中央環境審議会総合政策部会環境影響評価制度小委員会(第10回) 議事録
日時
令和6年11月21日(木)13:00~16:00
場所
AP新橋Fルーム
開催方式
オンライン併用
議事次第
1.開会
2.議事
環境影響評価制度の課題と対応の方向性について
3.閉会
配付資料
【資料】
資料1 環境影響評価制度の課題と対応の方向性について
【参考資料】
参考資料1 中央環境審議会総合政策部会環境影響評価制度小委員会 委員名簿
参考資料2 中央環境審議会総合政策部会環境影響評価制度小委員会(第8回)・風力発電に係る環境影響評価制度の在り方に関する小委員会(第4回)合同会議 議事録
参考資料3 中央環境審議会総合政策部会環境影響評価制度小委員会(第9回)・風力発電に係る環境影響評価制度の在り方に関する小委員会(第5回)合同会議 議事録
参考資料4 委員からの御質問に関する資料
参考資料5 環境アセスメント学会からの提言
議事
○加藤環境影響審査室長 定刻となりましたので、これより「第10回中央環境審議会総合政策部会環境影響評価制度小委員会」を開催いたします。
私は、環境省大臣官房環境影響評価環境影響審査室長の加藤です。本日もよろしくお願いいたします。本日は、御多用にもかかわらず、本小委員会に御参集いただき誠にありがとうございます。
報道関係者の皆様への御案内です。冒頭の撮影については、議事を開始するまでの間、可能となっております。御承知おきください。また、本日は対面とオンラインのハイブリッド方式での開催としており、「環境省大臣官房環境影響評価課チャンネル」にてライブ配信を行っております。なお、本配信は、議事録公開までの間、同チャンネルでアーカイブ配信を行う予定です。
オンライン参加の皆様におかれましては、何点か御協力をお願いいたします。御発言の際以外は、カメラ及びマイクをオフにし、御発言の際にはオンにしていただきますようお願いいたします。御発言を希望される場合には挙手ボタンをクリックしていただくようお願いいたします。通信トラブル等、何かございましたら事務局までお申し付けください。
本日は、委員総数の過半数以上が参画し、定足数の要件を満たしています。小委員会として成立していることを御報告申し上げます。また、御都合により、山口委員におかれましては途中で退席される旨を承っております。
続いて、お手元の資料の確認をいたします。本日の資料は、現在画面に表示している資料一覧のとおりです。過不足等ございましたら事務局までお申し付けください。
報道機関の皆様におかれましては、冒頭の撮影はここまでとなります。以降は傍聴のみとさせていただきます。
これより先の議事進行を委員長にお願いしたいと思います。大塚委員長、よろしくお願いいたします。
○大塚委員長 それでは、議事に入ります。本日、「環境影響評価制度の課題と対応の方向性について」を御議論いただきます。なお、本日の資料は、前回法改正事項の点検、環境配慮が確保された風力発電の最大限の導入促進、その他の現行制度の課題への対応の3つのパートで構成されています。それぞれパートごとに説明と質疑の時間を設けます。
それでは、事務局からパート1の前回法改正事項の点検に係る説明をお願いいたします。
○川越環境影響評価課長 環境省より御説明いたします。資料1の2ページを御覧ください。こちらは、第1回合同小委員会で御意見をいただいた3つの事項を示したものです。今回、論点についてはこの3つの柱を基に整理をしました。また、参考資料としてお配りしたとおり、環境アセスメント学会から「第六次環境基本計画への提言」ということで提出されています。その中で、環境影響評価に関する事項についても触れられています。今回、環境アセスメント学会の村山会長を始めとして、学会関連の方にも多く御参画いただいていることから、同学会へのヒアリングという形では実施しませんでしたが、同学会からの提言も踏まえ、今回、論点の整理をしています。また、第1回合同小委で奥委員からお尋ねのあった「都道府県別の法アセスの実施件数等の宿題事項について」は、参考資料4として配布していますので、後ほど御覧ください。
3ページを御覧ください。こちらが今回御議論いただきたいと考えている論点を示したものです。前回法改正事項の点検に係る論点としては配慮書及び報告書のそれぞれの手続の在り方について、環境配慮が確保された風力発電の最大限の導入促進に係る論点として以下にある3つの論点、その他、現行制度への課題への対応に係る論点として環境影響評価図書の継続公開を始めとした8つの論点について整理をしています。論点横断的な議論もあるかと思いますが、まずこの3つの柱、各論点で御説明いたします。
5ページを御覧ください。前回法改正事項に関する御意見を整理したものです。上段は配慮書手続に関する御意見となります。1ポツ目として、適正な環境配慮を確保する観点から配慮書手続の意義はあり、計画段階での配慮が適切に行われているものについては、一定程度効果的に機能していると言えるのではないか。一方、配慮書手続は本来の機能を果たしておらず、配慮書手続で実施した検討結果が適切にその後の検討につながっていない事例も見られるのではないか。2ポツ目として、位置・規模のみなし複数案について、厳格に位置・規模等の複数案を設定するべきではないか。配慮すべきエリアをあらかじめ国が提示することにより、効果的な環境配慮の確保が可能になるのではないか。広大なエリアが事業実施想定区域として設定されることにより、地域とのコミュニケーションが十分になされない、事業の不信感につながる、行政の審査負担が大きくなる、そのような課題が考えられるのではないか。さらに、適切に区域の絞り込みがなされているのであれば効果的な環境配慮の確保に資する側面があるのではないか。3ポツ目として、第二種事業についても配慮書手続の実施を義務付ける必要があるのではないかといった御意見を頂戴しております。
下段は報告書手続に関する御意見となります。1ポツ目として、報告書手続の導入により環境影響評価手続を通して検討されてきた環境配慮と実効性、透明性の確保に寄与したと考えられるのではないか。2ポツ目として、事後調査等を適切に実施し、環境影響を回避・低減する観点から順応的に対応していくことが重要ではないか。3ポツ目として、事後調査等の実施結果を国が一元的に管理・分析し、ガイドライン等を取りまとめていくこと、さらには環境保全措置に係る技術開発を促進していくことが重要ではないか。また、事後調査等の科学的な質を担保していくことが重要ではないか。4ポツ目として、供用後も継続的に報告書の提出を求めていくべきではないかといった御意見を頂戴しています。
以降、それぞれ配慮書、報告書の論点に関して御議論をお願いしたいと思います。7ページを御覧ください。配慮書手続の在り方に関する御説明をいたします。7ページについては、第1回合同小委でお示しした資料となります。配慮書における複数案の検討状況を整理したものです。左側の陸上風力に関しては全体の97.5%において複数案の検討がされており、このうち、陸上風力に関しては9割がみなし複数案によるものとなっています。右側の風力発電以外の事業では全体の81.1%において複数案の検討がなされています。このうち位置・規模の検討が23%、配置・構造の複数案の検討が48.6%となっており、事業種によって検討内容が異なっている状況が見て取れるかと思います。
8ページを御覧ください。以降、机上配付の資料になります。みなし複数の事例について幾つか御紹介します。この事例については、配慮書では面積が1,900ヘクタール、出力が16万キロワットであり、風車の立地も示されていない状況です。その後、方法書で面積、出力ともに大幅に減少し、風車の立地が示され、住宅からの離隔、水資源保全区域や防災関係の区域というものを除外しています。準備書では単機出力は増加し、基数は減少していますが、水資源保全区域、植生自然度10のエリアを外す、そして自然公園内の主要景観、現地調査に基づくイヌワシや渡り鳥の配慮が実施され、評価書では自然公園内の主要景観に配慮し、風車の基数を減らし、高さを低くする、改変が生じない箇所を除くという形で検討が進められた事例になります。各手続を経るごとに区域の絞り込みであるとか立地検討が行われているという点では、みなし複数案が機能している面はあると考える一方、区域面積は評価書段階では約1割まで大幅に減少している点、出力についても配慮書段階から報告書段階で約6割程度まで減少している点、既存情報に基づく絞り込みについて配慮書段階でも可能なものがあったのではないかと考えると、改善の余地もあるのではないかと考えられる事例です。
9ページを御覧ください。この事例では、配慮書段階で大まかな風車の立地が明示されているとともに、既存文献情報に基づいて適切な絞り込みがなされ、移行の手続で事業計画の具体化、環境大臣意見の発出等を踏まえ、区域が絞り込まれてきたという事例になります。このように、配慮書においても風車の立地案の提示であるとか、既存情報に基づく絞り込みを行うことにより、地域との適切なコミュニケーション実施に資するものになっている事例ではないかと考えているものです。
10ページを御覧ください。こちらの事例は配慮書で地方公共団体が策定しているゾーニングマップを考慮して環境保全上配慮すべき重要なエリア、関係法令等に基づき除外すべきエリアというものを除く形で、事業実施想定区域が設定されているものです。こちらも、配慮書段階でもこういった既存情報を活用した検討が十分可能であることを示している事例ではないかと考えています。
11ページを御覧ください。こちらの事例では、配慮書において環境保全上配慮すべき重要なエリア、関係法令等に基づき除外すべきエリアに配慮し、事業実施想定区域を設定したと記載されていますが、実際のところは通常配慮される場合の多いエリアなどが事業実施想定区域に含まれている事例です。配慮書に関しては、今まで少し御覧いただいたように事業者によってクオリティ、検討状況にばらつきがあることが分かるかと思います。
12ページを御覧ください。配慮書手続の在り方に関する論点として御議論いただきたい事項を示したものです。1ポツ目が、事業計画の立案段階から地域の声を踏まえた環境配慮に係る検討に資するものとなっている事例があることを踏まえれば、配慮書手続は今後も引き続き制度として維持していくことが適当ではないか。2ポツ目として、特にみなし複数案について、検討する際に留意すべきポイント等に関して今後検討を深めていくことが必要ではないか。例えば、配慮書に係る技術ガイドというものが既に出ていますが、そのガイドの見直しの必要について検討していく、そのようなことが想定されますが、具体的な方策案についても御意見を頂戴できればと考えます。3ポツ目として、第二種事業については配慮書の制度、趣旨を踏まえつつ、第二種事業に係る判定以降のプロセスにおいて、早期の段階で適切な立地検討がなされるよう促していくことが重要ではないか。例えば方法書では、環境省令に基づき、事業実施区域における環境保全の配慮に係る検討の経緯、内容を記載することとされていますが、第二種事業についても回避すべきエリア、その考え方等について記載の充実を求めていくことが考えられるのではないかと思います。以上が配慮書に関わる部分です。
続いて報告書に関する論点として、14ページを御覧ください。こちらは陸上風力発電に係る報告書の公表状況を整理したものとなります。発電所の供用開始1年後から3年後までの間に公表される場合が多くなっています。また、一定期間の間に講じられた供用中の事後調査、環境保全措置等の結果についても報告書には記載されているところです。
15ページから16ページにかけては、第1回合同小委で示した資料です。陸上風力発電に係る報告書の記載内容、工事着手後に実施された追加調査、追加的な環境保全措置を整理したものです。また、17ページはそういった追加調査、追加的な環境保全措置の実施内容について概要を整理したものです。18ページについては、発電所以外の事業に係る報告書の概要を示したものです。発電所以外では、環境影響評価法の規定に基づき、報告書が公表、送付されているものが、これまでのところ鉄道と飛行場の各1件となっています。鉄道については騒音、振動、飛行場では水質、底質、動植物等に関する事後調査、環境監視、追加的な環境保全措置等が実施されていますが、事業特性、地域特性を反映しているものではないかと考えているところです。
19ページを御覧ください。報告書手続の在り方に関する論点として御議論いただきたいものを示しました。1ポツ目として、報告書手続については環境配慮の実効性、透明性の確保に貢献していること等が確認されたことを踏まえると、今後も引き続き制度としては維持していくことが適当ではないか。また、発電所事業に関して、2ポツ目となりますが、公表はされるものの国への送付がないということで、まずは国が発電所に係る報告書を取得できる制度上の仕組みを構築することが必要ではないか。具体的には、後ほど御説明しますが、アセス図書の継続公開の一環で行えないかと考えているところです。また、事後調査の実施結果については、国が一元的に管理、分析していくことが重要ではないか。さらにはデータの標準化に係る検討も必要ではないかという点について御議論いただければと考えます。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、ただいまの説明に対する御意見、御質問等をお受けいたします。吉田委員、お願いします。
○吉田委員 御説明いただいた配慮書と報告書について、まず、みなし複数案に関する評価がありました。前回、野鳥の会等の関係者の方が、「幅広く調査し、その上で絞っていきながら大事な場所を回避する」という英国の洋上風力の事例を報告されていました。今回の資料の中でも、幾つかの事例が報告されていますが、幅広く調査した上で生物多様性保全上大事なところを回避することができているものは評価をしてもよいのではないか。複数案を、そうした方向でうまく使っていくことは順応的なアセスともなり得るため、よいと考えます。
報告書については、事業開始1年から3年後に出すというのは、環境保全措置に対する自然の反応(レスポンス)等を早い段階で調べ報告する面ではよいと思います。一方、風力発電事業、太陽光発電事業において、FITなどの条件として、ある一定の年限を超えた際に撤去し、原状復帰することが予定されているものについては、その年限までの環境保全に対する自然の反応をある程度予測し、理想を言えば、事業開始時よりもっとよい状態にして戻すといったことができないでしょうか。現行のアセスメント制度の中に入れるのは難しいのかもしれませんが、撤去時の報告書を義務化することができないかということです。国への送付の義務化については、全くそのとおりだと思いますので、是非その方向で進めていただきたいと思います。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございます。崎田委員、お願いします。
○崎田委員 配慮書に関して、みなし複数案の提示が効果的になっている場合もあるが、少し大きな場所を設定し過ぎている。そこから絞っていく中で、本当に的確に地域とのコミュニケーションというのがそのサイズでできているのだろうかと思うような提示もあります。配慮書がしっかりと機能している、配慮書の役割はしっかりあると私も感じていますので、これがしっかり機能するように今回の段階で少し配慮書の記載の仕方、提示の仕方に関して、もう少し事業者の皆さんにしっかりと精神と言うべきか、環境配慮の徹底と地域とのコミュニケーションを深めていただくことが必要。その辺の趣旨を明確に事業のガイドラインのような、先ほど「技術ガイドライン」があるという話でしたが、そうしたところにもう少し丁寧に書いていただく。そうした点はやっていただきつつ、配慮書を維持していただければよいと感じました。
また、報告書に関して、やはり、終わってからの報告書というのは大変重要なことです。しっかり今の制度を維持していただければと思うのですが、発電所からの報告書が届く仕組みがないなど、それをその後どういうふうに公開していくのかというのも、あまり明確な仕組みがないという今の状態を改善していくことが大事だと感じます。実は今回、環境アセスメント学会からこういう提案をしているという書面が参考資料で出ていたのですが、その中で環境アセスメント報告書を一元的に管理しながらしっかりと内容を精査していくといった環境アセスメント情報センターのような場をしっかりとつくったほうがよいのではないかという提案がなされていたのを拝見しました。今、そういう機能がきちんと発揮できるようなところがないのであれば、国あるいは専門的なところが連携したようなそういう場できちんと管理をしながら、分析していくといったことも必要と感じています。よろしくお願いいたします。
○大塚委員長 ありがとうございます。最後の点はパート3のほうでまた扱います。山口委員、お願いします。
○山口委員 丁寧な御説明ありがとうございました。論点1の対応方針案について、配慮書、報告書ともに維持していくことに賛成いたします。その上で、論点の1-1配慮書については、広大なエリアを事業実施想定区域として設定した場合には、地域との十分なコミュニケーションが難しくなると考えます。例えば配慮書における事業実施想定区域は、最大でも評価書段階での事業区域の3倍程度までの大きさとするなど、明瞭な基準の策定が必要ではないかと考えます。また、第二種事業についても、環境への影響を最小限に抑えるためには、計画の初期段階で適切に立地検討を行うことが重要と考えます。特に立地検討段階で地域住民等に早期に事業計画を周知し、その意見を反映させるということで、事業の透明性を確保し、その後の円滑な事業進行につながることが期待できると思っております。次に、論点1-2の報告書について、自治体の条例アセスでも同様に報告書の提出が義務付けられていることが多いのですが、方法書などその他の図書と異なり、報告書にはインセンティブが働きにくく、提出の遅れ、それから未提出が生じています。そのような状況から、法アセスにおいても国が報告書を取得できる仕組みを構築することが必要ではないかと考えます。また、調査結果を国が一元的に管理分析し、その結果が公表されることで、知見の蓄積、全国的な環境影響の傾向であるとか、問題点を把握することができるということで、より効果的な環境保全対策を講じることができるようになるのではないかと考えます。
○大塚委員長 ありがとうございます。勢一委員、お願いします。
○勢一委員 私からも両方の論点について少しずつコメントをいたします。配慮書については、やはり事業によって差が大きい点を確認することができました。みなし複数案の事例についても丁寧に御説明いただき、非常に勉強になりました。手続の実質やクオリティに相当差があるという現状は確認できましたので、このあたりの事業特性に応じた面と手続の実質、クオリティの確保というところで制度の何らかの修正ができないかという問題意識を持ちました。特に手続自体、事業者が行っていく手続になっていますから、実は誰がチェックをするのかという問題があります。これは崎田委員の指摘されたところですが、そうした点があるため、何らかの標準化は必要と思います。もちろん、理想的にはチェックする手続があるとよいとは思います。
また、立地の観点でいきますと、地方公共団体がゾーニングマップを策定していると、それがうまく機能したといった事例がありました。そういう点では空間管理の仕組みとの接続が何らか図られれば、現状の課題で、早い段階で立地確認をしながら地域とコミュニケーションができるというのが期待できると思います。そういう点で、12ページでお示しいただいた第二種事業について、「早期の段階で適切な立地検討がなされるよう促していくことが重要ではないか」と書かれています。「促す」というのは、「お勧めをする」といった趣旨ですから、制度的な担保にはならないところがあります。どういう形で第二種のほうに対応していくのかというのは、ほかの論点とも関わるところですが、これまで自主的には行われていなかった配慮書手続ですし、恐らく新たに何らかの仕掛けがないと行うインセンティブは生じないと思います。この辺りの制度の仕組みというのは、第二種を検討する際に併せて議論をする必要があると感じます。
そして、報告書について、これは私も事業者にとってインセンティブが低いと思っています。山口委員の御指摘のとおりですので、報告書を国が取得する制度的な担保も必要ですけれども、報告書の仕組み自体をきちんと動くようにするために何か工夫ができないのか。こうした点を考えたほうがよいのではないかと感じました。また、データの標準化というのも今後デジタル社会ですから重要だと思いますので、ここも是非検討に上げていただければと思います。
○大塚委員長 ありがとうございます。村山委員、お願いします。
○村山委員 まず、論点1-1の配慮書について、「みなし複数案」という言葉自体に私は非常に違和感を持ちます。制度上、複数案が必要ということで、これがみなしで複数案と言えるのか。仮に、外国の関係者に示す場合には、これが複数案であるとは答えられないと思います。基本的には、みなし複数案をできるだけ削減していく方向で検討すべきと考えます。どうしても事業者のほうでこの選択を取らざるを得ない場合、ある意味地域を対象にした配慮の考え方及び方向性だと思うものの、それを取らざるを得ないということであれば、その根拠を明確に示してもらうことは最低限必要と思います。先ほども説明があったとおり、非常に広めに区域を指定し、その中に明らかに環境保全上、事業ができないような区域まで含まれているというのはおかしな話です。そのような区域設定は事前に排除できるような仕組みも考
えていく必要あると思います。
それから、第二種については、今は配慮書が適用になっていないとのことですが、基本的には第二種についても配慮書適用という方向が本来は考えられるべきと思います。もし制度的に難しいとしても、何かそれに準ずるような仕組みを考えないと、第二種であっても、地区の特性、地域の特性によって影響が大きくなるということはありえるため、その点についても是非ご検討いただきたいと思います。
それから報告書、論点1-2については、結果の一元的管理、データの標準化は是非進めていただければと思います。このためにも、前回も申し上げましたが、工事中だけではなく、供用段階も含めて事後調査を行っていただくことこそが、こうしたデータの標準化につながるのではないかと思います。後の論点で、制度的公開が出てきますけれども、この点が具現化すればこのこともやりやすくなりますし、ある意味、横断的に横並びで見ることができます。事業者の方々にとっても、何が標準的なのかが分かってくるのではないかと思います。是非この点をお願いいたします。自治体のほうでも、事後調査に関する報告書を出されていると思いますが、基本的には供用段階を含めていると思います。この点も十分確認をした上で検討を進めていただければと思います。
○大塚委員長 ありがとうございます。白山委員、お願いします。
○白山委員 対象の関係について、一定の役割を果たしているという評価に異論はありません。むしろ、第二種事業についてどう考えるかということが大事かと思いますが、「規模は小さくても影響が大きい風力発電」というコメントを今までもいただいていますので、サイズで分けるというよりは、ステークホルダーの理解をしっかり得られるように、事前の段階からスコーピングをしっかりするようなことについて、リコメンデーションかもしれませんが、何らかの明示的なガイドがあってもよいと考えます。
私は、むしろ報告書について少し皆様と違う意見がありますので、そこを申し上げます。2013年頃のG7、G8で「オープンサイエンス」、「オープンデータ」という方向性が合意をされ、少なくとも自然科学の中では、論文を書くときに、その論文の基になったデータをしっかりと廃棄することなく持っていることが義務付けられるようになってきています。また、そのデータを公開することは、基本的にはその著者の義務という流れになっているわけです。「アセスの図書についてはそうではない」というフィロソフィーはないのではないかと思います。エビデンスベースの環境アセスメントをしているはずですから、そのエビデンスの基になっているデータを保持し公開するのは、むしろアセスメント図書を書いた人の当然の義務と考えます。そういうフィロソフィーをしっかりと日本の環境アセスメント図書を書くことに対して導入していくべきと思います。そうしますと、国が一生懸命データを集めるといった話ではなく、そもそも事業をやる人が、そういうことは当然の義務としてやるものだといった形になったほうがよいです。そのときに著作権に係る話になるものの、著作権を放棄しろと言っているわけではありません。著作権は常に持っているわけですが、その基になったデータの公開については、むしろ倫理的な義務があるといった哲学を持ったらよいと考えます。これは、論点3のほうでも出てくる話と思いますので長々とは話しませんが、「オープンデータ」、「オープンサイエンス」というのは、ナチュラルサイエンスの中では当たり前の流れです。国の方針として、文科省においても明示的に示しているものですから、アセスメントについてもそれと同じ哲学を当然として導入すればよいと思いますので、是非そこを考えていただきたいです。
○大塚委員長 ありがとうございます。奥委員、お願いします。
○奥委員 配慮書については、まず「みなし複数案」という言葉自体を用いるべきではないといった村山委員の意見に賛成です。そもそも複数案を提示しているわけではなく、広めにエリアを取っておき、ただ最後に絞り込んでいるということですから、これは複数案の検討に当たらないと事業者の方にも強く認識していただく方向性も考えていくべきと思います。
そして、環境保全上配慮すべき区域は当然のこととして除外していただく。自治体が作成するハザードマップ等も十分に踏まえていただく。これらも担保する必要があると思っておりますが、それを技術ガイドのほうでやるのか、それとも、もう少し法的に担保するようにするのか、そこはしっかりと検討したほうがよろしいかと思います。
さらに、先日の風力小委のほうで確認させていただいたところ、これは再エネ促進区域の話になりますが、環境配慮基準を設定している自治体、都道府県が14都道府県にとどまるという話もありました。再エネ促進区域との関連で、都道府県全てにおいて環境配慮基準もしっかりと示していただくというようなところ、これは再エネだけに限らない話であり、他の大規模な事業についても都道府県が示す環境配慮基準をしっかりと踏まえていただくということにもつながると思うため、そこはしっかり都道府県にやっていただく必要があると考えます。
そして、コミュニケーションの促進の観点で言えば、土地利用関連計画において、事業をしっかり誘導していけるような計画策定を地域のコミュニケーションを踏まえながら自治体につくっていただくといった土地利用計画との連動性をいかに担保していくかというところが重要と思います。
第二種事業の配慮書の話も同様に、前回の風力小委でも言われていたように、再エネ事業の場合は、特に温対法の促進区域としっかりとつなげていく。その促進区域の策定段階においては、地域におけるコミュニケーションを図る手続というものも踏まれていくので、それが十分な地域の理解及び情報提供にもつながっていくということもあろうかと思いますので、温対法上の促進区域とのつながりというのも、ここでも考えるべきと思います。再エネの話に限ったものではありませんが、そのように既存制度との連携、リンクという点になります。
それから報告書については、先ほど村山委員の言われたように、自治体においては供用開始後の割と間もない時期、それから一定期間経過後の複数回にわたって事後報告書を出してもらっています。経年変化していくという状況が当然あり得るため、そういった制度を持っているところがあります。供用後の一定期間経過後までの複数回の報告書の提出というところも考えられるのではないかと思います。
風力発電については、先ほど別の委員も言われましたが、洋上風力は特に廃止時、デコミッショニングの段階についてもしっかりとアセス図書の中にも盛り込んでいただき、そしてデコミッショニングの時点における報告書というところも検討すべきと思います。イギリスにおいてもそのような仕組みを持っており、そこも参考になると思います。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、環境省より回答をお願いします。
○川越環境影響評価課長 御意見を多々頂戴しました。ありがとうございます。これらの意見を踏まえて考えていく所存です。
まず、吉田委員から御意見のありました撤去時の報告書の義務化の観点ですが、一応、現状でも明らかに最初の時点で工作物の撤去が見込まれるようなものについては、それらに係る影響要因も整理することを基本的事項の中に書いています。ただし、FITの適用がなくなった後、本当につぶすのか、つぶさないのかといったところまで担保されているものではなく、それは事業者の意思もあるため、そのあたりで、この適用が必ずしもできるものなのか、できないものなのかというのが分かれてくると思いますが、そのような状況になっています。そして、配慮書の関係ではみなし複数案について、そもそも言葉自体がおかしいのではないか。一方、続けるにしても趣旨を明確にしていくべきではないか。これらの点は、どのように整理するかを考えさせてください。
次に、報告書について白山委員より、そもそも事業者としてエビデンスのデータを公開することは当然であり、フィロソフィーを明確にすべきとのことでした。そういったものを公開していく中で、どういったところで公開をするのか。もしくは、事業者がということなのかもしれませんけれども、その点についても整理をしていきたいと思います。第二種事業の配慮書に関しても御意見を頂戴しました。こちらとしても考えたいと思いますが、今、第二種事業については、まずアセスの要否に係る判定を受ける。その中で、配慮書手続を義務化する場合、配慮書は第二種事業の判定後の手続になると考えています。そういった際に、第二種事業の判定では、都道府県知事の意見を求めることとされています。一方、配慮書では、関係自治体、住民意見の聴取が努力義務にされているといった点でのバランス、そして、事業実施区域の環境状況等に基づく判定基準が設定されており、そういった点は、判定において、立地環境の観点からも実は配慮が行われる仕組みになっています。それらを踏まえ、制度的にどう考えるのかというのは詰めていく必要があると思います。今回いただいた御意見を踏まえ、どのような形で答申案に盛り込んでいただくかを考えさせてください。
そのほか、奥委員などからゾーニング等の御意見をいただきましたが、後ほど出てきますので、併せて回答できればと思います。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございました。みなし複数案については、中央新幹線のリニア新幹線のあたりで、その沿線について幅広く取って複数案のように検討しているようなところから始まっているのではないかと思いますが、日本特有の話になっているので、是非検討していきたいと思います。
続きまして、パート2、「環境配慮が確保された風力発電の最大限の導入促進」について、事務局から御説明をお願いします。
○川越環境影響評価課長 引き続き、資料1に基づいて御説明します。
21ページを御覧ください。こちらのほうは、風力発電を始めとした再エネの導入に関する御意見を整理したものとなります。少し飛ばして御説明します。3ポツ目になりますが、とりわけ陸上風力発電については、環境影響の懸念が小さい立地環境へ事業を誘導していく効果的なゾーニングの仕組みが必要ではないか。具体的には、先ほど出た温対法に基づく再エネ促進区域制度などの他制度と環境影響評価制度の連携を強化していくことが考えられるのではないか。4ポツ目として、小規模なものであっても、立地環境によって大きな環境影響が生じる可能性があるような事業については、国が積極的に環境影響評価の審査に関与していく必要があるのではないか。第二種事業の対象要件を拡張し、適切にスクリーニングがなされる仕組みとすることは考えられるのではないか。その際に、法に基づく環境影響評価が不要となった場合の条例における取扱いについても考え方の整理が必要ではないかといった御意見をいただいています。5ポツ目として、例えば風力発電に係るリプレース事業について、配慮手続の適用除外が必要な環境影響評価項目の絞り込み、スコーピングの強化について検討の余地があるのではないか。6ポツ目として、風力に限らず、対象事業種全体の環境影響評価手続の効率化について検討してほしいといった御意見を頂戴しています。
22ページ以降、風力発電事業を取り巻く状況に関する資料となります。22ページは、洋上、陸上における導入状況とその導入目標を示したものです。2030年度の目標達成のためには、いずれにしても自然環境を始め、環境への配慮をしつつ、地域と共生を図りながら最大限導入を図っていく、そういったことが重要であるという状況にあります。23ページについては、第1回合同小委で示した資料です。風力発電に係る手続実績及び環境大臣意見の発出件数を整理したものです。24ページが風力発電に係る準備書に対して発出した環境大臣意見を整理したものです。洋上では騒音、鳥類、陸上では騒音、水質、動植物、鳥類といったものに意見を多く出しています。
25ページを御覧ください。こちらは、陸上風力発電の単機出力の推移を示したものです。以前は2,000から3,000キロワット級がメインでしたが、近年の評価書を見る限り、4,000キロワット級というものが主流化してきており、大型化していることが見て取れると思います。
27ページを御覧ください。論点2-1として、適切な立地環境への誘導に係る導入促進です。こちらは洋上風力発電に係る環境配慮の制度検討を示したものになります。後段にありますように、洋上風力については領海及びEEZにおける洋上風力発電の区域指定に当たり、環境大臣が海洋環境調査をし、環境の配慮を事前に組み込んでいく。そのようなことを盛り込んだ再エネ海域利用法の改正案というものを国会に提出すべく、今目指しているところです。
28ページ、29ページがその再エネ海域利用法の改正案の概要を整理したものです。30ページについては、これも第1回に資料でお示ししたものですが、陸上風力発電の第一種事業の規模要件の見直しに係る経緯を示した資料です。続いて31ページになりますが、第一種事業の規模要件を見直した際に、立地に応じて地域の環境特性を踏まえた効果的、効率的な環境アセスメントの実施を進めていくべきだといった話があり、令和4年度に検討会を開催しています。その際に検討してきた制度案を示したものです。下段にフロー図を示しています。概要については、左側を見ていただくと、第一種、第二種事業の区別はしない、ある下限値以上の規模は全て対象とする。その後、立地場所を明らかにした事業計画や既存情報を基にした事業影響予測書というものの作成を求めていきます。その予測書を基に、青色のボックスにありますが、環境影響の程度に応じて3つのコースに振り分ける。①の著しい環境影響のおそれがある場合については立地の選定の再検討を求める。②は環境影響の程度は著しくなるおそれはないものの、一定程度あるものはアセスを通常どおりしていただく。③については環境影響のおそれがないというものは手続終了とする。その際には条例のアセスの対象とはならないといった制度案を検討してきています。
32ページを御覧ください。今御説明した制度案について、その後、具体化に向けた検討を進めてきたところですが、その際に、有識者、関係団体、地方公共団体にヒアリング等も実施してきました。その中で、少し新たな課題というものが出てきています。1)については、著しい環境影響のおそれがあると判定された場合、立地選定の再検討を課すことになっていますが、その場合、配慮書段階まで遡るようになります。他の事業種でも立地検討というのが重要であることを考えると、陸上風力のみに厳しい手続を課すこととなる制度上の課題があり得るのではないか。2)として、①から③の振り分けでは、環境影響の程度を3段階に区分して判定していくことが必要となります。その際に環境影響の程度を明確に区分するための定量的、統一的な指標基準が必要になるのですけれども、そのような指標、基準というものを、地形であるとか例えば土地利用といった自然環境、社会環境を含め、地域事情も十分考慮して国が統一的に策定する必要があるという点では技術的な課題があるのではないか。3)として、③の環境影響のおそれが大きくないと確認されたものについては、アセス自体が不要となるものの、国の統一的基準ですと地域事情というものが考慮されていない、さらには、環境影響評価条例の対象外となるということに対して地方公共団体のほうからは受け入れ難いといった御意見も複数いただいている。4)として、バードストライクによる鳥類への影響を始め、現行でも事後調査で対応しているような予測の不確実性の高いものがありますけれども、そういった不確実性の高い項目をほとんど事後調査で実施していることから、逆に考えますと、アセスが不要となる案件というのは極めて限定的になってくるのではないか。そうすると、結果として③という手続がなくなることにより、メリハリのあるアセスの実施につながらない可能性が出てくるのではないか。こうしたところで少し課題が出てきていると承知しています。
33ページを御覧ください。御議論いただきたい点ですが、1ポツ目にあるとおり、今御説明したような制度の詳細設計を進めていく中で出てきた課題を踏まえると、現行の環境影響評価法の枠組みの中で直ちに陸上風力の環境影響評価に係る新制度案というものを実現させることは少し難しい状況にあるのではないかというのが今の事務方の考えとなります。ただし、2ポツ目にあるとおり、適切な立地誘導を図る仕組みというものは極めて重要であり、特に環境配慮すべき立地環境といったものをあらかじめ示し、回避・低減につなげていく、そういったことについては、何かしらの対応が重要であると考えています。2ポツ目にあるように、これまで検討してきた内容、趣旨を十分に踏まえ、環境影響評価法の枠組みにとらわれず、ゾーニング制度の検討を進めていくことが必要と考えています。当然、ゾーニング制度を進めていく際に、環境情報の整備であるとか、例えば環境影響評価における回避・低減の考え方、そういったものは示していくことも併せて必要ではないかと考えています。3ポツ目になりますが、再エネ促進区域制度を始めとしたゾーニング制度が既にあるため、そういったものと環境影響評価制度の連携を強化し、ゾーニングにより一定程度環境配慮が確保される事業については、スコーピングを効かせたアセスにしていく。そういったことにより、環境影響評価手続の在り方についても検討を進めることが考えられるのではないかと思っています。これらについて御意見を頂戴できればというのが一つ目の論点となります。
以降、34ページからは温対法に基づく促進区域に関する資料です。
その中で、少しゾーニングの話が出ておりましたが、39ページを御覧ください。こちらは北海道のせたな町というところにおけるゾーニング制度に関する資料です。せたな町では既存の情報を基に、左下にあるようなゾーニングマップを作っています。ゾーニングマップの作成に当たり、協議会における合意形成であるとか、地域説明会、パブコメなども実施して公表しています。エリアについては4つのゾーンを設定しておりますが、そもそも再エネ設置が不可とする保全エリアであるとか、再エネ施設を設置可能とする調整エリア、促進エリア、そういった4つのゾーンを設定していますが、ゾーニングマップではやはり情報不足によって全てを表現することができないということに鑑み、事業のゾーニングマップに加えて、風車の影に関する記載がありますが、併せて配慮事項のようなものを整理しており、こういったものを基にアセスをする場合の環境影響の回避・低減であるとか、スコーピング等に資する情報を示しています。促進区域では、こういった広域ゾーニング型であるとか、事業者の個々のプロジェクトを基に設定する事業提案型といった幾つかのパターンがあります。そういった地域事情を踏まえて、これから我々としてアセス制度も連携していくことが考えられるのではないかと思います。
次に、論点2-2に関して説明します。42ページを御覧ください。こちらは環境影響評価制度における対象事業の規模の考え方です。環境影響評価法では、事業の規模と環境影響の程度の間に正の相関があるといった考え方を基に対象事業を設定していますが、風力発電についてはその考え方に当てはまらないケースが出てきている、そういった状況にあると理解しております。
43ページを御覧ください。こちら陸上風力発電に係る厳しい環境大臣意見の発出状況を整理したものです。出力帯によって案件数が異なるので厳しい意見の多寡で見られるものではありませんが、現行の第二種事業未満の規模となる1万から3万キロワットの案件でも緑色の厳しい意見というものを述べられていることから考えると、規模によらずというところが言えるかと思います。
44ページについては、そのような小規模の陸上風力発電に関する厳しい大臣意見の例を示したものです。鳥類、騒音、景観についての例となります。45ページは、各地方公共団体における風力発電に係る条例の制定状況です。第一種事業は必ず環境影響評価を行います。その下限値は自治体によって差はありますが、かなりの自治体で風力に対応した条例が整備されている状況です。
46ページが今回御議論いただきたい点です。環境配慮のなされた地域共生型の再生可能エネルギーを最大限導入していくという点では、小規模な事業であっても法の対象とし、大きな環境影響のおそれのある風力発電については効果的、効率的な環境影響評価の実施を図っていくことが必要ではないか。また、そのためには、どのような制度的措置が考えられるか。この点について御意見をいただければと思います。具体的には今、法アセスの対象外となっている3.75万キロワット未満、そういった事業についても法対象としていくことがどうなのか。また、小規模な事業では、環境影響の程度が大きいものと小さいものが混在する状況の中、特にスクリーニングであるとか、スコーピングといったものを効率的、効果的に実現していくためには、どういった方策が考えられるのか。そのような点について御意見、御議論をいただければと考えているところです。
続きまして、論点2-3の「リプレース事業に関する環境影響評価手続の合理化」について御説明します。
48ページを御覧ください。こちらは風力発電所の稼働年数を15年と仮定した場合、今後の風力発電所のリプレース件数というものを予想したものです。御覧いただくように、2024年度、2025年度以降も一定数リプレースというものが生じてくる。さらに、特に水色が1から3.75万キロワットに相当するものですが、こういった小規模なもののリプレースが出てくることが見て取れます。
49ページを御覧ください。こちらは、陸上風力発電に係るリプレース事業の特徴をグラフで整理したものです。左側は事業全体の出力、右側が事業実施想定区域ですが、いずれも変化がないというものが多くなっていることが見て取れます。
50ページを御覧ください。左側にある風車の単機出力、右側にある風車の高さといったものは増加する傾向にある一方、真ん中にはある風車の基数というものは減少する傾向となっています。こちらのほうは、系統容量の枠内で単機出力と基数の掛け合わせで調整している、そういった結果によるものと考えられます。
51ページについては、リプレース事業における風車のヤード、アクセス道路の状況ですが、既存のものを活用する形で工事が進められる場合が多いですが、新規造成、拡幅というものが機体の大型化等にもよって、場合としては多くなっていることが見て取れるというものです。
52ページについては、第1回合同小委で示した風力発電のリプレースに係る合理化ガイドラインの関係の資料となります。このガイドライン、活用されている事業というものがあるものの、事業者からは各地方公共団体の審査において十分にこのガイドラインが考慮されてない場合もある、合理化の対象となる条件が昨今の実態に即していない、ガイドラインを適用できる事業が少ない、そういった御指摘を受けているところです。
53ページについては、風力発電以外の発電所に係るリプレース事業の特徴を整理したものです。上は火力発電所に係るものです。出力は増加するものがほとんどですが、事業区域については同一のものが大半を占めています。燃料種については、石油、石炭類から天然ガス等へ変更するものが多くなっています。近年では水素混焼といった事業も見られるなど燃料種の転換というものが図られています。下段の表は水力発電、地熱発電に係るリプレース事業の前後を整理したものです。事業種、事業によってリプレース前後で規模であるとか土地改変等の有無が異なっています。環境影響も異なっている状況が見て取れると思います。
54ページが御議論いただきたい点です。まず1つ目のポツとして、リプレース事業については、既に事業実施区域、事業規模が特定されていることが一般ですけれども、そういったことを踏まえると、事業実施区域、事業規模等に大きな変更がないリプレース事業について、事業の位置・規模の複数案の検討を求める配慮書手続を適用除外とすることが合理的ではないか。ただし、リプレースに伴う土地改変、アクセス道路の拡張等が予定される場合は、風車の位置等が具体化してくる方法書段階で当然具体的な回避・低減の考え方を記載させていく。そういったものを併せてやっていくということが条件かと思いますが、この点について御意見をいただければと思います。2ポツ目として、リプレース事業に係る配慮書手続の適用除外について、配慮書手続の趣旨を踏まえると、事業種ごとに定義というものを定める必要があるものの、風力発電に限定せず、他の事業種についてもそれぞれの事業特性に考慮しつつ対象とし得る制度が妥当ではないか。3ポツ目として、配慮書をもしなくすということであれば、その作成に代わり事業概要を作成し、その内容を主務大臣に届けるとともに公表する、そういった仕組みが必要ではないか。4ポツ目として、リプレース事業における環境影響評価項目の絞り込みが適切になされるための措置というものも併せて必要ではないか。これらについて御議論いただければと考えています。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、ただいまの説明に対する御意見、御質問等をお受けいたします。吉田委員、お願いします。
○吉田委員 幾つか申し上げます。まず32ページの図になります。この下限値以上の全ての事業を対象として事業影響予測書を作り3つに振り分け、その後の効率化も図りながら重要な部分ではしっかりした手続をしていくといった内容は非常によい案だと思います。ここに4つ程度問題点が書かれていますが、このうち2番目の指標・基準の必要性というのは、それを作ればいいわけです。4番目の効果が限定的になる可能性については、やってみないと分かりません。今から「あまり効果がないのではないか」と言ってしまう必要はないと思います。3番目の地方公共団体の懸念についてはそのとおりだと思いますので、条例の手続まで不要にするかどうかは地方自治体の判断を入れていけばよいと思います。
そして、1番目の「陸上風力のみ厳しい手続となる」という点については、これは規模が小さいものであっても、立地によって影響が大きいという事業の特性に合わせてしっかりしたアセスをやると同時に、影響の少ないところであれば、アセス手続を簡略化し、風力発電を促進していこうということで事業者の意見等も聞きながら考えていったものだと思います。これについては、「現段階では実現することは難しい」と書いてしまわず、継続して検討していただきたい。風力発電小委員会も傍聴しましたが、関島委員も「是非継続審議を」と言われていたように、10年先までこれを先延ばしてしまうのではなく、少しずつ変えていくことによって実現の可能性がないかどうかを検討していただきたいです。
制度小委員会では、風力発電のことだけではなく、第二種事業の活用の仕方等を考えていく必要があります。11月1日の会議でも申し上げましたが、「生物多様性条約では、約20年前に第8回の締約会議のときに生物多様性の基準というものをスクリーニングに入れてほしいということが言われているため、そういったことは考えないのか」という点です。英文は誰でもダウンロードができるのですけれども、もし和文のほうが必要であれば提供いたします。「EIAの法的要件は、生物多様性が考慮されることを保証するものではないため、生物多様性基準を既存のスクリーニング基準に組み込むこと、また新しいスクリーニング基準を開発することを考慮する必要がある」と書かれています。日本政府代表も参加をしたところで、この決議が採択されているわけです。是非国際会議で採択されたことが盛り込まれるような改正が今後必要だと思います。その中で、第二種事業に関しては、施行令の第6条で「0.75」と書かれているところがネックになっているのであれば、施行令を変えればよいのではないかと思います。さらに、法第1条の「規模が大きく環境影響の程度の著しい」という点が問題であれば、これをどう解釈するかですけれども、「規模が大きく、かつ、環境影響の評価の著しい」と書いていませんので、規模がそれほど大きくなくとも環境影響の程度が著しいのであれば対象にしていってもよいと思います。そのあたり、もう少し詰めて考えたいと思います。そういったことを検討するのが制度小委員会の役割だと思います。第二種事業の在り方については、著しい大きな規模に準ずるようなものをチェックするという意味だと思いますが、単に規模だけではなく、規模にかかわらず、環境影響の程度が大きいものについてどう扱っていくかということが大事であり、それを今後の制度に入れていく必要があると思います。そもそも、2022年に第1種事業となる風力発電の規模を1万キロワットから5万キロワットに引上げたこと自体が間違っていたのでないか。あのときの議論で既に、小さな規模であっても生物多様性に影響があるということを自然保護団体の人たちは言っていました。また、事業者の方たちは少しでも環境影響評価の期間を短くしたいと言われ5万キロワットに引き上げたわけですが、実際上は、条例による環境影響評価もあるため結局は期間は変わらない。このことも、そのときに指摘されていたはずです。それなのに、5万キロワットに引き上げてもうまくいかないというのはおかしい。そうしたことから、制度小委員会としては、是非第二種事業の使い方、あるいは適用の仕方、そういったものをもう少し考え直す機会にしたいと思います。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございます。崎田委員、お願いします。
○崎田委員 それぞれのテーマに関して簡単に申し上げます。最初のゾーニングや効果的な温対法などとの関わり、あるいは地域共生型の取組を広げていくという話に関しては、私は是非積極的に取り組んでいただければと思っています。やはり、特に地域共生型の再生可能エネルギーのプロジェクトというのは、今まではエネルギーをつくっても、地域が活用しないでいくような企画が非常に多く、とても地域の中でなかなか自分事として考えられない。そういう厳しい視点が強くなるという傾向もありましたけれども、地域共生型でしっかりと取り組みながら、共にどのように環境影響をなくしていくのかを考えていくようなプロジェクトをできるだけ増やしていくということが大変重要だと思います。今まで太陽光が非常に多くありました。風力に関しても、地域共生形で考え、ゾーニングなどをしっかり取り入れていく動きを強めていく方向性に私は賛成です。
次に、小規模のところです。特に風力などは、影響が結構地域の方にとっては気になるところも多いと思います。小規模に関しても、ある程度アセスの仕組みを入れていくという方向とし、一方、あまり過剰にならないようなやり方を考える。その方向性に賛成します。
リプレースに関しては、これまでの事業の運営状況が地域にとってもあまり懸念がない状況で、なおかつ、あまり改変がないようなリプレースであれば、最初の配慮書段階を免除するといいますか、できるだけ早期に進められるようなリプレースという方向性には賛成したいと思います。ただし、配慮書までいかなくても、ある程度の事業概要を書くような報告書をしっかり提出するといった内容のとおり、そういう担保はあったほうがいいと思います。そうした制度を入れながら、変更が少ないリプレースに関して早く進めていくという方向に賛成します。
○大塚委員長 ありがとうございます。村山委員、お願いします。
○村山委員 まず論点の2-1になります。31ページにあるように、事業影響予測指標に基づいて3つに区分するという考え方は、これまで日本ではなされていなかったところであり、様々な意見が出ていると思います。ただ、外国ではカテゴリーに分ける方法を一般的に行なっていると思います。国際機関でも普通に行っていますし、一部の国、中国でも33つのカテゴリーで分けています。おそらく、こうした状況をベースにこのような案が出てきていると思います。しかし、日本はスクリーニングについて規模要件だけでやってきたので、そこから考えると大分違うというようなことだと思います。こういう考え方が決して悪いわけではないと思いますので、他国がどのようにやっているのかを調べていくと同時に、事例を幾つか積み重ねることで、徐々に標準化がなされていくようにも思います。さらには、この3つの区分に分けることの客観性を持たせるために、第三者の視点から見解を得て、そういった形での標準化ということもあり得るような気がしますので、少し時間はかかる可能性はありますが、決してこれが特殊な方法ではないということは申し上げておきます。
それから、適切な立地環境への誘導という意味でゾーニングのことが出てきています。ゾーニングはある意味自主的な取組という位置付けだと思いますけれども、一方、温対法の促進区域は制度的な裏付けがあります。この関係がもう少しクリアにされたほうがよいと思います。前回、関島委員がおっしゃっていたように思いますが、ゾーニング案の3つに区分をしていき、必ずしも促進区域だけではなく、保全や調整といったものも含めています。一方、促進区域は文字どおり促進の区域だけを選ぶということで、それぞれ制度や方法が異なるのでそれはそれでよいのですけれども、ゾーニングのやり方が有効だとすれば、その間をつなぐ仕組み、つなぐ考え方というものも、もう少し整理をした上で、一般に共有できるようなことがあってもよいと思います。事例としてご紹介いただいたせたな町では、ゾーニングから促進区域の設定をされていると思います。ある意味グッドプラクティスだと思いますが、そういった事例を含めてご紹介いただくということが必要と思います。
それから小規模事業に関する配慮について、第二種の規模要件を少し下げていくという考え方もあると思う一方、45ページの資料を拝見すると、自治体のほうでは既に対象になっているところもあります。灰色のところは全く風力が対象になってない点で問題ですが、既に多くの自治体で対象になっているとすれば、もう少し自治体の制度と連携をしていくことも考えてよいと思います。国として何らかのサポートをしていく、あるいは、これまではやっていなかったものの、国から自治体に意見を出すなど何かそういう仕組みもあってよいと考えます。これまで、市町村あるいは都道府県から国に意見が出てくるというのはありましたが、その逆があってもよいように思います。そういう形で、お互いに連携をしていく。既にある制度も活用するという考え方も一つあると思います。
加えて、学会からも提言として出しましたが、自主的にスモールアセスを進めていただく。それを促進するような制度を進めるには課題があるかもしれませんが、何か奨励するようなものがあるとよいと思います。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございます。勢一委員、お願いします。
○勢一委員 私からもそれぞれ申し上げます。まず、最初の論点の適正な立地に関して、洋上風力の例を御紹介いただきました。これは、国主導によって大規模な導入を加速して実施をしようとセントラル方式を採用するというもので設計された仕組みです。それが今の再エネ海域利用法に組み込まれていると理解しています。そうした観点で見れば、実は陸上風力のほうの先ほどから議論になっている国が主導でやっていく仕組みですけれども、それも洋上風力と同様に、国が主導して導入加速をするという趣旨で組まれた仕組みだと私は理解します。当時の議論にも関わりましたが、当時の政治ミッションを受けた議論があったという認識があります。そういう点では、当時の議論が現在のエビデンスと整合するかどうかというところは検証の余地があると考えます。ただ、現在では、それを踏まえたとしても立地適正化というところは非常に大きな必要性になっているため、その点では今回32ページでお示しいただいている仕組みというのは一つの選択肢になると思います。
また、課題を多く挙げていますが、1については事業特性があるという他の委員の先生方もおっしゃっています。2については、そのような仕組みをやるためにしっかり技術的な準備を整えていくことも必要であると考えます。3の地域事情の配慮についてもそのような手続をしっかりと組み込めばよいです。4については振り分け基準をどうするかというところの議論になると思います。こういう仕組みですけれども、そもそも論に戻るのですが、日本では空間管理の計画がありません。立地に関する環境影響をアセスが受け止めるというような仕組みになっているので、そういう点では諸外国と比べると複雑かつ集約的な仕組みに見えるところがあると思います。本来であれば、もう少しゾーニング的な意味での空間管理があり、そこで地域のコミュニケーションもしっかり入った上で事業に関するアセスというものが理想だと思いますが、現行制度を前提にどのように考えていくかが課題であると感じます。
あと、33ページの論点で示されたゾーニングとの接続です。他の法制度との議論は非常に大事と思います。ただ、温対法が典型例ではあるものの、今後、地域によっては条例レベルでゾーニング的な仕組みを置くという可能性もないとは言い切れません。少なくとも今、太陽光に対する規制が条例で多く行われている状況です。そうすると、法に限らず、条例等の類似制度も何らか考慮できるような枠組みが必要と感じました。
小規模の部分に関しては、これは規模の考え方をどうするかといったものだと思います。ただ、村山委員から指摘がありましたけれども、本来は全ての事業でアセス的な環境配慮は必要であり、法律や条例による義務付けをするのは一定規模以上であるというのが制度の立て付けだと思います。ですので、そうしたことを前提として対象事業をどのように設定していくか。これは第1回に申し上げましたので繰り返しませんが、法目的を改正することはもちろんできるわけですし、吉田委員御指摘のように、第二種の基準をどうするかを考えることも可能と思います。確かにアセス法ができた時点では、そういう想定のない仕組みになっていますが、今回、風力において新たなエビデンスが出てきたというのは、これは立法事実になると思います。このあたりは議論ができると考えます。
あと、リプレースの部分は、今回お示しいただいた資料の例えば51ページになりますが、風力についてはヤード、アクセス道路というところで、土地の改変等の影響が出てくるといった話でした。また、53ページの地熱について、これをどのように見てよいか分かりませんが、これは地熱である場合、どのような形でリプレースの影響が出るかというのは事業ごとで分からないという理解をしていますが、少なくとも、事業によってリプレースによる影響が異なるというのであれば、やはり事業ごとに基準を変えてみる必要が出てくると思います。このあたりは対象事業の在り方をどう見るかといったものとリンクをしてくるところだと思いますので、併せて御検討いただく必要があると考えます。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございます。山口委員、お願いします。
○山口委員 まず、論点2-1の方針案ですが、環境配慮、地域共生を両立させていくために適切な立地誘導を図る仕組みが重要という意見には賛成です。ゾーニングにより、一定程度環境への配慮が確保されている事業については手続の合理化など、何らかのインセンティブを与え、適切な立地誘導を図るための仕組みを構築することが重要と考えます。なお、全国知事会としては、温対法に基づく再エネ促進区域設定の例がいまだ少ない理由として、区域設定による地域経済のメリットが少ないなどの背景があるということを踏まえ、制度の活用に向け、市町村への財政支援や地域への利益還元の仕組みの創設等について要望しているところですので、よろしくお願いいたします。
次に、論点2-2に関連しまして、前回話がありました風力発電の第二種事業の規模要件の引下げについては、各自治体から、広い知見を要する国の審査の下、アセスが実施されることにより、条例の対象となる事業を検証しても特に問題ないという意見が多数で、規模要件引下げに、おおむね賛同している状況であります。
次に、論点2-3のリプレースについて、効果的で効率的な環境影響評価を行えるよう手続の合理化が必要であると考えています。配慮書手続のメリットである、地域住民などが初期の段階で時期を知ることができる仕組みが担保されているのであれば、風力発電に限らず、区域、規模などに大きな変更がないリプレース事業の配慮書手続の省略には賛成です。私からは以上です。
○大塚委員長 ありがとうございます。奥委員、お願いします。
○奥委員 32ページになります。これは、風力小委でも既に申し上げたことですが、改めて、特に③の環境影響のおそれが大きくないことを確認されたものについては、これは条例アセスも含めて適用除外、アセス手続不要とする点は、私は反対意見です。先ほども資料で御紹介いただいたように、法アセスの対象外の風力発電については条例で拾い上げるとしているところが多く存在しておりますし、昨今では、風力に限らず再エネの立地規制条例なども、むしろ促進というよりは規制をする趣旨の条例の制定数が増えてきているというところから考えても、どういった事業を、どの程度の事業をアセスの制度として取り込むのか。もしくは独自のローカルルールをつくり、その立地の適正化を図っていくのかといったようなことについては、これは自治体の裁量に委ねられるべきものだと考えています。
そして、先ほど既に申し上げてしまいましたが、特に立地の適正化を考えたときには、温対法の促進区域の仕組みとの連動というところもしっかりと考えていく。それが実現するような方向にどのようにしたら持っていけるのかを考えていく必要があると思います。34ページに温対法の促進区域の仕組みの説明スライドがありますけれども、配慮基準を国がつくるとして、先ほど申し上げたように、都道府県では14道府県が環境配慮基準を策定しているにとどまっているという話もありました。そこは、まず都道府県のほうでしっかりと整理していただき、そして基礎自治体がそういったことも踏まえて促進区域を定めていく方法でしっかりと取り組めるようにしていく。それに対する動機付けをどのように付与できるかも検討の必要があると思います。
ちなみにですが、最近の幾つかの自治体の検討を見ると、むしろ温対法の促進区域よりは、建築物省エネ法の建築基準緩和、特定認定要件の緩和のほうの促進区域の検討を先に進めている自治体が多く見られます。あまり温対法の促進区域というのは活用が広がってないような状況も見受けられるところですから、ここはもう少ししっかりと検討していく必要があると思います。
そして、54ページのリプレースの話です。こちらについては、先ほどの御説明の中にありましたが、リプレースだから環境配慮手続を除外してよいということではなく、リプレースの中身です。ヤードの新規造成であるとかアクセス道路の拡幅といった環境負荷が大きくなる内容である場合には適用除外とすることは望ましくないと思います。そのあたりの要件を明確化することは必要と考えます。ですので、一律に配慮書を免除ということには反対の意見になります。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございます。平石委員、お願いします。
○平石委員 丁寧な御説明をいただきありがとうございます。事業者の立場から、54ページの論点に対する今後の対応方針案について1点コメントします。電気事業者各社においては、今まさに2050年カーボンニュートラルの実現に向けて取組を進めているところですが、資源に乏しい島国である我が国において、エネルギーセキュリティーを確保するためには、特定の電源に過度に依存することなく、バランスの取れた電源構成を追求することが重要と考えています。こうした中、事業者として、将来的に電力需要の拡大が予想される中で、カーボンニュートラルの実現と、電力の安定供給の確保の両立を目指すべく、非効率石炭のフェードアウトや再生可能エネルギーの大量導入を進めていくと同時に、環境影響に適切に配慮をしながらカーボンニュートラルに資する多様な電源の開発を進めていく必要があると認識しています。したがいまして、今回のアセス法見直しの機会をとらえ、風力発電などの特定の電源種に限らず、事業特性や環境影響の程度、これまでの実績等を検証しながらカーボンニュートラルに関する他の政策なども総合的に踏まえた上で、アセスの手続の合理化を進めていただきたいと考えており、具体的には、リプレース事業は、対象事業区域が既存の地域であるとか隣接地に限定され、土地改変等による環境影響が限定的である場合には、配慮書の省略や方法書の合理化等、アセス手続期間の短縮に向けた具体的な検討を進めていただきたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございます。それでは、環境省より回答をお願いいたします。
○川越環境影響評価課長 まず論点2-1、適切な立地環境への誘導による導入促進になります。特に32ページに対する御意見を多数頂戴しています。現行の環境影響評価法の中で、即座に進めることが難しいというのは申し上げたとおりです。また、立地に応じてという点が出てきたのであれば、法の条文を直せばよいのではないか、政令を改めればよいといった御意見もありました。今回、風力を切り口として検討していますが、やはり環境影響評価法は13事業種全体を対象としたものといった点も踏まえ、こういったものが立法事実として法制局等で調整できるか。そういった点で詰めていく必要があると考えているところですけれども、今日いただいた御意見を基に、できることを考えていきたいと思っています。
また、制度案では①から③に分けていますが、結局は①、②と③に分けると、今の第二種事業のスクリーニングと同じことだと思います。①と②は、要はスコーピングに当たることだと思います。このままでということは現状難しいですが、例えば第二種事業のスクリーニング自体が今もあるため、そういったところでこうした考えを取り込んでいくことができないのかなど、そういった点も含めて考えていきたいと思います。
次に、吉田委員からは生物多様性条約のお話を前回同様にいただきました。以前も申し上げたとおり、重要な野生動植物の生息・生育地などの点は基本的事項において、既に判定基準として入っています。しかし、それが不十分だという御指摘かと思いますので、この点はまたいろいろと御指導をいただきながら考えていきたいと思います。そして、論点2-2、小規模事業に係る効果的、効率的な環境配慮の確保において、様々な御意見をいただきました。これらについても、少し第二種事業をどうするのかというところと、条例との関係についてもありましたので、そういった点を踏まえ、どのような方向があるのかを検討してまいります。
次に、勢一委員からは、リプレースの関係、地熱、水力のところをどう見ればよいのかといった御指摘がありました。正直、地熱についても出力がリプレース後で減ったり増えたりするものがあり、土地改変もあったりなかったりというもので、どこでどう見たらよいかというのは事業ごとに非常に異なっているのが正直なところです。そういったものを定義するときは、本当にどの要件に注目して定義すればいいかということを当然詰めていかなければいけません。ですので、一律に何でもとは多分いかないだろうといった趣旨で示した資料になります。ただし今、リプレースについても幾つか御意見を頂戴しましたので、それらを踏まえ、少しどのような方向性があるかというのは事務方でも検討し、また答申案としてお示しする中で、その考えた結果をお示ししたいと思います。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございます。それでは、最後のパート3、「その他の現行制度の課題への対応」に移ります。事務局より説明をお願いいたします。
○川越環境影響評価課長 それでは、その他の現行制度の課題への対応として、56ページを御覧ください。こちらは、平成22年に取りまとめられた中央環境審議会の答申における検討課題として指摘された検討事項を表形式で整理したものです。1行目については、先日来、白山委員からも御指摘をいただいていますが、CCSなど将来的に実施が見込まれる事業種の対応が必要である。2行目については、その対象事業について許認可等を行った際に環境影響評価の結果をどのように考慮したかを公表する仕組みを設けるべきではないか。3行目については、生物多様性の保全に関する技術として生物多様性オフセット等の新たな技術動向について整理が必要である。4行目については、今回も指摘いただいていますが、戦略的環境アセスメントの充実として広域的、複合的影響への配慮をSEAにおいて行うこと、SEAの実施の必要性を判断するような仕組みについても検討することが必要ではないか。5行目として、環境影響評価手続に係る不服申立後、争訟手続について今後の課題として検討していくことが必要ではないか。このような点について検討課題として御指摘をいただいていたところです。
57ページからが、今回の合同小委等で御意見をいただいたものを整理したものです。1つ目の情報発信関係ですが、環境影響評価図書の継続的な効果については積極的に検討していくべきではないか。2つ目として戦略的環境影響評価、SEA関係ですが、それを実施していくための検討が必要ではないか。次に、累積的環境影響評価関係として、諸外国の事例も参考にし、国として累積的環境影響評価に係る考え方を整理すべきではないか。また、累積的環境影響の責任主体の明確化が必要ではないか。次に、環境影響評価項目のメリハリ付けということで、適切に環境影響評価項目の絞り込みを行い、合理的に環境影響評価を実施していくことが重要ではないか。対象事業の追加関係として、今後、海洋における大規模な新規開発事業の実施が見込まれる中、先ほど出てまいりましたが、CCS事業など環境影響評価法の対象事業に追加すべき事業種があるか判断するため、状況を継続して注視する必要があるのではないかという御意見になります。
58ページは手続の手戻り関係です。陸上風力発電において、準備書から評価書に至る段階で風車の配置が大幅に変更している事例がある場合がありますが、そういった変更があるにもかかわらず、手続の手戻り要件に該当しないような事案が確認されている点で、こういったものへの対応が必要ではないか。さらに、アセスが長期間にわたって手続が進行されていない、止まってしまっている事業の対応についても考えていく必要があるのではないか。次に、人材育成、制度の普及啓発関係では、環境影響評価に係る技術的人材の育成を進めていくことが重要ではないか。さらに、自治体職員、審査会委員等に対し、研修等の取組を継続して実施していくことが必要ではないか。さらには、地域の専門家をリストアップし、事業者に提供していくような取組が重要ではないか。生物多様性保全関係では、30by30の達成、そして先ほども御意見をいただいたように、生物多様性条約の遵守等の観点から適切な環境影響評価がなされているかどうか技術的な検証が必要ではないか。さらに生物多様性分野の環境影響評価に係る技術の向上を図っていくことも必要ではないか。その際、生態系サービスであるとか、自然共生サイト等についても環境影響評価制度においてどのように取り扱っていくのか検討が必要ではないかといった御意見になります。
59ページは、その他として、目まぐるしく社会状況が変化していることを踏まえると、今後は10年を待たず、環境影響評価法の見直しに向けた検討を開始するべきではないか。2つ目として、先ほど村山委員からも御意見をいただきましたが、自主的に簡易な環境影響評価の実施を求めていくべきである。スモールアセスのような話を求めていくべきではないか。また、アセス逃れを防止するような対応が必要ではないか。さらには、災害のリスク評価であるとか、温室効果ガスに係るライフサイクルアセスメントを実施していくべきではないか。さらに環境に対するポジティブな側面をアセス図書に記載することにより、事業の理解醸成が促進される。さらには地域の個別事情を考慮し、条例に基づく環境影響評価条例を運用していることにも当然留意していく必要がある。このような御意見を頂戴したところです。
以降、8つの論点に整理をしています。61ページを御覧ください。まず論点3-1として、環境影響評価図書の継続的な公開になります。これについては、先ほど、既に「フィロソフィーを」といったお話も含めて御意見を頂戴しているところですが、今後の対応方針として御議論いただきたい事項について説明します。1ポツ目は、環境影響評価図書の継続的な公開については、現行の運用による取組ではなく制度的な措置が必要ではないか。2ポツ目として、図書の公開主体、公開範囲等を決定していく必要があるのではないか。この点について、先ほど既にいただいた御意見の内容も踏まえ、引き続き御議論をお願いしたく思います。62ページは、先ほども少し情報センターのお話で触れていただきましたが、環境アセスメント学会様より頂いている図書の継続公開に係る提言に関するものです。情報センターについても先ほど御意見いただきましたので、検討をしたく思います。
続きまして、戦略的環境アセスメントということで論点3-2になります。64ページを御覧ください。背景についてはSEAについて導入することを検討する必要があるということで、これまで御意見をいただいているところです。対応状況として、こちらはSEAにはならないと思うものの、それと似た手続として、アセス法では配慮書手続の導入、さらには地球温暖化対策推進法に基づく促進区域の設定、そして、先ほど勢一委員から「再エネ海域利用法ではセントラル方式」といった話がありましたけれども、そういった仕組みが入ってきているという点で類似する取組があると思っています。今後の対応方針として御議論いただきたい点としては、1ポツ目は、これも先ほど出ていることですが、再エネ促進区域制度を始めとしたゾーニング制度と環境影響評価法に基づく制度の連携というものを強化し、ゾーニングによって一定程度の環境配慮が確保されている事業についてはアセス手続を合理化することなど、適切な立地誘導を図るための枠組みについて検討を進めることが考えられるのではないか。2ポツ目として、その他事業についても海外事例も参考の上で個別の事業の計画、実施に枠組みを与えることになる上位計画、政策の検討段階を対象とした環境配慮の枠組みの実現を目指し、検討を進めていく必要があるのではないか。これらの点について御議論いただければと思います。
続きまして、論点3-3、累積的環境影響評価影響になります。66ページにあるように、累積的な環境影響への懸念に適切に対応していく必要があることを踏まえると、今後の対応方針案にあるように、1ポツ目は、諸外国における参考事例等を整理の上、我が国における累積的環境影響評価の考え方について技術的な観点から検討を行っていくことが必要ではないか。2ポツ目は、先ほども出ていましたが、再エネ促進区域制度を始めとしたゾーニング制度とアセス法に基づく制度の連携を強化していく。3ポツ目として環境影響評価図書の継続公開についても、これらの累積的影響の評価をしていく上での基礎データとして使っていく上では制度的な措置が必要ではないか。これらの点について御議論いただければと思います。
67ページは、既に累積的環境影響が懸念されるエリアということで、青森、北海道、秋田の3つの例を示しています。御覧いただいて分かるとおり、複数の事業が非常に重なるように実施されていることを考えると、累積的影響というものを見ていく必要は自明であると考えます。こういったところも、場合によってはモデルとして技術的検討というものができるのではないかと思います。
次に、論点3-4のスコーピングの強化による環境影響評価の合理化です。69ページを御覧ください。スコーピングを効かせていくというのは、アセス法ができてから言われているところですが、これが機能していない理由として、2ポツ目に少し書かせていただいていますが、1つは審査を担う立場の関係者からは詳細な調査を求められる場合がある。もう一つは、事業者は手戻りを防ぐ観点から網羅的な調査を進めておきたいといった意向がある。これだけではありませんが、このようなものがあるのではないかと考えます。この対応方針として、1ポツ目として、これまで数十年にわたって蓄積されてきた知見、事例等を踏まえると、適切なスコーピングがなされるよう技術的な観点から整理することが一定程度可能かと思われ、そういった検討を進めていく必要があるのではないか。3ポツ目は、地方公共団体の職員、審査会委員等の審査関係者に対する技術的な考え方を知っていただくための取組も大事ではないかという点について御議論いただければと思います。
70ページは参考となりますが、陸上風力における環境影響評価項目の選定状況というものを示した資料です。100%は全部の事業で行っているということで、工事の実施と土地、または工作物の存在、供用でそれぞれ違いますが、やはり、やっているもの、やってないものが明確に分かってきています。そして、地域特性を踏まえてやればよいものが見えてくると思いますので、このあたりの整理は一定程度できる部分があると考えます。
続きまして、論点3-5、環境影響評価法における新たな対象事業に関する検討です。72ページを御覧ください。こちらは先般からいただいているものですが、CCS事業など、そういった新しい事業への対応について検討が必要ではないか。今後の対応方針として、1ポツ目、今後新たに環境影響評価法の対象事業として追加するかどうかについての検討、そのための知見の収集を図るべき事業としてはどのようなものが考えられるかという点について、もし御意見等あればいただきたいと思います。CCS事業については、先般「CCS事業法」が成立しています。そういった制度の内容も踏まえ、新たに環境影響評価法の対象事業として追加するかどうかの検討であるとか、そのための知見の収集を図るべき事業としてどのようなものを考えられるかという点で御意見をいただければと思います。
73ページは、CCS事業法の概要を整理したものです。左側に、試掘・貯留事業の許可制度の創設ということで、経産大臣がそういった試掘や貯留事業を行う者を募集し、許可を行う。その上で、試掘権、貯留権を設定していくといった内容です。右側は、そういった貯留事業者に対する規制ということで、実施計画は経産大臣の認可制とし、その際、貯留層のモニタリングであるとか、必要な資金等を確保するため、引当金の積立て等を規定しています。環境省においても、海洋に関しては一緒に見ることになっているという制度設計です。
続きまして、論点3-6、手続途中段階の風車の機種変更です。75ページを御覧ください。こちらは、例えば風力発電であれば、購入予定の風車の機種が生産中止となってしまい、より大型の機種を使用することになった結果、その風車の離隔距離が増加する場合があります。このように、他律的な理由により、風車の配置であるとか1基当たりの出力が大きく変更されるケースが見られる場合もあります。このようなものに対し、準備書から評価書の段階で変わると、「準備書で見てきたものが何だったのか」という御意見もこれまでいただいたところですが、少しこちらで対応方針案として考えたものを下に書いています。例えば、他律的要因により風車単体の大きさであるとか配置の規模変更が想定される場合には、あらかじめ機種が変更になることも想定した上で、調査・予測・評価を行っていただき、その上で準備書手続も行っていただく。そのようにすると、準備書においても変更を想定した段階での評価もしているため、特に手戻りをせず、運用上、柔軟に対応することができるのではないかと考えています。このような方法を組み合わせて、より合理的、効果的にやっていくことについて御意見があればいただきたく思います。
76ページが、先ほど申し上げた変更のあった事例を示したものです。こちら机上配付となります。発電所全体の出力及び対象事業実施区域においては大きな変更がないものの、単機風車の出力が大きくなって基数が減り、風車の配置が変わっています。これが準備書から評価書段階で起きているといった事例の紹介です。
続きまして、論点3-7、環境影響評価に係る技術の向上です。78ページを御覧ください。これも幾つかの点で既に議論をいただいているところですが、背景として、最新の技術を取り込んでいくということと、2ポツ目にあるように、国内外の科学的知見を整理し、環境影響評価に係る技術の普及、技術的人材の育成を進めていくことが必要と考えています。対応状況として79ページにも紹介をしていますが、幾つかガイドラインであるとか、そういったものをつくるなど、技術的検討を進めてきたところです。さらには、2ポツ目にあるように、環境アセスメントデータベース(EADAS)といったものの情報整備、拡充というものを行ってきています。そのような中で、風力発電に関しては鳥類のセンシティビティマップというものも整備を進めてきているところです。今後の対応方針案の一つは、海外の事例を含め、科学的知見の収集、整理に引き続き努めていく。必要なガイドライン等の整備普及を進めていくことは行っていきたい。さらに、技術的人材の育成を進めていくことも必要と考えています。また、特に生態系を始め、環境影響評価に係る技術的な手法については検討が必要と考えているところです。こちらは、第1回において、例えば生態系サービスに注目していくべきではないかといった話もいただきましたが、そういった点も含め、広く検討が必要な部分ではないかといった点で御意見をいただきたく思います。
最後になります。論点3-8、迅速な災害復旧・復興と環境配慮の確保の両立です。81ページを御覧ください。背景①として、環境影響評価法において、今、人命に直接関わり緊急に実施する必要がある災害復旧等に係る事業対象として、アセス手続の適用除外規定というものが設けられています。ただし、東日本大震災の発生時においては、自主的なアセスメントが実施された経緯があります。背景②として、東日本大震災復興特別区域法において、復興事業への迅速な着手と環境保全の両立を図る観点から、復興整備計画に位置付けられた復興整備事業についてはアセス法の特例が設けられ、環境影響評価法に基づく手続を全て適用除外とする代わりに特定環境影響評価という、アセス手続を一つにまとめ、短縮して実施するといった特例手続を設けたという経緯があります。そういったものを踏まえ、今後の対応方針案ですが、そういった東日本大震災発生時の対応も参考とし、今後、大規模災害が発生した場合に備え、迅速な復旧・復興事業の推進と環境配慮の確保を両立させる仕組みについても検討していくことが必要ではないか。そういった点について御議論をいただければというものです。
82ページは、東日本大震災に基づく環境影響評価手続として、特に特定評価書の流れを示したものです。本日、答申案を作成していくに当たりまして、御議論いただきたい点を論点として整理していますが、これまでいただいた御意見のうち、まだ論点として反映できていない部分も多々あると思います。それらについては、今後お示しする答申案の中で御議論いただければと思いますが、この時点で何かあれば追加でいただければと思います。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、ただいまの説明に対する御意見、御質問等をお受けいたします。吉田委員、お願いします。
○吉田委員 「昆明・モントリオール生物多様性枠組」には、30by30のような保護地域の面積目標ということだけではなく、「絶滅のおそれのある種の大幅なリスク削減」であるとか、「劣化した生態系の30%を回復する」といった目標も掲げられています。それを回復していこうというのがネイチャーポジティブだと思います。ですので、このネイチャーポジティブに合った環境影響評価制度にしていく必要があると思います。それを考えると、56ページの生物多様性の保全に関する技術、生物多様性オフセットに関する整理、この生物多様性オフセットについては検討会をやってからもう10年も経つと思いますが、もう一度そういった検討の機会を設けていただき、どのようにすれば環境影響評価を通じて劣化した生態系を回復させられるかを検討していく必要があると思います。是非、それを御検討いただきたいです。
論点3-1以降に関して、何点か申し上げます。論点3-1の評価図書の継続的な公開ですが、これは本当に実現していただきたいところです。先ほど、白山委員からも御指摘がありましたように、制度化に当たって、「著作権法に基づき事業者が公衆送信権を有する点に留意して」と書いてあるのですが、研究者からすると、「自分が書いた論文、あるいはその中に使っている図が自分のオリジナルだからPDFを公開したくない」ということは許されないわけです。博士論文だって全てPDFで公開をするという時代であり、環境影響評価も同じだと思います。著作権を取り上げるわけではなく、それが適切に次の事業、あるいは累積的影響の評価などにつながっていくことで非常に有効に活用されるわけですから、こういったものについては、そろそろ義務化をしてもよいと思います。
それから、論点3-5の新たな対象事業に関する検討については、CCSが挙げられていますけれども、次に10年後では遅いと思いますので、是非CCSについては対象とするような検討が必要と思います。
それから論点3-8もこの小委員会で議論が必要な点だと思います。東日本大震災の復興特別区域法において設けられていた特定環境影響評価制度というものを大規模災害からの復興に関する法律に対しても、特定環境影響評価という制度を盛り込んでいくことについては、私は検討が必要だと思っております。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございます。白山委員、お願いします。
○白山委員 一部先ほどからの繰り返しになりますが、まず前回の宿題という件で、生物多様性のオフセットの件ですが、これは海外でもよく見聞きする話です。「こういうことをやりました」という話は随分と多く聞かされています。是非国内でも生物多様性のオフセットに対し、実行可能なこと、あるいはやるべき要件のようなものを検討していただくとよいと思います。
それから、先ほども申し上げましたが、オープンサイエンスの概念に基づき、図書の公開は義務化を是非考えてほしいと思います。その公開した図書を一々国がかき集めて管理するという組織をつくるのは、私はむしろ不要だと思います。そのために予算を割くようなことは必要ありません。要するに、誰かが以前に行われた環境アセスの評価図書を見たければ必ず見られるようにするということがあれば、見たい人は見られる。見せていただいた評価書に基づいて自分は戦略的アセスをするなど、累積的アセスの必要があるときにその参考にするといった流れになればよいと思います。今は、例えば先日、自然保護協会のほうで様々な風力のアセス図書を自分で見て、データを集めて、それで公開が止まる前に一生懸命データを自分でメモ書きをされた統計資料を拝見しましたが、そういうことは誰もがいつでもできるといった形が整っていればよいと思います。一方、公開する側にとってメリットも必要と考えます。昨今TNFDであるとか、基本的にデータ公開に後ろ向きの企業に対しては、マイナスの強い評価が出るという方向性が社会的にあります。特にファイナンスのほうではそういうところを相当意識しています。公開をしたところに対して何かインセンティブを考えることも一つと思いますが、公開しないことに対するペナルティが明示的ではなくとも、実際にそういうものが起きるような何らかの社会的ムーブメントをしっかりとつくっていくという考え方で進めていただければよいと考えます。
それから論点3-4ですが、スコーピングの強化をしようという際に、今の制度上でそれが思うようにいかないのは、順応的管理のコンセプトがあまりはっきりしていないため、予防的措置が非常に過大な要求になってしまっています。そのためにスコーピングがうまくいかない点があると思います。少し順応的管理に関する考え方をスコーピングの中で取り入れることができるようなことを論点としては考えていただくとよいと思います。
それから論点3-5のCCSの件ですが、今朝のNHKのニュース等でも報道されていましたが、ステークホルダーの理解を得ることに関して、「CCS事業法」だけで十分かどうかというのは検討していただいたほうがよいと思います。特に今後想定されるのは発電所であるとか石炭火力ですが、既に環境影響アセスのほうで対象になっている事業と連結した形で、恐らくCCSが行われる可能性は高いと考えます。そのときに整理をする必要がある、あるいは、CCS付きの発電所を新たに造るといった話が出てきたときには、一体どこまでを誰がやるのかといったややこしい話も発生し得ると思います。しっかりとした今後の議論の注視とともに、こちら側でも精力的に検討を進めることが必要だと思います。
それから論点3-6の観点では、やはりスコーピングの強化がこちらでも重要な考え方であり、是非その観点から議論を進めていきたいと思います。
それから、最後に災害の件ですが、実際に起きてしまった災害に対して特定評価書の作成というのはよく分かるのですが、例えば地震等は、事前にここにこういうことが起きそうだというのが分かっているわけです。あるいは、相当の確率で予測されます。それから水害に関しても、非常にリスクが高い場所というのは、それなりに予測されているとすれば、これは法として何かをしようといった話ではないかもしれませんが、事前にここにはこういう災害が起こり得る、そのときに特定アセスであればこのようにできるといった事前の準備ができる。それでも一応アセス図書を災害が起きてから作らなくてはいけないわけですから、その手続が非常に迅速に進み、災害の復興事業が更に加速できるのではないかと思います。そういう何か事前にこういう図書を準備することに対して後押しができるとよいのではないかと考えます。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございます。崎田委員、お願いします。
○崎田委員 幾つか申し上げます。まず論点に入る前に、様々な意見の中で既に出てきていたと思うのですが、今、見直しが10年になっているものの、昨今いろいろなことの動きが早い中、制度の見直しが10年というのは長い印象です。ただし、以前「アセスは1回やり始めると結構時間がかかるため、5年ぐらいで変えられると困る」という御意見もありまして、それもうなずけるところではあります。例えば今の10年で制度見直しという制度は変えなくとも、途中の5年で一度PDCAを回すなど、何かそういった仕組みを入れてもよいと思いました。
次に、前回いろいろと意見があったところで、将来見込まれる中でCCSの話だけではなく、高レベル放射性廃棄物処分場のことが出ていたとの記載があります。私は高レベルの放射性廃棄物処分場の調査に関する様々なリスクコミュニケーションに長く関わっているのですが、2020年にようやく複数地域で文献調査が始まり、3段階の調査を経て場所が決まるのが20年後という状況です。今回はまだこの話は入れずに、その次あたりでしっかりともう一度検討するのが現実的と思います。きっとそういうことを考えて今回、議論の対象としては出ていないものと理解いたします。
その一方、今回CCSが出ていますが、CCSに関しては非常に動きが早いです。いろいろと御意見が出ていたように、CCSをどのように扱っていくのかというのは、しっかりと意見交換をしたほうがよいと思います。また、この事業者様自体が非常に地域とのコミュニケーションに関心を持っていると感じるのは、様々な環境分野の展示会において、既に3、4年前から必ず出展されており、非常に多くの対話を精力的にやっている点からです。アセスの面ではどのように対応をするのか、きちんと話し合っていく大事な時期ではないでしょうか。
次に、論点3-1に関して、先ほど既に発言をしましたが、報告書に関しては皆でしっかり今後作っていただき、また今後の方々がいろいろそれを参考にするという好循環をつくっていくことが大変重要だと思います。「こういう場に関して、予算を付けなくてもいい」という御意見もありますが、10年前に制度を入れたものの、まだまだうまく活用し切れていない状況があるわけです。このような情報をしっかりと集め、評価をし、発信するということを中心課題にするセンターの必要性を一度しっかりと検討していただくことが大事だと思います。
論点3-2に関して、戦略的環境影響評価についてもう少ししっかり検討するべきかどうかという話がありました。できるだけしっかりと環境配慮を徹底しつつ、社会とのコミュニケーション、地域社会とのコミュニケーションを重視していくやり方として、どのようにやっていけば定着するのかということを常に意見交換し、情報が出ていくことで、社会の様々な企業の皆様の関心も高まっていくのではないかと思います。具体的にどういう視点というのは難しいですが、検討を続けていく、あるいは関心を持ち続けていくことは大事だと感じます。
また、ここに出ていなかったのですが、昨今、東京2020大会や大阪・関西万博など様々な大きな国際イベントのときに持続可能性が大変重視されるわけです。例えばCO2削減、カーボンニュートラルの配慮の話、サーキュラーエコノミーの配慮の話、それと生物多様性とを踏まえて大規模なイベントを評価していくといった動きが定着してきています。少しそういう環境アセスにプラスした形で、そういう新たな情報を蓄積していくこともあってもよいと感じました。
そして、私は人材育成のことを前回から発言していますが、ますます多様化をする中、しっかりとこの制度が生きていくための人材育成というのは大事な視点だと思います。そこのところは引き続きウオッチしていきたいところです。よろしくお願いします。
○大塚委員長 ありがとうございます。山口委員、お願いします。
○山口委員 まず、論点3-1の環境影響評価図書の継続的な公開については賛同いたします。公開によって、透明性の向上や周辺環境の基礎情報の蓄積、また後続事業等のアセス図書の質の向上に貢献し得ると考えます。
次に、論点3-3、累積的環境影響については、現状においても風力発電が集中的に設置されている地域があり、また、今後ゾーニングにより適切な立地環境への誘導が図られた場合など、累積的影響の評価の重要度はさらに増してくるものと考えます。評価方法も含め、具体的な方針の策定などの御検討を是非お願いしたいと思います。
次に、論点3-4、スコーピングの強化による環境影響評価の合理化については、効果的で効率的なアセスを行うため、これまで蓄積されてきた知見や事例などを踏まえ、項目の合理化を図ることは重要と考えます。また、地方公共団体では、案件数にばらつきがあり、知見が累積しづらい状況にあります。そのため、他の自治体におけるスコーピングの状況であるとか、報告書を含むアセス図書の内容などが把握できるようになれば、スコーピングに関わる技術的な考え方も周知され、適切な評価につながっていくものと考えます。
次に、論点3-6ですが、今後の答申案に、方法書段階における変更前、変更後それぞれの事業の案を設定した上で調査するとありますが、他律的要因が含まれている以上、予測設定には限界があると考えます。そのため、手続の再実施を要しない修正の要件への追加などの検討が必要ではないでしょうか。なお、評価の再実施を行うとなった場合につきましても、事業者に大きな負担が伴うため、変更内容によって環境影響が変化する部分を精査し、当該部門のみ改めて環境影響評価を実施するなど、手続の一部の省略化、図書の簡素化などの対応が必要ではないかと考えます。
次に、論点3-7、環境影響評価に関わる技術の向上に関連し、前回の委員会でも述べましたが、自治体においても技術審査会における専門家を選出する際の参考にさせていただきたく、専門家のリスト化などについては是非御検討いただきたいです。私からは以上です。よろしくお願いいたします。
○大塚委員長 ありがとうございます。鷲谷委員、お願いします。
○鷲谷委員 ここで意見が求められていることから少し外れてしまうかもしれませんが、論点3-7の78ページの下に記されている対応方針を支持する立場から、既に議論がなされたことにもかかわりますが、3点ほど意見を述べたく思います。
まず第1として、生物多様性、生態系の環境影響評価は、規模よりも、何よりもどこでという場所に大きく依存するものです。そのため、立地によって影響が千差万別であり、事業者がより広域的に設置場所を検討する段階で利用できる有効なゾーニング情報というのは何よりも重要だと思います。生物多様性の保全上、影響が大きく望ましくない場所を事業者が最初から避けることができるようなゾーニングをするということは、何度か御発言もありましたが、生物多様性条約の世界目標の求めに応じることでもあります。「空間計画」というキーワードは、生物多様性の急速な損失を減少させるために最も重視されていることの一つです。話題になっていた「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の23のターゲットの第1目標の中で求められていることは、「Participatory integrated and biodiversity-inclusive spatial planning(参加型で統合的な生物多様性を包含する空間計画)」を求めています。環境影響評価において、事業者が無駄な苦労をしなくて済むように、影響評価以前の問題になるかもしれませんが、事業を回避すべき空間をしっかりゾーニングしておく。事業を促進する空間については語られていますが、「するべきでないところ」もはっきりさせておくということが重要だと思います。それについては、実務上の難しさはあまりなく、国立公園などの自然保護区は既にその中での空間的重要度の情報を伴って設定されていますし、自然共生サイトなど新たなゾーニングが進んでいますが、その際にも地形や植生などで重要なところというのは、区域の中に含まれる傾向があると思われるからです。
2点目ですが、アセスの文書は、事業者と環境に関心を持つ地域内外の主体で、さらには将来世代をも含めたコミュニケーションの重要な手段ですから、報告書の公開が強く求められることは当然のこと、公表される文書は分かりやすく、また、既に議論に出ていましたけれども、科学的に有効な情報でなければならない。つまり、エビデンスベースでなければいけない。そうすると、専門性のある第三者の査読等の仕組みがうまくつくられると 質を保証するために最も有効なのではないかと思います。また、どのように文書を作るべきかというようなガイドライン、手引きも整備されるとよいのではないかと思います。
それから生態系サービスということで取り上げられている問題ですが、どのような生物多様性、生態系に関して影響評価をすべきという点については、生物多様性がつくる生態系の働きを介した人間社会への影響を評価することも重要だと思います。前回、少しだけコウモリの害虫防除効果という生態系サービスについて触れました。コウモリがいなくなれば殺虫作用のある農薬の使用量が増え、人の健康にも影響が及ぶということを環境経済学の国際誌で公表された最新の研究が明らかにしています。少し異なる問題ですが、事業地や附属される設備の整備で緑化が行われることがあり、そのときに外来牧草などで緑化された土地が広がると、稲の代表的な害虫である斑点米カメムシの発生源が拡大してしまうため、斑点米の被害が増えると思います。そうすると、農家は穂が出る前に農薬を多くまくことになりがちになり、多くの昆虫や生物、ひいては人間の健康も場合によっては影響を受けることになるのではないかと思います。これは一例ですが、生態系サービスや人間の営みと関連する影響についても目配りをするということは今後のアセスメントとして望ましいことではないかと思います。またその前提となる生物種の個体群への影響を含め、欧米では科学的な研究が大きく進展しているため、国内のものだけではなく、海外の科学的な情報の収集にも依拠した手引きのようなもの、あるいはマニュアルのようなものが作られると情報アセスにとっての情報インフラの整備として重要な役割を果たすのではないかと思います。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございます。勢一委員、お願いします。
○勢一委員 時間があまりないため、簡潔に重複しない点だけを申し上げます。まず、平成22年の取りまとめの宿題が残っており、この中で、後ろのほうに入っていないものは許認可の反映という点だと思います。これは、説明責任として国の側はしっかり対応しなければいけないところだと考えます。ですので、是非検討に入れていただきたいです。
そして、同じく宿題の戦略的環境アセスメントの部分ですが、配慮書手続で一部実現していますけれども、これの実質化と格上げというところはしっかり議論が必要だと思います。特に立地選定の部分に寄与できるような形です。本来であれば、空間管理計画でアセスを行えると最もよいのですが、日本の場合はそれができません。そのため、ゾーニング、空間管理、土地利用とひも付いたアセス手続を検討いただきたいと思います。
また、皆様より御指摘済みですが、図書の公開について、私も制度的措置が必要と思っています。アセス図書は行政手続のために作成された文書ですから、それに基づいて最終的には法の許認可決定が行われる。そうすると、政策判断の説明責任として国民に公開されるべきという理由もあると思います。このあたりを少し丁寧に御検討いただけるとありがたいです。
また、1点質問になります。「CCS事業法」ですが、法の検討の段階で「アセスが必要だ」という議論はなかったのでしょうかというところを伺いたく思います。非常に環境影響が大きい事業になりますし、事業が始まってからでは手遅れです。これは検討項目として少なくとも挙げておく必要があると思います。
最後に、アセスの評価項目として気候変動の適応についてはまだ何も触れられていないと認識しています。開発による災害等のリスクをどう見るか、そして設置される事業の施設の災害等へのレジリエンスをどう見るかといった点を実は議論する必要があると思っています。どのような手法で見るかといった点での整備があるため、すぐにとはならないかもしれませんが、こういうところはしっかり検討が必要と思い、一応挙げておきます。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございます。村山委員、お願いします。
○村山委員 まず、論点3-2の戦略的影響評価ですが、事業アセスとのつながりで言えば、これまで出てきたようなゾーニングや促進区域というものが多分カテゴリーに入ってくると思います。ただ、やはり今のところ弱いのは社会的な影響、経済的な影響、環境・社会・経済という3つがうまくそろうとSEA的になってくると思います。加えて、そのあたりになってくると他の計画との関係というのも考えていく必要があると思います。各地域で環境基本計画、あるいは都市地域マスタープラン等の計画が出てきていると思うので、そういった計画との関係というのもより重要になってくると考えます。
そして、全く別の観点ですが、これまで事業アセスとの関係だけではなく、もう少し上位段階の環境配慮という意味では、様々な計画に対するアセス的な取り入れというのもあり得ると思います。例えば廃棄物処理、生物多様性保全、地球温暖化防止といったものに関する計画に対してアセス的な考え方を取り入れるということもあると考え、その点も一つ検討すべきと思います。
それから、累積的影響については個別事業からのアプローチもあります。これは先ほど事例的な評価ということをお話しいただきましたが、加えて空間的なアプローチからも考えざるを得ないとところだと思います。やはり地域の計画との連携が非常に大事で、恐らく個別事業のアセスだけではできない問題です。アセスの枠を超えた形での対応というのを考えていく必要があると感じます。
スコーピングについては、項目を増やすよりは減らすほうが難しいため、これは審査会の取りまとめ役の役割が非常に重要だと思います。仮に、制度的に報告書が公開されていけば、それが一定程度役割を果たすと考えます。
新規事業については、CCSとともに今後恐らく「深海資源の採掘」という話も出てきて、国際学会では一つのトピックになっていますが、今後10年という長い話ではあるものの、そのあたりになってくるとEEZだけではなく、もう少し離れたところでの話も入ってくると思われます。そのあたりも動向を注視しておく必要があると考えます。
論点3-7については、今のところ「外国を含めて」と書いていただいていますが、これは欧米だけではなく、アジアの状況も調べていただく必要があります。場合によっては、アジアのほうがより進んでいることもあるため、そのあたりを調べた上で、日本で今後どうするかということもご検討いただきたいところです。
最後に、論点で挙げられていませんが、アセスメントのコミュニケーションという意味では公聴会の位置付けというのも考えておく必要があると思います。自治体では制度的に多くの自治体が導入していますが、国の制度としてどうするのか。有効性や課題について自治体の状況を見ながら検討するということもあってよいと思います。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございます。村山委員の言われた公聴会であるとか、深海の開発というのは大事なテーマだと思いますので、是非御検討いただければありがたいです。
それでは、環境省より回答をお願いいたします。
○川越環境影響評価課長 御意見ありがとうございました。質問のあったところだけ回答をします。まず、勢一委員から「CCS事業法の検討段階でアセスが必要かどうかの議論があったか」という点ですが、国会審議の中で「アセス法でもやる必要がないのか」といった御指摘がありました。そうしたところで、環境省としても環境影響としてどのようなものが懸念されるかというのを整理した上で、環境保全にも配慮した形でCCS事業ができることから事業法自体は成立しました。別途、「環境影響評価の観点でアセス法として対応をすることが必要かどうかというのは検討する」という答弁をしてきた経緯があります。
○大塚委員長 CCS事業法の環境省の検討に関して、私が座長を行いましたので、その責任として申し上げます。検討は行われており、多分省令で対応することになると思いますが、それだけで十分だろうかということで今回出していただいているものと思います。
そのほか、よろしいでしょうか。それでは、本日予定していた議事はこれで全て終了となります。進行を事務局にお返しいたします。
○加藤環境影響審査室長 本日は、活発な御議論をいただきましてありがとうございました。本日の議事録については、事務局で案を作成し、委員の皆様に御確認いただいた後、ホームページで公表する予定としています。その確認への御協力のほどよろしくお願いいたします。
今後は、本日の御議論いただいた内容と、11月18日(月)に開催した「風力発電に係る環境影響評価制度の在り方に関する小委員会」でいただいた内容も踏まえ、12月中旬に2つの小委員会の合同会議を開催し、答申案の内容について御議論いただく予定です。詳細については、後日、改めて連絡を差し上げるようにいたします。
以上をもちまして、「第10回中央環境審議会総合政策部会環境影響評価制度小委員会」を終了いたします。皆様、御多忙の中、長時間にわたり御議論を賜りまして誠にありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。