中央環境審議会総合政策部会環境影響評価制度小委員会(第9回)・風力発電に係る環境影響評価制度の在り方に関する小委員会(第5回)合同会議 議事録
日時
令和6年11月6日(水)9:00~12:00
場所
AP日本橋Gルーム
開催方式
オンライン併用
議事次第
1.開会
2.議事
関係団体からのヒアリング
3.閉会
配付資料
【資料】
資料1 一般社団法人日本環境アセスメント協会 発表資料
資料2 公益財団法人日本自然保護協会 発表資料
資料4 一般社団法人日本風力発電協会 発表資料
資料5 北海道環境生活部環境保全局環境政策課 発表資料
【参考資料】
参考資料1 中央環境審議会総合政策部会環境影響評価制度小委員会 委員名簿
参考資料2 中央環境審議会総合政策部会風力発電に係る環境影響評価制度の在り方に関する小委員会 委員名簿
参考資料3 ヒアリング団体一覧
議事
○加藤環境影響審査室長 これより、第9回中央環境審議会総合政策部会環境影響評価制度小委員会、第5回風力発電に係る環境影響評価制度の在り方に関する小委員会合同会議を開催いたします。
私は、環境省大臣官房環境影響評価課環境影響審査室長の加藤です。皆様、本日は御多用にもかかわらず、御参集賜りまして誠にありがとうございます。
報道関係者の皆様への御案内です。冒頭の撮影については、議事を開始するまでの間において可能となりますので、御承知おきください。
本日の合同会議ですが、対面とオンラインのハイブリッド方式での開催とさせていただいております。「環境省大臣官房環境影響評価課チャンネル」にてライブ配信を行っております。なお、本配信については、議事録公開までの間、同チャンネルでアーカイブ配信を行う予定です。
オンライン参加の皆様におかれましては、何点か御協力をお願いいたします。御発言の際以外は、カメラ及びマイクをオフにし、御発言の際にはオンにしていただきますようお願いいたします。また、御発言を希望される場合は、挙手ボタンをクリックしていただくようお願いいたします。通信トラブル等何かございましたら、事務局までお申し付けください。
本日の委員の出席状況ですが、環境影響評価制度小委員会及び風力発電に係る環境影響評価制度の在り方に関する小委員会について、それぞれ委員総数の過半数以上の方に御参画いただいておりますので、定足数の要件を満たしており、小委員会として成立していることを御報告申し上げます。また、本日は、都合により阿部委員、飯田委員におかれましては欠席となります。また、森田委員におかれましては、若干遅れ参加される予定と伺っております。
続いて、お手元の資料を確認いたします。本日の資料は、現在画面に表示している資料一覧のとおりです。過不足等ございましたら、事務局までお申し付けください。
会場の報道関係の皆様におかれましては、冒頭の撮影はここまでとなります。以降は、傍聴のみとさせていただきます。
これより先の議事進行を、大塚委員長にお願いいたしたく存じます。
○大塚委員長 それでは、議事に移ります。
本日は、風力発電に係る環境影響評価制度及び環境影響評価制度全体の在り方等について、5つの団体からヒアリングを行います。各団体の発表時間は15分とし、最後にまとめて委員の皆様から質問をお受けいたします。
まず、一般社団法人日本環境アセスメント協会様から発表をお願いいたします。
○日本環境アセスメント協会 ただいま御紹介にあずかりました日本環境アセスメント協会の島田と申します。本日は、このような発表の機会をいただき誠にありがとうございます。
1ページは、我々の団体の概要であるため説明を省略し、2ページより説明いたします。まず、環境影響評価法制度に関する課題として幾つか挙げております。(1)は、適切な時期を捉えた新たな大規模開発事業についての検討が必要と考えております。下の黒文字のところで背景等を含め文章を書いておりますが、今後新たな大規模開発事業の可能性として、海域・海洋の開発事業が想定されると考えております。こうした海洋の環境影響評価において、陸域、沿岸域でこれまで知見を非常に蓄積してきておりますが、調査方法、予測評価方法、環境保全措置、合意形成なども含め従来と大きく異なることが想定されるため、基準をどう使っていくか。また、法律の整理も必要となり、こうした大規模開発事業の可能性が想定された場合には、法制面、国際的なルールとの整合を含めて配慮し、適切な時期に検討を始めることが必要であると考えます。
3ページです。(2)は、メリハリのあるスコーピングになります。前回のアセス法改正において、配慮書の話や方法書についても参考項目、参考手法といった整理がされておりますが、実態としては網羅的に調査、予測、評価をする評価が行われるケースが多いです。下に参考として書いておりますが、実際に実務をやる上では、自治体の審査会、専門家等から地域の特性を踏まえた意見をいただいて参考にするのですが、アセスの目的を超えたものを意見として出される場合もあります。事業を進める側からは、「手戻りを避けたい」、「後で必要と言われても困る」、「絶対大丈夫な内容としたい」といった考えが当然あります。そうしたところを踏まえると、メリハリのある選定を事前に行うのが難しいという背景があります。そのため、赤字で書いているように、アセスの目的、制度について、国民、自治体、有識者等へ周知、理解促進について、より一層の取組が望まれると考えます。
4ページです。(3)は、アセスで得られたデータの有効活用になります。1つ目の丸に書いておりますが、アセス手続の過程で公表される各種の環境情報は、地域の情報として有用なものです。こうしたものをアセスに関わる各種図書、資料について公開、共有が重要であると考えます。そうした情報については、今後の適切なアセスに貢献していく意味でもデジタルの情報として整備されることが望ましいと思います。あわせて、事後調査報告等の制度を充実していくこと、洋上風力発電で想定されるようなモニタリングデータについても収集の対象に出していくとことが重要ではないかと考えます。それから、その下になりますが、現在アセスで利用されることが多い「EADAS」を始め、そうした環境情報があります。データベースが分散していることや、あるいは画像としてしか閲覧できないようなものもまだ多い現状です。「Shape File」や「KML」など一般の方も利用しやすい形でデータ統合も含めて考えていくことが重要ではないかと考えます。
5ページです。(4)は、事業のポジティブな面の評価になります。これから、アセスの対象になるような事業においても、カーボンニュートラル、ネイチャーポジティブといったものへの貢献も配慮される事業が多くなっていくものと想定されます。アセスでの合意形成を図っていく上で、そうした事業のポジティブな面についてどのようにしていくかの検討も必要ではないかと考えます。その下の(5)ですが、生物多様性のオフセットになります。前回の改正に際しても、中環審の答申で生物多様性オフセットの問題については記述がありました。こうしたオフセットやネットゲインを導入することは現時点ではまだ課題が多いと思いますが、将来的にどう関わることができるかは検討が必要であると考えます。
6ページです。(6)は、アセスにおけるコミュニケーションの推進になります。環境影響評価で地元住民の方々を含めたステークホルダーの方々とのコミュニケーションを図る上で、今、アセス図書というものが物によっては1,000ページであるとか、要約版でも相当なボリュームがあります。海外の例でもアセス図書は非常に大部なものになる傾向ですが、アメリカ等では150ページという基準をつくり、EU指令でも概要版の作成を義務付けています。アセス図書を見ていただくためには、例えばページ数の制限、概要版の作成の方法といった配慮も必要ではないかと思います。
7ページです。(7)は、アセスにおける自治体・専門家の関わりです。先ほどもありましたが、アセス制度においては、地域の環境行政を担う自治体の方々、それから、その環境影響評価審査に関わる有識者の先生方が重要な役割を担われていることは認識しております。しかし、そうした行政の方々、委員の方々は数年で交代されることも多く、アセスメントの目的を超えた意見をいただくこともある状況です。アセスメント制度の目的、審査のポイントを継続的に関係者に周知することが必要であり、頻度としても十分な数で今後行っていくことが望まれると考えます。(8)の専門家については、アセスにおいて専門家の方々へのヒアリングが重要な方法の一つですが、適当な専門家の方が見つからない場合、そして地域での事業に関するあつれきの懸念等から、ヒアリングに対応いただけないようなケースもあります。専門家の意見はアセスにおいても非常に重要であるため、国・地方公共団体が連携し、地域の専門家をリストアップしていく取組も重要と考えます。
8ページです。(9)は、配慮書の機能の見直し等早期の環境配慮の徹底になります。前段のEIAやSEAですが、諸外国で進んでおり、日本の環境影響評価法でもSEAの必要性というのは附帯決議として指摘をされたところであるものの、まだ現状では十分配慮書制度を含め、機能しているとは言い難い部分があると思います。一方、道路事業や温対法に基づく再エネ促進区域、それから洋上風力の促進区域設定など、SEAの考え方が導入されつつあるようなものもあると認識しています。赤字にあるように、現行の配慮制度を複数案の設定や配慮すべき対象の回避等、運用面でそうした機能を拡充するとともに、温対法を含めたところで活用可能な制度を生かしていく。そうしたトータルで進めていくことが重要ではないかと考えます。
9ページです。(10)は、制度についての継続的検討になります。昨今の環境を中心に社会経済を含めた課題というのは非常に目まぐるしく変化しています。アセスメント制度についても、その変化に迅速に対応する必要が今後あるだろうと考えております。将来、10年後程度の見直しに向けた課題を明確にしていただいた上で、必要なものについては継続的に議論していくことを望みます。
10ページからは陸上風力に関する課題として整理しています。(1)は、第二種事業の規模要件の引下げについてです。今、第二種事業の規模要件に関わらないものは条例アセスを行われる場合があります。条例アセスのほうの効率化が、法アセスほど進んでいないところもあります。赤字にあるように、そうした規模要件引下げの検討並びに、以前、設置された規模要件の引上げと逆行しないよう併せて第二種事業の評価項目の簡素化等を含めた検討を、令和4年度に検討会報告書が出ており、そうした趣旨を踏まえたメリハリのアセスの実現が望まれると考えます。法アセス不要と判定されたものについては条例での取扱いを検討する、それから条例アセスの手続、評価項目の簡素化といった点で、自治体への働きかけも望まれると考えます。
11ページです。(2)は、保全措置の検討支援になります。風力発電については、ここ数年で急速に数が増え、バードストライクを始めとした保全措置、効果的な方法の早期開発が求められています。そうした開発そのもの、そして効果の評価について個々の事業者で対応するのは限界があると思われます。国としてもそうしたところに関わっていくことが望まれるということを書いています。
12ページです。(3)は、事業内容の修正に係る条件の明確化になります。陸上風力では事業計画が頻繁に変わることがあり、アセスの手続段階で対象事業実施区域や改変区域、風車の位置、出力が異なる場合もあります。現状、対象事業実施区域、それから発電所の出力が、風力発電の場合において少し他の発電所とは意味合いが違ってくるところで、下に例を書いておりますが、そうした対象事業実施区域の考え方、出力の考え方、こうしたものについて実務上判断可能になるよう、より明確とされることが望まれるということを書いています。
最後の14ページです。(4)は、累積的影響についてです。複数の事業実施が見込まれる場合、累積的影響について解析、検討が求められます。標準的な検討方法などがないので、事業ごとにそれぞれで工夫をしてやっていることから異なったものになっています。累積的影響については、統一的な方法で検討が進められるように参考となる事例などを示す方法が望まれると考えます。発表は以上です。
○大塚委員長 ありがとうございました。続きまして、公益財団法人日本自然保護協会様から発表をお願いいたします。
○日本自然保護協会 日本自然保護協会の若松と申します。どうぞよろしくお願いいたします。本日は、このような場にお呼びいただき、どうもありがとうございます。私からは、環境影響評価対象事業の現状として、陸上風力発電事業を中心とした話を行います。話す内容は、主に以下の3つとなります。
2ページです。日本自然保護協会は、1951年に設立された環境NGOということで、「調べる」、「守る」、「広める」といった活動をメインとした寄付サポーターに支えられている団体になります。また、先日行われたCOPではIUCNの日本委員会の事務局を長年務めております。
3ページです。こちらは、環境影響評価対象事業の経年変化をグラフにしたものです。日本では1972年に初めて公共事業での環境アセスが導入され、その後、閣議アセス、環境影響評価法が成立し、法アセス、そして2011年の改正で配慮書や報告書が追加されることになりました。この法アセスにならないものは条例アセスということでカバーされるといった立て付けになっています。アセスの全体件数ですが、こちらのグラフは1984年から示されています。1990年代は手続件数が非常に多い時代でした。毎年100件以上の評価書が発行されています。説明に併せまして、こちらは評価書の発行年代を最後に示しています。100件以上ありましたが、2000年代以降になると毎年50件ほどに減少しているという状態になります。2000年以前は、ゴルフ場、道路といったものが多くを占める中で、特にゴルフ場の件数が多く、年間60件を超えていたという時代が続いていました。一方で、産業廃棄物最終処分場や火力発電は多少の増減があるものの、一定数あり、経年変化があまりないといった状況になっています。近年、太陽光発電、それから風力発電所が増加している傾向が見られます。
4ページです。こちらのグラフは、法アセスの手続開始を示しています。配慮書ないしは方法書が発行された年です。こちらは、2012年以降に特に手続の件数が増えています。特に2020年は100件を超える手続が開始されていることが分かります。その多くが風力発電事業であり、特に陸上風力発電が主と分かります。近い将来、こうしたものが、恐らく前のページの評価書の総数を引き上げていくことが予想されます。1990年代のゴルフ場建設事業と同じぐらいのアセスの件数が今後見込まれる状況になります。
5ページです。この風力発電事業、今回は陸上ですが、特に計画の際に最重要視されるのは風景の良さ、そして土地所有の容易さ、電気系統の接続性の便利さ、これらが重視されます。近年は山岳地の主稜線などの尾根上での計画が急増している状況です。風力発電事業の場合、建設時の土地の改変による影響だけでなく、稼働中の約20年間、広範囲に継続して、特に鳥の仲間への影響がある。コウモリも含めてですが、そうしたものがあるということです。他事業に比べると、特に尾根上であるため、原生的な自然環境への影響及び特殊性がある事業の多さは一つの傾向になります。こうしたものが、ソーラーに比べると山奥に建設される傾向が非常に急増している状況になります。
6ページです。我々は、風力発電事業の自然環境上の懸念を分析しております。現在稼働中のもの、それから評価書が発行済みでまだ建設がされていないもの、それからアセス手続中のもの、合計約400件の事業エリアの自然環境状況、土砂災害のリスクを解析し、その影響を独自にデータベース化しております。こうしたものは、特に金融機関の方が非常に気にしており、先日MS&ADグループと協定を結び、こうしたものがネガティブなインパクトへの緩和に貢献できることを目指している状態になります。
7ページです。特に風力発電事業の場合、先ほど述べたように、鳥の仲間に影響しますが、一番問題になるのが猛禽類への影響です。特に風力発電事業の事業特性から大きな懸念があります。イヌワシ、クマタカ、そうしたものは生態系の上位種ないしはアンブレラ種として位置付けられるため、1羽いなくなるだけでも相当なインパクトをもたらします。これは、バードストライクだけでなく、生息地、繁殖率の低下、そうしたことも同じです。また、常にいる猛禽類だけでなく、サシバ、チュウヒ、ノスリ、ハチクマなどの渡りの猛禽類の場合、風力発電事業の設置場所での生態系だけでなく、その場所以外でも影響が出ます。海外も含めた他所の生態系に大きな影響が出るということです。実際にそうした計画が数多く存在しています。
8ページです。こうした陸上風力発電ですが、出力規模と猛禽類への影響の関係を見てみると、右側のグラフは、イヌワシ、チュウヒ、クマタカ、オオワシ、オジロワシ、希少猛禽類、そして植生の影響を示しています。自然植生の影響は、規模が小さくなればなるほど影響がやや少なくなる傾向がある一方、多くの猛禽類は、出力5万キロワット以下でもそれなりに影響のある計画というのが相当あるということで、出力との関係があまり見られない種が多くあります。特にチュウヒやオジロワシ、それから希少猛禽類の渡りなどはあまり関係がないということになります。こうした状況にある中、今年3月、風力発電事業に係る環境影響評価の在り方についての一時答申において、「立地に応じ地域の環境特性を踏まえ、効果的かつ効率的な環境配慮の確保の仕組みについて早々に審議を開始するための検討を進める必要がある」という答申がされています。こうした部分というのは非常に重要なポイントであると考えます。
9ページです。今までは法アセスの話をしていきましたが、都道府県の環境影響評価条例の状況を右の表にまとめています。右側は条例アセスの状況を示しています。配慮書がいまだに設定されていない都道府県が実は全体の半数もあるという状況です。また、風力発電の事業があるにもかかわらず、風力発電が対象になっていない都道府県というのも実際に存在することが分かります。後で説明しますが、公開というような観点で見ると、過去の案件の公開をほぼされていない都道府県も実際に存在します。手続中の案件も含め、非公開な都道府県が存在するということです。そして、風力発電事業を条例に位置付けていない都道府県でないところも、下限規模で非常に3.75万キロワットなど法と同じ形で設定されている県も実は存在します。左側の図は、風力発電事業の規模によってどのような手続になるかをフローチャートで示しています。配慮書を課している都道府県の場合、第二種事業以下の3.75万キロワット以下だと配慮書が存在する一方、第二種事業は3.75万キロワットから5万キロワットの間は配慮書がないというような空白の部分も実は出てきており、配慮書を設定されている都道府県でもそうしたような状況があるということです。
10ページです。第二種事業が1万キロワットから5万キロワットに引き上げられ、3.75万キロワット5万キロワットという形になりましたが、この第二種事業に関しては、最初の配慮書が任意となっており、これまで配慮書を提出した事業は私のほうで一つも確認できておりません。全て方法書スタートになっています。配慮書には、環境大臣から意見を述べることができるものの、方法書には意見をすることができません。最初に環境大臣からの意見があるのが準備書になります。そうした場合、計画調査前に自然環境上の適切な助言が行われない可能性が存在することになります。その結果、初めてその時点で意見されるため、手戻りのリスクは当然高くなると私のほうでは考えます。この配慮書手続開始後、方法書手続前の計画、つまり第一種事業の場所で別の事業者が第二種事業のアセス手続を開始するという事例が実際に出ております。そうすると、どういうことが起きるかというと、方法書手続の開始時、FIT、FIPの申請の際にこうしたものが必要になるため、配慮書手続をパスすることにより、いきなり配慮書第一種を計画したところに第二種がかぶせられ、FIT、FIPの要件が、その時点で後から出されたところに移ってしまうといったようなことが実際に生じているということです。事業者は、配慮書をパスすることで、環境アセスにかかる経費、手間を節約できる一方、環境アセスの本来の目的のコミュニケーションの機会が失われることになっていると考えます。
11ページです。続いて、アセス図書の常時公開状況になります。これを見ていただくと、陸上風力発電事業に限らず、アセス図書の常時公開率は全体としては低い傾向にあります。全体で約24%程度です。特に、その中でも風力発電事業の常時公開率の低さが顕著です。飛行場、太陽光発電事業は常時公開率が高いという状況になります。ただ、サンプルが非常に少ないこともあります。こうしたものは、公開に積極的な事業者と消極的な事業者で、実は二極化が進んでいます。全て公開している事業者も存在しています。または、最近全て公開するようになった事業者も存在します。
12ページです。それ以外のアセス図書についてです。私のほうで公開されているアセス図書には全て目を通しておりますが、基本的にダウンロード不可能、印刷不可能であり、意見は郵送か直接投函のみの受付となっているのは、あまりにも不誠実と考えます。それから、中にはアセス図書の意見を決まった書式でしか受け付けないということで、意見を手書き、もしくは文書をはさみで切ってのりで貼り付けるといった要求を要求されるケースも実際に存在します。それ以外にも、締切当日に既にアセスのページがなくなっており、送り先が分からないといった不誠実な事業者も実際に存在します。こうしたものは、コミュニケーション上で非常に問題であると考えます。
13ページです。手続が長期間止まっている事業というのも実際に数多く存在しています。アセス手続を超長期間停止し、塩漬けにしている計画ということで、右側に最新のアセス図書が出た年を示します。最近のものが当然多いわけですけれども、10年以上前にアセス図書を出して以降、何もしていないといった事業も実はあります。そうした場合、地域が置き去りにされている状態で、いつの間にか廃止になっているといったケースも見られます。アセス手続の迅速化は非常に重要な課題ですが、一方、アセス手続の有効期限などもセットで議論をしないとよろしくないと考えます。
14ページです。カーボンニュートラルとネイチャーポジティブの両立は非常に重要であり、気候変動は人間社会、自然環境に悪影響があるということで、再エネの推進を急がれますが、それと同時にネイチャーポジティブという部分も考えていかないといけません。直接的に、この部分にこうした事業が貢献するかというとそれは厳しいところで、どうしてもトレードオフ関係になる中、いかに自然環境に悪影響のない形で誠実に再エネを導入するかが最も大きな課題と我々は考えます。
15ページからまとめとして5つ挙げています。先ほど述べたように、現在のアセス対象事業の大半は風力発電事業ということで、過去のゴルフ場建設とほぼ匹敵するような状態です。風力発電の影響というのは、立地が最も問題であり、特に猛禽類への影響をしっかり考慮することが最重要と考えます。今回この場では示していませんが、自然環境への配慮状況は事業者によって大きな差があるということで、こうしたことは先ほどの答申等を真摯に受け、早急な対応が必要と考えます。2番目として、規模要件の引上げについては、第二種事業というのはアセス制度の抜け道に使われている可能性があるということで、配慮書の提出を例えば必須にするなど何かしらの対応が必要と考えております。
最後に16ページです。先ほど言ったように、アセス図書は印刷できない等の問題があることから、常時公開を必須にすべきと考えるとともに、受付方法に関しても様々選択できるようにする。そして、塩漬けになっている事業に対する対応もしっかりとすべきです。今回は触れていませんが、送電網など関連事業がアセス対象外となっているのも実は課題です。これは風力発電に限らず、リニアの発生土置き場も不確定のまま工事が開始していることから大きな問題になっています。こうしたものをどのようにするかも今後議論を進めていくことが必要と考えます。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございました。続きまして、公益財団法人日本野鳥の会様から発表をお願いいたします。
○日本野鳥の会 日本野鳥の会の浦です。本日は、このような機会をいただきましてありがとうございます。早速、説明させていただきます。
まず規模要件についてです。ここにあるものが、風力発電事業における環境紛争の発生に係る出力規模です。御覧のように、今、第一種アセスの事業の規模要件が5万キロワットとなっていますが、5万キロワット以下の案件でも環境紛争は起こり得ます。規模が大きいと起こりやすい、小さいと起こりづらいというものではないことが分かると思います。
これは、環境大臣意見の中で厳しいものが出された例です。まず左側のグラフを見ていただくと、これも5万キロワット以下であっても厳しい意見が出ることがあると分かります。右のグラフはその意見の内容についてです。多くは、希少な猛禽類の生息地での事業計画に対して厳しい意見が出ています。また、渡り鳥や動植物の生態系などに厳しい意見が出ると分かります。このように、鳥類の生息に関して厳しい意見が出る場合には、施設規模はあまり関係ないということです。
これは、風力発電機に鳥がぶつかって死傷してしまうバードストライク(BS)です。バードストライクが発生する風力発電施設の規模と立地場所の関係について、表にあるように、まず海岸や平地に建っている風力発電施設では、2万キロワットから3万キロワットの規模の事業でバードストライクが多く起こる可能性があると推定されています。また、山地では1万キロワット程度の事業でバードストライクが多く起きるだろうと推測されています。下のグラフが、風車の立地環境と、風車の下で発見される鳥類の死骸の推定数との関係です。猛禽類が一番バードストライクの多い鳥ですが、特に海岸や平地に建っているものでバードストライクが多いことが分かります。また、スズメ目の小鳥が2番目に多いのですが、これも海岸です。このように、海岸や平地に建っている風車で多くバードストライクが発生し得るということも分かっております。このように、バードストライクが起きやすい地形、立地があると分かります。
これは、諸外国の環境影響評価における風力発電事業に係る規模要件について示しています。赤い字で示すカナダやフランスでは、基本的に新設される風車は全てがアセス対象になります。簡易アセスの場合もあります。ドイツでは、風車の基数によって簡易スクリーニングをやったり、一般的スクリーニングをやったりという形になっていますし、青字のところは、規模が小さいものでもアセス対象になるということです。日本では、5万キロワット以上がアセスの対象になるのですが、5万キロワットとなると、アメリカ、韓国、中国、スペインも規模が大きいでしょうか。そのように、どちらかというと日本の規模要件は、世界的に見ても非常に大きな規模を対象にしていることが分かると思います。
このようなことから、小規模の案件であっても法アセスの対象とし、適切に環境影響評価をすべきではないかと思います。例えば、規模要件を引き下げるのか、もしくは全ての案件において簡易的なものでもスクリーニングを実施し、必要な項目にアセスの調査項目を絞り、メリハリのあるアセスの実施、いわゆる簡易アセスのようなものを導入するなどを行い、規模ではなく立地によってどのようなアセスメントを行うかをしっかりと判断していくような制度を導入する必要があるのではないかと考えます。
次は累積的影響評価についての話です。まず、ここに図が3枚ありますが、今、北海道北部で風力発電施設の建設が進んでいますが、そこで発生している「障壁影響」という、風力発電ができたことにより鳥の飛行ルートが変化する影響について調べたものです。まず左の地図です。これは2017年から2018年に日本野鳥の会で調べたマガンやヒシクイ、ハクチョウ類の渡りルートで、黄緑色の線が飛翔ルートになります。このように、広くこのエリアを使って渡っていました。真ん中の地図にある黄色いドットが、この2、3年ぐらいで建った風力発電施設です。水色のドットで示した風車は2005年頃からある風車です。一番左の地図にある赤い線が、昨年の秋に調べた渡り鳥の飛翔ルートになります。黄緑と赤を比べてみると、風車が建った後に渡りのルートが非常に狭くなっていることが分かると思います。複数のウインドファームがあるため、複数の場所でルートの変更が起きていることが分かります。
これは、ある論文の図を載せていますが、東日本における、ガン、ハクチョウ類の渡りルートで、黄色く塗られたエリアが渡りルートとなっています。今、実際に、日本では青森や秋田、最近は山形の主に日本海側から山地にかけて多くの風力発電事業の計画があります。陸上も洋上も既に建っているものもたくさんあります。それらと、ガン・ハクチョウ類の渡りルートが重なるとことが多く、鳥が渡って行く先々に風車があるような状況だというのが分かります。
これはイギリスの洋上風力発電での例です。まず地図の中で緑の線で囲まれているのが洋上風力発電所の計画エリアです。これが東西で150キロメートルにわたります。この中に4つほど計画地があります。下のほうに様々な色で線が書いてある地図を入れていますが、これが鳥の飛翔位置です。このように、鳥は広い範囲を利用しますから、複数の計画地にまたがって多くの鳥が飛んでいることが分かります。このような状況では、複数の計画による鳥類への影響を考えないといけないと思います。
このように、左が青森の下北半島で、右が秋田県の男鹿半島を中心にしたところですが、日本では、陸上でも洋上でも計画が多く、既設の風車も多々ある地域です。そのため、この様な地域では累積影響評価をしっかりと行う必要があると考えます。
例えば、計画地の周りに他の計画があるような場合、環境大臣意見の中では、「累積影響評価をしましょう」という意見が出されることはよくあります。ただし、事業者の方も、累積影響評価を実際に行っているとしても、定性的評価を行っている程度かと思います。その背景として、累積影響評価をどのように行うのかが分からない、また定義においても、何をもって累積影響評価なのかが分からないといった点があると考えます。
環境省によると、このように複数の事業を稼働中、または手続中の影響を評価するのが累積影響評価であるとされています。それを行うには、環境影響評価図書の公開情報の収集、情報交換等が必要とあります。このようなところから、まず累積的影響評価というのは、これからはしっかりと実施を義務付ける必要があるのではないかと思っています。周辺に複数の案件があれば、必ず実施することが必要と思います。そのためには、アセス図書の継続公開、そして、それを他社が利用することを可能にする必要性を感じます。また、データベースを構築し、アセスのデータを収納するような仕組みは必要だと思います。そしてガイドラインです。実際に累積的影響評価をどのように行うかというガイドラインも整備する必要があると考えます。
累積影響評価の話を終えまして、次にアセスを今までよりも広範囲で行うべきではないかという話です。これはイギリスの例になります。まず右側の図を見てください。これは洋上風力発電の計画地の例です。外側の黒い枠がアセスの調査範囲になります。赤い枠が洋上風力発電の事業予定地になります。調査をしてみると、図の左上にあるエリアで希少な鳥が多いということで、実際に緑色の範囲に計画規模を縮小したという例です。今、日本でできる影響低減措置としては、このように事業規模を縮小することや基数を減らすことになると思います。しかし、こうした意見が出ても、事業者がそれを受け入れることは難しいとも考えるところです。イギリスでは洋上風力発電において、実際の施設に必要な計画範囲の6倍の面積でアセスを行う制度もあります。そのような仕組みを入れ、実際に洋上風力発電でいうと有望区域の6倍ぐらいの面積を調査することによって、もし有望区域全体で影響が大きそうだと出ても、影響の少ない場所に有望区域や計画エリアを移動することが可能になるのではないかと思います。これを洋上でできれば、ある程度は陸上でもこのような仕組みが入るのではないかと考えます。
最後に、事前・事後調査の重要性です。今、事後調査の実施は努力義務であって、法的には義務付けられていないと思うのですが、しっかりと事後調査を行うことが必要と考えます。洋上に関しては、現在、環境省にて議論をしていると思いますが、陸上においても、事後調査を努力義務ではなく、法的義務として実施することによって、その調査結果を事前アセスへフィードバックすることで、実データに基づく予防原則として使えますし、事後では順応的運用のためにも使えます。要は、事前に行った調査の結果が実際にはどうだったのかという点で答え合わせをすることにより、事前のアセス制度を高めることもできる、フィードバックをできると考えるため、事後調査は適切に行う必要があると考えます。以上です。
○大塚委員長 どうもありがとうございました。続きまして、一般社団法人日本風力発電協会様から発表をお願いいたします。
○日本風力発電協会(JWPA) 日本風力発電協会の小園と申します。よろしくお願いいたします。このたびは、当協会の考え方を申し述べる機会をいただきまして誠にありがとうございます。当協会は、御存じのとおり、風力発電事業者、関係のコンサルタント、メーカー等が加盟している団体です。情報交換を日々行いながら進めているところですが、まず1つトピックを紹介させてください。
「JWPA」は当協会の略語ですが、当協会で「環境・社会行動計画」を策定しました。もともと策定していた「バリュー・行動指針」にあるように、「優れた知見や経験を共有・集結し、風力エネルギー業界全体の健全な発展に寄与する」、また、「世界に誇ることができる日本の知見、技術、経験を海外に向けて積極的に発信する」ことを目指しています。このことについて、加盟企業に向けたルールとして、「環境・社会行動指針」を昨年度策定し、今年度の春には具体的な取組事項として、環境・社会行動計画を策定・公表したところです。これらの内容ですが、昨今の環境配慮におけるESGの取組を進めていくこととし、当協会の会員企業に浸透させていこうとしています。御案内のとおり、「Environment(環境への取組)」としてゼロカーボン、省エネを目指すのは当然のことですが、昨今の状況を踏まえ、生物多様性の保全、ネイチャーポジティブにも配慮しながらやっていきます。「Social(社会的課題への対応)」としては、情報開示や透明性の確保、それから地域共生等もしっかりと行うことを業界の中で浸透させていく取組を始めたところです。「Governance(ガバナンスの強化・向上)」にも取り組んでいきます。そうした中で、今、風力発電業界としては、陸上、洋上ともに風力発電事業の推進、拡大を図る中、本日は特に陸上の風力発電事業における環境影響評価に係る課題について考えを述べさせていただきます。
陸上風力発電事業については、2030年導入目標の18ギガワットの達成を目指すところですが、現在約10ギガワットの未稼働案件の運転開始が課題になっています。また、さらに2ギガワット程度、追加的な案件の形成が必要な状況です。風力発電事業の推進・拡大は、カーボンニュートラル、ネットゼロを目指すに当たっての重要な使命・責任と考えておるところですが、その「阻害」とまでは言わないまでも、環境アセス手続の長期化や過大な負担が風力発電事業拡大の遅滞を招いているのではないか、当協会内の意見交換で言われることがあります。その課題の論点を幾つか、今表示しているスライドの右下に書いています。一つ目として、環境アセス期間の長期化に伴い、他の許認可手続の遅滞、認定の失効、FITの運転開始期限が圧迫する点が挙げられます。二つ目として、法アセスにおける都道府県の審査、条例アセスにおける負担が大きいのではないかという点。そして、リプレース案件に係る環境アセスの合理化が進んでいないことが事業推進環境の遅滞に関係しているのではないかという点です。
次のスライドでは、陸上風力発電の環境アセスメントに関する課題として本日申し述べたいことを4点挙げました。①長期間に及ぶ環境アセスメント手続、②都道府県の審査や条例アセスの負担、③は少し各論に入りますが、累積的影響に関する話、事業規模変更になる場合の対応、④リプレース案件合理化の推進不足になります。1点ずつ詳しく申し述べていきます。
最初のテーマですが、長期間に及ぶ環境アセスメント手続になります。環境省様、経済産業省様において、環境アセス期間の短縮のための様々な制度、仕組みの創出・適用が進められています。ただし、審査期間、その前段階の調査事項は年々増大していて、依然として環境アセスメント期間が4、5年程度かかっている状況です。以下に要因例を書いています。評価書の審査段階においては、規定に基づくもの以上の審議内容やその対象の設定がなされており、その結果、特に「評価書」の審査に時間を要しているのではないかと考えます。それと付随した内容になりますが、林地開発、保安林解除というものが環境アセス評価書の確定通知を頂いた以降に本格的な手続を進められることになっており、確定通知を発出いただくまでのところで環境アセス期間が長期化した場合、結果的に工事着手までも時間がかかってしまうという状況にあります。そうしたことを踏まえ、環境アセス手続をもう少し合理化できればよいと考えるところです。その合理化の中身について3つ挙げています。事業影響については、立地に応じて様々であるため、選定項目や調査内容、評価内容にメリハリをつけていただく。そして、環境アセスの各段階に係る審査期間を短縮していただく。そして、関連手続も勘案した環境アセス手続期間の短縮ができればとよいと考えます。
次に、最初に申し上げたところに関する事例として当協会が考えているものです。立地に応じて事業特性があるため、ここでは立地に応じたメリハリ、エリア特性を踏まえたスクリーニングにより、調査・予測・評価項目の合理的な選定が環境アセス手続のトータル期間の短縮に資すると考えています。
次に、法アセスにおける都道府県の審査や条例アセスの負担の増大です。本来、条例アセスは法アセスの対象案件よりも環境影響の度合いが小さいものを扱うという建て付けになっているものと我々は理解しています。そのことを反映して、再エネ特措法に基づく運転開始期限は、法アセスの対象案件では8年以内なのに対し、条例アセス対象案件では4年以内となっています。一方、現状は、条例アセス案件のほうが手続内容や項目が多いなど対応期間が逆転現象になっており、条例アセスのほうが大変だという認識が広がっています。それから、法アセスにおいても自治体の審査はあるのですが、その項目において、事業者の実行可能な範囲を超える保全措置が求められることや、研究レベルになるのではないか、一つの事業案件で対応する内容のレベルを超えているのではないかと、と捉えざるを得ない要求・要請を受けることがあります。その負担が時間的にも労力的にも課題になっているという状況です。これらを解消するために考えることとして、まずは、法アセスと条例アセスの逆転現象の解消のために全国の自治体の方々に助言を行っていただけたらと考えます。条例に基づく環境アセスの合理化、簡素化を始め、自治体の対応の合理化、簡素化、簡略化を進めていただきたいです。それに当たっては、全国の自治体に向けた啓発として、意識、建て付けの理解促進を進めていただけたらと思います。ただし、全ての自治体がこのように逆転現象を起こしているわけではありませんが、とは言え、自治体対応が負担になっていることは事実であるため、各自治体への理解促進が進まないのであれば、第二種事業の規模要件を見直すといったところで、法アセスの対応でできる内容、対象案件を増やしていただきたいです。
次のページにイメージ図を載せています。先般、法の第一種事業対象規模要件が拡大したことを踏まえながら、なお一層、法の第二種事業の枠を広げていただけると、環境アセスの負担の軽減、合理化につながるのではないか、そして陸上風力発電事業の促進につながると考える次第です。
次は、やや各論になると申し上げたところです。累積的影響に係る予測評価については、先ほどの日本野鳥の会様からの発表にもあったように、分かりにくい点があるために混乱が生じています。これを解消していただきたいと考えています。それからもう一つ、事業規模変更になった場合の対応とありますが、風力発電事業の特徴の一つとして、計画検討中において、当該事業に採用する機種が調達できる、できないといった問題があります。また、系統連系の問題もあります。あるいは、最終的な詳細設計が進む段階において、風力発電機を設置できない地形が見つかることもあるため、サイトの発電規模が変わり得ます。発電容量の変動に伴い、アセス手続の種別が、第一種、法第二種、あるいは、条例アセス、自主アセス等へと変更が生じたときに、環境アセス手続の手戻りがある自治体もあるため、こうした点の解消ができるような取組を進めていただければと考えます。この各論で申した2つへの対応として、1つは累積的影響に関わる予測・評価の対応事項、考え方、具体的な方針等を策定、明確化、明示・公表をしていただければと思います。それから、計画途中での事業規模変更に伴う手続を適正化するため、計画規模が手続途中で変更になった場合にアセス手続の手戻りを生じさせないような対応手続の適正化や移行措置を策定いただければと思います。
最後に、リプレース案件の合理化の推進に係る課題です。環境省様において、風力発電のリプレースに係る環境影響評価のガイドラインを策定・公表いただきました。スライドの下のグラフにあるように、今後リプレース案件が増えてくるところとなっていますが、審査側、特に地方自治体の方々において、「リプレース案件の特性を踏まえた環境影響評価」という見方、審査の考え方浸透していないと感じます。リプレース案件では、現状、稼働中の風力発電所があり、そこの設備を更新していくというものです。当該ガイドラインにも記載のとおり、現在稼働中の環境影響のモニタリングをしっかり行うことは当然ながら、そのモニタリングをしっかり行うことを前提に、更新する事業に伴う環境アセスの合理化を進められたらと考える次第です。また、手続の緩和に係る2ポツ目ですが、リプレース案件では、本質的に必要としていない配慮書は省略できるのではないか、方法書については合理化する仕組み、制度が適用できるのではないかと考えます。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございました。続きまして、北海道環境生活部環境保全局環境政策課様から発表をお願いいたします。
○北海道環境生活部環境保全局環境政策課 北海道環境生活部 環境政策課の久保と申します。本日はこのような話をさせていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。また、本来であれば現地で説明すべきところですが、都合により、オンライン参加となりましたこと誠に申し訳ございません。早速、説明に入らせていただきます。
1ページにあるとおり、道の条例の概要の関係、近年の手続状況、道内での課題について、説明いたします。
2ページです。こちらは、道の環境影響評価条例について書いています。道の条例は、昭和53年に都道府県単位では全国に先駆けて制定したものになります。その後、国の環境影響評価法の制定や改正に合わせまして、道の条例も順次見直してきている状況です。
3ページです。こちらは、道条例で対象としている再エネ事業の規模要件についてです。第一種事業については、風力発電所以外はアセス法と同じ出力規模を設定しています。第二種事業については、法の第二種事業が第一種事業の4分の3とされ、75%の規模以上となっていますが、その法よりも、少し幅広く小規模の事業を対象にするということで、道の条例では第一種事業の2分の1とし、50%の規模以上のものが対象となるように設定しているところです。風力発電所については、令和3年に法の規模要件が引き上げられたところですが、道においても規模要件の見直しの検討を始め、道のアセス審議会等でも審議を開始しましたが、国においても引き続きアセス制度の検討を進めている状況があることから、審議会での審議を一旦中断し、法改正に合わせた条例の見直しは行っていない状況です。今後この合同会議での検討結果を始め、アセス制度の見直し等を踏まえ、道条例の規模要件を審議して考えていく形になります。
4ページです。道内でのアセス手続の状況についてですが、このグラフは、先週行われたこの合同会議で環境省から示された資料ですが、許可をいただき使わせていただきました。平成11年から令和5年の25年間の都道府県ごとのアセス手続の実績になります。緑の部分が法アセス手続の件数になっています。一番左、北海道の法アセスの件数が125件となっており、全国で最多になっている状況です。こうしたことで、今回、道の状況を踏まえたヒアリングという形で話をさせていただく機会をいただいたと思っております。各都道府県において、それぞれの地域でアセスの課題は様々あると思いますが、今回、北海道におけるアセス制度の課題をお話しいたします。ちなみに道の法アセス125件について、件数の数え方が明確ではなかったことから、はっきりとした件数までは言えませんが、125件のうちの9割は再エネ事業になります。その再エネのうち、ほぼ風力が対象となっている状況であることを付け加えさせてください。
5ページです。道内でのアセス手続の状況になりますが、直近10年間にアセスの手続を始めて知事意見を発出した案件ということで出しております。直近10年間ではそうした事業が86件あります。そのうち82件、95.3%が風力発電所の事業となります。年度別に見ると、審査件数は増加傾向となっており、令和6年度は道での審査件数として、点線の部分が見込みの件数も含めたものになりますが、過去最多となる見込みです。特徴としては、オレンジの部分の方法書のうち、配慮書を必要としない法の第二種事業が増えており、風力発電事業では令和6年度実績において、11件中7件と増加している状況です。
6ページです。直近10年間において82件の風力発電事業があったと申し上げましたが、その内訳として、法の第一種事業が72件と、こちらが大半を占めている状況です。法の第二種事業が8件、条例の第一種事業が2件、条例の第二種事業がゼロ件となります。条例の第二事業については、判定自体は大体10件程度やっていますが、アセスが必要とした案件もあるものの、その手続までいった件数がないことから、第二種はゼロ件となっています。法の第二種事業については、これまで8件あるとしていますが、そのうち7件が令和6年度に手続が始まっている状況であり、最近増えている形です。
7ページです。道内の課題について説明いたします。上の囲いの中に、最近のアセス事業の傾向を書いていますが、件数が増加してきており、その多くが風力発電事業という状況です。その一部では、事業区域の重複や隣接が生じています。また、これまでは沿岸部での計画が、風力については中心でしたが、近年は再エネ導入がなかった地域や内陸部、特に山間部の尾根沿いで新たな事業が計画されている状況があります。さらに、法の第二種事業の規模の案件が増えており、配慮書を省略し、方法書から開始される状況になっています。そうした中で、案件も増えていることもありますが、地域住民から反対の意見書等も提出される案件が徐々に増えてきている状況です。こうした事業の傾向を踏まえ、下の囲いの中に、道内の課題として(1)から(6)まで6つ挙げています。次のページから、それぞれ説明いたします。
8ページです。(1)の事業の集中による累積的影響等については、事業適地の減少により事業区域が隣接することや、重複している案件が増えている状況です。そうした中、他社より早く手続を始める、そして事業に早く着手したいといった事業者の状況も見受けられます。そうした点から、地域で適切な説明や十分な調査をしっかりやられているのかという懸念があります。そのような案件が増えているということで、地域も多少混乱している状況もあると思っています。また、風車が集中して設置されることについて、鳥類などへの累積的影響についても道のアセス審議会のほうから懸念の声が出ています。事業者からは、「他事業者の図書が公開されていないため、累積的評価は難しい」という回答もいただいています。道としても、環境保全の見地からの意見を様々なところから求められるように、知事意見でも、図書の継続した公開を求めているところですが、容易ではないということで、十分に対応いただけていない状況もあります。この公開については、ある程度のルールが必要な状況と考えます。さらに、広大な事業実施想定区域を配慮書の中で設定し、地域特性の把握や正確な情報の記載がその中でできていないということで、それを見て環境影響について判断ができないことから、知事意見として厳しめの意見を発出した案件もあります。(2)の、自然環境や景観への影響については、これまで再エネ導入がなかった地域や内陸部に新たな事業が計画され、周囲からよく見える山間部の尾根沿いに設置を検討されています。地元の市町村としては、地域のシンボルとして見ている風景が当然あります。あるいは観光資源として見ている景観として、そうしたところへの影響が懸念されるといった案件も出てきています。それから保安林や、植生自然度が高い区域に計画する事案も増えており、地域の希少な動植物に影響が出るおそれがある計画も見受けられ、これまでよりも環境影響が大きくなることが懸念される事業が増えている印象です。
9ページです。(3)は、地域とのあつれきになります。先ほども申しましたが、新たな地域への事業計画を始め、既にある施設の近傍にも設置するといった事業計画が増えている中、地域との相互理解の促進が大きな課題です。地域にとって重要な自然環境や生活環境、景観に対する影響が懸念されることから、地域住民、関係団体等から事業の中止を求める要望書が、事業者を始め、知事にも直接提出されることが特に今年に入ってから増えている状況です。また、アセスメント図書の審査中に保安林の中で許可を受けずに土地の改変を行った案件もあり、森林法違反として指導を受けたケースもあります。そうした法令遵守という基本的なこともないがしろにされている状況があり、アセス手続において地元自治体からも非常に厳しい意見が出ているところです。それから(4)として、準備書段階からの設置位置の大幅な変更です。こちらは、準備書で示されていた風車の位置が評価書の段階で大きく変更されていたという事案です。当然、より環境への配慮をするためということで変更がされたと理解しており、そうした意味では事業者が適切に配慮をされたと考える一方、準備書に至るまでの各段階で事業者から示された計画において、住宅への影響や風車の環境影響など、審議会の中で様々な意見をいただいて審議してきたところです。それを踏まえて、地域の方もその図書を見ながら理解を深めてきたという中、最後の最後で異なる計画になってしまったということで、それまでに行ってきたことの意味合いが薄れてしまっている状況があったと考えます。今、地域の理解促進が十分に進んでいない案件が増えている中で、このような突然の位置の変更により、今後問題化することが懸念されます。当然配慮する中で様々に計画が変わることは理解できるものの、もっと早い段階で適切な絞り込みをしていただければよいのではないかと思います。
10ページです。(5)は、調査・予測・評価手法の具体化になります。方法書段階で風車の位置に加え、動植物調査における踏査ルート、調査地点が示されず、改変による影響を十分な精度で予測評価が可能であるのかといった判断が難しい案件も散見されます。また、バードストライクであるとか希少な動物の生息環境に与える影響等について、「最新の科学的根拠に基づいた予測評価が不十分である」と道の審議会でも指摘されるような案件があります。科学的根拠の説明を始め、影響低減の効果というものも数字で示すようにと求められても、難しい点もあるとは当然理解するものの、しっかりと根拠を持った説明は必要と考えます。現時点では、調査・予測・評価手法や調査にかける努力量なども事業者によってばらばらとなっており、「適切な評価が行われていない」との指摘を受ける事業も増えている状況です。(6)は、事後調査の精度と運用へのフィードバックになります。例えば、バードストライクの調査については死骸の持ち去りや見落としの問題があり、十分な頻度及び範囲で調査が行われているのか、調査の精度が確保されているのかといった事後調査に関する課題があると認識しています。また、バードストライクの発生頻度などの調査結果が出たとしても、その結果による事象の重大性の対応基準がなく、風車の稼働を停止するなど、そうした運用へのフィードバックが実際には行われていない状況になっていることが課題と捉えます。今後は、データベース等による事業者間も含めた情報共有を始め、そうした情報収集体制の構築や情報の活用も含めて促していくことが必要と考えます。
11ページです。これは参考として、最近の道の取組状況になります。地域での理解促進が十分ではない中で事業が進んでいくという懸念があるため、事業者の皆様に、審議会でこれまで指摘している事項を含め注意していただきたい点として、チラシ的なものを作成し、チェックリストという形で公表しています。説明が不十分だと不信感につながると思いますので、今まで以上に丁寧な説明をしていただきたいと考えています。最後に、道としての考えになりますが、地域環境に対して適切な配慮と地元の皆様の理解の下で、再エネ事業を進めるべきだと考えています。これまで道内の課題を説明しましたが、それらを踏まえ、より適切な再エネ事業が実施されるように、アセス制度の在り方等について御検討いただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、これより関係団体の皆様からの発表内容に対する質疑の時間といたします。最大11時55分までとなります。
それでは、吉田委員、お願いします。
○吉田委員 第二種事業の考え方について、日本自然保護協会、あるいは日本野鳥の会の方からは配慮省が義務化されていないことの問題が指摘されました。それから、日本風力発電協会の方からは、条例アセスのほうが項目は多く厳しいことから、その逆転現象を踏まえて立地を重視したスクリーニング、そして第二種事業規模の案件の引下げと同時に、法アセスでの採用案件を増やすことが提案されました。両方の提案は非常に大事だと思いますが、どちらも実現をしていくとすれば、現在、第二種事業では、配慮書は任意となっていますが、今後、第二種事業の対象とする範囲を引き下げた上で、第二種事業でも配慮書を義務化する。その上で、立地的にそれほど影響がないということであれば、方法書以降は非常に簡素化してもよいでしょうし、そうした形であれば、風力発電協会の方は簡素化されたと納得されるのかどうか。この点について、日本自然保護協会、日本野鳥の会、日本風力発電協会の方から一言ずつお願いしたいと思います。
○大塚委員長 それでは、関島委員、お願いします。
○関島委員 質問の前に、まず、私の中央審議会に対する希望を申し上げます。前回、勢一委員より、「10年の見直しというのは長いのではないか。5年ではどうか」という指摘がありました。それに対し、「アセスの手続に時間を要するため、10年にならざるを得ない」との回答があったと思います。私は、2050年のカーボンニュートラルに向け、今後の導入量を考えていった際に、これから陸上から洋上にシフトしていくと思うのですが、陸上では既に自然度の高い環境への負荷が非常に大きくなっているという現状を踏まえると、例えば、この10年、20年でアセスをどのように組み立てるのかが非常に国内の環境への影響が大きいものと考えます。今回の見直しは、文言等の修正で終えるのではなく、具体的に本当に内容に踏み込み、今後の日本の環境をどのように保全していくかを真剣に考えた上でのアセスの見直しに踏み込んでいただきたいです。例えば時間が間に合わずに持ち越しになったとしても、次の10年に向けて、どのようにそれを組み立ているのかを真剣に考えていただきたい。その本気度を示していただきたいというのが、まずこれからコメントを行う前のお願いになります。
ただいま団体のほうから様々な意見を頂戴いたしました。日本環境アセスメント協会の資料が様々な視点からまとめられているため、これをベースにし、各団体で個別に伺いたい点を申し上げます。
まず4ページです。アセスで得られたデータの有効性ですが、前回も事後アセスモニタリングの在り方と公開の話が出ました。公開としては、これから手続が進んでいくと思うのですが、事業ごとのデータをどのように統合できるようにするのか。すなわち、事業ごとに個別に評価項目が違うようなものになるのではなく、データを統合して解析できるような仕組みにしていくためには、ベースとなるデータをどのように取っていくかという標準化の考えが必要だと思います。どのような内容を取っていくかが議論されていない中で、ただ公開していくことを考えていっても、恐らく、絵に描いた餅となり、何も活用できるものにはなりません。具体的にどのようなデータを国として蓄積するかを真剣に考えるとともに、それを実現する仕組みを考えていただきたい。
次に、5ページの生物多様性オフセットと、8ページの配慮書の機能の見直し等早期の環境配慮の徹底といったところが関連しているため、これらの点について合わせてコメントさせていただきます。私は今回の見直しにおいて、ここが最も重要なポイントではないかと考えます。中段にある温対法との関係、それから再エネ海域利用法との関係の中、アセス手続の中に、どのように環境配慮を組み込んでいくのか。前回、阿部委員より「配慮書には一定程度の効果はある」という御意見をいただきましたが、一定程度とはどの程度のものかは、それぞれの考え方によって解釈が変わります。私は、配慮書において事業者が配慮している点は、事業を推進する上での属性であり、自然環境や生活環境に対する配慮は、現行のアセス手続では十分行き届いていないのではないかと考えています。このような現状を踏まえたとき、改正温対法の促進地域や自然共生サイトなど他のゾーニング案との整合性をどのように取りながら、それらの成果をどのようにアセス手続に反映させていくかというのは、今回の見直しにおいて非常に重要なポイントと考えています。2年ほど前に、こうしたゾーニングの考えも含めた形で、3つの振り分け案を、環境省アセス課から公開していただきました。今回、本会議に先立つ事前レクでは、3つの振り分け案の実施はいくつかの観点から難しそうだとする説明を受けました。その代わりに、適切な立地選定に向けたスクリーニングについては、配慮書手続の実質化を一つの案として考えていきたいとのことでした。現時点で3つの振り分け案については、本委員会の中でしっかりと説明いただいておりませんが、まずそれを紹介していただいた上で、その実現が難しい場合には、配慮書手続をどのように実質化するかについて、真剣に考えていただきたい。加えて、それを進めていく上で、改正温対法に基づく再エネ促進区域の設定、再エネ海域利用法に関わる洋上風力の促進エリアの選定、加えて「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」を達成するための自然共生サイトのゾーニングなど、同時並行で進行している各種ゾーニングに関し、そうしたものをどのように同じプラットフォームにて整合性を取るのか、さらにそれらを見据えてアセス手続の中に組み込んでいくのかを、しっかり議論をしていただき、できれば、今回の制度見直しの中で、その考え方をお示しいただきたい。これが、スクリーニング情報としてアセスの中で機能していくのであれば、今後10年、20年という歩みの中で、環境配慮がしっかりと図られると考えます。この点を具体的にどの程度前進できるかが、今回のアセス制度見直しの中で重要なポイントになると考えています。
次に、12ページの事業内容の修正に係る条件の明確化ですが、これは北海道環境生活部環境保全局環境政策課の方も御指摘されていました。準備書から評価書の段階で大きく事業計画が変わることが起きており、例えば、風車の規格が変わるといった大きな変更があると、これまでの環境影響評価は一体何だったのか、経産省環境審査顧問会で審査を行っているとしばしば直面することがあります。準備書から評価書に、風車の規格が変わるようなことも含め、今後のアセスの中でそのような事業計画の変更をどの程度認めていくのか、どのような対応を取るべきなのかについて、今回のアセス制度見直しの中で是非検討いただきたいところです。これらがアセスメント協会の資料を基にした、私からの意見となります。後ほど、それぞれの団体から、配慮書手続の実質化も含め、立地適性の判断をどのようにアセス手続の中に組み込んでいけば良いのかについて、それぞれのお考えがあれば、御紹介いただきたいです。また、国として、他のゾーニング案との関連において、どのようにそれらの間の整合性を取ろうとしているのか、さらに、今回のアセス制度の見直しにおいて、スクリーニングに関わる内容はどのあたりの内容まで踏み込むことをお考えなのかについて、御意見をいただきたいと思います。
次に、各団体にコメントさせていただきます。まず、日本自然保護協会に関しては、16ページになります。その中の⑤にて、「関連事業に関しても何らかのアセスを課す方向で議論すべき」とあります。ここに送電網の話も紹介されていますが、現行制度では電力アセスの審査の中では、附帯設備は審査対象から外されています。一方、地熱発電を例に取りますと、例えば景観の点では、発電所設置そのものよりも、系統連携のための送電線をどのように配置するかが、景観阻害の点から影響が極めて大きい。そうしたところがアセス審査の対象にならずに、事業計画どおりに認可されていく現行の仕組みでは、アセスに欠陥があるのではないかと考えます。附帯設備をアセス手続にどのように取り込んでいくかという点も、是非御検討いただきたいと考えます。
次に、日本野鳥の会の資料になります。まず累積的な影響についてですが、昨今のアセス手続では、大臣意見及び知事意見において、必ず出てくる指摘事項です。この評価をどのようにしていくのか。恐らくその影響は誰もが認めるところですが、浦様も御指摘されているように、評価手法がまだ関係者の中で共有が図られていません。評価方法がないわけではなく、例えば、野鳥の会でも、累積的影響評価の勉強会を過去に開催しておりますし、私も以前NEDOプロジェクトにおいて累積的影響の解析を進め報告書で紹介させておりますし、論文等でその評価手法を示しています。こうした既往情報を整理していただき、アセスにおいて、どのように取り込んでいくかについて早急の検討が必要と考えます。評価手法が確立、共有されてないことから累積的影響の項目をアセスから外すというよりも、累積的影響をどのように評価していくかを早急に国として考えていくべきです。その際、累積的影響の評価は一つの事業者が取得するデータのみでは判断することができません。他の事業者が所有するデータをどのように活用していくかといった、情報共有の仕組みづくりが必要です。もう一つは、累積的な影響があるという結果が出たときに、誰がその責任を取るのか。要は、累積的な影響というものは、その評価結果を示した事業者だけの責任ではなく、先駆けて事業を進めてきた周辺の事業者も関わっていきます。影響の責任を誰が取るのか。私たちのプロジェクトでNEDOの報告書を取りまとめた際、累積的影響の責任を誰が取るのかについて、プロジェクトとしての考えがまとまりませんでした。そうしたところを、事業者任せにするのでなく、国は明確な指針を示す必要があると考えます。個人的な見解として、一つの事業者に累積的な影響の責任を負わすべきではないと考えます。その点について、日本野鳥の会及び国から御意見いただきたいです。
それから、順応的運用に関してです。現行のアセス手続において、大臣勧告等で影響が大きいとされた事業に関しては、協議会を設置して、供用後の運用に関して順応的管理をするようにといった勧告が出されます。その後、協議会が設置され、供用後の事後モニタリングの結果について検討が進められますが、現状では個々の事業者対応でその作業が進められています。さらに、協議会ごとにメンバーも異なります。それら情報を国が集約できているのかどうか私には分かりませんが、それらを統合し、俯瞰する形で順応的管理を進めていく仕組みが必要ではないかと考えています。この点について、国から回答をいただきたいです。
次に、日本風力発電協会に対するコメントとなります。長期間に及ぶ環境アセスメント手続に関して、確かに手続論として長期に及んでいることは否めません。しかし、私は手続論だけではなく、メリハリのある事業計画を進めていくことが、風力発電の推進において不可欠と考えています。そのためには、影響の大きいところを事前に回避していく仕組みが必要だと思います。ここでは、必要施策として手続の省略、合理化といった項目の洗い出しをされていますが、それよりもむしろ配慮書の実質化、すなわち環境影響が大きいと予測されるところを事前に回避していくというスクリーニングの仕組みをアセス手続の中に組み込むことが重要であり、手戻りのリスクを抑えることができると考えています。是非中間指針における今回の制度見直しの中で、その点を真剣に考えていただくような議論が3回目以降に行われることに期待します。日本風力発電協会におかれましては、この点に関する御意見を是非いただきたい。
最後になりますが、北海道庁に1点伺います。6ページに、北海道における環境影響評価の現状及び課題として、規模要件に応じた件数が示されています。実は、北海道では、条例の第二種事業以下の規模となる小型風力の環境影響が非常に大きいと聞いています。そうした意味では、規模に応じた整理だけではなく、どのような種目の発電が環境影響として発生するのかを整理いただいた上で、環境影響が大きいものをどのように条例の中に組み込んでいくかについて、是非御検討いただきたいと思います。以上です。
○大塚委員長 それでは、原田委員、お願いします。
○原田委員 これまで皆様の意見を伺うと、アセス図書のクオリティー、そして、どういう形で公開をするか、その公開をしっかりと担保するかということで、次の累積的評価においても非常に重要であると理解しました。JWPAに伺いますが、資料を拝見すると、必ずしも全ての事業者が公開をしていない、非常にばらばらであるといった状況だと捉えます。一方、こうしたアセス文書をしっかり公開し、その責任を果たすという意味では、会社のレピュテーションというのは非常にプラスに働くのではないかと思います。会員企業の皆様が必ずしも公開をされていない、かつ、それを何らかの形で、先ほど関島先生も標準化と言われましたが、標準化した形でクオリティーを保つといった御指導と言うべきか、どのような努力をされると、実際アセス図書というもののクオリティーを始め、パブリック性が担保できるとお考えでしょうか。また、実際に行動に移していかれるような計画がおありであれば教えてください。
○大塚委員長 それでは、森田委員、お願いします。
○森田委員 2点伺います。1点目は生態系に関してです。本日、日本野鳥の会と日本自然保護協会のほうから様々具体的な説明がありました。鳥の観点でも、なぜ評価をする必要があるかがよく分かりましたが、今後、累積的影響を見ていく中で、レジリエンスの観点、災害との関係などで生態系への影響が大丈夫かという観点も結構必要になってくると思います。生物多様性の観点で、生き物についての視点と、太陽光発電であれば土砂災害等との関係響の話が多く出てきていますが、風力発電が大規模で設置されるようになってきたときに、土地の関係であるとか、災害とのリンクで生態系を見ていくことも必要ではないかと思います。そうしたもののデータの入手は難しいと考えるものの、本日話された生態系の観点の指標以外にも何か必要な指標が議論されているか、必要と考えられているかという点でお聞きできればと思います。
2点目は浦様に伺います。小規模のものには簡易アセスが必要とのことでした。不勉強であり、教えていただきたいのですが、他国で行われている簡易アセスのやり方は定性的な感じなのか、どのような形の評価をされているのか、日本でどのような簡易アセスが必要と考えられているかについて、少し御見解を教えてください。
○大塚委員長 それでは、一度ここで質問を切りまして、環境省から回答をお願いしたいと思います。
○川越環境影響評価課長 意見を多々頂戴しましたので、要点について述べていきます。まず、関島委員から「本気度を示していただきたい」というお話がありました。決して手を抜いているわけではありませんので、一生懸命やっていきたいと思います。また、国としてどういうデータを考えるのかという話ですが、生物多様性関係であれば「ダーウィンコア」のようなものが世界的には使われているものの、事業者様にお願いしているアセスの中で、そうしたデータの標準化をどこまでするのか、そこはどういったデータをどのような形で蓄積し、活用していくのかという点にも関わると思います。このあたりは、恐らく審議会の場というよりも、更に深めていくような議論が必要ではないかと考えますが、趣旨につきましては理解しました。
次に、ゾーニング制度に係る観点、特に振り分け案の話ですが、実は次回、具体的に説明いたしますが、ゾーニング制度を基に、環境配慮をアセスにおいても組み込んでいくことは非常に大事な点です。特に、回避・低減という点では重要な視点であると思います。そのあたりのリンクは考えていきたいと思いますし、当然、その際に30by30や、ネイチャーポジティブ、生物多様性の分野で今進められているようなものとのリンケージをどのように取っていけるかは、当然、省庁横断ですし、省庁内でもやっていく必要があると思います。そのあたりは、アセスとしてどこまでできるかの限界もあるかもしれませんが、是非前向きに検討していきたいと考えております。
次に、付帯施設をどう考えるかという観点です。一体性の定義を行っているため、そうした中で見られるものは当然見ていきますが、どこまでというのは確かに問題のある場面も存在すると私も承知しています。
次に、累積的影響を誰が責任を取るかです。これは、非常にこの場で私も答えにくいものがあるものの、環境影響評価は工事着手前を対象としたものでもあるので、その後に累積的影響の評価をし、事業者にどこまでお願いできるかというのは、即座に回答するのは難しいですが、重要な課題として受けとめたいと思います。
次に、洋上の関係において、協議会などで進められているということですが、こちらも順応的管理について、前回、白山委員からも意見を頂戴したところでした。先ほど申し上げたように、環境影響評価というものは工事着手までの手続とされていることを踏まえ、どこまで順応的管理、順応的運用をお願いしていくことができるか、もしくは、アセスの中で位置付けられるのかは御議論をいただきながら、整理していく必要があると考えます。
以降は、ヒアリング団体様への御意見になると思います。また足りなければ、後で交代をさせていただきます。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございました。後からまとめて回答をいただきますので、再び意見等をお受けいたします。それでは、白山委員、お願いします。
○白山委員 既に幾つかの点はほかの委員より発言がありましたので、私はその発言のサポートになります。まず、データの公開、供用の推進に関わるものですが、風力発電協会が協会としてこれを推進されると最もよいと考えます。協会としての立場が今どうか、または今後どのようにすると検討されているかをお聞かせいただけるとありがたいです。
それから、空間計画等々について、陸上風力に関しても全体の国土としての空間計画を環境省がつくることは一つあると思うものの、風力発電は地域性が非常に強いという点から考えると、国がつくるのは容易でないと感じます。北海道庁に伺いたいのですが、北海道の道内で多量の風力発電案件を扱っており、非常に大変ではないかと思います。もし、何か空間計画みたいなものができていて、それを参照して事業者が風力発電の計画をつくるといったように、初めに少しレールを引いてあげると事業者にとってやりやすいものとなり、道のほうもアセスの手続の簡素化につながるのではないかと思います。洋上風力のほうで、国が一部アセスのプロセスを代行することもありましたが、道としてそういった立場を取ることはできないのか。そうした点を少し考えていただくとよいと思います。
それから、日本環境アセスメント協会に伺います。総合的な環境影響評価の制度の小委員会との合同であることから、風力以外の様々なポイントについても指摘がありました。特に、海洋の大規模開発がもうすぐある点での幾つか問題点への御指摘、これは環境省への問いになるかもしれませんが、2030年頃には、それこそ今から10年より手前で指摘いただいた様々な海洋大規模事業が開発計画の中では、実施あるいは事業化に向けた目標になっていることを鑑みると、これは次の10年では遅いと考えます。一方、非常にややこしい案件も多く、今から今年度末までの間に何らかの答申にしっかりと書き込むのもそう簡単ではない気もいたしますが、環境省としてどのようなストラテジーをお持ちか伺えるとありがたいです。
○大塚委員長 それでは、勢一委員、お願いします。
○勢一委員 各団体より、非常に丁寧かつクリティカルな内容の説明をいただき、非常に勉強になった次第です。ありがとうございました。全体として、陸上風力については事業特性により、規模より立地の影響が大きいといった点、そして、何らかの制度的対応が必要だとお示しいただいたものと思います。その方法として、第二種事業は一つ選択肢になるのではないかといった御示唆も頂戴したと理解しています。あわせて、風況の良い地域に風力などは小規模でも集積するため、累積的影響を見る必要があるのではないかという指摘も多数いただき、これも非常に重要ではないかと思っています。
各団体に少しずつ質問及びコメントをいたします。まず日本アセス協会ですが、10ページにおいて第二種事業の規模要件の引下げについて、過年度に実施された規模要件の引上げと逆行しないような形の対応が必要と示されています。この点について、もう少し具体的に何かお考えがあればお教えください。また、JWPAも二種事業の拡大の意見をお持ちですが、同じような感覚なのか。それとも違うのかといった点を把握したく思います。
日本自然保護協会は、6ページにおいて、アセス図書などからデータベース化の取組をされているといった発表がありました。これは非常に大きな取組と考えます。こちらは、自主的に公開されている図書だけから行っているということでしょうか。あるいは、公開中の図書をリサーチされているのか。この点について、詳細を教えてください。また、第二種事業の問題について非常に細かくデータでお示しいただきました。現行制度の運用状況を整理して議論する必要があるという示唆を頂戴したと思います。アセス図書の諸問題についても同じと思いますので、現行の状況を確認する必要があることから、時間は少ないものの、少し工夫ができればと思います。
日本野鳥の会からは、バードストライクが起きやすい地形があるということをお示しいただきました。規模より立地を考える必要があるといった非常に大きなエビデンスだと思っています。また、障壁影響の発生をお示しいただきました。既に関島委員から指摘されたネイチャーポジティブとの統合といった視点でも重要な観点だと思います。環境省として、こうした状況を放置してよいのかどうか。対策を考えるべきなのかどうかというのは、省内あるいは省庁間で議論する必要があると思います。海外との規模要件などの比較もお示しいただきましたが、国土の空間管理の計画が日本にはありません。他国は、国土の計画的な管理があり、その空間管理計画の下での事業設定になります。ゾーニングの問題が出ていましたが、まさにその部分は日本が欠けているところです。こうした海外との比較の上で、日本野鳥の会において、日本が現行法で何らかの工夫をできるような余地があるのかどうか。そうしたヒントをお持ちでしたらお教えください。
JWPAからは、アセスの手続の長期化と過大な負担に関して指摘されました。これは、様々なところで事業者の方々がおっしゃっていることと重なると思います。この点については環境省に伺いますが、他事業のアセスにおいて長期化や課題の負担というものが、その後生じているのかというところを比較の問題で教えていただきたいと思います。また、第二種事業の拡大をしてはどうかといった提案がありました。確かに、これまでの第一種事業の規模要件の引上げの趣旨とも沿う議論だと思いますが、他方、規模要件引上げ後の第二種事業の任意の配慮書手続が行われていない状況という指摘があります。実際に、北海道庁からはそうした指摘がありました。つまり、第二種事業の場合には、立地の影響を見ることができないということで、北海道などではそれが地域からの反対につながり、法の仕組みによって風力が迷惑施設化するような事態になっているのではないかという点を懸念しています。第二種事業の拡大を目指す方向と立地問題に対するケアについて、業界では、どのように考えているかを教えてください。
最後は北海道庁になります。本当に詳細なデータをありがとうございました。法アセスがメインの件数ということで、条例アセスに固有の課題は何かあるのかという点でお教えいただけたらと思います。
○大塚委員長 それでは、崎田委員、お願いします。
○崎田委員 3点質問いたしますが、それらに対し、御関心のある方に回答いただければ大変ありがたいです。
1点目は、10年前、戦略アセスに関してどこまで取り入れられるかということで見直しを行ったと思っています。それにより配慮書や方法書、そして地域との対話の中で、どれだけ地域とのコミュニケーションがうまく取られるようになったのか。私は、その点を大切に考えたく思います。そういう視点で、今回、様々な話の中で、既に図書の公開がうまくされていない問題や、地域から事前に様々な提案書や異議が出ているケースもあるという話でした。配慮書や方法書、地域との対話、図書の公開も含め、そうしたところでの地域とのコミュニケーション、信頼関係づくりにおいて、うまく進んだ面はどういう面で進んだのか、あるいは進んでいないのであれば、どこが一番制度及び運用の中で変えていくべきなのか。この点について伺えたらと思います。
2点目は、日本環境アセスメント協会の御発表資料に、ポジティブな面をどのように書くかといった検討が大事であるとあります。2050年のカーボンニュートラル、「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」といった多様な要素に関して、事業実施者、あるいは事業を実施するにおいてどう考えているのかというのも評価にとって大変重要なところだと思います。そういうものの記載に関して、是非御提案いただきたいです。
また、日本風力発電協会の皆様はポジティブな面を積極的に自分たちから発信することも大事だと思います。そういうことに関して、しっかりと取り組めること、あるいは制度の中に入れ込むことについて提案いただければありがたいです。
最後は、様々なテーマ及び配慮事項が増えてきている中で、環境アセスに関する専門家人材の育成は大変重要だと思います。日本環境アセスメント協会において、環境アセスメント士の認定制度をやられていると思いますが、こうした人材育成、多様な面に関して提案いただけることがあれば、伺いたいです。
○大塚委員長 それでは、奥委員、お願いします。
○奥委員 私からは、質問というよりは非常に気になった点に絞って意見を申し上げます。特に、日本環境アセスメント協会と日本風力発電協会の発表の中にあった自治体アセスと法アセスとの関係、もしくは法アセスと条例アセスとの関係になります。アセスメント協会の7ページの中で、「法アセスの目的を超えて自治体の審議会において、専門家から様々な指摘や要求をされることがあるため、アセスの制度の目的に絞って審議が行われるような自治体への働きかけも必要ではないか」といった発言がありました。同様に、日本風力発電協会も、7ページにて特に課題として指摘されている②の内容ですが、根本的に認識が違うのではないかと思います。
法アセスは大規模で影響が著しいものが対象となっていますが、必ずしも、条例アセスが環境影響の度合いが小さいものを扱うことではありません。本日の発表の中でもあったように、風力発電だけでなく、その他の事業においても、規模よりも立地が非常に重要だと考えると、規模は小さくても環境影響の度合いは大きいものも当然あります。そうしたものを自治体が地域的、社会的な状況に合わせて拾い上げていくというのは、地方自治体の裁量の中でしっかりやっていける部分です。それをもって、逆転現象が生じているという指摘は、そもそもの認識が違うのではないでしょうか。そうしたことを考えると、自治体がアセスにどのような目的を見いだそうとしているのか、非常に狭い範囲での環境影響だけを捉えて保全措置を講じていくだけではなく、自治体においては社会的な側面、安全性を始め、そうした多様な要素を広く捉え、アセスの中に組み込み、その事業が狭い意味での環境に限らず、社会的な側面を踏まえたよりよいものになっていくように誘導していくための手段としてアセスを駆使するということは当然あってしかるべきです。そこの認識は、しっかり改めていただきたいというのが要望になります。地方自治法第1条の2においても、「地方公共団体は住民の福祉の増進を図ることを基本として地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」という規定があります。アセス制度もその趣旨に基づいてしっかりと運用されるべきものと思います。この点に関する御見解を日本環境アセスメント協会と日本風力発電協会に確認したいです。
○大塚委員長 それでは、荒井委員、お願いします。
○荒井委員 まず、ほかの委員からも質問のあった累積的影響について、日本環境アセス協会、日本風力発電協会、環境省様に伺います。今回、皆様から「累積的影響の方法等について明確ではない」との発言が出ていました。アセス協会様と日本風力発電協会に伺いますが、北海道庁のほうから、皆様が報告書を提示されていないという話がありました。先行的な事業において、図書、調査データの活用の実態等の知見の集積があるのならば教えていただきたいです。また、環境省には、累積的影響について様々な意見が出始めてから非常に時間がたち、知見もたまっていると思います。その知見から分析を進め、統一した何かを出していく時期に来ていると考えます。そうした分析等に対して何か計画を持たれているのであれば教えていただきたいです。
次に、北海道庁に3点伺います。まず、8ページの自然環境や景観への影響において、「尾根沿いに計画することなど」と書いていますが、地域の方からは尾根沿いに関する懸念が多い状況であるかどうかを教えてください。そして、9ページでは、新たな地域に風力の計画があり、それに対する懸念が出ているとのことでした。加えて、累積における懸念もあると思います。感覚的なところとして、両方から非常に多くの意見が上げられているのでしょうか。例えば、片方からより多く出てきているなど、そうした状況があれば教えてください。最後に10ページです。アセス図書の段階では、非常に景観に対する意見が出てきていると思います。これは様々なところで申し上げているのですが、事後調査やモニタリングでなかなか景観を取り上げられていないため、その後の扱いが明確になっていない印象です。北海道の中で、景観について、図書に上がった後の事後調査、モニタリング等において景観への状況に対する知見があれば教えてください。
○大塚委員長 それでは、山口委員、お願いします。
○山口委員 ほかの委員の内容とも重なるかもしれませんが、質問及びコメントをさせていただきます。
初めに、日本環境アセスメント協会の7ページになります。(8)の専門家について、環境省への要望となりますが、地方公共団体においても技術審査会における専門家の選出に苦慮している状況です。専門家のリストアップなどについて是非検討いただきたく思います。
次に、日本自然保護協会の9ページになります。栃木県の条例アセスの公開状況について御指摘いただきました。本県は案件が少ないこともありまして、事業者からの開示請求には対応していますが、常時公開となっておらず、大変失礼いたしました。今後は案件一覧を公開してまいりたいと考えております。それから質問になりますが、同じ資料の15ページの①に「適地への誘導が必要」とあります。そのためには、生息状況調査などに基づくゾーニング等も重要と考えます。こうしたゾーニングの設定にはどれぐらいの調査期間を要するものなのか、また、その調査結果というのはどの程度の期間有効なデータとして活用できるものなのかを御教示いただければと思います。
次に、日本野鳥の会の5ページになります。諸外国の対象規模要件が記載されています。立地する地域の特性に応じて要件を変更するといった対応もあり得ると考えますが、諸外国の例で、同国内でも地域特性により規模要件等が異なる事例があるのかを教えてください。
次に、日本風力発電協会の7ページになります。自治体の対応の課題を御指摘いただいていますが、全国知事会としては、効率的で適切なアセス制度の構築に尽力していきたいと考えております。現状把握のため一点お伺いしたいのですが、上の枠の右側3行目に、「現状として条例アセス案件の方が手続や項目が多い」とありますが、具体的な事例として、どういった手続や項目が多いのかを御教示いただければと思います。
最後に、全体を通して、団体の皆様から共通して累積的影響についての意見をいただきました。累積的影響に係る予測評価の対応事項、具体的な方針などの設定や明確化が必要と私どもも考えているため、是非対応をお願いしたいと思います。
○大塚委員長 それでは、鷲谷委員、お願いします。
○鷲谷委員 これまでの質問の中にはなかったと思われる1点のみにおいて、主に日本環境アセスメント協会に質問いたします。また、関連する点については、日本風力発電協会及び栃木県の山口委員からも回答をいただけたらと思います。環境アセスメント協会の資料(7)、(8)に関して、ここではアセスに関わる専門家が問題だという点を非常に前面に出されています。赤字にて、こうすると解決できるといった提案をシンプルに書かれていますが、「誰が」及び「実行可能などのようなことを行うか」について、あまり具体的提案にはなっていない印象です。この点について、もう少し見解を伺えたらと思います。例えば、(8)では「地域の専門家をリストアップするなどの取組」と提案されていますが、やり方次第では、個人情報保護の観点から問題が起き得る可能性もあります。この頃、各地域で貢献できる専門家をリストアップするようなNPOの取組もあると思いますが、それは本人が手を挙げた人をリストアップする仕組みになります。そのようなリストアップでよいのかどうかを含め、お尋ねいたします。
○大塚委員長 それでは、村山委員、お願いします。
○村山委員 まず、日本環境アセスメント協会より、スコーピングのメリハリの点が挙げられました。これは、日本風力発電協会からも出てきていますが、この点は国の法律ができた当初から言われています。それから25年ほどがたちました。ある意味、長らく課題になっているところで、何かよい事例はあるのだろうかと考えます。あるいは、メリハリのための指針というものが必要でしょうか。これまで、個別項目の指針はあったと思うものの、そうしたものが必要かどうかについて見解を伺います。
それから、日本風力発電協会に関して、準備書から評価書の段階で大きな修正が入ったということで、これは北海道庁からも指摘されていました。制度上、これについてはあまり想定していないと思うのですが、事業者にとっては、この段階で大きな修正を加えるのは、予測評価も相当大変な気がしますが、どのような理由があるのか。これによって影響が低減されているのかを具体的に教えてください。
それから、日本自然保護協会の6ページにおいて、自主的に自然環境、土砂災害リスクを解析され、データベース化をされているとのことでした。ある意味、ネガティブリスト的なものを作られていると思います。具体的には、どういう情報で作成されているのかを教えてください。
それから、日本野鳥の会の13ページで、計画エリアを広くすることでエリアの変更ができる。それによる影響の低減の余地があるとの話がありました。一方、エリアを広くすることによる予測評価の困難性も考えられますが、このあたりのバランスについてはどのようにお考えでしょうか。
最後に、日本風力発電協会の5ページで手続きの長期化の話がありました。これは不必要な長期化は避けるべきと思いますが、4、5年というのはどこからどこまでを指されているのか。外国の事例から見てどの程度が適切だと考えられるか。何か具体的な情報があれば教えてください。
○大塚委員長 それでは、錦澤委員、お願いします。
○錦澤委員 コメント3点と質問1点になります。1つは、今議論のあった累積的影響です。関島委員の言われたとおり、これを誰の責任でやるのかというのが非常に重要な点だと思います。累積的影響は、欧州で非常に進んでおり、ガイドラインも出ています。それらの内容を参考にする必要はありますが、事業者と公共セクターの両方が責任を持つことになると思っています。複数の事業者が連携し、情報共有するような仕組みをつくることと、情報の管理については、公共セクターが行うことになると考えます。欧州の仕組みをもう少し調べて、日本の独自の取組を考えていく必要があると思います。鳥類、景観といったある程度評価項目は関係するものが絞られていくでしょうし、もう一つ別の話として、先ほど来より出ているネイチャーポジティブのような環境容量的なところとどのようにどう結びつけていくかという話の大きく2つがあると思います。その両方を考えていく必要があるのではないでしょうか。
それから2点目として、第二種事業が最近急増している点を私はあまり認識しておらず、今回初めて知りました。第二種事業が配慮書は任意になっており、それが省略できてしまう、第二種事業のほうが有利になるということです。風力発電において規模よりも立地が重要である点を考えると、仕組みとしてあまりよろしくないと思います。数年前に作成した簡易アセスとスクリーニングをセットにするといったものをそのままうまく使えるとは思いませんが、仕組みを考えていく必要があると思います。
それから、もう一つは、日本野鳥の会の浦様から、イギリスで非常に広めに調査エリアを取って行うことが有効であるといった話がありました。これは、配慮書のみなし複数案という考え方と少し類似しているようにも思えるのですが、みなし複数案のやり方をどのように評価されているのか、どのようなお考えかを伺います。
最後に、北海道庁になります。準備書から評価書の段階で立地を含めた事業計画が大きく変更される場合があり、それが課題だと挙げられていました。それは、どういった経緯で生じるのかが重要と思います。ある意味、準備書段階で指摘事項があり、それを踏まえて事業計画を変更したということであれば、それは妥当とポジティブに捉えることができると思うのですが、このあたりについて、詳細を教えてください。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、私からも一言だけ申し上げます。本日、様々な意見が出ましたが、5年後になるか10年後になるかは分からないものの、次の見直しに向けてさらに宿題になるようなことに関しては明確にしておいたほうがよいといった内容が多かったと思います。私としても、環境省に是非その点をお願いしたいと思います。
それから質問ですが、日本環境アセスメント協会の8ページになります。これは、以前の委員会で奥委員から聞かれた点とも関係すると思います。配慮書に関して有効に機能しているとは言い難いという点で、大問題だと考えます。ここに書いてある「複数案についても記載されないものが多い」という点で、記載できない理由が明確に書かれているかどうかを教えてください。
それから、日本自然保護協会の13ページになります。アセス手続の有効期限などもセットで議論すべきという趣旨ですが、途中で「置き去り」という言い方になっていますが、放置されているケースというのは風力に限らず存在しているわけです。ここで一番大きな問題としては、周りの環境が変化することをお考えでしょうか。また、山口委員も言われた点ですが、有効期限としては例えばどういうことをお考えかという点も併せて伺います。
それから、多くの委員から挙げられたものと関連しますが、配慮書に関しては第二種事業を仮に広げることを考えた場合、配慮書手続が義務的ではないため、環境大臣の意見が出てこないという点が特に問題になっていると思います。これに関して、日本野鳥の会の6ページに出ていたと思いますが、仮に第二種事業を広げて簡易アセスのようなことを考えるとした場合、配慮書手続のほうをどうするかという問題と、簡易にするところをどこにするかという問題があります。方法書を簡易にする趣旨の発言もあったと思いますが、この点についての見解をもう少し詳しく教えてください。
関連する点として、北海道庁の7ページにおいて、第二種事業規模の案件が増えており、方法書から開始しているということです。これについて、北海道のほうも問題点が出てきているのかどうか。こうした点について教えていただければと思います。
それでは、西本委員、お願いします。
○西本委員 2点簡単に伺います。まず1点は、日本環境アセスメント協会への質問です。資料の最初のほうで、海域における大規模な開発について挙げていただき、適切な時期に検討を始めることを望まれるとのことでした。具体的には、どの程度のタイムラインを考えられているのか。最初に挙げられているため、それなりに重要だとは理解するものの、どの程度切迫した検討事項だと捉えられているのかを伺います。
2点目は、日本野鳥の会に伺います。渡り鳥の場合、飛翔経路が変わるだけでも生態に影響が出るなど局所的に現れない環境影響はあると想像します。そうしたものの評価について、何か課題等があれば、御教示ください。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、回答をいただきますが、5団体及び環境省より、それぞれ5分をめどにお願いできればと思います。まず、日本環境アセスメント協会様からお願いします。
○日本環境アセスメント協会 意見をいただいた順に回答いたします。まず、10ページにおいて、引上げと逆行しないように第二種事業の簡素化等といった点ですが、これは第二種条件の規模要件を引き下げて、対象が増える一方になるため、そうした際にメリハリのあるアセスをしっかりやるために項目を選定する。令和4年度に報告書を検討されていますので、その辺を踏まえて実質考えることが大事というニュアンスになります。
次に、5ページのポジティブな面の記載に関して具体的なイメージがあればという話ですが、あまり具体的なイメージは持っておりません。今は事業の内容、目的のところで自主的に書かれることになると思うのですが、そのあたりに関して、例えばゾーニングで事前に行った等のものがあればこのように記載するなど、そういったものがあってもよいという考えです。
次に、人材育成、アセスメント士に関する話です。アセスメント士については、今登録されているアセスメント士についての教育というもので、再生可能エネルギーが増えているため、そうした内容も含めて教育をしています。そのほか、幅広く市民向けにもシンポジウム、セミナー等もこれから行っていく必要があります。また、学生向けというものも少し考えたいと思っています。
次に、累積的影響で実績があるかという点ですが、申し訳ありません。私のほうでは、そうした実績については思い当たりません。
次に、7ページに自治体、専門家の関わりとして書いていますが、黒字で書いているように、アセスを行う上では、地域の環境保全の観点から、地元の有識者の先生の意見が重要だと考えています。必須の手続だと思いますが、数年で交代されるようなケースも多くあります。そのような場合、アセスメントという目的を超えたような御意見をいただく場合があるということです。今、環境省のほうでも自治体の方々を対象にした研修をやられていますが、そうしたことを継続的かつ十分な頻度で、人が変わることも踏まえてやっていただくことが大事だと考えます。
次に、8ページの専門家をリストアップするときの個人情報の観点ですが、公開するかどうかは別にして、自治体に相談に行ったときに紹介いただけるだけでも十分ではないかと考えます。
次に、スコーピングのメリハリにおいて指針が必要ではないかという話ですが、3ページにてメリハリのアセスを阻む壁として参考を書いています。指針があったとしても、実際にそれに沿った形で運用されるものでないと困ります。それほど数多いケースではないにしろ、それをはみ出した意見が出た場合にも対応するとなれば、手戻りを避けるという意味で、できるだけ幅広にやるというのが多く、これまでもそういうケースがありました。指針はあったほうがよいと思いますが、アセスの制度の意味合いであるとか、そうしたところを広く知っていただくことが大事だと考えます。
次に、配慮書で複数案書かれていない場合にその理由が書いてあるかという話ですが、その点に関して多くを把握しているわけではないため、今すぐにはコメントができません。
次に、海域の検討が切迫なものかといった点ですが、資料に載せた順番は項目別であるため、一番目だから特に重要ということではありません。先ほど白山委員よりもお話がありましたとおり、多くのものが2030年を目指すところでの動きとして踏まえると、今は2024年であり、あと5年程度になります。海洋については、陸上と違う様々な法の絡みや、国際的な制度とも絡むことから、少し余裕を持ってスタートをしないといけないのではないかと思っています。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、日本自然保護協会様、お願いします。
○日本自然保護協会 まず、吉田委員等から御指摘いただいた第二種に配慮書を設ける事に関して解決ができるのかという点です。そもそも第一種よりも第二種が環境への影響が小さいとことが前提で設けられているシステムであるものの、実際、風力発電の場合にはそうではないケースが多いと考えると、根本的な解決にはなりませんが、最低限として第二種で抜け落ちてしまうような件は拾えます。事前に影響を環境省などが把握できるという点では重要なポイントだと考えます。
次に、勢一委員等から御指摘いただいたデータベースに関する点です。データベースについては、アセス図書を縦覧期間に全て、この4、5年の間において我々が確認し、データベースを取っています。内容は、猛禽類などの生息状況、植生自然度の分布状況、砂防三法、自然公園の占めている割合、保安林が占めている割合とその種類等といった40項目を超える項目のデータベースになります。それ以前のものは、そもそも私を始め、ほかの者もアセス図書を見ていなかったことから、「EADAS」を利用してデータベースの形で保管しています。ここ4、5年のものは全てアセス図書を見て埋めています。
次に、累積的影響についてどのように考えるかですが、ここでは申し上げなかったものの、累積的影響が非常に重要なポイントであることは我々も承知しています。しかしながら、皆様の御指摘のようにどのように評価するかが難しい中、アセス図書を見ていると、事業者の中には、自分たちの行っている同じ事業者の中での累積的影響を試みているケースは実際にあります。そうした点から、アセス図書を全て公開することで、そうした試みは一応できるのではないかと私は考えます。
次に、山口委員から頂戴したゾーニングの議論がどの程度かかるかですが、期間及び予算等は私のほうで分からないところですが、現在、青森県ではこのようなゾーニングの議論を進めており、間もなくパブリックコメントに入ると聞いています。様々な項目でやっているということです。1年前から議論が始まっていると認識しており、一つの参考にはなると思っています。そのほか、岩手県などではイヌワシの生息状況等を出しています。本日は出していませんが、イヌワシのレッドゾーンにかかっている事業は全体の70%程度という非常に高い割合になっている中、そのあたりをどうしていくかというのは気になるところです。
次に、関島委員から頂戴した関連事業に関してどのようにしていくかですが、非常に難しい問題であると思っています。これは、風力発電ではなく、私のほうはリニア事業でそうしたことを認識しており、土砂の置き場がほとんど決まらずに事業が始まり、どこに置くのかと右往左往している状態になっています。そうした中で、例えば重要湿地であるとか、そうしたところが埋められそうになっているなど、各地で後から出てくる問題というのが非常に厳しい状況になります。実際にどうすればよいのかといったアイデアは持ち合わせていません。
次に、大塚委員長から頂戴した塩漬けになっている件ですが、当然、周囲の環境変化もありますが、どの段階で止まっているのかというのが一つあると思います。配慮書で止まっていて方法書に進んでいないものであれば、改めてそこから進めることもできると思いますが、準備書で止まっているものも実際にある中、その評価は段階によって違うと考えます。何より、その地域の人たちが、この事業が進むのかどうかというのを非常に不安に思っている地域が実際に存在しています。「あれはなくなっていないのか。どうなっているのか」との不安を我々の支援者から聞く機会もあります。そうした点では、ある程度期限は必要だと思います。一方、それが何年という点は非常に難しい議論だと考えます。方法書の調査では2年程度事業者のほうで時間がかかるため、少なくともその2倍は必要と思うものの、さすがに10年は長いと感じますので、その間での議論になると考えます。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、日本野鳥の会様、お願いします。
○日本野鳥の会 まず、吉田委員から提案いただいた第二種事業で配慮書を義務化すべきであるとか、影響が小さそうなものであれば項目を絞り込むのはどうかという点ですが、基本的には提案いただいたようなものであればよいと思います。ただし、風力発電事業だけでそういうことができるのかというのが今後重要な議論になるものと考えます。
次に、関島委員からいただいた累積影響評価の責任の所在は誰が持ったらよいと考えるかといった点ですが、事業者と国がそれぞれ持てばよいと思います。累積影響評価の調査を事業者が行い、こういう結果であるというのをアセス図書の中で書くと思いますが、それに対して許認可を出す国が最終的な責任を持つことになるのではないかと考えます。そのためにも、国のほうでゾーニングを進めることが必要になると思います。
次に、森田委員からいただいた災害と生物多様性の観点ですが、これは難しい質問です。例えば、今、北海道の北部で大規模な風力発電の計画があり、風車を尾根部に建てようとしています。そこは希少なイトウという魚が生息している川の源流部に当たります。結局は、そこで土砂災害が起きたのなら、川に土砂が入ってしまい、川が濁ったり汚れたりすることにより、イトウの生息、産卵に影響があるのではないかと地元の方々は懸念されています。土砂がどの程度崩れそうなのか、河川に流入する土砂量はどの程度か、それによりどの程度濁りが発生するのか、そしてイトウの生息にどの程度影響をもたらすかといったものを一連で評価できるようになれば、今申し上げた点が評価できるようになるのではないかと考えます。
次に、簡易アセスに関してですが、基本的には全案件スクリーニングを行い、その中で、これはアセスをやらなくてもよいのか、やるべきなのか。やる場合であっても軽めでよいのか。最初にフルアセスをやりなさいということではなく、メリハリをつける形で全案件アセスを行いましょうといった意味合いで用いています。
次に、勢一委員からいただいた渡り鳥への影響といった点で、海外との比較で解決する手段があるのかですが、基本的にはしっかりとゾーニングを行い、渡り鳥のルートを避けることが必要と思います。また、事後調査もしっかりと行い、渡り鳥のルートを避けつつ、事後調査で影響が出たのなら、それを取り除く順応的管理を行うといった制度は必要であり、これらは海外でも取り入れられています。あとは、地形の解析になります。渡り鳥だけでなく、猛禽類も立地によって影響が異なります。そうした地形の解析をしっかりと国のほうで行うことにより、影響が出そうな場所をある程度避けられます。こうした取組は海外でも行われているため、参考になると思います。なぜ海外、特に欧州ではこのように風力発電施設における渡り鳥の保護が進んでいるかというと、EUの鳥類指令や生息地指令の存在、ボン条約への批准によるものが大きいと考えます。
次に、村山委員からいただいたエリアを広く取ることによりアセスに混乱が生じるのではないかという話ですが、おっしゃるとおりだと思います。なかなか準備書段階で場所をずらすというのは容易でないと感じます。特に、配慮書の段階、いかに絞り込みの際にできるかどうかです。錦澤委員からいただいた、みなし複数案のやり方とも関係あると思いますが、文献情報だけではなく、配慮の段階において、簡単にでも浅く広く調査ができれば、調査の結果自体をそのままその後の準備書等に生かせるのではないかと考えます。そういう実調査が伴うことによって、絞り込みを行う小範囲のゾーニングのようなことは一つあると思います。あとは、洋上であれば、航空機や船舶を使いながら少し広めに調査し、その結果に基づいて必要により事業地を変更することは、陸上よりは対応しやすいと思います。エリアを広く取るといった観点は、まずは洋上であれば可能と思い、提案した次第です。陸上でそのようなことができるかは、よく議論しなければならないと思います。
次に、大塚委員長からの質問で、簡易アセスを入れるとしてどこを簡易にすればよいかですが、基本的にはアセスの選定項目や詳細な調査項目を立地に合わせて必要なものだけ調査するようにする。フルアセスではなく、例えば大気や粉じんであるとか、動物の中でも両生・爬虫類などをやらなくてよい場所であれば、それは行わないようにするなど、そのような形で簡易なアセスができると考えます。
次に、西本委員からの質問で、渡り鳥の影響において局所的なものだけではない影響があるのではないか、課題が何かあるかという点ですが、おっしゃるとおりで、例えば渡り鳥のルートが大幅に変わることにより、個体に蓄積していく影響があるのではないかと言われています。それが結局、翌年の繁殖に何らかの影響をもたらす可能性であるとか、また、少し局所的な話かもしれませんが、渡りのルートが変わることにより、立ち寄りたい場所に寄らなくなることが発生する場合があると海外では言われています。ただ、データ数が少ないため、実際に中継地が変わったことや、渡り中の個体のエネルギー消費の増加が翌年の繁殖にどのような影響があるというものを数字でまだ示せるような状況ではない点が課題になっています。あくまでも仮説、または推測で言われている部分も少なからずあるため、これからしっかりとデータを取っていかなければなりません。しかし、そこが定量的に評価できないことから、特にヨーロッパでは、ゾーニングの中で渡りルートがしっかりとどこにあるかを調べ、そこをゾーニングの中で避け、風車を建てないようにしている国や州があります。影響が分からないものは、まず避けておき、後でよく調べていきましょうという考えで進めている状況です。以上になります。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、日本風力発電協会様、お願いします。
○日本風力発電協会(JWPA) 様々な御指摘、御質問をありがとうございました。幾つかまとめながら回答いたします。まず、第二種事業についての内容です。第二種事業で配慮書手続が欠落してしまう問題に対する指摘は、確かにそのとおりだと思います。一方、当協会の中での共通認識として、第二種事業の手始めに行うスクリーニングのための事業説明資料を提示する段階で、地域特性やその環境保全については配慮、加味して検討した事業概要を説明するという建付けになっていると理解しています。ただし、御指摘のとおり、そのことに関するステークホルダーの皆様とのコミュニケーション、地域の方との意思疎通については、その他のアセス手続(法第一種や条例)における配慮書手続に比べて密度の高いものとはなっていないため、そうした点については真摯に対応していきたく思います。
次に、情報公開に関する御指摘ですが、これについては、今回、我が協会の仕組みを最初に説明させていただいたのですが、「環境・社会行動指針/行動計画」をここ2年間で策定し、この中でESGのSの部分の対応として、説明責任をしっかり果たす、情報公開をしっかりやっていく、地域の皆様とのコミュニケーションやっていくといった点を協会傘下の企業の皆様とやり始めたところです。「なぜできないのか」といった質問もありましたが、著作権の問題や、少ないコストをかけた調査の成果をそのまま公開することへの社内的な意思疎通、合意形成にハードルがあると伺っています。それらに対しては、こういうことを公開したという点に対する協会内での報奨制度であるとか、そうしたインセンティブを与え、このような公開ができる、このような情報提供ができるといった点を促進していこうと考えています。また、もう一つ、「環境・社会行動指針/行動計画」の中で、ESGのEの部分についても方向性を示しています。その中では、ゾーニング、立地の適正化について、ネイチャーポジティブに資する点に対しても方針を考えています。これも併せて、よい取組は賞揚しながら進めていくことを考えています。ただし、具体的な施策については今後になるため、またよい報告ができればと思います。
次に、第二種事業に関連して、地方公共団体の考え方というものとの逆転現象という説明に対し、奥委員から非常にありがたい御指摘をいただきました。実は、言いたかった点は期間の逆転現象であり、我々も地方公共団体において、地方は地方で様々な事情や立地特性もあるため、環境影響に対しても真摯に取り組まなければいけないと思っています。その一方、再エネ特措法における運転開始期限である法アセス8年、条例アセス4年という期間の逆転に対して非常に苦慮しています。そのため、条例アセスにおいても8年を認めていただけるのであれば、それに越したことはありません。もしくは、それが早期にかなわないのであれば、なるべく法アセスで対応することができればありがたいと考えます。決して、地方公共団体の取組をないがしろにするといった趣旨ではありません。また、当協会の会員企業ともその点は意思共有を図っていきます。あわせて、法アセスの手続ではないものの、法アセスの評価書の確定通知を貰ってからしか進めない取組があるなど、そうした手順において少し前倒しを行い、アセス手続と併行して様々な作業や検討ができるようになると事業の促進もはかどると考えます。長期化の中での御質問もあったと思いますが、保安林内でボーリング調査をやるにおいても、ある程度環境アセスが進まないと具体的な調査に入れないケースがあります。それを行った上で、ボーリング調査の結果を踏まえ、ここに風車を建てると危ないから位置を変更する、あるいは配置を取りやめ発電容量の変更(減少)を図るといったケースも生じるため、環境アセス以外の様々な手続の同時並行ができる、当然ながら環境アセス手続に限りませんが、そうした仕組みが整うと、手戻りや順番待ち、待機期間が解消でき、環境アセスの期間、あるいは運転開始までの期間が縮減できると考えます。
環境アセス期間に関する質問もありましたが、現在、配慮書を届けてから評価書の確定通知を貰うまでに4年から5年かかっている状況です。以前、NEDOの研究成果において、「方法書の大臣勧告から準備書を出すまでを9か月にしましょう」という目標があり、そのために前倒環境調査を適用するという仕組みが推奨されたことがあったと思います。これについては随時適用することを進めています。また、前倒環境調査の意味は、そこで分かった調査結果をどんどん事業計画にフィードバックし、より環境に優しい事業計画をつくっていこうという方針です。そういうことを行っているものの、なお審査期間が一定以上かかっています。その中には、事業計画が変わってしまうという事情もあるかもしれませんので、できるだけの適正化を進めていきたいと思っています。
次に、メリハリの問題の質問ですが、例えば、経産省令において、風力アセスの項目における参考項目が幾つか見直しをされています。中でも、特によく話題になる超低周波音に関しては、環境省様のほうで科学的には影響が認められないと公表していただいているということで、経産省令に示された風力発電事業に係る「参考項目」から外れました。しかしながら、地域の方の心配項目でもあることから、調査・予測・評価をしなければいけない状況になっています。それから、各条例アセスの中において、条例における参考項目が法アセスとは多少違う項目があるため、そうしたところの対応において時間がかかっているのが実情です。以上になります。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、北海道環境生活部環境保全局環境政策課様、お願いします。
○北海道環境生活部環境保全局環境政策課 幾つかいただいた質問に対し、順番に回答いたします。まず、第二種事業以下の小型の影響が大きいということで、道の条例等で踏み込んでみてはどうかといった話ですが、状況としては、道内でも実際に多数の小型風力があります。そうしたことに対し、市町村からも、「アセスの対象にならないので、知らないうちにそういうものができている」という懸念の声もある中、現在、FIT、FIPの関係で取組も強化されているところです。また、市町村でも条例化の動きが進んできています。北海道は非常に広いため、地域の状況は様々であることも把握しながら、道としても必要なことについては今後検討していきたいと思います。現段階では条例までは考えていないのが実情です。
次に、道内の風力に関して空間計画があるのかといった点ですが、そうした計画はないのが実情です。道も「ゼロカーボン北海道」として風力の導入を進めていますが、実際の導入においては、各事業者様が風況や工事の着手のしやすさから場所の選定をしているため、そうした空間計画があって設置の場所を詰めていくことは行っていない状況になります。
次に、道内で法アセスが多いこと、そして条例アセスがある中で、条例アセスの固有の課題があるかどうかという点です。6ページにも書いていますが、最近は法が多く、条例だと2件しか行っておらず非常に数が少ない状況です。また、道の条例アセスの手続自体は、基本的には法アセスと同じような形でやっており、条例アセス固有の課題は今のところ特に発生していない状況です。
次に、景観の観点で尾根沿いの計画に対する懸念が多いのかという点ですが、尾根沿いということで、見えやすいところにつくることから、当然景観上の課題は発生しやすくなります。ただ、尾根沿いだけでなく、麓のほうにつくっても、山の前面に風力発電が建ってしまうということで、そうした意味での景観の影響は地元でも懸念されているのが実情です。景観以外では、尾根沿いにつくることで土砂が流出するといった災害の懸念や、工事の部分では、そうした土砂が流れ出すことにより、水質への影響、先ほどのイトウの例のように、魚への影響を始めとした希少な動物に対する影響への懸念は多くなっています。
次に、新たな地域に設置されるものが多いのか、それとも累積に関しての懸念ではどちらが多いかという点ですが、どちらか片方がという話ではなく、新たな地域でつくろうとすれば、当然住民の方の反対もあります。また、希少な生物への影響というのも当然懸念されます。また、累積されてつくられる点では、鳥類への影響も懸念されることから、どちらも同じような状況になっていると思います。
次に、景観に係る事後調査の知見の有無ですが、道内で景観の事後調査の件数自体があまりない状況であり、知見としては今持っていません。
次に、風力の関係で準備書から評価書の段階で大きく変わった事に対する経緯については、先ほども説明したとおり、環境への影響を少なくするというポジティブな面で事業者が考えられたと理解しています。準備書段階での意見を受けて変更していただいたところもありますが、それ以外にも、例えば近くに空港があるために設置できないであるとか、森林の規制の関係で設置できないという場所の制約が評価書の段階で明らかになったとして、他の場所に風車の位置を変更したという計画になっています。そうしたものについては、評価書段階ではなく、もう少し早い段階で把握して皆様に適切に示すことができたのではないかという点で、少し課題があったと考えています。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、環境省より回答をお願いします。
○川越環境影響評価課長 まず、白山委員からの海洋の大規模開発関係で環境省としてストラテジーはあるのかという指摘ですが、申し訳ありませんが、ストラテジーのようなものはありません。多分、大規模開発でいくと、CCSやレアアースのようなものが2030年頃に事業化、実装化が想定されており、もう「あと10年」と言っているタイミングではないというのは確かだと思います。今回の答申をまとめていただく中で、それを踏まえて、具体的に10年待たずに何をしていくのかというものを整理していく必要があると理解しています。
次に、勢一委員からの累積的影響におけるネイチャーポジティブの関係での御指摘、荒井委員からも累積的影響に関して大分知見がたまってきている状況において今後の方針等はあるのかというお話、そして、錦澤委員からも欧州等の事例を参考に進めていくべきではないかという御意見をいただきました。これについては、そのとおりだと思います。ただし、今のところ環境省において、累積的影響について技術的な面も含めて検討したことがないため、そこは今回の御意見をいただき、早急に検討を進めていく必要があると思っています。また、ネイチャーポジティブに係る御意見も多く頂戴しましたが、恐らくネイチャーポジティブのことを考えていくと、1つはネイチャーポジティブを図っていく上で重要な場所に関しては、ゾーニングと関わる部分を始め、どう示していくか。そして、生態系の評価に関する点では、土砂災害との関係や、前回も鷲谷委員から生態系サービスのお話を頂戴したところですが、生態系アセスの考え方自体を少し変えていく必要があるといった御指摘でもあると理解しており、主にそうした2点からの検討も必要と考える次第です。
次に、山口委員から専門家に関する御意見をいただきました。実は今、アセス学会様から、「自治体審査会の委員間連携を図っていくべきではないか」という提言をいただいており、そのような連携方策について検討を進めているところです。そうした点も含め、何かしらできればと考えています。
最後に、大塚委員長から見直しに際して宿題になるような事項を明確にすべきだというお話をいただきました。是非そのように我々としても心がけてしっかりやっていきたいと思います。以上です。
○大塚委員長 環境省から、ほかにはよろしいでしょうか。
それでは、様々な御知見をいただきましてありがとうございました。これらの指摘を踏まえ、対応していきたいと思います。以上で、本日予定していた議事は全て終了となります。進行を事務局にお返しいたします。
○加藤環境影響審査室長 本日は、活発な御議論をいただきまして誠にありがとうございました。議事録については、事務局で案を整理し、委員の皆様及び関係団体の皆様に御確認いただいた後、ホームページで公表する予定としていますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。
次回の審議会の日程については、小委員会ごとに各課題の対応方針等に関する論点整理を実施する予定です。「風力発電に係る環境影響評価の在り方に関する小委員会」については11月18日、月曜日、「環境影響評価制度小委員会」については11月21日、木曜日に開催する予定です。詳細については、後日、改めて事務局より連絡を差し上げるようにいたします。
以上をもちまして、第9回中央環境審議会総合政策部会環境影響評価制度小委員会、第5回風力発電に係る環境影響評価制度の在り方に関する小委員会合同会議を終了いたします。
皆様、御多忙の折、長時間にわたり、活発な御議論をいただきまして誠にありがとうございました。