中央環境審議会総会懇談会会議録

日時

平成13年7月13日(金)14:00~16:00

場所

東条インペリアルパレス2階 千鳥の間

出席者

(会長)森嶌 昭夫  
(委員)浅野 直人 石川 正幸 小澤紀美子
小早川光郎 清水  誠 鈴木 継美
竹内  啓 中西  弘 原田 尚彦
藤井 絢子 桝井 成夫 鷲谷いづみ
(臨時委員)青木 保之 浅岡 美恵 天野 明弘
飯田 哲也 飯田 浩史 大塚  直
塩田 澄夫 須藤 隆一 瀬田 重敏
高橋 一生 西岡 秀三 波多野敬雄
福川 伸次 宮本  一 甕   滋
横山 裕道  
(環境省)
太田事務次官 松本官房長
中川総合環境政策局長 炭谷地球環境局長
西尾環境管理局長 小島官房審議官
山田官房審議官 松原官房審議官
南川官房総務課長 小林官房秘書課長
竹本地球環境審議官補佐官 青山総合環境政策局総務課長
寺田地球環境局総務課長 竹内地球環境局地球温暖化対策課長
他 

議事

【南川官房総務課長】
 定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会を開催させていただきます。
 本日は、皆様御多用の折、お集まりいただきましてありがとうございます。
 官房総務課長でございますが、議事に入りますまで進行を務めさせていただきます。
 本日の会でございますが、特に森嶌会長から御指示がございまして、開催に至ったものでございます。案件は、地球温暖化問題についてであります。そのため、本日の総会とし ての御案内は、中央環境審議会委員の方々及び地球環境部会の臨時委員として属されている方々に連絡いたしております。総数定員としては62名でございますが、現在23名の御出席でございますので、総会の懇談会という形で開催させていただきたいと思います。
 なお、時間としましてはマキシマム2時間ということで予定いたしております。
 本日は、外は大変暑うございますし、省エネのためにも、会議の進行のためにも、ぜひ先生方には上着をおとりいただいて御参加いただければと思います。私ども事務方も適宜上着をとらせていただきます。
 まず、本日の会合の開催趣旨につきまして森嶌会長からお話をいただきたいと思います。

【森嶌会長】
 森嶌でございます。本日は、御多忙のところ、また、お暑い中を急遽お集まりいただきましてありがとうございます。
 私、昨日までロシアに行っておりまして、風邪をひいておりまして、声が出なくて耳がよく聞こえない状況でおりますけれども、お聞き苦しい点をお許しいただきたいと思いま す。
 本日は、京都議定書発効に向けた取組について御議論いただきたいと思っております。京都議定書の問題につきましては、中央環境審議会でも新しい環境基本計画を策定するに当たりましても様々な形で議論してまいりました。また、本年の2月には、環境省の発足に伴いまして、新たに組織されました中央環境審議会の中に設けられおります地球環境部会におきまして、2002年までの京都議定書の発効及び締結を目指しまして、京都議定書の目標を達成するための国内的な対策をどうすべきかということについて、2つの小委員会を設けて議論してまいりました。この点につきましては後ほど御説明がございますが、今週の9日に中間取りまとめが終わりまして、発表されたところであります。
 この間、申し上げるまでもないことですが、3月にアメリカが京都議定書から脱退するというようなブッシュ大統領の声明が出まして、その後、EUとアメリカあるいは日本と アメリカ、日本とEUとの関係で様々な形で、アメリカが交渉に復帰するように現在外交折衝が続けられているところであります。
 このほどこの会合を開いていただきましたのは、実は、地球環境問題を議論しているのはこの審議会だけではございませんが、環境問題の主要な問題を審議いたしますのがこの中央環境審議会でございます。私どもの審議会としましては、京都議定書の問題について重大な関心を持ってきているところでありますが、このたび、国内対策についての中間取りまとめができましたので、これを総会にかけて一応御説明して、こういうふうになっているということを御認識いただくとともに、来週からボンにおきましてCOP6の再開会合が開かれることになっておりますので、この際、総会を開催いたしまして、中央環境審議会としての委員の皆様の御意見を伺いたいと考えたわけであります。
 この会合自体は少し前から考えておりましたけれども、今申しました中間取りまとめがまとまるのを待っていたということ、さらに、来週からボンでCOP6の再開会合が開か れる、そういう日程的なことがございまして、本日ということで急遽御案内を申し上げたわけであります。多くの委員に大変御無理を願って御出席いただいたわけでありますけれども、ほぼ半数の方が御出席いただけたということでございますが、総会としてこれを審議するにはもっと多くの方の御参加をいただくのが適切かと思いまして、本日のところは、 来週から開かれるボンの会合に向けて、中央環境審議会総会の懇談会という形で自由な御意見をいただき、できれば、私の方でメモとして用意いたしましたような考え方につい て、もしも御意見がまとまるようでしたら、まとめていただきたいと思っております。
 総会を予定しておりましたけれども、懇談会ということになりましたので、ボンの会合が終わり、さらにある程度の見通しと申しましょうか、京都議定書の進展状況がわかった段階で総会としてお集まりいただきまして、中央環境審議会としての意見を取りまとめ、政府に具申できればと考えております。今日のところは、そういうことでございまして、 公式に集まっていただいておりますけれども、正式な意見の取りまとめということではございませんが、各種の報告をいただいた後、皆様に御意見をいただければと思っております。
 そういうことでございますので、大変お暑いところ恐縮ですが、2時間の間に御議論を賜ればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【南川官房総務課長】
 ありがとうございました。
 続きまして、環境省の太田事務次官より挨拶をいたします。

【太田事務次官】
 太田でございます。本日は、急な御連絡を申し上げたにもかかわりませず、また、お忙しい中、さらに大変暑い中、御参加いただきまして誠にありがとうございました。
 本日の趣旨は、先ほど森嶌会長からお話がありましたとおりでございます。後ほど詳しく御説明を申し上げることになりますが、地球温暖化をめぐる国際的状況につきましては、 先ほどお話がありましたように、本年3月にブッシュ政権が京都議定書を支持しないとする旨の表明がありました。ここ10年で最も時期を迎えていると考えております。来週の月曜日、16日からCOP6bis 、いわゆるCOP6再開会合が開かれますが、それに先駆けまして、川口大臣が昨日アメリカに参りまして、今日、日米のハイレベル協議を行うことになっております。私どもの基本姿勢は、我が国としてはできるだけ幅広い国際社会の参加を得て、京都議定書の2002年の発効を目指して、COP6再開会合の成功に全力を尽くしたいと考えております。
 一方、国内の方に目を向けますと、平成11年度の温室効果ガス排出量は、基準年の1990年に比べて約6.8%上回っているという状況にあります。我が国が京都会議で約束した6%削減目標を確実に達成するための国内制度を構築するということは、当面の最重要課題でございまして、そのために最大限の努力をしてまいりたいと思います。
 繰り返しになりますが、我が国は2002年京都議定書の発効ということに全力を尽くしますとともに、この議定書の締結に必要な国内制度の構築に全力で取り組んでまいりますので、今後ともよろしく御指導のほどお願い申し上げたいと思います。
 なお、本日お配りしました資料の最後に、今週の火曜日、10日に総理官邸で開かれました「21世紀『環の国』づくり会議」という、総理を本部長として、全閣僚及び有識者 10人からなっております会議がございます。この2月にスタートして、回を重ねて、10日にその報告書がまとまりました。キーワードは「環(わ)」でございますが、地球の環、環境と経済の環、物質循環の環、生態系の環、人と人との環ということで、この21世紀どういうことをすべきかということを御議論いただいたものでございます。後ほどお目通しいただければ大変ありがたいと思います。
 本日は、暑い中でございますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。どうもありがとうございました。

【南川官房総務課長】
 それでは、資料の確認をいたします。

【事務局】
 それでは、机の上にお配りしました資料の確認をさせていただきます。
 まず配席図に続きまして議事次第がございます。
 実質資料でございますが、資料1「京都議定書をめぐる最近の動向」。
 資料2-1「中央環境審議会地球環境部会『目標達成シナリオ小委員会』中間取りまとめ」。
 資料2-2「中央環境審議会地球環境部会『国内制度小委員会』中間取りまとめ」。
 資料3「1999年度(平成11年度)の温室効果ガス排出量について」。
 資料4-1「地球温暖化対策推進大綱の進捗状況及び今後の取組の重点(案)の概要」。
 資料4-2「地球温暖化対策推進大綱の進捗状況及び今後の取組の重点」。
 資料5「地球温暖化対策の強力な推進について」。
 資料6「論点メモ」。
 参考資料1として「21世紀『環の国』づくり会議」報告。
 以上でございます。

【南川官房総務課長】
 資料に不足がございましたら事務局までお申し出ください。
 それでは、以降の議事進行について、森嶌会長、よろしくお願いいたします。

【森嶌会長】
 それでは、よろしくお願いします。
 まず、「京都議定書をめぐる最近の国際動向」、資料1でございますが、事務局から御報告をお願いいたします。

【小島審議官】
 審議官の小島でございます。座って御説明させていただきます。
 資料1「京都議定書をめぐる最近の動向」でございます。
 まず1ページですが、気候変動枠組条約の京都議定書ということで、97年12月に京都会議が行われました。一定期間における法的拘束力のある数値目標を設定いたしました。 数値は、先進国で全体5%減。各国別に決めましたので、日本は-6%、アメリカは-7%、EUは-8%ということでございます。基準年が1990年、フロン等については95年も選択できるということでございます。
 同時に、このときはアメリカのクリントン政権から強い意見がありまして、京都メカニズムをこの京都議定書の中に位置づけたわけであります。しかしながら、その具体的なルールを決めるに至らないということで、その後、COP4、5ということで、COP6で決めるというブエノスアイレス行動計画に基づいて、京都議定書の具体的なルールと、条約で残されていた途上国問題を決めるということになっているわけであります。そういうことで、COP6でこの問題の解決を得るというのは、COP4のブエノスアイレスで決められたマンデートに従っているということであります。そこで、去年の11月にまとまらなかった部分を延会いたしまして、COP6再開会合、依然プロンク議長の下で会合を開くということでございます。
 その間に、2ページでございますが、今年の3月になりまして、アメリカの政権が変わり、ブッシュ新政権が京都議定書を支持しないということで、世界に大きな波紋を呼んで おります。その理由は、アメリカの経済に悪影響を及ぼすということが国内的な主たる議論だと思いますが、当初から議論がありました途上国の問題を1つの理由にしております。
 それでは、アメリカはどのような案を考えているかということでございますが、COP6再開会合までに出してもらいたいということでございましたけれども、先だっての非公式会合では、COP6再開会合にはアメリカは新提案は間に合わない、出さないということでございます。依然として閣僚レベルの検討作業中ということであります。
 3ページにまいりますが、アメリカの参加の重要性と京都議定書の発効要件が書いてございます。京都会議で議定書の発効要件は、55ケ国以上の国が締結、附属書I国の二酸化炭素の1990年排出量が55%以上の排出国ということになっております。現在、EUは、発効させるべく批准するという意思を表明しております。
 EUが24.2%、EUの加盟候補国あるいはヨーロッパの国々を合わせますと6.6%。EUはロシアにも非常に働きかけを行っております。ロシアは排出枠の売り手であります。そういう関心が非常に強い国でありますが、アンブレラの国ではありますけれども、17.4%のシェアを占めている国であります。続いて日本が8.5%というような状況でございます。他のアンブレラの国は合わせて2.6%、カナダは3.3%でございます。ロシアと日本がそういう意味ではキャスティングボートを握っているわけでありますけれども、ロシアがアメリカよりもEUによるということであれば、日本がキャスティングボートを握るということになるわけであります。もともと京都会議でエストラーダ議長がこの55という数字を設定した経緯は、アメリカに拒否権を与えないということを当時おっしゃっておられましたけれども、アメリカ+複数国が批准しなくても批准できるような数字ということであった。当初からそういう問題はあったわけであります。これが55%という数字の京都会議での意味であったと記憶しております。
 我が国より米国への主要な働きかけでありますが、政府・首脳からずっと働きかけております。国会の決議もございますし、日米首脳会談におけるブッシュ大統領との会談もあります。日米ハイレベル協議が、先ほど次官の方からお話がありましたが、本日あります。
 日本の方針は、6ページでございます。我が国としては、京都議定書の2002年までの発効を目指す方針は変わらないというのが第1点であります。
 第2点は、我が国及び関係国が合意可能・実施可能なルールづくりのための国際交渉に全力を尽くす。そして、我が国として締結に必要な国内制度の構築に全力で取り組む。中央環境審議会で御議論いただいているとおりであります。
 3番目が、環境十全性あるいは実効性という言葉でいっておりますが、さはさりながら、最大の排出国であるアメリカがこの議定書に参加しないということは、実効性を著しく損なう。どうしてもアメリカの参加が必要だ、ぜひ入っていただきたいということで、粘り強くアメリカへの働きかけを続けるということでございまして、日米ハイレベル協議を速やかに行う。そういうことを通じて、アメリカを含めた合意の可能性を追求するというのが日本政府の方針でございます。
 国際交渉の経緯でございますが、昨年の11月からいろいろなことがございましたが、来週からCOP6再開会合がドイツのボンで行われます。
 8ページでございますが、来週の月曜から木曜日は非公式ハイレベル会合でございます。先月ハーグで行われました大臣レベルでのハイレベル協議の延長でございます。どういうふうにCOP6再開会合を運営していくかということの非公式な協議を行いまして、19日の午後から開会式をして、日曜日まで閣僚会議を行う。その結果を受けて、次の週が事務レベル協議、最終日が法的文書の採択ということでございます。土日なしの日程になっております。その間の20~22日はG8サミットがイタリアでございます。こういう日程になっているということでございます。
 以上でございます。

【森嶌会長】
 ありがとうございました。
 御質問等がございましたら、また後で伺うことにしまして、次に、先ほど申しましたように、中央環境審議会の地球環境部会に、国内対策について、「目標達成シナリオ小委員会」と「国内制度小委員会」という2つの小委員会を設けまして、中間取りまとめを得たところであります。9日にその中間取りまとめが発表されておりますので、まず地球環境部会の部会長であります浅野委員から御説明をいただきまして、さらに事務局から補足的な説明をしていただきます。

【浅野部会長】
 地球環境部会長をしております浅野でございます。
 地球環境部会は、環境省発足後、2月16日に部会を開催いたしまして、ただいま会長から御紹介がありました「目標達成シナリオ小委員会」と「国内制度小委員会」の2つの小委員会の設置を決定し、その後、小委員会において精力的に検討をいただきました。その間、6月8日に、部会としては、議定書の問題に関して懇談会をもちましたが、7月9日、今週の月曜日に両小委員会からの中間取りまとめの御報告をいただき、これをこの夏、パブリックコメントにかけまして、さらに検討を継続することにしております。
 この2つの小委員会を開きました目的は、温室効果ガス削減のための国内制度をどうするかということでございます。これは既に前中央環境審議会の中間取りまとめが行われ、 今後、国内制度を固めることが重要であるという指摘があったことを受けてでございまして、議論としては、従前の小委員会がなさいました作業を受け継ぐということにしております。ただ、従前の小委員会は、どちらかというとトップダウンというのでしょうか、全体を見渡したシナリオという観点からの議論が多かったのですが、民生部門、運輸部門、産業部門といった各部門ごとにどのような施策を具体的に講じることができるかということを考えて、その上で横断的なシナリオをまとめる考え方が必要だろうと考えまして、今回の検討は、部門別の検討を最初に取り上げております。
 ところで、目標達成シナリオ小委員会でございますが、こちらはいかに国内制度を考えるといっても、技術的あるいは様々な手順についてのシナリオがないと国内制度を論じにくいという事情がございますので、国内制度小委員会の議論の前提を作るという意味でシナリオを考えていただく役割をお願い申し上げたということでございます。
 後ほど事務局から御説明申し上げますが、資料2-1と2-2に中間取りまとめの本体部分がございます。目標達成シナリオ小委員会中間取りまとめの最初のページをお開けいただきますと、固定ケースと計画ケースという2つが出ておりますけれども、固定ケースは、いってみれば、自然体で何の対策を講じない場合は排出量がどうなるかということを計算したものでございまして、計画ケースは、これまでに政府の大綱その他で考えられてきている対策・施策の中で確実性の高いものについて、それが確実に実施されたと考えるとこのぐらいになるであろうという計算をしたものでございます。その上で、さらに目標を達成するためには、追加的にどのぐらいの削減をしなければならないかということと、一方では、追加的な削減をすることができるか、2つが議論になるわけですが、シナリオ小委員会では、どれだけ削減できるであろうかという点を考えていただいたわけです。これにももちろん様々な条件がございますが、どちらかというと、シナリオ小委員会は、技術の角度から積み上げ方式で、一応経済的な要素や制度的な要素は、全く無視したわけではございませんが、それにはあまりこだわらないで、技術的可能性という観点からシナリオを作っていただきました。中心的には、シナリオの積み上げ方式で計算されておりますけれども、他方では既にこれまでに開発されているモデルがございますので、そのモデルを使った計算ではどうなるかという検討も同時に行っていただきました。
 このような作業を前提にした上で、国内制度小委員会では、大綱にもとづく施策についての中間的な評価をいたしまして、その評価とシナオリ小委員会がお出しくださったデータとを突き合わせながら、当初は部門別に、最後はそれを横断的に取り上げていけばどうなるかということを考えながら、国内制度のあり方を検討しているところでございます。
 資料2-1でシナリオ小委員会が掲げておられます技術的な手法としてどんなものがあるのかということを1つ1つ洗っておられるわけですが、もちろん、これがすべてというわけではございませんで、ともかく考えられる、しかし現実的に可能性がかなり高いものといったような観点からメニューが選ばれておりまして、それについてはどの程度の費用がかかるかということも一定の計算の上で計算されているところでございます。結論的にいいますと、国内対策をさらに積み上げていくことによって2%~5%の範囲内の削減が論理的には可能である。論理的に可能であると申しましたのは、では、それが実際に政治的に、経済的に、制度的にできるかということは、それはまた別だということでありまして、その部分を取り扱うのが国内制度小委員会の仕事であると御理解いただきたいと思うわけでございます。
 詳細は、後で資料をお読みいただき、また、事務局から補足的に説明させますが、部門別にこういうことを施策として考えることができ、そのためにこのような手立てがあるのではないか、さらに、横断的な施策としてこのような施策を講じることができるのではないか、といった点について検討をしておりますけれども、これはまだ中間取りまとめでございまして、現在は検討途上にございますので、今後さらに多くの方々の御意見を伺いながら、この内容を精緻なものにしていきたいと考えております。
 それでは、事務局から追加説明をさせます。

【竹内地球温暖化対策課長】
 それでは、事務局の方から補足説明をさせていただきます。
 まず資料2-1「目標達成シナリオ小委員会の中間取りまとめ」でございます。今部会長からお話がございましたように、まず、技術的な観点からどのくらい追加的な削減ができるかということでございまして、8ページでございますが、ここでは、追加的な削減量を入れ込んだ形で2010年にどのぐらいの排出量にすることができるだろうかということを表にしております。見出しの括弧の中で「火力平均排出係数使用」となっておりますが、対策を講じた結果、電力の需要が減った場合、その減った電力の需要の排出係数をどれでみるかということで、火力平均でみるか、全電源平均でみるかという2種類ございますが、ここでは火力平均でみております。この表の下から3行目に合計がございますが、 左側に、2年前にできた地球温暖化対策推進大綱のときにはこの合計のところの削減割合が-0.5ということで、90年の排出量に比して国内の対策で-0.5までやろうということでございました。その後、この審議会の小委員会で約100の追加対策を精査した結果、右側にございますように、国内の対策で-4~-7ぐらい技術的な可能性があることが明らかになりました。内訳を見てみますと、その上の方になりますが、エネルギー起源のCO2については概ね大綱のときと同じぐらいの数字でございますが、すぐ下の非 エネルギー起源CO2あるいはメタン、一酸化二窒素については、大綱のときが-0.5であったのが、-1~-2まで下げることができるだろう。HFC、PFC、SF6については、大綱のときが2010年+2となっておりましたが、技術的可能性としては-3までいけそうだということが明らかになったわけでございます。
 10ページは、先ほど申し上げましたような同じことを全電源排出係数で行った数字でございます。
 そこで、約100近くの個々の技術対策について、12ページ、13ページにございますが、炭素1トン当たり削減するためにどのぐらいのコストがかかるかということも併せて検討いたしまして、それを12ページ、13ページでは、価格の分類ごとに並べております。
 その結果、19ページでございますが、追加的費用別の削減量ということで、図7の上のところに「計画ケース(原発7基新設)」とございますが、これは2010年までに運転開始が予定されている原子力発電所が7基だという前提での数字でございます。もう1つ、13基という前提がございますが、その際にはこの棒グラフ全体がおよそ3%分下の方にいくわけでございますが、ここでは7基分の方で扱っております。これを見ていただければおわかりのように、1トン当たり削減するのにコストが0円未満というものも3.7%分ございますし、5千円未満、1万円未満と。仮に10万円未満までの対策を講じてみますと、-2.4%程度まで下げることができるということがわかりました。
 これまでは積み上げの方法でございましたが、もう1つ、20ページでございますが、数量モデルによる経済性評価ということで、我が国における温暖化対策の観点の代表的な6種類の数量モデルを用いまして、例えば二酸化炭素の排出量を2010年時点で90年比2%削減するというケースを想定しますと、仮にそれを炭素税で行うとした場合に、炭素トン当たり1万3千円から3万5千円とモデルによって違いますが、およそそういう範囲内の炭素税でCO2排出量を90年比-2%まで下げることができるということがわかりました。
 
 さらに、21ページの表15の最初のAIMエンドユースモデルでは、炭素税のケースでトン当たり3万円でございますが、さらにそれを3千円で、かつ、その税収を対策のための補助金としたときにも同じようにCO2排出量は対90年-2%まで下げることができるという結果も出ているわけでございます。
 これらがシナリオ小委員会において中間的に取りまとめられたものでございます。
 続きまして資料2-2でございます。シナリオ小委員会では各部門ごとに行ってきたわけでございますが、その部門ごとのシナリオ小委員会の結果を踏まえて、国内制度小委員会におきましても部門ごとの検討がなされてまいりました。
 目次のところをご覧いただきたいと思います。第1章で「地球温暖化に関する基本的認識」、第2章で「現行施策の評価と課題」ということで、主に2年前に策定された地球温暖化対策推進大綱に基づく施策についての評価をしております。その評価を踏まえた上で、第3章、35ページからでございますが、「今後の地球温暖化対策の在り方について」ということで、まず、その全体像が36ページに示されております。地球温暖化対策の計画的推進ということで、国、地方公共団体が計画を策定する、あるいは事業者が計画的な取組を行うという前提で、個々の措置として、国内の温室効果ガスの排出に関する制度的措置ということで、まず各主体の排出量の自主管理のための制度が必要ではないだろうかということで、1つは、38ページに詳細がございますが、事業活動に伴う温室効果ガス排出量の公表・届出制度ということで、自ら排出量を把握して、その情報を開示するといったような制度が適当ではないだろうか。もちろん、家庭などにおいてもそういうことが必要でありましょうが、その把握を直接的にするのはなかなか難しかろうということで、例えば電力、ガスなどの料金の通知の際に排出量も通知することで、各家庭が排出量を把握できるのではないだろうか。一方で、家庭における対策につきましても、経済的に利益のある対策もあるわけでございますが、それについてはなかなかわかりにくいということで、専門家による温暖化対策診断といったようなものをすることによって、その対策が進む、あるいはその排出の状況を踏まえた工夫ができるということになるのではないかということでございます。
 続きまして、産業、民生、運輸等の部門横断的な排出削減のための制度ということで、40ページでは協定制度、あるいは41ページの実行計画制度が1つ考えられるということで、協定制度では、行政との間で目標、対策等について協定を結ぶ。実行計画制度は、既に法律に基づきまして、行政、都道府県・市町村・政府は自らの事務・事業について実行計画を策定する義務が課せられておりますが、同様なことをすることによって目標を設定する、あるいは対策を推進するという仕組みも1つ考えられる。
 さらに、42ページ以降でございますが、そうした個々の主体の目標を達成するための横断的な仕組みとして、国内の排出量取引制度、温室効果ガス税あるいは課徴金といった ことが横断的な目標達成のための仕組みとして併せて講ずることも考えられる。
 43ページの(3)以降は、分野ごとの制度的手法ということで、44ページから電力の排出原単位改善の手法、45ページでは、交通体系のグリーン化の手法、46ページで は、ライフスタイルの脱温暖化の手法となっております。一方、47ページにございますが、メタンや一酸化二窒素などは規制的手法で対応できる部分が大きいのではないかということでございまして、排出が特定化される、明確化されている、あるいは人工的につくられた化学物質もあるということで、排出規制あるいは回収・破壊規制といったものが適用できるのではないかという点。49ページは、都市や地域基盤整備のための手法ということで、とりわけ都市における排熱を有効に利用するための熱導管あるいは交通システム、そういったものを公共主体でやっていくことが有効ではないだろうかということでございます。
 そのほか、53ページ、シンクにつきまして、国内の制度として、吸収量の算定のための統計・情報制度の整備・構築が必要であろう。
 54ページ以降は、京都メカニズムでありますが、京都メカニズムを国内で実施するために必要なレジストリーなどの仕組みを用意しておく必要があろうということでございます。
 最後に、59ページから、冒頭、計画を策定するとございましたが、その計画に基づいて、今まで述べましたような様々な対策を実施する。それをフォローアップする。フォローアップの結果、さらにその対策を分野ごと、あるいは全体にチェックしながら対策を強化するといった一連のステップが必要ではないだろうかという点でございます。
 以上でございます。

【森嶌会長】
 ありがとうございました。
 それでは、引き続いて、今週の火曜日に開催されました「地球環境保全に関する関係閣僚会議及び地球温暖化対策推進本部」につきまして事務局から御説明いただきます。

【炭谷地球環境局長】
 7月1日付けで地球環境局長を拝命いたしました炭谷でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 今週の火曜日、7月10日に地球環境保全に関する関係閣僚会議及び地球温暖化対策推進本部の合同の会議が開催されました。その概要について御報告させていただきたいと思います。
 まず資料3を御覧いただきたいと存じます。1999年度の温室効果ガスの排出量について御報告いたしました。
 1ページにございますように、我が国の6種類の温室効果ガスの総排出量は、約13億700万トンになっておりまして、京都議定書に定められております基準年と比べますと約6.8%上回っております。また、前年の98年度と比べますと約2.1%増加しております。
 2ページを御覧いただきたいと思います。6種類の温室効果ガス総排出量の9割以上を占める二酸化炭素についてみますと、99年度の排出量は約12億2500万トンとなっておりまして、これを90年度と比べますと約9.0%増加しているわけでございます。
 次に一番最後の6ページを御覧ください。上のグラフは、二酸化炭素の部門別排出量の推移でございます。産業部門については90年度比で0.8%増とほぼ横ばいで推移しております。一方、運輸部門では90年度比で23%も大幅に増加しており、また、民生
 (家庭)、民生(業務)部門では、90年度比では15ないし20%と大幅な増加となっております。
 続きまして資料4-1、資料4-2を御覧いただきたいと存じます。地球温暖化対策推進大綱の進捗状況及び今後の取組の重点及びその概要版でございます。推進大綱につきましては、地球温暖化対策に関する基本方針におきまして、その実施状況について、地球温暖化対策推進本部において毎年定期的にフォローアップを行うとされておりますので、今回その3回目のフォローアップを行いました。
 次に資料5を御覧いただきたいと思います。「地球温暖化対策の強力な推進について」の申合せというものでございます。先ほど御説明いたしましたように、我が国の99年度の温室効果ガスの排出量は、京都議定書の基準年に比べ約6.8%の増加となっており、京都議定書の目標の達成のためには、一層の取組が必要でございます。このため、京都議定書の目標を達成するための各般の施策の強力な推進を図っていくことを、COP6再開会合を控えたこの時期に改めて確認するため、この資料5にありますような内容で申合せを行ったわけでございます。
 以上で御報告を終わらせていただきます。

【森嶌会長】
 ありがとうございました。
 大変駆け足で、地球環境部会に日頃出席しておられる先生方は無理なくフォローアップできたのかもしれませんが、地球環境部会に属しておられない委員の先生方には少し早すぎた、あるいは説明が十分でなかったということがあるかもしれません。
 なお、この小委員会の中間取りまとめにつきましては、今後これをパブリックコメントなどにかけまして、その後、再度審議を再開して、最終答申になるか、中間答申になるかはともかくとしまして、今年中にまとめていきたいと考えているところであります。
 私も両小委員会にはできるだけ顔を出して議論を聞かせていただきました。非常に重要な問題でございまして、まだ小委員会の中でもいろいろと御議論が続いているところでありますけれども、一応の目安としましては、政府の御説明によりますと、国内対策でやる部分は、基準年の90年の-0.5%削減ということがうたわれておりまして、仮にそれを基準に考えてみますと、現在、議論は進められておりますけれども、頑張れば2%~5%の削減が可能であるということでございます。今のところ、これは中間的なことでございますが。その意味では、これは大変な努力をしなければならないことは確かでありますれども、決してできないということではないわけでございます。
 他方、アメリカのブッシュ政権の宣言が出た後、日本政府としては、京都議定書の2002年の発効を目指して全力をあげるということを明らかにした。これは先ほどの太田次官のお話にも明らかであったところであります。それと同時に、京都議定書が実効性のあるものとなるためにはアメリカの参加が不可欠という判断の下で、現在、京都議定書の場に戻ってきてもらうようにアメリカに対して強く働きかけているところであります。しかし、アメリカの態度は、今のところ、皆様御承知のように、決してそう簡単に議定書の場に戻ってくるという雰囲気ではございません。
 そこで、内外からいろいろな疑惑がございまして、アメリカが議定書に戻ってこなければ日本は批准しないのではないか。環境関係の私のアメリカの友人からもそういうことになっているのかと聞かれましたが、日本政府はそういうことは言っていないのだということを申しましたけれども。そういうことで、現在、いろいろ流動的でもあり、また、先ほど御説明がありましたように、99年度は少し景気が回復したということもありまして、減少ぎみだったのがまた少し増加しているということがありまして、まだまだこれから中央環境審議会としては、国民の皆さん、あるいは企業の方々と一緒になって頑張っていかなければならないわけであります。ボンの会議に当たりまして、先ほど申しましたように、地球環境問題、環境問題に対して最も深く関わっている中央環境審議会が何も議論しないで、中間取りまとめが出ているという状況だけでは、国民に対しても、また、対外的にもあまり望ましいことではないのではないかと思いまして、あまり先例はないようでありますけれども、私の方から環境省に申し出まして、こういう会合をもちたいということで、その際、私としましては、皆さんの御議論のたたき台として、資料6に「論点メモ」というものをまとめてみました。これはあくまでも、みましたということでございます。
 まず第1には、地球温暖化問題は、IPCCの第三次評価によっても、決して無視できるものではなく、今後非常に深刻に取り組んでいかなければならない。既に部分的には温暖化の影響が出ているというふうに指摘されております。そこで、地球温暖化問題に国際的に取り組む道具としては、今までのところ、もちろん国連気候変動枠組条約というのがもとにあるわけですが、それに基づいて京都議定書がございます。IPCCの活動からスタートして考えますと、もう10年にわたってこの問題に国際社会は取り組んできておりますし、京都議定書を採択してからでももう既に4年になろうとしているところであります。そのことから考えますと、深刻化する地球温暖化問題に対しては、京都議定書をもとにしてさらに進んでいかなければならないのではないか、第1の点についてはそういう認識を書いてございます。
 第2は、京都議定書の目標達成の可能性についてということでございますが、先ほど浅野部会長からも御報告がありましたように、シナリオ小委員会でモデルなどを使ってやった結果、2%~5%の削減が、これはただそういうふうになるということではありませんで、努力すればできないことではないと。その意味では、先ほど既に申しましたけれども、国内対策で0.5、排出量取引とかシンクなどで5.5というふうに現時点で計算されているわけですが、国内対策をしっかりやっていけば、京都議定書の目標達成の可能性はないわけではないというのが第2点でございます。
 第3点につきましては、先ほどから述べておりますが、ブッシュ政権が京都議定書を支持しないと声明をして以来、非常に混迷状態になっておりまして、来週からのボンの会議も決して容易にまとまるという見通しがあるわけではございません。その意味では極めて厳しい状況でありますが、日本政府は、京都議定書の2002年までの発効を目指し、COP6再開会合の成功に向けて最大限努力すると内外に宣言しているところであります。そして、先ほど関係閣僚会議あるいは対策推進本部などにもありますように、今後も強力に国内対策を進めていくというのが政府の態度であります。
 そこで、COP6再開会合に向けて、中央環境審議会として日本政府に望む点としましては、日本政府の今までに明らかにされている方針を支持する。地球温暖化対策が一刻の 猶予も許さない事態であることに鑑み、政府においては、今後も日本がこの分野で国際的な信頼を得、先ほど申しましたように、日本は、これ幸いで批准しないのではないかということではなくて、途上国も含めて信頼を得、国際的なイニシアティブを発揮するために、京都議定書に関する国際合意の成立に向けて最大の努力を傾けていただきたいというこ とでございます。
 一応文章としては考えたつもりでありますけれども、それほど推敲を重ねて練り上げたものでもございませんが、地球温暖化問題への取組というのが国際社会にとって喫緊の問題である。我が国としては、京都議定書に向けて頑張れば、削減目標を達成することは不可能ではない。そして、現在日本政府が述べている2002年の京都議定書の発効に向けて努力する。他方で、米国などの参加を強く求める。そういう方針で我が国としては、COP6に当たって、そうした努力を続けながら、京都議定書について国際的な合意が成立するように頑張っていただきたい。そういうことでございます。
 御質問もあろうかと思いますので、先ほどの御質問も含めて、また、私のメモにつきましてもどうぞ御議論いただければと思います。
 なお、このメモの位置づけでございますが、今日は懇談会ということでございますので、正式にこれによって政府に対して意見を具申するということではございませんけれども、 ここで皆様の御同意が得られれば、中央環境審議会としてこういう考え方であるということを発表したいということでございます。
 どうぞどなたからでも結構でございます。

【天野委員】
 最初に御質問を1つさせていただきます。質問というよりもむしろコメントになるかもしれませんが、資料5で、「記」と書きまして、2つのパラグラフがありますが、最初のパラグラフも、「京都議定書の目標の達成のためには、一層の取組が必要である。」と。同じように第2段落につきましても、「京都議定書の目標を達成するための各般の施策の強力な推進を図っていくこととする。」と書いてあります。これはいつもこういう表現が出てくると思うのですが、何年までにきちっとこういうことをやりますというのが書かれていないわけですね。ですから、ある意味で、英語でいいますと「インクリメンタル」、インクリメンタルな政策をやるということであって、いつまでにどういう成果ができるかということがわからない表現になっていると思います。ですから、こういう形で、今回のような場合に、例えば京都議定書には、2005年までには検証可能な成果が出るようなことをしなければいけないというのがあるのですが、一層の取組でそれができるかどうかということが大変疑問だと思うわけです。外国の場合には、はっきりやらないという場合もありますけれども、大体何年頃にはどういうことをするという言い方をする場合が非常に多くて、特に重要な政策についてはそういう場合が多いと思うんです。そういう形の申合せができないのかどうか、あるいは環境省としてそういうふうな申合せの方向へもっていくような努力をされないのかどうか、その辺をお伺いできたらと思います。

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