの方向をより強化することを通して、環境基本計画自身の独自性といいますか、意義というものをより強化したいということでございます。従来の重点分野をどうするかということについても、議論をさらに続ける必要があると思いますけれども、基本的にはそのような方向で、今回、6つ意見具申では提案させていただいておりますけれども、これは別に6つで行くことについてどうかということをお尋ねするのではなくて、ここの6つよりももう少し減らしたほうがいいとか、あるいは、こういう視点が足りないのではないかというようなことも含めて、この現在の部会で皆さん方に議論していただいた上で、今後の方針にしたいということが趣旨でございますので、そのような観点からの御意見をいただければと思います。

 浅野委員、どうぞ。

○浅野委員 第一次環境基本計画が作られたときには、環境政策という1つのキーワードで、それまでの公害防止と自然保護という二本立てで進められてきた政策をどう統合するかと、これが最大の課題でありましたので、細大漏らさず、とにかく全てのテーマについて丁寧に書き込んだというのが第一次環境基本計画だったのですが、その結果が、何でも書いてあるけれども、何が書いてあるか分からないということになってしまった。それで、第二次計画をつくるときに、これではいかんと、やはりストーリー性が必要だし、今、特にここが大事だということが分かるようにしようではないかというので、戦略的プログラムというものを考えたわけです。

 ただ、戦略プログラムといっても環境政策の個別分野について放置はできないので、分野でもということで書いてあるのですが、例えば、これを御覧いただくと分かるように、3番目にわざわざ交通の取組というのが出てきています。これは当時、工場から出る大気汚染のような問題は大体解決しましたので、むしろ今、大気汚染の課題の中では、自動車騒音と自動車の排ガス問題だろうということで、これをテーマに挙げているのです。だから、そんなふうに、それぞれのテーマの中で何が今、課題かということを意識しながら、重点分野を取り上げてきたということがあります。

 ただ、残念ながら、だんだん事象別に取り上げるというところに、網羅的に何でも書いてしまうという傾向になってしまった。戦略的、重点的とこういう形で取り上げているのだから、その中で特にこれが大事だということを書かなきゃいけないというつもりで始めたものが、その領域の施策の全部を並べるようなものになってしまってきていたということが言えます。それにしても、これまでの戦略、重点のテーマの並べ方は必ずしも一様ではないわけで、その時々の状況を考えながら変えてきているわけで、たとえば第四次計画と第三次計画では事象面についても取り上げ方が変わっていることが、お分かりいただけると思います。これはそのときに名古屋の会議があったので、生物多様性が重要だということで、上に上がったとか、大気の問題は、越境汚染の問題はあるけれども、それ以外はかなり解決しているので、ちょっと順位を下げてもいいのではないかと、そういうことを議論して、配列を考えてきています。

 それから、第四次計画では、それまで分野横断的なものを下に置いていたのですが、逆にしなければいけないということで、第四次では分野横断的なものを上に上げたのです。

 今度の第五次計画では、この中で例えば温暖化に関しても既に独立の計画がありますし、生物多様性も早い段階から国家戦略があります。循環型についても循環型の計画ができていまして、それとある意味ではダブルになってしまうということがあるものですから、これまでのような構造にこだわることはないだろうということを、私は前回にも申し上げました。

 それで、前の武内中環審会長時代に考えました意見具申は、今度の計画の柱になるのではないかと最初から考えて作られたものですが、ただ、戦略として考えたものが、今から3年前の7月に考えたそのときの状況を反映した課題をもとに書いています。ですから、今またこれがそっくりそのまま通用するかどうかということは、若干検討の余地があると思いますし、ひょっとしたらもう少し組みかえて統合することができることがあるかもしれません。しかし、これをよくよく見ていきますと、ここでは各論で取り上げなきゃならない課題が全部うまく網羅されているというふうに一応考えていまして、それをこういう切り口で捉えてみると、各論の問題も関連性がわかるのではないかと思えます。そして、それをさらに、それぞれまた縦割りではなくて横につないで見ることによって、各課題の相互関連性もわかるようにしようではないかと。これがこの意見具申のときの考え方であったわけです。

 ですから、できることなら今回はここで戦略と言っているものを、もう少し見直すことは必要だと思いますが、これを環境基本計画の柱に据えることが大事ではないか。そして、従来の各論的にやっていた問題については、従来からも環境政策の体系ということで各論をきちっと載せていますから、そこはそれでちゃんと残しておいて、その体系というものはそれを見れば分かるようにすることになろうかと考えます。しかし、その体系ということで書いたものの中で、この領域のこの問題は特に横断的にも取り上げなければいけないし、横断的に考えて重点に取り組まなければいけないという問題は、それぞれの担当原課とよく相談した上で、この6つなり5つなりになるであろう今度の戦略的な課題というものの中に織り込んでいって、その中にこの政策分野についての部分は、こういう観点から特にやらなければいけないということが書かれるようにするなどして、従来のやり方のように重点分野の事象面のところでそれぞれが強調点を強調するということではなかなか強調にならなくなってしまったという第三次以降の経験から言うと、今回それを繰り返さないためには、これまでのやり方ではない工夫をする必要があると考えます。

○武内部会長 ありがとうございました。

 豊岡委員、お願いいたします。

○豊岡委員 重点分野といっていいかどうかちょっと分からないですけれども、今回の計画は具体的に、前回はそれこそ総花的に網羅したものであったことを実際に落とし込めるような理念を持つということで発言させていただきますけれども、先週ドイツに行って、なぜ日本ができないのかと思ったときに、それこそ現状に合わない制度、過去の慣習、そして縦割りの弊害など、そういう条件が全然整えられていないというようなことがあって、理念は全く正しい、環境と経済の好循環、地域経済の循環の拡大、そういう理念は誰も反対しないと思いますけれども、これを実行計画などに落とし込んだときに、そういうものが邪魔をしてなかなか進んでいないというところがございますので、是非そういう障壁になっているものを取り除くという、もう一歩踏み込んだ理念を今回は入れていただければ、もう少し苦労せずにやれることもたくさん出てくるのではないかと思いました。これをどう反映させていただけるかちょっと分かりませんが、意見として申し上げます。

○武内部会長 ありがとうございました。

 井田委員、お願いいたします。

○井田委員 個別の分野は重要だと思いますけれども、これを見ますと環境省の局がずらっと並んでいるだけだと非常によく分かって、私は前回に関わったわけではありませんが、これができた経緯というのはよくわかるような、地球局、自然局とか見えてきます。もうこういうものはやはりやめたほうがいいと思います。そういう指標は別だと思いますけれども、これが重点分野ですというのはもうやめたほうがいいと思います。

 考えると、この6つの重点分野は非常によくできているしいいかなと思いますけれども、よく読んでみると、浅野先生がおっしゃったように時代遅れみたいなところもあったり、原燃料輸入代金削減と自然資源観光の強化というのは、私はちょっとよく分からない、木に竹を接いだような表現もあったりして、整理は重要だと思いますけれども、これを重点にして未来を描いていきますというのは非常にいいかなと思います。

 ただ、先ほどウェディングケーキの話をしましたけれども、これを6つただ並べるだけではなくてそこの総合連関、何が重要かという絵を見せていく、相互に関わるものだと思うので重要だと思います。

 それともう一つ、環境外交のフォロー、私は長かったもので、これがどう貢献していくか先ほどグローバルスタンダードのお話をしましたけれども、日本がグローバルスタンダードづくりとか、国際ルールづくりにどう貢献していくかということはやはり今回次の、これだけ世界はダイナミックに動いているので重点分野の一つというのは決して忘れてはいけないものだろうと思います。

 すみません、話を戻して恐縮ですが、さっき言い忘れた話がありまして、ウェディングケーキの話ですが、環境基本計画の中で、SDGsをどう考えるかというとき、一番ベースにあるのはバイオスフィアと申し上げましたけれども、環境基本計画というのはSDGsの中でそこに関わるものだと私は思うので、大塚先生のお話を聞いていてちょっと思いましたけれども、やはり環境基本計画がSDGsの最もベース、一番根の深いところに関わる、ロックストロームなんかは4つ見せていますけれども、それが関わるものだという仕切りをするといいのではないかと。議論を戻して恐縮ですが、言い忘れましたので、そこら辺を追加させていただきたいと思います。

○武内部会長 どうもありがとうございました。

 SDGsの体系化と今回の見直しの重点分野、横つなぎをうまく組み合わせると、全体としてのストーリーがはっきりするかもしれません。事務局のほうで検討してもらおうと思います。

 山極委員、お願いいたします。

○山極委員 第二次環境基本計画の中にあって、第四次にないもの、これは環境教育、環境学習の推進ということと環境投資の推進ということが抜けています。これは達成されたということで、あるいは分野としては含めないということなのか、私は環境省の委員として関わってきた経験からすると、例えば生物多様性というのは全然まだ浸透していなくて、初等教育、中等教育を通じて出てきますけれども、具体的に子どもたちが理解しているかというと、また理解の程度が低いなという気がします。

 ですから、教育というのは一方で非常に重要な問題だと思います。これを重点目標としてあげるかどうかは別ですけれども、そのことはやはりきちんとどこかに書き込んでいただきたいと思います。

 それから、もう一つ言えば、企業の環境政策に対する投資というのが大企業は結構進んでいるけれども、中小企業は非常に遅れているという結果が出ています。これはやはり日本全体で特に現場でいかに環境保全、これはSDGsに関わる投資をしていくか、それぞれの企業が頑張ってもらわないと困るわけで、これは関西でも地球環境関西フォーラムという組織が27年やってきて、来年その活動を閉じることになっています。これは産官学のネットワークとしては非常に重要な会議で、そういった努力がだんだんしぼんでいくというのは私自身非常に残念なことだと思っています。

 ですから、この投資というものがどういうことを意味するか、もう一つ、私も理解ができていませんけれども、是非そういったことを個々、もちろん企業だけではなくて、さまざまなところで投資をして、活動というものを活性化させていくという方向性をどこかで盛り込んだほうがいいのではないかという、私の印象でございます。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、次に木下委員、お願いいたします。

○木下委員 重点目標の6つの視点でありますけれども、2つ目の地域経済循環の拡大というところで、括弧として、地域活性化の実現というふうになっていますけれども、ここは地域活性化の実現とすると非常に視野というのかそれが狭くなってしまうのではないかと思います。というのは、最初に説明があった資料1の7ページの地域循環共生圏というような考え方を見ますと、単なる地域活性化を超えた新しい考え方を示しているのではないかと思っております。

 というのは、3つ目の健康で心豊かな暮らしの実現だとか、あるいはストックとしての国土価値の向上ということもある意味ではこういうような、7ページに書かれているような3社会の統合の中で一定の方向性が出てくるのではないかという感じがいたします。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、小林委員、お願いいたします。

○小林委員 この意見具申に掲げられた6つの基本戦略や、最新の状況を踏まえて見直しを図りながら、横断的・統合的な検討を進めて行くということについては賛成をしております。

 そのときの資料の整理の仕方ですが、本日の資料のように文章だけでこうやって個条書きで書かれると、どうしても横断的、横串を通した絵姿が分かりづらいということもございますので、ぜひとも個々の課題が重なり合った部分も含めて、ビジュアル的な表現の仕方を工夫して、ご提示をお願いできればと思っております。

 これは従前の計画からの反省、課題でありましたが、分かりやすさへの対応という観点が第一義でございますけれども、各委員の「認識合わせ」とか「ベクトル合わせ」という意味で、一つ一つ確認していきたいと思っておりますので、是非ともお願いいたします。

 また、高村委員からもありましたように、プロセスを含めて企業や国民の方々の参加型ということでの意味合いでも、こういう絵姿があると分かりやすいかなと思います。最終的には、この基本計画を国民の方々に御理解いただく際にも利用できるような形にもなろうかと思っておりますので、是非とも作成をよろしくお願いいたします。

 なお、ちょっと小粒な発言かもしれませんが、この6つの基本戦略の中に「国土強靱化(レジリエンス)」という項目もあったほうがいいのではないかと思っております。

 現項目では、「国土価値の向上」というところが近いかもしれませんが、レジリエンスいう言葉をどこかに入れておくべきかと思っておりますので、その分を含めて御検討をお願いいたします。

○武内部会長 ありがとうございました。

 ビジュアルな表現については次回にはお示ししたいと思います。今日の議論を踏まえまして、先ほど井田委員からもそういう御提案がございましたので、用意をさせていただきたいと思います。

 それから、もう1点、レジリエンスを強靱化と訳していいのかどうかはややこれも議論がございますので、非常に重要な観点ではあると思いますけれども、レジリエンスというものの考え方についても少し検討させていただきたいと思います。

 それでは、安井委員、お願いします。

○安井委員 今、じっくり見ておりますと、やはり上の3つのところでトリプルピラーズかもしれませんけれども、経済のところがやはりちょっと全面的に書き直さなければいけないという感じがして、先ほどちょっと御指摘いたしましたように、日本の経済、その前に基本計画というのは基本的に全省庁に関わるわけです。それを考えたときに、経済のところはやはりリードしていかなければいけないし、グローバルな状況と今の日本の状況は余りにも乖離が激しいので、ここはやはり何とかしなければいけない。

 例えば、先ほどちょっとお話に出たリコーさんのRE100とかCFDの評価、大企業が一生懸命気にしているのに、余り日本全体は気にしていないとか、あるいはブルームバーグがやっているTCFDが何をやっているかという話も余りよく分かっていないとか、そういういろいろな話がある中で、この経済をどういうふうにするかというのはやはりすごい考えどころだと思います。ですから、グローバルスタンダードではという記述にしてしまいたいぐらいです。

 そうすると、下のほうの6つの戦略も多分かなり変わってきてしまって、経済好循環ではなくてグローバル経済との何とかかんとかになるだろうし、それから右から2つ目の技術に関しましてもやはり世界に通用するイノベーションの創出みたいな記述になるだろうし、一番右の環境外交を通じた云々もやはり全く別の記述になるような気がすると。

 これがつくられてからその間に、SDGsができて、それでなおかつパリ協定ができたということをちゃんと組み込むにはそのくらいのことをしなければ駄目かなという気がいたします。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、大塚委員、お願いいたします。

○大塚委員 先ほど井田委員がおっしゃったことは私もそのとおりだと思っています。先ほどのプラネタリー・バウンダリーとか環境容量という話がございましたけれども、今回の戦略の一番基礎にはそういうものがあるので、その辺は分かるようにしていただけるとありがたいと思います。

 それから、先ほどお配りいただいた資料3の2ページのところの第四次環境基本計画との関係で見ると、浅野先生がおっしゃってくださったように、事象別で分けた重点分野のうち、上の3つはそれぞれ計画があるので、環境基本計画で特に取り上げなくてもいいということですけれども、多少気になるのは、化学物質のところはちょっと今でも結構重要な進展を見せているところがあるので、これがなくなるのはどうかという気もしますが、こういうものは個々の施策のところで是非充実させていただいた形でお書きいただければ大変ありがたいと思います。

 それから、言葉の問題で、今回第五次環境基本計画とも関係する、低炭素・資源循環・自然共生政策の統合的アプローチによる社会の構築の意見具申の中に出てきている循環共生型社会という言葉はかなり定着していると思います。

 循環共生型というと、低炭素・自然循環・自然共生の後ろの2つだけを言っているようにもちょっと思えなくもないので、そうではないことは重々承知していますが、ただ低炭素が先ほどから安井先生がおっしゃっているように、非常に重要な課題になってきているということがありますので、ちょっとこの言葉を変えられないのかもしれませんが、あるいは変えられないのであればちょっと説明はちゃんと分かるようにしていただけるとありがたいということを申し上げておきたいと思います。

 基本的に重点分野に関しては、この6つないしこれをどうするかということがあると思いますけれども、これでいくことに関しては賛成でございますけれども、今言ったような幾つかの問題があるので、注目していただくとありがたいということでございます。

○武内部会長 ありがとうございました。

 今の点は、私もちょっと気にしておりまして、もともと環境基本計画でいう循環というのは、いわゆるマテリアルの循環だけではなくて、大気循環という意味合いもありました。ですから、本来の循環という概念は低炭素ないしは脱炭素とそれから資源循環、これが合わさったものでしたが、循環型社会推進基本計画というふうなものになったので、循環という言葉がマテリアルのほうの言葉のようになってしまったということで、これは環境省のほうでも近く組織再編が予定されていて、環境再生資源循環局、ですから循環ということを資源循環というふうにも見えますが、その言葉を使っても違和感がないような状況になるのではないかと、おぼろげながらそんなふうに考えておりますので、参考までに申し上げておきたいと思います。

 浅野委員、お願いします。

○浅野委員 山極議員の御発言がありましたので、お答えをいたします。

 第三次計画から環境教育という言葉が消えたのは、これは環境教育の施策がもう完了したからだというのではありません。むしろ環境教育、環境学習という言葉にやや狭さを感じて、それよりも人づくりという言葉のほうがいいのではないか、そしてそれは地域づくりと常につないで考える必要がある。地域づくりは人づくり、人づくりは地域づくり、そういう文脈の中で捉えて、単に学校のような場所での教育による環境教育というイメージから外に出たいということがありました。

 これはその前に中央環境審議会の総合政策部会で環境教育についての考え方というのを出しまして、その中で学校教育だけではなくて企業内教育とか、地域の教育、家庭内教育全部含めて環境を学ばなければいけないということが出されてきておりました。

 その後、鈴木基之先生がつくられた21世紀環境立国戦略の中で、いつでも、どこでも、誰でも、という考え方を環境教育に関して示されましたが、それを踏まえていくと、これはこのほうがいいだろうということで、環境保全の人づくり、地域づくりという言葉に変えたわけです。

 ただし、このように変えようとしたときに、環境教育という言葉を消すのはけしからんという強いご意見も上のほうにはあったようですが、審議会で意図するところが伝わってないのは大変遺憾であるということで原案を通したという経緯があります。それで第四次でも同じような言葉を使ってきたということです。ですから、決して環境教育を軽視しているものではありません。

○武内部会長 棚橋委員、お願いいたします。

○棚橋委員 環境教育のお話が出たので、ちょっと補足をさせてください。

 ESD、先ほど申しました持続可能な開発のための教育が、2004年に出て、2005年から国連のユネスコが主導で、ESDの10年が始まりました。2014年に名古屋で最終的な会議をして、今また継続しておりますけれども、ESDを進める中で、環境教育そのものがESDの中の環境教育という位置付けになってきています。ですから、環境教育というと、今御指摘があったように狭い感じがすると思いますけれども、今の環境教育、ESDという中での扱いはもっと幅の広いものとしてやっておりますので、もし記述ができるのであれば大変励みになると感じております。

○武内部会長 ありがとうございました。

 高村ゆかり委員、お願いいたします。

○高村(ゆ)委員 1点だけでありますけれども、今日の資料1のところで前回の議論を反映していただいた7ページとの関係です。基本戦略のところで挙がっている技術の開発普及、あるいは環境技術の開発普及というところ恐らく狭い意味での技術だけではなく、これは和気委員の御発言を受けて、こういう修正が資料1についてされたと理解しておりますけれども、経済社会システム、ライフスタイルのイノベーションというものを取り込むような形の重点基本戦略、あるいは重点課題分野が望ましいのではないかと思っております。

○武内部会長 ほかにはよろしいでしょうか。

 それでは、今のこの議論についてはこれで終了とさせていただきたいと思います。

 先ほど申し上げましたように少しビジュアル的なものも含めて、次回の部会で皆さんの御意見を踏まえてのこれからの方向性について事務局より提案させていただきたいと思います。

 まだ、少し時間がありますので、最初に皆さんに御議論いただけませんでした資料1について、更に追加的にコメントがあればお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。

 井田委員、どうぞ。

○井田委員 既に御指摘があったところですけれども、企業は問題を引き起こす人でもあり、解決する主体でもあると思いますけれども、企業の取組、それがやがてはビジネスチャンスになるとかいう主体としての企業がどうするかというような記述がちょっと少ないかなというふうに全体を読んでいて感じました。そこら辺をもうちょっと明確にする、先ほどお話ししたように経済も企業も単に利益を上げればいいというだけではなくて、平等であるとか、社会の幸福、質の向上に貢献するものであるとか、もうちょっと企業がどういう義務、責任、役割を持って、そこにビジネスチャンスがあるのかという書き方が、ちょっと読んでいて足りないかなという認識を、これは私の個人的な感想でありますが抱きましたので、そこら辺もうちょっと増やしてもいいのではないかと思いました。

○武内部会長 どうもありがとうございました。

 それでは、豊岡委員、お願いいたします。

○豊岡委員 5ページについて、意見を申し上げたいと思います。5ページの一番上の文脈のところで、赤字で「潮流を捉えて」から後、「これまで培った制度、技術、ノウハウ等をいかし、積極的かつ着実な実施及び国際協力等を通じて課題解決に貢献していく」とございますが、これが今のこの全体の流れを考えると、これまで培った制度、技術、ノウハウというのは非常に違和感がございます。これまでとは違う価値観だったり、大きなパラダイムシフトの転換ということも言っているわけですから、違和感がございます。

 そして、それから後です、「また、こうした潮流の中で、」の赤字のところで、「社会、企業、個人がいかにして世界との競争に勝ち、」という文脈ですけれども、私としてはこの競争に勝ちというのが、非常に違和感がございます。何をもって勝ちというのかというところを非常に分かりづらいというところもございますし、こういう表現ではないほうがいいのではないかと思います。ほかの先生方の御意見もちょっとお伺いして、何かお考えいただければと思います。

○武内部会長 ありがとうございました。

 ほかに、どうぞ。浅野委員、お願いいたします。

○浅野委員 競争に勝ちと言うと、いかにもお金が儲かって仕方がないというイメージで捉えられるとちょっと違うので、今の環境の世界での大きな潮流の変化の中で、いかにそれにうまく乗って上手にやるかという競争だということがこの間から大分多くの委員から出てきた意見です。それを踏まえての競争に勝ちという表現ですから、もうちょっと言葉を足しておく必要があるとは思いますけれども、金儲け競争に勝つという意味では全くないということは事務局のために申し上げておきたいと思います。

 それから、第一次、第二次とずっと環境基本計画をこれまでやってきましたけれども、環境基本法の3条から5条までにもられている基本的な考え方を丹念に追いかけてきていますが、これまでずっと追いかけてきてまだ十分追いかけ切れていないのが世代間の公平という考え方です。今日の前半の議論の中でもありましたように、パリ協定、SDGsの考えている発想の根底には地域間公平と同時に世代間公平の強調という認識があると思います。これまでの計画では世代間公平という認識がちょっと弱い。それを強調する必要があるし、環境というものをもう少し倫理的に考えていかないと、当面次の株主総会で配当を維持できるようにしなければならないという発想だけで議論されると大変困ることをこれまでにも経験しています。是非世代間公平というキーワードを次の計画では大事にすべきであるということを申し上げておきたいと思います。

○武内部会長 ありがとうございました。

 小林委員、お願いいたします。

○小林委員 資料1の2ページの4行目です。「世界全体での脱炭素社会」という言葉ですけれども、前回の会合で複数の委員からのコメントで追加されたということでございますが、産業界の実態を御説明させていただくと、既に産業界、全国の商工会議所の会員の中にも、地球温暖化防止に貢献しようと努力して事業運営をされているところが少なからず居ります。しかしながら、この「脱炭素」という言葉になりますと、事業運営が数段違うステージになるという認識でございまして、先ほど来、話に出ています「SDGs」の考え方の「持続可能な社会」とか、誰一人取り残さないという意味合いからすると、ちょっと実現が難しくなるのではないかと思っております。よって、この計画策定の段階では「脱炭素」ではなく「低炭素」という言葉がふさわしいのではないかと思っている次第でございます。以上でございます。

○武内部会長 ありがとうございました。

 それでは、大塚委員、お願いいたします。

○大塚委員 3点ほど申し上げたいと思います。

 1つは、先ほど来から出ている環境容量の考え方というのは多分どこかにきっちり入れていただくといいなと思います。プラネタリー・バウンダリーのところに出ているので、そこは重視していただくとありがたいと思います。

 それから、浅野先生がおっしゃったことを引き継いでちょっと申し上げておきますが、環境政策の理念のようなことも、別にここに書いてなくても維持されると思いますけれども、重視していただきたいと思います。世代間公平、私も非常に重要だと思います。予防的なアプローチのことも、特に化学物質とか温暖化とかの関係ですけれども、重視していただけるとありがたいと思います。

 それから、最後の辺り計画の実効性の確保のところで、今回若干入れていただいていますけれども、環境基本計画では、政府のほかの省庁との関係でほかの省庁についての環境政策を実施していただくことが入っていますので、環境基本計画の実効性確保のための重要な視点でございますので、その点は特に重要であるということを申し上げておきたいと思います。

 それから、今の脱炭素の件に関しては、おっしゃることはわからないではないですけれども、21世紀後半に向けて温室効果ガス等の関係で、ゼロエミッションを目指していくということがパリ協定でも出てきていますので、究極的には脱炭素を目指さざるを得ないのではないかと私は思っているということをちょっと申し上げておきたいと思います。

 それから、5ページ、先ほど御指摘いただいた点は、別に競争に勝ちというのは絶対に残さなければいけないとは私も思いませんが、ここはとにかく低炭素関係のゲームチェンジがなされている中での潮流に乗って、競争に勝ちということなので、そこまでは私はわかりますが、その後のところがちょっと論理的に結びつかないかなということを気にしているということを申し上げておきたいと思います。以上でございます。

○武内部会長 ありがとうございました。

 田中委員、お願いいたします。

○田中(里)委員 資料の2ページの、世界の動きで先ほども少し触れさせていただきましたが、IoT、AIデータについての記述がありまして、3ページ目の真ん中くらいに、日本における動きについてもAI、ビッグデータという記述がありますけれども、ここが大量生産、大量消費という既にこの段階は抜けつつあるだろうと思われる、古い時代認識の記述に思えます。世界の動きに引けをとらないような動きが日本にもあるという前提で、多くの企業がこういう活動に着手しているわけで、恐らく投資もされる中で、同時に環境にも寄与することで、長期的なコスト削減、材料の調達から販売、宅配までのサプライチェーンにおける環境配慮ということをきめ細かく考えて、環境をビジネスの重要な要素にしていこうという動きは皆さん再認識されていて、重視されているところだとみています。そこがSDGsの理念にもつながるところで、大手企業のみならず、ベンチャー企業に至るまで、これを読んだ方々のモチベーションが上がるような書きぶりにできないかなということを期待を込めて思うところです。冷静な表現を志向してもらっているところでしょうが、そうすることで、広報戦略的な視点からも、後半の世論の形成、各主体の行動にも好影響を与えることにつながると感じます。

○武内部会長 どうもありがとうございました。

 井田委員、お願いいたします。

○井田委員 何度も発言させていただいて恐縮です。やはりこういう議論を聞いていると、日本人はどこまで目標を分かっているかなという気がしてまいりまして、SDGsにしてもパリ協定の今世紀後半に排出と吸収のバランスをとるというのは、これは極めて野心的な目標です。それこそが目標というものであって、どなたかおっしゃっていましたけれども、日本の目標はどうしても積み上げていって、これだけしかできませんというのが目標ですけれども、今ここで言われている環境基本計画の中で掲げる我々が意識するべき目標はそういうものではなくて、ジェフリー・サックスとかロックストロームとか、ケネディが、10年後に月に人を運んで無事に戻す、あれこそ目標だということをよく言いますけれども、まさに今言われているのは、そういうものであって、パリ協定もそういうことを考えたら、1つ申し上げたいのはその目標というものの考え方、50年80%、私はあれこそ目標だと思っています。

 ここでいう目標というものはどういうものかということをもうちょっと明確にこの際書いておいたほうが、国際的な目標というのはそういうものだというのをもう一度残念ながらきちんと明らかにしていかなければならないのではないかと思いまして、そういう表現が必要かなと思いました。

 長く取材していて、失礼ながらパリ協定の求めるものが世界全体での低炭素社会の構築に向けた契機というのは、それは間違いだと思います。

○武内部会長 今のことでしょうか。浅野委員、お願いいたします。

○浅野委員 ちなみに北九州市で、今、環境基本計画の見直しをしていますけれども、こういうことを事務局が言っていました。2030年ぐらいは低炭素社会でしょうが、2050年は超低炭素社会という表現を使いたい、さらには2100年になると脱炭素社会だと、これを並べようじゃないかと言ってきたので、いいでしょうと言ったのですが、御参考までに。

 それから、目標という言葉をどう使うかということは、低炭素ビジョンのほうでも大分議論しまして、どうも日本語の目標という言葉は具合が悪いなと議論していますけれども、ある種の合意がありまして、ここまでいかなければいけないというものとここまでいくことが望ましいなという2通りがあって、日本語でもどうも同じ言葉でいうものですから、お互いにそこが混乱してしまっているということが分かっていますから、今回の基本計画ではまたその議論にならないように、表現を上手に考える必要があると思います。

○武内部会長 安井委員、お願いいたします。

○安井委員 そもそもSDGsのGは何かという話です。それがゴールなわけです。そのゴールがなぜ日本語になると目標になるのか。これはやはり非常に問題なので、ここで目標(ゴール)と書こうと。

○武内部会長 ありがとうございました。

 高村典子委員、お願いいたします。

○高村(典)委員 全然違う話ですが、SDGsの目標が17、その下に入っている文言がたくさんあります。一般の私たちの日常生活でそれらに触れる機会をもっと増やしていく努力が必要なのではないかと思います。

 私たちは、ほぼ、毎日マーケットに行って買い物をし、経済活動、消費活動をしているのですが、商品を選ぶ際に、例えばSDGsのアイコンなどが見えれば、こういうマークがどういうふうなことに役立っているとか、触れる機会が多いと、浸透していくのではないでしょうか。生物多様性も20のターゲットがあって、専門家もその20を全部覚えるのは非常に大変でした。SDGsの目標も一緒ですが、日常生活でやっていることに、関連していることが非常にたくさんあるので、そういうふうなことを触れる機会に親子で会話ができるとか、子どもたちが会話できるとか、環境問題を私たちの日常生活の中に取り込む努力をもう少し政府のほうも企業のほうもしていく努力が必要なのではないかと思います。

○武内部会長 どうもありがとうございました。

 これについてもいただいた御意見を踏まえて、しかるべき修文を次回にさせていただいたものを提出させていただきたいと思います。

 それでは、一応今日の皆さんにお諮りする2つの大きな議題とそれから資料1についての更なるコメントについていただきましたので、これで審議は終了とさせていただきたいと思います。

 それでは、事務局から今後の予定について。

○山田計画官 どうもありがとうございました。

 本日の議事録につきましては、事務局で取りまとめを行い、委員の皆様に御確認をいただきました後に、ホームページに掲載させていただきます。

 また、次回の部会の開催予定について御連絡いたします。

 第90回の総合政策部会でございますが、平成29年6月29日木曜日午前中を予定しております。詳細は後日連絡させていただきます。以上でございます。

○武内部会長 どうもありがとうございました。これにて散会とさせていただきます。

午前11時53分 閉会