中央環境審議会総合政策部会(第32回)議事録
開催日時
平成17年11月24日(木)14:02~17:00
開催場所
経済産業省別館9階 944号会議室
出席委員
鈴木基之部会長、大塚直委員、小澤紀美子委員、高橋滋委員、服部拓也委員、和気洋子委員、青木保之委員、浅野直人委員、天野明弘委員、石坂匡身委員、江頭基子委員、江森孝至委員、塩田澄夫委員、善養寺幸子委員、田中充委員、永里善彦委員、中野璋代委員、中村紀子委員、馬場久萬男委員、速水亨委員、松原純子委員、渡辺修委員
議事
第二次環境基本計画の見直しについて
- 重点的分野検討結果報告
- (報告分野)
-
「化学物質の環境リスクの低減」
「環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組」
「環境保全の人づくり・地域づくりの推進」
その他
閉会
配付資料
資料1 | 第三次環境基本計画における重点的分野 「化学物質の環境リスクの低減」報告書 |
---|---|
資料2 | 第三次環境基本計画における重点的分野 「環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組」報告書 |
資料3 | 第三次環境基本計画における重点的分野 「環境保全の人づくり・地域づくりの推進」報告書 |
参考資料
参考資料1 | 第三次環境基本計画 重点分野の検討方針について (第31回総合政策部会資料) |
---|---|
参考資料2 | 第三次環境基本計画目次 (第31回総合政策部会資料) |
参考資料3 | 総合政策部会委員からの御意見 |
参考資料4 | 中央環境審議会総合政策部会名簿 |
議事録
午後 2時02分開会
○苦瀬計画官 それでは、定刻になりましたので、まだお見えでない先生方が若干いらっしゃいますが、議事に入ります前にお手元の配付資料のご確認をお願いいたしたいと思います。
本日の配付資料は「議事次第」の裏の一覧に書いてあるとおりでございますが、資料1が、第三次環境基本計画における重点的分野「化学物質の環境リスクの低減」報告書でございます。
資料2が、第三次環境基本計画における重点的分野「環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組」報告書でございます。資料3が、第三次環境基本計画における重点的分野「環境保全の人づくり・地域づくりの推進」報告書でございます。
参考資料1が、第31回総合政策部会資料でございました、「第三次環境基本計画 重点分野の検討方針について」の第30回総合政策部会後版でございます。参考資料2が、第31回総合政策部会資料でございますが、第三次環境基本計画目次。参考資料3が、河野先生からの意見。参考資料4が名簿。
それから、アスベスト問題に関する政府の過去の対応と検討についてという資料もお手元にあろうかと思います。
それから、いつものとおりでございますが、現行の環境基本計画等の資料をご参考にご配付しております。
資料は以上でございますが、不足等ございましたら、お申しつけくださいますようにお願いいたします。
それでは、議事に入っていただければと存じます。鈴木部会長、よろしくお願いいたします。
○鈴木部会長 それでは、ただいまから第32回中央環境審議会総合政策部会を開催させていただきます。
まず初めに、総合政策部会の臨時委員の交代がありましたので、事務局からご紹介をお願いいたします。
○佐野環境計画課長 本日より個別の政策プログラムの審議に入っていただくわけですが、これまでこの検討に多くの総合政策部会の委員の皆様にご参画いただきましてありがとうございました。
今、ご紹介のありました委員の交代でございますが、今まで臨時委員として総合政策にご参加いただいておりました久保田泰雄前日本労働組合総連合会副事務局長が11月22日付で退任されまして、同日付で江森孝至、同じく日本労働組合総連合会社会政策局長が臨時委員に選任され、総合政策部会にご参加いただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
○鈴木部会長 江森臨時委員、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、早速、第三次環境基本計画の見直しについての審議に入らせていただきたいと思います。
主題となります基本計画の目次の第二部の第1章、重点的分野ごとの環境政策の展開、これをそれぞれの重点分野ごとに検討会をお持ちいただき、その分案をご準備いただいております。それぞれのところでご検討いただきました件が10件になります。今回から4回にわたりましてご検討いただくわけですが、順不同ということで、本日は「化学物質の環境リスクの低減」、それから、「環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組」、「環境保全の人づくり・地域づくり」、この3つの分野につきましてご報告いただくことになっております。それぞれの検討会合で座長をお務めいただきました方、そして、その文案づくりにつきまして、政策部会で主担当いただきました方からご報告をいただくことになります。
きょうは、「化学物質の環境リスクの低減」分野の検討結果などのご報告があります関係で、当該分野の検討会合で座長を務められました中杉委員にもご出席いただいておりますので、ご紹介いたします。
審議の進め方ですが、時間が大変限られておりますので、3つの分野につきまして、各分野1時間弱程度を予定しております。分野ごとにまず主担当委員から簡単な検討経緯のご説明をいただいた後、15分程度でご報告をいただき、その後ご議論いただく、こういう形で進めさせていただきたいと思います。
それでは、まず「化学物質の環境リスクの低減」の分野につきまして、主担当の浅野委員からご報告をお願いいたします。
○浅野委員 浅野でございます。第5節「化学物質の環境リスクの低減」の部分でございます。
座長を中杉先生にお願いいたしまして、3回、検討会合を行いました。この会合には専門的な要素が多いということも考慮いたしまして、環境保健部会から池田委員、白石委員、北野委員、当部会にも所属しておられる崎田委員にお加わりいただき、また、土壌農薬部会の上路委員、河内委員にもご参加いただきました。そのほか、水環境部会の専門委員である中村委員、当部会の安井委員を主な検討メンバーといたしまして、そのほか総合政策部会の先生方にも多数ご参加をいただいて検討をいたしました。
なお、このテーマの検討については、化学物質と環境円卓会議のメンバーのうちNGOと産業界のメンバーにも傍聴いただきました。
検討会合は、1回目が8月24日、2回目が9月14日、3回目が10月27日、計3回開いております。そのほか、当部会の意見交換会で主にこの分野についてのご意見を承るという機会が8月24日に設けられましたほか、環境保健部会にこの件について諮りまして、フリーディスカッションの形でいろいろなアドバイスをいただいて、取りまとめに至っております。
このテーマにつきましては、第一次環境基本計画では、環境リスクという概念を化学物質管理ということに関連させて、初めて環境政策の中で打ち出したということがございましたが、詳細な内容はそれほど明確に打ち出しておりませんでした。その後、第一次環境基本計画の期間内、平成11年にいわゆるPRTR法が公布されまして、化学物質については政策が一歩進んだわけでありますが、このPRTR法が施行されるということを受けた形で、現在の第二次環境基本計画では「多様な対策手法による取組を行うべき」ということを提唱いたしました。
ちなみに、お手元にあります『環境基本計画』の冊子の61ページ以降に化学物質関係の現計画が載っております。後ほど63ページ以降ごらんいただきたいと思いますので、お開けいただければと思います。
この第二次環境基本計画を受けまして、この5年間の間に化学物質の分野ではかなり多くの進展が見られたと考えております。すなわち化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)が改正され、リスク管理という観点からの化学物質管理の考え方が大幅に導入されたということがございますし、また、ただ人の健康だけではなくて生物についての化学物質による環境リスクの回避のための施策をとるべしという考え方が進んでまいりました。
さらにまた、これに連動するような形で環境基準の中にも生物をターゲットとする環境基準が出てまいりました。他方、ダイオキシン類対策というような、第二次環境基本計画では緊急課題とされたことについては相当対策が進んでまいりましたし、大気汚染防止法の改正によって導入されました有害化学物質管理の自主的取組という点についても大きな進展があったと考えられます。
また、先頃の大気汚染防止法の別の改正では、いわゆるVOC規制という形で、個々の化学物質一つひとつをターゲットにするのではなく、化学物質をいわば群として取り上げるというような手法も積極的に導入されるようになってまいりまして、この分野ではかなり大きな進展があったという評価があるわけでございます。ただし、そうは言いましても、なお残っている問題が多数ございまして、これらのことがこの報告では「1、現状と課題」という形で記してございます。この部分をいちいちご紹介することは時間の関係上省略させていただきますので、後ほどでもお目通しをいただければと存じます。
限られた説明の時間ですから第三次環境基本計画のこの分野の報告書は何が目玉かということを端的に申し上げるのがよろしいのだろうと思いますが、多岐にわたっておりますので、一言二言で「これが目玉だ」と言い切ってしまうことは難しい面もございます。まず、現環境基本計画の63ページをごらんいただきたいと思うのですが、現環境基本計画の60ページでは目標というところが極めてシンプルな構造になっておりまして、「リスクを評価し、社会的な合意を形成した上で、多種多様な方向でリスク管理を行う。もって持続可能な社会を構築するために環境リスクを回避する。」という目標を掲げて、それを受けた形で基本的な方向という並びになっております。
今回の報告書では、この点について従来のシンプルな形をより深めたというふうに申し上げていいのではないかと思います。資料1の3ページをごらんいただきますと、「中長期的な目標」というところで、現計画の「目標」というところを少し詳細にしたということが言えるわけでございます。第二次環境基本計画では「リスクを回避する」という言い方をしておりますけれども、今回の考え方は「リスクの最小化」という表現に変わっております。つまり、リスク管理においてはリスクをゼロにするということはとてもあり得ないという認識がこの5年間の間にかなりはっきりしてまいりましたので、それを受ける形で今回は「リスクの最小化」という表現に変えたところが大きな変化であろうかと思います。
同じ段落で、有害性や暴露情報の化学物質のライフサイクル全体を通じての把握が必要であると記述しております。この点も新しく打ち出した点でありまして、あるステージでの断片的なというか、ある断面での評価ではなくて、化学物質がつくられ、それが使用され、廃棄されるという、全プロセスを通じてのリスクマネジメントが行われなければならないという認識を示しております。
第2に、○の2番目でございますけれども、先回のこの部会でご議論いただきました、いわゆる予防的な取組方法の考え方をここでも再掲する形で強調いたしまして、迅速なリスク評価を、さらに政策へちゃんと反映させなければいけないんだと、評価のための評価ではないということを目標として打ち出したということが大きな点ではなかろうかと存じます。
ところで、もう一度、現計画に戻っていただきますと、現計画は「施策の基本的方向」という形で少し具体的なことを記しているわけでございますけれども、その具体的な方向の中で一つの大きな塊が、環境リスクの定量的評価を早期に行って、リスク低減のための取組を行わなければならないというものです。2番目は、リスクコミュニケーションをしっかり行い、それによって合意形成を推進し、事業者の自主的な管理も推進しなければいけないというもの。。3つ目は、当時かなり大きな国際的な課題になっておりましたPOPs対策が出ておりまして、これを特記する形で国際協調への貢献ということを記しているわけでございます。
これに対しまして、今回の報告書では、このうちの本体となるべきリスクの評価と管理という部分については、「方向」というところで相当詳しく記しておりますけれども、「目標」のところではそのことについては特に言っておりません。しかしながら、リスクコミュニケーションのような課題について、従前はそれを「目標」のところではなくて一歩下のところに置いたわけでありますけれども、今回の考え方は、「目標」のところに、各主体のリスク低減のための行動が重要であるということを記載するという形でこれを掲げ、さらにまた国際的な協調ということに関しても、「目標」の中に取り入れるという形で、従前は下位の「方向」という位置付けであったものを「目標」のところに大きく掲げるという改訂を加えているということがございます。
その上で、「方向」という部分でございますが、先ほど申しましたように、リスク管理の問題に関しては、4ページの「基本的方向」をごらんいただきますとおわかりいただけると思います。従前は比較的大きな見出しで「リスク低減への取組」としておりました。もちろんその中には生態系影響についての評価をしなければいけないということを特記したことが、その後の大きな進展につながったということがあるわけですが、そういうような経験も踏まえて環境基本計画の中にある程度具体的なことを記しておくことが、その後の政策を大きく動かしていくことになるだろうという認識のもとに、3の基本的方向というところにも従来以上に、例えばどんなデータを収集すべきかということを具体的に挙げてみるとか、あるいは、データを共有すべき主体はどういうものなのかということを具体的に掲げるとか、あるいは、だれがリスク評価やそれを発見する手法の開発の主体として努力をすべきなのかといったようなことを記したということでございます。
それから、先ほど申しましたように、「リスクの最小化」という新たなキーワードを取り入れました。これは「方向」という部分にも記しているわけでございますが、例えば、公文書としてはどうかなという気持ちも若干ないわけではないんですが、2番目の○のところで「常に見張りを続けながら」と記述しております。ちょっと情緒的な表現なんですけれども、要するに監視などというといかにもガチガチという感じなので、ここはウォッチングしアラームを鳴らすということが、リスクの管理ということではあるべき姿だろうと考えたものですから、あえて「監視」などというおどろおどろしい言葉を使わないで、「見張りを続けながら」という表現にしたということがございます。化学物質の管理をやっていかなければいけないということと、さらに、負の遺産の適正処理ということが昨今特にいろいろ問題になっておりますから、これらを特出しで書くということをしております。
それから、リスクコミュニケーションに関しても、ここでは「共通理解」ということで記し、さらに国際的協調という点についても、どういう協力をしなければいけないということについて具体的に記すという工夫をしたということでございます。なお、リスクコミュニケーションに関しては、従前の計画では合意形成推進の目的という点を少し強調しすぎた面があるという反省がございまして、それ以前にもっと的確な情報をきちっとお互いに共有するということの方が先ではないか、それが欠けていきなり合意形成という話にいくというのもおかしいのではないかという声がかなり強くありました。そこでそのようなことを意識しながら、今回のリスクコミュニケーションのところに記載しているということをご理解いただければと思います。
時間もあまりありません。次に、重点的取組事項についてですが、以上のような目標と基本的方向を踏まえながら、できるだけ具体的に書けるものは書いていこうということでございます。従前と違いますのは、「各主体の役割」という項目を共通の約束に従って最初に入れたということでございます。なお、この点に関しては、他のプログラムの中には「基本的方向」というところに主体の役割を記載するというスタイルもございますけれども、私どもの場合は各主体に「重点的取組」というところに期待される役割を記しております。この辺は後ほど部会全体でどうするかということでの統一を図る必要があるかもしれません。
従来の環境基本計画では、京都議定書達成及び人材育成、それから環境リスク評価等の推進、そして、多様な手法によるリスク管理、リスコミの推進と合意形成、ダイオキシン類、PCBなどへの対策、国際協調・協力と、全部で6項目を並べておりましたが、今回は、「主体の取組」を除きますと、全部を4つにまとめてシンプルに整理しております。
特に基礎的データ整備、人材育成を特出しをしないで、それはむしろ「方向」のところにまとめて入れているということでもありますから、それらを2、3のところにまとめました。それから、ダイオキシン類、PCBについては、かなり対策が進んだということがございますので、特記することをやめまして、整理をしたということでございます。それから、従前の計画で「多様な手法による環境リスク管理の推進」という項目では、「体系的にリスク管理をする」という一言で片づけておりましたけれども、今回はこの辺についても3をごらんいただくとわかりますように、相当詳細に中身を挙げておりまして、例えばキーワードを並べますと、「基準の達成・維持」、「基準の不断の見直し」、「BAT」(利用可能な最良の技術)、「BEP」(環境のための最良の慣行)、「ベストミックス」、「代替物のリスク評価」、「インセンティブの活用」、「地球規模での配慮」、「負の遺産とこれに伴う費用負担の問題」、とこのような整理をしている次第でございます。
なお、ちょっと順序が逆になりましたが、(2)の科学的な環境リスク評価の推進というところも大きな目玉でございますけれども、国際的な合意があるということを受けまして、当環境基本計画の大きな年次の設定とはやや違うんですが、国際的に2020年の目標を掲げて進めるということになっておりますので、それを特に最初のパラグラフで記しております。
それから、この「科学的な環境リスク評価の推進」というところでも、トータルな把握は必要であり、情報共有が必要であるということを記し、さらにその前でありますけれども、これまで「生物」という言い方でばさっと済ませていたようなところがあるんですが、この辺についても例えば「生体試料の中での化学物質の残留状況調査」とか「試料の長期保存」といったように、より具体的に今まで欠けていた点を強調することにいたしました。
それから、6ページ、(3)は先ほど既にキーワード風でご紹介申し上げましたので、飛ばさせていただきまして、(4)のリスクコミュニケーションでございます。ここについては、現計画では「わかりやすく知らせる」と、一言で言えばそういうことをリスクコミュニケーションの中心というふうに位置付けておりますけれども、今回はそうではなくて、皆さんが知りたい疑問に思っていることをきちっと知らせるということ、つまり、一方的に発信するのではなくて、双方向で、みんなが疑問に思っていて知りたいと思うことを的確に伝えていくことが大事であるということを記述しています。つまり、双方向コミュニケーションをより強調する必要があるということと、リスクコミュニケーションの基本はまず理解すること、それによる信頼関係の醸成であろうと考えまして、このあたりのところを強調することにいたしましたのが、従来とは少し違った方向ではないかと考えております。
なお、検討会の中で様々ご意見が出まして、特に商品のラベリングの重要性といったことが出ておりまして、こういったところで事業者に従前以上に頑張っていただかなければいけないとか、あるいは、事業者が既に取り組んでおられるレスポンシブル・ケアのようなものが、本当の意味でのリスクコミュニケーションの手段になるようにという思いを込めて、こういったことについても記したということでございます。
(5)は国際的な協調でございますが、この部分については従前より、3回目に取り上げられます国際的取組のところの議論の流れと平仄を合わせるという意味で、我が国の積極的対応、情報発信、あるいは、そこでの役割を十全に果たしていくといったようなことを強調するとともに、全体の様子を書いているわけでございます。
最後、8ページをごらんいただきますと、具体的な目標を記しております。この部分については様々議論をしたのでありますが、どういうデータだったら把握できるだろうかということを考えまして、ここにあるようなものを指標として掲げ、あるいは、目標として使ってはどうかということを提案している次第でございます。
この後、中杉座長からコメントをさらにつけ加えさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○鈴木部会長 ありがとうございました。
それでは、中杉委員。
○中杉委員 浅野先生に詳しいご説明をいただきましたので、ほとんどつけ加えることはございませんけれども、2点ほど。
まず1点目ですが、浅野先生から先ほどご紹介のあった、4ページのところの「『常に見張りを続けながら』という少しやわらかい言葉」と申し上げましたのは、アスベストの問題も出ましたけれども、いろいろな法制度の中で情報のやりとりもやはり必要だろうと考えたためです。バラバラに監視していてもうまくいかないんだろうということで、あえて、もう少し幅広く相互に情報を伝えあえるという意味も込めてこんな表現をさせていただきました。
もう1点は、5ページの2の最初のパラグラフでございます。基本的には国民と言いますか、住民の方の安心ということが重要であろうと。これは過大な管理をしなくて済むということが一つでございますけれども、もう一方で安全が疎かになってはいけないという意味で、一番重要な柱と考えておりますのは、化学物質の内容をみんながよく知って、それを管理していこうということでございます。その意味で、残念なことにまだ今使われている化学物質の中で本当にわかっているものというのはごく一部でございます。そういう意味で、5ページ目の(2)の最初のところで、産業界の方にもご協力をいただきながら安全性情報の収集のための取組を進めることになりますけれども、なかなか全部の物質について取組が進むというわけにはいきません。そういう意味で、ここで「簡易な化学物質の安全性評価手法」と書いてございますのは、簡易な方法でスクリーニングしながら、段階的に追って、少なくとも全く何の評価もしてないという物質はなくしていこうということです。そして、振り分けをして、より詳細に評価をしているものはどれかというのをまず見て、効率よく評価を進めていって、全く白地のものはなくしてということを一つの目標として掲げるということでございます。
以上2点を追加をさせていただきます。
○鈴木部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまのご報告につきまして、委員の方々から何かご意見、コメント等ございますでしょうか。
なお、本日以降、10件の重点課題についての報告書の案のご紹介をいただくわけですが、この部会におきましては、委員の方々からいろいろなご意見をいただき、それに関していちいち修文をしていくことはいたしません。ご意見をいただいたものを私どもでまとめさせていただいて、最終的にパブリックコメントにかける前段階でまとまったものをごらんいただくということになろうかと思います。
そういうことで、それぞれのところから出ております報告書が必ずしも平仄が合っているわけではありませんが、中身につきましてコメント、ご意見をいただければと思います。いかがでしょうか。ご意見おありの方は札を立てていただきたいと思います。大変中身が濃いものですから、ぱっとお話を伺ってすぐにというわけにはなかなかいかないと思いますが。
天野委員お1人だけでしょうか。
では、天野委員からお願いいたします。
○天野委員 特に表現に関する修正を申し上げるつもりはないんですが、先ほど来お2人からご説明がありまして、「監視」という言葉ではなくて「見張りを続ける」という表現に変えたと。この説明がお2人違うんですね。これは非常に日本的な表現であって、いろいろな取り様ができるように変えるというのはいかがなものかと。ここを直せという意味でなく、今後こういうたくさんの人たちが読むような内容の文章をつくるときに、どうにでもとれるような表現は、簡潔でいいという点はあるんですけれども、読み手の自由にとられないように、ちょっと長くてもいいから詳しく、正確に伝わるように書く必要があるのではないかと思っております。
これは今回の話というよりは全般に、今後の環境基本計画をつくっていく上での表現にぜひご配慮いただきたい。少し長くてもいいから詳しく、わかりやすく書くということを徹底していただきたいと思います。
○鈴木部会長 それでは、田中委員、どうぞ。
○田中委員 内容は大変結構かと思いますが、表現のことが少し気になりましたので、2点確認させていただきたいと思います。
1つは、1ページ目の一番下のところですが、「調査済み又は調査着手済みの既存化学物質」ということで、分解性・蓄積性、それから、人毒性、「じんどくせい」というんでしょうか、次に生態毒性と続いていますが、人体毒性ではなくて人毒性と言うわけですね。こういうことをちょっと確認させていただきます。
それから、2点目は3ページ目の3行目のところです。これはよく目を通してみると表現がどうかなという感じがしたんですが、「例えばダイオキシン類や内分泌かく乱作用の問題では、」と。ここで「科学的知見に基づいて想定される環境リスクと国民の不安との間に、大きなギャップが見られました」とあります。以下ずうっと続いていきまして、環境リスクに関する情報を共有するということが大事だと、しかも社会的合意の形成が大事だということなんですが。その意味で、この「環境リスクと国民の不安との間に大きなギャップが見られた」というのは、国民の側に科学的な情報を受けとめると言いますか、環境リスクを十分浸透できなかったと、そういう意味がやや込められているような印象を持ちまして、ここのところは表現をもう少し、この「ギャップ」という言葉が価値判断が強いかもしれませんので、お考えになってはどうか。
その2点です。
○鈴木部会長 それでは、今の2点につきまして、浅野委員。
○浅野委員 天野先生のご指摘は、私も正直気になっていた点でございますので、検討させていただきます。
それから、「人毒性」は、事務局、間違いないですか。
○事務局 はい、これで結構です。
○浅野委員 ということだそうです。
それから、今の田中委員の後半のご発言については、確かに「ギャップ」というのは日本語では最初から悪い評価を使っている言葉ですから、同じことを言うならもっと別の表現があるだろうというご指摘はそのとおりですので、これも検討いたします。
○鈴木部会長 「監視」と「見張り」というのは、「監視」を使った場合と「見張り」という言葉を使った場合で、こちらの施策の上での対応はどう変わるのか。
○浅野委員 印象の問題という気もしますが、さっき中杉委員が言われたようなことが裏にあるものですから、少し長くてもいいという天野先生のご指摘に従って言いたいことをちゃんと的確に表現いたします。
○鈴木部会長 ほかはよろしいでしょうか。
大変短い時間で皆さんご納得いただいてしまったんでしょうか。
では、善養寺委員。
○善養寺委員 内容ではなくて、進め方でお願いがあるんです。
これもそうなんですが、その場で内容を読んでいただいた方が、「あれ、おかしい」と感じることができるけれども、今、これを片側で読んでいて片側でしゃべられて、片側で意見を言っているものを同時に頭の中で処理することが自分にはできなくて。説明のときもなるべく時間をかけたくないから、略して説明しますとされたんですが、そのときも、原文を早口でもいいから読んでもらった方が内容が把握できるんですけれど略すために、「ええ」とか「ああ」とか「うう」とか言われて、要点だけ説明されると何が書いてあったのかがまったくよくわからなくて。
すごい早口でもいいですから、端から読んでいってくださった方が、何が書いてあるのか、その時間内に把握することができるので、そのように進めていただけないものなのかどうかとずっと疑問に思っているんです。とりあえず持って帰ってじっくり読ませていただかないと、意見は言えないような気分です。
○浅野委員 どうしましょうかね。15分で説明せよと言われて、私は15分以上使ってしまったんですが、事情をご説明するだけでも時間がかかるわけですね。さらにこれを読み上げると20分ぐらいかかってしまうんですが。確かにきょういきなり初めて資料が出てきてどうかというのは、善養寺委員がおっしゃるように無理な面もありますね。ですから、きょうここで修文をするということを決定するということではないと部会長もおっしゃっているわけです。私はどういう考えで案をとりまとめたかを説明をするのが考えて報告したわけで、読み上げることはしなかったわけですが、今後どうしましょうか、部会長。
しかし、ここで読み上げてしまうと、いかにもこの文章をここで決めるというようなことになるので、こういうことが書いてあるという説明でいいと思うんです。後にゆっくり読んでいただいて、コメントは後でまたご自由にいただいて、それを含めて最終的な修文をするということはできると思うんです。1回に3つずつやるということになると、善養寺委員が言われるようなやり方だったらとても終わらないと思うんですね。
○善養寺委員 中身の説明で15分、こういうところが要点だったということは、「この中でこういうふうに聞きとれちゃったんですけれど、どうなんですか」という議論が出てきたときに説明してもらってもいいと思います。先に「そこはこういうふうに力点を置いて書かれています」と聞くより、その辺を何も知らずに読んで聞かされた方が、同じ一般人の感覚で聞けると思っていまして。事務方から15分かけて一通り本文を話をしてもらった後に、おかしいなと思ったところで、「実はここに論点を置いています」と言われた方がいいのではないか。結局、何もわからなくなっているんですよね。
○浅野委員 私は部会長の判断に任せます。ただ、チームでどなたでもご自由にご参加くださいといって、ある程度議論してきているものですから、ものによりけりなんですけれども、委員のかなりの方が入ってもう既にお目通しいただいたものと、ごく少数の者だけでやったものという濃淡があることは事実です。それから、各部局の部会にかけて持ってきているものもあって、これも部会にもかけているものですから、そういう意味ではかなり多くの人の目にとまっているということはあるにはあるんです。
でも、これは最終的には部会の進め方の問題ですから、部会長のご判断に任せます。もう一回読めと言われれば読みます。
○鈴木部会長 じゃ、佐野さんから。
○佐野環境計画課長 事務局として、今ご指摘の問題は、二、三日前に本日の資料をお送りしておけばよかったということでございましょうから、私の担当の諸君は直前までこの文章を一生懸命詰めているんですけれども、手際が悪いということであれば、そのとおりでございますので、まずおわびすべきは事務局であろうと思います。
本日の進め方でございますけれども、それぞれのセクションでまとめていただいたところで、これから10日ほどの間に4回開催するわけでございまして、これ以上お忙しい先生方のお手を煩わすのも無理でございますので、この日程でやろうということになりますと、ここでのご説明は極力かいつまんでというふうにならざるを得ないのではないかと思います。
かいつまみましたときに、この文章を拾う格好で、ここのところとここのところがポイントでありますというおっしゃり方と、むしろまとめたときの心をご説明した方がよりわかっていただけるというのは、それぞれのまとめ方の問題であろうと思いますので、どちらのやり方をやってくださいと申し上げるのはちょっと難しいのではないかと思います。
いずれにせよ、今、部会長や浅野先生もおっしゃいましたように、とにかく初めて見て、とてもこれで善し悪しは決めがたいということであれば、部会長からお話がありましたように、この文章を最終的にまとめるのは大分後にありますので、後刻でもコメントをお寄せいただくという方法でやっていただくわけにはいきませんでしょうか。
○鈴木部会長 この文章をまとめるに当たりましても、検討会、そして部会等々でご議論いただいております。この文章を最終的に8ページか9ページのぐらいのものにされるのも、ぎりぎりまで文章の詰めをしていただいているわけです。もちろんこれをぱっと見てぱっとご理解いただける方はこの中でも非常に数が少ないというのは私もよくわかります。次回以降、あしたはちょっと間に合わないかもしれませんが、可能であれば事前に、1日前にでもメールででもこれを委員の方々にお目通しいただくような方法がとれればそれに越したことはないと思います。
きょうの議論ですが、それぞれの報告書につきまして、何が第二次の環境基本計画と変更になったのかと言いますか、第二次環境基本計画を踏まえてどういうふうに第三次の環境基本計画がつくられてきたのか、その心と大事なところをご説明いただくと。これで中身についてのご議論をきょうはいただきたいと。読み上げて文章云々というのは、今後全体の調整を図りながら、文体の統一等々も必要になると思いますし、また全体がまとまった段階でお目通しいただくこともございますので、きょうのところはそれぞれの報告書についての要点をご説明いただくということにさせていただきたいと思います。
ご意見につきましては、メールでもファックスでも、もちろん普通の郵送でも結構ですが、事務局にお送りいただいて、それを全体としてまとめる段階で検討に加えさせていただくと、こんなことにさせていただきたいと思いますので、ぜひお帰りになりましてから熟読いただいて、先入観にとらわれずに何か思いつかれたことは寄せていただければと思います。
よろしいでしょうか。
この「化学物質の環境リスクの低減」につきましては、そのほか何かどうしても気になるというようなこととか、あるいは、中身についてわかりにくいところ等がございましたら、今お願いしたいと思います。
和気委員。
○和気委員 よくよく読めばわかる部分もあるんですが、もうちょっと伝わった方がいいという観点が2点ありますので、それだけコメントさせていただきます。
特にリスク情報の発信者がだれであるかによって国民の受け方が随分違ってくるということは、特にリスクについては重要だろうと思います。そこで、多くの場合、国と産業界というようなとらえ方で、受け手が国民というような構図で書かれているような印象を受けるんですが、専門家とか学会、あるいは科学者のような、いわゆる客観性なり、合理性、科学性をある程度担保できるような主体が、環境リスク情報を発信するという、社会の中での位置付けをもうちょっと明確に打ち出してもいいのかなと思います。書き方を変えるかどうは別として、そんな心がもうちょっと強く出てほしいと思います。
と言いますのは、国民のアンケート調査結果で、「だれからの環境情報を最も信頼しますか」と、大雑把に言えばそんなようなアンケートがあって、やはり専門家の意見を信じますというようなことが多くの国民の一般的なビヘイビアだろうと、心理的なメカニズムだと私は思っております。ですから、専門家の意見というか、科学的なバックグラウンドをどうこの仕組みの中に入れていくかというところがもうちょっとあってもいいかなというような印象をとりました。
以上です。
○鈴木部会長 いかがでしょうか。この部分は横断的な部分の第9節あたりで「科学技術の推進云々」のところに強調していただくということもあろうかと思いますし、あるいは、リスクのところで特にこれの部分を……。
○浅野委員 今の和気委員のご指摘の点は十分に意識して書いてはいるんですが、7ページのリスクコミュニケーションというところに、第三者による情報評価といったようなこととか、コミュニケーションのための人材育成、これは従前から書いてあったことですけれども、書いてはおります。しかし、今、和気委員からのご指摘のような観点は十分に議論をした上でこの表現になっていますので、内容的には見落としてはおりませんが、誤解というか、よりそこが鮮明になるようにというご指摘はわかりますので、もう一度部会長ともご相談しながらこの点は検討させていただきます。
○鈴木部会長 では、そのようにさせていただきたいと思います。
そのほかいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
学会等のヒアリングもしておりますので、そういう意味で今後いかに専門家集団を活用するかというのは重要なところだろうと思います。
よろしいでしょうか。
それでは、先ほど申し上げましたように、この場でご発言いただけなかった点につきましては、ファックスもしくはメールによりまして事務局まで、今月中ぐらいをめどに、なるべく早い方がいいと思いますが、お出しいただければと思います。
本日のご意見を踏まえまして、主担当委員とご相談させていただきながら、修正すべきところを修正いたしまして、後日まとめてお示しできることになると思いますが、第三次計画の第二部、重点的分野ごとの環境政策の展開、この部分に素案として加えさせていただきます。
それでは、続きまして、2つ目の重点分野にまいります。「環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組」につきましてご報告をお願いしたいと思いますので、準備をお願いいたします。
それでは、資料2に基づきまして、大塚委員からご報告をお願いいたします。
○大塚委員 では、大塚から、「環境保全上健全な水循環の確保に向けた取組」の報告案について簡単に説明させていただきたいと思います。
この報告案につきましては、水環境部会長の須藤先生を座長とする検討会合を3回開催いたしました。専門的見地から、私以外に6名の委員にご出席を依頼いたしましたほか、鈴木会長はじめ多くの総合政策部会の委員にもご参加いただいたところでございます。また、関係省庁にもご出席いただいたところでございます。
委員といたしましては、太田委員、福井委員、眞柄委員、松尾委員、虫明委員、鷲谷委員の6名でございます。
開催の日程といたしまして、9月28日と11月9日、11月17日の3回にわたって開催いたしております。
第1回目の会議におきましては、国の関係省庁の取組状況のフォローアップをいたしますとともに、流域ごとの環境保全上健全な水循環の構築に向けた計画づくりを、今後とも関係者の意見を取り入れつつ促進していくべきであるということ。それから、地方が主体であるという基本的な考え方についての合意をおおむね得たということでございます。
第2回目の検討会でございますが、地方及び国の関係省庁の取組状況をより詳しくフォローアップいたしまして、あわせて総合政策部会の報告素案について活発にご議論いただきました。
第3回でございますが、第1回、第2回の議論を踏まえまして、指標の充実化などについて議論いたしましたほか、各論点について、この健全な水循環の分野に位置付けるのか、それとも「水環境・土壌環境・地盤環境の保全」というもう1つのところに位置付けるのかという、どこの重点分野に位置付けるのかということについて整理を行いました。また、より分野横断的な分野としてとらえるのかということについても整理を行いまして、取りまとめに至ったということでございます。
そこで、簡単に中身をお話をしていきたいと思います。お手元にございます「環境基本計画」の現行の57ページとの関係で少し変わった点などについてお話をしていきたいと思いますけれども、まずその前提といたしまして、今回の環境基本計画はすべてそうですけれども、今後の四半世紀を見据えているということがございます。それから、この水の分野につきましては、特に申し上げておきたいのは関係省庁5省にまたがる問題でございまして、先ほども申しましたけれども、各省と調整を重ねて検討を進めてきたということがございます。
それから、第二次環境基本計画だけでなく、平成15年10月に関係省庁の連絡会議としてご報告いただいております「健全な水循環系構築のための計画づくりに向けて」という報告書を踏まえて、今回の報告書案をつくっているということでございます。
それから、先ほども申しましたけれども、環境基本計画にはもう1カ所、水に関連する部分がございまして、汚濁負荷の低減のための施策を「水環境・土壌環境・地盤環境の保全」という分野とこことどういうふうに振り分けていくかということが一つの大きな課題になっているということでございます。
ポイントといたしましては、4点ほど申し上げておきたいと思います。第1に、流域ごとの特性に応じた対応を重視してきたということでございます。第2に、指標の充実を図ったということでございます。第3に、主体ごとの取組、地方とか流域の住民の役割を特に強調して、主体ごとの役割を入れたということでございます。第4に、中長期的な目標を明確に打ち出したということでございまして、水質、水量、水生生物、水辺地の4つの切り口について、新たに目標を打ち出したということでございます。
もう少し詳しく特色について、そして、現行計画とどこが違うかということについて申し上げていきたいと思います。まず現状と課題でございますけれども、自然の水循環と人為的な水循環とを有機的に結びつけた現在の水循環を前提に記述をいたしております。
それから、平常時だけでなく、洪水時も含めてこの計画の対象にするということを明確にいたしております。確かに平常時に主眼を置くわけでございますが、洪水による土砂の供給にも着目するという趣旨でございます。
それから、湖沼等につきまして、閉鎖性水域での取組も新たに加えたところでございます。
また、水生生物等の生息に対する障害を除くということについても加えさせていただいております。
さらに、地球温暖化との関連の記述、国際的貢献についての記述も加えさせていただいております。
それから、「場の視点」とか「流れの視点」というのを強調するというところは、前回と同様でございます。
さらに今回、モニタリングの在り方についての検討が必要であるということについても加えております。
次に、3ページの下の方ですけれども、2の中長期的な目標に移っていきたいと思います。ここでは、先ほどポイントとして申し上げましたように、流域の特性に応じて水質、水量、水生生物、水辺地に分けて目標を掲げているというところに特色がございます。
それから、3の施策の基本的方向に移っていきたいと思います。まず流域に共通する施策でございますが、効率的かつ持続的な水利用等の推進をしていくということを記載しております。また、河川水を取水して、利用した後の排水につきまして、地域の特性に応じた取排水系統の見直しを含めた検討をするということを記述しております。
さらに、適切な地下水管理の方策についての検討をしていくということについても書かせていただいております。また、流域全体についての総合的な土砂管理をしていくという観点が新たにつけ加えられたということでございます。
さらに、山間部、農村・都市郊外部、都市部についての記述も一層充実したということがございまして、例えば、山間部につきましては森林の水源かん養機能の向上、農村については農業の多面的な機能発揮のための耕作放棄地の発生の防止について記述をしております。森林の水源かん養機能の向上等につきましては、9月27日に行われました総合政策部会の各種団体との意見交換会の議論も踏まえております。
さらに、都市部につきましては、下水道の高度処理水のような都市内水路等の創出・保全、ヒートアイランド対策などについても言及しております。
次に、(5)の閉鎖性水域における取組でございますけれども、ここでは、干潟とか海浜とか藻場等の再生、底質環境の改善についても言及しております。
次に、4の重点的取組事項でございますけれども、これは主体別の記述をしておりまして、先ほど申しましたように、流域別の取組を重視するということと、モニタリング体制の充実について記述をしているというあたりが重要な点でございます。
8ページにまいりまして、取組推進に向けた指標でございます。この点はかなり議論をさせていただいたところでございますが、まず流域ごとの指標といたしまして、平常時の河川流量と地下水涵養量等を挙げております。さらに国の方での新たな指標を検討するということが書かれておりまして、水環境を総合的に評価する指標とか、効果的なモニタリング体制等、環境保全上の観点から、水循環の健全性を診断していく上で効果的な指標の検討をしていくということがうたわれております。この点はさらに検討していくということでございます。
それから、全国ベースの指標といたしまして、水質につきましては、環境基準の維持・達成状況を指標の一つとするということと、流域計画の作成・改定数を指標として挙げております。
さらに参考データといたしまして、水質等のモニタリング地点数をモニタリング体制という観点から挙げていることと、雑用水の利用量、湧水の把握件数を、水量の観点から挙げているということ。それから、水環境の保全の観点から設定された水辺地の保全地区等の面積を、水辺地の保全という観点から入れております。また、主要な閉鎖性海域の干潟面積につきましては、水辺地の保全の観点から入れさせていただいております。最後に、全国水生生物調査の参加人数ですけれども、これは水生生物とか親水性という観点から入れさせていただいております。
以上でございますけれども、現行の計画との違いを一言で言うとどういうことになるかということを最後に申し上げます。水質、水量、水辺地、水生生物という4つの観点から水循環の問題点、目標を明らかにしたということ。それから、水循環の取組を通じた地域づくりという新しい観点を目標にすべきだということに特色がございます。そして、全体を通じて流域ごとの取組を促進していくために何が重要かということを明らかにして、取組の主体である地方、そして、国はどのように取り組むべきかという点を強化したということでございます。
以上、簡単でございますが、私からの報告を終わらせていただきます。
○鈴木部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまのご報告につきまして、ご意見、ご質問ございますでしょうか。
では、浅野委員、どうぞ。
○浅野委員 8ページの水辺地の保全地区の面積というのは、湖沼法改正は念頭にあるんですが、ほかに保全地区というものがあるのでしょうか。湖沼法だけですと、もともと指定湖沼が狭いのでうまく数字が出てこないのではないかと少々心配はしているんですが、この点はほかに手立てがあるかどうか。これは質問です。
それから、6ページの閉鎖性水域の取組のところもよく考えて書いてくださっているなと思います。従来の計画で問題だと思っていましたのは、海につながる部分が何となく話が切れているよう印象があったんですが、今回はこれで閉鎖性水域で海というところも考えてつないでくださったので、従来よりも大分水循環の流れが出てきたなということがあります。
もう1つ、評価できるのは、最近、本当に砂浜が少なくなってしまっている。これは河川の水がどこかでせき止められていて、堆積土砂が全然管理できていないものですから、川からの砂が供給されないために、どんどん砂浜がなくなっているという現象があちこちで顕著に起こっています。ですが、これは必ずしも閉鎖性水域ではなくて、もう1つ広がっている海でも問題になっているわけです。その点が土砂管理という形で出てきているんですね。
こういう点は評価できるのですが、欲を言えば川と海のつながる部分についてはもう少し統合的なとらえ方もできるのかなという気がしないでもない。ここはコメントということで聞くだけにしておいてください。私は前回の計画のときにも似たことを言ったんですが、特に閉鎖性の有明海は深刻なんですけれども、河川状況の変化のために塩分濃度調整機能が狂ってしまっていて、そこで生態系の異変が起こっているということは否定しがたいんだろうと思います。
つまり、水循環というのは、ただ水が流れているのではなくて、そういう意味で流れ込んだ先のところの生態系にまで影響を及ぼす。そのような塩分濃度に適合する生物が生態系をつくっているということに変わってしまっているんだろうという意識を持たなければいけないので、その辺のところが今回一歩前進したなというふうに思っているんですが、ちょっと閉鎖性のところで切れちゃっていて、土砂管理は別の流れになっているものですから、問題がそこで別の問題みたいに見えてしまう。つまり、河川管理がそのまま下流まで響くという問題意識をどこかでちょっと書いておいていただけるとなおいいなという印象です。
それから、近時関心を持たれている雨水利用ですがここでは、私の読み方が悪いのかもしれないけれども、都市部の透水性舗装のような話と、雨水浸透施設というふうになっちゃっていて、もうちょっと雨水を積極的に利用しましょうというのが、ヒートアイランド対策も含めながら、最近あちこち大都市でも行われているというところがあってもいいのではないか。どこにどう入れていいかというのはよくわかりませんが、ご検討いただければという印象です。
○鈴木部会長 石坂委員。
○石坂委員 総じて大変うまくまとまっていると思いますし、思想についても私は賛成です。ただ、ちょっと気になりますのは、最後、「重点的取組事項」のところで、(1)、(2)、(3)と書いてあって、(3)のところに至ってちょっと気になったんですけれども、ソフトの面ですね。「促進」とか「調整」とか「支援」とか「調査」とか、そういう必要なことが全部書いてあって、それはそれでいいと思うんですけれども、そういうことを前提にして、あるいは、それの前提としてしかるべき保全投資とか保護投資とかいうものもあると思うんですね。それに対する言及が全くなくていいのかなという気が若干いたします。その点、何か工夫ができれば、そんなに具体的に書く必要はありませんけれども、1行か2行あった方がいいのではないかという気がいたしました。
○鈴木部会長 江森委員、どうぞ。
○江森委員 きょう初めて拝見いたしましたので、どこかに触れているのかどうかわかりませんが、8ページの真ん中あたりに「世界の水環境問題の解決に貢献します。」という部分があって、それは国の取組の一つになっているんですけれども、最近、フードマイレージということがかなり言われるようになってきていて、日本の食料の場合はカロリーベースで6割が輸入食品ということになると。ある意味では地産地消とか自給率を高めていくということも間接的に限られた水を有効に使うことにつながるのではないかと思いますから、そういった視点がどこに入ってもいいのではないかと思います。
○鈴木部会長 永里委員。
○永里委員 今の江森委員のお話は、バーチャルウォーターのことをおっしゃっているわけではないんですか。穀物が水を含むとか、そういうこと……。
○江森委員 世界で農産物をつくるときに、それぞれの国ごとに水をたくさん使っていると私は思っているんです。
○永里委員 となりますと、第2回の会合でそれを私はそれを指摘し、3回目でまた同じ指摘が長辻委員からあって、また江森委員から同じ指摘があったということだと、私のコメントは議事録に残っていますけれども、時期尚早ということだろうと思いますし、あるいは、ちょっとこれになじまないだろうということで削除されているんですが、3回にわたってこれが指摘されたということについては少し考慮された方がいいのかもしれない。
ただし、今のことについては私の単なるコメントで、事務局のご苦労はよくわかっていまして、あまり先のことをここに書けない問題もあるんだろうと思います。その点ではこの資料2は非常によく書けているということをまず申し上げます。いろいろなご意見を入れて書いてあって、すばらしいと思います。
資料1の「化学物質の環境リスクの低減」で「監視」と「見張り」という、少し情緒的な言い方が出てきましたけれども、資料2にはそういう意味では情緒的な点があまりありません。例えば「森は海の恋人」という言葉があるんですが、水の大循環を言っているわけです。これは大変ロマンでして、雨が降って、これは説明する必要はないんですけれども、山から水が流れていくときにいろいろな養分を含みながら海に流れていって、海のところで魚が育っている、プランクトンも。そういう大変なロマンがあるんですけれども、この辺のところをこの大きな水循環の中に表現されますと、少しまた味が変わってくるのではないかなと思います。
○鈴木部会長 ありがとうございました。
それでは、中村委員。
○中村委員 ちょっとお伺いしたいのは、「環境基本計画」の101ページに海洋環境の保全ということで海に関しての項目があるんですが、今回新たにこの報告書の中には海自体のことに関しましては触れていないんですね。触れていないということは、こちらの基本計画のまま維持されるというあれでよろしいんでしょうか。
○鈴木部会長 今、中村委員ご指摘の部分は、きょうの重点分野の検討ではなくて、その次の第2章の環境保全施策の体系というのが参考資料2の2ページ目にあります。新しい方の1枚紙ですね。
○佐野環境計画課長 新しい方のページです。
○浅野委員 要するに、水環境の問題についてはもう一回、別に出てくるんです、全部が。その中で、ここは特に水の循環という切り口から関係することを整理して出そうということになっているわけです。ただし、私らにもご発言があったんですが、川だけではないよねという話が前からあって、海もあるよねと言ってはいるんです。ただし、いきなり静岡県の太平洋とか、あるいは新潟県ぐらいの日本海の話を始めると、際限なく話がつながってしまうものですから、とりあえず水の循環という切り口で整理をするときは、海を取り上げても瀬戸内海とか、有明海とか、東京湾とか、そういうところの川と接するようなところまでを考えましょうというのが、きょう出てきたものの考え方なんですね。
○中村委員 その中に出てくるわけですか、全体の感じで。というのは、日本は四方を海に囲まれているわけですね。これだけタンカーその他が海外のところを行き来しておりまして、事故とか廃棄物が流されていたりとか。これから二、三年先にどういう状態が維持されるんだろうかというのは非常に大きな問題だと思うんですが、そういうことを踏まえてきちっと検討がなされていらっしゃったのかなということを……。
○浅野委員 それは非常にいい指摘をしておられると思うんですよ。つまり、海の問題は海の問題として取り上げると言いながら、ある程度沖合までいくとこれは国際的な地球環境の問題ですという話になってしまいがちですね。どこかからは日本国内の水大気局のお仕事ですねというふうになっていて、つながっている海なのにあるところから先にいくとこれはもう地球環境問題、海洋汚染問題になってしまって、あるところは国内の海洋汚染問題というふうになって。それから、瀬戸内海までくるとそれが閉鎖性水域問題となって……。
○中村委員 その辺、もう縦に切る時代ではないと思うんですね。
○浅野委員 その点は非常に重要なご指摘だと思います。
○中村委員 しかも、ここに書いてあることは、日本が発信源になって国際協力を求めながら環境問題を考えていきたいということがうたわれているんであれば、それができるような内容で。何も日本で考えるという狭める必要は時代に合ってないような感じもいたします。
○鈴木部会長 今の点は2つ問題がありまして、第二部の第1章で重点分野を取り上げている問題と、第2章で環境保全施策の体系全体にわたって書き込もうとしていることと、どういうふうに切り分けをするか、どっちへどれを含めるかというような問題も含めてこれがあることと、もう1つは、今お話がありましたように、海の問題がどこまで環境省がカバーし得るか。もちろんこれは基本計画ですから、環境省だけの問題ではないので、それぞれの担当省庁とどういうふうにその辺をすり合わせをして、国としての意思をここへ盛り込んでいくか。その辺のことは第2章の書きぶりも拝見しながらご検討いただければと思います。
○中村委員 ありがとうございました。
○鈴木部会長 今まで幾つかご質問あるいはコメントがありましたが、いかがでしょうか、大塚先生。
○大塚委員 たくさんコメントいただきましたどうもありがとうございます。
浅野委員からおっしゃっていただいた点でございますが、8ページの水辺地の保全地区等の面積については、湖沼区域だけではなくて河川区域等も含めてより広げた形で把握していくということでございます。
それから、コメントとしていただいた点については承らせていただきますが、河川管理が下流まで響いていくというお話とか、あるいは、さっきの森は海の恋人みたいな話は、私も大変共感するところが多いのですけれども、どういう形で入れさせていただけるかということについては、さらに検討させていただきたいと思います。既にある程度は入っているつもりなんですが、どういう形で入れさせていただけるかについてはちょっと検討させていただければと思っております。
それから、雨水の浸透施設についてもある程度書き込んでいるつもりではいるんですけれども、まだ足りないというご趣旨でしたら、この点についてもさらに検討させていただきたいと思っております。
それから、国の取組についてですが、「促進」とか「調整」、「支援」、「調査」だけではなくて、さらに「保全」とか「保護」も入れるべきだというご指摘でしたけれども、ご趣旨は私もよくわかるのですが、ここのところは主体として、今回、環境基本計画全体について言えることですけれども、地方の方を主にして書くというところが出てきているものですから、そこまで書き切れないというところがございます。もしよろしければ後から事務局から補充していただければと思いますけれども、今回は「支援」とか「促進」というところまで書くのが精いっぱいということでございます。
それから、フードマイレージとかバーチャルウォーターの話は、確かにたくさんお話を伺っていて、どこかに書き込めたらなという気も私自身はしているのですけれども、この「健全な水循環」の中のどこかに書き込むというのは少し難しいのではないかとも思っておりまして、どこなのかという感じがしますが、水の環境という面から見た循環ということを考えていますので、どういう形で入れるかというのはさらに検討させていただきますけれども、ちょっと今回は難しいのではないかと思っているところでございます。
あと、海洋につきましては、先ほど鈴木部会長からおっしゃっていただきましたように、「水環境・土壌環境・地盤環境の保全」のところでは残ると思いますので、これはこれで残ると。「健全な水循環」でも何か書いた方がいいというご趣旨はあるかと思いますけれども、それもまた検討させていただければと思っております。
以上です。
もしよろしければ事務局より補足をしていただきたいと思います。
○坪香審議官 「支援」のところでございますけれども、基本計画でどこまで書くかということであると思います。ただ、具体的に書けば書くほど支援主体なり投資主体なりというふうな議論になってくるかと思います。その点を含めまして、検討させていただければと思います。
○鈴木部会長 小澤委員。
○小澤委員 すみません、まとめが出てきたところで。3ページの課題のところで流域の水管理という概念が、世界水フォーラムあたりから出てきたということは承知なんですが、実際の地域づくりであちこち地域を見せていただいて、農業用水を例えばミニ発電等々で活用しようとすると5省庁で、先ほど関連のところで問い合わせをしながらやったということですけれども、規制があるんですね。
ミニ発電ということは別の省庁の管理下にあるために、農業用水でミニ発電をやっていても、それは実験システムでしかできないとか。そういう規制緩和というものはここでどう書き込んでいっているのかがちょっと読み取れなかったので。今後は都市の中の一旦暗渠にしたものは創出ということで書き込まれていると思うんですけれども、農村型の農村における農業用水、特に地形をうまく利用したものに対するものがちょっと見えなかったので。ここでは水利権の問題がどうなっているのかというあたりがどこかで入っていると、地域の方もありがたいのではないかと。せっかく5省庁でというお話でしたので。
○鈴木部会長 それでは、速水委員。
○速水委員 6ページの(4)の都市部のところの半分より下のところに、下水の高度処理水の河川還元等による流量の確保ということが書いてあるんですけれども、水道水でとられて、下水で処理されて、一気にどこかに流れていくということで、川の水が一気に減っていくというのはよくある話なんですが、下水の場合、雨水と汚水に分けた考え方をすると、ここの場合は「高度処理水等」ということで、雨水と汚水がある意味で混じって、その形で処理をしなければいけないという話になっていると思うんですけれども、考え方としては雨水は雨水として何かできないのか、それを戻すようなことはできないのかという話は地方に行くと結構聞きますし、それによって新たな川がもう1個、都市部にできてしまっているというふうな感じがあるんですね。目には見えないんだけれども、巨大な川が別にもう一つ新しくできてしまっている。
そういう意味では、水循環の中で、雨水を下水の中に入れて、自然とは全然違うところに排出しているというふうなところに対する考え方が触れられてこないとおかしいのではないかなという感じがちょっといたします。
○大塚委員 最初の小澤委員からのご指摘につきましては、関係省庁とも絡む面でございますので、規制緩和の問題ということになると思いますが、今回のものに入れるかどうかを含めて検討させていただきたいと思っております。
それから、今の速水委員のご指摘ですけれども、これは4ページの下のところが関連すると思いますが、今回、「河川水を取水、利用した後の排水について可能な限り下流での水利用に生かせる水質、水量で河川に戻すことを基本にしながら、しかし地域の特性に応じて対応する」という整理をさせていただいております。この問題は都市の問題だけではなく農村の問題でもあるわけですけれども、今の点についてはこの整理をさせていただいているということでございます。
○鈴木部会長 それでは、高橋委員と永里委員、中野委員。
○高橋委員 さっきの国の役割で国が一歩引いているのではないかというお話があったんですが、それに関連して、一つは国は政策立案機能を持っていますので、そこでこういう問題について、もっと積極的な将来的なイニシアチブを発揮するといったような形で書き込めることは書き込めるのではないかというのが第1点です。
もう1つ、国は直轄区間については非常に大きな環境上のいろいろな権限を持っているわけで、各省いろいろと直轄事業を持っていらっしゃいますから、その限りでは積極的な主体としてこの分野で発揮できるという役割は当然あると思いますので、その辺も書き込もうと思ったら書き込めるのではないかということをご検討いただければと思います。
○永里委員 大塚先生が非常に苦労なさっているバーチャルウォーターについてどこに書き込めるかということなんですけれども、繰り返しますが、日本は世界中から水を奪っているわけでして、それは穀物とか植物、それから、家禽を輸入しておりますので、日本は水を世界中から奪っているわけです。ということは、逆に言いますと、21世紀は水で戦争が起こるのではないかと言われるぐらい大変な時代になってきて、日本以外から水を持ってきてうまくやっているということは非難される要素になります。
したがって、日本としては国際貢献するんだということで8ページに書いてあります。5.の取組推進に向けた指標の4行ぐらい上に「我が国における環境保全上健全な水循環に関する取組を国際的に発信し、世界の水環境問題の解決に貢献します。」と。国際貢献することによってバーチャルウォーターで日本が非難される部分を補えるのではなかろうと思うので、その辺にうまくにじみ込ませたらいいのではないかと思います。
○鈴木部会長 中野委員。
○中野委員 私たち地域でまちづくり、いろいろなことに活動する者にとりましては、7ページの地方公共団体に求められる取組ということで大変しっかりと書いていただきまして、取り上げていただいたことを本当に大きく評価したいと思います。ありがとうございます。
○鈴木部会長 高橋委員の「国の関与」、これはここだけで決められるものではなくて、大変だと思いますが、いかがでしょうか。
○大塚委員 個人的には高橋先生の今言われたことは共感するところが多いところですけれども、今回関係省庁とも十分話し合った結果がここまでということですが、もし、もう少し積極的にということがあるとすれば、さらに検討を進めたいと思っておりますけれども、かなり議論した上でここまでというところがないわけではございません。
それから、永里委員から繰り返しバーチャルウォーターの話が出てきていますけれども、8ページのおっしゃっていただいた部分に何らかのつけ加えができるかどうかについて、少し検討を進めていきたいと思っております。
以上でございます。
○高橋委員 質問ですが、今の話ですけれども、各省が自分が持っている直轄区間の水環境について、環境配慮の観点から積極的にやるということについて何か異論があったんでしょうか。
○大塚委員 じゃ、事務局、お願いします。
○江口調査官 事務局の環境省水環境課でございます。ご指摘の国の役割の点でございますが、冒頭、大塚先生からご紹介ありましたように、水循環と言いますのは、それぞれの地域、流域によって特性が違うということで、地域、流域に応じて取組を進めるべきだというのが、検討会での共通認識であったかと存じ上げます。
その上で、7ページのところでございますけれども、1つは、真ん中の(2)の地方公共団体に求められる取組の中で、自治体、地方におきましても、国の地方組織、いわゆる出先機関と連携しながら取組を進めていくという基本認識を書いております。
そして、7ページの下から5行目以降の(3)で国の取組を書いておりまして、1つは、7ページの下から2行目、今、直轄区間等のご指摘があったかと思いますけれども、国の地方組織、すなわち実際に直轄区間として管理している国の事務所等、そういった国の地方組織が協議会のような場を通じまして、地方公共団体、関係者との連携をきちっとやっていくということ。
それから、8ページの上から7行目の関係省庁間の連携の強化ということと、8行目から9行目のところでございますが、「関連施策の調整及び地方公共団体等の関係者の調整を行います。」ということでございまして、いわゆる中央省庁、国が全く引いてしまっているというふうな書きぶりではなくて、むしろ地方と言いますか、現場を中心にこういった取組を進めていくべきというふうな観点から、今申し上げましたような記述をしているところでございます。
○高橋委員 わかりました。どうもありがとうございました。
○鈴木部会長 よろしいでしょうか。
いろいろご議論いただきましたが……。では、善養寺委員。
○善養寺委員 先ほど速水委員が言われたことは、最後に説明があったような、4ページの最後の方の「利用した水の排水については可能な限り下流で利用できるように」ということではなくて、基本的に雨水利用が推進できるような方向性を出してほしいという意味ではないのかなと。というのは、我々、住宅を設計していまして、雨水利用をする際に、雨水でトイレの処理をしたいという話になると、下水利用の負担の問題があって、お役所からそのことで積極利用を阻止されるようなことが結構あるんですね。
もともと東京は雨水がそのまま下水に流れていってしまって、合流になっているところも結構あるので、雨水そのものが使われずに下水に負担がかかるよりも、雨水をためて使っても同じ下水処理場に対する負担ではないかということで、幾つかそれで通してしまっているところもあるんですが、それはかなりつらい折衝をしなければいけない部分がありまして、一般の方々ですと、折衝に勝てなくて、雨水をトイレに利用することができないということがあります。
このままですと、中水利用のようにしか読めないので、もっと市民レベルで雨水利用を推進できるような言葉にしてほしいという意味ではなかったのかなと思ったんですが、その辺、速水さんに聞きたいなと思います。
○速水委員 今言われた意味も当然あります。雨水がそのまま下水になっていくというふうな観点を少し別にとらえてみたらどうなんだろうという意味だったんですね。下水でいってしまうと、薄まろうが何しようが汚水であることは間違いないので、いろいろな形で処理をしていかなければいけない。今言われたような雨水だけを考えた場合には、それをその場で利用していくこともあるでしょうし、雨水を混合できていくような下水を雨水を分離して使う、動かすような形になれば、長い地下の川をつくるよりは、もとあった川に戻していく仕組みによって、河川の水循環をより活発にさせる方向ができるのではないかというふうな意味で、水利用の中で雨水というものをもう少し特化して考えられるのではないかなというふうな意味です。
○浅野委員 あまりしつこく言いたくないけれども、いいですか。
○鈴木部会長 これはきりがないと思いますが、先ほど浅野委員も雨水利用、汚水利用についてお話になったので。
○浅野委員 今の話は「考えてください」ぐらいにしておきませんと。つまり、分流式は私も大賛成なんですけれども、都市部の場合は面源負荷が結構高いものですから、そう単純に分流式で川と言われると川も困るのではないかなという面もありますから、それも大変だろうなという気がします。
それよりも先程のバーチャルウォーターの話は、ものにならないと思いながら、総合指標で使えないかと心密かに検討しておりますので、そこでどうするかという問題はあるんですが、何かその手のものが使えないかなという議論を一方でしております。そのことだけ申し上げておきます。
○大塚委員 雨水の生活用水としての利用等については、4ページの下から6行目から5行目にかけて書かれておりますので、そこで書き込んでいくつもりです。しかし、先ほどおっしゃっていただいた議論が全部入っているかどうかという問題はあろうかと思いますけれども、一応そこに書き込んでいるつもりでございます。
○鈴木部会長 いろいろご意見をいただきました。
私もちょっと気になったのは、閉鎖性水域の問題がここで取り上げられて、これは非常に重要なことなんですが、せっかく流域管理と言いながら、流域の末端としての閉鎖性水域。閉鎖性水域も含めた流域管理をそろそろ打ち出してもいいのではないかというところですね。
もう1つは、バーチャルウォーターも日本で試算すると大体500億トン以上なんですね。今、農業用水がやはり500億トン以上あって、農業用水を休耕田に使わないかわりに、外の水をもってきている。この構図は水循環で取り上げるのかどうか、農水省と一度戦って、水利権の問題も含めてどういうふうにするか考えてみてもいいのかなと。もちろんエスプリシットに書けないと思いますが、何らかの形でこういう機会に議論をしておくのもいいのではないかなという気がいたします。
雨水につきましては、ここで、平常時の問題ではなくて、洪水時もいろいろ考えるということで、せっかくそこまで広げてありますから、雨水をおおっぴらにお使いになるというのは全然問題がない話になってくるでしょうから、国土交通省とこういう機会に大いに議論をしていただく。そういう意味でこの基本計画の設定をお使いいただくのがいいのかなという気がいたします。
大体そんなところで……。江頭委員。
○江頭委員 ちょっと後先になっているかもしれないんですが。すみません、風邪を引いていますので、声が……。
内容的にかなり具体的に書かれて、さらに最後の方に各主体の役割がきちっと押さえられて書いてあります。特に私がよかったなと思うのは、国の取組のところが、前は大まかに書かれていたんですが、具体的に何をしていくと。ここのところで分流式、合流式をどうするかなんていうことを議論する必要はないと思うんですね。それぞれの地域において問題があったら、それについて教えるとか、知ろうとかいろいろなことをするのが国だと思うので、今回の書き方はかなりいいなと思っておりました。
○鈴木部会長 ありがとうございました。
どうぞ。
○大塚委員 先ほど部会長からおっしゃっていただいた流域の末端としての閉鎖性流域という点は、6ページの下から6行目、7行目あたりに書き込んでいるつもりでございますが、明確性が欠けるということでしたら、また検討したいと思います。その視点は一応入れているつもりでございます。どうもご指摘ありがとうございます。
○鈴木部会長 1番の流域に共通する施策と、5番の閉鎖性水域と、何となく項目が分かれていたものですから、そういう印象を与えたという意味です。
まだいろいろとご意見あろうかと思いますので、先ほどと同じようにファックスまたはメール等々で事務局に追加のご意見をお寄せいただければと思います。
では、どうもありがとうございました。
もう1件ございますが、幸い予定の時間よりも少し早めに進んでおりますので、45分まで休憩をとらせていただきたいと思います。
(休憩)
○鈴木部会長 それでは、再開させていただきたいと思います。
本日の最後の報告分野となります。これは横断的な分野に属します第8節に対応していますが、「環境保全の人づくり・地域づくりの推進」ということで、このご報告は主担当をお引き受けいただいております田中委員からお願いいたします。
○田中委員 田中でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
「環境保全の人づくり・地域づくり」の分野でございますが、9月以降4回の検討会合を行ってまいりました。9月7日、10月7日、11月4日、11月17日という4回でございます。
また、ご参画いただきましたメンバーでございますが、総合政策部会の小澤委員、崎田委員、速水委員に加えまして私、さらに自然環境部会から岡島委員にもご参画をいただきました。これ以外に、委員からの任意の参加ということで藤井委員、渡辺委員、あるいは、青木委員、江頭委員、塩田委員、善養寺委員、筑紫委員、中野委員、三橋委員、森嶌委員と、非常に幅広い各委員のご参加をいただきました。
この4回の会合でございますが、1回目につきましては、この分野で論議すべき論点、課題。それから、第2回会合では、その考え方と具体的な取組内容ということで、具体的な施策方向。それから、3回目では、それを受けまして、この報告と言いますか取りまとめのたたき台。そして、第4回目の検討会でこの報告書案の審議。こういう形で4回の、短い期間ではあります検討会合でここに至ったわけでございます。
この間、ほかの委員からもご助言をいただきましたけれども、すべてここには反映できていない部分もあるかと思いますが、一応そういう検討会合の中での議論を踏まえてこのような形で取りまとめさせていただきました。
以上が検討の経過でございます。
内容でございますが、資料3をごらんいただきたいと思います。かいつまんでご紹介させていただきますが、先ほど委員からもお話がありましたように、わかりやすく説明をしてほしいということもありますので、流れに沿ってご報告をさせていただきます。
まず、1番の現状課題ということでございます。近年の動向ということで、環境問題に関する知識や関心は高まっているけれども、具体的・積極的な行動に結びつく、あるいは、暮らしぶりを変えていくまでにはまだ至っていない。逆に地域社会のあり方が一人ひとりの暮らしぶりにも影響を与えている。この基本的な課題として環境保全の人づくりと地域づくりを一体的にとらえて取り組む必要が出てきているのではないか。これが第1の認識でございます。
続いて、都市域では人の集中による環境負荷が問題になる。他方では、高齢化や人口減少ということで、環境を維持・管理する活動が難しくなってきている。また、自然と触れ合う機会が減少する、生活や経済が健全で恵み豊かな環境があって成り立っていることを実感しにくくなっている。このような側面も出てきているということです。
他方、意識面でございますが、社会貢献活動とか自然と触れ合う生活を指向する人も増えてきておりまして、後ほど紹介させていただきますが、様々な価値観が出てきております。こういうことの中で、地域では環境保全に取り組む多様な主体が働きを強めて持続可能な地域づくりを進めるということが必要になってきている。
これが現状と現状の課題の認識でございます。
これを踏まえまして、2番の中長期的な目標というところでは、最初の2行ですが、これがこの分野での大目標ということになろうかと思います。持続可能で、豊かな、かつ、多様性を持った地域の集積として、環境的側面、経済的側面、社会的側面が総合的に向上する持続可能な日本社会を生み出すことを目指していくと。
その上で、そこに向けての取組の段階として、一人ひとりが環境や持続可能な社会づくりに関して学び、体験する。環境問題に関心を持ち、それぞれの立場で具体的に行動するようになることを目指していく。そのためには、すべての国民が体験を通じて環境について学ぶ機会を持つこと。折にふれて自然と触れ合うことによって環境との関わりについて考えるようになること。こういうことを進めていくということです。
次のパラグラフでございますが、環境問題について自らの問題と考え行動する国民と多様な主体が様々な形で連携をする。それから、地域の風土で文化的遺産などを踏まえて、地域の環境について知り、それを保全し活用することを通じて、そうした取組に取り組んでいく。そのことを通じて地域環境を持続可能なものにしていく。また、それを担う住民の力を統合的に高めていく。つまり、地域の環境保全と取り組む住民の力が統合的に高まっていくような関係、これをここでは「地域環境力」と称しておりますが、「地域環境力」を高めることによって、地域の特色を活かした、独自性を持った豊かな地域をつくっていく。このような具体的な取組が各地域で着手されることを目指す、このような目標にしております。
めくっていただきまして2ページでございます。以上のような中長期的な目標に向かっての基本的な方向ということで、3つの方向を掲げております。1番目が(1)、環境保全のために行動する人づくりという課題で、この方向で整理しております。まず、人づくりでございますが、一部の環境保全の意識の高い人による活動だけではない、できるだけ多くの人が環境を自分たちの暮らしを支えているということに気づき、日々の暮らしの中で少しずつでも行動していく。そうした持続可能な地域づくりに参画させていくことが必要だと。
このような認識の中で、例えば幼児教育から高等教育までの教育機関、あるいは、社会教育施設、地域のコミュニティ施設、あるいは、農業協同組合、森林組合、漁業組合等の事業を基盤とした地域の組織、それから、NPOや個人あるいは事業者、こういう様々な地域の主体が縦横のネットワークをつくって、家庭、学校、職場、地域などあらゆる場面において、身近なところで、より質の高い環境教育の機会を提供する。こういうことを基本的な方向にしていきたいということでございます。
具体的な取組をそこに箇条書きで幾つか書いてございます。アとしては、教育機関における環境教育・環境学習の推進でございます。年齢や教育目的に応じた環境教育の推進が重要であるということです。
イとして、職場における環境教育ということでございまして、職場においても幅広い観点から環境教育、従業員が事業活動と環境の関わりについて理解する等の取組が必要であるということです。
ウとしては、家庭や地域など幅広い場における環境教育ということで、学校や職場とも連携して地域の資源、社会教育施設や公園緑地等の学習資源も活用しながら、環境教育を進めていくということです。
エとしては、指導者の育成ということでございます。環境教育を中心になって行う指導者を育成する。
オとしては、各主体の連携、役割分担ということでございまして、様々な各分野の専門家、教育機関あるいは専門機関が、学校等と連携、協力しながら、役割分担の下で進めていくということです。
カとしては、情報提供ということで、環境に関する情報に加えて、教育プログラムや指導者に関する情報にも容易にアクセスできるような仕組みをつくるということ。
キとしては、「国連持続可能な開発のための教育の10年」ということで、特に途上国等と先進国との関係を含めて教育を進めていくということでございます。
3ページにまいりまして、大きな方向の(2)として、環境保全の組織とネットワークづくりということでございます。環境保全の地域づくりを進める上では、そうした組織やネットワークをいかにつくっていくかということが大事だということでございます。行政だけではなくて、既存の地域組織やNPO等の広い意味での公的な組織、あるいは、事業者、地域の事業を基盤とする、先ほど申しました農業協同組合等の組織といった、多様な主体による取組が重要であるということでございます。
その取組の例として、例えば里地里山等の自然環境の管理とか、水路の維持管理、あるいは、リサイクル活動といったものは、地域コミュニティによって担われてきたということ、あるいは、そうした地域組織や地域の事業を基盤とした組織などが環境保全の取組をさらに促進していく必要があるということでございます。
一方で、地域住民の全員の参加が期待できない、あるいは、広域の問題といったようなところでは、NPO等のような目的を共有する者によって構成された組織が効果的な場合もあるということでございまして、今度はむしろ専門性を有する、あるいは、広域的な課題についてはNPOのような様々な主体がそこに関わることで地域の取組を推進するという役目も期待されるということでございます。
以上のような形で、多様な主体が場面場面に応じてパートナーシップやネットワークを構築して活動していく。それぞれの役割と責任を明確にしながら、信頼関係を構築し活動するということでございます。
そのための具体的な取組ということで、アとしては、様々な主体の協働ということで、多様な主体がその特色を活かしつつ協働していくということでございます。
イとしては、活動の中心となる主体づくり、特に担い手となる主体づくりと、そこに多くの主体が参加するということでございまして、そのためには地域において積極的に環境保全に関わる取組を中心となって進める人材、あるいは、専門的知識を持つ人材が必要であるということで、女性や若者、あるいは、最近は高齢者といった、多様な人材の活用が期待されるということでございます。
めくっていただきまして、ウでございますが、活動の基盤、あるいはビジネス的手法などの手段の活用ということでございます。環境保全を持続的に進めるためには経済的な基盤が必要であるということでございまして、そのためには、地域コミュニティの力も使いながら、収益的事業として行う、いわゆる「コミュニティ・ビジネス」として事業を展開していく。あるいは、そのような運営能力、運営手法を取り入れるということで、コーディネート能力やプロデュース能力、経営能力、こういったものの人材づくりが必要になってくるのではないかということでございます。
こういう方向をア、イ、ウという形で3つにまとめております。
それから、(3)、地域の特長を活かした地域づくりということで、特に地域の資産あるいは環境資源等を活かして、環境負荷の少ない、同時に豊かな社会生活を送ることのできる地域づくり。つまり、地域に存在する環境資源の保全と有効活用を統合的に進めていく。これは特に次に書いてあります農林水産業というようなものが考えられるわけですが、農林水産業のような環境と密接に関係する産業、あるいは、各地の歴史的資産や伝統、あるいは風習といった文化でございます。さらに、「もったいない」といった昔ながらの考え方、あるいは、「スローライフ」や「LOHAS」といったような新しい考え方、こういうものを暮らしの中に活かしていくということでございます。
また、地域ぐるみの事業活動に着目するということで、具体的な取組を少し書いてございますが、環境的側面の向上に加えて、経済的側面からは地域が経済的に自立していく、あるいは、主体間の連携によって社会的側面をも統合的に向上させていくという取組。環境と経済の社会との統合が必要ではないかということで、例えば地域通貨を用いた3R活動、あるいは、環境配慮商品の販売、あるいは、地域の環境資源を保全しながら活用をするエコツーリズムやバイオマス利活用等の取組、このようなことも書いております。さらに、「田園生活」、あるいは都市と田園、あるいは農山村との交流ということで、都市の住民が自らの生活を見直す機会とするとともに、農山村の地域活性化にもつながるような、都市の住民と農山漁村をつなぐようなコーディネートも必要であるということでございます。
具体的な取組として3つの課題、まず1つは地域の環境に係る情報の共有ということでございまして、多様な主体が、環境に係る状況の正確な情報を共有していく必要があるということでございます。
次に、5ページですが、2つ目の取組の方向として、様々な主体が参画した環境保全の地域づくりのための計画づくりということでございます。特に地域の多様な主体が参画して、その間のコミュニケーションが図られつつ、持続可能な地域づくりに向けての計画策定といったことも必要だということです。
ウとしては、地域に存在する資源の保全と活用ということで、このあたりも繰り返しになりますが、地域の様々な環境、資源を持続可能な形で有効活用し、それを地域ぐるみで展開していくということでございます。こういう方向で地域の特長を活かした地域づくりを進めていくということでございます。
次に、5ページの中段からですが、重点的取組ということで具体的に何をしたらいいかということで整理をしております。まず、(1)各主体に期待される役割というところでは主体ごとに記述をしております。例えば、国民の役割、地域における様々な環境保全活動に関わる取組とか、地域の計画策定の参加、あるいは、日常生活への環境配慮とったようなこと、それから、国民ではなくてむしろ専門的知見ということで、専門的知識を有する者の役割、あるいは、地域の各種団体の役割ということで、ここもより詳しく地域のコミュニティを支えてきている町内会や自治会等の組織を想定した既存組織、あるいは、公益法人を含めNPO等の組織という形で分けて整理しております。
次の6ページでございますが、さらに各主体の取組の中で教育機関でも重要な役割が期待されておりまして、特に教育機関においては環境教育の積極的な推進ということが基本になってまいりますので、例えば学校における環境教育に関する全体的な計画、あるいは、各教科においての環境教育の実施、それから、総合的学習を活用した横断的な取組といったようなことを整理しております。
中段では、事業者ということでございまして、特に事業者全般ということでは、従業員等に対する継続的な環境教育、あるいは、国民に対する環境教育等の機会の提供ということでございます。
また、農林水産業では基盤となる山とか農地といったもの保全し、活用していく事業活動といったことを整理しております。
地方公共団体では、地域の環境に関わる情報の収集や整理、あるいは、持続可能な地域づくりに向けた計画の策定、環境教育に関する計画の策定といった課題を整理しております。
以上が各主体でございまして、7ページからは、具体的取組、重点的取組の国の取組ということで(2)にまとめております。ここが国が主体として担うべき課題ということになるかと思います。ここもかなり丁寧に書いてございまして、国としては、多様な主体と協力しつつ以下のような取組を行うということ。さらには、これまで述べてきたような人づくり・地域づくりが、それぞれの地域が主体性の下で、独自性を持って進められるように支援をしていくと、この2つの方向を整理しております。
その上で具体的な国が行うべき取組ですが、地域全体で行う環境保全のために行動する人づくりということでは、NPOや事業者等と連携して質の高い効果的な環境教育が行われるように推進をしていく。あるいは、学校や家庭・地域コミュニティで環境教育を行う際の教育プログラムや教材の提供に努める。あるいは、環境保全の人づくりに関して、経験に基づく意見を交換する場や知見を共有する仕組みを考えていく。
あるいは、その下にありますが、環境を考慮した学校施設、いわゆるエコスクール等の整備・改修を住民や技術者の参加を得て行う。あるいは、この施設を活用することによって、地域ぐるみの環境教育を促進していく。あるいは、人材認定事業等、教育現場への周知等を通じて環境教育の指導者の育成を進める等々の課題をここに整理しております。
それから、イの環境保全の組織、ネットワークづくりでございますが、ここは主として様々な手法や情報の提供ということが課題になろうかと思います。ネットワークづくりを進める人材の育成の促進、あるいは、コミュニティ・ビジネスのように収益事業として事業を行うことも含めた財務管理やマーケティング等の経営的側面、組織面の側面を含む事業運営の方法、こうした手法についての情報提供、あるいは、方法や手法の習得機会の拡大といったことでございます。
それから、地方の環境パートナーシッププラザを通じて、地域における多様な主体のネットワークづくりの場を提供していく。あるいは、地方の支分部局を活用しながら、多様な地域の主体と協働していくための整備を行うということ。
それから、7ページの一番下に書いてございますが、環境保全に関する活動に対する資金面を含めた支援ということで、例えば課税の特例措置の活用、あるいは、8ページにまいりまして、地域の事業を支援する中間支援団体やファンド等の組織や事業に関して情報を収集・整理して提供する。あるいは、構造特区における地域通貨の発行条件の緩和、こういう条件整備も図っていくということでございます。
それから、3つ目の国としての取組の地域の特長を活かした地域づくりということでは、特にここでは持続的な地域づくりに関して成功事例とか、持続可能な地域づくりを進めるための効果的手法について収集・整理し、分析をする。それから、その情報提供も行う。あるいは、実践的活動に対するモデル的な支援を行う。あるいは、環境に関する情報の提供や、国が持っている地域環境に関する情報の提供といったようなこと。それから、補助対象対策等の転用手続きの迅速化を通じて地域の施設の活用等を促していく。
あるいは、次のパラグラフにございますが、エコツーリズム、エコタウン事業、バイオマスタウン構想への支援といった取組を行うということでございます。
最後、5番のところでは、取組推進に向けた指標ということで、主に人づくりに関する指標としては、体験型の環境教育・環境学習に参加した国民の割合といったようなものを競っていてはどうだろうか。主に地域づくりに関する指標としては、持続可能な地域づくりに向けた考え方や進め方に関する計画や方針の策定状況、あるいは、策定している地方公共団体の割合、あるいは、環境保全のための取組に参加した国民の割合、このようなものを取組推進に向けた指標としてはどうだろうかということを考えております。
少し長くなって恐縮ですが、以上の内容でございます。よろしくお願いいたします。
○鈴木部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまのご報告につきまして、ご意見がございましたら、お願いしたいと思います。
では、今度は向こう側からまいりましょうか。馬場委員からお願いいたします。
○馬場委員 いろいろなことがたくさん書いてあるのでちょっと整理はしたんですが、特に6ページの教育絡みのところがよくわからないという感じがしたのでお尋ねしたいと思います。まず、教育機関というのがありまして、事業者というのがありまして、地方公共団体、そして国が出てくるんですけれども、教育の主体はだれだということになるんですね、教育を行うのは。例えば、7ページの国のところの中で「環境を考慮した学校施設の整備・改修を、住民や技術者の参加を得て行うことを促進します」というのが国の方に書いてあるんですね。
日本で普通、教育というのは、少なくとも小学校や中学校は地域の自治体でつくられているはずなんですね。これは、国で学校施設の整備を支援するという前に、地域がやるということが出てくることが普通じゃないかと思っておりますけれども、教育というものを扱う主体、関連というのが各所にいろいろ書いてあるけれども、全体としてよく見えないんですが、どんな認識でお書きになったんでしょう。
○鈴木部会長 では、中野委員。
○中野委員 全体的にものすごく細かく、落ちのないように書いていただいているんですけれども、4ページの3番、地域の特長を活かした地域づくりの真ん中辺で「もったいない」といった昔ながらの考え方や」と、そこまで書いていただいているんですけれども、私たちいろいろ環境学習をする中で、長年地域で実践してこられたお年を召した方たちの知恵というか、知恵袋というんですか、「なるほど」と思うことがたくさんありますので、この「もったいない」、そこでやめておかずに、もうちょっと長年の方たちの知恵も書いていただけたら、もうひとつうれしいかなと思います。ありがとうございます。
○鈴木部会長 善養寺委員。
○善養寺委員 そのことで言えば、女性、若者、今回は知見や技能を持った退職者も含めてと出ている部分が、一番働き盛りの人を抜いて指摘されているのが結構ユニークだなと思っています。これは前の部会のときにも言ったんですが、漁協、農協という地域の基盤でやっている組織なんです。NPO以外に公益法人みたいなものは、なしというふうに考えているのか。これだけいろいろ具体的に例を挙げているんだったら、いろいろな専門職の公益法人がありますので、NPOや公益な活動をする法人、NPOというのは非営利団体で、もう一つそうではない団体として、社団とかあるんですが、それがなくなっちゃうという前提で抜いてあるのか。組織のあとに個人がきた方がいいのかなという感じがしています。
それから、これから事務局が答えるんだと思うんですけれども、「環境を考慮した学校施設の整備・改修、住民や技術者を参加させて」ということでうたってくれるのはすごいありがたいことで、改修に対して国が今までお金を出さなかったので、新築に関しては促進されたんですが、改修・整備がなかなか促進されないで、新しいところと古いところ、古いところは一切手をつけず、新しいところだけは国の補助金で建て替わるというような状況が続いてきましたので、環境配慮をしたエコ改修もなかなか進んできませんでした。今年度から一部、お金が環境省から出てきたことでやっと自治体もエコ改修という考え方で動き出したので、そういう意味では国が音頭を取ってもらうことで、地方が動くということもありますので、ここはすごくうれしいことだなと思っています。
それから、期待される教育機関というのは、直接的な地方の問題、地方の方々を意味していて、国はそれをバックアップするという意味で、国の取組というのを書かれているんだなというふうに思っております。
○鈴木部会長 江森委員。
○江森委員 全体としては非常に具体性があっていいのではないのかなと私は思いました。私ども連合で考えていることとそんなに違わないなということがあるんですが、若干、私どもが取り組んでいる取組について紹介させていただいて、もし補強できるところがあれば補強していただきたいと思っています。
1ページの上から4行目の「環境保全の人づくりと地域づくりを一体的に捉えて取り組む必要がある」と、まさにそのとおりだと思います。そういう意味でいうと、環境保全は一部の専門家だけがやるわけではなくて、地域の中に人が住んで、環境というものも一緒にやっていくということが重要だろうと思っています。
実態的にいうと農林水産業、こちらに書いてあるとおり、耕作放棄地がどんどん増えてしまって、担い手がいなくなって、森林整備もできていないというのは、実態的にはどんどん進んでいると思います。そういった過疎が進むところに人がどんどん住むようにして、環境保全を日常的にできる体制をどうつくっていくかということが重要ではないかなと思っています。
ヒアリングのときに、私は委員という立場ではなくて発言させていただいたんですけれども、連合は一昨年の暮れから昨年の始めにかけて5万人の組合員を対象にアンケート調査を行いました。都市生活者に対する田舎暮らしのアンケート調査というものですが、4割ぐらいの皆さんが条件が整えば田舎暮らしをしてみたいと答えていまして、かなり大きな数字だなという印象を持ったわけです。そういう意味でいうと、時代の転換期の中で一人ひとりの働き方、暮し方、生き方みたいなものを、勤労者の皆さんが立ち止まって考えているのではないかなと感じています。
それから、「2007年問題」などが言われていますけれども、団塊の世代がどんどんこれから退職するということになると、この皆さんが都市から過疎が進んでいる地方に行って農業の新しい担い手になる可能性もあるのではないかなと思っております。そういう意味では、国の果たす役割、自治体、NPOの果たす役割、いろいろあるんだろうと思っています。連合は全中とか経団連の皆さんと一緒にNPOを立ち上げていまして、こういった田舎暮らしを社会的な運動にしていこうということに取り組んでおります。こういった田舎暮らしをやることも、ここにある環境保全の人づくり・地域づくりにつながっていくんだというような視点も入っていると思うんですけれども、もし補強できれば補強していただきたいと思います。
○鈴木部会長 浅野委員。
○浅野委員 地域づくりというテーマを決めたとき以来の問題があるわけです。別に学術論文を書くわけではないから、あまり深刻に聞いてもらっては困るんですけれども、およそ98カ所、「地域」という言葉が出てまいります。この98カ所程度に「地域」という言葉が出てくるのですが文脈ごとにそれぞれで言っている範囲が違うようです。全部をひろってきっちり整理をして、言葉の使い方の整理をするなり、頭を整理するなりしておかないと、困るのではないかなという気がします。
一番極端なことを言うと、国際の話が唐突に出できて、そこでは「開発途上地域」という言葉がと出てくるわけですね。それから、「地域外の人も参加して」という言葉が割合無造作に出てくるわけです。ところが、例えば福岡市のような場で考えると、福岡市全体で活動している場合はみんな市域は全部地域内と思っていますけれども、区の中の小さなコミュニティでやっていると、よそから来る人は地域外の人になるわけですね。そういうふうに「地域」という言葉にはすごく多義性があるわけで、それでメッセージが混乱することは困るということです。
どうしてそういうことを言っているかというと、田中委員は十分ご存じだと思うんですが、昔、この手のマニュアルづくりをやったときに、小さい自治体でもちゃんと地域環境計画をつくることができるような手だてを考えようというようなことを考えました。そのときの経験ではあるメッセージを出してみると、そこで言われている言葉によって受け止め方が決まってしまって、これは私には関係ないというふうにとられてしまう。これは、小さい自治体だけを考えているようにとられても困るし、中規模の自治体だけを考えているととられても困る、そのあたりについてをメッセージの受け手がどう受け取ってくれるかということについての配慮をする必要があると考えさせられたことでした。その意味では、この「地域」という言葉の使い方には配慮がちょっと欠けているような気がするんですね。
細かいことを言うといろいろありまして、「地域」という冠がついている言葉をざっと洗っていっても本当にそれを感じるわけです。ですから、これはぜひもう一回きちっと整理をする。何をメッセージとして出したいのかということをはっきりさせる必要があります。サイズという感覚がこの全体のペーパーの中に残念ながら欠けているのではないか。きちっとサイズという意識を持って、こういうサイズはこうなんです、このサイズのところにこうなんですというような話があっていいのではないか。今までのように大きいところでなければできませんという絶望観を与えないという意味はあるんだけれども、今度は逆のリアクションが出てくるおそれがあるような気がします。
それから、環境教育に関しては、中央環境審議会が既に環境教育についての提言を出して、それが現行の環境基本計画の中に入り込んできていて、それがほぼ踏襲されていると思うわけですが、「環境教育・環境学習」という対語で使いましょうと、教えてやるということはそればかりではよくないので、学ぶということが大事ですねということを言い続けているわけですが、なぜか職場のところだけは教えてやるになっていて、学ぶ方がないんですね。これは単なる誤記であろうと理解しますが、何で職場だけは教えてやることだけなのかというのが気になります。
それから、「教育機関」という言葉は最初に定義がしっかり出てきて、高等教育ということまで入っているわけですが、その割にはあとの役割のところまでくると大学のような匂いが消えてしまっている。最も今の大学の学生はほとんど中学校か高校並みのレベルですから、これでいいのかもしれませんが、大学院などというものもあるものですから、そういう教育機関の匂いが少し欠けているような気がします。せっかく「高等教育」ということまで入れて書くなら、そこの匂いをちらっとでも香りが出るといいという印象です。
○鈴木部会長 高橋委員。
○高橋委員 1点、先ほどの水環境のところでも言いましたけれども、地域というか地方公共団体中心にいろいろな計画をつくって、主体的にやっていかなければいけないというお話が出ています。そういう点で、6ページにありますが、最近よく言われることなんですけれども、専門的な知識を持ちつつ、計画策定のためのコーディネートとか、いろいろなコミュニケーションができる職員の育成が非常に重要なことで。そういう意味で、公共団体の策定の目標の割合ということも書いてありますので、ぜひ計画づくり等が担える地方公共団体の職員の育成を、地方公共団体に期待される役割として入れていただいた上で、さらに、7ページぐらいで、国がそれを促進、協力するというようなところを入れていただければありがたいと思います。
以上です。
○鈴木部会長 中村委員。
○中村委員 地域の人づくりということについて、公益法人とかNPOの方々がかなり参加されるであろうというのは、今もそうであるので、そう考えるんですけれども、今後、環境をテーマにした株式会社というものが増えてくると思うんですね。そうしますと、地域の中でビジネス的な手法ということで、様々な環境を一つのテーマにした会社がビジネスとしてもそれで成り立っていくということをつくりましょうということをこの中で言っていらっしゃいますね。
特に、そういう経営能力のある方々も参加しながら活動するということは、まさに株式会社でやっていきましょうということで、最後に、「こういったことが推進されるように制度的な支援も重要です」と書いてあるんですが、この「制度的支援」というのは具体的にどういうことを想定して、あるいは、どんなこと必要だと思っていらっしゃるのか。これが一つ質問です。
と言いますのは、そういうビジネスが立ち上がっていくときに、環境に非常に配慮して努力したり、熱意がそこにあったり、あるいは、時間とかエネルギーとかコストをかけながらやっていこうとするときに、自治体からそういう事業を、例えば公募とか入札であったときに、そういうことが必ずしも公募条件とか入札条件の中に入っていなくて、結果として安い金額を上げたところにそういう仕事が回っていくというふうなことが現状あるわけです。したがって、環境をテーマとしたビジネスを育成していくときに、制度的な支援というものを今現在どのようなことを考えていらっしゃるのか。ちょっとお尋ねしたいと思います。
○鈴木部会長 ご丁重なご指摘をいただきましたが……。
○田中委員 それでは、私の方から答えられる範囲を答えて、あと、事務局で補っていただきたいと思います。
各委員の先生から非常に貴重なご指摘ありがとうございました。幾つかコメントさせていただいた方がいいかなと思います。まず教育を扱う主体、教育はそれぞれの主体が扱っていくと。地域も国も扱っていくということで整理しております。先ほど具体的には環境に配慮した施設づくりのところの話がありましたが、環境を考慮した学校施設の整備・改修を国は促していくと。今ご指摘いただいたのは、7ページのところだと思いますが、そういう趣旨で促進をする、促していくということを考えております。支援をしていくということでございます。もう1つ、6ページの教育機関のところにも環境を考慮した学校施設の整備・改修、それを活用した教育の推進、こういう整理をしております。
また、後でご指摘いただきたいと思います。
いろいろなご指摘をいただきましたけれども、様々な人の知恵を借りるというのはどうかと、「もったいない」だけではなくて、高齢者等の知恵を借りたらどうかと。確かにそういう視点も書き込んだつもりでありますけれども、不足していれば補強をしていきたいと思っております。
それから、善養寺委員から「公益法人の扱いをどのように考えているのか」というお話がございましたが、ここではNPOの中にそのことを含めて考えております。公益法人という表現を出した方がよければ、つけ加えることはやぶさかではありませんが、一応NPOという枠の中に入っているということで考えております。
それから、江森委員から「田舎暮らしが人づくりにとって非常に重要だ」というご指摘があったかと思います。これは4ページのところで、都市と農村との間の「人・もの・情報」の行き来を統合的にすることによってスローライフ等の考え方をより広めていく。このようなことも一応入れております。少し表現が足りなければ補強していきたいと思います。
それから、全般的に浅野先生のご指摘がございましたが、ご指摘のように「地域」ということが繰り返し重複して出てきて、そのところの意味を少し整理して、精査して、地域のイメージを具体的になるように整理したらどうだろうかということ、このことは私と事務局でやりとりするときにも、「地域」あるいは「地域コミュニティ」という言葉が繰り返し出てきていて、そのことが非常に多義性を持っているという指摘がありまして、一たん整理はしたつもりなんですが、なおまだ不十分だなということを今ご指摘をいただき改めて感じました。ですから、読み手が「地域」というときにどういうことを想定できるのかという、具体的なメッセージが伝わるような表現ぶりをもう少し考えてみたい。先生に先ほどご指摘いただきました「少しサイズを意識する」ということも含めて整理をしてみたいと思います。
それから、高橋委員からは「地方公共団体の役割の中で職員の育成等の点が足りないのではないかな」という話がございました。確かにその点大事なところでございます。事業者の方にはそういう趣旨のことが入っておりますので、地方公共団体にないのもかえっておかしいかなという感じがいたします。この点はそのような方向で取り上げたいと思います。
あと、中村委員からは「環境ビジネスを進める上での制度的な支援ということを、具体的にどんなことを考えているか」ということですが、7ページの下から8ページにかけて、国としてはこういうことを考えているということで、課税特例措置の活用による資金調達の円滑化とか、あるいは、8ページの冒頭に書いてございます、情報提供あるいは構造特区における条件の緩和といったといったようなことを考えておりますが、まだなお追加することがあれば、事務局から補足していただければと思います。
私からは以上です。
○佐野環境計画課長 先生、ありがとうございました。ほとんど、先生の方からお答えいただきましたけれども、若干補足させていただきますと、教育機関の役割ということを考えましたときに、5ページから6ページにかけての各主体の取組、これは本日ご報告しましたほかの2つのブロックと人の切り方が大分違っているということをお気づきになると存じますが、ここはこのテーマの特性にあわせた分類、杓子定規にならないで特性から分けてしまおうという考え方をとっています。
教育機関というのは、市町村立の小中学校だったり、私立もあるぞとか、いろいろあるわけですけれども、現実の問題として教育機関、自治体の教育委員会ぐらいまでを含んで、学校教育をやるという機能を持って動いている塊があって、そこは市町村立か私立かということを追求するよりも、学校教育をやるという機能で動いている一つのグループの方々には何を期待しようかというふうに考えるのがよろしいのではないかという考え方で切り出したものでございます。高等教育機関も入っているんだったら、高等教育機関らしい役割もあってしかるべきではないかというご指摘がございましたが、これはすこぶるそのとおりであろうかと存じます。
それから、公益法人というところでございますけれども、ここのところのグループの切り方はどう考えているかというと、農協、漁協というような組織は、法人形態よりも、むしろ地域に密着した団体であろうと、地域団体であろうという考え方をとっています。実態を見ますと、町内会みたいなものもと同様に、地域の人たちは基本的に入っていて、地域にくっついた活動をしているという方々であろうから、それはそれの役割があるのではないか。
一方、例えば職種の何とか士連合会みたいなもの、何とか業協会とか、そういう格好の団体も、法人形態は何でもいいんですけれども、それは地域にとらわれないで専門の力を持っている人たちが目的によって集まった集まりであろうと。それはその人たちの役割があるのではないかという考え方で整理をして、5ページの役割分担の中では公益法人を含むNPO等の団体だというところにまとめております。
善養寺委員もお出でになられたみたいに、この議論で、それは固定できるものではないのだ。地域の団体はともすれば頭がこちこちで役に立たないから、こちらの目的を共有する者の組織が出張っていくこともあるんだというような議論もやったわけでございまして、そこは確かに柔軟に考えざるを得ないのではないかというふうに整理するのがいいのではないかと思っているところでございます。
あと、環境ビジネスあるいはコミュニティビジネスについて何をやるのかと。これは、ここまで具体的に書くとやるあてのないことは書けませんので、例えば地域再生の今の制度をつくった特例措置を適用するとか、あるいは、私どもがやりたいと思っているのは、その上に書いております人材育成的な、あるいは情報提供。情報提供というか、講習というか、人材育成というか、そういう情報を流すということあり。それから、地域再生の制度とか特区の制度は使えるのではないか。これはそれでいこうというつもりで、7ページから8ページにかけて書いております。
逆に、例えばドバドバ補助金を差し上げられると書けるかというと、これは書けないわけであります。ただ、正直言いますと、私どもも何をやったらいいかということについて、お金の要るやつはお金がないんですけれども、即効薬がなかなか思いつかないところでありまして、具体的な政策としてこういうことをやると即効性があるのではないかというものがあれば、ご提言を賜りたいと思います。
○中山環境計画課課長補佐 補足の補足で申しわけありません。教育の主体がどうするということに関しては、地域の教育機関なりが本来的に一番大きいんですが、それを地域コミュニティでみんなで支えていきましょうというのが、全体として書きたいところでございまして、国はそれを事業なり何なりで支えるという関係ということです。
それから、公益法人なり何なりですけれども、イメージとして細かい漁協とか農協は地域の組織という括りなんですが、もうちょっと広い専門的知識を持ったところについては、広く言えばNPOの中に入るんだろうと。そういう意味で、ここはあえてNPO法人とせずに、NPOとしているところであります。ただ、最後の方に定義が出てきているところをどうするかというのは検討すべきところがあるかもしれないと思っております。
○鈴木部会長 馬場委員。
○馬場委員 私の質問の仕方が悪かったのかもしれませんけれども、「教育実施」とこだわりましたのは、6ページの教育機関のところに「環境を考慮した学校施設の整備・改修、それらを活用して地域と連携した環境教育を実施」と書いてありますね。国の方は、先ほど善養寺さんがおっしゃったように、施設整備は結構なんですけれども、それを「住民や技術者の参加を得て行う」とあって、「整備された施設を活用することで、地域ぐるみの環境教育を促進します。」と書いてありますね。
本当は「教育機関の方で住民や技術者の参加を得て、施設を活用して地域ぐるみの教育を行う」ということを言って、それをサポートするのが国であれば、「そのための施設整備を促進します」と書くべきなんだけれども、これを並べて読むと、教育機関の方はさらっと「活用して、地域を目標にした環境教育を実施」と書いてあって、国の方にその中身を、住民や技術者の参加を得て行うことが内容に入って、「促進します」と書いてあるので、逆なのではないかという感じがしたので聞いたんです。
田中さんがおっしゃっている意味ではなくて、主体はどっちだと。主体の方に中身を詳しく書いて、サポートするのはそう書くべきではないかという感じです。
○佐野環境計画課長 これは書き方の問題だと思います。7ページの方は、その「促進します」というのは、例えば学校施設の改修なんかは補助を出しますというくらいの趣旨で書いてある、国の施策をそういうふうな格好で書いてあるものですので、もうちょっとご趣旨がよく伝わる様に考えてみたいと思います。
○善養寺委員 私が言うのも何なんですが、このままやっている事業がありまして、改修だけ、施設整備だけをやりますというと、施設だけはつくってみるものの連動性がない。施設整備にからめて、整備の中に教育効果を入れ、技術者教育をやったりしている事業があります。整備・改修を行う中で地域住民や技術者に参加してもらうことで、教育を兼ねてやっている事業が現実あって、小さいながら細々と進めているものがあります。かなり効果があるので、こういうものをきちんと教育と施設整備というものは連動して進めた方が効果的ではないかということで、ほかでもこういうような言葉で投げかけているものがあります。
それともう1つ、先ほど中村さんが言われたいわゆるグリーン契約みたいな部分に関しては、それも私が言うのも変なんですが、市場分野にそれらしい言葉がこれから入っていくと思います。出された案の中に、契約する企業に対して、提案を求め、その企業が環境に配慮した事業経営をしているかどうかというものも、お金だけではない部分での評価対象にしていくということと、製品そのものもただ単に値段だけではなくて、環境負荷がどれぐらい少ないものかということを一つの情報として購入を考えていくということが市場の方に入っているので、ここでいろいろなお金の支援の話が出てきて、契約の評価の仕方に市場分野側で入ってくれば、それが両方言えるのかなというふうには思っています。
○中村委員 よろしいですか。先ほどの……。
○鈴木部会長 すみません、江頭委員が。
○江頭委員 もし今の話の続きだったら、向こうからでいいです。
○鈴木部会長 そうですか。続きですか。
○中村委員 どうぞ。
○江頭委員 全然話が違うことになります。これを読ませていただきますと、「環境教育・環境学習」がだあっといっぱい出てきて、教えてやるんだ、勉強しろよと、国民に命令というか、そういうイメージがあるんですね。環境教育を受けようとか、環境教育を実施しようという教員も、子どもの方は教員がやれば素直に勉強してくれるんですが、環境学習をしなさいなんて言ったって、とんでもないですよ。しない人がいっぱいいるし、関心がないし。そういう人たちにどう変わってもらいたいかということを考えると、環境教育・環境学習をやります、やりますと。何回出てきているのか私は数えていませんけれども、非常に重くすぎるのではないかと思います。
ネットワークづくりとか、地域によってはNPOがあるしNGOがあるし、具体的に活動を頭が下がるほどにしている人がいっぱいいますよね。そういう人たちそれぞれがペンなんですよ、ペンシル型の建物じゃないけれども、ペンであるわけね。その人たちをつなぐのが行政の役割かなと思うけれども、まだ行政がそれをつなぐ意思がないというか。そういうところを国が指導するというか、こういうふうに支援するからやりなさいみたいな、そういうものが必要で、それが国の取組かなと私は思うんですね。
地方にどうあってほしいか、ネットワークづくりをしてもらいたいし、地域づくりをしてもらいたいし、人づくりもしてもらいたいと思うなら、そのために国はどうするかということが見えないというか。つくりなさい、つくりなさい、やりなさい、やりなさいというふうに聞こえてしまうところがあります。
すみません。
○鈴木部会長 じゃ、中村委員。
○中村委員 先ほど、もし何か即効性のある事業があれば教えてほしいということでしたので、ぜひ国として取り組むことができるのであればお願いしたいのは、これからはe-ラーニングの時代ですよね。それで、例えば自治体とか地方公共団体、家庭もしくは職場、そういったところで環境教育あるいは学習を推進していくときに、国が今一番環境に関する膨大なコンテンツ、内容と言いますか、プログラムをできるだけのものを持っているわけですね、素材。それをぜひ生かしてe-ラーニングの形で。
かつ、コンピュータをさわったことがないような人でも、今、タッチパネル、クリックだけで学習ができるシステムができ上がっておりまして、例のマクドナルドの店長が全国に何百人何千人とできるときに、このe-ラーニングが功を奏しているということが言われていますので、これからの環境教育、日本中を高い意識にさせるときにぜひ国が持っている素材、コンテンツ、あるいは、環境に対するいろいろなものをe-ラーニングという形で提供できるかどうかも検討していただければと思います。
○鈴木部会長 小澤委員。
○小澤委員 私もずっとかかわっていて、第二次のときは戦略的な政策手段としての環境教育・環境学習だったので、第三次のスタンスは地域づくりをしながらお互いに学習しながら環境への学びをお互いにやっていくということで、e-ラーニングもあるんですが、私はなじまいなという立場をとる者なんです。と言いますのは、データは幾らでもアクセスできますし、あるいは、小池大臣の主張による「我が家の環境大臣」というのもやっておりますけれども、やはり人間の意識を行動まで広げさせるには共感というものがなければいけないわけなんですね。それでは、なかなかe-ラーニングシステムではそこはちょっと難しい。データベースにアクセスするとか、それは幾らでもできますし、また、環境省あるいはほかの諸団体も、官庁も関連の法律ができていますので、そういうものはつくっていると思います。
○中村委員 でも、国民はまちまちですから、eーラーニングに余りあれしない人もいますので。
○小澤委員 ですから、そういうものはやっています。ということで、これは……。
○中村委員 豊かさというのは選択肢がたくさんあるということだと思うんですね。
○小澤委員 それは否定していないんです。ただ、環境教育のようなスペック向上が第三次では前提にあったんですが、スペック向上というのは消されちゃっているんですよね。どこかの省庁ではなじまないというのがあったわけですけれども、今、そういう段階にきているということで。データベース的なものにアクセスするとか、あるいは、「我が家の環境大臣」、地域の中でお互いに情報交流をしていくということは今システムとして動いているということだと思います。
私がちょっと気になったのは、浅野委員もご指摘になった、1ページのところで国際的には環境と経済と社会の側面が統合的に進めて持続可能な社会づくりという形になっているんですが、それが6ページの教育機関で「環境に特化せず」ということで、この「特化せず」というのがここだけ唐突に出てきちゃうので、「環境的、社会的、経済面で統合した持続可能な開発のための教育」という言い方をした方が、1ページ目のを受けて、いいのかなと思うんですね。
それから、先ほどの環境教育を学習しようという意欲のない人たちも参加できるような文言がどこかにあるかと思うんですね。それを私はちょっと見つけられないんですけれども、そういったことを主体に置きながら、幅広くお互いの地域で参加しながら、それがまたお互いの意識、行動の促進につなげていこうというスタンスで書かれていたかなと思います。
まだまだ足りないところもあるかもしれませんし、「地域」という言葉が、浅野委員が指摘されたように、それと混在しているところもあるかもしれません。
○佐野環境計画課長 小澤委員に幾つかご指摘いただきました。書いた人間が道に迷っていたら世話ないんですけれども、1つは、国民の行動につなげていただくために情報あるいはデータをどうやって伝えていくべきか、あるいは、そこが重要だというのは、新しい基本計画の全体を通しての一つの大きな課題でございまして、そのために第9ブロックという、科学技術と情報統計というブロックができておりますので、そこで国はどこまでの役割をすべきか。例えば情報をかみ砕いて見やすくするというのは、国ではないところの役目なのではなかろうということも含めまして。ただ、いずれにせよそれは非常に重要だということで、そこの新たなブロックができておりますので、そちらの方で方向を出し、またご審議を賜れればと思います。
小澤委員からご指摘のありました、「環境教育の質を高めていくという方向が大事である」というのは、このブロックの基本的な認識の一部を形成していまして、2ページ目の2つ目のパラグラフ、「教育機関や公民館、漁協、農協等々」と並んであって、下にいって「すべての国民に対して、身近なところで、より質の高い環境教育・環境学習の機会を提供することが重要です。」という形にさせていただいているんですが、これで趣旨を受けていないということであれば。かつ、後ろの方の具体の方向で、質の高い教育を実施するためにどうしたらいいか、例えば指導者はどうしたらいい、ちゃんとやった方がいいのではないかというような形で書いたつもりではあるんですが、芯が通ってなければまたご指導いただきたいと存じます。
○鈴木部会長 よろしいでしょうか。
「地域」というのが一つのキーワードになっていながら、浅野先生ご指摘のように国際的な場で「リージョン」というと国を超えた広がりですし、ここで言っている「地域」というのは日本語に訳すと「ローカル」ですかね、「コミュニティ」ですか。
○浅野委員 コミュニティだと思います。
○鈴木部会長 ファンクション、機能的な塊を指すんでしょうから、使われるところで。小学校のというと児童が通っている範囲でしょうし、その辺は書き分けるのは難しいですね。しかしながら、地域づくりというのは、今の行政改革の地方分権化と対応して、どうやって疲弊した地域、地方を蘇らせるかと、そういう流れに沿っていくんでしょうから、その辺に骨太にこたえるようなキーワードがあったり、環境あるいはサステナビリティ、その辺が出てくるといいんでしょうね。
注文をつける方は簡単なんですけれども。天野委員、どうぞ。
○天野委員 私も長年教育に携わったりしているんですけれども、特に環境教育と言いますと、環境倫理と言いますか、環境道徳と言いますか、あるいは、社会思想と言いますか、そういう要素が重要ではないかと考えています。もちろん環境の問題というのはいろいろな学問分野にまたがっていることは確かですけれども、社会思想的な側面というのは省けないと思うんです。ここを読んでいましても、1カ所だけ、「環境に関する理念」という言葉が出できますが、それ以外は一切そういう話は出てこないんですね。
ですから、どう考えればいいのか、そういう側面は環境省としてはあまり重点を置かないんだと考えたりしたのかなと思ったりしまして、環境思想のような、環境倫理と言いますか、これは欧米では当然入ってくる話なんですけれども、少しウエートが少なくすぎる、「理念」という言葉が一つだけ見つかるというのは少しさびしいなという感じはいたしますね。もっとありましたら、教えていただきたいと思います。
○鈴木部会長 では、和気委員。
○和気委員 一方では、今、天野先生がおっしゃられた志の部分で、環境教育の中で何か提言できるものがあればいいなと思いつつ、天野先生のお話を伺っていました。
実はもう1点申し上げたかったのはコミュニティというところで、私たちの分野では共同体というような言い方をします。そのサイズが地球規模であれ、あるいは、地域あるいは地方レベルであれ、ある種の共同体の中の一員であるという認識を持った上で環境問題が対応するというときに、自らが維持している、あるいは生活している場の中で、どんな環境資源があるかを含めて、その情報はすごく重要なので、その種の環境情報をしっかり提供するということもとても重要なんですね。
自分自身の行動が環境資源に対して具体的に保全にどんな影響を与えたかという、いわゆるアウトプット、成果の部分が、国の情報を通じてだけではなくて、あるいは、もうちょっと身近な情報交換の中で、自分がこんな行動をとるとこういうふうによくなったよというような、その種の活動のフィードバックが情報としてアクセスしやすい形で手に入ると、意識している者から行動に向かって、それが成果としてどうあらわれたということが実感できれば、あるいは共感できれば、コミュニティの中での環境保全の活動は活発化するのだろうと、ちょっと楽観的かもしれないんですけれども。
そういう意味で、情報提供という言葉が幾つかありますが、その情報提供の中にもう一つ、自分の行動がどう影響を与えるかと。当然考えていらっしゃる部分もあるんですが、その辺をもう少しきめの細かい情報提供という観点から何か書き込めればいいかなというふうに、多分書いてあると思うんですけれども、そんな印象を持ちました。
○鈴木部会長 江頭さん、立てておられるんですか。
○江頭委員 いえ、もう立てたんです。
○鈴木部会長 ああ、そうですか、すみません。
○江頭委員 さっきちょっと長く立てちゃったので。すみません。
ちょっと質問なんですけれども、この地域づくり・人づくりともう1つ、環境教育・環境学習の推進というあれがありますよね。一緒になっちゃったんですか、この2つは。それを知らなかったので、環境教育はもうひとつテーマがあるから、そちらだと思っていたんですよ。ここは人づくり・地域づくりで、その中で環境教育は推進しなければならないよ、環境学習って、そういう一つの項目でいろいろな地域づくりのための施策があるわけですよね。その一つだと思ったので重すぎるとさっき言ったんですよ。一緒になっちゃったんですか。そういうことですか。
○鈴木部会長 前回は地方で地域づくりと環境教育・環境学習と。それが今はないんです。
○江頭委員 ああ、そうですか。じゃ、今度は一緒ということですね。
○鈴木部会長 はい。
○江頭委員 それが1つ、質問でした。どうも失礼いたしました。小澤先生の話が私の考えと違うなと思って、今、質問してしまいました。
もう1つ、先ほども「意欲のない人がいる」と言ったんですが、私、ある区の年寄りというかシニアを集めていろいろな教室を開いているんですけれども、その中で環境学習という時間を設けているんですね、月に2回程度。その中で、栽培活動をしたり、いろいろな水質の実験をしたりしているんですが、いろいろ聞いていると初めてびっくりするんですね。
経済産業省から3Rのキットがきたのでそれを見せたら、「えっ、こんなのがあった。私、3Rなんて知らなかった」とほとんどの人が言うんですね。そういう人たちに対する環境教育が。それも環境教育をやりなさいではなくて、何気なく集めて自然な形でじわじわと環境学習を進めているんですよね。そうしないと拒否反応を起して来てくれないと困りますので。ということで、今しています。
それから、エコクラブを別の地域でしているんですが、エコクラブについてもなかなか集まらないんですね。どっちにしても行政の指導性というんですかね、さっき言った環境学習も、行政から頼まれて私が環境学習という講座をつくっているんですが、全部、地方公共団体、地方の区役所とか市役所の指導がすごく生きてくるんですね。ですから、ここに書いてあるんですが、それに対する国の指導というか援助がちょっと弱いのではないか。実際の問題としてそれを日ごろ感じています。
もう1つの問題としましては、環境教育・環境学習を無理やりにしてはいけないと今言ったんですが、逆に今、私が住んでいる市はこの3月からごみは強制的に自分の家の前に出すことになったんです。しかも、燃えるごみとか燃えないごみとか言わないで、燃やせるごみ、燃やせないごみ、それは袋を買わないで、有料です。それから、プラスチックとペットとか全部分別するんですが、それは行政の指導なんですよ。そしたら本当にカラスが減ったんですね。ごみは四十何パーセント減った。そういう行政、地域の市役所なり区役所が前向きに頑張らなきゃいけない。
ところが、私が今働いているところの区は何でもいいよと。一応、燃えるごみ、燃えないごみですが、朝行くといっぱい混ぜて捨てられているんですね。やっぱり行政の力ってすごいなと思いますので、その行政が一律に国の指導でやれとは言いませんが、最低限は行政が働いてくれるような指導を国でしていただける、そういうことをここに書いていただけるといいかなと思います。
○鈴木部会長 松原委員。
○松原委員 この報告書の中には「環境教育・環境学習」という言葉がたくさんあって、その内容についてですが、今までの議論を聞いておりますと、地域に密着した個別の環境問題に関心が集中しているように思うんですけれども、地域でも都市地域などでは局所的な地域認識よりも、地球温暖化の問題とか循環型社会にするとか、そういった非常に大きな視点からの問題に人々は自然と関心がありまして、それが3Rの運動につながっているわけですね。そういう意味で、環境学習というのは非常に広い視点からきちっとした教育・学習を進めるべきだと思うんですね。
この「現状と課題」では、そういったことで広い視点も二、三行書かれているわけですが、局所的な環境問題だけに重点を置かないためにという観点から一つつけ加えさせていただきたいと思ったのは、6ページに教育機関の役割が書いてありまして、「各学校において」というところで、学校というところに高等教育機関は当然含まれているとは思うんですが、「高等教育機関を含む各学校において」とか、そういうことも入れていただいて、今、我々が必要としている環境教育はどういうことかということを教員自身がしっかり考え、また、そういうことを指導する教科書なども将来的にはしっかりつくっていかなければならないわけですから、そういう意味で環境教育に対する視点を踏まえた上で、少し文章を広げていただきたいという印象でございます。
○田中委員 ありがとうございました。
各委員からいろいろ貴重なご指摘をいただきまして、ありがとうございます。
例えば、「環境倫理」とか「環境理念」の扱いでございますが、確かにこの中に十分そこらあたりが書き切れていないところはありますが、部会で扱っているときに、環境教育推進法ができまして、国としては教育的な取組が進められていると、その枠組みができたということを前提に考えていたものですから、そこまで十分入り切れなかったというところはあるかと思います。また必要があればそのあたりの補強を考えてみたいと思います。
それから、地域の環境に対する個人お一人おひとりの行動の成果とか影響、また、その情報のフィードバックといったことも考えたらどうかということですけれども、確かにそういう視点も、情報の提供あるいは情報の収集といったところにその意味を込めているつもりではいるんですが、少しわかりやすくさせていただきたいと思っております。
それから、最後に松原委員から環境教育を広い視点からということと同時に、教育機関の意味をもう少しはっきりということでございまして、これもできるだけその趣旨を勘案して取り入れさせていただくように整理してみたいと思っております。
以上でございます。
○鈴木部会長 よろしいでしょうか。
○浅野委員 今の教育についてちょっとよろしゅうございますか。
松原委員のご指摘、ここは第三次計画の特色ということである切り口を少し強調するという面があります。それから、おっしゃっているような化学物質の話とか循環の話、あるいは温暖化という話では全部、随所に環境教育が出てくるんですね。さらにそれを統括するものとしてはこの部分で入れて一向に構いませんし、私は高等教育の役割が落ちていると指摘したわけですから、いいんですが、全体的なことは総論に必ずまたもう一回統合的に書かなければいけないということになりますから、そこでは遺漏なく入るというふうにご理解いただいて。この部分だけに全部押しつけるとちょっとバランスが崩れてしまうということがあります。
その点だけ一言。
○鈴木部会長 ユネスコの「持続可能な開発10年」が始まるときも、始まるのは結構だけれども、何を教えるのって。サステナブルな経験者はどこにもいないわけですよね。それでいてこういうものがある。だから、環境教育、この辺は文部科学省とそれなりのすり合わせをしながら、環境省がイニシアチブをとるぐらいの。どこかに中身の検討もということを加えておかれるといいのかもしれません。
よろしいでしょうか。まだまだご意見やコメントがあると思いますが、先ほどから申し上げておりますように、ご意見がございましたら、ファックスもしくはメールで事務局までぜひご提出いただければと思います。
それでは、予定の時間にもなりましたので、本日の審議をお終いにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
それでは、また明日、それから来週、再来週と、この重点的分野の検討結果の報告が続きますので、委員の先生方、どうぞよろしくお願いいたします。
では、本日の審議を終了したいと思いますが、事務局からの連絡がございます。
○佐野環境計画課長 本日も長時間でございました、大変ありがとうございました。
明日もこの時間、この部屋で、3つのブロックの報告をさせていただきたいと存じますので、お時間の許す限りご指導賜れればと存じます。
どうもありがとうございました。
午後5時00分閉会