中央環境審議会総合政策部会(第43回)議事録

開催日時

平成19年10月29日(月)10:00~11:37

開催場所

ホテルフロラシオン青山1階はごろも

出席委員

鈴木基之委員長、猪野博行委員、崎田祐子委員、中村紀子委員、花井圭子委員、山本良一委員、鷲谷いづみ委員、青木保之委員、太田勝敏委員、木下寛之委員、塩田澄夫委員、鳥井弘之委員、永里善彦委員、長辻象平委員、福川伸次委員、安井至委員

議事次第

  1. 開会
  2. 議事
    1. (一)超長期ビジョンの検討について
    2. (二)その他
  3. 閉会

配付資料

資料1 「超長期ビジョンの検討について(報告)」の概要
資料2 超長期ビジョンの検討について(報告)
資料3 平成20年度環境保全経費概算要求額について

参考資料

参考資料1 中央環境審議会総合政策部会名簿
参考資料2

第三次環境基本計画の点検の進め方について

議事録

午前10時00分 開会

○弥元環境計画課長 それでは、時間になりましたので、まだお見えでない先生方いらっしゃいますけれども、ただいまから会議を開会したいと思います。
 議事に入ります前に、お手元の配付資料のご確認をお願いいたします。資料1「超長期ビジョンの検討について(報告)の概要」、それから資料2「超長期ビジョンの検討について(報告)」、本体でございます。それから資料3といたしまして、来年度「平成20年度環境保全経費概算要求額について」の資料でございます。それから参考資料といたしまして部会の委員名簿、以上でございます。
足りないものはございませんでしょうか。
 それでは、鈴木部会長、よろしくお願いいたします。

○鈴木部会長 それでは、議事に入らせていただきたいと思います。本日は議題1、超長期ビジョンの検討について、このご報告をいただくこととその他というのがございますが、メインの議題はこの議題1、超長期ビジョンの検討についてということでございます。
 これはご承知のように第三次環境基本計画におきまして超長期ビジョンを設定するというようなことが明示されたことを受けまして、平成18年6月、総合環境政策局長のもとに有識者による超長期ビジョン検討会および超長期ビジョン検討アドバイザリーグループを設置いたしまして検討を重ねてまいりましたものです。この検討会の座長は本日ご出席いただいておりますが、安井至先生です。
 この検討会が先週の10月25日に報告書をとりまとめられたということですので、この報告を本日の部会で聴取させていただくと、こういうことでございますので、まずこの報告書につきまして事務局からその概要説明お願いいたします。

○菊池計画官 それでは、説明をさせていただきたいと思います。説明に用いますのは資料番号1番、概要の資料、主にこの概要ペーパーに沿いましてご説明申し上げたいと思いますが、適宜に資料2、本体のほうの資料にも言及をしながら説明をさせていただきたいと思っております。
 まず資料1、検討の趣旨でございますが。ただいま部会長からご紹介、ご説明をしていただいたとおりでございます。第三次環境基本計画の中に50年といった超長期の環境政策のビジョン、これを基本計画の中で超長期ビジョンと呼んでおりますが、それを示すということが盛り込まれております。これを受けまして、学識経験者による検討会を設置いたしまして、2050年の環境像、社会像について検討を行っていただいたということでございます。
 こちらの検討会のメンバーリストにつきましては資料2の本体のほうで申しますと73ページの次にあたりますが、目次で申しますと参-1とふってあるページがございます。開けていただきますとメンバーリスト、安井先生を座長としてこうしたメンバーで検討をしていただいたということでございます。
 また、同じページの2番目の四角のところに書いてありますけれども、鈴木部会長を初めとしまして6人の先生方にこの検討のアドバイザリーグループとしてご検討に参画をしていただいてご意見をいただいてきたという経過でございます。
 ちなみに1枚開けていただきますと参-2というページがございまして、ここにこれまでの検討会の開催実績等の一覧がございます。先週25日に第12回の検討会が開催をされまして、またアドバイザリーグループ会合は3回開催いたしまして検討を進めていただきました。こういった経過でございます。
 一度資料1の概要ペーパーに戻らせていただきたいと思いますが、2.検討の手順という四角く囲ったパートがございます。こちらをごらんいただきますとどのような検討手順をとったかということを書いております。
 まず、(1)現状分析としておりますが、各種の統計データに基づきまして、現在の社会経済、それから環境の現状について分析を行っていただいた。(2)、その上で目指すべき2050年の環境像、社会像を描いていただいた。(3)でございますが、その描いた2050年に向けての検討をしていただいた、こういう検討の手順をとっていただいたということでございます。
 すみません、また本体の資料に戻って恐縮でございますけれども、まず現状分析の部分をちょっと見ていただければと思いますが、本体の資料の3ページが社会・経済の趨勢ということで現状分析のパートになっております。この現状分析のパートが2050年の社会、経済社会を描いていく上でのベースになります重要なパートでございますので、ここの部分はちょっと本体に沿いましてご紹介をさせていただきたいというふうに思います。
 まず3ページでございます、人口としまして将来の人口推計などを掲載しております。2050年の我が国の人口は図示してありますとおり、9,000万人から1億人強というふうに推計をされております。また、高齢者人口が増加をしているという少子高齢化の姿でございます。
 お隣4ページにまいりますと、過疎化の進展について現状を記載しております。
 すみません、駆け足で恐縮でございますが、5ページを開けていただきますと、こちらに経済の現状ということで書いておりますけれども、まず、経済につきまして2030年の予測といたしまして、日本は1%台の経済成長が続くという推計でございます。これに対して中国、インド等のアジア途上国が先進国に比して高い経済成長が続くという予測を掲載しております。
 6ページの上の半分、(2)我が国の将来における経済最長というパート、経済財政諮問会議での分析結果でございます。ここを見ていただきますと2030年の日本経済は実質成長率1%台半ばの伸びという展望が示されているわけでございます。6ページの下半分で産業構造の変化の見通しが示されておりますけれども、ここで見ますと例えばコンテンツ産業などの市場規模拡大、それから健康関連分野の就業者比率の拡大などといった産業構造の変化が見込まれているわけでございます。
 若干時間の関係もございましてはしょらせていただきますが。10ページをごらんいただきますと、国土・社会資本等といたしまして、将来の社会資本的な側面についての言及をしております。ここでまず最初に示されておりますのが、ストックの更新時期や耐用年数などについてでございます。まず、現在のストック、これがその多くが高度成長期に整備をされたものであるということで、今後更新時期を迎えていくということが図に示されているとおりでございます。今後更新投資額の推計としまして今後大幅な増加傾向になるということがグラフに示されているということでございます。
下半分が住宅の耐用年数でございますけれども、日本の住宅耐用年数は比較的短いということ、それから、政府内部で超寿命化への検討がなされているということが紹介をされているところでございます。
 少し飛ばしますけれども、13ページ以降には自給率に関する現状ということでございまして、エネルギー、それから食料、木材、こういったものも自給率に関する現状を記載をしているということでございます。
 16ページでございますが、現在の国際社会の動き。例えばいわゆるグローバル化傾向の動きや、逆に発生している反グローバル化の動きなどについて国際社会の現状を記述をしているということでございます。
 18ページ以降は持続可能性へのリスクとしまして、いわば直面している環境問題、地球温暖化、それから循環の問題、生態系の問題、それから生活の質という問題に分けまして、環境問題の現状分析をしているパートでございますけれども。ここはちょっと時間の関係もございまして説明はとりあえず割愛をさせていただきたいと思います。
 すみません、たびたび資料が前後して恐縮でございますが、資料1のほうに戻らせていただければと思います。今ご説明しましたのは検討の手順で申します現状分析のパートで、あらあらこういった分析をしておりますというご紹介でございました。
 次に、こういった現状分析に基づいて目指すべき2050年の環境像、それから社会像はどういったものかということを描いていただいたわけでございまして、それについてご説明をしたいと思います。この概要資料を1枚めくっていただきますと3.これまでの検討の結果という箱書きの部分が出てまいります。ここからが2050年の環境像、社会像を描いたところの概要でございます。
 まず、環境像については1.に概略を示しておりますけれども。この報告の中では低炭素社会、循環型社会、自然共生社会、快適生活環境社会という4つの視点から実現されていることが望ましい環境像ということを定性的に描いていただきました。
 まず低炭素社会でございますが、(ア)の部分でございますけれども、世界全体の温室効果ガスの排出量が大幅に削減され、将来世代にわたって人類、人類の生存基盤に対して悪影響を与えない水準で温室効果ガスの濃度が安定化する方向に進んだ社会でございます。
それから、循環型社会につきましては、資源生産性、循環利用率が大幅に向上し、最終処分量が大幅に減少、そして廃棄物からの資源・エネルギー回収が徹底して行われている、こういった社会でございます。
 自然共生社会としましては、農山村の活性化によって地域の生活環境である里地里山が適切に管理され、野性鳥獣と共存。また、都市周辺においても豊かな生物多様性を育む地域が広く残される、こういった社会でございます。
 快適生活環境社会としまして、環境汚染による生命、健康、生活環境への悪影響のリスクがなくなっていて、大都市部の大気汚染、ヒートアイランドなどの問題も解消されている。こういった社会を定性的に描いていただいたということでございます。
 こうした環境像を描いた上で、それを取り巻く社会全体の像は一体どうなっているべきであろうかということを描いていただいたのが2.2050年の我が国の社会像ということでございます。概略を申しますと、我が国の少子高齢化が進んでいて、就業者数自体は減少しているが、労働生産性の向上によって日本経済は成長を維持する。それとともに環境負荷の少ない持続可能な社会を実現していると、こういった社会像を描いていただいたわけでございます。
具体的に申しますと、(ア)の部分、社会・経済的側面でございますが、人口は1億200万人、2004年比で79.7%と減少をしている。それから、高齢者比率は37%というふうに考えております。ただ、就業者数は減少するものの、多様な就労環境が整備をされて、望ましい生き方の選択ができる、こういった社会になっているので、女性、高齢者の就業率が増加をしているという社会を描いております。
 それから、農業につきましては[3]の部分でございますが、農業収益性が向上し、安全で安心な生産物が供給できている。また、産業の世界、日本企業が低環境負荷企業として世界のトップランナーの地位にある。また、第三次産業、コンテンツ産業やライフサイエンス、医療・介護関連産業などが成長を遂げている、こういった社会を描いております。
 また、国土・社会資本的な側面としましては、[1]の部分でございますが、コンパクトシティの実現、また緑の多い道路や公園緑地の配置、「風の道」などができている。農山村数は数は減少するけれども、地域のコミュニティが活性化した社会。それから、都市や地域の規模や構造に即した合理的な公共交通システムが普及をしている。[3]の部分では、「ゼロエネルギー住宅」、「200年住宅」、「超寿命オフィス」といった社会資本が整備をされている。エネルギーの分野、[4]でございますが、自然エネルギーのシェアが大幅に増大するとともに、低炭素型の電力供給システムが構築をされている。また、防災とかかわってくる部分でございますが、安心・安全な都市構造が実現をして、温暖化の影響にも余裕をもった対応が可能になっていく。
こういった社会を定性的に描いていただいたと。これが2050年の我が国の望ましい社会ではないかという姿を描いていただきました。
こういった環境像、社会像を定性的に描いていただいた上で、このような社会が整合のとれた形で成立しているかどうかということを検討していただいたわけでございますが。まず、2050年の社会を定量化した分析、定量化分析と、それから2050年を想定条件を若干変化させた場合の検討ということを行っていただきました。
 こちらにつきましては、その結果は本体の報告書を見ていただいたほうがわかりやすかろうかと思いますが、66ページを開けていただきますとその結果をグラフで示しております。66ページの棒グラフで出ておりますけれども、こうしたようなGDPは1.7%程度の経済成長を維持しつつ、環境負荷の排出量は減少するという姿を示しております。これは計算上整合的に成立する組み合わせの1例を示したということでございまして、これを目標に設定して対策をとるという性格のものではなくて、いくつかのパラメータの組み合わせでこういった値が整合的に成立するということを示したものでございます。
また、このパラメータの変化につきましては67ページを開けていただきますと、分岐シナリオということで、世界経済が今後グローバル化が鮮明になっていく場合と逆の場合、2つのシナリオを想定した上でパラメータを若干変化をさせて計算をしてみたという結果が補足5でございます。
この計算結果が次の68ページに掲載しておりますけれども、経済成長率、グローバル化傾向が鮮鋭化した場合に1.75、逆の場合には1.61といったような結果になったということでございます。
 こうした検討を経まして、2050年の環境像と社会像というのを描いてきていただいたわけでございますが、さらに2050年に向けた道筋についての検討を行っていただいたわけでございます。すみません、たびたび引用資料があちこちいくのですが、概要資料の資料1のペーパーの最後のページでございますけれども、4、それから、参考と書いている部分でございます。CO2排出量の削減効果ということを試算して、その対策を進めていく上での留意点などをまとめていただいたということでございまして、試算の結果、結論的に申しますと2050年に世界及び我が国のCO2の排出量の大幅な削減は決して不可能ではないということが示されております。その数値等につきましてはその参考のところに記述をしているということでございます。
以上がこの超長期ビジョン検討会報告の概略のご説明でございました。
なお、この報告書の今後の扱いでございますけれども、どのようにこの有識者の先生方にとりまとめていただいた結果を活用してまいるかという点につきましてはまだ未定でございますけれども、本日総政部会の委員の皆様からご意見をちょうだいしてさらに検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。 とりあえず以上でございます。

○鈴木部会長 ありがとうございました。
このメインの報告書自体がその裏に大変な作業を伴う検討してこられただろうと思いますが、この検討会の座長を務められました安井先生から、とりまとめに当たってのいろいろなご苦労あるいはお考えをお聞かせいただければと思います。

○安井委員 安井でございます。それでは、簡単にといいましてもなかなか簡単ではないのですが、ご報告をさせていただきたいと思います。  先ほど事務局からご紹介いただきましたように、この検討会を始めましたのは第1回が昨年6月です。それ以後、この世の中の渦といいますか乱流は相当なものでございまして、特に昨年のイギリスのスタンレビューレポートあたり、それからアル・ゴアの映画ですね。それから、IPCCの第4次報告書というその3点セットができてまいりまして、これをどう書くかということで、5月末、安倍元首相がおっしゃった「美しい星50」というようなことで、いろいろな渦巻きが起きました。
 これで12回ほどやっておるわけでありますが、そもそもこの2050年といいますとかなり先でございまして、その辺が超長期としてよろしかろうかということを定めるような議論であるとか、そこにどうやっていくのかなというような議論はかなり実を言うと早く終わっていたんでありますが、その世の中の情勢が一通りおさまって、そこでの検討結果、こちらの検討結果との整合性がまあまあとれているのかなというようなところの、特に温暖化あるいはエネルギー使用といったものに関する整合性がとれているかどうか、また、しかもそれをどういう形でメッセージを出すかという、そこが非常に難しいところでありまして、そういうところを検討していくのに結構時間がかかったというのが実態でございます。
 お手元に資料をごらんいただきますと、先ほどご報告いただきましたように、最初現状認識から始まります。いろいろなことを考えてきております。その次に資料2の本文でございますが、18ページぐらいに持続可能性のリスクというようなところで今後どんなリスクがあり得るかというのをまとめているわけでございます。
 そして、2050年というのをこういったリスクあるいは現状の延長線上で描くというのもあり得るわけではございますが、一応それは共通理解として置いておいて、それでより暮らしやすくより幸せの多いような社会というものはどんなものなのかということを議論をしたというのを、1月に合宿までやりまして皆様にいろいろとご議論をいただきました。そのときに、国のあり方も一通りじゃないねというようなことで、先ほど分岐シナリオということでご紹介いただきました。本文でございますと後ろのほうの補足資料の67ページぐらいに入っておりますようなことも、実を言うと合宿のあたりでの成果でございます。  国がどういうスタンスになるかもよくわかりませんので、いろいろなスタンスを一応書き込んでおいて、どっちにいってもよければ両方とも書こうかと。決定的にだめなものはだめなのかもしれないというようなことでございます。
 そういった過程の中で書かれていないこともございまして、例えば皆さんの合宿のときの議論などを聞いておりますと、結局2050年というときに日本という国が一体何をやって生きている国になっているのかと、そのための人材の育成と教育と考え方、ライフスタイルなど、そういったものはちゃんとできているのかというのは、みんな危ないな、という認識だったんでありますけれども、そのあたりの人にかかわるようなところはどちらかというと今回は外されているということがございます。これできるんだといっても本当にできるのかという話ですね、人間がそれに追いついていくのかというようなところでございます。
 そんなことでございまして、一応最初はバックキャスティングをやると。要するに理想的な形としての2050年の社会を書いて、そこへの道筋をこちらから、バックキャスティングといっても本当に未来からこちらに向かってモデルを走らせるというのは不可能なんですが、その適当なところで中間点をポンポンと設けて、そこへ比較的短い先行のシミュレーションを走らせていこうということも考えたんですが、ちょっとそれも現実的ではなくて。結果的には、2050年低炭素社会という国環研のレポート――あれが出たのは今年ですかね――がございまして、その予備的な結果などもその議論の中に入っていたものですから。
 2050年においてまあまあ自律的にといいますか、そんな形で成立する社会像という、しかもCO2の排出が相当下がって、エネルギーの消費量も相当下がっているという社会が実現できそうだということは一応根底にあって、そこへの途中経過として、例えば2030年あたりが非常に重要だと思うんですね。それはなぜかといいますと、そのための補足資料が62ページ、社会インフラの耐用年数なんていうところにございますけれども。今、このビルはどうかわかりませんけれども、最近建てましたビル等はやはり2060年とか2070年もひょっとすると存在している。丸ビルなんか多分存在していると。丸ビルは将来のことを考えてつくったようでありますが、デザインのことしか考えないで省エネ構造になっていないビルなんていうのはやたらとございまして、そういうものは早めに壊したほうが本当はいいんだろうと思うんですが、そんなこともできないとなるとやはりかなりのイナーシャがあって。それで、未来に向かってすぐ切り替わるわけでもないということになると、やはり2030年ぐらいまでは余り現状から変わらない、かえって悪くなっていくような方向なのかもしれないといったような仮定を設けた検討も実はしてあったんでありますが、今回はちょっとまだ十分完成度が高くないということで一応見送ってございます。
 したがいまして、今この社会に向かっていきなり直線的にいくというイメージをお持ちいただくと多分それは間違いで、そういったことがわかるように62ページあたりから補足2であるとか補足3であるとかいろいろなことが書いてあって。要するに現状からのイナーシャが結構大きいよというようなことを補足という形でにおわせていただいているというような形になっております。
 こんな形で2050年のゴールそのものは国環研のお書きいただいたものと若干変わっておりますこと。それから国環研のレポートはどちらかといいますと低炭素というところに重点があって、それ以外のところに関しましては比較的補足的に記述されていると。こちらはそちらもまあまあ同じぐらいのウェイトで書こうというような感じの2050年の環境像になっているというわけでございます。
 というわけでございまして、何せ未来のことゆえ誰も本当のことはわかりません。しかも、現状を未来に延長してこれまでやってきて余りうまくいった例もないということがありまして。それで、そもそも2050年を選ぶときの議論でもそうだったんでありますが、場合によると若くして参画された委員もしくはその補助者といいますか援助者の方々は、ひょっとすると2050年まだ責任あるポジションにおられるかもしれませんけれども、多くの委員はほとんど関係ないですよね。ですから、そういう委員には関係のない2050年をセットして、それで正直な本音ベースの話ができるというようなセットアップをして、そこに若干のバックキャスティング的なアプローチというものを少し色づけをして、それであとは皆さんの思いとその分布をある形で書かせていただいたというのが今回お出しする報告書の中身みたいなものでございます。
 というわけでございまして、これに従って環境省が突っ走るんだなんて思われてもどうかなと、作った本人の正直なところでございますので、まあこれをどうやって使っていただくのか。環境基本計画の先の先の先のターゲット、常にこのあたりを若干意識をしていただきながら、場合によるとこれと全く同じではないかもしれませんが、そういった2050年といった超長期のビジョンを意識をしていただきながら、とりあえずの環境基本計画をつくるみたいな、そんな使い方になるのかなという予測はいたしますが。
 どういった形で公開をされるのか等々はこの総政部会でお決めいただくことかなと思う次第でございます。一応以上でございます。

○鈴木部会長 今年6月1日に閣議決定いただいた環境立国戦略、その中にも長期的なビジョンを考えていくというようなことが書き込まれておりますし、今いろいろお話がありましたように、2050年、今から43年ということになりますか。43年前にそれでは現状が予測できたかというと予測できるわけがない。そういう意味では非常に不確定要素、未知の要素を含みながら、しかしながら今非常に多くにリスクを抱えている。これは環境だけではなくていわば国づくりというようなことになりますが、そこで例えばGDPというような指標が本当に豊かさを示すものなのかとか、サステイナビリティというのは本当に何なのかと、いろいろな問題を抱えつつこの検討を行っていただいた。そういうところで、なおかつ余り大言壮語ではなくて確実なところを――確実というと変ですね――そこまではというところをお考えになってまとめられたのではないかと思います。
 先ほどもありましたように、新しい社会をポンとつくるわけではなくて現状からスタートしなくてはいけないというそういう難しい面もあるわけで。さはさりながら、国としての長期ビジョンを本来はどこかで考えなくてはいけない。しかし、それを考える場がないわけですね。したがって、環境省において長期のサステイナビリティに関する検討を行う、こういうようなことが基本だろうと思います。
今ご説明いただきました概要、それからこの超長期ビジョン、資料1と資料2のご説明があったわけですが、これに関しまして委員の先生方からいろいろとご意見あるいはご質問等もあろうかと思いますので、ご意見おありの方は名札を立てていただけますでしょうか。 では、福川委員からお願いいたしましょうか。

○福川委員 こういう長期的なビジョンに挑戦されるというのは大変すばらしいことなので、これをぜひさらに精査をしていく必要があるように思いますが、いくつかの点で気がついたことを申し上げたいと思います。まだ全文を読んでいないのであるいはその点大変失礼することがあるかと思います。  1つは、貯蓄投資バランスをこれどう考えておられるかという問題です。多分この状況を見ると高齢化社会になれば日本の貯蓄率は相当低下しているはずでありまして、そうするとかなり日本の金利水準は上がっている。そうすると外国の資金を入れてこれだけの投資をしないと、ということになりますが、多分そのときには中国とかインドとか高成長であると日本になかなか資金が、資本が回ってこないという状況にあります。この貯蓄投資バランスから見てこれが本当にフィージブルであるかという点をちょっとお伺いをしたいと思います。
 2つ目は、さっき人間的な要素は余り検討しなかったとおっしゃいましたが、技術革新の要素をどの程度見ておられるかという問題であります。これを今までのところで拝見するとかなり環境技術そのものの改善もありますが、産業構造を非常に変えていってサービス産業は非常に増えていく。特にIT中心にしたサービス産業がふえていくということでありますが、一体その辺の技術革新の要素、技術の力の要素をどのように評価をされたかということであります。
 さっきもちょっと安井先生も触れられましたが、大変残念ながら、日本の場合のこのITの技術革新というのはかなり遅れています。これはもうアメリカ、あるいは最近では韓国あたりのほうがむしろ進んでいるということなので、一体日本のこの技術革新の要素、これは人間の問題も絡みますが、これをどういうふうにしておられるかということであります。
 今、原子力も大いに使うということでそれも1つだと思いますし、核融合といったような新しい技術革新の要素も出るかと思います。最近いろいろ新聞紙上でも電気自動車の話が非常に出ておりますが、ハイブリッドを超えてこのころは多分電気自動車になっていて、原子力発電と電気自動車という形で解決していく可能性が非常に高くなっていると思いますので。この辺のいろいろな関連の技術開発の要素をどういうふうにされたかというのが2番目であります。
 3つ目はさっき安井先生ご自身がお触れになられた人間的な要素で、教育の問題、これは明確にはお触れにならなかったと思いますが、これは私非常に重要な問題だというふうに思います。
 最後に、こういう問題確かに、今、部会長もおっしゃいましたように、検討する場がないとこういうことでこういう総括的なものをおやりになるというのは大変すばらしいことだと思います。が、私はむしろ、これを拝見するとかなり楽観的で、余り努力しないでもできそうな感じを与えないでもない。この辺の政策的な努力がどういうふうになっているかという点です。まだ本文読んでいないのでわからないんですけれども、かなり相当努力しないとこのシナリオは実現しないんだろうと思います。
 そういうことから考えてみると、今どちらかといえば政治というのは楽観的なシナリオを国民に与えようとするわけでありますので、むしろこういう環境の面から見るともっと厳しいと。これを本当に今おっしゃるように安倍構想を実現しようと思うならば相当成長を犠牲にしなければできないのではないかと思うので、私はむしろ環境の面から見るともっと厳しい状況がくる、と。そのために何をしなければならないかという問題提起をむしろ中心にすえた提案ということのほうが必要ではないかと、こんな気がいたしております。
 政策提言、政策がどういうことをやるということの上で成り立っているのかをはっきりさせると同時に、やはり簡単にこの2つ数字がありますが、相当世界が混乱しても1%台の成長ができるというのは本当にあり得るのかどうか。むしろ環境の面からもっと警鐘を鳴らすというスタンスでこういうことをやるほうが政府全体の議論を建設的な方向にもっていくような気がいたします。
 以上、4点です。ありがとうございました。

○鈴木部会長 大変重要なご指摘をいただきました。ありがとうございました。
 それでは、長辻委員。

○長辻委員 福川委員からかなり重要なことをたくさんおっしゃっていただきましてありがとうございます。それと、安井先生にも大変なレポートをまとめていただきましてありがとうございます。
 これを拝見してというか拝聴して感じたことなんですけれども、言うまでもないことなんですが、これは完全に複雑系の世界の話でありまして、どの要素がどの要素に影響してどういう変化をもたらすか全くわからない。43年先、さっきおっしゃいましたけれども全く予想もしようがないというところなんでしょうけれども、しかし、何らかの目標がない限りどうしようもないわけでして、長期ビジョンを描くことは非常に大事だと思います。
予測と現実の間に差が生じた場合に、どう補正していくかということになりますと、やはりこれは定期的に見直しをやって、新しいそのときの変化率を見ていくというそれしかないのかと思うのです。
 それとやはり私も1つ感じたのは、人が重要であるということですね、教育ということで。今の若い世代を見ていると、先ほどの合宿の中でもメンバーの方々から危ないなという感想が漏れたということを伺いましたが、私も実にそのとおりだと思っております。これがやはり一番大きな要素になってくるのではないかという、そういう印象を受けました。
 以上です。

○鈴木部会長 永里委員。

○永里委員 まず安井先生、それから西岡先生をはじめとして、そのご努力に賞賛の辞を述べたいと思います。これからはこういうものができましたので、これを引用して私たちもいろいろと話が展開できるというのは非常にありがたいことだと思います。それを踏まえた上で私の感想と質問をしたいと思います。
 2050年の国の概念というものがそこで議論されていたのでしょうか。今のような国が存在するのか、国の概念がまったく変わっている可能性があります。それはさておき、20年も前に例えば今のインターネット社会をだれが予測しただろうかということを考えますと、全く違う技術とか全く違う社会が突然実現してくるという可能性は否定し得ないわけです。そのあたり、2050年の世界をどういうふうに議論なさったのかということです。
 ところで、超長期の食料、エネルギー、資源ということを考えた場合に、日本と外部との相互依存、もしくはフリクションが非常に起こっているわけでして、それについていかなる予測をなさったのか、いかなる手法を使ったのか。例えば資源やエネルギーを暴食する巨大化した中国の影響をどういうふうにとらえて、どのように組み込み、もしくは排除しているのか、その辺のことについてどういうご検討をなさったのか、別の言い方をするとどういうシミュレーションなさったのかということについて質問したいと思います。  以上です。

○鈴木部会長 塩田委員。

○塩田委員 安井委員を中心にこのレポートをまとめられたことに敬意を表したいと思います。
 全体のアプローチについては話を聞かせていただいて、わかりやすいアプローチかなというふうに思います。それで、私の質問と意見は、この概要の3番の国土・社会資本的側面というところに関してですが、全体としてこの問題は地球温暖化問題を背景に考えておられると思います。そういう観点からいきますと、この2ページの国土・社会的側面はこれから日本の自然をどういうふうに維持していくかとか、交通をどういうふうにもっていくかとか、あるいはエネルギーをどういうふうにもっていくかとか、あるいは住宅建築物をどういうふうにもっていくかというようなテーマを出しておられて、これは非常にわかりやすいと思うんですが、バックキャスティングの手法を採用されたということでそれに従って考えていく場合に、先ほど安井委員からご説明ありました30年ぐらい先が、2030年がどうなっているかというご指摘ありましたが、私はやはり2050年を目標にしてやる場合にも2030年だけではなく、10年単位ぐらいにそれを今とこの目標との間をフォローアップしていけるようなものにしていくほうが行政的にもいろいろメリットがあるんじゃないかという気がいたします。
 そういう関係で、目標地点を50年先として、今の現状をどう評価するか、例えばそういう面についてのそれなりにこれを裏付けるような作業がいるのかなという気がいたします。それは必ずしも絶対に必要かということかどうか私も自信がありません。ただ、これはこれで、必ずしも実際に行われていることとこのレポートが関係が薄いというのはもったいないような気がいたしまして、以上のようなことを申し上げたわけです。
 そこで、私の質問は、例えば交通というのをどういう方向にもっていくかというまとまった考え方は余りどこにもないのかもしれません。こういうものをどういう観点からまとめておられるか。そういう交通と都市の関係を全体として取り上げておられるんですが、この都市というものをここで見ますと、一律の都市として、要するに余り都市にめりはりをつけないでお書きになっているような気がするんです。東京周辺のこの地域とあるいは地方の、過疎とは言わないでも地方の割合コンパクトないろいろなことがしやすいような都市というのは交通に関しては全く様相が違うと思うんですね。当然将来のことを見通して交通のことを考えていく場合でも、その対策というのは全く違うんじゃないかと。そこで都市を直していかれるということを書いておられると思うんですけれども、その場合の都市というのはどういうものを頭に描いておられるのかということだけちょっとお伺いしたいと思います。
 以上です。

○鈴木部会長 では、木下委員。

○木下委員 まず、私は福川委員とは逆の意見なんですけれども、今回こういうもので一定の蓋然性あるものとしてこういうような、極めて魅力的な社会像を示していただいたというのはある意味では政策を考える上で非常に勇気付けられるんじゃないかなというふうに思いました。そういう意味でいくつか聞きたいことがございます。
 49ページの人口のところですけれども。私はこの人口の見通しが私などで日ごろ考えてるよりははるかに楽観的なシナリオではないのかなということが1つ。  もう1つは、人口の全体の数もさることながら、その分布が私はこういうような分布にいくというのは非常にまれなケースではないかなと。最近鳥取県に行きましたけれども、人口が60万とお聞きして、日本全体の人口の配置がもっと極端なものになるんじゃないかなというふうに思っているものですから、そういう意味で人口の総数と人口分布について、こういうふうになればいいかなというふうに思いますけれども、少し私が日ごろ考えておるよりはかなり正反対のところになるなというふうに思いました。
 もう1つ、51ページから52ページですけれども、産業の姿のところで、第一次産業についてかなり詳細に書かれております。これについての、中身は別にして、やはり全体の産業の重みから考えると、第二次産業あるいは第三次産業についての記述が少し少ないのではないかなという感じがいたしました。
 以上です。

○鈴木部会長 太田委員。

○太田委員 私としましては、福川委員さんからスタンスをどう思っているかということで、私もどちらかといえばやはりこういう、今からいろいろな形での総合的な対応を環境省としてしなきゃいけないという環境基本計画の方向のベースは、やはり警鐘を鳴らすということが1つ大きなポイントではないかと思います。
 そういう意味では4章ですかね、環境像を4つ挙げて、これは環境から見てこういうことが望ましいと。それをベースにそのときの社会経済像ということで5章を整理したというストーリーだろうと思うんです。それはそのとおりで非常にいいかと思いますが、それから出てきた結果の表現の、ちょっとこれは簡単なコメントなんですが、わかりやすさということでいろいろな指標で出されておりますが、例えば66ページには具体的な定量化なんか出されていまして非常にいいことかと思います。
 ただ、やはり1つ大きなテーマがCO2の問題ですから、やはり1人当たりのエネルギー消費を1人当たりCO2排出で、いろいろまたこれ換算が難しいところあると思いますが、一応出していただいて、現在新聞報道であります途上国を含めてやるんだったら、やはり1人当たり、途上国でも先進国でも1年当たり2トンというような数字が出ていたと思いますけれども、それに対してどういう状況なのかとか、何かそういう大きな判断ができるようなそういう指標をやはり出していただいたほうがいいかなというのが1つです。
 それから、交通につきましてはかなり難しいところもありますが、表現でちょっと気になったのは、先ほどの要旨でもございましたが、合理的な公共交通という言葉ですね。こういうのはやはりもっときちんと、本文のところに多少は書いてあるようですが、こういう合理的という中身は何かということをきちんと。環境から見た合理性もありますし、それから高齢者、子どもにやさしい、という言葉が本文にありましたから、この辺はやはりまとめるにしてももうちょっと中身を表現していただきたいというふうに思います。
 それから、モータリゼーションその他の話が当然いろいろなところで出てきますが、やはりここから現在のいろいろなモータリゼーションから変えていかなきゃいけないというスタンスはやはりきちんと出していただいて。既にいろいろな技術ができ始めているわけですね。だから、単なる自動車の交通量がどうだというのではなくて、次世代の交通として個別輸送なり私的な輸送としてトラック、自動車――今自動車と呼ばれているものですね。だから、単なる自動車じゃなくて次世代の自動車を活用した1つの交通は、やはりこれ個別の輸送がどうしても必要だと思いますので、そのときの社会はどうかと。そのときにやはりそれを利用できない、それにかわるような公共交通がやはり必要ですねという、何かその辺もう少しメッセージ性といいますか、めりはりをつけた表現のほうがいいのかなということで。
 次世代というのは先ほど他の委員からもございましたが、技術革新という意味では非常に進む話ですから、逆に進ませなきゃいけないというその方向性をいうために、将来についてやはり次世代自動車とか何か違う、現代と次世代は違うんだという表現で全体を統一していただいたほうがいいかなと思いました。  以上です。

○鈴木部会長 青木委員。

○青木委員 私もこのような試みをされたというのは画期的なことで非常にありがたいことだと思いますが、若干感じたことを申し上げさせていただきたいと思います。
 先ほど福川委員もおっしゃいましたけれども、やはり全般的に見てかなり楽観的な感じが強いという感じがいたします。もしこれを理想像ということでこれに向かっていくんだということであれば相当の覚悟が、いろいろな政策の展開が必要であろうと思います。
 私は特に国土・社会的資本的側面のところを注目して見ておりましたけれども、やはり国土で一番問題なのは安全の問題なんです。もう既に温暖化で気候条件が変わっているということであればかなり、具体的にいえば地すべりでありますとか土砂崩れであるとかというこういったのもはかなり各地で頻発するようになっておりまして、国土交通省でもかなりそういった対策を始めておられると思うんですけれども。そういった国土の安全に対する対策というのも従来の対策と異なるような方法でさらに力を入れていかなければならないと思いますが、やはりそういった自然に対して安全な国土ができ上がっているということにならないとすべての基礎が成り立たないというような気がいたします。
 それから、都市部の改革についても、これもいろいろな福川委員、塩田委員などからいろいろご指摘ございますが、都市はやはり個別性が非常に強くて、関係部局でもかなり各都市の指導というのは非常に難しくなっている。各都市の自主性というのは非常に強くなっておりますので、本当に全国各都市でこういうような状況が普及するということになるとすれば、これはかなり市民意識が発達して、市民の人たちが自分たちの都市をこういうふうに改革していくんだという意識がないとでき上がらない。50年ではかなり難しい気がいたします。
 特に都市構造で「風の道」でありますとかヒートアイランドだとかいうことになりますと、例えば街路を拡幅して街路樹もたくさん植えていくというようなことになりますので、この辺になってきますと恐らく目標は100年程度を目標にしないと難しいのではないかというような気がいたします。  それから、これは私のほうの関係ではございませんが若干心配なのは、私は父の実家が栃木の農家でございますけれども、最近行きますともう昔の純農村部の宅地化が始まっており、私の実家のほうは一生懸命農業をやってますけれども、周りはもう宅地化されております。50年後の農村というのは、恐らく今の農村――地域の連帯ができ上がっている今の農村とはかなり形態が違っているのではないかというふうに思われるわけでございます。そういった農村というものがどう いうふうになっているのか、その辺の見通しも考えていくべきではないかというふうに感じます。
ちょっと拝見しただけですので、とりあえず感じたことだけ申し上げます。

○鈴木部会長 では、中村委員。

○中村委員 2つほど印象をお話しさせていただきたいと思います。まず1つは災害、地震とか台風あるいは気候変動ということについてのリスクが余り中に入っていないような感じがするんですね。それを止めるためにどうしたらいいかということは入っているんですが。
 例えば今回の地震で刈羽原発がストップしたと。そして何百万、単位はちょっとわからないんですが、すごい電気が足りなくなってきて、今、東京電力はもうぎりぎりのところで綱渡りをしているわけですね。
 こういう全く想定してなかったようなことというのが今後、やはり災害とか気候変動のリスクの中でこの50年の間にどういったことが起こり得るか。そのときに日本という国はそれに対する保険というのをどれぐらい財源の中に入れているのかというようなことがちょっと見えなかった。そこがちょっと気になりました。 もう1つは、やはり福川委員がおっしゃったように、ちょっとこれ、大変夢のような、将来すばらしいバラ色の環境像あるいは社会像が描かれすぎているんじゃないかなというふうに思います。もう少し全体的に厳しい世界になっていくんじゃないかなという予想がするんです。
日本をとりますと、まず人口問題で、先ほどどなたかがおっしゃっていましたが、あと50年後に1億200万人、これは1.53という出生率で計算しておりますが、一昨年は1.29、昨年が1.32でちょっと上がりました。しかし、今年また1月から6月まで出生率が前年を下回っています。したがって、また1.32を落っこちるだろうというふうなことを言われています。
 今出産をしているのは団塊の世代のジュニア、この人たちが間もなく30代の後半から40代に入ってまいります。そして、女性自身の数も今少なくなってきています。こういった段階で1.53とか一点いくつと、どのような対策でやろうとしてらっしゃるのか。まさに今1.0を切る方向にいっているとなった場合に、2050年の人口はそれこそ6,000万人、7,000万人という数字が見えてくるわけですね。そういったときの日本の生産性とかというのも、最悪のシナリオを中心にもう一回考えたほうがいいのではないかというような印象をちょっと持ちました。
以上です。

○鈴木部会長 崎田委員。

○崎田委員 地球温暖化が予想以上に速く進んでいるというような報道がすごく強くなってきまして、多くの方が私たちの国がどうなっていくんだろうかということに大変関心を持ち始めている時期だというふうに思っております。そういうときに抽象論で議論するのではなく、今回のような超長期ビジョンというのをきちんとまとめていただいたということはやはり大変うれしいと思っています。
 それで、これをきちんと表明していただくときにいろいろお話があるように、何もしなければこのままでは大変将来は厳しい、でもみんなできちんとそこを意識していけば2050年というのはこういう社会があり得るだろうというそこをきちんと将来ビジョンを提示する。そしてそれに向けてどういうふうな道筋をとっていったらいいのかを一緒にみんなでつくっていこうというそういうメッセージの出し方を明確にしていただくことで、このビジョンをどういうふうに社会が活用したらいいかというのが見えてくるのではないかというふうに思っています。
 先ほど来いろいろお話があるように、これをどう活用するか、活用させていただくかというところだと思うんですけれども、もう待ったなしといういわゆる短期的な視点でも長期的な視点でもできるだけ早く動かなければいけないというところですので、こういうものをもとに、例えば各省庁で関連する審議会、国土交通省であれ農林水産省であれ資源エネルギー庁であれ、関連する審議会でこういうものをもとに、もう一度皆さんで意見交換をしていただくような場を持つ。そしてそれをこういう精神をもとに、どういうふうに今まで自分たちの考えてきた将来設計、政策づくりを考えたらいいのかということを一度考えていただく、そういうような場をできるだけ早く持つということが大事なんじゃないかというふうに思います。
 それだけではなく、市民社会の中でもともにつくるという視点が大事ですので、きちんとこういうところを盛り上げていくというところが大事だというふうに思っています。産業界ももちろんです。
 今ともにつくるというお話をしましたけれども、そういうスタンスからいえば、先ほど教育とか人材、ライフスタイル、その辺のところは余り検討を深めなかったというお話があります。その辺をこれから社会がきちんと話し合っていくというところが大事だというふうに思っております。  さまざまな技術革新というのが出てきておりますけれども、その技術を定着させるためのライフスタイル、そのハードとソフトの連携で効果を上げていく、そこが今すごく大事だというふうに言われていると思うんですが、そういうような視点を持ちながらきちんと社会全体で市民社会あるいは地域での将来計画づくり、さまざまな場面でこういうところを活用させていただく、そういう具体的なところに落とし込んでいく作業をできるだけ早くやるということが大事なのではないかというふうに感じております。
 どうぞよろしくお願いいたします。

○鈴木部会長 猪野委員。

○猪野委員 まさにこの超長期ビジョンをまとめられた関係者の方々は、いろいろなご意見がある中でこういうふうにまとまってきたというのは大変すごいことだなと思って敬意を表したいと思います。
 今回のビジョンの中で2050年を見て、大分先のようでもありますし、すぐ来ちゃうかもしれません。そういうような意味も含めて、途中の2030年という途中を置いて評価をしながらというところだと思います。
 私もエネルギー関係に携わっておりますものですからどうしてもエネルギーのことをちょっと先に見てしまいますと、やはりこれからエネルギーといいますと、将来にわたってのエネルギーの安定確保、セキュリティというのは非常に重要なことだと思っております。それからもう1つは、エネルギー問題とやはり環境問題、両方一体的に解決していくという今までの国の方向、これも非常に大事なことだと思っております。
 そういう中で、じゃあ例えば2030年ってこれから厳密にいうとあと23年後ということになりますけれども、一方で今から30年前はどうだったかといいますと、やはりこれもエネルギーの関係で石油危機とか何とかという時代があって、それで脱石油ということで始まって一生懸命、産業界も含めて国も含めてすべて努力した結果、やはり省エネルギー技術といいますか技術革新でそれをブレークスルーしてきたんだろうと思っております。
 じゃあ、これから先行きはどうなのかといいますと、仮にCO2という温暖化の部分を考えてみましても、やはりこれからは今のままではなくてさらに大きな技術革新というのは非常に大事だろうと思っております。
 そういう意味で今回本文の中、今日ちょっと目を通しただけであれなんですが、やはりエネルギー部分について少しシンプルに書かれすぎているかなという気がいたします。なぜかといいますと、例えば将来のエネルギーを減らしていこうという方向はよろしいんですが、じゃあ実際にどうやって確保できていくのかというそういう技術を含めて、例えば今回原子力のこともありますけれども、稼働率を高めてと書いてありますけれども、それだけでいいのか。それからもう1つは、各委員の方から交通の話も運輸の話も出ておりましたけれども、じゃあ運輸のエネルギーというのは実際に2030年までどうやっていくか。もちろんこれから考えていく部分だとは思いますが、やはりエネルギー源そのものが変わってくるかもしれない、非常に大きな技術革新が必要なのかなと思っております。
 そういう意味ではこの審議会だけではなくて、例えば経済産業省でやっております新国家エネルギー戦略とかいろいろなまとめられている部分があって、向こうはまた、エネルギーはエネルギーと主にやられております。そういうような部分ともう少しあわせられるところは重ね合わせてやっていくということが必要なのかなという気がいたします。
 そういう意味でこれからさらにそこら辺の部分を深堀りしていく必要もあるのかなと思っております。
 以上であります。

○鈴木部会長 ありがとうございました。極めて重要なご指摘をいろいろいただいたと思います。いろいろな面で楽観的に書いているんじゃないかというようなちょっと感じも持たれた方もあるかと思いますし。やはりこの環境省だけの問題ではなくてオールジャンパンで考えなくてはいけないところですので、その辺を個々の面でも具体的に裏づけながら検討を進めていく。
 将来像に関してはいろいろな不確定要素がありますしご苦労なさったと思いますが、いろいろなそういう意味でのご意見をいただいたということはある意味ではこの長期ビジョンが1つの議論のたたき台として成功しているのではないかと私は思うんですが。
 今いろいろいただきましたご質問あるいはコメントに対して、まず安井先生から。

○安井委員 ありがとうございます。いろいろご指摘ありがとうございます。
 まず最初に福川委員からご指摘いただきました貯蓄投資、要するにマネーフローのほうは実をいうとほとんどやっていないというのが現状でございます。それはその次、マネーフローをやるにはまずこれがないとという感じがするので、その次にどなたかにやっていただくのがいいのかなと思っております。
 それからあと、全体的に今鈴木部会長からおっしゃっていただきました、楽観的すぎるかどうかという話なんですが、基本的に超長期ビジョンというのが暗いのがいいのか、それとも、本当にすごい悲観的なビジョンを書くのがいいのか、ちょっと明るいのを書くのがいいのかというのは考えどころじゃないですかね。我々は一応いろいろ議論した結果、先ほど崎田委員がおっしゃってくださったことなんですけれども、それなりに努力をすれば何とかなるというのを書こうというのが基本的スタンスです。ですから、ちょっとそのあたりはお考えが違うかもしれませんが、基本的なスタンスはどちらかというとそうです。
 ですから、今の現状をそのまま延長しちゃうと多分ひょっとするとひどいことになって地獄にいくかもしれないけれども、まあ努力すればそんなにひどくなく、まあまあバラ色ではないけれども、ちょっとバラ色も部分的にあるんじゃないのというのを書きたかったという感じでございます。
 あといろいろと重要なことをおっしゃっていただきました。例えば国の概念が変化している――そのとおりだと思います。そのうち地球温暖化で海面上昇でも起きだすと国境という概念がどうなるかなんてすごくある意味でおもしろい話ですよね。ですから本当にそうだと思うんですが、残念ながらそれを予測してものを書けと言われるほどの自由度は我々にはないというのが申し上げたいことでありまして。いろいろおっしゃっていただいて応援をしていただいているようなんでありますが、残念ながらかなりやはり政治的文章でございます。
 というのは、要するにこの検討会の何が所掌範囲であって、何が所掌範囲でないかというのはかなり厳密にやらざるを得ないというところがあります。それがこの国の政治体制でしょうがないですね。ですから、それをぶち破れとおっしゃっていただけるなら、それはこの総合政策部会でぶち破っていただきたいということを申し上げたいというわけでございます。
例えば人口問題がその例かと思うのでありますが、私は個人的には2050年で9,000万と思っているんですね、実は。そうじゃないかなと思っているんです。ですけれども、それでしかし決定的にだめになるのかどうかというのは余り専門ではございませんからわからないということでございまして。人口問題の検討はまた別途ご専門の方がおやりいただくのがよろしいかという気がいたしまして。それが果たして我々の超長期ビジョンの主要なポイントであったかどうかというのはなかなか難しいところです。
 最後に皆様からご指摘いただいて、エネルギーが軽いんじゃないかとおっしゃられましたが、実を言うと検討の7割ぐらいはエネルギーの話をしているんです。それで、CO2の話をしていたんです。ところが、やはりそのバランスではとても書けないんですね。それで、実を言いますと、その観点からいきますと、先ほどパーキャピタで2トンというようなお話がありましたけれども、実をいうと人口9,000万だったほうがよほど楽というシナリオになっちゃうんですよ。ですから、ただそうでもないだろうということがありますから、その辺もあってどう書くかはなかなか難しいところでございました。
それからあと、同じようなことがやはり都市の構造とかいうところにも言えまして、あるいは災害の話もそうなんですが、恐らく、これもよくわかりませんけれども、それほど全国津々浦々全部安全に全く災害が起きないようにはできないだろうというのが共通理解です。ですから、要するに人口が減ってくることによって、やはり過疎化はより深刻になり、そういうところはむしろ自然林とかいう別の名前になってもう手入れはされないんじゃないかというのが共通理解なんですが、書けないですね、そういうのもなかなか。そういうような共通理解でした。
 ですから、手が入るのはやはり大都市と中堅都市。中堅都市に関しては今みたいな自動車交通を中心としたドーナツ都市ではなくて、やはり中心にコアがあるコンパクトシティというコンセプトだよねというところで。それ以外のところはどうなるのというところ、そこから先は言えないねという話になってしまったというのが現状であります。
 あとは、CO2がどうなっているかでありますが、それは2050年、国環研から出された低炭素社会にほぼ準拠みたいな格好ですから、今は10トンで7割カットぐらいですから3トンパーキャピタぐらいですね、2050年で恐らく。そのぐらいの社会になっていることが想定されているんじゃないかと思います。
それからあと、農村の話なんかも似たような問題でございまして、どうなるかなかなか難しいというところでございます。
 技術革新。技術革新はすごく重要だと思いますが、むしろ先ほど申しましたように、この国一体何で稼ぐのか。IT技術で稼ぐのか。ITは確かにアメリカ、携帯電話なんか見てますと日本の状況というのはひどいものでありますし。アメリカにとにかくいろいろなことをやられて、Googleみたいにああいうソフトでやられる。確かにそのとおりなんですが。本当に日本というのは一体何で食うのかというのは、その方向性すら明らかでないというのが共通認識でありまして。必ずしもITの意見ばかりではありませんでした。例えば今中国及び東アジアが世界の工場になっていくというのは多分1つの流れであろうと思うのでありますが、その中国が組立て産業としての工場にはなるんでありますが、例えば現状として、日本の部品を使って彼らは組み立てているという現実もあるわけですよね。ただ、そういった動きが2050年までまあもたんだろうと。ですけれども、とりあえずはそんな方向でいって、そのうち何か見つけなきゃいけないということであって、それがITかどうかに関しては必ずしも合意が得られていないという状況でございました。恐らく産業の進展を見ますと、よりバーチャルな方向に動くんだろうねという皆さん合意はあるんで、多分ITも1つの候補だろうという気はしないわけではありません。
 あといろいろとおっしゃっていただいて、一次産業が重過ぎるとかいうご指摘もいただいておりますが、これはやはり一次産業を扱っている相手が自然だからだとお考えください。それで、要するに環境省というこの枠組みの中での超長期ビジョンだとやはり自然がどうなるのかというのを扱うことが結構重要であって、そうなるとやはり一次産業が記述としては重くならざるを得ないと。二次産業はどちらかといいますと、多分対外的には稼いでいくんだとは思いますが、その話に関してはいろいろなビジョンがあって、余り確たるものは書けなかったし、またそれを書くのがどうやらここの超長期ビジョンの役割でもなかろうというようなことでございました。
 あといろいろ言っていただきました。教育、ライフスタイルは先ほど申しましたように余り述べていませんが、ライフスタイルはもっとちゃんと言わなきゃいけないんだと思うのですが、そのあたりの書き方もなかなか難しいところがございます。
 最後に、例えば原子力をどういうふうに考えているかというような話もかなり考えてはいるんですが、一応核融合は考えてません。これはできない前提でいこうという話でございます。それ以前、例えば軽水炉、今のウランの価格上昇であるとか軽水炉というものがどのくらい将来普及するだろうか。世界的に今四百四十何基だと思いますけれども、それが5,000基にでもなりますと実をいうとウランなんか足りないんですね。世界的に数年で枯渇するような状況になっちゃいますから。じゃあだめだというのは明らかであると。
 そこから先は。そこから先は人によっていろいろありまして、道は2つしかなくて。1つは再生可能エネルギーだと。そうなると恐らく電力というものに対する考え方が根底から違っているだろうと。要するにスイッチを入れれば電気がつくのは奇跡になっているかもしれないと、そういう状況になっているかもしれないと。いろいろ意見がありましたけれども、その辺は余りちゃんと書いていないというのが現実でございます。少なくとも今のように、今の世界で一番停電しない国である日本を維持できるとは思いにくいというようなことはないわけではありませんということでありまして。それはそれで皆さん意見が違うんですね。 この意見が違うのをそれではどうするんだという話になりまして、結局こういうふうにさせていただくことになっております。今、事務局から各検討員に宿題が出ております。これはもうこんなふうにまとめちゃったけれども、自分の意見は違うんだということをとにかく最後にA4紙、3枚ぐらいで書いてくれと。それをどういう形にされるか、その付属資料が常にくっついているのか別冊になっちゃうのかわかりませんけれども、何らかの形でそれぞれの検討員は個人的には自分の領域ではそう思っているということを書かせていただくということで何とか対応をとらせていただくということになっております。
 あと何かお答えしていないのありますかね。例えば中国なんかの話は、これにも出てまいりますが、ゴールドマンサックスのカーブなんか一応書き込んであるのでありますが、みんなあれを別に信じているわけでもないんですね。ですから、まああそこまではいかないだろうという意見のほうが多かったかもしれませんね。そのような感じでございます。

○中村委員 今のお話の中でちょっとお聞きしたい部分があるんですけれども、よろしいでしょうか。

○鈴木部会長 では、短めに。

○中村委員 先生が今ご説明いただいた中に、本来はこう書くべきである。例えば過疎化というのもいたし方がないと、そうなった場合は日本の国土全体はこういうふうに変わっていくだろうみたいな。それが要するに書けないとか、非常に規制がある中でこれをまとめていかなければいけないというニュアンスを私感じたんですね。ただ、私は日本の国のこれからの将来を、あるいは世界の中の日本という立場でものを考えなきゃいけないときに、書けないとか書いてはいけないというものが、これは障壁でそういうことになっているのか。ちょっとその事情が、わかる方はわかってらっしゃると思うんですが。そろそろそこを脱しないと私たちの国の、本当にこれだけの時間を使って大変皆様方にまとめていただいている意味がないんじゃないかという感じがしたんですが、どうでしょうか。

○安井委員 それはそうでないと思います。これは何もやらない、努力をしないとそうなるというのをなるべく避けたかったという因子がございますよね。それで、ある程度はそれを何とかする手もないわけではないかもしれない。我々としてはですから、ある程度こんな形といった形で、一応先ほど申しましたように若干バラ色の部分があるようなものをビジョンとして書きたかったというのが1つのあれですよね。
 ですから、そのバラ色のビジョンを書きながら過疎化のところはもう過疎化でどうしようもないというのをどう書こうかという話なんですが、それはなかなか未来予測ゆえに難しいですよね。ですから、多分過疎化の話は検討員の誰かが書くんじゃないかと思いますけれども、そういう形で対応させていただくという形でいかがかということです。
 あと、それでは十分ではないということであれば、それは例えば超長期ビジョンではなくて、超長期最悪シナリオという委員会をおつくりになったほうがいいと思います。それはあり得ると思いますよ。

○鈴木部会長 IPCCの報告書もそうですが、やはりサイエンティストというのは余り大言壮語、可能性のないことを書き連ねるということに非常に抵抗があって、やはりちょっと実質でなさる面もあるので、そういう意味ではかなり合意をとりながらこれを苦労しておつくりになって。多分この影には先ほどおっしゃったようにいっぱいいろいろな意見が、違う方々のコメントがこの後についてくることになるわけですね。
 ただ、先ほど安井先生が、委員の方々はもう2050年にはおられないのでとおっしゃいましたが、報告書はちゃんと人名入りで残ると思いますから。それなりの効果はきちんとあるのではないかと思います。

○安井委員 誤解されると困るんですけれども、少なくとも一応そういうつもりで書いております。文章は残るけれども本人は残らないから、何か自分の持っている背後霊に余り縛られなくて自由に発言してくださいという意味でございます。

○鈴木部会長 この報告はもう変更の余地はないというか、これはもうファイナルバージョンと考えてよろしいのか、それとも少しご指摘があったような面は部分的にわかりやすくするというようなこととか。

○安井委員 プラクティカルにやれるのは多分これに対する解説書を別途つくるというぐらいじゃないかと思います。

○鈴木部会長 わかりました。  もしもう少しご意見があれば。鳥井委員、簡単にご意見をおっしゃっていただければ。

○鳥井委員 ビジョンというのは予測じゃない、意図なんだと思うんですね。しかし、確実性が非常に高い問題に対して何か意図を表明するというと、その表明することの意味、目的というのをもう少し明確に持つ必要があって。どんな目的があり得るかというと、まあ国内向けに発信するという話と国際的に発信するという話と2種類あって、国内的には国民のライフスタイルに警告を与えるとか、それから政策にまつわる世論を形成するとか、政治のセクターにメッセージを出す、そんな二、三種類ぐらいあるのかなという感じがします。
 それから、世界に発信するとなると、こういうことを考えて一緒にやろうよという仲間をつくっていくというコンセンサスづくりに使うか。それとも日本はこういう国を目指しますから余り干渉しないでねという宣言をするのか、このくらいが使い道なんだろうと思うんですね。
 そこは多分もう少し目的と中身がリンクしてないと。皆さんがおっしゃったことはよくわかるんですが、全部について述べるなんていうことはあり得ないことで、もう少し目的から中身を。ですから、このビジョンの使い方になるんだと思うんですけれども、このビジョンを出発点にして、目的にあったような、先ほどの解説書みたいなものをつくっていくようなことを考えるべきかなというふうに思います。

○鈴木部会長 今のこの報告につきましては、局長からの諮問ということですから局長に対する報告ということになって、その後の取扱い、これをどう生かすかというのは検討会がまだ残っているようでもありますし、またこの総政部会の場でもいろいろとご意見をいただいて、これをやはり有効に、いろいろな問題点はもちろんご指摘いただいたようなことはあると思いますが、そういうものを検討するためのいわば非常に価値の高い下敷きになっているという、そういうような考え方で今後も生かせていただく、そういうことでよろしいでしょうね。
 安井先生、ありがとうございました。
 それでは、次の議題2に進めさせていただきたいと思います。事務局から平成20年度環境保全経費概算要求額について、皆様のお手元に資料が提出されておりますので、この説明をお願いいたします。

○弥元環境計画課長 資料3でございます。そもそも環境保全経費というものでございますけれども、政府におきます地球環境の保全、公害の防止、それから自然環境の保護及び整備に関する全体の経費を総称したものでございまして、複数の関係省庁において取り組まれております環境の保全に係る施策が政府全体として効率的、効果的に展開されるように、これは環境省設置法に規定がございまして、環境省が見積り方針の調整と含めてとりまとめを行うというものでございます。
 平成20年度の要求・要望の総額でございますけれども、2兆6,382億円というとりまとめの結果でございます。平成19年度の当初予算の相当額と比較いたしますと4,052億円増、パーセンテージですと18.1%の増ということになっております。
 20年度の要求・要望の総額につきましては実は19年度まで環境保全経費に含めておりませんでした原子力の発電所立地促進等に係る経費というものを京都議定書目標達成計画の予算等と整合をはかるために今回含めるということで行いました。したがいまして、20年度そういうものが含まれておりますので、19年度含まれておらなかったものにもしそれが入っていたらどうなるかという計算をした数字が相当額のところに書かれておる数字でございます。 内訳につきましてはそれぞれ項目ごとに金額、億円単位で書かせていただいておりますが。例えば地球環境の保全は7,751億円の要求額がある。それから、1ページめくっていただきますと、大気環境の保全は3,259億円。次の水環境、土壌環境、地盤環境の保全は9,503億円といったようにずっと続いて分類、整理、とりまとめをしておるところでございます。
 4番ということで、環境保全上意義の高い新規事項の例というのもがございますが、これは資料の一番最後のページに8本の予算を例ということでとりまとめております。それぞれごらんいただければというふうに思います。
 このとりまとめにつきましては、最初のページに日付が書いてございますけれども、10月12日の時点でとりまとまったということで公表いたしております。同じく翌週の15日に当省総合環境政策局長から財務省の主計局長に宛てて予算の査定作業の段階において配慮していただくように要請すると。例年の要請行動でございますけれども、当省の総合環境政策局長から財務省の主計局長宛に要請を行ったところでございます。

○鈴木部会長 ただいまご説明いただきました平成20年度の環境保全経費の概算要求額、これにつきましての何かご質問はございますでしょうか。
 どうぞ。

○福川委員 もしおわかりになればなんですが、先ほどから出ている技術開発、これの関連の技術開発予算というのが今年度いくらで来年度いくらご要求かという、その変化があれば教えていただきたいのと。もう1つ、この代替エネルギーというか新エネルギーというか、これの普及についてどういうふうな予算があるかちょっと教えていただければと思いますが。
以上です。

○弥元環境計画課長 今日お持ちしたのがこの概要のバージョンのみなんですけれども、実は1本1本の予算全部を積み上げた、とても分厚い資料がむしろ本体でございます。ちょっと本日手元に資料がないものですから、技術革新部分とか切り分けた金額をお答えすることができないんですけれども。その資料、必要でしたらお答えするというかお届けすることも可能でございます。

○鈴木部会長 よろしいでしょうか。
 どうぞ。

○鳥井委員 とりまとめていただく予算はどこを見てもそうなんですが、例えばこれ国土交通省が1兆3,189億円というのでものすごく環境にいいことやっている気がするんですが、そんなことは実は余りないんだろうと思って。やはり本当に環境に取り組んでいる予算というのと何となくここに紛れ込んでいる予算というのがいつもいつも必ずあるんですが。そこの真水部分というのがどんな感じなのかというようなところが出てこないとなかなか、これだけ環境に日本はお金使ってるんだよねという話になかなかなりにくいところがあるし。もっとここは環境にお金使うべきだという話も出てこないという感じがするので。少し何か集計されるときに、結構難しいと思うんですが、これともう1つ真水版というのを、独断と偏見で少しつくっていただくというようなことがあると非常にわかりやすくなると思うんですが。

○鈴木部会長 本来であれば環境関係の予算、各省庁から申請されたものをどこかの場できちんと、総政部会というのがせっかくあるんですけれども、こういうところにあがってこないわけですね。それを本当にそういう意味では各省の間の整合性をとりながら、きちんと国としての環境予算を考えていかなくてはいけないんですが。ここに出てきているのは、原子力もそのうちかもしれませんが、いわば枕詞として環境を使ったものがここへ並んでいると。キーワードとして含まれているものが並んでいるというそういう感じで。中身が大変わかりにくくてそういう意味では残念なんですが、仕方がない面もあるんですね、一たん出てしまうと。
 むしろ財務省でこの辺をきちんと、環境という面での総合的にいろいろな判断をして予算付けがされているのかどうか。これは要求額ですが、どういうものにどうつけられているのかというあたりも、これはむしろ財務省の方に伺わなきゃいけないのかもしれませんが。その辺も少し将来的にはいろいろと国として考えていくべきことの1つなのかな。全くこれは個人的な意見ですが、考えております。
 現状、今年度の概算要求額というのはこういうものであると、そういうことでご理解いただければと思います。
 それでは、これでよろしいでしょうか。そのほか何か事務局からよろしいですか。

○菊池計画官 すみません、事務局からのご連絡でございます。次回、総合環境政策部会、環境基本計画の点検結果の報告書(案)につきまして、11月9日金曜日10時から、経済産業省別館10階1028号会議室において開催いたしますので、よろしくお願いします。

○鈴木部会長 どうぞ。

○長辻委員 申しわけありません。1つだけちょっと確認したいことがあるんですが、安井先生がいるときにお尋ねすればよかったんですけれども。超長期ビジョンに関連してなんですが。例えば東海地震ですと30年以内の発生確率は87%と、国の調査研究推進本部によって出されています。あと、南海地震、東南海地震、首都直下もありますが、これらは検討の中に入っていなかったのでしょうか。かなり大きなダメージを与えますので、国の方向性が変わってしまいますから。

○鈴木部会長 多分その辺のところは、先ほどの社会資本整備の予算のところの下のところに自然災害に対する将来的な予測があって、それをそのまま多分ここでは使っているということじゃないかと思いますので。ここで特にそれを加えてということではないんじゃないでしょうか。ですから本当はその辺をどう見積もるかというのは非常に大きな問題ではあるんですね。
 よろしいでしょうか。

○長辻委員 はい。

○鈴木部会長 それでは、これをもちまして閉会させていただきます。
 どうもありがとうございました。

午前11時37分 閉会