中央環境審議会総合政策部会環境影響評価制度小委員会(第8回)・風力発電 に係る環境影響評価制度の在り方に関する小委員会(第4回)合同会議 議事録
日時
令和6年11月1日(金)9:30~12:00
場所
AP新橋Kルーム
開催方式
オンライン併用
議事次第
1.開会
2.議事
(1)開催経緯と今後の審議の進め方(案)について
(2)環境影響評価制度の現状等について
3.閉会
配付資料
【資料】
資料1 開催経緯と今後の審議の進め方(案)について
資料2 環境影響評価制度の現状等について
【参考資料】
参考資料1 中央環境審議会総合政策部会環境影響評価制度小委員会 委員名簿
参考資料2 中央環境審議会総合政策部会風力発電に係る環境影響評価制度の在り方に関する小委員会 委員名簿
参考資料3 今後の環境影響評価制度の在り方について(諮問)
参考資料4 今後の環境影響評価制度の在り方について(付議)
参考資料5 風力発電事業に係る環境影響評価の在り方について(諮問)
参考資料6 風力発電事業に係る環境影響評価の在り方について(付議)
参考資料7 風力発電事業に係る環境影響評価の在り方について(一次答申)
議事
○加藤環境影響審査室長 定刻になりましたので、これより「第8回中央環境審議会総合政策部会環境影響評価制度小委員会、第4回風力発電に係る環境影響評価制度の在り方に関する小委員会合同会議」を開催します。
私は、環境省大臣官房環境影響評価課環境影響審査室長の加藤です。本日は、御多忙にもかかわらず、本合同会議に御参加いただきまして誠にありがとうございます。
報道関係の皆様への御案内です。冒頭の撮影につきましては、議事を開始するまでの間、可能となっております。本日は対面とオンラインのハイブリッド方式での開催とさせていただいており、「環境省大臣官房環境影響評価課チャンネル」にてライブ配信を行っております。なお、本配信につきましては、議事録公開までの間、同チャンネルでアーカイブ配信を行う予定です。
オンライン参加の皆様におかれましては、何点か御協力をお願いいたします。御発言の際以外はカメラ及びマイクをオフにし、御発言の際にはオンにしていただきますようお願いいたします。また、御発言を希望される場合は挙手ボタンをクリックしていただくようお願いいたします。通信トラブル等、何かございましたら事務局まで申し付けください。
本合同会議に御参画いただく委員の皆様の御紹介につきましては、時間の都合上、現在画面に表示している参考資料1及び参考資料2の内容をもって代えさせていただきます。本日の委員の出席状況ですが、環境影響評価制度小委員会及び風力発電に係る環境影響評価制度の在り方に関する小委員会につきまして、それぞれ委員総数の半数以上の委員に御参画いただいております。定足数の要件を満たしており、小委員会として成立していることを御報告いたします。なお、飯田委員におかれましては、都合により本日は御欠席となっております。
続いて、資料の確認をいたします。本日の資料につきましては、現在画面で表示している資料一覧のとおりとなります。過不足等ございましたら、事務局まで申し付けください。
それでは、議事に先立ちまして、総合環境政策統括官の秦より挨拶を申し上げます。
○秦総合環境政策統括官 皆様、おはようございます。環境省の秦と申します。本日は、御多用の中、合同小委員会に御参画をいただきまして誠にありがとうございます。また、日頃から環境影響評価制度につきまして様々な御協力をいただいていることにつきましても改めて御礼を申し上げます。
さて、前回の環境影響評価法の改正から10年が経過いたしました。それにより、現状、将来に向けての議論、検討を始めなければならない時期に来ています。とりわけ、近年は風力発電事業のアセスメントの割合が非常に増えてきております。
一方、風力発電事業につきましては、事業特性から少しこれまでとは違った観点での検討も必要ではないかとの議論もあります。これらを含め、今後の環境アセスメントの在り方について、是非とも皆様方の忌憚のない御議論、御意見を賜りますようお願いを申し上げまして、冒頭の挨拶とさせていただきます。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。
○加藤環境影響審査室長 ありがとうございました。なお、所用により統括官の秦及び審議官の飯田は途中で一時退席をさせていただく予定です。報道機関の皆様におかれましては、冒頭の撮影はここまでとし、以降は傍聴のみとさせていただきます。
これより先の議事進行につきましては、総合政策部会の部会長指名により、両委員会の委員長に任命されている大塚委員長にお願いしたく思います。
委員長、議事の進行をよろしくお願いいたします。
○大塚委員長 両委員会の委員長を仰せつかっております大塚です。どうぞよろしくお願いいたします。最初に一言簡単に挨拶をさせていただきます。
環境影響評価法は1997年に制定され、2011年改正を経ています。今回の検討に当たっては、長年にわたる積み残しがありますし、新たに対応が必要となる点についてもしっかり御議論いただきたいと考えております。例えば、環境影響評価法全体の課題として、アセス図書の公開をどのように行っていくか、風力発電のアセスに関して、先ほど秦様からの御挨拶にもありましたように、様々な制度改正において残された宿題があります。このようなものにどのように対処していくかについて、活発な忌憚のない御意見をいただければ大変ありがたいと思います。また、委員の皆様より、簡潔明瞭に御意見をいただけますようお願いを申し上げます。
それでは、議事に移ります。まず、(1)開催経緯と今後の審議の進め方(案)について、事務局から説明をお願いします。
○川越環境影響評価課長 環境影響評価課長の川越より、御説明します。
資料1を御覧ください。2ページになりますが、今回の環境影響評価制度小委員会及び風力発電に係る環境影響評価制度の在り方に関する小委員会を合同で開催させていただく経緯を示した資料となります。
上段は環境影響評価制度全体の在り方に関するものです。平成9年に環境影響評価法が成立し、その後、先ほど大塚委員長よりお話がありましたように、平成23年(2011年)に改正され、平成25年に完全施行となりました。改正法の附則において、改正法の施行から10年が経過した場合、施行状況について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずると定められています。既に改正法の施行から10年が経過したことにより、今回、本規定に基づく見直しを行う所存です。このため、本年10月に環境大臣から中央環境審議会に諮問をさせていただいていたところです。
後段については、風力発電に係る環境影響評価制度の在り方に関する検討に関しての内容となります。令和5年9月に風力発電に係る環境影響評価制度の在り方については既に諮問をさせていただいているところです。このうち、洋上風力発電につきましては、今年、令和6年3月に一次答申として取りまとめをいただきました。一方、陸上風力発電に係る在り方については、まだ検討課題として残っていることから、今回、両小委員会を合同会議として開催させていただきます。
3ページを御覧ください。今後の審議の進め方(案)について示した資料です。本日、上段の施行状況等の振り返りとして、前回の改正事項のフォローアップを含めまして、アセス法の施行状況等を御報告させていただき、各委員から御意見を頂戴したいと考えます。第2回として、自治体、関係団体等へのヒアリングを実施し、その後、論点整理となります。なお、第3回として予定しているアセス小委・風力小委については論点が異なる点もあると思われることから、それぞれ小委員会を単独で開催したいと考えているところです。その後、取りまとめとなりますが、各小委員会での論点整理を踏まえ、合同会議を複数回開催し、答申案をまとめていきたいと事務方としては考えているところです。
資料1の説明は以上となります。
○大塚委員長 ありがとうございました。議事(1)に係る質疑は、議事(2)の終了後にまとめてお受けいたします。
それでは、次に議事(2)環境影響評価制度の現状等について、事務局から説明をお願いします。
○川越環境影響評価課長 引き続き、資料2に基づいて御説明します。
3ページを御覧ください。環境影響評価法に基づく環境アセスメントのフロー図を示しています。上の方が前回改正で導入された配慮書手続、その後、方法書手続、調査・予測・評価を実施し、それらの結果を取りまとめた準備書、評価書の各手続、そして、こちらも前回改正で導入されたものである報告書手続、このような流れが主なものとなります。
4ページを御覧ください。こちらは発電所に係る環境アセスメントのフロー図です。環境影響評価法に基づく手続に加え、例えば、方法書における経済産業大臣による勧告など電気事業法に基づく特例が適用されています。手続の各段階において、国による規制監督の強化が図られた形で環境アセスメントが行われています。
5ページを御覧ください。環境影響評価法の対象事業と規模要件を示したものです。環境影響評価法では規模が大きく、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあるとして、13事業種を対象としています。その中で、環境アセスメントを必ず実施する第一種事業、第一種事業に準ずる規模、具体的には全事業種共通で第一種事業の規模に0.75を乗じた規模としていますが、第二種事業と定義し、環境アセスメントの要否を個別に判定するスクリーニングの仕組みが設けられています。
6ページを御覧ください。地方公共団体における環境影響評価条例の制定状況を示したものです。全国で最初に環境影響評価条例を制定した川崎市をはじめ、全都道府県及び21の政令で定める市において環境影響評価条例が制定されています。条例では、法対象事業の規模要件を満たさない事業や、例えば、レクリエーション施設のように法対象とはなっていない事業種を含めた幅広い事業が対象となっています。評価項目についても、文化財、日照阻害といった条例独自の項目や審査会手続という手続上の違いなどが見られるところです。
続いて、環境影響評価制度の施行状況について説明いたします。8ページを御覧ください。上段は環境影響評価法に基づく手続の実施状況を示したものです。これまでに865事業の環境影響評価手続が実施されています。下段は、事業種別に環境大臣意見の提出件数の推移を示したものです。平成23年以降としていますが、近年、風力発電が大半を占めており、例えば令和5年度では環境影響評価法に基づき48件の環境大臣意見を出しており、そのうちの約7割が風力発電事業となります。今後、洋上風力発電に係る案件形成、さらには陸上においても更新を迎える既存施設も見込まれることから、今後も風力発電事業に係る手続は一定程度発生するものと考えます。
9ページを御覧ください。事業種別に準備書又は評価書に対する環境大臣意見の傾向を示した資料です。平成23年度から令和5年度までに環境大臣が準備書又は評価書に対して意見を述べた事業は計256件となりますが、このうち事業計画の見直し、実施区域の縮小、施設の配置変更といった比較的厳しい対応を求めたものは45件となります。追加的な環境調査の実施を求めたものは48件という状況になっています。また、事業の実施の再検討等の厳しい対応を求めたものの割合は、事業種としては全体の案件数も多いこともありますが、陸上風力発電事業で164件中37件となっています。そして、火力発電所についても厳しい意見を述べた案件が6件となっています。こちらは、以前、二酸化炭素の排出削減に向けて最大限の対策が講じられていない状況が見られた案件があり、その際、環境省としても「是認し難い」といった意見を述べたものとなります。最近は、比較的、現時点での最新の対策を講じる事業も多くなってきており、このような厳しい大臣意見は減ってきています。
10ページを御覧ください。各地方公共団体における環境影響評価手続の実績を示したものです。北海道、秋田、青森、福島等の各道府県では、近年、風力発電事業の案件数が多いこともあり、緑色の法アセスの案件が非常に多くなっています。また、自治体での審査では審査会が開催されており、近年の案件数の増加により、審査会の回数も増え、審査の方も労力が非常に必要となっているとの声が自治体より聞こえてきています。
一方、東京都などを見ていただくとオレンジ色の条例アセスが非常に多く、150件以上の実績がありますが、全体として見れば、アセスの実施件数が10件に満たない自治体もあるなど、自治体によってアセスの実施状況が異なっていることが見えると思います。
続いて、前回改正事項のフォローアップについて説明します。12ページを御覧ください。平成23年の環境影響評価法の改正事項の概要を示したものです。1点目としては、先ほども少し触れました配慮書手続を導入したこと、2点目として、アセス図書のインターネットによる公表、方法書に関する説明会の開催といった情報交流の拡大になります。3点目として、評価項目を選定する方法書段階で事業者が主務大臣に対して技術的助言を受けたいとの申出があったとき、または、公有水面埋立など知事が免許権者となっている事業に対し、環境大臣意見の提出の機会が増えたという点になります。4点目として、政令で定める市が事業者に直接意見を提出することができるようになったものとなります。5点目として、事後調査や環境保全措置等の内容を公表する報告書手続が導入された等の改正が行われています。
13ページ目がその改正事項を赤字でフロー図に入れ込んだものです。特にフローの前後で改正部分が増えていると思います。
14ページを御覧ください。配慮書手続の実施状況を示したものです。令和6年3月までに実施された配慮書手続については計493件となります。そのうち、風力発電に関するものとして、陸上風力が314件、洋上風力が105件、火力が30件の419件であり、全体の85%を占める状況です。なお、河川と原子力発電事業のそれぞれの事業については、配慮書手続が導入されて以降、対象事業が実施されていないため、グラフには表示していません。
15ページを御覧ください。配慮書における複数案の検討状況を整理したものです。左下は陸上風力についてのみ整理したものとなります。陸上風力発電事業については314件の配慮書手続が行われ、そのうちの306件で複数案の検討が実施されている状況です。そのうち位置・規模を検討したものが8件、配置・構造を検討したものが15件となりますが、286件が配慮書段階では事業実施想定区域を広く設定しておき、以降の環境影響評価手続の中で環境影響の回避・低減を考慮しながら事業区域を絞り込んでいくといった「みなし複数案」と呼ばれている手法によるものとなります。右側の図は、陸上風力以外の事業を取りまとめたものです。計74件の手続のうち59件、8割弱において複数案の検討が行われている状況です。そのうち、道路事業の11件を含む17件では位置・規模の複数案、火力発電所の26件を含む計36件において配置・構造の複数案が検討されているという状況になります。なお、火力発電所はリプレース案件が多いこともあり、配置・構造の見直しが多くなっていると思われますが、そういった複数案の検討内容においても事業特性が表れているものと想像する次第です。
16ページを御覧ください。配慮書手続段階における一般及び関係地方公共団体の意見聴取の状況を示したものです。配慮書手続段階における一般及び関係地方公共団体の意見聴取ですが、こちらは事業者の努力義務とされているもので必須の手続ではありませんが、令和6年3月末までに実施された配慮書手続は陸上風力については314件となっています。このうち、一般意見を聴取したものは313件、関係地方公共団体の意見聴取をしたものは309件となっており、非常に多くの事案で意見聴取が実施されている状況です。その他の事業に係る手続においても179件のうち、一般意見聴取を実施しているものが168件、関係地方公共団体の意見聴取を実施しているものが174件となっており、事業種全体で見ると9割以上で実施されているところです。下の表を見ていただくと若干道路が低いように見えますが、道路の方では独自にパブリックインボルブメント(PI)を実施しており、その中で住民の意見を拾っている形となっており、実際には相当数の意見聴取が行われている状況になります。
17ページを御覧ください。報告書手続の実施状況を示したものです。この報告書については、対象事業に係る工事が完了した後、当該工事の実施に当たって講じた環境保全措置の効果、さらには事後調査の結果を報告するものとなります。事業の工期や事後調査の実施期間、さらには環境保全措置の内容とその効果が出てくるまでの期間によって公表時期が異なってくるものと考えます。したがいまして、出てきたものが少ない状況であるものの、令和6年4月末までに報告書が公表、送付され、かつ免許権者へ意見を述べた事業としては飛行場1件、鉄道1件の計2件となっています。発電所については、電気事業法の特例において、免許等を行う者への報告書の送付が適用除外になっているため、事業者による報告書の公表のみが義務付けられている状況です。このため、環境省の調査で確認できたものとなりますが、陸上風力については29件、洋上風力については2件、地熱については1件の計32件で報告書の公表が確認されているところです。
18ページを御覧ください。こちらは、先ほど確認できた陸上風力発電に係る報告書の記載内容を整理したものです。左側の工事中、右側の供用時で分けて整理をしていますが、工事中については騒音、植物、動物等の監視、事後調査が行われています。右側の供用時は、騒音、超低周波音、さらには代償措置で実施されている植物の移植に関する事後調査、鳥類調査としての飛翔調査、バットストライク、バードストライクに係る死骸調査というものが事後調査で非常に多く実施されている状況です。特に、バットストライク、バードストライクについては29件中27件ということで、多くの事業で報告されている状況です。
19ページを御覧ください。こちらは、陸上風力発電事業において工事着手後に実施された追加調査、追加的な環境保全措置を示したものです。こちらについてもバットストライク、バードストライクの追加調査が報告書29件中12件、全体の4割弱で実施されている状況です。具体的にはコウモリであればバットディテクターによる調査や死骸調査等が行われています。また、追加的な保全措置としては、バットストライク、バードストライクにつきましては29件中6件になりますが、例えば目玉模様の貼付けや彩色、フェザーリングといった措置が行われている状況です。
20ページを御覧ください。その他の改正事項の実施状況を整理したものです。一番上の1ポツ目は、前回改正において、方法書手続段階に評価項目を選定するに当たり、事業者が主務大臣に対して技術的助言を受けたい旨の申出をした際に環境大臣の意見を聞くという規定が設けられたことに対するものですが、このような規定に基づく実績はありませんでした。本規定について、例えば発電所であれば、先ほど申し上げた方法書手続段階で経済産業大臣の関与する機会が設けられていることから、事業者としてこのようなニーズがないのか、さらには本規定があまり周知されていないことによるものなのか、この点は少し精査をしていく必要があると考えています。2ポツ目は、公有水面埋立のように、免許を行う者が地方公共団体の長である場合、評価書に対する意見を述べる際に環境大臣へ助言を求めるよう努めなければならないと規定されたものによるものです。実際に環境大臣が助言をした事業は、全体として対象となり得る事業10事業のうち、4件になります。3ポツ目は、環境影響評価法では市町村長の意見を都道府県知事に提出することとされており、直接意見を述べることができないこととなっていますが、政令で定める市については直接出すことができるという改正を行ったことによるものです。これまでのところ6つの政令で定める市において当該規定に基づく意見が述べられている状況になります。以上が前回改正事項のフォローアップとなります。
続いて、前回法改正以降の主な取組についての説明です。22ページを御覧ください。こちら東日本大震災からの復興・復旧への対応ということで、上段は平成23年に制定された東日本大震災復興特別区域法に基づき、復興整備計画に位置付けられた復興整備事業のうち、土地区画整理事業、鉄道事業及び軌道事業について復興事業の迅速な着手、さらには環境保全の両立、その両方を図る観点から環境影響評価手続の特例措置を設けたというものです。簡単に申し上げると、既存文献を活用し、特定評価書というものを作成しますが、手続期間等も短縮してアセスを実施するといった仕組みになります。下段にある放射性物質に係る対応ですが、平成24年に環境基本法が改正され、環境影響評価法においても放射性物質を環境影響評価の対象として含めることになったというものです。ただし、実際には空間線量率が高い地域において、土地改変等を伴う工事を実施する場合に環境影響評価の項目として選定しているというものであり、これまでに福島県、宮城県における土地改変を伴う事業において、そうした評価項目を設定している場合が多く見られますが、多くの地域では空間線量率が低いこともあり、評価項目としても選定していない場合がほとんどとなります。
23ページを御覧ください。風力発電に関する環境アセスメントの経緯を整理したものです。風力発電事業については、平成23年に環境影響評価法の対象事業が追加されております。その際に、第一種事業の規模要件というものは、他の発電事業も参考として1万キロワットとされたところです。
24ページを御覧ください。その後となりますが、令和2年に開催された「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」において、環境影響評価法の対象となる風力発電事業に係る規模要件の見直し等について指摘がなされたところです。これを受けまして、令和2年度に環境省、経済産業省が開催した検討会において、第一種事業の規模要件というものは5万キロワットが適当、2点目として、立地に応じて地域の環境特性を踏まえた効果的、効率的な環境アセスメントの実施に向けた検討が必要といった大きく2つの結論が得られました。その後、令和3年6月に閣議決定された規制改革実施計画においても、その検討結果を踏まえた措置を講ずることが閣議決定され、令和3年に風力発電事業に係る第一種事業の規模を1万キロワットから5万キロワットにするとの見直しを実施しています。加えて、立地に応じて、地域の環境特性を踏まえた効果的、効率的な環境アセスメントについて検討するため、令和4年度に環境省、経済産業省の検討会を開催して報告書を取りまとめているところです。陸上風力発電事業の効果的、効率的な環境アセスメント制度の在り方についても、今回の見直しの論点の一つになり得ると考えます。
25ページを御覧ください。風力発電事業のリプレースに係る環境影響評価の合理化に関するガイドラインについて説明した資料です。左側の青いボックスに書いてありますが、例えば風力発電のリプレースにおいて、事業位置、出力が大幅に増加せず、新たな土地改変等がない場合には、植物については評価項目として選定しないことも可能とする、そうした環境影響評価の合理化の観点からの考え方や、具体的な手法の例をガイドラインとして取りまとめ、令和2年に公表しているところです。なお、現行の制度では、事業の位置・規模がほぼ同様のリプレースであっても、環境アセスメントについては新築の場合と同様の手続が必要となっているため、本ガイドラインを踏まえ、その合理化を図っていくことが可能か否かといった点も、今回の見直しの論点になるのではないかと考えます。
26ページを御覧ください。こちらは、洋上風力発電に係る検討状況を示したスライドです。洋上風力発電の導入が円滑に進むように、中央環境審議会の答申を踏まえ、再エネ海域利用法の改正法案を先の通常国会へ提出したところです。改正法案の内容としては、領海及びEEZにおける洋上風力発電に係る区域指定に当たり、環境大臣が海洋環境調査等を行うとした規定を盛り込んでいます。改正法案については、前国会において審査未了となり、継続審査とされていましたが、先般の衆議院解散に伴い、廃案となったという状況です。政府としては、改めて同法案の提出に向けて今準備を進めているところです。
27ページを御覧ください。こちらは洋上風力発電に係るモニタリングに関する検討会に関するものです。令和6年3月に公表された中央環境審議会の1次答申において、海外の先進事例も含め、最新の科学的知見を踏まえ、洋上風力発電事業に係るモニタリングに関するガイドラインを公表することが適当ということを受けまして、本年7月より環境省、経済産業省が共同で検討会を開催しているものです。これまでに計2回の検討会を開催していますが、年度内にガイドラインを取りまとめるべく、今、検討を進めている次第です。
28ページ、29ページは参考となります。再エネ海域利用法の制度概要を説明したものであり、28ページは領海、29ページはEEZにおける再エネ海域利用法改正案に基づくものとなります。いずれも促進区域等の区域指定に先立ちまして、環境省が海洋環境調査を実施することによって区域指定の段階で環境配慮を確保していく、さらには環境影響評価の手続についても、例えば、領海では環境省が調査方法書調査を実施することにより配慮書、方法書手続を適用除外とするなど、アセス法の適用除外というものも組み込んだ制度となることを示したものです。
30ページを御覧ください。こちらは、太陽光発電事業に関するスライドです。令和元年に太陽光発電事業についても環境影響評価法の対象事業としています。第一種事業の規模要件につきましては4万キロワットとされているところです。また、条例の対象とならない小規模な事業も見られることから、太陽光発電事業のガイドラインとして「環境配慮ガイドライン」を令和2年に作成し、公表をしています。ただし、依然として太陽光発電事業につきましては小規模事業者によるものも多く、例えば北海道釧路湿原なども近年問題となっていますが、条例アセス以下のものが地域で問題となっているという事例もまだ見られている状況にあります。
31ページを御覧ください。地球温暖化対策推進法に基づく促進区域等に関する資料です。温対法に基づき、令和4年4月から施行されていますが、促進区域を設定し、促進区域の中で事業計画を認定した場合、アセス関係では配慮書手続が不要となるというような規定が設けられています。
32ページを御覧ください。これまで促進区域として45市町村が設定される中、市町村では人材、専門的知見等が不足していることも課題として挙げられていたことから、本年6月に法改正を行い、例えば都道府県及び市町村が共同して促進区域等を設定すること、さらには複数市町村にわたる事業計画の認定等について都道府県が処理することが可能となっています。再エネの導入等に当たって、環境配慮を確保していく仕組みとして、このようなゾーニング制度に対する期待も高くなっており、環境アセスメントにおいてもどのように考えていくかというのは一つの論点と考えています。
33ページを御覧ください。環境影響評価図書の継続公開に係るスライドです。今、環境影響評価に係る図書については、手続段階の縦覧・公表期間が終わった後、原則、閲覧することができないこととされています。このため、環境省では、平成30年度から縦覧・公表期間が終了した後、事業者の協力を得て継続公開というものを進めてきているものの、今まで行われた事業件数894件のうち、公開できているものは89件になります。例えば風力発電事業などでは累積的影響の評価が必要との指摘がされています。そうした評価をしていく上でも、このような情報を一元的に蓄積、活用できるようにしていくことも課題と考えています。
34ページを御覧ください。こちらは、図書の公開に関して、環境アセスメント学会より提言を頂戴しており、その抜粋を紹介しています。
35ページを御覧ください。環境省による環境影響評価の情報提供に関する取組を示したものです。左側の「EADAS(環境アセスメントデータベース)」は、「GIS(地理情報システム)」を使い、様々な情報をウェブサイトで一元的に公表をしているものになります。右側のアセス支援ネットについては、環境アセスメントの事例や法制度、技術検討の結果などを整理して公表しているものです。これらの強化、充実については引き続きの課題と認識しています。
最後の36ページを御覧ください。「本日御議論いただきたい事項」と書いていますが、幅広く御意見を頂戴できればと考える中、事務方としては、今回このような点で御議論いただけないかということで資料を作らせていただきました。1点目は、前回法改正事項のフォローアップということで、配慮書手続によりまして、事業の早期段階から環境配慮に係る検討というものが実施されるようになったこと、さらには報告書の導入によりまして、事後調査の結果や環境保全措置の結果が公表されることになり、そうした実効性というものを高めることが可能になったのではないかと考えられるところですが、これらの改正事項が本当に効果的に機能していると考えられるかという点になります。2点目は、再エネの導入に係る環境影響評価制度の役割として、2050年ネット・ゼロ、2030年温室効果ガス46%削減といった目標の実現に向け、再エネの最大限の導入拡大が求められています。一方、近年、再エネの導入に伴う環境影響等に関する地域の懸念というものも高まっています。そのような状況の中、適正な環境配慮、地域との共生を図りながら再エネを導入拡大していくために環境影響評価制度が果たす役割というのは何か、こうした点をお聞かせいただければと考えます。とりわけ、導入拡大が期待されている風力発電事業のうち、陸上風力発電事業については、事業特性を踏まえた効率的、効果的な環境アセスメント制度の在り方について検討が必要とされていますが、どのような課題が考えられるかという点についても具体的な御意見を頂戴できればと思います。3点目は、その他現行制度の課題ということで、近年の社会経済情勢、関連制度の動向を踏まえ、適正な環境配慮を確保する制度としていくためにどのような課題が考えられるかという点について、御意見を頂戴できればと思います。資料2の説明は以上です。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、これより11時55分まで、ただいまの説明内容に対する質疑の時間といたします。関島委員、お願いします。
○関島委員 幾つか伺います。まず15ページの配慮書手続の導入に係るフォローアップですが、陸上風力以外の事業に関し、後段に位置・規模の複数案であるとか、配置・構造の複数案が検討されていると紹介されています。また、陸上風力でも、位置・規模のみなし複数案が検討されているとされていますが、配慮書手続きにおいて、希少生物や生態系に対する環境配慮というものが、配慮書段階でどの程度風車の位置や配置の検討材料として考慮されているのか教えていただきたい。要は、生活環境及び自然環境に対し、配慮書手続として、現行手続を通して、私たちが想定する機能を十分に果たしているのかについて、説明をいただきたく思います。
次に、18ページの陸上風力発電に係る報告書の記載内容(参考)になります。鳥類調査、バードストライク、バットストライクの報告事例がひときわ多いものの、実際の事業数に比べると値がそれほど多くないと感じます。この点は、報告書の提出が努力義務にとどまっているからだと理解してよろしいでしょうか。また、この報告書の内容に関して伺います。現行としては事後モニタリングの在り方も含めて統一的な基準が示されていない中、報告書で記載されている結果をもとに、各事業の報告結果を統合し、その後、整理・解析できるのが理想と考えますが、そのような手順を踏めるのかどうか教えてください。そのような手続きに向けて、提出された報告内容の吟味を国として実施しているのかどうかを教えてください。
次に、24ページの風力発電に係る環境影響評価手続になります。風力発電に係る規模用件が紹介されており、第1種事業に関して1万キロワットから5万キロワットに引き上げられています。そして、それに伴い、第2種事業も3.75万キロワットから5万キロワット未満に引き上げられています。これまでは1万キロワット以上で審査されていたものに対し、現行の3.75万キロワット以上という規模の条件では、法アセスの対象にならず、条例アセス等で対処していると思います。一方、風力発電に関しては、1万キロワットに達していなくとも、非常に小規模なものであっても、環境影響が大きいということが度々報告されてきました。今回の見直しにおいて、3.75万キロワット未満の規模に対してどのように考えていくのか。この点は、まだアイデアとして出されていないと思うものの、今後手続として、どのように対応していくのか、もし、お考えがあればお示しいただきたい。
また、関連することとして、中段の2つ目に、立地に応じて地域の環境特性を踏まえた効果的かつ効率的な環境アセスメントの実施に向けた検討が必要と記述されていますが、これは非常に重要な点と考えています。今回、風力に関しては陸上風力が主な検討対象になると伺っておりますが、陸上風力は今までも環境影響が出ていますが、今後ますます自然度の高いところに事業展開する見通しの中では、立地に応じて事業の適性を考えていくことは極めて重要と考えます。風力発電事業を進める上で、アセス手続きの中に、どのようにスクリーニングを組み込んでいくのか。そして、スクリーニングを通して、環境影響が大きいと想定されたエリアに対し、どのように配慮するかという手続が制度の見直しにおいて重要かつ大きなポイントになると考えています。
最後に、31ページの温対法に基づく地域脱炭素化促進事業制度の仕組み(参考)に関して質問させてください。この点の説明を十分に理解し切れずにいるのですが、以前、アセス課において、再エネを進めるための促進区域、保全区域及び調整区域として3つのエリアを選定するモデル事業が行われていました。その後、温対法の改正に伴い、改正温対法が求める促進区域の選定手続きが進められていると伺っていますが、具体的にどのような方法で促進区域の選定が進められているのか。そして、現在、どの程度、地方自治体で促進区域の選定が進んでいるのか、御教示いただきたい。私は、地方自治体間で、ゾーニング方法の考え方や選定方法に相当の差異が出ているのではないかと推察していますが、環境省は地方自治体の動きをどこまでフォローしており、今後、どのような方向に改正温対法によるゾーニングを導こうとしているのか。進捗を含め、上手くいっている点、改善を要する点を御説明いただいた上で、今後、一層の地域導入を進める上で何か見解があれば教えていただきたい。
○大塚委員長 ありがとうございます。幾つか御意見を伺った後に、環境省より回答をいただきたく思います。それでは、奥委員、お願いします。
○奥委員 幾つか質問をいたします。まず10ページの各都道府県における環境影響評価手続の実績(参考)になります。先ほどの説明では、福島県以北については風力が多いとのことでした。特に緑の法アセスの部分の内訳、事業の種類について詳細を教えていただきたく思い、後日資料でお示しいただく形でも結構ですので、要望としてお願いいたします。
次に、15ページの配慮書手続の導入に係るフォローアップになります。計画段階配慮手続に係る技術ガイドにおいては、複数案を検討しない場合についても、その理由を明記するようにとなっています。複数案なしというものが数としてはそれほど多くないにしろ、検討されなかった理由がしっかり明記されていたかどうかの確認も必要だと思います。この点について、もしも状況がお分かりであれば、教えてください。また、ゼロオプションの場合も複数案の一つとなるとガイドにありますが、そもそもゼロオプションというものも検討された事案があったか。この点も併せて伺います。
次に、22ページの東日本大震災からの復興・復旧への対応になります。特定アセスの手続についてのフロー図を示されていますが、そもそもこの手続に乗っかった案件がどれぐらいあるのかといった数字が示されていないため、教えてください。また、その数が10ページの各都道府県における法アセス手続の内訳に入っているかどうか。この点も確認をさせてください。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、吉田委員、お願いします。
○吉田委員 前の委員と少し重なるところもあるかもしれませんが、風力発電と太陽光発電に共通するところで伺います。30ページの太陽光発電に係る環境影響評価手続において、風力発電のほうでも立地の特性に応じた効果的、効率的なアセスメントの実施とのことでしたが、太陽光発電の場合、4万キロワットという非常にハードルが高いため、実際には法アセスに係るものは非常に少ないわけです。しかし、実際に始まってみると知床の問題をはじめ、釧路の問題のように、非常に立地上の問題があるところで計画をされ、それが問題になってくるといった事例が生じてきています。そうした中で、規模に関してこれでよいのか。あるいは、規模だけではなく、別の立地というものを考えてスクリーニングをしていくことも必要ではないかと思うのですが、こうした点での見解を伺いたく思います。
それから、今、風力発電が非常に多く、CO2排出をゼロにといった点での対応が非常に強く求められているわけですが、生物多様性の視点というのも非常に重要であり、生物多様性に関しては、生物多様性条約締約国会議(COP)も2006年の段階で、スクリーニングに生物多様性の視点を入れるべきである、生物多様性の保全上重要な立地であるとか、あるいは絶滅危惧種がいるようなところは面積要件でスクリーニングするのではなく、そういった立地も考えてスクリーニングすべきであるといった決議が出ていると思います。その決議から20年近く経ちますが、全く対応をしていないような状況についてどのようにお考えでしょうか。
○大塚委員長 ありがとうございます。それでは、村山委員、お願いします。
○村山委員 36ページの本日御議論いただきたい事項の整理に従って少し意見を申し上げます。まず、前回の法改正からの配慮書と報告書に関する点です。アセス法の中で、方法書から評価書に至るプロセスについては比較的連携できていると思うのですが、残念ながら配慮書については少し遊離している印象です。仮に、複数案が提示されていたとしても、案件によっては方法書の段階で別の形の案が出てくるといった形で、前回の改正で配慮書という一つの文書が追加されたことは大変良いのですが、それがあまり生かされていないように感じます。方法書とどのようにうまくつなげていくのか。方法書とのリンクをもう少し進めていかないと、事業者にとっても、なぜ配慮書を作っているのかが明確になっていない中で位置付けられているように感じます。そういう意味で、複数案を明確化するというのは一つの方法だと思います。現状では見直し複数案というものも入っていますが、もう少し具体的な複数案を示していただく。そのために、具体的な複数案を設定できるような時期に配慮書を作成していただくことが必要と考えます。
それから、報告書については、こちらも前回の改正により一定の成果が挙げられているとは思うものの、報告書としては工事中だけではなく、供用段階の報告も非常に大事だと思います。現時点では、報告書について法では指針を示すとなっており、指針が基本的事項に書かれているのですが、その中では工事が完了した段階で1回作成することが基本とされています。基本的には工事中であるものの、必要に応じて供用段階も作成してくださいといった形になっていると思います。ここからもう一歩進めて、工事中に加えて供用段階までやっていただくと、実際にその施設の使用による影響が分かるものと考えます。
次に、風力の再エネ関係です。こちらは風力アセス小委のほうでより議論をされると思うのですが、今までの御意見にもあったように、規模要件は一つの効果ではあるものの、そこから外れるものに対する対応があまりうまくいっていないと考えます。加えて、事業段階から議論が始まるということの弊害もあると思います。仮に、第2種事業を少し幅広に設定するとしても、現状では、第2種事業があまりうまく使われていない印象です。そうした意味で第2種事業の活性化、これは再エネ関係だけではありませんが、もう少しうまく活用されることで、再エネも含めた形で対応ができるのではないかと思います。ただ、法だけではなく事業自治体のアセス、さらには、そこから外れるものについては、学会からも提言を出していますが、スモールアセスのような形で自主的な取組をうまく活性化させるようなことも必要と考えます。先ほども促進区域の話があったように、他の制度をもう少しアセスとリンクさせると、ゾーニングのような考え方が広がり、議論が活性化できるとともに、制度上どうするかはこれからの議論だと思います。
それから、その他として、1つは事業アセスに関するものですが、日本のアセスでは規模要件が非常に明確になっています。これによるプラスの効果も当然ありますが、それによる弊害も出てきています。これは最近に限ったことではありませんが、例えば大きな案件でも分割することによるアセス逃れがあります。また、分割において、空間的な分割もあれば時間的なく分割もあり、そういう形でアセスが適用されない。これは、民間事業だけではなく、防衛施設のような公共事業についてもこうした点が指摘されています。これについてどうするかということは一つの課題だと考えます。
そして、規模要件については初期の段階ですが、アセスの中では相当後の段階で、事業の変更をした場合にどう対応するかということも含まれていると思いますが、法律の中の事業変更に対する枠が狭い気がしています。自治体によっては、もう少し幅広に設定していると思います。例えば法の中では、大体事業の10%程度大きくなったら事業変更だという設定がされていると思います。それ以外にも、自治体では他の要件も含めている場合もあるため、その点についてもう少し考えてもよいのではないかと思います。
それからもう一つは、適用事例の数の問題です。これは、先ほど申し上げたスモールアセスにも関わりますが、他国に比べると、日本のアセスメントは数として少なめだとよく指摘されます。アメリカや中国を見ても、本格的な日本でやっているアセスメントだけでなく小規模であっても、簡易アセス、スモールアセスといったものを実質的にやられているわけです。アメリカでは年間1万件程度簡単なアセスをやっているのではないかといった話もあります。日本の場合も何かそういう形で、制度化は難しいかもしれませんが、自主的なアセスメントを後押しする仕組みを、もう少し国として進められないものかと考えます。
最後に、どうしても指摘せざるを得ないのは戦略的なアセスメントの問題です。国としても、相当前になるものの、戦略アセスの総合研究会が開かれました。ただし、2006年に検討は終わり、そろそろ20年近くが経つ状況です。様々な事情があることは承知していますが、世界的な潮流から取り残されてきていると言わざるを得ません。中国あるいは韓国でもこうしたアセスメントの一定の実績が出てきている状況です。そうした中で、日本はどうするのかが迫られてる時期ではないでしょうか。これについては、先ほど川越課長から話があったような累積的影響あるいは複合影響にも関係するため、どこかの時点でそろそろこの点の議論についても再起動すべきでないかと考えます。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、一旦ここで回答のほうをお願いしたいと思います。
○川越環境影響評価課長 まず、関島委員からの配慮書段階における環境配慮が機能しているのかといった点ですが、例えば風力等であれば、非常に広い区域から絞り込んでいくという中で、初期段階では広めに区域を取っておき、そこから絞り込んでいくという点では一定程度環境配慮がされていると言える面もあるかと思います。一方、個別に案件を見ると、重要な植物群落、自然公園といったものが最初の段階では入っていることもあります。そうした環境配慮がなされることがなく、配慮書段階で相当幅広に取ってきているというような例もあるため、配慮書が機能している部分と機能してない部分の双方があるという印象です。この点は、審査を担当する職員からもフォローをいただければと思います。
次に、報告書に関して出そろっていないケースもあるのではといった点ですが、先ほど申し上げたように、報告書の公表が工事完了後ということであるため、出てきていないものがまだ幾つかあるというのはおっしゃるとおりだと考えます。報告書がプールされていないといった点も、風力発電以外については2件となっていますが、まだ出てきていないものもあることから、そこまでいっていないと言えます。そして、発電所については、そもそも国の方には送付されず、我々が確認をしている状況です。こうした点で、プールできるような仕組みにはなっていないと思います。こうした点からも、報告書も含めたアセス図書の継続公開とリンクをさせながら考えていく必要があると理解をしています。
次に、3.75万キロワット以下への対応として、どのようにスクリーニングを実施し、環境影響の程度をどのように判断していくのかといった点です。まず、3.75万キロワット以下については、条例の中で捕捉している状況であると思います。一方、1万キロワットから5万キロワットに引き上げた際には、経過措置で法アセスと条例アセスを選択できる状況になっていますが、割と法アセスで見てきた経緯があります。したがいまして、条例と法のそれぞれにおいて対応してきている状況にありますが、3.75万キロワット以下についても問題になっている点は御指摘をいただいています。この点に対してどのように対応をしていくのかは今回の論点として是非整理をしていければと思います。
次に、ゾーニングに関しても、当然そういった環境影響の程度を判別していくことは非常に重要なことだと思っています。一方、環境影響評価手続では、そういった環境影響の程度が著しいおそれがあるものを対象として調査・予測・評価を行う中で、その有無、大きさというものを判定・判別していく、そして、必要に応じて環境保全措置を取っていくという流れにおいて、初期の段階でどのように環境影響の程度を判断していく基準を設定するのかは一つの課題になると思います。また、ゾーニング制度のようなものがあることにより、配慮すべきエリアというものが最初に見えてくることは非常に重要な観点だと考えます。
次に、促進区域の関係として、我々の方で以前実施していたモデル事業がありました。今は別の部署がメインに行っており、ガイドライン等をつくっているところですが、実際にはあまり進んでいない状況だと思います。促進区域の状況を見てみると、例えば、太陽光発電に関するものが多いのですが、公共施設の上であるとか、公有地であればよいといった区域設定をしているようなところも結構多く見られます。実際のゾーニングができているというものは非常に少ない印象です。この点は、論点整理の際に資料を整理してお示しできればと思います。また、具体的なゾーニングができるようにしていく取組については引き続き検討が必要だと思いますが、現在、「地域脱炭素政策の今後の在り方に関する検討会」を別途環境省で開催しておりますので、そこでの状況も紹介しながら、こちらとしてできることがあるかを考えていきたいと思います。
続いて、奥委員からの自治体における法アセスの内訳ですが、自治体別の整理を行った資料を現在持ち合わせていないため、宿題とさせていただきたく思います。また、配慮書段階で複数案を検討しなければいけないものの、その検討を行っていない場合の理由が明記されているかという点について、幾つかの例になりますが、例えばリプレース事業では、事業実施区域が同じであるとか、発電容量も変わらないために同じであるといったもの、都市計画や資源量調査等を行い、場所がもうそこしかないといった理由が述べられている場合もあります。さらに、構造上そういったものは既に決まっている、あまり泳ぎようがないといった理由が述べられている例を確認しています。
次に、ゼロオプションについてはあまりなかったと記憶していますが、この点は再度確認を行いたく思います。特定アセスに関しては、アセス法に基づくものではないため、我々の案件数にはカウントをしていないものとなります。
続いて、吉田委員からの太陽光については小さいものも問題になっているため、立地においてスクリーニングをしていくべきではないかという点です。アセス法については、法の中でも規定をしていますが、規模が大きく環境影響の程度が著しいおそれがあるものを対象として環境アセスメントをしていくといった定義の下、その規模が大きいというものをどこまで捉えるのかといった整理、規模に関係なく環境影響の程度で見ていくのかという点は、当然法改正も必要になる事項であり、議論をいただきながらと考えているところです。
次に、生物多様性の観点で重要な地域というものをスクリーニングで反映できるようにすべきではないか、それに対する環境省の見解はどのようなものかといった点ですが、現行、スクリーニング段階でも、基本的事項では、「環境保全上において大切な場所に該当する事案についてはアセスをしなさい」と書かれており、それに基づく主務省令においても、例えば重要な動植物の生息・生育地等について事業が予定されている場合は、アセスを実施するような判定基準が設けられていると思います。また、EADASにおいても、そういった大切な場所の情報提供を行っているところです。しかしながら、その点が不十分との御指摘と受け止め、この点についても、さらにどのような方策が必要かについて御意見を頂戴できればと考えます。
続いて、村山委員からの御意見ですが、まず配慮書については複数案が出てきていても報告書の段階で別の案が出てきている、そして配慮書と方法書のリンクをもう少し適切に取るべきではないかといった御意見であると理解いたしました。こちらについても、我々としては課題の部分と考えており、是非今回の小委員会の中で議論をいただければと思います。報告書についても、村山委員より御説明いただいたとおり、現行の基本的事項では工事完了後に1回を基本とする、その後の事後調査等についても報告するよう努めるといった形になっています。実際には、事後調査の結果も含めて報告書で報告しているような例は出てきていますが、基本的事項についても見直すべき必要があるのかどうかといった点については、今回議論をいただければと思います。
次に、風力発電に関して第二種事業の要件から外れるものについての話、全般的な話として第二種事業のスクリーニングが機能していないのではないか、そして自主アセス、スモールアセス等の仕組みを検討できないかといった御意見だったかと思います。風力発電事業については、今の第二種事業の規模未満のものも対応をしていく際に、単に第二種事業のレンジを広げるだけではなく、それに合わせたメリハリの効いたスクリーニング、そしてスコーピングを含めたところになるとは思いますが、そうした制度にしていかないと、効率的、効果的にならないと思うため、こちらとしても方策を是非考えていければと思います。
次に、SEAの関係について進んでいないというのは御指摘のとおりです。累積的影響との関係という点でも検討をということだと理解しましたので、このあたりも、是非御意見等を頂戴できればと思います。一方、洋上風力については、他国と比較をすると一部足りない点もあると思いますが、促進区域、募集区域に当たって国が関与をしてゾーニングを行っていくところで少し取り入れている部分もあると思うものの、SEA全体の制度の在り方については御意見を頂戴できればと考える次第です。以上、いただいた点に対する回答になります。
○大塚委員長 ありがとうございます。環境省側から、そのほかよろしいでしょうか。
それでは、澁谷様、お願いします。
○澁谷環境影響評価課課長補佐 環境影響評価課、課長補佐の澁谷より事務的な補足を行います。1点、関島委員からの報告書の規定に関する御指摘について、報告書の作成については全ての対象事業について事業者の義務となっています。主務大臣への送付、主務大臣の意見提出の機会に関しては、発電所事業以外の事業についてはそうした規定があるものの、発電所事業については報告書について事業者による公表のみが義務付けられており、主務大臣への送付は適用除外となっています。
また、促進区域に関して、どのような考え方で自治体がつくるかという点ですが、促進区域を市町村が策定する際には、まず国が全国統一的な基準として、促進区域の指定に係る環境配慮基準を作成しており、その上で、都道府県が地域の実情に応じて環境配慮基準を策定できる仕組みになっています。そうした国の基準、都道府県の基準を踏まえ、市町村が促進区域を策定することとしています。
次に、奥委員からいただいた特定アセスの件数に関する補足ですが、こちらの実績としては土地区画整理事業の関係で1件、鉄道事業の関係で1件の合計2件という実績になります。以上です。
○大塚委員長 そのほか、よろしいでしょうか。
それでは、私のほうから、基本的事項の検討及び2011年の改正時にも関わった関係で申し上げます。村山委員より上げられた報告書について供用時まで広げる点は大賛成ですが、当時、議論されていたのは、法の2条1項の「事業の実施」という文言を理由にして、供用時に関しては環境影響評価の対象に含めないというのが法制局の発想でした。そこをどのように乗り越えていくのか。あるいは、そこの文言を若干変えるといった議論が必要になってくると思うため、その点だけ申し上げます。では、山口委員、お願いします。
○山口委員 私、栃木県が全国知事会の脱炭素・地球温暖化対策本部長県であることから、全国知事会代表として本委員会に出席しております。どうぞよろしくお願いいたします。
先ほどは、現状や手続について丁寧な御説明をありがとうございました。36ページの記載事項に沿いながら意見を述べさせていただきたいと思います。まず1つ目の配慮書や報告書手続について効果的に機能していると考えるかという点は、配慮書手続により、計画の初期段階から環境影響を考慮し、柔軟かつ効率的な対応が可能になったことに加え、地域住民が早期に事業の情報を得て意見を述べる機会が増えたことなどから、より実効性が高まり、環境の保全に一定の効果はあったものと考えます。また、報告書については、環境影響評価を行うだけでなく、その結果をしっかりと把握し、必要に応じて追加対策を実施及び公表することで制度の実効性と透明性の向上に寄与していると考えます。その一方、環境保全に重要な手続であることは十分承知しておりますが、手続が多く複雑であり、事業開始までに長期間を要することが課題と考えます。当然、環境負荷を十分低減していく必要はありますが、事業者の手続にかかる負担を軽減しながらも効果的、効率的な影響評価を行えるよう手続を合理化していくことが重要ではないかと思います。例えば風力発電のリプレースなど環境への影響が少ないと見込まれるような事業については、手続の簡素化を検討いただければと思います。
次に、再エネ導入に係る環境影響評価制度が果たすべき役割については、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、風力発電を含め、再生可能エネルギーの導入推進が必要不可欠であると思っています。地域との共生を図るためには再エネの設置による環境影響を最小限にするため、どう対応していくのかを分かりやすく、正しく地域住民に説明して理解を得ることが重要です。環境影響評価制度の適切な運用は、地域共生型再エネの設置促進の一助になるものと考えます。
次に、より適正な環境配慮を確保する制度とするためにはどのような課題が考えられるかにおいては、アセス図書の継続公開が挙げられると思います。33ページで説明がありましたが、アセス図書について縦覧期間終了後もアクセスできるようにすることで事業の透明性向上や周辺環境の基礎情報の蓄積、また、後続事業等のアセス図書の質の向上に貢献し得るため、より多くの事例が継続的に公開され、成果や知見が蓄積されていくことが望ましいと考えます。
最後に、先ほど事務局からの説明にもあったように、全ての都道府県が環境影響評価条例を所管し、法律を同じように運用しています。制度の見直しにおいては、全国の状況を踏まえ、意見や要望をお伝えしていきたいと考えているため、今後も国と地方の適切な役割分担を維持しつつ、地方公共団体の意見も十分に反映させながら議論を進めていただき、より実効性のある制度を構築するようお願いしたいと思います。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、勢一委員、お願いします。
○勢一委員 何点かコメント及び質問をいたします。まず、今回10年見直しということで非常に重要な機会だと思います。最近は社会状況の変化が早く、制度のキャッチアップも必要であるため、5年が一般的ではないかと考えます。10年は、非常に時代に置いていかれた感のある制度になっているというのが環境法を専門とする研究者の所感です。特に、再エネの導入拡大は、ここ10年で地域の自然環境への影響を大きく変えました。このような変化をはじめ、人口減少による耕作放棄地、放置山林、空き家の急増といった状況もあります。こういうところに何が立地するのかという問題、こうした大幅な社会状況の変化や他の法制度の改正等に対応するためには、法の抜本的な制度議論が必要であるという認識です。場合によっては、法目的を含む再検討も必要と思います。特に風力発電のように、規模より立地が環境影響に大きい事業があると明らかになった状況においては、目的規定にあるアセスの対象の規模が大きく、環境影響の程度が著しいものとなるおそれのある事業といった点で、規模が大きいだけでよいのかというものは改めて問い直される必要があると思います。
次に、個別の制度について意見を申し上げます。今回、風力をどうするかは非常に大きなミッションだと思います。カーボンニュートラルに向け、再エネ拡大が求められているにもかかわらず、迷惑施設化をしておりますので、これはブレーキがかかる懸念があります。こうした現状は、今回お示しいただいたように、環境大臣意見で厳しい対応が求められており、陸上風力に非常に多いという点も、まさにそれを明らかにしている根拠になります。また、配慮書手続も風力が多いということでした。こちらも既に議論にありましたように、みなし複数案で行われている、つまり位置を含めた検討が不十分なまま手続が動いている。これは制度趣旨にのっとっていない運用になっていると思います。これもしっかりと見直していくことが、現行の配慮書手続を維持する場合でも実質化は必要と考えます。
また、質問になりますが、配慮書手続における意見聴取が事業者の努力義務としてかかっている中で、各事業者においては多くの事例で意見聴取が行われている。そういう意味では、事業者の良心的な対応がなされた点は評価できると思うものの、意見聴取をした結果が実質的にどの程度、配慮書段階での事業計画の改善に役立っているのか。このあたりは内容を少し検討する必要があると思います。こうした点で何か情報をお持ちであれば教えてください。
次に、配慮書手続に関して、運用改善も含めて議論が必要だとして、先ほど村山委員から指摘があったように、本格的な戦略アセスメントに向けてステップアップをするような検討は可能なのか。この点を議論にしていただければありがたいです。
次に、太陽光について、こちらも吉田委員から指摘があったように、立地問題が顕在化しています。特に、ここ数年において、各地域で実質上の規制条例が急増している状況です。これは、法アセスを含めたアセスが機能していないことの証左だと思います。こういう点でも、事業特性に応じた規模要件の再検討が避けられないと考えます。また、他の制度とのリンク、関係性も2011年以降において変わってきていることから、まず、既に議論があった温対法の促進区域制度とのリンクをどうするかは考えなければなりません。確かに、現状では促進区域として温対法の改正時に想定した理想像であるゾーニングが必ずしも行われていない現状です。先ほど環境省より説明があったように、国及び都道府県の配慮基準が出ているような中で、その地域において再エネを導入する際には慎重に考えなければいけない場所が徐々に地図上で分かってきている過程にあります。こういう情報について、アセスのほうでどのように受け止めることができるのか。これは簡単ではないと思いますが、制度間の議論では必要だと思います。
次に、生物多様性についても意見がありましたように、まさに環境省主導で自然共生サイトの認定を行っています。相当数が認定されており、来年度からは新法による法認定に格上げされます。このように認定された場所は、どのようにアセス制度で配慮をしていくのか。特に法認定になれば、まさに法の世界に入っていきます。これは、環境省所管としてしっかり考えていただく必要があります。
最後に、アセス図書の公開です。これについて既に述べられた意見及び今回紹介をいただいたアセス学会の提言で示されている指摘はまさにそのとおりだと思います。先ほど全国知事会様からも同様の指摘がありました。アセス手続において、社会全体で収集、検討した情報の公共性をどのように考えるのか。社会にどう還元するのかといった点をしっかり考えた上で、法的根拠を設定することは必要だと思っています。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、崎田委員、お願いします。
○崎田委員 私は、暮らしや地域の視点で環境政策に対する意見を申し上げる立場で様々な委員会に参加しております。特に環境アセスに関しては、10年前の見直しのときに日本版の環境アセスとして、こういう視点で新しい見直しをするということで皆様と議論を重ねていきました。それがしっかりと効果を上げているのか、定着をしているのかという点が非常に大事な視点だと思っています。そういう意味で、例えば配慮書に関して87%は複数案が出ている、それなりの効果は出ていると思って拝見していますが、それは大きな地域を指定し、それが徐々に検討の中で小さくなっていく。その中で、地域社会とのコミュニケーションはうまくできているのだろうか。そうした点を考えながら話を伺っていました。そうした上で、しっかりと地域の満足感がこのような制度改正で高まっているのかという視点も非常に大事だと考えます。
なお、この10年間で変わってきたことは、先ほど来から話に出ているように、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた再生可能エネルギーの大量導入が必要といった中で、どのように自然環境の保全と同時達成をしていくのか。この点が非常に大事になります。今の配慮書の話、あるいはアセスメント図書の公開がまだ一部であるといった知見が集積されない下で、皆の思いでつくられてきたことがこの10年で達成できているのか。そういうものの検証が最も重要だと感じます。
次に、最近は自然災害が非常に激甚災害になってきており、大型太陽光パネル施設が適切に運営されているはずであるものの、こうした災害により非常に破損をしている。あるいは、地域の環境に影響を与えているといった様々な事例も出てきています。今後この中で激甚災害をどのように見ていくのか。こうした点も必要ではないかと思います。
最後に、以前の検討の際、あるいは途中で出てきた洋上風力の報告書においても必ず新しい視点が増え、件数も増し、人材育成が重要だと出てきます。こういう分野の専門家の人材育成は現在どのように進められているのかも一つ検証していただければありがたいです。よろしくお願いいたします。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、森田委員、お願いします。
○森田委員 2点コメント及び質問をいたします。1つは、アセス図書及び、どのような情報を今後共有していくかという点に関わるものです。再エネ技術をネットゼロに向けて、とにかくたくさん投入しなくてはいけない点と、その導入をするためのプロセスを簡素化していくことは賛成ですが、この数年で生物多様性の議論の流れが非常に変わってきています。先ほど勢一委員から自然共生サイトの話もありましたが、民間の関係、TNFD等の関係、お金の流れにおいても、本当にグリーンウォッシュにならない生物多様性の取組とは何かといった部分に厳しい目が向けられています。アカデミアに関しては、日本ではまだ少ないのですが、今関わっているIPBESの社会変革アセスメントにおいて、社会―生態システムに関する研究が欧州等で非常に進んでいることが分かってきました。そうした点を考えると、一つの再エネ技術を入れるところで、ある幾つかの種の影響を見るというよりも、例えば自治体であれば、面で本当に生態系と再エネ技術のバランスはこれでよいのか、人が住むエリアはこれでよいのかといったものをもっと考えなくてはいけないと思います。一方、それを考えるための生物多様性のデータとして、まだ必要なデータが足りない部分もあると考えます。そういった意味で、ある程度やりながら議論していかなくてはいけない、アカデミアも自然科学のみならず社会科学的な知見が様々出てくる中、一件一件の問題ではなく、もう少し面で捉えていきながら、これまでの問題を教訓に他の方策を考えるといった在り方も一つだと思いました。面という意味では、ファイナンスの関係で民間のお金が入りやすいものはプロジェクトや小さいスケールだと想像しますが、生態系の観点で考えると広い面で考える必要があります。
2つ目は質問になります。欧州は生態系に関して面でどうやって入れていくか、都市の文脈でもネイチャー・ベース・ソリューションをどうやって入れていくかという形で脱炭素と生物多様性が統合的にどうあるべきかといった議論も行われています。日本は、多分そこのパッケージの統合的な議論をあまりしないままに個別のアセスの話に入ってきているような気がいたします。欧州のほうではアセスのやり方に関して、再エネが増えていく中で何か工夫している部分があるのか。自治体等でもっと面で統合的に再エネや生態系の観点等を入れていく上での戦略と照らし合わせながら見ている部分もあるのか。こうした観点で何か情報があれば教えてください。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、原田委員、お願いします。
○原田委員 既にほかの委員から大きな部分での問題点が指摘されているため、私からはその関連及び細かな点で幾つか申し上げたく思います。まず、配慮書のクオリティーや重複の問題です。私どものような金融機関から見ると、配慮書というのものが開発の検討に着手したという企業としての何かPRのために使われている印象が少しあります。むしろそれが目的になっている場合もあると感じます。先ほど、山口委員から「地域住民との対話のきっかけになっているという面もある」との報告があったように、そういうことは非常によいものですが、同一の似たような地域で複数事業者が取り組んでいる場合や、同一事業者で広く網をかけているということが、かえって地域に混乱をもたらすことはないかという懸念もあります。また、事業者自身もそうですが、受け手の自治体や地元側の負担感もあるのではないかと考えます。この点については、次回のヒアリングでお聞きできると思いますが、このような懸念を持っている次第です。
それから、報告書については、環境省の方が公表しているものを探しにいくとおっしゃっており、今の制度ではそうならざるを得ないかもしれませんが、それはシステムとしてあまりよろしくないと考えます。また、関島委員からの指摘があったように、クオリティーも様々な項目の中で、あるものとないものがあるといった点を考えると、今、洋上で検討をしていることと同様に、一定のガイドラインが必要ではないかと思います。
また、質問になりますが、公表期間についてと、公表のやり方について何かしっかり規定があり、例えば一般の人もしっかり見られるような状況になっているのでしょうか。
もう一点、累積的評価については私も全くそのとおりだと思います。「風力銀座」と言われるようなところに行くと、様々な会社がばらばらであるものの、群として見れば非常に陸上風力が固まっているところがあります。そういうものは累積の評価として、広く俯瞰を取った評価が必要だと思います。そういうことに規定があれば、例えば1事業者が時期をずらしてアセス逃れをするというようなことに対する一定の抑制がかかるのではないかと考えます。
最後に、25ページのリプレースの件ですが、ガイドラインの議論の際に既に整理がついているのであれば申し訳ございません。リプレースについて、飛翔性動物は既設の発電所で調査を行っていれば不要という趣旨に読めました。全体出力が上がらなくとも、今、リプレースをすると、当然リパワリングで1基当たりの規模は上がり、特に今後、小さいものを大きいものに変えていくことが一般的になると思います。そうするハブ高やブレード径等も大きくなっていくため、特に鳥類、コウモリ類の影響が相当程度あるのではないかと考えます。また、タワーやブレードを運搬するために、これは運転中の交換なども入ると思いますが、小さい風車を大きくすると道路の拡幅や資材を置いていくスペースも非常に変わっていきます。そういう場合に、「植物に影響がない」と言い切ってしまってよいのかと考えるところです。私としても、投資家として不要なものを促進する立場ではないものの、必要なものは適切にカバーをしていくことは必要だと思っており、このあたりの見解を伺えたらと思います。
○大塚委員長 ありがとうございます。それでは、環境省からの回答をお願いいたします。
○川越環境影響評価課長 まず山口委員からいただいたアセス手続の事業者の負担軽減として、特に風力のリプレースにおいて手続の簡素化をといった点ですが、この点は是非今回の小委員会でも御議論をいただければと考えています。また、地域への説明は非常に重要であり、環境影響評価が適切に運用されることが大切だということは我々も同感ですので、引き続き頑張っていきたいと思います。そして、アセス図書の蓄積、公開に関しても御指摘をいただきました。我々としても、今後、蓄積できるような方策を考えていければと思います。また、見直し等をするのであれば、自治体の意見も反映していただきたいという点も、是非我々としてもそのような意見交換等を行いながら進めていきたいと考えています。
次に、勢一委員からは、まず見直しの期間が10年ではなく5年が一般的ではないかといった話をいただきました。環境アセスメントの一般的な手続において、5年程度かかっているものが割と多いため、改正をしてもその成果が出るまでに5年では見られないというものも結構あるといったこともあり、10年とされている気もいたします。その辺も含め、どのような形で見直しをしていくのがよいかといった議論についても行っていければと思います。また、「規模が大きく」という点と、立地環境によって小さいものも問題ではないかという部分も、まさに法の条文と関わってくるところです。そういった規模と著しい環境影響の程度というものをシンクロさせて考えるのか、それとも、分けていくのかという点は非常に大きな見直しになると思いますので、是非御意見を頂戴できればと考えます。それから、配慮書手続において位置の検討が不十分な場合もあるといったところで、しっかり見直していくべきではないかという御意見をいただきました。こちらについては、環境省が出しているガイドの中でも「みなし複数案」と書いているため、そのガイドから見直す必要があるのかもしれませんが、この点がうまくいっている、うまくいっていないという部分で精査をしていき、どのような対策が必要かを考えていければと思います。
また、配慮書で意見聴取をしているものの、その結果がどの程度役立っているのかについての検証、検討が必要ではないかとの御意見ですが、このあたりも整理を行いたいと思います。感覚的な話としては、例えば地元より眺望点からの景観が阻害される、また、コウモリについては結構熱心に御意見をいただいています。結局、事業位置との関係で検討できる内容と検討できない内容があるため、反映はケースバイケースと言えます。そのような意見があった場合、その見解については方法書の段階で整理することとされているものの、実際に事業の実施段階に反映されたかというと、そうではない部分も確かにあるとは思います。
そして、SEAに向けてステップアップをする議論をしてほしいといった点ですが、私も20年ほど前に環境アセスメントを担当しており、その当時もやっていたと承知していますので、この点についても是非議論をしていただきたいと思います。また、太陽光発電についても規制条例が増えており、環境アセスメントが機能していない証左ではないかという点ですが、こちらも多分、規模の議論と関わってくるところだと思いますので、御議論をいただければと思います。他制度とのリンクについても、先ほど話が出ていた促進区域をはじめ、自然共生サイトについても、担当部局と相談をしていきたいと思います。それから、アセス図書については法的根拠が必要ということですが、我々としても今、任意でお願いしている立場であるため、少しその辺の根っこができるようなことを考えていければと思っています。
次に、崎田委員から再エネと環境配慮の両立を進めていく中で、前回進めた改正が地域の満足感を高めることになっているのかという御意見をいただきました。この点は、意見を精査しながら検討を進めていきたいと思います。また、自然災害、激甚災害への対応をどう見るのかという点ですが、実は環境アセスメントについてはリスク評価までは含めておらず、あくまで土地の形状変更、工作物の新改増築、さらには事業の運用に伴う影響という部分だけを見ているといった条文上の立て付けになっています。そうしたリスクの部分については今除かれているため、この点についてどう考えていくべきかといった観点も御議論をいただく論点の一つになると思います。そして、人材育成についても、日本環境アセスメント協会では「環境アセスメント士」といった制度を整備されながら進めていただいていますが、人材育成の状況等については同団体にも話を伺い、様々な課題を抽出していければと思った次第です。
次に、森田委員から、1点目として面的にも影響を見ていく必要があるのではないかという御意見をいただきました。生物多様性国家戦略等でも国全体の計画、戦略があっても、地域でのゾーニング、個別の計画にはなっていないなど、他局にて行っている内容にも関わってくる、非常に幅広な議論が必要かと思います。この辺も論点として今後御議論をいただければと思います。欧州などでは統合的に見ている部分があるのではないかという点については、少し御紹介のあったSEA、MSPというような形で全体を見ながらやられているのは事実かと思います。まさにSEA等の議論と一体的な話になってくると思いますが、是非海外の知見なども我々として勉強させていただき、何か進められるものがあるかを議論させていただければと思います。
次に、原田委員からは配慮書についてクオリティーの話をいただきました。配慮書が目的化しているのではないか、そして複数の地域、もしくは同一地域で複数の事業者が手続きを実施しているという場合において、地元の負担感が増しているのではないかという点ですが、洋上風力に関してはその辺の整理をすることで法改正を考えているところですが、陸上風力においても、そのようなことがあればどのように対応していくかは論点になるものと思います。また、アセス図書の公表期間についての御質問ですが、今のところ、我々としていつまで公開しなければならないということは決めていません。事業者がそれぞれ決めているという状況かと思います。公表についてはWebサイト等で行っているため、一般の方も見られる形になっているものの、公表期間が定まっていないことから、実際には見ることができないものもあります。
また、累積的影響については複数の委員から指摘をいただいているため、是非論点として御議論いただければと思います。あとリプレースの関係ですが、近年、機種・機体が大型化をしており、ブレード等の高さも増しているという点で、必ずしも鳥類の影響等が必要ではないと言い切れないという点はそのとおりだと思います。道路自体も拡幅せずに既存のものを使っている場合もあれば、拡幅しないと入れない場合といった両方の事例があるものと承知しています。当然、土地改変がある場合において、植物への影響があると判断される場合には、環境アセスメントを実施していただき、必要な回避・低減もしくは代償措置をしていただくことが基本的な考え方であると我々も理解しているところです。以上になります。
○大塚委員長 ありがとうございました。環境省側から、ほかにございますか。
それでは、質疑に戻ります。阿部委員、お願いします。
○阿部委員 私、経済産業省のほうで発電所のアセスメント審査のほとんどの案件に関わっているため、その視点から少しコメントいたします。まず、36ページの御議論いただきたい事項に沿いますが、配慮書手続について機能をしているか、機能をしていないかという観点は非常に重要です。風力発電事業に関しては、まだ事業がほとんど決まってないという非常に幅広の段階で手を挙げられます。実際には、方法書手続においても計画がしっかりと定まっていないようなものがあり、それが徐々に準備書、評価書に進むにつれて確度が高くなっていきます。その中にアセスの審査があることで、環境保全に対して様々配慮をしていただく点で機能しているものと、ふだん審査をしながら考えているところです。
特に配慮書手続に関しては、まだ計画がほとんど定まっていないというかなり早い段階で地域の方の様々な意見、あるいは地域の関連団体から様々な意見をいただけるということで、我々は方法書の審査から関わるのですが、その意見があることにより、「こういうところはかなり厳しいのではないか」といった意見も出しやすくなります。あるいは、事業者自体がそうした場所を避けていただくことにおいて配慮書があることで非常に機能していると考えます。一方、配慮書手続ができたことにより、第2種事業は配慮書手続を行わないことが多いですが、そうした中でも、慣れている事業者はそうした観点で自分たちはこういう形でゾーニング的なものをやっているとアセス図書の中で示されています。その一方、慣れていない事業者は、第2種事業がないことにより、地域のコミュニケーションがない中で、「我々はここがいい」と出してくることがあります。そうしたものは、自然度の高いところや保安林が入っており、知事意見として、「そういうところは回避してください」と記載あるものに対し、どのように事業を進めるのか。実際には事業が成立しないのではないかといった案件まで出てきている状況です。そういう意味でも、事業者側と地域の方、また審査をする方にとっても配慮書というものは非常に機能しておりますし、特に風力発電事業については機能していると考えます。
他方、例えば地熱発電等に関しては、坑井調査の段階で地元に入り、地元とのコミュニケーションを取りながら調査も行うため、配慮書段階で準備書相当のものが出てくることもあります。そうすると、同じものを2回出してくるようなケースになります。そういう意味では、例えばリプレースに関しても場所が限られていると、配慮書段階から検討をしていくという意義はあまり強くない、方法書以降からでも問題ないのではないかといった点を審査において考えています。
そして、先ほど第2種事業の話をしましたが、第2種事業に関しては多くの案件が風力でも太陽光でも出されています。例えば「こういう点が問題でアセスに上げてきたのですか」と伺うと、事業者自体が事業リスクを取って第2種事業として審査をやっているという案件が多く、実際にはスクリーニングの中でこういう環境への影響があった場合にアセスをやってくれというところがあまり考えられていないと、言うか、そういうところを勘案して第2種事業に上げてきているという事業者はあまりいない印象です。現行でも、スクリーニング制度の中では配慮書で見ているような内容として、例えば重要な自然環境のまとまりの場とほぼ同様のものが入っています。このスクリーニング制度を少し機能させていくことにより、あらかじめ事業者に「この事業は厳しそうだ」という予見性を与えることもできるのではないかと思います。このあたりのスクリーニング制度の運用の拡充は少し考えていただきたいところです。
それから、報告書手続に関して、これは事後調査に関してだと思いますが、風力発電事業の案件については、ほとんどの案件でバードストライク、バットストライクについては不確実性があるということで、現段階では必ず事後調査をやっていただくことになっています。一方、我々が実際にどうだったのかを見て検証を行う機会はありません。アセス図書の公開で、ある程度報告書を公開すると思いますが、一つ一つ公開をされたとしても、事業者が参照する際にも審査側が参照する際にも、全部に目を通すことや、類似の案件を探すのは容易ではありませんので、事後調査の結果については、国のほうで一元的に集約していただき、例えば立地特性に応じて、こういうところが問題だというものが分かるような形で整理をしていただくと、次の審査もしくは事業者がそれを参照していただく際に役に立つと思います。
それから、太陽光事業に関しては、法改正以降に追加になったものになります。2013年頃の法改正前の事業を見ると、かなり環境に配慮をされていないような案件がメガソーラーでも多かったと思います。最初に法が入ってきて、経過措置の案件は幾つかあったものの、現状ではゴルフ場の跡地に建てるような事業が多くなってきて、事業者側も環境に配慮されるといった形で運用を進めてきています。一方、アセス案件、規模要件以下のものについては、例えば地域住民の方から災害の懸念が出ているものに関しては、太陽光発電の環境配慮に関する検討などを様々やっていただいており、恐らく林地開発許可制度や保安林等の運用の中で対応をしていただいている部分があると思います。しかしながら、これは森林が対象のため、先ほど意見が出ていたような特に低湿地においては、私の見ているところでは太陽光パネルが建っており、そこに何も規制がかけられていない点では、生物多様性保全の観点から非常に問題があると思う一方、私有地のところもあって法規制的に考えていくのは難しいところです。このあたりは実態の把握とともに、将来的にどういうことを考えていったらよいのかを環境省のほうで是非考えていただきたいです。
最後に、累積的影響です。審査の中でも、知事意見等でも累積的影響をやってほしいと求められており、これに関しては事業者が様々苦労をしながらやられているところですが、国のほうで全くガイドラインが出されていないところがあると思います。諸外国の事例を参照し、こういうケースはこうしたものが適用できるといったガイドラインを是非国のほうで作成及び公表していただきたいと思います。その点もよろしくお願いいたします。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、荒井委員、お願いします。
○荒井委員 私は、景観を専門とするため、その観点から3点申し上げます。まず意見になりますが、関島委員、吉田委員をはじめ、既に皆様から出ているように、生物多様性に関して、24ページの風力発電に係る環境影響評価手続において、立地に応じた地域の環境特性を踏まえるという点は非常に景観で重要だと思います。ここの部分で議論を詰めていくものは、漏れてしまっている部分だと思います。3.75万キロワット未満のところをどのように拾うか。この点の重要性は、生物多様性の部分は非常に大切であるものの、例えば生物多様性の中でも景観の場合は、生態系サービスの中で文化的サービスというものがあり、それをこれから観光立国の面からもどのように使っていくかという点で、非常に目立つ部分だけではなく、地方全体で観光立国として立ち上げていこうという中で進んでいる部分もあります。先ほどの眺望点に関して事業の特性に応じてカバーできないところがあるといった話ですが、再エネを進めていかなければならないのは事実ですから、そこに対してどこに景観の価値を付けるかといった点で、生物の生態系サービスの部分や観光的な部分でどこを拾うのかという整理も含め、漏れている部分に対してどのようにアセスを行っていくのかが非常に重要な観点だと考えます。
次に、17ページ、18ページの報告書、モニタリング、環境監視の在り方ですが、この点は別の検討会で議論を行われているとのことで、その内容を待つところです。景観で言えば、環境影響の有無を含め、慣れも生じてしまいます。普通に伺うと、「皆様からあまり苦情が出ないです」という形で終わってしまっているのですが、ある意味、慣れてしまって別にいいやと思っているのか。または、資源とも捉えることができてプラスの面で働いているのか。それから累積に及びますが、一つを見ていて最初は良いと思ったものが、累積されていく中で、そこをどのように捉えていくのかは、本当は環境監視を行っていくと次のリプレースの際に活用できるような知見になるのではないかと思います。また、25ページですが、徐々に知見がたまってきて、御相談を個人的にいただく中でも、この後どうするのかといった際に、累積していった中でどのように思われているのかというデータがあると、もう少し的確なアドバイスができますし、アセスに対して効率的に援用できる部分があると感じます。質問としては、事例の知見整理がどれぐらい進んでいるのか。リプレースの場合、それを使って進んでいったほうがよいと思うところで、その整理がもしあれば教えていただきたいです。
最後に、36ページに関して、皆様からも指摘があったように、再エネの導入の3ポツ目の「適正な環境配慮と地域との共生を図りながら」において、環境影響評価は特にゾーニングの場合の合意形成に非常に役立つと思いますし、景観の場合はゾーニングでしっかり押さえておくことにより、事業を進める上で、アセスの上でも非常に効果的だと思います。先ほど勢一委員も触れていた点ですが、ゾーニング自体はアセスに直接的なことではないかもしれませんが、ゾーニングが今どれぐらい進んでいるのか。また、アセスへの好影響がある部分もあったのではないかと考えます。今回の資料の中で熊本県の事例を挙げられていますが、ゾーニングがアセスに対してどのような影響を与えるのかといった知見があれば教えてください。
○大塚委員長 ありがとうございます。それでは、錦澤委員、お願いします。
○錦澤委員 私も、36ページの本日御議論いただきたい事項に沿って意見を申し上げます。1つは配慮書ですが、配慮書が環境配慮上において一定の効果を発揮している点は賛同します。一方、これまで意見があったように、複数案の検討についてはもう少し厳格化をしたほうがよいと考えます。特にみなし複数案ですが、これが本来の配慮書の意義を不透明にしていると思います。みなし複数案の問題はどういうところにあるのか。あるいは、みなし複数案でも十分に環境配慮上、適切な配慮をできるといった何らかのエビデンスがあれば、それを明らかにする必要があると思います。少なくとも、広大な範囲を設定するようなやり方では、私が認識する限り、審査の段階で非常に大きな負担になるといったデメリットがあります。特に再エネに関しては立地が非常に重要になることから、位置の複数案を基本にする、それができない場合、地熱の場合は非常に資源の偏在性があるため、位置の複数案を柔軟にできないものの、そうした位置の複数案ができないといった理由を正当に説明できることを求める必要があると考えます。
次に、配慮書は計画の柔軟性の高い段階という特性があるため、基本は環境アセスメントとして環境面を考慮することですが、先ほど意見があったように、欧州のアセス指令でも前回の改正において一つの重要な点は「Environmental Policy Integration」であり、生物多様性や温暖化問題、災害の問題といった新しい環境課題をいかにアセスの中に取り入れていくかが大きな目玉になっていました。アセスの中にそういったものを全て入れる面では、良い面と悪い面の両方があるため現実的には難しいものの、他の法制度との連携をうまく図っていただきたいです。具体的には温対法の促進区域やゾーニングのような制度があり、それらで行われる促進区域は、私はSEAであると思っています。こういったものときちんとアセスを連動させていく仕組み、例えば温対法の促進区域では配慮書をスキップできるため、複数案の厳格化を行うようにすると、温対法の促進区域をもっと使っていこうというインセンティブにもなると思います。
そして、先ほど来から議論に出ている累積的影響評価をきちんとやっていきましょうという点は、私も同感です。累積的影響評価については、諸外国のアセス図書を見ると1章の中で扱って検討してもらうといった形で行われているため、今の日本のアセス法の中でもより明確化し、何らかの形で求めていく。特に再エネに関しては、そういった観点が必要だと思います。また、温対法の促進区域を使っていくのであれば、市町村の事業認定のプロセスが入ってきますので、累積的影響のチェックがしやすくなると思うのです。少しそこを他の制度との整合を含め、メリハリをつけていくことが一つと考えます。
そして、再エネのアセスに関しては、メリハリを付けるという点で、陸上風力で数年前に議論をしてきた簡易アセスとスクリーニングの仕組みを使っていくというのは、メリハリのあるアセスという意味で重要な仕組みだと思います。こちらについては、引き続き制度化をしていく方向がよいと思います。また、今後洋上風力が本格的に普及、拡大していく中で、特に不確実性が非常に高いアセスが求められてきます。事後調査の扱いが非常に重要になるという点で、第1条にアセスはあらかじめやることがうたわれており、これは環境汚染の未然防止において重要ですが、事後についても非常に大事ですから、その点についても何らかの形でしっかりと対応することが分かるような条文を求めます。
最後に、その他として、日本のアセスの場合、法制度とともに条例のアセスがありまして、そことの関係を考えなくてはいけませんが、先ほどのスクリーニングを拡大していくという話で、今のスクリーニングの仕組みであれば、スクリーニングでアセスの必要、不必要にかかわらず、不必要と判断をされても条例アセスの対象になるといった仕組みになっているため、そこはきちんとリンクをするような形が望ましいです。要するに、国のほうのスクリーニングの中で、自治体のアセスの意向をうまく取り入れるような形にすれば、そこで一括して不必要となった場合は、条例アセスも対象外になるといった仕組みにできると思います。そこはうまく整合が取られるような形で効率化を図れる仕組みにすべきと考えます。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、西本委員、お願いします。
○西本委員 私は、国際法が専門であるため、その観点からコメントをいたします。まず最も気になる点が国際法上、特に越境的な文脈において、実質的な環境影響が生じるおそれがある際には環境影響評価を実施するという義務があるため、この義務を履行できるような体制が完全に担保されているのかどうかです。この義務の担保は、特に環境影響評価法で行う必要はなく、個別法でも構いませんし、あるいは何らかの制度が入っていれば構いません。他方、環境影響評価では対象事業が列挙されている方式になっているため、そこに入っていないものとして何か新規に入れる必要がある事業はないのかどうかといった視点も必要と感じた次第です。
その上で、特に国際条約との関係で問題になりそうな点が2つあると思います。1つは、既に何名かの委員の先生方から提示いただいた点であり、生物多様性条約において、生物多様性の観点から環境影響評価をする制度の導入が規定されています。この規定自体は、比較的一般的な義務として規定されていますが、その後、生物多様性条約の枠組みの中での議論の進展もあるため、そうしたものも踏まえて、条約の誠実な履行となっているかという観点からも、環境影響評価の法制度の下、生物多様性の観点を十分に盛り込めているかということは課題としてあると考えます。もう一つ、具体的な点としてはアセス図書の公開についてですが、洋上風力との関係でも既に意見を申し上げたところですが、洋上での活動については国連海洋法条約という条約が適用され、この条約の下、環境影響評価を実施する義務と、その実施した結果について公表する義務があります。そこでいう公表は、一時的に縦覧に供しているだけでは足りないのかといった議論はあり得ると思うのですが、国際機関への通報又はパブリッシュをすることを求めているため、どちらかと言えば恒常的な公開を求めているといった読み方が素直だと思います。そうした観点からも、継続公開の制度があることが望ましいと言えるのではないでしょうか。
最後に、少し幅広の観点で、国際的な条約等でのトレンドとの関係になります。最近は、環境影響評価に関する規定を持っている条約が多くあります。その中で、特にSEAと累積的影響の評価の2点は非常に明確にトレンドとして見られます。これは、各国の国内法制でも進展されてきていることの反映だと考えるため、そうした点も今回検討すべき課題ではないかと考える次第です。なお、今の点と関連し、今後日本が批准する可能性のある条約の中にも、SEAや累積的影響評価の入っている条約があります。例えばBBNJ協定にはいずれも入っており、非常に先進的な環境影響評価の制度を採用しています。その批准と国内法上の担保の仕方は今後の議論かと思いますし、それは完全に別の文脈であり個別法で実施することになると思うのですが、そういったものが個別法で担保されていくときに、日本の環境影響評価法制全体を考えた際、条約等を通じて入ってくる非常に新しい先進的な制度は個別法で入っていて、他方で環境影響評価法のほうが割と旧態依然ということになると、日本の国内法制度の中でのちぐはぐさといった話も出てきそうな気がします。そうした観点からも、是非検討するとよいのではないかと思います。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、白山委員、お願いします。
○白山委員 幾つか指摘したい点があったものの、既に多くの委員と重複する話もあるため、それらと重ならない点を述べたいと思います。環境省におかれましては、非常に丁寧な説明をありがとうございました。今回のアセスメント制度の議論の中で完全に抜け落ちていると思うものは、再エネの導入ばかりではなく、今後、地球環境として、特にカーボンニュートラルを考えたときのCCS、つまり、大規模二酸化炭素排出源から二酸化炭素を分離回収し、何らかの方法でどこかに貯蔵するという考え方ですが、この事業が法律を改正されて積極的に実施される方向性にある中で環境影響評価をやる必要があるのか、ないのか。やるとすれば、どういうポイントを環境影響評価するのかということを議論していただく必要があるのではないかと考えます。本件については、既に前回の見直し時に宿題になっていたと聞き及んでいますが、この点についてどうするのか。少なくとも一度検討する必要はあるのではないでしょうか。ちなみに、現在、京都府の中では舞鶴の火力発電所にCCSに関する実証のための小規模な施設が設置されています。これに関して、京都府のほうでは環境影響評価をやったと伺っており、ある方向性を示すということは必要だと思います。
もう一点は、洋上風力の答申の中に非常に明示的に「順応的な取組」というものが記述されています。順応的取組の文脈は、不確実性が高いことから順応的な取組をするという形になっていますが、昨今、地球環境は非常に大きく変わりつつあります。特に海洋では水温の上昇が非常に顕著になってきています。水温の上昇による環境の変化は、恐らく発電関係で温排水の海洋の環境影響評価を行ってきていると思いますが、こちらとの関係において、果たして今の環境影響評価がこの変化した地球環境の中で有効かどうかというのを考える必要があると思いました。したがいまして、順応的な取組は今回も明示的に議論を行っていただけるとありがたいです。それから、BBNJに関係する点やMarine Spatial Planning 等の重要なキーワードもありますが、既に多くの委員が述べていますので私のほうからは発言を控えます。ありがとうございました。
○大塚委員長 簡潔にまとめていただきまして、ありがとうございました。それでは、平石委員、お願いします。
○平石委員 私からは、36ページの事務局から提示された議論テーマについて短めに意見を申し上げます。まず1つ目、前回法改正事項が効果的に機能しているかですが、御説明いただいたとおり、配慮書手続のフォローアップ状況等を鑑みますと、適正な環境配慮確保の観点という意味では、一定程度の効果があると考えます。
次に、再エネ導入に伴う環境影響評価制度の果たすべき役割については、本日は主に風力発電に係る環境影響評価手続等を説明いただきましたが、これまでのアセス実績や事業特性を踏まえ、効果的、効率的に見直していくことが重要だと考えます。そういった意味では、少し幅広にという意味合いも加わりますが、3つ目のその他現行制度の課題において、本日は特に風力などの再エネを中心に意見交換が行われたものの、アセス制度全体について、いま一度効果的、効率的な制度となるよう議論いただきたいと思います。弊会としても、次回の関係団体様へのヒアリング等も伺いながら、第3回の具体的な論点整理の際には整理を行い、御意見を申し上げたく存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○大塚委員長 ありがとうございました。それでは、鷲谷委員、お願いします。
○鷲谷委員 ここでの議論では手続が主な議題であるため、若干本筋から外れてしまうものの、自然環境の保全科学に関わる研究者として気になる点を少し述べたく思います。まず、アセスの科学的な質向上について、今はやりの言葉では「エビデンスベースドにするにはどうするか」となりますが、理想的には文章の中の科学的事項に関わるところで査読に当たるプロセスがあるとよいと思うものの、それはまだ長らく先の難しい課題かもしれません。今そこに近づくためにできることは、最近、欧米では論文等が多く出版されており、それらに基づいたガイドライン、チェックリストなども提供されるようになっています。そういう科学的にまとめられたものを参考にし、日本の国土に合うものを作成しながらアセスの際に参照できるようにすることがよいと思います。
次に、気候変動緩和策と生物多様性保全に関する課題ですが、まず再エネ発電所のアセスでは、率先して二酸化炭素の排出に関してのライフサイクルアセスメントをしっかりと文書化する必要があるのではないかと思います。つまり、部品の原料の調達、部品装置の製造、発電所の建設から運用、さらに役目を終えた装置や発電所、撤収、廃棄するまでの全ライフサイクルでのアセスメントが必要だと思います。温室効果ガスの放出については、とてもたやすい様々な手法もあるため、是非それをしていただくようにするとよいのではないでしょうか。
次に、生物多様性に関しては、サイトごとに何に注目すべきかが大きく異なるものの、生物多様性の価値のうち、そこで何に注目するべきかを明確にしたアセスが必要なのではないかと思います。例えば、日本では注目度が低いですが、生態系サービスの点から欧米ではコウモリが非常に重視されています。また、そうすると、そういうサービスを提供し得る地域個体群を評価することが必要です。今のアセスメントではバットストライクがテーマとして取り上げられるものの、それだけではなく、音量をはじめ、コウモリについてはディテクターがあるため調査を行いやすいと思いますので、どの価値に最も注目するかという観点を明瞭にした上で、科学的なアセスメントが行われるとよいと思います。非常に時間が経過しているため、以上といたします。ありがとうございました。
○大塚委員長 ありがとうございました。私からも一言だけ申し上げます。多くの有益な意見をいただき、ありがたく思います。全体及び他制度の関係では、促進区域との連携や生物多様性との統合は非常に重要なテーマだったと思います。法制度との関係では、規模要件だけではなく、立地との関係をどうするか。事後調査との関係で、供用時においても報告書に関して明確に対応することを考えるべきではないか。また、以前からの宿題である風力に関して規模要件の引上げにおいて、その間の簡易アセスであるとか、地熱に関しては必ずしも複数案は要らないといった話がありました。このあたりは、まさに立法と関連するところと考えます。そして、複数案に関して、みなし複数案は本来の趣旨ではないという議論がありました。これも運用のほうで考えなくてはならない点です。配慮書と方法書とのつながりについても、不十分であれば検討する必要があると思います。また、白山委員のおっしゃられた、そもそも気候変動との関係で海水温が変わってきているといった様々な影響に関して、これは技術的な問題だと思いますが、ある種の気候変動の適応のようなことをアセスの中でもやっていかなくてはいけないといった問題があります。この点はアメリカ等では結構議論を行っているようですが、様々な点について御指摘をいただきました。より根本的には戦略アセス等についても考えるべきですが、やや細かい点について申し上げさせていただきました。
まとめをしたため、更に時間がなくなってしまい申し訳ありません。環境省から、回答のほうをよろしくお願いします。
○川越環境影響評価課長 既に委員長より御回答をいただいたところもありますが、まず阿部委員から配慮書についても機能している部分があるといった御意見をいただきました。一方、地熱等では立地も決まっているため、方法書以降でも問題ないとのことでした。リプレースについても、事業種全体を見てどう考えるかというのは、是非論点として検討できればと思います。また、全体の話としてスクリーニングが機能していないといった点も御指摘をいただきました。一方、事業の予見性を与える点で、うまく使っていけると非常に良い制度になるのではないかといった点は是非検討を進めていきたいと思います。そして、バードストライク、バットストライクの関係で、一つ一つ公開されても大変なため、一元的に集約して見られるようにしていくべきだという点、太陽光発電についても小さいものは生物多様性保全上問題になっていることから方策を検討していくべきだという点、それから累積的影響についてはガイドラインがないので国で作成をといった点については、いずれも重要な論点として整理を行いたいと思います。
次に、荒井委員からは生物多様性の観点、景観の観点として御意見をいただきました。景観について、3.75万キロワット以下で漏れている部分をどのようにしていくのかという点については非常に重要な課題であると考えています。加えて、知見の整理などが進んでいるのかという点についてですが、実際に事後調査等では景観に触れられているケースがほぼなく、あまり整理されていません。また、景観の技術ガイドについても眺望景観の技術ガイドは出ているものの、複数のものが出てきたときの景観をどう評価するかという点は、まだガイドでは触れていなかったと記憶しています。ゾーニングの関係として、少し知っている限りですが、熊本県が指針を示し、それを基に市町村が促進区域を設定するということで、熊本県球磨村では実際にゾーニングを実施しているところです。また詳しく調べたいと思いますが、既存の風車が予定されている周辺でゾーニングを行うといった形のゾーニングになっていると思いますが、多くの場合、太陽光発電に関する促進区域となっており、先ほど少し触れたように、公共施設、公共用地等で促進区域を設定している場合が多く、具体的な立地に基づいたゾーニングは非常に限られていると思います。
次に、錦澤委員からは配慮書の関係において、一定の効果はあるものの、みなし複数案に関しては厳格化が必要であり、特に位置の厳格化が求められるといった御意見をいただきました。この点も是非議論を進めていければと考える次第です。それから、欧州のアセス指令の話等がありましたが、統合的な評価という点で、SEAや累積的影響とも関係してくるものと思います。また、他制度との連携において、促進区域をはじめ、簡易アセス、スクリーニングについての話、事後調査や条例等の関係等々について御意見をいただきましたが、特に条例については法と条例のそれぞれが両輪のような形で我が国では機能してきたところも含めて、どのように整理していくかは是非御議論をいただければと思います。
次に、西本委員から国際法上の観点より、環境影響評価法又は他制度で担保をしていればということでしたが、対象事業種が本当にこれまでのものでよいのかといった御意見をいただきました。基本的には国が実施するもの、もしくは国が免許権者となるようなもの等を対象事業種としているものの、この点については御意見を頂戴できればと考えます。あと、生物多様性条約の関係や、アセス図書の公開についても国連海洋法条約において、パブリッシュすることとされていることを踏まえれば、公開が重要であるとの御意見でしたが、それらの状況も踏まえ、どのような在り方がよいかを整理していきたいと思います。SEA、累積的影響というものは国際的トレンドであり、日本は遅れているという御指摘は多くの委員からもございましたので、そうした点への対応についても検討していきたいと思いますし、BBNJ等々についても同様に考えています。
次に、白山委員からは特にCCSの話を頂戴しました。CCS事業法が成立し、その中でリスク評価、環境影響評価なども行っていくとされているところで、アセス法でやるのか否か、やるのでれば、どのようなポイントがあるのかという御意見でした。環境影響評価法については、土地の形状変更、工作物の新改増築による影響、事業の運用に伴う影響それぞれから見ていくといった立て付けになりますが、その場合、CCS事業というものが、そういった土地の形状変更、工作物の新築から影響が大きいものとなるのかどうかといった判断や、恐らくCO2の分離回収を行う過程での環境影響等を環境アセスメントの対象とすべきかどうかの精査を行っていくことが必要かと思います。この点については、京都の事例も確認しながら進めていく必要があると感じた次第です。順応的取組についても重要だという御指摘に対しては、どのように環境影響評価の中に取り込んでいくのかが論点だと理解いたしました。
次に、平石委員からは配慮書について一定程度の効果があったという点と、今回風力発電の話が少し多かったものの、アセス制度全般の在り方について議論をしてほしいといった御意見をいただきました。これについては、是非そのように進めていければと思います。
次に、鷲谷委員からは査読に当たるようなチェック機能があるとよいのではないかといった話や、欧州をはじめ、海外等で出ているガイドラインも参考に、そのようなものを参照できるようにすべきではないかということで、科学的知見、技術的な部分での強化という点で御意見をいただきました。そして、ライフサイクルアセスメントについても必要ではないかという御指摘をいただきましたが、この点についても論点として整理をしていきたいと思います。そして、生物多様性の評価に関して、その価値に基づいて評価すべきではないか、生態系サービスも含めた環境アセスメントにすべきではないかという点は、現状、生態系の環境アセスメントについては、生態系ピラミッドに基づき、上位、典型、特殊といった種を定めて評価するという技術ガイドラインになっていたと思いますが、今後、生態系サービスも含めた形でやっていくのかどうかという点も、是非今回の小委員会で御議論いただければと思います。
最後に、大塚委員長からは非常に全体をまとめた御意見をいただきましたので、それらを含めて整理を行いたいと思います。以上です。
○大塚委員長 ありがとうございました。CCSについては、白山委員にも審議会のメンバになっていただいており、確かCCS事業法の省令においてアセスのほうは対応しているため、そちらと環境影響評価法との関係が少し問題になってくるように思います。
私の不手際で時間が超過してしまい、誠に申し訳ありませんでした。それでは、本日予定していた議事は全て終了となります。進行を事務局にお返しいたします。
○加藤環境影響審査室長 本日は、濃密かつ多角的な御意見を賜りまして誠にありがとうございました。次回の合同会議は来週11月6日、火曜日、午前9時から開催し、風力発電に係る環境影響評価制度及び環境影響評価制度全体の在り方等に対応する関係団体の皆様へのヒアリングを実施する予定です。
本日の議事録については、事務局で案を作成し、委員の皆様に御確認いただいた後、ホームページで公表する予定としていますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。
なお、各回の議事録については、以降の審議会の参考資料としても提示させていただく予定ですが、本日の議事録については、委員の皆様に御確認いただく時間を十分に確保する観点から、次回の合同会議の議事録と併せて次々回以降の会議で提示させていただく予定です。
最後に、閉会に当たりまして、審議官の飯田より一言、挨拶を申し上げます。
○飯田大臣官房審議官 大臣官房審議官の飯田です。途中、中座する時間帯がございまして申し訳ございませんでした。委員の皆様におかれましては、非常に闊達な御意見いただきまして、ありがとうございました。今、説明があったように、次回はヒアリング、次々回以降、論点整理という形で進めてまいりますので、引き続き活発に御議論をいただければと思います。
環境省としても、より適正な環境配慮を確保するための制度の在り方について検討を深めまして、一層、効果的、効率的な環境影響評価の実施につなげていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。本日ありがとうございました。
○加藤環境影響審査室長 以上をもちまして、本日の合同会議を終了いたします。次回以降も、皆様、よろしくお願いいたします。本日は、誠にありがとうございました。